(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-03
(54)【発明の名称】KIF18A阻害剤の合成
(51)【国際特許分類】
C07D 401/14 20060101AFI20250221BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20250221BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250221BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20250221BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20250221BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250221BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20250221BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20250221BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20250221BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250221BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250221BHJP
C07D 221/20 20060101ALI20250221BHJP
C07C 313/04 20060101ALI20250221BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20250221BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
A61K31/506
A61P35/00
A61P1/00
A61P15/00
A61P11/00
A61P1/18
A61P13/08
A61P13/10
A61P25/00
A61P43/00 101
C07D221/20
C07C313/04
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543870
(86)(22)【出願日】2023-01-26
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 US2023011636
(87)【国際公開番号】W WO2023146973
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カイエ,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】グリーン,ダニエル ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】コーベット,マイケル トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,キャロリン
【テーマコード(参考)】
4C086
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC42
4C086GA07
4C086GA13
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086NA11
4C086ZA02
4C086ZA31
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC41
4H006AA01
4H006TA02
4H039CA80
4H039CB20
4H039CE40
(57)【要約】
本発明は、化学構造化合物(1)を有するKIF18A阻害剤、またはその塩化合物(1a)の改良された調製[式中、HAは、本明細書で定義されるとおりである]、ならびにそれらの重要中間体、すなわち、式:化合物(2a)、化合物(3a)、化合物(5)またははその塩、及び化合物(6a)またはその水和物、好ましくは化合物(6a-1)の化合物(2a)、化合物(3a)、化合物(5)またはその塩、及び化合物(6a)またはその水和物に関する。本発明はさらに、化合物(6a)の固形物形態、好ましくは化合物(6a-1)の結晶性水和物形態に関する。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学構造:
【化1】
を有するKIF18A阻害剤化合物を調製する方法であって、構造:
【化2】
[式中、PGは、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-O-C
1-6アルキル、テトラヒドロピラニル、アリル、またはベンジルから選択されるヒドロキシル保護基である]を有する化合物2を、好適な溶媒中で好適な脱保護剤と反応させて前記化合物1を形成させることを含む、前記方法。
【請求項2】
式:
【化3】
[式中、PGは、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-O-C
1-6アルキル、テトラヒドロピラニル、アリル、またはベンジルから選択されるヒドロキシル保護基である]を有する化合物3またはその塩を、式
【化4】
を有する化合物4またはその塩と、有機溶媒中アミドカップリング試薬及び塩基の存在下で反応させて前記化合物2を形成させることを含む、前記化合物2を調製することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式:
【化5】
を有する化合物5またはその塩を、式
【化6】
[式中、PGは、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-O-C
1-6アルキル、テトラヒドロピラニル、アリル、またはベンジルから選択されるヒドロキシル保護基であり、Mは金属であり、nは、1または2から選択される整数である]を有する化合物6またはその水和物及び塩基と、任意に触媒の存在下、高温にて有機溶媒中で反応させて前記化合物3またはその塩を形成させることを含む、前記化合物3またはその塩を調製することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
式:
【化7】
[式中、X
1は、ハロゲン化物である]を有する化合物7を、式
【化8】
[式中、LG
1は、脱離基である]を有する化合物8と、塩基の存在下、高温にて有機溶媒中で反応させて前記化合物5、またはその塩を形成させることを含む、前記化合物5またはその塩を調製することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式:
【化9】
[式中、LG
2は、脱離基である]を有する化合物9を、式;
【化10】
[式中、X
2は、ハロゲン化物である]を有する化合物10と、塩基の存在下、有機溶媒中で高温にて反応させて前記化合物4を形成させることを含む、前記化合物4を調製することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
化合物であって、
【化11】
であり、式中、PGはベンジルである(化合物2a)、前記化合物。
【請求項7】
化合物であって、
【化12】
であり、式中、PGはベンジルである(化合物3a)、前記化合物。
【請求項8】
【化13】
またはその塩である、化合物。
【請求項9】
以下の化学構造:
【化14】
[式中、PGはヒドロキシル保護基であり、Mは金属であり、nは、1または2である](化合物6)を有する前記化合物6、またはその水和物を調製することをさらに含み、構造
【化15】
[式中、PGは、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-O-C
1-6アルキル、テトラヒドロピラニル、アリル、またはベンジルから選択されるヒドロキシル保護基である]を有する化合物11を、適度の高温にて極性溶媒中で塩基と反応させて前記化合物6またはその水和物を形成させることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
以下の化学構造:
【化16】
[式中、PGは、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-O-C
1-6アルキル、テトラヒドロピラニル、アリル、またはベンジルから選択されるヒドロキシル保護基である]を有する化合物12を、触媒の存在下、溶媒中でわずかに高温にて酸化剤と反応させて前記化合物11を形成させることによって前記化合物11を調製することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
以下の化学構造:
【化17】
を有する化合物13を、以下の化学構造:
【化18】
[式中、PGは、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-O-C
1-6アルキル、テトラヒドロピラニル、アリル、またはベンジルから選択されるヒドロキシル保護基であり、LG
3は、脱離基である]を有する化合物14と、塩基の存在下、溶媒中で適度の高温にて反応させて前記化合物12を形成させることによって前記化合物12を調製することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
PGがベンジルであり、前記好適な脱保護剤がパラジウム炭素触媒であるか、または前記溶媒が極性溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記アミドカップリング試薬が、クロロホルムアミジニウム塩、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムクロリド(DMC)、1-(クロロ-1-ピロリジニルメチレン)ピロリジニウムヘキサフルオロホスファート(PyCIU)、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(CDMT)、もしくはN-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン(EEDQ)から選択され、前記塩基が、N-メチルモルホリン(NMM)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリエチルアミン(TEA)、2,4,6-トリメチルピリジン(コリジン)、または2,6-ルチジンから選択される、あるいは
前記クロロホルムアミジニウム塩が、クロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファート(TCFH)であり、前記塩基が、2,4,6-トリメチルピリジン(コリジン)である、あるいは
前記方法が、25℃~50℃、40℃~50℃、または50℃の温度で行われる、あるいは
前記溶媒が、2-メチルTHF、アセトニトリル、酢酸イソプロピル、ジクロロメタン、THF、もしくはそれらの混合物から選択される有機溶媒であるか、または前記溶媒が、2-メチルTHF及びアセトニトリルである、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記方法を、無触媒で、または鉄触媒、金触媒、もしくはパラジウム触媒から選択される金属触媒の存在下で実施するか、または前記方法を金属触媒の存在下で実施し、前記触媒が塩化鉄(III)六水和物である、あるいは
前記塩基が亜硫酸水素ナトリウムである、あるいは
前記高温が、溶媒還流温度または60℃~100℃、70℃~90℃ C、もしくは70℃である、あるいは
前記溶媒がNMPである、請求項3に記載の方法。
【請求項15】
前記塩基が、水酸化物もしくはアミンであるか、または前記塩基が、水酸化カリウムもしくはジイソプロピルエチルアミンであるか、または前記塩基が、水酸化カリウムである、あるいは
前記溶媒が、NMP、DMAC、DMF、もしくはDMSOから選択される極性非プロトン性溶媒であるか、または前記溶媒が、NMPである、あるいは
前記高温が、溶媒還流温度または80℃~140℃、100℃~140℃ C、もしくは120℃である、あるいは
前記化合物5を、酸の添加によって結晶化させる、または前記酸がリン酸である、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
前記塩基が、アミンもしくは水酸化物であるか、または前記塩基がトリエチルアミンである、あるいは
前記高温が、溶媒還流温度または60℃~100℃、60℃~85℃ C、もしくは80℃である、あるいは
前記溶媒が、アセトニトリルと水との混合物である、請求項5に記載の方法。
【請求項17】
前記塩基が水酸化物であるか、または前記塩基が、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウムであるか、または前記塩基が水酸化カルシウムである、あるいは
前記溶媒が、C
1-6アルキルアルコールと水との混合物である、あるいは
前記化合物6を、アセトン中で結晶化させる、あるいは
温度が、25℃~50℃、40℃~50℃、または50℃である、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記酸化剤が、過酸化物もしくはペルオキシカルボン酸であるか、または前記酸化剤が、過酸化水素もしくはメタペルオキシカルボン酸である、あるいは
前記触媒が、タングステン酸ナトリウムである、あるいは
温度が、25℃~40℃、30℃~35℃ C、または30℃である、あるいは
前記溶媒が、アセトニトリルと水との混合物である、あるいは
前記化合物12を、アセトン中またはアセトンと水との混合物中で結晶化させる、あるいは
前記化合物12を単離せず、前記溶媒がアセトニトリルである、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記塩基が、重炭酸塩、炭酸塩、水酸化物、もしくはリン酸塩であるか、または前記塩基が炭酸カルシウムである、あるいは
前記溶媒が、アルコールであるか、または前記溶媒が、メタノールである、あるいは
温度が、溶媒還流温度または70℃~100℃、75℃~90℃ C、もしくは82℃である、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物1を、溶媒中で酸HAと反応させて式
【化19】
を有する化合物1の薬学的に許容される塩を形成させることをさらに含み、酸HXが、HCl、メタンスルホン酸、もしくはパラトルエンスルホン酸であるか、または前記酸HXが、DMSOに溶解させたHClであるか、または前記溶媒が水である、請求項1~5または9~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記PGがベンジルである、請求項1~5または9~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
化学構造:
【化20】
[式中、PGは、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-O-C
1-6アルキル、テトラヒドロピラニル、アリル、またはベンジル、好ましくは、メチル-O-メチル、テトラヒドロピラニル、またはベンジル、より好ましくはベンジルから選択されるヒドロキシル保護基であり、Mは金属であり、nは、1、2、または3から選択される整数である]を有する化合物、またはその固形物形態。
【請求項23】
PGがベンジルであり、Mがカルシウムであり、nが2であり(化合物6a)、構造
【化21】
を有する、請求項22に記載の化合物、またはその固形物形態。
【請求項24】
結晶性または非晶質である、請求項23に記載の前記化合物6aの固形物形態。
【請求項25】
式
【化22】
を有する化合物6a-Iであり、結晶性である、請求項24に記載の前記化合物6aの固形物形態。
【請求項26】
Cu Kα照射を使用して4.2、8.2、及び12.2±0.2°2θにおけるXRPDパターンピークによってさらに特徴付けられる、あるいは
Cu Kα照射を使用して13.6、14.2、18.3、19.5、20.6、20.9、及び22.9±0.2°2θにおけるXRPDパターンピークによってさらに特徴付けられる、またはCu Kα照射を使用して16.2、16.7,19.2、21.4、23.9、24.4、24.7、25.5、27.6、28.1、30.3、33.3、及び36.6±0.2°2θにおけるXRPDパターンピークによってさらに特徴付けられる、あるいは
実質的に
図1に示すようなXRPDパターンを有する、あるいは
示差走査熱量測定により測定した場合に、124.96℃~130.96℃における第1の吸熱転移を、及び256.11℃~262.11℃における第2の吸熱転移を有するか、または前記第1の吸熱転移が、127.96℃±3℃において生じ、前記第2の吸熱転移が259.11℃±3℃において生じる、あるいは
実質的に
図3に示すような熱重量分析(TGA)を有する、あるいは
実質的に
図4に示すような単結晶構造を有する、請求項25に記載の結晶性化合物6a-I。
【請求項27】
結晶形態が安定であり、吸湿性が低い、請求項25及び26のいずれか1項に記載の結晶性化合物6a-I。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、KIF18A阻害剤化合物、すなわち、N-(2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-イル)-4-((2-ヒドロキシエチル)スルホンアミド)-2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)ベンズアミド(化合物1)、またはその薬学的に許容される塩を調製するための改善された効率的でスケーラブルな工程であって、バッチ式工程、連続式工程、またはそれらの混合で実施する工程に関する。本発明はまた、化合物1またはその薬学的に許容される塩を調製するのに有用な重要中間化合物の調製に関する。本発明はさらに、化合物6aの固形物形態、好ましくは、化合物6aの結晶性水和物形態(化合物6a-I)に関する。
【背景技術】
【0002】
遊離塩基化合物の2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)-N-[2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-イル]-4-[(2-ヒドロキシエタンスルホニル)アミノ]ベンズアミド(化合物1)、またはその薬学的に許容される塩は、モータータンパク質キネシンファミリーメンバー18A(KIF18A)の阻害剤として有用である:
【化1】
【0003】
キネシンは、細胞分裂ならびに細胞内の小胞及び細胞小器官の輸送において重要な役割を果たす分子モーターである。有糸分裂キネシンは、紡錘体の集合、染色体分配、中心体の分離、及び動態のいくつかの側面における役割を果たす。ヒトのキネシンは、いわゆる「モータードメイン」内の配列相同性に基づいて14のサブファミリーに分類され、このドメインのATPアーゼ活性が微小管(MT)に沿った単一方向の運動を誘導する。これらのタンパク質の非モータードメインはカーゴの結合に関与しており、「カーゴ」には、多種多様な異なる膜性細胞小器官、シグナル伝達足場系、及び染色体のうちのいずれか1つが含まれ得る。キネシンはATP加水分解のエネルギーを使用してカーゴを分極微小管に沿って移動させる。したがって、キネシンは、「プラス端」指向性モーターまたは「マイナス端」指向性モーターと呼ばれることが多い。
【0004】
KIF18A遺伝子は、キネシン-8サブファミリーに属し、プラス端指向性モーターである。KIF18Aは、動原体微小管のプラス端における動態に影響を与えて、正しい染色体の配置及び紡錘体の張力を制御すると考えられている。ヒトKIF18Aの欠損は、HeLa子宮頸癌細胞において、より長い紡錘体、分裂中期における染色体振動の増加、及び有糸分裂紡錘体集合チェックポイントの活性化をもたらす。KIF18Aは、がん治療の標的とすることが可能と思われる。KIF18Aは、結腸癌、乳房癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、膀胱癌、頭部癌、頸部癌、子宮頸癌、及び卵巣癌等の、これらに限定されない様々な種類のがんで過剰発現している。さらに、KIF18Aの遺伝子の欠失もしくはノックダウンまたは阻害は、がん細胞株の有糸分裂紡錘体装置に影響を与える。特に、KIF18Aの阻害は、有糸分裂細胞の停止を誘発することがわかっており、これは、アポトーシスを介した有糸分裂中の細胞死、分裂期崩壊、または間期における細胞周期再開(mitotic slippage)後の多極性誘発による致死性もしくは死を促進し得る既知の脆弱性である。
【0005】
化合物1、及びそれを作製する例示的方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第11/236,069号(2022年2月1日発行)に記載されている。化合物1の固形物形態(結晶性無水の化合物1または非晶質の化合物1を含む)と共に、化合物1の安定な塩、水和物、溶媒和物、または共結晶、化合物1の安定な塩、水和物、溶媒和物、または共結晶、特に、化合物1の商用医薬品製造のためのものは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第US63/224,208号(2021年7月21日出願)に記載されている。
【0006】
米国特許第11/236,069号では化合物1を調製する方法が開示されたが、これは、最後から2番目のステップにおける重要中間化合物の導入に依存したものであった。開示された工程は、望ましくない物理的特性(吸湿性)を有する重要中間化合物を伴い、重要中間化合物の再結晶が複数回必要となる予測が不可能な不純物管理戦略を有することがわかった。開示された方法で特定された商業リスクを克服するために、本発明者らは、不純物管理戦略を改善し、収束、スケーラビリティを改善し、安定性が改善した重要中間化合物を活用する、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、好ましくはそのHCl塩を調製するための本発明の新規改良法を開発した。化合物1またはその薬学的に許容される塩の合成に使用され得る本発明の重要中間化合物は、以下の式:
【化2】
またはその塩;及び
【化3】
の化合物2a、化合物3a、化合物5またはその塩、及び化合物6aであり、好ましくは、化合物6aの水和物:
【化4】
である。
【0007】
新規重要中間化合物を以下のとおり命名する:
【0008】
(1)4-((2-(ベンジルオキシ)エチル)スルホンアミド)-N-(2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-イル)-2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)ベンズアミド(化合物2a)、
【0009】
(2)4-((2-(ベンジルオキシ)エチル)スルホンアミド)-2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)安息香酸(化合物3a)、
【0010】
(3)4-ニトロ-2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)安息香酸(化合物5)、
【0011】
(4)2-(ベンジルオキシ)エタン-1-スルフィン酸カルシウム(化合物6a)、及び
【0012】
(5)2-(ベンジルオキシ)エタン-1-スルフィン酸カルシウム 4/3水和物(化合物6a-I)。
【0013】
本発明はさらに、化合物6aの固形物形態、好ましくは、化合物6aの結晶性水和物形態(化合物6a-I)に関する。
【発明の概要】
【0014】
本発明の態様1では、本発明は、以下の化学構造:
【化5】
を有するKIF18A阻害剤を調製するための新方法を提供し、構造:
【化6】
[式中、PGは、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-O-C
1-6アルキル、テトラヒドロピラニル、アリル、またはベンジル、好ましくは、メチル-O-メチル、テトラヒドロピラニル、またはベンジル、より好ましくはベンジルから選択されるヒドロキシル保護基である]を有する化合物2を、好適な溶媒中で好適な脱保護剤と反応させて前記化合物1を形成させることを含む。
【0015】
本発明の態様2では、本発明は、式:
【化7】
[PGは、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-O-C
1-6アルキル、テトラヒドロピラニル、アリル、またはベンジル、好ましくは、メチル-O-メチル、テトラヒドロピラニル、またはベンジル、より好ましくはベンジルから選択されるヒドロキシル保護基である]を有する化合物3またはその塩を、式
【化8】
を有する化合物4またはその塩と、有機溶媒中アミドカップリング試薬及び塩基の存在下で反応させて前記化合物2を形成させることを含む、前記化合物2を調製することをさらに含む態様1の方法を提供する。
【0016】
本発明の態様3では、本発明は、式:
【化9】
を有する化合物5またはその塩を、式
【化10】
[式中、PGは、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-O-C
1-6アルキル、テトラヒドロピラニル、アリル、またはベンジル、好ましくは、メチル-O-メチル、テトラヒドロピラニル、またはベンジル、より好ましくはベンジルから選択されるヒドロキシル保護基であり、Mは、金属、例えば、アルカリ、アルカリ土類金属、または遷移金属、好ましくはナトリウム、カルシウム、または亜鉛金属、より好ましくはカルシウムであり、nは、1または2、好ましくは2から選択される整数である]を有する化合物6またはその水和物及び塩基と、任意に触媒の存在下、高温にて有機溶媒中で反応させて前記化合物3またはその塩を形成させることを含む、前記化合物3またはその塩を調製することをさらに含む態様2の方法を提供する。
【0017】
本発明の態様4では、本発明は、式:
【化11】
[式中、X
1は、ハロゲン化物、好ましくは塩化物または臭化物、より好ましくは塩化物である]を有する化合物7を、式:
【化12】
[式中、LG
1は、脱離基、好ましくはハロ、より好ましくはクロロまたはフルオロ、最も好ましくはフルオロである]を有する化合物8と、塩基の存在下、高温にて有機溶媒中で反応させて前記化合物5、またはその塩を形成させることを含む、前記化合物5またはその塩を調製することをさらに含む態様3の方法を提供する。
【0018】
本発明の態様5では、本発明は、式:
【化13】
[式中、LG
2は、脱離基、好ましくはハロ、より好ましくはクロロまたはフルオロ、最も好ましくはクロロである]を有する化合物9を、式
【化14】
[式中、X
2は、ハロゲン化物、好ましくは塩化物または臭化物、より好ましくは塩化物である]を有する化合物10と、有機溶媒中で高温にて塩基の存在下で反応させて前記化合物4を形成させることを含む、前記化合物4を調製することをさらに含む態様2の方法を提供する。
【0019】
本発明の態様6では、本発明は、化合物2であり、式中、PGがベンジルである、構造
【化15】
を有する化合物を提供する。
【0020】
本発明の態様7では、本発明は、化合物3であり、式中、PGがベンジルである、構造:
【化16】
を有する化合物を提供する。
【0021】
本発明の態様8では、本発明は、
【化17】
である化合物、またはその塩を提供する。
【0022】
本発明の態様9では、本発明は、以下の化学構造:
【化18】
を有する前記化合物6[式中、PGは、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-O-C
1-6アルキル、テトラヒドロピラニル、アリル、またはベンジル、好ましくは、メチル-O-メチル、テトラヒドロピラニル、またはベンジル、より好ましくはベンジルから選択されるヒドロキシル保護基であり、Mは、金属、例えば、アルカリ、アルカリ土類金属、または遷移金属、好ましくはナトリウム、カルシウム、または亜鉛金属、より好ましくはカルシウムであり、nは、1または2、好ましくは2から選択される整数である]、またはその水和物を調製することをさらに含む態様3の方法であって、構造
【化19】
[式中、PGは、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-O-C
1-6アルキル、テトラヒドロピラニル、アリル、またはベンジル、好ましくは、メチル-O-メチル、テトラヒドロピラニル、またはベンジル、より好ましくはベンジルから選択されるヒドロキシル保護基である]を有する化合物11を、適度の高温にて極性溶媒中で塩基と反応させて前記化合物6、または好ましくはその水和物、最も好ましくは
【化20】
を形成させることを含む、方法を提供する。
【0023】
本発明の態様10では、本発明は、以下の化学構造:
【化21】
[式中、PGは、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-O-C
1-6アルキル、テトラヒドロピラニル、アリル、またはベンジル、好ましくは、メチル-O-メチル、テトラヒドロピラニル、またはベンジル、より好ましくはベンジルから選択されるヒドロキシル保護基である]を有する化合物12を、触媒の存在下、溶媒中でわずかに高温にて酸化剤と反応させて前記化合物11を形成させることによって前記化合物11を調製することをさらに含む、態様9の方法を提供する。
【0024】
本発明の態様11では、本発明は、以下の化学構造:
【化22】
を有する化合物13を、以下の化学構造:
【化23】
[式中、PGは、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-O-C
1-6アルキル、テトラヒドロピラニル、アリル、またはベンジル、好ましくは、メチル-O-メチル、テトラヒドロピラニル、またはベンジル、より好ましくはベンジルから選択されるヒドロキシル保護基であり、LG
3は、脱離基であり、好ましくは、LG
3は、ハロ、より好ましくはフルオロ、クロロ、またはブロモ、より好ましくはブロモである]を有する化合物14と、塩基の存在下、溶媒中で適度の高温にて反応させて前記化合物12を形成させることによって前記化合物12を調製することをさらに含む、態様10の方法を提供する。
【0025】
本発明の態様12では、本発明は、PGがベンジルであり、前記好適な脱保護剤がパラジウム炭素触媒である、態様1の方法を提供する。
【0026】
本発明の態様13では、本発明は、前記溶媒が極性溶媒である、態様1の方法を提供する。
【0027】
本発明の態様14では、本発明は、前記溶媒が、アセトンと水との混合物である、態様13の方法を提供する。
【0028】
本発明の態様15では、本発明は、前記アミドカップリング試薬が、クロロホルムアミジニウム塩、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムクロリド(DMC)、1-(クロロ-1-ピロリジニルメチレン)ピロリジニウムヘキサフルオロホスファート(PyCIU)、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(CDMT)、またはN-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン(EEDQ)から選択される、態様2の方法を提供する。
【0029】
本発明の態様16では、本発明は、前記塩基が、N-メチルモルホリン(NMM)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリエチルアミン(TEA)、2,4,6-トリメチルピリジン(コリジン)、または2,6-ルチジンから選択される、態様2の方法を提供する。
【0030】
本発明の態様17では、本発明は、前記クロロホルムアミジニウム塩が、クロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファート(TCFH)であり、前記塩基が、2,4,6-トリメチルピリジン(コリジン)である、態様2の方法を提供する。
【0031】
本発明の態様18では、本発明は、前記方法が、25℃~50℃、好ましくは40℃~50℃、より好ましくは50℃の温度で行われる、態様2の方法を提供する。
【0032】
本発明の態様19では、本発明は、前記溶媒が、2-メチルTHF、アセトニトリル、酢酸イソプロピル、ジクロロメタン、THF、DMF、NMP、塩化メチレン、またはそれらの混合物、好ましくは2-メチルTHF及びアセトニトリルから選択される有機溶媒である、態様2の方法を提供する。
【0033】
本発明の態様20では、本発明は、前記方法を、無触媒で、または鉄触媒、金触媒、もしくはパラジウム触媒から選択される金属触媒の存在下で実施する、態様3の方法を提供する。
【0034】
本発明の態様21では、本発明は、前記方法を、金属触媒の存在下で実施し、前記触媒が、塩化鉄(III)六水和物である、態様20の方法を提供する。
【0035】
本発明の態様22では、本発明は、前記塩基が亜硫酸水素ナトリウムである、態様3の方法を提供する。
【0036】
本発明の態様23では、本発明は、前記高温が、溶媒還流温度または60℃~100℃、好ましくは70℃~90℃、より好ましくは70℃である、態様3の方法を提供する。
【0037】
本発明の態様24では、本発明は、前記溶媒がNMPである、態様3の方法を提供する。
【0038】
本発明の態様25では、本発明は、前記塩基が、水酸化物またはアミン、好ましくは水酸化物である、態様4の方法を提供する。
【0039】
本発明の態様26では、本発明は、前記塩基が、水酸化カリウムまたはジイソプロピルエチルアミン、好ましくは水酸化カリウムである、態様25の方法を提供する。
【0040】
本発明の態様27では、本発明は、前記溶媒が、NMP、DMAC、DMF、またはDMSOから選択される極性非プロトン性溶媒、好ましくはNMPである、態様4の方法を提供する。
【0041】
本発明の態様28では、本発明は、前記高温が、溶媒還流温度または80℃~140℃、好ましくは100℃~140℃ C、より好ましくは120℃である、態様4の方法を提供する。
【0042】
本発明の態様29では、本発明は、前記化合物5を、酸の添加によって結晶化させる、態様4の方法を提供する。
【0043】
本発明の態様30では、本発明は、前記酸がリン酸である、態様29の方法を提供する。
【0044】
本発明の態様31では、本発明は、前記塩基が、アミンまたは水酸化物、好ましくはアミンである、態様5の方法を提供する。
【0045】
本発明の態様32では、本発明は、前記塩基がトリエチルアミンである、態様31の方法を提供する。
【0046】
本発明の態様33では、本発明は、前記高温が、溶媒還流温度または60℃~100℃、好ましくは60℃~85℃ C、より好ましくは80℃である、態様5の方法を提供する。
【0047】
本発明の態様34では、本発明は、前記溶媒が、アセトニトリルと水との混合物である、態様5の方法を提供する。
【0048】
本発明の態様35では、本発明は、前記塩基が、水酸化物、好ましくは水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、より好ましくは水酸化カルシウムである、態様9の方法を提供する。
【0049】
本発明の態様36では、本発明は、前記溶媒が、C1-6アルキルアルコールと水との混合物、好ましくはメタノールと水との混合物である、態様9の方法を提供する。
【0050】
本発明の態様37では、本発明は、前記化合物6を、メタノール/エタノール/水の混合物中で結晶化させて、式
【化24】
を有する含水化合物6a-Iを形成させる、態様9の方法を提供する。
【0051】
本発明の態様38では、本発明は、温度が、25℃~50℃、40℃~50℃、好ましくは50℃である、態様9の方法を提供する。
【0052】
本発明の態様39では、本発明は、前記酸化剤が、過酸化物またはペルオキシカルボン酸、好ましくは過酸化水素またはメタペルオキシカルボン酸(mCPBA)、より好ましくは過酸化水素である、態様10の方法を提供する。
【0053】
本発明の態様40では、本発明は、前記触媒が、タングステン酸ナトリウムである、態様10の方法を提供する。
【0054】
本発明の態様41では、本発明は、温度が、25℃~40℃、好ましくは30℃~35℃ C、より好ましくは30℃である、態様10の方法を提供する。
【0055】
本発明の態様42では、本発明は、前記溶媒が、アセトニトリルと水との混合物である、態様10の方法を提供する。
【0056】
本発明の態様43では、本発明は、前記化合物12を、アセトン中またはアセトンと水との混合物中で結晶化させる、態様10の方法を提供する。
【0057】
本発明の態様44では、本発明は、前記化合物12を単離せず、前記溶媒がアセトニトリルである、態様10の方法を提供する。
【0058】
本発明の態様45では、本発明は、前記
【0059】
塩基が、重炭酸塩、炭酸塩、水酸化物、またはリン酸塩、好ましくは炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウム、より好ましくは炭酸カリウムである、態様11の方法を提供する。
【0060】
本発明の態様46では、本発明は、前記塩基が炭酸カルシウムである、態様11の方法を提供する。
【0061】
本発明の態様47では、本発明は、前記溶媒が、アルコール、好ましくはメタノールである、態様11の方法を提供する。
【0062】
本発明の態様48では、本発明は、温度が、溶媒還流温度または70℃~100℃、好ましくは75℃~90℃ C、より好ましくは82℃である、態様11の方法を提供する。
【0063】
本発明の態様49では、本発明は、前記化合物1を、溶媒中で酸HAと反応させて式
【化25】
を有する化合物1の薬学的に許容される塩を形成させることをさらに含む、態様1~5または9~48のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0064】
本発明の態様50では、本発明は、酸HXが、HCl、メタンスルホン酸、またはパラトルエンスルホン酸である、態様49の方法を提供する。
【0065】
本発明の態様51では、本発明は、酸HXが、DMSOに溶解させたHClである、態様49の方法を提供する。
【0066】
本発明の態様52では、本発明は、前記溶媒が水である、態様49の方法を提供する。
【0067】
本発明の態様53では、本発明は、前記PGがベンジルである、態様1~5または9~52のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0068】
本発明の態様54では、本発明は、化学構造:
【化26】
[式中、PGは、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-O-C
1-6アルキル、テトラヒドロピラニル、アリル、またはベンジル、好ましくは、メチル-O-メチル、テトラヒドロピラニル、またはベンジル、より好ましくはベンジルから選択されるヒドロキシル保護基であり、Mは、1価金属、2価金属、または3価金属等の金属であり、好ましくは、Mは、1価金属または2価金属であり、より好ましくは、Mは、Na、Ca、またはZn、最も好ましくは、Mは、Caであり、nは、1、2、または3から選択される整数であり、好ましくは、nは、1または2であり、より好ましくは、nは2である]を有する化合物6、またはその固形物形態を提供する。
【0069】
本発明の態様55では、本発明は、PGがベンジルであり、Mがカルシウムであり、nが2であり(化合物6a)、構造
【化27】
を有する態様54の化合物、またはその固形物形態を提供する。
【0070】
本発明の態様56では、本発明は、結晶性または非晶質である、態様55に記載の前記化合物6aの固形物形態を提供する。
【0071】
本発明の態様57では、本発明は、式
【化28】
を有する化合物6a水和物であり、前記化合物が4/3水分子を含有し、結晶性である、態様55に記載の前記化合物6aの固形物形態を提供する。
【0072】
本発明の態様58では、本発明は、前記化合物6a水和物(化合物6a-I)の結晶形態1であり、Cu Kα照射を使用して4.2、8.2、及び12.2±0.2°2θにおけるXRPDパターンピークによってさらに特徴付けられる、態様55に記載の前記化合物6aの固形物形態を提供する。
【0073】
本発明の態様59では、本発明は、態様58の前記化合物6a-Iの結晶形態1であり、Cu Kα照射を使用して13.6、14.2、18.3、19.5、20.6、20.9、及び22.9±0.2°2θにおけるXRPDパターンピークによってさらに特徴付けられる、態様58に記載の前記化合物6aの固形物形態を提供する。
【0074】
本発明の態様60では、本発明は、態様59の結晶性化合物6a-Iであり、Cu Kα照射を使用して16.2、16.7、19.2、21.4、23.9、24.4、24.7、25.5、27.6、28.1、30.3、33.3、及び36.6±0.2°2θにおけるXRPDパターンピークによってさらに特徴付けられる、態様59に記載の前記化合物6aの固形物形態を提供する。
【0075】
本発明の態様61では、本発明は、実質的に
図1に示すようなXRPDパターンを有する結晶性化合物6a-Iである、態様60に記載の前記化合物6aの固形物形態を提供する。
【0076】
本発明の態様62では、本発明は、示差走査熱量測定により測定した場合に、実質的に
図2に示すような124.96℃~130.96℃における第1の吸熱転移を、及び256.11℃~262.11℃における第2の吸熱転移を有する結晶性化合物6a-Iである、態様58に記載の前記化合物6aの固形物形態を提供する。
【0077】
本発明の態様63では、本発明は、第1の吸熱転移が、127.96℃±3℃において生じ、第2の吸熱転移が259.11℃±3℃において生じる結晶性化合物6a-Iである、態様58に記載の前記化合物6aの固形物形態を提供する。
【0078】
本発明の態様64では、本発明は、実質的に
図3に示すような熱重量分析(TGA)を有する結晶性化合物6a-Iである、態様58に記載の前記化合物6aの固形物形態を提供する。
【0079】
本発明の態様65では、本発明は、結晶形態が安定であり、吸湿性が低い、態様58に記載の前記化合物6aの固形物形態を提供する。一実施形態では、固形物形態安定性は、結晶形態の変化がなく、DVS前後の結晶試料のXRPDピークで示されるXRPDピークが実質的に同一であることによって確認可能である。別の実施形態では、結晶試料の低吸湿性特性は、試料の質量をDVS実験の開始時及び終了時に測定し、その質量変化を計算して0.10%~0.20%、好ましくは0.15%となることにより示され得る。
【0080】
本発明の態様66では、本発明は、実質的に
図4に示すような単結晶構造を有する結晶性化合物6a-Iである、態様58に記載の前記化合物6aの固形物形態を提供する。
【0081】
別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本開示に使用するための方法及び材料が本明細書で記載されているが、当該技術分野で公知の他の好適な方法及び材料も使用可能である。材料、方法、及び例は例示的なものに過ぎず、限定することを意図しない。刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリー、ならびに本発明の簡単な説明及び本明細書の後述の項において言及される他の参考文献はいずれも、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合は、定義も含め、本明細書が優先する。本開示の他の特徴及び利点は、以下のさらなる説明、実施例から、及び下記の特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】(1)動的蒸気吸着(DVS)で測定した湿度ストレスの前後の結晶性化合物6a-IのX線粉末回折(「XRPD」)パターン、及び(2)化合物6a-I単結晶構造からのシミュレートXRPDパターンを示す。
【
図2】結晶性化合物6a-Iの示差走査熱量測定(DSC)サーモグラフを示す。
【
図3】結晶性化合物6a-Iの熱重量分析(TGA)を示す。
【0083】
定義
以下の定義は、本明細書で使用される用語及び本明細書に記載される本発明の範囲を理解する上でさらに役立つはずである。
【0084】
「Cx-yアルキル」という用語は、鎖にx~y個の炭素を含有する直鎖アルキル基及び分岐鎖アルキル基が含まれる、置換または非置換の飽和炭化水素基を指す。
【0085】
「ハロアルキル」という用語は、少なくとも1つの水素原子が、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード)、例えば、CH2F、CHF2、トリフルオロメチル及び2,2,2-トリフルオロエチルに置き換えられているアルキル基を指す。
【0086】
「含むこと」という用語は、示されている構成要素(複数可)が含まれるが、他の要素が排除されるわけではない、非限定的であることを意図する。
【0087】
「当量」という用語は、当業者が共通して理解するようなモル当量を意味することが意図される。
【0088】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物5の比較的無毒な無機及び有機の酸付加塩を指す。塩の性質は重要ではないが、ただし、それが薬学的に許容されることを条件とする。これらの塩は、化合物(複数可)の最終の単離及び精製時にその場で調製することも、または別々に、遊離塩基形態にある精製された化合物を、好適な有機酸または無機酸と反応させ、そのようにして形成された塩を単離することによって調製することもできる。化合物の好適な薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸からでも有機酸からでも調製され得る。そのような無機酸の例としては、限定することなく、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸及びリン酸が挙げられる。有機酸の例としては、限定することなく、脂肪族、脂環式、芳香族、アリール脂肪族、複素環式、カルボン酸及びスルホン酸のクラスの有機酸が挙げられ、それらの例は、ギ酸、酢酸、アジピン酸、酪酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、メシル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ショウノウ酸、カンファースルホン酸、ジグルコン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ドデシルスルホン酸、グルコヘプラン酸、グリセロホスホン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸、ニコチン酸、2-ナフタレンスルホン酸、シュウ酸、パルモ酸(palmoic)、ペクチニン酸、過硫酸、2-フェニルプロピオン酸、ピクリン酸、ピバル酸 プロピオン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、メシル酸、ウンデカン酸、ステアリン酸、アルゲン酸(algenic)、β-ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、ガラクタル酸及びガラクツロン酸である(例えば、Berge et al.(1977)“Pharmaceutical Salts”,J.Pharm.Sci.66:1-19.を参照のこと)。
【0089】
本明細書で使用される場合、「ヒドロキシル保護基」という用語は、ヒドロキシル基における望ましくない反応の防止に好適な保護基を意味する。代表的なヒドロキシル保護基としては、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、tert-ブチルジメチルシリル(TBS)等のようなトリ(C1-6アルキル)シリル基が含まれるシリル基;ホルミル、アセチル等のようなC1-6アルカノイル基が含まれるエステル(アシル基);ベンジル(Bn)、p-メトキシベンジル(PMB)、9-フルオレニルメチル(Fm)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル、DPM)等のようなアリールメチル基が挙げられるが、これらに限定されない。多数の保護基、ならびにそれらの導入及び除去については、T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New Yorkに記載されている。
【0090】
本明細書で使用される場合、「金属」という用語は、「1価金属」、「2価金属」、または「3価金属」を指す。
【0091】
本明細書で使用される場合、「1価金属」という用語は、イオン結合の一部である金属であって、前記金属が、+1の電荷を有するイオンを形成するものを指す。1価金属の例は、IUPAC周期表の第1族の金属(したがって、水素は含まれない)である。好ましい1価金属は、Na、K、及びLiである。
【0092】
本明細書で使用される場合、「2価金属」という用語は、イオン結合の一部である金属であって、前記金属が、+2の電荷を有するイオンを形成するものを指す。2価金属の例は、IUPAC周期表の第2族の金属である。好ましい2価金属は、Mg、Zn、またはCaである。
【0093】
本明細書で使用される場合、「3価金属」という用語は、イオン結合の一部である金属であって、前記金属が、+3の電荷を有するイオンを形成するものを指す。3価金属の例は、Al及びFeである。
【0094】
本明細書で使用される場合、「溶媒」という用語には、「水性溶媒」または「有機溶媒」が含まれる。
【0095】
本明細書で使用される場合、「水性溶媒」という用語は、水を含有している溶媒を意味する。
【0096】
本明細書で使用される場合、「有機溶媒」という用語は、別の物質(すなわち、溶質)を溶解することができる有機分子を指す。有機溶媒は、室温で液体であり得る。本発明に使用され得る有機溶媒の例としては、炭化水素溶媒(例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン等)が挙げられ、これにはまた、芳香族炭化水素溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、及びp-キシレン)、ハロゲン化炭化水素溶媒(例えば、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム等)、エステル溶媒(例えば、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、マロン酸エチル等)、ケトン溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトンまたは2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、3-ペンタノン等)、エーテル溶媒(例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、イソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルフェニルエーテルまたはアニソール等)、アミン溶媒(例えば、プロピルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、アニリン、ピリジン)、アルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-プロパノール、2-メチル-1-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、tert-ブタノール、1-オクタノール、ベンジルアルコール、フェノール、トリフルオロエタノール、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、m-クレゾール等)、酸溶媒(例えば、酢酸、ヘキサン酸等)、ニトロベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N,-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、シリコーン溶媒(例えば、シリコーン油、ポリシロキサン、シクロシリコーン)も含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、有機溶媒は、2つ以上の有機溶媒の組み合わせによって形成され得る。
【0097】
本明細書で使用される場合、「極性溶媒」という用語は、誘電率が少なくとも3である溶媒を意味し、前記誘電率は、20℃~25℃における、その溶媒で満たされたコンデンサの電気容量と、真空コンデンサの電気容量との比である。溶媒の誘電率の値は、Vogel’s Textbook of Practical Organic Chemistry 5th Edition,Appendix 5に開示されている。極性溶媒の例は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、エステル溶媒(例えば、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、マロン酸エチル等)、ケトン溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトンまたは2-ブタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、3-ペンタノン等)、アミン溶媒(例えば、プロピルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、アニリン、ピリジン)、アルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-プロパノール、1-ブタノール、1-オクタノール、ベンジルアルコール、フェノール、トリフルオロエタノール、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、m-クレゾール等)、酸溶媒(例えば、酢酸、ヘキサン酸等)、ニトロベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N,-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル プロピオニトリル、ブチロニトリル、及びシリコーン溶媒(例えば、シリコーン油、ポリシロキサン、シクロシリコーン)である。
【0098】
本明細書で使用される場合、「アルコール」という用語は1つ以上の水素原子が、ヒドロキシル基として知られる-OH基に置き換えられている炭化水素誘導体を指す。本発明に好適なアルコールとしては、直鎖状、環状または分岐状のC1-6アルキルアルコール及びその任意の混合物が挙げられる。これには市販のアルコールも含まれる。アルコールの例は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、tert-ブタノール、1-オクタノール、ベンジルアルコール及びフェノールである。
【0099】
本明細書で使用される場合、「ベンジル」という用語は、構造C6H5CH2-を有する置換基を指す。
【0100】
本明細書で使用される場合、「還流」という用語は、反応混合物が沸騰する温度を指し、反応に使用される溶媒によって異なる。例えば、水が溶媒として使用される場合、還流温度は最大100℃である。
【0101】
本明細書で使用される場合、「酸化剤」という用語は、電子受容体として、他の物質を酸化させることができる物質を指す。一般的な酸化剤としては、酸素(O2);オゾン(O3);過酸化水素(H2O2)(他の無機過酸化物またはフェントン試薬を含む);式RCO3H[式中、Rは、アルキル基またはアリール基である]を有するペルオキシカルボン酸等の有機過酸化物(過酢酸またはメタ-クロロ過安息香酸(mCPBA)を含む);フッ素(F2)、塩素(Cl2)、もしくは他のハロゲン;硝酸(HNO3)もしくは硝酸塩化合物;硫酸(H2SO4);ペルオキソ二硫酸(H2S2O8);ペルオキソ一硫酸(H2SO5);次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、もしくは他の類似ハロゲン化合物(家庭用漂白剤を含む)(naclo);クロム酸、二クロム酸、三酸化クロム、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)、もしくはクロム酸塩/重クロム酸塩化合物等の6価クロム化合物;過マンガン酸カリウム(kmno4)等の過マンガン酸塩化合物;過ホウ酸ナトリウム;亜酸化窒素(N2O)、窒素二酸化物/四酸化二窒素(NO2/N2O4);硝酸カリウム(KNO3);ビスマス酸ナトリウム(NaBiO3);硝酸セリウムアンモニウムもしくは硫酸第二セリウム等のセリウム(IV)化合物;二酸化鉛(PbO2);または二クロム酸ナトリウム(Na2Cr2O7)が挙げられる。
【0102】
本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、分子の1個以上の非水素原子上に、水素に取って代わる置換基を有する部分を指す。当業者は、「置換」または「で置換された」には、そのような置換が、置換される原子と置換基の許容される価数に従っていること、及び置換により、安定な化合物、例えば、転位、環化、脱離等の変換を自発的に起こさない化合物を生じること等の、暗黙の条件が含まれることが理解される。本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、有機化合物のすべての許容される置換基が含まれることが意図される。広義の態様では、許容される置換基には、非環式及び環式、分岐及び非分岐、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の、有機化合物の置換基が含まれる。許容される置換基は、適切な有機化合物に対して1つ以上であり得、また同じであっても異なってもよい。本開示の目的の場合、窒素等のヘテロ原子は、水素置換基及び/またはヘテロ原子の価数を満たす、本明細書に記載される任意の許容される有機化合物の置換基を有し得る。置換基には、例えば、ハロゲン部分、ヒドロキシル部分、カルボニル部分(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシル等)、チオカルボニル部分(チオエステル、チオ酢酸塩、またはチオギ酸塩等)、アルコキシ部分、ホスホリル部分、リン酸部分、ホスホン酸部分、ホスフィン酸部分、アミノ部分、アミド部分、アミジン部分、イミン部分、シアノ部分、ニトロ部分、アジド部分、スルフヒドリル部分、アルキルチオ部分、硫酸部分、スルホン酸部分、スルファモイル部分、スルホンアミド部分、スルホニル部分、ヘテロシクリル部分、アラルキル部分、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分が含まれ得る。炭化水素鎖上で置換された部分は、適切であり、かつ価数が許容されれば、それ自体が置換され得ることを当業者は理解するであろう。
【0103】
本明細書で使用される場合、「連続式工程」または「連続」という用語は、1つの単位操作から次の単位操作へ連続的に流れる1つ以上の試薬または製品の流れ(複数可)を使用する製造工程を指し、システムが定常状態にある間はすべての操作が同時に行われる。
【0104】
「バッチ式工程」または「バッチ」という用語は、所与の単位操作を、次の単位操作の開始前に完了まで実行しなければならない製造工程を指す。通常、前の単位操作の生成物を単離または精製してから、それを次の単位操作に出発物質として使用する。
【0105】
本発明の一般合成及び代表的実施例
一般スキーム及び実施例を含め、本記載全体を通して使用される以下の略語は、以下のとおり意味する:
【0106】
DIPEA N,N-diisopropylethylamine
(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)
【0107】
DMF dimethylformamide(ジメチルホルムアミド)
【0108】
DMSO dimethyl sulfoxide(ジメチルスルホキシド)
【0109】
eq、equiv equivalent(molar)(当量(モル))
【0110】
EtOAc ethyl acetate(酢酸エチル)
【0111】
g.gm gram(グラム)
【0112】
GC gas chromatography(ガスクロマトグラフィー)
【0113】
HPLC high-performance liquid
chromatography(高速液体クロマトグラフィー)
【0114】
IPAc isopropyl acetate(酢酸イソプロピル)
【0115】
MeCN acetonitrile(アセトニトリル)
【0116】
MeOH methanol(メタノール)
【0117】
2-MeTHF 2-methyltetrahydrofuran
(2-メチルテトラヒドロフラン)
【0118】
mL、ml milliliter(ミリリットル)
【0119】
mpk,mg/kg milligram per kilogram
(キログラムあたりのミリグラム)
【0120】
NaCl sodium chloride(塩化ナトリウム)
【0121】
NaOH sodium hydroxide(水酸化ナトリウム)
【0122】
RT、rt room temperature(室温)
【0123】
THF tetrahydrofuran(テトラヒドロフラン)
【0124】
材料及び方法
【0125】
特に明記しない限り、市販の試薬は、さらなる精製をせずにそのまま使用される。
【0126】
PANalytical X’Pert PRO回折装置-反射幾何学
【0127】
特段に明記されない限り、PANalytical X’Pert PRO回折装置でXRPDパターンを収集した。
【0128】
XtaLAB Synergy,Dualflex,HyPix回折装置を使用して単結晶構造を決定した。
【0129】
Mettler-Toledo DSC3+示差走査熱量計を使用して示差走査熱量測定(DSC)を実施した。タウラグ(tau lag)調整を、インジウム、スズ、及び亜鉛を用いて実施する。温度及びエンタルピーを、オクタン、サリチル酸フェニル、インジウム、スズ及び亜鉛を用いて調整する。次いで、その調整を、オクタン、サリチル酸フェニル、インジウム、スズ、及び亜鉛を用いて検証する。DSC用アルミニウム製密閉パン内に試料を入れ、重量を正確に記録した。パンの蓋には装置により穴があけられ、その後、分析用DSCセル内に挿入した。サンプルパンとして構成された計量済みアルミニウムパンをセルのリファレンス側に置いた。
【0130】
別法として、TA Instruments Qシリーズ及びDiscoveryシリーズ熱量計でも、50ml/分の乾燥窒素下、アルミニウムパンに入れて25℃~250℃~350℃まで10℃/分で示差走査熱量測定(DSC)分析を行った。
【0131】
TA Instruments Qシリーズ及びDiscoveryシリーズ分析装置で、25ml/分の乾燥窒素下、プラチナパンに入れて雰囲気温度から250℃~350℃まで10℃/分にて熱重量分析(TGA)を実施した。
【0132】
DVS Endeavourを使用して水分吸着データを収集した。約30mgの試料サイズを用いた。温度は25℃であった。相対湿度(RH)を80%に24時間保った。実験の開始時及び終了時に質量を記録した。
【0133】
溶液プロトンNMRスペクトルは、Spectral Data Services of Champaign(SSCI),ILによってVarian UNITY INOVA-400分光計を用いて25℃で取得された。他に明記しない限り、試料はDMSO-d6に溶解させた。場合によっては、溶液NMRスペクトルはまた、SSCIにて、重水素化DMSOまたはメタノールを使用してAgilent DD2-400分光計を用いて取得された。
【0134】
本発明の一般実施例
本発明者らは、化合物1及びその薬学的に許容される塩、好ましくはそのHCl塩(化合物1a)を、5つの重要な出発物質/中間化合物、すなわち、化合物6、化合物7、化合物8、化合物9、及び化合物10から調製するための本発明の新規改良法を開発した。化合物1及び化合物1の薬学的に許容される塩のための本発明の新規合成経路では、後期段階アミドカップリング戦略を採用する。本方法は、2-フルオロ-4-ニトロ安息香酸(化合物8、またはその塩)の固有の反応性を、連続したC-N結合形成及びS-N結合形成を介して利用し、ヒドロキシが保護された、好ましくはベンジルエーテル保護された化合物2を得、それが脱保護を受け、遊離塩基の化合物1が形成される。化合物1と酸HAとの塩形成の後続反応により、化合物1の薬学的に許容される塩が得られる。
【0135】
スキームA:ステップ1~3 化合物6の調製、及びその固形物形態。
【化29】
【0136】
スキームAは、本発明の化合物6を調製するためのステップ1~3を示す。化合物6は、新規スルフィン酸カルシウム(スルフィン酸)塩化合物であり、スキームAは、スルフィン酸カルシウム塩を調製するための新しいロバストな経路を表す。文献によるスルフィン酸塩を調製するための経路、例えば、(a)Liang et.al.,“Recent Advances in the Synthesis and Direct Application of Sulfinate Salts”,Eur.J.Org.Chem.2020,4664 -4676、(b)Gianatassio et.al.,“Simple Sulfinate Synthesis Enables C-H Trifluoromethyl-cyclopropanation”,Angew.Chem.Int.Ed.2014,53,9851 -9855、(c)Day et.al.,“Benzothiazole Sulfinate:A Sulfinic Acid Transfer Reagent under Oxidation-Free Conditions”,Org.Lett.2017,19,3819-3822、(d)Cochran et.al.,“Development of a Commercial Process To Prepare AMG 232 Using a Green Ozonolysis-Pinnick Tandem Transformation”,J.Org.Chem.2019,84,4763-4779、及び(e)O’Hara et.al.,“Preparation and purification of zinc sulfinate reagents for drug discovery”,doi:10.1038/nprot.2013.059は、ナトリウム塩が容易に得られることが既知であるが、最も一般的な経路は(a)スルホニルクロリドの還元を使用し、典型的には、以下のスキームBに記載のように亜硫酸ナトリウムまたはナトリウム・ビスルホニルクロリドを用い、取り扱いは困難である。
【0137】
【化30】
スキームB:スルフィン酸塩RSO
2Mを調製するための現在の文献方法[式中、Rは、有機官能基であり、各Het及びArは、上記で定義のとおりであり、Mは、金属である]。
【0138】
これらの文献方法を使用すると、スルフィン酸ナトリウム生成物は、高度に吸湿性である可能性、または非理想的な物理的特性を有することが見い出される可能性がある。本明細書で提示される本方法では、物理的特性及び安定性が改善された、スルフィン酸亜鉛、スルフィン酸ナトリウム、及びスルフィン酸カルシウムの塩等のスルフィン酸金属塩が生成される。
【0139】
スキームA、ステップ1では、式LG
4-SHを有する化合物13[式中、LG
4は、有機脱離基、好ましくは非置換ベンゾチアゾリルである]を、式PG-O-CH
2CH
2-LG
3を有する化合物14と、塩基の存在下、溶媒中で反応させ、式LG
4-O-CH
2CH
2-OPGを有する化合物12を形成させる。好ましくは、前記化合物13は、式
【化31】
を有する。好ましくは、前記化合物14は、式
【化32】
を有し、式中、PGは、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-O-C
1-6アルキル、テトラヒドロピラニル、アリル、またはベンジルから選択されるヒドロキシル保護基であり、好ましくは、メチル-O-メチル、テトラヒドロピラニル、またはベンジル、より好ましくはベンジルである。LG
3は、脱離基であり、好ましくは、LG
3は、ハロ、より好ましくはフルオロ、クロロ、またはブロモ、より好ましくはブロモである。好ましくは、前記化合物12は、式
【化33】
を有し、式中、PGは、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-O-C
1-6アルキル、テトラヒドロピラニル、アリル、またはベンジルから選択されるヒドロキシル保護基であり、好ましくは、メチル-O-メチル、テトラヒドロピラニル、またはベンジル、より好ましくはベンジルである。好ましくは、前記塩基は、重炭酸塩、炭酸塩、水酸化物、またはリン酸塩であり、好ましくは、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウムであり、より好ましくは、炭酸カリウムまたは炭酸カルシウム、より好ましくは炭酸カリウムである。好ましくは、前記溶媒は、アルコール、より好ましくはメタノールである。好ましくは、前記反応は、溶媒還流温度または70℃~100℃、好ましくは75℃~90℃ C、より好ましくは82℃の温度で行われる。
【0140】
代替的な好ましい実施形態では、ステップ1を炭酸カリウム塩基の存在下で実施して、アセトニトリルに溶解させた前記化合物12の安定した流れを生じさせる。
【0141】
スキームA、ステップ2では、上記で定義される化合物12を、触媒の存在下、溶媒中でわずかに高温にて酸化剤と反応させて化合物11を形成させる。好ましくは、前記化合物11は、式
【化34】
を有し、式中、PGは、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-O-C
1-6アルキル、テトラヒドロピラニル、アリル、またはベンジルから選択されるヒドロキシル保護基であり、好ましくは、メチル-O-メチル、テトラヒドロピラニル、またはベンジル、より好ましくはベンジルである。前記酸化剤の例は、過酸化物またはペルオキシカルボン酸、好ましくは過酸化水素またはメタペルオキシカルボン酸、より好ましくは過酸化水素である。前記触媒の例は、タングステン酸ナトリウムである。好ましくは、前記反応は、25℃~40℃、好ましくは30℃~35℃ C、より好ましくは30℃の温度で行われる。好ましくは、前記溶媒は、アセトニトリルと水との混合物である。
【0142】
ステップ2の一実施形態では、前記化合物12を、アセトン中またはアセトンと水との混合物中で結晶性固体として結晶化させる。
【0143】
ステップ2の代替の実施形態では、前記化合物12をステップ1からはから単離せず、前記溶媒はアセトニトリルである。その後、前記化合物12の酸化を、タングステン酸ナトリウムを触媒として、また過酸化水素を化学量論的酸化剤として用いて実施した。
【0144】
ステップ2はバッチ式反応工程であったが、H2O2の使用に際して安全性の問題に直面し、適切な安全管理を要した。この安全性の問題を克服するため、本発明者らは、スケールアップ時の連続式工程を開発した。連続式工程の開発初期に主要な課題が2つあり、1つは、化合物12の難溶性、もう1つは、化合物12の酸化反応の変換速度が遅いことであった。溶解性の問題を克服するため、本発明者らは、連続式工程における複合溶媒体積についてさらなるスクリーニングを行い、ステップ2での生産の効率及び安全性が改善した連続式工程をスケールアップ生産に使用することに成功した。H2O2を30w/w%、3.0当量に調整し、pH範囲を3~4に維持し、H2O2の添加を3~4部に最適化し、33%NaHSO3溶液をクエンチ溶媒とした。
【0145】
スキームA、ステップ3では、上記で定義される化合物11を、適度の高温にて極性溶媒中で塩基と反応させて前記
【化35】
[式中、PGがベンジルであり、Mがカルシウムであり、nが2である]を形成させる。好ましくは、化合物6は、構造
【化36】
を有し、より好ましくは、化合物6aは、構造
【化37】
を有する。前記塩基の例は、水酸化物、好ましくは水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、より好ましくは水酸化カルシウムである。前記溶媒の例は、C
1-6アルキルアルコールと水との混合物、好ましくはメタノールと水との混合物であるか、またはメタノールである。一実施形態では、化合物6生成物を結晶化させ、好ましくは、化合物6を、メタノール/エタノール/水の混合物中で結晶化させて化合物6a-Iを形成させる。好ましくは、前記反応は、25℃~50℃、40℃~50℃、好ましくは50℃の温度で行われる。最も好ましくは、ベンゾチアゾール脱離基の切断を、水酸化カルシウム含有含水メタノールを用いて達成し、スルフィン酸カルシウム化合物6を生成し、これをアセトンでの結晶化により結晶性水和物形態として単離した。水は、水酸化カルシウムの物質移動を加速させる能力があること、及び前記化合物6aの結晶構造の格子中に存在することにより、重要であることが見出された。化合物6aの結晶化生成物は、約1個の水分子、より具体的かつ好ましくは4/3個の水分子または約1.33個の水分子(化合物6a-I)を含有する結晶性含水化合物である。
【0146】
スキームB:ステップ4~5 化合物3の調製
【化38】
スキームBは、本発明のステップ4からステップ5を示す。スキームB、ステップ4では、本方法は、化合物7と化合物8の塩基媒介性芳香族置換反応を利用して重要中間体である化合物5を生成させる。化合物5の合成は、芳香族置換(SNAr)反応であり、これは、好ましくは、化合物8[式中、LG
1は、脱離基、好ましくはハロ、より好ましくはクロロまたはフルオロ、最も好ましくはフルオロである]及び化合物7[式中、X
1は、ハロゲン化物、好ましくは塩化物または臭化物、より好ましくは塩化物である]を、KOHを含むNMP中で高反応条件にて処理することにより実施される。SNAr反応は高変換で進行し、リン酸水溶液でpH調整し、水を用いて沈殿させた後に所望の生成物を直接単離し、化合物5の生成物を結晶性固体として得る。
【0147】
スキームB、ステップ5では、続いて、化合物5と化合物6またはその水和物(化合物6a-I)とのニトロアレーン/スルフィン酸塩カップリングにより、重要中間化合物としての化合物3の形成がもたらされる。化合物3の合成は、好ましくは、化学量論的還元剤としての亜硫酸水素ナトリウムを含むNMP中での、化合物5と化合物6またはその水和物(化合物6a-I)との鉄触媒カップリングによって実施される。ニトロアレーン/スルフィン酸塩カップリング反応は、高変換、かつ所望のスルホンアミド生成物に対する良好な化学選択性で進行する。生成物は、好ましくは、水によるワークアップで無機不純物を除去した後に単離される。生成物は、好ましくはTHFに溶媒交換され、MTBE貧溶媒結晶化から結晶化させて、化合物3の生成物を結晶性固体として得る。
【0148】
スキームC:ステップ6 化合物4の調製
【化39】
スキームCは、本発明のステップ6を示す。このステップ6では、化合物9と化合物10の酸媒介性芳香族置換反応を介して化合物4を合成する。化合物4の合成は、米国特許第11/236,069号において以前に開示されている化合物4の合成から改善されている。改善された工程では、好ましくは、化合物4の生成物を、化合物9と化合物10[式中、X
2は塩化物である]との酸触媒SNAr反応下で高反応条件にてtertブチルアルコール:トルエン混合溶媒中で生成させる。SNAr反応は高変換で進行し、NaOH水溶液による塩分解、及びトルエン/n-ヘプタン溶媒系からの結晶化の後、所望の生成物を単離し、生成物を結晶性固体として得る。
【0149】
スキームD:ステップ7~8 化合物1の調製
【化40】
スキームDは、化合物1を遊離塩基形態で調製するための、本発明のステップ7及びステップ8を示す。ステップ7では、アミドカップリング条件下での化合物3と化合物4との後期段階フラグメントカップリングにより、最後から2番目の中間体である化合物2を結晶性中間体として生成させる。化合物2の合成は、好ましくは、2-メチルTHF、アセトニトリル、酢酸イソプロピル、ジクロロメタン、THF、NMP、またはそれらの混合物中、好ましくは2-メチルTHF及びアセトニトリル中で、塩基、好ましくは2,4,6-トリメチルピリジン(コリジン)の存在下、高反応条件にて、クロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファート(TCFH)に媒介される化合物3と化合物4とのアミドカップリングにより実施される。アミドカップリングは、塩基としての2,4,6-コリジンとの高化学選択性で進行し、水によるワークアップ及び2-MeTHF/イソプロピルアミンからの結晶化の後、所望のアミド生成物の化合物2を高化学収率で得、生成物を結晶性固体として得た。
【0150】
ステップ8では、ベンジルエーテル保護基を除去するためのPd触媒による化合物2の水素化により、結晶性遊離塩基化合物としての化合物1の生成がもたらされる。好ましい実施形態では、化合物の合成は、酢酸/水混合物中、不均一触媒としてのPd/Cの存在下で化合物2の水素化によって実施される。水素化は高変換で進行し、触媒の濾過及び1-プロパノールの貧溶媒の添加の後に生成物の単離が達成され、化合物1の生成物を結晶性固体として得た。
【0151】
スキームE:ステップ9 化合物1の薬学的に許容される塩の調製
【化41】
スキームEは、本発明のステップ9を示す。このステップ9では、結晶性遊離塩基の化合物1のHCl処理を介して塩形成を実施し、化合物1のHCl塩(化合物1a)を生成させ、粒度分布(PSD)を狭くするために実施可能な任意選択の粉砕を行う。好ましい実施形態では、HCl水溶液による化合物1のDMSO溶液の処理によって化合物1aの合成を実施する。水貧溶媒の添加により生成物を沈殿させ、生成物を結晶性固体として得た。粒径を小さくするために粉砕を実施することができる。化合物1の他の好ましい塩としては、メシル酸塩またはトシル酸塩が挙げられる。
【実施例】
【0152】
本発明の代表的実施例
以下の合成は、本発明の代表的実施例であり、本発明の範囲を限定するものと解釈されることを意図していない。
【0153】
実施例1:2-((2-(ベンジルオキシ)エチル)チオ)ベンゾ[d]チアゾールの調製
【化42】
【0154】
マグネチックスターラー付きバイアルに、メルカプトベンゾチアゾール(2.8kg、1.00当量)、炭酸カリウム(3.5kg、1.5当量)及び無水アセトニトリル(22L)を加えた。((2-ブロモエトキシ)メチル)ベンゼン(3.9L、1.00当量)を、撹拌した溶液に滴加した。溶液を82℃で18時間撹拌した。混合物を中孔径のフリットガラス漏斗で濾過して固形物を除去し、濾液を濃縮して生成物2-((2-(ベンジルオキシ)エチル)チオ)ベンゾ[d]チアゾールを橙色油状物として得、それを、さらに精製することなく次ステップに使用した。
【0155】
実施例2:2-((2-(ベンジルオキシ)エチル)スルホニル)ベンゾ[d]チアゾールの調製
【化43】
【0156】
別個のプラグフロー反応器に入った3つの溶液をミキサー中で合わせ、単一のプラグフロー反応器中で50℃にて滞留時間を15分にして循環させた。3つの溶液を以下のとおり調製した:(i)2-((2-(ベンジルオキシ)エチル)チオ)ベンゾ[d]チアゾール(5.0kg、1.0当量)のアセトニトリル溶液(27.5L)、(ii)Na2WO4(245g、0.05当量)、水(2.5L)、リン酸(85%、125g、0.025当量)、及び(iii)H2O2水溶液(35w/w%の溶液を1.8kg、4.5当量)。溶液を、連続撹拌槽型反応器に60℃で10分間通過させ、その後、別のプラグフロー反応器に65℃で15分間通過させた。混合物を20℃に冷却し、55Lの水を加えた。温度を20℃に維持しながらNaHSO3水溶液(10Lの33w/w%の溶液、1.9当量)を加えた。混合物を濾過し、ケーキを15Lの水で2回洗浄した。ケーキを15Lのヘプタンで洗浄し、真空下、40℃で乾燥させ、生成物2-((2-(ベンジルオキシ)エチル)スルホニル)ベンゾ[d]チアゾールを得た。
【0157】
実施例3:2-(ベンジルオキシ)エタン-1-スルフィン酸カルシウム及びその結晶性水和物塩の調製
【化44】
【0158】
50℃の、2-((2-(ベンジルオキシ)エチル)スルホニル)ベンゾ[d]チアゾール(4.4kg、1.0当量)及びCa(OH)
2(98g、0.1当量)のメタノール溶液(26L)の混合物に、Ca(OH)
2(431g、0.44当量)を、4回に分けて8時間かけて加えた。混合物を40℃に冷却し、濾過した。ケーキを18Lのメタノールで洗浄した。濾液をおよそ9Lの溶液になるまで濃縮し、55℃に温めた。水(2.2L)、次いでエタノール(16.5L)を55℃で加えた。混合物を4時間かけて5℃に冷却し、その温度で10時間撹拌した。スラリーを濾過し、ケーキを22Lのエタノールで洗浄した。ケーキに4.4Lのメタノールを加え、混合物を55℃に温めた。水(1.1L)、次いでエタノール(16.5L)を55℃で加えた。混合物を4時間かけて5℃に冷却し、その温度で10時間撹拌した。スラリーを濾過し、ケーキを44Lのエタノールで洗浄した。ケーキを真空下、40℃で乾燥させ、それにより、式
【化45】
を有する結晶性水和物、より具体的には4/3含水化合物としての2-(ベンジルオキシ)エタン-1-スルフィン酸カルシウムを収率72%で単離した。
1H NMR (500 MHz, D
2O): δ 7.43 (m, 10H), 4.58 (s, 4H), 3.84 (t, 6.2 Hz, 4H), 2.62 (t, 6.2 Hz, 4H);
13C NMR (125 MHz, D
2O): δ 138.3, 129.8, 129.5, 129.4, 74.0, 65.8, 62.3. HRMS-ESI (m/z): [M]
- [C
9H
11O
3S]
-に対する計算値, 199.0434;実測値: 199.0429.
【0159】
X線粉末回折:結晶性化合物6a-IのXRPDパターンを
図1に示す。試料を、CuKα照射(1.54Å)を用いて、0.0334度のステップサイズ、45kV、及び40mAにて、5~45度または2~45度(2θ)の連続モードで雰囲気温度にてスキャンした。入射ビーム経路は、0.02radソーラースリット、15mmマスク、4度固定散乱防止スリット、及びプログラム可能な発散スリットを備えた。回折ビームは、0.02radソーラースリット、プログラム可能な散乱防止スリット及び0.02mmニッケルフィルターを備えた。低バックグラウンド試料ホルダー上で試料を調製し、回転時間を2秒にして回転ステージに載せた。
【0160】
DVS前後のXRPD実験によって示される結晶性化合物6a-Iの安定性特性及び吸湿性特性:DVS Endeavor装置を使用して、結晶性化合物6a-Iを80%の相対湿度に25℃で24時間曝露した。曝露の開始時及び終了時に質量を記録した。本発明者らは、開始時質量が32.3989mgであったのに対し、終了時質量が32.4479であることを見出し、これは、0.15%の質量変化と算出される。質量変化から、結晶性化合物6a-Iが重量基準で0.15%の水を吸収したことが示された。これは、結晶性化合物6a-Iが低吸湿性を有することを示す。DVS前とDVS後で結晶試料の実質的に同一なXRPDピークによって示されるように、80%の相対湿度に25℃で24時間曝露した後の結晶形態の変化は見られなかった(表1及び表2を参照のこと)。
【0161】
【0162】
【0163】
XPRDピーク特性評価:X線粉末回折パターン(XPRD)によって結晶性化合物6a-Iについてさらに特徴付けを行ったところ、Cu Kα照射を使用して4.2、8.2、及び12.2±0.2°2θにピークを有する安定な多形形態であることが見出された。結晶性化合物6a-Iは、任意に、Cu Kα照射を使用して13.6、14.2、18.3、19.5、20.6、20.9、及び22.9±0.2°2θに追加のピークを有するX線粉末回折パターンによってさらに特徴付けることができる。結晶性化合物6a-Iは、任意に、Cu Kα照射を使用して16.2、16.7,19.2、21.4、23.9、24.4、24.7、25.5、27.6、28.1、30.3、33.3、及び36.6±0.2°2θに追加のピークを有するX線粉末回折パターンによってさらに特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、結晶性化合物6a-Iは、実質的に
図1に示すようなX線粉末回折パターンを有し、ここで、「実質的に」とは、報告されたピークが、±0.2°変動し得ることを意味する。当業者は、XRPDの分野では、スペクトルの相対的なピークの高さは、試料調製及び装置の構造等の多数の因子によって異なるが、ピーク位置は、実験の詳細による影響を比較的受けにくいことを知っている。
【0164】
結晶性化合物6a-Iの示差走査熱量測定(DSC)のサーモグラフを得た。DSC曲線は、127.96℃±3℃での吸熱転移を示している。したがって、いくつかの実施形態では、転移吸熱が124.96℃~130.96℃のオンセットのDSCサーモグラフによって結晶性化合物6a-Iを特徴付けることができる。例えば、いくつかの実施形態では、結晶性化合物6a-Iは、
図2に示すようなDSCを特徴とする。
【0165】
熱重量分析(TGA):結晶性化合物6a-Iはまた、TGAによっても特徴付けることができる。したがって、結晶性化合物6a-Iを、オンセット温度が124.96℃~130.96℃である約4.5%~約4.7%の範囲の重量減少によって特徴付けることができる。例えば、結晶性化合物6a-Iを、最大約127.96℃、約4.62%の重量減少によって特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、結晶性化合物6a-Iは、熱重量分析が実質的に
図3に示されるとおりであり、ここで、「実質的に」とは、報告されたTGA特性が、±3℃変動し得ることを意味する。
【0166】
動的蒸気吸着(DVS):結晶性化合物6a-Iを、DVS水分吸着プロファイルによって特徴付けることができる。DVSの前後のXPRDピークの特性評価により、結晶性化合物6a-Iが安定な結晶多形形態を有し、吸湿性が低く、水損失に相当する重量減少はわずか0.15%であったことが示された。
【0167】
単結晶実験:化合物6a-Iの無色針状単結晶を使用した。大きさが0.23×0.09×0.01mm
3の好適な結晶を選択し、XtaLAB Synergy,Dualflex,HyPix回折装置でパラトンオイルを用いてマイラーループにマウントした。データ収集中、結晶をT=100.00(10)Kで一定に保った。双対法(dual methods)を使用したShelXT 2018/2(Sheldrick,2018)構造決定プログラム(solution program)を用い、グラフィカルインターフェースとしてOlex2 1.5-アルファ(Dolomanov et al.,2009)を使用して構造を解いた。F
2に対する完全行列最小二乗最小化を使用してShelXL 2018/3(Sheldrick,2015)でモデルを精密化した。表3は、
図4に示す結晶性化合物6a-Iの結晶構造データの概要を示す。
【0168】
【0169】
実施例4:4-ニトロ-2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)安息香酸の調製
【化46】
【0170】
2L容器に、2-フルオロ-4-ニトロ安息香酸(150g、1.0当量)、6-アザスピロ[2.5]オクタン塩酸塩(131.6g、1.10当量)、及びNMP(900ml)を加えた。得られた混合物を20℃で30分間撹拌した。KOH(112.3g、2.10当量)を加え、混合物を120℃に加熱した。混合物を120℃で16時間撹拌し、90℃に冷却した。H3PO4水溶液(750mlの水中0.6当量のH3PO4)を2時間かけて90℃で。添加後、懸濁液を90℃で1時間撹拌し、5時間かけて20℃に冷却し、20℃で5時間撹拌した。生成物を、濾過、NMP/水(500mL)の1/1の混合物での洗浄、その後の水(500mL)での洗浄により単離した。ケーキを真空下で乾燥させて、4-ニトロ-2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)安息香酸を結晶性固体として収率90%で得た。1H NMR (500 MHz, dmso-d6): δ 15.46 (bs, 1H), 8.15 (bs, 1H), 7.98 (bd, 8.6 Hz, 1H), 7.94 (bd, 8.9 Hz, 1H), 3.17 (m, 4H), 1.53 (m, 4H), 0.39 (s, 4H);13C NMR (125 MHz, dmso-d6): δ 166.8, 151.6, 149.8, 131.8, 130.5, 117.7, 115.6, 52.1, 34.4, 16.6, 11.2;HRMS-ESI (m/z): [M+H]+ [C14H16N2O4+H]+に対する計算値, 277.1183;実測値, 277.1183.
【0171】
実施例5:4-((2-(ベンジルオキシ)エチル)スルホンアミド)-2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)安息香酸の調製
【化47】
【0172】
4-ニトロ-2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)安息香酸(150g、1.0当量)、2-(ベンジルオキシ)エタン-1-スルフィン酸カルシウム(143g、0.6当量)、NaHSO3(226g、4.0当量)、FeCl3・6H2O(14.5g、0.1当量)を反応槽に加えた。NMP(750mL)を加えた。混合物を1時間かけて70℃に温め、その温度で8時間撹拌した。バッチを50℃に冷却し、THF(2.25L)で希釈した。10M NaOH(1.05L)でpH7に調整したEGTA水溶液(20%)及び20w/w%の塩化ナトリウム水溶液(450mL)を加えた。混合物を50℃に温めてから、10M NaOHでpHを7~8に調整した。混合物を30分間撹拌し、層を分離させた。下部水層を排出した。20w/w%の塩化ナトリウム水溶液(1.5L)を加え、内容物を50℃に温めた。6M HClでpHを5に調整した。混合物を20分間撹拌し、層を分離させ、下部水層を排出した。20w/w%の塩化ナトリウム水溶液(1.5L)を加え、内容物を50℃に温めた。混合物を20分間撹拌し、層を分離させ、下部水層を排出した。20w/w%の塩化ナトリウム水溶液(1.5L)を加え、内容物を50℃に温めた。混合物を20分間撹拌し、層を分離させ、下部水層を排出した。有機層を、新鮮なTHFを加えながら真空下で3Lから750mLまで2回蒸留した。有機層をTHFで3Lに希釈し、ポリッシュ濾過した。有機層を750mLまで濃縮した。混合物を50℃に加熱し、完全に溶解するようにした。混合物を1時間かけて40℃に冷却した。40℃で、前のバッチから得られた4-((2-(ベンジルオキシ)エチル)スルホンアミド)-2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)安息香酸種晶(2.5重量%)を加え、スラリーを1時間撹拌した。トルエン(5L/kg)を5時間かけて40℃で加えた。混合物を50℃に加熱し、1時間撹拌した。トルエン(5L/kg)を3時間かけて50℃で加えた。懸濁液を12時間かけて20℃に冷却し、1時間撹拌した。固形生成物を濾過した。ケーキを、事前に混合した1:2のTHF/トルエン(900mL)で洗浄し、次いでトルエン(900mL)で洗浄した。ケーキを窒素流下、40℃で真空乾燥させ、生成物4-((2-(ベンジルオキシ)エチル)スルホンアミド)-2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)安息香酸を結晶性固体として収率79%で単離した。結晶種を用いない場合、収率は約1%低かった。融点:150.5~164.7℃;1H NMR (500 MHz, dmso-d6): δ 10.38 (br, 1H), 7.24-7.37 (m, 4H), 7.19-7.23 (m, 2H), 7.17 (dd, 1H), 4.42 (s, 2H), 3.79 (t, 2H), 3.57 (t, 2H), 2.94 (t, 4H), 1.55 (br, 4H), 0.41 (s, 4H);13C NMR (125 MHz, dmso-d6): δ 166.7, 152.8, 138.2, 132.9, 128.6, 127.9, 119.4, 116.5, 111.8, 72.4, 64.2, 53.7, 52.0, 34.9, 16.9, 11.7;HRMS-ESI (m/z): [M+H]+ [C23H28N2O5S+H]+に対する計算値, 445.1792;実測値: 445.1782.
【0173】
実施例6:2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-アミンの調製
【化48】
【0174】
2-クロロ-6-メチルピリミジン-4-アミン(市販、150g、1.0当量)、4,4-ジフルオロピペリジン-1-イウム・クロリド(市販、189g、1.15当量)、アセトニトリル(360mL)、水(240mL)及びトリエチルアミン(148g、1.4当量)を容器に加えた。混合物を10分間撹拌し、80℃に温め、16時間撹拌した。混合物を5℃に冷却し、前のバッチから得られた2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-アミン種晶(24gl)を加えた。混合物を15分間撹拌し、KOH水溶液(1.1M、150mL)を加えた。混合物を1時間撹拌し、KOH水溶液(1.1M、1.62L)を10時間かけて加えた。混合物を1時間撹拌し、濾過した。ケーキを、事前に撹拌したアセトニトリル(60mL)と水(540mL)との混合物で洗浄した。ケーキを真空下、60℃で乾燥させ、2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-アミンを結晶性固体として収率89%で単離した。結晶種を用いない場合、収率は約1%低かった。1H NMR (500 MHz, dmso-d6): δ 6.30 (bs, 2H), 5.64 (d, 0.7 Hz, 1H), 3.79 (t, 5.8 Hz, 4H), 2.06 (s, 3H), 1.90 (tt, 14.2,5.8 Hz, 4H);13C NMR (125 MHz, dmso-d6): δ 164.4, 164.4, 160.8, 123.4 (t, 1JC-F=-240.8 Hz), 93.7, 40.1 (t, 3JC-F=5.1 Hz), 33.2 (t, 2JC-F=22.1 Hz), 23.7;19F NMR (471 MHz, DMSO-d6) δ -94.7;HRMS-ESI (m/z): [M+H]+ [C23H28N2O5S+H]+に対する計算値, 445.1792;実測値: 445.1782.
【0175】
実施例7:2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-アミンの調製
【化49】
【0176】
4-((2-(ベンジルオキシ)エチル)スルホンアミド)-2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)安息香酸(150.3g、1.0当量)、2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-アミン(90.8g、1.2当量)、及びクロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファート(TCFH)(139.3g、1.5当量)の2-MeTHF溶液(1300mL)及びアセトニトリル(150mL)を反応槽に加えた。2,4,6-トリメチルピリジン(コリジン)(109mL、2.5当量)を加え、反応混合物を25℃で90分間撹拌した。反応混合物を50℃に温め、さらに4時間撹拌した。反応完了時、2M NaOH溶液(600mL)を加え、その後、塩化ナトリウム水溶液(600mL、15重量%)を加えた。得られた混合物を50℃で10分間撹拌した。相を分離し、有機層をNaH2PO4水溶液(1200mL、25重量%)でさらに洗浄した。得られた混合物を50℃で10分間撹拌した。相を分離し、有機層に1200mLの水を加えた。得られた混合物を50℃で10分間撹拌し、層を分離させた。有機層をおよそ525mLの体積まで濃縮した。2-MeTHFを加え(975mL)、有機層をおよそ525mLの体積まで濃縮した。2-MeTHFを加え(975mL)、有機層をおよそ525mLの体積まで濃縮した。2-MeTHFを加え(975mL)、木炭を加えた(3g、2重量%)。得られた懸濁液を20℃で12時間撹拌した。懸濁液をCELITE(登録商標)で濾過し、150mL MeTHFで洗浄した。濾過済み溶液を50℃に温めた。混合物に、前のバッチから得られた2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-アミン(1.5g、1重量%)を種晶として入れ、1時間撹拌した。混合物を35℃に冷却し、IPA(788mL)を3時間かけて加えた。混合物をさらに1時間撹拌し、IPA(788mL)を1時間かけて加えた。混合物をさらに1時間撹拌し、20℃に冷却した。混合物を12時間撹拌し、濾過した。ケーキを2-MeTHF/IPA(25%MeTHF(v/v)、600mL)で洗浄し、その後、IPA(600mL、2回)で洗浄した。ケーキを真空下、40℃で24時間乾燥させた。生成物2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-アミンをオフホワイトの結晶性固体として単離した(173.3g、80%)。結晶種を用いない場合、収率は約1%低かった。融点=156~160℃。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 13.29 (s, 1H), 10.31 (s, 1H), 8.03 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.40 (s, 1H), 7.30 - 7.21 (m, 6H), 7.14 (dd, J = 8.7, 2.1 Hz, 1H), 4.41 (s, 2H), 3.91 - 3.89 (m, 4H), 3.80 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 3.56 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 2.91 - 2.89 (m, 4H), 2.31 (s, 3H), 2.01 - 1.94 (m, 4H), 1.91 - 1.52 (m, 4H), 0.36 (s, 4H). 13C NMR (126 MHz, DMSO-d6): δ 169.0, 163.6, 160.2, 158.2, 153.6, 143.1, 137.7, 132.3, 128.0, 127.37, 127.35, 123.0 (t, J = 241.0 Hz), 120.7, 114.4, 111.2, 98.5, 71.9, 63.7, 53.5, 51.4, 40.2, 34.2, 33.1 (t, J = 22.3 Hz), 24.3, 16.8, 11.1;19F NMR (471 MHz, DMSO-d6) δ -94.8;HRMS-ESI (m/z): [M+H]+ [C33H40F2N6O4S+H]+に対する計算値, 655.2873;実測値, 655.2895.
【0177】
実施例8:N-(2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-イル)-4-((2-ヒドロキシエチル)スルホンアミド)-2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)ベンズアミドの調製
【化50】
【0178】
2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-アミン(700g、1.0当量)、10%Pd/C(105g、15重量%、50%含水)、酢酸(6L)及び水(1.05L)を水素化容器に加えた。容器をN2で不活性化し(4サイクル)、45psiのH2下に置いた。水素化を20℃で25時間実施した。反応の完了後、バッチを濾過し、触媒ケーキをメチルイソブチルケトン(MIBK)(4.9L)ですすいだ。濾液を水(7L)で洗浄し、水層をMIBKで2回抽出した(3.5Lで2回)。合わせたMIBK抽出物をNaOH水溶液(7L、3重量%)で2回洗浄した。溶液を濃縮して総量7Lとし、ポリッシュ濾過した。ポリッシュ濾過を2LのMIBKによるすすぎで追跡した。溶液を減圧下で濃縮して総体積1.5とし、100℃に加熱してトルエン(7L)を加えた。溶液を85℃に冷却し、前のバッチから得られたN-(2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-イル)-4-((2-ヒドロキシエチル)スルホンアミド)-2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)ベンズアミド(11g)を種晶として入れた。混合物を85℃で1時間撹拌し、3時間かけて50℃に冷却し、1時間で70℃に加熱した。懸濁液を70℃で1時間撹拌し、6時間かけて15℃に冷却した。懸濁液を15℃で2時間撹拌し、濾過した。ケーキを2.1Lのトルエンですすいだ。固形物を真空下、40℃で乾燥させた。N-(2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-イル)-4-((2-ヒドロキシエチル)スルホンアミド)-2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)ベンズアミドを結晶性生成物として収率85%で単離した。結晶種を用いない場合、収率は約1%低かった。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 13.34 (s, 1H), 10.23 (s, 1H), 8.05 (d, 8.6 Hz, 1H), 7.28 (d, 2.2 Hz, 1H), 7.14 (dd, 8.6,2.2 Hz, 1H), 4.93 (t, 6.2 Hz, 1H), 3.90 (bt, 6.0 Hz, 4H), 3.77 (q, 6.2 Hz, 2H), 3.36 (t, 6.2 Hz, 2H), 2.97 (t, 5.3 Hz, 4H), 2.30 (s, 3H), 1.98 (tt, 13.8,6.0 Hz, 4H), 1.72 (m, 4H), 0.38 (s, 4H) 13C NMR (126 MHz, DMSO-d6) δ 169.1, 163.6, 160.3, 158.3, 153.7, 143.2, 132.4, 123.1 (t, 1JC-F=-241.0 Hz), 120.7, 114.6, 111.3, 98.5, 55.4, 53.8, 53.6, 40.2 (t, 3JC-F=5.0 Hz), 33.1 (t, 2JC-F=22.3 Hz), 34.2, 24.4, 16.8, 11.1;19F NMR (471 MHz, DMSO-d6) δ -94.8;HRMS-ESI (m/z): [M+H]+ [C26H34F2N6O4S+H]+に対する計算値, 565.2409;実測値, 565.2407.
【0179】
実施例9:N-(2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-イル)-4-((2-ヒドロキシエチル)スルホンアミド)-2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)ベンズアミド塩酸塩の調製
【化51】
【0180】
N-(2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-イル)-4-((2-ヒドロキシエチル)スルホンアミド)-2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)ベンズアミド(100g、1.0当量)に、アセトンと水との8/1の予混合液1800mLを加えた。混合物を47℃に加熱し、その温度で30分間撹拌した。溶液をポリッシュ濾過し、ポリッシュ濾過をアセトンと水との8/1の予混合液450mlで追跡した。混合物に、150mLの水溶液及び濃縮塩酸水溶液(1.2当量のHCl、24.3g)を30分かけて47℃で加えた。混合物(100mL)に水を加え、それを47℃で30分間撹拌した。反応器を4時間かけて15℃に冷却した。バッチをスラリー粉砕にかけて粒径を小さくした。生成物を濾過により単離し、アセトン(300mL)で洗浄し、真空下で40℃にて乾燥させ、N-(2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-イル)-4-((2-ヒドロキシエチル)スルホンアミド)-2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)ベンズアミド塩酸塩を結晶性固体として収率92%で得た。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 13.87 (bs, 1H), 10.41 (s, 1H), 8.05 (d, 8.7 Hz, 1H), 7.54 (s, 1H), 7.34 (d, 2.2 Hz, 1H), 7.19 (dd, 8.7,2.2 Hz, 1H), 3.99 (bt, 6.1 Hz, 4H), 3.76 (t, 6.4 Hz, 2H), 3.37 (t, 6.4 Hz, 2H), 2.98 (bt, 5.3 Hz, 4H), 2.47 (s, 3H), 2.08 (btt, 13.6,6.1 Hz, 4H), 1.69 (m, 4H), 0.39 (s, 4H), ;13C NMR (126 MHz, DMSO-d6) δ 165.1, 164.0, 159.6, 156.6, 153.8, 143.8, 132.5, 122.6 (t, 1JC-F=-241.2 Hz), 120.1, 114.8, 111.5, 99.2, 55.4, 54.0, 53.6, 41.4, 34.2, 33.0 (t, 2JC-F=22.8 Hz), 21.9, 16.8, 11.2 ;19F NMR (471 MHz, DMSO-d6) δ -95.0;HRMS-ESI (m/z): [M+H]+ [C26H34F2N6O4S+H]+に対する計算値, 565.2409;実測値, 565.2407.
【0181】
前述は、本発明の例示に過ぎず、本発明を、開示されている使用に限定することは意図していない。当業者にとって日常的である変形及び変更は、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲及び性質内であることが意図される。言及されている参考文献、特許、出願及び刊行物は、本明細書に記載されているかの如く、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0182】
本明細書に開示の方法の実施、及びそれらの個々のステップは、手動で、及び/または電子機器を用いるかもしくはそれにより提供される自動化で実施可能である。工程が、特定の実施形態を参照しながら記載されているが、当業者は、それらの方法と関連する行為を実施する他の方法も使用され得ることを容易に理解するであろう。例えば、別途記載のない限り、様々なステップの順序を、その方法の範囲または趣旨から逸脱することなく変更してよい。さらに、個々のステップのうちいくつかを、組み合わせる、省く、または追加ステップにさらに細分することができる。
【0183】
本明細書における開示との関連における(特に、特許請求の範囲との関連における)「a」、「an」、「the」という用語、及び同様の指示語の使用は、特に明記しない限り、単数及び複数の両方が含まれると解釈される。本明細書における数値範囲の詳述は、本明細書で特に示されない限り、その範囲内に該当する別々の値それぞれに個々に言及する簡略な方法として使用することを意図しているに過ぎず、別々の値それぞれが、個々に本明細書で引用されているかの如く本明細書に組み込まれる。本明細書で提供されるすべての例、または例示的な言い回し(例えば、「等の」)の使用は、本明細書における開示をより良く説明することを意図しており、別段に示されていない限り、本明細書における開示の範囲を限定するものではない。本明細書内のいかなる言い回しも、特許請求されていない任意の要素を本開示の実施に不可欠な要素として示していると解釈されるべきではない。
【国際調査報告】