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特表2025-505919高エネルギー密度と急速充電性能とを兼ね備えるリチウムイオン電池
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  • 特表-高エネルギー密度と急速充電性能とを兼ね備えるリチウムイオン電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-05
(54)【発明の名称】高エネルギー密度と急速充電性能とを兼ね備えるリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20250226BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20250226BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20250226BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0569
H01M10/0567
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537325
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 CN2023071870
(87)【国際公開番号】W WO2024148556
(87)【国際公開日】2024-07-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】13/F., LKF29, 29 Wyndham Street, Central, Hong Kong, China
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼▲ジャオ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼立美
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼培培
(72)【発明者】
【氏名】任家墨
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ03
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK18
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
(57)【要約】
本出願は、リチウムイオン電池に関し、その電池コアのグループマージンAは、88%-97%であり、且つ、非水電解液を含み、前記非水電解液は、特定の構造を有する一つ又は複数の第一の有機溶媒を含み、前記非水電解液における有機溶媒の総質量を基準として、前記第一の有機溶媒の質量百分率は、X1であり、X1の範囲は、20-80%であり、且つ前記電池コアのグループマージンAと前記第一の有機溶媒の質量百分率X1とは、特定の関係式0.22≦X1/A≦0.91を満たす。本出願は、さらに前記リチウムイオン電池を含む電力消費装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池であって、その電池コアのグループマージンAは、88%-97%であり、且つ、非水電解液を含み、前記非水電解液は、第一の有機溶媒を含み、前記第一の有機溶媒は、式1に示す化合物のうちの一つ又は複数を含み、
とRとは、それぞれ独立してC1-C3アルキル基と、C1-C3ハロゲン化アルキル基とのうちの一つであり、
前記非水電解液における有機溶媒の総質量を基準として、前記第一の有機溶媒の質量百分率は、X1であり、X1の範囲は、20-80%であり、且つ
前記電池コアのグループマージンAと前記第一の有機溶媒の質量百分率X1とは、以下の関係式:
0.22≦X1/A≦0.91を満たす、リチウムイオン電池。
【請求項2】
前記電池コアのグループマージンAと前記第一の有機溶媒の質量百分率X1とは、以下の関係式:0.31≦X1/A≦0.79を満たす、請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項3】
前記電池コアのグループマージンAは、90-95%である、請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池。
【請求項4】
前記第一の有機溶媒の質量百分率X1の範囲は、30-70%であり、選択的に35-65%である、請求項1から3のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項5】
式1において、RとRとは、それぞれ独立してメチル基と、エチル基と、プロピル基と、フルオロメチル基と、フルオロエチル基と、フルオロプロピル基とのうちの一つである、請求項1から4のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項6】
前記第一の有機溶媒は、以下の化合物
のうちの少なくとも一つを含み、
選択的に、前記第一の有機溶媒は、以下の化合物
のうちの少なくとも一つを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項7】
前記非水電解液は、第一の添加剤を含み、前記第一の添加剤は、以下の式2で表される少なくとも一つのスルトン添加剤を含み、
pは、1、2又は3を表し、R11は、水素原子、ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C3ハロゲン化アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C1-C3ハロゲン化アルコキシ基のうちの一つを表し、R12は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-C3アルキル基、C1-C3ハロゲン化アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C1-C3ハロゲン化アルコキシ基のうちの一つを表し、R13は、水素原子、ハロゲン原子、カルボニル基、二重結合、エステル基、C1-C3アルキル基、C1-C3ハロゲン化アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C1-C3ハロゲン化アルコキシ基、C6-C8アリール基又はベンジル基のうちの一つを表し、
及び/又は、
少なくとも一つの、式3に示す環状硫酸エステル化合物を含み、
qは、1、2又は3を表し、R14は、水素原子、ハロゲン原子、カルボニル基、二重結合、C1-C6アルキル基、C1-C3ハロゲン化アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C1-C3ハロゲン化アルコキシ基のうちの一つを表し、R15は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C3ハロゲン化アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C1-C3ハロゲン化アルコキシ基、C6-C8アリール基のうちの一つを表す、請求項1から6のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項8】
前記第一の添加剤は、以下の化合物
のうちの少なくとも一つを含み、
選択的に、前記第一の添加剤は、以下の化合物
のうちの少なくとも一つを含む、請求項7に記載のリチウムイオン電池。
【請求項9】
前記第一の添加剤の質量百分率は、前記非水電解液の総質量を基準として、W1であり、且つ
W1と前記電池コアのグループマージンAとの関係は、0.0005<W1/A≦0.09であり、ここで、Aは、88%-97%であり、0.05%<W1≦9.7%であり、選択的に、0.1%≦W1≦3%である、請求項7又は8に記載のリチウムイオン電池。
【請求項10】
前記非水電解液は、第二の添加剤を含み、前記第二の添加剤は、式3に示す化合物、式4に示す化合物及び/又は式5に示す化合物のうちの一つ又は複数を含み、
ここで、R、Rは、それぞれ独立してF、C1-C6フルオロアルキル基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基、C6-C10アリール基を表し、且つR、Rのうちの少なくとも一つは、F又はC1-C6フルオロアルキル基を表し、選択的に、R、Rは、それぞれ独立してF、C1-C3フルオロアルキル基、C1-C3アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C2-C3アルケニル基、C2-C3アルキニル基、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基を表し、且つR、Rのうちの少なくとも一つは、F又はC1-C3フルオロアルキル基を表し、選択的に、R、Rは、それぞれ独立してF又はC1-C3フルオロアルキル基を表し、
ここで、R、Rは、それぞれ独立してF、C1-C6フルオロアルキル基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基を表し、且つR、Rのうちの少なくとも一つは、F又はC1-C6フルオロアルキル基を表し、選択的に、R、Rは、それぞれ独立してF、C1-C3フルオロアルキル基、C1-C3アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C2-C3アルケニル基、C2-C3アルキニル基を表し、且つR、Rのうちの少なくとも一つは、F又はC1-C3のフルオロアルキル基を表し、選択的に、R、Rは、それぞれ独立してF又はC1-C3フルオロアルキル基を表し、
ここで、R、Rは、それぞれ独立してF、C1-C6フルオロアルキル基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基、カルボニル基、O-、BF 又はホウ素-酸素結合を表し、選択的に、R、Rは、それぞれ独立してF、C1-C3フルオロアルキル基、C1-C3アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C2-C3アルケニル基、C2-C3アルキニル基、カルボニル基、O-、BF を表し、n=0、1又は2であり、m=1又は2であり、
Mは、アルカリ金属とアルカリ土類金属とのうちの一つ又は複数を表し、選択的に、Mは、Li、NaとKから選択される一つ又は複数である、請求項1から9のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項11】
前記第二の添加剤は、以下の化合物
のうちの一つ又は複数を含む、請求項10に記載のリチウムイオン電池。
【請求項12】
前記第二の添加剤の質量百分率は、前記非水電解液の総質量を基準として、W2であり、且つ
W2と前記電池コアのグループマージンAとの関係は、0.0005<W2/A≦0.09であり、ここで、Aは、88%-97%であり、0.05%<W2≦9.7%であり、選択的に、0.1%≦W2≦3%である、請求項10又は11に記載のリチウムイオン電池。
【請求項13】
前記非水電解液は、第三の添加剤を含み、前記第三の添加剤は、以下の式6に示す化合物及び/又は式7に示す化合物のうちの一つ又は複数を含み、
、Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C6ハロゲン化アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基を表し、選択的に、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-C4アルキル基、C1-C4ハロゲン化アルキル基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルケニル基、C2-C4アルキニル基を表し、
、R、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C6ハロゲン化アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基を表し、且つR、R、R、Rが異なる時に、水素原子を表し、選択的に、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-C4アルキル基、C1-C4ハロゲン化アルキル基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルケニル基、C2-C4アルキニル基を表し、且つR、R、R、Rが異なる時に、水素原子を表す、請求項1から12のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項14】
前記第三の添加剤は、以下の化合物
のうちの一つ又は複数を含む、請求項13に記載のリチウムイオン電池。
【請求項15】
前記第三の添加剤の質量百分率は、前記非水電解液の総質量を基準として、W3であり、且つ
W3と前記電池コアのグループマージンAとの関係は、0.0005<W3/A≦0.09であり、ここで、Aは、88%-97%であり、0.05%<W3≦9.7%であり、選択的に、0.1%≦W3≦3%である、請求項13又は14に記載のリチウムイオン電池。
【請求項16】
前記三種類の添加剤の質量百分率W1、W2及びW3と電池コアのグループマージンAとの関係は、0.0005<(W1+W2+W3)/A≦0.1であり、ここで、Aは、88%-97%であり、0.05%<(W1+W2+W3)≦9.6%であり、選択的に0.1%≦(W1+W2+W3)≦4%である、請求項1から15のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池を含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、リチウムイオン電池に関し、その電池コアのグループマージンAは、88%-97%であり、且つ、非水電解液を含み、前記非水電解液は、特定の構造を有する一つ又は複数の第一の有機溶媒を含み、前記非水電解液における有機溶媒の総質量を基準として、前記第一の有機溶媒の質量百分率は、X1であり、X1の範囲は、20-80%であり、且つ前記電池コアのグループマージンAと前記第一の有機溶媒の質量百分率X1とは、特定の関係式0.22≦X1/A≦0.91を満たし、選択的に0.31≦X1/A≦0.79である。本出願は、さらに前記リチウムイオン電池を含む電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池技術の発展に伴い、リチウムイオン二次電池は、水力、火力、風力と太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動工具、電動自転車、電動バイク、電気自動車、軍事装備、航空宇宙などの複数の分野に広く応用されている。リチウムイオン二次電池が極大の発展を遂げているため、その急速充電性能、サイクル性能と安全性能などに対してもより高い要求が求められる。
【0003】
リチウムイオン電池の小型化、軽量化の発展に伴い、エネルギー密度に対する要求がますます高まっている。現在、従来の技術において、リチウムイオン電池のエネルギー密度を向上させるために、一般的に採用されるソリューションは、以下のとおりである。電極上の活物質をできるだけ圧密し、その体積占有空間が変わらない前提で電池により多くの電極活物質を収容させ、それによって極板の塗布重量がますます高くなり、グループマージン設計がますます大きくなることを招き、リチウムイオン電池における収容空間が比較的小さくなり、リチウムイオン電池内部に収容可能なサイクルと保存中に発生するガスがますます少なくなり、電池コアが非常に膨張しやすくなることを招き、比較的大きい安全リスクをもたらす。
【0004】
本発明の目的は、電解液における溶媒と添加剤の種類及び含有量を調整して制御することにより、電池のサイクルと保存中におけるガス発生量を低減させ、高エネルギー密度と急速充電性能とを兼ね備えるリチウムイオン電池を実現するリチウムイオン電池を提供することである。
【発明の概要】
【0005】
本出願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高エネルギー密度において電池の急速充電性能が不足であり及び/又は体積膨張が大きすぎるという技術問題を解決するためのリチウムイオン電池を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するために、本出願の第一の態様は、リチウムイオン電池を提供し、その電池コアのグループマージンAは、88%-97%であり、且つ、非水電解液を含み、前記非水電解液は、第一の有機溶媒を含み、前記第一の有機溶媒は、式1に示す化合物のうちの一つ又は複数を含み、
とRとは、それぞれ独立してC1-C3アルキル基とC1-C3ハロゲン化アルキル基とのうちの一つであり、
前記非水電解液における有機溶媒の総質量を基準として、前記第一の有機溶媒の質量百分率は、X1であり、X1の範囲は、20-80%であり、且つ
前記電池コアのグループマージンAと前記第一の有機溶媒の質量百分率X1とは、以下の関係式:
0.22≦X1/A≦0.91を満たす。
【0007】
本出願のリチウムイオン電池は、比較的高いグループマージンを設定することにより、比較的高いエネルギー密度を実現できるとともに、電解液に特定の含有量のカルボン酸エステル溶媒が含まれ、それによって電解液の粘度を効果的に低減させ、電導率を向上させて、リチウムイオン電池は、比較的高いエネルギー密度を有すると同時に、良好な急速充電性能を保持することになる。
【0008】
いずれかの実施の形態では、前記電池コアのグループマージンAと前記第一の有機溶媒の質量百分率X1とは、以下の関係式:0.31≦X1/A≦0.79を満たす。いずれかの実施の形態では、前記電池コアのグループマージンAは、90-95%である。
【0009】
いずれかの実施の形態では、前記第一の有機溶媒の質量百分率X1の範囲は、30-80%であり、選択的に35-70%である。特定の含有量の第一の有機溶媒を選択することは、電池のインピーダンスを効果的に低減させ、急速充電性能を改善することができる。
【0010】
いずれかの実施の形態では、式1において、RとRとは、それぞれ独立してメチル基と、エチル基と、プロピル基と、フルオロメチル基と、フルオロエチル基と、フルオロプロピル基とのうちの一つである。
【0011】
いずれかの実施の形態では、前記非水電解液は、第一の添加剤を含み、前記第一の添加剤は、以下の式2で表される少なくとも一つのスルトン添加剤を含み、
pは、1、2又は3を表し、R11は、水素原子、ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C3ハロゲン化アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C1-C3ハロゲン化アルコキシ基のうちの一つを表し、R12は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-C3アルキル基、C1-C3ハロゲン化アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C1-C3ハロゲン化アルコキシ基のうちの一つを表し、R13は、水素原子、ハロゲン原子、カルボニル基、二重結合、エステル基、C1-C3アルキル基、C1-C3ハロゲン化アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C1-C3ハロゲン化アルコキシ基、C6-C8アリール基又はベンジル基のうちの一つを表し、
及び/又は、
少なくとも一つの、式3に示す環状硫酸エステル化合物を含み、
qは、1、2又は3を表し、R14は、水素原子、ハロゲン原子、カルボニル基、二重結合、C1-C6アルキル基、C1-C3ハロゲン化アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C1-C3ハロゲン化アルコキシ基のうちの一つを表し、R15は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C3ハロゲン化アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C1-C3ハロゲン化アルコキシ基、C6-C8アリール基のうちの一つを表す。
【0012】
いずれかの実施の形態では、前記第一の添加剤の質量百分率は、前記非水電解液の総質量を基準として、W1であり、且つ
W1と前記電池コアのグループマージンAとの関係は、0.0005<W1/A≦0.09であり、ここで、Aは、88%-97%であり、0.05%<W1≦9.7%であり、選択的に、0.1%≦W1≦3%である。
【0013】
いずれかの実施の形態では、前記非水電解液は、第二の添加剤を含み、前記第二の添加剤は、式3に示す化合物、式4に示す化合物及び/又は式5に示す化合物のうちの一つ又は複数を含み、
ここで、R、Rは、それぞれ独立してF、C1-C6フルオロアルキル基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基、C6-C10アリール基を表し、且つR、Rのうちの少なくとも一つは、F又はC1-C6フルオロアルキル基を表し、選択的に、R、Rは、それぞれ独立してF、C1-C3フルオロアルキル基、C1-C3アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C2-C3アルケニル基、C2-C3アルキニル基、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基を表し、且つR、Rのうちの少なくとも一つは、F又はC1-C3フルオロアルキル基を表し、選択的に、R、Rは、それぞれ独立してF又はC1-C3フルオロアルキル基を表し、
ここで、R、Rは、それぞれ独立してF、C1-C6フルオロアルキル基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基を表し、且つR、Rのうちの少なくとも一つは、F又はC1-C6フルオロアルキル基を表し、選択的に、R、Rは、それぞれ独立してF、C1-C3フルオロアルキル基、C1-C3アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C2-C3アルケニル基、C2-C3アルキニル基を表し、且つR、Rのうちの少なくとも一つは、F又はC1-C3のフルオロアルキル基を表し、選択的に、R、Rは、それぞれ独立してF又はC1-C3フルオロアルキル基を表し、
ここで、R、Rは、それぞれ独立してF、C1-C6フルオロアルキル基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基、カルボニル基、O-、BF 、ホウ素-酸素結合を表し、選択的に、R、Rは、それぞれ独立してF、C1-C3フルオロアルキル基、C1-C3アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C2-C3アルケニル基、C2-C3アルキニル基、カルボニル基、O-、BF を表し、n=0、1又は2であり、m=1又は2であり、
Mは、アルカリ金属とアルカリ土類金属とのうちの一つ又は複数を表し、選択的に、Mは、Li、NaとKから選択される一つ又は複数である。
【0014】
いずれかの実施の形態では、前記第二の添加剤の質量百分率は、前記非水電解液の総質量を基準として、W2であり、且つ
W2と前記電池コアのグループマージンAとの関係は、0.0005<W2/A≦0.09であり、ここで、Aは、88%-97%であり、0.05%<W2≦9.7%であり、選択的に、0.1%≦W2≦3%である。
【0015】
いずれかの実施の形態では、前記非水電解液は、第三の添加剤を含み、前記第三の添加剤は、以下の式6に示す化合物及び/又は式7に示す化合物のうちの一つ又は複数を含み、
、Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C6ハロゲン化アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基を表し、選択的に、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-C4アルキル基、C1-C4ハロゲン化アルキル基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルケニル基、C2-C4アルキニル基を表し、
、R、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C6ハロゲン化アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基を表し、且つR、R、R、Rが異なる時に、水素原子を表し、選択的に、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-C4アルキル基、C1-C4ハロゲン化アルキル基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルケニル基、C2-C4アルキニル基を表し、且つR、R、R、Rが異なる時に、水素原子を表す。
【0016】
いずれかの実施の形態では、前記第三の添加剤の質量百分率は、前記非水電解液の総質量を基準として、W3であり、且つ
W3と前記電池コアのグループマージンAとの関係は、0.0005<W3/A≦0.09であり、ここで、Aは、88%-97%であり、0.05%<W3≦9.7%であり、選択的に、0.1%≦W3≦3%である。
【0017】
いずれかの実施の形態では、前記三種類の添加剤の質量百分率W1、W2及びW3と電池コアのグループマージンAとの関係は、0.0005<(W1+W2+W3)/A≦0.1であり、ここで、Aは、88%-97%であり、0.05%<(W1+W2+W3)≦9.6%であり、選択的に0.1%≦(W1+W2+W3)≦4%である。
【0018】
本出願の第二の態様は、電力消費装置を提供し、この電力消費装置は、本出願の第一の態様から選択されるリチウムイオン電池を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本出願の技術案をより明瞭に説明するために、以下は、本出願の実施例に使用される必要のある図面について簡単に紹介する。自明なことに、以下に記述された図面は、ただ本出願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を払わない前提で、図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
図1】本出願の一つの実施の形態におけるリチウムイオン二次電池の概略図である。
図2図1に示す本出願の一つの実施の形態におけるリチウムイオン二次電池の分解図である。
図3】本出願の一つの実施の形態における電池パックの概略図である。
図4図3に示す本出願の一つの実施の形態における電池パックの分解図である。
図5】本出願の一つの実施の形態における電池パックが電源として用いられる装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
簡潔にするために、本出願は、いくつかの数値範囲を具体的に開示している。しかしながら、任意の下限と任意の上限とは、組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、及び任意の下限と他の下限とは、組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、同様に、任意の上限と他の任意の上限とは、組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。なお、各単独で開示される点又は個々の数値自体は、下限又は上限として任意の他の点又は個々の数値と組み合わせ、又は他の下限又は上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。
【0021】
リチウムイオン電池の小型化、軽量化の発展に伴い、業界のリチウムイオン電池のエネルギー密度に対する要求がますます高くなる。そのため、一般的なやり方は、電池コアのグループマージンを向上させて、できるだけより多くの活物質を収容し、極板の塗布重量を増加させることである。しかしながら、電池コアのグループマージンの向上に伴い、リチウムイオン電池を充電する時間も延長し、その急速充電性能の低下につながる。そのため、比較的高いグループマージン及び改善された急速充電性能を兼ね備えるリチウムイオン電池を提供する必要がある。
【0022】
この目的は、新たなリチウムイオン電池によって実現されており、前記リチウムイオン電池の電池コアのグループマージンAは、88%-97%であり、且つ、非水電解液を含み、前記非水電解液は、第一の有機溶媒を含み、前記第一の有機溶媒は、式1に示す化合物のうちの一つ又は複数を含み、
とRとは、それぞれ独立してC1-C3アルキル基と、C1-C3ハロゲン化アルキル基とのうちの一つであり、
前記非水電解液における有機溶媒の総質量を基準として、前記第一の有機溶媒の質量百分率は、X1であり、X1の範囲は、20-80%であり、且つ
前記電池コアのグループマージンAと前記第一の有機溶媒の質量百分率X1とは、以下の関係式:
0.22<X1/A<0.91を満たす。
【0023】
適切な第一の有機溶媒を選択することにより、前記非水電解液の粘度を適切な範囲内に保持することができる。そのため、この電解液により高い電導率を持たせることができ、それによってそれを含むリチウムイオン電池により良い急速充電性能を持たせる。
【0024】
いくつかの実施の形態では、前記電池コアのグループマージンAと前記第一の有機溶媒の質量百分率X1とは、以下の関係式:0.31≦X1/A≦0.79を満たす。急速充電性能を向上させると同時に電池のサイクル性能を保持することを実現するために、X1/Aの値を合理的な範囲内に制御すべきである。X1/Aの値が低すぎると、急速充電時間が長すぎるようになり、X1/Aの値が高すぎると、サイクル性能が低下し、電池のガス発生量が明らかに増加する。いくつかの実施の形態では、前記電池コアのグループマージンAは、90-95%である。電池コアのグループマージンは、特に指定されていない限り、一般的には電池の厚さ方向におけるグループマージンを指し、それが示すのは、電池コアにおける実際の内部断面積と最大内部断面積との割合であり、即ち、電池コアを横方向に切断し、そのうちの捲回型電池コアにおける様々な物質の断面積と電池ケース内径に含まれる面積との比率である。本出願では、リチウムイオン電池の電池コアのグループマージンAは、以下の方法で測定することができる。試験用リチウムイオン電池ケース内部の厚さをL1とし、試験用電極アセンブリの厚さをL2とし、リチウムイオン電池のグループマージン=L2/L1である。電池コアのグループマージンAが高すぎると、電池コアの加工がより困難になり、より膨張しやすくなり、且つケースに発生する圧力がより大きくなり、電池コアのグループマージンAが低すぎると、電池の高エネルギー密度の要求を満たすことが困難になる。
【0025】
いくつかの実施の形態では、前記第一の有機溶媒の質量百分率X1の範囲は、30-70%であり、選択的に35-65%である。前記第一の有機溶媒は、カルボン酸エステル系又はハロゲン化カルボン酸エステル系溶媒に属し、それは、非水電解液の粘度を低減させ、さらにナトリウムイオンの非水電解液における電導率を改善することができる。前記第一の有機溶媒の質量百分率X1が低すぎると、電導率を改善する効果が不十分であり、急速充電時間が長すぎるようになり、第一の有機溶媒の質量百分率X1が高すぎると、電池のサイクル性能が低下し、明らかな膨張が発生しやすい。
【0026】
上記関係式Iを満たすように適切な電池コアのグループマージンAと第一の有機溶媒の質量百分率X1とを選択することにより、リチウムイオン電池のエネルギー密度と急速充電性能との最適なバランスを実現することができる。
【0027】
いくつかの実施の形態では、式1において、RとRとは、それぞれ独立してメチル基と、エチル基と、プロピル基と、フルオロメチル基と、フルオロエチル基と、フルオロプロピル基とのうちの一つである。さらに、前記第一の有機溶媒は、以下の化合物
のうちの少なくとも一つを含み、
選択的に、前記第一の有機溶媒は、以下の化合物
のうちの少なくとも一つを含む。
【0028】
いくつかの実施の形態では、前記第一の有機溶媒は、
又は
である。
【0029】
前述の本出願のリチウムイオン電池は、高エネルギー密度と改善された急速充電性能を兼ね備えるが、いくつかの場合に、グループマージンが比較的大きいと、リチウムイオン電池における収容空間が比較的小さくなり、リチウムイオン電池内部に収容可能なサイクルと保存中に発生するガスの量がますます少なくなる。また、第一の有機溶媒の活性が比較的高く、比較的大きいガス発生量は、電池コアが膨張しやすくなり、一定の安全リスクをもたらす。
【0030】
この技術問題を解決するために、本発明者は、ガス発生を抑制する添加剤を導入することにより、電池コアのサイクルと保存中におけるガス発生量が適切な範囲内にあることを保証し、電池は、運行中に明らかに膨張が発生しにくくなり、それによって電池コアの安全性能を高める。
【0031】
いくつかの実施の形態では、前記非水電解液は、第一の添加剤を含み、前記第一の添加剤は、以下の式2で表される少なくとも一つのスルトン添加剤を含み、
pは、1、2又は3を表し、R11は、水素原子、ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C3ハロゲン化アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C1-C3ハロゲン化アルコキシ基のうちの一つを表し、R12は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-C3アルキル基、C1-C3ハロゲン化アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C1-C3ハロゲン化アルコキシ基のうちの一つを表し、R13は、水素原子、ハロゲン原子、カルボニル基、二重結合、エステル基、C1-C3アルキル基、C1-C3ハロゲン化アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C1-C3ハロゲン化アルコキシ基、C6-C8アリール基又はベンジル基のうちの一つを表し、
及び/又は、
少なくとも一つの、式3に示す環状硫酸エステル化合物を含み、
qは、1、2又は3を表し、R14は、水素原子、ハロゲン原子、カルボニル基、二重結合、C1-C6アルキル基、C1-C3ハロゲン化アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C1-C3ハロゲン化アルコキシ基のうちの一つを表し、R15は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C3ハロゲン化アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C1-C3ハロゲン化アルコキシ基、C6-C8アリール基のうちの一つを表す。
【0032】
例を挙げると、前記第一の添加剤は、以下の化合物
のうちの少なくとも一つを含む。
【0033】
選択的に、前記第一の添加剤は、以下の化合物
のうちの少なくとも一つを含む。
【0034】
いくつかの実施の形態では、前記第一の添加剤の質量百分率は、前記非水電解液の総質量を基準として、W1であり、且つ
W1と前記電池コアのグループマージンAとの関係は、0.0005<W1/A≦0.09であり、ここで、Aは、88%-97%であり、0.05%<W1≦9.7%であり、選択的に、0.1%≦W1≦3%である。電池コアのグループマージンAを調節し、及び特に第一の添加剤の質量百分率W1を調節することにより、W1/Aの値を適切な範囲内に制御することが有利である。W1/Aの値が低すぎると、電池の体積膨張を抑制する効果が不十分であり、W1/Aの値が高すぎると、電池容量を低減させ、且つ急速充電性能の改善に影響を与える。
【0035】
いくつかの実施の形態では、前記非水電解液は、第二の添加剤を含み、前記第二の添加剤は、式3に示す化合物、式4に示す化合物及び/又は式5に示す化合物のうちの一つ又は複数を含み、
ここで、R、Rは、それぞれ独立してF、C1-C6フルオロアルキル基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基、C6-C10アリール基を表し、且つR、Rのうちの少なくとも一つは、F又はC1-C6フルオロアルキル基を表し、選択的に、R、Rは、それぞれ独立してF、C1-C3フルオロアルキル基、C1-C3アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C2-C3アルケニル基、C2-C3アルキニル基、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基を表し、且つR、Rのうちの少なくとも一つは、F又はC1-C3フルオロアルキル基を表し、選択的に、R、Rは、それぞれ独立してF又はC1-C3フルオロアルキル基を表し、
ここで、R、Rは、それぞれ独立してF、C1-C6フルオロアルキル基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基を表し、且つR、Rのうちの少なくとも一つは、F又はC1-C6フルオロアルキル基を表し、選択的に、R、Rは、それぞれ独立してF、C1-C3フルオロアルキル基、C1-C3アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C2-C3アルケニル基、C2-C3アルキニル基を表し、且つR、Rのうちの少なくとも一つは、F又はC1-C3のフルオロアルキル基を表し、選択的に、R、Rは、それぞれ独立してF又はC1-C3フルオロアルキル基を表し、
ここで、R、Rは、それぞれ独立してF、C1-C6フルオロアルキル基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基、カルボニル基、O-、BF 又はホウ素-酸素結合を表し、選択的に、R、Rは、それぞれ独立してF、C1-C3フルオロアルキル基、C1-C3アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C2-C3アルケニル基、C2-C3アルキニル基、カルボニル基、O-、BF を表し、n=0、1又は2であり、m=1又は2であり、
Mは、アルカリ金属とアルカリ土類金属とのうちの一つ又は複数を表し、選択的に、Mは、Li、NaとKから選択される一つ又は複数である。
【0036】
例を挙げると、前記第二の添加剤は、以下の化合物
のうちの一つ又は複数を含む。
【0037】
いくつかの実施の形態では、前記第二の添加剤の質量百分率は、前記非水電解液の総質量を基準として、W2であり、且つ
W2と前記電池コアのグループマージンAとの関係は、0.0005<W2/A≦0.09であり、ここで、Aは、88%-97%であり、0.05%<W2≦9.7%であり、選択的に、0.1%≦W2≦3%である。電池コアのグループマージンAを調節し、及び特に第二の添加剤の質量百分率W2を調節することにより、W2/Aの値を適切な範囲内に制御することが有利である。W2/Aの値が低すぎると、電池の体積膨張を抑制する効果が不十分であり、W2/Aの値が高すぎると、電池容量を低減させ、且つ急速充電性能の改善に影響を与える。
【0038】
いくつかの実施の形態では、前記非水電解液は、第三の添加剤を含み、前記第三の添加剤は、以下の式6に示す化合物及び/又は式7に示す化合物のうちの一つ又は複数を含み、
、Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C6ハロゲン化アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基を表し、選択的に、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-C4アルキル基、C1-C4ハロゲン化アルキル基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルケニル基、C2-C4アルキニル基を表し、
、R、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、C1-C6ハロゲン化アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基を表し、且つR、R、R、Rが異なる時に、水素原子を表し、選択的に、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-C4アルキル基、C1-C4ハロゲン化アルキル基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルケニル基、C2-C4アルキニル基を表し、且つR、R、R、Rが異なる時に、水素原子を表す。
【0039】
例を挙げると、前記第三の添加剤は、以下の化合物
のうちの一つ又は複数を含む。
【0040】
いくつかの実施の形態では、前記第三の添加剤の質量百分率は、前記非水電解液の総質量を基準として、W3であり、且つ
W3と前記電池コアのグループマージンAとの関係は、0.0005<W3/A≦0.09であり、ここで、Aは、88%-97%であり、0.05%<W3≦9.7%であり、選択的に、0.1%≦W3≦3%である。電池コアのグループマージンAを調節し、及び特に第三の添加剤の質量百分率W3を調節することにより、W3/Aの値を適切な範囲内に制御することが有利である。W3/Aの値が低すぎると、電池の体積膨張を抑制する効果が不十分であり、W3/Aの値が高すぎると、電池容量を低減させ、且つ急速充電性能の改善に影響を与える。
【0041】
いくつかの実施の形態では、前記三種類の添加剤の質量百分率W1、W2及びW3と電池コアのグループマージンAとの関係は、0.0005<(W1+W2+W3)/A≦0.1であり、ここで、Aは、88%-97%であり、0.05%<(W1+W2+W3)≦9.6%であり、選択的に0.1%≦(W1+W2+W3)≦4%である。
【0042】
本出願の第二の態様は、電力消費装置を提供し、この電力消費装置は、本出願の第一の態様から選択されるリチウムイオン電池を含む。
【0043】
本出願のリチウムイオン電池の各アセンブリの材料は、広い範囲内で選択することができる。いくつかの実施方案において、前記リチウムイオン電池は、特にリチウムイオン二次電池である。以下、前記リチウムイオン二次電池の電池セルについて詳細に記述する。
【0044】
一般的には、リチウムイオン二次電池は、正極極板と、負極極板と、セパレータと、電解質とを含む。電池の充放電中に、活性イオンは、正極極板と負極極板との間で往復吸蔵と離脱する。セパレータは、正極極板と負極極板との間に設置され、隔離の作用を果たす。電解質は、正極極板と負極極板との間でイオンを伝導する作用を果たす。
【0045】
[電解液]
電解液は、正極極板と負極極板との間でイオンを伝導する作用を果たす。電解液は、電解質塩と溶媒とを含む。
【0046】
本出願では、電解質塩は、リチウムイオン二次電池において一般的に使用される電解質塩、例えばリチウム塩であってもよく、上記熱安定性の高い塩であるリチウム塩、低インピーダンス添加剤であるリチウム塩又はアルミニウム箔の腐食を抑制するリチウム塩を含む。実例として、電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTFS)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiDFOP)、フッ素スルホン酸リチウム(LiSOF)、ジフルオロビス(オキサラト)塩(NDFOP)、LiF(SON)SOF、KFSI、CsFSI、Ba(FSI)及びLiFSONSOCHCHCFのうちの一つ以上から選ばれてもよい。
【0047】
溶媒の種類に対して特に限定せず、実際の需要に応じて選択することができる。いくつかの実施の形態では、溶媒は、非水性溶媒である。選択的に、溶媒は、鎖状カーボネート、環状カーボネート、カルボン酸エステルのうちの一つ又は複数を含んでもよい。いくつかの実施の形態では、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、フルオロ酢酸メチル(FMA)、フルオロ酢酸エチル(FEA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、テトラヒドロフラン、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、エチルメチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)のうちの一つ以上から選ばれてもよい。
【0048】
いくつかの実施の形態では、電解液には、さらに選択的に他の添加剤が含まれる。例えば、添加剤は、負極膜形成添加剤を含んでもよく、正極膜形成添加剤を含んでもよく、電池のいくつかの性能を改善できる添加剤、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、及び電池の低温性能を改善する添加剤などをさらに含んでもよい。例として、添加剤は、不飽和結合を含有する環状カーボネート化合物、ハロゲンで置換される環状エステル化合物、硫酸エステル化合物、亜硫酸エステル化合物、スルトン化合物、ジスルホン酸化合物、ニトリル化合物、芳香族化合物、イソシアネート化合物、ホスファゼン化合物、環状酸無水物化合物、亜リン酸エステル化合物、リン酸エステル化合物、ホウ酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物から選択される少なくとも一つである。
【0049】
[正極極板]
正極極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面に設置される正極活物質層とを含み、正極活物質層は、正極活物質と導電剤とを含む。
【0050】
例として、正極集電体は、その自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、正極活物質層は、正極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一方又は両方に設置される。
【0051】
本出願のリチウムイオン二次電池において、正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、アルミニウム箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料ベース層と高分子材料ベース層の少なくとも一つの表面上に形成される金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することによって形成されることができる。
【0052】
正極集電体の表面上に設置される正極活物質層は、正極活物質を含む。本出願に使用される正極活物質は、二次電池に使用される任意の通常の正極活物質を有してもよい。いくつかの実施の形態では、正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びそれぞれの改質化合物から選択される一つ又は複数を含んでもよい。リチウム遷移金属酸化物の例は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの一つ又は複数を含んでもよいが、それらに限らない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例は、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料及びその改質化合物のうちの一つ又は複数を含んでもよいが、それらに限らない。これらの材料は、いずれも商業手段で入手可能である。正極活物質の表面は、炭素で被覆されてもよい。
【0053】
正極活物質層は、選択的に導電剤を含む。ただし、導電剤の種類に対して具体的に限定せず、当業者は、実際の需要に応じて選択することができる。例として、正極材料に用いられる導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一つ以上から選ばれてもよい。
【0054】
正極活物質層は、水性接着剤をさらに含む。水性接着剤は、可溶性多糖類及びその誘導体及び水溶性又は水分散性ポリマーのうちの一つ又は複数から選ばれてもよい。例として、水性接着剤は、メチルセルロース及びその塩類、キサンタンガム及びその塩類、キトサン及びその塩類、アルギン酸及びその塩類、及びポリエチレンイミン及びその塩類、ポリアクリルアミド、アクリル酸共重合体及びその誘導体であってもよい。
【0055】
本出願では、当分野において既知の方法に従って正極極板を製造することができる。例として、炭素で被覆される正極活物質、導電剤と水性接着剤を溶媒(例えば水)に分散させて、均一な正極スラリーを形成することができ、正極スラリーを正極集電体上に塗覆し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経た後、正極極板を得る。
【0056】
[負極極板]
負極極板は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一つの表面上に設置される負極材料層とを含み、前記負極材料層は、負極活物質を含む。
【0057】
例として、負極集電体は、その自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、負極材料層は、負極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一方又は両方上に設置される。
【0058】
本出願のリチウムイオン二次電池において、負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、銅箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料ベース層と高分子材料基材の少なくとも一つの表面上に形成される金属層を含んでもよい。複合集電体は、金属材料(例えば銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することによって形成されることができる。
【0059】
本出願のリチウムイオン二次電池において、負極材料層は、一般的には負極活物質及び選択的な接着剤、選択的な導電剤と他の選択的な助剤を含み、一般的には負極スラリーを塗布して乾燥して得られたものである。負極スラリーは、一般的には負極活物質及び選択的な導電剤と接着剤などを溶媒に分散させて均一に攪拌して形成されたものである。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよい。
【0060】
負極活物質の具体的な種類は、制限せず、当分野において既知のリチウムイオン二次電池負極に利用可能な活物質を採用してもよく、当業者は、実際の需要に応じて選択することができる。例として、負極活物質は、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、カーボンナノチューブ、シリコーン単体、シリコーン酸化物、シリコーン炭素複合体、チタン酸リチウムのうちの一つ又は複数から選ばれてもよい。
【0061】
例として、導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一つ以上から選ばれてもよい。
【0062】
例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの一つ以上から選ばれてもよい。
【0063】
他の選択的な助剤は、例えば増粘剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などである。
【0064】
[セパレータ]
電解液を採用するリチウムイオン二次電池には、セパレータがさらに含まれる。セパレータは、正極極板と負極極板との間に設置され、隔離の作用を果たす。本出願は、セパレータの種類に対して特に限定せず、任意の公知の良好な化学安定性と機械安定性を持つ多孔質構造セパレータを選択してもよい。いくつかの実施の形態では、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリビニリデンフルオライドのうちの一つ以上から選ばれてもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよく、特に制限がない。セパレータが多層複合フィルムである時、各層の材料は、同じであってもよく又は異なってもよく、特に制限がない。
【0065】
いくつかの実施の形態では、正極極板、負極極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリに製造されることができる。
【0066】
いくつかの実施の形態では、前記二次電池は、外装体を含んでもよい。この外装体は、上記電極アセンブリ及び電解質をパッケージングするために用いられてもよい。
【0067】
いくつかの実施の形態では、前記二次電池の外装体は、硬質ケース、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼製ケースなどであってもよい。前記二次電池の外装体は、パウチ、例えば袋状パウチであってもよい。パウチの材質は、プラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリブチレンサクシネート(PBS)などが挙げられる。
【0068】
本出願は、前記二次電池の形状に対して特に限定せず、それは、円筒型、四角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、図1は、一例としての四角形構造のリチウムイオン二次電池5である。
【0069】
いくつかの実施の形態では、図2を参照すると、外装体は、ケース51とカバープレート53とを含んでもよい。ここで、ケース51は、底板と底板に接続される側板とを含んでもよく、底板と側板は、囲んで収容キャビティを形成する。ケース51は、収容キャビティと連通する開口を有し、カバープレート53は、前記収容キャビティを密閉するように、前記開口を覆うことができる。正極極板、負極極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスにより電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容キャビティ内にパッケージングされる。電解液は、電極アセンブリ52に浸潤される。リチウムイオン二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、一つ又は複数であってもよく、当業者は、具体的に実際の需要に応じて選択することができる。
【0070】
本出願の二次電池は、電池セル形式、電池モジュール形式又は電池パック形式を含んでもよい。いくつかの実施方案において、電池セルは、電池モジュールに組み立てられてもよい。いくつかの実施の形態では、上記電池セルは、電池パックに組み立てられてもよい。いくつかの実施の形態では、上記電池モジュールも、電池パックに組み立てられてもよい。いくつかの実施の形態では、リチウムイオン二次電池は、電池モジュール4に組み立てられてもよく、電池モジュール4に含まれるリチウムイオン二次電池の数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池モジュール4の応用と容量に応じて選択することができる。電池モジュール4において、複数のリチウムイオン二次電池5は、電池モジュールの長手方向に沿って順に並べて設置されてもよい。無論、他の任意の方式で配列されてもよい。さらに締結具によりこれらの複数のリチウムイオン二次電池5を固定してもよい。選択的に、電池モジュール4はさらに、収容空間を有するハウジングを含んでもよく、複数のリチウムイオン二次電池5は、この収容空間に収容される。
【0071】
いくつかの実施の形態では、上記リチウムイオン二次電池5又は電池モジュール4は、電池パック1に組み立てられてもよく、電池パック1に含まれるリチウムイオン二次電池5又は電池モジュール4の数は、当業者が電池パック1の応用と容量に応じて選択することができる。
【0072】
図3図4は、一例としての電池パック1である。図3図4を参照すると、電池パック1には、電池ボックスと電池ボックスに設置される複数の電池セルとが含まれてもよい。電池ボックスは、上部筐体2と下部筐体3とを含み、上部筐体2は、下部筐体3を覆い、電池セルを収容するための密閉空間を形成することができる。
【0073】
また、本出願は、装置をさらに提供し、前記装置は、本出願による電池パックを含む。前記電池パックは、前記装置の電源として用いられてもよく、前記装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記装置は、移動体機器(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、それらに限らない。前記装置として、その使用需要に応じて電池パックを選択することができる。
【0074】
図5は、一例としての装置である。この装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。この装置のリチウムイオン二次電池の高出力と高エネルギー密度に対する需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。
【0075】
実施例
以下、本出願の実施例を説明する。以下に記述される実施例は、本出願を解釈するためにのみ用いられる例示的なものであり、本出願に対する制限として理解されるべきではない。実施例に具体的な技術又は条件が明記されていない場合、当分野における文献に記述された技術又は条件に従って、又は製品説明書に従って行う。使用する試薬又は計器は、生産メーカが明記されていない場合、いずれも市販で入手可能な通常製品である。特に表示されない場合、すべての含有量割合は、いずれも重量比であり、且つすべての実験は、いずれも常温(25℃)と常圧で行われる。
【0076】
実施例1
(1)正極極板の製造
正極活物質であるLiFePO(LFP)、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるポリビニリデンフルオライド(PVDF)を90:5:5の重量比で溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)に溶解し、十分に攪拌して均一に混合した後に正極スラリーを得、その後に正極スラリーを正極集電体に均一に塗覆し、片側の正極極板膜層重量が350mg/1540.25mmである正極極板を得、さらに乾燥、冷間プレス、スリットを経て、正極板を得た。
【0077】
(2)負極極板の製造
活物質である人造黒鉛、導電剤であるカーボンブラック、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)を90:4:4:2の重量比で溶媒脱イオン水に溶解し、均一に混合した後に負極スラリーとして製造し、負極スラリーを負極集電体銅箔に一回又は複数回均一に塗覆し、乾燥、冷間プレス、スリットを経て負極極板を得た。
【0078】
(3)電解液の製造
アルゴンガス雰囲気のグローブボックス(HO<0.1ppm、O<0.1ppm)において、有機溶媒であるエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)を体積比3/7で均一に混合した。また、酢酸メチルを第一の有機溶媒として加え、酢酸メチルの添加量を調節して、すべての有機溶媒におけるその質量百分率を60重量%にした。その後、12.5% LiPFリチウム塩を加えて有機溶媒に溶解し、均一に攪拌して、電解液を得た。
【0079】
(4)セパレータ
通常のポリプロピレンフィルムをセパレータとして使用した。
【0080】
(5)リチウムイオン電池の製造
セパレータを正、負極板の間に位置させて隔離の作用を果たすように、以上のように製造された正極極板、セパレータ、負極極板を順番に積層し、そして捲回してベアセルを得た。ベアセルにおける活物質の充填率を調節することにより、そのグループマージンを92%に設定した。ベアセルにタブを溶接し、ベアセルをアルミニウムケースに入れ、80℃で焼成して水分を除去したら、電解液を注入して封口し、非帯電電池を得た。非帯電電池をさらに静置、熱冷間プレス、化成、整形、容量試験などの工程を順に経て、実施例1のリチウムイオン二次電池製品を得た。
【0081】
実施例2-5
ステップは、実施例1と同じであり、相違点は、各実施例における電池の電池コアのグループマージン設定が異なることであり、例えば以下の表1に示すとおりである。
【0082】
実施例6-7
ステップは、実施例1と同じであり、相違点は、第一の有機溶媒の種類が異なることであり、例えば以下の表1に示すとおりである。
【0083】
実施例8-13
ステップは、実施例1と同じであり、相違点は、第一の有機溶媒の含有量が異なることであり、例えば以下の表1に示すとおりである。
【0084】
実施例14-22
ステップは、実施例1と同じであり、相違点は、各実施例において電解液に異なる質量百分率の第一の添加剤を別途加えることであり、例えば以下の表1に示すとおりである。
【0085】
実施例23-31
ステップは、実施例1と同じであり、相違点は、各実施例において電解液に異なる質量百分率の第二の添加剤を別途加えることであり、例えば以下の表1に示すとおりである。
【0086】
実施例32-40
ステップは、実施例1と同じであり、相違点は、各実施例において電解液に異なる質量百分率の第三の添加剤を別途加えることであり、例えば以下の表1に示すとおりである。
【0087】
実施例41-43
ステップは、実施例1と同じであり、相違点は、各実施例において電解液に異なる質量百分率の第一、第二と第三の添加剤を別途加えることであり、例えば以下の表1に示すとおりである。
【0088】
比較例1-2
ステップは、実施例1と同じであり、相違点は、第一の有機溶媒の含有量がそれぞれ10%と90%であることであり、例えば以下の表1に示すとおりである。
【0089】
【表1】
【0090】
電池性能試験の方法は、以下のとおりである。
【0091】
1、電池コア容量試験
25℃で、リチウムイオン電池を0.5Cの定電流で4.3Vまで充電し、そして4.3Vの定電圧で電流が0.05Cよりも小さくなるまで充電し、次いでリチウムイオン電池を0.5Cの定電流で2.8Vまで放電し、0.5Cでの放電容量を得た。
【0092】
2、急速充電時間
25℃で、0.33Cで10%充電状態(SOC)まで充電し、与えられた急速決定手順に基づいて、x分間充電し、80%SOCまで充電し、30分間静置した後に1Cで放電し、その後に30分間静置し、20サイクル後、満充電後に電池コアを分解し、負極がリチウムを析出するかどうかを観察し、リチウムを析出していない場合は、この電池コアがx分間の急速充電能力を有することを示した。
【0093】
3、60℃サイクル性能
60℃で、リチウムイオン電池を0.5Cの定電流で3.65Vまで充電し、そして3.65Vの定電圧で電流が0.05Cよりも小さくなるまで充電し、そしてリチウムイオン電池を0.5Cの定電流で2.5Vまで放電し、これを一つの充放電プロセスとした。このように充電と放電を繰り返して、リチウムイオン電池の1000回のサイクル後の容量保持率を計算した。
【0094】
4、体積膨張率
25℃で、まず0.33Cの定電流で製造されたリチウムイオン二次電池をそれぞれ3.65Vまで充電し、さらに3.65Vの定電圧で電流0.05Cまで充電し、そして0.33Cの定電流でリチウムイオン二次電池を2.5Vまで放電し、今回の放電容量は、リチウムイオン二次電池の高温保存前の放電容量であり、そして0.33Cの定電流でリチウムイオン二次電池を3.65Vまで充電し、3.65Vの定電圧で電流0.05Cまで充電し、リチウムイオン電池を満充電した。排水法を採用して電池の体積を試験した。その後にリチウムイオン電池を60℃で60日保存し、保存終了後、リチウムイオン二次電池を25℃の環境に置き、排水法を採用して電池の体積を試験した。電池の体積膨張率=(保存後の体積/保存前の体積-1)%である。
【0095】
実施例1-13から分かるように、グループマージンAの向上又は第一の有機溶媒の質量百分率X1の向上は、いずれも急速充電時間を効果的に短縮することができたが、同時に電池のサイクル性能を低下させ、体積膨張を増大させた。そのため、両者の割合を調節し、X1/Aの値を適切な範囲内に保持することで、急速充電性能とサイクル性能の良好なバランスを実現することができることが有利である。実施例1と6-7との比較から分かるように、第一の有機溶媒の選択は、電池の性能にも実質的な影響を与えた。
【0096】
第一の添加剤を加えることは、電池の体積膨張を効果的に改善することができ、例えば実施例14-22に示すとおりである。しかしながら、第一の添加剤の添加量は、適切な範囲内に制御する必要があり、その含有量が過剰である場合、急速充電性能が厳しく低下することを招いた。W1/Aの値を適切な範囲内に制御することにより、急速充電時間と体積膨張率の良好なバランスを得ることができた。実施例23-40から見ると、第二の添加剤と第三の添加剤の影響は、第一の添加剤に類似した。また、すべての三種類の添加剤を加えることは、ガス発生量による電池の体積膨張への影響をさらに改善することができた。
【0097】
比較例1-2で添加された第一の有機溶媒の量が多すぎるか又は少なく過ぎ、その結果、電池の体積膨張が大きすぎるか(例えば比較例2に示す)、又は急速充電時間が長すぎるようになった(例えば比較例1に示す)。
【0098】
すでに実施例を参照して、本出願を記述しているが、本出願の範囲を逸脱することなく、それに様々な改良を行うことができ、且つ等価物でそのうちの部材を置き換えることができる。特に、構造的衝突が存在しない限り、各実施例に言及された各技術的特徴は、いずれも任意の方式で組み合わせることができる。本出願は、本明細書に開示された特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に含まれるすべての技術案を含む。
【符号の説明】
【0099】
1電池パック
2上部筐体
3下部筐体
4電池モジュール
5リチウムイオン二次電池
51ケース
52電極アセンブリ
53カバープレート
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】