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特表2025-505933MSLNを標的とする抗原結合タンパク質及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-05
(54)【発明の名称】MSLNを標的とする抗原結合タンパク質及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20250226BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250226BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20250226BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250226BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20250226BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250226BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20250226BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20250226BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250226BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250226BHJP
   A61K 35/17 20250101ALI20250226BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20250226BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250226BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20250226BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N15/867 Z
C12N5/10
C07K19/00
C12N15/12
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K35/17
A61K35/76
A61K48/00
A61K39/395 E
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540577
(86)(22)【出願日】2023-01-06
(85)【翻訳文提出日】2024-08-29
(86)【国際出願番号】 CN2023070928
(87)【国際公開番号】W WO2023131276
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】202210011545.7
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210018557.2
(32)【優先日】2022-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520358863
【氏名又は名称】オリセル セラピューティクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン ホァジン
(72)【発明者】
【氏名】ヂョン ヂェンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チョン チャオ
(72)【発明者】
【氏名】シエ アルミン
(72)【発明者】
【氏名】チェン シャオルイ
(72)【発明者】
【氏名】フー シャオウェン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB01
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA04
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本願は、MSLNを標的とすることができる単離された抗原結合タンパク質に関し、上記単離された抗原結合タンパク質は、抗体重鎖可変領域VH中の少なくとも1つのCDRを含み、上記VHは、配列番号8、配列番号13、配列番号69、及び配列番号70の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。本願は、上記抗原結合タンパク質を含むキメラ抗原受容体、及び腫瘍の治療におけるその使用を更に提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソテリン(Mesothelin、MSLN)に特異的に結合することができる単離された抗原結合タンパク質であって、前記単離された抗原結合タンパク質は、抗体重鎖可変領域VH中の少なくとも1つのCDRを含み、前記VHは、配列番号8、配列番号13、配列番号69、及び配列番号70の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
抗原結合タンパク質。
【請求項2】
HCDR3を含み、且つ前記HCDR3は、配列番号1、配列番号9、配列番号65、及び配列番号66の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項3】
前記HCDR3は、配列番号1、配列番号9、配列番号14、配列番号19、配列番号24、配列番号29、及び配列番号34の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項2に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項4】
HCDR2を含み、且つ前記HCDR2は、配列番号67に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~3の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項5】
前記HCDR2は、配列番号2、配列番号10、配列番号15、配列番号20、配列番号25、配列番号30、及び配列番号35の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項4に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項6】
HCDR1を含み、且つ前記HCDR1は、配列番号68(XMG、そのうち、XはN、R、S、T又はYであり、XはN又はYであり、XはA、N又はVである)に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~5の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項7】
前記HCDR1は、配列番号3、配列番号11、配列番号16、配列番号21、配列番号26、配列番号31、及び配列番号36の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項6に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項8】
HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む、請求項1~7の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質であって、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、
(1)前記HCDR1は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、
(2)前記HCDR1は、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、
(3)前記HCDR1は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含み、
(4)前記HCDR1は、配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含み、
(5)前記HCDR1は、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は、配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は、配列番号24に示されるアミノ酸配列を含み、
(6)前記HCDR1は、配列番号31に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は、配列番号30に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は、配列番号29に示されるアミノ酸配列を含み、及び
(7)前記HCDR1は、配列番号36に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含み、
からなる群より選ばれるアミノ酸配列の何れか1つを含む、
請求項1~7の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項9】
H-FR1を含み、前記H-FR1のC末端が前記HCDR1のN末端に直接的又は間接的に連結されており、且つ前記H-FR1は、配列番号4、配列番号12、配列番号17、配列番号22、配列番号27、配列番号32、及び配列番号37の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~8の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項10】
H-FR2を含み、前記H-FR2は、前記HCDR1と前記HCDR2との間に位置し、且つ前記H-FR2は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~9の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項11】
H-FR3を含み、前記H-FR3は、前記HCDR2と前記HCDR3との間に位置し、且つ前記H-FR3は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~10の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項12】
H-FR4を含み、前記H-FR4のN末端が前記HCDR3のC末端に直接的又は間接的に連結されており、且つ前記H-FR4は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~11の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項13】
抗体重鎖可変領域VHを含み、且つ前記VHは、配列番号8、配列番号13、配列番号69、及び配列番号70の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~12の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項14】
抗体重鎖可変領域VHを含み、且つ前記VHは、配列番号8、配列番号13、配列番号18、配列番号23、配列番号28、配列番号33、及び配列番号38の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~13の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項15】
抗体又はその抗原結合断片を含む、
請求項1~14の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項16】
前記抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab)、Fv断片、F(ab’)、scFv、di-scFv、VHH及び/又はdAbを含む、
請求項15に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項17】
前記抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、及び完全ヒト抗体からなる群より選ばれる、
請求項15~16の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項18】
前記抗原結合断片はVHHであり、且つ前記VHHは、配列番号8、配列番号13、配列番号69、及び配列番号70の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項15~17の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項19】
前記VHHは、配列番号8、配列番号13、配列番号18、配列番号23、配列番号28、配列番号33、及び配列番号38の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項18に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項20】
MSLN(Mesothelin、メソテリン)タンパク質への結合について参照抗体と競合することができる、請求項1~19の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質であって、前記参照抗体は、抗体重鎖可変領域VHを含み、前記参照抗体のVHは、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、且つ前記参照抗体は、
(1)前記HCDR1は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、
(2)前記HCDR1は、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、
(3)前記HCDR1は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含み、
(4)前記HCDR1は、配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含み、
(5)前記HCDR1は、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は、配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は、配列番号24に示されるアミノ酸配列を含み、
(6)前記HCDR1は、配列番号31に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は、配列番号30に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は、配列番号29に示されるアミノ酸配列を含み、及び
(7)前記HCDR1は、配列番号36に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含み、
からなる群より選ばれるアミノ酸配列の何れか1つを含む、
請求項1~19の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項21】
抗体重鎖定常領域を含み、前記抗体重鎖定常領域はIgGに由来する、
請求項1~20の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項22】
抗体重鎖定常領域を含み、前記抗体重鎖定常領域はヒトIgGに由来する、
請求項1~21の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項23】
抗体重鎖定常領域を含み、前記抗体重鎖定常領域はヒトIgG1に由来する、
請求項1~22の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項24】
前記抗体重鎖定常領域は、IgGのFc領域を含む、
請求項21~23の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項25】
前記Fc領域は、配列番号54に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項24に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項26】
標的部分を含み、前記標的部分は請求項1~25の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質を含む、
キメラ抗原受容体。
【請求項27】
共刺激ドメインを含み、前記共刺激ドメインは、CD28、4-1BB、CD27、CD2、CD7、CD8、OX40、CD226、DR3、SLAM、CDS、ICAM-1、NKG2D、NKG2C、B7-H3、2B4、FcεRIγ、BTLA、GITR、HVEM、DAP10、DAP12、CD30、CD40、CD40L、TIM1、PD-1、LFA-1、LIGHT、JAML、CD244、CD100、ICOS、CD83のリガンド、CD40、及びMyD88からなる群より選ばれる1つ又は複数のタンパク質に由来する共刺激ドメインを含む、
請求項26に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項28】
前記共刺激ドメインは、4-1BBに由来する細胞内共刺激シグナル領域である、
請求項27に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項29】
前記共刺激ドメインは、配列番号39に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項27~28の何れか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項30】
細胞内シグナル伝達ドメインを含み、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD79a、CD79b、FcεRIγ、FcεRIβ、FcγRIIa、ウシ白血病ウイルスgp30、Epstein-Barrウイルス(EBV)LMP2A、サル免疫不全ウイルスPBj14 Nef、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(HSKV)、DAP10、DAP-12、及び少なくとも1つのITAMを含むドメインからなる群より選ばれる1つ又は複数のタンパク質に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含む、
請求項26~29の何れか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項31】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来するシグナル伝達ドメインである、
請求項30に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項32】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号41に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項31に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項33】
膜貫通領域を含み、前記膜貫通領域は、CD8、CD28、4-1BB、CD4、CD27、CD7、PD-1、TRAC、TRBC、CD3ε、CD3ζ、CTLA-4、LAG-3、CD5、ICOS、OX40、NKG2D、2B4、CD244、FcεRIγ、BTLA、CD30、GITR、HVEM、DAP10、CD2、NKG2C、LIGHT、DAP12、CD40L、TIM1、CD226、DR3、CD45、CD80、CD86、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD134、CD137、CD154、及びSLAMからなる群より選ばれる1つ又は複数のタンパク質に由来する膜貫通ドメインを含む、
請求項26~32の何れか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項34】
前記膜貫通領域は、CD8に由来する膜貫通領域である、
請求項33に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項35】
前記膜貫通領域は、配列番号40に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項34に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項36】
標的部分と膜貫通領域との間にヒンジ領域を含み、前記ヒンジ領域は、CD28、IgG1、IgG4、IgD、4-1BB、CD4、CD27、CD7、CD8、PD-1、ICOS、OX40、NKG2D、NKG2C、FcεRIγ、BTLA、GITR、DAP10、CD40L、TIM1、CD226、SLAM、CD30、及びLIGHTからなる群より選ばれる1つ又は複数のタンパク質に由来するヒンジ領域を含む、
請求項26~35の何れか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項37】
前記ヒンジ領域は、CD8に由来するヒンジ領域である、
請求項36に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項38】
前記ヒンジ領域は、配列番号42に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項37に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項39】
シグナルペプチドを更に含む、
請求項26~38の何れか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項40】
前記シグナルペプチドは、CD8タンパク質のシグナルペプチドに由来する、
請求項39に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項41】
前記シグナルペプチドは、配列番号43に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項40に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項42】
低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片を更に含む、
請求項26~41の何れか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項43】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12及びそれらの機能的断片からなる群より選ばれる1つ又は複数を含む、
請求項42に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項44】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5及び/又は6或いはその断片である、
請求項42~43の何れか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項45】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、配列番号44に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項42~44の何れか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項46】
配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、及び配列番号53の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項26~45の何れか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項47】
請求項1~25の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質を含む、
ポリペプチド。
【請求項48】
1つ又は複数の単離された核酸分子であって、請求項1~25の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質及び/又は請求項26~46の何れか一項に記載のキメラ抗原受容体をコードする、
核酸分子。
【請求項49】
プロモーターを更に含む、
請求項48に記載の核酸分子。
【請求項50】
前記プロモーターは、構成的プロモーターである、
請求項49に記載の核酸分子。
【請求項51】
前記プロモーターは、EF1αプロモーターである、
請求項49~50の何れか一項に記載の核酸分子。
【請求項52】
請求項48~51の何れか一項に記載の核酸分子を含む、
ベクター。
【請求項53】
ウイルスベクターを含む、
請求項52に記載のベクター。
【請求項54】
レンチウイルスベクターを含む、
請求項52~53の何れか一項に記載のベクター。
【請求項55】
請求項1~25の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質、請求項26~46の何れか一項に記載のキメラ抗原受容体、請求項47に記載のポリペプチド、請求項48~51の何れか一項に記載の核酸分子、及び/又は請求項52~54の何れか一項に記載のベクターを含む、
細胞。
【請求項56】
免疫エフェクター細胞である、
請求項55に記載の細胞。
【請求項57】
T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、マクロファージ、NKT細胞、単核細胞、樹状細胞、顆粒球、リンパ球、白血球、末梢血単核細胞、胚性幹細胞、リンパ球前駆細胞、及び/又は多能性幹細胞を含む、
請求項55~56の何れか一項に記載の細胞。
【請求項58】
T細胞である、
請求項55~57の何れか一項に記載の細胞。
【請求項59】
低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質若しくはその断片を更に含む及び/又は発現する、
請求項55~58の何れか一項に記載の細胞。
【請求項60】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12及びそれらの機能的断片からなる群より選ばれる1つ又は複数を含む、
請求項59に記載の細胞。
【請求項61】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5及び/又は6或いはその断片である、
請求項59~60の何れか一項に記載の細胞。
【請求項62】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、配列番号44に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項59~61の何れか一項に記載の細胞。
【請求項63】
請求項1~25の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質及び/又は請求項26~46の何れか一項に記載のキメラ抗原受容体を製造する方法であって、請求項1~25の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質及び/又は請求項26~46の何れか一項に記載のキメラ抗原受容体を発現可能な条件下で、請求項51~58の何れか一項に記載の細胞を培養することを含む、
方法。
【請求項64】
免疫エフェクター細胞中に、請求項52~54の何れか一項に記載のベクターを導入することを含む、
修飾された免疫エフェクター細胞を製造する方法。
【請求項65】
請求項1~25の何れか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質、請求項26~46の何れか一項に記載のキメラ抗原受容体、請求項47に記載のポリペプチド、請求項48~51の何れか一項に記載の核酸分子、請求項52~54の何れか一項に記載のベクター、及び/又は請求項55~62の何れか一項に記載の細胞、並びに任意選択的に薬学的に許容される担体を含む、
医薬組成物。
【請求項66】
薬物の製造における、請求項1~25の何れか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質、請求項26~46の何れか一項に記載のキメラ抗原受容体、請求項47に記載のポリペプチド、請求項48~51の何れか一項に記載の核酸分子、請求項52~54の何れか一項に記載のベクター、請求項55~62の何れか一項に記載の細胞、及び/又は請求項65に記載の医薬組成物の使用であって、前記薬物は、MSLNの異常発現に関連する疾患又は病状を予防、治療及び/又は緩和するために用いられる、
使用。
【請求項67】
前記MSLNの異常発現に関連する疾患又は病状は、腫瘍を含む、
請求項66に記載の使用。
【請求項68】
前記腫瘍は、固形腫瘍を含む、
請求項67に記載の使用。
【請求項69】
前記腫瘍は、非固形腫瘍を含む、
請求項67に記載の使用。
【請求項70】
前記腫瘍は、MSLN抗原を発現する腫瘍を含む、
請求項67~69の何れか一項に記載の使用。
【請求項71】
前記腫瘍は、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、中皮細胞癌(mesothelioma)、胆管癌、トリプルネガティブ乳癌、及び/又は子宮内膜癌を含む、
請求項67~70の何れか一項に記載の使用。
【請求項72】
MSLNの異常発現に関連する疾患又は病状を予防、治療及び/又は緩和する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1~25の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質、請求項26~46の何れか一項に記載のキメラ抗原受容体、請求項47に記載のポリペプチド、請求項48~51の何れか一項に記載の核酸分子、請求項52~54の何れか一項に記載のベクター、請求項55~62の何れか一項に記載の細胞、及び/又は請求項65に記載の医薬組成物を投与することを含む、
方法。
【請求項73】
前記MSLNの異常発現に関連する疾患又は病状は、腫瘍を含む、
請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記腫瘍は、固形腫瘍を含む、
請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記腫瘍は、非固形腫瘍を含む、
請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記腫瘍は、MSLN抗原を発現する腫瘍を含む、
請求項73~75の何れか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記腫瘍は、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、中皮細胞癌、胆管癌、トリプルネガティブ乳癌、及び/又は子宮内膜癌を含む、
請求項73~76の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、生物医薬分野に関し、具体的には、MSLNを標的とする抗原結合タンパク質、上記抗原結合タンパク質を含むキメラ抗原受容体、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
メソテリン(Mesothelin、MSLN)は、グリコシルホスファチジルイノシトールにより細胞膜にアンカーされる、細胞表面に位置する糖タンパク質である。メソテリン遺伝子は69kDaの前駆体タンパク質をコードし、フーリン(フューリン、furin)様インベルターゼにより2本の鎖に加水分解され、C末端の約40KDの膜結合タンパク質が即ち成熟メソテリンとなり、N末端の約30KDの巨核球促進因子(MPF)と呼ばれる断片が脱落し、且つ細胞外に放出される。MPF及び膜アンカーMSLNは、両方ともN-グリコシル化であり、MPFはインビトロで巨核球クローンの形成を促進することができ、膜アンカーMSLNはMUC16と相互作用し、細胞接着プロセスにおいて重要な役割を果たすことができ、したがって、現在の標的治療では、何れも膜アンカーMSLNを標的として選択するため、現在のMSLNはMSLNのC末端40KD断片、即ち膜アンカーMSLNを専門的に指す。
【0003】
メソテリンは、腹膜、胸膜及び心膜腔の中皮細胞系の細胞表面に存在する糖タンパク質である。メソテリンは、中皮腫、即ち、癌/腫瘍細胞、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、肺癌、及び子宮内膜癌において、優勢に発現(過剰発現)する。対照的に、その発現は、正常細胞、例えば中皮細胞において制限される。
【発明の概要】
【0004】
本願は、MSLNに特異的に結合することができる単離された抗原結合タンパク質を提供する。本願は、上記抗原結合タンパク質を含むキメラ抗原受容体、並びに当該キメラ抗原受容体を含む及び/又は発現する細胞を更に提供し、上記細胞は以下の1つ又は複数の特徴を有する:(1)増幅能力が高いこと、(2)MSLNを発現する標的細胞を殺傷することができること、(3)標的細胞の刺激下でサイトカインを分泌すること、(4)腫瘍細胞の増殖を阻害すること。
【0005】
一態様では、本願は、抗体重鎖可変領域VH中の少なくとも1つのCDRを含む、単離された抗原結合タンパク質を提供し、上記VHは、配列番号8、配列番号13、配列番号69、及び配列番号70の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0006】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合タンパク質はHCDR3を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号1、配列番号9、配列番号65、及び配列番号66の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0007】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合タンパク質はHCDR3を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号1、配列番号9、配列番号14、配列番号19、配列番号24、配列番号29、及び配列番号34の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0008】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合タンパク質はHCDR2を含み、且つ上記HCDR2は、配列番号67に示されるアミノ酸配列を含む。
【0009】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合タンパク質はHCDR2を含み、且つ上記HCDR2は、配列番号2、配列番号10、配列番号15、配列番号20、配列番号25、配列番号30、及び配列番号35の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0010】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合タンパク質はHCDR1を含み、且つ上記HCDR1は、配列番号68(XMG、そのうち、XはN、R、S、T又はYであり、XはN又はYであり、XはA、N又はVである)に示されるアミノ酸配列を含む。
【0011】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合タンパク質はHCDR1を含み、且つ上記HCDR1は、配列番号3、配列番号11、配列番号16、配列番号21、配列番号26、配列番号31、及び配列番号36の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0012】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合タンパク質は、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、且つ上記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、
(1)上記HCDR1は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、
(2)上記HCDR1は、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、
(3)上記HCDR1は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含み、
(4)上記HCDR1は、配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含み、
(5)上記HCDR1は、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号24に示されるアミノ酸配列を含み、
(6)上記HCDR1は、配列番号31に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号30に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号29に示されるアミノ酸配列を含み、及び
(7)上記HCDR1は、配列番号36に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含み、
からなる群より選ばれるアミノ酸配列の何れか1つを含む。
【0013】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合タンパク質は、H-FR1を含み、上記H-FR1のC末端が上記HCDR1のN末端に直接的又は間接的に連結されており、且つ上記H-FR1は、配列番号4、配列番号12、配列番号17、配列番号22、配列番号27、配列番号32、及び配列番号37の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0014】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合タンパク質は、H-FR2を含み、上記H-FR2は、上記HCDR1と上記HCDR2との間に位置し、且つ上記H-FR2は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む。
【0015】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合タンパク質は、H-FR3を含み、上記H-FR3は、上記HCDR2と上記HCDR3との間に位置し、且つ上記H-FR3は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む。
【0016】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合タンパク質は、H-FR4を含み、上記H-FR4のN末端が上記HCDR3のC末端に直接的又は間接的に連結されており、且つ上記H-FR4は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む。
【0017】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合タンパク質は、抗体重鎖可変領域VHを含み、且つ上記VHは、配列番号8、配列番号13、配列番号69、及び配列番号70の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0018】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合タンパク質は、抗体重鎖可変領域VHを含み、且つ上記VHは、配列番号8、配列番号13、配列番号18、配列番号23、配列番号28、配列番号33、及び配列番号38の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0019】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合タンパク質は、抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0020】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab)、Fv断片、F(ab’)、scFv、di-scFv、VHH及び/又はdAbを含む。
【0021】
幾つかの実施形態において、上記抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、及び完全ヒト抗体からなる群より選ばれる。
【0022】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合断片はVHHであり、且つ上記VHHは、配列番号8、配列番号13、配列番号69、及び配列番号70の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0023】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合断片はVHHであり、且つ上記VHHは、配列番号8、配列番号13、配列番号18、配列番号23、配列番号28、配列番号33、及び配列番号38の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0024】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合タンパク質は、MSLN(Mesothelin、メソテリン)タンパク質への結合について参照抗体と競合することができ、そのうち、上記参照抗体は、抗体重鎖可変領域VHを含み、上記参照抗体のVHは、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、且つ上記参照抗体は、
(1)上記HCDR1は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、
(2)上記HCDR1は、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、
(3)上記HCDR1は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含み、
(4)上記HCDR1は、配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含み、
(5)上記HCDR1は、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号24に示されるアミノ酸配列を含み、
(6)上記HCDR1は、配列番号31に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号30に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号29に示されるアミノ酸配列を含み、及び
(7)上記HCDR1は、配列番号36に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含み、
からなる群より選ばれるアミノ酸配列の何れか1つを含む。
【0025】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合タンパク質は、抗体重鎖定常領域を含み、上記抗体重鎖定常領域はIgGに由来する。
【0026】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合タンパク質は、抗体重鎖定常領域を含み、上記抗体重鎖定常領域はヒトIgGに由来する。
【0027】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合タンパク質は、抗体重鎖定常領域を含み、上記抗体重鎖定常領域はヒトIgG1に由来する。
【0028】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合タンパク質の重鎖定常領域は、IgGのFc領域を含む。
【0029】
幾つかの実施形態において、上記Fc領域は、配列番号54に示されるアミノ酸配列を含む。
【0030】
別の態様では、本願は、標的部分を含むキメラ抗原受容体を更に提供し、上記標的部分は上記抗原結合タンパク質を含む。
【0031】
幾つかの実施形態において、上記キメラ抗原受容体は共刺激ドメインを含み、上記共刺激ドメインは、CD28、4-1BB、CD27、CD2、CD7、CD8、OX40、CD226、DR3、SLAM、CDS、ICAM-1、NKG2D、NKG2C、B7-H3、2B4、FcεRIγ、BTLA、GITR、HVEM、DAP10、DAP12、CD30、CD40、CD40L、TIM1、PD-1、LFA-1、LIGHT、JAML、CD244、CD100、ICOS、CD83のリガンド、CD40、及びMyD88からなる群より選ばれる1つ又は複数のタンパク質に由来する共刺激ドメインを含む。
【0032】
幾つかの実施形態において、上記キメラ抗原受容体の上記共刺激ドメインは、4-1BBに由来する細胞内共刺激シグナル領域である。
【0033】
幾つかの実施形態において、上記キメラ抗原受容体中の上記共刺激ドメインは、配列番号39に示されるアミノ酸配列を含む。
【0034】
幾つかの実施形態において、上記キメラ抗原受容体は、細胞内シグナル伝達ドメインを含み、上記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD79a、CD79b、FcεRIγ、FcεRIβ、FcγRIIa、ウシ白血病ウイルスgp30、Epstein-Barrウイルス(EBV)LMP2A、サル免疫不全ウイルスPBj14 Nef、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(HSKV)、DAP10、DAP-12、及び少なくとも1つのITAMを含むドメインからなる群より選ばれる1つ又は複数のタンパク質に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0035】
幾つかの実施形態において、上記キメラ抗原受容体の上記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来するシグナル伝達ドメインである。
【0036】
幾つかの実施形態において、上記キメラ抗原受容体の上記細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号41に示されるアミノ酸配列を含む。
【0037】
幾つかの実施形態において、上記キメラ抗原受容体は、膜貫通領域を含み、上記膜貫通領域は、CD8、CD28、4-1BB、CD4、CD27、CD7、PD-1、TRAC、TRBC、CD3ε、CD3ζ、CTLA-4、LAG-3、CD5、ICOS、OX40、NKG2D、2B4、CD244、FcεRIγ、BTLA、CD30、GITR、HVEM、DAP10、CD2、NKG2C、LIGHT、DAP12、CD40L、TIM1、CD226、DR3、CD45、CD80、CD86、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD134、CD137、CD154、及びSLAMからなる群より選ばれる1つ又は複数のタンパク質に由来する膜貫通ドメインを含む。
【0038】
幾つかの実施形態において、上記キメラ抗原受容体の上記膜貫通領域は、CD8に由来する膜貫通領域である。
【0039】
幾つかの実施形態において、上記キメラ抗原受容体の上記膜貫通領域は、配列番号40に示されるアミノ酸配列を含む。
【0040】
幾つかの実施形態において、上記キメラ抗原受容体は、標的部分と膜貫通領域との間にヒンジ領域を含み、上記ヒンジ領域は、CD28、IgG1、IgG4、IgD、4-1BB、CD4、CD27、CD7、CD8、PD-1、ICOS、OX40、NKG2D、NKG2C、FcεRIγ、BTLA、GITR、DAP10、CD40L、TIM1、CD226、SLAM、CD30、及びLIGHTからなる群より選ばれる1つ又は複数のタンパク質に由来するヒンジ領域を含む。
【0041】
幾つかの実施形態において、上記キメラ抗原受容体の上記ヒンジ領域は、CD8に由来するヒンジ領域である。
【0042】
幾つかの実施形態において、上記キメラ抗原受容体の上記ヒンジ領域は、配列番号42に示されるアミノ酸配列を含む。
【0043】
幾つかの実施形態において、上記キメラ抗原受容体は、シグナルペプチドを更に含む。
【0044】
幾つかの実施形態において、上記キメラ抗原受容体の上記シグナルペプチドは、CD8タンパク質のシグナルペプチドに由来する。
【0045】
幾つかの実施形態において、上記キメラ抗原受容体の上記シグナルペプチドは、配列番号43に示されるアミノ酸配列を含む。
【0046】
幾つかの実施形態において、上記キメラ抗原受容体は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片を更に含む。
【0047】
幾つかの実施形態において、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12及びそれらの機能的断片からなる群より選ばれる1つ又は複数を含む。
【0048】
幾つかの実施形態において、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5及び/又は6或いはその断片である。
【0049】
幾つかの実施形態において、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、配列番号44に示されるアミノ酸配列を含む。
【0050】
幾つかの実施形態において、上記キメラ抗原受容体は、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、及び配列番号53の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0051】
別の態様では、本願は、上記抗原結合タンパク質を含むポリペプチドを更に提供する。
【0052】
別の態様では、本願は、上記単離された抗原結合タンパク質及び/又は上記キメラ抗原受容体をコードする1つ又は複数の単離された核酸分子を更に提供する。
【0053】
幾つかの実施形態において、上記核酸分子は、プロモーターを含む。
【0054】
幾つかの実施形態において、上記プロモーターは、構成的プロモーターである。
【0055】
幾つかの実施形態において、上記プロモーターは、EF1αプロモーターである。
【0056】
別の態様では、本願は、上記核酸分子を含むベクターを更に提供する。
【0057】
幾つかの実施形態において、上記ベクターは、ウイルスベクターを含む。
【0058】
幾つかの実施形態において、上記ベクターは、レンチウイルスベクターを含む。
【0059】
別の態様では、本願は、上記抗原結合タンパク質、上記キメラ抗原受容体、上記核酸分子及び/又は上記ベクターを含む細胞を更に提供する。
【0060】
幾つかの実施形態において、上記細胞は、免疫エフェクター細胞である。
【0061】
幾つかの実施形態において、上記細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、マクロファージ、NKT細胞、単核細胞、樹状細胞、顆粒球、リンパ球、白血球、末梢血単核細胞、胚性幹細胞、リンパ球前駆細胞、及び/又は多能性幹細胞を含む。
【0062】
幾つかの実施形態において、上記細胞はT細胞である。
【0063】
幾つかの実施形態において、上記細胞は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片を含む及び/又は発現する。
【0064】
幾つかの実施形態において、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12及びそれらの機能的断片からなる群より選ばれる1つ又は複数を含む。
【0065】
幾つかの実施形態において、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5及び/又は6或いはその断片である。
【0066】
幾つかの実施形態において、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、配列番号44に示されるアミノ酸配列を含む。
【0067】
別の態様では、本願は、修飾された免疫エフェクター細胞を製造する方法を更に提供し、上記方法は、上記抗原結合タンパク質及び/又は上記キメラ抗原受容体を発現させる条件下で、上記細胞を培養することを含む。
【0068】
別の態様では、本願は、免疫エフェクター細胞中に、上記ベクターを導入することを含む、修飾された免疫エフェクター細胞を製造する方法を更に提供する。
【0069】
別の態様では、本願は、上記単離された抗原結合タンパク質、上記キメラ抗原受容体、上記ポリペプチド、上記核酸分子、上記ベクター及び/又は上記細胞、並びに任意選択的に薬学的に許容されるベクターを含む医薬組成物を更に提供する。
【0070】
別の態様では、本願は、薬物の製造における、上記単離された抗原結合タンパク質、上記キメラ抗原受容体、上記ポリペプチド、上記核酸分子、上記ベクター、上記細胞、及び/又は上記医薬組成物の使用を更に提供し、上記薬物は、MSLNの異常発現に関連する疾患又は病状を予防、治療及び/又は緩和するために用いられる。
【0071】
幾つかの実施形態において、上記MSLNの異常発現に関連する疾患又は病状は、腫瘍を含む。
【0072】
幾つかの実施形態において、上記腫瘍は、固形腫瘍を含む。
【0073】
幾つかの実施形態において、上記腫瘍は、非固形腫瘍を含む。
【0074】
幾つかの実施形態において、上記腫瘍は、MSLN抗原を発現する腫瘍を含む。
【0075】
幾つかの実施形態において、上記腫瘍は、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、中皮細胞癌、胆管癌、トリプルネガティブ乳癌、及び/又は子宮内膜癌を含む。
【0076】
別の態様では、本願は、MSLNの異常発現に関連する疾患又は病状を予防、治療及び/又は緩和する方法を更に提供し、上記方法は、それを必要とする対象に、上記単離された抗原結合タンパク質、上記キメラ抗原受容体、上記ポリペプチド、上記核酸分子、上記ベクター、上記細胞、及び/又は上記医薬組成物を投与することを含む。
【0077】
幾つかの実施形態において、上記MSLNの異常発現に関連する疾患又は病状は、腫瘍を含む。
【0078】
幾つかの実施形態において、上記腫瘍は、固形腫瘍を含む。
【0079】
幾つかの実施形態において、上記腫瘍は、非固形腫瘍を含む。
【0080】
幾つかの実施形態において、上記腫瘍は、MSLN抗原を発現する腫瘍を含む。
【0081】
幾つかの実施形態において、上記腫瘍は、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、中皮細胞癌、胆管癌、トリプルネガティブ乳癌、及び/又は子宮内膜癌を含む。
【0082】
当業者は、以下の詳細な説明から本願の他の態様及び利点を容易に洞察することができる。以下の詳細な説明には、本願の例示的な実施形態のみを示して説明する。当業者に明らかなように、本願の内容により、当業者は、本願にかかる発明の精神及び範囲から逸脱することなく、開示された具体的な実施形態を変更することができる。それに応じて、本願の図面及び明細書における説明は、限定的なものではなく、単に例示的なものである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
本願にかかる発明の具体的な特徴は、添付される特許請求の範囲に記載される通りである。以下に詳細に説明する例示的な実施形態及び図面を参照することで、本願にかかる発明の特徴及び利点をよりよく理解することができる。図面の簡単な説明は以下の通りである。
図1】ファージPool ELISAの結果を示す。
図2】陽性クローンの選択を示す。
図3A-3D】本願の抗原結合タンパク質とMSLNとの親和性の検出を示す。
図4】本願の抗原結合タンパク質と、ヒトMSLNを過剰発現する293Tとの結合活性のフローサイトメトリー検証を示す。
図5】本願の抗原結合タンパク質と、293T、KERA、LO2、A549及びHACAT細胞との非特異的結合のフローサイトメトリー検証を示す。
図6】CAR-T細胞のインビトロ反復刺激増殖実験の結果を示す。
図7】CAR-T細胞のインビトロ殺傷の結果を示す。
図8】CAR-T細胞のインビトロでのサイトカイン放出の検出の結果を示す。
図9】CAR-T細胞のインビトロでのサイトカイン放出の検出の結果を示す。
図10】CAR-T細胞のインビトロでのサイトカイン放出の検出の結果を示す。
図11】SK-OV3腫瘍モデルマウスのインビボ薬効実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0084】
以下、特定の具体的な実施例により、本願の発明の実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容から本願の発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。
【0085】
用語の定義
本願において、「MSLN」という用語は、メソテリン、又はCAK1抗原若しくはプレプロ巨核球増強因子とも呼ばれ、正常な中皮細胞上に存在するタンパク質であり、且つ幾つかの腫瘍細胞において過剰発現される。本願において、当該用語は、MSLNタンパク質又はその機能的に活性な断片を含んでもよい。本願において、当該用語は、MSLNタンパク質のホモログ、類似体、又は変異体を更に含んでもよい。例えば、上記MSLNは、ヒトMSLNを含んでもよい。
【0086】
本願において、「単離された抗原結合タンパク質」という用語は、一般に、その天然に存在する状態から離脱した抗原結合能を有するタンパク質を指す。上記「単離された抗原結合タンパク質」は、抗原に結合する部分、及び任意選択的に、抗原結合部分が抗原へのその結合を促進する立体構造を採用することを可能にするフレームワーク又はフレームワーク部分を含んでもよい。抗原結合タンパク質は、例えば、抗体由来のタンパク質フレームワーク領域(FR)、又は移植された可変領域(CDR)若しくはCDR誘導体を有する候補のタンパク質フレームワーク領域若しくは人工フレームワーク領域を含んでもよい。例えば、上記抗原結合タンパク質は、抗体又はその抗原結合断片を含んでもよい。例えば、上記抗原結合タンパク質は、MSLNタンパク質に結合することができる。例えば、上記抗原結合タンパク質は、MSLNタンパク質への結合について、参照抗体と競合することができる。例えば、上記抗原結合タンパク質は、抗体重鎖可変領域VHを含んでもよい。例えば、上記抗原結合タンパク質は、抗体重鎖可変領域VHに由来する少なくとも1つのCDRを含んでもよい。例えば、上記VHは、HCDR3、HCDR2及び/又はHCDR1を含んでもよい。例えば、上記VHは、フレームワーク領域H-FR1を含んでもよく、上記H-FR1のC末端が上記HCDR1のN末端に直接的又は間接的に連結されている。例えば、上記VHは、フレームワーク領域H-FR2を含んでもよく、上記H-FR2は、上記HCDR1と上記HCDR2との間に位置する。例えば、上記VHは、フレームワーク領域H-FR3を含んでもよく、上記H-FR3は、上記HCDR2と上記HCDR3との間に位置する。例えば、上記VHは、フレームワーク領域H-FR4を含んでもよく、上記H-FR4のN末端が上記HCDR3のC末端に連結されている。例えば、上記抗原結合タンパク質はVHHであってもよい。例えば、上記抗原結合タンパク質は、抗体重鎖定常領域を含んでもよく、上記抗体重鎖定常領域はIgGに由来し得る。例えば、上記抗体重鎖定常領域はヒトIgGに由来し得る。例えば、上記抗体重鎖定常領域はヒトIgG1に由来し得る。
【0087】
使用される「抗体」という用語は、完全な抗体及びその結合断片を含む。一般に、断片は、抗原に特異的に結合することについて、その断片が由来する完全な抗体と競合する。任意選択的に、抗体又はその結合断片は、他のタンパク質に化学的に結合し得るか、又は他のタンパク質と融合タンパク質の形態で発現され得る。例えば、上記抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、及び完全ヒト抗体であってもよい。例えば、上記抗体又はその結合断片の結合タンパク質は、MSLNを含んでもよい。例えば、上記抗体又はその結合断片は、MSLNに対して特異性を有することができる。
【0088】
「抗原結合断片」という用語は、完全な抗体の一部を指し、且つ完全な抗体の抗原決定可変領域を指す。例えば、上記抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab)、Fv断片と一本鎖Fv断片、タンデムFv断片、VHH、二重特異性抗体を含んでもよい。例えば、上記抗原結合断片はVHHであってもよい。例えば、上記抗原結合断片は、MSLNに結合することができる。例えば、上記抗原結合断片は、MSLNに対して特異性を有することができる。
【0089】
本願において、「VHH」という用語は、一般に、重鎖抗体の可変抗原結合ドメインを含む抗体を指す。VHHは、ナノボディ(Nanobody)(Nb)及び/又は単一ドメイン抗体とも呼ばれる。例えば、上記VHHは、MSLNに結合することができる。例えば、上記VHHは、MSLNに対して特異性を有することができる。
【0090】
本願において、上記抗体は、ジスルフィド結合によって互いに連結された少なくとも2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖を含んでもよい。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域からなる。「重鎖定常領域」という用語は、CH1、CH2及びCH3という3つのドメインからなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域からなる。「軽鎖定常領域」という用語は、1つのドメインCLからなる。VH及びVL領域は更に、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に細かく分けられてもよく、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域が散在する。それぞれのVH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4という順で配列された3つのCDR及び4つのFRからなる。重鎖と軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫グロブリンと宿主組織又は因子との結合を媒介することができる。
【0091】
本願において、「参照抗体」という用語は、MSLNの同じエピトープへの結合について、上記単離された抗原結合タンパク質と競合することができる抗体を指す。上記参照抗体は、重鎖可変領域VHを含んでもよい。例えば、上記参照抗体は、3つのCDR配列を有することができる。例えば、上記参照抗体のVHは、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含んでもよい。例えば、上記CDR配列は、上記単離された抗原結合タンパク質のCDR配列と一致してもよい。
【0092】
本願において、「IgG」という用語は、基本的に公知の免疫グロブリンγ遺伝子によってコードされる抗体クラスに属するポリペプチドを指す。ヒトでは、このクラスには、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4が含まれる。マウスでは、このクラスには、IgG1、IgG2a、IgG2b、及びIgG3が含まれる。
【0093】
本願において、「キメラ抗原受容体」(CAR)という用語は、一般に、少なくとも抗原又は標的に特異的に結合する細胞外ドメイン、膜貫通領域、及び細胞内ドメインを含む組換えポリペプチドを指す。例えば、上記細胞外ドメインと上記膜貫通領域との間にヒンジ領域が含まれる。例えば、上記キメラ抗原受容体は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片を更に含んでもよい。例えば、上記キメラ抗原受容体は、シグナルペプチドを含んでもよい。CARの細胞外ドメインが標的細胞の表面上の標的抗原に結合することにより、CARクラスタリングが生じ、且つCAR含有細胞に活性化刺激が送達される。CARは、免疫エフェクター細胞の特異性をリダイレクトし、且つ増殖、サイトカイン産生、主要組織適合性(MHC)に依存せずに標的抗原を発現する細胞の死亡を媒介することができる分子の食作用及び/又は産生を誘発する。例えば、上記細胞外構造は、上記抗原結合タンパク質を含んでもよい。例えば、上記細胞外構造は、MSLNに特異的に結合することができる。
【0094】
本願において、「細胞内ドメイン」という用語は、活性化シグナルを形質導入するのに十分な任意の切断部分を含む細胞内ドメインを意味する。上記細胞内ドメインは、細胞内シグナル領域及び/又は共刺激シグナル領域を含んでもよい。「細胞内シグナル領域」という用語は、CAR含有細胞(例えば、CART細胞又はCAR発現NK細胞)の免疫エフェクター機能を促進するシグナルを産生することができる細胞内領域を指す。例えば、上記細胞内シグナル領域は、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD79a、CD79b、FcεRIγ、FcεRIβ、FcγRIIa、ウシ白血病ウイルスgp30、Epstein-Barrウイルス(EBV)LMP2A、サル免疫不全ウイルスPBj14 Nef、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(HSKV)、DAP10、DAP-12、及び少なくとも1つのITAMを含むドメインからなる群より選ばれる1つ又は複数のタンパク質の細胞内シグナル領域を含んでもよい。例えば、上記細胞内シグナル領域は、CD3ζに由来するシグナル伝達ドメインであってもよい。「共刺激シグナル領域」という用語は、上記細胞内シグナル領域内の、エフェクターシグナルを形質導入することができるCARの一部を指す。例えば、上記共刺激シグナル領域は、CD28、4-1BB、CD27、CD2、CD7、CD8、OX40、CD226、DR3、SLAM、CDS、ICAM-1、NKG2D、NKG2C、B7-H3、2B4、FcεRIγ、BTLA、GITR、HVEM、DAP10、DAP12、CD30、CD40、CD40L、TIM1、PD-1、LFA-1、LIGHT、JAML、CD244、CD100、ICOS、CD83のリガンド、CD40、及びMyD88からなる群より選ばれる1つ又は複数のタンパク質に由来する細胞内共刺激シグナル領域を含んでもよい。例えば、上記共刺激シグナル領域は、4-1BBに由来する細胞内共刺激シグナル領域であってもよい。
【0095】
本願において、「膜貫通領域」という用語は、細胞質膜を横断することができることができるペプチド、ポリペプチド又はタンパク質のドメインを指す。これらのドメインを用いて、細胞外ドメインを細胞膜にアンカーすることができる。例えば、上記膜貫通領域は、CD8、CD28、4-1BB、CD4、CD27、CD7、PD-1、TRAC、TRBC、CD3ε、CD3ζ、CTLA-4、LAG-3、CD5、ICOS、OX40、NKG2D、2B4、CD244、FcεRIγ、BTLA、CD30、GITR、HVEM、DAP10、CD2、NKG2C、LIGHT、DAP12、CD40L、TIM1、CD226、DR3、CD45、CD80、CD86、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD134、CD137、CD154、及びSLAMからなる群より選ばれる1つ又は複数のタンパク質の膜貫通ドメインを含んでもよい。例えば、上記膜貫通領域はCD8の膜貫通領域に由来し得る。
【0096】
本願において、「ヒンジ領域」という用語は、抗体重鎖ポリペプチドにおいて、CH1ドメインとCH2ドメインを連結する一部、例えば、KabatによるEU番号付けシステムの約216位~約230位を表す。ヒンジ領域は通常、同じアミノ酸配列を有する2本のポリペプチドからなる二量体分子である。ヒンジ領域は、一般に、約25個のアミノ酸残基を含み、フレキシブルであり、抗原結合領域の独立した移動を可能にする。ヒンジ領域は、上部、中間、下部ヒンジドメインという3つのドメインに細かく分けられてもよい。例えば、上記ヒンジ領域は、CD28、IgG1、IgG4、IgD、4-1BB、CD4、CD27、CD7、CD8、PD-1、ICOS、OX40、NKG2D、NKG2C、FcεRIγ、BTLA、GITR、DAP10、CD40L、TIM1、CD226、SLAM、CD30、及びLIGHTからなる群より選ばれる1つ又は複数のタンパク質に由来するヒンジ領域を含んでもよい。例えば、上記ヒンジ領域はCD8のヒンジ領域に由来し得る。
【0097】
本願において、「低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質(Low-density lipoproteinreceptor-related protein)」という用語は、エンドサイトーシス受容体に属する細胞表面タンパク質を指し、生体内に広く分布し、且つ非常に大きな組織間の差異性を有し、主な機能は細胞増殖並びにステロイドホルモン及び胆汁酸塩の合成のために、コレステロールを細胞内に摂取することである。例えば、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質は、任意の脊椎動物に由来してもよい。例えば、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、上記細胞内シグナル領域のC末端に位置してもよい。例えば、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12及びそれらの機能的断片からなる群より選ばれる1つ又は複数を含んでもよい。例えば、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6又はその断片であってもよい。
【0098】
本願において、「シグナルペプチド」という用語は、翻訳時又は翻訳後に新生タンパク質を小胞体に誘導し、続いて表面発現する、新生CARタンパク質のアミノ末端(N-末端)にあるリーダー配列を指す。例えば、上記シグナルペプチドは、CD8タンパク質のシグナルペプチドに由来する。
【0099】
本願において、「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書では互換可能であり、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1つ又は複数のアミノ酸残基がその対応する天然アミノ酸の人工合成化学模倣物であるアミノ酸ポリマーを指すために使用されてもよく、天然アミノ酸ポリマー、修飾残基を含むそれらのアミノ酸ポリマー、及び非天然アミノ酸ポリマーを指すために使用されてもよい。例えば、上記ポリペプチドは、上記抗原結合タンパク質を含んでもよい。
【0100】
本願において、「核酸分子」という用語は、DNA分子及びRNA分子を含む。1つの核酸分子は、一本鎖又は二本鎖であってもよいが、好ましくは二本鎖DNAである。「プロモーター」という用語は、一般に、プロモーターに操作的に連結された選択されたDNA配列の発現を調節し、それによって細胞中の選択されたDNA配列の発現に影響を及ぼすことができる1つのDNA配列を指す。例えば、上記核酸分子は、上記抗原結合タンパク質及び/又は上記キメラ抗原受容体を含むものをコードすることができる。例えば、上記核酸分子は、プロモーターを含んでもよい。例えば、上記プロモーターは、構成的プロモーターであってもよい。例えば、上記プロモーターは、EF1αプロモーターであってもよい。
【0101】
本願において、「ベクター」という用語は、一般に、本願の1つ又は複数の核酸分子に付着することができる分子を指す。例えば、上記ベクターは、ウイルスベクターであってもよい。例えば、上記ベクターは、レンチウイルスベクターであってもよい。
【0102】
本願において、「細胞」という用語は、核酸がトランスフェクトされ得る細胞を指し、「細胞」という用語は、プラスミド増殖のための原核細胞、並びに核酸発現及びポリペプチド産生のコーディングのための真核細胞を含む。例えば、細胞は、上記抗原結合タンパク質、上記核酸分子、及び/又は上記ベクターを含んでもよい。例えば、上記細胞は、免疫エフェクター細胞であってもよい。本願において、「免疫エフェクター細胞」という用語は、一般に、免疫応答に関与し、エフェクター機能を果たす免疫細胞を指す。例えば、上記エフェクター機能を果たすことは、異物抗原の除去又は免疫エフェクター応答の促進などを含んでもよい。例えば、免疫エフェクター細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、マクロファージ、NKT細胞、単核細胞、樹状細胞、顆粒球、リンパ球、白血球、末梢血単核細胞、胚性幹細胞、リンパ球前駆細胞、及び/又は多能性幹細胞を含んでもよい。例えば、免疫エフェクター細胞は、T細胞であってもよい。
【0103】
本願において、「医薬組成物」という用語は、一般に、哺乳動物個体への投与に適した化学的又は生物学的組成物を指す。例えば、上記医薬組成物は、上記抗原結合タンパク質、上記キメラ抗原受容体、上記ポリペプチド、上記核酸分子、上記ベクター、及び/又は上記細胞、並びに任意選択的に薬学的に許容されるベクターを含んでもよい。上記医薬組成物は、MSLNの異常発現に関連する疾患又は病状を予防、治療及び/又は緩和するために用いられ得る。例えば、上記MSLNの異常発現に関連する疾患又は病状は、腫瘍を含んでもよい。例えば、上記腫瘍は、固形腫瘍及び/又は非固形腫瘍を含んでもよい。
【0104】
本願において、「特異的に結合する」又は「特異的」という用語は、一般に、標的と抗体との間の結合などの測定可能且つ再現可能な相互作用を指し、分子(生体分子を含む)の不均一集団の存在下で標的の存在を決定することができる。例えば、標的(エピトープであってもよい)に特異的に結合する抗体は、他の標的に結合するよりも高い親和性、親和力、より容易、及び/又はより長い持続時間で当該標的に結合する抗体であってもよい。幾つかの実施形態において、抗体は、タンパク質上のエピトープに特異的に結合し、上記エピトープは異なる種のタンパク質において保存されている。幾つかの実施形態において、特異的な結合は、排他的な結合を含んでもよいが、これを必要とされない。
【0105】
本願において、「対象」という用語は、一般に、ヒト又は非ヒト動物を指し、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウサギ、マウス、ラット又はサルを含むが、これらに限定されない。
【0106】
本願において、かかるタンパク質、ポリペプチド及び/又はアミノ酸配列はまた、少なくとも、上記タンパク質又はポリペプチドと同じ又は類似の機能を有する変異体又はホモログを含むと理解されるべきである。
【0107】
本願において、上記変異体は、例えば、上記タンパク質及び/又は上記ポリペプチド(例えば、MSLNに特異的に結合する)のアミノ酸配列において、1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失又は付加されたタンパク質又はポリペプチドであってもよい。例えば、上記機能的変異体は、既に少なくとも1個、例えば1~30個、1~20個若しくは1~10個、また例えば1個、2個、3個、4個若しくは5個のアミノ酸の置換、欠失及び/又は挿入によってアミノ酸改変を有するタンパク質又はポリペプチドを含んでもよい。上記機能的変異体は、改変(例えば、置換、欠失又は付加)前の上記タンパク質又は上記ポリペプチドの生物学的特性を基本的に保持することができる。例えば、上記機能的変異体は、改変前の上記タンパク質又は上記ポリペプチドの少なくとも60%、70%、80%、90%、又は100%の生物学的活性(例えば、抗原結合能)を保持することができる。例えば、上記置換は、保存的置換であってもよい。
【0108】
本願において、上記ホモログは、上記タンパク質及び/又は上記ポリペプチド(例えば、MSLNに特異的に結合する)のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、少なくとも約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又はそれ以上)の配列相同性を有するタンパク質又はポリペプチドであってもよい。
【0109】
本願において、上記相同性は、一般に、2つ以上の配列の間の類似性、類似又は関連を指す。以下の方法により、「配列相同性パーセント」を計算することができる:2つのアラインメントされる配列を比較ウィンドウで比較し、2つの配列中に同じ核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)又は同じアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、及びMet)が存在する位置の数を決定して、一致する位置の数を得、一致する位置の数を比較ウィンドウ中の全位置の数(即ち、ウィンドウのサイズ)で割り、且つ結果に100を掛けて、配列相同性パーセントを生成する。配列相同性パーセントを決定するためのアラインメントは、当技術分野で既知の種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより実現することができる。当業者は、比較されている全長配列の範囲内又は標的配列の領域内での最大のアラインメントを実現するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントのための適切なパラメータを決定することができる。上記相同性は、FASTA及びBLASTの方法によって測定することもできる。FASTAアルゴリズムについての説明は、W.R.PearsonとD.J.Lipmanの「生物学的配列比較のための改良されたツール」,米国科学院院刊(Proc.Natl.Acad.Sci.),85:2444-2448,1988、及びD.J.LipmanとW.R.Pearsonの「迅速で高感度なタンパク質類似性検索」,Science,227:1435-1441,1989を参照することができる。BLASTアルゴリズムについての説明は、S.Altschul、W.Gish、W.Miller、E.W.Myers及びD.Lipmanの「基本的な局所的アラインメント(alignment)検索ツール」,分子生物学雑誌,215:403-410,1990を参照することができる。
【0110】
本願において、「含む」という用語は、一般に、包含すること、まとめること、含有すること又はカバーすることの意味を指す。幾つかの場合において、「である」、「……からなる」の意味も表す。
【0111】
本願において、「約」という用語は、一般に、指定値の0.5%~10%以上又は以下の範囲内の変化、例えば、指定値の0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、又は10%以上又は以下の範囲内の変化を指す。
【発明の詳細な説明】
【0112】
単離された抗原結合タンパク質
本願において、上記抗原結合タンパク質は、抗体又はその抗原結合断片を含んでもよい。本願において、上記抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab)、Fv断片、F(ab’)、scFv、di-scFv、VHH及び/又はdAbを含んでもよい。本願において、上記抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、及び完全ヒト抗体を含んでもよい。
【0113】
CDR
抗体のCDRは、相補性決定領域とも呼ばれ、可変領域の一部である。当該領域のアミノ酸残基は、抗原又は抗原エピトープと接触することができる。抗体CDRは、例えば、CCG、Kabat、Chothia、IMGT、AbM、総合的に考察すればKabat/Chothiaなどの様々な番号付けシステムによって決定することができる。これらの番号付けシステムは、当該技術分野において既知であり、具体的には、例えば、http://www.bioinf.org.uk/abs/index.html#kabatnumを参照することができる。当業者は、抗体の配列及び構造に応じて、異なる番号付けシステムを用いてCDR領域を決定することができる。異なる番号付けシステムを用いると、CDR領域に違いが生じる可能性がある。本願において、上記CDRは、任意のCDR分割方式に従って分割されたCDR配列をカバーし、またその変異体もカバーし、上記変異体は、上記CDRのアミノ酸配列の1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加を含む。例えば、1~30個、1~20個又は1~10個、更に例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個又は9個のアミノ酸の置換、欠失及び/又は挿入であり、またそのホモログもカバーし、上記ホモログは、上記CDRのアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、少なくとも約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又はそれ以上)の配列相同性を有するアミノ酸配列であってもよい。本願において、上記単離された抗原結合タンパク質は、Kabat番号付けシステムによって定義される。
【0114】
本願において、上記単離された抗原結合タンパク質は、抗体重鎖可変領域VH中の少なくとも1つのCDRを含んでもよく、例えば、上記VHは、配列番号8、配列番号13、配列番号69、及び配列番号70の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0115】
本願において、上記抗原結合タンパク質はHCDR3を含んでもよく、且つ上記HCDR3は、配列番号1、配列番号9、配列番号65、及び配列番号66の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0116】
例えば、上記HCDR3は、配列番号1、配列番号9、配列番号14、配列番号19、配列番号24、配列番号29、及び配列番号34の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0117】
本願において、上記単離された抗原結合タンパク質は、HCDR2を含んでもよく、且つ上記HCDR2は、配列番号67に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、上記HCDR2は、配列番号2、配列番号10、配列番号15、配列番号20、配列番号25、配列番号30、及び配列番号35の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0118】
本願において、上記単離された抗原結合タンパク質は、HCDR1を含んでもよく、且つ上記HCDR1は、配列番号68(XMG、そのうち、XはN、R、S、T又はYであり、XはN又はYであり、XはA、N又はVである)に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、上記HCDR1は、配列番号3、配列番号11、配列番号16、配列番号21、配列番号26、配列番号31、及び配列番号36の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0119】
本願において、上記単離された抗原結合タンパク質はHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含んでもよく、上記HCDR1は、配列番号68(XMG、そのうち、XはN、R、S、T又はYであり、XはN又はYであり、XはA、N又はVである)に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、上記HCDR2は、配列番号67に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、且つ上記HCDR3は、配列番号1、配列番号9、配列番号65、及び配列番号66の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0120】
本願において、上記単離された抗原結合タンパク質は、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含んでもよく、且つ上記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、
(1)上記HCDR1は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、
(2)上記HCDR1は、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、
(3)上記HCDR1は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含み、
(4)上記HCDR1は、配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含み、
(5)上記HCDR1は、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号24に示されるアミノ酸配列を含み、
(6)上記HCDR1は、配列番号31に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号30に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号29に示されるアミノ酸配列を含み、及び
(7)上記HCDR1は、配列番号36に示されるアミノ酸配列を含み、上記HCDR2は、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含み、且つ上記HCDR3は、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含み、
からなる群のアミノ酸配列の何れか1つを含んでもよい。
【0121】
FR
本願において、抗体フレームワーク領域FRは、抗体可変領域中の、より分岐性の高い(即ち、超可変)CDRの間に存在する部分を指す。そのようなフレームワーク領域は、典型的にフレームワーク1~4(FR1、FR2、FR3、及びFR4)と呼ばれ、且つ抗原結合表面を形成するために、3次元空間において6つのCDR(重鎖から3つ、且つ軽鎖から3つ)を提示するための骨格を提供する。
【0122】
本願において、上記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR1を含んでもよく、上記H-FR1は、配列番号4、配列番号12、配列番号17、配列番号22、配列番号27、配列番号32、及び配列番号37の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0123】
本願において、上記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR2を含んでもよく、上記H-FR2は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0124】
本願において、上記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR3を含んでもよく、上記H-FR3は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0125】
本願において、上記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR4を含んでもよく、上記H-FR4は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0126】
本願において、上記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR1、H-FR2、H-FR3及びH-FR4を含んでもよく、上記H-FR1は、配列番号4、配列番号12、配列番号17、配列番号22、配列番号27、配列番号32、及び配列番号37の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよく、上記H-FR2は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、上記H-FR3は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、且つ上記H-FR4は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0127】
VH/VHH
本願において、上記単離された抗原結合タンパク質は抗体重鎖可変領域VHを含んでもよく、且つ上記VHは、配列番号8、配列番号13、配列番号69、及び配列番号70の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、上記VHは、配列番号8、配列番号13、配列番号18、配列番号23、配列番号28、配列番号33、及び配列番号38の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0128】
本願において、上記抗原結合断片はVHHであってもよく、且つ上記VHHは、配列番号8、配列番号13、配列番号69、及び配列番号70の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、上記VHHは、配列番号8、配列番号13、配列番号18、配列番号23、配列番号28、配列番号33、及び配列番号38の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0129】
重鎖定常領域
本願において、上記単離された抗原結合タンパク質は、重鎖定常領域を含んでもよい。上記重鎖定常領域は、少なくともCH1、CH2、及びCH3という3つの重鎖定常ドメインを含む領域を指す。非限定的な例示的な重鎖定常領域は、γ、δ、及びαを含む。非限定的な例示的な重鎖定常領域は、εとμを更に含む。各重鎖定常領域は、1つの抗体アイソタイプに対応する。例えば、γ定常領域を含む抗体はIgG抗体であり、δ定常領域を含む抗体はIgD抗体であり、α定常領域を含む抗体はIgA抗体である。更に、μ定常領域を含む抗体はIgM抗体であり、ε定常領域を含む抗体はIgE抗体である。幾つかのアイソタイプは、更にサブクラスに細かく分けられてもよい。例えば、IgG抗体は、IgG1(γ定常領域を含む)、IgG2(γ定常領域を含む)、IgG3(γ定常領域を含む)、及びIgG4(γ定常領域を含む)抗体を含むが、これらに限定されなく、IgA抗体は、IgA1(α定常領域を含む)とIgA2(α定常領域を含む)抗体を含むが、これらに限定されなく、IgMは、IgM1とIgM2を含むが、これらに限定されない。
【0130】
本願において、上記単離された抗原結合タンパク質は、抗体重鎖定常領域を含んでもよく、上記抗体重鎖定常領域はIgGに由来し得る。本願において、上記単離された抗原結合タンパク質は、抗体重鎖定常領域を含んでもよく、上記抗体重鎖定常領域はヒトIgGに由来し得る。本願において、上記単離された抗原結合タンパク質は、抗体重鎖定常領域を含んでもよく、上記抗体重鎖定常領域はヒトIgG1に由来し得る。本願において、上記抗原結合タンパク質の重鎖定常領域は、IgGのFc領域を含んでもよい。例えば、上記Fc領域は、配列番号54に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0131】
キメラ抗原受容体
別の態様では、本願は、キメラ抗原受容体(CAR)を更に提供し、上記キメラ抗原受容体(CAR)は、MSLNタンパク質に結合する標的部分を含んでもよく、例えば、MSLNタンパク質に結合する標的部分は、本願に記載の抗原結合タンパク質であってもよい。
【0132】
例えば、本願のCARはVHHを含んでもよく、上記VHHは、配列番号8、配列番号13、配列番号18、配列番号23、配列番号28、配列番号33、及び配列番号38の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0133】
本願において、上記CARは、MSLNタンパク質に結合する細胞外の標的部分を含むだけでなく、細胞内ドメインを含んでもよい。
【0134】
本願において、上記CARは、刺激シグナルを提供することができる細胞内の共刺激シグナル領域を含んでもよい。例えば、上記共刺激シグナル領域は、CD28、4-1BB、CD27、CD2、CD7、CD8、OX40、CD226、DR3、SLAM、CDS、ICAM-1、NKG2D、NKG2C、B7-H3、2B4、FcεRIγ、BTLA、GITR、HVEM、DAP10、DAP12、CD30、CD40、CD40L、TIM1、PD-1、LFA-1、LIGHT、JAML、CD244、CD100、ICOS、CD83のリガンド、CD40、及びMyD88からなる群より選ばれる1つ又は複数のタンパク質の細胞内共刺激シグナル領域を含んでもよい。
【0135】
例えば、上記共刺激シグナル領域は、4-1BBに由来する細胞内共刺激シグナル領域であってもよい。例えば、上記共刺激シグナル領域は、配列番号39に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0136】
幾つかの場合において、上記CARは、少なくとも1つのITAMモチーフを有するドメインを含み得る細胞内シグナル領域を含んでもよい。上記細胞内シグナル伝達ドメインは、活性化シグナルを細胞の内部に伝達することができる。例えば、上記細胞内シグナル領域は、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD79a、CD79b、FcεRIγ、FcεRIβ、FcγRIIa、ウシ白血病ウイルスgp30、Epstein-Barrウイルス(EBV)LMP2A、サル免疫不全ウイルスPBj14 Nef、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(HSKV)、DAP10、DAP-12、及び少なくとも1つのITAMを含む他のドメインからなる群より選ばれる1つ又は複数のタンパク質に由来する細胞内シグナル領域を含んでもよい。
【0137】
例えば、上記細胞内シグナル領域は、CD3ζに由来するシグナル伝達ドメインであってもよい。例えば、上記細胞内シグナル領域は、配列番号41に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0138】
幾つかの場合において、上記CARは、膜貫通ドメインを含んでもよく、上記膜貫通ドメインは、疎水性alphaヘリックスを含んでもよい、細胞表面タンパク質中の細胞膜を跨がる1つの断片の配列である。上記膜貫通ドメインは、任意のI型膜貫通タンパク質に由来し得る。膜貫通ドメインは、疎水性ヘリックスを形成すると予測される合成配列であってもよい。例えば、上記膜貫通領域は、CD8、CD28、4-1BB、CD4、CD27、CD7、PD-1、TRAC、TRBC、CD3ε、CD3ζ、CTLA-4、LAG-3、CD5、ICOS、OX40、NKG2D、2B4、CD244、FcεRIγ、BTLA、CD30、GITR、HVEM、DAP10、CD2、NKG2C、LIGHT、DAP12、CD40L、TIM1、CD226、DR3、CD45、CD80、CD86、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD134、CD137、CD154、及びSLAMからなる群より選ばれる1つ又は複数のタンパク質に由来する膜貫通ドメインを含んでもよい。
【0139】
例えば、上記膜貫通領域は、CD8に由来する膜貫通領域であってもよい。例えば、上記膜貫通領域は、配列番号40に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0140】
幾つかの場合において、上記CARは、ヒンジ領域を含んでもよく、上記ヒンジ領域は、上記細胞外の標的部分と上記膜貫通ドメインとの間に位置することができる。例えば、上記ヒンジ領域は、CD28、IgG1、IgG4、IgD、4-1BB、CD4、CD27、CD7、CD8、PD-1、ICOS、OX40、NKG2D、NKG2C、FcεRIγ、BTLA、GITR、DAP10、CD40L、TIM1、CD226、SLAM、CD30、及びLIGHTからなる群より選ばれる1つ又は複数のタンパク質のヒンジ領域を含んでもよい。
【0141】
例えば、上記ヒンジ領域は、CD8に由来するヒンジ領域であってもよい。例えば、上記ヒンジ領域は、配列番号42に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0142】
本願において、上記CARは、上記MSLNタンパク質に結合する標的部分のN末端にシグナルペプチドを更に含んでもよい。例えば、上記シグナルペプチドは、CD8タンパク質に由来するシグナルペプチドであってもよい。例えば、上記シグナルペプチドは、配列番号43に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0143】
本願において、上記CARは、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片を更に含んでもよい。例えば、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、上記CARのC末端に位置してもよい。例えば、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12及びそれらの機能的断片を含んでもよい。例えば、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5及び/又は6或いはその断片であってもよい。例えば、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、配列番号44に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片をコードする核酸分子は、配列番号45に示されるヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0144】
本願において、上記CAR中の上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片の配列は、自己切断ペプチド(例えば、T2A、P2A、E2Aなどの2Aペプチド)を介して、CARのC末端配列に連結され得る。例えば、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、T2Aを介して細胞内シグナル領域のC末端に連結され得る。例えば、上記切断ペプチドは、配列番号46に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0145】
本願において、N末端からC末端まで、上記CARは順に、MSLNタンパク質に結合する標的部分(例えば、上記抗原結合タンパク質、また例えば、本願に記載のVHH)、上記ヒンジ領域、上記膜貫通ドメイン、上記共刺激シグナル領域、及び上記細胞内シグナル領域を含んでもよい。例えば、N末端からC末端まで、上記CARは順に、上記VHH、CD8に由来するヒンジ領域、CD8に由来する膜貫通領域、4-1BBに由来する共刺激シグナル領域、及びCD3ζに由来する細胞内シグナル領域を含んでもよく、且つ上記VHHは、配列番号8、配列番号13、配列番号18、配列番号23、配列番号28、配列番号33、及び配列番号38の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0146】
本願において、N末端からC末端まで、上記CARは順に、MSLNタンパク質に結合する標的部分(例えば、上記抗原結合タンパク質、また例えば、本願に記載のVHH)、上記ヒンジ領域、上記膜貫通ドメイン、上記共刺激シグナル領域、上記細胞内シグナル領域、及び上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片を含んでもよい。例えば、N末端からC末端まで、上記CARは順に、上記VHH、CD8に由来するヒンジ領域、CD8に由来する膜貫通領域、4-1BBに由来する共刺激シグナル領域、CD3ζに由来する細胞内シグナル領域、及び配列番号44に示されるアミノ酸配列を含む低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片を含んでもよく、且つ上記VHHは、配列番号8、配列番号13、配列番号18、配列番号23、配列番号28、配列番号33、及び配列番号38の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0147】
本願において、N末端からC末端まで、上記CARは順に、シグナルペプチド、MSLNタンパク質に結合する標的部分(例えば、上記抗原結合タンパク質、また例えば、本願に記載のVHH)、上記ヒンジ領域、上記膜貫通ドメイン、上記共刺激シグナル領域、及び上記細胞内シグナル領域を含んでもよい。
【0148】
本願において、N末端からC末端まで、上記CARは順に、シグナルペプチド、MSLNタンパク質に結合する標的部分(例えば、上記抗原結合タンパク質、また例えば、本願に記載のVHH)、上記ヒンジ領域、上記膜貫通ドメイン、上記共刺激シグナル領域、上記細胞内シグナル領域、及び上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片を含んでもよい。
【0149】
例えば、上記キメラ抗原受容体は、配列番号47に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、上記キメラ抗原受容体は、配列番号48に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、上記キメラ抗原受容体は、配列番号49に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、上記キメラ抗原受容体は、配列番号50に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、上記キメラ抗原受容体は、配列番号51に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、上記キメラ抗原受容体は、配列番号52に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、上記キメラ抗原受容体は、配列番号53に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0150】
核酸分子
別の態様では、本願は、1つ又は複数の核酸分子を更に提供し、上記核酸分子は、任意の長さの単離形態のヌクレオチド、デオキシヌクレオチド及び/リボヌクレオチドであってもよく、上記単離された抗原結合タンパク質及び/又は上記キメラ抗原受容体をコードすることができる。
【0151】
例えば、上記核酸分子は、プロモーターを含んでもよい。例えば、上記プロモーターは、構成的プロモーターであってもよい。例えば、上記プロモーターは、EF1αプロモーターであってもよい。
【0152】
別の態様では、本願は、1つ又は複数の核酸分子を更に提供し、上記核酸分子は、細胞において上記キメラ抗原受容体及び上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片を発現することができる配列を含む。本願において、上記キメラ抗原タンパク質をコードする核酸配列は、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片をコードする核酸配列と、切断ペプチドを介して連結することができる。
【0153】
ベクター
別の態様では、本願は、上記核酸分子を含んでもよいベクターを更に提供する。上記ベクターは、その保有する遺伝物質要素を宿主細胞内で発現させるように、宿主細胞を形質転換、形質導入、又はトランスフェクトすることができる。例えば、ベクターは、プロモーター、転写物、エンハンサー、レプリコン、選択要素、及びレポーター遺伝子を含んでもよい。例えば、ベクターは、細胞への進入を補助する成分を含んでもよい。上記核酸分子をベクター中で複製させるために、上記核酸分子の5’末端及び3’末端は、長い末端反復配列を更に含んでもよい。
【0154】
例えば、上記ベクターは、ウイルスベクターであってもよい。例えば、上記ベクターは、レンチウイルスベクターであってもよい。
【0155】
細胞
別の態様では、本願は、細胞を更に提供し、上記細胞は、上記単離された抗原結合タンパク質、上記キメラ抗原受容体、上記核酸分子及び/又は上記ベクターを含んでもよい。上記細胞は、単一の細胞の子孫を含んでもよい。天然の、偶然の、又は意図的な突然変異のために、子孫は、(全DNA相補体の形態又はゲノムで)必ずしも元の母細胞と完全に同じであるとは限らない。
【0156】
幾つかの実施形態において、上記細胞は、免疫エフェクター細胞であってもよい。幾つかの実施形態において、上記細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、マクロファージ、NKT細胞、単核細胞、樹状細胞、顆粒球、リンパ球、白血球、末梢血単核細胞、胚性幹細胞、リンパ球前駆細胞、及び/又は多能性幹細胞を含んでもよい。例えば、
幾つかの実施形態において、上記細胞は、T細胞であってもよい。
【0157】
本願において、上記細胞は、上記CARを含んでもよく、及び/又は発現してもよい。本願において、上記細胞は、上記CAR及び上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質若しくはその断片を含んでもよく、及び/又は発現してもよい。
【0158】
医薬組成物
別の態様では、本願は、上記単離された抗原結合タンパク質、上記キメラ抗原受容体、上記核酸分子、上記ベクター及び/又は上記細胞、並びに任意選択的に薬学的に許容されるアジュバントを含んでもよい医薬組成物を更に提供する。
【0159】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、1つ又は複数の(薬学的に有効な)キャリア剤、安定剤、賦形剤、希釈剤、可溶化剤、界面活性剤、乳化剤、及び/又は防腐剤の適切な製剤を更に含んでもよい。組成物の許容される成分は、好ましくは、使用される用量及び濃度下で受容者に対して毒性がない。本発明の医薬組成物は、液体、凍結及び凍結乾燥組成物を含んでもよい。
【0160】
幾つかの実施形態において、上記薬学的に許容されるアジュバントは、医薬投与に適合性があり、一般に安全で、非毒性であり、生物学的にも他の点でも望ましくないものではない、任意の及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、等張化剤、及び吸収遅延剤を含んでもよい。
【0161】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、非経口、経皮、腔内、動脈内、髄腔内及び/又は鼻内投与、或いは組織への直接注射を含んでもよい。例えば、上記医薬組成物は、注入又は注射によって患者又は対象に投与され得る。幾つかの実施形態において、上記医薬組成物の投与は、異なる手段、例えば静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所又は真皮内投与によって行うことができる。
【0162】
製造方法
別の態様では、本願は、上記単離された抗原結合タンパク質及び/又は上記キメラ抗原受容体を製造する方法を更に提供する。上記方法は、上記抗原受容体及び/又は上記キメラ抗原受容体を発現させる条件下で、上記細胞を培養することを含んでもよい。
【0163】
本願は、修飾された免疫エフェクター細胞を製造する方法を更に提供し、上記方法は、免疫細胞中に上記ベクターを導入することを含んでもよい。
【0164】
使用
別の態様では、本願は、薬物の製造における、上記単離された抗原結合タンパク質、上記キメラ抗原受容体、上記核酸分子、上記ベクター、上記細胞、及び/又は上記医薬組成物の使用を更に提供し、上記薬物は、疾患及び/又は病状を予防、緩和及び/又は治療するために用いられる。
【0165】
別の態様では、本願は、疾患及び/又は病状を予防、緩和及び/又は治療する方法を更に提供し、上記方法は、対象に、上記単離された抗原結合タンパク質、上記キメラ抗原受容体、上記核酸分子、上記ベクター、上記細胞、及び/又は上記医薬組成物を投与することを含んでもよい。
【0166】
別の態様では、本願は、疾患及び/又は病状を予防、緩和及び/又は治療するための、上記単離された抗原結合タンパク質、上記キメラ抗原受容体、上記核酸分子、上記ベクター、上記細胞、及び/又は上記医薬組成物を更に提供する。
【0167】
本願において、上記疾患及び/又は病状は、MSLNの異常発現に関連する疾患及び/又は病状を含んでもよい。
【0168】
本願において、上記疾患及び/又は病状は、腫瘍を含んでもよい。
【0169】
本願において、上記腫瘍は、固形腫瘍及び/又は非固形腫瘍を含んでもよい。
【0170】
本願において、上記腫瘍は、血液腫瘍及び/又はリンパ腫を含んでもよい。
【0171】
本願において、上記腫瘍は、MSLN抗原を発現する腫瘍を含んでもよい。
【0172】
本願において、上記腫瘍は、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、中皮細胞癌、胆管癌、トリプルネガティブ乳癌、及び/又は子宮内膜癌を含んでもよい。
【0173】
本願において、上記対象は、ヒト又は非ヒト動物を含んでもよい。
【0174】
別の態様では、本願は、上記単離された抗原結合タンパク質を含むポリペプチドを提供する。
【0175】
別の態様では、本願は、上記単離された抗原結合タンパク質、上記キメラ抗原受容体、上記核酸分子、上記ベクター、上記細胞、及び/又は上記医薬組成物を含む試薬キット又は投与装置を提供する。
【0176】
いかなる理論によっても限定されることを意図するものではなく、以下の実施例は、本願の発明の各技術案を例示するためのものに過ぎず、本願の発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0177】
実施例1 MSLN-Hisを標的とするナノボディのスクリーニング
1.1 MSLN-Hisを標的とするパンニング
全長のMSLN、及びそれぞれMSLN-D1(AA296-390)、MSLN-D2(AA391-486)、及びMSLN-D3(487-598)であるその3つのdomainを構築及び発現し、IgG-Fc及びMSLN-Hisタンパク質10μg/mLでプレートをコーティングし、4℃で一晩放置した。1日おきに1×PBST(PBS中に0.05%のTween20を含有する)で3回洗浄した後、0.5%のBSAで室温で2時間ブロッキングし、1×PBSTで3回洗浄し、IgG1-Fcウェルに100μLのファージライブラリー(社内の人工合成ナノボディライブラリーNanoOri_1.0)を加えてネガティブセレクションを行い、1時間後にIgG1-Fc中のファージをMSLN-Hisのウェルに移してポジティブセレクションを行い、1.5時間後に1×PBSTで10回洗浄して抗原に結合しないファージを洗い流し、最後にpH=2.2のGlycine-HClで溶離し、100μL/wellであり、次にpH=8.0のTris-HClで中和し、溶離されたファージの半分を取って対数増殖期にあるTG1に感染させ、半時間後にM13KO7に重感染させ、一晩培養した。1日おきに、次のラウンドのスクリーニングのためにファージを沈殿させた。類似のスクリーニング過程を4回繰り返し、第2ラウンドのポジティブセレクションの後、1×PBSTで20回洗浄し、第3ラウンドで30回洗浄し、第4ラウンドで40回洗浄した。
【0178】
1.2 Pool ELISA
1日前に、2μg/mLのMSLN-His、IgG1-Fc及び0.5%のBSAで96ウェルプレートをコーティングし、一晩静置した。1日おきに1×PBSTで3回洗浄した後、0.5%のBSAで2時間ブロッキングした。ブロッキング終了後、1×PBSTで3回洗浄し、30μLの各ラウンドのファージライブラリーを加え、室温で1時間振とうしてインキュベートし、1×PBSTで3回洗浄した後、二次抗体Anti-M13-HRP(Sino Biological、製品番号:11973-MM05T-H)とAnti-Flag-HRP(abcam、製品番号:ab1162)を加え、室温で30~60分間インキュベートし、1×PBSTで7回洗浄した後にTMB発色液を加え、3~5分後に2Mのリン酸を加えて反応を停止させ、450nmの波長の吸収値を読み取った。
【0179】
結果を図1に示し、結果は、第2ラウンドから、MSLN-Hisを標的とする特異的抗体が濃縮され始めることを示すが、anti-Flag-HRP二次抗体の曲線は、第3ラウンドと第4ラウンドの濃縮がより明らかであることを示した。従って、第3ラウンドと第4ラウンドの菌液からそれぞれ96個の単一クローンを採取した。
【0180】
1.3 ファージ酵素結合免疫法(ELISA)による特異的陽性単一クローンの同定
4ラウンドのパンニングの後、第4ラウンドの予備のoutputを2YT/carbにプレーティングし、1日おきに192個の単一コロニーをランダムに採取して800μLの2YT/carb/M13KO7中に入れ、一晩振とうして培養し、ファージを産生した。1日前に、2μg/mLのMSLN-HisとIgG1-Fcで384ウェルプレートをコーティングし、一晩静置した。1日おきに1×PBSTで3回洗浄した後、0.5%のBSAで2時間ブロッキングし、同時に遠心分離してファージ上清を収集した。ブロッキング終了後、1×PBSTで3回洗浄し、30μLのファージ上清を加え、室温で1時間振とうしてインキュベートし、1×PBSTで3回洗浄した後、二次抗体Anti-M13-HRPを加え、室温で30~60分間インキュベートし、1×PBSTで7回洗浄した後にTMB発色液を加え、3~5分後に2Mのリン酸を加えて反応を停止させ、450nmの波長の吸収値を読み取った。サンプルウェルのOD値が対照ウェル(0.5%のBSA又はIgG1-Fc)よりも2倍以上大きい場合、陽性と判定した。最後に、陽性ファージをTG1に再感染させ、配列決定した。配列アラインメントソフトウェアBioEditに従って各クローンのアミノ酸配列を分析した。CDR1、CDR2、CDR3配列が同一のクローンを同一抗体株とみなした。
【0181】
結果を図2に示し、全部で192個の単一クローンを採取し、MSLN/Fc>5のウェルを陽性とみなし、その後全ての130個以上の陽性クローンを配列決定した。
【0182】
配列決定の結果を図3A~3Dに示し、配列決定の結果は、42本の特異的ナノボディ配列があることを示し、ファージELISAによる検証の後、21本の配列を保持し、全てVHH-Fc融合タンパク質の形態で発現して精製した後にELISAを行い、5%のMilkを非特異的結合の対照とし、P4は陽性クローン(P4のVHは配列番号58に示され、P4のVLは配列番号62に示される)であり、Caplacizumabは陰性対照である。結果は、MSLN1、MSLN2、MSLN3、MSLN10、MSLN11、MSLN16、MSLN18、MSLN27、MSLN36、MSLN39、MSLN41、MSLN42の合計12つの高特異性、高親和性結合MSLNは、EC50が陽性抗体P4と類似しており、MSLN5、MSLN6、MSLN7、MSLN14、MSLN29、MSLN35の合計6つの抗体の特異性は比較的悪く、4、15の特異性は非常に悪いが、30番は全く結合しないことを示した。
【0183】
実施例2 3つのMSLNドメインを標的とするナノボディの結合活性の同定
2.1 真核細胞におけるVHH-Fc融合タンパク質の発現及び精製
配列決定の結果から特異的な抗体配列を選択し、それをベクターpcDNA3.4にクローニングし、組換えプラスミドを大腸菌DH5α(天根生化科技有限公司、製品番号:CB101-02)に形質転換し、次に100μg/mLのアンピシリンを含む2YT固体培地に菌液を均一に塗布し、37℃で一晩静置した。1日おきに単一クローンを採取し、37℃でシェーカーで6時間程度培養し、半分の菌液を取って配列決定し、残りの半分を4℃で保存した。配列決定が正確なクローンを拡大培養し、プラスミドから抽出した。PEIトランスフェクションの方法を用いて発現プラスミドをEXPI293にトランスフェクトし、37℃の細胞インキュベーターで5日間発現させ、その後に細胞上清を収集し、ProteinAアフィニティークロマトグラフィーカラムにより抗体を精製した。最終的に純度が90%以上に達する抗体タンパク質を得た。
【0184】
2.2 酵素結合免疫吸着アッセイによるヒトMSLNタンパク質及びその3つのドメインに対するVHH-Fcの特異的結合の検出
2μg/mLのMSLN-His及び3つのMSLN-Domainタンパク質で高吸着96ウェルプレートをコーティングし、4℃で一晩静置し、1×PBSTで3回洗浄し、0.5%のBSAで室温で2時間ブロッキングし、1×PBSTで3回洗浄し、100nMのVHH-Fcを加え、室温で1時間振とうしてインキュベートし、1×PBSTで3回洗浄した後、二次抗体Anti-human IgG Fc Antibody HRP(abcam、製品番号:ab99759)を加え、室温で30~60分間インキュベートし、1×PBSTで7回洗浄した後にTMB発色液を加え、3~5分後に2Mのリン酸を加えて反応を停止させ、450nmの波長の吸収値を読み取った。
【0185】
2.3 フローサイトメトリーによるヒトMSLNトランスフェクト293T及びOVCAR3に対する二価VHH-Fcの結合活性の同定
OVCAR3及び293T-MSLN細胞を蘇生して継代し、実験当日に細胞を収穫し、計数した後に細胞密度を1×10/mLに調整し、1ウェル当たり30μL(3×10/well)であった。代表的なMSLNナノボディ及び陽性抗体P4、陰性抗体Caplacizumabを、100nMを最高濃度とし、3倍比、7つの勾配で、PBS対照を設置し、1ウェルあたり30μLで、均一に混合した後に4℃で1時間インキュベートした。0.1%のBSAを含むPBSで2回洗浄し、500g、5min、4℃で脱水した。蛍光二次抗体Goat pAb to Hu IgG[DyLight 650](abcam、製品番号:ab98593)を1:200で希釈して、1ウェル当たり30μLであり、均一に混合した後に4℃で30分間インキュベートした;0.1%のBSAを含むPBSで2回洗浄し、500g、5min、4℃で脱水し、30μL/wellで再懸濁し、ハイスループットフローサイトメトリー検出器(IQue)で値を読み取り、収集したデータをGraphpadを用いて3パラメーターフィッティング曲線を作成した。結果を図4に示し、図中、図示の数字はMSLN VHHに対応する配列番号を示す。結果は、MSLN1、MSLN2、MSLN3、MSLN4、MSLN5、MSLN6、MSLN10、MSLN11、MSLN16、MSLN18、MSLN27、MSLN36、MSLN39、MSLN41、MSLN42は、MSLNを高発現する卵巣癌細胞株OVCAR3及び過剰発現細胞株293-MSLNとのフローサイトメトリー結合活性が比較的高いことを示した。
【0186】
2.4 フローサイトメトリーによる組織細胞に対する二価VHH-Fcの非特異的結合の同定
293T、LO2、KERA、A549、HACAT、及びK562-MSLN細胞を蘇生して継代し、実験当日に細胞を収穫し、計数した後に細胞密度を1×10/mLに調整し、1ウェル当たり30μL(3×10/well)であった。代表的なMSLNナノボディ及び陽性抗体P4を、20μg/mLの濃度、1ウェル当たり30μLで、均一に混合した後に4℃で1時間インキュベートした。0.1%のBSAを含むPBSで2回洗浄し、500g、5min、4℃で脱水した。蛍光二次抗体Goat pAb to Hu IgG[DyLight 650](abcam、製品番号:ab98593)を1:200で希釈して、1ウェル当たり30μLであり、均一に混合した後に4℃で30分間インキュベートした;0.1%のBSAを含むPBSで2回洗浄し、500g、5min、4℃で脱水し、30μL/wellで再懸濁し、ハイスループットフローサイトメトリー検出器(IQue)で値を読み取った。結果を図5に示し、結果は、MSLN1、MSLN4、MSLN5、MSLN6、MSLN11、MSLN36、MSLN42番の配列は何れも293T、LO2、KERA、A549、HACAT細胞と非特異的結合活性を有することを示した。
【0187】
実施例3 CAR-Tレンチウイルスのパッケージの検出
3.1 レンチウイルスのパッケージング
本発明のレンチウイルスプラスミドベクターを構築するためのベクターシステムは、第三世代レンチウイルスベクターシステムに属し、当該システムは、Gag-Polタンパク質及びRevタンパク質をコードするパッケージングプラスミドpsPAX2と、エンベロープタンパク質VSV-GをコードするPMD2.Gプラスミドと、目的遺伝子CARをコードするコアプラスミドとの合計3つのプラスミドを含む。BBz/L6プラットフォームコアプラスミド中のCARをコードする遺伝子に基づいて、伸長因子-1α(EF-1α)プロモーターによって発現が調節された。ウイルスのパッケージング過程は、以下の通りである:1×10の293FT細胞を2mLのDMEM(10%のFBS)培地に懸濁し、6ウェルプレートにプレーティングし、細胞を十分に均一に分散させ、5%のCO、37℃で約24h培養した;プラスミド、試薬を室温に平衡した;100μLのOpti-MEM培地は、4.5μg(psPAX2:PMD2.G:コアプラスミド=3:2:4)及び13.5μL(プラスミド:FuGENEHD=1:3)のトランスフェクション試薬(Promega、製品番号:E2311)を含み、パッケージングプラスミドを十分に均一に混合し、その後トランスフェクション試薬をゆっくりと1滴ずつ加え、全てを加えた後、1つずつ軽く十分に均一に混合し、室温で15min静置した;元の400μLの培地DMEM(10%のFBS)を吸い取り、分割してリポソームカチオン複合体(100μLのOpti-MEM+PSH1+PMH2+コアプラスミド+FuGENEHD)を1滴ずつ加え、5%のCO、37℃で約17時間培養した;プラスミド含有培地(約200μL、One by one)を除去し、5%のFBS含有DMEM培地2.5mL(37℃で30min予熱する)に交換し、5%のCO、37℃で約24~26時間培養した;ウイルス上清を収集し、3000rpm、10minで、約720μLを凍結保存管に分注して-80℃で凍結保存し、更に適量を取ってレンチウイルス力価測定に用いた。
【0188】
3.2 レンチウイルス力価滴定
状態が良好な293T細胞を取り、1×PBSで洗浄し、1.5mLの0.25%のパンクレアチンで37℃で消化し、11mLの培地で停止させた。細胞系を2×10cells/well/2.5mLに調整した;細胞系培地に1:1000で10μg/mLのpolybreneを加え、十分に均一に混合した;12ウェルプレートの各ウェルに1mLの細胞懸濁液を加えた;分割して5μLの得られたウイルス原液を1滴ずつ加え、各ウェルに2.5mLを補足し、十分に均一に混合した;ウイルス細胞を含まない懸濁液をフローサイトメトリー検出のブランク対照と設置した;5%のCO、37℃で約42~48h培養した;上清を除去し、PBSで洗浄し、400μLの0.25%のパンクレアチン(gibco、製品番号:25200072)で、37℃で約1min消化し、2.5mLの完全培地で消化を停止させた;1mLのピペットで細胞が完全に分散するまで軽く吹き、1.5mLのEPチューブに移し、細胞を計数した;5×10の細胞量を取って、フローサイトメトリー検出に用いた。
【0189】
実施例4 T細胞の感染及び増幅
PBMC細胞を蘇生し、11mLのX-VIVOを加え、500gで5min遠心分離した;12mLのX-VIVOを加え、400gで5min遠心分離した;12mLのX-VIVOを加え、300gで5min遠心分離した;1mLのX-VIVO懸濁液を計数した;細胞密度を1×10cells/mLに調整し、1:3の比率(細胞:磁気ビーズ)でCD3/CD28(4×10/mL)磁気ビーズ(サーモフィッシャーサイエンティフィック、製品番号:11131D)を加えてT細胞を活性化し、十分に均一に混合し、12ウェルプレートで、1ウェルあたり700μLの細胞懸濁液(7×10cells/well/700μL)であった;活性化されたPBMC、37℃、COインキュベーター、18hであった;MOIが4~5の比率でウイルス上清を加え、polybreneを最終濃度5μg/mL(1:2000、最終体積に基づく)にし、対応する培地を添加して補足し、細胞を均一に混合し、ブランク対照を設置し、水平遠心分離機、1200rpm、1hであった;37℃、5%のCOインキュベーター、24hであった;軽く均一に混合し、1.5mLのEPチューブに細胞を収集し、300g、5minであり、上清を除去し(約50~100μLの培地が残る)、1mLのX-VIVO培地を12-well-plateに再懸濁し、500μLの培地を追加し、37℃、5%のCOインキュベーターで48h培養した;培地の色を観察し、適量のX-VIVO培地(800μL-1mL)を加え、37℃、5%のCOであった;2日ごとに細胞を計数し、細胞密度を7×10/mL、6-Well-plate/3mLに調整した;総細胞数が2.1×10であり、37℃、5%のCOインキュベーターで24h培養した;適量の培地(1mL)を24h観察して加えた;軽く均一に混合し、計数した;計数に基づいて細胞総数を前の総細胞数2.1E+6で割ると増幅倍数T2であることを得た;細胞密度を7×10/mL、6-Well-plate/3mLに調整し、総細胞数が2.1×10であり、継代した;全細胞数2.1mLの調整し;6×10の細胞数を取ってCAR-T陽性率、CD25/CD69 CAR検出(磁気ビーズを1min除去する)に用いた;37℃、5%のCOインキュベーターで24h培養した;適量の培地(1mL)を24h観察して加えた;軽く均一に混合し、計数した;計数に基づいて細胞総数を前の総細胞数2.1×10で割ると増幅倍数T3であることを得た;細胞密度を7×10/mL、6-Well-plate/3mLに調整し、総細胞数が2.1×10であり、継代した;9E5の細胞数を取ってCAR-T陽性率、PD-L1/TIM3/LAG3 CAR検出(磁気ビーズを1min除去する)に用いた;適量の細胞数を取ってインビトロ腫瘍殺傷活性実験に用いた;37℃、5%のCOインキュベーターで24h培養した;適量の培地(1mL~2.5mL)を48h観察して加えた;軽く均一に混合し、計数した;計数に基づいて細胞総数を前の総細胞数2.1×10で割ると増幅倍数T4であることを得た;対応する細胞を取ってCAR-T反復刺激実験に用いた;適量の細胞数を取ってCAR-T陽性率、CD25/CD69、PD-1/TIM3/LAG3 CAR検出(磁気ビーズを1min除去する)に用いた;増幅倍数:T1*T2*T3*T4であった。
【0190】
結果を図6に示し、図中、図示の数字はMSLN VHHに対応する配列番号を示し、MSLN3(VHH配列は配列番号13に示される)、MSLN10(VHH配列は配列番号18に示される)、MSLN16(VHH配列は配列番号8に示される)、MSLN27(VHH配列は配列番号23に示される)、MSLN36(VHH配列は配列番号28に示される)、MSLN41(VHH配列は配列番号33に示される)、MSLN42(VHH配列は配列番号38に示される)を選択し、そのうち、MSLN0は陰性対照Caplacizumabであり、P4は陽性対照(VH配列は配列番号58に示され、VL配列は配列番号62に示される)であり、Tは標的細胞を加えないブランク対照である。結果は、全ての抗体が陽性抗体と類似の増殖速度を有することを示した。
【0191】
実施例5 CAR-T細胞のインビトロ腫瘍殺傷活性の検出
CytoTox96(登録商標)非放射性細胞毒性の検出
LDHは安定な細胞質酵素であり、細胞が溶解する時に放出され、放出方式は51Crの放射性分析における放出方式と基本的に同じであり、放出されたLDHは培地上清において、カップリング酵素反応によって検出され、酵素反応においてLDHはテトラゾリウム塩(INT)を赤色のホルマザンに変換することができ、生成された赤色生成物の量は溶解した細胞の数に正比例した(Promega、製品番号:G1780)。CAR-T陽性率を検出し、未感染ブランクT細胞で感染CAR群間の比率が一致し、各群の総細胞数が一致するように調整した;標的細胞の数は、2×10/96-well-plate/wellであり、エフェクター細胞:標的細胞(E:T)=3:1、1:1、1:3、1:9であった;実験群と等量のエフェクター細胞のみを含むウェルをエフェクター細胞自己放出LDHバックグラウンド群として設置した;実験群と等量のブランクT細胞のみを含むウェルをT細胞自己放出LDHブランク対照群として設置した;実験群と同じエフェクター細胞と標的細胞との比のブランクT細胞のみを含むウェルをT+標的細胞陰性対照群として設置した;実験群と等量の標的細胞のみを含むウェルを標的細胞自己放出LDHバックグラウンド群として設置した;実験群と等量の標的細胞のみを含むウェルを標的細胞最大放出LDHバックグラウンド群として設置した;200μLの細胞培地のみを含む単独ウェルを培地バックグラウンドLDH対照ウェルとして設置した;200μLの細胞培地のみを含む単独ウェルを体積補正対照ウェルとして設置した;対応するエフェクター細胞と標的細胞を200μLのX-VIVO(FBSなし)培地に共インキュベートし、37℃、5%のCOインキュベーターで20~24h培養した;消化し、計数して対応する量の標的細胞を取って、100μLのX-VIVOを再懸濁して96ウェルプレートにプレーティングした;エフェクター細胞と標的細胞との比に応じて対応する量のエフェクター細胞を取って、対応するブランクT細胞を補足し、500g、5minであった;100μLのX-VIVOを再懸濁して標的細胞と96ウェルプレートに均一に混合した;37℃、5%のCO、20~24hであった;約45min早めに、体積補正対照ウェル及び標的細胞最大放出LDHバックグラウンドウェルに20μLの溶解液(10X)を加え、37℃、5%のCOインキュベーター、45minであった;250xg,4minであった;50μLの上清液を酵素分析プレートに取り、50μL/ウェルで調製された基質(検出緩衝液で調製する)を加え、遮光で、室温で20~30minインキュベートした;50μL/ウェルで停止液を加えた;色を観察した(気泡を回避する);OD490測定値であった。
【0192】
1x10の腫瘍細胞SK-OV3-Luciferase-GFP及び例示的なMSLN-CAR-T細胞を、異なるエフェクター細胞と標的細胞との比に応じて18hと72h共培養した後、CAR-T細胞の腫瘍細胞に対する殺傷作用を検出し、結果を図7に示し、結果は、MSLN-CAR-101(そのうち、キメラ抗原受容体の標的部分のアミノ酸配列は配列番号13に示され、膜貫通領域のアミノ酸配列は配列番号40に示され、共刺激ドメインのアミノ酸配列は配列番号39に示され、細胞内シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列は配列番号41に示され、ヒンジ領域のアミノ酸配列は配列番号42に示され、上記MSLN-CAR-101細胞は更に配列番号44に示される外来タンパク質断片を発現する)の殺傷作用は陽性配列P4と類似の殺傷作用を有することを示した。
【0193】
実施例6 サイトカインの検出
実施例4におけるT細胞の感染及び増幅方法に従ってCAR-Tを製造し、上清を適量のE:T=1:1とともにインキュベートし、IL-2、IFN-γなどのサイトカイン検出に用いられた。CAR-T陽性率を検出し、未感染ブランクT細胞で感染CAR群間の比率が一致し、各群の総細胞数が一致するように調整した(必要なCAR-T細胞数、最低CAR陽性比率は基数である);T細胞の総数が一致した;VT(T+CELL群)=CART+Tであった;ブランクT細胞が実験群と等量のウェルをT細胞単独群として設置した;エフェクター細胞が実験群と等量のウェルをエフェクター細胞単独群として設置した;標的細胞の数は1×10/96-well/wellであり、エフェクター細胞:標的細胞(E:T)=1:1であり、対応するエフェクター細胞と標的細胞との比が1:1に従って共インキュベートし、エフェクター細胞(CAR-T陽性細胞1E4を含む)と標的細胞(1E4)とを混合し、最終体積が200μLになるまで血清なしl X-VIVO培地を補足した;軽く均一に混合し、37℃、5%のCOインキュベーター、24hであった;400xg、5minであり、50μLの細胞上清を取ってサイトカイン検出に用いた。
【0194】
結果を図8~10に示し、そのうち、KERAはMSLN陰性細胞であり、SK-OV3はMSLN陽性細胞である。CAR-T細胞をSK-OV3と共培養する場合、CAR-T細胞は活性化され、大量のサイトカインIL-2、TNF-α、及びIFN-γを産生した。そのうち、MSLN-CAR-101は、陽性配列P4と同量のサイトカイン放出を有する。更に、CAR-T細胞をKERAと共培養する場合、CAR-T細胞は何れも活性化されず、サイトカインの放出はなかった。
【0195】
実施例7 NSGマウス動物の薬効試験
マウスに3×10のSKOV3腫瘍細胞系を皮下注射し、2週間後に腫瘍体積の大きさが100~200mmである時にランダムに群分けし、1日おきにCAR-T静脈再注入を行い、細胞量は5×10であり、腫瘍を週に3回測定し、試験で47日を観察した。最後に、Graphpadを用いて腫瘍増殖曲線をプロットした。そのうち、5E6は、5*10^6のSK-OV3を接種した卵巣癌細胞を表す。
【0196】
結果を図11に示し、それによりMSLN-CAR-101は腫瘍の増殖を顕著に阻害したことが示された。
【0197】
上記詳細な説明は、説明及び例示のために提供され、添付される特許請求の範囲を限定するものではない。現在、本願の例示的な実施形態に対する様々な変更は、当業者にとって明らかであり、添付される特許請求の範囲及びその均等物の範囲内に保持される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
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【国際調査報告】