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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-05
(54)【発明の名称】移動伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/20 20060101AFI20250226BHJP
   B64D 11/06 20060101ALI20250226BHJP
   B60N 2/02 20060101ALI20250226BHJP
   F16C 23/08 20060101ALI20250226BHJP
   F16H 25/22 20060101ALI20250226BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
F16H25/20 K
B64D11/06
B60N2/02
F16C23/08
F16H25/22 Z
F16H25/24 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544901
(86)(22)【出願日】2023-01-19
(85)【翻訳文提出日】2024-09-19
(86)【国際出願番号】 FR2023050076
(87)【国際公開番号】W WO2023144483
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】2200786
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524280599
【氏名又は名称】サフラン・エレクトロニクス・アンド・デファンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン・シェイク,イェルーン・ロベルト
【テーマコード(参考)】
3B087
3J012
3J062
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3J012AB04
3J012BB03
3J012CB04
3J012DB07
3J012DB14
3J012FB10
3J012GB10
3J062AA41
3J062AB21
3J062BA17
3J062BA19
3J062CD02
3J062CD04
3J062CD12
3J062CD14
3J062CD22
3J062CD57
(57)【要約】
移動を伝達するための装置(22)であって、装置は、軸線(X)に沿って延在するねじ(28)と、ナット(26)と、ハウジング(24、241)と、第1の弾性部材(104)と、第2の弾性部材(106)と、第1のアセンブリ(200)と、第2のアセンブリ(300)と、第1の軸線方向ストッパ(127)と、第2の軸線方向ストッパ(123)と、を備え、第1の弾性部材(104)は、第1の軸力(E1)の作用下で第2の弾性部材(106)とは独立して変形されることが可能であり、第2の弾性部材(106)は、第2の閾値を超える第2の軸力の作用下で前記第1の弾性部材(104)とは独立して変形されることが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動を伝達するための伝達装置(22)であって、装置は、
軸線(X)に沿って延在するねじ(28、281)と、
ねじと協働するナット(26、261)と、
ハウジング(24、241)と、
第1の弾性部材(104)と、
第2の弾性部材(106)と、
前記ナットを備える第1のアセンブリ(200)と、
前記ハウジングを備える第2のアセンブリ(300)と、
第1のアセンブリと軸線方向に一体であり、第2のアセンブリの第1の相補的な軸線方向ストッパ(129)と協働することができる第1の軸線方向ストッパ(127)であって、第1の軸線方向クリアランス(301)が、第1の軸線方向ストッパ(127)と第1の相補的な軸線方向ストッパ(129)との間に形成される、第1の軸線方向ストッパ(127)と、
第1のアセンブリと軸線方向に一体であり、第2のアセンブリの第2の相補的な軸線方向ストッパ(125)と協働することができる第2の軸線方向ストッパ(123)であって、第2の軸線方向クリアランス(201)が、第2の軸線方向ストッパ(123)と第2の相補的な軸線方向ストッパ(125)との間に形成される、第2の軸線方向ストッパ(123)と、
を備え、
第1の弾性部材(104)は、第1の方向に向けられる第1の軸力(E1、E3)であって、第1のアセンブリ(200)によって第1の弾性部材(104)に加えられる第1の軸力(E1、E3)の影響下で第2の弾性部材(106)とは独立して変形されることができ、それによって第1の軸線方向クリアランス(301)を減少させ、前記第1の軸力(E1、E3)が第1の閾値を超えると、第1の軸線方向ストッパ(127)が第1の相補的な軸線方向ストッパ(129)に当接するようになることができ、
第2の弾性部材(106)は、第1の方向とは反対の第2の方向に向けられる第2の軸力(E2、E4)、第1のアセンブリ(200)によって第2の弾性部材(106)に加えられる第2の軸力(E2、E4)の影響下で第1の弾性部材(104)とは独立して変形されることができ、それによって第2の軸線方向クリアランス(201)を減少させ、前記第2の軸力(E2、E4)が第2の閾値を超えると、第2の軸線方向ストッパ(123)が第2の相補的な軸線方向ストッパ(125)に当接するようになることができる、伝達装置(22)。
【請求項2】
第1の予荷重要素(108)および第2の予荷重要素(110)をさらに備え、第1の予荷重要素は、第2の弾性部材(106)に作用する予荷重応力とは独立して第1の弾性部材(104)に作用する予荷重応力を調整することができ、第2の予荷重要素は、第1の弾性部材(104)に作用する予荷重応力とは独立して第2の弾性部材(106)に作用する予荷重応力を調整することができる、請求項1に記載の伝達装置(22)。
【請求項3】
第1のアセンブリ(200)に面して配置された半径方向内側リング(112)と、第2のアセンブリ(300)に面して配置された半径方向外側リング(114)とを備える、少なくとも1つの軸受(100、102、900)を備え、各弾性部材(104、106)の半径方向外周(122)は、前記軸受の半径方向外側リング(114)に対して軸線方向に直接的または間接的に当接するようになっており、半径方向内周(121)は、予荷重要素(108、110)に対して軸線方向に当接するようになっている、請求項2に記載の伝達装置(22)。
【請求項4】
第2のアセンブリ(300)は、ハウジング(24、241)の半径方向内壁(36)から半径方向に延在する肩部(40)を備え、第1の弾性部材(104)は、第2のアセンブリ(300)の肩部(40)の第1の側面に配置され、第2の弾性部材(106)は、第1の側面とは反対側の第2のアセンブリ(300)の肩部(40)の第2の側面に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の伝達装置(22)。
【請求項5】
第1の軸受(100)は、第1の弾性部材(104)と第2のアセンブリ(300)の肩部(40)の第1の側面との間に配置され、第2の軸受(102)は、第2の弾性部材(106)と第2のアセンブリ(300)の肩部(40)の第2の側面との間に配置され、第1の弾性部材(104)の半径方向外周(122)は、第1の軸受(100)の半径方向外側リング(114)に対して軸線方向に当接するようになり、第2の弾性部材(106)の半径方向外周(122)は、第2の軸受(102)の半径方向外側リング(114)に対して軸線方向に当接するようになる、請求項3および4に記載の伝達装置(22)。
【請求項6】
第1のアセンブリ(200)は、第1のアセンブリ(200)の半径方向外壁(85)から半径方向に延在する肩部(92)を備え、第1のアセンブリ(200)の肩部(92)は、第2のアセンブリ(300)の肩部(40)に半径方向に面して配置される、請求項4または5のいずれか一項に記載の伝達装置(22)。
【請求項7】
第1のアセンブリ(200)の肩部(92)は、第2のアセンブリ(300)の肩部(40)の前記軸線方向の長さよりも短い軸線方向の長さを有する、請求項6に記載の伝達装置(22)。
【請求項8】
軸受(900)は、第2のアセンブリ(300)の肩部(40)の半径方向内側に配置される、請求項4に記載の伝達装置(22)。
【請求項9】
軸受(900)の半径方向外側リング(114)と第1の弾性部材(104)の半径方向外周(122)との間に配置された第1の環状支持プレート(904)と、軸受(900)の半径方向外側リング(114)と第2の弾性部材(106)の半径方向外周(122)との間に配置された第2の環状支持プレート(905)とをさらに備え、第1の弾性部材(104)の半径方向外周(122)は、第1の支持プレート(904)に当接するようになり、第2の弾性部材(106)の半径方向外周(122)は、第2の支持プレート(905)に当接するようになる、請求項5および8に記載の伝達装置(22)。
【請求項10】
航空機用シート(2)であって、航空機の固定部分に固定されるように意図された固定部分と、固定部分に対して移動可能な可動部分と、を備え、可動部分と固定部分との間に請求項1~9のいずれか一項に記載の移動を伝達するための伝達装置(22)が取り付けられ、伝達装置のナット(26、261)はアクチュエータ(20)によって回転可能であり、ねじ(28、281)はシート(2)の前記可動部分に接続され、ハウジング(24、241)はシート(2)の前記固定部分に接続される、シート(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動伝達装置、および前記装置を備えるシートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗客輸送、特に航空輸送の分野では、乗客が着座位置で輸送されることを可能にするシートを航空機に装備することが知られている。各シートは、複数の要素、例えば、背もたれ、座席部分、ヘッドレスト、1つ以上のアームレストなどを備える。
【0003】
乗客の快適性を改善するために、各シートは、シートが設置された床に対するシートの移動、または他に対するシートの様々な要素の移動を可能にする1つ以上の駆動システムを用いて装備され得る。
【0004】
一般に、駆動システムは、アクチュエータおよび伝達チェーンを含む。駆動システムを構成する機械部品は、例えば航空機の緊急着陸中に発生する衝突型荷重を支持することができなければならない。機械部品はまた、シートの移動が突然停止したとき、または乗客がシート上に突然落下したときに生じる荷重を支持することができなければならない。これらの荷重はすべて、駆動システムの部品に加えられる大きな軸線方向力に関連付けられ、摩耗または破損さえももたらす結果になる。
【0005】
従来、摩耗および破損のリスクを制限するために、駆動システムの機械部品は過剰設計されている。しかしながら、この過剰設計は、駆動システムの製造コストと航空機の重量との両方を増加させる。
【0006】
ブレーキをシートに設けることも知られており、これはブレーキの複数の部品間の摩擦の現象に基づいて、大きな軸力を伴う荷重の場合にアクチュエータを停止させることを可能にする。しかしながら、現在使用されているブレーキは片方向ブレーキであり、つまり、一方向に加えられた荷重しか吸収することができないブレーキを意味する。これは、高い軸力を伴う荷重の印加中にシートが跳ね返るときに駆動システムの部品が保護されないことを意味する。片方向ブレーキの2つの変形形態は、ブレーキがシートに設置されることが意図されている方向にかかわらず動作可能であるように実装されなければならない。したがって、ブレーキの設計および製造のコストが増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は状況を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、移動を伝達するための伝達装置が提案され、装置は、
軸線に沿って延在するねじと、
ねじと協働するナットと、
ハウジングと、
第1の弾性部材と、
第2の弾性部材と、
前記ナットを備える第1のアセンブリと、
前記ハウジングを備える第2のアセンブリと、
第1のアセンブリと軸線方向に一体であり、第2のアセンブリの第1の相補的な軸線方向ストッパと協働することができる第1の軸線方向ストッパであって、第1の軸線方向クリアランスが、第1の軸線方向ストッパと第1の相補的な軸線方向ストッパとの間に形成される、第1の軸線方向ストッパと、
第1のアセンブリと軸線方向に一体であり、第2のアセンブリの第2の相補的な軸線方向ストッパと協働することができる第2の軸線方向ストッパであって、第2の軸線方向クリアランスが、第2の軸線方向ストッパと第2の相補的な軸線方向ストッパとの間に形成される、第2の軸線方向ストッパと、
を備え、
第1の弾性部材は、第1の方向に配向され、第1のアセンブリによって第1の弾性部材に加えられる第1の軸力の影響下で第2の弾性部材とは独立して変形されることができ、それによって第1の軸線方向クリアランスを低減させ、前記第1の軸力が第1の閾値を超えると、第1の軸線方向ストッパが第1の相補的な軸線方向ストッパに当接するようになることができ、
第2の弾性部材は、第1の方向とは反対の第2の方向に配向され、第1のアセンブリによって第2の弾性部材に加えられる第2の軸力の影響下で第1の弾性部材とは独立して変形されることができ、それによって第2の軸線方向クリアランスを低減させ、前記第2の軸力が第2の閾値を超えると、第2の軸線方向ストッパが第2の相補的な軸線方向ストッパに当接するようになることができる。
【0009】
本明細書では、「軸線方向」、「半径方向」、および「円周方向」という用語は、ねじの延長軸線に関して画定される。特に、「軸線方向」とは、ねじの延長軸線に沿っているかまたはそれに平行であることを意味し、半径方向とは、その軸線を横断するかまたは実質的に横断する任意の軸線に沿っていることを意味する。「円周方向」とは、前述の軸線の周りを意味すると理解される。
【0010】
提案された装置では、第1のアセンブリを第2のアセンブリに当接する第1の弾性部材または第2の弾性部材の変形によって、軸力は、摩耗および破損をより受けやすい装置の他の部分ではなく、第2のアセンブリ、特にハウジングを通して散逸される。したがって、前記装置の部品を過剰設計する必要なしに、装置の摩耗および破損のリスクが低減される。
【0011】
さらに、反対方向に向けられた軸力の影響下で互いに独立して変形されることができる、第1の弾性部材および第2の弾性部材の存在により、伝達装置は、シートが跳ね返った場合であっても、伝達装置のシートに設置される方向とは独立して、受けられる軸力を吸収することができる双方向ブレーキを構成することが可能である。
【0012】
第1の弾性部材および第2の弾性部材は、弾性ワッシャであってもよい。
【0013】
第1の閾値および第2の閾値は、例えば、第1の弾性部材および第2の弾性部材を変形させることなくそれらにそれぞれ加えられることができる最大の軸力に対応する。好ましくは、第1の閾値および第2の閾値は、3000N~6000Nの間、より好ましくは3325N~5556Nの間である。例えば、第1の閾値および第2の閾値は4440Nに等しい。第1の閾値を超える、第1の方向に向けられ、第1のアセンブリによって第1の弾性部材に加えられる任意の軸力は、衝突型荷重または第1の方向に装置に加えられる大きな軸力に関連付けられ得る。同様に、第2の閾値を超える、第2の方向に向けられ、第1のアセンブリによって第2の弾性部材に加えられる任意の軸力は、衝突型荷重または第2の方向の装置に加えられる大きな軸力に関連付けられ得る。
【0014】
ねじ、ハウジング、およびナットは、同軸線であってもよい。
【0015】
ハウジングおよびナットは、ボアを備えてもよい。したがって、ねじは、ハウジングおよびナットの内部に部分的に収容されてもよい。
【0016】
第1のアセンブリは、提案された装置が移動を伝達するときにねじの延長軸線の周りを回転するように構成されてもよい。衝突型荷重または装置に大きな軸力の荷重が加えられた場合、第1のアセンブリはまた、荷重を加える方向に軸線方向に移動し得る。第1のアセンブリのこの軸線方向移動は、第1のアセンブリが第1の弾性部材または第2の弾性部材に及ぼす、第1の方向または第2の方向の軸力を生成する。
【0017】
第2のアセンブリは、提案された装置が移動を伝達するとき、ならびに衝突型荷重または大きな軸力の荷重が加えられている間、不動であるように構成され得る。
【0018】
第1のアセンブリが第2のアセンブリに当接するようになると、第1のアセンブリの軸線方向移動が阻止され得る。その上、第1のストッパと第1の相補的ストッパとの間、または第2のストッパと第2の相補的ストッパとの間に摩擦が現れる。この摩擦は、第1のアセンブリの回転移動を減速させ得る。
【0019】
ねじおよびナットは、好ましくは可逆的であるねじナットシステムを形成する。「可逆的」とは、ねじの延長軸線の周りのナットの回転がねじの軸線方向移動を引き起こすことを意味すると理解される。
【0020】
ナットおよびねじは、ねじの軸線周りのナットの回転がねじの軸線方向移動を引き起こすように成形された相補的なタッピングおよびねじ切りをそれぞれ備え得る。ナットのタッピングおよびねじのねじ切りは、互いに直接的または間接的に係合してもよい。
【0021】
場合によっては、装置に加えられる軸力が第1または第2の閾値よりも大きいときに伝達装置が作動するように、ナットの回転は十分なトルクで阻止される。この目的のために、ナットは、それを制動することを可能にする要素に接続されてもよい。例えば、ナットは、高い戻り止めトルクを伴う摩擦ブレーキまたはモータに接続されてもよい。
【0022】
装置は、第1の予荷重要素および第2の予荷重要素をさらに備えてもよく、第1の予荷重要素は、第2の弾性部材に作用する予荷重応力とは独立して第1の弾性部材に作用する予荷重応力を調整することができ、第2の予荷重要素は、第1の弾性部材に作用する予荷重応力とは独立して第2の弾性部材に作用する予荷重応力を調整することができる。
【0023】
したがって、第1の予荷重要素および第2の予荷重要素は、それぞれ第1の弾性部材および第2の弾性部材に作用する予荷重応力を独立して調整することを可能にする。したがって、第1および第2の弾性部材に作用する予荷重応力は、それらが互いに打ち消されないように異なっていてもよい。したがって、伝達装置は、動作可能な双方向ブレーキを構成する。
【0024】
第1の予荷重要素および第2の予荷重要素は、ハウジングのボアに設置されてもよい。例えば、第1の予荷重要素および第2の予荷重要素は各々、第2のアセンブリに接続された半径方向外周および第1のアセンブリに面して配置された自由半径方向内周を有し得る。したがって、第1のアセンブリと第1および第2の予荷重要素との間に半径方向のクリアランスが形成され得る。これにより、第1および第2の予荷重要素が、ねじの延長軸線周りを回転する第1のアセンブリと共に移動することが防止される。
【0025】
第1および第2の予荷重要素をハウジングに接続するために、予荷重要素の各々の半径方向外周は、ハウジングに配置されたそれぞれのタッピングに相補的なねじ山を備え得る。この構成はまた、各弾性部材に作用する予荷重応力を調整するために、第1および第2の予荷重要素が軸線方向に移動することを可能にする。例えば、第1の予荷重要素は、そのねじ山をハウジングのそれぞれのタッピングにねじ込むことによって第1の弾性部材に軸線方向に近づけて、第1の弾性部材の予荷重応力を増加させ得る。同様に、第1の要素は、第1の弾性部材の予荷重応力を低減するために、ハウジングのそれぞれのタッピングにおけるそのねじ山を緩めることによって、第1の弾性部材から軸線方向にさらに離れるように移動され得る。第2の弾性部材の予荷重応力を増加または低減させるために、第2の予荷重要素に同じ原理が適用され得る。
【0026】
第1および第2の予荷重要素の軸線方向移動は互いに独立しており、これにより、各弾性部材に異なる予荷重応力を加えることが可能になることに留意されたい。
【0027】
本明細書における「外部」または「外側」および「内部」または「内側」という用語は、半径方向を意味すると理解されることを明確にする。
【0028】
装置は、第1のアセンブリに面して配置された半径方向内側リングおよび第2のアセンブリに面して配置された半径方向外側リングを備える少なくとも1つの軸受を備えてもよく、各弾性部材の半径方向外周は、前記軸受の半径方向外側リングに対して軸線方向に直接的または間接的に当接するようになり、半径方向内周は、予荷重要素に対して軸線方向に当接するようになる。
【0029】
第1の弾性部材は、少なくとも1つの軸受の側面とは軸線方向に反対側の少なくとも1つの軸受の側面で、少なくとも1つの軸受の半径方向外側リングに対して軸線方向に当接し、第2の弾性部材は前記半径方向外側リングに対して軸線方向に当接する。
【0030】
第1のアセンブリによって弾性部材の各々に加えられる軸力は、少なくとも1つの軸受を通過し得る。特に、軸力は、第1のアセンブリから少なくとも1つの軸受の半径方向内側リングに伝達されてもよく、これは、この軸力の方向に半径方向外側リングの軸線方向移動を引き起こす。各弾性部材は、前記軸受の半径方向外側リングに対して軸線方向に直接的または間接的に当接するので、半径方向外側リングの軸線方向移動は、軸力が加えられる弾性部材の変形を引き起こす。
【0031】
第2のアセンブリは、ハウジングの半径方向内壁から半径方向に延在する肩部を備え得る。次いで、第1の弾性部材は、第2のアセンブリの肩部の第1の側面に配置されてもよく、第2の弾性部材は、第1の側面とは反対側の第2のアセンブリの肩部の第2の側面に配置されてもよい。
【0032】
第1の弾性部材および第2の弾性部材が第2のアセンブリの肩部の両側に配置されることにより、第1の方向に加えられる軸力および第2の方向に加えられる軸力のための差動力経路を得ることが可能である。
【0033】
第2のアセンブリの肩部は、環状であってもよい。
【0034】
第1の軸受は、第1の弾性部材と第2のアセンブリの肩部の第1の側面との間に配置されてもよい。第2の軸受は、第2の弾性部材と第2のアセンブリの肩部の第2の側面との間に配置されてもよい。次いで、第1の弾性部材の半径方向外周は、第1の軸受の半径方向外側リングに対して軸線方向に当接するようになり、第2の弾性部材の半径方向外周は、第2の軸受の半径方向外側リングに対して軸線方向に当接するようになる。したがって、各弾性部材は、異なる軸受の外側リングに当接するようになり、これにより、弾性部材の各々によって受けられる力の間の独立性が増加する。
【0035】
第1のアセンブリは、第1のアセンブリの半径方向外壁から半径方向に延在する肩部を備えてもよく、第1のアセンブリの肩部は、第2のアセンブリの肩部に半径方向に面して配置される。
【0036】
第1のアセンブリの肩部は、第1の方向に加えられる軸力および第2の方向に加えられる軸力のための力経路のより良好な分離を可能にする。
【0037】
第1のアセンブリの肩部は、第2のアセンブリの肩部の前記軸線方向の長さよりも短い軸線方向の長さを有し得る。したがって、第1および第2の弾性部材の予荷重は、第1および第2のアセンブリの肩部の2つの側で独立して調整可能である。
【0038】
軸受は、第2のアセンブリの肩部の半径方向内側に配置されてもよい。
【0039】
軸受は、第2のアセンブリの肩部の軸線方向長さに実質的に等しい軸線方向長さを有し得る。軸受は、より多くの軸線方向荷重を吸収することができる、複列軸受であってもよい。したがって、衝突型荷重または大きな軸力を伴う任意の荷重の場合に安全性が改善され得る。
【0040】
軸受は、第1のアセンブリから半径方向に突出し、軸受の半径方向内側リングのいずれかの側に軸線方向に1つ配置された第2の環状スペーサおよび第1の環状スペーサを用いて、第2のアセンブリの肩部の所定位置に保持されてもよい。
【0041】
装置は、軸受の半径方向外側リングと第1の弾性部材の半径方向外周との間に配置された第1の環状支持プレート、および軸受の半径方向外側リングと第2の弾性部材の半径方向外周との間に配置された第2の環状支持プレートをさらに備えてもよく、第1の弾性部材の半径方向外周は、第1の支持プレートに当接するようになり、第2の弾性部材の半径方向外周は、第2の支持プレートに当接するようになる。
【0042】
第1のプレートおよび第2のプレートは、環状であってもよい。第1および第2のプレートの軸線方向半断面は、好ましくは逆L字形を有する。
【0043】
第1の支持プレートおよび第2の支持プレートは、第1のアセンブリおよび第2のアセンブリに対して自由に移動し得る。この場合、第1および第2の支持プレートは、軸受の半径方向外側リングと第1の弾性部材および第2の弾性部材の半径方向外周との間にそれぞれ軸線方向に押し込まれてもよい。したがって、それらは、軸受の半径方向外側リングと一体的に移動されることができる間、所定の位置に保持されてもよく、これにより、第1のアセンブリによって加えられる軸力が第1の閾値または第2の閾値よりも大きいときに、第1の弾性部材または第2の弾性部材を変形させることが可能になる。
【0044】
第1の支持プレートは、第1スペーサと半径方向に面していてもよい。第2の支持プレートは、第2スペーサと放射状に面していてもよい。
【0045】
別の態様によれば、航空機のためのシートが提案され、航空機の固定部分に固定されるように意図された固定部分と、固定部分に対して移動されることが可能な可動部分とを備え、可動部分と固定部分との間に上述のような移動を伝達するための伝達装置が取り付けられ、移動を伝達するための伝達装置のナットはアクチュエータによって回転されることが可能であり、ねじはシートの前記可動部分に接続され、ハウジングはシートの前記固定部分に接続される。
【0046】
移動を伝達するための伝達装置は、シートの可動部分に、可動部分を前記シートの固定部分に対して移動させる移動を伝える。特に、伝達装置のねじがシートの可動部分に接続されているため、この可動部分の移動はねじの軸線方向の移動と一体である。
【0047】
シートの固定部分は、航空機の固定部分に直接的または間接的に接続されてもよい。航空機の固定部分は、例えば床に対応する。
【0048】
場合によっては、シートの固定部分および可動部分は各々、シートの要素の1つに対応する。1つの非限定的な例では、可動部分は背もたれに対応し、一方、シートの固定部分は、航空機の床に直接または脚によって接続される座席部分に対応する。
【0049】
1つの所与の状況において、その固定部分を構成するシートの要素が、別の状況においてシートの可動部分を構成することは排除されないことに留意されたい。例えば、脚によって床に接続されたシートは、脚に対して移動することができ、脚はシートの固定部分に含まれ、座席部分はシートの可動部分の一部である。同様に、所与の状況において、その可動部分を構成するシートの要素は、別の状況においてシートの固定部分を構成し得る。
【0050】
別の非限定的な例によれば、シートの固定部分は、例えば、航空機の床に固定されたスライドを備える。シートの可動部分は、例えば、スライドに沿って摺動できるようにスライドに接続された数本の脚を備える。
【0051】
他の特徴、詳細および利点は、以下の詳細な説明を読み、添付の図面を分析すると明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明による、移動を伝達するための伝達装置を備えた航空機シートの概略側面図である。
図2】本発明の一実施形態による図1のシートの移動を伝達するための伝達装置の軸線方向断面の概略図、および伝達装置に第1の方向に軸力が加えられたときに、この伝達装置によってたどられる力経路を示す図である。
図3図2の移動を伝達するための伝達装置、および伝達装置に第1の方向とは反対の第2の方向の軸力が加えられたときに、この伝達装置によってたどられる力経路の同じ表示を示す図である。
図4】本発明の別の実施形態による、図1のシートアクチュエータによって生成された移動を伝達するための伝達装置の軸線方向断面の概略図、および伝達装置に第1の方向に軸力が加えられたときに、この伝達装置によってたどられる力経路を示す図である。
図5図4の移動を伝達するための伝達装置、および伝達装置に第1の方向とは反対の第2の方向の軸力が加えられたときに、この伝達装置によってたどられる力経路の同じ表示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、特に航空機用のシート2を示す。シート2は、座席部分4、背もたれ6、およびヘッドレスト8を備える。シート2はまた、足載台10を備えてもよい。
【0054】
シート2は、航空機の固定部分、特に床に接続されるように意図されている。この目的のために、シート2は、脚部12およびスライド14を備える。スライド14は、例えば、地面に固定された2つのレールを備え、各脚部12は、それぞれのレールに沿って摺動することができるように、レールの一方に取り付けられている。したがって、シート2は、前方または後方に移動することができる。
【0055】
シート2は、電気駆動システム18を含む。システム18は、シート2の要素(座席部分4、背もたれ6、ヘッドレスト8、足載台10など)のうちの1つを他の要素に対して移動させること専用であってもよい。代替的に、システム18は、スライド14において移動するシート2専用である。
【0056】
以下では、移動されるシート2の要素は「可動部分」と呼ばれ、それに対して移動する要素は「固定部分」と呼ばれる。
【0057】
駆動システム18は、例えば、移動、特に回転を生成することができるアクチュエータ20、および移動を伝達するための伝達装置22を備える。特に、伝達装置は、アクチュエータによって生成された移動を、シートの固定部分に対して可動部分を移動するように適合された移動に変換するように構成される。
【0058】
駆動システム18は、アクチュエータ20によって生成された移動を伝達装置22に伝達するように適合された、ギアまたはコネクティングロッドなどの機械部品(図示せず)をさらに備える。より正確には、これらの機械部品は、アクチュエータ20を伝達装置22に接続する。そのような機械部品は、好ましくは、減速機、例えば、多段減速機の一部を形成する。減速機は、伝達装置22に伝達される前にアクチュエータ20によって生成される移動の速度を低下させることを可能にする。アクチュエータ20によって生成される移動の速度の低下は、アクチュエータ20によって出力されるトルクの増加につながる。
【0059】
次に、図2図5を参照して、伝達装置22が説明される。
【0060】
図2および図3に示される、第1の実施形態では、装置22は、ハウジング24、ナット26、および軸線Xに沿って延在するねじ28を備える。
【0061】
ハウジング24は、第1の端部30と第2の端部32との間で軸線方向に延在する略円筒形状を有する。ハウジング24は、半径方向外壁34および半径方向内壁36を備える。半径方向内壁36は、第1の端部30と第2の端部32との間でハウジング24を軸線方向に貫通するボア38を画定する。ボア38は、好ましくは、その全長に沿って略円形の横断面を有する。本明細書では、「横断」は、X軸線に略垂直な平面内に備えられることを意味する。
【0062】
ハウジング24は、半径方向内壁36から半径方向に延在する、好ましくは、環状の肩部40を備える。特に、肩部40は、略平行であり、ボア38内に半径方向に突出する第1の面42および第2の面44を備える。肩部40は、ボア38内で軸線方向に延在する接続面46をさらに備える。接続面46は、肩部40の第1および第2の面42、44を接続する。
【0063】
第1と第2の面42、44の間の軸線方向の距離は、肩部40の幅を画定する。
【0064】
ハウジング24の半径方向内壁36には、第1のタッピング47および第2のタッピング48が設けられることが有利である。第1のタッピング47は、ハウジング24の第1の端部30と肩部40の第1の面42との間に配置される。第2のタッピング48は、ハウジング24の第2の端部32と肩部40の第2の面44との間に配置される。有利には、タッピング47、48は同一であるが、これに限定されない。
【0065】
以下に詳述されるように、第1のタッピング47は、第1の予荷重要素108をハウジング24に接続することを可能にし、第2のタッピング48は、第2の予荷重要素110をハウジング24に接続することを可能にする。
【0066】
半径方向内壁36は、第1の軸線方向ストッパおよび第2の軸線方向ストッパをさらに備えてもよいが、これらは図2および図3には示されていない。壁36の第1および第2の軸線方向ストッパは、以下で説明されるように、第1の予荷重要素108および第2の予荷重要素110の軸線方向移動をそれぞれ阻止する。
【0067】
また、詳細に説明されるように、ハウジング24は、装置22において不動であるように構成される。有利には、装置22がシート2に設置されると、ハウジング24は、シート2の固定部分に接続される。
【0068】
ナット26は、第1の端部50と第2の端部52との間で軸線方向に延在する略円筒形状を有する。ナット26は、半径方向外壁54および半径方向内壁56を備える。
【0069】
半径方向外壁54は、半径方向外側に突出する環状フランジ60を備える。フランジ60の一方の面62は、ナット26の第1の端部50と軸線方向に整列されている。有利には、フランジ60の直径は、ハウジング24のボア38の直径よりも大きい。
【0070】
半径方向内壁56は、第1および第2の端部50、52の間でナット26を軸線方向に貫通するボア58を画定する。好ましくは、ボア58の横断面は、その全長に沿って略円形である。
【0071】
半径方向内壁56には、好ましくは環状の肩部64が設けられている。肩部64は、ボア58内で半径方向に延在する面66を備える。面66に垂直なベクトルは、ナット26の第1の端部50に向けられてている。
【0072】
肩部64は、半径方向内壁56を第1の領域68と第2の領域70とに分割する。第1の領域68は、肩部64とナット26の第1の端部50との間に延在する。第2の領域70は、肩部64とナット26の第2の端部52との間に延在する。図2および図3から見られることができるように、第1の領域68に沿ったボア58の直径は、第2の領域70に沿ったボア58の直径よりも大きいが、ハウジングのボア38の直径よりも短い。
【0073】
半径方向内壁56の第1の領域68はタッピング72を備える。タッピング72は、以下で説明されるスリーブ80へのナット26の接続を可能にする。有利には、タッピング72は、以下に詳述されるように、ナット26とスリーブ80とが接続されたときに一緒に移動するように設計されている。
【0074】
半径方向内壁56の第2の領域70は、ねじ28と直接的または間接的に係合するように意図されたタッピング74を備える。図2および図3では、タッピング74は、複数のボール76を介してねじ28と係合するが、他の可能性の中でも、複数のローラを介してねじ28と係合することができる。代替的に、タッピング74は台形であり、ねじ28と直接係合されてもよい。タッピング74は、ナット26がX軸線を中心に回転するときにねじ28の軸線方向移動を引き起こすように設計されている。
【0075】
有利には、ナット26は駆動システム18の減速機に接続されている。したがって、アクチュエータ20によって生成された回転移動は、減速され、トルクが増加してナット26に伝達される。したがって、ナット26はX軸線を中心に回転する。
【0076】
図2および図3に見られることができるように、ねじ28は、ハウジングのボア38およびナット26のボア58に部分的に収容される。
【0077】
ねじ28の半径方向外面は、上述のようにナット26のタッピング74と直接的または間接的に係合するように成形されたねじ山78を備える。したがって、ねじ28は、他の可能性の中でも、ボールねじ、ローラねじ、または台形ねじであってもよい。これにより、ねじ28とナット26とが協働し、ナット26がX軸線周りに回転すると、ねじ28が軸線方向の移動を引き起こす。
【0078】
装置22がシート2に設置されるとき、ねじ28は、好ましくは、直接的または間接的に、シート2の可動部分に接続される。したがって、可動部分は、ねじ28と一体的に、シート2の固定部分に対して移動される。可動部分が脚部12に対応し、シート2の固定部分がスライド12に対応するとき、装置22は、シート2を前後に移動させることが可能になる。
【0079】
上述のように、装置22は、スリーブ80をさらに備える。スリーブ80は、第1の端部82と第2の端部84との間で軸線方向に延在する実質的に円筒形の形状を有する。スリーブ80は、半径方向外壁85および半径方向内壁86を備える。
【0080】
スリーブ80の半径方向外壁85は、第1のねじ山87および第2のねじ山88を備える。
【0081】
第1のねじ山87は、第1の端部82を備えるスリーブ80の第1の端部89上に軸線方向に延在する。第1のねじ山87は、ナット26のタッピング72と相補的であり、ナット26とスリーブ80との接続を可能にする。
【0082】
第2のねじ山88は、第2の端部84を備えるスリーブ80の第2の端部90上に軸線方向に延在する。第2のねじ山88は、スリーブ80を後述する閉鎖ナット96に接続することを可能にする。
【0083】
半径方向外壁85は、半径方向外壁85から半径方向に延在する、好ましくは環状の肩部92をさらに備える。特に、肩部92は、略平行であり、スリーブ80から半径方向外側に突出する第1の面93および第2の面94を備える。肩部92は、軸線方向に延在し、肩部92の第1および第2の面93、94を接続する接続面95をさらに備える。
【0084】
第1および第2の面93、94の間の軸線方向の距離は、肩部92の幅を画定する。好ましくは、肩部92の幅は、ハウジング24の肩部40の幅よりも短い。
【0085】
半径方向内壁86は、第1および第2の端部82、84の間でスリーブ80を横断するボア107を画定する。有利には、ボア107は略円形の横断面を有する。図2および図3に見られることができるように、ボア107の直径は、好ましくは、半径方向内壁56の第2の領域70に沿ったナット26のボア58の直径に略等しい。これにより、ナット26とスリーブ80とが接続されたときに、ボア58および107が互いに延長して存在することが可能になる。
【0086】
閉鎖ナット96は、中心ボア97を備える略環状形状を有する。中心ボア97の直径は、好ましくは、スリーブ80のボア107の直径以上である。閉鎖ナット97は、ナット26に向かって軸線方向に方向付けされた閉鎖面101を備える。有利には、閉鎖面101の半径方向外径は、ハウジング24のボア38の直径よりも大きい。
【0087】
閉鎖ナット96の半径方向内側縁部はタッピング98を備える。タッピング98は、スリーブ80の第2のねじ山88と相補的であり、閉鎖ナット96とスリーブ80との接続を可能にする。タッピング98およびねじ山88は、スリーブ80と閉鎖ナット96とが接続されると一緒に一体的に移動するように設計されている。スリーブ80はナット26と一体的に移動するため、閉鎖ナット96もナット26と一体的に移動する。
【0088】
図2および図3から見られることができるように、スリーブ80は、ハウジング24のボア38の内側で軸線方向に延在するように成形されている。特に、スリーブ80は、ねじ28とハウジング24の半径方向内壁36との間に半径方向に配置されている。この位置では、ハウジング24とスリーブ80とは同軸線である。有利には、スリーブの肩部92およびハウジングの肩部40は、スリーブ80がハウジングのボア38の内側に設置されたときに互いに半径方向に対向して配置される。
【0089】
スリーブ80の半径方向外壁とハウジング24の半径方向内壁との間には、円周方向キャビティ99が形成される。キャビティ99は、肩部40、92が半径方向に互いに対向する領域において狭くなるように、実質的に一定の厚さを有している。
【0090】
伝達装置22は、第1の軸受100、第2の軸受102、第1の弾性部材104、第2の弾性部材106、ならびに第1および第2の予荷重要素108、110をさらに備える。軸受100、102、弾性部材104、106、および予荷重要素108、110は、キャビティ99内に配置される。
【0091】
第1および第2の軸受100、102は、半径方向内側リング112および半径方向外側リング114を備える。リング112とリング114との間に円周方向に複数の転動体117が配置される。図2および図3において、軸受100、102は、円周方向に一列の転動体117を備えている。
【0092】
半径方向内側リング112は、スリーブ80に半径方向に面するように配置され、一方、半径方向外側リング114は、ハウジング24に半径方向に面するように配置される。より正確には、半径方向内側リング112は、スリーブ80の半径方向外壁85と接触し、半径方向外側リング114は、ハウジング24の半径方向内壁36と接触する。
【0093】
各軸受100、102の半径方向内側リング112は、スリーブ80の肩部92の面93、94の一方に軸線方向に面して配置される。各軸受100、102の半径方向外側リング114は、ハウジング24の肩部40の面42、44の一方に軸線方向に面して配置される。
【0094】
図2および図3に見られることができるように、第1および第2の軸受100、102は各々、ハウジング24の肩部40およびスリーブ80の肩部92の反対側に配置される。有利には、軸受100、102の半径方向外側リング114は、肩部40の面42、44の一方と接触する。図2および図3では、第1の軸受100の半径方向外側リング114は面42と接触し、一方、第2の軸受102の半径方向外側リング114は面44と接触する。
【0095】
半径方向内側リング112は、X軸線を中心にスリーブ80と共に回転するように構成される。半径方向外側リング114は、固定されるように構成される。したがって、第1および第2の軸受100、102は、固定されたハウジング24で、X軸線の周りで回転移動可能なスリーブ80の耐久性のある組み立てを可能にする。
【0096】
第1および第2の軸受100、102は、例えば、アンギュラコンタクト軸受である。
【0097】
第1の予荷重要素108および第2の予荷重要素110は、半径方向内周115および半径方向外周116を備える略環状の形状を有する。
【0098】
各予荷重要素108、110の半径方向内周115は、スリーブ80の半径方向外壁85に面して配置され、半径方向クリアランス118は、各予荷重要素108とスリーブ80との間に存在する。
【0099】
各予荷重要素108、110の半径方向外周116は、ハウジング24の半径方向内壁36に面して配置されている。特に、上述したように、第1の予荷重要素108は第1のタッピング47に接続され、一方、第2の予荷重要素110は第2のタッピング48に接続される。この目的のために、各予荷重要素の半径方向外周116は、タッピング47、48にそれぞれ相補的なねじ山119、120を備える。予荷重要素108、110はハウジング24にねじ込まれているため、これらの弾性部材104、106の各々の予荷重応力を調整するために、それらは、それぞれの弾性部材104、106に向かって、またはそこから離れるように軸線方向に移動されることができる。
【0100】
予荷重要素108、110が、それぞれ弾性部材104、105に向かう軸線方向移動を阻止するために、各予荷重要素108、110は、ハウジングの壁36が備え得る軸線方向ストッパに対して相補的な軸線方向ストッパ(図示せず)を備え得る。
【0101】
第1の弾性部材104は、第1の軸受100と第1の予荷重要素108との間のキャビティ99に配置される。第2の弾性部材106は、第2の軸受102と第2の予荷重要素110との間のキャビティ99に配置される。
【0102】
第1および第2の弾性部材104、106は、例えば、弾性ワッシャである。ワッシャ104、106は各々、スリーブ80の半径方向外壁85に面するように配置された半径方向内周121と、ハウジング24の半径方向内壁36に面するように配置された半径方向外周122とを備える。
【0103】
有利には、ワッシャ104、106は、略円錐台形状を有する。図2および図3に見られることができるように、ワッシャ104、106の半径方向内周121は、第1の予荷重要素108および第2の予荷重要素110にそれぞれ当接する。これにより、それぞれの予荷重要素108、110の軸線方向移動により、ワッシャ104、106の各々の予荷重応力を調整することが可能になる。
【0104】
ワッシャ104、106の半径方向外周122は、それぞれ第1の軸受100の外側リングおよび第2の軸受102の外側リングに当接するようになる。
【0105】
第1のワッシャ104の予荷重応力は、装置22が第1の閾値以下の軸力を受けられたときにワッシャ104が変形するのを防止する。装置22が受けられる軸力が第1の閾値よりも大きいとき、ワッシャ104は軸線方向に圧縮される。同様に、第2のワッシャ106の予荷重応力は、装置22が第2の閾値以下の軸力を受けられたときにワッシャ106が変形するのを防止する。装置22が受けられる軸力が第2の閾値よりも大きいとき、ワッシャ106は軸線方向に圧縮される。
【0106】
運動学的に、装置22は、第1のアセンブリ200および第2のアセンブリ300を備える。第1のアセンブリ200は、X軸線周りに回転移動可能である装置22の構成要素を備える。したがって、図2および図3の装置22の場合、第1のアセンブリ200は、ナット26と、スリーブ80と、閉鎖ナット96とを備える。第2のアセンブリ300は、固定された装置の構成要素を備える。図2および図3の装置22の場合、第2のアセンブリ300は、ハウジング24と、予荷重要素108、110と、弾性部材104、106とを備える。
【0107】
第1および第2のアセンブリ200、300は、有利には同軸線である。
【0108】
上述したように、ナット26のフランジ60の直径は、ハウジング24のボア38の直径よりも大きく、フランジ60とハウジング24の端部30とが軸線方向に互いに部分的に対向することを可能にする。このようにして、フランジ60の面62の部分123とハウジング24の第1の端部30の部分125との間に第1の軸線方向クリアランス201が形成される。以下に説明されるように、面62の部分123は軸線方向ストッパ123を構成し、一方、ハウジング24の端部30の部分125は相補的な軸線方向ストッパ125を構成する。好ましくは、第1のクリアランスの軸線方向長さは、装置22が受けられる軸力が第2の閾値よりも大きいときに第2の弾性部材106によって受けられる軸線方向圧縮の値以下である。
【0109】
上述したように、閉鎖面101の直径は、ハウジング24のボア38の直径よりも大きく、閉鎖面101とハウジング24の端部32とが軸線方向に互いに部分的に対向することを可能にする。したがって、閉鎖ナット96の閉鎖面101の部分127とハウジング24の第2の端部32の部分129との間に第2の軸線方向クリアランス301が形成される。以下に説明されるように、閉鎖面101の部分127は軸線方向ストッパ127を構成し、一方、ハウジング24の端部32の部分129は相補的な軸線方向ストッパ129を構成する。好ましくは、第2のクリアランスの軸線方向長さは、装置22が受けられる軸力が第1の閾値よりも大きいときに第1の弾性部材104によって受けられる軸線方向圧縮の値以下である。
【0110】
次に、図2および図3の実施形態による装置22の動作が説明される。
【0111】
装置22が第1または第2の閾値よりも大きい軸力を受けられていないことを意味する、通常の稼働条件下では、第1のアセンブリ200は、第2のアセンブリ300に対してX軸線周りに回転移動可能である。特に、アクチュエータ20は、第1のアセンブリ200をX軸線周りに回転させるが、第2のアセンブリ300は動かないままである。第1のアセンブリ200の回転は、上部で説明されたように、ねじ28をX方向に並進移動させる。これにより、シートの可動部分がその固定部分に対して移動する。
【0112】
有利には、通常の動作条件下では、第2のアセンブリ300に対する第1のアセンブリ200の軸線方向移動は生じない。したがって、軸線方向クリアランス201、301の長さは変更されない。
【0113】
図2に点線の曲線で概略的に示されるように、第1の閾値を超える軸力E1がナット26へ方向付けられる方向にねじ28に加えられると、力E1がねじ28からナット26およびスリーブ80に伝達される。これは、力E1の方向への第1のアセンブリ200の移動を引き起こす。第1のアセンブリ200の移動は、肩部92の一体的移動を引き起こし、これは、第1の軸受100の内側リング112への軸力E1の伝達、次に、力E1の方向に軸受100の外側リング114の移動を引き起こす。その後、外側リング114が第1の弾性部材104の変形、特に軸線方向圧縮を引き起こす。次いで、力E1が第1の予荷重要素108に伝達され、最終的にハウジング24を通って散逸される。
【0114】
上述したように、クリアランス301の長さは、力E1の特性を有する軸力の存在下で弾性部材104によって受けられる軸線方向圧縮の値以下である。したがって、弾性部材104の圧縮は、第1のアセンブリ200の軸線方向ストッパ127が第2のアセンブリ300の相補的な軸線方向ストッパ129に当接するようになるまでクリアランス301の長さを低減させる。これにより、一方では、第2のアセンブリ300に対する第1のアセンブリ200の軸線方向移動を阻止する。他方では、軸線方向ストッパ127と相補的な軸線方向ストッパ129との間に存在する摩擦のために、X軸線を中心とした第1のアセンブリ200の回転が制動される。
【0115】
図3の点線の曲線は、第2の閾値を超える軸力E2が、閉鎖ナット96へ方向付けられる方向にねじ28に加えられたときの装置22の力の経路を概略的に示す。この場合、力E2は、ねじ28からナット26およびスリーブ80に伝達される。これにより、力E2の方向に第1のアセンブリ200の移動を引き起こす。第1のアセンブリ200の移動により、肩部92の一体的移動を引き起こし、これにより、軸力E2が第2の軸受102の内側リング112に伝達され、次に、力E2の方向に軸受102の外側リング114の移動を引き起こす。その後、外側リング114が第2の弾性部材106の変形、特に軸線方向の圧縮を引き起こす。次いで、力E2が第2の予荷重要素110に伝達され、最終的にハウジング24を通って消散される。
【0116】
上述したように、クリアランス201の長さは、力E2の特性を有する軸力の存在下で弾性部材106によって受けられる軸線方向圧縮の値以下である。したがって、弾性部材104の圧縮は、第1のアセンブリ200の軸線方向ストッパ123が第2のアセンブリ300の相補的な軸線方向ストッパ125に当接するようになるまでクリアランス201の長さの低減を引き起こす。これにより、一方では、第2のアセンブリ300に対する第1のアセンブリ200の軸線方向移動を阻止する。他方では、X軸線を中心とした第1のアセンブリ200の回転は、軸線方向ストッパ123と相補的な軸線方向ストッパ125との間に存在する摩擦のために制動される。
【0117】
図4および図5は、装置22の第2の実施形態を示す。以下では、特に指示されない限り、図2および図3と同じ参照を記載する構成要素は、上述されたものと同様または同一であり、再度説明されない。
【0118】
この実施形態では、装置22は、ハウジング241と、ナット261と、ねじ281とを備える。
【0119】
ハウジング241およびねじ281はそれぞれ、図2および図3を参照して上述されたハウジング24およびねじ28と同様である。その結果、それらは再度説明されない。しかしながら、図4および図5には、予荷重要素108、110の軸線方向移動を阻止する第1および第2のストッパが示されていることに留意されたい。第1のストッパは符号243で示され、一方、第2のストッパは符号245で示されている。これらの図では、予荷重要素108、110に設けられた相補的なストッパも見える。ストッパ243のための相補的なストッパは符号247で示され、ストッパ245のための相補的なストッパは符号249で示されている。
【0120】
ナット261は、半径方向外壁54が環状フランジ60を備えないという点でナット26とは異なる。ねじ山272が半径方向外壁54に設けられる。ねじ山272は、例えば、環状である。ねじ山272は、第1の端部50を備える半径方向外壁54の端部255に備えられる。
【0121】
図4および図5から明らかなように、ナット261では、半径方向内壁56の第1の領域68はタッピング72を備えない。
【0122】
装置22は、閉鎖ナット961に一体化されたスリーブ801をさらに備える。
【0123】
閉鎖ナット961は、図2および図3の閉鎖ナット96と同様である。しかしながら、閉鎖ナット961では、閉鎖面101は、ハウジング241を通るボア38の直径よりも小さい直径を有する。したがって、閉鎖ナット961はハウジング241の内部に配置されてもよい。
【0124】
スリーブ801は、円筒形エンベロープ802およびクラウン803を備える。
【0125】
円筒形エンベロープ802は、第1の端部804と第2の端部805との間に延在し、半径方向外壁806および半径方向内壁807を備える。半径方向内壁807は、第1の端部804と第2の端部805との間で円筒形エンベロープ802を軸線方向に横断するボア808を画定する。ボア808は、図2および図3の装置22のスリーブ80のボア107と同様であり、ここでは再度説明されない。
【0126】
円筒形エンベロープ802の半径方向外壁806は、第1の端部804を備える端部810に半径方向突起809を備える。
【0127】
円筒形エンベロープ802の半径方向外壁806は、第2の端部805を備える端部811に、図2および図3を参照して上述されたねじ山88を備える。ねじ山88は、閉鎖ナット961のタッピング98と相補的である。
【0128】
クラウン803は、半径方向部分812および軸線方向部分813を備える。半径方向部分812は、円筒形エンベロープ802の第1の端部804と軸線方向部分813との間で、スリーブ801から半径方向外側に延在する。したがって、半径方向部分812の直径は、ボア808の直径よりも大きい。
【0129】
軸線方向部分813は、半径方向部分812と一体の端部と自由端との間で軸線方向に延在する。
【0130】
半径方向部分812の軸線方向内壁814および軸線方向部分813の半径方向内壁815は、ナット261と組み立てるための収容部分を画定する。特に、軸線方向部分813の半径方向内壁815は、ナット261の半径方向外壁54のねじ山272と相補的なタッピング816を備える。
【0131】
図4および図5の実施形態では、単一の軸受900が装置22に設けられている。軸受900は、図2および図3を参照して詳述されたものなどの半径方向内側リング112および半径方向外側リング114を備える。好ましくは、軸受900は複列軸受である。
【0132】
軸受900は、ハウジング241の肩部40に配置される。
【0133】
第1の環状スペーサ901および第2の環状スペーサ902は、円筒形エンベロープ802に接続されている。特に、スペーサ901、902は、円筒形エンベロープ802から半径方向に突出している。
【0134】
第1のスペーサ901は、円筒形エンベロープ802から径方向突起809に接触する。第2のスペーサ902は、閉鎖ナット907に接触する。
【0135】
有利には、スペーサ901、902は、軸受900の半径方向内側リング112のいずれかの側に軸線方向に1つ配置される。これにより、軸受900を所定位置に保持することが可能になる。
【0136】
スペーサ901および902は円筒形エンベロープに接続されているため、スリーブ801と一体的に移動する。
【0137】
第1の支持プレート904および第2の支持プレート905は、ハウジング241の肩部42のいずれかの側に1つ配置される。したがって、支持プレート904、905は、軸受900のいずれかの側に1つ配置される。有利には、上述の第1の閾値を超える軸力が装置22に作用していないとき、支持プレート904はスペーサ901と半径方向に対向する。同様に、上述の第2の閾値を超える軸力が装置22に作用していないとき、支持プレート905はスペーサ902と半径方向に対向する。
【0138】
支持プレート904、905は、ワッシャ104、106と軸受900の半径方向外側リング114との間に介在する。したがって、本実施形態では、ワッシャ104、106の半径方向外周122がそれぞれ支持プレート904および支持プレート905に対して軸線方向に当接するようになる。しかしながら、ワッシャ104、106は、軸受の半径方向外側リング814に対して軸線方向に間接的に(支持プレート904、905を通して)支持している。
【0139】
支持プレート904、905は、例えば、環状である。プレート904、905の軸線方向半断面は、有利には、逆L字形を有する。この逆L字形は、支持プレート904、905を、軸受900とワッシャ104およびワッシャ106の半径方向外周122との間にそれぞれ押し込むことによって、所定位置に保つことを可能にする。したがって、プレート904、905を装置22のいずれかの構成要素に固定する必要がない。こうして、後述するように、装置22に第1の閾値よりも大きな力が加えられたときには支持プレート904は軸線方向に移動され、装置22に第2の閾値よりも大きな力が加えられたときには支持プレート905は軸線方向に移動される。
【0140】
この実施形態では、第1のアセンブリ200は、ナット261と、スリーブ801と、閉鎖ナット907と、スペーサ901、902とを備えている。第2のアセンブリ300は、ハウジング241と、予荷重要素108、110と、弾性部材104、106とを備えている。その上、第1のスペーサ901と第1の弾性部材104との間には第1の軸線方向クリアランス201が存在し、一方、第2のスペーサ902と第2の弾性部材106との間には第2の軸線方向クリアランス301が存在している。
【0141】
次に、図4および図5の実施形態による装置22の動作が説明される。
【0142】
通常の動作条件下では、図4および図5の装置22の動作は、図2および図3の動作と同一である。
【0143】
図4に点線の曲線で概略的に示されているように、第1の閾値よりも大きい軸力E3がねじ28にナット261へ向かう方向に加えられると、力E3がねじ28からナット261およびスリーブ801に伝達される。これは、力E3の方向への第1のアセンブリ200の移動を引き起こす。次に、スペーサ902が軸受900の内側リング112に軸線方向に当接し、これは、リング112への軸力E3の伝達を引き起こす。力E3が軸受900の外側リング114に伝達され、これは、力E3の方向へのリング114の軸線方向の移動を引き起こす。次に、リング114が支持プレート904に軸線方向に当接し、それを力E3の方向に軸線方向に並進で駆動する。次いで、弾性部材104が軸線方向に圧縮される。次に、力E3が第1の予荷重要素108に伝達され、最終的にハウジング241を通って散逸される。
【0144】
弾性部材104の圧縮は、スペーサ901が弾性部材104に当接するようになるまで第2の軸線方向クリアランス201の長さが低減されることを引き起こす。一方では、これは第2のアセンブリ300に対する第1のアセンブリ200の軸線方向移動を阻止する。他方では、スペーサ901に対応する、軸線方向ストッパ127と弾性部材104に対応する、相補的な軸線方向ストッパ129との間に存在する摩擦のために、X軸線を中心とした第1のアセンブリ200の回転が制動される。
【0145】
図5に点線の曲線で概略的に示されているように、第2の閾値よりも大きい軸力E4がねじ28に閉鎖ナット907に向かう方向に加えられると、力E4がねじ28からナット261およびスリーブ801に伝達される。これは、力E4の方向への第1のアセンブリ200の移動を引き起こす。次に、スペーサ901が軸受900の内側リング112に当接し、これは、リング112への軸力E4の伝達を引き起こす。力E4が軸受900の外側リング114に伝達され、これは、力E4の方向へのリング114の軸線方向の移動を引き起こす。次に、リング114が支持プレート905に軸線方向に当接し、それを力E4の方向に軸線方向に並進で駆動する。次いで、弾性部材106が軸線方向に圧縮される。次に、力E4が第2の予荷重要素110に伝達され、最終的にハウジング241を通って散逸される。
【0146】
弾性部材106の圧縮は、スペーサ902が弾性部材106に当接するようになるまで第2の軸線方向クリアランス301の長さが低減されることを引き起こす。一方では、これは第2のアセンブリ300に対する第1のアセンブリ200の軸線方向移動を阻止する。他方では、スペーサ902に対応する、軸線方向ストッパ173と弾性部材106に対応する、相補的な軸線方向ストッパ129との間に存在する摩擦のゆえに、X軸線周りの第1のアセンブリ200の回転が制動される。
【0147】
特定の場合には、過剰荷重の場合(装置22に加えられる軸力が第1または第2の閾値よりも大きい場合を意味する)に伝達装置22が作動するために、ナット26、261の回転は十分なトルクで阻止されることに留意されたい。この目的のために、伝達装置22、特にナット26、261は、ナットを制動することを可能にする要素に接続されてもよい。例えば、ナットは、他の可能性の中でも、高い戻り止めトルク(コギングトルクとも呼ばれる)を伴う摩擦ブレーキまたはモータに接続されてもよい。国際電気標準会議(IEC)によって受け入れられた定義によれば、コギングトルクは「ロータおよびステータが最小磁気抵抗の位置にそれ自体を整列する傾向に起因する、非通電の永久磁石モータにおける周期的トルク」である。
【0148】
ナット26、261の制動を可能にする要素は、例えば、上述の減速機に備えられてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】