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特表2025-505998M個の入力を有するブール関数を光学的に計算する方法、及び関連する電気光学的計算システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-05
(54)【発明の名称】M個の入力を有するブール関数を光学的に計算する方法、及び関連する電気光学的計算システム
(51)【国際特許分類】
   G02F 3/00 20060101AFI20250226BHJP
   G06E 3/00 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
G02F3/00 501
G06E3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546151
(86)(22)【出願日】2023-02-01
(85)【翻訳文提出日】2024-10-01
(86)【国際出願番号】 IB2023050877
(87)【国際公開番号】W WO2023148631
(87)【国際公開日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】102022000001982
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516002716
【氏名又は名称】ウニヴェルシタ デッリ ストゥディ ディ ミラノ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】ポテンツァ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】パローリ,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ミラーニ,パオロ
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102AA30
2K102BA01
2K102BA05
2K102BA31
2K102BB01
2K102BC04
2K102BC07
2K102CA20
2K102DB08
2K102DC07
2K102DC09
2K102EA21
2K102EB02
2K102EB04
2K102EB10
2K102EB16
2K102EB20
2K102EB22
2K102EB26
(57)【要約】
本発明は、M個の入力を有するブール関数を光学的に計算するための方法(200)と、関連する電気光学的計算システム(100)とに関する。本システムは、M個の入力ビーム(L,L1)を利用可能にするコヒーレント又は部分的にコヒーレントな光放射ソース(1)と、M個の入力光ビームから変調された光ビーム(L2)を生成する光変調装置(3)と、光変調装置に機能的に関連付けられ、変調された光ビームを受信する1つ又は複数の光拡散装置(5)と、光変調装置(3)を制御するように構成された少なくとも1つの電子的処理装置(9,10)と、少なくとも1つの電子的処理装置(9,10)に機能的に関連付けられた1つ又は複数の電気光学的センサとを備える。本方法は、光変調装置が、M個の入力光ビームの2個の組み合わせからなる変調された光ビーム(L2)を生成するステップ(201a)を含む。2個の組み合わせのそれぞれにおいて、各入力光ビーム(L,L1)はオン状態(ON)又はオフ状態(OFF)をとることができる。本方法は、変調された光ビームを、1つ又は複数の光拡散装置により利用可能にすることで、変調された光ビームの組み合わせにそれぞれ関連付けられた2個のランダム又は擬似ランダムフィールド(20)を生成するステップ(201b)を含む。各ランダムフィールドは、観察空間(S)における点のランダム光強度変動の集合を表し、各擬似ランダムフィールドは、観察空間における点の決定論的光強度変動の集合を表す。本方法は、2個のランダム又は擬似ランダムフィールドのそれぞれに関連付けられた観察空間の1つ又は複数の領域の点の光強度を少なくとも1つのしきい値光強度値(TH)に対して比較することに基づいて、2個の生成されたランダム又は擬似ランダムフィールドのうちの1つにそれぞれ関連付けられた2個のブールフィールド(30)を導出するステップ(201c)を含む。各ブールフィールドは関連するランダム又は擬似ランダムフィールドの光強度が少なくとも1つのしきい値光強度値より大きい、観察空間の1つ又は複数の領域の第1の点であって、論理1を表す第1の点と、関連するランダム又は擬似ランダムフィールドの光強度が少なくとも1つのしきい値光強度値より小さい、観察空間の1つ又は複数の領域の第2の点であって、論理0を表す第2の点とを含む。本方法は、M個の入力を有する目標ブール関数(F)を選択するステップ(201d)と、少なくとも1つの電子的処理装置(9,10)が、選択された目標ブール関数を満たす2個の導出されたブールフィールド(30)のそれぞれの第1及び第2の点の間におけるアクティブ点(31)を識別するステップ(201e)と、識別されたアクティブ点に基づいて、M個の入力を有するブール関数を計算するステップ(202)とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学的計算システム(100)によって実施される、M≧1であるM個の入力を有するブール関数を光学的に計算するための方法(200)であって、
上記計算システムは、
- M個の入力ビーム(L,L1)を利用可能にするように構成されたコヒーレント又は部分的にコヒーレントな光放射ソース(1)と、
- 上記M個の入力光ビーム(L,L1)から変調された光ビーム(L2)を生成するように適応された光変調装置(3)と、
- 上記光変調装置(3)に機能的に関連付けられ、上記変調された光ビーム(L2)を受信する1つ又は複数の光拡散装置(5)と、
- 上記光変調装置(3)を制御するように構成された少なくとも1つの電子的処理装置(9,10)と、
- 上記少なくとも1つの電子的処理装置(9,10)に機能的に関連付けられた1つ又は複数の電気光学的センサとを備え、
上記方法(200)は、
- 上記光変調装置(3)が、上記M個の入力光ビーム(L,L1)の2個の組み合わせからなる上記変調された光ビーム(L2)を生成するステップ(201a)を含み、
上記2個の組み合わせのそれぞれにおいて、各入力光ビーム(L,L1)はオン状態(ON)又はオフ状態(OFF)をとることができ、
上記方法(200)は、
- 上記変調された光ビーム(L2)を、上記1つ又は複数の光拡散装置(5)により利用可能にすることで、上記変調された光ビーム(L2)の組み合わせにそれぞれ関連付けられた2個のランダム又は擬似ランダムフィールド(20)を生成するステップ(201b)を含み、
各ランダムフィールドは、観察空間(S)における点のランダム光強度変動の集合を表し、
各擬似ランダムフィールドは、上記観察空間(S)における点の決定論的光強度変動の集合を表し、
上記方法(200)は、
- 上記少なくとも1つの電子的処理装置(9,10)が、上記2個のランダム又は擬似ランダムフィールドのそれぞれに関連付けられた上記観察空間(S)の1つ又は複数の領域の点の光強度を少なくとも1つのしきい値光強度値(TH)に対して比較することに基づいて、上記1つ又は複数の電気光学的センサによって、上記2個の生成されたランダム又は擬似ランダムフィールドのうちの1つにそれぞれ関連付けられた2個のブールフィールド(30)を導出するステップ(201c)を含み、
上記2個のブールフィールド(30)のそれぞれは、
関連する上記ランダム又は擬似ランダムフィールドの光強度が上記少なくとも1つのしきい値光強度値(TH)より大きい、上記観察空間(S)の1つ又は複数の領域の第1の点であって、論理1を表す第1の点と、
関連する上記ランダム又は擬似ランダムフィールドの光強度が上記少なくとも1つのしきい値光強度値(TH)より小さい、上記観察空間(S)の上記1つ又は複数の領域の第2の点であって、論理0を表す第2の点とを含み、
上記方法(200)は、
- 計算されるM個の入力を有する目標ブール関数(F)を選択するステップ(201d)と、
- 上記少なくとも1つの電子的処理装置(9,10)が、上記M個の入力を有する選択された目標ブール関数(F)を満たす上記2個の導出されたブールフィールド(30)のそれぞれの上記第1及び第2の点の間におけるアクティブ点(31)であって、上記M個の入力を有するブール関数を光学的に符号化するアクティブ点(31)を識別するステップ(201e)と、
- 上記電気光学的計算システム(100)が、上記識別されたアクティブ点(31)に基づいて、上記M個の入力を有するブール関数を計算するステップ(202)とを含む、
方法。
【請求項2】
上記2個の生成されたランダム又は擬似ランダムフィールドのうちの1つにそれぞれ関連付けられた上記2個のブールフィールド(30)を導出するステップ(201c)は、上記2個のランダム又は擬似ランダムフィールドのそれぞれに関連付けられた上記観察空間(S)の1つ又は複数の領域の点の光強度を、第1(TH1)及び少なくとも第2(TH2)のしきい値光強度値に対して比較するステップを含み、
上記2個のブールフィールド(30)のそれぞれは、
関連する上記ランダム又は擬似ランダムフィールドの光強度が上記第1(TH1)及び少なくとも第2(TH2)のしきい値光強度値の間にある、上記観察空間(S)の1つ又は複数の領域のさらなる第1の点であって、論理1を表すさらなる第1の点と、
関連する上記ランダム又は擬似ランダムフィールドの光強度が上記第1(TH1)及び少なくとも第2(TH2)のしきい値光強度値を境界とする光強度範囲の外部にある、上記観察空間(S)の上記1つ又は複数の領域のさらなる第2の点であって、論理0を表すさらなる第2の点とを含む、
M個の入力を有するブール関数を光学的に計算するための請求項1記載の方法(200)。
【請求項3】
上記計算するステップ(202)は、
- 上記2個のブールフィールド(30)のそれぞれに関して識別されたアクティブ点(31)に関連付けられた第1の光ビーム(L4)を、上記システム(100)の検出領域(12)に伝送するステップ(2021)と、
- 上記検出領域(12)に伝送された光強度を、少なくとも1つのアクティベーション光強度しきい値(THa)に対して比較するステップ(2022)と、
- 上記検出領域(12)に伝送された光強度が上記少なくとも1つのアクティベーションしきい値(THa)より大きい場合には論理値1を、又は、上記検出領域(12)に伝送された光強度が上記少なくとも1つのアクティベーションしきい値(THa)より小さい場合には論理値0を、上記M個の入力を有するブール関数の出力状態(U1)に対して関連付けるステップ(2023)とをさらに含む、
M個の入力を有するブール関数を光学的に計算するための請求項1又は2記載の方法(200)。
【請求項4】
上記伝送するステップ(2021)は、
- 上記変調された光ビーム(L2)を上記システム(100)のさらなる光変調装置(4)に向かって拡散するステップと、
- 上記さらなる光変調装置(4)が、上記識別されたアクティブ点(31)に関連付けられた上記第1の光ビーム(L4)を少なくとも1つの集束レンズ(11)に向かって偏向させるステップと、
- そのような少なくとも1つの集束レンズ(11)が、上記偏向された第1の光ビーム(L4)を集中させることで、上記検出領域(12)に向かって伝送される第1の光ビーム(L5)を生成するステップとをさらに含む、
M個の入力を有するブール関数を光学的に計算するための請求項3記載の方法(200)。
【請求項5】
上記比較するステップ(2022)は、
- 上記システム(100)の第1の電気光学的センサ(13)を介して、上記検出領域(12)に伝送された光強度を検出し、それを電気信号(E)に変換するステップと、
- 電子的増幅手段(14)が、上記電気信号(E)を増幅して第1の電気信号(E1)を生成するステップと、
- 電子的比較手段(15)に関連付けられた少なくとも1つの電気的アクティベーションしきい値(ETHa)であって、上記少なくとも1つアクティベーション光強度しきい値(THa)を表す少なくとも1つ電気的アクティベーションしきい値(ETHa)に対して、上記第1の電気信号(E1)を比較するステップとをさらに含む、
M個の入力を有するブール関数を光学的に計算するための請求項3又は4記載の方法(200)。
【請求項6】
上記比較するステップは、第1(THa1)及び少なくとも第2(THa2)のアクティベーション光強度しきい値をそれぞれ表す第1(ETHa1)及び少なくとも第2(ETHa2)の電気的アクティベーションしきい値に対して、上記第1の電気信号(E1)を比較するステップを含む、
M個の入力を有するブール関数を光学的に計算するための請求項3記載の方法(200)。
【請求項7】
単一のしきい値の場合、上記アクティベーション光強度しきい値(THa)は次式を用いて計算可能であり、
THa=N*TH*k
ここで、Nは、上記検出領域(12)に向かって伝送されるアクティブゾーン(31)の個数であり、THは、上記少なくとも1つのしきい値光強度値であり、kは、上記アクティブゾーンから上記検出領域(12)に転送される光においてアクティブゾーン光強度(31)がどの程度にわたって減衰されるかを示す減衰定数である、
M個の入力を有するブール関数を光学的に計算するための請求項3~5のうちの1つに記載の方法(200)。
【請求項8】
2つ以上の複数のアクティベーションしきい値の場合、上記アクティベーション光強度しきい値(THaj)は次式を用いて算可能であり、
THaj=N*THj*k
ここで、THjは、上記比較ステップ(201c)において使用される光強度しきい値を示し、j=1,2,3,4…である、
M個の入力を有するブール関数を光学的に計算するための請求項3~6のうちの1つに記載の方法(200)。
【請求項9】
上記識別するステップ(201e)は、
- 上記M個の入力光ビーム(L,L1)の2個の組み合わせのそれぞれに関して、上記M個の入力を有するブール関数を光学的に符号化するアクティブ点(31)のうちから、上記アクティブ点におけるランダム又は擬似ランダムフィールドの光強度と上記少なくとも1つのしきい値光強度値(TH)との間の差の絶対値が予め設定された正のパラメータ(P)よりも常に大きくなるようにそれぞれ設定された第1のアクティブ点(31’)を選択するステップ(2010)と、
- 上記電気光学的計算システム(100)が、上記選択された第1のアクティブ点(31’)に基づいて、上記M個の入力を有するブール関数を計算するステップ(202)とをさらに含む、
M個の入力を有するブール関数を光学的に計算するための請求項1~8のうちの1つに記載の方法(200)。
【請求項10】
上記計算するステップ(202)は、
- 上記2個のブールフィールド(30)のそれぞれに関して識別された第1のアクティブ点(31’)に関連付けられた第1の光ビーム(L4)を、上記システム(100)の検出領域(12)に向かって伝送するステップ(2021)と、
- 上記検出領域(12)に伝送された光強度を、少なくとも1つのアクティベーション光強度しきい値(THa)に対して比較するステップ(2022)と、
- 上記検出領域(12)に伝送された光強度が上記少なくとも1つのアクティベーションしきい値(THa)より大きい場合には論理値1を、又は、上記検出領域(12)に伝送された光強度が上記少なくとも1つのアクティベーションしきい値(THa)より小さい場合には論理値0を、上記M個の入力を有するブール関数の出力状態(U1)に対して関連付けるステップ(2023)とをさらに含む、
M個の入力を有するブール関数を光学的に計算するための請求項9記載の方法(200)。
【請求項11】
M≧1であるM個の入力を有する1つ又は複数のブール関数を計算するための電気光学的システム(100)であって、上記システムは、
- M個の入力ビーム(L,L1)を利用可能にするように構成されたコヒーレント又は部分的にコヒーレントな光放射ソース(1)と、
- 上記M個の入力光ビーム(L,L1)から変調された光ビーム(L2)を生成するように適応された光変調装置(3)と、
- 上記光変調装置(3)に機能的に関連付けられ、上記変調された光ビーム(L2)を受信する1つ又は複数の光拡散装置(5)と、
- 上記光変調装置(3)を制御するように構成された少なくとも1つの電子的処理装置(9,10)と、
- 上記少なくとも1つの電子的処理装置(9,10)に機能的に関連付けられた1つ又は複数の電気光学的センサと、
- 上記1つ又は複数の光拡散装置(5)から、拡散された光ビーム(L3)を受信するように適応された光反射素子(6)であって、観察空間(S)に向かって、及び/又は、上記少なくとも1つの電子的処理装置(9,10)によって制御されるさらなる光変調装置(4)に向かって、上記拡散された光ビーム(L3)を伝送するように構成された光反射素子(6)と、
- 上記さらなる光変調装置(4)から第1の光ビーム(L4)を受けて、検出領域(12)に向かって伝送される上記第1の光ビーム(L5)を集中させるように適応された1つ又は複数の集束レンズ(11)と、
- 上記伝送された第1の光ビーム(L5)のそれぞれを各電気信号(E)に変換するように構成された第1の電気光学的センサ(13)と、
- 上記第1の電気光学的センサ(13)の出力に接続され、上記電気信号(E)から第1の電気信号(E1)を生成する電子的増幅手段(14)と、
- 上記電子的増幅手段(14)に接続され、上記第1の電気信号(E1)を入力として受信する電子的比較手段(15)とを備え、
上記少なくとも1つ電子的処理装置(9,10)は、請求項1~10のうちの1つに記載の方法(200)のステップを実行するように構成された、
システム(100)。
【請求項12】
上記光反射素子(6)は、上記少なくとも1つの電子的処理装置(9,10)によって、上記拡散された光ビーム(L3)が観察空間(S)に向かって伝送される第1の動作位置から、上記拡散された光ビーム(L3)が上記少なくとも1つの電子的処理装置(9,10)によって制御される上記さらなる光変調装置(4)に向かって伝送される第2の動作位置に、可逆的に移動可能なミラーである、
請求項11記載の電気光学的システム(100)。
【請求項13】
上記観察空間(S)は、ディジタルカメラの電荷結合センサ又は電荷結合素子(CCD)の平面(7)である、
請求項11又は12記載の電気光学的システム(100)。
【請求項14】
吸収材料からなり、上記1つ又は複数の光拡散装置(5)及び上記観察空間(S)の間に配置された第1のセパレータ(8)と、
上記第1のセパレータ(8)に類似し、上記1つ又は複数の光拡散装置(5)及び上記さらなる光変調装置(4)の間に配置された第2のセパレータ(8’)とをさらに備える、
請求項11~13のうちの1つに記載の電気光学的システム(100)。
【請求項15】
請求項1~10に記載の方法を実施するために、M≧1であるM個の入力を有する1つ又は複数のブール関数を計算するための電気光学的システム(100)の少なくとも1つの電子的処理装置(9,10)によって実行可能なアプリケーションコードを含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ又は複数の入力、例えばM個の入力を有する1つ又は複数のブール関数を計算又は光学的に生成する方法に関する。本発明はまた、この方法を実施する、ブール関数を光学的に計算するための光学的電子的計算システムに関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、ディジタルデータに対する計算及び/又は処理を実行するために使用される電子デバイスは、制限された実行速度によって特徴付けられる。その理由は、計算装置を形成する基本電子部品、すなわちトランジスタが、そのような電子部品の有限のサイズと、部品中の固有容量の存在との両方によって決まる、信号自体の伝搬遅れによって制限される信号処理速度を有することにある。
【0003】
互いにカスケードで接続された電子デバイスの個数が増大するときに信号伝搬遅延は増大し、従って、例えば論理ゲート及びプロセッサのような、多数のトランジスタからなる複雑なデバイス及び装置において増大する。
【0004】
そのような欠点を回避するために、最近になって、光放射を用いて情報を転送及び処理することが提案されている。
【0005】
この目的で開発されたいくつかの最近の技術的解決方法は、例えば光タイプ論理ゲート又は光プロセッサのような、複雑な計算装置を作成するために組み合わせ可能である、光トランジスタに等価なデバイスを作成することを目的とする。
【0006】
例えば、これらの解決方法のうちのいくつかは、光キャビティの強め合う干渉及び弱め合う干渉の特性を利用することで、バイナリ情報が関連付けられうる光放射強度を変調し、強め合う干渉の場合には、高いほうの光放射強度が論理状態「1」に関連付けられ、弱め合う干渉の場合には、低いほうの光放射強度が論理状態「0」に関連付けられる。
【0007】
他の解決方法は、例えば結晶又は液晶のような、材料の非線形光学効果を利用することで、制御ビームを介して主光ビームの光放射強度又は方向を制御する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、そのような既知の光学的解決方法は、集積スケールに関して電子デバイス及び回路を用いて入手可能であるものに匹敵する複雑な装置を実装するように構成された、トランジスタに類似した光デバイスを作成できない、という欠点を有する。
【0009】
さらに、これらの単に光学的なアプローチの共通の欠点は、現在、複数の光デバイスを組み合わせて、電子デバイスを用いて取得可能であるものに匹敵する小型の装置サイズ及び論理ゲートファンアウト値を維持しながら、複雑な計算装置を作成することが不可能であるということにある。特に、相互にカスケードで接続された構成要素間の正しい情報転送を示すパラメータである、無理のないファンアウト値を達成することは、そのようなアプローチの制限である。
【0010】
そのような欠点を部分的に回避するために、特に、電気光学的コンピュータを作成するために、ハイブリッド解決方法が提案された。この場合、最初に、光学タイプの情報が電気タイプの情報に変換され、後者は従来の電子的処理装置によって処理され、処理結果は光学タイプの情報に変換して戻される。
【0011】
そのようなハイブリッド解決方法は、複雑な計算装置の小型化と、相互にカスケードで接続された構成要素間における情報の転送とに関連付けられた欠点の緩和を可能にしたが、既知の電気光学的解決方法はなお、最大の達成可能な計算速度に関する制限を有する。
【0012】
従って、従来の電気光学的解決方法の制限及び欠点を克服することを可能にする、ディジタルデータ及び情報を光学的に処理するための、特にブール関数を光学的に計算するための解決方法に対する必要性が強く感じられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明の目的は、既知のタイプの光学的又は電気光学的技術で作成された計算装置の制限を少なくとも部分的に克服することを可能にする、1つ又は複数の入力、例えばM個の入力を有する1つ又は複数のブール関数を生成又は光学的に計算するための方法を提供することにある。
【0014】
そのような目的は、請求項1に係る、例えばM個の入力を有する、ブール関数を光学的に計算するための方法によって達成される。ここで、M≧1である。
【0015】
本発明はまた、請求項11に係る、ブール関数を光学的に計算するための光学的電子的計算システムに関する。
【0016】
概略的かつ例示的な実施形態では、計算システムは、
- M個の入力ビーム(L,L1)を利用可能にするように構成されたコヒーレント又は部分的にコヒーレントな光放射ソース(1)と、
- 上記M個の入力光ビーム(L,L1)から変調された光ビーム(L2)を生成するように適応された光変調装置(3)と、
- 上記光変調装置(3)に機能的に関連付けられ、上記変調された光ビーム(L2)を受信する1つ又は複数の光拡散装置(5)と、
- 上記光変調装置(3)を制御するように構成された少なくとも1つの電子的処理装置(9,10)と、
- 上記少なくとも1つの電子的処理装置(9,10)に機能的に関連付けられた1つ又は複数の電気光学的センサと、を備える。
【0017】
さらに、本発明の方法(200)は、
- 上記光変調装置(3)が、上記M個の入力光ビーム(L,L1)の2個の組み合わせからなる上記変調された光ビーム(L2)を生成するステップ(201a)を含み、
上記2個の組み合わせのそれぞれにおいて、各入力光ビーム(L,L1)はオン状態(ON)又はオフ状態(OFF)をとることができ、
本発明の方法(200)は、
- 上記変調された光ビーム(L2)を、上記1つ又は複数の光拡散装置(5)により利用可能にすることで、上記変調された光ビーム(L2)の組み合わせにそれぞれ関連付けられた2個のランダム又は擬似ランダムフィールド(20)を生成するステップ(201b)を含み、
各ランダムフィールドは、観察空間(S)における点のランダム光強度変動の集合を表し、
各擬似ランダムフィールドは、上記観察空間(S)における点の決定論的光強度変動の集合を表し、
本発明の方法(200)は、
- 上記少なくとも1つの電子的処理装置(9,10)が、上記2個のランダム又は擬似ランダムフィールドのそれぞれに関連付けられた上記観察空間(S)の1つ又は複数の領域の点の光強度を少なくとも1つのしきい値光強度値(TH)に対して比較することに基づいて、上記1つ又は複数の電気光学的センサによって、上記2個の生成されたランダム又は擬似ランダムフィールドのうちの1つにそれぞれ関連付けられた2個のブールフィールド(30)を導出するステップ(201c)を含み、
上記2個のブールフィールド(30)のそれぞれは、
関連する上記ランダム又は擬似ランダムフィールドの光強度が上記少なくとも1つのしきい値光強度値(TH)より大きい、上記観察空間(S)の1つ又は複数の領域の第1の点であって、論理1を表す第1の点と、
関連する上記ランダム又は擬似ランダムフィールドの光強度が上記少なくとも1つのしきい値光強度値(TH)より小さい、上記観察空間(S)の上記1つ又は複数の領域の第2の点であって、論理0を表す第2の点とを含み、
本発明の方法(200)は、
- 計算されるM個の入力を有する目標ブール関数(F)を選択するステップ(201d)と、
- 上記少なくとも1つの電子的処理装置(9,10)が、上記M個の入力を有する選択された目標ブール関数(F)を満たす上記2個の導出されたブールフィールド(30)のそれぞれの上記第1及び第2の点の間におけるアクティブ点(31)であって、上記M個の入力を有するブール関数を光学的に符号化するアクティブ点(31)を識別するステップ(201e)と、
- 上記電気光学的計算システム(100)が、上記選択された第1のアクティブ点(31)に基づいて、上記M個の入力を有するブール関数を計算するステップ(202)とを含む。
【0018】
本発明の方法及び関連する計算システムは、優位点として、既知の解決方法で達成可能なものよりも高い計算速度を保証する。
【0019】
さらに、上述した方法及び関連する計算システムは、例えば、ブール代数NOT、OR、AND、XOR、EXOR関数のような基本的ブール関数、又は、複雑なブール関数を生成するために使用されてもよい。そのような基本的関数は、さらなるブール関数を定式化するために組み合わされてもよい。
【0020】
ブール関数を光学的に計算するための方法及び関連する光学的電子的計算システムの好ましい及び有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の1つ又は複数のブール関数を光学的に計算するための方法を実施するように構成された光学的電子的計算システムの例示的な実施形態を概略的に示す図である。
図2】2入力ブールEXOR関数を光学的に計算する本発明の方法の符号化ステップにおいて実行される動作シーケンスの例を概略的に示す図である。
図3A図2のブールEXOR関数の光学的実装に関連する、ランダム又は擬似ランダムフィールドのアクティブゾーンの光放射強度を示す図である。
図3B図2のブールEXOR関数の光学的実装に関連する、対応するブールフィールドの光放射強度を示す図である。
図4図2の2入力ブールEXOR関数を光学的に計算する本発明の方法のエラー低減ステップにおいて実行される動作の例を概略的に示す図である。
図5】ブール関数を光学的に計算するための本発明の方法の重畳ステップにおいて実行される動作の例を概略的に示す図である。
図6図2の2入力EXORブール関数を光学的に計算するための本発明の方法の計算ステップを概略的に示す図である。
図7】本発明に係るブール関数を光学的に計算するための方法の動作ステージをフローチャートにより示す図である。
図8図7のブール関数を光学的に計算するための本発明の方法の重畳ステップの動作ステージをフローチャートにより示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のさらなる特徴及び利点は、下記の好ましい実施形態の説明から、添付の図面を参照して、非限定的な表示によって与えられて、明らかになるであろう。
【0023】
前述の図面において同様又は等価な構成要素は同じ参照符号によって示される。
【0024】
図1を参照すると、参照符号100によって、本発明に係るM個の入力を有するブール関数を光学的に計算するための、又は、複数のブール関数を同時に計算するための方法200を実施するように構成された電気光学的計算システムの例が全体として示される。ここで、M≧1である。
【0025】
本発明に係る1つ又は複数のブール関数を光学的に計算するためのそのような方法200は、図2図3A図3B図4図5図6図7図8を参照して説明される。
【0026】
下記の説明において、用語ランダムフィールドは、観察空間Sにおける点のランダム光強度変動の集合を示すために使用される。
【0027】
用語擬似ランダムフィールドは、観察空間Sにおける点の決定論的光強度変動を示すために使用される。
【0028】
言いかえると、ランダムフィールドは未知であって特徴付けられる必要があり、一方、擬似ランダムフィールドはが既知の特徴を有する。
【0029】
観察空間Sは、三次元空間又は3D空間と、平面又は任意の2D面、球、直線、又は三次元空間の任意の分離した領域のような、三次元空間の任意の部分集合との両方も意味する。特定の、ただし限定するものではない例示的な実施形態では、観察空間Sは、電荷結合センサ又はCCD(電荷結合素子)センサの表面である。
【0030】
ランダム又は擬似ランダムフィールドは、観察空間Sよりも大きくなってもよいことに注意する。従って、観察空間Sは、ランダム又は擬似ランダムフィールドの一部にアクセスすることを可能にする。
【0031】
概して、提案する方法200は、コヒーレント又は部分的にコヒーレントなタイプの電磁放射、すなわち、単一のソース1、典型的にはレーザソースによって発生されるコヒーレント又は部分的にコヒーレントな光ビームを使用することにある。代替として、方法200は、ソース自体によって生成されたコヒーレンな光ビームを複数の光ビームに分割することで取得された、独立したコヒーレント又は部分的にコヒーレントなM個のソースを使用する。そのようなM個の光ビームは、上言した電気光学的計算システム100のM個の入力である。
【0032】
本発明において、光ビームは、光線の組み合わせを意味する。
【0033】
コヒーレント又は部分的にコヒーレントなタイプの前述した電磁放射は、例えば、可視スペクトルにおける放射、又は、赤外線又は紫外線放射である。
【0034】
概して、図1を参照すると、電気光学的計算システム又はシステム100は、M個の入力光ビームL,L1を利用可能にするように構成された、コヒーレント又は部分的にコヒーレントな光放射ソース1を備える。
【0035】
特に、各光ビームは、他のものに無関係にオン又はオフされてもよく、従って、オン光ビームに論理状態「1」を関連付け、オフ光ビームに論理状態「0」を関連付けることができる。
【0036】
さらに、システム100は、M個の入力光ビームL,L1から、変調された光ビームL2を生成するように適応された光変調装置3を備える。システム100はさらに、光変調装置3に機能的に関連付けられ、変調された光ビームL2を受信する1つ又は複数の光拡散装置5と、そのような光変調装置3を制御するように構成された少なくとも1つの電子的処理装置9,10とを備える。さらに、システム100は、少なくとも1つの電子的処理装置9,10に機能的に関連付けられた1つ又は複数の電気光学的センサを備える。
【0037】
特に、変調されたM個の光ビームL2は、自由空間において伝搬するように構成され、又は、光ファイバーケーブルを用いて光学的にガイドされてもよく、前述した1つ又は複数の拡散器5に向かって進み、ランダム又は擬似ランダムフィールドを生成し、それは、本発明の方法200による計算のために使用される。
【0038】
言いかえると、ランダム又は擬似ランダムフィールドは、観察空間S、例えば三次元観察空間において、前述した1つ又は複数の拡散装置5によって生成される。
【0039】
システム100のさらなる構造的特徴については詳細後述する。
【0040】
本発明に係るM個の入力を有するブール関数を光学的に計算する方法200の概略的かつ例示的な実施形態を、図7を参照してフローチャートにより示す。ここで,M≧1である。本方法は、開始ステップの符号STRで開始し、終了ステップの符号EDで終了する。
【0041】
そのような方法200は、M個の入力を有する1つ又は複数のブール関数の計算又は生成で終了する動作ステップを含む。そのような動作するステップは、符号化ステップ、エラー低減ステップ、重畳ステップ、及び計算ステップを含む。
【0042】
図2図3A図3B、及び図7を参照すると、方法200は、光変調装置3によって、 上記M個の入力光ビームL,L1の2個の組み合わせからなる変調された光ビームL2を生成するステップ201aを含む。2個の組み合わせの各々において、各入力光ビームL,L1は、オン状態(ON)又はオフ状態(OFF)のいずれかをとりうる。
【0043】
さらに、方法200は、変調された光ビームL2を、前述した1つ又は複数の光拡散装置5により利用可能にすることで、変調された光ビームL2の組み合わせにそれぞれ関連付けられた2個のランダム又は擬似ランダムフィールド20を生成するステップ201bを含む。
【0044】
さらに、方法200は、少なくとも1つ)電子的処理装置9,10によって、2個のランダム又は擬似ランダムフィールドのそれぞれに関連付けられた観察空間Sの1つ又は複数の領域における点の光強度を少なくとも1つのしきい値光強度値THに対して比較することに基づいて、前述した1つ又は複数の電気光学的センサを用いて、生成された2個のランダム又は擬似ランダムフィールドのうちの1つにそれぞれ関連付けられた)2個のブールフィールド30を検出するステップ201cを含む。
【0045】
個のブール30フィールドの各々は、関連するランダム又は擬似ランダムフィールドの光強度が少なくとも1つのしきい値光強度値THより大きい、観察空間の1つ又は複数の領域の第1の点であって、従って、論理1を表す第1の点と、関連するランダム又は擬似ランダムフィールドの光強度が少なくとも1つのしきい値光強度値THより小さい、観察空間Sの上記1つ又は複数の領域の第2の点であって、従って、論理0を表す第2の点とを含むことに注意する。
【0046】
方法200は、計算されるM個の入力を有する目標ブール関数Fを選択するステップ201dをさらに含む。
【0047】
さらに、方法200は、少なくとも1つの電子的処理装置9.10によって、M個の入力を有する選択された目標ブール関数Fを満たす導出された2個のブール関数30の各々の第1及び第2の点の間におけるアクティブ点31を識別すること201eを可能にする。
【0048】
言いかえると、そのようなアクティブ点31は、M個の入力を有するブール関数の光学的符号化であり、上述した方法200のステップはともに、本発明の方法の符号化ステップ201を形成する。
【0049】
符号化ステップ201の少なくとも1つのしきい値THに対する比較処理は、M個の入力の各組み合わせに対して少なくとも1つしきい値を適用することにあり、これにより、観察空間Sの1つ又は複数の領域におけるすべての点は、ランダム又は擬似ランダムフィールドの放射強度がそのような少なくとも1つしきい値THより高いならば、1(又は否定ブールフィールドの場合には0)とみなされ、又は、ランダム又は擬似ランダムフィールドの放射強度が少なくとも1つしきい値THより低いならば、0(又はブール否定フィールドの場合には1)とみなされる、ということに注意する。
【0050】
例示的な実施形態では、方法200は、生成された2個のランダム又は擬似ランダムフィールド20のうちの1つにそれぞれ関連付けられた2個のブールフィールド30を導出するステップ201cを含み、それは、2個のランダム又は擬似ランダム20フィールドのそれぞれに関連付けられた観察空間Sの1つ又は複数の領域の点の光強度を、第1、TH1及び少なくとも第2、TH2のしきい値光強度値に対して比較するステップを含む。
【0051】
この場合、2個のブールフィールド30のそれぞれは、関連するランダム又は擬似ランダムフィールドの光強度が第1、TH1及び少なくとも第2、TH2のしきい値光強度値の間にある、観察空間Sの1つ又は複数の領域のさらなる第1の点であって、従って、論理1を表すさらなる第1の点と、関連するランダム又は擬似ランダムフィールドの光強度が第1、TH1及び少なくとも第2、TH2のしきい値光強度値を境界とする光強度範囲の外部にある、観察空間Sの1つ又は複数の領域のさらなる第2の点であって、従って、論理0を表すさらなる第2の点と
を含む。
【0052】
符号化ステップ201で導出されるブールフィールド30は、次式によって形式的に表されてもよい。
【0053】
Ci(x):S⊆R→[0,1] (1)
【0054】
ここで、Ciがブールフィールドであり、xはブールフィールドの空間座標を示し、Sは観察空間であり、iは入力の組み合わせi=(a,…,a)を示す。ここで、a,…,aはブール入力を示す。
【0055】
方法200の符号化ステップ201は、導出されたブールフィールド30から目標ブール関数Fが満たされるように、観察空間Sの点又は部分を識別するステップ201eを含む。
【0056】
目標ブール関数Fは、入力iの各組み合わせを出力のただ1つの値に対して関連付ける関係であることに注意する。関数がブール値を有するので、出力の値は論理値1又は0をとりうる。
【0057】
概して、目標ブール関数Fは、下記の関係によって定義されうる。
【0058】
F(i):B→{0,1} (2)
【0059】
ここで、B={0,1}はブール値の集合である。
【0060】
従って、目標ブール関数Fを満たす観察空間Sの1つ又は複数の領域の点又は部分は、次式の関係を満たす空間Sの点である。
【0061】
x:F(i)=C(x) ∀i (3)
【0062】
上述したことから、また、式(3)に基づいて、詳しくは、入力iの各組み合わせに関して、目標ブール関数F(iの関数)の値が、点xにおける(組み合わせiによって生成された)ブールフィールドCiの値に等しくなるように、アクティブ点31が観察空間Sの点xであることに注意する。
【0063】
従って、入力iの各組み合わせに関して、目標ブール関数F(iの関数)の値が、点xにおける(組み合わせiによって生成された)ブールフィールドCiの値に等しくなるように、アクティブ点を識別する上述のステップ201eは、観察空間Sの点xを追跡するステップと同時に行われる。
【0064】
アクティブ点を識別するそのような動作は、処理装置9および10によって、観察フィールドxにおける任意の点に関して、特に、上に示した式(3)を検証する、すなわち、入力の任意の組み合わせに関して等式F(i)=Ci(x)が成り立つことを検証することによって実行される。
【0065】
点xにおけるそのような式が、入力の任意の組み合わせに対して有効である場合、考慮される点xはアクティブ点31として識別される。逆に、入力のただ1つの組み合わせに関して、点xにおける等式F(i)=Ci(x)が有効でない場合、そのような点はアクティブ点ではなく、非アクティブ点として示されてもよい。
【0066】
さらに、上述したように、拡散光ビームは、観察空間Sにおけるランダム又は擬似ランダムに変化する強度分布を形成するようなものである。そのような強度はランダム又は擬似ランダムであるが、ステップ201cによって、入力の各組み合わせに対して1つずつの、2個のブールフィールドを導出することができる。そのようなブールフィールドは、観察空間における「1」又は「0」値の分布である。
【0067】
従って、ブールフィールド及び目的関数Fを知ることで、処理装置9及び10により前述の式(3)を検証することにより、アクティブ点31を非アクティブ点から識別することができる。言いかえると、アクティブ点を識別することは、式(3)を利用して観察空間Sにおけるそのような点の位置xを識別することを意味する。
【0068】
アクティブ点は相互に分離されることを必要とせず、実際に、それらは、観察空間Sの連続エリアをカバーしてもよい。しかしながら、そのようなアクティブ点のすべては式(3)を満たす必要があり、このことは、処理装置9及び10によって検証されうる。
【0069】
アプリケーションの観点からは、本発明は、三次元3D観察空間Sに分布した1つ又は複数の電気光学的センサを備える電気光学的計算システムを作成することを含む。特に、そのようなセンサは、必ずしも適切に定義された表面に沿うことなく、分布してもよい。図1の例では、観察空間Sは、CCDセンサの面に一致するので、二次元の(2D)であることに注意する。
【0070】
各センサは、三次元観察空間Sの所与の場所xにおけるランダム又は擬似ランダムフィールドの強度を測定するように構成される。そのような強度から、処理装置9,10によって、センサの様々な位置xにおけるブールフィールドを導出することができる。
【0071】
さらに、式(3)を用いて、アクティブ点31は、処理装置9,10によって識別されうる。観察空間Sに位置したそのような電気光学的システムセンサは、処理装置9,10に機能的に関連付けられる。従って、繰り返しになるが、そのような処理装置9及び10は、すべての点xにおいて、かつ、入力iのすべての組み合わせに対して、式(3)を検証するように適応される。
【0072】
さらに、観察空間におけるアクティブ点31が事前に知られていないことに注意する価値がある。従って、本発明では、所与の点の前又は後に電気光学的センサを配置することは必要ではない。実際に、導出されたブールフィールド30(すなわちアクティブ点)から目標ブール関数Fが満たされるように、観察空間Sの点又は部分を識別するステップ201eは、電気光学的センサがアクティブ点にあるか、それとも非アクティブ点にあるかを決定するように適応される。
【0073】
前述した符号化ステップ201の後、本発明の方法200は、電気光学的計算システム100によって、識別されたアクティブ点31に基づいて、M個の入力を有するブール関数を計算する概略ステップ202を含む。
【0074】
そのような計算ステップ202の例示的な実施形態は、図5図6図8と、図1の光学的電子的計算システムの実施例とを参照して説明される。
【0075】
例示的な実施形態では、本方法のそのような計算ステップ202はさらに、
- 2個のブールフィールド30のそれぞれに関して識別されたアクティブ点31に関連付けられた第1の光ビームL4を、システム100の検出領域12に伝送するステップ2021と、
- 検出領域12に伝送された光強度を、少なくとも1つのアクティベーション光強度しきい値THaに対して比較するステップ2022と、
- 検出領域12に伝送された光強度が少なくとも1つのアクティベーションしきい値THaより大きい場合には論理値1を、又は、検出領域12に伝送された光強度が少なくとも1つのアクティベーションしきい値THaより小さい場合には論理値0を、M個の入力を有するブール関数の出力状態U1に対して関連付けるステップ2023とをさらに含む。
【0076】
特定の例示的な実施形態では、前述した伝送ステップ2021は、
- 上記変調された光ビームL2をシステム100のさらなる光変調装置4に向かって拡散するステップと、
- さらなる光変調装置4が、識別されたアクティブ点31に関連付けられた第1の光ビームL4を少なくとも1つの集束レンズ11に向かって偏向させるステップと、
- そのような少なくとも1つの集束レンズ11が、偏向された第1の光ビームL4を集中させることで、検出領域12に向かって伝送される第1の光ビームL5を生成するステップとをさらに含む。
【0077】
上述したステップは、本発明の方法200の重畳ステップを形成する。重畳ステップの間において、符号化ステップ201で識別された、アクティブゾーン31からの光の全部又は一部(しきい値の値による)は、検出領域12に向かって伝送される。
【0078】
優位点として、検出領域12に伝送される光の強度は、M個の入力を有するブール関数の計算の結果である。そのような伝送された光の強度は、そのような強度がアクティベーションしきい値THaを超過する状態をブール関数の論理状態1(又は否定ブール関数の場合には0)として識別及び認識し、そのような強度がアクティベーションしきい値THa未満である状態をブール関数の論理状態0(又は否定ブール関数の場合には1)として認識することを可能にする。
【0079】
方法200の例示的な実施形態において、前述した比較ステップ2022は、
- システム100の第1の電気光学的センサ13、例えば1つ又は複数のフォトダイオードを介して、検出領域12に伝送される光強度を検出してそれを電気信号Eに変換するステップと、
- 電子的増幅手段14、例えば増幅器によって、電気信号Eを増幅して第1の電気信号E1を生成するステップと、
- 電子的比較手段15、例えば1つ又は複数のしきい値比較器に関連付けられた少なくとも1つの電気的アクティベーションしきい値ETHaに対して第1の電気信号E1を比較するステップとをさらに含み、
そのような少なくとも1つの電気的アクティベーションしきい値ETHaは、上述した少なくとも1つのアクティベーション光強度しきい値THaを表す。
【0080】
特定の例示的な実施形態では、比較するステップは、第1、THa1及び少なくとも第2、THa2のアクティベーション光強度しきい値をそれぞれ表す第1、ETHa1及び少なくとも第2、ETHa2の電気的アクティベーションしきい値に対して、第1の電気信号E1を比較するステップを含む。
【0081】
上述したことに基づいて、計算されるブール関数の出力状態U1は電気信号に変換され、これにより、計算は任意の電子回路に対して互換性を有する。
【0082】
電子的比較手段15に関連付けられたアクティベーションしきい値THaは、目標ブール関数Fが満たされるように選択される、すなわち、アクティベーションしきい値THaは、ドリフト又はノイズに起因する強度の変動を考慮しても、ブール関数の値「1」(又は否定関数の場合には「0」)が期待される場合に、検出領域12に伝送される光の強度未満になるように選択されることに注意する。逆に、アクティベーションしきい値THaは、ドリフト又はノイズに起因する強度の変動を考慮しても、ブール関数の値「0」(又は否定関数の場合には「1」)が期待される場合に、検出領域に伝送される光強度より高くなるように選択される。
【0083】
代替の例示的な実施形態では、方法200は、電子的比較手段15に関連付けられた2つ以上のアクティベーションしきい値をともなう。しかしながら、そのようなしきい値は、目標ブール関数Fが満たされるように選択される。
【0084】
特に、2つのアクティベーションしきい値THa1,THa2の場合、そのようなしきい値は、ブール関数の値1が期待される場合(又は否定関数の場合には0)に、検出領域12に伝送される光の強度がそのような2つのしきい値の間になるように選択される。
逆に、検出領域12に伝送される光強度は、ブール関数の値0(又は否定関数の場合には1)が期待される場合、2つのアクティベーションしきい値THa1,THa2の間の範囲の外部になるように提供される。
【0085】
複数のアクティベーションしきい値の場合であっても、そのようなしきい値は、目標ブール関数F(又は否定目標ブール関数)が満たされるように選択される。
【0086】
符号化ステップ201の間において、目標ブール関数Fを満たすブールフィールド30のまさしくその点又は部分が探索されたという事実、すなわち、対応するランダム又は擬似ランダムフィールド20に対して単一、2つ、又は複数のしきい値を適用することによる関数を本質的に満たす、アクティブゾーン31によって、提案する方法200による目標ブール関数Fの解決方法が保証されることを注意する。
【0087】
さらに、本方法の重畳ステップは、優位点として、様々な目標ブール関数を実装することを可能にし、これらの関数を実装するために、目的関数に対応するアクティブゾーン31の光放射のチャネルを検出領域12に向ければ十分である。
【0088】
さらに、本方法の重畳ステップは、同じブール関数を満たす複数の領域を重畳することによって、ノイズ及びドリフトの拒否を増大させるために有用である。
【0089】
本方法の例示的な実施形態において、単一のしきい値の場合には、アクティベーション光強度しきい値THaは次式により計算可能である。
【0090】
THa=N*TH*k (4)
【0091】
ここで、Nは、検出領域12に向かって伝送されるアクティブゾーン31の個数であり、THは、少なくとも1つのしきい値光強度値であり、kは、アクティブゾーンから検出領域12に転送される光においてアクティブゾーン光強度31がどの程度にわたって減衰されるかを示す減衰定数である。
【0092】
さらに例示的な実施形態では、2つ以上の複数のアクティベーションしきい値の場合、アクティベーション光強度しきい値THajは次式を用いて算可能である。
【0093】
THaj=N*THj*k (5)
【0094】
ここで、THjは、上述した比較ステップ201cにおいて使用される光強度しきい値を示し、j=1,2,3,4…である。
【0095】
図7及び図4を参照すると、本発明の方法200のオプションの例示的な実施形態において、前述した識別ステップ201eは、
- M個の入力光ビームL,L1の2個の組み合わせのそれぞれに関して、M個の入力を有するブール関数を光学的に符号化するアクティブ点31のうちから、アクティブ点におけるランダム又は擬似ランダムフィールドの光強度と少なくとも1つのしきい値光強度値THとの間の差の絶対値が予め設定された正のパラメータPよりも常に大きくなるようにそれぞれ設定された第1のアクティブ点31’を選択するステップ2010と、
- 電気光学的計算システム100によって、前述した第1の選択されたアクティブ点31’に基づいてM個の入力を有するブール関数を計算することステップ202とをさらに含む。
【0096】
このように、本発明の方法200の計算ステップ202は、
- 2個のブールフィールド30のそれぞれに関して識別された第1のアクティブ点31’に関連付けられた第1の光ビームL4を、検出領域12に伝送するステップ2021と、
- 検出領域12に伝送された光強度を、少なくとも1つのアクティベーション光強度しきい値THaに対して比較するステップ2022と、
- 検出領域12に伝送された光強度が少なくとも1つのアクティベーションしきい値THaより大きい場合には論理値1を、又は、検出領域12に伝送された光強度が少なくとも1つのアクティベーションしきい値THaより小さい場合には論理値0を、M個の入力を有するブール関数の出力状態U1に対して関連付けるステップ2023とをさらに含むように実行される。
【0097】
上述した方法200のステップは、エラー低減ステップを形成する。そのようなエラー低減ステップは、優位点として、特に不安定なシステム又はノイズを含むシステムの場合に、計算エラーを生じる可能性を低減するようにアクティブ点又は部分を選択することを可能にする。
【0098】
計算システムが特に安定かつ低ノイズである場合、又は、ノイズ又はドリフトに起因するアクティブゾーンにおけるランダム又は擬似ランダムフィールド強度の変動が無視できるほど、すなわち、入力の各組み合わせに関して、かつ、各アクティブゾーンに関して、考慮されるアクティブ点又は部分におけるランダム又は擬似ランダムフィールド強度としきい値と間の差の絶対値に比較して、ノイズ又はドリフトは無視できるほど十分にアクティブゾーンが大きい場合、エラー低減ステップは無視されてもよい。
【0099】
本発明の方法200の計算ステップは、計算上の必要性に係るブール関数の入力としてM個の光ビーム(ON又はOFF)と、出力として検出領域12に伝送される強度とを用いて、M個の入力を有する目標ブール関数(F)を計算又は光学的に実装することを含む。提案する方法に従って実装される関数は、目的関数(又は、複数の複数符号化及びエラー低減のステップが行われる場合には、複数の目的関数)に対応する。
【0100】
方法のアプリケーションの実施例
図2図3A図3B図4図5図6を参照して、2入力のEXOR目標ブール関数、すなわち、F(0,0)=0,F(0,1)=1,F(1,0)=1,F(1,1)=0を光学的に計算する本発明の方法200に関連する動作のシーケンスを下記に説明する。
【0101】
特に、図2を参照すると、符号化ステップ201は、例えば電気光学型又は音響光学型の、任意の光変調器を用いて、又は、光学シャッタにより、相互に分離された2つの入力光ビームL2を逐次的アクティベーションすること201aを含む。
【0102】
このように、拡散器5を介して、観察空間Sにおいて取得されるランダム201b又は擬似ランダムフィールド20を生成するように、入力の4つの可能な組み合わせを達成することができる。そのような観察空間Sは、例えば、ディジタルカメラの電荷結合センサ、又は電荷結合素子(CCD)の面7において作成される。
【0103】
前述した生成されたランダム又は擬似ランダムフィールド20から、処理装置9,10によって、少なくとも1つのしきい値光強度値THに対して比較することに基づいて、前述したランダム又は擬似ランダムフィールドに関連付けられた対応する4つのブールフィールド30を導出する次のステップ201cが含まれる。
【0104】
さらに、いったん目標ブール関数F、すなわちEXOR関数が選択されると、システム100の処理装置9,10を用いて、識別されたブールフィールド30の各々に関連付けられたアクティブゾーン31を識別する1ステップ201eが含まれる。
【0105】
この実施例では、符号化ステップ201がシステム製造プロセス中に実行されることに注意する。
【0106】
さらに、擬似ランダムフィールドの場合には、拡散器5によって生成された強度フィールド分布が事前に既知であるので、電荷結合センサ(CCD)の面7を使用することは必要ではない。しかしながら、符号化ステップ201は、例えば、既知の擬似ランダムフィールドに対して前述したしきい値を適用する処理装置9,10を利用して、EXOR関数を満たすアクティブゾーン31を識別するのに有用である。
【0107】
図3A図3Bは、図2に係るランダム及び擬似ランダムフィールド20のアクティブゾーン31及び対応する導出されたブールフィールド30の強度Iを示す。4つのランダム又は擬似ランダムフィールドの各アクティブゾーンの強度Iが、少なくとも1つしきい値THを用いた比較処理によって、式(2)によって記述されるような目標ブール関数Fを満たす4つの対応するブールフィールド30を生成することに注意する。
【0108】
図4は、本方法のエラー低減ステップを示す。しきい値THに非常に近いアクティブゾーン31は除外される。言いかえると、第1のアクティブゾーン31’を形成するしきい値THから十分に遠いアクティブゾーン31のみが選択される。従って、実施例では、7つのアクティブゾーンのうちの5つの第1の31’が選択されている。
【0109】
図5は、電気光学的システム100によって実施される方法200の重畳ステップを示す。そのようなステップは、観察の空間領域S(CCDセンサの検出の領域又は面)に位置した、追加の空間光変調器4の使用をともなう。
【0110】
そのようなさらなる空間的光変調器4は、アクティブゾーン31,31’における集束レンズ11に向かってランダム又は擬似ランダムフィールド光のみを伝送するように構成される。レンズ11は、レンズの焦点に近い検出領域12に向かって(アクティブゾーンのみの)放射を伝送するように適応される。
【0111】
アクティベーションしきい値THaに対して比較することは、検出領域12におけるパワー又は強度を測定し、それを電気信号Eに変換するフォトダイオード13によって実施される。電気信号Eは増幅され、しきい値比較器15に適用される初期電気信号E1を生成する。
【0112】
アクティベーションしきい値は、定数k=A*R*Gを考慮して、関係(4)に従うことで選択される。ここkde,アクティブゾーン31から検出領域12への光減衰A、フォトダイオード13の電力-電流変換定数R、及び増幅器14の利得Gである。したがって、比較器15のしきい値は、重畳ステップにおいて記述される基準による選択される、アクティベーションしきい値THaのうちの1つ又は複数を実装する。
【0113】
図6は、本発明の方法200の計算ステップを示し、ここで、2つの入力の任意の組み合わせに関して、目的関数F、すなわちEXOR関数が正しく計算される。
【0114】
本願出願人は、特に、いったん符号化するステップ201が実行されると、EXOR関数を計算する前述した計算ステップは極めて高速であることに注意する。実際に、ランダム又は擬似ランダムフィールドのアクティブゾーン31,31’に関連付けられた光ビームの集束レンズ11に対する伝送が光速で行われるので、伝搬遅延は、実質的に、フォトダイオード13、増幅器14、及び比較器15のみによって決定される。しかしながら、これらの電子装置は、10GHzより高いクロック周波数を有する電気通信のアプリケーションで使用される基本的電子部品により作成されるので、非常に高速である。
【0115】
光学的電子的システムの実施例
図1を参照して、本発明に係る、例えばM個の入力を有する、1つ又は複数のブール関数を光学的に計算するための方法200を実施するように構成された、光学的電子的計算システム100の実施例について詳細後述する。
【0116】
電気光学的計算システム、又は、単にシステム100は、光ビームLのコヒーレント又は部分的にコヒーレントなソース1、例えばレーザソースを備える。そのようなレーザはM個の光ビームを備え、ここで、M≧1である。
【0117】
システム100は、オプションで、ソース1によって放射されたレーザビームLからコリメートされたM個のレーザビームL1を生成するように適応されたコリメータ装置2を含む。
【0118】
そのようなM個のビームレーザL,L1は、電気光学的計算システム100のM個の入力である。
【0119】
さらに、システム100は、M個の入力光ビームL,L1から変調された光ビームL2を生成するように適応された、光変調装置、空間光変調器、又は変調器3を備える。
【0120】
例えば、空間光変調器3は、テキサス・インスツルメンツからのDLP 6500変調器によって具体化される。
【0121】
そのような空間的光変調器3は、M個の入力レーザビームL1を、変調器3に関連付けられた個々の画素又はグループの画素から、M×N個のグループのレーザビームL2に分離するように、システム100の少なくとも1つの電子的処理装置9,10によって制御される。言いかえると、変調器3は、変調されたレーザビームL2のM×N個のグループを生成するように構成される。
【0122】
図1の実施例は、相互に独立でありデータ通信線19によって接続された、第1の電子的処理装置10及び第2の電子的処理装置9を示す。もう1つの例示的な実施形態では、システム100は、単一の電子的処理装置を備えてもよい。
【0123】
レーザビームL2のM×N個のグループが、本発明の方法200に従ってM個の入力を有するN個のブール関数を実装又は計算するN個の装置の入力であることに注意する。
【0124】
システム100は、光変調装置3に関連付けられ、かつ、変調された光ビームL2を受信する、1つ又は複数の光拡散5をさらに備える。
【0125】
特に、変調器3は、前述した1つ又は複数の拡散器5(論理状態1又はオン)又は図1には図示しない吸収器(論理状態0又はオフ)に向かって入力レーザ放射L1を偏向させることによって、他のものとは無関係に、前述した変調されたレーザビームL2のグループの各々をオン又はオフするように構成される。
【0126】
代替の例示的な実施形態では、入力レーザビームL,L1は、ビームスプリッタ装置により複数のサブビームへ分割されてもよい。ビームスプリッタから出力されるそのようなサブビームは、例えば電気的光学型又は音響光学型の、任意の光変調器によって、又は、光学シャッタによって、適切に変調されうる。
【0127】
さらに、システム100は、光反射素子6、例えば鏡を含み、拡散器5から出力されるレーザビームのグループ、すなわち、拡散器5から出力される、拡散されたレーザビームグループL3は、そのような鏡6に向かって自由空間を伝搬する。特に、そのような鏡6は、第1の電子的処理装置10によって、拡散器5から出力されるレーザビームグループL3が観察空間Sに向かって伝送される第1の動作位置から、第2の動作位置に、可逆的に移動可能である。
【0128】
鏡6が前述した第1の動作位置にある場合、そのような鏡は、例えばディジタルカメラの電荷結合素子(CCD)センサの面7において、作成されるS観察空間に向かって、拡散されたレーザ光線グループL3を反射するように構成される。そのような電荷結合センサは、電子的処理装置9,10に機能的に関連付けられた電気光学的センサである。
【0129】
異なる例示的な実施形態では、そのような光反射素子6は、ビームスプリッタによって具体化され、それは、鏡に関して固定位置にあり、移動される必要がない。
【0130】
CCDセンサの面7に向かって拡散されるレーザグループL3の各々は、観察空間Sにおいて各ランダム又は擬似ランダム20フィールドを生成するように構成される。
【0131】
さらに、様々な拡散されたレーザビームグループL3が互いに別個であり、したがって独立したままであることを保証するために、システム100は、例えば吸収材料からなり、拡散器5及び観察空間Sの間に配置された第1のセパレータ8の使用をともなう。そのような吸収材料は、概して、レーザ放射を良好に吸収するように構成された、黒色にされた材料、紙、プラスチック、金属(例えば、黒色の陽極処理されたアルミニウム)を備える。
【0132】
観察空間Sにおけるディジタルカメラは、本発明の方法200の符号化及びエラー低減ステップにおいて指定されるような、観察空間Sにおいて2個のランダム又は擬似ランダムフィールドの領域を選択するように適応された、従来型の第2の電子的処理装置9に機能的に関連付けられる。
【0133】
変調器3は、そのようなビームを拡散器5に向かって偏向させることにより、入力レーザビームグループL1を逐次にオン又はオフして、本発明の方法の符号化ステップにおいて変調されたレーザビームL2を生成するように構成される。
【0134】
第2の電子的処理装置9及びカメラによって、システム100は、特に、前述した符号化ステップにおける適切なしきい値THを設定することにより、計算しようとしている目標ブール関数Fを満たすアクティブゾーン31を選択するように構成される。
【0135】
例示的な実施形態では、システム100の前述した第2の電子的処理装置9はまた、方法200のエラー低減ステップにおける第1のアクティブゾーン31’を選択するように構成される。
【0136】
いったんアクティブゾーン31,31’が選択されると、システム100は、第2の動作位置をとるように鏡6が移動される、方法200の重畳ステップを実行するように構成される。
【0137】
鏡6のそのような第2の動作位置において、拡散器5によって拡散されたレーザビームグループL3は、例えば空間光変調器3と同様のタイプの、さらなる空間光変調器又はさらなる変調器4に直接的に伝送される。
【0138】
様々な拡散されたレーザビームグループL3が互いに別個であり、したがって独立したままであることを保証するために、システム100は、拡散器5及びさらなる空間光変調器4の間で配置された、第1のセパレータ8に類似した第2のセパレータ8’を備える。特に、そのような第2のセパレータ8’は、別個のレーザビームグループをさらなる変調器4に送信して第1のレーザビームL4を生成するように構成される。
【0139】
観察平面7において生成されたランダム又は擬似ランダムフィールドが、追加の空間光変調器4におけるランダム又は擬似ランダムフィールドと同じ分布を有することを保証するために、システム100は、鏡6及びカメラの間の距離が鏡6自体及びそのようなさらなる空間光変調器4の間の距離に等しいことを保証するように設計される。
【0140】
さらに、システム100は、追加の空間光変調器4によって伝送されるアクティブゾーン31,31’に対応する第1のレーザビームグループL4のみを受信するように適応された集束レンズ11を備える。
【0141】
例示的な実施形態では、アクティブゾーンに対応しないレーザ放射は、各吸収器(図1には図示せず)に対して偏向される。このように、本発明の方法200の符号化及びエラー低減ステップにおいて選択されたアクティブゾーンのみが、システム100の検出領域12に向かって伝送される。
【0142】
特に、システム100は、図1の実施例では、4つの集束レンズ11を備える。そのようなレンズは、4つの計算装置の各ランダム又は擬似ランダムフィールドに関連付けられ、計算装置は、特定の実施例では、4つの異なるブール関数を独立かつ同時に計算する。
【0143】
さらに、システム100は、各レンズ11によって集中されたレーザ放射を各電気信号Eに変換するように構成された第1の電気光学的センサ13を備える。特に、システム100は4つのフォトダイオード13を備える。各増幅器装置14は、各フォトダイオード13の出力に接続される。
【0144】
増幅器14から出力される、増幅された電気信号E1又は第1の電気信号E1は、フォトダイオード13のエリアに対する統合されたレーザ放射のパワー又は強度に比例する。
【0145】
さらに、システム100は、入力として第1の電気信号E1を受信するように構成され、例えば単一のしきい値又は複数のしきい値を有する、比較器15を備える。特に、そのような比較器15のしきい値、単一のしきい値の場合にはETHa、又は、2つのしきい値の場合にはETHa1及びETHa2は、本発明の方法の重畳ステップに従って選択される。
【0146】
上述したように、変調器3は、計算上必要性に従って、論理的に高い値もしくは論理「1」(ON)又は論理的に低い値もしくは論理「0」(OFF)をとるように計算される、ブール関数のM個の入力を制御するように構成される。単一のしきい値又は複数のしきい値を有する比較器15の出力U1は、計算された目標ブール関数Fの出力状態である。言いかえると、比較器15のしきい値は、本発明の方法の重畳ステップで説明した基準に従って選択されるアクティベーションしきい値を表す。
【0147】
M個の入力を有するブール関数を光学的に計算するための提案する方法を実行するように、上述したもの以外のシステムが作成されうることに注意する。
【0148】
上述した利点に加えて、M個の入力を有するブール関数を光学的に計算するための方法200と、関連する電気光学的計算システム100とは、さらなる利点を有し、予め設定された目的を達成する。
【0149】
特に、提案する方法200は、M個の入力を有する任意のブール関数を光学的に計算することを可能にする。計算されるそのような関数は、システム自体のハードウェア構造に対する変更を必要とすることなく、単に、システム100の電子的処理装置9,10に機能的に関連付けられたメモリに格納された各ソフトウェアプログラムを変更することで確立可能である。
【0150】
従って、本発明の方法を実施するシステム100は、普遍的かつプログラミング可能なブール関数生成器である。
【0151】
追加の利点は、複数の変調器及び複数の高解像度CCDが使用される場合、本発明の方法が計算又は生成されうるブール関数の個数を増大することを可能にする、ということにある。
【0152】
本発明はさらに、本発明の方法200を実施する、M個の入力を有する1つ又は複数のブール関数を計算するための電気光学的システム100の少なくとも1つの電子的処理装置9,10によって実行可能であるアプリケーションコードを含むコンピュータプログラムに関する。
【0153】
偶発的な必要性を満たすために、当業者は、上述したブール関数を生成するための方法及び電気光学的計算システムに対して変更及び適応を加えてもよく、又は、特許請求の範囲から逸脱することなく、構成要素を機能的に等価な他のもので置き換えてもよい。可能な1つの実施形態に属するものとして上述した特徴のそれぞれは、説明した他の実施形態に関わりなく実施されてもよい。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】