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特表2025-506038フェーズドアレイアンテナのための表面変化屈折角を有するレドーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-05
(54)【発明の名称】フェーズドアレイアンテナのための表面変化屈折角を有するレドーム
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/42 20060101AFI20250226BHJP
   H01Q 15/08 20060101ALI20250226BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
H01Q1/42
H01Q15/08
H01Q21/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547559
(86)(22)【出願日】2023-02-06
(85)【翻訳文提出日】2024-10-09
(86)【国際出願番号】 EP2023052765
(87)【国際公開番号】W WO2023152070
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】22156417.2
(32)【優先日】2022-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】310023106
【氏名又は名称】サン-ゴバン ペルフォルマンス プラスティク フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】リッカルド カコッチオラ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ミーレック
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン ビグールダン
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル ミムーン
(72)【発明者】
【氏名】フラビアン フレミー
(72)【発明者】
【氏名】シャー ナワ ブロクール
(72)【発明者】
【氏名】バドル エディーヌ ラニ
【テーマコード(参考)】
5J020
5J021
5J046
【Fターム(参考)】
5J020AA02
5J020BB01
5J020BC04
5J020DA03
5J020DA04
5J021AA05
5J021AA09
5J046RA05
(57)【要約】
【課題】フェーズドアレイアンテナのための表面変化屈折角を有するレドームを提供する。
【解決手段】レドームは、誘電体基材と2つの二重偏波メタ表面とからなる電磁波活性領域を含む。二重偏波メタ表面は、開いた、回転対称の、非連続な幾何学的パターンを有する、複数の周期的に配列された金属メタアトムからなる。メタアトムは誘電体基材の2つの側面の間で相補的に重なり合い、平面アレイアンテナの角度放射パターンの空間領域を覆う少なくとも2つの群へと周期的に配置される。メタアトムの幾何学的寸法は、各群内で種々の値であり、それにより、その群内で電磁透過位相勾配が形成され、1つの群と別の群とで異なる。メタアトムの周期Δpはλ/4~λ/1.3であり、λは平面アレイアンテナからの入射電磁波の波長である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面アレイアンテナ(1002)のためのレドームであって、
前記レドームは、少なくとも電磁波活性領域(6001、7001、8001)を備え;
前記電磁波活性領域(6001、7001、8001)は、誘電体基材(6002、8002、9002)と、前記誘電体基材(6002、8002、9002)の両側に配置された2つの二重偏波メタ表面(6003、6004、9003、9004、10003、10004)とからなり;
前記二重偏波メタ表面(6003、6004、7003、7004、8003、8004)は、周期的に配置された複数の金属メタアトム(9001a~z、10001a~z)から形成され、各メタアトムは、開いた、回転対称な、非連続な幾何学的パターンを有する金属セルからなり;
前記複数のメタアトム(9001a~z、10001a~z)は、前記誘電体基材(6002、7002、8002)の2つの表面に平行な平面内で前記パターンを重ね合わせたときに、重なり合って、完全で閉じたパターンを形成するようになっており;
前記複数のメタアトム(9001a~z、10001a~z)は、前記平面アレイアンテナ(1002)の角度放射パターンの全部または一部(R1、R2)を覆う、少なくとも2つ(6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b)の群、好ましくは3つ(6005a~6005c)の群へと、周期的に配置され;
前記複数のメタアトム(9001a~z、10001a~z)の前記幾何学的寸法(l,s,g,w)は、各群(6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b)内で種々の値であり、それにより、その群内で電磁的な透過位相勾配が形成されるようになっており、
前記透過位相勾配は、1つの群(6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b)と、別の群(6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b)とで異なり;
前記複数のメタアトム9001a~z、10001a~zの周期性Δpは、λ/10~λ、好ましくはλ/4~λ/1.3、好ましくはλ/2.8~λ/1.6であり;
λは、前記平面アレイアンテナ(1002)からの入射電磁波IWの波長であり;
前記誘電体基材(6002、7002、8002)は、織布帛、好ましくは無機/有機混合織布帛である、
レドーム。
【請求項2】
前記複数のメタアトム(9001a~z、10001a~z)が、少なくとも3つの群(6005a~6005c)に配置されてよく、
前記透過位相勾配gradφの位相差Δφが、第1の群(6005a)については0°~30°であり、第2の群(6005b)については30°~40°であり、第3の群(6005c)については40°~50°であり、
前記第1、第2および第3の群(6005a~6005c)について平面アレイアンテナの入射角がそれぞれ0°~15°、15°~30°および30°および45°であるように、前記第1、第2および第3の群(6005a~6005c)が前記レドームに沿って配置されている、
請求項1に記載のレドーム。
【請求項3】
群(6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b)内の透過位相勾配gradφが、前記群にわたって、正、負、または交互であってよい、請求項1~2のいずれか一項に記載のレドーム。
【請求項4】
群6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b内のメタアトム9001a~z、10001a~zの数が、2πと、前記透過位相勾配gradφのラジアンで表される位相差Δφとの間の比であってよい、請求項1~3のいずれか一項に記載のレドーム。
【請求項5】
前記第1のメタ表面(6003、7003、8003)の前記メタアトム(9001a~z)のパターンが、辺が開いた正方形であってよく、前記第2のメタ表面(6004、7004、8004)の前記メタアトム(10001a~z)のパターンが、角が開いた正方形であってよい、請求項1~4のいずれか一項に記載のレドーム。
【請求項6】
前記正方形のセグメントの辺の長さsが、λ/200~λ/20、好ましくはλ/100~λ/40であってよく、λは、前記平面アレイアンテナ(1002)からの入射電磁波IWの波長である、請求項5に記載のレドーム。
【請求項7】
前記角が開いた正方形のセグメントの長さが、λ/5~λ/1.4、好ましくはλ/4.7~λ/1.8であり、λは、前記平面アレイアンテナ(1002)からの前記入射電磁波IWの波長である、請求項5~6のいずれか一項に記載のレドーム。
【請求項8】
前記誘電体基材6002の厚さが、少なくとも1mm、好ましくは少なくとも3mmである、請求項1~7のいずれか一項に記載のレドーム。
【請求項9】
前記レドームの動作周波数が、KuバンドまたはKaバンドにある、請求項1~8のいずれか一項に記載のレドーム。
【請求項10】
前記活性領域の振幅損失が、0~3dBである、請求項1~9のいずれか一項に記載のレドーム。
【請求項11】
前記メタアトム(9001a~z、10001a~z)が、銅または合金化銅から形成されてよい、請求項1~10のいずれか一項に記載のレドーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、表面変化屈折角を有するレドームに関する。当該レドームは、フェーズドアレイアンテナに適合される。
【背景技術】
【0002】
技術的背景
フェーズドアレイアンテナは、現在、各種電気通信および検出システム、例えば、宇宙探査機、気象予報システム、レーダシステム、AM/FM放送システム、および高周波通信システム、例えば、ブロードバンドセルラーネットワークのための5G技術標準のために選択される技術である。
【0003】
フェーズドアレイアンテナは、電磁波の干渉に基づく放射システムであり、すなわち、アンテナ自体を機械的に動かすことなく異なる方向を指すように操向され得る電波のビームを生成するためのいくつかの放射源の位相依存重ね合わせに基づく放射システムである。それらは、比較的低いサイドローブ減衰量を伴う高ゲイン、ビーム方向の高速チューニング、任意空間走査、及び複数の電磁ビームの同時生成を可能にする。
【0004】
フェーズドアレイアンテナは、通常、平面状であり、アンテナ素子のアレイまたはマトリクスから形成され、それらのそれぞれが、それ自体の電気的に制御される位相シフト器または時間遅延器を有し、パターン形成のための可変振幅制御を備えてもよい。共通の送信機によって提供される同じ発信電磁信号が、各アンテナ素子に送信され、所与の位相シフトまたは時間遅延値で位相シフトまたは時間遅延され、その後で、位相シフトまたは時間遅延された個々の電磁波として再送される。次に、個々の電磁波が重ね合わされて、各位相シフト器の位相関係に応じて特定の方向に進行する平面電磁波が生成される。
【0005】
フェーズドアレイアンテナの走査範囲は、多くの場合、-60°~+60°の範囲内に制限される。出力ビームの走査角度を60°を超えて延ばすために、フェイズアレイアンテナの後ろまたは前にセットされたレドーム、耐候性誘電体ドーム、を表面機能化することが一般的に行われている。現在の表面機能化方法の中には、有望な結果を提供するメタ表面(メタサーフェイス)がある。
【0006】
メタ表面は、3D周期複合構造(誘電性/金属性または完全誘電性のいずれか)である3Dメタマテリアルの2D対応物であり、その材料特性は、バルク内に小さな不均一性を含むように設計されてよく、それによって、人工的な、すなわち自然界では得られない、材料特性が提供される。それらは、X平面およびY平面に周期的に複製された個々のセルまたはメタアトムから形成される2D構造である。メタ表面およびメタマテリアルは、いずれも、有効な巨視的挙動を有する入射電磁放射を操作することを可能にでき、例えば、入射電磁放射を遮断、吸収、増強、および/または曲げることを可能にし得る。
【0007】
WO 2019 165684 A1[CHANGSHU ZU INSTITUTE FOR OPTO ELECTRONIC TECH MERCIALIZATION IOTEC[CN]]06.09.2019は、2つの平行な平面メタ表面を含むレドームを開示している。第1のメタ表面は凸レンズとして作用し、第2のメタ表面は凹レンズとして作用する。2つのメタ表面間の焦点距離及び距離は、入射電磁放射の波長及び入射角に依存する。フェーズドアレイアンテナの走査範囲は、-60°~60°の範囲から-90°~90°の範囲に拡張することができる。
【0008】
Xueら、Ultrathin Dual-Polarized Huygen′s Metasurface: Design an Application an Application, Annalen der Physik(ベルリン), 532(7), 2020は、誘電体基材の両側に二重偏波ホイヘンスのメタ表面を含むレドームを開示している。二重偏極ホイヘンスメタ表面は、基板の上面と底面との間で部分的に重なる、開いており、回転対称であり、かつ非連続的な幾何学的パターンを有する、周期的に配置された複数の金属メタアトムでできている。レドームは、標準的なホーンアンテナに適合され、前記アンテナの種類に対して高い送信振幅およびほぼ360°の位相シフトを提供する。
【0009】
Lvら、Scanning range expansion of planar phased arrays using metasurfaces. IEEE Transactions on Antennas and Propagation, 68(3), 2020は、2つの積層された平面状の誘電体基材の対向面上に分散された3層状メタ表面を含むレドームを開示している。メタ表面は複数の金属メタアトムでできており、対称で連続した幾何学的パターンを有し、これらの幾何学的パターンは積み重ねられた基板の対向面の間で、完全に重なっており、同中心(ホモセントリック)である。メタアトムは、周期的に分布された群へと配置され、メタアトムの幾何学的寸法が、位相透過勾配を提供するように種々の値を有している。レドームは、2つの放射方向に20°だけフェーズドアレイアンテナの走査範囲を拡張することを可能にする。
【0010】
Lee et al., Single-layer phase gradient mmWave metasurface for incident angle independent focusing, Scientific Reports 11:12671, 2021は、2つの金属メタ表面を有する単一の誘電体基材を開示している。メタ表面は、開いた、回転対称の、連続した幾何学的パターンを有する、周期的に配置された複数の金属メタアトムでできている。メタアトムは誘電体基材の2つの側面の間で部分的に重なり合い、非周期的レイアウトへと配置されて、電磁波集束レンズを形成する。
【0011】
CN 111 834 752 A UNIV GUANGXI SCI & TECHNOLOGY 27/Oct/2020は、ホイヘンスメタ表面マイクロストリップ二重偏波伝送アレイを記載している。アレイは、2つの金属メタ表面を有する単一の誘電体基材である。各メタ表面は複数の周期的に配置された金属メタアトムから形成され、各メタアトムは、開いており、回転対称であり、かつ非連続な幾何学的パターンを有する金属セルからなる。メタアトムは、誘電体基材の2つの表面に平行な平面でパターンが重ね合わされたときに、完全で閉じたパターンを形成するように重なり合う。それらはまた、群へと周期的に配置され、メタアトムの幾何学的寸法が種々の値となっており、それによって、各郡内で異なる電磁透過位相勾配が形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
技術的課題
従来のレドームの主な制限は、入射電磁波を、レドームの表面上へのその入射位置に応じて様々な屈折角で屈折させることができないことである。レドームは、入射波がそれらの表面と相互作用する場所であればどこでも、入射波に対して同じように作用し、走査範囲は、特定の入射角に対して拡張され得る。さらに、走査角度の特定の部分範囲では、入射電磁波が、入射角度に応じて、不都合に屈折されることがあり、例えば、ランダムに、またはノイズを含んで、屈折されることがある。
【0013】
いくつかの用途では、この均一な屈折挙動の欠如は、走査範囲が入射角に応じて異なるように拡張されるべきであるとき又は走査範囲が平面アンテナに対するレドームの位置に応じて、間接的に、異なるように拡張されるべきであるときに、重要な欠点であり得る。例えば、大きな入射角は、十分に拡張されないことがある。さらに、従来のレドームは、レドーム表面への入射電磁波の入射位置に応じて、屈折角の微調整を可能にしない。
【0014】
レドーム表面の曲率に起因して入射角が変化し得るので、複雑な形状、例えば、測地線、オジバル、シャーレを備えたレドームについても、いくつかの問題が生じ得る。走査範囲は、レドームの表面全体にわたって均一に広がらないことがある。
【0015】
従来のレドームの別の制限は、複雑な設計に依拠することがある点であり、それらは、複数のメタ表面を挟むいくつかの誘電体基材のスタックをしばしば必要とし、かつ/又は、異なる集束表面として作用する位相透過勾配を提供するためにそれらのメタアトムの配置のための固有のレイアウトを有するメタ表面を必要とする。
【0016】
レドームの表面上の位置に応じて、微細な表面変化屈折角を可能にする、単純化されたレドーム構造が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
技術的課題への解決
表面変化屈折角を有するレドームが提供される。より正確には、請求項1に記載されるとおりのレドームが提供され、従属クレームは有利な実施形態である。
【発明の効果】
【0018】
本開示によるレドームの顕著な利点は、レドームが、入射角に依存する変化屈折角で屈折させ得ることである。また、平面フェーズドアレイアンテナの走査範囲は、走査範囲の異なる部分範囲に対して異なるように拡張されることができる。本レドームは、また、従来のレドームと比較してより単純な設計を有することができ、より複雑な形状を有するレドームを形成することを可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、電磁波活性領域を有する平面フェーズドアレイアンテナのための例示的なレドームの模式図である。
図2図2は、誘電体基材の両側に配置された2つの二重偏波メタ表面を有するレドームの活性領域の模式図である。
図3図3は、活性領域からの誘電体基材の第1の側のメタアトムの模式図である。
図4図4は、活性領域からの誘電体基材の第2の側のメタアトムの模式図である。
図5図5は、活性領域の誘電体基材の両側の重ね合わされたメタアトムの模式図である。
図6図6は、本開示によるレドームの一実施形態の電磁波活性領域の模式図である。
図7図7は、本発明によるレドームの第2の実施形態の電磁波活性領域の模式図である。
図8図8は、本発明によるレドームの第3の実施形態の電磁波活性領域の模式図である。
図9図9は、図6図7及び図8の電磁波活性領域からの領域の第1の側のメタアトムの模式図である。
図10図10は、図6図7及び図8の電磁波活性領域からの領域の第2の側のメタアトムの模式図である。
図11図11は、第1の例示的な実施形態によるレドームを有する平面フェーズドアレイアンテナの遠距離場放射パターンである。
図12図12は、第2の例示的な実施形態によるレドームを有する平面フェーズドアレイアンテナの遠距離場放射パターンである。
図13図13は、第3の例示的な実施形態によるレドームを有する平面フェーズドアレイアンテナの遠距離場放射パターンである。
図14図14は、本開示によるものではないレドームの第1の対照例を有する平面フェーズドアレイアンテナの遠距離場放射パターンである。
図15図15は、本開示によるものではないレドームの第1の対照例を有する平面フェーズドアレイアンテナの遠距離場放射パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の文脈において、形容詞「開いている」または「閉じている」は、それらが形状、図形またはパターンを修飾するために使用される場合、開いている形状または図形の幾何学的形状における共通の定義に従って解釈されるべきである。開いた形状、図形、またはパターンは、異なる開始点および終点を有しており、すなわち、開始点および終点が合致しない形状、図形、またはパターンである。閉じた形状、図形、またはパターンは、同じ開始点および終了点を有する形状、図形、またはパターンである。
【0021】
本開示の文脈において、メタ表面は、平面内で格子として周期的に複製された、メタアトムとも呼ばれる、サイズ決めされた電気的な個別のセルから形成される2D構造を指す。メタアトムのサイズは、入射電磁放射の波長よりも小さい。それらは、入射電磁放射の波長に応じて、ミリメートル、又はマイクロ又はナノサイズのメタアトムであってもよい。
【0022】
その電気的なメタアトム、すなわちLC共振器として作用する2Dプラズモン電気双極子、の周期的構造および幾何学的寸法に起因して、メタ表面は、電磁放射に曝露されると、当該電磁放射の所与の周波数に対する共振器のグリッドとして作用する。
【0023】
メタ表面の基本的でよく知られているパラメータは、その共振周波数であり、その値は、メタアトムの幾何学的寸法および周期によって調整される。レドーム用途では、共振周波数は、多くの場合、レーダまたはアンテナの動作自由空間周波数に対応する。
【0024】
全方向性アンテナ、例えばホイップアンテナは、その周囲空間の全方向に放射する。逆に、平面フェーズドアレイアンテナなどの指向性アンテナでは、放射は空間のいくつかの方向に集中する。アンテナが放射し得る方向は、角度放射パターンを通して表され得る。
【0025】
図1を参照すると、平面フェーズドアレイアンテナ1002の角度放射パターンは、例えば、放射ビームの0°入射角の方向に対応する仮想垂直平面Pによって、2つの空間領域R1、R2に分割され得る。角度放射パターンは、平面フェーズドアレイアンテナ1002の放射特性に応じて、より多くの領域、例えば、3つまたは4つの領域に分割され得る。
【0026】
例示的な図1に示すように、レドーム1000は、アンテナ1002の前に設置されてよく、それによって、当該アンテナの走査範囲が拡張される。これは、電磁波活性領域1001を有してよく、電磁波活性領域1001は、アンテナの角度放射パターンの空間領域一部または全部R1、R2の中で相互作用するように設計されている。レドーム1000の活性領域1001は、これらの2つの領域R1、R2に対応する2つの対称方向+Yおよび-Yに伸びることができる。レドームはまた、垂直方向Xで延伸することによって、両方向X、Yによって画定される仮想平面であってアンテナ1002の放射空間領域R1、R2の有効領域全体を覆う仮想平面へと拡張されてよい。
【0027】
図2図3および図4を参照して、レドーム1000の活性領域1001は、誘電体スラブまたは誘電体基材2001から形成されてもよく、誘電体基材2001の両側2001a、2001bに、2つの二重偏波メタ表面2002、2003が配置される。メタ表面2002、2003は、開いた、回転対称の、および非連続的な幾何学的パターンを有する複数の金属メタアトム3001a~z、4001a~zから形成されてよい。メタアトムは所与の周期Δpで配列されてもよく、それらのパターンは所与の幾何学的寸法またはパラメータ(l,s,g,w)によって定義されてもよい。
【0028】
これらの図では、上面2002の上の辺が開いた正方形および底面2003の上の角が開いた正方形に関して、メタアトムパターンの幾何学的寸法またはパラメータ(l,s,g,w)が表されている。辺が開いた正方形の場合、gは開いた辺のギャップ長であり、sは正方形の辺の長さであり、wは線の幅である。角が開いた正方形の場合、lは線の長さであり、wは線の幅である。
【0029】
図2に示すように、メタアトム3001a~z、4001a~zは、誘電体基材2001の2つの側面2001a、2001bの間で部分的に重複し得る。図5を参照すると、メタアトム3001a~z、4001a~zは、それらの回転中心O3、O4が軸(A)に沿って一致するように、誘電体基材2001のそれぞれの側面2001a、2001b上で互いに向かい合うことができる。一方の側2001a上のメタアトム3001a~zのパターンの一部は、基材の領域のうち、他方の側2001b上のメタアトム3001a~zのパターンによって側2001b上の対応する領域が覆われていない領域を覆うことができる。好ましくは、メタアトム3001a~zのパターンは、メタアトム4001a~zをパターン化するように少なくとも相補的であり、それにより、誘電体基材を通してパターンを重ね合わせたときに、完全で閉じたパターン、例えば閉じた正方形が形成されるようになっている。
【0030】
動作中、すなわち、平面フェーズドアレイアンテナ1002からの放射が来た際に、レドーム1000のアクティブ領域1001は、一般化されたスネル・デカルトの法則に従って入射電磁波Iを屈折させる。
【0031】
【数1】
【0032】
ここで、θiは入射電磁波IWの入射角であり、θrは屈折電磁波RWの屈折角であり、niはメタ表面2002より下の媒質の屈折率であり、nrはメタ表面2003より上の媒質の屈折率であり、λは平面アレイアンテナからの入射電磁波IWの波長であり、Δφはメタ表面2002、2003の2つの隣接するメタアトム3001a~z、4001a~zの間の位相差であり、Δpはメタ表面2002、2003のメタアトム3001a~z、4001a~zの周期である。メタ表面2002、2003は無視できる厚さを有し、レドームの両側の媒質は空気であるので、屈折率niおよびnrは1に等しいと見なされる。
【0033】
比Δφ/Δpは、位相勾配gradφと呼ばれる。一般化されたスネル・デカルトの法則によれば、所与の波長および所与の入射角θiについて、屈折角θrの値は、位相勾配gradφに依存する。
【0034】
図2図3及び図4に例示されるように、メタ表面2002、2003は、幾何学的寸法が変化しない(種々の値ではない)パターンを有するメタアトム3001a~z、4001a~zで形成されている。それらの位相勾配、gradφはゼロである。レドーム1000は、この場合、入射波が表面に当たる場所ではどこでも、同じ様式で入射波と相互作用する。走査範囲は、入射角に応じて異なるように拡張される。
【0035】
本開示によれば、図6図7図8図9図10を参照して、平面アレイアンテナ1002のためのレドームが提供され、レドームは、少なくとも電磁波活性領域6001、7001、8001を備え;
電磁波活性領域6001、7001、8001は、誘電体基材6002、8002、9002と、誘電体基材6002、8002、9002の両側に配置された2つの二重偏波メタ表面6003、6004、9003、9004、10003、10004とからなり;
二重偏波メタ表面6003、6004、7003、7004、8003、8004は、複数の周期的に配置された金属メタアトム9001a~z、10001a~zから形成され、各メタアトムは、開いた、回転対称の、かつ非連続な幾何学的パターンを有する金属セルからなり;
メタアトム9001a~z、10001a~zは、誘電体基材6002、7002、8002の2つの表面に平行な平面内でパターンが重ね合わされたときに、完全で閉じたパターンを形成するように重なり合い;
メタアトム9001a~z、10001a~zは、少なくとも2つの6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b、好ましくは3つの群6005a~6005cへと周期的に配置され、平面アレイアンテナ1002の角度放射パターンの全部または一部R1、R2を覆い;
メタアトム9001a~z、10001a~zの幾何学的寸法(l,s,g,w)は、各群6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b内で種々の値であり、それにより、その群内で電磁的な透過位相勾配を形成するようになっており、
透過位相勾配は、1つの群6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005bと、別の群6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005bとで異なり;
メタアトム9001a~z、10001a~zの周期性Δpは、λ/10~λ、好ましくはλ/4~λ/1.3、好ましくはλ/2.8~λ/1.6であり、
λは、平面アレイアンテナ1002からの入射電磁波IWの波長である。
【0036】
メタアトム9001a~z、10001a~zの幾何学的寸法またはパラメータ(l,s,g,w)は、各群6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b内で種々の値であり、メタアトム9001a~z、10001a~zは、誘電体基材6002、7002、8002の2つの側面の間で相補的に重なり合ってよい。
【0037】
一方のメタ表面6003、7003、8003上のメタアトム9001a~zのパターンの一部は、基材6002、7002、8002の領域のうち、他方のメタ表面6003、7003、8003上の対応する領域がその側のメタアトム10001a~zのパターンによって覆われていない領域を覆うことができる。図5の文脈で示されたものと同様に、メタアトム9001a~zのパターンは、メタアトム10001a~zのパターンと相補的であってよく、それにより、誘電体基材6002、7002、8002を通してパターンが重ね合わされたときに、完全で閉じたパターン、例えば閉じた正方形を形成するようになっていてよい。言い換えれば、前記メタアトム9001a~z、10001a~zは、誘電体基材6002、7002、8002の2つの表面に平行な平面内でパターンが重ね合わされたときに、完全で閉じたパターンを形成するように重なり合っている。
【0038】
これは、図9および図10の例示的な実施形態で例示される。ギャップ長gは、第1のメタ表面6003、7003、8003上のメタアトム9001a~zのパターンについて左から右に増加することができ、一方、線長lは、第2のメタ表面6004、7004、8004上で相補的に増加することができ、それにより、誘電体基材6002、7003、8003を通してパターンが重ね合わされたときに、完全で閉じたパターン、例えば、閉じた正方形を形成するようになっている。
【0039】
図6図7図8図9及び図10で例示されるように、メタアトム9001a~z、10001a~zの幾何学的寸法またはパラメータ(l,s,g,w)は、各群6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b内で一方向+Yで種々の値を有して、電磁的な透過位相勾配gradφを形成することができる。群6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b内のメタアトムは、この方向+Yに従って、行または列に編成されてよい。垂直方向+X、-Xにおける行または列の数はレドームの設計の問題であり、そのサイズおよびそのアクティブエリアのサイズに依存し得る。
【0040】
群6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b内の透過位相勾配gradφは、当該群にわたって、正、負、または交互であってよい。メタアトム9001a~z、10001a~zの幾何学的寸法のバリエーションは、絶対値基準と、透過位相勾配gradφの符号(例えば、プラスまたはマイナス)とに従って適合させることができる。
【0041】
群6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b内のメタアトム9001a~z、10001a~zの数は、透過相シフト勾配φの絶対値、およびメタアトム9001a~z、10001a~zのパターンの幾何学的寸法(l,s,g,w)に依存し得る。いくつかの実用的な実施形態では、群6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b内のメタアトム9001a~z、10001a~zの数は、2πと、透過位相勾配gradφのラジアンにおける位相差Δφとの間の比であり得る。
【0042】
図6を参照して、アクティブエリア6001は、1つの方向+Yに延伸し、かつ平面アレイアンテナ1002の角度放射パターンの1つの空間領域R2のみをカバーするものとして表される。そのような構成は例えば、その周囲空間の1つの領域R2において放射するように構成される平面フェーズドアレイアンテナのために使用されてよく、すなわち、その放射パターンがこの空間領域に集中される平面フェーズドアレイアンテナのために使用され得る。
【0043】
いくつかの空間領域、例えば、2つの領域R1、R2に延在する放射パターンを有する平面フェーズドアレイアンテナの場合、レドームの活性領域は、角度放射パターンのこれらの2つの領域R1、R2に対応する2つの方向-Y、+Yに沿って対称的に複製され得る。そのような複製が、図7及び図8の実施形態において例示され、領域R1を覆う群7006a~7006b、8006a~8006bは、(P)面に対して、+Y方向に領域R2を覆う群7006a~7006b、8006a~8006bの-Y方向における反射対称である。
【0044】
いくつかの実施形態では、群6005a~6005b、7005a~7005b、7006a~7006b、8005a~8005b、8006a~8006bは、互いに隣接するか、または、メタ表面を有しない領域および/または透過位相勾配を有さないメタ表面を有する領域によって、分離され得る。図7の例示的な実施形態では、群7005a~7005b、7006a~7006bは、メタ表面を有さない誘電体領域7007によって分離される。図8の例示的な実施形態では、8005a~8005b、8006a~8006bは、透過位相勾配のないメタ表面を有する誘電体領域8007によって分離される。
【0045】
図6を参照して、好ましい実施形態では、メタアトム9001a~z、10001a~zは、少なくとも3つの群6005a~6005cに配置されてもよく、透過位相勾配gradφの位相差Δφは、第1の群6005aについては0°~30°であり、第2の群6005bについては30°~40°であり、第3の群6005cについては40°~50°であり、第1、第2、および第3の群6005a~6005cは、平面アレイアンテナの入射角が、第1、第2、および第3の群6005a~6005cそれぞれに関して0°~15°、15°~30°、および30°、および45°であるように、ラドームに沿って位置する。この構成では、レドームが、レドームの設計の複雑さを比較的低く保ちながら、ほとんどの平面フェーズドアレイアンテナに適合する変化屈折角を提供することができる。
【0046】
メタアトムのパターンは、任意の適切な2D幾何学的表面パターンであってよく、例えば、正方形もしくは長方形などの多角形パターン、円もしくは楕円などの円形パターン、または多角形ループもしくは円形ループなどのより複雑なパターンであってよい。
【0047】
好ましい実施形態では、図6図7図8図9図10に示されるように、第1のメタ表面6003、7003、8003のメタアトム9001a~zのパターンは、辺が開いた正方形であってよく、第2のメタ表面6004、7004、8004のメタアトム10001a~zのパターンは角が開いた正方形であってよい。
【0048】
第1のメタ表面6003、7003、8003のメタアトム9001a~zのパターンに関して、例示的な実施形態では、正方形セグメントの辺の長さsが、λ/200~λ/20、好ましくはλ/100~λ/40であってよく、λは、平面アレイアンテナ1002からの入射電磁波IWの波長である。
【0049】
第1のメタ表面6004、7004、8004のメタアトム10001a~zのパターンに関して、例示的な実施形態では、角が開いた正方形のセグメントの長さは、λ/5~λ/1.4、好ましくはλ/4.7~λ/1.8であり、λは、平面アレイアンテナ1002からの入射電磁波IWの波長である。
【0050】
メタアトムは、任意の金属から形成されてよい。いくつかの好ましい実施形態では、メタアトム9001a~z、10001a~zは銅または合金化銅から形成されてよい。それらは、任意の適合された方法で形成され得る。例示的な実施形態では、メタアトムが3Dまたは2Dプリント方法、例えば、インクジェットプリント方法、スクリーンプリントで印刷されてもよい。それはまた、フォトリソグラフィー法、スパッタリング法、または化学エッチングによって堆積されてもよい。
【0051】
図示の図では、レドーム1000のアクティブ領域6001、7001、8001は平面として表されている。いくつかの実施形態では、それはより複雑な形状、例えば、ジオデジック、オジバル、シャーレなどの複雑な形状を有しうる。誘電体基材6002は、誘電体綴じ目の手段によって接合された複数の誘電体パネルの集合体であってもよい。
【0052】
誘電体基材6002、7002、8002、または誘電体基材6002、7002、8002がいくつかの誘電体パネルでできている場合には複数の誘電体パネルは、バルク材料、例えばプラスチック膜、繊維強化複合材料、または層状材料であってもよい。好ましい実施形態では、織布帛、好ましくは無機/有機混合織布帛であってもよい。織布帛の例は、アラミド繊維をさらに含み得るPTFE織ガラス布帛積層体であってもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、誘電体基材6002の厚さは少なくとも1mm、好ましくは少なくとも3mmであってよい。
【0054】
本開示によるレドームは、任意の動作周波数内で動作することができる。好ましい実施形態では、レドームの動作周波数がKuバンド(帯域)、すなわち12~18GHz、またはKaバンド、すなわち26.5および40GHzであってよい。好ましくは、活性領域の振幅損失が0~3dBであってよい。
【0055】
本明細書に記載のすべての実施形態は、技術的に互換性がないと思われない限り、組み合わせることができる。さらに、好ましい実施形態に関連して本発明を説明してきたが、特許請求の範囲に定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって本発明に様々な修正、追加、および変更を行うことができることを理解されたい。
【実施例
【0056】
本開示によるレドームの特徴および顕著な利点は、以下に詳細に説明される例示的な実施形態によって示される。
【0057】
2つの例示的な実施形態E1、E2において、図6を参照して、レドームは、誘電体基材6002から形成される電磁波活性領域6001と、誘電体基材6002の両側に配置された2つの二重偏波メタ表面6003、6004とで作られる。誘電体基材6002は、TAIZHOU WANGLINGによって商品名F4BM-1/2で販売されている、銅で被覆(クラッド)されたTeflon(登録商標)織ガラス布帛積層体である。厚さは3mm、誘電率は3.5、誘電正接は0.002である。
【0058】
二重偏波メタ表面6003、6004は、開いた、回転対称で、非連続的な幾何学的パターンを有する、複数の周期的に配置された銅メタアトム9001a~z、10001a~zでできている。これらは、化学エッチングによって、銅クラッド誘電体基材誘電体6002上に直接パターン化される。
【0059】
図9および図10に示されるものと同様に、第1のメタ表面6003のメタアトム9001a~zのパターンは、辺が開いた正方形であり、第2のメタ表面6004のメタアトム10001a~zのパターンは、角が開いた正方形である。メタアトム9001a~z、10001aは、誘電体基材6002の2つの側面の間で相補的に重なり合い、誘電体基材6002を通してパターンが重ね合わされたときに、完全で閉じた正方形を形成する。
【0060】
メタアトム9001a~z、10001a~zは、平面アレイアンテナ1002の角度放射パターンの1つの空間領域R1を覆う2つの群6005a~6005bへと周期的に配置される。メタアトム9001a~z、10001a~zの幾何学的寸法(l,s,g,w)は、各群6005a~6005b内で種々の値となっており、それにより、その群内で電磁的な透過位相勾配が形成されるようになっている。
【0061】
第1の例示的な実施形態E1では、2つの群6005a~6005bの各々の中の電磁的な透過位相勾配は、それらのパターンに関して種々の値の幾何学的寸法(l,s,g,w)を有する、一連の6個のメタアトムから形成される。第2の例示的な実施形態E2では、2つの群6005a~6005bの各々の中の電磁的な透過位相勾配が、一連の12個のメタアトムから形成される。各群6005a~6005bにおけるそれぞれの一連のメタアトムのそれぞれのメタアトムのパターンの、位相φ、dB単位での振幅損失A、ミリメートル単位での周期性Δp、およびミリメートル単位での幾何学的寸法(l,s,g,w)が、第1の例示的な実施形態E1については表1に、第2の例示的な実施形態E2については表2に報告されている。位相差Δφは第1の例示的な実施形態E1に関して約60°であり、第2の例示的な実施形態E1に関して約30°である。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
各群において、それぞれの一連のメタアトムは、被覆領域R1の放射方向に対応する方向に3回複製され、垂直方向に3回複製される。言い換えれば、第1の例示的な実施形態E1のそれぞれの群は、54(3x3x6)のメタアトムを含有し、第1の例示的な実施形態E2のそれぞれの群は、108(3x3x12)のメタアトムを含有する。
【0065】
第3の例E3では、図8を参照して、レドームは、誘電体基材8002から形成される電磁波活性領域8001と、誘電体基材8002の両側に配置された2つの二重偏波メタ表面8003、8004とで形成される。誘電体基材8002は、TAIZHOU WANGLINGによって商品名F4BM-1/2で販売されている、銅で被覆された(クラッドされた)Teflon(登録商標)織ガラス布帛積層体である。厚さは3mm、誘電率は3.5、誘電正接は0.002である。
【0066】
二重偏波メタ表面8003、8004は、開いた、回転対称な、非連続的な幾何学的パターンを有する、複数の周期的に配置された銅メタアトム9001a~z、10001a~zから形成されている。これらは、化学エッチングによって、銅クラッド誘電体基材誘電体8002上に直接パターン化される。
【0067】
図9および図10に示されるものと同様に、第1のメタ表面8003のメタアトム9001a~zのパターンは、辺が開いた正方形であり、第2のメタ表面6004のメタアトム10001a~zのパターンは、角が開いた正方形である。メタアトム9001a~z、10001aは、誘電体基材8002の2つの側面の間で相補的に重なり合い、誘電体基材6002を通してパターンが重ね合わされたときに、完全で閉じた正方形を形成する。
【0068】
メタアトム9001a~z、10001a~zは、平面アレイアンテナ1002の角度放射パターンの1つの空間領域R1を覆う2つの群8005a~8005bへと、周期的に配置される。メタアトム9001a~z、10001a~zの幾何学的寸法(l,s,g,w)は、各群8005a~8005b内で種々の値となっており、それにより、その群内で電磁的な透過位相勾配が形成されるようになっている。
【0069】
活性領域8001は、幾何学的寸法が変化しない(種々の値ではない)メタアトムの基8007をさらに含み、すなわち透過位相勾配がない。群8005a内の電磁的な透過位相勾配は、そのパターンに関して種々の値の幾何学的寸法(l,s,g,w)を有する、一連の6個のメタアトムから形成される。8005b内の電磁透過位相勾配は、それらのパターンに関して種々の値の幾何学的寸法(l,s,g,w)を有する、一連の12個のメタアトムから作られる。各群6005a~6005bにおけるそれぞれの一連のメタアトムのそれぞれのメタアトムのパターンの、位相φ、dBでの振幅損失A、ミリメートルでの周期性Δp、およびミリメートルでの幾何学的寸法(l,s,g,w)を表3に報告する。位相差Δφは、群8005aについては約60°であり、群8005bについては約30°である。
【0070】
【表3】
【0071】
比較のために、2つの対照例、CE1、CE2において、図1図2図3図4を参照して、レドームは、誘電体基材2000から形成される電磁的な波活性領域1001と、誘電体基材2000の両側に配置された2つの二重偏波メタ表面2002、2003とで形成される。誘電体基材2000は、例示的な実施形態E1、E2、およびE3と同じである。
【0072】
活性領域は、開いた、回転対称の、非連続的な幾何学的パターンを有する複数の銅メタアトム3001a~z、4001a~zの1つの群のみを含み、2つの例示的な実施形態E1、E2に関して、メタアトムは、化学エッチングによって、銅クラッド誘電体基材誘電体2000上に直接パターン化される。
【0073】
メタアトムパターンは、上面2002上の辺が開いた正方形、及び底面2003上の角が開いた正方形である。メタアトムは均一であり、すなわち、それらの幾何学的寸法(l,s,g,w)は種々の値ではない。位相φ、振幅損失A(dB)、周期性Δp(ミリメートル)、及びパターンの幾何学的寸法(l,s,g,w)(ミリメートル)が、2つの対照例CE1及びCE2に関して、表4に報告される。
【0074】
【表4】
【0075】
第3の対照例CE3は、メタアトム3001a~z、4001a~zの幾何学的寸法(l,s,g,w)が種々の値であることによって透過位相勾配が形成されるようになっていることを除いて、対照例CE1およびCE2と同様に作製される。位相φ、振幅損失A(dB)、周期性Δp(ミリメートル)、及び幾何学的寸法(l,s,g,w)(ミリメートル)を、表5に示す。
【0076】
【表5】
【0077】
3つの例示的な実施形態E1、E2、およびE3、ならびに3つの対照例CE1、CE2、CE3を、15GHzで電磁ビームを放射する平面フェーズドアレイアンテナの前に設置した。第1の例示的な実施形態E1は、0°入射照明ビームおよび30°入射照明ビームに曝露された。第2の例示的な実施形態E2は、0°入射照明ビームおよび-30°入射照明ビームに曝露された。第3の例示的な実施形態E3は、0°入射照明ビーム、15°入射照明ビーム、及び30°入射照明ビームに露光された。透過遠距離場放射パターンを測定した。このパターンが、第1の実施形態E1について図11に示されており、第2の例示的な実施形態E2について図12に示されており、第3の例示的な実施形態E3について図13に示されている。
【0078】
第1の対照例CE1を、0°入射照明ビームに曝露し、第2の対照例CE2を、30°入射照明ビームに曝露した。第3の対照例CE3は、-15°の入射照明ビームおよび-30°の入射照明ビームに曝された。測定された透過遠距離場放射パターンを、対照例CE1およびCEの両方について、図14に示し、第3の対照例CE3について図15に示す。
【0079】
図11図12及び図13の透過遠距離場パターンは、本開示によるレドームが表面変化屈折角を可能にし、入射電磁放射ビームの入射角に応じて適応し得ることを明確に示す。図11において、レドームは、0°の入射電磁波を約25°(実線)で屈折させることを可能にし、30°Cの入射電磁波を約55°(点線)で屈折させることを可能にする。図12において、レドームは、0°入射電磁波を約-10°(実線)で屈折させることを可能にし、-30°入射電磁波を約-40°(点線)で屈折させることを可能にする。図13において、レドームは、0°入射電磁波(実線)を屈折させず、15°入射照明ビームは約38°(点線)で屈折され、30°入射照明ビームは約42°(点線)で屈折される。走査範囲は、放射ビームの入射角が何であれ、均一に拡張される。
【0080】
図14の透過遠距離場パターンは、2つの対照例CE1(実線)、CE2(点線)における透過位相勾配の不存在が、入射ビームを屈折させないことを示す。図15において、対照例CE3によるレドームは、-38°C(実線)で-15°の入射照明ビームを屈折させるが、-30°照明ビームは屈折されず、-30°(点線)のままである。
【0081】
例示的な実施形態は、本開示によるレドームが表面変化屈折角を可能にし、入射電磁放射ビームの入射角に応じて適応し得ることを明確に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2024-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0081
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0081】
例示的な実施形態は、本開示によるレドームが表面変化屈折角を可能にし、入射電磁放射ビームの入射角に応じて適応し得ることを明確に示す。
本開示は、下記の発明の態様を含む:
<態様1>
平面アレイアンテナ(1002)のためのレドームであって、
前記レドームは、少なくとも電磁波活性領域(6001、7001、8001)を備え;
前記電磁波活性領域(6001、7001、8001)は、誘電体基材(6002、8002、9002)と、前記誘電体基材(6002、8002、9002)の両側に配置された2つの二重偏波メタ表面(6003、6004、9003、9004、10003、10004)とからなり;
前記二重偏波メタ表面(6003、6004、7003、7004、8003、8004)は、周期的に配置された複数の金属メタアトム(9001a~z、10001a~z)から形成され、各メタアトムは、開いた、回転対称な、非連続な幾何学的パターンを有する金属セルからなり;
前記複数のメタアトム(9001a~z、10001a~z)は、前記誘電体基材(6002、7002、8002)の2つの表面に平行な平面内で前記パターンを重ね合わせたときに、重なり合って、完全で閉じたパターンを形成するようになっており;
前記複数のメタアトム(9001a~z、10001a~z)は、前記平面アレイアンテナ(1002)の角度放射パターンの全部または一部(R1、R2)を覆う、少なくとも2つ(6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b)の群、好ましくは3つの群(6005a~6005c)へと、周期的に配置され;
前記複数のメタアトム(9001a~z、10001a~z)の前記幾何学的寸法(l,s,g,w)は、各群(6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b)内で種々の値であり、それにより、その群内で電磁的な透過位相勾配が形成されるようになっており、
前記透過位相勾配は、1つの群(6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b)と、別の群(6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b)とで異なり;
前記複数のメタアトム9001a~z、10001a~zの周期性Δpは、λ/10~λ、好ましくはλ/4~λ/1.3、好ましくはλ/2.8~λ/1.6であり;
λは、前記平面アレイアンテナ(1002)からの入射電磁波IWの波長であり;
前記誘電体基材(6002、7002、8002)は、織布帛、好ましくは無機/有機混合織布帛である、
レドーム。
<態様2>
前記複数のメタアトム(9001a~z、10001a~z)が、少なくとも3つの群(6005a~6005c)に配置されてよく、
前記透過位相勾配gradφの位相差Δφが、第1の群(6005a)については0°~30°であり、第2の群(6005b)については30°~40°であり、第3の群(6005c)については40°~50°であり、
前記第1、第2および第3の群(6005a~6005c)について平面アレイアンテナの入射角がそれぞれ0°~15°、15°~30°および30°および45°であるように、前記第1、第2および第3の群(6005a~6005c)が前記レドームに沿って配置されている、
態様1に記載のレドーム。
<態様3>
群(6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b)内の透過位相勾配gradφが、前記群にわたって、正、負、または交互であってよい、態様1~2のいずれか一項に記載のレドーム。
<態様4>
群6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b内のメタアトム9001a~z、10001a~zの数が、2πと、前記透過位相勾配gradφのラジアンで表される位相差Δφとの間の比であってよい、態様1~3のいずれか一項に記載のレドーム。
<態様5>
前記第1のメタ表面(6003、7003、8003)の前記メタアトム(9001a~z)のパターンが、辺が開いた正方形であってよく、前記第2のメタ表面(6004、7004、8004)の前記メタアトム(10001a~z)のパターンが、角が開いた正方形であってよい、態様1~4のいずれか一項に記載のレドーム。
<態様6>
前記正方形のセグメントの辺の長さsが、λ/200~λ/20、好ましくはλ/100~λ/40であってよく、λは、前記平面アレイアンテナ(1002)からの入射電磁波IWの波長である、態様5に記載のレドーム。
<態様7>
前記角が開いた正方形のセグメントの長さが、λ/5~λ/1.4、好ましくはλ/4.7~λ/1.8であり、λは、前記平面アレイアンテナ(1002)からの前記入射電磁波IWの波長である、態様5~6のいずれか一項に記載のレドーム。
<態様8>
前記誘電体基材6002の厚さが、少なくとも1mm、好ましくは少なくとも3mmである、態様1~7のいずれか一項に記載のレドーム。
<態様9>
前記レドームの動作周波数が、KuバンドまたはKaバンドにある、態様1~8のいずれか一項に記載のレドーム。
<態様10>
前記活性領域の振幅損失が、0~3dBである、態様1~9のいずれか一項に記載のレドーム。
<態様11>
前記メタアトム(9001a~z、10001a~z)が、銅または合金化銅から形成されてよい、態様1~10のいずれか一項に記載のレドーム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面アレイアンテナ(1002)のためのレドームであって、
前記レドームは、少なくとも電磁波活性領域(6001、7001、8001)を備え;
前記電磁波活性領域(6001、7001、8001)は、誘電体基材(6002、8002、9002)と、前記誘電体基材(6002、8002、9002)の両側に配置された2つの二重偏波メタ表面(6003、6004、9003、9004、10003、10004)とからなり;
前記二重偏波メタ表面(6003、6004、7003、7004、8003、8004)は、周期的に配置された複数の金属メタアトム(9001a~z、10001a~z)から形成され、各メタアトムは、開いた、回転対称な、非連続な幾何学的パターンを有する金属セルからなり;
前記複数のメタアトム(9001a~z、10001a~z)は、前記誘電体基材(6002、7002、8002)の2つの表面に平行な平面内で前記パターンを重ね合わせたときに、重なり合って、完全で閉じたパターンを形成するようになっており;
前記複数のメタアトム(9001a~z、10001a~z)は、前記平面アレイアンテナ(1002)の角度放射パターンの全部または一部(R1、R2)を覆う、少なくとも2つ(6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b)(6005a~6005c)の群へと、周期的に配置され;
前記複数のメタアトム(9001a~z、10001a~z)の前記幾何学的寸法(l,s,g,w)は、各群(6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b)内で種々の値であり、それにより、その群内で電磁的な透過位相勾配が形成されるようになっており、
前記透過位相勾配は、1つの群(6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b)と、別の群(6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b)とで異なり;
前記複数のメタアトム9001a~z、10001a~zの周期性Δpは、λ/10~λであり;
λは、前記平面アレイアンテナ(1002)からの入射電磁波IWの波長であり;
前記誘電体基材(6002、7002、8002)は、織布帛である、
前記レドーム。
【請求項2】
前記複数のメタアトム(9001a~z、10001a~z)が、少なくとも3つの群(6005a~6005c)に配置されてよく、
前記透過位相勾配gradφの位相差Δφが、第1の群(6005a)については0°~30°であり、第2の群(6005b)については30°~40°であり、第3の群(6005c)については40°~50°であり、
前記第1、第2および第3の群(6005a~6005c)について平面アレイアンテナの入射角がそれぞれ0°~15°、15°~30°および30°および45°であるように、前記第1、第2および第3の群(6005a~6005c)が前記レドームに沿って配置されている、
請求項1に記載の前記レドーム。
【請求項3】
群(6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b)内の透過位相勾配gradφが、前記群にわたって、正、負、または交互であってよい、請求項1に記載の前記レドーム。
【請求項4】
群6005a~6005b、7005a~7005b、8005a~8005b内のメタアトム9001a~z、10001a~zの数が、2πと、前記透過位相勾配gradφのラジアンで表される位相差Δφとの間の比であってよい、請求項1に記載の前記レドーム。
【請求項5】
前記第1のメタ表面(6003、7003、8003)の前記メタアトム(9001a~z)のパターンが、辺が開いた正方形であってよく、前記第2のメタ表面(6004、7004、8004)の前記メタアトム(10001a~z)のパターンが、角が開いた正方形であってよい、請求項1に記載の前記レドーム。
【請求項6】
前記正方形のセグメントの辺の長さsが、λ/200~λ/20であってよく、λは、前記平面アレイアンテナ(1002)からの入射電磁波IWの波長である、請求項5に記載の前記レドーム。
【請求項7】
前記角が開いた正方形のセグメントの長さが、λ/5~λ/1.4であり、λは、前記平面アレイアンテナ(1002)からの前記入射電磁波IWの波長である、請求項5に記載の前記レドーム。
【請求項8】
前記誘電体基材6002の厚さが、少なくとも1mmである、請求項1に記載の前記レドーム。
【請求項9】
前記レドームの動作周波数が、KuバンドまたはKaバンドにある、請求項1に記載の前記レドーム。
【請求項10】
前記活性領域の振幅損失が、0~3dBである、請求項1に記載の前記レドーム。
【請求項11】
前記メタアトム(9001a~z、10001a~z)が、銅または合金化銅から形成されてよい、請求項1に記載の前記レドーム。
【国際調査報告】