(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-07
(54)【発明の名称】光触媒粒子が自己駆動してコアを生成するコアシェル中空構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 35/39 20240101AFI20250228BHJP
B01J 21/06 20060101ALI20250228BHJP
C01G 23/053 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
B01J35/39
B01J21/06 M
C01G23/053
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560491
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 CN2022077328
(87)【国際公開番号】W WO2023159357
(87)【国際公開日】2023-08-31
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523371366
【氏名又は名称】耐酷時(北京)科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】NECOSH(BEIJING)TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 6011,6/F,Building 12,188 West South Fourth Ring Road,Fengtai District,Beijing 100070(CN)
(71)【出願人】
【識別番号】523371377
【氏名又は名称】耐酷時科技有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】NECOSH TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Factory 103,No.1,180 Shengye Street,Fuxi Street,Deqing County,Zhejiang,Huzhou(Mount Mogan National High-tech Zone),Zhejiang 313000(CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲タオ▼
(72)【発明者】
【氏名】許 凱
(72)【発明者】
【氏名】張 振宇
【テーマコード(参考)】
4G047
4G169
【Fターム(参考)】
4G047CA02
4G047CB06
4G047CC03
4G047CD04
4G169AA02
4G169AA08
4G169AA11
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169CB35
4G169DA05
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EA30
4G169EC22Y
4G169EC25
4G169EE01
4G169EE02
4G169FB34
4G169FB80
4G169FC02
4G169FC03
4G169FC04
4G169HA01
4G169HB02
4G169HB10
4G169HC03
4G169HC14
4G169HD02
4G169HD07
4G169HE06
4G169HE07
(57)【要約】
【要約】
光触媒粒子が自己駆動してコアを生成するコアシェル中空構造の製造方法が開示される。前記方法は、(1)二酸化チタンのアルコール溶液とオルトチタン酸テトラオクタデシルとを混合して、第1の溶液を得るステップであって、第1の溶液は、修飾された二酸化チタンナノスフェアを含むステップと、(2)マイクロ・ナノバブル発生器によって水中に空気を注入し、剪断・破砕して第2の溶液を得るステップであって、第2の溶液は、マイクロ・ナノバブルを含むステップと、(3)第2の溶液と第1の溶液とを摂氏35度以上の温度の条件下で混合して、第3の溶液を得るステップと、(4)第3の溶液にアンモニア水及びオルトケイ酸テトラエチル溶液を加えて、第4の溶液を得るステップと、(5)分離し、沈殿物を乾燥した後、か焼して、コアシェル中空構造ナノ粒子を得るステップとを含む。得られるコアシェル中空構造は、触媒反応の活性面を広げ、活性を向上させ、かつ方法が簡単で、工業的に大量に生産しやすい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシェル中空構造ナノ粒子の製造方法であって、
(1)二酸化チタンのアルコール溶液とオルトチタン酸テトラオクタデシルとを混合して、第1の溶液を得るステップであって、前記第1の溶液は、修飾された二酸化チタンナノスフェアを含むステップと、
(2)マイクロ・ナノバブル発生器によって水中に空気を注入し、剪断・破砕して、第2の溶液を得るステップであって、前記第2の溶液は、マイクロ・ナノバブルを含むステップと、
(3)第2の溶液と第1の溶液とを摂氏35度以上の温度の条件下で混合して、第3の溶液を得るステップと、
(4)前記第3の溶液にアンモニア水及びオルトケイ酸テトラエチル溶液を加えて、第4の溶液を得るステップと、
(5)分離し、沈殿物を乾燥した後、か焼して、コアシェル中空構造ナノ粒子を得るステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップ(1)において、前記二酸化チタンのアルコール溶液は、1~4重量部の二酸化チタンを含有し、前記オルトチタン酸テトラオクタデシルは、0.1~1.5重量部であり、
任意選択で、ステップ(1)において、前記二酸化チタンのアルコール溶液中の二酸化チタンの直径は、200~400ナノメートルであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(1)において、前記二酸化チタンのアルコール溶液は、1~4重量部の二酸化チタンと、10~50重量部の無水エタノールとを含む二酸化チタンのエタノール溶液であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(2)において、前記マイクロ・ナノバブルの直径は、600~1000ナノメートルであり、
任意選択で、前記剪断・破砕の時間は、4~9時間であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(2)において、空気湿度が5%~30%となるように、マイクロ・ナノバブル発生器によって水中に空気を注入することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(3)において、前記温度は、摂氏40~50度であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(4)において、ステップ(1)の二酸化チタンの量を1~4重量部として計算して、前記アンモニア水の量は、1~10重量部であり、オルトケイ酸テトラエチル溶液は、2~10重量部であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(5)において、前記か焼温度は、摂氏400~500度であり、前記か焼時間は、1~3時間であり、
任意選択で、前記乾燥温度は、摂氏70~90度であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
コアシェル中空構造ナノ粒子の製造方法であって、
(1)二酸化チタンのアルコール溶液とオルトチタン酸テトラオクタデシルとを混合して、第1の溶液を得るステップであって、前記第1の溶液は、修飾された二酸化チタンナノスフェアを含み、前記二酸化チタンのアルコール溶液は、10~50重量部の無水エタノールと、1~4重量部の二酸化チタンとを含むステップと、
(2)マイクロ・ナノバブル発生器によって水中に空気を注入し、剪断・破砕して、第2の溶液を得るステップであって、前記第2の溶液は、マイクロ・ナノバブルを含み、マイクロ・ナノバブルの直径は、600~1000nmであるステップと、
(3)第2の溶液と第1の溶液とを摂氏40度の条件下で混合して、第3の溶液を得るステップと、
(4)前記第3の溶液に1~10重量部のアンモニア水及び2~10重量部のオルトケイ酸テトラエチル溶液を加えて、第4の溶液を得るステップと、
(5)分離し、沈殿物を乾燥した後、か焼して、コアシェル中空構造ナノ粒子を得るステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法によって製造されたことを特徴とするコアシェル中空構造ナノ粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリマー材料分野に関し、具体的には、光触媒粒子が自己駆動してコアを生成するコアシェル中空構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタンは、よく見られる半導体光触媒材料である。光の照射の下で、二酸化チタンは、光エネルギーを化学エネルギーに変換でき、比較的短い時間内に有毒で有害な有機物を分解できる。なお、二酸化チタンは、高安定性、耐光腐食性、非毒性などの特性も有し、処理過程で二次汚染を引き起こさないため、抗菌、脱臭、油汚れ分解、防カビ防藻、及び空気浄化などの分野でますます多くの人々の注目を集めている。しかし、触媒反応は、本質的に表面接触反応であるため、材料の表面でのみ発生する。したがって、触媒の場合、限られた表面積が触媒反応に使用されるばかりではなく、粒子負荷固定のタスクも担うべきであり、往々にして触媒効果に大きく影響を与える。
【0003】
コアシェル構造は、化学結合又はその他の作用力によって、一種のナノ材料で別の一種のナノ材料を包み覆って形成されるナノスケールの順序付き組立て構造である。コアシェル構造は、触媒の機能的安定性を維持し、優勢相補を達成するように材料の理化特性を調節し、ナノ粒子の凝集を防止し、粒子界面反応を制御する上で重要な役割を果たしており、光触媒、バッテリー、ガス貯蔵及び分離における応用の見通しも幅広くある。しかし、表面積に依存して反応を推し進めるナノ触媒材料の場合、コア表面がシェルで覆われてコアの触媒活性に対して干渉を引き起こす問題をどのように解決するかは、常にナノ触媒応用化の道において避けることの出来ない障害である。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、関連技術の技術的問題の一つを少なくともある程度まで解決することを目的としている。本開示は、表面疎水性物質が親気性を有するという表界面原理を利用して、オルトチタン酸テトラオクタデシルを使用して市販の二酸化チタンナノスフェア粒子に対して表面疎水性修飾を行う。その後、該二酸化チタン粒子を水及びマイクロ・ナノバブルの体系に置き、親疎性表面の張力の違いにより、二酸化チタン粒子がマイクロ・ナノバブルに自己駆動して入るようにする。最後に、マイクロ・ナノバブルの水と空気の界面で二酸化シリコンシェルを合成することで、コアとシェルの間の中空構造を有する光触媒コアシェル中空構造ナノ粒子が得られる。
【0005】
具体的には、本開示は以下のような技術方案を提供する。
【0006】
本開示の第1の態様は、コアシェル中空構造ナノ粒子の製造方法を提供する。前記方法は、
(1)二酸化チタンのアルコール溶液とオルトチタン酸テトラオクタデシルとを混合して、第1の溶液を得るステップであって、前記第1の溶液は、修飾された二酸化チタンナノスフェアを含むステップと、
(2)マイクロ・ナノバブル発生器によって水中に空気を注入し、剪断・破砕して、第2の溶液を得るステップであって、前記第2の溶液は、マイクロ・ナノバブルを含むステップと、
(3)第2の溶液と第1の溶液とを摂氏35度以上の温度の条件下で混合して、第3の溶液を得るステップと、
(4)前記第3の溶液にアンモニア水及びオルトケイ酸テトラエチル溶液を加えて、第4の溶液を得るステップと、
(5)分離し、沈殿物を乾燥した後、か焼して、コアシェル中空構造ナノ粒子を得るステップとを含む。
【0007】
本開示の実施例によれば、上記のコアシェル中空構造ナノ粒子の製造方法は、以下のような技術的特徴を更に含み得る。
【0008】
さらに、ステップ(1)において、前記二酸化チタンのアルコール溶液は、1~4重量部の二酸化チタンを含有し、前記オルトチタン酸テトラオクタデシルは、0.1~1.5重量部である。
【0009】
さらに、ステップ(1)において、前記二酸化チタンのアルコール溶液中の二酸化チタンの直径は、200~400ナノメートルである。
【0010】
さらに、ステップ(1)において、前記二酸化チタンのアルコール溶液は、1~4重量部の二酸化チタンと、10~50重量部の無水エタノールとを含む二酸化チタンのエタノール溶液である。
【0011】
さらに、ステップ(2)において、前記マイクロ・ナノバブルの直径は、600~1000ナノメートルである。
【0012】
さらに、前記剪断・破砕の時間は、4~9時間である。
【0013】
さらに、ステップ(2)において、マイクロ・ナノバブル発生器によって水中に空気を注入する。本開示の好ましい実施例によれば、空気湿度が5%~30%となるように、マイクロ・ナノバブル発生器によって水中に空気を注入する。
【0014】
さらに、ステップ(3)において、前記温度は、摂氏40度である。
【0015】
さらに、ステップ(4)において、ステップ(1)の二酸化チタンの量を1~4重量部として計算して、前記アンモニア水の量は、1~10重量部であり、オルトケイ酸テトラエチル溶液は、2~10重量部である。
【0016】
さらに、ステップ(5)において、前記か焼温度は、摂氏400~500度であり、前記か焼時間は、1~3時間である。
【0017】
さらに、前記乾燥温度は、摂氏70~90度である。
【0018】
本開示の第2の態様は、コアシェル中空構造ナノ粒子の製造方法を提供する。前記方法は、
(1)二酸化チタンのアルコール溶液とオルトチタン酸テトラオクタデシルとを混合して、第1の溶液を得るステップであって、前記第1の溶液は、修飾された二酸化チタンナノスフェアを含み、前記二酸化チタンのアルコール溶液は、10~50重量部の無水エタノールと、1~4重量部の二酸化チタンとを含むステップと、
(2)マイクロ・ナノバブル発生器によって水中に空気を注入し、剪断・破砕して、第2の溶液を得るステップであって、前記第2の溶液は、マイクロ・ナノバブルを含み、マイクロ・ナノバブルの直径は、600~1000nmであるステップと、
(3)第2の溶液と第1の溶液とを摂氏40度の条件下で混合して、第3の溶液を得るステップと、
(4)前記第3の溶液に1~10重量部のアンモニア水及び2~10重量部のオルトケイ酸テトラエチル溶液を加えて、第4の溶液を得るステップと、
(5)分離し、沈殿物を乾燥した後、か焼して、コアシェル中空構造ナノ粒子を得るステップとを含む。
【0019】
本開示的第3の態様は、第1の態様又は第2の態様のいずれか1つに記載の方法によって製造されたコアシェル中空構造ナノ粒子を提供する。
【0020】
本開示によって得られる有益な効果は次の通りである。本開示が提供する方法によって、コアシェル中空構造ナノ粒子が得られ、得られたコアシェル中空構造は、触媒反応の活性面を広げ、活性を向上させるとともに、原材料も節約できる。製品の製造過程が相対的に簡単で、条件の制御が容易であり、工業的に大量に生産しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の実施例に係るコアシェル中空構造ナノ粒子の電子顕微鏡図である。
【0022】
【
図2】本開示の実施例に係るコアシェル中空構造ナノ粒子のEDSエネルギー分散型分光図である。
【0023】
【
図3】本開示の実施例に係るコアシェル中空構造ナノ粒子のXRDデータ結果である。
【0024】
【
図4】本開示の実施例に係るローダミンB溶液の光触媒退色実験結果である。
【0025】
【
図5】本開示の実施例に係る大腸菌及び黄色ブドウ球菌の抗菌性能試験結果である。
【0026】
【
図6】本開示の比較例1に係る電子顕微鏡結果図である。
【0027】
【
図7】本開示の比較例2に係る電子顕微鏡結果図である。
【0028】
【
図8】本開示の比較例3に係る電子顕微鏡結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本開示の実施例について詳細に説明するが、示される実施例は本開示を解釈するための例示的なものであり、本開示に対する限定として理解されるべきではない。
【0030】
マイクロ・ナノバブルは、気体と液体の界面に存在する特殊な気体状態であり、液体中で長時間安定に存在することができ、触媒表面非接触型の製造テンプレートとして利用され得る。市販のマイクロ・ナノバブル発生器によってマイクロ・ナノバブルを得ることができる。例えば、市販のマイクロ・ナノバブルは、高剪断発生器であるが、通常、動的又は静的な高速剪断設備を利用して、大きい気液混合気泡を破砕することでマイクロ・ナノバブルを得る。
【0031】
本開示は、表面疎水性物質が親気性を有するという表界面原理を利用し、表面を疎水性の二酸化チタン粒子に修飾して、水及びマイクロ・ナノバブルの体系に置き、親疎性表面張力の違いにより、二酸化チタン粒子がマイクロ・ナノバブルに自己駆動して入るようにする。最後に、マイクロ・ナノバブルの水と空気の界面で二酸化シリコンシェルを合成することで、コアとシェルの間の中空構造を有する光触媒コアシェル中空構造ナノ粒子が得られる。
【0032】
本開示は、コアシェル中空構造ナノ粒子の製造方法を提供する。前記方法は、
(1)二酸化チタンのアルコール溶液とオルトチタン酸テトラオクタデシルとを混合して、第1の溶液を得るステップであって、前記第1の溶液は、修飾された二酸化チタンナノスフェアを含むステップと、
(2)マイクロ・ナノバブル発生器によって水中に空気を注入し、剪断・破砕して、第2の溶液を得るステップであって、前記第2の溶液は、マイクロ・ナノバブルを含むステップと、
(3)第2の溶液と第1の溶液とを摂氏35度以上の温度の条件下で混合して、第3の溶液を得るステップと、
(4)前記第3の溶液にアンモニア水及びオルトケイ酸テトラエチル溶液を加えて、第4の溶液を得るステップと、
(5)分離し、沈殿物を乾燥した後、か焼して、コアシェル中空構造ナノ粒子を得るステップとを含む。
【0033】
ステップ(1)とステップ(2)の製造順序には特別な要件はない。
【0034】
具体的な実施形態によれば、ステップ(1)において、前記二酸化チタンのアルコール溶液は、1~4重量部の二酸化チタンを含有し、前記オルトチタン酸テトラオクタデシルは、0.1~1.5重量部である。適切な含有量のオルトチタン酸テトラオクタデシルは、表面疎水性修飾の役割を果たすことができ、したがって修飾された二酸化チタンナノスフェアを得ることができる。
【0035】
具体的な実施形態によれば、ステップ(1)において、前記二酸化チタンのアルコール溶液中の二酸化チタンの直径は、200~400ナノメートルである。
【0036】
具体的な実施形態によれば、ステップ(1)において、前記二酸化チタンのアルコール溶液は、1~4重量部の二酸化チタンと、10~50重量部の無水エタノールとを含む二酸化チタンのエタノール溶液である。
【0037】
具体的な実施形態によれば、ステップ(2)において、前記マイクロ・ナノバブルの直径は、600~1000ナノメートルであり、例えば、700~1000ナノメートル、800~1000ナノメートル、900~1000ナノメートル、600~800ナノメートルである。マイクロ・ナノバブルの直径は、最終的に製造して得られるコアシェル中空構造ナノ粒子の性能及び形成されるコアとシェルの間の空間の大きさにある程度直接影響を与える。マイクロ・ナノバブルの直径が小さすぎると、コアシェル中空構造ナノ粒子の装入に影響を及ぼし、マイクロ・ナノバブルの直径が大きすぎると、最終的に形成されるコアシェル中空構造ナノ粒子のシェル層構造が不安定になる。
【0038】
本開示の具体的な実施形態によれば、前記剪断・破砕の時間は、4~9時間である。
【0039】
本開示の具体的な実施形態によれば、ステップ(2)において、マイクロ・ナノバブル発生器によって水中に空気を注入する。
【0040】
本開示の具体的な実施形態によれば、ステップ(3)において、前記温度は、摂氏40度である。アルコールが揮発するにつれて、表面疎水性修飾された二酸化チタンナノスフェアは表面張力の作用により疎水性かつ親気性の特性を生み出し、その後、気泡の内部に自己駆動して入る(水体中での気泡除去の過程に類似)。
【0041】
オルトケイ酸テトラエチルは、アンモニア水の作用下で二酸化ケイ素を形成できる。本開示の具体的な実施形態によれば、ステップ(4)において、ステップ(1)の二酸化チタンの量を1~4重量部として計算して、前記アンモニア水の量は、1~10重量部であり、オルトケイ酸テトラエチル溶液は、2~10重量部である。
【0042】
本開示の具体的な実施形態によれば、ステップ(5)において、前記か焼温度は、摂氏400~500度であり、前記か焼時間は、1~3時間である。
【0043】
本開示の具体的な実施形態によれば、前記乾燥温度は、摂氏70~90度である。
【0044】
以下、実施例と併せて本開示をさらに詳しく記述する。実施例は、説明のみを目的としており、本開示の内容を限定するものではない。以下、実施例と併せて本開示の方案を解釈する。当業者であれば、以下の実施例は本開示を説明するためだけのものであり、本開示の範囲を限定するものとみなすべきではないことを理解するであろう。実施例に具体的な技術又は条件が明記されていない場合、本分野内の文献に記述されている技術又は条件に従って、或いは製品仕様書に従って行われるものとする。使用される試薬や器具は、メーカーが明記されていない場合、いずれも市中で購入され得る従来製品である。
【0045】
実施例1
実施例1は、コアシェル中空構造ナノ粒子を製造する方法を提供する。前記方法は、以下のステップを含む。
【0046】
1.30重量部の無水エタノールに、2重量部の直径200~400nm前後の市販の二酸化チタンナノスフェアを加え、均一に撹拌する。
【0047】
2.上記のステップ1で得られた溶液に1重量部のオルトチタン酸テトラオクタデシルを加え、24時間撹拌して、二酸化チタンナノスフェアの表面疎水性修飾を行う。
【0048】
3.市販のマイクロ・ナノバブル発生器によって100重量部の蒸留水に空気を注入し、気液を剪断・破砕する方式によりマイクロ・ナノバブルを得る。マイクロ・ナノバブルの直径は800nm前後に制御され、剪断時間は6時間である。
【0049】
4.ステップ3で得られた溶液を摂氏40度に加熱した後、ステップ2で得られた溶液10重量部を素早く加える。
【0050】
5.5重量部のアンモニア水をステップ4で得られた溶液に加え、激しく撹拌した後、5重量部のオルトケイ酸テトラエチル溶液を滴下して加え、4時間撹拌する。
【0051】
6.最後に、ステップ5で得られた溶液を遠心分離して沈殿物を得、摂氏80度で12時間乾燥させる。その後、摂氏400~500度で1~3時間か焼することで、コアシェル中空構造ナノ粒子が得られる。
【0052】
得られたコアシェル中空構造ナノ粒子の電子顕微鏡図は
図1に示す通りである。
【0053】
製造されたコアシェル中空構造ナノ粒子に対してEDSエネルギー分散型分光により特性評価を行ったが、結果は
図2に示す通りである。
図2のEDSエネルギー分散型分光は、光触媒の各組成元素としてのコアシェル中空構造ナノ粒子の割合を示している。
【0054】
また、
図3に示すように、XRDデータにより、コアシェル中空構造ナノ粒子中の二酸化チタン粒子の格子構造が変化していないことを示し、標準的なアナターゼ相二酸化チタンの格子構造パラメーターを示している。
【0055】
ローダミンB溶液の光触媒退色実験結果は、
図4に示す通りである。この結果は、コアシェル中空構造ナノ粒子が1時間以内に1×10
-5mol/LのローダミンB(RhB)溶液を光触媒退色できること、及びその触媒活性が同じ条件下での未処理の二酸化チタン粒子よりも高いことも示している。
【0056】
大腸菌及び黄色ブドウ球菌の抗菌試験結果は、
図5に示す通りである。この結果は、添加していないブランクサンプル(
図5の図面bの番号1及び番号2)及び添加した二酸化チタンサンプル(
図5の図面bの番号3及び番号4)と比較すると、コアシェル中空結果ナノ粒子を添加したサンプル(
図5の図面bの番号5及び番号6)が最も高い抗菌性能を呈していることも示している。
【0057】
実施例2
実施例2は、コアシェル中空構造ナノ粒子を製造する方法を提供する。前記方法は、以下のステップを含む。
【0058】
1.50重量部の無水エタノールに、4重量部の直径200~400nm前後の市販の二酸化チタンナノスフェアを加え、均一に撹拌する。
【0059】
2.上記の得られた溶液に1.5重量部のオルトチタン酸テトラオクタデシルを加え、40時間撹拌して、二酸化チタンナノスフェアの表面疎水性修飾を行う。
【0060】
3.市販のマイクロ・ナノバブル発生器によって100重量部の蒸留水に空気を注入し、気液を剪断・破砕する方式によりマイクロ・ナノバブルを得る。マイクロ・ナノバブルの直径は1000nm前後に制御され、剪断時間は8時間である。
【0061】
4.ステップ3で得られた溶液を摂氏40度に加熱した後、ステップ2で得られた溶液20重量部を素早く加える。
【0062】
5.10重量部のアンモニア水をステップ4に記載の溶液に加え、激しく撹拌した後、10重量部のオルトケイ酸テトラエチル溶液を滴下して加え、4時間撹拌する。
【0063】
6.最後に、ステップ5で得られた溶液を遠心分離して沈殿物を得、摂氏80度で12時間乾燥させる。その後、摂氏400~500度で1~3時間か焼することで、コアシェル中空構造ナノ粒子が得られる。
【0064】
実施例2で製造されたコアシェル中空構造ナノ粒子に対して実施例1と同じ特性評価を行った結果、実施例1で製造されたコアシェル中空構造ナノ粒子と同様の特徴を呈している。
【0065】
比較例1
実験中、
図6に示すように、二酸化チタンナノスフェアの表面に対して疎水性修飾を行う時、オルトチタン酸テトラオクタデシルが使用されないと、表面の疎水性が不十分となり、本開示が提供する表面張力により疎水性かつ親気性の特性を生み出し、気泡の内部に自己駆動して入るという過程が形成できなくなり、最終的に形成される二酸化ケイ素シェルにはコアがないことが発見された。同様に、オルトチタン酸テトラオクタデシルの量が不足する場合にも、形成されるコアシェル中空構造ナノ粒子の構造及び性能に影響を及ぼすことになる。
【0066】
比較例2
研究中、
図7に示すように、オルトケイ酸テトラエチルがアンモニア水の作用により、水と空気の界面で二酸化ケイ素シェルを合成する過程で、二酸化ケイ素反応の形成が速すぎるため、シェル構造を形成できないことが発見された。したがって、オルトケイ酸テトラエチル溶液を添加する際には滴下して加えるべきである。
【0067】
比較例3
研究中、
図8に示すように、オルトケイ酸テトラエチルがアンモニア水の作用により、水と空気の界面で二酸化ケイ素シェルを合成する過程で、多すぎるオルトケイ酸テトラエチル溶液を添加すると、体系内に二酸化ケイ素が過剰になって、二酸化ケイ素の自己凝集現象が生じ、正常なシェル構造の生成に影響を及ぼすことが発見された。
【0068】
上記の説明は、本開示の好ましい実施形態にすぎず、当業者であれば、本開示の原理から逸脱することなく、いくつかの改良及び潤色を更に行うことができ、これらの改良及び潤色も本開示の保護範囲としてみなされるべきであることを指摘しておくべきである。
【国際調査報告】