(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-07
(54)【発明の名称】累進厚さ層を有している多層ウインドシールドフィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20250228BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B17/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547154
(86)(22)【出願日】2023-02-03
(85)【翻訳文提出日】2024-08-23
(86)【国際出願番号】 US2023012316
(87)【国際公開番号】W WO2023154227
(87)【国際公開日】2023-08-17
(32)【優先日】2022-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524234064
【氏名又は名称】アールオー テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】RO TECHNOLOGIES,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、スティーブン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、バート イー.
(72)【発明者】
【氏名】フリーモント、クリストフ
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AG00E
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK01E
4F100AK42A
4F100AK42C
4F100AK42E
4F100AK51A
4F100AK51C
4F100AK51E
4F100AT00E
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10E
4F100CB00B
4F100CB00D
4F100GB32
4F100JB16A
4F100JB16C
4F100JB16E
4F100JD02
4F100YY00A
4F100YY00C
(57)【要約】
保護バリアは、自動車のウインドシールドなどの曲面基板に貼付可能にされている。保護バリアは、3枚以上のレンズからなるスタックを備えうる。3枚以上のレンズの各々は、熱可塑性フィルム(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)と、熱可塑性フィルムの第1面上の接着剤層と、を備えうる。3枚以上のレンズ同士は、スタックの積層方向において単調減少関数を定義するとともに、少なくとも3つの異なる厚さを備えているうちの各々の厚さを有しうる。保護バリアは、スタックのうちの最も内方のレンズの接着剤層が湾曲基板に接触した状態で、湾曲基板上に配置される。熱と圧力とを加えることでスタックを、湾曲基板の形状に適合させうる。その後、スタックのうちの最も外方のレンズを剥がすことで、スタックの次のレンズを見せうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲基板に貼り付け可能な保護バリアであって、前記保護バリアは、3枚以上のレンズからなるスタックを備えており、
3枚以上の前記レンズの各々は、熱可塑性フィルムと、前記熱可塑性フィルムの第1面上の接着剤層と、を備えており、
3枚以上の前記レンズ同士は、前記スタックの積層方向に単調減少関数を定義しているとともに、少なくとも3つの異なる厚さを備えているうちの各々の厚さを有している、
保護バリア。
【請求項2】
3枚以上の前記レンズの前記熱可塑性フィルム同士は、前記スタックの前記積層方向に単調減少関数を定義しているとともに、少なくとも3つの異なる厚さを備えているうちの各々の厚さを有している、
請求項1に記載の保護バリア。
【請求項3】
前記スタックのうちの最も内方のレンズの前記熱可塑性フィルムは、前記スタックのうちの最も外方のレンズの前記熱可塑性フィルムの少なくとも2倍の厚さである、
請求項2に記載の保護バリア。
【請求項4】
前記スタックのうちの最も内方のレンズの前記熱可塑性フィルムは、5ミル(0.127mm)以上の厚さを有している、
請求項1に記載の保護バリア。
【請求項5】
前記スタックのうちの最も内方のレンズの前記熱可塑性フィルムの厚さは、7ミル(0.1778mm)以下である、
請求項4に記載の保護バリア。
【請求項6】
前記スタックのうちの最も外方のレンズの前記熱可塑性フィルムは、3ミル(0.0762mm)以下の厚さを有している、
請求項1に記載の保護バリア。
【請求項7】
前記スタックのうちの最も外方のレンズの前記熱可塑性フィルムの厚さは、2ミル(0.0508mm)以上である、
請求項6に記載の保護バリア。
【請求項8】
3枚以上の前記レンズの前記接着剤層同士は、前記スタックの前記積層方向に単調減少関数を定義しているとともに、少なくとも3つの異なる厚さを備えているうちの各々の厚さを有している、
請求項1に記載の保護バリア。
【請求項9】
前記スタックのうちの最も内方のレンズの前記接着剤層は、前記スタックのうちの最も外方のレンズの前記接着剤層の少なくとも2倍の厚さである、
請求項8に記載の保護バリア。
【請求項10】
前記スタックのうちの最も内方のレンズの前記接着剤層は、前記スタックのうちの最も外方のレンズの前記接着剤層の少なくとも3倍の厚さである、
請求項9に記載の保護バリア。
【請求項11】
3枚以上の前記レンズの前記熱可塑性フィルムは、少なくとも2つの異なる厚さを備えているうちの各々の厚さを有している、
請求項1に記載の保護バリア。
【請求項12】
3枚以上の前記レンズの前記接着剤層は、少なくとも2つの異なる厚さを備えているうちの各々の厚さを有している、
請求項1に記載の保護バリア。
【請求項13】
3枚以上の前記レンズの数は、少なくとも4枚である、
請求項1に記載の保護バリア。
【請求項14】
前記レンズのうちの少なくとも2枚は、同じ厚さを有している、
請求項13に記載の保護バリア。
【請求項15】
前記スタックの総厚さは、10ミル(0.254mm)~30ミル(0.762mm)である、
請求項1に記載の保護バリア。
【請求項16】
前記スタックの前記総厚さは、15ミル(0.381mm)~25ミル(0.635mm)である、
請求項15に記載の保護バリア。
【請求項17】
前記熱可塑性フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである、
請求項1に記載の保護バリア。
【請求項18】
前記熱可塑性フィルムは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルムである、
請求項1に記載の保護バリア。
【請求項19】
車両ウインドシールドと、
前記車両ウインドシールドに貼り付けられた保護バリアであって、前記保護バリアは3枚以上のレンズからなるスタックを備えており、3枚以上の前記レンズの各々は、熱可塑性フィルムと、前記熱可塑性フィルムの第1面上の接着剤層と、を備えており、3枚以上の前記レンズ同士は、前記スタックの積層方向に単調減少関数を定義しているとともに、少なくとも3つの異なる厚さを備えているうちの各々の厚さを有している、前記保護バリアと、
を備えている、システム。
【請求項20】
前記車両ウインドシールドは、路上車両のウインドシールドである、
請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記熱可塑性フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである、
請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記熱可塑性フィルムは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルムである、
請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
方法であって、前記方法は、
3枚以上のレンズを積層する工程であって、3枚以上の前記レンズの各々は、熱可塑性フィルムと、前記熱可塑性フィルムの第1面上の接着剤層と、を備えており、3枚以上の前記レンズ同士は、スタックの積層方向に単調減少関数を定義しているとともに、少なくとも3つの異なる厚さを備えているうちの各々の厚さを有している、3枚以上の前記レンズを積層する工程と、
前記スタックの最も内方のレンズの前記接着剤層が湾曲基板に接触するように、3枚以上の前記レンズからなる前記スタックを前記湾曲基板上に配置する工程と、
3枚以上の前記レンズからなる前記スタックを前記湾曲基板の形状に適合させるべく熱および圧力を加える工程と、
を備えている、方法。
【請求項24】
前記方法はさらに、前記熱および前記圧力を加える前記工程の後に、3枚以上の前記レンズからなる前記スタックのうちの最も外方のレンズを剥離する工程を備えている、
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記熱可塑性フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである、
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記熱可塑性フィルムは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルムである、
請求項24に記載の方法。
【請求項27】
湾曲基板に貼り付け可能な保護バリアであって、前記保護バリアは、2枚以上のレンズからなるスタックを備えており、
2枚以上の前記レンズの各々は、熱可塑性フィルムと、前記熱可塑性フィルムの第1面上の接着剤層と、を備えており、
2枚以上の前記レンズの前記接着剤層同士は、前記スタックの積層方向に単調減少関数を定義しているとともに、少なくとも2つの異なる厚さを備えているうちの各々の厚さを有している、
保護バリア。
【請求項28】
前記熱可塑性フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである、
請求項27に記載の保護バリア。
【請求項29】
前記熱可塑性フィルムは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルムである、
請求項27に記載の保護バリア。
【請求項30】
湾曲基板に貼り付け可能な保護バリアであって、前記保護バリアは、1枚または複数のレンズからなるスタックを備えており、
1枚または複数の前記レンズの各々は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルムと、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの第1面上の接着剤層と、を備えている、
保護バリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、累進(プログレッシブ)厚さ層を有している多層(マルチレイヤー)ウインドシールドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
(関連特許出願との相互参照)
本出願は、2022年2月8日に出願されており、「マルチ-レイヤーウインドシールドフィルムハビングプログレッシブシックネスレイヤーズ」(累進厚さ層を有している多層風防薄膜)と題された米国仮出願第63/267,686号に関する。本出願は米国仮出願の利益を主張するものであり、米国仮出願の全内容は参照によって明示的に組み込まれる。
【0003】
ストックカーレースやオフロードレースのようなモータースポーツの参加者にとって、泥(マッド)、虫(バグ)、その他の破片(デブリ)、が車両のウインドシールド(フロントガラス、風除け)に蓄積すると、ウインドシールドには岩のような硬い破片によって穴が開くので、コースの視界を維持することが重要である。これは、一般的な街乗り車両でも同じことが言える。加えて、オートレーサおよび一般的な街乗り車両の所有者は、同様に、ウインドシールドを交換する際の高額な費用と不便さとを考慮して、ウインドシールドの下地を穴あきやヒビ割れから保護する必要性を有している。実際、この問題の側面は、レースカーで一般的に使用されるようなポリカーボネート製ウインドシールドに比べて、現存する街乗り車両の数が遙かに多いとともに、ガラス製ウインドシールドのコストが高いので、街乗り車両の場合にはさらに顕著である。このようなニーズに対応するべく、ティアオフフィルムが一般的に採用されている。ティアオフフィルムは個別に、あるいはラミネート加工されたスタック(積層体、積み重ね)として、あらゆるタイプの車両ウインドシールドに適用されることが可能にされている。ティアオフフィルムの最も外方(一番外方、アウターモースト)にゴミが溜まったり、最も外方のフィルムに穴が開いたり、破損したり、するとドライバーがフィルムを剥がすだけで、その下に存在している次のきれいなフィルムが現れる。積み重ねられた(インザスタックの)フィルムの枚数によっては、スタック(積層体、積み重ね)を交換する前にこの処理を数回繰り返すこともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0121105号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/0162645号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2021/0283994号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2022/0032591号明細書
【特許文献5】米国特許第9128545号明細書
【特許文献6】米国特許第9295297号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2021/0070017号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2020/0247102号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Wolfel(oはウムラウト付) B, Seefried A, Allen V, Kaschta J, Holmes C, Schubert DW, “Recycling and Reprocessing of Thermoplastic Polyurethane Materials towards Nonwoven Processing”, Polymers, 2020年,12(9),1917
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、ティアオフフィルムのラミネートスタック(積み重ねられた積層体)の保護的利点の多くは、硬い破片(ハードデブリ)の衝撃を緩和する役割を果たす総厚さ(総厚、トータルシックネス)から由来することを見出した。残念なことに、この潜在的な利点は、フィルムを除去するごとにスタックの厚さが劇的に減少するので、ラミネートされたスタックとしての機能性とは相反する。結果、衝撃(インパクト)に対する耐性(レジスタンス)が低下するので、スタックの使用中に破片によって下層(アンダーライイング)のウインドシールドが損傷する虞れが著しく高くなりうる。さらに、衝撃緩和効果と、比較的厚いフィルムの使用に伴う歪みの増加と、の間には性能上のトレードオフが存在しうる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、関連技術に付随する上記の欠点を克服するための様々なシステムおよび方法を企図する。本開示の実施形態の一態様は、湾曲基板(カーブドサブストレート、湾曲した基材)に貼付可能な保護バリアである。保護バリアは、3枚(3つ、3個)以上のレンズからなるスタック(積層体)を備えて構成されてもよい。3枚以上のレンズの各々は、熱可塑性フィルム(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたは熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルム)と、熱可塑性フィルムの第1面上の接着剤層(粘着層)と、を備えていることができる。3枚以上のレンズ同士は、スタックの積層方向に単調減少関数(モノトニカリデクリージングファンクション)を定義(規定、デファイン)しているとともに、少なくとも3つの異なる厚さを備えているうちの各々の厚さを有していることができる。
【0008】
3枚以上のレンズの熱可塑性フィルム同士は、スタックの積層方向に単調減少する関数(特徴、機能)を定義しているとともに、少なくとも3つの異なる厚さを備えているうちの各々の厚さを有していることができる。スタックのうちの最も内方のレンズ(最内レンズ)の熱可塑性フィルムは、スタックのうちの最も外方のレンズ(最外レンズ)の熱可塑性フィルムの少なくとも2倍の厚さ、好ましくは少なくとも3倍の厚さであってもよい。
【0009】
スタックのうちの最も内方のレンズの熱可塑性フィルムは、5ミル(0.127mm)以上の厚さを有してよい。スタックのうちの最も内方のレンズの熱可塑性フィルムの厚さは、7ミル(0.1778mm)以下、好ましくは6ミル(0.1524mm)以下、であってもよい。
【0010】
スタックのうちの最も外方のレンズの熱可塑性フィルムの厚さは、3ミル(0.0762mm)以下であってもよい。スタックの最外レンズの熱可塑性フィルムの厚さは、2ミル(0.0508mm)以上であってもよい。
【0011】
3枚以上のレンズの接着剤層同士は、スタックの積層方向に単調減少関数を定義しているとともに、少なくとも3つの異なる厚さを備えているうちの各々の厚さを有していることができる。スタックのうちの最も内方のレンズの接着剤層は、スタックのうちの最も外方のレンズの接着剤層の少なくとも2倍の厚さであってもよい。スタックのうちの最も内方のレンズの接着剤層は、スタックのうちの最も外方のレンズの接着剤層の少なくとも3倍の厚さであってもよい。
【0012】
3枚以上のレンズの熱可塑性フィルムは、少なくとも2つの異なる厚さを備えているうちの各々の厚さを有していることができる。
3枚以上のレンズの接着剤層は、少なくとも2つの異なる厚さを備えているうちの各々の厚さを有していることができる。
【0013】
3枚以上のレンズの数は少なくとも4枚(4つ、4個)である。レンズのうち少なくとも2枚(2つ、2個)は同じ厚さを有していてもよい。
スタックの総厚さは、10ミル(0.254mm)から30ミル(0.762mm)の間であってもよい。スタックの総厚さは、15ミル(0.381mm)と25ミル(0.635mm)との間であってもよい。
【0014】
本開示の実施形態の別の態様は、システムである。このシステムは、車両ウインドシールドと、車両ウインドシールドに貼付された保護バリアとを含んでよい。保護バリアは、3枚(3つ、3個)以上のレンズからなるスタックを備えて構成されてもよい。3枚以上のレンズの各々は、熱可塑性フィルム(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたは熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルム)と、熱可塑性フィルムの第1面上の接着剤層と、を備えていることができる。3枚以上のレンズ同士は、スタックの積層方向において単調減少関数を定義しているとともに、少なくとも3つの異なる厚さを備えているうちの各々の厚さを有していることができる。
【0015】
車両のウインドシールドは、路上走行車両のウインドシールドであってもよい。
本開示の実施形態の別の態様は、方法である。本方法は、3枚以上のレンズを積層する工程を含んでよい。3枚以上のレンズの各々は、熱可塑性フィルム(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたは熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルム)と、熱可塑性フィルムの第1面上の接着剤層と、を備えていることができる。3枚以上のレンズ同士は、スタックの積層方向において単調減少関数を定義しているとともに、少なくとも3つの異なる厚さを備えているうちの各々の厚さを有していることができる。本方法はさらに、3枚以上のレンズからなるスタックを、スタックのうちの最も内方のレンズの接着剤層が湾曲基板に接触した状態で、湾曲基板上に配置するとともに、熱と圧力を加えることで3枚以上のレンズからなるスタックを、湾曲基板の形状に適合させる工程を含んでいてもよい。
【0016】
この方法は、前記熱および圧力を加えた後に、3枚以上のレンズからなるスタックのうちの最も外方のレンズを剥離する工程を含んでいてもよい。
本開示の実施形態の別の態様は、湾曲基板に貼付可能な保護バリアである。保護バリアは、2枚以上のレンズからなるスタックを備えて構成され得る。2枚以上のレンズの各々は、熱可塑性フィルム(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたは熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルム)と、熱可塑性フィルムの第1面上の接着剤層と、を備えていることができる。2枚以上のレンズの接着剤層同士は、スタックの積層方向に単調減少関数を定義しているとともに、少なくとも2つの異なる厚さを備えているうちの各々の厚さを有していることができる。
【0017】
本開示の実施形態の別の態様は、湾曲基板に貼付可能な保護バリアである。保護バリアは、1枚または複数のレンズからなるスタックを備えている。1枚または複数のレンズの各々は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルムと、熱可塑性ポリウレタンTPUフィルムの第1面上の接着剤層と、を備えている。
【0018】
本明細書で開示される様々な実施形態のこれらおよび他の特徴および利点は、以下の説明および図面に関してよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の一実施形態による保護バリアの断面図。
【
図3】本開示の実施形態による別の保護バリアの断面図。
【
図4】本開示の実施形態による例示的な操作フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、車両のウインドシールドなどの湾曲基板(湾曲した基材、カーブドサブストレート)に貼付可能な保護バリアの様々な実施形態、ならびにその製造、設置、および使用方法、を包含する。添付図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、現在考えられているいくつかの実施形態の説明として意図されており、開示された発明が開発または利用され得る唯一の形態を表すことを意図していない。本明細書は、図示された実施形態に関連して機能および特徴を規定する。しかしながら、本開示の範囲内に包含されることが意図される異なる実施形態によっても、同一または同等の機能が達成され得ることが理解される。さらに、第1および第2などの関係用語は、そのようなエンティティ間の順序における実際のそのような関係を必ずしも要求または暗示することなく、1つのエンティティを別のエンティティから区別するべくのみ使用されることを理解されたい。
【0021】
図1は、本開示の一実施形態による保護バリア100の断面図である。保護バリア100は、自動車のウインドシールド(フロントガラス、風除け)などの基板(基材、サブストレート)10に貼り付けられてもよいし、
図1に示すレンズ110a、110b、110c、などの3枚(3つ、3個)以上のレンズ110(場合によっては2枚以上のレンズ110)からなるスタック(積層体)を備えて構成されてもよい。レンズ110の各々は、熱可塑性フィルム(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)112と、レンズ110同士を接着するとともに基板10に接着されるための接着剤層(接着層、アドヒーシブレイヤー)114と、を第1面(ファーストサイド)に備えていることができる。従来のティアオフフィルムからなるスタックとは異なり、3枚以上のレンズ110同士は、スタックの積層方向(すなわち、基板10に最も近いレンズ110から、基板10から最も遠いレンズ110に向かう方向)において、単調減少関数(すなわち、減少するかまたは同じままであって、増加しないもの)を定義(規定、デファイン)するうちの各々の厚さを有してもよい。3枚以上のレンズ110の各々の厚さは、さらに、それに応じて配置済の少なくとも3つの異なる厚さを含んでもよい。したがって、厚さの各々の変化は減少であり、その結果、より薄いレンズ110が積層方向において後に配置される(ただし、積層は、各々の厚さが同じである隣接するレンズ110同士を含んでもよい)。
図1に例として示すように、図示された3枚のレンズ110a、110b、110c、はすべて異なる各々の厚さD
a、D
b、D
c、を有している。厚さD
a、D
b、D
c、は基板10に最も近い最初の(最も内方の)レンズ110aから、基板10から最も遠い最後の(最も外方の)レンズ110cに向かって減少する。すなわち、D
a>D
b>D
cであってもよい。記載された構造によれば、すべての層が同じ厚さを有している従来のスタックとで比較して、保護バリア100は、各レンズ110が除去されるにつれて、より大きな総残存厚さを維持することが可能にされている。結果、保護バリア100の寿命中に各レンズ110が剥離しても、スタックのクッション効果はそれほど低下しないとともに、有害な衝撃に対する基板10の保護が向上する。同時に、保護バリア100の新規な構造は、比較的厚いフィルムのクッション効果とで、比較的薄いフィルムの低減された歪みを組合せることによって、所望の性能バランスを達成することを可能にする。
【0022】
図2は、
図1に示す保護バリア100の分解図である。一般に、異なる厚さD
a、D
b、D
cは、各レンズ110の任意のサブ層の厚さを調整することによって達成され得る。したがって、各レンズ110が熱可塑性フィルム112と接着剤層114とを有している図示の例では、異なる厚さD
a、D
b、D
c、は各レンズ110のこれら2つの層(112、114)のうちの一方または両方の厚さを変化させた結果である可能性がある。例示のために、
図1および
図2は、熱可塑性フィルム112の厚さと、接着剤層114の厚さと、の両方が積層方向に減少するそのような可能性の1つを示す。特に、図示の例では、
図2においてd
1a、d
1b、およびd
1c、として識別されている熱可塑性フィルム112の各々の厚さは、d
1a>d
1b>d
1cの関係を有している。
図2においてd
2a、d
2b、およびd
2c、として識別されている接着剤層114の各々の厚さも同様に、d
2a>d
2b>d
2cの関係を有している。しかしながら、これらの関係のいずれかが、それ自体で、例えば、他の層の厚さ(すなわち、熱可塑性フィルム112の厚さ、または接着剤層114の厚さ)が一定のままであるかまたは異なる関係を有している状態で、D
a>D
b>D
cの関係を生じさせてもよい。
【0023】
より一般的には、互いに同じ厚さを有している隣接するレンズ110同士が存在し得る実施形態を考慮すると、3枚以上のレンズ110の熱可塑性フィルム112同士は、積層方向に単調減少関数を定義するうちの各々の厚さを有し得る。追加的にまたは代替的に、3枚以上のレンズ110の接着剤層114同士は、積層方向に単調減少関数を定義するうちの各々の厚さを有していることができる。さらに、熱可塑性フィルム112の各々の厚さまたは接着剤層114の各々の厚さのいずれかがまたは両方が、少なくとも2つの異なる厚さを、または場合によっては3つ以上の厚さを、含んでいてもよい。例えば、1つの実用的な実施態様として、3つ以上の異なる厚さの熱可塑性フィルム112を製造することで、熱可塑性フィルム112同士は積層方向に単調減少する厚さを有しているように積層される。場合によっては接着剤層114同士の厚さを一定に保つことが考えられる。このようなスタックでは、スタックのうちの最も内方のレンズ(最内レンズ)110の熱可塑性フィルム112は、スタックのうちの最も外方のレンズ(最外レンズ)110の熱可塑性フィルム112の少なくとも2倍の厚さ、例えば、好ましくは少なくとも3倍の厚さ、であってもよい。別の実用的な実施態様は、同じ厚さを有している熱可塑性フィルム112同士を製造するが、接着剤層114同士が積層方向に単調減少する厚さを有しているように、異なる量の接着剤が適用されることであろう。このようなスタックでは、スタックのうちの最も内方のレンズ110の接着剤層114は、スタックのうちの最も外方のレンズ110の接着剤層114の少なくとも2倍の厚さ、例えば、好ましくは少なくとも3倍の厚さ、であってもよい。これら2つの極端同士間で、熱可塑性フィルム112の厚さはまたは接着剤層114の厚さは、最も内方のレンズ110の最も厚い熱可塑性フィルム112または最も厚い接着剤層114から、最も外方のレンズ110の最も薄い熱可塑性フィルム112または最も薄い接着剤層114へ、と徐々に移行することが可能にされている。好ましくは、以下でさらに詳細に説明するように、熱可塑性フィルム112または接着剤層114の厚さは、各レンズ110が除去されるにつれて、スタックの残り(残存)の総厚さをできるだけ最大にするべく、完全に均等ではなく、離散的な段階で移行してもよい。
【0024】
図3は、本開示の実施形態による、別の保護バリア300の断面図である。保護バリア100とで同様に、保護バリア300は、自動車のウインドシールドなどの基板(基材、サブストレート)10に貼り付けられてもよいし、3枚以上のレンズ110(場合によっては2枚以上のレンズ110)からなるスタックを、この場合、レンズ110a、110b、110cと、追加のレンズ110cと、を備えて構成されてもよい。レンズ110の各々は、
図1に関連して説明したものとで同じであってもよいし、レンズ110同士を接着するとともに基板10に接着するための、熱可塑性フィルム(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)112と、熱可塑性フィルム112の第1面上の接着剤層(114)と、を含んでもよい。
図3の保護バリア300の例は、上述の単調減少関数が、各々の厚さが同じである隣接するレンズ110同士を許容し得ることを説明するべく提供されている。この点に関して、
図3は、最も薄いレンズ110c(厚さD
cを有している)が繰り返される、特定の場合を例示している。より一般的には、レンズ110のいずれかが、本明細書で企図される単調減少関数の意味内で、任意の回数で繰り返されてもよい。例えば、2枚のレンズ110aと、2枚のレンズ110bと、および2枚のレンズ110cと、があってもよい。または3枚のレンズ110aと、1つのレンズ110bと、および3枚のレンズ110cと、があってもよい。したがって、例えば、企図される3枚以上のレンズ110は、4枚以上であってもよいし、レンズのうちの2枚(またはそれ以上)は、同じ厚さを有している。また、異なる厚さを有しつつ異なるように作製されたレンズ110の数には、制限がないことに留意すべきである。すなわち、厚さD
d(ここで、D
d<D
c)を有している1枚または複数のレンズ110dと、厚さD
e(ここで、D
e<D
d)を有している1枚または複数のレンズ110eと、なども存在し得る。しかしながら、典型的には、保護バリア100にあまり多くの光学的歪みを導入しないように、レンズ110の総数は5枚(5つ、5個)以下であってもよい。
【0025】
一般に、本明細書で企図される保護バリア100、300のレンズ110の厚さは、各レンズ110が除去されるにつれてスタックの残りの全厚さをできるだけ最大にするべく、最も厚い(最も内方の)レンズ110から最も薄い(最も外方の)レンズ110まで均等に移行してもよいし、好ましくは、離散的な段階で移行してもよい。数値的な例として、以下の表1は、3つの仮想的な保護バリアにおいて、各レンズ110が除去されるにつれて残存するスタックの厚さをミル単位で比較したものである。各ケースにおいて、スタックの開始時の総厚さ(合計厚さ)は20.00ミル(0.508mm)であるとともに、レンズ110は4枚である。各レンズの厚さに関する特定の制約は、使用されるポリエチレンテレフタレートPETの品質または強度(例えば、より高品質のポリエチレンテレフタレートPETは、より薄い熱可塑性フィルム112を可能にする可能性がある)および特定の用途(例えば、厚い熱可塑性フィルム112は、より高度な光学的歪みが許容される場合に使用可能にされ得る)、各場合において、使用可能な最も薄い熱可塑性フィルム112は2.00ミル(0.0508mm)であり、使用可能な最も厚い熱可塑性フィルム112は7.00ミル(0.1778mm)であると仮定される(しかしながら、より強いポリエチレンテレフタレートPETによって、場合によっては1.00ミル(0.0254mm)の熱可塑性フィルム112が可能になり得ることに留意されたい)。この例では、接着剤層114の厚さは各レンズ110について0.50ミル(0.0127mm)で一定に保たれているとともに、各レンズ110の厚さは2.50ミル(0.0635mm)から7.50ミル(0.1905mm)の範囲であると仮定する。
【0026】
【0027】
表1において、「一定厚さ」(一定厚み、コンスタントシックネス)としてラベル付けされた保護バリアは、各々5.0ミル(0.127mm)の4枚の等しい厚さのレンズ110を有している。一方で、「累進厚さ1」(第1累進厚み、プログレッシブシックネス1)および「累進厚さ2」(第2累進厚み、プログレッシブシックネス2)としてラベル付けされた2つの保護バリアは、本明細書に記載されるように、少なくとも3つの厚さを備えている、最も内方のレンズから最も外方のレンズまで単調に減少する厚さを示す。表1の異なる仮想的な保護バリア同士間の比較から分かるように、「累進厚さ1」および「累進厚さ2」の例における総残存厚さは、各レンズ110が除去されるにつれて、「一定厚さ」の例における厚さよりも著しく大きくなる。そのような残存スタックは、衝撃に耐えるための優れたクッション効果を提供する。例えば、最も外方のレンズ(レンズ番号4)が取り外された後、「一定厚さ」のスタックは、20.00ミル(0.508mm)の総厚さから15.00ミル(0.381mm)の総厚さまで下がったが、2つの「累進厚さ」の例は、17.50ミル(0.4445mm)の総厚さまでしか下がらなかった。「累進厚さ」の例は、レンズ110が取り除かれるにつれて、さらに多くの総厚さを維持し続ける。「累進厚さ1」の単調減少の厚さは、厚さの変化(チェンジインシックネス)がレンズ110から次のレンズ110まで一定(コンスタント)の均等な移行(イーブントランジッション)を表している。「累進厚さ2」の単調減少の厚さは、スタックの最も外方に比較的薄いレンズ110の段階(ステージ)(2.50ミル(0.0635mm)と3.00ミル(0.0762mm))が存在する一方で、スタックの最も内方に比較的厚いレンズ110の段階(7.00ミル(0.1778mm)と7.50ミル(0.1905mm))が存在するような、離散的な段階によって示される不均等な移行を表する。レンズ110の厚さをこのように配置することで、各レンズ110が取り除かれたときに残る厚さをさらに最適化することが可能にされている。例えば、「累進厚さ2」は2枚目のレンズ110を取り外した後、14.50ミル(0.3683mm)の総厚さを保持するが、「累進厚さ1」は13.33ミル(0.338582mm)の総厚さしか保持しない(それでも、「厚さ一定」の例で保持される10.00ミル(0.254mm)の総厚さよりもはるかに優れている)。このように、最も厚いレンズ110と最も薄いレンズ110との間の不均一な移行は、各レンズ110が取り外された後に残る総厚さを一層大きくするので、使用中の衝撃に対する保護のために保護バリア100をさらに最適化する可能性がある。
【0028】
表1に関連して説明した上記の実施例では、接着剤層114の厚さは0.50ミル(0.0127mm)で一定に保たれると仮定しており、熱可塑性フィルム112の厚さは、「一定厚さ」の実施例では4.50ミル(0.1143mm)であり、累進的厚さの2つの実施例(「累進的厚さ1」および「累進的厚さ2」)では7.00ミル(0.1778mm)から2.00ミル(0.0508mm)に移行する。一般に、開示された厚さの単調減少を実施する場合、スタックの最も内方のレンズ110の熱可塑性フィルム112と、それに最も近いレンズ110の熱可塑性フィルム112と、は保護層(100)の全厚さの最大部分がスタックの最も内方に集中するように、好ましくは比較的厚く(例えば、5ミル(0.127mm)以上に)することが可能にされていることが企図される。同時に、この最も内方の熱可塑性フィルム112の厚さは、好ましくは7ミル(0.1778mm)を超えない(一層好ましくは6ミル(0.1524mm)を超えない)ようにして、光学的歪みの程度をウインドシールドの使用例に適した範囲内に保つ。スタックの最も外方のレンズ110と、それに最も近いレンズ110の熱可塑性フィルム112と、に関してはスタックから取り除かれる最初のレンズ110がスタックの総厚さを著しく減少させないように、厚さは好ましくは3ミル(0.0762mm)以下である。同時に、最も外方の熱可塑性フィルム112の厚さ(すなわち、最小フィルム厚さ)は、使用中に使用者がレンズ110をスタックから剥がすのに関連する力に耐えるのに十分な強度を有しているように、通常、少なくとも2ミル(0.0508mm)以上である。しかしながら、最も外方の熱可塑性フィルム112は、前の(すなわち、より高い)接着剤層の引っ張り力を受ける必要がないので、最も外方のレンズ110の熱可塑性フィルム112は、場合によっては、その下のレンズ110の熱可塑性フィルム112よりもかなり薄くてもよいことに留意されたい。
【0029】
上述のように、異なる厚さDa、Db、Dc同士は、接着剤層114を備えている各レンズ110の任意のサブ層の厚さを調整することによって達成することが可能にされている。この点に関して、接着剤層114の厚さは、典型的には、例えば、0.050ミル(0.00127mm)以上である最小厚さと、2.00ミル(0.0508mm)以下である最大厚さと、の間で変化させることができる。
【0030】
図4は、本開示の実施形態による例示的な操作フローである。
図4の操作フローは、
図1~
図3に関連して示されており、説明されたレンズ110からなるスタックを備えている保護バリア100、300を製造しており、設置しており、使用する例示的な方法として機能し得る。操作フローは、3枚以上のレンズ110の各々に使用される熱可塑性フィルム112を提供することから始めてもよい(ステップ410)。各レンズ110の熱可塑性フィルム112は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BoPET)であってもよいし、特定のMTF(変調伝達関数)データに対して選択されてもよい。あるいは各レンズ110の熱可塑性フィルム112は、「グレージングフィルムにおける非正常入射歪みを低減するための方法および装置」と題された特許文献2、「安全グレージング用保護バリア」と題された特許文献3、または共有されている「グレージングフィルムにおける非正常入射歪みを低減するための方法および装置」と題された特許文献4(米国特許出願番号第17/505,433号)、のいずれかに記載されているように、連続処理またはバッチ同士間処理で変調伝達関数MTFデータを積極的に監視しながら製造することもできる。これらの各々の全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。これに関して、熱可塑性フィルム112を提供する工程は、例えば、樹脂を溶融する工程と、溶融済の樹脂をダイ経由(を通して)押し出すことでポリマーフィルムを製造する工程と、およびポリマーフィルムを冷却する工程と、を備えていることができる。各熱可塑性フィルム112は、その片面を接着剤層114で被覆してもよい(ステップ420)。この接着剤層114は、好ましくは湿式成膜されるが、スピンコーティング、ディップコーティング、または真空成膜、を備えている任意の適切な方法に従って塗布してもよい。接着剤層114は、例えば「タッチスクリーンシールド」と題された特許文献5に開示されているようなウェットマウント接着剤であってもよいし、例えば「取外可能な層の接着剤マウント可能なスタック」と題された特許文献6に開示されているようなドライマウント接着剤であってもよい。これらの各内容の全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。接着剤(114)は、アクリル感圧接着剤(PSA)またはシリコンPSAなどのアクリルまたはシリコン接着剤であってもよい。
【0031】
熱可塑性フィルム112が接着剤層114で被覆された状態で、
図4の操作フローは、得られたレンズ110を3枚以上積層することによって漸進的な厚さのスタックを生成することで継続することが可能にされている(ステップ430)。例えば、上述したように、熱可塑性フィルム112の厚さと、接着剤層114の厚さと、のいずれかまたは両方を、最も内方のレンズ110から、最も外方のレンズ110に向かって単調減少関数に従って変化させてもよい。各レンズ110の厚さは、積層方向において前のレンズ110の厚さ以下または等しくなるようにしてもよい。熱可塑性フィルム112および接着剤層114に加えて、各レンズ110は、上述の特許文献3(′994特許)に記載されているようなハードコート、UV遮断層、または「ナノパーティクルソーラー制御フィルム」と題された特許文献7に記載されているようなサーモクロミックフィルム、などを挙げることができる。それらの全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。このような追加層の厚さも同様に、本明細書で説明する単調減少する厚さを維持するように制御されることが可能にされている。レンズ110からなるスタックの総厚さは、好ましくは10ミル(0.254mm)と30ミル(0.762mm)との間、一層好ましくは15ミル(0.381mm)と25ミル(0.635mm)との間(例えば、表1の上記の例のように20ミル(0.508mm))である。光学歪みを可能な限り低く保つべく、熱可塑性フィルム112、接着剤層114、および各レンズ110、内の、および複数のレンズ110の各々同士の間のその他の層の、屈折率は、上述の特許文献6(′297特許)に記載されているように0.2以内に一致させることができる。
【0032】
レンズ110からなるスタックからなる保護バリア100が組み立てられると、操作フローは、保護バリア100を、自動車または他の車両のウインドシールド(フロントガラス)などの湾曲基板(湾曲した基材10)に設置することで継続することが可能にされている。引き続き
図4の操作フローを参照すると、レンズ110からなるスタックを備えている保護バリア100は、最下段のレンズ110a(
図1~
図3参照)の接着剤層(114)が、湾曲基板(10)に接触した状態で、ウインドシールドまたは他の湾曲基板(10)上に配置することが可能にされている(ステップ440)。取り付けを促進するべく、保護バリア100は、ウインドシールド(10)の外方にあまりはみ出さないように(例えば電気フィルムカッターを使用して)粗くカットしてもよい。操作フローは、3枚以上のレンズ110からなるスタックを湾曲基板(10)の形状に適合させるべく熱と圧力を加えることで継続することが可能にされている(ステップ450)。特に、熱および圧力の印加は、3枚以上のレンズ110の各々の接着剤層114が完全に硬化する前に、例えば、接着剤層114が、剥離に必要な単位幅当たりの一定荷重として決定される1インチ(25.4mm)当たり25グラムの剥離強度を超える前に、少なくとも部分的に実行されてもよい。保護バリア100は、接着剤層114が完全に硬化する前に、湾曲基板(10)の形状に完全に適合させることができる。場合によっては、保護バリア100は、「成形可能な金型一体型熱成形フロントガラススタック」(サーモフォームウィンドシールドスタックウィズイングレーテッドフォーマブルモールド)と題された特許文献8に記載されており、その全内容は参照によって本明細書に組み込まれているように、レンズ110同士のスタックを犠牲層と基板10との間に挟むための雌型キャビティとして機能する犠牲層を使用することで、基板10に適用されてもよい。保護バリア100を冷却させた後、ウインドシールドまたは他の基板10に適合するように最終的なトリミングを行なうことで取り付けを終了することが可能にされている。
【0033】
上記で説明したように、2枚以上のレンズ110を有している保護バリア100では、最も外方のレンズ110を剥がして除去することで、その下に存在しているレンズ110の未使用の表面を露出させることができることが企図されている。この点で、
図4の動作フローは、車両のウインドシールドまたは他の基板10に設置された保護バリア100の寿命中、継続することが可能にされている。最も外方のレンズ110が経時的に許容できないほど劣化した場合(例えば、6ヶ月後、1年後、ワイパーブレードによる傷が発生し始めた後など)、それを剥がして、その下に存在している次のレンズ110を露出させてもよい(ステップ460)。一番外方のレンズ110を剥がすタイミングは、保護バリア100が使用される特定の気候に依存する場合があり、例えば、日光にさらされる機会が多い気候や、ワイパーブレードを頻繁に使用する必要がある気候がある。レンズ110からなるスタックの厚さが漸進的であるので、保護バリア100の総厚さは、最も外方のレンズ110の除去後も、従来のティアオフレンズからなるスタックよりもかなり大きいままであり、その結果、保護バリア100の寿命中、衝撃に対するクッション効果がより長く持続する。
【0034】
上記開示において、ポリエチレンテレフタレートPET(例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートBoPET)が、好ましい熱可塑性フィルム112であり得ることに留意されたい。しかしながら、熱可塑性フィルム112の材料は、この点において必ずしも限定されない。例えば、レンズ110のいずれかまたは全ての熱可塑性フィルム112は、代わりに、光学的に透明な熱可塑性ポリウレタンTPUフィルムなどの熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルムであってもよい。熱可塑性ポリウレタンTPUフィルムは、低いヘイズ(例えば、1%以下)を有しながら、85%以上(例えば、90~95%)の可視光透過率(VLT)を有しているように製造されてもよい。熱可塑性ポリウレタンTPUフィルムは、例えば2ミル(0.0508mm)以上であってもよい。有利なことに、保護バリア100の熱可塑性フィルム112に熱可塑性ポリウレタンTPUを使用することによって、ポリエチレンテレフタレートPETを使用する場合とで比較して、設置者側の専門知識が少なくて済むとともに、迅速な設置処理が可能になる場合がある。これは、フィルムまたはスタックを熱成形するべく熱を加える必要がなく、またはフィルムを設置するときに熱可塑性ポリウレタンTPUを数秒で熱成形するべくごくわずかな熱を加えるだけでよいとともに、熱可塑性ポリウレタンTPUが2Dまたは3Dの曲面に適用しやすいからである。特に、熱可塑性ポリウレタンTPUはポリエチレンテレフタレートPETよりも伸縮性が高いだけでなく、伸縮性を高める上で必要な熱量も少ない。ポリエチレンテレフタレートPETベースのスタックを取り付ける際に発生するフィンガリング(フィルムの下に指状の気泡が生じる不完全な貼り付け)のような一般的な問題は、特定の熱成形技術で回避・修正する必要がある。このような不完全性を修正すること自体に時間がかかるので、専門家による施工時間が長くなる。対照的に、強い弾性と伸長特性とを持つ熱可塑性ポリウレタンTPUは、それほど多くの技術を必要とはしないので、場合によっては専門家の技術を必要としないこともある。
【0035】
上記の利点の結果として、熱可塑性フィルム(単数または複数)112に熱可塑性ポリウレタンTPUを使用することによって、ポリエチレンテレフタレートPETベースの熱可塑性フィルム(単数または複数)112の場合よりも大幅に低い設置コストが可能になる。その結果、非常に手頃な価格の製品が得られる可能性がある。このような手頃な価格の製品は、先進運転支援システム(ADAS)技術、新しい自動車設計のウインドシールド曲率の増加、および新しい自動車設計のウィンドシールドサイズの大型化、によってウインドシールドのコストが増加するにつれて、その下に存在している(下層の、アンダーライイングの)ウインドシールドの保護バリアとして特に重要である。熱可塑性ポリウレタンTPUベースのフィルム(112)は、保護ハードコートの有無にかかわらず、ポリエチレンテレフタレートPETベースのフィルム(112)よりも長持ちする可能性があることも企図される。このように、開示された実施形態における熱可塑性ポリウレタンTPUの使用は、(以下に説明されるような単層スタックであっても、保護フィルム一般についても、同様であるが)、下層のウインドシールドが破損、ヒビ割れ(クラック)、または孔あき、から保護されるので、さらに低コストのフィルム、著しく短い設置時間(例えば、設置時間の5分の1)、さらに長い寿命、および1年当たりのウインドシールドあたりのさらに低いコスト(例えば、ポリエチレンテレフタレートPETベースの保護フィルムの場合のコストの10分の1)、をもたらす可能性がある。
【0036】
さらに、米国でウインドシールドが交換される場合、たとえそれが第三者のリサイクル会社に送られることによってリサイクルできるとしても、古いウインドシールドはリサイクルされないことが95%以上である。破損したウインドシールドの推定1,500万枚の大部分は、米国だけでも毎年埋立地に投棄されており、大規模な公害を引き起こしている(非特許文献1としての「熱可塑性ポリウレタン材料の不織布加工に向けたリサイクルと再加工」(https://doi.org/10.3390/polym12091917))。1枚以上の保護熱可塑性ポリウレタンTPUフィルムを重ねて使用することで、このような廃棄物のかなりの部分を避けることができる。一方、熱可塑性ポリウレタンTPU自体は簡単にリサイクルできるので、100%リサイクル可能な生分解性素材である。熱可塑性ポリウレタンTPUはリサイクル可能で、3年から5年で生分解されるので、ポリ塩化ビニル(PVC)などの代替品よりもはるかに環境に優しい先進的な素材である。埋立地で分解されるのに数十万年かかることがあるガラスウインドシールドの素材がまったく分解されないと仮定すると、熱可塑性ポリウレタンTPUはそれよりもはるかに環境に優しい素材である。
【0037】
有利には、熱可塑性ポリウレタンTPUベースのフィルム(112)は、上記のように開示された保護バリア100のポリエチレンテレフタレートPETベースのフィルム(112)を置き換えることができることが企図される。しかしながら、熱可塑性ポリウレタンTPUベースのフィルム(112)を使用する利点に関する上記の開示は、本明細書に記載される保護バリア100における使用のみに限定されることを意図するものではない。熱可塑性ポリウレタンTPUベースのフィルム(112)は、例えば、レンズ110の他の多層スタックに、または1枚のレンズ110の単層スタックに、使用することが可能にされている。1枚のレンズ110が想定される単層スタックは、例えば、熱可塑性ポリウレタンTPUのフィルム(112)と、レンズ110を基板10に接着するための接着剤層114と、任意選択で上述のハードコート、UV遮断層、サーモクロミックフィルム、などと、を備えていることができる。
【0038】
上記の説明は、例示のために与えられたものであり、限定するものではない。上記の開示が与えられれば、当業者は、本明細書に開示された本発明の範囲および精神の範囲内である変形を考案することが可能にされている。さらに、本明細書に開示された実施形態の様々な特徴は、単独で、または互いに様々な組合せで使用することができ、本明細書に記載された特定の組合せに限定されることを意図するものではない。したがって、特許請求の範囲は、図示された実施形態によって限定されるものではない。
【国際調査報告】