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特表2025-506161厚朴抽出物を有効成分として含有する筋肉疾患予防および治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-07
(54)【発明の名称】厚朴抽出物を有効成分として含有する筋肉疾患予防および治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/575 20060101AFI20250228BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20250228BHJP
   A61K 31/04 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250228BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20250228BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20250228BHJP
【FI】
A61K36/575
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P21/00
A61P21/02
A61K31/04
A61P35/00
A61K33/243
A23L33/105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547439
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(85)【翻訳文提出日】2024-10-08
(86)【国際出願番号】 KR2022001982
(87)【国際公開番号】W WO2023153533
(87)【国際公開日】2023-08-17
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2021年3月20日、International Journal of Molecular Sciences、https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33804803/
(71)【出願人】
【識別番号】522119938
【氏名又は名称】ツインピグ バイオラブ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ミン ウ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,イク ファン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,イル ソプ
(72)【発明者】
【氏名】チャ,ナ リ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウ ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン クァン
(72)【発明者】
【氏名】べ,ヒョン ス
【テーマコード(参考)】
4B018
4C084
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE05
4B018MD48
4B018MD61
4B018ME08
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF06
4C084AA19
4C084MA52
4C084NA06
4C084NA14
4C084ZA94
4C084ZB26
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA12
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA06
4C086NA14
4C086ZA94
4C086ZB26
4C086ZC75
4C088AB65
4C088BA08
4C088BA09
4C088CA05
4C088CA06
4C088CA07
4C088CA09
4C088CA10
4C088MA52
4C088NA06
4C088NA14
4C088ZA94
4C088ZB26
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA17
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA06
4C206NA14
4C206ZA94
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、厚朴抽出物を含む筋肉疾患治療用薬学組成物に関し、厚朴抽出物は、マグノロール(Magnolol)およびホーノキオール(honokiol)の外に様々な成分を含有し、抗-腫瘍機能を妨げないとともにシスプラチンによる体重減少、筋肉量減少、握力低下および筋繊維損傷を抑制し、M1からM2へのマクロファージ分極化を通じて損傷された筋繊維の復元を促進するので、これを筋肉疾患、特に、抗がん剤による筋肉疾患の予防および治療用途で有用に使用することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚朴(Magnolia officinalis)抽出物を有効成分として含有する筋肉疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項2】
筋機能低下、筋組織損傷、筋肉消耗または筋肉退化による筋肉疾患である、請求項1に記載の筋肉疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項3】
がんによる筋肉疾患である、請求項1に記載の筋肉疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項4】
筋肉疾患は、筋萎縮症(muscular atrophy)、ミオパシー(myopathy)、筋肉変性症、筋無力症(myasthenia)、筋肉損傷(muscular injury)、ジストロフィン異常症(dystrophinopathy)、筋症ミオパシー(myopathy)、筋ジストロフィー(muscular dystrophy)、悪液質(cachexia)、および筋肉減少症(sacopenia)からなる群から選択されるいずれか1つ以上である、請求項1に記載の筋肉疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項5】
抽出物は、水、有機溶媒、亜臨界流体および超臨界流体からなる群から選択される1つ以上の溶媒で抽出された、請求項1に記載の筋肉疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項6】
厚朴抽出物は、マグノロール(Magnolol)およびホーノキオール(honokiol)を2:1~4:1(w/w)の割合で含有する、請求項1に記載の筋肉疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項7】
厚朴抽出物を60~500mg/kgの濃度で含む、請求項1に記載の筋肉疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項8】
体重減少、筋肉量減少、握力低下または筋繊維損傷を抑制する、請求項1に記載の筋肉疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項9】
厚朴抽出物を有効成分として含む、抗がん剤副作用疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項10】
抗がん剤は、シクロホスファミド(Cyclophosphamide)、メトトレキサート(methotrexate)、5-フルオロウラシル(fluorouracil)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、ムスチン(Mustine)、ビンクリスチン(vincristine)、プロカルバジン(procarbazine)、プレドニゾロン(prednisolone)、ブレオマイシン(bleomycin)、ビンブラスチン(vinblastine)、ダカルバジン(dacarbazine)、エトポシド(etoposide)、シスプラチン(cisplatin)、エピルビシン(Epirubicin)、シスプラチン(cisplatin)、カペシタビン(capecitabine)またはオキサリプラチン(oxaliplatin)である、請求項9に記載の抗がん剤副作用疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項11】
抗がん剤副作用疾患は、筋萎縮症、筋肉変性症、筋肉損傷、筋ジストロフィー、悪液質および筋肉減少症からなる群から選択されるいずれか1つ以上である、請求項9に記載の抗がん剤副作用疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項12】
抗がん剤による体重減少、筋肉量減少、握力低下または筋繊維損傷を抑制する、請求項9に記載の抗がん剤副作用疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項13】
抗がん剤と別個に、同時にまたは順次に投与される、請求項9に記載の抗がん剤副作用疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項14】
厚朴抽出物を有効成分として含む、筋肉疾患の予防または改善用食品組成物。
【請求項15】
厚朴抽出物を有効成分として含む、抗炎症性マクロファージ分化促進用組成物。
【請求項16】
M2マクロファージ分極化(polarization)を誘導する、請求項15に記載の抗炎症性マクロファージ分化促進用組成物。
【請求項17】
厚朴抽出物を薬学的に有効な量で筋肉疾患を有する個体に投与するステップを含む、筋肉疾患の治療方法。
【請求項18】
筋肉疾患の予防および治療用薬学的組成物の製造に使用するための、厚朴抽出物の用途。
【請求項19】
厚朴抽出物を薬学的に有効な量で抗がん剤副作用疾患を有する個体に投与するステップを含む、抗がん剤副作用疾患の治療方法。
【請求項20】
抗がん剤副作用疾患は、筋萎縮症、筋肉変性症、筋肉損傷、筋ジストロフィー、悪液質および筋肉減少症からなる群から選択されるいずれか1つ以上である、請求項19に記載の抗がん剤副作用疾患の治療方法。
【請求項21】
抗がん剤副作用疾患の予防および治療用薬学的組成物の製造に使用するための、厚朴抽出物の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚朴抽出物を含む筋肉疾患治療用薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
筋肉(Muscle)は、人体で40%程度を担い、人体の機能的能力を維持し、代謝性疾患を予防するためには適正筋肉量の確保が必須に要求される。大きく、平滑筋(smooth muscle)、心筋(cardiac muscle)、骨格筋(skeletal muscle)に分けられ、骨格筋は、人体の全身で相当な部分を占めて骨格の動きを促進する。骨格筋は、人体で最も大きな部分を占める器官であって、総体重の40~50%を占め、エネルギー恒常性および熱生成などを始めとした体内様々な代謝機能にも重要な役割を果たす。人の筋肉は40歳以降から毎年1%以上ずつ減少し、80歳になると最大筋肉量の50%水準が減少し、老年の筋肉減少は全般的な身体機能を落とす最も重要な要素として認識されている。
【0003】
筋肉疾患は、骨格筋の弱化により次第に歩行および移動機能の障害が生じ、日常生活動作(activities of daily living、ADL)が困難になり、独立した生活が不可能になる経過を経る。併せて、心肺機能障害を招き、他の合併症を誘発する。このうち、悪液質(cachexia)は、がん、結核、AIDS、慢性閉塞性肺疾患などのような慢性疾患でよく伴う症候群であって、持続的な食欲不振と体重減少を示し、これによる栄養失調や代謝不均衡、筋肉や脂肪の減少を伴う体内代謝の異化現象(catabolic state)を意味し、がん患者の場合、他の慢性疾患者とは異なり、悪液質だけでなくがんの治療に利用される様々な抗がん治療法の副作用まで伴う特性がある(Fearon K.など、Lancet Oncol 2011;12(5):489-495)。
【0004】
悪液質は、消火器がんおよび肺がん患者の50~80%で発生し、悪液質による死亡率は20~30%に至る。がん性悪液質は多様なサイトカインが引き起こす炎症反応および代謝変化による異化反応の増加で筋肉損失を招いて体重減少が現れることが特徴であって、筋肉消耗が12ヶ月以下内に5%超えの体重減少を引き起こすとき発生する。このような変化は、坑がん化学療法や放射線治療に対する反応率を下げ、効果的な抗がん治療の進行を難しくして患者の生活の質を低下させ、生存を短縮させる。筋損失は、悪液質の最も大きな特徴のうち1つであり、多様なサイトカインの過活性化によるタンパク質異化作用の増加とタンパク質生成の減少のためと知られている。悪液質は、筋損失(筋肉減少症)を含んでいる症状であって、互いに重なる部分が多い。悪液質を有している患者のほとんどが筋損失(筋肉減少症)を有しているが、筋損失を見せるすべての患者が悪液質症状を見せるわけではない。臨床的に表現すると、筋損失(筋肉減少症)は、悪液質の前駆症状と言える。悪液質に作用する炎症性サイトカインは、筋肉の代謝を調節するインスリンとテストステロンに影響を及ぼし、筋肉タンパク質合成に異常を起こす(リュウ・スンワン、J.Clin.Nutr.2017;9:2-6)。
【0005】
悪液質の特徴のうち1つである筋肉減少症(sarcopenia)は、骨格筋の収縮を誘導する運動神経が退行して骨格筋の収縮が進行しないか、骨格筋内で筋肉の収縮に関与するタンパク質の発現が減少あるいは変形して正常な骨格筋の収縮が進められず、長期的には前記運動神経または骨格筋が繊維性組織に変形することで、老化、ホルモン異常、栄養不足、身体活動不足、炎症および退行性疾患など多様な原因によって発生するが、そのうち、がん、坑がん化学療法治療が主要原因になり得ると知られている。現在、筋肉減少症には、運動、タンパク質およびカロリー補充が役立つと知られているが、筋肉減少症患者のほとんどを占める患者および高齢者にはあまり役立たず、筋肉減少症治療剤が切実に必要である。しかし、現在、筋肉減少症に使用される治療剤は、筋肉減少改善および筋肉量増進に直接的な効果を示す薬物は、まだ臨床実験水準のステップであり、現在、最終的にFDA承認を受けた薬剤はない状況である。そのため、筋肉減少症治療のために一部選択的アンドロゲン受容体モジュラー(selective androgen receptor modulator)、アクチビン受容体アンタゴニスト(activin receptor antagonist)、速やかな骨格筋トロポニン阻害剤(fast skeletal muscle troponin inhibitor)などを筋肉減少症治療剤として開発しようとする努力はあるが、現在、初期臨床を試みる水準である。現在、前記筋肉減少症の治療方法としては、主に筋肉減少症の一種である筋肉細胞の退行または進行性変異によって誘発される筋萎縮症を抑制する方法が使用されている。例えば、WO2007/088123には、ニトロキシ誘導体を有効成分として含む筋萎縮症治療剤が開示されており、WO2006/081997には、アトラル酸またはその誘導体を有効成分として含む筋萎縮症治療剤が開示されている。しかし、化合物を有効成分として含むこれらの治療剤は、筋萎縮症が発病した骨格筋だけでなく、筋萎縮症と関連のない内臓筋または心筋にも作用するため、大きいまたは小さい多様な副作用が誘発される可能性があり、実質的な治療に使用されていない。一方、ホルモン製剤は、化合物製剤より副作用が顕著に減少し、ホルモン製剤の特性上、生体に優しいため、ホルモン製剤を利用した筋萎縮症または筋肉減少症治療薬物の開発が加速化している実情である。
【0006】
また、筋萎縮(muscle atrophy)は、筋肉の使用減少のような機械的刺激の不在による筋肉組織の損傷、直接的な傷害や物理的要因による筋肉の破壊、老化による筋肉細胞の回復力障害、そして筋肉の作用を調節する神経の損傷による筋肉使用の障害のような要因によって発生する(Booth FW.、J Appl Physiol Respir Environ Exerc Physiol.、1982)。一般的な場合、障害や事故により長期間該当部位と周辺部の筋肉を使用しないことから筋肉強度の消失により次第に筋萎縮に進められる不使用性筋萎縮(disuse atrophy)が現れ、筋肉そのものの疾病による重症筋無力症(myasthenia gravis)、筋ジストロフィー(dystrophy):進行性筋ジストロフィー、筋緊張性筋ジストロフィー、デュシェンヌ型、ベッカー型、肢帯型、顔面肩甲上腕型、筋肉そのものに発生する炎症、筋肉を支配する神経の損傷による筋萎縮である脊髄性筋萎縮症(spinal musclular amyotrophy):ウェルドニッヒ・ホフマン型、クーゲルベルグ、ウェランダー病、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis、ALS):ルー・ゲーリック病、 球脊髄性筋萎縮症(spinobular muscular atrophy):ケネディ病などの形態でも発病する。
【0007】
このような筋肉消失は、抗がん患者に最もよく現れる症状であって、がんそのもの、または抗がん剤の毒性によって筋肉が炎症状況に露出して現れる。筋肉の消失は、患者の活動と抗がん治療を制限し、生活の質を大きく落としたり、ひどくは死亡に至らせたりするので、これを制御するための研究が増加している。
【0008】
一方、マクロファージは、抗炎症性(anti-inflammatory)M2マクロファージと炎症性(pro-inflammatory)M1マクロファージに分極化(polarization)される。このうち、M1マクロファージは、IL-1、TNF-αおよびIL-6のような前-炎症性サイトカインを生産し、筋肉消耗を誘発し、筋繊維溶解を通じたタンパク質分解を増加させる一方、M2マクロファージは、TGF-βおよびIL-10のような様々な抗炎症性サイトカインを分泌して筋肉回復および再生を誘導し、筋繊維合成を促進する。マクロファージ由来IGF-1は、高い水準の基質メタロプロテイナーゼ-8(MMP-8)、CD163およびCD206を発現して細胞外基質リモデリングおよび筋肉治癒に関与するマクロファージ集団であるM2aおよびM2c表現型に極性を移動させて筋肉回復を促進し、筋ジストロフィーから保護するので、M1とM2マクロファージ集団との間のバランスは筋肉回復に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2007/088123号-2
【特許文献2】国際公開第2007/081997号-2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、筋肉疾患の予防または治療用薬学組成物を提供することである。
【0011】
また、本発明の目的は、抗がん剤副作用疾患の予防または治療用薬学組成物を提供することである。
【0012】
また、本発明の目的は、筋肉疾患の予防または改善用食品組成物を提供することである。
【0013】
また、本発明の目的は、抗炎症性マクロファージ分化促進用組成物を提供することである。
【0014】
また、本発明の目的は、筋肉疾患の治療方法を提供することである。
【0015】
また、本発明の目的は、筋肉疾患の予防および治療用薬学的組成物を使用するための用途を提供することである。
【0016】
また、本発明の目的は、抗がん剤副作用疾患の治療方法を提供することである。
【0017】
併せて、本発明の目的は、抗がん剤副作用疾患の予防および治療用薬学的組成物の製造に使用するための用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するために、本発明は、厚朴(Magnolia officinalis)抽出物を有効成分として含有する筋肉疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0019】
また、本発明は、厚朴抽出物を有効成分として含む、抗がん剤副作用疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0020】
また、本発明は、厚朴抽出物を有効成分として含む筋肉疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0021】
また、本発明は、厚朴抽出物を有効成分として含む抗炎症性マクロファージ分化促進用組成物を提供する。
【0022】
また、本発明は、厚朴抽出物を薬学的に有効な量で筋肉疾患を有する個体に投与するステップを含む筋肉疾患の治療方法を提供する。
【0023】
また、本発明は、筋肉疾患の予防および治療用薬学的組成物の製造に使用するための、厚朴抽出物の用途を提供する。
【0024】
また、本発明は、厚朴抽出物を薬学的に有効な量で抗がん剤副作用疾患を有する個体に投与するステップを含む抗がん剤副作用疾患の治療方法を提供する。
【0025】
併せて、本発明は、抗がん剤副作用疾患の予防および治療用薬学的組成物の製造に使用するための、厚朴抽出物の用途を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、厚朴抽出物は、マグノロール(Magnolol)およびホーノキオール(honokiol)の外に様々な成分を含有し、抗-腫瘍機能を妨げないとともにシスプラチンによる体重減少、筋肉量減少、握力低下および筋繊維損傷を抑制し、M1からM2へのマクロファージ分極化を通じて損傷された筋繊維の復元を促進するので、これを筋肉疾患、特に、抗がん剤による筋肉疾患の予防および治療用途で有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】厚朴抽出物の成分をHPLCで分析した図である。
図2】シスプラチンによって誘導された筋肉減少症マウスモデルから厚朴抽出物投与による体重減少および食物摂取変化を確認した図である:A:体重変化;B:対照群対比体重変化;C:結腸長さ;D:平均一日食物摂取量;Control(PBS):PBS投与対照群;CIS:シスプラチン投与群;CIS+MAG:シスプラチンおよびマグノロール投与群;およびCIS+M.C:シスプラチンおよび厚朴抽出物投与群(50、100および200mg/kg)。
図3】シスプラチンによって誘導された筋肉減少症マウスモデルから厚朴抽出物投与による筋肉消耗抑制効果を確認した図である:A:肢の筋肉重量;B:代表肢のイメージ(スケールバー0.5cm);C:TA筋肉重量;D:前肢およびすべての筋で行動技能検査で測定された握力;E:TA筋肉のH&E染色(スケールバー200μm);F:CSA(cross-sectional area)分析;Control(PBS):PBS投与対照群;CIS+PBS:シスプラチンおよびPBS投与群;CIS+MAG:シスプラチンおよびマグノロール投与群;およびCIS+M.C:シスプラチンおよび厚朴抽出物投与群(50、100および200mg/kg)。
図4】シスプラチンによって誘導された筋肉減少症マウスモデルから厚朴抽出物による骨格筋内M1およびM2マクロファージ分極化調節をM1-特異的遺伝子およびM2-特異的遺伝子のmRNA発現を通じて確認した図である:AおよびB:M1マクロファージ特異的マーカー;C~F:M2マクロファージ特異的マーカー;Control(PBS):PBS投与対照群;CIS+PBS:シスプラチンおよびPBS投与群;CIS+MAG:シスプラチンおよびマグノロール投与群;およびCIS+M.C:シスプラチンおよび厚朴抽出物投与群(50、100および200mg/kg)。
図5】シスプラチンによって誘導された筋肉減少症マウスモデルのTA筋肉で厚朴抽出物によるマクロファージ数およびIGF-1発現増加効果を確認した図である:A:TA筋肉でCD68(マクロファージ、グリーン)、IGF-1(レッド)、DAPI(核、ブルー)、およびこれらをマージして確認したCD68およびIGF-1をすべて発現する細胞(白色矢印)を示すIHCイメージ(Magnification:40×、scale bar 50μm);B:IGF-I、CD68およびDAPI陽性細胞の数;C:IGF-1のmRNA発現水準;D:IGF-1タンパク質発現水準;Control(PBS):PBS投与対照群;CIS+PBS:シスプラチンおよびPBS投与群;CIS+MAG:シスプラチンおよびマグノロール投与群;およびCIS+M.C:シスプラチンおよび厚朴抽出物投与群(50、100および200mg/kg)。
図6】シスプラチンによって誘導された筋肉減少症マウスモデルから厚朴抽出物によるM2aおよびM2cマクロファージの割合増加効果を確認した図である:AおよびB:CD11b+F4/80+およびCD45+細胞でCD206およびCD163のFACSドットプロット(CD206-CD163-:M1マクロファージ;CD206+CD163-:M2aマクロファージ;およびCD206+CD163+:M2cマクロファージ);C~E:M1マクロファージ、M2aマクロファージおよびM2cマクロファージグラフ(CD11b+F4/80+細胞の%で表示);F:脾臓細胞でCD45+細胞のCD4+/CD8割合;Control(PBS):PBS投与対照群;CIS+PBS:シスプラチンおよびPBS投与群;CIS+MAG:シスプラチンおよびマグノロール投与群;およびCIS+M.C:シスプラチンおよび厚朴抽出物投与群(50、100および200mg/kg)。
図7】厚朴抽出物のシスプラチンの抗-腫瘍活性に及ぼす影響を確認した図である:A:腫瘍サイズ;B:腫瘍イメージ;C:腫瘍重さ;Control:対照群;CIS:シスプラチン投与群;およびCIS+M.C:シスプラチンおよび厚朴抽出物投与群。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照して本発明の実現例で本発明を詳しく説明することにする。ただし、下記実現例は、本発明に対する例示として提示されるものであって、当業者において周知著名な技術または構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を不明確にすることができるものと判断される場合には、その詳細な説明を省略することができ、これにより本発明が制限されない。本発明は、後述する特許請求の範囲の記載およびそれから解析される均等範疇内で様々な変形および応用が可能である。
【0029】
また、本明細書において使用される用語(terminology)は、本発明の好ましい実施例を適切に表現するために使用された用語であって、これは、使用者、運用者の意図または本発明の属する分野の慣例などによって変わり得る。よって、本用語に対する定義は、本明細書の全般にわたった内容に基づいて下されるべきである。明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0030】
本明細書の全体にわたって、特定物質の濃度を示すために使用される「%」は、別途の言及がない場合、固体/固体は(w/w)%、固体/液体は(w/v)%、そして液体/液体は(v/v)%である。
【0031】
一側面において、本発明は、厚朴(Magnolia officinalis)抽出物を有効成分として含有する筋肉疾患の予防または治療用薬学組成物に関する。
【0032】
一実現例において、前記筋肉疾患は、筋機能低下、筋組織損傷、筋肉消耗または筋肉退化による筋肉疾患であってよく、がんによる筋肉疾患であってよい。
【0033】
一実現例において、前記筋肉疾患は、筋萎縮症(muscular atrophy)、ミオパシー(myopathy)、筋肉変性症、筋無力症(myasthenia)、筋肉損傷(muscular injury)、ジストロフィン異常症(dystrophinopathy)、筋症ミオパシー(myopathy)、筋ジストロフィー(muscular dystrophy)、悪液質(cachexia)、および筋肉減少症(sacopenia)からなる群から選択されるいずれか1つ以上であってよい。
【0034】
一実現例において、抽出物は、水、有機溶媒、亜臨界流体および超臨界流体からなる群から選択される1つ以上の溶媒で抽出されることができ、有機溶媒は、炭素数1~4の低級アルコール、ヘキサン(n-ヘキサン)、エーテル、グリセロール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチルアセテート、メチルアセテート、ジクロロメタン、クロロホルム、エチルアセテート、アセトン、メチレンクロライド、シクロヘキサン、石油エーテル(petroleum ether)、ベンゼンおよびこれらの混合溶媒からなる群から選択されるいずれか1つであってよく、
一実現例において、前記厚朴抽出物は、エタノール抽出物であってよく、70%エタノール抽出物であることがさらに好ましい。
【0035】
一実現例において、マグノロール(Magnolol)およびホーノキオール(honokiol)を2:1~4:1(w/w)の割合で含有することができる。
【0036】
本発明の一実施例において、前記厚朴抽出物は、マグノロールおよびホーノキオールの外に様々な成分を含有することで(図1参照)、50mg/kg超過濃度でマグノロール単独投与に比べて顕著な筋肉疾患、特に、抗がん剤投与によって誘発された筋肉疾患治療効果を持つ。
【0037】
一実現例において、前記組成物は、厚朴抽出物を60~500mg/kgの濃度で含むことができる。
【0038】
一実現例において、前記組成物は、体重減少、筋肉量減少、握力低下または筋繊維損傷を抑制することができる。
【0039】
本発明において使用された用語「抽出物(extract)」とは、天然物から分離した活性成分、すなわち、目的とする活性を見せる物質を意味する。前記抽出物は、水、有機溶媒またはこれらの混合溶媒を利用する抽出過程で獲得することができ、抽出物、その乾燥粉末、またはこれらを利用して剤形化されたすべての形態を含む。また、前記抽出物には、前記抽出過程を経た抽出物を分画したものも含まれる。抽出物の抽出方法は、特に制限されず、例えば、撹拌抽出、振とう抽出、熱水抽出、冷浸抽出、還流冷却抽出または超音波抽出などの方法で抽出されることができる。抽出溶媒としては、水、C-Cの低級アルコールのような極性溶媒やヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタンまたはエチルアセテートのような非極性溶媒、またはこれらのうち2以上の混合物を使用してもよい。
【0040】
本発明の組成物は、厚朴抽出物だけでなく、これと同一または類似した機能を持つ他の有効成分をさらに含有するか、または前記成分と異なる機能を持つ他の有効成分をさらに含有することで、筋肉疾患の予防または治療用薬学組成物として製造されることができる。
【0041】
一側面において、本発明は、厚朴抽出物を有効成分として含む、抗がん剤副作用疾患の予防または治療用薬学組成物に関する。
【0042】
一実現例において、抗がん剤は、シクロホスファミド(Cyclophosphamide)、メトトレキサート(methotrexate)、5-フルオロウラシル(fluorouracil)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、ムスチン(Mustine)、ビンクリスチン(vincristine)、プロカルバジン(procarbazine)、プレドニゾロン(prednisolone)、ブレオマイシン(bleomycin)、ビンブラスチン(vinblastine)、ダカルバジン(dacarbazine)、エトポシド(etoposide)、シスプラチン(cisplatin)、エピルビシン(Epirubicin)、シスプラチン(cisplatin)、カペシタビン(capecitabine)またはオキサリプラチン(oxaliplatin)であってよく、シスプラチンであることがさらに好ましい。
【0043】
一実現例において、抗がん剤副作用疾患は、抗がん剤副作用による筋肉疾患であってよく、抗がん剤副作用による筋萎縮症、筋肉変性症、筋肉損傷、筋ジストロフィー、悪液質および筋肉減少症からなる群から選択されるいずれか1つ以上であることがさらに好ましく、抗がん剤副作用による悪液質または筋肉減少症であることがさらに好ましい。
【0044】
一実現例において、前記組成物は、抗がん剤による体重減少、筋肉量減少、握力低下または筋繊維損傷を抑制することができる。
【0045】
一実現例において、前記組成物は、抗がん剤と別個に、同時にまたは順次に投与されることができる。
【0046】
一実現例において、前記抗がん剤副作用疾患の予防または治療用薬学組成物は、抗がん補助剤として使用されることができる。
【0047】
一実現例において、前記組成物は、M1からM2へのマクロファージ分極化を通じて抗がん剤によって損傷された筋繊維の復元を促進することができる。
【0048】
本発明において、用語「予防」とは、本発明に係る薬学組成物の投与によって筋肉疾患または抗がん剤副作用疾患の発生、拡散および再発を抑制または遅延させるすべての行為を意味し、「治療」とは、本発明の組成物の投与で筋肉疾患または抗がん剤副作用疾患の症状を好転させるか、有利に変更するすべての行為を意味する。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、大韓医学協会などで提示された資料を参照して本願の組成物が効果がある疾患の正確な基準が分かり、改善、向上および治療された程度を判断することができるはずである。
【0049】
本発明において有効成分と結合して使用された「治療学的に有効な量」という用語は、筋肉疾患または抗がん剤副作用疾患を予防または治療するのに有効な量を意味し、本発明の組成物の治療的に有効な量は、いくつかの要素、例えば、投与方法、目的部位、患者の状態などによって変わり得る。したがって、人体に使用する際の投与量は、安全性および効率性を一緒に考慮して適正量で決定しなければならない。動物実験を通じて決定した有効量から、ヒトに使用される量を推定することも可能である。有効な量の決定時に考慮されるべきこれらの事項は、例えば、Hardman and Limbird、eds.、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、10th ed.(2001)、Pergamon Press;およびE.W.Martin ed.、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18th ed.(1990)、Mack Publishing Co.に記述されている。
【0050】
本発明の薬学組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において使用される用語「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受益/危険比率で疾患を治療するのに十分であり、副作用を引き起こさない程度の量を意味し、有効用量水準は、患者の健康状態、筋肉疾患または抗がん剤副作用疾患の種類、筋肉疾患または抗がん剤副作用疾患の発病原因、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与方法、投与時間、投与経路および排出割合、治療期間、配合または同時に使用される薬物を含む要素およびその他の医学分野でよく知られた要素に基づいて決定されることができる。本発明の組成物は、個別治療剤として投与するか、他の治療剤と併用して投与されることができ、従来の治療剤と順次にまたは同時に投与されることができ、単一または多重投与されることができる。上記の要素をすべて考慮して、副作用なく最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは当業者により容易に決定され得る。
【0051】
本発明の薬学組成物は、生物学的製剤に通常使用される担体、希釈剤、賦形剤、または2つ以上のこれらの組み合わせを含むことができる。本発明において使用される用語「薬学的に許容可能な」とは、前記組成物に露出する細胞やヒトに毒性がない特性を示すことを意味する。前記担体は、組成物を生体内伝達に適したものであれば、特に制限されず、例えば、Merck Index、13th ed.、Merck & Co.Inc.に記載された化合物、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、およびこれらの成分のうち1成分以上を混合して利用することができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など、他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤および潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。さらに、当分野の適正な方法で、またはRemington’s Pharmaceutical Science(Mack Publishing Company、Easton PA、18th、1990)に開示されている方法を用いて、各疾患に応じて、または成分に応じて好ましく製剤化することができる。
【0052】
一実現例において、前記薬学組成物は、経口型剤形、外用剤、坐剤、滅菌注射溶液および噴霧剤を含む群から選択される1つ以上の剤形であってよく、経口型または注射剤形がさらに好ましい。
【0053】
本発明において使用される用語「投与」とは、任意の適切な方法で個体または患者に所定の物質を提供することを意味し、目的とする方法によって非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、または局所に注射剤形に適用)するか、経口投与することができ、投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食物、投与時間、投与方法、排泄率、および疾患の重症度などによってその範囲が多様である。本発明の組成物の経口投与のための液状製剤としては、懸濁液剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、通常使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが一緒に含まれることができる。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁液剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれる。本発明の薬学組成物は、活性物質が標的細胞に移動することができる任意の装置によって投与されることもできる。好ましい投与方式および製剤は、静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤などである。注射剤は、生理食塩液、リンゲル液などの水性溶剤、植物油、高級脂肪酸エステル(例、オレイン酸エチルなど)、アルコール類(例、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)などの非水性溶剤などを利用して製造することができ、変質防止のための安定化剤(例、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、BHA、トコフェロール、EDTAなど)、乳化剤、pH調節のための緩衝剤、微生物発育を阻止するための保存剤(例、硝酸フェニール水銀、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレソル、ベンジルアルコールなど)などの薬学的担体を含むことができる。
【0054】
本発明において使用される用語「個体」とは、前記筋肉疾患または抗がん剤副作用疾患が発病したか、発病することができるヒトを含むサル、ウシ、ウマ、ヤギ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、またはギニーピッグを含むすべての動物を意味し、本発明の薬学組成物を個体に投与することで前記疾患を効果的に予防または治療することができる。本発明の薬学組成物は、既存の治療剤と並行して投与されることができる。
【0055】
本発明の薬学組成物は、薬剤学的に許容可能な添加剤をさらに含むことができて、このとき、薬剤学的に許容可能な添加剤としては、デンプン、ゼラチン化デンプン、微結晶セルロース、ラクトース、ポビドン、コロイダルシリコンジオキシド、リン酸水素カルシウム、ラクトース、マンニトール、飴、アラビアゴム、アルファー化デンプン、トウモロコシデンプン、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、オパドライ、デンプングリコール酸ナトリウム、カルナウバロウ、合成ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、白糖、デキストロース、ソルビトールおよびタルクなどが使用され得る。本発明に係る薬剤学的に許容可能な添加剤は、前記組成物に対して0.1重量部~90重量部含まれることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0056】
一側面において、本発明は、厚朴抽出物を有効成分として含む筋肉疾患の予防または改善用食品組成物に関する。
【0057】
一実現例において、前記筋肉疾患は、がんによって発生した筋肉疾患であるか、抗がん剤治療によって発生した筋肉疾患であってよい。
【0058】
一実現例において、前記筋肉疾患は、筋萎縮症(muscular atrophy)、ミオパシー(myopathy)、筋肉変性症、筋無力症(myasthenia)、筋肉損傷(muscular injury)、ジストロフィン異常症(dystrophinopathy)、筋症ミオパシー(myopathy)、筋ジストロフィー(muscular dystrophy)、悪液質(cachexia)、および筋肉減少症(sacopenia)からなる群から選択されるいずれか1つ以上であってよい。
【0059】
本発明の組成物を食品組成物として使用する場合、前記組成物をそのまま添加するか、他の食品または食品成分とともに使用することができ、通常の方法によって適切に使用することができる。前記組成物は、有効成分以外に食品学的に許容可能な食品補助添加剤を含むことができ、有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康または治療的処置)によって適して決定されることができる。
【0060】
本発明において使用される用語「食品補助添加剤」とは、食品に補助的に添加されることができる構成要素を意味し、各剤形の健康機能食品を製造するのに添加されるものとして当業者が適切に選択して使用することができる。食品補助添加剤の例としては、様々な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤および天然風味剤などの風味剤、着色剤および充填剤、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などが含まれるが、前記の例により本発明の食品補助添加剤の種類が制限されるものではない。
【0061】
本発明の食品組成物には、健康機能食品が含まれることができる。本発明において使用される用語「健康機能食品」とは、人体に有用な機能性を持つ原料や成分を使用して、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状、および丸などの形態で製造および加工した食品を言う。ここで「機能性」とは、人体の構造および機能に対して栄養素を調節するか、生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得ることを意味する。本発明の健康機能食品は、通常の技術分野において通常使用される方法によって製造可能であり、前記製造時には、通常の技術分野において通常添加する原料および成分を添加して製造することができる。また、前記健康機能食品の剤形もまた、健康機能食品として認められる剤形であれば制限なく製造されることができる。本発明の食品用組成物は、多様な形態の剤形で製造されることができ、一般薬品とは異なって食品を原料にして薬品の長期服用時に発生し得る副作用などがない長所があり、携帯性に優れ、本発明の健康機能食品は、抗がん剤の効果を増進させるための補助剤として摂取が可能である。
【0062】
また、本発明の組成物が使用され得る健康食品の種類には制限がない。併せて、本発明の厚朴抽出物を有効成分として含む組成物は、当業者の選択によって健康機能食品に含有されることができる適切なその他の補助成分と公知の添加剤を混合して製造することができる。添加することができる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、茶、ドリンク剤、アルコール飲料およびビタミン複合剤などがあり、本発明に係る抽出物を主成分として製造した汁、茶、ゼリーおよびジュースなどに添加して製造することができる。
【0063】
一側面において、本発明は、厚朴抽出物を有効成分として含む抗炎症性マクロファージ分化促進用組成物に関する。
【0064】
一実現例において、前記組成物は、M2マクロファージ分極化(polarization)を誘導し、IGF-1(like growth factor-1)の発現を増加させることができる。
【0065】
一実現例において、前記組成物は、M1マクロファージ(CD206CD163)集団を減少させ、M2aマクロファージ(CD206CD163)集団およびM2cマクロファージ(CD206CD163)集団を増加させることができる。
【0066】
一側面において、本発明は、厚朴抽出物を薬学的に有効な量で筋肉疾患を有する個体に投与するステップを含む筋肉疾患の治療方法に関する。
【0067】
一側面において、本発明は、筋肉疾患の予防および治療用薬学的組成物の製造に使用するための、厚朴抽出物の用途に関する。
【0068】
一側面において、本発明は、厚朴抽出物を薬学的に有効な量で抗がん剤副作用疾患を有する個体に投与するステップを含む抗がん剤副作用疾患の治療方法に関する。
【0069】
一実現例において、前記抗がん剤副作用疾患は、筋肉疾患であってよく、筋萎縮症、筋肉変性症、筋肉損傷、筋ジストロフィー、悪液質および筋肉減少症からなる群から選択されるいずれか1つ以上であることがさらに好ましい。
【0070】
一側面において、本発明は、抗がん剤副作用疾患の予防および治療用薬学的組成物の製造に使用するための、厚朴抽出物の用途に関する。
【0071】
下記の実施例を通じて、本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明の内容を具体化するためのものであって、これにより本発明が限定されるものではない。
【0072】
実施例1.厚朴抽出物の製造
【0073】
エタノール:水(7:3、v/v)混合溶媒(70%エタノール)1000mLを厚朴(Magnolia officinalisRehder et Wilson)(Sunchen、Korea)200gと混合した後、70℃の還流システム(reflux system)で2回抽出して濾過した。その後、40~45℃で減圧濃縮し、3日間凍結乾燥して厚朴抽出物(M.C)を10.91%(21.82g)の歩留まりで製造した。
【0074】
実施例2.厚朴抽出物の成分分析
【0075】
前記実施例1で製造した厚朴エタノール抽出物の成分をHPLCを利用して分析し、厚朴エタノール抽出物に存在するマグノロール(Magnolol)およびホーノキオール(honokiol)をDong-eul Herbal Medicine Analysis Center(Busan、Korea)で分析した。具体的に、マグノロールおよびホーノキオールのODS(octadecyl silica)-クロマトグラフィ分析をUV-vis spectrophotometer(289nm)が取り付けられたDHAC-12-01(Agilent、Santa Clara、CA、USA)を利用して行った。マグノロールおよびホーノキオールは、OSAKASODA C18コラム(5um粒子サイズ、4.6×250mm;Osaka、Japan)を使用して20℃でアセトニトリル:蒸溜水:アセト酸(70:30:1、v/v/v)を移動相構成要素として使用した定組成溶離(isocratic elution)によって分析され、注入体積と流速は、それぞれ10μLおよび0.3mL/minである。マグノロールおよびホーノキオール標準物質を定量的HPLC分析のために289nmで検出した。また、前記実施例1で製造した厚朴エタノール抽出物の凍結乾燥粉末(0.1g)をメタノール(100mL)に溶かした後、20分間超音波処理および濾過した後、ODS-HPLC分析に使用した。また、マグノロールおよびホーノキオール標準物質をそれぞれ100%メタノールに100mg/Lの濃度で溶かしてHPLC分析を行った。
【0076】
その結果、厚朴エタノール抽出物(M.C)内のマグノロールおよびホーノキオール含量は、それぞれ2.1%および0.8%であることが確認された(図1)。
【0077】
実施例3.厚朴抽出物のシスプラチン-媒介体重減少抑制効果
【0078】
厚朴抽出物が一般的な化学療法抗がん治療剤であるシスプラチン(cisplatin)による筋萎縮(muscle atrophy)および急激な体重減少に対して如何なる影響を及ぼすかを確認するために、マウスにシスプラチンを投与して体重減少を誘発しつつ、前記実施例1の厚朴エタノール抽出物(M.C)を投与してその効果を確認した。具体的に、マウス(C57BL/6、7-8週齢)(ジャクソン研究所、京畿ラオンバイオ)を無作為にケージに閉じ込めて12時間の明暗周期で飲食と水に対する自由に接近可能な規制された環境で飼育した後、1~5および26~30日目に生理食塩水に1mg/mLで溶かしたシスプラチン(Sigma-Aldrich、P4394;St.Louis、MO、USA)(2.5mg/kg)を毎日1回腹腔注射し(筋肉減少症マウスモデル)、M.C(50、100および200mg/kg)を3日ごとに(計12回)経口投与した。また、対照群(control)および陰性対照群(CIS+PBS)はPBSを3日ごとに経口投与し、陽性対照群はDMSOに10mMで溶かしたマグノロール(purity 95%)(Sigma(m3445;Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)(10mg/kg)を3日ごとに(計12回)腹腔注射した。このとき、すべての実験過程はKyung Hee Institutional Animal Care(KHUASP(SE)-20-529)の承認を受けて進めた。その結果、シスプラチン投与によって15日目から急激な体重減少がマウスで誘発され、これは、M.Cまたはマグノロール投与によって顕著に緩和されて速い体重回復を示した(図2)。このようなCIS(cisplatin)+PBS投与群およびCIS+M.C投与群の間の有意な差が6日以上持続し、マウスの体重が30%以上減少して42日目に実験を終了した(図2A)。特に、M.Cを100または200mg/kgで投与した群の場合、マグノロール投与群よりもシスプラチンによる体重減少を顕著に抑制することが示された。また、最後の日および初日の体重変化を確認した結果、シスプラチン投与したマウスは体重が顕著に誘発されたのに対し、M.Cまたはマグノロール投与群の場合、シスプラチンによって誘導された体重減少を顕著に減少させたことが示された(図2B)。このような体重減少が消化および食欲不振と関連したかを確認するために、結腸(colon)長さおよび平均一日飲食摂取量を測定した結果、前記群の間に結腸長さおよび飲食摂取量に差がないことが示され(図2CおよびD)、シスプラチンによって誘導された体重減少が非正常的な消化または食欲変化と関係がないことが分かった。
【0079】
実施例4.厚朴抽出物のシスプラチン-骨格筋消耗緩和効果
【0080】
4-1.筋肉量減少抑制効果確認
【0081】
シスプラチンによる骨格筋(skeletal muscle)消耗に対する厚朴抽出物の効果を確認するために、実験42次に各群の肢の重さおよび軽骨筋(tibialis anterior、TA)筋肉量を測定した。その結果、M.C投与群およびマグノロール投与群のいずれもシスプラチンによって誘導された肢の重さおよびTA筋肉量減少を顕著に緩和させ、このような効果は、マグノロール投与群に比べてM.C投与群で顕著に高いことが示された(図3A~C)。
【0082】
4-2.握力低下抑制効果確認
【0083】
シスプラチンによる握力(grip strength)低下に対する厚朴抽出物の効果を確認するために、すべての肢の筋肉強度および前肢の筋肉強度をdigital force gauge(DS2-5N;IMADA Inc.、Northbrook、IL、USA)を利用して測定した。筋肉強度は、マウスの尻尾を下側に5回引っ張り、マウスが肢を置いたときの最大張力(peak tension)を記録して測定され、10分間隔で3回繰り返し測定した後、平均5個の値を計算に利用した。その結果、シスプラチン投与群に比べてM.C投与群(100および200mg/kg)およびマグノロール投与群で引く力(pulling force power)が顕著に増加したことが示され、このような効果は、M.Cを100mg/kgまたは200mg/kg投与した群でマグノロール投与群に比べて顕著に高く示された(図3D)。
【0084】
4-3.筋繊維損傷抑制効果確認
【0085】
シスプラチンによる筋繊維(muscle fiber)損傷に対する厚朴抽出物の効果を確認するために、骨格筋の筋繊維形態をH&E(hematoxylin and eosin)染色を通じて確認した。具体的に、TA筋肉組織切片を4%ホルマリンで24時間固定した後、パラフィン包埋して、4μmの厚さでセクションした。セクションした切片をLee et al.、に記載されたように処理し、H&E染色を行って組織の病理学的変化を評価し、Eclipse Ci-L microscope(Nikon、Tokyo、Japan)でイメージ化された。その結果、M.Cを50mg/kg投与した群とは異なって、100または200mg/kg投与した群のいずれにおいても筋繊維変形(筋繊維損傷)が防止されたことが示され(図3E)、厚朴抽出物がシスプラチンによって誘発される筋肉減少症(sarcopenia)が発病したマウスで筋肉損失および損傷を予防または抑制することを確認することができた。
【0086】
実施例5.骨格筋内M1およびM2マクロファージ分極化活性化効果
【0087】
損傷された筋繊維の復元はM2マクロファージの活性化を必要とするので、厚朴抽出物投与によって骨格筋でArg-1、NOS2、TNF-α、MRC1、TGF-βおよびCD163を含むマクロファージ-特異的マーカー遺伝子の発現が変化するかをqPCR(real-time quantitative PCR)で確認した。具体的に、easy-BLUE TM Total RNA Extraction Kit(17061;iNtRON、Biotechnology、Jungwon、Korea)を利用してTA筋肉で総RNAを抽出した後、Maxime RT-PCR PreMix Kit(25131;iNtRON Biotechnology、Jungwon、Korea)でcDNAを合成した。この後、下記の各遺伝子に対するプライマーセット(5’→3’)およびSensiFAST SYBR No-ROX Kit(BIO-98020;Medison bioline、Roma、Italia)を利用してreal-time qPCRを行い、standard 2δδCt方法で分析し、GAPDH(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)で正規化した:Nos2(Forward:CAC CTT GGA GTT CAC CCA GT、Reverse:ACC ACT CGT ACT TGG GAT GC)、Igf-1(Forward:CTA CCA AAA TGA CCG CAC CT、Reverse:CAC GAA CTG AAG AGC ATC CA)、Tgfb1(Forward:CAA GGA AGG TTG GCA TTT GT、Reverse:AGG TAA CGC CAG GAA TTG CA)、Tnfa(Forward:GCT GAG CTC AAA CCC TGG TA、Reverse:CCG GAC TCC GCA AAGTCT AA)、Mrc1(Forward:CAA GGA AGG TTG GCA TTT GT、Reverse:CCT TTC AGT CCT TTG CAA GC)、Arg-1(Forward:GGC TGG TCT GCT TGA GAA AC、Reverse:CTT TTC CCA CAG ACC TTG GA)、Cd163(Forward:TGG TGT GCA GGG AAT TAC AA、Reverse:ATC CCT GCT GTG GGT ACA AG)およびGapdh(Forward:ACC CAG AAG ACT GTG GAT GG、Reverse:CAC ATT GGG GGT AGG AAC AC)。
【0088】
その結果、シスプラチン投与群でM1マクロファージ特異的マーカー遺伝子(TNF-αおよびiNOS)の発現が増加したが、M.C処理によって顕著に減少することが示された(図4AおよびB)。同時に、M2マクロファージ特異的マーカー遺伝子(CD206、Arg-1、TGF-βおよびCD163)の発現水準はM.C投与群でシスプラチン投与群に比べて顕著に増加したことが示された(図4C~F)。これを通じて、厚朴抽出物が骨格筋微細環境でM1およびM2マクロファージ分極化(polarization)を調節することを確認することができた。
【0089】
実施例6.骨格筋内マクロファージ数およびIGF-1発現増加効果
【0090】
6-1.骨格筋内マクロファージ数確認
【0091】
厚朴抽出物投与によって、マクロファージの表現型をM2aからM2c(細胞外基質リモデリングおよび筋肉治癒に関与したマクロファージ)へ分極化を移動させるIGF-1(like growth factor-1)およびマクロファージの数が骨格筋で影響を受けるのかを確認した。具体的に、前記実施例4-3のTA筋肉組織切片を1次抗体であるレット抗-マウスCD68抗体(1:250;MCA1957GA;Bio-Rad、Contra Costa County、CA、USA)およびラビット抗-マウスIGF-1抗体(1:500;40657;Abcam、Cambridge、UK)と一晩インキュベーションした後、2次抗体であるAlexa Fluor 488-コンジュゲートされたゴート抗-レット免疫グロブリンIgG(A11006;Invitrogen、Carls-bad、CA、USA)およびAlexa Fluor 594-コンジュゲートされたゴート抗-ラビットIgG(A32740;Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)と30分間インキュベーションした。その後、切片をDAPI(4’、6-diamidino-2-phenylindole)(H-1200、Vector、Torrance、CA、USA)を含むマウンティングメディアを利用してマウンティングした後、共焦点顕微鏡(FV10C-PSU;Olympus Corporation、Tokyo、Japan)でイメージングした。撮影したイメージで最小5個の任意フィールドでイメージ領域当たりIGF-I(red)、CD68(マクロファージ)(green)およびDAPI(blue)陽性細胞の数を測定した。
【0092】
その結果、CD68およびIGF-1をいずれも発現する細胞の数がM.C投与群およびマグノロール投与群のいずれにおいても増加したことが示された(図5AおよびB)。
【0093】
6-2.骨格筋内IGF-1発現確認
【0094】
前記実施例4-3のTA筋肉組織切片でIGF-1のmRNA発現程度をqPCRで確認し、IGF-1タンパク質発現程度をELISAで確認した。具体的に、qPCRは前記実施例5のように行い、ELISAはTA筋肉組織切片をプロテアーゼ阻害剤カクテル(protease inhibitor cocktail)が含まれたPRO-PREP Protein Extraction Solution(17081;iNtRON Biotechnology、Jungwon、Korea)で溶解した後、mechanical homogenizer(Precellys R24;Bertin、Montigny-le-Bretonneux、France)を利用して均質化した。その後、IGF-1用ELISAキット(DY791;R&D Systems、Minneapolis、MN、USA)を利用してELISA分析を行った。
【0095】
その結果、IGF-1のmRNAおよびタンパク質発現のいずれもM.C投与群でシスプラチン投与群に比べて顕著に増加したことが示された(図5CおよびD)。
【0096】
これを通じて、厚朴抽出物が骨格筋でマクロファージ由来IGF-1の発現を増加させて分極化をM2aおよびM2c表現型に移動させることで、シスプラチンによる骨格筋損傷で筋肉回復を促進し、筋ジストロフィー(muscle dystrophy)から保護することを確認することができた。
【0097】
実施例7.マクロファージ亜型変化効果
【0098】
厚朴抽出物がM1マクロファージ表現型変化に及ぼす影響を確認するために、前記実施例3の筋肉減少症マウスモデルから各群の脾臓-由来マクロファージを抽出した後、マクロファージの亜型をフローサイトメトリーで確認した。具体的に、各群のマウスの脾臓を摘出した後、40μmナイロンメッシュストレーナー(strainer)を使用して単一の細胞に分離した。その後、赤血球をPharmlyse buffer(555899;BD bioscience、San Jose、CA、USA)で溶解させ、単一の細胞を抗-mCD8 APC-CY7抗体(100713;BioLegend、San Diego、CA、USA)、抗-mCD4 APC抗体(100412;BioLegend、San Diego、CA、USA)、anti-mCD45 Pacific Blue(MCD4528;Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)、抗-mF4/80 BV421抗体(123131;BioLegend、San Diego、CA、USA)、抗-mCD11b PerCP-Cy5.5抗体(101227;BioLegend、San Diego、CA、USA)、抗-mCD163 PE抗体(12-1631-82;e-bioscience;Thermo Fisher Scientific、Middlesex County、MA、USA)および抗-mCD206 APC抗体(141707;BioLegend、San Diego、CA、USA)と4℃で1時間インキュベーションして染色した。染色された細胞をFACSバッファーで2回洗浄した後、FACS Lyric instruments(BD bioscience、San Jose、CA、USA)で分析した。データは、FlowJo V10 software(Treestar Inc.、San Carlos、CA、USA)で分析した。染色されていない細胞(陰性対照群)をゲーティング対照群として使用した。細胞の表現型は下記のとおりである(図6A):CD45およびCD11bF4/80でゲーティングされた細胞のうちM1マクロファージはCD206CD163細胞;M2aマクロファージはCD206CD163細胞;M2cマクロファージはCD206CD163細胞。
【0099】
その結果、厚朴抽出物処理によってCD11bF4/80マクロファージ内のM1マクロファージ(CD206CD163)集団がシスプラチン投与群に比べて顕著に減少したことが示された(図6BおよびC)。また、厚朴抽出物投与群でM2aマクロファージ(CD206CD163)集団およびM2cマクロファージ(CD206CD163)集団が顕著に増加した(図6DおよびE)。併せて、T-細胞下位集団における変化を示すCD4/CD8T細胞割合を測定した結果、各群間の差がないことが示された(図6F)。
【0100】
実施例8.厚朴抽出物のシスプラチンの抗-腫瘍活性に及ぼす影響確認
【0101】
厚朴抽出物の投与がシスプラチンの抗-腫瘍活性を妨げるかを確認するために、マウス結腸がん細胞株であるCT26(Korean Cell Line Bank、80009;Seoul、Korea)をマウス当たり3×10個ずつ皮下注射して結腸がんを保有したマウスモデルを製作した後、シスプラチンまたはシスプラチン+厚朴抽出物(200mg/kg)を処理し、腫瘍の大きさ(体積)および重さを3日ごとに測定した。その結果、シスプラチンが腫瘍成長を顕著に減少させ、厚朴抽出物をシスプラチンとともに投与した群からもシスプラチン単独投与による腫瘍成長抑制効果と類似した程度で示され(図7)、厚朴抽出物がシスプラチンの抗-腫瘍機能を妨げないことを確認した。
【0102】
これを通じて、厚朴抽出物ががん悪液質(cancer cachexia)、特に、シスプラチンによる筋肉減少症(Sarcopenia)に対する予防および治療効果を有し、シスプラチンによる抗-腫瘍効果は妨げないことを確認した。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
【国際調査報告】