IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニーの特許一覧

特表2025-506180分子篩の調製用の構造指向剤としての1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムおよび1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムから選択されるカチオンの使用およびこれを用いて得られる分子篩
<>
  • 特表-分子篩の調製用の構造指向剤としての1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムおよび1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムから選択されるカチオンの使用およびこれを用いて得られる分子篩 図1
  • 特表-分子篩の調製用の構造指向剤としての1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムおよび1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムから選択されるカチオンの使用およびこれを用いて得られる分子篩 図2
  • 特表-分子篩の調製用の構造指向剤としての1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムおよび1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムから選択されるカチオンの使用およびこれを用いて得られる分子篩 図3
  • 特表-分子篩の調製用の構造指向剤としての1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムおよび1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムから選択されるカチオンの使用およびこれを用いて得られる分子篩 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-07
(54)【発明の名称】分子篩の調製用の構造指向剤としての1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムおよび1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムから選択されるカチオンの使用およびこれを用いて得られる分子篩
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
C01B39/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547597
(86)(22)【出願日】2023-02-02
(85)【翻訳文提出日】2024-10-08
(86)【国際出願番号】 US2023061859
(87)【国際公開番号】W WO2023154656
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】63/308,793
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523025539
【氏名又は名称】エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】ファム,トロン ディー
(72)【発明者】
【氏名】バートン,アレン ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】テレフェンコ,ユージーン エイ
【テーマコード(参考)】
4G073
【Fターム(参考)】
4G073BA02
4G073BA14
4G073BA36
4G073BA58
4G073BA63
4G073BA64
4G073BA69
4G073BA75
4G073BA79
4G073BB44
4G073CZ06
4G073CZ50
(57)【要約】
本開示は、分子篩の調製用の構造指向剤としての1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンおよび1,2,3,4,6-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンから選択される少なくとも1つのカチオンの使用に関する。また、本開示は、該構造指向剤を用いる分子篩の製造方法、および該構造指向剤を含む分子篩にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子篩の調製用の構造指向剤(Q)としての、式Iの1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIの1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンおよび式IIIの1,2,3,4,6-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンから選択される少なくとも1つのカチオンの使用。
【化1】
【請求項2】
前記構造指向剤(Q)が、ハロゲン化物、水酸化物または硝酸塩の形態であり、好ましくは、前記構造指向剤(Q)が、水酸化物の形態である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記分子篩が、アルミノシリケート分子篩またはボロシリケート分子篩である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記分子篩が、超大細孔分子篩、好ましくは14員環分子篩であり、より好ましくは前記分子篩が、SFNフレームワークタイプを有し、最も好ましくは前記分子篩がEMM-72である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
分子篩を製造する方法であって、
(a)水、4価元素(Y)の酸化物源、3価元素(X)の酸化物源、構造指向剤(Q)、水酸化物イオン(OH)源、ならびにオプションとしてアルカリおよび/またはアルカリ土類金属(M)源を含む合成混合物を準備することであって、
前記構造指向剤(Q)が、式Iの1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIの1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIIの1,2,3,4,6-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンおよびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのカチオンを含むこと、
【化2】
(b)前記合成混合物を、前記分子篩の結晶を形成するのに十分な時間で、100~200℃の温度を含む結晶化条件下にて加熱すること、
(c)前記工程(b)から前記分子篩の少なくとも一部を回収すること
を含む、方法。
【請求項6】
前記構造指向剤(Q)が、ハロゲン化物、水酸化物または硝酸塩の形態であり、好ましくは、前記構造指向剤(Q)が、水酸化物の形態である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記4価元素(Y)が、シリコン、ゲルマニウムおよびそれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは前記4価元素(Y)が、シリコンを含み、より好ましくは前記4価元素(Y)が、シリコンである、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記3価元素(X)が、アルミニウム、ホウ素、鉄、ガリウムおよびそれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは前記3価元素(X)が、アルミニウムおよび/またはホウ素を含み、より好ましくは前記3価元素(X)が、アルミニウムおよび/またはホウ素であり、特にアルミニウムである、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記合成混合物が、モル比の観点において以下の組成を有する、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【表1】
【請求項10】
工程(c)にて回収された前記分子篩を、前記構造指向剤(Q)の少なくとも一部を除去するように処理することを更に含む、請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記分子篩が、ボロシリケートであり、前記方法が、フレームワークシリケート中に存在するホウ素原子の少なくとも一部をアルミニウム原子で置換することを更に含む、請求項5~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
式Iの1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIの1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンおよび式IIIの1,2,3,4,6-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンから選択される少なくとも1つのカチオンを細孔構造中に有する、分子篩。
【化3】
【請求項13】
請求項5~11のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、請求項12に記載の分子篩。
【請求項14】
前記分子篩が、アルミノシリケート分子篩またはボロシリケート分子篩である、請求項12または13に記載の分子篩。
【請求項15】
前記分子篩が、超大細孔分子篩、好ましくは14員環分子篩であり、より好ましくは前記分子篩が、SFNフレームワークタイプを有し、最も好ましくは前記分子篩がEMM-72である、請求項12~14のいずれか一項に記載の分子篩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年2月10日に出願された米国特許仮出願第63/308793号の優先権およびその利益を主張し、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、分子篩(またはモレキュラーシーブ)の調製用の構造指向剤としての1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンおよび1,2,3,4,6-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンから選択される少なくとも1つのカチオンの使用に関する。また、本開示は、該構造指向剤を用いる分子篩の製造方法、および該構造指向剤を含む分子篩にも関する。
【背景技術】
【0003】
分子篩材料は、天然および合成のいずれでも、吸着剤として使用され得、および炭化水素転化反応のための触媒特性を有し得る。ゼオライト、AIPO、およびメソポーラス材料などのある分子篩は、X線回折(XRD)によって測定されたときに明確な結晶構造を有する規則的な多孔質結晶性材料である。ある分子篩は、規則的であり、特異的な同定可能なXRDパターンを生成する。ある分子篩材料内において、多数の空洞(キャビティ)が存在し得、これらは多数のチャネルまたは細孔によって相互接続され得る。これらの空洞および細孔は、特定の分子篩材料内においてサイズが均一である。これら細孔の寸法が、所定の寸法の分子の吸着は受容する一方で、より大きい寸法の分子は拒絶するようになっているので、これらの材料は「分子篩」として知られるようになり、例えば(熱)分解、水素化分解、不均化、アルキル化、オリゴマー化および異性化などのさまざまな工業プロセスにおいて利用されている。
【0004】
触媒作用および吸着において用途を見出した分子篩には、天然産または合成の結晶性分子篩が含まれる。これら分子篩の例には、超大細孔ゼオライト、大細孔ゼオライト、中細孔寸法ゼオライトおよび小細孔ゼオライトが含まれる。これらゼオライトおよびそれらのアイソタイプは、IUPACゼオライト命名法委員会の規則に従って国際ゼオライト学会の構造委員会によって分類される。この分類に従って、フレームワークタイプゼオライトおよび他の結晶性ミクロポーラス分子篩(これらにつき構造が確立されている)に3文字のコードが割り当てられ、Ch. Baerlocher、L.B. McCuskerおよびD.H. Olson編「Atlas of Zeolite Framework Types」、Elsevier、Sixth Edition、2007に記載されており、これは参照することにより本明細書に組み込まれる。これらゼオライトおよびそれらのアイソタイプは、http://america.iza-structure.org/IZA-SC/ftc_table.phpにも記載されている。
【0005】
ゼオライトの理想的な無機フレームワーク構造は、すべての四面体原子が、4つの隣接する最も近い四面体原子と酸素原子によって結合しているシリケートのフレームワークである。用語「シリケート」は、本明細書で使用される場合、互いに交互に結合したシリコン(ケイ素)および酸素原子(すなわち、-O-Si-O-Si-)を少なくとも含有し、オプションとして無機フレームワーク構造中に他の原子、例えばホウ素、アルミニウム、または他の金属(例えばチタン、バナジウムまたは亜鉛などの遷移金属)原子を含む物質を言う。フレームワークシリケート中のシリコンおよび酸素以外の原子は、「全シリカ」フレームワークシリケートではシリコン原子が占めていた格子サイトの一部を占める。よって、用語「フレームワークシリケート」は、本明細書にて使用される場合、シリケート、ボロシリケート、ガロシリケート、フェリシリケート、アルミノシリケート、チタノシリケート、ジンコシリケート、バナドシリケートなどのいずれをも含む原子格子を言う。
【0006】
所与のゼオライト内のフレームワークシリケートの構造によって、その内部に存在する細孔またはチャネルの寸法が決まる。細孔またはチャネル寸法によって、所与のゼオライトを適用し得るプロセスのタイプが決まり得る。現在、200超のユニークなゼオライトフレームワークシリケート構造が知られており、および国際ゼオライト学会の構造委員会によって認められており、よって、細孔ジメトリおよび配向の範囲が規定されている。
【0007】
ゼオライトまたは分子篩のフレームワークシリケートは、一般的に、その環寸法によって特徴付けられ、環寸法は、ゼオライトの内部で細孔またはチャネルを規定するループにおいて、酸素原子によって四面体配位されるシリコン原子(またはこれに代替する原子、例えば上述のもの)の数を言う。例えば、「8員環」ゼオライトは、ループに存在する8つの代替四面体原子および8つの酸素原子によって規定される細孔またはチャネルを有するゼオライトを言う。所与のゼオライト内で規定される細孔またはチャネルは、特定のフレームワークシリケートにおいて存在するさまざまな構造的制約に応じて対称または非対称であり得る。
【0008】
ゼオライトは、細孔窓に対して小、中、大、超大細孔構造を有するものとして分類され得、それぞれ8、10、12および12超のT原子によって定められる。超大細孔ゼオライト(>12R)には、例えば、AET(14R、例えばALPO-8)、SFN(14R、例えばSSZ-59)、VFI(18R、例えばVPI-5)、CLO(20R、クロベライト(cloverite))およびITV(30R、ITQ-37)フレームワークタイプゼオライトが含まれる。超大細孔ゼオライトは、一般的に、約0.8nmより大きいフリー細孔径を有する。大細孔ゼオライト(12R)には、例えば、LTL、MAZ、FAU、EMT、OFF、*BEAおよびMORフレームワークタイプゼオライト、例えば、マッザイト(mazzite)、オフレタイト(offretite)、ゼオライトL、ゼオライトY、ゼオライトX、オメガ、ZSM-2、ゼオライトTおよびベータが含まれる。大細孔ゼオライトは、一般的に、0.6~0.8nmのフリー細孔径を有する。中(または中間)細孔寸法ゼオライト(10R)には、例えば、MFI、MEL、EUO、MTT、MFS、AEL、AFO、HEU、FER、MWWおよびTONフレームワークタイプゼオライトが含まれ、例えばZSM-5、ZSM-11、ZSM-22、MCM-22、シリケート-1およびシリケート-2が含まれる。中細孔寸法ゼオライトは、一般的に、0.45~0.6nmのフリー細孔径を有する。小細孔寸法ゼオライト(8R)には、例えば、CHA、RTH、ERI、KFI、LEVおよびLTAフレームワークタイプゼオライトが含まれ、例えば、ZK-4、SAPO-34、SAPO-35、ZK-14、SAPO-42、ZK-21、ZK-22、ZK-5、ZK-20、ゼオライトA、チャバザイト(chabazite)およびALPO-17が含まれる。小細孔寸法ゼオライトは、一般的に、0.3~0.45nmのフリー細孔径を有する。
【0009】
分子篩材料の合成は、典型的には、例えばシリカまたアルミナなどの分子篩(またはゼオライト)存在する全ての元素の源を含む合成混合物からの水熱結晶化を伴う。多くの場合、構造指向剤(structure directing agent:SDA)も存在する。構造指向剤は、分子篩の形成を促進すると考えられている化合物であって、その周囲で所定の分子篩構造が形成され得るテンプレートとして機能すると考えられ、よって、所望の分子篩の形成を促進する化合物である。構造指向剤として、さまざまな化合物が使用されてきており、これには、さまざまなタイプの四級アンモニウムカチオンが含まれる。典型的には、分子篩(またはゼオライト)結晶が、構造指向剤の周囲で形成され、構造指向剤は、結晶化が完了すると分子篩における細孔を占めることになる。よって、「合成状態(as-synthesized)」(または作製状態(as-made))の分子篩は、その細孔に構造指向剤を含有し、よって、結晶化の後に、「合成状態」の分子篩は、通常、構造指向剤を除去するために、焼成工程などの処理工程に付される。
【0010】
例えば、米国特許第6,464,956号およびA. Burtonら(2003)「SSZ-53 and SSZ-59: Two Novel Extra-Large Pore Zeolites」、Chem. Eur. J.、v.9(23)、pp. 5737-5748には、SSZ-59(SFNフレームワークタイプの超大細孔ゼオライトであって、14員環によって定められる一次元チャネルシステムを有する)の調製が開示される。SSZ-59合成は、オプションで塩素化されるN-メチル-N-[(1-フェニルシクロペンチル)メチル]ヘプタメチレンイミニウム、ヘキサメチレンイミニウムまたはピペリジニウムカチオンなどの複雑な構造指向剤の使用を要する。
【0011】
多数の分子篩が発見されているが、ガス分離、乾燥、有機転化反応および他の用途に対して望ましい特性を有する新規な分子篩(またはゼオライト)に対する継続的な要請が存在する。新規な分子篩は、新規な内部孔アーキテクチャを有し得、これらのプロセスにおける選択性が増強される。また、新規な構造指向剤、ならびに新規な分子篩の調製を容易にし、および/または既知の分子篩の製造コストを削減するための分子篩合成のより効率的な方法を同定することも重要である。
【発明の概要】
【0012】
1つの要旨において、本開示は、分子篩(またはゼオライト)の調製用の構造指向剤(Q)としての、式Iの1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIの1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンおよび/または式IIIの1,2,3,4,6-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンから選択される少なくとも1つのカチオンの使用に関する。
【化1】
【0013】
第2の要旨において、本開示は、分子篩(またはゼオライト)を製造する方法であって:(a)水、4価元素(Y)の酸化物源、3価元素(X)の酸化物源、式Iの1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIの1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIIの1,2,3,4,6-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンおよびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのカチオンを含む構造指向剤(Q)、水酸化物イオン(OH)源、ならびにオプションとしてアルカリおよび/またはアルカリ土類金属(M)源を含む合成混合物を準備すること;(b)前記合成混合物を、前記分子篩の結晶を形成するのに十分な時間で、100~200℃の温度を含む結晶化条件下にて加熱すること;(c)前記工程(b)から前記分子篩の少なくとも一部を回収することを含む、方法に関する。
【0014】
第3の要旨において、本開示は、式Iの1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIの1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンおよび/または式IIIの1,2,3,4,6-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンから選択される少なくとも1つのカチオンを細孔構造中に有する、分子篩(またはゼオライト)に関する。
【0015】
本開示のこれらおよび他の特徴および寄与物ならびにそれらの有利な用途および/または使用は、下記の詳細な説明から明らかになるであろう。本発明の1つの要旨に関するものとして記載される特徴は、本発明の他の要旨に組み込まれ得ることが勿論理解されるであろう。特に、本明細書(この発明の概要部分を含む)に記載される特徴の任意の2つ以上が、本明細書に特段記載されていない特徴の組合せを形成するために組み合わされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例2の合成状態の生成物の粉末XRDパターンを示す。
図2図2は、実施例2の焼結された生成物の粉末XRDパターンを示す。
図3図3は、実施例2の合成状態の生成物のSEM像を示す。
図4図4は、実施例8の合成状態の生成物のSEM像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の第1の要旨において、式Iの1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIの1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIIの1,2,3,4,6-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンおよびそれらの混合物からなる群より選択されるカチオンが、分子篩の調製用の構造指向剤(Q)として使用できることが判明した。
【化2】
【0018】
上述のように、新規な構造指向剤、ならびに新規な分子篩の調製を容易にし、および/または既知の分子篩の製造コストを削減するための分子篩合成のより効率的な方法を同定することが重要である。本発明者らにより、式IおよびIIの上記カチオンが、例えばアルミノシリケートまたはボロシリケート分子篩のような分子篩の調製に好適に使用できることが判明した。特に、式I、IIおよびIIIの上記カチオンは、例えば14員環分子篩、特にSFNフレームワークタイプ、例えばSSZ-59またはEMM-72などの超大細孔分子篩の調製に好適に使用できることが判明した。
【0019】
上記1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンおよび1,2,3,4,6-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンは、分子篩合成混合物において任意の形態、例えばそれらのハロゲン化物の形態(例えば塩化物、臭化物、ヨウ化物またはフッ化物の形態)、それらの硝酸塩の形態、および/またはそれらの水酸化物の形態で使用されてよい。構造指向剤(Q)がその水酸化物の形態で使用される場合、水酸化物源としても機能し、合成混合物に対して水酸化物イオン(OH)を提供し得る。構造指向剤(Q)がそのハロゲン化物の形態で使用される場合、ハロゲン化物源としても機能し、合成混合物に対してハロゲンイオン(W)を提供し得る。例えば、構造指向剤(Q)がそのフッ化物の形態である場合、フッ化物源としても機能し、合成混合物に対してフッ化物イオン(F)を提供し得る。
【0020】
式Iの1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIの1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンおよび式IIIの1,2,3,4,6-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンは、当該技術分野における任意の適切な方法で得ることができる。例えば、カチオンのヨウ化物の形態は、ヨードメタンを2,5-ジメチルベンゾイミダゾール、2,4,5-トリメチルベンゾイミダゾールまたは2,4,6-トリメチルベンゾイミダゾールと反応させることによって得ることができ、あるいはカチオンの臭化物の形態は、臭化メタンを2,5-ジメチルベンゾイミダゾール、2,4,5-トリメチルベンゾイミダゾールまたは2,4,6-トリメチルベンゾイミダゾールと反応させることによって得ることができる。カチオンの水酸化物の形態は、その後、例えばイオン交換樹脂を用いて、ヨウ化物塩または臭化物塩を水酸化物と交換することによって得ることができる。
【0021】
第2の要旨において、本開示は、分子篩を製造する方法であって、以下の工程:
(a)水、4価元素(Y)の酸化物源、3価元素(X)の酸化物源、構造指向剤(Q)、水酸化物イオン(OH)源、ならびにオプションとしてアルカリおよび/またはアルカリ土類金属(M)源を含む合成混合物を準備することであって、
前記構造指向剤(Q)が、式Iの1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIの1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIIの1,2,3,4,6-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンおよびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのカチオンを含むこと、
【化3】
(b)前記合成混合物を、前記分子篩の結晶を形成するのに十分な時間で、100~200℃の温度を含む結晶化条件下にて加熱すること、
(c)前記工程(b)から前記分子篩の少なくとも一部を回収すること、および
(d)オプションとして、工程(c)にて回収された前記分子篩を、前記構造指向剤(Q)の少なくとも一部を除去するように処理すること
を含む、方法に関する。
【0022】
構造指向剤(Q)は、任意の形態、例えばハロゲン化物(例えばフッ化物、塩化物、ヨウ化物または臭化物)として、水酸化物としてまたは硝酸塩として、例えばその水酸化物の形態で存在してよい。構造指向剤(Q)は、合成混合物中にて、0.01~1.0、例えば0.05~1.0または0.05~0.8または0.1~0.7、例えば0.1または0.2~0.5、例えば0.3または0.4のQ/Yモル比で存在してよい。
【0023】
合成混合物は、例えばSiおよび/またはGeなどの4価元素Yの酸化物の少なくとも1つの源を含み、好ましくはYはSiを含み、およびより好ましくはYはSiである。合成混合物を調製するために使用され得る4価元素Yの適切な源は、選択される元素Yに依存する。Yがシリコンである態様では、該方法に使用されるのに適切なSi源(例えばシリコン酸化物源)は、例えば、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)およびテトラエチルオルトシリケート(TEOS)などのテトラアルキルオルトシリケートなどのシリケート、例えばAerosil(登録商標)(Evonikから入手可能)、Cabosperse(登録商標)(Cabotから入手可能)およびCabosil(登録商標)(DMSから入手可能)などのフュームドシリカ、例えばUltrasil(登録商標)およびSipernat(登録商標)340(Evonikから入手可能)などの沈降シリカ、例えばカリウムシリケートおよびナトリウムシリケートなどのアルカリ金属シリケート、およびシリカの水性コロイド状懸濁物、例えばE.I. du Pont de Nemoursから商品名Ludox(登録商標)にて販売されているもの、またはEvonikから商品名Aerodisp(登録商標)にて販売されているものを含み、好ましくはシリケート、フュームドシリカ、沈降シリカ、アルカリ金属シリケート、および特にコロイド状シリカである。Yがゲルマニウムである態様では、適切なGe源は、ゲルマニウム酸化物を含む。
【0024】
合成混合物は、例えばAl、B、Feおよび/またはGaなどの3価元素の酸化物の少なくとも1つの源を含み、好ましくはXはAlおよび/またはB、例えばAlを含み、およびより好ましくはXはAlおよび/またはB、例えばAlである。合成混合物を調製するのに使用され得る3価元素Xの適切な源は、選択される元素Xに依存する。Xがアルミニウムである態様では、該方法に使用されるのに適切なAl源(例えばアルミニウム酸化物源)は、例えば硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩、特に水溶性の塩、例えばアルミン酸ナトリウムなどのアルカリ金属アルミン酸塩、例えばアルミニウムイソプロポキシドなどのアルミニウムアルコキシド、および例えばベーマイト、ギブサイトおよび擬ベーマイトなどの水和アルミニウム酸化物、ならびにそれの混合物を含む。他のアルミニウム源は、他の水溶性アルミニウム塩、アルミン酸ナトリウム、例えばアルミニウムイソプロポキシドなどのアルミニウムアルコキシド、例えばチップの形態のアルミニウムなどのアルミニウム金属を含むが、これらに限定されない。特に適切なアルミナ源は、水溶性塩、例えば硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、特に水酸化アルミニウム、およびアルカリ金属アルミン酸塩、例えばアルミン酸ナトリウムおよびアルミン酸カリウムである。Xがホウ素である態様では、適切なB源は、ホウ酸およびホウ酸塩、例えば四ホウ酸ナトリウムまたはホウ砂、および四ホウ酸カリウムを含む。ホウ素の源は、アルミニウムの源よりも、水酸化物で媒介される(mediated)合成系においてより溶解し易い傾向にある。Xがガリウムである態様では、適切なGa源は、没食子酸ナトリウム、没食子酸カリウム、および例えば塩化ガリウム、硫酸ガリウムおよび硝酸ガリウムなどのガリウム塩を含む。Xが鉄である態様では、適切なFe源は、塩化鉄、硝酸鉄、および酸化鉄を含む。
【0025】
先述のYおよびX源に換えてまたは加えて、YおよびX元素の双方を含有する源、例えばSiおよびAlの源も使用され得る。SiおよびAl元素の双方を含有する適切な源の例には、アモルファスシリカ-アルミナゲル、または乾燥シリカアルミナ粉末、シリカアルミナ類、例えばカオリン、メタカオリンなどのクレイ、およびゼオライト、特に例えば合成フォージャサイトおよび超安定フォージャサイト、例えば超安定Y(USY)、ベータまたは他の大~中細孔分子篩またはゼオライトなどのアルミノシリケートが含まれる。
【0026】
合成混合物は、2.5~100、例えば5~50、例えば10~35、例えば10、15、20、25または30のY/Xモル比を有し得る。本発明のこの要旨に関する好ましい態様において、YはSiであり、XはAlまたはBであり、および分子篩は、アルミノシリケートまたはボロシリケートである。
【0027】
合成混合物は、水酸化物イオン(OH)の少なくとも1つの源を含む。例えば、水酸化物イオンは、構造指向剤(Q)のカウンターイオンとして存在してよく、またはAlの源としての水酸化アルミニウムまたはアルミン酸ナトリウムの使用によって存在してよい。また、水酸化物イオンの適切な源は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、水酸化アンモニウムおよびそれらの混合物からなる群より選択されてよく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、およびそれらの混合物、よりしばしば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、およびそれらの混合物、もっとも頻繁には水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムから選択され得る。合成混合物は、水酸化物イオン源を、0.01~1.5、例えば0.1~1.0、または0.15~0.7、例えば0.2~0.6のOH/Yモル比で含み得る。
【0028】
オプションとして、合成混合物は、アルカリまたはアルカリ土類金属カチオン(M)の1つ以上の源を含み得る。存在する場合、Mは、好ましくはナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、カルシウム、マグネシウムおよびそれの混合物からなる群より選択され、好ましくはナトリウムおよび/またはカリウム、より好ましくはナトリウムである。ナトリウム源は、存在する場合、水酸化ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、ナトリウムシリケート、アルミン酸ナトリウム、またはナトリウム塩、例えばNaCl、NaBrまたは硝酸ナトリウムなどであり得る。カリウム源は、存在する場合、水酸化カリウム、アルミン酸カリウム、カリウムシリケート、カリウム塩、例えばKClもしくはKBrまたは硝酸カリウムなどであり得る。リチウム源は、存在する場合、水酸化リチウムまたはリチウム塩、例えばLiCl、LiBr、LiI、硝酸リチウムまたは硫酸リチウムであり得る。ルビジウム源は、存在する場合、水酸化ルビジウムまたはルビジウム塩、例えばRbCl、RbBr、RbIまたは硝酸ルビジウムであり得る。カルシウム源は、存在する場合、例えば水酸化カルシウムであり得る。マグネシウム源は、存在する場合、例えば水酸化マグネシウムであり得る。また、アルカリまたはアルカリ土類金属カチオンMは、3価元素Xの1つ以上の源、例えばアルミン酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、没食子酸ナトリウム、没食子酸カリウムなどに存在してよく、および/または4価元素Yの1つ以上の源、例えばカリウムシリケートおよび/またはナトリウムシリケートなどに存在してよい。合成混合物は、アルカリまたはアルカリ土類金属カチオン(M)源を、0~1.0、例えば0または0.01~0.5、特に0または0.01~0.2または0.15、例えば0または0.01~0.1または0.1未満のM/Yモル比で含み得る。あるいは、合成混合物は、アルカリまたはアルカリ土類金属カチオン(M)を実質的に含まないものであり得る。
【0029】
合成混合物は、オプションとして、フッ化物イオン(F)の少なくとも1つの源を含み得る。フッ化物イオン(F)の源は、分子篩合成混合物中にフッ化物イオンを放出し得る任意の化合物であり得る。例えば、フッ化物イオンは、構造指向剤(Q)のカウンターイオンとして存在してよい。フッ化物イオン(F)の源の非限定的な例は、フッ化水素(HF)、例えば金属フッ化物などを含む1つまたは数種のフッ化物イオンを含有する塩、好ましくは金属がアルカリまたはアルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムもしくはバリウムなどであるもの、または例えばアルミニウム塩(AlF、Al)またはスズ(SnF)などの金属;フッ化アンモニウム(NHF);および重フッ化アンモニウム(NHHF)を含む。フッ化物イオンの特に簡便な源は、HF、NHF、NHHFであり、特にHFである。少量のフッ化物イオン(F)が不純物として、例えばアルカリまたはアルカリ土類金属カチオン(M)のオプションの源中に存在してよい。フッ化物イオン(F)は、0~1.0、例えば0または0.1~0.8、例えば0.15~0.7、例えば0.2~0.6のF/Yモル比で存在してよい。好ましい態様では、構造指向剤(Q)が式IIの1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンを含む場合、合成混合物は、フッ化物イオン(F)の少なくとも1つの源を含有する。あるいは、合成混合物は、フッ化物イオンを実質的に含まないものであり得る。
【0030】
合成混合物は、オプションとして、フッ化物イオンと異なる(塩化物、臭化物、またはヨウ化物からなる群より選択される得る)ハロゲン化物イオン(W)の少なくとも1つの源を含有し得る。ハロゲン化物イオン(W)の源は、分子篩合成混合物中でハロゲン化物イオンを放出し得る任意の化合物であり得る。例えば、ハロゲン化物イオンは、構造指向剤(Q)のカウンターイオンとして存在し得る。ハロゲン化物イオンの源の非限定的な例は、塩化水素、塩化アンモニウム、臭化水素、臭化アンモニウム、ヨウ化水素、ヨウ化アンモニウム;例えば金属ハロゲン化物、好ましくは金属がアルカリまたはアルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムまたはバリウムであるものなどの1つまたは数種のハロゲン化物イオンを含有する塩;例えばハロゲン化テトラメチルアンモニウム、またはハロゲン化テトラエチルアンモニウムなどのハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを含む。また、少量のハロゲン化物イオン(W)が、例えばアルカリまたはアルカリ土類金属カチオン(W)のオプションの源中に不純物として存在してもよい。ハロゲン化物イオン(W)は、0~0.2、例えば0~0.1、例えば0.1未満または0のW/Yモル比で存在してよい。あるいは、合成混合物は、ハロゲン化物イオン(W)を実質的に含まないものであり得る。
【0031】
合成は、核形成シード(または種)の添加ありまたはなしで実施され得る。核形成シードが合成混合物に添加されるなら、シードは本方法で得られる分子篩、例えば、前の方法から得られた分子篩と同じまたは異なるものであってよく、適切には、合成混合物に基づいて約0.01重量ppm~約10,000重量ppmの量で存在してよく、例えば、合成混合物の約100重量ppm~約5,000重量ppmで存在してよい。
【0032】
合成混合物は、典型的には、1~100、例えば5~80または5~70、例えば5または10~50のHO/Yモル比で水を含む。ベース混合物における組成物の性質に応じて、ベース混合物の溶媒(例えば、水酸化物溶液からの水、およびオプションとしてシリカ源の水分解からのメタノールおよびエタノール)の量が、合成混合物に対して所望の溶媒対Yモル比を達成し得るように除去され得る。溶媒含有量を低減する適切な方法は、例えば周囲空気、乾燥窒素、乾燥空気などの静的または流動雰囲気下での、または噴霧乾燥または凍結乾燥による蒸発を含み得る。溶媒除去プロセスの間に過剰の水が除去されたときは、所望のHO/Yモル比を達成するように、得られる混合物に水を添加してもよい。いくつかの例では、調製物が十分なHO/Yモル比を有する場合には、水の除去は必要でない。
【0033】
本開示の合成混合物を調製するために用いられる、例えば4価元素源または3価元素源などの成分の様々な源において、CHの形態の炭素が存在し得、得られる分子篩フレームワークに架橋原子として組み込まれ得る。SDAが除去された後、窒素原子が、分子篩材料のフレームワークに架橋原子として組み込まれ得る。
【0034】
1つ以上の要旨において、溶媒調節(例えば所望の水対シリカ比が得られた)後の合成混合物は、例えば撹拌または高せん断ブレンディングなどの機械的プロセスによって、例えばデュアル非対称遠心混合(例えばFlackTekスピードミキサ)を用いて1,000~3,000rpm(例えば2,000rpm)の撹拌速度で、混合されて、ベース混合物の適切な均質化が達成され得る。
【0035】
その後、合成混合物は、分子篩材料を形成するのに適切な結晶化条件に付される。分子篩材料の結晶化は、適切な反応容器内にて、例えば適切な温度で維持された対流オーブン中に配置されたテフロン(登録商標)でライニングしたまたはステンレス鋼のオートクレーブにて、静的または撹拌条件下で実施され得る。
【0036】
本方法の工程(b)における結晶化は、典型的には、100℃~200℃、例えば120℃~180℃、例えば160℃~170℃の温度にて、使用する温度において結晶化が起こるのに適切な時間で、実施される。例えば、より高い温度では、結晶化時間は短くされ得る。例えば、本方法の工程(b)における結晶化条件は、1~100日間、例えば1~50日間、例えば1~30日間、例えば少なくとも1または少なくとも5日間~30または20日間の期間に亘る加熱を含み得る。結晶化時間は、例えば、合成混合物をさまざまな時間でサンプリングして、沈降した固体の収率およびX線結晶化度を測定するなどの当該技術分野において既知の方法によって確定してよい。本明細書において特に断りのない限り、測定される温度は、加熱される材料の周囲環境の温度、例えば材料が加熱される雰囲気の温度である。
【0037】
典型的には、分子篩は、溶液中で形成され、そして標準的な手段、例えば遠心分離またはろ過などによって回収され得る。また、分離された分子篩は、洗浄され、遠心分離またはろ過によって回収され、そして乾燥され得る。
【0038】
本開示の分子篩は、吸着剤としてまたは有機化合物転化プロセスにおける触媒として使用される場合、少なくとも部分的に脱水(例えば乾燥)され得る。これは、例えば空気、窒素などの雰囲気中で80℃~500℃、例えば90℃~370℃の温度に、大気圧または大気圧未満もしくは大気圧超の圧力にて、30分間~48時間に亘って加熱することによって実施され得る。また、脱水は、分子篩を真空下にて室温にて単に配置することによっても実施され得るが、十分な量の脱水を得るにはより長い時間を要する。
【0039】
結晶化プロセスの結果として、回収された生成物は、その細孔内に、合成にて使用された構造指向剤の少なくとも一部を含有する。よって、工程(c)から回収された合成状態(as-synthesized:合成されたままの状態)の分子篩は、合成中にその細孔内に取り込まれたSDAの一部または全部を除去するための熱処理または他の処理に付され得る。合成状態の分子篩の熱処理(例えば焼成)は、典型的には、該材料を、空気、窒素、オゾンまたはそれらの混合物から選択される炉内の雰囲気にて、SDAの一部または全部を除去するのに十分な高温に曝すものである。大気圧未満の圧力が熱処理に適用され得るが、簡便さの理由から大気圧が望ましい。熱処理が、925℃までの温度、例えば300~700℃、または400~600℃の温度で実施され得る。測定される温度は、サンプルの周囲環境の温度である。熱処理(例えば焼成)は、空気から水を除去する乾燥剤を含有する乾燥チューブに予め曝した、乾燥空気中のボックス炉内にて実施され得る。加熱は、通常、少なくとも1分間で、一般的に1または数日間を超えない期間で焼成される。加熱は、最初、窒素雰囲気下にて実施され、その後、雰囲気を空気および/またはオゾンに変更し得る。
【0040】
また、分子篩は、合成混合物中にアルカリ金属カチオンおよび/またはアルカリ土類金属価カチオンが存在する場合にこれらを除去するために、およびこれらをプロトンで交換して分子篩の酸形態を生成するために、例えば水性アンモニウム塩(硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、アンモニウムアセテートなど)などによる、イオン交換処理に付され得る。所望される範囲まで、合成状態の材料のオリジナルのカチオン(例えばアルカリ金属カチオン)は、他のカチオンによるイオン交換によって置換され得る。好ましくは置換カチオンには、水素イオン、水素前駆体、例えばアンモニウムイオンおよびそれらの混合物が含まれる。イオン交換工程は、作製状態(as-made:作製されたままの状態)の分子篩を乾燥させた後に行い得る。イオン交換工程は、焼成工程の前および後のいずれで行ってもよい。
【0041】
オプションとして、アルミニウム原子は、水熱合成反応の後の交換プロセスの間に(SDAの一部または全部が除去された)分子篩フレームワークに導入され得る。ホウ素原子を含むフレームワークシリケート(例えばボロシリケート)は、アルミニウム原子との交換を経ることが特に有用であり得る。かかる交換プロセスは、分子篩を、例えばアルミニウム塩を含む水性溶液などのアルミニウム源に、フレームワークシリケート中のホウ素原子の少なくとも一部~実質的に全部がアルミニウム原子で交換されるのに十分な条件下にて曝すことを含み得る。例えば、ホウ素を含む焼成された分子篩は、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウムおよび/またはアルミニウムアセテートの溶液と共に(例えば、対流オーブン内で100℃にある封止オートクレーブ内にて、または開放系における沸騰温度にて)加熱することによって、アルミノシリケート分子篩に変換され得る。アルミニウム処理された分子篩は、その後、ろ過および脱イオン水による洗浄によって回収され得る。
【0042】
また、分子篩は、例えばスチームおよび/または溶媒による洗浄などの他の処理に付され得る。かかる処理は、当業者に周知であり、分子篩の特性を所望される通りに改変するために実施される。
【0043】
本開示の第2の要旨に関する方法は、例えば14員環分子篩、例えばSFNフレームワークタイプの分子篩、例えばSSZ-59またはEMM-72などの超大細孔分子篩を調製するために使用され得る。
【0044】
第3の要旨において、本開示は、式Iの1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIの1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンおよび/または式IIIの1,2,3,4,6-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンから選択される少なくとも1つのカチオンを、その細孔構造中に有する分子篩に関する。
【化4】
【0045】
前記分子篩は、式(IV)の分子式によって表され得る。
(q)Q:(m)X:YO (式IV)
式中、0<q≦0.7、0.005<m≦0.2、Xは3価の元素、Yは4価の元素、Qは、式Iの1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIの1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンおよび/または式IIIの1,2,3,4,6-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンである。Yは、SiおよびGeの1つ以上を含み得る。例えば、YはSiを含むかSiであり得る。Xは、Al、B、FeまたはGaの1つ以上を含み得る。例えば、Xは、Alおよび/またはBを含むかAlおよび/またはBであり得、特にXはAlを含むかAlであり得る。YがSiであり、かつXがAlである態様において、分子篩はアルミノシリケートである。YがSiであり、かつXがBである態様において、分子篩はボロシリケートである。式IVにおける酸素原子が、炭素原子(例えばCHの形態にある)で交換され得、炭素原子は、作製状態の分子篩を調製するために使用された成分の源に由来するものであり得る。また、式IVにおける酸素原子は、例えばSDAを除去した後に、窒素原子によって交換され得る。式IVは、構造指向剤(Q)をその細孔構造中に有する典型的な分子篩のフレームワークを表し得るが、かかる材料の唯一の表現であるよう意図したものでない。分子篩材料は、式IVに含まれていない不純物を含んでいてよい。更に、式IVは、分子篩材料中に存在していてよいプロトンおよび電荷補償イオンを含んでいない。
【0046】
変数mは、式IV中にてYOに対するXのモル比の関係を表す。例えば、mが0.005であるとき、Xに対するYOのモル比は200であり、およびY/Xモル比は100である(例えば、Si/AlまたはSi/Bのモル比が100である)。mは0.005~0.2、例えば0.01~0.1、例えば0.015~0.05で変化し得る。Xに対するYのモル比は、2.5~100、特に5~50、例えば5~40、例えば10~35であり得る。
【0047】
変数qは、式IV中にてYOに対するQのモル関係を表す。例えば、qが0.1のとき、Q/Yモル比は0.1である。YOに対するQのモル比は、0~0.7、例えば0.1~0.5、例えば0.2~0.5であり得る。
【0048】
特に好ましい態様において、本開示の第3の要旨に関する分子篩は、例えば14員環分子篩、例えばSFNフレームワークタイプの分子篩、例えばSSZ-59またはEMM-72などの超大細孔分子篩であり得る。
【0049】
更なる要旨において、本開示は、本明細書にて開示される第2の要旨の方法によって得られ得る(または得られた)、特にSFNフレームワークタイプの分子篩、例えばSSZ-59またはEMM-72などの分子篩に関する。
【0050】
また本明細書にて開示されるものは、合成状態の形態にて(例えば、SDAが除去されていない)、表1に示す以下のピークを含むX線回折パターンを有するEMM-72材料として指定され得る分子篩である。
【表1】
【0051】
前記EMM-72材料は、その合成状態の形態にて、表1Aに示す以下のピークを含むX線回折パターンを有し得、表中、d間隔値は、ブラッグの法則を用いてd間隔の対応する値に変換したときの、対応する偏差±0.20度2θに基づいて決定された偏差を有する。
【表2】
【0052】
本明細書に記載のXRDピークを有するXRDパターンは、Cu(Kα)放射を用いている。
【0053】
前記EMM-72材料は、オプションとして、その合成状態の形態において、本開示の第3の要旨について規定されるように、式IVの分子式によって表され得る。
【0054】
また本明細書にて開示されるものは、焼成された形態にて(例えば、SDAの少なくとも一部が熱処理または他の処理によって除去されている)、表2に示す以下のピークを含むX線回折パターンを有するEMM-72材料として指定され得る分子篩である。
【表3】
【0055】
前記EMM-72材料は、その焼成された形態にて、表2Aに示す以下のピークを含むX線回折パターンを有し得、表中、d間隔値は、ブラッグの法則を用いてd間隔の対応する値に変換したときの、対応する偏差±0.20度2θに基づいて決定された偏差を有する。
【表4】
【0056】
本明細書に記載のXRDピークを有するXRDパターンは、Cu(Kα)放射を用いている。
【0057】
前記EMM-72は、その焼成された形態にて、0.05~0.3、例えば0.1~0.25、例えば0.17cc/gの微細孔容積;100~800m/g、例えば300~600m/g、例えば516m/gの微細孔表面積;および/または5~200m/g、例えば50~150m/g、例えば91m/gの外部表面積を有し得る。
【0058】
前記EMM-72材料は、その焼成された形態にて、オプションとして、式Vの分子式によって表され得る。
(m)X:YO (式V)
式中、0.005≦m≦0.2、Xは3価の元素、Yは4価の元素である。Yは、SiおよびGeの1つ以上を含み得る。例えば、YはSiを含むかSiであり得る。Xは、Al、B、FeまたはGaの1つ以上を含み得る。例えば、Xは、Alおよび/またはBを含むかAlおよび/またはBであり得、特にXはAlを含むかAlであり得る。YがSiであり、かつXがAlである態様において、分子篩はアルミノシリケートである。YがSiであり、かつXがBである態様において、分子篩はボロシリケートである。式Vにおける酸素原子が、炭素原子(例えばCHの形態にある)で交換され得、炭素原子は、作製状態の分子篩を調製するために使用された成分の源に由来するものであり得る。また、式Vにおける酸素原子は、例えばSDAを除去した後に、窒素原子によって交換され得る。式Vは、本開示において規定されるような典型的なゼオライトのその焼成された形態のフレームワークを表し得るが、前記分子篩の唯一の表現であることを意図したものでない。前記分子篩は、その焼成された形態において、SDAおよび不純物を除去するための適切な処理の後、式Vに含まれていないSDAおよび/または不純物を含んでいてよい。更に、式Vは、焼成された分子篩中に存在していてよいプロトンおよび電荷補償イオンを含んでいない。
【0059】
変数mは、式V中にてYOに対するXのモル比の関係を表す。例えば、mが0.005であるとき、Xに対するYOのモル比は200であり、およびXに対するYのモル比は100である(例えば、Si/AlまたはSi/Bのモル比が100である)。mは0.005~0.2、例えば0.01~0.1、例えば0.015~0.05で変化し得る。Xに対するYのモル比は、2.5~100、特に5~50、例えば5~40、例えば10~35であり得る。
【0060】
前記EMM-72材料は、本開示の第1の要旨において規定される少なくとも1つのカチオンを用いて、または本開示の第2の要旨において規定される方法によって、好ましくは調製され得る。
【0061】
本開示の第2の要旨の方法によって得られ得る分子篩(SDAの一部または全部が除去されている)は、吸着剤、あるいは例えば有機化合物の転化生成物への転化などの幅広くさまざまな炭化水素転化における触媒または触媒支持体として使用され得る。
【0062】
本開示の分子篩材料(SDAの一部または全部が除去される)は、例えば該材料に対して異なる吸着特性を有する蒸気または液体相にある成分の混合物から少なくとも1つの成分を分離するためなどの、吸着者として使用され得る。よって、少なくとも1つの成分は、該1つの成分を選択的に吸着するように混合物を前記分子篩に接触させることによって、分子篩に対して異なる吸着特性を有する成分の混合物から部分的にまたは実質的に全てが分離され得る。例えば、フィードストックの1つ以上の成分を、フィードストックの残りの成分から選択的に分離するためのプロセスにおいて、フィードストックは、本開示の分子篩を含む吸着剤と、効果的な吸着条件にて接触し得、これにより、吸着された生成物および流出した生成物(effluent product)を形成する。所望の成分の1つ以上が、吸着された生成物または流出した生成物のいずれかから回収される。
【0063】
また、本開示の分子篩(SDAの一部または全部が除去される)は、幅広くさまざまな有機化合物転化プロセスを触媒するための触媒として使用され得る。本明細書に記載される分子篩によって、単独で、または他の結晶性触媒を含む他の1つ以上の触媒活性物質と組み合わされて、効果的に触媒される化学転化プロセスの例には、酸活性を有する触媒を必要とするものが含まれる。本明細書に記載される分子篩によって触媒され得る有機転化プロセスの例には、(熱)分解、水素化分解、異性化、重合化、改質、水素化、脱水素化、脱ろう、水素化脱ろう、吸着、アルキル化、トランスアルキル化、脱アルキル化、水素化脱シリゼーション(hydrodecylization)、不均化、オリゴマー化、水素化脱環化、メタノールからオレフィンへの転化、脱NOx用途およびそれらの組合せが含まれる。炭化水素フィードの転化は、任意の簡便なモードで、例えば、所望のプロセスのタイプに応じて流動床、移動床または固定床反応器などで起こり得る。
【0064】
本開示の分子篩は、他の材料、例えば最終生成物(または製品)に追加の硬度を提供するバインダーおよび/またはマトリックスなどと組み合わされることによって製品組成物に調製され得る。これら他の材料は、不活性材料または触媒活性材料であり得る。
【0065】
例えば、本開示の分子篩を、使用の間に適用される温度および他の条件に耐える他の材料と組み合わせることが望ましいことがある。かかる材料には、合成または天然に生じるゼオライトならびに、例えばクレイ、シリカなどの無機材料、および/または、例えばアルミナなどの金属酸化物およびそれらの混合物が含まれる。金属酸化物は、シリカおおび金属酸化物の混合物を含む、天然に生じるものまたはゼラチン状沈降物またはゲルの形態にあるもののいずれであってもよい。耐性材料(resistant material)を本開示の分子篩と一緒に使用すること、すなわち、一緒に組み合わされること、または結晶が活性である作製状態の分子篩の合成の間に存在することは、ある有機転化プロセスにおける触媒の転化および/または選択性を変える傾向にある。不活性の耐性材料は、所与のプロセスにおいて転化の量を制御するための希釈剤として好ましく機能し、よって、反応率を制御するための他の手段を適用することなく、経済的および規則的な方法で、生成物を得ることができる。これらの材料は、商業的な操作条件での生成物の破壊強度を向上させるために、天然産のクレイ、例えばベントナイトおよびカオリンなどに組み込まれ得る。前記不活性耐性材料、すなわちクレイ、酸化物などは、触媒に対してバインダーとして機能する。良好な破壊強度を有する触媒は、商業的使用において触媒が粉末状材料に崩壊するのを避けるために望ましいので、好都合であり得る。
【0066】
使用され得る天然産クレイには、モンモリロナイトおよびカオリン族が含まれ、この族には、サブベントナイトが含まれ、ならびにカオリンは、ディキシー、マクナミー(McNamee)、ジョージアおよびフロリダクレイまたは、主なミネラル構成成分が、ハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライトもしくはアナウキサイト(anauxite)である他のものとして一般的に知られている。かかるクレイは、採掘されたままの生の状態で、または焼成、酸処理もしくは化学修飾に付された後に使用され得る。また、本開示の分子篩とコンポジット(または混合)されるのに有用なバインダーには、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、べリリア、アルミナ、イットリア、酸化ガリウム、酸化亜鉛およびそれらの混合物が含まれる。
【0067】
上述の材料に加えて、本開示の分子篩は、例えばシリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニアなどの、ならびに例えばシリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア、およびシリカ-マグネシア-ジルコニアなどの3元組成物などの多孔性マトリクス材料とコンポジットされ得る。
【0068】
これらバインダー材料は、さまざまな炭化水素分離プロセスにおいて起こる温度および例えば機械的摩耗などの他の条件に耐える。よって、本開示の分子篩は、バインダーとの押出物の形態で使用され得る。これらは、典型的には錠剤(pill)、球または押出物を形成することによって結合される。押出物は、通常、分子篩を、オプションとしてバインダーの存在下で押し出して、得られる押出物を乾燥および焼成することによって形成される。例えばスチームおよび/またはイオン交換などの更なる処理が、必要に応じて実施され得る。分子篩は、オプションとして、少なくとも100m/g、例えば少なくとも200m/g、オプションとして少なくとも300m/gの表面積を有するバインダーと結合され得る。
【0069】
分子篩および無機酸化物マトリックスの相対割合は、幅広くさまざまであり得、分子篩含量は、コンポジットの約1~約100重量%の範囲にあり、より一般的には、特にコンポジットが押出物の形態で調製される場合には、約2~約95重量%、オプションとして約20~約90重量%の範囲にある。
【0070】
本開示の分子篩は、例えばタングステン、バナジウム、モリブデン、レニウム、ニッケル、コバルト、クロム、マンガンなどの水素化する成分(hydrogenating component)、または例えばプラチナもしくはパラジウムなどの水素化-脱水素化機能が実施される貴金属と緊密に組み合わされて使用され得る。かかる水素化する成分は、以下のプロセスの1つ以上によって組成物中に組み込まれ得る:共結晶化;IIIA属元素(例えばアルミニウム)が構造中に存在する程度での組成物中への交換;または物理的に緊密に一緒に混合すること。かかる成分は、例えば水素化する金属を含有するイオンで分子篩を処理することによって、分子篩中またはその上に含浸され得る。例えばプラチナの場合、この目的に適切なプラチナ化合物には、塩化白金酸、塩化第一白金、およびプラチナアミン錯体を含有するさまざまな化合物が含まれる。金属およびその導入のための方法の組み合わせも使用され得る。
【0071】
当業者には理解されるように、本開示の分子篩は、不純物、例えばアモルファス材料、異なるトポロジーを有するユニットセル(例えば、得られる触媒の性能に影響を及ぼすまたは及ぼさないものであり得る、異なるフレームワークタイプのクォーツまたは分子篩)、および/または他の不純物(例えば重金属および/または有機炭化水素)を含有し得る。本開示の分子篩と共存する異なるフレームワークタイプの分子篩の典型的な例は、例えば、MTWフレームワークタイプの分子篩である。本開示の分子篩は、好ましくは不純物を実質的に含まない(または実質的に不純物フリーである)。本明細書で使用される用語「不純物を実質的に含まない(または実質的に不純物フリーである)」(あるいは「実質的に純粋である」)とは、分子篩材料が、より少ない割合(50重量%未満)、好ましくは20重量%未満、より好ましくは10重量%未満、更により好ましくは5重量%未満、および最も好ましくは1重量%未満(例えば0.5重量%または0.1重量%未満)のかかる不純物(または「非SFN」フレームワークタイプ)を含有することを意味する(ここで、重量%の値は、不純物および純粋な分子篩の合計重量に基づく)。不純物の量は、粉末XRD、回転電子回折(rotating electron diffraction)、および/またはSEM/TEM(例えば異なる結晶モルフォロジー)によって適切に決定され得る。
【0072】
本明細書に記載される分子篩は、実質的に結晶性である。本明細書で使用される場合、用語「結晶性」は、材料の結晶性固体形態を言うものであり、これには、例えば溶媒和物、水和物、および共結晶を含む単一成分または複数成分の結晶形態が含まれるが、これらに限定されない。結晶性は、分子の規則的な繰り返しおよび/または規則的な配置を有し、認識可能な結晶格子を有することを意味し得る。例えば、分子篩は、異なる水または溶媒含量を有し得る。異なる結晶性格子は、固体状態特徴決定方法によって、例えばXRD(例えば粉末XRD)によって、同定され得る。当該技術分野におおける当業者に知られている他の特徴決定方法は、さらに、結晶形態の同定に役立ち、ならびに安定性および溶媒/水含量を決定するのに役立ち得る。本明細書にて使用される場合、用語「実質的に結晶性」は、記述される材料のサンプルの重量の大部分(50重量%超)が結晶性であり、サンプルの残りが非結晶性形態であることを意味する。1つ以上の要旨において、実質的に結晶性のサンプルは、少なくとも95%結晶化度(例えば5%の非結晶性形態)、少なくとも96%結晶化度(例えば4%の非結晶性形態)、少なくとも97%結晶化度(例えば3%非結晶化形態)、少なくとも98%結晶化度(例えば2%非結晶性形態)、少なくとも99%結晶化度(例えば1%非結晶化形態)、および100%結晶化度(例えば0%の非結晶化形態)を有する。
【0073】
本開示の要旨を具体的な実施例によってより詳細に説明する。以下の実施例は、例示の目的で提供するものであり、本開示をいかなる様式によっても限定することを意図したものでない。さまざまなパラメータが本質的に同じ結果を得るために変更または改変され得ることが当業者に容易に認識されるであろう。
【実施例
【0074】
本発明が、その範囲を限定することなく以下に更に説明される。
【0075】
これらの実施例において、合成状態(as-synthesized)および焼成状態(as-calcinated)の材料のX線回折(XRD)パターンを、X線粉末回折測定器(Bruker DaVinci D8 Discovery instrument)にて、連続モードで、CuKα放射を用いて、Bragg-Bentanoジオメトリ、Vantec 500検出器で、2~50度の2θ範囲にて記録した。面間隔(d間隔)をオングストローム単位で計算し、ラインの相対強度(I/I)は、バックグランドの上方で最も強いラインの強度のピーク強度に対するピーク強度の比である。強度は、Lorentzおよび偏光効果について較正されていない。2θにおける回折ピークの位置、およびバックグラウンドより上のラインの相対ピーク面積強度I/I(Iは最も強いラインの強度である)は、MDIジェイド(Jade)ピークサーチアルゴリズムで決定した。単一ラインとしてリスト化されている回折データは、ある条件下では複数の重なったラインから成り得、例えば結晶学的変化における相違は、分解した(resolved)または部分的に分解したラインとして現れる。典型的には、結晶学的変化は、ユニットセルパラメータにおけるわずかな変化および/または結晶対称性における変化(フレームワーク接続性における変化なしでの)を含み得る。また、これらのわずかな効果(相対強度における変化を含む)は、カチオン含量、フレームワーク組成、細孔充填の特性および程度、結晶のサイズおよび形状、好ましい配向、ならびに熱的および/または熱水的履歴における相違の結果として生じ得る。
【0076】
合成状態の材料の走査型電子顕微鏡(SEM)像を、Hitachi 4800走査型電子顕微鏡を用いて得た。SEM像を用いて生成物純度の評価に役立てた。SEM像において明らかに異なる結晶モルフォロジーの存在は、他の結晶性材料の形態にある不純物を示し得る。かかるおおよその分析は、生成物XRDパターンでは同定し得ない相対的に少量の結晶性不純物の形成を同定するのに特に有用であり得る。
【0077】
イオン交換され、および焼成されたサンプルについて以下の測定を実施した。イオン交換および焼成に付した各サンプルについて、使用した手順は次の通りである:調製状態(as-prepared)のサンプルを1M硝酸アンモニウム溶液で2回洗浄し、その後500℃で16時間焼成した。
【0078】
材料の全(overall)BET表面積(SBET)を、S. Brunauerら、(1938)「Adsorption of Gases in Multimolecular Layers」、J. Am. Chem. Soc.、v.60、pp. 309-319(参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載されるBET方法によって、液体窒素温度にて窒素吸着-脱着を用いて決定した。材料の外表面積(Sext)をt-プロット法から得、材料のマイクロ細孔表面積(Smicro)を、全BET表面積(SBET)から外表面積(Sext)を差し引くことによって計算した。
【0079】
材料のマイクロ細孔容積(Vmicro)を、関連する技術分野において既知の方法を用いて決定し得る。例えば、材料のマイクロ細孔容積は、窒素物理吸着で測定でき、データは、Lippens, B.C.ら、(1965)「Studies on pore system in catalysts: V. The t method」、J. Catal.、v.4、pg. 319(マイクロ細孔容積方法を記載し、参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載されるt-プロット法によって分析され得る。
【0080】
実施例2~11のモル比および合成に使用した条件、ならびに得られた生成物は、下記に詳細に示し、表3にまとめられる。
実施例1a:1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムヒドロキシド(SDA-1)の合成
【0081】
30gの2,5-ジメチルベンゾイミダゾール、116gのヨードメタンおよび42gの炭酸カリウムを、磁気撹拌棒を備える500mL丸底フラスコ内の300mLのアセトニトリルに添加した。次いで、懸濁物を18時間還流し、その後、室温に冷却した。その後、溶液をブフナー漏斗でろ過し、ろ過溶液をロータリーエバポレーター(rotovap)で濃縮した。濃縮溶液にジクロロメタンを添加して、残存するカリウム塩を除去した。ジクロロメタン中のろ液をロータリーエバポレーターで濃縮し、真空下にて乾燥させて、1,2,3,5-テトラメチル-1H-ベンゾイミダゾリウムアイオダイドを得た。
【0082】
1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムのアイオダイド(またはヨウ化物)塩を、その後、イオン交換樹脂Amberlite(登録商標)IRN78 OHヒドロキシド形態で、ヨウ化物:樹脂:水重量比がその水酸化物形態に対して1:3.5:5で、イオン交換した。交換は室温で一晩実施した。
実施例1b:1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムヒドロキシド(SDA-2)の合成
【0083】
275mLのメタノール中にて30gの3,4-ジメチルベンゼン-1,2-ジアミン、31.8gのオルトギ酸トリメチルおよび1.07gのスルファミン酸を室温で撹拌した。反応を薄層クロマトグラフィーでモニターし、3時間で完了したことが開始物質3,4-ジメチルベンゼン-1,2-ジアミンの消滅および単一の低いスポットの形成によって確認された。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、反応含有物をエチルアセテート(300mL)と水(300mL)との間に配置した。有機層を硫化マグネシウムで乾燥させて、ろ過し、ロータリーエバポレーターに付して、24.3g(69%)の2,4,5-トリメチルベンゾイミダゾールを得た。
【0084】
230mLのアセトニトリル(CHCN)中の24.3gの2,4,5-トリメチルベンゾイミダゾールと31.4gの炭酸カリウムの上部撹拌溶液に、53.8gのヨードメタンを添加した。反応物を80℃に加熱した。4時間後、薄層クロマトグラフィーは、開始物質2,4,5-トリメチルベンゾイミダゾールの存在を依然として示し、よって、追加の40gのヨードメタンを添加して加熱を継続した。薄層クロマトグラフィーによる追加2時間の加熱後の開始物質の消滅および青色ベースラインスポットの出現(10%メタノール/ジクロロメタン)は、生成物の形成を示していた。アセトニトリルをロータリーエバポレーターで除去し、得られた固形物をエチルアセテートで粉砕し、ろ過して、約16.3gの1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムアイオダイドを得た。
【0085】
1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムのアイオダイド(またはヨウ化物)塩を、その後、イオン交換樹脂Amberlite(登録商標)IRN78 OHヒドロキシド形態で、ヨウ化物:樹脂:水重量比がその水酸化物形態に対して1:3.5:5で、イオン交換した。交換は室温で一晩実施した。
実施例2:SDA-1、USYゼオライト、Si/Al=15
【0086】
PTFEライナーを有する23mLスチール製Parr社オートクレーブにて、次のものを一緒に混合した:8.79gのSDA-1溶液(9重量%)およびSi/Alモル比が15の0.72gの超安定YU(USY)ゼオライト(ZeolystからCBV720として入手可能)。そして、混合物を50℃で、3.4gの水が消失するまで撹拌し、モル比の観点から以下の組成を有する合成混合物を生成した。
25HO:1SiO:0.033Al:0.4QOH
【0087】
その後、ライナーを蓋して、23mLParr社オートクレーブ内で封止して、対流オーブンの滴下内部(spit inside)内に配置した。反応器をタンブル条件下(約30rpm)にて160℃で3週間加熱した。生成物をろ過により分離し、脱イオン水で濯いで乾燥させた。合成状態の材料を、その後、ボックス加熱炉内で3℃/分の昇温レートにて空気中で580℃まで焼成した。温度を580℃で8時間維持し、その後、ボックス加熱炉を冷却した。
【0088】
合成状態の生成物および焼成した生成物のXRD分析は、材料が、それぞれ合成状態および焼成したSSZ-59ゼオライトと、度2θおよびd間隔の点で同様の粉末XRDパターンを有するが、異なる相対強度(米国特許第6,464,956号の表I/IAおよび表II/IIAに例示されるようなもの、この文献は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)を有することを示した。この新しい生成物は、EMM-72であると同定された。
【0089】
図1および図2は、実施例2のそれぞれ合成状態のおよび焼成された生成物の粉末XRDパターンを示す。下記の表4および表5は、実施例2の合成状態のおよび焼成されたEMM-72についてのピークおよび強度のリストを示す。図3は、実施例2の合成状態の生成物のSEM像を示す。
【0090】
実施例2の焼成されたEMM-72生成物のマイクロ細孔表面積(Smicro)は516m/gであり、外表面積(Sext)は91m/gであり、マイクロ細孔容積(Vmicro)は0.17cc/gであった。
実施例3:SDA-1、USYゼオライト、Si/Al=15
【0091】
この実施例は、合成混合物が水を10のHO/Siモル比で含有していたこと以外は、実施例2と同様の条件で実施した。
【0092】
160℃での加熱3週間後、純粋なEMM-72生成物が得られ、このことは、そのXRDパターンから同定された。
実施例4:SDA-1、USYゼオライト、Si/Al=15、NaOH
【0093】
この実施例は、合成混合物がより少量のSDA-1およびいくらかの水酸化ナトリウム(NaOH、4重量%)を含んでいたこと以外は、実施例2と同様の条件で実施し、モル比の観点から以下の組成を有する合成混合物を得た。
25HO:1SiO:0.033Al:0.2QOH:0.07NaOH
【0094】
160℃での加熱3週間後、純粋なEMM-72生成物が得られ、このことは、そのXRDパターンから同定された。
実施例5:SDA-1、USYゼオライト、Si/Al=22.5
【0095】
この実施例は、15および30のSi/Alモル比をそれぞれ有する超安定Y(USY)ゼオライト(ZeolystからそれぞれCBV720およびCBV760として入手可能)の混合物から開始し、22.5の全体Si/Alモル比を得たこと以外は、実施例2と同様の方法で実施した。モル比の観点から以下の組成を有する合成混合物を得た。
10HO:1SiO:0.022Al:0.3QOH
【0096】
170℃での加熱5日間後、純粋なEMM-72生成物が得られ、このことは、そのXRDパターンから同定された。
実施例6:SDA-1、コロイド状シリカ、水酸化アルミニウム、Si/Al=25
【0097】
この実施例は、Ludox HS40(40重量%コロイド状シリカ懸濁物)をSi源として使用し、水酸化アルミニウム(Al(OH)、54重量%)をAl源として使用したこと以外は、実施例2と同様の方法で実施した。モル比の観点から以下の組成を有する合成混合物を得た。
50HO:1SiO:0.02Al:0.4QOH
【0098】
160℃での加熱4週間後、純粋なEMM-72生成物が得られ、このことは、そのXRDパターンから同定された。
実施例7:SDA-1、コロイド状シリカ、水酸化アルミニウム、Si/Al=25、NaOH
【0099】
この実施例は、Ludox LS30(30重量%コロイド状シリカ懸濁物)をSi源として使用したこと、および合成混合物がより少量の水およびSDA-1といくらかの水酸化ナトリウム(NaOH、4重量%)とを含んでいたこと以外は、実施例6と同様の条件で実施した。モル比の観点から以下の組成を有する合成混合物を生成した。
45HO:1SiO:0.02Al:0.2QOH:0.15NaOH
【0100】
160℃での加熱4週間後、少量のMTW相を有するEMM-72生成物が得られ、このことは、そのXRDパターンから同定された。
実施例8:SDA-1、コロイド状シリカ、アルミン酸ナトリウム、Si/Al=33、NaOH
【0101】
この実施例は、Ludox HS40(40重量%コロイド状シリカ懸濁物)をSi源として使用し、アルミン酸ナトリウム(NaAlO、25重量%Al、19.3重量%NaO)をAl源として使用したこと以外は、実施例2と同様の方法で実施した。モル比の観点から以下の組成を有する合成混合物を得た。
28HO:1SiO:0.015Al:0.2QOH:0.07NaOH
【0102】
160℃での加熱2週間後、純粋なEMM-72生成物が得られ、このことは、そのXRDパターンから同定された。図4は、実施例8の合成状態の生成物のSEM像を示す。
実施例9:SDA-1、フュームドシリカ、USYゼオライト、Si/Al=15
【0103】
この実施例は、ヒュームドシリカ(CabotからCab-O-Sil(登録商標)M5として入手可能)および2.6のSi/Al比を有する超安定Y(USY)ゼオライト(ZeolystからCBV500として入手可能)をSi源およびAl源として、水酸化ナトリウム(NaOH、4重量%)の存在下にて使用したこと以外は、実施例2と同様の方法で実施した。モル比の観点から以下の組成を有する合成混合物を得た。
25HO:1SiO:0.033Al:0.15QOH:0.1NaOH
【0104】
160℃での加熱2週間後、少量のMTW相を有するEMM-72生成物が得られ、このことは、そのXRDパターンから同定された。
実施例10:SDA-1、コロイド状シリカ、ホウ酸、Si/B=10
【0105】
この実施例は、Ludox HS40(40重量%コロイド状シリカ懸濁物)をSi源として使用し、ホウ酸(HBO、3.9重量%)をB源として使用したこと以外は、実施例2と同様の方法で実施した。モル比の観点から以下の組成を有する合成混合物を得た。
10HO:1SiO:0.05B:0.4QOH
【0106】
160℃での加熱2週間後、純粋なEMM-72生成物が得られ、このことは、そのXRDパターンから同定された。
実施例11:SDA-2、TEOS、水酸化アルミニウム、Si/Al=20、HF
【0107】
1.24gのテトラエチルオルトシリケート(TEOS、>99重量%)および0.028gのAl(OH)(Sigma、54重量%)を、15.7gのSDA-2(3.9重量%溶液)中で加水分解して、エタノールおよび水(合計15g)を除去した。その後、0.12gのHF(48重量%溶液)を混合物に添加して、モル比の観点から以下の組成を有する合成混合物を得た。
10HO:1SiO:0.025Al:0.5QOH:0.5HF
【0108】
合成混合物をテフロン容器内にて手で均質化し、テフロンライナーを有する23mLステンレス鋼オートクレーブ(Parr社)に移した。160℃での加熱2週間後(対流オーブン、回転約40rpm)、少量の石英(またはクォーツ)を有するEMM-72生成物が得られ、このことは、そのXRDパターンから同定された。
【0109】
【表5】
【0110】
【表6】
【0111】
【表7】
【0112】
本発明を特定の態様を参照しつつ詳述および例示してきたが、本発明は、本明細書に例示されていない多くの異なる変更、改変およびバリエーションに付されることが当業者に理解されるであろう。また、数値下限および数値上限が本明細書に列挙される場合、任意の下限から任意の上限までの範囲が意図されることが当業者には明白であろう。また、本明細書の詳細な説明における全ての数値は、指定された数値が「約」で修飾され、当業者に予測されるであろう実験誤差およびバリエーションが考慮される。
【0113】
上述の説明において整数または要素が既知、明らか、または予測できる均等物であると述べられているとき、かかる均等物は、個々に述べられているものとして本明細書に組み込まれる。本発明の真の範囲を決定するために特許請求の範囲が参照されるべきであり、これは、いずれの均等物をも包含するものとして解釈されるべきである。また、好ましい、好都合、簡便などと説明されている整数および本発明の特徴は、オプションであり、独立請求項の範囲を限定するものでないことが、読者によって理解されるであろう。更に、かかるオプションの整数または特徴は、本発明のいくつかの態様におけるあり得る利点を有するが、他の態様においては望ましくないことがあり得、およびよって、存在しないことがあり得る。
【0114】
加えて、またはあるいは、本発明は以下に関する:
【0115】
態様1:分子篩の調製用の構造指向剤(Q)としての、式Iの1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIの1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンおよび式IIIの1,2,3,4,6-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンから選択される少なくとも1つのカチオンの使用。
【化5】
【0116】
態様2:前記構造指向剤(Q)が、ハロゲン化物、水酸化物または硝酸塩の形態であり、好ましくは、前記構造指向剤(Q)が、水酸化物の形態である、態様1に記載の使用。
【0117】
態様3:前記分子篩が、アルミノシリケート分子篩またはボロシリケート分子篩であり、特にアルミノシリケート分子篩である、態様1または2に記載の使用。
【0118】
態様4:前記分子篩が、超大細孔分子篩、好ましくは14員環分子篩であり、より好ましくは前記分子篩が、SFNフレームワークタイプを有し、最も好ましくは前記分子篩がEMM-72である、態様1~3のいずれか一つに記載の使用。
【0119】
態様5:分子篩を製造する方法であって、
(a)水、4価元素(Y)の酸化物源、3価元素(X)の酸化物源、構造指向剤(Q)、水酸化物イオン(OH)源、ならびにオプションとしてアルカリおよび/またはアルカリ土類金属(M)源を含む合成混合物を準備することであって、
前記構造指向剤(Q)が、式Iの1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIの1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIIの1,2,3,4,6-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンおよびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのカチオンを含むこと、
【化6】
(b)前記合成混合物を、前記分子篩の結晶を形成するのに十分な時間で、100~200℃の温度を含む結晶化条件下にて加熱すること、
(c)前記工程(b)から前記分子篩の少なくとも一部を回収すること
を含む、方法。
【0120】
態様6:前記構造指向剤(Q)が、ハロゲン化物、水酸化物または硝酸塩の形態であり、好ましくは、前記構造指向剤(Q)が、水酸化物の形態である、態様5に記載の方法。
【0121】
態様7:前記4価元素(Y)が、シリコン、ゲルマニウムおよびそれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは前記4価元素(Y)が、シリコンを含み、より好ましくは前記4価元素(Y)が、シリコンである、態様5または6に記載の方法。
【0122】
態様8:前記3価元素(X)が、アルミニウム、ホウ素、鉄、ガリウムおよびそれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは前記3価元素(X)が、アルミニウムおよび/またはホウ素を含み、より好ましくは前記3価元素(X)が、アルミニウムおよび/またはホウ素であり、特にアルミニウムである、態様5~7のいずれか一つに記載の方法。
【0123】
態様9:前記合成混合物が、モル比の観点において以下の組成を有する、態様5~8のいずれか一つに記載の方法。
【表8】
【0124】
態様10:工程(c)にて回収された前記分子篩を、前記構造指向剤(Q)の少なくとも一部を除去するように処理することを更に含む、態様5~9のいずれか一つに記載の方法。
【0125】
態様11:前記分子篩が、ボロシリケートであり、前記方法が、フレームワークシリケート中に存在するホウ素原子の少なくとも一部をアルミニウム原子で置換することを更に含む、態様5~10のいずれか一つに記載の方法。
【0126】
態様12:式Iの1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIの1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンおよび式IIIの1,2,3,4,6-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンから選択される少なくとも1つのカチオンを細孔構造中に有する、分子篩。
【化7】
【0127】
態様13:態様5~11のいずれか一つに記載の方法によって得ることができる、態様12に記載の分子篩。
【0128】
態様14:前記分子篩が、アルミノシリケート分子篩またはボロシリケート分子篩であり、特にアルミノシリケートである、態様12または13に記載の分子篩。
【0129】
態様15:前記分子篩が、超大細孔分子篩、好ましくは14員環分子篩であり、より好ましくは前記分子篩が、SFNフレームワークタイプを有し、最も好ましくは前記分子篩がEMM-72である、態様12~14のいずれか一つに記載の分子篩。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-10-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子篩の調製用の構造指向剤(Q)としての、式Iの1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIの1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンおよび式IIIの1,2,3,4,6-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンから選択される少なくとも1つのカチオンの使用。
【化1】
【請求項2】
前記構造指向剤(Q)が、ハロゲン化物、水酸化物または硝酸塩の形態であ、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記分子篩が、アルミノシリケート分子篩またはボロシリケート分子篩である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記分子篩が、14員環分子篩であ、請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
前記分子篩が、SFNフレームワークタイプを有する、請求項1または2に記載の使用。
【請求項6】
前記分子篩が、EMM-72である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項7】
分子篩を製造する方法であって、
(a)水、4価元素(Y)の酸化物源、3価元素(X)の酸化物源、構造指向剤(Q)、水酸化物イオン(OH)源、ならびにオプションとしてアルカリおよび/またはアルカリ土類金属(M)源を含む合成混合物を準備することであって、
前記構造指向剤(Q)が、式Iの1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIの1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIIの1,2,3,4,6-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンおよびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのカチオンを含むこと、
【化2】
(b)前記合成混合物を、前記分子篩の結晶を形成するのに十分な時間で、100~200℃の温度を含む結晶化条件下にて加熱すること、
(c)前記工程(b)から前記分子篩の少なくとも一部を回収すること
を含む、方法。
【請求項8】
前記構造指向剤(Q)が、ハロゲン化物、水酸化物または硝酸塩の形態であ、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記4価元素(Y)が、シリコン、ゲルマニウムおよびそれらの混合物からなる群より選択され、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記4価元素(Y)が、シリコンを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記3価元素(X)が、アルミニウム、ホウ素、鉄、ガリウムおよびそれらの混合物からなる群より選択され、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記3価元素(X)が、アルミニウムおよび/またはホウ素を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記合成混合物が、モル比の観点において以下の組成を有する、請求項に記載の方法。
【表1】
【請求項14】
前記合成混合物が、モル比の観点において以下の組成を有する、請求項13に記載の方法。
【表2】
【請求項15】
前記合成混合物が、モル比の観点において以下の組成を有する、請求項14に記載の方法。
【表3】
【請求項16】
工程(c)にて回収された前記分子篩を、前記構造指向剤(Q)の少なくとも一部を除去するように処理することを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項17】
前記分子篩が、ボロシリケートであり、前記方法が、フレームワークシリケート中に存在するホウ素原子の少なくとも一部をアルミニウム原子で置換することを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項18】
式Iの1,2,3,5-テトラメチルベンゾイミダゾリウムカチオン、式IIの1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンおよび式IIIの1,2,3,4,6-ペンタメチルベンゾイミダゾリウムカチオンから選択される少なくとも1つのカチオンを細孔構造中に有する、分子篩。
【化3】
【請求項19】
請求項7~17のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、請求項18に記載の分子篩。
【請求項20】
前記分子篩が、アルミノシリケート分子篩またはボロシリケート分子篩である、請求項18に記載の分子篩。
【請求項21】
前記分子篩が、14員環分子篩であ、請求項18に記載の分子篩。
【請求項22】
前記分子篩が、SFNフレームワークタイプを有する、請求項18に記載の分子篩。
【請求項23】
前記分子篩が、EMM-72である、請求項18に記載の分子篩。
【国際調査報告】