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特表2025-506195水素を固体形態で貯蔵するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-07
(54)【発明の名称】水素を固体形態で貯蔵するための装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 11/00 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
F17C11/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547759
(86)(22)【出願日】2023-02-03
(85)【翻訳文提出日】2024-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2023052686
(87)【国際公開番号】W WO2023152046
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】2201193
(32)【優先日】2022-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524300875
【氏名又は名称】ミンカテック・エネルギー
【氏名又は名称原語表記】MINCATEC ENERGY
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ブートリュー,エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】マナイ,サクレディーン
(72)【発明者】
【氏名】ジェンニナスカ,ヤン
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA09
3E172AB01
3E172BA04
3E172BB04
3E172BB12
3E172BB18
3E172CA10
3E172CA31
3E172DA90
3E172EA02
3E172EB02
3E172FA01
(57)【要約】
本発明は、コンパクトで、モジュール式で、安全であり、エネルギー効率の良い水素貯蔵庫の製造を可能にする水素貯蔵ペレットに関する。本発明のペレットは、圧縮された粉末の形態の金属水素化物(5)のウェハを取り囲む、所定の高さの膨張天然黒鉛(ENG)の外径を有する周囲リング(4)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素貯蔵タンク(10)に組み込まれるように意図された固体形態で水素を貯蔵するためのペレット(1)であって、
圧縮された粉末の形態の金属水素化物(5)のウェハを取り囲む、所与の高さ(H4)の膨張天然黒鉛(ENG)で作られた所与の外径(D4)の周囲リング(4)を備える、ことを特徴とするペレット(1)。
【請求項2】
前記周囲ENGリングが、前記周囲リングの前記高さ(H4)よりも低い高さ(H4a)を有する環状ENGシートの軸方向の積み重ねによって形成される、請求項1に記載のペレット。
【請求項3】
前記環状ENGシートが、10分の数ミリメートルのオーダーの高さ、好ましくは10分の1ミリメートルと10分の5ミリメートルとの間の高さを有する、請求項2に記載のペレット。
【請求項4】
水素を固体形態で貯蔵するためのタンク(10)であって、
- 長手方向軸(X-X)に沿って延在し、第1の端部(11a)で閉鎖され、第2の端部(11c)で開放され、熱伝導性の外側半径方向壁(11b)によって画定され、所与の直径(D2)の熱伝導性材料で作られた剛性ディスク(2、2a)と請求項1から3のいずれか一項に記載のペレット(1)とを交互に配置する積み重ね(1a)を備える中空円筒容器(11)であって、
各ペレットが2つの剛性ディスク(2、2a)の間に介在し、各剛性ディスク(2、2a)が穴(3)によって貫通され、軸方向通路を形成するように、各金属水素化物ウェハ(5)が前記ディスク内の前記穴(3)に面する穴(5a)によって貫通される中空円筒容器(11)と、
- 前記中空円筒容器(11)の前記第2の端部(11c)を可逆的にシールするための取り外し可能なカバー(12)であって、水素入口/出口オリフィスを備える取り外し可能なカバー(12)と、
を備えるタンク。
【請求項5】
前記剛性ディスク(2)及び前記ペレット(1)の前記水素化物ウェハ(5)における前記穴(3、5a)を通って前記中空円筒容器に沿って軸方向に延在し、前記取り外し可能な可逆的にシールするカバーにおける前記オリフィスとシールされて流体連通する受動水素拡散チューブ(13)をさらに備える、請求項4に記載のタンク(10)。
【請求項6】
前記受動水素拡散チューブ(13)が、水素に対して透過性の材料で作られる、請求項5に記載のタンク(10)。
【請求項7】
前記水素入口/出口オリフィスが、開閉弁(14)と流体的に接続する、請求項4に記載のタンク(10)。
【請求項8】
前記中空円筒容器(11)が、前記積み重ねの最後の剛性ディスク(2a)と前記取り外し可能な可逆的にシールするカバー(12)との間に、前記ペレット(1、1a)の積み重ねのための自由な軸方向の膨張空間(16)を備える、請求項4から7のいずれか一項に記載のタンク(10)。
【請求項9】
前記容器の前記長手方向軸(X-X)が重力に対して水平である伸長位置において使用されるように成形され、前記タンク(10)が、前記積み重ねの前記最後の剛性ディスク(2a)と前記取り外し可能な可逆的にシールするカバー(12)との間に圧縮ばねをさらに備える、請求項8に記載のタンク(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、低圧の金属水素化物の形態で水素を貯蔵するためのコンパクトでモジュール式のタンクを製造するための、固体形態で水素を貯蔵するための装置に関する。
【0002】
水素は、多くの産業分野において、特に燃料又は試薬として使用される。これに関連して、ガス状の状態でのその体積及び空気中での爆発性を考慮すると、限られた空間を占有し、安全な封じ込めを確実にする形態で貯蔵されることが水素には望ましい。
【0003】
現在、3つの主要な技術がある。
【0004】
第1は、高い圧力に耐えるように設計され、よって高価であるタンク内で水素ガスを圧縮するように、非常に高い圧力(350バール~700バール)で水素ガスを貯蔵することを含む。このタイプの貯蔵はまた、水素を圧縮し冷却するためにかなりの量のエネルギーを必要とする。従って、この貯蔵方法で水素を使用するときのエネルギーバランスは悪い。
【0005】
第2の技術は、水素を液体の形態で貯蔵することを含む。その場合、タンク内の水素を液化するために、温度を-252.87℃未満に維持する必要がある。このタイプの貯蔵は、水素を液化状態に維持するためにかなりの量のエネルギーを必要とする。
【0006】
第3の技術は、圧縮された金属水素化物粉末の形態で固体媒体中にガス状の水素を貯蔵することを含む。
【0007】
この技術は、より安全な貯蔵条件及び限られたエネルギーコストを提供する。いくつかの金属又は合金は、結晶格子中に水素原子を可逆的に組み込める。水素は、温度及び圧力条件の関数として、これらの材料によって吸収/脱着される。例としては、パラジウム(Pd)、マグネシウム(Mg)、ZrMn2、ZrMn2、Mg2Ni、又はMg-Mg2Ni若しくはアラネートなどの合金が挙げられる。
【0008】
慣例により、ここで使用される「金属水素化物」という用語は、方法のステップに応じて、部分的に又は完全に水素が充填された金属を含む。
【0009】
2つのタイプの金属水素化物、即ち、重水素化物(主にLaNi5、及びフェロチタン合金又はTi-V-Cr合金などの合金)及び軽水素化物(主にマグネシウム及びリチウム)が一般に認識されている。
【0010】
重水素化物では、水素は周囲温度及び圧力で吸収される。反応の発熱は、通常中程度である(35kJ/mol H2以下)。水素は、その後、使用中に周囲温度及び圧力で脱着される。水素を使用するために必要なエネルギー入力は妥当である。
【0011】
逆に、軽水素化物では、軽金属水素化物による水素の吸収は、より高い温度(MgH2に対して約300℃)を必要とする。この反応は非常に発熱性である(75kJ/mol H2)。従って、水素吸収反応を開始するために必要なエネルギー入力は、中程度である。一方、吸収反応は、発生した熱が排出されなければ、自然に停止する。さらに、使用中、水素の脱着はかなりの熱入力を必要とし、反応は吸熱性である。
【0012】
水素化物、特に軽水素化物の使用は、従って、水素の吸収中及び脱着中の両方において、非常に正確な熱管理を必要とする。
【0013】
さらに、使用される水素化物のタイプにかかわらず、吸収/脱着反応は、水素化物の膨張/収縮、即ち、水素の充填/放出中の水素化物の体積膨張/収縮を発生させる。
【0014】
タンクの壁に加えられる機械的応力が前記タンクに亀裂を生じさせ、さらには破裂させ得るので、タンクを製造し、タンクに金属水素化物を充填するとき、体積の変動及び熱変動が考慮されなければならない。
【0015】
最後に、かなりの数のサイクルが完了すると、サイクルが通常の使用と一致しているにもかかわらず、圧縮された金属水素化物媒体は「崩壊(decrepitates)」する、即ち、崩れて、粉末状の状態に戻る傾向があることが指摘されていた。
【0016】
本発明は、製造が容易であり、迅速な水素吸収運動を提供する、安全な固体形態で(即ち、吸収/脱着中の体積の変動に起因する機械的応力下での破裂のリスクなしに)水素を貯蔵するための装置及びタンクを提供することが意図される。
【0017】
米国特許第US6969545号明細書は、固体(水素化物)形態で水素を貯蔵するためのタンクを記載している。このタンクは、単一の入口及び単一の出口を有する単一の大きい体積の水素化物を備え、前記単一の大きい体積は、それ自体がタンクの剛性(非変形性)壁と接触している膨張天然黒鉛(ENG)の層によって取り囲まれている。この層は、熱伝達を可能にし、水素吸収中に圧縮され得る。
【0018】
しかしながら、水素化物の大きい体積は、このタンクを使用可能とするには水素吸収/脱着時間が長すぎることを意味する。
【0019】
フランス国特許出願公開第FR2939784号明細書も、体積の変動を最小限にする水素貯蔵タンクを提供する。これは、熱伝導性マトリックス(ENG、金属フェルト、非酸化物セラミック、及び非酸化物セラミックで被覆された銅発泡体を含む群から選択される)と混合及び圧縮され、可逆的吸収-熱貯蔵システムと組み合わされた軽金属水素化物、特に水素化マグネシウムを使用する水素貯蔵タンクを提案する。
【0020】
圧縮された材料は、80重量%~99重量%の水素化マグネシウム及び20重量%~1重量%のENGを含み得る。
【0021】
タンクは、相変化材料中に浸漬された熱伝導性壁によって画定された少なくとも1つのチューブ状容器を備える。
【0022】
各チューブ状容器は、金属水素化物を含む圧縮された材料と、ENGで作られた熱伝導性マトリックスを形成する粒子との混合物で形成された複数の垂直に積み重ねられた固体ペレットを含む。各ペレットは、水素入口及び出口と流体連通する透過性のチューブを受けるように意図された中心穴を備える。金属板は、各ペレットの間に配置される。
【0023】
ペレットは、ステンレス鋼で作られた各容器の壁を介して外部の相変化材料と熱伝達関係にある。膨張の問題に対処するために、この文献は、ペレットを壁と接触させて保持するための機械的手段を提供することを提案する。
【0024】
この装置は、複雑であり、高価であり、相変化材料の存在のために実施が困難である。
【0025】
さらに、この装置は、垂直に積み重ねられたペレットの使用のために、ペレットの崩壊(decrepitation)中に水素化物粉末がタンクの底部に落下し、特定の動作条件下で爆発を引き起こし得るので、危険であり得る。
【0026】
従って、本発明は、ペレット形態の金属水素化物コンパクトの自然かつ不可避の崩壊から生じるこのリスクを回避することを意図される。
【0027】
従って、本発明は、コンパクトで、モジュール式で、安全であり(即ち、機械的応力下で壁が破裂するリスクがなく、爆発のリスクがない)、向上したエネルギー効率を提供する(即ち、より高い充填速度を有する)水素タンクの設計及び製造を可能にする、低圧金属水素化物の形態で水素を貯蔵するための解決策に関する。
【0028】
この目的のために、本発明は、これらの問題の全てが克服されることを可能にする、特に、水素充填/放出サイクル中のタンクの壁に対する機械的応力を制限し、崩壊に関連する爆発のリスクを制限し、一方で、改善された熱交換の結果として充填速度及び充填容量を加速する、金属水素化物及びENGの特定の配置を提案する。
【0029】
本発明は、より特別には、水素貯蔵タンクに組み込まれることが意図された固体形態で水素を貯蔵するためのペレットであって、圧縮された粉末の形態の金属水素化物のウェハを取り囲む、所与の高さの膨張天然黒鉛(ENG)で作られた所与の外径の周囲リングを備えるペレットに関する。
【0030】
従って、本発明は、金属水素化物とENGとを混合するのではなく、好ましくはシート構造を有するENGで作られたリングで圧縮された金属水素化物ペレットを囲み、熱伝導性材料のプレートを使用してこれらの2つの要素を分離することを提案する。
【0031】
特定の実施形態によれば:
・ 周囲ENGリングは、周囲リングの高さよりも低い高さを有する環状ENGシートの軸方向の積み重ねによって形成され得る、及び/又は
・ 環状ENGシートは、10分の数ミリメートルのオーダーの高さ、好ましくは10分の1ミリメートルと10分の5ミリメートルとの間の高さを有し得る。
【0032】
本発明はまた、水素を固体形態で貯蔵するためのタンクであって、
- 長手方向軸に沿って延在し、第1の端部で閉鎖され、第2の端部で開放され、熱伝導性の外側半径方向壁によって画定され、所与の直径の熱伝導性材料で作られた剛性ディスクと上述のペレットとを交互に配置する積み重ねを備える中空円筒容器であって、
各ペレットが2つの剛性ディスクの間に介在し、各剛性ディスクが穴によって貫通され、軸方向通路を形成するように、各金属水素化物ウェハがディスク内の穴に面する穴によって貫通される中空円筒容器と、
- 中空円筒容器の第2の端部を可逆的にシールするための取り外し可能なカバーであって、水素入口/出口オリフィスを備える取り外し可能なカバーと、
を備えるタンク。
【0033】
特定の実施形態によれば
・ タンクは、剛性ディスク及びペレットの水素化物ウェハにおける穴を通って中空円筒容器に沿って軸方向に延在し、取り外し可能な可逆的にシールするカバーにおけるオリフィスとシールされて流体連通する受動水素拡散チューブをさらに備え得る。
・ 受動水素拡散チューブが、水素に対して透過性の材料で作られ得る。
・ 水素入口/出口オリフィスが、開閉弁と流体的に接続し得る。
・ 中空円筒容器が、積み重ねの最後の剛性ディスクと取り外し可能な可逆的にシールするカバーとの間に、ペレットの積み重ねのための自由な軸方向の膨張空間を備え得る。及び/又は
・ タンクが、容器の長手方向軸が重力に対して水平である伸長位置において使用されるように成形され得、タンクが、積み重ねの最後の剛性ディスクと取り外し可能な可逆的にシールするカバーとの間に圧縮ばねをさらに備える。
【0034】
本発明の他の特徴は、例として提供され、それぞれを示す添付の図面を参照して以下に与えられる詳細な説明に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】アルミニウムディスクが間に挿入された本発明による水素貯蔵ペレットの積み重ねの概略斜視図である;
図2図1の積み重ねの概略断面図である;
図3】本発明による周囲ENGリングを形成するシートの積み重ねの2つのENGシートの概略斜視図である;
図4】本発明によるタンクの概略断面図である;
図5】本発明による複数のペレットを備える図4のタンクの概略断面図である;及び
図6】伸長位置で使用される本発明によるタンクの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1及び図2は、本発明による固体形態で水素を貯蔵するためのペレット1を示す。それは、水素貯蔵タンクに組み込まれることが意図される(図5及び図6参照)。
【0037】
ペレット1は、所与の高さH4の膨張天然黒鉛(ENG)で作られた所与の外径D4の周囲リング4であって、同様に高さH4の圧縮された粉末の形態の金属水素化物5のウェハを取り囲む周囲リング4を備える。圧縮された粉末は、数メートルトンの一軸の力を受けた粉末であり、粉末を結合し、固体の、即ち自立した金属水素化物5のウェハを提供する。
【0038】
直径D4は、ENGリングとタンクの壁との間の密接な接触を確実にするために、ペレット1が組み込まれることが意図されるタンクの内径に等しい。
【0039】
図3は、周囲ENGリング4が、複数の環状ENGシート4a(この図は2つのシートのみを示す)を軸方向に(使用時に軸X-Xに沿って)重ねることによって形成される、特に有利な実施形態を示す。これらのシート4aは、周囲リング4の高さH4よりも低い高さH4aを有する。好ましくは、環状ENGシートは、10分の数ミリメートルのオーダーの高さ、好ましくは10分の1ミリメートルと10分の5ミリメートルとの間の高さを有する。
【0040】
この重ねられたシート構造は、半径方向の応力の吸収、熱伝達、軸方向応力のオフセット、及び経時的な安定性の両方に関して驚くべき効率を提供する。
【0041】
好ましくは、圧縮された粉末の形態の金属水素化物5は、適度な動作条件(適度な圧力、即ち100バール未満、及び100℃未満の温度、好ましくは周囲温度)に対して1.8重量%(kg_H2/kg金属水素化物)までの重量貯蔵容量を有する金属水素化物のAB2族の水素化物である。
【0042】
有利には、本発明によるペレットの構造によって特に良好に機能する金属水素化物は、Ti/Zr/Mn/V/Feをベースとする合金である、Hydralloy C5の名称で市販されている金属水素化物である。粉末は、最初は600μmより小さい粒子の形態である。圧縮後、金属水素化物の見掛け密度(粉末の質量/粉末の見掛け体積)は2.93g/cmである。その絶対密度は6.41g/cmである。
【0043】
本発明によるペレットのこの配置は、水素の充填/放出によって引き起こされる体積圧縮/減圧サイクルが、熱伝達を維持しながら、ENGリングによって特に良好に横方向に吸収され、充填/放出速度が、周囲ENGリングを有さない既知のシステムよりもはるかに速いことを確実にする。
【0044】
本発明によれば、ペレット1は、熱伝導性材料で作られた剛性ディスク2と交互に積み重ねられる。
【0045】
換言すれば、ディスク2は、膨張天然黒鉛(ENG)の周囲リング4と、ディスクが自由に、即ちディスクに固定されることなく載置される金属水素化物ウェハ5とによって互いに離間される。
【0046】
周囲ENGリング4は、金属水素化物ウェハ5を受けるためにディスク2の間に空間を形成するスペーサとして作用する。
【0047】
ディスク2が熱伝達中に膨張し、タンクに応力を加えることなくタンクの壁11bと接触することができるように、ディスク2がタンク内に積み重ねられることが意図されるよう、各ディスク2はタンクの内径よりもわずかに小さい直径D2を有する。
【0048】
各ディスク2は、少なくとも1つの穴3(この場合、単一の中央穴3)によって貫通される。
【0049】
金属水素化物ウェハ5は、積み重ねを通る自由通路を残すように、穴3に対してリング状に配置された穴5aも備える。この自由通路は、水素がペレット1の金属水素化物5へと、及び、金属水素化物5から循環し、穴3及び5aを介して排出されることを可能にする。以下に特定されるように、水素に対して透過性のチューブは、有利には、水素をタンク及び水素貯蔵システムの循環に運ぶように、穴3、5aを通して挿入される。このチューブはまた、水素を濾過すること、即ち、ウェハ5からの金属水素化物粒子がタンクから出る水素を汚染するのを防止することを可能にする。最後に、このチューブはまた、タンク内での積み重ねの製造中に機械的案内の役割を有し、ペレット1及び剛性ディスク2を完全に中心に置くことを可能にする。
【0050】
図2は、非限定的な例としてのみ与えられる寸法の実施形態を示す。図では、比率は考慮されておらず、単に例として与えられる。
【0051】
この図では、ディスク2はアルミニウムで作られ、111.8mmの直径D2、1mmの厚さE2を有する。穴3は、10.2mmの直径D3を有する。
【0052】
周囲ENGリング4は、15mmの高さH4及び5.6mmの幅L4を有する。
【0053】
より一般的には、周囲ENGリング4は、半径(D4/2)の5%~15%に等しい高さH4を有する。
【0054】
有利には、ディスクの直径D2に対する周囲ENGリングの幅L4の比は、3~8の間である。
【0055】
ディスク2の材料は、熱伝達を最適化し、タンクの壁及び金属水素化物ウェハ5と接触する熱の排出を可能にするように選択される。また、それは可能な限り低い密度を有するように選択される。それは、例えば、ステンレス鋼又は銅から選択され得るが、有利には、熱伝導/密度比を最適化するアルミニウムで作られる。例えば、アルミニウムディスクは、約1mmの厚さE2を有する。
【0056】
図4及び図5は、垂直に使用される、本発明による固体形態で水素を貯蔵するためのタンク10を示す。それは、本発明による複数のペレット1を組み込むように成形される。
【0057】
タンク10は、長手方向軸X-Xに沿って延在し、第1の端部11aで閉鎖され、熱伝導性の外側半径方向壁11bによって画定された中空円筒容器11を備える。容器11は、前記容器の内部へのアクセスを可能にする第2の開放端部11cを有する。
【0058】
タンク10はまた、容器の内部へのアクセスを可能にし、その中にペレットを配置するために中空円筒容器11の第2の端部11cを可逆的にシールするための取り外し可能なカバー12であって、水素の貯蔵/取り出しに使用するために容器をシールするための取り外し可能なカバー12を備える。カバー12はまた、開閉弁14と流体的に接続する水素入口/出口オリフィス12aを備える。
【0059】
貯蔵ペレット1と接触する容器の壁11bは、熱の排出を最適化するために可能な限り薄い。もちろん、この壁は、水素の動作圧力及びペレット1からの機械的圧縮に変形することなく耐えることを可能にしなければならない。本発明によるペレットでは、ペレット1からの機械的圧縮は、周囲ENGリングによって吸収されるため、非常に制限される。第2の端部11cにおいて、壁11bは、カバー12の固定を可能にするために有利にはより厚い。
【0060】
好ましくは、タンク10はまた、ディスク2の穴3及びペレットの穴5aを通って、中空円筒容器に沿って軸方向に延在する受動水素拡散チューブ13を備える。チューブ13はまた、取り外し可能な可逆的にシールするカバーのオリフィス12aとシールされて流体的に接続する。
【0061】
チューブ13はまた、アセンブリをセンタリングし、即ち、特に周囲ENGリング4、ディスク2、容器11の壁11b間の接触に関して、その最適な位置決めを確実にすることによって、ペレット1及びディスク2の容器11内への挿入を容易にする。チューブ13はまた、脱着中に残留した金属水素化物粉末の濾過を可能にする。
【0062】
受動水素拡散チューブ13は、金属水素化物5の内部及び外部への水素の吸収/脱着を可能にするように、水素に対して透過性の材料で作られたチューブである。
【0063】
受動水素拡散チューブ13は、容器全体にわたって軸方向に(長手方向軸X-Xに平行に)延在し、タンク10からの、又は、タンク10への水素の循環を防止/許可するために、タンク10の外側の開閉弁14に接続される。有利には、弁14は、手動及び/又は貯蔵システムの中央ユニット(図示せず)によって自動的に制御され得る。
【0064】
好ましくは、中空円筒容器11は、積み重ねの最後のディスク2aと取り外し可能なシール
カバー12との間に、ペレットの積み重ねのための軸方向の膨張空間16を備える。
【0065】
使用時(図4参照)、ペレット1のENGリング4は、タンク10の壁11bと圧縮された金属水素化物5との間に配置される。このようにして、ENGリング4は、タンクの壁11bに及ぼされる機械的応力を吸収することによってタンクの壁11bに及ぼされる機械的応力を低減し、熱を排出するために熱伝導性を改善する。
【0066】
ディスク2は、タンクの壁に向かう熱伝導を可能にするだけでなく、その重量のために、水素の充填/放出によって引き起こされる体積圧縮/減圧サイクル中に金属水素化物5の膨張から生じる応力の一部をENGリング4に向かって半径方向に案内し、周囲ENGリングは即ち、応力をタンクの壁に伝達することなく、金属水素化物5の体積における増加の大部分を吸収する。
【0067】
水素化物ウェハの体積における増加の残りは、前記ウェハの高さのわずかな増加をもたらす。並行して、半径方向の応力の吸収の間、ENGリング4は壁に対して圧縮され、水素化物ウェハの高さと同様にそれ自体の高さH4も増加する。この全ては、剛性ディスク2がENGリング4又は金属水素化物ウェハ5に堅固に接続されていないために可能になる。
【0068】
ペレット1、ディスク2及び膨張空間16のアセンブリは、積み重ねが「呼吸する」ことを可能にし、これは、空間16が、ペレットが軸方向に膨張することを可能にするため、タンクに対して非常に小さい半径方向の応力を発生させ、軸方向の機械的圧縮を発生させない。後者は、動作圧力に適合した水素圧力であって、タンクが機械的リスクなしに容易に耐えることができる水素圧力の増加のみをもたらす。
【0069】
驚くべきことに、ENGリング4への剛性プレート2による機械的応力のこの横方向の案内はまた、周囲ENGリングが備えられていないペレットと比較して、水素の吸収/脱着時間において非常に実質的な改善を伴う。
【0070】
この時間の節約は、図3に示されるように、軸方向に重ねられたシート4aによって形成されたENGリングによって特に向上される。このシートの重ねることは、異方性の熱伝導特性を提供する。伝導率は、軸X-Xに対して垂直な方向において著しく大きい。
【0071】
以下の例に従って寸法決めされたタンクでは、このように150gのガス状の水素を10分未満で貯蔵することが可能である。
【0072】
非限定的な例としてのみ提供される寸法の実施形態では、壁11aは、アルミニウム合金で作られ、ペレット1と接触するように意図された部分において、約5mmの厚さE1aを有し、カバー12を固定するための部分において、約20mmの厚さE1bを有する。アルミニウム合金から作られるカバー12も、約12mmの厚さE12を有する。
【0073】
容器11は、ペレット1のENGリング4の直径D4に実質的に等しい内径D11を有する。
【0074】
「実質的に等しい」とは、ペレットをタンク内に挿入するのに必要な製造クリアランスの範囲内で、直径がD4に等しいことを意味する。
【0075】
ディスク2は、熱伝達中にその膨張を可能にし、タンクの壁11bに著しい応力を加えることなくタンクの壁11bと接触するように、ENGリング4の直径D4よりもわずかに小さい直径D2を有する。
【0076】
例えば、内径D11は112.1mmであり、ENGリングの直径D4は112mmであり、ディスクの直径D2は111.8mmである。
【0077】
容器11は、ペレットの積み重ねの最後のペレット1aと取り外し可能な可逆的にシールするカバー12との間に自由な軸方向の膨張空間16を残すために、ペレット1の積み重ねの高さよりも大きい高さH11を有する。例えば、高さH11は約320mmであり、17mmの全高さを有する17個のペレット1を貯蔵することを可能にし、高さ31mmの膨張空間16を残す。
【0078】
本発明によるタンクは、選択された貯蔵容量、従って、設置されるペレットの数(及び等しい直径における高さ)に応じて、容易に長く又は短くできる。
【0079】
ペレット1及びディスク2の本発明による積み重ねの構造はまた、タンクを特に安全にする。
【0080】
実際に、タンク及びペレットが老化するにつれて、多くの水素充填/放出サイクルの後、金属水素化物ウェハ5は崩壊し、即ち、それらは再び粉状になる傾向がある。
【0081】
周囲ENGリングは、この金属水素化物粉末をディスク間に保持する。この周囲ENGリング4は、非常に少量の粉末だけが重力によってタンクの第1の端部の壁11aに落下し得ることを確実にする。逆に、周囲ENGリングを有さない既知のタンクにおいては、大量の粉末が重力によってタンクの底部に落下し、爆発のリスクをもたらす。
【0082】
図6は、本発明によるペレットの構造によって可能になるさらに安全な実施形態を示す。この実施形態では、タンクは水平位置で使用され、即ち、タンクの長手方向軸X-Xは実質的に水平である。
【0083】
前の実施形態と同様に、ペレット1は、チューブ13の周りにディスク2と交互に配置される。この実施形態では、タンクは、膨張空間16において、積み重ねの最後の剛性ディスク2aと取り外し可能な可逆的にシールするカバー12との間に圧縮ばね17をさらに備える。
【0084】
このばね17は、ペレット1とディスク2とを交互に配置する積み重ねをタンクの第1の端部11aの壁に対して保持し、一方、水素充填/放出サイクル中に軸方向の膨張を可能にする。
【0085】
この実施形態は、特に安全である。実際、周囲ENGリングは、この金属水素化物粉末をディスク間に保持する。それにもかかわらず、粉末がENGリングとディスクとの間を通過する場合、前記粉末は、使用位置において、タンクの底部の壁11dに対して重力によって落下する。
【0086】
この壁11dは壁11aよりもはるかに大きいため、粉体は蓄積できず、垂直位置におけるよりも爆発の危険性がさらに低くなる。
【0087】
本発明によるこの装置は、単純でありながら、水素充填中の金属水素化物の膨張から生じる機械的応力を吸収することができ、水素充填時間及び安全性の点で特に効率的である。この効率的な装填時間は、驚くべきことに、本発明によるペレットの特定の設計に関連しており、剛性プレート2による軸方向の膨張を制限し、周囲ENGリング4によって吸収される横方向(又は半径方向)の膨張を促進する、ペレット1内部の機械的応力の差別的な吸収を可能にする。
【0088】
従って、本発明は、コンパクトで、軽量で(その壁の大部分が薄いため)、モジュール式で、安全であり(即ち、機械的応力下で壁が破裂するリスクがなく、爆発のリスクがない)、向上したエネルギー効率を提供する(即ち、より高い充填速度を有する)水素タンクの設計及び製造を可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】