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特表2025-506203抗HER2/NEU抗体および使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-07
(54)【発明の名称】抗HER2/NEU抗体および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20250228BHJP
   G01N 33/577 20060101ALI20250228BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20250228BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20250228BHJP
   C07K 17/00 20060101ALN20250228BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20250228BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALN20250228BHJP
【FI】
C07K16/30
G01N33/577 B
G01N33/53 D
C12N15/13 ZNA
C07K17/00
C12M1/34 F
C12Q1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547850
(86)(22)【出願日】2023-02-09
(85)【翻訳文提出日】2024-09-05
(86)【国際出願番号】 US2023062260
(87)【国際公開番号】W WO2023154780
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】63/267,755
(32)【優先日】2022-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524301931
【氏名又は名称】マーテル ダイアグノスティック ラボラトリーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MARTELL DIAGNOSTIC LABORATORIES,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】パス、フランクリン
(72)【発明者】
【氏名】ストーズ、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】レングフェルド、ジャスティン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB11
4B029BB15
4B029BB17
4B029CC08
4B029FA12
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR72
4B063QR77
4B063QR84
4B063QS33
4B063QS36
4B063QX02
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA51
4H045EA54
4H045FA74
4H045FA80
(57)【要約】
本明細書では、抗HER2モノクローナル抗体またはその結合フラグメントおよびその使用が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列またはそれと少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号2のアミノ酸配列またはそれと少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む、抗HER2モノクローナル抗体またはその結合フラグメント。
【請求項2】
重鎖及び軽鎖を含む抗HER2モノクローナル抗体またはその結合フラグメントであって、(i)前記重鎖が、配列番号5、6、7のアミノ酸配列、又はそれらに対して少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を有する3つのCDR領域を含み、(ii)前記軽鎖が、配列番号8、9、10のアミノ酸配列、又はそれらに対して少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を有する3つのCDR領域を含む、抗HER2モノクローナル抗体またはその結合フラグメント。
【請求項3】
前記抗体が検出剤にコンジュゲートされている、請求項1または2に記載の抗HER2モノクローナル抗体またはその結合フラグメント。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗HER2抗体および担体を含む組成物。
【請求項5】
検査サンプル中のHER2ポリペプチドまたはそのフラグメントを検出するための方法であって、前記方法は:
a)ポリペプチド/抗体複合体の形成を可能にする条件下で、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗HER2モノクローナル抗体またはその結合フラグメントを検査サンプルと接触させるステップと;
b)a)のポリペプチド/抗体複合体を検出するステップであって、ポリペプチド/抗体複合体の前記検出が、HER2ポリペプチドが前記サンプル中に存在することの指標である、検出するステップと、
を含む方法。
【請求項6】
対象からのサンプル中のHER2ポリペプチドまたはそのフラグメントをモニターする方法であって、前記方法は:
a)ポリペプチド/抗体複合体の形成を可能にする条件下で、請求項1~4のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗HER2モノクローナル抗体またはその結合フラグメントを前記サンプルと接触させるステップと;
b)a)のポリペプチド/抗体複合体を検出するステップであって、ポリペプチド/抗体複合体の前記検出が、HER2ポリペプチドまたはそのフラグメントが前記対象に存在することを示す、検出するステップと;
c)ステップa)およびb)を複数の時点で実施して、前記対象におけるHER2ポリペプチドまたはそのフラグメントを経時的にモニターするステップと、
を含む方法。
【請求項7】
a)のサンプルを、配列番号3のアミノ酸配列もしくは少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、配列番号4のアミノ酸配列もしくは少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)、あるいは重鎖及び軽鎖を含む抗HER2抗体もしくはそのフラグメントであって、(i)前記重鎖が、配列番号11、12、13のアミノ酸配列もしくは少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を有する3つのCDR領域を含み、(ii)前記軽鎖が、配列番号14、15、16のアミノ酸配列もしくは少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を有する3つのCDR領域を含む、抗HER2抗体もしくはそのフラグメント、を含む第2の抗HER2抗体もしくはそのフラグメントと接触させることをさらに含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか一項に記載の方法であって、前記サンプルが、a)において:
i)捕捉抗体またはその結合フラグメント、および
ii)検出抗体またはその結合フラグメント、と接触している方法。
【請求項9】
前記捕捉抗体および検出抗体がHER2に結合する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記捕捉抗体が固定化されている、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記検出抗体が検出剤を含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象が、治療剤で治療されている、請求項6~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記治療剤が、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、ペンブロリズマブ、ペルツズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、またはそれらの組み合わせである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記対象が、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、ペムブロリズマブ、ペルツズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブまたはそれらの組合せで治療されており、前記トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、ペムブロリズマブ、ペルツズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブまたはそれらの組合せが、前記捕捉抗体および/もしくは検出抗体またはそれらの結合フラグメントの結合に干渉しないかまたは中程度にしか干渉しない、請求項6~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記サンプルが、リンパ節または組織吸引物(例えば、乳房)、血清、全血、血漿、尿、唾液、涙、脳脊髄液、正常細胞溶解物からの上清、前新生物細胞溶解物からの上清、新生物細胞溶解物からの上清、および/または組織培養で維持されたがん細胞株からの上清である、請求項5~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
b)の検出が、ラテラルフローアッセイを使用して実施される、請求項5~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗HER2/NEU抗体および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳がんの治療は、例えば、より早期の検出、より良好な外科的技術、種々の新薬、および(例えば、再発を検出するための)新規な画像化方法の結果として、この20年間にわたってかなり改善されてきた。
【0003】
HER2/neuは、ヒト上皮成長因子受容体(HER/EGFR/ERBB)ファミリーのメンバーである。このがん遺伝子の増幅または過剰発現は、特定の侵攻性タイプの乳がんの発生および進行において役割を果たしていることが示されている。このタンパク質は、乳がん患者の約30%に対して、バイオマーカーおよび治療の標的となっている。
【0004】
HER2/neuタンパク質は、膜結合セリンプロテアーゼによってタンパク質分解的に切断されて細胞外ドメインを放出し、次いでこれを体液中で検出および測定することができる。血液についてのHER2/neuインビトロ診断(IVD)イムノアッセイが導入された(例えば、非特許文献1)が、その結果はしばしば混乱を招き、この検査は臨床では使用されなくなった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Carney他、2003、Clin.Chem.、49(10):1579-98
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書において、配列番号1のアミノ酸配列またはそれと少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号2のアミノ酸配列またはそれと少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と、を含む抗HER2モノクローナル抗体またはその結合フラグメントが提供される。一態様は、重鎖および軽鎖を含む抗HER2モノクローナル抗体またはその結合フラグメントを提供し、ここで、(i)重鎖は、配列番号5、6、7のアミノ酸配列またはそれらに対して少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を有する3つのCDR領域を含み、(ii)軽鎖は、配列番号8、9、10のアミノ酸配列またはそれらに対して少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を有する3つのCDR領域を含む。別の態様は、抗体が検出剤にコンジュゲートされている、本明細書に記載される抗HER2モノクローナル抗体またはその結合フラグメントを提供する。一態様は、本明細書に記載される抗HER2抗体及び担体を含む組成物を提供する。
【0007】
一態様は、検査サンプル中のHER2ポリペプチドまたはそのフラグメントを検出する方法であって、(a)ポリペプチド/抗体複合体の形成を可能にする条件下で、本明細書に記載の抗HER2モノクローナル抗体またはその結合フラグメントを検査サンプルと接触させるステップと、(b)a)のポリペプチド/抗体複合体を検出するステップとを含み、ポリペプチド/抗体複合体の検出は、HER2ポリペプチドがサンプル中に存在することの指標である方法を提供する。別の方法は、対象由来のサンプル中のHER2ポリペプチドまたはそのフラグメントをモニターする方法を提供し、同方法は、以下のステップ:(a)本明細書中に記載される抗HER2モノクローナル抗体またはその結合フラグメントのうちの少なくとも1つを、ポリペプチド/抗体複合体の形成を可能にする条件下で、このサンプルと接触させるステップ;(b)a)のポリペプチド/抗体複合体を検出するステップであって、ここで、ポリペプチド/抗体複合体の検出は、HER2ポリペプチドまたはそのフラグメントが前記対象中に存在することを示す、ステップ;および(c)複数の時点でステップ(a)および(b)を実施して、この対象中のHER2ポリペプチドまたはそのフラグメントを経時的にモニターするステップ、を含む。一実施形態において、方法は、(a)のサンプルを、配列番号3のアミノ酸配列もしくは少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、配列番号4のアミノ酸配列もしくは少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)、あるいいは重鎖および軽鎖を含む抗HER2抗体もしくはそのフラグメントであって、(i)前記重鎖は、配列番号11、12、13のアミノ酸配列もしくは少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を有する3つのCDR領域を含み、(ii)前記軽鎖は、配列番号14、15、16のアミノ酸配列もしくは少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を有する3つのCDR領域を含む、抗HER2抗体もしくはそのフラグメント、を含む第2の抗HER2抗体もしくはそのフラグメントと接触させることをさらに含む。一実施形態において、サンプルを、a)において、(i)捕捉抗体またはその結合フラグメント、および(ii)検出抗体またはその結合フラグメントと接触させる。一実施形態において、捕捉抗体および検出抗体は、HER2またはそのポリペプチドに結合する。一実施形態において、捕捉抗体は固定化される。別の実施形態において、検出抗体は検出剤を含む。
【0008】
一実施形態において、対象は、治療剤で治療されている。一実施形態において、治療剤は、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、ペムブロリズマブ、ペルツズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブまたはそれらの組み合わせである。別の実施形態において、対象は、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、ペムブロリズマブ、ペルツズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブまたはそれらの組合せで治療されており、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、ペムブロリズマブ、ペルツズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブまたはそれらの組合せは、捕捉抗体および/もしくは検出抗体またはそれらの結合フラグメントの結合に干渉しないか、または中程度にしか干渉しない。一実施形態において、対象は、がんについて治療されているかまたは治療することができ、そのような治療は、小分子、免疫療法、外科手術、化学療法および/または放射線治療を含む。一実施形態において、サンプルは、リンパ節または組織吸引物(例えば、乳房)、血清、全血、血漿、尿、唾液、涙、脳脊髄液、正常細胞溶解物からの上清、前新生物細胞溶解物からの上清、新生物細胞溶解物からの上清、および/または組織培養で維持されたがん細胞株からの上清である。
【0009】
一実施形態において、b)における検出は、ラテラルフローアッセイを使用して実施される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書中に記載される方法および組成物の実施は、他に示されない限り、薬学的化学、分子生物学、製剤技術、投薬レジメン、免疫学および生化学の従来の技術を使用することができ、これらの全ては、当業者の技術の範囲内である。
【0011】
本明細書では、HER2(例えば、ヒトHER2受容体)の細胞外ドメインなどのHER2に特異的に結合する組換えウサギモノクローナル抗体が提供される。本明細書に記載される抗体は、それらの結合特異性に加えて、他の抗HER2抗体を上回るいくつかの改善点を提供し、それらは、治療剤との干渉をほとんどまたは全く示さず、本明細書に提供される抗体に基づくイムノアッセイを、医師/患者に非常に必要とされる正確な情報を提供することに関してより有益にする。
【0012】
分析物の測定可能な濃度を変化させるか、または抗体結合を変化させる物質は、潜在的にイムノアッセイ干渉を生ずる可能性がある。干渉物質は、反応における干渉の部位に依存して、1つ以上のアッセイ系において分析物濃度が誤って高くなったり低くなったりする可能性がある。免疫アッセイにおける干渉は、検査室が患者の結果を誤って解釈すること、および医師による誤った治療方針をとること、につながる可能性がある。例えば、ペルツズマブは、血清中のHER2のレベルを低下させるために乳がんの治療において使用される最も一般的な治療法の1つであるが;残念なことに、ペルツズマブは、臨床で現在使用されている診断アッセイの多くを干渉し、これらのアッセイの信頼性を大幅に低下させる。治療用抗体による診断アッセイへの干渉は、アッセイのどの段階でも、またはアッセイに関与するどの成分(例えば、捕捉抗体および/または検出抗体)でも起こりうる。重要なことに、ペルツズマブ、トラスツズマブ、マルゲツキシマブ、および/またはHER2小分子阻害剤(例えば、ラパチニブ、ネラチニブ)は、本明細書に記載される抗体/イムノアッセイとの干渉をほとんどまたは全く示さず、これは、HER2陽性乳がんのための治療レジメンを投与されている患者を検査および/またはモニタリングする場合に、より高い精度を可能にする。
【0013】
定義
明確性および簡潔な説明のために、特徴は、同一または別個の実施形態の一部として本明細書において説明され得るが、本発明の範囲は、説明される特徴の全部または一部の組み合わせを有する実施形態を含み得ることが理解されるであろう。
【0014】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することは意図されていない。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。以下の定義は、読者が本発明を理解するのを助けることを意図するものであるが、具体的に示されない限り、そのような用語の意味を変更または別様に限定することは意図されない。
【0015】
本明細書で使用される場合、不定冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の言及を含むことを理解されたい。したがって、例えば、「阻害剤(aninhibitor)」への言及は、標的分子を阻害する能力を有する1つまたは複数の薬剤を指し、「方法(the method)」への言及は、当業者に公知の同等のステップおよび方法への言及を含む、などである。
【0016】
本明細書で使用される「および/または」という句は、そのように結合された要素、たとえば、ある場合には結合的に存在し、他の場合には非結合的に存在する要素の「いずれかまたは両方(either or both)」を意味すると理解されるべきである。
【0017】
本明細書で使用される場合、「または」は、上で定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、項目のリストを分離するとき、「および/または」または「または」は、包括的である、例えば、いくつかの項目のうちの少なくとも1つを含むが、2つ以上も含み、任意選択的にさらなるリスト化されていない項目を含むと解釈されるものとする。「~のうちの1つのみ(only one of)」、「~のうちのまさに1つ(exactly one of)」、または特許請求の範囲において使用される場合の「~からなる(consisting of)」は、明確に反示される用語に限り、複数の要素の数またはリストのうちのまさに1つの要素を含むことを指す。一般に、本明細書で使用される「または」という用語は、排他性の用語、例えば「いずれか(either)」、「~のうちの1つ(one of)」、「~のうちの1つのみ(only one of)」、または「~のうちのまさに1つ(exactly one of)」等が先行する場合、排他的な代替(すなわち、「一方または他方、ただし両方ではない(one or the other but not both)」)を示すものとしてのみ解釈されるものとする。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、示された値のプラスまたはマイナス10%を意味する。例えば、約100は、90~110を意味する。
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限値と下限値との間の各介在値、およびその記載された範囲内の任意の他の記載された値または介在値が、本発明の範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立してより小さい範囲に含まれてもよく、また、記載された範囲内の任意の具体的に除外された制限に従うことを条件として、本発明に包含される。記載された範囲が限界値の一方または両方を含む場合、それらの含まれた限界値の一方両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0019】
膜貫通型タンパク質HER2(ヒト上皮成長因子受容体2)またはHER2/neuは、受容体チロシンタンパク質キナーゼerbB-2、CD340(分化クラスタ340)、がん原遺伝子Neu、Erbb2(げっ歯類)、またはERBB2(ヒト)としても知られており、ヒトでは、ERBB2(赤芽球性がん遺伝子B)遺伝子によってコードされるタンパク質である。HER2タンパク質は、約185キロダルトン(kDa)の分子量を有し、細胞内チロシンキナーゼドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞外ドメインから構成されている。
【0020】
増幅はERBB2遺伝子の過剰発現としても知られ、HER2陽性乳がんとしても知られる乳がんの約15~30%で起こる。HER2陽性乳がんは、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)と呼ばれるタンパク質について検査にて陽性となる乳がんである。このタンパク質は、がん細胞の増殖を促進する。
【0021】
乳がんの約5人に1人は、がん細胞がHER2タンパク質を作製する遺伝子のコピーを余分に持っている。HER2陽性乳がんは、他のタイプの乳がんよりも侵攻性である(aggressive)傾向がある。それは、疾患再発の増加および予後不良と関連している;しかしながら、乳がんにおいてHER2を標的とする薬剤は、HER2陽性乳がんの他の予後不良の自然経過を著しく改善した。HER2の有無はその結果が治療法の推奨や決定に大きく影響するため、すべての浸潤性乳がんについて検査を受けることが推奨される。
【0022】
本明細書で使用される場合、「検出すること」は、サンプル中のHER2/neuなどの検出されているものの存在を同定する行為(action)またはプロセスを指す。本明細書中で使用される場合、用語「サンプル」は、血液、血清、血漿、尿、唾液、涙、脳脊髄液、正常細胞溶解物からの上清、前新生物細胞溶解物からの上清、新生物細胞溶解物からの上清、組織培養物中に維持されたがん腫細胞株由来の上清、および乳房吸引物または生検として定義される。したがって、血液、血清、血漿、尿、唾液、涙、脳脊髄液、細胞溶解物(例えば、正常細胞、前新生物細胞、新生物細胞、がん腫細胞)からの上清、または乳房吸引物もしくは生検を含むがこれらに限定されない任意の数の生物学的サンプルを、本明細書に記載されるイムノアッセイにおいて使用することができる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「モニタリング」とは、ある期間にわたって少なくとも2回検出されているものの存在を同定する行為またはプロセスをいう。
用語「抗体」は、インタクトな抗体、または抗原結合についてインタクトな抗体と競合するその抗原結合部分もしくはフラグメントをいう。用語「抗体」はまた、HER2に特異的に結合する任意のタイプの抗体分子または特異的結合分子を含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」などの用語は、本明細書で使用される場合、HER2タンパク質に特異的に結合する任意の天然に存在する、酵素的に入手可能な、合成の、または遺伝子操作されたポリペプチド、糖タンパク質、または免疫グロブリンを含む。抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、タンパク質分解消化または抗体可変ドメインおよび任意選択で定常ドメインをコードする核酸の操作および発現を含む組換え遺伝子操作技術などの任意の適切な標準的技術を使用して、完全抗体分子から得ることができる。
【0024】
モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の群から得られる抗体である。実質的に均一な抗体の群は、少量の変異体(mutants)またはバリアントを含み得る。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位と相互作用する。各モノクローナル抗体は、典型的には、単一のエピトープを標的とするが、ポリクローナル抗体集団は、典型的には、多様なエピトープの群を標的とする様々な抗体を含有する。モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(KohlerおよびMilstein、Nature 256:495、1975)、組換え法(米国特許第4,816,567号明細書)、およびファージ抗体ライブラリーからの単離(Clackson他、Nature 352:624-628,1991;Marks他、J.Mol.Biol.、222:581-597、1991)を含む多くの方法によって産生することができる。
【0025】
本明細書で使用される「対象」、「哺乳動物」および「哺乳動物対象」という用語は、ヒト、高等非ヒト霊長類、げっ歯類、ならびにウシ、ウマ、イヌ、およびネコなどの家畜および農場動物を含む哺乳動物として分類される任意の動物を指す。本発明のいくつかの実施形態において、哺乳動物はヒト(男性または女性)である。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「伴う(with)」、またはそれらの変形は、用語「含む(comprising)」と同様に包括的であることが意図される。
【0027】
本明細書で使用される場合、前記「含有する」、「有する」または「含む」は、「含む」、「主に~からなる」、「基本的に~からなる」および「から形成される」を含み;「主に~からなる」、「一般的に~からなる」および「からなる(comprising of)」は、「有する」、「含む」または「含有する」の上位概念に属する。
【0028】
「含む(comprises)」、「含む(comprising)」などの用語は、米国特許法においてそれらに帰する意味を有することができ、「含む(includes)」、「含む(including)」などを意味することができる。本明細書で使用される場合、「含む(including)」または「含む(includes)」などは、限定なしに含むことを意味する。
【0029】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、方法および組成物が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料を、本発明の方法および組成物の実施または検査において使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。さらに、材料、方法および実施例は、単なる例示であり、限定することを意図するものではない。本明細書に記載されるすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、その全体が参照により援用される。
【0030】
ウサギ抗体/ポリペプチド
ウサギモノクローナル抗体(例えば、抗ヒトHER2抗体)は、免疫蛍光、免疫組織化学、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、およびELISAアッセイを含む多くの用途に有用である。他の動物モデル(例えば、マウスおよびラット)と比較して、ウサギは、ウサギ免疫系がより広い範囲の抗原に応答するので、モノクローナル抗体産生のためのより良好な系を提供する。また、物理的に、ウサギは、より多くの抗体を産生することができるより大きな脾臓を有するより大きな動物である。
【0031】
ウサギモノクローナル抗体は、伝統的なマウスモノクローナル抗体と同様であるが、より良好な特異性および感度を提供する。ウサギに免疫を与え、得られた脾臓細胞をパートナー細胞と融合させて、抗体を発現する不死化(immortal)細胞株を作製する。抗体は、単一クローンに由来し、適用における性能について特徴付けられる。次いで、1つまたは複数のクローンが抗体産生のために選択される。
【0032】
ウサギの自然なレパートリーはマウスよりも多様であり、脾臓はより大きいので、それらの抗体は抗原に対してより高い親和性を示す。従って、ウサギモノクローナル抗体は、クローンがスクリーニングされた用途において優れた感度を与える傾向がある。ウサギの多様性のさらなる利点は、他の系では実現可能ではないかもしれないエピトープ認識を可能にすることである。他の利点としては、天然の多様性、高い親和性および特異性、新規なエピトープ認識、ヒトおよびマウス標的に対する交差反応性、ならびにヒト化の容易さが挙げられる。また、本明細書に提供されるように、他の抗体、ペプチドまたは小分子などの治療剤との干渉をほとんどまたは全く示さない抗体を提供することができる。
【0033】
抗体の軽鎖または重鎖可変領域は、相補性決定領域(CDR)として知られる3つの超可変領域によって中断された4つのフレームワーク領域を有する。CDRは、抗原結合の特異性を決定する。重鎖および軽鎖はそれぞれ、N末端からCDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれる3つのCDRを有し、4つのフレームワーク領域がこれらのCDRに隣接している。フレームワーク領域のアミノ酸配列は高度に保存されており、CDRを他の抗体に移植することができる。従って、組換え抗体は、1つ以上の抗体由来のCDRを、1つ以上の他の抗体のフレームワークと組み合わせることによって産生され得る。本発明の抗体は、本明細書に記載されるモノクローナル抗体のいずれかのCDRのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つ(またはそれらの組み合わせ)を含む抗体を含む。
【0034】
本発明のポリペプチド/抗体は、完全長ウサギ抗HER2/neu重鎖可変領域、完全長ウサギ軽鎖可変領域、それらの結合フラグメントまたはバリアント、およびそれらの組み合わせを含む。
【0035】
1C5(捕捉抗体)配列:
重鎖(配列番号1(下記);CDR1、2、および3は、それぞれ、表Aに提供される配列番号5、6、および7である):
【0036】
【化1】
【0037】
軽鎖(配列番号2(下記);CDR1、2、および3は、それぞれ、表Bに提供される配列番号8、9、および10である):
【0038】
【化2】
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
1B7(標識抗体)配列:
重鎖(配列番号3(下記);CDR1、2、および3は、それぞれ、表Cに提供される配列番号11、12、13である):
【0042】
【化3】
【0043】
軽鎖(配列番号4(下記);CDR1、2および3は、それぞれ、表Dに提供される配列番号14、15、16である):
【0044】
【化4】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
CDR同定法は、E.Kabat,T.Wu,H.Perry,Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、US Department of Health and Human Services、National Institutes of Health、Bethesda MD、1992による。
【0048】
ポリペプチドバリアント、抗体バリアントまたはバリアントCDRは、配列番号1~16に示されるポリペプチドまたはそのフラグメントとは、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60またはそれ以上のアミノ酸残基が異なる(例えば、アミノ酸の付加、置換または欠失)。この比較がアライメントを必要とする場合、配列は、最大相同性についてアライメントされる。変異部位は、ポリペプチドの任意の場所に存在し得る。本発明の一実施形態において、バリアントポリペプチドは、配列番号1~16に示されるポリペプチドと実質的に類似の(substantially similar)活性を有する。実質的に類似の活性とは、ポリペプチドが抗体を構築するために使用される場合、抗体が野生型抗体と同じまたは実質的に同じ活性/結合を有することを意味する。
【0049】
本明細書中で使用される場合、2つのアミノ酸配列(または2つの核酸配列)の同一性パーセントは、KarlinおよびAltschul(PNAS USA87:2264-2268,1990)のアルゴリズム、KarlinおよびAltschulにおいて改変されたアルゴリズム(PNAS USA90:5873-5877,1993)、を使用して決定される。このようなアルゴリズムは、Altschulら(J.Mol.Biol.、215:403-410,1990)のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長(word length)=12を用いて実行される。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実行される。比較目的のためのギャップ付きアラインメントを得るために、Altschulら(Nucleic Acids Res.、第25巻:3389~3402頁、1997年)に記載されているように、GappedBLASTを利用する。BLASTおよびGappedBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターを使用して、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得る。
【0050】
同一性または同一とは、アミノ酸配列(または核酸配列)類似性を意味し、当技術分野で認識されている意味を有する。同一性を有する配列は、同一または類似のアミノ酸(または核酸)を共有する。配列同一性とは、抗体の元のアミノ酸配列と同じアミノ酸の割合のことで、配列を整列させ、必要に応じてギャップを適切に導入して配列同一性を最大にした後に決定される。したがって、参照配列と85%のアミノ酸配列同一性を共有する候補配列は、候補配列と参照配列とのアラインメント後に、候補配列中のアミノ酸の85%が参照配列中の対応するアミノ酸と同一であり、かつ/または保存的アミノ酸変化(conservative amino acid changes)を含んでいることを必要とする。
【0051】
本発明はまた、配列番号1~16のポリペプチドバリアントまたはCDRバリアントを含む。配列番号1~16のポリペプチドバリアントまたはCDRバリアントは、1つまたは複数のアミノ酸置換、付加または欠失を含むことができる。一実施形態において、バリアントポリペプチドまたはバリアントCDRは、配列番号1~16として示される配列と少なくとも約75%同一のアミノ酸配列を含む。一実施形態において、バリアントリペプチドまたはCDRは、配列番号1~16と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、99.5%またはそれ以上同一である。バリアントポリペプチドまたはバリアントCDRは、1つまたは複数のアミノ酸残基が付加、置換または欠失されている配列番号1~16のアミノ酸配列を含む抗体であるバリアント抗体をコードする。例えば、抗体の可変領域は、その生物学的特性(例えば、抗原結合性)を改善するために改変され得る。このような改変は、例えば、部位特異的変異誘発、PCRベースの変異誘発、カセット変異誘発によって達成され得る。バリアント抗体は、配列番号1~16の重鎖または軽鎖可変領域のアミノ酸配列と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、99.5%またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を含む。
【0052】
アミノ酸配列に変異を導入する方法は、当業者に周知である。例えば、Ausubel(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley and Sons,Inc.(1994);Maniatis他、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)を参照のこと。変異はまた、「QuikChange(商標)Site-Directed Mutagenesis Kit」(Stratagene)などの市販のキットを使用して導入することもできる。ポリペプチドの機能に影響を及ぼさないアミノ酸を置換することによる機能的に活性なバリアントポリペプチドの生成は、当業者によってなし得ることができる。
【0053】
バリアントポリペプチドは、1つ以上の予測された非必須アミノ酸残基に保存的アミノ酸置換を有し得る。保存的置換は、アミノ酸が類似の特性を有する別のアミノ酸に置換される置換であり、その結果、ペプチド化学の当業者は、ポリペプチドの二次構造および疎水性親水性(hydropathic nature)が実質的に変化しないことを予測するであろう。一般に、以下のアミノ酸群は保存的変化を表す。(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、his。
【0054】
本発明のポリペプチドまたは抗体は、そのポリペプチドまたは抗体が天然では通常結合していないアミノ酸配列に共有結合または非共有結合することができる。さらに、本発明のポリペプチドまたは抗体は、アミノ酸以外の化合物または分子に共有結合または非共有結合することができる。例えば、ポリペプチドまたは抗体は、指示試薬(指示試薬としては、発色剤、触媒(例えば、酵素コンジュゲート)、蛍光化合物(例えば、フルオレセインおよびローダミン)、化学発光化合物(例えば、ジオキセタン、アクリジニウム、フェナントリジニウム、ルテニウム、およびルミノール)、放射性元素、直接可視標識、ならびに補因子、インヒビター、磁性粒子などが挙げられ得る;酵素コンジュゲートの例としては、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼなどが挙げられる)、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンド(例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ヒスチジンタグ、およびブドウ球菌プロテインA)、またはそれらの組み合わせに連結され得る。本発明の一実施形態において、タンパク質精製リガンドは、例えば、本発明のポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端にある1つ以上のCアミノ酸残基であり得る。アミノ酸スペーサーは、天然では本発明のポリペプチドまたは抗体と通常関連しないアミノ酸の配列である。アミノ酸スペーサーは、約1、5、10、20、100、または1,000アミノ酸を含むことができる。
【0055】
本発明のポリペプチドは、標準的なタンパク質精製技術を使用して、細胞または組織供給源から単離され得る。本発明のポリペプチドはまた、化学的に合成され得るか、または組換えDNA技術によって産生され得る。例えば、本発明のポリペプチドは、従来のペプチド合成機を用いて合成することができる。
【0056】
本発明のポリペプチドは、組換え的に産生され得る。本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、組換え発現ベクターに導入されてもよく、これは、当該分野で周知の技術を使用して、適切な発現宿主細胞系にて発現されてもよい。種々の細菌、酵母、植物、哺乳動物、および昆虫の発現系が当該分野で利用可能であり、そして任意のこのような発現系が使用され得る。必要に応じて、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、無細胞翻訳系において翻訳され得る。
【0057】
結合
本発明の抗体/その結合部分(抗原結合フラグメント)は、HER2(例えば、ヒトHER2)に特異的に結合する。「特異的に結合する」は、抗体が、HER2ではない他の非特異的分子よりも高い親和性でHER2を認識し、それに結合することを意味する。例えば、非特異的抗原(例えば、HER2に関連しないかまたは相同でないタンパク質)よりも効率的に結合する抗原(ポリペプチド)に対して惹起された抗体は、その抗原に特異的に結合すると記載され得る。結合特異性は、例えば、当該分野で周知の方法論を使用する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、またはウエスタンブロットアッセイを使用して試験され得る。
【0058】
抗体を作製する方法
本発明の抗体は、当業者に公知の方法を使用して産生され得る。例えば、HER2抗原またはそのフラグメントは、ウサギを含む動物を免疫するために使用され得る。HER2またはそのフラグメントは、キャリアタンパク質にコンジュゲートされてもよく、および/またはアジュバントとともに動物に投与されてもよい。HER2抗原は、1つまたは複数のエピトープ(すなわち、抗原決定基)を含み得る。エピトープは、線状(linear)エピトープ、連続エピトープまたは立体構造エピトープであり得る。本発明のポリペプチド内のエピトープは、いくつかの方法によって同定することができる。例えば、米国特許第4,554,101号明細書;JamesonおよびWolf、CABIOS4:181-186(1988)を参照されたい。例えば、HER2を単離し、スクリーニングすることができる。合わせることによってHER2ポリペプチド配列全体になる一連の短いペプチドは、タンパク質分解性切断によって調製され得る。例えば、100マーのポリペプチドフラグメントで開始することによって、各フラグメントは、ELISAにおいて認識されるエピトープの存在について検査される。例えば、ELISAアッセイにおいて、HER2抗原(例えば、100マーのポリペプチドフラグメント)は、固体支持体(例えば、プラスチック製マルチウェルプレートのウェル)に付着される。抗体の集団が標識され、固体支持体に添加され、そして非特異的吸収がブロックされる条件下で非標識抗原に結合させられ、そして任意の非結合抗体および他のタンパク質が洗い流される。抗体結合は、例えば、無色の基質を有色の反応生成物に変換する反応によって検出される。次いで、その特定された100マーから、より小さく重なり合ったフラグメントを順次テストして、目的のエピトープの位置をマッピングする。
【0059】
ハイブリドーマからモノクローナル抗体を調製するための方法は、当業者に周知であり、例えば、標準的な細胞培養法および腹水産生法を含む。遺伝子操作によって産生される組換え抗体またはそのフラグメントは、本発明のポリヌクレオチド配列を使用して作製され得る。抗体またはそのフラグメントをコードする遺伝子は、本発明のハイブリドーマまたは他のハイブリドーマから単離され得る。遺伝子は、適切なベクターに挿入し、宿主細胞に導入することができる。例えば、BorrebaeckおよびLarrick、Therapeutic Monoclonal Antibodies、Macmillan Publ.Ltd、1990、を参照されたい。
【0060】
一態様において、高度に特異的なモノクローナル抗体は、ウサギに免疫を与え、脾臓細胞を選択し、そして臨床使用に適切な市販の量のモノクローナル抗体を構築することによって開発された。ほとんどの組換えウサギモノクローナル抗体は研究においてのみ使用されるので、臨床分野におけるモノクローナルウサギ抗体の使用は特異的である。加えて、本明細書に記載の抗体は、いくつかの理由で優れている。例えば、組換えウサギmAbは、組換えマウスmAbと比較して、それらのリガンドに対してより高い結合親和性を示し、それによって、より再現性のある結果を提供する。さらに、本明細書に提供されるウサギモノクローナル抗体は、イムノアッセイにおいて、限定された/中程度の治療薬干渉を示すか、または治療薬干渉を全く示さない。
【0061】
ウサギモノクローナル抗体(mAb)は、研究および診断試薬としてのそれらの利点について認識されている:それらは、マウスmAbよりも10~100倍高い親和性;単一のアミノ酸の差異さえも区別し、交差反応性を低減することができる優れた特異性;mAb多様性を増加させる広範なエピトープ認識;一貫した性能のための大きな安定性;およびウサギIgGにおける過剰なジスルフィド結合に起因するより長い貯蔵寿命を有する(Feng他、Am J Transl Res.、2011;3(3):269-74;Rossi S.他、American Journal of Clinical Pathology.、2005;124(2):295-302;Vilches-Moure JG他、J Vet Diagn Invest.、2005;17(4):346-50)。
【0062】
特異的mAbを効果的に発見するために、当技術分野で利用可能な方法、例えば、目的の特異的ウサギmAbについての効率的なハイスループットスクリーニングのための単一B細胞ベースのSMabTM(商標)プラットフォームを使用することができる。簡単に述べると、蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用して、脾臓細胞からタンパク質認識B細胞を最初に濃縮および選別し;選別された細胞を1細胞/ウェルで培養および刺激し;酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および目的のタンパク質に対する他の所望のアッセイを使用して、単一のB細胞から陽性クローンを同定し;上清およびRNAをさらなる分析のために収集し;次いで、自然に対になっているIgG軽鎖および重鎖の遺伝子を陽性クローンからクローニングし;次いで、選択されたmAbクローンを発現させ、かつ検証する。SMabTM(商標)プラットフォームは、従来のハイブリドーマおよびディスプレイプラットフォームよりも約30%~50%高速で、3~4.5ヶ月でmAbの300~500のテスト可能なクローンを日常的に生成する。大量の脾臓細胞および拡張可能なハイスループット設計の使用は、目的のタンパク質を認識する最初のmAbプールの多様性を向上させる。SMabTM(商標)プラットフォームは、不必要な作業負荷を除去することによって抗体開発時間を短縮するために、中間ステップからの培養上清を使用して、タンパク特異的mAbの最も早い機能的特徴付けを提供する。
【0063】
コンジュゲート
本発明の抗体は、共有結合がHER2に結合する抗体の能力に影響を及ぼさないように、他の分子に共有結合され得る。例えば、抗体は、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護/遮断基(例えば、メチル基、エチル基、炭水化物基)による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結などによって修飾され得る。
【0064】
コンジュゲート抗体は、例えば、ポリマー、ヒアルロン酸、蛍光物質、発光物質、ハプテン、酵素、金属キレート、細胞毒性剤、放射性核種、および薬物を含む様々な分子に結合させることができる。
【0065】
検出方法
本発明の一実施形態は、サンプル中のHER2ポリペプチドを検出する方法を提供する。同方法は、HER2ポリペプチドを含むことが疑われるサンプルを、本発明の抗体またはその抗原結合部分と接触させて、HER2/抗体複合体を形成することを包含する。HER2/抗体複合体の存在が検出され、それによってHER2ポリペプチドの存在が検出される。いくつかの実施形態において、本発明の2つの異なる抗体またはその抗原結合部分が、HER2の検出において使用される(例えば、配列番号5~10を含む抗体、および配列番号11~16を含む抗体との接触;捕捉抗体および標識抗体、1C5および1B7を含む)。
【0066】
検査サンプルは、例えば、リンパ節または組織吸引物、血清、全血、血漿、循環腫瘍細胞、腫瘍細胞または組織(例えば、組織生検)または腹水であり得る。ポリペプチド/抗体複合体は、当該分野で公知の任意の方法(酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、多重蛍光イムノアッセイ(MFIまたはMFIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、サンドイッチアッセイ、ウェスタンブロッティング、イムノブロッティング分析、免疫組織化学法、免疫蛍光アッセイ、蛍光活性化細胞選別(FACS)またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)によって検出され得る。
【0067】
HER2についての免疫アッセイは、1つの抗体またはいくつかの異なる抗体を利用することができる。免疫アッセイプロトコルは、例えば、標識抗体を使用する、例えば、競合、直接反応、またはサンドイッチ型アッセイに基づいてもよい。本発明の抗体は、当該分野で公知の任意の型の標識(例えば、蛍光標識、化学発光標識、放射性標識、酵素標識、コロイド金属標識、放射性同位体標識および生物発光標識が挙げられる)で標識され得る。
【0068】
本発明の抗体またはその抗原結合部分は、支持体に結合されてもよく、そしてHER2の存在を検出するために使用され得る。支持体には、例えば、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよびマグレタイト(magletite)が含まれる。
【0069】
本発明の抗体は、例えば、過剰増殖性障害を有することが疑われるヒトまたは動物から検査サンプルを得ることによって、過剰増殖性障害の診断の方法において使用され得る。検査サンプルは、抗体-抗原複合体(すなわち、免疫複合体)の形成を可能にする条件下で、本発明の抗体またはその抗原結合部分と接触させる。当業者は、抗原/抗体複合体の形成を可能にし、それに適切である条件を認識している。抗体-抗原複合体(例えば、抗体またはその抗原結合部分とHER2との複合体を含む)の量は、当技術分野で公知の方法論によって決定することができる。対照サンプルにおいて形成されるレベルよりも高いレベルは、過剰増殖性障害の存在を示す。抗体/抗原複合体の量は、当技術分野で公知の方法によって決定することができる。
【0070】
HER2陽性過剰増殖性障害は、乳がん、卵巣がん、膵臓がん、膀胱がん、肺の腺がん、子宮がん(子宮漿液性子宮内膜がんなど)、胃がん、食道がん、結腸がん、ならびに頭頸部がんおよび/または唾液管がんを含めた新生物障害であり得る。
【0071】
本明細書中に記載される抗体/アッセイは、HER2を過剰発現する腫瘍を有する患者を同定およびモニターするために使用することができ、従って、標的化薬物治療のための候補である。本明細書に記載される抗体/アッセイは、治療剤との限定された干渉を示すか、または干渉を示さない。したがって、本明細書に記載されるイムノアッセイは、乳がんケア分野における満たされていないニーズを満たすものである。
【0072】
本明細書中に記載されるイムノアッセイは、HER2陽性乳がんについて検査するため、薬物療法を受けている患者におけるHER2の血清レベルをモニターするため、再発を検出するため、または組織HER2陰性と検査された女性におけるHER2疾患を検出するために使用され得る。本明細書中に記載されるイムノアッセイは、女性における血清HER2の上昇したレベルまたは上昇しつつあるレベルを検出するために使用されてもよく、これは、(例えば、組織検査によって)HER2陰性であると考えられた女性におけるHER2疾患の出現を示し得る。本明細書に記載されるイムノアッセイはまた、循環腫瘍細胞(CTC)を測定することと併せて、またはポジトロン放出断層撮影(PET)スキャンを必要とするか、もしくはそれから利益を得る可能性のある患者を同定するか、もしくは同定するのを助けるための補助として使用され得る。
【0073】
ラテラルフローアッセイ(LFA)
ラテラルフローアッセイ(LFA)は、分析物と相互作用する分子が付着したポリマーストリップを通る液体サンプルの移動に基づき、視覚的に検出することができるシグナルを提供する。LFAは、一般に、しばしば複雑な混合物である分析物(例えば、タンパク質、ハプテン、核酸およびアンプリコン)の検出および/または定量のための紙ベースのプラットフォームであり、ここで、サンプルは、検査デバイス上に配置され、そして結果は、約5~30分以内(例えば、5~10分)に表示される。LFAの低い開発コストおよび製造の容易さは、生物医学、農業、食品および環境科学などの迅速な検査が必要とされる複数の分野へのその適用の拡大をもたらした。LFAに基づく検査は、とりわけ、動物およびヒトの疾患、病原体、化学物質、毒素および水質汚染物質をスクリーニングすることを含む、獣医学、品質管理、食品生産における製品安全性、ならびに環境衛生および安全性などの状況において、特定の抗原および抗体、ならびに遺伝子増幅の産物の定性的および定量的検出のために、病院、診療所および臨床検査室で広く使用されている。
【0074】
LFAでは、目的の分析物を含有する液体サンプル(尿、唾液、汗、血清、血漿、全血、および他の流体など)は、外力(毛管作用)の補助なしに、分析物と相互作用することができる分子が付着しているポリマーストリップの様々なゾーンを通って移動する。典型的なラテラルフロー検査ストリップは、より良好な安定性のためにバッキングカード上に取り付けられた重なり合う膜から構成されてもよい。サンプルは、サンプルを検出システムとの相互作用に適したものにする緩衝塩および界面活性剤を装填することができる吸着性サンプルパッド上のストリップの一端に適用される。サンプルは、標的分析物に特異的であり、着色または蛍光粒子(例えば、金コロイドおよびラテックスミクロスフェア)にコンジュゲートされた抗体を含むコンジュゲート放出パッドを通って移動する(使用される認識要素に依存して、LFAは、異なるタイプ(例えば、抗体が認識要素として使用される「ラテラルフローイムノアッセイ」(LFIA)、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の間に形成され得るアンプリコンの検出が使用される核酸LFA(NALFA))に分類され得る)。サンプルは、標的分析物に結合したコンジュゲート抗体と共に、ストリップに沿って検出ゾーン内に移動する。これは、一般に、ライン中に固定化された特定の生物学的成分(主に抗体または抗原)を有する多孔性膜(通常、ニトロセルロースから構成される)である。それらの役割は、コンジュゲート抗体に結合した分析物と反応することである。サンプル分析物の認識は、検査ライン上に適切な応答を生じ、一方、対照ライン上の応答は、ストリップを通過する適切な液体の流れを示す。異なる強度で現れる線によって表される読み出し(read-out)は、目視によって、または専用のリーダー(デバイス)を使用して評価することができる。
【0075】
例えば、乳がん、卵巣がん、胃がん、肺の腺がん、子宮がん(例えば、漿液性子宮内膜上皮内がん)、胃がんおよび/または唾液線がんを含む腫瘍性障害などのHER2陽性過剰増殖性疾患を含む、サンプル中に存在する複数の分析物の迅速かつ同時の検出を可能にし、例えば、治療前、治療後および/または治療中のがんの検出および進行のための強力な手段を提供する、複数の検査ラインを用いるポイントオブケアの複合診断アッセイが本明細書で提供される。同じ条件下で複数の分析物を同時に検査するために、異なる分析物に特異的な抗体のさらなる検査ラインが、アレイ形式で固定化され得る。一方、同じ抗体をロードした複数の検査ラインを半定量的アッセイに使用することができる。この「ラダーバー(ladder bars)」アッセイの原理は、各連続ライン上の固定化抗体による比色コンジュゲート抗原複合体の段階的捕捉に基づいており、ストリップ上に現れるラインの数は、分析物の濃度に正比例する。液体は、ストリップ材料の毛管力のためにデバイスを横切って流れ、この動きを維持するために、吸収パッドをストリップの端部に取り付けることができる。吸収パッドの役割は、過剰な試薬を吸い上げ、液体の逆流を防止することである。LFAの現行の例は、妊娠検査スティックである。
【0076】
LFIAの2つの形式を区別することができる:直接および競合。直接検査は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)検査で使用されるp24抗原などのより大きな分析物、ならびに妊娠検査で使用されるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)などの複数の抗原部位を有する分析物に使用される。hCG検査は、標的が2つの相補的抗体の間に固定化されるサンドイッチベースのアッセイの一例である。直接検査では、検査ラインの存在は陽性結果を示し、対照ラインは通常、特定のコンジュゲート中の抗体に特異的な種特異的抗免疫グロブリン抗体を含有する。2つの抗体に同時に結合することができない単一の抗原決定基を有する小分子の場合、競合検査が使用される。この種類の検査において、分析物は、検査ライン上の抗体上の結合部位をブロックし、着色したコンジュゲートとのそれらの相互作用を防止する。したがって、陽性の結果は、検査ラインにおけるシグナルの欠如によって示され、一方、対照ラインは、検査結果とは無関係に視認できるはずである。
【0077】
標識に関しては、金コロイドが市販のLFIAにおいて広く使用されている標識である。別の一般的な標識はラテックスであり、これは、種々の検出試薬(例えば、着色色素または蛍光色素、および磁性成分または常磁性成分)でタグ化され得る。ラテックスは複数の色で製造することができるので、多数のライン間の識別を必要とする多重アッセイに適用される。炭素および蛍光標識、または標識の酵素的修飾も使用される。カーボンナノチューブ、蛍光標識、量子ドット、アップコンバーティングリン光体は全て標識として使用することができる。使用することができる別の検出システムは、T7ポリメラーゼと結合したときに検出mAbの増幅が起こる高感度タンパク質検出システムの頭字語であるFACTTである。mAbを直接測定するのではなく、リーダーは、ポリメラーゼによって生成されたRNA分子を検出し、したがって、結果を大きく増幅する。この検査は、定性的な色の変化をもたらすことができるが、リーダー(デバイス)からも利益を得ることができる。それは20~30分かかり得る。
【0078】
そのようなアッセイを使用することには、例えば、多くの産業/国において望ましい安価で迅速かつ容易な検査を提供するポイントオブケアを含む多くの利点があり、それらの長い貯蔵寿命および貯蔵のために多くの場合冷蔵を必要としないという事実のために、これらの検査は、発展途上国、小さな外来診療環境、遠隔地域および戦場における使用によく適している。さらに、視覚的結果は通常明確であるため、追加の機器は必要とされないが、読み出しのために任意のデバイスを使用することができる。
【0079】
以下の実施例は、例示目的のみのために提供され、そして上記の広範な用語で記載される本発明の範囲を限定することを意図していない。
【実施例
【0080】
実施例I
A.直線性(Linearity)
報告可能な範囲を評価するために、直線性アッセイを利用した。適切なHER2レベルを有する2つの天然サンプル、35SCおよび40SCを、アッセイの標準操作手順(SOP)で指定された1:50希釈に加えて、1:25、1:100および1:200に希釈した。測定後、これらの値を、検査した各希釈物について予想されるHER2濃度の百分率として定量することによって、直線性を実証した。期待値の80%~120%の範囲は、許容可能である直線性を示す。
【0081】
直線性は、検査した両方の天然サンプルについて十分に許容可能な許容範囲内であった。1:25、1:100および1:200希釈物について、血清35SCは、それぞれ、予想濃度の98%、101%および105%の修正値(corrected values)を与え;そして血清40SCは、それぞれ、101%、99%および100%の修正値を与えた。表1を参照のこと。
【0082】
【表5】
【0083】
B.交差反応性
交差反応性については、以下の4つの組換えヒト(rh)タンパク質(HER2に関連する3つのファミリーメンバーおよび1つの非関連タンパク質)を、標準曲線と並行してアッセイにおいて200ng/mLの高濃度で個々に検査した:rhEGFR、rhHER3、rhHER4、およびrhPD-L1(それぞれSino Biologicalによって提供される)。200ng/mLの負荷された初期濃度に対する測定された組換えタンパク質濃度のパーセンテージを計算することによって、交差反応性を評価した。HER2について予測される値の5.0%より大きい値を生じることが見出された任意の組換えタンパク質を、交差反応するとみなした。
【0084】
検査した4つの組換えタンパク質のいずれも、HER2 ELISAにおいて200ng/mLで交差反応せず、許容性要件を満たした。表2を参照のこと。
【0085】
【表6】
【0086】
C.タンパク質干渉
関連するファミリータンパク質との干渉を決定するために、200ng/mLの同じ高濃度のEGFR、HER3およびHER4を、約7ng/mLの中間点rhHER2濃度(参照サンプルと考えられる)に個々に添加した。アッセイを行った後、測定されたHER2濃度を予想濃度と比較し、回収率(%)を計算した。存在する場合、HER2について予測される濃度の80%未満または120%を超える測定濃度を生じた任意のタンパク質を、干渉しているとみなした。
【0087】
回収率(%)は、rhEGFRについて96.7%、rhHER3について99.7%、およびrhHER4について109.6%であった。したがって、これらの関連する組換えタンパク質は、200ng/mLでHER2 ELISAとの干渉を示さず、結果は許容要件を満たした。表3を参照のこと。
【0088】
【表7】
【0089】
D.薬物干渉
関連する薬物との干渉を決定するために、以下の3つの治療用抗体を、血清サンプル中の干渉について実行した:トラスツズマブ(Herceptin;Roche)、ペルツズマブ(Perjeta;Roche)、およびペンブロリズマブ(Keytruda;Merck)。各薬物を、100μg/mLの生理学的に関連する濃度で、既知のアッセイ測定値を有する内因性サンプル(自然基準点)中に添加した(spiked)。予想される濃度からの任意の変化を決定し、干渉パーセントとして表した。存在する場合に、HER2について予測されるものの10%を超える測定濃度の変化を生じた治療用抗体は、干渉していると考えられた。
【0090】
2つのサンプル(B54および20SC)を使用して、干渉の平均パーセンテージは、Herceptin(登録商標)について6.13%およびPerjeta(登録商標)について3.72%であった。結果を確認するために8つの血清および2つの実験日を使用して、干渉の平均パーセンテージは、Perjeta(登録商標)について4.5%であった。したがって、検査した3つの抗体薬物、Herceptin(登録商標)、Keytruda(登録商標)、およびPerjeta(登録商標)はすべて、100μg/mLでHER2 ELISAとの干渉を示さなかった。表4を参照のこと。
【0091】
【表8】
【0092】
全ての刊行物、それらのアクセッション番号によって同定されるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列、特許および特許出願は、本明細書中に参考として援用される。上記の明細書において、本発明は、その特定の好ましい実施形態に関連して記載され、そして多くの詳細が例示の目的のために示されているが、本発明がさらなる実施形態を受け入れることが可能であること、および本明細書中に記載される特定の詳細が本発明の基本原理から逸脱することなくかなり変更され得ることは、当業者に明らかである。
【0093】
本明細書中に記載される特定の方法および組成物は、好ましい実施形態の代表であり、そして例示的なものであり、そして本発明の範囲に対する限定として意図されてはいない。他の目的、態様、および実施形態は、本明細書を考慮すると当業者に思いつき、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神の範囲内に包含される。種々の置換および変更が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本明細書中に開示される本発明に対してなされ得ることは、当業者に容易に明らかである。本明細書に適切に例示的に記載された本発明は、本明細書において本質的なものとして具体的に開示されていない任意の要素(単数または複数)または限定(単数または複数)の非存在下で実施され得る。本明細書に適切に例示的に記載される方法およびプロセスは、ステップが異なる順序で実施されてもよく、方法およびプロセスは、本明細書にまたは特許請求の範囲に示されるステップの順序に必ずしも限定されない。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が明らかに他を指示しない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば、「核酸(anucleicacid)」または「ポリペプチド(apolypeptide)」への言及は、複数のそのような核酸またはポリペプチド(例えば、核酸もしくはポリペプチドの溶液または一連の核酸もしくはポリペプチド調製物)などを含む。本明細書では、「または」という用語は、非排他的なものを指すために使用され、「AまたはB」は、別段の指示がない限り、「AであるがBではない」、「BであるがAではない」、および「AおよびB」を含む。
【0094】
いかなる状況下においても、本特許は、本明細書に具体的に開示される特定の実施例または実施形態または方法に限定されると解釈されない。いかなる状況においても、本特許は、特許商標庁の任意の審査官または任意の他の役人もしくは従業員によってなされた任意の陳述によって限定されると解釈されるべきではなく、ただし、そのような陳述が、具体的に、かつ、資格または留保なしに、出願人による応答文書に明示的に採用される場合を除く。
【0095】
採用された用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、そのような用語および表現の使用において、示され、説明される特徴またはその一部の任意の均等物を除外する意図はないが、種々の修正が、特許請求されるような本発明の範囲内で可能であることが認識される。従って、本発明は、好ましい実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書中に開示される概念の修正および変更が、当業者によって用いられ得、そしてこのような修正および変更は、添付の特許請求の範囲および本発明の記述によって規定されるような本発明の範囲内であると考えられることが理解される。
【配列表】
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【国際調査報告】