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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-07
(54)【発明の名称】湾曲パネルのための鋳型
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/36 20060101AFI20250228BHJP
   B29C 33/20 20060101ALI20250228BHJP
   B29C 33/34 20060101ALI20250228BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20250228BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20250228BHJP
   B29C 70/48 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
B29C43/36
B29C33/20
B29C33/34
B29C33/02
B29C39/10
B29C70/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024569669
(86)(22)【出願日】2023-02-13
(85)【翻訳文提出日】2024-10-09
(86)【国際出願番号】 EP2023053440
(87)【国際公開番号】W WO2023152356
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】22156544.3
(32)【優先日】2022-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524303348
【氏名又は名称】コーエックスペア
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルタン アンドレ
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F202AB25
4F202AH31
4F202AJ08
4F202AK11
4F202CA09
4F202CB01
4F202CD16
4F202CD30
4F202CK12
4F202CK18
4F202CK42
4F202CK52
4F202CK73
4F202CL11
4F202CN01
4F202CN20
4F202CN21
4F204AC05
4F204AD16
4F204AH31
4F204AJ08
4F204EA03
4F204EB01
4F204EB11
4F204EK10
4F204EK13
4F204EK17
4F205AC05
4F205AD16
4F205AH31
4F205AJ08
4F205HA12
4F205HA27
4F205HA35
4F205HB01
4F205HB11
4F205HK03
4F205HK04
(57)【要約】
本発明は、大きい寸法を有する湾曲部品(9)を成形するための鋳型(1)に関する。鋳型(1)は、第1の部分(10)と、第2の部分(20)と、軸受デバイス(30、40)と、第1の部分(10)と軸受デバイス(30、40)のうちの一方(30)との間に、及び第2の部分(20)と軸受デバイス(30、40)のうちの他方(40)との間に位置する摺動領域(51、52)と、を備える。鋳型(1)は、第1の部分(10)及び第2の部分(20)が水平方向に摺動することを可能にする一方で、軸受デバイス(30、40)は、それに垂直の圧力を加える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲した(9)の少なくとも一部分を成形するための鋳型(1)であって、前記部品(9)が、厚さによって分離された第1の部品表面(91)及び第2の部品表面(92)を有し、前記鋳型(1)が、
-シェル(2)であって、
-前記第1の部品表面(91)を成形するための第1の成形表面(11)と、前記第1の成形表面(11)の反対側の第1の外部表面(12)と、を備える第1の部分(10)と、
-前記第2の部品表面(92)を成形するための第2の成形表面(21)と、前記第2の成形表面(21)の反対側の第2の外部表面(22)と、を備える第2の部分(20)であって、前記第1の外部表面及び前記第2の外部表面(12、22)のうちの少なくとも一方が、非平面である、第2の部分(20)と
を備える、シェル(2)と、
-軸受システム(3)であって、
-前記第1の部分(10)に機械的に結合され、前記第1の部分(10)を第1の方向(501)に押圧するように構成される、第1の軸受デバイス(30)と、
-前記第2の部分(20)に機械的に結合され、前記第2の部分(20)を前記第1の方向(501)に押圧するように構成される、第2の軸受デバイス(40)と
を備える、軸受システム(3)と
を備え、
前記鋳型(1)が、前記シェルの前記第1の部分(10)と前記第1の軸受デバイス(30)との間、及び前記シェルの前記第2の部分(20)と前記第2の軸受デバイス(40)との間で、前記第1の方向(501)と垂直な少なくとも1つの方向に摺動することを可能にするように構成される、
鋳型(1)。
【請求項2】
前記第1の外部表面(12)と前記第1の軸受デバイス(30)との間の前記機械的結合が、前記第1の外部表面(12)から前記第1の軸受デバイス(30)まで延在する突出部(13)、及び/又は前記第1の軸受デバイス(30)から前記第1の外部表面(12)まで延在する突出部(31)を備え、前記第2の外部表面(22)と前記第2の軸受デバイス(40)との間の前記機械的結合が、前記第2の外部表面(22)から前記第2の軸受デバイス(40)まで延在する突出部(23)、及び/又は前記第2の軸受デバイス(40)から前記第2の外部表面(22)まで延在する突出部(41)を備える、請求項1に記載の鋳型。
【請求項3】
前記突出部(13、23、31、41)の少なくともいくつかが、隆起部を備える、請求項2に記載の鋳型。
【請求項4】
前記第1の外部表面(12)に、及び/又は前記第2の外部表面(22)に、及び/又は前記軸受システム(3)に、締結され、突出部(13、23、31、41)間に位置する、加熱要素(60)を備える、請求項2又は3に記載の鋳型。
【請求項5】
前記軸受システム(3)が、熱伝達流体を通過させるように構成される通路(33、43)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の鋳型。
【請求項6】
前記第1の外部表面(12)と前記第1の軸受デバイス(30)との間の前記機械的結合、及び前記第2の外部表面(22)と前記第2の軸受デバイス(40)との間の前記機械的結合が、第1の断熱材(71)を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の鋳型。
【請求項7】
前記第1の部分(10)と前記第1の軸受デバイス(30)との間の前記摺動が、複数の第1の摺動領域上で生じ、前記第2の部分(20)と前記第2の軸受デバイス(40)との間の前記摺動が、複数の第2の摺動領域上で生じ、前記鋳型(1)が、前記第1の摺動領域と前記第2の摺動領域との間の前記第1の方向(501)における距離が、前記鋳型(1)全体にわたって20%未満だけ変化するように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の鋳型。
【請求項8】
前記第1の部分(10)が、前記第1の成形表面(11)の外側の機械的締結具(58)によって、及び前記第1の成形表面(11)に沿った溶接部(59)によって、組み立てられた第1のセグメント(17)及び第2のセグメント(18)を備え、並びに/あるいは前記第2の部分が、前記第2の成形表面(21)の外側の機械的締結具(58)によって、及び前記第2の成形表面(21)に沿った溶接部(59)によって、組み立てられた第1のセグメント(27)及び第2のセグメント(28)を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の鋳型。
【請求項9】
前記シェル(2)が、前記第1の成形表面(11)及び/又は前記第2の成形表面(21)にキャビティ(81)を備え、前記鋳型(1)が、前記キャビティ(81)内に位置する除去可能なインサート(82)を備え、各インサート(82)が、突出した強化材(93)を受け入れるように意図した開放空間(83)を備え、前記鋳型(1)が、前記インサート(82)を保持し、前記第1の成形表面(11)及び/又は前記第2の成形表面(12)の溝(85)に少なくとも部分的に挿入されるように構成される、除去可能なアーム(84)を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の鋳型。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の鋳型(1)と、締付デバイス(110)と、前記第1の成形表面(11)と前記第2の成形表面(21)との間に樹脂を注入するように構成される樹脂注入システム(120)と、を備える成形システム(100)。
【請求項11】
主強化材(99)及び樹脂を組み込む複合材部品(9)を成形するために、請求項1から9のいずれか一項に記載の鋳型(1)内で樹脂及び前記主強化材(99)を加熱するステップを含む成形方法であって、前記複合材部品(9)の第1の部品表面(91)が、前記第1の成形表面(11)に対して成形され、第2の部品表面(92)が、前記第2の成形表面(21)に対して成形される一方で、樹脂が、前記第1の成形表面(11)と前記第2の成形表面(21)との間に注入され、前記第1の方向(501)の圧力が、前記軸受システム(3)を介して加えられる、成形方法。
【請求項12】
前記部品(9)が、航空機の翼、航空機の尾翼、航空機の胴体パネル、航空機の翼型フラップ、航空機のフェアリング、又は航空機のエンジン部品のための翼型パネルを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記鋳型(1)が、請求項9に記載の鋳型であり、前記方法が、前記樹脂注入の前に、前記インサート(82)を前記キャビティ(81)に挿入するステップと、前記突出した強化材(93)を前記開放空間(83)に挿入するステップであって、これにより、前記突出した強化材(93)、前記主強化材(99)、及び前記樹脂が、成形によって一体化されて前記部品(9)を形成するステップと、を含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記インサート(82)が前記キャビティ(81)に挿入されるとき、前記シェル(2)が40℃を超える温度にある、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記加熱が、
-前記第1の方向(501)の前記圧力が、前記シェル(2)全体にわたって均一である期間と、
-中央シェル領域(2)上の前記第1の方向(501)の前記圧力が、周辺シェル領域(2)上の前記圧力と異なる少なくとも1つの他の期間と
の間に行われる、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湾曲して、大きい寸法を有する、複合材料で作製されたパネルを圧力下で成形し、重合するための鋳型に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、重合樹脂で含浸された1つ又は複数の強化材を含む。
【0003】
複合材料で作製された大きい寸法を有する湾曲パネル、例えば、航空機の翼のための翼型パネルを成形することを可能にする既知の鋳型は、一方では成形表面を備え、他方では真空膜又はバッグを備える。成形のために加えられる圧力は、場合によっては、鋳型と、バッグ又は膜との間の排出を介して大気圧であり、あるいは他の場合では、オートクレーブにより、典型的には、6~8バール間で上昇する。複合材の多孔度を許容値、典型的には、体積の2%未満に制限するためには、通常、6~8バールの圧力が必要である。鋳型を加熱して、典型的には、180℃で複合材料の樹脂を重合させる。許容される加熱速度は一般に3℃/分であるが、鋳型及び製造される部品の全体の熱的均質性を維持するために、オートクレーブ硬化のために1℃/分に制限されることが最も多い。本発明者らは、典型的には、全体として+/-5℃の均一性を目指す。
【0004】
ほとんどの場合、樹脂は、鋳型が真空膜又はバッグによって閉じられたときに強化材中に既に存在するか、又は排出後にそこに注入される。場合によっては、樹脂は、排出中に部分的に存在し、補完物が注入される。
【0005】
更に、部品が突出した要素、例えば、補強材を組み込んでいる場合、これらは一般に、成形表面に対して位置決めが困難な真空バッグの下に位置する外部デバイスによって、成形表面の反対側の上方に形成される。
【0006】
真空バッグによって閉じられた片面鋳型上のオートクレーブ内における圧力及び温度下での硬化の代替法は、雄/雌鋳型の両面鋳型内における圧力及び温度下での硬化を可能にすることが知られている、SQRTM(Same Qualified Resin Transfer moulding)と呼ばれる方法である。このSQRTM法は、オートクレーブ法の圧力及び温度レベルを再現することを可能にする。SQRTMは、オートクレーブ内で製造された複合材と少なくとも同等の品質の複合材を製造することを可能にする。
【0007】
複合材パネルの成形中に樹脂を注入するための多くの方法が存在する。この方法は、一般にRTM(Resin Transfer moulding)と呼ばれ、鋳型が完全に閉じているときに応じて、真空、鋳型への外圧、真空バッグを備えた片面鋳型、又は雄/雌鋳型が、関与するか否かに応じて、多くの変形形態で利用可能である。好適な品質の部品は、一般に、圧力注入の前に真空が適用される雄/雌鋳型で得られる。
【0008】
鋳型に閉鎖圧力を加えて加熱するためのオートクレーブの使用は、極めてエネルギー効率が低く(対流によって鋳型を加熱するガスを加熱する必要がある)、各使用後に廃棄される真空バッグ又は数回の使用後に廃棄される膜などの付属材料を消費する、方法であることが知られている。
【0009】
航空機の翼型パネルの場合、複合材料の強化材は炭素繊維であり、樹脂は、エポキシであることが最も多い。炭素繊維の特殊性は、20℃~180℃間の成形サイクル中にほとんど膨張しないことである。インバー鋼、又は炭素繊維をベースとする複合材など、炭素繊維の熱膨張率に近い材料で作製された片面鋳型上に大きい寸法を有する鋳型部品が一般的である。インバーは、高価な材料である。炭素繊維をベースとする複合材は、鋳型の材料として比較的脆弱である。雄/雌鋳型において、圧力及び温度下で、大きい寸法を有する部品のSQRTM又はRTMによる成形中に、膨張係数が炭素繊維の膨張係数に近い鋳型材料の使用を省略することが可能であることが示されている。典型的には、アルミニウム又は鋼の鋳型が使用される。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、複合材料で作製され、湾曲し、大きい寸法を有し、圧力及び温度下で重合される、パネルなどの部品のための鋳型を提供することである。本鋳型は、パネルの厚さの、及び任意の突出した要素の位置の、優れた制御を可能にする。本鋳型はまた、膨張係数が複合材部品の強化材の膨張係数とは著しく異なる材料、例えば、炭素繊維強化材のための鋼又はアルミニウムで作製することもできる。本発明による鋳型は、高品質の部品を魅力的な収率で製造することを可能にする。
【0011】
この目的のために、本発明は、湾曲部品の少なくとも一部分を成形するための鋳型を提案し、部品が、厚さによって分離された第1の部品表面及び第2の部品表面を有し、鋳型は、
-シェルであって、
-第1の部品表面を成形するための第1の成形表面と、第1の成形表面の反対側の第1の外部表面と、を備える第1の部分と、
-第2の部品表面を成形するための第2の成形表面と、第2の成形表面の反対側の第2の外部表面と、を備える第2の部分であって、第1の外部表面及び第2の外部表面のうちの少なくとも一方が、非平面である、第2の部分と
を備える、シェルと、
-軸受システムであって、
-シェルの第1の部分に機械的に結合され、シェルの第1の部分を第1の方向に押圧するように構成される、第1の軸受デバイスと、
-シェルの第2の部分に機械的に結合され、シェルの第2の部分を第1の方向に押圧するように構成される、第2の軸受デバイスと
を備える、軸受システムと
を備え、
鋳型は、シェルの第1の部分と第1の軸受デバイスとの間、及びシェルの第2の部分と第2の軸受デバイスとの間で、第1の方向と垂直な少なくとも1つの方向に摺動することを可能にするように構成される。
【0012】
本発明による鋳型では、部品の第1の表面及び第2の表面の各々は、成形表面のうちの1つによって画定され、部品の厚さは、鋳型の成形表面間の距離によって画定される。鋳型は、第1の方向と垂直な任意の方向に摺動可能であることが好ましい。
【0013】
シェルの第1の部分は、第1の軸受デバイスに対して摺動し、シェルの第2の部分は、第1の方向と垂直な少なくとも1つの方向において第2の軸受デバイスに対して摺動するので、成形表面に軸受デバイスによって及ぼされる応力は、第1の方向のみである。これにより、移動を少なくとも1つの垂直方向に自由にしつつ、圧力を第1の方向にすることが可能になる。したがって、成形中に、成形表面の温度が上昇して膨張すると、成形表面は、第1の方向に対して垂直に延在する自由度を有する一方で、第1の方向に拘束される。その結果、成形表面の熱膨張は、第1の方向と垂直な変形を主にもたらし、第1の方向の圧力による熱膨張にもかかわらず、部品の厚さ、すなわち第1の方向へのその延長は、極めて良好に制御される。例えば、第1の方向が垂直である場合、シェルは、水平に固定されたままの軸受デバイス間で水平に摺動すると考えることができる。その結果、成形表面の熱膨張は、軸受デバイス間のギャップの増加を主にもたらし、このギャップ(したがって、部品の厚さ)は、軸受システムに締付デバイスが及ぼす圧力により極めて良好に制御される。したがって、成形中、部品の厚さは、第1の方向に押圧することによって制御される。
【0014】
成形中、注入された樹脂は、シェルの第1の部分及び第2の部分を離隔させる傾向の圧力を及ぼす。本発明による鋳型では、この外向きの圧力は、軸受システムを介して内向きの圧力を及ぼす締付デバイスによって、主に相殺される。外向き圧力と内向き圧力との間のバランスにより、所望の部品厚さを得ることが可能になる。
【0015】
成形は、120℃~180℃間の温度で5~10バールの圧力下で実行される。典型的には、シェル内部の真空レベルは10ミリバール未満である。
【0016】
第1の軸受デバイスとシェルの第1の部分との間の機械的結合が、第1の軸受デバイスからシェルの第1の部分に第1の方向の圧力を伝達するように、更に第2の軸受デバイスとシェルの第2の部分との間の機械的結合が、第2の軸受デバイスからシェルの第2の部分に第1の方向の圧力を伝達するように、鋳型は構成される。
【0017】
シェルの第1の部分と第1の軸受デバイスとの間の圧力伝達及び摺動は、複数の第1の摺動領域で生じ、シェルの第2の部分と第2の軸受デバイスとの間の圧力伝達及び摺動は、複数の第2の摺動領域で生じる。
【0018】
好ましくは、圧力は、シェルの第1の部分の、及びシェルの第2の部分の、外部表面の一部分にのみ加えられ、この部分は、外部表面の20%未満を占める。言い換えれば、第1の摺動領域は、外部表面の20%未満を表し、第2の摺動領域は、外部表面の20%未満を表す。これにより、特に軽量の鋳型を得ることが可能になる。
【0019】
シェルの第1の部分及びシェルの第2の部分が成形中に互いに対して摺動しないか、又はわずかしか摺動しないように、シェルは設けられる。シェルの第1の部分は、好ましくは雌部分であり、第2の部分は、好ましくは雄部分である。しかしながら、本発明の範囲内でありつつ、反対のことが可能である。
【0020】
外部表面の非平面性により、外部表面は、成形部品の、又は部品の成形部分の、湾曲形状に少なくとも部分的に追従することができる。これにより、シェルを特に軽量にし、したがって特に容易に加熱することが可能である。摺動領域の非共平面性についても同様である。
【0021】
圧力及び温度下で、本発明のシェルのような両面鋳型でのSQRTM又はRTMによる成形は、オートクレーブの使用の省略を可能にする。部品の厚さが、鋳型のエアギャップによって画定され、多孔度を制限するためにオートクレーブが及ぼす圧力によって画定されないので、オートクレーブよりも良好に制御される利点がある。軸受システムのおかげで、本発明による両面鋳型は、鋳型の内部に及ぼす圧力に応じて、エアギャップが過度に変化しないように十分に剛性である。十分な剛性を得るための別の方法は、そのような剛性シェルを使用することであるが、そのようなシェルは特に巨大であり、それを加熱するために必要なエネルギーを増加させる。
【0022】
第1の方向は、好ましくは、成形中に鋳型の内側に強化材及び樹脂によって及ぼされる圧力の大部分を占めるような方向である。
【0023】
第1の方向は、好ましくは垂直であるが、任意(例えば水平)とすることができる一方で、それは、本発明の範囲内である。部品は、主に第2の方向及び第3の方向に延在し、その厚さは、主に第1の方向に延在する。
【0024】
部品は、パネルを好ましくは備える。本発明による鋳型は、少なくとも1m、例えば少なくとも10mのパネルであるか、又はそれを備える部品に特に適している。これは、第2の方向に測定して、少なくとも5m、例えば、少なくとも12mの長さを有してもよい。これは、第3の方向に測定して、少なくとも1m、例えば、少なくとも2mの幅を有してもよい。
【0025】
部品は湾曲している。例えば、「サドル」形状を示す負の屈曲点を有してもよい。部品の中空部は、少なくとも30cm、例えば、少なくとも80cmの深さを有してもよい。
【0026】
軸受デバイスを、例えば、鋼又は炭素繊維で作製することができる。炭素繊維は、質量及び熱膨張の低減を可能にする。
【0027】
シェルの第1の部分と第1の軸受デバイスとの間の、及びシェルの第2の部分と第2の軸受デバイスとの間の、摺動の静摩擦係数μが0.5未満になるように、第1の摺動領域及び第2の摺動領域は、好ましくは1つ又はいくつかの材料を含む。
【0028】
一実施形態によれば、第1の外部表面と第1の軸受デバイスとの間の機械的結合は、第1の外部表面から第1の軸受デバイスまで延在する突出部、及び/又は第1の軸受デバイスから第1の外部表面まで延在する突出部を備え、第2の外部表面と第2の軸受デバイスとの間の機械的結合は、第2の外部表面から第2の軸受デバイスまで延在する突出部、及び/又は第2の軸受デバイスから第2の外部表面まで延在する突出部を備える。したがって、軸受デバイスとシェルの第1の部分及び第2の部分との間の接触は、シェルの表面全体にわたって延在しない。これにより、鋳型を特に軽量にすることができる。第1の方向の圧力は、突出部を介して伝達される。
【0029】
一実施形態によれば、突出部の少なくともいくつかは隆起部を備える。これにより、特に均一な圧力伝達が可能になる。隆起部は、シェルと軸受システムとの間の接触線を形成する。更に、外部表面の隆起状突出部は、シェルの補強を可能にする。しかしながら、本発明の範囲内にありながら、突出部の少なくともいくつかが別の形態、例えば、ロッド又はポストを有することが可能である。
【0030】
一実施形態によれば、第1の外部表面に、及び/又は第2の外部表面に、及び/又は軸受システムに、締結され、突出部間に位置する、加熱要素を、鋳型は備える。加熱要素は、例えば、シェル内に渦電流を誘起する電気抵抗器又は磁気インダクタとすることができる。熱伝達が特に効果的であるので、可能な限りシェルの外部表面に近い加熱要素の配置は、特に少ないエネルギー消費を可能にする。
【0031】
本発明の一実施形態では、軸受システムは、熱伝達流体を通過させるように構成される通路を備える。流体は、ガス、例えば、突出部を形成する壁の孔を通過する、特に空気とすることができる。冷却は、受動的又は強制対流によって行うことができる。特に、鋳型が成形表面と軸受システムとの間に能動冷却システムを備える場合、流体は液体とすることができる。例えば、第1の断熱材間に位置し、冷却された液体が循環する、パイプを、能動冷却システムは備えることができる。ガス及び液体冷却を組み合わせることができる。
【0032】
一実施形態によれば、第1の外部表面と第1の軸受デバイスとの間の機械的結合、及び第2の外部表面と第2の軸受デバイスとの間の機械的結合は、第1の断熱材を備える。したがって、シェルと軸受システムとの間の熱伝達は特に低い。これにより、加熱される材料の質量が、軽いシェルに限定されるので、特に少ないエネルギー消費を可能にする。更に、軸受システムは熱変形を防止する。第1の断熱材は、例えば、0.5Wm-1-1よりも低い熱伝導率を有する材料で作製されてもよく、例えば、ガラス繊維及びGlasthermなどの樹脂ベースの積層材料で作製されてもよい。軸受デバイスは、断熱材料、例えば、炭素繊維複合材で作製されることも可能である。
【0033】
一実施形態によれば、シェルの第1の部分と第1の軸受デバイスとの間の摺動は、複数の第1の摺動領域上で生じ、シェルの第2の部分と第2の軸受デバイスとの間の摺動は、複数の第2の摺動領域上で生じ、鋳型は、第1の摺動領域と第2の摺動領域との間の第1の方向における距離が、鋳型全体にわたって20%未満だけ変化するように構成される。したがって、シェルと軸受システムとの接合点間の第1の方向の距離は、鋳型全体にわたって20%未満だけ変化する。これにより、シェルがその厚さにわたって膨張するとき、すべての摺動領域が同じように第1の方向に離れて移動し(締付デバイスが対応する)、接触がどこでも失われないので、第1の方向に圧力を特に均一に加えることが可能になる。
【0034】
シェルの要素間の距離は、鋳型全体にわたって一定ではない。実際、部品の厚さは、鋳型の2つの場所間で変化し得る。
【0035】
一実施形態によれば、シェルの第1の部分は、第1の成形表面の外側の機械的締結具によって、及び第1の成形表面に沿った溶接部によって、組み立てられた第1のセグメント及び第2のセグメントを備え、並びに/あるいはシェルの第2の部分は、第2の成形表面の外側の機械的締結具によって、及び第2の成形表面に沿った溶接部によって、組み立てられた第1のセグメント及び第2のセグメントを備える。いくつかのセグメントを有することにより、鋳型の製造及び輸送が容易になり、その中で修正の実行を望む場合、シェルの一部が故障した場合、シェルの第1の部分から、又はシェルの第2の部分から、単一のセグメントを分離することが可能になる。例えば、ボルト締めによる機械的組立体は、特に耐性のある正確な分離可能な締結を可能にする。表面溶接により、成形表面を気密にすることができる。溶接部は、10mmの最大厚さを有することが好ましい。これは、レーザによって実行することができる。セグメントの各々は、好ましくは、10メートル未満の長さを有する。溶接部は、セグメントの分離中に破断される。
【0036】
一実施形態によれば、シェルは、第1の成形表面及び/又は第2の成形表面にキャビティを備える。キャビティは、成形(したがって樹脂の重合)後に部品の突出した要素、例えば、補強材を形成する突出した強化材を配置することを可能にする。
【0037】
キャビティは、好ましくは、第1の成形表面にのみ存在し、シェルの第2の部分は存在しない。第1の部分が第2の部分の下に位置する場合、これにより、重いけれども、成形プロセス中に取扱いが制限される第1の部分と、除去可能であり、多くの取扱いを受ける第2の部分と、において複雑さを、単純で、軽量にすることができる。
【0038】
一実施形態によれば、鋳型は、キャビティ内に位置する除去可能なインサートを備え、各インサートは、突出した強化材を受け入れるように意図した開放空間を備える。重合樹脂を用いて、突出した強化材は、部品の突出した要素、典型的には補強材を成形した後に構成される。インサートを、例えば、シェルと同じ材料で作製することができる。それらは、互いに対して除去可能な少なくとも2つの部分を備えてもよい。インサートは、突出した要素の成形、並びにそれらの離型を容易にする。
【0039】
一実施形態によれば、インサートを保持し、第1の成形表面及び/又は第2の成形表面の溝に少なくとも部分的に挿入されるように構成される、除去可能なアームを、鋳型は備える。アームは、突出した要素、補強材、又は部品の他の構成要素を構成する強化材であるインサートを、システム上に取り込むことを可能にし、アームは、鋳型内にインサートを置くために、インサートのそれぞれの位置を維持しつつ、準備する。これにより、かなりの長さを有するインサートをセグメント化し、インサートを正確な相対位置に配置することによってインサートを準備することが可能になる。インサートセグメント間の正確なクリアランスは、鋳型内に配置され、所与の温度になると、その中に配置された強化材を損傷することなく、インサートの熱膨張の影響下でセグメント間のこのクリアランスがなくなるように、画定することができる。
【0040】
アームは、低温インサートと、例えば90~120℃間の予め加熱された成形表面にインサートが収容する強化材と、の正確な設置を可能にする。次いで、他の成形表面が配置される前に、強化材を成形表面及びインサート上に配置することができる。これも予熱されてよい。本解決策は、部品を製造する時間を節約し、加熱されるべき質量の大部分は予熱されている。部品が、例えば180℃で重合されると、アームは、部品を容易に離型し、その後別の部品を成形するために使用され得る鋳型デバイスを迅速に解放することを可能にする。
【0041】
本発明は、鋳型と、締付デバイスと、第1の成形表面と第2の成形表面との間に、好ましくは第1の成形表面と第2の成形表面との間に位置する少なくとも1つの強化材の中及び/又はその周囲に、樹脂を注入するように構成される樹脂注入システムと、を備えるシステムを更に提案する。少なくとも1つの強化材は、主強化材と、任意選択的で、1つ又は複数の他の強化材、例えば突出した強化材と、を含む。RTM法の場合、樹脂は、少なくとも1つの強化材に注入される。SQRTM法では、樹脂は、成形プロセス中の樹脂内の圧力を制御するために、重合前に少なくとも1つの強化材の周りに注入される。本発明による鋳型は、例えば、力が圧縮ガスによって伝達される空気圧式締付デバイスで動作するように意図される。圧力は、好ましくは、(図に示すように)締付デバイスの下部部分によって垂直上方に加えられる。締付デバイスを、軸受システムに部分的に締結するか、又は一方の側で第1の軸受デバイスと一体化し、他方の側で第2の軸受デバイスと一体化することができる。
【0042】
一実施形態によれば、締付デバイスによって加えられる圧力は、シェルの中心と比較してシェルの縁部に異なる圧力を加えることを可能にする領域によって制御することができる。加えられる圧力は、樹脂の注入を容易にするために、及び/又は樹脂の重合中に所望の厚さを得るために、成形中に変化することができる。
【0043】
本発明は、主強化材及び樹脂を組み込む複合材部品を成形するために、本発明による鋳型内で樹脂及び主強化材を加熱することを含む成形方法であって、複合材部品の第1の部品表面が、第1の成形表面に対して成形され、第2の部品表面が、第2の成形表面に対して成形される、成形方法を更に提案する。加熱中、樹脂が、第1の成形表面と第2の成形表面との間に好ましくは注入され、第1の方向の圧力が、軸受システムを介して加えられる。本方法は、例えば、強化材の事前含浸なし(RTM)の、又は強化材の事前含浸あり(SQRTM)の、樹脂トランスファー成形とすることができる。既に存在する樹脂の量が、注入なしでも所望の圧力に達するような量である場合、本方法は、樹脂注入を含まなくてもよい(例えば、「圧縮成形」と呼ばれる方法)。強化材中に存在する樹脂を加熱することにより、樹脂の重合を可能にする。加熱は、シェルの加熱を介して、好ましくは実行される。加熱により、例えば、120℃~180℃間の温度に達することが可能になる。圧力は、特に、許容できない多孔質部をもたらす、樹脂の脱気又は沸騰さえも防止することを可能にする。注入は、好ましくは、5~10バール間の圧力下で実行される。
【0044】
一実施形態によれば、部品は、航空機の翼、航空機の尾翼、航空機の胴体パネル、航空機の翼型フラップ、航空機のフェアリング、又は航空機のエンジン部品のための翼型パネルであるか、又はそれを含む。
【0045】
一実施形態によれば、翼型は、本発明による鋳型で製造された上部パネルと、本発明による別の鋳型で製造された下部パネルと、を備えてもよい。別の実施形態によれば、シェルの成形表面の一方に対する上部パネルと、シェルの成形表面の他方に対する下部パネルと、の上部パネルと下部パネルが、同じ鋳型で製造される。
【0046】
一実施形態によれば、本方法は、樹脂の注入の前に、インサートをキャビティに挿入することと、突出した強化材をインサートの開放空間に挿入することであって、これにより、突出した強化材、主強化材、及び樹脂は、成形によって一体化されて部品を形成する、挿入することと、を含む。インサート及びそれらの位置決めの精度は、突出した要素が特に明確な形状を有することを意味する。
【0047】
一実施形態によれば、インサートがキャビティに挿入されるとき、シェルは、40℃を超える温度、例えば90℃~120℃間の温度にある。例えば、シェルは、連続する成形間で、40℃超、例えば90℃~120℃間に維持することができる。これにより、シェルの温度を上昇させるために必要なエネルギー量の低減が可能になる。
【0048】
一実施形態によれば、加熱は、以下の期間に行われる:
-第1の方向の圧力がシェル全体にわたって均一である期間、及び
-中央シェル領域上の第1の方向の圧力が周辺シェル領域上の圧力と異なる少なくとも1つの他の期間。
【図面の簡単な説明】
【0049】
本発明の他の特徴及び利点は、理解のために添付の図面を参照する以下の詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。
図1】シェルの垂直概略図である。
図2】成形システムの垂直概略図である。
図3】鋳型の一部分の垂直概略図である。
図4a】第1の軸受デバイスを示す図である。
図4b】第2の軸受デバイスを示す図である。
図5】第1の部分及び第2のシェル部分のいくつかのセグメント間の組立体の概略図である。
図6a】第2のシェル部分の上面図である。
図6b】第2のシェル部分の底面図である。
図7】第1のシェル部分の上面図である。
図8】鋳型の第1の部分のキャビティ内のインサートを示す垂直図である。
図9】突出した強化材及びインサートの概略上面図である。
図10】シェルの第1の部分上の突出した強化材及びインサートの概略上面図である。
図11a】注入前のシェルの第1の部分上の突出した強化材及びインサートの概略垂直断面図である。
図11b】注入後に開いた鋳型内の部品の概略垂直断面図である。
図11c】成形部品の概略垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
発明の実施形態
本発明は、特定の実施形態及び図面を参照して説明するが、本発明はそれによって限定されない。説明する図面又は図は概略的なものにすぎず、限定的なものではない。更に、説明する機能は、本明細書に記載したもの以外の構造によって実行されてもよい。
【0051】
本文書の文脈において、「第1」及び「第2」という用語は、様々な要素間を区別するために役立つだけであり、これらの要素間の順序を意味しない。
【0052】
図面において、同一又は類似の要素は、同じ参照符号を有することがある。
【0053】
本発明の様々な要素は、第1の方向501、第2の方向502、及び第3の方向503を参照して説明する。第2の方向502及び第3の方向503は、第1の方向501に対して垂直であり、好ましくは互いに垂直である。参照番号501、502及び503は、特に図8に示している。図面は、第1の方向501が垂直である本発明の一実施形態に対応する。
【0054】
図1は、本発明の一実施形態による鋳型1で使用されるように意図したシェル2の垂直概略図である。シェル2は、第1の部分10と、第2の部分20と、を備える。第1の方向501が垂直であるとき、第1の部分10及び第2の部分20は本質的に水平であり、第1の部分10は、第2の部分20の下方にあるように意図している。第1の部分10は、第1の成形表面11を備え、第2の部分20は、第2の成形表面21を備え、これらは鋳型1によって成形される部品9(図2及び図3)の形状を共に画定する。部品9は、成形されると、主強化材99、突出した強化材93(図11a)、及び重合樹脂を組み込む。主強化材99及び突出した強化材93は、炭素繊維から作製される。
【0055】
第1の成形表面11は、部品9の第1の部品表面91を成形することを可能にし、第2の成形表面21は、部品9の第2の部品表面92を成形することを可能にする。シェル2は、その周囲において、第1の部分10及び第2の部分20が互いに対して、摺動しない、又はわずかしか摺動しないように設けられる。例えば、図1の左端部及び右端部におけるそれらの間の摩擦は、摺動を防止するために十分であり得る。
【0056】
第1の部分10は、第1の成形表面11に対向する第1の外部表面12を備え、第2の部分20は、第2の成形表面21に対向する第2の外部表面22を備える。第1の外部表面12及び/又は第2の外部表面22は、部品9の曲げに少なくとも部分的に追従するように非平面である。第1の外部表面12は、好ましくは第1の方向501と垂直なファセット14を備え、及び/又は第2の外部表面22は、好ましくは第1の方向501と垂直なファセット24を備える。
【0057】
図2は、本発明の一実施形態による成形システム100の垂直概略図である。成形システム100は、鋳型1と、鋳型1に第1の方向501の圧力を加えるために流体を受け入れるように設けられたビード101を含む、例えば、空気圧又は油圧の締付デバイス110と、を備える。鋳型1は、シェル2と、軸受システム3と、を備える。成形システム100はまた、好ましくは、第1の成形表面11と第2の成形表面21との間に樹脂を注入するように構成される樹脂注入システム120を備える。
【0058】
軸受システム3は、第1の摺動領域51を介して第1の部分10を第1の方向501に押圧するように構成される第1の軸受デバイス30と、第2の摺動領域52を介して第2の部分20を第1の方向501に押圧するように構成される第2の軸受デバイス40と、を備える。第1の摺動領域51は、同一平面内になく、及び/又は第2の摺動領域52は、同一平面内にない。
【0059】
第1の摺動領域は、第1の部分10と第1の軸受デバイス30との間の第1の方向501と垂直な摺動を可能にし、第1の方向501の圧力を第1の軸受デバイス30から第1の部分10に伝達する。第2の摺動領域は、第2の部分20と第2の軸受デバイス40との間の第1の方向501と垂直な摺動を可能にし、第1の方向501の圧力を第2の軸受デバイス40から第2の部分20に伝達する。
【0060】
本発明の一実施形態では、第1の外部表面12は、下方に延在する突出部13を備え、第1の軸受デバイス30は、上方に延在する突出部31を備え、第1の摺動領域は、第1の外部表面12の突出部13と第1の軸受デバイス30の突出部31との間の境界面にある。
【0061】
本発明の一実施形態では、第2の外部表面22は、上方に延在する突出部23を備え、第2の軸受デバイス40は、下方に延在する突出部41を備え、第2の摺動領域は、第2の外部表面22の突出部23と第2の軸受デバイス40の突出部41との間の境界面にある。
【0062】
好ましくは、第1の摺動領域と第2の摺動領域との間の第1の方向501の距離は、鋳型1全体にわたって20%未満だけ変化する。
【0063】
第1の軸受デバイス30は、第1の方向501と垂直で、シェル2の反対側に方向付けられた、平坦な外部表面39を備える。平坦な外部表面39は、締付デバイス110の第1の部分111と接触しているか、又は一体である。第2の軸受デバイス40は、第1の方向501と垂直で、シェル2の反対側に方向付けられた、平坦な外部表面49を備える。平坦な外部表面49は、締付デバイス110の第2の部分112と接触しているか、又は一体である。締付デバイス110の第1の部分111、及び締付デバイス110の第2の部分112は、機械的に連結113されている。
【0064】
図3は、本発明の一実施形態による鋳型1の一部分の垂直概略図である。本発明のいくつかの任意選択の特徴を、特に、シェル2の突出部13、23間に位置する加熱要素60、摺動領域51、52に位置する第1の断熱材71、及びシェル2の反対側の加熱要素60に位置する第2の断熱材72を、示すことが可能になる。第2の断熱材72は、例えば、0.5Wm-1-1より低い熱伝導率を有する材料、例えば、グラスウールで作製されてもよい。
【0065】
加熱要素60は、特に、伝導加熱の場合、好ましくは外部表面12、22に当接する。加熱要素60は、放射加熱又は誘導加熱の場合、好ましくは外部表面12、22に面する。
【0066】
図4a及び図4bは、本発明の一実施形態における第1の軸受デバイス30及び第2の軸受デバイス40をそれぞれ示し、軸受デバイス30、40の突出部31、41は隆起部である。突出部31、41は、区画32、42又はボックスを画定する壁を形成する。これらの壁は、区画32、42間に通路33、43を形成する穴によって、好ましくは横断される。軸受デバイス30、40のそのような構造は、軸受デバイスを特に軽量にし、特に、軸受デバイスの取扱いを容易にし得る。これはまた、例えば、強制対流によって、及び熱伝達流体システムによって、循環空気のおかげで、熱の放散を可能にする。
【0067】
一般に、軸受デバイス30、40は、少なくとも50%中空であることが好ましい。言い換えれば、軸受デバイス30、40の各々が占める体積の少なくとも50%は、固体材料で作製されない。
【0068】
図5は、本発明の一実施形態における、第1の部分10の第1のセグメント17と第2のセグメント18との間の組立体、及び第2の部分20の第1のセグメント27と第2のセグメント28との間の組立体の概略図である。組立体の各々は、成形表面11、21の外側に位置する機械的締結具58、及び/又は少なくとも成形表面11、21に位置する溶接部59を備える。機械的締結具58及び溶接部59は、好ましくは、互いに空間的に分離される。機械的締結具58は、例えば、ボルトが通過するフランジ16、26を備えてもよい。溶接部59は、三角形の長手方向断面を有してもよい。セグメント17、18間又は27、28間の境界面は、封止部57を備えてもよい。
【0069】
図6aは、本発明の一実施形態における第2のシェル部分20の第2の外部表面22を示している。第2の部分20の突出部23は、隆起部である。それらはファセット24を画定する。同様に、図10に好適に図示するように、第1の部分の突出部13は、ファセット14を画定する隆起部である。第2の部分20は、それらの接合部でフランジ26で終端する、第1のセグメント27、第2のセグメント28、及び第3のセグメント29を備える。
【0070】
図6bは、本発明の一実施形態における第2のシェル部分20の第1の成形表面21を示している。
【0071】
図7は、本発明の一実施形態における第1のシェル部分10の第1の成形表面11を示している。第1の部分10は、第1のセグメント17と、第2のセグメント18と、及び第3のセグメント19と、を備える。部品9の周囲15は、第1の成形表面11上に図示している。鋳型1は、好ましくは、周囲15の周りに封止部115を備える。
【0072】
本発明の一実施形態では、シェル2は、好ましくは第1の成形表面11に、少なくとも部分的に突出した強化材93(特に図11aに図示)を受けるように設けられたキャビティ81を備える。追加的に、又は代替的に、それは第2の成形表面21に一部を備えることができる。キャビティ81及び突出した強化材93は、特に、第1の方向501と垂直に延在する。それらは、主に第2の方向502に沿って延在する。それらは平行ではない。主強化材99及び突出した強化材93は、予め形成され、これらは、成形中に部品9に組み込まれる前に既に形成される。
【0073】
シェル2は、好ましくは、第1の成形表面11の、又は場合によっては第2の成形表面12の、溝85を備える。溝85は、アーム84(図10に図示)を受け入れるように意図している。アーム84及び溝85は、好ましくは、少なくとも部分的に、第3の方向503に延在する。
【0074】
突出した強化材93は、好ましくは、シェル2に対して除去可能なインサート82の開放空間83に少なくとも部分的に挿入され、インサート82自体は、キャビティ81に少なくとも部分的に挿入される(図8)。
【0075】
インサート82を、第1の成形表面11、又は場合によっては第2の成形表面12の溝85に少なくとも部分的に挿入されたアーム84(図10に図示)によって保持することができる。
【0076】
図8はまた、インサート82が好ましくは少なくとも部分的にキャビティ81に挿入されることを示している。インサート82は、シェル2に対して除去可能である。それらは、好ましくは、2つの部分82a、82bにあり、開放空間83は、2つの部分82a、82b間にある。それらは、突出した強化材93を保持するように意図している。
【0077】
図9は、インサート82に設置中の突出した強化材93の概略上面図である。突出した強化材93は、中間空間87によって分離された、いくつかのインサート82上に載置することができる。次いで、インサート82を、一時的な支持システム86によって保持することができる。アーム84は、それぞれの位置を尊重しつつ、支持システム86上のインサート82及び突出した強化材93をピックアップし、図10に示すように第1の部分10上に配置される。
【0078】
図10は、第1の部分10に設置中の突出した強化材93及びインサート82の概略上面図である。第1の部分10の第1の外部表面12上にある、隆起部の形態の突出部13、及びファセット14もそこに示している。
【0079】
実際には、2つの部品9の連続する成形間、シェル2は、高温、例えば約120°~140°のままである。シェル2は、例えば少なくとも40℃に留まる。インサート82及び突出した強化材93を保持するアーム84が第1の高温部分10に配置されたとき、インサート82が膨張し、中間空間87が消失する。
【0080】
図11aは、注入前の第1の部分10における主強化材99、インサート82、及び突出した強化材93の正確な位置決めを示す垂直断面図である。
【0081】
注入中、主強化材99及び突出した強化材93は、成形表面11、21間の空間に位置し、それらを含みそれらを囲む樹脂は、重合するように硬化される。締付デバイス110は、軸受システム3を介して、第1の方向501に圧力を加えて、成形表面11、21が第1の方向501に離れて移動することを防止する。温度(例えば、160°~180°)の影響下で、成形表面11、21は、摺動領域により軸受システム3に対して水平に膨張する。突出した強化材93、主強化材90、及び樹脂は、樹脂の重合中に部品9に組み込まれる。
【0082】
好ましくは、加熱は、第1の方向501の圧力がシェル2に均一に加えられる期間と、シェル中央領域2上の第1の方向501の圧力がシェル周辺領域2上の圧力と異なる少なくとも1つの他の期間と、を含む。例えば、第1の期間中、第1の方向501の圧力は、注入を容易にするために、周辺領域よりも中央領域で低くすることができ、第2の期間中、第1の方向501の圧力は、部品の所望の形状を得るために均一とすることができ、第3の期間中、第1の方向501の圧力は、部品の中心が潰れることを避けるために、周辺領域よりも中央領域で低くすることができる。実際、加熱中、樹脂が固化し始めたとき、部品9は収縮し、シェル2に及ぼす圧力が減少する。部品9上、少なくともシェル2の中央領域における鋳型1の圧力の低下は、この現象を考慮に入れることを可能にする。
部品9の周囲15(図7に示す)を中央領域よりも高い圧力に維持することにより、封止部の維持が可能になる。
【0083】
部品9への圧力の経時的な変化を可能にするため、締付デバイス110は、圧力を経時的に変化させ得るように構成される。部品9への圧力の空間的調整を可能にするため、締付デバイス110は、中央領域と、中央領域を囲む周辺領域と、を好ましくは備え、これにより、中央領域内の圧力は周辺領域内の圧力とは異なり得る。
【0084】
図11bは、第2の部分20が持ち上げられたときの部品9を示している。注入中に残ったアーム84は、離型中の部品9の取扱いに役立つ。
【0085】
図11cは、鋳型1からの部品9を示している。部品9は、突出した強化材93及び重合樹脂から形成された突出した要素94を備える。
【0086】
言い換えれば、本発明は、大きい寸法を有する湾曲部品9を成形するための鋳型1に関する。鋳型1は、第1の部分10と、第2の部分20と、軸受デバイス30、40と、第1の部分10と軸受デバイス30、40のうちの一方の30との間、及び第2の部分20と軸受デバイス30、40のうちの他方の40との間に位置する摺動領域と、を備える。鋳型1は、第1の部分10及び第2の部分20が水平方向に摺動することを可能にする一方で、軸受デバイス30、40は、それに垂直の圧力を加える。
【0087】
本発明を特定の実施形態に関連して説明してきたが、これらは純粋に例示的なものであり、限定するものとして解釈されるべきではない。一般に、本発明は、例示及び/又は上述の例に限定されない。動詞「備える」、「含む」、「有する」、又は任意の他の変形、並びにそれらの活用形の使用は、言及したもの以外の要素の存在を決して除外することはできない。要素を導入するための不定冠詞「a」、「an」、又は定冠詞「the」の使用は、これらの要素の複数の存在を排除するものではない。特許請求の範囲における参照番号は、それらの範囲を限定するものではない。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図11c
【国際調査報告】