(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-11
(54)【発明の名称】マニピュレータヘッドおよび負圧システム
(51)【国際特許分類】
G01N 23/2204 20180101AFI20250304BHJP
G01N 23/2273 20180101ALI20250304BHJP
G01N 27/28 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
G01N23/2204
G01N23/2273
G01N27/28 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547721
(86)(22)【出願日】2023-02-13
(85)【翻訳文提出日】2024-09-24
(86)【国際出願番号】 DE2023100119
(87)【国際公開番号】W WO2023151760
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】102022103442.9
(32)【優先日】2022-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512028770
【氏名又は名称】スペックス サーフェス ナノ アナリシス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】SPECS Surface Nano Analysis GmbH
【住所又は居所原語表記】Voltastrasse 5, 13355 Berlin, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100210099
【氏名又は名称】遠藤 太介
(72)【発明者】
【氏名】カイ クンツェ
(72)【発明者】
【氏名】ダーフィト シューマッハ
(72)【発明者】
【氏名】カーステン ディアシュケ
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA08
2G001CA03
2G001DA09
2G001EA04
2G001GA01
2G001GA11
2G001GA16
2G001JA14
2G001LA11
2G001MA02
2G001MA05
2G001PA06
2G001PA11
2G001PA12
2G001PA18
2G001QA01
2G001QA02
(57)【要約】
本発明は、負圧、特に600mbar未満の絶対圧が生じた状態において負圧システムでの液体(18)の圧送に関する。このために、負圧が生じた状態で負圧ハウジングにおいて使用するためのマニピュレータヘッド(10’)が設けられている。マニピュレータヘッド(10’)は、液体セル(12)と液体ポンプ(14)とを有している。液体セル(12)は、液体セル流出部(22)と、負圧用に形成され、液体(18)を収容するように構成された内部空間(16)とを有している。液体ポンプ(14)は、液体セル流出部(22)に流体接続された液体圧送領域(26)を有しており、かつ液体セル(12)の内部空間(16)内に負圧が生じた状態で、液体(18)を液体圧送領域(26)から圧送するために形成されている。液体セル(12)の液体セル流出部(22)と液体ポンプ(14)の液体圧送領域(26)との間の間隔(d’)は、液体セル(12)の内部空間(16)内で600mbar未満の絶対圧が生じた状態で、液体(18)が少なくとも液体ポンプ(14)の液体圧送領域(26)内にまで延び、これにより液体ポンプ(14)が液体(18)を圧送することができるように選択されている。このことは、液体(18)を600mbar未満の絶対圧で循環させることができ、特に空にすることもできる、負圧システムのためのコンパクトな構造を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニピュレータヘッド(10;10’;10’’;10’’’)であって、該マニピュレータヘッド(10;10’;10’’;10’’’)は、負圧が生じた状態で負圧ハウジング(70)内において使用するように構成されており、かつ
液体セル流出部(22;22’’;22’’’)と、液体(18)を収容するように構成された、負圧用に形成された内部空間(16)とを備えた液体セル(12;12’’;12’’’)と、
前記液体セル流出部(22;22’’;22’’’)に流体接続された液体圧送領域(26;26’’;26’’’)を有し、前記液体セル(12;12’’;12’’’)の前記内部空間(16)内に負圧が生じた状態で前記液体圧送領域(26;26’’;26’’’)から前記液体(18)を圧送するように構成された液体ポンプ(14;14’’;14’’’)と
を有し、
前記液体セル(12;12’’;12’’’)の前記液体セル流出部(22;22’’;22’’’)と前記液体ポンプ(14;14’’;14’’’)の前記液体圧送領域(26;26’’;26’’’)との間の間隔(d;d’;d’’;d’’’)は、前記液体セル(12;12’’;12’’’)の前記内部空間(16)内に600mbar未満、好ましくは400mbar未満、特に100mbar以下の絶対圧が生じた状態で前記液体(18)が少なくとも前記液体ポンプ(14;14’’;14’’’)の前記液体圧送領域(26;26’’;26’’’)にまで延び、これにより前記液体ポンプ(14;14’’;14’’’)が前記液体(18)を圧送することができるように選択されている、マニピュレータ(10;10’;10’’;10’’’)。
【請求項2】
前記液体セル流出部(22;22’’)は、前記液体セル(12;12’’)の底部領域、特に前記液体セル(12;12’’)の前記内部空間(16)の最深点に配置されており、前記液体セル(12;12’’)の前記液体セル流出部(22;22’’)は、前記液体ポンプ(14;14’’)の前記液体圧送領域(26;26’’)に対して鉛直方向の間隔(d;d’;h’’)を置いて配置されており、該鉛直方向の間隔(d;d’;h’’)は、前記液体セル(12;12’’)の前記内部空間(16)内に600mbar未満、好ましくは400mbar未満、特に100mbar以下の絶対圧が生じた状態で前記液体(18)が少なくとも前記液体ポンプ(14;14’’)の前記液体圧送領域(26;26’’)内にまで延び、これにより前記液体ポンプ(14;14’’)が前記液体(18)を圧送することができるように選択されている、請求項1記載のマニピュレータヘッド(10;10’;10’’)。
【請求項3】
前記液体セル(12;12’’;12’’’)の底部は、前記液体セル流出部(22;22’’;22’’’)の方向に傾斜しており、該傾斜は、前記液体(18)が前記液体セル流出部(22;22’’;22’’’)の方向に流れるように選択されている、請求項1または2記載のマニピュレータヘッド(10;10’;10’’;10’’’)。
【請求項4】
前記液体ポンプ(14;14’’;14’’’)は、容積式ポンプ、特に蠕動ポンプを有している、請求項1から3までの少なくともいずれか1項記載のマニピュレータヘッド(10;10’;10’’;10’’’)。
【請求項5】
前記液体セル(12;12’’;12’’’)は、作用電極(13)と対極(15)とを有する電気化学セルである、請求項1から4までの少なくともいずれか1項記載のマニピュレータヘッド(10;10’;10’’;10’’’)。
【請求項6】
前記作用電極(13)は、液面に対して傾斜して前記電気化学セル(12;12’’;12’’’)内に配置されており、
前記作用電極(13)の第1の部分(23)が運転中に前記液体(18)から突出し、
前記作用電極(13)の第2の部分(23’)が前記液体(18)により濡らされていて、且つ
前記作用電極(13)の第3の部分(23’’)が前記液体(18)内に位置していることができる
ように、前記傾斜が選択されている、請求項5記載のマニピュレータヘッド(10;10’;10’’;10’’’)。
【請求項7】
マニピュレータ内部空間(62)を備えたマニピュレータ(60)であって、該マニピュレータ(60)は、負圧ハウジング(70)に気密に接続されるように構成されており、前記マニピュレータ(60)は、遠位の端部(65)を備えた移動可能な軸部(64)を有し、該遠位の端部(65)は、前記マニピュレータ(60)が前記負圧ハウジング(70)に接続された状態において前記負圧ハウジング(70)の中空室(72)内で移動可能であり、前記移動可能な軸部(64)の前記遠位の端部(65)は、請求項1から6までの少なくともいずれか1項記載のマニピュレータヘッド(10)を有し、これにより前記マニピュレータヘッド(10)は、前記マニピュレータ(60)が前記負圧ハウジング(70)に接続された状態において前記負圧ハウジング(70)の前記中空室(72)内に配置されている、マニピュレータ(60)。
【請求項8】
負圧システム(100;100’’)であって、該負圧システム(100;100’’)は、
負圧が生じた状態で第1の中空室(72)を気密に取り囲むための負圧ハウジング(70)と、
請求項1から6までの少なくともいずれか1項記載のマニピュレータヘッド(10;10’;10’’;10’’’)と
を有する、負圧システム(100;100’’)。
【請求項9】
負圧が生じた状態で第1の中空室(72)を気密に取り囲むための負圧ハウジング(70)と、
請求項7記載のマニピュレータ(60)と
を有する、負圧システム(100)。
【請求項10】
液体セル(12;12’’;12’’’)に粒子または放射線(X)を照射するように構成された照射システム(80)と、
前記液体セル(12;12’’;12’’’)から放出された粒子(p)または放射線を受け取るように構成された検出器システム(90)と
を有する、請求項8または9記載の負圧システム(100;100’’)。
【請求項11】
マニピュレータヘッドを製造する方法(600)であって、
液体セル流出部と、液体を収容するように構成された、負圧用に形成された内部空間とを備えた液体セルを準備するステップ(602)と、
前記液体セル流出部に流体接続された液体圧送領域を有し、前記液体セルの前記内部空間内に負圧が生じた状態で前記液体圧送領域から前記液体を圧送するように構成された液体ポンプを準備するステップ(604)と、
前記液体セルの前記液体セル流出部と、前記液体ポンプの前記液体圧送領域との間の間隔を、前記液体セルの前記内部空間内で600mbar未満、好ましくは400mbar未満、特に100mbar以下の絶対圧が生じた状態で前記液体が少なくとも前記液体ポンプの前記液体圧送領域にまで延び、これにより前記液体ポンプが前記液体を圧送することができるように選択するステップ(606)と
を有する方法。
【請求項12】
請求項10記載の負圧システムを運転する方法(500)であって、
液体セルの内部空間内に600mbar未満、好ましくは400mbar未満、特に100mbar以下の絶対圧を生成するステップ(502)と、
前記液体セル内に液体を準備するステップ(504)と、
液体ポンプを用いて前記液体ポンプの液体圧送領域から液体を圧送し、これにより前記液体を前記液体セルから圧送する、ステップ(506)と、
前記液体セルに照射システムからの粒子または放射線を照射することができ、かつ放射線または粒子を検出器システムにより受け取ることができるように、前記液体セル、前記照射システムおよび前記検出器システムを相互に配置するステップ(508)と、
前記液体セルに前記照射システムの粒子または放射線を照射するステップ(510)と、
前記液体セルから放出された放射線または粒子を前記検出器システムにおいて検出するステップ(512)と
を有する、方法。
【請求項13】
前記液体セルに前記照射システムからの粒子または放射線を照射することができ、かつ放射線または粒子を前記検出器システムにより受け取ることができるように、前記液体セル、前記照射システムおよび前記検出器システムを相互に配置するために、前記マニピュレータを用いて前記液体セルを移動かつ/または傾斜させるステップと、
前記液体ポンプの前記液体圧送領域からの前記液体の圧送中に、前記液体セル内に前記液体を準備するステップと、
前記液体セルの前記内部空間内で規定された液体レベルが一定に維持されるように、前記液体セル内に液体を準備し、かつ前記液体ポンプの前記液体圧送領域から前記液体を圧送するステップと、
前記液体セルの前記内部空間内で前記液体レベルを変化させるように、前記液体セル内に前記液体を準備し、かつ前記液体ポンプの前記液体圧送領域から前記液体を圧送するステップと、
運転中に作用電極の第1の部分が前記液体から突出し、前記作用電極の第2の部分が前記液体により濡らされていて、かつ前記作用電極の第3の部分が前記液体内に位置していることができるように、前記電気化学セルの前記作用電極を傾斜させるステップと、
運転中に前記作用電極の第1の部分が前記液体から突出し、前記作用電極の第2の部分が前記液体により濡らされていて、かつ前記作用電極の第3の部分が前記液体内に位置しているように、前記電気化学セル内に前記液体を準備し、かつ前記液体ポンプの前記液体圧送領域から前記液体を圧送するステップと、
運転中に前記液体から突出している前記作用電極の前記第1の部分と、前記液体により濡らされている前記作用電極の前記第2の部分と、前記液体内に位置している前記作用電極の前記第3の部分とが相前後して照射されるように、前記電気化学セルの前記作用電極に前記照射システムからの粒子または放射線を照射するステップと
のうちの1つまたは複数のステップを有している、請求項12記載の方法。
【請求項14】
表面分析、
表面反応の測定、
液体-固体反応の測定、
液体-気体反応の測定、
液体の測定、
薄層の測定
液体中の異物の検出、
光電子放出測定、
大気圧付近での光電子分光測定、
大気圧付近でのX線光電子分光測定、
電気化学的な測定、
バッテリ分析、
酸化測定、
電解質測定、
電極測定、
液体を通した試料測定
品質管理、
腐食測定、
触媒測定、
圧力依存測定、
生体試料の測定、
電位差測定、
過飽和液体の測定
のための請求項10記載の負圧システム(100;100’’)の使用。
【請求項15】
表面分析、
表面反応の測定、
液体-固体反応の測定、
液体-気体反応の測定、
液体の測定、
薄層の測定、
液体中の異物の検出、
光電子放出測定、
大気圧付近での光電子分光測定、
大気圧付近でのX線光電子分光測定、
電気化学的な測定、
バッテリ分析、
酸化測定、
電解質測定、
電極測定、
液体を通した試料測定、
品質管理、
腐食測定、
触媒測定、
圧力依存測定、
生体試料の測定、
電位差測定、
過飽和液体の測定
のための請求項12または13記載の方法(500)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、負圧において負圧ハウジング内で使用するためのマニピュレータヘッド、マニピュレータヘッドを備えたマニピュレータ、マニピュレータヘッドを備えた負圧システムならびにマニピュレータヘッドの製造方法、負圧システムを運転する方法および負圧システムの使用ならびに負圧システムを運転する方法の使用に関する。特に本発明は、600mbar未満、例えば400mbar未満、特に100mbar以下の絶対圧での電気化学セルの充填および排出に関する。
【0002】
従来技術
SPECS Surface Nano Analysis GmbH社の製品O-EC-NAP Operando Electrochemical Cell用の2020年6月2日付けの取扱い手順V.1.0から負圧システムが知られており、この負圧システムでは、負圧において電気化学セルにおける測定を実施することができるように、電気化学セルが負圧ハウジング内に配置されている。電気化学セルには、水ベースの電解質が充填されているので、試料電極および水ベースの電解質における測定を実施することができる。電気化学セルの水ベースの電解質を空にするために、負圧ハウジング外に蠕動ポンプが配置されており、この蠕動ポンプは、負圧ハウジング内の600mbar以上の絶対圧において、水ベースの電解質を電気化学セルから圧送することができる。電気化学セルを空にするためには、水ベースの電解質を電気化学セルから圧送することができるまで、負圧ハウジング内において絶対圧が高められる。
【0003】
国際公開第01/16486号は、真空チャンバ内にポンプ機構を備えた蠕動ポンプを示している。真空チャンバ内におけるポンプ機構の配置は、ポンプ通路の内側と外側との間の圧力差を減じ、これにより、閉じ込められた流体体積の変化を最小限にすることができる。
【0004】
発明の説明
600mbar未満の絶対圧において液体を圧送することを可能にする、マニピュレータヘッド、マニピュレータヘッドを備えたマニピュレータおよびマニピュレータヘッドを備えた負圧システムならびにマニピュレータヘッドの対応する製造方法およびマニピュレータヘッドを備えた負圧システムを運転する方法を規定することを、本発明の課題と見なすことができる。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、負圧が生じた状態で負圧ハウジング内において使用するように構成されたマニピュレータヘッドが規定されている。マニピュレータヘッドは、液体セルと液体ポンプとを有している。液体セルは、液体セル流出部と、液体を収容するように構成された、負圧用に形成された内部空間とを有している。液体ポンプは、液体セル流出部に流体接続された液体圧送領域を有していて、液体セルの内部空間内で負圧が生じた状態で液体を液体圧送領域から圧送するように構成されている。液体セルの液体セル流出部と液体ポンプの液体圧送領域との間の間隔は、液体セルの内部空間内で600mbar未満の絶対圧、例えば400mbar未満、特に100mbar以下の絶対圧が生じた状態で液体が少なくとも液体ポンプの液体圧送領域にまで延び、これにより液体ポンプが液体を圧送することができるように選択されている。
【0006】
負圧とは、ここでは、大気圧よりも低い絶対圧として理解され、つまり負圧は、大気圧よりも低い絶対圧、例えば1013.25mbarもしくは1atm未満である。液体セルの内部空間における負圧は、例えば0.1mbar~600mbar未満の絶対圧であってもよい。好ましくは、液体セルの内部空間における絶対圧は、0.1mbar~100mbarであってもよい。
【0007】
液体セルの内部空間は、マニピュレータヘッドの周囲に流体接続されていてもよい。つまり、液体セルの内部空間と、マニピュレータヘッドの周囲との間で気体および液体を交換することができる。このためには、液体セルは、例えばマニピュレータヘッドの周囲に対する開口を有していてもよい。これにより、マニピュレータヘッドが負圧ハウジング内に配置されている場合に、液体セルの内部空間における圧力を、負圧ハウジング内の運転圧を介して調節することができる。
【0008】
マニピュレータヘッドは、例えば負圧システムの負圧ハウジング内に配置されていてもよく、この負圧ハウジングは、液体の蒸気圧平衡付近で運転させられる。これにより、液体の表面に作用する圧力もしくは固定された温度での運転圧が規定されている。このような低い運転圧では、従来技術から公知の負圧システムでは、例えば液体の密度、液体の粘度、液体管路出口と液体圧送領域との間の液体管路の内径もしくは液体を導出するための液体管路内径、液体管路の材料、液体管路の長さ等のような別のパラメータに応じて、液体は運転圧のみに基づいて流出することはできない。液体を交換したい場合、従来技術から公知の負圧システムでは運転圧を増大させなければならず、このことは、運転、例えば例えば測定の中断につながってしまう。
【0009】
液体ポンプが液体を圧送して排出することができるようにするためには、液体が液体ポンプの液体圧送領域内へと延びていなければならない。発明者らは、従来技術から公知の負圧システムの液体セルの液体セル流出部が液体ポンプの液体圧送領域に対して過度に大きな間隔を有している場合、運転圧だけではこのことを確実にできないことを認識した。この場合、液体セル流出部と液体ポンプの液体圧送領域との間の管路の圧力損失は、液体を液体圧送領域に押し込む圧力よりも大きくなってしまう。
【0010】
マニピュレータヘッドが、液体セルおよび液体ポンプの両方を有しているので、よりコンパクトな構造を達成することができ、これにより、液体セルの液体セル流出部と液体ポンプの液体圧送領域との間のより小さな間隔を達成することができる。このことは、液体が液体ポンプの液体圧送領域内にまで延びることを妨げる、液体に反対に作用する力を減じる。特に、液体セルの液体セル流出部と液体圧送領域との間の間隔がより短く、ひいては液体セル流出部と液体圧送領域との間の液体管路もより短い場合、液体セルの液体セル流出部と液体ポンプの液体圧送領域との間の液体管路に沿った圧力損失を減じることができる。この圧力損失は、特に液体と液体管路との間の摩擦力によって引き起こされる。液体管路に沿った圧力損失を、液体ポンプによる液体の圧送が液体に作用する、600mbar未満の絶対圧、例えば400mbar未満の絶対圧、例えば100mbar以下、特に0.1mbar~100mbar、例えば10mbar~100mbarの絶対圧でも可能であるように減じることができる。これによりマニピュレータヘッドおよび特に液体セルの運転時に、600mbar未満、例えば100mbar以下の絶対圧で液体を圧送し、ひいては交換することができ、この場合に、圧送を可能にするために、マニピュレータヘッドの周囲のより高い圧力を生ぜしめる必要はない。このことは、液体セルを空にすることも可能にする。液体を交換するために負圧を解除する必要がないので、マニピュレータヘッドの周囲、特に液体セル内への汚れの侵入を阻止するか、または少なくとも減じることができる。このことは、マニピュレータヘッドの改善された運転を可能にする。例えば、マニピュレータヘッド、特に液体の蒸気圧平衡における液体セルの運転時にも液体を、圧力上昇なしに圧送し、例えば交換することができる。さらに、所望の運転圧で、液体セルへの液体の追加または液体セルからの除去が可能であるので、液体セルにおける種々異なる液体レベルの箇所での測定が可能である。例えば、マニピュレータヘッドが、照射システムおよび検出器システムを備えた負圧システムにおいて試料を分析するために使用される場合、試料上の測定すべき箇所を変更する必要なしに、試料を、濡れていない状態、濡れた状態および試料の表面上に種々異なる厚さの液膜を有する状態で分析することができる。
【0011】
液体セルの液体セル流出部と液体ポンプの液体圧送領域との間の間隔は、液体セルの内部空間内で600mbar未満の負圧、特に100mbar以下の負圧が生じた状態で液体が少なくとも液体ポンプの液体圧送領域内にまで延びるように選択されているので、液体を、種々異なる液体および液体セルの種々異なる運転パラメータのためにも圧送することができる。
【0012】
液体ポンプの液体圧送領域内に延び、これにより液体ポンプが液体を圧送することができるとは、液体が、液体を圧送するためにポンプ要素が作用することができる程度に液体ポンプ内へと延びていることであると理解される。例えばポンプ要素は、蠕動ポンプのローラまたは滑りシューのような圧迫要素であってもよい。この場合、液体は、液体ポンプの液体管路を圧迫要素により圧迫し、次いで液体管路を圧迫しながら圧迫要素を移動させることによって液体が圧送され得る程度に液体ポンプ内へと延びていなければならない。この場合、液体圧送領域は圧迫要素の圧迫位置の背後で開始し、液体は、液体ポンプが液体を圧送することができるようにするために、液体管路内で圧迫部材の圧迫位置を超えて延びていなければならない。
【0013】
液体セルの内部空間内で負圧が生じた状態で、液体に作用する圧力は基本的には、液体セルの液体セル流出部と液体ポンプの液体圧送領域との間の液体管路に沿った圧力損失が、液体圧送領域の方向へと液体を押圧する圧力よりも大きくなるように、低くてもよい。この場合、液体セル流出部から液体圧送領域までの区間を液体により克服することはできず、これにより液体が液体圧送領域内に到達しないか、または少なくとも、液体ポンプが液体を圧送できる程度に液体ポンプ内に延びていない。この場合、液体セルを空にするために、液体を液体セルから圧送して排出することができない。換言すると、この場合、数センチメートルの液柱により生ぜしめられる圧力、つまり数ミリバールの静水圧および場合により内部空間への液体の追加圧送による動的な圧力は、液体管路に沿った圧力損失よりも小さくてもよい。液体管路を短縮すると、ある程度の長さから、液体に作用する圧力よりも圧力損失が小さくなり、これにより液体は、液体圧送領域にまで延び、液体を圧送することができる。
【0014】
液体管路の第1の位置、例えば液体管路入口と、液体管路の第2の位置、例えば圧迫要素の圧迫位置との間の圧力損失Δp
12は、例えばダルシー・ワイスバッハ方程式に基づいて、
【数1】
として規定することができる。ここで、ρは液体の密度、uは液体の流速、λは管摩擦数、lは第1の位置と第2の位置との間の液体管路の長さ、dは液体管路内径ならびに任意には、例えばベントや減径部のような成形部材の圧力損失係数
【数2】
である。液体管路内径および液体管路の材料ならびに流速が例えば構造的な周辺条件により決定されている場合、液体管路の長さにわたって圧力損失を調節することができる。液体管路容積は有利には、液体管路内径と液体管路の長さとをできるだけ小さく選択することにより、最小限にすることができる。このことは例えば、液体の死体積を減じることを可能にし、これにより例えば特に液体の交換時に、液体管路を通る通過時間を減じることができる。さらに、液体管路を通って流れる液体の量を減じることができ、これにより特に高価な液体のために、運転コストを減じることができる。
【0015】
液体管路内で作用する全圧ptotは、粘度なしの非圧縮性の流体の定常流れの場合、ベルヌーイの圧力方程式ptot=pdyn+pstatを用いて、動圧pdyn=2u+2と、運転圧pおよび流体コラムの静水圧pg=ρ・g・hから構成される静圧pstat=p+ρ・g・hとにより求めることができる。ここでgは、重力加速度であり、hは液柱の高さである。さらに、例えば液体の圧縮性、液体の粘性および/または液体管路の毛管現象での別の圧力をベルヌーイの圧力方程式において考慮することができる。次いで、ベルヌーイの圧力方程式とダーシー・ワイスバッハ方程式とを用いて、全圧が圧力損失よりも大きくなる液体管路の最大長さを推定することができ、液体セル流出部と液体ポンプの液体圧送領域との間の間隔を、液体が液体ポンプの液体圧送領域に延びて、液体が圧送され得るように、対応して選択することができる。
【0016】
当業者は、600mbarを下回る圧力で液体が液体圧送領域に延びる、液体セルの液体セル流出部と液体ポンプの液体圧送領域との間の間隔を例えば簡単な実験によっても求めることができる。このためには、例えば、同一の液体管路内径と互いに異なる長さとを有する液体管路について、液体が液体ポンプの液体圧送領域内にまで延び、これにより液体が圧送され得るのはどの液体管路かを試すことができる。このことは、例えば液体の粘度、液体セル流出部直径、液体管路内径、液体圧送領域直径および別のパラメータのような、マニピュレータヘッドが配置されている負圧システムのパラメータを考慮することを可能にする。
【0017】
液体セル流出部と液体圧送領域との間の間隔は、鉛直方向の間隔、水平方向の間隔、または鉛直方向の間隔と水平方向の間隔との組み合わせであってもよい。液体セル流出部と液体圧送領域との間に鉛直方向の間隔を設けることにより、液体に付加的な重力が作用し、これにより、液体を液体圧送領域に押圧するための付加的な圧力を生成することができる。これは、例えば、起こり得る粘着力に抗して作用することを可能にする。言い換えると、鉛直方向の間隔を設けることは、液体への重力を引き起こすので、これにより600mbar未満の絶対圧の場合でも、液体を液体圧送領域に押圧する正の力が液体に作用し、これにより、液体管路の粘着力が克服され得る。
【0018】
液体管路は、大気圧では圧縮し得ない材料から形成されてもよい。材料は、液体管路内に負圧、例えば600mbar未満、特に100mbar以下の負圧が占めているときに、液体管路に外部から大気圧が作用した場合に液体管路内径が5%未満だけ縮小すると、圧縮し得ないと見なされる。液体管路の材料は、好ましくは真空適合性、化学的耐性および不活性である。この材料は、例えば、鋼またはプラスチック、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含んでいるか、またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であってもよい。液体管路は、例えば鋼管路であってもよく、この鋼管路の内壁は、PEEKまたはPTFEのようなプラスチックによりコーティングされている。代替的には、液体管路が弾性材料から形成されていてもよく、これにより液体管路を挟み込むことができる。液体管路は、例えばPEEKホースであってもよい。
【0019】
液体管路は、外部から液体管路に大気圧が作用する場合に潰れないように、または液体管路内に、例えば600mbar未満、特に100mbar以下の絶対圧が占めている場合に液体管路内径が5%未満しか縮小しないように構成されていてもよい。このためには、例えば、液体管路内径、液体管路外径、液体管路肉厚および液体管路の材料特性が対応して互いに調整されていてもよい。
【0020】
液体セル流出部と液体圧送領域との間の間隔は、例えば0.1mm~200mm、例えば0.1mm~100mmまたは1mm~40mmであってもよい。液体管路は、対応して、例えば0.1mm~200mm、例えば0.1mm~100mmまたは1mm~40mmの長さを有していてもよい。
【0021】
液体管路は、例えば0.5mm~4mmの一定の液体管路内径を有していてもよい。このことは、細い液体管路を設けることを可能にし、これによりマニピュレータヘッドのコンパクトな構成が可能である。さらに、液体管路により取り囲まれた管腔のための減じられた容積を達成することができる。液体管路内径は、例えば1mm~4mm、例えば2mmまたは2.8mmであってもよい。より大きな液体管路内径は、より大きな液体管路外径につながるので、液体管路内径が大きな場合には、コンパクトな構造は不可能である。より小さな液体管路内径は、毛管作用を引き起こすことがある。液体管路内径は、毛管作用により生じる力が、液体に作用する別の力よりも小さくなるように選択されていてもよい。このことにより、液体管路における粘着力を減じることを可能にする。
【0022】
マニピュレータヘッドは、互いに接続された液体セルと液体ポンプとのアッセンブリであってもよく、液体セルと液体ポンプとは一緒に負圧ハウジング内に配置されているか、マニピュレータに取り付けられているか、または負圧ハウジング内に配置されて、かつマニピュレータに取り付けられていてもよい。特にマニピュレータヘッドは、マニピュレータのためのマニピュレータヘッドであってもよく、つまり、マニピュレータヘッドは、マニピュレータに接続されるために適していてもよく、特にマニピュレータに取り付けられ得る。
【0023】
マニピュレータヘッドは、ハウジングを有していてもよく、このハウジング内に液体セルと液体ポンプとが配置されている。代替的には、液体セルと液体ポンプとが別個に、互いに接続された2つのハウジング内に配置されていてもよい。
【0024】
マニピュレータヘッドは、取付け装置を有していてもよく、この取付け装置は、マニピュレータに取り付けられるように形成されている。取付け装置は、例えばファスナを有していてもよい。取付け装置は、取付け手段を備えた唯1つの表面であってもよい。例えば、取付け装置は、ねじ山付き孔を備えたマニピュレータヘッドの底部であってもよく、マニピュレータヘッドは、マニピュレータの1つの表面に置かれてもよく、マニピュレータに設けられたねじ山付き孔内には取付け可能なねじを導入することができ、これにより、マニピュレータヘッドをマニピュレータに接続することができる。
【0025】
液体ポンプは、直接に液体セル流出部に接続することができ、これにより、液体セル流出部と液体圧送領域との間の間隔は、例えば1mm未満、特に0.5mm以下の極めて短い長さを有している。
【0026】
液体管路は、液体ポンプの液体圧送領域で終端している必要はない。液体管路は、特に液体ポンプが蠕動ポンプであり、液体管路が蠕動ポンプを貫通して延びている場合、例えば液体ポンプの液体圧送領域を越えて延びていてもよい。
【0027】
液体セル流出部と液体圧送領域とは、液体セルの内部空間内で600mbar未満、特に100mbar以下の負圧が生じた状態で、液体が重力の作用のみによって少なくとも液体圧送領域内にまで延びることができ、これにより液体ポンプが液体を圧送することができるように、互いに対して配置されていてもよい。
【0028】
液体セル流出部は、液体セルの底部領域、特に液体セルの内部空間の最深点に配置されていてもよい。液体セルの液体セル流出部は、液体ポンプの液体圧送領域に対して鉛直方向の間隔を置いて配置されていてもよく、この鉛直方向の間隔は、液体セルの内部空間内で600mbar未満の絶対圧、例えば400mbar未満、特に100mbar以下の絶対圧が生じた状態で、液体が少なくとも液体ポンプの液体圧送領域にまで延び、これにより液体ポンプが液体を圧送することができるように選択されている。
【0029】
底部領域は、例えば液体セルの底部および/または液体セルの壁の一部、特に壁の、底部に接触している部分を含んでいてもよい。液体セル流出部は、液体セルの内部空間の最深点に配置されていてもよい。例えば、液体セル流出部は、液体セルの壁において、液体セル流出部の最深点が、液体セルの内部空間の最深点を形成するように配置されていてもよい。
【0030】
液体セルの液体セル流出部が、液体セルの底部領域に、特に内部空間の最深点に配置されているので、液体が内部空間から液体セル流出部へと流れることができる。液体セルの液体セル流出部が、液体ポンプの液体圧送領域に対して鉛直方向の間隔を置いて配置されているので、液体セルの液体セル流出部と液体ポンプの液体圧送領域との間で液体に重力が作用する。重力は、液体ポンプの液体圧送領域内への液体の進入を阻止する力とは反対方向に作用する。さらに、鉛直方向の間隔は、液体セルの内部空間内で600mbar未満、特に100mbar以下の絶対圧が生じた状態で液体が少なくとも液体ポンプの液体圧送領域内にまで延びるように選択されているので、液体ポンプが液体を圧送することができる。換言すると、鉛直方向の間隔は、重力が、液体が液体圧送領域内にまで延びることを妨げる反対方向に作用する全ての力よりも強くなるように選択されている。
【0031】
鉛直方向の間隔は、例えば1mm~200mm、例えば1mm~40mm、特に5mm~20mm、例えば12mmであってもよい。
【0032】
液体セルの底部は、液体セル流出部の方向に傾斜していてもよい。この傾斜は、液体が液体セル流出部の方向に流れるように選択されていてもよい。このことは、液体セル流出部への液体の流出を改善することを可能にし、これにより液体セルからの流出を改善することができる。傾斜の傾斜角は、例えば2°~45°、または2°~20°であってもよい。液体セル流出部は、例えば液体セルの一方の側に、または液体セルの中央に位置していてもよい。
【0033】
液体ポンプは、容積式ポンプ、特に蠕動ポンプを有していてもよい。このことは、マニピュレータヘッドの簡単な構造を可能にする。
【0034】
蠕動ポンプは、液体管路を取り囲むハウジングを有していてもよい。液体管路は、ハウジングの壁に配置されていてもよい。ハウジングは、ロータと、例えばローラまたは滑りシューのような1つまたは複数の圧迫要素とを有していてもよい。ロータは、この圧迫要素に結合されていてもよく、この圧迫要素を駆動することができる。ローラまたは滑りシューは、ロータの回転中に液体管路のそれぞれの区分を圧迫するか、もしくは挟み込むことができるように配置されていてもよく、これにより液体を圧送することができる。ローラは、例えば潤滑剤フリーのハイブリッド玉軸受を有していてもよい。液体ポンプが蠕動ポンプの形態で設けられている場合、液体管路は、好適には蠕動ポンプのローラまたは滑りシューにより挟み込むことができるホースである。蠕動ポンプの形態の液体ポンプを設けることにより、簡単かつ頑丈な構造が可能であり、この構造では液体に接触する部材、特にホースの形態の液体管路を簡単に交換することができる。
【0035】
液体ポンプは、例えばダイヤフラムポンプ、圧電ポンプ、電気浸透流ポンプまたは別の形式の容積式ポンプであってもよく、またはダイヤフラムポンプ、圧電ポンプ、電気浸透流ポンプまたは別の形式の容積式ポンプを有していてもよい。液体ポンプは、マイクロ流体ポンプであってもよく、またはマイクロ流体ポンプを有していてもよい。
【0036】
液体ポンプは、0mbarの流入圧を有していてもよい。液体ポンプは、1つまたは複数の耐熱性の材料、例えば150℃超まで、または300℃超までの耐熱性に形成されていてもよく、これにより液体ポンプは加熱可能である。
【0037】
液体ポンプは、超高真空適合性(UHV適合性)の材料から形成されていてもよい。これらの材料は、例えば150℃で10-10mbar未満、130℃で10-8mbar未満のオーダに至る非常に低い蒸気圧を有していてもよい。材料は、例えばステンレス鋼、アルミニウムまたはPEEKであってもよく、またはステンレス鋼、アルミニウムまたはPEEKを含んでいてもよい。
【0038】
液体セルは、電気化学セルであってもよい。電気化学セルは、作用電極および対極を有していてもよい。このことは、電気化学セルを600mbar以下の負圧で運転し、適切な分析システムを用いてその特性および挙動を調査することを可能にする。作用電極は、例えば分析または測定すべき試料として使用することができる。液体セルは、1つまたは複数の別の電極、例えば参照電極を有していてもよい。
【0039】
液体は、例えば液体の電解質、例えば水ベースの電解質を含んでいてもよく、または液体の電解質、例えば水ベースの電解質であってもよい。代替的または付加的に、液体は、例えば水ベースの溶液、アルコールベースの液体、例えばグリコールもしくはエタノールのようなアルコール、または例えばエンジンオイル、例えば5W40のようなオイルを含んでいてもよく、または水ベースの溶液、アルコールベースの液体またはオイルであってもよい。
【0040】
作用電極は、液面に対して傾斜して電気化学セル内に配置されていてもよい。この傾斜は、例えば0.1°~80°、特に15°~45°であってもよい。傾斜は、作用電極の第1の部分が運転中に液体から突出し、作用電極の第2の部分が液体によって濡らされていて、作用電極の第3の部分が液体内に位置していることができるように選択されていてもよい。作用電極は、電気化学セルのハウジング壁に対して相対的に固定的な傾斜で配置されていてもよく、これにより、液体セルに液体が満たされた場合に、液面に対して固定的な傾斜が生じる。代替的には、作用電極は、電気化学セルのハウジング壁に対して相対的な、作用電極の傾斜角を調節することができる傾斜装置上に配置されていてもよく、これにより液面に対する傾斜角を調節することもできる。代替的または付加的に、作用電極が液面に対して傾斜しているように、電気化学セルが傾斜させられていてもよい。電気化学セルは、例えばマニピュレータを用いて傾斜させることができる。
【0041】
作用電極を液面に対して傾斜させて電気化学セル内に配置することができるので、この作用電極を用いて種々異なる測定を実施することができ、すなわち作用電極自体、作用電極が液体により濡らされている場合の作用電極および液体自体において種々異なる測定を実施することができる。このためには、電気化学セルの運転に応じて、放射スポットに対する作用電極の移動または作用電極に対する放射スポットの移動は、単に僅かにしか必要ではないか、または不要である。
【0042】
液体セルは、開口を備えたカバーを有していてもよい。開口は、液体セル内の液体がマニピュレータヘッドの周囲に流体接続されていることを確実にする大きさを有していてもよい。開口は、例えば1mm2~10cm2の面積を有していてもよい。開口は、例えば楕円形、円形または方形であってもよい。カバーは、液体セルからマニピュレータヘッドの周囲への液体の意図しない流出を阻止するか、または少なくとも減じることを可能にする。液体に対峙するカバーの内面は、コーティングされていてもよい。例えば、PTFEまたはPEEKから成るコーティングが設けられていてもよい。
【0043】
液体セルの内壁は、プラスチック、例えばPEEKから形成されていてもよい。液体セルの内壁は、PTFEでコーティングされているか、またはPTFEから形成されていてもよい。
【0044】
マニピュレータヘッドは、温度調節装置を有していてもよい。温度調節装置は、1つまたは複数の加熱器および/または冷却器を含んでいてもよい。温度調節装置は、液体管路、液体供給管路、液体セルおよび/または液体ポンプにもしくはそれらの内部に配置されていてもよい。このことは、液体を温度調整、つまり加熱または冷却することを可能にし、これによりマニピュレータヘッドの規定された位置において液体のための所望の温度を調節することができる。マニピュレータヘッドの種々異なる位置に種々異なる加熱器および冷却器が設けられていてもよい。このことは、マニピュレータヘッドの種々異なる位置において液体のための種々異なる温度を調節することを可能にする。
【0045】
マニピュレータヘッドは、バッファセルを有していてもよい。バッファセルは、例えば液体リザーバとして、特に電解質リザーバとして働くことができる。バッファセルは、例えば液体セルの下に配置されていてもよい。バッファセルは、液体セルから流出した液体を溜めるように構成されていてもよい。例えば、液体セルから流出した液体を溜めるために、バッファセルは上方に向かって開放されていてもよく、液体セルよりも大きな底面を有していてもよい。このことは、意図せずに流出する液体を溜めることを可能にする。
【0046】
バッファセルは、蒸気圧バッファとして働くように構成されていてもよい。
【0047】
さらに温度調節装置は、バッファセルを温度調節するように構成されていてもよい。温度調節装置の1つまたは複数の加熱器および/または冷却器は、例えばバッファセルに、またはバッファセル内に配置されていてもよい。このことは、例えばバッファセルを加熱することを可能にする。これにより、例えば、液体セルが電気化学セルであり、かつ液体が電解質である場合に、電気化学セル内の電解質体積と、バッファセル内の電解質体積との間の蒸気圧平衡を生じさせることができる。このことは、例えば、電気化学セル内の電解質レベルを一定に保つことを可能にする。このためには、例えばバッファセルの温度を緩慢にもしくは慎重に変化させることができ、これにより電気化学セルとバッファセルとが負圧ハウジング内において負圧で運転される場合に、電気化学セルとバッファセルとの間の蒸気圧平衡を等しくすることができる。
【0048】
マニピュレータヘッドは、1つまたは複数の液体リザーバを有していてもよく、または1つまたは複数の液体リザーバに接続されていてもよい。液体リザーバは、例えば負圧ハウジングの中空室内に配置されていてもよい。このことは、液体リザーバから液体セル内へ液体を圧送することを可能にする。例えば、液体リザーバから液体セルへと液体を圧送するために、液体ポンプまたは別のポンプが使用され得る。液体リザーバは、蒸気圧バッファとして働くことができる。
【0049】
マニピュレータヘッドは、間隔調節装置を有していてもよく、この間隔調節装置は、液体セルと液体ポンプとの間の間隔を調節するように構成されている。間隔調節装置は高さ調節装置を含んでいるか、または高さ調節装置であってもよい。高さ調整装置は、液体セルの底部と液体ポンプの液体圧送領域との間の鉛直方向の間隔を調節するように構成されていてもよい。
【0050】
代替的には、鉛直方向の間隔は、マニピュレータヘッドの運転中に負圧で使用されることが望ましい全ての液体が、少なくとも液体ポンプの液体圧送領域にまで延び、これにより液体が液体ポンプにより圧送され得るように選択されていてもよい。このことは、マニピュレータヘッドの運転中に、液体セルの内部空間内で600mbar未満、特に100mbar以下の絶対圧が生じた状態で、液体が液体ポンプの液体圧送領域内に延びることを確実することを可能にする。したがって、間隔、特に鉛直方向の間隔を、運転の別の条件もしくはパラメータ、例えば液体の粘度および液体管路内径に適合させることができる。
【0051】
本発明の別の態様によれば、マニピュレータが規定されている。マニピュレータは、マニピュレータ内部空間を有している。マニピュレータは、負圧ハウジングに気密に接続されるように構成されている。特に、負圧ハウジングにより取り囲まれた中空室は、マニピュレータ内部空間に気密に接続されてもよい。マニピュレータはさらに、遠位の端部を備えた移動可能な軸部を有している。遠位の端部は、マニピュレータが負圧ハウジングに接続された状態において、負圧ハウジングの中空室内で移動可能である。移動可能な軸部の遠位の端部は、請求項1から6までの少なくともいずれか1項記載のマニピュレータヘッド、またはこのマニピュレータヘッドの1つの実施形態によるマニピュレータヘッドを有している。したがって、マニピュレータが負圧ハウジングに接続された状態において、マニピュレータヘッドは、負圧ハウジングの中空室内に配置されている。このことは、マニピュレータヘッドを負圧ハウジング内で移動させることを可能にし、これにより、液体セルを例えば第1の位置において準備し、第2の位置において分析するか、もしくは測定を実施することができる。このために移動可能な軸部は、例えば分析システムの下側で、マニピュレータヘッドを第1の位置から第2の位置へと移動させることができる。
【0052】
移動可能な軸部の少なくとも一部は、マニピュレータ内部空間内に配置されていてもよい。マニピュレータは、マニピュレータ内部空間を取り囲むハウジングを有していてもよい。ハウジングは、例えば中空シリンダであってもよい。マニピュレータ内部空間は管腔であってもよい。移動可能な軸部は、少なくとも部分的に管腔内に配置されていてもよい。移動可能な軸部は、近位の端部を有していてもよい。軸部の近位の端部は、マニピュレータが負圧ハウジングに結合された状態において、負圧ハウジングの外側、例えばマニピュレータの管腔内に配置されていてもよい。軸部の近位の端部は、マニピュレータの近位の端部を形成していてもよく、マニピュレータの管腔の外側に配置されていてもよい。マニピュレータのハウジングは、管腔内への1つまたは複数のアクセス部を有していてもよい。管腔を通って、かつ特に移動可能な軸部により取り囲まれた軸部管腔内では、導管がマニピュレータを通って案内されていてもよい。この導管は、例えば電気的な線路および/または液体管路を含んでいてもよい。アクセス部は、例えば軸部の近位の端部に、または軸部の近位の端部の近傍に設けられていてもよい。
【0053】
マニピュレータは、軸部の遠位の端部を負圧ハウジング内で移動させることができるように、かつ/またはマニピュレータ内部空間内の弁の下流側に戻すことができるように形成されていてもよい。このことは、軸部の遠位の端部に配置された、試料を備えた液体セルを、第1の圧力において準備し、かつ第2の圧力において分析することを可能にする。
【0054】
移動可能な軸部は、付加的に回転可能であってもよい。このことは、マニピュレータヘッドを傾斜させることを可能にする。
【0055】
軸部は、例えば36mm~38mmの外径を有していてもよい。軸部が案内されている管腔は、例えば38mm~40mmの管腔内径を有していてもよい。
【0056】
本発明の別の或る態様によれば、負圧システムが設けられており、この負圧システムは、
-負圧が生じた状態で第1の中空室を気密に取り囲むための負圧ハウジングと、
-請求項1から6までの少なくともいずれか1項記載のマニピュレータヘッドまたはこのマニピュレータヘッドの1つの実施形態によるマニピュレータと
を有している。
【0057】
マニピュレータヘッドは、負圧ハウジングの第1の中空室内に配置されていてもよい。負圧システムは、第1の中空室内に600mbar未満、例えば400mbar未満、特に100mbar以下の絶対圧を生成するように構成されていてもよい。負圧システムは、第1の中空室内に負圧を生成するために、例えば1つまたは複数のポンプを有していてもよい。
【0058】
本発明の別の或る態様によれば、負圧システムが規定されており、この負圧システムは、
-負圧が生じた状態で第1の中空室を気密に取り囲むための負圧ハウジングと、
-請求項7記載のマニピュレータまたはこのマニピュレータの1つの実施形態によるマニピュレータと
を有している。
【0059】
マニピュレータは、負圧ハウジングに気密に接続されていてもよい。マニピュレータヘッドは、負圧ハウジングの第1の中空室内に配置されていてもよい。負圧システムは、第1の中空室内に600mbar未満、例えば400mbar未満、特に100mbar以下の絶対圧を生成するように構成されていてもよい。負圧システムは、第1の中空室内に負圧を生成するために、例えば1つまたは複数のポンプを有していてもよい。
【0060】
請求項8または9記載の負圧システムまたはこの負圧システムの1つの実施形態による負圧システムは、照射システムおよび検出器システムを有していてもよい。照射システムは、液体セルに粒子または放射線を照射するように構成されていてもよい。検出器システムは、液体セルから放出された粒子または放射線を受け取るように構成されていてもよい。
【0061】
照射システムは、放射線源、例えばX線、放射光、深紫外線(英語でdeep ultra-violetもしくはDUV)または光のような電磁放射線のための放射線源を有していてもよい。照射システムは、付加的に、放射線源から入射ビームから特定の波長をスペクトル的に分離するためのモノクロメータを有していてもよい。代替的または付加的には、照射システムは粒子源を有していてもよい。このことは、液体セルに照射するために使用することができる粒子または放射線を提供することを可能にする。
【0062】
照射システムは、移動可能かつ/または傾斜可能であってもよく、これにより、照射システムを、液体セルもしくは試料に粒子または放射線を照射するために、液体セルもしくは液体セル内に位置する試料に接近させることができる。代替的または付加的には、検出器システムが移動可能かつ/または傾斜可能であってもよく、これにより検出器システムを、液体セルから放出された粒子または放射を受け取るために、液体セルに接近させることができる。代替的または付加的には、液体セルも、例えばマニピュレータにより移動可能かつ/または傾斜可能であってもよい。マニピュレータは、照射システム、検出器システムおよび液体セルを、測定および/または分析が可能であるように互いに対して移動かつ傾斜させることを可能にする。例えばマニピュレータは、液体セルを、第1の中空室内で、照射システムおよび検出器システムに相対的に移動させかつ傾斜させることができる。
【0063】
検出器システムは、液体セルから放出された粒子または放射線を分析するように構成されていてもよい。検出器システムは、例えば、光電子分光計であってもよい。検出器システムは、フロントキャップ電極、1つまたは複数の電子レンズ、1つまたは複数の偏向器、分析器および/または検出器を有していてもよい。検出器システムは、例えばフロントキャップ電極と、電子レンズと、分析器と、検出器とにより構成されてもよい。検出器システムは、互いに接続された1つまたは複数の中空室を有していてもよく、これらの中空室は、検出器システムの内部空間を形成し、この内部空間を通して、液体セルから放出される粒子または放射線をフロントキャップ電極から検出器へと案内することができる。付加的に、検出器システムは、粒子または放射線を分析器の入力部に向けるために、1つまたは複数の偏向器を有していてもよい。
【0064】
フロントキャップ電極は、円錐形状を有していて、入力開口を有していてもよい。入力開口は、円錐状の延在形状を有していてもよく、これにより入力開口に流入するガス分子は、フロントキャップ電極によって取り囲まれる中空室内への入口開口の背後で迅速に分散することができる。このことは、迅速な減圧を可能にする。これにより、入口開口の下流側の電子のための自由な経路長さを増大させることができる。
【0065】
互いに接続された複数の中空室内には、互いに異なる負圧が占めていてもよく、この負圧は、入口開口から検出器の方向においてさらに減じることができる。このためには種々異なる減圧段が設けられていてもよく、圧力は、例えば種々異なる強さで圧送するポンプを用いて、相前後して配置された中空室内で種々異なる強さで低減され得る。このことは、検出器システム内のより低い圧力を維持することができ、負圧ハウジングの第1の中空室内では、0.1mbar~100mbar、例えば25mbarの絶対圧の場合、フロントキャップ電極により取り囲まれた中空室内では、10-4mbar~10-2mbarの範囲、例えば10-3mbarの絶対圧、後続の中空室内では、10-6mbar~10-4mbar、例えば10(-5)mbarの絶対圧、かつ検出器の手前の中空室では、10-8mbar~10-5mbarの範囲、例えば10-6mbarの絶対圧を維持することができる。
【0066】
分析器は、例えば半球形のエネルギ分析器であってもよいか、または分析器が、半円球のエネルギ分析器を有してもよい。検出器は例えば、電子増倍管、蛍光体スクリーン、ビデオカメラ、CCDセンサ(英語:charge-coupled device)および/またはCMOSセンサ(英語:complementary metal-oxide-semiconductor)を有していてもよい。検出器はDLD(英語:delay line detector)として構成されてもよい。
【0067】
フロントキャップ電極の入口開口は、例えば液体セルの上側に、特に液体セルのカバーに設けられた開口の上側に配置され得る。フロントキャップ電極は、例えば液体セルのカバーに設けられた開口を通って液体セルの内部空間内に導入されていてもよい。このことは、フロントキャップ電極の入口開口を、試料として用いられる作用電極の上側に直接に配置することを可能にする。液体セルのカバーに設けられた開口は、照射システムからの粒子または放射線、例えばX線を液体セル内に入射させることを可能にし、放射線または粒子、例えば電子を、開口を通して液体セルから漏出させることを可能にするように構成されていてもよい。液体セルのカバーは、液体セルの内壁を、特に、この液体セルがPEEKから形成されているか、またはPEEKによりコーティングされている場合に、例えば光電子放出実験中の帯電から保護することを可能にする。
【0068】
開口内には、電子に対して透過性の窓が設けられていてもよい。この窓は、例えば単層の膜、例えば単層の炭素、換言するとグラフェンから形成されていてもよい。このことは、液体セルの内部空間における圧力とは異なる圧力を負圧ハウジング内のマニピュレータヘッドの周囲で調節することを可能にする。
【0069】
負圧システムは、運転中に第1の中空室から気密に分離された第2の中空室を有していてもよい。第1の中空室は、第2の中空室とは異なる圧力範囲で使用するように構成されていてもよい。このことは、例えば第2の中空室内で液体セルを測定のために準備し、第1の中空室内で測定を実施することを可能にする。
【0070】
液体は、望ましくない気体、例えば酸素(O2)、一酸化炭素(CO2)または二酸化炭素(CO2)を含んでいることがある。負圧システムは、液体を脱気するように、例えば熱により脱気するように構成されていてもよい。このことは、液体セル内における液体の意図しない脱気を阻止するか、または少なくとも減じることを可能にする。負圧システムは、例えば、圧力脱気、真空脱気、膜脱気または化学的な脱気を実施するように構成されていてもよい。好ましくは、脱気は第1の中空室外で実施される。このことは、第1の中空室内への、かつ特に液体セル内への汚れの侵入を阻止するか、または少なくとも減じることを可能にする。
【0071】
負圧システムは、液体を提供および/または溜めるための1つまたは複数の液体リザーバを有していてもよい。液体リザーバは、第1の中空室内に配置されていてもよく、または第1の中空空間に流体接続されていてもよい。このことは、負圧を遮断する必要なしに、液体交換を可能にすることができる。このことは、第1の中空室内への、特に液体セル内への汚れの侵入を阻止するか、または少なくとも減じることを可能にする。
【0072】
負圧システムは、ポテンショスタットを有していてもよい。ポテンショスタットは、電気化学セルの1つまたは複数の電極に接続されていてもよい。これにより、電気化学セル内の電位を変えることができる。
【0073】
負圧システムは、第1の中空室内に負圧を生成するために、負圧ポンプを有しているか、または負圧ポンプに接続されていてもよい。負圧ポンプは、第1の中空室内に負圧を生成するように構成されていてもよい。負圧ポンプは、例えば、0.1mbar~600mbar、0.1mbar~400mbar、または1mbar~100mbar、例えば20mbarの絶対圧を生成するように構成されていてもよい。このことは、負圧システム内において、周囲圧の近傍、特に大気圧付近、好ましくは使用される液体の蒸気圧付近の種々異なる圧力を生成することを可能にする。負圧ポンプは、例えばダイヤフラムポンプであってもよい。
【0074】
第1の中空室は、不活性ガスで満たされていてもよい。例えば、第1の中空室内の空気の残りの分子は、不活性ガス分子によって置き換えられ得る。不活性ガスは、例えば希ガス、例えばアルゴン、または希ガスの混合物を含むか、または希ガスまたは希ガスの混合物であってもよい。不活性ガスは、不活性ガスと液体との間の化学反応を防止することを可能にする。
【0075】
負圧ハウジングは、例えば特殊鋼から形成されていてもよい。負圧ハウジングは、第1の中空室を負圧ハウジングの周囲から気密に分離するために、1つまたは複数の遮断弁を有していてもよい。
【0076】
第1の中空室は、例えば0.0001m3~1m3の容積、例えば0.001m3~0.1m3の容積、特に50lの容積を有していてもよい。
【0077】
負圧システムは、温度調節装置を有していてもよい。温度調節装置は、1つまたは複数の加熱器および/または冷却器を含んでいてもよい。温度調節装置は、液体管路、移動可能な軸部、液体供給管路、バッファセル、液体セルおよび/または液体ポンプにまたはそれらの内部に配置されていてもよい。このことは、液体を温度調整、つまり加熱または冷却することを可能にし、これにより負圧システムの規定された位置において液体のための所望の温度を調節することができる。負圧システムの種々異なる位置に種々異なる加熱器および冷却器が設けられていてもよい。このことは、負圧システムの種々異なる位置において液体のための種々異なる温度を調節することを可能にする。
【0078】
温度調節装置は、液体の沸騰を阻止するように構成された温度制御器を有していてもよい。この温度制御器は、液体の種々異なるパラメータ、例えば圧力および温度ならびに液体の周辺環境を検出するために1つまたは複数のセンサに接続されていてもよい。このことは、液体の沸騰を回避することを可能にすることができ、これにより液体セルからの液体の飛散、ひいてはマニピュレータヘッドおよび第1の中空室が液体により汚れることを阻止することを可能にする。特に温度制御器は、蒸気圧を減じることを可能にし、これにより液体セルをより低い圧力で運転することを可能にする。
【0079】
本発明の別の或る態様によれば、マニピュレータヘッドを製造する方法が規定されている。本方法は、
-液体セル流出部と、液体を収容するように構成された、負圧用に形成された内部空間とを有する液体セルを準備するステップと、
-液体セル流出部に流体接続された液体圧送領域を有し、かつ液体セルの内部空間内に負圧が生じた状態で液体圧送領域から液体を圧送するように構成された液体ポンプを準備するステップと、
-液体セルの液体セル流出部と液体ポンプの液体圧送領域との間の間隔を、液体セルの内部空間内で600mbar未満の絶対圧、例えば400mbar未満、特に100mbar以下の絶対圧が生じた状態で液体が少なくとも液体ポンプの液体圧送領域にまで延び、これにより液体ポンプが液体を圧送することができるように選択するステップと
を有している。
【0080】
液体セルの内部空間は、例えば液体セルにマニピュレータヘッドの周囲に対する開口を設けるまたは提供することによって、マニピュレータヘッドの周囲に流体接続されているように提供され得る。
【0081】
液体セルは、液体ポンプに気密に接続されていてもよい。
【0082】
別の或る態様では、本発明は、負圧システムを製造する方法も含んでいる。負圧システムを製造する方法は、マニピュレータヘッドを製造するステップに対して付加的に、
-負圧において第1の中空室を気密に取り囲むための負圧ハウジングを準備するステップと、
-第1の中空室内にマニピュレータヘッドを準備するステップと
を含んでいる。
【0083】
負圧システムを製造する方法は、マニピュレータを提供するステップを含んでいてもよい。付加的または代替的に、負圧システムを製造する方法は、
-液体セルに粒子または放射線を照射するように構成された照射システムを準備するステップと、
-液体セルから放出された粒子または放射線を受け取るように構成された検出器システムを準備するステップと
を有していてもよい。
【0084】
本発明の別の或る態様によれば、請求項10記載の負圧システム、または請求項10記載された負圧システムに基づく負圧システムの実施形態を運転する方法が規定されている。本方法は、
-液体セルの内部空間内に600mbar未満、例えば400mbar未満、特に100mbar以下の絶対圧を生成するステップと、
-液体セル内に液体を準備するステップと、
-液体ポンプを用いて液体ポンプの液体圧送領域から液体を圧送し、これにより前記液体を液体セルから圧送する、ステップと、
-液体セルに照射システムからの粒子または放射線を照射することができ、かつ放射線または粒子を検出器システムにより受け取ることができるように、液体セル、照射システムおよび検出器システムを相互に配置するステップと、
-液体セルに照射システムの粒子または放射線を照射するステップと、
-検出器システムにおいて液体セルから放出された放射線または粒子を検出するステップと
を有している。
【0085】
内部空間内の負圧は、例えば、液体セルの内部空間が第1の中空室に流体接続されている場合に第1の中空室内に負圧を生成することによって形成することができる。
【0086】
液体セル内の液体を準備することおよび液体ポンプにより液体ポンプの液体圧送領域から液体を圧送することは、負圧を解消する必要なしに行うことができる。このことは、負圧システムの運転中に液体を交換することを可能にする。液体は、負圧で、特に600mbar未満の絶対圧で交換され得る。液体セル流出部と液体圧送領域との間の間隔は、例えば、液体が、600mbar未満の絶対圧で、第1の中空室において少なくとも液体圧送領域にまで延び、これにより液体ポンプが液体を圧送することができるように選択されていてもよい。
【0087】
液体セル内の液体を準備することおよび液体ポンプにより液体圧送領域から液体を圧送することは、例えば連続的に実施することができる。このことは、液体、例えば水ベースの電解質の連続的な交換を可能にする。
【0088】
負圧システムを運転する方法は、以下のステップのうちの1つまたは複数のステップを有していてもよい:
-液体セルに照射システムからの粒子または放射線を照射することができ、放射または粒子を検出器システムによって受け取ることができるように液体セル、照射システムおよび検出器システムを相互に配置するために、マニピュレータを用いて液体セルを移動かつ/または傾斜させるステップと、
-液体ポンプの液体圧送領域からの液体の圧送中に、液体セル内に液体を準備するステップと、
-液体セルの内部空間内の所定の液体レベルが一定に維持されるように、液体セル内に液体を準備し、液体ポンプの液体圧送領域からの液体の圧送するステップと、
-液体セルの内部空間内の液体レベルを変化させるように、液体セル内に液体を準備し、液体ポンプの液体圧送領域から液体を圧送するステップと、
-作用電極の第1の部分が運転中に液体から突出し、作用電極の第2の部分が液体によって濡らされていて、かつ作用電極の第3の部分が液体内に位置していることができるように、電気化学セルの作用電極を傾斜させるステップと、
-作用電極の第1の部分が液体から突出し、作用電極の第2の部分が液体によって濡らされていて、かつ作用電極の第3の部分が液体内に位置しているように、電気化学セル内に液体を準備し、液体ポンプにより液体圧送領域から液体を圧送するステップと、
-運転中に液体から突出している作用電極の第1の部分と、液体によって濡らされている作用電極の第2の部分と、液体内に位置している作用電極の第3の部分とが相前後して照射されるように、電気化学セルの作用電極に照射システムからの粒子または放射線を照射するステップと
を有している。
【0089】
液体を準備することは、例えば制限された圧送速度で圧送することによって、かつ/または予め規定された最大圧力で圧送することによって、液体の過熱が回避されるように行うことができる。
【0090】
負圧システムを運転するための方法は、
-液体セル内の液体レベルが連続的に変化するように、液体セル内の液体を準備し、液体ポンプの液体圧送領域から液体を圧送するステップと、
-液体セル内の液レベルが連続的に変化する間に、作用電極の特定の箇所において、照射システムの粒子または放射線を、電気化学セルの作用電極に照射するステップと
を有していてもよい。
【0091】
連続的な変化は周期性を有していてもよく、例えば液体レベルは、最大の液体レベルにまで上昇することができ、次いで最大の液体レベルにまで低下し、次いで再び最大の液体レベルまで上昇することができる。
【0092】
本発明の別の或る態様によれば、請求項10記載の負圧システム、または請求項10に記載の負圧システムに基づく負圧システムの1つの実施形態の使用が、
-表面分析、
-表面反応の測定、
-液体-固体反応の測定、
-液体-気体反応の測定、
-液体の測定、
-薄層の測定
-液体中の異物の検出、
-光電子放出測定、
-大気圧付近での光電子分光測定
-大気圧付近のX線光電子分光測定
-電気化学的な測定、
-バッテリ分析、
-酸化測定、
-電解質測定、
-電極測定、
-液体を通した試料測定
-品質管理、
-腐食測定、
-触媒測定、
-圧力依存測定、
-生体試料の測定、
-電位差測定、
-過飽和液体の測定
のために規定されている。
【0093】
さらに、本発明のさらに別の或る態様によれば、請求項12または13記載の方法の使用、または請求項10記載の負圧システムを運転する方法のいずれかの実施形態または請求項10の負圧システムに基づく負圧システムの実施形態の使用は、
-表面分析、
-表面反応の測定、
-液体-固体反応の測定、
-液体-気体反応の測定、
-液体の測定、
-薄層の測定
-液体中の異物の検出、
-光電子放出測定、
-大気圧付近での光電子分光測定
-大気圧付近のX線光電子分光測定
-電気化学的な測定、
-バッテリ分析、
-酸化測定、
-電解質測定、
-電極測定、
-液体を通した試料測定
-品質管理、
-腐食測定、
-触媒測定、
-圧力依存測定、
-生体試料の測定、
-電位差測定、
-過飽和液体の測定
のために規定されている。
【0094】
本発明の別の或る態様によれば、請求項10記載の負圧システム、または請求項10記載の負圧システムに基づく負圧システムの実施形態による負圧システムを運転するためのコンピュータプログラム製品が規定されている。コンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラムコード手段を含んでおり、このコンピュータプログラムコード手段は、プロセッサにおいてコンピュータプログラム製品が実行されると、プロセッサに、請求項12または13記載の方法、または方法の任意の実施形態による方法を実行させる。
【0095】
別の或る態様によれば、コンピュータプログラム製品が保存されたコンピュータ可読媒体が規定されている。
【0096】
請求項1記載のマニピュレータヘッド、請求項7記載のマニピュレータ、請求項8記載の負圧システム、請求項9記載の負圧システム、請求項11記載の方法、請求項13記載の方法、請求項14記載の使用および請求項15記載の使用は、特に従属請求項において定義されているのと類似のかつ/または同一の好ましい実施形態を有していてもよい。
【0097】
さらに、本発明の好ましい実施形態は、対応する独立請求項に関連した、従属請求項または上述の実施形態の特徴の任意の組み合わせであってもよい。
【0098】
本発明のこの態様および別の態様を、以下に、図面に示された実施例に関連してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【
図1】電気化学セルを備えた第1の実施例による、マニピュレータに取り付けられたマニピュレータヘッドを備えた、光電子分光システムの形態の負圧システムの第1の実施例を示す例示的な概略図である。
【
図2】第2の実施例によるマニピュレータヘッドを例示的に示す概略図である。
【
図3】負圧ハウジング内に取り付けられた、第3の実施例によるマニピュレータヘッドを備えた、光電子分光システムの形態の負圧システムの第2の実施例を例示的に示す概略図である。
【
図4】第4の実施例によるマニピュレータヘッドを例示的に示す概略図である。
【
図5】負圧システムを運転するための方法の1つの実施例を示す例示的なフローチャートである。
【
図6】マニピュレータヘッドを製造する方法の1つの実施例を示す例示的なフローチャートである。
【0100】
実施例の説明
以下に種々異なる実施例につき説明されるマニピュレータヘッドおよびマニピュレータヘッドを備えた負圧システムの実施例ならびに負圧システムを運転する方法は、600mbar未満、例えば400mbar未満の、特に100mbar以下の絶対的な運転圧で、好適には0.1mbar~100mbarの範囲、例えば10mbar~100mbarの絶対的な運転圧が生じた状態で液体自体を圧送して排出することを可能にする。したがって、必要に応じて、運転圧を上昇させることなしに液体セルを空にすることができ、液体セル内の液体を交換することができる。さらに、液体セル内の運転圧を変化させることなしに、液体レベルを変化させることができる。このことは、液体による種々異なる濡れ度を有する固体試料の所定の個所において測定が実施され得ることを可能にする。さらに、例えば、液体レベルを変化させることなしに、連続的に液体を交換することができる。これにより、例えば液体セルの外側の液体を変化させ、変化した液体を液体セル内に導入し、液体の変化を測定することができる。さらに、液体を測定中に測定条件を変更することなしに後充填することができるので、液体が測定中に消費された場合に、より長い測定を実施することが可能である。
【0101】
図1は、光電子分光法(PES)システム100の形態の負圧システムの第1の実施例を概略的かつ例示的に示している。PESシステム100は、例えば、試料、例えば作用電極および水ベースの電解質の形態の液体において、周囲圧力近傍の圧力、特に0.1mbar~100mbarの絶対圧で測定を実施するために使用することができる。ここでは、放射線が試料および液体に入射され、放射線によって生成される光電子が検出される。
【0102】
PESシステム100は、マニピュレータヘッド10、真空ポンプ50、マニピュレータ60、真空チャンバの形態の負圧ハウジング70、単色化されたアルミニウム(Al)X線源の形態の照射システム80および検出器システム90を含んでいる。アルミニウムX線源の代わりに、別のX線源、例えば銀(Ag)もしくはクロム(Cr)X線源または複数の波長を提供するX線源も使用することができる。
【0103】
マニピュレータヘッド10は、負圧、例えば0.1mbar~600mbarの範囲内の負圧ハウジング70内において使用するために形成されている。このためには、マニピュレータヘッドを製造するために、このような圧力に特に適した材料が使用される。
【0104】
この実施例では、マニピュレータヘッド10は、電気化学セルの形態の液体セル12と、蠕動ポンプ(詳細に図示せず)の形態の液体ポンプ14とを含んでいる。代替的には、別の形式の液体ポンプ、特に別の形式の容積式ポンプを使用することもできる。複数の液体ポンプが設けられていてもよい。
【0105】
液体セル12は、負圧用に形成された内部空間16を有しており、内部空間16は、水ベースの電解質の形態の液体18を収容するように構成されている。内部空間16は、開口19を介してマニピュレータヘッド10の周囲に流体接続されている。液体セル12は、この実施例では、3つの電極13,15および17、すなわち作用電極13、対応電極15および参照電極17を有している。別の実施例では、別の個数の電極、例えば2つまたは4つの電極が設けられていてもよい。液体18は、液体セル流入部20を介して液体セル12内へ導入され、液体セル流出部22を介して再び液体セル12から導出され得る。液体セル流出部22は、本実施例では、液体セル12の内部空間16の最深点、すなわち液体セル12の底部24の最深点に配置されている。別の実施例では、液体セル流出部を、例えば液体セルの別の底部領域に、例えば液体セルの壁に底部に接触して配置することもできる。さらにこの実施例では、液体セル12の底部24は、液体セル流出部16の方向に向かって10°の傾斜角を備えて傾斜している。別の実施例では、底部は、傾斜させずに、または異なる傾斜で形成されていてもよく、例えば2°~20°の傾斜角を備えて、液体セル流出部の方向に向かって傾斜して形成されていてもよく、これにより液体が、液体セル流出部の方向に流れ、これにより、液体セルからより良好に流出する。
【0106】
液体ポンプ14は、液体セル流出部22に流体接続された液体圧送領域26を有している。このためには、液体セル流出部22が、PEEKから成るホースの形態の液体管路28を介して液体圧送領域26に接続されている。液体ポンプ14は、液体セル12の内部空間16内に負圧が生じた状態で液体圧送領域26から液体18を圧送するように構成されている。この実施例では、液体管路28は、液体ポンプ14を貫通して液体リザーバ30内にまで延びている。この液体リザーバ30内に、圧送して排出された液体32が貯蔵され得る。より見やすくするために、液体管路28は液体ポンプ14内では部分的にしか図示されていない。液体ポンプ14は、液体ポンプ14内の液体管路28を圧迫することができるローラ(図示せず)を有しており、これにより、ローラの移動によって、区分的に液体管路28を通して液体18を圧送することができる。ローラは、この場合には液体圧送領域26の開始を表す所定の圧迫位置からようやく、液体管路を圧迫することができる。
【0107】
液体セル12の液体セル流出部22と液体ポンプ14の液体圧送領域26との間の間隔dは、液体セル12の内部空間16内で0.1mbar~100mbarの範囲の絶対圧が生じた状態で、液体18が少なくとも液体圧送領域26内にまで延び、これにより液体ポンプ14が液体18を圧送することができるように選択されている。換言すると、液体セルの液体セル流出部と液体ポンプの液体圧送領域との間の間隔を、圧力損失が、液体セル流出部と液体圧送領域との間で生じる圧力差よりも小さくなるように短くすることが目標である。この実施例では、間隔dは、鉛直方向の間隔である。別の実施例では、この間隔は、鉛直方向の間隔と水平方向の間隔とから構成されていてもよい。別の実施例では、液体セル流出部と液体圧送領域との間の間隔は、600mbar未満、例えば400mbar未満、特に100mbar以下の範囲の絶対圧が生じた状態で、液体が少なくとも液体圧送領域にまで延び、これにより液体ポンプが液体を圧送することができるように選択されていてもよい。
【0108】
この実施例では、液体流出部22と液体管路28とは、それぞれ2.8mmである一定の内径を有している。別の実施例では、これらの内径が、互いに異なる大きさであってもよく、例えば1mm~4mm、例えば2mmであってもよい。液体管路の内径は、別の実施例では、用途、特に液体の粘度に適合されていてもよい。
【0109】
液体セル流出部22と液体圧送領域26との間の間隔dは、この実施例では12mmである。この場合、液体セル流出部22と液体圧送領域26との間の液体管路区分の長さも、12mmである。別の実施例では、この間隔は、例えば1mm~200mmであってもよい。
【0110】
真空ポンプ50は、負圧ハウジング70から気体を圧送して排出することができ、これにより負圧ハウジング70の第1の中空室72内に負圧を発生させることができる。負圧はこの場合、0.1mbar~100mbar、例えば0.5mbar、1mbarまたは2mbarの絶対圧である。別の実施例では、負圧は、例えば、600mbar未満、400mbar未満または100mbar以下の絶対圧であってもよい。
【0111】
マニピュレータ60は、マニピュレータ内部空間62と移動可能な軸部64とを有している。さらに軸部64は回転可能でもある。マニピュレータ60は、負圧ハウジング70に気密に接続されている。移動可能な軸部64は、遠位の端部65と近位の端部66とを有している。遠位の端部65は、負圧ハウジング70の第1の中空室72内に配置されており、近位の端部66は、負圧ハウジング70外に位置している。移動可能な軸部64を通って延びる管腔63を通って、液体リザーバ69からの液体供給管路67が延びている。液体リザーバ69内には、液体セル12内に導入することができる供給液68が貯蔵されている。このためには、液体供給管路67が、液体セル流入部20を介して液体セル12に接続されている。マニピュレータヘッド10は、マニピュレータ60の移動可能な軸部64の遠位の端部65に取り付けられている。マニピュレータ60が負圧ハウジング70に接続された状態において、移動可能な軸部64は、負圧ハウジング70の第1の中空室72内において移動可能かつ傾斜可能であるので、マニピュレータヘッド10は、負圧ハウジング70の第1の中空室72内に配置されている。
【0112】
照射システム80はX線源82を含んでいる。X線源82では、電子銃が電子をAl陽極(図示せず)へと加速する。Al陽極に衝突した電子によってX線が生成され、このX線がモノクロメータ84を用いて単色化される。単色化されたX線Xは、モノクロメータ出口86から出射し、光電子pを励起するために作用電極13に入射する。別の実施例では、照射システムが別の放射線または粒子を生成し、液体セルにこの放射線または粒子を照射することもできる。
【0113】
光電子pは、検出器システム90において分析される。このためには、検出器システム90は、フロントキャップ電極92、レンズ系94、半球形のエネルギ分析器96および検出器98を含んでいる。
【0114】
フロントキャップ電極92は、液体セル12の作用電極13から放出された、できるかぎり多くの光電子pがレンズ系94のフロントキャップ電極92の入口開口内に進入できるように、液体セル12の作用電極13から、例えば0.2mm~0.5mmの範囲のできるだけ短い間隔を有している。この実施例では、フロントキャップ電極が円錐形を有している。このことは、レンズ系94の内部の迅速な圧力減少を可能にする。付加的に、レンズ系94の相前後して位置する複数の中空室内の圧力を低減するさらに別の真空ポンプ(図示せず)が設けられている。このことは、第1の中空室72内で、例えば0.1mbar~100mbarの運転圧を維持することを可能にする一方で、検出器98の上流側の中空室内では、10-8mbar~10-5mbar、例えば10-6mbarの絶対圧のみが占めている。このことは、ガス分子との衝突による光電子の損失を減じることを可能にし、これによって信号の質を高めることができる。
【0115】
レンズ系94は、半球形のエネルギ分析器96に光電子pを伝達し、半球形のエネルギ分析器96が光電子pを、その運動エネルギに対応して分離することができるように集束させるために働く。このために、レンズ系94は、種々異なる電子光学レンズおよび/または偏向器を含んでいてもよい(図示せず)。次いで光電子pを検出器98により検出することができる。検出器98は、例えばCMOS検出器であってもよい。次いで、検出器98により測定された光電子の衝突位置を、対応する運動エネルギに割り当てることができ、これによって、光電子pを分析することができる。
【0116】
別の実施例では、検出器システムは、液体セルから放出された別の粒子または放射線を受け取って分析するように構成されてもよい。
【0117】
図2は、第2の実施例によるマニピュレータヘッド10’を概略的かつ例示的に示している。マニピュレータヘッド10’は、電気化学セルの形態の液体セル12と、蠕動ポンプの形態の液体ポンプ14と、取付け装置34と、バッファセル36と、温度調節装置38とを有している。別の実施例と同一の構成要素には、同一の参照符号を付してある。
【0118】
液体セル12は、作用電極13、対極15および参照電極17を有している。作用電極13は、電気化学セル12内の液体18の液面に対して傾斜して配置されている。この傾斜は、作用電極13の第1の部分23が液体18から突出し、作用電極13の第2の部分23’が液体18によって濡らされていて、作用電極13の第3の部分23’’が液体18内に位置しているように選択されている。別の実施例では、液面に対する作用電極の相対的な傾斜角度は、傾斜装置によって変更することもできる。別の或る実施例では、例えば、作用電極が液面に対して相対的に傾斜するように、液体セル全体が傾斜させられてもよい。マニピュレータヘッド、ひいては液体セルも、マニピュレータの移動可能な軸部が規定された角度だけ回転させられることによって、例えばマニピュレータにより傾斜させられてもよい。
【0119】
さらに、液体セル12は、液体セル12の内部空間16を周囲に接続する開口19を有している。作用電極13は、開口19の下側に配置されているので、検出器システムを作用電極13に接近させることができ、もしくは作用電極13を検出器システムに接近させることができる。
【0120】
液体セル12は、液体18を導入する液体セル流入部20と、この液体セル12から液体18を導出する液体セル流出部22とを有している。この実施例でも、底部24は傾斜しており、これにより、液体18は、液体セル流出部22の方向に向かって流れる。本実施例では、液体ポンプ14は液体セル流出部22に直接に接続されている。この場合、液体セル流出部22と液体圧送領域との間の間隔d’は、液体セル流出部22を形成するハウジング部分の肉厚と、液体圧送領域26が開始する圧迫箇所の上流側の短い液体管路領域とに相当する。この場合、間隔d’は例えば1mmである。
【0121】
取付け装置34は、マニピュレータに取り付けることができる。この実施例では、取付け装置34はねじ山付き孔35を有しており、このねじ山付き孔35内にねじをねじ込むことができ、これによりマニピュレータヘッド10をマニピュレータの軸部に取り付けることができる。
【0122】
バッファセル36は、上方に向かって開いているので、液体セル12から下方に跳ねた液体18をバッファセル36内に溜めることができる。
【0123】
温度調節装置38は、液体セル12とバッファセル36との間に配置されていて、液体セル12とバッファセル36とを温度調節するための加熱器および冷却器を含んでいる。
【0124】
図3は、PESシステム100’’の形態の負圧システムの第2の実施例を概略的かつ例示的に示している。PESシステム100’’は、
図1に示したPESシステム100に類似している。別の実施例と同一の参照符号は、同一の構成要素に対して使用されており、これらの構成要素の機能を説明するために、
図1の説明が参照される。
【0125】
PESシステム100’’は、マニピュレータヘッド10’’と、真空ポンプ50と、真空チャンバの形態の負圧ハウジング70と、単色化されたAl-X線源の形態の照射システム80と、検出器システム90とを含んでいる。
【0126】
PESシステム100とは異なり、マニピュレータヘッド10’’はPESシステム100’’において負圧ハウジング70内に取り付けられており、マニピュレータの遠位の端部には取り付けられていない。つまりこの実施例では、マニピュレータヘッド10’’は、マニピュレータと共に移動可能ではない。したがって照射システム80および検出器システム90を、マニピュレータヘッド10’’の液体セル12’’の作用電極13に向けて位置調整するために、この実施例では、照射システム80および検出器システム90を対応して移動させるか、場合によっては傾斜させなければならない。このためには、対応するアクチュエータ(図示せず)が設けられている。代替的には、例えば、複数の偏向器が設けられていてもよく、これらの偏向器が、照射システムからの放射線または粒子を作用電極に向けて位置調整することができる(図示せず)。さらにこの実施例では、第1の液体リザーバ69も負圧ハウジング70内に位置しており、これにより液体供給管路67も完全に、負圧ハウジング70の第1の中空室72内に延びている。
【0127】
マニピュレータヘッド10’’は、液体管路28’’を介して互いに接続されている液体セル12’’と液体ポンプ14’’とを有している。
【0128】
液体セル12’’の液体セル流出部22’’は、底部領域において液体セル12’’の壁部に配置されている。液体ポンプ14’’の液体圧送領域26’’に対する、液体セル12’’の液体セル流出部22’’の間隔d’’は、本実施例では、水平方向の間隔d1およびd2と、鉛直方向の間隔h’’とから構成されている。鉛直方向の間隔h’’により、液体18の液柱による付加的な静水圧が作用する。間隔d’’は、作用する圧力が、液体セル流出部22’’と液体圧送領域26’’との間の、特に液体管路28’’に沿った圧力損失よりも大きくなるように選択されており、これにより液体18が、液体圧送領域26’’内に延び、液体ポンプ14’’が液体18を圧送することができる。
【0129】
図4は、第4の実施例によるマニピュレータヘッド10’’’を概略的かつ例示的に示している。
【0130】
マニピュレータヘッド10’’’は、液体セル12’’’と液体ポンプ14’’’とを含んでいる。この実施例では、液体セル12’’’と液体ポンプ14’’’とは、1つの共通のハウジング内に配置されている。
【0131】
ハウジングには開口19があり、この開口19は、グラフェン層の形態の透過性の窓40によって、マニピュレータヘッド10’’’の周囲から分離されている。このことは、開口19を通る液体18の流出を阻止することを可能にする。さらにこのことは、マニピュレータヘッド10’’’の周囲と、内部空間16’’’内とに互いに異なる圧力を調節することを可能にする。例えば液体セル12’’’内で、マニピュレータヘッド10’’’の周囲におけるよりも高い圧力が占めていてもよい。代替的には、別の透過性の窓が設けられていてもよく、この窓は、照射装置から入射して液体セル12’’’から放出される放射線および粒子に対して透過性である。ここで「透過性の」とは、透過性の窓において損失が生じないことを意味するのではなく、透過率が比較的高い、例えば90%超であることを意味している。さらに、代替的には、1つの開口の代わりに、複数の透過性の窓を備えた複数の開口が設けられていてもよく、例えば、液体セルに入射する放射線または粒子のための開口と、液体セルから放出される粒子または放射線のための開口とが設けられていてもよい。この場合、透過性の窓は、それぞれ透過する放射線または透過する粒子に対して透過性である互いに異なる材料から形成されていてもよい。
【0132】
液体セル12’’’は、傾斜した作用電極13および対極15を含んでいる。液体18は、液体セル流入部20を介して液体セル12’’’の内部空間16’’’内に導入され、液体セル流出部22’’’を介して液体セル12’’’から液体ポンプ14’’’の液体圧送領域26’’’内へと導入される。傾斜を有する底部24は、液体18が液体セル流出部22’’’へと流れるために働く。この場合、液体セル12’’’の液体セル流出部22’’’と液体ポンプ14’’’の液体圧送領域26’’’との間の間隔d’’’は、水平方向の間隔である。間隔d’’’は、液体18が液体圧送領域26’’’内にまで延び、液体ポンプ14’’’が液体18を圧送することができるように選択されている。
【0133】
別の実施例では、液体を液体セル流出部に向かって流すために、液体セルが傾斜させられていてもよい。この場合、液体セル流出部は、液体セルの壁部に、特に底部に接触することなしに位置していてもよい。好ましくは、液体セル流出部は、液体セルの傾斜時に液体セル流出部が液体セルの内部空間の最深点に位置しているように壁に配置されており、これにより液体が、この内部空間から流出する。この場合、傾斜は、作用電極が照射システムおよび検出器システムに向けて位置調整されていて、測定を行うことができるように選択されていてもよい。
【0134】
図5は、負圧システムを運転するための方法500の1つの実施例の例示的なフローチャートを示している。例えば、
図1または
図3に示した負圧システムは、この方法に従って運転することができる。
【0135】
ステップ502では、液体セルの内部空間内で0.1mbar~100mbar、例えば25mbarの絶対圧が生成される。このためには、液体セルの内部空間に流体接続されている負圧ハウジングの第1の中空室から気体を圧送して排出するための真空ポンプが使用される。別の実施例では、液体セルの内部空間内に、例えば600mbar未満、400mbar未満または100mbar未満、例えば1mbarから600mbar未満、1mbarから400mbar未満、または1mbar~100mbarの絶対圧を生成することもできる。
【0136】
ステップ504では、液体セル内の液体を準備する。このためには、液体セル流入部を介して液体が液体セル内に導入される。液体は、液体ポンプの液体圧送領域内にまで延びており、これにより液体ポンプは、液体を循環させるために、または液体セルを空にするために液体を圧送することができる。
【0137】
ステップ506では、液体を液体ポンプにより液体ポンプの液体圧送領域から圧送し、これにより液体が液体セルから圧送される。この実施例では、同時に液体が液体セル流入部を介して液体セルに供給されるので、液体の絶え間ない交換を行うことができる。換言すると、本実施例では、ステップ504および506は、液体セルの内部空間内の規定された液体レベルが一定に維持されるように実施される。
【0138】
別の実施例では、液体セルの内部空間内の液体レベルが変化するように、例えば連続的にかつ/または周期的に変化するように、液体セル内の液体を準備し、液体を液体ポンプの液体圧送領域から圧送することもできる。このことは、所定の測定箇所において、種々異なる液体レベルにおいて測定を実施することを可能にする。
【0139】
代替的な実施例では、液体セルを例えば測定後に空にすることができ、これにより容器に別の液体を満たすことができる。
【0140】
ステップ508では、液体セルに照射システムのX線を照射することができ、かつ光電子を検出器システムにより受け取ることができるように、液体セル、照射システムおよび検出器システムを相互に配置する。別の実施例では、照射システムによって別のビームまたは粒子が提供されてもよく、検出器システムは、別の粒子または放射線を検出することができる。
【0141】
図1に示したPESシステムの場合、液体セルを、照射システムの照射スポットが液体セルの作用電極の測定すべき箇所に向けられており、かつ検出器システムへの入口開口が照射スポット上に位置しているように、対応してマニピュレータにより移動かつ傾斜させることができ、これにより、光電子が、検出器システムに入射することができる。
【0142】
別の実施例、例えば
図3に示したPESシステムの場合、照射システムおよび検出器システムを、照射システムの放射スポットが液体セルの作用電極の測定すべき箇所に向けられており、検出器システムへの入口開口が放射スポット上に位置しているように、移動かつ傾斜させることができ、これにより光電子が、検出器システムに入射することができる。
【0143】
ステップ510では、液体セルの作用電極の液体セルもしくは測定すべき箇所に、照射システムのX線を照射する。これにより、検出器システムに入射する光電子が生成される。検出器システムに入射することができる、できるだけ多くの数の光電子を生成するために、照射システムの種々異なるパラメータを最適化することができる。
【0144】
別の実施例では、液体セルは、放射線または粒子を生成するために、別の放射線または粒子により照射されてもよい。
【0145】
作用電極の代わりに、液体セルの別の電極に照射することもでき、あるいは液体または液体で濡らされた作用電極に照射することもできる。作用電極は、例えば、液体が作用電極の表面にメニスカスを形成し、これにより作用電極の測定を薄い液膜によって行うことができるように傾斜させられてもよい。
【0146】
作用電極は、作用電極の第1の部分が液体から突出し、作用電極の第2の部分が液体によって濡らされ、作用電極の第3の部分が液体内に位置しているように、傾斜させられてもよい。液体は、電気化学セルにおいて、作用電極の第1の部分が作動時に液体から突出し、作用電極の第2の部分が液体によって濡らされ、作用電極の第3の部分が液体内に位置しているように準備することができ、かつ液体は液体ポンプの液体圧送領域から圧送することができる。この場合、例えば、液体から突出している作用電極の第1の部分と、液体によって濡らされている作用電極の第2の部分と、液体内に位置している作用電極の第3の部分とが相前後して照射されるように、作用電極に、照射システムからの粒子または放射線を照射することができる。このためには、作用電極上でスポットを移動させることができる。代替的には、液体セル内の液体レベルを上昇させることによって、液膜を用いて、かつ液膜なしに測定を作用電極上で相前後して同じ測定箇所において実施することができるように液体レベルを変化させるように、液体を圧送することもできる。
【0147】
ステップ512では、液体セルから、もしくは液体セルの作用電極の測定されるべき箇所から放出された光電子が、検出器系内で検出される。検出器システム内で光電子を検出できるようにするために、検出器システムの種々異なるパラメータを最適化することができる。
【0148】
別の実施例では、別の粒子または放射線も検出器システムにおいて検出することができる。
【0149】
図1および
図3に示した負圧システム100および100’ならびに
図5に示した方法は、例えば、表面分析、表面反応の測定、液体-固体反応の測定、液体-気体反応の測定、液体の測定、薄い膜の測定、液体中の異物の検出、光電子放出測定、大気圧付近での光電子分光測定、大気圧付近でのX線光電子分光測定、電気化学的な測定、バッテリ分析、酸化測定、電解質測定、電極測定、液体を通した試料測定、品質管理、腐食測定、触媒測定、圧力依存測定、生体試料の測定、電位差測定および/または過飽和液体の測定のために使用され得る。
【0150】
図6は、マニピュレータヘッドを製造する方法600の1つの実施例を例示的なフローチャートで示している。例えば、
図1、
図2、
図3および
図4に示したマニピュレータヘッド10,10’,10’’,10’’’の実施例うちの1つを製造することができる。
【0151】
ステップ602では、電気化学セルの形態の液体セルが準備される。このためには、液体、特に水ベースの電解質を収容することができる内部空間を取り囲んでいる4つの側壁および底部を有するハウジングが提供される。付加的に、ハウジングが、開口を備えたカバーを有している。ハウジングは、負圧での運転、特に600mbar未満の絶対圧、例えば100mbar以下の絶対圧での運転のために適している。任意選択的には、液体セル内に複数の電極、例えば作用電極、参照電極および対極を設けることができる。
【0152】
さらに、液体セルは、液体を液体セル内に導入するための液体セル流入部と、この液体セルから液体を導出するための液体セル流出部とを有している。この実施例では、液体セル流出部は、液体セルの底部において、底部の最深点に配置されており、これにより、この液体セル流出部は、槽流出部と同様に、液体用の流出部として働くことができる。これにより、液体セルを完全に空にすることができる。任意選択的には、底部は、液体セル流出部に向かって傾斜させられており、例えば10°の傾斜角で傾斜させられている。
【0153】
600mbar未満の絶対圧では、液体は、液体管路の内径、液体の粘度および液体管路の長さに依存して、自動的に液体管路を通って流出しないので、さらに、液体を圧送して排出するために液体ポンプを設けなければならない。
【0154】
ステップ604では、蠕動ポンプの形態の液体ポンプが準備される。液体ポンプは、液体圧送領域を有している。この実施例では、液体圧送領域は、PEEKから成る弾性的なホースの形態の液体管路の一部によって形成されている。この実施例では、液体圧送領域は、液体ポンプのローラの第1の圧迫点から、ローラ同士の間隔に相当する第2の点にまで延びており、これにより、ローラがホースを圧迫すると、液体が、ローラの移動によりホースに沿って搬送される。換言すると、液体ポンプは、液体ポンプの液体圧送領域内に延びている液体を圧送することができる。
【0155】
ステップ606では、液体セルの液体セル流出部と液体ポンプの液体圧送領域との間の間隔は、液体セルの内部空間内で1mbar~100mbarの絶対圧が生じた状態で液体が少なくとも液体圧送領域にまで延び、これにより液体ポンプが液体を圧送することができるように選択される。このことは、液体が液体圧送領域からポンプで圧送して排出され得ることを確実にする。別の実施例では、液体セル流出部と液体圧送領域との間の間隔は、液体セルの内部空間内で600mbar未満、400mbar未満または100mbar以下の絶対圧が生じた状態で、液体が少なくとも液体圧送領域にまで延び、これにより液体ポンプが液体を圧送することができるように選択することができる。
【0156】
この間隔は、鉛直方向の間隔と水平方向の間隔とから構成されていてもよい。例えば、固定的な別のパラメータ、例えば液体管路内径、液体管路の材料、液体セルの内部空間内の所望の絶対圧および液体の粘度のために、液体ポンプが液体を圧送可能になるまで、液体セル流出部と液体圧送領域との間の間隔を短くすることができる。このために、例えば、液体が圧送され得るまで、液体セル流出部と液体圧送領域との間の液体管路の長さを減じることができる。このことは、一方では実験的に行うことができるが、例えばシミュレーションによって、またはベルヌーイ方程式に基づいて計算することもできる。
【0157】
本発明の上記説明は、図面に関連して、実施例の形態で本発明の特徴を例示的に説明するために用いられる。しかし実施例において説明された特徴は、単に例示的であり、かつ制限するものとして理解されるべきではない。特に、本発明は、実施例または個別の実施例の特徴の組み合わせに制限されない。例えば、1つの実施例において、本発明を、別の照射システム、例えば同期放射源または別の検出器システムと一緒に運転することも可能である。
【0158】
図示した例示的な実施形態の別の変形例およびバリエーションは、当業者であれば、特許請求される発明を図、説明および特許請求の範囲に鑑みて再現することにより理解し、実施することができる。
【0159】
「含んでいる」、「有する」、「含む」という言葉は、別の要素、構成要素またはステップを排除するものではなく、不定冠詞「1つの(ein)」は、複数を排除するものではない。
【0160】
特定の手段が互いに異なる請求項で挙げられているという事実は、これらの手段の組み合わせを有利には使用することができないことを意味するものではない。
【0161】
特許請求の範囲において使用される参照符号は、実施例の特徴を制限するものとして理解されるべきではなく、請求項の特徴のために単に例示的に理解されるべきである。
【0162】
本発明は、負圧で、特に600mbar未満の絶対圧での負圧システムにおける液体の圧送に関する。このためには、負圧時に負圧ハウジング内で使用するためのマニピュレータヘッドが設けられている。マニピュレータヘッドは、液体セルと液体ポンプとを含んでいる。液体セルは、液体セル流出部と、液体を収容するように構成された、負圧用に形成された内部空間とを有している。液体ポンプは、液体セル流出部に流体接続された液体圧送領域を有しており、液体セルの内部空間内で負圧が生じた状態で液体を液体圧送領域から圧送するように構成されている。液体セルの液体セル流出部と液体ポンプの液体圧送領域との間の間隔は、液体セルの内部空間内で600mbar未満の絶対圧が生じた状態で液体が少なくとも液体ポンプの液体圧送領域内にまで延び、これにより液体ポンプが液体を圧送することができるように選択されている。このことは、600mbar未満の絶対圧で液体を循環させることができ、特に空にすることもできる、負圧システムのためのコンパクトな構造を可能にする。
【国際調査報告】