(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-11
(54)【発明の名称】ダブルチャンバー内循環の密閉式薬液移送器及び薬液移送システム
(51)【国際特許分類】
A61J 1/20 20060101AFI20250304BHJP
【FI】
A61J1/20 314C
A61J1/20 316B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547926
(86)(22)【出願日】2023-03-02
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 CN2023079355
(87)【国際公開番号】W WO2024066201
(87)【国際公開日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】202211212995.9
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524302411
【氏名又は名称】広東健力源医療科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Guangdong Jianliyuan Medical Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.679, Guangyuan Road, Longtou Town, Potou District, Zhanjiang City, Guangdong 524001, China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】陳 日志
(72)【発明者】
【氏名】羅 栄瓊
(72)【発明者】
【氏名】謝 世庚
(72)【発明者】
【氏名】陳 偉権
(72)【発明者】
【氏名】唐 秉華
(72)【発明者】
【氏名】鄭 梁宇
(72)【発明者】
【氏名】楊 麗臻
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047HH03
4C047HH04
4C047HH07
(57)【要約】
本発明は、ダブルチャンバー内循環の密閉式薬液移送器及び移送システムを開示し、前記薬液移送器は、ダブルチャンバーシリンジ(10)と、調剤針アセンブリ(20)と、ニードルシールアセンブリ(30)とを含む。本発明の製品構造は、精巧に設計されており、且つ組み立てが容易であり、完全に密閉された薬物の調製と移送を実現することができ、使用過程において薬物容器内の空気圧を自動又は手動で調節してバランスをとり、薬物漏洩リスクを最大限に低減させることを実現することができ、密閉効果が非常に優れているとともに、コストが低く、使用利便性が高いなどの利点を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダブルチャンバーシリンジ(10)と、調剤針(21)アセンブリ(20)と、ニードルシールアセンブリ(30)とを含むダブルチャンバー内循環の密閉式薬液移送器であって、
前記ダブルチャンバーシリンジ(10)は、第一の注射筒(11)と、第一の注射筒(11)内で内キャビティに沿って前後摺動可能な第一のピストンロッド(12)と、第二の注射筒(14)と、第二の注射筒(14)内で内キャビティに沿って前後摺動可能な第二のピストンロッド(15)とから構成され、ここで、第一の注射筒(11)と第二の注射筒(14)とは、並設され、同方向であり且つ前端が面一となる方式で固定して設置され、第一の注射筒(11)の前端面上には、第一の継手(13)が設置されており、第二の注射筒(14)の前端面上には、第二の継手(16)が設置されており、
前記調剤針(21)アセンブリ(20)は、調剤針(21)と針ハブ(22)とを含み、調剤針(21)は、その後端を針ハブ(22)の前端に埋め込む方式で針ハブ(22)に固定して接続され、ここで、
針ハブ(22)の後端には、第一の継手(13)にマッチングする第一の接続穴(221)と、第二の継手(16)にマッチングする第二の接続穴(223)とが設置されており、且つ針ハブ(22)の内部には、第一の接続穴(221)及び第二の接続穴(223)とそれぞれ連通し、且つ互いに独立した第一のチャンネル(222)と第二のチャンネル(224)とが設置されており、
調剤針(21)は、二層柱状構造であり、インナーコラムチャンネル(211)とサイドリングチャンネル(212)とを有し、ここで、インナーコラムチャンネル(211)は、第一のチャンネル(222)と連通し、サイドリングチャンネル(212)は、第二のチャンネル(224)と連通し、
第一の継手(13)と第二の継手(16)をそれぞれ第一の接続穴(221)と第二の接続穴(223)に埋め込むことによって、調剤針(21)アセンブリ(20)とダブルチャンバーシリンジ(10)とは、固定的且つ密閉的な接続を実現し、
前記ニードルシールアセンブリ(30)は、調剤針(21)と同軸に設置されるシース(31)と、密閉部材(32)と、弾性部材(33)とを含み、ここで、
シース(31)は、前後に開口した中空の筒状構造であり、針ハブ(22)の前端に軸方向に移動可能に套設され、
密閉部材(32)は、弾性材料で作られ、シース(31)の前端筒体内に固定して設置され、
密閉部材(32)の中軸には、調剤針(21)が通過するための穴管が設けられており、穴管の内径は、調剤針(21)の外径よりも小さく、
弾性部材(33)は、密閉部材(32)と針ハブ(22)との間に設置され、針ハブ(22)に依存して、弾性部材(33)は、前端の密閉部材(32)に軸方向の弾力支持を提供し、
非受圧状態では、弾性部材(33)が軸方向に伸び、シース(31)は、調剤針(21)をシース(31)の内部に遮蔽するとともに、弾性材料の弾力作用により、密閉部材(32)は、調剤針(21)の前端部を緊密に包み、インナーコラムチャンネル(211)とサイドリングチャンネル(212)の前端チャンネル口を内部に密閉し、
受圧状態では、弾性部材(33)が軸方向に圧縮され、インナーコラムチャンネル(211)とサイドリングチャンネル(212)の前端チャンネル口とを含む調剤針(21)の前端部は、密閉部材(32)の穴管を経由してシース(31)から抜け出ることができる、ことを特徴とするダブルチャンバー内循環の密閉式薬液移送器。
【請求項2】
第一の注射筒(11)と第二の注射筒(14)とは、同じサイズ仕様を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項3】
第一の継手(13)と第二の継手(16)とは、近接する方式で設置される、ことを特徴とする請求項1に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項4】
第一の継手(13)と第二の継手(16)の外側壁は、テーパ面であり、且つテーパ面には、少なくとも一つの環状ボスが設置されており、
それに応じて、針ハブ(22)の後端に設置される第一の接続穴(221)と第二の接続穴(223)の形状はそれぞれ、それに対応する継手のテーパ面にマッチングし、且つ穴壁上には、環状ボスに対応する環状溝が設置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項5】
前記調剤針(21)は、内針管と外針管とからなり、内針管は、外針管内に穿設され、且つ両端は、いずれも外針管外に延在し、この時にインナーコラムチャンネル(211)は、内針管の内キャビティによって構成され、サイドリングチャンネル(212)は、外針管と内針管との間の空洞によって構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項6】
内針管と外針管とは、互いに独立しているか、又は一体成形され、互いに固定して接続されており、それが後者のタイプを選択する場合、好ましくは外針管の前端は、内針管の前端側壁に密閉的に固定して接続される、ことを特徴とする請求項5に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項7】
内針管の前端は、斜め開口部に設置され、又は内針管の前端は、先端であり、側方開口部が設置されており、外針管の前端側壁には、側方開口部が設置されている、ことを特徴とする請求項6に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項8】
針ハブ(22)の前端部には、取り付け溝が設置されており、且つ取り付け溝内には、外形構造が取り付け溝にマッチングする針通し台(23)が装着されており、
第一のチャンネル(222)と第二のチャンネル(224)の前端開口は、いずれも前記取り付け溝の底部に位置し、且つ第一のチャンネル(222)の前端開口の位置は、調剤針(21)と同軸であり、
針通し台(23)の内部は、調剤針(21)の軸に対応する位置に、前後に貫通する穴管が設置されており、前部に位置する針通し穴と後部に位置する固定穴とから構成され、前記針通し穴は、ラッパ状であり、固定穴まで内径が前から後へ徐々に減小し、前記固定穴の内径は、外針管の外径にマッチングし、
針通し台(23)の後端面上には、連通溝が設置されており、両端は、第二のチャンネル(224)及び固定穴とそれぞれ連通し、
調剤針(21)の内針管の後端は、針通し台(23)を通過し、埋め込む方式で第一のチャンネル(222)内に固定され、外針管の後端は、埋め込む方式で針通し台(23)の固定穴内に固定される、ことを特徴とする請求項1に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項9】
針ハブ(22)内の第一のチャンネル(222)は、調剤針(21)と同軸である方式で設置され、第二のチャンネル(224)は、第一のチャンネル(222)の一方側に平行して設置される、ことを特徴とする請求項8に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項10】
針通し台(23)の断面は、円形ではなく、且つ軸方向に沿って変化しないように維持する、ことを特徴とする請求項8に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項11】
調剤針(21)アセンブリ(20)とダブルチャンバーシリンジ(10)とが固定され且つ密閉的に接続された後、インナーコラムチャンネル(211)、第一のチャンネル(222)、第一の接続穴(221)と第一の注射筒(11)は、前から後へ順に連通し、密閉通路Iを形成し、サイドリングチャンネル(212)、第二のチャンネル(224)、第二の接続穴(223)と第二の注射筒(14)は、前から後へ順に連通し、密閉通路IIを形成し、密閉通路IとIIとの間は、互いに独立している、ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項12】
前記ニードルシールアセンブリ(30)は、同軸に設置されるシース(31)と、密閉部材(32)と、弾性部材(33)と、内側スリーブ(34)とを含み、ここで、
シース(31)の前端部は、より小さい径方向サイズを取り、内径が比較的小さい第一の筒状セグメントと内径が比較的大きい第二の筒状セグメントとから構成される複合筒状構造を形成し、
密閉部材(32)は、断面が逆T字状を呈する構造として設計され、前部直径は、第一の筒状セグメントの内径に対応し、後部直径は、第二の筒状セグメントの内径に対応し、それによって密閉部材(32)は、第一の筒状セグメントの内キャビティを完全に充填すると同時に、少なくとも一部の第二の筒状セグメントの内キャビティを充填することができ、
内側スリーブ(34)の内径は、針ハブ(22)の外径に対応し、内側スリーブ(34)の外径は、シース(31)の第二の筒状セグメントの内径に対応し、その前端面は、密閉され、且つ端面の中央には、調剤針(21)が通過するための貫通孔が設置されており、内側スリーブ(34)は、シース(31)の第二の筒状セグメント内に固定して接続され、前端面は、密閉部材(32)の後端面に当接し、
弾性部材(33)は、内側スリーブ(34)内に設置され、両端は、内側スリーブ(34)の前端内面及び針ハブ(22)の前端面にそれぞれ当接する、ことを特徴とする請求項1に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項13】
内側スリーブ(34)の外壁には、バックルが設置されており、シース(31)の第二の筒状セグメント上には、対応する係止孔が設置されており、内側スリーブ(34)をシース(31)に挿入する時にバックルと係止孔との協働によってシース(31)と内側スリーブ(34)との間の固定的な接続を実現する、ことを特徴とする請求項12に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項14】
内側スリーブ(34)の後端口には、径方向外向き方式で環状ボスが設置されており、内側スリーブ(34)の前端面が密閉部材(32)の後端面に当接する時、後端の環状ボスは、シース(31)から露出し且つシース(31)の後端に当接する、ことを特徴とする請求項12又は13に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項15】
内側スリーブ(34)の前端内面と針ハブ(22)の前端面には、いずれもバックル構造が設置されており、それによって弾性部材(33)との固定的な接続を実現する、ことを特徴とする請求項12から14のいずれか1項に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項16】
針ハブ(22)の側面には、軸方向溝と横方向溝とからなるL字状溝が設置されており、内側スリーブ(34)の後端には、径方向内向きにスライドテーブルが設置されており、スライドテーブルは、L字状溝に埋め込まれ、溝に沿って摺動可能である、ことを特徴とする請求項12から14のいずれか1項に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項17】
密閉部材(32)は、弾性材料で作られ、好ましくはゴムと、シリカゲルと、合成ゴムとのうちのいずれか一つで作られる、ことを特徴とする請求項1に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項18】
密閉部材(32)の前端面は、シース(31)の前端面よりも外側に突出している、ことを特徴とする請求項1に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項19】
弾性部材(33)は、弾性折り畳みチューブ又はバネである、ことを特徴とする請求項1に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項20】
シース(31)の前端外壁には、移液接続器(40)との固定的な接続を容易にするために、径方向外向きに凸となる二つの係合台が対称的に設置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項21】
前記密閉式薬液移送器は、保護キャップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項22】
密閉式薬液移送システムであって、
請求項1から21のいずれか1項に記載の密閉式薬液移送器と、前記薬液移送器を薬物容器に固定して接続するための移液接続器(40)とを含み、
前記移液接続器(40)の一端は、薬物容器を取り外し可能に固定して接続するために用いられ、他端は、薬液移送器を取り外し可能に固定して接続するために用いられ、固定して接続される時、密閉部材の前端面は、薬物容器の容器口に当接する、密閉式薬液移送システム。
【請求項23】
移液接続器(40)は、同軸的且つ互いに接続された第一のスリーブ(41)と第二のスリーブ(42)とを含み、第一のスリーブ(41)は、薬液移送器のシース(31)の前端に取り外し可能に套設されるために用いられ、第二のスリーブ(42)は、薬物容器の容器口に取り外し可能に套設されるために用いられ、固定して接続される時、密閉部材の前端面と薬物容器の容器口とは、スリーブ内で安定した当接を維持する、ことを特徴とする請求項22に記載の密閉式薬液移送システム。
【請求項24】
第二のスリーブ(42)の外縁には、軸方向前方に延在するバックル爪(43)が対称的に設置されており、且つ各バックル爪(43)の後端には、後方に延在するリリースアーム(44)が設置されており、第二のスリーブ(42)は、バックル爪(43)を介して容器口に固定され、且つリリースアーム(44)を介して容器口から取り外される、ことを特徴とする請求項23に記載の密閉式薬液移送システム。
【請求項25】
第一のスリーブ(41)の内壁には、二つの係合溝(45)が対称的に設置されており、前記係合溝(45)は、軸方向溝と横方向溝とから構成されるL字状構造であり、それに応じて、シース(31)の前端外壁には、径方向外向きに凸となる二つの係合台が対称的に設置されている、ことを特徴とする請求項23に記載の密閉式薬液移送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤の調製と移送デバイス分野に関し、具体的にダブルチャンバー内循環の密閉式薬液移送器及び薬液移送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
化学療法薬物を代表とする危険性薬物は、長期的にこのような薬物の調製移送に従事する医療従事者の健康に極めて大きな危害を与え、例えば発がん、内臓器官損傷、DNA損傷、生殖問題、流産催奇形性などである。従来の資料によると、長期的に危険性薬物に接触している薬剤師、看護師などの人員のがん発症率は、一般の人に比べて3~10倍増加し、不妊又は流産などのリスクは、2~5倍増加している。そのため、いくつかの医療機構は、様々な浄化室、バイオキャビネットなどの設施を建設して薬物漏洩リスクを低減させ、投資が大きいが実際の普及応用効果が良くない。国内の診療段階は、密閉式薬液移送器に対する需要量が大きいが、選択肢が少なく、製品には、密閉性が良いだけでなく、コストが低く、使用が便利であることが求められている。米国BD社は近年、密閉式の構成と移送システムを発売したが、構造が複雑で、コストが高く、操作が煩雑であるため普及しにくいとともに、このシステムは、50~80%の漏洩リスクを減少させることしかできない。本発明の出願人は、以前にも空気圧バランス用のエアバッグを備えた2種類の薬液移送器(CN111346008AとCN111346009A)を発売しており、コストが低く、使用が便利であり且つ比較的に良い内循環密閉効果を有するが、普及応用においても同様にいくつかの問題を発見し、例えばエアバッグ構造が破損/離脱しやすく、エアバッグを接続するチャンネルが薬液に浸入しやすく閉塞されるなどであるため、依然として一定の漏洩リスクが存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術の不足と実際の応用の需要に対して、本発明の目的は、主にダブルチャンバー内循環の密閉式薬液移送器及び移送システムを提供することであり、構造は、精巧に設計されており、且つ組み立てが容易であり、完全に密閉された薬物の調製と移送を実現することができ、使用過程において薬物容器内の空気圧を自動又は手動で調節してバランスをとり、薬物漏洩リスクを最大限に低減させることを実現することができ、密閉効果が非常に優れているとともに、コストが低く、使用利便性が高いなどの利点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を実現するために、本発明の第一の態様として、ダブルチャンバーシリンジと、調剤針アセンブリと、ニードルシールアセンブリとを含むダブルチャンバー内循環の密閉式薬液移送器を提供し、
前記ダブルチャンバーシリンジは、第一の注射筒と、第一の注射筒内で内キャビティに沿って前後摺動可能な第一のピストンロッドと、第二の注射筒と、第二の注射筒内で内キャビティに沿って前後摺動可能な第二のピストンロッドとから構成され、ここで、第一の注射筒と第二の注射筒とは、並設され、同方向であり且つ前端が面一となる方式で固定して設置され、第一の注射筒の前端面上には、第一の継手が設置されており、第二の注射筒の前端面上には、第二の継手が設置されており、
前記調剤針アセンブリは、調剤針と針ハブとを含み、調剤針は、その後端を針ハブ前端に埋め込む方式で針ハブに固定して接続され、ここで、
針ハブの後端には、第一の継手にマッチングする第一の接続穴と、第二の継手にマッチングする第二の接続穴とが設置されており、且つ針ハブの内部には、第一の接続穴及び第二の接続穴とそれぞれ連通し、且つ互いに独立した第一のチャンネルと第二のチャンネルとが設置されており、
調剤針は、二層柱状構造であり、インナーコラムチャンネルとサイドリングチャンネルとを有し、ここで、インナーコラムチャンネルは、第一のチャンネルと連通し、サイドリングチャンネルは、第二のチャンネルと連通し、
第一の継手と第二の継手をそれぞれ第一の接続穴と第二の接続穴に埋め込むことによって、調剤針アセンブリとダブルチャンバーシリンジとは、固定的且つ密閉的な接続を実現し、
前記ニードルシールアセンブリは、調剤針と同軸に設置されるシースと、密閉部材と、弾性部材とを含み、ここで、
シースは、前後に開口した中空の筒状構造であり、針ハブ前端に軸方向に移動可能に套設され、
密閉部材は、弾性材料で作られ、シースの前端筒体内に固定して設置され、密閉部材の中軸には、調剤針が通過するための穴管が設けられており、穴管の内径は、調剤針の外径よりも小さく、
弾性部材は、密閉部材と針ハブとの間に設置され、針ハブに依存して、弾性部材は、前端の密閉部材に軸方向の弾力支持を提供し、
非受圧状態では、弾性部材が軸方向に伸び、シースは、調剤針をシースの内部に遮蔽するとともに、弾性材料の弾力作用により、密閉部材は、調剤針の前端部を緊密に包み、インナーコラムチャンネルとサイドリングチャンネルの前端チャンネル口を内部に密閉し、
受圧状態では、弾性部材が軸方向に圧縮され、インナーコラムチャンネルとサイドリングチャンネルの前端チャンネル口とを含む調剤針の前端部は、密閉部材の穴管を経由してシースから抜け出ることができることを特徴とする。
【0005】
本発明では、特に断りのない限り、前端とは、調剤針の針先が指す一端であり、後端とは、それと反対の他端である。
【0006】
本発明の密閉式薬液移送器では、ダブルチャンバーシリンジは、第一の注射筒と、第一の注射筒内で内キャビティに沿って前後摺動可能な第一のピストンロッドと、第二の注射筒と、第二の注射筒内で内キャビティに沿って前後摺動可能な第二のピストンロッドとから構成され、第一の注射筒と第二の注射筒とは、並設され、同方向であり且つ前端が面一となる方式で固定して設置される。本発明は、第一の注射筒と第二の注射筒の仕様に特に制限を設けず、両者は、同じであっても異なってもよいが、生産と実際の操作の利便性の観点から考慮すると、好ましい実施の形態として、第一の注射筒と第二の注射筒とは、同じサイズ仕様を有する。好ましくは、第一の注射筒と第二の注射筒とは、透明な材質で作られ、且つ筒体表面には、容積を表示する目盛が設置されている。
【0007】
注射筒の前端面上の継手の作用は、主に二つの面に体現され、即ち、一つは、ダブルチャンバーシリンジと調剤針アセンブリとの間の挿着式固定接続部品とし、もう一つは、薬液又は気体の注射筒への出入りの出入口とする。針ハブのサイズ制限に鑑みて、好ましくは、第一の継手と第二の継手とは、できるだけ近接する方式で設置される。
【0008】
好ましい実施の形態として、第一の継手と第二の継手の外側壁は、テーパ面であり、且つテーパ面には、少なくとも一つの環状ボスが設置されている。それに応じて、針ハブの後端に設置される第一の接続穴と第二の接続穴の形状はそれぞれ、それに対応する継手のテーパ面にマッチングし、且つ穴壁上には、環状ボスに対応する環状溝が設置されている。継手と接続穴との挿着固定によって、調剤針アセンブリとダブルチャンバーシリンジとの間の固定的且つ密閉的な接続を容易に実現することができる。
【0009】
本発明の密閉式薬液移送器では、調剤針アセンブリは、調剤針と針ハブとを含み、調剤針は、その後端を針ハブ前端に埋め込む方式で針ハブに固定して接続される。
【0010】
調剤針は、二層柱状構造であり、インナーコラムチャンネルとサイドリングチャンネルとを有する。好ましい実施の形態として、前記調剤針は、内針管と外針管とからなってもよく、内針管は、外針管内に穿設され、且つ両端は、いずれも外針管外に延在し、この時にインナーコラムチャンネルは、内針管の内キャビティによって構成され、サイドリングチャンネルは、外針管と内針管との間の空洞によって構成される。
【0011】
内針管と外針管は、互いに独立してもよく、一体成形され、互いに固定して接続されてもよく、それが後者のタイプを選択する場合、好ましくは外針管の前端は、内針管の前端側壁に密閉的に固定して接続される。さらに好ましくは、内針管の前端は、斜め開口部に設置され、又は内針管の前端は、先端であり、側方開口部が設置されており、外針管の前端側壁には、側方開口部が設置されている。このように開口部を設計することは、調剤針が薬物容器に突き刺さるのに有利であるだけでなく、インナーコラムチャンネルとサイドリングチャンネル両方との間の干渉を低減させることができるとともに、サイドリングチャンネルを薬液チャンネルとすると、後方に設置される側方開口部は、医療従事者が薬剤を調製する時に液体薬剤瓶を逆にする操作習慣にもっとフィットし、より十分に薬液(特にボルト口における薬液)を吸引するのに有利であり、薬剤の浪費又は二次操作による操作リスクの高まりを回避する。
【0012】
針ハブは、調剤針とニードルシールアセンブリを設置するキャリアである。上述したように、針ハブの後端には、第一の継手にマッチングする第一の接続穴と、第二の継手にマッチングする第二の接続穴とが設置されており、且つ針ハブの内部には、第一の接続穴及び第二の接続穴とそれぞれ連通し、且つ互いに独立した第一のチャンネルと第二のチャンネルとが設置されており、調剤針のインナーコラムチャンネルは、第一のチャンネルと連通し、サイドリングチャンネルは、第二のチャンネルと連通する。
【0013】
一好ましい実施の形態として、針ハブの前端部には、取り付け溝が設置されており、且つ取り付け溝内には、外形構造が取り付け溝にマッチングする針通し台(針ハブの前端部から一塊を掘り出すのに相当する)が装着されており、第一のチャンネルと第二のチャンネルの前端開口は、いずれも前記取り付け溝の底部に位置し、且つ第一のチャンネルの前端開口の位置は、調剤針と同軸であり、針通し台の内部は、調剤針の軸に対応する位置に、前後に貫通する穴管が設置されており、前部に位置する針通し穴と後部に位置する固定穴とから構成され、前記針通し穴は、ラッパ状であり、固定穴まで内径が前から後へ徐々に減小し、前記固定穴の内径は、外針管の外径にマッチングし、針通し台の後端面上には、連通溝が設置されており、両端は、第二のチャンネル及び固定穴とそれぞれ連通する。調剤針の内針管の後端は、針通し台を介して、埋め込む方式で第一のチャンネル内に固定され、外針管の後端は、埋め込む方式で針通し台の固定穴内に固定される。
【0014】
さらに好ましくは、上記実施の形態では、針ハブ内の第一のチャンネルは、調剤針と同軸である方式で設置され、第二のチャンネルは、第一のチャンネルの一方側に平行して設置される。
【0015】
さらに好ましくは、針通し台の断面は、円形ではなく、且つ軸方向に沿って変化しないように維持する。このように設計する目的は、針通し台が固定角度でのみ針ハブの取り付け溝内に取り付けられるようにし、針通し台底部の連通溝と第二のチャンネルとの正確な突き合わせを便利にすることである。
【0016】
針ハブと調剤針の構造を十分に理解した後、どのように組み立て調剤針アセンブリを形成するかは、当業者によって容易に決定することができる。例えば、調剤針が互いに独立した内針管と外針管とから構成される時、まず針通し台を取り出し、内針管の後端を第一のチャンネル内に埋め込み、次いで外針管を針通し台に固定し、さらに一体化した外針管と針通し台とを内針管の外側にセットして取り付け溝内に挿入してもよく、又は、内針管と外針管が一体成形され且つ互いに固定して接続される時、まず針通し台を取り出し、調剤針を針通し台に固定し、外針管の後端が針通し台の固定穴内に埋め込まれ且つ内針管の後端を突き抜け、針通し台から抜け出ることを確保し、その後、針通し台を取り付け溝内に挿入し、露出した内針管の後端が第一のチャンネル内に完全に埋め込まれることを確保してもよい。
【0017】
調剤針アセンブリとダブルチャンバーシリンジとが固定され且つ密閉的に接続された後、インナーコラムチャンネル、第一のチャンネル、第一の接続穴と第一の注射筒は、前から後へ順に連通し、密閉通路Iを形成し、サイドリングチャンネル、第二のチャンネル、第二の接続穴と第二の注射筒は、前から後へ順に連通し、密閉通路IIを形成する。密閉通路IとIIとの間は、互いに独立しており、薬液の調製と移送過程において、2本の通路のうちの一つは、薬液の伝送に用いられ、もう一つは、気体を伝送し、空気圧を平衡させる作用を発揮することができる。
【0018】
本発明では、ニードルシールアセンブリは、調剤針と同軸に設置されるシースと、密閉部材と、弾性部材とを含む。ニードルシールアセンブリを設置することにより、針通し防止の機能を発揮できるだけでなく、薬液の調製と移送過程全体がいずれも完全に密閉された状態にあることを確保し、薬液が前端チャンネル口から漏洩するリスクを回避することができる。類似する構造と機能を有するアセンブリは、出願人の先の特許においてすでに報道されており、例えばCN111346008AとCN111346009Aであるが、それらの製造工程は、比較的複雑であり、構造が比較的複雑な部品を使用する必要があり、簡単な構造部品の組み合わせでよいわけではないため、ロット生産の際に特定の機器を使用する必要があるか、又は機器の精度に対する要求が比較的高い。
【0019】
製造プロセスを簡略化し、組み立てが容易であり、さらにロット生産コストを低減させるという目的を実現するために、出願人は、ニードルシールアセンブリの構造を最適化した。本発明の好ましい実施の形態として、前記ニードルシールアセンブリは、同軸に設置されるシースと、密閉部材と、弾性部材と、内側スリーブとを含み、ここで、
シースの前端部は、より小さい径方向サイズを取り、内径が比較的小さい第一の筒状セグメントと内径が比較的大きい第二の筒状セグメントとから構成される複合筒状構造を形成し、
密閉部材は、断面が逆T字状を呈する構造として設計され、前部直径は、第一の筒状セグメントの内径に対応し、後部直径は、第二の筒状セグメントの内径に対応し、それによって密閉部材は、第一の筒状セグメントの内キャビティを完全に充填すると同時に、少なくとも一部の第二の筒状セグメントの内キャビティを充填することができ、
内側スリーブの内径は、針ハブの外径に対応し、内側スリーブの外径は、シース第二の筒状セグメントの内径に対応し、その前端面は、密閉され、且つ端面の中央には、調剤針が通過するための貫通孔が設置されており、内側スリーブは、シースの第二の筒状セグメント内に固定して接続され、前端面が密閉部材の後端面に当接し、
弾性部材は、内側スリーブ内に設置され、両端は、内側スリーブの前端内面と針ハブの前端面にそれぞれ当接する。
【0020】
シースと密閉部材の構造を改良し、内側スリーブを増設することにより、密閉部材がストッパーして固定され、且つ弾性部材の前後両端は、いずれも硬質材料に当接し、全体の構造と性能をより安定させる。さらに好ましくは、内側スリーブの外壁には、バックルが設置されており、シースの第二の筒状セグメント上には、対応する係止孔が設置されており、内側スリーブをシースに挿入する時にバックルと係止孔との協働によってシースと内側スリーブとの間の固定的な接続を実現する。好ましくは、内側スリーブの後端口には、径方向外向き方式で環状ボスが設置されており、内側スリーブ前端面が密閉部材の後端面に当接する時、後端の環状ボスは、シースから露出し且つシースの後端に当接する。
【0021】
理解しやすいことに、本発明の前記薬液移送器を使用する過程において、ニードルシールアセンブリは、弾性部材の伸縮に伴って軸方向に移動するが、常に針ハブに接続される状態を維持する。一好ましい実施の形態として、内側スリーブの前端内面と針ハブの前端面には、いずれもバックル構造が設置されており、それによって弾性部材との固定的な接続を実現する。また別の好ましい実施の形態として、針ハブの側面には、軸方向溝と横方向溝(軸方向に垂直な溝)とからなるL字状溝が設置されており、内側スリーブの後端には、径方向内向きにスライドテーブルが設置されており、スライドテーブルは、L字状溝に埋め込まれ、溝に沿って摺動可能である。スライドテーブルとL字状溝の位置設計により、ニードルシールアセンブリの針ハブに対する可動範囲を柔軟に調整、制限することができる。スライドテーブルが軸方向溝に沿って後方に摺動するのに伴って、弾性部材が圧縮され、調剤針が密閉部材を突き抜け、設定された程度に達した後にスライドテーブルが横方向溝に沿って回動すると、ニードルシールアセンブリの軸方向運動を制限することによって、ストッパー固定の効果を達成することができる。
【0022】
密閉部材は、弾性材料で作られ、好ましくはゴムと、シリカゲルと、合成ゴムとのうちのいずれか一つで作られる。適用される弾性材料は、医療材料の関連規格に適合すべきであり、これは、当業者にとって容易に知って決定することである。好ましい実施の形態として、密閉部材の前端面は、シースの前端面よりも外側に突出していることによって、薬液の調製と移送の際に、弾性材料で作られる密閉部材は、薬物容器の糊口にフィットし、薬物容器の開口部をより良くシールする作用を果たすことができる。
【0023】
弾性部材は、弾性折り畳みチューブ、バネなどであってもよく、好ましくはバネである。
【0024】
本発明の密閉式薬液移送器を用いて移液接続器と協働して薬液の調製と移送操作を行う場合、移液接続器との固定的な接続を容易にするために、好ましくは、シースの前端外壁には、径方向外向きに凸となる二つの係合台が対称的に設置されている。
【0025】
本発明の密閉式薬液移送器は、非受圧状態で、弾性部材が軸方向に伸び、シースは、調剤針をシースの内部に遮蔽するとともに、弾性材料の弾力作用により、密閉部材は、調剤針の前端部を緊密に包み、インナーコラムチャンネルとサイドリングチャンネルの前端チャンネル口を内部に密閉し、受圧状態で、弾性部材が軸方向に圧縮され、インナーコラムチャンネルとサイドリングチャンネルの前端チャンネル口とを含む調剤針の前端部は、密閉部材の穴管を経由してシースから抜け出ることができる。密閉式薬液移送器の初期状態は、非受圧状態であってもよく、受圧状態であってもよいが、針通しを防止し、汚染を回避し、及び弾性部材と密閉部材の慣性変形を回避するという目的のために、好ましくは、初期状態は、非受圧状態である。
【0026】
好ましくは、本発明の密閉式薬液移送器は、保護キャップをさらに含む。予備状態では、保護キャップは、潜在的な汚染リスクを回避するために、シース上にセットされる。
【0027】
本発明の第二の態様として、密閉式薬液移送システムをさらに提供し、このシステムは、
上記ダブルチャンバー内循環の密閉式薬液移送器と、前記薬液移送器を薬物容器に固定して接続するための移液接続器とを含み、
前記移液接続器の一端は、薬物容器を取り外し可能に固定して接続するために用いられ、他端は、薬液移送器を取り外し可能に固定して接続するために用いられ、固定して接続される時、密閉部材の前端面は、薬物容器の容器口に当接する。
【0028】
一好ましい実施の形態として、移液接続器は、同軸的且つ互いに接続された第一のスリーブと第二のスリーブとを含み、第一のスリーブは、薬液移送器のシース前端に取り外し可能に套設されるために用いられ、第二のスリーブは、薬物容器の容器口に取り外し可能に套設されるために用いられ、固定して接続される時、密閉部材の前端面と薬物容器の容器口とは、スリーブ内で安定した当接を維持する。
【0029】
さらに好ましくは、第二のスリーブの外縁には、軸方向前方に延在するバックル爪が対称的に設置されており、且つ各バックル爪の後端には、後方に延在するリリースアームが設置されており、第二のスリーブは、バックル爪を介して容器口に固定され、且つリリースアームを介して容器口から取り外される。
【0030】
さらに好ましくは、第一のスリーブの内壁には、二つの係合溝が対称的に設置されており、前記係合溝は、軸方向溝と横方向溝とから構成されるL字状構造であり、それに応じて、シースの前端外壁には、径方向外向きに凸となる二つの係合台が対称的に設置されている。シースを第一のスリーブに挿入する時、係合台は、同期して係合溝の軸方向溝に入り、所定の位置に達した後、係合台が横方向溝内に回動するように薬液移送器を回転させると、薬液移送器は、移液接続器との固定を実現することができ、逆方向に操作すると取り外し分離を行うことができる。
【0031】
本発明の密閉式薬液移送器は、ダブルチャンバー内循環の特点を有し、そのうちの密閉通路IとIIは、互いに独立しており、密閉通路Iは、第一の注射筒及び薬物容器と連通し、密閉通路IIは、第二の注射筒及び薬物容器と連通する。調剤針の前端部が薬物容器内に突き刺さった後、第一の注射筒と第二の注射筒とのうちの一つは、薬液の伝送に用いられ、もう一つは、ピストンロッドの前後移動によって、注射筒内に予め吸入される空気と協働して、空気圧を平衡させる目的を達成することができる。
【0032】
本発明の密閉式薬液移送器は、混合薬剤を調製し、調製された薬液を輸液ボトル又は留置針内に移送するなどの目的に用いられてもよい。本発明の上記密閉式薬液移送器及び移送システムの構造を十分に理解した上で、どのようにそれを使用して薬液の調製と移送を行うかは、当業者にとって容易に決定することができる。
【0033】
薬液(粉薬の溶解を伴う)を調製し、輸液ボトルに注入することを例にすると、本発明の薬液移送システムを使用するフローは、以下のステップを含んでもよい。
【0034】
(1)ダブルチャンバーシリンジの第一のピストンロッドを、第一の注射筒の前部キャビティの容積が調製すべき薬液の体積よりも大きくなるまで後方に引く。このガス貯蔵段階を行うために、予め調剤針を密閉部材から突き刺し、ガスを貯蔵した後に再リセットするか、又はダブルチャンバーシリンジを調剤針アセンブリから分離し、ガスを貯蔵した後に調剤針アセンブリに再固定して接続してもよい。
【0035】
(2)移液接続器Aの第二のスリーブを輸液ボトルのボルト口に套設し、バックル爪を用いてそれと固定した後、薬液移送器のシース(係合台が設置される)を持って位置合わせて移液接続器Aの第一のスリーブ(係合溝が設置される)に挿入し、回転させて固定し、この時、密閉部材の前端面と輸液ボトルの糊口とは、スリーブ内で当接する。
【0036】
(3)薬液移送器の注射筒を持って前方に押し、バネの圧縮に伴って、調剤針は、密閉部材を差し抜いて輸液ボトルに突き刺さる。完全に突き刺さった後、注射筒(例えば時計回りに)を回動させて、ニードルシールアセンブリと針ハブとをストッパー固定する。
【0037】
(4)ダブルチャンバーシリンジの第二のピストンロッドを引き、輸液ボトルにおける一部の薬液(例えば生理塩水)を、密閉通路IIを経て第二の注射筒に抽出し、この時に輸液ボトル内に負圧が発生し、内外の圧力差の作用下で第一のピストンロッドは、内外の空気圧が平衡するまで前進し、第一の注射筒内に予約された空気を輸液ボトル内に補充する。
【0038】
(5)薬液の抽出が完了した後、注射筒を逆方向(例えば反時計回り)に回動させ、ニードルシールアセンブリと針ハブとのストッパー固定を解除し、バネの弾性位置エネルギーの助力下で、調剤針がリセットされるまで、ダブルチャンバーシリンジと調剤針アセンブリとを後方に移動させると、輸液ボトルから引き抜かれ、密閉部材によって再シールされる。
【0039】
(6)薬液移送器のシースをねじり、薬液移送器と移液接続器Aとの固定的な接続を解除し、それを移液接続器Aから引き抜く。
【0040】
(7)移液接続器Bの第二のスリーブをバイアル瓶のボルト口に套設し、バックル爪を用いてそれと固定した後、薬液移送器のシースを持って位置合わせて移液接続器Bの第一のスリーブ(係合溝が設置される)を挿入し、回転させて固定し、この時、密閉部材の前端面とバイアル瓶の糊口とは、スリーブ内で当接する。
【0041】
(8)薬液移送器の注射筒を持って前方に押し、バネの圧縮に伴って、調剤針は、密閉部材を差し抜いてバイアル瓶に突き刺さる。完全に突き刺さった後、注射筒(例えば時計回りに)を回動させて、ニードルシールアセンブリと針ハブとをストッパー固定する。
【0042】
(9)ダブルチャンバーシリンジの第二のピストンロッドを押し、薬液は、第二の注射筒から密閉通路IIを経てバイアル瓶内に注入され、この時バイアル瓶内に正圧が発生し、その中の空気は、密閉通路Iを経て第一の注射筒内に自動的に入り、第一のピストンロッドを後退させる。
【0043】
(10)バイアル瓶内に注入される薬液がバイアル瓶内の元の粉薬を十分に溶解した後、第二のピストンロッドを引き、バイアル瓶における混合薬液を、密閉通路IIを経て第二の注射筒に抽出し、この時にバイアル瓶内に負圧が発生し、第一の注射筒内の気体がバイアル瓶内に自動的に補充され、第一のピストンロッド内外の圧力差の作用下では、内外の空気圧が平衡するまで前進する。
【0044】
(11)混合薬液の抽出が完了した後、ステップ(5)と(6)を参照して、調剤針をリセットし、薬液移送器を移液接続器Bから引き抜く。
【0045】
(12)薬液移送器のシースを持って再位置合わせて移液接続器Aの第一のスリーブを挿入し、回転させて固定し、この時、密閉部材の前端面と輸液ボトルの糊口とは、再びスリーブ内で当接する。
【0046】
(13)ステップ(3)を参照して操作した後、ダブルチャンバーシリンジの第二のピストンロッドを押し、混合薬液は、第二の注射筒から密閉通路IIを経て輸液ボトル内に注入され、この時に輸液ボトル内に正圧が発生し、その中の空気は、密閉通路Iを経て第一の注射筒内に自動的に入り、第一のピストンロッドを後退させる。
【0047】
(14)混合薬液が輸液ボトルに完全に注入された後、ステップ(5)と(6)を参照して、調剤針をリセットし、薬液移送器を移液接続器Aから引き抜く。
【0048】
上記調製と移送過程において、第二の注射筒は、密閉通路IIを介して薬液を伝送し、第一の注射筒は、第一のピストンロッドの前後によって移動し、第一の注射筒内に予め吸入される空気と協働して、移送システムの内外の空気圧を平衡させる。第一のピストンロッドの前後移動は、外力を介さず内外の圧力差作用のみで完了してもよく、人力による補助で進行を柔軟に調整してもよい。
【発明の効果】
【0049】
従来の技術に比べて、本発明の有益な効果は、少なくとも以下の方面を含む。
【0050】
(1)本発明の薬液移送器の構造は、精巧に設計されており、各部材は、いずれもロット生産と組み立てが容易な部品であり、比較的複雑な構造の部品を使用する必要がなく、特定の機器を使用する必要がない。
【0051】
(2)製品の構造と性能が安定しており、コストが低いが歩留まりが高く、且つ使用が便利である。
【0052】
(3)薬物の調製と移送を行う過程において、薬液移送システムの内外の空気圧が完全に平衡している。
【0053】
(4)完全に密閉された薬物の調製と移送を実現し、薬物漏洩リスクを最大限に低減させることを実現することができ、密閉効果が非常に優れている。
【0054】
以下では、図面を結び付けながら本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】実施例1の薬液移送器の断面構造概略図であり、ここで、
図1aは、非受圧状態での薬液移送器であり、
図1bは、受圧状態での薬液移送器である。
【
図2】実施例1の薬液移送器の斜視局所の断面構造概略図であり、ここで、
図2aは、非受圧状態での薬液移送器であり、
図2bは、受圧状態での薬液移送器である。
【
図4】実施例2の薬液移送システムにおける薬液移送器と移液接続器の断面構造概略図であり、ここで、
図4aは、未接続状態におけるものであり、
図4bは、接続状態におけるものであり、
図4cは、薬液移送システムの運行状態におけるものである。
【
図6】応用実施例1における三目的紫外線分析装置を用いた検出結果の実物図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の目的、技術案と利点をより良く説明するために、以下では、図面と実施例を結び付けながら、本発明の具体的な実施の形態をさらに詳細に記述する。以下の実施例は、本発明を説明するためのものであるが、本発明の範囲を制限するものではない。
【0057】
実施例1
図1に示すように、ダブルチャンバー内循環の密閉式薬液移送器であって、ダブルチャンバーシリンジ10と、調剤針アセンブリ20と、ニードルシールアセンブリ30とを含む。
【0058】
ダブルチャンバーシリンジ10は、第一の注射筒11と、第一の注射筒11内で内キャビティに沿って前後摺動可能な第一のピストンロッド12と、第二の注射筒14と、第二の注射筒14内で内キャビティに沿って前後摺動可能な第二のピストンロッド15とから構成される。ここで、第一の注射筒11と第二の注射筒14とは、透明な材質で作られ、両者は、仕様が同じであり、且つ並設され、同方向であり且つ前端が面一となる方式で固定して設置され、筒体表面には、容積を表示する目盛(図示せず)が設置されている。第一の注射筒11と第二の注射筒14の前端面には、互いに近接する方式で第一の継手13と第二の継手16とがそれぞれ設置されており、二つの継手の構造は、同じであり、外側壁は、いずれもテーパ面であり、且つテーパ面には、一つの環状ボス(図示せず)が設置されていない。
【0059】
調剤針アセンブリ20は、調剤針21と針ハブ22とを含む。
【0060】
調剤針21は、互いに固定される内針管と外針管とからなる二層柱状構造である。内針管は、外針管よりも長く、両端が外針管の外側まで延在し、且つ外針管の前端は、内針管の前端側壁に密閉的に固定して接続される。内針管の前端口は、斜め開口部であり、外針管の前端には、側方開口部が設置されている。このように、内針管の内キャビティは、インナーコラムチャンネル211を構成し、サイドリングチャンネル212は、外針管と内針管との間の空洞によって構成される。
【0061】
針ハブ22の後端には、第一の継手13の位置と形状にマッチングする第一の接続穴221と、第二の継手16の位置と形状にマッチングする第二の接続穴223とが設置されるとともに、針ハブ22の内部には、それぞれ第一の接続穴221及び第二の接続穴223と連通し、且つ互いに独立した第一のチャンネル222と第二のチャンネル224とが設置されており、ここで、第一のチャンネル222は、調剤針21と同軸的に設置され、第二のチャンネル224は、第一のチャンネル222の一方側に平行して設置される。
【0062】
針ハブ22の前端部には、断面が楕円形である取り付け溝が設置されており、第一のチャンネル222と第二のチャンネル224との前端口は、いずれも取り付け溝の底部に位置する。取り付け溝内には、外形構造が取り付け溝にマッチングする針通し台23が装着されており、針通し台23の内部は、対応する調剤針21の軸の位置に前後に貫通する穴管が設置されており、前部に位置する針通し穴と後部に位置する固定穴とから構成され、ここで、針通し穴は、ラッパ状であり(調剤針21の取り付けを容易にする)、固定穴まで内径が前から後へ徐々に減小し、固定穴の内径は、外針管の外径にマッチングする。針通し台23の後端面には、連通溝がさらに設置されており、両端は、それぞれ第二のチャンネル224及び固定穴と連通する。
【0063】
調剤針21は、その後端を針ハブ22に埋め込む方式で針ハブ22に固定して接続される。この時、内針管の後端は、針通し台23の穴管を通過し、埋め込む方式で第一のチャンネル222内に固定され、外針管の後端は、針通し穴を通過し、埋め込む方式で針通し台23の固定穴内に固定される。
【0064】
第一の継手13と第二の継手16をそれぞれ第一の接続穴221と第二の接続穴223に埋め込むことによって、調剤針アセンブリ20とダブルチャンバーシリンジ10とは、固定的且つ密閉的な接続を実現する。
【0065】
ニードルシールアセンブリ30は、同軸に設置されるシース31と、密閉部材32と、弾性部材33と、内側スリーブ34とを含む。
【0066】
シース31の前端部は、比較的小さい径方向サイズを取り、内径が比較的小さい第一の筒状セグメントと内径が比較的大きい第二の筒状セグメントとから構成される複合筒状構造を形成する。第一の筒状セグメントの外壁上には、移液接続器に固定して接続されるための径方向外向きに凸となる二つの係合台が対称的に設置されており、第二の筒状セグメントの後端口に近接する筒壁上には、二つの係止孔が対称的に設置されている。
【0067】
密閉部材32は、シリカゲルで作られ、断面は、逆T字状構造を呈し、その前部直径は、シース31の第一の筒状セグメントの内径に等しく、且つ長さは、第一の筒状セグメントの軸方向長さよりも若干長く、後部直径は、第二の筒状セグメントの内径に等しい。密閉部材32は、第一の筒状セグメントの内キャビティと第二の筒状セグメントの前端内キャビティを完全に充填すると同時に、前端面は、シース31の前端面よりも外側に突出している。密閉部材32の中軸には、調剤針21が通過するための穴管が設けられており、穴管の内径は、調剤針21の外径よりも小さい。
【0068】
内側スリーブ34の内径と外径は、それぞれ針ハブ22の外径とシース31の第二の筒状セグメントの内径に対応し、その前端面は、密閉され、且つ端面の中央には、調剤針21が通過するための貫通孔が設置されており、後端口には、径方向外向き方式で環状ボスが設置されており、且つ後端口に近接する外壁上には、係止孔にマッチングする二つのバックルが対称的に設置されている。
【0069】
内側スリーブ34は、シース31の第二の筒状セグメント内に挿入され、バックルと係止孔との協働によって両方の間の固定的な接続を実現するとともに、内側スリーブ34の前端面は、密閉部材32の後端面に当接し、後端の環状ボスは、シース31から露出し且つシース31の後端に当接する。
【0070】
弾性部材33は、バネであり、内側スリーブ34内に設置され、両端は、それぞれ内側スリーブ34の前端内面と針ハブ22の前端面に当接する。
【0071】
針ハブ22の側面には、二つの軸方向溝と横方向溝とからなるL字状溝が対称的に設置されており、それに応じて、内側スリーブ34の後端径方向には、内向きに二つのスライドテーブルが対称的に設置されており、スライドテーブルは、L字状溝に埋め込まれ、溝に沿って摺動可能である。
【0072】
図1aに示すように、密閉式薬液移送器は、非受圧状態にあり、弾性部材は、軸方向に伸び、内側スリーブ34のスライドテーブルは、針ハブ22の側面の軸方向溝の前端に位置し、シース31は、調剤針21をシース31の内部に遮蔽するとともに、シリカゲルの弾力作用下で、密閉部材32は、調剤針21の前端部を緊密に包み、インナーコラムチャンネル211とサイドリングチャンネル212の前端チャンネル口を内部に密閉する。
【0073】
図1aの密閉式薬液移送器において、調剤針アセンブリ20は、ダブルチャンバーシリンジ10に固定的且つ密閉的に接続され、インナーコラムチャンネル211、第一のチャンネル222、第一の接続穴221と第一の注射筒11は、前から後へ順に連通し、密閉通路Iを形成し、サイドリングチャンネル212、第二のチャンネル224、第二の接続穴223と第二の注射筒14は、前から後へ順に連通し、密閉通路IIを形成する。密閉通路IとIIとの間は、互いに独立している。
【0074】
図1bは、上記薬液移送器の軸方向受圧状態での断面構造概略図である。受圧状態では、バネが軸方向に圧縮され、インナーコラムチャンネル211とサイドリングチャンネル212の前端チャンネル口とを含む調剤針21の前端部は、密閉部材32の穴管を経由してシース31から抜け出る。内側スリーブ34のスライドテーブルは、軸方向溝に沿って同期後方に摺動し、回転ダブルチャンバーシリンジ10又はシース31を介して横方向溝に移動することによって、ニードルシールアセンブリ30の軸方向運動を制限、ストッパー固定の効果を達成する。
【0075】
図2aと2bに表示されるのは、上記薬液移送器の非受圧と受圧状態での斜視局所の断面構造概略図である。
【0076】
図3は、本発明の薬液移送器の代表的な実物図である。図において、
図3aは、予備状態でのサンプル実物図であり、
図3bは、ダブルチャンバーシリンジ、調剤針アセンブリとニードルシールアセンブリが互いに分割された後のサンプル実物図であり、
図3cは、各部材が分割された後のサンプル実物図である(内部構造をより全面的に明瞭に示すために、ここでは、調剤針の内針管と外針管とを分割して提示する)。
【0077】
実施例2
図4に示されるのは、密閉式薬液移送システムであり、ダブルチャンバー内循環の密閉式薬液移送器(
図1~3に示すとおりであり、
図4に全面的に提示されていない)と、薬液移送器を薬物容器に固定して接続するための移液接続器40とを含む。
【0078】
移液接続器40は、同軸的且つ互いに接続された第一のスリーブ41と第二のスリーブ42とを含む。
【0079】
第一のスリーブ41は、薬液移送器のシース31の前端に取り外し可能に套設されるために用いられる。シース31の前端外壁の係合台に対応し、第一のスリーブ41の内壁には、二つの係合溝45が対称的に設置されており、係合溝45は、軸方向溝と横方向溝とから構成されるL字状構造である。シース31を第一のスリーブ41に挿入する時、係合台は、同期して係合溝の軸方向溝に入り、所定の位置に達した後、係合台が横方向溝内に回動するように薬液移送器を回転させると、薬液移送器は、移液接続器との固定を実現することができる。
【0080】
第二のスリーブ42は、薬物容器の容器口に取り外し可能に套設されるために用いられる。第二のスリーブ42の外縁には、軸方向前方に延在するバックル爪43が対称的に設置されており、且つ各バックル爪43の後端には、後方に延在するリリースアーム44が設置されており、第二のスリーブ42は、バックル爪43を介して容器口に固定され、且つリリースアーム44を介して容器口から取り外される。
【0081】
移液接続器40を介して薬液移送器と薬物容器とを固定して接続する時、密閉部材32の前端面と薬物容器の容器口とは、スリーブ内で安定した当接を維持する。
【0082】
図4aに示す薬液移送システムにおいて、薬液移送器と移液接続器は、未接続状態にある。
図4bは、薬液移送システムにおける薬液移送器と移液接続器との接続状態下での断面構造概略図である。
図4cは、薬液移送システムの運行状態下での断面構造概略図である。
【0083】
図5は、本発明の薬液移送システムの代表的な実物図である。図において、
図5aは、予備状態でのサンプル実物図であり、
図5bと
図5cは、移液接続器に輸液ボトルとバイアル瓶とが固定して接続される時の異なる角度のサンプル実物図である。
【0084】
応用実施例1
以上、すでに本発明の薬液移送器と薬液移送システムの従来の技術と比較した性能優位性について詳細に記述した。その技術的効果をさらに検証するために、現在、実際の製品を用いて応用実験を行う。
【0085】
1、実験場所
湛江健力源医療用品有限公司製品研究開発実験室。
【0086】
2、実験対象
図5に示す薬液移送システムを実験サンプルとして採用し、そのうちの薬液移送器は、
図3に示すとおりであり、第一と第二の注射筒の仕様は、20mLである。
【0087】
濃度10g/Lの蛍光素ナトリウム水溶液10mLをバイアル瓶に加え、アルミニウムキャップ塩素化ブチルゴム栓でシールし、バイアル瓶Aとし、別の空のバイアル瓶を取り、同様にアルミニウムキャップ塩素化ブチルゴム栓でシールし、バイアル瓶Bとし、予備とした。
【0088】
3、実験方法
1)ダブルチャンバーシリンジの第一のピストンロッドを、第一の注射筒の前部キャビティの容積が10mLよりも大きくなるまで後方に引いた。このガス貯蔵操作を行うために、ダブルチャンバーシリンジを調剤針アセンブリから分離させ、ガスを貯蔵した後に調剤針アセンブリに再固定して接続した。
【0089】
2)移液接続器Aの第二のスリーブをバイアル瓶Aのボルト口に套設し、バックル爪を用いてそれと固定した後、薬液移送器のシースを持って位置合わせて移液接続器Aの第一のスリーブを挿入し、回転させて固定し、この時、密閉部材の前端面とバイアル瓶Aの糊口とは、スリーブ内で当接した。
【0090】
3)薬液移送器の注射筒を持って前方に押し、バネの圧縮に伴って、調剤針は、密閉部材を差し抜いてバイアル瓶Aに突き刺さった。完全に突き刺さった後、注射筒を回動させ、ニードルシールアセンブリと針ハブとをストッパー固定した。
【0091】
4)ダブルチャンバーシリンジの第二のピストンロッドを引き、バイアル瓶Aにおける溶液を密閉通路IIを経て第二の注射筒に抽出し、この時にバイアル瓶A内に負圧が発生し、内外の圧力差の作用下で第一のピストンロッドは、前進し、内外の空気圧が平衡するまで第一の注射筒内に予約された空気をバイアル瓶A内に補充した。
【0092】
5)溶液の抽出が完了した後、注射筒を逆方向に回動させ、ニードルシールアセンブリと針ハブとのストッパー固定を解除し、バネの弾性位置エネルギーの助力下で、調剤針がリセットされるまで、ダブルチャンバーシリンジと調剤針アセンブリとを後方に移動させるとバイアル瓶Aから退出し、密閉部材で再シールされた。
【0093】
6)薬液移送器のシースをねじり、薬液移送器と移液接続器Aとの固定的な接続を解除し、それを移液接続器Aから引き抜いた。
【0094】
7)移液接続器Bの第二のスリーブをバイアル瓶Bのボルト口に套設し、バックル爪を用いてそれと固定した後、薬液移送器のシースを持って位置合わせて移液接続器Bの第一のスリーブに挿入、回転させて固定し、この時、密閉部材の前端面とバイアル瓶Bの糊口とは、スリーブ内で当接した。
【0095】
8)薬液移送器の注射筒を持って前方に押し、バネの圧縮に伴って、調剤針は、密閉部材を差し抜いてバイアル瓶Bに突き刺さった。完全に突き刺さった後、注射筒を回動させ、ニードルシールアセンブリと針ハブとをストッパー固定した。
【0096】
9)ダブルチャンバーシリンジの第二のピストンロッドを押し、溶液は、第二の注射筒から密閉通路IIを経てバイアル瓶B内に注入され、この時にバイアル瓶B内に正圧が発生し、その中の空気は、密閉通路Iを経て第一の注射筒内に自動的に入り、第一のピストンロッドを後退させた。
【0097】
10)溶液がバイアル瓶Bに完全に注入された後、ステップ(5)と(6)を参照して、調剤針をリセットし、薬液移送器を移液接続器Bから引き抜いた。
【0098】
三目的紫外線分析装置(型番:ZF-1)を用いて上記過程における異なる段階の薬液移送システムに対して検出を行った。具体的な方法は、薬液移送システムを三目的紫外線分析装置の操作台に置き、機器をオンにして紫外線をその上に照射させ、特定の領域に蛍光スポットが出現するかどうかを観察した。
【0099】
4、実験結果
三目的紫外線分析装置を用いて得られた検出結果は、
図6に示すとおりである。
【0100】
図6aは、薬液移送器を移液接続器Aを経てバイアル瓶Aに固定して接続した後の蛍光表示図であり、接続時の初期蛍光状態が提示された。注:初期蛍光状態を提示するだけであるため、第一の注射筒には、ガスが予め貯蔵されていなかった。
【0101】
図6bは、前述ステップ1)~6)が完了した後の薬液移送システムの蛍光表示図である。その中から分かるように、バイアル瓶Aと薬液移送器との接触部位には、何の蛍光もなかった。これは、蛍光素ナトリウム水溶液の抽出過程が完全シールの状況で完了し、薬液移送システムの密閉性が極めて良く、バイアル瓶Aと薬液移送器との接触部位に少しも漏洩していないことを示した。
【0102】
図6cは、前述ステップ9)を実行する過程において、バイアル瓶B内に一部の蛍光素ナトリウム水溶液を注入した後、操作を一時停止し、薬液移送器と移液接続器Bとを分離した後のシステム蛍光表示図である。その中から分かるように、バイアル瓶Bと薬液移送器との接触部位には、何の蛍光もなく、薬液移送器には、蛍光素ナトリウム水溶液を充填した第二の注射筒と溶液の液体チャンネル内部における付着残留による少量の透過性蛍光を除き、サンプル外観には、何の蛍光現象も出現しなかった。これらの現象は、本発明の薬液移送システムが極めて良い密閉性能を有し、且つ密閉通路IとIIの両方がそれぞれの役割を果たし、互いに干渉が発生しないことを示した。
【0103】
なお、本発明の薬液移送システムを使用する時、バイアル瓶内外が常に等圧であることを確保できるため、溶液の吸引と注入が非常にスムーズであり、バイアル瓶内外の圧力差を克服する必要があり、さらに操作が困難になるという問題が存在していなかった。
【0104】
応用実施例2
本発明の薬液移送器と薬液移送システムの薬液の調製と移送過程における密閉性能をさらに検証するために、臭気性溶液を併用して、応用実験を行った。
【0105】
1、実験場所
湛江健力源医療用品有限公司製品研究開発実験室。
【0106】
2、実験対象
図5に示す薬液移送システムを実験サンプルとして採用し、そのうちの薬液移送器は、
図3に示すとおりであり、第一と第二の注射筒の仕様は、20mLである。
【0107】
実験室の通風室において、濃度0.1g/Lのニンニク臭の臭剤溶液10mLをバイアル瓶に加え、アルミニウムキャップ塩素化ブチルゴム栓でシールし、その後、外表面を十分に洗浄し、乾燥させて、無臭の程度にし、バイアル瓶Aとし、別の空のバイアル瓶を取り、同様にアルミニウムキャップ塩素化ブチルゴム栓でシールし、バイアル瓶Bとし、予備とした。
【0108】
3、実験方法
面積が約12平方メートルの独立し、且つ密閉した実験室内において、応用実施例1のステップを参照して、バイアル瓶Aにおけるニンニク臭の臭剤溶液をすべてバイアル瓶Bに移送した。
【0109】
その後、年齢層が26~43歳の間にあり、且つ身体が健康で、嗅覚が正常な男女各3名を選別し、実験室内に入って30秒滞在し、該当する臭いがするかどうか及び程度についてフィードバックした。
【0110】
4、実験結果
フィードバック結果によると、テストした6名の人員のうち、3名の男性と2名の女性は、何の臭いもしなかったことを表し、1名の女性は、表し空気中にごくわずかな異臭がするようであるが、臭いの種類を決定できないことを表した。この結果は、本発明の薬液移送システムの薬液の調製と移送過程における完全な密閉効果をさらに実証し、薬物漏洩リスクを最大限に低減させることができ、密閉効果が非常に優れていた。
【0111】
以上の実施例は、本発明の基本原理、主な特徴と利点を主に記述した。当業者は、本出願が上記実施例の制限を受けず、上記実施例と明細書において記述されているのが本発明の原理を説明するものにすぎず、本発明の精神と範囲から逸脱しないことを前提に、本発明に様々な変化と改良があり、これらの変化と改良がいずれも保護を要求する本発明範囲内に含まれることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0112】
10、ダブルチャンバーシリンジ、11、第一の注射筒、12、第一のピストンロッド、13、第一の継手、14、第二の注射筒、15、第二のピストンロッド、16、第二の継手、20、調剤針アセンブリ、21、調剤針、211、インナーコラムチャンネル、212、サイドリングチャンネル、22、針ハブ、221、第一の接続穴、222、第一のチャンネル、223、第二の接続穴、224、第二のチャンネル、23、針通し台、30、ニードルシールアセンブリ、31、シース、32、密閉部材、33、弾性部材、34、内側スリーブ、40、移液接続器、41、第一のスリーブ、42、第二のスリーブ、43、バックル爪、44、リリースアーム、45、係合溝。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダブルチャンバーシリンジ(10)と、調剤針アセンブリ(20)と、ニードルシールアセンブリ(30)とを含むダブルチャンバー内循環の密閉式薬液移送器であって、
前記ダブルチャンバーシリンジ(10)は、第一の注射筒(11)と、第一の注射筒(11)内で内キャビティに沿って前後摺動可能な第一のピストンロッド(12)と、第二の注射筒(14)と、第二の注射筒(14)内で内キャビティに沿って前後摺動可能な第二のピストンロッド(15)とから構成され、ここで、第一の注射筒(11)と第二の注射筒(14)とは、並設され、同方向であり且つ前端が面一となる方式で固定して設置され、第一の注射筒(11)の前端面上には、第一の継手(13)が設置されており、第二の注射筒(14)の前端面上には、第二の継手(16)が設置されており、
前記調剤針アセンブリ(20)は、調剤針(21)と針ハブ(22)とを含み、調剤針(21)は、その後端を針ハブ(22)の前端に埋め込む方式で針ハブ(22)に固定して接続され、ここで、
針ハブ(22)の後端には、第一の継手(13)にマッチングする第一の接続穴(221)と、第二の継手(16)にマッチングする第二の接続穴(223)とが設置されており、且つ針ハブ(22)の内部には、第一の接続穴(221)及び第二の接続穴(223)とそれぞれ連通し、且つ互いに独立した第一のチャンネル(222)と第二のチャンネル(224)とが設置されており、
調剤針(21)は、二層柱状構造であり、インナーコラムチャンネル(211)とサイドリングチャンネル(212)とを有し、ここで、インナーコラムチャンネル(211)は、第一のチャンネル(222)と連通し、サイドリングチャンネル(212)は、第二のチャンネル(224)と連通し、前記調剤針(21)は、内針管と外針管とからなり、内針管は、外針管内に穿設され、且つ両端は、いずれも外針管外に延在し、この時にインナーコラムチャンネル(211)は、内針管の内キャビティによって構成され、サイドリングチャンネル(212)は、外針管と内針管との間の空洞によって構成され、
第一の継手(13)と第二の継手(16)をそれぞれ第一の接続穴(221)と第二の接続穴(223)に埋め込むことによって、調剤針(21)アセンブリ(20)とダブルチャンバーシリンジ(10)とは、固定的且つ密閉的な接続を実現し、
前記ニードルシールアセンブリ(30)は、調剤針(21)と同軸に設置されるシース(31)と、密閉部材(32)と、弾性部材(33)とを含み、ここで、
シース(31)は、前後に開口した中空の筒状構造であり、針ハブ(22)の前端に軸方向に移動可能に套設され、
密閉部材(32)は、弾性材料で作られ、シース(31)の前端筒体内に固定して設置され、
密閉部材(32)の中軸には、調剤針(21)が通過するための穴管が設けられており、穴管の内径は、調剤針(21)の外径よりも小さく、
弾性部材(33)は、密閉部材(32)と針ハブ(22)との間に設置され、針ハブ(22)に依存して、弾性部材(33)は、前端の密閉部材(32)に軸方向の弾力支持を提供し、
非受圧状態では、弾性部材(33)が軸方向に伸び、シース(31)は、調剤針(21)をシース(31)の内部に遮蔽するとともに、弾性材料の弾力作用により、密閉部材(32)は、調剤針(21)の前端部を緊密に包み、インナーコラムチャンネル(211)とサイドリングチャンネル(212)の前端チャンネル口を内部に密閉し、
受圧状態では、弾性部材(33)が軸方向に圧縮され、インナーコラムチャンネル(211)とサイドリングチャンネル(212)の前端チャンネル口とを含む調剤針(21)の前端部は、密閉部材(32)の穴管を経由してシース(31)から抜け出ることができる、ことを特徴とするダブルチャンバー内循環の密閉式薬液移送器。
【請求項2】
第一の継手(13)と第二の継手(16)の外側壁は、テーパ面であり、且つテーパ面には、少なくとも一つの環状ボスが設置されており、
それに応じて、針ハブ(22)の後端に設置される第一の接続穴(221)と第二の接続穴(223)の形状はそれぞれ、それに対応する継手のテーパ面にマッチングし、且つ穴壁上には、環状ボスに対応する環状溝が設置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項3】
針ハブ(22)の前端部には、取り付け溝が設置されており、且つ取り付け溝内には、外形構造が取り付け溝にマッチングする針通し台(23)が装着されており、
第一のチャンネル(222)と第二のチャンネル(224)の前端開口は、いずれも前記取り付け溝の底部に位置し、且つ第一のチャンネル(222)の前端開口の位置は、調剤針(21)と同軸であり、
針通し台(23)の内部は、調剤針(21)の軸に対応する位置に、前後に貫通する穴管が設置されており、前部に位置する針通し穴と後部に位置する固定穴とから構成され、前記針通し穴は、ラッパ状であり、固定穴まで内径が前から後へに減小し、前記固定穴の内径は、外針管の外径にマッチングし、
針通し台(23)の後端面上には、連通溝が設置されており、両端は、第二のチャンネル(224)及び固定穴とそれぞれ連通し、
調剤針(21)の内針管の後端は、針通し台(23)を通過し、埋め込む方式で第一のチャンネル(222)内に固定され、外針管の後端は、埋め込む方式で針通し台(23)の固定穴内に固定される、ことを特徴とする請求項1に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項4】
調剤針アセンブリ(20)とダブルチャンバーシリンジ(10)とが固定され且つ密閉的に接続された後、インナーコラムチャンネル(211)、第一のチャンネル(222)、第一の接続穴(221)と第一の注射筒(11)は、前から後へ順に連通し、密閉通路Iを形成し、サイドリングチャンネル(212)、第二のチャンネル(224)、第二の接続穴(223)と第二の注射筒(14)は、前から後へ順に連通し、密閉通路IIを形成し、密閉通路IとIIとの間は、互いに独立している、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項5】
前記ニードルシールアセンブリ(30)は、同軸に設置されるシース(31)と、密閉部材(32)と、弾性部材(33)と、内側スリーブ(34)とを含み、ここで、
シース(31)の前端部は、より小さい径方向サイズを取り、内径が比較的小さい第一の筒状セグメントと内径が比較的大きい第二の筒状セグメントとから構成される複合筒状構造を形成し、
密閉部材(32)は、断面が逆T字状を呈する構造として設計され、前部直径は、第一の筒状セグメントの内径に対応し、後部直径は、第二の筒状セグメントの内径に対応し、それによって密閉部材(32)は、第一の筒状セグメントの内キャビティを完全に充填すると同時に、少なくとも一部の第二の筒状セグメントの内キャビティを充填することができ、
内側スリーブ(34)の内径は、針ハブ(22)の外径に対応し、内側スリーブ(34)の外径は、シース(31)の第二の筒状セグメントの内径に対応し、その前端面は、密閉され、且つ端面の中央には、調剤針(21)が通過するための貫通孔が設置されており、内側スリーブ(34)は、シース(31)の第二の筒状セグメント内に固定して接続され、前端面は、密閉部材(32)の後端面に当接し、
弾性部材(33)は、内側スリーブ(34)内に設置され、両端は、内側スリーブ(34)の前端内面及び針ハブ(22)の前端面にそれぞれ当接する、ことを特徴とする請求項1に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項6】
内側スリーブ(34)の外壁には、バックルが設置されており、シース(31)の第二の筒状セグメント上には、対応する係止孔が設置されており、内側スリーブ(34)をシース(31)に挿入する時にバックルと係止孔との協働によってシース(31)と内側スリーブ(34)との間の固定的な接続を実現する、ことを特徴とする請求項5に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項7】
内側スリーブ(34)の後端口には、径方向外向き方式で環状ボスが設置されており、内側スリーブ(34)の前端面が密閉部材(32)の後端面に当接する時、後端の環状ボスは、シース(31)から露出し且つシース(31)の後端に当接する、ことを特徴とする請求項5又は6に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項8】
内側スリーブ(34)の前端内面と針ハブ(22)の前端面には、いずれもバックル構造が設置されており、それによって弾性部材(33)との固定的な接続を実現する、ことを特徴とする請求項5又は6に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項9】
針ハブ(22)の側面には、軸方向溝と横方向溝とからなるL字状溝が設置されており、内側スリーブ(34)の後端には、径方向内向きにスライドテーブルが設置されており、スライドテーブルは、L字状溝に埋め込まれ、溝に沿って摺動可能である、ことを特徴とする請求項5又は6に記載の密閉式薬液移送器。
【請求項10】
密閉式薬液移送システムであって、
請求項1から9のいずれか1項に記載の密閉式薬液移送器と、前記薬液移送器を薬物容器に固定して接続するための移液接続器(40)とを含み、
前記移液接続器(40)の一端は、薬物容器を取り外し可能に固定して接続するために用いられ、他端は、薬液移送器を取り外し可能に固定して接続するために用いられ、固定して接続される時、密閉部材の前端面は、薬物容器の容器口に当接する、密閉式薬液移送システム。
【国際調査報告】