(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-11
(54)【発明の名称】試料上の粒子ビーム誘起痕を低減させるためのマルチビーム粒子顕微鏡
(51)【国際特許分類】
H01J 37/09 20060101AFI20250304BHJP
H01J 37/16 20060101ALI20250304BHJP
H01J 37/18 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
H01J37/09 Z
H01J37/16
H01J37/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024550592
(86)(22)【出願日】2023-02-10
(85)【翻訳文提出日】2024-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2023025061
(87)【国際公開番号】W WO2023160874
(87)【国際公開日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】102022104535.8
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521126944
【氏名又は名称】カール ツァイス マルティセム ゲゼルシヤフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】シュトレック ゲロ
(72)【発明者】
【氏名】ディスターヘフト ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】キーライ ホルガー
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101BB01
5C101BB02
5C101BB03
5C101BB08
5C101DD07
5C101EE03
5C101EE13
5C101EE14
5C101EE19
5C101EE33
5C101EE51
5C101EE59
5C101EE69
5C101EE70
5C101FF02
5C101FF03
5C101FF15
5C101GG04
5C101GG05
5C101GG23
5C101GG37
(57)【要約】
本発明は、高電圧が存在する試料上の粒子ビーム誘起痕を低減させるためのマルチビーム粒子顕微鏡に関する。特に遮蔽される、特定の対物レンズケーブルおよび/または特定の試料ステージケーブルの使用によって、試料チャンバ内でのさらなる残留ガスの発生を低減させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料上の粒子ビーム誘起痕を低減させるためのマルチビーム粒子顕微鏡であって、以下の特徴、すなわち
複数の個々の第1の荷電粒子ビームの第1の視野を生成するように構成されたマルチビーム生成器と、
第1の粒子光学ビーム経路を有する第1の粒子光学ユニットであって、第2の視野を形成する入射位置において試料表面に前記第1の個々の粒子ビームが入射するように、前記生成された個々の粒子ビームを対物面における前記試料表面に結像する(image)ように構成された、第1の粒子光学ユニットと、
第3の視野を形成する複数の検出領域を有する検出系と、
第2の粒子光学ビーム経路を有する第2の粒子光学ユニットであって、前記第2の視野における前記入射位置から生じる第2の個々の粒子ビームを前記検出系の前記検出領域の前記第3の視野に結像する(image)ように構成された、第2の粒子光学ユニットと、
前記第1の個々の粒子ビームおよび前記第2の個々の粒子ビームが両方とも通過する磁気対物レンズおよび/または静電対物レンズと、
前記マルチビーム生成器と前記対物レンズとの間の前記第1の粒子光学ビーム経路内に配置されるとともに、前記対物レンズと前記検出系との間の前記第2の粒子光学ビーム経路内に配置されるビームスイッチと、
試料検査時に試料を保持および/または位置決めする試料ステージと、
前記マルチビーム粒子顕微鏡を制御するように構成されたコントローラと、
を備え、
前記対物レンズおよび前記試料ステージは、接地されている真空チャンバ内に配置され、
前記真空チャンバ内に少なくとも部分的に案内される対物レンズケーブルによって、高電圧が前記対物レンズに印加されることができるかまたは印加され、
前記真空チャンバ内に少なくとも部分的に案内される試料ステージケーブルによって、高電圧が前記試料ステージに印加されることができるかまたは印加され、
前記対物レンズケーブルは、前記対物レンズケーブルと前記真空チャンバとの間での静電放電を減少させるように、前記真空チャンバ内に案内されるセクションに少なくとも部分的にシールドを有し、および/または、前記試料ステージケーブルは、前記試料ステージケーブルと前記真空チャンバとの間での静電放電を減少させるように、前記真空チャンバ内に案内されるセクションに少なくとも部分的にシールドを有する、
マルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項2】
前記対物レンズケーブルは、前記真空チャンバ内に案内される前記セクション全体にシールドを含み、および/または前記試料ステージケーブルは、前記真空チャンバ内に案内される前記セクション全体にシールドを含む、請求項1に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項3】
前記対物レンズケーブルの前記シールドの長さは、少なくとも20cmであり、および/または、前記試料ステージケーブルの前記シールドの長さは、少なくとも40cmである、請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項4】
前記真空チャンバ内で発生可能であるかまたは発生する真空は、10
-7mbar以上(or better)であり、および/または
前記対物レンズおよび/または前記試料ステージに印加されることができるかまたは印加される電圧の絶対値は、少なくとも15kV、特に少なくとも20kVまたは少なくとも30kVである、請求項1~3のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項5】
前記対物レンズケーブルおよび/または前記試料ステージケーブルは、前記ケーブルのコアの周りに絶縁物を含み、前記シールドは、前記絶縁物に対して外側に配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項6】
前記絶縁物は、低レベルのガス放出を有し、疎水性であり、および/または弾性である、プラスチックを含む、請求項5に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項7】
前記プラスチックは、以下のプラスチック群、すなわち、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシアルカンのうちの少なくとも1つから選択される、請求項6に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項8】
前記対物レンズケーブルの前記シールドおよび/または前記試料ステージケーブルの前記シールドは、導電性であり、有機材料がなく、特にフルオロ有機材料もない、請求項1~7のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項9】
前記シールドは、編組シールドを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項10】
前記シールドは、撚り合せシールドを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項11】
前記シールドは、箔、特にアルミニウム箔を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項12】
前記シールドは、蒸着によって、前記ケーブルに、特に前記絶縁物に施される、請求項1~11のいずれか1項、特に請求項5に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項13】
蒸着によって施される前記シールドは、以下に挙げる金属群、すなわち、白金、パラジウム、銅、チタン、アルミニウム、金、銀、クロム、タンタル、タングステン、モリブデンからの少なくとも1つの金属を含む、請求項12に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項14】
蒸着によって施される前記シールドは、以下に挙げる半金属群、すなわち、Si、Si/Ge、GaAs、AlAs、InAs、GaP、InP、InSb、GaSb、GaN、AlN、InN、ZnSe、ZnS、CdTeからの少なくとも1つの半金属を含む、請求項12または13に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料上の粒子ビーム誘起痕を低減させるためのマルチビーム粒子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体構成要素などの、ますます小型化および複雑化する微細構造体の継続的な開発に伴い、微細構造体の小寸法を製造および検査するための平面製造技術および検査システムをさらに開発および最適化する必要性がある。例として、半導体構成要素の開発および製造は、テストウェハの設計のモニタリングを必要とし、平面製造技術は、高スループットでの信頼性のある製造のためのプロセス最適化を必要とする。さらに最近、リバースエンジニアリングのための、および半導体構成要素の顧客固有の個々の構成のための、半導体ウェハの分析の需要が存在している。したがって、ウェハ上の微細構造体を高精度で調べるために、高スループットで使用することができる検査手段の必要性がある。
【0003】
半導体構成要素の製造において使用される典型的なシリコンウェハは、最大300mmの直径を有する。各ウェハは、最大800mm2のサイズを有する30~60個の反復領域(「ダイ」)に細分される。半導体装置は、平面集積技術によってウェハの表面上に層になって製造される複数の半導体構造を含む。半導体ウェハは典型的に、製造プロセスのゆえに平らな表面を有する。この場合の集積半導体構造の構造サイズは、数μmから5nmの限界寸法(CD)にわたるが、近い将来、構造寸法はさらにより小さくなり、将来、構造サイズまたは限界寸法(CD)は、3nm未満、例えば2nm、またはさらには1nm未満になると予想される。上記の小型構造サイズの場合、限界寸法のサイズの欠陥を非常に大きな面積において迅速に特定せねばならない。いくつかの用途の場合、検査機器が提供する測定の精度に関する仕様要件は、例えば2倍または1桁分、さらに高い。例として、半導体フィーチャの幅は、1nm未満、例えば0.3nm以下の精度で測定されねばならず、半導体構造の相対位置は、1nm未満、例えば0.3nm以下の重ね合わせ精度で決定されねばならない。
【0004】
MSEM、すなわちマルチビーム走査電子顕微鏡は、荷電粒子システム(「荷電粒子顕微鏡(CPM)」)の分野における比較的新しい開発である。例として、米国特許第7244949(B2)号および米国特許出願公開第2019/0355544号にマルチビーム走査電子顕微鏡が開示されている。マルチビーム電子顕微鏡またはMSEMの場合、視野または格子に配置された複数の個々の電子ビームにより同時に試料が照射される。例として、4~10000本の個々の電子ビームを一次放射として与えることができ、各個々の電子ビームが、隣り合う個々の電子ビームから1~200マイクロメートルのピッチだけ離隔されている。例として、MSEMは、およそ100本の別個の個々の電子ビーム(「ビームレット」)を有し、これらが例えば六角形格子状に配置され、個々の電子ビームがおよそ10μmのピッチだけ離隔されている。共通の対物レンズによって、複数の個々の荷電粒子ビーム(一次ビーム)が検査対象の試料の表面に集束される。例として、試料は、可動ステージに取り付けられたウェハホルダに固定される半導体ウェハとすることができる。個々の一次荷電粒子ビームによるウェハ表面の照射中、相互作用生成物(interaction products)、例えば二次電子または後方散乱電子が、ウェハの表面から生じる。それらの開始点は、各場合に複数の個々の一次粒子ビームが集束される、試料上のそれらの位置に対応する。相互作用生成物の量およびエネルギーは、材料組成とウェハ表面のトポグラフィとに応じて決まる。相互作用生成物は、複数の個々の二次粒子ビーム(二次ビーム)を形成し、これらが共通の対物レンズによって集められ、マルチビーム検査システムの投影結像系の結果として、検出面に配置された検出器に入射する。検出器は、複数の検出領域を含み、これら検出領域のそれぞれが複数の検出画素を含み、検出器は、個々の二次粒子ビームのそれぞれについての強度分布を捕捉する。このプロセスでは例えば100μm×100μmの像視野が得られる。
【0005】
従来技術のマルチビーム電子顕微鏡は、一連の静電素子および磁気素子を含む。複数の個々の荷電粒子ビームの焦点位置および非点収差を適応させるために、静電素子および磁気素子の少なくとも一部が設定可能である。さらに、従来技術の荷電粒子によるマルチビームシステムは、個々の一次または二次荷電粒子ビームの少なくとも1つのクロスオーバ面を含む。さらに、従来技術のシステムは、調整をより容易にするための検出システムを備える。従来技術のマルチビーム粒子顕微鏡は、試料表面の像視野を得るために複数の個々の一次粒子ビームによって試料表面の領域を一括走査するための少なくとも1つのビーム偏向器(「偏向スキャナ」)を備える。マルチビーム電子顕微鏡およびそれを動作させる方法に関するさらなる詳細は、国際公開第2021239380号の出願番号を有する国際特許出願に記載されており、その開示は全体が参照により本特許出願に組み込まれる。
【0006】
マルチビーム走査電子顕微鏡を使用して、またはより一般的にはマルチビーム粒子顕微鏡を使用して、試料もしくは試料表面の正確な検査を行うことができるようにするには、高真空下で非常にクリーンな環境において非常にクリーンな試料を扱う必要がある。試料表面上に取り込まれる可能性がある、真空中の汚染物質または残留ガスは、マルチビーム粒子顕微鏡を使用した像生成時に急激なコントラストの変化をもたらす可能性があり、このことは、正確な分析をより困難にさせる、またはさらには不可能にさせる可能性がある。この場合、試料表面上の粒子の吸着は、自発的に、または粒子ビームによって誘起されるようにして行うことができる。この場合、粒子ビーム誘起汚染物質は通常、試料表面上での炭素の成長によって引き起こされる。この汚染物質を防ぐ既知の支障のない措置は、炭素を放出しないまたはほとんど放出しない材料を真空チャンバ内で使用することである。
【0007】
それにもかかわらず、本出願人が行った実験では、高真空下であっても、これらの措置は、試料表面上の粒子ビーム誘起痕を十分に低減させるには十分ではなく、同時にマルチビーム粒子顕微鏡による検査タスクの所要の精度がますます高まりつつある場合にいずれにしても十分でないことを示した。
【0008】
二次電子に加え、後方散乱電子も検出することができる、マルチビーム電子顕微鏡を、米国特許出願公開第2020/0 373 116号が開示している。このため、試料と対物レンズの下側磁極片との間に特定の膜が設けられている。
【0009】
3つの磁極片を含む対物レンズを有するマルチビーム粒子顕微鏡を、米国特許出願公開第2020/0 243 296号が開示している。その場合、磁極片間に電気的な絶縁が提供される。試料の荷電を減少させる遮蔽電極がさらに開示される。
【0010】
米国特許出願公開第2007/0194 230号が、SPLEEMによる磁気試料の検査に関している。
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明の目的は、既存のマルチビーム粒子顕微鏡をさらに改善することである。特に、一目的は、試料上の粒子ビーム誘起痕がさらに低減されることを可能にするマルチビーム粒子顕微鏡を提供することである。
【0012】
目的は、独立特許請求項の主題によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属特許請求項から明らかである。
【0013】
本特許出願は、2022年2月25日の独国特許出願第10 2022104 535.8号の優先権を主張し、その開示は全体が参照により本特許出願に組み込まれる。
【0014】
本発明は、試料表面上における説明した粒子ビーム誘起汚染物質または粒子ビーム誘起痕(particle beam-induced traces)の発生に関して本出願人が行った実験に基づいている。この場合、驚くべきことに、マルチビーム粒子顕微鏡の文脈で以前に知られていないさらなる汚染物質源があることが分かった。具体的には、真空下で対物レンズおよび/または試料ステージにおいて非常に高い電圧または(電子など、負に帯電した粒子の場合は)非常に低い電圧が存在するマルチビーム粒子顕微鏡が用いられる場合に汚染物質が生じる。本出願人の結果によれば、検査対象の試料を有する真空チャンバ内に高い電界が発生するときはいつでも、汚染物質がますます生じる。この原因は、真空チャンバ内における、ケーブル付近で起こる内部放電またはコロナ放電である。これは、特に、接地真空チャンバに対する絶対値に関して非常に高い電圧が存在する、対物レンズケーブルおよび試料ステージケーブルに影響する。真空チャンバ内で放電が起こると、真空チャンバ内に依然として存在する原子または分子または一般的には残留ガスがイオン化および加速される。これらのイオンが次いで、例えば、真空チャンバの接地壁またはケーブルに衝突し、そこで、例えば、典型的にはケーブルを囲んでいる絶縁体の材料から、材料を叩き出す(スパッタリング効果)。したがって、概して、内部放電またはコロナ放電のため、スパッタリング効果により、真空チャンバ内に存在する、妨げとなる残留物質または残留ガスの量が、対応する放電がない場合に存在するであろうよりも多く存在する。
【0015】
本発明は、これらの洞察を利用する。本発明の一環として、試料を収容する真空チャンバ内での内部放電またはコロナ放電の発生が低減されるまたは完全に防止される。
【0016】
したがって、本発明の第1の態様によれば、本発明は、試料上の粒子ビーム誘起痕を低減させるためのマルチビーム粒子顕微鏡であって、以下の特徴、すなわち
複数の個々の第1の荷電粒子ビームの第1の視野を生成するように構成されたマルチビーム生成器と、
第1の粒子光学ビーム経路を有する第1の粒子光学ユニットであって、第2の視野を形成する入射位置において試料表面に第1の個々の粒子ビームが入射するように、生成された個々の粒子ビームを対物面(object plane)における試料表面に結像する(image)ように構成された、第1の粒子光学ユニットと、
第3の視野を形成する複数の検出領域を有する検出系と、
第2の粒子光学ビーム経路を有する第2の粒子光学ユニットであって、第2の視野における入射位置から生じる第2の個々の粒子ビームを検出系の検出領域の第3の視野に結像する(image)ように構成された、第2の粒子光学ユニットと、
第1の個々の粒子ビームおよび第2の個々の粒子ビームが両方とも通過する磁気対物レンズおよび/または静電対物レンズと、
マルチビーム生成器と対物レンズとの間の第1の粒子光学ビーム経路内に配置されるとともに、対物レンズと検出系との間の第2の粒子光学ビーム経路内に配置されるビームスイッチと、
試料検査時に試料を保持および/または位置決めする試料ステージと、
マルチビーム粒子顕微鏡を制御するように構成されたコントローラと、
を備え、
対物レンズおよび試料ステージは、接地されている真空チャンバ内に配置され、
真空チャンバ内に少なくとも部分的に案内される対物レンズケーブルによって、高電圧が対物レンズに印加されることができるかまたは印加され、
真空チャンバ内に少なくとも部分的に案内される試料ステージケーブルによって、高電圧が試料ステージに印加されることができるかまたは印加され、
対物レンズケーブルは、対物レンズケーブルと真空チャンバとの間での静電放電を減少させるように、真空チャンバ内に案内されるセクションに少なくとも部分的にシールドを有し、および/または、試料ステージケーブルは、試料ステージケーブルと真空チャンバとの間での静電放電を減少させるように、真空チャンバ内に案内されるセクションに少なくとも部分的にシールドを有する、
マルチビーム粒子顕微鏡に関する。
【0017】
荷電粒子は例えば、電子、陽電子、ミューオンもしくはイオン、または他の荷電粒子とすることができる。好ましくは、荷電粒子は、例えば熱電界放出源(TFE)を用いて生成された電子である。しかしながら、他の粒子源も用いることができる。
【0018】
個々の粒子ビームは好ましくは、格子配列で配列され、すなわち、互いに対する個々の粒子ビームの配列は好ましくは固定されるかまたは選択することができる。好ましくは、これは、特に均一な間隔で、例えば、互いに対して個々の粒子ビームの正方形、長方形または六角形配列を提供することができる、規則的な格子配列である。個々の粒子ビームの数が3n(n-1)+1であれば好都合であり、式中、nは任意の自然数である。
【0019】
マルチビーム粒子顕微鏡は、シングルカラムにより動作するシステムとすることができるが、マルチビーム粒子顕微鏡がマルチカラムシステムによって実現されることも可能である。好ましくは、マルチビーム粒子顕微鏡は、個々の粒子ビームのすべてが通過する対物レンズ(多分割とすることもできる)を1つだけ備える。しかしながら、複数の対物レンズが設けられること、または対物レンズアレイが設けられることも可能であり、個々の第1の粒子ビームのみまたはすべての個々の粒子ビームのサブグループのみが対物レンズアレイの各対物レンズ(多分割とすることもできる)を通過する。したがって対物レンズに高電圧を印加するために対物レンズケーブルが1本だけ設けられることが可能である。しかしながら、1つまたは複数の対物レンズに高電圧を印加するために複数本の対物レンズケーブルが設けられることも可能である。必要とされる対物レンズケーブルが少ないほど、試料上の望ましくない粒子ビーム誘起痕を低減させるにはより良好である。したがって、好ましくは、対物レンズケーブルは1本だけ設けられる。
【0020】
試料ステージは、検査時に試料を保持および/または位置決めする役割を果たす。高電圧が試料ステージに印加される結果、試料ステージに配置可能なまたは配置される試料もまた同じ電位にある。このため、好ましくは、1本だけの試料ステージケーブルが使用されるが、複数本の試料ステージケーブルを設けることも可能である。
【0021】
以下、対物レンズケーブルおよび試料ステージケーブルの参照はすべて単数で行うが、当然のことながら、以下で説明する特性を有する複数本のケーブルが各場合に設けられることも可能である。
【0022】
対物レンズケーブルおよび試料ステージケーブルは、真空チャンバ内に少なくとも部分的に案内される。したがって、それに応じて高い電界が存在すれば、これらのセクションにおいて、上記で説明した内部放電またはコロナ放電が起こり得るであろう。したがって、セクションに少なくとも部分的にシールドが設けられ、このシールドが放電を防止する。ここでは、少なくとも部分的に2つの異なることを意味し、すなわち、第1に、シールドは、真空チャンバ内に延びるセクション全体に沿って設けられる必要はなく(ただし、そのように設けることができる)、第2に、ケーブルのシールドは、ケーブルの表面をそのあらゆる地点で直接または間接的に100%完全に囲むもしくは包囲するまたは覆う必要はない(ただし、そのようにすることができる)。
【0023】
この場合、シールド自体は、それ自体知られているとともに様々なやり方で実現することができるシールドである。シールドが実現されるやり方は、対物レンズケーブルの場合と試料ステージケーブルの場合とで同一とすることができるが、異なるものとすることもできる。重要なことは、原則として、シールドの導電性であり、シールドによる、ファラデーケージの原理に従った電界の十分に良好な閉じ込めである。
【0024】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、対物レンズケーブルのシールドの長さは、少なくとも20cmであり、および/または、試料ステージケーブルのシールドの長さは、少なくとも40cmである。したがって、シールドは各場合、少なくともこの長さ全体にわたって有効であり、これは、シールドがケーブルを100%覆うのではないやり方で設けられる場合にもあてはまる。
【0025】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、真空チャンバ内で発生可能なまたは発生する真空は、10-7mbar以上(or better)である(したがって、圧力がより低い)。好ましくは、真空チャンバ内の総圧は、≦10-8mbar、最も好ましくはおよそ10-9mbarである。これらの値は、高電圧が対物レンズおよび試料ステージに存在する状況に関係する。対物レンズケーブルおよび試料ステージケーブルのシールドの効果は、上述した既に本質的に非常に低い総圧の場合であっても非常に大きい。このことは注目すべきである。真空チャンバ内における特定の要素の圧力(より正確には、分圧)を、対物レンズケーブルおよび試料ステージケーブルにおけるケーブルシールドによっておよそ10倍減少させることができる。
【0026】
追加的または代替的に、対物レンズおよび/または試料ステージに印加されることができるかまたは印加される電圧の絶対値は、少なくとも15kV、特に少なくとも20kVまたは特に少なくとも30kVである。これらの高電圧、または真空チャンバ(アース電位)に対する電圧差の場合、高真空であっても、説明した放電が起こる。対物レンズは概して、好ましくは、略同じ電位、例えば、各場合におよそ±20kV、±22kV、±25kV、±28kV、±30kVまたは±32kVが対物レンズおよび試料に存在するように、試料または試料ステージのすぐ上流に位置付けられる。
【0027】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、対物レンズケーブルおよび/または試料ステージケーブルは、それぞれのケーブルのコアの周りに絶縁物を含む。この場合、ケーブルは好ましくは、単芯ケーブルであるが、多芯ケーブルとすることもできる。この場合、シールドは、絶縁物に対してそれぞれ外側に配置される。既に従来技術による対物レンズケーブルおよび試料ステージケーブルは典型的に、材料が低レベルのガス放出しか有しない絶縁物を有している。したがって、この時点で、絶縁物を理論上省略することは、ガス放出の問題を解決するであろうが、ケーブルの領域または真空チャンバの壁における粒子の分離または叩き出しの増加につながる、残留ガス中での内部放電またはコロナ放電ならびに残留ガスのイオンの関連する発生および加速に関する、本発明が対処する問題を解決しないことに留意されたい。したがって、既に知られている絶縁物を本発明によるシールドと組み合わせて維持することもできる。
【0028】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、絶縁物は、疎水性であり、低レベルのガス放出を有し、および/または弾性である、プラスチックを含む。弾性は、ケーブルの絶縁物とともにケーブルの可撓性を可能にする。プラスチックの場合のガス放出率は多くの場合、TML(「総質量損失」)またはCVCM(「収集揮発性凝縮性物質」)として指定される。総質量損失は、試料が真空下で24時間にわたって125℃に加熱された後で失われる質量のパーセンテージである。CVCMとは、25℃で近くの試験表面上で凝縮する質量の割合である。TMLおよびCVCMは、真空中で用いるためのその適合性に関して種々の材料を比較するのに使用することができる。システムにおいて達成されるであろう実際の圧力を予測するために、または、所望の圧力に達するのに必要とされる吸引容量を計算するために、ガス放出率を特定し、単位時間当たりの単位面積当たりの(体積掛ける圧力)として表現することができる。本特許出願の趣旨内の低レベルのガス放出は、以下の関係式、すなわち、TML≦1%、CVMC≦0.02、ガス放出率≦10-7torr*litre/cm2*sのうちの少なくとも一方が満たされる場合に存在する。
【0029】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、プラスチックは、以下のプラスチック群、すなわち、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシアルカンのうちの少なくとも1つから選択される。
【0030】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、対物レンズケーブルおよび/または試料ステージケーブルのシールドは導電性であり、有機材料がなく、特にフルオロ有機材料もない。したがって、金属および/または半金属およびそれらの合金は、その導電性により、原則的に、シールドとして適している。好ましくは使用される金属は、銅、アルミニウムおよび/または銀であるが、他の金属を使用することもできる。炭素が、特に実質的に、したがって、混乱をきたすかたちで、試料表面上に吸着する可能性があるか、または、そこに粒子ビーム誘起的に堆積するため、有機材料、特にフルオロ有機材料なしで済ますことが好ましい。
【0031】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、シールドは、編組シールドを含む。例として、シールドは、裸銅線または錫メッキ銅線から編組することができ、錫メッキの実施形態が、腐食に対してかなりより優れた特性を有する。編組シールドの利点は、非常に優れた減衰および優れた機械的特性である。特定の編組角度でおよそ70%の線形および90%の光学的カバレッジを有する非常にフレキシブルなラインがつくり出され、これにより遮蔽線にかかる張力が回避される。しかしながら、他の実施形態変形例も可能である。しかしながら、他の実施形態変形例も可能である。
【0032】
追加的または代替的に、シールドが撚り合せシールドを含むことも可能である。内部導体のカバレッジは概して、95%~100%の間に及ぶ。例として、裸銅線または錫メッキ銅線から構成されたシールドが、内部導体(複数可)に被せられるかまたは巻き付けられ、錫メッキの実施形態が、腐食に対してかなりより優れた特性を有する。撚り合せシールドに関して有利なことは、簡単、迅速、かつ安価な製造である。銅の代替例として、他の金属、例えばアルミニウムまたは銀を使用することもできる。
【0033】
追加的または代替的に、シールドが箔、特にアルミニウム箔を含むことも可能である。箔がアルミニウムでコーティングされることが可能である。好ましくは、箔は100%カバレッジを与えるが、その機能が著しく損なわれることなく、カットアウトおよび/または穴を有することもできる。
【0034】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、シールドは、蒸着(例えば、電子ビーム蒸発、抵抗蒸発、または一般的に物理蒸着(PVD))によって、ケーブルに、特にケーブルの絶縁物に施される。好ましくは、カバレッジは完全である、すなわち100%である。蒸着によって製造される層の厚さSdについて、好ましくは、10nm≦Sd≦200nm、例えば、10nm、20nm、30nm、50nm、80nm、100nm、150nmまたは200μmが適用される。この場合、ケーブルまたは絶縁体に対する、施される物質の良好な付着が重要であり、当然のことながら、この付着は、関連技術の当業者に知られているように、それぞれに使用される材料の組合せに応じて決まる。
【0035】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、蒸着によって施されるシールドは、以下に挙げる金属群、すなわち、白金、パラジウム、銅、チタン、アルミニウム、金、銀、クロム、タンタル、タングステン、モリブデンからの少なくとも1つの金属を含む。
【0036】
追加的または代替的に、さらに好ましい実施形態によれば、蒸着によって施されるシールドは、以下に挙げる半金属群、すなわち、Si、Si/Ge、GaAs、AlAs、InAs、GaP、InP、InSb、GaSb、GaN、AlN、InN、ZnSe、ZnS、CdTeからの少なくとも1つの半金属を含む。
【0037】
本発明の上述の実施形態は、結果として技術的な矛盾が生じないことを前提として、完全にまたは部分的に互いと組み合わせることができる。
【0038】
当然のことながら、対物レンズケーブルのシールドおよび試料ステージケーブルのシールドと同様に1本または複数本のさらなるケーブルを遮蔽することも可能である。
【0039】
本発明は、添付の図面を参照しながらさらによりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】マルチビーム粒子顕微鏡(MSEM)の概略図を示す図である。
【
図2】マルチビーム粒子顕微鏡の概略断面を示す図である。
【
図3】高真空中の残留ガスの分圧の測定を示す図である。
【
図4】対物レンズケーブルおよび試料ステージケーブルを有する、マルチビーム粒子顕微鏡の真空チャンバを概略的に示す図である。
【
図5】a)真空チャンバ内でのコロナ放電の作用、およびb)シールドによる、真空チャンバ内でのコロナ放電の防止を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、複数の粒子ビームを使用するマルチビーム粒子顕微鏡1の形態の粒子ビームシステム1の概略図である。粒子ビームシステム1は、物体から生じてその後で検出される相互作用生成物、例えば二次電子をそこで発生させるために、検査対象の物体に入射する複数の粒子ビームを生成する。粒子ビームシステム1は、走査電子顕微鏡(SEM)型であり、複数の位置5において物体7の表面に入射し、そこで互いから空間的に分離した複数の電子ビームスポット、またはスポットを発生させる、複数の一次粒子ビーム3を使用する。検査対象の物体7は、任意の所望の種類、例えば、半導体ウェハまたは生体試料とすることができ、小型素子などの配列を含むことができる。物体7の表面は、対物レンズ系100の対物レンズ102の第1の面101(対物面)に配置される。
【0042】
図1における拡大詳細l1は、第1の面101に形成された入射位置5の正四角形視野103を有する対物面101の平面図を示す。
図1において、入射位置の数は、5×5視野103を形成する25である。入射位置の数25は、図の簡略化のために選択された数である。実際には、ビームの数、したがって、入射位置の数を、例えば、20×30、100×100などのように、大幅により大きくなるように選択することができる。
【0043】
図示の実施形態では、入射位置5の視野103は、隣り合う入射位置間に一定の間隔P1を有する略正四角形の視野である。間隔P1の例示的な値は、1マイクロメートル、10マイクロメートルおよび40マイクロメートルである。しかしながら、視野103が例えば六方対称などの他の対称性を有することも可能である。
【0044】
第1の面101内に成形されるビームスポットの直径は、小さいものとすることができる。この直径の例示的な値は、1ナノメートル、5ナノメートル、10ナノメートル、100ナノメートルおよび200ナノメートルである。ビームスポット5を成形するための粒子ビーム3の集束は、対物レンズ系100によって行われる。
【0045】
物体に入射した一次粒子が、相互作用生成物、例えば、二次電子、後方散乱電子、または、他の理由から運動が逆転した一次粒子を発生させ、これらは物体7の表面から、または第1の面101から生じる。物体7の表面から生じる相互作用生成物は、対物レンズ102によって整形されて二次粒子ビーム9を形成する。粒子ビームシステム1は、複数の二次粒子ビーム9を検出器系200に誘導するための粒子ビーム経路11を提供する。検出器系200は、二次粒子ビーム9を粒子マルチ検出器209に向けるための投影レンズ205を有する粒子光学ユニットを含む。
【0046】
図1における詳細l2は、二次粒子ビーム9が位置213に入射する粒子マルチ検出器209の個々の検出領域が位置する平面211の平面図を示す。入射位置213は、互いから等間隔P2で視野217内にある。間隔P2の例示的な値は、10マイクロメートル、100マイクロメートルおよび200マイクロメートルである。
【0047】
一次粒子ビーム3は、少なくとも1つの粒子源301(例えば、電子源)と、少なくとも1つのコリメーションレンズ(collimation lens)303と、マルチアパーチャ構成(multi-aperture arrangement)305と、視野レンズ307とを備えるビーム生成装置300において生成される。粒子源301は、発散粒子ビーム309を生成し、これが、マルチアパーチャ構成305を照射するビーム311を整形するためにコリメーションレンズ303によってコリメートまたは少なくとも実質的にコリメートされる。
【0048】
図1における詳細l3は、マルチアパーチャ構成305の平面図を示す。マルチアパーチャ構成305は、複数の開口またはアパーチャ315が形成されているマルチアパーチャプレート313を含む。開口315の中点317が、対物面101においてビームスポット5によって形成された視野103に結像される(imaged)視野319内に配置される。アパーチャ315の中点317間の間隔P3は、5マイクロメートル、100マイクロメートルおよび200マイクロメートルの例示的な値を有することができる。アパーチャ315の直径Dは、アパーチャの中点間の距離P3よりも小さい。直径Dの例示的な値は、0.2×P3、0.4×P3および0.8×P3である。
【0049】
照射粒子ビーム311の粒子がアパーチャ315を通過し、粒子ビーム3を形成する。プレート313に入射する照射ビーム311の粒子は、プレート313によって吸収され、粒子ビーム3の形成に寄与しない。
【0050】
印加される静電界により、マルチアパーチャ構成305は、ビーム焦点323が平面325内に形成されるように粒子ビーム3のそれぞれを集束させる。代替的に、ビーム焦点323は仮想的であり得る。ビーム焦点323の直径は例えば、10ナノメートル、100ナノメートルおよび1マイクロメートルとすることができる。
【0051】
視野レンズ307および対物レンズ102は、ビーム焦点323が形成される平面325を第1の平面101に結像する(image)ことにより入射位置5またはビームスポットの視野103がそこで生じるようにするための第1の結像粒子光学ユニットを提供する。物体7の表面が第1の平面内に配置される場合、ビームスポットがそれに対応して対物表面に形成される。
【0052】
対物レンズ102および投影レンズ構成205が、第1の平面101を検出面211に結像する(image)ための第2の結像粒子光学ユニットを提供する。したがって、対物レンズ102は、第1および第2の粒子光学ユニットの両方の一部であるレンズであり、その一方、視野レンズ307は、第1の粒子光学ユニットにのみ属し、投影レンズ205は、第2の粒子光学ユニットにのみ属する。
【0053】
マルチアパーチャ構成305と対物レンズ系100との間の、第1の粒子光学ユニットのビーム経路において、ビームスイッチ400が配置される。ビームスイッチ400は、対物レンズ系100と検出器系200との間のビーム経路における第2の粒子光学ユニットの一部でもある。
【0054】
そのようなマルチビーム粒子ビームシステム、および、そこで使用される、例えば、粒子源、マルチアパーチャプレートおよびレンズなどの構成要素に関するさらなる情報は、国際特許出願である国際公開第2005/024881号、国際公開第2007/028595号、国際公開第2007/028596号、国際公開第2011/124352号および国際公開第2007/060017号、ならびに独国特許出願である独国特許出願公開第10 2013 016 113号および独国特許出願公開第10 2013 014 976号から得ることができ、その開示はその全範囲が参照により本出願に組み込まれる。
【0055】
多粒子ビームシステム1は、多粒子ビームシステムの個々の粒子光学構成要素を制御するように構成されるとともに、マルチ検出器209によって得られた信号を評価および解析するように構成されたコンピュータシステム10をさらに備える。コンピュータシステム10は、複数の個々のコンピュータまたは構成要素から構成することができる。マルチビーム粒子顕微鏡1の形態のマルチビーム粒子ビームシステムは、対物レンズケーブルおよび試料ステージケーブルに、本発明によるケーブルシールドを備えることができる。
【0056】
図2は、例えば、
図1に示すマルチビーム粒子顕微鏡などの、多粒子ビームシステムの断面図を概略的に示す。この場合、
図2は主として、真空下の粒子光学ビーム経路を例として示す。
図2に示す例によるマルチビーム粒子顕微鏡1はここでも同様に、まず、粒子源301を備える。図示の例では、この粒子源301は、荷電粒子、例えば電子を含む、個々の粒子ビームを放出する。この場合、粒子源301は、高電圧で、例えば少なくとも±20kVまたは±30kVの電圧で動作することができる。
図2において、粒子ビームまたは粒子光学ビーム経路は、参照符号3による破線によって概略的に示されている。個々の粒子ビーム3は初めに、集光レンズシステム(condenser lens system)303を通過し、その後、マルチアパーチャ構成305に入射する。場合によってはさらなる粒子光学構成要素を有する、このマルチアパーチャ構成305は、マルチビーム生成器として機能する。マルチビーム生成器は好ましくは、およそ接地電位にある。マルチアパーチャ構成305から生じた第1の粒子ビームが次いで、視野レンズまたは視野レンズ系307を通過し、その後、ビームスイッチ400に入る。第1の粒子ビーム3は、ビームスイッチ400を通過した後、走査偏向器500およびその直後に粒子光学対物レンズ102を通過してから、物体7に入射する。この入射の結果、物体7から、二次粒子、例えば二次電子が放出される。これらの二次粒子は、第2の粒子光学ビーム経路9が割り当てられる第2の粒子ビームを形成する。第2の粒子ビームは、物体7から生じた後、初めに、粒子光学対物レンズ102を通過し、その後、走査偏向器500を通過してから、ビームスイッチ400に入る。その後、第2の粒子ビーム9は、ビームスイッチ400から出て、投影レンズ系205を通過し、静電素子260を通過し、次いで、粒子光学検出器ユニット209に衝突する。
【0057】
粒子ビーム3、9は、排気されているビーム管460を通る。いくつかの領域において、ビーム管460は、より大きなチャンバを形成するように広がっているか、またはチャンバによって中断されている。これらチャンバは例えば、粒子源301の領域におけるチャンバ350と、例えばマルチビーム生成器またはマルチアパーチャ構成305などの粒子光学構成要素のマルチアパーチャ構成305の領域におけるチャンバ355と、検出システム209の領域におけるチャンバ250と、また、対物レンズ102と試料7を有する試料ステージ153との領域における真空チャンバ150とを含む。この場合、ビームスイッチ400内でのビーム管460の内部に、10-5mbar未満、特に10-7mbarおよび/または10-9mbar未満の圧力を有することが好ましい高真空が行き渡る。各場合、既に述べたチャンバ350、355および250内に、10-5mbar未満、特に10-7mbarおよび/または10-9mbar未満の圧力を有することが好ましい真空が行き渡る。対物レンズ102と試料7を有する試料ステージ153とを包含する真空チャンバ150内に、10-7mbar未満、特に10-8mbarおよび/または10-9mbar未満の総圧を有する真空が行き渡ることが好ましい。
【0058】
対物レンズ102は、上側磁極片108および下側磁極片109を有する。磁界を発生させるための巻線110が2つの磁極片108および109間に位置付けられている。この場合、上側磁極片108および下側磁極片109は、相互に電気的に絶縁することができる。図示の例では、粒子光学対物レンズ102は、磁気レンズであるが、静電レンズまたは複合型の磁気/静電レンズとすることもできる。この場合、図示の例では、高電圧により、すなわち、絶対値に関して少なくとも20kV、特に少なくとも30kVである電圧により、対物レンズを動作させる。電圧は例えば、およそ±20kV、±22kV、±25kV、±28kV、±30kVまたは±32kVとすることができる。対物レンズ102および試料ステージ153または試料7はとも密接しており、そのため、試料ステージ153または試料7に存在する電圧もまた、対物レンズ102におけるのと同じ程度の大きさの高電圧である。電圧を印加するために対物レンズケーブル151および試料ステージケーブル152(
図2には簡潔さの理由からそのいずれも示されていない)がそれぞれ使用される。
【0059】
高電圧が使用されることにより、既に説明したマルチビーム粒子顕微鏡1は、試料7が接地電位にある、従来技術による多くの他の粒子顕微鏡とは異なる。しかしながら、この相違が、試料7の領域における高真空にもかかわらず試料7上の粒子ビーム誘起痕または電子ビーム誘起痕に関して重要である、ということが、本出願人による詳細な調査時にようやく明らかとなった。
【0060】
図3は、高真空中の残留ガスの分圧の測定を示す。具体的には、本出願人は、真空チャンバ150内の様々な要素または様々な残留ガスの分圧を調査した。分圧を求めるのに質量分析計を使用した。
図3に示す例示において、2つの曲線がプロットされており、塗りつぶされていないドットが示す一方の曲線において、原子質量101~200を有する物質の分圧がプロットされており、塗りつぶされている丸による曲線は、原子質量45~100を有する物質の分圧を示す。この場合、それぞれの分圧は、時間に対してプロットされている。
【0061】
分圧の測定を各場合に磁界なしで開始した、すなわち、時間間隔T1の間、真空チャンバ150ならびに対物レンズ102および試料ステージ153のいずれも接地されており、すなわち、そこには電圧が存在しなかった(つまり、この時間間隔T1の間、マルチビーム粒子顕微鏡による結像は行われておらず、他の状況であれば、電圧または高電圧が対物レンズ102および試料ステージ153に印加されている必要があったかまたは存在している必要があったであろう。時間間隔T2およびT3のどちらもの間、結像は行われなかった)。それぞれの分圧は、時間間隔T1においておよそ一定であり、それぞれおよそ2×10-10mbarおよびおよそ8×10-10mbarであった。1時間後、図示の例ではおよそ-30kVである高電圧を、対物レンズケーブル151および試料ステージケーブル152の両方に印加した。高電圧を印加した直後、各場合に、それぞれの分圧においておよそ一桁分の急上昇が観察された。次いで、高電圧が印加されている、時間間隔T2の間、分圧はここでも同様に、各場合におよそ一定のままである。次いで、時間間隔T3において、高電圧を再びオフに切り換えた、つまり、2つのケーブル151、152を接地させた。その後すぐ、分圧が再び回復し、すなわち、ゆっくりと減少した。回復は急ではなく、むしろ徐々に起こった。このことから最初に推論することができることは、残留ガスの発生が電圧誘起されるか、または、一方で、ケーブル151、152間でのコロナ放電に、他方で、真空チャンバ150の接地壁159によるものであるということである。ケーブルによって保持される高電圧による質量分析計の乱れは、高電圧がオフに切り換えられた後の分圧の減少が急ではなく徐々に起こるため、あり得ないものとすることができる。この場合、時間間隔T2の間に高電圧が存在する場合に測定される残留ガスは、上記で説明したスパッタリング効果の結果、生じる。真空チャンバ150内で放電が起こると、真空チャンバ150内に依然として存在する残留ガスがイオン化し、イオンがその電荷に応じて加速される。イオンは次いで、例えば、真空チャンバ150の接地壁159に衝突するか、または、ケーブル151、152に衝突し、特に、ケーブル151、152を囲む絶縁体158から、材料を叩き出し、材料が次いで、真空チャンバ150内を自由に移動し、そこでの残留ガスに寄与する。
【0062】
図4は、対物レンズケーブル151および試料ステージケーブル152を有する、マルチビーム粒子顕微鏡1の真空チャンバ150を概略的に示す。試料ステージ153は、試料検査時に試料7を保持および/または位置決めする役割を果たす。試料ステージ153の構造は、概略的に全体として示されているにすぎず、図示の例は、z方向に調整可能すなわち高さ調整可能である試料ステージ153に関する。この試料ステージの試料ステージ表面154にケーブル152が接続され、このケーブルに高電圧が印加されることができるかまたは印加される。対物レンズ102が、試料ステージ表面154のすぐ上に位置付けられており、対物レンズ102は、
図4において非常に概略的に示されているにすぎない。対物レンズケーブル151が、対物レンズ102に接続されている。図示の例では、ケーブル151、152は両方とも、絶縁体158によって絶縁されているかまたは囲まれている。絶縁体158は、例えば、低レベルのガス放出を有する、ポリイミドを含むものとすることができ、ケーブル151、152の所要の可撓性により弾性である。しかしながら、他の材料も可能である。図示の例では、ケーブル151、152は両方とも、2つのケーブル151、152が真空チャンバ150内に延びる全長にわたって遮蔽されている。これらケーブルはそれぞれ、真空対応かつ高電圧対応のコネクタ155および156を経由してそれぞれチャンバ150に案内される。真空チャンバ150内における対物レンズケーブルの長さすなわち対物レンズケーブル151の遮蔽セクションの長さは、図示の例では少なくとも20cmである。試料ステージケーブル152のシールドの長さは、図示の例では少なくとも40cmである。当然のことながら、それぞれのケーブル151、152の特定の長さはまた、真空チャンバ150の設計に応じて決まる。
【0063】
図示の例では、真空チャンバ150内で発生可能なまたは発生する真空は、10-7mbar以上(or better)であり、この仕様は、残留ガスの総圧に関する。対物レンズ102におよび/または試料ステージ153もしくはその表面154に印加されることができるかまたは印加される電圧の絶対値は、少なくとも20kV、特に少なくとも30kVである。図示の例では電子が荷電粒子ビームとして用いられるため、電圧は、図示の例ではおよそ-30kVである。
【0064】
図5は、a)真空チャンバ150内でのコロナ放電の作用、およびb)本発明によるシールドによる、真空チャンバ150内でのコロナ放電の防止を概略的に示す。
【0065】
この場合、
図5a)によるコロナ放電は、以下のようにして起こる。ケーブル151、152が、導電性コア157とその周りに配置された絶縁体158とを含む。これは好ましくは、疎水性であり、低レベルのガス放出を有し、および/または弾性である、プラスチックから構成された絶縁物を含む。この場合、プラスチックは、以下のプラスチック群、すなわち、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシアルカンのうちの少なくとも1つから選択することができる。しかしながら、他のプラスチックも使用することができる。
【0066】
ケーブル151、152はまた、真空チャンバ150の、接地されている壁159の近くに、少なくとも部分的に延びる。ケーブル151、152のコア157と壁159との間に強電界が生じ、この電界の電界線が
図5aにおいて線または矢印161によって示されている。それゆえ、コア157と壁159との間の高い電界強度によりコロナ放電が起こり、コロナ放電の間、真空チャンバ150内に存在する残留ガスがイオン化される。したがって、正に帯電したイオンおよび負に帯電したイオンが、
図5a)に概略的に示されている。図示の例では、負に帯電したイオンは、壁159に向かって高速で移動し、壁159に衝突すると、壁159から粒子を叩き出す。これは矢印163によって示されている。叩き出された粒子(ejected particles)は、さらなる残留ガスを形成し、この残留ガスは真空チャンバ150内で検出または測定することができる。これとは反対に、図示の例(例えば、-30kVでのコア157の電位)では、正に帯電したイオンは、絶縁体158に向かって高速で移動し、絶縁体158に衝突すると、絶縁体158から材料を叩き出し、これは矢印162によって示されている。次いで、これらの粒子もまた、真空チャンバ150内にさらなる残留ガスを形成する。
【0067】
次いで、
図5b)は、本発明によるシールド160が存在する場合の状況を示し、シールド160は、ケーブル151、152の導電性コア157の電界をシールド内に閉じ込める。接地電位にあるシールド160と、真空チャンバ150の壁159との間に、もはや電位差はいっさいない。このように、コロナ放電が回避され、真空チャンバ150内でのさらなる残留ガス形成もない。したがって、試料表面における粒子ビーム誘起痕または電子ビーム誘起痕の形成を低減させることもできる。
【0068】
対物レンズケーブル151および/または試料ステージケーブル152のシールド160は導電性であり、図示の例では、有機材料がなく、特にフルオロ有機材料もない。この場合、シールドはそれ自体、様々なやり方で実現することができ、対物レンズケーブル151および試料ステージケーブル152について同一にまたは異なるかたちで実現することができる。1つの例によれば、シールド160は、編組シールドを含む。この場合、シールドは、裸銅線または錫メッキ銅線から編組することができ、錫メッキの実施形態が、腐食に対してかなりより優れた特性を有する。編組シールドは、非常に優れた減衰および優れた機械的特性を有する。特定の編組角度でおよそ70%の線形および90%の光学的カバレッジを有する非常にフレキシブルなラインがつくり出され、これによりシールド160の遮蔽線にかかる張力が回避される。しかしながら、他の実施形態変形例も可能である。
【0069】
追加的または代替的に、シールド160が撚り合せシールドを含むことも可能である。内部導体の、または、コア157および好ましくは絶縁体158を含むケーブルのカバレッジは概して、95%~100%の間に及ぶ。記載の撚り合せシールドの場合、裸銅線または錫メッキ銅線、あるいは、いくつかの他の材料、例えばアルミニウムまたは銀から構成された線から構成されたシールドが、ケーブルに被せられるかまたは巻き付けられる。
【0070】
追加的または代替的に、シールド160が箔、特にアルミニウム箔を含むことも可能である。箔がアルミニウムでコーティングされることも可能である。好ましくは、その場合、箔は100%カバレッジを与えるが、その機能が著しく損なわれることなく、カットアウトおよび/または穴を有することもできる。
【0071】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、シールド160は、蒸着によって、対物レンズケーブル151および/または試料ステージケーブル152に、特に、ケーブル151、152のそれぞれの絶縁物に施される。このため、例えば、電子ビーム蒸発または抵抗蒸発を用いることができるが、一般的に物理蒸着(PVD)も可能である。好ましくは、蒸着によるカバレッジは完全である、すなわち100%である。蒸着の結果、典型的な層厚さSdは、10nm≦Sd≦200nm、例えば、10nm、20nm、30nm、50nm、80nm、100nm、150nmまたは200μmである。この場合、ケーブル151、152に対する、またはケーブル151、152の最外層としての絶縁体158に対する、蒸着による、施される材料の良好な付着が重要であり、当然のことながら、この付着は、関連技術の当業者に知られているように、それぞれに使用される材料の組合せに応じて決まる。例として、蒸着によって施されるシールド160は、以下に挙げる金属群、すなわち、白金、パラジウム、銅、チタン、アルミニウム、金、銀、クロム、タンタル、タングステン、モリブデンからの少なくとも1つの金属を含むことができる。追加的または代替的に、蒸着によって施されるシールド160は、以下に挙げる半金属群、すなわち、Si、Si/Ge、GaAs、AlAs、InAs、GaP、InP、InSb、GaSb、GaN、AlN、InN、ZnSe、ZnS、CdTeからの少なくとも1つの半金属を含むことができる。
【0072】
本発明によって、試料7上の粒子ビーム誘起痕をさらに低減させること、したがって、マルチビーム粒子顕微鏡1によってさらにより良好な記録をできるようにすることが可能となった。
【符号の説明】
【0073】
1 マルチビーム粒子顕微鏡
3 一次粒子ビーム(個々の粒子ビーム)
5 ビームスポット、入射位置
7 物体
9 二次粒子ビーム(個々の粒子ビーム)
10 コンピュータシステム、コントローラ
11 二次粒子ビーム経路
13 一次粒子ビーム経路
25 試料表面、ウェハ表面
100 対物レンズ系
101 対物面
102 対物レンズ
103 視野
108 上側磁極片
109 下側磁極片
150 真空チャンバ
151 対物レンズケーブル
152 試料ステージケーブル
153 試料ステージ、ステージ
154 試料ステージ表面、ステージ表面
155 高真空ブッシング
156 高真空ブッシング
157 ケーブルのコア
158 絶縁体
159 真空チャンバ壁
160 シールド
161 電界線
162 スパッタリング効果を示す矢印
163 スパッタリング効果を示す矢印
200 検出器系
205 投影レンズ
209 粒子マルチ検出器
211 検出面
213 入射位置
215 検出領域
217 視野
250 真空チャンバ
300 ビーム生成装置
301 粒子源
303 コリメーションレンズ系
305 マルチアパーチャ構成、マルチビーム生成器
306 マイクロオプティクス
307 視野レンズ
309 発散粒子ビーム
311 照射粒子ビーム
313 マルチアパーチャプレート
315 マルチアパーチャプレートの開口
317 開口の中点
319 視野
323 ビーム焦点
325 中間像面
350 真空チャンバ
355 真空チャンバ
400 ビームスイッチ
410 磁気セクタ
420 磁気セクタ
460 ビーム管構成
500 走査偏向器
【手続補正書】
【提出日】2024-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料上の粒子ビーム誘起痕を低減させるためのマルチビーム粒子顕微鏡であって、以下の特徴、すなわち
複数の個々の第1の荷電粒子ビームの第1の視野を生成するように構成されたマルチビーム生成器と、
第1の粒子光学ビーム経路を有する第1の粒子光学ユニットであって、第2の視野を形成する入射位置において試料表面に前記第1の個々の粒子ビームが入射するように、前記生成された個々の粒子ビームを対物面における前記試料表面に結像する(image)ように構成された、第1の粒子光学ユニットと、
第3の視野を形成する複数の検出領域を有する検出系と、
第2の粒子光学ビーム経路を有する第2の粒子光学ユニットであって、前記第2の視野における前記入射位置から生じる第2の個々の粒子ビームを前記検出系の前記検出領域の前記第3の視野に結像する(image)ように構成された、第2の粒子光学ユニットと、
前記第1の個々の粒子ビームおよび前記第2の個々の粒子ビームが両方とも通過する磁気対物レンズおよび/または静電対物レンズと、
前記マルチビーム生成器と前記対物レンズとの間の前記第1の粒子光学ビーム経路内に配置されるとともに、前記対物レンズと前記検出系との間の前記第2の粒子光学ビーム経路内に配置されるビームスイッチと、
試料検査時に試料を保持および/または位置決めする試料ステージと、
前記マルチビーム粒子顕微鏡を制御するように構成されたコントローラと、
を備え、
前記対物レンズおよび前記試料ステージは、接地されている真空チャンバ内に配置され、
前記真空チャンバ内に少なくとも部分的に案内される対物レンズケーブルによって、高電圧が前記対物レンズに印加されることができるかまたは印加され、
前記真空チャンバ内に少なくとも部分的に案内される試料ステージケーブルによって、高電圧が前記試料ステージに印加されることができるかまたは印加され、
前記対物レンズケーブルは、前記対物レンズケーブルと前記真空チャンバとの間での静電放電を減少させるように、前記真空チャンバ内に案内されるセクションに少なくとも部分的にシールドを有し、および/または、前記試料ステージケーブルは、前記試料ステージケーブルと前記真空チャンバとの間での静電放電を減少させるように、前記真空チャンバ内に案内されるセクションに少なくとも部分的にシールドを有する、
マルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項2】
前記対物レンズケーブルは、前記真空チャンバ内に案内される前記セクション全体にシールドを含み、および/または前記試料ステージケーブルは、前記真空チャンバ内に案内される前記セクション全体にシールドを含む、請求項1に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項3】
前記対物レンズケーブルの前記シールドの長さは、少なくとも20cmであり、および/または、前記試料ステージケーブルの前記シールドの長さは、少なくとも40cmである、請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項4】
前記真空チャンバ内で発生可能であるかまたは発生する真空は、10
-7mbar以上(or better)であり、および/または
前記対物レンズおよび/または前記試料ステージに印加されることができるかまたは印加される電圧の絶対値は、少なくとも15kV、特に少なくとも20kVまたは少なくとも30kVである、
請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項5】
前記対物レンズケーブルおよび/または前記試料ステージケーブルは、前記ケーブルのコアの周りに絶縁物を含み、前記シールドは、前記絶縁物に対して外側に配置される、
請求項1に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項6】
前記絶縁物は、低レベルのガス放出を有し、疎水性であり、および/または弾性である、プラスチックを含む、請求項5に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項7】
前記プラスチックは、以下のプラスチック群、すなわち、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシアルカンのうちの少なくとも1つから選択される、請求項6に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項8】
前記対物レンズケーブルの前記シールドおよび/または前記試料ステージケーブルの前記シールドは、導電性であり、有機材料がなく、特にフルオロ有機材料もない、
請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項9】
前記シールドは、編組シールドを含む、
請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項10】
前記シールドは、撚り合せシールドを含む、
請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項11】
前記シールドは、箔、特にアルミニウム箔を含む、
請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項12】
前記シールドは、蒸着によって、前記ケーブルに、特に前記絶縁物に施される、
請求項1または5に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項13】
蒸着によって施される前記シールドは、以下に挙げる金属群、すなわち、白金、パラジウム、銅、チタン、アルミニウム、金、銀、クロム、タンタル、タングステン、モリブデンからの少なくとも1つの金属を含む、請求項12に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項14】
蒸着によって施される前記シールドは、以下に挙げる半金属群、すなわち、Si、Si/Ge、GaAs、AlAs、InAs、GaP、InP、InSb、GaSb、GaN、AlN、InN、ZnSe、ZnS、CdTeからの少なくとも1つの半金属を含む、請求項12
に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【国際調査報告】