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特表2025-506562JAKチロシンキナーゼ阻害剤の結晶多形及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-11
(54)【発明の名称】JAKチロシンキナーゼ阻害剤の結晶多形及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20250304BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
C07D487/04 140
C07D487/04 CSP
A61K31/519
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024550831
(86)(22)【出願日】2023-02-24
(85)【翻訳文提出日】2024-08-23
(86)【国際出願番号】 CN2023078243
(87)【国際公開番号】W WO2023160663
(87)【国際公開日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】202210173823.9
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】524317596
【氏名又は名称】プライム ジーン セラピューティクス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Prime Gene Therapeutics Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 413,4th Floor,Building 6,No.105 Jinghai 3rd Road,Beijing Economic and Technological Development Area,Daxing District,Beijing,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マ,スーフェン
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,ファソン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジュンル
(72)【発明者】
【氏名】フウ,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,リー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA28
4C086MA52
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、化合物である2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリル(式A)の結晶多形及びその医薬組成物、並び使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線回折パターンにおける特徴的なピークの2θ値が6.48、13.01、15.38、19.61、20.68、23.47、26.29であり、その測量誤差が±0.2度であることを特徴とする、化合物である2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの結晶型I。
【請求項2】
前記結晶型の粉末X線回折パターンにおける特徴的なピークの2θ値が6.48、7.68、9.90、13.01、14.81、15.38、16.43、16.87、19.61、20.68、23.47、26.29及び32.23であり、その測量誤差が±0.2度であることを特徴とする請求項1に記載の結晶型I。
【請求項3】
前記結晶型の粉末X線回折パターンを図1に示すことを特徴とする請求項1に記載の結晶型I。
【請求項4】
粉末X線回折パターンにおける特徴的なピークの2θ値が7.93、9.36、11.29、14.95、20.96、21.36、21.77、22.12、22.79であり、その測量誤差が±0.2度であることを特徴とする、化合物である2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの結晶型IIb。
【請求項5】
前記結晶型の粉末X線回折パターンにおける特徴的なピークの2θ値が7.93、9.36、11.29、14.69、14.95、15.13、15.95、19.93、20.15、20.96、21.36、21.77、22.12、22.79、23.54、24.14、26.38、28.74、29.15であり、その測量誤差が±0.2度であることを特徴とする請求項4に記載の結晶型IIb。
【請求項6】
前記結晶型の粉末X線回折パターンを図6に示すことを特徴とする請求項4に記載の結晶型IIb。
【請求項7】
前記結晶型は、化合物である2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの半水和物の結晶型であることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の結晶型IIb。
【請求項8】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の結晶型Iを含む、経口医薬組成物。
【請求項9】
請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の結晶型IIbを含む、外用医薬組成物。
【請求項10】
ヤヌスキナーゼ介在疾患を治療するための薬物の製造における、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の結晶型又は医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、化学製薬分野に属し、化学薬物の結晶多形(polymorph)に関し、具体的には、化合物である2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの結晶多形及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリル(化合物A)は、JAK類小分子の非受容体型チロシンキナーゼ阻害剤に属し、そのJAK-STATシグナル経路は、炎症性サイトカインや腫瘍と密接に関連しており、ヒトの健康及び疾患の過程における細胞の増殖、分化、転移及びアポトーシス、免疫反応と細胞のホメオスタシスの調節などの重要な生物学的プロセスに広く関与している。化合物Aの構造式は、以下の通りである。
【0003】
この化合物の合成方法は、発明の特許CN201711248509.8に開示されたが、化合物の結晶型については言及されておらず、2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの結晶型についても他の文献に報告されていない。しかし、薬物の結晶多形は、薬物の物理的性質、バイオアベイラビリティ、製剤の品質及びプロセスに重要な意義を持ち、結晶多形を有する薬物は、結晶型が異なる場合、それらの物理化学的性質の差異が、薬物の安定性に影響を与える。薬物は同じが結晶型が異なる場合、それらのバイオアベイラビリティは、有意な差を有する可能性がある。異なる結晶型は、薬物の溶出速度に影響を与える。また、異なる結晶型の表面自由エネルギーの違いによって、結晶の粒子間の結合力が異なり、薬物の流動性、粒子の均一性、含有量の均一性及び物理的安定性に影響を及ぼす。そのため、結晶型について検討する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本願の目的は、化学名が2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリルである化合物Aの結晶多形及びその製造方法を提供することである。この化合物Aの合成方法は、発明の特許CN201711248509.8に開示されており、当該発明特許を参照して製造された化合物Aは、本願における結晶多形の製造に用いられる。
【0005】
一態様によれば、本願は、化合物Aの結晶多形を提供する。
【0006】
本願は、薬物化合物Aの結晶多形を提供し、前記薬物化合物Aの結晶多形は、例えば結晶型I、結晶型IIa、結晶型IIb、結晶型IIIのような化合物Aの多くの結晶型を含む。本願は、化合物Aの塩の結晶型をさらに提供する。
【0007】
本願の2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの結晶型Iの粉末X線回折パターンを図1に示し、その中、2θの測量誤差は、±0.2度であり、以下の表に示すように、0~40度の間に複数の特徴的なピークを含む。
【0008】
本願に係る結晶型Iは、示差走査熱量計(DSC)において50~200℃の間に発熱ピーク及び吸熱ピークがなく、213.5℃、219.6℃、229.0℃付近に吸熱ピークがあり、213.5℃~229.0℃の間に明らかな発熱ピークがあったことが示された。結晶型Iの示差走査熱量曲線から、この結晶型が昇温融解の過程において結晶転移が発生したことが示された。サンプルが213.5℃程度で吸熱して融解した後、発熱して、安定性がより高い結晶型に転移し、温度がさらに上昇した場合、新たに生成した結晶型が吸熱して融解したことが示された。結晶型の転移によって、異なる結晶型間の安定性(融点、格子エネルギー)の相対的な大きさが示されたが、このような変化は、比較的高い温度(>200.0℃)で発生しており、通常の使用条件下での結晶型の安定性に対応していない。
【0009】
本願に係る結晶型Iは結晶水を含まず、結晶溶媒を含まない。
【0010】
本願は、2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの結晶型IIaに関し、結晶型IIaの粉末X線回折パターンを図3に示し、その中、2θの測量誤差は、±0.2度であり、0~40度の間に含まれる複数の特徴的なピークを以下の表に示す。
【0011】
本願に係る結晶型IIaは、示差走査熱量計(DSC)において50~200℃の間に吸熱ピークがなく、220.2℃付近に吸熱ピークがあったことが示された。
【0012】
本願に係る結晶型IIaは結晶水を含まず、無水物である。
【0013】
本願は、2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの結晶型IIbに関し、結晶型IIbの粉末X線回折パターンを図5に示し、その中、2θの測量誤差は、±0.2度であり、0~40度の間に含まれる複数の特徴的なピークを以下の表に示す。
【0014】
本願に係る結晶型IIbは、示差走査熱量計(DSC)において50~200℃の間に吸熱ピークがあり、221.5℃付近に吸熱ピークがあったことが示された。
【0015】
本願に係る結晶型IIbは、熱重量分析(TGA)において50~150℃では約2.2%の重量減少が示され、重量減少に基づいて計算すると、重量減少量は約0.5分子の水であったので、結晶型IIbは、化合物Aの0.5水和物であった。
【0016】
他の態様によれば、本願は、本願の結晶型Iを含む経口医薬組成物に関する。
【0017】
別の態様によれば、本願は、本願の結晶型IIbを含む外用医薬組成物に関する。
【0018】
さらに他の態様によれば、本願は、ヤヌスキナーゼ介在疾患を治療するための薬物の製造における上記の結晶型又は上記の医薬組成物の使用に関する。
【0019】
さらに他の態様によれば、本願は、ヤヌスキナーゼ介在疾患を治療するための薬物の製造における上記の結晶型又は上記の医薬組成物の使用に関する。
【0020】
他の態様によれば、本願は、ヤヌスキナーゼ介在疾患を治療するための結晶型I又は結晶型IIbに関する。
【0021】
さらに他の態様によれば、本願は、上記の結晶型又は医薬組成物を必要とする個体に投与するステップを含むヤヌスキナーゼ介在疾患を治療する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】結晶型Iの粉末X線回折(XRPD)によるパターンである。
図2】結晶型Iの示差走査熱量計(DSC)によるパターンである。
図3】結晶型IIaの粉末X線回折(XRPD)によるパターンである。
図4】結晶型IIaの示差走査熱量計(DSC)によるパターンである。
図5】結晶型IIbの単結晶X線回折(XRSD)測定によるパターンである。
図6】結晶型IIbの粉末X線回折(XRPD)によるパターンである。
図7】結晶型IIbの示差走査熱量計(DSC)によるパターンである。
図8】結晶型IIbの熱重量分析(TGA)によるパターンである。
図9】皮膚透過試験における結晶型I及び結晶型IIbの皮膚透過速度を示す。
図10】結晶型IIIの粉末X線回折(XRPD)によるパターンである。
図11】結晶型IIIの粉末放置後の1H-NMRパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、当業者が本願及びその利点をより良く理解できるように実施例を参照して本願の様々な実施形態をより具体的に説明する。なお、以下の実施例は、本願の技術案をさらに限定せずに詳細に説明するものであり、本願の範囲を制限するものと見なされるべきではなく、本願の例示的な説明及び典型的な代表に過ぎない。
【0024】
特別な説明がない限り、これらの実施例で使用された試薬は、化学的に純粋な試薬であり、それらのサプライヤーは、福晨(天津)化学試薬株式会社である。実施例で使用された実験器具は、丸底フラスコ、ブフナー漏斗、吸引ろ過瓶、電磁攪拌器(DF-101S)を含み、いずれも実験室における汎用的な機器であり、乾燥用設備は、真空オーブン(DZF-6020型)又はダブルコーン(FZG-8型)により乾燥する。
【0025】
実施例1
2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの結晶型Iの製造
250mLのフラスコに化合物である2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリル20.0g、N,N-ジメチルホルムアミド100mLを加え、撹拌し、溶解させ、濾過により不溶化物を除去し、濾液に精製水を250mL加え、撹拌して晶析させ、濾過し、得られた固体を乾燥した後、250mLのフラスコに移し、続いて無水エタノール200mLを添加し、3時間昇温しながら還流させ、冷却し、濾過し、得られた固体を恒量になるまで55~60℃で乾燥し、オフホワイト固体18.8g(収率94.0%、化学純度99.62%)を得た。
【0026】
実施例2
2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリルのリン酸塩の製造
2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリル(400mg、1.0mmol、1.0eq)を20mLのアセトニトリルに加え、室温で85%のリン酸(350mg、3.0mmol、3.0eq)を加え、室温で一晩反応させ、減圧濃縮した後、塩ではない油状物を得た。
【0027】
実施例3
2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの結晶型IIaの製造
100mLのフラスコに化合物である2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの結晶型Iを5.0g加え、エタノール(95%)100mLを加え、5h昇温しながら撹拌して還流させ、降温して冷却し、濾過し、固体が得られ、真空(0.1MPa)中で、得られた固体を80℃で12h乾燥し、固体4.8g(収率96.0%、HPLCによる純度:99.50%)を得た。
【0028】
実施例4
2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリルのリン酸塩の製造
2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリル(400mg、1.0mmol、1.0eq)を20mLのアセトニトリルに加え、室温で85%のリン酸(350mg、3.0mmol、3.0eq)を加え、その後、70℃まで昇温して3時間反応させた。HPLCによって、反応系が複雑になったことが示され(主ピークの面積が98%から87%に変化した)、減圧濃縮した後、塩ではない油状物を得た。
【0029】
実施例5
2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリル塩酸塩の製造
2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリル(400mg、1.0mmol、1.0eq)を20mLのアセトニトリルに加え、室温で38%の濃塩酸(290mg、3.0mmol、3.0eq)を加え、室温で一晩反応させた。HPLCによって、不純物が多くなったことが示され、減圧濃縮した後、塩ではない油状物を得た。
【0030】
実施例6
2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの結晶型IIbの製造
100mLのフラスコに化合物である2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリル6.2gを加え、N,N-ジメチルホルムアミド25mLを加え、撹拌し、溶解させ、濾過により不溶化物を除去し、濾液に精製水50mLを加え、撹拌して晶析させ、濾過し、得られた固体を恒量になるまで55~60℃で乾燥し、固体5.6g(収率88.9%)を得た。
【0031】
実施例7
2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリル塩酸塩の製造
2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリル(400mg、1.0mmol、1.0eq)を20mLのアセトニトリルに加え、室温で38%の濃塩酸(290mg、3.0mmol、3.0eq)を加え、その後、40℃まで昇温して3時間反応させた。HPLCによって、反応系中の不純物が多くなったことが示され、減圧濃縮した後、塩ではない油状物を得た。
【0032】
実施例8
2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの結晶型IIIの製造
2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリル15mgを3mLのジオキサンに加え、その後、40℃まで昇温して溶解させ、清澄化させ、濾過後、40℃で溶液を揮発させて晶析させ、結晶型IIIが得られた。この結晶型の結晶化度及び安定性が悪く、安定的に放置した後、核磁気共鳴分析によって、約10%の不純物が生成したことが示された。
【0033】

【0034】
異なる結晶型の安定性の考察
実施例1、3、6で製造された結晶型のサンプルを選び、国家食品医薬品監督管理総局が発布している安定性研究に関する指導原則に従って、製造して得られた結晶型I、IIa、IIbについて安定性の考察を行い、サンプルは、医薬用低密度ポリエチレン袋の極性包装を採用し、24ヶ月間の長期安定性を考察し、考察結果は、以下の通りである。


【0035】
上記の異なる結晶型の安定性の考察の結果から、化合物である2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの結晶型I、IIbの化学的安定性が良いことが示された。結晶型IIaは、放置過程において徐々に水分を吸収し、結晶型IIbに変換し、サンプルが吸水して重くなり、含有量の低下を招いた。
【0036】
皮膚透過試験
実施例1、6で製造された結晶型を選び、ゲル製剤(ゲル製剤は、以下のように製造されてもよい。PEG400、プロピレングリコール、グリセリン、エタノール及び実施例1又は6の結晶体を均一に攪拌した後、EDTA水溶液と混合し、膨潤したカルボマー水溶液に加え、10%トリエタノールアミン溶液でpHを6に調整してゲルを得た)をそれぞれ製造し、皮膚透過試験によりそれぞれの皮膚透過速度(レセプター媒体5.0%Tween80、pH5.5リン酸塩)を測定した。試験結果を図9A及び9Bに示し、結晶型Iの皮膚透過性能がより良いことが示された。
【0037】
薬物動態実験
実施例1、6の固体粉末及びそのハイドロゲル製剤を選び、経口胃内投与及び経皮塗布により投与されたラットの薬物動態学的データをそれぞれ測定した。SD系雄ラットを各群3匹ずつ群分け、それぞれ、実施例1、6のゲル製剤を単回胃内投与し、実施例1のゲル製剤を静脈内投与し、実施例1、6のゲル製剤を経皮塗布により投与した。実験前に動物を一晩絶食させ、絶食時間は、投与前10時間から投与後4時間までとした。経口投与群及び経皮投与群は、投与から0.25、0.5、1、2、4、6、8及び24時間後に採血し、静脈内投与群は、投与から0.083、0.25、0.5、1、2、4、6、8及び24時間後に採血した。小動物用麻酔器を使用してイソフルランで麻酔をかけた後、眼窩静脈叢から全血0.3mLを採血し、ヘパリン抗凝固チューブに入れ、サンプルを4℃、4000rpmで5min遠心分離し、血漿を遠心チューブに移し、且つ-80℃で分析まで保存した。血漿中のサンプルをタンパク質沈殿法により抽出し、抽出液をLC/MS/MSにより分析した。経皮投与群は、経皮投与から24時間後に、表皮での薬物を洗い流した後、ラットの投与部位の皮膚を剥ぎ取り、ホモジネート後、LC/MS/MSにより皮膚中の薬物含有量を分析した。薬物動態実験の結果を表1、表2に示す。

【0038】
結晶型Iと結晶型IIbは、結晶性が高く、安定性がよいという特徴を有し、結晶型Iは、結晶型IIbよりも溶解度が高く、経口投与によるバイオアベイラビリティが高かった。結晶型IIbは、経皮吸収が結晶型Iよりも劣ったが、その外用剤が動物の皮膚に滞留した薬物の濃度が結晶型Iより明らかに数倍(例えば7倍以上高い)高く、この意外な特徴によって、体系への浸透が少ないが皮膚中の薬物滞留濃度がより高い場合により適している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-08-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線回折パターンにおける特徴的なピークの2θ値が6.48、13.01、15.38、19.61、20.68、23.47、26.29であり、その測量誤差が±0.2度であることを特徴とする、結晶型Iの2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリル。
【請求項2】
記粉末X線回折パターンにおける特徴的なピークの2θ値が6.48、7.68、9.90、13.01、14.81、15.38、16.43、16.87、19.61、20.68、23.47、26.29及び32.23であり、その測量誤差が±0.2度であることを特徴とする請求項1に記載の2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリル
【請求項3】
粉末X線回折パターンにおける特徴的なピークの2θ値が7.93、9.36、11.29、14.95、20.96、21.36、21.77、22.12、22.79であり、その測量誤差が±0.2度であることを特徴とする、結晶型IIbの2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリル。
【請求項4】
記粉末X線回折パターンにおける特徴的なピークの2θ値が7.93、9.36、11.29、14.69、14.95、15.13、15.95、19.93、20.15、20.96、21.36、21.77、22.12、22.79、23.54、24.14、26.38、28.74、29.15であり、その測量誤差が±0.2度であることを特徴とする請求項に記載の2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリル
【請求項5】
水和物であることを特徴とする請求項に記載の2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリル
【請求項6】
半水和物であることを特徴とする請求項4に記載の2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリル。
【請求項7】
請求項1または2に記載の2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリルを含む、経口医薬組成物。
【請求項8】
請求項から請求項のいずれか1項に記載の2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリルを含む、外用医薬組成物。
【請求項9】
ヤヌスキナーゼ介在疾患を治療するための薬物の製造における、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の2-{3-[3-アミノ-4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(イソプロピルスルホニル)アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの使用。
【請求項10】
ヤヌスキナーゼ介在疾患を治療するための薬物の製造における、請求項7に記載の経口医薬組成物の使用。
【請求項11】
ヤヌスキナーゼ介在疾患を治療するための薬物の製造における、請求項8に記載の外用医薬組成物の使用。

【国際調査報告】