(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-11
(54)【発明の名称】アシル-CoA結合タンパク質の中和がもたらすオートファジー依存性臓器保護
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20250304BHJP
C12N 15/115 20100101ALI20250304BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20250304BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20250304BHJP
C12N 9/22 20060101ALI20250304BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250304BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20250304BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20250304BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20250304BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20250304BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250304BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20250304BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20250304BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250304BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20250304BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20250304BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20250304BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
A61K45/00
C12N15/115 Z ZNA
C07K16/18
C12N15/113 Z
C12N9/22
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/7088
A61K31/713
A61K38/46
A61K31/7105
A61P43/00 107
A61P43/00 111
A61P39/02
A61P9/10
A61P13/12
A61P17/00
A61P9/00
A61P1/16
A61P11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024568655
(86)(22)【出願日】2023-02-07
(85)【翻訳文提出日】2024-08-21
(86)【国際出願番号】 IB2023051086
(87)【国際公開番号】W WO2023152637
(87)【国際公開日】2023-08-17
(32)【優先日】2022-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】507416908
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
(71)【出願人】
【識別番号】500257447
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリック-オピト ド パリ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE-HOPITAUX DE PARIS
(71)【出願人】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クレーマー, グイド
(72)【発明者】
【氏名】モンティーニョ ガルシア-ミゲル, オマル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA17
4C084BA44
4C084DC22
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4C084ZA59
4C084ZA75
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4C084ZB22
4C084ZC19
4C084ZC37
4C085AA03
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZB22
4C086ZC19
4C086ZC37
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
重要な臓器に対する損傷は、深刻で生命すら脅かす結果をもたらす。臓器損傷には様々な病因があり、典型的には薬物、毒物、及び虚血性損傷が挙げられる。アシル-CoA結合タンパク質(ACBP)は、ジアゼパム結合阻害剤(DBI)としても知られ、オートファジーの細胞外フィードバック制御物質である。本明細書において、発明者らは、ACBP/DBI(α-DBI)を中和するモノクローナル抗体の注射により、マウスの肝臓が、虚血/再灌流損傷、アセトアミノフェン及びコンカナバリンAによる急性中毒、ならびに胆管結紮または四塩化炭素により誘発される肝線維化から保護されることを報告する。注目すべきことに、この結果は、α-DBIが複数の損傷に対する広範な臓器保護効果を媒介するという主張を支持するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の臓器における化学的傷害、物理的傷害、または虚血性傷害により引き起こされる組織損傷の治療に使用するための組成物であって、ジアゼパム結合阻害剤(DBI)の活性または発現を阻害する薬剤を含み、前記薬剤が、前記対象に投与されたときに、前記対象の前記臓器における化学的傷害、物理的傷害、または虚血性傷害により引き起こされる前記組織損傷を治療するのに十分な量である、前記組成物。
【請求項2】
前記薬剤が細胞外DBIの活性を阻害する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アルコール、2,2’,4,4’,5,5’-ヘキサクロロビフェニル(PCB-153)、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン(TCDD)、2-ブロモエチルアミン(BEA)、3-メチルコラントレン、4-アミノフェノール(PAP)、アセトアミノフェン、アドリアマイシン、アリルアルコール、アミオダロン、アムホテリシンB、アロクロール1254、アロクロール1260、ヒ素、アスピリン、アステミゾール、ベンゼン、カドミウム、カルバメジピン、四塩化炭素(CCl4)、シプロフィブラート(シプロ)、クロフィブラート、塩化コバルト、コルバスタチン、シクロスポリンA、ジエチルニトロサミン、ジメチルホルムアミド、ジメチルヒドラジン(DMH)、ジクワット、エトスクシミド、エトポシド、ファモチジン、フルコナゾール、ゲムフィブロジル、ガンシクロビル、ヘキサクロロ-1,3-ブテジエン(HCBD)、HIVプロテアーゼ阻害剤、ヒドラジン、インドメタシン、ケトコナゾール、酢酸鉛(PbAc)、リポ多糖(LPS)、塩化水銀(II)(HgCl2)、メタノール、メタピリレン、メトトレキサート、メトロニダゾール、ミコナゾール、モノクロタリン、一酸化窒素、オンダンセトロン、ペンタミジン、フェノバルビタール、フェニルヒドラジン(phenylhyrzn)、フェニトイン、プラバスタチン、プロプルシド、ピューロマイシンアミノヌクレオシド(PAN)、キノロン、シンバスタチン、フッ化ナトリウム(NaF)、スタチン、チオアセトアミド、トカイニジン、三環系抗うつ薬、トログリタゾン、腫瘍壊死因子α(TNFα)、硝酸ウラニル、バルプロ酸、ビンクリスチン、Wy-16,463、ジドブジン(AZT)、α-ナフチルイソチオシアネート(ANIT)、β-ナフトフラボン(BNF)、アスベスト、ラドン、タバコの煙、接着剤、ダイオキシン、ニッケル、ヒ素、水銀、セメント(クロム)、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、四塩化炭素、塩化メチレン、塩化ビニル、水銀、塩素化炭化水素溶媒、二硫化炭素、カドミウム、オゾン、タバコの煙、硝酸塩、塩化メチレン、二臭化エチレン、及びポリ塩化ビフェニルからなる群より選択される毒物により誘導される化学的傷害により引き起こされる組織損傷の治療に使用するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
化学療法剤により引き起こされる組織損傷の治療に使用するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記化学療法剤が、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ファルモルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、ピキサントロン、及びこれらの医薬的に許容される塩からなる群より選択されるアントラサイクリンである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
DBIの活性または発現を阻害する前記薬剤が、アセトアミノフェン誘導性肝毒性、アミオダロン誘導性肺毒性、ドキソルビシン誘導性心毒性、塩化カドミウム誘導性腎毒性、ジメチルニトロサミン誘導性脾毒性、及びO-エチル-S,S-ジプロピルホスホロジチオエート(MOCAP)誘導性神経毒性を治療するのに十分な量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
虚血性傷害の治療に使用するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記虚血性傷害が心筋梗塞である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記対象が虚血再灌流傷害を患っている、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
DBIの活性または発現を阻害する前記薬剤が、急性腎傷害(AKI)から慢性腎疾患(CKD)への進行を低減または遅延するのに十分な量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
単離された臓器における傷害の重症度の低減に使用するための組成物であって、ジアゼパム結合阻害剤(DBI)の活性または発現を阻害する薬剤を、前記単離された臓器に接触させたときに前記単離された臓器における前記傷害の重症度を低減するのに十分な量で含む、前記組成物。
【請求項12】
前記単離された臓器が移植可能な臓器である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
臓器傷害に関連する線維化の低減を、それを必要とする対象において行うのに使用するための組成物であって、ジアゼパム結合阻害剤(DBI)の活性または発現を阻害する薬剤を含み、前記薬剤が、投与時に、前記対象の臓器における前記臓器傷害に関連する線維化の量を、前記投与の不在下での前記臓器における線維化の量と比較して低減するのに十分な量である、前記組成物。
【請求項14】
前記薬剤が細胞外DBIの活性を阻害する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記線維化が、皮膚、心臓、肝臓、肺、及び腎臓からなる群より選択される臓器で生じる、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記臓器が肝臓である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
DBIの活性または発現を阻害する前記薬剤が、投与されたときに、前記対象におけるトランスアミナーゼのレベルを、前記投与前の前記対象における前記トランスアミナーゼのレベルと比較して低減するのに十分な量で存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記トランスアミナーゼが、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)またはアラニントランスアミナーゼ(ALT)である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
DBIの活性または発現を阻害する前記薬剤が、線維化スコアを、前記投与前の前記線維化スコアに対し少なくとも1/3だけ低減するのに十分な量で存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
DBIの活性または発現を阻害する前記薬剤が、投与されたときに、前記対象におけるヒドロキシプロリンのレベルを、前記投与前の前記対象におけるヒドロキシプロリンのレベルと比較して低減するのに十分な量で存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
前記線維化が非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)に関連する、請求項16~20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
DBIの活性または発現を阻害する前記薬剤が、投与されたときに、前記対象におけるNAFLDスコアを、前記投与前のNAFLDスコアに対し低減するのに十分な量で存在する、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
DBIの活性を阻害する前記薬剤が、DBIを対象とする抗体またはアプタマーである、請求項1~22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記抗体が、配列番号1の43位~50位のアミノ酸配列を含むDBIのポリペプチドフラグメントを対象とする、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記抗体が、モノクローナルキメラ抗体、モノクローナルヒト化抗体、またはモノクローナルヒト抗体である、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
DBIの発現を阻害する前記薬剤が、siRNA、エンドヌクレアーゼ、アンチセンスオリゴヌクレオチド、及びリボザイムからなる群より選択される発現阻害剤である、請求項1~22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
DBIの活性を阻害する前記薬剤が、前記対象に投与されたときに、DBIに対する中和自己抗体を誘発するのに適したワクチン組成物として存在する、請求項1~22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記ワクチン組成物が、i)配列番号1に対し少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列、ii)配列番号1の17位~50位のアミノ酸配列に対し少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列、iii)配列番号1の33位~50位のアミノ酸配列に対し少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列、またはiv)配列番号1の43位~50位のアミノ酸配列に対し少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む抗原を含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
化学的傷害、物理的傷害、または虚血性傷害により引き起こされる組織損傷の治療を、それを必要とする対象の肝臓において行う方法であって、ジアゼパム結合阻害剤(DBI)の活性または発現を阻害する薬剤の治療有効量を前記対象に投与することを含み、前記投与することが、前記化学的傷害、前記物理的傷害、または前記虚血性傷害により引き起こされる前記対象の前記肝臓における組織損傷を治療するのに十分である、前記方法。
【請求項30】
化学的傷害、物理的傷害、または虚血性傷害により引き起こされる組織損傷の治療を、それを必要とする対象の心臓において行う方法であって、ジアゼパム結合阻害剤(DBI)の活性または発現を阻害する薬剤の治療有効量を前記対象に投与することを含み、前記投与することが、前記化学的傷害、前記物理的傷害、または前記虚血性傷害により引き起こされる前記対象の前記心臓における組織損傷を治療するのに十分である、前記方法。
【請求項31】
ジアゼパム結合阻害剤(DBI)の活性または発現を阻害する薬剤を含む組成物であって、対象に投与されたときに、化学的傷害、物理的傷害、または虚血性傷害により引き起こされる前記対象の肝臓における組織損傷を治療するのに十分な量の前記薬剤を含む、前記組成物。
【請求項32】
ジアゼパム結合阻害剤(DBI)の活性または発現を阻害する薬剤を含む組成物であって、対象に投与されたときに、化学的傷害、物理的傷害、または虚血性傷害により引き起こされる前記対象の心臓における組織損傷を治療するのに十分な量の前記薬剤を含む、前記組成物。
【請求項33】
ジアゼパム結合阻害剤(DBI)の活性または発現を阻害する薬剤を含む組成物であって、投与されると、対象における臓器傷害に関連する線維化の量を、前記投与の不在下での線維化の量と比較して低減するのに十分な量の前記薬剤を含む、前記組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、欧州出願第EP22305137号(2022年2月8日出願)の優先権を主張し、その開示内容を参照により全体として本明細書に援用する。
【0002】
本発明は医学、詳細には生理学の分野に属する。
【背景技術】
【0003】
重要な臓器(例えば、心臓、脳、肺、腎臓、胃腸管、または肝臓)に対する損傷は、深刻で生命すら脅かす結果をもたらす。臓器損傷には様々な病因があり、典型的には薬物、毒物、及び虚血性損傷が挙げられる。例えば、急性心筋梗塞における虚血性傷害の細胞病態生理学の研究では、組織損傷のかなりの部分が再灌流中(約10分超の虚血期間の後に血流が回復する期間)に発生することが一貫して示されている。この傷害が、再灌流期間終了後の逆説的な臓器死及び組織傷害の原因となっている。IRIはほとんど全ての臓器系で示され得る。IRIに関与する機序としては、組織虚血後数時間の高エネルギーリン酸(ATP)レベルの低減、炎症性細胞(好中球)媒介性の細胞及び微小血管の傷害、ノーリフロー現象(不十分な再灌流)、再灌流期間中の不十分な組織灌流による血小板プラグ及び内皮損傷による微小血管の機能不全、ならびにカルシウム過剰負荷媒介性の再灌流傷害が挙げられる。
【0004】
臓器損傷の一般的な転帰は線維化である。線維化とは、実際には、傷害に応答して線維性の結合組織が形成されることである。これは、損傷部位における細胞外マトリックス成分、特にコラーゲンの蓄積により特徴付けられる。線維化は、創傷治癒及び組織修復に不可欠な成分である適応応答である。しかし、その活性化の継続は非常に有害であり、神経、腎臓、心血管、肝臓、及び呼吸器の疾患を含む多数の病態に共通する最終経路となっている。
【0005】
したがって、臓器を傷害から保護し、ひいては線維化を予防するための療法が依然として必要とされている。
【0006】
マクロオートファジー(以下、オートファジーと称する)とは、細胞質の一部がオートファゴソームに封じ込められ、続いてオートファゴソームがリソソームと融合して、オートファジーカーゴの酵素的加水分解を行うプロセスである(Morishita and Mizushima,2019)。オートファジーは、しばしば細胞死との関連で観察されるが、圧倒的に細胞保護機能に役立っている。したがって、過剰なオートファジーが細胞消滅(「オートファジー細胞死」または「オートシス」)につながることは稀な現象である。むしろ多くの場合において、細胞ストレス誘導性オートファジーは、細胞の適応を促進することにより、細胞死の遅延または回避を行っている(Kroemer and Levine,2008;Lopez-Otin and Kroemer,2021;Schwartz,2021)。オートファジーのこのストレス適応機能は、諸因子の組み合わせに起因するものであり、このような因子には、限定されるものではないが、(i)エネルギー豊富な代謝産物及び同化反応のためのビルディングブロックを生成するためのタンパク質、mRNA、脂質、及びグリコーゲンを含む巨大分子の動員、ならびに(ii)ミスフォールドしたタンパク質の凝集体、結合していないまたは透過性のミトコンドリア、及び他の機能不全オルガネラを含む損傷した細胞構造の選択的除去が含まれる(Galluzzi et al.,2014;Lopez-Otin and Kroemer,2021;Mizushima and Klionsky,2007)。その結果、細胞の適応度は細胞自律的様式で改善する。さらに、炎症促進性経路の活性化は、内在性パターン認識受容体を活性化し得る分子(例えば、細胞質DNAまたは活性酸素種)の除去、及びこのような受容体から発出される下流シグナルの下方調節に起因して、オートファジーにより鈍化する(Deretic,2021;Galluzzi et al.,2018;Schwartz,2021)。オートファジーの広範な効果に鑑みて、その誘導は疾患と戦うための一般的な戦略として提唱されている。
最近では、オートファジーの細胞外フィードバックループについて説明され、これはジアゼパム結合阻害剤(DBI)により呼び出されるタンパク質アシルコエンザイムA結合タンパク質(ACBP)を伴う(Bravo-San Pedro et al.,2019a)。実際に、オートファジーは、主に有核細胞の細胞質に存在するこのリーダーレスタンパク質の非定型分泌と結びついている(Bravo-San Pedro et al.,2019a;Loomis et al.,2010)。ひとたび細胞外空間に放出されると、ACBP/DBIは次にガンマアミノ酪酸(GABA)受容体に作用して、オートクリン、パラクリン、及び神経内分泌経路を介しオートファジーを阻害する(Bravo-San Pedro et al.,2019a;Joseph et al.,2020)。腹腔内または静脈内注射を行うと、ACBP/DBI(α-DBIと呼ぶ)に対するモノクローナル抗体(mAb)は、高脂肪食により誘導される脂肪症、糖尿病、及び脂肪肝を顕著に低減し、一方でオートファジー、脂肪分解、及びβ-酸化を促進し、同時に食欲を低減した(Bravo-San Pedro et al.,2019a;Joseph et al.,2020,2021)。これらの効果は、ACBP/DBIの誘導性全身ノックアウトにより模倣することができるため、オンターゲットであるものと考えられた(Bravo-San Pedro et al.2019a)。したがって、DBIの活性または発現の調節に基づいてオートファジーを調節するための方法及び医薬組成物が開示された(WO2019057742)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特許請求の範囲により定義される。詳細には、本発明は、臓器を傷害から保護する(すなわち、傷害による組織損傷を治療または低減する)方法及び医薬組成物であって、アシル-CoA結合タンパク質の中和を含む、方法及び医薬組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
アシル-CoA結合タンパク質(ACBP)は、ジアゼパム結合阻害剤(DBI)としても知られ、オートファジーの細胞外フィードバック制御物質である。本明細書において、発明者らは、ACBP/DBI(α-DBI)(いくつかの実施形態では細胞外DBI)を中和するモノクローナル抗体を注射することで、マウスの肝臓を虚血/再灌流損傷、アセトアミノフェン及びコンカナバリンAによる急性中毒、ならびに胆管結紮または四塩化炭素により誘導される肝線維化から保護する(すなわち、それを治療するまたはその発生率を減少させる)ことを報告する。α-DBI投与は、炎症性遺伝子及び線維化促進遺伝子を下方調節し、肝臓における抗酸化防御及び脂肪酸酸化を上方調節した。注目すべきことに、この結果は、α-DBIが複数の損傷に対する広範な臓器保護効果を媒介するという主張を支持するものである。
【0010】
主な定義:
本明細書で使用する場合、「対象」、「個体」、または「患者」という用語は互換的に使用され、診断、治療、または療法が所望される任意の対象、特にヒトを指す。他の対象としては、ウシ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマなどを挙げることができる。いくつかの好ましい実施形態において、対象はヒトである。
【0011】
本明細書で使用する場合、「臓器」という用語は、生物の体内で特定の機能または機能群を遂行する固体の血管化された臓器を指す。臓器という用語は、限定されるものではないが、心臓、肺、腎臓、肝臓、膵臓、皮膚、子宮、骨、軟骨、小腸または大腸、膀胱、脳、乳房、血管、食道、卵管、胆嚢、卵巣、膵臓、前立腺、胎盤、脊髄、四肢(上肢及び下肢を含む)、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、気管、尿管、尿道、子宮を含む。
【0012】
本明細書で使用する場合、「臓器機能不全」という用語は、臓器の物理的構造または機能の低減または障害を意味し、またそれを含む。
【0013】
本明細書で使用する場合、「実質臓器移植」という用語及びそのバリエーションは、実質臓器(移植片とも呼ばれる)をレシピエントに挿入することを指し、移植が同系移植(ドナー及びレシピエントが遺伝的に同一である場合)か、同種異系移植(ドナー及びレシピエントの遺伝的起源は異なるが同種である場合)かは問わない。
【0014】
本明細書で使用する場合、「損傷」または「傷害」という用語は、正常な機能に直接的または間接的に影響を及ぼす任意の損傷を指す。損傷には、限定されるものではないが、生理学的傷害、化学的傷害、または物理的傷害を含む様々な原因があり得る。この用語は、急性及び慢性の傷害を包含する。本明細書で使用する場合、「急性傷害」という用語は、最近発生した傷害を含む。例えば、急性傷害は、ごく最近発生した場合もあれば、1時間以内に発生した場合もあれば、1日以内に発生した場合もあれば、1週間以内に発生した場合もあれば、2週間以内に発生した場合もある。本明細書で使用する場合、「慢性傷害」という用語は、一定期間持続する傷害のことである。例えば、慢性傷害は、2週間超前に発生した場合もあれば、3週間超前に発生した場合もあれば、2か月超前に発生した場合もあれば、3か月超前に発生した場合もある。
【0015】
本明細書で使用する場合、「虚血」という用語は、臓器の損傷または機能不全をもたらす血液供給の制限を指す。低酸素症(酸素不足(通常は、呼吸する空気中に酸素が不足した結果)を表すより一般的な用語)とは異なり、虚血は、臓器への血液供給の絶対的または相対的な不足、すなわち、酸素、グルコース、及び他の血液由来成分の不足である。相対的不足とは、血液供給(酸素/燃料供給)及び組織の十分な代謝のための血液要求のミスマッチを意味する。本明細書で使用する場合、「温虚血」という用語は、当技術分野における一般的な意味を有し、正常体温条件下での細胞及び組織の虚血を表すために使用される。本明細書で使用する場合、「冷虚血」という用語は、当技術分野における一般的な意味を有し、血液灌流の減少中または血液供給の不在下における臓器冷却を指す。
【0016】
本明細書で使用する場合、「再灌流」という用語は、当技術分野における一般的な意味を有し、虚血後の組織に対する血流の回復を指す。したがって、本明細書で使用する場合、「虚血再灌流」または「I/R」という用語は、虚血エピソードの次に再灌流エピソードが生じるイベントを包含することが意図されている。
【0017】
本明細書で使用する場合、「虚血再灌流傷害」または「I/R傷害」という用語は、虚血再灌流イベントにより引き起こされる組織損傷を指す。虚血期間中に血液からの酸素及び栄養素が不在となることで、循環が回復した結果、正常な機能が回復するのではなく(またはその回復とともに)酸化ストレスが誘発されることにより、炎症及び酸化的損傷が生じる条件が生まれる。本明細書で使用する場合、「虚血再灌流傷害重症度」または「I/R傷害重症度」という用語は、傷害の程度の尺度を指す。
【0018】
本明細書で使用する場合、「線維化」という用語は、臓器または組織の正常な構成要素としてではなく、修復的または反応的プロセスとして線維性組織が形成されることを指す。線維化は、任意の特定の組織における筋線維芽細胞の蓄積及び正常な沈着を超えるコラーゲン沈着により特徴付けられる。
【0019】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸の多量体を指す。また、これらの用語は、修飾されたアミノ酸多量体、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質付加、リン酸化、または標識構成成分との結合体化も包含する。遺伝子療法の文脈で考察される際のポリペプチドは、それぞれのインタクトなポリペプチド、またはインタクトなタンパク質の所望の生化学的機能を保持するその任意のフラグメントもしくは遺伝子操作された誘導体を指す。
【0020】
本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、任意の長さのヌクレオチドの多量体形態を指し、これにはデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはこれらのアナログが含まれる。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチドアナログのような修飾ヌクレオチドを含むことができ、また非ヌクレオチド成分により遮断され得る。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、多量体の集成の前に付与されても後に付与されてもよい。本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドという用語は、二本鎖及び一本鎖の分子を互換的に指す。別段の指定または要求がない限り、本明細書に記載の本発明の任意の実施形態(ポリヌクレオチド)は、二本鎖形態、及び二本鎖形態を形成することが知られているまたは予測される2つの相補的な一本鎖形態の各々の両方を包含する。
【0021】
本明細書で使用する場合、「コードする」という用語は、例えば、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチド内の特定のヌクレオチド配列が、生物学的プロセスにおいて、定義されたヌクレオチド配列(例えば、rRNA、tRNA、及びmRNA)または定義されたアミノ酸配列のいずれかを有する他の多量体及び巨大分子の合成のための鋳型として機能する固有の特性、ならびにそれから生じる生物学的特性を指す。したがって、遺伝子、cDNA、またはRNAは、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が細胞または他の生物系においてタンパク質をもたらす場合、タンパク質をコードする。コード鎖(そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常、配列表で示される)及び非コード鎖(遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される)はいずれも、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードすると称することができる。別段の明記がない限り、「アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列」には、互いの縮重バージョンであり、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列が含まれる。「タンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチド配列」という表現は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が何らかのバージョンでイントロン(複数可)を含み得る範囲内で、イントロンも含むことができる。
【0022】
本明細書で使用する場合、「発現阻害剤」という用語は、ポリヌクレオチドの発現を阻害する生物学的効果を有する天然または合成の化合物を指す。
【0023】
本明細書で使用する場合、「DBI」という用語は、当技術分野における一般的な意味を有し、DBI遺伝子(遺伝子ID:1622)によりコードされるジアゼパム結合阻害剤、アシル-CoA結合タンパク質を指す。この用語は、EP、ACBP、ACBD1、及びCCK-RPの別名でも知られている。DBIの例示的なアミノ酸配列は、配列番号1により表される。
配列番号1>sp|P07108|ACBP_HUMAN Acyl-CoA-binding protein OS=Homo sapiens OX=9606 GN=DBI PE=1 SV=2
MSQAEFEKAAEEVRHLKTKPSDEEMLFIYGHYKQATVGDINTERPGMLDFTGKAKWDAWN
ELKGTSKEDAMKAYINKVEELKKKYGI
【0024】
本明細書で使用する場合、「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は同じ意味を有し、本発明でも同様に使用される。本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、すなわち抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。そのため、抗体という用語には、抗体分子全体だけでなく、抗体フラグメント、ならびに抗体及び抗体フラグメントのバリアント(誘導体を含む)も含まれる。天然の抗体の場合、2つの重鎖がジスルフィド結合により互いに結合し、各重鎖はジスルフィド結合により軽鎖に結合している。2つのタイプの軽鎖、ラムダ(l)及びカッパ(k)が存在する。抗体分子の機能的活性を決定する5つの主な重鎖クラス(またはアイソタイプ):IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEが存在する。各鎖は異なる配列ドメインを含む。軽鎖は、2つのドメイン、可変ドメイン(VL)及び定常ドメイン(CL)を含む。重鎖には、3つ(α、β、γ)~5つ(μ、ε)のドメインと、可変ドメイン(VH)と、3つ~4つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、及びCH4;総称してCHと称される)とが含まれる。軽鎖(VL)及び重鎖(VH)の両方の可変領域は、抗原に対する結合認識及び特異性を決定する。軽鎖(CL)及び重鎖(CH)の定常領域ドメインは、重要な生物学的特性(例えば、抗体鎖の会合、分泌、経胎盤移動性、補体結合、及びFc受容体(FcR)との結合)を付与する。Fvフラグメントは、免疫グロブリンのFabフラグメントのN末端部分であり、1つの軽鎖及び1つの重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基との間の構造的相補性に存在する。抗体結合部位は、主に超可変領域または相補性決定領域(CDR)に由来する残基から構成されている。場合によっては、非超可変領域またはフレームワーク領域(FR)由来の残基が抗体結合部位に関与することもあれば、ドメイン全体の構造、ひいては結合部位に影響を及ぼすこともある。CDRとは、ネイティブの免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性及び特異性を定義するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖は各々3つのCDRを有し、それぞれL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、及びH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と呼ばれている。そのため典型的には、抗原結合部位は、重鎖及び軽鎖の各V領域からのCDRセットを含む6つのCDRを含む。フレームワーク領域(FR)とは、CDR間に挟まれたアミノ酸配列を指す。抗体可変ドメインの残基は、Kabatらにより考案されたシステムに従って慣例的にナンバリングされている。このシステムは、Kabat et al.,1987(Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Department of Health and Human Services,NIH,USA)(以下、「Kabatら」)に記載されている。本明細書では、このナンバリングシステムを使用する。Kabat残基の名称は、必ずしも配列番号順でアミノ酸残基の直線的ナンバリングに直接対応しているわけではない。実際の直線的アミノ酸配列は、基本的な可変ドメイン構造における構造的成分(フレームワークであっても相補性決定領域(CDR)であっても)の短縮またはそれへの挿入に対応して、厳密なKabatナンバリングよりも少ないアミノ酸またはさらなるアミノ酸を含む可能性がある。残基の正確なKabatナンバリングは、抗体の配列中の相同的な残基を「標準的な」Kabatナンバリング配列とアラインメントすることにより、所与の抗体に対し決定することができる。重鎖可変ドメインのCDRは、Kabatナンバリングシステムに従って、残基31-35B(H-CDR1)、残基50-65(H-CDR2)、及び残基95-102(H-CDR3)に存在する。軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabatナンバリングシステムに従って、残基24-34(L-CDR1)、残基50-56(L-CDR2)、及び残基89-97(L-CDR3)に存在する。
【0025】
本明細書で使用する場合、「モノクローナル抗体」、「モノクローナルAb」、「モノクローナル抗体組成物」、「mAb」などの用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体の集団から得られる。すなわち、集団に含まれる個々の抗体は、微量で存在し得る考えられる天然の変異を除いて同一である。
【0026】
本明細書で使用する場合、「キメラ抗体」という用語は、非ヒト抗体のVHドメイン及びVLドメインと、ヒト抗体のCHドメイン及びCLドメインとを含む抗体を指す。いくつかの実施形態において、「キメラ抗体」は、(a)定常領域(すなわち、重鎖及び/または軽鎖)あるいはその一部が改変、置き換え、または交換されて、抗原結合部位(可変領域)が、異なるまたは改変されたクラス、エフェクター機能、及び/または種の定常領域に、あるいは新たな特性をそのキメラ抗体に付与する全く異なる分子(例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物など)に結合している、あるいは(b)可変領域またはその一部が、異なるまたは改変された抗原特異性を有する可変領域により改変、置換、または交換されている抗体分子のことである。キメラ抗体には、霊長類化抗体、詳細にはヒト化抗体も含まれる。さらに、キメラ抗体には、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含むことができる。このような修飾は、抗体性能をさらに精緻化するために行われる。詳細はJones et al.,Nature,321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323-329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照(米国特許第4,816,567号;及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984)を参照)。
【0027】
本明細書で使用する場合、「ヒト化抗体」とは、ヒト抗体の可変領域フレームワーク及び定常領域を有し、ただし以前の非ヒト抗体のCDRを保持する抗体を指す。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含む。ほとんどの部分において、ヒト化抗体及びその抗体フラグメントは、レシピエントの相補的決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラット、またはウサギ)(ドナー抗体)のCDR由来の残基により置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体または抗体フラグメント)であり得る。いくつかの場合において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。さらに、ヒト化抗体/抗体フラグメントは、レシピエント抗体にも移入されたCDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基を含むことができる。このような抗体は、結合領域が由来する非ヒト抗体の結合特異性を維持するように、ただし非ヒト抗体に対する免疫反応を回避するように設計されている。これらの修飾は、抗体または抗体フラグメントの性能をさらに精緻化及び最適化することができる。概して、ヒト化抗体またはその抗体フラグメントは、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域の全てまたはかなりの部分がヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むことになる。また、ヒト化抗体または抗体フラグメントは、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの一部も含むことができる。詳細はJones et al.,Nature,321:522-525,1986;Reichmann et al.,Nature,332:323-329,1988;Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593-596,1992を参照。
【0028】
本明細書で使用する場合、「ヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことが意図されている。本発明のヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列によりコードされていないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダムもしくは部位特異的変異誘発により、またはin vivoでの体細胞変異により導入された変異)を含むことができる。ただし、本明細書で使用する場合、「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳類種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことは意図されていない。
【0029】
本明細書で使用する場合、「抗体フラグメント」という用語は、(例えば、結合、立体障害、安定化/不安定化、空間分布により)抗原のエピトープと特異的に相互作用する能力を保持する、インタクトな抗体の少なくとも1つの部分、好ましくはインタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域を指す。「フラグメント」は、インタクトな抗体の一部、概して抗原結合部位または可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、及びFvフラグメント;ダイアボディ;連続したアミノ酸残基の1つの中断されない配列からなる一次構造を有するポリペプチドである任意の抗体フラグメント(本明細書では、「一本鎖抗体フラグメント」または「一本鎖ポリペプチド」と称される)(限定されるものではないが、(1)一本鎖Fv分子、(2)関連する重鎖部分なしで、1つの軽鎖可変ドメインのみを含む一本鎖ポリペプチド、または軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含むそのフラグメント、及び(3)関連する軽鎖部分なしで、1つの重鎖可変領域のみを含む一本鎖ポリペプチド、または重鎖可変領域の3つのCDRを含むそのフラグメントを含む);ならびに抗体フラグメントから形成された多重特異的抗体が挙げられる。本発明の抗体のフラグメントは、標準的な方法を用いて得ることができる。
【0030】
本明細書で使用する場合、「特異性」という用語は、抗体が標的分子(例えば抗原上に提示されたエピトープ)に検出可能に結合し、その一方で他の標的分子との検出可能な反応性を相対的にほとんど有しない能力を指す。特異性は、本明細書の他の箇所に記載のように、例えば、Biacore装置を用いた結合アッセイまたは競合結合アッセイにより、相対的に決定することができる。特異性は、他の無関係な分子との非特異的結合に対する特異的抗原との結合における親和性/アビディティーの比が、例えば、約10:1、約20:1、約50:1、約100:1、10.000:1、またはそれ以上であることにより示すことができる。
【0031】
本明細書で使用する場合、「親和性」という用語は、抗体と標的分子(エピトープなど)との結合の強度を意味する。結合タンパク質の親和性は、解離定数Kdにより与えられる。抗体の場合、前述のKdは[Ab]×[Ag]/[Ab-Ag]として定義され、式中、[Ab-Ag]は抗体-抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は非結合抗体のモル濃度であり、[Ag]は非結合抗原のモル濃度である。親和定数Kaは、1/Kdにより定義される。結合タンパク質の親和性を決定するための好ましい方法は、Harlow,et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988);Coligan et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1992,1993);及びMuller,Meth.Enzymol.92:589-601(1983)で見出すことができ、これらの参考文献は、参照により全体として本明細書に援用される。当技術分野で周知されている、結合タンパク質の親和性を決定するための1つの好ましい標準的な方法は、Biacore装置の使用である。
【0032】
本明細書で使用する場合、「結合」という用語は、例えば、共有結合、静電結合、疎水結合、及びイオン結合、及び/または水素結合の相互作用(塩橋及び水橋などの相互作用を含む)による、2つの分子間の直接的な結合を指す。詳細には、本明細書で使用する場合、抗体と所定の標的分子(例えば抗原またはエピトープ)との結合の文脈における「結合」という用語は、典型的には、約10-7M以下、例えば、約10-8M以下、例えば、約10-9M以下、約10-10M以下、または約10-11M以下、またはさらにそれ以下のKDに対応する親和性を有する結合のことである。
【0033】
本明細書で使用する場合、「中和抗DBIモノクローナル抗体」という用語は、DBIに対する特異性を有し、DBI(例えば、細胞外DBI)の活性を阻害する、低減する、または完全に、モノクローナル抗体に対する抗体を指す。抗体が中和抗体であるかどうかは、実施例に記載するin vitroアッセイにより決定することができる。典型的には、本発明の中和抗体は、DBIの活性を少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%阻害する。
【0034】
本明細書で使用する場合、「治療」または「治療する」という用語は、予防的(prophylactic)または予防的(preventive)治療、ならびに治癒的または疾患修飾的治療の両方(疾患に罹患するリスクのある患者または疾患に罹患した疑いのある患者、ならびに病気の患者または疾患もしくは医学的状態に罹患していると診断された患者の治療を含む)を含み、また臨床的再発の抑制を含む。治療は、医学的障害を有する患者、または最終的に障害に罹患する可能性のある患者に、障害もしくは再発する障害の1つ以上の症状の予防、治癒、発症遅延、重症度低減、もしくは緩和を行うために、または患者の生存期間をこのような治療の不在下で予想される生存期間を超えて延長するために、実施することができる。「治療レジメン」とは、病気の治療パターン、例えば、療法中に使用される投与パターンを意味する。治療レジメンは、導入レジメン及び維持レジメンを含むことができる。「導入レジメン」または「導入期間」という表現は、疾患の初期治療に使用される治療レジメン(または治療レジメンの一部)を指す。導入レジメンの全般的目的は、治療レジメンの初期期間中に高レベルの薬物を患者に提供することである。導入レジメンは、(部分的または全体的に)「ローディングレジメン」を用いることがあり、これは、医師が維持レジメン中に投与するよりも多くの用量の薬物を投与すること、医師が維持レジメン中に投与するよりも高頻度に薬物を投与すること、またはその両方を含み得る。「維持レジメン」または「維持期間」という表現は、病気の治療中の患者の維持のため、例えば、患者を長期間(数か月または数年)寛解状態に保つために使用される治療レジメン(または治療レジメンの一部)を指す。維持レジメンは、継続的な療法(定期的な間隔で(例えば、毎週、毎月、毎年など)薬物を投与すること)、または間欠的な療法(例えば、治療の中断、間欠的な治療、再発時の治療、もしくは特定の所定の基準[例えば、疼痛、疾患の発現など]を達成した際の治療)を用いることができる。
【0035】
本明細書で使用する場合、「医薬組成物」という用語は、担体及び/または賦形剤などの他の薬剤を伴った本明細書に記載の組成物またはその医薬的に許容される塩を指す。本明細書で提供する医薬組成物は、典型的には、医薬的に許容される担体を含む。
【0036】
本明細書で使用する場合、組成物に関して「~から本質的になる」とは、本明細書の上記の本発明の少なくとも1つの抗体が、当該組成物内で1つのみの治療剤または生物学的活性を有する薬剤であることを意味する。
【0037】
本明細書で使用する場合、「医薬的に許容される担体」という用語は、所望される特定の剤形に適したあらゆる溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散または懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、防腐剤、固体結合剤、滑沢剤などを含む。Remington’s Pharmaceutical-Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)は、医薬組成物の製剤化に使用される様々な担体及びその調製に関する既知の技法を開示している。
【0038】
本明細書で使用する場合、「治療有効量」という用語は、所望の治療結果を得るために必要な投与量及び期間において有効な量を指す。活性薬剤の治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、ならびに個体において所望の応答を誘発するための活性薬剤の能力などの因子に応じ変化し得る。また、治療有効量は、治療上有益な作用が薬物の任意の毒性または有害作用を上回る量でもある。活性薬剤の効率的な投与量及び投与レジメンは、治療される疾患または状態に依存し、当業者が決定することができる。当該技術分野における通常の技術を有する医師であれば、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師は、医薬組成物に用いられる活性薬剤の投与を、所望の治療効果を達成するのに要するレベルよりも低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることができる。概して、本発明の組成物の好適な用量は、特定の投与レジメンに従って治療効果をもたらすのに有効な最低用量である化合物の量である。このような有効用量は、概して上述の因子に依存する。例えば、治療使用のための治療有効量は、疾患の進行を安定化させるその能力により測定することができる。当業者であれば、患者のサイズ、患者の症状の重症度、選択された特定の組成物または投与経路などの因子に基づき、このような量を決定することができるであろう。本発明の薬物の治療有効量における例示的で非限定的な範囲は、約0.1~100mg/kg、例えば約0.1~50mg/kg、例えば約0.1~20mg/kg、例えば約0.1~10mg/kg、例えば約0.5、例えば約0.3、約1、約3mg/kg、約5mg/kgまたは約8mg/kgである。本発明の薬物の治療有効量における例示的で非限定的な範囲は、0.02~100mg/kg、例えば、約0.02~30mg/kg、例えば、約0.05~10mg/kgまたは0.1~3mg/kg、例えば、約0.5~2mg/kgである。
【0039】
臓器保護を付与する方法:
本発明の第1の目的は、臓器保護(すなわち、傷害により引き起こされる組織損傷の治療または低減)の付与を、それを必要とする対象において行う方法であって、DBI(例えば、循環または細胞外DBI)の活性または発現を阻害する薬剤の治療有効量を対象に投与することを含む、方法に関する。そのため、本明細書では、対象の臓器における本明細書に記載の傷害により引き起こされる組織損傷の治療または低減に使用するための組成物であって、ジアゼパム結合阻害剤(DBI)の活性または発現を阻害する薬剤の量を含み、当該量が、対象に投与されたときに、対象の臓器に対する傷害により引き起こされる組織損傷を治療または低減するのに十分である、組成物を開示する。
【0040】
本発明の方法及び組成物は、臓器機能不全の予防に特に適している。
【0041】
本発明の方法及び組成物は、任意の種類の傷害に対する臓器保護を付与するのに特に適している。いくつかの実施形態において、本発明の方法または組成物は、化学的傷害に対する臓器保護を付与する(化学的傷害により引き起こされる組織損傷を治療または低減する)ために特に適している。いくつかの実施形態において、本発明の方法または組成物は、物理的傷害に対する臓器保護を付与する(物理的傷害により引き起こされる組織損傷を治療または低減する)ために特に適している。いくつかの実施形態において、本発明の方法または組成物は、虚血性傷害に対する臓器保護を付与する(虚血性傷害により引き起こされる組織損傷を治療または低減する)ために特に適している。
【0042】
詳細には、本発明の方法または組成物は、アルコール、2,2’,4,4’,5,5’-ヘキサクロロビフェニル(PCB-153)、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン(TCDD)、2-ブロモエチルアミン(BEA)、3-メチルコラントレン、4-アミノフェノール(PAP)、アセトアミノフェン、アドリアマイシン、アリルアルコール、アミオダロン、アムホテリシンB、アロクロール1254、アロクロール1260、ヒ素、アスピリン、アステミゾール、ベンゼン、カドミウム、カルバメジピン、四塩化炭素(CCl4)、シプロフィブラート(シプロ)、クロフィブラート、塩化コバルト、コルバスタチン、シクロスポリンA、ジエチルニトロサミン、ジメチルホルムアミド、ジメチルヒドラジン(DMH)、ジクワット、エトスクシミド、エトポシド、ファモチジン、フルコナゾール、ゲムフィブロジル、ガンシクロビル、ヘキサクロロ-1,3-ブテジエン(HCBD)、HIVプロテアーゼ阻害剤、ヒドラジン、インドメタシン、ケトコナゾール、酢酸鉛(PbAc)、リポ多糖(LPS)、塩化水銀(II)(HgCl2)、メタノール、メタピリレン、メトトレキサート、メトロニダゾール、ミコナゾール、モノクロタリン、一酸化窒素、オンダンセトロン、ペンタミジン、フェノバルビタール、フェニルヒドラジン(phenylhyrzn)、フェニトイン、プラバスタチン、プロプルシド、ピューロマイシンアミノヌクレオシド(PAN)、キノロン、シンバスタチン、フッ化ナトリウム(NaF)、スタチン、チオアセトアミド、トカイニジン、三環系抗うつ薬、トログリタゾン、腫瘍壊死因子α(TNFα)、硝酸ウラニル、バルプロ酸、ビンクリスチン、Wy-16,463、ジドブジン(AZT)、α-ナフチルイソチオシアネート(ANIT)、β-ナフトフラボン(BNF)、アスベスト、ラドン、タバコの煙、接着剤、ダイオキシン、ニッケル、ヒ素、水銀、セメント(クロム)、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、四塩化炭素、塩化メチレン、塩化ビニル、水銀、塩素化炭化水素溶媒、二硫化炭素、カドミウム、オゾン、タバコの煙、硝酸塩、塩化メチレン、二臭化エチレン、及びポリ塩化ビフェニルからなる群より選択される毒物により誘導される化学的傷害に対する臓器保護を付与する(化学的傷害により引き起こされる組織損傷を治療または低減する)ために特に適している。
【0043】
いくつかの実施形態において、本発明の方法または組成物は、化学療法剤に対する臓器保護を付与する(化学療法剤により引き起こされる組織損傷を治療または低減する)ために特に適している。化学療法剤としては、限定されるものではないが、チオテパ及びシクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドパ、カルボクオン、メツレドパ、及びウレドパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンエチオホスホルアミド、及びトリメチロールメラミンを含むエチレンイミン及びメチルアメラミン(methylamelamine);アセトゲニン類(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成アナログのトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチンなどのニトロソウレア;エネジイン抗生物質などの抗生物質(例えば、カリケアミシン、特にカリケアミシンガモール(calicheamicin gammall)及びカリケアミシンオメガール(calicheamicin omegall));ダイネミシン(ダイネミシンAを含む);クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラマイシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連するクロモプロテインエネジイン抗生物質クロモフォア、アクラシノミシン、アクチノマイシン、アウトラルナイシン(authrarnycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン類、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸アナログ;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジンアナログ;カルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎皮質物質;フロリン酸などの葉酸補充物;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルホルミチン;エリプチニウムアセテート;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;マイタンシン及びアンサミトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル及びドキセタキセル;クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチンなどの白金配位錯体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-1 1);トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオミチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;ならびに上記のいずれかの医薬的に許容される塩、酸、または誘導体が挙げられる。
【0044】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ファルモルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、ピキサントロン、及びこれらの医薬的に許容される塩からなるリストより選択されるアントラサイクリンにより誘導される薬物誘導性傷害に対する臓器保護を付与する(薬物誘導性傷害により引き起こされる組織損傷を治療または低減する)ために特に適している。
【0045】
いくつかの実施形態において、本発明の方法または組成物は、アセトアミノフェン誘導性肝毒性、アミオダロン誘導性肺毒性、ドキソルビシン誘導性心毒性、塩化カドミウム誘導性腎毒性、ジメチルニトロサミン誘導性脾毒性、及びO-エチル-S,S-ジプロピルホスホロジチオエート(MOCAP)誘導性神経毒性の治療に特に適している。
【0046】
本発明の方法または組成物は、任意の虚血性損傷またはイベントに適用することができる。虚血イベントに対し特に感受性である組織としては、心筋、血管、及び神経細胞の組織(特に脳組織)が挙げられる。虚血に対し感受性である他の組織としては、消化管、肝臓、腎臓、及び眼の組織が挙げられる。例えば、心臓保護の必要性は、ある特定の生理的障害(例えば、不安定狭心症)により、外傷時、または心停止期間中に生じ得る。さらに、脳卒中、一過性脳虚血発作、または切迫脳卒中(一過性黒内障(amarosis fugax))などの障害は、本発明の方法を用いた治療における候補状態である。二次的な脳卒中のリスクを生じる脳卒中が発生した場合、または数時間もしくは数日以内に脳卒中のリスクを生じる別の状態が発生した場合、この方法はそのようなリスクを減弱するために適用することができる。当業者は、他の虚血性組織傷害のリスク増加に関連する状況を認識するであろう。このような疾患状態としては、腸間膜動脈不全、腎動脈狭窄症、肝静脈血栓症、末梢血管不全、多発性外傷、敗血症、及び多臓器不全が挙げられる。他の虚血イベントとしては、部分的冠動脈閉塞の血管造影学的エビデンス、心筋損傷の心エコー学的エビデンス、または将来もしくは追加の虚血イベント(例えば、心筋梗塞(MI)などの心筋虚血イベント、もしくは脳血管障害CVAなどの神経血管虚血)のリスクの任意の他のエビデンスが挙げられる。虚血/再灌流は、心筋以外の組織を損傷することがある。本明細書で提供する方法または組成物は、脳、肝臓、腸(gut)、腎臓、腸(bowel)の組織、または他の任意の組織で発生し得る虚血再灌流傷害の低減に特に適している。さらなる用途としては、内臓臓器への血流の遮断をもたらす鈍的または貫通外傷(銃創、刺創、あるいは減速傷害及び/または自動車事故に続発する貫通創または鈍的腹部外傷に起因する腹部に対する貫通創から生じるものを含む)が挙げられる。他の好ましい用途としては、内臓臓器への血流を途絶または減少させる全身性低血圧をもたらす疾患または手順(失血による出血性ショック、心筋梗塞もしくは心不全による心原性ショック、神経原性ショック、またはアナフィラキシーを含む)が挙げられる。
【0047】
いくつかの実施形態において、本発明の方法または組成物の使用は、臓器への血液供給の停止及びそれに続く再灌流を必要とする外科処置中の臓器保護を改善することができる。虚血再灌流傷害のリスクを生じる外科的手順の例としては、肝臓切除;心筋梗塞後の血管再生(例えば、血栓溶解療法、ステント留置、もしくは外科的修復によるもの);脳卒中後の血管再生(例えば、血栓溶解療法もしくは外科的修復によるもの);または血管傷害後の血管再生(虚血性傷害後の四肢の修復もしくは再結合または動脈瘤の外科的修復を含む)が挙げられる。他の例としては、腹腔鏡手術を含む上部または下部胃腸管の手術、人工心肺装置ありまたはなしの直視下心臓手術、鼻及び喉の手術、血管手術、神経学的(脳)手術、移植(肝臓、心臓、肺、腎臓、腸)、肝臓の手術、及び帝王切開がある。いくつかの実施形態において、外科的手順は冠動脈バイパス手術(冠動脈バイパス移植(CABG)手術または心臓バイパス手術または単にバイパス手術の別名でも知られる)であり、これは、狭心症を緩和し、冠動脈疾患による死亡リスクを低減するために実施される外科的手順である。患者の体の他の場所から動脈または静脈を冠動脈に移植して、アテローム性動脈硬化症の狭窄をバイパスし、心筋(心臓の筋肉)に供給する冠動脈循環への血液供給を改善する。この手術は、通常は心臓停止状態で実施されるため、心肺バイパスを使用する必要があるが、動いている心臓にCABGを実施するいわゆる「オフポンプ」手術の技法も利用可能である。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、臓器への血液供給のクランプを必要とする任意の外科的手順に使用することができる。詳細には、本発明の方法は、2つの血管の接続を伴う全ての外科的手順(例えば、冠動脈バイパス、末梢バイパス、血液透析アクセス(瘻孔の作成)、及びフリーフラップ手術(乳房及び顔の再建手術))に適用される。より詳細には、本発明の方法または組成物は、吻合を必要とする任意の外科的手順に適用することができる。本明細書で使用する場合、「吻合」という用語は、血管などの管状構造間の外科的接続を指す。
【0048】
典型的には、DBI(例えば細胞外DBI)の活性または発現を阻害する薬剤の有効量は、再灌流の前、最中、または後に患者に投与することができる。詳細には、DBIの活性または発現を阻害する薬剤の有効量は、臓器の再灌流中に患者に投与される。
【0049】
いくつかの実施形態において、本発明の方法または組成物は、急性腎傷害(AKI)後の慢性腎疾患(CKD)への進行の予防に特に適している。本明細書で使用する場合、「慢性腎疾患」(CKD)という用語は、数か月~数年の期間にわたる進行性の腎機能喪失を指す。CKDは、当技術分野で一般的な意味を有し、腎臓に影響を及ぼす多数の状態、腎実質の破壊、及び機能的ネフロンまたは糸球体の喪失を分類するために使用される。CKDは種々の原因に起因するが、最終的な経路は腎線維化のままであることにさらに留意されたい。「急性腎傷害」または「急性腎不全」という用語は、典型的には、体内の窒素性老廃物の蓄積をもたらすのに十分な腎機能の急速な悪化により識別される(例えば、Anderson and Schrier(1994)(Harrison’s Principles of Internal Medicine,13th edition);Isselbacher et al,eds.,McGraw Hill Text,New Yorkを参照)。BUNの増加率が少なくとも4~8mmol/L/日(10~20mg/dL/日)であること、及び血清クレアチニンの増加率が少なくとも40~80μmol/L/日(0.5~1.0mg/dL/日)であることは、急性腎不全で典型的である。急性腎傷害を患う患者の場合、尿試料が尿細管傷害の残留物を含むことがある。異化(または異化亢進)が見られる対象では、BUNの増加率が100/mg/dL/日を超えることがある。BUNまたは血清クレアチニンの増加率は、連続的な血液検査により定量することができ、好ましくは少なくとも2回の血液検査を6~72時間、より好ましくは12~24時間の期間にわたって行う。場合により、「急性」腎不全(数日の期間にわたる悪化)は、「急速進行性」腎不全(数週間の期間にわたる悪化)と区別される。しかし、本明細書で使用する場合、「急性腎傷害」という表現は、両方の症候群を包含することが意図されている。急性腎傷害は、上記で述べたように臨床医により定期的に識別されている。AKIは、脈管構造の異常、例えば、血管収縮性疾患(例えば、悪性高血圧症、強皮症、溶血性尿毒症症候群、血栓性血小板減少性紫斑病)及び血管炎(例えば、結節性多発動脈炎、過敏性血管炎、血清病、ウェゲナー肉芽腫症、巨細胞性動脈炎、混合クリオグロブリン血症、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、全身性エリテマトーデス)に起因し得る。また、AKIは、糸球体の異常、例えば、感染後(例えば、溶連菌感染後、肺炎球菌感染後、淋菌感染後、ブドウ球菌感染後、腸球菌感染後、ウイルス[例えば、B型及びC型肝炎、流行性耳下腺炎、麻疹、エプスタイン-バー]感染後、マラリア感染後の異常、またはブルセラ症、レジオネラ菌、リステリア菌、シャント腎炎、ハンセン病、レプトスピラ症、もしくは内臓膿瘍に関連する異常)、及び非感染性の異常(例えば、急速進行性糸球体腎炎、膜増殖性糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、全身性エリテマトーデス、ウェゲナー肉芽腫症)にも起因し得る。いくつかの実施形態において、AKIは、薬物関連の原因(例えば、ペニシリン、スルホンアミド、カルベニシリン、セファロスポリン、エリスロマイシン、ナフシリン、オキサシリン、非ステロイド性抗炎症剤、利尿剤(フロセミド、エタクリン酸、チアジド、スピロノラクトン、水銀剤)、フェニトイン、フェノバルビタール、プロベニシド、アロプリノール、シメチジン)、感染関連の原因(例えば、急性腎盂腎炎、連鎖球菌性、ブドウ球菌性、レプトスピラ症、マラリア、サルモネラ症)、腎乳頭壊死(例えば、糖尿病、鎌状赤血球疾患、鎮痛薬乱用、アルコール中毒症に伴うもの)、及び他の種々の原因(例えば、サルコイドーシス、白血病、リンパ腫)に起因する急性間質性腎炎によって生じ得る。いくつかの実施形態において、AKIは、結晶沈着(例えば、尿酸、シュウ酸塩、メトトレキサート)または多発性骨髄腫及び軽鎖疾患による尿細管内閉塞に起因し得る。いくつかの実施形態において、AKIは、ネフロトキシン(例えば、アミノグリコシド、テトラサイクリン、アムホテリシン、ポリミキシン、セファロスポリンなどの抗微生物剤)、重金属(例えば、水銀、鉛、ヒ素、金塩、バリウム)、及び他の様々な化学剤(例えば、シスプラチン、ドキソルビシン、ストレプトゾシン、メトキシフルラン、ハロタン、エチレングリコール、四塩化炭素)、虚血(例えば、出血、低血圧、敗血症、熱傷、腎梗塞、腎動脈解離、横紋筋融解症、外傷)、または他の様々な原因(例えば、造影剤、輸血反応、ミオグロビン血症、熱中症、ヘビ及びクモによる咬傷)に起因する急性尿細管壊死に起因し得る。
【0050】
本発明の方法または組成物は、臓器における傷害の予防、その重症度の低減、またはそのリスクの低減に特に適している。いくつかの実施形態において、臓器は単離される。いくつかの実施形態において、臓器は移植片または移植可能な臓器である。
【0051】
いくつかの実施形態において、本発明の方法または組成物は、DBI(例えば細胞外DBI)の活性または発現を阻害する薬剤の有効量を単離された(移植された)臓器に投与することにより、臓器移植を改善することができる。したがって、いくつかの実施形態において、臓器は、レシピエントに移植されることになる。したがって、この方法は、単離された臓器においてex vivoで行われる。
【0052】
いくつかの実施形態において、移植臓器は死体臓器であり、臓器が死体ドナーから得られた場合、DBIの活性または発現を阻害する薬剤は、死体臓器または摘出臓器のいずれかに投与することができる。いくつかの実施形態において、移植臓器は生体臓器が供与されたものであり、このような場合、DBIの活性または発現を阻害する薬剤を摘出臓器に投与することができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、臓器は単離され、DBI(例えば細胞外DBI)の活性または発現を阻害する薬剤の有効量で灌流される。
【0054】
いくつかの実施形態において、移植臓器は温虚血及び/または冷虚血の対象である。
【0055】
いくつかの実施形態において、DBI(例えば細胞外DBI)の活性または発現を阻害する薬剤の有効量は、冷虚血時間中に投与される。本明細書で使用する場合、「冷虚血時間」または「CIT」という用語は、当技術分野における一般的な意味を有し、回復臓器の低温保存の開始から移植後の温循環の回復までに及ぶ時間を指す。受け入れる外科医/施設によって、またドナーおよびレシピエントの特徴によってばらつきがある。直感的には、短いCITの方がよい。腎移植の場合、CITは24時間未満であるべきであり、膵移植の場合、CITは18時間未満、肝移植の場合、CITは8時間未満であるべきである(Bernat JL,D’Alessandro AM,Port FK,Bleck TP,Heard SO,Medina J,et al.Report of a National Conference on Donation after cardiac death.Am J Transplant.2006;6:281-91)。
【0056】
線維化を予防する方法:
また、本発明の方法または組成物は、臓器傷害に関連する、またはその後に発生する線維化の予防または低減にも特に適している。
【0057】
いくつかの実施形態において、線維化は、皮膚、心臓、肝臓、肺、または腎臓からなる群より選択される少なくとも1つの臓器に影響を及ぼす。線維化の例としては、限定されるものではないが、皮膚瘢痕形成、ケロイド、肝線維化、肺線維化、腎線維化、糸球体硬化症、肺線維化(例えば、特発性肺線維化)、肝線維化、腎線維化、腸線維化、間質性線維化、膵臓及び肺の線維化、注射線維化、心内膜心筋線維化、縦隔線維化、骨髄線維化、後腹膜線維化、進行性巨大線維化、腎性全身性線維化などが挙げられる。いくつかの実施形態において、線維化は、人工臓器の外科的移植により引き起こされる。
【0058】
例えば、肝臓(肝)線維化は、慢性肝傷害の創傷治癒応答の一部として起こる。このような損傷は、ウイルス活動(例えば、B型もしくはC型慢性肝炎)または他の感染症(例えば、寄生虫、細菌)、化学物質(例えば、医薬品、アルコール、汚染物質)、免疫プロセス(例えば、自己免疫性肝炎)、代謝障害(例えば、脂質、グリコーゲン、もしくは金属貯蔵障害)、あるいはがん成長の結果であり得る。肝線維化は、正常な肝臓とは質的に区別することができる細胞外マトリックスの蓄積により特徴付けられる。肝線維化を確認せずに放置すると、肝硬変(被包性の小結節の存在により定義される)、肝不全、そして死亡まで進行する。本明細書に記載の方法または組成物は、投与されたときに、対象におけるトランスアミナーゼのレベルを、投与前の対象におけるトランスアミナーゼのレベルと比較して低減するのに十分な量で提供され得る。いくつかの実施形態において、トランスアミナーゼは、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)またはアラニントランスアミナーゼ(ALT)である。本明細書に記載の方法または組成物は、線維化スコアを、投与前の線維化スコアに対して少なくとも1/3だけ低減するのに十分な量で提供され得る。本明細書に記載の方法または組成物は、投与されたときに、対象におけるヒドロキシプロリンのレベルを、投与前の対象におけるヒドロキシプロリンのレベルと比較して低減するのに十分な量で提供され得る。本明細書に記載の方法または組成物は、投与されたときに、対象におけるNAFLDスコアを、投与前のNAFLDスコアと比較して低減するのに十分な量で提供され得る。
【0059】
腎臓の線維性障害としては、限定されるものではないが、糸球体腎炎(膜増殖性、びまん性増殖性、急速進行性、感染後、及び慢性形態を含む)、糖尿病性糸球体硬化症、巣状糸球体硬化症、糖尿病性腎症、ループス腎炎、尿細管間質線維症、膜性腎症、アミロイドーシス(他の組織の中でも腎臓に影響を及ぼす)、腎動脈硬化症、ネフローゼ症候群、腎間質性線維症、シクロスポリン投与患者における腎線維化、及びHIV関連腎症が挙げられる。糸球体は、免疫学的(例えば、免疫複合体またはT細胞媒介性)、血行力学的(全身性または腎性高血圧)、代謝学的(例えば、糖尿病)、「アテローム性動脈硬化」(糸球体における脂質の蓄積)、浸潤性(例えば、アミロイド)、及び毒物(例えば、ヘビの毒液)を含む多くのタイプの腎傷害の主要な標的となっている。糖尿病性腎症の患者の腎構造変化には、糸球体の肥大、糸球体膜及び尿細管膜の肥厚(マトリックスの蓄積に起因)、ならびにメサンギウム及び尿細管間質におけるマトリックス量の増加が含まれる。糖尿病における腎臓内血行力学の変化に起因する糸球体性高血圧は、糖尿病性腎症の進行に寄与し得る。また、自己免疫性腎炎もメサンギウム細胞成長応答の改変をもたらし得る。また、C型肝炎ウイルスによる感染も、特発性膜増殖性糸球体腎炎をもたらし得る。
【0060】
肺の線維性障害としては、限定されるものではないが、珪肺症、石綿肺、特発性肺線維化、閉塞性細気管支炎性器質化肺炎、高用量化学療法に伴う肺線維化、特発性肺線維化、及び肺高血圧症が挙げられる。これらの疾患は、細胞増殖、ならびにコラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、及びテネイシン-Cなどの細胞外マトリックス成分の産生増加により特徴付けられる。本発明の方法は、喘息及び気道リモデリングに関連する他の肺状態を有する対象の治療にも利用することができる。
【0061】
膵線維化は慢性膵炎で発生する。この状態は、管石灰化及び膵実質の線維化により特徴付けられる。肝硬変と同様に、慢性膵炎もアルコール乱用に関連する。
【0062】
本発明の方法は、腸線維化、特に炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)に伴う線維化の治療にも適している。
【0063】
本発明の方法により治療され得る皮膚線維化状態としては、限定されるものではないが、強皮症、モルフェア、ケロイド、肥厚性瘢痕、家族性皮膚性コラーゲノーマ、及びコラーゲンタイプの結合組織母斑が挙げられる。さらに、本発明の方法は、ケロイドまたは肥厚性瘢痕を形成することが知られている患者における瘢痕の過剰産生の阻害、外科的切開、外科的腹部創傷、及び外傷性裂傷を含む様々なタイプの創傷の治癒中の瘢痕または瘢痕の過剰産生の阻害または予防、冠動脈血管形成術後の動脈の瘢痕及び再閉路の予防または阻害、ならびに梗塞後及び過敏性血管症における心臓線維化に関連する過剰な瘢痕または線維性組織形成の予防または阻害に適している。
【0064】
眼の線維性状態としては、糖尿病性網膜症、手術後瘢痕(例えば、緑内障フィルター手術後及び内斜視手術後)、及び増殖性硝子体網膜症などの状態が挙げられる。
【0065】
骨の線維増殖性障害は、異常な異所性骨形成により特徴付けられ、一般的に、骨形成に関与する主要な細胞タイプの活発な増殖、及びそれらの細胞による複雑な骨マトリックスの合成として見られる。このような骨障害の例示としては、前立腺腫瘍の軸骨格への転移とともに発生する線維化がある。前立腺腫瘍関連の海綿骨の成長において、前立腺癌細胞は、骨芽細胞と相互に作用して、骨に沈着すると腫瘍成長及び骨芽細胞作用の強化をもたらす場合がある。骨格それ自体から生じる骨の線維増殖性応答としては、大理石骨病及び過骨症が挙げられる。骨芽細胞の分化及び機能における欠陥は、大理石骨病の主な原因であると考えられている。大理石骨病は、骨吸収低減に起因する骨硬化、骨髄腔が発達しないことによる髄外造血、ならびに視神経萎縮、デアフィブロネイクチネス(deafibronectiness)、及び精神遅滞を伴う重度の血液学的異常が生じることにより特徴付けられる遺伝性疾患である。変形性関節症においては、骨の変化が発生することが知られており、変形性関節症の大腿骨頭内では骨コラーゲン代謝が増加する。最も大きな変化は軟骨下領域で生じ、疾患組織内で類骨の割合を高く維持している。
【0066】
血管系の線維増殖性障害としては、例えば、心臓移植の慢性拒絶反応の主な原因である移植血管障害が挙げられる。移植血管障害は、古典的な線維増殖性疾患である、冠動脈のびまん性閉塞を伴うアテローム性動脈硬化プラーク形成の促進により特徴付けられる。
【0067】
本発明の方法により治療され得るさらなる線維性状態としては、関節リウマチ、長期の関節痛及び関節悪化に関連する疾患、進行性全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、好酸球性筋膜炎、モルフェア、レイノー症候群、及び鼻ポリープ症が挙げられる。
【0068】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は炎症誘導性線維化の治療に特に適している。本明細書で使用する場合、「炎症誘導性線維化」という表現は、炎症性疾患、すなわち、(組織傷害、病原体感染、または毒剤により引き起こされる)急性または慢性の炎症に関連する、またはその結果としての疾患の際に発症する線維化に関する。
【0069】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、肝線維化の治療に特に適している。
【0070】
本発明の薬剤:
いくつかの実施形態において、DBI(例えば細胞外DBI)の活性を阻害する薬剤は、DBIを対象とする抗体である。
【0071】
いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号1の43位のアミノ酸残基から50位のアミノ酸残基にわたるアミノ酸配列に存在するフラグメント(すなわち、オクタペプチドまたはOP)を対象とする。
【0072】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体はキメラ抗体であり、典型的にはマウス/ヒトキメラ抗体である。
【0073】
いくつかの実施形態において、抗体はヒト化抗体である。
【0074】
いくつかの実施形態において、抗体はヒト抗体である。完全ヒトモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の遺伝子座の大部分がトランスジェニックのマウスを免疫することにより調製することもできる。例えば、米国特許第5,591,669号、同第5,598,369号、同第5,545,806号、同第5,545,807号、同第6,150,584号、及びこれらに引用された参考文献を参照されたい(これらの内容は、参照により本明細書に援用される)。
【0075】
いくつかの実施形態において、抗体は中和抗体である。
【0076】
いくつかの実施形態において、本発明の中和抗体は、抗体依存性細胞媒介細胞傷害性を媒介しないため、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を誘導するFc部分を含まない。いくつかの実施形態において、中和抗体は、FcgRIIIA(CD16)ポリペプチドに実質的に結合可能なFcドメインを含まない。いくつかの実施形態において、中和抗体は、Fcドメインが欠如している(例えば、CH2及び/またはCH3ドメインが欠如している)、あるいはIgG2またはIgG4アイソタイプのFcドメインを含む。いくつかの実施形態において、中和抗体は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、ダイアボディ、一本鎖抗体フラグメント、または複数の異なる抗体フラグメントを含む多重特異性抗体からなる、またはこれらを含む。いくつかの実施形態において、中和抗体は毒性部分に結合していない。いくつかの実施形態において、アミノ酸残基から選択される1つ以上のアミノ酸は、抗体が、C2q結合が改変するように及び/または補体依存性細胞傷害(CDC)が低減もしくは消失するように、異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。このアプローチは、ldusogieらによる米国特許第6,194,551号にさらに詳しく記載されている。
【0077】
DBI(例えば細胞外DBI)の活性を阻害するいくつかの抗DBI抗体は、本明細書に記載の方法及び組成物に使用するのに適している。このような抗DBI抗体は市販されており、文献にも記載されている。例えば、DBIの活性を阻害する抗体(例えば、細胞外DBI)は、ab231910(ウサギポリクローナル;abcam)、ab232760(ウサギポリクローナル;abcam)、ab16871(ウサギポリクローナル;abcam)、sc-30190(ウサギポリクローナル;Santa Cruz Biotechnology)、FNab02256(ウサギポリクローナル;Wuhan Fine Biotech Co)、PA5-89139(ウサギポリクローナル;Invitrogen)、OTI4A8(マウスモノクローナル;OriGene)、OTI6E12(マウスモノクローナル;OriGene)、またはmAb 7A(マウスモノクローナル;Fred Hutch Antibody Technology)からなる群より選択される抗体のポリペプチド配列に対し少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の配列同一性を有する。
【0078】
いくつかの実施形態において、DBI(例えば細胞外DBI)の活性を阻害する薬剤は、DBIを対象とするアプタマーである。アプタマーは、分子認識の観点で抗体の代替物に相当する分子のクラスである。アプタマーは、事実上任意のクラスの標的分子を高い親和性及び特異性で認識する能力を有するオリゴヌクレオチド配列である。このようなリガンドは、ランダム配列ライブラリーのSystematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment(SELEX)により単離することができる。ランダム配列ライブラリーは、DNAのコンビナトリアル化学合成により入手できる。このライブラリーにおいて、各メンバーはユニークな配列の直鎖オリゴマーであり、最終的には化学修飾される。ペプチドアプタマーは、2つのハイブリッド方法によりコンビナトリアルライブラリーから選択される、E.coliチオレドキシンAなどのプラットフォームタンパク質により表示される立体構造的に制約された抗体可変領域からなる(Colas et al.,1996)。
【0079】
いくつかの実施形態において、DBIの発現を阻害する薬剤は発現阻害剤である。本発明の好ましい実施形態において、当該遺伝子発現阻害剤は、siRNA、エンドヌクレアーゼ、アンチセンスオリゴヌクレオチド、またはリボザイムである。
【0080】
いくつかの実施形態において、DBI(例えば細胞外DBI)の活性を阻害する薬剤は、対象に投与されたときにDBIに対する中和自己抗体を誘発するのに適したワクチン組成物に存在する。本発明の目的において、「ワクチン組成物」という用語は、免疫系応答を誘導するためにヒトまたは動物に投与することができる組成物を意味することが意図されており、この免疫系応答は、DBIに対する抗体の産生をもたらし得る。典型的には、ワクチン組成物は、DBIに由来する少なくとも1つの抗原を含む。本明細書で使用する場合、「抗原」という用語は、MHC分子によって処理及び提示された場合に、抗体またはT細胞受容体(TCR)により特異的に結合可能な分子を指す。本明細書で使用する場合、「抗原」という用語はT細胞エピトープも包含する。抗原はさらに、免疫系によって認識され、及び/またはB-及び/またはT-リンパ球の活性化につながる液性免疫応答及び/または細胞性免疫応答を誘導することが可能である。抗原は、1つ以上のエピトープまたは抗原部位(B-及びT-エピトープ)を有することができる。いくつかの実施形態において、抗原は、配列番号1の配列またはそのフラグメント(例えばエピトープ)に対し少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドに存在する。いくつかの実施形態において、抗原は、i)配列番号1に対し少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列、またはii)配列番号1の17位のアミノ酸残基から50位のアミノ酸残基にわたるアミノ酸配列に対し少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列、またはiii)配列番号1の33位のアミノ酸残基から50位のアミノ酸残基にわたるアミノ酸配列に対し少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列、またはiv)配列番号1の43位のアミノ酸残基から50位のアミノ酸残基にわたるアミノ酸配列に対し少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドに存在する。いくつかの実施形態において、このポリペプチドは、ワクチンに対する強力な免疫応答を誘発するために概して十分に外来性の担体タンパク質と結合体化している。例示する担体タンパク質は、本質的に免疫原性が高い。ウシ血清アルブミン(BSA)及びアオガイヘモシアニン(KLH)は、動物を用いた実験をする際に、結合体ワクチンの開発における担体として一般的に使用されており、本明細書ではこれらを担体タンパク質として企図している。治療用結合体ワクチンの調製に使用されてきたタンパク質としては、限定されるものではないが、病原性細菌の複数の毒素及びそれらのトキソイドが挙げられる。好適な担体分子は多数存在し、限定されるものではないが、細菌毒素または産物、例えば、コレラ毒素B-(CTB)、ジフテリア毒素、破傷風トキソイド、及び百日咳毒素、ならびに糸状菌ヘマグルチニン、志賀毒素、Pseudomonas外毒素;レクチン、例えば、リシンBサブユニット、アブリン、及びスイートピーレクチン;サブウイルス、例えば、レトロウイルス核タンパク質(レトロNP)、狂犬病リボ核タンパク質(狂犬病RNP)、植物ウイルス(例えば、TMV、ササゲ、及びカリフラワーモザイクウイルス)、水疱性口内炎ウイルス-ヌクレオカプシドタンパク質(VSV-N)、ポックスウイルスベクター、及びセムリキ森林ウイルスベクター;人工ビヒクル、例えば、多抗原性ペプチド(MAP)、ミクロスフェア;酵母ウイルス様粒子(VLP);マラリアタンパク質抗原;その他、例えば、タンパク質及びペプチドならびに上記の任意の修飾物、誘導体、またはアナログが挙げられる。他の有用な担体としては、粘膜応答を強化する能力を有する担体、より詳細には、細菌毒素のLTBファミリー、レトロウイルス核タンパク質(レトロNP)、狂犬病リボ核タンパク質(狂犬病RNP)、水疱性口内炎ウイルス-ヌクレオカプシドタンパク質(VSV-N)、及び組換えポックスウイルスサブユニットが挙げられる。
【0081】
医薬組成物:
典型的には、DBI(例えば細胞外DBI)の活性または発現を阻害する薬剤は、医薬的に許容される担体を含む医薬組成物の形態で患者に投与される。このような組成物で使用することができる医薬的に許容される担体としては、限定されるものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、または電解質、例えば、プロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベース物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロック多量体、ポリエチレングリコール、及び羊毛脂が挙げられる。患者への投与に使用する場合、組成物は患者への投与用に製剤化される。本発明の組成物は、経口、非経口、吸入スプレー、局所、経直腸、経鼻、頬側、経膣、または植込み型リザーバーにより投与することができる。本明細書で使用されるものとしては、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、病巣内、及び頭蓋内の注射または点滴技法が挙げられる。本発明の組成物の無菌注射用形態は、水性または油性の懸濁液であり得る。このような懸濁液は、当技術分野で知られている技法に従って、好適な分散剤または湿潤剤及び懸濁化剤を用いて製剤化することができる。また、無菌注射用調製物は、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の(例えば、1,3-ブタンジオール中溶液としての)無菌注射用の溶液または懸濁液であってもよい。用いることが許容されるビヒクル及び溶媒に含まれるものとして、水、リンゲル液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、無菌の固定油は、従来から溶媒または懸濁媒体として用いられている。この目的において、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激の固定油を用いることができる。脂肪酸、例えば、オレイン酸及びそのグリセリド誘導体は、特にそのポリオキシエチレン化バージョンにおいて、天然の医薬的に許容される油(例えば、オリーブ油またはヒマシ油)のように、注射液の調製に有用である。また、これらの油の溶液または懸濁液は、長鎖アルコールの希釈剤または分散剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、または乳剤及び懸濁液を含めた医薬的に許容される剤形の製剤化に一般的に使用されている同様の分散剤)を含んでもよい。他の一般的に使用されている界面活性剤、例えば、Tween(登録商標)、Span(登録商標)、及び医薬的に許容される固体、液体、または他の剤形の製造で一般的に使用されている他の乳化剤または生体利用能増強剤も、製剤化の目的で使用することができる。本発明の組成物は、限定されるものではないが、カプセル、錠剤、水性の懸濁液または溶液を含む任意の経口的に許容される剤形で、経口投与することができる。経口使用向けの錠剤の場合、一般的に使用されている担体としては、ラクトース及びトウモロコシデンプンが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も典型的に加えられる。カプセル形態で経口投与する場合、有用な希釈剤としては、例えばラクトースが挙げられる。経口使用向けに水性懸濁液が必要である場合、DBIの活性または発現を阻害する薬剤は、乳化剤及び懸濁化剤と組み合わされる。所望に応じて、ある特定の甘味剤、香味剤、または着色剤を加えてもよい。代替形態として、本発明の組成物は、経直腸投与用の坐薬の形態で投与することができる。このような坐薬は、薬剤と、室温では固体だが直腸温で液体となるため直腸内で融解して薬物を放出する好適な非刺激性の賦形剤と混合することにより、調製することができる。このような材料としては、カカオバター、ミツロウ、及びポリエチレングリコールが挙げられる。本発明の組成物は、特に治療の標的が局所適用により容易にアクセス可能な部位または臓器(眼、皮膚、または下部腸管の疾患を含む)を含む場合は、局所投与してもよい。好適な局所用製剤は、これらの部位または臓器の各々のために容易に調製される。局所適用の場合、組成物は、1つ以上の担体中に懸濁または溶解した活性成分を含む好適な軟膏に製剤化することができる。本発明の化合物の局所投与用の担体としては、限定されるものではないが、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ロウ及び水が挙げられる。代替形態として、組成物は、1つ以上の医薬的に許容される担体中に懸濁または溶解した活性成分を含む好適なローションまたはクリームに製剤化してもよい。好適な担体としては、限定されるものではないが、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、及び水が挙げられる。下部腸管に対する局所適用は、経直腸用坐薬製剤(上記参照)または好適な浣腸製剤で行うことができる。パッチを使用してもよい。本発明の組成物は、経鼻エアロゾルまたは吸入により投与することもできる。このような組成物は、医薬製剤の分野で周知されている技法に従って調製され、ベンジルアルコールもしくは他の好適な防腐剤、生体利用能を増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/または他の従来的な可溶化剤もしくは分散剤を用いて、食塩水溶液として調製することができる。
【0082】
いくつかの実施形態において、本発明のDBI(例えば、細胞外DBI)の活性または発現を阻害する薬剤は、注射、ポンプデバイス、及び/または任意の機械(例えば、バイパス機械)を用いて、対象または単離された臓器に直接投与される。いくつかの実施形態において、移植に適した単離された臓器は、DBIの活性または発現を阻害する薬剤の有効量を含む保存溶液により灌流される。本明細書で使用する場合、「保存溶液」または「臓器保存溶液」という用語は、pHが6.5~7.5で、塩、好ましくは塩化物、硫酸塩、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びカリウム;糖、好ましくはマンニトール、ラフィノース、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトビオン酸塩(耐水性)、またはグルコン酸塩;抗酸化剤、例えば、グルタチオン;活性薬剤、例えば、アロプリノールなどのキサンチンオキシダーゼ阻害剤、乳酸塩、ヒスチジン、グルタミン酸(またはグルタミン酸塩)、トリプトファンなどのアミノ酸;及び任意選択で、ヒドロキシエチルデンプン、ポリエチレングリコール、またはデキストランなどのコロイドを含む水溶液を指す。いくつかの実施形態において、臓器を保存するためのデバイスが使用され、当該デバイスは、保存溶液で満たされた臓器容器を含み、当該デバイスはさらに、1つ以上の化合物(例えば、DBIの活性または発現を阻害する薬剤)を臓器容器に注入するための1つ以上の手段を含むことを特徴とする。
【0083】
本発明を、以下の図面及び実施例によりさらに例示する。ただし、これらの実施例及び図面は、いかなる形においても本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図1A】ACBP/DBIの中和は、in vivoでオートファジーフラックスを活性化し臓器損傷を減弱する。A~C:90分/4時間の虚血/再灌流(IR)により生じた肝傷害。マウスを、α-DBIまたはIgG(2.5μg/g)及びHCQ(50mg/kg)の4時間及びIR直前の腹腔内注射により前処置した。肝傷害(A)を組織学的検査により評価した。血漿中のALT(B)及びASTトランスアミナーゼ活性(C)を比色分析アッセイにより分析した(群当たりn=5~11頭のマウス)。
【
図1B】ACBP/DBIの中和は、in vivoでオートファジーフラックスを活性化し臓器損傷を減弱する。A~C:90分/4時間の虚血/再灌流(IR)により生じた肝傷害。マウスを、α-DBIまたはIgG(2.5μg/g)及びHCQ(50mg/kg)の4時間及びIR直前の腹腔内注射により前処置した。肝傷害(A)を組織学的検査により評価した。血漿中のALT(B)及びASTトランスアミナーゼ活性(C)を比色分析アッセイにより分析した(群当たりn=5~11頭のマウス)。
【
図1C】ACBP/DBIの中和は、in vivoでオートファジーフラックスを活性化し臓器損傷を減弱する。A~C:90分/4時間の虚血/再灌流(IR)により生じた肝傷害。マウスを、α-DBIまたはIgG(2.5μg/g)及びHCQ(50mg/kg)の4時間及びIR直前の腹腔内注射により前処置した。肝傷害(A)を組織学的検査により評価した。血漿中のALT(B)及びASTトランスアミナーゼ活性(C)を比色分析アッセイにより分析した(群当たりn=5~11頭のマウス)。
【
図2A】α-DBIは、マウスにおいてアセトアミノフェン及びコンカナバリンAによる臓器毒性を軽減する。肝傷害前4時間にわたる及び肝傷害の直前のα-DBIまたはIgG(2.5μg/g)及びHCQ(50mg/kg)の腹腔内注射により前処置したマウスにおいて、アセトアミノフェン(APAP、腹腔内300mg/kg、16時間)またはコンカナバリンA(ConA、静脈内12mg/kg、4時間)により損傷を誘発した。A~C.APAP中毒後のDBI中和による肝保護効果。肝傷害(A)を、中心静脈周辺の細胞死、変性(風船様腫大)、及び炎症の面積を考慮して組織学的検査により測定した。血漿マウスからのALT及びASTトランスアミナーゼ活性(B及びC)(群当たりn=4~11頭のマウス)。D~F.DBI中和によるConA損傷からの肝臓保護。浸潤及び肝細胞壊死のグレードを用いて、肝傷害(D)をスコア化した。血漿中のALT及びASTトランスアミナーゼの活性(E及びF)(群当たりn=3~11頭のマウス)。
【
図2B】α-DBIは、マウスにおいてアセトアミノフェン及びコンカナバリンAによる臓器毒性を軽減する。肝傷害前4時間にわたる及び肝傷害の直前のα-DBIまたはIgG(2.5μg/g)及びHCQ(50mg/kg)の腹腔内注射により前処置したマウスにおいて、アセトアミノフェン(APAP、腹腔内300mg/kg、16時間)またはコンカナバリンA(ConA、静脈内12mg/kg、4時間)により損傷を誘発した。A~C.APAP中毒後のDBI中和による肝保護効果。肝傷害(A)を、中心静脈周辺の細胞死、変性(風船様腫大)、及び炎症の面積を考慮して組織学的検査により測定した。血漿マウスからのALT及びASTトランスアミナーゼ活性(B及びC)(群当たりn=4~11頭のマウス)。D~F.DBI中和によるConA損傷からの肝臓保護。浸潤及び肝細胞壊死のグレードを用いて、肝傷害(D)をスコア化した。血漿中のALT及びASTトランスアミナーゼの活性(E及びF)(群当たりn=3~11頭のマウス)。
【
図2C】α-DBIは、マウスにおいてアセトアミノフェン及びコンカナバリンAによる臓器毒性を軽減する。肝傷害前4時間にわたる及び肝傷害の直前のα-DBIまたはIgG(2.5μg/g)及びHCQ(50mg/kg)の腹腔内注射により前処置したマウスにおいて、アセトアミノフェン(APAP、腹腔内300mg/kg、16時間)またはコンカナバリンA(ConA、静脈内12mg/kg、4時間)により損傷を誘発した。A~C.APAP中毒後のDBI中和による肝保護効果。肝傷害(A)を、中心静脈周辺の細胞死、変性(風船様腫大)、及び炎症の面積を考慮して組織学的検査により測定した。血漿マウスからのALT及びASTトランスアミナーゼ活性(B及びC)(群当たりn=4~11頭のマウス)。D~F.DBI中和によるConA損傷からの肝臓保護。浸潤及び肝細胞壊死のグレードを用いて、肝傷害(D)をスコア化した。血漿中のALT及びASTトランスアミナーゼの活性(E及びF)(群当たりn=3~11頭のマウス)。
【
図2D】α-DBIは、マウスにおいてアセトアミノフェン及びコンカナバリンAによる臓器毒性を軽減する。肝傷害前4時間にわたる及び肝傷害の直前のα-DBIまたはIgG(2.5μg/g)及びHCQ(50mg/kg)の腹腔内注射により前処置したマウスにおいて、アセトアミノフェン(APAP、腹腔内300mg/kg、16時間)またはコンカナバリンA(ConA、静脈内12mg/kg、4時間)により損傷を誘発した。A~C.APAP中毒後のDBI中和による肝保護効果。肝傷害(A)を、中心静脈周辺の細胞死、変性(風船様腫大)、及び炎症の面積を考慮して組織学的検査により測定した。血漿マウスからのALT及びASTトランスアミナーゼ活性(B及びC)(群当たりn=4~11頭のマウス)。D~F.DBI中和によるConA損傷からの肝臓保護。浸潤及び肝細胞壊死のグレードを用いて、肝傷害(D)をスコア化した。血漿中のALT及びASTトランスアミナーゼの活性(E及びF)(群当たりn=3~11頭のマウス)。
【
図2E】α-DBIは、マウスにおいてアセトアミノフェン及びコンカナバリンAによる臓器毒性を軽減する。肝傷害前4時間にわたる及び肝傷害の直前のα-DBIまたはIgG(2.5μg/g)及びHCQ(50mg/kg)の腹腔内注射により前処置したマウスにおいて、アセトアミノフェン(APAP、腹腔内300mg/kg、16時間)またはコンカナバリンA(ConA、静脈内12mg/kg、4時間)により損傷を誘発した。A~C.APAP中毒後のDBI中和による肝保護効果。肝傷害(A)を、中心静脈周辺の細胞死、変性(風船様腫大)、及び炎症の面積を考慮して組織学的検査により測定した。血漿マウスからのALT及びASTトランスアミナーゼ活性(B及びC)(群当たりn=4~11頭のマウス)。D~F.DBI中和によるConA損傷からの肝臓保護。浸潤及び肝細胞壊死のグレードを用いて、肝傷害(D)をスコア化した。血漿中のALT及びASTトランスアミナーゼの活性(E及びF)(群当たりn=3~11頭のマウス)。
【
図2F】α-DBIは、マウスにおいてアセトアミノフェン及びコンカナバリンAによる臓器毒性を軽減する。肝傷害前4時間にわたる及び肝傷害の直前のα-DBIまたはIgG(2.5μg/g)及びHCQ(50mg/kg)の腹腔内注射により前処置したマウスにおいて、アセトアミノフェン(APAP、腹腔内300mg/kg、16時間)またはコンカナバリンA(ConA、静脈内12mg/kg、4時間)により損傷を誘発した。A~C.APAP中毒後のDBI中和による肝保護効果。肝傷害(A)を、中心静脈周辺の細胞死、変性(風船様腫大)、及び炎症の面積を考慮して組織学的検査により測定した。血漿マウスからのALT及びASTトランスアミナーゼ活性(B及びC)(群当たりn=4~11頭のマウス)。D~F.DBI中和によるConA損傷からの肝臓保護。浸潤及び肝細胞壊死のグレードを用いて、肝傷害(D)をスコア化した。血漿中のALT及びASTトランスアミナーゼの活性(E及びF)(群当たりn=3~11頭のマウス)。
【
図3A】ACBP/DBI中和は慢性傷害により誘導される線維化を減弱する。A~C.C57BL/6マウスを2週間の胆管結紮(BDL)に供した。BDLの4時間前及び1時間前に、マウスに2.5μg/gのIgGまたはα-DBIを腹腔内注射し、BDL中は週に2回、線維化スコア(A)、ALT活性(B)、及びビリルビンレベル(C)を測定した(群当たりn=5~10頭のマウス)。D~E.C57BL/6マウスに、2.5μg/gのα-DBIまたはIgGを週に1回、1.6ml/kgのCCl
4を週2回、9週間腹腔内注射した。追加群は、CCl
4の最終4週間、50mg/kg/日のHCQで処置した。線維化ステージ(D)及び血漿ALT(E)の定量を示す(群当たりn=5~14頭のマウス)。
【
図3B】ACBP/DBI中和は慢性傷害により誘導される線維化を減弱する。A~C.C57BL/6マウスを2週間の胆管結紮(BDL)に供した。BDLの4時間前及び1時間前に、マウスに2.5μg/gのIgGまたはα-DBIを腹腔内注射し、BDL中は週に2回、線維化スコア(A)、ALT活性(B)、及びビリルビンレベル(C)を測定した(群当たりn=5~10頭のマウス)。D~E.C57BL/6マウスに、2.5μg/gのα-DBIまたはIgGを週に1回、1.6ml/kgのCCl
4を週2回、9週間腹腔内注射した。追加群は、CCl
4の最終4週間、50mg/kg/日のHCQで処置した。線維化ステージ(D)及び血漿ALT(E)の定量を示す(群当たりn=5~14頭のマウス)。
【
図3C】ACBP/DBI中和は慢性傷害により誘導される線維化を減弱する。A~C.C57BL/6マウスを2週間の胆管結紮(BDL)に供した。BDLの4時間前及び1時間前に、マウスに2.5μg/gのIgGまたはα-DBIを腹腔内注射し、BDL中は週に2回、線維化スコア(A)、ALT活性(B)、及びビリルビンレベル(C)を測定した(群当たりn=5~10頭のマウス)。D~E.C57BL/6マウスに、2.5μg/gのα-DBIまたはIgGを週に1回、1.6ml/kgのCCl
4を週2回、9週間腹腔内注射した。追加群は、CCl
4の最終4週間、50mg/kg/日のHCQで処置した。線維化ステージ(D)及び血漿ALT(E)の定量を示す(群当たりn=5~14頭のマウス)。
【
図3D】ACBP/DBI中和は慢性傷害により誘導される線維化を減弱する。A~C.C57BL/6マウスを2週間の胆管結紮(BDL)に供した。BDLの4時間前及び1時間前に、マウスに2.5μg/gのIgGまたはα-DBIを腹腔内注射し、BDL中は週に2回、線維化スコア(A)、ALT活性(B)、及びビリルビンレベル(C)を測定した(群当たりn=5~10頭のマウス)。D~E.C57BL/6マウスに、2.5μg/gのα-DBIまたはIgGを週に1回、1.6ml/kgのCCl
4を週2回、9週間腹腔内注射した。追加群は、CCl
4の最終4週間、50mg/kg/日のHCQで処置した。線維化ステージ(D)及び血漿ALT(E)の定量を示す(群当たりn=5~14頭のマウス)。
【
図3E】ACBP/DBI中和は慢性傷害により誘導される線維化を減弱する。A~C.C57BL/6マウスを2週間の胆管結紮(BDL)に供した。BDLの4時間前及び1時間前に、マウスに2.5μg/gのIgGまたはα-DBIを腹腔内注射し、BDL中は週に2回、線維化スコア(A)、ALT活性(B)、及びビリルビンレベル(C)を測定した(群当たりn=5~10頭のマウス)。D~E.C57BL/6マウスに、2.5μg/gのα-DBIまたはIgGを週に1回、1.6ml/kgのCCl
4を週2回、9週間腹腔内注射した。追加群は、CCl
4の最終4週間、50mg/kg/日のHCQで処置した。線維化ステージ(D)及び血漿ALT(E)の定量を示す(群当たりn=5~14頭のマウス)。
【
図4A】ACBP/DBIの中和は、メチオニンコリン欠乏飼料により誘導される脂肪肝を減弱する。A~D.月齢2~3か月の雄マウスに、普通飼料(RCD)またはメチオニンコリン欠乏飼料(MCD)を4週間与えた。肝F4/80マクロファージ(A)、NAFLD活性スコア(B)、ALT及びAST活性(C)、ならびにp62レベル(D)を測定した。
【
図4B】ACBP/DBIの中和は、メチオニンコリン欠乏飼料により誘導される脂肪肝を減弱する。A~D.月齢2~3か月の雄マウスに、普通飼料(RCD)またはメチオニンコリン欠乏飼料(MCD)を4週間与えた。肝F4/80マクロファージ(A)、NAFLD活性スコア(B)、ALT及びAST活性(C)、ならびにp62レベル(D)を測定した。
【
図4C】ACBP/DBIの中和は、メチオニンコリン欠乏飼料により誘導される脂肪肝を減弱する。A~D.月齢2~3か月の雄マウスに、普通飼料(RCD)またはメチオニンコリン欠乏飼料(MCD)を4週間与えた。肝F4/80マクロファージ(A)、NAFLD活性スコア(B)、ALT及びAST活性(C)、ならびにp62レベル(D)を測定した。
【
図4D】ACBP/DBIの中和は、メチオニンコリン欠乏飼料により誘導される脂肪肝を減弱する。A~D.月齢2~3か月の雄マウスに、普通飼料(RCD)またはメチオニンコリン欠乏飼料(MCD)を4週間与えた。肝F4/80マクロファージ(A)、NAFLD活性スコア(B)、ALT及びAST活性(C)、ならびにp62レベル(D)を測定した。
【
図5A】ACBP/DBIの中和は、西洋飼料により誘導される脂肪肝を減弱する。A~B.月齢2~3か月の雄マウスに、普通飼料(RCD)または高脂肪西洋飼料+糖を4週間与えた。NAFLD活性スコア(A)、ならびにALT及びAST活性(B)を測定した。
【
図5B】ACBP/DBIの中和は、西洋飼料により誘導される脂肪肝を減弱する。A~B.月齢2~3か月の雄マウスに、普通飼料(RCD)または高脂肪西洋飼料+糖を4週間与えた。NAFLD活性スコア(A)、ならびにALT及びAST活性(B)を測定した。
【
図6A】ACBP/DBIの中和は、西洋飼料及びCCl
4により誘導される脂肪肝を減弱する。A~B.月齢2~3か月の雄マウスに、普通飼料(RCD)または高脂肪西洋飼料+糖+CCl
4を4週間与えた。NAFLD活性スコア(A)、ならびにALT及びAST活性(B)を測定した。
【
図6B】ACBP/DBIの中和は、西洋飼料及びCCl
4により誘導される脂肪肝を減弱する。A~B.月齢2~3か月の雄マウスに、普通飼料(RCD)または高脂肪西洋飼料+糖+CCl
4を4週間与えた。NAFLD活性スコア(A)、ならびにALT及びAST活性(B)を測定した。
【
図7】ACBP/DBIの中和は、西洋飼料及びCCl
4により誘導される線維化を減弱する。C57BL/6マウスに普通飼料(RCD)または高脂肪西洋飼料+糖+CCl
4を4週間与えた。マウスに、2.5μg/gのα-DBIまたはIgGを週に1回、1.6ml/kgのCCl
4を週2回、9週間腹腔内注射した。線維化スコアの定量を示す(群当たりn=5~14頭のマウス)。
【
図8A】ACBP/DBI中和はCCl
4により誘導される線維化を回復させる。マウスにCCl
4を9週間投与し、次いでビヒクル(油)で処置して4週間回復させた(R)。2.5μg/gのIgGまたはα-DBIを回復の1日前及びRの間は週に1回腹腔内注射した。線維化ステージ(A)、血漿ALT活性(B)、及びヒドロキシプロリンレベル(C)の定量を測定した(群当たりn=4~12頭のマウス)。
【
図8B】ACBP/DBI中和はCCl
4により誘導される線維化を回復させる。マウスにCCl
4を9週間投与し、次いでビヒクル(油)で処置して4週間回復させた(R)。2.5μg/gのIgGまたはα-DBIを回復の1日前及びRの間は週に1回腹腔内注射した。線維化ステージ(A)、血漿ALT活性(B)、及びヒドロキシプロリンレベル(C)の定量を測定した(群当たりn=4~12頭のマウス)。
【
図8C】ACBP/DBI中和はCCl
4により誘導される線維化を回復させる。マウスにCCl
4を9週間投与し、次いでビヒクル(油)で処置して4週間回復させた(R)。2.5μg/gのIgGまたはα-DBIを回復の1日前及びRの間は週に1回腹腔内注射した。線維化ステージ(A)、血漿ALT活性(B)、及びヒドロキシプロリンレベル(C)の定量を測定した(群当たりn=4~12頭のマウス)。
【実施例】
【0085】
実施例1:材料及び方法
化学物質及び試薬
試薬をAxon Medchem BV(Groningen,Netherlands)、Qiagen(Hilden,Germany)、Millipore(MA,USA)、Randox(Antrim,UK)、Roche Applied Science(Upper Bavaria,Germany)、及びSigma Aldrich(MO,USA)から入手した。電気泳動用の試薬をThermo Fisher Scientific(MA,USA)及びBioRad(CA,USA)から入手した。抗体をAbcam(TX,USA)、Abnova(Taipei,Taiwan)、Cell Signaling(MA,USA)、及びSigma Aldrichから入手した。
【0086】
動物実験
野生型(Wt)C57BL/6マウス(Envigo,Gannat,France)、ホモ接合性Atg4b-/-マウス(Dr.Carlos Lopez-Otinの寄贈;University of Oviedo, Spain)、タモキシフェン誘導性全身ノックアウトfloxed Acbp/Dbi-/-マウス(UBC-cre/ERT2::Acbp/Dbifl/fl、対照:Acbp/Dbifl/fl(CREなし))(Bravo-San Pedro et al.,2019a)、ホモ接合性Gabrg2mut/mutマウス(ガンマ-アミノ酪酸A受容体γ2サブユニットのACBP/DBIの結合部位内に点変異F77Iを保有)(Wulff et al.,2007)、及び緑色蛍光タンパク質に結合体化したLC3を発現するトランスジェニックマウス(GFP-LC3-Tg)(Mizushima et al.,2004)を、FELASAガイドライン及びAnimal Experimental Ethics Committeeからのローカルガイドラインに従って飼育及び維持した(パーミッション番号25000、31411、34537、34538、及び34539)。マウスを12時間明/暗サイクルにて温度制御された環境下で飼育し、飼料及び水を自由に摂取させた。全ての動物を屠殺し、臓器を液体窒素中で瞬間凍結し、-80℃で保存するか、または4℃の4%緩衝パラホルムアルデヒド中で一晩固定しパラフィンに包埋した。血漿を心臓穿刺により得た。
【0087】
受動免疫または能動免疫によるDBIの中和
DBIに対するモノクローナル抗体(受動免疫)またはアイソタイプIgG(Bioxcell,NH,USA)をin vivoで(2.5μg/g体重(B.W.)、腹腔内(i.p.)、200μL中)単回または複数回用量で使用した。一部の実験では、実験終了の2時間前にロイペプチン(Leu、30mg/kg体重)を腹腔内注射した。
【0088】
自己抗体の産生(能動免疫)を、Montegutらが説明したように、アオガイヘモシアニン(KLH;Thermo製)及びマウスrecACBP(KLH-DBI)の結合体化により誘導した(Montegut et al.,2022)。簡潔に説明すると、KLH及びDBIを1:20のモル比で混合し、徐々に調整して0.25%(v/v)のグルタルアルデヒドとした。その後、グリシン溶液を加えて反応を終了させ、100KDaメンブレン(Millipore)を用いて限外濾過した。ホルムアルデヒド溶液を加えて0.2%(v/v)の最終濃度とし、グリシン溶液を加え、次に70mM pH7.8リン酸緩衝液で限外濾過することにより反応をクエンチした。8週齢の雄C57BL/6マウスに、アジュバント乳剤(1:1)として30、30、30、10μgのKLH-DBIまたはKLH単独を、Montanide ISA-51vg(Seppic,Paris,France)とともにそれぞれ0、7、14、及び21日目に腹腔内注射を行うことにより免疫した。
【0089】
マウスにおける急性肝障害
肝虚血再灌流傷害を誘導するため、12週齢の雄C57BL/6マウスを2%イソフルオランで麻酔し、セグメント(70%)温肝I/Rプロトコルのモデルを評価した(Motino et al.,2019)。簡潔に説明すると、肝虚血を90分間誘導し、クランプを4時間除去することにより再灌流を開始した。肝毒性を誘導するため、12週齢の雄C57BL/6マウスを、12mg/kgのコンカナバリンA(ConA;Sigma Aldrich)または300mg/kgのアセトアミノフェン(APAP;Sigma Aldrich)でそれぞれ4時間または16時間処置した。オートファジーフラックスを阻害するため、肝損傷の4時間前及びその直前に、動物に50mg/kgのヒドロキシクロロキン(HCQ、PBS中;Axon Medchem BV)の2回用量を腹腔内注射した。
【0090】
in vivoの肝線維化モデル
肝臓の線維化を誘導するため、CCl4(Sigma Aldrich)を月齢2か月の雄C57BL/6マウスに1.6ml/kgの用量で週に2回9週間腹腔内投与した(Motino et al.,2016)。対照動物にビヒクルのオリーブ油(Sigma Aldrich)を腹腔内注射した。追加群には、CCl4の最後の4週間、50mg/kgのHCQを毎日腹腔内投与した。肝線維化を誘導する別のアプローチは、2週間の胆管結紮(BDL)を伴う(Tag et al.,2015)。
【0091】
生化学的アッセイ
比色分析キット(Randox)を製造業者の指示に従って用いて、血清ALT及びAST活性を定量した。コラーゲンを定量化するため、肝ヒドロキシプロリン含量を市販のキット(Sigma Aldrich)によりアッセイした。
【0092】
病理組織学的検査
パラフィン包埋切片(5μm)をヘマトキシリン-エオシン-サフラニン(HES)またはSirius Redで染色し、動物群の特徴を盲検化された経験豊富な病理学者が評価した。全てのスライドをAxioScan Z1(Carl Zeiss,Jena,Germany)でスキャンした。Liangらにより検証されたマウスモデル用のNAFLDスコアリングシステムを用いて、NAFLD活性スコアを評価した(Liang et al.,2014)。簡潔に説明すると、脂肪症のグレードを以下のように分類した。グレード0:脂肪症肝細胞5%未満;グレード1:5~33%;グレード2:33~66%;グレード3:66%超。小葉炎症を以下のようにスコア化した。0:病巣なし;1:病巣2個未満;2:病巣2~4個;3:病巣4個超。風船様腫大を0:なし、1:少数の風船様細胞、2:多数の風船様細胞に分類した。NAFLD活性スコアを、各肝生検について脂肪症、炎症、及び風船様腫大のスコアの合計に基づいて算出した。さらに、肝線維化ステージ分類(Metavirスコア)を、0:なし、1:類洞周囲及び/または中心周囲、2:不完全な中心部/中心部架橋線維化、3:完全な中心部/中心部架橋線維化、ならびに4:明白な肝硬変として定義した(Bedossa and Poyard,1996)。肝IRの重症度を、Suzukiの基準に従って0~4までのスケールで類別した。壊死、うっ血、または中心-小葉風船様腫大については、なし(0%)、最小限(10%)、軽度(11~30%)、中等度(30~60%)、及び高度(60%超)をそれぞれグレード0、1、2、3、及び4に割り当てた(Suzuki et al.,1993)。APAPの肝毒性を測定するため、細胞死領域、風船様腫大、及び中心静脈周囲の炎症を考慮して、肝試料をなし(0:0%)、軽度(1:20%未満)、中等度(2:20~70%)、重度(3:肝小葉の70%超)に分類した(Naiki-Ito et al.,2010)。以下のようなグレードを用いて、ConAにより誘導した肝傷害をスコア化した。0:壊死浸潤なし、1:肝細胞間の小さな壊死細胞巣または個々の肝細胞を取り囲む壊死細胞巣、2:100個の壊死細胞または30個の肝細胞を含む大きな壊死細胞巣、3:肝断面の10%を含む、及び4:肝断面の30%を含む(Zhao et al.,2020)。また、肝マクロファージ及びクッパー細胞の存在量を定量するため、抗マウスF4/80を用いて、固定パラフィンブロックの肝臓切片を、標準的な手順に従って免疫組織化学的に染色した。
【0093】
肝臓抽出物
タンパク質またはRNA抽出のため、組織をそれぞれ、150mMのNaCl、1%のTriton(登録商標)X-100、10mMのEDTA及びComplete(登録商標)プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Applied Science)、またはQIAzol(Qiagen)を含む20mMのTris緩衝液(pH7.4)中で、Precellys 24 tissue homogenator(Bertin Technologies,Montigny-le-Bretonneux,France)を用いて、5,500rpmで20秒間、2サイクルでホモジナイズした。その後、タンパク質抽出物を12,000g(4℃)で15分間遠心分離し、上清を収集した。上清中のタンパク質濃度をビシンコニン酸技法(BCA protein assay kit;Thermo Fisher Scientific)により評価した。RNeasy Mini Kit(Qiagen)を製造業者の指示に従って用いて、ホモジネートRNAを精製した。RNAの純度及び濃度をNanoDrop(商標)(Thermo Fisher Scientific)により測定した。
【0094】
データ分析
データを平均±SEMとして表現する。統計分析については、最初に、結果の正規分布をD’Agostino & Pearson正規性検定及びShapiro-Wilk正規性により評価した。統計学的有意性は、Studentの対応のない両側t検定または対応のない両側Mann-Whitney検定を用いて分析して、単一遺伝子型内及び遺伝子型間における処置マウス及び無処置マウスの差を評価した。分析は統計ソフトGraphPad Prism 5を使用することにより実施した。全トランスクリプトームシークエンシング及びGEOデータセットの統計解析を、Fisherの正確確率検定により試験した。メタボロミックの統計解析については、Mann-Whitney検定によりp値を算出した。全ての標的処理データを、専用のR(バージョン3.4)パッケージ(@Github/Kroemerlab/GRMeta)によりマージ及びクリーニングした。p<0.05を統計的に有意とみなした。
【0095】
実施例2:ACBP/DBI中和の急性損傷に対する臓器保護効果。
ACBP/DBI(α-DBI)を中和するモノクローナル抗体(mAb)(2.5μg/g、腹腔内(i.p.)、屠殺の6時間及び2時間前)を注射することにより、オートファジーのマーカーである微小管関連タンパク質1A/1B軽鎖3B(以下、LC3Bと称する)の肝脂質化が強化され、電気泳動的により移動性の高いLC3-II形態が生じる(データは示さず)(Mizushima et al.,2004)。この効果は、リソソームプロテアーゼ阻害剤ロイペプチン(屠殺の2時間前に30mg/kg、腹腔内)を注射することによりさらに強化され、オートファジーフラックスの上昇が確証された(Haspel et al.,2011)(データは示さず)。これに対応して、α-DBI(屠殺の4時間前に2.5μg/g、腹腔内)を1回注射することにより、緑色蛍光タンパク質(GFP)-LC3融合タンパク質をコードする導入遺伝子を発現するマウス(Mizushima et al.,2004)の肝細胞において、オートファジー斑点の形成が誘導された(データは示さず)。またα-DBIの2回注射により、肝臓の虚血/再灌流の組織学的徴候(Suzukiスコアでまとめたうっ血、風船様腫大、壊死)(Suzuki et al.,1993)(
図1A)が低減され、さらにアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の2つのトランスアミナーゼの血漿濃度の増加も低減された(
図1B、C)。α-DBI注射を、in vivoでオートファジーを阻害するリソソーム作用剤(lysomotropic agent)のヒドロキシクロロキン(50mg/kg)(Cook et al.,2014)と組み合わせたところ、ACBP/DBI中和が虚血/再灌流に及ぼす肝保護効果が喪失した(
図1A~C)。α-DBIと同様のヒドロキシクロロキン阻害性肝保護効果が、アセトアミノフェン(APAP、商品名パラセタモール)及びレクチンコンカナバリンA(ConA)により引き起こされた薬理学的肝毒性の2つのモデルでも得られた(
図2)。いずれのモデルにおいても、α-DBIは、肝傷害の組織学的徴候及び循環トランスアミナーゼレベルを低減した(
図2)。
【0096】
実施例3:ACBP/DBI中和は線維化を抑制する。
肝線維化が胆管結紮(BLD)により誘導されるモデルを使用した(Brea et al.,2018)。BLDの2週間後、アイソタイプ対照抗体で処置したマウスでは肝損傷及び線維化が顕著であったが、α-DBIを隔週で注射した後はかなり減弱した(
図3A~C)。同様の結果が、十分に確立された四塩化炭素(CCl
4)誘導性肝線維化のモデルでも得られた。これは、α-DBI(もしくはアイソタイプIgG対照を9週間)を週に1回投与し、及び/またはヒドロキシクロロキンを毎日注射する(もしくはビヒクル対照を実験の最後の4週間)ことにより調節された。このモデルにおいて、α-DBIは、体重減少、Sirius Red染色により検出可能な線維化の徴候(
図3D)、またはコラーゲンリッチアミノ酸のヒドロキシプロリンの定量化により検出可能な線維化の徴候(データは示さず)、さらにトランスアミナーゼ活性により反映される肝損傷(
図3E)、及び線維化促進マーカーのコラーゲン1A1及びα-平滑筋アクチン(α-SMA)の免疫ブロット検出により反映される肝損傷(データは示さず)を減弱した。α-DBIが肝臓損傷及び線維化に及ぼす有益な効果は、オートファジーがヒドロキシクロロキンにより阻害されると喪失した(
図3D、E)。p62及びLC3-IIにおけるCCl
4誘導性改変は、α-DBIにより回復したが、ヒドロキシクロロキンの不在下の場合に限られ、その存在下では回復しなかった(データは示さず)。また、α-DBIは、CCl
4誘導性循環トランスアミナーゼ上昇も、やはりヒドロキシクロロキンの不在下の場合に限って回復した(
図3E)。さらにα-DBIは、慢性CCl
4中毒の転写効果を、全てではないとしてもほとんど回復して、線維化促進性、炎症促進性、マクロファージ関連、またはトランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)関連の遺伝子の発現を低減したが、抗酸化酵素の発現を強化した。α-DBIのこれらの転写効果は、ヒドロキシクロロキンを同時投与したときには消失した(データは示さず)。さらに一連の実験において、CCl
4誘導性肝線維化が、CCl
4の休薬を週に1回のα-DBI注射と4週間組み合わせた場合により効率的に回復し得るかについて判定した(データは示さず)。この治癒的設定においてもまた、α-DBIは肝線維化の徴候を低減した(データは示さず)。総合すると、これらのデータは、ACBP/DBI中和は肝線維化に有益な効果を及ぼし、この効果がオートファジーに大きく依存することを示すものである。
【0097】
実施例4:ACBP/DBIは、飼料により誘導される脂肪肝を減弱する。
食事誘導性脂肪肝を使用して、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の治療をモデル化した。最初は、メチオニンコリン欠乏飼料(MCD)(対照:普通飼料(RCD))の結果として体重減少との関連で発生するNASHモデルに及ぼすACBP/DBI中和の効果である。α-DBI(対照:アイソタイプ免疫グロブリンG[IgG]mAb)を週に1回注射したマウスにおいて、MCDを4週間の過程で投与した後に、NASHの特徴を評価した。α-DBIは、肝臓内のF4/80マクロファージの低減により測定されたように、NASHに関連する炎症を低減し(
図4A)、MCDにより誘導されるNASHの組織学的徴候(脂肪症、炎症、及び風船様腫大の合計として測定されるNAFLD活性スコアによる定量:
図4B)ならびに酵素学的徴候(ALT及びAST)をほとんど予防した(
図4C)。さらに、α-DBIは、NASHに関連するオートファジーフラックスの抑制を回復した。これは、α-DBIを投与したマウスでは、オートファジー基質p62が対照と比較して低減されていることから証明される。
【0098】
次に、ACBP/DBI中和が、高脂肪西洋飼料を消費する対象に発生するNASHモデルに及ぼす効果について定量した。NASHの特徴を、α-DBI(対照:アイソタイプ免疫グロブリンG[IgG]mAb)を週に1回注射を投与したマウスにおいて、西洋飼料の4週間過程の後に評価した。さらに、西洋飼料を与えていた別のマウス群に、線維化を誘導するためにCCl
4を腹腔内投与した。MCD誘導性NASHと同様に、α-DBIは、西洋飼料により誘導されるNASHの組織学的徴候(NAFLD活性スコアによる定量:
図5A)及び酵素学的徴候(ALT及びAST)をほとんど予防した(
図5B)。さらに、α-DBIの投与により、西洋飼料を与えCCl
4を投与したマウスのNAFLD活性スコア(
図6A)及びNASHの酵素学的徴候(ALT及びAST:
図6B)が低減された。さらに、α-DBIの投与は、線維化スコアの低減により証明されるように、西洋飼料を与えたマウスにおいて、CCl
4投与に伴う線維化を低減した(
図7)。
【0099】
最後に、α-DBIが、CCl
4により誘導される肝線維化に回復をもたらす能力について判定した。肝臓の線維化を誘導するため、CCl
4(Sigma Aldrich)を月齢2か月の雄のC57BL/6マウスに1.6ml/kgの用量で週に2回9週間腹腔内投与し、次いでビヒクル(油)で処置して4週間回復させた(R)。2.5μg/gのIgGまたはα-DBIを回復の1日前及びRの間は週に1回腹腔内注射した。対照動物にはビヒクルのオリーブ油(Sigma Aldrich)を腹腔内注射した。この治癒的設定においてもまた、α-DBIは、線維化スコア(
図8A)、ALT活性(
図8B)、及びヒドロキシプロリン含量(
図8C)の低減により判定されたように、肝線維化の損傷徴候を低減した。
【0100】
まとめると、α-DBIによるACBP/DBI中和は、様々なモデルにおいて、NASHに関連する脂肪肝及び肝臓の線維化を低減し、さらに形成後の肝臓の線維化を回復することさえでき、よってα-DBIによるACBP/DBI中和の治療可能性をさらに実証している。
【0101】
参考文献:
本出願全体において、様々な参考文献が、本発明が関連する最新技術を説明している。これらの参考文献の開示内容は、参照により本開示に援用される。
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【国際調査報告】