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特表2025-506567末梢T細胞リンパ腫の治療のためのバイオマーカー及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-11
(54)【発明の名称】末梢T細胞リンパ腫の治療のためのバイオマーカー及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20250304BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 38/15 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 31/18 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250304BHJP
   C12Q 1/6874 20180101ALN20250304BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALN20250304BHJP
   C12Q 1/00 20060101ALN20250304BHJP
【FI】
C12Q1/68
A61K45/00
A61K38/15
A61K31/18
A61K39/395 T
A61K31/519
A61K31/706
A61P35/00
A61P35/02
C12Q1/6874 Z
C12Q1/02
C12Q1/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024569053
(86)(22)【出願日】2023-02-08
(85)【翻訳文提出日】2024-09-11
(86)【国際出願番号】 US2023012625
(87)【国際公開番号】W WO2023154349
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】63/307,905
(32)【優先日】2022-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508221224
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ネブラスカ
(71)【出願人】
【識別番号】524296888
【氏名又は名称】ザ ガバメント オブ ザ ユーエスエイ アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー オブ ザ デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】イクバル ジャヴィード
(72)【発明者】
【氏名】チャン ウィン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ライト ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】スタウト ルイス エム.
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ08
4B063QQ12
4B063QQ53
4B063QR32
4B063QR40
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA16
4C084BA26
4C084BA27
4C084BA28
4C084CA04
4C084CA59
4C084DA27
4C084NA14
4C084ZB072
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC202
4C084ZC412
4C085AA14
4C085AA26
4C085BB01
4C085CC23
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB07
4C086EA16
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA13
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZB26
(57)【要約】
本開示は、末梢T細胞リンパ腫を遺伝的にサブタイプ決定する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)のサブタイプを識別する方法:
対象からの試料を核酸単離に供すること、
前記試料から遺伝子発現プロファイルを得ること、及び
前記遺伝子発現プロファイル内の特定の遺伝子の存在に基づいて、PTCLのサブタイプを特定すること。
【請求項2】
PTCLサブタイプ血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陰性未分化大細胞リンパ腫(ALK- ALCL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、結節外ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫(ENKTL)、ALK陽性ALCL(ALK+ ALCL)、PTCL非特定型(PTCL-NOS)、又は不確定(indeterminate)、ここで、不確定が、前記試料が少なくとも2つの前記PTCLサブタイプの特徴を含むことを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遺伝子発現プロファイルが、ACHE、ADRA2A、ARRDC4、COL4A4、EFNB2、FCAMR、GJA4、GNA14、IER3IP1、ISG15、MSR1、OLFM1、PAPLN、S1PR3、SOX8、TMEM206、TUBB2B、及びVANGL2のうちのいずれか1つ以上を含む場合、前記PTCLサブタイプがAITLとして特定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記遺伝子発現プロファイルが、BATF3、C9orf89、CD28、DUSP2、ICMT、LGALS1、PIK3IP1、PRKCQ、TNFRSF8、TRAT1、及びZNF101のうちのいずれか1つ以上を含む場合、前記PTCLサブタイプがALK- ALCLとして特定される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記遺伝子発現プロファイルが、ATP8B4、CD3D、CD5、CTSW、FAM102A、FASLG、GZMB、KLRC2、KLRC3、KLRC4、PRF1、SH2D1B、EBER、LMP1、及びTNFRSF25のうちのいずれか1つ以上を含む場合、前記PTCLサブタイプがENKTLとして特定される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝子発現プロファイルが、ARSG、CCNE1、DOK5、FGF18、MYCN、NFATC1、NSMCE1、NUCB2、SAT1、SLC7A10、SPPL2A、STOM、TIAM2、UST、HBZ、及びZCCHC12のうちのいずれか1つ以上を含む場合、前記PTCLサブタイプがATLLとして特定される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記遺伝子発現プロファイルが、ALK、CACNA2D2、CCDC64、CCNA1、CCR4、DMBX1、GALNT2、GAS1、GATA3、HTRA3、IL1RAP、PCOLCE2、PFKFB3、RABGAP1L、TIAM2、TMEM158、及びZADH2のうちのいずれか1つ以上を含む場合、前記PTCLサブタイプがALK+ ALCLとして特定される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記遺伝子発現プロファイルが、CASP2、EZH2、FLJ37453、IFI30、IFNG、LAGE3、LAP3、NR1H3、PLA2G7、SLAMF7、SLC31A2、TCN2、TMEM176B、WARS、TBX21、CXCR3、GATA3及びCCR4のうちのいずれか1つ以上を含む場合、前記PTCLサブタイプがPTCL-NOSとして特定される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記試料が、前記対象からの生検標本である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記試料が、ホルマリン固定パラフィン包埋組織を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記試料が、新鮮な凍結組織を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記対象に有効量のサブタイプ特異的治療を提供することを更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記サブタイプ特異的治療が、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、抗葉酸剤、アキル化剤、プロテソーム阻害剤、抗体-薬物コンジュゲート、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)阻害剤、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)3阻害剤、STAT5阻害剤、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤、肝細胞成長因子(HGF)阻害剤、cMET阻害剤、血小板由来成長因子受容体アルファ(PDGFRα)阻害剤、血小板由来成長因子受容体ベータ(PDGFRβ)阻害剤、ラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)経路阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、低メチル化剤、抗分化抗原群52(CD52)抗体、免疫調整薬、抗誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)抗体、CCケモカイン受容体4(CCR4)阻害剤、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤、B細胞リンパ腫2阻害剤、抗インターロイキン2受容体アルファ鎖(CD25)抗体、カルシニューリン阻害剤、Notchシグナル伝達阻害剤、脾臓チロシンキナーゼ(SYK)阻害剤、二重特異性抗体、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞、又はこれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記HDAC阻害剤が、ロミデプシン、ベリノスタット、パノビノスタット、又はこれらの組み合わせを含み、
前記抗葉酸剤が、プララトレキサートを含み、
前記アキル化剤が、ベンダムスチンを含み、
プロテオソーム阻害剤が、ボルテゾミブを含み、
前記抗体-薬物コンジュゲートが、ブレンツキシマブベドチンを含み、
前記PI3K阻害剤が、デュベリシブ、テナリシブ、又はこれらの組み合わせを含み、
前記JAK阻害剤が、ルキソリチニブを含み、
前記ALK阻害剤が、クリゾチニブを含み、
前記mTOR経路阻害剤が、エベロリムスを含み、
前記低メチル化剤が、5-アザシチジンを含み、
前記抗CD52抗体が、アレムツズマブを含み、
ImiDが、レナリドミドを含み、
前記CCR4阻害剤が、モガムリズマブを含み、
前記IDH阻害剤が、エナシデニブを含み、
BCL2阻害剤が、ベネトクラクスを含み、
前記抗CD25抗体が、カミダンルマブテシリンを含み、
前記カルシニューリン阻害剤が、シクロスポリンAを含み、
前記SYK阻害剤が、セルデュラチニブを含み、
前記二重特異性抗体が、AFM13を含み、
前記キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞が、CD30、CD7、又は両方を含み、
あるいは、これらの組み合わせである、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
PTCL-NOSの前記サブタイプ特異的治療が、ロミデプシン、ベリノスタット、ブレンツキシマブベドチン、デュベリシブ、又はこれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
AITLの前記サブタイプ特異的治療が、ロミデプシン、5-Aza、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤、カルシニューリン阻害剤、又はこれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
ALK- ALCLの前記サブタイプ特異的治療が、ブレンツキシマブベドチンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
ALK+ ALCLの前記サブタイプ特異的治療が、ALK阻害剤、血小板由来成長因子受容体ベータ(PDGFRβ)阻害剤、又はこれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
ATLLの前記サブタイプ特異的治療が、NOTCH阻害剤、肝細胞成長因子(HGF)阻害剤、cMET阻害剤、モガムリズマブ、又はこれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
ENKTLの前記サブタイプ特異的治療が、血小板由来成長因子受容体アルファ(PDGFRα)阻害剤を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
対象からの試料において末梢T細胞リンパ腫(PTCL)のサブタイプを特定するための診断キットであって、
特定のPTCLサブタイプを示す遺伝子シグネチャを表す遺伝子の1つ又は組み合わせの存在を検出するための手段の少なくとも1つと、使用説明書と
を含む、前記診断キット。
【請求項22】
PTCLサブタイプ血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陰性未分化大細胞リンパ腫(ALK- ALCL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、結節外ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫(ENKTL)、ALK陽性ALCL(ALK+ ALCL)、PTCL非特定型(PTCL-NOS)、又は不確定、ここで、不確定が、前記試料が少なくとも2つの前記PTCLサブタイプの特徴を含むことを示す、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記遺伝子シグネチャが、ACHE、ADRA2A、ARRDC4、COL4A4、EFNB2、FCAMR、GJA4、GNA14、IER3IP1、ISG15、MSR1、OLFM1、PAPLN、S1PR3、SOX8、TMEM206、TUBB2B、及びVANGL2のうちのいずれか1つ以上を含む場合、前記PTCLサブタイプがAITLを示す、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記遺伝子シグネチャが、BATF3、C9orf89、CD28、DUSP2、ICMT、LGALS1、PIK3IP1、PRKCQ、TNFRSF8、TRAT1、及びZNF101のうちのいずれか1つ以上を含む場合、前記PTCLサブタイプがALK- ALCLを示す、請求項22に記載のキット。
【請求項25】
前記遺伝子シグネチャが、ATP8B4、CD3D、CD5、CTSW、FAM102A、FASLG、GZMB、KLRC2、KLRC3、KLRC4、PRF1、SH2D1B、EBER、LMP1、及びTNFRSF25のうちのいずれか1つ以上を含む場合、前記PTCLサブタイプがENKTLを示す、請求項22に記載のキット。
【請求項26】
前記遺伝子シグネチャが、ARSG、CCNE1、DOK5、FGF18、MYCN、NFATC1、NSMCE1、NUCB2、SAT1、SLC7A10、SPPL2A、STOM、TIAM2、UST、TAX、及びZCCHC12のうちのいずれか1つ以上を含む場合、前記PTCLサブタイプがATLLを示す、請求項22に記載のキット。
【請求項27】
前記遺伝子シグネチャが、ALK、CACNA2D2、CCDC64、CCNA1、CCR4、DMBX1、GALNT2、GAS1、GATA3、HTRA3、IL1RAP、PCOLCE2、PFKFB3、RABGAP1L、TIAM2、TMEM158、及びZADH2のうちのいずれか1つ以上を含む場合、前記PTCLサブタイプがALK+ ALCLを示す、請求項22に記載のキット。
【請求項28】
前記遺伝子シグネチャが、CASP2、EZH2、FLJ37453、IFI30、IFNG、LAGE3、LAP3、NR1H3、PLA2G7、SLAMF7、SLC31A2、TCN2、TMEM176B、及びWARSのうちのいずれか1つ以上を含む場合、前記PTCLサブタイプがPTCL-NOSを示す、請求項22に記載のキット。
【請求項29】
以下を含む、試料において末梢T細胞リンパ腫(PTCL)の特定のサブタイプを特定する方法:
試料から遺伝子発現プロファイルを得ること、
前記遺伝子発現プロファイルを、特定のPTCLサブタイプに関連する遺伝子シグネチャと比較することであって、PTCLの各サブタイプが、固有の遺伝子シグネチャを含む、こと、及び
前記試料内のPTCLのサブタイプを、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陰性未分化大細胞リンパ腫(ALK- ALCL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、結節外ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫(ENKTL)、ALK陽性ALCL(ALK+ ALCL)、PTCL非特定型(PTCL-NOS)、又は不確定のいずれかとして特定することであって、ここで、不確定が、前記試料の前記遺伝子発現プロファイルが少なくとも2つの前記PTCLサブタイプの前記固有の遺伝子シグネチャからの遺伝子を含むことを示す、こと。
【請求項30】
AITLの前記遺伝子シグネチャが、ACHE、ADRA2A、ARRDC4、COL4A4、EFNB2、FCAMR、GJA4、GNA14、IER3IP1、ISG15、MSR1、OLFM1、PAPLN、S1PR3、SOX8、TMEM206、TUBB2B、及びVANGL2のうちのいずれか1つ以上を含み、
ALK- ALCLの前記遺伝子シグネチャが、BATF3、C9orf89、CD28、DUSP2、ICMT、LGALS1、PIK3IP1、PRKCQ、TNFRSF8、TRAT1、及びZNF101のうちのいずれか1つ以上を含み、
ENKTLの前記遺伝子シグネチャが、ATP8B4、CD3D、CD5、CTSW、FAM102A、FASLG、GZMB、KLRC2、KLRC3、KLRC4、PRF1、SH2D1B、EBER、LMP1、及びTNFRSF25のうちのいずれか1つ以上を含み、
ATLLの前記遺伝子シグネチャが、ARSG、CCNE1、DOK5、FGF18、MYCN、NFATC1、NSMCE1、NUCB2、SAT1、SLC7A10、SPPL2A、STOM、TIAM2、UST、TAX、及びZCCHC12のうちのいずれか1つ以上を含み、
ALK+ ALCLの前記遺伝子シグネチャが、ALK、CACNA2D2、CCDC64、CCNA1、CCR4、DMBX1、GALNT2、GAS1、GATA3、HTRA3、IL1RAP、PCOLCE2、PFKFB3、RABGAP1L、TIAM2、TMEM158、及びZADH2のうちのいずれか1つ以上を含み、
PTCL-NOSの前記遺伝子シグネチャが、CASP2、EZH2、FLJ37453、IFI30、IFNG、LAGE3、LAP3、NR1H3、PLA2G7、SLAMF7、SLC31A2、TCN2、TMEM176B、及びWARSのうちのいずれか1つ以上を含み、
あるいは、これらの組み合わせである、
請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記PTCLのサブタイプを特定することが以下を含む、請求項29又は30に記載の方法:
一連の少なくとも4つのバイナリ予測子であって、
第1のバイナリ予測子が、前記試料の前記遺伝子発現プロファイルがAITL又はPTCL-NOSの前記遺伝子シグネチャとより一致しているかどうかを決定することを含み、
第2のバイナリ予測子が、前記試料の前記遺伝子発現プロファイルがALCL又はPTCL-NOSの前記遺伝子シグネチャとより一致しているかどうかを決定することを含み、
第3のバイナリ予測子が、前記試料の前記遺伝子発現プロファイルがATLL又はPTCL-NOSの前記遺伝子シグネチャとより一致しているかどうかを決定することを含み、
第4のバイナリ予測子が、前記試料の前記遺伝子発現プロファイルがENKTL又はPTCL-NOSの前記遺伝子シグネチャとより一致しているかどうかを決定することを含む、
一連の少なくとも4つのバイナリ予測子、ならびに
前記バイナリ予測子からの結果に基づいて、標本の前記PTCLサブタイプを割り当てること。
【請求項32】
前記第1のバイナリ予測子において、前記試料の前記遺伝子発現プロファイルがAITLの前記遺伝子シグネチャとより一致している場合、ならびに
前記第2、第3、及び第4のバイナリ予測子において、前記試料の前記遺伝子発現プロファイルがPTCL-NOSの前記遺伝子シグネチャとより一致している場合
に、前記PTCLサブタイプがAITLとして特定される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記第2のバイナリ予測子において、前記試料の前記遺伝子発現プロファイルがALCLの前記遺伝子シグネチャとより一致している場合、ならびに
前記第1、第3、及び第4のバイナリ予測子において、前記試料の前記遺伝子発現プロファイルがPTCL-NOSの前記遺伝子シグネチャとより一致している場合
に、前記PTCLサブタイプがALCLとして特定される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
以下を更に含む、請求項33に記載の方法:
前記試料の前記遺伝子発現プロファイルがALK+ ALCL又はALK- ALCLの前記遺伝子シグネチャとより一致しているかどうかを決定することを含む、第5のバイナリ予測子、及び
前記試料の前記遺伝子発現プロファイルがALK+ ALCLの前記遺伝子シグネチャとより一致している場合に、前記PTCLサブタイプをALK+ ALCLとして特定すること、又は
前記試料の前記遺伝子発現プロファイルがALK- ALCLの前記遺伝子シグネチャとより一致している場合に、前記PTCLサブタイプをALK- ALCLとして特定すること。
【請求項35】
前記第3のバイナリ予測子において、前記試料の前記遺伝子発現プロファイルがATLLの前記遺伝子シグネチャとより一致している場合、ならびに
前記第1、第2、及び第4のバイナリ予測子において、前記試料の前記遺伝子発現プロファイルがPTCL-NOSの前記遺伝子シグネチャとより一致している場合
に、前記PTCLサブタイプがATLLとして特定される、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記第4のバイナリ予測子において、前記試料の前記遺伝子発現プロファイルがENKTLの前記遺伝子シグネチャとより一致している場合、ならびに
前記第1、第2、及び第3のバイナリ予測子において、前記試料の前記遺伝子発現プロファイルがPTCL-NOSの前記遺伝子シグネチャとより一致している場合
に、前記PTCLサブタイプがENKTLとして特定される、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記第1、第2、第3、及び第4のバイナリ予測子において、前記試料の前記遺伝子発現プロファイルがPTCL-NOSとより一致している場合に、前記PTCLサブタイプがPTCL-NOSとして特定される、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記バイナリ予測子の少なくとも2つがPTCL-NOSとより一致していない場合に、前記PTCLサブタイプが、不確定として特定される、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
不確定として特定された試料が、追加のバイナリ予測子を受け、前記追加のバイナリ予測子が、
PTCL-NOSとより一致していなかった前記PTCLサブタイプの1つを含む第1の潜在的サブタイプと、PTCL-NOSとより一致していなかった少なくとも1つの他のPTCLサブタイプを含む第2の潜在的サブタイプと
を含み、
前記方法が、
前記試料の前記遺伝子発現プロファイルが前記第1の潜在的サブタイプ又は前記第2の潜在的サブタイプの遺伝子シグネチャとより一致しているかどうかを決定すること、及び
前記試料の前記遺伝子発現プロファイルが前記第1の潜在的サブタイプの前記遺伝子シグネチャとより一致している場合に、前記PTCLサブタイプを前記第1の潜在的サブタイプとして特定すること、又は
前記試料の前記遺伝子発現プロファイルが前記第2の潜在的サブタイプの前記遺伝子シグネチャとより一致している場合に、前記PTCLサブタイプを前記第2の潜在的サブタイプとして特定すること
を更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記PTCLサブタイプがALCLとして特定された場合に、前記方法が、
請求項34に記載の第5のバイナリ予測子を使用して、前記ALCLサブタイプをALK+ ALCL又はALK- ALCLのいずれかとして決定すること
を更に含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
PTCL-NOS症例として特定された試料が、GATA3高サブグループ及びTBX21高サブグループへと更に分離される、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
ENKTLとして特定された試料が、NK又はガンマ/デルタT細胞系統へと細分される、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
以下を含む、末梢T細胞リンパ腫を治療する方法:
対象の試料から遺伝子発現プロファイルを得ること、
前記遺伝子発現プロファイルを、特定のPTCLサブタイプに関連する遺伝子シグネチャと比較することであって、PTCLの各サブタイプが、固有の遺伝子シグネチャを含む、こと、
前記試料内のPTCLの前記サブタイプを、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陰性未分化大細胞リンパ腫(ALK- ALCL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、結節外ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫(ENKTL)、ALK陽性ALCL(ALK+ ALCL)、PTCL非特定型(PTCL-NOS)、又は不確定のいずれかとして特定することであって、ここで、不確定が、前記試料の前記遺伝子発現プロファイルが少なくとも2つの前記PTCLサブタイプの前記固有の遺伝子シグネチャからの遺伝子を含むことを示す、こと、及び
有効量の治療剤を前記対象に投与することであって、前記治療剤が、特定された前記PTCLサブタイプを治療するように構成されている、こと。
【請求項44】
前記治療剤が、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、抗葉酸剤、アキル化剤、プロテソーム阻害剤、抗体-薬物コンジュゲート、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)阻害剤、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)3阻害剤、STAT5阻害剤、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤、肝細胞成長因子(HGF)阻害剤、cMET阻害剤、血小板由来成長因子受容体アルファ(PDGFRα)阻害剤、血小板由来成長因子受容体ベータ(PDGFRβ)阻害剤、ラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)経路阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、低メチル化剤、抗分化抗原群52(CD52)抗体、免疫調整薬、抗誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)抗体、CCケモカイン受容体4(CCR4)阻害剤、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤、B細胞リンパ腫2阻害剤、抗インターロイキン2受容体アルファ鎖(CD25)抗体、カルシニューリン阻害剤、Notchシグナル伝達阻害剤、脾臓チロシンキナーゼ(SYK)阻害剤、二重特異性抗体、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞、又はこれらの組み合わせを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記HDAC阻害剤が、ロミデプシン、ベリノスタット、パノビノスタット、又はこれらの組み合わせを含み、
前記抗葉酸剤が、プララトレキサートを含み、
前記アキル化剤が、ベンダムスチンを含み、
プロテオソーム阻害剤が、ボルテゾミブを含み、
前記抗体-薬物コンジュゲートが、ブレンツキシマブベドチンを含み、
前記PI3K阻害剤が、デュベリシブ、テナリシブ、又はこれらの組み合わせを含み、
前記JAK阻害剤が、ルキソリチニブを含み、
前記ALK阻害剤が、クリゾチニブを含み、
前記mTOR経路阻害剤が、エベロリムスを含み、
前記低メチル化剤が、5-アザシチジン(5-Aza)を含み、
前記抗CD52抗体が、アレムツズマブを含み、
ImiDが、レナリドミドを含み、
前記CCR4阻害剤が、モガムリズマブを含み、
前記IDH阻害剤が、エナシデニブを含み、
BCL2阻害剤が、ベネトクラクスを含み、
前記抗CD25抗体が、カミダンルマブテシリンを含み、
前記カルシニューリン阻害剤が、シクロスポリンAを含み、
前記SYK阻害剤が、セルデュラチニブを含み、
前記二重特異性抗体が、AFM13を含み、
前記キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞が、CD30、CD7、又は両方を含み、
あるいは、これらの組み合わせである、
請求項44に記載の方法。
【請求項46】
PTCLサブタイプがPTCL-NOSとして特定されている場合、前記治療剤が、ロミデプシン、ベリノスタット、ブレンツキシマブベドチン、デュベリシブ、又はこれらの組み合わせを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記PTCLサブタイプがAITLとして特定されている場合、前記治療剤が、ロミデプシン、5-Aza、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤、カルシニューリン阻害剤、又はこれらの組み合わせを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記PTCLサブタイプがATLLとして特定されている場合、前記治療剤が、NOTCH阻害剤、肝細胞成長因子(HGF)阻害剤、cMET阻害剤、モガムリズマブを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
前記PTCLサブタイプがALK- ALCLとして特定されている場合、前記治療剤がブレンツキシマブベドチンを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項50】
前記PTCLサブタイプがALK+ ALCLとして特定されている場合、前記治療剤が、ALK阻害剤、血小板由来成長因子受容体ベータ(PDGFRβ)阻害剤、又はこれらの組み合わせを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項51】
前記PTCLサブタイプがENKTLとして特定されている場合、前記治療剤が血小板由来成長因子受容体アルファ(PDGFRα)阻害剤を含む、請求項43に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年2月8日に出願された米国特許仮出願第63/307,905号からの優先権の利益を主張する国際出願であり、その内容全体は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に記載され特許請求される本発明の日付時点での当業者に既知の最新技術をより完全に記載するために、これらの刊行物の開示は、参照によりその全体が本出願に組み込まれる。
【0003】
本特許開示は、著作権保護の対象となる、材料を含む。著作権所有者は、米国特許商標局の特許ファイル又は記録に表れているような特許文書又は特許開示をいかなる者がファクシミリ複製することにも異議はないが、それ以外では、あらゆる全ての著作権を留保する。
【0004】
政府の権益
本発明は、National Institutes of Health(NIH)によって授与されたU01 CA157581及びUH3 CA206127に基づく政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0005】
技術分野
本明細書に開示される主題は、末梢T細胞リンパ腫(peripheral T-cell lymphoma、PTCL)の診断、予後、及び/又は治療のための方法に関する。加えて、本明細書に開示される主題は、PTCLの診断、予後、及び/又は治療のためのキット及び試薬に関する。更に、本明細書に開示される主題は、ソフトウェア及び分析システムを使用した、PTCLの診断、予後、及び/又は治療のためのバイオマーカーのセットの特定方法に関する。
【背景技術】
【0006】
序論
T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞系統に由来する悪性腫瘍は、西洋諸国において全ての非ホジキンリンパ腫(NHL)の10%を構成し、アジアにおいて、より優勢である。末梢T細胞リンパ腫(PTCL)は、全ての非ホジキンリンパ腫(NHL)の最大20%を構成する異種がんである。World Health Organization(WHO)の分類は、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)を含む末梢T細胞リンパ腫(PTCL)のいくつかの特徴的なサブタイプ、及び鼻型の結節外NK/T細胞リンパ腫(ENKTL)を含む大部分がNK細胞に由来するエンティティを認識している。ほとんどが結節外腫瘍である、更に稀なPTCLが存在する。大部分のサブタイプについての多様な形態及び決定的な診断マーカーの欠如は、これらの疾患の診断及び分類を困難なものにし、それらの調査を妨げている。現在の免疫表現型マーカー及び分子マーカーでは、PTCL症例の約30%~50%が分類不可能であり、PTCL非特定型(PTCL not otherwise specified、PTCL-NOS)として分類される。いくつかの再発性遺伝子異常がPTCLにおいて報告されているが、ALK(1)ALCLにおけるt(2;5)(p23;q35)を除き、特定のPTCLサブタイプの診断となる特異的な遺伝子異常はない。PTCLを有する患者は、一般に、現在の標準治療では予後不良であり、PTCL患者の転帰の改善は、過去20年間で達成されていない。したがって、PTCL及びそのサブタイプの正確な診断は、各個々の患者のための最も適切かつ有効な治療の選択を確実にするために必要とされる。特に、日常的な臨床適用のための商業的アッセイの作成は、PTCL患者の診断、治療、及び転帰を改善する。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様では、本発明は、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)のサブタイプを識別する方法を含む。実施形態では、本方法は、対象からの試料を核酸単離に供することと、試料から遺伝子発現プロファイルを得ることと、遺伝子発現プロファイル内の特定の遺伝子の存在に基づいて、PTCLのサブタイプを特定することと、を含む。特定の実施形態では、PTCLサブタイプ血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陰性未分化大細胞リンパ腫(ALK- ALCL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、結節外ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫(ENKTL)、ALK陽性ALCL(ALK+ ALCL)、PTCL非特定型(PTCL-NOS)、又は不確定(indeterminate)、ここで、不確定は、試料が少なくとも2つのPTCLサブタイプの特徴を含むことを示す。
【0008】
遺伝子発現プロファイルが、ACHE、ADRA2A、ARRDC4、COL4A4、EFNB2、FCAMR、GJA4、GNA14、IER3IP1、ISG15、MSR1、OLFM1、PAPLN、S1PR3、SOX8、TMEM206、TUBB2B、及びVANGL2のうちのいずれか1つ以上を含む場合、PTCLサブタイプがAITLとして特定され得る。遺伝子発現プロファイルが、BATF3、C9orf89、CD28、DUSP2、ICMT、LGALS1、PIK3IP1、PRKCQ、TNFRSF8、TRAT1、及びZNF101のうちのいずれか1つ以上を含む場合、PTCLサブタイプがALK- ALCLとして特定され得る。実施形態では、遺伝子発現プロファイルが、ATP8B4、CD3D、CD5、CTSW、FAM102A、FASLG、GZMB、KLRC2、KLRC3、KLRC4、PRF1、SH2D1B、EBER、LMP1、及びTNFRSF25のうちのいずれか1つ以上を含む場合、PTCLサブタイプがENKTLとして特定され得る。遺伝子発現プロファイルが、ARSG、CCNE1、DOK5、FGF18、MYCN、NFATC1、NSMCE1、NUCB2、SAT1、SLC7A10、SPPL2A、STOM、TIAM2、UST、HBZ、及びZCCHC12のうちのいずれか1つ以上を含む場合、PTCLサブタイプがATLLとして特定され得る。
【0009】
遺伝子発現プロファイルが、ALK、CACNA2D2、CCDC64、CCNA1、CCR4、DMBX1、GALNT2、GAS1、GATA3、HTRA3、IL1RAP、PCOLCE2、PFKFB3、RABGAP1L、TIAM2、TMEM158、及びZADH2のうちのいずれか1つ以上を含む場合、PTCLサブタイプがALK+ ALCLとして特定される、請求項2に記載の方法。特定の実施形態では、遺伝子発現プロファイルが、CASP2、EZH2、FLJ37453、IFI30、IFNG、LAGE3、LAP3、NR1H3、PLA2G7、SLAMF7、SLC31A2、TCN2、TMEM176B、WARS、TBX21、CXCR3、GATA3及びCCR4のうちのいずれか1つ以上を含む場合、PTCLサブタイプがPTCL-NOSとして特定される。
【0010】
実施形態では、試料は、対象からの生検標本である。試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋組織を含み得る。特定の実施形態では、試料は、新鮮な凍結組織を含む。
【0011】
本方法は、対象に有効量のサブタイプ特異的治療を提供することを更に含み得る。実施形態では、サブタイプ特異的治療は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、抗葉酸剤、アキル化剤、プロテソーム阻害剤、抗体-薬物コンジュゲート、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)阻害剤、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)3阻害剤、STAT5阻害剤、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤、肝細胞成長因子(HGF)阻害剤、cMET阻害剤、血小板由来成長因子受容体アルファ(PDGFRα)阻害剤、血小板由来成長因子受容体ベータ(PDGFRβ)阻害剤、ラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)経路阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、低メチル化剤、抗分化抗原群52(CD52)抗体、免疫調整薬、抗誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)抗体、CCケモカイン受容体4(CCR4)阻害剤、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤、B細胞リンパ腫2阻害剤、抗インターロイキン2受容体アルファ鎖(CD25)抗体、カルシニューリン阻害剤、Notchシグナル伝達阻害剤、脾臓チロシンキナーゼ(SYK)阻害剤、二重特異性抗体、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞、又はこれらの組み合わせを含む。実施形態では、HDAC阻害剤は、ロミデプシン、ベリノスタット、パノビノスタット、又はこれらの組み合わせを含み、抗葉酸剤は、プララトレキサートを含み、アキル化剤は、ベンダムスチンを含み、プロテオソーム阻害剤は、ボルテゾミブを含み、抗体-薬物コンジュゲートは、ブレンツキシマブベドチンを含み、PI3K阻害剤は、デュベリシブ、テナリシブ、又はこれらの組み合わせを含み、JAK阻害剤は、ルキソリチニブを含み、ALK阻害剤は、クリゾチニブを含み、mTOR経路阻害剤は、エベロリムスを含み、低メチル化剤は、5-アザシチジンを含み、抗CD52抗体は、アレムツズマブを含み、ImiDは、レナリドミドを含み、CCR4阻害剤は、モガムリズマブを含み、IDH阻害剤は、エナシデニブを含み、BCL2阻害剤は、ベネトクラクスを含み、抗CD25抗体は、カミダンルマブテシリンを含み、カルシニューリン阻害剤は、シクロスポリンAを含み、SYK阻害剤は、セルデュラチニブを含み、二重特異性抗体は、AFM13を含み、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞が、CD30、CD7、又は両方を含み、あるいは、これらの組み合わせ。
【0012】
PTCL-NOSのサブタイプ特異的治療は、ロミデプシン、ベリノスタット、ブレンツキシマブベドチン、デュベリシブ、又はこれらの組み合わせを含み得る。AITLのサブタイプ特異的治療は、ロミデプシン、5-Aza、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤、カルシニューリン阻害剤、又はこれらの組み合わせを含み得る。ALK- ALCLのサブタイプ特異的治療は、ブレンツキシマブベドチンを含み得る。ALK+ ALCLのサブタイプ特異的治療は、ALK阻害剤、血小板由来成長因子受容体ベータ(PDGFRβ)阻害剤、又はこれらの組み合わせを含み得る。ATLLのサブタイプ特異的治療は、NOTCH阻害剤、肝細胞成長因子(HGF)阻害剤、cMET阻害剤、モガムリズマブ、又はこれらの組み合わせを含み得る。ENKTLのサブタイプ特異的治療は、血小板由来成長因子受容体アルファ(PDGFRα)阻害剤を含み得る。
【0013】
本発明の別の態様は、対象からの試料において末梢T細胞リンパ腫(PTCL)のサブタイプを特定するための診断キットであって、キットが、特定のPTCLサブタイプを示す遺伝子シグネチャを表す遺伝子の1つ又は組み合わせの存在を検出するための手段の少なくとも1つと、使用説明書と、を含む、診断キットを含む。実施形態における、PTCLサブタイプ血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陰性未分化大細胞リンパ腫(ALK- ALCL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、結節外ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫(ENKTL)、ALK陽性ALCL(ALK+ ALCL)、PTCL非特定型(PTCL-NOS)、又は不確定、ここで、不確定は、試料が少なくとも2つのPTCLサブタイプの特徴を含むことを示す。遺伝子シグネチャが、ACHE、ADRA2A、ARRDC4、COL4A4、EFNB2、FCAMR、GJA4、GNA14、IER3IP1、ISG15、MSR1、OLFM1、PAPLN、S1PR3、SOX8、TMEM206、TUBB2B、及びVANGL2のうちのいずれか1つ以上を含む場合、PTCLサブタイプがAITLを示し得る。遺伝子シグネチャが、BATF3、C9orf89、CD28、DUSP2、ICMT、LGALS1、PIK3IP1、PRKCQ、TNFRSF8、TRAT1、及びZNF101のうちのいずれか1つ以上を含む場合、PTCLサブタイプがALK- ALCLを示し得る。実施形態では、遺伝子シグネチャが、ATP8B4、CD3D、CD5、CTSW、FAM102A、FASLG、GZMB、KLRC2、KLRC3、KLRC4、PRF1、SH2D1B、EBER、LMP1、及びTNFRSF25のうちのいずれか1つ以上を含む場合、PTCLサブタイプがENKTLを示し得る。遺伝子シグネチャが、ARSG、CCNE1、DOK5、FGF18、MYCN、NFATC1、NSMCE1、NUCB2、SAT1、SLC7A10、SPPL2A、STOM、TIAM2、UST、TAX、及びZCCHC12のうちのいずれか1つ以上を含む場合、PTCLサブタイプがATLLを示し得る。遺伝子シグネチャが、ALK、CACNA2D2、CCDC64、CCNA1、CCR4、DMBX1、GALNT2、GAS1、GATA3、HTRA3、IL1RAP、PCOLCE2、PFKFB3、RABGAP1L、TIAM2、TMEM158、及びZADH2のうちのいずれか1つ以上を含む場合、PTCLサブタイプがALK+ ALCLを示し得る。遺伝子シグネチャが、CASP2、EZH2、FLJ37453、IFI30、IFNG、LAGE3、LAP3、NR1H3、PLA2G7、SLAMF7、SLC31A2、TCN2、TMEM176B、及びWARSのうちのいずれか1つ以上を含む場合、PTCLサブタイプがPTCL-NOSを示し得る。
【0014】
別の態様は、以下を含む、試料において末梢T細胞リンパ腫(PTCL)の特定のサブタイプを特定する方法を含む:試料から遺伝子発現プロファイルを得ること、遺伝子発現プロファイルを、特定のPTCLサブタイプに関連する遺伝子シグネチャと比較することであって、PTCLの各サブタイプが、固有の遺伝子シグネチャを含む、こと、及び、試料内のPTCLのサブタイプを、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陰性未分化大細胞リンパ腫(ALK- ALCL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、結節外ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫(ENKTL)、ALK陽性ALCL(ALK+ ALCL)、PTCL非特定型(PTCL-NOS)、又は不確定のいずれかとして特定することであって、ここで、不確定が、試料の遺伝子発現プロファイルが少なくとも2つのPTCLサブタイプの固有の遺伝子シグネチャからの遺伝子を含むことを示す、こと。
【0015】
実施形態では、AITLの遺伝子シグネチャは、ACHE、ADRA2A、ARRDC4、COL4A4、EFNB2、FCAMR、GJA4、GNA14、IER3IP1、ISG15、MSR1、OLFM1、PAPLN、S1PR3、SOX8、TMEM206、TUBB2B、及びVANGL2のうちのいずれか1つ以上を含み、ALK- ALCLの遺伝子シグネチャは、BATF3、C9orf89、CD28、DUSP2、ICMT、LGALS1、PIK3IP1、PRKCQ、TNFRSF8、TRAT1、及びZNF101のうちのいずれか1つ以上を含み、ENKTLの遺伝子シグネチャが、ATP8B4、CD3D、CD5、CTSW、FAM102A、FASLG、GZMB、KLRC2、KLRC3、KLRC4、PRF1、SH2D1B、EBER、LMP1、及びTNFRSF25のうちのいずれか1つ以上を含み、ATLLの遺伝子シグネチャが、ARSG、CCNE1、DOK5、FGF18、MYCN、NFATC1、NSMCE1、NUCB2、SAT1、SLC7A10、SPPL2A、STOM、TIAM2、UST、TAX、及びZCCHC12のうちのいずれか1つ以上を含み、ALK+ ALCLの遺伝子シグネチャが、ALK、CACNA2D2、CCDC64、CCNA1、CCR4、DMBX1、GALNT2、GAS1、GATA3、HTRA3、IL1RAP、PCOLCE2、PFKFB3、RABGAP1L、TIAM2、TMEM158、及びZADH2のうちのいずれか1つ以上を含み、PTCL-NOSの遺伝子シグネチャが、CASP2、EZH2、FLJ37453、IFI30、IFNG、LAGE3、LAP3、NR1H3、PLA2G7、SLAMF7、SLC31A2、TCN2、TMEM176B、及びWARSのうちのいずれか1つ以上を含み、あるいは、これらの組み合わせ。
【0016】
実施形態では、PTCLのサブタイプを特定することは、以下を含む:
一連の少なくとも4つのバイナリ予測子であって、
第1のバイナリ予測子が、試料の遺伝子発現プロファイルがAITL又はPTCL-NOSの遺伝子シグネチャとより一致しているかどうかを決定することを含み、
第2のバイナリ予測子が、試料の遺伝子発現プロファイルがALCL又はPTCL-NOSの遺伝子シグネチャとより一致しているかどうかを決定することを含み、
第3のバイナリ予測子が、試料の遺伝子発現プロファイルがATLL又はPTCL-NOSの遺伝子シグネチャとより一致しているかどうかを決定することを含み、
第4のバイナリ予測子が、試料の遺伝子発現プロファイルがENKTL又はPTCL-NOSの遺伝子シグネチャとより一致しているかどうかを決定することを含む、
一連の少なくとも4つのバイナリ予測子、ならびに
バイナリ予測子からの結果に基づいて、標本のPTCLサブタイプを割り当てることと。第1のバイナリ予測子において、試料の遺伝子発現プロファイルがAITLの遺伝子シグネチャとより一致している場合、ならびに第2、第3、及び第4のバイナリ予測子において、試料の遺伝子発現プロファイルがPTCL-NOSの遺伝子シグネチャとより一致している場合に、PTCLサブタイプはAITLとして特定され得る。第2のバイナリ予測子において、試料の遺伝子発現プロファイルがALCLの遺伝子シグネチャとより一致している場合、ならびに第1、第3、及び第4のバイナリ予測子において、試料の遺伝子発現プロファイルがPTCL-NOSの遺伝子シグネチャとより一致している場合に、PTCLサブタイプはALCLとして特定され得る。一実施形態では、本方法は以下を更に含む:
試料の遺伝子発現プロファイルがALK+ ALCL又はALK- ALCLの遺伝子シグネチャとより一致しているかどうかを決定することを含む、第5のバイナリ予測子、及び
試料の遺伝子発現プロファイルがALK+ ALCLの遺伝子シグネチャとより一致している場合に、PTCLサブタイプをALK+ ALCLとして特定すること、又は
試料の遺伝子発現プロファイルがALK- ALCLの遺伝子シグネチャとより一致している場合に、PTCLサブタイプをALK- ALCLとして特定すること。
【0017】
一実施形態では、第3のバイナリ予測子において、試料の遺伝子発現プロファイルがATLLの遺伝子シグネチャとより一致している場合、ならびに第1、第2、及び第4のバイナリ予測子において、試料の遺伝子発現プロファイルがPTCL-NOSの遺伝子シグネチャとより一致している場合に、PTCLサブタイプはATLLとして特定される。第4のバイナリ予測子において、試料の遺伝子発現プロファイルがENKTLの遺伝子シグネチャとより一致している場合、ならびに第1、第2、及び第3のバイナリ予測子において、試料の遺伝子発現プロファイルがPTCL-NOSの遺伝子シグネチャとより一致している場合に、PTCLサブタイプはENKTLとして特定され得る。第1、第2、第3、及び第4のバイナリ予測子において、試料の遺伝子発現プロファイルがPTCL-NOSとより一致している場合に、PTCLサブタイプはPTCL-NOSとして特定され得る。
【0018】
バイナリ予測子の少なくとも2つが、PTCL-NOSとより一致していない場合に、PTCLサブタイプは不確定として特定され得る。一実施形態では、不確定として特定された試料は、追加のバイナリ予測子を受け、追加のバイナリ予測子は、PTCL-NOSとより一致していなかったPTCLサブタイプの1つを含む第1の潜在的サブタイプと、PTCL-NOSとより一致していなかった少なくとも1つの他のPTCLサブタイプを含む第2の潜在的サブタイプと、を含む。そのような実施形態では、本方法は、試料の遺伝子発現プロファイルが、第1の潜在的サブタイプ又は第2の潜在的サブタイプの遺伝子発現プロファイルとより一致しているかどうかを決定すること、及び試料の遺伝子発現プロファイルが、第1の潜在的サブタイプの遺伝子シグネチャとより一致している場合に、PTCLサブタイプを第1の潜在的サブタイプとして特定すること、又は試料の遺伝子発現プロファイルが、第2の潜在的サブタイプの遺伝子シグネチャとより一致している場合に、PTCLサブタイプを第2の潜在的サブタイプとして特定すること、を更に含み得る。PTCLサブタイプがALCLとして特定された場合に、本方法は、本明細書に開示される第5のバイナリ予測子を使用して、ALCLサブタイプをALK+ ALCL又はALK- ALCLのいずれかとして決定することを更に含み得る。
【0019】
実施形態では、PTCL-NOS症例として特定された試料は、GATA3高サブグループ及びTBX21高サブグループへと更に分離される。ENKTLとして特定された試料が、NK又はガンマ/デルタT細胞系統へと細分され得る。
【0020】
別の態様は、末梢T細胞リンパ腫を治療する方法を含む。実施形態では、本方法は、対象の試料から遺伝子発現プロファイルを得ることと、遺伝子発現プロファイルを、特定のPTCLサブタイプに関連する遺伝子シグネチャと比較することであって、PTCLの各サブタイプが、固有の遺伝子シグネチャを含む、ことと、試料内のPTCLのサブタイプを、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陰性未分化大細胞リンパ腫(ALK- ALCL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、結節外ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫(ENKTL)、ALK陽性ALCL(ALK+ ALCL)、PTCL非特定型(PTCL-NOS)、又は不確定のいずれかとして特定することであって、ここで、不確定が、試料の遺伝子発現プロファイルが少なくとも2つのPTCLサブタイプの固有の遺伝子シグネチャからの遺伝子を含むことを示す、ことと、有効量の治療剤を対象に投与することであって、治療剤が、特定されたPTCLサブタイプを治療するように構成されている、ことと、を含む。実施形態では、治療剤は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、抗葉酸剤、アキル化剤、プロテソーム阻害剤、抗体-薬物コンジュゲート、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)阻害剤、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)3阻害剤、STAT5阻害剤、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤、肝細胞成長因子(HGF)阻害剤、cMET阻害剤、血小板由来成長因子受容体アルファ(PDGFRα)阻害剤、血小板由来成長因子受容体ベータ(PDGFRβ)阻害剤、ラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)経路阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、低メチル化剤、抗分化抗原群52(CD52)抗体、免疫調整薬、抗誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)抗体、CCケモカイン受容体4(CCR4)阻害剤、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤、B細胞リンパ腫2阻害剤、抗インターロイキン2受容体アルファ鎖(CD25)抗体、カルシニューリン阻害剤、Notchシグナル伝達阻害剤、脾臓チロシンキナーゼ(SYK)阻害剤、二重特異性抗体、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞、又はこれらの組み合わせを含む。
【0021】
一実施形態では、HDAC阻害剤は、ロミデプシン、ベリノスタット、パノビノスタット、又はこれらの組み合わせを含み、抗葉酸剤は、プララトレキサートを含み、アキル化剤は、ベンダムスチンを含み、プロテオソーム阻害剤は、ボルテゾミブを含み、抗体-薬物コンジュゲートは、ブレンツキシマブベドチンを含み、PI3K阻害剤は、デュベリシブ、テナリシブ、又はこれらの組み合わせを含み、JAK阻害剤は、ルキソリチニブを含み、ALK阻害剤は、クリゾチニブを含み、mTOR経路阻害剤は、エベロリムスを含み、低メチル化剤は、5-アザシチジン(5-Aza)を含み、抗CD52抗体は、アレムツズマブを含み、ImiDは、レナリドミドを含み、CCR4阻害剤は、モガムリズマブを含み、IDH阻害剤は、エナシデニブを含み、BCL2阻害剤は、ベネトクラクスを含み、抗CD25抗体は、カミダンルマブテシリンを含み、カルシニューリン阻害剤は、シクロスポリンAを含み、SYK阻害剤は、セルデュラチニブを含み、二重特異性抗体は、AFM13を含み、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞は、CD30、CD7、又は両方を含み、あるいは、これらの組み合わせ。
【0022】
実施形態では、PTCLサブタイプがPTCL-NOSとして特定されている場合、治療剤は、ロミデプシン、ベリノスタット、ブレンツキシマブベドチン、デュベリシブ、又はこれらの組み合わせを含む。PTCLサブタイプがAITLとして特定されている場合、治療剤は、ロミデプシン、5-Aza、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤、カルシニューリン阻害剤、又はこれらの組み合わせを含み得る。PTCLサブタイプがATLLとして特定されている場合、治療剤は、NOTCH阻害剤、肝細胞成長因子(HGF)阻害剤、cMET阻害剤、モガムリズマブを含み得る。実施形態では、PTCLサブタイプがALK- ALCLとして特定されている場合、治療剤は、ブレンツキシマブベドチンを含む。PTCLサブタイプがALK+ ALCLとして特定されている場合、治療剤は、ALK阻害剤、血小板由来成長因子受容体ベータ(PDGFRβ)阻害剤、又はこれらの組み合わせを含み得る。一実施形態では、PTCLサブタイプがENKTLとして特定されている場合、治療剤は、血小板由来成長因子受容体アルファ(PDGFRα)阻害剤を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
特許又は出願ファイルは、カラーで仕上げられた少なくとも1つの図面を含有する。カラー図面を伴うこの特許又は特許出願刊行物のコピーは、申請及び必要な料金の支払い後、特許庁によって提供される。本明細書に記載される図面は、Amador C,Bouska A,Wright G,et al.Gene Expression Signatures for the Accurate Diagnosis of Peripheral T-Cell Lymphoma Entities in the Routine Clinical Practice.J Clin Oncol.2022;40(36):4261-4275.doi:10.1200/JCO.21.02707に対応し、その全体が参照により組み込まれる。
【0024】
本発明の特定の特徴は、特に添付の特許請求の範囲に記載されている。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が使用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、及び添付の図面を参照することによって得られるであろう。
図1】PTCLサブグループの分子診断シグネチャを示す。複合共変量予測モデルを使用して、主要なPTCLエンティティについて固有の遺伝子発現シグネチャを特定した(詳細については、参考文献番号10、11を参照されたい)。各々の列は、PTCL患者を表し、各々の行は、分類子の固有の遺伝子を表す。
図2】PTCL-NOS内の2つの主要な分子サブグループを示す。(A)GATA3及びTBX21サブタイプについてのベイズ予測子を導出した。分類精度のために、一つ抜き交差検証を使用した。症例の約18%は、明確に定義されなかった(UC、分類不能)。(B)GATA3及びTBX21サブグループの全生存期間(OS)分析は、臨床転帰において有意差を示した(P=.01)(参考文献番号10)。
図3】モデルにおけるエラー率対遺伝子数を示す。Y軸は、500個のシミュレーションされたデータセットの平均相互検証エラー率を示し、利用可能な候補遺伝子の数を示すプラットフォームの変化の影響を近似するために、X軸の関数として、ノイズが加えられている。それぞれのカラーの線は、異なる診断的区別を表す(図の凡例を参照されたい)。左から右への曲線の急な低下が存在し、15~20個の遺伝子で各曲線が平坦化している。これらの結果は、この数の遺伝子が、各々の診断的区別を行うのに十分であり、追加の遺伝子がエラー率を更に減少させないことを実証する。
図4】独立した検証コホートにおけるLymph2Cxアッセイの性能を示す。(A)Lymph2Cxアッセイは、67名の患者の遺伝子発現ヒートマップの形態で示される。5個のハウスキーピング遺伝子を含む、モデルに寄与する20個の遺伝子を左側に示す。アッセイについて起始細胞の割り当てを示し、ゴールドスタンダード法と比較し、新鮮な凍結組織からの遺伝子発現に対して以前に公開されているアルゴリズム及び3つの免疫組織化学に基づくアルゴリズム20、23を使用する。(B)2つの独立した研究所(MoCha、CLC)からの検証コホートにおけるLymph2Cxスコアの比較。水平及び垂直の薄い灰色の線は、GCB、未分類、及びABCサブタイプの間の閾値を表す。R2は、0.996であり、最良適合線の傾きは、1.015である。MoCha、Molecular Characterization Laboratory,Frederick National Laboratory for Cancer Research(Frederick,MD)、CLC、Centre for Lymphoid Cancer,BC Cancer Agency(Vancouver,BC)。
図5】(A)DLBCLにおける667個の診断及び予後遺伝子についてのNanostringデータとAffymetrixデータとの間の相関の分布を示すヒストグラム。(B)「学術的」PTCLシグネチャ中に存在する遺伝子。40個の遺伝子の大部分は、十分に相関しており、相関中央値は、0.76である。
図6】カットポイントを含むサブタイプの線形予測子を開発するために、検証セットとは独立したFF試料からのU133アレイデータを使用したアッセイ開発を示す。訓練セットでは、複製物試料を使用して、遺伝子重み及び加法的シフトを調整して、プラットフォームの差を説明し、FFPE標本/NanoString分析と可能な限り近似してFF予測子スコアを模倣し、検証のためのロック態様を確立する。本提案に従う第II相試験も示される。
図7】変動性(Y軸)対シグナル強度(X軸)を示す。それぞれのカラーの線は、異なるLymphoma/Leukemia Molecular Profiling Project(LLMPP)施設からのデータを表す。線の重複は、施設間の優れた再現性を示し、最小シグナル強度で、ある程度の変動性を有する。
図8】ALCL及びPTCL-NOSの下位分類のための例示的な免疫組織化学的染色を示す。ALCLは、CD30+又はALK+として下位分類することができ、GATA3及びTBX21は、PTCL-NOSの2つのサブグループを表す。
図9】DNA/RNA単離のための異なるプロトコルを使用して様々な時間に収集されたFFPE組織からのRNA収量のヒストグラム比較を提供する。STORMプロトコル、修正STORMプロトコル、又はQuiagenプロトコルのいずれかを使用して、RNA単離を行った。より古いブロックからのRNAの回収は概して、より低かったが、これは、より新しいキットを使用しても差がなかった。
図10A】様々なプロトコルを使用してFFPE及び新鮮な凍結試料から単離されたRNAの代表的なゲル画像を含む。示された年に、組織を収集した。
図10B】様々な年数の試料から、より大きなRNA分子(長さが200塩基対を超える)を単離する際の異なるプロトコルの有効性を比較するヒストグラムを提供する。
図11図1と比較して、診断シグネチャリストに追加された追加の遺伝子を伴う、精緻化された遺伝子シグネチャを示す(参考文献10から修正されている)。
図12】PTCL分子分類子を提供する。図12Aは、PTCLの分子診断の研究設計及び概略図を提供する。PTCL下位分類のための分子分類子は、訓練コホートとして指定された新鮮な凍結(FF)組織(n=109)を用いたPTCLからのHG-U133plus2.0アレイデータを使用して導出された。この分子分類子は、ハウスキーピング遺伝子及びT細胞生物学に関与する他の遺伝子を含む442個の別個の遺伝子を有していた。このトランスクリプトームシグネチャを、対応するマッチしたFFPE試料を使用するnCounter(登録商標)分析(NanoString,Inc)のために考慮した。FFデータとFFPEデータとの間で高い相関を示した転写産物を選択した。下位分類のための最小数の転写産物を有するように、かつNanoStringプラットフォームを用いてFF予測子スコアを模倣するように、アルゴリズムを更に精緻化した(詳細についてはM&Mを参照されたい)。最終診断モデルは、153個の転写産物(99個の診断、5個のウイルス及び16個のハウスキーピング、並びに33個のT細胞生物学関連)をもたらし、病理学及び他の補助的方法によって厳密に特性決定されたPTCL症例の独立コホートにおいて検証された。分類アルゴリズムは、図17に詳述されるように、1つのエンティティを別のエンティティから区別するための一連のいくつかのバイナリ予測子に基づいていた。図12Bは、訓練コホート及び検証コホートにおける最終的なnCounter(登録商標)分類子のヒートマップを提供する。特定のPTCLサブタイプにおいて一般的に発現されるEBV及びHTLV-1ウイルス転写産物が示され、正規化のために使用され、PTCLサブタイプ間で変動しないハウスキーピング遺伝子が、比較のために示される。図12Cは、105個の訓練コホート症例のうち89個及び140個の検証症例のうち66個についての全生存期間のカプラン・マイヤー曲線を、利用可能な転帰データとともに示す。図12Dは、訓練コホートに含まれるPTCLサブタイプのOSのカプラン・マイヤー曲線を示す(HG-U133plus2.0アレイによる分子分類)。図12Eは、検証コホートに含まれるPTCLエンティティのOSのカプラン・マイヤー曲線を示す(病理分類)。
図13】AITL分類を示す。図13Aは、訓練及び検証AITLにおける5個のTFH関連遺伝子の平均発現に対するAITL診断スコアの散布図を提供する。図13Bは、AITLにおけるEBER及びEBNA1転写産物発現の箱ひげ図を提供する(訓練/検証コホート)。図13Cは、CD20 mRNA発現による組み合わせコホートにおけるAITLのOSのカプラン・マイヤー曲線を提供する。実線は、分子分類によってAITLとして分類された症例である(p=0.02)。点線は、病理によるAITLである(p=0.06)。代表的な低発現AITL症例及び高発現AITL症例におけるCD20発現(400倍)。図13Dは、利用可能な配列決定データを有する症例の変異状態を示す。AITL-PTCL-NOS中間であった症例、又はNanoString分類子でAITLとして分類されなかった症例は、アスタリスクで示される。図13Eは、nCounter(登録商標)でプロファイリングされたAITL及びPTCL-NOS症例におけるAITL分類診断スコアのバイオリンプロット及びドットプロットを提供する。AITLとPTCL-NOSとの間で不一致であった症例は、赤色に着色され、中間AITL症例は、灰色に着色されている。図13Fは、検証コホートにおけるnCounter(登録商標)分類による不一致を示すAITLのヒートマップを提供する。一致したケースの平均シグネチャが示されている。中間とラベル付けされた症例については、コンセンサス病理検査によってAITLと診断された症例が左側にあり、PTCL-NOSと診断された中間症例が右側にある。nCounter(登録商標)によってAITLとして分類された2つのPTCL-NOS。図G~Iは、nCounter(登録商標)プラットフォームによってAITLとして分類されたPTCL-NOS症例においてみられるBCL6及びICOS(400倍;G、H&I;B、BCL-6及びC、ICOS)の局所発現の一例を提供する。
図14】ALCL分類を示す。図14Aは、ALCL分類スコア対PTCL-NOSのバイオリンプロット及び散布図を提供する。図14Bは、nCounter(登録商標)プラットフォームでのALK陽性ALCL対ALK陰性ALCLを示す。ALCLとPTCL-NOSとの間、又はALK陰性とALK陽性との間で不一致であった症例は、赤色に着色されている。図14Cは、検証コホートにおけるnCounter(登録商標)分類による不一致を示すALK陰性及びALK陽性ALCL症例のヒートマップを提供する。NanoStringアッセイによってALK陽性ALCLとして分類された代表的なALK陰性ALCL症例のH及びE及びCD30及びALK免疫染色が示される(400倍)。図14Dは、NanoString分類による訓練及び検証コホートにおけるALCLのOSのカプラン・マイヤー曲線を提供する。図14Eは、ALCL及びPTCL-NOS症例におけるCD30及び細胞傷害性転写産物発現のヒートマップを提供する。不一致の症例を、赤色の線で示す。
図15】ATLL及びENKTCL分類を示す。図15Aは、nCounter(登録商標)でプロファイリングされたATLL及びPTCL-NOS症例におけるATLL分類スコアのバイオリンプロット及びドットプロットを提供する。図15Bは、検証コホートにおけるnCounter(登録商標)分類によって不一致のATLL症例のヒートマップを提供する。PTCL-NOSとして診断されたがnCounter(登録商標)によってATLLに分類された症例についてのH&E及びCD4染色(下パネル)。図15Cは、訓練及び検証ATLL症例におけるHTLV-1特異的転写産物HBZ対ATLLスコアの発現の散布図を提供する。実線の当てはめ線は、訓練データを表し、破線は、検証データを表す。図15Dは、ATLL及びPTCL-NOS検証コホートにおけるHBZ及びTAX発現のヒートマップを提供する。不一致の症例は、赤色のアスタリスクによって示される。図15Eは、qPCR対nCounter(登録商標)によって測定されたHBZ発現の散布図を提供する。図15F~Gは、nCounter(登録商標)での訓練及び検証コホートにおいてプロファイリングされたENKTCL及びPTCL-NOS症例における、ENKTCL分類スコア(F)又はEBERスコア(G)のバイオリンプロット及びドットプロットを提供する。不一致の症例は赤色である。図15Hは、訓練コホート及び検証コホートにおけるENKTCL及びPTCL-NOS症例におけるCD3ガンマ及びデルタ並びにEBV転写産物の発現のヒートマップを提供する。図15Iは、検証コホートにおける平均シグネチャと比較した、ENKTCL不一致症例における関連シグネチャの発現のヒートマップを提供する。
図16】PTCL-NOS下位分類を示す。図16Aは、nCounter(登録商標)での訓練及び検証コホートにおいてプロファイリングされたPTCL-NOS症例におけるPTCL-GATA3分類スコアのバイオリンプロット及びドットプロットを提供する。図16Bは、利用可能な配列決定データを有するPTCL-NOSコホートの変異状態を示す。図16C訓練(上)及び検証(下)症例におけるCD4、CD8、CD20、及び細胞傷害性遺伝子の発現のヒートマップを提供する。図16Dは、NanoStringによってPTCL-TBX21として分類された症例における細胞傷害性遺伝子対CD20の平均発現の散布図を提供する。図16Eは、GATA3を示す1つの代表的なPTCL-GATA3症例(左)、及びTBX21及びCD8発現を示す1つのPTCL-TBX21症例(右)についてのH&E及びIHC染色を提供する。図16Fは、PTCL-GATA3又はPTCL-TBX21 NanoStringとして分類された訓練及び検証コホートの組み合わせにおける利用可能な転帰データを有するPTCL-NOS症例の全生存期間のKM曲線を示す。
図17】PTCL下位分類のためのアルゴリズム設計の概略図を提供する。6個のペアワイズサブモデルを組み合わせて、分類のための最終予測子を生成する。ステージ1:最初に4つのカテゴリー(AITL、ALCL、ENKTCL、又はATLL)が、PTCL-NOSから区別される。続いて、EBV-ウイルス転写産物(EBER)を、ENKTCL分類子(対PTCL-NOS)に加え、最後にALCLをALK- ALCL対ALK+ ALCLに下位分類する。ステージ2:第2のステージでは、PTCL-NOSとみなされた試料が、PTCL-GATA3又はPTCL-TBX21サブタイプに区別される。4個の予測子のうち1個より多くが、非PTCL-NOS診断(例えば、ALCL及びAITL)をもたらした場合、それらのタイプ間の追加の一対一予測子を適用して、モデルに含まれるように選択されたいずれかのタイプに特徴的な全ての遺伝子を使用して、タイ状態を破る(例えば、ALCL対AITL)。
図18A】新鮮な凍結組織から抽出された同じRNAについて、nCounter442遺伝子アッセイ(NanoString,Inc)によって測定されたlog2(カウント) 対 HG-U133 plus2(Affymetrix,Inc)によって測定された対応する転写産物についてのlog2(プローブ強度)値の散布図を提供する。
図18B】2つのプラットフォーム(nCounter、NanoString,Inc対HG-U133 plus 2(Affymetrix,Inc)によってプロファイリングされた10症例についての各mRNA転写産物の相関値のヒストグラムを提供する。
図18C】Qiagen(Q)又はStormキット(S)によって抽出されたRNAを比較するゲル画像を提供する。
図18D】Qiagen(Q)又はStormキット(S)によって抽出されたRNAにおける200塩基より大きなRNAの%を比較する棒グラフを提供する。
図18E】対応する生検からQiagen又はStormキットを使用して抽出された新鮮な凍結(FF)又はFFPEからのRNAのnCounter分析によって生成されたlog2(カウント)を比較する散布図及びヒストグラムを提供する。ボックス内の数字は、相関係数を表す。
図18F】対応する生検からのFF又はFFPE組織から抽出されたRNAのnCounter分析によって生成されたlog2(カウント数)の散布図を提供する。
図19A】両方のプラットフォームをプロファイリングした100症例について、nCounter(NanoString,Inc)によって分析されたFFPE RNA及びHG-U133 plus 2(Affymetrix,Inc)によって分析されたFF RNAについての各mRNA転写産物についての相関値のヒストグラムを提供する。
図19B】両方のプラットフォームをプロファイリングした100症例について、nCounterによって分析されたFFPE RNA及びHG-U133 plus 2によって分析されたFF RNAについての分類子における各mRNA転写産物についての相関値のヒストグラムを提供する。
図19C】最終的にはnCounterプラットフォーム分類モデルに使用される、元々の、しかし拡張された分類子遺伝子リスト(C)及び低減された分類子遺伝子リスト(D)を示す、訓練コホートに含まれる症例からのFF RNAからのAffymetrix U133 plus2データのヒートマップを提供する。PTCLサブタイプ間で変化しないハウスキーピング遺伝子を、比較のために示す。
図19D】最終的にはnCounterプラットフォーム分類モデルに使用される、元々の、しかし拡張された分類子遺伝子リスト(C)及び低減された分類子遺伝子リスト(D)を示す、訓練コホートに含まれる症例からのFF RNAからのAffymetrix U133 plus2データのヒートマップを提供する。PTCLサブタイプ間で変化しないハウスキーピング遺伝子を、比較のために示す。
図19E】訓練及び検証症例の試行において、nCounterによってFFPE組織において分析されたハウスキーピング及びモデル遺伝子の分散の箱ひげ図及びドットプロットを提供する。
図19F】HG-U133 plus2 Affymetrixアレイによって分析されたFF RNA(上)又はnCounterによって分析されたFFPE RNA(下)を使用した、GATA3又はTBX21として分類されたPTCL-NOS症例の全生存期間のカプラン・マイヤー曲線を提供する。
図20】3つの異なる場所(UNMC,Insight.Inc、及びCOH)でUNMC(初期設計)で生成されたモデルスコア(FFPE RNA) 対 最終診断モデル試行でのモデルスコアの比較を示す。症例をPTCLエンティティとして分類するための閾値は、緑色でラベル付けされている。薄い緑色の線は、中間AITL/PTCL-NOSスコアの閾値を示す。赤線は、直交回帰の結果を示し、これを等対角線(diagonal ofequal)モデルを示す灰色の線と比較することができる。153個のCodeSetを含有する低減された遺伝子設計を使用したnCounterパネル。**442個のCodeSetを含有する初期設計を使用したnCounterパネル。全ての症例は、UNMCで元々の442個のCodeSet設計に対して試行され、他の場所で最終の153個のCodeSet設計に対して試行され、一方で、7個の試料は、153個の最終設計CodeSetパネルを使用して、UNMCでも繰り返された。全てのスコアは、最終モデルを使用して生成された。
図21】nCounterでの訓練及び検証コホートにおいてプロファイリングされた全てのPTCL症例における分類スコアのバイオリンプロット及びドットプロットを提供する。x軸は、既知の診断である。nCounter分類が、予想される診断と一致しなかった症例は、それらがどのように分類されたかに従って着色されており、一方、一致した症例は、灰色である。
図22】強いEBER及び細胞傷害性(TIA-1及びパーフォリン)マーカー発現を有する結節性ENKTL症例の1つについてのH&E及びIHC染色を示す。
図23A】AITL、PTCL-TFH、及びPTCL-TBX21、PTCL-GATA3、及び反応性過形成におけるTFH、AITL、GATA3及びTBX21シグネチャ発現のヒートマップを提供する。
図23B】示されたエンティティにおけるTFH特異的遺伝子の平均発現の箱ひげ図を提供する。
図24】訓練コホートにおけるゴールドスタンダード診断と精緻化された診断シグネチャとの間の一致を示す。AITL、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、ALCL、未分化大細胞リンパ腫、ATLL、成人T細胞白血病/リンパ腫、ENKTCL、結節外NK/T細胞リンパ腫、PTCL-NOS、末梢T細胞リンパ腫非特定型、FFPE、ホルマリン固定パラフィン包埋組織、FF、新鮮な凍結組織。ボーダーラインの症例は、不一致とみなされなかった。新鮮な凍結GEPに基づく、病理診断及び分子診断の組み合わせ。
図25】検証コホートにおけるゴールドスタンダード診断と精緻化された診断シグネチャとの間の一致を示す。転写分類子は、症例の85%(119/140)において3名の専門血液病理学者によって与えられた病理診断と一致し、6%(8/140)において分子シグネチャとの「ボーダーラインの関連」を示した。全体として、127/140の症例(緑色)が、コンセンサス病理検査と分子診断との間で一致するとみなされる。分類子は、再検査でその後の臨床病理学的情報と一致した、ATLLとして分子的に分類された2症例のPTCL-NOS症例(水色)において、病理診断を改善した。「不一致」であった残りの11症例のうち、4症例は、全体的なトランスクリプトームシグネチャ及び形態学的特徴に基づく病理診断を超える改善を提供し得る分子分類(黄色)を有していた。AITL、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、ALCL、未分化大細胞リンパ腫、ATLL、成人T細胞白血病/リンパ腫、ENKTCL、結節外NK/T細胞リンパ腫、PTCL-NOS、末梢T細胞リンパ腫非特定型。ボーダーラインの症例は、不一致とみなされなかった。再検査でその後の臨床病理学的情報と一致した、ATLLとして分子的に分類されたPTCL-NOS症例。++再検査でTFHマーカー発現を示した、AITLとして分子的に分類されたPTCL-NOS症例。+++全体的なトランスクリプトームシグネチャに基づいてALK陽性様ALCLを表し得るALK-ALCL症例。
【発明を実施するための形態】
【0025】
例示的態様の説明
本明細書に開示される主題の1つ以上の実施形態の詳細が、本明細書に提供される。しかしながら、本明細書に開示される主題が様々な形態で具現化され得ることが、理解されるべきである。本文書に記載される実施形態及び他の実施形態に対する修正は、本明細書に提供される情報を検討した後に当業者に明らかになるであろう。本文書で提供される情報、特に説明される例示的な実施形態の特定の詳細は、主に理解を明確にするために提供され、限定するものとして解釈されるべきではない。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。
【0026】
本明細書で使用される用語は、当業者によって十分に理解されると考えられるが、本明細書に開示される主題の説明を容易にするために、特定の定義が示される。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本明細書に開示される主題が属する技術分野の当業者に一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0027】
本明細書に記載の方法、デバイス、及び材料と同様又は同等の任意の方法、デバイス、及び材料が、本明細書に開示される主題の実施又は試験に使用され得るが、代表的な方法、デバイス、及び材料を、以下に記載する。
【0028】
特定の場合に、本明細書に開示されるヌクレオチド及びポリペプチドは、GENBANK(登録商標)及びSWISSPROTなどの公的に利用可能なデータベースに含まれる。そのような公的に利用可能なデータベースに含まれるそのようなヌクレオチド及びポリペプチドに関連する配列及び他の情報を含む情報は、参照により明示的に組み込まれる。別段の指示がない限り、又は明らかでない限り、そのような公的に利用可能なデータベースへの言及は、本出願の出願日時点でのデータベースの最新バージョンへの言及である。
【0029】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本主題が属する当業者に一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書の開示全体を通して言及される全ての特許、特許出願、公開された出願及び刊行物、GenBank配列、データベース、ウェブサイト並びに他の公開された資料は、別段の記載がない限り、それらの全体が参照により組み込まれる。本明細書中の用語について複数の定義が存在する場合、このセクションにおける定義が優先する。URL又は他のそのような識別子若しくはアドレスに対して参照が行われる場合、そのような識別子は、変化する可能性があり、インターネット上の特定の情報が行き交う可能性があるが、同等の情報をインターネットを検索することによって見つけることができることが理解される。それらへの言及は、そのような情報の利用可能性及び公的な普及を証明する。
【0030】
本明細書に記載の方法、デバイス、及び材料と同様又は同等の任意の方法、デバイス、及び材料が、本明細書に開示される主題の実施又は試験に使用され得るが、代表的な方法、デバイス、及び材料を、以下に記載する。
【0031】
長年にわたる特許法の慣習に従って、「a」、「an」、及び「the」という用語は、特許請求の範囲を含む本出願において使用される場合、「1つ以上」を指す。したがって、例えば、「細胞(a cell)」への言及は、複数のそのようなセルを含むなどである。
【0032】
「実質的に」という用語は、意図した目的に悪影響を与えない記述語からの逸脱を可能にする。記述用語は、「実質的に」という語が明確に列挙されていなくても、「実質的に」という用語によって変更されることが理解される。したがって、例えば、句「ここで、レバーは垂直に延在する」は、レバーがその機能を実行するのに正確な垂直配置が必要でない限り、「ここで、レバーは実質的に垂直に延在する」を意味する。
【0033】
「含む(comprising)」及び「含む(including)」及び「有する(having)」及び「含む(involving)」(並びに同様に「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「有する(has)」、及び「含む(involves)」)などの用語は、交換可能に使用され、同じ意味を有する。具体的には、用語の各々は、「含む(comprising)」の一般的な米国特許法の定義と一致して定義され、したがって、「少なくとも以下(at least the following)」を意味する非限定用語(open term)であると解釈され、追加の特徴、限定、態様などを除外しないとも解釈される。よって、例えば、「ステップa、b、及びcを含むプロセス」は、プロセスが少なくともステップa、b、及びcを含むことを意味する。「a」又は「an」という用語が使用されている場合は常に、そのような解釈が文脈上無意味でない限り、「1つ以上」と理解される。
【0034】
別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件などの特性などを表す全ての数は、全ての場合において「約」という用語によって修正されるものとして理解されるべきである。したがって、そうではないと示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本明細書に開示される主題によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【0035】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、質量、重量、時間、体積、濃度又はパーセンテージの値又は量に言及する場合、特定の量からいくつかの実施形態では±20%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±5%、いくつかの実施形態では±1%、いくつかの実施形態では±0.5%、及びいくつかの実施形態では±0.1%の変動を包含することを意味し、そのような変動は、開示された方法を実施するのに適切である。
【0036】
本明細書で使用される場合、範囲は、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表すことができる。本明細書に開示される多くの値が存在すること、及び各値はまた、その値自体に加えて「約」その特定の値として本明細書に開示されることも理解される。例えば、「10」という値が開示される場合、「約10」もまた開示される。2つの特定の単位の間の各単位も開示されることも理解される。例えば、10及び15が開示される場合、11、12、13、及び14も開示される。
【0037】
本明細書で使用される場合、「生物学的試料」は、対象から得られる生物学的材料の試料を指す。実施形態では、対象は、ヒト対象を含む。生物学的試料の例としては、組織、組織試料、細胞試料、流体試料、又はこれらの組み合わせが挙げられる。生物学的試料は、例えば、組織生検、例えば、吸引生検、ブラシ生検、表面生検、針生検、パンチ生検、切除生検、直視下生検、切開生検及び内視鏡下生検の形態で得ることができる。「生物学的試料」は、限定されないが、例えば、血液、血漿、血清、腫瘍生検、尿、糞便、痰、脊髄液、胸膜液、乳頭吸引液、リンパ液、皮膚の外部切片、呼吸器、腸管、及び尿生殖路、涙、唾液、乳、細胞、腫瘍、臓器を含む、対象から単離された組織又は流体の試料、また、インビトロ細胞培養物の構成成分の試料を指し得る。生物学的試料の非限定的な例としては、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織、新鮮な凍結(FF)試料、又は他の調製試料型が挙げられる。
【0038】
当業者は、対象由来の生物学的試料が、種々の従来技術によって得られ得ることを認識する。本明細書に記載される方法は、典型的には、がんを有することが疑われる対象又はがんに罹患している対象などの対象から生物学的試料を得ることを伴う。本明細書中で使用される場合、「生物学的試料を得る」という語句は、対象から生物学的試料を直接的又は間接的に獲得するための任意のプロセスを指す。例えば、生物学的試料は、対象から組織又は流体試料(例えば、組織生検、採血、骨髄試料、脊椎穿刺)を入手することによって(例えば、ポイントオブケア施設、例えば、診療所、病院、研究所施設において)得ることができる。あるいは、生物学的試料は、対象から直接試料を入手した1人以上の人から(例えば、研究所施設で)生物学的試料を受け取ることによって得ることができる。生物学的試料は、例えば、対象由来の組織(例えば、組織生検、血液)、細胞(例えば、造血幹細胞、白血球、若しくは網状赤血球などの造血細胞、幹細胞、若しくは形質細胞、がん細胞)、小胞、生体分子凝集体、又は血小板であり得る。
【0039】
ある実施形態では、試料は、原発性又は転移性腫瘍の切除、生検、又はコア針生検からの試料である。加えて、細針吸引試料が使用される。試料は、パラフィン包埋組織又は凍結組織のいずれかであり得る。
【0040】
実施形態では、生物学的試料は、生検組織であってもよく、生検組織は、がん細胞であるか、又はがん細胞であることが疑われる少なくとも1つの細胞を含有する。「生検組織」という用語は、試料が、がん性組織を含有するかどうかを決定するか、又はがん性である組織を検査する目的のために対象から取り出される組織の試料を指し得る。いくつかの実施形態では、生検組織は、ある対象が、がんを有することが疑われるため、得られる。次いで、生検組織は、がんの有無について検査される。他の実施形態では、ある対象が、がんを有することが知られているため、生検組織が得られ、次いで、生検組織は、がんのステージ及び/又は治療選択肢を示すマーカーについて検査される。
【0041】
本明細書で使用される場合、「診断する」とは、対象において疾患を検出し、特定することを指す。この用語はまた、疾患(例えば、PTCL)を有することが知られている患者における疾患状態(進行、退縮、安定化、治療に対する応答など)を評価すること(assessing)又は評価すること(evaluating)も包含し得る。
【0042】
本明細書で使用される場合、「予後」という用語は、がんの存在(例えば、本発明の診断方法によって決定されるような)が、対象の将来の健康(例えば、予測される罹患率又は死亡率、がんになる可能性、及び転移のリスク)に及ぼす影響に関する情報を提供することを指す。言い換えれば、「予後」という用語は、がんの予想される経過及び転帰の予測、又はがんからの回復の可能性の予測を提供することを指す。「予後」という用語は、当該技術分野において認識されており、特に、疾患寛解、疾患再燃、腫瘍再発、転移、及び死亡の可能性に関して、疾患又は疾患進行の起こり得る経過についての予測を包含する。「良好な予後」は、がんに罹患した患者が、療法後にがんを有していないままである可能性を指し得る。「予後不良」は、治療後の根底にあるがんの再燃又は再発の可能性、転移を発生する可能性、及び/又は死亡の可能性を指し得る。特定の実施形態では、予後を評価するための時間枠は、例えば、1年未満、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、15年、20年、又はそれより長い。
【0043】
本明細書で使用される「治療する」、「治療」又は「治療すること」という用語は、患者の状態(例えば、1つ以上の症状)の改善、状態の進行の遅延などを含む、疾患に罹患した患者に利益を与える任意の種類の治療を指す。
【0044】
本発明の態様は、それを必要とする患者におけるがんの治療のための方法に関する。がんの治療は、本明細書で使用される場合、がん転移を含むがんの進行を部分的又は完全に阻害、遅延、若しくは予防すること、がんの再発を阻害、遅延、若しくは予防すること、又は哺乳動物、例えば、ヒトにおけるがんの発症若しくは発生を予防すること(化学予防)を指し得る。がんを治療することは、腫瘍発生、腫瘍成長、増殖、血管新生、及び/又は転移を停止又は低減することによって示され得る。
【0045】
本発明の態様はまた、対象におけるがんについての診断情報を提供することを含む。例えば、本発明の態様は、がんを有することが疑われる対象、又はがんを有するリスクがある対象に診断情報を提供することを含み得る。「がんを有することが疑われる対象」という用語は、がんを示す1つ以上の症状(例えば、顕著なしこり若しくは塊)を呈するか、又はがんについてスクリーニングされている(例えば、日常的な身体検査中に)対象を指し得る。がんを有することが疑われる対象はまた、1つ以上のリスク因子を有し得る。がんを有することが疑われる対象は、一般に、がんについて検査されていない。しかしながら、「がんを有することが疑われる対象」は、初期の診断を受けたが、がんのステージが不明である個体を包含する。この用語は更に、かつてがんを有していた人々(例えば、寛解期の個体)を含む。本明細書で使用される場合、「がんのリスクがある対象」という用語は、特定のがんを発生する1つ以上のリスク因子を有する対象を指す。リスク因子としては、限定されないが、性別、年齢、遺伝的素因、環境曝露、以前のがんの発生、既存の非がん疾患、及び生活様式が挙げられる。
【0046】
「有効量」という語句は、患者の状態の改善をもたらす治療剤の量を指す。特定の実施形態では、有効量は、生存率を少なくとも1年間増加させる。有効量は、疾患が実質的に進行しない治療開始後の生存年数によって測定することができる。実施形態では、有効量は、少なくとも1年の無増悪生存期間(PFS)を生じさせるのに十分な量であり得る。有効量は、1年より長いPFSを誘導するのに十分なものであり得る。実施形態では、有効量は、1年のPFS、2年のPFS、3年のPFS、4年のPFS、又は5年のPFSを生じさせるのに十分な投薬量である。実施形態では、治療剤は、抗がん剤である。
【0047】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、投与の標的を指す。本明細書に開示される方法の対象は、哺乳動物、魚類、鳥類、爬虫類、又は両生類などの脊椎動物であり得る。したがって、本明細書に開示される方法の対象は、ヒト又は非ヒトであり得る。したがって、獣医学的治療用途が、本明細書に開示される主題に従って提供される。
【0048】
「対象」は、ヒト及び非ヒト霊長類などの哺乳動物、及びアムールトラなど絶滅の危機にさらされていることに起因して重要な哺乳動物;ヒトによる消費のために農場で飼育された動物などの経済的に重要な動物;並びに/又はペットとして、若しくは動物園で飼育されている動物などのヒトにとって社会的に重要な動物を指し得る。このような動物の例としては、限定されないが、ネコ及びイヌなどの肉食動物;ブタ(pig)、ブタ(hog)、及びイノシシを含む、ブタ;反芻動物及び/又は有蹄動物、例えばウシ、雄ウシ、ヒツジ、キリン、シカ、ヤギ、バイソン、及びラクダ;ウサギ、モルモット、及びげっ歯類が挙げられる。絶滅の危機にさらされており、及び/又は動物園で飼育されている種類の鳥類、並びに家禽、より具体的には、家畜化された家禽、すなわち、例えば、ヒトにとっても経済的に重要であるようなシチメンチョウ、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ホロホロチョウなどの治療を含む、鳥類の治療も提供される。したがって、家畜化されたブタ、反芻動物、有蹄動物、ウマ(競走馬を含む)、家禽などを含むが、これらに限定されない家畜の治療も提供される。
【0049】
実施形態では、対象は、がんを保有すると以前に診断されており、おそらく既にがんの治療を受けている。代替的な実施形態では、対象は、がんを保有すると以前に診断されていない。本発明は、がんのリスクがある全ての患者に有用であり得る。各々の種類のがんは、彼ら自身のリスク因子のセットを有するが、がんを発生するリスクは、年齢、性別、人種並びに個人及び家族の病歴とともに増加する。他のリスク因子は、生活様式の選択に大きく関連し、一方、特定の感染、職業曝露及びいくつかの環境因子もまた、がんの発生に関連し得る。
【0050】
本明細書中で使用される場合、「投与すること」及び「投与」という用語は、薬学的調製物を対象に提供する任意の方法を指す。このような方法は当業者に周知であり、限定されないが、経口投与、経皮投与、吸入による投与、経鼻投与、局所投与、膣内投与、点眼投与、口腔内投与、脳内投与、直腸投与、並びに静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、及び皮下投与などの注射液を含む非経口投与が挙げられる。投与は、連続的又は断続的であり得る。調製物は、治療的に投与することができる。すなわち、目的の既存の状態を治療するために投与される。調製物は、予防的に投与することができる。すなわち、目的の状態の予防のために投与される。
【0051】
本明細書に開示される主題は、対象からの生物学的試料中の1つ以上のバイオマーカーの存在又は量を決定することによる、対象におけるがんの診断、予後、又は治療のための方法に関する。実施形態では、がんは、非ホジキンリンパ腫である。がんは、PTCLであり得る。
【0052】
ある実施形態では、本方法は、対象から生物学的試料を得ることであって、生物学的試料は、がん細胞であるか、又はがん細胞であることが疑われる少なくとも1つの細胞を含む、ことと、生物学的試料からの遺伝子の発現レベルを測定又は決定することと、生物学的試料中の発現レベルを対照試料と比較することと、測定するステップに基づき、診断、予後、又は予測情報を提供することと、を含む。
【0053】
実施形態では、遺伝子のヌクレオチド又はタンパク質のレベルなどの測定値を、対照と比較することができ、対照のものと異なる場合、対象は、がんを有する及び/又は発生する可能性の増加、がんを有するか、又は発生する可能性の減少、所与の治療に応答する可能性の増加、又は所与の治療に応答する可能性の減少を有し得る。「対照のものと異なる」試料又は対象は、正常、未治療、又は異常な状態の対照試料からの試料とは統計的に異なるレベルで検出される分析物又は診断若しくは治療指標(例えば、マーカー)のレベルを有すると理解される。統計的有意性の決定は、当業者の能力の範囲内であり、例えば、陽性又は陰性の結果を構成する平均からの標準偏差の数である。例えば、対照試料は、1つ以上の非がん性細胞、又はがんと診断されていない患者からの生物学的試料を含み得る。
【0054】
実施形態では、mRNA及び/又はタンパク質のレベルなどの測定値を閾値と比較して、対象が、がんを有するかどうかを決定し、がんの種類又はサブタイプを診断し、患者の予後を提供し、特定の治療レジメンを決定し、又はこれらの組み合わせを行うことができる。「閾値」という用語は、バイオマーカーについての複数の生物学的試料に由来する値を指すことができ、その閾値を超えることは、がんを有する及び/又は発生する可能性の増加、又は所与の治療に応答する可能性の増加に関連する。
【0055】
本発明の方法の特定の実施形態によれば、遺伝子によってコードされる遺伝子産物(例えば、ポリペプチド又は核酸)の存在又は量は、対象に由来する試料(例えば、対象から得られる腫瘍又は血液試料から得られる組織又は細胞の試料)において検出される。試料は、一連の検出の前又は検出中に、様々な処理ステップに供することができる。
【0056】
本発明の目的のために、「遺伝子」という用語は、当該技術分野で理解されるのと同じ意味を有する。しかしながら、「遺伝子」という用語は、当該技術分野において様々な意味を有し、それらのうちのいくつかは、遺伝子調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)及び/又はイントロン配列を含み、それらのうちの他のものは、コード配列に限定されることが当業者によって理解されるだろう。「遺伝子」の定義は、タンパク質をコードしないが、むしろtRNAなどの機能的RNA分子をコードする核酸への言及を含むことが更に理解されるであろう。明確にするために、本願発明者らは、本出願において使用される場合、「遺伝子」という用語が、一般に、タンパク質をコードする核酸の一部を指すことに留意する。この用語は、任意選択的に調節配列を包含することができる。この定義は、「遺伝子」という用語の非タンパク質コード発現単位への適用を排除することを意図するものではなく、むしろ、ほとんどの場合、本明細書で使用されるその用語がタンパク質コード核酸を指すことを明確にすることを意図するものである。
【0057】
遺伝子産物又は発現産物は、一般に、遺伝子から転写されたRNA、又は遺伝子から転写されたRNAによってコードされるポリペプチドである。
【0058】
遺伝子の発現は、当該技術分野で公知の種々の技術によって測定することができる。特定の技術は、遺伝子によってコードされるポリペプチドに結合する抗体ではなく、遺伝子の一部又は全部に対応するポリヌクレオチドを利用することができる。適切な技術としては、限定されないが、インサイチュハイブリダイゼーション、ノーザンブロット、並びに種々の核酸増幅技術(例えば、PCR、定量的PCR、及びリガーゼ連鎖反応)が挙げられる。
【0059】
いくつかの実施形態では、本出願は、生物学的試料中の1つ以上のバイオマーカーの存在又は量に基づいて、異なるサブグループPTCLを特定する方法を提供する。PTCLの非限定的なサブグループとしては、PTCL-NOS、AITL、ALCL、ALK(-)ALCL、ENKTL、NK及びγδ-T-PTCLが挙げられる。実施形態では、PTCL-NOSは、転写因子GATA3又はTBX21及びこれらの標的遺伝子のいずれかの高い発現によって特徴付けられる2つの主要な分子サブタイプの1つへと更に細分することができる。
【0060】
特定の実施形態では、バイオマーカーは、PTCLの異なるサブタイプに固有に存在する遺伝子シグネチャを含む。PTCLの各サブタイプについての遺伝子シグネチャは、以下の表1に列挙される遺伝子のうちの1つ以上を含み得る。
【0061】
(表1)例示的なPTCLサブタイプ遺伝子シグネチャ
【0062】
いくつかの実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、GATA、TBX21、又はこれらの関連する標的遺伝子を含む。1つ以上のバイオマーカーは、NK又はガンマ/デルタT細胞系統を含み得る。特定の実施形態では、NK系統は、EBVウイルス転写(EBER及びLMP1)を含む。実施形態では、ATLLサブタイプについての遺伝子シグネチャは、HTLV-1ウイルス転写産物発現(TAX、HBZ、又はこれらの組み合わせ)を更に含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、本出願は、遺伝子の特定のパネルの発現プロファイルを決定することによる、対象におけるがんの診断、予後、及び/又は治療の方法を提供する。
【0064】
いくつかの実施形態では、本出願は、PTCLの特定のサブグループと診断された対象の生存期間を予測する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、遺伝子の特定のパネルのプロファイルの発現を検出することに関する。
【0065】
更に、本明細書に開示される主題のいくつかの実施形態では、対象におけるPTCLの特定のサブグループのための治療のための方法が提供される。実施形態では、治療方法は、対象に有効量の抗がん剤を投与することを含む。抗がん剤は、対象のPTCLサブタイプに応じて変化し得る。実施形態では、治療は、対象のPTCLサブタイプを特異的に標的とするように最適化される。そのような剤の非限定的な例は、化学療法、免疫療法、毒素療法、放射線療法、又はこれらの組み合わせを含む。抗がん剤は、プララトレキサート、ロミデプシン、ベリノスタット、ブレンツキシマブベドチン、デュベリシブ、デシタビン及び関連化合物、EZH1/2阻害剤、現在知られているか、若しくはその後に発見される他のPTCLサブタイプ特異的治療、又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0066】
加えて、本明細書に開示される主題は、PTCLの診断、予後、及び/又は治療のためのキット及び試薬に関する。いくつかの実施形態では、キットは、遺伝子の特定のパネルの発現プロファイルを検出する手段を含む。いくつかの実施形態では、キットは、1つ以上のプローブを含む。
【0067】
更に、本明細書に開示される主題は、ソフトウェア及び分析システムを使用した、PTCLの診断、予後、及び/又は治療のためのセットバイオマーカーの特定方法に関する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される主題は、いくつかの遺伝子の発現レベルを比較することによって、PTCLをサブタイプ決定する方法を提供する。
【0068】
実施形態は、単一反応において多数の核酸を分析するための方法論を使用する。実施形態では、方法又はキットは、次世代配列決定(NGS)などのハイスループット核酸配列決定技術を使用する。実施形態では、標的化されたRNA配列パネルは、NGSプラットフォーム上で与えられ得る。そのようなNGS技術の非限定的な例としては、Illumina,Inc(San Diego,CA,USA)、Thermo Fischer Scientific(Waltham,MA,USA)、Qiagen(Venlo,Netherlands)からの機器及びプロトコルが挙げられる。なお他の実施形態では、特定の多重PCRベースのプラットフォームが使用される。実施形態は、Qiagen Modaplex(Venlo,Netherlands)又は同様のプラットフォームなどのかなりの数の分析物を収容するように構成されたqPCRベースのプラットフォームを使用する。実施形態は、従来のリアルタイムPCRプラットフォームを使用することができる。代替の実施形態は、限定されないが、Affymetrix(Santa Clara,CA,USA)、Aknonni Biosystems(Frederick,MD,USA)、Biofire Diagnostics(Salt Lake City,UT,USA)又は類似のプラットフォームを含む、様々な発現マイクロアレイベースのプラットフォームのいずれかを利用する。いくつかの実施形態は、非アレイプラットフォーム及びプロトコルを使用する。特定の非アレイ実施形態では、定量的ヌクレアーゼ保護アッセイが利用される。他の非アレイ実施形態は、NanoString Technologies,Inc.(Seattle,WA,USA)からのプラットフォーム及びプロトコルを使用する。本明細書で提供される例は、単に例示的なものであり、決して限定するものとみなされるべきではない。実施形態は、様々な分子診断プラットフォームのいずれかを使用する。
【0069】
特定の実施形態は、多数の遺伝子の発現レベルを同時に比較するのに好都合なデバイスであるDNAチップを使用する。DNAチップベースの発現プロファイリングは、例えば、「Microarray Biochip Technology」(Mark Schena,Eaton Publishing,2000)などに開示されている方法によって行うことができる。
【0070】
DNAチップは、いくつかの遺伝子を検出するための固定化された高密度プローブを含む。したがって、多くの遺伝子の発現レベルを、1回の分析によって同時に推定することができる。すなわち、DNAチップを用いて標本の発現プロファイルを決定することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される主題は、PTCLなどのがんの異なるサブタイプに特異的なバイオマーカーを特定する方法に関する。実施形態は、生物学的試料のGEP分析に基づいて診断アルゴリズムを実行するステップを含む。特定の実施形態は、サブグループ分類のための段階的バイナリモデルアルゴリズムを使用する。実施形態は、診断の正確さを著しく損なうことなく、がんサブグループ分類子における遺伝子の数を実質的に低減する方法を提供する。実施形態では、遺伝子の総数を、50個未満まで低減する。特定の実施形態では、遺伝子の総数は、25個未満である。遺伝子の総数を、15~20個(両端を含む)まで低減することができる。いくつかの実施形態では、遺伝子の総数を、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、約30個まで低減する。本方法は、これらの様々な分子PTCLエンティティにおける潜在的な治療標的を含む別個の発がん経路を特定することを更に含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される主題は、対象において精緻化された診断及び予後バイオマーカーを使用して、PTCLサブタイプを区別する方法を提供する。
【0073】
本明細書に記載される方法はまた、がんの治療を選択するためにも有用である。例えば、ある実施形態は、がん試料を提供すること、又は対象からがん試料を得ること(例えば、単離すること)と、PTCLシグネチャにおける遺伝子の発現、活性、又は産物のうちの少なくとも1つを測定することと、測定するステップに基づいて治療を選択することと、を含み得る。実施形態は、測定されたレベルを、対照試料又は閾値のレベルと比較するステップを更に含み得る。
【0074】
本発明の態様はまた、キット、例えば、がんを治療及び/又は診断するためのキットを包含する。
【0075】
ある実施形態では、キットは、例えば、阻害剤などの本明細書に記載の1つ以上の組成物を含み得る。
【0076】
例えば、キットは、PTCLシグネチャにおける遺伝子、又は試料における他のタンパク質のレベルの検出に有用な1つ以上の試薬を含み得る。1つ以上の試薬は、固体支持体に固定化され得る。固体支持構造の組成物の非限定的な例は、プラスチック、ボール紙、ガラス、プレキシガラス、スズ、紙、又はこれらの組み合わせを含む。固体支持体はまた、ディップスティック、スプーン、薬匙、濾紙又はスワブを含み得る。
【0077】
試薬は、生物学的試料中のがん又は腫瘍細胞(例えば、scFv又はモノクローナル抗体)を検出することができる標識された化合物又は剤;試料中の遺伝子発現の量を決定するための手段;及び試料中の遺伝子発現の量を、対照試料又は閾値などの標準と比較するための手段を含み得る。標準は、いくつかの実施形態では、非がん細胞又はその細胞抽出物である。化合物又は剤は、好適な容器に包装することができる。キットは、キットを使用して試料中のがんを検出するための説明書を更に含み得る。
【0078】
実施形態では、キットはまた、ポリペプチドをコードする遺伝子から転写されたmRNAを増幅させるためのプライマー及び/又はプライマーを試験するための対照試料を含み得る。例えば、対照試料は、プライマーにハイブリダイズする核酸を含み得る。
【0079】
キットはまた、試料収集装置、例えば、生物学的流体又は腫瘍生検を収集するために使用されるデバイスを含み得る。
【0080】
ある実施形態では、キットは、1つ以上の試薬を含有する容器と、任意選択的に、(b)情報資料と、を含み得る。情報材料は、本明細書に記載される方法及び/又は診断目的のための剤の使用に関する説明的であり、指導的であり、マーケティング又は他の材料であり得る。ある実施形態では、キットは、1つ以上の抗がん治療薬も含む。
【0081】
キットの情報資料は、その形態において限定されない。一実施形態では、情報資料は、キットの構成要素の製造、例えば、分子量、濃度、有効期限、バッチ又は製造場所の情報などについての情報を含み得る。一実施形態では、情報資料は、キットの構成要素を使用する方法に関する。情報は、様々な形式で提供することができ、印刷されたテキスト、コンピュータ読み取り可能な資料、ビデオ録音、若しくは音声録音、又は実質的な資料へのリンク若しくはアドレスを提供する情報を含む。
【0082】
キットは、溶媒若しくは緩衝液、安定剤、又は保存剤などの他の成分を含み得る。任意選択的に、キットは、任意の形態、例えば、液体、乾燥形態又は凍結乾燥形態、好ましくは、実質的に純粋及び/又は滅菌で提供することができる治療剤を含み得る。剤が溶液で提供される場合、液体溶液は、好ましくは水溶液である。剤が乾燥形態として提供される場合、再構成は一般に、適切な溶媒の添加による。溶媒、例えば、無菌水又は緩衝液は、任意にキットにおいて提供することができる。
【0083】
他の実施形態
本発明は、その詳細な説明とともに記載されたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例示することを意図しており、限定することを意図していない。他の態様、利点、及び変更は、以下の特許請求の範囲内である。
【0084】
本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定しない以下の例に更に記載される。
【実施例
【0085】
実施例は、本発明のより完全な理解を促進するために以下に提供される。以下の実施例は、本発明を作製及び実施する例示的な様式を例示する。しかしながら、本発明の範囲は、これらの実施例に開示されている特定の実施形態に限定されず、代わりの方法を使用して同様の結果を得ることができるため、例示のみを目的としている。
【0086】
実施例1
本研究の包括的な目標は、発現マイクロアレイにより分析された新鮮な凍結標本を使用して元々開発された「学術的な」PTCL診断及び予後遺伝子発現(GE)シグネチャを、Nanostring nCounterプラットフォームで分析されたホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本に適用可能な最適化されたロックダウンシグネチャに移行させることである。この提案の2つの目的(目的1.低減された転写産物のセットを特定し、既存の「学術的な」診断及び予後PTCLシグネチャを複製することができる新しいモデルを作製すること、目的2.FFPE標本の分析のためのNanoString nCounterプラットフォームでの精緻化された診断及び予後PTCL遺伝子シグネチャセットの適用可能性を確認すること)は、本提案の直後に続く第II相試験において行われ、アッセイの分析及び臨床性能、及び臨床有用性の完全な評価及び検証を含む、更なる商業的試験開発のための候補としての最適化されたFFPE/nCounterアッセイの実現可能性を決定する。
【0087】
特定の目的
第I相: 末梢T細胞リンパ腫(PTCL)診断及び予後のための「学術的な」遺伝子発現プロファイリング(GEP)シグネチャの最適化、並びに商業的アッセイ開発のための最適化されたシグネチャの実現可能性の初期の評価。
目標。 本研究の包括的な目標は、発現マイクロアレイにより分析された新鮮な凍結(FF)標本を使用して元々開発された「学術的な」PTCL診断/予後GEPシグネチャを、Nanostring nCounterプラットフォームで分析されたホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本に適用可能な最適化されたロックダウンシグネチャに移行させることである。この努力は、2つの目的に分割され、それぞれの特定の活動を以下に詳述する。これらの第I相試験は、更なる商業的な試験開発(CLIA認定研究所におけるその提供、及び新しいか、又は既存のPTCL療法のためのインビトロ診断(IVD)キット及びコンパニオン診断(CDx)アッセイとしてのその更なる開発を含む)のための候補として最適化されたFFPE標本/nCounterアッセイの実現可能性を決定するのに役立ち、これは、第I相の目的が満たされた場合、これは、アッセイの分析及び臨床性能、並びに臨床有用性の完全な評価及び検証を含む第II相フォローアップ試験において行われる。
【0088】
目的1: 低減された転写産物のセットを特定し、既存の「学術的な」診断及び予後PTCLシグネチャを複製することができる新しいモデルを作製すること。
1a. 各PTCLエンティティの最適な区別のために必要とされる低減された転写産物のセットを特定する。成果物: 新鮮な凍結(FF)標本/発現アレイプラットフォームからFFPE標本/nCounterプラットフォームに移行することが可能な元々のPTCLサブタイプ決定シグネチャからのそれらの遺伝子転写産物の特定。これらの研究は、アレイを使用して以前に特性決定された同じ症例からのFF試料からのデータと比較して、nCounterプラットフォームで約60個のFFPE標本からのRNAにおけるコードセットの性能を決定する。
【0089】
1b.PTCLエンティティを区別するためにFFPE組織に適用することができる診断及び予後シグネチャを精緻化する。成果物: 元々の「学術的な」PTCLシグネチャを可能な限り1に近い一致で再現することができる単一の作業最小遺伝子セットの特定。FF/マイクロアレイからFFPE/nCounterプラットフォームへと十分に移行させるために目的1aで示される転写産物を、約120のPTCL症例の訓練セットに使用して、臨床的関連性の診断及び予後PTCLサブタイプを区別することが可能な最小数の遺伝子から構成される分類モデル及びアルゴリズムを開発する。
【0090】
目的2: FFPE標本の分析のためのNanoString nCounter platformで精緻化された診断及び予後PTCL遺伝子シグネチャセットの適用可能性を確認する。
2a.ロックダウン診断及び予後PTCL遺伝子シグネチャを作成し、研究所間の再現性を評価する。成果物: 初期の検証コホート及び研究所間の研究結果に基づく最適化されたPTCLシグネチャのロックダウン。約100のPTCL FFPE症例を、UNMC、City of Hope、及びコンサルティング商業CLIAラボとともにHealthChart、Insight Molecular Labsでの分子診断研究所において独立して、精緻化された診断及び予後遺伝子シグネチャを使用してサブタイプ決定し、その結果を、マッチした標本から以前に得られたFF/マイクロアレイゴールドスタンダードサブタイプ決定と比較する。研究所間のアッセイ再現性を評価し、アッセイアルゴリズムを終了させ、最終アッセイSOPを導出する。
【0091】
2b.第II相のアッセイ移行のための「ロックされた」診断/予後シグネチャを検証する。成果物: 第II相の開発への前進のためのロックダウンシグネチャの適合性を確認する検証コホート結果。約30のFFPE症例のPTCL検証コホートの分析を、世界中の複数の独立した研究所において、nCounterプラットフォームで実施して、第II相のアッセイ開発への前進のための最適化されたサブタイプ決定シグネチャ、アルゴリズム、及びSOPの適合性を確認する。
【0092】
A.化学的及び臨床的有意性
末梢T細胞リンパ腫(PTCL)は、治療課題を有する不均一エンティティである:PTCLは、非ホジキンリンパ腫の最大20%を構成する1、2。World Health Organization(WHO)は、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、及び結節外NK/T細胞リンパ腫(ENKTL)を含むいくつかのPTCLサブタイプを認識する。PTCLの診断は、専門の血液病理学者にとってさえ困難であり、PTCLの30~50%は、現在の免疫表現型及び分子マーカーを用いて、分類不可能であり、PTCL非特定型(PTCL-NOS)として分類される。ALK(+)ALCL(co-PI,Dr.Steve Morrisによって特性決定されたもの)及びDUSP22再配列を有するALK(-)ALCLを除き、PTCLを有する患者は、CHOP様化学療法又はより集中的なレジメンにより、予後不良である4、6、7。実際、5年無増悪生存期間(PFS)は、過去20年間にわたって20~25%しか残っていない8~12。しかしながら、特定の患者群を標的とした新たな療法が試験され始め、いくつかは目覚ましい結果を示した(表2を参照されたい)13~16。したがって、正確なPTCL分類は、治療試験及び診療所における患者のための最良の治療を選択する際の両方に不可欠である17(例えば、Celgene及びSeattle Geneticsからのサポートの手紙を参照されたい)。
【0093】
(表2)サブタイプによる応答を有する新規治療剤の第II相試験(参考文献番号13から適合させたもの)。
【0094】
PTCL診断の改善には、新しいアプローチが必要である:本願発明者らは、広範な遺伝子発現プロファイリング(GEP)研究を行い、PTCLの主要なサブタイプを分類することができる強固な分子シグネチャを定義した10~12。本願発明者らはまた、いくつかのPTCL-NOSを代わりに別個のエンティティに再分類することができた(AITLとして15%、ALCLとして10%、及びγδ-PTCLとして9%)。重要なことに、本願発明者らはまた、豊富な異なるシグナル伝達経路及び異なる予後を示す、PTCL-NOS内の2つの新しい主要なサブグループを特定した。更に、本願発明者らは、AITL患者の生存期間を予測する発現シグネチャを特定した10、11、18
【0095】
Affymetrix19、NanoString20、21、及び定量的ヌクレアーゼ保護アッセイ(qNPA;HTG Molecular Diagnostics,Inc.)22を含むFFPE標本についてのLLMPPによって試験されるいくつかのプラットフォームの中で、FDAが認可したNanoString nCounterシステムは、標本の取り扱い、酵素反応の必要性の欠如、及びmRNA発現の直接定量化に関して優れており、同時に高い精度及び感度も提供した23。注目すべきことに、LLMPPは、本明細書に記載されるものと同様のアプローチを利用して、nCounterプラットフォームでのDLBCL分類のためのLymph2Cx発現ベースのアッセイを確立した20、21。このアッセイは、その後、NanoStringによって独占的に認可され、現在、インビトロ診断(IVD)コンパニオン診断(CDx)試験として、Celgeneと協力して開発中であり(NanoStringに対して、事前に、また、開発及び規制のマイルストーン、及び商業的支払いで4500万ドルまでの価値がある)、DLBCLを有する患者のための治療としてのレナリドミドの開発を支援した(http://www.nanostring.com/company/corp_press_release?id=116)。
【0096】
革新
このアプローチは、現在定義されているPTCLサブタイプ並びに以前に認識可能ではなかった新しいエンティティの診断のより高い精度及び正確さを提供する、高含有量であり、定量的であり、再現可能な分子アッセイの作成によるPTCLの診断、予後判定及び管理のための診療を変えるものであろう。
【0097】
本願発明者らは、研究診断シグネチャ及び予後シグネチャを、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織に適用可能なプラットフォームに変換し、初期にCLIA研究所設定において、後にIVDキットとしてシグネチャを検証し、広範な臨床的使用を可能にすることを提案する。
【0098】
臨床試験における新規剤は、異なるPTCLサブタイプにおける応答率の差を示すため(例えば、表2を参照されたい)、標準化され、検証されたアッセイを使用して、実験的試行において分子シグネチャを評価することが重要である。本明細書で開発される分子アッセイは、Lymph2Cxアッセイが、DLBCLの個別化療法を導くのに役立つように、PTCLのための精密医療の実施をはるかに容易にするだろう20、23
【0099】
要約すると、本願発明者らは、日常的に入手可能な試料において臨床的に関連するPTCLサブタイプを信頼性高く特定し、最適な個別化治療を可能にし、正確な患者層別化による新規剤の試験を容易にする分子診断/予後アッセイを開発し、検証する。
【0100】
B.予備研究
B.1.アッセイ開発のための標本コホート: 本願発明者らは、病理学的データ及び臨床データを有する1,000を超えるFFPE症例及び300を超える新鮮な凍結(FF)アーカイブPTCL組織へのアクセスを有する10~12。本願発明者らの元々のGEP研究に使用されたFF試料に対応するFFPEブロックは、本明細書において実施される初期アッセイの精緻化及び最適化のために利用される。本願発明者らは、この第I相の提案の一部として実施される初期の検証試験のために、また、その後の第II相試験の間に、複数の欧州及びアジアの共同研究者(サポートのバイオス/レター(bios/letters)を参照されたい)から必要に応じて追加の遡及的に収集されたPTCL試料を得る。これらの組織及びデータリソースは、前例のないものであり、最先端の技術及び洗練されたバイオインフォマティクス分析と組み合わせて、本願発明者らがシグネチャを更に最適化し、臨床適用のためのPTCLアッセイを検証することを可能にする。
【0101】
B.2.PTCLの強固な診断及び予後シグネチャ: PTCLアッセイの学術的態様の開発中に、Drs.Chan及びIqbal、並びに拡張されたLLMPP研究者は、HG U133 plus 2(U133)マイクロアレイ(Affymetrix))を使用して、160個の新鮮な凍結PTCL組織生検に対する遺伝子発現プロファイリング(GEP)を完了した11、12。次いで、これらの知見を、はるかに大きな一連の症例(n=372)を使用して精緻化した10図1は、PTCLの主要なクラスの特徴的な遺伝子発現プロファイルを示す。この研究は、(a)標準化された操作手順を使用するいくつかの施設からの新鮮な凍結組織のGEP分析に基づく診断アルゴリズムの成功した性能、(b)複雑なエンティティにおけるサブグループ分類に、段階的なバイナリモデルアルゴリズムを使用することができること、(c)診断の正確さを著しく損なうことなく、サブグループ分類子における遺伝子の数を実質的に減少させることができること(例えば、AITLについての200を超える遺伝子から22個の遺伝子まで)10、並びに(d)潜在的な治療標的を含む異なる発がん経路が、これらの様々な分子PTCLエンティティにおいて特定することができることを明確に示した。
【0102】
いくつかの追加の注目すべき知見には、以下のものが含まれていた。(i)ALK(-)ALCLは、別個のエンティティであり(後にゲノムデータ及び変異データの両方によって独立してサポートされた知見である)24~27、PTCL-NOSの11%を、このエンティティとして再分類することができ、これは抗CD30療法であるブレンツキシマブベドチンに対して非常に応答性である(表2)。(ii)ENKTLは、NK及びγδ-T細胞サブタイプへと細分することができ10、12、PTCL-NOSの約9%を、γδ-PTCL(活性化STAT5B変異及びJAK阻害剤に対する感度を含有するサブタイプ28)として再分類することができる10。同様に重要なことに、AuroraキナーゼA又はNOTCH1阻害のいずれかが、NK-リンパ腫細胞株において顕著な細胞傷害性を誘導することが示された12。(iii)AITL予後は、腫瘍微小環境(すなわち、B細胞、樹状細胞、及び単球細胞含有量)に非常に依存し、最も好ましいシグネチャを有する患者四分位数は、55%の5年全生存期間(OS)を有していたが、最も好ましくない四分位数のOSは、わずか15%であった10、11
【0103】
B.3.PTCL-NOS内の異なるサブグループの特定: PTCL-NOSは、現在の組織病理学的方法で診断されたPTCLの最大の部分であり、現在、転写因子GATA3(約33%)又はTBX21(約49%)のいずれかの高発現、及びそれらの標的遺伝子の多く10によって特徴付けられる2つの主要な分子サブタイプに分けることができる(図2A)。GATA3の高発現を有する症例は、より不良な臨床転帰を示す(図2B10
【0104】
B.4.変異分析は分子分類を交差検証する。90を超えるPTCL症例の本願発明者らの変異分析は、(PTCL-NOSから)GEP分類又は再分類されたAITLにおけるIDH2R172変異の排他的な存在29、30、並びにCD28及びRHOAG17V変異の優先的な発生を示した31。対照的に、JAK1及びSTAT3変異は、ALK(-)ALCLにおいてより優勢であり26、STAT5B変異は、γδ-PTCLにおいて頻繁である28。これらの観察は、分子分類の妥当性を裏付けるものであり、これらの変異は、分子分類子の性能を評価するための独立したマーカーを提供する。
【0105】
B.5.FFPE組織におけるGEPシグネチャ: FFPE組織は、GEPアッセイに十分な品質のRNAを産生しない可能性があるという懸念が生じている。本願発明者らは、発現アレイを用いてFFPE組織から得られたGEPシグネチャが、DLBCLを強固に下位分類することができることを示した19。加えて、本願発明者らは、2つの非アレイプラットフォームである定量的ヌクレアーゼ保護アッセイ(HTG Molecular Diagnostics,Inc.)22、32及びnCounter技術20、23、33(NanoString Technologies)を評価し、アーカイブDLBCL FFPE標本においてシグネチャを測定する実現可能性を示した。更に、産業co-PIであるDr.MorrisとBrian Z.Ring,PhDは、現在の提案における主要な産業生物情報学者であり、RNA-seqを用いてトリプルネガティブ乳がんFFPE標本のGEPを行い、それぞれが臨床管理に関連する6個の分子TNBCサブタイプを特定する市販のInsight TNBCtype(商標)101遺伝子アッセイを開発した34
【0106】
B.6.遺伝子シグネチャは、より小さいパネルへと精緻化することができる: Drs.Chan,Iqbal及び共同研究者らは、彼らの以前のアレイ研究から、PTCL診断及び予後の最も強力な予測子として345個の遺伝子を選定した10~12。ここで、本願発明者らは、この遺伝子リストを更に精緻化して、より小さな遺伝子数を有する分類子を構築する。図3は、15~20個のより小さなパネルを使用して、2つのPTCLサブタイプを区別する際にエラー率に有意な変化がないことを示す計算を示す。
【0107】
B.7.FFPE組織をプロファイリングするためのNanoString Technologiesプラットフォーム: 本願発明者らは、FF標本由来のシグネチャを、NanoString nCounterシステム:「Lymph2Cx」シグネチャを使用して、DLBCL分類のためのFFPE組織に対して15遺伝子セットまで減少させることができ20、23図4A)、このアッセイを複数の研究所で高い再現性で実施することができたことを示した(図4B)。Lymph2Cxアッセイは、近年、ABC-DLBCLについてのR-CHOP+レナリドミドを試験する現在の第III相のROBUST試験(Celgene;ClinicalTrials.gov ID:NCT02285062)において、FDA評価のためのCDxとして選択した。Drs.Chan,Iqbal及びそのLLMPP同僚によるLymph2Cxの開発は、標準化され、検証された臨床診断及び予後シグネチャの作成を確実にするために、本明細書で提案されるアッセイのために複製される。成功の可能性は、本願発明者らの分子診断コンサルティング会社であるInsight Genetics,Inc.(以下に記載されるように、目的2aにおいて行われる検証研究に参加する)とともに、企業パートナーであるHealthChart LLCにおけるコア能力及び強みを活用することによって、更に増強される。
【0108】
C.アプローチ/特定の目的
技術用語/統計的考察に関する注記: 本文全体で、転写産物は、Affymetrix U133アレイでは「プローブセット」、NanoStringプラットフォームでは「コードセット」と称される。「訓練セット」は、U133アレイで分析されたFF標本からの対応するGEPデータが利用可能である症例から構成される。「検証セット」は、ロックダウンされたアルゴリズムが評価される、非重複症例から構成される。これらのセットに含まれる症例の最終的な数、並びにこのプロジェクトにおける全ての他の統計計画及び分析は、1993年以来、薬学及び生物工学部門において広範に研究されてきた生物統計会社であるWu Consulting,Inc.によって行われる(www.wuconsulting.com;レターを参照されたい)。
【0109】
目的1: 低減された転写産物のセットを特定し、既存の「学術的な」診断及び予後PTCLシグネチャを複製することができる新しいモデルを作製すること。
概要。 この第I相のSTTR提案の包括的な目標は、発現アレイにより分析された新鮮な凍結標本を使用して開発された学術的なPTCL診断/予後GEPシグネチャを、Nanostring nCounterプラットフォームにより分析されたFFPE標本に適用可能な最適化されたロックダウンシグネチャに移行させることである。現在のシグネチャ10は、必要とされるものよりも大きく、臨床アッセイ開発にとって非実用的かつ非経済的であろう。したがって、本願発明者らの初期の研究(目的1)は、DLBCLについてのLymph2Cxアッセイを開発するために成功裏に使用された同じ線形モデル方法論を使用して、診断セットを可能な限り最小の遺伝子に減少させる20。しかしながら、これに加えて、本願発明者らは、最小限の遺伝子を使用して強固なモデルを作成する際の成功を確実にするのを助けるために、相補的な手法(例えば、本願発明者らが以前に使用したような重心ベースのモデル)を探索する34
【0110】
成果物: 最適化された商業的に適用可能なPTCL分類モデルの導出のために使用される、低減された遺伝子セットの作成。
【0111】
目的1a: 各PTCLエンティティの最適な区別のために必要とされる低減された転写産物のセットを特定する。
FFPE標本についての分析前考察: 本願発明者らは、同じ症例からのFFPE組織(n=88)を分析するために、NanoStringコードセットを使用して得られたデータに対して、DLBCLについてU133アレイを使用して特定された667個の診断及び予後遺伝子の性能を以前に比較した。図5Aは、これらの転写産物におけるコードセット対プローブセットの間の相関を示す。ほとんどの遺伝子は、0.75の相関中央値と非常によく相関しているが、いくつかは、非常に不十分にしか機能しない。本願発明者らは、このDLBCL遺伝子セット及び本願発明者らの学術的なPTCLシグネチャの両方に存在する40個の遺伝子の相関を具体的に調べ、この2つのプラットフォーム間で0.76の相関を観察した(図5B)。本願発明者らは、本願発明者らのPTCLシグネチャにおける残りの遺伝子についても同様の相関が当てはまると予想し、バイナリモデルにおける各サブタイプの区別には、わずか約15~20個の遺伝子で十分であると仮定すると(図3)、本願発明者らのマイクロアレイ研究10~12において特定された345個の遺伝子からの十分な数の転写産物を得て、遺伝子数が著しく減少したモデルを構築するはずである。
【0112】
パワー計算: これらの研究は、アレイを使用して以前に特性決定された対応するFF試料からのデータと比較して、nCounterプラットフォームでのFFPE標本からのRNAにおけるコードセットの性能を決定することのみを求めるため、目的1aについてのマッチしたFF及びFFPE PTCL症例の必要数は、比較的少ない。本願発明者らは、標本とプラットフォームタイプとの間の相関が0.80である性能の良い転写産物の相関を、95%の確率で0.68~0.88の間に拘束し、また、相関が0.4である性能の悪い転写産物の相関を0.155~0.60に拘束して、性能の良い転写産物と性能の悪い転写産物とを容易に区別できるようにするためには、60個の試料で十分であると予想する。この試料サイズはまた、典型的な試料について、不適切な調整に起因するエラーが、FF標本モデリングとFFPE標本モデリングとの間のノイズに起因するエラーの5分の1未満であるように、適切なスケーリング及び付加的な調整を可能にする。
【0113】
目的1b: PTCLエンティティを区別するためにFFPE組織に適用することができる診断及び予後シグネチャを精緻化する。
FFPE組織/NanoStringアッセイ内の遺伝子シグネチャ予測子の反復発生のための方法: 本願発明者らの元々のFF RNA PTCLシグネチャは、試料をPTCL分子サブタイプに分割するカットポイントのセットとともに、各遺伝子の区別能に基づく個々の重みを有する発現値の線形結合から構成されるモデルスコアからなる10~12。本願発明者らは、U133アレイで分析されたFF PTCL標本及びNanoStringプラットフォームで分析されたマッチしたFFPE組織を用いて「訓練セット」を生成する。この訓練セットは、FF組織ベースのモデルにおいて使用される任意の所与のAffymetrixプローブセットと、FFPE標本での対応するNanoStringコードセットとの間の相関を正確に推定する。この分析は、プラットフォームの変化が、発現推定値にノイズを導入する程度を示し、したがって、特定の遺伝子がモデルにおける予測能力の減少を示すために重みを下げられるべき程度、又は完全に排除されるべき程度を示す。第2に、重み付けされたスコアが生成されると、訓練セットを使用して、適切なカットポイントを決定するために最終モデルスコアのセンタリング及びダイナミックレンジの変化を推定する。これにより、FFPE試料/NanoStringアッセイでのモデルの平均及びSDを推定し、その結果を、マッチした試料についてのFF標本/アレイモデルの平均及びSDと比較することによって、容易に達成されるはずである。これらの目標を満たすために、必要とされる訓練セットは、120症例であると推定される(図6)。
【0114】
PTCLサブタイプ分類及び予後判定のためのアルゴリズム開発: サブタイプ分類のための詳細な方法論は、B細胞リンパ腫20、23、35~40及びPTCL10~12について本願発明者らのチームによって以前に記載されている。簡単に説明すると、現在の研究では、一連の4個のバイナリ予測子を使用して、PTCL-NOSから4個の個々のサブタイプAITL、ALCL、ATLL及びENKTLを区別する。これらの予測子についての結果に基づいて、本願発明者らは、標本を6個の可能なカテゴリー(AITL、ALCL、ATLL、ENKTL、PTCL-NOS、又は不確定)のうちの1つに分類する(表3)。「不確定」試料は、十分に定義されたPTCLサブタイプのうちの2つ以上の特徴を有し、本願発明者らの以前の研究に基づいて10~12、不確定症例は、試料の非常に小さな割合(1~2%)であるはずである。次いで、PTCL-NOS症例は、GATA3高サブグループ及びTBX21高サブグループへと分離され、ENKTLはまた、NK及びガンマ/デルタT細胞系統へと細分される。以前に定義されたAITL予後サブグループ10、11は、診断シグネチャについて記載された方法論を用いて変換される。本願発明者らは、十分に機能するコードセットを特定し、モデルスコアを最良に再現するようにそれぞれの重みを調整して、患者を、最大の生存期間区別を示すサブグループに分割する。予後モデルが強固であることを確実にするために、本願発明者らは、0.05未満の片側p値で生存期間を区別することを示すことができる場合にのみ、ロックダウン及び検証に進む。
【0115】
(表3)サブタイプ分析のための段階的バイナリ分類スキーム。
【0116】
-試料サイズの考察: プロジェクトのこの段階のために、本願発明者らは、追加の新しい試料を収集して、対になったFF及びFFPE標本の総数を120症例まで上げることを提案する(20例のAITL、10例のALK(+)ALCL、10例のALK(-)ALCL、20例のATLL、20例のENKTL、20例のGATA3 PTCL及び20例のTBX21 PTCL)。この患者数を用いて、本願発明者らは、十分に測定された遺伝子(r>0.8)のプラットフォームの変化によって導入されるノイズを、95%の信頼度でその真の値の12%以内まで推定することができるはずである。本願発明者らのFFPEモデルスコアをそれらの凍結対応物に対して95%の信頼度で正規化するために必要なスケーリング及び平均シフトの推定値は、推定モデル閾値とそれらの最適化値との間の差が、プラットフォームの変化に起因する個々の試料の予測ノイズの20%未満であることを示唆する。更に、各バイナリ区別についての各サブタイプの20個の試料はまた、推定モデルカットポイントとそれらの最適化値との間の差が、95%の信頼度で、個々の試料の変動性のわずか12%であるように、本願発明者らのモデルスコアをそれらの凍結対応物に対して正規化することを可能にする。シミュレーションは、この程度の不正確さによって、95%の信頼度で、無限数の試料に基づいて同様のNanoStringモデルが使用される場合に、それらがどのように予測されるかとは異なって予測される試料が最大4%であることを示唆する。
【0117】
潜在的な問題及び代替的なアプローチ: 再分類: 不一致を説明することができるFF組織とFFPE組織との間の形態学的差異について、不一致の症例を再検査する10、20、23。分子分類は、特定のサブタイプにおいて固有であるか、又は濃縮された体細胞変異及び/又はDNAコピー数変化の分析によって、交差検証される10~12、24~31。臨床転帰は、予後シグネチャの検証として役立つ。分類モデル: 考慮されるであろう多くの追加の分類モデルが存在する(例えば、類似の発現に基づく市販の診断アッセイを開発するのに成功しつつ、本願発明者らが以前に使用した重心に基づくモデル34、41)。しかしながら、本願発明者らのPTCLシグネチャは、線形モデルを使用して、FF組織において試験され、検証されており、本願発明者らは、他の研究18、42において示されているように、FFPE組織における同じモデルの強固性を予測する。モデルにおける遺伝子の数: 現在の「学術的」シグネチャは、345個の遺伝子を含有する。本願発明者らの予備的なバイオインフォマティクス研究は、シグネチャ全体について合計50~60個、又はおそらくそれより少ない転写産物の減少が容易に可能であることを示唆する。注目すべきことに、NanoStringプラットフォームは、1回の試験で最大800個の転写産物をアッセイすることができる。
【0118】
特定の目的2: FFPE標本の分析のためのNanoString nCounterプラットフォームに対する精緻化された診断及び予後PTCL遺伝子シグネチャセットの適用可能性を確認する。
概要: 目的2の包括的な目標は、精緻化された診断及び予後シグネチャが、強固であり、再現可能であり、第II相の商業的開発への移行の準備ができていることを示すことである。LLMPPコンソーシアムは、Affymetrixプラットフォームで試行される凍結材料の試料交換中の低い研究所間変動性を示しており(図7)、このことは、SOPを開発し、試験場所全体にわたって再現性のある結果を得る能力を示している。ここで、本願発明者らは、アッセイを商業的に前進させるために、NanoStringプラットフォームでFFPE標本を用いて本願発明者らのPTCLシグネチャの再現性を確認するために同様の研究を行う。
【0119】
成果物: 訓練コホート及び研究所間の研究結果に基づく最適化されたPTCLシグネチャのロックダウン(目的2a)、第II相の開発への前進のためのロックダウンシグネチャの適合性を確認する検証コホート結果(目的2b)。
【0120】
目的2a: ロックダウン診断及び予後PTCL遺伝子シグネチャを作成し、研究所間の再現性を評価する。
本願発明者らは、訓練セットと同じサブタイプ分布を有する一連の非重複のPTCL症例(約100)を使用して、本願発明者らの精緻化された診断及び予後シグネチャを評価する。代表的なFFPEブロックからの連続スクロールは、本発明者らの訓練セット研究(目的1b)から作成された作業「ロックダウン」標準操作手順(SOP)を使用して、盲検で評価される。アッセイは、UNMC(Dr.Timothy Greiner)、City of Hope(Dr.Raju Pillai)、及びコンサルティング商業CLIAラボとともにHealthChart、Insight Molecular Labs(Drs.Steve Morris及びDave Hout-www.insightgenetics.com;レターを参照されたい)の診断研究所で行われる。
【0121】
統計的考察: 本願発明者らは、LLMPPによって行われた初期の研究10~12の一部であった試料の一部を再分析する(しかし、目的1において研究された症例とは別個である)。比較的少数の標本(約100)では、所望の統計的基準でFFPEモデルの全ての単一の性能パラメータを決定的に確認することはできない(第I相の資金供給に固有の制限に起因する)。むしろ、本願発明者らは、FF/アレイアッセイからFFPE/nCounterプラットフォームへのABC DLBCL対GCB DLBCLサブタイプ決定シグネチャの最適化及び移行に関与する以前のLLMPP研究20、21を模倣しようと試み、サブタイプ決定の全体的な忠実性を確認するために、訓練及び検証セットのために適度な数を使用した(それぞれ51症例及び68症例)。このアプローチは、Lymph2Cxアッセイのフォローアップ研究において成功したことがわかっている。コールは、ゴールドスタンダードFF/アレイアッセイと比較して、49回の反復生検の96%及び83個のFFPE標本の100%で一致しており、決定的なことに、誤分類(ABC-DLBCLをGCB-DLBCLに、又はその逆)は観察されなかった21。PTCLにおけるFFPE組織モデルの予測能力を推定するために、本願発明者らは、交差検証ステップの一部としてモデルにおける全ての重み及び閾値の選択を含む、一つ抜き交差検証を用いてその性能を評価する。
【0122】
分析計画: FF/マイクロアレイ診断は、ゴールドスタンダードであると考えられ、正確さ、精度、感度及び特異性は、アレイ結果との比較に基づく。アッセイ結果は、Drs.George Wright(NCI Biometric Research Program)及びBrian Ring(HealthChart LLC)に提供され、そこで、症例の分類を独立して決定する。再現性分析のために、本願発明者らは、3つの研究所の場所からの最終的予測分類、及びカットポイントからのそれらの距離に対するモデルスコア間の一致を比較して、予測再現性のより正確な推定値を提供する。本願発明者らの以前の経験に基づいて、本願発明者らは、NanoStringでのモデルが、場所間で非常に再現可能であり、一般に0.99を超える相関を有することを見出している20、21。したがって、本願発明者らは、高い目標値を設定し、100個の試料が、各々のモデルについて99%のパワーでこの基準を達成するのに十分であるはずと推定する。
【0123】
目的2b: 第II相のアッセイ移行のための「ロックされた」診断/予後シグネチャを検証する。
目的2bの目標は、ロックされたアッセイが、アーカイブ材料を使用して複数の施設の研究所で臨床的に容易に適用され得ることを示すこと、また、必要な場合、アッセイの最終的なトラブルシューティングを提供して、第II相の開発のためのその準備を確実にすることである。アーカイブFFPE PTCL標本のコホート(約100~120症例、各々の診断及び予後サブタイプの20症例を含むため)が、世界中の研究所から選択される(治験調整医師からのレターを参照されたい)。これらの症例では、Affymetrix発現アレイ研究が実施されていないため、直接的な比較は実行可能ではなく、ロックされた態様及びSOPを使用して、複数の研究所にわたる再現性、信頼性、及び問題解決(必要な場合)の運用面の方により重点が置かれる。加えて、将来の通常の検査のためにSOPを精緻化するために留意される、異なる研究所全体での品質管理測定値に重点が置かれる。
【0124】
実施例2
アッセイを開発し、最適化するための適切な標本を得るための計画
本願発明者らは、本願発明者らの以前のGEP研究から約70のPTCL症例を集めた10。代表的な腫瘍切片を切断し、代表的かつ適切な組織の存在を確認し、PTCL症例の診断を検証する必要があるため、予備選択は重要なステップである。これらの症例は、Drs.Chan及びAmadorによって組織された病理検査を受けている。これらは、コンセンサス初期診断及び分子シグネチャ診断を伴う症例を含んでいた。これらのうち、本願発明者らは、AITL(n=18)、ALCL(n=15)、ENKTL(n=4)、PTCL-NOS(n=30)のコンセンサス診断を有している。GATA3サブグループとTBX21サブグループとの間を区別するのに役立ち得る染色を含む、特性決定又は下位分類のために現在使用されている追加の免疫染色を、症例に対して行った(図8)。本願発明者らは、PTCL-NOSをGATA3及びTBX21サブグループへと下位分類することができる、免疫組織化学に基づくアルゴリズムを開発した。本願発明者らは、このIHCアルゴリズムを精緻化し続け、開発された場合に遺伝子シグネチャ診断を用いて、その症例を交差検証する。
【0125】
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織からのDNA/RNAの単離の最適化:
組織標本は、一般にホルマリン(ホルムアルデヒド)による固定化によって調製されるため、生体分子の架橋及び付加物を生じさせ、ハイブリダイゼーション手順を伴う分子分析からのシグナルを減少させる。一般に、市販のキット(例えば、Qiagen AllPrep DNA/RNA FFPEキット)を使用するFFPTE組織からのDNA/RNAの単離は、Tris緩衝液中、高温(>80℃)で数時間加熱することを伴い、これによりRNA及びDNAを損傷する。本願発明者らは、以前の研究26において、nCounterアッセイのためのDNA/RNAの単離のためにこれらのキットを日常的に使用しており、良好な成功を収めている。本願発明者らは、本願発明者らの遡及的シリーズからのいくつかのFFPE症例が10年を超えると予想しているため、本願発明者らの分析アッセイは、nCounterアッセイのための反応混合物内の全RNA含有量の少なくとも40%が200bp長を超えることを必要とする。したがって、本願発明者らは、より低い温度及びより短いインキュベーション時間でRNA及びDNAからホルムアルデヒド付加物を除去する水溶性二官能性触媒(アントラニレート及びホスファニレート)法を試験した(Karmaker et.al Nat Chem.2015;7(9):752-758)、https://celldatasci.com/products/RNAstorm/で入手可能。このプロトコルの有用性を試験するために、本願発明者らは、1988~2017(非必須症例)の代表的なFFPEブロックの10μmスクロール(2×)を使用し、Qiagen FFPE単離キットと比較した。これらのキットからの総RNA収量は、これらの症例において同様の範囲であったが、より古いブロックは、比較的より低い収量を示した(図9)。
【0126】
TapeStation-2200を使用したRNA分子のサイズ分布の分析は、Stromキットが、より古い(10年を超える)症例で、Qiagen Kitよりも比較的良好な(より大きいサイズの)RNA分子を生じたことを示し、一方で、2014年のFFPEブロックからの症例では、より穏やかな改善があった(図10A及び10B)。したがって、優先事項は、初期段階におけるnCounterアッセイについて、2010年以降の症例を使用することである。結論として、Qiagenキットからの単離手順は、最近の症例(5年未満)に対しては実行可能な方法であり得るが、一方、10年を超える症例が、特にENKTLのような稀なエンティティにおいて最適化のために必要とされる場合、Stormキット単離が、RNA/DNAの単離のための有効な代替法であり得る。
【0127】
複数分析物アッセイのための、Affymetrix ProbeセットからのGEPデータの、NanoStringからのnCounterコードセットへの変換:
本願発明者らの主な目的は、NanoString技術を使用して、新鮮な凍結組織からのGEPシグネチャをFFPE組織に変換することである。コードセット設計は高価であり、バイオインフォマティクス的に困難であるため、本願発明者らは、本願発明者らの以前の研究から本願発明者らの遺伝子発現シグネチャを精緻化し、各診断シグネチャにおいて、より多くの遺伝子を数で少なくとも10%追加し、したがって、コードセットの一部が、診断シグネチャの正確さを変化させることなくFFPE RNAにおいて最適に機能しない場合にはシグネチャの精緻化に利用可能な十分な数の遺伝子を有している(図11)。コードセットは、nDesign(商標)Gatewayを使用して、NanoStringからのバイオインフォマティクス担当者とともに、遺伝子リストの守秘義務についての契約UNeMEdの下で設計された。この設計は、NKとガンマデルタサブグループ(n=50)とを区別するために、ハウスキーピング遺伝子(n=50)、AITL診断(n=50)、予後(n=49)、及びPTCL-NOSサブグループ(n=50)コードセット、並びにALCLを分類するためのコードセット(ALK+ALCL対ALK-ALCLを含む、n=100)を含む合計416のコードセットを含む。本願発明者らは、これらの遺伝子についてのこれらのコードセットを受け取り、数週間でFFPE症例に対するアッセイを開始する。本願発明者らは、いくつかのRNAは、固定化後の研究に不適切であり、特に、より少ないシグネチャが使用される場合には、除外される必要があると予想する。したがって、本願発明者らは、nCounterプラットフォームを使用してシグナル強度を比較するために、10個の新鮮な凍結RNA及び対応するFFPETに対して初期アッセイを行い、0.8以上の相関を有する転写産物のみを更なる評価のために選択する。
【0128】
本明細書に開示される主題は、本発明の特徴、利益、及び利点の更なる説明によって、並びに本明細書に添付され、参照により本明細書に組み込まれる補遺に記載されるような具体的であるが非限定的な例によって更に説明される。
【0129】
本明細書及び補遺に言及されている全ての刊行物、特許、及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物、特許、又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0130】
本明細書に開示される主題の様々な詳細は、本明細書に開示される主題の範囲から逸脱することなく変更され得ることが理解されるであろう。更に、前述の説明は、例示のみを目的としており、限定を目的としていない。
【0131】
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【0132】
実施例3
日常的な臨床診療における末梢T細胞リンパ腫エンティティの正確な診断のための遺伝子発現シグネチャ
要約
目的
末梢T細胞リンパ腫(PTCL)は、多数の診断及び治療の課題を有する不均一な臨床病理学的エンティティを含む。本願発明者らは、以前に、一般的なPTCLエンティティを区別する強固なトランスクリプトームシグネチャを定義し、2つの新規な生物学的及び予後PTCL-NOSサブタイプ(PTCL-TBX21及びPTCL-GATA3)を特定した。本願発明者らは、ホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPE)組織を使用して、遺伝子発現に基づく下位分類を統合して、PTCL診断における正確さ及び精度を改善することを目的とした。
【0133】
方法
本願発明者らは、遺伝子発現プロファイリング(GEP)データを有する十分に特性決定されたPTCL訓練コホート(n=105)を集め、HG-U133plus2プラットフォーム(Affymetrix,Inc)で新鮮な凍結(FF)組織を使用して診断シグネチャを導出し、その後、デジタルGEPプラットフォーム(NanoString,Inc)において、マッチしたFFPE組織を使用して検証した。統計的フィルタリングアプローチを適用してトランスクリプトームシグネチャを精緻化し、次いで、厳密な病理検査及び補助アッセイにより別のPTCLコホート(n=140)において検証した。
【0134】
結果
訓練コホートでは、FFPE組織における精緻化されたトランスクリプトーム分類子は、FFにより導出された診断モデルと比較して、PTCL下位分類について高い感度(80%を超える)、特異性(95%を超える)、及び正確さ(94%を超える)を示し、3つの独立した研究所間で高い再現性を示した。検証コホートでは、転写分類子は、症例の85%(n=119)において、3名の専門血液病理学者によって与えられた病理診断と一致し、6%(n=8)で分子シグネチャとの「ボーダーラインの関連」を示し、8%(n=11)で不一致であった。分類子は、臨床所見によって検証された2つの症例において、病理診断を改善した。不一致であった11症例のうち、4例は、全体的なトランスクリプトーム及び形態学的特徴に基づく病理診断を超える改善を提供し得る分子分類を有していた。分子下位分類は、ウイルス病因因子及び転座パートナーを含むPTCLサブタイプの包括的な分子特性決定を提供した。
【0135】
結論
本願発明者らは、従来の病理診断よりも高い精度及び均一性を有する臨床診療への転換を容易にする、PTCL下位分類のための新規トランスクリプトームアプローチを開発した。
【0136】
内容の概要
主要な目的
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織を使用して、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)の分類のためのデジタル遺伝子発現シグネチャの役割を評価すること、及び日常的な臨床診療に適用可能な非常に正確かつ再現可能な診断アッセイを開発すること。
【0137】
生成された知識
転写産物のデジタル定量化を使用して、本願発明者らは、PTCL-NOS内の2つの新規な生物学的及び診断サブグループを含む、WHO分類に従って共通のPTCLサブタイプを区別することができる、強固なトランスクリプトームシグネチャを定義した。本願発明者らは、分類アルゴリズムを精緻化し、独立したPTCLコホートにおいて検証された強固な診断アッセイのためのアッセイ手順を標準化した。このアッセイは、施設間で再現性があり、高い分類精度を示した。
【0138】
関連性
デジタルトランスクリプトームアッセイは、FFPE組織からmRNAを使用してPTCLの強固な分子分類をもたらし、これにより、従来の病理よりも正確かつ均一な診断を提供する臨床試験への変換を容易にする。この分子アッセイはまた、調査研究及び臨床試験のための症例のより良好な層別化を容易にする。
【0139】
序論
末梢T細胞リンパ腫(PTCL)は、非ホジキンリンパ腫(NHL)の約10~15%に相当し、専門血液病理学者であっても、診断には多くの課題がある2~4。World Health Organization(WHO)の分類は、25を超える異なるPTCLのサブタイプを定義しており、地理的変動を伴う最も頻繁なエンティティとして、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、成人T細胞白血病/リンパ種(ATLL)、及び鼻型の結節外NK/T細胞リンパ腫(ENKTCL)を有する。しかしながら、PTCLの30%は、WHO分類における特定のエンティティのいずれにも分類することができず、これらは、PTCL非特定型(PTCL-NOS)として分類される6、7。腫瘍を定義する異常、例えば、ALK陽性ALCL(ALK+ ALCL)におけるALK遺伝子を伴う転座、ATLLにおけるヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV-1)感染、ENKTCLにおけるEBV陽性、及びAITLにおけるIDH2R172変異は、PTCLにおいて一般的に稀である。PTCLは、一般に、現在の療法では予後不良であり、より集中的なレジメンが優れていることは証明されていない10。しかしながら、新規な標的化療法が現在試験されており、いくつかの注目すべき結果が得られている11、12
【0140】
多くの機能的サブセット及び機能的可塑性を有するT細胞生物学の複雑さに起因して、B細胞リンパ腫と比較して、PTCLの下位分類は、より困難である。遺伝子発現プロファイリング(GEP)は、新規の生物学的サブタイプの描写及びいくつかのB-NHLにおける発がん経路の特定に役立ってきた13~18。PTCLにおける同様のアプローチは、共通のPTCLエンティティについての強固な分子分類子をもたらし、PTCL-NOS内の2つの生物学的及び診断サブグループ(PTCL-GATA3及びPTCL-TBX21)を特定した19~21。しかしながら、これらの研究は、トランスクリプトームワイドアレイを用いて新鮮な凍結(FF)試料に対して行われたものであり、したがって、その適用は、日常的な臨床診療に限定されている22、23。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料は、日常的な診断において広く使用されているが、ホルマリン固定は、RNA及びDNAのフラグメント化、架橋、及び化学修飾を引き起こす24。したがって、本願発明者らの非常に正確なRNAベースのPTCL診断シグネチャをFFPE組織に効果的に変換することは困難であるが、広範な臨床適用を有するアッセイを実施するために必須である25。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫26~28におけるように、RNAのデジタル定量化を使用して、本願発明者らは、新鮮な凍結RNAからの本願発明者らのPTCL診断シグネチャを、主要なPTCLエンティティにわたる正確な診断のための単一の技術的プラットフォームに統合した19~21。本願発明者らは、「訓練」PTCLコホート(n=105)を使用し、「独立」PTCLコホート(n=140)において、及びPTCL下位分類のための単一プラットフォーム上で調査された十分に特性決定された最大数の症例の中で検証した。いくつかのウイルス転写産物を加えて診断の正確さを改善し、本願発明者らは、PTCL-GATA3及びPTCL-TBX21の新規な分子生物学的サブタイプを含むPTCLエンティティを区別する際に高い感度、特異性、及び正確さを達成した診断アルゴリズムを報告する20、21
【0141】
材料及び方法
患者情報
本願発明者らは、複数の施設からの249の診断PTCL症例を含んでおり、これを、不良なRNA品質を有する4症例を除外した後、マッチしたFF及びFFPE試料を有する以前に生成されたGEP19~21を有する訓練コホート(105症例)と、以前に分析されていない検証コホート(140症例)とに分けた(表4及び5並びに図12A)。症例の基本的な臨床的特徴及び病理学的特徴を表6に示す。PTCL症例の包含基準及び除外基準は、補足のセクションにおいて詳述される。
【0142】
(表4)訓練コホートにおけるPTCL診断アルゴリズムの性能。
【0143】
(表5)検証コホートにおけるPTCL診断アルゴリズムの性能。
【0144】
(表6)訓練及び検証コホート症例並びに除外症例における特徴。
AITL、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、ALCL、未分化大細胞リンパ腫、ATLL、成人T細胞白血病/リンパ腫、ENKTCL、結節外NK/T細胞リンパ腫、PTCL-NOS、末梢T細胞リンパ腫非特定型、PTCL-TFH、TFH表現型を伴う末梢T細胞リンパ腫、RH、反応性過形成、NA:利用可能ではない。
【0145】
PTCLコホートの組織病理学/免疫形態学的特徴
PTCL症例は、現在のWHO分類に従って中心的に検査され、診断された。検証コホートは、3名の血液病理学者(CA、DDW、WCC)によって、必要に応じて包括的な免疫染色パネル及びTCRg遺伝子再配列分析を用いて徹底的に再評価された。診断に関して全員一致の同意があった場合に、コンセンサス診断に達した。
【0146】
PTCL下位分類のためのRNA抽出及びデジタル遺伝子発現
RNA抽出プロトコル、品質管理手段、nCounter(登録商標)アッセイ、データ処理、交差検証、及び再現性評価についての詳細は、補足セクション及び図12Aにある。データ分析及び正規化は、プロトコルが必要に応じて患者試料を処理するのに適するように、バッチではなく個別に試料を処理するように設計された。クラス予測は、各試料についての最終分類コールのために組み合わされた一連のバイナリ比較に基づいていた(図12A及び図17)。詳細な材料及び方法が本明細書で提供される。
【0147】
生存分析
生存データを、Rにおける生存期間(survival)、サーブマイナー(survminer)、及びコインパッケージ(coin package)を使用して分析し、本明細書に詳述した。
【0148】
結果
「訓練」コホート及び「検証」コホートにおける患者の特徴
訓練コホート(n=105)は、FFにおいて以前に生成したGEPデータ19~21及びマッチしたFFPE組織を有しており、これを使用してnCounter(登録商標)プラットフォームのための分類子遺伝子を選択した。新鮮した凍結トランスクリプトームデータを有していないPTCL「検証」コホート(n=140)は、現在のWHO診断基準を使用して、3名の専門血液病理学者によって厳密に診断された(図12A並びに表4及び5)。注目すべきことに、PTCL-NOS症例は、結節性PTCL-TFH症例の除外についてTFHマーカーを用いて評価され、その後、最近公開されたIHCアルゴリズム29を用いてPTCL-GATA3及びPTCL-TBX21に下位分類された。
【0149】
訓練コホート及び検証コホートの臨床病理学的特徴を表6に要約している。検証コホートと訓練コホートとの間で性別、年齢、及びOSに有意差はなかった(図12C)。生存者についてのフォローアップの中央値は、利用可能な生存データを有する患者について3.5年(0.01~24年の範囲)であった。ALK+ ALCL症例は、公開された研究と一致して、他のエンティティよりも優れた転帰を示した(図12D~E)2、21
【0150】
FFPE組織のためのトランスクリプトームシグネチャの開発
FFPE組織ブロックを、十分な腫瘍組織の存在に基づいて選択し、RNA品質を補足S1に示されるように評価した。2つのプラットフォーム(HG-U133plus2(Affymetrix,Inc)対nCounter(登録商標)プラットフォームの間で評価されたトランスクリプトームシグネチャは、シグネチャ特異的遺伝子の大部分(約60%)において高い相関(相関係数r>0.4)を明らかにした(図19A~B)。本願発明者らは、再帰的フィルタリング分析を行い、(3つの転写産物を除く)ピアソン相関を使用して相関係数≦0.4を有する転写産物を除外して、PTCLサブタイプ当たり11~20個の診断用転写産物及び16個のハウスキーピング遺伝子を生成した(図19C~D)。nCounter(登録商標)でのこれらの良好に機能する転写産物の使用は、訓練コホート(n=105)における新鮮な凍結RNA(HG-U133plus 2)又はマッチしたFFPE RNA(nCounter(登録商標),Inc)のいずれにおいても、分類の正確さ、感度、特異性に影響を及ぼさなかった。FFPE試料を用いた分子下位分類は、様々なPTCLサブタイプにわたって、5%未満のエラー率でFFゴールドスタンダードと非常に同等であった。
【0151】
精緻化されたシグネチャを使用するPTCL分類の正確さ及び研究所間の再現性
低減された転写産物シグネチャは、HG-U133 plus2プラットフォームデータにおける分類の正確さを保持した19~21図19C~D)。したがって、低減された診断転写産物は、訓練セットにおけるnCounter(登録商標)アッセイとのその後の比較のための「ゴールドスタンダード」とみなされた(図12B、左パネル)。FFPE訓練コホートの分類は、症例の90%(105例のうちの95例)においてnCounter(登録商標)で反復発生された(表4、5及び図24)。本願発明者らは、PTCL-GATA3とPTCL-TBX21との間の予後の差を観察したが(図19F)、試料の数が少なすぎて統計的有意差に達しなかった。本願発明者らは、診断転写産物のより大きなパネルからより小さなパネルに移行したため、異なるPTCLサブタイプからの7症例を、nCounter(登録商標)プラットフォームで、元々のより大きなパネルに対して低減された転写産物セットを用いて再評価した。それらは、一致した結果を示し、同様の診断の正確さを維持していた(図20)。再現性を評価するために2つの追加のCLIA場所でアッセイを行った場合、本願発明者らは、研究した24のPTCL症例及び観察者間の全てについて、元々の場所での場合と高度に一致した結果及び同じ分類を観察した(図20)。
【0152】
異なるPTCLエンティティ及び検証コホートにわたる精緻化された診断アルゴリズム
診断性能を評価するために、nCounter(登録商標)プラットフォームを用いて得られた分子分類を、独立した検証コホート(n=140)におけるコンセンサス病理診断と比較した。このコホートは、訓練コホートと同様の臨床転帰及びPTCLサブタイプの分布を有していた(図12A、C)。nCounter(登録商標)プラットフォームを用いて得られた分類は、専門の病理学者によって行われた診断と非常に類似しており、検証症例において91%の全体的な一致(140例のうち127例、95%信頼区間(CI)0.85~0.95)があり、以下に示されるように困難なPTCL症例の分類を精緻化した(表4、5及び図25図12B、右パネル;図21)。
【0153】
AITL: 診断シグネチャの平均発現は、汎T-FH遺伝子発現シグネチャと有意に相関していた(すなわち、6個の転写産物はWHOにおいてTFHマーカーとして定義された)(図13A~B)。nCounter(登録商標)によって訓練コホート及び検証コホートにおいてAITLとして分子的に分類された症例は、AITLと一般的に関連する免疫形態学的特徴を示した。以前の研究と一致して、CD20の高発現は、より良好なOSと関連付けられ20、21、30、これは、免疫組織科学を使用して検証された(図13C)。AITL変異スペクトル(すなわち、TET2、DNMT3A、RHOAGI7V、及びIDH2R172)は、利用可能な配列決定データを有する症例の89%において見られた(図13D)。
【0154】
nCounter(登録商標)プラットフォームを使用して、AITLは、訓練コホートにおいて83%の一致(20/24)及び検証コホートにおいて74%(14/19)で分類されたが、一方で、残りの症例(訓練において3例、検証において5例)は、AITLとPTCL-NOSとの間の「ボーダーラインモデルスコア」を示した(表4及び5;図13E図21)。これらの症例は、「閾値又はカットポイント」に基づくAITL分子診断を誤った。再検査により、これらの症例は、古典的AITL免疫形態学的特徴を有することが確認され、変異分析は、図13Dに示されるように、その診断を裏付けており、TET2、RHOAG17V、及びIDH2R172を含む古典的AITL変異スペクトルを有していた。これらの症例は、他のPTCLよりも比較的高いレベルで、AITLよりもわずかに低いAITL診断シグネチャ発現、及びTFHシグネチャのより高い発現を示した。(図13A、F)。予想通り、3つの濾胞性T細胞リンパ腫症例は、全てAITLとして分類された。2つのPTCL-NOS症例は、AITLとして分子的に分類された。これらの症例は、TFHマーカーBCL6及びICOSの限局性陽性を示したが(図13G~I)、結節性PTCL-TFHの基準は満たされなかった。これらの2つの症例(図13F)は、大部分の他のPTCL-NOS症例よりも高いAITLシグネチャ遺伝子及びTFHmRNAシグネチャを明確に発現したが、AITLに一般的に見られる遺伝子における変異(TET2、IDH2R172、RHOAG17V、DNMT3A)は存在しなかった。これらの2つの症例は、実施された免疫染色によって分類されなかったPTCL-TFHを表し得る。
【0155】
ALCLサブタイプ: ALCL対他のPTCLの初期分析は、検証コホートにおいて83%(30/36、95%CI:0.67~0.94)の一致を示し、これは、精緻化されたシグネチャを使用して、訓練コホートと同等であった(26/29、90%、95%CI:0.73~0.98)(図14A)。検証コホート(表4及び5、図14B)は、ALK+ ALCLにおいて90%(18/20)の一致を示し、ALK- ALCLにおいて75%(12/16)の一致を示した。興味深いことに、2つのALK- ALCLは、高いALK+ ALCLシグネチャのために、ALK+ ALCLとして分類されたが、ALK mRNA発現は低く(図14C)、IHCは、ALKタンパク質発現を検出しなかった。予想通り、ALK状態によってALCLに分類された症例は、ALK陽性症例がより良好なOSを有することを示した(図14D)。注目すべきことに、IHCによる強いCD30陽性を有する症例を含むPTCL-NOS症例のいずれも、ALCLに誤って分類されなかった。しかしながら、4つのALCL(2つのALK+ ALCL及び2つのALK- ALCL)は、比較的低いALCLシグネチャ発現を示したが、2つのALK+ ALCLは、高いALKシグネチャを有していた(図14C)。低いALCLシグネチャを有する2つのALK- ALCL症例は、CD30 mRNAを発現せず、これらの症例を分類できなかったことは、不十分なRNA品質又は低い腫瘍含有量に起因し得る(図14E)。これらの知見は、低い診断シグネチャを有する時折現れる症例が、注意深く診断されるべきであることを示唆する。
【0156】
ATLL: ATLL分子シグネチャは、訓練コホートにおいてATLL症例の100%を検出し(7/7、95%CI:0.59~1)、検証コホート症例の83%を検出した(10/12、95%CI:0.52~0.98)。(図15A)。不一致を示す2症例は、ATLL診断シグネチャの境界的な発現を有していたが、両方ともHTLV1 mRNA発現について陽性であることが確認された(すなわち、qPCRによってHBZ)が、一方では、nCounter(登録商標)によって測定されたHBZの発現は、他のATLLよりも低かった(図15B~C)。2つのHTLV1転写産物(HZB及びTAX1)のうち、HZBは、TAXと比較して、ATLL症例においてより高いレベルで一貫して発現され、ATLLシグネチャとの正の相関を示し(図15D~E)、qRT-PCRによって測定されたHBZ発現との有意な相関を示した(図15F)。興味深いことに、検証コホートからの2つのPTCL-NOS症例は、ATLLとして分子的に分類された(図15A)。HZB特異的qPCRを用いたこれらの症例の再評価により、HBZの発現が確認され(図15E)、その後の臨床チャートの検査により、HTLV1についての血清学的陽性及びATLLと適合する臨床所見が示されたが、これは最初の診断時には不明であった。形態学的に、これらの症例は、CD4陽性単形性T細胞リンパ腫からなり、適切な病歴、血液検査、及び血清学的検査が存在しない場合には、PTCL-NOSと誤って診断された図15B)。したがって、これら2つの症例は、ATLLとして再分類された。
【0157】
ENKTCL: ENKTCL分子分類子は、訓練コホートにおいてENKTCL症例の90%(9/10)、検証コホートにおいて95%(21/22)を特定することができた(表4及び5、図15F~G)。症例のサブセットは、他の症例と比較してCD3γ及びCD3δの発現が上昇しており(図15H)、T系統に由来し得る。2つの症例は、現在のWHO分類に従って「原発性EBV陽性結節性T/NK細胞リンパ腫」と診断された。これらの症例は、ENKTCLに似ているが、主に結節性所見を有し、両方とも分子アッセイによってENKTCLとして分類された(図22)。1つの分子的に分類されたENTKCL症例は、ALCL及びENKTCLシグネチャの両方を固有に示したが、EBV転写産物の強い発現を示した(図14I)。
【0158】
2つの新規なPTCL-NOSサブタイプ(PTCL-GATA3及びPTCL-TBX21)の精緻化及び検証。
訓練コホートにおけるPTCL-NOS症例のうち、本願発明者らは、低減された数の転写産物(n=19)を用いて、87%の一致を有する2つの新規分子サブグループ(すなわち、PTCL-GATA3又はPTCL-TBX21)を分離した。検証における残りのPTCL-NOSグループのうち、nCounter(登録商標)プラットフォームを用いて、40%(21/52)がPTCL-GATA3サブタイプとして、52%(27/52)がPTCL-TBX21サブタイプとして分類された(表4及び5、図16A)。この分類は、本願発明者らのIHCアルゴリズム分類との良好な一致を示した(全体的な一致:80%)。本願発明者らのトランスクリプトームシグネチャ分類を更に検証するために、本願発明者らは、これらの2つのグループにおける配列決定データを比較した。本願発明者らは、TET2変異などの遺伝子変化がPTCL-TBX21サブタイプにおいて頻繁であったのに対して、TP53変異は、PTCL-GATA3サブグループにおいて濃縮されたことを観察し、これは、本願発明者らの以前の知見31と一致していた(図16B)。
【0159】
本願発明者らの以前の観察21、29と一致して、細胞傷害性転写産物を発現する症例は、PTCL-TBX21サブタイプにおいて有意に濃縮され(図16C)、PTCL-GATA3サブタイプよりもPTCL-TBX21サブタイプにおいて、より頻繁な細胞傷害性免疫表現型によって検証された(52%対16%、p=0.013、図16C)。平均細胞傷害性CD8+T細胞シグネチャと汎B細胞CD20転写産物との間に逆相関が認められた(図16D)。本願発明者らの以前の観察29と一致して、PTCL-TBX21症例は、細胞傷害性表現型にかかわらず、濃縮された炎症性バックグラウンドを頻繁に有していた(図16E)。PTCL-NOSの臨床転帰は、限られた数の症例においてのみ利用可能であったため、組み合わせコホートは、PTCL-GATA3対PTCL-TBX21として分類された症例に関連するOSが劣っている傾向があった(OS中央値:0.57対1.4年、図16F)。
【0160】
検証コホートから除外されたPTCL-TFH症例の評価
nCounter(登録商標)プラットフォームを使用してPTCL-TFH(n=12)症例を分析し、2例(17%)のみがAITL分子シグネチャとの有意な関連を示したが、4例はAITLとPTCL-NOSとの間のボーダーラインスコアを有し、6例はPTCL-NOSとの明確な関連を示し、PTCL-TBX21症例(n=3)又はPTCL-GATA3(n=3)に類似していた。本願発明者らがTFHシグネチャを具体的に調べた場合、高いAITLシグネチャを有するPTCL-TFH症例はまた、その残りよりも高いTFHシグネチャを示した(図23A~B)。本願発明者らはまた、10症例の反応性過形成を含み、それらのうちのいずれも、アッセイに含まれるPTCLのサブタイプについての診断シグネチャの発現を示さなかった。
【0161】
考察
PTCLの診断は、リンパ腫の中で最も困難なものの1つであり、より多くの場合、結論が出ないか、一貫性がないか、又は不正確な診断が得られる19~21、32、33。近年、新規の治療アプローチが、CD30+PTCL、特にALCLに対するブレンツキシマブ-ベドチン(Brentuximab-Vedotin、BV)34、ALK+ ALCLにおけるクリゾチニブ35、36、ATLLにおけるモガムリズマブ37、AITL又はTFH-PTCLにおけるHDACi及び脱メチル化剤38、並びにおそらくIDH2変異体AITLにおけるエナシデニブ39を含む、PTCLのサブグループにおいて著しい利益を示した。したがって、正確な診断は、患者の治療及び新薬の臨床試験において重要な場合がある40~42。本願発明者らは、PTCLに対して広範なGEP研究を行い、RNAベースの分子診断シグネチャ及び生存の予測因子を構築し、重要な発がん機構を詳細に説明した19~21。これらの知見のいくつかは、改訂された2016年のWHO分類に含まれている。この分子情報を、臨床用途に適したプラットフォームに変換するために25、本願発明者らは、このデジタル定量化技術がFFPE材料に典型的な分解RNAに対してより耐性があるため、新鮮な凍結組織からのGEPデータとよく相関するnCounter(登録商標)プラットフォームを使用して、PTCLにおけるFFPE組織からのRNAを特定するための系統的分析を行った。加えて、本願発明者らは、訓練セットにおいて以前のGEP由来の診断と同等に機能した最小数の転写産物を有する診断トランスクリプトームシグネチャを開発した13~15。分析前評価では、より古い標本のRNA収量及び質(すなわち、DV200>50%)は、RNAstorm(商標)キットを使用して改善された。しかしながら、最近取得されたFFPE組織では、他の単離方法も良好な品質のRNAを提供し得る。加えて、このアッセイは、制限されたRNA量(最小必要量200ng)を用いて行うことができ、これは通常、組織のサイズに応じて、数枚の未染色スライドから得られる。しかしながら、本願発明者らは、コア針生検から抽出されたRNAを使用しても十分な分類を有することができ、これは研究試料の約10%に相当した。3つのCLIA認定研究所にわたる変動性及び再現性の研究所間比較もまた、非常によく相関した。
【0162】
本願発明者らは、検証のための症例に関するGEPデータを有していないため、本願発明者らは、広範なIHC研究及び厳密な検査の後に確実な病理診断を有する症例のみを含めた。所見は、訓練セットの所見と非常に類似しており(図12)、高い感度、特異性、及び正確さを維持していた。いくつかの場合では、シグネチャスコアは、カットオフポイントのすぐ外側にあり、これらは、「ボーダーライン」の症例と考えられた。分子アッセイが遡及的分析で正確な診断を行った少数の症例は、心強い。しかしながら、明白な不一致も観察された。このことは、部分的には、腫瘍含有量及び腫瘍の不均一性などの技術的理由に起因し得るが、いくつかは、最近報告されたALK陽性様ALCLを表し得るいくつかのALK-ALCL症例における強いALKシグネチャなどの、まだ知られていない生物学に関連し得る43。同様に、2つのPTCL-NOSは、AITL及びTFHトランスクリプトミクスシグネチャとの有意な関連を示し、これは、検査すると、TFHマーカー(BCL6、ICOS)の限局性発現を示した。強いTFH発現シグネチャは、これらの症例がPTCL-TFHにより類似しているが、少なくとも2つのTFHマーカーの強い発現の現在の基準を満たさなかったことを示し得る。これらの場合、分子アッセイは、PTCL-NOSとAITLとの間の複雑かつ重複する生物学、及びそれらの境界があまり明確でないことを明らかにした。本願発明者らはまた、EBV及びHTLV1転写産物の添加が、それぞれENTKCL及びATLLにおける分子アッセイの診断性能を増強することを見出した。このアプローチの1つの重要な寄与は、PTCL-GATA3及びPTCL-TBX21症例の強固な定義であり、これらは、最近の遺伝的知見によって裏付けられるように、異なる生物学及び予後を有する31。IHCパネルを使用してGEP分類をシミュレーションすることは可能であるが、染色を最適化し、解釈することは困難である可能性があり、これは、施設間の実質的な変動性を引き起こす可能性がある。ここで報告されたアッセイは、研究所間で非常に再現性があり、したがって、大きな利点を示す。
【0163】
診断シグネチャを最初に定義したGEP研究は、PTCL-TFHの暫定エンティティの定義が正式に本研究に含まれなかった以前に実施された。しかしながら、nCounter(登録商標)アッセイで探索された12のPTCL-TFH症例は、より高い平均AITL及びTFHシグネチャを示し、個々のシグネチャは、Dobayらによる研究44と同様に、AITL又はPTCLサブタイプの分子シグネチャと重複した。これらの探索的研究は、PTCL-TFHが現在定義されているような単一のエンティティである可能性は低く、それがいかに最良に特性決定されるべきかを決定するために更なる評価を必要とすることを示した。同様に、本願発明者らの以前のGEP研究20、21は、PTCL-TBX21サブグループ内の細胞傷害性PTCLバリアントを示した。その観察と一致して、本願発明者らは、PTCL-TBX21における症例の25%が細胞傷害性シグネチャを有することを見出し、IHCによってCD8+表現型との関連を検証した。研究された少数の症例に起因して、このグループの症例についての強固なシグネチャを開発するために更なる調査が必要である。
【0164】
要約すると、本願発明者らは、PTCL診断シグネチャを臨床的に適用可能なアッセイに変換するためのアプローチを記載し、これは、本願発明者らが、PTCLの診断的に困難な分野における一般的及び学術的な病理学者にとって有用なツールであると想定する。加えて、本願発明者らは、それが調査研究のための症例のより良好な定義を容易にし、臨床試験のためのより均一なコホートを確実にすることができると考える。PTCL分類は、発展しつつある領域であり、基礎となる生物学及び利用可能な技術の我々の理解が向上するにつれて、分類を臨床的に関連性のあるものにするために修正が行われる。
【0165】
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【0166】
材料及び方法
患者情報
本願発明者らは、複数の施設からの249の診断PTCL症例を含め、これを、不良なRNA品質を有する4症例を除外した後、次いで、105症例の訓練コホート及び140症例の検証コホートに分けた(表4及び5/図12A)。2つのコホートの基本的な臨床的特徴及び病理学的特徴を表6に示す。訓練コホートは、HG-U133 Plus 2.0 Array13-15(Affymetrix,Santa Clara,CA;アクセッション番号GSE19069)でのFF組織からのRNAを使用して、以前のGEP研究1~3において以前に評価された91症例の「ブリッジングセット」を含んでおり、入手可能な対応するFFPE試料を有していた。加えて、以前のGEP研究1~3には含まれなかった利用可能なHG-U133 Plus 2.0データを有する9例の新規PTCL、及び確定診断を有する5例の十分に特性決定された古典的なENKTCL症例もまた、訓練セットに含まれていた。訓練コホートは、24例のAITL、14例のALK+ ALCL、15例のALK- ALCL、7例のATLL、10例のENKTCL、及び35例のPTCL-NOS(15例のPTCL-GATA3及び20例のPTCL-TBX21)からなっていた。これらを使用して、nCounter(登録商標)プラットフォーム(NanoString Inc、Seattle)でのFFPEにおいても、FF組織で診断的であると以前に特定されたどのRNA転写産物が良好に機能したかを特定した。
【0167】
別個の検証コホートは、GEPでは以前に分析されていないが、適切なFFPE組織が利用可能な、独立した一連の140のPTCL症例からなっていた。このセットは、19例のAITL、20例のALK+ ALCL、16例のALK- ALCL、12例のATLL、22例のENKTCL、及び51例のPTCL-NOSを含んでいた。本願発明者らは、最初に検証のために152のPTCL症例を集めたが、それらがT濾胞ヘルパー(TFH)表現型を有するPTCLとして病理学的に再分類されたため、12例をこのコホートから除外した。これらの12例のPTCL-TFH症例及び10例の追加の反応性リンパ節症を、比較のためにNanoStringベースのアッセイで分析した。研究プロトコルは、UNMC及びCOH-MC Institutional Review Boardによって承認された。
【0168】
PTCLコホートの形態学的特徴及び免疫表現型的特徴。
全ての症例は、現在のWHO分類に従って中心的に検査され、診断された。検証コホートにおける症例は、T細胞リンパ腫診断における専門知識を有する3名の血液病理学者(CA、DW、WCC)によるコンセンサス会議において厳密な病理学的検査を受けた、FF GEPデータを有さない症例の新しいコホートからなっていた。診断に関して全員一致の同意があった場合に、コンセンサス診断に達した。病理学的評価は、必要に応じて、CD3、CD20、CD30、TFHマーカー(PD1、ICOS、CD10、CXCL13、及びBCL6)、CD4、CD8、細胞傷害性マーカー(TIA1、グランザイムB、及びパーフォリン)、TCRαβ、TCRγδ、及びEBERインサイチュハイブリダイゼーションを含むB細胞及びT細胞の免疫染色の一部又は全体のパネルを含んでいた。2つ以上のTFHマーカーの強い発現を有するPTCL-NOSの症例は、TFH表現型を有する結節性PTCLとして再分類された。PTCL-NOS症例は、1名の血液病理学者(CA)によって、GATA3、TBX21、CCR4、及びCXCR3に対する抗体を使用する最近公開されたIHCアルゴリズムを使用して、PTCL-GATA3及びPTCL-TBX21に下位分類された。43例のAITL症例のうち、40例は典型的なAITL形態を有したが、3例はトランスクリプトーム分析のためにAITLとともにグループ化されたT-FLであった。検証シリーズにおけるATLL症例は、ATLLにおけるHTLV-1ウイルスの存在について以前に確立された試験4、6、7に従って、FFPE抽出されたRNAに基づくqRT-PCR(Taq manプローブ)を使用して、HZBウイルス転写産物により陽性シグナル(CT値)を有さなければならない。検証コホートにおけるENKTCL症例は、ゲノムDNA中のLMP1/EBNA1の存在について、EBERインサイチュハイブリダイゼーション又はPCRのいずれかを用いて確認した。32例のENKTCL症例のうち、30例は、鼻病変を有し、典型的なENKTCLであり、2例は、主に結節性病変を有していたが、それ以外は鼻ENKTCL症例と同様の表現型特徴を有していた。これら2つの症例における鼻病変に関する詳細な情報は入手可能ではなかった。2つの症例は、現在のWHO分類における原発性結節性EBV陽性T/NK細胞リンパ腫を表し得るが、トランスクリプトーム分析のためにENK/TCLとともにグループ分けされた。
【0169】
FFPE組織からのRNA抽出及びnCounter(登録商標)システムを用いたデジタル遺伝子発現
厚さ10~20μmのFFPEスクロールをブロックから1cm2の表面積に切断し、抽出まで-20℃で保存した。FFPEスクロールが利用できなかった少数の場合については、未染色スライドから組織を掻き取った。全RNAの脱パラフィン化及び抽出を、2つの市販のキットである(a)Qiagen AllPrep DNA/RNA FFPE Kit(Qiagen GmbH,Germany)又は(b)RNAStormTM RNA単離キット(Cell Data Sciences,CD501)を使用して、製造業者の指示に従って行った。RNA品質を、Agilent Tape-Stationを使用して評価し、RNA完全性分析(RIN)値を使用して、また、RNA断片サイズ>200塩基DV200 10によって推定した。Qubitを使用してRNAを定量し、200ngの全RNA(DV200:>35%)を、ハイブリダイゼーションのために使用し、より分解した試料のために、NanoString,Incの推奨(https://www.nanostring.com/wp-content/uploads/2021/07/MAN-10050-05-Preparing-48 RNA-from-FFPE-Samples.pdf)に従って、追加のRNAを使用した。nCounter(登録商標)Prep Stationで、65℃で一晩(16~18時間)、全RNAをカスタムコードセット(以下参照)にハイブリダイズさせ、nCounter(登録商標)デジタルアナライザー上で「高50分解能」設定でGEPデータを取得した。標準QC(nSolver(商標)分析ソフトウェア、NanoString Technologiesによって提供されるような)を使用し、陽性スパイクイン対照の合計がそのカートリッジの総陽性スパイクインの幾何平均の0.3~3倍の範囲外である任意の試料にフラグを立てた。シグナルカウント値は、所与の試料についての各遺伝子についてのカウントを、その試料中のハウスキーピング遺伝子についてのカウントの幾何平均で割ることによって正規化した。次いで、正規化されたカウントをlog2変換して、全てのその後の分析において利用される遺伝子シグナル値を得た。ハウスキーピング遺伝子の幾何平均が10以下であった試料は、研究から除外した。
【0170】
nCounter(登録商標)PTCLサブタイプ決定アッセイのためのコードセット設計
新鮮な凍結RNAに由来するGEPを有するPTCL症例(n=105)の訓練コホートを使用して、対応するFFPE組織を使用するnCounter(登録商標)プラットフォームのための分類子遺伝子を選択した。本願発明者らは、初期のFF GEPデータ(HG-U133 Plus 2.0 Array,Affymetrix,Inc)を再分析して、PTCLサブタイプに特異的な287個の分類子転写産物、PTCLにおいて一貫した発現を有する50個のハウスキーピング遺伝子、T細胞分化に関連する余分な遺伝子セットを含む診断転写産物シグネチャを生成した。遺伝子は、(1)PTCLサブタイプ(すなわち、AITL、ALCL、ENKTCL、ATLL)のうちの1つ、(2)ALK+ ALCLとALK- ALCLとの間で差次的に発現される、又は(3)PTCL-NOSのPTCL-TBX21サブグループとPTCL-GATA3サブグループを区別するために、特徴的に差次的に発現される(正又は負のいずれか)ように選択された。50個のハウスキーピング遺伝子を、FF GEPデータにおいてPTCLにわたって最も低い分散を有するものの中から選択した。したがって、これらの分類子転写産物は、分類のための最も有益かつ強固な要素であるように設計され、nCounter(登録商標)コードセットは、コードセット設計のための標準的なnCounter(登録商標)化学を使用して、NanoStringバイオインフォマティクスチームにより設計された。各々の捕捉された転写産物に対応するバーコードを撮像し、ハイブリダイゼーション後に計数し、したがって、各捕捉されたRNAのデジタル定量化を提供した(遺伝子のカスタムコードセットに関する詳細は、https://www.nanostring.com/products/custom-solutions/custom-CodeSetsで見ることができる)。
【0171】
反復するコードセット計及び製造(nCounter(登録商標)、NanoString Inc)に関連するコストを最小限に抑えるために、本願発明者らは、ブリッジングコホートからの試料を使用して、診断マーカーの初期セットをキュレーションし、NanoStringプラットフォームに基づいて最良の性能を示したEBV及びHTLV-1からの93個の遺伝子及び5個のサブタイプ特異的ウイルス転写産物のセットを定義した。以下の基準のセットを使用して、この評価を行った。(a)NanoString log2シグナル値とそれらの対応するHG-U133 Plus 2.0シグナル強度(SI)値との間の相関、(b)PTCLサブタイプ対他のPTCLサブタイプにおけるそれらの試料についての正規化されたlog変換NanoString SI値の間のT統計量、(c)全ての試料についてのPTCLサブタイプ及び他のPTCLサブタイプにおける試料についてのHG-U133 Plus 2.0シグナル値の間のT統計量、並びに(d)Iqbal et al.2014からのNanoStringシグナル値とそのサブタイプについてのモデルスコアとの間の相関。このキュレーションされたリストが、各区別について正及び負の両方の関連遺伝子を含むように注意を払った。加えて、ハウスキーピング遺伝子は、16まで低減し、ブリッジングコホートにおいて最も低い分散であった。本願発明者らはまた、T細胞リンパ腫生物学に重要であるとして文献から特定された40個の他の遺伝子を加えた。これにより、最終的に153個の遺伝子コードセットが得られ、これを今後の全ての分析で使用した。
【0172】
訓練コホートにおける下位分類の予測
線形判別分析、ラッソ回帰、サポートベクターマシン、及びランダムフォレストを含む複数の予測方法を、いくつかの異なる予測アーキテクチャを利用する交差検証様式で訓練セットに適用した(データは示さず)。最良の交差検証された予測正確さを有する方法は、以下に記載され、図12A及び図17に示されるように構造化された一連のバイナリ線形予測子に基づいていた。
【0173】
所与のクラス及び選択された遺伝子iの対について、以下:
を計算し、式中、μ1i及びμ2iは、クラス1及びクラス2におけるその遺伝子の平均発現値を表し、σ は、プールされたグループ内分散推定値である。次に、各試料jについて、セット1とセット2との間の区別の重み付けされたスコアを以下:
のように計算し、式中、xijは、試料j上の遺伝子iについての正規化されたシグナル値であり、合計は、特定の区別のために選択された全ての遺伝子にわたる。
【0174】
次いで、本願発明者らは、このスコアとクラス1又はクラス2におけるメンバーシップとの間の関係に基づいてROC曲線をプロットし、感度及び特異度の平均が最大化される点を特定した。この点より上のスコアを有する試料をクラス1と特定し、この点より下のスコアを有する試料をクラス2と特定した。この規則の例外は、AITLサブタイプ分類に対して行われ、AITLモデルスコアとPTCL-NOSモデルスコアとの間に重複領域が存在した。この領域にスコアを有する試料については、その試料がAITLであるかどうかは不確定であった。この領域を定義するために、本願発明者らは、感度+2特異性を最大化した下限カットポイント、及び特異性+2感度を最大化した上限カットポイントを考慮した。上限カットポイントより上の試料をAITLと呼び、下限カットポイントより下の試料を非AITLと呼び、2つのカットポイントの間の試料をボーダーラインAITLと呼んだ。
【0175】
個々の試料のサブタイプを予測するために、本願発明者らは、最初に6つの予測因子を実行し、これらのうちの4つを、PTCL-NOSを、以下の4つのカテゴリー(AITL、ALCL、ENKTCL、又はATLL)のうちの1つの症例から区別するように訓練した。本願発明者らは、ENKTCL予測子が、細胞傷害性マーカー発現を有するPTCL-NOSをENKTCLとして特定する傾向があることを見出したので、本願発明者らは更に、ウイルス転写産物EBERに基づいてPTCL-NOSとENKTCLとの間の分類子を生成した。ENKTCLとして予測される試料について、本願発明者らは、多重遺伝子ENKTCL及び単一EBER分類子の両方が分子診断と一致することを必要とした。ALK- ALCLをALK+ ALCLから区別する最終予測子も生成した。第1に、ALK陽性に従ってALCL試料を分割し、第2に、ALCLの特徴のいくつかを共有するが均一にALK(-)であるENKTCL試料を区別するために使用した。予測子の初期セットが全て、試料がPTCL-NOSであると結論付けられた場合、PTCL-GATA3をPTCL-TBX21から区別する最終予測子が適用された。4個の予測子のうち1個より多くが、非PTCL-NOS診断(例えば、ALCL及びAITLの両方)をもたらした場合、それらのタイプ間の追加の一対一予測子を適用して、モデルに含まれるように選択されたいずれかのタイプに特徴的な全ての遺伝子を使用して、タイ状態を破った(例えば、ALCL対AITL)。
【0176】
FFPE RNAの分析前評価
nCounter(登録商標)プラットフォームで良好に機能する転写産物を特定するために、本願発明者らは、nCounter(登録商標)プラットフォーム及びAffymetrix HG-U133 plus2アレイの両方によってプロファイリングされた10個の新鮮な凍結RNA試料中の各転写産物についてのシグナル強度を相関させた。転写産物の86.5%より多く及び65%より多くが、それぞれ、2つのプラットフォーム間で、0.4を超える相関又は0.6を超える相関を示し、これらを更なる分析のために選択した(図18A~B)。加えて、RNAstormTM法を使用してFFPE試料から単離されたRNAは、別の市販のキットと比較して、より長い転写産物(>200塩基)を生成し(図18C~D)、新鮮な凍結RNA転写プロファイルとのより高い相関係数をもたらした(図18E)。したがって、RNAstormTM単離キットを、その後の試料についてのこのアッセイのための標準的な操作手順において使用した。本願発明者らは、FFPE標本当たり少なくとも200ng~1ugの全RNAを単離することができ、50%を超えるRNAがDV200>50%を示した。nCounter(登録商標)(NanoString,Inc)で実行したFF RNAと対応するFFPE RNAとの間に高い相関があった(図18F)。
【0177】
場所間の再現性及び元の遺伝子セット(n=442)と精緻化された遺伝子セット(n=153)との間の調整
異なる施設でのアッセイの再現性をチェックするために、本願発明者らは、訓練セットから24個の試料を選択し、2つの異なる施設(City of Hope及びInsight Genetics)で、それらを153遺伝子アレイで再分析した。これらの試料のうちの7つを、1つの追加の訓練試料とともに、低減された遺伝子セットアレイでの元の場所(UNMC)でも再試行し、合計55個の複製物試料を得た。本願発明者らは、予測子スコアのいくつかについて、これらが、442遺伝子アレイで試行されたモデルと153遺伝子アレイで試行されたモデルとの間の系統的バイアスであるように思われることを観察した(図20を参照されたい)。これを補正するために、本願発明者らは、153遺伝子アレイ(μ153及びσσ153によって示される)及び442遺伝子アレイ(μ442及びσσ442によって示される)で複製された試料についてスコアの平均及び標準偏差を計算した。これらの値を使用して、本願発明者らは、以下の式に従って、153遺伝子アレイ(特に、検証セットにおけるもの)によって生成されたスコアを、442遺伝子アレイのスコアに一致するように調整した。
予測モデルを生成するため、又はこの調整を定義するために、検証試料を使用しなかったことに留意されたい。
【0178】
統計分析
ベースラインの患者特徴を、χ2検定及びt検定を用いて群間で比較した。カプラン・マイヤー法を使用して、全生存期間の分布を推定した。全生存(OS)時間は、診断から死亡日又は最後の接触日までの時間として計算した。最後の接触時に生存していた患者を、全生存期間分析について、打ち切りとして処理した。「近似」分布11を使用して、コインRパッケージで実行されるような順列ベースのログランク検定を使用して、群間の転帰の差を評価した。両側p<.05を有意とみなした。
【0179】
本方法で引用されている参考文献
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【国際調査報告】