(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-12
(54)【発明の名称】綿又は綿混合物から得られるセルロースの製造
(51)【国際特許分類】
C08B 15/08 20060101AFI20250305BHJP
C08K 3/10 20180101ALI20250305BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20250305BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
C08B15/08
C08K3/10
C08L1/00
C08L67/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024548532
(86)(22)【出願日】2023-02-13
(85)【翻訳文提出日】2024-10-08
(86)【国際出願番号】 DE2023150006
(87)【国際公開番号】W WO2023155957
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】102022000572.7
(32)【優先日】2022-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524305386
【氏名又は名称】エーデン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Eeden GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100206324
【氏名又は名称】齋藤 明子
(72)【発明者】
【氏名】マンチュ,ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ライムブリンク,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ヒューネケ,アルネ
【テーマコード(参考)】
4C090
4J002
【Fターム(参考)】
4C090AA03
4C090BA24
4C090BD19
4C090BD35
4C090CA04
4C090CA05
4C090DA29
4C090DA32
4J002AB01W
4J002CF05X
4J002DA066
4J002DE086
4J002DE116
4J002DJ006
4J002FD070
4J002GK00
(57)【要約】
繊維廃棄物から、セルロース含有率が92%以上であるセルロースポリマーを製造する方法であって
綿とPETの混合物であり、長さ1mm以下の原料(educt)を、
温度130~200℃、特に好ましくは160℃~200℃、及び、圧力1~25bar、好ましくは1~10barで、亜臨界水と共に、反応器中で約1~120分間処理して
平均重合度が450~650であるセルロースポリマーを形成する、製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維廃棄物から、セルロース含有率が90%以上、好ましくは92%以上であるセルロースポリマーを製造する方法であって、
繊維長が、60mm~1mm以下である、綿とPETの混合物から得られる反応物(educt)を、
温度130~200℃、特に好ましくは160℃~200℃、及び、圧力1~25bar、好ましくは1~10barで、亜臨界水と共に、反応器中で約1~120分間処理して、
平均重合度が300~1000DP、好ましくは450~650であるセルロースポリマーを形成する、セルロースポリマーの製造方法。
【請求項2】
前記反応物(educt)が、さらに、5%以下の夾雑繊維及び/又はPET成分を含んでいてもよい、請求項1に記載のセルロースポリマーの製造方法。
【請求項3】
前記反応物(educt)が、さらに、35ppm以下の金属成分を含んでいてもよい、請求項1又は2に記載のセルロースポリマーの製造方法。
【請求項4】
触媒を使用しない、請求項1~3のいずれか1項に記載のセルロースポリマーの製造方法。
【請求項5】
蒸気圧爆発を上流及び/又は下流で行う、請求項1~4のいずれか1項に記載のセルロースポリマーの製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法により製造される、セルロース。
【請求項7】
請求項6に記載の繊維から製造される、セルロース繊維、特にビスコース又はリヨセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、綿、綿混紡から得られるセルロースの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
サーキュラーエコノミー(循環経済)は、原材料とエネルギー消費に対して、持続可能であり、環境に配慮したアプローチを達成するための共同努力に影響を与える、話題性の高い課題の一つである。再利用(着用可能か?)の問題を一つとっても、現時点で入手される「原材料」の秩序立った分別・回収から、リサイクル・再利用まで、多岐にわたる多くの問題を検討し、解決する必要がある。政治的な取り組みとしては、例えば、使用済み繊維製品とその回収を扱うEU指令に新たな規則を設ける等の対応が、こうしたプロセスを部分的に支えている。古い繊維製品の再加工及び再利用の障壁の一つとして、繊維のリサイクルは通常、新しいものを生産するよりもコストがかかるという事実が挙げられる。その理由の一つとして、多くの場合、繊維素材は複数の繊維からなり、材料として複雑であることが挙げられる。また、DPにみられるようなセルロースの分子特性の大きな変動も挙げられる。これはもちろん素材の機能性という点では利点があるが、製品サイクルに戻す際には、繊維の混合物を処理しなければならず、複雑な分離工程が必要になる。
【0003】
綿等の純粋な原料をセルロースに加工することは先行技術において知られているが、所望の品質を有する製品を得ることはできいない。強力な添加物の使用や、エネルギーを消費する処理工程が必要になるためである。これらは最終製品の品質に影響を及ぼす。触媒や他の反応助剤として酸や塩基を添加すると、不安定なポリマー繊維や、反応混合物からの除去が困難なテレフタル酸等の、望ましくない副生成物が生じる。純度に加え、平均重合度はセルロースにとって最も重要な品質パラメーターである。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本開示の目的は、90%以上のセルロース含有率を有する高品質のポリマー繊維を得るための方法を提供することであり、かかる方法において、DP値は、任意に所定範囲内にある。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本開示の目的は、繊維廃棄物から、セルロース含有率が、90%以上、好ましくは92%以上のセルロースポリマーを製造する方法によって達成される。かかる方法において、綿、又は、綿とPETとの混合物から得られ、繊維長が1mm以下である反応物(educt)を、反応器中で、亜臨界水とともに、温度130~180℃、圧力1~10barの範囲で、約1~120分間処理する。これにより、平均重合度(DP)が、300~1000DP、好ましくは450~650のセルロースポリマーが製造される。上記原料(educt)は、純粋な綿からなるものとしてもよい。事前に、DP値を所定の範囲とすることが重要であるのは、製造される最終材料の品質は、特定のDP値の範囲内における純度を有するように設計されているためである。例えば、リヨセルはDP値550~600のパルプから得られ、ビスコースはDP値300~700のパルプから得られる。ここで、パルプ中のDPが一定となることで、最終製品の品質が保証される。したがって、本開示の方法では、パルプのDP範囲を事前に決定することができる。
【0006】
純度が90%~92%、或いは、それ以上であるセルロースポリマーは、他の複数の高品質な製品の製造に使用できる高品質原料となる材料である。上述のように、ビスコースとリヨセルが製造対象である。ビスコースは通常、様々な種類の木材や綿から得られる化学セルロースから製造される。ここで、セルロースの品質は製紙用とは異なり、決められた鎖長と純度のセルロースを使用しなければならない。リヨセル繊維は、高い乾燥強度と湿潤強度で知られ、柔らかく、吸湿性に優れている。この素材から作られたテキスタイルは「滑らか」で「涼しげ」な感触を持ち、流れるようなドレープがある。これらは、ほぼシワになることがなく、洗濯やドライクリーニングが可能である。これらの特徴を保持するためには、製造の際、極めて純度の高い原料しか使用することができない。さらに、DP値は繊維メーカーがシームレスに加工できるように調整されている必要がある。DP値は、繊維固有の要件を満たし、繊維メーカーが予め設定したDP値の範囲内になければならない。ビスコース繊維では、DP値は300~700の範囲にある。リヨセル繊維に用いられるセルロースのDP値は500~700であり、550~600であることが好ましい。
【0007】
このように、本開示の方法で製造されたポリマー繊維は、「アップサイクル(upcycling)」製品である。原料の繊維長が1mm以下というのは、原料が予め粉砕されていることを意味する。これにより、その後の反応がより容易に行われる。また、繊維長は、製造時の条件(process parameters)を標準化することにも寄与する。これについては後述する。本開示の方法は、繊維廃棄物から、300~1000の範囲で予め定義されたDPを有する高純度セルロースを製造するのに特に有利であることが見出された。非常に特殊な実施形態では、繊維長0.2mmから8mmの範囲の原料(educt)が使用される。繊維長が短いほど、水との混合がよくなる。
【0008】
本開示の方法では、亜臨界水を用いる反応器を使用する。ここでいう亜臨界水とは、大気中の沸点(すなわち、100℃)と臨界温度(すなわち、374℃)の間にある液体の水のことである。かかる条件下では、水は特殊な、又は通常とは異なる性質を有する。これらの性質は、亜臨界状態における密度、誘電率、イオン濃度、拡散性、溶解度に影響する。このような状態では、イオン化定数は温度とともに増加し、通常の状態の水よりも約3桁高くなる。また、誘電率は80から20に低下する。このような物性の劇的な変化によって、綿とPETからなる繊維廃棄物材料の架橋が急速に溶解する。
【0009】
イオン化定数の増加により水が異なるpH値をとることも、部分的な影響を及ぼす。この影響は、綿繊維のセルロース鎖を開裂させるのに十分であり、その結果、目標とするDP範囲にDPを調整できる。これにより、得られるセルロースが、DPに加えて、良好な溶解特性と高純度も有することを示している。
【0010】
高温高圧の水系で繊維を処理することを水熱法という。したがって、反応器は水熱反応器であり得る。反応器の温度は130℃~200℃、特に好ましくは160℃~200℃である。圧力は1~25barの範囲に調節される。反応時間は1~120分である。所定のパラメーターにより、反応器は原料、すなわち繊維廃棄物に繊維レベルで影響し、繊維間の結合強度を弱め、あるいは織り込まれた繊維ストランドを互いにほぐすこともできる。同時に、存在する可能性のあるポリエステル残渣も分解される。生成物の重合度は、反応器の運転の際、主要な運転パラメーターの影響を受ける場合もある。ここで、溶媒としての亜臨界水は、無毒であり、環境適合性が高く、コスト効率が高いことを特記する。亜臨界水は、その性質として、PHが中性であるため、溶媒として過激な性質を有しない。
【0011】
現在、生成物であるセルロースポリマーは、少なくとも90%~92%の純度を有しており、300~1000、さらには450~650の平均重合度(DP)を有する。反応が好適に調整されれば、生成物は550~600の平均重合度(DP)を有し得る。かかる重合度は、原料(educt)が、リヨセルに好適に加工できる程度に分解され、均一な反応であることを示す。重合度は、ポリマー分子あたりの基本構成ブロックの数を示す。これは、ポリマーの平均モル質量を、その繰り返し単位(モノマー単位)のモル質量で割った値と同じである。正確な数値は通常、対象となる試料の平均値である。この平均値を平均重合度(DP)と呼ぶ。繊維形成ポリマーにとっては、加工特性や使用特性にとって重要なパラメーターである。
【0012】
試料の重合度は通常、そのモル質量によって決定される。かかる方法としては、、例えば、GPC、束一的性質を決定するための方法(凝固点降下法、蒸気圧浸透法等)、粘度測定法、光散乱法等、多くの方法が挙げられる。その他の方法は技術的に重要であるが、試料の正確な校正が必要である。ここではメルトフローインデックス法を挙げる。例えば、プラスチック溶融物の粘度は、重合度が高くなるにつれて増加する。平均値は、MFI法を用いて間接的に(すなわち、化学的に比較可能な標準物質との相対値である)求めることができる。
【0013】
重合度と分子内のモノマーの空間幾何学的分布(すなわち、分子枝の立体化学的配置である)は、ポリマーの物理的特性、特に機械的特性に大きな影響を与える。しかし、Staudingerによれば、繊維強度は重合度に比例して変化しない。DPは、例えば、綿では3000、ビスコース繊維では250~700、ポリアミドでは100~180、ポリエステルでは130~220である。平均重合度を決定することはセルロース繊維にとって特に重要であり、これにより、これらの繊維に対する化学的損傷を数値的に特徴付けることができる。好ましい態様において、綿/PET混合物は、PET成分が5%以下の組成物からなる。しかしながら、夾雑繊維部分がPETではなく他の繊維から構成されていても、本開示の方法には障害とならない。これらの夾雑繊維も、最終製品に影響を与えることなく処理される。夾雑繊維の含有率を5%以下とした実験では、方法の順序及び最終製品に全く障害は見られない。夾雑繊維がポリウレタン(elastane)やPES/PETである場合は、最終製品には残存しない。繊維混合物の着色成分の含有の有無も影響を及ぼさない。アゾ染料、硫黄染料、ジフェニルメタン染料、チアゾール染料、トリフェニルメタン染料、ニトロ染料、アントラキノン染料、ニトロソ染料、インジゴ染料、キノリン染料、インジゴゾールアクリジン染料、キノンイミン染料、シアニン染料(アジン、オキサジン、チアジン)、フタロシアニン染料は全く問題なく使用可能である。これらは、現在、最も一般的に使用されている繊維染料である。ある方法では、染料は上流工程で原料(educt)から除去される。しかし、本開示の方法では、かかる工程は不要である。さらに、原料(educt)の金属含有量は、10ppmを超える場合がある。小さな金属残留物も大きな金属含有物も、原料(educt)から確実に溶解除去される。しかし、アルカリ土類金属やアルカリ金属、及び、多くの重金属は、反応混合物中に塊を形成する原因となり得る。こうした塊が生じると、フィルターの目詰まりが生じ、反応を阻害する。また、重金属は触媒作用を持つため、望ましくない副反応を引き起こすことも指摘されている。しかし、重金属の量が、10ppm以下の範囲であれば、反応に影響はない。酸化防止剤の添加も、高レベルの重金属への対応に採用可能である。同様に、本開示の方法では、原料(educt)が、懸濁液の形態で存在していてもよい。原料(educt)が重合度700以上で存在する場合、生成物は450~650のDP値を有する。本開示の方法によれば、このように、繊維廃棄物中のセルロース繊維を小さくすること、セルロース繊維を繊維廃棄物から剥離すること、又はその両方が可能となる。
【0014】
触媒を使わない反応工程を実施することが重要である。従来の方法では、繊維は通常、酸又は塩基の助けを借りて分解され、DP値を調整し、その後さらに処理される。pHを調整するための材料を添加することで、最終製品が過激な化学薬品によって損なわれるという欠点が生じる。これらの化学物質は、追加工程により反応混合物から除去することもできるが、既に生じたダメージを回復することはできない。追加の洗浄工程も当然、手間とコストを要し、長い時間を要する。溶剤の廃棄も、汚染のため、より困難でなる。したがって、本開示の方法における無触媒反応は、持続可能であり、環境適合性が高く、現在の反応温度で実施する場合は、省エネルギーでもある繊維リサイクル法への重要な一歩である。パルプのPH中和は実施する必要がない。本開示の方法における、全過程のpH値は、約5.0~9.0である。反応は130~180℃の亜臨界水中で行われる。反応時間は1~120分であり、圧力は1~25barである。pHが中性である反応液(ここでは5~7の値を測定)は、固/液比が1:10~1:20である。酸、塩基、その他の触媒は添加しない。本開示の方法は、無酸素下で実施される。しかしながら、制御された、あるいは所定の方法で添加された酸素は、酸化的な変化、特にDP値の変化を引き起こす可能性がある。さらに、1bar又は10bar以下の小さな印可圧力比であっても、本開示の方法を有利に実施するのに十分であることが示されている。
【0015】
すなわち、製品を得るために必要な工程は、ろ過、洗浄、圧搾、エバポレーターによる乾燥(たとえば乾燥度約90%まで)のみである。パルプのPH中和の工程はない。かかる工程は不要である。その後、製品はさらに使用するためのサイズにカットされる。
【0016】
以下では、原料(educt)の繊維長が、混合物の撹拌性に影響を及ぼすことを説明する。該繊維長は、反応にも影響を与える。例えば、反応物の繊維長が1mm、質量割合が2.5質量%である場合、混合物は撹拌可能であるが、質量割合が5質量%の場合は撹拌が困難であり、質量割合が7.5質量%の場合は撹拌不可能である。
【0017】
反応繊維の長さが0.2mmの場合、混合物は2.5質量%の質量割合において、撹拌が容易であり、5質量%の質量割合においても撹拌しやすく、7.5質量%の質量割合でも撹拌可能である。
【0018】
使用した粉砕機、すなわちフリッチュの万能粉砕機PULVERISETTE 19(5000W、400V、3~50/60Hz、13Nm、回転数:300~3000rpm、ふるい投入口サイズ:0.2~1mm)が特に好適であることが確認されている。しかし、他の粉砕機の使用も可能である。
【実施例】
【0019】
以下、本開示の非限定的な例示的実施形態について説明する。
【0020】
5%のPET成分を含む綿からなる古い織物を選別し、繊維長1mmとなるように裁断する。かかる繊維長の短い反応物は、当初、多くの実験や一連の実験を互いに比較することを目的として採用された。原料の長さは、表面が異なるため、本開示の方法の反応挙動に寄与している。裁断装置は、通常のティーシュレッダーでよい。ただし、引裂及び裁断された繊維廃棄物の長さは、可能な限り等しくする必要がある。上述したように、廃棄物の着色の程度は関係ない。本開示の方法の実施により、ほとんどすべての繊維染料が溶出する。原料が、懸濁液として、すなわち液体中に微細に分散して存在することも、本発明による方法にとって支障はない。
【0021】
原料は平均重合度が700以上であっても良好に処理できる。原料の重合度が高いほど、反応法で起こる解重合は複雑になる。最終的に、平均重合度300~1000、通常は450~650、あるいは550~600が達成される。最終生成物のDPがより均質かつ正確に調整されていればいるほど、最終生成物の加工性は向上する。したがって、本発明によるこの方法では、準備反応工程は必要ない。
【0022】
原料は、Berghof社の高圧反応器BR-300型に充填された。最高到達温度は300℃、最高圧力は200barであり、この反応器は本開示の方法に最適である。この反応器では、特に以下の6つの実験が行われた。
【0023】
【0024】
固:液比1:20、温度160℃~200℃、反応時間60分~180分、severity factor 3.54~5.20の範囲において、表に示す平均重合度を測定した。severity factorとは、製品の亜臨界液体-熱水前処理における、過酷度(severity)を示す係数であり、この場合の製品は、使用済の繊維である。severity factorは、、数学用語では、蒸気温度或いは温度と、暴露時間の積分である。したがって、化学反応における全体的な反応条件(この場合は温度と圧力)の厳しさや激しさの指標である。時間と温度は表から読み取ることができる。反応圧力は1~10baである。固:液の比は、実験では1:10から1:20の範囲とした。
【0025】
触媒は添加していない。したがって無触媒反応法である。最終塊はろ過され、洗浄され、圧搾され、液体残渣は、乾燥物の割合が約90%になるまで蒸発させる。再度、パルプの中和を含む各追加工程は必要ないことに留意すべきである。その後、製品はサイズに合わせて切断した。製品の特性は、以下の通りである。
・セルロース含有量>90%-92
・平均重合度300~1000であり、好ましくは450~650、理想的には550-600である。最終製品が異なる場合、異なるDP値が必要となることに留意すべきである。
・無着色/白色度80以上(ISOによる)
・金属含有量:<10-20ppm
【0026】
原料(educt)の数が少ないため、副生物も少量であり、低濃度でしか確認されなかった。これらは、いくつかのオリゴマー、グルコース、フルクトース、キシロースである。生地の濃度はごくわずかで、ほぼ0g/Lである。
【0027】
個別の実験や各加工業者との調整の過程で、原料製品について、以下の要件を満たすことが判明した:
1.セルロース含有率>92%、
2.ケイ酸塩含有量<80ppm
3.カルシウム含有量<80ppm未満、
4.鉄の含有量<10ppm未満、
5.含水率10%
【0028】
これらの値は、ビスコース、さらには、最終製品としてのリヨセルにも適用される。
【0029】
別の加工場で指定された条件は以下の通りである。
・高純度=セルロース含有率(α-セルロース/長鎖セルロース)>90%
・ヘミセルロースの含有量が少量である:<5%
・リグニンの含有量が少量である:<0.1%
・重金属の含有量が少量である:<10ppm
【0030】
【表2】
X軸は温度/時間の反応の組合せを示し、Y軸は重合度(DP)を示す。DP値を設定するためにどのパラメーターが使用可能であるかを正確に検討することができる。
【0031】
平均重合度は、関連するDIN規格に従って測定した。
【0032】
ここに、
・セルロースを60℃のオーブンで一晩乾燥させる、
・次に、50mgのセルロースを50mLのロータリージョイント容器に移す(c=1g/L)。
・その後、2~4個の銅製スパイラルと約20個の小さなセラミックボールを加える。銅製スパイラルは酸化防止剤として、セラミックボールは容器内のデッドボリュームを置換する役割を果たす。
・50mLのCuoxam溶液を容器に加える。
・容器を閉じて振る。
・容器を振動するプレートの上に一晩置き、セルロースを完全に溶解させる。
・DP測定では、粘度計(Ubbelohde等)を、温度制御装置付き水槽を用いて25℃(±0.1℃)に設定する。
・測定前にセルロース溶液をガラスフィルター(ガラスフリットPor.1)でろ過する。
・その後、濾液20mLを粘度計に充填する。
・該溶液は、温度を均一にするため、粘度計の中で静置される。
・その後、該溶液は(ピペット等を用いて)吸引され、流下時間を停止する。
・流速はサンプルごとに4回測定され、平均値を計算する。
・平均値に基づいて、比粘度を算出する。
・該比粘度を、DPの算出に使用する。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースポリマーを製造する方法であって
原料、すなわち、繊維長が、60mm~1mm以下である、綿とPETの混合
物を供給すること、
及び、
前記原料を、温度130~200℃、特に好ましくは160℃~200℃、及び、圧力1~25bar、好ましくは1~10barで、亜臨界水と共に、反応器中で約1~120分間処理
すること、
を含み、
触媒を使用せず、全反応時間において、pHが5~7であり、該方法は無酸素下で実施される、セルロースポリマーの製造方法。
【請求項2】
ろ過、洗浄、圧搾及び乾燥を、後工程として含む、セルロースポリマーの製造方法。
【請求項3】
生成物が、90%以上、好ましくは92%以上のセルロース含有率を有し、予め設定され得る平均重合度が、300~1000DP、好ましくは450~650である、請求項1又は2に記載のセルロースポリマーの製造方法。
【請求項4】
前記
原料が、さらに、5%以下の夾雑繊維及び/又はPET成分を含んでいてもよい、請求項1
~3のいずれか1項に記載のセルロースポリマーの製造方法。
【請求項5】
前記
原料が、さらに、35ppm以下の金属成分を含んでいてもよい、請求項1
~4のいずれか1項に記載のセルロースポリマーの製造方法。
【請求項6】
蒸気圧爆発を上流および/または下流で行う、請求項1~
5のいずれか1項に記載のセルロースポリマーの製造方法。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の製造方法により製造される、セルロース。
【請求項8】
請求項
7に記載の
セルロースである材料から製造される、セルロース繊維、特にビスコース又はリヨセル。
【国際調査報告】