IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッドの特許一覧

特表2025-506645ジェット燃料及びディーゼル燃料の製造のためのSSZ-41xゼオライト及びMTWゼオライトの使用
<>
  • 特表-ジェット燃料及びディーゼル燃料の製造のためのSSZ-41xゼオライト及びMTWゼオライトの使用 図1
  • 特表-ジェット燃料及びディーゼル燃料の製造のためのSSZ-41xゼオライト及びMTWゼオライトの使用 図2
  • 特表-ジェット燃料及びディーゼル燃料の製造のためのSSZ-41xゼオライト及びMTWゼオライトの使用 図3
  • 特表-ジェット燃料及びディーゼル燃料の製造のためのSSZ-41xゼオライト及びMTWゼオライトの使用 図4A
  • 特表-ジェット燃料及びディーゼル燃料の製造のためのSSZ-41xゼオライト及びMTWゼオライトの使用 図4B
  • 特表-ジェット燃料及びディーゼル燃料の製造のためのSSZ-41xゼオライト及びMTWゼオライトの使用 図5
  • 特表-ジェット燃料及びディーゼル燃料の製造のためのSSZ-41xゼオライト及びMTWゼオライトの使用 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-13
(54)【発明の名称】ジェット燃料及びディーゼル燃料の製造のためのSSZ-41xゼオライト及びMTWゼオライトの使用
(51)【国際特許分類】
   C10G 47/16 20060101AFI20250306BHJP
   B01J 37/20 20060101ALI20250306BHJP
   B01J 29/78 20060101ALI20250306BHJP
   C10G 45/12 20060101ALI20250306BHJP
   C10L 1/08 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
C10G47/16
B01J37/20
B01J29/78 M
C10G45/12 Z
C10L1/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546327
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 IB2022055530
(87)【国際公開番号】W WO2023161694
(87)【国際公開日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】63/314,505
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オットー、トレントン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リアン、アン ジア - バオ
(72)【発明者】
【氏名】ゾーンズ、ステイシー イアン
(72)【発明者】
【氏名】リュー、クリストファー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】パスクアル、ジェジュ シー.
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ビー - ゼン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA03A
4G169BA03B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA08A
4G169BA21C
4G169BB01A
4G169BB01B
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC57A
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC60A
4G169BC60B
4G169BC65A
4G169BC68B
4G169BC69A
4G169BD02A
4G169BD02B
4G169BD07A
4G169BD07B
4G169BE08C
4G169CC02
4G169CC17
4G169DA06
4G169DA07
4G169FA08
4G169FB50
4G169FC04
4G169FC05
4G169ZA12A
4G169ZA12B
4G169ZA32A
4G169ZA32B
4G169ZA33A
4G169ZA33B
4G169ZB03
4G169ZC04
4G169ZD06
4G169ZD07
4G169ZF02A
4G169ZF02B
4H129AA02
4H129CA13
4H129DA21
4H129KC03X
4H129KC03Y
4H129KC10X
4H129KC10Y
4H129KC17X
4H129KC17Y
4H129KD13X
4H129KD15X
4H129KD15Y
4H129KD16X
4H129KD16Y
4H129KD18X
4H129KD21X
4H129KD23X
4H129KD24Y
4H129KD37X
4H129KD37Y
4H129KD41X
4H129NA23
4H129NA37
(57)【要約】
MTW触媒及び/またはSSZ-41x触媒を使用して留分範囲の炭化水素を製造する方法を開示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
留分範囲の炭化水素を製造する方法であって、
水素化処理条件下で炭化水素原料を水素化処理触媒と接触させて水素化処理された流出物を生成することと、
前記水素化処理された流出物を分画してディーゼル燃料またはジェット燃料の範囲内で沸騰する1つ以上の炭化水素画分を回収することと、を含み、
前記水素化処理触媒は、担体成分と、前記担体成分に担持された金属成分と、を含み、前記担体成分は、(i)前記担体の総重量に対して0.1重量%~75重量%の量のMTWゼオライト及び/またはSSZ-41xゼオライトと、(ii)前記担体の総重量に対して15重量%~85重量%の量の非晶質シリカ-アルミナと、(iii)前記担体の総重量に対して5重量%~55重量%の量のアルミナ結合剤と、を含み、前記金属成分は、第6族の金属及び第8~10族の非貴金属を含む、前記方法。
【請求項2】
前記炭化水素原料が、少なくとも10重量%の生物成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物成分が、再生可能な油の水素化脱酸素から得られたものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記炭化水素原料が、少なくとも40重量%のn-パラフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水素化処理条件が、300℃~500℃の反応温度、6MPa~30MPaの総圧力、800SL/L~2000SL/Lの水素供給速度、及び0.1h-1~10h-1の液空間速度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記MTWゼオライトが、25~100のSiO/Alモル比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記MTWゼオライトがZSM-12である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記SSZ-41xゼオライトが、30~100未満のSiO/Alモル比、及び15~75のSiO/ZnOモル比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記MTWゼオライト及び/または前記SSZ-41xゼオライトが、前記担体の総重量に対して0.5重量%~25重量%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記非晶質シリカ-アルミナが、前記担体の総重量に対して50重量%~80重量%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記担体に組み込まれる前に、前記非晶質シリカ-アルミナは、0.5cm/g~2.0cm/gの総細孔容積、4nm~14nmの平均細孔直径、及び400m/g~550m/gのBET表面積のうちの1つ以上の特性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記アルミナ結合剤が、前記担体の総重量に対して15重量%~35重量%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第6族の金属が、前記触媒の総重量に対して酸化物換算で5~40重量%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第8~10族の金属が、前記触媒の総重量に対して酸化物換算で1~10重量%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第6族の金属が、モリブデン及び/またはタングステンから選択され、前記第8~10族の金属が、コバルト及び/またはニッケルから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記水素化処理触媒が、2~10個の炭素を有しかつ炭素原子数の酸素原子数に対する比が0.6~2である有機分散剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記有機添加剤が、クエン酸、グルコン酸、ニトリロ三酢酸、エチレングリコール、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記水素化処理触媒が、前記触媒の総重量に対してP換算で1~10重量%の量のリンをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記炭化水素原料を前記水素化処理触媒と接触させる前に、前記水素化処理触媒を硫化条件下で更に硫化する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記ディーゼル燃料または前記ジェット燃料は、ドロップイン燃料組成物として使用されるか、または既存の燃料組成物と混合される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]
関連出願の相互参照
本出願は、2022年2月28日に出願した米国仮出願第63/314,505号の優先権を主張するものであり、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
[0002]
本発明は、留出燃料の製造を目的として炭化水素原料を水素化処理する(水素化分解及び水素化異性化を含む)ためのSSZ-41x及び/またはMTWを含む触媒の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
[0001]
ディーゼル及びジェットの沸点範囲の燃料の需要が世界中で増加するにつれて、原油以外の原料への関心が高まっている。
[0002]
MTW及びSSZ-41は、液体燃料製造のための再生不能な石油炭化水素の処理に一般的に使用されるUSYなどのゼオライトの代替物またはその代わりになる可能性を有している。しかしながら、特に関心の対象であるのは、再生可能な供給源に由来する燃料の生成に対してMTWゼオライト及びSSZ-41ゼオライトを適用することである。n-ヘキサデカン(n-C16)及びn-オクタデカン(n-C18)を含むパラフィン系炭化水素は、再生可能な植物油または動物油において遊離酸またはトリグリセリドの形態で存在する遊離脂肪酸(例えば、パルミチン酸またはリノール酸)の水素化脱酸素によって容易に生成することができる。次いで、再生可能原料からジェット燃料を製造するための経路を創出するべく、そのようなパラフィンは、触媒による水素化分解(HCR)及び/または水素化異性化(HIS)を介して、ジェット範囲内の沸点を有する炭化水素種に変換することができる。
【0003】
様々な再生可能原料から容易に入手可能なn-C18を、所望のジェット沸点範囲を有する製品に選択的に変換することは困難である。その困難さは、再生可能な航空燃料を生成するための経済的に実行可能な経路を開発する試みを妨げている。ここでHCR/HIS触媒中の主要成分としてSSZ-41xゼオライト及び/またはMTWゼオライトを使用することは、従来のHCR/HIS用途での使用に加えて、そのような経路をもたらし得る。
【発明の概要】
【0004】
一態様において、留分範囲の炭化水素を製造するプロセスを提供し、前記プロセスは、水素化処理条件下で炭化水素原料を水素化処理触媒と接触させて水素化処理された流出物を生成することと、前記水素化処理された流出物を分画して、ディーゼル燃料またはジェット燃料の範囲内で沸騰する1つ以上の炭化水素画分を回収することと、を含み、前記水素化処理触媒は、担体成分と前記担体成分に担持された金属成分とを含み、前記担体成分は、(i)前記担体の総重量に対して0.1重量%~75重量%の量のMTWゼオライト及び/またはSSZ-41xゼオライトと、(ii)前記担体の総重量に対して15重量%~85重量%の量の非晶質シリカ-アルミナと、(iii)前記担体の総重量に対して5重量%~55重量%の量のアルミナ結合剤と、を含み、前記金属成分は、第6族の金属及び第8~10族の非貴金属を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】実施例1で使用したMTW触媒及びSSZ-41x触媒によるn-オクタデカンの水素化変換中における触媒活性温度(CAT)対水素化分解(HCR)変換率(<500°F)のグラフである。
【0006】
図2】実施例1で使用したMTW触媒及びSSZ-41x触媒によるn-オクタデカンの水素化変換中におけるHCR変換率(<500°F)に対する生成物画分収率のグラフである。
【0007】
図3】実施例1で使用したMTW触媒及びSSZ-41x触媒によるn-オクタデカンの水素化変換中におけるHCR変換率(<500°F)に対するジェット生成物画分の凝固点のグラフである。
【0008】
図4A】実施例1で使用したSSZ-41x触媒によるn-オクタデカンの水素化変換中におけるHCR変換率(<500°F)に対するジェット生成物の曇り点及び流動点のグラフである。
【0009】
図4B】実施例1で使用したMTW触媒によるn-オクタデカンの水素化変換中におけるHCR変換率(<500°F)に対するジェット生成物の曇り点及び流動点のグラフである。
【0010】
図5】実施例2で使用したMTW触媒及びSSZ-41x触媒による未変換油の水素化変換中におけるHCR変換率(<700°F)に対する留分収率のグラフである。
【0011】
図6】実施例2で使用したMTW触媒及びSSZ-41x触媒による未変換油の水素化変換中におけるCAT対HCR変換率(<700°F)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
ジェット燃料の沸点範囲は、140℃~300℃であると規定される。ジェット燃料沸点範囲の画分は、初留点が140℃以上、T10蒸留点が205℃以下、及び最終沸点が300℃以下の画分として規定される。別途明記しない限り、蒸留点及び沸点は、ASTM D2887に従って決定することができる。
【0013】
ディーゼルの沸点範囲は、140℃~375℃として規定される。ディーゼル沸点範囲の画分は、140℃以上のT10蒸留点、300℃以上の最終沸点、及び375℃以下のT90蒸留点を有する画分として規定される。
【0014】
留出燃料の沸点範囲(ジェットに加えてディーゼル)は、約140℃~約427℃として規定される。
【0015】
供給原料の「T10」沸点は、供給原料の10重量%が蒸発する温度を意味する。同様に「T90」沸点は、供給原料の90重量%が蒸発する温度を意味する。ASTM D86またはASTM D2887などの適切なASTM法を、沸点(分画沸点を含む)の測定に使用することができる。
【0016】
「水素化処理」という用語は、水素化処理触媒及び水素の存在下で炭化水素をより価値のある生成物に変換するプロセスを指すものとする。
【0017】
「水素化分解」(「HCR」)及び「水素化変換」という用語は、炭化水素の供給流が触媒及び水素と高圧及び高温で接触させられて、炭化水素の供給流の少なくとも一部がより低い沸点の生成物に変換され、それにより、重量パーセントに基づいて全体的により低い平均沸点の生成物の流れがもたらされる任意のプロセスを指すものとする。水素化分解は、水素化処理プロセスの一部である。当然ながら、「水素化分解」または「水素化変換」は、炭化水素流中に存在する長鎖パラフィンの水素化異性化(「HIS」)も含み得る。水素化異性化は、分岐状パラフィンの割合を増加させることにより、低温流動特性を改善し得る。
【0018】
「MTW」という用語には、the Structure Commission of the International Zeolite Associationによって骨格型MTWと指定されている全てのモレキュラーシーブ及びそれらのアイソタイプが含まれる。MTW骨格型モレキュラーシーブは、12員のT原子環を含む一次元チャネルからなる独自の細孔系を有する。MTW骨格型を有するモレキュラーシーブとしては、CZH-5、NU-13、Theta-3、TPZ-12、及びZSM-12が挙げられる。
【0019】
「SSZ-41x」という用語は、SSZ-41の骨格構造を有し、(a)SiO/Alモル比が30~100未満(例えば50~90または60~80)であり、(b)SiO/ZnOモル比が15~75(例えば、20~40)であり、かつ(c)平均結晶サイズが500nm未満(例えば、50~500nm、または50~250nm、または75~500nm、または75~250nm)であることを特徴とするジンコアルミノケイ酸塩モレキュラーシーブを指す。米国特許第5,591,421号の教示に従って従来合成されているように、SSZ-41は少なくとも1000nmの平均結晶サイズを有する。SSZ-41は、VPI-8(VET骨格型)(12員のT原子環を含む固有の一次元チャネルを有する材料)に類似する構造を有するが、SSZ-41がVPI-8について報告されているよりも大きな(例えば、最大約3倍の)アルゴン保持力を有するという点でVPI-8とは異なる。SSZ-41はその骨格構造にアルミニウムを含み得るが、VPI-8は骨格アルミニウムを含まない。
【0020】
「ジンコアルミノケイ酸塩」という用語は、亜鉛、アルミナ、及びシリカで構築された骨格構造(すなわち、ZnO4、AlO4、及びSiO4の四面体単位を繰り返す)を有する合成モレキュラーシーブを指す。
【0021】
「未変換油」(unconverted oil)という用語及びその頭字語「UCO」は、窒素、硫黄、及びNiの含有量が低く、かつ常圧軽油(AGO)範囲の炭化水素の終点に対応する初留点を有する炭化水素を含む、水素添加分解装置からの高パラフィン画分を指す。特定の実施形態では、初留点が340℃~370℃の範囲にあり(例えば、340℃、または360℃、または370℃)、終点が約510℃~560℃の範囲にある(例えば、540℃、または550℃、または560℃)。UCOはまた「ハイドロワックス」などの他の同義語によって当該業界において知られている。
【0022】
用語「Cn炭化水素」又は「Cn」(nは整数値である)は、その値の炭素原子を有する炭化水素を意味する。用語「Cn+炭化水素」又は「Cn+」は、その値以上の炭素原子を有する炭化水素を指す。用語「Cn-炭化水素」又は「Cn-」は、その値以下の炭素原子を有する炭化水素を指す。
【0023】
用語「重量%」、「体積%」、または「mol%」は、それぞれ、当該成分を含む材料の合計重量、合計体積、または合計モル数に対する当該成分の重量百分率、体積百分率、またはモル百分率を指す。非限定的な例において、10グラムの特定の成分を含む100グラムの材料は、その成分を10重量%含んでいる。
【0024】
用語「SiO/Alモル比」は、「SAR」と略される場合がある。
【0025】
炭化水素原料
広範囲の石油及び化学原料を、本開示に従って水素化処理することができる。適切な原料としては、全原油及び還元原油、常圧油、循環油、真空軽油及びコーカー軽油を含む軽油、ならびに未精製の留分、水素化分解生成物、水素化処理油、スラックワックス、フィッシャートロプシュワックス、ラフィネート、及びこれらの材料の混合物を含む軽質~重質留分が挙げられる。
【0026】
いくつかの態様において、供給原料の少なくとも一部は、生物成分供給源に由来する原料に相当し得る。本明細書において、生物成分原料は、植物、動物、魚、及び/または藻類などの生物成分供給源に由来する、生物学的原料成分由来の炭化水素原料を指す。生物成分原料は、例えば、再生可能な油の水素化脱酸素及び場合により異性化によって得ることができる。
【0027】
供給原料は、単数または複数の生物成分供給源に対して、少なくとも約10重量%(例えば、少なくとも25重量%、または少なくとも40重量%、または少なくとも50重量%、または少なくとも75重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも約95重量%)の原料を含む。追加的または代替的に、供給原料は、完全に生物成分供給源からの原料であり得るか、または供給原料は、生物成分供給源に対して約99重量%以下(例えば、90重量%以下、または75重量%以下、または50重量%以下)の原料を含み得る。
【0028】
原料を定義する1つの方法は、供給原料の沸点範囲に基づくものである。典型的な供給原料には、例えば、少なくとも約400°F(204℃)(例えば少なくとも約450°F(232℃))の初留点及び/またはT5沸点を有する原料が含まれる。追加的または代替的に、供給原料の終点、T95沸点及び/またはT90沸点は、約850°F(454℃)以下、例えば、800°F(427℃)以下、または約750°F(399℃)以下であり得る。T5沸点がより低い供給原料も適している可能性があることに留意されたい。しかしながら、そのような低沸点の供給原料の結果として得られる収率は、供給原料の400°F+(204℃+)部分に対して決定することができる。
【0029】
いくつかの態様において、原料は、より高いn-パラフィン含量を有し得る。原料のn-パラフィン含有量は、少なくとも40重量%(例えば、少なくとも50重量%、または少なくとも75重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%)であり得る。
【0030】
水素化処理
水素化処理は、有効な水素化処理条件下で原料を水素化処理触媒に曝露することによって実施することができる。
【0031】
水素化処理は、直列配置及び/または並列配置の1つ以上の固定床、沸騰床(ebullated-bed)、スラリー床、移動床、連続撹拌槽(CSTR)、または管型反応器において行うことができる。固定床反応器は、複数の容器と、各容器内の単一または複数の触媒床と、1つ以上の容器内の水素化処理触媒の様々な組み合わせと、を含み得る。
【0032】
水素化処理中の反応条件は、供給原料の所望のレベルの変換をもたらすように選択することができる。供給原料の変換は、閾値温度より高い温度で沸騰する分子をその閾値未満で沸騰する分子に変換するという観点から規定することができる。変換温度は、260℃(500°F)または371℃(700°F)などの任意の都合のよい温度とすることができる。例えば、プロセス条件は、原料の260℃+部分の少なくとも10%の変換率を達成するように選択することができる。すなわち、条件は、260℃超で沸騰する供給原料の少なくとも約10重量%の部分を260℃未満で沸騰する部分に変換するよう選択する。いくつかの態様において、260℃に対する一回通過の変換量を、少なくとも20%(例えば、少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%)とすることができる。追加的または代替的に、変換百分率は、約80%以下(例えば、70%以下、または60%以下)とすることができる。適切な変換量の例は、30%~80%(例えば、40%~70%)の変換百分率であり得る。
【0033】
プロセス条件としては、300℃~500℃(例えば、300℃~450℃、または330℃~450℃)の範囲の反応温度、6MPa~30MPa(例えば、10MPa~20MPa、または12MPa~18MPa)の範囲の総圧力、800SL/L~2000SL/L(例えば、1000SL/L~2000SL/L、または1000SL/L~1500SL/L)の範囲の水素供給速度(炭化水素原料1リットル当たりの標準リットル)、及び0.1h-1~10h-1(例えば、0.5h-1~5h-1、または0.5h-1~2h-1)の範囲の液空間速度(LHSV)を挙げることができる。
【0034】
水素化処理は、水素の存在下で行われる。したがって、水素流は、水素化処理触媒が位置する反応器または反応ゾーンまたは水素化処理ゾーンに供給されるかまたは注入される。水素「処理ガス」に含まれる水素は、純水素、または水素含有ガスのいずれであってもよい。水素含有ガスは、意図される反応(複数可)に十分な量の水素を含有するガス流であって、場合により1以上の他のガス(例えば、窒素及びメタンなどの軽質炭化水素)を含むガス流である。反応ステージに導入される処理ガス流は、少なくとも50体積%(例えば、少なくとも75体積%)の水素を含み得る。場合により、水素処理ガスは、HS及びNHなどの不純物を実質的に含まない(1体積%未満)ものとすることができ、及び/またはそのような不純物は、使用前に処理ガスから実質的に除去することができる。水素は、投入原料と同時にまたは別のガス導管を介して別々に水素化処理反応器及び/または反応ゾーンへ供給することができる。
【0035】
水素化処理に続いて、水素化処理された流出物は、次いで、気液分離器に通され、流出物から気相部分を除去することができる。次いで、分離器からの液相流出物を分画して、少なくとも、留分範囲の生成物を含む変換画分と、典型的には未変換部分から得られるより高い沸点範囲の生成物を含む未変換画分とを生成することができる。例えば、分留装置を使用して、少なくともディーゼル画分及びジェット炭化水素画分を生成することができる。次いで、未変換部分を水素化分解することができ、場合により、さらなる水素化分解のために残りの未変換部分をリサイクルすることができる。場合により、共通の分留装置または他の分離器を使用して、留出燃料沸点範囲の生成物を、留出燃料沸点範囲を上回る沸点範囲を有する供給原料の未変換部分から分離することができる。分画は、例えば、常圧蒸留ユニットなどの蒸留ユニットを使用して行うことができる。
【0036】
場合により、水素化処理された生成物を脱ろうして、改善された低温流動特性を有する留出燃料沸点範囲の生成物を得ることができる。
【0037】
ここで得られるディーゼル範囲及びジェット範囲の炭化水素画分は、ドロップイン燃料組成物として使用することができ、あるいは既存の燃料組成物と混合することができる。
【0038】
水素化処理触媒
本水素化処理プロセスを実施する際に使用する触媒は、担体成分と、担体成分に担持された金属成分と、を含む。担体成分は、(i)担体の総重量に対して0.1重量%~75重量%の量のMTWゼオライト及び/またはSSZ-41xゼオライトと、(ii)担体の総重量に対して15重量%~85重量%の量の非晶質シリカ-アルミナと、(iii)担体の総重量に対して5重量%~55重量%の量のアルミナ結合剤と、を含む。金属成分は、第6族の金属及び第8~10族の非貴金属を含む。
【0039】
いくつかの態様において、MTWゼオライトはZSM-12である。
【0040】
好ましくは、ゼオライトは、低いSiO/Alモル比を有する。例えば、MTWゼオライトのSiO/Alモル比は、25~100(例えば、25~75、または25~50、または30~100、または30~75、または30~50)の範囲内であり得る。SSZ-41xは、30~100未満(例えば、50~90)の範囲内のSiO/Alモル比を有し得、さらに15~75(例えば、20~40)の範囲内のSiO2ZnOモル比を有し得る。ゼオライトのSiO/Alモル比及びSiO/ZnOモル比を定量する手段及び方法は、当技術分野で周知であり、原子吸光分光法(AAS)、誘導結合プラズマ-原子発光分光法(ICP-AES)、及び蛍光X線(XRF)法を含む。
【0041】
好ましくは、ゼオライトは、水素型またはNH 型である(すなわち、ゼオライトに結合する元のカチオンの少なくとも一部が、それぞれHイオンまたはNH イオンによって置き換えられている)。第1の方法は、酸、例えば鉱酸(HNO、HClなど)を用いた直接処理を含む。第2の方法は、アンモニウム塩(例えば、NHNO)を使用して直接交換を行ってから、焼成することを含む。ゼオライトは、場合により、多くとも微量の他のカチオン(例えばNa)を含んでもよい(ここで微量とは、ゼオライトの総重量に対して0.05重量%以下である)。
【0042】
担体中のゼオライトの量は、担体の総重量に対して0.1重量%~75重量%(例えば、0.5重量%~25重量%)の範囲内とすることができる。
【0043】
非晶質シリカ-アルミナ(ASA)は、SIRAL高細孔容積ASAなどの多孔性非晶質シリカ-アルミナを含み得るが、触媒が有効であるために高細孔容積は必要ではない。ASAは、20重量%~50重量%のシリカを含み得、その残部はアルミナであり得る。
【0044】
触媒に組み込む前のASA粉末は、77KでN吸着によって測定した場合、0.5cm/g~2.0cm/g(例えば、0.6cm/g~1.6cm/g)の総細孔容積を有し得る。担体に組み込む前のASA粉末の平均細孔直径は、BJH法によって測定した場合、4nm~14nm(例えば、5~13nm)の範囲内であり得る。組み込む前のASA粉末の総BET表面積は、400m/g~550m/g(例えば、410m/g~510m/g)の範囲内であり得る。
【0045】
担体中のASAの量は、担体の総重量に対して15重量%~85重量%(例えば、50重量%~80重量%)の範囲内であり得る。
【0046】
任意のα-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ、またはγ-アルミナが、担体に適したアルミナ結合剤であり、γ-アルミナが好ましい。担体中のアルミナの量は、担体の総重量に対して5重量%~55重量%(例えば、15重量%~35重量%)の範囲内であり得る。
【0047】
担体は、製造を容易にし、強度を与えるために、場合により、使用されるアルミナ以外の耐火性結合剤または母材を含み得る。適切な結合剤は、無機酸化物、例えば、シリカ、マグネシア、ジルコニア、クロミア、チタニア、ボリア、トリア、及び酸化亜鉛のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0048】
使用する担体は、成形粒子の形態であり得る。成形された担体は、当業者に既知の任意の好適な方法によって調製することができる。粒子は、円柱、多葉などの様々な形状であり得、また1/16インチ、1/8インチ、3/16インチなどの名目寸法であり得る。
【0049】
担体粒子を成形した後、担体粒子に、含浸溶液を使用して金属塩を含浸させることができる。含侵、例えば、単純湿潤法(incipient wetness)または溶液中でのイオン交換による含浸は、担体を含む触媒に金属を導入するために一般的に使用される技術である。好適な金属塩は、触媒のための担体粒子の水性含浸に使用される一般的な塩を含み得る。
【0050】
水素化処理は、水素化金属または触媒金属として、少なくとも1つの第6族金属及び少なくとも1つの第8~10族非貴金属を含む。
【0051】
第6族の金属は、クロム、モリブデン、タングステン、またはそれらの任意の組み合わせ、好ましくはモリブデン及び/またはタングステンを含み得る。第6族の金属は、酸化物の形態で、典型的には、触媒の総重量に対して2重量%~~70重量%(例えば、5重量%~40重量%、または10重量%~30重量%)の範囲内の量で存在し得る。
【0052】
第8~10族の非貴金属は、鉄、コバルト、ニッケル、またはそれらの任意の組み合わせ、好ましくはニッケルを含み得る。第8~10族の非貴金属は、酸化物の形態で、典型的には、触媒の総重量に対して1重量%~40重量%(2重量%~15重量%)の範囲内の量で存在し得る。
【0053】
いくつかの態様において、総金属含有量(第6族と第8~10族金属)は、酸化物の形態で、触媒の総重量に対して15重量%~55重量%(例えば、20重量%~40重量%)の範囲内であり得る。触媒中の金属の量は、例えば、触媒をXRFまたはICP分析に供することによって測定することができる。
【0054】
水素化処理触媒は、さらに有機分散剤を含み得る。有機分散剤は、2~10個の炭素を含み、酸素原子数に対する炭素原子数の比率が0.6~2の有機化合物であり得る。有機分散剤はキレート剤でもあり得る。適切な有機分散剤の例としては、グリコール(例えば、エチレングリコール)及び有機酸(例えば、クエン酸、グルコン酸)が挙げられる。場合により、有機分散剤は、ニトリロ三酢酸などの窒素含有有機化合物であってもよい。いかなる特定の理論にも拘束されることなく、金属酸化物及び/または金属硫化物を形成するために含浸後に行われる加熱、焼成、及び/または硫化ステップ中に、有機分散剤を触媒前駆体/触媒から除去することができると考えられる。分散剤は、触媒担体全体における金属分布の調整を補助することができると考えられる。
【0055】
金属が含浸によって触媒に添加される場合、含浸溶液中の有機分散剤の量は、溶液中の金属の量に基づいて選択することができる。いくつかの態様において、溶液中の総金属に対する有機添加剤のモル比は、0.1~5.0(例えば、0.1~2.0、または0.1~1.0、または0.2~5.0、または0.2~2.0、または0.2~1.0、または0.3~5.0、または0.3~2.0、または0.3~1.0、または0.4~5.0、または0.4~2.0、または0.4~1.0)であり得る。追加的または代替的に、有機添加剤の第8~10族金属(例えば、Ni)に対するモル比は、0.5~10(例えば、0.5~5.0、または0.5~3.0、または1.0~10、または1.0~5.0、または1.0~3.0)であり得る。
【0056】
所望により、既に添加した金属成分に加えて、更なる材料、例えば、従来の水素化処理触媒の調製中に添加できる任意の材料を、添加してもよい。そのような追加の材料の適切な例としては、リン化合物、ホウ素化合物、フッ素含有化合物、追加の遷移金属、希土類金属、フィラー、またはそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0057】
いくつかの態様において、触媒はリン化合物をさらに含む。適切なリン化合物としては、リン酸アンモニウム、リン酸、または有機リン化合物を挙げることができる。リン化合物は、触媒調製プロセスの任意の段階で添加することができる。触媒中のリンの量は、触媒の総重量に対して少なくとも1重量%(Pとして換算)とすることができ、より好ましくは触媒の総重量に対して1~10重量%の範囲内(Pとして換算)とすることができる。
【0058】
担体の成形後、さらに金属の含浸後、担体/触媒組成物は、適切に乾燥され、焼成される。乾燥温度は50℃~200℃の範囲内とすることができ、乾燥時間は0.5~5時間が好適である。焼成温度は、200℃~800℃(例えば、300℃~600℃)の範囲内とすることができる。担体の焼成には、比較的短い時間、例えば0.5~3時間が必要である。触媒組成物の焼成については、金属の最適な分散を確実にするため、低い加熱速度で制御された昇温を使用しなければならない場合がある。そのような焼成は、5~20時間を必要とする場合がある。
【0059】
炭化水素原料と接触させる前に、触媒を使用前に硫化して、硫化金属触媒を形成してもよい。金属の硫化は、気相硫化または液相硫化などの任意の都合のよい方法によって行うことができる。硫化は、通常、触媒前駆体(例えば、分散剤によって錯化された金属及び/または金属酸化物の形態の金属を含む触媒前駆体)を、硫黄含有化合物(例えば、元素硫黄、硫化水素、またはポリ硫化物)と接触させることによって行われる。硫化水素は、気相硫化のための便利な硫化剤であり、水素を0.1重量%~10重量%の量で含む気相硫化雰囲気に加えることができる。硫化はまた、ジメチルジスルフィド添加炭化水素流などのポリ硫化物と水素との組み合わせを利用して液相中で行うことができる。硫化は、都合のよい硫化温度、例えば、150℃~500℃の温度において行うことができる。硫化は、都合のよい硫化圧力、例えば、100psig~1000psig(689.5kPa~6.895MPa)またはそれ以上において行うことができる。硫化時間は、硫化条件に応じて異なり得るため、1時間~72時間の硫化時間が適切であり得る。得られた触媒を使用前に蒸気処理してもよい。
【実施例
【0060】
以下の例示的な実施例は非限定的であることを意図している。
【0061】
実施例1
n-オクタデカンからのジェット沸点範囲の炭化水素の製造
n-オクタデカンからジェット沸点範囲の炭化水素への水素化変換について、SSZ-41x触媒をMTW触媒とともにスクリーニングした。触媒は従来の手段によって調製した。ゼオライト、アルミナ結合剤、及び非晶質シリカ-アルミナ(ASA)を含む混合押出基材を、NiCO、クエン酸、MoO、(NH1240、及びHPOを含む水溶液で共含浸し、次いで空気中450℃で60分間焼成した。SSZ-41xのSiO/Alモル比は75であった。MTWゼオライト(CBV8014、Zeolyst International)のSiO/Alモル比は80~90であった。触媒の特性を表1にまとめる。

【表1】
【0062】
触媒性能を、表2に示す条件にて、シングルステージワンススルー(single-stage once-through)モードで操作するベンチスケールユニットにおいて評価した。
【表2】
【0063】
図1は、SSZ-41x触媒及びMTW触媒によるn-オクタデカンの水素化変換中における触媒活性温度(CAT)対水素化分解(HCR)変換率(<500°F)のグラフである。図示するとおり、試験した合成HCR変換率の範囲(<500°Fに対して約20~50%)にわたり、MTW及びSSZ-41を含有する触媒の活性の差は、約5°F以下、平均して約2°Fであり、したがって、試験法の精度において触媒の活性は実質的に同じであった。結果を表3にまとめる。
【表3】
【0064】
図2は、SSZ-41x触媒及びMTW触媒によるn-オクタデカンの水素化変換中におけるHCR変換率に対する生成物画分収率のグラフである。図示するとおり、MTW触媒及びSSZ-41触媒は、試験した変換率の範囲にわたり、ジェット(300°F~550°F)、重質ナフサ(180°F~300°F)、軽質ナフサ(C5~180°F)、及びガス(C4-)についてほぼ同じ製品収率をもたらした。ジェット及びガスの収率は、それらがそれぞれ最も必要な生成物と最も不要な生成物であるため、特に興味深い。それらの結果を表4にまとめる。
【表4】
【0065】
さらに、n-オクタデカン(通常の沸点すなわちnBP=603°F)を分解してn-C8炭化水素(nBP=257°F)またはその低級物を生成すれば、ジェット沸点範囲(300°F~550°)を下回る化合物が生成される。いかなる理論にも拘束されることなく、重質ナフサなどの低沸点生成物画分に対して高収率のジェット生成物画分が認められたこと(例えば、図2参照)から、n-オクタデカンが、MTW触媒及びSSZ-41x触媒により、主にまたは大部分、ジェット範囲内で沸騰する種への異性化によって変換されたことが明らかであると考えられる。これは、それほど望ましくない軽質画分への過剰な分解を回避し、n-オクタデカンからジェット燃料を選択的に製造するにあたりMTW及び/またはSSZ-41xを使用することの実現可能性を実証する望ましい結果である。
【0066】
図3は、MTW触媒及びSSZ-41x触媒によるn-オクタデカンの水素化変換中におけるHCR変換率に対するジェット生成物画分の凝固点のグラフである。使用した分析方法で検出可能な最低凝固点は-60℃であった。図3に示すように、触媒によって生成されたジェット画分の凝固点(300°F~550°F)は、HCR変換率が増加するにつれて低下する傾向にある。同様の変換において、MTWを含む試料は、SSZ-41xを有する触媒によって生成されるものよりも低い温度で凝固するジェット画分を生成し、MTW触媒及びSSZ-41x触媒は、それぞれ19.6重量%及び21.7重量%のHCR変換率で、-31.1℃及び-5.4℃のジェット凝固点をもたらした。
【0067】
図4A~4Bは、それぞれ、SSZ-41x触媒及びMTW触媒によるn-オクタデカンの水素化変換中におけるHCR変換率に対するジェット生成物の曇り点及び流動点のグラフである。図4A図4Bに示すように、300°F+及び500°F+で沸騰する生成物の流動点/曇り点は、通常、SSZ-41xよりもMTWを含有する触媒の方が低かった。
【0068】
要約すると、MTW及びSSZ-41xを含有する触媒は、通常、活性及び生成物の選択性に関して同様のn-C18HCR能をもたらしたが、SSZ-41xを含有する触媒は、MTWを含む触媒よりも金属含有量が顕著に低くなるよう調製された。結果として、SSZ-41xは、全体的に少ない金属で同程度のHCR収率をもたらす能力とプロポキシの水素化活性が低いことを考えると、再生可能な原料からジェット燃料を生成する目的において、MTWよりも総合的に有利であり得る。しかしながら、SSZ-41xによって生成されたジェット燃料の凝固点は、MTWに由来するものよりも高く、これは一般にそれほど望ましくない。MTWゼオライトまたはSSZ-41xゼオライトのいずれかを含む触媒は、十分に高い収率及び満足のいく活性でn-C18を300°F~550°Fの沸点範囲内の生成物に変換する能力を有するため、再生可能原料からジェット燃料を製造するのに利用できることを示している。
【0069】
実施例2
従来の石油原料からの中間留分の製造
未変換油(UCO)を中間留分沸点範囲の炭化水素に水素化変換するために、SSZ-41x触媒をMTW触媒とともにスクリーニングした。MTWゼオライト(SAR=80)を自家調製したこと以外、SSZ-41x触媒及びMTW触媒を実施例1に記載した通り調製した。触媒の特性を表2にまとめる。
【表2】
【0070】
石油原料は、表6に記載の特性を有する未変換油(UCO)であった。
【表6】
【0071】
触媒性能を、表7に示す条件にて、シングルステージワンススルー(single-stage once-through)モードで操作するベンチスケールユニットにおいて評価した。
【表7】
【0072】
図5は、MTW触媒及びSSZ-41x触媒によるUCOの水素化変換中におけるHCR変換率に対する留分収率のグラフである。図5に示すように、MTW及びSSZ-41xを含む触媒は、試験した変換率の範囲にわたって同様の留分(380°F~700°F)の収率をもたらし、MTW触媒は、任意の所定の変換率において約1重量%収率が高かった。これらの結果を表8にまとめる。
【表8】
【0073】
図6は、MTW触媒及びSSZ-41x触媒によるUCOの水素化変換中におけるCAT対HCR変換率(<700°F)のグラフである。図6に示すとおり、SSZ-41x触媒は、試験したHCR変換率の範囲内でMTW触媒よりも約18°F有意に優れた活性を示した。各触媒によって生成される留分の収率は比較的類似しているが、活性上SSZ-41xが実質的に有利であることが認められる(図5)。ある水素化処理触媒が別の水素化処理触媒よりも活性が大きく優れているということには、一般に、HCR選択性がより低いあるいは生成物収率がより低いという相応の不利益が伴う。本SSZ-41x触媒の特定の場合、そのような不利益も不相応に小さく、このことは、SSZ-41xが、MTWよりも活性上本質的に有利であることを示唆している。
【0074】
要約すると、MTW触媒及びSSZ-41x触媒はともに、中間留分(380°F~700°Fの沸点)を同等の変換率で同様の収率にて生成するのに優れていた。しかしながら、SSZ-41x触媒は、HCR活性においてMTWよりも実質的に有利である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
【国際調査報告】