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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-13
(54)【発明の名称】硬化性シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20250306BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20250306BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024548739
(86)(22)【出願日】2023-02-23
(85)【翻訳文提出日】2024-08-19
(86)【国際出願番号】 US2023013660
(87)【国際公開番号】W WO2023164019
(87)【国際公開日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】63/313,396
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【弁理士】
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】ユク、ジュヨン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP044
4J002CP045
4J002CP141
4J002CP142
4J002CP143
4J002DA117
4J002DD007
4J002DJ016
4J002EC038
4J002EX019
4J002EX039
4J002EX069
4J002FD016
4J002FD144
4J002FD145
4J002FD157
4J002FD208
4J002FD209
4J002GH00
4J002GJ00
(57)【要約】
本開示は、(A)分子中にアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン樹脂と、(B)25℃における粘度が1,000mPa・s以下であり、分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合アルケニル基又はケイ素原子結合水素原子を有し、少なくとも1個のケイ素原子結合アリール基を有するオルガノシロキサンオリゴマーと、(C)分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合アリール基及びSiO4/2ユニットを有さないオルガノポリシロキサン、又は分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合水素原子を有し、ケイ素原子結合アリール基を有さないオルガノポリシロキサンと、(D)シリカ充填剤と、(E)ヒドロシリル化反応触媒と、を含む硬化性シリコーン組成物に関する。この組成物は、多量のオルガノポリシロキサン樹脂を含有しているにもかかわらず、優れたチキソトロピー特性を有し、硬化して透明な硬化物を形成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)以下の平均ユニット式:
(R SiO1/2(R SiO1/2(SiO4/2(HO1/2
(式中、各Rは独立してアルキル基であり、Rはアルケニル基であり、「a」、「b」、「c」及び「d」は、a≧0、b>0、0.3≦c≦0.7、0≦d≦0.05、及びa+b+c=1の条件を満たす数である)で表されるオルガノポリシロキサン樹脂と、
(B)25℃における粘度が1,000mPa・s以下であり、(B)分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合アルケニル基と少なくとも1個のケイ素原子結合アリール基とを有するオルガノシロキサンオリゴマー、(B)分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合水素原子と少なくとも1個のケイ素原子結合アリール基とを有するオルガノシロキサンオリゴマー、及び成分(B)と(B)との混合物から選択されるオルガノシロキサンオリゴマーと、
(C)(C)分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合アリール基及びSiO4/2ユニットを有さないオルガノポリシロキサン、(C)分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合水素原子を有し、ケイ素原子結合アリール基を有さないオルガノポリシロキサン、並びに成分(C)と(C)との混合物から選択されるオルガノポリシロキサンと、
(D)シリカ充填剤と、
(E)触媒量のヒドロシリル化反応触媒と、を含み、
成分(A)~(C)の合計質量を基準としてそれぞれ、成分(A)の量が40.0~65.0質量%の範囲、成分(B)の量が1.0~55.0質量%の範囲、成分(C)の量が0~50.0質量%の範囲であり、成分(D)の量が、成分(A)~(C)の合計質量100質量部に対して1~10質量部の範囲であり、ただし、成分(A)~(C)中の、全ケイ素原子結合水素原子の全ケイ素原子結合アルケニル基に対するモル比が0.5~2.0の範囲である、硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
成分(B)が、
(B11)以下の一般式:
SiO(R SiO)SiR
(式中、各Rは独立してアルケニル基であり、各Rは独立してアルキル基又はアリール基であり、ただし、少なくとも1つのRはアリール基であり、「m」は0~10の整数である)で表されるオルガノシロキサンオリゴマー、及び
(B12)以下の平均ユニット式:
(R SiO1/2(RSiO3/2
(式中、R及びRは上記の通りであり、「e」及び「f」は、e>0、f>0、及びe+f=1の条件を満たす数である)で表されるオルガノシロキサンオリゴマーから選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
成分(B11)が、以下の式:
(CH=CH)(CHSiO(CSiOSi(CH(CH=CH
(CH=CH)(CHSiO(C)(CH)SiOSi(CH(CH=CH
(CH=CH)(CH)(C)SiOSi(CH)(C)(CH=CH
で表されるオルガノシロキサンオリゴマーから選択される少なくとも1つであり、成分(B12)が、以下の一般ユニット式:
[(CH=CH)(CHSiO1/2[(C)SiO3/2
(式中、「e」及び「f」は上記の通りである)で表されるオルガノシロキサンオリゴマーである、請求項2に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
成分(B)が、
(B21)以下の一般式:
HR SiO(R SiO)SiR
(式中、各Rは独立してアルキル基又はアリール基であり、ただし、少なくとも1つのRはアリール基であり、「m」は0~10の整数である)で表されるオルガノシロキサンオリゴマー、及び
(B22)以下の平均ユニット式:
(R HSiO1/2(RSiO3/2
(式中、Rは上記の通りであり、「e」及び「f」は、e>0、f>0、及びe+f=1の条件を満たす数である)で表されるオルガノシロキサンオリゴマーから選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
成分(B21)が、以下の式:
H(CHSiO(CSiOSi(CH
H(CHSiO(C)(CH)SiOSi(CH
で表されるオルガノシロキサンオリゴマーから選択される少なくとも1つであり、
成分(B22)が、以下の一般ユニット式:
[(CHHSiO1/2[(C)SiO3/2)]
(式中、「e」及び「f」は上記の通りである)で表されるオルガノシロキサンオリゴマーである、請求項4に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項6】
(F)前記組成物に関する質量単位に換算して、この成分中0.1~10,000ppmの量のヒドロシリル化反応抑制剤
を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項7】
(G)成分(A)~(C)の合計質量100質量部に対して最大10質量部の量の接着促進剤
を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年2月24日に出願された米国特許仮出願第63/313,396号の優先権及び全ての利点を主張するものであり、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、硬化性シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(CHSiO1/2ユニット、CH=CH(CH)SiO2/2ユニット及びSiO4/2ユニットからなるオルガノポリシロキサン樹脂と、分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化反応触媒と、を含む硬化性シリコーン組成物は、硬化して、優れた耐熱性、電気絶縁特性及び耐候性を有する透明な硬化物を形成する。したがって、硬化性シリコーン組成物は、電気/電子機器の保護コーティング剤、封止材又はシーラントとして広く使用されている。特定の用途では、流動性を制御し、硬化性シリコーン組成物を分注した後にその形状を保持するために、硬化性シリコーン組成物のチキソトロピー特性が必要とされる。
【0004】
例えば、特許文献1は、実施例1において、CH=CH(CHSiO1/2ユニット、(CHSiO1/2ユニット及びSiO4/2ユニットからなるオルガノポリシロキサン樹脂、ビニル基末端ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、並びに白金触媒を含む硬化性シリコーン組成物を開示している。また、特許文献1は、透明性を損なわない範囲で、強度向上のためのヒュームドシリカなどの無機充填剤を開示している。しかしながら、特許文献1は、硬化性シリコーン組成物のチキソトロピー特性を高めることについては言及していない。
【0005】
特許文献2は、実施例4において、分子鎖の両末端がジメチルビニルシロキシ基でキャッピングされたジメチルシロキサンとメチルビニルシロキサンとのコポリマー、CH=CH(CHSiO1/2ユニット、(CHSiO1/2ユニット及びSiO4/2ユニットからなるオルガノポリシロキサン樹脂、(CHHSiO1/2ユニット及びSiO4/2ユニットからなるメチルハイドロジェンポリシロキサン、白金触媒、並びにヒュームドシリカを含む硬化性シリコーン組成物を開示している。しかしながら、この硬化性シリコーン組成物は、硬化すると、透明性の低い硬化物を形成した。また、特許文献2は、実施例5において、分子鎖の両末端がジメチルビニルシロキシ基でキャッピングされたジメチルシロキサンとジフェニルシロキサンとのコポリマー、CH=CH(CHSiO1/2ユニット、(CHSiO1/2ユニット及びSiO4/2ユニットからなるオルガノポリシロキサン樹脂、(CHHSiO1/2ユニット及びSiO4/2ユニットからなるメチルハイドロジェンポリシロキサン、並びに白金触媒を含む硬化性シリコーン組成物を開示している。しかしながら、特許文献2は、硬化性シリコーン組成物のチキソトロピー特性を高めることについては言及していない。
【0006】
特許文献3は、実施例1において、分子鎖の両末端がトリビニルシロキシ基でキャッピングされたジメチルシロキサンとジフェニルシロキサンとのコポリマー、CH=CH(CHSiO1/2ユニット、(CHSiO1/2ユニット及びSiO4/2ユニットからなるオルガノポリシロキサン樹脂、(CHHSiO1/2ユニット及びSiO4/2ユニットからなるポリメチルハイドロジェンシロキサン、分子鎖の両末端がトリメチルシロキシ基でキャッピングされたメチルハイドロジェンポリシロキサン、白金触媒、ヒュームドシリカ、並びにチキソトロピー付与剤としてのグリシドキシプロピル基を有するオルガノポリシロキサンを含む硬化性シリコーン組成物を開示している。この硬化性シリコーン組成物は、硬化して透明な硬化物を形成するが、ジメチルシロキサンとジフェニルシロキサンとのコポリマーの代わりに分子鎖の両末端がジメチルビニルシロキシ基でキャッピングされたジメチルポリシロキサンを用いた組成物と比較して、そのチキソトロピー特性は劣る。
【0007】
特許文献4は、複数の実施例において、分子鎖の両末端がジメチルビニルシロキシ基でキャッピングされたジメチルシロキサンとジフェニルシロキサンとのコポリマー、(CHSiO1/2ユニット、CH=CH(CH)SiO2/2ユニット及びSiO4/2ユニットからなるオルガノポリシロキサン樹脂、(CHHSiO1/2ユニット及びSiO4/2ユニットからなるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、又は分子鎖の両末端がトリメチルシロキシ基でキャッピングされたメチルハイドロジェンシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマー、白金触媒、並びにヒュームドシリカを含む硬化性シリコーン組成物を開示している。これらの硬化性シリコーン組成物は、チキソトロピー特性を有し、硬化して透明な硬化物を形成する。しかしながら、オルガノポリシロキサン樹脂がRSiO2/2ユニット(式中、各Rは独立してアルケニル基、又はハロゲン置換されていてもよいアルキル基を表す)を含有する必要がある。更に、オルガノポリシロキサン樹脂の量は、直鎖オルガノポリシロキサンとオルガノポリシロキサン樹脂との合計を基準として10~40質量%の範囲に限定される。
【0008】
先行技術文献
特許文献
特許文献1:米国特許出願公開第2004/0116640(A1)号
特許文献2:特開2006-335857(A)号
特許文献3:韓国特許出願公開第10-2009-0103785(A)号
特許文献4:韓国特許出願公開第10-2015-0065672(A)号
【発明の概要】
【0009】
発明が解決しようとする課題
本発明の目的は、多量のオルガノポリシロキサン樹脂を含有しているにもかかわらず、優れたチキソトロピー特性を有し、硬化して透明な硬化物を形成することができる硬化性シリコーン組成物を提供することである。
【0010】
課題を解決するための手段
本発明の硬化性シリコーン組成物は、
(A)以下の平均ユニット式:
(R SiO1/2(R SiO1/2(SiO4/2(HO1/2
(式中、各Rは独立してアルキル基であり、Rはアルケニル基であり、「a」、「b」、「c」及び「d」は、a≧0、b>0、0.3≦c≦0.7、0≦d≦0.05、及びa+b+c=1の条件を満たす数である)で表されるオルガノポリシロキサン樹脂と、
(B)25℃における粘度が1,000mPa・s以下であり、(B)分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合アルケニル基と少なくとも1個のケイ素原子結合アリール基とを有するオルガノシロキサンオリゴマー、(B)分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合水素原子と少なくとも1個のケイ素原子結合アリール基とを有するオルガノシロキサンオリゴマー、及び成分(B)と(B)との混合物から選択されるオルガノシロキサンオリゴマーと、
(C)(C)分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合アリール基及びSiO4/2ユニットを有さないオルガノポリシロキサン、(C)分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合水素原子を有し、ケイ素原子結合アリール基を有さないオルガノポリシロキサン、並びに成分(C)と(C)との混合物から選択されるオルガノポリシロキサンと、
(D)シリカ充填剤と、
(E)触媒量のヒドロシリル化反応触媒と、を含み、
ここで、成分(A)~(C)の合計質量を基準としてそれぞれ、成分(A)の量は40.0~65.0質量%の範囲、成分(B)の量は1.0~55.0質量%の範囲、成分(C)の量は0~50.0質量%の範囲であり、成分(D)の量は、成分(A)~(C)の合計質量100質量部に対して1~10質量部の範囲であり、ただし、成分(A)~(C)中の、全ケイ素原子結合水素原子の全ケイ素原子結合アルケニル基に対するモル比は0.5~2.0の範囲である。
【0011】
様々な実施形態において、成分(B)は、(B11)以下の一般式:
SiO(R SiO)SiR
(式中、各Rは独立してアルケニル基であり、各Rは独立してアルキル基又はアリール基であり、ただし、少なくとも1つのRはアリール基であり、「m」は0~10の整数である)で表されるオルガノシロキサンオリゴマー、及び
(B12)以下の平均ユニット式:
(R SiO1/2(RSiO3/2
(式中、R及びRは上記の通りであり、「e」及び「f」は、e>0、f>0、及びe+f=1の条件を満たす数である)で表されるオルガノシロキサンオリゴマーから選択される少なくとも1つである。
【0012】
様々な実施形態において、成分(B11)は、以下の式:
(CH=CH)(CHSiO(CSiOSi(CH(CH=CH
(CH=CH)(CHSiO(C)(CH)SiOSi(CH(CH=CH
(CH=CH)(CH)(C)SiOSi(CH)(C)(CH=CH
で表されるオルガノシロキサンオリゴマーから選択される少なくとも1つであり、成分(B12)は、以下の一般ユニット式:
[(CH=CH)(CHSiO1/2[(C)SiO3/2
(式中、「e」及び「f」は上記の通りである)で表されるオルガノシロキサンオリゴマーである。
【0013】
様々な実施形態において、成分(B)は、(B21)以下の一般式:
HR SiO(R SiO)SiR
(式中、各Rは独立してアルキル基又はアリール基であり、ただし、少なくとも1つのRはアリール基であり、「m」は0~10の整数である)で表されるオルガノシロキサンオリゴマー、及び
(B22)以下の平均ユニット式:
(R HSiO1/2(RSiO3/2
(式中、Rは上記の通りであり、「e」及び「f」は、e>0、f>0、及びe+f=1の条件を満たす数である)で表されるオルガノシロキサンオリゴマーから選択される少なくとも1つである。
【0014】
様々な実施形態において、成分(B21)は、以下の式:
H(CHSiO(CSiOSi(CH
H(CHSiO(C)(CH)SiOSi(CH
で表されるオルガノシロキサンオリゴマーから選択される少なくとも1つであり、成分(B22)は、以下の一般ユニット式:
[(CHHSiO1/2[(C)SiO3/2)]
(式中、「e」及び「f」は上記の通りである)で表されるオルガノシロキサンオリゴマーである。
【0015】
様々な実施形態において、硬化性シリコーン組成物は、(F)組成物に関する質量単位に換算して、この成分中0.1~10,000ppmの量のヒドロシリル化反応抑制剤を更に含む。
【0016】
様々な実施形態において、硬化性シリコーン組成物は、(G)成分(A)~(C)の合計質量100質量部に対して最大10質量部の量の接着促進剤を更に含む。
【0017】
発明の効果
本発明の硬化性シリコーン組成物は、多量のオルガノポリシロキサン樹脂を含有しているにもかかわらず、優れたチキソトロピー特性を有し、硬化して透明な硬化物を形成することができる。
【0018】
定義
「含むこと(comprising)」又は「含む(comprise)」という用語は、本明細書において、それらの最も広い意味で使用され、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing)essentially of)」、及び「からなる(consist(ing)of)」という観念を意味し、それを包含する。実例を列挙するための「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば/など(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列挙されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、これらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「~などであるが、これらに限定されない(such as,but not limited to)」を意味し、他の同様又は同等の例を包含する。本明細書で使用されている「約」という用語は、機器分析により測定した数値、又はサンプルを取り扱った結果としての数値のわずかな変動を、合理的に包含又は記載するのに役立つ。このようなわずかな変動は、数値の±0~25、±0~10、±0~5、又は±0~2.5%ほどであり得る。更に、「約」という用語は、ある範囲の値に関連する場合、数値の両方に当てはまる。更に、「約」という用語は、明確に記載されていない場合であっても、数値に適用されることがある。
【0019】
添付の特許請求の範囲は、「発明を実施するための形態」に記載されている、明示された及び特定の化合物、組成物、又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲の範囲内の特定の実施形態間で異なり得ることが理解されるべきである。本明細書において、様々な実施形態の特定の特徴又は態様の記載が依拠するあらゆるマーカッシュ群に関しては、異なる、特別な、及び/又は想定外の結果がそれぞれのマーカッシュ群の各要素から、他の全マーカッシュ要素とは無関係に得ることができることが理解されるべきである。マーカッシュ群の各要素は、個別に、及び/又は組み合わせて依拠されてもよく、添付の特許請求の範囲の範囲内の具体的な実施形態に十分なサポートを提供する。
【0020】
本発明の様々な実施形態を記載する際に依拠される任意の範囲及び部分範囲は、独立して及び包括的に、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることも理解されるべきであり、本明細書で明示的に書かれていない場合であっても、整数値及び/又は分数値を含む全ての範囲がそこに記載及び企図されていると理解される。当業者は、列挙された範囲及び部分範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に記載し、かつ可能にすること、並びにこのような範囲及び部分範囲が、関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分などに更に記述され得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9の」範囲は、下方の3分の1、すなわち、0.1~0.3、中央の3分の1、すなわち、0.4~0.6、及び上方の3分の1、すなわち、0.7~0.9に更に記述され得、これらは、個々に及び包括的に、添付の特許請求の範囲の範囲内であり、添付の特許請求の範囲の範囲内の具体的な実施形態に、個々に及び/又は包括的に依拠され得、十分なサポートを提供する。加えて、範囲を定義するか又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」、「未満」、「以下」などに関して、このような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などを本質的に含み、各部分範囲は、添付の特許請求の範囲の範囲内の具体的な実施形態に、個々に及び/又は包括的に依拠され得、十分なサポートを提供する。最後に、開示した範囲内の個々の数は、添付の特許請求の範囲の範囲内の具体的な実施形態に依拠され得、十分なサポートを提供する。例えば、「1~9の」範囲は、3などの様々な個々の整数、及び4.1などの小数点(又は分数)を含む個々の数を含み、これは、添付の特許請求の範囲の範囲内の具体的な実施形態に依拠され得、十分なサポートを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の硬化性シリコーン組成物について詳細に記載する。
【0022】
成分(A)は、以下の平均ユニット式:
(R SiO1/2(R SiO1/2(SiO4/2(HO1/2
で表されるオルガノポリシロキサン樹脂である。
【0023】
式中、各Rは独立してアルキル基である。アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基などの1~12個の炭素原子を有するアルキル基により例示される。これらの中でも、メチル基が好ましい。
【0024】
式中、Rはアルケニル基である。アルケニル基は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基などの2~12個の炭素原子を有するアルケニル基により例示される。これらの中でも、ビニル基が好ましい。
【0025】
式中、「a」、「b」、「c」及び「d」は、a≧0、b>0、0.3≦c≦0.7、0≦d≦0.05、及びa+b+c=1の条件を満たす数であり、0.1≦a≦0.5、0.01≦b≦0.2、0.4≦c≦0.7、0≦d≦0.05、及びa+b+c=1であってもよく、0.2≦a≦0.5、0.01≦b≦0.2、0.4≦c≦0.7、0≦d≦0.05、及びa+b+c=1であってもよい。これは、「a」、「b」、「c」及び「d」が上述の範囲内の数であれば、本組成物を硬化させて得られる硬化物が適切な硬度及び機械的強度を有するからである。
【0026】
成分(A)のオルガノポリシロキサン樹脂の分子量は限定されないが、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)によって標準ポリスチレンに換算して測定されるその数平均分子量(Mn)は、好ましくは少なくとも1,500g/mol、代替的には少なくとも2,000g/mol、又は代替的には少なくとも3,000g/molであり、同時にMnは、好ましくは6,000g/mol以下、代替的には5,500g/mol以下である。成分(A)のMnは、上記の上限と下限とを組み合わせた任意の範囲であることができる。成分(A)が25℃で固体状態であり、本組成物中の他の成分を均一に混合することが困難な場合には、予め成分(A)の有機溶液を調製して、成分(B)及び(C)の一部又は全部と混合した後、使用した有機溶剤をこの混合物から除去することにより解決することができることに留意されたい。成分(A)の有機溶液を調製するために用いることができる有機溶剤は、成分(A)を溶解することができ、かつ容易に除去できるものであれば使用することができることに留意されたい。その具体的な例としては、これらに限定されないが、トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素、並びにヘキサン及びヘプタンなどの脂肪族炭化水素が挙げられる。
【0027】
成分(A)は、成分(A)~(C)の合計質量を基準としてそれぞれ、40.0~65.0質量%の量、代替的には40.0~62.0質量%の量、代替的には45.0~65.0質量%の量、又は代替的には45.0~62.0質量%の量で使用される。これは、量が上記範囲の下限以上であれば、本組成物を硬化させて得られる硬化物が適切な硬度及び機械的強度を有する一方、量が上記範囲の上限以下であれば、組成物が25℃において好適な粘度を有するからである。
【0028】
成分(B)は、硬化性シリコーン組成物にチキソトロピー特性を付与し、また、組成物を硬化して得られる硬化物に透明性を付与するためのオルガノシロキサンオリゴマーである。成分(B)のオルガノシロキサンオリゴマーの分子構造は限定されないが、直鎖、部分的に分岐した直鎖、及び分岐鎖により例示される。成分(B)のオルガノシロキサンオリゴマーの分子量は限定されないが、好ましくは2,000g/mol以下、代替的には1,500g/mol以下である。このようなオルガノシロキサンオリゴマーは、典型的には、25℃における粘度が1,000mPa・s以下、代替的には500mPa・s以下、又は代替的には100mPa・s以下である。本明細書において、粘度は、ASTM D1084に従ってB型粘度計を用いて23±2℃で測定した値であることに留意されたい。
【0029】
成分(B)のオルガノシロキサンオリゴマーはまた、組成物の鎖延長剤又は架橋剤としても作用し、(B)分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合アルケニル基と少なくとも1個のケイ素原子結合アリール基とを有するオルガノシロキサンオリゴマー、(B)分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合水素原子と少なくとも1個のケイ素原子結合アリール基とを有するオルガノシロキサンオリゴマー、及び成分(B)と(B)との混合物から選択される。
【0030】
成分(B)のオルガノシロキサンオリゴマーは、典型的には、(B11)以下の一般式:
SiO(R SiO)SiR
で表されるオルガノシロキサンオリゴマー、及び(B12)以下の平均ユニット式:
(R SiO1/2(RSiO3/2
で表されるオルガノシロキサンオリゴマーから選択される少なくとも1つである。
これらの中でも、成分(B11)が好ましい。
【0031】
式中、各Rは独立してアルケニル基であり、その例としては上記のものと同じ基が挙げられる。これらの中でも、ビニル基が好ましい。
【0032】
式中、各Rは独立してアルキル基又はアリール基である。Rのアルキル基の例としては、上記のRと同じアルキル基が挙げられる。Rのアリール基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基などの6~12個の炭素原子を有するアリール基が挙げられる。しかしながら、少なくとも1つのRはアリール基であり、典型的にはフェニル基である。
【0033】
式中、「m」は、0~10の整数、代替的には0~5の整数、代替的には0~3の整数、又は代替的には0若しくは1の整数である。
【0034】
式中、「e」及び「f」は、
e>0、f>0、及びe+f=1、代替的には0.3<e及びe+f=1、又は代替的には0.5<e及びe+f=1の条件を満たす数である。
【0035】
成分(B)は、典型的には、以下の式:
(CH=CH)(CHSiO(CSiOSi(CH(CH=CH
(CH=CH)(CHSiO(C)(CH)SiOSi(CH(CH=CH
(CH=CH)(CH)(C)SiOSi(CH)(C(CH=CH
で表されるオルガノシロキサンオリゴマーから選択される少なくとも1つであり、成分(B12)は、典型的には、以下の一般ユニット式:
[(CH=CH)(CHSiO1/2[(C)SiO3/2
(式中、「e」及び「f」は上記の通りである)で表されるオルガノシロキサンオリゴマーである。
【0036】
成分(B)のオルガノシロキサンオリゴマーは、典型的には、(B21)以下の一般式:
HR SiO(R SiO)SiR
で表されるオルガノシロキサンオリゴマー、及び(B22)以下の平均ユニット式:
(R HSiO1/2(RSiO3/2
で表されるオルガノシロキサンオリゴマーから選択される少なくとも1つである。
これらの中でも、成分(B21)が好ましい。
【0037】
式中、各Rは、アルキル基又はアリール基であり、その例としては上記のものと同じ基が挙げられる。しかしながら、少なくとも1つのRはアリール基であり、典型的にはフェニル基である。
【0038】
式中、「m」は、0~10の整数、代替的には0~5の整数、代替的には0~3の整数、又は代替的には0若しくは1の整数である。
【0039】
式中、「e」及びf「は」、
e>0、f>0、及びe+f=1、代替的には0.3<e及びe+f=1、又は代替的には0.5<e及びe+f=1の条件を満たす数である。
【0040】
成分(B21)は、典型的には、以下の式:
H(CHSiO(CSiOSi(CH
H(CHSiO(C)(CH)SiOSi(CH
で表されるオルガノシロキサンオリゴマーから選択される少なくとも1つであり、成分(B22)は、典型的には、以下の一般ユニット式:
[(CHHSiO1/2[(C)SiO3/2)]
(式中、「e」及び「f」は上記の通りである)で表されるオルガノシロキサンオリゴマーである。
【0041】
成分(B)は、成分(A)~(C)の合計質量を基準としてそれぞれ、1.0~55.0質量%の量、代替的には1.0~50.0質量%の量、又は代替的には1.0~45.0質量%の量で使用される。これは、量が上記範囲の下限以上であれば、組成物が良好なチキソトロピー特性を有する一方、量が上記範囲の上限以下であれば、得られる硬化物が良好な透明性を有するからである。成分(B)のオルガノシロキサンオリゴマーは、成分(B)と(B)との混合物であってもよい。しかしながら、成分(B)及び(B)の量は限定されないが、成分(B)の量は、成分(A)~(C)中の、全ケイ素原子結合水素原子の全ケイ素原子結合アルケニル基に対するモル比が0.5~2.0の範囲となる量とすべきである。
【0042】
成分(C)は、任意の成分であり、(C)分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合アリール基及びSiO4/2ユニットを有さないオルガノポリシロキサン、(C)分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合水素原子を有し、ケイ素原子結合アリール基を有さないオルガノポリシロキサン、並びに成分(C)と(C)との混合物から選択されるオルガノポリシロキサンである。
【0043】
成分(A)と(B)との混合物が完全に硬化され得る場合、成分(C)の添加は任意である。しかしながら、混合物がケイ素原子結合アルケニル基の不足のために硬化できない場合には、成分(C)を添加すべきであり、混合物がケイ素原子結合水素原子の不足のために硬化できない場合には、成分(C)を添加すべきである。更に、本組成物を硬化させて得られる硬化物が硬質である場合には、成分(C)を鎖延長剤として添加すべきであり、本組成物を硬化させて得られる硬化物が軟質である場合には、成分(C)を架橋剤として添加すべきである。
【0044】
成分(C)は、分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合アリール基及びSiO4/2ユニットを有さないオルガノポリシロキサンである。アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基などの2~12個の炭素原子を有するアルケニル基が挙げられる。これらの中でも、ビニル基が好ましい。また、成分(C)中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基などの1~12個の炭素原子を有するアルキル基が挙げられる。
【0045】
成分(C)の分子構造は限定されないが、典型的には、直鎖構造、部分的に分岐した直鎖構造、分岐鎖構造、又は環状構造である。成分(C)は、これらの分子構造を有する1種のオルガノポリシロキサンであってもよく、又はこれらの分子構造を有する2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。
【0046】
このような成分(C)の例としては、分子鎖の両末端がジメチルビニルシロキシ基でキャッピングされたジメチルポリシロキサン、分子鎖の両末端がジメチルビニルシロキシ基でキャッピングされたジメチルシロキサンとメチルビニルシロキサンとのコポリマー、分子鎖の両末端がトリメチルシロキシ基でキャッピングされたジメチルシロキサンとメチルビニルシロキサンとのコポリマー、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0047】
成分(C)は、分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合水素原子を有し、ケイ素原子結合アリール基を有さないオルガノポリシロキサンである。成分(C)中のケイ素原子に結合する基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基などの1~12個の炭素原子を有するアルキル基が挙げられる。
【0048】
成分(C)の分子構造は限定されないが、典型的には、直鎖構造、部分的に分岐した直鎖構造、分岐鎖構造、環状構造、及び三次元網状構造が挙げられる。成分(C)は、これらの分子構造を有する1種のオルガノポリシロキサンであってもよく、又はこれらの分子構造を有する2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。
【0049】
このような成分(C)の例としては、分子鎖の両末端がトリメチルシロキシ基でキャッピングされたメチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖の両末端がトリメチルシロキシ基でキャッピングされたジメチルシロキサンとメチルハイドロジェンシロキサンとのコポリマー、分子鎖の両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基でキャッピングされたジメチルポリシロキサン、分子鎖の両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基でキャッピングされたジメチルシロキサンとメチルハイドロジェンシロキサンとのコポリマー、(CHHSiO1/2ユニット及びSiO4/2ユニットからなるコポリマー、(CHHSiO1/2ユニット、(CHHSiO1/2ユニット及びSiO4/2ユニットからなるコポリマー、並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0050】
成分(C)のオルガノポリシロキサンは、成分(C)と(C)との混合物であってもよい。しかしながら、成分(C)は、典型的には、25℃における粘度が1,000mPa・s以下、代替的には500mPa・s以下、又は代替的には100mPa・s以下である。本明細書において、粘度は、ASTM D1084に従ってB型粘度計を用いて23±2℃で測定した値であることに留意されたい。
【0051】
成分(C)は、成分(A)~(C)の合計質量を基準としてそれぞれ、0~55.0質量%の量、代替的には0.1~50.0質量%の量、又は代替的には0.5~45.0質量%の量で使用される。これは、量が上記範囲の下限以上であれば、組成物が良好なチキソトロピー特性を有する一方、量が上記範囲の上限以下であれば、組成物が良好な透明性を有するからである。成分(C)のオルガノシロキサンオリゴマーは、成分(C)と(C)との混合物であってもよい。しかしながら、成分(C)及び(C)の量は限定されないが、成分(C)の量は、成分(A)~(C)中の、全ケイ素原子結合水素原子の全ケイ素原子結合アルケニル基に対するモル比が0.5~2.0の範囲となる量とすべきである。
【0052】
成分(A)~(C)中の、全ケイ素原子結合水素原子の全ケイ素原子結合アルケニル基に対するモル比(「SiH/Vi比」)は0.5~2.0の範囲、代替的には0.5~1.5の範囲、又は代替的には0.8~1.5の範囲である。これは、モル比が上記範囲の下限以上であれば、組成物を完全に硬化させることができ、本組成物を硬化させて得られる硬化物が適切な硬度及び機械的強度を有する一方、モル比が上記範囲の上限以下であれば、硬化物が良好な熱的安定性を有するからである。
【0053】
成分(D)は、硬化性シリコーン組成物にチキソトロピー特性を付与するためのシリカ充填剤である。成分(D)は、典型的には、少なくとも50m/g、代替的には80~400m/g、又は代替的には100~400m/gのBET表面積を有するヒュームドシリカ又は沈降シリカ充填剤である。シリカ充填剤の表面は、未処理であっても、オルガノクロロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノシラザン、及びオルガノシロキサンオリゴマーなどの処理剤で処理されていてもよい。
【0054】
成分(D)のシリカ充填剤は市販されている。シリカ充填剤の例としては、AEROSIL(商標)R8200、R9200、R812、R812S、R972、R974、R805、R202などのAEROSIL(商標)の商品名のDegussa社製のヒュームドシリカ、CAB-O-SIL(商標)ND-TS、TS610又はTS710の商品名のCabot社製のヒュームドシリカ、並びにDM-10、DM-20S、DM-30、HM-30S、MT-10、PM-20L、QS-10、QS-20A、及びQS-25CなどのREOLOSIL(商標)の商品名のトクヤマ社製のヒュームドシリカが挙げられる。
【0055】
成分(D)の量は、成分(A)~(C)の合計質量100質量部に対して、1~10質量部の範囲、代替的には2~10部の範囲である。これは、成分(D)の量が上記範囲の下限以上であれば、組成物が優れたチキソトロピー特性を有し、本組成物を硬化させて得られる硬化物が適切な硬度及び機械的強度を有する一方、量が上記範囲の上限以下であれば、硬化性シリコーン組成物が良好な透明性を有するからである。
【0056】
成分(E)は、本組成物の硬化を促進するために使用されるヒドロシリル化反応触媒である。成分(E)のヒドロシリル化反応触媒は当技術分野でよく知られており、市販されている。好適なヒドロシリル化触媒としては、限定されないが、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム若しくはイリジウム金属を含む白金族金属、又はこれらの有機金属化合物、及びこれらのいずれか2つ以上の組み合わせが挙げられる。成分(E)は、典型的には、本組成物の硬化を劇的に加速させることができるような白金系触媒である。白金系触媒の例としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金-アルケニルシロキサン錯体、白金-オレフィン錯体、及び白金-カルボニル錯体が挙げられ、白金-アルケニルシロキサン錯体が最も典型的である。
【0057】
様々な実施形態において、成分(E)は、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの白金との錯体を含む、白金と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体を含むヒドロシリル化反応触媒である。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化されていてもよい。具体的な実施形態において、触媒としては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの白金との錯体が挙げられる。
【0058】
成分(E)に好適なヒドロシリル化反応触媒の例は、例えば、米国特許第3,159,601号、同第3,220,972号、同第3,296,291号、同第3,419,593号、同第3,516,946号、同第3,814,730号、同第3,989,668号、同第4,784,879号、同第5,036,117号、及び同第5,175,325号、並びに欧州特許第0347895(B)号に記載されている。マイクロカプセル化されたヒドロシリル化反応触媒及びそれらの調製方法は、米国特許第4,766,176号及び同第5,017,654号に例示されている。
【0059】
本組成物中の成分(E)の量は、本組成物の硬化を促進するのに有効な量である。具体的には、本組成物を十分に硬化させるために、成分(E)の含有量は、典型的には、本組成物に対する成分(E)中の触媒金属の含有量が、質量単位に換算して、約0.01~約500ppm、代替的には約0.01~約100ppm、代替的には約0.01~約50ppm、代替的には約0.1~約10ppmとなる量である。
【0060】
様々な実施形態において、硬化性シリコーン組成物は、硬化性シリコーン組成物の硬化速度を調節するための(F)ヒドロシリル化反応抑制剤を含む。特定の実施形態において、成分(F)としては、限定されないが、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、若しくは2-フェニル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-シクロヘキサン-1-オールなどのアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、若しくは3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-インなどのエン-イン化合物;又は1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、トリス[(1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ]メチルシラン、ジアリルマレエート若しくはベンゾトリアゾールが挙げられ、成分(F)は、任意選択の成分として本組成物に組み込むことができる。
【0061】
本組成物中の成分(F)の量は、特に限定されないが、含まれる場合、典型的には、本組成物に関する質量単位に換算して、この成分中約1~約10,000ppmの量、代替的には約10~約5,000ppmの量である。これは、成分(F)の量が上述の範囲の下限以上であれば、本組成物の貯蔵安定性が良好である一方、成分(F)の量が上述の範囲の上限以下であれば、低温における本組成物の硬化性が良好であるからである。
【0062】
硬化中に接触する基材に対する硬化物の接着性を向上させるために、本組成物は(G)接着促進剤を含有してもよい。特定の実施形態において、成分(G)の接着促進剤は、典型的には、分子中にケイ素原子と結合した少なくとも1個のアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物である。このアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、及びメトキシエトキシ基により例示され、メトキシ基が最も典型的である。更に、この有機ケイ素化合物のケイ素原子に結合した非アルコキシ基は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基などの置換又は非置換の一価炭化水素基;3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基、又は類似のグリシドキシアルキル基などのエポキシ基含有一価有機基;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基、又は類似のエポキシシクロヘキシルアルキル基;及び4-オキシラニルブチル基、8-オキシラニルオクチル基、又は類似のオキシラニルアルキル基;例えば3-メタクリロキシプロピル基などのアクリル基含有一価有機基;及び水素原子により例示される。この有機ケイ素化合物は、概して、ケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合水素原子を有する。更に、様々な種類の基材に対する良好な接着性を付与する能力に起因して、この有機ケイ素化合物は、概して、分子中に少なくとも1個のエポキシ基含有一価有機基を有する。この種類の有機ケイ素化合物は、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサンオリゴマー、及びアルキルシリケートにより例示される。オルガノシロキサンオリゴマー又はアルキルシリケートの分子構造は、直鎖構造、部分的に分岐した直鎖構造、分岐鎖構造、環状構造、及びネット状構造により例示される。直鎖構造、分岐鎖構造、及びネット状構造が典型的である。この種類の有機ケイ素化合物は、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのシラン化合物;分子中に少なくとも1個のケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合水素原子と少なくとも1個のケイ素結合アルコキシ基とを有するシロキサン化合物;シラン化合物又は分子中に少なくとも1個のケイ素結合アルコキシ基を有するシロキサン化合物と、分子中に少なくとも1個のケイ素結合ヒドロキシル基及び少なくとも1個のケイ素結合アルケニル基を有するシロキサン化合物との混合物;並びにメチルポリシリケート、エチルポリシリケート、及びエポキシ基含有エチルポリシリケートにより例示される。
【0063】
本組成物において、成分(G)の量は特に限定されないが、硬化中に接触する基材に対する良好な接着を実現するために、典型的には、成分(A)~(C)の合計質量100質量部に対して最大10質量部である。
【0064】
本組成物の25℃における屈折率は、限定されないが、典型的には1.415~1.470の範囲である。また、本組成物の25℃における粘度は、限定されないが、典型的には、剪断速度1/sで測定して10~200Pa・sの範囲である。本組成物のチキソトロピー指数は、限定されないが、典型的には、1.2~6.0の範囲、代替的には1.2~5.5の範囲、代替的には1.5~6.0の範囲、代替的には1.5~5.5の範囲、代替的には2.0~6.0の範囲、又は代替的には2.0~5.5の範囲である。これは、本組成物のチキソトロピー指数が上記範囲の下限以上であれば、本組成物は分注された後にその形状を保持することができる一方、本組成物のチキソトロピー指数が上記範囲の上限以下であれば、本組成物は分注された際に凸レンズの形状などの適切な形状を形成することができるからである。本明細書で使用される「チキソトロピー指数」は、スピンドルを用いたレオメータで測定された、剪断速度1/s及び10/sでの本組成物の25℃における粘度の比([1/sでの粘度]/[10/sでの粘度])から計算される。
【実施例
【0065】
以下に実施例及び比較例を用いて、本発明の硬化性シリコーン組成物について詳細に記載する。しかしながら、本発明は、以下に列挙する実施例の記載により限定されるものではない。
【0066】
[ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)]
Waters2414屈折率検出器(Refractive index detector、RID)を備えたWaters社製のWaters2695分離モジュールを使用して、成分(a1)及び(a2)のGPCデータを収集した。カラムとして、3本の(7.8×300mm)Styragel HRカラム(分子量分離範囲100~4,000,000)、及び1本の、トルエンを有するStyragelガードカラム(4.6×30mm)を使用する。サンプルをトルエン中0.5重量%溶液として調製し、0.45ミクロンのPTFEシリンジフィルターを通して濾過した。毎分1ミリリットルの流量を用い、検出器及びカラムの温度は45℃、注入容量は100マイクロリットル、ランタイムは60分である。数平均分子量(Mn)は、580~2,610,000の分子量範囲をカバーする直鎖ポリスチレン標準に対して計算した。
【0067】
[屈折率]
硬化性シリコーン組成物の25℃における屈折率を、ATAGO Co.,Ltd.製のアッベ屈折計を用い、DIN51423規格に従って1013mbarの大気圧下で、589nmの波長で測定した。
【0068】
[粘度]
各オルガノシロキサンオリゴマー及びオルガノポリシロキサンの25℃における粘度を、スピンドル#CP-40Zを用いたDV1 VISCOMETER(Brookfield)で1分間測定した。
【0069】
[チキソトロピー指数]
硬化性シリコーン組成物の25℃における粘度を、スピンドル(部品番号543661.901、ステンレススチール、25mm、2°、ETCコーン)を用いたARES G2レオメータ(TA instrument)で測定した。剪断速度1/s及び10/sでの粘度(Pa・s)を1分間測定した。チキソトロピー指数を、剪断速度1/s及び10/sでの粘度の比=[1/sでの粘度]/[10/sでの粘度]から計算した。
【0070】
[硬度]
硬化性シリコーン組成物を、所定の形状の凹部を有する型(厚さ10mm)に流し込み、次いで150℃で1時間硬化させた。硬化物の硬度を、タイプDデュロメータ硬度計、及びASTM D2240に規定されたショアAデュロメータを用いるタイプAデュロメータ硬度計を用いて測定した。
【0071】
[透過率]
硬化性シリコーン組成物を、型(厚さ1mm)に流し込み、マイクロスライドガラス(松浪硝子工業株式会社、製品番号9213)の間に挟んだ。組み立てたサンプルを190℃で30分間硬化させた。ASTM D1003に規定された方法(UV可視分光光度計、コニカミノルタCM-3600A、参照=水)で、450nm、550nm、及び700nmの波長での透過率(%)を室温で測定した。
【0072】
[実施例1~8及び比較例1~11]
以下の成分を、表1~4に示した量の割合で均一に混合して、硬化性シリコーン組成物を製造した。成分(A)が25℃で固体であった場合は、粘度が高いため、トルエン及びキシレンなどの溶剤を用いて成分(A)を他の成分に添加した。次いで、無溶剤組成物を調製するために、溶剤を蒸発させ、混合を容易にする他の成分で置き換えた。例えば、まず、溶剤に溶解させた成分(A)の溶液に成分(B)を添加した。次いで、窒素バブリングしながら加熱して溶剤を減圧下で除去した。室温まで冷却した後、成分(C)を添加した。混合物を室温で混合した。更に、他の成分を混合物に添加して室温で混合した。得られた組成物及び硬化物を上述のように評価した。これらの結果を表1~4に示す。表1~4のそれぞれにおける「SiH/Vi比」は、成分(A)~(C)中の、全ケイ素原子結合水素原子の全ケイ素原子結合ビニル基に対するモル比を示す。
【0073】
以下のオルガノポリシロキサン樹脂を成分(A)として使用した。
(a1)以下の平均ユニット式:
[(CHSiO1/20.40[(CH=CH)(CHSiO1/20.04(SiO4/20.56
で表され、ビニル基含有量が約1.9質量%であり、数平均分子量(Mn)が約5,000であり、25℃で固体であるオルガノポリシロキサン樹脂。
(a2)以下の平均ユニット式:
[(CHSiO1/20.40[(CH=CH)(CHSiO1/20.10(SiO4/20.50
で表され、ビニル基含有量が約3.0質量%であり、数平均分子量(Mn)が約3,000であり、25℃で固体であるオルガノポリシロキサン樹脂。
【0074】
以下のオルガノポリシロキサン樹脂を成分(A)の比較として使用した。
(a3)以下の平均ユニット式:
[(CH=CH)(CHSiO1/20.25(CSiO3/20.75
で表され、ビニル基含有量が5.62質量%であり、25℃で固体であるオルガノポリシロキサン樹脂。
(a4)以下の平均ユニット式:
[(CHSiO1/20.14[(CH=CH)(CHSiO1/20.11(CHSiO3/20.53(CSiO3/20.22
で表され、ビニル基含有量が約2.2質量%であり、25℃で固体であるオルガノポリシロキサン樹脂。
【0075】
以下のオルガノシロキサンオリゴマーを成分(B)として使用した。
(b1)以下の式:
(CH=CH)(CHSiO(CSiOSi(CH(CH=CH
で表され、粘度が8.7mPa・sであり、ビニル基含有量が約14.06質量%であるオルガノシロキサンオリゴマー。
(b2)以下の式:
H(CHSiO(CSiOSi(CH
で表され、粘度が4.4mPa・sであり、ケイ素原子結合水素原子の含有量が約0.61質量%であるオルガノシロキサンオリゴマー。
(b3)以下の平均ユニット式:
[(CHSiO1/20.60(CSiO3/20.40
で表され、粘度が29mPa・sであり、ケイ素原子結合水素原子の含有量が約0.65質量%であるオルガノシロキサンオリゴマー。
【0076】
以下のオルガノポリシロキサンを成分(B)の比較として使用した。
(b4)以下の式:
(CH=CH)(CHSiO[(C)(CH)SiO]20Si(CH(CH=CH
で表され、粘度が2,300mPa・sであり、ビニル基含有量が約1.43質量%であるオルガノポリシロキサン。
(b5)以下の式:
(CH=CH)(CHSiO[(CHSiO]200[(CSiO]50Si(CH(CH=CH
で表され、粘度が14,000mPa・sであり、ビニル基含有量が約0.22質量%であるオルガノポリシロキサン。
【0077】
以下のオルガノポリシロキサンを成分(C)として使用した。
(c1)以下の式:
(CH=CH)(CHSiO[(CHSiO]Si(CH(CH=CH
で表され、粘度が7mPa・sであり、ビニル基含有量が約7.49質量%であるオルガノポリシロキサン。
(c2)以下の式:
(CH=CH)(CHSiO[(CHSiO]45Si(CH(CH=CH
で表され、粘度が60mPa・sであり、ビニル基含有量が約1.66質量%であるオルガノポリシロキサン。
(c3)以下の式:
H(CHSiO[(CHSiO]16Si(CH
で表され、粘度が15mPa・sであり、ケイ素原子結合水素原子の含有量が約0.15質量%であるオルガノポリシロキサン。
(c4)以下の平均ユニット式:
[(CHHSiO1/20.65(SiO4/20.35
で表され、粘度が23mPa・sであり、ケイ素原子結合水素原子の含有量が約0.96質量%であるオルガノポリシロキサン樹脂。
【0078】
以下のヒュームドシリカを成分(D)として使用した。
(d1)BET比表面積が230m/gのヒュームドシリカ(トクヤマ社製REOLOSIL DM-30S)
【0079】
以下のヒドロシリル化反応触媒を成分(E)として使用した。
(e1)1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン溶液中の、白金の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンとの錯体(白金含有量=4質量%)
【0080】
以下のヒドロシリル化反応抑制剤を成分(F)として使用した。
(f1)1-エチニル-シクロヘキサン-1-オール
(f2)1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン
【0081】
以下の接着促進剤を成分(G)として使用した。
(g1)1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン
(g2)以下の平均ユニット式:
[(CH=CH)(CHSiO1/20.18(CSiO3/20.54[CH(O)CHCHO(CHSiO3/20.28
で表されるオルガノポリシロキサン樹脂
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
実施例IE1~IE8は、透明性(450nmでの透過率>99%)と共にチキソトロピー特性(チキソトロピー指数≧1.5)を示す、本明細書に記載の硬化性シリコーン組成物の代表的な例である。比較例CE2に示されるように、成分(D)なしではチキソトロピー特性が得られない。一方、比較例CE3及びCE4は、光学特性が450nmでそれぞれ96.39%及び96.86%と劣っていることを示す。比較例CE4と実施例IE5~IE8とを比較すると、成分(B)を用いることにより、チキソトロピー特性が示されると共に透明性が付与されると考えられる。
【0087】
比較例CE5によれば、比較成分(b4)が成分(A)及び(C)と相溶性でないため、不均質な濁った液体が得られる。比較例CE6~CE9は、比較成分(a3、a4)及び比較成分(b4、b5)を使用した硬化性シリコーン組成物を示し、これは光透過率が450nmで99%未満と劣っていることを示す。
【0088】
65.06質量%の成分(a1)を使用する比較例CE1の場合、非常に粘稠な液体が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、多量のオルガノポリシロキサン樹脂を含有しているにもかかわらず、優れたチキソトロピー特性を有し、硬化して透明な硬化物を形成することができる。したがって、硬化性シリコーン組成物は、電気/電子装置における光半導体素子のシーラント、接着剤、又はコーティングに有用である。
【国際調査報告】