(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-13
(54)【発明の名称】医療用の穿孔装置および穿孔システム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/88 20060101AFI20250306BHJP
【FI】
A61B17/88
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024550684
(86)(22)【出願日】2023-02-27
(85)【翻訳文提出日】2024-10-18
(86)【国際出願番号】 EP2023054780
(87)【国際公開番号】W WO2023161460
(87)【国際公開日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】102022104674.5
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521389815
【氏名又は名称】エースクラップ・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Aesculap AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ポイケルト,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ブリュースラー,ローベルト
(72)【発明者】
【氏名】マルクス,イレーネ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL08
4C160LL24
(57)【要約】
本発明は、カニューレ型のドリルを備える医療用の穿孔装置に関し、前記ドリルは、その長手方向軸と同軸に延びる長手方向チャネルを有する。前記穿孔装置は、近位端において、回転固定態様でハンドル又は穿孔機に結合するための穿孔装置結合部を備える。前記ドリルは、近位端と遠位端とを有し、前記穿孔装置は、遠位スタイレット部と近位スタイレット部とを有するスタイレットを備える。前記遠位スタイレット部は、穿孔位置において前記ドリルの前記長手方向チャネルに挿入され且つ前記長手方向チャネルを全長または略全長にわたって閉塞するように構成される。前記ドリルは、前記近位端の領域においてドリル結合部を備え、前記ドリル結合部は、前記近位スタイレット部と共に、前記穿孔装置結合部を形成する。さらに、改良された医療用の穿孔システムが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カニューレ型のドリル(16)を備える医療用の穿孔装置(12)であって、
前記ドリル(16)は、前記ドリル(16)の長手方向軸(18)と同軸に延びる長手方向チャネル(20)を有し、
前記穿孔装置(12)は、近位端において、回転固定態様でハンドル(14)又は穿孔機に結合するための穿孔装置結合部(22)を備え、
前記ドリル(16)は、近位端(24)と遠位端(26)とを有し、
前記穿孔装置(12)は、遠位スタイレット部(32)と近位スタイレット部(34)とを有するスタイレット(30)を備え、
前記遠位スタイレット部(32)は、穿孔位置において前記ドリル(16)の前記長手方向チャネル(20)に挿入され且つ前記長手方向チャネル(20)を全長または略全長にわたって閉塞するように構成され、
前記ドリル(16)は、前記近位端(24)の領域においてドリル結合部(60)を備え、
前記ドリル結合部(60)は、前記近位スタイレット部(34)と共に、前記穿孔装置結合部(22)を形成するように構成されている、
医療用の穿孔装置。
【請求項2】
前記穿孔装置結合部(22)は、前記長手方向軸(18)を基準として回転非対称に構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療用の穿孔装置。
【請求項3】
前記ドリル結合部(60)は、少なくとも1つのドリル係合面(92)を有し、
前記近位スタイレット部(34)は、少なくとも1つのスタイレット係合面(94)を有し、
前記少なくとも1つのドリル係合面(92)と前記少なくとも1つのスタイレット係合面(94)とは、前記穿孔位置において互いに当接または略当接し、
特に、前記ドリル結合部(60)は、2つの前記ドリル係合面(92)を有し、前記近位スタイレット部(34)は、2つの前記スタイレット係合面(94)を有する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の医療用の穿孔装置。
【請求項4】
前記遠位スタイレット部(32)は、前記長手方向チャネル(20)の断面に一致する断面を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療用の穿孔装置。
【請求項5】
前記穿孔装置結合部(22)は、前記長手方向軸(18)を含む鏡面(96)に対して鏡面対称に構成されており、
特に、
(a)前記ドリル結合部(60)と前記近位スタイレット部(34)とがそれぞれ前記鏡面(96)に対して鏡面対称に構成され、且つ/又は、
(b)前記少なくとも1つのスタイレット係合面(94)と前記少なくとも1つのドリル係合面(92)とは、前記鏡面(96)に平行に延在している、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の医療用の穿孔装置。
【請求項6】
前記スタイレット(30)と前記ドリル(16)とは、前記穿孔位置において回転固定態様で互いに係合する、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の医療用の穿孔装置。
【請求項7】
前記ドリル(16)には、前記スタイレット(30)のための深さ方向ストッパ(62)が、前記長手方向チャネル(20)への前記遠位スタイレット部(32)の挿入深さを制限するように配置または形成されており、
特に、前記深さ方向ストッパ(62)には、前記ドリル(16)のストッパ面(58)が近位方向を向くように設けられ、前記穿孔位置において、前記近位スタイレット部(34)が遠位側において前記ストッパ面(58)に対して当接する、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の医療用の穿孔装置。
【請求項8】
前記ドリル結合部(60)は、前記長手方向軸(18)に平行に延びる結合スロット(140)を備え、
前記近位スタイレット部(34)は、前記穿孔位置において前記結合スロット(140)に係合し、
特に、前記結合スロット(140)は、互いに対向する2つのスロット面(142)を有し、前記2つのスロット面(142)は、2つの前記ドリル係合面(92)を形成する、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の医療用の穿孔装置。
【請求項9】
前記穿孔装置結合部(22)は、結合面(80)を有し、前記結合面(80)は、前記長手方向軸(18)に平行に且つ前記少なくとも1つのドリル係合面(92)に対する横方向、特に垂直方向に延在しており、
特に、前記結合面(80)は、平坦面または略平坦面で構成され、且つ、少なくとも2つの結合面部(84,86)を備え、前記少なくとも2つの結合面部(84,86)のうちの少なくとも1つは、前記ドリル結合部(60)の側面(88)によって形成され、前記少なくとも2つの結合面部(84,86)のうちの少なくとも1つは、前記近位スタイレット部(34)の側面(88)によって形成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の医療用の穿孔装置。
【請求項10】
前記穿孔装置結合部(22)は、回転対称の基本形状と、前記穿孔装置結合部(22)の側面に沿った平坦部(76)とを有し、前記平坦部(76)は、前記長手方向軸(18)に平行に延在しており、
特に、前記平坦部(76)は、前記結合面(80)を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の医療用の穿孔装置。
【請求項11】
前記ドリル結合部(60)と前記近位スタイレット部(34)とは、それぞれ前記長手方向軸(18)を基準として回転非対称に構成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の医療用の穿孔装置。
【請求項12】
前記穿孔装置結合部(22)には、少なくとも1つの結合要素(98)が、前記穿孔装置(12)と前記ハンドル(14)または穿孔機との相対的な軸方向位置を予め決定するように配置または形成されており、
特に、前記少なくとも1つの結合要素(98)は、
(a)径方向を向くように構成され、且つ/又は、
(b)結合突起または結合受入部(100)の形態で構成され、且つ/又は、
(c)前記長手方向軸(18)を少なくとも部分的に取り囲むように構成され、且つ/又は、
(d)前記平坦部(76)によって遮断されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の医療用の穿孔装置。
【請求項13】
少なくとも1つの操作要素(104)が、前記近位スタイレット部(34)上に配置または形成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の医療用の穿孔装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の少なくとも1つの医療用の穿孔装置(12)を備える医療用の穿孔システム(10)であって、
前記穿孔装置(12)に回転固定態様で結合するためのハンドル(14)及び/又は穿孔機を備える、
医療用の穿孔システム。
【請求項15】
(a)少なくとも1本のKワイヤ(148)を備え、且つ/又は、
(b)前記ハンドル(14)及び/又は前記穿孔機は、結合位置において前記穿孔装置結合部(22)に圧入状態および/又は嵌合状態で結合するための結合装置(116)を備え、
特に、前記結合装置(116)は、前記結合位置から、前記穿孔装置結合部(22)との係合が解除される解放位置へ移動可能であり、
特に、前記結合装置(116)は、前記結合装置(116)が前記解放位置にあるときに前記少なくとも1つの操作要素(104)に係合するための引っ張り要素を備える、
ことを特徴とする請求項14に記載の医療用の穿孔システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリルの長手方向軸と同軸に延びる長手方向チャネルを有するカニューレ型ドリルを備えた医療用の穿孔装置に関するものであり、この穿孔装置は、近位端において、回転固定態様でハンドル又は穿孔機に結合するための穿孔装置結合部を備え、ドリルは遠位端と近位端とを有する。
【0002】
本発明はさらに、少なくとも1つの医療用穿孔装置を備えた医療用の穿孔システムに関する。
【背景技術】
【0003】
脊椎手術では、多くの処置が低侵襲で行われる。脊椎安定化システムの一部として、特に椎弓根スクリューが使用される。椎弓根スクリューは、椎弓根チャネルの椎骨領域の皮質層に配置される。ドリルで皮質を開けることが知られている。ドリルを取り除いた後、先にドリルで穿孔された皮質に、キルシュナー鋼線またはドリルワイヤ(以下、「Kワイヤ」という)が配置され、該Kワイヤを介して、椎弓根スクリューが、所望の態様で椎骨に固定されるように椎骨まで送り込まれる。この手法の問題点は、ドリルを取り除いた後に、Kワイヤのためのガイドが存在しないことから、皮質の入口部がKワイヤによる打撃を受けることである。さらに、最小侵襲アクセス部位は実質的に見えない。この点に関して、上述のようなカニューレ型ドリルを備えた医療用穿孔装置も役立たない。なぜなら、ドリルによる穿孔中に、骨が長手方向チャネル(管状部)に押し込まれることで、Kワイヤをドリルに直接通すように配置できないためである。したがって、カニューレ型ドリルも最初に取り外される必要があり、該ドリルを取り外した後の第2のステップにおいてKワイヤを配置する必要がある。
【0004】
そこで、本発明の目的は、冒頭で説明された種類の医療用穿孔装置および医療用穿孔システムを改良し、特に、その取り扱いの簡素化を図ることである。
【発明の概要】
【0005】
この目的は、冒頭で説明された種類の医療用の穿孔装置において、本発明によって達成される。本発明に係る穿孔装置は、遠位スタイレット部と近位スタイレット部とを有するスタイレットを備え、前記遠位スタイレット部は、穿孔位置において前記ドリルの前記長手方向チャネルに挿入され且つ前記長手方向チャネルを全長または略全長にわたって閉塞するように構成され、前記ドリルは、前記近位端の領域においてドリル結合部を備え、前記ドリル結合部は、前記近位スタイレット部と共に、前記穿孔装置結合部を形成する。
【0006】
本発明によって提案されるようにさらに開発された医療用の穿孔装置により、特に、低侵襲性の処置で骨を開くことが可能になり、Kワイヤを配置するためにドリルを取り外す必要がなくなる。代わりに、本発明によれば、長手方向チャネルからスタイレットを取り外すだけで十分である。スタイレットは、特に嵌合状態で長手方向チャネルを完全または略完全に塞ぐため、長手方向チャネルへの骨物質の侵入を防止する。スタイレットを取り外した後、ドリルの長手方向チャネルには骨物質が完全に存在しないため、ドリル自体は、Kワイヤのガイドとして使用可能であり、これにより、規定の態様(規定の向き、及び規定の位置)で骨(例えば、椎骨)にKワイヤを配置し得る。特に、スタイレットは、穿孔中に骨物質または他の組織が長手方向チャネルに侵入して長手方向チャネルを詰まらせるのを防ぐために、長手方向チャネル用のプラグの形態において閉鎖要素を形成する。上述のように、ドリルは、従来の方法の場合のようにKワイヤを配置する前に取り外される必要がなく、ドリル自体がKワイヤのガイドとして機能する。これにより、Kワイヤを配置するときに骨における入り口点を見つけやすくなり、穿孔装置の取り扱いも容易になる。特に、これにより、手術の質が向上し、手術時間の短縮も可能になる。
【0007】
前記穿孔装置結合部は、前記長手方向軸を基準として回転非対称に構成されることが好ましい。これにより、穿孔装置は、ハンドル又は穿孔機(ボール盤)、例えばドリルチャック又はその結合部に、規定の態様で結合され得る。特に、ハンドル又は穿孔機と穿孔装置との回転固定態様での結合が、簡単な方法でなされ得る。
【0008】
前記ドリル結合部は、少なくとも1つのドリル係合面(ドリル駆動面)を有し、前記近位スタイレット部は、少なくとも1つのスタイレット係合面(スタイレット駆動面)を有し、前記少なくとも1つのドリル係合面と前記少なくとも1つのスタイレット係合面とは、前記穿孔位置において互いに当接または略当接(実質的に当接するように近接)すると、有利である。特に、前述の面(ドリル係合面およびスタイレット係合面)が長手方向軸に平行に延びる場合、ドリルの回転時にスタイレットが共に回転するように、穿孔装置結合部の領域でドリルとスタイレットとを互いに係合させることが可能となる。換言すると、ドリルとスタイレットとはこのように一体的に回転される。近位スタイレット部とドリル結合部とは、それぞれの他の構成要素にトルクを伝達するように、互いに駆動部を形成する。具体的には、ハンドル又は穿孔機によってどの構成要素にトルクが導入されるかに依存する。
【0009】
特に、前記ドリル結合部は、2つの前記ドリル係合面を有し、前記近位スタイレット部は、2つの前記スタイレット係合面を有することにより、スタイレットとドリルとの良好な結合および良好なガイド(案内)が実現され得る。特に、2つのドリル係合面が対になって互いに平行に延びるように構成され、2つのスタイレット係合面が対になって互いに平行に延びるように構成されてもよい。例えば、2つのスタイレット係合面は互いから離反する方向を向くように設けられてもよく、2つのドリル係合面は互いに向かい合うように設けられてもよい。もちろん、このような係合面の配置または向きは、逆に構成されることも考えられる。
【0010】
好ましくは、長手方向チャネルは楕円形の断面を有する。特に、長手方向チャネルの断面は円形であってもよい。楕円形の断面には、ドリルが回転されるとスタイレットも一緒に回転されるという利点もある。円形の断面の場合、円形断面を有するKワイヤが長手方向チャネルを通して案内され、長手方向チャネル内において規定の態様で回転されることが可能になる点で有利である。
【0011】
前記遠位スタイレット部は、前記長手方向チャネルの断面に一致(対応)する断面を有することが好ましい。特に、これにより、遠位スタイレット部によって長手方向チャネルを嵌合状態で塞ぐことが可能になる。したがって、骨物質が長手方向チャネル内に侵入するのを簡単かつ確実な態様で防止することが可能になる。
【0012】
有利には、遠位スタイレット部の遠位端に尖端部が形成される。このような尖端部により、骨上に穿孔装置を配置しやすくなる。特に、ドリルの先端部のスリップ(滑り)が簡単かつ確実に防止され得る。
【0013】
さらに好ましい実施形態によれば、穿孔位置における遠位スタイレット部の遠位端が長手方向チャネル(スタイレットチャネル)の遠位端まで達するか、又は、該遠位端を超えて突出するようにしてもよい。いずれの場合も、特に、骨をドリルで開くときに骨組織の侵入を防ぐために、長手方向チャネルが遠位側で十分に閉じられていることが保証される。遠位スタイレット部は、長手方向チャネルの遠位端を超えて突出する場合、例えば、骨上にドリルを位置決めするために使用され得る。この目的のために、遠位スタイレット部の遠位端は、好ましくは、尖端部の形状に構成される。
【0014】
前記穿孔装置結合部が、前記長手方向軸を含む鏡面に対して鏡面対称に構成される場合、簡単な方法で医療量の穿孔装置が形成され得る。特に、非円形の断面を有する穿孔装置結合部が形成され得る。
【0015】
さらに、前記ドリル結合部と前記近位スタイレット部とがそれぞれ前記鏡面に対して鏡面対称に構成される場合、医療用の穿孔装置の構成が簡素化され得る。換言すれば、近位スタイレット部とドリル結合部とは、鏡面を介してそれ自体に変換され得る。このような構成により、特に、近位スタイレット部を収容するためのスロットを備えたドリル結合部を構成することが可能になる。当該スロットは、好ましくは、鏡面に対して鏡面対称に構成される。
【0016】
ドリル結合部から近位スタイレット部へ、又は、その逆へトルクを確実に伝達できるようにするためには、前記少なくとも1つのスタイレット係合面と前記少なくとも1つのドリル係合面とは、前記鏡面に平行に延在していると有利である。
【0017】
スタイレットがドリルと共に一体的に回転するように、前記スタイレットと前記ドリルとは、回転固定態様(相対回転不能に固定された態様)で互いに係合することが好ましい。ドリルの回転により、スタイレットは強制的(一体的)に回転される。
【0018】
さらに好ましい実施形態によれば、遠位スタイレット部を長手方向チャネルに近位端から挿入することによって、スタイレットは、スタイレットとドリルとが係合していない分離位置から、穿孔位置へ、遠位スタイレット部と共に移動可能に構成されてもよい。この構成により、特に、簡単な方法でスタイレットをドリルに結合することが可能になる。このことは、特に、外科手術中に、冒頭で説明された方法で複数の椎弓根スクリューを配置する必要がある場合に有利である。Kワイヤが配置された後、カニューレ型のドリルは取り外されてもよい。次に、スタイレットが、ドリルの長手方向チャネルを閉塞するように前述の方法でドリルに再び係合され得る。したがって、このような手順では、少なくとも理論的に、関連するスタイレットを備えた単一のドリルのみが必要であり、すなわち、単一の穿孔装置のみが必要である。
【0019】
前記ドリルには、前記スタイレットのための深さ方向ストッパが、前記長手方向チャネルへの前記遠位スタイレット部の挿入深さを制限するように配置または形成されることが好ましい。これにより、特に、所望の態様でスタイレットが長手方向チャネルを塞ぐことが保証される。この目的のために、使用者は、スタイレットを深さ方向ストッパに達するまで長手方向チャネルに挿入するだけで済む。スタイレットがドリルに対して遠位方向にそれ以上動かなくなると、スタイレットは所望の位置に到達したことになる。
【0020】
前記深さ方向ストッパに、前記ドリルのストッパ面が近位方向を向くように設けられ、前記穿孔位置において、前記近位スタイレット部が遠位側において前記ストッパ面に対して当接する場合、簡単な方法で穿孔装置が形成され得る。
【0021】
好ましくは、前記ストッパ面は、長手方向軸に対して横方向に、特に垂直方向に延在する。これにより、簡単な方法で前記深さ方向ストッパが作成され得る。
【0022】
前記ストッパ面が長手方向チャネルの近位側の挿入開口部に隣接し、挿入開口部を少なくとも部分的に(特に、完全に)取り囲むと有利である。このような構成により、特に、穿孔位置で長手方向チャネルを詰める(埋める)ように長手方向チャネルに独占的に対応する遠位スタイレット部を形成することが可能になる。この場合、近位スタイレット部は、穿孔装置結合部の一部を独占的に形成し得る。さらに、近位スタイレット部に対する遠位スタイレット部の変形(特に、曲がり)が、簡単な方法で防止され得る。
【0023】
前記ドリル結合部は、前記長手方向軸に平行に延びる結合スロットを備え、前記近位スタイレット部は、前記穿孔位置において前記結合スロットに係合すると有利である。この構成により、特に、近位スタイレット部とドリル結合部との相対的な位置決めが簡単かつ明確になる。特に、近位スタイレット部は、ドリル結合部によって両側(両面)でガイドされ得る。
【0024】
前記結合スロットは、互いに対向する2つのスロット面を有し、前記2つのスロット面は、2つの前記ドリル係合面を形成することが好ましい。特に、前記2つのスロット面は、互いに平行に、且つ、上述の鏡面に対して平行に構成されてもよい。この場合の鏡面は、長手方向軸を含むか、又は、長手方向軸に平行に延在してもよい。
【0025】
さらに、特に、前記穿孔装置結合部が結合面を有し、前記結合面が、前記長手方向軸に平行に且つ前記少なくとも1つのドリル係合面に対する横方向(特に、垂直方向)に延在することによって、簡単な方法で回転非対称の穿孔装置結合部が形成され得る。例えば、この結合面は、回転対称に構成された穿孔装置結合部上に形成されることも可能である。
【0026】
前記結合面は、平坦面または略平坦面で構成され、且つ、少なくとも2つの結合面部を備え、前記少なくとも2つの結合面部のうちの少なくとも1つは、前記ドリル結合部の側面によって形成され、前記少なくとも2つの結合面部のうちの少なくとも1つは、前記近位スタイレット部の側面によって形成されることが好ましい。このように、特に、穿孔装置結合部を穿孔装置のハンドル又は穿孔機に結合する場合、ドリルだけでなく同時にスタイレットにもトルクを伝達することが可能になる。特に、これにより、近位スタイレット部と遠位スタイレット部との互いに対するねじれが防止され得る。
【0027】
前記穿孔装置結合部が、回転対称の基本形状と、前記穿孔装置結合部の側面に沿った平坦部とを有し、前記平坦部が前記長手方向軸に平行に延在する場合、簡単な方法で前記結合面が形成され得る。
【0028】
好ましくは、前記平坦部は、前記結合面を備える。このような構成により、特に、例えば回転固定態様で、簡単かつ確実に穿孔装置をハンドル又は穿孔機に係合させることが可能になる。
【0029】
さらに好ましい実施形態によれば、前記ドリル結合部と前記近位スタイレット部とは、それぞれ前記長手方向軸を基準として回転非対称に構成されてもよい。これにより、前記ドリル結合部と前記近位スタイレット部とは、それぞれ、トルクを伝達するために、他の部分のための駆動部として簡単な方法で構成され得る。
【0030】
さらに、前記穿孔装置結合部には、少なくとも1つの結合要素が、前記穿孔装置と前記ハンドル又は穿孔機(ボール盤)との相対的な軸方向位置を予め決定するように配置または形成されていると有利である。前記少なくとも1つの結合要素により、特に、結合位置において穿孔装置とハンドル又は穿孔機との相対的な軸方向移動を防止することが可能になる。
【0031】
前記少なくとも1つの結合要素が径方向を向くように構成される場合、ハンドル又は穿孔機は、簡単な方法で穿孔装置に結合され得る。例えば、前記少なくとも1つの結合要素は、径方向を向く凹部の形状、例えば、長手方向軸に対する環状溝の形状または該環状溝の一部の形状で構成されてもよい。
【0032】
前記少なくとも1つの結合要素が結合突起または結合受入部の形態に構成される場合、穿孔装置とハンドル又は穿孔機との結合はさらに簡素化され得る。このような結合要素は、ハンドル又は穿孔機上における対応する結合要素に対して、圧入状態および/または嵌合状態で係合され得る。
【0033】
前記少なくとも1つの結合要素は、長手方向軸を少なくとも部分的に取り囲むように形成されることが好ましい。例えば、長手方向軸に対して360°未満の円周角にわたって延びる環状溝が形成されてもよい。特に、上記のように穿孔装置結合部に結合面が形成され、これによって穿孔装置結合部が非円形の断面を得る場合、前記少なくとも1つの結合要素は、長手方向軸に対して全周にわたって延びる必要はなく、代わりに、周方向の一部(円周の一部)のみ(例えば、180°又は270°の角度範囲のみ)にわたって延びるだけでよい。
【0034】
好ましくは、前記少なくとも1つの結合要素は、前記平坦部によって遮断される。換言すればば、前記平坦部の領域には結合要素が存在しない。さらに換言すれば、このことは、例えば、元々は長手方向軸に対する円周状の(全周にわたって延びる)結合要素を備える回転対称な穿孔装置結合部において、前記平坦部の領域では結合要素が完全に除去されるように、前記平坦部の寸法を定めることによって、達成され得る。
【0035】
さらに、少なくとも1つの操作要素が、前記近位スタイレット部上に配置または形成されると有利になり得る。このような操作要素は、特に、スタイレットをドリルに対して近位方向または遠位方向に移動させるように指または対応する引っ張り要素に係合するために、使用され得る。特に、ハンドル又は穿孔機のドリルチャックに、少なくとも1つの操作要素に対応する引っ張り要素を設けることが考えられる。この場合、前記引っ張り要素は、前述のようにドリルに対してスタイレットを遠位方向、又は、特に近位方向に移動させるために、所定の態様で前記少なくとも1つの操作要素に係合または係合解除することが可能である。特に、ドリルが骨の中にあり、スタイレットが長手方向チャネル内に収容されているとき、スタイレットは、簡単な方法でドリルから近位方向に引き抜かれ得る。
【0036】
好ましくは、操作要素は、操作凹部または操作突起の形態で構成される。例えば、操作要素は、前記少なくとも1つの結合要素の一部によって形成されてもよく、その部分は近位スタイレット部上に形成される。特に、これにより、穿孔装置の構造がさらに簡素化される。
【0037】
スタイレットに対して近位方向または遠位方向に作用する力を及ぼしやすくするために、前記少なくとも1つの操作要素が長手方向軸に対して径方向を向くように構成されていると有利である。例えば、前記少なくとも1つの操作要素は、長手方向軸に対する穿孔装置結合部上の円周方向溝の一部として構成されてもよい。
【0038】
穿孔位置において、前記少なくとも1つの操作要素が、長手方向軸に対する横方向(特に、垂直方向)に延在する端面を有する場合、穿孔装置の取り扱い(操作)がさらに簡素化される。特に、前記端面は、スタイレットが所望の態様でドリルに係合しているかどうか、すなわち、特に遠位スタイレット部でドリルの長手方向チャネルが塞がれている(詰められている)かどうかを示し得る。
【0039】
さらに、近位スタイレット部が近位スタイレット端面を規定し、ドリル結合部が近位ドリル端面を規定し、前記端面が、部分的にスタイレット端面によって形成され、部分的にドリル端面によって形成されることが好ましい。特に、これにより、使用者は、スタイレットとドリルとが所望の態様で係合しているかどうかを直接視認し得る。このように、前記端面は、使用者にとっての一種の視覚インジケータとして使用され得る。
【0040】
十分に安定した穿孔装置を形成することを可能にするためには、ドリルが金属材料で作られていると有利である。具体的には、ドリルはステンレス鋼またはチタンで作られてもよい。
【0041】
さらに、スタイレットは、金属材料またはプラスチック材料で作られていることが好ましい。特に、プラスチック製のスタイレットは、コスト効率の高い方法で製造され得る。特に、ドリルだけでなく、スタイレットも金属材料で作られる場合、穿孔時に発生する熱が良好に放散され得る。
【0042】
穿孔装置は、少なくとも1つの滅菌可能な材料から作られることが好ましい。特に、穿孔装置は、滅菌可能な材料を1つだけ使用して製造されてもよい。例えば、スタイレットとドリルとは、同じ材料で作られてもよい。
【0043】
冒頭で述べられた目的は、冒頭で述べられた種類の穿孔システムにおいて、本発明によってさらに達成される。本発明に係る穿孔システムでは、医療用の穿孔装置が、上述された有利な実施形態のうちの1つの穿孔装置の形態で構成され、また、本発明に係る穿孔システムは、前記穿孔装置に回転固定態様で結合するためのハンドル及び/又は穿孔機(ボール盤)を備える。
【0044】
穿孔装置は、特に、例えば椎弓根スクリューのガイドとしてKワイヤを配置するために、骨をドリルで開けるように、ハンドル又は穿孔機を使用して所望の態様で操作され得る。穿孔システムは、形状および大きさが互いに異なる複数の穿孔装置を備えていてもよい。例えば、穿孔システムには、複数種類のドリル(例えば、ツイストドリル、クラウンドリル、コアドリル、センタードリル、皿穴ドリル、皿取りドリルなど)が設けられてもよい。
【0045】
穿孔システムは、好ましくは、少なくとも1本のKワイヤを備える。ここでいうKワイヤは、穿孔ワイヤである。したがって、これらの用語は同義語として使用される。特に、穿孔システムは、例えば直径および長さが異なる複数のKワイヤを備えていてもよい。スタイレットを取り外した後、上述のように、Kワイヤは、長手方向チャネルを通して、穿孔装置によって開かれた骨内に配置され得る。この目的のために、Kワイヤは、ドリルを引き抜けるだけの十分な長さが必要である。ドリルをKワイヤに沿って近位方向に引いて取り外した後、カニューレ型の椎弓根スクリューが、Kワイヤに沿って遠位方向にスライドされて骨まで移動され、この骨にねじ込まれ得る。このようなガイドによる取り外しを確実に行うために、Kワイヤは、ドリルよりも長いことが好ましい。
【0046】
前記ハンドル及び/又は前記穿孔機が、結合位置において前記穿孔装置結合部に圧入状態および/又は嵌合状態で結合するための結合装置を備える場合、ハンドル又は穿孔機は、簡単な方法で穿孔装置に結合され得る。
【0047】
好ましくは、前記結合装置は、前記結合位置から、前記穿孔装置結合部との係合が解除される解放位置へ移動可能である。解放位置において、穿孔装置は、ハンドル又は穿孔機から簡単かつ確実な方法で取り外され得る。
【0048】
さらに、前記結合装置は、前記結合装置が前記解放位置にあるときに前記少なくとも1つの操作要素に係合するための引っ張り要素を備えると有利である。前述のように、スタイレットは、ドリルから簡単かつ確実に取り外され得る。このためには、結合装置のみが解放位置に移動され、引っ張り要素は前記少なくとも1つの操作要素に係合される必要がある。ハンドル又はドリルは、上記位置で穿孔装置から取り外されると、依然としてスタイレットに結合された状態でドリルとの係合が解除され、近位方向に引き戻されると、ドリルの長手方向チャネルからスタイレットを引き抜く。
【図面の簡単な説明】
【0049】
以下、更なる説明に役立てるために、下記の図面と併せて本発明の好ましい実施形態が説明される。
【0050】
【
図1】ドリルによる椎骨の穿孔時における穿孔システムの概略全体斜視図を示す。
【
図2】
図1の穿孔システムの一部破断側面図を示す。
【
図3】穿孔位置における一実施形態の穿孔装置の一部破断図を示す。
【
図5】
図3の穿孔位置における穿孔装置の近位端および遠位端の拡大図を示す。
【
図7】別の実施形態の穿孔装置を示す
図3と同様の図である。
【
図11】骨の上に穿孔装置を配置する際の概略図を示す。
【
図12】椎弓根に突き当てられた穿孔装置の一部破断概略図を示す。
【
図13】スタイレットが取り外され、ドリルの長手方向チャネルを通してKワイヤが椎弓根に挿入された後、椎弓根にドリルが残されている状態を示す
図11と同様の概略図である。
【
図14】Kワイヤに沿ってドリルが取り外され、椎弓根スクリューがKワイヤに沿って椎弓根に導入された状態を示す
図12と同様の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1には、一実施形態に係る医療用穿孔システムが概略的に示されており、全体として参照符号10で示されている。医療用穿孔システム1は、ドリルによる穿孔を行うための穿孔装置12と、特に回転固定態様(相対回転不能になる固定態様)で穿孔装置12に結合するためのハンドル14とを備える。
【0052】
穿孔装置12は、カニューレ型のドリル16を備える。ドリル16は、ドリル16の長手方向軸(軸心)18と同軸に延びる長手方向チャネル(管状部)20を有する。
【0053】
穿孔装置12は、近位端において、ハンドル14または穿孔機(ボール盤)に回転固定態様(図示せず)で結合するための穿孔装置結合部22を備える。
【0054】
ドリル16は、近位端24と遠位端26とを有する。遠位端26には、特に骨を切断するのに適した複数の刃先(切断刃)28が設けられている。
【0055】
また、穿孔装置12は、スタイレット(マンドレル)30を備えている。スタイレット30は、遠位スタイレット部(遠位マンドレル部)32と近位スタイレット部(近位マンドレル部)34とを有する。遠位スタイレット部32は、細長い棒状に構成されており、円形の断面を有する。
【0056】
遠位スタイレット部32の遠位端36には、尖端部38が形成されている。
【0057】
ドリル16は、ドリルシャフト40を有する。ドリルシャフト40の外径は、遠位端26から近位方向に向かって、遷移領域42において段状に拡径する。これにより、ドリルシャフト40には、遠位シャフト部44と近位シャフト部46とが規定され、遠位シャフト部44と近位シャフト部46との間に遷移領域42が形成される。
【0058】
近位側では、近位シャフト部46にシリンダ本体48が隣接している。シリンダ本体48の近位端面50からは、近位方向に突出する円筒状のストッパ本体52が構成されている。ストッパ本体52は、シリンダ本体48よりもわずかに小さい外径を有する。これにより、近位方向を向く環状面54が、シリンダ本体48上に形成されている。近位方向を向いたストッパ本体52の端面56は、ストッパ面58を規定する。
【0059】
ドリル結合部60が、ストッパ面58から近位方向に突出している。すなわち、ドリル16は、その近位端24の領域にドリル結合部60を有する。ドリル結合部60は、近位スタイレット部34とともに、穿孔装置結合部22を形成している。
【0060】
遠位スタイレット部32は、
図1~
図3、
図5、及び
図6に概略的に示されている穿孔位置(ドリルによる穿孔位置、すなわち穿孔動作位置)において、ドリル16の長手方向チャネル20に全長に亘って挿入されて長手方向チャネル20を閉塞するように構成されている。
【0061】
長手方向軸18に垂直な遠位スタイレット部32の断面は、長手方向チャネル20の断面に一致しており、これにより、遠位スタイレット部32は、嵌合状態で長手方向チャネル20を塞ぐ。穿孔位置において、遠位スタイレット部32の遠位端36は、長手方向チャネル20の遠位端26まで達するか、又は、遠位端26をわずかに超えて突出する。
【0062】
長手方向チャネル20は、円形の断面を有する。別の実施形態において、長手方向チャネル20は、楕円形または他の非円形の断面を有してもよい。
【0063】
遠位スタイレット部32の長手方向チャネル20への挿入深さを制限するように、ストッパ本体52は、ストッパ面58とともに、スタイレット30のための深さ方向ストッパ62を形成している。
図5及び
図6から容易に分かるように、穿孔位置における近位スタイレット部34は、近位方向を向くドリル16のストッパ面58に対して、遠位方向に当接する。
【0064】
ストッパ面58は、長手方向軸18に対して横方向に、すなわち垂直に延びている。ストッパ面58は、長手方向チャネル20の近位側の挿入開口部64に隣接している。
図5から容易に分かるように、ストッパ面58は、挿入開口部64を少なくとも部分的に(例えば、完全に)囲んでいる。
【0065】
近位スタイレット部34は、穿孔位置においてストッパ本体52を近位方向に延在させるように直円柱を形成する部分66の領域において、ドリル結合部60を補完する。
【0066】
穿孔装置結合部22は、遠位方向を向く近位スタイレット部34の端面68から穿孔装置結合部22の近位端面70まで延びている。近位端面70は、長手方向軸18に対して横方向、すなわち垂直方向に延びている。
【0067】
近位端面70は、穿孔位置において、近位スタイレット部34の近位スタイレット端面72と近位ドリル端面74とによって形成される。近位スタイレット部34の端面68は、近位スタイレット端面72によって部分的に形成されるとともに、ドリル端面74によって部分的に形成される。
【0068】
穿孔装置結合部22は、円筒形の基本形状を有するが、平坦部76の形成により、具体的には、近位側において前記部分66に隣接するとともに端面70まで延在する結合領域78の形成により、非円形の断面を有する。平坦部76は、穿孔装置結合部22の側面に沿って形成され、長手方向軸18に平行に延びている。これにより、平坦部76は、穿孔装置結合部22上に結合面80を規定している。すなわち、結合面80も、長手方向軸18に平行に延びている。
【0069】
結合面80は、短い遷移領域82を除いて平坦であり、2つの結合面部84,86を有する。具体的に、結合面80は、ドリル結合部60の側面88によって形成される第1の結合面部84と、近位スタイレット部34の側面90によって形成される第2の結合面部86とを有する。
【0070】
平坦部76の形成により、穿孔装置結合部22は、長手方向軸18を基準として回転非対称に構成されている。
【0071】
ドリル結合部60は、ドリル係合面(ドリル駆動面)92を規定するように構成されている。近位スタイレット部34は、スタイレット係合面(スタイレット駆動面)94を規定する。穿孔位置では、
図5及び
図6から容易に分かるように、ドリル係合面92とスタイレット係合面94とが互いに接する。
【0072】
穿孔装置結合部22は、長手方向軸18を含む鏡面96に対して鏡面対称に構成されている。ドリル係合面92とスタイレット係合面94とは、鏡面96に平行に延びている。
【0073】
近位スタイレット部34及びドリル結合部60の上述の構成の結果として、スタイレット30とドリル16とは、穿孔位置において、回転固定態様で互いに係合する。
【0074】
この実施形態において、ドリル結合部60と近位スタイレット部34とは、それぞれ長手方向軸18を基準として回転非対称に構成されている。
【0075】
さらに、穿孔装置結合部22には、穿孔装置12とハンドル14との相対的な軸方向位置を予め決定するための結合要素98が形成されている。結合要素98は、長手方向軸18に対して径方向を向くように構成されている。
【0076】
図1~
図6に示される一実施形態に係る穿孔装置12において、結合要素98は、結合受入部100の形態に構成されている。結合受入部100は、長手方向軸18を部分的に囲む。結合受入部100は、仮に穿孔装置結合部22に平坦部76が設けられていない場合には環状溝102の形状を有するように構成されている。言い換えれば、この環状溝102、すなわち結合要素98は、平坦部76によって遮断されている。
【0077】
結合要素98は、部分的に近位スタイレット部34上に形成され、部分的にドリル結合部60上に形成される。
【0078】
近位スタイレット部34には、操作要素(ハンドリング要素)104も形成されている。操作要素104は、操作凹部(ハンドリング凹部)106の形状を有する。操作要素104は、長手方向軸18に対して径方向を向くように構成されている。
【0079】
図1~
図6の実施形態において、操作要素104は、長手方向軸18に対して近位スタイレット部34の外周面108に沿って周方向に延びる結合要素98部分によって形成されている。
【0080】
一例として示されるハンドル14は、近位端にノブ110を備え、ノブ110の遠位端には、長手方向軸18に平行に延びる複数の溝114を備えた保持領域112が隣接している。複数の溝114は、保持領域112の全周にわたって均等に分布して配置されている。
【0081】
結合装置116は、ハンドル14の遠位端領域を形成する。結合装置116は、ハンドル14のシャフト118上で移動可能な結合スリーブ120を備えたクイックカップリングの形態に構成される。結合装置116は、結合位置においてハンドル14を穿孔装置12に結合することを可能にする。
【0082】
結合スリーブ120は、ばね122の作用に抗して近位方向に変位可能である。押し戻された結合スリーブ120が解放されると、ばね122は、結合スリーブ120が遠位方向に自動的に移動されるように作用する。
【0083】
シャフト118の径方向に沿って穿孔された貫通穴124に挿入された複数のボール126が、前記シャフト118上に保持される。ばね122が結合スリーブ120を遠位位置に保持する結合位置において、ボール126は、長手方向軸18に向かう方向(径方向内側)に押し込まれ、長手方向軸18と同軸上においてシャフト118に形成された結合受入部130の内壁面128を若干超えて突出する。
【0084】
結合スリーブ120には、長手方向軸18に向かう方向(径方向内側)を向く内壁面132に、長手方向軸18に向かう方向(径方向内側)を向く環状溝の形態で凹部134が形成されている。前記環状溝(凹部134)は、ボール126が凹部134内に沈み込むことで結合受入部130を解放し得るような深さを有する。
【0085】
さらに、結合受入部130は、長手方向軸18に対して横方向に延びる回転非対称の断面を有する。結合受入部130の断面は、穿孔装置結合部22が結合受入部130内に嵌合状態で収容可能なように、穿孔装置結合部22の断面に適合している。以上のような構成により、穿孔装置結合部22とハンドル14とは、回転固定態様で互いに係合する。
【0086】
穿孔装置12をハンドル14に結合するためには、穿孔装置結合部22が、近位端面70を前方にして、ハンドル14におけるシャフト118の遠位方向に開放した結合受入部130内に挿入される。このとき、ボール126は、穿孔装置結合部22の経路を遮断する。ここで、結合スリーブ120がばね122の作用に抗して保持領域112の方向に押されると、ボール126は、前述のように凹部134に沈み込み、穿孔装置結合部22は、近位方向にさらに移動可能になる。具体的に、結合受入部100がボール126に対向するように位置するまで、穿孔装置結合部22が移動され得る。結合スリーブ120が解放されると、ばね122は、結合スリーブ120を保持領域112に対して遠位方向に移動させ、これにより、ボール126は、径方向において長手方向軸18から遠ざかる方向(径方向外側)への動きに対して固定される。
図2は、上述の結合位置(ハンドル14がその結合装置116によって穿孔装置結合部22に圧入状態および/または嵌合状態で結合されている位置)を示している。
【0087】
あるいは、結合装置116は、穿孔機(ボール盤)上において同様に構成されてもよく、これによって、穿孔装置12が穿孔機に結合されるようにしてもよい。
【0088】
上述のように、結合装置116は、前記結合位置から、穿孔装置結合部22との係合が解除される解放位置へ移動可能である。解放位置は、図示されていないが、上記で説明された通りである。解放位置において、結合スリーブ120は、ばね122の作用に抗して保持領域112の方向に移動し、この結果、ボール126が凹部134に沈み込み、穿孔装置結合部22を解放する。
【0089】
任意選択的に、結合装置116は、結合装置116が解放位置を取ったときに、少なくとも1つの操作要素104に係合するための引っ張り要素を備えていてもよい。これにより、引っ張り要素が、近位スタイレット部34に形成された操作要素104にのみ係合すると、ハンドル14の助けを借りて、穿孔装置12が、その複数の構成要素に分解され得る。ハンドル14が近位方向に引き抜かれるときに、引っ張り要素が操作要素104に係合すると、スタイレット30は、長手方向チャネル20から近位方向に引き出される。
【0090】
図7~
図10に、第2の実施形態に係る穿孔装置12が概略的に示されている。
図7~
図10に示す実施形態の穿孔装置12は、穿孔装置結合部22の構成のみにおいて、
図1~
図6に示す実施形態の穿孔装置12と異なっている。したがって、第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同一または機能的に類似する構成要素には同じ参照符号が使用される。
【0091】
第2の実施形態において、ドリル結合部60は、鏡面96に対して鏡面対称に構成されている。具体的に、ドリル結合部60は、互いに分離された2つの部分136,138を備えている。2つの部分136,138は、長手方向軸18に平行に延びる結合スロット140によって互いに分離され、すなわち、互いから一定の距離を空けて配置されている。結合スロット140は、互いに向かい合う2つのスロット面142を有する。2つのスロット面142は、ドリル係合面(ドリル駆動面)92を形成している。
【0092】
第2の実施形態において、近位スタイレット部34は、鏡面96に対して鏡面対称に構成されており、穿孔位置において、結合スロット140を埋めるように結合スロット140に係合する。第2の実施形態における穿孔位置は、
図7、
図9、及び
図10に概略的に示されている。
【0093】
穿孔装置結合部22の外形輪郭は、
図1~
図6の実施形態の穿孔装置結合部22の外形輪郭と同一である。
【0094】
ドリル結合部60がスロット構造になっていることにより、ドリル結合部60は、長手方向軸18に平行かつ互いに平行に延びるように、且つ、互いに向かい合うように設けられた2つのドリル係合面(ドリル駆動面)92を備えている。これに対応して、近位スタイレット部34は、2つのスタイレット係合面(スタイレット駆動面)94を有する。2つのスタイレット係合面94は、互いに反対方向を向いており、互いに平行に且つ長手方向軸18に対して平行に延びている。
図10から容易に分かるように、ドリル係合面92とスタイレット係合面94とは、穿孔位置において互いに当接している。
【0095】
ストッパ面58は、互いに向かい合うドリル係合面92の間に延びており、ストッパ本体52の端面56によって形成されている。
【0096】
第2の実施形態でも、操作要素104は、操作凹部106の形態で、結合要素98の一部として構成されている。
【0097】
図7~
図10の実施形態において、結合面80は、ドリル結合部60の部分136,138上の2つの第1の結合面部84と、近位スタイレット部34上の第2の結合面部86とによって形成されている。
【0098】
これに応じて、近位端面70も、3つの部分によって形成され、具体的には、穿孔位置において2つの近位ドリル端面74の間に配置される近位スタイレット端面72によって形成される。
【0099】
図7~
図10の実施形態に係る穿孔装置12の機能は、
図1~
図6の実施形態に係る穿孔装置12の機能と完全に対応(一致)しているため、既述の説明が参照され得る。
【0100】
以上の実施形態において、ドリル16は、金属材料で作られている。スタイレット30も、金属材料で作られている。
【0101】
別の実施形態において、スタイレット30は、プラスチック材料で作られてもよい。
【0102】
全ての実施形態において、穿孔装置12は、少なくとも1つの滅菌可能な材料で作られる。穿孔装置12は、例えば、滅菌可能な金属材料など、単一の滅菌可能な材料で作られてもよい。例えば、スタイレット30がプラスチック材料で作られ、ドリル16が金属材料で作られている場合、穿孔装置12は2つの滅菌可能な材料で作られる。
【0103】
以下、
図11及び
図14に関連して、可能性のある用途に基づいて、穿孔システム10の使用について概略的に説明される。例えば、脊椎手術では、椎弓根スクリューだけが存在するわけではない。頸椎の場合は、外側塊スクリューも存在する。以下に説明される手順は、椎弓根スクリュー150に関連して使用するための穿孔装置12の使用範囲を制限するものではない。
【0104】
第1のステップでは、穿孔装置12が、その遠位端26において、最小侵襲アクセス部位を通して患者の体内に挿入される。
図11及び
図12は、この手順を概略的に示しているが、理解の容易化の目的で、ハンドル14、及び、これに対応する適切な穿孔機(ボール盤)の図示は省略されている。
【0105】
スタイレット30を備えたドリル16は、椎骨144の椎弓根146に固定される。穿孔時に、スタイレット30は、骨物質が長手方向チャネル20に入り込んで詰まるのを防止する。
【0106】
次のステップでは、スタイレット30が、ドリル16の長手方向チャネル20から引き抜かれる。ただし、ドリル16は、椎骨144内に残される。
【0107】
スタイレット30が長手方向チャネル20を解放した後、穿孔システム10に含まれるKワイヤ148が、近位側から挿入開口部64を通って長手方向チャネル20に挿入され、椎骨144に固定され得る。ドリル16は、Kワイヤ148のガイドとして機能する。
【0108】
図13に模式的に示されるように、Kワイヤ148が固定されると、次のステップにおいて、ドリル16が椎骨144から取り外されて、Kワイヤ148が椎骨144内に残されるようにしてもよい。
【0109】
Kワイヤ148は、カニューレ型の椎弓根スクリュー150をガイド(案内)する役割を果たす。次いで、椎弓根スクリュー150は、雄ねじ152が設けられたシャフト154を用いて、一般的な態様で椎弓根146にねじ込まれ得る。
【0110】
椎弓根スクリュー150が椎骨144に十分に固定されると、Kワイヤ148は取り外される。椎弓根スクリュー150は、必要に応じて、椎骨144内にさらに深くねじ込まれてもよい。
【0111】
椎弓根スクリュー150のヘッド部(頭部)156は、図示されていないロッド状の接続要素を収容するように構成されている。この接続要素は、図示されていない固定ねじによってクランプ態様(挟持態様)でヘッド部156内に固定され得る。
【0112】
上述の態様で最初の椎弓根スクリュー150を配置した後、遠位スタイレット部32を長手方向チャネル20に近位端から挿入することによって、スタイレット30は、その遠位スタイレット部32と共に、スタイレット30とドリル16が完全に係合解除されている分離位置から、穿孔位置へ戻され得る。これにより、外科手術中において、単一の穿孔装置12のみを使用して、複数の椎弓根スクリュー150を椎骨144に上記の態様で固定することが可能になる。
【符号の説明】
【0113】
10 穿孔システム
12 穿孔装置
14 ハンドル
16 ドリル
18 長手方向軸
20 長手方向チャネル
22 穿孔装置結合部
24 近位端
26 遠位端
28 刃先
30 スタイレット
32 遠位スタイレット部
34 近位スタイレット部
36 遠位端
38 尖端部
40 ドリルシャフト
42 遷移領域
44 遠位シャフト部
45 近位シャフト部
48 シリンダ本体
50 端面
52 ストッパ本体
54 環状面
56 端面
58 ストッパ面
60 ドリル結合部
62 深さ方向ストッパ
64 挿入開口部
66 部分
68 端面
70 近位端面
72 近位スタイレット端面
74 近位ドリル端面
76 平坦部
78 結合領域
80 結合面
82 遷移領域
84 第1の結合面部
86 第2の結合面部
88 側面
90 側面
92 ドリル係合面
94 スタイレット係合面
96 鏡面
98 結合要素
100 結合受入部
102 環状溝
104 操作要素
106 操作凹部
108 外周面
110 ノブ
112 保持領域
114 溝
116 結合装置
118 シャフト
120 結合スリーブ
122 ばね
124 貫通穴
126 ボール
128 壁面
130 結合受入部
132 壁面
134 凹部
136 部分
138 部分
140 結合スロット
142 スロット面
144 椎骨
146 椎弓根
148 Kワイヤ(キルシュナー鋼線)
150 椎弓根スクリュー
152 雄ねじ
154 シャフト
156 ヘッド部
【国際調査報告】