(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-13
(54)【発明の名称】抗体結合B7-H3及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20250306BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20250306BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20250306BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250306BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250306BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20250306BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20250306BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250306BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250306BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20250306BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250306BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250306BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P37/04
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K39/395 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024553732
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2024-11-01
(86)【国際出願番号】 CN2022081615
(87)【国際公開番号】W WO2023173393
(87)【国際公開日】2023-09-21
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519439209
【氏名又は名称】ベイジン マブワークス バイオテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ、ジアンメイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ユニュン
(72)【発明者】
【氏名】マオ、ティン
(72)【発明者】
【氏名】グオ、ヤナン
(72)【発明者】
【氏名】フ、ウェンチ
(72)【発明者】
【氏名】リ、フェン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
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4C085AA14
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4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本出願は、B7-H3に特異的に結合する単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供する。抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸分子、及び、当該抗体又はその抗原結合部分を発現させるための発現ベクター、宿主細胞、及び方法も提供される。本出願は更に、抗体又はその抗原結合部分を含む免疫複合体、二重特異性分子、キメラ抗原受容体、腫瘍溶解性ウイルス及び医薬組成物、及び、開示の抗体又はその抗原結合部分を使用する治療方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)重鎖可変領域、ここで、前記重鎖可変領域は、VH CDR1領域、VH CDR2領域、及びVH CDR3領域を含み、ここで、前記VH CDR1領域、前記VH CDR2領域、及び前記VH CDR3領域は、(1)それぞれ配列番号:1、2、及び3;(2)それぞれ配列番号:1、7、及び8;(3)それぞれ配列番号:12、13、及び14;(4)それぞれ配列番号:18、19、及び20;又は(5)それぞれ配列番号:23、24、及び25と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;及び/又は
ii)軽鎖可変領域、ここで、前記軽鎖可変領域は、VL CDR1領域、VL CDR2領域、及びVL CDR3領域を含み、ここで、前記VL CDR1領域、前記VL CDR2領域、及び前記VL CDR3領域は、(1)それぞれ配列番号:4、5、及び6;(2)それぞれ配列番号:9、10、及び11;(3)それぞれ配列番号:15、16、及び17;(4)それぞれ配列番号:9、21、及び22;又は、(5)それぞれ配列番号:26、27、及び28と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
を備える、B7-H3に結合する単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項2】
前記重鎖可変領域は、配列番号:29、31、33、35又は37と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項3】
前記軽鎖可変領域は、配列番号:30、32、34、36又は38と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項4】
前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域は、(1)それぞれ配列番号:29及び30;(2)それぞれ配列番号:31及び32;(3)それぞれ配列番号:33及び34;(4)それぞれ配列番号:35及び36;又は(5)それぞれ配列番号:37及び38と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項5】
i)重鎖可変領域、ここで、前記重鎖可変領域は、VH CDR1領域、VH CDR2領域、及びVH CDR3領域を含み、ここで、前記VH CDR1領域、前記VH CDR2領域、及び前記VH CDR3領域は、それぞれ、指定されたVH配列のVH CDR1領域、VH CDR2領域、及びVH CDR3領域との同一性を有し;及び/又は
ii)軽鎖可変領域、ここで、前記軽鎖可変領域は、VL CDR1領域、VL CDR2領域、及びVL CDR3領域を含み、ここで、前記VL CDR1領域、前記VL CDR2領域、及び前記VL CDR3領域は、それぞれ、指定されたVL配列のVL CDR1領域、VL CDR2領域、及びVL CDR3領域との同一性を有し、
ここで、前記指定されたVH配列及び前記指定されたVL配列は、
(1)それぞれ配列番号:29及び30において記載される、前記指定されたVH配列及び前記指定されたVL配列;
(2)それぞれ配列番号:31及び32に記載される、前記指定されたVH配列及び前記指定されたVL配列;
(3)それぞれ配列番号:33及び34に記載される、前記指定されたVH配列及び前記指定されたVL配列;
(4)それぞれ配列番号:35及び36に記載される、前記指定されたVH配列及び前記指定されたVL配列;
(5)それぞれ配列番号:37及び38に記載される、前記指定されたVH配列及び前記指定されたVL配列
から成る群から選択される、
を備える、B7-H3に結合する単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項6】
重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を備え、ここで、前記重鎖定常領域はヒトIgG1定常領域であり、前記軽鎖定常領域は、ヒトκ定常領域である、請求項1から5のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項7】
前記重鎖定常領域は、配列番号:44の前記アミノ酸配列を含み、前記軽鎖定常領域は、配列番号:45の前記アミノ酸配列を含む、請求項6に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項8】
アフコシル化されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分である、請求項1から7のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項9】
(a)ヒトB7-H3に結合し、(b)サルB7-H3に結合し、(c)マウスB7-H3に結合し、(d)B7-H3
+細胞に結合し、(e)免疫細胞を活性化可能であり、(f)B7-H3
+細胞に対するADCCを誘導可能であり、及び/又は(g)インビボ抗癌作用を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分を備える、二重特異性分子、免疫複合体、キメラ抗原受容体、操作されたT細胞受容体、又は腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸分子。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分、及び、薬学的に許容される担体を備える医薬組成物。
【請求項13】
B7-H3関連疾患を治療するための薬剤の調製における、請求項1から9のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分、又は、請求項11に記載の医薬組成物の使用。
【請求項14】
前記B7-H3関連疾患は腫瘍である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記腫瘍は、乳癌、黒色腫、前立腺癌、頭頚部扁平上皮癌、肺癌、非小細胞肺癌、中枢神経系神経芽細胞腫、神経膠芽腫、線維形成性小細胞腫瘍、びまん性橋膠腫、髄芽腫、膵臓癌、肝臓癌、結腸直腸癌、非ホジキンリンパ腫、食道癌、卵巣癌、膀胱癌、小細胞癌、子宮内膜癌、腎臓癌、胃癌、急性骨髄性白血病、肝細胞癌、下咽頭扁平上皮癌、尿路上皮細胞癌から成る群から選択される、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
免疫反応を増強するための薬剤の調製における、請求項1から9のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分、又は、請求項11に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ヒトB7-H3に特異的に結合する抗体、及びその調製及び使用、特に、癌などのB7-H3関連疾患の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
T細胞の増殖及び活性化は、二重のシグナルに依存する。T細胞受容体と、抗原提示細胞又は腫瘍細胞上のMHCによって提示されるペプチドの間の相互作用は、T細胞活性化に不可欠である第1のシグナルを提供するが、細胞増殖又はサイトカイン放出を誘導しない。第2のシグナル、すなわち、共刺激シグナルは、T細胞が活性化/増殖、無反応、又はアポトーシスを経ることを決定する。B7-CD28共刺激シグナリング経路は、T細胞活性化及び抑制の制御において重要な役割を果たし、ここで、CD-28分子は、T細胞上に発現され、一方、B7分子は一般的に、活性化された抗原提示細胞上に存在する。現在までに、10より多いB7タンパク質が発見され、T細胞活性化中にそれらが形質導入するシグナル及び機能に従って3つの群、すなわち、i)共刺激、ii)共阻害、及びiii)共刺激/阻害に分けられる。
【0003】
CD276としても知られているB7-H3は、B7ファミリーの共刺激/阻害分子である。最初に発見されたとき、それは、T細胞活性化及びIFN-γ産生を促進する共刺激分子とみなされた。しかしながら、近年の研究が示唆するところによれば、B7-H3は、適応免疫において阻害の役割を果たし、例えば、T細胞活性化/増殖又はエフェクターサイトカイン(主にIFN-γ及びIL-2)の放出を抑制し、NK細胞活性を阻害する等を行う(Prasad DVR. et al., (2004) J Immunol 173(4):2500-2506;Castriconi R. et al., (2004) Proc Natl Acad Sci USA 101(34):12640-12645)。B7-H3の一見矛盾する制御活性は、異なる受容体によって媒介され得るが、B7-H3受容体について行われた研究はわずかである。
【0004】
B7-H3は、1型膜貫通型タンパク質であり、他のB7ファミリーメンバーと20%~27%の相同性を共有する。それは、染色体15q24に位置する遺伝子によってコードされ、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び短い細胞内ドメインを含む。細胞内ドメインは、非常に短く、任意のシグナリングモチーフを有することが知られていない。加えて、ヒトB7-H3タンパク質は、エクソン重複に起因して、1又は2対の細胞外ドメインを含み得、結果として、2つのサブタイプ、すなわち、2IgB7-H3及び4IgB7-H3をもたらす。前者のサブタイプは、1対の免疫グロブリン可変領域(IgV)様及び免疫グロブリン定常領域(IgC)様細胞外ドメインを含み、一方、後者は、2対の同一のIgV様及びIgC様細胞外ドメインを含み、ヒト細胞において見られる主なサブタイプである。
【0005】
B7-H3のmRNAは、正常な組織において広範に発現され、一方、B7-H3タンパク質分子は、わずかな組織でのみ低発現される(Flem-Karlsen K. et al., (2018) Trends Cancer 4(6):401-404)。例えば、唾液腺腺房細胞、胃上皮細胞、及び副腎細胞の細胞質では弱い染色が見られ、また、胃、胆嚢、前立腺、子宮頸部、及び子宮内膜の基底膜において弱い染色が見られた。B7-H3タンパク質は、複数の悪性腫瘍によって高発現される。B7-H3分子は腎細胞癌患者の33.0%において、及び、肝細胞癌患者の91.8%において発現されることが様々な研究で示されている。B7-H3発現を伴う患者の割合は、腎細胞癌及び全身性血液癌において非常に低く(それぞれ33.0%及び36.7%、p<0.001)、一方、他の固形癌の患者の少なくとも52.3%はB7-H3発現を有することに留意されたい。消化器癌のうち、B7-H3発現を伴う患者の割合は、肝細胞癌において最も高く(91.8%)、胃癌において最も低い(58.0%)。悪性泌尿生殖器癌のうち、B7-H3発現を伴う患者の割合は、腎細胞癌において最も低く、卵巣癌において最も高い(88.3%)。すべての癌のうち、患者の59.5%(15877/26703)はB7-H3陽性である。一方では、高いB7-H3発現を伴う膵臓癌患者は、低いB7-H3発現を伴う患者より手術後の予後が良好であることが分かった(Loos M. et al., (2009)BMC Cancer 9: 463)。他方では、B7-H3は、免疫抑制性腫瘍微小環境に寄与し、例えば扁平上皮癌における癌幹細胞が免疫監視から逃れることを促進すると考えられる(Wang C. et al., (2021) Cell Stem Cell 28(9): 1597-1613;Jin MZ, Jin WL., (2020) Signal Transduct Target Ther 5(1): 166)。B7-H3はまた、複数の非免疫経路によって癌の発生及び進行を促進する。例えば、それは、結腸直腸癌細胞におけるVEGFA発現を誘導し、結腸直腸癌における上皮間葉転換を促進し、好気性解糖を誘発して腫瘍にエネルギーを供給する(Wang RQ et al., (2020) Cell Death Dis (2020) 11(1):55;Jiang B. et al., (2016) Oncotarget 7(22): 31755-31771;Lim S. et al., (2016) Cancer Res 76(8): 2231-2242)。
【0006】
B7-H3のインビボ発現パターンにより、それは癌治療のための有望な標的となる。特に、高いB7-H3発現はまた、腫瘍微小環境及び腫瘍関連血管(tumor associated vasculature:TAV)における間質細胞(線維芽細胞)において見られるので、B7-H3標的治療は、B7-H3発現が低い癌細胞さえ除去し得る。
【0007】
現在、様々な形態におけるB7-H3標的治療薬が臨床試験段階にある。エノブリツズマブは、最適化されたFc領域を伴うB7-H3タンパク質を標的にする第1のモノクローナル抗体であり、抗体依存性細胞媒介細胞傷害性及びT細胞免疫機能増強の両方を通じて抗腫瘍活性を示す。Society for Immunotherapy of Cancer(SITC)の2018年年次報告において公開されたデータによれば、エノブリツズマブ及び抗PD‐L1抗体の併用療法の客観的奏効率(objective response rate:ORR)は、臨床試験における頭頸部の扁平上皮癌(squamous cell carcinoma of head and neck:SCCHN)の患者において33.3%であり、低いPD-L1発現(<1%)を伴う非小細胞肺癌(non-small cell lung cancer:NSCLC)の患者において35.7%のORRが達成された。特に、以前に抗PD-1/L1抗体治療を受けた患者は、そのような療法に反応し(部分寛解、partial remission:PR)、初めて抗PD-1/L1治療の対象となった患者と比較して、同一の割合の患者において疾患が抑制された。131Iで標識されたモノクローナル抗体8H9(オムブルタマブ、Y-mAbs)が、腹腔内注射を介して、転移性の中枢神経系神経芽細胞腫(NCT00089245)の患者及び線維形成性小細胞腫瘍(NCT01099644)の患者を治療するために使用され、良好な忍容性を示している。同様に、124Iで標識されたモノクローナル抗体8H9が、びまん性内在性橋神経膠腫(NCT01502917)において試験され、これも良好な忍容性を示している。小分子薬、単一特異性抗体、二重特異性抗体、抗体薬コンジュゲート、CAR-T及び同様のものを含む、いくつかの他のB7-H3標的治療薬が、黒色腫、前立腺癌、頭頚部扁平上皮癌、非小細胞肺癌、中枢神経系細胞腫瘍、神経膠芽腫、線維形成性小細胞腫瘍、髄芽腫及び同様のものなどの固形腫瘍の臨床試験において試験されている(Zhou WT, Jin WL. (2021) Front Immunol 12: 701006)。
【0008】
しかしながら、B7-H3標的療法の広範囲の抗腫瘍効果にもかかわらず、これらの療法はなお、臨床試験の早期段階にあり、患者のごく一部のみに対して臨床有効性を示す。さらに、これらの療法は、最初は一部の患者において非常に良好な治療効果を示し得るが、後に耐性が発生し得ることに留意されたい。特定の患者における非反応性及び耐性の進行の原因を発見し、次に、新しい治療手段及び方式を開発することは、更なる癌治療にとって重要である。異なる結合親和性、ブロック活性、及び更には異なる結合エピトープを伴う抗B7-H3抗体など、異なる特性及び有効性の特徴を伴うより多くの抗B7-H3抗体に対する大きい需要が癌治療分野においてなお存在する。
【0009】
本願における任意の文献の引用又は特定は、そのような文献が本発明の従来技術として利用可能であることを承認するものではない。
【発明の概要】
【0010】
本願は、エノブリツズマブなどの従来技術の抗体と比較して、同等の又はより高いヒト/サルB7-H3結合親和性/結合活性、同等の又はより高いB7-H3+細胞結合活性、同等の又はより高い免疫細胞(例えばNK細胞)活性化活性、同等の又はより高い、後退依存性細胞媒介細胞傷害性(antibody dependent cell mediated cytotoxicity:ADCC)を誘導する能力、同等又はより高いインビボ抗癌作用を有する、B7-H3(例えば、ヒトB7-H3、サルB7-H3又はマウスB7-H3)に結合する、ヒト又はキメラモノクローナル抗体などの単離モノクローナル抗体を提供する。本願のモノクローナル抗体は、B7-H3+細胞によって取り込まれ得、ヒトB7-H3に対するその結合特異性は、エノブリツズマブなどの従来技術の抗体より優れている。
【0011】
本願の抗体は、癌などのB7-H3関連疾患の治療を含む、複数の適用を有し得る。
【0012】
したがって、一態様において、開示は、B7-H3に結合する単離モノクローナル抗体(例えばヒト抗体)又はその抗原結合部分を提供し、それは、i)重鎖可変領域、ここで重鎖可変領域は、VH CDR1領域、VH CDR2領域及びVH CDR3領域を含み、ここでVH CDR1領域、VH CDR2領域及びVH CDR3領域は、(1)それぞれ配列番号:1、2、及び3;(2)それぞれ配列番号:1、7、及び8;(3)それぞれ配列番号:12、13、及び14;(4)それぞれ配列番号:18、19、及び20;又は(5)それぞれ配列番号:23、24、及び25のアミノ酸配列、又は、上記の配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得;及び/又は、ii)軽鎖可変領域、ここで、軽鎖可変領域は、VL CDR1領域、VL CDR2領域、及びVL CDR3領域を含み、ここで、VL CDR1領域、VL CDR2領域、及びVL CDR3領域は、(1)それぞれ配列番号:4、5、及び6;(2)それぞれ配列番号:9、10、及び11;(3)それぞれ配列番号:15、16、及び17;(4)それぞれ配列番号:9、21、及び22;又は(5)それぞれ配列番号:26、27、及び28のアミノ酸配列、又は、上記の配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る、を含み得る。
【0013】
本願の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み得、ここで、VH CDR1領域、VH CDR2領域、VH CDR3領域、VL CDR1領域、VL CDR2領域、及びVL CDR3領域は、(1)それぞれ配列番号:1、2、3、4、5及び6;(2)それぞれ配列番号:1、7、8、9、10及び11;(3)それぞれ配列番号:12、13、14、15、16及び17;(4)それぞれ配列番号:18、19、20、9、21及び22;又は(5)それぞれ配列番号:23、24、25、26、27及び28のアミノ酸配列、又は、上記の配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0014】
本開示の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分の重鎖可変領域は、配列番号:29、31、33、35又は37と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0015】
本開示の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分の軽鎖可変領域は、配列番号:30、32、34、36又は38と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0016】
本願の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、(1)それぞれ配列番号:29及び30;(2)それぞれ配列番号:31及び32;(3)それぞれ配列番号:33及び34;(4)それぞれ配列番号:35及び36;又は(5)それぞれ配列番号:37及び38のアミノ酸配列、又は、上記の配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0017】
別の態様において、開示は、B7-H3に結合する単離モノクローナル抗体(例えば、ヒト抗体)又はその抗原結合部分を提供し、それは、i)重鎖可変領域、ここで重鎖可変領域は、VH CDR1領域、VH CDR2領域及びVH CDR3領域を含み、ここで、VH CDR1領域、VH CDR2領域及びVH CDR3領域は、指定されたVH配列のVH CDR1領域、VH CDR2領域及びVH CDR3領域の同一性を有し、及び/又は、ii)軽鎖可変領域、ここで軽鎖可変領域は、VL CDR1領域、VL CDR2領域、及びVL CDR3領域を含み、ここでVL CDR1領域、VL CDR2領域及びVL CDR3領域は、指定されたVL配列のVL CDR1領域、VL CDR2領域及びVL CDR3領域との同一性を有し;ここで、指定されたVH配列及び指定されたVL配列は、(1)配列番号:29及び30にそれぞれ記載される指定されたVH配列及び指定されたVL配列;(2)配列番号:31及び32にそれぞれ記載される指定されたVH配列及び指定されたVL配列;(3)配列番号:33及び34にそれぞれ記載される指定されたVH配列及び指定されたVL配列;(4)配列番号:35及び36にそれぞれ記載される、指定されたVH配列及び指定されたVL配列;及び、(5)配列番号:37及び38にそれぞれ記載される、指定されたVH配列及び指定されたVL配列の1つである、を含む。
【0018】
一実施形態において、本開示の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分は、重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域を含み得る。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4重鎖定常領域、又はその機能的断片であり得る。更に、重鎖定常領域は、例えば、B7-H3+細胞に対するADCCを増強するために、増強されたFcR結合活性を有するように操作され得る。例えば、重鎖定常領域は、SI変異(EUナンバリングによるS239D及びI332E変異)又はVLPLL変異(EUナンバリングによるL235V、F243L、R292P、Y300L及びP396L)を導入され得る。一実施形態において、重鎖定常領域は、配列番号:43のアミノ酸配列を含む野性型ヒトIgG1定常領域であり得る。一実施形態において、重鎖定常領域は、配列番号:44(EUナンバリングによる、L235V、F243L、R292P、Y300L及びP396L)のアミノ酸配列を含むヒトIgG1定常領域であり得る。軽鎖定常領域は、κ定常領域、例えば、配列番号:45のアミノ酸配列を含むヒトκ定常領域、又はその機能的断片であり得る。重鎖定常領域のN末端は、重鎖可変領域のC末端に連結され、軽鎖定常領域のN末端は、軽鎖可変領域のC末端に連結される。
【0019】
本願の抗体又はその抗原結合部分は、アフコシル化のために、例えば、特定の哺乳類細胞株において組み換えにより発現され得る。アフコシル化された抗体又はその抗原結合部分を発現するための細胞株は、これらに限定されないが、Slc35C1ノックアウト細胞株、FUT8ノックアウト細胞株、Lec13細胞株(変異CHO細胞株)、ラット骨髄腫細胞株YB2/0、遺伝子FUT8に特異的である小干渉RNAを含む細胞株、及び、β-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII及びゴルジα-マンノシダーゼIIを共発現する細胞株を含む。
【0020】
本開示の抗体は、特定の実施形態において、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含み得る、又は、2つの重鎖及び2つの軽鎖から成り得る、ここで、各重鎖は、上で言及された重鎖定常領域、重鎖可変領域及び/又はCDR配列を含み、各軽鎖は、上で言及された軽鎖定常領域、軽鎖可変領域、及び/又は、CDR配列を含む。特定の実施形態において、本開示の抗体は、単鎖可変断片であり得る、又は、Fab又はF(ab')2断片などの抗体断片から成る。
【0021】
本願は更に、本開示の抗体又はその抗原結合部分を含む免疫複合体を提供し、ここで、抗体又はその抗原結合部分は、細胞毒又は抗癌剤などの治療剤に連結される。本開示は更に、開示の抗体又はその抗原結合部分を含む二重特異性分子を提供し、ここで、抗体又はその抗原結合部分は、第2機能部分(例えば、第2抗体)に連結され、ここで、第2機能部分は、本開示の抗体又はその抗原結合部分と異なる結合特異性を有する。別の点において、本開示の抗体又はその抗原結合部分は、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)又は操作されたT細胞受容体(T cell recepto:TCR)の一部であり得る。T細胞、NK細胞、又は同様のものを含む、上のCAR及び/又はTCRを含む免疫細胞も提供される。本開示の抗体又はその抗原結合部分はまた、腫瘍溶解性ウイルスによってコードされ得る、又は、腫瘍溶解性ウイルスによって保有され得る。
【0022】
本願は更に、本開示の抗体又はその抗原結合部分、又は二重特異性分子をコードする核酸分子、及び、当該核酸を含む発現ベクター、及び、当該発現ベクターを含む宿主細胞を含む。
【0023】
一実施形態において、本開示の発現ベクターは、上で言及された1又は複数の核酸を含む。別の実施形態において、本開示の発現ベクターは、B7-H3に共に結合し得るVH及びVLをそれぞれコードする、上で言及された2つの核酸を含む。別の実施形態において、本開示は、ベクターの対を提供し、ここで、各ベクターは、上で言及された核酸の1つを含み、ベクターの対は、B7-H3に結合し得るVH及びVLを共にコードする。
【0024】
本開示は更に、上の発現ベクターを含む宿主細胞を使用して、本開示の抗体又はその抗原結合部分、又は二重特異性分子を調製するための方法を提供し、当該方法は、(i)宿主細胞において、抗体、その抗原結合部分、又は二重特異性分子を発現させる段階、及び、(ii)宿主細胞又はその培養物から、抗体、その抗原結合部分、又は二重特異性分子を単離する段階を備える。
【0025】
本願は更に、開示の抗体又はその抗原結合部分、免疫複合体、二重特異性分子、免疫細胞、腫瘍溶解性ウイルス、核酸分子、発現ベクター、又は宿主細胞を含む医薬組成物及び薬学的に許容される担体を提供する。
【0026】
一態様において、本願は、対象におけるB7-H3関連疾患を治療又は軽減するための方法を提供し、当該方法は、開示の医薬組成物の治療有効量を対象に投与する段階を含む。B7-H3関連疾患は癌又は自己免疫疾患であり得る。癌は、これらに限定されないが、乳癌、黒色腫、前立腺癌、頭頚部扁平上皮癌、肺癌、非小細胞肺癌、中枢神経系神経芽細胞腫、神経膠芽腫、線維形成性小細胞腫瘍、びまん性橋膠腫、髄芽腫、膵臓癌、肝臓癌、結腸直腸癌、非ホジキンリンパ腫、食道癌、卵巣癌、膀胱癌、小細胞癌、子宮内膜癌、腎臓癌、胃癌、急性骨髄性白血病、肝細胞癌、下咽頭扁平上皮癌、尿路上皮細胞癌を含む固形腫瘍であり得る。自己免疫疾患は、喘息を含むが、これに限定されない。特定の実施形態において、開示の抗体又はその抗原結合部分は、抗PD‐1抗体、抗PD‐L1抗体、抗4-1BB抗体及び同様のものなどの少なくとも1つの追加的な抗癌抗体と共に投与され得る。別の実施形態において、本開示の抗体又はその抗原結合部分は、サイトカイン(例えば、IL-2及び/又はIL-21)又は共刺激抗体(例えば、抗CD137抗体及び/又は抗GITR抗体)と共に投与され得る。別の実施形態において、本開示の抗体又はその抗原結合部分は、細胞傷害性剤であり得る化学療法剤と共に投与され得る。本開示の抗体は例えばヒト抗体であり得る。
【0027】
一態様において、本開示は、対象における免疫反応を増強する方法を提供し、当該方法は、開示の抗体又はその抗原結合部分の有効量を、それを必要とする対象に投与する段階を含む。免疫反応の増強は、NK細胞及び同様のものを含む免疫細胞の活性化を含む。
【0028】
本願において引用又は参照されるすべての文書(本明細書において引用される、すべての文献文書、特許、特許出願公開を含むがそれらに限定されない)(「本明細書において引用される文書」)、本明細書において引用される文書において引用又は参照されるすべての文書は、本明細書において言及される任意の製品についての、又は、本明細書に参照によって組み込まれる任意の文書における、任意の製造元の指示、説明、製品仕様、及び、製品シートと共に、参照によって本明細書において組み込まれ、発明の実施において採用され得る。より具体的には、参照されたすべての文献は、個々の文献が参照によって組み込まれるように具体的かつ個々に示された場合と同程度まで、参照によって組み込まれる。本開示において言及される任意のGenbank配列は参照によって組み込まれる。
【0029】
本開示、特に、請求項において、「含む」、「備える」及び同様のものなどの用語は、中国特許法において与えられる意味を有し得;「本質的に成る」などの用語は、中国特許法においてそれらに与えられる意味を有し、例えば、それらは、明示的に列挙されない要素を許可するが、従来技術において見られる、又は、本発明の基本的又は新規の特徴に影響を与える要素を除外することに留意されたい。
【0030】
本開示の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び例から明らかであるが、これは限定として解釈されるべきでない。本願全体において引用されるすべての参照、GenBankエントリ、特許及び特許出願公開の内容は、参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
以下の詳細な説明は、例として与えられるが、記載された特定の実施形態にのみ専ら本発明を限定することを意図されていなく、添付図面と併せて最もよく理解され得る。
【0032】
【
図1】A549細胞(A)、NCI-H520細胞(B)、HepG2細胞(C)、SK-OV-3細胞(D)及びMCF-7細胞(E)を含むB7-H3
+腫瘍細胞に対する完全ヒト抗B7-H3抗体の結合活性を示す。
【0033】
【
図2】ジャーカット細胞(A)、ダウディ細胞(B)及びラージ細胞(C)を含む、B7-H3
-腫瘍細胞に対する完全ヒト抗B7-H3抗体の結合活性を示す。
【0034】
【
図3】ヒト前立腺平滑筋細胞(A)、ヒト皮膚線維芽細胞(B)、ヒト大動脈平滑筋細胞(C)、及びヒト樹状細胞(D)を含むB7-H3
+正常細胞に対する完全ヒト抗B7-H3抗体の結合活性を示す。
【0035】
【
図4】HUVEC細胞(A)及びNCI-H520細胞(C)に対する、Fc操作を伴う又は伴わない完全ヒト抗B7-H3抗体、すなわち6B5-WT、6B5-AF及び6B5-Mutの結合活性、及び、HUVEC細胞(B)及びNCI-H520細胞(D)に対する10D7-WT、10D7-AF及び10D7-Mutの結合活性を示す。
【0036】
【
図5】NK細胞によるNCI-H520細胞殺傷を誘導するための(A)、及び、NK細胞を活性化するための(C)、Fc操作を伴う又は伴わない完全ヒト抗B7-H3抗体、すなわち、10D7-WT、10D7-AF、及び10D7-Mutの能力、及び、NK細胞によるNCI-H520細胞殺傷を誘導するための(B)、及び、NK細胞を活性化するための(D)、6B5-WT、6B5-AF、及び6B5-Mutの能力を示す。
【0037】
【
図6】PBMCによるNCI-H520細胞殺傷を誘導するための、Fc操作を伴う又は伴わない完全ヒト抗B7-H3抗体、すなわち、10D7-WT、10D7-AF、及び10D7-Mutの能力(A)、及び、PBMCによるNCI-H520細胞殺傷を誘導するための、6B5-WT、6B5-AF、及び6B5-Mutの能力(B)を示す。
【0038】
【
図7】NK細胞(A)又はPBMC(B)によるHUVEC細胞殺傷を誘導するための、アフコシル化された完全ヒト抗B7-H3抗体、10D7-AF、及び6B5-AFの能力、及び、HUVEC細胞殺傷中のPBMCによるIFN-γの放出(C)を示す。
【0039】
【
図8】NK細胞による成熟樹状細胞の殺傷を誘導するための、アフコシル化された完全ヒト抗B7-H3抗体、10D7-AF、及び6B5-AFの能力を示す。
【0040】
【
図9】NCI-H520細胞(A)及びA549細胞(B)による、完全ヒト抗B7-H3抗体の取り込みを示す。
【0041】
【
図10】完全ヒト抗B7-H3抗体によって結合されるB7-H3エピトープの、平均的な連鎖クラスタリング由来のツリー図である。
【0042】
【
図11】SPRによるB7ファミリーメンバーに対する6B5抗体の結合親和性を示す。
【0043】
【
図12】完全ヒト抗B7-H3抗体10F5-Mut(A)、6B5-Mut、15F11-Mut(B)によって処置された、ヒトB7-H3遺伝子を伴うマウスにおける腫瘍の大きさの変化を示す。
【0044】
【
図13】アフコシル化された完全ヒト抗B7-H3抗体6B5-AFの代表的な組織染色結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本開示がより容易に理解され得ることを確実にするべく、特定の用語をまず定義する。追加の定義は、詳細な説明全体を通して記載される。
【0046】
「B7-H3」という用語は、細胞外ドメイン構造に従って2つのサブタイプ、すなわち、4Ig及び2Igに分けることができる、分化抗原群276(CD276)としても知られているB7ホモログ3を指す。当該用語は、バリアント、ホモログ、オーソログ及びパラログを含む。例えば、ヒトB7-H3に特異的な抗体は、特定の場合において、サルなどの別の種からのB7-H3タンパク質と交差反応し得る。他の実施形態において、ヒトB7-H3タンパク質に特異的な抗体は、ヒトB7-H3タンパク質に対して完全に特異的であり、他の種又は他の型に対する交差反応性を示さないことがあり得る、又は、特定の他の種からのB7-H3タンパク質と交差反応するが、すべての他の種と交差反応するわけではないことがあり得る。
【0047】
「ヒトB7-H3」という用語は、NCBIアクセッション番号NP_001019907.1を有するアミノ酸配列を含むB7-H3(4Ig)タンパク質(Kanayama T. et al., (2021) Sci Rep 11(1): 18802)、又は、NCBIアクセッション番号NP_001316557.1を有するアミノ酸配列を含むB7-H3(2Ig)タンパク質(Fu M. et al., (2021) J Transl Med 19(1):404)などの、ヒトからのアミノ酸配列を有するB7-H3タンパク質を指す。「サルB7-H3」という用語は、NCBIアクセッション番号XP_015308534.1を有するアミノ酸配列を含むB7-H3など、サルからのアミノ酸配列を有するB7-H3タンパク質を指す。「マウスB7-H3」という用語は、NCBIアクセッション番号NP_598744.1を有するアミノ酸配列を含むB7-H3タンパク質(Cheng N. et al., (2021) Biochem Pharmacol 183: 114298)などの、マウスからのアミノ酸配列を有するB7-H3タンパク質を指す。
【0048】
本明細書において使用される「抗体」という用語は、IgG、IgA、IgD、IgE、及びIgMの完全長抗体、及び、その抗原結合断片(すなわち、抗原結合部分)のいずれかを含むことが意図される。完全長抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含み得る糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略される)及び重鎖定常領域を含み得る。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3を含み得る。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略される)及び軽鎖定常領域を含み得る。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLを含み得る。VH及びVL領域は更に、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に細分化でき、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存的な領域が点在する。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配置される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び従来の補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織又は因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介し得る。抗体定常領域の「機能的断片」は、FcR/補体系成分結合活性を保持する重鎖定常領域の断片など、特定の必要な機能を保持する定常領域の断片を指す。
【0049】
抗体の「抗原結合部分」(又は単純に「抗体部分」)という用語は、本明細書において使用される場合、抗原(例えば、B7-H3タンパク質)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1又は複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって実行され得ることが示された。抗体の「抗原結合部分」という用語内に含まれる結合断片の例は、(i)Fab断片、VL、VH、CL、及びCH1ドメインから成る一価断片;(ii)F(ab')2断片、ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋によって連結される2つのFab断片を含み得る二価断片;(iii)VH及びCH1ドメインから成るFd断片;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインから成るFv断片;(v)dAb断片(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546);(vi)単離された相補性決定領域(CDR);及び、(viii)ナノボディ、単一の可変ドメイン及び2つの定常ドメインを含む重鎖可変領域を含む。さらに、Fv断片、VL及びVHの2つのドメインは別個の遺伝子によってコードされているが、単一のタンパク質鎖にすることを可能にする合成リンカーによって、組み換えの方法を使用して接続でき、ここで、VL及びVH領域は対になって一価分子(単一鎖Fv(scFv)としても知られる;例えば、Bird et al., (1988) Science 242:423-426;及びHuston et al., (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照)を形成する。そのような単一鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合部分」という用語内に含まれることが意図される。これらの抗体断片は、当業者に知られている従来の技法を使用して取得され、断片は、完全な抗体と同じ方式で、使用性に関してスクリーニングされる。
【0050】
本明細書において使用される「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことが意図されている。例えば、B7-H3タンパク質に特異的に結合する単離抗体は、B7-H3タンパク質以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない。しかしながら、ヒトB7-H3タンパク質に特異的に結合する単離抗体は、他の種からのB7-H3タンパク質など、他の抗原に対する交差反応性を有し得る。更に、単離抗体は、他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まないことがあり得る。
【0051】
本明細書において使用される場合、「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一分子組成物の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して、単一結合特異性及び親和性を示す。
【0052】
本明細書において使用される「ヒト抗体」という用語は、フレームワーク及びCDR領域の両方がヒト生殖系列重鎖のみの抗体配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことが意図される。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もヒト生殖細胞抗体配列に由来する。本開示のヒト抗体は、ヒト生殖細胞抗体配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロのランダム又は部位特異的変異原性又はインビボの体細胞変異によって導入される変異)を含み得る。しかしながら、本明細書において使用される「ヒト抗体」という用語は、別の哺乳類種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図しない。
【0053】
「キメラ抗体」という用語は、非ヒトの供給元からの遺伝物質をヒトの遺伝物質と組み合わせることによって作られる抗体を指す。又はより一般的には、キメラ抗体とは、ある種の遺伝物質と別の種の遺伝物質を有する抗体のことである。
【0054】
「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体」という語句は、本明細書において、「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と交換可能に使用される。
【0055】
本明細書において使用される場合、「ヒトB7-H3に特異的に結合する」抗体は、ヒトB7-H3タンパク質(及び別の非ヒト種からのB7-H3)に結合するが、非B7-H3タンパク質に実質的に結合しない抗体を指すことが意図される。好ましくは、抗体は、「高い親和性」で、すなわち、5.0×10-8M又はより低いKDでヒトB7-H3タンパク質に結合する。
【0056】
タンパク質又は細胞に「実質的に結合しない」という用語は、タンパク質又は細胞に対して結合しない又は高い親和性で結合しない、すなわち、1.0×10-6M又はより高い、より好ましくは1.0×10-5M又はより高い、より好ましくは1.0×10-4M又はより高い、1.0×10-3M又はより高い、より好ましくは1.0×10-2M又はより高いKDでタンパク質又は細胞に結合することを意味する。
【0057】
半最大有効濃度としても知られている「EC50」という用語は、最大反応の半分(50%)を与える抗体の濃度を指す。
【0058】
「IC50」という用語は、特定の生物学的プロセスを50%阻害する薬剤又は阻害剤の濃度である半最大阻害濃度を指す。
【0059】
「抗体依存性細胞傷害性」、「抗体依存性細胞媒介細胞傷害性」、又は「ADCC」という用語は、開示の抗B7-H3抗体などの抗体によって細胞表面抗原が結合される標的細胞をエフェクター免疫細胞が活発に溶解する細胞媒介免疫防御を指す。
【0060】
「対象」という用語は、任意のヒト又は非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」という用語は、すべての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類、及び爬虫類など、哺乳類及び非哺乳類を含むが、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマなどの哺乳類が好ましい。
【0061】
「治療有効量」という用語は、疾患又は疾病(例えば癌)に関連する症状を予防又は軽減するのに十分である、本開示の抗体の量を指す。治療有効量は、治療される疾患に関し、当業者は、実際の有効量を容易に識別できる。
【0062】
本開示の様々な態様が下でさらに詳細に説明される。
【0063】
本開示の抗体又はその抗原結合部分は、B7-H3+細胞を含む、ヒト、サル、及び同様のもののB7-H3に結合可能であり、結合活性/結合親和性は、エノブリツズマブなどの従来技術の抗体と同等である又はそれより良好である。加えて、エノブリツズマブなどの従来技術の抗体と比較して、開示の抗体又はその抗原結合部分は、同等の又はより高い免疫細胞(例えば、NK細胞)活性化能力、同等の又はより高い抗体依存性細胞媒介細胞傷害性(ADCC)誘導能力、同等又はより良好なインビボ抗癌作用を有する。開示のモノクローナル抗体又はその抗原結合部分は、B7-H3+細胞によって取り込まれ得、ヒトB7-H3に対するその結合特異性は、エノブリツズマブなどの従来技術の抗体より良好である。
【0064】
本開示の好ましい抗体はモノクローナル抗体である。抗体は例えばヒト又はキメラモノクローナル抗体であり得る。
【0065】
本開示の例示的な抗体又はその抗原結合部分は、以下で構造的及び化学的に特性評価される。
【0066】
開示の抗体又はその抗原結合部分の重鎖可変領域CDR及び軽鎖可変領域CDRは、Kabatナンバリングシステムによって定義されている。CDRアミノ酸配列の配列番号及び重/軽鎖アミノ酸配列の配列番号は表1Aに記載される。開示の抗体又はその抗原結合部分の重鎖可変領域CDR及び軽鎖可変領域CDRはまた、Chothiaナンバリングシステムによって決定でき、そのようなシステムによって決定されるCDRアミノ酸配列の配列番号は表1Bにおいて記載される。
表1A
Kabatナンバリングシステムによって決定される重鎖/軽鎖可変領域CDR及び重鎖/軽鎖可変領域のアミノ酸配列の配列番号
【表1】
表1B
Chothiaナンバリングシステムによって決定される重鎖/軽鎖可変領域CDR及び重鎖/軽鎖可変領域のアミノ酸配列の配列番号
【表2】
【0067】
Kabat及びChothiaナンバリングシステムによって決定される上の例示的CDRに加えて、開示の抗体の重鎖/軽鎖可変領域は、配列番号:29、30、31、32、33、34、35、36、37及び38に基づいて他のナンバリングシステムによって決定されるCDR領域を含み得る。重鎖可変領域及び軽鎖可変領域CDRは、例えば、IMGT、AbM又はContactナンバリングシステム/方法によっても決定され得ることが本技術分野において周知である。
【0068】
開示の抗体は、IgG1定常領域、例えば配列番号:43のアミノ酸配列を含む、例えばヒトIgG1定常領域などの重鎖定常領域を含み得る。定常領域は、配列番号:44(EUナンバリングによるL235V、F243L、R292P、Y300L及びP396L)のアミノ酸配列を含むヒトIgG1定常領域など、増強されたFcR結合能力を有するように操作され得る。軽鎖定常領域は、配列番号:45のアミノ酸配列を含み得るヒトκ定常領域などのκ定常領域であり得る。
【0069】
ヒトB7-H3に結合する他の抗B7-H3抗体のVH及び/又はVL配列(又はCDR配列)は、本開示の抗B7-H3抗体のVH及びVL配列(又はCDR配列)と「混合及び組み合わされ」得る。好ましくは、VH及びVL鎖(又はそのような鎖の中のCDR)が混合及び組み合わされるとき、特定のVH/VLの対からのVH配列は、構造的に同様のVH配列と置換される。同様に、好ましくは、特定のVH/VLの対からのVL配列は、構造的に同様のVL配列と置換される。
【0070】
したがって、一実施形態において、本開示の抗体又はその抗原結合部分は以下を含み得る:
(a)表1に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;及び
(b)表1に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、又は別の抗B7-H3抗体のVL、ここで抗体はヒトB7-H3に特異的に結合する。
【0071】
別の実施形態において、本開示の抗体又はその抗原結合部分は以下を含む:
(a)表1に記載される重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3;及び
(b)表1に記載される軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3、又は、別の抗B7-H3抗体のCDR、ここで、抗体はヒトB7-H3に特異的に結合する。
【0072】
更に別の実施形態において、開示の抗体又はその抗原結合部分は、ヒトB7-H3に結合する他の抗体のCDR、例えば、重鎖可変領域からのCDR1及び/又はCDR3、及び/又は、別の抗B7-H3抗体の軽鎖可変領域からのCDR1、CDR2、及び/又はCDR3と組み合わされる抗B7-H3抗体の重鎖可変CDR2領域を含む。
【0073】
加えて、本技術分野において、CDR1及び/又はCDR2ドメインから独立のCDR3ドメインは単独で、類似の抗原に対する抗体の結合特異性を決定できること、ならびに、共通のCDR3配列に基づいて同じ結合特異性を有する複数の抗体を予測的に生成できることが知られている。例えば、Klimka et al., British J. of Cancer 83(2):252-260 (2000);Beiboer et al., J. Mol. Biol. 296:833-849 (2000);Rader et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:8910-8915 (1998);Barbas et al., J. Am. Chem. Soc. 116:2161-2162 (1994);Barbas et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:2529-2533 (1995);Ditzel et al., J. Immunol. 157:739-749 (1996);Berezov et al., BIAjournal 8: Scientific Review 8 (2001);Igarashi et al., J. Biochem (Tokyo) 117:452-7 (1995);Bourgeois et al., J. Virol 72:807-10 (1998);Levi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:4374-8 (1993);Polymenis and Stoller, J. Immunol. 152:5218-5329 (1994)及びXu and Davis, Immunity 13:37-45 (2000)を参照されたい。米国特許第6,951,646号;第6,914,128号;第6,090,382号;第6,818,216号;第6,156,313号;第6,827,925号;第5,833,943号;第5,762,905号及び第5,760,185号も参照されたい。これらの参考文献は、参照によって全体として本明細書に組み込まれる。
【0074】
別の実施形態において、開示の抗体は、抗B7-H3抗体の重鎖可変領域のCDR2、及び、少なくとも抗B7-H3抗体の重鎖及び/又は軽鎖可変領域のCDR3、又は、別の抗B7-H3抗体の重鎖及び/又は軽鎖可変領域のCDR3を含み得、ここで、抗体は、ヒトB7-H3に特異的に結合可能である。これらの抗体は好ましくは、(a)B7-H3と結合を競合し;(b)機能的特徴を保持し;(c)同一のエピトープに結合し;及び/又は(d)本開示の抗B7-H3抗体と同様の結合親和性を有する。更に別の実施形態において、抗体は更に、抗B7-H3抗体の軽鎖可変領域のCDR2、又は、別の抗B7-H3抗体の軽鎖可変領域のCDR2を含み得、ここで抗体は、ヒトB7-H3に特異的に結合可能である。別の実施形態において、開示の抗体は、抗B7-H3抗体の重鎖及び/又は軽鎖可変領域のCDR1、又は、別の抗B7-H3抗体の重鎖及び/又は軽鎖可変領域のCDR1を含み得、ここで抗体は、ヒトB7-H3に特異的に結合可能である。
【0075】
別の実施形態において、開示の抗体は、1又は複数の保存的改変によって本開示の抗B7-H3抗体と異なるCDR1、CDR2及びCDR3配列の重鎖及び/又は軽鎖可変領域配列を含み得る。本技術分野において、抗原結合を排除しない特定の保存的配列改変が行われ得ることが理解される。例えば、Brummell et al., (1993) Biochem 32:1180-8;de Wildt et al., (1997) Prot. Eng. 10:835-41;Komissarov et al., (1997) J. Biol. Chem. 272:26864-26870;Hall et al., (1992) J. Immunol. 149:1605-12;Kelley and O'Connell (1993) Biochem.32:6862-35;Adib-Conquy et al., (1998) Int. Immunol.10:341-6 and Beers et al., (2000) Clin. Can. Res. 6:2835-43を参照されたい。
【0076】
したがって、一実施形態において、抗体は重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含み、ここで重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は各々CDR1、CDR2及びCDR3を含み、ここで:
(a)重鎖可変領域CDR1は、上の表1に列挙される配列、及び/又は、その保存的改変を含み;及び/又は
(b)重鎖可変領域CDR2は、上の表1に列挙される配列、及び/又は、その保存的改変を含み;及び/又は
(c)重鎖可変領域CDR3は、上の表1に列挙される配列、及び、その保存的改変を含み;及び/又は
(d)軽鎖可変領域CDR1及び/又はCDR2及び/又はCDR3は、上の表1に列挙される配列及び/又はその保存的改変を含む;及び
(e)抗体はヒトB7-H3に特異的に結合する。
【0077】
開示の抗体は、ヒトB7-H3に対する高い親和性及び高い結合特異性、及び、増強されたFcR結合親和性、及び、したがって、B7-H3+腫瘍細胞に対するADCCを誘導するための増強された能力など、以下の機能的特徴のうちの1又は複数を含み得る。
【0078】
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合部分は例えば、ヒト又はキメラであり得る。
【0079】
本明細書において使用される場合、「保存的配列改変」という用語は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に著しく影響しない、又は、それを変更しないアミノ酸改変を指すことを意図する。そのような保存的改変はアミノ酸置換、追加及び欠失を含む。部位特異的変異誘発及びPCR媒介変異誘発など、本技術分野において知られている標準的な技法によって、開示の抗体に改変が導入され得る。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が、同様の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されることである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが本技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、極性無電荷側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。したがって、開示の抗体のCDR領域における1又は複数のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基に置換され得、変更された抗体は、本明細書において記載された機能的アッセイを使用して、保持された機能(すなわち、上に記載された機能)について試験され得る。
【0080】
開示の抗体は、本開示の抗B7-H3抗体のVH/VL配列のうちの1又は複数を有する抗体を、改変された抗体を操作するための開始物質として使用して調製され得る。抗体は、一方又は両方の可変領域(すなわち、VH及び/又はVL)、例えば、1又は複数のCDR領域、及び/又は、1又は複数のフレームワーク領域における1又は複数の残基を改変することによって操作され得る。追加的又は代替的に、例えば抗体のエフェクター機能を変更するために、抗体は、定常領域内の残基を改変することによって操作され得る。
【0081】
特定の実施形態において、抗体の可変領域を操作するために、CDR移植が使用され得る。抗体は、主に6の重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を通じて標的抗原と相互作用する。この理由から、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外部の配列より、個別の抗体間の多様性が高い。CDR配列は、大部分の抗体-抗原相互作用を担うので、異なる特性を伴う異なる抗体からのフレームワーク配列上に移植された特定の天然に発生する抗体からのCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、特定の天然に発生する抗体の特性を模倣する組み換え抗体を発現することが可能である(例えば、Riechmann et al., (1998) Nature 332:323-327; Jones et al., (1986) Nature 321:522-525; Queen et al., (1989) Proc. Natl. Acad; U.S.A. 86:10029-10033;米国特許第5,225,539号;第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号及び第6,180,370号を参照されたい)。
【0082】
従って、開示の別の実施形態は、上に記載された本開示の配列を含むCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む重鎖可変領域、及び/又は、上に記載された本開示の配列を含むCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域を備える単離モノクローナル抗体、又は、その抗原結合部分に関連する。これらの抗体は、本開示のモノクローナル抗体のVH及びVL CDR配列を含むが、異なるフレームワーク配列を含み得る。
【0083】
そのようなフレームワーク配列は、公共のDNAデータベース、又は、生殖系列抗体遺伝子配列を含む公開されている参考文献から取得できる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子についての生殖系列DNA配列が、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース(インターネット上でwww.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseで入手可能)及び上記で引用されるKabat et al.,(1991);Tomlinson et al., (1992)J. Mol. Biol. 227:776-798;及びCox et al., (1994) Eur. J. Immunol. 24:827-836において見られ得る;それらの各々の内容は、参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。別の例として、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列はGenbankデータベースで見ることができる。例えば、HCo7 HuMAbマウスにおいて見られる以下の重鎖生殖系列配列は、添付のGenbankアクセッション番号1-69(NG--0010109、NT--024637&BC070333)、3-33(NG--0010109&NT--024637)及び3-7(NG--0010109&NT--024637)において入手可能である。別の例として、HCo12 HuMAbマウスにおいて見られる以下の重鎖生殖系列配列が添付のGenbankアクセッション番号において入手可能である:1-69 (NG--0010109、NT--024637 & BC070333)、5-51(NG--0010109 & NT--024637)、4-34(NG--0010109&NT--024637)、3-30.3(CAJ556644)及び3-23(AJ406678)。
【0084】
抗体タンパク質配列は、当業者に知られている、Gapped BLAST (上記のAltschul et al.,(1997))と呼ばれる配列類似性検索方法の1つを使用して、まとめられたタンパク質配列データベースと比較される。
【0085】
開示の抗体において使用される好ましいフレームワーク配列は、開示の抗体によって使用されるフレームワーク配列と同様の構造である。VH CDR1、CDR2、及びCDR3配列は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子において見られるものと同一の配列を有するフレームワーク領域に移植され得るか(フレームワーク配列は生殖系列免疫グロブリン遺伝子に由来する)、又は、CDR配列は、生殖系列配列と比較して1又は複数の変異を含むフレームワーク領域に移植され得る。例えば、特定の事例において、抗体の抗原結合能力を維持又は増強するためにフレームワーク領域内の残基を変異させることが有益であることが分かっている(例えば、米国特許第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号及び第6,180,370号を参照)。
【0086】
別の種類の可変領域改変は、VH及び/又はVL CDR1、CDR2、及び/又はCDR3領域におけるアミノ酸残基を変異させ、これによって、目的の抗体の1又は複数の結合特性(例えば親和性)を改善することである。変異を導入するために、部位特異的変異誘発又はPCR媒介変異誘発が実行され得、抗体結合に対する効果、又は、他の目的の機能特性が、本技術分野において知られているように、in vitro又はin vivoアッセイで評価され得る。好ましくは、保存的改変(本技術分野において知られている)が導入される。変異は、アミノ酸置換、追加、又は欠失であり得るが、好ましくは置換である。更に、典型的には、CDR領域内の1、2、3、4又は5以下の残基が変更される。
【0087】
したがって、別の実施形態において、開示は、(a)本開示の配列、又は、1、2、3、4又は5のアミノ酸置換、欠失又は追加を有するアミノ酸配列を含むVH CDR1領域;(b)本開示の配列、又は、1、2、3、4、又は5のアミノ酸置換、欠失、又は追加を有するアミノ酸配列を含むVH CDR2領域;(c)本開示の配列、又は、1、2、3、4、又は5のアミノ酸置換、欠失、又は追加を有するアミノ酸配列を含むVH CDR3領域;(d)本開示の配列、又は、1、2、3、4、又は5のアミノ酸置換、欠失、又は追加を有するアミノ酸配列を含むVL CDR1領域;(e)本開示の配列、又は、1、2、3、4、又は5のアミノ酸置換、欠失、又は追加を有するアミノ酸配列を含むVL CDR2領域、及び(f)本開示の配列、又は、1、2、3、4、又は5のアミノ酸置換、欠失、又は追加を有するアミノ酸配列を含むVL CDR3領域を含む重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を備える、単離された抗B7-H3モノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0088】
開示の操作された抗体は、例えば、抗体の特性を改善するために、VH及び/又はVL内のフレームワーク残基に改変が加えられたものを含む。フレームワーク改変は、T細胞エピトープを除去するための、フレームワーク領域又は更には1又は複数のCDR領域における1又は複数の残基の変異を含み、それによって、抗体の潜在的な免疫原性を低減する。この手法は、「脱免疫化」とも呼ばれ、米国特許公開第20030153043号においてさらに詳細に説明される。
【0089】
フレームワーク又はCDR領域内で行われる改変に加えて、又は替えて、開示の抗体は、典型的には、血中半減期、補体結合、Fc受容体結合、及び/又は、抗原依存的細胞傷害性など、抗体の1又は複数の機能的特性を変更するために、Fc領域内の改変を含むように操作され得る。更に、開示の抗体は、化学的に改変され得る(例えば、1又は複数の化学的部分が抗体に取り付けられ得る)か、又は、そのグリコシル化を変更するために改変され得、これにより、同様に抗体の1又は複数の機能的特性が変更される。
【0090】
一実施形態において、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域におけるシステイン残基の数が変更されるように、例えば、増加又は減少するように改変される。この手法は、米国特許第5,677,425号において更に説明される。CH1のヒンジ領域におけるシステイン残基の数は、例えば、軽鎖及び重鎖の組み立てを促進するために、又は、抗体の安定性を増加又は減少させるために変更される。
【0091】
別の実施形態において、抗体のFcヒンジ領域は、抗体の生物学的半減期を増加又は減少させるために変異される。より具体的には、ネイティブのFcヒンジドメインのスタフィロコッカスタンパク質A(SpA)結合と比べて弱いSpA結合を抗体が有するように、1又は複数のアミノ酸変異が、Fcヒンジ断片のCH2‐CH3ドメインインタフェース領域に導入される。この手法は、米国特許第6,165,745号においてさらに詳細に説明される。
【0092】
更に別の実施形態において、抗体のグリコシル化は改変される。例えば、アグリコシル化抗体がつくられ得る(すなわち、抗体はグリコシル化を欠いている)。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を増加させるために変更され得る。そのような炭化水素改変は、例えば、抗体配列内のグリコシル化の1又は複数の部位を変更することによって達成され得る。例えば、1又は複数の可変領域フレームワークグリコシル化部位の除去をもたらす1又は複数のアミノ酸置換が行われ得、これによって、当該部位のグリコシル化を除去する。そのようなアグリコシル化により、抗原に対する抗体の親和性が増加し得る。例えば、米国特許第5,714,350号及び第6,350,861号を参照されたい。
【0093】
追加的又は代替的に、フコシル残基の量が低減された低フコシル化抗体、又は、二分GlcNac構造を増加させた抗体など、グリコシル化の種類が変更された抗体が作られ得る。そのような変更されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増加又は低減することが示されている。そのような炭化水素改変は、例えば、グリコシル化機構を変更した宿主細胞において、抗体を発現させることによって達成され得る。これらに限定されないが、Slc35C1ノックアウト細胞株、FUT8ノックアウト細胞株、Lec13細胞株(変異CHO細胞株)、ラット骨髄腫細胞株YB2/0、遺伝子fut8に対して特異的である小干渉RNAを含む細胞株、及び、β-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII及びゴルジα-マンノシダーゼIIを共発現する細胞株を含む、グリコシル化機構を変更した細胞が本技術分野において説明されている。それらは、開示の組み換え抗体を発現させるために宿主細胞として使用でき、それによって、変更されたグリコシル化を伴う抗体を産生する。Slc35C1ノックアウト細胞株は、例えば、MabWorksによって開発されたフコース除去プラットフォームを採用することによって調製され得る。アクセッション番号CGMCC第14287の米国特許第10377833B2号において説明されるCHO細胞株を参照されたい。
【0094】
本明細書における抗体の別の改変はPEG化である。抗体は、例えば、抗体の生物学的(例えば、血中)半減期を増加させるためにPEG化され得る。抗体をPEG化するために、抗体又はその断片は典型的には、1又は複数のPEG基が抗体又は抗体断片に取り付けられる条件下において、PEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)と反応される。好ましくは、PEG化は、反応性PEG分子(又は、類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応を介して実行される。本明細書において使用される場合、「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(C1‐C10)アルコキシ又はアリールオキシ‐ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール‐マレイミドなど、他のタンパク質を誘導体化するために使用されるPEGの任意の形態を包含することが意図される。特定の実施形態において、PEG化される抗体は、アグリコシル化抗体である。タンパク質をPEG化するための方法が本技術分野において知られ、開示の抗体に適用され得る。例えば、EP 0 154 316及びEP 0 401 384を参照されたい。
【0095】
開示の抗体は、その異なるクラスを検出及び/又は区別するための様々な物理的特性を特徴とし得る。
【0096】
例えば、抗体は、軽鎖又は重鎖可変領域のいずれにおける1又は複数のグリコシル化部位を含み得る。そのようなグリコシル化部位は、変更された抗原結合に起因して、抗体の免疫原性の増加、又は、抗体のpKの変更をもたらし得る(Marshall et al (1972) Annu Rev Biochem 41:673-702; Gala and Morrison (2004) J Immunol 172:5489-94; Wallick et al (1988) J Exp Med 168:1099-109; Spiro (2002) Glycobiology 12:43R-56R; Parekh et al (1985) Nature 316:452-7; Mimura et al., (2000) Mol Immunol 37:697-706)。グリコシル化は、N‐X‐S/T配列を含むモチーフにおいて発生することが知られている。いくつかの事例において、可変領域グリコシル化を含まない抗B7-H3抗体を有することが好ましい。これは、可変領域においてグリコシル化モチーフを含まない抗体を選択すること、又は、グリコシル化領域内の残基を変異させることのいずれによって達成され得る。
【0097】
好ましい実施形態において、抗体はアスパラギン異性部位を含まない。アスパラギンの脱アミド化は、N-G又はD-G配列で発生し得、結果として、ポリペプチド鎖にリンクを導入してその安定性を減少させるイソアスパラギン酸残基の形成をもたらす(イソアスパラギン酸効果)。
【0098】
各抗体は、一般に6~9.5のpH範囲に収まる固有の等電点(pI)を有する。IgG1抗体のpIは典型的には、7~9.5のpH範囲に収まり、IgG4抗体のpIは、典型的には、6~8のpH範囲に収まる。正常範囲外のpIを有する抗体は、in vivo条件下において、いくらかのアンフォールディング及び不安定性を有し得ると考えられる。したがって、正常範囲に収まるpI値を含む抗B7-H3抗体を有することが好ましい。これは、正常範囲におけるpIを有する抗体を選択すること、又は、荷電表面残基を変異させることのいずれかによって達成できる。
【0099】
別の態様において、開示は、開示の抗体又はその抗原結合部分の重鎖及び/又は軽鎖可変領域又はCDRをコードする核酸分子を提供する。核酸分子は、全細胞に、細胞溶解物に、又は、部分的に精製された又は実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸分子は、他の細胞成分又は他の混入物、例えば、他の細胞核酸又はタンパク質から標準的な技法によって精製されるとき、「単離される」又は「実質的に純粋になる」。本開示の核酸分子は、例えば、DNA又はRNAであり得、イントロン配列を含んでも含まなくてもよい。好ましい実施形態において、核酸分子はcDNA分子である。
【0100】
本開示の核酸分子は、標準的な分子生物学的技法を使用して取得され得る。ハイブリドーマ(例えば、下で更に説明される、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有する遺伝子組み換えマウスから調製されたハイブリドーマ)によって発現される抗体については、ハイブリドーマによって作られる抗体の軽鎖及び重鎖をコードするcDNAは、標準的なPCR増幅又はcDNAクローニング技法によって取得され得る。免疫グロブリン遺伝子ライブラリから(例えばファージディスプレイ技法を使用して)取得される抗体については、そのような抗体をコードする核酸分子が遺伝子ライブラリから回収され得る。
【0101】
開示の好ましい核酸分子は、B7-H3モノクローナル抗体のVH及びVL配列又はCDRをコードするものを含む。VH及びVLセグメントをコードするDNA断片が取得されると、これらのDNA断片は、例えば、可変領域遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子、Fab断片遺伝子、又はscFv遺伝子に変換するために、標準的な組み換えDNA技法によって更に操作され得る。これらの操作において、VL又はVHをコードするDNA断片は、抗体定常領域又はフレキシブルリンカーなどの、別のタンパク質をコードする別のDNA断片に作動可能に連結される。この文脈において使用される場合、「作動可能に連結される」という用語は、2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームに留まるように、2つのDNA断片が接続されることを意味するように意図される。
【0102】
VH領域をコードする単離DNAは、VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2、及びCH3)をコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、完全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、本技術分野において知られ、これらの領域を包含するDNA断片は標準的なPCR増幅によって取得され得る。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域であり得るが、好ましくは、IgG1又はIgG4定常領域であり得る。Fab断片重鎖遺伝子については、VHをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に作動可能に連結され得る。
【0103】
VL領域をコードする単離DNAは、VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、全長軽鎖遺伝子に変換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、本技術分野において知られ、これらの領域を包含するDNA断片は標準的なPCR増幅によって取得され得る。好ましい実施形態において、軽鎖定常領域は、κ又はλ定常領域であり得る。
【0104】
scFv遺伝子を生成するために、VH及びVLをコードするDNA断片が、フレキシブルリンカーをコードする別の断片に作動可能に連結され、それにより、VH及びVL配列は、VL及びVH領域がフレキシブルリンカーによって接続された連続的な単鎖タンパク質として発現され得る(例えば、Bird et al., (1988) Science 242:423-426; Huston et al., (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; McCafferty et al., (1990) Nature 348:552-554を参照されたい)。
【0105】
本開示のモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein (1975) Nature 256: 495において説明される体細胞ハイブリダイゼーション(ハイブリドーマ)技術を使用して調製され得る。モノクローナル抗体を調製するための他の実施形態は、ウイルス又は発癌物質媒介Bリンパ球変換、及びファージディスプレイ技術を含む。キメラ又はヒト化抗体は本技術分野において周知である。例えば、米国特許第4,816,567;5,225,539;5,530,101;5,585,089;5,693,762及び6,180,370号を参照されたい。
【0106】
開示の抗体はまた、本技術分野において周知のように、例えば、組み換えDNA技法及び遺伝子トランスフェクション方法(例えば、Morrison, S. (1985) Science 229:1202)の組み合わせを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマによって産生され得る。一実施形態において、標準的な分子生物学的技法によって取得される部分的又は完全長軽鎖及び重鎖をコードするDNAは、1又は複数の発現ベクターに挿入される。その結果、遺伝子は、転写及び翻訳制御配列に作動可能に連結される。この文脈において、「作動可能に連結される」という用語は、ベクター内の転写及び翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写及び翻訳を制御する意図される機能を担うように、抗体遺伝子がベクターにライゲーションされることを意味するように意図される。
【0107】
「制御配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー、及び、抗体遺伝子の転写又は翻訳を制御する他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。そのような制御配列は、例えば、Goeddelに記載される(Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990))。哺乳類宿主細胞発現のための好ましい制御配列は、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルスに由来するプロモーター及び/又はエンハンサー、例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)及びポリオーマウイルスエンハンサーなど、哺乳類細胞における高レベルのタンパク質発現を指示するウイルス要素を含む。代替的に、ユビキチンプロモーター又はβ-グロブリンプロモーターなどの非ウイルス制御配列が使用され得る。なお更に、制御要素は、SV40早期プロモーターからの配列及びヒトT細胞白血病1型ウイルスの長い末端反復配列を含む、SRαプロモーターシステムなどの、異なる供給源からの配列から構成される(Takebe et al., (1988) Mol. Cell. Biol. 8:466-472)。発現ベクター及び発現対照配列は、使用される発現宿主細胞に適合するように選択される。
【0108】
抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子は、同じ、又は別個の発現ベクターに挿入され得る。好ましい実施形態において、任意の抗体アイソタイプの完全長抗体遺伝子を作成するために可変領域が使用される。それらは、所望のアイソタイプの重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を既にコードしている発現ベクターに挿入される。その結果、VHセグメントは、ベクター内のCHセグメントに作動可能に連結され、VLセグメントは、ベクター内のCLセグメントに作動可能に連結される。追加的又は代替的に、組み換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームに連結されるように、ベクターにクローニングされ得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド、又は、異種混合のシグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質からのシグナルペプチド)であり得る。
【0109】
抗体鎖遺伝子及び制御配列に加えて、開示の組み換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を制御する配列(例えば、複製起点)及び選択可能マーカー遺伝子など、追加の配列を保有し得る。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、第4,634,665号及び第5,179,017号を参照)。例えば、選択可能マーカー遺伝子は典型的には、ベクターが導入された宿主細胞に対して、G418、ハイグロマイシン、又はメトトレキサートなどの薬剤に対する耐性を付与する。好ましい選択可能マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅と共に、dhfr宿主細胞において使用)及びneo遺伝子(G418選択用)を含む。
【0110】
軽鎖及び重鎖の発現のために、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターが、標準的な技法によって宿主細胞にトランスフェクトされる。「トランスフェクション」という用語の様々な形態は、外来性DNAを原核生物又は真核生物の宿主細胞に導入するために一般に使用される幅広い様々な技法、例えば、電気穿孔法、りん酸カルシウム沈殿、DEAEデキストラントランスフェクション及び同様のものを包含することが意図される。開示の抗体を原核生物又は真核生物のいずれの宿主細胞において発現することも理論的に可能であるが、真核細胞(哺乳類宿主細胞がもっとも好ましい)における抗体の発現がもっとも好ましい。なぜなら、そのような真核細胞、特に哺乳類細胞は、原核生物の細胞と比較して、適切に折り畳まれた、免疫活性抗体を組み立てて分泌する可能性が高いからである。
【0111】
本開示の組み換え抗体を発現させるための好ましい哺乳類宿主細胞は、Slc35C1ノックアウト細胞株、FUT8ノックアウト細胞株、Lec13細胞株(変異CHO細胞株)、ラット骨髄腫細胞株YB2/0、遺伝子fut8に特異的な小干渉RNAを含む細胞株、及び、β-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII及びゴルジα-マンノシダーゼIIを共発現する細胞株、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(Urlaub and Chasin, (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220において説明されるdhfr-CHO細胞を含み、例えば、R. J. Kaufman and P. A. Sharp (1982) J. Mol. Biol. 159:601-621において説明されるDHFR選択可能マーカーと共に使用される)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞、及びSP2細胞を含む。抗体遺伝子をコードする組み換え発現ベクターが哺乳類宿主細胞に導入されるとき、抗体は、宿主細胞における抗体の発現、又は、より好ましくは、宿主細胞が増殖する培養培地への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間にわたって宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、標準的なタンパク質精製方法を使用して培養培地から回収され得る。
【0112】
本開示の抗体又はその抗原結合部分は、治療剤とコンジュゲートされ、抗体薬コンジュゲート(ADC)などの免疫複合体を形成し得る。適切な治療剤としては、細胞毒素、アルキル化剤、DNA小溝結合剤、DNAインターカレーター、DNA架橋剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、核輸送阻害剤、プロテアソーム阻害薬、トポイソメラーゼI又はII阻害剤、熱ショックタンパク質阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗生物質及び有糸分裂阻害剤を含む。ADCにおいて、抗体と治療剤は、好ましくは、ペプチジルリンカー、ジスルフィドリンカー、又はヒドラゾンリンカーなどのような切断可能なリンカーを介してコンジュゲートされる。より好ましくは、リンカーは、Val-Cit、Ala-Val、Val-Ala-Val、Lys-Lys、Ala-Asn-Val、Val-Leu-Lys、Ala-Ala-Asn、Cit-Cit、Val-Lys、Lys、Cit、Ser又はGluなどのペプチジルリンカーである。ADCは、米国特許第7,087,600;6,989,452;及び7,129,261号;PCT公開WO02/096910;WO07/038,658;WO07/051,081;WO07/059,404;WO08/083,312;及びWO08/103,693;米国特許公開第20060024317;20060004081;及び20060247295号において説明されるように調製され得る。
【0113】
別の態様において、本開示は、少なくとも2つの異なる結合部位又は標的分子に結合する二重特異性分子を生成するために少なくとも1つの他の機能分子、例えば、別のペプチド又はタンパク質(例えば、別の抗体、又は受容体に対するリガンド)に連結された開示の1又は複数の抗体を含み得る二重特異性分子を特徴とする。したがって、本明細書において使用される場合、「二重特異性分子」は、3又はより多くの特異性を有する分子を含む。
【0114】
二重特異性分子には多くの異なるフォーマット及びサイズがあり得る。サイズの範囲の一端では、二重特異性分子は、従来の抗体フォーマットを保持するが、同一の特異性の2つの結合アームを有する代わりに、異なる特異性を各々が有する2つの結合アームを有する。他の極端な例は、2つの単鎖抗体断片(scFv)をペプチド鎖で連結した構造から成る二重特異性分子、いわゆるBs(scFv)2構造である。中サイズの二重特異性分子は、ペプチジルリンカーによって連結される2つの異なるF(ab)断片を含む。これらのフォーマット及び他のフォーマットの二重特異性分子は、遺伝子操作、体細胞ハイブリダイゼーション、又は化学的方法によって調製され得る。例えば、上記で引用されたKufer et al,;Cao and Suresh, Bioconjugate Chemistry, 9 (6), 635-644 (1998);及びvan Spriel et al., Immunology Today, 21 (8), 391-397 (2000)を参照されたい。
【0115】
本明細書において抗B7-H3 scFvを含むキメラ抗原受容体も提供され、抗B7-H3 scFvは、本明細書において説明されるCDR及び重/軽鎖可変領域を含む。
【0116】
抗B7-H3キメラ抗原受容体は、(a)抗B7-H3 scFvを含む細胞外抗原結合ドメイン;(b)膜貫通ドメイン;及び(c)細胞内シグナリングドメインを含み得る。
【0117】
腫瘍溶解性ウイルスは、癌細胞に優先的に感染して殺傷する。本開示の抗体又はその抗原結合部分は、腫瘍溶解性ウイルスと併せて使用され得る。代替的に、開示の抗体又はその抗原結合部分をコードする腫瘍溶解性ウイルスが人体に導入され得る。
【0118】
別の態様において、本開示は、薬学的に許容される担体と共に製剤化される、開示の1又は複数の抗体又はその抗原結合部分、抗体又は抗原結合部分をコードするベクター、免疫複合体、免疫細胞、二重特異性抗体、及び/又は腫瘍溶解性ウイルスを含む医薬組成物を提供する。組成物は任意選択的に、抗腫瘍抗体、又は、免疫増強のための抗体、又は、非抗体抗腫瘍剤又は免疫増強剤など、1又は複数の追加の薬学的活性成分を含み得る。本開示の医薬組成物は、例えば、抗腫瘍剤又は免疫増強のための薬剤と組み合わせて使用され得る。
【0119】
医薬組成物は任意の数の賦形剤を含み得る。使用できる賦形剤として、担体、表面活性剤、増粘剤又は乳化剤、固形結合剤、分散助剤又は懸濁助剤、可溶化剤、着色剤、着香剤、コーティング、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、保存料、等張剤、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい賦形剤の選択及び使用がGennaro, ed., Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed. (Lippincott Williams & Wilkins 2003)において教示される。
【0120】
医薬組成物は、好ましくは(例えば注射又は注入による)静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与に好適である。投与経路に応じて、活性成分を材料でコーティングして、酸の作用及びそれを不活性化し得る他の自然条件から保護することができる。本明細書において使用される場合、「非経口投与」という語句は、経腸投与及び局所投与以外の投与方法、通常は注射による投与方法を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、関節包下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内の注射及び注入を含むが、これらに限定されない。代替的に、本開示の抗体は、局所、表皮又は粘膜の投与経路などの非経口経路以外で、例えば、鼻腔内、経口、経膣、直腸、舌下又は局所的に投与することができる。
【0121】
医薬組成物は、無菌水溶液又は分散系の形態であり得る。また、それらはマイクロエマルション、リポソーム、又は、高い薬剤濃度に好適な他の規則構造で製剤化され得る。
【0122】
単回投与形態を生成するために担体物質と組み合わせることができる活性成分の量は、治療される対象、及び、特定の投与方法に応じて変動し、一般的に、治療効果を生じさせる組成物の量である。一般的に、この量は、100パーセントのうち、薬学的に許容される担体と組み合わせた活性成分の約0.01%~約99%の範囲に及ぶ。
【0123】
最適な所望の反応(例えば治療反応)を提供するように投与計画が調整される。例えば、単回ボーラスを投与でき、いくつかの分割された用量を経時的に投与でき、又は、治療状況の緊急事態による指示に応じて用量を比例的に低減又は増加させることができる。投与を容易にするために、及び、投与量を統一するために、単位用量形態で非経口組成物を製剤化することは特に有利である。本明細書において使用される単位用量形態とは、治療される対象のための単位投与量として好適な物理的に別個の単位を指す。各単位は、必要な医薬担体と組み合わせて所望の治療効果を生じさせるために算出された活性成分の予め定められた量を含む。代替的に、抗体は、徐放性の製剤として投与され得、その場合、必要な投与の頻度が少ない。
【0124】
抗体の投与については、投与量は、約0.001~100mg/kgの範囲であり得る。例示的な治療計画は、週あたり1回の投与を伴う。抗B7-H3投与の好ましい手段は静脈内投与を含む。
【0125】
本開示の抗B7-H3抗体の「治療的に有効な投与量」の結果として、疾患症状の重症度が減少し、疾患症状が無い期間の頻度及び長さが増加する。例えば、腫瘍を有する対象を治療する場合、「治療有効投与量」は好ましくは、未治療の対象と比較して、腫瘍増殖を少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらに好ましくは少なくとも約60%、なお更に好ましくは少なくとも約80%阻害する。有効量の治療抗体は、腫瘍の大きさを低減し、又は、対象の症状を軽減し得る。対象は、ヒト又は別の哺乳動物であり得る。
【0126】
医薬組成物は、インプラント及びマイクロカプセル化送達システムを含む徐放性製剤であり得る。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸など、生分解性、生体適合性ポリマーを使用できる。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0127】
医薬組成物は、(1)針なし皮下注射器(例えば、米国特許第5,399,163;5,383,851;5,312,335;5,064,413;4,941,880;4,790,824;及び4,596,556号);(2)マイクロ注入ポンプ(米国特許第4、487、603号);(3)経皮デバイス(米国特許第4、486、194号);(4)注入装置(米国特許第4,447,233及び4,447,224号);及び(5)浸透圧デバイス(米国特許第4,439,196及び4,475,196号)などの医療機器を介して投与され得、それらの開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0128】
特定の実施形態において、本開示の抗体は、インビボの適切な分配を確実にするために製剤化され得る。例えば、開示の治療抗体が血液脳関門を超えることを確実にするために、それらは、特定の細胞又は臓器への選択的輸送を強化する標的化部分を追加的に含み得るリポソームにおいて製剤化され得る。例えば、米国特許第4,522,811;5,374,548;5,416,016;及び5,399,331;V. V. Ranade (1989) J. Clin.Pharmacol.29:685;Umezawa et al., (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038;Bloeman et al., (1995) FEBS Lett.357:140;M. Owais et al., (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39:180;Briscoe et al., (1995) Am. J. Physiol. 1233:134;Schreier et al., (1994) J. Biol. Chem. 269:9090;Keinanen and Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346:123;及びKillion and Fidler (1994) Immunomethods 4:273を参照されたい。
【0129】
本開示の医薬組成物は、例えば癌治療、又はより一般的に、癌などの疾患を有する患者における免疫系の増強など、多くのインビトロ及びインビボの応用を有し得る。医薬組成物は、例えば、腫瘍増殖をインビボで阻害するために、ヒト対象に投与され得る。
【0130】
腫瘍細胞増殖及び生存を阻害する、開示の医薬組成物の能力を考慮すると、本願は、対象において腫瘍増殖が阻害されるように開示の医薬組成物を対象に投与する段階を備える、対象における腫瘍細胞増殖を阻害するための方法を提供する。本開示の抗体によって治療され得る腫瘍の非限定的な例は、原発又は転移性である、乳癌、黒色腫、前立腺癌、頭頚部扁平上皮癌、肺癌、非小細胞肺癌、中枢神経系神経芽細胞腫、神経膠芽腫、線維形成性小細胞腫瘍、びまん性橋膠腫、髄芽腫、膵臓癌、肝臓癌、結腸直腸癌、非ホジキンリンパ腫、食道癌、卵巣癌、膀胱癌、小細胞癌、子宮内膜癌、腎臓癌、胃癌、急性骨髄性白血病、肝細胞癌、下咽頭扁平上皮癌、尿路上皮細胞癌を含むが、これらに限定されない。難治性又は再発性の悪性腫瘍も、開示の医薬組成物によって治療され得る。開示の医薬組成物は、喘息などの自己免疫疾患も治療し得る。
【0131】
開示の医薬組成物は、例えば、NK細胞及びT細胞などの免疫細胞を活性化するべく、対象における免疫反応を増強するために使用され得る。
【0132】
本願は、開示の医薬組成物が、対象における腫瘍増殖を効果的に阻害し得る1又は複数の他の抗体又は非抗体治療剤と共に投与される併用療法を提供する。一実施形態において、本願は、対象における腫瘍増殖を阻害するための方法を提供し、当該方法は、開示の医薬組成物、及び、抗PD‐1抗体、抗PD‐L1抗体及び/又は抗4-1BB抗体などの1又は複数の他の抗体を対象に投与する段階を備える。特定の実施形態では、対象はヒトである。別の態様において、本願は、開示の医薬組成物が化学療法剤と共に投与される癌治療方法を提供し、ここで化学療法剤は細胞傷害性剤であり得る。開示の医薬組成物と組み合わされ得る他の療法は、免疫原の投与、インターロイキン2(IL-2)の投与、放射線治療、手術、又はホルモン除去を含むが、これらに限定されない。
【0133】
本明細書において説明される治療剤の組み合わせは、薬学的に許容される担体における単一の組成物として同時に投与され得るか、又は、薬学的に許容される担体における各薬剤と共に別個の組成物として同時に投与され得る。別の実施形態において、治療剤の組み合わせは、順次に投与され得る。
【0134】
更に、併用療法の1より多くの用量が順次に投与される場合、順次投与の順序は、投与の各時点において、逆になり得、又は、同じ順序に維持され得、順次の投与は、同時の投与、又は、それらの任意の組み合わせと組み合わされ得る。
【0135】
本開示は以下の例において更に図示されるが、これは、更なる限定として解釈されるべきでない。本願を通して引用される図及びすべての参考文献、Genbank配列、特許及び特許出願公開は、参照によって全体として本明細書に明示的に組み込まれる。
例
実施例1
抗ヒトB7-H3モノクローナル抗体の生成
【0136】
抗ヒトB7-H3抗体を生成するために、組み換えヒトB7-H3(4Ig)タンパク質(Hisタグを有するヒトB7-H3(4Ig)/B7-H3bタンパク質、Cat#:B7B-H52E7、ACROBiosystems)及び/又は組み換えヒトB7-H3(2Ig)タンパク質(Hisタグ(MALS認証)を有するヒトB7-H3/CD276タンパク質、Cat#:B73-H52E2、ACROBiosystems)を用いて、B7-H3RenMab KOマウスが免疫化された。RenMabマウスは、ヒト化免疫グロブリン重鎖の遺伝子座、及び、ヒト化免疫グロブリンκ鎖の遺伝子座を含む。免疫グロブリン重鎖の遺伝子座は、抗体重鎖をコードする遺伝子を有する領域を含み、この遺伝子座は、IGHV(可変)、IGHD(多様性)、IGHJ(接続)及び重鎖定常領域の遺伝子を含む。免疫グロブリンκ鎖の遺伝子座は、抗体軽鎖(κ鎖)をコードする遺伝子を含む。免疫グロブリンκ鎖の遺伝子座は、IGKV(可変)、IGKJ(接続)及び軽鎖定常領域の遺伝子を含む。RenMabマウスの詳細な説明は、参照によって全体として本明細書に組み込まれるPCT/CN2020/075698において見ることができる。B7-H3RenMab KOマウスは、RenMabマウスのB7-H3遺伝子をノックアウトすることによって取得され、機能性B7-H3タンパク質を発現しなかった。
マウス免疫化
【0137】
組み換えヒトB7-H3(4Ig)タンパク質を使用して、B7-H3RenMab KOマウスにおいて免疫化が4回実行された。タンパク質は、1:1のv/v比でアジュバントと混合され、次に乳化された。各動物は、踵及び頚部に注射された。第1の免疫化に使用されたアジュバントは、完全フロイントアジュバント(CFA)であり、第2から第4の免疫化のアジュバントは、不完全フロイントアジュバント(IFA)であった。2つの注射は、少なくとも14日間の間隔を空ける必要がある。
【0138】
並行に実行された別の試験において、免疫化は代替的に、組み換えヒトB7-H3(4Ig)タンパク質及び組み換えヒトB7-H3(2Ig)タンパク質を使用して行われた。タンパク質及びアジュバントは、1:1のv/v比で混合され、次に乳化された。各動物は、踵及び頚部に注射された。第1の免疫化に使用されたアジュバントは、完全フロイントアジュバント(CFA)であり、第2から第4の免疫化のアジュバントは、不完全フロイントアジュバント(IFA)であった。2つの注射は、少なくとも14日間の間隔を空ける必要がある。
【0139】
末梢血(血清)が採取され、蛍光活性化細胞選別(FACS)又はELISAによって抗体価が測定された。
【0140】
最後のブースト免疫化は、B7-H3(4Ig)タンパク質の腹腔内注射、及び、B7-H3抗原の表面上で発現するCHO細胞の尾静脈注射により、第4の免疫化の少なくとも14日後に行われた。
抗体発見
【0141】
最後の免疫化の4日後、マウスが屠殺された。抗原に対して陽性のB細胞が、マウス内から直接単離され、単一細胞選別(Beacon(登録商標)Optofluidic System, Berkeley Lights Inc.)にかけられ、抗原特異的モノクローナル抗体を分泌する形質細胞が取得された。抗体可変領域配列は、逆転写及びPCRによって取得され、抗体の重/軽鎖可変領域は、ヒトIgG定常領域及びヒトκ定常領域をコードするベクターにクローニングされて抗体を発現し、B7-H3に対するそれらの結合特異性がFACSによって試験された。取得された例示的な完全ヒト抗体は、6B5、10D7、10F5、10F7及び15F11を含み、重鎖及び軽鎖可変領域及びCDR配列及び配列番号は表1及び表9に記載される。
抗体の構築、発現及び精製
【0142】
可変領域及びヒトIgG1/κ定常領域(配列番号:43及び45においてそれぞれ記載される重鎖定常領域及び軽鎖定常領域のアミノ酸配列)をコードする断片が、pCDNA3.1(Invitrogen、米国)における制限部位XhoI/BamHIの間に挿入されて、抗体発現ベクターが構築された。
【0143】
上のように取得される発現ベクターは、PEIでHEK-293F細胞(Cobioer、中国)をトランスフェクトするために使用された。特に、HEK-293F細胞は、Free Style(登録商標)293発現培地(Cat#:12338-018、Gibco、米国)において培養され、各発現ベクターは、ポリエチレンイミン(PEI)を用いて細胞にトランスフェクトされ、DNAとPEIの比は、1:3であり、ここで、DNAの量は、細胞培養培地ミリリットルあたり1.5μgであった。トランスフェクション後のHEK-293F細胞は、37℃、5%CO2のインキュベーターシェーカーにおいて120rpmで培養された。細胞培養上清は、10~12日後に採取され、3500rpmで5分間遠心分離され、細胞の破片を除去するために0.22μmの膜でろ過された。モノクローナル抗体は、事前に平衡化したタンパク質A親和性カラム(Cat#:17040501、GE、米国)を通過することによって濃縮及び精製され、溶出バッファ(20mMクエン酸、pH3.0~pH3.5)を使用して溶出された。その後、抗体はPBS(pH7.0)内に保存され、NanoDrop分光光度計において抗体濃度を測定された。
実施例2
完全ヒト抗B7-H3抗体の親和性測定
【0144】
完全ヒト抗ヒトB7-H3抗体は、事前に固定されたタンパク質Aセンサーチップを提供されたBiacore T200バイオセンサー(Biacore、米国)を使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)によって、ヒトB7-H3(4Ig)、ヒトB7-H3(2Ig)、サルB7-H3(サルB7-H3/CD276タンパク質、Hisタグ付き、Cat#:B73-C52Ha、ACROBiosystems)及びマウスB7-H3タンパク質(マウスB7-H3/CD276タンパク質、Hisタグ付き、Cat#:B73-M52H4、ACROBiosystems)に対する結合親和性を試験された。簡潔に説明すると、抗ヒトB7-H3抗体(1μg/mL)は、10μL/分で、20秒間にわたってBiacore T200バイオセンサーに注入され、所望のタンパク質密度(100±30RU)を達成した。次に、抗原タンパク質は、200nM、100nM、50nM、25nM、12.5nM、6.25nM、3.125nM、1.5625nM、0.78125nM、及び0nMの濃度で、30μL/分で、180秒間にわたって注入され、600秒間にわたって解離が監視された。エノブリツズマブ、MacroGenicsによって開発された、Fc最適化を伴うヒト化抗B7-H3抗体(抗体配列についてはUS8802091B2を参照されたい、重鎖及び軽鎖可変領域配列は、配列番号:39及び40にそれぞれ記載され、重鎖定常領域は、ADCCを増強するための5つの点変異、F243L/R292P/Y300L/L235V/P396Lを伴うIgG1定常領域であり、軽鎖定常領域は、配列番号:44及び45にそれぞれ記載される配列を伴うκ定常領域である)がポジティブコントロールとして使用された。
【0145】
生成されたデータは、1対1のラングミュア結合モデルを用いて、Biacore Insight V2.0.1 5.12933を使用して解析された。会合速度(kon)及び解離速度(koff)が同時に取得された。親和性は、2つの運動速度定数(KD=koff/kon)の商として計算された。
【0146】
開示の抗体はすべて、ヒトB7-H3の2つのスプライシングバリアントに、及び、サルB7-H3タンパク質にも結合した。抗体6B5及び15F11はまた、マウスB7-H3タンパク質に結合した。開示の代表的抗体の親和性試験結果は、表2及び表3に示される。
表2
ヒトB7-H3(4Ig)及びヒトB7-H3(2Ig)に対する抗B7-H3抗体の結合親和性
【表3】
表3
サルB7-H3及びマウスB7-H3に対する抗B7-H3抗体の結合親和性
【表4】
実施例3
B7-H3
+腫瘍細胞、B7-H3
-腫瘍細胞、及びB7-H3
+正常細胞に対する完全ヒト抗B7-H3抗体の結合活性
【0147】
異なる種類のB7-H3+腫瘍細胞、B7-H3-腫瘍細胞、及びB7-H3+正常細胞に対する、開示の完全ヒト抗B7-H3抗体の結合活性を決定するために、A549細胞(Cat#:CBP60084、COBIOER)、NCI-H520細胞(Cat#:CBP60139、COBIOER)、HepG2細胞(Cat#:CBP60199、COBIOER)、SK-OV-3細胞(Cat#:CBP60291、COBIOER)、及びMCF-7細胞(Cat#:CL-0149,ProCell)を代表的なB7-H3+腫瘍細胞として、ジャーカット細胞(Cat#:CBP60520、COBIOER)、ダウディ細胞(Cat#:CBP60262、COBIOER)、及びラージ細胞(Cat#:CBP60272、COBIOER)を代表的なB7-H3-腫瘍細胞として(文献によれば、これらの3つの細胞はB7-H3 mRNA陰性である)、及び、ヒト前立腺平滑筋細胞(Cat#:CC-2587,Lonza)、ヒト皮膚線維芽細胞(Cat#: CC-2511,Lonza)、ヒト大動脈平滑筋細胞(Cat#:H-6080,Cell Biologics)、及びヒト樹状細胞(ヒトPBMC由来)を代表的な正常細胞として使用して、FACSが実行された。
【0148】
A549細胞、NCI-H520細胞、ジャーカット細胞、ダウディ細胞及びラージ細胞は、10%FBS(Cat#:FND500、Excell)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Cat#、SV30010、Hyclone)を添加されたRPMI1640培地(Cat#: 12-115F、Lonza)において培養された。HepG2細胞及びSK-OV-3細胞はそれぞれ、MEM培地(Cat#:12561-056、Gibco)及びマッコイ5A培地(Cat#:16600-082、Hyclone)において培養され、両方とも10%FBS(Cat#:FND500、Excell)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Cat#:SV30010、Hyclone)を添加された。MCF-7細胞は、MCF7細胞専用培地(Cat#:CM-0149、ProCell)において培養され、ヒト前立腺平滑筋細胞は、マニュアルに従ってSmGM(登録商標)-2平滑筋細胞増殖培地BulletKit(登録商標)(Cat#:CC-3182、Lonza)において培養された。ヒト皮膚線維芽細胞は、マニュアルに従ってFGM(登録商標)-2線維芽細胞増殖培地BulletKit(登録商標)(Cat#:CC-3132、Lonza)において培養され、ヒト大動脈平滑筋細胞は、マニュアルに従って完全平滑筋細胞培地(Cat#:M2268、Cell Biologics)において培養された。
【0149】
ヒト樹状細胞は、PBMCを単離し、続いてインビトロ誘導することによって取得された。簡潔に説明すると、PBMC(Cat#:PB004F-C、ALLCELLS)は、RPMI1640培地において再懸濁され、37℃のインキュベーターで2時間にわたってインキュベートされた。壁に接着した細胞、すなわち、単離された単球は採取された。単球は、100ng/mlの組換えヒトGM-CSF(Cat#:7954-GM、R&D)、100ng/mlの組換えヒトIL-4(Cat#:6507-IL、R&D)及び10%FBSを添加されたRPMI1640培地において培養された。3日後、培養培地の半分は新鮮なもので置換された。培養の6日目に、培養培地は、100ng/mlの組換えヒトGM-CSF、100ng/mlの組換えヒトIL-4、10ng/mlのrhTNF-α(Cat#:210-TA-100、R&D)、1000U/mlのrhIL-6(Cat#:7270-IL-025、R&D)、1μg/mlのPEG2(Cat#:363-24-6、TOCRIS)及び10ng/mlのIL-1β(Cat#:210-LB-025、R&D)を含む培地で置換された。細胞を更に2日間インキュベートした後に、成熟ヒト樹状細胞が取得された。
【0150】
上の細胞に対する抗B7-H3抗体の結合活性が試験された。簡潔に説明すると、100μl培養培地における10
5の細胞が96ウェルプレート上に蒔かれ、50μlの連続希釈抗B7-H3抗体を添加された。4℃で1時間インキュベートした後、96ウェルプレートは、PBSTを用いて3回洗浄された。次に、プレートには、1:500で希釈したPE-ヤギ-抗マウスIgG(Cat#:PA1-86078、Invitrogen)が添加された。4℃で1時間インキュベートした後、96ウェルプレートは、PBSを用いて3回洗浄され、次に、FACSマシン(BD)を使用して細胞蛍光測定にかけた。エノブリツズマブがポジティブコントロールとして使用された。開示の代表的な抗B7-H3抗体の試験結果が
図1~
図3に示される。
【0151】
図1に示されるように、6B5及び10D7は、様々な種類のB7-H3
+腫瘍細胞に結合し、両方の結合活性は、エノブリツズマブより有意に高い。B7-H3 mRNA
-腫瘍細胞に対する6B5又は10D7の結合はほぼ無かったこと、及び、結合活性はエノブリツズマブより有意に低いことが
図2から分かる。これらはすべて、開示の抗体がより良好なB7-H3結合特異性を有することを示唆する。
図3に示されるように、複数の正常なヒトB7-H3
+細胞に対する6B5の結合能力は、エノブリツズマブよりわずかに高く、一方、10D7の結合活性はエノブリツズマブと同等であった。
実施例4
Fc操作は、B7-H3
+細胞に対する完全ヒト抗B7-H3抗体の結合に影響を与えなかった
【0152】
10D7及び6B5の重鎖/軽鎖可変領域並びにヒトIgG1/κ定常領域(配列番号:43及び45)をコードする断片は、pCDNA3.1(Invitrogen、米国)にクローニングされ、CHO-K1細胞及びslc35c1ノックアウトCHO-K1-AF細胞にトランスフェクトされた発現ベクターが構築された。slc35c1ノックアウトCHO-K1-AF細胞は、Beijing MabWorks Biotech Inc.,によって生成され、詳細な生成方法は、US10377833B2において見ることができ、そのような細胞株によって発現されるタンパク質は基本的に、フコシル化を有しない。10D7及び6B5は、CHO-K1及びCHO-K1-AF細胞において一時的に発現され、精製され、取得された抗体は、10D7-WT、6B5-WT、10D7-AF(アフコシル化)及び6B5-AF(アフコシル化)として指定された。一方、10D7及び6B5の重鎖/軽鎖可変領域、並びに、5点変異ヒトIgG1 Fc/κ定常領域(配列番号:44(EUナンバリングによるL235V、F243L、R292P、Y300L及びP396L)及び45)をコードする断片がpCDNA3.1にクローニングされ、一時的な発現のためにCHO-K1細胞にトランスフェクトされた発現ベクターが構築され、取得された抗体は、10D7-Mut及び6B5-Mutとして指定された。Fc領域における点変異及びアフコシル化はADCCを増強するために使用された。抗体発現及び精製は、実施例1のプロトコルに従って実行された。
【0153】
これらの抗B7-H3抗体は、FACSによって、ヒトB7-H3を発現するHUVEC細胞(Cat#:C-12200、PromoCell、ドイツ)及びNCI-H520細胞に対する結合能力について試験された。HUVEC細胞は、EGM(登録商標)-2内皮細胞増殖培地-2BulletKit(登録商標)(Cat#:CC-3162、Lonza)において培養され、マニュアルに従って継代培養した。NCI-H520細胞培養及びFACS試験の詳細については実施例3を参照されたい。
【0154】
図4に示されるように、Fc領域における変化、アフコシル化又は点変異は、B7-H3
+細胞に対する抗B7-H3抗体の結合に影響を与えない。10D7-AF、10D7-WT、及び10D7-Mutは、HUVEC(B)及びNCI-H520細胞(D)に対する完全に同一の結合活性を示し、6B5-AF、6B5-WT、及び6B5-Mutは、HUVEC(A)及びNCI-H520細胞(C)に対してほぼ同一の結合活性を示した。
実施例5
ADCCを誘導し免疫細胞を活性化する完全ヒト抗B7-H3抗体の活性
【0155】
開示の抗B7-H3抗体は更に、B7-H3+NCI-H520腫瘍細胞、B7-H3+ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)及び成熟樹状細胞(DC)に対する抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を誘導する、及び、NK細胞及びPBMCを活性化する能力について試験され、ここで、樹状細胞は、単離されたPBMCから誘導され、分化され、成熟された(実施例3における詳細を参照されたい)。
【0156】
簡潔に説明すると、NCI-520細胞、HUVEC細胞及びDCは、1.0×106/mlの細胞密度で完全RPMI培地に再懸濁された。細胞はカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、Cat#;C34554I、Invitrogen)によって標識された。具体的には、細胞は、2.5μMのCFSEと共に、37℃で10分間インキュベートされた。標識後、細胞は完全RPMI培地(RPMI+10%FBS)に再懸濁された。NCI-H520細胞、HUVEC細胞、DC及びNK92MI-CD16a(エフェクター細胞、Huabo Bio)は、1200rpmで5分間にわたって遠心分離された。これらの細胞は、ADCC試験培地(MEM培地、Cat#:12561-056、Gibco;1%FBS、Cat#:FND500、EX細胞;1%BSA、Cat#:V900933-1KG、 VETEC)に懸濁され、細胞生存率は、細胞カウント結果によれば約90%であった。4×105/mlの細胞密度である50μlの標的細胞(NCI-H520細胞、HUVEC細胞又はDC)及び2×106/mlの細胞密度である50μlのNK92MI-CD16a細胞は、96ウェルプレートの各ウェルに添加され、エフェクターと標的の比は5:1であった。試験される抗体は、異なる濃度で各ウェルに添加され、開始最終濃度は50000ng/mlであり、他の最終濃度は5倍希釈され、合計で10の濃度になった。96ウェルプレートは、37℃で4時間インキュベートされ、プレート上の細胞は、PBSで3回洗浄され、次に、LIVE/DEAD固定可能死細胞染色を用いて37℃で30分間にわたってインキュベートされた。プレート上の細胞は、PBSを用いて3回洗浄され、2μlのPEマウス抗ヒトCD69抗体(Cat#: 555531、BD)を添加された。常温で30分間インキュベートした後に、プレートは遠心分離され、PBSを用いて3回洗浄され、FACSにかけられた。CFSE+細胞(NCI-H520細胞、HUVEC細胞又はDC)の細胞死率が決定され、CFSE-細胞(NK92MI-CD16a細胞)の平均PE染色蛍光強度が計算された。エノブリツズマブがポジティブコントロールとして使用された。
【0157】
抗B7-H3抗体は更に、NCI-H520細胞及びHUVEC細胞に対するヒトPBMC媒介ADCCを誘導する能力について試験され、ここで、NCI-H520細胞及びHUVEC細胞は、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、Cat#:C34554I、Invitrogen)を使用して標識された。ヒトPBMCは、リンパ球分離培地を使用して、密度勾配遠心分離によって取得され、培地(RIPM1640+10%FBS+300IU IL-2)において一晩培養された。ADCC試験は、LIVE/DEAD固定可能死細胞染色キット(Thermo Fisher、米国、Cat#:L34964)を使用して実行された。標的細胞及びエフェクター細胞(PBMC)は、1200rpmで5分間にわたって遠心分離された。細胞はADCC試験培地(RIPM1640培地+1%FBS)に再懸濁され、細胞生存率は、細胞カウント結果によれば約90%であった。4×10
5/mlの細胞密度である50μlの標的細胞、及び、4×10
6/mlの細胞密度である50μlのPBMCが96ウェルプレートの各ウェルに添加され、エフェクター:標的の比は10:1である。試験される抗体は各ウェルに添加され、開始最終濃度は50000ng/mlであり、他の最終濃度は5倍希釈され、合計で10の濃度になった。96ウェルプレートは、37℃で24時間インキュベートされ、各ウェルからの上清は採取されて、製造元のマニュアルに従ってELISA(Cat#:SIF50、R&D)によってIFN-γ濃度を測定された。プレート上の細胞は、PBSを用いて3回洗浄され、LIVE/DEAD固定可能死細胞染色を用いて、37℃で30分間インキュベートされた。細胞は、PBSを用いて3回洗浄され、FACS試験にかけられた。CFSE
+細胞(NCI-H520細胞又はHUVEC細胞)の細胞死率が決定された。エノブリツズマブがポジティブコントロールとして使用された。試験結果を
図5~8に示す。
【0158】
図5に示されるように、10D7-AF及び10D7-Mutは、NCI-H520腫瘍細胞に対するNK92媒介ADCCを誘導する能力が、10D7-WTより有意に高く、それらの能力はまた、エノブリツズマブ、ポジティブコントロールより高く(A);10D7-AFは、NK細胞表面上に、より高いレベルの活性化マーカーCD69を誘導するので、10D7-Mutより高いNK細胞活性化能力を示す(C)。同様に、ADCCを誘導する6B5-AF及び6B5-Mutの能力は、6B5-WTより有意に高く、また、エノブリツズマブ、ポジティブコントロールより高く(B);加えて、6B5-AFは、より高いレベルのCD69を誘導するので、6B5-Mutより高いNK細胞活性化能力を示した(D)。加えて、ポジティブコントロールであるエノブリツズマブは、高用量において、NK92媒介NCI-H520殺傷の誘導において、明白なフック効果を示した。すなわち、抗体濃度が、指定された値に達した後に増加したとき、検出された殺傷効果は減少した。この効果は10D7又は6B5において観察されなかった。
【0159】
図6に示すように、PBMC媒介NCI-H520腫瘍細胞死を誘導する10D7-AF及び10D7-Mutの能力は、10D7-WTより有意に高く、また、ポジティブコントロールエノブリツズマブより高い(A)。そのような傾向はまた、ADCC誘導において6B5について観察され、すなわち、NCI-H520腫瘍細胞に対する6B5-AF及び6B5-Mutによって誘導されるADCCは、6B5-WTより強力であり、また、ポジティブコントロールエノブリツズマブより強力である(B)。同様に、ポジティブコントロールであるエノブリツズマブは、高い用量において、PBMC媒介NCI-H520死の誘導における明白なフック効果を示した。この効果は10D7又は6B5において観察されなかった。
【0160】
図7に示されるように、NK92媒介HUVEC細胞死を誘導する6B5-AF及び10D7-AFの能力は、エノブリツズマブ、ポジティブコントロールよりいくらか高く(A)、一方、エフェクター細胞としてPBMCを伴う反応系において、6B5-AF、10D7-AF及びエノブリツズマブのいずれも、明白なHUVEC細胞死(B)又は明白なIFN-γ放出(C)を誘導しなかった。
【0161】
図8に示されるように、NK92細胞によるDC殺傷を誘導する6B5-AF及び10D7-AFの能力は、ポジティブコントロールであるエノブリツズマブと同等であった又はより低かった。
実施例6
完全ヒト抗B7-H3抗体の取り込み
【0162】
開示の抗B7-H3抗体が細胞に取り込まれ得るかどうかを試験するために、A549細胞及びNCI-H520細胞が取り込みに使用され、エノブリツズマブ-IgG1-Mut及びオムブルタマブ-IgG1がポジティブコントロールとして使用された。オムブルタマブは、Y-mAbs Therapeuticsによって開発された放射線ヨウ素標識抗ヒトB7-H3モノクローナル抗体であり、オムブルタマブ-IgG1は、配列番号:41及び42の重鎖及び軽鎖可変領域を含み、重鎖定常領域は野性型IgG1であり、軽鎖定常領域はκ定常領域であり、配列番号:43及び45のアミノ酸配列をそれぞれ含む。
【0163】
試験される抗ヒトB7-H3抗体は、pHAb標識ヤギ抗ヒトIgG1 Fc(Cat#:SSA015、Sino Biological、pHAbにより標識)と1:1の濃度比で均一に混合された。この混合物は、10000のA549細胞と均一に混合され、抗B7-H3抗体及び二 次抗体の両方の最終濃度は25μg/mLであり、ヒトIgG1タンパク質は、ブランクコントロールウェルにおいて使用された。混合物は、暗所の氷上で1時間インキュベートされ、事前に冷却されたFACSバッファ(90%DMEM+10%FBS)を使用して遠心分離を用いて3回洗浄され(上清は破棄され)、事前に加熱された完全培養培地を添加されて37℃の5%CO2インキュベーターにおいて共にインキュベートされた。細胞培養物は、0、3、6及び9時間の時点で採取され、暗所の氷上で保存された。すべての試料が採取された後に、それらは上清を破棄するために低温、1200rpmで3分間遠心分離され、PBSバッファを添加されて1回洗浄された。細胞表面からの蛍光シグナルが読み取られた。異なる抗体と共にインキュベートされる細胞について、フローサイトメトリーから生データが採取され、細胞表面B7-H3に結合することによって異なる抗体が取り込まれた細胞から放出される蛍光のMFIが、生データに基づいて解析及び決定された。MFI曲線が、取り込まれた抗B7-H3抗体の量に基づいてプロットされた。
【0164】
上のプロトコルに続いて、抗ヒトB7-H3抗体の取り込みはまた、NCI-H520細胞を使用して試験された。
【0165】
その結果を
図9に示す。全体試験中に、細胞のみ、細胞及び二 次抗体のみ、又は、細胞、二 次抗体及びヒトIgG1タンパク質のみがインキュベートされた場合、取り込みは発生しなかったが、細胞が6B5、10D7、10F5、10F7、エノブリツズマブ又はオムブルタマブ-IgG1と共にインキュベートされるとき、時間と共にMFIは増加する傾向があった。特に、明白なMFIの上昇が10D7、10F7、及びオムブルタマブ-IgG1について観察された。データは、6B5、10D7、10F5、10F7、エノブリツズマブ及びオムブルタマブ-IgG1がすべて、NCI-H520及びA549細胞によって取り込まれることが可能であることを示し、ここで、10D7、10F7及びオムブルタマブ-IgG1は、比較的高い取り込み速度で取り込まれた。
実施例7
完全ヒト抗B7-H3抗体が結合するエピトープの解析
【0166】
抗ヒトB7-H3抗体が結合するエピトープ間の関係を決定するべく、直列方式で表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して、他の抗体の抗原結合に対する各抗ヒトB7-H3抗体の阻害効果が試験された。合計で4つの抗ヒトB7-H3抗体、すなわち、6B5(「Ab6B5」)、10D7(「Ab10D7」)、10F5(「Ab10F5」)及びエノブリツズマブ(簡潔に「AbEno」と呼ばれる)が試験された。
【0167】
HBS-EP+バッファ(10mM 4-(2-ヒドロエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、150mM NaCl、3mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、及び0.05%P20、pH7.4)が泳動用のバッファとして使用された。抗His抗体は、シリーズSセンサーチップCM5の表面にアミン結合され、抗Hisチップが生成された。次に、チップ表面上に残った活性カルボキシル基をブロックするために、1Mエタノールアミン(pH8.5)が注入され、チップはHBS-EP+バッファで2時間にわたって平衡化された。Hisタグを有する組み換えヒトB7-H3(4Ig)タンパク質(Cat#:B7B-H52E7、Acrobiosystems)が、30μL/分の速度で50秒間にわたってBiacore8Kバイオセンサーに注入され、タンパク質密度が約50RUに達するように抗Hisチップによって捕捉された。
【0168】
一対の抗体(両方とも800nMの濃度)が、30μL/分の速度のオーダーでチップに注入された。第1の注入された抗体(解析物1)についての結合時間は300秒であり、第2の注入された抗体(解析物2)についての結合時間は、300秒であった。各解析サイクル中に、チップは、抗体注入の後にグリシンバッファ(pH1.7、30μL/分、30秒)を使用することによって、2回再生された。同一の試験のステップが各対のモノクローナル抗体について実行され、別の抗体の抗原結合に対する各モノクローナル抗体の阻害効果が取得された。各抗体の結合値は、Biacore Insightを使用して取得された。1つの抗体が別の抗体の抗原結合にどのように干渉するかを定量化するべく、運動速度を決定して各対の抗体を比較した。統計ソフトウェアを使用してクラスター解析が実行された。
【0169】
図10に示すように、4つの抗ヒトB7-H3抗体は3つのエピトープクラスターに分類された。特に、6B5(Ab6B5)及び10F5(Ab10F5)は同一のエピトープに結合し得る、又は、それらのエピトープは重複し得る;10D7(Ab10D7)は固有のエピトープに結合する;6B5(Ab6B5)、10F5(Ab10F5)及び10D7(Ab10D7)が結合するエピトープ、及び、エノブリツズマブ(AbEno)が結合するエピトープは、重複し得る又は異なり得る。
実施例8
B7ファミリータンパク質に対する抗ヒトB7-H3抗体の結合
【0170】
抗ヒトB7-H3抗体は、事前に固定されたタンパク質Aセンサーチップが提供されているBiacore T200バイオセンサー(Biacore、米国)を使用して、SPRによってB7ファミリータンパク質に対する結合能力を試験された。
【0171】
特に、チップは、10μL/分の流量で1μg/mL抗ヒトB7-H3抗体を捕捉し、180秒間にわたって30μL/分で、200nM、100nM、50nM、25nM、12.5nM、6.25nM、又は0nMの組み換えヒトCD80タンパク質(ヒトB7-1/CD80タンパク質、Hisタグ付き、Cat#:Cat#:B71-H5228、Acrobiosystems)、CD86(ヒトB7-2/CD86タンパク質、Hisタグ付き、Cat#:CD6-H5223、Acrobiosystems)、PDL2(ヒトPD-L2/B7-DCタンパク質、Hisタグ付き、Cat#:PD2-H5220、Acrobiosystems)、PDL1(ヒトPD-L1/B7-H1タンパク質、Hisタグ付き、Cat#:PD1-H5229、Acrobiosystems)、B7-H2(ヒトB7-H2/ICOSLGタンパク質、Hisタグ付き、Cat#:B72-H5221、Acrobiosystems)、B7-H3(4Ig)(Cat#:B7B-H52E7、Acrobiosystems)、B7-H4(ヒトB7-H4タンパク質、Hisタグ付き(MALS認証)、Cat#:BH7-HM174、Kactus Biosystems)、B7-H5(ヒトB7-H5/Gi24/VISTAタンパク質、Hisタグ付き(MALS認証)、Cat#:B75-H52H0、Acrobiosystems)、B7-H6(ヒトB7-H6/NCR3LG1タンパク質、Hisタグ付き、Cat#:B71-H5228、Acrobiosystems)、及びB7-H7(ヒトB7-H7/HHLA2タンパク質、Hisタグ付き(MALS認証)、Cat#:B77-H52H5、Acrobiosystems)をそれぞれ注入された。解離は600秒間にわたって監視された。Biacore8k評価ソフトウェアバージョン3.0を使用してデータが解析されて結合応答が取得され、タンパク質濃度-結合応答曲線がプロットされ、B7ファミリータンパク質に対する抗ヒトB7-H3抗体の交差反応が決定された。
【0172】
結果を表4にまとめた。エノブリツズマブと同様に、抗体6B5、10D7及び10F5は、組み換えヒトCD80、CD86、PDL2、PDL1、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H5、B7-H6又はB7-H7タンパク質に結合しなかったが、組み換えヒトB7-H3タンパク質に特異的に結合した。組換えヒトタンパク質に対する6B5の結合の結果が
図11に示される。200nMにおける組換えヒトタンパク質に対する各抗体の結合応答が、下の表4にまとめられている。
表4
B7ファミリータンパク質に対する完全ヒト抗B7-H3抗体の結合
【表5】
実施例9
完全ヒト抗B7-H3抗体のインビボ抗癌作用
【0173】
抗体6B5、10D7、10F5及びポジティブコントロールであるエノブリツズマブのインビボ抗腫瘍活性が試験された。抗体可変領域の生物学的効果をより良く示すために、すべての抗体は、5点変異(EUナンバリングによれば、L235V、F243L、R292P、Y300L、及びP396L、配列番号:44)が導入されたFc領域としてヒトIgG1を選択し、ADCCを増強した。
【0174】
第1の実験において、ヒトB7-H3遺伝子(Cat#: 110028、Biocytogen)を有するマウスは、腹部の片側に、ヒトB7-H3タンパク質を過剰発現する2×105EL4細胞を皮下注射された。腫瘍が90~120mm3に達したとき、マウスは無作為に3つの群に割り当てられ(n=8/群)、10mg/kgの用量で、週に2回、PBS(G1)、エノブリツズマブ(G2)、及び10F5-Mut(G3)をそれぞれ腹腔内注射され、合計で6回投与された。グループ化した日を0日目と指定し、この日に投与が開始した。
【0175】
別の実験において、腫瘍が90~120mm3に成長したとき、B7-H3ヒト化マウスは、4つの群(n=8/群)に無作為に割り当てられ、上と同一の用量及び同一の投与頻度で、PBS(G1)、エノブリツズマブ(G2)、6B5-Mut(G3)、及び15F11-Mut(G4)でそれぞれ腹腔内注射された。グループ化した日を0日目と指定し、この日に投与が開始した。
【0176】
試験中にマウスの体重が測定された。腫瘍の大きさは週に2回測定され、腫瘍の大きさは、V=(長さ×幅2)/2として計算された。腫瘍増殖阻害は、TGI(%)=[1-(Ti-T0)/(Vi-V0)]×100として計算され、ここで、Tiは、i日目における処置群の平均の腫瘍体積を指し、T0は、0日目の当該処置群の平均の腫瘍体積であり、Viは、i日目の対照群の平均の腫瘍体積であり、V0は、0日目の対照群の平均の腫瘍体積である。
【0177】
全体試験中に、動物の各群は、良好な健康状態で生存した。対照群と比較して、処置群のマウスは、明白な体重の変化を示さなかった(P>0.05)。特に、各群の平均体重は、グループ化が行われた0日目に19.3~19.5であり、平均体重は、試験が終了したとき(第1の実験ではグループ化後の17日目、及び、第2の実験ではグループ化後の20日目)、19.8~20.9であったので、体重変化は、103.2%から111.1%の間であった。結果は、試験された抗ヒトB7-H3抗体が、マウスによる良好な忍容性を示し、すなわち、すべての抗体は、マウスに対して非毒性であったことを示した。
【0178】
図12は、各群からのマウスの腫瘍の大きさの変化を示す。対照群と比較して、すべての抗ヒトB7-H3抗体は、腫瘍増殖をある程度遅くした又は阻害したことが分かる。特に、10F5-Mut(A)、6B5-Mut及び15F11-Mut(B)は、ポジティブコントロールであるエノブリツズマブより高い抗腫瘍効果を示した。
【0179】
グループ化した日、及び、グループ化後の7又は14日目の腫瘍の大きさ、実験の終了時の腫瘍の体積、マウス生存率、腫瘍(体積)阻害率(TGI
TV%)、及び、処置群及び対照群の間の統計学的有意差(P値)を含む、主なデータ及び解析結果は、表5及び表6に記載されている。データは、6B5-Mut、15F11-Mut及び10F5-Mutはすべて、腫瘍増殖を有意に阻害し、10F5-Mutの抗腫瘍効果が最高であり、15F11-Mutがその次であることを示した。
表5
完全ヒト抗ヒトB7-H3抗体10F5-Mutのインビボ抗癌作用の概要
【表6】
表6
完全ヒト抗ヒトB7-H3抗体6B5-Mut及び15F11-Mutのインビボ抗癌作用の概要
【表7】
実施例10
完全ヒト抗ヒトB7-H3抗体による正常なヒトの組織の交差反応染色
【0180】
ストレプトアビジン-ビオチン結合を利用する免疫組織化学的染色によって、35種類の凍結した正常なヒトの組織(各組織は3人の個人に由来)に対する完全ヒト抗ヒトB7-H3抗体6B5-AFの交差反応が試験され、エノブリツズマブが対照抗体として使用された。人体組織が表7に列挙されている。
【0181】
免疫組織化学的染色は以下のように行われた。凍結した切片を常温で乾燥させ、PBSTにおいて5~10分間浸漬し;0.3%過酸化水素/無水メタノールを添加し、常温で10~15分間にわたって反応させ、PBSTに3回浸漬し;アビジンを添加して常温で10~15分間にわたって反応させ、PBSTに3回浸漬し;d-ビオチン溶液を添加して常温で10~15分間にわたって反応させ、PBSTに3回に浸漬し;ブロックのためにヒツジ血清(作業溶液)を添加し、常温で10~15分間にわたって反応させ、溶液を破棄し;一次抗体(エノブリツズマブ-ビオチン、6B5-AF-ビオチン、ヒトIgG1/κアイソタイプ対照-ビオチン)又はPBSTを添加し、常温で10~15分間にわたって反応させ、PBSTに3回浸漬し;ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼを添加し、常温で10~15分間インキュベートし、PBSTに3回浸漬し;DABで発色させ、ヘマトキシリンで対比染色し、濃度を増加させながらアルコール、次にキシレンで脱水し;培地を添加し、カバーガラスで覆い、顕微鏡検査のために空気中で乾燥させた。
表7
35種類の凍結された正常なヒトの組織
【表8】
【0182】
染色結果は、顕微鏡を介して観察され、組織に結合した抗体のレベルが、染色によって決定された。染色強度及び染色された細胞の割合に従って、染色結果がスコア化された(陽性細胞染色強度:0=細胞染色無し;1=弱い又は曖昧な染色;2=弱い陽性染色;3=中等度の陽性染色;4=強い陽性染色;M=組織喪失又は該当しない。同一の種類の細胞における陽性細胞の割合:0=細胞染色無し;1=陽性細胞が同一の種類の細胞の25%未満を占める;2=陽性細胞が同一の種類の細胞の25%~50%を占める;3=陽性細胞が同一の種類の細胞の50%~75%を占める;4=陽性細胞が同一の種類の細胞の75%より多くを占める;M=組織喪失又は該当しない)。一次抗体(エノブリツズマブ-ビオチン、6B5-AF-ビオチン、ヒトIgG1/κアイソタイプ対照-ビオチン)又はPBSTから任意の陽性染色が無い組織は統計から除外され、陽性染色の組織のスコアは、表8にまとめられている。
【0183】
表8におけるヒト組織染色結果から、完全ヒト抗B7-H3抗体6B5-AFの組織染色特異性は、エノブリツズマブと一致していることが分かる。すなわち、試験された35種類の正常なヒトの組織のうち、24種類の正常なヒトの組織が陰性の染色結果を得て、11種類の正常な組織のみが弱い染色を得た。一方では、6B5-AF及びエノブリツズマブの間のB7-H3抗原エピトープの違いとして、染色強度は、陽性染色を有するいくつかの組織においてわずかに異なる。表8に示されるように、エノブリツズマブと比較して、6B5-AFでは、下垂体における染色は比較的強いが、胸腺、子宮頸部及び子宮内膜における染色は、わずかに弱い。
【0184】
図13は、代表的組織の染色結果を示し、ここで、1-1、2-1、3-1、及び4-1は、脾臓、骨格筋、副腎及び膀胱においてエノブリツズマブの染色を示し、1-2、2-2、3-2、及び4-2は、脾臓、骨格筋、副腎及び膀胱における6B5-AFの染色を示した。
表8
陽性染色を有する組織の結果概要
【表9】
a:陽性細胞染色強度-同一の種類の細胞における陽性細胞の割合によるスコア:陽性細胞染色強度:0=細胞染色無し;1=弱い又は曖昧な染色;2=弱い陽性染色;3=中等度の陽性染色;4=強い陽性染色;M=組織喪失又は該当しない;同一の種類の細胞における陽性細胞の割合:0=細胞染色無し;1=陽性細胞が同一の種類の細胞の25%未満を占める;2=陽性細胞が同一の種類の細胞の25%~50%を占める;3=陽性細胞が同一の種類の細胞の50%~75%を占める;4=陽性細胞が同一の種類の細胞の75%より多くを占める;M=組織喪失又は該当しない。
【0185】
本願において言及される配列は表9にまとめられている。
表9.配列
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【表10-4】
【0186】
本発明は、1又は複数の実施形態を用いて説明されたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、上の説明は、添付の請求項の主旨及び範囲に含まれるすべての他の代替形態、修正形態、及び同等物を含むことが意図されていることが理解される。本明細書に引用されるすべての参照は、それらの全体が参照によって組み込まれる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-11-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)重鎖可変領域、ここで、前記重鎖可変領域は、VH CDR1領域、VH CDR2領域、及びVH CDR3領域を
含み;及
び
ii)軽鎖可変領域、ここで、前記軽鎖可変領域は、VL CDR1領域、VL CDR2領域、及びVL CDR3領域を含み、ここで、
前記VH CDR1領域、前記VH CDR2領域、前記VH CDR3領域、前記VL CDR1領域、前記VL CDR2領域、及び前記VL CDR3領域は、(1)それぞれ配列番号:
1、2、3、4、5、及び6;
又は(2)それぞれ配列番号:
18、19、20、9
、21、及び22
のアミノ酸配列を含む、
を備える、B7-H3に結合
可能な単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項2】
前記重鎖可変領域は、配列番号:29
又は3
5と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項3】
前記軽鎖可変領域は、配列番号:30
又は3
6と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項4】
前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域は、(1)それぞれ配列番号:29及び30;
又は(2)それぞれ配列番号
:35及び3
6と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項5】
重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を備え、ここで、前記重鎖定常領域はヒトIgG1定常領域であり、前記軽鎖定常領域は、ヒトκ定常領域である、請求項
1に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項6】
前記重鎖定常領域は、配列番号:44の前記アミノ酸配列を含み、前記軽鎖定常領域は、配列番号:45の前記アミノ酸配列を含む、請求項
5に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項7】
アフコシル化されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分である、請求項
1に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸分子。
【請求項9】
請求項8に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項10】
請求項9に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項11】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分、及び、薬学的に許容される担体を備える医薬組成物。
【請求項12】
B7-H3関連疾患を治療するため
に使用される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記B7-H3関連疾患は
B7-H3
+
腫瘍である、請求項
12に記載の使用
のための医薬組成物。
【請求項14】
前記腫瘍は、乳癌、黒色腫、前立腺癌、頭頚部扁平上皮癌、肺癌、非小細胞肺癌、中枢神経系神経芽細胞腫、神経膠芽腫、線維形成性小細胞腫瘍、びまん性橋膠腫、髄芽腫、膵臓癌、肝臓癌、結腸直腸癌、非ホジキンリンパ腫、食道癌、卵巣癌、膀胱癌、小細胞癌、子宮内膜癌、腎臓癌、胃癌、急性骨髄性白血病、肝細胞癌、下咽頭扁平上皮癌、
及び尿路上皮細胞癌から成る群から選択される、請求項
13に記載の使用
のための医薬組成物。
【請求項15】
免疫反応を増強するため
に使用される、請求項1から
7のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部
分。
【国際調査報告】