(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-13
(54)【発明の名称】シュウ酸ジメチルのシュウ酸含有量を定量するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 31/00 20060101AFI20250306BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20250306BHJP
G01N 30/86 20060101ALI20250306BHJP
G01N 31/16 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
G01N31/00 V
G01N30/88 H
G01N30/86 J
G01N31/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024554804
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2024-09-12
(86)【国際出願番号】 CN2022089413
(87)【国際公開番号】W WO2023206109
(87)【国際公開日】2023-11-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524298907
【氏名又は名称】中国神華煤製油化工有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】524342358
【氏名又は名称】国能楡林化工有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】張亜春
(72)【発明者】
【氏名】白文娟
(72)【発明者】
【氏名】李春雷
(72)【発明者】
【氏名】黄起中
(72)【発明者】
【氏名】葛喜慧
【テーマコード(参考)】
2G042
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BD10
2G042BD11
2G042CB03
2G042DA02
2G042FA02
2G042FB03
2G042HA04
2G042HA07
(57)【要約】
以下の工程を含む、シュウ酸ジメチル中のシュウ酸含有量を定量するための方法:シュウ酸ジメチル試料中の全酸の含有量を定量すること;シュウ酸ジメチル試料中の硝酸含有量を定量すること;全酸の含有量から硝酸含有量を差し引き、得られた値をシュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸含有量とすること。この方法は、混合される2つの酸を別々に定量する困難な課題を克服し、滴定中に酸性物質でもある硝酸不純物の反応によってシュウ酸の定量結果が高くなる問題を回避し、硝酸および溶液塩基の干渉を排除する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、シュウ酸ジメチル中のシュウ酸含有量を定量するための方法:
シュウ酸ジメチル試料中の全酸の含有量を定量すること;
シュウ酸ジメチル試料中の硝酸含有量を定量すること;および
前記全酸の含有量から前記硝酸含有量を差し引き、得られた値を前記シュウ酸ジメチル試料中の前記シュウ酸含有量とすること。
【請求項2】
前記全酸の含有量を定量するための方法が、シュウ酸ジメチル試料を滴定し、第1の電位突発的急増点が発生したときに消費された滴定液の量により全酸の含有量を算出することである、請求項1に記載の定量方法。
【請求項3】
前記全酸の含有量を定量するための方法が、シュウ酸ジメチル試料を滴定し、第2の電位突発的急増点が発生したときに消費された滴定液の量によって全酸の含有量を算出することである、請求項1に記載の定量方法。
【請求項4】
前記全酸の含有量が、電位差滴定装置により定量される、請求項1~3のいずれか1項に記載の定量方法。
【請求項5】
前記滴定液が、KOHメタノール溶液である、請求項1~3のいずれか1項に記載の定量方法。
【請求項6】
前記硝酸含有量が、酸塩基滴定法またはイオンクロマトグラフィにより定量される、請求項1~5のいずれか1項に記載の定量方法。
【請求項7】
イオンクロマトグラフィによる、前記硝酸含有量を定量するための方法が、以下の工程を含む、請求項6に記載の定量方法:
硝酸イオンの0~100mg/L標準溶液に対するその対応する電気伝導度ピーク面積の標準曲線を作成すること;
消化後のシュウ酸ジメチル試料をイオン交換カラムに通して前記シュウ酸ジメチル試料中の硝酸イオンを分離し、前記硝酸イオンの電気伝導度ピーク面積を検出すること;および
前記標準曲線上の前記得られた電気伝導度ピーク面積に対応する硝酸イオン濃度に従って、前記シュウ酸ジメチル試料中の硝酸含有量を算出すること。
【請求項8】
前記硝酸イオンの標準溶液の濃度が、それぞれ6.25mg/L、12.50mg/L、25.00mg/L、50.00mg/L、および100.00mg/Lである、請求項7に記載の定量方法。
【請求項9】
前記消化が、前記シュウ酸ジメチル試料中の各元素を遊離状態に変換することである、請求項7に記載の定量方法。
【請求項10】
前記消化が、前記シュウ酸ジメチル試料を過酸化水素と混合し、前記混合物を加熱および乾燥することを含む、請求項9に記載の定量方法。
【請求項11】
前記イオン交換カラムが陰イオン交換カラムである、請求項7に記載の定量方法。
【請求項12】
前記陰イオン交換カラムは、陰イオン交換樹脂を固定相として用い、溶離液を移動相として用い、前記溶離液は炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムの混合溶液である、請求項11に記載の定量方法。
【請求項13】
前記シュウ酸ジメチル試料中の硝酸含有量が、式IIIに従って算出される、請求項7~12のいずれか1項に記載の定量方法:
【数1】
前記式IIIにおいて、
ω
HNO3は、前記シュウ酸ジメチル試料中の%での硝酸含有量を表し;
C
HNO3は、前記標準曲線上のイオンクロマトグラフィで検出された硝酸イオンの前記電気伝導度ピーク面積に対応するmg/Lでの前記硝酸イオン濃度を表し;
mは前記シュウ酸ジメチル試料のgでの質量を表し;
Vは、消化された後に容量を補った前記シュウ酸ジメチル試料のmLでの体積である。
【請求項14】
以下の工程を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の定量方法:
前記シュウ酸ジメチル試料を溶媒に分散させ、シュウ酸ジメチル溶液を得ること;
前記シュウ酸ジメチル溶液をKOHメタノール標準溶液で滴定し、前記第1の電位突発的急増点が発生したときに前記消費された滴定液の体積(V
KOH)を記録すること;
硝酸イオンの0~100mg/L標準溶液に対するその対応する電気伝導度ピーク面積の標準曲線を作成すること;
消化後の前記シュウ酸ジメチル試料をイオン交換カラムに通して、前記シュウ酸ジメチル試料中の硝酸イオンを分離し、前記得られた硝酸イオンの電気伝導度ピーク面積を検出すること;
前記標準曲線上の前記得られた電気伝導度ピーク面積に対応する硝酸イオン濃度(C
HNO3)を記録し、前記シュウ酸ジメチル試料中の硝酸含有量ω
HNO3を算出すること;および
式Iに従い、前記シュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸含有量を算出すること;
【数2】
前記式Iにおいて、
ω(%)は、シュウ酸の質量パーセント含有量を表し;
C
KOHは、前記KOHメタノール標準溶液のmol/Lでの濃度を表し;
V
KOHは、前記第1の電位突発的急増点が発生したときに消費された前記KOHメタノール標準溶液のmLでの体積を表し;
mは前記シュウ酸ジメチル試料のgでの質量を表し;
ω
HNO3は、前記シュウ酸ジメチル試料中の%での硝酸含有量を表し;
63は硝酸の相対分子量であり;および
90.03はシュウ酸の相対分子量である。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、検出の技術分野に関し、特にシュウ酸ジメチル中のシュウ酸不純物の含有量を検出する方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
ポリグリコール酸(PGA)装置は非石油プロセス技術ルートを採用している。ポリグリコール酸製品は優れた完全分解特性、優れた機械特性、および高いバリア性を持ち、主に医療用縫合糸、医療用ステント、衛生用品、食品包装、食器などに使用される。ここで、シュウ酸ジメチルはポリグリコール酸製造の重要な中間原料であるため、シュウ酸ジメチルの組成はポリグリコール酸およびポリグリコール酸生成物の製造工程に極めて重要な影響を与える。
【0003】
しかし、シュウ酸ジメチルは水に触れると加水分解反応を起こし、対応するシュウ酸を生成し、シュウ酸の生成は以下のような危険性を有する:1)装置のパイプラインを腐食し、装置の耐用年数に影響を与え、2)装置が腐食された後に塩類物質が発生し、塩類は装置内でスケールを形成し、装置およびパイプラインの閉塞を引き起こし、3)シュウ酸は装置を腐食し、鉄がイオンの形態でPGA生成物に混入し、PGA生成物の品質に悪影響を及ぼす。したがって、シュウ酸ジメチル中のシュウ酸含有量を厳密に管理することは、重要な技術的指標となっている。
【0004】
シュウ酸ジメチル中のシュウ酸含有量の既存の分析方法は、主に伝統的な酸塩基滴定によって行われており、誤差が大きい、再現性が悪い、結果が不正確などの問題がある。
【0005】
[発明の概要]
本発明の目的は、シュウ酸ジメチル中の他の不純物がシュウ酸の定量結果に与える影響を排除し、より正確なシュウ酸含有量を得ることを目的とした、シュウ酸ジメチル中のシュウ酸含有量を定量するための方法を提供することである。
【0006】
上記発明の目的を達成するために、本発明は、シュウ酸ジメチル中のシュウ酸含有量を定量するための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
シュウ酸ジメチル試料中の全酸の含有量を定量すること;
シュウ酸ジメチル試料中の硝酸含有量を定量すること;および
全酸の含有量から硝酸含有量を差し引くこと、そして得られた値がシュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸含有量である。
【0007】
いくつかの実施形態では、全酸の含有量を定量するための方法は、シュウ酸ジメチル試料を滴定し、第1の電位突発的急増(potential sudden jump)点が発生したときに消費された滴定液の量によって全酸の含有量を算出することである。
【0008】
いくつかの実施形態では、全酸の含有量を定量するための方法は、シュウ酸ジメチル試料を滴定し、第2の電位突発的急増点が発生したときに消費された滴定液の量によって全酸の含有量を算出することである。
【0009】
いくつかの実施形態では、全酸の含有量は電位差滴定装置によって定量される。
【0010】
いくつかの実施形態では、滴定液はKOHメタノール溶液である。
【0011】
いくつかの実施形態では、硝酸含有量は酸塩基滴定によって定量される。
【0012】
いくつかの実施形態では、硝酸含有量はイオンクロマトグラフィによって定量される。
【0013】
いくつかの実施形態では、イオンクロマトグラフィによって硝酸含有量を定量するための方法は、以下を含む:
硝酸イオンの0~100mg/L標準溶液に対するその対応する電気伝導度ピーク面積の標準曲線を作成すること;
消化後のシュウ酸ジメチル試料をイオン交換カラムに通してシュウ酸ジメチル試料中の硝酸イオンを分離し、硝酸イオンの電気伝導度ピーク面積を検出すること;および
得られた標準曲線上の電気伝導度ピーク面積に対応する硝酸イオン濃度に従って、シュウ酸ジメチル試料中の硝酸含有量を算出すること。
【0014】
いくつかの実施形態では、硝酸イオンの標準溶液の濃度は、それぞれ6.25mg/L、12.50mg/L、25.00mg/L、50.00mg/L、および100.00mg/Lである。
【0015】
いくつかの実施形態では、イオン交換カラムは陰イオン交換カラムである。
【0016】
いくつかの実施形態では、シュウ酸ジメチル中のシュウ酸含有量を定量するための方法は、以下の工程を含む:
シュウ酸ジメチル試料を溶媒に分散させ、シュウ酸ジメチル溶液を得ること;
シュウ酸ジメチルの溶液をKOHメタノール標準溶液で滴定し、第1の電位突発的急増点が発生したときに消費された滴定液の体積(V
KOH)を記録すること;
硝酸イオンの0~100mg/L標準溶液に対するその対応する電気伝導度ピーク面積の標準曲線を作成すること;
消化後のシュウ酸ジメチル試料をイオン交換カラムに通して、シュウ酸ジメチル試料中の硝酸イオンを分離し、得られた硝酸イオンの電気伝導度ピーク面積を検出すること;
標準曲線上で得られた電気伝導度ピーク面積に対応する硝酸イオン濃度(C
HNO3)を記録し、シュウ酸ジメチル試料中の硝酸含有量(ω
HNO3)を算出すること;および
式Iに従い、シュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸含有量を算出すること;
【数1】
式Iにおいて、
ω(%)はシュウ酸の質量パーセントを表し;
C
KOHは、KOHメタノール標準溶液のmol/Lでの濃度を表し;
V
KOHは、第1の電位突発的急増点が発生したときに消費されたKOHメタノール標準溶液のmLでの体積を表し;
mはシュウ酸ジメチル試料のgでの質量を表し;
ω
HNO3は、シュウ酸ジメチル試料中の硝酸の%での含有量を表し;
63は硝酸の相対分子量であり;および
90.03はシュウ酸の相対分子量である。
【0017】
先行技術と比較して、本発明には以下の利点がある:
本発明によって提供されるシュウ酸ジメチル中のシュウ酸含有量を定量するための方法は、2つの混合酸を別々に測定する困難を克服し、滴定中に酸性物質でもある硝酸不純物の反応によって引き起こされるシュウ酸の高い定量結果という問題を回避することができる。さらに、本発明により提供される定量方法は、シュウ酸ジメチル中のシュウ酸を定量する際に、明白でない第2の電位突発的急増に起因した、シュウ酸含有量の定量データが大きく変動するという問題も解決する。本発明によって提供された定量方法は、シュウ酸ジメチル中のシュウ酸含有量を定量するために使用され、これは硝酸および溶液塩基の干渉を排除することができ、試験結果はよりパラレルで高い精度を有する。
【0018】
[図面の簡単な説明]
図1は、電位差滴定装置により定量されたシュウ酸標準溶液(1mol/L)のE&dE/dV図であり、第1の電位突発的急増点のpHは、4.17であり、第2の電位突発的急増点のpHは8.14である。
図2は、電位差滴定装置により定量されたシュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸のE&dE/dV図であり、第1の電位突発的急増点のpHは、4.74であり、第2の電位突発的急増点のpHは7.54である。
図3は、電位差滴定装置により定量された硝酸標準溶液のE&dE/dV図であり、電位突発的急増点のpHは5.08である。
図4は、異なる濃度の硝酸塩に対するその対応する電気伝導度の標準曲線である。
図1~3において、E&dE/dV図とは、指示電極の電位を用いて滴定量をプロットしたもの、および指示電極の電位を滴定量に対して一次微分したものを用いて滴定量をプロットしたものをいう。ここで、Eは指示電極の電位、Vは滴定量、dE/dVは滴定量に対する指示電極の電位の一次微分である。
【0019】
[発明の詳細な説明]
シュウ酸は、イオン化定数Ka1が5.9x10
-2、Ka2が6.4x10
-5の二価の弱酸である。通常、試料中のシュウ酸を定量する場合、滴定にはアルカリ性標準溶液を使用し、古典的な酸塩基滴定によってシュウ酸含有量を求める。ここで、第1の水素イオンは、pHが第1の突発的急増を示すときにシュウ酸によって解離され、第2の水素イオンは、pHが第2の突発的急増を示すときにシュウ酸によって解離される。滴定液としてKOHメタノール標準溶液を使用する例では、試料中のシュウ酸の質量%含有量は式IIに従って算出される:
【数2】
式IIにおいて、
V
KOHは、試料の滴定によって消費されたKOHメタノール標準溶液のmLでの体積を表し;
C
KOHは、KOHメタノール標準溶液のmol/Lでの濃度を表し;
ωはシュウ酸の質量%を表し;
mは試料のgでの質量を表し;および
90.03はシュウ酸の相対分子量を表す。
【0020】
しかし、試験中に、本発明の発明者らは、シュウ酸の標準溶液の第1の電位突発的急増点(すなわち、第1のpH突発的急増点)のpHが4.17であり、第2の電位突発的急増点(すなわち、第2のpH突発的急増点)のpHが8.14であった(
図1に示す)が、一方で、シュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸を定量すると、第1の電位突発的急増点のpHは4.74であり、第2の電位突発的急増点のpHは7.54であることを認めた(
図2に示す)。シュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸を定量中に、第1の電位突発的急増点および第2の電位突発的急増点の両方がシフトしたことが分かる。この点について、本発明者らが試験を続けたところ、硝酸標準液のE&dE/dVを電位差滴定装置で定量すると、電位突発的急増点のpHは5.08であることが認められた(
図3に示す)。したがって、シュウ酸ジメチル試料中の硝酸の影響により、シュウ酸の第1の電位突発的急増点および第2の電位突発的急増点が硝酸の電位突発的急増点(5.08)にシフトすると考えられる。シュウ酸ジメチル生成物中の主な不純物はメタノール、ギ酸メチル、水、硝酸、シュウ酸などであり、硝酸およびシュウ酸は共に酸物質であるため、滴定によりシュウ酸含有量を検出する場合、硝酸もまた反応に加わり、シュウ酸含有量の定量結果が高くなることが試験により確認されている。この問題を解決するために、本発明は、シュウ酸ジメチル中のシュウ酸含有量を定量するための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(1)シュウ酸ジメチル試料中の全酸の含有量を定量すること;
(2)前記シュウ酸ジメチル試料中の硝酸含有量を定量すること;および
(3)全酸の含有量から硝酸の含有量を差し引き、得られた値を前記シュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸含有量とすること。
【0021】
具体的には、工程(1)において、シュウ酸ジメチル試料は、シュウ酸ジメチルの最終生成物およびシュウ酸ジメチルの処理過程試料を含む。ここで、シュウ酸ジメチルの最終生成物とは、シュウ酸ジメチルの含有量が99.5%以上のシュウ酸ジメチル生成物をいう。シュウ酸ジメチルの処理過程試料とは、シュウ酸ジメチル生成物を生成するまたは発生する中間処理工程で得られるシュウ酸ジメチルを含む試料をいう。
【0022】
全酸の含有量は、シュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸含有量および硝酸含有量の合計をいう。
【0023】
いくつかの実施形態では、全酸の含有量は、電位差滴定装置によって定量される。好ましくは、電位差滴定装置は、0.005mLの最小液体添加量、0.15%以下の液体添加誤差、および±1000mVの定量電位範囲を有する電位差滴定装置などの高精度電位差滴定装置である。
【0024】
シュウ酸を滴定法によって滴定すると、2つのpH突発的急増が発生する。したがって、シュウ酸を電位差滴定(例えば、電位差滴定装置を使用)により滴定する場合、第1のpH突発的急増は第1の電位突発的急増点であり、第2のpH突発的急増は第2の電位突発的急増点である。
【0025】
いくつかの実施形態では、全酸の含有量を定量するための方法は、シュウ酸ジメチル試料を滴定し、第2の電位突発的急増点が発生したときに消費された滴定液の量によって全酸の含有量を算出することである。
【0026】
いくつかの実施形態では、全酸の含有量を定量するための方法は、シュウ酸ジメチル試料を滴定し、第1の電位突発的急増点が発生したときに消費された滴定液の量によって全酸の含有量を算出することである。一方、本発明者らは、さらに、試験の際、シュウ酸標準液の第1の電位突発的急増点および第2の電位突発的急増点はいずれも明らかである(
図1に示す)のに対して、シュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸を定量する場合には、第2の電位突発的急増点は明らかでなくなり(
図2に示す)、シュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸を定量する場合に、読み取りが困難であったり、定量データの差が大きくなるなどの問題が生じることを認めた。試験後に、この問題の原因は溶液塩基の干渉であることが認められた。この問題を解決するために、本発明では、シュウ酸ジメチル試料中の全酸の含有量の結果として、第1の電位突発的急増点が発生したときに消費される滴定液の量によって算出された値を使用し、また、検証を繰り返した後、シュウ酸ジメチル試料中の全酸の含有量の結果として第2の電位突発的急増点が発生したときに消費された滴定液の量によって算出された値を使用するものと比較する。これはよりパラレルでかつ誤差を小さくし、シュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸含有量の定量精度をさらに向上させる。
【0027】
いくつかの実施形態では、滴定液は、KOHメタノール溶液、すなわち、メタノール中にKOHを分散させることによって形成される溶液である。いくつかの具体的な実施形態では、滴定および算出を容易にするために、KOHメタノール溶液中のKOHの濃度は、0.1mol/Lである。
【0028】
工程(2)において、シュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸を滴定により直接定量すると、その結果は硝酸の干渉を受けてしまう。したがって、本発明では、最初に、全酸の含有量を定量し、次に硝酸の含有量を差し引いてシュウ酸含有量の正確な結果を取得する方法を採用する。そのため、硝酸含有量を定量する必要がある。いくつかの実施形態では、硝酸含有量は酸塩基滴定またはイオンクロマトグラフィ、好ましくはより正確であるイオンクロマトグラフィによって定量される。イオンクロマトグラフィによるシュウ酸ジメチル試料中の硝酸イオンの分離は、当該技術分野で公知の方法および材料によって実施され得る。その方法は、シュウ酸ジメチル試料中の硝酸イオンを分離するために、硝酸イオンのイオン交換カラムとの異なる結合能力を使用する。
【0029】
いくつかの実施形態では、イオンクロマトグラフィによるシュウ酸ジメチル試料からの硝酸イオンの分離は、以下の工程を含む:
(i)硝酸イオンの0~100mg/L標準溶液に対するその対応する電気伝導度ピーク面積の標準曲線を作成すること;
(ii)消化後のシュウ酸ジメチル試料をイオン交換カラムに通して、シュウ酸ジメチル試料中の硝酸イオンを分離し、硝酸イオンの電気伝導度ピーク面積を検出すること;および
(iii)標準曲線上の得られた電気伝導度ピーク面積に対応する硝酸イオン濃度に従って、シュウ酸ジメチル試料中の硝酸含有量を算出すること。
【0030】
いくつかの実施形態では、工程(i)において、標準曲線は、横軸として硝酸イオン濃度を使用し、縦軸として電気伝導度ピーク面積を使用する。
【0031】
いくつかの実施形態では、硝酸イオンの0~100mg/L標準溶液の具体的な濃度は、それぞれ6.25mg/L、12.50mg/L、25.00mg/L、50.00mg/L、および100.00mg/Lである。
【0032】
いくつかの実施形態では、イオン交換カラムは陰イオン交換カラムである。具体的な実施形態では、陰イオン交換カラムは、Thermo Fisher AS23 タイプの陰イオンカラムであり、主にガードカラムおよび陰イオン分離カラムを含み、陰イオン分析カラムは、固定相として陰イオン交換樹脂を使用し、移動相として溶離液を使用する。
【0033】
工程(ii)において、シュウ酸ジメチル試料の消化方法は、当該技術分野における従来の方法を使用してもよく、その目的は、シュウ酸ジメチル試料中の様々な元素を陰イオン交換のための遊離状態に変換して、硝酸イオンの含有量を定量することである。いくつかの実施形態では、消化は、シュウ酸ジメチル試料を過酸化水素と混合し、次いで加熱および乾燥することである。好ましくは、シュウ酸ジメチル試料は、70℃の温度で過酸化水素と混合され、その温度を1.5時間保持した後、乾燥のために80℃に加熱する。消化後に得られた物質は水に再添加し、陰イオン交換カラムを通過させるための溶液を得るため容量を補う。
【0034】
工程(iii)において、硝酸含有量は式IIIに従って算出することができる:
【数3】
式IIIにおいて、
ω
HNO3は、シュウ酸ジメチル試料中の%での硝酸含有量を表し;
C
HNO3は、標準曲線上の、イオンクロマトグラフィにより検出された硝酸イオンの電気伝導度ピーク面積に対応する、mg/Lでの硝酸イオン濃度を表し;
mは、シュウ酸ジメチル試料のgでの質量を表し;
Vは、工程(ii)で消化され容量を補った後のシュウ酸ジメチル試料のmLでの容量である。
【0035】
工程(3)において、いくつかの実施形態では、全酸の含有量から硝酸含有量を差し引くことにより、シュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸含有量を算出する方法は以下の通りである:消費された滴定液のモル量は、全酸の含有量の定量中に消費された滴定液の体積に従って算出され、硝酸のモル量は、硝酸イオン含有量に従って算出され、シュウ酸のモル量は、消費された滴定液のモル量から硝酸のモル量を引くことによって得られ、次いで、シュウ酸の相対分子量を乗じ、得られた積をシュウ酸ジメチル試料の質量で除し、最後に100を乗じることにより、シュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸の質量パーセント含有量が得られる。KOHメタノール標準溶液を滴定液として用いた例では、シュウ酸含有量は式Iのように算出される。
【数4】
式Iにおいて、
ω(%)は、シュウ酸の質量パーセント含有量であり;
C
KOHは、KOHメタノール標準溶液のmol/Lでの濃度を表し;
V
KOHは、第1の電位突発的急増点が発生したときに消費されたKOHメタノール標準溶液のmLでの体積であり;
mは、シュウ酸ジメチル試料のgでの質量を表し;
ω
HNO3は、シュウ酸ジメチル試料中の%での硝酸含有量を表し;
63は硝酸の相対分子質量であり;そして
90.03はシュウ酸の相対分子量である。
【0036】
本発明の好ましい具体的な実施形態の一つとして、シュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸含有量を定量するための方法は、以下の工程を有する:
S1.シュウ酸ジメチル試料を溶媒に分散させ、シュウ酸ジメチルの溶液を得ること;
S2.シュウ酸ジメチルの溶液をKOHメタノール標準溶液で滴定し、第1の電位突発的急増点が発生したときに、消費された滴定液の体積(V
KOH)を記録すること;
S3.硝酸イオンの0~100mg/L標準溶液に対するその対応する電気伝導度ピーク面積の標準曲線を作成すること;
S4.消化後のシュウ酸ジメチル試料をイオン交換カラムに通して、シュウ酸ジメチル試料中の硝酸イオンを分離し、得られた硝酸イオンの電気伝導度ピーク面積を検出すること;
S5.標準曲線上の得られた電気伝導度ピーク面積に対応する硝酸イオン濃度(C
HNO3)を記録し、シュウ酸ジメチル試料中の硝酸含有量を算出すること(ω
HNO3)。
S6.式Iに従って、シュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸含有量を算出すること;
【数5】
ここで、式Iにおいて
ω(%)はシュウ酸の質量パーセント含有量を表し;
C
KOHは、KOHメタノール標準溶液のmol/Lでの濃度を表し;
V
KOHは、第1の電位突発的急増点が発生したときに消費されたKOHメタノール標準溶液のmLでの体積を表し;
mはシュウ酸ジメチル試料のgでの質量を表し;
ω
HNO3は、シュウ酸ジメチル試料中の硝酸含有量を%で表し;
63は硝酸の相対分子量であり、そして
90.03はシュウ酸の相対分子量である。
【0037】
この好ましい具体的な実施形態では、定量中のシュウ酸に対する硝酸の干渉のみでなく、溶液塩基の干渉も排除されるので、シュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸含有量の定量結果は、よりパラレルであり精度がさらに向上する。同時に、本発明において、式I、式IIおよび式IIIで示されるパラメーターの単位は、同じパラメーターを表す国際単位またはサブユニットに変換されてもよく、例えば、mol/Lは、mmol/Lに変換されてもよく、mLはLなどに変換されてもよく、式I、式IIおよび式IIIは、特定の変換状態に応じて適宜調整されてもよいことが理解され得る。
【0038】
本発明の上記の実施細部および操作を当業者に明確に理解させ、本発明の実施例におけるシュウ酸ジメチル中のシュウ酸含有量を定量するための方法の改善された性能を顕著に反映させるために、上記の技術的解決策を以下の複数の実施例により説明する。
【0039】
以下の実施例で使用される実験方法は、特に定めのない限り従来の方法である。
【0040】
以下の実施例で使用される材料、試薬などは、特に定めのない限り、すべて市販のものから入手され得る。
【0041】
[実施例1]
この例は、楡林公司のポリグリコール酸製造工場の中間生成物であるシュウ酸ジメチル中の微量の硝酸をイオンクロマトグラフィにより定量したものである。
【0042】
1.試薬および材料
(1)過酸化水素:分析グレード;
(2)水:超純水;
(3)硝酸イオン標準液:それぞれ6.25mg/L、12.50mg/L、25.00mg/L、50.00mg/L、および100.00 mg/Lの標準液;
(4)溶離液:4.5mmol Na2CO3+0.8mmol NaHCO3を含む溶離液2Lを調製する。
【0043】
2.機器および装置(市販品)
(1)イオンクロマトグラフィは、溶離液貯蔵ボトル、送液ポンプ、注入バルブ、ガードおよび分離カラム、陰イオンサプレッサー、電気伝導度検出器、ならびにクロマトグラフィーワークステーションなどで構成される。
【表1】
【0044】
(2)化学天秤:感度0.1mg。
(3)ガードカラムおよび分離カラム:ガードカラムおよび分離カラムはいずれも樹脂充填カラムであり、機種はThermo FisherAG23型 陰イオンカラム(4x50mm)およびThermo FisherAS23型 陰イオンカラム(4x250mm)。
【0045】
3.分析工程
(1)標準曲線の作図:
濃度が6.25mg/L、12.50mg/L、25.00mg/L、50.00mg/L、および100.00mg/Lの硝酸イオン標準溶液をそれぞれ50mL容フラスコ5本に調製した。各硝酸イオン標準液に対応する硝酸イオンの電気伝導度ピーク面積を、上述のイオンクロマトグラフィで定量し、硝酸イオン濃度を横軸として、および電気伝導度ピーク面積を縦軸として検量線を作図した(
図4)。
【0046】
(2)試料の定量
塩基干渉を排除するための消化:シュウ酸ジメチル試料を採取し、2gを秤量して50mLビーカーに入れ、水4mLを加え、その混合物を70℃で加熱して均一相にし、0.5時間保温した後、過酸化水素3mLを加え、1.5時間保温し、得られた溶液を80℃で蒸発乾固した。
【0047】
ビーカー内の蒸発物を超純水で洗浄し、容量フラスコに移し、水で目盛り(50mL)まで希釈し、その結果CHNO3を読み取った。
【0048】
試料中の硝酸含有量(ωHNO3)を質量パーセントで定量し、式IIIに従って算出した。
【0049】
定量結果を表1に示す。
【0050】
【0051】
表1から、シュウ酸ジメチル試料が硝酸不純物を含有することが認められる。同時に、定量によって得られた硝酸含有量のデータは、その後のシュウ酸含有量の算出に使用され得る。
【0052】
[実施例2]
本実施例では、第1の電位突発的急増および第2の電位突発的急増のそれぞれによって、シュウ酸ジメチル試料中の全酸の含有量を算出する方法を提供する。
【0053】
(11)シュウ酸ジメチル試料を、清浄で乾燥したビーカーに秤量し、有機溶媒50mLを加えて試料を完全に溶解し、シュウ酸ジメチルの溶液を得た。電位差滴定装置を用い、0.1mol/LのKOHメタノール溶液(標準溶液)を滴定液として使用して、シュウ酸ジメチル溶液を滴定し、第1の電位突発的急増点が発生したときに、この時点で消費されたKOHメタノール溶液の体積(V1)を記録した。
【0054】
(12)滴定を続け、第2の電位突発的急増点が発生したときに、消費されたKOHメタノール溶液の体積(V2)を記録した。
【0055】
第1の電位突発的急増pH、第2の電位突発的急増pH、対応する時点で消費された滴定液の体積、および算出された全酸の含有量を表2に示す。ここで、全酸の含量の計算式を式Iに示す。算出は、全酸の含有量の計算基準として第1の電位突発的急増点の発生を用いる場合、本実施例におけるV1は、計算式IにおけるVKOHとして使用され、全酸の含有量の計算基準として第2の電位突発的急増点の発生を用いる場合、本実施例におけるV2は、計算式IにおけるVKOHとして使用される。
【0056】
【0057】
表2から、第2の電位突発的急増点が発生したときに消費された滴定液の量を記録することにより算出されたシュウ酸ジメチル試料中の全酸の含有量の結果と比較して、第1の電位突発的急増点が発生したときに消費された滴定液の量を記録することにより算出されたシュウ酸ジメチル試料中の全酸の含有量の標準偏差は小さくなり、したがって、第1の電位突発的急増点が発生したときに消費された滴定液の量を記録することにより算出されたシュウ酸ジメチル試料中の全酸の含有量の結果はより正確である。
【0058】
[実施例3]
本実施例では、第1の電位突発的急増点が発生したときに消費された滴定液の量(V1)を記録することにより算出されたシュウ酸ジメチル試料中の全酸の含有量に基づいて得られたシュウ酸含有量のスパイク-アンド-リカバリー実験を提供する。
【0059】
1.定量プロセス
シュウ酸含有量が知られているシュウ酸ジメチルの2つの試料を同じ重量で採取し、それぞれに104μgのシュウ酸を添加し、実施例1および実施例2の手順に従って、同じ条件下で2つの試料のシュウ酸含有量をそれぞれ定量した(第1の電位突発的急増点が発生したときに消費された滴定液の量を記録することにより、シュウ酸ジメチル試料中の全酸の含有量を算出する)。
【0060】
2.スパイク回収率の算出
スパイク回収率=(スパイク試料の定量値-試料の定量値)÷スパイク量x100
【0061】
スパイク-アンド-リカバリー実験結果を表3に示す。
【0062】
【0063】
表3から、本発明の方法によって検出されたシュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸含量の結果の精度および信頼性は、分析の専門的要件(95%~105%)を満たすことができることが認められる。
【0064】
[実施例4]
本実施例では、ユーリン社のポリグリコール酸デバイスの中間生成物であるシュウ酸ジメチル中のシュウ酸含有量の定量を提供する。
【0065】
実施例1で使用されたシュウ酸ジメチル試料を清浄で乾燥したビーカーに秤量し、有機溶媒50mLを加えて試料を完全に溶解させ、シュウ酸ジメチル溶液を得た。電位差滴定装置を用い、0.1mol/LのKOHメタノール溶液(標準溶液)を滴定液として用いてシュウ酸ジメチル溶液を滴定し、第1の電位突発的急増点が発生したとき、この時点で消費されたKOH溶液の体積(VKOH)を記録した。
【0066】
実施例1で定量された硝酸含有量の結果の平均値0.0079%と合わせて、試料中のシュウ酸含有量を式Iに従って算出した。その結果を表4に示す。
【0067】
【0068】
上述した実施例は、本発明のいくつかの実施態様を表現したに過ぎず、その説明は比較的具体的かつ詳細であるが、本発明の特許範囲を限定するものと理解すべきではない。この分野の通常の技術者にとっては、本発明の概念から逸脱することなく、いくつかの修正および改良が可能であり、これらはすべて本発明の保護範囲に属することに留意すべきである。したがって、本発明の特許の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に基づくものとする。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】
図1は、電位差滴定装置により定量されたシュウ酸標準溶液(1mol/L)のE&dE/dV図であり、第1の電位突発的急増点のpHは、4.17であり、第2の電位突発的急増点のpHは8.14である。
【
図2】
図2は、電位差滴定装置により定量されたシュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸のE&dE/dV図であり、第1の電位突発的急増点のpHは、4.74であり、第2の電位突発的急増点のpHは7.54である。
【
図3】
図3は、電位差滴定装置により定量された硝酸標準溶液のE&dE/dV図であり、電位突発的急増点のpHは5.08である。
【
図4】
図4は、異なる濃度の硝酸塩に対するその対応する電気伝導度の標準曲線である。
図1~3において、E&dE/dV図とは、指示電極の電位を用いて滴定量をプロットしたもの、および指示電極の電位を滴定量に対して一次微分したものを用いて滴定量をプロットしたものをいう。ここで、Eは指示電極の電位、Vは滴定量、dE/dVは滴定量に対する指示電極の電位の一次微分である。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、シュウ酸ジメチル中のシュウ酸含有量を定量するための方法:
シュウ酸ジメチル試料中の全酸の含有量を定量すること;
シュウ酸ジメチル試料中の硝酸含有量を定量すること;および
前記全酸の含有量から前記硝酸含有量を差し引き、得られた値を前記シュウ酸ジメチル試料中の前記シュウ酸含有量とすること。
【請求項2】
前記全酸の含有量を定量するための方法が、シュウ酸ジメチル試料を滴定し、第1の電位突発的急増点が発生したときに消費された滴定液の量により全酸の含有量を算出することである、請求項1に記載
の方法。
【請求項3】
前記全酸の含有量を定量するための方法が、シュウ酸ジメチル試料を滴定し、第2の電位突発的急増点が発生したときに消費された滴定液の量によって全酸の含有量を算出することである、請求項1に記載
の方法。
【請求項4】
前記全酸の含有量が、電位差滴定装置により定量される、請求項1~3のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項5】
前記滴定液が、KOHメタノール溶液である、請求項1~3のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項6】
前記硝酸含有量が、酸塩基滴定法またはイオンクロマトグラフィにより定量される、請求項1~
3のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項7】
イオンクロマトグラフィによる、前記硝酸含有量を定量するための方法が、以下の工程を含む、請求項6に記載
の方法:
硝酸イオンの0~100mg/L標準溶液に対するその対応する電気伝導度ピーク面積の標準曲線を作成すること;
消化後のシュウ酸ジメチル試料をイオン交換カラムに通して前記シュウ酸ジメチル試料中の硝酸イオンを分離し、前記硝酸イオンの電気伝導度ピーク面積を検出すること;および
前記標準曲線上の前記得られた電気伝導度ピーク面積に対応する硝酸イオン濃度に従って、前記シュウ酸ジメチル試料中の硝酸含有量を算出すること。
【請求項8】
前記硝酸イオンの標準溶液の濃度が、それぞれ6.25mg/L、12.50mg/L、25.00mg/L、50.00mg/L、および100.00mg/Lである、請求項7に記載
の方法。
【請求項9】
前記消化が、前記シュウ酸ジメチル試料中の各元素を遊離状態に変換することである、請求項7に記載
の方法。
【請求項10】
前記消化が、前記シュウ酸ジメチル試料を過酸化水素と混合し、前記混合物を加熱および乾燥することを含む、請求項9に記載
の方法。
【請求項11】
前記イオン交換カラムが陰イオン交換カラムである、請求項7に記載
の方法。
【請求項12】
前記陰イオン交換カラムは、陰イオン交換樹脂を固定相として用い、溶離液を移動相として用い、前記溶離液は炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムの混合溶液である、請求項11に記載
の方法。
【請求項13】
前記シュウ酸ジメチル試料中の硝酸含有量が、式IIIに従って算出される、請求項
7に記載
の方法:
【数1】
前記式IIIにおいて、
ω
HNO3は、前記シュウ酸ジメチル試料中の%での硝酸含有量を表し;
C
HNO3は、前記標準曲線上のイオンクロマトグラフィで検出された硝酸イオンの前記電気伝導度ピーク面積に対応するmg/Lでの前記硝酸イオン濃度を表し;
mは前記シュウ酸ジメチル試料のgでの質量を表し;
Vは、消化された後に容量を補った前記シュウ酸ジメチル試料のmLでの体積である。
【請求項14】
以下の工程を含む、請求項
1に記載
の方法:
前記シュウ酸ジメチル試料を溶媒に分散させ、シュウ酸ジメチル溶液を得ること;
前記シュウ酸ジメチル溶液をKOHメタノール標準溶液で滴定し、前記第1の電位突発的急増点が発生したときに前記消費された滴定液の体積(V
KOH)を記録すること;
硝酸イオンの0~100mg/L標準溶液に対するその対応する電気伝導度ピーク面積の標準曲線を作成すること;
消化後の前記シュウ酸ジメチル試料をイオン交換カラムに通して、前記シュウ酸ジメチル試料中の硝酸イオンを分離し、前記得られた硝酸イオンの電気伝導度ピーク面積を検出すること;
前記標準曲線上の前記得られた電気伝導度ピーク面積に対応する硝酸イオン濃度(C
HNO3)を記録し、前記シュウ酸ジメチル試料中の硝酸含有量ω
HNO3を算出すること;および
式Iに従い、前記シュウ酸ジメチル試料中のシュウ酸含有量を算出すること;
【数2】
前記式Iにおいて、
ω(%)は、シュウ酸の質量パーセント含有量を表し;
C
KOHは、前記KOHメタノール標準溶液のmol/Lでの濃度を表し;
V
KOHは、前記第1の電位突発的急増点が発生したときに消費された前記KOHメタノール標準溶液のmLでの体積を表し;
mは前記シュウ酸ジメチル試料のgでの質量を表し;
ω
HNO3は、前記シュウ酸ジメチル試料中の%での硝酸含有量を表し;
63は硝酸の相対分子量であり;および
90.03はシュウ酸の相対分子量である。
【国際調査報告】