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特表2025-507240モリブデン合金管ターゲット材の調製方法、モリブデン合金管ターゲット材及び用途
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  • 特表-モリブデン合金管ターゲット材の調製方法、モリブデン合金管ターゲット材及び用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-18
(54)【発明の名称】モリブデン合金管ターゲット材の調製方法、モリブデン合金管ターゲット材及び用途
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20250311BHJP
   C22F 1/18 20060101ALI20250311BHJP
   C22C 27/04 20060101ALI20250311BHJP
   C22C 30/00 20060101ALI20250311BHJP
   B22F 1/14 20220101ALI20250311BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20250311BHJP
   B22F 3/15 20060101ALI20250311BHJP
   B22F 3/20 20060101ALI20250311BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20250311BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20250311BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20250311BHJP
   B22F 1/00 20220101ALN20250311BHJP
【FI】
C23C14/34 A
C23C14/34 B
C22F1/18 C
C22C27/04 102
C22C30/00
B22F1/14 500
B22F3/02 P
B22F3/15 H
B22F3/20 C
B22F3/24 C
B22F3/24 G
C23C14/14 D
C22F1/00 604
C22F1/00 612
C22F1/00 621
C22F1/00 626
C22F1/00 630B
C22F1/00 630K
C22F1/00 661D
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 684C
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 691Z
C22F1/00 694A
C22F1/00 694B
C22F1/00 694Z
B22F1/00 M
B22F1/00 P
B22F1/00 R
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529933
(86)(22)【出願日】2023-05-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 CN2023095630
(87)【国際公開番号】W WO2023208249
(87)【国際公開日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】202210565049.6
(32)【優先日】2022-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524190874
【氏名又は名称】安泰科技股▲分▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】524190885
【氏名又は名称】安泰天竜▲タングステン▼▲モリブデン▼科技有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】524190896
【氏名又は名称】安泰天竜(北京)▲タングステン▼▲モリブデン▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王広達
(72)【発明者】
【氏名】熊寧
(72)【発明者】
【氏名】弓艶飛
(72)【発明者】
【氏名】牛曼
(72)【発明者】
【氏名】季鵬飛
(72)【発明者】
【氏名】楊亜傑
(72)【発明者】
【氏名】王鳳権
(72)【発明者】
【氏名】劉潔
【テーマコード(参考)】
4K018
4K029
【Fターム(参考)】
4K018AA22
4K018AB10
4K018AC01
4K018BA03
4K018BA04
4K018BA09
4K018BA20
4K018BB04
4K018BC12
4K018BC19
4K018CA02
4K018CA23
4K018DA32
4K018EA16
4K018EA31
4K018FA06
4K018FA08
4K018KA29
4K018KA32
4K018KA70
4K029BD02
4K029DC04
4K029DC09
4K029DC13
(57)【要約】
本願はモリブデン合金管ターゲット材の調製方法、モリブデン合金管ターゲット材及び用途に関し、粉末冶金技術分野に属する。本ターゲットは原料粉末を冷間等方圧加圧成形、クラッド、熱間等方圧加圧、押出成形、焼鈍等の工程を通じて調製するものであり、調製して得られたターゲット材は、質量%で、Ni:10~30%、Ti:5~25%、Re:0.5~5%、M:0~15%を含み、MはCr、Zr、Ta、Nbのうちの少なくとも1つであり、MはTiの一部の代わりに使用され、残りはMo及び不可避的不純物であり、モリブデン合金管ターゲット材におけるMoの質量%含有量が50%以上である。調製されたターゲット材は延性靭性がよく、変形能力がよく、結晶粒が細かく均一である。調製されたターゲット材を用いてスパッタによって堆積された薄膜の厚さ分布がより均一であり、電子部品用積層配線膜の主導電層にスパッタにより付着して金属被覆層を形成し、平面ディスプレイ、薄膜太陽エネルギ及び半導体装置などに用いられることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン合金管ターゲット材の調製方法であって、
質量%で、Ni:10~30%、Ti:5~25%、Re:0.5~5%、M:0~15%を含み、MはCr、Zr、Ta、Nbのうちの少なくとも1つであり、前記MはTiの一部の代わりに使用され、残りはMo及び不可避的不純物であり、かつ前記モリブデン合金管ターゲット材におけるMoの質量%含有量が50%以上であるモリブデン合金管ターゲット材であって、前記モリブデン合金管ターゲット材の各元素の質量分率に基づいてそれぞれ原料を秤量し、均一に混合し、モリブデン合金粉末を得る粉混合工程と、
混合後の粉末を金型に入れ、冷間等方圧加圧成形を行い、第1ブランクを得る冷間等方圧加圧成形工程と、
前記第1ブランクを熱間等方圧加圧成形し、第2ブランクを得る熱間等方圧加圧成形工程と、
前記第2ブランクを押出成形し、第3ブランクを得る押出成形工程と、
前記第3ブランクを焼鈍処理する焼鈍処理と、を含み、
前記押出成形は降温押出であり、前記押出成形の開始温度は1100~1400℃であり、前記押出成形の終了温度は900~1100℃であり、
各パスの押出を行う前に、前記第2ブランクをマッフル炉に入れ、空気又はアルゴンガス雰囲気で加熱し、保温温度を1100~1400℃とし、保温時間を30~120分とし、出炉後に前記各パスの押出を開始し、
前記降温押出は、具体的には、後のパスの押出前の加熱保温温度が前のパスの押出前の加熱保温温度より順次低くなるものであり、
前記後のパスの押出前の加熱保温温度は、前記前のパスの加熱保温温度に基づいて0よりも大きく100℃以下を低下するものであり、
前記押出の各パスの押出変形率は15~25%であり、前記押出成形の総変形量は40~80%であり、
前記焼鈍処理はアルゴンガス雰囲気下で行われ、焼鈍温度は1000~1300℃であり、焼鈍保温時間は60~120分である、
ことを特徴とするモリブデン合金管ターゲット材の調製方法。
【請求項2】
前記冷間等方圧加圧成形後の前記第1ブランクを整形する整形と、
前記熱間等方圧加圧成形前に、前記整形後の前記第1ブランクをシースに入れ、排気を行って真空密封するクラッドと、
前記熱間等方圧加圧成形後、前記第2ブランクの前記シースを機械加工により除去するシースの除去と、
前記焼鈍処理前に、前記第3ブランクを機械加工する機械加工と、をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のモリブデン合金管ターゲット材の調製方法。
【請求項3】
前記モリブデン合金管ターゲット材は、質量%で、Ni:10~30%、Ti:5~25%、Re:1~5%、M:0~5%を含み、MはCr、Zr、Ta、Nbのうちの少なくとも1つであり、前記MはTiの一部の代わりに使用され、残りはMo及び不可避的不純物であり、かつモリブデン合金管ターゲット材におけるMoの質量%含有量は60%以上である、
ことを特徴とする請求項2に記載のモリブデン合金管ターゲット材の調製方法。
【請求項4】
前記粉混合工程において、前記原料は、純度が3N5以上であるモリブデン粉であって、FSSS範囲は2.5~4μmであるモリブデン粉と、純度が3N以上であるニッケル粉であって、FSSS範囲は2~3μmであるニッケル粉と、チタン粉又は水素化チタンであるチタン源であって、チタン粉の純度は3N以上であり、チタン粉のFSSS範囲は2~4μmであり、水素化チタンの純度は2N以上であり、水素化チタンのFSSS範囲は2~4μmであるチタン源と、純度が4N以上であるレニウム粉であって、FSSSは2~4μmであるレニウム粉と、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のモリブデン合金管ターゲット材の調製方法。
【請求項5】
モリブデン合金管ターゲット材におけるチタン元素は、モリブデンチタン合金粉末の形で添加されるものであり、前記モリブデンチタン合金粉末は、原料中のモリブデン粉の一部を水素化チタン粉末と混合した後、還元処理して得られるものである、
ことを特徴とする請求項4に記載のモリブデン合金管ターゲット材の調製方法。
【請求項6】
前記モリブデンチタン合金粉末のモリブデンチタン質量比は90:10~70:30であり、
前記モリブデンチタン合金粉末の調製中、前記還元処理は水素雰囲気中で行われ、前記還元処理の温度は500~900℃であり、前記還元処理の時間は2~8hである、
ことを特徴とする請求項5に記載のモリブデン合金管ターゲット材の調製方法。
【請求項7】
前記粉混合はボールミル缶中で行われ、BPRは1:1~2:1であり、負圧まで排気した後にアルゴンガスを充填し、ボールミル缶中のアルゴンガス圧力は大気圧であり、混合時間は10h~16hであり、回転速度は50~300r/minであり、
前記冷間等方圧加圧成形では、前記冷間等方圧加圧成形のプレス圧力は150~200MPa、保圧時間は5~20分であり、
前記熱間等方圧加圧成形の保温温度は900℃~980℃、圧力は100~170MPa、保圧時間は2~5hである、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のモリブデン合金管ターゲット材の調製方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法で調製されたモリブデン合金管ターゲット材。
【請求項9】
前記モリブデン合金管ターゲット材の結晶粒寸法は100μm以下であり、結晶粒度は4~5級である、
ことを特徴とする請求項8に記載のモリブデン合金管ターゲット材。
【請求項10】
モリブデン合金管ターゲット材が電子部品用積層配線膜の主導電層にスパッタにより付着して金属被覆層を形成し、前記電子部品は平面ディスプレイ、太陽エネルギ薄膜又は半導体装置である、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載のモリブデン合金管ターゲット材の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉末冶金技術分野に属し、具体的にはモリブデン合金管ターゲット材の調製方法、モリブデン合金管ターゲット材及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、表示パネルなどの平面表示装置の技術的な更新に伴い、配線膜の低抵抗化が必要である。同時に、平面ディスプレイの大画面、高精細度、高速応答化、およびフレキシブルパネルの大型化に伴い、比較的低い膜抵抗レベルも要求されている。
【0003】
薄膜トランジスタ(TFT)は、表示パネルの駆動素子として、主配線材料としてAlまたはCuを用いている。しかし、AlまたはCuがSiに直接接触すると、調製中に熱加工により熱拡散が形成され、薄膜トランジスタの性能が悪化する。そのため、Al/CuとSiの間に積層配線膜を設ける必要がある。
【0004】
Mo及びMo-Nb、Mo-Ti等のモリブデン合金は、耐食性、耐熱性に優れ、また基板との密着性に優れ、積層配線膜の調製に用いられることができる。しかし、調製過程で基板に積層配線膜が形成された後、長期間大気中に放置されることがある。また、表示パネルに信号ケーブルを取り付ける際には、大気中で加熱する必要がある場合があり、また酸化物を用いた半導体薄膜では、性能向上と安定化を図るために、有酸素環境下で加熱処理する必要がある。そのため、積層配線膜の耐酸化性を高めるニーズが強い。また、携帯性の軽量・フレキシブル表示パネルに用いられる樹脂フィルムは、ガラス基板に比べて透湿性を有し、積層配線フィルムは高い耐湿性を有することが必要である。しかし純Mo、Mo-Tiなどの材料は耐湿性や耐酸化性が十分ではなく、酸化が発生することがあり、AlやCuの抵抗値が顕著に増加する問題がある。
【0005】
特許「CN2012102930608」は、純モリブデンめっき膜の耐湿性と耐酸化性を改善するために、モリブデンに一定数のNiとTiを添加し、電子部品の安定調製と信頼性の向上に役立つ積層配線膜用モリブデン合金ターゲット材を開示している。
【0006】
特許「CN2014100909230」は、Niを添加することにより耐酸化性を高め、W元素を添加することにより耐湿性を高めることができる電子部品用モリブデン合金ターゲット材を開示している。
【0007】
特許「CN2017114460697」は、純モリブデンの耐湿性と耐酸化性を良好に改善し、低い膜抵抗を維持することができる、Ni、Nb、Tiなどの元素を含むモリブデン合金ターゲット材成分を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許は、モリブデン基体にNi、Ti又はW等の元素を一定量添加することにより、モリブデンターゲット材スパッタ膜の耐湿性、耐酸化性を共に向上させ、低い抵抗値を保持する。しかし、ターゲットの調製は主に熱間等方圧加圧(HIP)によって成形され、ターゲット材の長さの増大に伴い、HIP成形寸法はHIP設備の寸法に大きく制約され、高性能なモリブデン合金ターゲット材を量産することができない。また、モリブデン合金ターゲット材の成形性が悪いため、押出、鍛造などの変形方式によって異なる長さの管状ターゲット材製品を調製することができない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題に対して、本願の目的は、モリブデン合金管ターゲット材の調製方法、及びモリブデン合金管ターゲット材、用途を提供することにある。
【0010】
本願が提供するモリブデン合金管ターゲット材は、レニウム元素が添加された後、ターゲット材の延性靭性を高め、ターゲット材の変形加工能力を高める。モリブデン合金管ターゲット材は後続の調製過程における押出成形により、結晶粒寸法を微細化することができる。また、レニウムの価格が比較的高価であることを考慮し、本願は少量のレニウムを添加して他の成分と配合することにより、ターゲット材の性能と加工能力を改善する役割を効果的に果たすことができる。
【0011】
上記目的を達成するために、本願は以下の技術案を採用する。
本願の第1の側面は、以下の工程を含むモリブデン合金管ターゲット材の調製方法を提供する。
粉混合:モリブデン合金管ターゲット材の各元素の質量分率に基づいてそれぞれ原料を秤量し、均一に混合し、モリブデン合金粉末を得る。ここで、前記モリブデン合金管ターゲット材は、質量%で、Ni:10~30%(例えば12%、15%、20%、25%)、Ti:5~25%(例えば6%、8%、10%、15%、20%)、Re:0.5~5%(例えば0.7%、0.9%、1.2%、1.5%、2%、2.5%、3%、4%)、M:0~15%(例えば1%、3%、5%、8%、10%、13%)を含み、MはCr、Zr、Ta、Nbのうちの少なくとも1種であり、前記MはTiの一部の代わりに使用され、残りはMo及び不可避的不純物であり、かつ前記モリブデン合金管ターゲット材におけるMoの質量%含有量が50%以上である(例えば52%、60%、70%)。
冷間等方圧加圧成形:混合後の粉末を金型に入れ、冷間等方圧加圧成形を行い、第1ブランクを得る。
熱間等方圧加圧成形:前記第1ブランクを熱間等方圧加圧成形し、第2ブランクを得る。
押出成形:前記第2ブランクを押出成形し、第3ブランクを得る。
焼鈍処理:前記第3ブランクを焼鈍処理する。
【0012】
本願モリブデン合金管ターゲット材成分のNiは本願ターゲット材から形成される膜層の耐酸化性を高めることができ、Tiは膜層の耐湿性を高めることができ、両者の適量の添加は膜層の耐酸化性と耐湿性を保証するだけでなく、配線膜の低抵抗を保証することもでき、エッチング剤のエッチング速度にも影響を与えない。
【0013】
本願モリブデン合金管ターゲット材に少量のRe元素が添加された。特定割合のレニウム元素の添加は、モリブデン合金中の特定割合の他の元素と共同作用し、レニウムにこのモリブデン合金における「レニウム効果」を発揮させ、モリブデン合金の室温塑性を改善し、塑性脆性転移温度を低下させ、結晶粒を微細化する。このモリブデン合金管ターゲット材にRe元素を添加することにより、ターゲット材の変形性能を向上させることができ、大変形量加工時にもクラックが発生しない。ターゲット材組織結晶粒が小さいため、好ましいモリブデン合金群の分配比で得られたターゲット材結晶粒の段差が特に小さく、結晶粒が均一であり、本発明のターゲット材で調製された膜層の厚さがより均一であり、スパッタ速度がより速い。Re元素の使用量が5%を超えると、コストが増加する一方で、Re元素の添加量が過剰になると、Reは他の元素と合金相を形成し得るので、後続のめっき効果に影響を与える。Re元素の使用量が0.5%未満である場合、効果的な結晶粒の微細化及びターゲット材の塑性向上の効果が得られない。
【0014】
本願におけるM元素は、ターゲット材めっき膜の耐湿性を強化する作用を有し、同様に耐湿性を有するTiを部分的に置換することができ、この元素はターゲット材めっき膜の耐酸化性などを改善することもできる。しかし、ターゲット材の各種成分の相互作用の観点から、M元素はTiの一部のみを置換できることが好ましい。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記モリブデン合金管ターゲット材の調製方法は、さらに以下の工程を含む。
整形:前記冷間等方圧加圧成形後の前記第1ブランクを整形する。
クラッド:前記熱間等方圧加圧成形前に、前記整形後の前記第1ブランクをシースに入れ、排気をして真空密封する。
シースの除去:前記熱間等方圧加圧成形後、前記第2ブランクの前記シースを機械加工により除去する。
機械加工:前記焼鈍処理前に、前記第3ブランクを機械加工する。
【0016】
いくつかの実施形態において、モリブデン合金管ターゲット材は、質量%で、Ni:10~30%(例えば12%、14%、18%、20%、25%)、Ti:5~25%(例えば6%、8%、10%、13%、16%、19%、23%)、Re:1~5%(例えば1.2%、1.5%、2%、3%、4%)、M:0~5%(例えば0.5%、1%、2%、3%、4%)を含み、残りはMo及び不可避的不純物であり、かつモリブデン合金管ターゲット材におけるMoの質量%含有量は60%以上である(例えば61%、65%、70%、80%)。
この好ましい成分範囲において、前記モリブデン合金管ターゲット材の各性能はより優れている。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記粉混合工程では、前記原料は、純度が3N5以上であるモリブデン粉であって、FSSS(Fisher Sub-sieve Size)範囲、好ましくは2.5~4μmであるモリブデン粉と、純度が3N以上であるニッケル粉であって、FSSS範囲、好ましくは2~3μmであるニッケル粉と、チタン粉又は水素化チタンであるチタン源であって、チタン粉の純度は3N以上であり、チタン粉のFSSS範囲、好ましくは2~4μmであり、水素化チタンの純度は2N以上であり、水素化チタンのFSSS範囲、好ましくは2~4μmであるチタン源と、純度が4N以上であるレニウム粉であって、FSSS好ましくは2~4μmであるレニウム粉と、を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、モリブデン合金管ターゲット材におけるチタン元素は、モリブデンチタン合金粉末の形で添加されるものであり、前記モリブデンチタン合金粉末は、原料中のモリブデン粉の一部を水素化チタン粉末と混合した後、還元処理して得られるものである。
【0019】
好ましくは、前記モリブデンチタン合金粉末のモリブデンチタン質量比は、90:10~70:30(例えば、85:15、80:20、75:25)である。
【0020】
好ましくは、モリブデンチタン合金粉末の調製中、還元処理は水素雰囲気中で行われ、前記還元処理の温度は500~900℃(例えば600℃、700℃、800℃)であり、前記還元処理の時間は2~8h(3h、4h、5h、6h)である。
【0021】
上記水素ガス還元処理において、ガス流量は還元炉の大きさに応じて異なり、圧力は微正圧であればよい。チタン源として水素化チタンを選択したのは、調製されたモリブデンチタン合金粉末をより均一・一致させるためである。供給源としてチタン粉を直接使用して混合してもよいが、粉末均一性は水素化チタンとモリブデン粉との混合の上に還元プロセスを用いたほうがよい。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記粉混合はボールミル缶中で行われ、BPR(Ball-to-Power Ratio)は1:1~2:1であり、負圧まで排気した後にアルゴンガスを充填し、好ましくはボールミル缶中のアルゴンガス圧力は大気圧であり、混合時間は10h~16h(例えば12h、14h)であり、回転速度は50~300r/minである。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記冷間等方圧加圧成形では、前記冷間等方圧加圧成形のプレス圧力は150~200MPa(例えば170MPa、190MPa)、保圧時間は5~20分(例えば8分、10分、15分、18分)である。好ましくは、前記金型はステンレス製の管状金型である。
【0024】
本願の冷間等方圧加圧プロセスは、前記第1ブランクの相対密度を55~65%にすることができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、熱間等方圧加圧成形の保温温度は900℃~980℃(例えば920℃、940℃、960℃)、圧力は100~170MPa(例えば120MPa、140MPa、160MPa)、保圧時間は2~5h(例えば3h、4h)である。
【0026】
本願の熱間等方圧加圧プロセスは、いくつかのモリブデン合金成分から形成される第2ブランクの相対密度を100%にすることができる。
熱間等方圧加圧プロセスを通じるだけではブランクの相対密度が100%に達することができない場合、前記熱間等方圧加圧成形工程と冷間等方圧加圧成形工程との間に高温焼結工程を増加して、合金成分の焼結効果を高め、ブランクの相対密度をさらに高めることができる。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記押出成形は低温押出であり、前記押出成形の開始温度は1100~1400℃(例えば1150℃、1200℃、1300℃)であり、前記押出成形の終了温度は900~1100℃(例えば950℃、1000℃、1050℃)である。各パスの押出を行う前に、前記第2ブランクをマッフル炉に入れ、空気またはアルゴンガス雰囲気で加熱し、保温温度を1100~1400℃とし、保温時間を30~120分(例えば、40分、60分、80分、100分)とし、出炉後に前記各パスの押出を開始する。
【0028】
前記降温押出は、具体的には、後のパスの押出前の加熱保温温度が前のパスの押出前の加熱保温温度よりも低い。
【0029】
好ましくは、後のパスの押出前の加熱保温温度は、前のパスの押出前の加熱保温温度に基づいて0よりも大きく100℃以下(例えば、10℃、20℃、40℃、50℃、60℃、80℃)を低下する。
【0030】
好ましくは、前記押出の各パスの押出変形率は15~25%(例えば17%、19%、21%、23%)であり、前記押出成形の総変形量は40~80%(例えば50%、60%、70%)である。
【0031】
押出開始温度を1100~1400℃の範囲に制御すると、押出成形の効果がよい。押出開始温度が高すぎると、ニッケルが溶け、酸化が深刻になる。押出開始温度が低いと、押出成形中にブランクが割れやすい。押出成形終了温度を900~1100℃(例えば1050℃、1100℃、1150℃)に制御して、成形性能を保証し、亀裂を避けることができる。
【0032】
各パスの押出変形率を15~25%に制御することで、材料の変形性能を十分に利用することができ、変形率が大きすぎると、押出変形中にブランクが割れ、同時にパスの降温を100℃以内に制御して、材料の良好な強度と可塑性を維持し、亀裂を避けることができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記焼鈍処理はアルゴンガス雰囲気下で行われ、焼鈍温度は1000~1300℃(例えば1050℃、1100℃、1150℃、1200℃、1250℃)であり、焼鈍保温時間は60~120分(例えば70分、80分、90分、100分、110分)である。
【0034】
焼鈍温度をこの範囲に制御することで、押出後のターゲット材の異方性を解消し、組織が均一で、結晶粒が細かいモリブデン合金管ターゲット材を得ることができる。焼鈍温度が1000℃より低いと、ターゲット材の組織が不均一になり、焼鈍温度が1300℃より高いと、結晶粒が異常に大きくなり、混晶が発生し、何れもターゲット材の後続スパッタめっき膜の効果に影響を与える。
【0035】
いくつかの実施形態において、前記焼鈍処理後、結晶粒寸法≦100μm(例えば60μm、70μm、80μm、90μm)、結晶粒度4~5級の均一微結晶ターゲット材を得ることができる。
【0036】
本願で調製されたモリブデン合金管ターゲット材は結晶粒が小さく、スパッタ速度は結晶粒の粗大なターゲット材のスパッタ速度よりも速い。また、ターゲット材の結晶粒寸法の差が小さく(分布が均一)、ターゲットスパッタによって堆積された薄膜の厚さ分布がより均一である。本願で調製されたモリブデン合金管ターゲット材でスパッタによって得られた薄膜の品質は大幅に改善される。
【0037】
本願の第2の側面は、上記方法を用いて調製されたモリブデン合金管ターゲット材を提供する。
【0038】
いくつかの実施形態において、モリブデン合金管ターゲット材の結晶粒寸法は100μm以下(例えば60μm、70μm、80μm、90μm)であり、結晶粒度は4~5級である。
【0039】
本願の第3の側面は、上記モリブデン合金管ターゲット材の応用を提供する。モリブデン合金管ターゲット材は、電子部品用積層配線膜の主導電層上にスパッタにより付着して金属被覆層を形成し、前記電子部品は、平面ディスプレイ、薄膜太陽エネルギ又は半導体装置等である。
【発明の効果】
【0040】
従来技術と比較して、本願の有益な効果は、以下の通りである。
1)レニウム元素を添加した後、ターゲット材の延性靭性を増加し、ターゲット材の変形加工能力を高めることができる。
2)モリブデン合金管ターゲット材は後続の調製過程における押出成形により、結晶粒寸法を微細化でき、結晶粒寸法≦100μm、結晶粒度4~5級の均一微結晶ターゲット材を得ることができる。
3)本願は少量のレニウムを添加して他の成分と協働することにより、ターゲット材の性能と加工能力を改善する役割を効果的に果たすことができる。
4)本願で調製したモリブデン合金管ターゲット材の結晶粒は小さく、スパッタ速度は結晶粒の粗大なターゲット材のスパッタ速度よりも速い。また、ターゲット材の結晶粒寸法の差が小さく(分布が均一)、ターゲットスパッタによって堆積された薄膜の厚さ分布がより均一である。本願で調製されたモリブデン合金管ターゲット材でスパッタによって得られた薄膜の品質は大幅に改善される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本願の実施例で調製されたモリブデン合金管ターゲット材の微視的組織形態模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の実施例において、本願の内容をさらに詳細に説明し、本願の保護範囲は、以下の各実施例を含むが、これらに限定されない。実施例に具体的な条件が明記されていないものは、当業界通常の条件またはメーカーが提案した条件に従って行うことができる。使用する薬品や機器に生産メーカーが明記されていないものは、いずれも市販で入手できる通常製品である。
【0043】
Re元素がモリブデン中で発揮する「レニウム効果」を通じて、材料の室温塑性を改善し、塑性脆性転移温度を下げ、結晶粒を微細化する。モリブデン合金管ターゲット材にRe元素を添加することにより、ターゲット材の変形性能を向上させ、すなわち押出などの変形方式により、大寸法の板状ターゲット材を調製し、焼鈍処理により、均一な微結晶を有するターゲット材を得ることができる。
【0044】
以下、具体的な実施例を用いて本願について詳細に説明する。
特に説明がない限り、以下の実施例でいう粉末粒度はいずれもFSSSであり、割合は質量比である。
本願の実施例における結晶粒度レベル(級別)試験の基準は、「GB/T6394 金属平均結晶粒度測定方法」である。
以下の実施例でいう歩留まりは、押出変形後に得られた合格管ブランクの数/押出変形を行う熱間圧延ブランクの数*100%である。
【0045】
実施例1
本実施例にかかるモリブデン合金管ターゲットの調製方法は、以下の工程:
純度3N5、粒度3.5μmの純Mo粉と、純度3N、粒度3.2μmのNi粉と、純度3N、粒度3.4μmのTiH2粉と、純度4N、粒度4μmのレニウム粉とを、ターゲット材の各元素質量比Mo:Ni:Ti:Re=60:20:18:2に従って、140Kgの原料を用意し、ここで、チタンの添加は原料であるモリブデン粉の一部にすべての水素化チタン粉末を添加した後、水素雰囲気中で800℃で4hの還元を行い、還元後のモリブデンチタン合金粉末(モリブデンチタン合金粉末におけるモリブデン元素とチタン元素の質量比は1:1)を得た後、モリブデンチタン合金粉末を残りの混合しようとする粉末に添加する工程1と、
工程1で得られた粉末をボールミル缶に入れ、BPRを1:1とし、負圧まで排気し、アルゴンガスを大気圧まで充填し、混合時間を13hとし、回転速度を200r/minとする工程2と、
工程2で得られた混合後の粉末をステンレス製の管状金型に入れ、冷間等方圧加圧(Cold isostatic pressing、CIP)成形を行い、プレス圧力を200MPaとし、保圧時間を10分とする工程3と、
工程3で得られたCIP管状ブランクを整形し、ブランクの幾何学寸法を規則的且つ完全なものにする工程4と、
工程4で整形後のブランクをシースに入れ、10-1Paまで排気し、排気を5h保持して密封する工程5と、
工程5のシースを熱間等方圧加圧(Hot isostatic pressing、HIP)し、保温温度を920℃とし、圧力を120MPaとし、保温保圧時間を4hとする工程6と、
工程6のシースを機械加工により除去し、管ターゲットの外周面の平坦、突起無し、管ブランク外径180mm、内径140mmを確保する工程7と、
工程7で得られた管ブランクをマッフル炉に入れ、空気雰囲気で加熱し、押出開始温度を1350℃とし、保温時間を90分とし、各パスの押出変形率を15~25%とし、各パスの押出前の保温温度を前のパスよりも50℃下げ、各パスの押出前の保温時間を90minとし、押出変形終了温度を980℃前後とし、管ブランク寸法を外径120mm、内径100mmとする工程8と、
工程8で得られた管ブランクの内外表面を機械加工し、外径115mm、内径105mmの管ブランクを得る工程9と、
工程9で得られた管ブランクをArガス雰囲気下で焼鈍処理し、焼鈍温度1100℃、保温時間90分で、結晶粒寸法66μm~92μm、結晶粒度4級の均一微結晶管材を得て、具体的には図1を参照することができる工程10と、を含む。
本実施例の調製方法で得られた管ターゲット材は亀裂がなく、歩留まりは100%であった。
【0046】
実施例2
本実施例にかかるモリブデン合金管ターゲットの調製方法は、以下の工程:
純度3N5、粒度3.8μmの純Mo粉と、純度3N、粒度2.4μmのNi粉と、純度3N、粒度3.0μmのTiH2粉と、純度4N、粒度3.5μmのレニウム粉とを、ターゲット材の各元素質量比Mo:Ni:Ti:Re=73:15:10:2に従って、200Kgの原料を用意し、ここで、チタンの添加は原料であるモリブデン粉の一部にすべての水素化チタン粉末を添加した後、水素雰囲気中で750℃で4hの還元を行い、還元後のモリブデンチタン合金粉末(モリブデンチタン合金粉末におけるモリブデン元素とチタン元素の質量比は2:1)を得て、モリブデンチタン合金粉末を残りの混合しようとする粉末に添加する工程1と、
工程1で得られた粉末をボールミル缶に入れ、BPRを1:2とし、負圧まで排気し、アルゴンガスを大気圧まで充填し、混合時間を15hとし、回転速度を200r/minとする工程2と、
工程2で得られた混合後の粉末をステンレス製の管状金型に入れ、冷間等方圧加圧成形を行い、プレス圧力を200MPaとし、保圧時間を8分とする工程3と、
工程3で得られたCIP管状ブランクを整形し、ブランクの幾何学寸法を規則的且つ完全なものにする工程4と、
工程4で整形後のブランクをシースに入れ、10-2Paまで排気し、排気を4h保持して密封する工程5と、
工程5のシースを熱間等方圧加圧(HIP)し、保温温度を940℃とし、圧力を150MPaとし、保温保圧時間を3hとする工程6と、
工程6のシースを機械加工により除去し、管ターゲットの外周面の平坦、突起無し、管ブランク外径200mm、内径120mmを確保する工程7と、
工程7で得られた管ブランクをマッフル炉に入れ、空気雰囲気で加熱し、押出開始温度を1300℃とし、保温時間を90分とし、各パスの押出変形率を15~25%とし、各パスの押出前の保温温度を前のパスよりも50℃下げ、各パスの押出前の保温時間を90minとし、押出変形終了温度を1050℃前後とし、管ブランク寸法を外径150mm、内径130mmとする工程8と、
工程8で得られた管ブランクの内外表面を機械加工し、外径145mm、内径135mmの管ブランクを得る工程9と、
工程9で得られた管ブランクをArガス雰囲気下で焼鈍処理し、焼鈍温度1250℃、保温時間90分で、結晶粒寸法60μm~85μm、結晶粒度5級の均一微結晶管材を得る工程10と、を含む。
本実施例の調製方法で得られたモリブデン合金管状ターゲット材は亀裂がなく、歩留まりは100%であった。
【0047】
実施例3
本実施例にかかるモリブデン合金管ターゲット及び調製方法であって、特に調製方法は以下の工程:
純度3N5、粒度3.2μmの純Mo粉と、純度3N、粒度3.5μmのNi粉と、純度3N、粒度3.5μmのTiH2粉と、純度4N、粒度3.5μmのレニウム粉とを、ターゲット材の各元素質量比Mo:Ni:Ti:Re=70:15:10:5に従って、70Kgの原料を用意し、ここで、チタンの添加は原料であるモリブデン粉の一部に40%質量比の水素化チタン粉末を添加した後、水素雰囲気中で800℃で3hの還元をし、還元後のモリブデンチタン合金粉末を得て、モリブデンチタン合金粉末を残りの混合しようとする粉末に添加する工程1と、
工程1で得られた粉末をボールミル缶に入れ、BPRを1:1とし、負圧まで排気し、アルゴンガスを大気圧まで充填し、混合時間を16hとし、回転速度を200r/minとする工程2と、
工程2で得られた混合後の粉末をステンレス製の管状金型に入れ、冷間等方圧加圧成形を行い、プレス圧力を150MPaとし、保圧時間を15分とする工程3と、
工程3で得られたCIP管状ブランクを整形し、ブランクの幾何学寸法を規則且つ完全にする工程4と、
工程4で整形後のブランクをシースに入れ、10-1Paまで排気し、排気6hを保持して密封する工程5と、
工程5のシースを熱間等方圧加圧(HIP)し、保温温度を920℃とし、圧力を170MPaとし、保温保圧時間を3hとする工程6と、
工程6のシースを機械加工により除去し、管ターゲットの外周面の平坦、突起無し、管ブランク外径240mm、内径100mmを確保する工程7と、
工程7で得られた管ブランクをマッフル炉に入れ、空気雰囲気で加熱し、押出開始温度を1350℃とし、保温時間を120分とし、各パスの押出変形率を15~25%とし、各パスの押出前の保温温度を前のパスよりも50℃下げ、各パスの押出前の保温時間を90minとし、押出変形終了温度を1080℃前後とし、管ブランク寸法を外径160mm、内径130mmとする工程8と、
工程8で得られた管ブランクの内外表面を機械加工し、外径155mm、内径135mmの管ブランクを得る工程9と、
工程9で得られた管ブランクをArガス雰囲気下で焼鈍処理し、焼鈍温度1250℃、保温時間60分で、結晶粒寸法55μm~80μm、結晶粒度5級の均一微結晶管材を得る工程10と、を含む。
本実施例で得られた管状ターゲット材は亀裂がなく、歩留まりは100%であった。
【0048】
実施例4
本実施例にかかるモリブデン合金管ターゲット及び調製方法であって、特に調製方法は以下の工程:
純度3N5、粒度3.8μmの純Mo粉と、純度3N、粒度3.5μmのNi粉と、純度3N、粒度3.2μmのTiH2粉と、純度4N、粒度2.8μmのレニウム粉とを、ターゲット材の各元素質量比Mo:Ni:Ti:Re=74:15:10:1に従って、150Kgの原料を用意し、ここで、チタンの添加は原料であるモリブデン粉の一部に全ての水素化チタン粉末を添加した後、水素雰囲気中で800℃で4hの還元をし、還元後のモリブデンチタン合金粉末(モリブデンチタン合金粉末中のモリブデン元素とチタン元素の質量比は2:1)を得て、モリブデンチタン合金粉末を残りの混合しようとする粉末に添加する工程1と、
工程1で得られた粉末をボールミル缶に入れ、BPRを1:2とし、負圧まで排気し、アルゴンガスを大気圧まで充填し、混合時間を16hとし、回転速度を200r/minとする工程2と、
工程2で得られた混合後の粉末をステンレス製の管状金型に入れ、冷間等方圧加圧成形を行い、プレス圧力を200MPaとし、保圧時間を10分とする工程3と、
工程3で得られたCIP管状ブランクを整形し、ブランクの幾何学寸法を規則且つ完全にする工程4と、
工程4で整形後のブランクをシースに入れ、10-2Paまで排気し、排気4hを保持して密封する工程5と、
工程5のシースを熱間等方圧加圧(HIP)し、保温温度を930℃とし、圧力を150MPaとし、保温保圧時間を4hとする工程6と、
工程6のシースを機械加工により除去し、管ターゲットの外周面の平坦、突起無し、管ブランク外径220mm、内径100mmを確保する工程7と、
工程7で得られた管ブランクをマッフル炉に入れ、空気雰囲気で加熱し、押出開始温度を1350℃とし、保温時間を90分とし、各パスの押出変形率を15~25%とし、各パスの押出前の保温温度を前のパスよりも50℃下げ、各パスの押出前の保温時間を90minとし、押出変形終了温度を1080℃前後とし、管ブランク寸法を外径165mm、内径135mmとする工程8と、
工程8で得られた管ブランクの内外表面を機械加工し、外径160mm、内径140mmの管ブランクを得る工程9と、
工程9で得られた管ブランクをArガス雰囲気下で焼鈍処理し、焼鈍温度1200℃、保温時間100分で、結晶粒寸法70μm~100μm、結晶粒度4級の均一微結晶管材を得る工程10と、を含む。
本実施例で得られた管状ターゲット材は亀裂がなく、歩留まりは100%であった。
【0049】
実施例5
工程1であって、純度3N5、粒度3.8μmの純Mo粉と、純度3N、粒度2.4μmのNi粉と、純度3N、粒度3.4μmのTiH2粉と、純度4N、粒度4μmのレニウム粉と、Crの原料であり、粒度3.5μmのクロム粉とを、ターゲット材の各元素質量比Mo:Ni:Ti:Re:Cr=60:20:16:2:2に従って、140Kgの原料を用意し、ここで、チタンの添加は原料であるモリブデン粉の一部に全ての水素化チタン粉末を添加した後、水素雰囲気中で800℃で4hの還元をし、還元後のモリブデンチタン合金粉末(モリブデンチタン合金粉末中のモリブデン元素とチタン元素の質量比は1:1)を得て、モリブデンチタン合金粉末を残りの混合しようとする粉末に添加する工程1
次の工程は実施例1と同じである。
得られたターゲット材結晶粒寸法は55μm~85μm、結晶粒度は5級である。
本実施例で得られた管状ターゲット材は亀裂がなく、歩留まりは100%であった。
【0050】
比較例1
押出成形プロセスのパラメータが実施例1と異なる以外は、残りは実施例1と同じ調製方法である。本比較例の押出成形プロセスにおけるパス変形量は30%であった。
押出成形の最初のパスでは、ブランクに表面亀裂が発生し、押出成形の2番目のパスでは、ブランクが割れた。
比較例1で調製されたモリブデン合金管ターゲット材は亀裂が多く、機械加工により亀裂部位を除去する必要があり、材料の利用率に影響を与える。
【0051】
比較例2
レニウム元素を添加しなかった以外は、実施例1と同様の調製方法である。
比較例2で調製されたモリブデン合金管ターゲット材は変形が困難であり、押出の1回目のパスで、深刻な亀裂が発生し、変形処理を行うことができなかった。
【0052】
比較例3
この比較例はターゲット材の各元素質量比Mo:Ni:Ti:Re=69:15:10:6に従って、140Kgの原料を用意し、残りは実施例3と同様である。
比較例3で調製されたモリブデン合金管ターゲット材は、コストが大幅に上昇し、かつレニウム含有量が高すぎるため、かえって変形の困難度が増加し、変形過程でブランク表面に亀裂が発生した。
同時に、Re含有量が多い場合、Reは他の元素と合金相を形成することができ、後続のめっき効果に影響を与える。
一部の結晶粒寸法が100μmを超え、結晶粒均一性が悪い。
本比較例の管ターゲット材は亀裂が発生し、歩留まりは50%であった。
【0053】
比較例4
実施例1と同様であるが、押出開始温度1500℃を区別とした。
比較例4の押出開始温度が高すぎるため、ブランクにおけるニッケルが局所的に融解し、表面の酸化が深刻になり、ブランクの熱可塑性が悪くなり、押出中にブランクが割れた。
【0054】
比較例5
実施例1と同様であるが、本比較例の押出ポロセスにおいて、各パスの加熱保温温度が前パスの加熱保温温度に基づいて120℃低下したことのみを区別とした。
本比較例で得られた管状ターゲット材の結晶粒寸法は90μm~160μmであり、結晶粒均一性が悪い。
本実施例で得られた管ターゲット材は亀裂が発生し、歩留まりは50%未満であった。
【0055】
比較例6
実施例1と同様であるが、焼鈍温度が1350℃であることのみを区別とした。
比較例6で調製されたモリブデン合金管ターゲット材は結晶粒寸法が大きく、120μm~200μmであり、結晶粒度1~3級であり、混晶が現れ、局所的に大きな結晶粒がある。
【0056】
以上、本願について詳述した。当業者にとっては、本願の趣旨及び範囲を逸脱することなく、及び不必要な実験を行うことをせずに、同等のパラメータ、割合及び条件の下で、広い範囲で本願を実施することができる。本願は特別な実施形態を提供しているが、本願をさらに改善することができると理解すべきである。要するに、本願の原理によれば、本願は、本願に開示されている範囲を逸脱して、当技術分野で知られている従来技術を用いて行われた変更を含む任意の変更、用途、または本願に対する改良を含むことを意図する。以下に添付する特許請求の範囲に従って、いくつかの基本的な特徴の応用を行うことができる。

図1
【手続補正書】
【提出日】2024-08-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン合金管ターゲット材の調製方法であって、
質量%で、Ni:10~30%、Ti:5~25%、Re:0.5~5%、M:0~15%を含み、MはCr、Zr、Ta、Nbのうちの少なくとも1つであり、前記MはTiの一部の代わりに使用され、残りはMo及び不可避的不純物であり、かつ前記モリブデン合金管ターゲット材におけるMoの質量%含有量が50%以上であるモリブデン合金管ターゲット材であって、前記モリブデン合金管ターゲット材の各元素の質量分率に基づいてそれぞれ原料を秤量し、均一に混合し、モリブデン合金粉末を得る粉混合工程と、
混合後の粉末を金型に入れ、冷間等方圧加圧成形を行い、第1ブランクを得る冷間等方圧加圧成形工程と、
前記第1ブランクを熱間等方圧加圧成形し、第2ブランクを得る熱間等方圧加圧成形工程と、
前記第2ブランクを押出成形し、第3ブランクを得る押出成形工程と、
前記第3ブランクを焼鈍処理する焼鈍処理と、を含み、
前記押出成形は降温押出であり、前記押出成形の開始温度は1100~1400℃であり、前記押出成形の終了温度は900~1100℃であり
記押出の各パスの押出変形率は15~25%であり、前記押出成形の総変形量は40~80%である、
ことを特徴とするモリブデン合金管ターゲット材の調製方法。
【請求項2】
前記冷間等方圧加圧成形後の前記第1ブランクを整形する整形と、
前記熱間等方圧加圧成形前に、前記整形後の前記第1ブランクをシースに入れ、排気を行って真空密封するクラッドと、
前記熱間等方圧加圧成形後、前記第2ブランクの前記シースを機械加工により除去するシースの除去と、
前記焼鈍処理前に、前記第3ブランクを機械加工する機械加工と、をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のモリブデン合金管ターゲット材の調製方法。
【請求項3】
前記モリブデン合金管ターゲット材は、質量%で、Ni:10~30%、Ti:5~25%、Re:1~5%、M:0~5%を含み、前記MはCr、Zr、Ta、Nbのうちの少なくとも1つであり、前記MはTiの一部の代わりに使用され、残りはMo及び不可避的不純物であり、かつモリブデン合金管ターゲット材におけるMoの質量%含有量は60%以上である、
ことを特徴とする請求項2に記載のモリブデン合金管ターゲット材の調製方法。
【請求項4】
前記粉混合工程において、前記原料は、純度が3N5以上であるモリブデン粉であって、FSSS範囲は2.5~4μmであるモリブデン粉と、純度が3N以上であるニッケル粉であって、FSSS範囲は2~3μmであるニッケル粉と、チタン粉又は水素化チタンであるチタン源であって、チタン粉の純度は3N以上であり、チタン粉のFSSS範囲は2~4μmであり、水素化チタンの純度は2N以上であり、水素化チタンのFSSS範囲は2~4μmである前記チタン源と、純度が4N以上であるレニウム粉であって、FSSSは2~4μmである前記レニウム粉と、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のモリブデン合金管ターゲット材の調製方法。
【請求項5】
モリブデン合金管ターゲット材におけるチタン元素は、モリブデンチタン合金粉末の形で添加されるものであり、前記モリブデンチタン合金粉末は、原料中のモリブデン粉の一部を水素化チタン粉末と混合した後、還元処理して得られるものである、
ことを特徴とする請求項4に記載のモリブデン合金管ターゲット材の調製方法。
【請求項6】
前記モリブデンチタン合金粉末のモリブデンチタン質量比は90:10~70:30である、
ことを特徴とする請求項5に記載のモリブデン合金管ターゲット材の調製方法。
【請求項7】
前記モリブデンチタン合金粉末の調製中、前記還元処理は水素雰囲気中で行われ、前記還元処理の温度は500~900℃であり、前記還元処理の時間は2~8hである、
ことを特徴とする請求項に記載のモリブデン合金管ターゲット材の調製方法。
【請求項8】
前記粉混合はボールミル缶中で行われ、BPRは1:1~2:1であり、負圧まで排気した後にアルゴンガスを充填し、ボールミル缶中のアルゴンガス圧力は大気圧であり、混合時間は10h~16hであり、回転速度は50~300r/minであり、
前記冷間等方圧加圧成形では、前記冷間等方圧加圧成形のプレス圧力は150~200MPa、保圧時間は5~20分であり、
好ましくは、前記金型はステンレス製の管状金型であり、
前記熱間等方圧加圧成形の保温温度は900℃~980℃、圧力は100~170MPa、保圧時間は2~5hである、
ことを特徴とする請求項に記載のモリブデン合金管ターゲット材の調製方法
【請求項9】
各パスの押出を行う前に、前記第2ブランクをマッフル炉に入れ、空気又はアルゴンガス雰囲気で加熱し、保温温度を1100~1400℃とし、保温時間を30~120分とし、出炉後に前記各パスの押出を開始し、
前記降温押出は、具体的には、後のパスの押出前の加熱保温温度が前のパスの押出前の加熱保温温度より順次低くなるものである、
ことを特徴とする請求項8に記載のモリブデン合金管ターゲット材の調製方法
【請求項10】
前記後のパスの押出前の加熱保温温度は、前記前のパスの加熱保温温度に基づいて0よりも大きく100℃以下を低下するものである、
ことを特徴とする請求項9に記載のモリブデン合金管ターゲット材の調製方法
【請求項11】
前記焼鈍処理はアルゴンガス雰囲気下で行われ、焼鈍温度は1000~1300℃であり、焼鈍保温時間は60~120分である、
ことを特徴とする請求項8に記載のモリブデン合金管ターゲット材の調製方法。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の調製方法で調製されたモリブデン合金管ターゲット材。
【請求項13】
前記モリブデン合金管ターゲット材の結晶粒寸法は100μm以下であり、結晶粒度は4~5級である、
ことを特徴とする請求項12に記載のモリブデン合金管ターゲット材。
【請求項14】
モリブデン合金管ターゲット材が電子部品用積層配線膜の主導電層にスパッタにより付着して金属被覆層を形成し、前記電子部品は平面ディスプレイ、太陽エネルギ薄膜又は半導体装置である、
ことを特徴とする請求項12に記載のモリブデン合金管ターゲット材の応用。
【国際調査報告】