(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-18
(54)【発明の名称】MOX触媒で改質された単結晶TA3N5ナノ粒子、触媒、触媒を用いた水分解方法、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 35/39 20240101AFI20250311BHJP
B01J 27/24 20060101ALI20250311BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20250311BHJP
B01J 23/20 20060101ALI20250311BHJP
B01J 23/75 20060101ALI20250311BHJP
B01J 35/45 20240101ALI20250311BHJP
C01B 13/02 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
B01J35/39 ZAB
B01J27/24 M ZNM
B01J37/08
B01J23/20 M
B01J23/75 M
B01J35/45
C01B13/02 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547839
(86)(22)【出願日】2023-02-14
(85)【翻訳文提出日】2024-10-07
(86)【国際出願番号】 US2023012963
(87)【国際公開番号】W WO2023158623
(87)【国際公開日】2023-08-24
(32)【優先日】2022-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】512189233
【氏名又は名称】グローバル アドバンスト メタルズ ユー.エス.エー.,インコーポレイティド
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【氏名又は名称】中島 彩夏
(74)【代理人】
【識別番号】100231647
【氏名又は名称】千種 美也子
(72)【発明者】
【氏名】堂免 一成
(72)【発明者】
【氏名】久富 隆史
(72)【発明者】
【氏名】クラウス,メアリー
(72)【発明者】
【氏名】イン,アイジュン
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ゴードン
【テーマコード(参考)】
4G042
4G169
【Fターム(参考)】
4G042BA08
4G042BB04
4G169AA02
4G169AA08
4G169AA12
4G169BA48A
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB11A
4G169BB11B
4G169BC10A
4G169BC51A
4G169BC56A
4G169BC56B
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BD02A
4G169BD02B
4G169BD06A
4G169BD06B
4G169CB81
4G169CC33
4G169DA08
4G169EA01Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC25
4G169EC27
4G169FA01
4G169FB14
4G169FB29
4G169FB78
4G169FB80
4G169HA05
4G169HB06
4G169HB10
4G169HC02
4G169HC29
4G169HD02
4G169HE09
4G169HF02
(57)【要約】
窒化タンタル、具体的には単結晶Ta3N5ナノ粒子などの新規なTa3N5ナノ粒子が開示される。助触媒とともに使用されるナノ粒子がさらに開示される。本発明はまた、CoOx助触媒などの金属酸化物で改質されたTa3N5ナノ粒子に関するものであって、Oxはコバルト酸化物の一部である酸化物を表す。水を酸化してO2を生成するための触媒が開示されている。本ナノ粒子は、さらに、水還元触媒を含むように改質することができる。水分解触媒がさらに開示される。本ナノ粒子および触媒の製造方法も開示されている。触媒を利用して水を分解する方法もさらに記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MO
x助触媒で改質された単結晶Ta
3N
5ナノ粒子であって、Mは金属であり、およびO
xは金属酸化物の一部である酸化物を表すものである、単結晶Ta
3N
5ナノ粒子。
【請求項2】
MO
xはCoO
x助触媒であって、O
xはコバルト酸化物の一部である酸化物を表すものである、請求項1に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子。
【請求項3】
MO
x助触媒は、単結晶Ta
3N
5ナノ粒子の総重量に基づいて少なくとも0.01重量%の量でTa
3N
5ナノ粒子に含浸されるものである、請求項1に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子。
【請求項4】
MO
x助触媒は、単結晶Ta
3N
5ナノ粒子の総重量に基づいて少なくとも0.5重量%の量でTa
3N
5ナノ粒子に含浸されるものである、請求項1に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子。
【請求項5】
MO
x助触媒はCoO、Co
2O、Co
2O
3、および/またはCo
3O
4である、請求項1に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子。
【請求項6】
単結晶ナノ粒子は、0.1%を超える光触媒O
2発生反応(OER)の見かけの量子収率を有するものである、請求項1に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子。
【請求項7】
単結晶ナノ粒子は、0.1%~9.4%の光触媒O
2発生反応(OER)の見かけの量子収率を有する、請求項1に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子。
【請求項8】
単結晶ナノ粒子は少なくとも1つの金属でドープされている、請求項1に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子。
【請求項9】
請求項1に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子と、該単結晶ナノ粒子の表面に分散させた白金および/または他の金属触媒を含む触媒。
【請求項10】
請求項1に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子を含み、および0.015%を超える太陽光から水素への(STH)エネルギー変換効率を有する、光触媒。
【請求項11】
太陽光から水素への(STH)エネルギー変換効率が0.015%~0.1%である、請求項10に記載の光触媒。
【請求項12】
請求項1に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子を含み、および5μmol/hを超えるH
2生成量を有する、光触媒。
【請求項13】
前記H
2生成量は5μmol/hから13μmol/hである、請求項12に記載の光触媒。
【請求項14】
請求項1に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子を含み、および0.15%を超える見かけの量子収率(AQY)を有する、光触媒。
【請求項15】
前記AQYが0.15%~0.54%である、請求項14に記載の光触媒。
【請求項16】
さらに、H
2生成量が5μmol/hを超えるか、または、見かけの量子収率(AQY)が0.15%を超えるか、またはその両方を有する、請求項10に記載の光触媒。
【請求項17】
請求項1に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子を含む光触媒。
【請求項18】
請求項17に記載の光触媒をエネルギー源とともに流体または溶液中で利用することを含む、水を分解する方法。
【請求項19】
水を触媒的に水素と酸素の元素に分解する方法であって、O
2を生成するための酸化反応は請求項17に記載の光触媒を利用することを含む、方法。
【請求項20】
H
2を生成する還元反応をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
還元反応では、少なくとも1つの金属がドープされた窒化タンタルの単結晶ナノ粒子が使用される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
還元反応では、Ta
3N
5:Mg+Zr、Ta
3N
5:Mg、Ta
3N
5:Zr、またはこれらの任意の組み合わせである単結晶ナノ粒子が使用される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
還元反応では、Ta
3N
5:Mg+Zr、Ta
3N
5:Mg、Ta
3N
5:Zr、またはこれらの任意の組み合わせである単結晶ナノ粒子と、少なくとも1つの助触媒が使用される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
請求項1に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子の製造方法であって、前記方法は、球状タンタル粉末または塩凝集体を有するタンタル凝集体、または任意に塩でカプセル化することができる火炎合成タンタルのいずれかを窒化プロセスに供することを含むものであって、前記窒化プロセスは、NH
3流下で700K以上の温度で10分から32時間窒化を行って窒化タンタルを形成し、次いで窒化タンタルをMO
x助触媒で含浸することを含む、方法。
【請求項25】
1時間から8時間の間前記温度が700Kから1200Kである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記方法は、窒化タンタルにMgCl
2または他の第1の金属塩およびZrOCl
2または他の第2の金属塩を含浸させることをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
単結晶ナノ粒子は単分散ナノロッド粒子である、請求項1に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子。
【請求項28】
単分散ナノロッド粒子の平均長は50nmから500nmを有する、請求項27に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子。
【請求項29】
前記光触媒は、流体または溶液と接触する不均一相である、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
エネルギー源は太陽エネルギーである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
単結晶ナノ粒子は、少なくとも200μmol h
-1のO
2発生速度を提供する、請求項1に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子。
【請求項32】
単結晶ナノ粒子は、少なくとも300μmol h
-1のO
2発生速度を提供する、請求項1に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子。
【請求項33】
単結晶ナノ粒子は、少なくとも450μmol h
-1のO
2発生速度を提供する、請求項1に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子。
【請求項34】
前記方法は、平均粒子径が20nmから100nmを有する球状タンタル粉末を、1150Kから1230Kの温度で4から8時間窒化プロセスに供し、窒化タンタルを0.3重量%から0.7重量%の担持でMO
x助触媒に含浸させることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項35】
前記方法は、前記塩凝集体を有する前記タンタル凝集体、または前記塩でカプセル化された前記火炎合成タンタルを、前記温度が1000Kから1100Kで8時間から32時間の窒化プロセスに供すること、および前記窒化タンタルを、0.3重量%から0.7重量%の担持でMO
x助触媒に含浸することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項36】
前記塩凝集体を有する前記タンタル凝集体、または前記塩でカプセル化された前記火炎合成タンタルは、タンタルおよび塩の重量に基づいて25重量%から70重量%の塩含有量を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記含浸は、前記Ta
3N
5ナノ粒子を金属前駆体と混合して分散スラリーを形成し、次いで回収を行い回収した改質ナノ粒子を乾燥させ、次いで前記ナノ粒子をNH
3ガス流下で500K以上の温度で加熱して、MO
x助触媒で改質されたTa
3N
5ナノ粒子を得ることを含む、請求項34~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
請求項24または請求項34~37のいずれか1項に記載の方法で製造された、MO
x助触媒で改質されたTa
3N
5ナノ粒子。
【請求項39】
単結晶ナノ粒子は少なくとも2つの金属でドープされている、請求項1に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子。
【請求項40】
単結晶ナノ粒子は2つの金属で共ドープされている、請求項1に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子。
【請求項41】
単結晶ナノ粒子もドープされて、Ta
3N
5:Mg+Zr、Ta
3N
5:Mg、Ta
3N
5:Zr、またはこれらの任意の組み合わせが形成される、請求項1に記載の単結晶Ta
3N
5ナノ粒子。
【請求項42】
a)MO
x助触媒で改質された単結晶Ta
3N
5ナノ粒子(ここで、O
xはコバルト酸化物の一部である酸化物を表す)、および2)改質またはドープされたZrおよび/またはMgを含む、触媒。
【請求項43】
触媒的に水を水素と酸素の元素に分解する方法であって、前記方法は請求項42に記載の触媒を利用することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
この出願は、2022年2月15日に提出された先の米国仮特許出願第63/310,237号の35 U.S.C.§119(e)に基づく利益を主張するものであり、その全文は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
光触媒の存在下で太陽エネルギーを使用して水を分解し、水素と酸素を生成する方法は、クリーンな大規模燃料生産の潜在的な手段として研究されてきた。地球温暖化への懸念から、水素燃料の生産はますます注目を集めている。クリーンな燃料である水素を生成するために、光触媒による水分解などの方法が研究されている。水分解は、安価な再生可能資源である水を利用するため、特に有望である。光触媒水分解は、触媒と太陽光を使用して水から水素を生成するというシンプルさを持つ。
【0003】
太陽光発電とそれに続く水の電気分解の2段階システムとは対照的に、光触媒水分解プロセスは光触媒が水と直接接触することによって実行される。光触媒は、水に対して均一な環境(水中に浮遊する光触媒)にあるか、または水に対して不均一な相(水と接触する表面に結合した光触媒)にある。不均一光触媒プロセスの例としては、特許文献1および特許文献2に記載されているものがあり、これらの特許文献の方法は本発明の触媒とともに利用することができ、その全体が本明細書に参照により組み込まれる。均一か不均一かにかかわらず、光触媒による水分解は、水の電気分解の2段階プロセスよりも効率的である。
【0004】
光触媒の有効性の主な指標は量子収率(QY)であり、QY(%)= (光化学反応速度) / (光子吸収速度)×100%である。この量は光触媒がどれほど効果的であるかを決定する信頼性の高いものである。全体的に、最良の光触媒は量子収率が高く、ガス発生速度が速くなる。報告されているほぼすべての光触媒水分解システムは、可視光領域でのQYが低い(例えば、420nmで3%を超えることはめったにない)ことが報告されており、潜在的な実用化を大きく妨げている。
【0005】
エネルギー不足と環境破壊に関する世界的に増大する問題を解決するために、人工光合成(光触媒による水分解とCO2の削減)は、太陽エネルギーを高付加価値の化学エネルギーに変換する有望な方法である(非特許文献1;および非特許文献2)。
【0006】
光触媒による水分解には通常、水素と酸素の生成につながる2つの別々の反応経路が含まれる:2H2O=>2H2+O2
【0007】
光触媒は、対応する還元反応を触媒する水素経路を強化することができ、および/または光触媒は、対応する酸化反応を触媒する酸素経路を強化することができる。水素経路もおよび酸素経路も同時に促進することができ、かつ効率的に行うことができる光触媒を利用することが望ましい。
【0008】
水の酸化(4電子移動とO=O結合形成を伴う)は、水をH2とO2に分解するだけでなく、CO2を炭素含有化学物質に還元するための重要なステップである(非特許文献3 ; 非特許文献4; 非特許文献5)。
【0009】
可視光(波長400nm~800nm)は太陽光スペクトルの大部分を占めるため、期待される太陽エネルギー変換効率を得るには、広い可視光照射下で反応できる半導体光触媒を開発することが重要となり得る。Ta3N5は、化学組成が単純で、バンドギャップエネルギーが狭く(2.1 eV)、水の酸化還元電位にまたがる適切なバンド位置にあるため、太陽光による水分解に利用されると考えられてきた。Ta3N5は半反応からH2またはO2を生成し(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、および非特許文献9)、一段階励起で水分解できることが報告されている(非特許文献10)。
【0010】
その水酸化能力により、Zスキーム水分解とO2発生のためのTa3N5を用いた光電気化学的水分解において大幅な改善が達成された(非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13、および非特許文献14)。
【0011】
高品質のTa3N5光触媒は、光励起電荷の分離と、光触媒反応のための表面部位への電子と正孔の移動を効率的に強化するために非常に望ましい。従来のTa3N5光触媒は、通常、粉末状のTa2O5前駆体をNH3流下で高温かつ長期間窒化することによって製造されるが、結晶欠陥と不純物エネルギーレベルを持つ凝集した多結晶粒子で構成されており、光触媒の酸化活性に悪影響を及ぼす。効率的な光触媒O2発生を促進するには、Ta2O5前駆体からTa3N5の形態と表面特性を調整するためにアルカリ金属または酸化マグネシウムで改質することが必要である。Ta3N5の格子間隔に近いKTaO3と高温で容易に蒸発するカリウム成分をユニークな出発金属酸化物として適用した場合、欠陥状態が最小限に抑えられたTa3N5ナノロッド単結晶は、短時間のNH3窒化プロセスでKTaO3キューブ上に急速に成長し、可視光駆動の一段階励起による全体的な水分解でH2とO2の同時発生を示した。これは、Ta3N5の合成のための前駆体が、効率的な太陽光から化学エネルギーへの変換に向けてTa3N5の形態、結晶性、ナノ構造、および欠陥状態を操作する上で重要な機能を持っていることを示す。金属Ta粒子は、高温窒化におけるTa金属とNH3の酸化反応がTa2O5前駆体のOからNへの置換とは異なるため、よく結晶化されたTa3N5光触媒の成長に有望な材料とみなすことができ、これにより、窒化プロセスが大幅に短縮される。同じ短期窒化プロセスで、Ta金属粉末は単相Ta3N5を生成するのに対し、Ta2O5は生成しないことが報告されている。さらに、短時間のNH3窒化プロセスによってTa金属ナノ粉末から合成されドープされたナノ粒子Ta3N5単結晶は、劇的に強化された光触媒水還元活性(H2生成)を示し、ナノサイズのTa金属前駆体の高度な利用可能性を示している(非特許文献15、非特許文献16、非特許文献17、および非特許文献18)。
【0012】
Ta3N5は、優れた可視光吸収性と単純な結晶成分のため、太陽光による水分解用の有望な光触媒と考えられる。しかしながら、酸化物前駆体からの従来のTa3N5光触媒は、一般的に欠陥状態と粒界を持つ凝集した多結晶粒子を有しており、光触媒水酸化活性の大幅な向上を制限している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US10,744,495
【特許文献2】US2014/0174905
【非特許文献】
【0014】
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【非特許文献2】Wang, Z.; Li, C.; Domen, K.Recentdevelopments in heterogeneous photocatalysts for solar-driven overallwatersplitting. Chem. Soc. Rev. 2019, 48, 2109-2125
【非特許文献3】Wang, Y.; Suzuki, H.; Xie, J.; Tomita,O.;Martin, D. J.; Higashi, M.; Kong, D.; Abe, R.; Tang, J. W. Mimickingnaturalphotosynthesis: solar to renewable H2 Fuel synthesis byZ-schemewater splitting systems. Chem. Rev. 2018, 118, 5201-5241
【非特許文献4】Wang, Z.; Teramura, K.; Hosokawa, S.; Tanaka,T.Highly efficient Photocatalytic conversion of CO2 into solid COusingH2O as a reductant over Ag-modified ZnGa2O4.J.Mater. Chem. A 2015, 3, 11313-11319
【非特許文献5】Kudo, A; Miseki, Y. Heterogeneousphotocatalystmaterials for water splitting. Chem. Soc. Rev. 2009, 38, 253-278
【非特許文献6】Yuliati, L.; Yang, J. H.; Wang, X. C.;Maeda,K.; Takata, T.; Antonietti, M.; Domen; and Highly active tantalum(V)nitridenanoparticles prepared from a mesoporous carbon nitride templateforphotocatalytic hydrogen evolution under visible light irradiation. J.Mater.Chem. 2010, 20, 4295-4298
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【非特許文献16】Chen, S. S.; Shen, S.; Liu, G. J.; Qi,Y.;Zhang, F. X.; Li, C. Interface engineering of a CoOx/Ta3N5photocatalystfor unprecedented water oxidation performance undervisible-light-irradiation.Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 3047-3051
【非特許文献17】Suzuki, S.; Ando, R.; Matsui, Y.; Isechi,K.;Yubuta, K.; Teshima, K. Prismatic Ta3N5-composed spheres producedbyself-sacrificial template-like conversion of Ta particles via Na2CO3flux.CrystEngComm 2020, 22, 5122-5129
【非特許文献18】Xiao, J. D.; Vequizo, J. J.; Hisatomi,T.;Rabeah, J.; Nakabayashi, M.; Wang, Z.; Xiao, Q.; Li, H. H.; Pan, Z. H.;Krause,M.; Yin, N.; Smith, G.; Shibata, N.; Brueckner, A.; Yamakata, A.;Takata, T.;Domen, K. Simultaneously Tuning the defects and surface propertiesof Ta3N5nanoparticles by Mg-Zr codoping for significantlyaccelerated photocatalytic H2evolution. J. Am. Chem. Soc. 2021, 143,10059-10064
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、単結晶ナノ粒子であり、および/または改良された光触媒水酸化活性など(ただしこれに限定されない)の改良された触媒特性を提供する、改良されたTa3N5ナノ粒子および触媒を提供する必要がある。
【0016】
すなわち、産業界において、例えば触媒として、また水分解方法および/または他の用途に使用するための、改良されたナノ粒子、特に改良された窒化タンタルを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、本発明の特徴は、新規な窒化タンタル、具体的には新規なTa3N5ナノ粒子、例えば単結晶Ta3N5ナノ粒子を提供することである。
【0018】
さらなる特徴は、少なくとも1つの助触媒(co-catalyst)とともに使用できるTa3N5ナノ粒子を提供することである。
【0019】
本発明の別の特徴は、例えば水を酸化してO2を生成するための触媒を提供することである。
【0020】
本発明の別の特徴は、水の酸化によりO2を生成するための触媒および水の還元によりH2を生成するための触媒などの、単一の触媒を提供することである。
【0021】
本発明の別の特徴は、水酸化触媒と水還元触媒との触媒混合物によって、水を酸化してO2を生成するための触媒、および水を還元してH2を生成するための触媒などを提供することである。
【0022】
本発明の別の特徴は、水分解触媒を提供することである。
【0023】
本発明の別の特徴は、触媒の形態などのナノ粒子を使用して水を分解する方法を提供することである。
【0024】
本発明の別の特徴は、新規な窒化タンタルおよび触媒を製造する方法を提供することである。
【0025】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の説明で一部説明され、一部は説明から明らかになるか、または本発明の実施によって習得され得る。本発明の目的および他の利点は、明細書および添付の特許請求の範囲に特に指摘されている要素および組み合わせによって実現され、達成される。
【0026】
これらの利点および他の利点を達成するために、また、本明細書に具体化され、広範に説明されている本発明の目的に従って、本発明は、部分的には、窒化タンタル、特にTa3N5に関し、および、これに限定されないが、触媒などの、Ta3N5を含むまたはTa3N5から作られた産物に関する。
【0027】
本発明はまた、CoOx助触媒などの金属酸化物で改質されたTa3N5ナノ粒子に関するものであって、Oxはコバルト酸化物の一部である酸化物を表すものである。
【0028】
本発明はさらに、CoOx助触媒などの金属酸化物で改質された単結晶Ta3N5ナノ粒子に関するものであって、Oxはコバルト酸化物の一部である酸化物を表ものである。
【0029】
さらに、本発明は、CoOx助触媒などの金属触媒で改質された(例えば、単結晶の)Ta3N5ナノ粒子を含む、またはTa3N5ナノ粒子である光触媒に関するものであって、Oxはコバルト酸化物の一部である酸化物を表ものである。
【0030】
また、本発明は、CoOx助触媒などの金属酸化物助触媒で改質された単結晶Ta3N5ナノ粒子を含み、白金および/または他の触媒金属が単結晶ナノ粒子の表面に分布している触媒に関する。
【0031】
さらに、本発明は、(1)CoOx助触媒などの金属触媒で改質された(例えば、単結晶の)Ta3N5ナノ粒子を含む、またはTa3N5ナノ粒子である触媒に関するものであって、Oxは、コバルト酸化物の一部であり、(2)Zrおよび/またはMgなどの1つまたは2つの金属で改質またはドープされた酸化物(例えば、Ta3N5:Mg+Zr、Ta3N5:Mg、Ta3N5:Zr、またはこれらの任意の組み合わせ) を表す。
【0032】
助触媒は、単結晶ナノ粒子上に含浸、付着、分布、または分散させるか、または単結晶ナノ粒子とともに使用することができる。
【0033】
さらに、本発明は、触媒の混合物に関するものであって、第1触媒は水酸化触媒であり、第2触媒は水還元触媒(または水を還元する触媒)である。例えば、混合物は、第1触媒が、CoOx助触媒などの金属触媒で改質された(例えば、単結晶の)Ta3N5ナノ粒子を含むか、またはTa3N5ナノ粒子であってもよく、Oxはコバルト酸化物の一部である酸化物を表し、第2の触媒はZrおよび/またはMgなどの1つまたは2つの金属で改質またはドープされる (例えば、Ta3N5:Mg+Zr、Ta3N5:Mg、Ta3N5:Zr、またはこれらの任意の組み合わせ)。
【0034】
本発明はさらに、本発明の単結晶ナノ粒子と金属酸化物触媒(例えば、CoOx助触媒)とを含む触媒に関し、およびさらに、単結晶ナノ粒子上に均一に分布または分散されるか、またはナノ粒子と混合されるか、またはナノ粒子と組み合わせて使用される白金金属(Pt)であり得る助触媒を含む。
【0035】
本発明はさらに、水酸化触媒として使用する金属助触媒(例えば、CoOx助触媒)とともに本発明の単結晶ナノ粒子を含む触媒を、水還元触媒と組み合わせて使用する触媒に関する。例えば、還元反応のための水還元触媒は、任意で、少なくとも1つの金属がドープされた窒化タンタルである単結晶ナノ粒子を利用することができる。還元反応では、Ta3N5:Mg+Zr、Ta3N5:Mg、Ta3N5:Zr、またはこれらの任意の組み合わせである単結晶ナノ粒子を利用できる。還元反応では、Ta3N5:Mg+Zr、Ta3N5:Mg、Ta3N5:Zr、またはこれらの任意の組み合わせである単結晶ナノ粒子を、少なくとも1つの助触媒(例えば、Pt)とともに利用できる。
【0036】
さらに、本発明は、水分解の方法に関するものであり、その方法は、本発明の触媒(例えば、光触媒)を水または他の流体と接触させて利用する工程を含む。この方法は、さらなる触媒(例えば、光触媒)の使用をさらに含むことができるものであって、1つの触媒は、本明細書に記載の水酸化触媒であり、さらなる触媒は、2021年5月6日出願の米国仮特許出願番号63/184816またはWO2022/235721(参照により本明細書に組み込まれる)に記載の水還元触媒である。2つの触媒は、本発明の同じ単結晶ナノ粒子上で混合物として使用することができ、またはナノ粒子の混合物として一緒に使用して、任意の順序で導入または使用することもできる。
【0037】
さらに、本発明は、水分解の方法に関するものであって、その方法は、本発明の触媒(例えば、光触媒)を水または他の流体と接触させて使用する工程を含む。単一の/同一の触媒は、本明細書に記載の水酸化触媒と、さらに、2021年5月6日出願の米国仮特許出願番号63/184816またはWO2022/235721(参照により本明細書に組み込まれる)に記載の水還元触媒の2つの機能を有する。
【0038】
本発明はまた、本発明のナノ粒子または触媒を製造する方法に関するものであって、該方法は、球状タンタル粉末または塩凝集体を有するタンタル凝集体、または任意に塩でカプセル化することができる火炎合成タンタル(a flame synthesized tantalum)を窒化プロセスに供することを含む、窒化プロセスを有するものであり、窒化プロセスは、NH3流下で700K以上の温度で10分から4時間以上窒化を行って窒化タンタルを形成し、次いで、窒化タンタルに助触媒としてCoOxなどの金属酸化物助触媒を含浸させることを含むものである。
【0039】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、両方とも例示および説明のみを目的としており、特許請求の範囲に記載された本発明をさらに説明することを目的としていることは理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、本願の実施例で使用した、(a)Taナノ粒子前駆体(w/oNaCl/Ta)、ならびに(b)773K、(c)923K、(d)1023K、(e)1073K、および(f)1123Kで10分間の窒化により生成された生成物、ならびに(h)1173Kで4時間窒化したTaナノ粉末(w/oNaCl/Ta)から得られたTa
3N
5のXRDパターンである。
【
図2A】
図2Aは、異なる温度で4時間窒化したTaナノ粉末 (w/oNaCl/Ta) を使用して生成されたTa
3N
5ナノ粒子から得られた XRDパターンである。
【
図2B】
図2Bは、異なる温度で4時間窒化したTaナノ粉末(w/oNaCl/Ta) を使用して生成されたTa
3N
5ナノ粒子から得られたUV-Vis DRSデータである。
【
図2C】
図2Cは、本発明の触媒の窒化温度とO
2発生速度との関係を示す棒グラフである。これらのTa
3N
5ナノ粒子上での光触媒O
2発生。条件:触媒、0.15g;CoO
x担持、0.5重量%;0.2MAgNO
3水溶液、150 mL;La
2O
3バッファー、0.15g;光源、300Wキセノンランプ(λ ≧ 420nm)。
【
図2D】
図2Dは、Taナノ粉末(w/oNaCl/Ta)を1173Kで4時間窒化して作成されたTa
3N
5ナノ粒子のSEM画像である。
【
図2E】
図2Eは、Taナノ粉末(w/oNaCl/Ta)を1173Kで4時間窒化して作成されたTa
3N
5ナノ粒子のHRTEMおよびSAED画像である。
【
図3A】
図3AはXRDパターンであり、
図3Bは、棒グラフであり、異なる温度で16時間窒化されたNaCl混合Taナノ粉末(NaCl/Ta)から作成されたTa
3N
5ナノ粒子の光触媒O
2発生活性を示す。条件:触媒、0.15g;CoO
x担持、0.5重量%;0.2MAgNO
3水溶液、150 mL;La
2O
3バッファー、0.15g;光源、300W キセノンランプ(λ ≧420nm)。
【
図3B】
図3AはXRDパターンであり、
図3Bは、棒グラフであり、異なる温度で16時間窒化されたNaCl混合Taナノ粉末(NaCl/Ta)から作成されたTa
3N
5ナノ粒子の光触媒O
2発生活性を示す。条件:触媒、0.15g;CoO
x担持、0.5重量%;0.2M AgNO
3水溶液、150mL;La
2O
3バッファー、0.15g;光源、300Wキセノンランプ(λ ≧420nm)。
【
図3D】
図3Dは、1073Kで16時間窒化されたNaCl混合Taナノ粉末 (NaCl/Ta)から作成されたTa
3N
5ナノ粒子のHRTEM画像である。
【
図4】
図4は波長とAQYのグラフである:入射光波長の関数としての光触媒O
2発生中に1073Kで16時間窒化されたNaCl混合Taナノ粉末(NaCl/Ta)から作成されたTa
3N
5ナノ粒子の見かけの量子収率。条件:触媒、0.15g;CoO
x担持、0.5重量%;0.2M AgNO
3水溶液、150mL;La
2O
3バッファー、0.15g;光源、各種バンドパスフィルターを備えた300W キセノンランプ。
【
図5】
図5は、本発明の実施例において窒化されてTa
3N
5を形成したTa金属ナノ粉末(w/oNaCl/Ta)のSEM画像である。
【
図6】
図6は、照射時間と発生するO
2量のグラフである:異なる温度で4時間窒化したTaナノ粉末(w/oNaCl/Ta)を使用して生成されたTa
3N
5ナノ粒子上の光触媒O
2発生の経時変化。条件:触媒、0.15g;CoO
x担持、0.5重量%;0.2M AgNO
3水溶液、150mL;La
2O
3バッファー、0.15g;光源、300W キセノンランプ(λ ≧420nm)。
【
図7】
図7AはXRDパターンであり、
図7Bは窒化時間とO
2発生速度の関係を示すグラフであり、具体的には、1173Kで異なる時間間隔でTaナノ粉末(w/oNaCl/Ta)を窒化して得られたTa
3N
5ナノ粒子の光触媒O
2発生活性を示す。条件:光触媒、0.15g;CoO
x担持、0.5重量%;0.2M AgNO
3水溶液、150mL;La
2O
3バッファー、0.15g;光源、300W キセノンランプ(λ ≧420nm)。
【
図8】
図8は、CoO
x担持量とO
2発生速度の関係を示すグラフである。
図8は、Taナノ粉末(w/oNaCl/Ta)から1173Kで4時間合成したTa
3N
5ナノ粒子を使用して、CoO
x助触媒の担持が光触媒性能に与える影響を具体的に示す。条件:光触媒、0.15g;0.2M AgNO
3水溶液、150mL;La
2O
3バッファー、0.15g;光源、300W キセノンランプ(λ ≧420nm)。
【
図9】
図9は、本発明の実施例で使用したNaCl混合Ta金属ナノ粉末(NaCl/Ta)のSEM画像である。
【
図10A】
図10Aは、本発明の触媒、すなわち、異なる時間範囲で1073Kで窒化されたNaCl混合Taナノ粉末(NaCl/Ta)から得られたTa
3N
5ナノ粒子の窒化温度とO
2発生速度の関係を示す棒グラフである:NaCl混合Taナノ粉末(NaCl/Ta)を1073Kでさまざまな時間範囲で窒化して得られたTa
3N
5ナノ粒子の光触媒O
2発生活性。条件:光触媒、0.15g;CoO
x担持、0.5重量%;0.2M AgNO
3水溶液、150mL;La
2O
3バッファー、0.15g;光源、300W キセノンランプ(λ ≧420nm)。
【
図10C】
図10Cは、
図10Aで試験されたさまざまな時間範囲で1073Kで窒化されたNaCl混合Taナノ粉末(NaCl/Ta)から得られたTa
3N
5ナノ粒子のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、CoOx助触媒などの金属酸化物で改質されたTa3N5ナノ粒子などの窒化タンタルナノ粒子に関する。本ナノ粒子は、単独で触媒となることも、触媒の一部となることもできる。本触媒は、水を分解する方法など、さまざまな方法で使用できる。本発明はさらに、窒化タンタルナノ粒子および触媒の製造方法に関する。好ましくは、CoOx助触媒などの金属酸化物で改質されたTa3N5ナノ粒子などの窒化タンタルナノ粒子は、水酸化触媒として使用される。
【0042】
窒化タンタルナノ粒子は、本明細書で説明するように、水還元触媒としても機能するようにさらに改質することができる。水酸化触媒として機能する窒化タンタルナノ粒子は、水還元触媒として機能する窒化タンタルナノ粒子と組み合わせて使用することができる。二重触媒は、同じ窒化タンタルナノ粒子上で使用することも、窒化タンタルナノ粒子の混合物(水酸化触媒としての窒化タンタルナノ粒子と水還元触媒としての窒化タンタルナノ粒子の混合物であり、2種類のナノ粒子の混合物としての組み合わせたもの)として使用することもできる。
【0043】
窒化タンタルの具体的な例としてはTa3N5がある。
【0044】
窒化タンタルの他の例としては、Ta4N5、Ta5N6、Ta2N、TaNなどがあるが、これらに限定されない。また、一般的にはTaNx(xは0.1~3の範囲)である。
【0045】
窒化タンタルは、好ましくは狭いバンドギャップおよび/または水の酸化還元電位にまたがる伝導帯および価電子帯の適切なエネルギー位置を有するn型半導体であり得る。
【0046】
本発明のTa3N5ナノ粒子は単結晶ナノ粒子であってよい。
【0047】
本発明のTa3N5ナノ粒子は、少なくとも1 つの助触媒で改質された単結晶ナノ粒子、例えば、一般式MOx(式中、Mは金属を表し、Oxは金属酸化物の一部である酸化物を表す)の金属酸化物で改質された単結晶ナノ粒子であり得る。例示的な金属酸化物としては、CoOx、MnOx、FeOx、NiOx、IrOx、およびRuOxが挙げられる。本明細書では、CoOxの特定の実施形態が金属酸化物に関して説明されることがあるが、本発明の目的において、CoOxに関する詳細および説明は他の金属酸化物にも同様に適用されることを理解されたい。
【0048】
Ta3N5ナノ粒子は、単結晶Ta3N5単分散ナノ粒子などの単分散ナノ粒子である可能性があり、ここで単分散とは、ほぼ同じサイズの粒子を有することを意味する。単分散分布とは、ナノ粒子の集団の粒子サイズが互いに20%以内、10%以内、5%以内、または1%以内である分布であってよい。粒子サイズは、Horiba Scientific Partica LA-960V2 などのレーザー回折式粒度分布測定装置、または Horiba Scientific nanoPartica SZ-100V2シリーズなどの動的光散乱式粒度分布測定装置によって測定できる。
【0049】
上記または本明細書に記載の本発明のナノ粒子は、単分散ナノ粒子であり、結晶相が単一の結晶相であるナノ粒子であってもよい。本発明の結晶粒子には、Ta、Ca、または類似の微量相などの微量偏析相が実質的に存在しないか、または検出可能な程度に存在しない可能性がある。
【0050】
より具体的な例として、好ましい実施形態を参照すると、ナノ粒子は、CoOx助触媒で改質された単結晶Ta3N5ナノ粒子であり得るものであって、ここでOxはコバルト酸化物の一部である酸化物を表す。
【0051】
CoOx助触媒などの金属酸化物助触媒は、水酸化触媒として機能するのに十分な量、例えば単結晶Ta3N5ナノ粒子の総重量に基づいて少なくとも0.01重量%の量でTa3N5ナノ粒子に含浸される。その量は、金属酸化物改質Ta3N5ナノ粒子光触媒(例えば、CoOx改質Ta3N5ナノ粒子光触媒)の全重量に基づいて、少なくとも0.05重量%、または少なくとも0.1重量%、または少なくとも0.25重量%、または少なくとも0.5重量%以上、例えば0.01重量%~1重量%以上、または0.05重量%~1重量%であり得る。
【0052】
CoOx助触媒は、CoO、Co2O、Co2O3、および/またはCo3O4、あるいはそれらの任意の組み合わせまたは混合物であり得る。
【0053】
単結晶ナノ粒子(例えば、少なくとも1つの助触媒で改質されたTa3N5ナノ粒子、例えば、少なくとも1つの金属酸化物(例えばCoOx助触媒)で改質されたTa3N5ナノ粒子)は、420nmで少なくとも5%、420nmで少なくとも7.5%、少なくとも9%、少なくとも10%、例えば420nmで5%から10%以上の見かけの量子収率を有することができる。
【0054】
本発明はさらに、単結晶ナノ粒子(例えば、少なくとも1つの助触媒で改質されたTa3N5ナノ粒子、例えば、少なくとも1つの金属酸化物(例えばCoOx助触媒)で改質されたTa3N5ナノ粒子)である光触媒、または単結晶ナノ粒子を含む光触媒などの触媒に関する。
【0055】
触媒は、NH3窒化などの窒化プロセスによって形成された単結晶ナノ粒子であってもよい。
【0056】
本発明の光触媒などの触媒は、200μmol/hを超える、400μmol/hを超える、または600μmol/hを超える、または700μmol/hを超える、例えば200μmol/h~800μmol/hのO2生成を提供する特性を有することができる。
【0057】
本発明の触媒(例えば光触媒)は、光触媒O2発生反応(OER)の見かけの量子収率(AQY)が、0.1%を超える、例えば、0.1%から9.4%まで(例えば、この9.4%の値の20%以内、10%以内、または5%以内の量)を提供する特性を有してもよい。
【0058】
使用される触媒に、本明細書に記載の水還元触媒(同じ触媒の一部として、または水酸化触媒と組み合わせて使用される)も含まれる場合、本発明の光触媒などの触媒は、0.015%を超える、例えば0.015%~0.1%以上の太陽光から水素(STH)へのエネルギー変換効率を提供する特性を有することができる。
【0059】
使用される触媒に、本明細書に記載の水還元触媒(同じ触媒の一部として、または水酸化触媒と組み合わせて使用される)も含まれる場合、本発明の光触媒などの触媒は、5μmol/hを超える、7μmol/hを超える、9μmol/hを超える、10μmol/hを超える、または12μmol/hを超える、例えば5μmol/hから13μmol/hまでのH2生成を提供する特性を有することができる。
【0060】
使用される触媒に、本明細書に記載の水還元触媒(同じ触媒の一部として、または水酸化触媒と組み合わせて使用される)も含まれる場合、本発明の光触媒などの触媒は、光触媒H2発生反応(HER)の見かけの量子収率(AQY)が、0.15%を超える、例えば、0.15%から0.54%まで(例えばこの0.54%の値の20%以内、10%以内、または5%以内の量)を提供する特性を有することができる。
【0061】
使用される触媒に、本明細書に記載の水還元触媒(同じ触媒の一部として、または水酸化触媒と組み合わせて使用される)も含まれる場合、触媒は、200μmol/hを超えるO2生成、例えば200μmol/h~800μmol/hのO2生成を提供することと、および、5μmol/hを超えるH2生成、例えば5μmol/hから13μmol/hのH2生成を提供し、そして、光触媒O2発生反応(OER)の見かけの量子収率(AQY)が、0.1%を超える、例えば、0.1%から9.4%、および光触媒H2発生反応(HER)の見かけの量子収率(AQY)が、0.15%を超える、例えば、0.15%から0.54%の両方の特性を有することができる。触媒は、本明細書に記載のSTH特性をさらに有することができる。
【0062】
本発明はさらに、単結晶ナノ粒子(少なくとも1つの助触媒で改質されたTa3N5ナノ粒子、例えばCoOx助触媒などの金属酸化物で改質されたTa3N5ナノ粒子)をさらに改質した、または単結晶ナノ粒子の表面に分散した白金および/または他の触媒金属を含む触媒に関する。
【0063】
本発明は、さらに、本発明の単結晶ナノ粒子を金属酸化物助触媒(例えば、CoOx助触媒)とともに含む触媒を水酸化触媒として使用し、光触媒水分解において水還元触媒(本明細書に記載)と組み合わせて使用することに関する。
【0064】
光触媒などの触媒は、本明細書に記載の結晶ナノ粒子(少なくとも1つの助触媒で改質されたTa3N5ナノ粒子、例えばCoOx助触媒などの金属酸化物で改質されたTa3N5ナノ粒子)の1つを含むことができるか、本質的にからなることができるか、それらからなることができるか、それらを含むことができるか、またはそれらである、少なくとも水の酸化のための触媒であり得る。
【0065】
例えば、Ta3N5ナノ粒子光触媒は、犠牲的なAgNO3溶液(sacrificial AgNO3 solution)からO2を発生させるための高い光触媒性能を有することができる。
【0066】
本発明の触媒は、純粋なTa3N5(例えば可視光照射下)よりも高い光触媒水酸化活性を有することができる。そのより高い活性は、5%以上高くなるか、10%以上高くなるか、15%以上高くなる可能性がある。
【0067】
例えば、本発明のナノ粒子または触媒(少なくとも1つの助触媒で改質されたTa3N5ナノ粒子、例えばCoOx助触媒などの金属酸化物で改質されたTa3N5ナノ粒子)は、少なくとも200μmol/h、少なくとも300μmol/h、または少なくとも450μmol/hのO2発生速度、例えば200μmol/hから800μmol/h、200μmol/hから700μmol/h、200μmol/hから600μmol/h、または200μmol/hから500μmol/hのO2発生速度を有することができる。
【0068】
ナノ粒子の集団内に複数の窒化タンタルが存在する場合、2つ以上の異なる窒化タンタル間の分布は均一または不均一になる可能性がある。例えば、Ta3N5は、存在するすべての窒化タンタルの総重量に基づいて、最も高い重量パーセントで存在することができる。任意で、ナノ粒子の集団には1種類の窒化タンタルのみが存在する。
【0069】
本発明の単結晶ナノ粒子は、anosovite型窒化タンタル、例えばanosovite型Ta3N5に関連する単相X線回折(XRD)パターンを示すことができる。
【0070】
本発明の単結晶ナノ粒子は、様々な形状を有することができる。例えば、ナノ粒子は、単分散ナノロッド粒子または単分散球状粒子など、ナノロッド状粒子および/または球状粒子であると考えられるような形状を有することができる。
【0071】
ナノ粒子がナノロッド粒子である場合、ナノロッド粒子は長さを有することができる。長さは、50nm~500nm以上、例えば、50nm~450nm、50nm~400nm、50nm~350nm、50nm~300nm、50nm~250nm、50nm~200nm、50nm~150nm、75nm~500nm、100nm~500nm、125nm~500nm、150nm~500nm、175nm~500nm、200nm~500nm、225nm~500nm、250nm~500nm、275nm~500nm、300nm~500nm等とすることができる。長さは平均的な長さと考えられる。長さ(および幅)の測定は、走査型電子顕微鏡で撮影した画像を使用して、サンプルごとに最低3つの画像を分析し、画像ごとに最低10個の粒子を測定することで実行でき、合計で、最低30個の粒子の長さと幅を測定し、平均長さと平均幅を取得する。
【0072】
ナノ粒子がナノロッドである場合、ナノロッドのアスペクト比(長さ/幅)は少なくとも1.2(例えば、少なくとも1.3、または少なくとも1.4、または少なくとも1.5、または少なくとも1.7、または少なくとも2、または少なくとも2.5、または少なくとも3、または少なくとも4、例えば1.2から4以上、または1.3から4、または1.4から4など)である。
【0073】
ナノ粒子が球状である場合、球状ナノ粒子の平均粒子サイズ(例えば、直径)は20nmから500nm以上、例えば、50nm~500nm以上、例えば、50nm~450nm、50nm~400nm、50nm~350nm、50nm~300nm、50nm~250nm、50nm~200nm、50nm~150nm、75nm~500nm、100nm~500nm、125nm~500nm、150nm~500nm、175nm~500nm、200nm~500nm、225nm~500nm、250nm~500nm、275nm~500nm、300nm~500nmなどである。測定/方法は、レーザー回折式粒度分布分析装置を使用するか、動的光散乱式粒度分布分析装置を使用して実行できる。
【0074】
任意で、窒化タンタル(例えば、Ta3N5)は、Ta3N5(N-Ta-N)の形態で表面Taの原子比が90at%を超えることができる(例えば、91at%以上、92at%以上、95at%以上、91at%から99at%、91at%から98at%、92at%から98at%、93at%から98at%、94at%から98at%)。
【0075】
任意で、窒化タンタル(例えば、Ta3N5)は、Ta3+の形態で表面Taの原子比が1at%未満であることができる(例えば、0.9at%以下、0.8at%以下、0.5at%以下、例えば0.001at%~0.9at%、または0.01at%~0.5at%)。Ta3+の形態での表面Taの原子比は、検出されないか、0.001at%未満になる。
【0076】
任意で、窒化タンタル(例えば、Ta3N5)は、TaOxNy(O-Ta-N)の形態で表面Taの原子比が2at%以上であってもよい。原子比は2at%から5at%までである。ここで、xおよびyは、N/Oが好ましくは2より大きい、または3より大きい、または4より大きい、または4.5より大きい、または4.8より大きいものとなるような値である。
【0077】
本発明の結晶粒子は、電荷の不均衡を有し、その結果、酸素対陰イオン(O/N+O)モル比が3.0%以上または4.0%以上、例えば、3.0%から約18%、または5%から約18%、または約7%から約18%、または約10%から約18%、または 約12%から約18%、または15%以上、となる可能性がある。
【0078】
任意で、窒化タンタル(例えば、Ta3N5)は電荷の不均衡を有し、酸素対陰イオン(O/N+O)モル比が4.0%以上(例えば、モル比が5.0%から約18%、または6.0%から18%、または7.0%から18%、または8.0%から18%、または9.0%から18%、または10%から18%など)になる可能性がある。
【0079】
任意で、窒化タンタル(例えば、Ta3N5)は、Ta3+またはTa4+、またはVN、またはONなどの還元された種のうちの1つ以上が実質的に存在しないまたは検出可能な程度に存在しない窒化タンタルであってもよい。本明細書および全体を通じて使用される「実質的に存在しない」は(特に明記しない限り)、15at%未満、10at%未満、5at%未満、2.5at%未満、1.5at%未満、1at%未満、0.5at%未満、0.2at%未満、0.1at%未満、0.05at%未満、0.01at%未満、または0.001at%未満である可能性がある。VNは窒素空孔を表し、VN・・・、VN・・、VN・、VNΦのいずれかになる。そして、VN・・・、VN・・、VN・、およびVNΦは、それぞれ 0、1、2、および3個のトラップされた電子を持つVNを表し、不対電子を持つVN・・およびVNΦのみがEPR活性である可能性があることを示す。ONは酸素不純物(例えば、O2-)を表す。
【0080】
本発明の窒化タンタルは、単独で触媒として作用することができ、または任意で触媒の一部とすることもできる。本発明の触媒としての窒化タンタルは、1種以上の助触媒とともに使用することができ、および/または1種以上の金属で改質および/またはドープすることができ、および/または1種以上の金属で含浸または表面コーティングすることができる。
【0081】
本発明の触媒は光触媒であってもよい。光触媒は、紫外線や可視光(すなわち、可視光領域)などのさまざまな光波または光領域で活性になる。
【0082】
助触媒は、例えば少なくとも1つのCoOx助触媒単独のような少なくとも1つの金属酸化物であってもよく、または金属助触媒であってもよく、またはその両方であってもよい。助触媒は白金(Pt)であってよく、または白金(Pt)を含んでよく、またはさらに白金(Pt)を含むことができる。助触媒は、これらに限定されるものではないが、金、白金、コバルト、パラジウム、銀、ニッケル、またはそれらの任意の組み合わせなどの金属であるか、またはこれらを含むか、さらに含むことができる。助触媒は、Cr2O3であるか、またはこれを含むか、これをさらに含むことができる。
【0083】
金属助触媒(例えば、Pt)などの助触媒は、CoOx助触媒またはCr2O3などの別の助触媒と組み合わせて使用することができる。
【0084】
本発明の窒化タンタルは、分解水から酸素を生成するための光触媒などの触媒として機能し、分解水から水素を生成することができる光触媒などの第2の触媒と組み合わせて使用することができる。
【0085】
したがって、任意で、本発明は、水酸化触媒と水還元触媒の2つの触媒の組み合わせであってもよい。2つの触媒は混合物として一緒に使用できる。2つの触媒は、水酸化触媒の後に水還元触媒を使用するか、水還元触媒の後に水酸化触媒を使用するというように、順番に使用することができる。2つの触媒は、水分解反応のために別々に添加され得るが、水分解反応中は一緒に存在することができるように使用することができる。
【0086】
2つの触媒を使用する場合、両触媒を等量(重量比)で使用することも、一方の触媒を他方の触媒より多く使用することもできる。例えば、水酸化触媒と水還元触媒の重量比は、10:1~1:10、例えば、7.5:1~1:7.5、5:1~1:5、3:1~1:3、2:1~1:2、1.5:1~1:1.5、1.2:1~1:1.2、1.1:1~1:1.1などの重量比であり得る。
【0087】
別の選択肢として、本発明の窒化タンタルは、二重光触媒などの二重触媒として機能することができ、水の分解から酸素を生成し、また水の分解から水素を生成することもできる。この選択肢では、両方の触媒機能を達成できるように、窒化タンタルを少なくとも2つの方法で改質する。窒化タンタルは、本明細書に記載のように改質され(例えば、少なくとも1つの助触媒で改質されたTa3N5ナノ粒子、例えば、少なくとも1つの金属酸化物、例えばCoOx助触媒で改質されたTa3N5ナノ粒子)、また、Zrおよび/またはMgなどの1つまたは2つの金属で改質またはドープされる(例えば、Ta3N5:Mg+Zr、またはTa3N5:Mg、またはTa3N5:Zr、またはそれらの組み合わせ)。さらに別の例として、Mg2+および/またはZr4+陽イオンはすべてTa3N5の結晶格子内に存在する。さらに別の変更態様として、窒化タンタルはTa3N5:Mg+Zrのみであってもよい。窒化タンタルは、Ta3N5:Mgのみであってもよいし、Ta3N5:Zrのみであってもよい。これらのそれぞれにおいて、Mgおよび/またはZrは、Ta3N5の結晶格子内に陽イオンとして存在する。
【0088】
二重触媒と水分還元機能に関して、窒化タンタルが、Ta3N5:Mg+Zr、またはTa3N5:Mg、またはTa3N5:Zr、あるいはこれらの任意の組み合わせであるか、またはこれらを含む場合、窒化タンタルは、それぞれ9.0モル%および10.2モル%と高いMg対陽イオン(例えば、Mg/(Ta+Mg+Zr))およびZr対陽イオン(例えば、Zr/(Ta+Mg+Zr))の比を有することができる。Mg対陽イオン比は、1~9モル%、2~9モル%、3~9モル%、4~9モル%、5~9モル%、6~9モル%である。Zr対陽イオン比は、1~10.2モル%、2~10モル%、3~10モル%、4~10モル%、5~10モル%、6~10モル%、7~10モル%、または8~10モル%である。
【0089】
窒化タンタルは、水分還元機能のために、TaNx:M1またはTaNx:M1+M2またはこれらの任意の組み合わせとなるように改質することができ、ここでxは0.1から3の範囲であり、M1とM2は金属陽イオン(例えば、Mg、Zr、Li、Sc、Ti、Hf、Al、またはGa)を表すが、M1とM2は同じではない。
【0090】
本発明の窒化タンタルは、光触媒などのように単独で触媒として機能し、助触媒の助けを借りずに水を分解する能力を有する。
【0091】
1種以上の助触媒または金属の使用が好ましい。両方の機能、すなわち水の酸化と水の還元が望まれる場合、Ptなどの金属と、必要に応じてCr2O3または他の金属酸化物を含めることが好ましい(例えば、Pt上にCr2O3の均一な薄い層のPt/Cr2O3コアシェルナノ構造を形成する)。Ptなどの金属または他の金属の担持量は、触媒の重量に基づいて、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.5重量%、または少なくとも0.9重量%、または少なくとも1重量%であり得る。
【0092】
本発明の窒化タンタルは、光触媒などの触媒として単独で使用することができ、犠牲試薬(sacrificialreagent)を使用せずに水を分解する能力を有する。
【0093】
任意で、本発明の窒化タンタルは、本明細書に記載の例えば光触媒のように、単独で、または1つ以上の助触媒とともに触媒として機能し得るものであり、および水を分解する能力があり、1つ以上の犠牲試薬(例えば、犠牲電子供与体)、例えば、これに限定されるものではないが、AgNO3を使用して分解することができる。
【0094】
本発明の窒化タンタルは、光触媒などの触媒として単独で使用することができ、紫外線照射下または可視光下で水を分解する能力を有する。
【0095】
助触媒は、単結晶ナノ粒子上に均一に分布または分散されるなど、ナノ粒子上に分布または分散され得る。代替的にまたは追加的に、助触媒はナノ粒子と混合することも、または任意の方法でナノ粒子と組み合わせて使用することもできる。
【0096】
好ましくは、助触媒は単結晶ナノ粒子の表面に均一に分布している(例えば、表面上のいかなる場所も助触媒の重量のばらつきは±10%)。任意で、助触媒の凝集は検出されないか、または助触媒とナノ粒子の凝集は検出されない。
【0097】
本発明はさらに、本発明のナノ粒子を製造する方法に関する。
【0098】
触媒(例えば、Ta3N5ナノ粒子)を製造する方法には、球状タンタル粉末または塩バルブ金属凝集体(salt-valve metal aggregate、例えば、NaClなどの塩凝集体とのタンタル凝集体)のいずれかを穏やかな窒化プロセスに供することが含まれ得るか、またはそれを伴うことができる。「穏やかな窒化」は、NH3などのガス流下で700K以上の高温または他の温度(例えば、700Kから1300Kまたは725Kから1175K、または750Kから1175K、または775Kから1300K、または800Kから1300K、または850Kから1300K、または900Kから1300K、または925Kから1175K、または773Kから1223K)で窒化を行うことを含むことができる。この方法は、700Kから1300Kまたは900Kから1150Kの温度で、10分から40時間以上、または1時間から8時間、または8時間から32時間以上行うことができる。
【0099】
窒化タンタルの製造方法は、タンタル金属(Ta)を窒化タンタル(例えば、Ta3N5)に変換することを含むか包含し得る。タンタルは、球状のタンタル粉末(例えば、粒子の最短直径測定値上の直径および最長直径測定値を測定することによって決定されるアスペクト比が1.4対1または1.2対1であるものなど)であってもよく、または任意でNaClなどの塩でカプセル化できる火炎合成タンタルであってもよい。
【0100】
窒化タンタルへの変換は、窒化工程によって行うことができ、これには、700K以上の高温または他の温度で(例えば、700Kから1300K、725Kから1175K、750Kから1175K、775Kから1300K、800Kから1300K、850Kから1300K、900Kから1300K、925Kから1175K、または773Kから1223K)、NH3などのガス流下でタンタルの窒化を行うステップが含まれるが、これに限定されない。この方法は、700Kから1200Kまたは900Kから1150Kの温度で、10分から40時間以上、または1時間から8時間、または8時間から32時間以上行うことができる。次に、この方法は、少なくとも1つの助触媒、例えば少なくとも1つの金属酸化物、例えばCoOx助触媒またはその前駆体を窒化タンタルに含浸させることを含むことができる。
【0101】
窒化工程に関しては、ガス流用のガスは、NH3などの窒素含有ガスであってもよい。ガスの流量は、室温(25℃)および室温圧力(1気圧)で測定した場合、10ml/分以上、100ml/分以上、150ml/分以上、または200ml/分以上になり得る。窒化工程において窒化タンタルに変換されるタンタルの量は、0.01g以上、0.1g以上、1.0g以上、または10.0g以上であってもよい。
【0102】
使用されるタンタルは以下のとおりである。その製造方法は、出発物質がタンタル製造プロセスであり、火炎合成またはナトリウム/ハロゲン化物火炎カプセル化(SFE)を含むか、またはそれである方法である。本発明の出発タンタル粉末の製造に適応可能なSFEプロセスに使用される技術は、米国特許5,498,446および7,442,227に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。また、Barr, J. L. et al., "Processing salt-encapsulated tantalumnanoparticles for high purity, ultra high surface area applications," J.Nanoparticle Res. (2006), 8:11-22も参照されたい。米国特許5,498,446のSFEプロセスによる金属粉末の製造に使用される化学反応の例は次のとおりでり、ここで、「M」はTaなどの金属を指す:MClx+XNa+Inert→M+XNaCl+Inert。五塩化タンタルは、反応物MClxとして使用できるタンタルハロゲン化物の一例であり、この化学反応では、アルゴンガスが不活性(Inert)ガスおよび搬送ガスとして使用されることがある。最初に、粒子(例えば、Ta)が火炎で生成され、塩が蒸気相に残っている間に凝固によって成長する。塩は熱損失を伴ってTa粒子上および/または周囲に凝縮し、コーティングされていないコア粒子は塩粒子によって除去される可能性がある。
【0103】
使用されるタンタルは、塩のカプセル化やコーティングを施さずにSFEプロセスで得られるような粉末であってもよい。
【0104】
使用されるタンタルは、SFEプロセスによって得られるような粉末、およびNaCl/Ta粉末などの塩層またはカプセル化を含む粉末であってよい。
【0105】
少なくとも1つの助触媒、例えば少なくとも1つの金属酸化物、例えばCoOx助触媒またはその前駆体を窒化タンタルに含浸させることは、これに限定されないが、Co(NO3)2・6H2Oなどの共前駆体などの金属前駆体を使用することによって達成できる。他の金属前駆体の例としては、Mn(NO3)2・(H2O)n、Fe(NO3)3・(H2O)n、Ni(NO3)2・(H2O)n、Ru(NO3)3・(H2O)n、CoCl2・(H2O)n、MnCl2・(H2O)n、FeCl3・(H2O)n、NiCl2・(H2O)n、IrCl3・(H2O)n、およびRuCl3・(H2O)nを含むが、これらに限定されない。
【0106】
助触媒を用いて触媒を製造する方法は、単結晶ナノ粒子の複数の助触媒担持(co-catalystloading)(例えば、CoOxおよびPt担持)を含むか、またはそれを伴うことができる。それぞれのユニークな助触媒は、同じ化学反応または異なる化学反応を触媒する働きをする。 例えば、単結晶ナノ粒子は、水の酸化(酸素の生成)を触媒するのに有用な第1の助触媒担持と、水の還元(水素の生成)を触媒するのに有用な第2の助触媒担持を有することができる。
【0107】
Ta3N5ナノ粒子をCoOx助触媒で改質する方法は、含浸によって実現でき、その後NH3流下で加熱処理することができる。一般的に、例えばTa3N5粉末は、Co前駆体としてのCo(NO3)2・6H2Oなどの金属前駆体の必要量または所望量を含む水溶液に浸漬することができる。これによりスラリーが形成される。このスラリーは、超音波処理(例えば、強力な超音波処理)または他の同様の分散方法を用いて、一定時間(例えば、1から5分以上)連続的に撹拌され、Co(NO3)2溶液などの金属前駆体溶液中にTa3N5粉末が完全に分散される。その後、改質されたナノ粒子は、温水浴で乾燥するなどの任意の技術によって回収することができる。得られた粉末混合物を、例えば、500K以上の温度、例えば773Kで1時間または他の時間、NH3ガス流下(100mL min-1またはそれ以下またはそれ以上の流量)で加熱して、CoOx改質Ta3N5ナノ粒子光触媒などの金属酸化物Ta3N5ナノ粒子光触媒を得ることができる。
【0108】
上記の方法は、他のCo前駆体および/または他の金属前駆体に適用して、このタイプの助触媒で窒化タンタルを改質することができる。
【0109】
助触媒の担持には、含浸還元(IMP)法による1つ以上の助触媒(例えば、Pt)の堆積(deposition)が関与または含まれ得る。この方法は、窒化タンタル(第1の助触媒の有無にかかわらず予め担持されている)を助触媒含有化合物または助触媒前駆体(例えば、Pt含有化合物またはH2PtCl6などのPt前駆体)とともに分散させてスラリーを形成し、これを蒸気などの熱水蒸気で乾燥するまで加熱することを含む。次に、粉末をH2/N2ガス流(H2:20mL/分、N2:200mL/分)下で250℃で1時間加熱し、助触媒を担持した窒化タンタルを得ることができる。
【0110】
助触媒の担持(例えば、Ptの担持)には、in-situ光堆積(PD)法による助触媒(例えば、Pt)の堆積が関与または含まれ得る。この方法では、助触媒前駆体(例えば、Pt前駆体)を、窒化タンタル(第1助触媒の有無にかかわらず事前に担持された)ナノ粒子を含む水溶液に添加することができる。光触媒反応条件下で、助触媒(例えば、Pt)を窒化タンタルナノ粒子上にその場で(in-situ)担持することができる。
【0111】
助触媒の担持(例えば、Ptの担持)は、IMP法とPD法の組み合わせで行うことができる。例えば、助触媒の担持(例えば、Ptの担持)は、段階的な方法で行うことができる。IMP-PD段階的方法では、シード(seed)としてのIMPによる助触媒(例えば、Pt)の堆積(第1段階)と、in-situPDによる助触媒(例えば、Pt)のさらなるシード成長(第2段階)が含まれる。
【0112】
IMP法とPD法の組み合わせでは、光堆積(photodeposition:PD)法による助触媒の担持量(例えば、Ptの担持量)は、助触媒の重量%による総助触媒担持量(例えば、Ptの重量%によるPtの担持量)の70%から95%を占めることができる。
【0113】
本発明の触媒は、水または他の流体(例えば、水性流体、ここでの流体とは液体または気体を指す)を分解して、例えば(水素ガスまたは水素陽子の形で)水素を生成し、さらに(酸素ガスまたは酸素分子の形で)酸素も生成する方法に使用することができる。
【0114】
(CoOxなどの金属酸化物を有する)本発明のナノ粒子は、酸素を生成する水分解部分に特に有用であり、水素を生成する水分解部分に特に有用な触媒と組み合わせて使用することができる。各触媒(酸素を生成するための触媒と水素を生成するための触媒)は、一緒に使用することも、任意の順序で連続して使用することもできる。上記で示されているように、同じ触媒が二重目的の触媒となり得、水を分解して酸素と水素を生成するという両方の機能を実現できる。
【0115】
より具体的には、本発明はさらに、水を触媒的に水素と酸素の元素に分解する方法を含むものであって、O2を生成する酸化反応には、本明細書に記載の触媒のいずれか1つ(例えば、少なくとも1つの助触媒で改質されたTa3N5ナノ粒子、例えばCoOx助触媒などの金属酸化物で改質されたTa3N5ナノ粒子)の使用が含まれる。
【0116】
水を触媒的に水素と酸素の元素に分解する方法は、O2を生成する酸化反応の他に、2021年5月6日出願の米国仮特許出願番号63/184816またはWO2022/235721(参照により本明細書に組み込まれる)に記載の触媒(すなわち、水還元触媒)のいずれかを利用してH2を生成する還元反応をさらに含むことができる。米国仮特許出願番号63/184816またはWO2022/235721に記載されている水還元触媒の詳細と説明、およびそれを製造し使用する方法は、本発明の触媒を改質したり、触媒に含めたり(同じ触媒に、または水酸化触媒と組み合わせて使用)するために本明細書で採用することができる。
【0117】
したがって、本発明に関して、本発明の方法の一部として、H2を生成するための還元反応をさらに含めることができる。その還元反応は、任意で、少なくとも1つの金属がドープされた窒化タンタルである単結晶ナノ粒子を利用することができる。還元反応では、Ta3N5:Mg+Zr、Ta3N5:Mg、Ta3N5:Zr、またはそれらの任意の組み合わせである単結晶ナノ粒子を利用できる。還元反応では、Ta3N5:Mg+Zr、Ta3N5:Mg、Ta3N5:Zr、またはそれらの任意の組み合わせである単結晶ナノ粒子を、少なくとも1つの助触媒(例えば、Pt)とともに利用できる。
【0118】
水性流体は水であってもよい。水性流体は水ベースの流体であってもよい。水性流体はアルコールであってもよい。
【0119】
本発明の方法において、光触媒などの触媒は、流体または溶液と接触する不均一相であってもよい。
【0120】
この方法は、触媒の存在下で水または水性流体にエネルギーを適用して、水分子を水素と酸素に分解することを含むことができる。
【0121】
エネルギー源は太陽エネルギーであってもよい。エネルギー源は光エネルギーであってもよい。エネルギー源は紫外線であってもよい。エネルギー源は可視光であってもよい。エネルギー源は赤外線(IR)エネルギーであってもよい。エネルギー源は可視光照射であってもよい。そのエネルギー源は少なくとも20mW/cm2、または少なくとも40mW/cm2、または少なくとも60mW/cm2、または少なくとも80mW/cm2、または少なくとも100mW/cm2、または少なくとも200mW/cm2、または少なくとも300mW/cm2、または少なくとも400mW/cm2、または少なくとも500mW/cm2、または少なくとも600mW/cm2、または少なくとも700mW/cm2、または少なくとも800mW/cm2、または少なくとも900mW/cm2、または少なくとも1000mW/cm2の照射を提供できる。
【0122】
触媒は、水、水性流体、または他の流体中に懸濁しているか、または存在していてもよい。
【0123】
触媒は表面に付着することができ、水または水性流体または他の流体と接触することができる。
【0124】
水または水性流体または他の流体は、触媒に対して移動していても静止していてもよい。
【0125】
触媒は任意の量で存在することができる。例えば、触媒が水または水性流体または他の流体に懸濁されている場合、その量は、少なくとも0.15g/150ml流体、または少なくとも0.2g/150ml、または少なくとも0.5g/150ml、またはこれらの範囲のいずれかより下または上の他の量であり得る。触媒が表面に固定されている場合も同様の量を使用できる。
【0126】
本発明および様々な実施形態が本明細書に記載されているが、本発明を開発する過程で、Ta3N5を形成するために使用される特定のパラメータおよび材料が触媒特性に重大な影響を及ぼす可能性があることが予期せず発見された。すなわち、以下の方法が特に好ましく、得られるTa3N5触媒は、特に光触媒として使用する場合に特に好ましい。
【0127】
1つの好ましい実施形態として、使用されるTa材料は球状のTa金属粉末であり、平均粒子サイズは25nmから100nm、または約50nmから100nmであるのが好ましい。平均球状粒子サイズが100nm未満の場合に最良の結果が得られた。球状Ta粉末の窒化は、少なくとも1150K、または少なくとも1160K、または少なくとも1170K、例えば1150Kから1230K、または1170Kから1230Kの温度で窒化された場合に、予想外に優れたTa3N5を提供する。窒化時間は、少なくとも1時間、または少なくとも2時間、または少なくとも3時間、または少なくとも4時間の場合に最適であり、4~8時間の場合に最高の触媒特性が示される。助触媒、すなわちCoOxの量は、0.2重量%から0.8重量%の場合、例えば0.3重量%から0.7重量%の場合、または0.35重量%から0.5重量%の場合、または約0.5重量%の場合に良好であった。CoOx担持が0.5重量%を超えると、触媒活性は実際に低下した。最も好ましくは、0.35重量%から0.5重量%、または約0.5重量%である。これらのパラメータにより、優れた結晶性と低い欠陥密度、光吸収、および光触媒O2発生(例えば、可視光照射下でのO2発生に高い光触媒活性を発揮する)を備えた触媒が提供された。
【0128】
さらに好ましい実施形態として、使用されるTa材料は、NaCl混合Ta金属ナノ粉末(例えば、NaCl立方結晶およびTa金属ナノ粒子)などの塩混合Ta金属ナノ粉末である。NaClなどの塩含有量は、10重量%から75重量%の量、例えば25重量%から60重量%または35重量%から60重量%または40重量%から60重量%または50重量%から60重量%または約55重量%の量であり得る(Taおよび塩の総重量に基づく)。窒化プロセス中の塩の存在は、窒化プロセス中の溶融塩フラックスとして予想外にうまく機能し、高度に分散したTa3N5ナノ粒子単結晶の形成を促進した。形成されたTa3N5は、滑らかなファセットが露出した単分散のロッド状結晶だった。Ta3N5結晶の粒子サイズは窒化温度とともに増加する。この窒化プロセスにより、Ta3N5は表面から内部まで粒界のない明確な格子縞を持つことができ、塩(NaCl)混合Ta金属前駆体を使用して単結晶Ta3N5ナノ粒子が形成されたことを示す。好ましい窒化プロセス条件は、球状Taを使用する場合に比べて実際には低いものである。ここで、好ましい窒化温度は、約1000Kから1100K、たとえば1050Kから1100K、または約1073Kである。最良の特性を与える窒化時間は8時間から32時間であり、約10時間から24時間がより好ましく、12時間から18時間、または14時間から17時間、または約16時間が最も好ましい。このような好ましい条件により、生成された触媒は、照射波長での光触媒O2発生中のTa3N5ナノ粒子のO2発生と見かけの量子収率(AQY)に関して最良の光触媒性能を示した。予想外にも、フラックスとしてNaClなどの塩を使用すると、粒界や欠陥状態のない明確なTa3N5ナノ粒子単結晶が得られることが発見された。したがって、CoOx助触媒で改質されたこのTa3N5ナノ粒子では、O2発生に対するかなり高い光触媒活性が達成された。光触媒によるO2発生のAQYは、少なくとも5%などと高く、例えば420nm(± 25nm)では5%から10%、例えば9.4%だった。これらのパラメータにより、優れた結晶性と低い欠陥密度、光吸収、および光触媒O2発生(例えば、可視光照射下でのO2発生に高い光触媒活性を発揮する)を備えた触媒が提供された。
【0129】
したがって、本発明は、部分的には、太陽エネルギー変換用の光触媒の形成に有用な、熱NH3窒化による活性ナノスケール単結晶窒化物の製造に適切な出発物質を使用することに関する。
【0130】
本発明は、本発明の単なる例示として意図される以下の実施例によってさらに明確にされる。
【実施例】
【0131】
材料調達
【0132】
Ta3N5合成用のNaClを含まないTa金属ナノ粉末(w/oNaCl/Ta)の形態の火炎合成(SFE)Ta粉末(Taナノ粉末前駆体とも呼ばれる)、およびNaCl混合Ta金属ナノ粉末(NaCl/Ta)(NaCl:Ta=55:45重量%)は、Global Advanced Metals USA, Inc. から供給された。O2発生助触媒の前駆体であるCo(NO3)2・6H2O(99.95%)、犠牲電子供与体であるAgNO3(99.9%)、およびバッファーであるLa2O3(99.9%)は、それぞれ関東化学株式会社、富士フイルム和光純薬株式会社、株式会社高純度化学研究所から購入した。
【0133】
Ta3N5ナノ粒子の合成
【0134】
本実施例において、Ta3N5ナノ粒子は、Ta金属ナノ粉末(w/oNaCl/Ta)またはNaCl混合Ta金属ナノ粉末(NaCl/Ta)の窒化によって製造された。0.4~0.5gのTa金属ナノ粉末(w/oNaCl/Ta)または0.6~0.7gのNaCl混合Ta金属ナノ粉末(NaCl/Ta)をアルミナチューブに移し、100mL/分のNH3ガス流下でさまざまな温度および時間範囲で窒化した(室温および大気圧で測定)。NaCl混合Ta金属ナノ粉末前駆体を、窒化前にメノウ乳鉢で5分間粉砕した。窒化したサンプルを343Kの超純水で2時間洗浄し、その後室温で一晩完全に乾燥させた。
【0135】
CoOx助触媒によるTa3N5ナノ粒子の改質
【0136】
本実施例において、CoOx助触媒によるTa3N5ナノ粒子光触媒の改質は、含浸とそれに続くNH3流下での加熱処理によって行われた。通常、Ta3N5粉末は、Co前駆体として必要量のCo(NO3)2・6H2Oを含む水溶液に浸漬される。スラリーを強力な超音波処理で5分間連続的に撹拌し、Ta3N5粉末をCo(NO3)2溶液中に完全に分散させた。スラリーを温水浴で乾燥させた後、得られた粉末混合物をNH3ガス(100mL/分)の流下において773Kで1時間加熱し、CoOx改質Ta3N5ナノ粒子光触媒を得た。特に記載がない限り、すべての実施例において、CoOx助触媒は触媒の0.5重量%まで添加された。
【0137】
材料特性評価
【0138】
記載されている場合、以下の分析手法が使用された。X線回折(XRD)パターンは、30kVおよび30mAで動作するCu Kα放射線を備えたRigaku MiniFlex 300粉末回折計を使用して取得された。UV-vis拡散反射スペクトル(DRS)は、積分球を備えた分光光度計(V-670、JASCO)を使用して記録され、ベースライン補正の基準としてSpectralon標準が使用された。走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、HitachiSU8020システムおよびJEOL JSM-7600Fで取得された。高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)は、JEOL JEM-2800システムとJEM-2100Fシステムを使用して実施された。
【0139】
光触媒O2発生反応
【0140】
光触媒O2発生反応は、密閉ガス循環システムに接続されたパイレックス製の上部照明付き反応容器内で実施された。0.15gのCoOx改質Ta3N5光触媒とpHバッファーとしての0.15gのLa2O3を150mLのAgNO3水溶液(0.2M)に分散させた。冷却水を循環させることで温度を285Kに維持した。反応スラリーから真空排気により空気を完全に除去した後、コールドミラーとカットオフフィルター(L42、λ≧420nm)を備えた300Wキセノンランプで懸濁液を照射した。反応中、反応物溶液は冷却水システムによって288Kに維持された。発生したガス生成物は、アルゴンを担体ガスとし、モレキュラーシーブ5Aカラムを備えたGC-8Aクロマトグラフ(島津製作所製)からなる統合型熱伝導度検出器-ガスクロマトグラフィーシステム (TCD-GC) を使用して分析された。TCDの感度は、照射下で反応溶液を含む完全に排気された反応システムに導入された既知量のガスを分析することによって較正された。光触媒上にAg粒子が堆積するとO2発生速度が低下することが多いため、光触媒O2発生活性は初期のガス発生速度から推定された。
【0141】
見かけの量子収率測定
【0142】
O2発生反応条件下では、光触媒反応の見かけの量子収率(AQY)は、AQY(%)=[4×R]/I×100で表され、ここで、RとIはそれぞれガス発生速度と入射光子束を表す。係数4は、犠牲AgNO3からの光触媒O2発生反応で4つの電子が関与して1分子のO2が生成されることを示す。光源は、例えば、バンドパスフィルター(それぞれ中心波長 380、400、420、440、500、560、および600 nm(半値全幅=15nm))を備えた300W Xe ランプ(MAX-303 コンパクトキセノン光源、Asahi Spectra)でした。入射光子数はLS-100グレーティング分光放射計(EKO Instruments Co., Ltd.)を使用して測定された。
【0143】
実施例1
【0144】
Ta金属ナノ粉末からのTa3N5ナノ粒子上での光触媒O2発生。
【0145】
前述のように、Ta
3N
5は一般に、窒素源としてNH
3ガスの存在下の高温でタンタル酸化物(Ta
2O
5)を窒化することによって合成される。この反応では、Ta
5+の高い酸化状態を維持するために、3つの酸素原子を2つの窒素原子に置き換える必要がある。Ta
3N
5の形成には、還元性NH
3雰囲気中で固体陰イオンがゆっくりと拡散するプロセスが必要であり、その結果、Ta種が還元され、一定量の酸素不純物が生成される。この問題を回避するために、本発明の実施例では、平均粒子サイズが約50~100nmの球状Ta金属ナノ粉末(w/oNaCl/Ta)を前駆体として使用した(
図5)。金属Ta前駆体(w/oNaCl/Ta)を窒化してTa
3N
5相を形成することは、Taの化学状態の変化により、まったく異なる反応プロセスである。
図1は、773Kから1173Kで窒化されたTaナノ粒子前駆体(w/oNaCl/Ta)およびTaナノ粉末の中間相のXRDパターンを示す。Taナノ粒子前駆体(w/oNaCl/Ta)は金属相(Ta
0)だった。
【0146】
窒化温度は一般に、最終的なTa
3N
5生成物の結晶度と欠陥密度を決定する上で重要な役割を果たすため、Taナノ粉末前駆体(w/oNaCl/Ta)からのTa
3N
5ナノ粒子の結晶度、光吸収、および光触媒O
2発生に対する異なる窒化温度の影響を調べた。
図2Aに示すとおり、1123K~1223Kで4時間調製した硝化サンプルのXRDパターンは、標準的なTa
3N
5パターン(
図11C)とよく一致しており、この温度範囲で純粋なTa
3N
5相が首尾よく得られたことを示す。窒化温度が上昇すると、回折ピークの強度はわずかに変化し、徐々に増加するが、これは、より高い温度(1173Kまたは1223K)で処理されたサンプルの結晶性が1123Kで処理されたサンプルよりも優れていることを意味する。UV-VisDRS(
図2B)によれば、これらのサンプルの吸収端は600nm付近にあり、Ta
3N
5の特徴的な光吸収と一致する。しかしながら、サンプルのバックグラウンド吸収は温度の上昇とともに増加し、窒化温度の上昇とともにより多くの欠陥が形成されることを示唆する。
【0147】
結晶度と欠陥レベルの両方がTa
3N
5の光触媒性能に影響し、窒化温度が高いほど結晶度が高くなり(光触媒性能が高くなる)、および欠陥レベルが高くなる(光触媒性能が低くなる)。異なる硝化温度(nitration temperatures)で生成されたTa
3N
5をCoO
x助触媒で改質し、光触媒によるO
2発生を測定した。1173Kで処理されたTa
3N
5ナノ粒子は、可視光照射下でのO
2発生に対して最高の光触媒活性を示すことがわかった(
図2C)。1223Kで処理したTa
3N
5は1173Kで処理したものと同程度の結晶性を示したが、
図2Bのバックグラウンド吸収の結果から、1173Kで処理したものよりも欠陥が多く見られ、わずかに活性が低いことが示された。
【0148】
窒化温度(nitridationtemperature)に加えて、窒化期間も光触媒活性にとって重要である。Taナノ粉末前駆体(w/oNaCl/Ta)を1173Kで1時間から8時間かけて硝化して(nitrated)Ta
3N
5を形成し、続いてCoO
x助触媒で改質し、光触媒によるO
2発生を測定した。
図7Aは、CoO
x助触媒で改質されたTa
3N
5からのTa
3N
5およびO
2発生活性のXRDパターンを示し、ここで、Ta
3N
5は1173Kで1時間から8時間窒化して生成された。4時間窒化されたTa
3N
5ナノ粒子は、他のTa
3N
5サンプルよりもわずかに強い回折強度と高い光触媒性能を示した。このように、Ta金属ナノ粉末を使用したTa
3N
5ナノ粒子単結晶の成長に最適な合成条件が決定された。
【0149】
O
2発生助触媒が光触媒表面に活性触媒部位を提供し、電荷移動を改善することを考慮して、1173Kで4時間合成したTa
3N
5ナノ粒子を使用して、CoO
x助触媒の量が光触媒性能に及ぼす影響を調査した(
図8)。Taナノ粉末前駆体(w/oNaCl/Ta)から1173Kで4時間合成されたTa
3N
5ナノ粒子をCoO
x助触媒で改質した。CoO
x助触媒改質手順においてCo前駆体としてのCo(NO
3)
2・6H
2Oの量を調整することにより、0.2重量%、0.35重量%、0.5重量%、および0.7重量%のCoO
x助触媒担持物が生成された。光触媒によるO
2発生を測定した。CoO
xの担持とともに活性が増加し、CoO
x含有量が0.5重量%のときに最適レベルに達し、その後CoO
x含有量がさらに増加すると活性が減少することが観察された。
【0150】
1173Kで4時間窒化したTa
3N
5ナノ粒子の詳細な形態情報をSEMおよびHRTEMで観察した。
図2Dおよび
図2Eに示されるように、Ta
3N
5サンプルは、100nm未満の小さな粒子サイズを持つ不規則な結晶形状を示す。結晶サイズが小さいと、光触媒の表面までの電子と正孔の移動距離が短くなり、電荷の再結合の機会が大幅に減少するため、光触媒の性能に有利になる。
図2Eの赤と青の四角で囲まれた領域の拡大画像(
図2Eの矢印で示す)からは、Ta
3N
5ナノ粒子の内部に明瞭な回折縞と粒子間の明確な粒界が観察され、Ta
3N
5ナノ粒子が凝集を伴いながらも十分に結晶化された単結晶であることが確認される。
【0151】
実施例2
【0152】
NaCl混合Ta金属ナノ粉末(NaCl/Ta)からのTa
3N
5ナノ粒子上での光触媒O
2発生は、もともとNaCl立方結晶とTa金属ナノ粒子で構成されていた(
図9)。NaCl混合Ta金属ナノ粉末をNH
3気流下で1023K、1073K、1123K、1173Kで16時間窒化したところ、純粋なTa
3N
5相が得られ、温度が上昇するにつれてTa
3N
5の結晶度が高くなった(
図3A)。
図3Cは、NaCl混合Ta金属ナノ粉末(NaCl/Ta)から生成されたTa
3N
5ナノ粒子のSEM画像を示す。混合物中の55重量%のNaClは、窒化プロセス中に溶融塩フラックスとして機能し、高度に分散したTa
3N
5ナノ粒子単結晶の形成を促進した。NaClフラックスの作用により、得られたTa
3N
5ナノ粒子は滑らかな面が露出した単分散のロッド状結晶であった。Ta
3N
5結晶の粒子サイズは窒化温度とともに増加し、これはXRDパターンの強度の増加とよく一致している(
図3A)。NaCl混合Ta金属ナノ粉末からのTa
3N
5ナノ粒子のHRTEM画像には、粒界のない表面から内部までの明確な格子縞が示されており、NaCl混合Ta金属前駆体(NaCl/Ta)を使用して単結晶Ta
3N
5ナノ粒子が形成されたことを示す(
図3D)。
【0153】
NaCl混合Ta金属ナノ粉末(NaCl/Ta)から生成されたTa
3N
5ナノ粒子単結晶をCoO
x助触媒で改質し、光触媒O
2発生を測定した。NaCl混合Ta金属ナノ粉末(NaCl/Ta)から生成された高分散Ta
3N
5ナノ粒子単結晶は、Ta金属前駆体(w/oNaCl/Ta)からのTa
3N
5ナノ粒子(
図2C)と比較して、ホール(hole)犠牲試薬としてAgNO
3を使用したO
2発生に対する光触媒性能が向上した(
図3B)。1073Kで窒化されたNaCl混合Ta金属ナノ粉末(NaCl/Ta)からのTa
3N
5ナノ粒子の光触媒O
2発生活性は、他のさまざまな温度でのサンプルの中で最も高かった(
図3B)。
【0154】
窒化温度に加えて、窒化期間も光触媒活性にとって重要であることが再度調査された。NaCl混合Ta金属ナノ粉末(NaCl/Ta)を1073Kで8時間から32時間かけて硝化してTa
3N
5を形成し、続いてCoO
x助触媒で改質し、光触媒によるO
2発生を測定した(
図10A~C)。窒化時間を8時間から16時間に延長すると、Ta
3N
5ナノ粒子の結晶度と粒子サイズの両方が増加し、光触媒O
2発生が改善された。窒化時間をさらに長くすると、Ta
3N
5粒子のO
2発生活性が徐々に低下し、これは、大きな粒子内の電荷移動距離の延長と表面積の減少によるものと考えられる。
【0155】
NaCl混合Taナノ粉末(NaCl/Ta)から1073Kで16時間合成された単分散単結晶Ta
3N
5ナノ粒子は、O
2発生に対して最高の光触媒性能を示した。光触媒O
2発生中のTa
3N
5ナノ粒子の見かけの量子収率(AQY)の照射波長への依存性を
図4に示す。AQYは400nm未満の波長で増加し、400nmでピークに達し、その後徐々に減少して420nmから600nmの間の波長で最小となり、NaCl混合Taナノ粉末(NaCl/Ta)から調製されたTa
3N
5ナノ粒子の吸収プロファイルとよく一致した。AQY値は420nm(± 25nm)で9.4%、500nm(±25nm)で5.4%であり、表面やバルクの改質を行わずに前駆体から単純に調製したTa
3N
5光触媒としては比較的高い効率である。これは、金属Taナノ粉末が、欠陥状態や粒界が存在せず、効率的な光触媒O
2発生につながる高品質のTa
3N
5ナノ粒子光触媒を製造するための有望な材料であることを示す。
【0156】
まとめると、実施例に示すように、金属Taナノ粉末またはNaCl混合Taナノ粉末前駆体から、NH3窒化における酸化プロセスを経て、単結晶Ta3N5ナノ粒子が製造された。Ta金属からTa3N5相への急速な変化により、比較的穏やかな窒化条件で高品質のTa3N5ナノ粒子の形成が可能になった。さらに、フラックスとしてNaClを使用することで、粒界や欠陥状態のない明確なTa3N5ナノ粒子単結晶が得られた。したがって、CoOx助触媒で改質されたこのTa3N5ナノ粒子では、O2発生に対するかなり高い光触媒活性が達成された。光触媒によるO2発生のAQYは、420nm(± 25nm)で9.4%と高かった。本研究結果から、太陽エネルギー変換用の光触媒の形成に有用な、熱NH3窒化による活性ナノスケール単結晶窒化物の製造に適切な出発物質を使用することの有効性を確認した。
【0157】
本発明は、以下の態様/実施形態/特徴を任意の順序および/または任意の組み合わせで含む:
1. 本発明は、MOx助触媒で改質された単結晶Ta3N5ナノ粒子を含むものであって、ここで、MOxは金属酸化物であり、Mは金属であり、Oxは金属酸化物の一部である酸化物を表すものである。
2. MOxはCoOx助触媒であって、Oxはコバルト酸化物の一部である酸化物を表すものである、前記または下記のいずれかに記載の実施形態/特徴/態様の単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
3. MOx助触媒は、単結晶Ta3N5ナノ粒子の総重量に基づいて少なくとも0.01重量%の量でTa3N5ナノ粒子に含浸されるものである、前記または下記のいずれかに記載の実施形態/特徴/態様の単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
4. MOx助触媒は、単結晶Ta3N5ナノ粒子の総重量に基づいて少なくとも0.5重量%の量でTa3N5ナノ粒子に含浸されるものである、前記または下記のいずれかに記載の実施形態/特徴/態様の単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
5. MOx助触媒はCoO、Co2O、Co2O3、および/またはCo3O4である、前記または下記のいずれかに記載の実施形態/特徴/態様の単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
6. 単結晶ナノ粒子は、0.1%を超える光触媒O2発生反応(OER)の見かけの量子収率を有するものである、前記または下記のいずれかに記載の実施形態/特徴/態様の単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
7. 単結晶ナノ粒子は、0.1%~9.4%の光触媒O2発生反応(OER)の見かけの量子収率を有する、前記または下記のいずれかに記載の実施形態/特徴/態様の単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
8. 単結晶ナノ粒子は少なくとも1つの金属もドープされている、前記または下記のいずれかに記載の実施形態/特徴/態様の単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
9. 単結晶ナノ粒子の表面に白金および/または他の金属触媒を分散させたものである、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の単結晶ナノ粒子もしくは単結晶Ta3N5ナノ粒子を含む触媒(またはその使用方法)。
10. 0.015%を超える太陽光から水素への(STH)エネルギー変換効率を有する、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の単結晶ナノ粒子もしくは単結晶Ta3N5ナノ粒子を含む光触媒(またはその使用方法)。
11. 太陽光から水素への(STH)エネルギー変換効率が0.015%~0.1%である、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の光触媒または単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
12. 前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様の単結晶ナノ粒子を含み、および5μmol/hを超えるH2生成量を有する、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の光触媒または単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
13 前記H2生成量は5μmol/h~13μmol/hである、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の光触媒または単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
14. 0.15%を超える見かけの量子収率(AQY)を有する、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の光触媒または単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
15. 前記AQYが0.15%~0.54%である、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の光触媒または単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
16. さらに、H2生成量が5μmol/hを超えるか、または、見かけの量子収率(AQY)が0.15%を超えるか、またはその両方を有する、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の光触媒または単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
17. 前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の単結晶Ta3N5ナノ粒子または他の実施形態を含む光触媒(またはその使用方法)。
18. エネルギー源とともに流体または溶液中で行われる、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の光触媒または単結晶Ta3N5ナノ粒子を利用することを含む水分解方法。
19. O2を生成するための酸化反応が、エネルギー源とともに流体または溶液中で行われる、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の光触媒または単結晶Ta3N5ナノ粒子を利用することを含む、水を触媒的に水素と酸素に分解する方法。
20. H2を生成する還元反応をさらに含む、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法(または触媒またはナノ粒子)。
21. 還元反応では、少なくとも1つの金属がドープされた窒化タンタルの単結晶ナノ粒子が使用される、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法(または触媒またはナノ粒子)。
22. 還元反応では、Ta3N5:Mg+Zr、Ta3N5:Mg、Ta3N5:Zr、またはこれらの任意の組み合わせである単結晶ナノ粒子が使用される、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法(または触媒またはナノ粒子)。
23. 還元反応では、Ta3N5:Mg+Zr、Ta3N5:Mg、Ta3N5:Zr、またはこれらの任意の組み合わせである単結晶ナノ粒子と、少なくとも1つの助触媒が使用される、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法(または触媒またはナノ粒子)。
24. 前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様の単結晶ナノ粒子の製造方法であって、前記方法は、球状タンタル粉末または塩凝集体を有するタンタル凝集体、または任意に塩でカプセル化することができる火炎合成タンタルのいずれかを窒化プロセスに供することを含むものであって、前記窒化プロセスは、NH3流下で700K以上の温度で10分から32時間窒化を行って窒化タンタルを形成し、次いで窒化タンタルをMOx助触媒で含浸することを含む。
25. 前記温度は700Kから1200Kで1時間から8時間である、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法(または触媒またはナノ粒子)。
26. 前記方法は、窒化タンタルにMgCl2または他の第1の金属塩およびZrOCl2または他の第2の金属塩を含浸させることをさらに含む、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法(または触媒またはナノ粒子)。
27. 単結晶ナノ粒子は単分散ナノロッド粒子である、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
28. 単分散ナノロッド粒子の平均長は50nmから500nmである、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
29. 前記光触媒は、流体または溶液と接触する不均一相である、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法(または触媒またはナノ粒子)。
30. エネルギー源は太陽エネルギーである、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
31. 単結晶ナノ粒子は、少なくとも200μmol/hのO2発生速度を提供する、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
32. 単結晶ナノ粒子は、少なくとも300μmol/hのO2発生速度を提供する、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
33. 単結晶ナノ粒子は、少なくとも450μmol/hのO2発生速度を提供する、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
34. 前記方法は、平均粒子径が20nm~100nmである球状タンタル粉末を、1150K~1230Kの温度で4~8時間窒化プロセスに供し、窒化タンタルを0.3重量%~0.7重量%の担持でMOx助触媒に含浸させることを含む、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
35. 前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態であって、前記方法は、前記塩凝集体を有する前記タンタル凝集体、または前記塩でカプセル化された前記火炎合成タンタルを、前記温度が1000K~1100Kで8時間~32時間の窒化プロセスに供すること、および前記窒化タンタルを、0.3重量%から0.7重量%の担持でMOx助触媒に含浸することを含む。
36. 前記塩凝集体を有する前記タンタル凝集体、または前記塩でカプセル化された前記火炎合成タンタルは、タンタルおよび塩の重量に基づいて25重量%~70重量%の塩含有量を有する、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
37. 前記含浸は、前記Ta3N5ナノ粒子をCo前駆体などの金属前駆体と混合して分散スラリーを形成し、次いで回収を行い回収した改質ナノ粒子を乾燥させ、次いで前記ナノ粒子をNH3ガス流下で500K以上の温度で加熱して、MOx助触媒で改質されたTa3N5ナノ粒子を得ることを含む、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法(または触媒またはナノ粒子)。
38. 前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法(または触媒またはナノ粒子)から製造されたMOx助触媒で改質されたTa3N5ナノ粒子。
39. 単結晶ナノ粒子には少なくとも2つの金属でもドープされている、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
40. 単結晶ナノ粒子は2つの金属でも共ドープ(co-doped)されている、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
41. 単結晶ナノ粒子もドープされて、Ta3N5:Mg+Zr、Ta3N5:Mg、Ta3N5:Zr、またはこれらの任意の組み合わせが形成される、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態。
42. a)MOx助触媒で改質された単結晶Ta3N5ナノ粒子(ここで、Oxはコバルト酸化物の一部である酸化物を表す)、および2)改質またはドープされたZrおよび/またはMgを含む、触媒。
43. 水を触媒的に水素と酸素の元素に分解する方法であって、前記方法は、前記または下記のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の単結晶Ta3N5ナノ粒子または方法または他の実施形態を利用することを含む。
【0158】
本発明は、文章および/または段落で説明した上記および/または下記の様々な特徴または実施形態の任意の組み合わせを含むことができる。本明細書に開示された特徴の任意の組み合わせは、本発明の一部とみなされ、組み合わせ可能な特徴に関して制限は意図されない。
【0159】
本明細書の開示は、特定の図示された例を参照するものであり、これらの例は、限定するものではなく、例として提示されていることを理解されたい。前述の詳細な説明は、例示的な実施例について論じているが、追加の開示によって定義される本発明の精神および範囲内に含まれる可能性がある実施例のすべての修正、代替、および同等物をカバーするように解釈されるものとする。
【0160】
本開示で引用されたすべての参考文献の全内容は、本開示と矛盾しない限り、参照により本明細書に組み込まれる。
【0161】
本発明は、上記および/または以下の特許請求の範囲において文章および/または段落で説明される様々な特徴または実施形態の任意の組み合わせを含むことができる。本明細書に開示された特徴の任意の組み合わせは、本発明の一部とみなされ、組み合わせ可能な特徴に関して制限は意図されない。
【0162】
本発明の他の実施形態は、本明細書および本明細書に開示された本発明の実施を考慮することにより、当業者には明らかとなるであろう。本明細書および実施例は、本発明の真の範囲および精神が以下の特許請求の範囲およびその同等物によって示されることを前提としてのみ考慮されることが意図されている。
【0163】
図面の用語
Intensity強度
2θ/degree 2θ/度
K-M Function (arb. unit) K-M関数(任意単位)
Wavelength/nm波長/nm
Rate of O2 evolution/μmol h-1 O2発生速度/μmol h-1
Nitridation temparature窒化温度
BLUE 青
RED 赤
Amount of O2 evolved/μmol O2発生量/μmol
Irradiation time/h照射時間/時間
CoOx loading content CoOx担持含有量
【国際調査報告】