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特表2025-507459可溶性腫瘍壊死因子レセプター2(STNFR2)を分析する方法およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-19
(54)【発明の名称】可溶性腫瘍壊死因子レセプター2(STNFR2)を分析する方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20250312BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20250312BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250312BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250312BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20250312BHJP
   A61K 35/35 20150101ALI20250312BHJP
   A61K 35/48 20150101ALI20250312BHJP
   A61K 35/51 20150101ALI20250312BHJP
   A61K 35/50 20150101ALI20250312BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20250312BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20250312BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
G01N33/68
A61P37/02
A61K45/00
A61P29/00
A61P43/00 105
A61K35/28
A61K35/35
A61K35/48
A61K35/51
A61K35/50
A61P31/14
G01N33/53 Y
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545241
(86)(22)【出願日】2023-01-27
(85)【翻訳文提出日】2024-09-19
(86)【国際出願番号】 US2023011710
(87)【国際公開番号】W WO2023147029
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】63/303,585
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524283431
【氏名又は名称】アイオン ヘルススパン, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514198183
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ マイアミ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ランゾーニ, ジャコモ
(72)【発明者】
【氏名】クロピス, ディミトリオス
(72)【発明者】
【氏名】リコルディ, カミロ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045AA25
2G045BB20
2G045CB01
2G045DA36
2G045FB03
4B063QA01
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR54
4B063QR56
4B063QS32
4B063QX02
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB07
4C084ZB11
4C084ZB21
4C084ZB33
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB44
4C087BB57
4C087BB58
4C087BB59
4C087BB64
4C087CA04
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB11
4C087ZB21
4C087ZB33
(57)【要約】
本開示は、例えば、間葉系幹細胞を含む細胞の免疫調節活性を試験する方法、およびCOVID-19関連急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を処置するための免疫調節活性を有すると決定される上記細胞の使用に関する。インビボでのそれらの有効な免疫調節効果に関して間葉系幹細胞を評価するインビトロの方法が、本明細書で開示される。いくつかの実施形態において、複数の細胞は、ヒト間葉系幹細胞、または間葉系間質細胞、または医療用シグナル伝達細胞を含む。いくつかの実施形態において、上記細胞は、出生後の脂肪組織、膝蓋下脂肪体、出生後の骨髄、出生後の子宮内膜、周産期の臍帯、周産期の絨毛膜、周産期の羊膜、または周産期の胎盤に由来する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の細胞の免疫調節活性を試験する方法であって、前記方法は、
a. 前記複数の細胞を、細胞の第1群および細胞の第2群へと分離すること;
b. 前記細胞の第1群を基礎条件において培養し、前記細胞の第2群を炎症条件において培養すること;
c. 前記細胞の第1群の培養上清、前記細胞の第2群の培養上清、前記細胞の第1群の細胞、および前記細胞の第2群の細胞を収集すること;
d. 前記細胞の第1群の培養上清および前記細胞の第2群の培養上清中の可溶性腫瘍壊死因子レセプター2(TNFR2)タンパク質のレベルを決定すること;
e. 前記細胞の第1群および前記細胞の第2群の前記可溶性TNFR2タンパク質のレベルを、ステップcにおいて収集した前記細胞の第1群および前記細胞の第2群それぞれの全タンパク質レベルで正規化すること;
f. 前記細胞の第2群の前記可溶性TNFR2タンパク質の前記正規化されたレベルを前記細胞の第1群の前記可溶性TNFR2タンパク質の前記正規化されたレベルで除算することによって、炎症刺激指数(ISI)を計算すること;ならびに
g. 前記ISIが1より高い場合に、前記複数の細胞が免疫調節活性を有することを決定すること、
を包含する方法。
【請求項2】
前記複数の細胞は、ヒト間葉系幹細胞、間葉系間質細胞、または医療用シグナル伝達細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の細胞は、出生後の脂肪組織、膝蓋下脂肪体、出生後の骨髄、出生後の子宮内膜、周産期の臍帯、周産期の絨毛膜、周産期の羊膜、または周産期の胎盤に由来する、請求項1または2に記載の細胞。
【請求項4】
前記炎症条件は、腫瘍壊死因子α(TNFα)またはインターフェロンγ(IFNγ)の存在を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記炎症条件は、TNFβ、IL-1β、または結合組織成長因子(CTGF)の存在をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
COVID-19関連急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を処置することを必要とする被験体においてCOVID-19関連急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を処置する方法であって、前記方法は、前記被験体に複数の細胞を投与することを含み、ここで前記複数の細胞は、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法を使用して免疫調節活性を有するとして決定される方法。
【請求項7】
前記複数の細胞は、1より高い前記炎症刺激指数(ISI)を有するとして決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記被験体に、治療上有効な量の抗COVID治療剤を投与することをさらに包含する、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
炎症性障害または線維症のうちの少なくとも一方の状態を処置することを必要とする被験体において炎症性障害または線維症のうちの少なくとも一方の状態を処置する方法であって、前記方法は、前記被験体に複数の細胞を投与することを含み、ここで前記細胞は、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法を使用して免疫調節活性を有するとして決定される方法。
【請求項10】
前記複数の細胞は、1より高い前記炎症刺激指数(ISI)を有するとして決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記被験体に、治療上有効な量の抗COVID治療剤を投与することをさらに包含する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
炎症状態を処置することを必要とする被験体において炎症状態を処置する方法であって、前記方法は、前記被験体に複数の細胞を投与することを含み、ここで前記細胞は、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法を使用して免疫調節活性を有するとして決定される方法。
【請求項13】
前記複数の細胞は、1より高い前記炎症刺激指数(ISI)を有するとして決定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記被験体に、治療上有効な量の抗COVID治療剤を投与することをさらに包含する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
特徴づけられる線維性状態を処置することを必要とする被験体において特徴づけられる線維性状態を処置する方法であって、前記方法は、前記被験体に複数の細胞を投与することを含み、ここで前記細胞は、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法を使用して免疫調節活性を有するとして決定される方法。
【請求項16】
前記複数の細胞は、1より高い前記炎症刺激指数(ISI)を有するとして決定される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記被験体に、治療上有効な量の抗COVID治療剤を投与することをさらに包含する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
腫瘍壊死因子(TNF)の増加によって特徴づけられる状態を処置することを必要とする被験体において腫瘍壊死因子(TNF)の増加によって特徴づけられる状態を処置する方法であって、前記方法は、前記被験体に複数の細胞を投与することを含み、ここで前記細胞は、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法を使用して免疫調節活性を有するとして決定される方法。
【請求項19】
前記複数の細胞は、1より高い前記炎症刺激指数(ISI)を有するとして決定される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記被験体に、治療上有効な量の抗COVID治療剤を投与することをさらに包含する、請求項18または19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2022年1月27日出願の米国仮特許出願第63/303,585号(これは、その全体において参考として援用される)の優先権を主張する。
【0002】
分野
本開示は、細胞の免疫調節活性を決定する方法および炎症性疾患を処置するための使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
間葉系幹細胞(MSC)ベースの治療の安全性および有効性は、炎症性疾患、免疫疾患、自己免疫疾患、筋骨格系疾患、心血管系疾患、神経変性疾患、および消化管疾患を含む種々の障害に関する多くの臨床試験において調査されている。しかし、多くのこのような試験からの初期の結果から、これらの細胞治療には変動性の程度がかなりあり、臨床観察において再現性がない場合があることが明らかにされている。
【0004】
インビボでMSCをそれらの有効な免疫調節効果に関して評価するための新規なインビトロの方法が必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
本開示の一実施形態は、複数の細胞の免疫調節活性を試験するための方法であって、上記方法は、
a. 上記複数の細胞を、細胞の第1群および細胞の第2群へと分離すること;
b. 上記細胞の第1群を基礎条件において培養し、上記細胞の第2群を炎症条件において培養すること;
c. 上記細胞の第1群の培養上清、上記細胞の第2群の培養上清、上記細胞の第1群の細胞、および上記細胞の第2群の細胞を収集すること;
d. 上記細胞の第1群の培養上清および上記細胞の第2群の培養上清中の可溶性TNFR2タンパク質のレベルを決定すること;
e. 上記細胞の第1群および上記細胞の第2群の可溶性TNFR2タンパク質のレベルを、ステップcにおいて収集した上記細胞の第1群および上記細胞の第2群それぞれの全タンパク質レベルで正規化すること;
f. 上記細胞の第2群の可溶性TNFR2タンパク質の正規化されたレベルを上記細胞の第1群の可溶性TNFR2タンパク質の正規化されたレベルで除算することによって、炎症刺激指数(ISI)を計算すること;ならびに
g. 上記ISIが1より高い場合に、上記複数の細胞が炎症刺激および免疫調節活性に対する応答性を有することを決定すること、
を包含する方法である。
【0006】
いくつかの実施形態において、上記複数の細胞は、ヒト間葉系幹細胞、または間葉系間質細胞、または医療用シグナル伝達細胞を含む。いくつかの実施形態において、上記細胞は、出生後の脂肪組織、膝蓋下脂肪体、出生後の骨髄、出生後の子宮内膜、周産期の臍帯、周産期の絨毛膜、周産期の羊膜、または周産期の胎盤に由来する。
【0007】
いくつかの実施形態において、上記炎症条件は、TNFαおよび/またはIFNγの存在を含む。いくつかの実施形態において、上記炎症条件は、TNFβ、IL-1β、または結合組織成長因子(CTGF)の存在をさらに含む。
【0008】
本開示の一実施形態は、COVID-19関連急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を処置することを必要とする被験体においてCOVID-19関連急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を処置する方法であって、上記方法は、上記被験体に複数の細胞を投与することを含み、ここで上記細胞は、任意の前述の局面の方法を使用して免疫調節活性を有するとして決定される。いくつかの実施形態において、免疫調節活性を有する上記複数の細胞は、1より高い炎症刺激指数(ISI)を有するとして決定される。
【0009】
本開示の一実施形態は、炎症性障害および/または線維症を処置することを必要とする被験体において炎症性障害および/または線維症を処置する方法であって、上記方法は、上記被験体に複数の細胞を投与することを含み、ここで上記細胞は、任意の前述の局面の方法を使用して免疫調節活性を有するとして決定される。いくつかの実施形態において、免疫調節活性を有する上記複数の細胞は、1より高い炎症刺激指数(ISI)を有するとして決定される。
【0010】
本開示の一実施形態は、炎症状態を処置することを必要とする被験体において炎症状態を処置する方法であって、上記方法は、上記被験体に複数の細胞を投与することを含み、ここで上記細胞は、任意の前述の局面の方法を使用して免疫調節活性を有するとして決定される。いくつかの実施形態において、免疫調節活性を有する上記複数の細胞は、1より高い炎症刺激指数(ISI)を有するとして決定される。
【0011】
本開示の一実施形態は、特徴づけられる線維性状態を処置することを必要とする被験体において特徴づけられる線維性状態を処置する方法であって、上記方法は、上記被験体に複数の細胞を投与することを含み、ここで上記細胞は、任意の前述の局面の方法を使用して免疫調節活性を有するとして決定される。いくつかの実施形態において、免疫調節活性を有する上記複数の細胞は、1より高い炎症刺激指数(ISI)を有するとして決定される。
【0012】
本開示の一実施形態は、TNFの増加によって特徴づけられる状態を処置することを必要とする被験体においてTNFの増加によって特徴づけられる状態を処置する方法であって、上記方法は、上記被験体に複数の細胞を投与することを含み、ここで上記細胞は、任意の前述の局面の方法を使用して免疫調節活性を有するとして決定される。いくつかの実施形態において、免疫調節活性を有する上記複数の細胞は、1より高い炎症刺激指数(ISI)を有するとして決定される。いくつかの実施形態において、任意の前述の局面の方法は、上記被験体に治療上有効な量の抗COVID治療剤を投与することをさらに包含する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付の図面は、本明細書の中に組み込まれ、その一部を構成し、以下で記載されるいくつかの局面を例証する。
【0014】
図1図1は、標準的希釈物調製のステップを示す。
【0015】
図2図2は、96ウェルプレートにおけるサンプルおよび標準物を調製するレイアウトを示す(表5を参照のこと)。
【0016】
図3図3は、正規化された定量および炎症刺激指数(ISI)を介して可溶性TNFR2放出を測定する模式図を示す。
【0017】
図4図4は、炎症誘導に対して基礎培養条件において3日間にわたるUC-MSCによる可溶性TNFR2(sTNFR2)放出を示す。
【0018】
図5図5は、基礎条件に対する炎症条件におけるsTNFR2放出の比として計算された、UC-MSCによるsTNFR2放出の炎症刺激指数(ISI)を示す。
【0019】
図6図6は、患者における観察を示す。COVID-19急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を有する被験体(n=24)における可溶性腫瘍壊死因子レセプター2(sTNFR2)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、および腫瘍壊死因子β(TNFβ)の血漿濃度。6日目では、UC-MSCレシピエントは、コントロールと比較して、血漿sTNFR2の有意に上昇したレベル、ならびにTNFαおよびTNFβの有意に減少したレベルを有した。データは、メジアン値および最小から最大値を示す箱ひげ図として、ならびに個々の値を示す線付き散布図として示される。
【0020】
図7図7は、異なるドナーからの、および異なる培養継代でのUC-MSC調製物のsTNFR2炎症刺激指数(ISI)を示す。ISI値を、静的sTNFR2放出アッセイを介して得た。ヒストグラムは、3連の試験からの平均sTNFR2 ISIを示す;エラーバーは、平均の標準誤差を示す。A:UC-MSC SCI-St 継代2; B:UC-MSC SCI-St 継代4; C:UC-MSC SCI-St 継代5; D:UC-MSC SCI-R01 継代4; E:UC-MSC SCI-R01 継代5; F:UC-MSC SCI-MCB-1 バッチ1 継代2; G:UC-MSC SCI-MCB-1 バッチ2 継代2; H:UC-MSC SCI-MCB-1 継代4。
【0021】
図8図8は、トリパンブルー生存率試験の細胞の計数に関するダイヤグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
本発明の実施形態に対して詳細に参照がなされる。その例は、図面および実施例中で例証される。しかし、本発明は、多くの異なる形態において具現化され得、本明細書で示される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。
【0023】
別段定義されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。用語「含む、包含する(comprising)」およびそのバリエーションは、本明細書で使用される場合、用語「含む、包含する、が挙げられる(including)」およびそのバリエーションと同義語的に使用され、オープンで非限定的な用語である。用語「含む、包含する(comprising)」および用語「含む、包含する、が挙げられる(including)」は、種々の実施形態を記載するために本明細書で使用されており、用語「から本質的になる」および「からなる」は、より具体的な実施形態を提供するために「含む、包含する(comprising)」および「含む、包含する、が挙げられる(including)」の代わりに使用され得、同様に開示される。本開示および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a(1つの、ある)」、「an(1つの、ある)」、「the(上記、この、その)」は、文脈が別段明らかに規定しなければ,複数形への言及を含む。
【0024】
以下の定義は、本明細書において使用される用語の十分な理解のために提供される。
【0025】
用語法
用語「約」とは、量、パーセンテージなどのような測定可能な値に言及するときに本明細書で使用される場合、その測定可能な値から±20%、±10%、±5%、または±1%の変動を包含することが意味される。
【0026】
被験体への「投与」または「投与すること(administering)」は、被験体に薬剤を導入または送達する任意の経路を含む。投与は、任意の適切な経路(経口、静脈内、腹腔内、鼻内、吸入などが挙げられる)によって行われ得る。投与は、自己投与および他者による投与を含む。
【0027】
「コントロール」は、比較目的のために実験で使用される代わりの被験体またはサンプルである。コントロールは、「陽性」または「陰性」であり得る。
【0028】
用語「増加した(increased)」または「増加する」は本明細書で使用される場合、一般に、統計的に有意な量による増加を意味する; 例えば、「増加した」は、参照レベルと比較した場合、少なくとも10%の増加、例えば、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の増加、もしくは100%までおよび100%を含む増加、または参照レベルと比較した場合、10~100%の間の任意の増加、または参照レベルと比較した場合、少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍もしくは少なくとも約10倍の増加、または2倍~10倍もしくは10倍超の間の任意の増加を意味する。
【0029】
用語「低減した(reduced)」、「低減する」、「低減」、または「減少する(decrease)」とは、本明細書で使用される場合、一般に、統計的に有意な量による減少を意味する。しかし、疑義を回避するために、「低減した」は、参照レベルと比較した場合、少なくとも10%の減少、例えば、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の減少もしくは100%までおよび100%を含む減少、または参照レベルと比較した場合、10~100%の間の任意の減少を意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「レベル」とは、サンプル(例えば、被験体に由来するサンプル)中の標的分子の量に言及する。その分子の量は、当該技術で公知の任意の方法によって決定され得、その分子(すなわち、遺伝子、mRNA、cDNA、タンパク質、酵素など)の性質に一部依存する。当該技術は、ヌクレオチド(例えば、遺伝子、cDNA、mRNAなど)、ならびにタンパク質、ポリペプチド、酵素などに関する定量方法に精通している。サンプル中の分子の量またはレベルは、絶対的な用語で決定される必要はなく、相対的な用語で決定され得ることは理解される(例えば、コントロールまたは偽または非処理のサンプルと比較した場合)。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「し得る、してもよい(may)」、「必要に応じて、および「必要に応じて~し得る(may optionally)」とは、交換可能に使用され、その状態が起こる場合、およびその状態が起こらない場合を含むことが意味される。従って、例えば、製剤が「賦形剤を含み得る(may include an excipient)」という陳述は、上記製剤が賦形剤を含む場合、および上記製剤が賦形剤を含まない場合を含むことが意味される。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「被験体」または「宿主」とは、生きている生物(例えば、ヒト、家畜、イヌ、ネコ、および他の哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されない哺乳動物)に言及し得る。治療剤の投与は、被験体の処置のために有効な投与量および期間で行われ得る。いくつかの実施形態において、上記被験体はヒトである。
【0033】
「治療剤」とは、有益な生物学的効果を有する任意の組成物に言及する。有益な生物学的効果としては、治療効果(例えば、障害もしくは他の望ましくない生理学的状態の処置)および予防的効果(例えば、障害もしくは他の望ましくない生理学的状態の防止)の両方を含む。上記用語はまた、本明細書で具体的に言及される有益な薬剤の薬学的に受容可能な、薬理学的に活性な誘導体(塩、エステル、アミド、プロエージェント、活性代謝産物、異性体、フラグメント、アナログなどが挙げられるが、これらに限定されない)を包含する。用語「治療剤」が使用される場合、次いで、または特定の薬剤が特に特定される場合、上記用語は、その薬剤自体、および薬学的に受容可能な、薬理学的に活性な、塩、エステル、アミド、プロエージェント、結合体、活性代謝産物、異性体、フラグメント、アナログなどを含むことが理解されるべきである。
【0034】
用語「処置する」、「処置すること(treating)」、「処置」、およびその文法上のバリエーションは、本明細書で使用される場合、感染もしくは状態の1もしくはこれより多くの付随する症状を部分的にもしくは完全に遅らせる、緩和する、軽減する、またはその強度を低減する、ならびに/あるいはCOVID-19関連急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の1もしくはこれより多くの症状を緩和する、軽減するもしくは妨げることを含む。本発明に従う処置は、防止的に、予防的に、緩和的にまたは治療的に適用され得る。予防的処置は、開始前に(例えば、感染の明らかな徴候の前に)、早期の開始の間に(例えば、感染の初期徴候および症状の際に)、感染の発生の確立後に、被験体に投与される。予防的投与は、感染の出現の数分から数ヶ月前に行い得る。
【0035】
方法
いくつかの局面において、複数の細胞の免疫調節活性を試験するための方法であって、上記方法は、
a. 上記複数の細胞を、細胞の第1群および細胞の第2群へと分離すること;
b. 上記細胞の第1群を基礎条件において培養し、上記細胞の第2群を炎症条件において培養すること;
c. 上記細胞の第1群の培養上清、上記細胞の第2群の培養上清、上記細胞の第1群の細胞、および上記細胞の第2群の細胞を収集すること;
d. 上記第1群の培養上清および上記第2群の培養上清中の可溶性TNFR2タンパク質のレベルを決定すること;
e. 上記第1群および上記第2群の可溶性TNFR2タンパク質のレベルを、ステップcにおいて収集した上記細胞の群それぞれの全タンパク質レベルで正規化すること;
f. 上記第2群の可溶性TNFR2タンパク質の正規化されたレベルを上記第1群の可溶性TNFR2タンパク質の正規化されたレベルで除算することによって、炎症刺激指数(ISI)を計算すること;ならびに
g. 上記ISIが1より高い場合に、上記複数の細胞が免疫調節活性を有することを決定すること、
を包含する方法が、本明細書で開示される。
【0036】
可溶性腫瘍壊死因子レセプター2(可溶性TNFR2)がまた、sTNFR2、sTNF-RII、TNFRSF1B、CD120b、TBPII、TNF-R-II、TNF-R75、TNFBR、TNFR1B、TNFR2、TNFR80、p75、p75TNFR、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリーメンバー1B、TNFレセプタースーパーファミリーメンバー1B(これは、遺伝子「TNFレセプタースーパーファミリーメンバー1B」またはTNFRSF1Bの生成物である)として公知であることは、理解されるべきであり、本明細書で企図される。
【0037】
本明細書で使用される用語「免疫調節活性(immunomodulatory activity)」は、炎症活性を減少させるという活性(例えば、超炎症性(例えば、サイトカインストーム)または超免疫応答のモジュレーションを含む)に言及する。いくつかの実施形態において、上記免疫調節活性は、抗炎症効果である。
【0038】
いくつかの実施形態において、上記複数の細胞は、ヒト間葉系幹細胞、もしくは間葉系間質細胞、医療用シグナル伝達細胞、または複能性間質細胞を含む。いくつかの実施形態において、上記細胞は、出生後の膵島または膵臓組織、出生後の脂肪組織、膝蓋下脂肪体、出生後の骨髄、出生後の子宮内膜、出生後の歯髄、周産期の臍帯、周産期の絨毛膜、周産期の羊膜、または周産期の胎盤のような器官および組織に由来する。いくつかの実施形態において、上記複数の細胞は、間葉系幹細胞を含む。
【0039】
本明細書で使用される場合、「間葉系幹細胞」または「MSC」は、間葉系細胞系統(すなわち、骨芽細胞、軟骨芽細胞および脂肪細胞)に分化し得る細胞である。当業者に周知の形態的および機能的基準は、これらの細胞を特定するために使用される。Horwitzら,前出; Dominiciら,前出; Trivedi P & Hematti P, 「Derivation and immunological characterization of mesenchymal stromal cells from human embryonic stem cells」, Exp. Hematol. Jan. 5, 2008; Trivedi P & Hematti P, 「Simultaneous generation of CD34+ primitive hematopoietic cells and CD56+ mesenchymal stromal cells from human embryonic stem cells cocultured with murine OP9 stromal cells」, Exp. Hematol. 35: 146-154(2007);および米国公開特許出願番号2006/0008902(これらの各々は、その全体において示されるかのように本明細書に参考として援用される)を参照のこと。間葉系幹細胞またはMSCは、それらの特徴的な単核の卵形、星形または紡錘形で、丸~楕円の核を有することによって認識され得る。楕円の細長い核は、代表的には、顕著な核小体およびヘテロクロマチンおよびユークロマチンの混在を有する。これらの細胞は、細胞質をほとんど有しないが、核から延びるようである多くの薄い突起を有する。間葉系幹細胞またはMSCは、造血系統細胞マーカー(例えば、CD14、CD34、またはCD45)および内皮系統細胞マーカー(例えば、CD31およびVE-カドヘリン)に関しては陰性であるが、以下のマーカーのうちの1つ、2つ、3つまたはこれより多くのものに関して染色し得る: CD29、CD44、CD73、CD90、CD105、CD106(VCAM)、CD166(ALCAM)、およびアルカリホスファターゼ。間葉系幹細胞またはMSCは、マーカーとしてSTRO-1および/またはCD146も発現し得る。
【0040】
いくつかの実施形態において、上記炎症条件は、TNFαおよび/またはIFNγを含む。いくつかの実施形態において、上記炎症条件は、TNFβ、IL-1β、結合組織成長因子(CTGF)をさらに含む。よって、いくつかの例では、上記細胞の第2群は、TNFα、IFNγ、TNFβ、IL-1β、もしくはCTGF、またはこれらの任意の組み合わせを含む細胞培養培地中で培養される。
【0041】
上記細胞は、少なくとも1分間、少なくとも1時間、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも15日間、少なくとも20日間、少なくとも30日間、または少なくとも60日間、培養され得る。いくつかの実施形態において、上記細胞は、少なくとも1日間培養される。いくつかの実施形態において、上記細胞は、少なくとも2日間培養される。いくつかの実施形態において、上記細胞は、少なくとも3日間培養される。
【0042】
COVID-19関連急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を処置することを必要とする被験体においてCOVID-19関連急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を処置する方法であって、上記方法は、上記被験体に複数の細胞を投与することを含み、ここで上記細胞は、本明細書で開示される方法を使用して免疫調節活性を有するとして決定される、方法がまた、本明細書で開示される。
【0043】
よって、いくつかの局面において、COVID-19関連急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を処置することを必要とする被験体においてCOVID-19関連急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を処置する方法であって、上記方法は、
上記被験体に複数の細胞を投与することを含み、ここで上記細胞は、
a. 上記複数の細胞を、細胞の第1群および細胞の第2群へと分離すること;
b. 上記細胞の第1群を基礎条件において培養し、上記細胞の第2群を炎症条件において培養すること;
c. 上記細胞の第1群の培養上清、上記細胞の第2群の培養上清、上記細胞の第1群の細胞、および上記細胞の第2群の細胞を収集すること;
d. 上記第1群の培養上清および上記第2群の培養上清中の可溶性TNFR2タンパク質のレベルを決定すること;
e. 上記第1群および上記第2群の可溶性TNFR2タンパク質のレベルを、ステップcにおいて収集した上記細胞の群それぞれの全タンパク質レベルで正規化すること;
f. 上記第2群の可溶性TNFR2タンパク質の正規化されたレベルを上記第1群の可溶性TNFR2タンパク質の正規化されたレベルで除算することによって、炎症刺激指数(ISI)を計算すること;ならびに
g. 上記ISIが1より高い場合に、上記複数の細胞が免疫調節活性を有することを決定すること、
を包含する方法を使用して、免疫調節活性を有するとして決定される、
方法が本明細書で開示される。
【0044】
いくつかの実施形態において、上記複数の細胞は、1より高いISIを有するとして決定される。
【0045】
「ARDS」または「急性呼吸窮迫症候群」とは、肺にあるごく小さな弾力性のある気嚢(肺胞)に液体が蓄積した場合に起こる疾患に言及する。ARDSの症状としては、例えば、極度の呼吸困難、息切れ、および/または血中の低酸素レベルが挙げられ、それはまた、錯乱、眩暈、過度の発汗、低血圧、心拍数の上昇を含む一連の他の症状を生じる。ARDSは、肺胞における炎症性の変化の結果であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される方法を使用して免疫調節活性を有するとして決定される上記細胞の投与は、例えば、極度の呼吸困難、息切れ、および/または血中の低酸素レベルを含む症状のうちの1またはこれより多くのものを軽減し得る。いくつかの実施形態において、上記細胞の投与は、上記被験体において炎症を減少させる。いくつかの実施形態において、上記細胞の投与は、上記被験体においてSARS-CoV-2ウイルスのレベルを減少させる。本明細書で使用される用語「増加する」および「減少する」が、上記被験体の処置の前と比較した場合の、または一般的集団または試験集団におけるこのような症状の発生率と比較した場合の、増加または減少に言及し得ることは、理解されるべきであり、本明細書で企図される。
【0046】
炎症性障害および/または線維症を処置することを必要とする被験体において炎症性障害および/または線維症を処置する方法であって、上記方法は、上記被験体に複数の細胞を投与することを含み、ここで上記細胞は、本明細書で開示される方法を使用して免疫調節活性を有するとして決定される方法がまた、本明細書で開示される。
【0047】
よって、いくつかの局面において、炎症性障害および/または線維症を処置することを必要とする被験体において炎症性障害および/または線維症を処置する方法であって、上記方法は、上記被験体に複数の細胞を投与することを含み、ここで上記細胞は、
a. 上記複数の細胞を、細胞の第1群および細胞の第2群へと分離すること;
b. 上記細胞の第1群を基礎条件において培養し、上記細胞の第2群を炎症条件において培養すること;
c. 上記細胞の第1群の培養上清、上記細胞の第2群の培養上清、上記細胞の第1群の細胞、および上記細胞の第2群の細胞を収集すること;
d. 上記第1群の培養上清および上記第2群の培養上清中の可溶性TNFR2タンパク質のレベルを決定すること;
e. 上記第1群および上記第2群の可溶性TNFR2タンパク質のレベルを、ステップcにおいて収集した上記細胞の群それぞれの全タンパク質レベルで正規化すること;
f. 上記第2群の可溶性TNFR2タンパク質の正規化されたレベルを上記第1群の可溶性TNFR2タンパク質の正規化されたレベルで除算することによって、炎症刺激指数(ISI)を計算すること;ならびに
g. 上記ISIが1より高い場合に、上記複数の細胞が免疫調節活性を有することを決定すること、
を包含する方法を使用して、免疫調節活性を有するとして決定される、
方法が本明細書で開示される。
【0048】
いくつかの実施形態において、上記複数の細胞は、1より高いISIを有するとして決定される。
【0049】
いくつかの実施形態において、任意の前述の局面の方法は、上記被験体に治療上有効な量の抗COVID治療剤を投与することをさらに包含する。
【0050】
一実施形態において、上記抗COVID治療剤は、以下のうちの1またはこれより多くのものである: バリシチニブ、ルキソリチニブ、トファシチニブ、イマチニブ、フルボキサミン、メチルプレドニゾロン、ロピナビル、リトナビル、ダルナビル、ファビピラビル、レムデシビル、ソホスブビル/ダクラタスビル、ニルマトレルビル、ブデソニド、アルテスナート、I型インターフェロン、テルミサルタン、ニタゾキサニド、ニクロサミド、ブロムヘキシン、ドルナーゼアルファ、デクスメデトミジン、フルオキセチン、サビザブリン、リバビリン、モルヌピラビル、ダノプレビル、ベムニホスブビル、ガリデシビル、BCX-4430、オパガニブ、アルビドール、クロロキン、デキサメタゾン、ヘパリン、ニタゾキサニド、トシリズマブ、サリルマブ、レビリマブ、シルツキシマブ、クラザキズマブ、シルクマブ、オロキズマブ、アナキンラ、カナキヌマブ、マブリリムマブ、レンジルマブ、ギムシルマブ、オチリマブ、TJ003234、エマパルマブ、アダリムマブ、インフィキシマブ(Infiximab)、セクキヌマブ、イキセキズマブ、リサンキズマブ、ルホトレルビル)、エンソビベプ、フェンレチニド、リンタトリモド、ベムセンチニブ、プリチデプシン、エメチン塩酸塩、スズプロトポルフィリン、アントロキノノール、二メシル酸アピリモド(Apilimod dimesylate)、ブレキナル、ブリラシジン、サンギバマイシン、テンポール(Tempol)、RP-7214、PBI-0451、およびマシチニブ。
【0051】
一実施形態において、静的sTNFR2放出アッセイにおいて、細胞は、別個の培養容器中で培養され、炎症培地またはコントロール(基礎)培地に曝される。次いで、sTNFR2の値は、それぞれの培地中で測定され、正規化され、上記条件において測定されるsTNFR2の間の比が計算される。
【0052】
図7は、異なるドナーからの、異なる培養継代でのUC-MSC調製物でのsTNFR2炎症刺激指数(ISI)を示す。ISI値を、静的sTNFR2放出アッセイを介して得た。そのヒストグラムは、三連の試験からの平均sTNFR2 ISIを示す;エラーバーは、平均の標準誤差を示す。A: UC-MSC SCI-St 継代2; B: UC-MSC SCI-St 継代4; C: UC-MSC SCI-St 継代5; D: UC-MSC SCI-R01 継代4; E: UC- MSC SCI-R01 継代5; F: UC-MSC SCI-MCB-1 バッチ1 継代2; G: UC-MSC SCI-MCB-1 バッチ2 継代2; H: UC-MSC SCI-MCB-1 継代4。
【0053】
一実施形態において、動的なsTNFR2放出アッセイにおいて、同じ細胞調製物が固定して維持され、培養培地が上記細胞の周りを流れる(「灌流(perifusion)」)。この実施形態において、その同じ細胞が、異なる時間範囲の間に、固定された細胞の周りに異なる組成を有する培地の流動を介して、基礎条件および炎症条件培地に動的に曝され得る。サンプルは、灌流アッセイ全体を通じて異なる時点で収集され、sTNFR2放出の値が種々のサンプルにおいて測定され得、その差異が、基礎培地と比較して、炎症培地への曝露後に測定されるsTNFR2の量において計算され得る。チャンバに固定された細胞の周りで培地の自動化灌流を行うための機器は、市販されている。
【0054】
sTNFR2放出における差異(「デルタsTNFR2」、または「ΔsTNFR2」と称される)、およびsTNFR2放出における変化の動態は、複数の細胞調製物を比較する場合に有用である。
【0055】
sTNFR2値の正規化は、好ましい実施形態において示されるように、インビトロ実験の結論における細胞タンパク質含有量に基づき得る。
【0056】
他の実施形態において、sTNFR2の正規化は、初期の播種における細胞数、または細胞播種密度、または培養培地中の細胞濃度に基づき得る。
【0057】
一実施形態において、上記培養培地は、10% 血小板溶解物を含む。他の実施形態において、上記培養培地は、9%、または8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1% 血小板溶解物を含む。他の実施形態において、上記培養培地は、血小板溶解物を含まない。
【0058】
一実施形態において、上記培養培地は、化学的に規定された培養培地である。
【0059】
一実施形態において、炎症誘導は、TNFαおよびIFNγの添加に基づく。他の実施形態において、炎症誘導は、TNFα、またはTNFβ、またはIFNγ、または他の炎症性サイトカインの添加に基づく。
【0060】
ある特定の実施形態において、TNFαの濃度は、0~15000pg/mlである。ある特定の実施形態において、TNFαの濃度は、0~12500pg/mlである。ある特定の実施形態において、TNFαの濃度は、0~10000pg/mlである。ある特定の実施形態において、TNFαの濃度は、0~7000pg/mlである。ある特定の実施形態において、TNFαの濃度は、0~4000pg/mlである。一実施形態において、TNFαの濃度は、0~4000pg/mlである。一実施形態において、TNFαの濃度は、0~3000pg/mlである。一実施形態において、TNFαの濃度は、0~2500pg/mlである。一実施形態において、TNFαの濃度は、0~2000pg/mlである。一実施形態において、TNFαの濃度は、0~1500pg/mlである。一実施形態において、TNFαの濃度は、0~1000pg/mlである。一実施形態において、TNFαの濃度は、100~1500pg/mlである。一実施形態において、TNFαの濃度は、500~2500pg/mlである。一実施形態において、TNFαの濃度は、500~2000pg/mlである。一実施形態において、TNFαの濃度は、500~1500pg/mlである。一実施形態において、TNFαの濃度は、500~1000pg/mlである。一実施形態において、TNFαの濃度は、500~4000pg/mlである。一実施形態において、TNFαの濃度は、100~4000pg/mlである。
【0061】
ある特定の実施形態において、TNFβの濃度は、0~20000pg/mlである。ある特定の実施形態において、TNFβの濃度は、0~15000pg/mlである。ある特定の実施形態において、TNFβの濃度は、0~10000pg/mlである。ある特定の実施形態において、TNFβの濃度は、0~5000pg/mlである。ある特定の実施形態において、TNFβの濃度は、500~5000pg/mlである。ある特定の実施形態において、TNFβの濃度は、500~10000pg/mlである。ある特定の実施形態において、TNFβの濃度は、100~10000pg/mlである。ある特定の実施形態において、TNFβの濃度は、100~7500pg/mlである。ある特定の実施形態において、TNFβの濃度は、100~5000pg/mlである。ある特定の実施形態において、TNFβの濃度は、100~20000pg/mlである。ある特定の実施形態において、TNFβの濃度は、500~20000pg/mlである。
【0062】
ある特定の実施形態において、IFNγの濃度は、0~10000pg/mlである。ある特定の実施形態において、IFNγの濃度は、0~5000pg/mlである。ある特定の実施形態において、IFNγの濃度は、0~2000pg/mlである。ある特定の実施形態において、IFNγの濃度は、0~1750pg/mlである。ある特定の実施形態において、IFNγの濃度は、0~1500pg/mlである。ある特定の実施形態において、IFNγの濃度は、0~1250pg/mlである。ある特定の実施形態において、IFNγの濃度は、0~1000pg/mlである。ある特定の実施形態において、IFNγの濃度は、500~1500pg/mlである。ある特定の実施形態において、IFNγの濃度は、500~1250pg/mlである。ある特定の実施形態において、IFNγの濃度は、100~1000pg/mlである。ある特定の実施形態において、IFNγの濃度は、100~2000pg/mlである。ある特定の実施形態において、IFNγの濃度は、500-2000pg/mlである。
【0063】
他の実施形態において、sTNFR2放出に関して分析される上記細胞は、懸濁培養で培養される。
【0064】
他の実施形態において、sTNFR2放出に関して分析される上記細胞は、撹拌なしもしくは撹拌ありのいずれかでマイクロキャリアに接着した状態で、または懸濁した状態で培養される。
【0065】
ある特定の実施形態において、sTNFR2放出に関して分析される上記細胞は、マトリクスに接着している。
【0066】
他の実施形態において、sTNFR2放出に関して分析される上記細胞は、材料中の孔を通るsTNFR2の動きを可能にするその材料に埋め込まれる。
【0067】
ある特定の実施形態において、上記細胞は、マトリクス上へと接着させるか、または容器への封入によって固定され、培養培地は、インビトロシステムにおいて上記細胞の周りを流動される(灌流)。その流体、すなわち、培養培地、または薬物を含む溶液、または細胞の懸濁物は、インビトロシステムの中を流動して、上記細胞と接触する。この方法を用いると、その固定細胞からのsTNFR2の放出の動態が詳細に分析され、異なるサンプルが、経時的におよび/またはコントロール培地もしくは炎症誘導培地への曝露後に収集され得る。
【0068】
本明細書で示される標準化されたインビトロ方法を利用して、細胞調製物をスクリーニングし、その目的がsTNFR2のインビボ濃度を増加させる、ならびに/またはTNFαおよび/もしくはTNFβのインビボ濃度を減少させることである場合に、臨床上の有効性に関する最大の潜在力を有する調製物を選択し得る。
【0069】
この方法は、細胞集団のインビボでの有効性および効果を推測する潜在力を有して、sTNFR2の放出に関連するインビトロ効力に基づいて細胞集団の選択を可能にする。
【実施例
【0070】
以下の実施例は、本開示の主題に従う組成物、方法、および結果を例証するために以下に示される。これらの実施例は、本明細書で開示される主題の全ての局面の例証であることが意図されるのではなく、むしろ、代表的な方法および結果を例証することが意図される。これらの実施例は、当業者に明らかな本発明の均等物および変形期待を排除することは意図されない。
【0071】
実施例1. 培養したUC-MSCによるsTNFR2放出の測定
本開示の一実施形態は、炎症性メディエーターの存在下または非存在下で、正規化されたELISA定量および炎症刺激指数(ISI)を介して、培養したUC-MSCによるsTNFR2放出を測定する方法である。これは、代表的方法であり、上記方法における変形形態は、本開示の範囲内である。
【0072】
間葉系幹細胞(MSC)は、ヒトの胚に起源があり、成人複能性幹細胞と考えられる。MSCは、間質幹細胞の不均一なサブセットであり、これは、骨髄、動員末梢血(mobilized peripheral blood)、臍帯血、臍帯(UC)、胎盤、脂肪組織、歯髄、ならびにさらには胎児肝臓および肺から単離され得る。UCは、2本の臍動脈(UCA)および1本の臍静脈(UCV)を含み、これらはともに、羊膜上皮によって覆われるウォートンゼリー(Wharton’s jelly)(WJ)として公知の特定の粘液様結合組織内に埋め込まれる。UCは、医療廃棄物とみなされており、非侵襲性の様式で収集される。さらに、UCへのアクセスは、倫理的な問題で妨げられたことはない。UC-MSCは、他の供給源に由来するMSCに類似であり、それらの複能性、すなわち、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞、ニューロン、および肝細胞へと分化する能力を維持しながら自己再生のための別個の能力を有するが、いくつかの分化能力が、部分的であることが公知である。さらに、MSCは、それらの強力な免疫調節特性、抗炎症特性、および修復特性に起因して、治療モダリティーとして提案されている。
【0073】
UC-MSC処置は顕著な臨床上の利益(生存の有意な改善、重篤な有害事象のない生存、およびCOVID-19急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を有する患者における回復までの時間が挙げられる)と関連することが観察された。注入後6日目で、UC-MSCレシピエントは、コントロールと比較して、血漿可溶性TNFレセプター2(sTNFR2)の有意に増加したレベル、ならびにTNFαおよびTNFβの有意に減少したレベルを生じさせることが示された。それらの観察は、sTNFR2が、COVID-19 ARDSにおける炎症の減少を決定する、TNFαおよびTNFβ血漿レベルに対するUC-MSC効果を媒介することにおいて機構的な役割を果たすことを示唆した。
【0074】
この試験は、炎症性メディエーターの存在下または非存在下で、正規化されたELISA定量および炎症刺激指数(ISI)を介して、培養したUC-MSCによって放出されるsTNFR2(UC-MSC処置の抗炎症効果の中心的なメディエーター)の測定を提供する。
【0075】
定義
A. GM: 成長培地
B. IIM: 炎症誘導培地
C. ISI: 炎症刺激指数
D. MSC: 間葉系幹細胞
E. 効力: 生成物が所定の結果をもたらす特定の能力またはキャパシティ
F. SOP: 標準作業手順
G. sTNFR2: 可溶性TNFレセプター2
H. UC-MSC: 臍帯由来間葉系幹細胞
I. WR: 作業試薬。
【0076】
機器および材料
A. 機器:
1. 生物学的安全キャビネット(BSC)
2. 遠心分離機
3. 血球計算板とカバースリップ
4. インキュベーター
5. マイクロピペット(2~20μl、20~200μl、100~1000μl)
6. マイクロプレートリーダー(SpectraMax(登録商標) iD3、Molecular Devices)
7. 顕微鏡
8. マルチチャネルピペット
9. ピペットエイド
10. 冷蔵庫
11. タイマー

B. 用品:
1. 1.5ml 微量遠心チューブ
2. 15mL コニカルポリプロピレンチューブ
3. ベントキャップ付き25cm 矩形傾斜ネック細胞培養フラスコ
4. 96ウェルプレート
5. フェイスマスク
6. ガーゼ
7. 手袋(非滅菌)
8. 手袋(滅菌)
9. マイクロピペットチップ、滅菌: 2~200μlおよび100~1000μl
10. セロロジカルピペット、滅菌: 5ml、10ml、25ml、50ml

C. 試薬:
1. CTSTM TrypLETM Select Enzyme、cGMPグレード、ThermoFisher Scientific
2. DMEM、低グルコース、ピルベート、グルタミンなし、フェノールレッドなし、cGMPグレード、ThermoFisher Scientific
3. GlutaMAX 100X、cGMPグレード、ThermoFisher Scientific
4. IFNγ、インビトロ使用、R&D Systems
5. MEM-NEAA 100×、cGMPグレード、ThermoFisher Scientific
6. ミクロBCAプロテインアッセイキット、インビトロ使用、ThermoFisher Scientific
7. PLTGold、cGMPグレード、Mill Creek
8. RIPA溶解および抽出緩衝液、インビトロ使用、ThermoFisher Scientific
9. 可溶性TNFレセプター2 ヒト、ELISA KIT、インビトロ使用、Abcam
10. TNFα、インビトロ使用、R&D Systems
11. ヒトTNF-RII(可溶性)組換えタンパク質、インビトロ使用、ThermoFisher Scientific

D. 方法:
1. UC-MSC効力アッセイ: バッチ生成記録。
2. 培地および試薬調製: 炎症誘導培地および可溶性TNFレセプター2ヒト試薬
3. 標準曲線調製: 可溶性TNFレセプター2ヒト標準および希釈アルブミン(BSA)標準
【表1】
【表2】
【表3】
【0077】
さらなる考慮事項
A. 一実施形態において、少なくとも2名の予め訓練され、かつ資格のあるcGMP関係者が、この手順全体を通して存在するべきである。一実施形態において、全ての計算手順は、存在している第二のスタッフメンバーによって検証されるべきである。
B. 一実施形態において、ここで記載される製造プロセスは、複数のステップを含み、完了するのに6日間かかる。製品製造に関与するcGMP施設職員は、プロセスの各ステップにおいて記録を出すべきである。
C. 一実施形態において、細胞播種および拡大は、滅菌/無菌技術を使用して行われるべきである。これは、安全キャビネット(BSC)の中での作業を含む。
D. 一実施形態において、この手順において使用される全ての供給物、培地および試薬の製造業者、ロット番号および有効期限は、記録されるべきである。
E. 一実施形態において、sTNFR2ヒトELISA KITからの全てのサンプルおよび試薬は、使用前に室温(18~25℃)にすること。
F. 一実施形態において、開封したマイクロプレートウェルまたは試薬は、-20℃で最長1ヶ月間貯蔵してもよい。
【0078】
手順
A. 培地、試薬、および標準物調製
1. 培地調製
1.1 成長培地(GM)
培地を一瓶調製するために、以下に示される順に以下の試薬を添加する:
a. 1000ml DMEM
b. 54ml PLTGoldTM(5% PLTGold)
c. 10.8ml GlutaMAX Supplement 200mM
d. 10.8ml MEM-NEAA、以下とともに培地に10mMの表示をする:
・ 培地名
・ 調製日
・ 有効期限(調製後14日間)
・ 培地を調製するcGMP施設職員のイニシャル

1.2 炎症誘導培地(IIM)
注: 3日目の使用前に培地を調製すること。
45mlのIIMを調製するために、以下に示される順に以下の試薬を添加する:
a. 44.5ml GM
b. 225μl IFNγ(最終濃度: 10ng/ml)
c. 337.5μl TNFα(最終濃度: 15ng/ml) 以下とともに培地に表示する:
・ 培地名
・ 調製日
・ 新鮮なものを使用する
・ 培地を調製するcGMP施設職員のイニシャル

2. 試薬調製(可溶性TNFレセプター2ヒトELISAキット)
【表4】

3. 可溶性TNFレセプター2ヒト標準物の調製
注: 製造業者の推奨に従って、使用直前に段階希釈した標準物を調製すること。使用ごとに新鮮な一連の標準物を常に調製すること。
3.1 1バイアル(1バイアル/標準曲線)のみを再構成する
3.2 sTNFR2標準物のバイアルを短時間遠心する。400μlの1×アッセイ希釈液Bをそのバイアルに添加することによって、50ng/ml ストック標準物を調製する。完全にかつ穏やかに混合する。
3.3 1~3の希釈率での段階標準希釈物について、チューブ#1~7に表示をする。
3.4 40μlの50ng/ml ストック標準物を、チューブ#1の960μlの1×アッセイ希釈液Bに添加することによって、標準物#1を調製する。完全にかつ穏やかに混合する。
3.5 400μlの1×アッセイ希釈液Bを残りのチューブにピペットで移す。
3.6 200μl 標準物#1をチューブ#2に添加することによって標準物#2を調製し、完全に混合する。
3.7 200μl 標準物#2をチューブ#3に添加することによって標準物#3を調製し、完全に混合する。
3.8 図2をガイドとして使用し、さらなる段階希釈物を調製する(表5を参照のこと)。
3.9 1×アッセイ希釈液B(チューブ8: 陰性コントロール)は、ゼロ標準(0μg/ml)として役立つ(図1)。

【表5】
4. 希釈アルブミン(BSA)標準物の調製
2.0mg/mL アルブミン標準物の各1mLアンプルは、各希釈物の3つの反復物を試験管手順の中に含め得るように、一連の希釈標準物を調製するために十分である。新鮮な一連の標準物を、使用ごとに調製するべきである。
4.1 蒸留水を使用して一連のタンパク質標準物を調製する。ガイドとして表6を使用する。

【表6】
4.2 以下の式を使用して、必要とされる作業試薬(WR)の全体積を決定する:
[(#標準物×2回の反復) + (#未知数×3回の反復)] × (150μlのWR) = 必要とされるWR全体積
4.3 25部のMicro BCA Reagent A(MA)および24部のReagent B(MB)を、1部のMicro BCA Reagent C(MC)(25:24:1)と混合することによって、必要とされるWR体積を調製する。
注: WRは、室温において閉じた容器の中で貯蔵される場合は、1日安定である。

B. 細胞播種および拡大
1. UC-MSCバイアルまたはセグメント(複数可)の解凍および細胞拡大
1.1 凍結貯蔵からのUC-MSCを含む1バイアルまたは2~3セグメントを取り出す。
1.2 標本バッグ中にサンプルを入れ、37℃のウォーターバスの中でそれを、穏やかに渦を巻くように回すことによって、迅速に解凍する(小さな氷の結晶がバイアルまたはセグメント(複数可)の中に残るまで)。上記細胞を穏やかに扱って、機械的損傷を回避する。これは、3分以下で行うべきである。
1.3 サンプルがいったん解凍したら、滅菌アルコールプレップパッドを使用してそれを拭き取る。
1.4 そのサンプルをBSC内部に入れ、ゆっくりと上記細胞をシリンジで滅菌50ml コニカルチューブへと移す。
1.5 ゆっくりと滴下様式で、10mlの室温のGMをその同じ50mLコニカルチューブへと添加する。
1.6 細胞を500×gで10分間、室温において、「高」にブレーキを設定して遠心分離する。
1.7 細胞を遠心分離機から取り出し、上清を穏やかに吸引除去する。
1.8 そのペレットを10mlのGMに再懸濁し、室温へと平衡化する。
1.9 細胞計数および生存率(「トリパンブルーまたはヨウ化プロピジウム(PI)およびチアゾールオレンジ(TO)を使用する生存率試験」を行う。その結果を記録する。トリパンブルー生存率試験は、生きている(生存)細胞の細胞膜が(トリパンブルー)色素を排除し、非生存細胞がその色素を取り込む能力に基づく。細胞を、顕微鏡下で評価し、生存細胞および非生存細胞両方の計数を行って、パーセント生存率を決定する。トリパンブルーは、使用前に濾過されるべきである。細胞は、色素を添加したら直ぐに計数されるべきである。生存細胞が2~3分以内にその色素を取り込み始め、これは、低い生存率という結果をもたらす。

a.試薬
・ 0.4% トリパンブルー(濾過したもの)、Sigmaまたは同等なもの
・ リン酸緩衝化食塩水(PBS)、MediaTechまたは同等なもの
・ 70% エタノール

b. 手順
新鮮な細胞における生存率
1. 以下の手順は、懸濁物中で調製した新鮮な細胞に関するものである。
2. 血球計算板およびカバーガラスを徹底的にきれいにすることを確実にし、風乾する。70% アルコールおよびリントフリーワイプを使用する。
3. カバースリップを両方のV字の切り込みを部分的に覆うように血球計算板上に置く。
4. マイクロピペットを使用して、新鮮な細胞を完全に混合し、100μlを小さなチューブに入れる。
5. 100μlの0.4% トリパンブルーを添加する。細胞生成物が濃すぎる場合、トリパンブルーを添加する前にPBSで希釈し、十分に混合する。
6. 血球計算板に以下のように載せる:
a. ピペットを使用して、1滴の上記細胞/トリパンブルー混合物を、カバースリップを乱すことなくV字の切り込みのうちの一方に、カバーガラスと計数チャンバとの間に入れる。その領域をゆっくりと完全に満たし、チャンバセクションの縁部で溶液が溢れでてしまう前に、ピペットを外す。
b. いっぱいにし過ぎても充填不足してもよくない。チャンバに載せすぎたか、または気泡が見える場合、過剰な液体を除去しようと試みるのではなく、チャンバをきれいにしてやり直す。
7. 回転させて4×対物レンズにし、顕微鏡のステージの上に血球計算板を注意深く配置する。
8. およそ1分間のインキュベーション後かつ3分より前に細胞を計数する。インキュベーションの2~3分後に、生存細胞はその色素を取り込み始め、不適切な計数を生じる可能性がある。
9. 生存細胞は染色されないままである一方で、死細胞は色素を取り込んだ後青色に見える。
10. 合計100個の無作為の細胞において、染色されていない有核細胞に対して染色された有核細胞の数を計数する。これらの計数は、図8における1~5と番号付けされた四分円のいずれでも行い得る。
11. データを記録する。
12. 以下の式を使用してパーセント生存率を計算する:
% 生存細胞 = 生存細胞数×100
計数した全細胞数

解凍した細胞の生存率
1. 凍結保存した細胞を迅速に解凍する。
2. 新鮮細胞手順における生存率からのステップ#2~#12をたどる。

1.10 5mL GM/フラスコで再懸濁した500,000 生存細胞/フラスコ(20.000 細胞/cm)の濃度において上記細胞を6個の25cm フラスコ中に播種する(条件ごとに3フラスコ:「基礎」および炎症誘導」)。
1.11 上記細胞を、GM中で72時間(3日間)、37℃、5% COインキュベーターの中で培養する。

C. 炎症誘導
1. 炎症誘導(TNFα/IFNγ)
1.1 使用前にIIMを調製し、37℃で加温する。
1.2 フラスコから培地を全て除去する。
1.3 5mlの予め加温したGMを一方のフラスコに添加し、そのフラスコを「基礎」として印を付ける。
1.4 5mlの予め加温したIIMを他方のフラスコに添加し、そのフラスコを「炎症誘導」として印を付ける。
1.5 組織培養フラスコを、5% COの37℃のインキュベーターに3日間戻す。

D. 効力アッセイ
誘導の3日目の後:
1. sTNFR2測定
注: 全ての標準物を二連で、サンプルを三連でアッセイすることが推奨される。キットに含まれる96ウェルプレートストリップは、すぐに使える状態で供給される。
1.1 培養上清を15ml チューブ中に収集する。
1.2 その上清を1,500rpmにおいて5分間遠心分離して、デブリを除去する。
1.3 上清を新たな15ml チューブへと穏やかに注ぐ。
1.4 その上清を、sTNFR2ヒトELISAキット(Abcam)の1×アッセイ希釈液B(試薬調製、V、A、2節)で5倍希釈する
1.5 100μLの各標準物を二連で(標準物調製V、A、3節を参照のこと)、および各サンプル(UC-MSCサンプル、TNFR2標準物、培地)を三連で適切なウェルへと添加する(図2)。ウェルを覆い、一晩4℃において穏やかに振盪しながらインキュベートする。
1.5.1 TNFR2標準物:
a) Hは高濃度として定義(H)
b) Mは中程度の濃度として定義(M)
c) Lは低濃度として定義(L)
1.5.2 ブランク培地:
a) GM
b) IIM
1.5.3 上清(試験サンプル):
a) 上清GM(sGM)
b) 上清IIM(sIIM)
1.6 翌日、溶液を廃棄し、1×洗浄溶液で4回洗浄する。各ウェルにマルチチャネルピペットまたは自動洗浄機を使用して1×洗浄溶液(300μL)を満たすことによって洗浄する。最後の洗浄の後、デカントすることによっていかなる残っている洗浄緩衝液をも除去する。プレートを反転させ、きれいなペーパータオルで拭いとる。
1.7 100μLの1×ビオチン化可溶性TNFレセプター2検出抗体(試薬調製、V、A、2節)を各ウェルに添加する。穏やかに振盪しながら、1時間、室温においてインキュベートする。
1.8 溶液を廃棄する。洗浄をステップ1.6にあるように反復する。
1.9 100μLの1×HRP-ストレプトアビジン溶液を各ウェルに添加する。穏やかに振盪しながら、45分間、室温においてインキュベートする。
1.10 溶液を廃棄する。洗浄をステップ1.6にあるように反復する。
1.11 100μLのTMB 1工程基質試薬を各ウェルに添加する。穏やかに振盪しながら、遮光して30分間、室温においてインキュベートする。
1.12 50μLの停止溶液を各ウェルに添加する。
1.13 そのプレートを、SpectraMax(登録商標) iD3の中に載せ、そのプレートを450nmで即座に読み取る。

2. タンパク質定量
注: sTNFR2分泌は、細胞溶解物全タンパク質含有量に対して正規化される。このために、その細胞溶解物全タンパク質含有量は、「ミクロBCAプロテインアッセイキット」(ThermoFisher Scientific)で定量される。
2.1 タンパク質溶解物
a. 簡潔には、上清除去後に、細胞単層を5mlの冷DPBSで2回洗浄する。
b. 1mlの冷RIPA緩衝液(4℃)を各25cm フラスコにマイクロピペットで添加する。
c. そのフラスコを4℃で5分間インキュベートする。
d. 細胞溶解物を収集し、10,000rpmで5分間遠心分離して細胞デブリを除去する。
e. 遠心分離してから、細胞溶解物を新たな微量遠心チューブに移し、タンパク質定量のためにさらに処理する。

2.2 Micro BCA Protein Assayでのタンパク質定量
a. ウシ血清アルブミン標準曲線(0~200μg/ml)を本明細書で記載されるように準備する。
b. 細胞溶解物を蒸留水で1:100希釈する。
c. 各標準物150μLを二連でまたは希釈した細胞溶解物150μLを三連で、96ウェルプレートへと添加する。
d. 各ウェルに、150μLのWR(25:24:1、試薬MA:MB:MC)を添加する。
e. プレート振盪機上で30秒間完全に混合する。
f. そのプレートを37℃で2時間インキュベートする。
g. マイクロプレートリーダーで562nmでの吸光度を測定する。

E. 分析
1. アッセイを、誘導フラスコおよび非誘導フラスコの3セットで行い、結果をSoftMax Pro Softwareを使用して分析する。
2. sTNFR2 ELISA:
2.1 各サンプルのsTNFR2濃度を、4パラメトリックロジスティック回帰にフィットさせたアッセイ標準曲線(0~2,000μg/ml)を使用して計算する。
2.2 2つのブランク培地サンプルおよび6つの試験サンプル(3×誘導および3×非誘導)の三連のウェルの値を平均して、各ブランク/フラスコについての平均sTNFR2濃度を得る。
2.3 合計8つの平均(各フラスコにつき1つ、および各ブランク培地につき1つ)があるはずである。
3. 全タンパク質BCAアッセイ:
3.1 各サンプルについての細胞溶解物全タンパク質濃度を、線形回帰にフィットさせたMicro BCA Protein Assay標準曲線を使用して計算する。
3.2 6つの試験サンプル(3×誘導および3×非誘導)の三連のウェルの値を平均して、各フラスコについての平均全タンパク質を得る。
3.3 合計6つの平均(各フラスコにつき1つ)があるはずである。
4. 正規化されたsTNFR2計算:
4.1 全フラスコ(UC-MSC基礎群およびUC-MSC炎症誘導群の両方)に関して、sTNFR2濃度を、各フラスコのsTNFR2値をその相当する全タンパク質濃度値で除算することによって正規化する。
4.2 次いで、基礎培養条件においてその正規化されたsTNFR2を、UC-MSC基礎の正規化されたsTNFR2濃度を平均することによって計算する。その得られた値は、≧0.2(pg/mL)/(全タンパク質のμg)であるはずである。
5. 炎症刺激指数(ISI)計算:
5.1 ISIを、非誘導正規化されたsTNFR2濃度に対する誘導正規化されたsTNFR2濃度の比として、フラスコの各セットに関して計算する。
5.2 その3つのISIを平均し、その得られた値は≧1.5であるはずである。
【0079】

A. 全細胞タンパク質含有量を、使用した細胞溶解物の体積(RIPA、1.5ml)のおよび希釈率(1:100)に基づいて計算する。
【0080】
品質管理
A. sTNFR2の定量に関する偽陽性結果についての潜在性を評価するために、培地サンプル(成長培地および炎症誘導培地)を分析する。
B. 標準曲線にわたる範囲に及ぶ濃度を有する外部sTNFR2標準はまた、ELISAキットが適切に機能することを確実にするために実行される。これらの値は、理論的濃度の20%以内にあるべきである。
C. 誘導および非誘導ELISA反復物の%CVは、正確な結果を確実にするために≦20%であるべきである。前記%CVが>20%である場合、1つの値は、域外値として外され得る。
D. その標準曲線は、4パラメーターロジスティック回帰にフィットされるべきであり、許容可能と考えられる≧0.98のR2値を有するはずである。R2値が<0.98である場合、値は、標準物の各濃度に関して少なくとも1つの値が存在する限りにおいて域外値として外され得る。
E. 使用した全ての機器は、維持されるべきである。
【0081】
実施例2. 可溶性腫瘍壊死因子レセプター2(sTNFR2)放出の分析に基づく免疫調節細胞に関するインビトロ効力アッセイ
免疫調節細胞に関するインビトロ効力アッセイは、可溶性腫瘍壊死因子レセプター2(sTNFR2)放出の分析に基づいた。これは、代表的アッセイであり、アッセイプロトコールにおける変形形態は、本開示の範囲内である。
【0082】
本明細書中の試験は、免疫調節細胞(例えば、間葉系幹細胞)の効力を決定するために、生物学的に関連するインビトロアッセイを開発したところ、適格であった。その効力アッセイは、上記細胞によって放出される可溶性腫瘍壊死因子レセプター2(sTNFR2)の測定に焦点を当てている。それは、細胞タンパク質含有量、および上記細胞によって放出されるsTNFR2の炎症刺激指数(ISI)の計算で正規化した、ELISAを介するsTNFR2定量に基づく。ISIを、基礎条件に対する炎症誘導におけるsTNFR2放出の比として計算する。そのアッセイを、インビトロで培養した細胞で行う。一実施形態において、上記アッセイで分析されるべき細胞は、臍帯由来間葉系幹細胞(UC-MSC)である。上記基礎条件は、最終細胞生成物の生成に利用される同じ培地中で上記細胞を培養することに相当する。上記炎症誘導は、これらの培養の培地中にTNFα(15ng/mL)およびIFNγ(10ng/mL)を添加することで得られる。上記細胞は、基礎条件においてまたは培養の特定の時間量にわたる炎症誘導の下で、および好ましい実施形態では3日間の培養にわたって維持される。次いで、その上清を収集し、sTNFR2定量のための市販のキット(例えば、Abcam Soluble TNFR2 Human ELISA KIT, Abcam, カタログ番号ab100643)で試験する。全細胞タンパク質含有量に基づく正規化のために、上記細胞を、RIPA溶解および抽出緩衝液(例えば、ThermoFisher Scientific, カタログ番号89900)で溶解し、タンパク質含有量を、BCA法で(例えば、ミクロBCAプロテインアッセイキット(ThermoFisher Scientific, カタログ番号23235)で)得る。そのアッセイを図3に記載する。そのアッセイに関するSOPは、本明細書中、上記の実施例1で提供される。
【0083】
効力アッセイのデータ
実施例1に記載される方法を、Diabetes Research Institute cGMP施設で製造した「UC-MSC最終生成物(バッチ、凍結保存)」のステージから解凍したUC-MSCを用いて適用した。その実験から、炎症(TNFα/IFNγ)誘導に対して基礎培養条件下での3日間にわたるUC-MSCによるsTNFR2放出を定量した。結果を表7、図4、および図5に示す。
【表7】
【0084】
患者に関連するアッセイの生物学的関連性
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を有するCOVID 19患者における超炎症応答を、炎症促進性メディエーター(腫瘍壊死因子(TNF)αおよびβを含む)の高血清レベルによって特徴づける。これら2つの分子(ARDS病態生理に関わる)は、TNFR2に結合する。TNFR2可溶性形態は、TNF機能に対して阻害効果を有することが報告された。本明細書中での試験は、COVID-19 ARDSに関するフェーズl/2a臨床試験において、UC-MSC処置群およびコントロール群の両方でのTNFα、TNFβ、および可溶性TNFR2(sTNFR2)の血漿レベルを調査した。sTNFR2は、6日目で、コントロール群の患者と比較して、UC-MSC処置群の患者で増加した(図6を参照のこと)。TNFαおよびTNFβは、6日目で減少することが見出された。その観察は、図6に示される。
【0085】
方法(患者における観察)
血液サンプルを、0日目(注入前)および6日目(2回目の注入の3日後)で臨床試験の無作為化被験体から得た。簡潔には、全血をEDTA処理チューブへと収集し、氷上に移し、2時間以内に血漿分離のために処理した。全血を2,000gで15分間、4℃において遠心分離し、血漿を収集し、処理するまで-80℃で貯蔵した。定量的マルチプレックスタンパク質アレイ(RayBio(登録商標) Q-Series, RayBiotech)を利用して、製造業者の指示に従ってTNFR2、TNFα、TNFβの血漿レベル(pg/ml)を全てのサンプルで同時に決定した。蛍光シグナルを、Cy3波長レーザースキャナーを介して可視化し、アレイごとに生成した標準曲線を使用して濃度に変換した。
【0086】
統計分析を、2サンプルT検定およびノンパラメトリックWilcoxon2サンプル検定を使用して行った。符合順位検定を、群内の時点間の変化を調べる一対比較のために使用した。全ての試験を両側検定し、統計的有意性をp<0.05で確立した。データは、平均および平均の標準誤差で示す。
【0087】
結果(患者における観察)
UC-MSC群およびコントロール群における患者は、ベースラインタンパク質レベルにおいて有意差を示さなかった。コントロール群において、sTNFR2、TNFαおよびTNFβレベルは、0日目と6日目の間で有意差がなかった。TNFαおよびTNFβレベルは、0日目と6日目の間で有意に減少した(それぞれ、p=0.005およびp=0.002)。6日目の群間の比較は、コントロール群のTNFα(319±40 対 950±226pg/ml、p=0.048)およびTNFβ(810±126 対 2,944±735pg/ml、p=0.032)と比較して、UC-MSC群において有意に低いレベルを明らかに示した。sTNFR2は、6日目のコントロールと比較して、UC-MSC群において有意により高いレベルを示した(26,609±846pg/ml 対 23,111±760pg/ml, p=0.021)。図6を参照のこと。
【0088】
最近完了したフェーズl/2a臨床試験では、UC-MSC処置は、COVID-19 ARDSを有する患者における加速した臨床回復と関連した。それらの結果を説明する助けになる、重要な根底にある免疫/炎症性メディエーター軸における差異の分子的証拠が、本明細書で提供される。6日目に、UC-MSCレシピエントは、コントロールと比較して、血漿sTNFR2の有意に上昇したレベルならびにTNFαおよびTNFβの有意に減少したレベルを有した。TNFレセプターベースの薬物を試験して、慢性炎症性疾患を処置したところ、重篤なCOVID-19患者における超炎症減弱化について同様に有益であり得る。TNF遮断は、循環インターロイキン(IL)-1およびIL-6レベルの迅速な低減(<12時間)、ならびに炎症した組織における白血球トラフィッキングおよび毛細管透過性に強く影響を及ぼす接着分子および血管内皮細胞成長因子(VEGF)の低減を生じることから、臨床上有効である。試験は、抗TNF治療の際に、炎症した組織におけるTNF濃度が、抗TNF抗体に結合して血液循環へと通過するにつれて低減したことを示した。
【0089】
さらに、sTNFR2は、TNFを結合し得、TNF誘導性細胞傷害性および免疫反応性を中和し、炎症反応をモジュレートする。例えば、より高いsTNFR2レベルは、減少したT細胞活性化および調節性T細胞(Treg)の段階的な生成をもたらす。これに基づいて、試験は、MSCによるTNFR2の発現がそれらのより高いFoxp3+T reg誘導能力に相関することを示した。従って、本明細書での知見は、UC-MSC効果の重要な機序を示すのに対して、sTNFR2血漿レベルは、COVID-19 ARDS進行および治療後の臨床転帰の予測因子であり得る。
【0090】
ここで、上記で記載される患者における観察に基づけば、および先の段落において記載される効力アッセイの観察に基づけば、本明細書で開発された効力アッセイは、生物学的に意義がある。
【0091】
効力の保証
この効力アッセイ、正規化された定量および炎症刺激指数(ISI)を介する可溶性TNFR2放出の測定は、提唱されるフェーズ2b/3試験において使用されるべき生成物の効力の保証のために利用される。フェーズ2b/3試験のために利用されるUC-MSCの各バッチの効力の保証に関する基準は、以下である:
・ 3日間の培養にわたって全細胞タンパク質含有量によって正規化した可溶性TNFR2(sTNFR2)放出>0.01(pg/mL)/(μg)
・ 炎症刺激指数(ISI)>1

・ 一実施形態において、基礎条件における3日間培養にわたって全細胞タンパク質含有量によって正規化した可溶性TNFR2(sTNFR2)放出>0.02(pg/mL)/(μg)
・ 炎症刺激指数(ISI)>1.5

・ 一実施形態において、炎症誘導下での3日間培養にわたって全細胞タンパク質含有量によって正規化した可溶性TNFR2(sTNFR2)放出>0.03(pg/mL)/(μg)
・ 炎症刺激指数(ISI)>1.5
【0092】
本開示は、ヒトにおいて腫瘍壊死因子(TNF)炎症経路を改変する免疫調節細胞(またはそれらのセクレトーム)に関する効力アッセイの必要性に対処する。免疫調節細胞のタイプとしては、間葉系幹細胞、間葉系間質細胞、医療用シグナル伝達細胞(MSC)が挙げられる。
【0093】
このインビトロ効力アッセイは、インビボでの免疫調節機能を推定するために、基礎条件または炎症条件におけるインビトロでの可溶性腫瘍壊死因子レセプター2(sTNFR2)の放出の測定に基づく。現在、MSCベースの治療の安全性および有効性は、炎症性疾患、免疫疾患、自己免疫疾患、筋骨格疾患、心血管疾患、神経変性疾患、および消化管疾患を含む種々の障害に関して多くの臨床試験において調査されている。しかし、このような試験のうちの多くからの初期の結果から、これらの細胞治療には変動性の程度がかなりあり、臨床観察において再現性がない場合があることが明らかにされている。最も重要なことには、一貫性のない証拠は、効力の不一致において反映される調製物に標準化された特徴がないことを含め、使用される細胞ベースの生成物における本質的な差異に潜在的に関連する。従って、インビボでの有効な免疫調節作用のために、インビトロでMSCバッチを先験的で定性的に評価する迅速かつ正確な方法が、本明細書で示される。
【0094】
別段定義されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示の発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で引用される刊行物およびこれらが引用される資料は、本明細書に具体的に援用される。
【0095】
当業者は、多くの変更および改変が本発明の好ましい実施形態に対して行われ得ること、およびこのような変更および改変が本発明の趣旨から逸脱することなく行われ得ることを認識する。従って、全てのこのような均等な変形形態を網羅する添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨および範囲内に入るとして意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】