(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-21
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20250313BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20250313BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20250313BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20250313BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
A61B5/11 200
A61B5/11
A61B5/11 120
A61B5/08
A61B5/113
A61B5/16 130
A61B5/00 102A
A61B5/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546412
(86)(22)【出願日】2023-02-23
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 US2023013664
(87)【国際公開番号】W WO2023164021
(87)【国際公開日】2023-08-31
(32)【優先日】2022-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002956
【氏名又は名称】田辺三菱製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 聡
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
4C038PP05
4C038PS07
4C038SS08
4C038VA04
4C038VA13
4C038VA15
4C038VB04
4C038VB05
4C038VB12
4C038VB14
4C038VC05
4C038VC20
4C117XA04
4C117XB01
4C117XB05
4C117XB06
4C117XC11
4C117XC19
4C117XD04
4C117XD06
4C117XD08
4C117XD11
4C117XD31
4C117XE42
4C117XE60
4C117XE63
4C117XJ03
(57)【要約】
情報処理装置は、(a)~(k)から選ばれる神経筋疾患に関する1つ以上のユーザデータを所定の期間において複数回取得するデータ取得部と、ユーザデータに基づいて、所定の端末へ提供する提供情報を生成する生成部とを備える。(a)タイピング動作に関するデータ、(b)歩行に関するデータ、(c)発話に関するデータ、(d)睡眠に関するデータ、(e)呼吸に関するデータ、(f)表情に関するデータ、(g)微細運動に関するデータ、(h)粗大運動に関するデータ、(i)疾患症状に関する質問票の答え、(j)デバイスの内蔵センサで自動的に収集された情報、(k)医療機関からのデータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~(k)から選ばれる神経筋疾患に関する1つ以上のユーザデータを所定の期間において複数回取得するデータ取得部と、
前記ユーザデータに基づいて、所定の端末へ提供する提供情報を生成する情報生成部と、
を備える、情報処理装置。
(a)タイピングの速度、精度、時間及び量から選ばれる1つ以上のタイピング動作に関するデータ
(b)歩数、歩行速度、足の振り上げ角度、足首の可動角度、歩幅、腕振り、足振り、全身体の横振れ、及び、歩行時の転倒の割合から選ばれる1つ以上の歩行に関するデータ
(c)会話の音声データ、通話記録、発話速度、発話時間、持続的な発声、単語数、言語障害、不明瞭な言語の頻度、停止期間、非言語音、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の発話に関するデータ
(d)睡眠時間、睡眠効率、眼球の動き及び覚醒の頻度から選ばれる1つ以上の睡眠に関するデータ
(e)肺活量、努力性肺活量、呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の呼吸に関するデータ
(f)上唇と下唇との間の開口、上唇と下唇との間の幅、唇の動き、開口の速度、開口の加速度、痙攣、口の表面、左右の口の表面の平均対称比、眉の縦位置、目の開き、頭の傾きの平行移動と回転ベクトル、及び、眼球の動きから選ばれる1つ以上の表情に関するデータ
(g)デジタルデバイスに入力されたユーザのタップ、入力、スワイプ、及び、描画から選ばれる1つ以上の微細運動に関するデータ
(h)腕の位置を変える動作、階段の上り下り、座位からの立ち上がり、及び、足の痙攣の頻度から選ばれる1つ以上の粗大運動に関するデータ
(i)疾患症状に関する質問票の答え
(j)デバイスの内蔵センサで自動的に収集された情報
(k)医療機関からのデータ
【請求項2】
前記データ取得部は、前記ユーザデータを前記所定の期間において連続的に取得する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記データ取得部は、前記ユーザデータを受動的又は能動的に取得する、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記提供情報は、神経筋疾患の兆候、発症の予測、進行予測、患者層別化、医療機関の受診に関する情報及び疾患症状の進行に関するスコア値からなる少なくとも1つに関する情報である、請求項1-3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記ユーザデータの変動量から前記神経筋疾患の兆候について解析する解析部を備え、
前記情報生成部は、前記兆候を前記提供情報として生成する、請求項1-4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記ユーザデータは、ALS機能評価スケール(ALSFRS-R)に含まれる運動機能に関するデータを含む、請求項1-5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記ユーザデータは、ユーザの自己申告情報を含む、請求項1-6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記自己申告情報は、前記ユーザが利用するユーザ端末から取得される、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
さらに情報提供部を備え、
前記情報提供部は、前記ユーザ、前記ユーザの家族及び医師のいずれかが利用する端末に、前記提供情報を通知する、請求項1-8のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記ユーザデータが、運動神経系の直接的又は間接的な機能異常に関するデータである、請求項1-9のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記神経筋疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む、請求項1-10のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
下記(a)~(k)から選ばれる運動神経系の直接的又は間接的な機能異常に関する1つ以上のユーザデータを所定の期間において複数回取得するデータ取得部と、
前記ユーザデータに基づいて、所定の端末へ提供する提供情報を生成する情報生成部と、を備える、情報処理装置。
(a)タイピングの速度、精度、時間、及び、量から選ばれる1つ以上のタイピング動作に関するデータ
(b)歩数、歩行速度、足の振り上げ角度、足首の可動角度、歩幅、腕振り、足振り、全身体の横振れ、及び、歩行時の転倒の割合から選ばれる1つ以上の歩行に関するデータ
(c)会話の音声データ、通話記録、発話速度、発話時間、持続的な発声、単語数、言語障害、不明瞭な言語の頻度、停止期間、非言語音、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の発話に関するデータ
(d)睡眠時間、睡眠効率、眼球の動き、及び、覚醒の頻度から選ばれる1つ以上の睡眠に関するデータ
(e)肺活量、努力性肺活量、呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の呼吸に関するデータ
(f)上唇と下唇との間の開口、上唇と下唇との間の幅、唇の動き、開口の速度、開口の加速度、痙攣、口の表面、左右の口の表面の平均対称比、眉の縦位置、目の開き、頭の傾きの平行移動と回転ベクトル、及び、眼球の動きから選ばれる1つ以上の表情に関するデータ
(g)デジタルデバイスに入力されたユーザのタップ、入力、スワイプ、及び、描画から選ばれる1つ以上の微細運動に関するデータ
(h)腕の位置を変える動作、階段の上り下り、座位からの立ち上がり、及び、足の痙攣の頻度から選ばれる1つ以上の粗大運動に関するデータ
(i)疾患症状に関する質問票の答え
(j)デバイスの内蔵センサで自動的に収集された情報
(k)医療機関からのデータ
【請求項13】
下記(a)~(k)から選ばれる神経筋疾患に関する1つ以上のユーザデータを所定の期間において複数回取得するデータ取得部と、
前記ユーザデータに基づいて、所定の端末へ提供する提供情報を生成する情報生成部と、
を備える、情報処理システム。
(a)タイピングの速度、精度、時間及び量から選ばれる1つ以上のタイピング動作に関するデータ
(b)歩数、歩行速度、足の振り上げ角度、足首の可動角度、歩幅、腕振り、足振り、全身体の横振れ、及び、歩行時の転倒の割合から選ばれる1つ以上の歩行に関するデータ
(c)会話の音声データ、通話記録、発話速度、発話時間、持続的な発声、単語数、言語障害、不明瞭な言語の頻度、停止期間、非言語音、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の発話に関するデータ
(d)睡眠時間、睡眠効率、眼球の動き、及び、覚醒の頻度から選ばれる1つ以上の睡眠に関するデータ
(e)肺活量、努力性肺活量、呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の呼吸に関するデータ
(f)上唇と下唇との間の開口、上唇と下唇との間の幅、唇の動き、開口の速度、開口の加速度、痙攣、口の表面、左右の口の表面の平均対称比、眉の縦位置、目の開き、頭の傾きの平行移動と回転ベクトル、及び、眼球の動きから選ばれる1つ以上の表情に関するデータ
(g)デジタルデバイスに入力されたユーザのタップ、入力、スワイプ、及び、描画から選ばれる1つ以上の微細運動に関するデータ
(h)腕の位置を変える動作、階段の上り下り、座位からの立ち上がり、及び、足の痙攣の頻度から選ばれる1つ以上の粗大運動に関するデータ
(i)疾患症状に関する質問票の答え
(j)デバイスの内蔵センサで自動的に収集された情報
(k)医療機関からのデータ
【請求項14】
コンピュータを用いた情報処理方法であって 、
下記(a)~(k)から選ばれる神経筋疾患に関する1つ以上のユーザデータを所定の期間において複数回取得するステップと、
前記ユーザデータに基づいて、所定の端末へ提供する提供情報を生成するステップと、
を有する、情報処理方法。
(a)タイピングの速度、精度、時間、及び、量から選ばれる1つ以上のタイピング動作に関するデータ
(b)歩数、歩行速度、足の振り上げ角度、足首の可動角度、歩幅、腕振り、足振り、全身体の横振れ、及び、歩行時の転倒の割合から選ばれる1つ以上の歩行に関するデータ
(c)会話の音声データ、通話記録、発話速度、発話時間、持続的な発声、単語数、言語障害、不明瞭な言語の頻度、停止期間、非言語音、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の発話に関するデータ
(d)睡眠時間、睡眠効率、眼球の動き、及び、覚醒の頻度から選ばれる1つ以上の睡眠に関するデータ
(e)肺活量、努力性肺活量、呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の呼吸に関するデータ
(f)上唇と下唇との間の開口、上唇と下唇との間の幅、唇の動き、開口の速度、開口の加速度、痙攣、口の表面、左右の口の表面の平均対称比、眉の縦位置、目の開き、頭の傾きの平行移動と回転ベクトル、及び、眼球の動きから選ばれる1つ以上の表情に関するデータ
(g)デジタルデバイスに入力されたユーザのタップ、入力、スワイプ、及び、描画から選ばれる1つ以上の微細運動に関するデータ
(h)腕の位置を変える動作、階段の上り下り、座位からの立ち上がり、及び、足の痙攣の頻度から選ばれる1つ以上の粗大運動に関するデータ
(i)疾患症状に関する質問票の答え
(j)デバイスの内蔵センサで自動的に収集された情報
(k)医療機関からのデータ
【請求項15】
情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記プログラムは、前記情報処理方法として、
下記(a)~(k)から選ばれる神経筋疾患に関する1つ以上のユーザデータを所定の期間において複数回取得するステップと、
前記ユーザデータに基づいて、所定の端末へ提供する提供情報を生成するステップと、
をコンピュータに実行させる、プログラム。
(a)タイピングの速度、精度、時間、及び、量から選ばれる1つ以上のタイピング動作に関するデータ
(b)歩数、歩行速度、足の振り上げ角度、足首の可動角度、歩幅、腕振り、足振り、全身体の横振れ、及び、歩行時の転倒の割合から選ばれる1つ以上の歩行に関するデータ
(c)会話の音声データ、通話記録、発話速度、発話時間、持続的な発声、単語数、言語障害、不明瞭な言語の頻度、停止期間、非言語音、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の発話に関するデータ
(d)睡眠時間、睡眠効率、眼球の動き、及び、覚醒の頻度から選ばれる1つ以上の睡眠に関するデータ
(e)肺活量、努力性肺活量、呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の呼吸に関するデータ
(f)上唇と下唇との間の開口、上唇と下唇との間の幅、唇の動き、開口の速度、開口の加速度、痙攣、口の表面、左右の口の表面の平均対称比、眉の縦位置、目の開き、頭の傾きの平行移動と回転ベクトル、及び、眼球の動きから選ばれる1つ以上の表情に関するデータ
(g)デジタルデバイスに入力されたユーザのタップ、入力、スワイプ、及び、描画から選ばれる1つ以上の微細運動に関するデータ
(h)腕の位置を変える動作、階段の上り下り、座位からの立ち上がり、及び、足の痙攣の頻度から選ばれる1つ以上の粗大運動に関するデータ
(i)疾患症状に関する質問票の答え
(j)デバイスの内蔵センサで自動的に収集された情報
(k)医療機関からのデータ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年2月23日に出願された米国仮特許出願63/313,084号の優先権の利益を主張する。当該米国仮特許出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
神経筋疾患は、脳・脊髄・末梢神経等神経自体の病変又は筋肉自体の病変によって運動障害をきたす疾患の総称であり、代表的な疾患としてパーキンソン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症、ウイルス又は菌による神経炎や脊髄炎、重症筋無力症、筋ジストロフィー、多発性筋炎などが挙げられる(非特許文献1~3)。これらの神経筋疾患は、運動障害が共通の主症状である。
【0004】
神経筋疾患のうち、例えば、筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis、以下、「ALS」とも呼ぶ。)は、上位および下位運動ニューロンの選択的な変性脱落により随意運動が障害され、上肢・下肢の脱力や球麻痺、呼吸筋麻痺が徐々に進行し、発症後2~5年で呼吸不全のため呼吸管理が必要になることが多い、急速に進行する致死性の重篤疾患である。
【0005】
ALS患者における萎縮する筋肉の種類及び進行には個体差がある。また、ALSには特異的なマーカがないため、現在の診断は基本的に除外診断である。診断基準として、例えば改訂版EL Escorial診断基準があるが、診断感度が低く、実際には臨床診断が総合的に行われている。また、電気生理学的検査もあるが、この検査は患者負担が大きく、かつ病態の進行及び重症度を把握できないため、ALSの進行を目視で評価することとなり、早期の高感度診断は困難である。そこで、肢体能力を、定量的、かつ、客観的に評価するために、例えば、モーションキャプチャ技術を用いて肢体能力の測定の利便性を向上させる技術がある(例えば、特許文献1等)。以下に示す文献の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6465419号公報
【非特許文献1】難病情報センター インターネット<URL:https://www.nanbyou.or.jp/entry/5347♯01>
【非特許文献2】一般社団法人 日本神経学会 インターネット<URL:https://www.neurology-jp.org/public/disease/index.html♯about>
【非特許文献3】公益社団法人 日本整形外科学会、神経・筋疾患の症状一覧 インターネット<URL:https://www.joa.or.jp/public/sick/body/nerve.html>
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一様態に係わる情報処理装置は、
下記(a)~(k)から選ばれる神経筋疾患に関する1つ以上のユーザデータを所定の期間において複数回取得するデータ取得部と、
前記ユーザデータに基づいて、所定の端末へ提供する提供情報を生成する情報生成部と、
を備える。
(a)タイピングの速度、精度、時間及び量から選ばれる1つ以上のタイピング動作に関するデータ
(b)歩数、歩行速度、足の振り上げ角度、足首の可動角度、歩幅、腕振り、足振り、全身体の横振れ、及び、歩行時の転倒の割合から選ばれる1つ以上の歩行に関するデータ
(c)会話の音声データ、通話記録、発話速度、発話時間、持続的な発声、単語数、言語障害、不明瞭な言語の頻度、停止期間、非言語音、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の発話に関するデータ
(d)睡眠時間、睡眠効率、眼球の動き及び覚醒の頻度から選ばれる1つ以上の睡眠に関するデータ
(e)肺活量、努力性肺活量、呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の呼吸に関するデータ
(f)上唇と下唇との間の開口、上唇と下唇との間の幅、唇の動き、開口の速度、開口の加速度、痙攣、口の表面、左右の口の表面の平均対称比、眉の縦位置、目の開き、頭の傾きの平行移動と回転ベクトル、及び、眼球の動きから選ばれる1つ以上の表情に関するデータ
(g)デジタルデバイスに入力されたユーザのタップ、入力、スワイプ、及び、描画から選ばれる1つ以上の微細運動に関するデータ
(h)腕の位置を変える動作、階段の上り下り、座位からの立ち上がり、及び、足の痙攣の頻度から選ばれる1つ以上の粗大運動に関するデータ
(i)疾患症状に関する質問票の答え
(j)デバイスの内蔵センサで自動的に収集された情報
(k)医療機関からのデータ
【0008】
本発明の他の様態に係わる情報処理装置は、
下記(a)~(k)から選ばれる運動神経系の直接的又は間接的な機能異常に関する1つ以上のユーザデータを所定の期間において複数回取得するデータ取得部と、
前記ユーザデータに基づいて、所定の端末へ提供する提供情報を生成する情報生成部と、を備える。
(a)タイピングの速度、精度、時間、及び、量から選ばれる1つ以上のタイピング動作に関するデータ
(b)歩数、歩行速度、足の振り上げ角度、足首の可動角度、歩幅、腕振り、足振り、全身体の横振れ、及び、歩行時の転倒の割合から選ばれる1つ以上の歩行に関するデータ
(c)会話の音声データ、通話記録、発話速度、発話時間、持続的な発声、単語数、言語障害、不明瞭な言語の頻度、停止期間、非言語音、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の発話に関するデータ
(d)睡眠時間、睡眠効率、眼球の動き、及び、覚醒の頻度から選ばれる1つ以上の睡眠に関するデータ
(e)肺活量、努力性肺活量、呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の呼吸に関するデータ
(f)上唇と下唇との間の開口、上唇と下唇との間の幅、唇の動き、開口の速度、開口の加速度、痙攣、口の表面、左右の口の表面の平均対称比、眉の縦位置、目の開き、頭の傾きの平行移動と回転ベクトル、及び、眼球の動きから選ばれる1つ以上の表情に関するデータ
(g)デジタルデバイスに入力されたユーザのタップ、入力、スワイプ、及び、描画から選ばれる1つ以上の微細運動に関するデータ
(h)腕の位置を変える動作、階段の上り下り、座位からの立ち上がり、及び、足の痙攣の頻度から選ばれる1つ以上の粗大運動に関するデータ
(i)疾患症状に関する質問票の答え
(j)デバイスの内蔵センサで自動的に収集された情報
(k)医療機関からのデータ
【0009】
本発明の一様態に係わる情報処理方法は、
コンピュータを用いた情報処理方法であって 、
下記(a)~(k)から選ばれる神経筋疾患に関する1つ以上のユーザデータを所定の期間において複数回取得するステップと、
前記ユーザデータに基づいて、所定の端末へ提供する提供情報を生成するステップと、
を有する。
(a)タイピングの速度、精度、時間、及び、量から選ばれる1つ以上のタイピング動作に関するデータ
(b)歩数、歩行速度、足の振り上げ角度、足首の可動角度、歩幅、腕振り、足振り、全身体の横振れ、及び、歩行時の転倒の割合から選ばれる1つ以上の歩行に関するデータ
(c)会話の音声データ、通話記録、発話速度、発話時間、持続的な発声、単語数、言語障害、不明瞭な言語の頻度、停止期間、非言語音、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の発話に関するデータ
(d)睡眠時間、睡眠効率、眼球の動き、及び、覚醒の頻度から選ばれる1つ以上の睡眠に関するデータ
(e)肺活量、努力性肺活量、呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の呼吸に関するデータ
(f)上唇と下唇との間の開口、上唇と下唇との間の幅、唇の動き、開口の速度、開口の加速度、痙攣、口の表面、左右の口の表面の平均対称比、眉の縦位置、目の開き、頭の傾きの平行移動と回転ベクトル、及び、眼球の動きから選ばれる1つ以上の表情に関するデータ
(g)デジタルデバイスに入力されたユーザのタップ、入力、スワイプ、及び、描画から選ばれる1つ以上の微細運動に関するデータ
(h)腕の位置を変える動作、階段の上り下り、座位からの立ち上がり、及び、足の痙攣の頻度から選ばれる1つ以上の粗大運動に関するデータ
(i)疾患症状に関する質問票の答え
(j)デバイスの内蔵センサで自動的に収集された情報
(k)医療機関からのデータ
【0010】
本発明の一様態に係わるプログラムは、
情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記プログラムは、前記情報処理方法として、
下記(a)~(k)から選ばれる神経筋疾患に関する1つ以上のユーザデータを所定の期間において複数回取得するステップと、
前記ユーザデータに基づいて、所定の端末へ提供する提供情報を生成するステップと、
をコンピュータに実行させる。
(a)タイピングの速度、精度、時間、及び、量から選ばれる1つ以上のタイピング動作に関するデータ
(b)歩数、歩行速度、足の振り上げ角度、足首の可動角度、歩幅、腕振り、足振り、全身体の横振れ、及び、歩行時の転倒の割合から選ばれる1つ以上の歩行に関するデータ
(c)会話の音声データ、通話記録、発話速度、発話時間、持続的な発声、単語数、言語障害、不明瞭な言語の頻度、停止期間、非言語音、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の発話に関するデータ
(d)睡眠時間、睡眠効率、眼球の動き、及び、覚醒の頻度から選ばれる1つ以上の睡眠に関するデータ
(e)肺活量、努力性肺活量、呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の呼吸に関するデータ
(f)上唇と下唇との間の開口、上唇と下唇との間の幅、唇の動き、開口の速度、開口の加速度、痙攣、口の表面、左右の口の表面の平均対称比、眉の縦位置、目の開き、頭の傾きの平行移動と回転ベクトル、及び、眼球の動きから選ばれる1つ以上の表情に関するデータ
(g)デジタルデバイスに入力されたユーザのタップ、入力、スワイプ、及び、描画から選ばれる1つ以上の微細運動に関するデータ
(h)腕の位置を変える動作、階段の上り下り、座位からの立ち上がり、及び、足の痙攣の頻度から選ばれる1つ以上の粗大運動に関するデータ
(i)疾患症状に関する質問票の答え
(j)デバイスの内蔵センサで自動的に収集された情報
(k)医療機関からのデータ
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、情報処理装置を含む情報処理システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、情報処理装置のソフトウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、ユーザ情報記憶部に格納されるユーザ基本情報の構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、ユーザデータ記憶部に格納されるユーザデータの構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、医師入力情報記憶部に格納される医師入力情報の構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、提供情報記憶部に格納される提供情報の構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、情報処理装置において実行される処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、同一の符号は、各図面をとおして対応する又は同一の要素を示すものとする。
【0013】
本発明の一実施形態に係わる情報処理装置10の具体例を、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
本実施形態において、「神経筋疾患」としては、例えば、パーキンソン病、ハンチントン病、筋委縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、多発性硬化症、視神経脊髄炎、副腎白質ジストロフィー、異染性白質ジストロフィー、高グルタル酸血症I型、フェニルケトン尿症、GM1ガングリオシド―シス、GM2ガングリオシド―シス、ムコリピドーシスII型(I-cell病)、アンジェルマン症候群、クラッベ病、バッテン病、ムコ多糖症、レット病、ニーマンピック病A,B,C、脊髄損傷、封入体筋炎、重症筋無力症、遺伝性痙攣対麻痺、原発性側索硬化症、シャルコーマリートゥース病、脊髄性筋萎縮症、フリードライヒ運動失調症、皮膚筋炎、多発性筋炎、ギランバレー症候群、慢性炎症性、脱髄性多発神経炎、ランバーイートン筋無力症、多巣性運動ニューロパチー、抗MAG末梢ニューロパチー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、筋ジストロフィー、筋強直性ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、球脊髄性筋萎縮症、ミトコンドリア病、Leigh脳症(リー脳症)、MELAS(ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群)、脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTAS)、ペリチェウス・メルツバッハ病(PMD)、ウイルスや菌による神経炎や脊髄炎、脳梗塞、頚椎症、脊椎症などが挙げられる。なお、脳梗塞、頚椎症、脊髄症は、一般には神経筋疾患には含まれないものの、運動障害が生じる疾患であり、本実施形態においては、神経筋疾患に含まれる疾患として同義に捉えるものとする。
【0015】
本実施形態において、「運動神経系の直接的又は間接的な機能異常」とは、例えば、神経筋疾患の診断を下すために医師が患者に対して確認する患者の症状または検査結果のうち、運動神経系の機能異常に関するものを指す。運動神経系の機能異常が直接的に関与する症状または検査結果としては、タイピング動作、歩行、発話、呼吸、表情、または微細もしくは粗大運動に関するものが挙げられる。また、運動神経系の機能異常が間接的に関与する症状または検査結果としては、睡眠に関するものが挙げられる。
【0016】
<構成>
図1は、本実施形態に係る情報処理装置10を含む情報処理システム1の一例を示す図である。この実施形態では、情報処理装置10は、患者等のユーザが利用するユーザ端末20、及び医師が利用する医師端末30とネットワークNWを介して通信可能に接続される。
【0017】
本実施形態において、ネットワークNWは、例えば、インターネットである。ネットワークNWは、例えば、公衆電話回線網、携帯電話回線網、無線通信網、イーサネット(登録商標)等により構築される。
【0018】
情報処理装置10は、医療機関や医療情報を提供する組織により管理される端末であり、ユーザ端末20及び医師端末30とネットワークNWを介して情報処理を実行することにより情報提供システム1の一部を構成する。情報処理装置10は、例えば、ワークステーションであるか、パーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、あるいはクラウドコンピューティングによって論理的に実現されてもよい。かかる情報処理装置10には、ユーザ端末20及び医師端末30とのコミュニケーションが可能なアプリケーション等がインストールされていてもよいし、当該コミュニケーションを可能とするウェブサービスにアクセスするためのブラウザがインストールされていてもよい。
【0019】
ユーザ端末20は、主にユーザがデータ等を入力するために利用する端末であり、ネットワークNWを介して情報処理装置10及び医師端末30との情報処理を実行する。ユーザ端末20は、例えば、ワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータであってもよいし、スマートフォン等の携帯通信機器等であってもよい。また、ユーザ端末20は、ユーザ自身が身に着けるウェアラブルデバイス等のデジタルデバイスであってもよい。かかるユーザ端末20には、情報処理装置10又は医師端末30とのコミュニケーションが可能なアプリケーション等がインストールされていてもよいし、当該コミュニケーションを可能とするウェブサービスにアクセスするためのブラウザがインストールされていてもよい。また、ユーザ端末20は、ユーザが入力するものであれば、元々所有しているスマートフォンであってもよく、病院側から渡された端末であってもよい。また、ユーザ端末20に入力するのは、ユーザ本人に限らず、ユーザ端末20は、ユーザの家族、ユーザを介護する介護者、又は、ユーザを代理する代理人(representative)が利用する端末であってもよい。
【0020】
医師端末30は、例えば、病院等の医療機関に勤務する医師がユーザの状況を把握するために用いる端末であり、ネットワークNWを介して情報処理装置10及びユーザ端末20との情報処理を実行する。医師端末30は、例えば、ワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータであってもよいし、スマートフォン等の携帯通信機器等であってもよい。かかる医師端末30には、情報処理装置10又はユーザ端末20とのコミュニケーションが可能なアプリケーション等がインストールされていてもよいし、当該コミュニケーションを可能とするウェブサービスにアクセスするためのブラウザがインストールされていてもよい。
【0021】
<ハードウェア構成>
図2は、本実施形態に係る情報処理装置10を実現するコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。コンピュータは、少なくとも、制御部11、メモリ12、ストレージ13、通信部14及び入出力部15等を備える。これらはバス16を通じて相互に電気的に接続される。
【0022】
制御部11は、情報処理装置10全体の動作を制御する演算装置であり、各要素間におけるデータの送受信の制御、及び、アプリケーションの実行及び認証処理に必要な情報処理等を行う。例えば、制御部11は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、ストレージ13に格納されメモリ12に展開されたプログラム等を実行することにより各情報処理を実施する。
【0023】
メモリ12は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される主記憶と、フラッシュメモリ又はHDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶装置で構成される補助記憶と、を含む。メモリ12は、制御部11のワークエリア等として使用され、また、情報処理装置10の起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)、及び、各種設定情報等を格納する。
【0024】
ストレージ13は、アプリケーションプログラム等の各種プログラムを格納する。各処理に用いられるデータを格納したデータベースがストレージ13に構築されていてもよい。
【0025】
通信部14は、情報処理装置10をネットワークに接続する。通信部14は、例えば、有線LAN(Local Area Network)、無線LAN、Wi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、近距離又は非接触通信等の方式で、外部機器と直接又はネットワークアクセスポイントを介して通信する。
【0026】
入出力部15は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等の情報入力機器、及びディスプレイ等の出力機器である。
【0027】
バス16は、上記各要素に共通に接続され、例えば、アドレス信号、データ信号及び各種制御信号を伝達する。
【0028】
本実施形態において、ユーザ端末20及び医師端末30を実現するコンピュータ又はスマートフォン等の端末のハードウェア構成は、
図2に示す情報処理装置10のハードウェア構成例と同様であるため、説明を省略する。
【0029】
<ソフトウェア構成>
図3は、本実施形態に係る情報処理装置10のソフトウェア構成例を示す図である。情報処理装置10は、データ取得部101、解析部102、情報生成部103、情報提供部104、ユーザ端末通知部105、及び、医師端末通知部106を含む機能部と、ユーザ情報記憶部111、ユーザデータ記憶部112、医師入力情報記憶部113、及び、提供情報記憶部114を含む記憶部とを備えることができる。
【0030】
データ取得部101、解析部102、情報生成部103、情報提供部104、ユーザ端末通知部105、及び、医師端末通知部106は、情報処理装置10に設けられている制御部11がストレージ13に記憶されているプログラムをメモリ12に読み出して実行することにより実現される。ユーザ情報記憶部111、ユーザデータ記憶部112、医師入力情報記憶部113、及び、提供情報記憶部114は、それぞれ、メモリ12及びストレージ13の少なくとも一方が備える記憶領域の一部として実現される。
【0031】
ユーザ情報記憶部111は、例えば、データ取得部101が取得したユーザの基本情報を記憶する。
図4は、ユーザ情報記憶部111に格納されるユーザ基本情報のデータ構成の一例である。ユーザ基本情報はユーザIDに紐づけられていてもよい。ユーザ基本情報は、ユーザID、ユーザの年齢、性別、職業、出身地などの属性に関する情報、持病、既往歴、アレルギー、体質(肥満、虚弱など)、食生活、飲酒、喫煙、運動習慣等の生活習慣に関する情報等を含んでもよく、必要に応じてユーザの氏名、住所、身長、体重が含まれてもよい。
【0032】
ユーザデータ記憶部112は、データ取得部101が所定の期間において複数回取得したユーザデータを記憶する。ユーザデータは、運動神経系の直接的又は間接的な機能異常に関する1つ以上であり、例えば、下記(a)乃至(j)から選ばれる神経筋疾患に関する1つ以上のユーザデータを含み、これらは、例えば、ユーザ端末20から取得される。
【0033】
(a)タイピングの速度、精度、時間、及び、量から選ばれる1つ以上のタイピング動作に関するデータ
(b)歩数、歩行速度、足の振り上げ角度、足首の可動角度、歩幅、腕振り、足振り、全身体の横振れ、及び、歩行時の転倒の割合から選ばれる1つ以上の歩行に関するデータ
(c)会話の音声データ、通話記録、発話速度、発話時間、持続的な発声、単語数、言語障害、不明瞭な言語の頻度、停止期間、非言語音、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の発話に関するデータ
(d)睡眠時間、睡眠効率、眼球の動き、及び、覚醒の頻度から選ばれる1つ以上の睡眠に関するデータ
(e)肺活量、努力性肺活量、呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の呼吸に関するデータ
(f)上唇と下唇との間の開口、上唇と下唇との間の幅、唇の動き、開口の速度、開口の加速度、痙攣、口の表面、左右の口の表面の平均対称比、眉の縦位置、目の開き、頭の傾きの平行移動と回転ベクトル、及び、眼球の動きから選ばれる1つ以上の表情に関するデータ
(g)デジタルデバイスに入力されたユーザのタップ、入力、スワイプ、及び、描画から選ばれる1つ以上の微細運動に関するデータ
(h)腕の位置を変える動作、階段の上り下り、座位からの立ち上がり、及び、足の痙攣の頻度から選ばれる1つ以上の粗大運動に関するデータ
(i)疾患症状に関する質問票の答え
(j)デバイスの内蔵センサで自動的に収集された情報
【0034】
図5は、ユーザデータ記憶部112に格納されるユーザデータの構成例である。上記(a)乃至(j)から選ばれる1つ以上のユーザの神経筋疾患に関する1つ以上のユーザデータはユーザIDに紐づけられてよい。
【0035】
(a)「タイピング動作に関するデータ」の例としては、タイピングの速度、精度、時間、及び、量が挙げられる。タイピング動作に関するデータは、例えば、ユーザ端末20への入力動作、入力動作にかかる時間や速度、入力し直す割合、入力動作の際にどこを押しているか、LINEやブラウザでどのような言葉の検索を行っているかのデータである。
【0036】
タイピング動作に関するデータは、ユーザ端末20に内蔵されたGPS、加速度計、テキストのログ及び画面イベントデータなどから自動で取得されたデータ等や、調査のためのタスクから能動的に取得されたデータであってもよい。タイピング動作に関するデータは、例えば、米国特許出願公開第2021/0236044号明細書に開示されるように、ユーザがタイプしたキーストロークデータである。
【0037】
(b)「歩行に関するデータ」の例としては、歩数、歩行速度、足の振り上げ角度、足首の可動角度、歩幅、腕振り、足振り、全身体の横振れ、及び、歩行時の転倒の割合が挙げられる。歩行に関するデータは、ウェアラブル端末やスマートフォンから取得されるデータであり、ウェアラブル端末に内蔵された加速度計から自動的に取得されるデータである。歩行に関するデータは、例えば、米国特許第9408560号明細書に開示されるように、ウェアラブル端末やスマートフォンに内蔵された歩数計により検出及び記録された、ユーザの所定の期間にわたる歩行に関するデータである。歩行に関するデータは、カメラ等を用いて撮影した、ユーザの画像や動画であってもよい。複雑な計測機器を用いることなく簡単にデータを取得し、日常生活の活動から神経筋疾患の兆候をより捉えやすくするためには、上記(b)に関連するデータとして、歩数データを含めることが好ましい。
【0038】
(c)「発話に関するデータ」の例としては、会話の音声データ、通話記録、発話速度、発話時間、持続的な発声、単語数、言語障害、不明瞭な言語の頻度、停止期間、非言語音(鼻音など)、及び、咳の頻度が挙げられる。発話に関するデータは、声の音声録音を継続的に取得し、時間の経過に伴う音声の劣化を評価するデータが含まれる。これらのデータは、例えば、国際公開第2021/150989号に開示されるように、スマートフォン、スマートウォッチ、ウェアラブルセンサ、コンピューティングデバイス、ヘッドセット、ヘッドバンド、又はこれらの組み合わせである音声記録装置によって取得する。日常会話、又は、短時間の音声録音等から神経筋疾患の兆候をより捉えやすくするためには、上記(c)に関連するデータとして、停止期間データを含めることが好ましい。
【0039】
(d)「睡眠に関するデータ」の例としては、睡眠時間、睡眠効率、眼球の動き及び覚醒の頻度が挙げられる。睡眠に関するデータは、例えば、国際公開第2019/106230号に開示されるように、装着型の電子装置を用いて取得した睡眠の概日リズム、入眠及び起床時刻、並びに、持続時間のデータである。睡眠に関するデータは、スマートフォン、スマートウォッチ、ウェアラブルセンサ等を用いて取得した、睡眠パターン、睡眠時間、起きた時間、睡眠の深さ、及び、レム睡眠の回数等のデータであってもよく、カメラ等を用いて撮影した、ユーザの画像や動画であってもよい。
【0040】
(e)「呼吸に関するデータ」の例としては、肺活量、努力性肺活量、呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全、及び、咳の頻度等の肺の機能に関するデータが挙げられる。呼吸に関するデータは、例えば、スマートフォン肺活量計等のモニター装置、又は、スパイロメーター(肺機能検査)を利用して取得される。データの取得は、マウスピースをくわえ、鼻をつまみ、技師の声掛けに合わせて呼吸を行い、肺に出入りする空気の量、及び、速度を測定することにより実行される。
【0041】
(f)「表情に関するデータ」の例としては、上唇と下唇との間の開口及び幅、唇の動き、開口の速度及び加速度、痙攣、口の表面、左右の口の表面の平均対称比、眉の縦位置、目の開き、頭の傾きの平行移動及び回転ベクトル、並びに、眼球の動きが挙げられる。表情に関するデータは、例えば、PCT国際出願公開の日本語訳である特表2020-537579号公報に開示されるように、利用者が用意した動画に映る人物の表情を感情認識AIで解析し、動画から読み取れる人物の感情を数値データとして出力することにより取得される。また、特開2018-007792号公報に開示されるように、表情に関するデータは、映像に映っている人物の顔画像からデータを取得する。表情に関するデータは、カメラ等を用いて撮影した、ユーザの画像や動画であってもよい。
【0042】
(g)「微細運動」とは、一般的には、手又は指を使った細かく緻密な動作に必要な運動を指し、文字を書く、箸を使う、ボタンを留める、小さなものを掴む等が、微細運動に含まれる。本実施形態では、「微細運動に関するデータ」は、例えば、通常アナログで行われているDrawing試験をデジタルデバイス上で行う試験から得られるデータである。具体的な試験としては、スマートフォン等の画面表面に絵を描いてもらったり、提示された絵の上をなぞったり、幾何学的な図形を右から左へ移動させたりする試験が挙げられる。各試験における応答の正確性または試験に要する時間から兆候を見出すことができる。微細運動に関するデータは、例えば、特開2021-77412号公報に記載されたDrawing試験のように、モバイル端末に指で入力する技術を使用して、取得される。デジタル機器を用いた日常生活の活動から神経筋疾患の兆候をより容易に捉えるためには、上記(g)に関するデータとして、親指と人差し指とを用いて実行する微細運動に関するデータを含めることが好ましい。
【0043】
(h)「粗大運動」とは、姿勢の保持及び移動動作などのように全身をつかう運動を指し、歩く、走る、跳ぶ(ジャンプする)、物を投げる等の動作が粗大運動に含まれる。本実施形態では、「粗大運動に関するデータ」の例として、腕の位置を変える動作、階段の上り下り、座位からの立ち上がり、足の痙攣の頻度が挙げられる。ここで、粗大運動に関するデータとしては、モーションキャプチャのようにカメラ又はセンサを用いて身体の動きを立体的に計測して取得したデータ、又は、身体の映像を用いて検出した身体の部位の動作を示すデータを用いることができる。粗大運動に関するデータの取得は、身体の動きを捉えることで実行される。なお、粗大運動に関するデータは、例えば、スマートフォンアプリ を用いて入力された自己申告情報であってもよく、例えば、Modified Norris Scaleのような四肢症状尺度データを用いることができる。
【0044】
(i)疾患症状に関する質問票の答えは、例えば、ユーザ端末20にユーザ又はユーザ以外の第三者に入力してもらうことにより取得できるデータである。疾患症状に関する質問票の答えは、例えば、スマートフォンアプリを用いて入力される自己申告情報であってもよい。そのような質問票(Survey)としては、例えば、ALSFRS-R Questionnaire、Rasch Overall ALS Disability Scale(ROADS)、CPIB Questionnaire、Neurological Fatigue Index-Motor Neuron Disease(NFIMND)、ALS Depression inventory(ADI-12)Questionnaire、ALS Quality of Life Survey(QoL)、Survey on demographic and phone usage info.、ALS CBS(ALS Cognitive Behavioral Screen)等が挙げられる。
【0045】
(j)「デバイスの内蔵センサで自動的に収集された情報」は、例えば、ユーザ端末20にインストールされているセンサ又はアプリから自動的に取得されたデータである。より具体的には、これらは、GPS、加速度計、通話とテキストのログ、及び、画面イベントデータ等から自動で取得されたデータである。このようなデータは、例えば、JMIR Ment Health.2016 Apr-Jun;3(2):e16.に開示されるように、スマートフォンアプリを用いて、スマートフォンに内蔵されたGPS及び加速度計により取得した、上記の(b)「歩行に関するデータ」である。日常生活で携帯する機器又はウェアラブル機器で簡単にデータを取得しつつ、より効果的に疾患又は運動機能異常の兆候を検出するために、GPSまたは加速度計に取得させるデータを上記(j)に関するデータとして含めることが好ましい。
【0046】
上記のうち、(a)乃至(i)のユーザデータは、ユーザ端末20を利用するユーザが直接ユーザ端末20に入力した自己申告情報であってもよい。自己申告情報は、ユーザ以外の第三者が代わりに入力した情報であってもよい。また、自己申告情報は、病院や検査を行う箇所で入力されたものであってもよく、アンケートの回答を集計したものであってもよい。自己申告情報は、ユーザ端末20から自動で取得されるものであってもよい。なお、自己申告情報には、上記(a)乃至(i)に加えて、ユーザの身長、及び、体重が含まれてもよい。
【0047】
医師入力情報記憶部113は、データ取得部101が所定の期間において医師端末30から複数回取得した医師入力情報、及び/又は、医師端末30から自動的に取得したデータを記憶する。
図6は、医師入力情報記憶部113に格納される医師入力情報の構成例である。医師入力情報の例としては、ユーザの受診情報、すなわちユーザの受診日時、又は、上記のユーザの神経筋疾患に関するユーザデータの1つである(k)「医療機関からのデータ」が挙げられる。医師入力情報は、ユーザIDに紐づけられてよい。
【0048】
(k)「医療機関からのデータ」は、ユーザ端末20から取得できない医療データ、又は、既往歴等のデータである。これら医療機関からのデータは、ユーザデータとして単独で用いてもよく、提供情報の精度を上げるために、上記(a)乃至(j)のユーザデータと組み合わせて用いることもできる。より具体的には、医療機関からのデータは、例えば、医療機関等で実施された臨床試験で取得されたデータ(治験データ)を記憶した臨床試験情報データベース(図示せず)から取得された情報である。臨床試験情報データベースから取得された情報の場合、ユーザデータは、臨床試験が実施された日付や、データ取得日が含まれてもよい。また、医療機関からのデータは、ユーザを診察した医師が医師端末30を用いて入力した情報を記憶した医師入力情報記憶部113から取得された情報であってもよい。さらに、医療機関からのデータには、医師入力情報記憶部113から取得したユーザに投与された薬の種類又は処方量を示すデータが含まれていてもよく、薬の服薬期間を示すデータが含まれてもよい。また、カメラ等を用いて撮影した、患者(ユーザ)の画像又は動画や、ユーザの身長や体重が含まれてもよい。
【0049】
上記(a)乃至(k)のユーザデータのいずれか1つ以上は、運動神経系の直接的又は間接的な機能異常に関するデータであり、例えば、ALS機能評価スケール(ALSFRS-R)に含まれる運動機能に関するデータであってもよい。
【0050】
ALS患者の多くは、手又は足の痙攣、並びに、筋力低下及び筋萎縮などを含む不規則な非対称性の症状を訴える。筋力低下は、前腕、肩、及び、下肢に進行する。程なくして線維束性収縮、痙縮、深部腱反射亢進、伸展性足底反応、巧緻運動障害、硬直した動き、体重減少、疲労、並びに、顔の表情および舌の動きの制御困難が生じる。その他の症状としては、嗄声、嚥下困難、言語不明瞭などがあり、嚥下が困難になるために、唾液が増加するようであり、患者は液体でむせやすくなる。疾患の後期には、情動調節障害(pseudobulbar affect)が生じ、不適切で不随意かつ制御不能の過剰な笑いや号泣がみられる。感覚系、意識、認知、自発的眼球運動、性機能、並びに、尿道および肛門括約筋は通常保たれる。よって、ALSFRS-Rに含まれる運動機能に関するデータを活用することで、ユーザの神経筋疾患に関するユーザデータとして利用することができる。
【0051】
ここで、「ALSFRS-R」(ALS Functional Rating Scale-Recvised)は、ALS患者の日常生活活動を把握するための評価尺度で、四肢の運動機障害、延髄機能障害(球機能障害)、呼吸機能障害などに関する合計12の評価項目を含む。各項目は、0から4の5段階で点数化され、ALS患者の総合的な重症度及び病態進行の評価に用いられている。評価項目は、例えば、1)言語(speech)、2)唾液分泌、3)嚥下、4)書字、5)摂食動作(食物の切断及び器具の取り扱いなど)、6)着衣/身の回りの動作、7)寝床での動作(寝返り及び寝具の調整など)、8)歩行、9)階段をのぼる、10)呼吸困難、11)起坐呼吸、12)呼吸不全の12項目を含む。ALSFRS-R以外に、ALSの評価手法として、40-item Amyotrophic Lateral Sclerosis (ALS) Assessment Questionaire(ALSAQ-40)、Japanese ALS Severity Classification、Modified Norris Scale等が挙げられる。これらの項目をユーザデータとして用いることで、神経筋疾患の兆候を容易に捉えることができる。
【0052】
上記(a)乃至(k)のユーザデータは、適宜組み合わせて用いることができる。ユーザデータは自己申告情報に基づいて更新されてもよい。また、自己申告情報は、自己申告情報を取得するたびに更新されてもよい。
【0053】
一実施形態において、情報処理装置又はプログラムは、上記の(a)乃至(k)に関するユーザデータとして、上記(a)、(b)、(c)、(f)、(g)、(h)及び(j)から選択される1以上を含むユーザデータを取得するように構成されていることが好ましい。これらユーザデータの多くは、運動神経系の直接的な機能障害に関連する。したがって、このようなユーザデータを取得することにより、ユーザ自身又は第三者が疾患の兆候を認識する前であっても、容易に疾患の兆候を早期に検出することが可能となる。
【0054】
一実施形態において、情報処理装置及びプログラムは、上記の(a)乃至(k)に関するユーザデータとして、(c)発話に関するデータ及び(g)微細運動に関するデータから選択される少なくとも1つ以上を取得するように構成されていることが好ましい。これらのデータは、検証レベルが高く、信頼性の高いデータである可能性が高い。したがって、これらのデータを1つ以上取得することで、信頼性の高いデータに基づき、高い信頼性で容易に疾患の兆候を検出することが可能となる。
【0055】
さらに、一実施形態において、情報処理装置及びプログラムは、上記の(a)乃至(k)に関するユーザデータのうち、以下に示すグループ1に分類される1つ以上のデータを含むユーザデータを取得するように構成されていることが好ましい。また、情報処理装置及びプログラムは、グループ1に分類される1つ以上のデータに代えて、又は、加えて、以下に示すグループ2に分類される1以上のデータを含めて取得するように構成されていることが、より好ましい。特に、各グループのデータを組み合わせて取得することにより、複数の部位における運動神経系に関するデータを取得することができる。その結果、より早期に、より高い精度で、疾患の兆候を容易に検出することが可能となる。なお、本実施形態において、複数のカテゴリのユーザデータを取得する場合、例えば、グループ1及び/又はグループ2に分類されるデータのみを取得してもよいし、グループ1及びグループ2に分類されるデータ以外の1つ以上のユーザデータを追加で取得してもよい。
【0056】
グループ1:(c)発話に関するデータ、及び、(f)表情に関するデータのうちから選択される1つ以上であり、好ましくは、(c)発話に関するデータを少なくとも含む。
グループ2:(b)歩行に関するデータ、(h)粗大運動に関するデータ、及び、(j)デバイスの内蔵センサで自動的に収集された情報から選択される1つ以上であり、好ましくは、(b)歩行に関するデータを少なくとも含む。
【0057】
さらに、一実施形態において、情報処理装置及びプログラムは、上記の(a)乃至(k)に関するユーザデータのうち、上記グループ1及び/又はグループ2に属するデータに加えて、以下に示すグループ3に分類される1つ以上を含むユーザデータを取得するように構成されていることが好ましい。
グループ3:(a)タイピング動作に関するデータ、及び、(g)微細運動に関するデータから選択される1つ以上であり、好ましくは、(g)微細運動に関するデータを少なくとも含む。
【0058】
グループ1のデータは、主に、延髄に支配される運動機能(顔の動きなど)に対応し、グループ2のデータは、主に、下肢の運動機能に対応し、グループ3のデータは、主に、上肢の運動機能に対応すると考えられる。そのため、これらのユーザデータを組み合わせて取得することで、全身の運動機能に対応するデータを網羅的に取得することができる。その結果、特定の部位に疾患の兆候が現れた場合であっても、その兆候をより早期に、より高い精度で容易に検出することが可能となる。さらに、ALSFRS-Rなどの評価スコアに現れない発症又は疾患の進行についても、これらのユーザデータを組み合わせることで、その疾患の兆候を早期に検出することができる。その結果、ユーザの生活の質を向上させることができる。
【0059】
上記の(a)乃至(k)に関するユーザデータの好ましい組み合わせの例としては、以下に示す(I)~(V)が挙げられるが、これらの例示に限定されるものではない。いずれにしても、より高い精度で容易に疾患の兆候を早期に検出することが可能となる。
(I):(c)発話に関するデータ、(b)歩行に関するデータ、及び、(g)微細運動に関するデータを含む組み合わせ
(II):(c)発話に関するデータ、(h)粗大運動に関するデータ、及び、(g)微細運動に関するデータを含む組み合わせ
(III):(c)発話に関するデータ、(b)歩行に関するデータ、及び、(a)タイピング動作に関するデータを含む組み合わせ
(IV):(f)表情に関するデータ、(b)歩行に関するデータ、及び、(g)微細運動に関するデータを含む組み合わせ
(V):(c)発話に関するデータ、(j)デバイスの内蔵センサで自動的に収集された情報、及び、(a)タイピング動作に関するデータを含む組み合わせ
【0060】
提供情報記憶部114は、ユーザ情報記憶部111に記憶されたユーザデータと、ユーザデータ記憶部112に記憶されたユーザデータとに基づいて生成された提供情報を記憶する。
図7は、提供情報記憶部114に格納される提供情報の構成例を示す図である。提供情報の例としては、神経筋疾患の兆候、発症の予測、進行予測、患者層別化、医療機関の受診に関する情報、及び、疾患症状の進行に関するスコア値等が挙げられる。疾患症状の進行に関するスコア値としては、例えば、後述する解析部102の解析により得られたタイピング動作の変動量を数値化し、閾値以上を疾患スコアとして判別する場合に用いられるスコア値が挙げられる。
【0061】
データ取得部101は、(a)乃至(k)から選ばれる神経筋疾患に関する1つ以上のユーザデータを所定の期間において複数回取得する。ユーザデータを所定の期間において複数回取得することで、時間の経過に伴うユーザの行動の変化を定量化する。データ取得部101は、ユーザデータをユーザ端末20又は医師端末30から直接取得してもよいし、若しくは別のデータサーバを介してユーザデータを取得してもよい。データ取得部101が取得した情報は、ユーザ情報記憶部111、ユーザデータ記憶部112又は医師入力情報記憶部113にそれぞれ格納される。データ取得部101は、例えば、ユーザ自身の入力、もしくは、ユーザの家族、友人、介護者、又は代理人等のような、ユーザ以外の人物の入力により、ユーザデータを受付けてもよく、2人以上の者によるデータの入力を受付けてもよい。
【0062】
データ取得部101は、ユーザデータを、受動的に取得してもよいし、能動的に取得してもよい。ここで、「受動的に取得されたデータ」とは、上記の(j)のように、GPS、加速度計、通話とテキストのログ、及び画面イベントデータなどから自動で取得されたデータであり、GPSトレース及び通話記録などのように、対象者が直接関与することなく生成されるデータを指す。また、「能動的に取得されたデータ」とは、タスク(質問票への回答、及び、指を用いた入力動作など)から取得されたデータであり、生成のために対象者による能動的な関与を必要とするデータを指す。例えば、ユーザ端末20のGPS、加速度計等のセンサ、並びに、電話使用ログ及び通信ログ等のようなログ等の受動的に取得されたデータと、質問票への回答、指を用いた入力動作等によるタスクから能動的に取得されたデータとを相互に補完的に利用することで、より精度の高い情報を提供することができる。
【0063】
データ取得部101は、上記ユーザデータを所定の期間において連続的に取得してもよい。ユーザデータを連続的に取得することで、ユーザデータの変動量に関するデータを取得することができる。神経筋疾患の患者は、疲れやすくなり、日常生活のパターンが変化する可能性がある。そのため、睡眠パターン及び呼吸パターン等のようなユーザ特有のパターンを見ることで、神経筋疾患の兆候を捉えやすくなると考えられる。したがって、連続して取得するユーザデータは多ければ多いほど良い。
【0064】
解析部102は、データ取得部101が取得したユーザデータの変動量から神経筋疾患の兆候を解析する。すわなち、(a)~(k)から選ばれる1つ以上のユーザデータから得られたデータの質を解析して、解析結果から神経筋疾患の微細な兆候を捉える。例えば、ユーザデータの変動量から異常値パターンの有無を検出し、これらのデータからAI等を用いて機能異常の兆候を予測する。神経筋疾患の兆候は、情報生成部103により、ユーザ又は医師に提供する提供情報として生成される。
【0065】
情報生成部103は、データ取得部101により取得されたユーザデータに基づいて、所定の端末へ提供する提供情報を生成する。すわなち、(a)乃至(k)のユーザデータに基づいて、すなわち、(a)乃至(k)の単独又は複合的に組み合わせたユーザデータを用いて、ユーザ又は医師に提供する提供情報を生成する。ユーザデータの組み合わせは、目的とする提供情報又は取得したユーザデータの質に応じて、適宜選択することができる。また、情報生成部103は、解析部102による解析結果から、神経筋疾患の兆候に関する情報を提供情報として生成する。生成した情報は、情報提供部104によってユーザ端末20及び医師端末30に送信される。情報生成部103が生成した情報は、提供情報記憶部114に格納される。
【0066】
ユーザに提供する提供情報は、上記のように、例えば、神経筋疾患の兆候だけでなく、発症の予測、進行予測、患者層別化、医療機関の受診に関する情報、及び、疾患症状の進行に関するスコア値などが含まれていてもよい。これらの提供情報を提供することにより、ユーザは早期の受診が可能となり、また、医者は、正確な診断と、発症部位の違いに応じたケアを検討することができる。
【0067】
情報提供部104は、情報生成部103が生成した提供情報をユーザ、ユーザの家族、又は、医師のいずれかが利用する所定の端末に提供する。情報提供部104が情報を提供する端末は、ユーザが利用するユーザ端末20であってもよく、また医師端末30であってもよく、それ以外の保険会社、製薬企業、患者団体、研究機関、金融機関等のような第三者が利用する端末であってもよい。
【0068】
ユーザ端末通知部105は、例えば、あらかじめ設定されたタイミングにおいてユーザにユーザデータの取得を促すメッセージを通知する。このタイミングはユーザごとに設定してもよく、例えば、毎日所定の時間に通知するように間隔又は時間帯を設定したり、一週間に一度通知する等などのように間隔又は時間帯を設定したりすることができる。また、情報提供部104から通知された提供情報に基づき、警告を発するようにしてもよい。
【0069】
医師端末通知部106は、例えば、あらかじめ設定されたタイミングにおいて、情報提供部104からユーザの提供情報が取得された場合に、その提供情報の確認を促すメッセージを通知する。また、例えば、ユーザ端末20から受診の予約が入力され、情報処理装置10を介して、その予約情報を取得した場合に、その予約情報を通知するようにしてもよい。
【0070】
<情報処理の流れ>
図8は、本実施形態に係る情報処理装置10において実行される処理の流れを示す図である。
【0071】
まず、本処理の前処理として、情報処理装置10のデータ取得部101は、ユーザに関する情報入力を受付け、ユーザ基本情報をユーザ情報記憶部111に格納する。既にユーザ基本がユーザ情報記憶部111に格納されている場合は、ユーザID等の入力を受け付けることで本実施形態に係る情報処理に必要なユーザ基本情報を参照することもできる。
【0072】
次に、データ取得部101は、上記(a)乃至(k)から選ばれる1つ以上の神経筋疾患に関するユーザデータを取得する(S101)。これらのデータの取得は、ユーザ端末20、医師端末30、又は、他のサーバが保有しているデータを取得するための操作を行うことで取得してもよく、インストールしたアプリによって自動で取得するようにしてもよい。
【0073】
情報生成部103は、データ取得部101が取得したユーザデータに基づいて、所定の端末へ提供する提供情報を生成する(S102)。すわなち、(a)乃至(k)から選ばれる1つ以上のユーザデータに基づいて、ユーザ又は医師等に提供する神経筋疾患の兆候に関する情報を生成する。
【0074】
情報提供部104は、情報生成部103が生成した提供情報を所定の端末に提供する(S103)。情報提供部104が情報を提供する端末は、ユーザが利用するユーザ端末20であってもよいし、医師端末30であってもよいし、もしくは、それ以外の第三者の端末であってもよい。
【0075】
このように、本実施形態の情報処理装置10では、神経筋疾患に関するユーザデータを所定の期間において複数回取得し、時間の経過に伴う行動の変化を定量化し、そのユーザデータに基づいて所定の端末へ提供する提供情報を生成して、その結果を所定の端末に提供する。その結果、ユーザの神経筋疾患に関する兆候を容易に、かつ、早期に捉えることが可能となる。これにより、神経筋疾患を早期に発見し、ユーザに適切な治療を施し、疾患の進行を防止可能とすることができる。また、ユーザデータをウェアラブル又はスマートフォン等のデジタルデバイスを介して取得する場合には、ユーザデータをデジタルバイオマーカとして継続的かつ非侵襲的に、かつ、容易に利用することができ、神経筋疾患の兆候を容易に捉えることが可能となる。
【0076】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更又は改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、本明細書は、情報処理装置の他に、情報処理システム、コンピュータを用いた情報処理方法、及び、情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに係わる実施形態も開示している。これらの内容に関連して特に説明しない点については、本明細書に記載された各実施形態を単独で採用することもできるし、2つ以上の実施形態を適宜組み合わせて採用することもできる。
【0077】
例えば、本実施形態では、本実施形態では、説明の便宜のために、情報処理装置10、ユーザ端末20及び医師端末30は夫々1台ずつ図示されているが、情報処理装置10に対して複数のユーザ端末20又は複数の医師端末30が、ネットワークNWを介して接続されていてもよい。また、情報処理装置10は1台のコンピュータであるものとしたが、これに限らず、複数台のコンピュータに機能部及び記憶部を分散させるようにしてシステムを構成してもよい。例えば、情報処理装置10の各記憶部をデータベースサーバが備えるようにし、情報処理装置10はデータベースサーバにアクセスするようにしてもよい。また、各機能部を複数のコンピュータに分散させて備えるようにすることもできる。
【0078】
また、情報処理装置10をユーザが利用するユーザ端末として、当該ユーザ端末が別に設けたデータベースサーバにアクセスするように構成してもよい。
【0079】
さらに、
図3に含まれる機能部と構成部以外の構成を含んでもよい。また、
図9に含まれる各工程以外の他の工程を追加してもよい。例えば、S101において連続してユーザデータを取得し、そのデータの変動量を解析部102が解析し、S102において、情報生成部103が解析結果を利用して、所定の端末へ提供する提供情報を生成してもよい。
【0080】
また、S103において、又はS103の後に、提供情報に基づきユーザ端末20に警告を発してもよい。さらに、提供情報に基づき、臨床試験における薬効の評価を行う評価部を設け、その評価結果を医師端末30に通知してもよい。また、その評価結果又は提供情報に基づいて、ユーザに医師への受診を促すように設定してもよい。その場合には、受診のための予約を受け付けて医師端末30に通知してもよい。
【0081】
上記評価の結果、神経筋疾患を患っていると疑われるユーザに対して、神経筋疾患を治療する方法を提供してもよい。例えば、神経筋疾患治療薬を投与するステップが含まれてもよい。神経筋疾患治療薬としては、例えば、エダラボン及びリルゾール等のALS治療薬、タルチレリン及びプロチレリン等の脊髄小脳変性症治療薬、並びに、L-ドパ及びアポモルフィン等のパーキンソン病治療薬などが挙げられる。さらに、上記評価を通じて、臨床試験における薬効の評価(新規臨床指標/患者層別化)を行ってもよい。
【0082】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的又は例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者に明らかな他の効果を奏しうる。
【0083】
本発明は、神経筋疾患の兆候を客観的かつ容易に捉えることができる情報処理装置に関する。
本発明の一実施形態に係わる情報処理装置は、
下記(a)~(k)から選ばれる神経筋疾患に関する1つ以上のユーザデータを所定の期間において複数回取得するデータ取得部と、
前記ユーザデータに基づいて、所定の端末へ提供する提供情報を生成する情報生成部と、を備える。
(a)タイピングの速度、精度、時間及び量から選ばれる1つ以上のタイピング動作に関するデータ
(b)歩数、歩行速度、足の振り上げ角度、足首の可動角度、歩幅、腕振り、足振り、全身体の横振れ、及び、歩行時の転倒の割合から選ばれる1つ以上の歩行に関するデータ
(c)会話の音声データ、通話記録、発話速度、発話時間、持続的な発声、単語数、言語障害、不明瞭な言語の頻度、停止期間、非言語音、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の発話に関するデータ
(d)睡眠時間、睡眠効率、眼球の動き及び覚醒の頻度から選ばれる1つ以上の睡眠に関するデータ
(e)肺活量、努力性肺活量、呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の呼吸に関するデータ
(f)上唇と下唇との間の開口、上唇と下唇との間の幅、唇の動き、開口の速度、開口の加速度、痙攣、口の表面、左右の口の表面の平均対称比、眉の縦位置、目の開き、頭の傾きの平行移動と回転ベクトル、及び、眼球の動きから選ばれる1つ以上の表情に関するデータ
(g)デジタルデバイスに入力されたユーザのタップ、入力、スワイプ、及び、描画から選ばれる1つ以上の微細運動に関するデータ
(h)腕の位置を変える動作、階段の上り下り、座位からの立ち上がり、及び、足の痙攣の頻度から選ばれる1つ以上の粗大運動に関するデータ
(i)疾患症状に関する質問票の答え
(j)デバイスの内蔵センサで自動的に収集された情報
(k)医療機関からのデータ
本発明の実施形態に係わる情報処理装置は、神経筋疾患の兆候を容易に捉えることができる。
【0084】
[項目1]
本発明の一実施形態に係わる情報処理装置は、
下記(a)~(k)から選ばれる神経筋疾患に関する1つ以上のユーザデータを所定の期間において複数回取得するデータ取得部と、
前記ユーザデータに基づいて、所定の端末へ提供する提供情報を生成する情報生成部と、を備える。
(a)タイピングの速度、精度、時間及び量から選ばれる1つ以上のタイピング動作に関するデータ
(b)歩数、歩行速度、足の振り上げ角度、足首の可動角度、歩幅、腕振り、足振り、全身体の横振れ、及び、歩行時の転倒の割合から選ばれる1つ以上の歩行に関するデータ
(c)会話の音声データ、通話記録、発話速度、発話時間、持続的な発声、単語数、言語障害、不明瞭な言語の頻度、停止期間、非言語音、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の発話に関するデータ
(d)睡眠時間、睡眠効率、眼球の動き及び覚醒の頻度から選ばれる1つ以上の睡眠に関するデータ
(e)肺活量、努力性肺活量、呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の呼吸に関するデータ
(f)上唇と下唇との間の開口、上唇と下唇との間の幅、唇の動き、開口の速度、開口の加速度、痙攣、口の表面、左右の口の表面の平均対称比、眉の縦位置、目の開き、頭の傾きの平行移動と回転ベクトル、及び、眼球の動きから選ばれる1つ以上の表情に関するデータ
(g)デジタルデバイスに入力されたユーザのタップ、入力、スワイプ、及び、描画から選ばれる1つ以上の微細運動に関するデータ
(h)腕の位置を変える動作、階段の上り下り、座位からの立ち上がり、及び、足の痙攣の頻度から選ばれる1つ以上の粗大運動に関するデータ
(i)疾患症状に関する質問票の答え
(j)デバイスの内蔵センサで自動的に収集された情報
(k)医療機関からのデータ
[項目2]
項目1の情報処理装置において、前記データ取得部は、前記ユーザデータを前記所定の期間において連続的に取得してもよい。
[項目3]
項目1又は2の情報処理装置において、前記データ取得部は、前記ユーザデータを受動的又は能動的に取得してもよい。
[項目4]
項目1~3の情報処理装置において、前記提供情報は、神経筋疾患の兆候、発症の予測、進行予測、患者層別化、医療機関の受診に関する情報、及び、疾患症状の進行に関するスコア値の少なくとも1つに関する情報であってもよい。
[項目5]
項目1~4の情報処理装置は、前記ユーザデータの変動量から前記神経筋疾患の兆候について解析する解析部を備えていてもよく、
前記情報生成部は、前記兆候を前記提供情報として生成してもよい。
[項目6]
項目1~5の情報処理装置において、前記ユーザデータは、ALS機能評価スケール(ALSFRS-R)に含まれる運動機能に関するデータを含んでいてもよい。
[項目7]
項目1-6の情報処理装置において、前記ユーザデータは、ユーザの自己申告情報を含んでいてもよい。
[項目8]
項目7の情報処理装置において、前記自己申告情報は、前記ユーザが利用するユーザ端末から取得されてもよい。
[項目9]
項目1~8の情報処理装置は、さらに情報提供部を備えていてもよく、
前記情報提供部は、前記ユーザ、前記ユーザの家族及び医師のいずれかが利用する端末に、前記提供情報を通知してもよい。
[項目10]
項目1~9の情報処理装置において、前記ユーザデータは、運動神経系の直接的又は間接的な機能異常に関するデータであってもよい。
[項目11]
項目1~10の情報処理装置において、前記神経筋疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含んでいてもよい。
[項目12]
本発明の他の実施形態に係わる情報処理装置は、
下記(a)~(k)から選ばれる運動神経系の直接的又は間接的な機能異常に関する1つ以上のユーザデータを所定の期間において複数回取得するデータ取得部と、
前記ユーザデータに基づいて、所定の端末へ提供する提供情報を生成する情報生成部と、を備える。
(a)タイピングの速度、精度、時間、及び、量から選ばれる1つ以上のタイピング動作に関するデータ
(b)歩数、歩行速度、足の振り上げ角度、足首の可動角度、歩幅、腕振り、足振り、全身体の横振れ、及び、歩行時の転倒の割合から選ばれる1つ以上の歩行に関するデータ
(c)会話の音声データ、通話記録、発話速度、発話時間、持続的な発声、単語数、言語障害、不明瞭な言語の頻度、停止期間、非言語音、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の発話に関するデータ
(d)睡眠時間、睡眠効率、眼球の動き、及び、覚醒の頻度から選ばれる1つ以上の睡眠に関するデータ
(e)肺活量、努力性肺活量、呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の呼吸に関するデータ
(f)上唇と下唇との間の開口、上唇と下唇との間の幅、唇の動き、開口の速度、開口の加速度、痙攣、口の表面、左右の口の表面の平均対称比、眉の縦位置、目の開き、頭の傾きの平行移動と回転ベクトル、及び、眼球の動きから選ばれる1つ以上の表情に関するデータ
(g)デジタルデバイスに入力されたユーザのタップ、入力、スワイプ、及び、描画から選ばれる1つ以上の微細運動に関するデータ
(h)腕の位置を変える動作、階段の上り下り、座位からの立ち上がり、及び、足の痙攣の頻度から選ばれる1つ以上の粗大運動に関するデータ
(i)疾患症状に関する質問票の答え
(j)デバイスの内蔵センサで自動的に収集された情報
(k)医療機関からのデータ
[項目13]
本発明の他の実施形態に係わる情報処理システムは、
下記(a)~(k)から選ばれる神経筋疾患に関する1つ以上のユーザデータを所定の期間において複数回取得するデータ取得部と、
前記ユーザデータに基づいて、所定の端末へ提供する提供情報を生成する情報生成部と、
を備える。
(a)タイピングの速度、精度、時間及び量から選ばれる1つ以上のタイピング動作に関するデータ
(b)歩数、歩行速度、足の振り上げ角度、足首の可動角度、歩幅、腕振り、足振り、全身体の横振れ、及び、歩行時の転倒の割合から選ばれる1つ以上の歩行に関するデータ
(c)会話の音声データ、通話記録、発話速度、発話時間、持続的な発声、単語数、言語障害、不明瞭な言語の頻度、停止期間、非言語音、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の発話に関するデータ
(d)睡眠時間、睡眠効率、眼球の動き、及び、覚醒の頻度から選ばれる1つ以上の睡眠に関するデータ
(e)肺活量、努力性肺活量、呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の呼吸に関するデータ
(f)上唇と下唇との間の開口、上唇と下唇との間の幅、唇の動き、開口の速度、開口の加速度、痙攣、口の表面、左右の口の表面の平均対称比、眉の縦位置、目の開き、頭の傾きの平行移動と回転ベクトル、及び、眼球の動きから選ばれる1つ以上の表情に関するデータ
(g)デジタルデバイスに入力されたユーザのタップ、入力、スワイプ、及び、描画から選ばれる1つ以上の微細運動に関するデータ
(h)腕の位置を変える動作、階段の上り下り、座位からの立ち上がり、及び、足の痙攣の頻度から選ばれる1つ以上の粗大運動に関するデータ
(i)疾患症状に関する質問票の答え
(j)デバイスの内蔵センサで自動的に収集された情報
(k)医療機関からのデータ
[項目14]
本発明の他の実施形態に係わる、コンピュータを用いた情報処理方法は、
下記(a)~(k)から選ばれる神経筋疾患に関する1つ以上のユーザデータを所定の期間において複数回取得するステップと、
前記ユーザデータに基づいて、所定の端末へ提供する提供情報を生成するステップと、を有する。
(a)タイピングの速度、精度、時間、及び、量から選ばれる1つ以上のタイピング動作に関するデータ
(b)歩数、歩行速度、足の振り上げ角度、足首の可動角度、歩幅、腕振り、足振り、全身体の横振れ、及び、歩行時の転倒の割合から選ばれる1つ以上の歩行に関するデータ
(c)会話の音声データ、通話記録、発話速度、発話時間、持続的な発声、単語数、言語障害、不明瞭な言語の頻度、停止期間、非言語音、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の発話に関するデータ
(d)睡眠時間、睡眠効率、眼球の動き、及び、覚醒の頻度から選ばれる1つ以上の睡眠に関するデータ
(e)肺活量、努力性肺活量、呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の呼吸に関するデータ
(f)上唇と下唇との間の開口、上唇と下唇との間の幅、唇の動き、開口の速度、開口の加速度、痙攣、口の表面、左右の口の表面の平均対称比、眉の縦位置、目の開き、頭の傾きの平行移動と回転ベクトル、及び、眼球の動きから選ばれる1つ以上の表情に関するデータ
(g)デジタルデバイスに入力されたユーザのタップ、入力、スワイプ、及び、描画から選ばれる1つ以上の微細運動に関するデータ
(h)腕の位置を変える動作、階段の上り下り、座位からの立ち上がり、及び、足の痙攣の頻度から選ばれる1つ以上の粗大運動に関するデータ
(i)疾患症状に関する質問票の答え
(j)デバイスの内蔵センサで自動的に収集された情報
(k)医療機関からのデータ
[項目15]
本発明のさらに他の実施形態は、情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。前記プログラムは、前記情報処理方法として、
下記(a)~(k)から選ばれる神経筋疾患に関する1つ以上のユーザデータを所定の期間において複数回取得するステップと、
前記ユーザデータに基づいて、所定の端末へ提供する提供情報を生成するステップと、
をコンピュータに実行させる。
(a)タイピングの速度、精度、時間、及び、量から選ばれる1つ以上のタイピング動作に関するデータ
(b)歩数、歩行速度、足の振り上げ角度、足首の可動角度、歩幅、腕振り、足振り、全身体の横振れ、及び、歩行時の転倒の割合から選ばれる1つ以上の歩行に関するデータ
(c)会話の音声データ、通話記録、発話速度、発話時間、持続的な発声、単語数、言語障害、不明瞭な言語の頻度、停止期間、非言語音、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の発話に関するデータ
(d)睡眠時間、睡眠効率、眼球の動き、及び、覚醒の頻度から選ばれる1つ以上の睡眠に関するデータ
(e)肺活量、努力性肺活量、呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全、及び、咳の頻度から選ばれる1つ以上の呼吸に関するデータ
(f)上唇と下唇との間の開口、上唇と下唇との間の幅、唇の動き、開口の速度、開口の加速度、痙攣、口の表面、左右の口の表面の平均対称比、眉の縦位置、目の開き、頭の傾きの平行移動と回転ベクトル、及び、眼球の動きから選ばれる1つ以上の表情に関するデータ
(g)デジタルデバイスに入力されたユーザのタップ、入力、スワイプ、及び、描画から選ばれる1つ以上の微細運動に関するデータ
(h)腕の位置を変える動作、階段の上り下り、座位からの立ち上がり、及び、足の痙攣の頻度から選ばれる1つ以上の粗大運動に関するデータ
(i)疾患症状に関する質問票の答え
(j)デバイスの内蔵センサで自動的に収集された情報
(k)医療機関からのデータ
[項目16]
項目1~12の情報処理装置において、
前記ユーザデータは、上記(a)、(b)、(c)、(f)、(g)、(h)、及び、(j)から選択される1つ以上のデータを含んでいてもよい。
[項目17]
項目16の情報処理装置において、
前記ユーザデータは、上記(c)及び(g)から選択される1つ以上のデータを含んでいてもよい。
[項目18]
項目16の情報処理装置において、前記ユーザデータは、以下のグループ1のデータを含んでいてもよい。
グループ1:上記(c)及び(f)のデータから選択される1つ以上
[項目19]
項目18の情報処理装置において、前記ユーザデータは、少なくとも上記(c)のデータを含んでいてもよい。
[項目20]
項目16,18,又は19の情報処理装置において、前記ユーザデータは、さらに以下のグループ2のデータを含んでいてもよい。
グループ2:上記(b)、(h)、及び、(j)のデータから選択される1つ以上
[項目21]
項目16、及び、項目18~20の情報処理装置において、前記ユーザデータは、さらに以下のグループ3のデータを含んでいてもよい。
グループ3:上記(a)及び(g)のデータから選択される1つ以上
[項目22]
項目21の情報処理装置において、前記ユーザデータは、少なくとも上記(g)のデータを含んでいてもよい。
[項目23]
項目18~22の情報処理装置において、前記ユーザデータは、前記グループ1、前記グループ2、及び前記グループ3のそれぞれから選択される1つ以上のデータを含んでいてもよい。
[項目24]
項目16の情報処理装置において、前記ユーザデータは、以下の(I)~(V)のいずれかの組み合わせを含んでいてもよい。
(I):上記(c)、(b)、及び、(g)のデータを含む組み合わせ
(II):上記(c)、(h)、及び、(g)のデータを含む組み合わせ
(III):上記(c)、(b)、及び、(a)のデータを含む組み合わせ
(IV):上記(f)、(b)、及び、(g)のデータを含む組み合わせ
(V):上記(c)、(j)、及び、(a)のデータを含む組み合わせ
[項目25]
項目13の情報処理システムにおいて、
前記ユーザデータは、上記(a)、(b)、(c)、(f)、(g)、(h)、及び、(j)から選択される1つ以上のデータを含んでいてもよい。
[項目26]
項目25の情報処理システムにおいて、
前記ユーザデータは、上記(c)及び(g)から選択される1つ以上のデータを含んでいてもよい。
[項目27]
項目25の情報処理システムにおいて、前記ユーザデータは、以下のグループ1のデータを含んでいてもよい。
グループ1:上記(c)及び(f)のデータから選択される1つ以上
[項目28]
項目27の情報処理システムにおいて、前記ユーザデータは、少なくとも上記(c)のデータを含んでいてもよい。
[項目29]
項目25,27,又は、28の情報処理システムにおいて、前記ユーザデータは、さらに以下のグループ2のデータを含んでいてもよい。
グループ2:上記(b)、(h)、及び、(j)のデータから選択される1つ以上
[項目30]
項目25、及び、項目27~29の情報処理システムにおいて、前記ユーザデータは、さらに以下のグループ3のデータを含んでいてもよい。
グループ3:上記(a)及び(g)のデータから選択される1つ以上
[項目31]
項目30の情報処理システムにおいて、前記ユーザデータは、少なくとも上記(g)のデータを含んでいてもよい。
[項目32]
項目25~31の情報処理システムにおいて、前記ユーザデータは、前記グループ1、前記グループ2、及び前記グループ3のそれぞれから選択される1つ以上のデータを含んでいてもよい。
[項目33]
項目25の情報処理システムにおいて、前記ユーザデータは、以下の(I)~(V)のいずれかの組み合わせを含んでいてもよい。
(I):上記(c)、(b)、及び、(g)のデータを含む組み合わせ
(II):上記(c)、(h)、及び、(g)のデータを含む組み合わせ
(III):上記(c)、(b)、及び、(a)のデータを含む組み合わせ
(IV):上記(f)、(b)、及び、(g)のデータを含む組み合わせ
(V):上記(c)、(j)、及び、(a)のデータを含む組み合わせ
[項目34]
項目14の情報処理方法において、前記ユーザデータは、上記(a)、(b)、(c)、(f)、(g)、(h)、及び、(j)から選択される1つ以上のデータを含んでいてもよい。
[項目35]
項目34の情報処理方法において、前記ユーザデータは、上記(c)及び(g)から選択される1つ以上のデータを含んでいてもよい。
[項目36]
項目34の情報処理方法において、前記ユーザデータは、以下のグループ1のデータを含んでいてもよい。
グループ1:上記(c)及び(f)のデータから選択される1つ以上
[項目37]
項目36の情報処理方法において、前記ユーザデータは、少なくとも上記(c)のデータを含んでいてもよい。
[項目38]
項目34,36,又は37の情報処理方法において、前記ユーザデータは、さらに以下のグループ2のデータを含んでいてもよい。
グループ2:上記(b)、(h)、及び、(j)のデータから選択される1つ以上
[項目39]
項目34、及び、項目36~38の情報処理方法において、前記ユーザデータは、さらに以下のグループ3のデータを含んでいてもよい。
グループ3:上記(a)及び(g)のデータから選択される1つ以上
[項目40]
項目34~39の情報処理方法において、前記ユーザデータは、前記グループ1、前記グループ2、及び前記グループ3のそれぞれから選択される1つ以上のデータを含んでいてもよい。
[項目41]
項目34の情報処理方法において、前記ユーザデータは、以下の(I)~(V)のいずれかの組み合わせを含んでいてもよい。
(I):上記(c)、(b)、及び、(g)のデータを含む組み合わせ
(II):上記(c)、(h)、及び、(g)のデータを含む組み合わせ
(III):上記(c)、(b)、及び、(a)のデータを含む組み合わせ
(IV):上記(f)、(b)、及び、(g)のデータを含む組み合わせ
(V):上記(c)、(j)、及び、(a)のデータを含む組み合わせ
[項目42]
項目15のプログラムにおいて、前記ユーザデータは、上記(a)、(b)、(c)、(f)、(g)、(h)、及び、(j)から選択される1つ以上のデータを含んでいてもよい。
[項目43]
項目42のプログラムにおいて、前記ユーザデータは、上記(c)及び(g)から選択される1つ以上のデータを含んでいてもよい。
[項目44]
項目42のプログラムにおいて、前記ユーザデータは、以下のグループ1のデータを含んでいてもよい。
グループ1:上記(c)及び(f)のデータから選択される1つ以上
[項目45]
項目44のプログラムにおいて、前記ユーザデータは、少なくとも上記(c)のデータを含んでいてもよい。
[項目46]
項目42,44,又は45のプログラムにおいて、前記ユーザデータは、さらに以下のグループ2のデータを含んでいてもよい。
グループ2:上記(b)、(h)、及び、(j)のデータから選択される1つ以上
[項目47]
項目42、及び、項目44~46のプログラムにおいて、前記ユーザデータは、さらに以下のグループ3のデータを含んでいてもよい。
グループ3:上記(a)及び(g)のデータから選択される1つ以上
[項目48]
項目47のプログラムにおいて、前記ユーザデータは、少なくとも上記(g)のデータを含んでいてもよい。
[項目49]
項目42~48のプログラムにおいて、前記ユーザデータは、前記グループ1、前記グループ2、及び前記グループ3のそれぞれから選択される1つ以上のデータを含んでいてもよい。
[項目50]
項目42のプログラムにおいて、前記ユーザデータは、以下の(I)~(V)のいずれかの組み合わせを含んでいてもよい。
(I):上記(c)、(b)、及び、(g)のデータを含む組み合わせ
(II):上記(c)、(h)、及び、(g)のデータを含む組み合わせ
(III):上記(c)、(b)、及び、(a)のデータを含む組み合わせ
(IV):上記(f)、(b)、及び、(g)のデータを含む組み合わせ
(V):上記(c)、(j)、及び、(a)のデータを含む組み合わせ
【0085】
本発明の多数の修正及び変形が可能であることは、上記の教示に照らして、明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲内においては、本発明は、本明細書に具体的に記載した以外の様態で実施することができることを理解されたい。
【国際調査報告】