(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-21
(54)【発明の名称】投与量設定部材を備えた注射装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20250313BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
A61M5/315 550L
A61M5/31 534
A61M5/315 550
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024554753
(86)(22)【出願日】2023-03-13
(85)【翻訳文提出日】2024-11-13
(86)【国際出願番号】 EP2023056291
(87)【国際公開番号】W WO2023174842
(87)【国際公開日】2023-09-21
(32)【優先日】2022-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロンシアン ホアン
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン ホアン
(72)【発明者】
【氏名】ボー ヤン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066FF05
4C066HH30
(57)【要約】
注射装置(10)であって、バレル(12)と、前記バレル(12)内に受容され、前記バレル(12)の軸(X)に沿って異なる位置に連続的に配置されたN個の半径方向突起(14A,14B)からなるプランジャロッド(14)であって、Nは2以上の整数である、プランジャロッド(14)と、前記バレル(12)上に取り外し可能に取り付けられるように構成され、前記バレル(12)内で前記プランジャロッド(14)を軸方向に押すときに、N個の前記半径方向突起(14A,14B)に対してそれぞれ順次軸方向に当接するように構成されたN個の部分(16A,16B)を有する投与量設定部材(16)と、前記投与量設定部材(16)は、N個の位置の間で前記バレル(12)に対して移動されるように構成され、第nの前記半径方向突起(14A,14B)は、第nの位置で第nの部分(16A,16B)に軸方向に面し、nは、1以上N以下の整数である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射装置(10,10’,10’’)であって、
軸(X)に沿って延び、リザーバ(12A)を画定するバレル(12)であって、前記バレル(12)は、近位端(PE)と、出口(22)を有する遠位端(DE)とを備える、バレル(12)と、
前記近位端(PE)を介して、前記バレル(12)内に受容され、前記バレル(12)に対して、前記軸(X)に沿って移動するように構成されたプランジャロッド(14)であって、前記プランジャロッド(14)は、前記軸(X)に沿って、異なる位置に連続して配置されたN個の半径方向突起(14A,14B)を備え、Nは、2以上の整数である、プランジャロッド(14)と、
前記バレル(12)に取り外し可能に取り付けられるように構成され、前記プランジャロッド(14)を、前記近位端(PE)から前記遠位端(DE)に向かう第1の方向(F1)に軸方向に移動させるときに、N個の前記半径方向突起(14A,14B)に対して、それぞれ順次軸方向に当接するように構成されたN個の部分(16A,16B)を有する、投与量設定部材(16,16’,16’’)と、を備え、
前記投与量設定部材(16,16’,16’’)は、N個の位置の間で前記バレル(12)に対して移動されるように構成され、第nの前記半径方向突起(14A,14B)は、n番目の位置において、前記第nの部分(16A,16B)に軸方向に面し、nは、1以上N以下の整数である、注射装置(10,10’,10’’)。
【請求項2】
前記第nの部分(16A,16B)が、第nの前記半径方向突起(14A,14B)に対してのみ当接できるように構成される、請求項1に記載の注射装置(10,10’,10’’)。
【請求項3】
前記投与量設定部材(16’,16’’)が、少なくとも1つのN+1の位置を採用するように構成されており、前記プランジャロッド(14)が、前記投与量設定部材(16’,16’’)に対して軸方向に自由である、請求項1または2に記載の注射装置(10’,10’’)。
【請求項4】
前記投与量設定部材(16,16’,16’’)が、N個の位置の間で、前記バレル(12)に対して半径方向に移動するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の注射装置(10,10’,10’’)。
【請求項5】
前記投与量設定部材(16,16’,16’’)が前記バレル(12)に装着されるときに、前記投与量設定部材(16,16’,16’’)が、半径方向に延び、半径方向に開口し、前記バレル(12)を受容するように構成される切り欠き部(100)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の注射装置(10,10’,10’’)。
【請求項6】
前記切り欠き部(100)が第2の軸(X2)に沿って延在し、前記N個の部分(16A、16B)が、第2の軸(X2)に沿って異なる位置に連続して配置される、請求項5に記載の注射装置(10,10’,10’’)。
【請求項7】
第tの前記半径方向突起(14B)の半径方向延長部が、第(t-1)の前記半径方向突起(14A)の半径方向延長部よりも大きく、かつ、第(t+1)の前記半径方向突起の半径方向延長部よりも小さく、tが2以上N以下の整数である、請求項1から6のいずれか一項に記載の注射装置(10,10’,10’’)。
【請求項8】
前記半径方向突起(14A,14B)の各々が、半径を有する環状形状を有し、第tの前記半径方向突起(14B)の半径が、第(t-1)の前記半径方向突起(14A)の半径よりも大きく、第(t+1)の前記半径方向突起の半径よりも小さく、前記部分(16A,16B)の各々は、最小半径方向長さを有する軸方向通路を画定し、前記第tの部分(16B)の最小半径方向長さ(RL2)は、前記第(t-1)の部分(16A)の最小半径方向長さ(RL1)よりも大きく、前記第(t+1)の部分の最小半径方向長さよりも小さく、tは2以上N以下の整数である、請求項1から7のいずれか一項に記載の注射装置(10,10’,10’’)。
【請求項9】
前記少なくとも1つのN+1の位置において、前記投与量設定部材(16’,16’’)は、第Nの前記半径方向突起(14B)の半径よりも大きい、最小半径方向長さ(RL3,RL4,RL5)を有する軸方向通路を画定する、請求項3及び8に記載の注射装置(10’,10’’)。
【請求項10】
第(t-1)の前記半径方向突起(14A)が、第tの前記半径方向突起(14B)よりも前記遠位端(DE)に軸方向に近い、請求項7から9のいずれか一項に記載の注射装置(10,10’,10’’)。
【請求項11】
前記バレル(12)が、半径方向に延びるフランジ(24)を備え、前記投与量設定部材(16,16’,16’’)が、前記フランジ(24)に摺動可能に取り付けられるように構成される、請求項1から10のいずれか一項に記載の注射装置(10,10’,10’’)。
【請求項12】
前記フランジ(24)が、前記投与量設定部材(16,16’,16’’)を摺動可能に案内するように構成される案内部(GP)と、前記投与量設定部材(16,16’,16’’)を前記N個の位置のいずれかに維持するように構成される保持部(RP)と、を備える、請求項11に記載の注射装置(10,10’,10’’)。
【請求項13】
注入前に注射装置の投与量を予め設定するための投与量設定方法であって、請求項1から13のいずれか1項に記載の注射装置(10,10’,10’’)を提供するステップと、第nの前記半径方向突起が第nの部分に軸方向に面するように、前記N個の位置のうちのいずれか1つの位置に、前記投与量設定部材を移動させるステップと、を含む、投与量設定方法。
【請求項14】
前記投与量設定部材(16,16’)が前記バレル上に取り外し可能に取り付けられ、前記投与量設定方法は、最後の投与量を設定するために前記投与量設定部材(16,16’)を取り外すステップを含む、請求項13に記載の投与量設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射装置、例えば、注射器などの医療用注射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日における、プレフィルド注射器などの医療用注射装置は、同じ医療用注射液を数回分収容して投与することを目的としているが、正確な投与量、例えば、少量(例えば、1ml)を投与するには必ずしも便利ではない。さらに、医療用注射装置に含まれる潜在的な気泡を排出するには、高い起動力が必要となり、その結果、注入される流体の投与精度が低下する可能性がある。例えば、米国特許出願公開第5601077号明細書、米国特許第9579465号明細書、米国特許出願公開第2021/0196906号明細書によって開示された注射装置は、取り扱いが容易でなかったり、精度が低かったりすることがある。さらに、このような装置の構造は非常に複雑な場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、正確な投与量を送達し、かつ/または、簡単な構造を示す、信頼性が高く使いやすい注射装置を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
実施形態は、軸に沿って延び、リザーバを画定するバレルを含む注射装置に関し、バレルは、出口を有する近位端および遠位端を含み、プランジャロッドは、近位端を介して、バレル内に受容され、バレルに対して軸に沿って移動するように構成され、プランジャロッドは、軸に沿って異なる位置に連続的に配置されたN個の半径方向突起を含み、Nは、2以上の整数である、バレルに取り付けられるように構成され、プランジャロッドを近位端から遠位端に向かう第1の方向(または遠位方向)に軸方向に移動させるときに、N個の半径方向突起に対してそれぞれ軸方向に順次隣接するように構成されたN個の部分を有する投与量設定部材であって、N個の位置の間でバレルに対して移動されるように構成され、第nの半径方向突起が、n番目の位置において第nの部分に軸方向に面し、nは、1以上N以下の整数である、投与量設定部材と、を備える。
【0005】
軸方向は、バレルの軸によって定義される方向である。半径方向は、軸に垂直な方向である。円周方向又は方位角方向は、軸方向の周りのリングを記述する方向に対応する。軸方向、半径方向、方位角方向の3方向は、それぞれ円筒座標系における高さ、半径、角度で定義される方向に対応する。さらに、上流および下流は、第1の方向に動かされたときに、リザーバの内容物を排出/送達されるためのプランジャロッドの移動方向に関して定義することができる。
【0006】
遠位側とは、リザーバの内容物が排出/送達される注射装置の側であり、近位側とは、軸に沿って遠位端とは反対側の側であり、通常、注入中にユーザによって扱われる側である。
【0007】
各第nの半径方向突起は、半径方向に延びる1つまたは複数の突起を含み得る。各第nの部分は、1つまたは複数の当接部/肩部を含み得る。第nの部分の一つの当接部/肩部は、第nの半径方向突起の1つまたは複数の突起と協働するように構成することができる。第nの部分のいくつかの当接部/肩部は、第nの半径方向突起の1つまたは複数の突起と協働するように構成され得る。
【0008】
半径方向突起は、連続的に配置され、すなわち、(プランジャロッドがリザーバ内に取り付けられるとき)第1の半径方向突起から第Nの半径方向突起まで、軸に沿って、配置/順序付けられる。言い換えれば、第nの半径方向突起は、第(n-1)の半径方向突起と第(n+1)の半径方向突起の間にある。
【0009】
各部分は連続して配置されていてもよいが、必ずしもそうである必要はない。
【0010】
N個の部分は、それぞれN個の突起に対して軸方向に隣接するように構成され、すなわち、第1の突起は、第1の半径方向突起に対して軸方向に隣接するように構成され、第2の突起は、第2の半径方向突起に対して軸方向に隣接するように構成される。
【0011】
例えば、2つの連続する位置の間の投与量設定部材の移動は、並進、回転、それらの組合せなどとすることができる。
【0012】
プランジャロッドは、2、3、4などの半径方向突起から構成されてもよく、投与量設定部材は、それぞれ同じ数の部分、すなわち、2、3、4などから構成されてもよく、それぞれ同じ数の位置の間、すなわち、2、3、4などの間を移動してもよい。第1の位置では、第1の半径方向突起が第1の部分に軸方向に対向し、第2の位置では、第2の半径方向突起が第2の部分に軸方向に対向する。
【0013】
プランジャロッドの単一の全注入ストローク中(すなわち、第1の方向)、投与量設定部材は、第1、第2、第3(存在する場合)などの位置に連続して配置され、第1、第2、第3(存在する場合)などの半径方向突起が第1、第2、第3(存在する場合)などの部分に連続して軸方向に対向する。プランジャロッドの初期位置から第1の部分との第1の半径方向突起の当接までの部分的なストロークは、第1の投与量(プライミング投与量であってもよい)に対応し、第1の半径方向突起から第2の部分との第2の半径方向突起の当接までの部分的なストロークは、第2の投与量に対応する。
【0014】
投与量設定部材を異なる位置間で移動させることにより、所定の投与量が予め設定される。例えば、n番目の位置では、注射装置は、n番目の注入のために事前に設定される。
【0015】
言い換えれば、投与量設定部材は、最初に第1の位置に配置される。次いで、第1の送達(またはプライミング)は、プランジャロッドを初期位置(リザーバが満杯であり、まだ注入/送達が行われていない)から、第1の半径方向突起に第1の部分と当接するまで移動させることによって実行することができる。その後、投与量設定部材を第2の位置に移動させることができる。次いで、第2の送達(または第1の注入)は、プランジャロッドを前の位置(第1の注入/送達の終了時におけるプランジャロッドの軸方向位置、すなわち、第1の半径方向突起が第1の部分に当接する位置に対応する位置)から、第2の半径方向突起に第2の部分と当接するまで移動させることによって行うことができる。
【0016】
注射装置の構成により、ユーザは、投与量設定部材をリザーバに対して移動させるだけで、投与量を簡単かつ確実に設定することができ、一方で、半径方向突起と部分との軸方向への密着は、信頼性の高い停止手段を保証する。加えて、半径方向突起および部分の構成は、単純な構造を提供することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、注射装置は、第nの部分が第nの半径方向突起に対してのみ当接することができるように構成することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、投与量設定部材は、少なくとも1つのN+1位置を採用するように構成されてもよく、プランジャロッドは、投与量設定部材に対して軸方向に自由である。
【0019】
例えば、投与量設定部材がN+1の位置に配置されるとき、プランジャロッドは、N回目の注入の後(N回目の半径方向突起がN回目の部分に当接するとき)、又は、リザーバ内の注入されるべき物質、例えば液体であるが必ずしもそうでなくてもよい物質を、出口を介して吸引/ポンプのために、第1の方向と対向する第2の方向(又は近位方向)に、(N+1)回目の注入を実施するために動かされ得る。あるいは、医療用注射器に注入する物質をあらかじめ充填しておくこともできる。注射装置は、単一のN+1の位置又は複数のN+1の位置、例えば、注入される物質を吸引/ポンプのための第1のN+1の位置と、(N+1)番目の注入を実施するための第2のN+1の位置とから構成される。例えば、第1のN+1の位置は、1番目の位置の前の初期位置であり(この場合、第1のN+1の位置は、0の位置とも考えられる)、第2のN+1の位置は、第Nの位置の後の最後の位置である。
【0020】
いくつかの実施形態では、投与量設定部材は、バレルに取り外し可能に取り付けられる。
【0021】
このような構成では、N+1番目の投与量を設定することができ、これは、N番目の注入の終わりにおけるプランジャロッドの軸方向位置から、すなわち、第Nの半径方向突起が第Nの部分に当接するときから、プランジャロッドがバレルの一部、例えば、出口と流体連通するように画定されたリザーバの底部と当接するまでのプランジャロッドの最後のストロークに対応する。
【0022】
いくつかの実施形態では、投与量設定部材は、N個の位置の間でバレルに対して半径方向に移動するように構成され得る。
【0023】
このような半径方向の移動は、簡単に行うことができ、適切な投与量が設定されていることを確認するために、ユーザが確実に確認することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、投与量設定部材は、投与量設定部材がバレルに装着されたときに考慮される、半径方向に延び、半径方向に開放された切り欠き部を含んでよく、バレルを受容するように構成される。
【0025】
投与量設定部材がバレルに取り付けられると、切り欠き部は、軸に垂直な平面に延在し得る。切り欠き部の周囲に延びる壁、又は、切り欠き部を画定する壁は、一般的なU字形を画定し得る。バレルとプランジャロッドは、U字形の穴、すなわち、「U字形」の開放上部を介して、切り欠き部内に導入され、「U字形」が延在する平面に対して横方向に延在することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、切り欠き部は、第2の軸に沿って延びることができ、第Nの部分は第2の軸に沿って異なる位置に連続して配置される。
【0027】
投与量設定部がバレルに取り付けられている場合、第2の軸は半径方向に延在することができる。各部分は、第2軸に沿って第1の部分から第Nの部分まで配列/順序付けることができる。言い換えれば、第nの部分は、第(n-1)の部分と第(n+1)の部分との間であってもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、t番目の半径方向突起の半径方向延長部は、(t-1)番目の半径方向突起の半径方向延長部よりも大きく、(t+1)番目の半径方向突起の半径方向延長部よりも小さくてもよく、もしあれば、tは2以上N以下の整数である。
【0029】
言い換えれば、半径方向突起は、第1から第Nの半径方向突起まで、大きくなるように配置することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、半径方向突起の全部又は一部は、リザーバの半径より小さい半径方向延長部を有することができる。これにより、半径方向突起をリザーバ内、バレル内に挿入することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、半径方向突起の各々は、半径を有する環状形状を有してもよく、t番目の半径方向突起の半径は、(t-1)番目の半径方向突起の半径よりも大きく、(t+1)番目の半径方向突起の半径よりも小さく、もしあれば、各々の部分は、最小半径方向長さを有する軸方向通路を画定し、t番目の部分の最小半径方向長さは、(t-1)番目の部分の最小半径方向長さよりも大きく、(t+1)番目の部分の最小半径方向長さよりも小さく、もしあれば、tは2以上N以下の整数である。
【0032】
各半径方向突起の環状形状は、連続的、すなわち環状であってもよいし、不連続的、例えば、環状又は円周方向に配列された一連の突起又は環状部分であってもよい。半径方向突起は、第1の半径方向突起から第Nの半径方向突起に向かって大きくなるように配置することができる。
【0033】
t番目の部分の最小半径方向長さは、(t-1)番目の半径方向突起上の直径よりも大きく、t番目の半径方向突起の直径よりも小さくてもよい。最小半径方向長さは、t番目の位置において、切り欠き部を画定し第2の方向に沿って延びる2つの対向壁間の短い距離に対応することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、N個の部分は連続的に配置され、全体的に階段形状を有し、各部分は階段形状のステップを形成することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのN+1の位置において、投与量設定部材は、第Nの半径方向突起の半径よりも大きい最小半径方向長さを有する軸方向通路を画定し得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、(t-1)番目の半径方向突起は、t番目の半径方向突起よりも遠位端に軸方向に近い場合がある。
【0037】
いくつかの実施形態では、バレルは、半径方向に延びるフランジを含んでよく、投与量設定部材は、フランジに摺動可能に取り付けられるように構成される。
【0038】
投与量設定部材は、フランジの全部又は一部を受け入れる1つ又は複数の溝を有することができる。例えば、フランジは、投与量設定部材の溝内に摺動可能に係合するリブを形成することができる。フランジはどのような形状でもよく、例えば環状形状、長方形又は楕円形、菱形形状、正方形、長方形、あるいは鋭角または丸みを帯びた多角形などがある。
【0039】
いくつかの実施形態では、フランジは、投与量設定部材を摺動可能に案内するように構成された案内部と、投与量設定部材のN個の位置のいずれかに維持するように構成された保持部と、を含むことができる。
【0040】
案内部は、半径方向に対向して延びる2つの舌部から構成することができる。例えば、投与量設定部材がバレルに取り付けられるとき、案内部は、切り欠き部の第2の軸に沿って延び、第2の軸に沿って並進するように投与量設定部材を半径方向に案内することができる。
【0041】
例えば、保持部は、投与量設定部材とスナップフィットにより協働することができる。例えば、保持部は、投与量設定部材の異なる相補的部分に係合するように構成されたラチェットを形成することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、注射装置は、医療用注射器であってもよい。注射器は、使い捨て、及び/又は、予め充填されていてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、注射装置は、取り外し可能なスプレーノズルを含んでもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、注射装置は、バイアルアダプタを含んでいてもよく、このアダプタは取り外し可能であってもよい。
【0045】
実施形態はまた、注入前に注射装置の投与量を予め設定するための投与量設定方法に関し、投与量設定方法は、本開示の実施形態のいずれか1つに従う注射装置を提供することと、第nの半径方向突起が第nの部分に軸方向に面するように、投与量設定部材をN個の位置のいずれか1つに移動させることとを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、投与量設定部材は、n番目の注入を考慮してn番目の位置に移動され得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、投与量設定部材は、バレルに取り外し可能に取り付けられ得、投与量設定方法は、最後の投与量を設定するために投与量設定部材を取り外すことを含み得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、投与量設定部材は、少なくとも1つのN+1の位置を採用するように構成されてもよく、プランジャロッドは、投与量設定部材に対して軸方向に自由であり、投与量設定方法は、注射装置を充填するための第1の投与量を設定する前、又は、注射装置を空にすることを可能にするためのN番目の投与量の完了後に、投与量設定部材を少なくとも1つのN+1の位置のいずれかに移動させる、ことを含んでもよい。
【0049】
上記実施形態のいずれか1つによる構成は、信頼性が高く、使い勝手がよく、及び/又は、簡単な構造及び方法を提供する役割を果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本開示及びその利点は、非限定的な例として与えられた様々な実施形態の詳細な説明を読むことによってよりよく理解することができる。この説明では、添付の図面を参照する。
【
図5A】
図5Aは、注射装置との投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図5B】
図5Bは、注射装置との投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図5C】
図5Cは、注射装置との投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図5D】
図5Dは、注射装置との投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図5E】
図5Eは、注射装置との投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図5F】
図5Fは、注射装置との投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図5G】
図5Gは、注射装置との投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図7】
図7は、第1の変形例による投与量設定部材の上面図を示す。
【
図8】
図8は、第1の変形例による投与量設定部材の側面図を示す。
【
図9】
図9は、第1の変形例による投与量設定部材の別の図を示す。
【
図10A】
図10Aは、第1の変形例による注射装置で投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図10B】
図10Bは、第1の変形例による注射装置で投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図10C】
図10Cは、第1の変形例による注射装置で投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図10D】
図10Dは、第1の変形例による注射装置で投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図10E】
図10Eは、第1の変形例による注射装置で投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図10F】
図10Fは、第1の変形例による注射装置で投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図10G】
図10Gは、第1の変形例による注射装置で投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図11A】
図11Aは、第1の変形例による注射装置の断面図(断面VIと同様の断面)を示す。
【
図11B】
図11Bは、第1の変形例による注射装置の断面図(断面VIと同様の断面)を示す。
【
図11C】
図11Cは、第1の変形例による注射装置の断面図(断面VIと同様の断面)を示す。
【
図12】
図12は、第2の変形例による投与量設定部材の上面図を示す。
【
図13】
図13は、第2の変形例による投与量設定部材の側面図を示す。
【
図14】
図14は、第2の変形例による投与量設定部材の別の図を示す。
【
図15A】
図15Aは、第1の変形例による注射装置で投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図15B】
図15Bは、第1の変形例による注射装置で投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図15C】
図15Cは、第1の変形例による注射装置で投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図15D】
図15Dは、第1の変形例による注射装置で投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図15E】
図15Eは、第1の変形例による注射装置で投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図15F】
図15Fは、第1の変形例による注射装置で投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図15G】
図15Gは、第1の変形例による注射装置で投与量を設定するための異なるステップを示す。
【
図16A】
図16Aは、第2の変形例による注射装置の断面図(断面VIと同様の断面)を示す。
【
図16B】
図16Bは、第2の変形例による注射装置の断面図(断面VIと同様の断面)を示す。
【
図16C】
図16Cは、第2の変形例による注射装置の断面図(断面VIと同様の断面)を示す。
【
図16D】
図16Dは、第2の変形例による注射装置の断面図(断面VIと同様の断面)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、バレル12、プランジャロッド14、及び、投与量設定部材16を含む注射装置10を示す。本実施例では、注射装置10は、医療用注射器、例えば、注射器である。この例では、注射装置10はスプレーノズル18と取り外し可能なバイアルアダプタ20で構成される。例えば、注射装置10は、粉末薬剤、液体医療成分、又は、医療薬剤、ワクチンなどの他の活性成分をプレフィルドすることができる。
【0052】
バレル12は、軸Xに沿って延在し、その中にリザーバ12Aを画定する。バレル12は、近位端PEと、遠位端DEと、を備える。遠位端DEは、出口22を有する。スプレーノズル18及びバイアルアダプタ20は、遠位端DEに配置される。スプレーノズル18は、出口22を介して、リザーバ12Aと流体連通する。スプレーノズル18の代わりに、患者に医療用成分を注入するために、バレルの遠位端DEに針を取り付けることもできる。
【0053】
注射装置10の遠位側は、遠位端DEの側に対応し、注射装置10の近位側は近位端PEの側に対応する。
【0054】
本実施例では、バレル12は半径方向に延在するフランジ24からなり、フランジ24はバレル12の近位端PEに配置される。
図5Aに見られるように、フランジ24は、丸みを帯びた角度を有する一般的な菱形形状を有する。この実施例では、フランジ24は、投与量設定部材16を摺動可能に案内するように構成された案内部GPと、投与量設定部材16をNの位置のいずれかに維持するように構成された保持部RPと、を備える。案内部GPは、半径方向に対向して延在する2つの舌部E1及びE2から構成される。保持部RPは、半径方向に対向する2つの縁部E3及びE4を備える。2つの舌部E1及びE2は、菱形の大きい方の対角線に沿って延在し、2つの縁部E3及びE4は、菱形の小さい方の対角線によって結合された牽引対向頂部に配置される。本実施例では、縁部E3及びE4は、後述する投与量設定部材16の異なる相補的部分に係合するように構成された2つのラチェットからなる。変形例では、フランジは、任意の形状、例えば、円形形状を有することができる。
【0055】
プランジャロッド14は、近位端PEを介して、バレル12内に受容され、バレル12に対して軸Xに沿って移動するように構成される。プランジャロッド14は、軸Xに沿って異なる位置に連続的に配置されたN個の半径方向突起14A,14Bからなり、Nは2以上の整数である。本実施例では、Nは2に等しい(N=2)。この例では、プランジャロッド14は、その近位端にあるプッシャー部15と、その遠位端にあり、リザーバ12A内に配置されたストッパ(図示せず)と、を備える。バレル12に収容された医療成分の注入/噴霧のために、エンドユーザは、注入/噴霧を容易にするために、親指をプランジャロッド14のプッシャー部15に当てることができる。
【0056】
本実施例では、
図1及び
図5A~
図5Gに示すように、第2の半径方向突起14Bの半径方向延長部は、第1の半径方向突起14Aの半径方向延長部よりも大きい。言い換えれば、最も遠位の半径方向突起14Bの半径方向延長部は、最も近位の半径方向突起14Aの半径方向延長部よりも大きい。本実施例では、半径方向突起14A,14Bは、半径を有する環状形状、本実施例ではリング形状を有し、第2の半径方向突起14B(または最遠位半径方向突起)の半径は、第1の半径方向突起14A(または最近位半径方向突起)の半径よりも大きい。第1の半径方向突起14Aは、第2の半径方向突起14Bよりも遠位端DEに軸方向に近い。本実施例では、すべての外側半径方向突起の半径は、リザーバ12Aの内側半径よりも小さく、リザーバ12A内をバレル12内に挿入できるようになっている。
【0057】
投与量設定部材16は、バレル12に取り付けられるように構成される。この例では、投与量設定部材16は、フランジ24に摺動可能に取り付けられるように構成される。投与量設定部材16は、プランジャロッド14を近位端PEから遠位端DEに向かう第1の方向(または遠位方向)F1に軸方向に移動させるときに、N個の半径方向突起14A,14Bに対してそれぞれ軸方向に順次付勢するように構成されたN個の部分16A,16Bを有する。投与量設定部材16は、N個の位置の間で、バレル12に対して移動するように構成されており、第nの半径方向突起は、n番目の位置で、第nの部分に軸方向に面しており、nは、1以上N以下の整数、すなわち、本実施例では、1から2の間である。本実施例では、投与量設定部材16は、バレルに取り外し可能に取り付けられている(特に、
図5A及び5Fを参照)。
図5A~
図5Gに示すように、投与量設定部材16は、軸Xに垂直な方向に、N個の部分の間でバレル12に対して半径方向に移動するように構成される。
【0058】
投与量設定部材16は、投与量設定部材16がバレル12に装着されたときに考慮される、半径方向に延び、半径方向に開いた切り欠き部100からなり、バレル12を受け入れるように構成される。切り欠き部100は、第2の軸X2に沿って延在し、第Nの部分は第2の軸X2に沿って異なる位置に連続して配置される。切り欠き部100の周囲に延びる壁は、一般的なU字形状を画定する。バレル12とプランジャロッド14は、U字形の穴、すなわち「U字形」の開放上部を介して切り欠き部100内に導入され、「U字形」が延在する平面に対して横方向に延在することができる(
図5B参照)。投与量設定部材16がバレル12に取り付けられると、第2の軸X2は、軸Xに対して垂直に、半径方向に延在する。
【0059】
本実施例では、投与量設定部材16は、バレル12に取り付けられたときに考慮される、軸Xに垂直な半径方向平面内に延在する、トッププレートであってもよい上部26からなる。上部26は、プランジャロッド14の遠位端(この例ではプランジャロッド14のプッシャー部15)に向くように構成される。上部26のU字型切り欠き部100の側壁は、プランジャロッド14を受け入れ、協働するように構成される。切り欠き部100の両側には、プランジャロッド14の半径方向突起14A,14Bに対して軸方向に当接するように構成された各部分16A,16Bにおいて、2つの対向する肩部が形成される。本例では、部分16Aは2つの対向する肩部(この例では半径方向の肩部)16A1,16A2からなり、部分16Bは2つの対向する肩部(この例では半径方向の肩部)16B1,16B2からなる。この実施例では、部分16A,16Bの各々は、最小半径方向長さを有する軸方向通路を画定し、第2の部分16Bの最小半径方向長さRL2は、第1の部分16Aの最小半径方向長さRL1よりも大きい。プランジャロッド14の残りの部分(すなわち、半径方向突起のないプランジャロッドのロッド)は、切り欠き部100内に受容され、投与量設定部材16に対して軸方向に自由に移動する。上部26は、位置における投与量に関する情報を示すための標識で構成することができる。本実施例では、部分16A,16Bは、第2の軸X2に沿って連続的に配置され、最後の部分16Bは、最初の部分16Aよりも「U字形」の開放上部に近い。
【0060】
本実施例では、投与量設定部材16は、軸Xに垂直で、第2の軸X2に平行な半径方向平面内に延在する、下部プレートであってもよい下部28からなる。下部28は、バレル12の遠位端DEに向くように構成される。下部28のU字形切り欠き部100の側壁は、バレル12(又は、バレル本体)を受け入れて協働するように構成される。下部28の切り欠き部100の第2の軸X2に垂直な幅は、第2の軸X2に沿って全て一定である。この幅は、上部26内の切り欠き部100の最大幅よりも大きくてもよい。
【0061】
上部26と下部28は、(バレル12に取り付けられたときに)軸Xに沿って隣接しており、同一の単一要素を形成する。切り欠き部100の対向する側壁には、上部26と下部28との間に軸方向に2つの対向溝30が配置される。溝30は第2の軸X2に沿って延在する。開口部38が2つの溝30の間に配置され、この開口部を通してフランジ24の舌部E1又はE2が少なくとも部分的に延在することができる。溝30は、フランジ24の少なくとも部分的に摺動可能に受けるように構成される。起伏部32は、溝30内、この例では溝30の底部に配置され、フランジ24の縁部E3及びE4とスナップフィットにより協働するように構成される。言い換えれば、起伏部32は、縁部E3及びE4と係合するように構成された異なる相補的な部分を形成する。起伏部32は対をなして配置され、対の2つの部材は第2の軸X2に対して互いに対向する。本実施例では、各スナップフィット位置は、投与量設定部材16のn番目の位置に対応する。
【0062】
本実施例では、投与量設定部材16の外縁部は、投与量設定部材16の取り扱いを容易にするために、滑り止めリブ34Aを有するグリップ部34を備える。
【0063】
投与量設定部材16は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンで作られてもよく、好ましくは、投与量設定部材16は、ポリプロピレンで作られてもよい。
【0064】
本実施例では、注射装置10は、第nの部分が第nの半径方向突起に対してのみ当接することができるように構成される。
【0065】
注入前に注射装置10の投与量を予め設定するための投与量設定方法であって、第nの半径方向突起が第nの部分に軸方向に面するように、N個の位置のうちのいずれか1つの位置で投与量設定部材16を移動させることからなる投与量設定方法を、次に、
図5A~
図5Gを参照して説明する。
【0066】
図5Aでは、注射装置10は投与量設定部材16を備えていない。注射液の再構成は、プレフィルド粉末と注射液を混合することによって実施することができる。代替案として、リザーバ12Aが最初は空である間に、注射液を含む外部バイアル(図示せず)から注射液をポンピング/吸引してもよい。これは、軸Xに沿って延在し、遠位端DEから近位端PEに向かう方向F2(又は近位方向)にプランジャロッド14を移動させることによって実施され得る。あるいは、注射装置10に注射液をプレフィルドし、プレフィルドしたまま保管することもできる。
【0067】
図5Bにおいて、投与量設定部材16は、溝30(
図5B及び
図6Aの矢印I参照)内にフランジ24を半径方向に挿入して摺動させ、挿入方向(
図6A参照)において最後の一対の起伏部32とみなされる縁部E3,E4をスナップフィットさせることによって、バレル12に取り付けることができる。この位置では、投与量設定部材16の第1の位置であり、第1の部分16Aは、軸方向に第1の半径方向突起14Aに面する。最初の投与量はあらかじめ設定される。
図6Aに見られるように、第1の位置では、舌部E2が開口部38を通って延在する。
【0068】
図5Cにおいて、1回目の投与量、本実施例では、注射装置内に潜在的に含まれる気泡を排出するために使用されるプライミングの投与量は、矢印IIで示すように、プランジャロッド14を第1の方向F1に、第1の部分16Aに対して第1の半径方向突起14Aを当接させるまで移動させることによって実施される。
【0069】
図5Dにおいて、次に、注入される1回目の投与量に対応する2回目の投与量を予め設定するために、投与量設定部材16は、第2の軸X2(矢印IIIを参照)に沿って、第1の位置から第2の位置まで、半径方向に移動され、スライドされる。この位置では、第2の部分16Bは軸方向に第2の半径方向突起14Bに面する。
図6Bに示すように、このような位置では、縁部E3,E4は、挿入方向で考慮された第1の対の起伏部32にスナップフィットされる。
【0070】
図5Eでは、プランジャロッド14を矢印IVで示すように第1の方向F1に移動させ、第2の部分16Bに対して第2の半径方向突起14Bを当接させるまで移動させることにより、1回目の注入が行われる。第1の半径方向突起14Aの半径は、第2の部分16Bの最小半径方向長さRL2よりも小さいため、第1の半径方向突起は、第2の部分16Bと協働しないことに留意されたい。
【0071】
図5Fにおいて、1回目の注入が完了すると、投与量設定部材16は、第2の軸X2(矢印V参照)に沿って半径方向に移動および摺動され、バレル12から取り外される。その後、注入される2回目の投与量に対応する3回目の投与量があらかじめ設定される。つまり、最後の投与量を設定するために、投与量設定部材が取り外される。
【0072】
図5Gでは、プランジャロッド14を矢印VIで示すように第1の方向F1に移動させ、プランジャロッド14の一部がバレル12の一部当接するまで、2回目の注入が行われる。
【0073】
投与量設定部材16’の第1の変形例を、
図7~
図9を参照して説明する。投与量設定部材16’は、1つのN+1の位置を採用するように構成されており、プランジャロッド14は、投与量設定部材16’に対して軸方向に自由である。
【0074】
第1の変形例による投与量設定部材16’は、第2の方向X2に平行な2つの縁部にのみ配置されるグリップ部、及び、
図2から
図4の投与量設定部材16には設けられていない、上部26’における切り欠き部100の幅広部16Cを除いて、
図2から
図4の投与量設定部材16と同様である。他の部品は同一または非常に類似しており、再記述はせず、同じ参照符号を維持する。用語「幅広」は、という表現は他の部分に対して使用されており、幅広部16Cの最小半径方向長さは、他の部分16A、16Bの半径方向長さよりも大きいことに留意されたい。
【0075】
本実施例では、幅広部16Cにより、投与量設定部材16’は、第Nの半径方向突起14Bの半径よりも大きい最小半径方向長さRL3を有する軸方向通路を画定する。幅広部16Cは、投与量設定部材16’のN+1の位置に対応する。投与量設定部材16と比較して、第1の変形例の投与量設定部材16’はまた、2つの追加の起伏部32(すなわち、追加の対向する起伏部32の組)を備え、フランジ24がN+1の位置にある状態でのスナップフィットを可能にする。本実施例では、幅広部16Cは第1の部分16Aの前に配置され、初期位置又は0の位置に対応する。幅広部16Cは、第1の部分16Aよりも「U字形」の閉じた底部に近い。第1の部分16Aは、幅広部16Cと第2の部分16Bとの間に軸方向に配置される。
【0076】
図10A~
図10Gに示す注射装置10’は、投与量設定部材16が第1の変形例による投与量設定部材16’に置き換えられた注射装置10に対応する。
【0077】
注入前に提供される注射装置10’の投与量を予め設定するための投与量設定方法であって、第nの半径方向突起が第nの部分に軸方向に面するように、N個の位置のうちのいずれか1つの位置で投与量設定部材16’を移動させることからなる投与量設定方法を、次に、
図10A~
図10Gを参照して説明する。
【0078】
図10Aにおいて、投与量設定部材16’は、バレル12に取り付けられ(又は
図5Aと比較して予め取り付けられ)、N+1又は初期位置に配置される(
図11Aに示される対応するスナップフィット構成も参照)。このような位置では、投与量設定部材16’のどの部分も半径方向突起14A,14Bに軸方向に面しておらず、プランジャロッド14は、投与量設定部材16’に対して軸方向に自由である。注射液の再構成は、プレフィルド粉末と注射液を混合することによって実施することができる。代替案として、リザーバ12Aが最初は空である間に、図示しない外部バイアルから注入流体をポンピング/吸引してもよい。これは、軸Xに沿って延在し、遠位端DEから近位端PEに向かう方向F2にプランジャロッド14を移動させることによって実施され得る。あるいは、注射装置10に注射液をプレフィルドし、プレフィルドしたまま保管することもできる。言い換えれば、
図10Aは、注射装置10’に充填するための1回目の投与量を設定する前に、投与量設定部材16’をN+1の位置に移動させるステップに対応する。
【0079】
図10Bにおいて、投与量設定部材16’は、第2の軸X2(矢印VII参照)に沿って半径方向に移動および摺動して、縁部E3,E4を第2の又は中間の一対の起伏部32(
図11B参照)にスナップフィットすることができる。この位置では、投与量設定部材16’の1番目の位置であり、第1の部分16Aは、軸方向に第1の半径方向突起14Aに面する。1回目の投与量はあらかじめ設定される。
【0080】
【0081】
投与量設定部材16’’の第2の変形例を、
図12から
図14を参照して説明する。投与量設定部材16’’は、2つのN+1の位置を採用するように構成され、プランジャロッド14は、投与量設定部材16’’に対して軸方向に自由である。投与量設定部材16’’は取り外し不可能であってもよいが、必ずしもそうである必要はない。
【0082】
第2の変形例による投与量設定部材16’’は、上部26’’上の部分の配置に関して以外は、第1の変形例の投与量設定部材16’と同様である。他の部品は同一または非常に類似しており、再記述はせず、同じ参照符号を維持する。
【0083】
投与量設定部材16’’の上部26’’は、第2の軸X2に沿って、第1のN+1の部分又は幅広部16C’’、第1の部分16A’’、第2の部分16B’’、及び、第2のN+1の部分又は幅広部16D’’から連続的に構成され、第1のN+1の部分16C’’は、第2のN+1の部分又は幅広部16D’’よりも「U字形」の開放上部に近い。第2のN+1の部分16D’’は、第1のN+1の部分16C’’よりも「U字形」の閉鎖底部に近い。
【0084】
本実施例では、第1の幅広部16C’’により、投与量設定部材16’’は、第Nの半径方向突起14Bの半径よりも大きい最小半径方向長さRL4を有する第1の軸方向通路を画定する。第1の幅広部16C’’は、投与量設定部材16’’の第1のN+1の位置に対応する。第2の幅広部16D’’により、投与量設定部材16’’は、第Nの半径方向突起14Bの半径よりも大きい最小半径方向長さRL5を有する第2の軸方向通路を画定する。第2の幅広部16D’’は、投与量設定部材16’’の第2のN+1の位置に対応する。本実施例では、RL4は、RL5よりも大きい。しかしながら、RL4は、RL5よりも小さくてもよく、又は、RL4は、RL5と等しくてもよい。
【0085】
投与量設定部材16と比較して、第2の変形例16’’はまた、4つの追加の起伏部32(すなわち、2つの追加の対向する起伏部32)を備え、第1の位置及び第2のN+1の位置でのフランジ24とのスナップフィットを可能にする。
【0086】
図15Aから
図15Gに示す注射装置10’’は、投与量設定部材16が第2の変形例による投与量設定部材16’’に置き換えられた注射装置10に対応する。
【0087】
注入前に提供される注射装置10’’の投与量を予め設定するための投与量設定方法であって、第nの半径方向突起が第nの部分に軸方向に面するように、N個の位置のうちのいずれか1つの位置で投与量設定部材16’’を移動させることからなる投与量設定方法を、次に、
図15Aから
図15Gを参照して説明する。
【0088】
【0089】
図15Fにおいて、投与量設定部材16’’は、2番目の位置から第2のN+1の位置まで半径方向に移動及びスライドされる(矢印XII参照)。対応するスナップフィット位置を
図16Dに示す。この位置は、投与量設定部材16’’の最後の位置であり、最後の投与量が予め設定される。言い換えれば、
図15は、N回目の投与の完了後、注射装置10’’を空にすることを可能にするために、第2のN+1の位置で投与量設定部材16’’を移動させることに対応する。
【0090】
図15Gにおいて、最後の注入は、矢印XIIIで示すように、プランジャロッド14の一部をバレル12の一部と当接するまで、プランジャロッド14を第1の方向F1に動かすことによって行われる。
【0091】
本開示は、特定の実施例を参照して説明されているが、これらの実施例は、本開示の原理および応用を単に例示するものであることを理解されたい。特に、図示及び/又は言及される様々な実施形態の個々の特徴は、追加の実施形態において組み合わせることができる。したがって、本明細書および図面は、制限的な意味ではなく例示的な意味で考慮されるべきである。
【0092】
さらに、開示された装置の特徴はすべて、単独で又は組み合わせて、方法に転用することができ、その逆も同様である。
【0093】
本明細書および実施例は例示的なものとしてのみ考慮されることが意図されており、本発明の真の範囲は以下の特許請求の範囲によって示される。
【手続補正書】
【提出日】2025-01-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射装置(10,10’,10’’)であって、
軸(X)に沿って延び、リザーバ(12A)を画定するバレル(12)であって、前記バレル(12)は、近位端(PE)と、出口(22)を有する遠位端(DE)とを備える、バレル(12)と、
前記近位端(PE)を介して、前記バレル(12)内に受容され、前記バレル(12)に対して、前記軸(X)に沿って移動するように構成されたプランジャロッド(14)であって、前記プランジャロッド(14)は、前記軸(X)に沿って、異なる位置に連続して配置されたN個の半径方向突起(14A,14B)を備え、Nは、2以上の整数である、プランジャロッド(14)と、
前記バレル(12)に取り外し可能に取り付けられるように構成され、前記プランジャロッド(14)を、前記近位端(PE)から前記遠位端(DE)に向かう第1の方向(F1)に軸方向に移動させるときに、N個の前記半径方向突起(14A,14B)に対して、それぞれ順次軸方向に当接するように構成されたN個の部分(16A,16B)を有する、投与量設定部材(16,16’,16’’)と、を備え、
前記投与量設定部材(16,16’,16’’)は、N個の位置の間で前記バレル(12)に対して移動されるように構成され、第nの前記半径方向突起(14A,14B)は、n番目の位置において、前記第nの部分(16A,16B)に軸方向に面し、nは、1以上N以下の整数である、注射装置(10,10’,10’’)。
【請求項2】
前記第nの部分(16A,16B)が、第nの前記半径方向突起(14A,14B)に対してのみ当接できるように構成される、請求項1に記載の注射装置(10,10’,10’’)。
【請求項3】
前記投与量設定部材(16’,16’’)が、少なくとも1つのN+1の位置を採用するように構成されており、前記プランジャロッド(14)が、前記投与量設定部材(16’,16’’)に対して軸方向に自由である、請求項1
に記載の注射装置(10’,10’’)。
【請求項4】
前記投与量設定部材(16,16’,16’’)が、N個の位置の間で、前記バレル(12)に対して半径方向に移動するように構成される、請求項1
に記載の注射装置(10,10’,10’’)。
【請求項5】
前記投与量設定部材(16,16’,16’’)が前記バレル(12)に装着されるときに、前記投与量設定部材(16,16’,16’’)が、半径方向に延び、半径方向に開口し、前記バレル(12)を受容するように構成される切り欠き部(100)を備える、請求項1
に記載の注射装置(10,10’,10’’)。
【請求項6】
前記切り欠き部(100)が第2の軸(X2)に沿って延在し、前記N個の部分(16A、16B)が、第2の軸(X2)に沿って異なる位置に連続して配置される、請求項5に記載の注射装置(10,10’,10’’)。
【請求項7】
第tの前記半径方向突起(14B)の半径方向延長部が、第(t-1)の前記半径方向突起(14A)の半径方向延長部よりも大きく、かつ、第(t+1)の前記半径方向突起の半径方向延長部よりも小さく、tが2以上N以下の整数である、請求項1
に記載の注射装置(10,10’,10’’)。
【請求項8】
前記半径方向突起(14A,14B)の各々が、半径を有する環状形状を有し、第tの前記半径方向突起(14B)の半径が、第(t-1)の前記半径方向突起(14A)の半径よりも大きく、第(t+1)の前記半径方向突起の半径よりも小さく、前記部分(16A,16B)の各々は、最小半径方向長さを有する軸方向通路を画定し、前記第tの部分(16B)の最小半径方向長さ(RL2)は、前記第(t-1)の部分(16A)の最小半径方向長さ(RL1)よりも大きく、前記第(t+1)の部分の最小半径方向長さよりも小さく、tは2以上N以下の整数である、請求項1
に記載の注射装置(10,10’,10’’)。
【請求項9】
前記投与量設定部材(16’,16’’)が、少なくとも1つのN+1の位置を採用するように構成されており、前記プランジャロッド(14)が、前記投与量設定部材(16’,16’’)に対して軸方向に自由であり、
前記少なくとも1つのN+1の位置において、前記投与量設定部材(16’,16’’)は、第Nの前記半径方向突起(14B)の半径よりも大きい、最小半径方向長さ(RL3,RL4,RL5)を有する軸方向通路を画定する、請求項
8に記載の注射装置(10’,10’’)。
【請求項10】
第(t-1)の前記半径方向突起(14A)が、第tの前記半径方向突起(14B)よりも前記遠位端(DE)に軸方向に近い、請求項7
に記載の注射装置(10,10’,10’’)。
【請求項11】
前記バレル(12)が、半径方向に延びるフランジ(24)を備え、前記投与量設定部材(16,16’,16’’)が、前記フランジ(24)に摺動可能に取り付けられるように構成される、請求項1
に記載の注射装置(10,10’,10’’)。
【請求項12】
前記フランジ(24)が、前記投与量設定部材(16,16’,16’’)を摺動可能に案内するように構成される案内部(GP)と、前記投与量設定部材(16,16’,16’’)を前記N個の位置のいずれかに維持するように構成される保持部(RP)と、を備える、請求項11に記載の注射装置(10,10’,10’’)。
【請求項13】
注入前に注射装置の投与量を予め設定するための投与量設定方法であって、請求項1から1
2のいずれか1項に記載の注射装置(10,10’,10’’)を提供するステップと、第nの前記半径方向突起が第nの部分に軸方向に面するように、前記N個の位置のうちのいずれか1つの位置に、前記投与量設定部材を移動させるステップと、を含む、投与量設定方法。
【請求項14】
前記投与量設定部材(16,16’)が前記バレル上に取り外し可能に取り付けられ、前記投与量設定方法は、最後の投与量を設定するために前記投与量設定部材(16,16’)を取り外すステップを含む、請求項13に記載の投与量設定方法。
【国際調査報告】