(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-21
(54)【発明の名称】TPEチューブの接合方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/02 20060101AFI20250313BHJP
F16L 47/06 20060101ALI20250313BHJP
F16L 47/22 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
B29C65/02
F16L47/06
F16L47/22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024555351
(86)(22)【出願日】2023-03-14
(85)【翻訳文提出日】2024-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2023056526
(87)【国際公開番号】W WO2023174960
(87)【国際公開日】2023-09-21
(32)【優先日】2022-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500213856
【氏名又は名称】ワトソン-マーロウ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】WATSON-MARLOW LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】フッド,ダニエル
【テーマコード(参考)】
3H019
4F211
【Fターム(参考)】
3H019FA07
3H019FA09
3H019FA14
4F211AA03
4F211AA45
4F211AG08
4F211AH11
4F211AH63
4F211AR06
4F211AR11
4F211AR12
4F211TA01
4F211TC11
4F211TD07
4F211TN24
4F211TQ01
(57)【要約】
熱可塑性エラストマ(TPE)チューブを接合する方法であって、第1TPEチューブ2の端面を第2TPEチューブ4の端面に当接させることと、端面を被覆するように第1及び第2チューブの周りにTPEスリーブ6を設けることと、スリーブの周囲に半径方向力を加えるように構成されている圧縮部材8をスリーブの周りに設けることと、圧縮部材を使用してスリーブに半径方向力を加えながらスリーブに熱を加えることにより第1及び第2チューブとスリーブとを互いに融着させることとを包含する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマ(TPE)チューブを接合する方法であって、
第1TPEチューブの端面を第2TPEチューブの端面に当接させることと、
前記端面を被覆するように前記第1及び第2チューブの周りにTPEスリーブを設けることと、
前記スリーブの周囲に半径方向力を加えるように構成されている圧縮部材を前記スリーブの周りに設けることと、
前記圧縮部材を使用して前記スリーブに半径方向力を加えながら前記スリーブに熱を加えることにより、前記第1及び第2チューブと前記スリーブとを互いに融着させることと、
を包含する方法。
【請求項2】
前記圧縮部材は熱収縮チューブである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱収縮チューブは、前記スリーブの長さより大きい長さを有して、前記スリーブの両端部に張り出すように配置される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2チューブの外径に対応する内径を前記スリーブは有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
融着中に長手方向圧力が前記第1及び第2チューブに加えられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
熱が加えられる時間の一部のみにわたって前記長手方向圧力が加えられる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1及び第2チューブの壁厚より小さい壁厚を前記スリーブは有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記スリーブは、前記第1及び第2チューブの前記壁厚の25%~75%である壁厚を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記スリーブの前記壁厚は、前記第1及び第2チューブの前記壁厚の50%である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記圧縮部材は融着後に除去される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TPEチューブを接合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマ(TPE)チューブ材又は他のコンポーネントは、その望ましい特性ゆえに医薬品及びバイオプロセスの用途で一般に使用されている。特に、TPEチューブ材は蠕動ポンプと併せて使用され得る。
【0003】
TPEチューブは、機械的コネクタ及びクランプを使用して共に接続され得る。しかしながら、これにより汚染及び漏出の可能性が生じる。TPEチューブは溶接し得るが、処理上の制約(例えば、材料適合性、サイクル時間等)と品質属性(例えば、低い表面品質、溶接による接合部の開封問題、粒子の発生等)ゆえに、多くの溶接プロセスが適していない。
【0004】
従って、既存の技術と関連する課題に対処するTPEチューブ接合方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、熱可塑性エラストマ(TPE)チューブを接合する方法であって、第1TPEチューブの端面を第2TPEチューブの端面に当接させることと、端面を被覆するように第1及び第2チューブの周りにTPEスリーブを設けることと、スリーブの周囲に半径方向力を加えるように構成されている圧縮部材をスリーブの周りに設けることと、圧縮部材を使用してスリーブに半径方向力を加えながらスリーブに熱を加えることにより第1及び第2チューブとスリーブとを互いに融着させることとを包含する方法が提供される。
【0006】
圧縮部材は、熱収縮チューブであり得る。
【0007】
熱収縮チューブは、スリーブの長さより大きい長さを有し得て、スリーブの両端部に張り出すように配置され得る。
【0008】
スリーブは、第1及び第2チューブの外径に対応する内径を有し得る。
【0009】
融着中に長手方向圧力が第1及び第2チューブに加えられ得る。
【0010】
熱が加えられる時間の一部のみにわたって長手方向圧力が加えられ得る。
【0011】
スリーブは、第1及び第2チューブの壁厚より小さい壁厚を有し得る。
【0012】
スリーブは、第1及び第2チューブの壁厚の25%~75%である壁厚を有し得る。
【0013】
スリーブの壁厚は、第1及び第2チューブの壁厚の50%であり得る。
【0014】
圧縮部材は、融着後に除去され得る。
【0015】
これから、図面を参照して例としてのみ実施形態が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】発明の実施形態による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、
図2~4を参照して記載される2本の熱可塑性エラストマ(TPE)チューブを接合する方法を記している。
【0018】
第1ステップS1では、
図2に示されるように、第1チューブ2の端面が第2チューブ4の端面に当接される。
【0019】
この例において、第1及び第2チューブ2、4は、同じ内径(つまりボアサイズ)と外径と壁厚とを有する。第1及び第2チューブ2、4間の界面でボアが位置合わせされるように、第1及び第2チューブ2、4は配置される。第1及び第2チューブ2、4は、これらが汚れておらず端面が垂直であることを確実にするように用意され得る。
【0020】
第1及び第2チューブ2、4は、0.5mm~25.4mmの内径と、1.6mm~4.8mmの壁厚とを有し得る。例えば、チューブは、0.5mmの内径と1.6mmの壁厚とを有する(ゆえに3.7mmの外径を備える)チューブから、25.4mmの内径と4.8mmの壁厚とを有する(ゆえに35mmの外径を備える)チューブまでの範囲であり得る。この例で、チューブ2、4は、12.7mmの内径と3.2mmの壁厚、ゆえに19.1mmの外径を有する。
【0021】
第2ステップS2では、第1及び第2チューブ2、4間の界面で端面を被覆するように(第1及び第2チューブ2、4と同じ等級であり得る)TPEスリーブ6が第1及び第2チューブ2、4の周りに設けられる。この例では、スリーブ6が第1及び第2チューブ2、4上に等距離延在するように、第1及び第2チューブ2、4間の界面はスリーブ6の中央に位置付けられる。
【0022】
スリーブ6は、第1及び第2チューブ2、4の外径に対応する内径を有する短尺のチューブである。それゆえ、この例において、スリーブ6の内径は19.1mmである。他の例では、第1及び第2チューブ2、4とスリーブ6との間に締まり嵌めが設けられるように、第1及び第2チューブ2、4の外径より小さい内径をスリーブ6は有し得る。第1及び第2チューブ2、4がスリーブ6へ容易に挿入され得るべく充分な変形を可能にする為に、スリーブ6及び/又は第1及び第2チューブ2、4は充分に軟質であり得る(つまり、充分に低いデュロメータ硬度値を有し得る)。締まり嵌めが設けられる場合には、第1及び第2チューブ2、4がスリーブ6へ挿入されるとスリーブ6の内径は第1及び第2チューブ2、4の外径に対応することが理解されるだろう。スリーブ6は、第1及び第2チューブ2、4の壁厚より小さい壁厚を有し得る。例えば、スリーブ6の壁厚は、第1及び第2チューブ2、4の壁厚の25%~75%であり得る。この例において、スリーブ6は、1.6mmの壁厚を有し、ゆえに第1及び第2チューブ2、4の壁厚の50%である。この例においてスリーブ6は20mmの長さを有するが、他の例ではスリーブ6が異なる長さを有してもよい。
【0023】
スリーブ6は第1チューブ2上へ充分に摺動され得、次に、端面が互いに当接すると第2チューブ4上を戻るように部分的に摺動され得る。代替的に、スリーブ6は第1チューブ上へ部分的に摺動され得、次に、第1チューブ2と当接するまで第2チューブ4がスリーブ6へ挿入されてもよい。
【0024】
図3に示されるように、第3ステップS3では、スリーブ6の周りに圧縮部材が設置される。この例において、圧縮部材は、ポリオレフィン又は他の熱収縮材料で形成され得る熱収縮チューブ8である。図のように、熱収縮チューブ8は、スリーブ6の長さより大きい長さを有し、その為、スリーブ6の両端部を越えて延出している。熱収縮チューブ8は、スリーブ6の両端部を越えて等しい張り出し部を設けるように位置決めされる。この例において、熱収縮チューブ8は35mmの長さを有し、その為、スリーブ6の両端部を越えておよそ7.5mmだけ張り出している。両端部でもスリーブ6の長さ(L
S)にスリーブ6の壁厚(WT
S)を加えたものより大きい長さ(L
HST)を熱収縮チューブ8は有すること(つまりL
HST≧L
S+2WT
S)が望ましい。熱収縮チューブ8の長さは加熱中に(約5~10%だけ)減少することもあり、望ましい長さを検討する時にこれを考慮(つまり加算)すべきである。
【0025】
熱収縮チューブ8は、スリーブ6の外径より大きい(納品時の)内径を有する。この例において、熱収縮チューブ8の内径は25.4mmである(22.3mmのスリーブの外径と比較)。熱収縮チューブ8は2:1の収縮比を有するが、他の収縮比が適切であり得る。
【0026】
図4及び5に示されるように、第4ステップS4では、アセンブリ、特に熱収縮チューブ8に熱が加えられる。これは、熱収縮チューブ8をスリーブ6の外面との係合状態まで収縮させる。それゆえ、アセンブリが加熱され続けている間、熱収縮チューブ8はスリーブ6を圧縮してスリーブ6の周囲に半径方向力を加える。熱収縮チューブ8は、スリーブ6の両端部を完全に覆うとともにスリーブ6の両側の小部分にわたって第1及び第2チューブ2、4の外面と接触するように、充分な長さを有する。
【0027】
アセンブリに熱が加えられている間は、熱収縮チューブ8により加えられる半径方向力に加えて、端面が共に押し付けられるように(矢印で示された)長手方向圧力がチューブ2、4中に加えられる。
【0028】
この例では、ヒートガンからの高温空気により熱が加えられる。ヒートガンは300℃の温度に設定され、合計で70秒間、このエリア中に適用される。熱が加えられる時間の一部にわたって、長手方向圧力はチューブ2、4に加えられる。特に、この例では、長手方向圧力は、最初の30秒間にのみ加えられる。
【0029】
熱と圧縮と長手方向圧力とは、第1及び第2チューブ2、4の端面の間、そしてスリーブ6の内面と第1及び第2チューブ2、4の外面との間にも融着を生じる。従って、
図6の試料で示されるように、第1及び第2チューブ2、4とスリーブ6とが充分に融着されて単一の一体形成したコンポーネントが得られる。
【0030】
図6の例において、熱収縮チューブ8は加熱後にアセンブリから除去される。他の例では、熱収縮チューブ8がアセンブリに残されてもよい。
【0031】
熱収縮チューブ8を使用するものとして方法が記載されたが、スリーブの周囲に半径方向力を加えて融着を補助する他の形の圧縮部材が使用され得ることが理解されるだろう。例えば、圧縮部材は、収縮するとスリーブ6に半径方向力を加えることができる可変直径を有する膨張リングなどの機械的装置であってもよい。
【0032】
急な段差を回避して内側ボアを制限するリスクを低下させるべく、スリーブ6の両端部(又はその一部分)は、第1及び第2チューブ2、4の外面に対して垂直ではなく、ゆえに第1及び第2チューブ2、4の外面へテーパ形状となるように傾斜していてもよい。代替的に、溶融する際にスリーブ6のテーパ形状が形成されてもよい。これは、追加の力をスリーブ6に加えてスリーブ6の両端部から材料を横向きに押し出すことにより達成され得る。
【0033】
クロス、Y字、又はT字のフィッティング、或いはクランプでの使用の為のフランジコンポーネントなど、コネクタコンポーネントの一部をチューブの一方が形成し得ることが理解されるだろう。スリーブ6と熱収縮チューブ8(又は他の圧縮部材)とはコネクタコンポーネントを備え得る。(クロス、Y字、T字のフィッティングのように)コネクタが多数の脚部を具備する場合には、脚部が同時的に別々のチューブに接続され得る。例えば、脚部の各々に同時に高温空気を提供するアダプタマニホールドを単一のヒートガンが備えてもよい。
【0034】
図示していないが、チューブ及び/又はコネクタコンポーネントの一方又は両方がフランジ又はボスのような肩部を備え、スリーブ6を長手方向に位置決めする為にスリーブ6がこの肩部に当接してもよい。
【0035】
発明は、本明細書に記載された実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく修正又は改変され得る。
【符号の説明】
【0036】
2 第1チューブ
4 第2チューブ
6 スリーブ
8 熱収縮チューブ
【手続補正書】
【提出日】2024-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマ(TPE)チューブを接合する方法であって、
第1TPEチューブの端面を第2TPEチューブの端面に当接させることと、
前記端面を被覆するように前記第1及び第2チューブの周りにTPEスリーブを設けることと、
前記スリーブの周囲に半径方向力を加えるように構成されている圧縮部材を前記スリーブの周りに設けることと、
前記圧縮部材を使用して前記スリーブに半径方向力を加えながら前記スリーブに熱を加えることにより、前記第1及び第2チューブと前記スリーブとを互いに融着させることと、
を包含する方法。
【請求項2】
前記圧縮部材は熱収縮チューブである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱収縮チューブは、前記スリーブの長さより大きい長さを有して、前記スリーブの両端部に張り出すように配置される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2チューブの外径に対応する内径を前記スリーブは有する、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
融着中に長手方向圧力が前記第1及び第2チューブに加えられる、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
熱が加えられる時間の一部のみにわたって前記長手方向圧力が加えられる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1及び第2チューブの壁厚より小さい壁厚を前記スリーブは有する、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記スリーブは、前記第1及び第2チューブの前記壁厚の25%~75%である壁厚を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記スリーブの前記壁厚は、前記第1及び第2チューブの前記壁厚の50%である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記圧縮部材は融着後に除去される、請求項
1に記載の方法。
【国際調査報告】