(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-26
(54)【発明の名称】揮発性物質デバイス、その使用および方法
(51)【国際特許分類】
A45D 34/02 20060101AFI20250318BHJP
A61Q 13/00 20060101ALN20250318BHJP
A61K 8/37 20060101ALN20250318BHJP
A61K 8/97 20170101ALN20250318BHJP
A61K 8/89 20060101ALN20250318BHJP
【FI】
A45D34/02 510A
A45D34/02 510D
A61Q13/00
A61K8/37
A61K8/97
A61K8/89
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539876
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(85)【翻訳文提出日】2024-08-21
(86)【国際出願番号】 EP2023050645
(87)【国際公開番号】W WO2023135211
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】512280161
【氏名又は名称】ヴェ マン フィユ
【氏名又は名称原語表記】V. MANE FILS
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ミシェル ハネテル
(72)【発明者】
【氏名】オドレ タルデュー
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AC351
4C083AD151
4C083KK01
(57)【要約】
フレグランス送達デバイスおよびその使用が提供される。このデバイスは、複数のフレグランス充填カプセルと、軸方向に沿って両方向にフレグランス充填カプセルに隣接して配置された生分解性吸収媒体と、フレグランス充填カプセルおよび生分解性吸収媒体を包囲し収容する外側の紙カバーと、を含む。カプセルを押し潰すと、シェルが破裂して液体コアが放出され、これが隣接する吸収媒体によって吸収され、それによってフレグランス化合物が徐々に外側の紙カバーに向けて拡散し、次に隣接する周囲に拡散する。外側の紙カバーは、ユーザーをリモートサーバに接続する2次元バーコードを含む印刷された表示を含む。携帯型電子デバイスに属する視覚検出アプリケーションによって2次元バーコードが検出され、デコードされ、および/またはリモートサーバに送信されると、フレグランス送達デバイスに関する情報が携帯型電子デバイスに送信され、表示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレグランス送達デバイスであって、
複数のフレグランス充填シームレスカプセルであって、それぞれがフレグランス化合物および非グリセリド親油性溶媒を含む液体コアを包囲するカプセルシェルを有し、前記カプセルシェルはハイドロコロイドゲル化剤および充填材を含み、前記液体コアは、0.85~0.99の間の相対密度を有する、複数のフレグランス充填シームレスカプセルと、
軸方向に沿って両方向に前記複数のフレグランス充填シームレスカプセルをまとめる吸収媒体と、
前記複数のフレグランス充填シームレスカプセルおよび前記吸収媒体を包囲し、これらを収容する外側の紙カバーであって、前記カバーは、前記フレグランス化合物が前記カバーを通して拡散され得るように適合されており、前記外側の紙カバーは、例えば、1次元または2次元バーコードを含む、印刷された表示を含む、外側の紙カバーと、
を備えるか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなるものであり、
各フレグランス充填シームレスカプセルは、0.5~2.5kgの初期破壊強度(C
i)、最大60%の弾性、および0.9以上の形状比を有する易破壊性のものであり、十分な破壊力を印加することによって前記カプセルシェルを破裂させると、前記液体コアが放出されて、前記隣接する吸収媒体に吸収され、それによって、前記フレグランス化合物が前記外側の紙カバーに向けて徐々に分散される、フレグランス送達デバイス。
【請求項2】
前記非グリセリド親油性溶媒は、エタノールと混和性を有し、
25℃の温度および10s
-1のせん断速度で測定した場合、10mPa・s未満の粘度と、
0.85~0.99の間の相対密度と、
850mm
2/10分を超える拡散値と、
を有する、請求項1に記載のフレグランス送達デバイス。
【請求項3】
前記非グリセリド親油性溶媒は、非グリセロールエステル、シリコーン、植物油、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載のフレグランス送達デバイス。
【請求項4】
前記非グリセリド親油性溶媒は、イソプロピルミリステート、イソアジペート、ココカプリレート、ポリジメチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ジメチコン、グレープシードオイル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載のフレグランス送達デバイス。
【請求項5】
前記フレグランス送達デバイスは、円筒形本体の中心軸の軸方向に沿って整列した前記複数の前記フレグランス充填シームレスカプセルと共に、遠位端および近位端を含む実質的に円筒形または円筒形の本体を有し、前記複数のカプセルは、前記吸収媒体の部分によって離間し、分離されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のフレグランス送達デバイス。
【請求項6】
外側の紙カバーは、22gsm~90gsmの間の密度を有し、5CU未満の気孔率であることを特徴とするコート紙を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる、請求項1~5のいずれか一項に記載のフレグランス送達デバイス。
【請求項7】
前記外側の紙カバーは、更に、前記フレグランス充填シームレスカプセルの位置を示す、カプセル位置マーキング等のカプセル位置識別子を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のフレグランス送達デバイス。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の前記フレグランス送達デバイスと、前記印刷された表示にリンクされたリモートサーバと、を備えるか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる、フレグランス送達システムであって、前記リモートサーバは、前記携帯型電子デバイスに属する視覚検出アプリケーションによって、例えば前記1次元または2次元バーコードの印刷された表示を検出し、デコードし、および/または送信すると、前記携帯型電子デバイスに/前記携帯型電子デバイス上に前記フレグランス送達デバイスに関する情報を送信および表示するように適合されている、フレグランス送達システム。
【請求項9】
前記携帯型電子デバイスおよび前記フレグランス送達デバイスのユーザーには、個人情報または製品関連情報を格納するためのファイルが提供され、前記ファイルは前記携帯型電子デバイスまたは前記リモートサーバに格納されている、請求項8に記載のフレグランス送達システム。
【請求項10】
人が前記フレグランス化合物を体験できるようするための、請求項1~7のいずれか一項に記載の前記フレグランス送達デバイスまたは請求項8あるいは請求項9に記載の前記フレグランス送達システムの使用。
【請求項11】
前記フレグランス化合物のサンプリングおよび/またはマーケティングを行うための、請求項1~7のいずれか一項に記載の前記フレグランス送達デバイスまたは請求項8あるいは請求項9に記載の前記フレグランス送達システムの使用。
【請求項12】
請求項8または請求項9に記載の前記フレグランス送達システムの使用方法であって、
前記フレグランス送達デバイスを人に提供することと、
携帯型電子デバイスに属する視覚検出アプリケーションによって、例えば前記1次元または2次元バーコード等の前記印刷された表示を検出し、デコードし、リモートサーバに送信することと、
前記フレグランス送達デバイスに関する情報を前記リモートサーバから前記携帯型電子デバイスに送信することと、
前記情報を前記携帯型電子デバイス上に表示することと、
を含む、方法。
【請求項13】
更に、
個人情報または製品関連情報を格納するファイルを作成し、前記ファイルを前記携帯型電子デバイスまたは前記リモートサーバに格納することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
更に、
前記液体コアを放出するのに十分な破壊力を印加することによって前記カプセルシェルを破裂させ、前記隣接する吸収媒体が前記液体コアを吸収し、それによって、前記フレグランス化合物が、好ましくは数秒で、前記外側の紙カバーに向けて徐々に輸送され、次に、前記隣接する周囲に拡散して人が前記フレグランス化合物を体験できるようにすることを含む、請求項12または13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、揮発性物質デバイスに関するものであり、より具体的には、フレグランス送達デバイス、その使用、並びに、それに関連する製品およびサービスを向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
揮発性フレグランスメーカーは、購入を促すために、顧客および/または消費者が利用可能なサンプルフレグランスを作製することに長年努めてきた。消費者向けファインフレグランス等の揮発性フレグランスは、複数の種類の媒体で宣伝され、通常、小売店の販売カウンターで販売される。フレグランス消費者にとってブランド名の認知度は重要であるが、フレグランスの実際の香りも重要である。多くの場合、フレグランス消費者は、大量のフレグランスを購入する前に、新しいおよび/または馴染みのないフレグランスを試してみたいと考えるだろう。
【0003】
フレグランスのサンプルを経済的に分配するために使用されるデバイスの1つに、サンプルアトマイザーが挙げられる。アトマイザーは、店頭ディスプレイで、測定された量の香料を空気中または顧客の手や手首に噴霧するために使用される。アトマイザーの欠点の1つは、空気中に噴霧した場合、香りのサンプルをうまく採取しにくいことである。しかしながら、顧客の手や手首に噴霧した場合、作製可能な異なる香りのサンプルの数は、事実上、各手または手首に1つずつ、合計2つに制限される。
【0004】
もちろん、香水科学者が使用するような無香料の紙カードストックまたはブロッターは、揮発性フレグランスを塗布して吸収する基材として使用することができる。次に、噴霧されたブロッターから発せられる揮発性フレグランスをユーザーは嗅ぐことができる。しかしながら、揮発性フレグランスが徐々に蒸発すると、香りの強さも弱まり、従ってその有効期間も短くなる。更に、複数のフレグランスをサンプリングする場合、ユーザーがブロッターに情報を手動で記録するか、または各揮発性フレグランスの詳細を記載したラベルをブロッターに貼り付けない限り、どの揮発性フレグランスがどのブロッターに塗布されたかを忘れてしまいやすい。
【0005】
フレグランスをサンプリングするための他の一般的なデバイスには、特許文献1または特許文献2に記載されているような、いわゆる「ピールアンドスニッフ(peel and sniff)」または「スクラッチアンドスニッフ(scratch and sniff)」カードがある。これらのフレグランスを含むサンプルカードは、雑誌や郵送物で配布されることが多い。ピールアンドスニッフまたはスクラッチアンドスニッフカードの基本的な考え方は、吸収されたフレグランス(例えば、タルク上)またはカプセル化された揮発性フレグランス(例えば、ゼラチンまたはプラスチックマイクロスフィア)を(例えば、ラッカーまたは接着剤を使用して)カード表面に接着することである。通常、サンプルカードは、香りの付いた領域を覆う可逆的に取り外し可能な遮水層を有する。カードの香りの付いた領域がカバーを外される、引っかかれる、および/または押されると、揮発したフレグランスが露出して匂いを嗅ぐことができる。これらのカードには、例えば、ブランド名、製造元、組成等、フレグランスに関する詳細に関連する表示が印刷されることが多いが、この技術で使用される接着剤は、香水製品の「本当の」香りの正確な再現を妨げることが多く、および/または、時間の経過とともに劣化する可能性がある。
【0006】
もちろん、他のタイプのフレグランス送達デバイスも知られている。例えば、SAS Carestiaに譲渡された、特許文献3には、内側プレートと1つ以上の一般的なカプセルとを挟む2つの外壁を備える長方形プレートが記載されている。内側プレートは、オープンセルフォームプラスチックの形態、不織布の形態、または揮発性物質がカプセルから透過性外壁に移動するのにかかる時間を遅らせる効果のある構造で作られている。外壁はフレグランスを透過すると報告されているが、報告されている構成材料は、一般的な名刺や招待状の範囲の坪量の紙または厚紙である。カプセルの詳細(例えば、シェル、フレグランス、溶剤、テクスチャ特性等)は記載されていない。
【0007】
R.J.Reynolds Tobacco Companyに譲渡された特許文献4に記載されている別の付臭剤またはフレッシュナー物品は、液体または粉末の形態、または易破壊性フレグランス含有カプセルの形態で、ウェブまたはフィラメントトウ材料にフレグランスを埋め込むか注入することを含み、更に衣類乾燥機で使用するための帯電防止添加剤を含んでよい。この場合も、カプセルの詳細(例えば、シェル、フレグランス、溶剤、テクスチャ特性等)は記載されていない。
【0008】
従って、揮発性フレグランスのサンプリングおよび/またはマーケティングのための新しいデバイスおよび方法が、従来のアプローチの1つ以上の欠陥を克服するために必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第92/14607(A1)号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0140054(A1)号明細書
【特許文献3】国際公開第2017017387(A1)号パンフレット
【特許文献4】国際公開第9844961(A1)号パンフレット
【特許文献5】欧州特許第513603号明細書
【特許文献6】国際公開第0053832(A1)号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2009079202(A1)号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2013019616(A2)号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】M. Douguet and al., "Spreading properties of cosmetic emollients: Use of synthetic skin surface to elucidate structural effects." Colloids Surf B Biointerfaces, 154 (2017) 307-314
【非特許文献2】S. Arctander, "Perfume and Flavor Chemicals" Vol. I and II, (Montclair, NJ, 1969)
【非特許文献3】"Common Fragrance and Flavor Materials", 5th Ed., Wiley-VCH, Weinheim, 2006
【非特許文献4】Green Chemistry, Theory and Practice, Oxford University Press, New-York, 1998
【発明の概要】
【0011】
本開示の特定の態様は、添付の特許請求の範囲に記載されている。本明細書に記載された主題には、追加の特徴および利点がある。それらは、本明細書が進むにつれて明白になるであろう。特許請求の範囲および以下に記載された様々な実施形態の様々な特徴は、組み合わせて、または別々に使用することができる。例えば、指定された範囲は、明示的に除外されない限り、その言及された終点を含むことができる。任意の特定の実施形態は、上記の全ての特徴を提供する必要はなく、また、全ての問題を解決する必要も、上記の全ての問題に対処する必要もない。
【0012】
本発明の実施形態によれば、複数のフレグランス充填カプセルと、軸方向に沿って両方向にフレグランス充填カプセルに隣接して配置された吸収媒体と、フレグランス充填カプセルおよび吸収媒体を包囲し、これらを収容する外側の紙カバーと、を備えるか、本質的にこれらからなるか、またはこれらからなるフレグランス送達デバイスが提供される。外側の紙カバーは、フレグランス化合物が外側の紙カバーを通って拡散することを可能にし、また、例えば、1次元または2次元バーコードを含む、または1次元または2次元バーコードからなる、ユーザーに見える印刷された表示を含む。フレグランス充填カプセルは、フレグランス化合物および非グリセリド溶媒を含む液体コアを包囲するカプセルシェルを含む(本質的にそれからなる、またはそれからなる)シームレスカプセルであり、液体コアの相対密度は0.85~0.99の間である。シームレスカプセルのカプセルシェルはハイドロコロイド混合物を含み、シェルは、初期破壊強度(Ci)が0.5~2.5kg、弾性が最大60%、形状比が0.9以上である易破壊性シェルである。十分な破壊力を印加してカプセルシェルを破裂させると、隣接する吸収媒体が液体コアを吸収し、それによってフレグランス化合物が徐々に外側の紙カバーに向けて輸送され、次に、隣接する周囲に拡散される。驚くべきことに、本明細書に記載のフレグランス充填カプセルを含むフレグランス送達デバイスは、従来のブロッターと比較して、トップノート、ミドルノート、およびボトムノートの忠実度が高く、ユーザーに長く続く感覚体験を提供することが判明した。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、フレグランス送達デバイスはリモートサーバと組み合わされて、携帯型電子デバイスが外側の紙カバーの表面上に印刷された表示、例えば1Dまたは2Dバーコードを検出すると、ユーザーが携帯型電子デバイスを利用してフレグランス充填カプセルに関する情報を取得できるようにするフレグランス送達システムを更に提供する。フレグランス送達システムは、双方向の情報交換も可能にし、エンドユーザーはアカウントを登録し、フレグランス送達デバイスに関するフィードバックを提供することができる。
【0014】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の実施形態を示しており、上記の本発明の一般的な説明および下記の詳細な説明と共に、本発明を説明するのに役立つ。明確性のために、および適切とみなされる場合、対応する特徴を示すために、図面では参照番号が繰り返されていることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による、フレグランス送達デバイスの平面図である。
【
図2】第1の実施形態による、
図1に示すフレグランス送達デバイスの破線1A-1Aに沿った断面図である。
【
図3】第2の実施形態による、
図1に示すフレグランス送達デバイスの破線1A-1Aに沿った断面図である。
【
図4】本発明の別の実施形態による、フレグランス送達デバイスを示す概略図である。
【
図5】全体的なフレグランスの強さを評価した、従来の香料を含浸させたブロッターと本発明のフレグランス送達デバイスとの比較試験を示す図である。
【
図6】フレグランスのトップノート、ハートノート、およびボトムノートの強さを評価した、従来の香料を含浸させたブロッターと本発明のフレグランス送達デバイスとの比較試験を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特に説明がない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合には、用語の説明を含む本明細書が優先する。単数形の用語「1つ(a)」、「1つ(an)」、「少なくとも1つ」、および「その(the)」は、文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、複数形の指示対象を含む。同様に、「または」という語は、文脈上そうでないことが明らかでない限り、「および」を含むことを意図している。「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」を意味する。従って、「AまたはBを含む」とは、AまたはBを含むことと、AおよびBを一緒に含むこととを意味する。
【0017】
図1は、複数のフレグランス充填カプセル12(破線で示す)と、フレグランス充填カプセル12を包囲し、それらを収容する外側の紙カバー16とを備えるフレグランス送達デバイス10の平面図である。外側の紙カバー16は、観察者に見える印刷された表示18およびカプセル位置マーキング20を含む。これらの目に見える特徴により、観察者は、本明細書で更に説明するように、フレグランス充填カプセル12に関する情報、並びに外側の紙カバー16の下の各カプセル位置に関する情報を取得することができる。
【0018】
図2は、
図1に示すフレグランス送達デバイスの破線1A-1Aに沿った断面図であり、吸収媒体14が、フレグランス充填カプセル12に隣接して軸方向に沿って両方向に連続した構成で配置されている第1の実施形態を示している。
【0019】
図3は、
図1に示すフレグランス送達デバイスの破線1A-1Aに沿った断面図であり、長さcを有する吸収媒体14の個々の部分が、フレグランス充填カプセル12に隣接して軸方向に沿って両方向に配置されている第2の実施形態を示している。
【0020】
図1~
図3において、フレグランス充填カプセル12は、フレグランス化合物および任意に溶媒を含む液体コア24を包囲するカプセルシェル22を含む。
【0021】
本発明の実施形態によれば、「カプセル」という用語は、カプセルシェル22が液体コア24を包囲するコアシェル構造を指しており、シェル形成材料の連続マトリックス内に小さな液滴が分散されているマトリックスシステムとは区別される。本発明の実施形態によれば、フレグランス充填カプセル12はシームレスであり、いわゆる「ソフトゲル」カプセルの場合のように、2つのハーフシェルを溶接する必要がない。従って、シームレスフレグランス充填カプセル12は、溶接が弱い部分の破裂に関連する漏出を回避できるという利点を有する。
【0022】
本発明の実施形態によれば、「易破壊性カプセル」という用語は、上で定義したように、カプセルの外面の対向側面に力を印加することによってシェルを破壊することができるカプセルを指す。十分な破壊力を印加してカプセルシェル22を破裂させると、液体コア24は隣接する吸収媒体14に吸収され、それによって、フレグランス化合物が徐々に外側の紙カバー16に向けて拡散し、次に隣接する周囲に拡散する。本発明による易破壊性カプセルは、0.5~2.5kgの間の硬度(初期破壊強度(Ci))を有し、従って、2本の指の間に力を印加することによって破壊可能であり、破壊時に可聴ノイズがする。
【0023】
本発明によるカプセルシェル22は、有利には、少なくとも1つのハイドロコロイドゲル化剤を含む。好ましくは、ハイドロコロイドゲル化剤はバイオベースのポリマーである。「バイオベース」とは、少なくとも部分的に(一般には20%超)または完全にバイオマスあるいはその誘導体から得られる合成ポリマーを意味する。ポリマーのバイオベース性は、特に、ASTM D6866-21規格によると、そのC14含有量から判定することができる。
【0024】
フレグランス充填カプセル12のカプセルシェル22のハイドロコロイドゲル化剤は、好ましくは、ジェランガム、(動物またはバイオテクノロジー由来の)ゼラチン、コラーゲン、アルギン酸塩、カラギーナン、寒天、キトサンおよびその誘導体、ペクチン、アラビアガム、ガティガム、プルランガム、マンナンガム、デンプンおよびデンプンの誘導体、植物性タンパク質、または改質セルロース、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。動物由来でないシームレスカプセルを準備するためには、易破壊性カプセルのシェル材料には動物由来のゼラチンが一切含まれないようにする。
【0025】
好ましい実施形態では、ハイドロコロイドゲル化剤は、単独で、またはゼラチンと組み合わせて使用されるジェランガムを含む。別の好ましい実施形態では、ハイドロコロイドゲル化剤はカラギーナンを含む。シェル内の乾燥重量成分の総質量に基づいて、ハイドロコロイドゲル化剤は、約10重量%~約95重量%、好ましくは15重量%~75重量%、より好ましくは20重量%~50重量%の範囲の量で存在する。
【0026】
シェル材料は、更に充填材を含む。例示的な充填材には、デキストリン、マルトデキストリン、イヌリン、スクロース、アルロース、タガトース、シクロデキストリン(アルファ、ベータ、ガンマ、または修飾シクロデキストリン)等のデンプン誘導体、微結晶セルロース(MCC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、またはカルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、非可塑性ポリオール、トレハロース、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、グリセロール、トリアセチン、ポリエチレングリコール、可塑性または保湿性ポリアルコール、または前述の2つ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。シェル内の乾燥重量成分の総質量に基づいて、充填剤は、約10重量%~約90重量%、好ましくは15重量%~75重量%、より好ましくは20重量%~50重量%の範囲の量で存在することができる。
【0027】
以下に更に説明するように、シームレスフレグランス充填カプセル12は共押出によって形成され、従って、乾燥成分(例えば、ハイドロコロイドゲル化剤、充填剤、および他の添加剤)のゲル化可能な水性混合物が水と混合することによって形成される。水と非水(乾燥)成分との典型的な重量比は、1:1~20:1の範囲である。好ましくは、外相に使用される水は、蒸留水、脱イオン水、または逆浸透水等の精製水であるが、処理水でも実行可能である。ゲル化可能な水性混合物は、更に、架橋剤、着色剤、金属イオン封鎖剤等を含んでもよい。
【0028】
液体コア24は、少なくとも1つの香料製剤/フレグランス化合物と、少なくとも1つの非グリセリド親油性溶媒とを含む。有利なことに、非グリセリド溶媒はエタノールと混和性があり、以下の特性を有する:a)25℃の温度および10s-1のせん断速度で測定した際の粘度が10mPa・sec未満である;b)850mm2/10分を超える分散値を有する;およびc)0.85~0.99の間の相対密度を有する。
【0029】
本発明の重要な技術的利点は、非グリセリド親油性溶媒により、共押出技術を使用して液体コアをカプセル化することで、易破壊性の、かつ安定したカプセルを取得することができることである。更に、非グリセリド親油性溶媒は、香料組成物を(隣接する吸収媒体14に吸収させることにより)外側の紙カバー16に良好に輸送する。
【0030】
実際、香料業界の当業者には、従来の香料組成物に、大量のエタノールが存在することで香料分子を「運ぶ」ことによって香料が蒸発し、従って、香りの効果が得られることが知られている。しかしながら、大量のエタノールを含む液体コア組成物の共押出カプセル化は、エタノールが親水性であり、液体コアと水性シェル形成組成物との間の界面を不安定にするため、実行不可能である。エタノールを従来の親油性共押出溶媒、例えば中鎖トリグリセリド(MCT)に単純に置き換えると、共押出が成功する可能性は高いが、MCTは香料分子の拡散を大幅に制限するだけでなく、皮膚に脂っこい感触が残るか、または衣服に油ジミを残す可能性がある。
【0031】
有利なことに、非グリセリド親油性溶媒は、エタノールおよび香料製剤の両方と混和性があり、更に、香料組成物の香りを妨げる臭いがない。本明細書で使用される用語「混和性」とは、非グリセリド親油性溶媒が香料およびエタノールと混合されて、均質な混合物を形成できることを意味すると理解される。場合によっては、香料の親油性の程度に応じて、共押出プロセス中に液体コア組成物に少量のエタノール(例えば、0~10重量%)を使用することが有利であり、その大部分はカプセルの乾燥中に蒸発する。同様に、少量のグリセリド溶媒も許容される。しかしながら、本発明の実施形態で使用される非グリセリド親油性溶媒は、主要溶媒、即ち、50質量%を超える。
【0032】
従って、本発明に従って定義される非グリセリド親水性溶媒は、液体コア24に以下の利点を提供する:a)安定した液体コアの配合、b)吸収媒体14を介して香料製剤を外側の紙カバー16に輸送するための良好な運搬性、c)外側の紙カバー16を介した香料組成物の良好な蒸発プロファイル、d)べたつきや油っぽい感覚を与えない、およびe)衣類材料を汚さない。
【0033】
一実施形態では、非グリセリド親油性溶媒は、非グリセロールエステル(例えば、イソプロピルミリステート、イソアジペート、および/またはココカプリレート)、シリコーン(例えば、ポリジメチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、および/またはジメチコン)、植物油(例えば、グレープシードオイル)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。一実施形態では、バイオベースかつ生分解性のカプセルを得るためには、植物油が好ましい。別の実施形態では、非グリセリド親油性溶媒は、イソプロピルミリステート、イソアジペート、ココカプリレート、ポリジメチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ジメチコン、およびグレープシードオイル、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0034】
非グリセリド親油性溶媒の相対密度は、好ましくは、0.85~0.99の間である。定義により、組成物の相対密度は、20℃で測定された前記組成物の密度と4℃の水の密度との比に対応する。非グリセリド親油性溶媒のこの相対密度範囲は、いわゆる共押出プロセスによるカプセルの製造中に良好な結果を保証する。有利には、液体コアの全組成物(例えば、香料製剤、親油性溶媒、存在する場合はエタノール)の相対密度は、0.85~0.99の間である。
【0035】
有利には、非グリセリド親油性溶媒は、25℃の温度および10s-1のせん断速度で測定された際に、粘度が10mPa・sec未満であるべきである。mPa・secで表される粘度(η)測定は、Haake MARS IIIレオメーターを使用して、25℃で、2度の角度を有する5mmコーンを使用して、せん断速度10sec-1で行われる。
【0036】
非グリセリド親油性溶媒は、850mm2/10分を超える拡散値を有するべきである。任意の物質の拡散値(または拡散性)は、一般的に、前記物質が一定時間内に表面を覆う能力として定義される。有利なことに、親油性溶媒(エステル、シリコーン、植物油、および鉱物油から選択)の拡散値は、非特許文献1から引用した方程式を使用して、10分間隔で計算することができる。実際、部分的最小二乗回帰による統計分析の後、25℃で測定された粘度(x)が、様々な化学特異的対数回帰に従って、非グリセリド親油性溶媒の性質の関数として、拡散値(y)を予測するための最も信頼性の高い変数であることが判明した。エステルの場合:y=-255xlog(x)+1315、シリコーンの場合:y=-222xlog(x)+1670、植物油の場合:y=-101xlog(x)+748である。これらの式は、非グリセリド親油性溶媒のスクリーニングまたは選択に使用することができる。
【0037】
本発明の実施形態によれば、非グリセリド親油性溶媒は、液体コア組成物の総重量に基づいて、10重量%~99.99重量%の間である。少量のエタノール(例えば、液体コア組成物の総重量に基づいて、0~10重量%の間)および/または少量のグリセリド溶媒(例えば、液体コア組成物の総重量に基づいて、0~5重量%の間)を、非グリセリド親油性溶媒と共に使用することができる。例えば、非グリセリド親油性溶媒は、液体コア組成物の総重量に基づいて、15重量%~90重量%の間、または20重量%~80重量%の間、または25重量%~75重量%で液体コア中に存在することができる。
【0038】
フレグランス充填カプセルの液体コア24に有用な例示的な香料製剤/フレグランス化合物には、フレーバーまたはフレグランス組成物の配合に従来使用されるような1つ以上の芳香族分子またはフレグランス分子が含まれるが、これらに限定されない。例えば、フレグランス分子には、芳香族、テルペンおよび/またはセスキテルペン炭化水素、より具体的には、精油、アルコール、アルデヒド、ケトン、フェノール、様々な形態のカルボン酸、芳香族アセタールおよびエーテル、窒素複素環、硫化物、ジスルフィド、および芳香族または非芳香族であり得るメルカプタンが含まれる。そのような臭気物質は、例えば、非特許文献2または非特許文献3に記載されている。香料製剤は、Orcanox(登録商標)1,5,5,9-テトラメチル-13-オキサトリシクロ[8.3.0.0]トリデカン、Betahydrane(登録商標)(3-ベンジル-テトラヒドロピラン)、Antillone(登録商標)(9-デセン-2-オン)、Noreenal(登録商標)((±)-6,8-ジメチルノン-7-エナール)、および/またはPescagreen(登録商標)(2-(2,4,4-トリメチル-シクロペンチル)-アクリロニトリル)を含む1つ以上のキャプティブ剤も含むことができるが、これらに限定されない。一実施形態では、液体コア中の香料製剤は、液体コア組成物の総重量に基づいて、0.01重量%~90重量%の間である。例えば、液体コア組成物の総重量に基づいて、香料製剤は、液体コア中に、1重量%~85重量%、または5重量%~80重量%、または10重量%~75重量%の量で存在してよい。
【0039】
一実施形態によれば、液体コア中の香料製剤の量は、最終用途、例えば、アロマセラピー、フレグランスサンプリング、空気清浄等に基づいて定義されてもよい。更に、乾燥されたフレグランス充填カプセル12の直径および/またはカプセルシェルの厚さは、特定の最終用途に対する液体コアの所望の容量を達成するために調整されてもよい。
【0040】
有利なことに、香料製剤および他の成分は、MANEのGREEN MOTION(登録商標)指数を使用して、環境への影響について評価することができる。この指数は、フレーバーおよびフレグランス業界で製造された原料の健康、安全、および環境への影響を0~100のスケールで評価する。プロセスがより安全かつ影響が少ないほど、評価は高くなる。GREEN MOTIONTM(登録商標)指数は、基本的にAnastas氏およびWarner氏(非特許文献4)が提唱した12のグリーンケミストリーの原則に結びついている。しかしながら、GREEN MOTION(登録商標)は、7つの基本概念、即ち、原材料、溶媒、試薬の危険性および毒性、反応、プロセス、最終製品の危険性および毒性、並びに廃棄物に重点を置いている。
【0041】
香料製剤および非グリセリド親油性溶媒に加えて、フレグランス充填カプセル12の液体コア24は、有利には、配合物中に固定剤を含むことで、香料製剤の急速な揮発を抑制し、より長く持続する香りを提供することができる。固定剤は、香料製剤自体よりも揮発性が低く、従って、芳香成分の蒸発速度を低下させる。適切な固定剤の非限定的な種類には、アブソリュート、コンクリート、樹脂、グルコース、スクロース、ソルビトール、クエン酸、およびサリチル酸の誘導体、セルロース(特にエチルセルロース)、海藻抽出物、トリグリセリド、ヒマシ油およびその誘導体等の油、エチルヘキシルグリセリン等の特定のエステル等の皮膚軟化剤、ポリウレタン、ポリアミド、特定のシリコーン、流動パラフィン、グリコールエーテル、熱分解法シリカおよび第四級アンモニウム塩が含まれる。
【0042】
本発明の好ましい実施形態によれば、フレグランス充填カプセル12の液体コア24は、前記カプセルの50%~95%(w/w)、好ましくは80%~92%、より好ましくは85%~92%を示す。逆に、この好ましい実施形態では、フレグランス充填カプセル12のカプセルシェル22は、前記カプセルの5%~50%(w/w)、好ましくは8%~20%、より好ましくは8%~15%を示す。
【0043】
シームレスフレグランス充填カプセル12は、特許文献5に記載されているように、共押出プロセスによって製造することができる。シームレスカプセルを調製するための一般的な手順を以下に記載する。乾燥成分(例えば、ハイドロコロイドゲル化剤、充填剤、および他の添加剤)のゲル化可能な水性混合物の外相と、液体コアの内油相とが個別に浸漬された同軸ノズルアセンブリを通してポンプで送られ、同心円状の複合流を形成し、この複合流が加えられた振動エネルギーの影響下で、個別の同心円状の液滴に分離する。同軸ノズルからの吐出物を、ゲル化可能な水性混合物のゲル化温度よりも低い温度のキャリア流体(例えば、中鎖トリグリセリド(MCT))に浸漬する。このようにしてゲル化可能な水性混合物を冷却し、カプセルの水和したハイドロコロイド含有シェル部分を形成する。このように形成されたカプセルを、次に、収集し、残留MCTの大部分を除去するために遠心分離する。遠心分離したカプセルをデシカントまたは乾燥剤(例えば、デンプンまたはシリカ)で更に処理し、続いて、30~45℃の空気で乾燥させる。得られた乾燥カプセルを、その後、収集し、ふるいにかける。本発明の実施形態に従って調製された乾燥フレグランス充填カプセル12は、均質で滑らかな外観を有し、球状または実質的に球状である(マイクロカプセルの幅と長さとの平均比で測定)。好ましい実施形態では、乾燥シームレスフレグランス充填カプセル12は、更なる操作およびフレグランス送達デバイスへの組み込みに耐えるテクスチャ特性(例えば、初期破壊強度または弾性)を有するが、2本の指の間で押し潰す力によって破壊することができる(破壊時に可聴ポップ音を伴う)。
【0044】
有利には、乾燥フレグランス充填カプセル12の外径は、2~10mm、好ましくは3~5mm、より好ましくは3.4~4.8mm、更により好ましくは3.5~4.5mmである。フレグランス充填カプセル12のシェル22の厚さは、10~500ミクロン、好ましくは30~150ミクロン、より好ましくは50~80ミクロンであり、カプセル直径/シェル厚さの比は、10~100の範囲、好ましくは50~70の範囲である。乾燥したフレグランス充填シームレスカプセル12は、初期破壊強度(Ci)が0.5~2.5kg、弾性が最大60%、形状比が0.9以上である。上記の特性を決定するために、乾燥カプセルの水分含有量(カールフィッシャー滴定法で測定)は、カプセルの総重量に基づいて、5重量%未満である。
【0045】
カプセルの初期破壊強度(Ci)(硬度または破壊時の力とも呼ばれる)は、Stable Micro System Ltd.(英国、サリー州)のTA.XTplusテクスチャアナライザーを使用して、5Kgロードセルを使用した圧縮モードで測定する。プローブ:P0.5-1/2直径DELRIN(登録商標)シリンダー、シリンダー速度0.5mm/秒、解像度0.01Kg、20個のカプセルの平均を取得する。カプセルは、TA.XT plusデバイスのベースとプローブとの間に配置される。次に、易破壊性シェルが破裂するまで、1つの粒子に垂直方向の圧縮力が継続的に印加され、同時に内蔵ゲージが(キログラム(Kg)単位で)力と(ミリメートル(mm)単位で)位置とを記録する。カプセルが破裂すると、破裂して液体コアが放出されたことを示す可聴ノイズが伴う。
【0046】
「変形」とは、破壊時の距離とカプセルの初期サイズとの比率であり、「破壊時の距離」(mm)は、上記のTA.XTplusテクスチャアナライザーを使用して測定された、カプセルとの接触からカプセルの破壊点までプローブがカバーする距離である。「弾性」は、パーセントで表された変形値である。
【0047】
乾燥カプセルの形状比(または対称性)は0.9以上である。等価直径および対称性/形状比は、Haver&BoeckerのCPA2-1によって測定される。CPAは、乾燥粒子(例えば、カプセル)のサイズおよび形状の分析を測定するための撮影光学ユニットである。CPAユニットは、供給ユニット、光学センサー、カメラ、特殊光源、および電子モジュールで構成されている。カプセルはカメラの前に落下する。影の投影がカメラによって検出され、CPA Servソフトウェアでリアルタイムに評価される。
【0048】
フレグランス充填カプセル12は、軸方向に沿って配置され、外側の紙カバー16によって包囲され保持されている吸収媒体14に埋め込まれている。フレグランスの拡散性は、吸収媒体14の特定の特性(化学組成、密度、圧力降下、硬度、形状、および直径等)を変更することによって、および/または外側の紙カバー16の特定の特性(コーティング、穿孔、重量、および多孔度等)を変更することによって高めることができる。
【0049】
図2に示すように、吸収媒体14は、実質的に球形または球形のフレグランス充填カプセル12を収容するための空洞を備えた連続構成を有してよい。あるいは、吸収媒体14は、
図3に示すように、個別の部分であってもよい。図示されていないが、吸収媒体14は、フレグランスの吸収および/または拡散速度を高めるために、放射状に延在するまたは軸方向に延在するチャネルを備えるように構成されてもよい。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、吸収媒体14は、生分解性/生分解性ポリマーを含む。本明細書で使用される場合、「生分解性」物質とは、標準試験方法(ISO14855-2:2018)を用いて1年以内に自然条件下で急速に分解することができる物質を意味し、生分解とは、有機物質が微生物(主に好気性細菌)によって二酸化炭素、水およびアンモニア等のより単純な物質に分解されるプロセスである。
【0051】
従来のタバコフィルターは、化学的に修正された天然ポリマーであるセルロースアセテートで作製される。セルロースのヒドロキシル基のアセチル化は、好ましい有用な特性を与える一方、この疎水化された形態は、セルロースの生分解能力も阻害する。従って、セルロースアセテートは、特許文献6に記載されている「生分解促進剤」等の脱アセチル化を促進する他の成分または材料と組み合わせない限り、または特許文献7に記載されているセルロースアセテートフィラメントの加水分解を触媒する材料と組み合わせることのない限り、生分解性であるとは見なされない。
【0052】
生分解性の吸収媒体材料の非限定的な例には、セルロース、亜麻、綿、マニラ麻、ポリ乳酸、またはポリラクチド、並びに特許文献8(RJ Reynoldsに譲渡され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている生分解性ポリエステル(例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートアジペート、およびそれらのコポリマーまたはブレンド)が含まれる。市販されているバイオベースおよび生分解性の吸収媒体材料の非限定的な例には、Eastman ESTRON(登録商標)(テネシー州、キングスポート)、Tianjin NAT Technology(中国、天津)製の生分解性トウ、Greenbutts LLC(カリフォルニア州、サンディエゴ)製のGreenbutts(登録商標)、Cerdia International GMBH(スイス、バーゼル)製のCerdia(登録商標)DE-Tow、またはEssentra Filter Products Development Co. Pte. Ltd(シンガポール)製のECO Active(登録商標)が含まれる。
【0053】
一実施形態では、吸収媒体14材料は、ランダム配向の再生セルロース繊維およびセルロースアセテート繊維を含むことができ、更にバインダーを含むことができる。本明細書で使用される「再生セルロース繊維」という用語は、天然セルロース材料を加工して所望の物理的特性を有するセルロース繊維を提供することによって形成されたセルロース繊維を意味する。再生セルロース繊維を形成するための典型的なプロセスには、木材チップ等の天然セルロース材料をパルプ化してパルプを形成するステップと、パルプに1つ以上の処理ステップを施してセルロースの物理的特性を変更するステップと、例えば、パルプを三角形の紡糸口金に通過させることによってセルロース繊維を紡糸し、Y字型断面を提供することによって、処理されたパルプから再生セルロース繊維を形成するステップと、が含まれる。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、吸収媒体材料は、デニールフィラメントが2.5Y~8.0Yの範囲にあり、総線密度が10000~40000であることを特徴とする。デニールフィラメントは、長さの単位で表された重量であり、9000mの線状セルロース材料のグラム単位の重量として定義される。デニールは、数値が小さいほど寸法が細く、数値が大きいほど寸法が太い、直接的なメートル法である。長さ9000mかつ重量が1グラムの単一フィラメントは、デニール1に等しい。総デニールは、長さ9000mの吸収材料繊維のグラム単位の重量である。吸収媒体材料は、そのデニールフィラメントおよび総デニールによって特徴付けることができる。例えば、6.0Y17000吸収材料は、フィラメント当たりのデニール(またはフィラメントデニール)が6.0かつ総デニールが17000であり、断面Yはタバコ業界で一般的に使用されているものである。一実施形態では、吸収媒体材料は、4.0~8.0のデニールのフィラメントおよび12000~30000の総線密度を有する。
【0055】
有利なことに、ランダム配向の再生セルロースを含む吸収材料を使用することにより、濾過材の分解が改善される。これは、特に、従来のセルロースアセテートトウ材料の実質的に連続したフィラメントと比較した場合、ランダム配向の繊維が、フレグランス送達デバイス10が廃棄された後により容易に分散できるためである。繊維の分散が増加すると、個々の繊維が環境に曝露される量が増加し、従って、セルロース材料の分解速度が増加する。
【0056】
セルロースおよびその誘導体は、より伝統的な紙用途で使用されるものも含め、責任を持って調達することが好ましい。FSC(森林管理協議会)またはPEFC(森林認証プログラム)等の例示的な環境認証は、パルプの供給源の追跡可能性を保証するための周知の認証である。欧州規格EN643「再生紙と再生段ボールの標準グレードのヨーロピアンリスト」は、リサイクルによって回収できる紙および段ボールの材料および製品を定義している。一実施形態によれば、吸収材料は、責任を持って調達された、またはリサイクルされたセルロース材料から製造される。
【0057】
本発明の一態様によれば、吸収媒体材料は、バインダー組成物を使用して、実質的に円筒形または円筒形に形成される。一般的なバインダー材料の1つにトリアセチンが挙げられる。一実施形態では、バインダー組成物は、ジメチルイソソルビド、プロピレンカーボネート、メチルベンジルアルコール、グリセロールカーボネートアセテート、グリセロールカーボネートエチルエーテル、およびそれらの混合物のうちの1つ以上を更に含んでもよい。別の実施形態では、バインダー組成物は、ジメチルイソソルビド、プロピレンカーボネート、メチルベンジルアルコール、グリセロール、およびグリセロールカーボネートアセテートまたはグリセロールカーボネートエチルエーテル等のグリセロール誘導体、またはそれらの混合物のいずれも含まない。
【0058】
トリアセチンまたはトリアセチン含有バインダー組成物は、好ましくは、吸収媒体の重量の約1%~約15%、より好ましくは吸収媒体の重量の約5%~約13%、最も好ましくは吸収媒体の重量の約8%~約12%の量で存在する。
【0059】
フレグランス充填カプセル12および吸収媒体14は、外側の紙カバー16によって包囲され、保持されている。吸収媒体14と同様に、外側の紙カバー16も生分解性である。外側の紙カバーを構成するのに適した材料には、充填剤有または無のセルロースおよびその誘導体が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、外側の紙カバー16は非多孔性である。外側の紙カバー16の多孔度は、CORESTA単位(CU)で表され、1kPaの圧力差をかけた状態で1cm2の基板サンプルを通過する空気の体積流量(cm3/分)である。一実施形態では、外側の紙カバーの気孔率は、5CU未満、例えば、4CU、3CU、2CU、1CU、あるいは0CU、または前述の任意の2つの値の間の範囲内である。
【0060】
一実施形態では、外側の紙カバー16はコーティングまたは含浸される。コーティングまたは含浸は、ブレードコーター、ロールコーター、ディッピングロール、カーテンコーター、サイズプレス、または他の従来のコーティングおよび含浸方法を利用して実行することができる。市販されているバイオベースおよび生分解性の外側の紙カバー16の非限定的な例には、Delfort Group(オーストリア、トラウン)が製造するプラグラッパーまたはSchweitzer-Mauduit International,Inc(ジョージア州アルファレッタ)が製造するプラグラッパーが含まれる。
【0061】
坪量またはグラム数は、外側の紙カバー16の基本的な特性である。紙の坪量は、単位面積あたりの重量である。これは、平方メートルあたりのグラム数(gsmまたはg/M2)で表すことができる。一実施形態によれば、外側の紙カバー16のグラム数は、22gsm~90gsmまで変化することができ、これにより、フレグランスの良好な拡散性、デバイスの感触の良さ、およびフレグランス送達デバイス10の剛性がもたらされるが、依然としてユーザーの指への溶剤/オイルの移動が抑制され、使用中にデバイスの相対的な円筒形状が維持される。例えば、外側の紙カバー16のグラム数は、22~90gsm、24~80gsm、26~70gsm、または30~60gsmであってもよい。
【0062】
図1に示すように、本発明の実施形態によれば、外側の紙カバー16の表面には、印刷された表示18および位置マーキング20が付されている。印刷は組み立て後に実行してもよいが、組み立て前に紙が平らな状態で外側の紙カバー16に印刷することが好ましい。平らな外側の紙カバー16に印刷することにより(着色することも可)、+/-2mmの精度で表示やマーキングを印刷することが可能となる。カプセル位置マーキング20により、フレグランス充填シームレスカプセルの位置を簡単かつ迅速に識別できる。
【0063】
図4に示すように、印刷された表示18は、会社名、ブランド名、商標、またはデバイス内のフレグランス組成に関する任意の他の情報等、ユーザーが直接識別可能な情報を提供してもよい。有利には、印刷された表示18は、スキャン可能な1次元または2次元バーコード(例えば、コード39、コード128、QR、UPC-A、EAN-8、EAN-13、およびITFバーコード)または任意の他のスマートフォンでスキャン可能なコードを含み、携帯型電子デバイス38によって撮影/検出することができ、消費者をリモートサーバ40の特定のインターネットURLサイトに即座にかつ直接リンクできるようにする。従って、印刷された表示18により、ユーザーは携帯型電子デバイスを使用して、フレグランス充填シームレスカプセルに関する情報を取得することができる。例えば、ユーザーは、フレグランスの組成、原料の産地、サプライヤー情報、GREEN MOTION(登録商標)インデックス、および他のユーザーや調香師からの評価やコメント等、ユーザーに関連する他の詳細等、フレグランスに関する情報に直接アクセスすることができる。
【0064】
リモートサーバ40は、双方向の情報交換を可能にするように構成することもでき、これにより、エンドユーザーは、アカウントを登録または作成し、フレグランス送達デバイス10およびフレグランス充填カプセル12の内容物に関するフィードバックまたは評価を提供することができる。従って、リモートサーバ40は、印刷された表示18を介してフレグランス送達デバイス10にリンクされており、携帯型電子デバイス38に属する視覚検出アプリケーションによって印刷された表示18を検出し、デコードし、および/またはリモートサーバ40に送信すると、フレグランス送達デバイス10に関する情報が携帯型電子デバイス38に送信され、表示される。更に、ユーザーが作成したファイルまたはアカウントは、サンプルされたフレグランス組成物の数量および/またはタイプを含む、ユーザーの個人情報を格納するために利用することができ、ユーザーの好き嫌いの記録としても機能する。ユーザーが作成したファイルは、携帯型電子デバイス38および/またはリモートサーバ40に格納することができる。
【0065】
従って、本発明の一実施形態では、フレグランス送達システムが提供される。システムは、フレグランス送達デバイス10と、印刷された表示18にリンクされたリモートサーバとを備えるか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり、前記リモートサーバ40は、携帯型電子デバイス38に属する視覚検出アプリケーションによって、例えば、1次元または2次元バーコード等の印刷された表示18を検出し、デコードし、および/または送信すると、フレグランス送達デバイス10に関する情報を携帯型電子デバイス38に/携帯型電子デバイス38上に送信および表示するように適合される。更に、携帯型電子デバイス38およびフレグランス送達デバイス10のユーザーには、個人情報または製品関連情報を格納するためのファイルが提供されてもよく、前記ファイルは携帯型電子デバイス38またはリモートサーバ40に格納される。
【0066】
フレグランス充填シームレスカプセルの実質的に球形または球形の形状と、フレーバー充填カプセルを備えるタバコフィルターを製造する既知の技術とに基づいて、本発明のフレグランス送達デバイスは、従来のタバコおよびカプセル包装機械を使用して製造することができる。実質的に球形または球形のフレグランス充填カプセル12、吸収媒体14、および外側の紙カバー16のこの組み立てには、更に、フレグランス充填カプセル12および/または吸収媒体14を外側の紙カバー16に固定し、外側の紙カバー16の継ぎ目を接着するための接着剤の使用が含まれてよい。フレグランス充填カプセル12および/または吸収媒体14を固定し、外側の紙カバー16の継ぎ目を接着するのに適した生分解性接着剤には、例えば、ポリ酢酸ビニル(PVA)または生分解性ホットメルト(HM)接着剤が含まれる。
【0067】
吸収媒体14の外側の紙カバー16への接着性は、吸収媒体14の外側の紙カバー16自体に対する物理的特性と共に、フレグランス送達デバイス10に良好な構造的完全性を提供する。例えば、2kgの荷重で設定時間が10秒間の試験後のフレグランス送達デバイスの元の直径に対するフレグランス送達デバイスの直径の残存高さを表すボルグワルド硬度を、フレグランス送達デバイス10の特性評価に使用することができる。ボルグワルド硬度試験は、ボルグワルドDD60A密度計(ドイツのHeinr.Borgwaldt GmbHが製造し市販している)を使用して実施される。本発明の実施形態によれば、フレグランス送達デバイス10は、50%以上、好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上のボルグワルド硬度を有する。
【0068】
本発明の実施形態によれば、更に
図1~
図3を参照すると、フレグランス送達デバイス10は、遠位端30および近位端32と、円筒形本体の中心軸の軸方向に沿って整列した複数のシームレスフレグランス充填カプセル12とを含む円筒形本体で構成され、複数のカプセルは、吸収媒体14の部分によって離間され、分離されている。長さおよび直径の寸法は、フレグランス送達デバイス10の実装に関して限定されない。円筒形本体の長さ(L1)は、約5cm~約25cmの範囲、好ましくは約10cm~約20cmの範囲であり得、円筒形本体の直径(D1)は、例えば、約4mm~約15mmの範囲、好ましくは約5mm~約10mmの範囲であり得る。
【0069】
一態様において、フレグランス送達デバイス10の直径(D1)はカプセルの直径(a)と関連しており、フレグランス送達デバイス10の直径(D1)はフレグランス充填カプセル12の直径(a)よりも大きい。
図2に示すように、直径(a)を有するフレグランス充填カプセル12は、全体直径(D1)を有するフレグランス送達デバイス10内に収容されているが、好ましくは外側の紙カバー16とは接触せず、距離(b)だけ離間しており、これにより、フレグランス送達デバイス10の組み立て中にフレグランス充填カプセル12が受ける損傷を最小限に抑える。
【0070】
本明細書に記載のフレグランス送達デバイスを使用することによる感覚体験を向上させるために、追加の修正および特徴を加えることができる。例えば、
図1に示す実施形態に示すように、カプセルが破壊された直後に、ユーザーが液体の漏出に不当に曝されることなく、フレグランスの拡散を高めるために、外側の紙カバー16に小さな穿孔36を戦略的に配置することができる。図示されていないが、吸収媒体14には、フレグランス化合物が外部環境に向けて拡散しやすくなるよう、軸方向または放射状チャネルが設けられてもよい。別の実施形態では、フレグランス送達デバイス10の外側の紙カバー16には穿孔が設けられていない。
【0071】
乾燥された、易破壊性フレグランス充填カプセル12を吸収性媒体14と組み合わせ、外側の紙カバー16で包んでフレグランス送達デバイス10を形成し、1つまたは2つの接着剤のストリップ(例えば、ホットメルト接着剤またはポリビニルアルコール接着剤)を使用して吸収媒体14を外側の紙カバー16に固定し、1本の接着剤ラインを使用して外側の紙カバー16の継ぎ目を接着することによって、デバイス10の単一の外面を形成する。フレグランス送達デバイス10は、カプセルインサータを備える標準的または改良されたタバコフィルター製造機械を使用して製造することができる。例えば、ITMグループ(例えば、ITM PolandまたはITM Solaris)またはHauniグループ(例えば、FLEXPORT CIモジュール)によって製造された機械を使用して、本明細書に記載のフレグランス送達デバイス10を準備することができる。
【0072】
本発明の更に別の実施形態によれば、フレグランス送達デバイス10を使用する方法が提供される。この方法は、フレグランス送達デバイス10を人に提供することと、携帯型電子デバイス38に属する視覚検出アプリケーションによって2次元バーコードを検出し、デコードし、および/またはリモートサーバ40に送信することと、フレグランス送達デバイス10に関する情報をリモートサーバ38から送信し、携帯型電子デバイス38にて前記情報を受信することと、携帯型電子デバイス38に前記情報を表示することとを含む。この方法は、フレグランス充填シームレスカプセル12を破壊し、その後に嗅覚経験をする前、後、または同時に実行することができる。有利には、ユーザーは、フレグランスの組成、原料の産地、サプライヤー情報、GREEN MOTION(登録商標)インデックス、および他のユーザーからの評価やコメント、または作製した調香師からの感動的なコメント等、ユーザーに関連する可能性のある他の詳細等、フレグランスに関連する情報に直接アクセスすることができる。別の実施形態では、この方法は、更に、個人情報または製品関連情報を格納するファイルを作成することを含み、そのファイルは、携帯型電子デバイス38またはリモートサーバ40に格納することができる。本発明の実施形態によれば、この方法は、更に、液体コア24を放出するのに十分な破壊力を印加することによってカプセルシェル22を破裂させることを含み、隣接する吸収媒体14が液体コア24を吸収し、それによって数秒でフレグランス化合物が徐々に外側の紙カバー16に向けて輸送され、その後、隣接する周囲に拡散されて、人がフレグランス化合物を体験できるようにする。
【0073】
以下に、本発明を次の実施例によって説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【0074】
実施例:
外部水相を調製するための一般的な手順:測定された量の処理水を加熱し、完全に溶解が達成されるまでハイドロコロイドゲル化剤をその中に混合する。充填剤、架橋剤、および/または他の添加剤を加え、得られた混合物を撹拌して共押出し、易破壊性シームレスカプセルを作製する。ゲル化可能な混合物の外部水相を調製するための例示的な配合を表1および表2に示す。
【0075】
【0076】
【0077】
内部油相液体コアを調製するための一般的な手順:所望量のフレグランス成分を、測定された量の非グリセリド溶媒と混合する。場合によっては、少量(<10重量%)のエタノールを使用して液体コアを均質化してもよい。最終的な液体コア配合物は、室温で安定した液体であるべきである。フレグランス、イソプロピルミリステート(IPM)溶媒、およびエタノールを含む様々な液体コア配合の例示的な配合を表3に示す。
【0078】
【0079】
カプセルを調製するための一般的な手順:ゲル化可能なシェル混合物の外部水相と液体コアの内部油相とを、それぞれ、浸漬された同軸ノズルアセンブリを通してポンプで送り、それによって、そこに与えられる振動エネルギーによって、個別の同心円状の液滴に分割される同心円状の複合ストリームを形成する。同軸ノズルの吐出物を、ゲル化可能な混合物のゲル化温度よりも低い温度のキャリア流体(例えば、中鎖トリグリセリド(MCT))に浸漬する。これにより、ゲル化可能なシェル混合物を冷却し、カプセルの水和シェル部分を形成する。このようにして形成したカプセルを、次に約1時間4℃でエージングし、収集し、残留MCTの大部分を除去するために遠心分離にかける。遠心分離したカプセルと乾燥剤(例えば、シリカまたはデンプン)の一部とを混合し、次に、乾燥されたカプセルの水分が所望の量に減少するまで(<5重量%の水分)35℃で空気乾燥して、次に収集し、ふるいにかける。
【0080】
本発明の実施形態に従って調製された、乾燥した易破壊性フレグランス充填カプセルは、均質かつ滑らかな外観を有し、球形または実質的に球形(即ち、形状比>0.9)であり、所望の硬度(Ci)および弾性を特徴とする(表4を参照)。
【0081】
【0082】
乾燥した、易破壊性フレグランス充填カプセル12を吸収媒体14と組み合わせ、外側の紙カバー16で包んでフレグランス送達デバイス10を形成し、カプセルインサータを備えた標準的なまたは改良されたフィルター製造技術および装置を使用して製造した。
【0083】
【0084】
【0085】
官能試験および比較:
図5および
図6に示すように、カプセルコアの量(22μL)と同等の測定量のフレグランス組成物を投与した従来の調香師のフレグランスブロッターストリップ(150mmx7mm)を、表6のデバイス1または2で製造した本発明のフレグランス送達デバイス10と比較した。8人のパネリストが、週末を除く15日間毎日、従来のブロッターに対して本発明のフレグランス送達デバイスを試験した。フレグランスAの評価を、トップノート、ハートノート、およびボトムノート(
図6)、並びに全体的なフレグランスの強さ(
図5)について、特定の時間間隔(0時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、および2~15日)で行い、0~10のスケールで評価した。従来のブロッターは最初の2時間でより強い感覚的体験を提供したが、本発明のフレグランス送達デバイス10は数日後でさえも大幅に長く持続していることが証明された。更に、本発明のフレグランス送達デバイスは、従来のブロッターと比較して、トップノートおよびハートノートの拡散がより良好かつより長く持続した。更に、本発明のフレグランス送達デバイス10により、特に評価の初日に、ユーザーはトップノートとボトムノートとを同時に嗅ぐことができる。有利には、本発明のフレグランス送達デバイス10は、複数のフレグランス充填シームレスカプセルも備えるため、数週間後でさえも別のカプセルを破壊することができるという追加の利点がある。
【0086】
これらの感覚的パネルの結果をHS-GC/MS分析によって確認し、本発明のフレグランス送達デバイスには、24時間後および48時間後に、従来のブロッターよりも定量的に多くのフレグランスが残っていることが示された。本発明のデバイスおよび標準ブロッター上のフレグランスの蒸発を、残留フレグランスAを経時的に測定することによって研究した。これには、2つのインジェクターおよび2つの検出器(FIDおよびMS検出器5977MSD Agilent)を備えた7890ガスクロマトグラフ(Agilent)を使用した。分析システムは、ChemStationソフトウェア(Agilent、バージョンE01.00.237)を使用して駆動した。本発明のデバイスの各カプセルの周囲2cmの断片を切り取った。2cmのブロッターの断片も準備した。T0:本発明のデバイスのカプセルを割り、マイクロピペットで22μLのフレグランスをブロッターの断片に付着させた。ブロッターに付着したフレグランスはコアカプセルと同じで(イソプロピルミリステート50%のフレグランスA)、22μLはカプセル1個分の容量を表す。各デバイスに残留するフレグランスの抽出は、内部標準(ヘプタン中の30%メチルオクタン酸溶液20mg)とジクロロメタン10mLとを正確に添加することによって、異なる蒸発時間後に実施した。サンプルを、振動台で300rpmで30分間撹拌した。有機相をPSでろ過し、GC-MSに注入して同定および定量化した。定量化アプローチでは、FID積分データを使用する。ISO11024規格への準拠を事前に検証した。内部較正曲線は、ジクロロメタン10mL中の異なる比率のフレグランスと内部標準とを含む4つの参照溶液により決定される。T0で定量化されたフレグランスは、各デバイスで使用可能なフレグランスの量として定義される。
【0087】
本発明は、その1つ以上の実施形態の説明によって説明されており、実施形態はかなり詳細に説明されているが、添付の特許請求の範囲をそのような詳細に制限または限定する意図はない。付加的な利点や改良は、当業者にとっては容易に想到されるものである。従って、本発明のより広範な態様は、具体的な詳細、代表的な製品および/または方法、並びに、示されかつ説明されている実施例に限定されない。本明細書に記載される例示的な実施形態の様々な特徴は、任意の組み合わせで使用され得る。従って、一般的な発明概念の範囲から逸脱することなく、上記詳細から逸脱してもよい。
【国際調査報告】