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特表2025-508370バッテリセルのシール、バッテリセル用のシールアセンブリ、及び架橋グロメットを備えるバッテリセル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-26
(54)【発明の名称】バッテリセルのシール、バッテリセル用のシールアセンブリ、及び架橋グロメットを備えるバッテリセル
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/184 20210101AFI20250318BHJP
   H01M 50/188 20210101ALI20250318BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20250318BHJP
   H01M 50/534 20210101ALI20250318BHJP
   H01M 50/562 20210101ALI20250318BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20250318BHJP
   H01M 50/152 20210101ALI20250318BHJP
   H01M 6/08 20060101ALI20250318BHJP
   H01M 10/24 20060101ALI20250318BHJP
【FI】
H01M50/184 D
H01M50/188
H01M50/193
H01M50/534
H01M50/562
H01M50/107
H01M50/152
H01M6/08 Z
H01M10/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547335
(86)(22)【出願日】2023-03-07
(85)【翻訳文提出日】2024-08-08
(86)【国際出願番号】 US2023014676
(87)【国際公開番号】W WO2023172532
(87)【国際公開日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】17/691,030
(32)【優先日】2022-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】315014051
【氏名又は名称】デュラセル、ユーエス、オペレーションズ、インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー、シェレキン
【テーマコード(参考)】
5H011
5H024
5H028
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011AA17
5H011EE01
5H011GG01
5H011HH02
5H011JJ02
5H011JJ12
5H011JJ27
5H011KK02
5H024BB14
5H024CC02
5H024DD02
5H024DD03
5H024HH00
5H024HH01
5H024HH13
5H024HH15
5H028AA07
5H028BB01
5H028CC05
5H028CC08
5H028CC17
5H028EE10
5H028HH00
5H028HH01
5H043AA19
5H043BA04
5H043BA15
5H043CA03
5H043CA15
5H043DA09
5H043DA11
5H043EA01
5H043EA15
5H043LA14D
5H043LA14E
(57)【要約】
バッテリセル用のシールアセンブリは、開口部を有する架橋グロメットを備える。集電体は、ヘッドとヘッドから延在するステムとを有し、ステム及びグロメットは、開口部で締まり嵌めを形成する。グロメットは、架橋ポリマーを含む。架橋グロメットを有するバッテリセルの製造方法は、前駆体ポリマー材料を含むグロメットを形成し、それによって、予め形成されたグロメットを形成することと、前駆体ポリマー材料を含む予め形成されたグロメットを架橋処理に曝露し、それによって、架橋グロメットを形成することと、架橋グロメットをバッテリセルに組み込むことと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリセル用のシールアセンブリであって、
開口部を有し、かつ架橋ポリマーを含む架橋グロメットと、
前記開口部内に配設された、ヘッドと前記ヘッドから延在するステムとを有する集電体と、を備え、前記ステム及び前記架橋グロメットが、前記開口部で締まり嵌めを形成する、シールアセンブリ。
【請求項2】
バッテリセル用のシールアセンブリであって、
開口部を有し、かつ放射線誘導架橋ポリマーを含む照射された架橋グロメットと、
前記開口部内に配設された、ヘッドと前記ヘッドから延在するステムとを有する集電体と、を備え、前記ステム及び前記照射された架橋グロメットが、前記開口部で締まり嵌めを形成する、シールアセンブリ。
【請求項3】
前記集電体が、真鍮合金又は青銅合金を含む、請求項1又は2に記載のシールアセンブリ。
【請求項4】
前記架橋ポリマーが、放射線誘導架橋ナイロンを含む、請求項1又は2に記載のシールアセンブリ。
【請求項5】
前記放射線誘導架橋ナイロンが、架橋ナイロン10/20、放射線誘導架橋ナイロン12、放射線誘導架橋ナイロン11、放射線誘導架橋ナイロン10/12、放射線誘導架橋ナイロン6/12、放射線誘導架橋ナイロン6/10、放射線誘導架橋ナイロン4/12、及び放射線誘導架橋ナイロン4/10から選択される1つ以上の放射線誘導架橋ナイロンを含む、請求項4に記載のシールアセンブリ。
【請求項6】
前記架橋ポリマー又は前記放射線誘導架橋ポリマーが、架橋ナイロン6、架橋ナイロン6/6、架橋ナイロン4/6、架橋ナイロン3、架橋ナイロン12、架橋ナイロン11、架橋ナイロン6/12、架橋ナイロン10/20、架橋ナイロン10/12、架橋ナイロン6/10、架橋ナイロン4/12、架橋ナイロン4/10、架橋超高密度ポリエチレン(UHDPE)、架橋低密度ポリエチレン(LDPE)、架橋高密度ポリエチレン(HDPE)、架橋アタクチックポリプロピレン(PP)、架橋イソタクチックPP、架橋ポリ塩化ビニル、架橋ポリプロピレンオキシド、架橋ポリ酢酸ビニル、架橋ポリブタジエン、架橋ポリスチレン、架橋ポリメチルアクリレート、及び架橋ポリメチルメタクリレートから選択される1つ以上の架橋ポリマーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のシールアセンブリ。
【請求項7】
前記架橋ポリマー又は前記放射線誘導架橋ポリマーが、架橋HDPE、架橋LDPE、架橋アタクチックPP、架橋イソタクチックPP、架橋ポリ塩化ビニル、架橋ポリブタジエン、架橋ポリスチレン、架橋ナイロン12、架橋ナイロン11、及び架橋ナイロン6/12から選択される1つ以上の架橋ポリマーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のシールアセンブリ。
【請求項8】
前記放射線誘導架橋ポリマーが、前駆体ポリマー材料を含む予め形成されたグロメットを電子ビーム放射線及びガンマ線放射線から選択される1つ以上のタイプの放射線に曝露することを含むプロセスによって調製される、請求項1~7のいずれか一項に記載のシールアセンブリ。
【請求項9】
放射線量が、少なくとも40kGy、少なくとも50kGy、少なくとも100kGy、少なくとも125kGy、少なくとも150kGy、少なくとも200kGy、及び/又は少なくとも250kGy、例えば、300kGy、350kGy、又は400kGyである、請求項8に記載のシールアセンブリ。
【請求項10】
前記架橋ポリマーが、架橋剤を前駆体ポリマー材料と反応させることを含むプロセスによって調製される、請求項1~3のいずれか一項に記載のシールアセンブリ。
【請求項11】
前記架橋グロメットと前記集電体との間のかみ合い干渉が、15%超、17.5%超、及び/又は19%超、例えば、約20%である、請求項1~10のいずれか一項に記載のシールアセンブリ。
【請求項12】
前記架橋ポリマーのゲル含有量が、50%超、70%超、及び/又は90%超である、請求項1~11のいずれか一項に記載のシールアセンブリ。
【請求項13】
バッテリセルであって、
ハウジングであって、第1のハウジング端部にある第1のカバー及び第2のハウジング端部にある第2のカバーと、前記ハウジング内に配設されたアノード及びカソードとを含む、ハウジングと、
前記第1のカバーに近接するシールアセンブリと、を備え、前記シールアセンブリが、ヘッドと前記ヘッドから延在するステムとを有する集電体と、開口部を有し、かつ架橋ポリマーを含む架橋グロメットと、を含み、前記ステムが、前記開口部を通って延在し、前記グロメットとの締まり嵌めを形成する、バッテリセル。
【請求項14】
前記架橋グロメットが、照射された架橋グロメットであり、前記架橋ポリマーが、放射線誘導架橋ナイロンを含む、請求項13に記載のバッテリセル。
【請求項15】
前記架橋グロメットが、ショートボス又はロングボスを含む、請求項13又は14に記載のバッテリセル。
【請求項16】
アルカリ電解質を更に含む、請求項13~15のいずれか一項に記載のバッテリセル。
【請求項17】
前記架橋グロメットと前記集電体との間のかみ合い干渉が、15%超、17.5%超、及び/又は19%超、例えば、約20%である、請求項13~16のいずれか一項に記載のバッテリセル。
【請求項18】
前記架橋ポリマーのゲル含有量が、50%超、70%超、及び/又は90%超である、請求項13~16のいずれか一項に記載のバッテリセル。
【請求項19】
架橋グロメットを有するバッテリセルの製造方法であって、前記方法が、
前駆体ポリマー材料を含むグロメットを形成し、それによって、予め形成されたグロメットを形成することと、
前記前駆体ポリマー材料を含む前記予め形成されたグロメットを架橋処理に曝露し、それによって、架橋グロメットを形成することと、
前記架橋グロメットをバッテリセルに組み込むことと、を含む、方法。
【請求項20】
前記架橋処理が、前記グロメットを放射線に曝露し、それによって、照射された架橋グロメットを作成することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記放射線が、電子ビーム放射線及びガンマ線放射線から選択される1つ以上の放射線タイプを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記放射線が、電子ビーム放射線であり、前記電子ビーム放射線の放射線量が、少なくとも40kGy、少なくとも50kGy、少なくとも100kGy、少なくとも125kGy、少なくとも150kGy、少なくとも200kGy、及び/又は少なくとも250kGy、例えば、300kGy、350kGy、又は400kGyに達する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記架橋グロメット及び/又は前記予め形成されたグロメットが、12%未満、10%未満、8%未満、及び/又は5%未満の非水素原子含有率として酸素原子含有量を有するポリマーを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のシールアセンブリ、請求項13~18のいずれか一項に記載のバッテリセル、及び請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記前駆体ポリマー材料が、1つ以上の架橋剤を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
化学架橋剤が、過酸化物架橋剤、シラン架橋剤、ビス(マレイミド)架橋剤、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びトリメチロールプロパントリメタクリレートから選択される1つ以上の架橋剤を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
バッテリセル用の架橋グロメットであって、前記架橋グロメットが、
ポリマー材料を含み、かつ外周壁と、集電体を受容するための中央開口部を取り囲む中央ボスとを有する環状ポリマーディスクを備え、前記環状ポリマーディスクの前記ポリマー材料が、架橋されている、グロメット。
【請求項27】
前記ポリマー材料が、放射線への曝露によって架橋されている、請求項26に記載のグロメット。
【請求項28】
前記放射線が、電子ビーム放射線を含み、放射線量が、少なくとも40kGy、少なくとも50kGy、少なくとも100kGy、少なくとも125kGy、少なくとも150kGy、少なくとも200kGy、及び/又は少なくとも250kGy、例えば、300kGy、350kGy、又は400kGyである、請求項24に記載のグロメット。
【請求項29】
前記環状ポリマーディスクの前記ポリマー材料が、架橋ナイロン6、架橋ナイロン6/6、架橋ナイロン4/6、架橋ナイロン3、架橋ナイロン12、架橋ナイロン11、架橋ナイロン6/12、架橋ナイロン10/20、架橋ナイロン10/12、架橋ナイロン6/10、架橋ナイロン4/12、架橋ナイロン4/10、架橋超高密度ポリエチレン(UHDPE)、架橋低密度ポリエチレン(LDPE)、架橋高密度ポリエチレン(HDPE)、架橋アタクチックポリプロピレン(PP)、架橋イソタクチックPP、架橋ポリ塩化ビニル、架橋ポリプロピレンオキシド、架橋ポリ酢酸ビニル、架橋ポリブタジエン、架橋ポリスチレン、架橋ポリメチルアクリレート、及び架橋ポリメチルメタクリレートの群から選択される1つ以上の架橋ポリマーを含む、請求項26~28のいずれか一項に記載のグロメット。
【請求項30】
前記架橋ポリマー材料のゲル含有量が、50%超、70%超、及び/又は90%超である、請求項26~29のいずれか一項に記載のグロメット。
【請求項31】
アルカリバッテリセルであって、
ハウジングであって、第1のハウジング端部にある第1のカバー及び第2のハウジング端部にある第2のカバーと、前記ハウジング内に配設されたアノード、アルカリ電解質、及びカソードとを含む、ハウジングと、
前記第1のカバーに近接する放射線誘導架橋ポリマーを含む照射された架橋グロメットと、を備える、アルカリバッテリセル。
【請求項32】
前記架橋グロメット又は前記照射された架橋グロメットが、非イオン性ポリマーを含む、請求項1~31のいずれか一項に記載のシールアセンブリ、バッテリ、バッテリセルの製造方法、グロメット、又はアルカリバッテリセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリセルに関し、より具体的には、バッテリセルのシール、バッテリセル用のシールアセンブリ、及び架橋グロメットを含むバッテリセルに関する。
【背景技術】
【0002】
民生用電子機器には特定の電力要件がある。一般に、民生用電子機器は、1つ以上のバッテリセル(機器自体の中に含まれた)から、又は1つ以上のバッテリセルを含み得る外部のポータブルバッテリパックから電力を受け取る。例えば、1つ以上の単回使用バッテリセル(一般に「一次バッテリ」と称される)又は1つ以上の充電可能なバッテリセル(一般に「二次バッテリ」と称される)を使用し、必要に応じて機器において交換できる。バッテリセルは、カソードの還元及びアノードの酸化によって電気を生成する。電子の流れのバランスを取るために、アノードからカソードへのイオンの移動を促進するための電解質が含まれる。
【0003】
アルカリバッテリセル(充電可能なアルカリバッテリセルを含む)は、バッテリシールからアルカリ電解質が漏れやすいことが知られている。例えば、Hullらの“Why Alkaline Cells Leak,”J.Electrochem.Soc.,124(3):332-339,(1977)及びDavisらの“Aspects of Alkaline Cell Leakage,”J.Electrochem.Soc.125(12):1918-123(1978)を参照されたい。白い粉がバッテリセルのシールの周りに堆積すると、アルカリ電解質の漏れの証拠を視覚的に検出できる。アルカリ電解質の漏れは、負に分極した電極に沿ったアルカリ電解質のクリープに起因し得る。アルカリ電解質の漏れは、バッテリセルのシール及び/又は集電体の引っかき傷又は他の物理的な変形/欠陥などの物理的要因によって悪化し得る。粉末状のアルカリ電解質は一般に人体に接触しても安全であるが、呼吸器、目、及び皮膚の炎症が生じることがあるため、接触を最小限に抑える必要がある。更に、電解質が失われると、バッテリセルの性能が低下する可能性がある。
【0004】
ポリマー材料、具体的には、ナイロン及び様々なゴムなどの可撓性材料は、一般に、バッテリセルのシールを製造するために使用される。しかしながら、そのような材料から作られたシールは、経時的に劣化し、材料破壊、及びセル内の電解質のクリープの増加を引き起こす可能性がある。したがって、バッテリセルが、例えば、特にアノード集電体の本体(これは、一般にネイルの形態で提供される)に沿った電解質のクリープに起因して、電解質が漏れやすいことが既知である。当然のことながら、他の物理的現象もまた、電解質の漏れを引き起こす可能性がある。シールアセンブリの漏れを防止するための以前の試みは、シール自体の前に追加のシール面を提供するために、集電体の周りにシーラントを提供することによってなされている。しかしながら、既存のシールアセンブリは、主にシール自体の材料破壊に起因して、電解質のクリープを防止するのに十分に効果的ではなく、その破壊は、バッテリセルの製造/組み立て中に導入され得、並びに/又は経時的に引き起こされ及び/若しくは悪化し得る。
【発明の概要】
【0005】
一実施例によれば、バッテリセル用のシールアセンブリは、開口部を有する架橋グロメットを備える。ヘッドとヘッドから延在するステムとを有する集電体が、開口部内に配設され、ステム及び架橋グロメットは、開口部で締まり嵌めを形成する。架橋グロメットは、架橋ポリマーを含む。
【0006】
更なる実施例では、バッテリセル用のシールアセンブリは、開口部を有する照射された架橋グロメットを備える。ヘッドとヘッドから延在するステムとを有する集電体が、開口部内に配設され、ステム及び照射された架橋グロメットは、開口部で締まり嵌めを形成する。照射された架橋グロメットは、放射線誘導架橋ポリマーを含む。
【0007】
別の実施例によれば、バッテリセルは、第1のハウジング端部にある第1のカバー及び第2のハウジング端部にある第2のカバーを含むハウジングを備える。アノード及びカソードが、ハウジング内に配設されている。シールアセンブリは、第1のカバーに近接して配設され、シールアセンブリは、ヘッドとヘッドから延在するステムとを有する集電部と、開口部を有する架橋グロメットとを含む。ステムは、開口部を通って延在し、架橋グロメットとの締まり嵌めを形成する。架橋グロメットは、架橋ポリマーを含む。
【0008】
別の実施例によれば、バッテリセルは、第1のハウジング端部にある第1のカバー及び第2のハウジング端部にある第2のカバーを含むハウジングを備える。アノード及びカソードが、ハウジング内に配設されている。シールアセンブリは、第1のカバーに近接して配設され、シールアセンブリは、ヘッドとヘッドから延在するステムとを有する集電部と、開口部を有する照射された架橋グロメットとを含む。ステムは、開口部を通って延在し、照射された架橋グロメットとの締まり嵌めを形成する。照射された架橋グロメットは、放射線誘導架橋ポリマーを含む。
【0009】
別の実施例によれば、架橋グロメットを含むバッテリセルの製造方法は、前駆体ポリマー材料を含む予め形成されたグロメットを提供することと、前駆体ポリマー材料を架橋して、架橋ポリマーを含む架橋グロメットを形成することと、架橋グロメットをバッテリセルに組み込むことと、を含む。
【0010】
別の実施例によれば、照射されたグロメットを有するバッテリセルの製造方法は、前駆体ポリマー材料を含む予め形成されたグロメットを提供することと、前駆体ポリマー材料に照射して、放射線誘導架橋ポリマーを含む照射された架橋グロメットを形成することと、照射された架橋グロメットをバッテリセルに組み込むことと、を含む。
【0011】
別の実施例によれば、バッテリセル用の架橋グロメットは、外周壁と、集電体を受容するための中央開口部を取り囲む中央ボスとを有する、環状ポリマーディスクを備える。環状ポリマーディスクのポリマー材料は、架橋されている。
【0012】
別の実施例によれば、バッテリセル用の照射された架橋グロメットは、外周壁と、集電体を受容するための中央開口部を取り囲む中央ボスとを有する、環状ポリマーディスクを備える。環状ポリマーディスクは、放射線誘導架橋ポリマーを含む。
【0013】
また別の実施例では、バッテリセルは、ハウジングであって、第1のハウジング端部にある第1のカバー及び第2のハウジング端部にある第2のカバーと、ハウジング内に配設されたアノード及びカソードとを含む、ハウジングと、第1のカバーに近接する架橋グロメットであって、架橋ポリマーを含む、架橋グロメットと、を備える。
【0014】
更なる実施例では、バッテリセルは、ハウジングであって、第1のハウジング端部にある第1のカバー及び第2のハウジング端部にある第2のカバーと、ハウジング内に配設されたアノード及びカソードとを含む、ハウジングと、第1のカバーに近接する照射された架橋グロメットであって、放射線誘導架橋ポリマーを含む、照射された架橋グロメットと、を備える。
【0015】
バッテリセル用の架橋グロメット、バッテリセル用の照射されたグロメット、シールアセンブリ、バッテリセル、及び/又はバッテリセルの形成方法の前述の実施例は、以下の任意選択の特徴、構造、及び/又は形態のうちのいずれか1つ以上を更に含み得る。
【0016】
全ての形態では、架橋グロメットは、架橋ポリマーを含む。同様に、全ての形態では、照射された架橋グロメットは、架橋ポリマー、具体的には、放射線誘導架橋ポリマーを含む。
【0017】
いくつかの任意選択の形態では、架橋ポリマーは、グロメットの形成前に架橋剤をポリマー混合物に添加することを含む、プロセスによって調製される。架橋剤は、過酸化物架橋剤、シラン架橋剤、ビス(マレイミド)架橋剤、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びトリメチロールプロパントリメタクリレートの群における1つ以上の架橋剤から選択され得る。前述の架橋剤の組み合わせ、及び前述の架橋剤のうちの1つ以上と他の架橋剤の組み合わせを使用してもよい。
【0018】
更に他の任意選択の形態では、架橋ポリマーは、eビーム放射線、ガンマ線放射線、又はそれらの組み合わせから選択される放射線に前駆体ポリマー材料を曝露することを含む、プロセスによって調製される。概して、前駆体ポリマー材料を含む予め形成されたグロメットは、放射線に曝露され、それによって、放射線誘導架橋ポリマーを含む架橋グロメットを形成する。
【0019】
更に他の任意選択の形態では、架橋ポリマーは、好ましくは、例えば、ナイロン6/12、ナイロン11、ナイロン12、又はそれらの組み合わせなどの、比較的低い酸素原子含有量を有する前駆体ナイロンの放射線架橋による、放射線誘導架橋ナイロンを含む。前述の架橋ナイロンの組み合わせ、及び前述の架橋ナイロンのうちの1つ以上と、他のポリマー、例えば、他の架橋ポリマーの組み合わせを使用してもよい。典型的には、前駆体ナイロンを含む予め形成されたグロメットは、照射された架橋グロメットのバッテリ又はバッテリシールアセンブリへの組み込む前だが、グロメット自体の形成後に、グロメット内の架橋を誘導するために、放射線に曝露される。代替的に、前駆体ナイロンは、グロメット形成前に、照射によって架橋されて、照射誘導架橋ナイロンを形成し得る。
【0020】
更に他の任意選択の形態では、前駆体ポリマー材料、又はそれを含む予め形成されたグロメットは、少なくとも50kGy、少なくとも100kGy、少なくとも125kGy、少なくとも150kGy、少なくとも200kGy、及び/又は少なくとも250kGy、例えば、300kGy、350kGy、又はそれ以上の放射線量(量)で照射される。
【0021】
更に他の任意選択の形態では、架橋ポリマーは、架橋低密度ポリエチレン(LDPE)、架橋高密度ポリエチレン(HDPE)、架橋アタクチックポリプロピレン(PP)、架橋イソタクチックPP、架橋ポリ塩化ビニル、架橋ポリプロピレンオキシド、架橋ポリ酢酸ビニル、架橋ポリブタジエン、架橋ポリスチレン、架橋ポリメチルアクリレート、架橋ポリメチルメタクリレートの群における1つ以上の架橋ポリマーから選択される架橋ポリマーを含む。前述の架橋ポリマーの組み合わせ、及び前述の架橋ポリマーのうちの1つ以上と他の架橋ポリマーの組み合わせを使用してもよい。
【0022】
更に他の任意選択の形態では、グロメットは、ショートボス又はロングボスを含む。
【0023】
更に他の任意選択の形態では、グロメットと集電体との間のかみ合い干渉は、15%超、17.5%超、及び/又は19%超、例えば、約20%である。
【0024】
更に他の任意選択の形態では、架橋ポリマーのゲル含有量は、50%超、70%超、及び/又は90%超である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本明細書は、本開示を形成するとみなされる、主題を特に指摘し、明確に主張する特許請求の範囲をもって結論付けるが、本発明は、添付の図面と併せて以下の記載からより良好に理解されるであろう。
【0026】
図1】バッテリセル用のシールアセンブリの断面図であり、シールアセンブリは、架橋グロメットを備える。
【0027】
図2】架橋グロメットを備えるシールアセンブリの更なる実施形態の断面図である。
【0028】
図3A】非架橋グロメットを備える比較AAバッテリセルと比べた、2週間での照射線量に対する、漏れの兆候がある照射された架橋グロメットを備えるAAバッテリセルの総数のパーセンテージを例示するグラフである。
【0029】
図3B】非架橋グロメットを備える比較AAバッテリセルと比べた、8週間での照射線量に対する、漏れの兆候がある照射された架橋グロメットを備えるAAバッテリセルの総数のパーセンテージを例示するグラフである。
【0030】
図3C】非架橋グロメットを備える比較AAバッテリセルと比べた、14週間での照射線量に対する、漏れの兆候がある照射された架橋グロメットを備えるAAバッテリセルの総数の割合を例示するグラフである。
【0031】
図4A】様々なレベルの照射へのグロメットの曝露後の、特定の例示的なポリマー、ナイロン6/12を含むグロメットの前駆体ポリマー材料の分子量変化のグラフである。
【0032】
図4B】様々なレベルの照射へのグロメットの曝露後の、特定の例示的なポリマー、HDPEを含むグロメットの前駆体ポリマー材料の分子量変化のグラフである。
【0033】
図5】ゼリーロール構成を有する例示的なバッテリセルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
電気化学セル、又はバッテリは一次であっても二次であってもよい。一次バッテリは、一度だけ放電され(例えば、空になるまで)、その後、廃棄されることが意図されている。一次バッテリ(又は使い捨てバッテリ)は、例えば、David Linden、Handbook of Batteries(第4版、2011)(参照により本明細書に援用される)に記載されている。二次バッテリ(又は充電式バッテリ)は、充電して繰り返し使用することが意図されている。二次バッテリは何度も、例えば、50回以上、100回以上、又はそれ以上の回数、放電及び充電され得る。二次バッテリは、例えば、David Linden、Handbook of Batteries(第4版、2011)(これも参照により本明細書に援用される)に記載されている。したがって、バッテリは、様々な電気化学対(electrochemical couple)及び電解質の組み合わせを含み得る。本明細書に提供される記載及び実施例は、水性系、非水性系、イオン液体系、及び固体系の一次及び二次バッテリの両方に適用される。民生用の単回使用一次アルカリバッテリセルが添付の説明の主な焦点であるが、以下の説明は、充電式アルカリマンガン(RAM)バッテリセル、リチウムイオンバッテリセルなどの充電式アルカリバッテリセルを含むがこれに限定されない任意のバッテリセル、及び(水性系か非水性系かに関わらず)電解質溶液を含む任意の他のタイプのバッテリセルに等しく適用され得る。
【0035】
驚くべきことに、かつ予想外に、本明細書に記載される架橋グロメットを備えるシールアセンブリは、それを含むバッテリセルの漏れの減少によって実証されるように、性能の改善を示す。前述のように、従来のグロメットは、典型的には、可撓性材料を含み、したがって、そのような材料は、ひび割れ及び貫入がより形成されやすいことが予想されるので、(架橋から生じる)より剛性の高い材料をそれに使用することは、直感に反する。「グロメット」という用語は、本明細書における「シール」という用語と交換可能に使用されることを理解されたい。
【0036】
有利なことに、本開示による架橋グロメットは、電解質を含む任意のタイプの電気化学バッテリセルに含めることができる。例えば、本開示による架橋グロメットは、AAAAセル、AAAセル、AAセル、Bセル、Cセル、Dセル、9Vセルなどを含むがこれらに限定されない任意のサイズ及び/又は形状の民生用電気化学セル(円筒形状、矩形形状、又は正方形の形状、又は前述の断面形態を有するバッテリを含むがこれらに限定されない)において使用できる。開示される架橋グロメットは、アルカリ電気化学セル、特に、開示された架橋グロメットを備えるシールアセンブリと、架橋グロメットのボアに配設された集電体とを含むアルカリセルに組み込まれた場合に、特に有利である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「架橋された」及び「架橋処理」という用語は、意図した架橋から生じる架橋ポリマー構造、前駆体ポリマーを架橋させるための方法、及び/又は予め形成されたグロメットを、グロメット形成後の架橋処理に曝露させることによって、予め形成されたグロメットを架橋させるための方法を指す。周知のように、グロメット形成は、典型的には、射出成形技術を使用して実施される。典型的には、非架橋前駆体ポリマーの架橋は、前駆体ポリマーの架橋を促進する既知の技術を使用して、例えば、架橋剤を前駆体ポリマーに添加し、架橋を開始することによって、及び/又は前駆体ポリマーを照射に曝露することによって、達成され得る。一実施例では、架橋は、架橋剤を前駆体ポリマーに添加して混合物を形成し、必要な温度上昇が前駆体ポリマー及び架橋剤を反応させるにつれて、混合物を射出成形することによって、グロメット形成中に達成され得る。成形前、成形中、又は成形後に前駆体ポリマーを架橋するための他の技術もまた、単独又は組み合わせて使用できる。グロメット形成後の架橋処理の例としては、前駆体ポリマー材料を含む予め形成されたグロメットを照射に曝露すること、又は前駆体ポリマー材料を含む予め形成されたグロメットを化学浴に曝露することが挙げられる。グロメットなどの予め形成されたポリマー成分の架橋を促進する他の技術もまた、使用され得る。これらの事例の全てにおいて、予め形成されたグロメットの前駆ポリマーは、意図した架橋を容易にするための架橋剤を更に含み得る。架橋処理は、露出したポリマーグロメット表面の両面で、及び露出したポリマー表面を越えた(例えば、ポリマーグロメットの内部構造内の)ポリマーバルク材料で架橋形成を促進する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「照射」という用語は、架橋を誘導するのに十分な投与量で、eビーム、ガンマ線、又は前述の組み合わせへの曝露を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「架橋グロメット」という用語は、ポリマー鎖間の架橋を含むポリマー材料を含むグロメットを指し、架橋は、例えば、照射、架橋を形成させる化学反応の開始/促進、又はそれらの組み合わせを含む、任意の架橋プロセスによって形成され得る。架橋プロセスは、グロメットの形成前、形成中、又は形成後に完了し得る。架橋が、グロメットの形成の前又は形成中に実施される場合、典型的には、非架橋前駆体ポリマー材料は、架橋ポリマー材料が、グロメットを形成するために使用されるように、グロメット形成の前及び/又は形成中に架橋される。特に、グロメット形成後に行われた架橋に関して、「架橋グロメット」という用語は、(意図した架橋処理を受けていない)前駆体ポリマー材料を含むグロメットとは異なるポリマー構造を有するグロメットを指すことが理解される。
【0040】
本明細書で使用される場合、「照射された架橋グロメット」という用語は、ポリマー鎖間の架橋を含むポリマー材料を含むグロメットを指し、架橋は、グロメットがその最終形状に形成された後に、グロメットを照射に曝露することによって作成される。典型的には、予め形成されたグロメットを照射することは、グロメットがバッテリセルに設置される前に行われる。前駆体ポリマー材料を含む「予め形成されたグロメット」を、十分な投与量の照射に曝露することにより、前駆体ポリマー材料に架橋が形成され、それによって、ポリマーグロメットの内部構造内の架橋を含む照射された架橋ポリマーグロメットが形成される。したがって、「照射された架橋グロメット」という用語は、(意図した架橋処理を受けていない)前駆体ポリマー材料を含むグロメットとは異なるポリマー構造を有するグロメットを指すことが理解される。
【0041】
本明細書で使用される場合、「かみ合い干渉」という用語は、集電体とグロメットとの間のかみ合い干渉、具体的には、集電体の外径からグロメットのボアの内径、すなわち、グロメット開口部の内径を指し引いたものと、グロメット開口部の内径との比を指す。集電体の外径は、従来、グロメットの内径よりも大きく、締まり嵌めを提供し、それによって、シール特性を向上させるが、先行技術のバッテリセルでは、かみ合い干渉は、バッテリセルの組み立てを容易にするために、典型的には、15%未満である。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ゲル」という用語は、もうこれ以上様々な溶媒中に溶解することができない凝集体で相互接続されている物質の状態を指す。ゲルの量が多いほど、ポリマー鎖間の架橋結合の数が多いことを示す。そのような接合は、材料が溶媒中に溶解するのを有利に防止し、温度変動に対する耐性を高め、また、ポリマー材料の剛性を高める。
【0043】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、任意の列挙された値の+/-10%を意味し、又は、代替的な実施形態では、任意の列挙された値の+/-5%を意味する。本明細書で使用される場合、この用語は、1つ以上の範囲の任意の列挙された値、値の範囲、又は端点を修正する。
【0044】
照射されたグロメットは、完全に形成されたグロメットを、電子ビーム放射線、ガンマ線、又は前述の組み合わせに曝露することによって作成される。照射されたグロメットを作成するために、完全に予め形成されたグロメットのセットは、例えば、コンベヤを含む電子ビーム加速器を使用して、1つ以上の照射処理を受けることができる。したがって、照射処置は、予め形成されたグロメットのセットを放射線ゾーンに通過させて、典型的には、約25kGy~約50kGyの放射線量を投与することを含み得る。集積線量の放射線を提供するために、複数の照射処置が、予め形成されたグロメットのセットに実行される場合、処置間のグロメットの相対位置を変更して、グロメット間のより均一な放射線曝露を確実にすることが有利であり得る。典型的には、ビームのエネルギーは、約1MeV~約4.5MeVであり、加速器の電力は、25kW~200kWである。例えば、1.5MeV、75kWの加速器を使用することができる。Wasik、IOTRON、及びIBAは全て、好適なeビーム加速器を製造する。
【0045】
実施形態では、前駆体ポリマー材料を含む予め形成されたグロメットは、前駆体ポリマー材料のマトリックス全体に分配又は分散された架橋剤を更に含み得る。架橋剤は、前駆体ポリマー材料の予め形成されたグロメットマトリックス全体に埋め込まれてもよく、別様に分散されてもよい。グロメットを形成するための前駆体ポリマー材料の成形は、前駆体ポリマーと架橋剤との反応、したがって、前駆体ポリマーの架橋が、グロメット形成中に生じ得るように、温度を上昇させることを伴う。加えて、架橋剤が埋め込まれている予め形成されたグロメットの照射は、照射時、埋め込まれた架橋剤とのポリマー鎖の(追加の)反応に起因して、(前駆体ポリマーと架橋剤との混合物を射出成形することによってのみ作成される架橋の量に対して、また、照射によってのみ作成される架橋の量に対して)グロメット中のポリマー鎖間に追加の架橋を有利に生成する。促進薬又は架橋剤の反応によって作成される追加の架橋は、照射された架橋グロメットの機械的特性を更に改善し得る。
【0046】
他の実施形態では、グロメットは、更なる照射処理の前に架橋され得る。例えば、架橋グロメットは、上述のように、架橋剤が中に埋め込まれた前駆体ポリマー材料の射出成形により、前駆体ポリマー材料を含むグロメットを製作することによって形成され得、任意選択的に、後に、前駆体ポリマー材料内の残りの埋め込まれた架橋剤の追加の反応を開始するか又は引き起こし、それによって、グロメット内のポリマー鎖間に追加の架橋を提供するための更なる処理(例えば、熱処理又は化学浴での浸漬)が続く。そのような架橋グロメットの後続の照射は、グロメット内のポリマー鎖間に更なる架橋を生成することになる。
【0047】
多数の架橋剤が使用され得る。ビニル基などの複数の反応性官能基を含有する架橋剤は、複数のポリマー鎖と反応して架橋を作成することができる。フリーラジカル開始剤架橋剤、シランカップリング剤架橋剤、及び鎖延長剤架橋剤もまた使用され得る。上述の前駆ポリマー材料のマトリックス全体に分配又は分散するための好適な架橋剤としては、限定されるものではないが、例えば、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、過酸化ジラウリル、及び過酸化ジクミルなどの過酸化物、例えば、ビニルトリメトキシルシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-(トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(N-2-アミノエチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシランなどのシラン、例えば、N,N’-(1,2-フェニレン)ジマレイミド、N,N’-(1,3-フェニレン)ジマレイミド、N,N’-(1,4-フェニレン)ジマレイミド1,4-ジ(マレイミド)ブタン、N,N’-(メチレンビス(1,4-フェニレン))-ビス(マレイミド)などのビス(マレイミド)化合物、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びトリメチロールプロパントリメタクリレートが挙げられる。加えて、(前駆体ポリマー材料を含有するナイロンを架橋するための)NEXAMITE(登録商標)A32及びNEXAMITE(登録商標)A33、並びに(前駆体ポリマー材料を含有するポリエチレンを架橋するための)NEXAMITE(登録商標)A48及びNEXAMITE(登録商標)A49を含むがこれらに限定されない、NEXAMITE(登録商標)(Nexam Chemical)の商標名で入手可能な架橋剤が使用され得る。当然のことながら、前述の架橋剤は単なる例示であり、他の架橋剤を使用し得る。
【0048】
架橋剤が使用される場合、典型的には、架橋剤は、グロメットを形成する前に、前駆体ポリマー材料のマトリックス全体に分配又は分散されるように、前駆体ポリマー材料に添加される。架橋は、上記で考察されるように、グロメット形成の前、グロメット形成中、及び/又はグロメット形成後に開始され得る。架橋剤は、前駆体ポリマー材料のマトリックス全体にわたる架橋のより均一な形成を促進するのに特に有効であり得る。
【0049】
一実施形態では、架橋グロメットを有するアルカリバッテリセルの製造方法は、前駆体ポリマー材料を含む予め形成されたグロメットを提供することを含む。予め形成されたグロメットは、前駆体ポリマー材料を架橋するために、放射線及び/又は化学的架橋浴などの架橋処理に曝露され、それによって、架橋グロメットを形成する。架橋グロメットは、バッテリセル、例えば、一次バッテリセル、又は二次バッテリセルに組み込まれ得る。架橋グロメットと、架橋グロメットのボアに配設された集電体とを備えるシールアセンブリもまた形成され得る。その後、架橋グロメット及び/又はそれを備えるシールアセンブリは、電解質を含むバッテリセル、例えば、一次バッテリセル、又は二次バッテリセルに配設され得る。
【0050】
一実施例では、本方法は、予め形成されたグロメットを、電子ビーム(eビーム)、ガンマ線、又はそれらの組み合わせなどの放射線に曝露して、照射された架橋グロメットを形成することを含む。eビーム放射線を使用する場合、少なくとも40kGy、少なくとも50kGy、少なくとも100kGy、少なくとも125kGy、少なくとも150kGy、少なくとも200kGy、及び/又は少なくとも250kGy、例えば300kGy、350kGy、400kGy、又は更にそれ以上の放射線量は、ポリマー材料中の化学架橋を提供及び/又は最大化するのに特に有用であり得る。例えば、eビーム放射線量は、約40kGy~500kGy未満、約50kGy~約450kGy、及び/又は75kGy~約400kGyであり得る。約250kGy~約400kGyの量の放射線量は、予め形成されたグロメット、特に、超高密度ポリエチレン(UHDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、及び高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレン、アタクチックポリプロピレン(PP)及びイソタクチックPPなどのポリプロピレン、並びにポリ塩化ビニルを含むが、これらに限定されず、15%を超えるかみ合い干渉を有する熱可塑性ポリオレフィンを含む架橋グロメットを架橋するために有利であることが示されている。eビーム放射線は、例えば、電子銃を使用して一次ビームを生成及び加速し、磁気光学システムを使用してビームを集束及び偏向させることによって、達成され得る。所望の投与量を達成するために、例えば、10kGy、20kGy、25kGy、30kGy、又は50kGyなどの増分で、より小さい放射線量増分での複数のパスが一般に使用される。グロメットの構造が変形するように過熱されない限り、より高い増分もまた使用され得る。電子ビームのエネルギーは、300keV~20MeV、1MeV~10MeV、3MeV~10MeVで変動することができ、例えば、4.5MeVの電子ビームが使用され得る。
【0051】
架橋グロメットの強度特性は、架橋処理及び/又は照射プロセスの完了後に、架橋グロメットをアニールすることによって、例えば、熱を加えることによって、更に改善され得る。アニーリングは、25℃超、好ましくは、40℃~135℃で行われるが、架橋ポリマーの融点未満で行われる。概して、アニーリングは、浴中で1時間以上の期間で、典型的には、少なくとも約4時間の期間で処理することによって達成され、次いで、架橋グロメットは、室温に冷却される。理論に拘束されることを意図するものではないが、アニーリングプロセスは、互いに対する鎖の移動度を高め、これは、例えば、放射線、化学浸漬浴への曝露後、及び/又はグロメット形成中に、架橋反応を完了しなかったグロメットポリマーマトリックス内のフリーラジカルとの架橋化学反応の完了を容易にすると考えられる。したがって、ポリマー鎖間の追加の結合が形成され、ポリマー材料の引張特性は、アニーリングの結果として、更に改善され得る。
【0052】
任意の実施形態では、(ネイルであり得る)集電体は、導電性金属、例えば、真鍮合金又は(ケイ素青銅を含む)青銅合金を含み得る。約50重量%を超える、例えば60重量%又は70重量%の銅含有量、及び20重量%を超える、例えば30重量%又は40重量%の亜鉛含有量を有する真鍮合金を使用できる。
【0053】
概して、熱可塑性ポリマーを使用して、本開示による架橋グロメットを形成することができる。例えば、ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン4/6、ナイロン3、ナイロン12、ナイロン11、及びナイロン6/12、ナイロン10/20、ナイロン10/12、ナイロン6/10、ナイロン4/12、及びナイロン4/10などのナイロン、並びに超高密度ポリエチレン(UHDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、及び高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレン、アタクチックポリプロピレン(PP)及びイソタクチックPPなどのポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンオキシド、ポリ酢酸ビニル、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレートを含むがこれらに限定されない他の熱可塑性ポリマー、又はそれらの組み合わせが使用され得る。本明細書に開示されるシールの架橋ポリマー材料は、好ましくは、非イオン性の架橋ポリマーである。
【0054】
ナイロンはポリアミドであるため、全てのナイロンは、隣接するポリマー鎖間に水素結合(C=O...H-N)を呈する。概して、ポリマー鎖間の水素結合の増加は、材料を過度に剛性にすることなく、改善された機械的特性をポリマー材料に付与する。特にナイロンの場合、水素結合の量は、ポリマー中のアミド基の密度に対応することが予想され、すなわち、2つのナイロンポリマーを考慮すると、より多くのアミド基を有する方が、より多くの水素結合を呈することが予想される。ナイロンの場合、アミド基の密度は、前駆体分子の鎖長に依存する。前駆体の鎖長を増加させることにより、ポリマー鎖上のアミド基間のC-C結合の数が増加し、ポリマー中のアミド基の密度が低下する。したがって、短鎖前駆体から作られたナイロンは、より高いアミド基の密度を有し、したがって、鎖がより長い前駆体から作られたナイロンよりも、より高度な水素結合を呈し、バッテリセル用のグロメットにより適していると予想される。したがって、好ましい機械的強度を有するグロメットの製作に適したポリマーの群には、ナイロン6、ナイロン6/6、及びナイロン4/6が含まれ、これらの全ては、ナイロン12、ナイロン11、及びナイロン6/12などの鎖がより長い前駆体から調製されたナイロンと比較して、より高度な水素結合、及び、したがって、優れた機械的特性を呈することが予想される。驚くべきことに、このことは当てはまらない。
【0055】
様々なナイロンの構造を比較する1つのやり方は、各ポリマー中の非水素原子の割合として酸素原子の数(「%O」)に注目することである。例えば、ナイロン6の場合、繰り返し単位は、C10C(=O)NHであり、したがって、%Oは、1/8=12.5%であり、ナイロン12の場合、繰り返し単位は、C1122C(=O)NHであり、対応する%Oは、1/14=7.1%である。概して、より大きな%Oを有するポリマーは、より高い密度のアミド基を有し、したがって、より低い%Oを有するポリマーと比較して、より高度な水素結合を呈し、したがって、優れた機械的特性を呈することが予想される。したがって、上述のように、相対量の多い水素結合を有する鎖がより短いナイロンは、優れた機械的特性を有することが予想される。しかしながら、驚くべきことに、ナイロン12、ナイロン11、又はナイロン6/12などの鎖がより長く、%Oがより低いナイロンを含む架橋グロメットは、ナイロン6/6などの鎖がより短いナイロンで作製されたグロメットと同じ程度に、又は更に優れた性能を発揮する。例えば、驚くべきことに、かつ予想外に、照射された架橋ナイロン6/12(%O=9.1%)の機械的特性は、非照射の非架橋ナイロン6/6(%O=12.5%)のものとほぼ等しく、これは、業界では、最も効果的なグロメットを提供すると概ね考えられているが、非常に高価である。更に、驚くべきことに、かつ予想外に、ナイロン6/12を含む照射された架橋グロメットは、ナイロン6/6を含む同じ程度に照射された架橋グロメットと比較しても、優れた漏れ防止を呈する。したがって、架橋ナイロン6/6よりも優れた漏れ性能を有する架橋ナイロン6/12は、バッテリセル用の架橋グロメットにとって特に有用な材料である。
【0056】
一方、12%を超える%O値を有するナイロン4-6、ナイロン6、ナイロン6-6、及びナイロン3などのポリマーは、乾燥条件で優れた水素結合及び十分な引張特性を有するが、驚くべきことに、これらのポリマーは、水の存在下で劣化を増大させやすく、その結果、水性電解質を含むバッテリセルにおいて、それらの引張特性が低下する。特に、ナイロン6-6は、バッテリセル内の総電解質の重量に基づいて、30重量パーセント(wt.%)を超える高いアルカリ水酸化物濃度を含む電解質において比較的安定しているが、分解されやすく、その結果、ひび割れが、30重量%未満、25重量%未満、及び20重量%未満の比較的低いアルカリ水酸化物濃度で、グロメットにおいてより容易に形成され得る。アルカリ水酸化物は、例えば、水酸化カリウム、水酸化セシウム、又はそれらの任意の組み合わせであり得るが、典型的には、水酸化カリウムである。理論に拘束されることを意図するものではないが、ナイロン又は他のポリマー材料中の酸素原子の数が多いほど、飽和含水率が高くなり、経時的に加水分解率が大きくなり、したがって、材料破壊が大きくなる。その結果、構造内の酸素原子のパーセントが低いナイロン、例えば、ナイロン6-12、ナイロン12、ナイロン11、又は構造内の酸素原子が0%のHDPE又はLDPEのようなポリオレフィンでさえも、そのようなプラスチックの引張特性が、ポリマー鎖間の(例えば、隣接するポリマー鎖のアミド基-C=O・・・H-N-間の)比較的少ない水素結合の存在により低下するにもかかわらず、驚くほど好ましい。例えば、理論に拘束されることを意図するものではないが、発明者らは、ナイロンで作製されたグロメットが、電解質中に存在する任意の水と(加水分解を通して)反応し、これが、ナイロンを劣化及び分解させ、最終的に、電解質のクリープを可能にする材料のひび割れを引き起こすことを見出した。ナイロン12、ナイロン11、又はナイロン6/12などの鎖がより長く、%Oがより低いナイロンを含むグロメットの架橋は、特に、架橋グロメットの加水分解に対する耐性を有利に高める。
【0057】
更に、再度、理論に拘束されることを意図するものではないが、発明者らは、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィンで作製されたグロメットは、加水分解を起こしにくいが、特に加圧下で、ひび割れができる傾向もまたあることを見出した。そのようなひび割れは、集電体がネイルの形態で提供される場合を含むがこれに限定されない、任意のバッテリセルシール又はグロメットにとって問題である。例えば、このような構造劣化に起因してグロメットに形成するひび割れ及び貫入は、最終的には、ネイルとグロメットとの間の電解質溶液のシール破壊及び/又はクリープを引き起こす。ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィンを含むグロメットの架橋は、特に、架橋グロメットに形成されるひび割れが少ないように、架橋グロメットの材料強度を有利に高め、これは、前駆体ポリマー材料の架橋から生じる材料の剛性の向上により、架橋材料が、ひび割れ及び貫入がより形成されやすくなることが予想されることを考慮すると、特に驚くべきことである。
【0058】
したがって、UHDPE、HDPE、及びLDPEなどのポリエチレン、アタクチックPP及びイソタクチックPPなどのポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリスチレン、ナイロン10/20、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン10/12、ナイロン6/12、ナイロン6/10、ナイロン4/12、並びにナイロン4/10などのポリマーは、いずれも12%O未満を含有し、架橋時の改善された特性及び/又は加水分解による劣化に対する耐性の向上を提供することが予想され、これは、特に、ナイロンが、概して、加水分解されやすく、ポリオレフィンなどの他の熱可塑性ポリマーが材料破壊しやすいという我々の知見を考えると、意外かつ予想外である。12%O未満、10%O未満、8%O未満、及び/又は5%O未満のポリマーは、バッテリセル用の架橋グロメットにとって特に有用である。
【0059】
現時点の最新技術に対して、グロメットと集電体との間のかみ合い干渉を増大させることにより、漏れの低減によって実証されるように、より剛性の高い材料の歪みの増加にもかかわらず、驚くべきことに、かつ有利なことに、グロメットの性能を向上させることが見出されている。かみ合い干渉は、15%超、17.5%超、及び/又は19%超、例えば、約20%、又はそれ以上であってよい。かみ合い干渉のそのような増大は、UHDPE、HDPE、及びLDPEなどの架橋ポリエチレン、アタクチックPP及びイソタクチックPPなどの架橋ポリプロピレン、並びにナイロン6-12d、ナイロン12、及びナイロン11などの架橋ナイロンを含むグロメットにとって特に有利である。
【0060】
更に、架橋レベルを増加させることによって、例えば、より多くの量の照射を使用することによって、隣接するポリマー鎖間に追加の架橋が形成される。これらの追加の架橋は、ポリマー前駆体材料の分子量に対する分子量の増加として、測定及び検出することができる。試験中、ナイロン6-12を含む前駆体ポリマーを含むグロメットを200kGyの照射に曝露した後、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、10倍を超える分子量の増加が実証され、それによって、ポリマー鎖間の架橋の形成が確認された。概して、より高い分子量を有する架橋ポリマーは、驚くべきことに、より優れた引張特性及びより少ないクリープを実証し、電気化学バッテリセルが、保管及び輸送中に頻繁に曝露される温度変動により良好に耐えることができ、驚くべきことに、電気化学バッテリセルにおいてより優れた性能を発揮するグロメット/シールを提供する。
【0061】
別の実施例では、放射線量が200kGyを上回って増加すると、ナイロン6-12を含む前駆体ポリマー材料を含むグロメット内にゲルが形成された。架橋ポリマーのゲル含有量が50%超、70%超、及び/又は90%超である場合、有利なグロメット性能が実証される。
【0062】
ここで図1を参照すると、本開示による例示的なシールアセンブリ15を含むアルカリバッテリセル10の一実施例が図示されている。シールアセンブリ15は、集電体又はネイル30と、架橋グロメット又はシール28と、を備える。
【0063】
バッテリセル10は、第1のカバー12及び第2のカバー14を含み、これらはそれぞれ、負極及び正極のバッテリ端子に対応し、ハウジング16が概ねそれらの間に配設されている。アノード18をカソード20から分離するために、バッテリセル10はセパレータ22を含む。バッテリセル10の構成要素がハウジング16内に配設された後で、端部24を閉じるために、第1のカバー12は、架橋グロメット28の外周壁52に形成された溝26内に受け入れられ、ハウジング16の側壁29は、架橋グロメット28の周縁に圧着され、その結果、架橋グロメット28は、ハウジング16内に封入される。いくつかの例では、架橋グロメット28は、カソード20が拡張できるように、カソード20から離間している。いくつかの例では、架橋グロメット28は、アノード18が拡張できるように、アノード18から離間している。架橋グロメット28は、略円筒状の側壁29の端部を覆うために、図示の例では環状である。
【0064】
アノード集電体30と、組み立てられたバッテリセル10に負極端子を提供する第1のカバー12とを結合するために、この例では、架橋グロメット28は、ヘッド隙間又はスペース36を画定するより広い部分34を有する第1の開口部又はボア32を含み、ここに、アノード集電体30の端部又はヘッド38が位置決めされ、第1のカバー12に電気的に結合される。このスペース36は、ヘッド38を収容するために、面取りされた、又は角度のついた構成を有してもよい。この例では、アノード集電体30の本体40が、第1の開口部32を通ってアノード18内に延在する。第1の開口部32は、図示の例では、ショートボスであるボス50によって取り囲まれてもよい。第1の開口部32は、概して、集電体/ネイル30の外径に対応する内径を有する。集電体30の外径は、典型的には、シールアセンブリ15のこれらの構成要素間の締まり嵌めを提供するためにより大きく、いくつかの好ましい実施形態では、集電体30の外径は、上述のように、第1の開口部32の内径よりも少なくとも15%大きい。
【0065】
本明細書で使用される場合、ショートボスは、架橋グロメット28の略平坦な環状部分又は棚部35の下方に、又は棚部35の上方のいずれかに延在するが、両方には延在しないボス50を指す。以下で更に説明される他の例では、ボス50は、ロングボスであってもよい。本明細書で使用される場合、ロングボスは、架橋グロメット28の棚部35の上方及び下方の両方に延在するボス50を指す。
【0066】
電解質溶液は、ハウジング16内に含まれており、電解質溶液は、アノード18とカソード20との間の化学反応を促進する。電解質は、アルカリ水酸化物、例えば、水酸化カリウム、水酸化セシウム、又はそれらの任意の組み合わせであり得るが、典型的には、水酸化カリウムである。
【0067】
電解質のクリープを更に低減するために、追加の実施形態では、上述の架橋グロメットは、図2に示すように、かつ例えば、米国特許公開第2021/0367297(A1)号(その全体は、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるように、ロングボスの設計で実装され得、シーラントトラップと更に組み合わせられ得る。図2に示すように、シールアセンブリ100は、開口部又はボア150を有する架橋グロメット128を備え得る。組み立てられると、架橋グロメット128の上部153は、バッテリセルの負極端子を提供するカバーに隣接し、架橋グロメット128の底部155は、バッテリセルのアノード、カソード、及び電解質のより近くに配設される。集電体又はネイル130は、ネイルヘッド138と、ネイルヘッド138から延在する本体又はステムとを有する。
【0068】
組み立てられると、ステム140は、架橋グロメット128の開口部150を通って、上部153から底部155を通って延在し、ネイルヘッド138は、上部153付近のヘッドスペースに着座する。組み立てられると、ステム140及び架橋グロメット128は、第1の締まり嵌め部152及び第2の締まり嵌め部157を形成する。第1の締まり嵌め部152及び第2の締まり嵌め部157の各々は、15%超、17.5%超、及び/又は19%超、例えば、約20%のかみ合い干渉を有し得る。組み立てられると、ステム140とボア150との間、第1の締まり嵌め部152と第2の締まり嵌め部157との間に、トラップ隙間160が半径方向及び長手方向に形成される。トラップ隙間160は、シーラント170用のトラップ160を画定する。シーラント170は、ステム140の周りに配設され、トラップ160内に少なくとも部分的に位置し、第1の締まり嵌め部152及び第2の締まり嵌め部157と協働する追加のシール面を形成して、電解質がバッテリセルから逃げるのを低減又は防止する、強化されたシールを形成する。
【0069】
ネイル130のステム140は、第1のステム直径を有する第1の部分172と、第2のステム直径を有する第2の部分174とを含む。第2のステム直径は、第1のステム直径よりも小さい。図示のように、ステム140の第1の部分172及び第2の部分174は、面取り部176によって接合されているが、第2の部分174が前述のように第1の部分172よりも小さい直径を有するのであれば、第1の部分172と第2の部分174との間のより「急激な」段状の遷移部も使用できる。ステム140の第1の部分172は、前述のように、ボア150の内径よりも大きい外径を有する。
【0070】
トラップ160は、ボア150とステム140の第2の部分174との間に形成されている。トラップ160は、第2の部分174の外面によって内側が半径方向に境界付けられ、ボア150の内面によって外側が半径方向に境界付けられる。図示の例のトラップ160は、環状形のスペースを形成している。
【0071】
内部環状リング180は、ボア150の内面から突出する。内部環状リング180は、ステム140が架橋グロメット128に完全に挿入されると、第2のステム174の第2のステムの外径が、前述のように、環状リング180の内径よりも大きいため、ステム140の第2の部分174とともに第1の締まり嵌め152を形成する。任意選択的に、バッテリセルの内部構成要素に開口する、内部環状リング180よりも広い直径を有する下側ボア181を含めることができる。
【0072】
トラップ160は、ステム140に沿って、内部環状リング180の上に長手方向に位置する。図2に示す例では、トラップ160は、ステム140が架橋グロメット128に完全に挿入されると、内部環状リング180及び面取り部176によって長手方向に境界付けられる。したがって、ボア150内のステム140の構造的配置は、シーラント170のためのトラップ160である空隙を提供するように意図的に配置される。
【0073】
具体的に図5を参照すると、他の実施形態では、一次又は二次セルであり得る電気化学バッテリセル500のアノード518及びカソード520は、いわゆる「ゼリーロール」構成を備える。ゼリーロール構成の一例は、米国特許第11,081,721号に 記載及び図示されており、その全体は、参照により本明細書に組み込まれる。電気化学バッテリセル500は、負極リード594と電気接触するアノード518と、正極リード592と電気接触するカソード520と、セパレータ522と、電解質(図示せず)と、を含む。セパレータ522が間に配設されたアノード518及びカソード520を圧延して、ゼリーロールアセンブリを形成し得る。アノード518、カソード520、セパレータ522、及び電解質は、ハウジング516内に含まれている。セル500は、第1のカバー594と、第1のカバー594に近接して配設された環状の絶縁架橋グロメット528と、を更に含む。セル500は、安全ベント530を含んでもよい。
【実施例
【0074】
以下の実施例は、本明細書に開示されるような架橋グロメットを含むバッテリセルの利点を更に示す。
【0075】
実施例A
図3A図3Cは、(eビーム放射線に曝露されなかった)非架橋ナイロン6/6グロメットを含む、それ以外は同一の比較AAバッテリセルと比べた、架橋ナイロン6/6を含む(かつ、異なる放射線量のeビーム放射線に曝露された)照射された架橋グロメットを含むAAバッテリセルの試験データを示すグラフである。バッテリセルを、それぞれ2、8、及び14週間後に検査した。グラフ中のx軸は、照射線量(kGy)を表し、グラフ中のy軸は、試験中のセル全体に占める割合として、漏れの兆候があるセルの総数を表す。概して、図3A図3Cに示すように、照射線量が増加するにつれて、漏れの兆候があるセルの割合は、有意にかつ驚くほど減少した。理論に拘束されないが、改善された漏れ率は、より高い放射線量の照射によるポリマーグロメット中の架橋の増加に起因すると考えられる。試験セルのグロメットは、ショートボス設計を有していた。
【0076】
実施例B
架橋グロメットを含む(かつ、異なる放射線量のeビーム放射線に曝露された)バッテリセルを、漏れ試験に供し、非架橋グロメットを含む、それ以外は同一の比較対照バッテリセルと比較した。バッテリセルは、約25重量%のKOHを含むKOH電解質溶液を有していた。セルは、対照群(照射されていないグロメット)及び照射された群(架橋され照射されたグロメットを含む)から無作為に採取された。照射された群には、200kGyに供されたナイロン6/12を含む架橋グロメットが含まれていた。次いで、セルを、12年間の保管にわたって通常のバッテリ保管条件下で漏れの原因となる可能性のある欠陥を悪化させることを意図される50℃を超える高温条件で保持しながら、デジタル顕微鏡を使用して、1週間間隔で漏れの証拠がないか観察した。非照射ナイロン6/12を含むシールを有する対照セルは、8週間後に30個のうち7個の漏出セルを示し、一方、照射ナイロン6/12を含むシールを有する照射されたセルは、8週間後に30個のうちゼロ個の漏出セルを示した。試験セルのグロメットは、ショートボス設計を有していた。
【0077】
実施例C
第2の実施例では、ショートボスグロメットを含むバッテリセルを、12年間の保管期間にわたって通常のバッテリ保管条件下で漏れの原因となる可能性のある任意の欠陥を悪化させるように、温度が、60℃に近づく相対的に高い温度と、-25℃未満の相対的に低い温度との間で温度を循環させる温度衝撃試験と、(60℃及び相対湿度85%に近づく)高温高湿試験と、で試験した。使用した材料は、ナイロン6/6であった。対照セルのシールは照射を受けず、照射されたセルのシールは、最大125kGyの放射線量を受けた。8週間後、温度衝撃試験では、放射線を受けたセルは、漏れの65%減少(対照セルの92%が漏れた一方で、照射されたセルの32%しか漏れなかった)、温湿度試験では、漏れの33%減少(対照セルの12%が漏れた一方で、照射されたセルの8%しか漏れなかった)を示した。
【0078】
実施例D
追加のバッテリセルを組み立てて、本明細書に開示される架橋グロメットの有利な性能を更に実証した。具体的には、ナイロン6/12(「N6/12」)又はHDPEを含む架橋グロメットを含み、様々なかみ合い干渉を生成するための異なる外径を有する集電体を含み、異なる放射線量のeビーム放射線に曝露されたバッテリセル(B群、C群、D群、E群、F群、G群、H群、I群、及びJ群)を、漏れ試験に供し、非架橋グロメットを含む、それ以外は同一の比較対照バッテリセル(A群)と比較した。バッテリセルは、約25重量%のKOHを含むKOH電解質溶液を有していた。対照A群のグロメットは照射されず、本開示によるB群~J群は、以下の表1に示された放射線量で照射された。セルを、12年間の保管期間にわたって通常のバッテリ保管条件下で漏れの原因となる可能性のある欠陥を悪化させるように、高温高湿試験(60℃及び相対湿度85%に近づく)に供し、2500Xレンズ(MXG-2500REZレンズ、Hirox Co.Ltd.、Japan)を備えたデジタル顕微鏡を使用して、1週間間隔で漏れの証拠がないか観察した。非照射ナイロン6/12を含む(本明細書に記載されるような)ロングボスが閉じ込められたシーラント設計を有する対照セルは、8週間後に30個のうち6個の漏出セルを示した一方で、照射されたナイロン6/12及び照射されたHDPEを含むロングボス設計を有する照射されたグロメットを含むセルは、特により高いレベルの放射線で驚くほど少ない漏れを示した。具体的には、B群、C群、及びD群のセルは、閉じ込められたシーラント無しのロングボス設計を有し、E群、F群、及びG群のセルは、ロングボスが閉じ込められたシーラント設計を有し、H群、I群、及びJ群のセルは、閉じ込められたシーラント無しのロングボス設計を有していた。驚くべきことに、照射されたHDPEを含むセル(C群、D群、H群、I群、及びJ群)の漏れ性能は、特に250kGyを超える放射線量で、非照射ナイロン6/12を含むロングボスグロメットを含む対照A群と比べて改善され、これらのセルは、追加のシール面を提供することができる閉じ込められたシーラントを含まないため、特に意外で有利である。表1に示されるように、かみ合い干渉が、対照A群と比べて増加したとき、200kGyを超える放射線量で照射された架橋ナイロン6/12及び照射された架橋HDPEを含むセルについて、驚くほど改善された漏れの結果が観察された。
【表1】
【0079】
実施例E
照射された架橋HDPE及び照射された架橋ナイロン12を含む架橋された試料を分析して、ゲル含有量を判定した。
【0080】
具体的には、照射された架橋HDPE材料の0.5gの試料を計量し、瓶に入れた。キシレン100mLを添加し、瓶に蓋をして、110℃の油浴中に24時間つるした。試料を冷却し、真空下で乾燥させ、計量した。架橋HDPE試料は、約97%のゲルを含有することが判定された(すなわち、質量の約97%が、これらの条件下で溶解しなかった)。非架橋HDPEは、そのような高温でキシレン中にほぼ完全に溶解するため、キシレンを溶媒として選択した。
【0081】
同様に、照射された架橋ナイロン12材料の0.5gの試料を計量し、瓶に入れた。1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)100mLを添加し、試料をHFIP中に24時間浸漬した。試料を真空下で乾燥させ、計量した。架橋ナイロン12試料は、約94%のゲルを含有することが判定された(すなわち、質量の約94%が、これらの条件下で溶解しなかった)。非架橋ナイロン12は、これらの条件下でHFIP中にほぼ完全に溶解するため、HFIPを溶媒として選択した。
【0082】
照射されたシールの引張強度のいくらかの改善が期待されたが、特にシール材料の剛性の向上のために、漏れの減少の改善の大きさは意外かつ予想外であった。
【0083】
前述の結果は、開示されたシールアセンブリが、グロメットとネイルとの間の電解質のクリープを有利に低減し、それによって、バッテリセル、特にアルカリバッテリセルのシールアセンブリの耐用年数を延ばすことを実証する。
【0084】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙される正確な数値に厳密に制限されるものとは理解されるべきではない。代わりに、特に指定のない限り、そのような各寸法は、従来の製作公差を包含するように、列挙された値、及びその値の周辺の機能的に等価な範囲、の両方を意味することが意図される。
【0085】
あらゆる相互参照特許又は出願を含む、本明細書に引用される全ての文献が、明確に除外されているか、又は別段の制限がない限り、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。任意の文献の引用は、それが本明細書にて開示若しくは特許請求される任意の発明に対して先行技術であることを認めるものではなく、又は、それが単独で若しくは任意の1つ以上の他の参考文献との組み合わせで、任意のそのような発明を教示、示唆、若しくは開示することを認めるものでもない。更に、この文献における用語のいずれかの意味又は定義が、参照により組み込まれた文献における同じ用語のいずれかの意味又は定義と矛盾する場合には、この文献においてその用語に割り当てられた意味又は定義が優先されるものとする。
【0086】
本発明の特定の実施形態を図示及び記載してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な他の変更及び修正を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲に含まれるそのような全ての変更及び修正を包含することが意図される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
【国際調査報告】