(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-04-11
(54)【発明の名称】EGFR及びcMETに結合する抗体を含む併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20250404BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250404BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250404BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250404BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20250404BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20250404BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20250404BHJP
C07K 16/40 20060101ALN20250404BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20250404BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P35/00 ZNA
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P35/04
A61K31/506
C07K16/28
C07K16/40
C07K19/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024553479
(86)(22)【出願日】2023-03-07
(85)【翻訳文提出日】2024-09-06
(86)【国際出願番号】 NL2023050110
(87)【国際公開番号】W WO2023172133
(87)【国際公開日】2023-09-14
(32)【優先日】2022-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(32)【優先日】2022-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510340757
【氏名又は名称】メルス ナムローゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】イェルン・イレス・ランメルツ・ファン・ビューレン
(72)【発明者】
【氏名】ジャンルカ・ラウス
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・パウル・ドールンボス
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZC202
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB36
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、対象におけるがんの治療の方法における使用のための、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む二重特異性抗体との組み合わせに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがんの治療の方法における使用のための、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む二重特異性抗体であって、前記第1の可変ドメインが、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYX1X2NTNYAQKLQG、及び配列X3X4X5X6HWWLX7Aを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、X1=N又はS、X2=A又はG、X3=D又はG、X4=R、S又はY、X5=H、L又はY、X6=D又はW、かつX7=D又はGであり、X1~X7以外の位置で、0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有し、前記第2の可変ドメインが、0~10個、好ましくは0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号1~23の配列のうちの1つのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む、二重特異性抗体との、組み合わせ。
【請求項2】
がんを有する対象を治療する方法であって、前記治療が、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む二重特異性抗体であって、前記第1の可変ドメインが、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYX1X2NTNYAQKLQG、及び配列X3X4X5X6HWWLX7Aを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、X1=N又はS、X2=A又はG、X3=D又はG、X4=R、S又はY、X5=H、L又はY、X6=D又はW、かつX7=D又はGであり、X1~X7以外の位置で、0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有し、前記第2の可変ドメインが、0~10個、好ましくは0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号1~23の配列のうちの1つのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む、二重特異性抗体との有効量の組み合わせを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項3】
対象におけるがんの治療のための医薬品の製造における、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含み、前記第1の可変ドメインが、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYX1X2NTNYAQKLQG、及び配列X3X4X5X6HWWLX7Aを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、X1=N又はS、X2=A又はG、X3=D又はG、X4=R、S又はY、X5=H、L又はY、X6=D又はW、かつX7=D又はGであり、X1~X7以外の位置で、0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有し、前記第2の可変ドメインが、0~10個、好ましくは0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号1~23の配列のうちの1つのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む二重特異性抗体と第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤との組み合わせの、使用。
【請求項4】
前記がんが、EGFR陽性及び/又はcMET陽性がんである、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項5】
前記がんが、EGFR及び/又はcMET異常を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項6】
前記がんが、チロシンキナーゼ阻害剤での治療に耐性がある、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項7】
前記がんが、EGFR及び/又はcMETチロシンキナーゼ阻害剤に対して耐性がある、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項8】
EGFRチロシンキナーゼ阻害剤耐性が、第1、第2及び/又は第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤、好ましくは、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する耐性を含む、請求項7に記載の使用又は方法。
【請求項9】
cMETチロシンキナーゼ阻害剤耐性が、カプマチニブ、テポチニブ、クリゾテニブ、カボザンチニブ、サボリチニブ、グレサチニブ、シトラバチニブ、BMS-777607、メレスチニブ、チバンチニブ、ゴルバチニブ、フォレチニブ、AMG-337又はBMS-794833、好ましくは、カプマチニブ又はテポチニブに対する耐性を含む、請求項7に記載の使用又は方法。
【請求項10】
前記対象が、チロシンキナーゼ阻害剤、好ましくはEGFR及び/又はcMETチロシンキナーゼ阻害剤での事前の治療を受けている、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項11】
前記対象が、第1、第2又は第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤での事前の治療を受けている、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項12】
前記対象が、cMETチロシンキナーゼ阻害剤での事前の治療を受けている、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項13】
前記がんが、活性化EGFR変異、承認されたチロシンキナーゼ阻害剤耐性変異、三次チロシンキナーゼ阻害剤耐性変異、EGFRへの第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤の結合を低減する変異、後天性チロシンキナーゼ阻害剤耐性変異、EGFR遺伝子増幅、cMET変異又はcMET異常を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項14】
前記がんが、エクソン19欠失変異、好ましくは、フレーム内エクソン19欠失、エクソン20ミスセンス変異、又はL858Rなどのエクソン21変異を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項15】
前記がんが、EGFRエクソン20変異、好ましくはエクソン20挿入変異を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項16】
前記がんが、オシメルチニブに耐性を付与する変異などの後天性チロシンキナーゼ阻害剤耐性変異を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項17】
前記がんが、近ループ挿入、遠ループ挿入、好ましくは、V769_D770insASV、D770_N771insSVD、H773_V774insNPH、H773_V774insH、D770_N771insG、D770delinsGY、N771_P772insN、V774_C775insHV、D770_N771insGL、H773_V774insPH、A763_Y764insFQEA、D770_N771delinsEGN、D770_N771insGD、D770_N771insH、D770_N771insP、H773_V774insAH、H773_V774insGNPH、H773delinsSNPY、N771_P772insH、N771_P772insVDN、N771delinsGY、N771delinsKH、N771delinsRD、P772_H773delinsHNPY、P772_H773insGT、P772_H773insPNP、P772_H773insT、V769_D770insA、V769_D770insGG、V769_D770insGSV、V769_D770insGVV及びV769_D770insMASV;又は変異T790M、L792X(例えば、L792H)、C796X(例えば、G796R、G796S、G796D)、C797X(例えば、C797S、C797G)、L798I若しくはフレーム内エクソン20挿入、例えば、M766_A767insASV若しくはH773-V774insNPH、Ins761(EAFQ)、Ins770(ASV)、Ins771(G)、Ins774(NPH)、M766_A7671ns A、S768_V769InsSVA、P772_H773InsNS、D761_E762InsX1-7、A763_Y764InsX1-7、Y764_Y765 InsX1-7、M766_A767InsX1-7、A767_V768 InsX1-7、S768_V769 InsX1-7>V769_D770 InsX1-7>D770_N771 InsX1-7>N771_P772 InsX1-7>P772_H773 InsX1-7、H773_V774 InsX1-7若しくはV774_C775 InsX1-7から選択されるエクソン20変異を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項18】
前記がんが、cMET増幅、cMET過剰発現、cMET経路のシグナル伝達の増加、cMET遺伝子増幅、HGF発現の増加及び/又はcMETタンパク質活性の増加などのcMET異常を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項19】
前記がんが、cMETエクソン14スキッピング変異を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項20】
前記第1世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤が、ゲフィチニブ、エルロチニブ若しくはイコチニブを含むか、又はこれである、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項21】
前記第2世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤が、アファチニブ、ダコミチニブ、XL647、AP26113、CO-1686若しくはネラチニブを含むか、又はこれである、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項22】
前記第3世代のEGFRチロシンキナーゼが、オシメルチニブ、ラゼルチニブ、アルフルチニブ、レジベルチニブ、ロシレチニブ、オルムチニブ、アルモネルチニブ、アビベルチニブ、ASK120067、ベフォテルチニブ、SH-1028、ナザルチニブ(EGF816)、ナコチニブ(ASP8273)、マベレルチニブ(PF-0647775)、オラフェルチニブ(CK-101)、ケイナチニブ若しくはES-072、好ましくはオシメルチニブを含むか、又はこれである、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項23】
前記cMETチロシンキナーゼ阻害剤が、カプマチニブ、テポチニブ、クリゾテニブ、カボザンチニブ、サボリチニブ、グレサチニブ、シトラバチニブ、BMS-777607、メレスチニブ、チバンチニブ、ゴルバチニブ、フォレチニブ、AMG-337若しくはBMS-794833を含むか、又はこれである、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項24】
前記治療が、前記二重特異性抗体と前記チロシンキナーゼ阻害剤との前記組み合わせを、それを必要とする対象に投与することを含み、好ましくは、前記二重特異性抗体を、前記第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤と同時に、連続して、又は別々に投与する、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項25】
前記対象が、チロシンキナーゼ阻害剤治療又は抗EGFR治療ナイーブである対象など、事前の抗がん治療を受けていない、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項26】
前記二重特異性抗体及びTKI阻害剤の投与が、一次選択治療として投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項27】
前記対象又はがんが、EGFR及び/又はcMET活性化変異、例えば、エクソン19欠失変異又はエクソン21変異(L858Rなど)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項28】
前記対象が、ヒト対象である、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項29】
前記がんが、肺がん、特に非小細胞肺がん、好ましくは転移性又は進行性非小細胞肺がんである、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項30】
前記がんが、進行性又は転移性がんである、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項31】
第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む二重特異性抗体であって、前記第1の可変ドメインが、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYX1X2NTNYAQKLQG、及び配列X3X4X5X6HWWLX7Aを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、X1=N又はS、X2=A又はG、X3=D又はG、X4=R、S又はY、X5=H、L又はY、X6=D又はW、かつX7=D又はGであり、X1~X7以外の位置で、0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有し、前記第2の可変ドメインが、0~10個、好ましくは0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号1~23の配列のうちの1つのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む、二重特異性抗体とを含む、薬学的組み合わせ。
【請求項32】
前記抗体が、ヒト抗体である、先行請求項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【請求項33】
前記抗体が、ADCC増強されている、先行請求項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【請求項34】
前記抗体が、1:1の抗EGFR、抗cMET化学量論を有するIgG1フォーマット抗体である、先行請求項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【請求項35】
前記抗体が、EGFRに結合することができる1つの可変ドメインと、cMETに結合することができる1つの可変ドメインと、を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【請求項36】
ヒトEGFRに結合することができる前記可変ドメインが、カニクイザル及びマウスEGFRにも結合することができる、先行請求項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【請求項37】
ヒトEGFRに結合することができる前記可変ドメインが、ヒトEGFRのドメインIIIに結合する、先行請求項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【請求項38】
cMETに結合することができる前記可変ドメインが、cMETへの抗体5D5の前記結合を遮断する、先行請求項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【請求項39】
cMETに結合することができる前記可変ドメインが、cMETへのHGFの前記結合を遮断する、先行請求項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【請求項40】
一方のCH3ドメインにおける405位及び409位の前記アミノ酸が、他方のCH3ドメインにおける対応する位置の前記アミノ酸と同じである(EU番号付け)、先行請求項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【請求項41】
X1=N、X2=G、X3=D、X4=S、X5=Y、X6=W、かつX7=Gであるか、
X1=N、X2=A、X3=D、X4=S、X5=Y、X6=W、かつX7=Gであるか、
X1=S、X2=G、X3=D、X4=S、X5=Y、X6=W、かつX7=Gであるか、
X1=N、X2=G、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、
X1=N、X2=A、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、
X1=S、X2=G、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、
X1=N、X2=G、X3=G、X4=Y、X5=L、X6=D、かつX7=Gであるか、
X1=N、X2=A、X3=G、X4=Y、X5=L、X6=D、かつX7=Gであるか、又は
X1=S、X2=G、X3=G、X4=Y、X5=L、X6=D、かつX7=Gである、
先行請求項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【請求項42】
X1=N、X2=G、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、又はX1=N、X2=A、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、又はX1=S、X2=G、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dである、先行請求項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【請求項43】
X1=N、X2=G、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、又はX1=N、X2=A、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dである、先行請求項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【請求項44】
前記第2の可変ドメインの前記重鎖可変領域が、0~10個、好ましくは0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号1~3、7、8、10、13、15、16、17、21、22又は23の配列のうちの1つの前記アミノ酸配列を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【請求項45】
前記第2の可変ドメインの前記重鎖可変領域が、0~10個、好ましくは0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号2、7、8、10、13又は23の配列のうちの1つの前記アミノ酸配列を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【請求項46】
前記第1の可変ドメインが、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYNGNTNYAQKLQG、及び配列DRHWHWWLDAを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、前記第2の可変ドメインが、CDR1配列SYSMN、CDR2配列WINTYTGDPTYAQGFTG、及びCDR3配列ETYYYDRGGYPFDPを有する重鎖可変領域を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【請求項47】
前記第1の可変ドメインが、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYNANTNYAQKLQG、及び配列DRHWHWWLDAを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、前記第2の可変ドメインが、CDR1配列TYSMN、CDR2配列WINTYTGDPTYAQGFTG、及び配列ETYFYDRGGYPFDPを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【請求項48】
前記第1及び第2の可変ドメインが、共通軽鎖、好ましくは、
図4Bの軽鎖可変ドメインを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【請求項49】
抗体が、HGF成長応答性細胞のHGF誘導成長を阻害する、先行請求項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【請求項50】
抗体が、EGF成長応答性細胞のEGF誘導成長を阻害する、先行請求項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、抗体の分野に関する。具体的には、この開示は、異常細胞を伴う疾患の治療のための、ヒト抗体を含む、治療抗体の分野に関する。更に、この開示は、多重特異性抗体を含むEGFR及びcMETに結合する抗体、並びにEGFR及びcMET陽性細胞、特に腫瘍細胞の結合におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
上皮成長因子(EGF)受容体(EGFR)は、細胞外タンパク質リガンドの上皮成長因子ファミリー(EGFファミリー)のメンバーのための細胞表面受容体である。EGFRは、ErbB-1受容体としても知られている。受容体には、過去に様々な名称が与えられている(EGFR;ERBB;ERBB1;HER1;PIG61;mENA)。本開示では、ヒトにおける名称ErbB-1、EGFR又はHER1は、互換的に使用される。EGFRは、以下の4つの密接に関連する受容体チロシンキナーゼである受容体のErbBファミリーのメンバーである:ErbB-1(EGFR)、ErbB-2(HER2/c-neu;Her2)、ErbB-3(Her3)、及びErbB-4(Her4)。
【0003】
EGFRは、細胞表面上に存在し、上皮成長因子及び形質転換成長因子α(TGFα)を含むその特異性リガンドの結合によって活性化され得る。その成長因子リガンドによって活性化されると、受容体は、不活性である大部分がモノマーの形態から活性なホモ二量体への移行を受け得る。リガンド結合後にホモ二量体を形成することに加えて、EGFRは、ErbB2などのErbB受容体ファミリーの別のメンバーと対合して、活性化されたヘテロ二量体を作成し得る。二量体はまた、リガンド結合の不在下で形成する場合があり、活性化されたEGFRのクラスターは、リガンド結合後に形成し得る。
【0004】
EGFR二量体化は、固有の細胞内タンパク質-チロシンキナーゼ(PTK)活性を刺激する。この活性は、細胞増殖及び分化をもたらすいくつかのシグナル変換カスケードを誘導する。EGFRのキナーゼドメインは、これが複合体化されている他の受容体のチロシン残基を交差リン酸化することができ、それ自体がそのようにして活性化され得る。
【0005】
EGFRを伴う変異は、いくつかのタイプのがんにおいて特定されている。これは、拡大するクラスの抗がん療法の標的である。そのような療法は、肺がんに対するゲフィチニブ及びエルロチニブなどのEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)、並びに結腸がん及び頭頸部がんに対するセツキシマブ及びパニツムマブなどの抗体を含む。
【0006】
セツキシマブ及びパニツムマブは、受容体を阻害するモノクローナル抗体である。臨床開発中の他のモノクローナルは、ザルツムマブ、ニモツズマブ及びマツズマブである。モノクローナル抗体は、主に受容体へのリガンド結合を遮断することによって、細胞外リガンド誘導受容体活性化を遮断することを目的としている。結合部位が遮断されると、シグナル誘導分子は、効果的に結合せず、それによって、下流シグナル伝達も活性化させない場合がある。リガンド誘導受容体活性化はまた、不活性受容体コンフォメーション(マツズマブ)の安定化によって阻害され得る。
【0007】
これまでのところ、EGFR標的化療法は、経時的な治療耐性の発症に関連付けられている。EGFR-TKIに対する耐性についての様々なメカニズムが説明されている。進行性非小細胞肺がん(NSCLC)を有する患者では、耐性のメカニズムは、二次又は三次変異の発生(例えば、T790M、C797S、L718Q、エクソン20挿入変異)、代替シグナル伝達の活性化(例えば、Met、HGF、AXL、Hh、IGF-1R)、異常な下流経路(例えば、AKT変異、PTEN減少)、EGFR-TKIs媒介性アポトーシス経路の障害(例えば、BCL2様11/BIM欠失多型)、及び組織学的形質転換を含む。耐性のいくつかのメカニズムが特定されているが、他のメカニズムは特定されていないままである。更に、第3世代のTKI耐性メカニズムの場合、NSCLCの分子不均一性は、これまでに発見された広範囲の耐性異常への寄与に影響を与える。同様に、EGFR抗体で治療された結腸直腸がん患者も、経時的に耐性を発症する。これは、KRAS変異の出現によって発生し得る。KRAS変異を有しないもののうち、MET原がん遺伝子の増幅は、抗EGFR療法中の後天性耐性と関連付けられ得る(Bardelli et al.,2013;Cancer Discov.Jun;3(6):658-73.doi:10.1158/2159-8290.CD-12-0558)。腫瘍は、最初から耐性であり得るか、又は治療中に耐性を発症し得る。EGFR標的化療法に対する耐性は、多くのEGFR陽性がんに見られ、当技術分野では、ケアの標準を改善し、かつEGFR標的化療法耐性に対処する能力の点で優れているより効き目のあるEGFRがん治療の必要性を実証している。
【0008】
MET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)及び肝細胞成長因子(HGF)の調節不全は、様々な腫瘍で報告されている。リガンド駆動型cMET活性化は、いくつかのがんで観察されている。血清及び腫瘍内HGFの上昇は、肺、乳がん及び多発性骨髄腫において観察される(J.M.Siegfried et al.,Ann Thorac Surg 66,1915(1998);P.C.Ma et al.,Anticancer Res 23,49(2003);B.E.Elliott et al.Can J Physiol Pharmacol 80,91(2002);C.Seidel,et al,Med Oncol 15,145(1998))。cMET、cMET増幅又は変異の過剰発現は、結腸直腸、肺、胃及び腎臓がんなどの様々ながんにおいて報告されており、リガンド非依存性受容体活性化を駆動し得る(C.Birchmeier et al,Nat Rev Mol Cell Biol 4,915(2003);G.Maulik et al.,Cytokine Growth Factor Rev 13,41(2002))。HGFの発現は、HGF/cMETシグナル伝達経路の活性化とも関連付けられており、EGFR標的化療法によって選択された腫瘍の逃避メカニズムのうちの1つでもある。更に、カプマチニブ又はテポチニブなどのcMETチロシンキナーゼ阻害剤での治療は、cMET異常に対する逃避メカニズムの出現と関連付けられている。
【0009】
cMET受容体は、共通の前駆体のタンパク質分解処理によって、シングルパスのジスルフィド結合α/βヘテロ二量体に形成される。cMETの細胞外部分は、3つのドメインタイプから構成される。N末端領域フォールドは、αサブユニット全体及びβサブユニットの一部を包含する大きなセマフォリン(Sema)ドメインを形成する。プレキシン-セマフォリン-インテグリン(PSI)ドメインは、Semaドメインに続いており、4つのジスルフィド結合を含む。このドメインは、免疫グロブリン様ドメインに関連する4つの免疫グロブリンプレキシン転写(IPT)ドメインを介して膜貫通ヘリックスに接続されている。細胞内では、cMET受容体は、独自の膜近傍及びカルボキシ末端配列が横にあるチロシンキナーゼ触媒ドメインを含有する(Organ and Tsao.Therapeutic advances in medical oncology 3.1_suppl(2011):参照によりその全体が本明細書に組み込まれるS7-S19)。
【0010】
cMET、肝細胞成長因子(HGF;散乱因子としても知られている)、及びそのスプライシングアイソフォーム(NK1、NK2)のリガンドは、cMET受容体の既知のリガンドである。HGFは、1991年に、強力なマイトジェン/モルホゲンとして特定された。HGF/cMETシグナル伝達経路は、様々ながんの発症及び進行において重要な役割を果たす。ヒトがんにおけるHGF又はcMETの調節不全及び/又は過剰活性化は、予後不良に関わる。cMETは、過剰発現、増幅又は変異を介して活性化され得る。活性化は、がんの発症、進行、浸潤性成長及び転移を促進し得る。cMETは、HGFに関連付けられた、HGFに依存しない手法で活性化され得る。HGFに依存しない活性化は、cMET過剰発現の場合に発生する。豊富なcMETはまた、リガンドの不在下で、(ヘテロ)二量体化及び細胞内シグナル伝達を誘発し得る。追加のリガンドは、そのようなcMET過剰発現細胞の機能に影響を与えないように思われる。cMET増幅は、cMET過剰発現に関連付けられており、腫瘍サブタイプのバイオマーカーとして出現した。
【0011】
HGFは、身全体に遍在して発現され、この成長因子が、全身的に利用可能なサイトカインであり、また腫瘍間質からのものであることを示す。cMET活性化の陽性パラクリン及び/又はオートクリンループは、更なるcMET発現をもたらし得る。HGF特異性抗体リロツムマブ(AMG102)は、胃がんに対して開発された。第I相及び第II相試験は有望であったが、胃がんにおける一次選択療法としてシスプラチン及びカペシタビンを有する第III相研究(RILOMET-2)は、研究20070622の事前に計画されたデータ監視委員会の安全性レビューの後に終了した。
【0012】
EGFR標的化療法に対する耐性におけるcMET/HGFシグナル伝達の関連性は、耐性に対処する手法の開発を刺激した。これまでのところ、抗体ベースのアプローチは、抗HGF抗体を含み、抗cMET又はcMET抗体及びcMET/EGFR(Lee et al.,2015;Immunotargets and Therapy 4:35-44でレビューされた)は、臨床的に有効ではなかった。cMET抗体オナルツズマブ(MetMab(商標))及びエミベツズマブ(LY-2875358)は、第II相臨床試験で評価した。これらのうち、オナルツズマブは、EGFR阻害剤エルロチニブと一緒に用いた併用治療において、結腸直腸がんに対して有効であると思われた。しかしながら、これらの結果は、無作為の第III相臨床試験では繰り返すことができなかった。MetMAbは、cMETへのHGF結合及びその後の経路活性化を遮断する、cMETに対する一価モノクローナル抗体(mAb)である(Jin et al.,2008 Cancer Research Vol.68:pp4360-68)。
【0013】
抗EGFR、cMET及びHGF免疫療法の問題を克服するため、本開示は、上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメインと、cMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインと、を含む、新規の二重特異性抗体を提供する。
【0014】
これまでのところ、ある特定の二重特異性EGFR×cMET抗体が当該技術分野で記載されている。Castoldi R.et al.(2013)には、抗体5D5(又はMetMab)のcMET結合部位及びセツキシマブのEGFR結合部位を有する、MetHer1と呼ばれる二重特異性EGFR×cMET抗体が記載されている。二重特異性抗体は、2:1の固定EGFR及びcMET結合化学量論比を有する(補足図を参照)。
【0015】
US20140378664には、様々な他の二重特異性抗体のなかでも、cMET×EGFR二重特異性抗体が記載されている。完全な二重特異性抗体は、後にタンパク質分解的に切断される単一のタンパク質として産生される。2つのVH/VLドメインは、単鎖Fv断片として産生される。抗体の結合は、胃がん細胞株において、cMET分解及びAktリン酸化を誘導する。Moores et al(2016)には、EU番号付けに従って405位及び409位に変異を有する制御されたFabアーム交換(cFAE)によって産生された、JNJ-61186372と命名された二重特異性cMET×EGFR抗体が記載されており、これは、免疫原性の可能性を有し得る。JNJ-61186372は、cMETリガンドHGFを発現する腫瘍細胞株H1975を有する異種移植片モデルを使用してインビボで活性であることが示された。この腫瘍モデルは、抗体のADCC活性に依存することが知られている(Ahmed et al.,2015)。JNJ-61186372は、EGFRよりもcMETに対して約40倍高い親和性の親和性不均衡を有すると報告されており(Moores et al.(2016))、ザルツムマブに由来する抗EGFRアームは、他の問題のなかでも、注入関連反応、皮膚障害を引き起こすことが知られている。
【0016】
LY3164530は、cMET結合抗体LY2875358(Emibetuzumab;Kim and Kim 2017)の重鎖可変ドメインに融合した一本鎖Fv断片としてセツキシマブのEGFR結合ドメインを含む、二重特異性cMET×EGFR抗体である。これは、抗原の各々について2つの結合部位を含む、いわゆる二重可変ドメイン抗体である。抗体についてのHGF阻害に関するデータは提供されていない。抗体は、アゴニスト活性なしでcMET及びEGFRに結合し、これらを内在化すると報告されている。著者らは、様々なcMET、EGFR、及びcMET×EGFR標的化療法をレビューし、これまでのところ、これらの阻害剤のいずれも臨床試験において顕著な有効性を示していないという結論を導き出している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本明細書に記載されているような優れた特性を有し得るものを含む、新規の二重特異性cMET×EGFR抗体が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
ある特定の態様では、本開示は、がんの治療の方法における使用のための、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む本開示による二重特異性抗体と第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤との組み合わせを提供する。
【0019】
ある特定の態様では、本開示は、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む本開示による二重特異性抗体との有効量の組み合わせを対象に投与することを含む、がんを有する対象を治療する方法を提供する。
【0020】
ある特定の態様では、本開示は、がんの治療のための医薬品の製造における、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む本開示による二重特異性抗体と第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤との組み合わせの使用を提供する。
【0021】
ある特定の態様では、本開示は、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む本開示による二重特異性抗体とを含む薬学的組み合わせを提供する。
【0022】
ある特定の態様では、がんは、EGFR陽性がん、cMET陽性がん、又はEGFR及びcMET陽性がんである。ある特定の態様では、がんは、EGFR異常、cMET異常、又はEGFR及びcMET異常を含む。
【0023】
ある特定の態様では、当該がん若しくは対象は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤での事前の治療を受けており、及び/又は当該がん若しくは対象は、チロシンキナーゼ阻害剤、ある特定の態様ではEGFR及び/若しくはcMETチロシンキナーゼ阻害剤での治療に耐性がある。ある特定の態様では、当該対象は、オシメルチニブなどの第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤での事前の治療を受けている。当該EGFRチロシンキナーゼ阻害剤耐性は、第1、第2及び/又は第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤を含む。ある特定の態様では、二重特異性抗体とEGFRチロシンキナーゼ阻害剤との組み合わせの投与又はそれによる治療は、EGFR及び/又はcMETチロシンキナーゼ阻害剤耐性の対象に対する二次選択治療を含む。他の態様では、二重特異性抗体とEGFRチロシンキナーゼ阻害剤との組み合わせの投与又はそれによる治療は、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤での事前の治療を受けた対象の二次選択治療を含む。ある特定の態様では、当該対象は、当該第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に耐性を付与するEGFR及び/又はcMET異常を含む。ある特定の態様では、当該対象又はがんは、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対して耐性があるか、又は難治性であり、ある特定の態様では、オシメルチニブに対して耐性があるか、又は難治性である。
【0024】
ある特定の態様では、使用又は治療は、対象に、1000、1500又は2000mgの用量の二重特異性抗体を提供することを含む。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、毎週1回又は2週間に1回提供される。ある特定の態様では、当該第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、約50mg~約400mgの1日量、例えば、70mg、75mg、80mg、100mg、110mg又は240mgで提供される。
【0025】
ある特定の態様では、使用又は治療は、対象に、2週間に1回、1500mgの用量の二重特異性抗体を提供することを含む。
【0026】
ある特定の態様では、当該併用治療で投与されるEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、オシメルチニブ、ラゼルチニブ、アルフルチニブ、レジベルチニブ、ロシレチニブ、オルムチニブ、アルモネルチニブ、アビベルチニブ、ASK120067、ベフォテルチニブ(BPI-D0316又はD-0316とも称される)、SH-1028、ナザルチニブ(EGF816)、ナコチニブ(ASP8273)、マベレルチニブ(PF-0647775)、オラフェルチニブ(CK-101)、ケイナチニブ、ES-072を含むか、又はこれである。ある特定の態様では、当該EGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、オシメルチニブ、BPI-D0316/ベフォテルチニブ、ラゼルチニブ又はアルモネルチニブである。
【0027】
ある特定の態様では、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、オシメルチニブ(AZD9291)である。オシメルチニブ(AZD9291)は、L858Rに対して12nM及びL858R/T790Mに対して1nMの見かけのIC50を各々有する共有結合型、経口活性型、不可逆的及び変異体選択型EGFR阻害剤である。推奨される第2相投薬は、80mgの1日用量で確立された。
【0028】
ある特定の態様では、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、アルモネルチニブ(HS-10296)である。アルモネルチニブは、EGFR感作性及びT790M耐性変異に対する選択性を有する、経口利用可能な、不可逆的な、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤である。アルモネルチニブは、非小細胞肺がんの研究に使用されている。推奨される第2相投薬は、110mgの1日用量で確立された。
【0029】
ある特定の態様では、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、ラゼルチニブである。ラゼルチニブ(YH25448)は、強力な、変異体選択型の、血液脳関門透過性の、経口利用可能な、かつ不可逆的な第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であり、非小細胞肺がんの研究に使用することができる。推奨される第2相投薬は、240mgの1日用量で確立された。
【0030】
ある特定の態様では、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、ベフォテルチニブ(又はBPI-D0316又は場合によってD-0316)である。ベフォテルチニブ(Beta Pharmaceuticals,Co.,China)は、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤である。ベフォテルチニブは、EGFR陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の研究に使用することができる。第II相の単一アーム研究NCT05007938では、局所進行性又は転移性NSCLCを有する患者において、ベフォテルチニブの安全性及び有効性を、25mg、1日3回、経口で、イコチニブ(1日3回で125mg、経口)と併用して評価した。第I相研究NCT04464551では、対象は、経口懸濁液として、75mgのD-0316の単回経口用量を受けた。第II相単一アーム研究NCT03861156では、局所進行性/転移性非小細胞肺がん患者は、21日間のサイクルで75mgの経口用量を受け、忍容性がある場合、用量を100mgに増加させた。それ以外の場合、用量は75mgに維持した。第II/III相研究NCT04206072では、D-0316の有効性及び安全性を、70mg、1日1回、21日間、次いで、100mgに増加させて、1日1回評価した。
【0031】
ある特定の態様では、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、アルフルチニブ(AST2818又はフルモネルチニブ)である。AST2818は、NSCLCにおけるその臨床有効性のNCT03787992の臨床試験の対象である。
【0032】
ある特定の態様では、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、経口活性の、選択的な、かつ不可逆的な第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)であるレジベルチニブ(BPI-7711)である。レジベルチニブは、NSCLCにおけるその臨床有効性の臨床試験NCT03866499の対象である。
【0033】
ある特定の態様では、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、7.68nMのIC50を有するピロロピリミジンベースの不可逆的上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤であるアビチニブ(アビベルチニブ/AC0010)である。アビチニブは、NSCLCにおけるその臨床有効性の臨床試験NCT03856697の対象である。
【0034】
ある特定の態様では、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、EGFRの強力な経口活性阻害剤であるASK120067である。ASK120067は、非小細胞肺がん(NSCLC)の研究のための第3世代のEGFR-TKIである。ASK120067は、NSCLCにおけるその臨床有効性の臨床試験(NCT04143607)の対象である。
【0035】
ある特定の態様では、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、オリチニブ(SH-1028、Nanjing Sanhome Pharmaceutical Co.,Ltd.、Nanjing,China)である。SH-1028は、NSCLCにおけるその臨床有効性のNCT04239833の臨床試験の対象である。
【0036】
ある特定の態様では、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、変異体EGFR形態を特異的に標的とする経口送達キナーゼ阻害剤である、ロシレチニブ(CO-1686)である。ロシレチニブは、NSCLCにおけるその臨床有効性の臨床試験NCT02186301の対象であった。
【0037】
ある特定の態様では、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、キナーゼドメインの近くのシステイン残基に結合する経口活性の不可逆的な第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であるオルムチニブ(HM61713;BI-1482694)である。オルムチニブは、NSCLCの研究で使用することができる。オルムチニブは、NSCLCにおけるその臨床有効性の臨床試験NCT02485652の対象であった。
【0038】
ある特定の態様では、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、進行性EGFR変異体NSCLCを有する患者においてEGFR活性化変異を選択的に阻害する第3世代のEGFR TKIであるナザチニブ(EGF816)である。ナザルチニブは、NSCLCにおけるその臨床有効性の臨床試験NCT03529084の対象であった。
【0039】
ある特定の態様では、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、経口利用可能な、不可逆的な、第3世代の、変異体選択型の、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤であるナコチニブである。ナコチニブは、NSCLCにおけるその臨床有効性の臨床試験NCT02588261の対象であった。
【0040】
ある特定の態様では、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、選択的な、経口利用可能な、かつ不可逆的なEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR TKI)であるマベレルチニブ(PF-0647775)である。マベレルチニブは、NSCLCにおけるその臨床有効性の臨床試験NCT02349633の対象であった。
【0041】
ある特定の態様では、当該対象又はがんは、第1、第2、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤又はcMET阻害剤での治療に耐性がある。
【0042】
ある特定の態様では、当該第1世代のチロシンキナーゼ耐性は、ゲフィチニブ、エルロチニブ若しくはイコチニブに対する耐性であるか、又はこれを含む。
【0043】
ある特定の態様では、当該第2世代のチロシンキナーゼ耐性は、アファチニブ、ダコミチニブ、XL647、AP26113、CO-1686若しくはネラチニブに対する耐性であるか、又はこれを含む。
【0044】
ある特定の態様では、当該cMETチロシンキナーゼ耐性は、カプマチニブ、テポチニブ、クリゾテニブ、カボザンチニブ、サボリチニブ、グレサチニブ、シトラバチニブ、BMS-777607、メレスチニブ、チバンチニブ、ゴルバチニブ、フォレチニブ、AMG-337若しくはBMS-794833に対する耐性であるか、又はこれを含む。ある特定の態様では、当該cMETチロシンキナーゼ耐性は、テポチニブに対する耐性であるか、又はこれを含む。ある特定の態様では、当該cMETチロシンキナーゼ耐性は、カプマチニブに対する耐性であるか、又はこれを含む。
【0045】
ある特定の態様では、当該第3世代のチロシンキナーゼ耐性は、オシメルチニブ、ラゼルチニブ、アルフルチニブ、レジベルチニブ、オルムチニブ、アルモネルチニブ、アビベルチニブ、ASK120067、ベフォテルチニブ、ロシレチニブ、オリチニブ、ナザルチニブ、ナコチニブ、マベレルチニブに対する耐性であるか、又はこれを含む。ある特定の態様では、当該第3世代のチロシンキナーゼ耐性は、オシメルチニブに対する耐性であるか、又はこれを含む。ある特定の態様では、当該第3世代のチロシンキナーゼ耐性は、ラゼルチニブに対する耐性であるか、又はこれを含む。ある特定の態様では、当該第3世代のチロシンキナーゼ耐性は、ベフォテルチニブに対する耐性であるか、又はこれを含む。ある特定の態様では、当該第3世代のチロシンキナーゼ耐性は、アルモネルチニブに対する耐性であるか、又はこれを含む。
【0046】
ある特定の態様では、対象は、EGFR及び/若しくはcMET陽性がんのための、又はEGFR及び/若しくはcMET異常を含むがんのための事前の抗がん治療を受けていない。ある特定の態様では、対象は、事前の化学療法又は抗EGFR抗体若しくは抗cMET抗体を含む治療を受けていない。ある特定の態様では、当該対象は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤治療ナイーブ、又はセツキシマブ治療ナイーブである。ある特定の態様では、二重特異性抗体及びEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の組み合わせの投与又はそれによる治療は、一次選択治療である。ある特定の態様では、当該一次選択治療は、肺がん患者又は肺がん、特に非小細胞肺がんなどにおいて、EGFR及び/又はcMETチロシンキナーゼメカニズムに対する耐性が発症するのを防ぐことである。EGFR及び/又はcMETチロシンキナーゼ阻害剤に対する耐性メカニズムは、特に転移性又は進行性がんなどの非小細胞肺がんを有する対象において、発症することが周知である。したがって、本開示はまた、対象においてEGFR及び/又はcMETチロシンキナーゼ阻害剤耐性を有するがんの発症又は発生を防ぐための方法における使用のための、当該第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤と当該二重特異性抗体との組み合わせを提供する。
【0047】
ある特定の態様では、対象は、ヒト対象である。
【0048】
ある特定の態様では、がんは、肺がんである。
【0049】
ある特定の態様では、当該がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)である。
【0050】
ある特定の態様では、当該がん又は対象は、活性化EGFR変異、承認されたチロシンキナーゼ阻害剤耐性変異、三次チロシンキナーゼ阻害剤耐性変異、EGFRへの第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤の結合を低減する変異、後天性チロシンキナーゼ阻害剤耐性変異、EGFR遺伝子増幅、cMET変異又はcMET異常を含む。
【0051】
ある特定の態様では、当該がん又は対象は、cMET増幅、cMET過剰発現、cMET経路のシグナル伝達の増加、cMET遺伝子増幅、及び/又はcMETタンパク質活性の増加などのcMET異常を含む。ある特定の態様では、当該がん又は対象は、HGF発現の増加を含む。ある特定の態様では、当該がんは、cMETエクソン14スキッピング変異を含む。
【0052】
ある特定の態様では、cMET調節不全は、cMET増幅、cMET過剰発現、cMET経路のシグナル伝達の増加、cMET遺伝子増幅、及び/若しくはcMETタンパク質活性の増加、又はcMETエクソン14スキッピング変異を含む。一態様では、当該cMET調節不全は、HGF発現の増加によって引き起こされる。
【0053】
ある特定の態様では、本開示は、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む二重特異性抗体とを含む薬学的組み合わせを提供する。
【0054】
ある特定の実施形態では、薬学的組み合わせは、使用説明書を含む。
【0055】
ある特定の態様では、本開示の二重特異性抗体は、ADCC活性を示し、ある特定の態様では、抗体は、改善されたADCC活性を有する。そのような態様では、抗体は、完全なヒトCH2ドメインに比べて、1つ以上のCH2変異によって、変化したADCC活性を有し得る。したがって、アフコシル化された、本開示による二重特異性抗体が更に提供される。ある特定の態様では、本開示の抗体は、2つのアフコシル化されたCH2ドメインを含む。ある特定の態様では、本開示の抗体は、どちらもアフコシル化されている、合計2つのCH2ドメインを含む。ある特定の態様では、本開示の抗体は、どちらもアフコシル化されている、2つのCH2ドメインを含む。
【0056】
ある特定の態様では、本開示の二重特異性抗体は、ADCP活性を示し、ある特定の態様では、抗体は、改善されたADCP活性を有する。ある特定の態様では、EGFR結合アーム及びcMET結合アームの両方、又はEGFR結合アーム及びcMET結合アームを含む重鎖の両方が、ADCPに寄与する。ある特定の態様では、本開示の二重特異性抗体は、NSCLC細胞に対するADCP活性を有するか、又はこれを呈する。ある特定の態様では、本開示の二重特異性抗体は、NSCLC細胞のADCPを誘導する。
【0057】
二重特異性抗体は、共通軽鎖を含み得る。第1及び第2の可変ドメインは、ある特定の態様では、同じ又は実質的に同じ(共通)軽鎖可変領域を含む。当該共通軽鎖可変領域は、組換えを受けたヒト可変領域遺伝子セグメントの多様性と良好に対合することが知られているものであり得る。ある特定の態様では、当該共通軽鎖は、O12/IgVκ1-39*01可変領域遺伝子セグメントなどの生殖系列Vk遺伝子セグメントによってコードされた可変領域である。好ましい軽鎖可変領域は、再配列されたIgVκ1-39*01/IGJκ1*01又はIgVκ1-39*01/IGJκ5*01を含む。cMET結合アームの軽鎖及びEGFR結合アームの軽鎖は、ある特定の態様では、同じ(共通)軽鎖である。ある特定の態様では、共通軽鎖は、ヒト軽鎖定常領域に結合された再配列されたカッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01又はIgVκ1-39*01/IGJκ5*01である。二重特異性抗体は、ヒト抗体であり得る。二重特異性抗体は、全長抗体であり得る。これは、EGFRに結合することができる1つの可変ドメイン及びcMETに結合することができる1つの可変ドメインを有し得る。ある特定の態様では、ヒトEGFRに結合することができる可変ドメインはまた、マウスEGFR及び/又はカニクイザルEGFRに有益に結合することができる。ある特定の態様では、ヒトEGFRに結合するか又は結合することができる可変ドメインは、ヒトEGFRのドメインIIIに結合する。cMETに結合することができる可変ドメインは、cMETへの抗体5D5の結合を遮断し得る。cMETに結合することができる可変ドメインは、cMETへのHGFの結合を遮断し得る。cMETについての抗体のKdは、EGFRについての抗体のKdよりも少なくとも10倍少ない場合がある。一方のCH3ドメインにおける405位及び409位のアミノ酸は、他方のCH3ドメインにおける対応する位置のアミノ酸と同じであり得る(EU番号付け)。
【0058】
ある特定の態様では、本開示の抗体は、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYX1X2NTNYAQKLQG、及び配列X3X4X5X6HWWLX7Aを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含む第1の可変ドメインを含み、
X1=N又はS、X2=A又はG、X3=D又はG、X4=R、S又はY、X5=H、L又はY、X6=D又はW、かつX7=D又はGであり、X1~X7以外の位置で、0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する。
【0059】
ある特定の態様では、本開示の抗体は、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号1~23(
図3)の配列のうちの1つのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む第2の可変ドメインを含む。
【0060】
X1=N、X2=G、X3=D、X4=S、X5=Y、X6=W、かつX7=Gであるか、
X1=N、X2=A、X3=D、X4=S、X5=Y、X6=W、かつX7=Gであるか、
X1=S、X2=G、X3=D、X4=S、X5=Y、X6=W、かつX7=Gであるか、
X1=N、X2=G、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、
X1=N、X2=A、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、
X1=S、X2=G、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、
X1=N、X2=G、X3=G、X4=Y、X5=L、X6=D、かつX7=Gであるか、
X1=N、X2=A、X3=G、X4=Y、X5=L、X6=D、かつX7=Gであるか、又は
X1=S、X2=G、X3=G、X4=Y、X5=L、X6=D、かつX7=Gである、
二重特異性抗体が記載されている。
【0061】
ある特定の態様では、X1=N、X2=G、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、又はX1=N、X2=A、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、又はX1=S、X2=G、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dである。
【0062】
ある特定の態様では、X3~X7=DRHWDであり、X1及びX2は、NG、SG又はNAである。
【0063】
第2の可変ドメインの重鎖可変領域が、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号1~3、7、8、10、13、15、16、17、21、22又は23の配列のうちの1つのアミノ酸配列を含む、二重特異性抗体が記載されている。
【0064】
本開示はまた、腫瘍を有する対象の治療の方法であって、この方法が、この治療を必要としている個体に、本明細書に記載されているような二重特異性抗体を投与することを含む。典型的には、個体は、異常細胞を含む疾患を患っている個体であり、例えば、個体は、腫瘍又はがんを患っている場合がある。
【0065】
本開示はまた、上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメインと、MET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインと、を含む、本開示の治療に含まれるような二重特異性抗体であって、第1の可変ドメインが、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYX
1X
2NTNYAQKLQG、及び配列X
3X
4X
5X
6HWWLX
7Aを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、
X
1=N又はS、X
2=A又はG、X
3=D又はG、X
4=R、S又はY、X
5=H、L又はY、X
6=D又はW、かつX
7=D又はGであり、X
1~X
7以外の位置で、0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有し、第2の可変ドメインが、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号1~23(
図3)の配列のうちの1つのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む、二重特異性抗体を提供する。
【0066】
ある特定の態様における第1の可変ドメインは、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYNGNTNYAQKLQG、及び配列DRHWHWWLDAFDYを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、第2の可変ドメインは、ある特定の態様では、CDR1配列SYSMN、CDR2配列WINTYTGDPTYAQGFTG、及びCDR3配列ETYYYDRGGYPFDPを有する重鎖可変領域を含む。
【0067】
本開示はまた、腫瘍などの異常細胞を伴う疾患を有する対象の治療における使用のための本開示の二重特異性抗体を提供する。
【0068】
腫瘍又はがんなどの異常細胞を伴う疾患の治療のための医薬品の製造における、本開示の二重特異性抗体及び第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤の使用も提供される。
【0069】
腫瘍、ある特定の態様では、EGFR陽性腫瘍、cMET陽性腫瘍又はEGFR及びcMET陽性腫瘍を有する対象の治療の方法であって、この方法が、この治療を必要としている個体に、二重特異性抗体及び第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤を投与することを含む、方法も提供される。
【0070】
本開示の抗体は、EGFR TKI耐性腫瘍細胞株のHGF及びEGF/HGF誘導成長を阻害し、第3世代のTKIと組み合わせて使用される。TKIは、ある特定の態様では、オシメルチニブである。TKIは、ある特定の態様では、ラゼルチニブである。TKIは、ある特定の態様では、アルモネルチニブである。TKIは、ある特定の態様では、ベフォテルチニブである。
【0071】
ある特定の態様における当該第3世代のチロシン阻害剤と組み合わせた本開示の抗体は、活性化EGFR変異、承認されたチロシンキナーゼ阻害剤耐性変異、三次チロシンキナーゼ阻害剤耐性変異、EGFRへの第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤の結合を低減する変異、後天性チロシンキナーゼ阻害剤耐性変異、EGFR遺伝子増幅、cMET変異、又はcMET異常、ある特定の態様ではフレーム内エクソン20挿入変異を含む細胞株又はモデルなどの、HGF応答性細胞の、ある特定の態様では、ヒト対象、腫瘍モデル又は細胞株のEGFR TKI耐性又は難治性腫瘍のHGF誘導成長を阻害する。ある特定の態様では、阻害は、HGFの存在下で示される。
【0072】
ある特定の態様における第3世代のTKIと組み合わせた本開示の抗体は、フレーム内エクソン20挿入変異を含む細胞株又はモデルなどの、HGF応答性細胞、ある特定の態様では、EGFR TKI耐性腫瘍、腫瘍モデル又は細胞株のHGF誘導成長を阻害する。
【0073】
本明細書では、「難治性」という用語は、治療に応答しない疾患を指す。難治性疾患は、治療の前若しくは開始時に治療に耐性があり得るか、又は難治性疾患は、治療中に難治性になり得る。
【0074】
本明細書では、「耐性」という用語は、関与する治療剤の処方用量に投与されたときに治療に応答しないがん又は患者を指す。
【0075】
本明細書では、「第1世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤」(第1世代のTKI)という用語は、ゲフィチニブ及びエルロチニブなどの可逆的EGFR阻害剤を指し、これらは、エクソン19及びエクソン21L858R変異における欠失などのEGFR活性化変異を保有するNSCLCの一次選択治療に有効である。
【0076】
本明細書では、「第2世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤」(第2世代のTKI)という用語は、アファチニブ及びダコミチブなどの共有結合型不可逆的EGFR阻害剤を指し、これらは、エクソン19及びエクソン21L858R変異における欠失などのEGFR活性化変異を保有するNSCLCの一次選択治療に有効である。
【0077】
本明細書では、「第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤」(第3世代のTKI)という用語は、単独又はT790M変異との組み合わせで、エクソン19及びエクソン21L858Rにおける欠失などのEGFR活性化変異に選択的であり、野生型EGFRに対する阻害活性が低い、オシメルチニブ及びラゼルチニブなどの共有結合型不可逆的EGFR阻害剤を指す。
【0078】
本開示の抗体は、高親和性二価EGFR抗体に関連する発疹及び下痢などの毒性を誘導することなく、EGF応答性細胞のEGF誘導成長を阻害する。これによって、抗体は、それ自体の毒性プロファイルを有するTKIとの組み合わせに理想的に適している。
【0079】
本開示は、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と組み合わせた本明細書に開示されている二重特異性抗体を含む、薬学的組み合わせ、又はキットオブパーツを更に含む。薬学的組み合わせは、ある特定の態様では、物理的に連結されておらず、本開示の抗体を含有する容器及び第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤を含有する容器を含む。薬学的組み合わせは、ある特定の態様では、使用説明書を伴う。使用説明書は、静脈内投与の説明書などの臨床的に関連する情報を含む。ある特定の態様では、オシメルチニブ、BPI D-0316/ベフォテルチニブ又はアルモネルチニブなどの第3世代のEGFRチロシンキナーゼは、関連当局の承認後の使用説明書に従って投与される。ある特定の態様では、オシメルチニブは、1日1回、80mgの用量で投薬される。ある特定の態様では、アルモネルチニブは、1日1回、110mgの用量で投薬される。ある特定の態様では、ラゼルチニブは、1日1回、240mgの用量で投薬される。いくつかの態様では、ベフォテルチニブは、1日1回、70mg、75mg又は100mgで投薬される。ベフォテルチニブの75の1日用量は、それぞれ25mgの3回の経口投与投薬量として提供され得る。
【0080】
ある特定の態様では、本開示の二重特異性抗体は、特に1000mgのフラット用量を使用して、1000mgで投薬される。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、毎週1回、1000mgの量で提供される。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、2週間に1回、1000mgの量で提供される。
【0081】
ある特定の態様では、本開示の二重特異性抗体は、特に1500mgのフラット用量を使用して、1500mgで投薬される。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、2週間に1回、1500mgの量で提供される。
【0082】
ある特定の態様では、本開示の二重特異性抗体は、特に2000mgのフラット用量を使用して、2000mgで投薬される。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、2週間に1回、2000mgの量で提供される。
【0083】
本開示の抗体は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤での治療に耐性があるか、又はこれに対して低減された感受性を有する、例えば、オシメルチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ若しくはアファチニブ、オシメルチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ若しくはアファチニブの類似体、又はそれらの各々の化合物及び/若しくは類似体のうちの1つ以上の組み合わせに耐性がある腫瘍を治療するために使用され得る。
【0084】
したがって、本開示の二重特異性抗体は、本開示のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と同時に、連続して、又は別々に投与され得る。ある特定の態様では、当該EGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、当該第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤を含むか、又はこれである。
【0085】
本開示は、本明細書に開示されている二重特異性抗体又はそのバリアントの重鎖又は重鎖可変領域を単独で又は一緒にコードする核酸分子又は核酸分子群を更に含む。また、本明細書に開示されている抗体をコードする核酸分子又は核酸分子群も提供される。
【0086】
ある特定の態様では、重鎖は、IgG1抗体の定常領域、ある特定の態様では、ヒトIgG1抗体を含む。当該IgG1定常領域のCH2領域は、抗体のADCC及び/又はCDC活性を変化させるように操作されても、又はそうでなくてもよい。ある特定の態様では、当該変化は、ADCC及び/又はCDC活性の増強をもたらす。ある特定の態様では、抗体のCH3領域は、EGFRに結合している第1の重鎖とcMETに結合している第2の重鎖とを含む重鎖のヘテロ二量体化を容易にするように操作される。
【0087】
本開示は、本明細書に開示されているような二重特異性抗体又はそのバリアントを単独で又は一緒にコードする1つ以上の核酸分子を含む細胞を更に含む。また、ある特定の態様では、細胞の培養物からの二重特異性抗体又はそのバリアントの回収を伴って、記載されているような細胞を使用して本明細書に開示されている二重特異性抗体又はそのバリアントを産生する方法も提供される。
【0088】
本開示は、本明細書に開示されている二重特異性抗体又はそのバリアントを含む細胞系を更に含む。
【0089】
本開示は、二重特異性抗体を発現する、及び/又は当該二重特異性抗体をコードする核酸分子を含む、細胞を更に提供する。
【0090】
本開示は、本明細書で開示されているような二重特異性抗体を更に含み、これは、ある特定の態様では、インビボイメージングのための標識を更に含む。
【0091】
ある特定の態様では、本開示は、がんの治療の方法における使用のための、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む本開示による二重特異性抗体と第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤との組み合わせを提供する。
【0092】
ある特定の態様では、本開示は、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む本開示による二重特異性抗体との有効量の組み合わせを対象に投与することを含む、がんを有する対象を治療する方法を提供する。
【0093】
ある特定の態様では、本開示は、がんの治療のための医薬品の製造における、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む本開示による二重特異性抗体と第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤との組み合わせの使用を提供する。
【0094】
ある特定の態様では、本開示の二重特異性抗体は、本開示のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と同時に、連続して、又は別々に投与され得る。したがって、本開示による二重特異性抗体と第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤との当該組み合わせは、同時、連続、又は別々の投与を包含する。ある特定の態様では、当該EGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、当該第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤を含むか、又はこれである。
【0095】
したがって、ある特定の態様では、本開示は、がんの治療の方法における使用のための、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む本開示による二重特異性抗体であって、治療が、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の投与を更に含み、任意選択的に、本開示の二重特異性抗体が、本開示のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と同時に、連続して、又は別々に投与される、二重特異性抗体を提供する。
【0096】
したがって、ある特定の態様では、本開示は、がんの治療の方法における使用のための、有効量の第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む本開示による二重特異性抗体とを対象に投与することを含む、がんを有する対象を治療する方法であって、任意選択的に、本開示の二重特異性抗体が、本開示のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と同時に、連続して、又は別々に投与される、方法を提供する。
【0097】
したがって、ある特定の態様では、本開示は、がんの治療のための医薬品の製造における、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む本開示による二重特異性抗体、並びに第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の使用であって、任意選択的に、本開示の二重特異性抗体が、本開示のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と同時に、連続して、又は別々に投与される、使用を提供する。
【0098】
EGFRは、Her-又はcErbB-1、-2、-3、及び-4という名称の4つの受容体チロシンキナーゼ(RTK)のファミリーのメンバーである。EGFRは、4つのサブドメインから構成される細胞外ドメイン(ECD)を有し、そのうちの2つはリガンド結合に関与し、そのうちの1つはホモ二量体化及びヘテロ二量体化に関与する(Ferguson(2008))。このセクションで使用する参照番号は、「明細書で引用」という見出しの欄の参照番号の付番を指し、これは、それぞれ参照により組み込まれる。EGFRは、様々なリガンドからの細胞外シグナルを統合し、多様な細胞内応答をもたらす(Yarden at al.2001、及びJorrisen et al.2003)。EGFRは、いくつかのヒト上皮悪性腫瘍、特に乳房、膀胱、非小細胞肺がん肺、結腸、卵巣、頭頸部、及び脳のがんに関与している。遺伝子における活性化変異、並びに受容体及びそのリガンドの過剰発現が見出され、自己分泌活性化ループを生じる(レビューについては、Robertson et al.2000を参照)。したがって、このRTKは、がん療法の標的として広く使用されている。RTKを標的とする小分子阻害剤及び細胞外リガンド結合ドメインに指向されるモノクローナル抗体(mAb)の両方が開発され、これまでにいくつかの臨床的成功が示されているが、ほとんどが選択された患者群に対してである。ヒトEGFRタンパク質及びそれをコードする遺伝子のデータベース受入番号は、(GenBank NM_005228.3)である。遺伝子及び/又はタンパク質についての他のデータベース識別子は、HGNC:3236、Entrez Gene:1956、Ensembl:ENSG00000146648、OMIM:131550及びUniProtKB:P00533である。受入番号は、主に、EGFRタンパク質を標的として特定する更なる方法を提供するために与えられ、抗体によって結合されたEGFRタンパク質の実際の配列は、例えば、いくつかのがんなどで生じる変異などのコード遺伝子における変異のため、変化し得る。本明細書でEGFRについて言及される場合、別段記載されない限り、参照はヒトEGFRについて言及される。EGFRに結合する抗原結合部位は、EGFR及びその様々なバリアント、例えば、いくつかのEGFR陽性腫瘍上に発現されるものに結合する。
【0099】
本明細書で使用される「EGFRリガンド」という用語は、EGFRに結合して活性化するポリペプチドを指す。EGFRリガンドの例は、EGF、TGF-α、HB-EGF、アンフィレグリン、ベータセルリン及びエピレグリンを含むが、これらに限定されない(レビューについては、Olayioye MA et al.;EMBO J(2000)Vol 19:pp3159-3167)。この用語には、天然に生じるポリペプチドの生物学的に活性な断片及び/又はバリアントが含まれる。
【0100】
例えば、EGFR又はEGFR遺伝子増幅の変異を介したEGFRの異常に活性化された形態は、非小細胞肺がん(NSCLC)における発がん性ドライバーであることが知られており、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤での治療において生じることが知られている。本開示は、EGFRの当該発がん性ドライバーを治療するために、本開示の抗体を第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と組み合わせて投与する、併用治療を提供する。ある特定の態様では、当該チロシンキナーゼ阻害剤耐性は、第1、第2及び/又は第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤に対する耐性を含む。
【0101】
ある特定の態様では、治療は、EGFRのリガンド非依存性活性化及び/又はcMETのリガンド非依存性活性化から生じるがんの治療を含む。別の態様では、治療は、EGFRのリガンド依存性活性化及び/又はcMETのリガンド依存性活性化から生じるがんの治療を含む。
【0102】
ある特定の態様では、がん又は対象は、オシメルチニブでの事前の治療を受けており、後天性又は三次オシメルチニブ耐性を有する。当該の事前のオシメルチニブ治療は、ある特定の態様では、一次選択又は二次選択治療であり、ある特定の態様では、一次選択治療、続いて、第2の治療としての本開示の組み合わせでの治療である。
【0103】
ある特定の態様では、がん又は対象は、活性化EGFR変異、承認されたチロシンキナーゼ阻害剤耐性変異、三次チロシンキナーゼ阻害剤耐性変異、EGFRへの第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤の結合を低減する変異、後天性チロシンキナーゼ阻害剤耐性変異、EGFR遺伝子増幅、cMET変異、cMET異常又はHGF発現の増加を含む。
【0104】
ある特定の態様では、がん又は対象は、フレーム内エクソン19欠失変異又はエクソン21変異などの活性化EGFR変異を含む(ある特定の態様では、L858R)。本明細書では、「活性化EGFR変異」という用語は、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する進行後に発症する変異を意味する。NSCLCにおいて、最も一般的な活性化変異は、エクソン19におけるフレーム内欠失(del19)及びエクソン21におけるアルギニンに対するロイシンの置換(L858R)であり、これらは合わせて、NSCLCにおけるEGFR変異の85~90%を占める。
【0105】
本開示の二重特異性抗体の有効性の臨床研究では、臨床有効性は、異なる遺伝的な発がん性のバックグラウンドを有する様々ながんで観察された。具体的には、臨床有効性は、NSCLCで観察された。例えば、臨床有効性は、EGFRエクソン20変異、L858RなどのEGFRエクソン21変異、EGFRエクソン19欠失変異、c-METエクソン14スキッピング変異、cMET増幅及びEGFR増幅変異を有する患者で観察された。したがって、ある特定の態様では、がんは、NSCLCであり、かつ/又は対象は、L858RなどのEGFRエクソン21変異、EGFRエクソン19欠失変異、若しくはc-METエクソン14スキッピング変異を含む、NSCLCを患っている。
【0106】
ある特定の態様では、がん又は対象は、承認されたチロシンキナーゼ阻害剤耐性変異を含む。本明細書では、「承認されたチロシンキナーゼ阻害剤耐性変異」という用語は、T790Mなどのがんの治療のために現在承認されているEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する進行後に発症する耐性を意味する。承認されたチロシンキナーゼ阻害剤の例は、オシメルチニブ及びアルモネルチニブである。
【0107】
ある特定の態様では、がん又は対象は、L718X(例えば、L718Q)、G719X(例えば、G719A)、L792X(例えば、L792H)、G796X(例えば、G796R、G796S、G796D)、C797X、C797X(例えば、C797S、C797G)などの三次チロシンキナーゼ阻害剤耐性変異を含む。本明細書では、「三次チロシンキナーゼ阻害剤耐性変異」という用語は、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する進行後に発症する耐性を意味する。
【0108】
ある特定の態様では、がん又は対象は、L792X、L718XなどのEGFRに対する第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤の結合を低減する変異を含む。
【0109】
ある特定の態様では、がん又は対象は、後天性チロシンキナーゼ阻害剤耐性変異、(T790M、L858R、エクソン19欠失変異、C797X、L792X、G796X、G724X、S768X、L718X又はエクソン20挿入変異など)、ある特定の態様では、G724X(例えば、G724S)、S768X(例えば、S768I)、L792X(例えば、L792H)、C797X(C797S及びC797Gを含む)、L798X(例えば、L798I)を含む、オシメルチニブに対する耐性を付与するか又はオシメルチニブに対する進行後に生じた変異を含む。本明細書では、「後天性チロシンキナーゼ阻害剤耐性変異」という用語は、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する進行後など、チロシンキナーゼ阻害剤での治療に対する進行後に獲得される耐性を意味する。
【0110】
ある特定の態様では、がん又は対象は、EGFR遺伝子増幅、例えば、オシメルチニブに対する進行後の、EGFRmRNAの増加、又はEGFR-ex19del対立遺伝子の存在と組み合わせた野生型EGFR対立遺伝子の増幅を含む。
【0111】
ある特定の態様では、がん又は対象は、cMETエクソン14スキッピング変異などのcMET変異を含む。
【0112】
ある特定の態様では、がん又は対象は、cMET増幅、cMET過剰発現、cMET経路のシグナル伝達の増加、cMET遺伝子増幅、及び/又はcMETタンパク質活性の増加などのcMET異常を含む。ある特定の態様では、当該がんは、NSCLCであり、当該cMET増幅は、MET/CEP7>5若しくはcfDNA≧2コピー又はそれらの任意の組み合わせによって特性評価される。ある特定の態様では、がんは、HGF発現の増加を含む。
【0113】
ある特定の態様では、cMET増幅は、MET/CEP7≧3、ある特定の態様ではMET/CEP7≧4、ある特定の態様ではMET/CEP7≧5(及び最大15若しくは20以下)によって、又はcfDNA≧1.8cMETコピー、例えば、(≧1.8、<2.2)若しくは(>2.2、<5)若しくは(≧5)によって特性評価される。
【0114】
ある特定の態様では、がん又は対象は、エクソン19欠失変異、ある特定の態様では、フレーム内エクソン19欠失、エクソン20ミスセンス変異(例えば、T790M)、又はL858Rなどのエクソン21変異を含む。
【0115】
ある特定の態様では、がん又は対象は、EGFRエクソン20変異、ある特定の態様ではエクソン20挿入変異、ある特定の態様ではフレーム内エクソン20挿入変異を含む。
【0116】
ある特定の態様では、がん又は対象は、近ループ挿入(767~772位)、遠ループ挿入(773~775位)、ある特定の態様では、V769_D770insASV、D770_N771insSVD、H773_V774insNPH、H773_V774insH、D770_N771insG、D770delinsGY、N771_P772insN、V774_C775insHV、D770_N771insGL、H773_V774insPH、A763_Y764insFQEA、D770_N771delinsEGN、D770_N771insGD、D770_N771insH、D770_N771insP、H773_V774insAH、H773_V774insGNPH、H773delinsSNPY、N771_P772insH、N771_P772insVDN、N771delinsGY、N771delinsKH、N771delinsRD、P772_H773delinsHNPY、P772_H773insGT、P772_H773insPNP、P772_H773insT、V769_D770insA、V769_D770insGG、V769_D770insGSV、V769_D770insGVV及びV769_D770insMASV;又は変異T790M、L792X(例えば、L792H)、C796X(例えば、G796R、G796S、G796D)、C797X(例えば、C797S、C797G)、L798I若しくはフレーム内エクソン20挿入、例えば、M766_A767insASV若しくはH773-V774insNPH、Ins761(EAFQ)、Ins770(ASV)、Ins771(G)、Ins774(NPH)、M766_A7671ns A、S768_V769InsSVA、P772_H773InsNS、D761_E762InsX1-7、A763_Y764InsX1-7、Y764_Y765 InsX1-7、M766_A767InsX1-7、A767_V768 InsX1-7、S768_V769 InsX1-7>V769_D770 InsX1-7>D770_N771 InsX1-7>N771_P772 InsX1-7>P772_H773 InsX1-7、H773_V774 InsX1-7若しくはV774_C775 InsX1-7から選択されるエクソン20変異を含む。ある特定の態様では、がん又は対象は、当該変異のうちの2つ以上を含む。
【0117】
ある特定の態様では、がん又は対象は、フレーム内エクソン19欠失変異、エクソン21変異、(ある特定の態様では、L858R)若しくはエクソン19におけるフレーム内欠失(del19)、又はエクソン21におけるアルギニンに対するロイシンの置換(L858R)、変異L861X(例えば、L861Q)若しくはL844X(例えば、L844V)を含む。ある特定の態様では、がん又は対象は、当該変異のうちの2つ以上を含む。
【0118】
ある特定の態様では、がん又は対象は、EGFR変異T790Mを含む。
【0119】
ある特定の態様では、がん又は対象は、L718X(例えば、L718Q、L718V)、G719X(例えば、G719A)、L792X(例えば、L792H、L792F、L792R、L792Y、L792V及びL792P)、G796X(例えば、G796R、G796S、G796D)、C797X(例えば、C797S、C797G、C797N)、M766X(例えば、M766Q)、R776X(例えば、R776C)から選択されるEGFR変異を含む。ある特定の態様では、がん又は対象は、当該変異のうちの2つ以上を含む。
【0120】
ある特定の態様では、がん又は対象は、T790M、L858R、エクソン19欠失変異、C797X、L792X、G796X、G724X、S768X、L718X、エクソン20挿入変異、変異G724X(例えば、G724S)、S768X(例えば、S768I)、L792X(例えば、L792H)、C797X(C797S及びC797Gを含む)、L798X(例えば、L798I)、I941X(例えば、I941R)、V948X(例えば、V948R)から選択されるEGFR変異を含む。ある特定の態様では、がん又は対象は、当該変異のうちの2つ以上を含む。
【0121】
ある特定の態様では、がん又は対象は、二重変異L858X/T790X(例えば、L858R/T790M)、T790X/L798X(例えば、T790M/L798I)、T790X/C797X(例えば、T790M/C797S)、G719X/R776X(例えば、G719A/R776C)又はdelE746_A750/T790Mを含む。
【0122】
ある特定の態様では、がん又は対象は、二重変異D770insSVD/E762X(例えば、E762K)、D770insSVD/L792X(例えば、L792I、L792S)、D770insSVD/P794X(例えば、P794S)又はD770insSVD/G796X(例えば、G796D)を含む。
【0123】
ある特定の態様では、がん又は対象は、二重変異H773insH/E762X(例えば、E762K)、H773insH/L792X(例えば、L792I、L792S)、H773insH/P794X(例えば、P794S)又はH773insH/G796X(例えば、G796D)を含む。
【0124】
ある特定の態様では、がん又は対象は、二重変異H773insNPH/E762X(例えば、E762K)、H773insNPH/L792X(例えば、L792I、L792S)、H773insNPH/P794X(例えば、P794S)又はH773insNPH/G796X(例えば、G796D)を含む。
【0125】
ある特定の態様では、がん又は対象は、二重変異L858X/L718X(例えば、L858R/cis-L718Q)、L858X/C797X(例えば、L858R/cis-C797S)、エクソン19del/C797X(例えば、エクソン19del/cis-C797S)を含む。
【0126】
ある特定の態様では、がん又は対象は、三重変異L858X/T790X/C797X(例えば、L858R/T790M/C797S)、L858X/T790X/M766X(例えば、L858R/T790M/M766Q)、L858X/T790X/L718X(例えば、L858R/T790M/cis-L718Q、L858R/T790M/L718Q)、L858X/T790X/C797X(例えば、L858R/T790M/cis-C797S)、エクソン19del/T790X/C797X(例えば、エクソン19del/T790M/cis-C797S)、L858X/T790X/C941X(例えば、L858R/T790M/I941R)、delE746_A750/T790X/C797X(例えば、delE746_A750/T790M/C797S)を含む。
【0127】
ある特定の態様では、がん又は対象は、EGFR遺伝子増幅、例えば、オシメルチニブに対する進行後の、EGFRmRNAの増加、又はEGFR-ex19del対立遺伝子の存在と組み合わせた野生型EGFR対立遺伝子の増幅を含む。
【0128】
ある特定の態様では、がんは、cMETエクソン14スキッピング変異などのcMET変異を含む。
【0129】
チロシンタンパク質キナーゼMET又は肝細胞成長因子受容体(HGFR)とも呼ばれるcMETは、ヒトにおいてMET遺伝子によってコードされるタンパク質である。このタンパク質は、チロシンキナーゼ活性を有する。一次単鎖前駆体タンパク質は、翻訳後に切断されて、成熟受容体を形成するためにジスルフィド結合されているアルファ及びベータサブユニットを産生する。
【0130】
cMETの調節不全、又は異常に活性化されたcMETは、腫瘍成長、腫瘍に栄養素を供給する新しい血管の形成(血管新生)、及び他の臓器へのがんの拡散(転移)を誘導し得る。cMETは、腎臓、肝臓、胃、乳房、及び脳のがんを含む多くのタイプのヒト悪性腫瘍で調節不全される。cMET遺伝子は、MET原がん遺伝子、受容体チロシンキナーゼ、肝細胞成長因子受容体、チロシンタンパク質キナーゼMET、散乱因子受容体、原がん遺伝子C-MET、HGF/SF受容体、HGF受容体、SF受容体、EC2.7.10.1、MET原がん遺伝子、EC2.7.10、DFNB97、AUTS9、RCCP2、C-MET、MET、HGFRなどの多くの異なる名称で知られており、cMETの外部Idは、HGNC:7029、Entrez Gene:4233、Ensembl:ENSG00000105976、OMIM:164860及びUniProtKB:P08581である。受入番号は、主に、cMETタンパク質を標的として特定する更なる方法を提供するために与えられ、抗体によって結合されたcMETタンパク質の実際の配列は、例えば、いくつかのがんなどで生じる変異などのコード遺伝子における変異のため、変化し得る。本明細書でcMETについて言及される場合、別段記載されない限り、参照はヒトcMETについて言及される。cMETに結合する抗原結合部位は、cMET及びその様々なバリアント、例えば、いくつかのcMET陽性腫瘍上に発現されるものに結合する。cMET異常又は調節不全の例は、cMET変異(エクソン14スキッピング変異など)、cMET増幅、cMET過剰発現、cMET経路のシグナル伝達の増加、cMET遺伝子増幅、及び/又はcMETタンパク質活性の増加を含む。また、cMET調節不全は、HGF発現の増加によって引き起こされ得る。c-METの調節不全は、腫瘍浸潤、血管新生及び転移の確立されたドライバーである(Birchmeier et al.,2003)。c-METの3つのタイプの生物学的変化は、発がんにつながり得る:増幅、変異及び融合。これらのゲノム変化は、主に、腫瘍成長の一次又は二次ドライバーのいずれかとして見出され、そのような異常は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤でのがん患者の治療後に生じることが報告されている(参照Suzawa et al.,DOI:10.1200/PO.19.00011 JCO Precision Oncology-May 10,Vol3,2019)。
【0131】
抗体は、典型的には、抗原の一部のみを認識する。抗原は、典型的には、必ずしもタンパク質ではない。抗体によって結合された抗原上の認識又は結合部位は、エピトープと称され、エピトープは、線状又は立体構造であり得る。抗原への抗体の結合は、典型的には、特異性である。抗体の「特異性」は、特定のエピトープに対するその選択性を指すが、「親和性」は、抗体の抗原結合部位とそれが結合するエピトープとの相互作用の強度を指す。
【0132】
本開示の例示的な抗体は、EGFR及びcMET、ある特定の態様ではヒトEGFR及びヒトcMETに結合する。本開示のEGFR/cMET二重特異性抗体は、EGFRに結合し、他の点で同一の条件下では、同じ種の相同受容体ErbB-2及びErbB-4に少なくとも100倍低く結合する。本開示のEGFR/cMET二重特異性抗体は、cMETに結合し、他の点で同一の条件下では、同じ種の受容体ErbB-2及びErbB-4に少なくとも100倍低く結合する。受容体が細胞表面受容体であることを考慮すると、結合は、受容体を発現する細胞について評価され得る。ある特定の態様における本開示の二重特異性抗体は、ヒト、カニクイザルEGFR及び/又はマウスEGFRに結合する。
【0133】
EGFR及びcMETに結合する抗体は、そのような他のタンパク質が同じエピトープを含有する場合、同様に他のタンパク質に結合してもよい。したがって、「結合する」という用語は、同じエピトープを含有する別の1つ以上のタンパク質への抗体の結合を排除しない。そのような結合は、典型的には、交差反応性と称される。EGFR/cMET二重特異性抗体は、典型的には、出生後、ある特定の態様では成人のヒトにおいて、細胞の膜上のEGFR及び/又はcMET以外の他のタンパク質に結合しない。本開示による抗体は、典型的には、以下でより詳細に概説されるように、少なくとも1×10e-6Mの結合親和性(すなわち、平衡解離定数Kd)でEGFRに結合することができる。
【0134】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、タンパク質の免疫グロブリンクラスに属するある特定の態様におけるタンパク質性分子を意味する。抗体は、典型的には、抗原上のエピトープに結合する2つの可変ドメインを含有する。そのようなドメインは、抗体の可変ドメインに由来するか、又はこれと配列相同性を共有する。ある特定の態様における本開示の二重特異性抗体は、2つの可変ドメインを含む。治療的使用のための抗体は、ある特定の態様では、可能な限り治療される対象の天然抗体に近い(例えば、ヒト対象のためのヒト抗体)。抗体結合は、特異性及び親和性に関して表され得る。特異性は、どの抗原又はそのエピトープが結合ドメインによって特異的に結合されるかを決定する。典型的には、治療用途のための抗体は、最大1×10e-10M以上の親和性を有し得る。本開示の二重特異性抗体などの抗体は、ある特定の態様では、天然抗体の定常ドメイン(Fc部分)を含む。本開示の抗体は、典型的には、ヒトIgGサブクラスのある特定の態様では、二重特異性全長抗体である。ある特定の態様では、本開示の抗体は、ヒトIgG1サブクラスのものである。本開示のそのような抗体は、ヒトへのインビボ投与時に好ましい半減期を有し、クローン細胞での共発現時にホモ二量体よりも優先的にヘテロ二量体を形成する修飾された重鎖を提供し得るCH3工学技術を有する、優れたADCC特性を有し得る。抗体のADCC活性は、当業者に既知の技法によっても改善され得る。
【0135】
本開示の抗体は、ある特定の態様では、「全長」抗体である。本開示による「全長」という用語は、本質的に完全な抗体を含むと定義されるが、必ずしも無傷な抗体の全ての機能を有するわけではない。誤解を避けるために、全長抗体は、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含有する。各鎖は、定常(C)領域及び可変(V)領域を含有し、これらは、CH1、CH2、CH3、VH、及びCL、VLと指定されたドメインに分類され得る。典型的には、抗体は、Fab部分に含まれる可変ドメインを介して抗原に結合し、結合後、定常ドメインを介して、主にFc部分を介して免疫系の分子及び細胞と相互作用することができる。本開示による全長抗体は、所望の特徴を提供する変異が存在し得る抗体を包含する。結果として得られた抗体の特異性及び/又は親和性特性を本質的に変化させることなく、1つ以上のアミノ酸残基が欠失した抗体は、「全長抗体」という用語内に包含される。例えば、IgG抗体は、定常領域において1~20アミノ酸残基の挿入、欠失若しくは置換、又はそれらの組み合わせを有し得る。
【0136】
ある特定の態様では、本開示の抗体は、二重特異性全長IgG1抗体又はヒトIgG1などの二重特異性IgG抗体である。免疫原性を理由とした、それらの典型的には好ましい半減期のため、及び完全に自己の(ヒト)分子に近いままでいることが望まれるため、全長IgG抗体が好ましい。ある特定の態様では、本開示の抗体は、全長IgG1、全長IgG2、全長IgG3又は全長IgG4抗体である。
【0137】
EGFRに結合することができ、かつ本明細書に示されるようなMF3370又はそのバリアントのアミノ酸配列を含む、可変ドメインは、ある特定の態様では、EGFRドメインIIIに結合する(国際特許出願PCT/NL2015/050124の表4を参照;参照により本明細書に組み込まれるWO2015/130172)。ある特定の態様における可変ドメインは、EGFRへのリガンドEGFの結合を遮断するか、又はEGFRへの結合についてEGFリガンドと競合する。EGFRへの可変ドメインの結合は、セツキシマブによって阻害され得る。可変ドメインは、セツキシマブ及びザルツムマブによって認識されるエピトープとは異なるエピトープに結合する。例えば、可変ドメインは、マウスEGFRに結合するが、セツキシマブ及びザルツムマブは結合せず、マウスとヒトEGFRドメインIIとの間で異なる残基のうちの1つ以上が、セツキシマブ及びザルツムマブの結合において役割を果たすが、本開示の抗体においては役割を果たさないことを示す。ヒト、マウス、カニクイザルEGFR交差反応性を有する本開示の二重特異性抗体の利点は、ヒトがんモデルを用いた異種移植片調査の使用を可能にすることであり、これは、抗体が受容体を有する正常なマウス細胞にも結合する一方で、カニクイザル毒性学研究における使用も可能であるため、有効性及び毒性に関してより予測的であり得る。一態様では、本開示は、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメインと、ヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインと、を含み、当該第1の可変ドメインが、マウスEGFR、カニクイザルEGFR又はその両方に結合することもできる、二重特異性抗体を提供する。
【0138】
cMET可変ドメインは、ある特定の態様では、本明細書に示されるようなMF4356又はそのバリアントのアミノ酸配列を含み、ある特定の態様では、cMETへの抗体MetMabの結合を遮断する。ある特定の態様における可変ドメインは、cMETへのリガンドHGFの結合を遮断するか、又はcMETへの結合についてリガンドHGFと競合する。可変ドメインは、最大半量結合条件でのcMETへのMetMabの結合が、飽和量の当該可変ドメインの存在下で、少なくとも40%、ある特定の態様では少なくとも60%減少される場合に、cMETへの抗体MetMabの結合を遮断する。可変ドメインは、ある特定の態様では、二価単一特異性抗体の文脈で提供される。cMET可変ドメインは、ある特定の態様では、cMETのsemaドメインに結合することができる。本開示のcMET可変ドメインは、cMETへの結合について5D5と競合していても、又は5D5などの報告されている抗cMET参照抗体と競合していなくてもよい。表2を参照されたい。
【0139】
本開示の可変ドメインは、EGFR(第1の可変ドメイン)に結合することができ、ある特定の態様では、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYX1X2NTNYAQKLQG、及び配列X3X4X5X6HWWLX7Aを含むCDR3を有し、X1=N又はS、X2=A又はG、X3=D又はG、X4=R、S又はY、X5=H、L又はY、X6=D又はW、かつX7=D又はGである、重鎖可変領域を含む。
【0140】
X1~7は、ある特定の態様では、
X1=N、X2=G、X3=D、X4=S、X5=Y、X6=W、かつX7=Gであるか、
X1=N、X2=A、X3=D、X4=S、X5=Y、X6=W、かつX7=Gであるか、
X1=S、X2=G、X3=D、X4=S、X5=Y、X6=W、かつX7=Gであるか、
X1=N、X2=G、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、
X1=N、X2=A、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、
X1=S、X2=G、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、
X1=N、X2=G、X3=G、X4=Y、X5=L、X6=D、かつX7=Gであるか、
X1=N、X2=A、X3=G、X4=Y、X5=L、X6=D、かつX7=Gであるか、又は
X1=S、X2=G、X3=G、X4=Y、X5=L、X6=D、かつX7=Gである。
【0141】
ある特定の態様では、
X1=N、X2=G、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、
X1=N、X2=A、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、又は
X1=S、X2=G、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dである。
【0142】
ある特定の態様では、X1=N、X2=G、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dである。
【0143】
第1の可変ドメインのCDR3配列における配列X3X4X5X6HWWLX7Aにおけるアミノ酸Aの後のアミノ酸は、様々であり得る。配列X3X4X5X6HWWLX7Aの後のアミノ酸配列は、FDYであり得る。ある特定の態様における第1の可変ドメインのCDR3は、配列X3X4X5X6HWWLX7AF、ある特定の態様ではX3X4X5X6HWWLX7AFD、ある特定の態様ではX3X4X5X6HWWLX7AFDYを含む。
【0144】
ある特定の態様における第1の可変ドメインは、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYNGNTNYAQKLQG、及びCDR3配列X3X4X5X6HWWLX7Aを有する、重鎖可変領域を含む。
【0145】
ある特定の態様における第1の可変ドメインは、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYNGNTNYAQKLQG、及び配列DRHWHWWLDAを含むCDR3を有する、重鎖可変領域を含む。第1の可変ドメインのCDR3配列における配列LDAの後のアミノ酸は、様々であり得る。配列LDAの後のアミノ酸配列は、FDYであり得る。ある特定の態様では、第1の可変ドメインのCDR3は、配列DRHWHWWLDAF、ある特定の態様ではDRHWHWWLDAFD、ある特定の態様ではDRHWHWWLDAFDYを含む。
【0146】
ある特定の態様では、第1の可変ドメインは、示される配列に関して、最大10個、ある特定の態様では、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個、ある特定の態様では、0、1、2、3、4又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせを有する、
図2に示されるような、MF3353、MF8229、MF8228、MF3370、MF8233、MF8232、MF3393、MF8227又はMF8226のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、第1の可変ドメインは、
図2に示されるような、MF3353、MF8229、MF8228、MF3370、MF8233、MF8232、MF3393、MF8227又はMF8226のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、第1の可変ドメインは、
図2に示されるような、MF3353、MF8229、MF8228、MF3370、MF8233、MF8232、MF3393、MF8227又はMF8226のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0147】
ある特定の態様におけるcMETに結合することができる可変ドメイン(第2の可変ドメイン)は、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号1~23(
図3)の配列のうちの1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。ある特定の態様における第2の可変ドメインの重鎖可変領域は、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号1~3、7、8、10、13、15、16、17、21、22又は23の配列のうちの1つのアミノ酸配列を含む。ある特定の態様における第2の可変ドメインの重鎖可変領域は、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号2、7、8、10、13、又は23の配列のうちの1つのアミノ酸配列を含む。ある特定の態様における第2の可変ドメインの重鎖可変領域は、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号13又は配列番号23の配列のアミノ酸配列を含む。ある特定の態様では、第2の可変ドメインは、MF8225(配列番号1)、MF8243(配列番号2)、MF8224(配列番号3)、MF8239(配列番号4)、MF8242(配列番号5)、MF8237(配列番号6)、MF8240(配列番号7)、MF8234(配列番号8)、MF8245(配列番号9)、MF8231(配列番号10)、MF8247(配列番号11)、MF8238(配列番号12)、MF8230(配列番号13)、MF8248(配列番号14)、MF8246(配列番号15)、MF8223(配列番号16)、MF8222(配列番号17)、MF8235(配列番号18)、MF8236(配列番号19)、MF8241(配列番号20)、MF8244(配列番号21)、MF8221(配列番号22)又はMF4356(配列番号23)のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0148】
ある特定の態様では、第1の可変ドメインは、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYNGNTNYAQKLQG、及び配列DRHWHWWLDA、ある特定の態様では配列DRHWHWWLDAFDYを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、第2の可変ドメインは、CDR1配列SYSMN、CDR2配列WINTYTGDPTYAQGFTG、及びCDR3配列ETYYYDRGGYPFDPを有する重鎖可変領域を含む。ある特定の態様における、第1及び第2の可変ドメインの軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3は、アミノ酸配列CDR1-QSISSY、CDR2-AAS、CDR3-QQSYSTPPT、すなわち、IGKV1-39のCDR(IMGTによる)を各々含む。
【0149】
ある特定の態様では、第1の可変ドメインは、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYNGNTNYAQKLQG、及び配列DRHWHWWLDAを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、第2の可変ドメインは、CDR1配列TYSMN、CDR2配列WINTYTGDPTYAQGFTG、及び配列ETYFYDRGGYPFDPを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含む。ある特定の態様における、第1及び第2の可変ドメインの軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3は、アミノ酸配列CDR1-QSISSY、CDR2-AAS、CDR3-QQSYSTPPT、すなわち、IGKV1-39のCDR(IMGTによる)を各々含む。
【0150】
EGFRの細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメインと、cMETの細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインと、を含む、二重特異性抗体であって、第1の可変ドメインが、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYNANTNYAQKLQG、及び配列DRHWHWWLDAを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、第2の可変ドメインが、CDR1配列SYSMN、CDR2配列WINTYTGDPTYAQGFTG、及びCDR3配列ETYYYDRGGYPFDPを有する重鎖可変領域を含む、二重特異性抗体。ある特定の態様における、第1及び第2の可変ドメインの軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3は、アミノ酸配列CDR1-QSISSY、CDR2-AAS、CDR3-QQSYSTPPT、すなわち、IGKV1-39のCDR(IMGTによる)を各々含む。
【0151】
EGFRの細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメインと、cMETの細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインと、を含む、二重特異性抗体であって、第1の可変ドメインが、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYNANTNYAQKLQG、及び配列DRHWHWWLDAを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、第2の可変ドメインが、CDR1配列TYSMN、CDR2配列WINTYTGDPTYAQGFTG、及び配列ETYFYDRGGYPFDPを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含む、二重特異性抗体。ある特定の態様における、第1及び第2の可変ドメインの軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3は、アミノ酸配列CDR1-QSISSY、CDR2-AAS、CDR3-QQSYSTPPT、すなわち、IGKV1-39のCDR(IMGTによる)を各々含む。
【0152】
EGFRの細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメインと、cMETの細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインと、を含む、二重特異性抗体であって、第1の可変ドメインが、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYSGNTNYAQKLQG、及び配列DRHWHWWLDAを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、第2の可変ドメインが、CDR1配列SYSMN、CDR2配列WINTYTGDPTYAQGFTG、及びCDR3配列ETYYYDRGGYPFDPを有する重鎖可変領域を含む、二重特異性抗体。ある特定の態様における、第1及び第2の可変ドメインの軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3は、アミノ酸配列CDR1-QSISSY、CDR2-AAS、CDR3-QQSYSTPPT、すなわち、IGKV1-39のCDR(IMGTによる)を各々含む。
【0153】
EGFRの細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメインと、cMETの細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインと、を含む、二重特異性抗体であって、第1の可変ドメインが、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYSGNTNYAQKLQG、及び配列DRHWHWWLDAを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、第2の可変ドメインが、CDR1配列TYSMN、CDR2配列WINTYTGDPTYAQGFTG、及び配列ETYFYDRGGYPFDPを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含む、二重特異性抗体。ある特定の態様における、第1及び第2の可変ドメインの軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3は、アミノ酸配列CDR1-QSISSY、CDR2-AAS、CDR3-QQSYSTPPT、すなわち、IGKV1-39のCDR(IMGTによる)を各々含む。
【0154】
cMET結合可変ドメインが、CDR2配列「WINTYTGDPTYAQGFTG」を有すると記載されているある特定の態様では、CDR2配列は、「WINTYTGDPTYAQGFT」でもあり得る。
【0155】
ある特定の態様における、本明細書に記載されている、第1及び第2の可変ドメインの軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3は、アミノ酸配列CDR1-QSISSY、CDR2-AAS、CDR3-QQSYSTPPT、すなわち、IGKV1-39のCDR(IMGTによる)を各々含む。そのような実施形態のいくつかでは、CDR3は、アミノ酸配列QQSYSTPを含む。本明細書に記載されているような二重特異性抗体のいくつかの実施形態では、第1及び第2の可変ドメインは、共通軽鎖、ある特定の態様では、
図4Bの軽鎖可変領域を含む。
【0156】
別のある特定の態様では、EGFR/cMET二重特異性抗体は、
図1に示されるMF3755の重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3を含むヒトEGFRの細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメインと、
図1に示されるMF4297の重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3を含むヒトcMETの細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインと、を含む。当該第1及び第2の可変ドメインにおける軽鎖可変領域は、ある特定の態様では、本明細書に記載されているような共通軽鎖可変領域である。ある特定の態様における、第1及び第2の可変ドメインの軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3は、アミノ酸配列CDR1-QSISSY、CDR2-AAS、CDR3-QQSYSTPPT、すなわち、IGKV1-39のCDR(IMGTによる)を各々含む。ある特定の態様では、抗体は、示される配列に関して、最大10個、ある特定の態様では、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個、ある特定の態様では、0、1、2、3、4又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせを有する、
図1に示されるようなMF3755のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、第1の可変ドメインは、
図1に示されるようなMF3755のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、cMET(第2の可変ドメイン)に結合することができる可変ドメインは、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する
図1に示されるようなMF4297のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。ある特定の態様における第2の可変ドメインの重鎖可変領域は、
図1に示されるようなMF4297のアミノ酸配列を含む。
【0157】
本開示の文脈における「二重特異性」(bs)という用語は、抗体が、2つの異なる標的に又は同じ標的上の2つのエピトープに結合することができることを意味し、例えば、抗体の1つの可変ドメイン(先に定義されている通り)は、EGFR上のエピトープに結合しており、第2の可変ドメインは、cMET上のエピトープに結合している。二重特異性抗体によって認識される2つの抗原の発現レベル、(亜)細胞局在化及び化学量論に依存して、抗体の両方のFabアームは、それらのエピトープに同時に結合していても、又は同時に結合していなくてもよい。二重特異性抗体の一方のアームは、典型的には、一方の抗体の可変ドメインを含有し、もう一方のアームは、別の抗体の可変ドメインを含有する(すなわち、二重特異性抗体の一方のアームは、一方の軽鎖と対合した一方の重鎖によって形成され、他方のアームは、軽鎖と対合した異なる重鎖によって形成される)。したがって、本開示の好ましい二重特異性抗体の化学量論は、1:1のEGFR:cMET結合である。
【0158】
本開示の二重特異性抗体の重鎖可変領域は、典型的には、互いに異なるが、軽鎖可変領域は、ある特定の態様では同じである。異なる重鎖可変領域が同じ軽鎖可変領域に会合している二重特異性抗体は、共通軽鎖可変領域(cLcv)を有する二重特異性抗体とも称される。軽鎖定常領域も同じであることが好ましい。そのような二重特異性抗体は、共通軽鎖(cLc)を有するものと称される。したがって、両方のアームが共通軽鎖を含む、本開示による二重特異性抗体が更に提供される。
【0159】
本開示による「共通軽鎖」という用語は、同一であり得るか、又はいくつかのアミノ酸配列の差を有し得るが、全長抗体の結合特異性は影響を受けない、二重特異性抗体における1つ以上の軽鎖を指す。例えば、保存的アミノ酸変化、重鎖と対合したときに結合特異性に寄与しないか、又は部分的にしか寄与しない領域におけるアミノ酸の変化などを導入し、かつ試験することにより、同一ではないが依然として機能的に等価である軽鎖を調製するか、又は見出すことは、例えば、本明細書で使用される共通軽鎖の定義の範囲内で可能である。「再配列された」という用語の付加を伴うか否かにかかわらず、「共通軽鎖」、「共通LC」、「cLC」、「単一軽鎖」という用語は全て、本明細書で互換的に使用される。「再配列された」という用語の付加を伴うか否かにかかわらず、「共通軽鎖可変領域」、「共通VL」、「共通LCv」「cLCv」、「単一VL」という用語は全て、本明細書で互換的に使用される。本開示のある特定の態様では、多重特異性抗体は、機能的抗原結合ドメインを有する抗体を形成するために、異なる結合特異性の少なくとも2個、ある特定の態様では複数の重鎖(可変領域)と組み合わせることができる、共通軽鎖(可変領域)を有する(例えば、WO2009/157771)。共通軽鎖(可変領域)は、ある特定の態様では、ヒト軽鎖(可変領域)である。ある特定の態様における共通軽鎖(可変領域)は、生殖系列配列を有する。好ましい生殖系列配列は、良好な熱力学的安定性、収率及び可溶性を有する軽鎖可変領域である。好ましい生殖系列軽鎖は、O12である。ある特定の態様における共通軽鎖は、生殖系列ヒトVk遺伝子セグメントによってコードされる軽鎖を含み、ある特定の態様では、再配列された生殖系列ヒトカッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01(
図4A)である。共通軽鎖可変領域は、ある特定の態様では、再配列された生殖系列ヒトカッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01の可変領域である。ある特定の態様における共通軽鎖は、0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する、
図4B又は4Dに示されるような軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様における共通軽鎖は、軽鎖定常領域、ある特定の態様ではカッパ軽鎖定常領域を更に含む。共通軽鎖をコードする核酸は、共通軽鎖タンパク質を発現するために使用される細胞系に対してコドンを最適化され得る。コード核酸は、生殖系列核酸配列から逸脱し得る。
【0160】
ある特定の態様では、軽鎖は、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する、
図4Aに示されるようなO12/IgVκ1-39*01遺伝子セグメントのアミノ酸配列を含む軽鎖領域を含む。「O12軽鎖」という語句は、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する、示される
図4Aの一部としてのO12/IgVκ1-39
*01遺伝子セグメントのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む軽鎖の略として、本明細書全体で使用される。IgVκ1-39は、免疫グロブリン可変カッパ1-39遺伝子の略である。この遺伝子は、免疫グロブリンカッパ可変1-39、IGKV139、IGKV1-39、O12a又はO12としても知られている。この遺伝子の外部Idは、HGNC:5740、Entrez Gene:28930、Ensembl:ENSG00000242371である。IgVκ1-39の好ましいアミノ酸配列が
図4Eに提示される。この図は、V領域の配列を列記する。V領域は、5つのJ領域のうちの1つと組み合わせることができる。
図4B及び4Dは、J領域と組み合わせたIgVκ1-39の2つの好ましい配列を記載する。合わせられた配列は、IGKV1-39/jk1及びIGKV1-39/jk5と示され、代替名称は、IgVκ1-39*01/IGJκ1*01又はIgVκ1-39*01/IGJκ5*01(imgt.orgのIMGTデータベースワールドワイドウェブによる命名)である。
【0161】
軽鎖可変領域を含むO12/IgVκ1-39*01が生殖系列配列であることが好ましい。軽鎖可変領域を含むIGJκ1*01又は/IGJκ5*01が生殖系列配列であることが更に好ましい。ある特定の態様では、IGKV1-39/jk1又はIGKV1-39/jk5軽鎖可変領域は、生殖系列配列である。
【0162】
ある特定の態様では、軽鎖可変領域は、生殖系列O12/IgVκ1-39*01を含む。ある特定の態様では、軽鎖可変領域は、カッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01又はIgVκ1-39*01/IGJκ5*01を含む。ある特定の態様では、IgVκ1-39*01/IGJκ1*01。ある特定の態様における軽鎖可変領域は、生殖系列カッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01又は生殖系列カッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ5*01、ある特定の態様では生殖系列IgVκ1-39*01/IGJκ1*01を含む。
【0163】
O12軽鎖を有する抗体を産生する成熟B細胞は、多くの場合、生殖系列配列、すなわち、生物の非リンパ系細胞における正常配列に対して1つ以上の変異を経た軽鎖を産生する。これらの変異に関与するプロセスは、多くの場合、体細胞(超)変異と称される。結果として得られた軽鎖は、親和性成熟軽鎖と称される。そのような軽鎖は、O12生殖系列配列に由来する場合、O12由来の軽鎖である。本明細書では、「共通軽鎖」という語句は、「共通軽鎖由来の軽鎖」を含み、「O12軽鎖」という語句は、O12由来の軽鎖を含む。体細胞超変異によって導入される変異は、研究室で人工的に導入することもできる。研究室では、他の変異も、必ずしも量ではなく種類に関して軽鎖の特性に影響を及ぼすことなく導入することができる。軽鎖は、これが、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する
図4A、
図4B、
図4D又は
図4Eに示されるような配列を含む場合、少なくともO12軽鎖である。ある特定の態様では、O12軽鎖は、0~9個、0~8個、0~7個、0~6個、0~5個、0~4個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する
図4A、4b、4d又は4eに示されるような配列を含む軽鎖である。ある特定の態様では、O12軽鎖は、0~5個、ある特定の態様では0~4個、ある特定の態様では0~3個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する
図4A、
図4B、
図4D又は
図4Eに示されるような配列を含む軽鎖である。ある特定の態様では、O12軽鎖は、0~2個、ある特定の態様では0~1個、ある特定の態様では0個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する
図4A、
図4B、
図4D又は
図4Eに示されるような配列を含む軽鎖である。ある特定の態様では、O12軽鎖は、言及されているアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する
図4A又は
図4Bに示されるような配列を含む軽鎖である。ある特定の態様では、軽鎖は、
図4Aの配列を含む。ある特定の態様では、軽鎖可変領域は、
図4Bの配列を含む。言及されている1、2、3、4又は5個のアミノ酸置換は、ある特定の態様では、保存的アミノ酸置換であり、重鎖及び/又は軽鎖のCDR領域に存在し得、挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせは、ある特定の態様では、VL鎖のCDR3領域には存在せず、ある特定の態様では、VL鎖のCDR1、CDR2若しくはCDR3領域又はFR4領域には存在しない。
【0164】
共通軽鎖は、ラムダ軽鎖を有し得、したがって、これはまた、本開示の文脈で提供されるが、しかしながら、カッパ軽鎖が好ましい。本開示の共通軽鎖の定常部分は、カッパ又はラムダ軽鎖の定常領域であり得る。これは、ある特定の態様では、カッパ軽鎖の定常領域であり、ある特定の態様では、当該共通軽鎖は、生殖系列軽鎖であり、ある特定の態様では、IgVKl-39遺伝子セグメントを含む再配列された生殖系列ヒトカッパ軽鎖であり、ある特定の態様では、再配列された生殖系列ヒトカッパ軽鎖IgVKl-39*01/IGJKl*01である(
図4)。再配列された生殖系列ヒトカッパ軽鎖IgVκ1-39
*01/IGJκ1
*01、IGKV1-39/IGKJ1、huVκ1-39軽鎖又は略してhuVκ1-39若しくは単に1-39という用語は、本出願全体で互換的に使用される。
【0165】
共通軽鎖を産生する細胞は、例えば、再配列された生殖系列ヒトカッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01、及びラムダ定常領域に融合された言及されている軽鎖の可変領域を含む軽鎖を産生することができる。
【0166】
ある特定の態様では、軽鎖可変領域は、0~5個、ある特定の態様では0~10個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有するアミノ酸配列DIQMT QSPSS LSASV GDRVT ITCRA SQSIS SYLNW YQQKP GKAPK LLIYA ASSLQ SGVPS RFSGS GSGTD FTLTI SSLQP EDFAT YYCQQ SYSTP PTFGQ GTKVE IK又はDIQMT QSPSS LSASV GDRVT ITCRA SQSIS SYLNW YQQKP GKAPK LLIYA ASSLQ SGVPS RFSGS GSGTD FTLTI SSLQP EDFAT YYCQQ SYSTP PITFG QGTRL EIKを含む。ある特定の態様では、軽鎖可変領域は、示されるアミノ酸配列に関して、0~9個、0~8個、0~7個、0~6個、0~5個、0~4個、ある特定の態様では0~3個、ある特定の態様では0~2個、ある特定の態様では0~1個、ある特定の態様では0個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを含む。挿入、欠失、付加又は置換の組み合わせは、整列させた配列が5個超の位置で異ならない場合の特許請求されている組み合わせである。ある特定の態様では、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列DIQMT QSPSS LSASV GDRVT ITCRA SQSIS SYLNW YQQKP GKAPK LLIYA ASSLQ SGVPS RFSGS GSGTD FTLTI SSLQP EDFAT YYCQQ SYSTP PTFGQ GTKVE IK又はDIQMT QSPSS LSASV GDRVT ITCRA SQSIS SYLNW YQQKP GKAPK LLIYA ASSLQ SGVPS RFSGS GSGTD FTLTI SSLQP EDFAT YYCQQ SYSTP PITFG QGTRL EIKを含む。ある特定の態様では、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列DIQMT QSPSS LSASV GDRVT ITCRA SQSIS SYLNW YQQKP GKAPK LLIYA ASSLQ SGVPS RFSGS GSGTD FTLTI SSLQP EDFAT YYCQQ SYSTP PTFGQ GTKVE IKを含む。ある特定の態様では、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列DIQMT QSPSS LSASV GDRVT ITCRA SQSIS SYLNW YQQKP GKAPK LLIYA ASSLQ SGVPS RFSGS GSGTD FTLTI SSLQP EDFAT YYCQQ SYSTP PITFG QGTRL EIKを含む。
【0167】
アミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせは、ある特定の態様では軽鎖可変領域のCDR3領域内には存在せず、ある特定の態様では軽鎖可変領域のCDR1又はCDR2領域には存在しない。ある特定の態様では、軽鎖可変領域は、示される配列に関して、欠失、付加又は挿入を含まない。この態様では、重鎖可変領域は、示されるアミノ酸配列に関して0~5個のアミノ酸置換を有し得る。アミノ酸置換は、ある特定の態様では、保存的アミノ酸置換である。ある特定の態様における、本開示の抗体の軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3は、アミノ酸配列CDR1-QSISSY、CDR2-AAS、CDR3-QQSYSTPPT、すなわち、IGKV1-39のCDR(IMGTによる)を各々含む。
【0168】
ある特定の態様では、本明細書に記載されているような二重特異性抗体は、EGFRの細胞外部分に結合している1つの重鎖可変領域/軽鎖可変領域(VH/VL)の組み合わせ及びcMETの細胞外に結合している第2のVH/VLの組み合わせを有する。ある特定の態様では、当該第1のVH/VLの組み合わせにおけるVLは、当該第2のVH/VLの組み合わせにおけるVLに類似している。特定の態様では、第1及び第2のVH/VLの組み合わせにおけるVLは、同一である。ある特定の態様では、二重特異性抗体は、EGFRの細胞外部分に結合している1つの重/軽(H/L)鎖の組み合わせとcMETの細胞外部分に結合している1つのH/L鎖の組み合わせとを有する全長抗体である。ある特定の態様では、当該第1のH/L鎖の組み合わせにおける軽鎖は、当該第2のH/L鎖の組み合わせにおける軽鎖に類似している。特定の態様では、第1及び第2のH/L鎖の組み合わせにおける軽鎖は、同一である。
【0169】
二重特異性抗体又はその逆の単一特異性抗体の産生を有利にする発現を有する宿主細胞を産生するために、いくつかの方法が発表されている。本開示では、抗体分子の細胞発現は、各々の単一特異性抗体の産生よりも二重特異性抗体の産生に有利であることが好ましい。このようなことは、典型的には、重鎖の定常領域を、それらがホモ二量体化よりもヘテロ二量体化(すなわち、他の重鎖/軽鎖の組み合わせの重鎖との二量体化)を有利にするように修飾することによって達成される。ある特定の態様では、本開示の二重特異性抗体は、適合性ヘテロ二量体化ドメインを有する2つの異なる免疫グロブリン重鎖を含む。様々な適合性ヘテロ二量体化ドメインが当該技術分野において記載されている。適合性ヘテロ二量体化ドメインは、ある特定の態様では、適合性免疫グロブリン重鎖CH3ヘテロ二量体化ドメインである。野生型CH3ドメインを使用する場合、2つの異なる重鎖(A及びB)と共通軽鎖の共発現は、3つの異なる抗体種、AA、AB及びBBをもたらすだろう。AA及びBBは、2つの単一特異性二価抗体の記号であり、ABは、二重特異性抗体の記号である。所望の二重特異性生成物(AB)のパーセンテージを増加させるために、CH3工学が用いられ得るか、又は言い換えれば、それは、本明細書で定義される適合性ヘテロ二量体化ドメインを有する重鎖を使用し得る。当該技術分野では、そのような重鎖のヘテロ二量体化を達成することができる様々な方法が記載されている。1つの手法は、「ノブイントゥーホール(knob into hole)」二重特異性抗体を生成することである。
【0170】
本明細書で使用される「適合性ヘテロ二量体化ドメイン」という用語は、操作されたドメインA’が優先的に操作されたドメインB’とヘテロ二量体を形成し、その逆もまた同様であり、A’-A’及びB’-B’の間のホモ二量体化が減少するように操作された、タンパク質ドメインを指す。
【0171】
US13/866,747(現在はUS9,248,181として発行されている)、US14/081,848(現在はUS9,358,286として発行されている)及びPCT/NL2013/050294(参照により本明細書に組み込まれるWO2013/157954として公開されている)の方法及び手段は、適合性ヘテロ二量体化ドメインを使用して二重特異性抗体を産生するために開示されている。これらの手段及び方法も、本開示で有利に用いることができる。具体的には、ある特定の態様における本開示の二重特異性抗体は、宿主細胞において二重特異性全長IgG分子の実質的な発現を産生する変異を含む。好ましい変異は、第1のCH3ドメインにおけるアミノ酸置換L351K及びT366K(「KKバリアント」重鎖)、並びに第2のドメインにおけるアミノ酸置換L351D及びL368E(「DEバリアント」重鎖)、又はその逆である。US9,248,181及びUS9,358,286特許、並びにWO2013/157954PCT出願(これらは、参照により本明細書に組み込まれる)は、DEバリアント及びKKバリアントが、優先的に対合して、ヘテロ二量体(いわゆる「DEKK」二重特異性分子)を形成することを実証している。DEバリアント重鎖(DEDEホモ二量体)のホモ二量体化は、同一の重鎖間のCH3-CH3界面における荷電残基間の反発に起因して不利である。
【0172】
二重特異性抗体は、効率的なヘテロ二量体化及び二重特異性抗体の形成を確実にするようにCH3操作された軽鎖及び2つの異なる重鎖をコードするプラスミドの(一過性)トランスフェクションによって生成され得る。単一細胞におけるこれらの鎖の産生は、単一特異性抗体の形成よりも二重特異性抗体の形成を有利にする。本質的に二重特異性全長IgG1分子のみを産生する好ましい変異は、第1のCH3ドメインにおける351位及び366位のアミノ酸置換、例えば、L351K及びT366K(EU番号付けによる番号付け)(「KKバリアント」重鎖)、並びに第2のCH3ドメインにおける351位及び368位のアミノ酸置換、例えば、L351D及びL368E(「DEバリアント」重鎖)、又はその逆である(例えば、
図5E及び5Fを参照)。
【0173】
一態様では、EGFRに結合する可変ドメインを含む重鎖/軽鎖の組み合わせは、重鎖のDEバリアントを含む。この態様では、cMETに結合することができる可変ドメインを含む重鎖/軽鎖の組み合わせは、重鎖のKKバリアントを含む。cMETに結合する重鎖のKKバリアントは、ホモ二量体を産生せず、それによって、二重特異性抗体によるHGF誘導cMET活性化阻害の観察される効果を非常に正確にする。これは、場合によって二価cMET抗体で観察されるcMETの活性化(アゴニズム)を回避する。
【0174】
Fc領域は、補体依存性細胞毒性(CDC)、抗体依存性細胞毒性(ADCC)及び抗体依存性細胞食作用(ADCP)などの抗体のエフェクター機能を媒介する。治療抗体又はFc融合タンパク質の用途に応じて、エフェクター機能を低減又は増加させることが望ましい場合がある。本開示の態様のいくつかにあるように、免疫応答が、活性化されるか、増強されるか、又は刺激される場合、低減されたエフェクター機能が所望され得る。エフェクター機能が低下した抗体を使用して、とりわけ、免疫細胞の細胞表面分子を標的化することができる。ある特定の態様では、本開示の抗体は、抗体依存性細胞食作用(ADCP)を促進する。ある特定の態様では、本開示の抗体は、抗体依存性細胞毒性(ADCC)を促進する。本開示の1つの利点は、ある特定の態様で、本開示の二重特異性抗体が、特にcMET異常を含む細胞又はがんに対して、アミバンタマブよりも強力なADCC活性を示すことである。
【0175】
エフェクター機能が低減した抗体は、ある特定の態様では、例えば、Fc受容体相互作用を低減させるか、又はC1q結合を低減させるように、修飾されたCH2/下部ヒンジ領域を含むIgG抗体である。いくつかの態様では、本開示の抗体は、Fc-ガンマ受容体への二重特異性IgG抗体の相互作用が低減されるように、変異体CH2及び/又は下部ヒンジドメインを有するIgG抗体である。変異体CH2領域を含む抗体は、ある特定の態様では、IgG1抗体である。ある特定の態様におけるそのような変異体IgG1 CH2及び/又は下部ヒンジドメインは、235位及び/又は236位(EU番号付け)にアミノ置換を含み、ある特定の態様では、L235G及び/又はG236R置換を含む(
図5D)。
【0176】
ある特定の態様における本開示の抗体は、エフェクター機能を有する。ある特定の態様における本明細書に開示されているような二重特異性抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)を含む。抗体は、ADCC活性を増強するように操作することができる(レビューについては、Cancer Sci.2009 Sep;100(9):1566-72.Engineered therapeutic antibodies with improved effector functions.Kubota T,Niwa R,Satoh M,Akinaga S,Shitara K,Hanai Nを参照されたい)。ADCCを誘発する際に抗体又はエフェクター細胞の有効性を決定するためのいくつかのインビトロ方法が存在する。それらの中には、クロム-51[Cr51]リリースアッセイ、ユウロピウム[Eu]リリースアッセイ、及び硫黄-35[S35]リリースアッセイが含まれる。通常、ある特定の表面が曝露された抗原を発現する標識標的細胞株は、その抗原に特異的な抗体とともにインキュベートされる。洗浄後、Fc受容体CD16を発現するエフェクター細胞を、抗体標識標的細胞と共インキュベートする。続いて、標的細胞溶解を、シンチレーションカウンター又は分光光度法による細胞内標識のリリースによって測定する。一態様では、本開示の二重特異性抗体は、ADCC活性を呈する。そのような態様では、二重特異性抗体は、改善されたADCC活性を有し得る。そのような態様では、抗体は、本明細書の他の箇所に記載されているような1つ以上のCH2変異によって、及び当技術分野で既知の技術によって、ADCC活性を変化させることができた。抗体のADCCを増強するための1つの技術は、アフコシル化である。(例えば、Junttila,T.T.,K.Parsons,et al.(2010).“Superior In vivo Efficacy of Afucosylated Trastuzumab in the Treatment of HER2-Amplified Breast Cancer.”Cancer Research 70(11):4481-4489を参照されたい)。したがって、アフコシル化された、本開示による二重特異性抗体が更に提供される。ある特定の態様では、本開示の抗体は、2つのアフコシル化されたCH2ドメインを含む。ある特定の態様では、本開示の抗体は、どちらもアフコシル化されている、合計2つのCH2ドメインを含む。ある特定の態様では、本開示の抗体は、どちらもアフコシル化されている2つのCH2ドメインを有する、IgG型のものなどの全長抗体である。代替的に、又は追加的に、ADCCの増強を達成するために、例えば、糖鎖工学(Kyowa Hakko/Biowa、GlycArt(Roche)及びEureka Therapeutics)及び変異誘発を含む、複数の他の戦略を使用することができ、これらの全ては、低親和性活性化FcγRIIIaへのFc結合を改善すること、及び/又は低親和性阻害性FcγRIIbへの結合を低減することを目指すものである。本開示の二重特異性抗体は、ある特定の態様では、ADCC活性を増強するためにアフコシル化される。ある特定の態様における本明細書の本開示の二重特異性抗体は、正常なCHO細胞において産生される同じ抗体と比較した場合、Fc領域におけるN連結炭水化物構造のフコシル化の量の低減を含む。
【0177】
本明細書に記載されているような抗体又は二重特異性抗体のバリアントは、抗体又は二重特異性抗体の機能部分、誘導体及び/又は類似体を含む。バリアントは、(二重特異性)抗体の結合特異性を維持する。機能部分、誘導体、及び/又は類似体は、(二重特異性)抗体の結合特異性を維持する。結合特異性は、本明細書に記載されるように、第1の膜タンパク質及び第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合する能力によって定義される。
【0178】
本開示の二重特異性抗体は、ある特定の実施形態では、ヒトにおいて使用される。本開示の好ましい抗体は、ヒト化抗体、又はある特定の態様ではヒト抗体である。本開示の二重特異性抗体の定常領域は、ある特定の態様では、ヒト定常領域である。定常領域は、天然に生じるヒト抗体の定常領域と1以上、ある特定の態様では10以下、ある特定の態様では5以下のアミノ酸差を含み得る。定常部分が、天然に生じるヒト抗体に完全に由来することが好ましい。本明細書で産生される様々な抗体は、ヒト抗体可変ドメインライブラリに由来する。このように、これらの可変ドメインは、ヒトである。独自のCDR領域は、ヒトに由来し得るか、合成され得るか、又は別の生物に由来し得る。可変領域は、CDR領域を除いて、天然に生じるヒト抗体の可変領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する場合、ヒト化可変領域とみなされる。そのような態様では、本開示のEGFR又はcMETに結合する抗体の可変ドメインのVHは、CDR領域のアミノ酸配列における可能な差をカウントせずに、天然に生じるヒト抗体の可変領域と1以上、ある特定の態様では10以下、ある特定の態様では5以下のアミノ酸差を含み得る。本開示の抗体におけるEGFR結合ドメイン及び/又はcMET結合ドメインの軽鎖可変領域は、CDR領域のアミノ酸配列における可能な差をカウントせずに、天然に生じるヒト抗体の可変領域と1以上、ある特定の態様では10以下、ある特定の態様では5以下のアミノ酸差を含み得る。本開示の抗体における軽鎖は、CDR領域のアミノ酸配列における可能な差をカウントせずに、天然に生じるヒト抗体の可変領域と1以上、ある特定の態様では10以下、ある特定の態様では5以下のアミノ酸差を含み得る。そのような変異はまた、体細胞超変異の文脈においても自然に生じる。
【0179】
抗体は、少なくとも重鎖可変領域に関して、様々な動物種に由来し得る。そのような例えば、マウス重鎖可変領域をヒト化することが一般的な慣行である。これが達成され得る様々な方法があり、その中には、マウス重鎖可変領域の3D構造に一致する3D構造を有するヒト重鎖可変領域へのCDR移植;ある特定の態様では、マウス重鎖可変領域から既知の又は疑わしいT細胞又はB細胞エピトープを除去することによって行われる、マウス重鎖可変領域の脱免疫がある。この除去は、典型的には、エピトープの配列がもはやT細胞又はB細胞エピトープではないように修飾されるように、エピトープ中のアミノ酸のうちの1つ以上を別の(典型的には保存的)アミノ酸で置換することによるものである。
【0180】
脱免疫化マウス重鎖可変領域は、元のマウス重鎖可変領域よりもヒトにおいて免疫原性が低い。ある特定の態様では、本開示の可変領域又はドメインは、例えば、ベニヤリングされるなど、更にヒト化される。ベニヤリング技術を使用することにより、免疫系によって容易に遭遇される外部残基を選択的にヒト残基に置き換えて、弱免疫原性又は実質的に非免疫原性のベニヤリング表面のいずれかを含むハイブリッド分子を提供する。本開示で使用される動物は、ある特定の態様では哺乳動物、ある特定の態様では霊長類、ある特定の態様ではヒトである。
【0181】
ある特定の態様における本開示による二重特異性抗体は、ヒト抗体の定常領域を含む。重鎖定常ドメインの違いによって、抗体は5つのクラス又はアイソタイプ:IgG、IgA、IgM、IgD及びIgEに群分けされる。これらのクラス又はアイソタイプは、対応するギリシャ文字で命名された当該重鎖のうちの少なくとも1つを含む。ある特定の態様は、当該定常領域が、IgG、IgA、IgM、IgD及びIgE定常領域の群から選択される抗体を含み、ある特定の態様では、当該定常領域は、IgG定常領域、すなわち、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4からなる群から選択されるIgG定常領域を含む。ある特定の態様では、当該定常領域は、IgG1又はIgG4定常領域、ある特定の態様では変異体IgG1定常領域である。IgG1の定常領域のいくつかの変異が、天然に生じ、及び/又は結果として得られる抗体の免疫学的特性を変化させることなく許容される。変異は、抗体又はその一部にある特定の好ましい特徴を取り付けるために人工的に導入することもできる。そのような特徴は、例えば、CH2及びCH3の文脈において本明細書に記載されている。典型的には、約1~10個のアミノ酸挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせが、定常領域内で許容される。
【0182】
ある特定の態様における
図1、2又は3のVH鎖は、
図1、2又は3に示されるVH鎖に関して、最大15個、ある特定の態様では、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせを有し、ある特定の態様では、
図1、2又は3に示されるVH鎖に関して、0、1、2、3、4又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせを有し、ある特定の態様では、0、1、2、3又は4個の挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせ、ある特定の態様では、0、1、2又は3個の挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせ、更に、ある特定の態様では、0、1又は2個の挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせ、ある特定の態様では、
図1、2又は3に示されるVH鎖に関して、0又は1個の欠失、置換又はそれらの組み合わせを有する。1つ以上のアミノ酸挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせは、ある特定の態様では、VH鎖のCDR1、CDR2及び/又はCDR3領域には存在しない。これらは、ある特定の態様でも、FR4領域には存在しない。アミノ酸置換は、ある特定の態様では、保存的アミノ酸置換である。
【0183】
合理的な方法は、ヒトの文脈における非ヒト残基の含有量を最小限に抑えることに向かって進化してきた。別の抗体上への抗体の抗原結合特性を上手く移植するための様々な方法が利用可能である。抗体の結合特性は、可変ドメイン全体の適切な構造と組み合わされた可変ドメイン内のCDR1及びCDR2領域の配列によって多くの場合支えられているCDR3領域の正確な配列に主に基づき得る。
【0184】
CDR配列は、Kabat番号付けスキーム(Kabat et al.,J.Biol.Chem.252:6609-6616(1977);及び/又はKabat et al.,U.S.Dept.of Health and Human Services,“Sequences of proteins of immunological interest”(1991))、Chothia番号付けスキーム(Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901-917(1987)、Chothia et al.,Nature 342:877-883,1989、及び/又はAl-Lazikani B.et al.,J.Mol.Biol.,273:927-948(1997))、Honegger及びPlukthunの番号付けシステム(Honegger及びPlueckthun,J.Mol.Biol.,309:657-670(2001))、MacCallumの番号付けシステム(MacCallum et al.,J.Mol.Biol.262:732-745(1996)、及び/又はAbhinandan and Martin,Mol.Immunol.,45:3832-3839(2008))、Lefrancの番号付けシステム(Lefranc M.P.et al.,Dev.Comp.Immunol.,27:55-77(2003)、並びに/又はHonegger及びPlueckthun,J.Mol.Biol.,309:657-670(2001))によるもの、又はIMGT(Giudicelli et al.,Nucleic Acids Res.25:206-21 1(1997)で論じられている)によるものを含むがこれらに限定されない異なる方法を使用して定義され得る。
【0185】
これらの番号付けスキームの各々は、抗原結合に対する重鎖又は軽鎖可変領域内のアミノ酸残基の予測される寄与に基づいてCDRを定義している。したがって、CDRを特定するための各方法を使用して、本開示の結合ドメインのCDRを特定することができる。ある特定の態様では、本開示の結合ドメインの重鎖CDRは、Kabat、Chothia、又はIMGTによるものである。ある特定の態様では、本開示の結合ドメインの重鎖CDRは、Kabatによるものである。ある特定の態様では、本開示の結合ドメインの重鎖CDRは、Chothiaによるものである。ある特定の態様では、本開示の結合ドメインの重鎖CDRは、IMGTによるものである。ある特定の態様では、本開示の結合ドメインの軽鎖CDRは、Kabatによるものである。ある特定の態様では、本開示の結合ドメインの軽鎖CDRは、Chothiaによるものである。ある特定の態様では、本開示の結合ドメインの軽鎖CDRは、IMGTによるものである。本明細書に示されるような重鎖CDR領域のアミノ酸配列は、Kabat定義によって決定される。
【0186】
現在、CDR領域を別の抗体の好適な可変ドメインに移植するための様々な方法が利用可能である。これらの方法のうちのいくつかは、参照により本明細書に含まれる、J.C.Almagro1及びJ.Fransson(2008)Frontiers in Bioscience 13,1619-1633でレビューされている。したがって、本開示は、EGFRに結合する第1の抗原結合部位とcMETに結合する第2の抗原結合部位とを含む、本開示の治療に含まれるようなヒト化又はある特定の態様ではヒト二重特異性抗体を更に提供し、EGFR結合部位を含む可変ドメインは、
図1のMF3370に示されるようなVH CDR3配列を含み、cMET結合部位を含む可変ドメインは、
図1のMF4356に示されるようなVH CDR3領域を含む。ある特定の態様におけるEGFR結合部位を含むVH可変領域は、
図1のMF3370について示されるようなVH鎖のCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域の配列を含む。ある特定の態様におけるcMET結合部位を含むVH可変領域は、
図1のMF4356について示されるようなVH鎖のCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域の配列を含む。CDR移植はまた、
図1のVHのCDR領域を有するが異なるフレームワークを有するVH鎖を産生するために使用され得る。異なるフレームワークは、別のヒトVHのもの、又は異なる哺乳動物のものであり得る。したがって、本開示は、EGFRに結合する第1の抗原結合部位とcMETに結合する第2の抗原結合部位とを含む、ヒト化又はある特定の態様ではヒト二重特異性抗体を更に提供し、EGFR結合部位を含む可変ドメインは、
図2のMF8233に示されるようなVH CDR3配列を含み、cMET結合部位を含む可変ドメインは、
図3のMF8230に示されるようなVH CDR3領域を含む。ある特定の態様におけるEGFR結合部位を含むVH可変領域は、
図2のMF8233について示されるようなVH鎖のCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域の配列を含む。ある特定の態様におけるcMET結合部位を含むVH可変領域は、
図3のMF8230について示されるようなVH鎖のCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域の配列を含む。CDR移植はまた、
図2又は
図3のVHのCDR領域を有するが異なるフレームワークを有するVH鎖を産生するために使用され得る。異なるフレームワークは、別のヒトVHのもの、又は異なる哺乳動物のものであり得る。
【0187】
したがって、本開示は、EGFRに結合する第1の抗原結合部位とcMETに結合する第2の抗原結合部位とを含む、本開示の治療に含まれるようなヒト化又はある特定の態様ではヒト二重特異性抗体を更に提供し、EGFR結合部位を含む可変ドメインは、
図1のMF3370に示されるようなVH CDR3配列を含み、cMET結合部位を含む可変ドメインは、
図3のMF8230に示されるようなVH CDR3領域を含む。ある特定の態様におけるEGFR結合部位を含むVH可変領域は、
図1のMF3370について示されるようなVH鎖のCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域の配列を含む。ある特定の態様におけるcMET結合部位を含むVH可変領域は、
図3のMF8230について示されるようなVH鎖のCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域の配列を含む。CDR移植はまた、
図2又は
図3のVHのCDR領域を有するが異なるフレームワークを有するVH鎖を産生するために使用され得る。異なるフレームワークは、別のヒトVHのもの、又は異なる哺乳動物のものであり得る。
【0188】
したがって、本開示は、EGFRに結合する第1の抗原結合部位とcMETに結合する第2の抗原結合部位とを含む、本開示の治療に含まれるようなヒト化又はある特定の態様ではヒト二重特異性抗体を更に提供し、EGFR結合部位を含む可変ドメインは、
図2のMF8233に示されるようなVH CDR3配列を含み、cMET結合部位を含む可変ドメインは、
図3のMF4356に示されるようなVH CDR3領域を含む。ある特定の態様におけるEGFR結合部位を含むVH可変領域は、
図2のMF8233について示されるようなVH鎖のCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域の配列を含む。ある特定の態様におけるcMET結合部位を含むVH可変領域は、
図3のMF4356について示されるようなVH鎖のCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域の配列を含む。CDR移植はまた、
図2又は
図3のVHのCDR領域を有するが異なるフレームワークを有するVH鎖を産生するために使用され得る。異なるフレームワークは、別のヒトVHのもの、又は異なる哺乳動物のものであり得る。
【0189】
したがって、本開示は、EGFRに結合する第1の抗原結合部位とcMETに結合する第2の抗原結合部位とを含む、本開示の治療に含まれるようなヒト化又はある特定の態様ではヒト二重特異性抗体を更に提供し、EGFR結合部位を含む可変ドメインは、
図2のMF8232に示されるようなVH CDR3配列を含み、cMET結合部位を含む可変ドメインは、
図3のMF8230に示されるようなVH CDR3領域を含む。ある特定の態様におけるEGFR結合部位を含むVH可変領域は、
図2のMF8232について示されるようなVH鎖のCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域の配列を含む。ある特定の態様におけるcMET結合部位を含むVH可変領域は、
図3のMF8230について示されるようなVH鎖のCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域の配列を含む。CDR移植はまた、
図2又は
図3のVHのCDR領域を有するが異なるフレームワークを有するVH鎖を産生するために使用され得る。異なるフレームワークは、別のヒトVHのもの、又は異なる哺乳動物のものであり得る。
【0190】
したがって、本開示は、EGFRに結合する第1の抗原結合部位とcMETに結合する第2の抗原結合部位とを含む、本開示の治療に含まれるようなヒト化又はある特定の態様ではヒト二重特異性抗体を更に提供し、EGFR結合部位を含む可変ドメインは、
図2のMF8232に示されるようなVH CDR3配列を含み、cMET結合部位を含む可変ドメインは、
図3のMF4356に示されるようなVH CDR3領域を含む。ある特定の態様におけるEGFR結合部位を含むVH可変領域は、
図2のMF8232について示されるようなVH鎖のCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域の配列を含む。ある特定の態様におけるcMET結合部位を含むVH可変領域は、
図3のMF4356について示されるようなVH鎖のCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域の配列を含む。CDR移植はまた、
図2又は
図3のVHのCDR領域を有するが異なるフレームワークを有するVH鎖を産生するために使用され得る。異なるフレームワークは、別のヒトVHのもの、又は異なる哺乳動物のものであり得る。
【0191】
配列バリアントを生成するための方法は、当技術分野で周知である。配列バリアントの生成においてランダムなアプローチ又は標的アプローチをとることができ、例えば、結合親和性を増加又は減少させる可能性が高い変異を導入することを目的とすることができる。抗体結合ドメインを親和性成熟させるための日常的な方法は、当該技術分野で広く知られており、例えば、Tabasinezhad M.et al.Immunol Lett.2019;212:106-113を参照されたい。また、結合ドメイン、又はそのような結合ドメインを含む部分を大規模に産生するという観点から、開発可能性リスクを軽減する変異を導入することを目的とすることができる。結合特異性の減少を引き起こさない、及び/又は結合親和性に影響を与えない可能性が高い変異が導入され得る。CDR及び/又はフレームワーク領域内のアミノ酸残基が、例えば、保存的アミノ酸残基で置換され得るかどうか、並びに結合特異性及び/又は親和性の損失なしで、又は実質的になしで置換され得るかどうかは、当該技術分野で周知の方法によって決定することができる。実験例は、例えば、アラニンスキャニング(Cunningham BC,Wells JA.Science.1989;244(4908):1081-5)、及びディープ変異スキャニング(deep mutational scanning)(Araya CL,Fowler DM.Trends Biotechnol.2011;29(9):435-42)を含むが、これらに限定されない。例えば、Sruthi CK,Prakash M.PLoS One.2020;15(1):e0227621,Choi Y.et al.PLoS One.2012;7(10):e46688、及びMunro D,Singh M.Bioinformatics.2020;36(22-23):5322-9に記載されるものなどの、アミノ酸変異の効果を予測することができる計算方法も開発されている。
【0192】
本明細書では、上記方法によって産生される任意のバリアント抗ヒトEGFR及びc-MET結合ドメイン、当該バリアント結合ドメインのいずれかを含む抗体などの結合部分、当該バリアント抗ヒトEGFR及びc-MET結合ドメイン又は結合部分のいずれかを含む薬学的組成物、当該バリアント結合ドメインのいずれかをコードする核酸、当該核酸を含むベクター及び細胞、並びにがんの治療のための当該バリアント結合ドメイン又は薬学的組成物の使用が更に提供される。
【0193】
本開示は、EGFRに結合する第1の可変ドメインと、cMETに結合する第2の可変ドメインと、を含む、本開示の治療に含まれるようなヒト化又はある特定の態様ではヒト二重特異性抗体を更に提供し、第1の可変ドメインは、最大10個、ある特定の態様では、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個、ある特定の態様では、0、1、2、3、4又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせを有する
図2に示されるようなMF3370のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含み、第2の可変ドメインは、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する
図3に示されるようなMF4356のアミノ酸配列(配列番号23)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。本開示は、EGFRに結合する第1の可変ドメインと、cMETに結合する第2の可変ドメインと、を含む、ヒト化又はある特定の態様ではヒト二重特異性抗体を更に提供し、第1の可変ドメインは、最大10個、ある特定の態様では、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個、ある特定の態様では、0、1、2、3、4又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせを有する
図2に示されるようなMF8233のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含み、第2の可変ドメインは、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する
図3に示されるようなMF8230のアミノ酸配列(配列番号13)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0194】
本開示は、EGFRに結合する第1の可変ドメインと、cMETに結合する第2の可変ドメインと、を含む、本開示の治療に含まれるようなヒト化又はある特定の態様ではヒト二重特異性抗体を更に提供し、第1の可変ドメインは、最大10個、ある特定の態様では、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個、ある特定の態様では、0、1、2、3、4又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせを有する
図2に示されるようなMF3370のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含み、第2の可変ドメインは、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する
図3に示されるようなMF8230のアミノ酸配列(配列番号13)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0195】
本開示は、EGFRに結合する第1の可変ドメインと、cMETに結合する第2の可変ドメインと、を含む、本開示の治療に含まれるようなヒト化又はある特定の態様ではヒト二重特異性抗体を更に提供し、第1の可変ドメインは、最大10個、ある特定の態様では、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個、ある特定の態様では、0、1、2、3、4又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせを有する
図2に示されるようなMF8233のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含み、第2の可変ドメインは、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する
図3に示されるようなMF4356のアミノ酸配列(配列番号23)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0196】
本開示は、EGFRに結合する第1の可変ドメインと、cMETに結合する第2の可変ドメインと、を含む、本開示の治療に含まれるようなヒト化又はある特定の態様ではヒト二重特異性抗体を更に提供し、第1の可変ドメインは、最大10個、ある特定の態様では、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個、ある特定の態様では、0、1、2、3、4又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせを有する
図2に示されるようなMF8232のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含み、第2の可変ドメインは、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する
図3に示されるようなMF4356のアミノ酸配列(配列番号23)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0197】
本開示は、EGFRに結合する第1の可変ドメインと、cMETに結合する第2の可変ドメインと、を含む、本開示の治療に含まれるようなヒト化又はある特定の態様ではヒト二重特異性抗体を更に提供し、第1の可変ドメインは、最大10個、ある特定の態様では、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個、ある特定の態様では、0、1、2、3、4又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせを有する
図2に示されるようなMF8232のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含み、第2の可変ドメインは、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する
図3に示されるようなMF8230のアミノ酸配列(配列番号13)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0198】
最大15個、ある特定の態様では、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個、ある特定の態様では0、1、2、3、4又は5個のアミノ酸置換は、ある特定の態様では、保存的アミノ酸置換であり、挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせは、ある特定の態様では、VH鎖のCDR3領域には存在せず、ある特定の態様では、VH鎖のCDR1、CDR2又はCDR3領域には存在せず、ある特定の態様では、FR4領域には存在しない。
【0199】
二重特異性抗体を産生するための様々な方法が利用可能である。1つの方法は、細胞における2つの異なる重鎖及び2つの異なる軽鎖の発現を含み、細胞によって産生される抗体を収集する。このようにして産生された抗体は、典型的には、重鎖及び軽鎖の異なる組み合わせを有する抗体の集合を含有し、そのうちのいくつかは、所望の二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、その後、収集物から精製され得る。細胞によって産生される他の抗体に対する二重特異性の比率は、様々な方法で増加され得る。ある特定の態様では、比率は、2つの異なる軽鎖ではなく、細胞内で共通軽鎖を発現することによって増加される。共通軽鎖が2つの異なる重鎖で発現される場合、細胞によって産生される他の抗体に対する二重特異性抗体の比率は、2つの異なる軽鎖の発現に対して顕著に改善される。細胞によって産生される二重特異性抗体の比率は、2つの異なる重鎖の互いの対合を2つの同一の重鎖の対合に対して刺激することによって更に改善され得る。(単一細胞からの)二重特異性抗体を産生するための方法及び手段が開示されており、それにより、単一特異性抗体の形成よりも二重特異性抗体の形成を有利にする手段が提供される。これらの方法も、本開示で有利に用いることができる。したがって、一態様における本開示は、単一の細胞から二重特異性抗体を産生するための方法であって、当該二重特異性抗体が、界面を形成することが可能な2つのCH3ドメインを含み、当該方法が、当該細胞に、a)重鎖を含む第1のCH3ドメインをコードする第1の核酸分子、b)重鎖を含む第2のCH3ドメインをコードする第2の核酸分子を提供することを含み、当該核酸分子に、重鎖を含む当該第1及び第2のCH3ドメインを優先的に対合するための手段が提供され、当該方法が、当該宿主細胞を培養し、当該2つの核酸分子の発現を可能にし、培養物から当該二重特異性抗体を採取するステップを更に含む、方法を提供する。当該第1及び第2の核酸分子は、同じ核酸分子、ベクター又は遺伝子送達ビヒクルの一部であってもよく、宿主細胞のゲノムの同じ部位に組み込まれてもよい。代替的に、当該第1及び第2の核酸分子は、当該細胞に別々に提供される。
【0200】
ある特定の態様は、単一の細胞から本開示による二重特異性抗体を産生するための方法であって、当該二重特異性抗体が、界面を形成することが可能な2つのCH3ドメインを含み、当該方法が、
-a)EGFRに結合し、かつ第1のCH3ドメインを含有する抗原結合部位を含む重鎖をコードする第1の核酸分子と、b)ErbB-3に結合し、かつ第2のCH3ドメインを含有する抗原結合部位を含む重鎖をコードする第2の核酸分子とを有し、当該核酸分子に、当該第1及び第2のCH3ドメインを優先的に対合するための手段を提供されている、細胞、を提供することを含み、当該方法が、当該細胞を培養し、当該2つの核酸分子によってコードされたタンパク質の発現を可能にし、培養物から当該二重特異性IgG抗体を採取するステップを更に含む、方法を提供する。ある特定の態様では、当該細胞はまた、共通軽鎖をコードする第3の核酸分子を有する。当該第1、第2及び第3の核酸分子は、同じ核酸分子、ベクター又は遺伝子送達ビヒクルの一部であってもよく、宿主細胞のゲノムの同じ部位に組み込まれてもよい。代替的に、当該第1、第2及び第3の核酸分子は、当該細胞に別々に提供される。好ましい共通軽鎖は、O12に基づいており、ある特定の態様では、これは、上記のように、再配列された生殖系列ヒトカッパ軽鎖IgVκ1 39*01/IGJκ1*01である。当該第1及び当該第2のCH3ドメインの優先的な対合のための手段は、ある特定の態様では、重鎖コード領域のCH3ドメイン内の対応する変異である。二重特異性抗体を優先的に産生するための好ましい変異は、第1のCH3ドメインにおけるアミノ酸置換L351K及びT366K(EU番号付け)、並びに第2のCH3ドメインにおけるアミノ酸置換L351D及びL368E、又はその逆である。したがって、二重特異性抗体を産生するための本開示による方法であって、当該第1のCH3ドメインが、アミノ酸置換L351K及びT366K(EU番号付け)を含み、当該第2のCH3ドメインが、アミノ酸置換L351D及びL368Eを含み、当該方法が、当該細胞を培養し、当該核酸分子によってコードされたタンパク質の発現を可能にし、培養物から当該二重特異性抗体を採取するステップを更に含む、方法が更に提供される。また、二重特異性抗体を産生するための本開示による方法であって、当該第1のCH3ドメインが、アミノ酸置換L351D及びL368E(EU番号付け)を含み、当該第2のCH3ドメインが、アミノ酸置換L351K及びT366Kを含み、当該方法が、当該細胞を培養し、当該核酸分子の発現を可能にし、培養物から当該二重特異性抗体を採取するステップを更に含む、方法が提供される。これらの方法によって産生され得る抗体はまた、本開示の一部である。CH3ヘテロ二量体化ドメインは、ある特定の態様では、IgG1ヘテロ二量体化ドメインである。CH3ヘテロ二量体化ドメインを含む重鎖定常領域は、ある特定の態様では、IgG1定常領域である。
【0201】
本開示の一態様は、抗体重鎖可変領域をコードする核酸分子を含む。ある特定の態様では、核酸分子(典型的には、インビトロ、単離された、又は組換え核酸分子)は、
図2若しくは
図3に示されるような重鎖可変領域、又は1、2、3、4若しくは5個のアミノ酸挿入、欠失、置換若しくはそれらの組み合わせを有する
図2若しくは
図3に示されるような重鎖可変領域をコードする。ある特定の態様では、核酸分子は、
図2又は
図3に示されるようなアミノ酸配列をコードするコドン最適化核酸配列を含む。コドン最適化は、抗体産生細胞の種及び/又は細胞型について最適化される。例えば、CHO産生の場合、分子の核酸配列は、チャイニーズハムスター細胞について最適化されたコドンである。本開示は、
図2又は
図3の重鎖をコードする核酸分子を更に提供する。
【0202】
本開示で使用される核酸分子は、典型的には、リボ核酸(RNA)又はデオキシリボ核酸(DNA)であるが、これらに限定されない。代替的な核酸は、当業者に利用可能である。本開示による核酸は、例えば、細胞に含まれる。当該核酸が当該細胞内で発現されるとき、当該細胞は、本開示による抗体を産生することができる。したがって、本開示の一態様では、本開示による抗体及び/又は本開示による核酸を含む、細胞を含む。当該細胞は、ある特定の態様では動物細胞、更に、ある特定の態様では哺乳動物細胞、ある特定の態様では霊長類細胞、ある特定の態様ではヒト細胞である。好適な細胞は、本開示による抗体及び/又は本開示による核酸を含むことが可能であり、ある特定の態様ではこれらを産生することが可能である、任意の細胞である。
【0203】
本開示は、本開示による抗体を含む、細胞を更に提供する。ある特定の態様では、当該細胞(典型的には、インビトロ、単離された、又は組換え細胞)は、当該抗体を産生する。当該細胞はまた、貯蔵部から取り出されて培養されたときに当該抗体を産生することができる貯蔵細胞であり得る。ある特定の態様では、当該細胞は、ハイブリドーマ細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞又はPER-C6(商標)細胞である。特定の態様では、当該細胞は、CHO細胞である。本開示による細胞を含む細胞培養物が更に提供される。様々な機関及び企業が、例えば、臨床使用のための抗体の大規模な産生のための細胞株を開発している。そのような細胞株の非限定的な例は、CHO細胞、NS0細胞又はPER.C6(商標)細胞である。これらの細胞は、タンパク質の産生などの他の目的にも使用される。タンパク質及び抗体の工業規模産生のために開発された細胞株は、本明細書で更に工業的細胞株と称される。したがって、ある特定の態様は、
図2又は
図3に示されるようなVH、VL及び/又は重鎖をコードする核酸分子を含む抗体を産生するための細胞をある特定の態様で含む、本開示の抗体の産生のための抗体の大規模産生のために開発された細胞株の使用を含む。
【0204】
本開示は、本開示の細胞を培養することと、当該抗体を当該培養物から採取することと、を含む、抗体を産生するための方法を更に提供する。ある特定の態様では、当該細胞は、無血清培地中で培養される。ある特定の態様では、当該細胞は、浮遊成長に適している。本開示による抗体を産生するための方法によって得ることが可能な抗体が更に提供される。抗体は、ある特定の態様では、培養物の培地から精製される。ある特定の態様では、当該抗体は、親和性精製される。
【0205】
本開示の細胞は、例えば、ハイブリドーマ細胞株、CHO細胞、293F細胞、NS0細胞、又は臨床目的の抗体産生についてのその好適性で知られている別の細胞型である。ある特定の態様では、当該細胞は、ヒト細胞である。ある特定の態様では、アデノウイルスE1領域によって形質転換された細胞又はその機能的等価物。そのような細胞株の好ましい例は、PER.C6TM細胞株又はその等価物である。ある特定の態様では、当該細胞は、CHO細胞又はそのバリアントである。ある特定の態様では、抗体の発現のためにグルタミン合成酵素(GS)ベクター系を使用するバリアント。
【0206】
本開示の抗体は、懸濁293F細胞における一過性トランスフェクション後に、50mg超/Lのレベルで産生することができる。二重特異性抗体は、70%超の収率で98%超の純度に精製することができる。分析的特性評価研究は、二価単一特異性lgG1と同等の二重特異性lgG1抗体プロファイルを示す。機能活性の点で、本開示の二重特異性抗体は、インビトロ及びインビボでのセツキシマブと比較して、優れた効力を実証し得る。
【0207】
本開示は、本開示による抗体と当該EGFRチロシンキナーゼ阻害剤との組み合わせを含む、薬学的組成物を更に提供する。ある特定の態様における薬学的組成物は、ある特定の態様では、薬学的に許容される賦形剤又は担体を含む。
【0208】
抗体は、標識、ある特定の態様では、インビボイメージングのための標識を含み得る。そのような標識は、典型的には、治療用途に必要ではない。例えば、診断設定では、標識が有用であり得る。例えば、体内の標的細胞を視覚化することにおいてである。様々な標識が適しており、多くのラベルが当技術分野で周知である。ある特定の態様では、標識は、検出のための放射性標識である。別のある特定の態様では、標識は、赤外線標識である。ある特定の態様では、赤外線ラベルは、インビボイメージングに適している。様々な赤外線ラベルが、当業者に利用可能である。好ましい赤外線ラベルは、例えば、IRDye 800、IRDye 680RD、IRDye 680LT、IRDye 750、IRDye 700DX、IRDye 800RS、IRDye 650、IRDye 700ホスホロアミダイト、IRDye 800ホスホロアミダイト(LI-COR USA、4647 Superior Street、Lincoln、Nebraska)である。
【0209】
本開示は、腫瘍を有するか、又は当該腫瘍を有するリスクがある対象の治療のための方法であって、この治療を必要とする対象に、本開示の抗体及びEGFRチロシンキナーゼ阻害剤又は薬学的組成物を投与することを含む、方法を更に提供する。腫瘍は、ある特定の態様では、EGFR、cMET又はEGFR/cMET陽性腫瘍である。当該治療の開始前に、ある特定の態様における方法は、当該対象が、そのようなEGFR、cMET又はEGFR/cMET陽性腫瘍を有するかどうかを決定することを更に含む。本開示は、EGFR、cMET又はEGFR/cMET陽性腫瘍を有するか、又は有するリスクがある対象の治療における使用のための、本開示の抗体又は薬学的組成物を更に提供する。
【0210】
ある特定の態様では、当該治療は、当該対象に、有効量の当該二重特異性抗体及び当該第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤を投与することを含む。
【0211】
ある特定の態様では、EGFR及びcMETに結合する二重特異性抗体は、対象に、特にフラット用量レジメンを使用して、1000、1500又は2000mgの用量で提供される。フラット用量レジメンは、調製時間を低減し、かつ潜在的な用量計算ミスを低減するため、体表面又は体重投薬に対していくつかの利点を呈する。ある特定の態様では、二重特異性抗体は、毎週1回(Q1W)、2週間に1回(Q2W)又は3週間に1回(Q3W)投与される。ある特定の態様では、二重特異性抗体は、2週間に1回投与される。当技術分野では、そのような投薬スキームは、Q2Wとして記されている。ある特定の実施形態では、本明細書に開示されているフラット用量レジメンは、成人及び/又は少なくとも35kgの体重の対象における使用に好適である。当業者に理解されるように、この投薬量は、経時的に投与され得る。当業者に理解されるように、「フラット用量」又は「フラット用量レジメン」という用語は、対象が投薬レジメンを受け、対象が、毎日、実質的に同じ所定の量で二重特異性抗体又は第3世代のEGFR TKIを受けるようにスケジュールされており、その量が、対象の体重に関係ないことを意味する。ある特定の態様によると、対象には、1000mgのフラットな週用量の二重特異性抗体が提供される。代替的に、対象には、1000mgのフラットな隔週用量の二重特異性抗体が提供される。代替的に、対象には、1500mgのフラットな隔週用量の二重特異性抗体が提供される。代替的に、対象には、2000mgのフラットな隔週用量の二重特異性抗体が提供される。また、対象には、典型的には、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の1日用量も提供される。ある特定の態様では、対象には、80mgのオシメルチニブの1日用量、110mgのアルモネルチニブの1日用量、240mgのラゼルチニブの1日用量、70mgのD-0316の1日用量又は75mgのD-0316の1日用量が提供される。ある特定の態様では、当該1日用量は、フラット1日用量である。ある特定の態様では、対象に、70mgのD-0316の1日用量が21日間、続いて、100mgが1日用量として提供されるか、又は75mgのD-0316の1日用量が21日間、続いて、100mgが1日用量として提供される。21日間の75mgのD-0316の1日用量は、それぞれ25mgの3回の経口投薬量として提供され得る。
【0212】
したがって、ある特定の態様では、本開示の二重特異性抗体は、特に1000mgのフラット用量を使用して、1000mgで投薬又は投与される。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、毎週1回、1000mgの量で投与される。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、2週間に1回、1000mgの量で投与される。また、対象には、80mgのオシメルチニブの1日用量を含む、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の承認された用量も提供される。
【0213】
したがって、ある特定の態様では、本開示の二重特異性抗体は、特に1500mgのフラット用量を使用して、1500mgで投薬又は投与される。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、2週間に1回、1500mgの量で投与される。また、対象には、80mgのオシメルチニブの1日用量を含む、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の承認された用量も提供される。
【0214】
したがって、ある特定の態様では、本開示の二重特異性抗体は、特に2000mgのフラット用量を使用して、2000mgで投薬又は投与される。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、2週間に1回、2000mgの量で投与される。また、対象には、80mgのオシメルチニブの1日用量を含む、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の承認された用量も提供される。
【0215】
ある特定の他の態様では、本開示の二重特異性抗体は、特に1000mgのフラット用量を使用して、1000mgで投薬又は投与される。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、毎週1回、1000mgの量で投与される。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、2週間に1回、1000mgの量で投与される。また、対象には、110mgのアルモネルチニブの1日用量を含む、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の承認された用量も提供される。
【0216】
したがって、ある特定の態様では、本開示の二重特異性抗体は、特に1500mgのフラット用量を使用して、1500mgで投薬又は投与される。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、2週間に1回、1500mgの量で投与される。また、対象には、110mgのアルモネルチニブの1日用量を含む、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の承認された用量も提供される。
【0217】
したがって、ある特定の態様では、本開示の二重特異性抗体は、特に2000mgのフラット用量を使用して、2000mgで投薬又は投与される。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、2週間に1回、2000mgの量で投与される。また、対象には、110mgのアルモネルチニブの1日用量を含む、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の承認された用量も提供される。
【0218】
ある特定の他の態様では、本開示の二重特異性抗体は、特に1000mgのフラット用量を使用して、1000mgで投薬又は投与される。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、毎週1回、1000mgの量で投与される。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、2週間に1回、1000mgの量で投与される。また、対象には、240mgのラゼルチニブの1日用量を含む、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の承認された用量も提供される。
【0219】
したがって、ある特定の態様では、本開示の二重特異性抗体は、特に1500mgのフラット用量を使用して、1500mgで投薬又は投与される。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、2週間に1回、1500mgの量で投与される。また、対象には、240mgのラゼルチニブの1日用量を含む、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の承認された用量も提供される。
【0220】
したがって、ある特定の態様では、本開示の二重特異性抗体は、特に2000mgのフラット用量を使用して、2000mgで投薬又は投与される。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、2週間に1回、2000mgの量で投与される。また、対象には、240mgのラゼルチニブの1日用量を含む、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の承認された用量も提供される。
【0221】
ある特定の他の態様では、本開示の二重特異性抗体は、特に1000mgのフラット用量を使用して、1000mgで投薬又は投与される。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、毎週1回、1000mgの量で投与される。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、2週間に1回、1000mgの量で投与される。また、対象には、70mg、75mg又は100mgのベフォテルチニブの1日用量を含む、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の承認された用量も提供される。ある特定の態様では、70mgのベフォテルチニブの1日用量又は75mgのベフォテルチニブの1日用量が提供される。ある特定の態様では、当該1日用量は、フラット1日用量である。ある特定の態様では、対象に、70mgのベフォテルチニブの1日用量が21日間、続いて、100mgが1日用量として提供されるか、又は75mgのベフォテルチニブの1日用量が21日間、続いて、100mgが1日用量として提供される。ベフォテルチニブの75mgの1日用量は、それぞれ25mgの3回の経口投与で提供され得る。
【0222】
したがって、ある特定の態様では、本開示の二重特異性抗体は、特に1500mgのフラット用量を使用して、1500mgで投薬又は投与される。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、2週間に1回、1500mgの量で投与される。また、対象には、70mg、75又は100mgのベフォテルチニブの1日用量を含む、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の承認された用量も提供される。ある特定の態様では、70mgのベフォテルチニブの1日用量又は75mgのベフォテルチニブの1日用量が提供される。ある特定の態様では、当該1日用量は、フラット1日用量である。ある特定の態様では、対象に、70mgのベフォテルチニブの1日用量が21日間、続いて、100mgが1日用量として提供されるか、又は75mgのベフォテルチニブの1日用量が21日間、続いて、100mgが1日用量として提供される。ベフォテルチニブの75mgの1日用量は、それぞれ25mgの3回の経口投与で提供され得る。
【0223】
したがって、ある特定の態様では、本開示の二重特異性抗体は、特に2000mgのフラット用量を使用して、2000mgで投薬又は投与される。ある特定の態様では、当該二重特異性抗体は、2週間に1回、2000mgの量で投与される。また、対象には、70mg、75又は100mgのベフォテルチニブの1日用量を含む、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の承認された用量も提供される。ある特定の態様では、70mgのベフォテルチニブの1日用量又は75mgのベフォテルチニブの1日用量が提供される。ある特定の態様では、当該1日用量は、フラット1日用量である。ある特定の態様では、対象に、70mgのベフォテルチニブの1日用量が21日間、続いて、100mgが1日用量として提供されるか、又は75mgのベフォテルチニブの1日用量が21日間、続いて、100mgが1日用量として提供される。ベフォテルチニブの75mgの1日用量は、それぞれ25mgの3回の経口投与で提供され得る。
【0224】
腫瘍がEGFRに対して陽性であるかどうかを確認するために、当業者は、例えば、EGFR増幅及び/又は免疫組織化学染色を決定することができる。生検における腫瘍細胞の少なくとも10%が陽性であるべきである。生検はまた、20%、30%、40%、50%、60%、70%以上の陽性細胞を含み得る。腫瘍がcMETに対して陽性であるかどうかを確認するために、当業者は、例えば、免疫組織化学におけるcMET増幅及び/又は染色を決定することができる。生検における腫瘍細胞の少なくとも10%が陽性であるべきである。生検はまた、20%、30%、40%、50%、60%、70%以上の陽性細胞を含み得る。
【0225】
がん又は腫瘍は、EGFR、cMET又はEGFR/cMET陽性がんであり得る。一態様では、本開示は、肺がん、ある特定の態様では非小細胞肺がんである、EGFR、cMET又はEGFR/cMET陽性がんである陽性がんの治療を提供する。対象は、ある特定の態様では、ヒト対象である。対象は、ある特定の態様では、セツキシマブなどのEGFR特異性抗体を使用した抗体療法に適格な対象である。ある特定の態様では、本開示は、ある特定の態様では、腫瘍を含む対象、ある特定の態様では、EGFR/cMET陽性がん、ある特定の態様では、EGFR RTK耐性表現型、EGFRモノクローナル抗体耐性表現型又はそれらの組み合わせを有する腫瘍/がんを治療し得る。
【0226】
本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、腫瘍の治療ががんの治療にも適用されるように、「腫瘍」という用語と同じように適用される。
【0227】
患者に投与される抗体の量は、典型的には、治療窓内にあり、治療効果を得るために十分な量が使用されるが、量は、許容できない程度の副作用をもたらす閾値を超えないことを意味する。所望の治療効果を得るために必要な抗体の量が少ないほど、治療窓は典型的には大きくなる。したがって、低投薬量で十分な治療効果を発揮する本開示による抗体が好ましい。投薬量は、セツキシマブの投薬レジメンの範囲内であり得る。ある特定の態様では、用量は、1000mg、1500mg又は2000mgである。投薬は、毎週1回又は2週間に1回であり得る。
【0228】
オシメルチニブは、規制当局によって承認された用量に従って投与される。典型的には、投薬は、1日1回、80mgである。
【0229】
アルモネルチニブは、規制当局によって承認された用量に従って投与される。典型的には、投薬は、1日1回、110mgである。
【0230】
ラゼルチニブは、規制当局によって承認された用量に従って投与される。典型的には、投薬は、1日1回、240mgである。
【0231】
典型的には、ベフォテルチニブの投薬は、1日当たり75mgであり、21日間、それぞれ25mgの3回の経口投与として提供され、忍容性がある場合、続いて、1日用量として100mgが提供される。代替的に、投薬は、21日間にわたって70mgのベフォテルチニブであり、忍容性がある場合、続いて、1日用量として100mgである。
【0232】
ある特定の態様では、本開示による二重特異性抗体は、他の点で同様の条件下ではセツキシマブと比較して、より少ない皮膚毒性を誘発する。ある特定の態様における本開示による二重特異性抗体は、他の点で同様の条件下ではセツキシマブと比較して、より少ない炎症誘発性ケモカイン、ある特定の態様ではCXCL14を産生する。ある特定の態様における本開示による二重特異性抗体は、他の点で同様の条件下ではセツキシマブと比較して、抗菌RNAse、ある特定の態様ではRnase 7のより少ない損傷を誘発する。
【0233】
本開示には、とりわけ、EGFR及びcMET受容体を標的とし、インビトロでのがん細胞株の強力な増殖阻害及びインビボでの腫瘍成長阻害をもたらす、抗体が記載されている。本開示の二重特異性抗体は、低毒性プロファイルを高い有効性と組み合わせることができる。本開示の抗体は、様々なタイプ及び系統のEGFR標的化療法に有用であり得る。本開示の抗体は、両方のアームで同じ抗原に結合する抗体と比較して、増加した治療ウィンドウを有し得る。本開示の二重特異性抗体は、セツキシマブ抗体と比較した場合、インビトロ、インビボ又はそれらの組み合わせでより良好な成長阻害効果を呈し得る。
【0234】
本開示は、様々な異なる種類の腫瘍のうちの1つ以上を有し得る対象の治療における使用のための、本明細書に開示されているような二重特異性抗体を提供する。腫瘍は、EGFR陽性腫瘍、cMET陽性腫瘍又はEGFR及びcMET陽性腫瘍であり得る。腫瘍は、非小細胞肺がんを含む肺がんであり得る。腫瘍は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤での治療に耐性があり得る。ある特定の態様では、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であり、ある特定の態様では、オシメルチニブ又はその類似体である。治療は、当該チロシンキナーゼ阻害剤での治療を含む。当該チロシンキナーゼ阻害剤での共治療の場合、腫瘍は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤での治療に耐性があり得る。共治療は、チロシンキナーゼ阻害剤に対する腫瘍の感受性を少なくとも部分的に回復させる。ある特定の態様におけるEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤である。臨床的に関連する第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の例は、オシメルチニブ、ラゼルチニブ、アルフルチニブ、レジベルチニブ、ロシレチニブ、オルムチニブ、アルモネルチニブ、アビベルチニブ、ASK120067、ベフォテルチニブ、オルムチニブ、ロシレチニブ又はSH-1028(ナザルチニブ(EGF816)、ナコチニブ(ASP8273)、マベレルチニブ(PF-0647775)、オラフェルチニブ(CK-101)、ケイナチニブ、ES-072である。ある特定の態様では、チロシンキナーゼ阻害剤は、オシメルチニブである。ある特定の態様では、チロシンキナーゼ阻害剤は、ラゼルチニブである。ある特定の態様では、チロシンキナーゼ阻害剤は、アルモネルチニブである。ある特定の態様では、チロシンキナーゼ阻害剤は、ベフォテルチニブである。この態様及び他の態様では、腫瘍は、HGF関連腫瘍であり得る。
【0235】
ある特定の態様では、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、オシメルチニブ、オルムチニブ又はアルモネルチニブなどの不可逆的阻害剤である。
【0236】
EGFR陽性腫瘍は、典型的には、EGFR活性化変異を有する腫瘍である。EGFR活性化変異は、EGF/EGFRシグナル伝達経路の活性化をもたらすEGFRの変異である。EGFR活性化変異は、腫瘍のがん状態にとって重要であり得る。そのような腫瘍がEGFR標的化療法に非感受性になり得る手法のうちの1つは、HGF/cMETシグナル伝達経路の活性化によるものである。腫瘍は、HGF関連腫瘍であり得る。cMET/HGFシグナル伝達経路の活性化は、EGFR陽性腫瘍がEGFR標的化療法による治療を逃避することができる手法のうちの1つである。cMET/HGF経路は、様々な手法で活性化され得る。活性化の様々な方法が、当技術分野に記載されており、そのうちのいくつかは、本明細書に詳述されている。本開示の抗体は、cMET/HGFシグナル伝達経路の活性化が、HGFが存在すること又は過剰にあることと関連付けられている、腫瘍の治療に特に適している。そのようなcMET陽性腫瘍は、HGF関連腫瘍又はHGF依存性腫瘍と称される。本開示の抗体はまた、EGFR陽性腫瘍のこの可能な逃避メカニズムを少なくとも部分的に阻害するために使用することができる。そのような腫瘍は、更にcMET/HGFシグナル伝達経路が活性化される、腫瘍細胞の選択された発達によってEGFR標的化療法を逃避することができる。そのような細胞は、EGFR標的化療法の開始時に存在し得る。そのような細胞は、HGF/cMETシグナル伝達陰性腫瘍細胞よりも選択的成長利点を有する。腫瘍は、HGF/cMETシグナル伝達経路が活性化される腫瘍であり得る。腫瘍は、肝細胞成長因子(HGF)のレベルの上昇又はHGF受容体c-Metの過剰発現に関連する腫瘍であり得る。腫瘍は、成長がEGF及び/又はHGFによって駆動される腫瘍であり得る。腫瘍は、シグナル伝達経路が成長因子の存在に応答して腫瘍の細胞内で活性化され、成長因子の除去が腫瘍の細胞の成長の阻害をもたらす場合、ある特定の成長因子によって駆動されると言われる。この減少は、減少した細胞分裂及び/又は誘導細胞死滅、例えば、アポトーシスによって測定することができる。腫瘍は、他の点で腫瘍の成長が許容されるであろう条件下では、腫瘍がHGFの存在下で成長するか又は成長が速くなる場合、HGF関連腫瘍である。
【0237】
様々な腫瘍に対するEGFR標的化療法は、Vecchione et al.,EGFR-targeted therapy.”Experimental cell research Vol 317(2011):2765-2771によってレビューされた。一般に、EGFR標的化療法は、EGFRと相互作用し、かつ細胞内のEGFR媒介性シグナル伝達を阻害する分子での療法である。
【0238】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、予防を包含する。本開示の予防の態様は、具体的には、以下のように示されている。
【0239】
本開示はまた、対象におけるチロシンキナーゼ阻害剤耐性を有するがんの発生の防止の方法における使用のための、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む本開示の二重特異性抗体との組み合わせも提供する。ある特定の態様では、第1の可変ドメインは、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYX1X2NTNYAQKLQG及び配列X3X4X5X6HWWLX7Aを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、X1=N又はS、X2=A又はG、X3=D又はG、X4=R、S又はY、X5=H、L又はY、X6=D又はW、かつX7=D又はGであり、X1~X7以外の位置で、0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有し、第2の可変ドメインは、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号1~23の配列のうちの1つのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0240】
本開示の予防の態様はまた、第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤と、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む本開示の二重特異性抗体との有効量の組み合わせを対象に投与することを含む、対象におけるチロシンキナーゼ阻害剤耐性を有するがんの発生の防止の方法の提供に関する。
【0241】
具体的には、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤耐性を有するがんの防止の方法は、第1、第2及び/又は第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤での治療に対する進行から発生する変異に関連する。ある特定の態様では、当該がんは、NSCLCである。第1、第2又は第3世代のチロシン阻害剤でのそのようながん型の治療は、後天性耐性変異T790M又はエクソン20挿入変異などのいくつかの変異をもたらすことが報告されている。
【0242】
ある特定の態様では、対象におけるチロシンキナーゼ阻害剤耐性を有するがんの発生の当該防止は、T790M又はエクソン20挿入変異などの、EGFRにおける後天性耐性変異を有するがんの発症又は発生を防止することを含む。
【0243】
ある特定の態様では、当該防止は、エクソン19欠失、エクソン21L858R点置換又はEGFR増幅などの活性化EGFR変異を含むがん又は患者の治療を含む。
【0244】
ある特定の態様では、チロシンキナーゼ阻害剤耐性を有するがんの発生を防止することから利益を得る対象は、EGFR活性化変異の存在について診断される。ある特定の態様では、そのような対象は、白金ベースの化学療法又は当該チロシンキナーゼ阻害剤のうちの1つを含む、一次選択のケアの標準の臨床的に関連する基準に従った治療に適格である。NSCLC又は他のがん型についてのそのような基準は、有資格の開業医によく知られている。ある特定の態様では、そのような基準は、放射線学的方法によるRECISTバージョン1.1によって定義されるような不治の測定可能な疾患である転移性又は局所進行性の未切除疾患のエビデンスを有する組織学的又は細胞学的に確認された固形腫瘍を含む(参照Eisenhauer et al.,European Journal of Cancer 45(2009)228-247)、治験責任医師の判断に従って、12週間以上の平均余命を含むか含まない、0又は1のEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータス。
【0245】
本明細書では、示されたグレード及びパフォーマンスステータスを有するECOGパフォーマンスステータススケールは、以下の通りである:
グレード0:完全に活動でき、制限なしで全ての疾患前のパフォーマンスで行うことができる。グレード1:身体的に激しい活動は制限されているが、外来であり、軽い家事、オフィスワークなどの、軽い又は座りでの仕事を行うことができる。グレード2:外来であり、全ての自身の世話が可能であるが、仕事の活動を行うことができない;起きている時間の約50%超で動き回れる。グレード3:限られた自身の世話のみが可能であり、起きている時間の50%超がベッド又は椅子に限られている。グレード4:全身に障害を負っており、自身の世話を行うことができない;ベッド及び椅子に完全に限られている。グレード5:死亡。
【0246】
ある特定の態様では、当該防止で使用される抗体は、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYX1X2NTNYAQKLQG及び配列X3X4X5X6HWWLX7Aを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、X1=N又はS、X2=A又はG、X3=D又はG、X4=R、S又はY、X5=H、L又はY、X6=D又はW、かつX7=D又はGであり、X1~X7以外の位置で、0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する、第1の可変ドメインと、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号1~23の配列のうちの1つのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む、第2の可変ドメインと、を含む。
【0247】
ある特定の態様において本明細書に示されるような治療における使用のための治療又は抗体の方法は、腫瘍がHGF関連腫瘍であるかどうかを決定するステップを更に含む。
【0248】
本開示の抗体は、HGF関連腫瘍の成長を阻害することができる。
【0249】
本明細書で数字1と数字2との間で範囲が与えられている場合、範囲は、数字1及び数字2を含む。例えば、2~5の範囲は、数字2及び5を含む。
【0250】
本明細書で別の親和性よりも高い親和性について言及される場合、Kd=他のKdよりも低い。誤解を避けるために、10e-9MのKdは、10e-8MのKdよりも低い。標的に対する10e-9MのKdを有する抗体の親和性は、Kdが10e-8Mである場合よりも高い。
【0251】
ある特定の態様では、治療の開始時に、以下の包含要因IF1~IF8のうちの少なくとも1つ、1つより多く、又は全てが、治療の対象に該当する。ある特定の態様では、対象は、包含要因IF1~IF8の全てを含むか、又はこれらに準拠する:
IF1.インフォームドコンセントの署名時に18歳以上の年齢であること。
IF2.不治の転移性又は局所進行性の未切除疾患のエビデンスを有する組織学的又は細胞学的に確認された固形腫瘍を有すること。
IF3.1.事前の標準的な一次選択治療に失敗した対象の場合:対象は、臨床的利益を提供することが知られている療法が進行しているか、又はこれに不耐性である。対象は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)感作変異及び/若しくは承認されたTKI耐性変異を含む活性化EGFR変異を保有するNSCLC、又は任意の活性化c-MET変異/増幅のいずれかを有する。
IF3.2.事前の一次又はそれ以上の抗がん治療を受けたことがある対象の場合:臨床的利益をもたらすことが知られている療法が進行しているか、又はこれに不耐性であること。患者は、NSCLC EGFR感作変異(Del19、L858Rなど)を有し、抗がん治療(すなわち、一次選択治療)を受けていないか、又はオシメルチニブ耐性NSCLCを有し、化学療法ナイーブである。
IF4.最新の療法、アーカイブ又は新鮮な腫瘍組織試料での進行後に埋め込まれたFFPEの可用性を有すること。
IF5.放射線学的方法によるRECISTバージョン1.1によって定義されるような測定可能な疾患を有すること(測定不可能であるが評価可能な疾患を有する患者は、用量漸増部分に含まれ得る)。
IF6.0又は1のEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータスを有すること。
IF7.12週間以上の平均余命を有すること。
IF8.以下のうちの少なくとも1つ又は全てによって確立されるような適切な臓器機能を有すること:
IF8.1 絶対好中球数(ANC)≧1.5×109/L。
IF8.2 ヘモグロビン≧9g/dL。
IF8.3 血小板≧100×109/L。
IF8.4 正常範囲内の補正総血清カルシウム。
IF8.5 正常範囲内の(又はサプリメントで補正された)血清マグネシウム。
IF8.6 正常範囲内の血清カリウム。
IF8.7 アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)が、正常上限(ULN)の3.0倍以下であり、総ビリルビンが、1.5×ULN以下であり、ただし、肝臓関与又は悪性腫瘍の場合、ALT/ASTが、5×ULN以下であり、総ビリルビンが、2×ULN以下である。
IF8.8 ギルバート症候群の患者の場合、コンジュゲートビリルビンは、正常範囲内の値を有する。
IF8.9 65歳超の年齢の患者についてのCockroft及びGault式又はMDRD式に従って計算して、1.5×ULN以下の血清クレアチニン又は50mL/分以上のクレアチニンクリアランス。
IF8.10 血清アルブミン>3.3g/dL。
【0252】
ある特定の態様では、IF8による臓器機能測定のための全ての値は、健康な対象で観察される上限を有する。
【0253】
ある特定の態様では、治療の対象は、IF1~IF8からなる群から選択される1つ以上の要因を含む。ある特定の態様では、治療の対象は、要因IF2、IF3(IF3.1、IF3.2など)、IF5及びIF8を含む。ある特定の態様では、治療の対象は、要因IF1~IF8の全てを含む。
【0254】
ある特定の態様では、治療の開始時に、以下の除外要因EF1~EF16のうちの少なくとも1つ、1つより多く、又は全てが、治療の対象に該当する。
EF1.以下の中枢神経系転移を有すること:
EF1.1:未治療かつ症候性の中枢神経系転移を有し、その一方で、無症候性病変を有する対象が、安定していると考えられる場合に含まれ得ること、
EF1.2 放射線又は手術を必要とする中枢神経系転移を有すること、
EF1.3 最初の用量の投与前の投与から14日以内に症状を制御するために、継続的なステロイド療法(10mg超のプレドニゾン又は等価物)を必要とする中枢神経系転移を有すること。他の中枢神経系転移を有する対象は、許容される。
EF2.既知の軟髄膜関与を有すること。
EF3.最初の用量の投与前4週間以内での任意の治験薬による別の臨床研究又は治療への参加。
EF4.治験薬の最初の用量の4週間又は5半減期のいずれか短い方以内の全身抗がん療法又は免疫療法の投与。重大な遅延毒性(例えば、ミトマイシンC、ニトロソウレア)を有する細胞毒性剤の場合、6週間のウォッシュアウト期間が必要である。
EF5.最初の用量の投与から3週間以内に大手術又は放射線療法を受けていること。任意の時点で骨髄の25%以上に事前の放射線療法を受けた対象は、適格ではない。
EF6.事前の抗悪性腫瘍療法に関連する1超の臨床的に顕著な毒性の持続性グレードを有すること(脱毛症を除く);ただし、NCI-CTCAE v5.0の2以下のグレードを有する安定した感覚性ニューロパチー及びホルモン置換で安定している2以下のグレードを有する甲状腺機能低下症は除外されない。
EF7.これらの薬剤の恒久的停止を正当化した、ヒトタンパク質又は賦形剤のいずれかに起因する過敏症反応又はいずれかの毒性の病歴を有すること。
EF8.以下を含むがこれらに限定されない臨床的に顕著な心血管疾患の病歴を有すること:
EF8.1 治験薬の最初の投与前の1ヶ月以内の深部静脈血栓症又は肺塞栓症の診断、又は治験薬の最初の投与前の6ヶ月以内で以下のうちのいずれかの診断:心筋梗塞、不安定狭心症、脳卒中、一過性虚血発作、冠動脈/末梢動脈バイパス移植片又は急性冠症候群。
EF8.2 延長されたQT間隔>480ミリ秒又は臨床的に顕著な不整脈又は電気生理学的疾患(すなわち、植込み型除細動器の配置又は制御不能な速度での心房細動)。臨床的に安定している心臓ペースメーカーを有する患者は、適格である。
EF8.3 制御されていない(持続的)動脈性高血圧:収縮期血圧>180mmHg及び/又は拡張期血圧>100mmHg。
EF8.4 New York Heart Association(NYHA)クラスIII-IVとして定義されているうっ血性心不全(CHF)又は治験薬の最初の投与から6ヶ月以内のCHFのための入院。
EF8.5 臨床的に顕著な心嚢液貯留
EF8.6 心筋炎。
EF9.薬剤誘導性間質性肺疾患、1年以内に長期ステロイド又は他の免疫抑制剤での治療を必要とする放射線性肺炎を含む間質性肺疾患の病歴を有すること。
EF10.腫瘍が治癒又は緩和の意図をもって治療され、以前又は同時の悪性腫瘍が、治験薬の安全性及び有効性の評価に影響を及ぼさない限り、皮膚の非基底細胞がん又は子宮頸部のインサイチュがんを除く、以前又は同時の悪性腫瘍を有すること。
EF11.制御されていない活動性感染症、臨床的に顕著な肺の、代謝性の若しくは精神の疾患を含むがそれらに限定されない現在の重篤な疾病又は精神障害を有すること。
EF12.抗ウイルス治療を受けずに活動性B型肝炎感染(HBsAg陽性)を有すること。活動性B型肝炎(HbsAg陽性)の対象は、最初の用量の投与の少なくとも7日以上前に開始して、ラミブジン、テノホビル、エンテカビル又は他の抗ウイルス剤での抗ウイルス治療を受ける必要がある。B型肝炎の前例(抗HBc陽性、HbsAg及びHBV-DNA陰性)を有する対象が適格である。
EF13.C型肝炎リボ核酸(HCV RNA)の陽性試験を有すること;HCV感染が自発的に解決した対象(検出可能なHCV-RNAなしの陽性HCV抗体)、又は抗ウイルス治療後に持続的なウイルス学的奏効を達成し、かつ抗ウイルス治療の中止後に6ヵ月超(IFNフリーのレジメンを使用)又は12ヵ月超(IFNベースのレジメンを使用)の検出可能なHCV RNAの欠如を示す対象が適格である。
EF14.HIV(HIV1/2抗体)の既往歴を有すること。検出できないウイルス量を有するHIVを有する患者は、許容される。地域の保健当局又は規制によって義務付けられていない限り、HIV試験は必要ではない。
EF15.妊娠可能性のある性的に活発な男性及び女性の患者の場合、研究の全期間中及びPB19478の最終投与後6ヶ月間、以下の避妊法のいずれかを使用することに同意する:
・排卵(経口、膣内、経皮)の阻害に関連する併用(エストロゲン及びプロゲストゲン含有)ホルモン避妊
・排卵の阻害に関連するプロゲストゲンのみのホルモン避妊(経口、注射、埋め込み)
・子宮内避妊器具(IUD)
・子宮内ホルモン放出システム(IUS)
・両側卵管閉塞
・精管切除されたパートナー
・性的禁欲
EF16.妊娠中又は授乳中。
【0255】
ある特定の態様では、治療の対象は、EF1~EF16からなる群から選択される1つ以上の要因に準拠する。ある特定の態様では、治療の対象は、要因EF1~EF16の全てに準拠する。
【0256】
本明細書における引用されている特許文献又は他の事項への言及は、その文献若しくは事項が知られていたこと、又はそれに含まれる情報が、請求項のいずれかの優先日時点の共通の一般的な知識の一部であったことを認めるものとはみなされない。
【0257】
複数の列挙されている要素間の接続用語「及び/又は」は、個々の選択肢及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって結ばれている場合、第1の選択肢は、第2の要素なしでの第1の要素の適用可能性を指す。第2の選択肢は、第1の要素なしでの第2の要素の適用可能性を指す。第3の選択肢は、一緒になった第1の要素及び第2の要素の適用可能性を指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つは、この意味の範囲内にあると理解され、したがって、本明細書で使用されるような「及び/又は」という用語の要件を満たす。選択肢のうちの1つより多くの同時の適用可能性はまたこの、意味の範囲内にあると理解され、したがって、「及び/又は」という用語の要件を満たす。
【0258】
明確化及び簡潔な説明のために、特徴は、同じ又は別個の実施形態の一部として本明細書に記載されるが、本開示の範囲は、記載される特徴の全て又は一部の組み合わせを有する実施形態を含み得ると理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0259】
【
図1】この出願で言及される可変ドメインの重鎖可変領域のアミノ酸配列。
【
図2】MF3370及びそのバリアント。MF8226中のCDR1、CDR2及びCDR3配列は、左から右に下線が引かれている。他の配列内のCDRは、対応する位置にある(Kabatによる)。
【
図3-1】MF4356及びそのバリアント。MF4356中のCDR1、CDR2及びCDR3配列は、左から右に下線が引かれている。他の配列内のCDRは、対応する位置にある(Kabatによる)。
【
図3-2】MF4356及びそのバリアント。MF4356中のCDR1、CDR2及びCDR3配列は、左から右に下線が引かれている。他の配列内のCDRは、対応する位置にある(Kabatによる)。
【
図4A】単一及び二重特異性IgGで使用される共通軽鎖。共通軽鎖アミノ酸配列。
【
図4B】単一及び二重特異性IgGで使用される共通軽鎖。共通軽鎖可変ドメインDNA配列及び翻訳(IGKV1-39/jk1)。
【
図4C】単一及び二重特異性IgGで使用される共通軽鎖。共通軽鎖定常領域DNA配列及び翻訳。
【
図4D】単一及び二重特異性IgGで使用される共通軽鎖。IGKV1-39/jk5共通軽鎖可変ドメイン翻訳。
【
図4E】単一及び二重特異性IgGで使用される共通軽鎖。V領域IGKV1-39A。
【
図5A】二重特異性分子の生成のためのIgG重鎖。CH1領域。
【
図5B】二重特異性分子の生成のためのIgG重鎖。ヒンジ領域。
【
図5C】二重特異性分子の生成のためのIgG重鎖。CH2領域。
【
図5D】二重特異性分子の生成のためのIgG重鎖。L235G及びG236Rサイレンシング置換を含有するCH2。
【
図5E】二重特異性分子の生成のためのIgG重鎖。置換L351K及びT366K(KK)を含有するCH3ドメイン。
【
図5F】二重特異性分子の生成のためのIgG重鎖。置換L351D及びL368E(DE)を含有するCH3ドメイン。
【
図6】治療スケジュールの概要。抗体、オシメルチニブ、及び抗体とオシメルチニブとの組み合わせ、又はビヒクルを、示された期間で投与した。治療の終了時(31日目)に、腫瘍試料を収集し、標的発現分析のためにスナップ凍結した。マウスを奏効の持続時間(DoR)及び治療終了後の再発について監視した。
【
図7】750mm3までの生存曲線:併用群対各単剤療法群のログランク(Mantel-Cox)試験は、有意である。
【
図8】28日目の個々の腫瘍体積。統計分析を、Graphpad PrismにおいてTukeyのポスト試験を伴う混合モデルを使用して実施した。
【
図9】完全な治療期間中の平均腫瘍体積±SEM。観察期間は、100日目に終了した。
【
図10】治療スケジュールの概要。群を3週間の期間にわたって投与した。
【
図11】エクソン19に変異を保有するNSCLC CDXモデルHCC827/ER1における抗体、オシメルチニブ、併用治療、及びビヒクルのみを含む群での治療の効果。異なる時点で示されるビヒクル及び治療群を表す腫瘍体積成長曲線(平均TV±SEM)。
【
図12】異なる治療群対ビヒクル群における、エクソン19に変異を有するNSCLC CDXモデルHCC827/ER1を保有するマウスの動物生存曲線。
【発明を実施するための形態】
【0260】
条項
1.対象におけるがんの治療の方法における使用のための、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む二重特異性抗体であって、当該第1の可変ドメインが、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYX1X2NTNYAQKLQG、及び配列X3X4X5X6HWWLX7Aを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、X1=N又はS、X2=A又はG、X3=D又はG、X4=R、S又はY、X5=H、L又はY、X6=D又はW、かつX7=D又はGであり、X1~X7以外の位置で、0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有し、当該第2の可変ドメインが、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号1~23の配列のうちの1つのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む、二重特異性抗体との、組み合わせ。
【0261】
2.がんを有する対象を治療する方法であって、当該治療が、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む二重特異性抗体であって、当該第1の可変ドメインが、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYX1X2NTNYAQKLQG、及び配列X3X4X5X6HWWLX7Aを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、X1=N又はS、X2=A又はG、X3=D又はG、X4=R、S又はY、X5=H、L又はY、X6=D又はW、かつX7=D又はGであり、X1~X7以外の位置で、0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有し、当該第2の可変ドメインが、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号1~23の配列のうちの1つのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む、二重特異性抗体との有効量の組み合わせを対象に投与することを含む、方法。
【0262】
3.対象におけるがんの治療のための医薬品の製造における、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む二重特異性抗体であって、当該第1の可変ドメインが、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYX1X2NTNYAQKLQG、及び配列X3X4X5X6HWWLX7Aを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、X1=N又はS、X2=A又はG、X3=D又はG、X4=R、S又はY、X5=H、L又はY、X6=D又はW、かつX7=D又はGであり、X1~X7以外の位置で、0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有し、当該第2の可変ドメインが、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号1~23の配列のうちの1つのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む、二重特異性抗体と第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤との組み合わせの、使用。
【0263】
4.がんが、EGFR陽性がん、cMET陽性がん、又はEGFR及びcMET陽性がんである、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0264】
5.当該がんが、EGFR異常、cMET異常又はEGFR及びcMET異常を含む、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0265】
6.当該がんが、チロシンキナーゼ阻害剤での治療に耐性がある、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0266】
7.当該がんが、EGFR及び/又はcMETチロシンキナーゼ阻害剤に対して耐性がある、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0267】
8.EGFRチロシンキナーゼ阻害剤耐性が、第1、第2及び/又は第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤、好ましくは、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する耐性を含む、条項7に記載の使用又は方法。
【0268】
9.当該cMETチロシンキナーゼ阻害剤耐性が、カプマチニブ、テポチニブ、クリゾテニブ、カボザンチニブ、サボリチニブ、グレサチニブ、シトラバチニブ、BMS-777607、メレスチニブ、チバンチニブ、ゴルバチニブ、フォレチニブ、AMG-337又はBMS-794833、好ましくは、カプマチニブ又はテポチニブに対する耐性を含む、条項7に記載の使用又は方法。
【0269】
10.対象が、チロシンキナーゼ阻害剤、好ましくはEGFR及び/又はcMETチロシンキナーゼ阻害剤での事前の治療を受けている、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0270】
11.対象が、第1、第2又は第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤での事前の治療を受けている、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0271】
12.対象が、cMETチロシンキナーゼ阻害剤での事前の治療を受けている、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0272】
13.当該がんが、活性化EGFR変異、承認されたチロシンキナーゼ阻害剤耐性変異、三次チロシンキナーゼ阻害剤耐性変異(L718X(例えば、L718Q)、G719X(例えば、G719A)、L792X(例えば、L792H)、G796X(例えば、G796R、G796S、G796D)、C797X、C797X(例えば、C797S、C797G)、EGFRへの第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤の結合を低減する変異(例えば、L792X、L718X)、後天性チロシンキナーゼ阻害剤耐性変異(C797X、L792X、G796X、G724X、S768X、L718X又はエクソン20挿入変異など)、EGFR遺伝子増幅、cMET変異又はcMET異常を含む、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0273】
14.当該がんが、エクソン19欠失変異、好ましくは、フレーム内エクソン19欠失、エクソン20ミスセンス変異(例えば、T790M)、又はL858Rなどのエクソン21変異を含む、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0274】
15.がんが、EGFRエクソン20変異、好ましくはエクソン20挿入変異を含む、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0275】
16.がんが、G724X(例えば、G724S)、S768X(例えば、S768I)、T790X(例えば、T790M)、L792X(例えば、L792H)、C797X(C797S及びC797Gを含む)、L798X(例えば、L798I)を含む、オシメルチニブに対する耐性を付与する変異などの後天性チロシンキナーゼ阻害剤耐性変異を含む、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0276】
17.当該がんが、近ループ挿入(767~772位)、遠ループ挿入(773~775位)、好ましくは、V769_D770insASV、D770_N771insSVD、H773_V774insNPH、H773_V774insH、D770_N771insG、D770delinsGY、N771_P772insN、V774_C775insHV、D770_N771insGL、H773_V774insPH、A763_Y764insFQEA、D770_N771delinsEGN、D770_N771insGD、D770_N771insH、D770_N771insP、H773_V774insAH、H773_V774insGNPH、H773delinsSNPY、N771_P772insH、N771_P772insVDN、N771delinsGY、N771delinsKH、N771delinsRD、P772_H773delinsHNPY、P772_H773insGT、P772_H773insPNP、P772_H773insT、V769_D770insA、V769_D770insGG、V769_D770insGSV、V769_D770insGVV及びV769_D770insMASV;又は変異T790M、L792X(例えば、L792H)、C796X(例えば、G796R、G796S、G796D)、C797X(例えば、C797S、C797G)、L798I若しくはフレーム内エクソン20挿入、例えば、M766_A767insASV若しくはH773-V774insNPH、Ins761(EAFQ)、Ins770(ASV)、Ins771(G)、Ins774(NPH)、M766_A7671ns A、S768_V769InsSVA、P772_H773InsNS、D761_E762InsX1-7、A763_Y764InsX1-7、Y764_Y765 InsX1-7、M766_A767InsX1-7、A767_V768 InsX1-7、S768_V769 InsX1-7>V769_D770 InsX1-7>D770_N771 InsX1-7>N771_P772 InsX1-7>P772_H773 InsX1-7、H773_V774 InsX1-7若しくはV774_C775 InsX1-7から選択されるエクソン20(762~823)変異を含む、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0277】
18.当該がんが、cMET増幅、cMET過剰発現、cMET経路のシグナル伝達の増加、cMET遺伝子増幅、cMETタンパク質活性の増加、及び/又はHGF発現の増加などのcMET異常を含む、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0278】
19.当該がんが、cMETエクソン14スキッピング変異を含む、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0279】
20.当該第1世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤が、ゲフィチニブ、エルロチニブ若しくはイコチニブを含むか、又はこれである、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0280】
21.当該第2世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤が、アファチニブ、ダコミチニブ、XL647、AP26113、CO-1686若しくはネラチニブを含むか、又はこれである、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0281】
22.当該第3世代のEGFRチロシンキナーゼが、オシメルチニブ、ラゼルチニブ、アルフルチニブ、レジベルチニブ、ロシレチニブ、オルムチニブ、アルモネルチニブ、アビベルチニブ、ASK120067、ベフォテルチニブ、SH-1028、ナザルチニブ(EGF816)、ナコチニブ(ASP8273)、マベレルチニブ(PF-0647775)、オラフェルチニブ(CK-101)、ケイナチニブ若しくはES-072、好ましくはオシメルチニブを含むか、又はこれである、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0282】
23.当該cMETチロシンキナーゼ阻害剤が、カプマチニブ、テポチニブ、クリゾテニブ、カボザンチニブ、サボリチニブ、グレサチニブ、シトラバチニブ、BMS-777607、メレスチニブ、チバンチニブ、ゴルバチニブ、フォレチニブ、AMG-337若しくはBMS-794833を含むか、又はこれである、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0283】
24.治療が、当該二重特異性抗体と当該チロシンキナーゼ阻害剤との当該組み合わせを、それを必要とする対象に投与することを含み、好ましくは、当該二重特異性抗体を、当該第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤と同時に、連続して、又は別々に投与する、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0284】
25.対象が、チロシンキナーゼ阻害剤治療又は抗EGFR治療ナイーブである対象など、事前の抗がん治療を受けていない、条項1~5のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0285】
26.二重特異性抗体及びTKI阻害剤の投与が、一次選択治療として投与される、条項1~5のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0286】
27.対象又はがんが、EGFR及び/又はcMET活性化変異、例えば、エクソン19欠失変異又はエクソン21変異(L858Rなど)を含む、条項1~5のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0287】
28.対象が、ヒト対象である、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0288】
29.がんが、肺がん、特に非小細胞肺がん、好ましくは転移性又は進行性非小細胞肺がんである、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0289】
30.当該がんが、活性化EGFR変異、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤感作変異(エクソン19欠失及びL858Xなど)、後天性EGFRチロシンキナーゼ阻害剤耐性変異(T790X、C797X、L792X、L798Xなど)、承認されたEGFRチロシンキナーゼ阻害剤耐性変異、EGFRエクソン20挿入変異、活性化c-MET変異、好ましくはエクソン14スキッピング変異、又は好ましくはMET/CEP7>5若しくはcfDNA≧2コピーを含むcMET増幅、又はそれらの任意の組み合わせを含む、NSCLCである、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0290】
31.当該がんが、進行性又は転移性がんである、先行条項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0291】
32.第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含み、当該第1の可変ドメインが、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYX1X2NTNYAQKLQG、及び配列X3X4X5X6HWWLX7Aを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、X1=N又はS、X2=A又はG、X3=D又はG、X4=R、S又はY、X5=H、L又はY、X6=D又はW、かつX7=D又はGであり、X1~X7以外の位置で、0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有し、当該第2の可変ドメインが、0~10個、好ましくは0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号1~23の配列のうちの1つのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む二重特異性抗体とを含む、薬学的組み合わせ。
【0292】
33.抗体が、ヒト抗体である、先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0293】
34.抗体が、ADCC増強されている、先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0294】
35.抗体が、1:1の抗EGFR、抗cMET化学量論を有するIgG1フォーマット抗体である、先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0295】
36.抗体が、EGFRに結合することができる1つの可変ドメインと、cMETに結合することができる1つの可変ドメインと、を有する、先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0296】
37.ヒトEGFRに結合することができる可変ドメインが、カニクイザル及びマウスEGFRにも結合することができる、先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0297】
38.ヒトEGFRに結合することができる可変ドメインが、ヒトEGFRのドメインIIIに結合する、先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0298】
39.cMETに結合することができる可変ドメインが、cMETへの抗体5D5の結合を遮断する、先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0299】
40.cMETに結合することができる可変ドメインが、cMETへのHGFの結合を遮断する、先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0300】
41.一方のCH3ドメインにおける405位及び409位のアミノ酸が、他方のCH3ドメインにおける対応する位置のアミノ酸と同じである(EU番号付け)、先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0301】
42.X1=N、X2=G、X3=D、X4=S、X5=Y、X6=W、かつX7=Gであるか、
X1=N、X2=A、X3=D、X4=S、X5=Y、X6=W、かつX7=Gであるか、
X1=S、X2=G、X3=D、X4=S、X5=Y、X6=W、かつX7=Gであるか、
X1=N、X2=G、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、
X1=N、X2=A、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、
X1=S、X2=G、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、
X1=N、X2=G、X3=G、X4=Y、X5=L、X6=D、かつX7=Gであるか、
X1=N、X2=A、X3=G、X4=Y、X5=L、X6=D、かつX7=Gであるか、又は
X1=S、X2=G、X3=G、X4=Y、X5=L、X6=D、かつX7=Gである、
先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0302】
43.X1=N、X2=G、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、又はX1=N、X2=A、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、又はX1=S、X2=G、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dである、先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0303】
44.X1=N、X2=G、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dであるか、又はX1=N、X2=A、X3=D、X4=R、X5=H、X6=W、かつX7=Dである、先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0304】
45.第2の可変ドメインの重鎖可変領域が、0~10個、好ましくは0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号1~3、7、8、10、13、15、16、17、21、22又は23の配列のうちの1つのアミノ酸配列を含む、先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0305】
46.第2の可変ドメインの重鎖可変領域が、0~10個、好ましくは0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する配列番号2、7、8、10、13又は23の配列のうちの1つのアミノ酸配列を含む、先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0306】
47.第1の可変ドメインが、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYNGNTNYAQKLQG、及び配列DRHWHWWLDAを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、第2の可変ドメインが、CDR1配列SYSMN、CDR2配列WINTYTGDPTYAQGFTG、及びCDR3配列ETYYYDRGGYPFDPを有する重鎖可変領域を含む、先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0307】
48.第1の可変ドメインが、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYNANTNYAQKLQG、及び配列DRHWHWWLDAを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、第2の可変ドメインが、CDR1配列TYSMN、CDR2配列WINTYTGDPTYAQGFTG、及び配列ETYFYDRGGYPFDPを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含む、先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0308】
49.第1及び第2の可変ドメインが、共通軽鎖、好ましくは、
図4Bの軽鎖を含む、先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0309】
50.第1及び第2の可変ドメインが、(IMGTによる)各々QSISSY、AAS及びQQSYSTPのCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を有する軽鎖を含む、先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0310】
51.抗体が、HGF成長応答性細胞のHGF誘導成長を阻害する、先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0311】
52.抗体が、EGF成長応答性細胞のEGF誘導成長を阻害する、先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0312】
53.対象に、1000mgの二重特異性抗体を、特に1000mgのフラット用量を使用して投与する、先行条項のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0313】
54.二重特異性抗体を毎週1回投与する、条項53に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0314】
55.対象に、好ましくは80mgの1日用量を含む、オシメルチニブを更に投与する、条項53又は54に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0315】
56.対象に、好ましくは110mgの1日用量を含む、アルモネルチニブを更に投与する、条項53又は54に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0316】
57.対象に、好ましくは240mgの1日用量を含む、ラゼルチニブを更に投与する、条項53又は54に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0317】
58.対象に、好ましくは75mgの1日用量を含む、ベフォテルチニブを更に投与する、条項53又は54に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0318】
59.二重特異性抗体を2週間に1回投与する、条項53に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0319】
60.対象に、好ましくは80mgの1日用量を含む、オシメルチニブを更に投与する、条項53又は59に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0320】
61.対象に、好ましくは110mgの1日用量を含む、アルモネルチニブを更に投与する、条項53又は59に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0321】
62.対象に、好ましくは240mgの1日用量を含む、ラゼルチニブを更に投与する、条項53又は59に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0322】
63.対象に、好ましくは75mgの1日用量を含む、ベフォテルチニブを更に投与する、条項53又は59に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0323】
64.対象に、1500mgの二重特異性抗体を、特に1500mgのフラット用量を使用して投与する、条項1~52のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0324】
65.二重特異性抗体を2週間に1回投与する、条項64に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0325】
66.対象に、好ましくは80mgの1日用量を含む、オシメルチニブを更に投与する、条項64又は65に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0326】
67.対象に、好ましくは110mgの1日用量を含む、アルモネルチニブを更に投与する、条項64又は65に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0327】
68.対象に、好ましくは240mgの1日用量を含む、ラゼルチニブを更に投与する、条項64又は65に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0328】
69.対象に、好ましくは75mgの1日用量を含む、ベフォテルチニブを更に投与する、条項64又は65に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0329】
70.対象に、2000mgの二重特異性抗体を、特に2000mgのフラット用量を使用して投与する、条項1~51のいずれか一項に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0330】
71.二重特異性抗体を2週間に1回投与する、条項70に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0331】
72.対象に、好ましくは80mgの1日用量を含む、オシメルチニブを更に投与する、条項70又は71に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0332】
73.対象に、好ましくは110mgの1日用量を含む、アルモネルチニブを更に投与する、条項70又は71に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0333】
74.対象に、好ましくは240mgの1日用量を含む、ラゼルチニブを更に投与する、条項70又は71に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【0334】
75.対象に、好ましくは75mgの1日用量を含む、ベフォテルチニブを更に投与する、条項70又は71に記載の使用、方法又は薬学的組み合わせ。
【実施例】
【0335】
本明細書で使用される場合、Xが独立して数字0~9である「MFXXXX」は、可変ドメインを含むFabを指し、VHは、4桁によって識別されるアミノ酸配列を有する。別段指示されない限り、可変ドメインの軽鎖可変領域は、
図4A、典型的には4Bの配列を有する。「MFXXXX VH」は、4桁で識別されるVHのアミノ酸配列を指す。MFは、更に、軽鎖の定常領域と、通常、軽鎖の定常領域と相互作用する重鎖の定常領域と、を含む。PGは、同一の重鎖及び軽鎖を含む単一特異性抗体を指す。PBは、2つの異なる重鎖を有する二重特異性抗体を指す。重鎖のVH可変領域は異なり、典型的には、CH3領域も異なり、重鎖の一方はそのCH3ドメインのKK変異を有し、他方はそのCH3ドメインの相補的DE変異を有する(参考PCT/NL2013/050294(WO2013/157954として公開)を参照されたい)。
【0336】
本開示の抗体の産生の詳細については、PCTNL/2018/050537(WO2019/031965として公開されている)を参照されたい。添付の実施例における使用及び本開示の方法における使用に好適なEGFR及びcMETに結合する二重特異性抗体は、表3、4、5及び6のものを含む。具体的には、二重特異性抗体PB19478は、添付の実施例で好適に使用される。
【0337】
各二重特異性抗体は、EGFR及びcMETに各々結合することができるMF番号によって指定される2つのVHを含み、
図5e及び
図5fに各々示されるようなKK/DE CH3ヘテロ二量体化ドメイン、
図5dに示されるようなCH2ドメイン、
図5bに示されるようなヒンジドメイン、
図5aに示されるようなCH1ドメイン、並びに
図4a~eに示されるような共通軽鎖を有するFc尾部を更に含む。例えば、MF8233×MF8230によって示される二重特異性抗体は、上記の一般的な配列、MF8233の配列を有するVHを有する可変ドメイン、及びMF8230の配列を有するVHを有する可変ドメインを有し、好ましくは、添付の実施例で使用される。
【0338】
実施例1:材料及び方法
細胞株:
EBC-1[JCRB0820]、PC-9[RCB0446]、H358[ATCC(登録商標)CRL-5807(商標)]、HCC827[ATCC(登録商標)CRL-2868(商標)]、MKN-45[DSMZ ACC 409]N87[ATCC(登録商標)CRL-5822(商標)]及びA431[ATCC(登録商標)CRL-1555(商標)]細胞株を購入し、10%熱不活性化ウシ胎児血清(FBS)で補充した成長培地でルーチン的に維持した。HEK293F Freestyle細胞を、Invitrogenから得て、293 FreeStyle培地中でルーチン的に維持した。
【0339】
cDNA構築物:
安定した細胞株(cMET及びEGFR)の生成のための、及び免疫化(cMET)のためのcMET及びEGFR発現ベクターの生成
クローニングのための独自の制限部位と効率的な翻訳のためのコザックコンセンサス配列とを含む各標的の全長cDNAを、クローニングのための独自の制限部位と効率的な翻訳のためのコザックコンセンサス配列とを導入した特異的プライマーを用いて、標的cDNAを含有する市販の発現構築物上でのPCR増幅を介して合成するか、又は得た。各標的の全長cDNAをpcDNA3.1などの真核発現構築物にクローニングし、その一方で、細胞外ドメインをpVAX1及びpDisplayにクローニングした。挿入配列は、NCBI参照アミノ酸配列と比較して検証した。
【0340】
細胞表面上での発現のためのアミノ酸配列全長ヒトEGFR挿入物(GenBank:NP_00533と同一):
MRPSGTAGAALLALLAALCPASRALEEKKVCQGTSNKLTQLGTFEDHFLSLQRMFNNCEVVLGNLEITYVQRNYDLSFLKTIQEVAGYVLIALNTVERIPLENLQIIRGNMYYENSYALAVLSNYDANKTGLKELPMRNLQEILHGAVRFSNNPALCNVESIQWRDIVSSDFLSNMSMDFQNHLGSCQKCDPSCPNGSCWGAGEENCQKLTKIICAQQCSGRCRGKSPSDCCHNQCAAGCTGPRESDCLVCRKFRDEATCKDTCPPLMLYNPTTYQMDVNPEGKYSFGATCVKKCPRNYVVTDHGSCVRACGADSYEMEEDGVRKCKKCEGPCRKVCNGIGIGEFKDSLSINATNIKHFKNCTSISGDLHILPVAFRGDSFTHTPPLDPQELDILKTVKEITGFLLIQAWPENRTDLHAFENLEIIRGRTKQHGQFSLAVVSLNITSLGLRSLKEISDGDVIISGNKNLCYANTINWKKLFGTSGQKTKIISNRGENSCKATGQVCHALCSPEGCWGPEPRDCVSCRNVSRGRECVDKCNLLEGEPREFVENSECIQCHPECLPQAMNITCTGRGPDNCIQCAHYIDGPHCVKTCPAGVMGENNTLVWKYADAGHVCHLCHPNCTYGCTGPGLEGCPTNGPKIPSIATGMVGALLLLLVVALGIGLFMRRRHIVRKRTLRRLLQERELVEPLTPSGEAPNQALLRILKETEFKKIKVLGSGAFGTVYKGLWIPEGEKVKIPVAIKELREATSPKANKEILDEAYVMASVDNPHVCRLLGICLTSTVQLITQLMPFGCLLDYVREHKDNIGSQYLLNWCVQIAKGMNYLEDRRLVHRDLAARNVLVKTPQHVKITDFGLAKLLGAEEKEYHAEGGKVPIKWMALESILHRIYTHQSDVWSYGVTVWELMTFGSKPYDGIPASEISSILEKGERLPQPPICTIDVYMIMVKCWMIDADSRPKFRELIIEFSKMARDPQRYLVIQGDERMHLPSPTDSNFYRALMDEEDMDDVVDADEYLIPQQGFFSSPSTSRTPLLSSLSATSNNSTVACIDRNGLQSCPIKEDSFLQRYSSDPTGALTEDSIDDTFLPVPEYINQSVPKRPAGSVQNPVYHNQPLNPAPSRDPHYQDPHSTAVGNPEYLNTVQPTCVNSTFDSPAHWAQKGSHQISLDNPDYQQDFFPKEAKPNGIFKGSTAENAEYLRVAPQSSEFIGA
【0341】
そのうち:
-MRPSGTAGAALLALLAALCPASR:シグナルペプチド。
-ALEEKKVCQGTSNKLTQLGTFEDHFLSLQRMFNNCEVVLGNLEITYVQRNYDLSFLKTIQEVAGYVLIALNTVERIPLENLQIIRGNMYYENSYALAVLSNYDANKTGLKELPMRNLQEILHGAVRFSNNPALCNVESIQWRDIVSSDFLSNMSMDFQNHLGSCQKCDPSCPNGSCWGAGEENCQKLTKIICAQQCSGRCRGKSPSDCCHNQCAAGCTGPRESDCLVCRKFRDEATCKDTCPPLMLYNPTTYQMDVNPEGKYSFGATCVKKCPRNYVVTDHGSCVRACGADSYEMEEDGVRKCKKCEGPCRKVCNGIGIGEFKDSLSINATNIKHFKNCTSISGDLHILPVAFRGDSFTHTPPLDPQELDILKTVKEITGFLLIQAWPENRTDLHAFENLEIIRGRTKQHGQFSLAVVSLNITSLGLRSLKEISDGDVIISGNKNLCYANTINWKKLFGTSGQKTKIISNRGENSCKATGQVCHALCSPEGCWGPEPRDCVSCRNVSRGRECVDKCNLLEGEPREFVENSECIQCHPECLPQAMNITCTGRGPDNCIQCAHYIDGPHCVKTCPAGVMGENNTLVWKYADAGHVCHLCHPNCTYGCTGPGLEGCPTNGPKIPS:ヒトEGFRのECD。
-IATGMVGALLLLLVVALGIGLFM:予測されたTM領域。
-RRRHIVRKRTLRRLLQERELVEPLTPSGEAPNQALLRILKETEFKKIKVLGSGAFGTVYKGLWIPEGEKVKIPVAIKELREATSPKANKEILDEAYVMASVDNPHVCRLLGICLTSTVQLITQLMPFGCLLDYVREHKDNIGSQYLLNWCVQIAKGMNYLEDRRLVHRDLAARNVLVKTPQHVKITDFGLAKLLGAEEKEYHAEGGKVPIKWMALESILHRIYTHQSDVWSYGVTVWELMTFGSKPYDGIPASEISSILEKGERLPQPPICTIDVYMIMVKCWMIDADSRPKFRELIIEFSKMARDPQRYLVIQGDERMHLPSPTDSNFYRALMDEEDMDDVVDADEYLIPQQGFFSSPSTSRTPLLSSLSATSNNSTVACIDRNGLQSCPIKEDSFLQRYSSDPTGALTEDSIDDTFLPVPEYINQSVPKRPAGSVQNPVYHNQPLNPAPSRDPHYQDPHSTAVGNPEYLNTVQPTCVNSTFDSPAHWAQKGSHQISLDNPDYQQDFFPKEAKPNGIFKGSTAENAEYLRVAPQSSEFIGA:細胞内尾部。
【0342】
エクソン2~7のフレーム内欠失によって引き起こされる、ヒトEGFRvarIIIの細胞外ドメインのアミノ酸配列、天然に存在するEGFRバリアントVAR_066493[Ji H.,Zhao X;PNAS103:7817-7822(2006)]。以下の_は、アミノ酸30~297を欠いている場所を示す
MRPSGTAGAALLALLAALCPASRALEEKK_GNYVVTDHGSCVRACGADSYEMEEDGVRKCKKCEGPCRKVCNGIGIGEFKDSLSINATNIKHFKNCTSISGDLHILPVAFRGDSFTHTPPLDPQELDILKTVKEITGFLLIQAWPENRTDLHAFENLEIIRGRTKQHGQFSLAVVSLNITSLGLRSLKEISDGDVIISGNKNLCYANTINWKKLFGTSGQKTKIISNRGENSCKATGQVCHALCSPEGCWGPEPRDCVSCRNVSRGRECVDKCNLLEGEPREFVENSECIQCHPECLPQAMNITCTGRGPDNCIQCAHYIDGPHCVKTCPAGVMGENNTLVWKYADAGHVCHLCHPNCTYGCTGPGLEGCPTNGPKIPS
【0343】
そのうち:
-MRPSGTAGAALLALLAALCPASR:シグナルペプチド。
-ALEEKK_GNYVVTDHGSCVRACGADSYEMEEDGVRKCKKCEGPCRKVCNGIGIGEFKDSLSINATNIKHFKNCTSISGDLHILPVAFRGDSFTHTPPLDPQELDILKTVKEITGFLLIQAWPENRTDLHAFENLEIIRGRTKQHGQFSLAVVSLNITSLGLRSLKEISDGDVIISGNKNLCYANTINWKKLFGTSGQKTKIISNRGENSCKATGQVCHALCSPEGCWGPEPRDCVSCRNVSRGRECVDKCNLLEGEPREFVENSECIQCHPECLPQAMNITCTGRGPDNCIQCAHYIDGPHCVKTCPAGVMGENNTLVWKYADAGHVCHLCHPNCTYGCTGPGLEGCPTNGPKIPS:EGFRvarIIIのECD
【0344】
細胞表面上で発現のためのヒトEGFR膜貫通及び細胞内ドメインを有する、アミノ酸配列キメラマカク(Macaca mulatta)細胞外EGFRドメインハイブリッド(GenBank:XP_014988922.1。以下の実施例で下線が引かれているヒトEGFR配列。
【化1】
【0345】
そのうち:
-MGPSGTAGAALLALLAALCPASR:シグナルペプチド。
-LEEKKVCQGTSNKLTQLGTFEDHFLSLQRMFNNCEVVLGNLEITYVQRNYDLSFLKTIQEVAGYVLIALNTVERIPLENLQIIRGNMYYENSYALAVLSNYDANKTGLKELPMRNLQEILHGAVRFSNNPALCNVESIQWRDIVSSDFLSNMSMDFQNHLGSCQKCDPSCPNGSCWGAGEENCQKLTKIICAQQCSGRCRGKSPSDCCHNQCAAGCTGPRESDCLVCRKFRDEATCKDTCPPLMLYNPTTYQMDVNPEGKYSFGATCVKKCPRNYVVTDHGSCVRACGADSYEMEEDGVRKCKKCEGPCRKVCNGIGIGEFKDSLSINATNIKHFKNCTSISGDLHILPVAFRGDSFTHTPPLDPQELDILKTVKEITGFLLIQAWPENRTDLHAFENLEIIRGRTKQHGQFSLAVVSLNITSLGLRSLKEISDGDVIISGNKNLCYANTINWKKLFGTSGQKTKIISNRGENSCKATGQVCHALCSPEGCWGPEPRDCVSCRNVSRGRECVDKCNLLEGEPREFVENSECIQCHPECLPQAMNITCTGRGPDNCIQCAHYIDGPHCVKTCPAGVMGENNTLVWKYADAGHVCHLCHPNCTYGCTGPGLEGCPTNGPKIPS:cyEGFRのECD
【0346】
細胞表面上での発現のためのアミノ酸配列全長ヒトcMET挿入物(GenBank:P08581-2)。この配列は、755~755に挿入を有する位置の参照配列とは異なる:S→STWWKEPLNIVSFLFCFAS
MKAPAVLAPGILVLLFTLVQRSNGECKEALAKSEMNVNMKYQLPNFTAETPIQNVILHEHHIFLGATNYIYVLNEEDLQKVAEYKTGPVLEHPDCFPCQDCSSKANLSGGVWKDNINMALVVDTYYDDQLISCGSVNRGTCQRHVFPHNHTADIQSEVHCIFSPQIEEPSQCPDCVVSALGAKVLSSVKDRFINFFVGNTINSSYFPDHPLHSISVRRLKETKDGFMFLTDQSYIDVLPEFRDSYPIKYVHAFESNNFIYFLTVQRETLDAQTFHTRIIRFCSINSGLHSYMEMPLECILTEKRKKRSTKKEVFNILQAAYVSKPGAQLARQIGASLNDDILFGVFAQSKPDSAEPMDRSAMCAFPIKYVNDFFNKIVNKNNVRCLQHFYGPNHEHCFNRTLLRNSSGCEARRDEYRTEFTTALQRVDLFMGQFSEVLLTSISTFIKGDLTIANLGTSEGRFMQVVVSRSGPSTPHVNFLLDSHPVSPEVIVEHTLNQNGYTLVITGKKITKIPLNGLGCRHFQSCSQCLSAPPFVQCGWCHDKCVRSEECLSGTWTQQICLPAIYKVFPNSAPLEGGTRLTICGWDFGFRRNNKFDLKKTRVLLGNESCTLTLSESTMNTLKCTVGPAMNKHFNMSIIISNGHGTTQYSTFSYVDPVITSISPKYGPMAGGTLLTLTGNYLNSGNSRHISIGGKTCTLKSVSNSILECYTPAQTISTEFAVKLKIDLANRETSIFSYREDPIVYEIHPTKSFISTWWKEPLNIVSFLFCFASGGSTITGVGKNLNSVSVPRMVINVHEAGRNFTVACQHRSNSEIICCTTPSLQQLNLQLPLKTKAFFMLDGILSKYFDLIYVHNPVFKPFEKPVMISMGNENVLEIKGNDIDPEAVKGEVLKVGNKSCENIHLHSEAVLCTVPNDLLKLNSELNIEWKQAISSTVLGKVIVQPDQNFTGLIAGVVSISTALLLLLGFFLWLKKRKQIKDLGSELVRYDARVHTPHLDRLVSARSVSPTTEMVSNESVDYRATFPEDQFPNSSQNGSCRQVQYPLTDMSPILTSGDSDISSPLLQNTVHIDLSALNPELVQAVQHVVIGPSSLIVHFNEVIGRGHFGCVYHGTLLDNDGKKIHCAVKSLNRITDIGEVSQFLTEGIIMKDFSHPNVLSLLGICLRSEGSPLVVLPYMKHGDLRNFIRNETHNPTVKDLIGFGLQVAKGMKYLASKKFVHRDLAARNCMLDEKFTVKVADFGLARDMYDKEYYSVHNKTGAKLPVKWMALESLQTQKFTTKSDVWSFGVLLWELMTRGAPPYPDVNTFDITVYLLQGRRLLQPEYCPDPLYEVMLKCWHPKAEMRPSFSELVSRISAIFSTFIGEHYVHVNATYVNVKCVAPYPSLLSSEDNADDEVDTRPASFWETS
【0347】
そのうち:
-MKAPAVLAPGILVLLFTLVQRSNG:シグナルペプチド
-ECKEALAKSEMNVNMKYQLPNFTAETPIQNVILHEHHIFLGATNYIYVLNEEDLQKVAEYKTGPVLEHPDCFPCQDCSSKANLSGGVWKDNINMALVVDTYYDDQLISCGSVNRGTCQRHVFPHNHTADIQSEVHCIFSPQIEEPSQCPDCVVSALGAKVLSSVKDRFINFFVGNTINSSYFPDHPLHSISVRRLKETKDGFMFLTDQSYIDVLPEFRDSYPIKYVHAFESNNFIYFLTVQRETLDAQTFHTRIIRFCSINSGLHSYMEMPLECILTEKRKKRSTKKEVFNILQAAYVSKPGAQLARQIGASLNDDILFGVFAQSKPDSAEPMDRSAMCAFPIKYVNDFFNKIVNKNNVRCLQHFYGPNHEHCFNRTLLRNSSGCEARRDEYRTEFTTALQRVDLFMGQFSEVLLTSISTFIKGDLTIANLGTSEGRFMQVVVSRSGPSTPHVNFLLDSHPVSPEVIVEHTLNQNGYTLVITGKKITKIPLNGLGCRHFQSCSQCLSAPPFVQCGWCHDKCVRSEECLSGTWTQQICLPAIYKVFPNSAPLEGGTRLTICGWDFGFRRNNKFDLKKTRVLLGNESCTLTLSESTMNTLKCTVGPAMNKHFNMSIIISNGHGTTQYSTFSYVDPVITSISPKYGPMAGGTLLTLTGNYLNSGNSRHISIGGKTCTLKSVSNSILECYTPAQTISTEFAVKLKIDLANRETSIFSYREDPIVYEIHPTKSFISGGSTITGVGKNLNSVSVPRMVINVHEAGRNFTVACQHRSNSEIICCTTPSLQQLNLQLPLKTKAFFMLDGILSKYFDLIYVHNPVFKPFEKPVMISMGNENVLEIKGNDIDPEAVKGEVLKVGNKSCENIHLHSEAVLCTVPNDLLKLNSELNIEWKQAISSTVLGKVIVQPDQNFT:ヒトcMETのECD
-GLIAGVVSISTALLLLLGFFLWL:膜貫通領域
-KKRKQIKDLGSELVRYDARVHTPHLDRLVSARSVSPTTEMVSNESVDYRATFPEDQFPNSSQNGSCRQVQYPLTDMSPILTSGDSDISSPLLQNTVHIDLSALNPELVQAVQHVVIGPSSLIVHFNEVIGRGHFGCVYHGTLLDNDGKKIHCAVKSLNRITDIGEVSQFLTEGIIMKDFSHPNVLSLLGICLRSEGSPLVVLPYMKHGDLRNFIRNETHNPTVKDLIGFGLQVAKGMKYASKKFVHRDLAARNCMLDEKFTVKVADFGLARDMYDKEYYSVHNKTGAKLPVKWMALESLQTQKFTTKSDVWSFGVLLWELMTRGAPPYPDVNTFDITVYLLQGRRLLQPEYCPDPLYEVMLKCWHPKAEMRPSFSELVSRISAIFSTFIGEHYVHVNATYVNVKCVAPYPSLLSSEDNADDEVDTRPASFWETS:細胞内領域
【0348】
参照抗体
抗cMET抗体は、当技術分野で既知である(表1)。単一特異性二価cMET抗体を、公表されている情報に従って構築し、293F Freestyle細胞において発現させた。表1は、関連する開示情報を示す。cMETに向けられた単一特異性二価抗体を、公表されている情報に従って構築し、293F Freestyle細胞において発現させた。HGFリガンド遮断アッセイについて、患者由来(patent-derived)の抗cMET抗体のVH及びVLコード遺伝子セグメントを糸状バクテリオファージ上に表示するためのファージディスプレイベクターにおいて再クローニングした。
【0349】
参照抗体セツキシマブ(Erbitux)をEGFR Fabパネルの参照抗体として使用した。
【0350】
2994 Fabタンパク質をパパイン消化によって精製されたPG2994 IgGから生成した。したがって、PG2994を、ビーズ上でカップリングしたパパインとインキュベートし(Peirce#44985)、回転させながら37℃で5.5時間消化させた。Fab断片を、MabSelectSure LX上での濾過によって、消化混合物から精製した。Fabタンパク質を含有する画分をフロースルーし、vivaspin20 10kDaを使用して3mlに濃縮し、PBS中のsuperdex75 16/600カラムを使用してゲル濾過によって更に精製する。
【0351】
実施例2
二価モノクローナル抗体の生成及び抗体の特性評価
VH遺伝子配列及びそのいくつかの配列バリアントによって判断されるように、独自の抗体のVH遺伝子を骨格IgG1ベクターにおいてクローニングした。懸濁に適応した293Fフリースタイル細胞を、3.0×106細胞/mlの密度になるまで、シェーカープラトーにおいてT125フラスコ内で培養した。細胞を、0.3~0.5×106生細胞/mlの密度で、24ディープウェルプレートの各ウェル内に播種した。細胞を、個々の無菌DNA:PEl混合物で一過性にトランスフェクトし、更に培養した。トランスフェクションから7日後に、上清を回収し、0.22μM(Sartorius)に通して濾過し、バッチ精製、続いてPBSへの緩衝液交換を使用してプロテインAビーズ上で精製した。
【0352】
相互遮断アッセイcMET抗体
cMET特異性ファージをELISAにおけるcMET参照抗体との競合について試験した。したがって、2.5μg/mlのcMET-Fc融合タンパク質を4℃でMAXISORPTM ELISAプレートに一晩かけてコーティングした。ELISAプレートのウェルを、振とう(700rpm)しながら、室温で1時間、2%のELKを含有するPBS(pH7.2)で遮断した。次の対照又は陰性対照IgGを、5μg/mlの濃度で添加し、室温で15分間、700rpmで結合させた。次に、5μlのPEG沈殿ファージを、添加し、室温で1時間、700rpmで結合させた。結合したファージを、HRP標識抗M13抗体を用いて、室温で1時間、700rpmで検出した。対照として、この手順を、コーティングされた抗原に特異的な抗体、及び陰性対照ファージと同時に実施した。結合した二次抗体をTMB/H2O2染色によって視覚化し、染色をOD450nm測定によって定量化した。表2は、MF4040及びMF4356が5D5参照抗体との競合を示すことを実証している。MF4297は、13.3.2及びC8H241とより低い程度で競合する。陽性対照ファージは全て、対応するIgGとの完全な競合を示すが、非抗体対照は、競合アッセイに影響を与えない。
【0353】
二重特異性抗体の生成
二重特異性抗体は、効率的なヘテロ二量体化及び二重特異性抗体の形成を確実にする独自のCH3工学技術を使用して、異なるVHドメインを有するIgGをコードする2つのプラスミドの一過性コトランスフェクションによって生成された。共通軽鎖はまた、同じプラスミド上又は別のプラスミド上のいずれかで同じ細胞内でコトランスフェクションされる。我々の同時係属中の出願(例えば、WO2013/157954及びWO2013/157953、参照により本明細書に組み込まれる)では、単一細胞から二重特異性抗体を産生するための方法及び手段が開示されており、それにより、単一特異性抗体の形成よりも二重特異性抗体の形成を有利にする手段が提供される。これらの方法も、本開示で有利に用いることができる。具体的には、本質的に二重特異性全長IgG分子のみを産生する好ましい変異は、第1のCH3ドメインにおける351位及び366位のアミノ酸置換、例えば、L351K及びT366K(EU番号付けによる番号付け)(「KKバリアント」重鎖)、並びに第2のCH3ドメインにおける351位及び368位のアミノ酸置換、例えば、L351D及び10L368E(「DEバリアント」重鎖)、又はその逆である。負電荷を帯びたDEバリアント重鎖及び正電荷を帯びたKKバリアント重鎖が優先的に対合して、ヘテロ二量体(いわゆる「DEKK」二重特異性分子)を形成することが、我々の同時係属中の出願で以前に実証された。DEバリアント重鎖(DE-DEホモ二量体)又はKKバリアント重鎖(KK-KKホモ二量体)のホモ二量体化は、同一重鎖間のCH3-CH3界面における荷電残基間の強い反発に起因して不利である。
【0354】
表3は、どのcMET及びEGFR Fabアームを適切なKK及びDEベクターにおいてクローニングしたかを示す。産生後、二重特異性IgGをタンパク質-Aバッチ精製によって精製し、緩衝液をPBSに交換した。産生が上手くいくことによって、0.1mg/mlの最小濃度でIgG1全長抗体がもたらされ、これに、2つの異なる標的結合Fab断片の特異的な組み合わせを同定するための独自のコード(PBnnnnn、ここで、nnnnnは、ランダムに生成された数を表す)を割り当てた。上手く産生された二重特異性IgGをELISAにおけるそれらの各々の標的への結合について試験した。本明細書では、二重特異性抗体の産生の更なる詳細については、PCTNL/2018/050537(WO2019/031965として公開されている)を参照されたい。
【0355】
実施例3
EGF/HGF並びにHGF及びEGF増殖アッセイにおけるc-MET×EGFR二重特異性抗体のスクリーニング
cMET×EGFR二重特異性抗体のパネルの効力を、HGF/EGF、HGF及びEGFアッセイを使用してN87細胞において試験した。N87細胞株(正式名称NCI-N87)は、転移部位に由来する胃がん細胞株であり、高いEGFR発現レベル及び中間のcMET発現レベルを有する(Zhang et al,2010)。抗体を10μg/ml~3.16ng/mlの範囲の8段階の半対数滴定において試験した。各抗体を二重で試験した。抗RSV-G抗体PG2708を陰性対照として使用した。参照抗体2994 FabをHGFアッセイの陽性対照として使用し、参照抗体セツキシマブをEGFアッセイの陽性対照として使用した。
【0356】
EGF、HGF及びEGF/HGFアッセイの陽性対照として、等モルの1:1セツキシマブ/5D5 Fabを使用した。
【0357】
1つのリガンド又はその組み合わせのいずれかを有するウェル、及び培地対照を含めて、アッセイ窓を決定した。抗体を化学的に定義された飢餓培地(CDS:1ml当たり80Uのペニシリン及び80μgのストレプトマイシン、0.05%(w/v)のBSA及び10μg/mlのホロトランスフェリンを含有するRPMI1640培地)において希釈し、50μlの希釈抗体を96ウェル黒色ウェルクリアボトムプレート(Costar)のウェルに添加した。リガンドを添加した(400ng/mlのHGFと4ng/mlのHGFとを含有するウェル1つ当たり50μlのストック溶液、並びにCDS中で希釈した4ng/mlのEGF/400ng/mlのHGFのEGF/HGF濃度:R&D systems,カタログ番号396-HB及び236-EG)。N87細胞を、トリプシン化し、回収し、カウントし、100μlのCD中の8000個の細胞をプレートの各ウェルに添加した。エッジ効果を回避するために、プレートを室温で1時間放置し、それから、37℃の細胞培養インキュベータ内の容器に3日間入れた。4日目に、Alamar blue(Invitrogen、#DAL1100)を添加し(ウェル1つ当たり20μl)、Biotek Synergy 2マルチモードマイクロプレートリーダー上で560nmの励起及び590nmの読み出しを使用して、Alamar blueで6時間のインキュベーション(37℃)後に蛍光を測定した。蛍光値を、阻害されていない成長に正規化した(抗体はなかったが、両方のリガンドを添加した)。
【0358】
表4は、様々な実験の結果を列挙する。N87 HGF/EGFアッセイでは、参照単一特異性抗体(セツキシマブと5D5 Fabとの等モル混合物)と同等の効力を有する14種の異なるcMETxEGFR二重特異性が同定された:PB7679、PB7686、PB8218、PB8244、PB8292、PB8316、PB8340、PB8364、PB8388、PB8511、PB8535、PB8583、PB8607及びPB8640。
【0359】
N87 EGFアッセイにおいて、単一特異性セツキシマブと同等の効力を有する11種の異なるcMETxEGFR二重特異性が同定された:PB7679、PB8244、PB8292、PB8340、PB8364、PB8388、PB8511、PB8535、PB8583、PB8607及びPB8640。これらは全て、EGFR FabアームMF3755を含有する。HGF N87アッセイでは、単一特異性5D5 Fab参照抗体と比較してより高い効力を示した9種の二重特異性が同定された。PB8218、PB8388、PB8511、PB8532、PB8535、PB8545、PB8583、PB8639及びPB8640。これらは、6種の異なるcMET FabアームMF4040、MF4297、MF4301、MF4356、MF4491及びMF4506を含有する。
【0360】
ADCC活性
24種のcMetxEGFR二重特異性のADCC活性を腫瘍細胞株N87(EGFR-高、cMET-低)及びMKN-45(EGFR-低、cMET-増幅)に対して試験した。ADCCアッセイを、384ウェルプレートフォーマットのPromega ADCCバイオアッセイキットを使用して実施した。抗体を、10μg/ml~1ng/mlの範囲の半対数連続希釈において、9種の異なる濃度で、二重で試験した。
【0361】
参照セツキシマブ抗体をアッセイの陽性対照として含め、PG2708を陰性対照抗体として使用した。抗体又はアッセイ培地対照(IgGなし)を、ADCCエフェクター細胞、及び標的細胞(N87又はMKN-45)と一緒に、37℃で6時間の誘導にわたってインキュベートした。ルシフェラーゼ活性を、Bio-Gloルシフェラーゼ試薬を使用して定量化した。
【0362】
ADCCアッセイの例は、WO2019/031965の
図15に示される。cMETxEGFR二重特異性のいずれも、両方の細胞株において有意なADCC活性を示さなかった。陽性対照参照セツキシマブ抗体は、両方の細胞株に対して用量依存性ADCC活性を示した。
【0363】
更なる分析のために、N87 HGF/EGFアッセイにおいて高い有効性を示し、かつ高い配列多様性を示したEGFR及びcMetアームからなる5種の二重特異性を選択した(表5)。5種の二重特異性のうちの2種は、cMETへの結合について5D5と競合するMF4356を含有する(表2)。表5は、選択された候補の特性を要約している。
【0364】
実施例4
図2は、本明細書に開示されているようなEGFR結合可変ドメインの重鎖の代替的な可変領域の様々な配列を示す。
図3は、本明細書に開示されているようなcMET結合可変ドメインの重鎖の代替的な可変領域の様々な配列を示す。重鎖可変領域を使用して、多数の異なるcMET×EGFR二重特異性抗体を作成した。これらの抗体における軽鎖は、
図4Bに示されるような配列を有する。二重特異性抗体を実施例1に記載されているように産生した。抗体はまた、ADCC増強型として産生された。抗体構築物の同時トランスフェクションに、IgG1のFc領域からフコース残基を除去するレダクターゼ酵素をコードするDNAを含めることによって、ADCC増強型を産生した。使用される二重特異性抗体及びそれらのPBコードのリストについては、表6を参照されたい。
【0365】
実施例5
PB8532のcMET可変ドメインの重鎖可変領域(VH)は、例えば、
図3に示されるように、MF4356のアミノ酸を含む。PB19748のcMET可変ドメインのVHは、MF8230のアミノ酸配列を含む(
図3を参照)。PB8532のEGFR可変ドメインのVHは、例えば、
図2に示されるように、MF3370のアミノ酸を含む。PB19748のEGFR可変ドメインのVHは、
図2のMF8233のアミノ酸配列を含む。PB8532及びPB19748における軽鎖は、同じであり、
図4Bに示される。cMET抗体LY2875358抗体は、なかでも、Kim及びKim 2017に記載されている。
【0366】
実施例6
EGFRエクソン20挿入NSCLCモデルにおける二重特異性抗体PB19478及びオシメルチニブの効率
この研究の目的は、EGFRエクソン20挿入を有する患者由来腫瘍異種移植片(PDX)非小細胞肺がん(NSCLC)モデルにおける抗体PB19478の単独及びオシメルチニブとの組み合わせでの抗腫瘍有効性を評価することであった。EGFRエクソン20挿入(「EGFRex20ins」)は、EGFRの構成的活性化をもたらす、762位と774位との間でクラスター化されたアミノ酸挿入を有する変異体をコードするクラスを表す。EGFRエクソン20挿入は、そのような変異を抱えるがんを有するヒト対象において、承認されたEGFR TKIに耐性を付与し、予後不良と関連している。
【0367】
材料:
PB19748は、Merusによって生成され、対照材料は、PB19748ビヒクルであり、抗体なしの12%のPB19748製剤緩衝液からなるが、生理食塩水又はPBSなどの他の陰性対照も使用され得る。
【0368】
PDXモデル特性:
モデルLXFE2478は、機能的なFcエフェクター細胞を有するヌードマウスにおいてCharles Riverで生成された。
【0369】
このモデルは、変異EGFRex20ins(M766_A767insASV)を有する。これはまた、c-METのリガンド結合部位に位置するc-METのSEMAドメインにおいて点変異(E168D)を有する。
【0370】
このモデルにおけるエクソン20中での9つのヌクレオチドの挿入は、EGFRチロシンキナーゼドメイン(M766X)に影響を与え、小分子EGFR阻害剤に対する耐性を付与する。このモデルは、B-RAF、H-/N-及びKRAS及びPTEN遺伝子に変異を有しない(患者腫瘍及び腫瘍異種移植片の両方について全エクソーム配列決定を行い、一致する結果が得られた)。
【0371】
LXFE2478PDXモデルにおけるEGFR、c-MET及びHGFの発現
モデルLXFE2478を、インビボ研究のためのその適合性を調べるために、EGFR及びc-MET受容体並びにリガンドhuHGFの発現について分析した。
【0372】
2つの腫瘍片をEGFR及びc-MET受容体の発現について評価し、ウェスタンブロットを介してリガンドhuHGFの発現を評価した。huHGFを分析に含めた。PDXモデルから得られた腫瘍試料を簡易ウェスタンサイズテクノロジー(SWS)によって評価して、EGFR、HGF及びc-METの発現を確認した。
【0373】
ウエスタンブロッティングによって、LXFE2478モデルがEGFR、HGF及びMETをタンパク質レベルで発現したことが明らかになった(表7)。
【0374】
統計的方法:
全ての群の抗腫瘍有効性を、対照ビヒクル/プラセボ緩衝液群を参照として使用して評価した。腫瘍成長阻害は、試験群のRTVと対照群との比較によって決定され、最小T/C値としてパーセントで表される。抗腫瘍有効性の統計的有意性の評価のために非パラメトリックKruskal-Wallis試験、続いて、多重比較のためのDunn法を実施した。試験群及び対照群の個々のRTVを、試験群で最小T/C値が達成された日に比較した。統計分析は、最初に無作為化された動物の少なくとも50%が依然として関連群に残っている場合にのみ行った。試験群間の比較を同じ日に行った。0.05未満の全てのp値は、統計的に有意であると考慮された。統計的計算を、GraphPad Prism生体分析ソフトウェア(Microsoft Windows用のバージョン9.10,GraphPad Software,San Diego,California,USA)を使用して実施した。
【0375】
治療スケジュール及び方法:
抗体とオシメルチニブとの組み合わせの抗腫瘍有効性をLXFE2478 NSCLC PDX腫瘍モデルにおいて評価した。
図6は、治療スケジュールの図式的概要を示す。
【0376】
腫瘍を、ドナーPDXマウスから採取し、断片(LXFE2478:3~4mmのエッジ長)に切断し、側腹部のレシピエントヌードマウス(SC)に接種した。腫瘍インプラントが十分な数の動物において約80~200mm3に達したとき、マウスを群に割り当てた。無作為化を「層別分布」法に基づいて実施した。処理は、無作為化と同じ日(0日目)に開始した。
【0377】
マウスを、抗体、オシメルチニブ、又は2つの化合物の組み合わせで4週間治療し、最大100日間の無用量観察期間が続いた。治療は、登録と同じ日(0日目)に開始した。マウスは、腫瘍体積が1000mm3超である場合、観察期間中に終了させた。
【0378】
抗体を、5mg/kg及び25mg/kgの用量で、5週間にわたって、週1回腹腔内(IP)投与した。オシメルチニブは、5mg/kg、25mg/kgで、30日間にわたって、経口ゲージ(PO)当たり毎日(QD)投与した。群1のマウスを、5週間にわたって週1回、ビヒクル1(抗体緩衝液)で、又は30日間にわたって毎日、ビヒクル2(オシメルチニブ緩衝液)で治療した。治療計画は、表8に示される。
【0379】
無作為化後に、動物を罹患率及び死亡率についてルーチン的に監視し、これらを週2回加重し、腫瘍体積(TV)をキャリパーで週2回決定した。相対体重(RBW)は、ある特定の日の絶対体重又は体積を0日目の絶対体重で割って100を掛けることによって計算した。相対腫瘍体積(RTV)は、ある特定の日の個々の絶対腫瘍体積を0日目の絶対腫瘍体積で割って100を掛けることによって計算した。
【0380】
10%超の体重を減少したマウスについては、体重を毎日測定し、動物が飼料及び水の利用、並びにDietGelの利用が容易であるようにした。15%超の体重を減少したマウスについては、これらが90%以上のRBWを回復するまで、療法を中断した。
【0381】
無用量観察期間を含めて、奏効の持続時間及び治療終了後の再発(腫瘍再成長)を比較した。更に、低用量の抗体を含めて、腫瘍成長阻害比較のための窓を作成した。
【0382】
オシメルチニブ25mg/kgでの治療(群2及び6)で観察された有意な体重減少(10%超)を理由に、これらの2つの群には、11~14日目の間に治療化合物を投与しなかった。体重は、この無用量期間中に回復した。これらの群では、体重減少(10%超)が28日目に再び観察され、その後、28日目にオシメルチニブ25mg/kgの投薬を停止することが決定された。25mg/kgのオシメルチニブと二重特異性抗体PB19478との組み合わせは、25mg/kgのオシメルチニブ治療で観察された有害効果を増加させなかった。
【0383】
この実験の動物生存曲線が
図7に示される。併用対各対応する単剤療法群のログランク(Mantel-Cox)試験は、以下のように有意である:
・オシメルチニブ25mg/kg対抗体+オシメルチニブ25mg/kg P=0.0102
・抗体25mg/kg対抗体+オシメルチニブ25mg/kg P=0.0344
・オシメルチニブ5mg/kg対抗体+オシメルチニブ5mg/kg P=0.0006
・抗体5mg/kg対抗体+オシメルチニブ5mg/kg P=0.0162
【0384】
28日目の個々の腫瘍体積が
図8に示される。統計分析を、Tukeyのポスト試験(Graphpad Prism)を伴う混合モデルを使用して行った。全ての25mg/kg群は、腫瘍の停滞又は退行を誘発したため、併用群及び対応する単剤療法群の比較は、5mg/kg群のみで有意であった。全ての群は、28日目にビヒクル群と有意に異なっていた。
【0385】
図9は、28日目に治療停止が示された完全な観察期間中のNSCLC PDXモデルにおける腫瘍体積に対する二重特異性抗体PB19478及びオシメルチニブの単剤療法及び併用療法の効果を示す。
【0386】
単剤療法の場合、二重特異性抗体PB19478及びオシメルチニブの用量依存性抗腫瘍有効性が観察された。5mg/kgで、モデルは、オシメルチニブ治療に対する感受性の低下を示す。更に、抗体とオシメルチニブとの組み合わせは、両方の対応する単剤療法群と比較して、腫瘍増殖阻害を増強した。
【0387】
治療停止後(28日目)に、抗体及びオシメルチニブの併用療法は、抗体又はオシメルチニブ単独と比較して、無増悪生存期間(腫瘍サイズ<750mm3として定義される)を有意に延長した。ログランク(Mantel-Cox)試験は、対応する単剤療法群と比較して、各併用群についてP<0.05を示した。治療後11週目に、25mg/kg併用群の9匹のマウスのうちの1匹(11%)のみが異種移植片の進行を示したが、25mg/kgの抗体及び25mg/kgのオシメルチニブアームにおける5/9及び6/9異種移植片は、750mm3に進行した(
図9)。
【0388】
要約すると、これらの結果は、EGFRエクソン20挿入変異(H773-V774insNPH)を保有するNSCLC PDXモデルに対する抗体の前臨床抗腫瘍活性を示す。抗体とオシメルチニブとの組み合わせは、このモデルにおいて、腫瘍成長阻害を増強し、無増悪生存期間を延長する。
【0389】
実施例7
EGFRエクソン19欠失NSCLCモデルにおける二重特異性抗体PB19478及びオシメルチニブの効率この研究の目的は、EGFRエクソン19欠失を有する細胞株由来腫瘍異種移植片(CDX)非小細胞肺がん(NSCLC)モデルにおける抗体PB19478の単独及びオシメルチニブとの組み合わせでの抗腫瘍有効性を評価することであった。この腺がん細胞株、HCC827-ER1は、エクソン19に活性化EGFR変異(欠失E746~A750)を保有し、エルロチニブなどの承認されたEGFR TKIに耐性がある。
【0390】
材料:
PB19748は、実施例5で言及されているように、Merusによって生成された。
【0391】
CDXモデルの特性:
モデルHCC827-ER1をBALB/cヌードマウスにおいて生成した。これは、エクソン19にEGFR変異(欠失E746~A750)を有し、野生型HCC827細胞株と比較して、増幅したc-METコピー数及びAxl発現を有する。HCC827-ER1細胞株は、EGFR TKIエルロチニブに耐性があり、エルロチニブの濃度の上昇に対する野生型細胞株の繰り返しのインビトロ曝露を介して生成された。
【0392】
実験的手順:
各マウスに、腫瘍発症のためにMatrigelと混合したHCC827-ER1腫瘍細胞を右前側腹部領域に接種した。無作為化は、平均腫瘍サイズが約125(75~175)mm
3に達したときに開始した。合計32匹の腫瘍を有するマウスを、腫瘍有効性研究に登録し、表9に示されるように、1つの群当たり8匹のマウスを用いて、4つの異なる群に無作為に割り当てた。無作為化の日付を0日目として示し、投薬を0日目から開始した。マウスを、抗体、オシメルチニブ、又は2つの化合物の組み合わせで3週間治療し、最大74日間の無用量観察期間が続いた。無用量観察期間を含めて、奏効の持続時間及び治療終了後の再発(腫瘍再成長)を比較した。1500mm
3を超える腫瘍体積を有する又は治療の初日の体重に対して20%超の体重減少を有するマウスは、治療期間中に終了させた。抗体を、21日の期間にわたって25mg/kgの用量で、合計7回の用量で、週2回腹腔内(i.p.)投与した。オシメルチニブは、合計22回の用量によって、25mg/kgで、21日間にわたって、経口ゲージ(p.o.)当たり毎日(QD)投与した。群1の8匹のマウスをビヒクル対照(プラセボ緩衝液)で治療した。治療スケジュールの図式的概要は、
図10に示される。腫瘍体積(mm
3)を、キャリパーを使用して二次元で1週間に2回測定した。動物を、可動性、食物及び水消費、体重増加/減少、目/毛のマット及び他の異常などの行動に対する腫瘍成長及び処置のいずれかの影響についてチェックした。体重を、無作為化後に、1週間に2回測定した。これらのマウスのいずれも15%超の体重を減少せず、治療群のいずれにおいても治療剤の投与を中断しなかった。
【0393】
図11は、21日目に治療停止が示された完全な観察期間中のNSCLC CDXモデルにおける腫瘍体積に対する二重特異性抗体PB19478及びオシメルチニブの単剤療法及び併用療法の効果を示す。抗体又はオシメルチニブでの単剤療法は、ビヒクル対照群と比較して、腫瘍の退行を示した。しかしながら、抗体とオシメルチニブとの併用療法は、その他の治療群と比較して、強い相乗効果及び完全な腫瘍退行を示した。全ての治療は、忍容性が良好であった。研究におけるマウスは、開始体重から10%超の体重減少を示さなかった。群1、2及び3におけるいくつかのマウスにおける腫瘍かさぶた化又は腫瘍潰瘍化を除いて、有害事象は観察されなかった。群4について、有害事象は報告されなかった。軽度の体重減少(5~10%の間)は、群4の1匹のマウスにおいてのみ観察された。
【0394】
動物生存曲線が
図12に示される。併用対各対応する単剤療法群のログランク(Mantel-Cox)試験は、以下のように有意である:
・抗体25mg/kg+オシメルチニブ25mg/kg対抗体25mg/kg P=0.0009
・抗体25mg/kg+オシメルチニブ25mg/kg対オシメルチニブ25mg/kg P<0.0001
【0395】
要約すると、これらの結果は、エクソン19(欠失E746~A750)に変異を保有するNSCLC CDXモデルに対する調査中の抗体の前臨床抗腫瘍活性を示す。抗体とオシメルチニブとの組み合わせは、このモデルにおいて、腫瘍成長阻害を増強し、無増悪生存期間を延長する。
【0396】
実施例8
用量漸増フェーズでは、二重特異性抗体PB19478は、活性化EGFR変異(TKI感作変異及び/又は承認されたTKI耐性変異)若しくは活性化c-MET変異(エクソン14スキッピング)/増幅(MET/CEP7>5又はcfDNA≧2コピー)を保有するNSCLCの患者、又は進行性/転移性疾患のための事前療法を受けた後に全ての場合で進行したc-MET増幅(MET/CEP7>5又はcfDNA≧2コピー)の患者に、用量を増加させて投与される。
【0397】
前臨床PKモデルのアロメトリックスケーリングを使用して、ヒトにおける抗体曝露を予測した。抗体の開始用量は、4週間のサイクル(28日)で、2週間ごとに1回(q2w)、100mg(フラット用量、静脈内)である。5つの用量レベルを100~3000mgの間で調査することが計画される。
【0398】
患者のコホートは、MTDに達するか、又はより低い推奨用量が確立されるまで、抗体で処理される。
【0399】
RP2D(推奨される第2相投薬)は、PK、薬力学的活性、及び予備的抗腫瘍活性についての利用可能なデータを考慮して、MTD以下の用量として定義される。
【0400】
用量拡大
80mgの経口1日用量で与えられるオシメルチニブと組み合わされた1500mgのRP2Dを使用して、第2相部分における計画された拡張コホートを開始することができる。RP2Dの安全性は、少なくとも2サイクルにわたって、抗体単独で処置された最初の12人の患者における用量拡大中に確認される(募集はその間継続する)。抗体の抗腫瘍活性(単独又はオシメルチニブとの組み合わせ)をORRの観点から評価し、他の有効性パラメータ、安全性、忍容性、PK、免疫原性及びバイオマーカーの評価を実施する。
【0401】
以下の局所進行性切除不能/転移性固形腫瘍のコホートを開くことができる:
拡張コホート1:NSCLCの一次選択治療としてのPB19478+オシメルチニブ
拡張コホート2:オシメルチニブ耐性集団におけるNSCLCの二次選択治療としてのPB19478+オシメルチニブ
【0402】
オシメルチニブは、1日1回、80mgの用量で投与される。投与は、食物と一緒でも、又は一緒でなくてもよい。朝(すなわち、起床後)に服用することが好ましい。抗体注入日には、用量を注入前に服用する必要がある。用量を取り忘れた場合、取り替えるべきではなく、患者は、次の計画された用量まで待つべきである。
【0403】
研究集団
選択基準
患者は、研究に参加するために以下の要件の全てを満たさなければならない:
1.いずれかの研究手順の開始前に、インフォームドコンセントに署名した。
2.インフォームドコンセントの署名時に、年齢は18歳以上である。
3.不治の転移性又は局所進行性の未切除疾患のエビデンスを有する組織学的又は細胞学的に確認された固形腫瘍。
1.用量漸増部-以前の標準的な一次選択治療に失敗した患者。患者は、臨床的利益をもたらすことが知られている療法が進行しているか、又はこれに不耐性である必要がある。事前処置レジメンの数に制限はない。患者は、以下を有する必要がある:
・チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)感作変異(例えば、19del及びL858R)及び/若しくは承認されたTKI耐性変異(例えば、後天性TKI耐性変異、すなわち、T790M、C797S、L792、L798I、エクソン20挿入)、又は任意の活性化c-MET変異/増幅(例えば、高レベルc-MET増幅[MET/CEP7>5又はcfDNA≧2コピー]、又はc-METエクソン14スキッピング変異)を含む活性化EGFR変異を保有する非小細胞肺がん(NSCLC)。
・
*注:患者の同定は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤での過去の治療歴及びCLIA認定ラボで実施された局所試験に基づく。
2.コホート拡大部-2L以上の患者は、臨床的利益をもたらすことが知られている療法が進行しているか、又はこれに不耐性である必要がある。事前処置レジメンの数に制限はない。
患者は、以下を有する必要がある:
コホート1:EGFR感作変異(Del19、L858Rなど)を保有するか、又はEGFR感作変異を有する進行性疾患についてNSCLC治療ナイーブである、NSCLC一次選択治療。
コホート2:NSCLCオシメルチニブ耐性/化学療法ナイーブの患者、又はNSCLCオシメルチニブ耐性、及び少なくとも安定した疾患が報告されたオシメルチニブでの治療の3ヶ月後に進行。
4.アーカイブ又は新鮮な腫瘍組織試料の可用性(漸増では好ましく、拡張では必須)。
5.放射線学的方法によるRECISTバージョン1.1によって定義されるような測定可能な疾患(測定不可能であるが評価可能な疾患を有する患者は、用量漸増部分に含まれ得る)。
6.0又は1のEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータス。
7.治験責任医師によると、平均余命は12週間以上である
8.治験責任医師の判断に従った適切な臓器機能
・絶対好中球数(ANC)≧1.5×109/L
・ヘモグロビン≧9g/dL
・血小板≧100×109/L
・正常範囲内の補正総血清カルシウム
・正常範囲内の血清カリウム
・正常範囲内の(又はサプリメントで補正された)血清マグネシウム
・アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)≦3×正常上限(ULN)及び総ビリルビン≦1.5×ULN(Gilbert症候群の患者は、コンジュゲートビリルビン値が正常範囲内である場合に適格である);肝臓関与の場合、ALT/AST≦5×ULN及び総ビリルビン≦2×ULNが許容される
・65歳超の年齢の患者についてのCockroft及びGault式又はMDRD式に従って計算して、1.5×ULN以下の血清クレアチニン又は50mL/分以上のクレアチニンクリアランス。
・血清アルブミン>3.3g/dL
【0404】
除外基準
以下の基準のうちのいずれかが存在する場合には、患者は研究への参加を除外される:
1.中枢神経系転移(漸増において排他的ではなく、拡張において必須である)であって、
・未治療又は症候性であるもの(治験責任医師の判断で安定していると判断された場合、未治療の無症候性病変を有する患者が含まれ得る)
・放射線又は手術を必要とするもの
・研究登録から14日以内に症状を制御するために、継続的なステロイド療法(10mg超のプレドニゾン又は等価物)を必要とするもの。
2.既知の軟髄膜関与。
3.研究登録前4週間以内での任意の治験薬による別の臨床研究又は治療への参加。
4.治験薬の最初の用量の4週間又は5半減期のいずれか短い方以内の全身抗がん療法又は免疫療法。重大な遅延毒性(例えば、ミトマイシンC、ニトロソウレア)を有する細胞毒性剤の場合、6週間のウォッシュアウト期間が必要である。注:長い半減期を有する薬剤の場合、5回目の半減期前の登録にはスポンサーの承認が必要である。
5.治験薬の最初の投与から3週間以内の大手術又は放射線療法。任意の時点で骨髄の25%以上に以前の放射線療法を受けた患者は、適格ではない。
6.既存の抗悪性腫瘍療法に関連する、治験責任医師の判断における、持続性グレード>1の臨床的に顕著な毒性(脱毛症を除く);安定した感覚性ニューロパチー≦グレード2のNCI-CTCAE v5.0、及びホルモン置換で安定している甲状腺機能低下症≦グレード2が許容される。
7.これらの薬剤の恒久的停止を正当化した、ヒトタンパク質又は賦形剤のいずれかに起因する過敏症反応又はいずれかの毒性の病歴。
8.以下を含むがこれらに限定されない臨床的に顕著な心血管疾患の病歴:
・3つの心電図(ECG)から得られる、延長されたQT間隔>480ミリ秒、又は臨床的に顕著な不整脈又は電気生理学的疾患(すなわち、植込み型除細動器の配置又は制御不能な速度での心房細動)、又はQTc延長のリスク若しくは不整脈イベント、例えば、電解質異常のリスクを増加させる任意の因子。臨床的に安定している心臓ペースメーカーを有する患者は、適格である。
・心不全、先天性長QT症候群、長QT症候群の家族歴、又は一等親族の40歳未満の原因不明の突然死、又はQT間隔を延長し、かつトルサード・ド・ポワンツを引き起こすことが知られている任意の併用薬。
・制御不能な(持続的な)動脈性高血圧:収縮期血圧>180mmHg及び/又は拡張期血圧>100mmHg。
・New York Heart Association(NYHA)クラスIII-IVとして定義されているうっ血性心不全(CHF)又は治験薬の最初の投与から6ヶ月以内のCHFのための入院。
9.薬剤誘導性間質性肺疾患、1年以内に長期ステロイド又は他の免疫抑制剤での治療を必要とする放射線性肺炎を含む間質性肺疾患の病歴。
10.腫瘍が治癒又は緩和の意図をもって治療され、治験責任医師の意見では、治験依頼者の同意を得て、以前又は同時の悪性腫瘍が、治験薬の安全性及び有効性の評価に影響を及ぼさない限り、皮膚の非基底細胞がん又は子宮頸部のインサイチュがんを除く、以前又は同時の悪性腫瘍。
11.制御されていない活動性感染症、臨床的に顕著な肺の、代謝性の若しくは精神の疾患を含むがそれらに限定されない現在の重篤な疾病又は精神障害。
12.抗ウイルス治療を受けない活動性B型肝炎感染(HBsAg陽性)。注:活動性B型肝炎(HbsAg陽性)の患者は、研究治療の開始の少なくとも7日以上前に開始して、ラミブジン、テノホビル、エンテカビル又は他の抗ウイルス剤での抗ウイルス治療を受ける必要がある。B型肝炎の前例(抗HBc陽性、HbsAg及びHBV-DNA陰性)を有する患者が適格である。
13.C型肝炎リボ核酸(HCV RNA)の陽性試験;注:HCV感染が自発的に解決した患者(検出可能なHCV-RNAなしの陽性HCV抗体)、又は抗ウイルス治療後に持続的なウイルス学的奏効を達成し、かつ抗ウイルス治療の中止後に6ヶ月以上(IFNフリーのレジメンの使用)又は12ヶ月以上(IFNベースのレジメンの使用)の検出可能なHCV RNAの不在を示す患者が適格である。
14.HIV(HIV1/2抗体)の既往歴。検出できないウイルス量を有するHIVを有する患者は、許容される。地域の保健当局又は規制によって義務付けられていない限り、HIV試験は必要ではない。
15.妊娠可能性のある性的に活発な男性及び女性の患者は、研究の全期間中及びPB19478の最終投与後6ヶ月間、以下の非常に効果的な避妊法のいずれかを使用することに同意する必要がある:
・排卵(経口、膣内、経皮)の阻害に関連する併用(エストロゲン及びプロゲストゲン含有)ホルモン避妊
・排卵の阻害に関連するプロゲストゲンのみのホルモン避妊(経口、注射、埋め込み)
・子宮内避妊器具(IUD)
・子宮内ホルモン放出システム(IUS)
・両側卵管閉塞
・精管切除されたパートナー
・性的禁欲
16.妊娠中又は授乳中の女性は、この研究から除外される。
【0405】
治験療法及びレジメン
抗体は、RP2Dレベルとして1500mg(フラット用量)の用量レベルで、IV注入として投与される。各患者(拡張コホートを含む)についての投与される用量、用量増加、及び投薬頻度は、患者の安全性、PK及び薬力学的データに基づいて、並びにスポンサーの推奨に基づいて変化に供される。スポンサーは、サイクル1の隔週投薬スケジュールの使用を推奨し得る。
【0406】
治療期間
研究治療は、進行性疾患(RECIST v1.1による)、許容できない毒性、同意の撤回、患者の非コンプライアンス、治験責任医師の決定(例えば、臨床的悪化)、又は連続した6週間超の抗体中断が確認されるまで、投与される。
【0407】
患者は、最後の抗体注入後、及び全ての関連毒性の回復又は安定化までの少なくとも30日間の安全性、並びに最大1年にわたって3ヶ月ごとに疾患の進行及び生存状態について追跡される。
【0408】
実施例9
EGFR19欠失及びEGFR変異を有していた非小細胞肺がんを有する54歳の女性患者に、実施例8の臨床試験プロトコルのオシメルチニブと1500mg q2wの二重特異性抗体PB19478との組み合わせを投薬した。患者は、オシメルチニブ及び治験中の抗腫瘍薬での事前治療を受けていた。患者は、当該抗体の6回のサイクル及びオシメルチニブの6回のサイクル後に、確認された部分的奏効(PR)の形態で、臨床的に関連する効果を呈した。有害効果は、グレード1又は2以外のグレードでは観察されなかった。
【0409】
実施例10
EGFR19欠失、EGFR増幅及びcMET増幅を有していた非小細胞肺がんを有する61歳の女性患者に、実施例8の臨床試験プロトコルのオシメルチニブ(80mgのq2w)及び二重特異性抗体(1500mgのq2w)PB19478との組み合わせを投薬した。患者は、オシメルチニブでの事前治療を受けていた。患者は、当該抗体の3回のサイクル及びオシメルチニブの4回のサイクル後に、確認されたPRの形態で、臨床的に関連する効果を呈した。観察された最も重篤な有害効果は、低カリウム血症であった。更なる有害効果は、グレード1又は2以外のグレードでは観察されなかった。
【0410】
引用文献
Ahmed,M et al.Lack of in Vivo Antibody Dependent Cellular Cytotoxicity with Antibody containing gold particles/Bioconjugate chemistry(2015):26 812-816.DOI:10.1021/acs.bioconjchem.5b00139.
Castoldi,R.,et al.“A novel bispecific EGFR/Met antibody blocks tumor-promoting phenotypic effects induced by resistance to EGFR inhibition and has potent antitumor activity.”Oncogene 32.50(2013):5593-5601.
Eisenhauer et al.,New response evaluation criteria in solid tumours:Revised RECIST guideline(version1.1).European Journal of Cancer 45(2009)228-247)
Ferguson KM.Structure-based view of epidermal growth factor receptor regulation.Annu Rev Biophys 2008;37:353-73.
Kim,George P.,and Axel Grothey.“Targeting colorectal cancer with human anti-EGFR monoclonal antibodies:focus on panitumumab.”Biologics 2.2(2008):223-228.
Kim,Ki-Hyun and Kim,Hyori.Progress of antibody-based inhibitors of the HGF-cMET axis in cancer therapy.Experimental&Molecular medicine(2017),e307;doi:10.1038/emm.2017.17)
Moores,Sheri L.,et al.“A novel bispecific antibody targeting EGFR and cMet is effective against EGFR inhibitor-resistant lung tumors.”Cancer research 76.13(2016):3942-3953.
Oken MM,Creech RH,Tormey DC,Horton J,Davis TE,McFadden ET,Carbone PP.Toxicity and response criteria of the Eastern Cooperative Oncology Group.Am J Clin Oncol.1982 Dec;5(6):649-655.PMID:7165009.
Robertson SC,Tynan J,Donoghue DJ.RTK mutations and human syndromes:when good receptors turn bad.Trends Genet 2000;16:368.
Yarden Y.The EGFR family and its ligands in human cancer.Signalling mechanisms and therapeutic opportunities.Eur J Cancer 2001;37(Suppl 4):S3-S8.
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【手続補正書】
【提出日】2024-09-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-11-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがんの治療の方法における使用のための、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む二重特異性抗体であって、前記第1の可変ドメインが、
重鎖可変領域MF3370又はMF8233のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を含み
、前記第2の可変ドメインが、
重鎖可変領域MF4356又はMF8230のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を含
み、前記第1及び第2の可変ドメインが、図4Bの軽鎖可変ドメインのCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を含む、二重特異性抗体との、組み合わせ
物。
【請求項2】
がんを有する対象を治療する
ための医薬であって、前記
医薬が、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む二重特異性抗体であって、前記第1の可変ドメインが、
重鎖可変領域MF3370又はMF8233のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を含み
、前記第2の可変ドメインが、
重鎖可変領域MF4356又はMF8230のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を含
み、前記第1及び第2の可変ドメインが、図4Bの軽鎖可変ドメインのCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を含む、二重特異性抗体との、組み合わせ
物を含む、
医薬。
【請求項3】
対象におけるがんの治療のための医薬品の製造における、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる
(又はこれに結合する)第2の可変ドメインを含み、前記第1の可変ドメインが、
重鎖可変領域MF3370又はMF8233のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を含み
、前記第2の可変ドメインが、
重鎖可変領域MF4356又はMF8230のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を含
み、前記第1及び第2の可変ドメインが、図4Bの軽鎖可変ドメインのCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を含む二重特異性抗体と第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤との組み合わせ
物の、使用。
【請求項4】
前記がんが、EGFR陽性及び/又はcMET陽性がんである、
請求項2に記載の医薬。
【請求項5】
前記がんが、EGFR及び/又はcMET異常を含む、
請求項2又は4に記載の医薬。
【請求項6】
前記がんが、チロシンキナーゼ阻害剤での治療に耐性があ
り、例えば、EGFR及び/又はcMETチロシンキナーゼ阻害剤に対して耐性があり、又は前記対象が、以前にEGFR及び/又はcMETチロシンキナーゼ阻害剤での治療を受けている、
請求項2又は4に記載の医薬。
【請求項7】
EGFRチロシンキナーゼ阻害剤耐性が、第1、第2及び/又は第3世代のチロシンキナーゼ阻害
剤に対する耐性を含む、請求項
6に記載の
医薬。
【請求項8】
cMETチロシンキナーゼ阻害剤耐性が
、カプマチニブ又はテポチニブに対する耐性を含む、請求項
6に記載の
医薬。
【請求項9】
前記がんが、活性化EGFR変異、承認されたチロシンキナーゼ阻害剤耐性変異、三次チロシンキナーゼ阻害剤耐性変異、EGFRへの第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤の結合を低減する変異、後天性チロシンキナーゼ阻害剤耐性変異、EGFR遺伝子増幅、cMET変異又はcMET異常を含む、
請求項2又は4に記載の医薬。
【請求項10】
前記がんが、エクソン19欠失変異、好ましくは、フレーム内エクソン19欠失、エクソン20ミスセンス変異、又はL858Rなどのエクソン21変異を含む、
請求項2又は4に記載の医薬。
【請求項11】
前記がんが、EGFRエクソン20変異、好ましくはエクソン20挿入変異を含む、
請求項2又は4に記載の医薬。
【請求項12】
前記がんが、オシメルチニブに耐性を付与する変異などの後天性チロシンキナーゼ阻害剤耐性変異を含む、
請求項2又は4に記載の医薬。
【請求項13】
前記がんが、cMET増幅、cMET過剰発現、cMET経路のシグナル伝達の増加、cMET遺伝子増幅、HGF発現の増加及び/又はcMETタンパク質活性の増加などのcMET異常を含む、
請求項2又は4に記載の医薬。
【請求項14】
前記がんが、cMETエクソン14スキッピング変異を含む、
請求項2又は4に記載の医薬。
【請求項15】
前記第3世代のEGFRチロシンキナーゼが、オシメルチニ
ブを含むか、又はこれである、
請求項2又は4に記載の医薬。
【請求項16】
前記cMETチロシンキナーゼ阻害剤が、カプマチニブ若しくはテポチニ
ブを含むか、又はこれである、
請求項2又は4に記載の医薬。
【請求項17】
前記治療が、前記二重特異性抗体と前記チロシンキナーゼ阻害剤との前記組み合わせ
物を、それを必要とする対象に投与することを含み
、前記二重特異性抗体を、前記第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤と同時に、連続して、又は別々に投与する、
請求項2又は4に記載の医薬。
【請求項18】
前記対象が、チロシンキナーゼ阻害剤治療又は抗EGFR治療ナイーブである対象など、事前の抗がん治療を受けていない、
請求項2又は4に記載の医薬。
【請求項19】
前記二重特異性抗体及びTKI阻害剤の投与が、一次選択治療として投与される、
請求項2又は4に記載の医薬。
【請求項20】
前記対象又はがんが、EGFR及び/又はcMET活性化変異、例えば、エクソン19欠失変異又はエクソン21変異(L858Rなど)を含む、
請求項2又は4に記載の医薬。
【請求項21】
前記対象が、ヒト対象である、
請求項2又は4に記載の医薬。
【請求項22】
前記がんが、肺がん、特に非小細胞肺がん、好ましくは転移性又は進行性非小細胞肺がんである、
請求項2又は4に記載の医薬。
【請求項23】
前記がんが、進行性又は転移性がんである、
請求項22に記載の医薬。
【請求項24】
前記第1の可変ドメインが、重鎖可変領域MF8233のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を含み、前記第2の可変ドメインが、重鎖可変領域MF8230のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を含み、前記第1及び第2の可変ドメインが、図4Bの軽鎖可変ドメインのCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を含む、請求項2又は4に記載の医薬。
【請求項25】
前記第1の可変ドメインが、重鎖可変領域MF8233の重鎖可変領域のアミノ酸配列を含み、前記第2の可変ドメインが、重鎖可変領域MF8230の重鎖可変領域のアミノ酸配列を含み、前記第1及び第2の可変ドメインが、図4Bの軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を含む、請求項2又は4に記載の医薬。
【請求項26】
第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外部分に結合することができる第1の可変ドメイン及びヒトMET原がん遺伝子である受容体チロシンキナーゼ(cMET)の細胞外部分に結合することができる第2の可変ドメインを含む二重特異性抗体であって、前記第1の可変ドメインが、
重鎖可変領域MF3370又はMF8233のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を含み
、前記第2の可変ドメインが、
重鎖可変領域MF4356又はMF8230のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を含
み、前記第1及び第2の可変ドメインが、図4Bの軽鎖可変ドメインのCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を含む、二重特異性抗体とを含む、薬学的組み合わせ
物。
【請求項27】
前記抗体が、ヒト抗体である、
請求項26に記載の薬学的組み合わせ物。
【請求項28】
前記抗体が、ADCC増強されている、
請求項26又は27に記載の薬学的組み合わせ物。
【請求項29】
前記抗体が、1:1の抗EGFR、抗cMET化学量論を有するIgG1フォーマット抗体である、
請求項26又は27に記載の薬学的組み合わせ物。
【請求項30】
前記第1の可変ドメインが、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYNGNTNYAQKLQG、及び配列DRHWHWWLDAを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、前記第2の可変ドメインが、CDR1配列SYSMN、CDR2配列WINTYTGDPTYAQGFTG、及びCDR3配列ETYYYDRGGYPFDPを有する重鎖可変領域を含む、
請求項26又は27に記載の薬学的組み合わせ物。
【請求項31】
前記第1の可変ドメインが、CDR1配列SYGIS、CDR2配列WISAYNANTNYAQKLQG、及び配列DRHWHWWLDAを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含み、前記第2の可変ドメインが、CDR1配列TYSMN、CDR2配列WINTYTGDPTYAQGFTG、及び配列ETYFYDRGGYPFDPを含むCDR3を有する重鎖可変領域を含む、
請求項26又は27に記載の薬学的組み合わせ物。
【請求項32】
前記第1の可変ドメインが、重鎖可変領域MF8233の重鎖可変領域のアミノ酸配列を含み、前記第2の可変ドメインが、重鎖可変領域MF8230の重鎖可変領域のアミノ酸配列を含み、前記第1及び第2の可変ドメインが、図4Bの軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を含む、請求項26又は27に記載の薬学的組み合わせ物。
【請求項33】
前記第1及び第2の可変ドメインが
、図4Bの
共通軽鎖可変ドメインを含む、
請求項26又は27に記載の薬学的組み合わせ物。
【国際調査報告】