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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-04-11
(54)【発明の名称】OCTスペックル流速測定
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20250404BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20250404BHJP
   G06V 10/70 20220101ALI20250404BHJP
【FI】
A61B3/10 100
G06T7/00 616
G06T7/00 350B
G06V10/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024554731
(86)(22)【出願日】2023-03-14
(85)【翻訳文提出日】2024-11-01
(86)【国際出願番号】 US2023064299
(87)【国際公開番号】W WO2023178078
(87)【国際公開日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】63/269,298
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】コー, トニー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ, シャン
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 正博
(72)【発明者】
【氏名】クオ, ジェンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャファリ, レザ
(72)【発明者】
【氏名】スパイド, リチャード
【テーマコード(参考)】
4C316
5L096
【Fターム(参考)】
4C316AA10
4C316AB02
4C316AB11
4C316AB16
4C316FB21
4C316FB22
5L096AA06
5L096BA03
5L096BA06
5L096BA13
5L096CA08
5L096EA12
5L096FA16
5L096FA23
5L096FA32
5L096FA34
5L096FA69
5L096GA51
5L096GA55
(57)【要約】
血流情報は、構造光干渉断層撮影(OCT)画像の時系列のスペックル情報から抽出される。フロー情報は、OCT画像の高周波数情報、OCT画像のスペックル密度、OCT画像に適用された共起行列、入力されたOCT画像の機械学習分析などから決定されうる。パルス波形に類似したフロープロファイルは次に、抽出されたフロー情報の時系列として生成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象から光干渉断層撮影(OCT)データをキャプチャすること、
キャプチャされたOCTデータに基づいて前記対象の第1の位置から第1の複数の構造OCT画像を生成すること、
前記第1の複数の構造OCT画像の内の個々の画像からフロー情報を抽出すること、及び
前記対象の前記第1の位置の第1の時系列フロープロファイルを生成することであって、前記第1のフロープロファイルは、前記抽出されたフロー情報と、前記第1の複数の構造OCT画像の内の対応する個々の画像の生成元の前記キャプチャされたOCTデータのタイミングと、の間の関係であること、
を備える、方法。
【請求項2】
フロー情報を抽出することは、前記第1の複数の構造OCT画像の内の前記個々の画像の周波数情報に高周波数フィルタを適用し、これにより高周波数情報を生成することを備え、
前記フロー情報は、前記高周波数情報に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フロー情報を抽出することは、前記第1の複数の構造OCT画像の内の前記個々の画像の前記周波数情報に低周波数フィルタを適用し、これにより低周波数情報を生成することを備え、
前記フロー情報は、前記高周波数情報の前記低周波数情報に対する比である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
フロー情報を抽出することは、
前記第1の複数の構造OCT画像の内の前記個々の画像に2次元フーリエ変換を適用し、これにより前記周波数情報を生成すること、
を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記抽出されたフロー情報は、前記第1の複数の構造OCT画像の前記個々の画像のスペックル密度である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フロー情報を抽出することは、
前記第1の複数の構造OCT画像に共起行列を適用すること、及び
前記共起行列に基づいて、前記第1の複数の構造OCT画像間の相関を決定すること、
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
フロー情報を抽出することは、入力された構造OCT画像に基づいて、フロー情報を出力するように訓練された機械学習システムに前記第1の複数の構造OCT画像の内の前記個々の画像を入力すること、
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
フロー情報を抽出すること、及び前記時系列フロープロファイルを生成することは、
入力された構造OCT画像の時系列に基づいて、前記フロープロファイルを出力するように訓練された機械学習システムに前記第1の複数の光干渉断層撮影(OCT)画像を時系列として入力すること
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記OCTデータは、複数の心周期を備える期間にわたってキャプチャされる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記第1のフロープロファイルを時系列グラフとして表示すること、
を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、
前記第1の複数の構造OCT画像の内の個々の画像の複数の領域から、前記フロー情報を抽出すること、
前記複数の領域にわたって、前記抽出されたフロー情報のフローマップを生成すること、及び
前記フローマップを表示すること、
を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、
前記第1の複数の構造OCT画像の内の少なくとも2つに対する前記フローマップを生成すること、
前記生成されたフローマップからフロービデオを生成すること、及び
前記フロービデオを表示すること、
を更に備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の位置は、断面位置であり、前記OCTデータは、第1の断面位置から、及び前記第1の断面位置から既知の距離である第2の断面位置から、キャプチャされ、
前記方法は、
前記対象の前記第2の断面位置から第2の複数の構造OCT画像を生成すること、
前記対象の前記第2の断面位置の第2の時系列フロープロファイルを生成すること、
前記第1のフロープロファイルと前記第2のフロープロファイルとの間の時間差を決定すること、及び
前記既知の距離と前記決定された時間差とに基づいて前記対象における流速を決定すること、
を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記OCTデータは、前記第1の断面位置と前記第2の断面位置との間で交互にキャプチャされる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記時間差は、前記第1のフロープロファイル及び前記第2のフロープロファイルにおける極大値又は極小値の間隔である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、
前記対象に刺激を適用すること、及び
前記刺激の適用に応じた前記第1のフロープロファイルへの変化を決定すること、
を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記適用された刺激は、圧力である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記フロー情報は、前記第1の複数の構造OCT画像の内の1つで特定された関心領域から抽出され、他の第1の複数の構造OCT画像に登録される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記関心領域は、血流の領域に対応し、自動的に識別される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記対象は、眼である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年3月14日に出願された米国仮特許出願63/269,298の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
光干渉断層撮影(OCT)は、非侵襲的なイメージング技術であり、頻繁に眼科で使用される。OCTは、干渉法の原理を利用し、対象(被写体の目など)に関する情報を撮影し、収集する。具体的には、光源からの光は、撮影対象によって反射されるサンプルアームと、鏡などの参照の対象によって反射される参照アームに分割される。反射光は次に、分光器又はフォトダイオード等で検出される干渉パターンを生成するように、検出アームで組み合わされる。検出された干渉信号は、対象を再構築し、構造OCT画像を生成するために処理される。
【0003】
より具体的には、構造OCT画像及びボリュームは、多数の深度プロファイル(A線、例えば、X-Y位置におけるZ深さ方向に沿った)を単一の断面画像(Bスキャン、例えば、X-Z又はY-Z平面として)に組み合わせること、及び多数のBスキャンを1つのボリュームに組み合わせることによって、生成される。これらの深度プロファイルは、X方向及びY方向に沿ってスキャンすることによって生成される。X-Y平面の正面画像は、Z-深さ方向の全部又は一部のボリュームを平坦化することによって生成でき、Cスキャン画像は、所与の深さでのボリュームのスライスを抽出することによって生成されてもよい。他の方法において、OCT画像は、連続して取得されたZ-深さでのX-Y平面における正面に順番に取得される。X-Z又はY-Z平面の断面画像は、取得したボリュームから生成され得る。
【0004】
いくつかのアプリケーションにおいて、OCTイメージングは、速度等の血流特性を決定するために使用され得る。そうするための1つの手法は、ドップラーOCTであり、これは、血球がOCT光線を散乱させるときに生じるドップラーシフトを測定する。しかしながら、ドップラーOCTは、生のスペクトルデータから位相情報を抽出し、ドップラー位相シフトを決定する必要がある。これらのプロセスは、複雑になり、効率的に実行することが難しい場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一例によれば、方法は、対象から光干渉断層撮影(OCT)データをキャプチャすること;キャプチャされたOCTデータに基づいて対象の第1の位置から第1の複数の構造OCT画像を生成すること;第1の複数の構造OCT画像の内の個々の画像からフロー情報を抽出すること;及び対象の第1の位置の第1の時系列フロープロファイルを生成することであって、第1のフロープロファイルは、抽出されたフロー情報と、第1の複数の構造OCT画像の内の対応する個々の画像の生成元のキャプチャされたOCTデータのタイミングと、の間の関係であること、を備える。
【0006】
上記の例の様々な実施形態において、フロー情報を抽出することは、第1の複数の構造OCT画像の内の個々の画像の周波数情報に高周波数フィルタを適用し、これにより高周波数情報を生成することを備え、フロー情報は、高周波数情報に対応する;フロー情報を抽出することは、第1の複数の構造OCT画像の内の個々の画像の周波数情報に低周波数フィルタを適用し、これにより低周波数情報を生成することを備え、フロー情報は、高周波数情報の低周波数情報に対する比である;フロー情報を抽出することは、第1の複数の構造OCT画像の内の個々の画像に2次元フーリエ変換を適用し、これにより周波数情報を生成すること、を備える;抽出されたフロー情報は、第1の複数の構造OCT画像の個々の画像のスペックル密度である;フロー情報を抽出することは、第1の複数の構造OCT画像に共起行列を適用すること、及び共起行列に基づいて、第1の複数の構造OCT画像間の相関を決定すること、を備える;フロー情報を抽出することは、入力された構造OCT画像に基づいて、フロー情報を出力するように訓練された機械学習システムに第1の複数の構造OCT画像の内の個々の画像を入力すること、を備える;フロー情報を抽出すること、及び時系列フロープロファイルを生成することは、入力された構造OCT画像の時系列に基づいて、フロープロファイルを出力するように訓練された機械学習システムに第1の複数の光干渉断層撮影(OCT)画像を時系列として入力することを備える;OCTデータは、複数の心周期を備える期間にわたってキャプチャされる;本方法は、第1のフロープロファイルを時系列グラフとして表示すること、を更に備える;本方法は、第1の複数の構造OCT画像の内の個々の画像の複数の領域から、フロー情報を抽出すること、複数の領域にわたって、抽出されたフロー情報のフローマップを生成すること、及びフローマップを表示すること、を更に備える;本方法は、第1の複数の構造OCT画像の内の少なくとも2つに対するフローマップを生成すること、生成されたフローマップからフロービデオを生成すること、及びフロービデオを表示すること、を更に備える;第1の位置は、断面位置であり、OCTデータは、第1の断面位置から、及び第1の断面位置から既知の距離である第2の断面位置から、キャプチャされ、方法は、対象の第2の断面位置から第2の複数の構造OCT画像を生成すること、対象の第2の断面位置の第2の時系列フロープロファイルを生成すること、第1のフロープロファイルと第2のフロープロファイルとの間の時間差を決定すること、及び既知の距離と決定された時間差とに基づいて対象における流速を決定すること、を更に備える;OCTデータは、第1の断面位置と第2の断面位置との間で交互にキャプチャされる;時間差は、第1のフロープロファイル及び第2のフロープロファイルにおける極大値又は極小値との間である;本方法は、対象に刺激を適用すること、及び刺激の適用に応じた第1のフロープロファイルへの変化を決定すること、を更に備える;適用された刺激は、圧力である;フロー情報は、第1の複数の構造OCT画像の内の1つで特定された関心領域から抽出され、他の第1の複数の構造OCT画像に登録される;関心領域は、血流の領域に対応し、自動的に識別される、;及び/又は対象は、眼である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、光干渉断層撮影(OCT)システムの一例を示す。
図2図2は、本開示に係る方法の一例を示す。
図3図3は、周波数に基づいて血流情報を抽出する方法の一例を示す。
図4A図4Aは、スペックル密度に基づいて血流情報を抽出するための方法の第1の例を示す。
図4B図4Bは、スペックル密度に基づいて血流情報を抽出するための方法の第2の例を示す。
図5図5は、共起行列に基づいて血流情報を抽出する方法の一例を示す。
図6A図6Aは、本開示に従って決定されたフロープロファイルと、フロープロファイルの決定に用いられた、対応する構造OCT信号と、を比較して示す。
図6B図6Bは、図6Aで識別されたフレームに対する血流マップと、構造OCT画像と、を比較して示す。
図7図7は、流速を決定する方法の一例を示す。
図8A図8Aは、流速を決定するためのスキャン位置を識別する正面画像を示す。
図8B図8Bは、図8Aに示された位置のフロープロファイル、及びそこからの流速の決定を示す。
図9図9は、緑内障検査の一例の方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前述した課題を踏まえ、本開示は、複雑な処理を必要とせずに、光干渉断層撮影(OCT)画像から血流情報を決定することに関する。より具体的には、本開示は、ドップラー又は同様の位相関連分析を伴わない、構造OCT画像から血流情報を決定するためのシステム及び方法に関する。更に具体的には、本開示は、構造OCT画像のスペックル情報に基づいて血流情報を決定する。
【0009】
本開示のようなOCTシステム100の一例は、図1に示される。上述したように、システム100は、光源101を含む。光源101によって生成された光は、例えば、(干渉計光学系108の一部としての)ビームスプリッタによって分割され、参照アーム104及びサンプルアーム106に送られる。サンプルアーム106内の光は、後方散乱される、又はそうでなければ眼112の網膜などの対象から反射される。参照アーム104内の光は、ミラー110又は同様の対象によって後方散乱される、又はそうでなければ反射される。サンプルアーム106及び参照アーム104からの光は、光学系108で再結合され、対応する干渉信号が検出器102によって検出される。本明細書では、OCT画像の「スペックル」は、組織微細構造などの混濁媒質からの後方散乱されたOCT光によって生成される特徴的な干渉パターンを意味すると理解される。検出器102は、分光器、フォトディテクタ、又は任意の他の光検出装置であってよい。検出器102は、干渉信号に対応する電気信号を1つ以上のプロセッサ114に出力する。プロセッサ114は、電気信号をOCT信号データに処理し、対応する構造画像を生成し、且つ/又はデータと画像とを更に分析する。特に、プロセッサ114は、本開示の任意の又は全ての態様を実装してもよい。
【0010】
プロセッサ114は、処理された画像、又はそれらの画像の分析に関連する情報を出力するためのディスプレイを含む、入力/出力インターフェース(図示せず)にも関連付けられてもよい。入力/出力インターフェースは、システムへのユーザー入力を受信するためのボタン、キー、又はその他の制御手段などのハードウェアも含まれ得る。いくつかの実施形態において、プロセッサ114は、光源及びイメージング処理を制御するためにも使用され得る。
【0011】
本開示の方法の一例は、図2に概括的に示される。そこでは、本方法は、撮影対象の位置でOCT構造画像の時系列を生成することから始まる。換言すると、図1のOCTシステム100は、同じ位置からOCTデータを複数回生成するスキャンパターンに従って対象を撮影する。例えば、OCTシステム100は、対象の単一の断面平面位置を繰り返しスキャンし、異なる時間におけるその断面平面位置の複数のBスキャンを生成できる。他の実施形態において、OCTシステム100は、対象の領域を繰り返しスキャンし、対象の複数のボリュームを生成することができ、そこから異なる時間におけるBスキャンを導出できる。
【0012】
血流を分析するために、OCTシステム100のスキャンプロトコルは、1つ以上の心拍数をキャプチャするために十分な長さの時間にわたってデータを収集してよい。換言すると、OCTデータは、数秒程度の時間、収集され得る。一例を挙げると、OCTデータは、2秒から3秒の間に収集される。更に、OCTデータキャプチャの速度及び密度は、オーバーサンプリングされ、結果として得られる各構造OCT画像におけるスペックル情報の量を改善してもよい。例えば、OCTシステム100は、共通の断面平面位置で毎秒少なくとも50回の反復された構造OCT Bスキャンを得るのに十分な周波数で動作し得る。一例を挙げると、各構造OCT Bスキャンは、500から1024本のAラインの情報を有する、約1mm幅である。
【0013】
OCTデータのキャプチャの間、対象を追跡して、キャプチャ期間中の移動を制限してもよい。移動が大きすぎ、それによりノイズが大きすぎたり、結果として生じるOCT Bスキャン又はボリュームを登録できなくなったりすると、スキャンプロトコルは、リセットされ得る。
【0014】
OCTデータキャプチャ及び構造画像生成に続いて、個別に生成された構造OCT画像から、血流情報が抽出される。実施形態よっては、血流情報は、OCT Bスキャン全体から抽出されてもよいし、又は関心領域(ROI)のみから抽出されてもよい。ROIから抽出された場合、ROIは、手動又は自動で決定されてよい。ROIは、血流又は血管系の領域に対応するOCT Bスキャンの領域を選択することによって、臨床医により手動で決定されてよい。血管系のサイズといった、血管系の測定値は、構造OCT画像から臨床医により手動で測定されてもよい。代替の例では、このような領域及び測定値は、様々な方法によって自動的に決定されてよい。例えば、血管系の領域(従って血流)は、セグメンテーション技術、機械学習技術、閾値技術(血流及び血管系がより大きな強度及び変動を有する)などによって特定されてよい。更に、追加的なROIは、他の血管に対して特定されてもよい。
【0015】
上述したように、共通の断面平面位置で反復されたBスキャンの各々は、互いに登録されてよい。従って、ROIは、Bスキャン画像でのみ識別され、その後、その位置で他の反復されたBスキャン画像に外挿され得る。X-Y平面において対面するように画像が取得される場合、それらのX-Y平面画像も相互に登録され得る。従って、ROIは、単一のX-Y平面画像で識別されるだけでよい。
【0016】
血流情報は、個々のOCT Bスキャンから様々な方法で抽出され得る。一般に、構造OCT Bスキャンから血流情報を抽出する技術は、血流が静的な構造組織よりも大きなスペックル変動を生じるという認識に基づく。
【0017】
周波数分析に基づいた血流情報を抽出する方法の第1の例は、図3に示される。そこに見られるように、ROIは、(高輝度信号及び高密度スペックルパターンによって示されるように)血流及び血管系に対応するOCT構造画像の領域内で識別される。ROIは次に、(例えば2Dフーリエ変換に従って)変換され、ROIの2D周波数情報が生成し、その後、周波数フィルタリングされ得る。換言すると、高周波数フィルタ及び低周波数フィルタは、変換されたROIの周波数情報に適用される。フィルタのカットオフ周波数は、分析下の血管スペックルのサイズに対するROI(又は2Dフーリエ変換領域)のサイズに基づいて決定され得る。結果として生じる信号は次に、統計的に1つの値に結合され、高周波数信号F及び低周波数信号Fを生成する。図3の例によると、統計的な組み合わせは、平均である。
【0018】
一般に、高周波数信号Fは、血流を表し、低周波数信号Fは、静止組織を表すと理解され得る。従って、いくつかの実施形態において、高周波数信号Fのみが決定され、更に処理され、フロー情報に対応させることができる。しかしながら、いくつかの実施形態において、高周波数信号Fを(例えば低周波数信号Fに)正規化することは、画像化された対象及びOCTシステム100の自然な変動を説明するのに役立ち、それにより、抽出されたフロー情報の質を向上し得る。換言すると、フロー情報は、高周波数信号Fと低周波数信号Fの比として決定されてよい。
【0019】
もう一つの技術によれば、フロー情報は、スペックル密度に基づいて抽出され得る。このような技術の第1の例は、図4Aに示される。図4の例によれば、閾値は、ROI内のピクセルに適用され得る。ROIのバイナリマップは次に、適用された閾値に基づいて生成され得る。例えば、閾値より大きい全てのピクセルは、1の値に設定され、閾値より小さい全てのピクセルは、0の値に設定され得る。スペックル密度は、1の値を持つピクセル数の、ROIのピクセル合計数、又は値0のピクセル数に対する比として決定され得る。そのためフロー情報は、スペックル密度と等しい、又はスペックル密度の関数と見なされ得る。
【0020】
スペックル密度を決定するための技術の第2の例は、図4Bに示される。本方法によると、エッジフィルタは、スペックルのエッジを識別する構造OCT Bスキャンに最初に適用される。平均化フィルタは次に、スペックルエッジ(エッジフィルタの出力)及び構造OCT Bスキャンに適用される。平均化フィルタを適用することは、構造OCT Bスキャンのエッジ強度及び平均強度をそれぞれ作成する。平均化フィルタは、好ましくは血流情報の決定に用いられる構造OCT Bスキャンにおける血管のサイズに近いサイズを有する。最後に、スペックル密度が可視エッジの密度に比例するため、スペックル密度は、エッジ強度及び平均強度の間の比(例えば平均強度で割られたエッジ強度)として決定され得る。上記のように、フロー情報は、スペックル密度(例えば比)又はスペックル密度の関数と見なされ得る。
【0021】
更に他の実施形態において、スペックル密度は、スペックルエッジに閾値強度を適用することによって決定され得る。換言すると、スペックル密度は、閾値強度を超えるスペックルエッジの数と見なされ得る。しかしながら、正規化(例えば上述した平均強度)は、様々な位置でエッジ強度の情報を保持するのに役立つ。
【0022】
更に他の技術において、フロー情報は、ROIに共起行列を適用することにより、決定され得る。共起行列は、ピクセル強度値iを有するピクセルが、値jを有するピクセルに隣接するフレームで発生する頻度を決定することにより、依存行列を作成する。依存行列の各要素(i,j)は、値iを有するピクセルが値jを有するピクセルの隣接フレームで発生した回数を指定する。フロー情報は次に、共起行列上の隣り合うフレームにピクセルの相関を適用することによって決定される。そのような共起行列の適用例は、図5に示される。まず、一時的に隣接する構造OCT Bスキャン画像に適用された移動窓のサイズが決定される。一例を挙げると、移動窓のサイズは、4である。共起行列は次に、この分析窓内の構造OCT Bスキャン画像データに適用される。フロー情報は次に、共起行列上の相関の属性を適用することにより、決定される。
【0023】
更に他の技術において、フローは、機械学習システムによって決定されてよい。このような機械学習システムは、入力の構造ROI、OCT Bスキャン、又はOCTボリュームに基づいて、フロー情報を表す1つ以上の値を出力するように訓練されてよい。例えば機械学習システムは、入力の構造OCT画像情報及び対応するグラウンドトゥルースのフロー情報に基づいて、教師あり方式で訓練されてもよい。グラウンドトゥルースのフロー情報は、例えば上述した技術の内の1つに従って決定されてもよい。グラウンドトゥルースのフロー情報は、ドップラーOCT又は非OCT分析技術などの他の技術によって追加的又は代替的に決定されてもよい。従って、機械学習システムは、構造スペックル信号と対応するフロー情報との関係を認識するように訓練される。
【0024】
更に他の技術において、フローは、スペックル非相関、スペックルコントラスト、及びスペックル自己相関などの既知の超音波及びレーザースペックル技術を適用することによって決定され得る。これらの技術の各々は、個々の構造OCT Bスキャン及び/又は一時的に隣接する構造OCT Bスキャン画像に適用され得る。更に他の技術において、スペックル分散、振幅-無相関性、又はスプリットスペクトル振幅-無相関性などの既知の振幅ベースのOCT血管造影技術を適用することにより、フローは決定され得る。上記のように、これらの技術の各々は、個々の構造OCT Bスキャン及び/又は一時的に隣接する構造OCT Bスキャン画像に適用され得る。
【0025】
図2に戻ると、複数の反復されたOCT Bスキャン画像(又は共通の位置にある他の画像)に対するフロー情報が識別されると、フロープロファイルは、フロー情報の時系列プロットとして決定され得る。換言すると、高周波数信号Fと低周波数信号Fとの間の比、スペックル密度、又は同様のフロー関連情報の値は、各フロー関連情報の値の相対時間が反復されたOCT画像がキャプチャされた時間に対応する時系列に従ってプロットされる。
【0026】
フロープロファイルの一例は、対応する構造OCT信号と共に図6Aに示される。構造OCT信号は、フロープロファイルのフロー情報が抽出されたROIフォーム内の平均ピクセル強度を表す。図に示すように、フロープロファイルは、従来のパルス波形と似ている。実際、二重ノッチは、画像フレーム15と20の間にもおおよそ見られる。対照的に、構造OCT信号は、比較的平坦であり、パルス波と関係がない。
【0027】
図6Aは、図6Bに示される4つの画像フレーム(9、12、29、及び36)を更に識別する。より具体的には、図6Bは、各フレームの元の構造OCT画像と共に、各フレームの血流マップを示す。血流マップは、構造OCT画像の全領域について抽出された血流情報のマップであり、図6Aに示された時系列信号は、図6Bの画像フレームに記録されたROIのみを表す。
【0028】
図6Aのフロープロファイルを図6Bの血流マップと比較すると、ROIに対応する領域のピクセル強度(従って抽出された血流情報)は、フレーム9及び29では相対的に低い(暗い)が、フレーム12及び36では相対的に高い(明るい)。対照的に、任意のフレームで構造OCT画像のROIに、ほとんど又は全く識別できない違いがある。
【0029】
いくつかの実施形態において、フロープロファイルは、機械学習システムによって生成され得る。例えば機械学習システムは、入力の構造OCT画像の時系列に基づいたフロープロファイルを出力するように訓練され得る。
【0030】
上記の説明は、共通の断面平面位置におけるフロープロファイルを生成することに関するものであるが、2つの異なる断面平面位置からのフロープロファイルに基づいた流速を決定することが可能である。
【0031】
図7を参照すると、流速を決定するための方法の一例における最初のステップは、少なくとも2つの異なる位置であって、その間の距離が既知である位置から同時にOCTデータをキャプチャすることを含む。一例を挙げると、OCTデータのキャプチャは、各位置から結果として得られるBスキャン画像が一時的にインターリーブされるように異なる位置の間で交互に行われる。図8Aは、その中の血管に沿って2つの位置A、Bが識別された正面画像を示す。位置A、Bは、距離dで区切られる。いくつかの実施形態において、OCTデータは、異なる半径を有する円形スキャンに従ってキャプチャされ得る。各円形スキャンの間の半径の差は従って、既知の距離を表す。これらの円形スキャンは、上記で説明したのと同じ方法で一時的にインターリーブされ得る。
【0032】
OCTデータのキャプチャに続いて、各位置からのデータのフロープロファイルは、生成される。これらのフロープロファイルは、任意の上述した方法から生成され得る。図8Bは、図8Aの位置A、Bに対応するフロープロファイルを示す。その後、これら2つのフロープロファイルの間の時間Δtは、決定され得る。例えば、図8Bに示すように、時間Δtは、フロープロファイルの極大値の間で決定される。しかしながら、代替の例として、フロープロファイルの他の共通の位置(極小値など)の間で、時間が決定されてもよい。極大値は、例えば、各心周期において最大値が発生するフレームを特定することによって決定され得る。他の実施例によれば、フロープロファイルの導関数は、決定され、次に導関数がゼロに等しい(又は交差する)フレームは、極大値及び極小値に対応する。時間Δtは次に、OCTデータがキャプチャされたサンプリングレートに基づいて決定され得る。換言すると、OCT Bスキャンが毎秒50フレームでキャプチャされる場合、異なるフロープロファイルのローカル最大値の間の50フレームの差は、1秒の差を表す。
【0033】
時間Δtが決定されると、速度は、速度=d/Δtの関係に従って決定され得る。フローの方向は、2つの位置の間のOCT信号の位相シフトが正又は負であるかどうかによって更に決定され得る。この速度は、同じ2つの位置の間、及び/又は複数の位置の間で複数回決定され得る。複数の決定された速度は次に、代表的な速度を識別するために、平均化される(又は別の統計的決定に従って組み合わされる)。同様に、決定された速度は、異常を識別するために複数の患者の間、又は患者の状態の変化を決定するために複数のキャプチャ時間における同じ患者の間で比較され得る。
【0034】
更に上記の説明の任意の部分は、他の分析技術、及び/又は処理と共に組み込まれてよい。例えばフロープロファイルは、疾患を監視するために、いくつかの心周期にわたって平均化され得る、又は一定期間(例えば数週間、数ヶ月、数年)にわたって比較され得る。他の例において、静脈と動脈の血流が反対と考えられ得るため、血流の決定された距離は、構造画像内の動脈と静脈を区別するために使用され得る。同様に、静脈の血流が動脈よりも遅いため、決定された速度を比較することにより、静脈及び動脈は更に区別される。更に他の例において、上記のOCTデータ取得は、パルスオキシメトリー、心電図などの他の生理学的測定と同時に行うことができる。本明細書におけるフロープロファイルの更なる分析は、同時測定によってキャプチャされた追加の生理学的情報に基づいてよい。
【0035】
その上、血管のフローの障害や自己調節など、緑内障の損傷の任意の血管バイオマーカーは、診断情報を提供するために使用されてよい。従って、外部刺激に応答した血流の変化を測定することにより、緑内障を検出したり、その重症度を定量化したりすることが可能になり得る。このような方法の一例は、図9に示される。
【0036】
図9の方法の例に見られるように、外部刺激は、適用される。緑内障検査の例において、そのような刺激は、適用された圧力(例えば、エアパフ)又は眼圧の変化を生じさせる他の刺激であり得る。上記の技術のいずれかに従って、次に患者についてフロープロファイルは、決定され得る。結果として得られるフロープロファイルは、既知の健康な患者又はその患者について以前に決定されたベースラインのフロープロファイルと比較されてよい。ベースラインに対するフロープロファイルの変化は、眼(及び従って眼の血管)の流れが適用された圧力によって影響を受けるため、健康な眼を示している可能性がある。対照的に、ベースラインに対するフロープロファイルの変化がない(又は比較的小さい)ことは、血流及び血管が適用された圧力に反応しないため、緑内障を示している可能性がある。上記の分析は、適用される外部刺激に応じて、その逆も適用され得る。
【0037】
上記の例は、緑内障を検査するために適用された圧力に関するものであるが、任意の外部刺激及び検査が利用できることを理解すべきである。換言すると、フロープロファイルは、任意の外部刺激の適用前、適用中、又は適用後に、本開示に従って決定され得る。その後、刺激に対するフロープロファイルの応答は、診断又は同様の目的で分析され得る。
【0038】
図2に再度戻ると、フロープロファイルを知っている状態で、抽出されたフロー情報は、更に分析され、及び/又は表示されてよい。上述したフロープロファイルは、パルス波形に対応するため、このような分析は、パルス波形の分析のための既知の手法を含み得る。そのような技術は、心拍数、立ち上がり時間、フローのゆがみ、血圧、心機能、血管の硬化等を決定するためのものを含んでよい。
【0039】
表示に関して、抽出されたフロー情報の表示は、フロープロファイル自体、血流マップ、及び/又は構造OCT画像を含んでよい。抽出されたフロー情報は、血流マップ内のピクセル強度、及び/又は色にマッピングされてよい。いくつかの実施形態において、血流マップは、静止画像ではなくビデオとして示され得る。
【0040】
上記には様々な特徴が存在するが、その特徴は単独で、又はそれらの任意の組み合わせで使用され得ることを理解すべきである。更にクレームされた例が関係する分野の当業者であれば、変形例及び修正例を想到し得ることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
【国際調査報告】