(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-04-14
(54)【発明の名称】フランポリマー含浸材を得るための重合性溶液
(51)【国際特許分類】
B27K 3/15 20060101AFI20250404BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20250404BHJP
C09D 171/14 20060101ALI20250404BHJP
B27K 3/52 20060101ALI20250404BHJP
【FI】
B27K3/15
C09D5/00 Z
C09D171/14
B27K3/52 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024556383
(86)(22)【出願日】2023-03-23
(85)【翻訳文提出日】2024-10-03
(86)【国際出願番号】 EP2023057532
(87)【国際公開番号】W WO2023180473
(87)【国際公開日】2023-09-28
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524351062
【氏名又は名称】ケボニー アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャンセン,カール クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】リー,アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
2B230
4J038
【Fターム(参考)】
2B230AA08
2B230AA15
2B230BA01
2B230CA01
2B230CA24
2B230CB08
2B230DA02
4J038DF001
4J038KA04
4J038LA03
4J038LA04
4J038MA08
4J038NA26
4J038NA27
4J038PC06
(57)【要約】
本発明は、木材に含浸するための重合性溶液、前記溶液を木材に含浸させる方法、及び前記溶液を含浸させた含浸木材に関する。重合性溶液は、前記溶液の総重量を基準として25~75重量%の範囲のフルフリルアルコールと、前記溶液の総重量を基準として0.01~0.15mol/kgの範囲のカルボン酸と、前記溶液の総重量を基準として0.25~4重量%の範囲の無水マレイン酸と、前記溶液の総重量を基準として24~74重量%の範囲の、先の木材硬化プロセスからの凝縮物と、前記溶液が作製された時点で3~5の範囲のpHを得るための量の、水溶性アルカリ塩と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材に含浸するための重合性溶液であって、前記溶液は、
前記溶液の総重量を基準として25~75重量%の範囲のフルフリルアルコールと、
前記溶液の総重量を基準として0.01~0.15mol/kgの範囲のカルボン酸と、
前記溶液の総重量を基準として0.25~4重量%の範囲の無水マレイン酸と、
初期組成が3~5の範囲のpHを含むような量の水溶性アルカリ塩と、
前記溶液の総重量を基準として24~74重量%の範囲の、先の木材硬化プロセスからの凝縮物と、を含み、
水溶性アルカリ塩の量は、前記溶液が作製された時点で3~5の範囲のpHを得るためである重合性溶液。
【請求項2】
前記水溶性アルカリ塩は、3~4.5、より好ましくは3.5~4の範囲のpHを得るために添加される、請求項1に記載の重合性溶液。
【請求項3】
フルフリルアルコールの量は、30~60重量%、好ましくは35~60重量%の範囲である、請求項1または2に記載の重合性溶液。
【請求項4】
前記水溶性アルカリ塩は、金属水酸化物塩、金属重炭酸塩、および金属炭酸塩のうちの少なくとも1つから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の重合性溶液。
【請求項5】
前記カルボン酸は、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、酒石酸、2-フロ酸、安息香酸、レブリン酸およびサリチル酸のうちの少なくとも1つから選択され、好ましくはクエン酸である、請求項1~4のいずれか一項に記載の重合性溶液。
【請求項6】
カルボン酸および無水マレイン酸の総量は、4.5重量%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の重合性溶液。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の重合性溶液を含浸させた含浸木材。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の重合性溶液を調整する方法であって、
硬化プロセスからの凝縮物を容器内に供給するステップと、
前記容器内にフルフリルアルコールを添加するステップと、
前記容器内にカルボン酸、無水マレイン酸及び水溶性アルカリ塩を添加するステップと、を含む、方法。
【請求項9】
木材に含浸するための重合性溶液であって、
前記溶液の総重量を基準として25~75重量%の範囲のフルフリルアルコールと、
前記溶液の総重量を基準として0.01~0.15mol/kgの範囲のカルボン酸と、
前記溶液の総重量を基準として0.25~4重量%の範囲の無水マレイン酸と、
前記溶液の総重量を基準として24~74重量%の範囲の、先の木材硬化プロセスからの凝縮物と、
前記溶液が作製された時点で3~5の範囲のpHを得るための量の、水溶性アルカリ塩と、を含み、
前記重合性溶液は、請求項8に記載の方法によって得られる、重合性溶液。
【請求項10】
木材に含浸するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の重合性溶液の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材等のフランポリマー含浸材を得るための重合性溶液に関する。
特に、本発明は、先行する乾燥および硬化プロセスからの凝縮物を重合性溶液中の担体として再利用することに関する。
【背景技術】
【0002】
フランポリマー含浸木材は当技術分野で知られている。フランポリマー含浸木材は、一般に、適切な量の重合性溶液/液体を木材に塗布/含浸し、その後、重合性溶液の重合性化合物が木材細胞の中でフランポリマーに重合/硬化されるように木材を加熱し硬化させることにより製造される。
【0003】
重合性溶液は、一般に、例えば、フルフラール、フルフリルアルコール、ビスヒドロキシメチルフラン、またはそれらの組み合わせの低分子フラン誘導体を含み、任意選択的に、触媒、開始剤および安定剤を含む。
【0004】
フルフリルアルコールは、酸が重合反応を開始し促進する酸性媒体中で重合する(樹脂化する)。強酸の存在は、望ましくない。何故なら、それは、制御することが困難な、フルフリルアルコールの激しい自己縮合重合につながる可能性があるためである。したがって、含浸および重合/硬化中にフルフリルアルコールから分離しない弱酸、例えば、有機酸を重合性溶液中に用いることが望ましい。含浸される材料、例えば木材、との化学的親和性をも有する弱酸を選択することが有用である。木材に対する親和性が増強された非分離性混合物は、特許文献1から知られている。
【0005】
いくつかの用途については、木材のような多孔質材料に、より希薄な開始フルフリルアルコール溶液を含浸させて、特許文献1に開示されているよりも良好な制御性および経済性を提供することが望ましい。木材中のフルフリルアルコールポリマー(フランポリマーまたはフラン樹脂とも呼ばれる)の濃度が低いほど、より低コストで外観の変化が少ない有用な特性を提供することが見出されている特許文献1に従って調製された木材は、非常に暗色である。フルフリルアルコールの濃度が低いと、淡褐色から暗褐色までの色が可能である。
【0006】
最終硬化生成物中のフランポリマーの濃度の制御は、重合性溶液中にフルフリルアルコールのための液体担体を用いることにより得られる。担体およびフルフリルアルコールは、重合プロセスが開始する前に、生成物中に一緒に加えられる。
【0007】
いくつかの担体は、先行技術から知られており、水または水およびアルコールなどである。フルフリルアルコールは水に可溶であるので、水を、希釈された未開始フルフリルアルコールのための担体として用いることができる。水は、環境に優しい、安価な物質であり、したがって、しばしば好ましい担体である。
【0008】
上述したように、重合性溶液は、重合反応を開始させるための開始剤を含む。有機酸開始剤がフルフリルアルコール及び水(水が担体である)と混合されると、溶液は反応性が非常に高くなり、フルフリルアルコールの重合を引き起こす。したがって、重合に先立つ保管または少なくとも含浸に適した安定な溶液を提供するために、安定剤が必要となり、これは特許文献2の根拠である。
【0009】
発見された第1の有用な化学安定剤は、ホウ砂およびリグノスルホン酸のナトリウム塩であった。しかしながら、リグノスルホン酸のナトリウム塩は、低い溶解度を示し、高価であり、扱いにくく、したがって、あまり好ましくない安定剤である。 ホウ砂は、緩衝剤を形成するために用いることができ、また、最終フランポリマー含浸生成物に対する生物学的分解からの保護を増加させる殺生物剤でもある。しかしながら、殺生物剤であるホウ砂は、ホウ砂が最終含浸材から容易に洗い落とされて環境内に堆積されるため、環境上の理由から望ましくない。
【0010】
上述した安定剤を使用することなく、安定な重合性溶液を製造する努力がなされた。このような安定な重合性溶液は、保管中には一定のpH範囲にとどまらねばならない。なぜなら、過度に酸性の重合性溶液は急速に重合して相分離をもたらし、このような反応は非可逆性であるため、溶液を破壊する。一方、過度に塩基性の重合性溶液は、使用中の重合性溶液の重合反応を遅延または妨害し、したがって、要求される反応性および最終含浸生成物の目標特性を提供することができない。
【0011】
そのような安定な重合性溶液を提供する方法の1つは、特許文献3に開示されているような安定化補助溶剤を使用することを含む。そのような補助溶剤は、メタノール、エタノール、アセトンまたは他の揮発性溶媒であり得る。これらの補助溶剤は、フルフリルアルコールの良好な溶媒および木材のための良好な膨張剤の両方である。補助溶剤は、保管および含浸中に酸濃度を希釈し、これにより重合性溶液の保管寿命を延ばす。含浸後、すなわち硬化前に、補助溶剤が木材から除去されるときに、補助溶剤が木材から蒸発するにつれて、溶液の反応性が増加する(pHが低下する)。効果的な補助溶剤除去工程が、処理プロセスに添加されねばならない。この除去工程は、好ましくは、補助溶剤を回収するためのシステムを用いた真空乾燥プロセスであり、その結果、補助溶剤を再利用することができる。このような安定化補助溶剤を使用することにより、さらなる安定剤が必要とされず、開始剤:フルフリルアルコールの比を低減することができる。これは、最終含浸木材製品中の浸出性物質の量をより少なくすることにつながり、好ましい。さらに、実験は、安定化補助溶剤が、木材に含浸した後まで、重合性溶液中のpHを維持したことを示している。次いで、pHが低下し(より酸性になり)、硬化が促進された。
【0012】
しかしながら、そのような補助溶剤の使用は、より高価であり、水を使用するよりも安全性およびプロセス設備に対してより多くの要件を課し、したがって、あまり好ましくない。これらの補助溶剤はまた、揮発性で、回収が困難であり、可燃性であると考えられている。このような可燃性補助溶剤を、典型的にはプロセス設備のための閉鎖容積で使用することは、空気中の酸素のような酸化剤を含む場合、爆発性雰囲気の形成につながる可能性がある。
【0013】
含浸木材製品を得るための従来の重合プロセスは、とりわけ、特許文献4から知られ、これは参照として本明細書に組み込まれる。このプロセスは、とりわけ、乾燥と硬化の組合せのための装置、すなわち乾燥及び硬化チャンバの使用を含む。このプロセスは、含浸対象の材料、例えば木材に、木材を装置に導入する前に、重合性溶液を加えることを含む。装置は、典型的には、加熱段階において、そして、程度は少ないが引き続く硬化段階において、いわゆる「底部凝縮物」が装置から汲み出されることを許容する排水口を含む。底部凝縮物は、水、フルフリルアルコール、有機化合物、ポリマーや樹脂などの、重合性溶液からの化合物および木材からの化合物によって実現される。さらに、水および他の化学物質、いわゆる「上部凝縮物」の除去のための主要な機構は、乾燥および硬化チャンバ内にその上面に向かって組み込まれた凝縮器によるものである。このような上部凝縮物は、主に、重合性溶液および木材由来の、蒸発水、フルフリルアルコールおよび揮発性有機化合物(VOC)を再凝縮することによって実現される。次いで、上部凝縮物は、再利用のために凝縮物タンクに送られる。底部凝縮物は、凝縮物の再利用可能な部分を使用不能な高密度ポリマーから分離する分離タンクに送られる。その後、再利用可能な部分は、再利用のために凝縮物タンクに移送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第02/30638号
【特許文献2】国際公開第02/060660号
【特許文献3】国際公開第2004/011216号
【特許文献4】欧州特許出願公開第2435223号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、最終含浸木材製品を得るのに適した安定な重合性溶液を提供するための担体としての、このような凝縮物、すなわち、上部凝縮物および底部凝縮物の再利用可能な部分の再利用は難題である。その理由の一つは、硬化中の重合度の増加に伴って、重合性溶液に由来する凝縮物中の樹脂化されオリゴマー化された成分が、ますます無極性になることである。このような成分はフルフリルアルコールに可溶であるので、担体として使用された場合の凝縮物中のこれらの成分の存在は、水中の有機フルフリルアルコール相の溶解度を低下させることになる。この溶解度の低下は、曇点温度の上昇として現れ、このことは、相分離を回避するためには初期重合性溶液の曇点温度が溶液の保管温度未満でなければならないため、望ましくない。凝縮物はまた、重合反応中に生成される酸性副生成物に起因して低いpHを有する。低いpHは重合反応を加速させ、したがって、重合性溶液の保管寿命を縮める。
【0016】
さらに、特に、担体としての凝縮物中の有機溶媒の存在をともなう、木材の含浸は、テルペン(例えば、α-ピネン)などの無極性成分を抽出してしまう。そのような無極性成分はまた、水溶性に影響を及ぼし、それにより、濃度が増加するにつれて曇点温度を上昇させる。
【0017】
したがって、本発明の第1の目的は、従来技術の欠点を克服する、木材などの材料に含浸するための重合性溶液を提供することである。
【0018】
本発明の第2の目的は、既知の溶液よりも安価で環境に優しい重合性溶液を提供することである。
【0019】
本発明の第3の目的は、通常15~30℃である周囲温度における密閉容器中の保管の際、少なくとも7日間、好ましくは少なくとも10日間、より好ましくは少なくとも14日間、さらにより好ましくは少なくとも21日間、安定である重合性溶液を提供することである。
【0020】
本発明の第4の目的は、寸法安定性、機械的強度、耐浸出性、耐朽性および耐候性が良好または改善された、木材などの、フランポリマー含浸/化学修飾製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
第1の態様において、木材に含浸するための重合性溶液が提供され、前記重合性溶液は、
前記溶液の総重量を基準として25~75重量%の範囲のフルフリルアルコールと、
前記溶液の総重量を基準として0.01~0.15mol/kgの範囲のカルボン酸と、
前記溶液の総重量を基準として0.25~4重量%の範囲の無水マレイン酸と、
初期組成が3~5の範囲のpHを含むような量の水溶性アルカリ塩と、
前記溶液の総重量を基準として24~74重量%の範囲の、先の木材硬化プロセスからの凝縮物と、を含み、
水溶性アルカリ塩の量は、前記溶液が作製された時点で3~5の範囲のpHを得るためである。
【0022】
第1の態様による一実施形態において、前記水溶性アルカリ塩は、3~4.5、より好ましくは3.5~4の範囲のpHを得るために添加される。
【0023】
第1の態様による一実施形態において、フルフリルアルコールの量は、30~60重量%、好ましくは35~60重量%の範囲である。
【0024】
第1の態様による一実施形態において、前記水溶性アルカリ塩は、金属水酸化物塩、金属重炭酸塩、および金属炭酸塩のうちの少なくとも1つから選択される。
【0025】
第1の態様による一実施形態において、前記カルボン酸は、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、酒石酸、2-フロ酸、安息香酸、レブリン酸およびサリチル酸のうちの少なくとも1つから選択され、好ましくはクエン酸である。
【0026】
第1の態様による一実施形態において、カルボン酸および無水マレイン酸の総量は、4.5重量%以下である。
【0027】
第2の態様において、第1の態様およびその任意の実施形態による重合性溶液を含浸させた含浸木材が提供される。
【0028】
第3の態様において、重合性溶液を調製するための方法が提供され、この方法は、
硬化プロセスからの凝縮物を容器内に供給するステップと、
前記容器内にフルフリルアルコールを添加するステップと、
前記容器内にカルボン酸、無水マレイン酸及び水溶性アルカリ塩を添加するステップと、を含む。
【0029】
第3の態様による一実施形態において、前記水溶性アルカリ塩の量は、前記溶液が作製された時点で3~5の範囲のpHを得るために添加される。
【0030】
第4の態様において、木材に含浸するための重合性溶液が提供され、前記重合性溶液は、
前記溶液の総重量を基準として25~75重量%の範囲のフルフリルアルコールと、
前記溶液の総重量を基準として0.01~0.15mol/kgの範囲のカルボン酸と、
前記溶液の総重量を基準として0.25~4重量%の範囲の無水マレイン酸と、
前記溶液の総重量を基準として24~74重量%の範囲の、先の木材硬化プロセスからの凝縮物と、
前記溶液が作製された時点で3~5の範囲のpHを得るための量の、水溶性アルカリ塩と、を含み、
前記重合性溶液は、第3の態様の方法によって得られる。
【0031】
第5の態様において、木材に含浸するための、第1の態様およびその任意の実施形態による重合性溶液の使用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を、実施例を参照してより詳細に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
本明細書において特に定義されない限り、用いられるすべての技術的および科学的用語は、ポリマー工学および木材含浸の分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0034】
とりわけ、硬化/重合プロセスにおいて生成される凝縮物の処分に関する環境上の課題を緩和するために、本発明は、このような凝縮物を重合性溶液中の担体として再利用する、木材などの材料を含浸させるための重合性溶液を提供する。
【0035】
したがって、本発明は、保管に適し安価であり環境に優しい最適化されたフラン重合性溶液であって、寸法安定性、機械的強度、耐浸出性、耐朽性および耐候性が良好または改善され且つ色および密度が均一なフランポリマー含浸木材を提供し、さらに溶液中の担体として凝縮物を利用できる、最適化されたフラン重合性溶液を提供する。
【0036】
したがって、第1の態様において、木材に含浸するための重合性溶液が提供され、前記重合性溶液は、
前記溶液の総重量を基準として25~75重量%の範囲のフルフリルアルコールと、
前記溶液の総重量を基準として0.01~0.15mol/kgの範囲のカルボン酸と、
前記溶液の総重量を基準として0.25~4重量%の範囲の無水マレイン酸と、
初期組成が3~5の範囲のpHを含むような量の水溶性アルカリ塩と、
前記溶液の総重量を基準として24~74重量%の範囲の、先の木材硬化プロセスからの凝縮物と、を含み、
水溶性アルカリ塩の量は、前記溶液が作製された時点で3~5の範囲のpHを得るためである。
【0037】
また、本明細書では、木材などの材料に含浸するための重合性溶液も記載され、前記重合性溶液は、
前記重合性溶液の全組成の重量を基準として25~75重量%の範囲のフルフリルアルコールと、
前記重合性溶液の全組成の重量を基準として0.01~0.15mol/kgの範囲のカルボン酸と、
前記重合性溶液の全組成の重量を基準として0.25~4重量%の範囲の無水マレイン酸と、
初期組成が3~5の範囲のpHを含むような量の水溶性アルカリ塩と、
前記重合性溶液の全組成物の重量を基準として24~74重量%の範囲の水および/または凝縮物と、を含む組成を有する。
【0038】
水溶性アルカリ塩を含まない初期組成のpHは常に3未満であるため、水溶性アルカリ塩は常に重合性溶液中に存在する。
【0039】
上記組成の重合性溶液は保管に適しており、これは、溶液を密閉容器内で、少なくとも7日間、好ましくは少なくとも10日間、より好ましくは少なくとも14日間、さらにより好ましくは少なくとも21日間、周囲条件下で分離することなく、保管できることを意味する。
【0040】
重合性溶液中の担体として用いられる凝縮物は酸性であり、3未満のpHを有し得るため、水に代わる担体として従来のフラン重合性溶液中に添加されると、溶液の重合を加速させ、したがって、急速に分離する溶液を提供してしまう。例えば48時間以内など急速に分離する溶液は、そのような分離が生じる前に材料の塗布/含浸を行わなければならないため、望ましくない。本発明の重合性溶液の組成は、緩衝剤としてのカルボン酸の存在によって提供される有機バッファと、初期重合性溶液のpHを3~5の目標pH範囲内、より好ましくは3~4.5のpH範囲内、さらにより好ましくは3.5~4のpH範囲内に調節するための、制御された量の水溶性アルカリ塩とを含むという点において、この問題を緩和する。この範囲は、最も安定な重合性溶液を提供し、さらに、重合プロセスにおいて加熱されたときの良好な反応性を保持する。
【0041】
本発明の重合性溶液に添加されるカルボン酸は、開始剤としてではなく、凝縮物の酸性度が溶液のpH安定性に影響を及ぼさず、感受性がより低くより安定な重合性溶液を提供するように、保管中にpHをできるだけ一定に保つための緩衝剤として機能する。実験により、重合性溶液中のカルボン酸の量は、重合性溶液の全組成の重量を基準にして、0.01~0.15mol/kgの範囲でなければならないことが示された。
【0042】
3未満のpHを有する溶液などの、過度に酸性の重合性溶液は、急速に重合して相分離をもたらし、そのような反応は不可逆性なので、溶液を破壊することになる。一方、5を超えるpHを有する溶液などの、過度に塩基性の重合性溶液は、使用中の重合性溶液の重合反応を低減または妨害し、したがって、要求される反応性および最終含浸生成物の目標特性を提供することができない。したがって、初期溶液のpHを、過度に酸性でも過度に塩基性でもないと考えられる3~5の範囲内のpH値に制御することができる、重合性溶液を提供することが重要である。重合性溶液中の凝縮物の酸性特性に起因して、添加される水溶性アルカリ塩の量は、その酸性度および添加された酸の緩衝範囲および緩衝能に依存する。
【0043】
水溶性アルカリ塩は、有利には、金属水酸化物塩、金属重炭酸塩、及び金属炭酸塩のうちの少なくとも1つから選択されてよい。なぜなら、これらは、全ての実用的な目的のために、重合性溶液に陽イオン及びOH-を添加するのみであり、これにより、主に重合性溶液のpHに影響を及ぼすからである。好ましくは、水溶性アルカリ塩は、環境に優しくたやすく入手可能で安価な炭酸ナトリウム(Na2CO3)である。
【0044】
緩衝液は、酸又はアルカリの濃度の変化に伴うpHの変化に抗する能力を有することが一般に知られている。緩衝能(β)は、これの定量的尺度であり、単純カルボン酸の溶液について、以下のように表すことができる。
【0045】
【数1】
ここで、
[H
+]はH
+イオンの平衡濃度であり、
C
CAは、溶液中のカルボン酸の総濃度であり、
K
aは、カルボン酸の酸解離定数であり、
K
wは水の解離定数である。
【0046】
上記の式は、そのような溶液の緩衝能が主にカルボン酸濃度に依存することを示している。モノカルボン酸の場合、緩衝能は、pH=pKaのときに最大である。pH=pKa±1で最大値の33%まで低下し、pH=pKa±1.5で最大値の12%まで低下し、pH=pKa±2で最大値の4%まで低下する。したがって、ジカルボン酸の場合、2だけ離れたpKa値は、pKa1+1=pH=pKa2-1における合計66%の緩衝能をもたらし、一方、3だけ離れたpKa値は、中間点において24%の緩衝能をもたらすことになる。
【0047】
したがって、重合性溶液のカルボン酸のpKa値、または複数ある場合には少なくとも1つのpKa値は、好ましくは、目標pHの±1.5以内、または目標pH範囲(緩衝領域)の端点のうちの一方の±1.5以内であってよい。好ましくは、重合性溶液のカルボン酸のpKa値、または複数ある場合には少なくとも1つのpKa値は、好ましくは、目標pHの±1以内、または目標pH範囲の端点のうちの一方の±1以内であってよい。
【0048】
さらに、≦3だけ離れた、すなわち、Δ≦3であるいくつかのpKa値をもつポリカルボン酸は、有利でありしたがって好ましい、増大した緩衝能を有している。
【0049】
緩衝剤として好適なカルボン酸は、酢酸、プロピオン酸及び酪酸などのモノカルボン酸;クロトン酸およびソルビン酸などの不飽和カルボン酸;グリコール酸および乳酸などのヒドロキシカルボン酸;ピルビン酸およびレブリン酸などのケトカルボン酸;2-フロ酸などの複素環式芳香族カルボン酸;安息香酸、サリチル酸および没食子酸などのフェニルカルボン酸;シュウ酸、マロン酸およびコハク酸などのジカルボン酸;フマル酸などの不飽和ジカルボン酸;リンゴ酸および酒石酸などのヒドロキシジカルボン酸;プロパン-1,2,3-トリカルボン酸、アコニット酸およびクエン酸などのトリカルボン酸を含むが、これらには限定されない。
【0050】
本発明の重合性溶液のカルボン酸は、好ましくは、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、酒石酸、2-フロ酸、レブリン酸、 安息香酸及びサリチル酸のうちの少なくとも1つから選択されてもよい。
【0051】
全組成に添加されるカルボン酸の総量は、上述したとおり、重合性溶液の全組成を基準として0.01~0.15mol/kgの範囲内である。この量は、当業者に知られているように、約0.25~3重量%のクエン酸、約0.15~1.8重量%のフマル酸、約0.17~2.1重量%のリンゴ酸、約0.14~1.6重量%のマロン酸、約0.12~1.4重量%のシュウ酸、約0.20~2.3重量%の酒石酸、約0.15~1.8重量%の2-フロ酸、約0.15~1.8重量%のレブリン酸、約0.18~2.2重量%のサリチル酸、および約0.16~1.9重量%の安息香酸に対応し、これらはすべて重合性溶液の全組成の重量を基準とする。
【0052】
例えばリン酸や硫酸などの非カルボン酸は緩衝剤として適切ではなく、なぜならそのような溶液は急速に分離するからである。リン酸は、2.1、7.2、および12のpKa値を有し、したがって、Δ>3を有し、これは、リン酸を、この基準を満たす例えばクエン酸よりもはるかに適さないものとする。硫酸は弱酸ではなく、したがって重合プロセスを加速させるため、適さない。
【0053】
非カルボン酸に照らしての、重合性溶液に影響を及ぼすかもしれない、カルボン酸の他の有利な特性は、分配係数(logP)、双極子モーメント
【数2】
プロトン性および水素結合などの特性であり、これらは化合物の極性および分子間力を示し、続いて、溶解度および溶媒和を決定する特性であってよい。
【0054】
クエン酸は、水およびフルフリルアルコールの両方に高度に可溶性であり、さらに、重合性溶液のpHが上述の範囲内で安定であることを可能とし、したがってより大きな緩衝能を可能にするようなpKa値を有するため、好適であると考えられる。さらに、クエン酸は安価であり、自然界に放出されたときに環境に優しいと考えられている。
【0055】
実験により、カルボン酸の量が制限されねばならないこと、すなわち、総組成の0.15mol/kgを超えてはならないことが示された。これは、量が多すぎると、重合性溶液の保管時間、すなわち相分離までの時間を減少させ、したがって、カルボン酸が緩衝剤としてよりもむしろ開始剤としての役割を果たしてしまい、したがって、保管に適さない、より不安定な重合性溶液を提供するからである。
【0056】
そこで、重合性溶液中の開始剤としての役割を果たすために無水マレイン酸が溶液に添加される。無水マレイン酸は、大きな開始特性および木材親和性を有する周知の開始剤であり、さらに、無水フタル酸など、先行技術から知られる他の開始剤よりも環境により優しい。
【0057】
有利には、重合性溶液の重合の加速を制限するために、重合性溶液中のカルボン酸および無水マレイン酸の総量は、4.5重量%以下、さらにより好ましくは4重量%未満である。
【0058】
従来のフラン重合性溶液における凝縮物の再利用に関する別の問題は、凝縮物中の、水に不溶性である、オリゴマーおよびあるいはその他の化合物に関係している。最終含浸生成物の均一な密度および平坦な表面構造を確保してより優れた耐候性、機械的強度特性などを提供するように、このような化合物は、保管及び含浸に先立って重合性溶液に溶解させなければならない。
【0059】
本発明の重合性溶液は、重合性溶液中に十分な量のフルフリルアルコールを有することによって、そのような化合物を溶解する。
【0060】
一般に、保管に適するすべての重合性溶液には、初期重合性溶液の曇点温度(Cp)が溶液の保管温度を下回ることも重要である。曇点温度は、相分離の開始が溶液の曇りとして視覚的に観察され得る温度として定義される。溶液中のオリゴマーの存在は、重合性溶液の曇点温度を上昇させるのに寄与し、一方、フルフリルアルコールの存在の増加は、曇点温度を低下させる。
【0061】
したがって、重合性溶液の重合にとって必須の成分であることに加えて、フルフリルアルコールの量は、保管に適した安定な重合性溶液を提供するために重要である。
【0062】
フルフリルアルコールの量は、そのような特性を提供するために、重合性溶液の全組成の少なくとも25重量%でなければならない。
【0063】
保管のための最も安定な重合性溶液は、重合性溶液の全組成の25~75重量%、好ましくは30~60重量%の範囲、さらにより好ましくは35~60重量%の範囲の量の、フルフリルアルコールを有する。
【0064】
木材および木質材料は、本発明の重合性溶液によって含浸され、重合される主要な製品であるが、レンガ、ポートランドセメント、コンクリートおよび石のようなその他の多孔質材料も同様に含浸させてもよい。
【0065】
第3の態様において、第1の態様およびその実施形態による重合性溶液を含浸させた含浸木材が提供される。
【0066】
本発明の第4の態様は、第1の態様に係る重合性溶液の調製方法を提供する。
【0067】
この方法は、
硬化プロセスからの凝縮物を容器内に供給するステップと、
前記凝縮物を含む前記容器内にフルフリルアルコールを添加するステップと、
フルフリルアルコール及び凝縮物を含む前記容器内に、カルボン酸、無水マレイン酸及び水溶性アルカリ塩を添加するステップとを含む。
【0068】
換言すれば、この方法は、凝縮物の形態の担体を容器内に添加することを含んでよい。その後、フルフリルアルコールを同じ容器に、好ましくは撹拌中に、添加してよい。次いで、初期重合性溶液のpHを測定しながら、カルボン酸、無水マレイン酸及び水溶性アルカリ塩を同時に又はほぼ同時に添加してよい。
【0069】
一実施形態において、溶液が作製された時点で3~5の範囲のpHを得るための量の、水溶性アルカリ塩が添加される。
【0070】
初期重合性溶液のpHは、当技術分野で公知の任意の従来の方法によって測定されてよい。
【0071】
本方法は、各ステップ中および/または各ステップの間に、撹拌または混合することをさらに含んでよい。
【0072】
プロセス機器に応じて、プロセス全体は、約5分から数時間を要してよい。
【0073】
容器が非周囲温度下で保管される場合、容器は、その中の内容物が周囲によって影響されないことを可能にする材料から作製されることが好ましい。
【0074】
第4の態様において、木材に含浸するための重合性溶液が提供され、前記重合性溶液は、
前記溶液の総重量を基準として25~75重量%の範囲のフルフリルアルコールと、
前記溶液の総重量を基準として0.01~0.15mol/kgの範囲のカルボン酸と、
前記溶液の総重量を基準として0.25~4重量%の範囲の無水マレイン酸と、
前記溶液の総重量を基準として24~74重量%の範囲の、先の木材硬化プロセスからの凝縮物と、
前記溶液が作製された時点で3~5の範囲のpHを得るための量の、水溶性アルカリ塩と、を含み、
前記重合性溶液は、第3の態様に係る方法により得られる。
【0075】
また、木材などの材料に含浸するための重合性溶液が提供され、前記溶液は、
前記重合性溶液の全組成の重量を基準として25~75重量%の範囲のフルフリルアルコールと、
前記重合性溶液の全組成の重量を基準として0.01~0.15mol/kgの範囲のカルボン酸と、
前記重合性溶液の全組成の重量を基準として0.25~4重量%の範囲の無水マレイン酸と、
初期組成が3~5の範囲のpHを含むような量の水溶性アルカリ塩と、
前記重合性溶液の全組成の重量を基準として24~74重量%の範囲の凝縮物と、を含み、
前記重合性溶液は、上記の方法により得られる。
【0076】
第5の態様において、本発明は、木材に含浸させて最終含浸木材製品を得るための、第1の態様およびその実施形態の重合性溶液の使用を開示する。
【0077】
「初期組成/初期重合性溶液」なる用語は、保管前の重合性溶液の出発組成として解釈されるべきである。したがって、全ての成分が添加され混合された直後の重合性溶液の組成である。
【0078】
「含浸/含浸する」なる用語は、含浸された生成物(例えば、含浸木材)を得るプロセスにおいて、重合性溶液を材料(例えば、木材)に加える動作として解釈されるべきである。
【0079】
「最終フラン重合体含浸生成物/含浸生成物」は、材料に含浸および硬化/重合に供された後に得られる生成物/材料として解釈されるべきである。したがって、フラン重合体含浸木材などの、フラン重合体を含む材料である。
【0080】
「凝縮物」なる用語は、本発明の重合性溶液を用いた含浸木材を乾燥および硬化させるプロセス中に得られる、いわゆる「上部凝縮物」と、いわゆる「底部凝縮物」の再利用可能な部分とを含む溶液として解釈されるべきである。したがって、凝縮物は、主に、本発明による重合性溶液を用いた先の木材硬化プロセスから得られた水、フルフリルアルコール、有機化合物の残基及び酸を含む。
【0081】
「安定な溶液」なる用語は、相分離が生じていない重合性溶液として解釈されるべきである。したがって、安定な溶液を、相分離の発生なしに、周囲温度および圧力で少なくとも7日間、好ましくは10日間、より好ましくは14日間、さらにより好ましくは21日間、保管することができる。
【0082】
本明細書に記載される範囲は、端点を含むと解釈されるべきである。
【0083】
周囲温度は、15~30℃の温度として解釈されるべきである。周囲圧力は、大気圧として解釈されるべきである。「周囲条件」なる用語は、温度が15~30℃であり、圧力が大気圧である条件として解釈されるべきである。
【0084】
下記の第1の実験において、重合性溶液中の成分の種々の量を比較するという理由から、重合性溶液は、水を担体として作製した。既に述べたように、凝縮物の組成は、各重合プロセスが異なる組成の凝縮物を生成するため、変化する。
【0085】
そこで、表1に示すように、異なる組成の重合性溶液を用いて実験を行った。
【0086】
【0087】
実験において、フルフリルアルコール(FA)、無水マレイン酸(MA)、カルボン酸緩衝剤(クエン酸(CA)により代表される)、水溶性アルカリ塩(無水炭酸ナトリウム(SC)により代表される)および水を一緒に混合し、27℃および周囲圧力で21日間保管した。溶液中のFA、MA、CAおよびSCの量は、重量%(wt%)で示され、残りの成分は水であり、すべての成分の量を合計すると重合性溶液の全組成である100重量%となる。
【0088】
表1は、重合性溶液の初期pHが約3.8~3.9であることを示す。これは、全ての成分が一緒に添加され、均質な溶液が得られるまで撹拌された後の溶液のpHであり、したがって、保管のために最初に置かれた時点での溶液のpHである。
【0089】
表1はさらに、1日(d1)保管後および14日間(d14)保管後のpHと、保管された日(d0)および14日間(d14)保管後のpHの差ΔpH(d1-d14)を示す。
【0090】
1日(d1)及び14日間(d14)溶液を保管した後、曇点温度(Cp)も測定した。
【0091】
表の最後の列は、1日(d1)、7日間(d7)、14日間(d14)および21日間(d21)溶液を保管した後に相分離が生じたかどうかを示し、「N」は、相分離が生じなかったことを示し、「Y」は、相分離が生じたことを示す。
【0092】
実験No.1~6、10および11は、27℃での保管の最初の14日(d14)以内に相分離が生じなかったことを示す。したがって、これらの溶液は安定であると考えられる。
【0093】
さらに、表から、4重量%以上などの過剰なカルボン酸開始剤を組成物に添加することは、実験No.7、12、13に示されるように、14日の保管のあいだに相分離を引き起こす、より不安定な溶液を提供することが示される。したがって、添加される酸の総量を、重合プロセスの早すぎる開始を回避するように制御することが重要である。
【0094】
さらに、実験により、溶液中の20重量%未満のフルフリルアルコール(実験No.8および9)も、14日の保管のあいだに相分離を引き起こしたことが示される。これは、少ない量のフルフリルアルコールが、相分離が起こる前に経時的に増加するオリゴマーおよびポリマーの存在に対する耐性を低くし、したがって、より多くのFAを有する同様な溶液よりも、曇点(Cp)の迅速な上昇をもたらすことによって引き起こされる。したがって、重合性溶液は、安定な重合性溶液を提供するためには、少なくとも25重量%のフルフリルアルコールを含むべきである。
【0095】
さらに、緩衝剤としてカルボン酸を添加せずに、水または凝縮物を担体として用いた重合性溶液の初期曇点温度を比較する実験を行った。実験の重合性溶液は、35重量%のフルフリルアルコール、1重量%の無水マレイン酸(MA)及び比較の理由で初期pHを調整するための水溶性アルカリ塩(無水炭酸ナトリウム(SC)で代表される)を含む。以下の表2を参照されたい。
【0096】
【0097】
表2に示すように、担体として水を用いたときの初期曇点は、凝縮物の場合よりもかなり低い。したがって、担体として水を用いることは、同じ条件下での凝縮物の使用よりも、より安定な重合性溶液を提供するであろう。したがって、表2は、凝縮物を担体として用いる場合に安定な重合性溶液を提供することに関連する課題を示している。
【0098】
以下の表3に、目標pHの±1の範囲内の、または目標pH範囲(緩衝領域)の端点のうちの一方の±1の範囲内の、pKa値または1つより多い場合には少なくとも1つのpKa値を有する、好ましいカルボン酸の例を挙げる。
【0099】
さらに、好ましいポリカルボン酸は、≦3だけ離れた、すなわちΔ<3のpKa値を有する。
【0100】
【国際調査報告】