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特表2025-511093リチウム二次電池用非水電解液およびそれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-04-15
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用非水電解液およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20250408BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20250408BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20250408BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20250408BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20250408BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/052
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024557785
(86)(22)【出願日】2023-03-30
(85)【翻訳文提出日】2024-09-27
(86)【国際出願番号】 KR2023004265
(87)【国際公開番号】W WO2023191540
(87)【国際公開日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】10-2022-0039951
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ユ・スン・カン
(72)【発明者】
【氏名】チュル・ヘン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・フン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソル・ジ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ウォン・イ
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ04
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050AA09
5H050AA10
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
本発明は、リチウム塩、有機溶媒、および特定の化学式(化学式1)で表される化合物を含むリチウム二次電池用非水電解液、およびそれを含むリチウム二次電池に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩と、有機溶媒と、下記化学式1で表される化合物と、を含む、リチウム二次電池用非水電解液。
【化1】
前記化学式1中、
Rは、O;またはOR1であり、前記R1は、水素;または炭素数1~10のアルキル基であり、
L1は、直接結合;または炭素数1~30のアルキレン基であり、
L2は、炭素数1~10のアルキレン基である。
【請求項2】
前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1-1または下記化学式1-2で表される、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【化2】
【化3】
前記化学式1-1および前記化学式1-2中、
R1、L1、およびL2は、前記化学式1における定義と同様である。
【請求項3】
前記L1は-(CH)n-で表され、
前記nは1~20の整数である、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項4】
前記L2は-(CH)m-で表され、
前記mは1~10の整数である、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項5】
前記化学式1で表される化合物の含量は、前記非水電解液の全重量を基準として0.1重量%以上5重量%以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項6】
前記化学式1で表される化合物の含量は、前記非水電解液の全重量を基準として0.5重量%以上5重量%以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項7】
ビニレンカーボネート、1,3-プロパンスルトン、エチレンサルフェート、およびリチウムジフルオロホスフェートの中から選択された1種以上の添加剤をさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項8】
前記有機溶媒は、環状カーボネート系溶媒、直鎖状カーボネート系溶媒、および直鎖状エステル系溶媒の中から選択された2種以上の混合物を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項9】
正極活物質を含む正極と、
負極活物質を含む負極と、
前記正極と前記負極との間に介在されるセパレータと、
請求項1から8のいずれか一項に記載の非水電解液と、
を含む、リチウム二次電池。
【請求項10】
前記正極活物質は、下記化学式2で表されるリチウム複合遷移金属酸化物を含む、請求項9に記載のリチウム二次電池。
[化学式2]
Li1+x(NiCoMn)O
前記化学式2中、
Mは、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoの中から選択された1種以上であり、
1+x、a、b、c、およびdは、それぞれ独立した元素の原子分率であって、
-0.2≦x≦0.2、0.6≦a<1、0<b≦0.3、0<c≦0.3、0≦d≦0.1、a+b+c+d=1である。
【請求項11】
前記化学式2のa、b、c、およびdは、それぞれ0.70≦a<1、0<b≦0.2、0<c≦0.2、0≦d≦0.1である、請求項10に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年3月30日付の韓国特許出願第10-2022-0039951号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用非水電解液およびそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、一般的に、リチウムを含有する遷移金属酸化物からなる正極活物質を含む正極と、リチウムイオンを貯蔵できる負極活物質を含む負極との間にセパレータを介在させて電極組立体を形成し、前記電極組立体を電池ケースに挿入した後、リチウムイオンを伝達する媒介体となる非水電解液を注入した後に密封する方法により製造される。
【0004】
リチウム二次電池は、小型化が可能であり、エネルギー密度および使用電圧が高いため、モバイル機器、電子製品、電気自動車などの様々な分野に適用されている。リチウム二次電池の適用分野が多様化するにつれ、求められる物性条件も次第に高くなっており、特に、高温条件においても安定的に駆動可能であり、長寿命特性を有するリチウム二次電池の開発が求められている。
【0005】
一方、高温条件でリチウム二次電池が駆動される場合、電解液に含まれるLiPFなどのリチウム塩からPF アニオンが熱分解されることでPFなどのルイス酸を発生させ得、これが水分と反応してHFを生成させる。このようなPF、HFなどの分解産物は、電極の表面に形成された被膜を破壊し得るだけでなく、有機溶媒の分解反応を起こし得る。また、電解液の分解産物が正極活物質の分解産物と反応して遷移金属イオンを溶出させ得、溶出した遷移金属イオンが負極に電着し、負極の表面に形成された被膜を破壊し得る。
【0006】
このように破壊された被膜上で電解質の分解反応が続くと、電池の性能がさらに低下するため、高温条件においても優れた性能を維持できる二次電池の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2003-0061219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであり、イミダゾリウムスルホネート(imidazolium sulfonate)系化合物を含むことで、電解液の分解産物を除去し、電極上に強化された被膜を形成することができる非水電解液、およびそれを含むことで、高温駆動時にも長寿命特性を示すリチウム二次電池を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態によると、本発明は、リチウム塩と、有機溶媒と、下記化学式1で表される化合物と、を含む、リチウム二次電池用非水電解液を提供する。
【0010】
【化1】
【0011】
前記化学式1中、
Rは、O;またはOR1であり、前記R1は、水素;または炭素数1~10のアルキル基であり、
L1は、直接結合;または炭素数1~30のアルキレン基であり、
L2は、炭素数1~10のアルキレン基である。
【0012】
他の実施形態によると、本発明は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に介在されるセパレータと、前記リチウム二次電池用非水電解液と、を含む、リチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る非水電解液に添加剤として含まれる化学式1で表される化合物の構造中のカチオン部の窒素原子がルイス塩基として作用することで、電解質の分解産物として発生するルイス酸を効果的に除去することができ、スルホネート(-RSO )およびプロパルギル基(-CHC≡CH)により正極もしくは負極上の被膜を強化することができるため、リチウム二次電池に適用時に高温貯蔵特性および正極の溶出による自己放電の程度が改善されたリチウム二次電池を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
一般的に、リチウム二次電池用電解液に広く用いられるLiPFなどのリチウム塩に含まれたアニオンは、熱分解または水分などによりフッ化水素(HF)およびPFのような分解産物を形成することになる。このような分解産物は、酸(acid)の性質を有しており、電池内で被膜もしくは電極表面を劣化させる。
【0015】
電解液の分解産物と繰り返された充放電による正極の構造変化などにより正極内の遷移金属が電解液の内部に溶出しやすく、溶出した遷移金属が正極に再び再蒸着(Re-deposition)し、正極の抵抗を増加させる。さらに、溶出した遷移金属が電解液を介して負極に移動する場合、負極に電着し成長して内部短絡を発生させ、このため、負極の自己放電が引き起こされ、低電圧不良の原因となる。また、溶出した遷移金属が負極に電着する際にSEI(solid electrolyte interphase)膜を破壊し、追加の電解質の分解反応の原因となり、このため、リチウムイオンの消費および抵抗増加などの問題が発生する。
【0016】
また、電池の初期活性化時に電解液の反応により正極および負極に保護被膜が形成されるが、被膜が上記の理由で不安定になる場合、充-放電もしくは高温にさらされる際に追加の電解液の分解が起こって電池の劣化を促進し、ガスを発生させる。
【0017】
そこで、本発明者らは、被膜の強化に効果がある、スルホネート(-RSO )およびプロパルギル基(-CHC≡CH)を含む下記化学式1で表される化合物を非水電解液に含ませた。スルホネート(-RSO )は、負極で還元されることで、重合(polymerization)構造およびLiSO系被膜を形成する。プロパルギル基(-CHC≡CH)の場合は、還元されてプロパルギルラジカルを生成し、生成されたラジカルが重合により負極の表面に薄くて緻密な被膜を形成する。また、下記化学式1で表される化合物は、リチウム二次電池の駆動時に発生するHFおよびPFのようなルイス酸の分解産物を除去できるルイス塩基官能基を含むため、それを含む非水電解液は、40℃以上の高温条件においても電池の劣化を防止する効果があることを確認した。
以下、本発明の各構成についてより詳細に説明する。
【0018】
〔非水電解液〕
本発明は、リチウム塩と、有機溶媒と、下記化学式1で表される化合物と、を含む、リチウム二次電池用非水電解液を提供する。
以下、各成分について具体的に説明する。
【0019】
(1)化学式1で表される化合物
本発明の非水電解液は、下記化学式1で表される化合物を含む。
【0020】
【化2】
【0021】
前記化学式1中、
Rは、O;またはOR1であり、前記R1は、水素;または炭素数1~10のアルキル基であり、
L1は、直接結合;または炭素数1~30のアルキレン基であり、
L2は、炭素数1~10のアルキレン基である。
【0022】
前記化学式1で表される化合物は、スルホネートおよびプロパルギルを含む構造により電極上の被膜を強化するという効果がある。
前記スルホネート(-RSO )は、負極で還元されることで、重合(polymerization)構造およびLiSO系被膜を形成することができる。また、前記スルホネートを構造中に含ませることで、化学式1の化合物のLUMO値を低くし、負極の還元性をさらに向上させることができる。
【0023】
また、前記化学式1の構造中に含まれたプロパルギル基(-CHC≡CH)は、還元されてプロパルギルラジカルを生成し、生成されたラジカルが重合により負極の表面に薄くて緻密な被膜を形成することができる。
【0024】
また、前記化学式1で表される化合物は、イミダゾリウムに存在する窒素がルイス塩基として作用することができる。そこで、電解質の分解産物から発生するHFなどのルイス酸を容易に除去することができるため、前記ルイス酸により正極が攻撃され、遷移金属が溶出する問題を著しく防止することができる。
【0025】
これにより、本発明の非水電解液は、化学式1で表される化合物を添加剤として用いることで、特に高温での寿命性能の向上、抵抗低減、およびガス低減効果を達成するリチウム二次電池の実現が可能である。
【0026】
本発明の一実施態様において、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1-1または下記化学式1-2で表されてもよい。
【0027】
【化3】
【0028】
【化4】
【0029】
前記化学式1-1および前記化学式1-2中、
R1、L1、およびL2は、前記化学式1における定義と同様である。
【0030】
具体的に、本願発明の化学式1で表される化合物が前記化学式1-1のように構造中にアニオン部とカチオン部を有する中性分子である双性イオン(zwitterion)構造の化合物である場合、双性イオンによりイオン伝導性がさらに改善されることができる。
【0031】
一方、本願発明の化学式1で表される化合物が前記化学式1-2の構造である場合、構造中のカチオン部の窒素原子がルイス塩基として作用することで、電解質の分解産物として発生するルイス酸を効果的に除去することができる。
【0032】
本発明の一実施態様において、前記L1は-(CH-で表され、前記nは1~20の整数であってもよく、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2または3であってもよい。
一方、前記L2は-(CH-で表され、前記mは1~10の整数、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1であってもよい。
【0033】
本発明の一実施態様において、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1Aまたは下記化学式1Bで表されてもよい。
【0034】
【化5】
【0035】
【化6】
【0036】
本発明の一実施態様において、前記化学式1で表される化合物の含量は、前記非水電解液の全重量を基準として0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であってもよい。この場合、分解産物の除去および被膜の耐久性を改善する有意な効果を示す点で好ましい。
【0037】
また、前記化学式1で表される化合物の含量は、前記非水電解液の全重量を基準として5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下であってもよい。この場合、過剰の添加剤による副反応および副産物の生成を防止できる点で好ましい。
最も好ましくは、前記化学式1で表される化合物の含量は、前記非水電解液の全重量を基準として1重量%~2重量%であってもよい。
【0038】
(2)添加剤
本発明の非水電解液は、高電圧の環境で電解液が分解されることで電極崩壊が引き起こされるのを防止したり、低温高率放電特性、高温安定性、過充電の防止、高温での電池の膨張抑制効果などをさらに向上させたりするために、必要に応じて、下記添加剤を選択的にさらに含んでもよい。
【0039】
前記添加剤は、環状カーボネート系化合物、ハロゲン置換されたカーボネート系化合物、スルトン系化合物、サルフェート系化合物、ホスフェート系またはホスファイト系化合物、ボレート系化合物、ニトリル系化合物、アミン系化合物、シラン系化合物、ベンゼン系化合物、およびリチウム塩系化合物の中から選択された1種以上であってもよい。
【0040】
前記環状カーボネート系化合物は、ビニレンカーボネート(VC)およびビニルエチレンカーボネート(VEC)の中から選択された1種以上であってもよく、具体的に、ビニレンカーボネートであってもよい。
前記ハロゲン置換されたカーボネート系化合物は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)であってもよい。
【0041】
前記スルトン系化合物は、負極の表面で還元反応による安定したSEI膜を形成できる物質として、1,3-プロパンスルトン(PS)、1,4-ブタンスルトン、エテンスルトン、1,3-プロペンスルトン(PRS)、1,4-ブテンスルトン、および1-メチル-1,3-プロペンスルトンの中から選択された1種以上の化合物であってもよく、具体的に、1,3-プロパンスルトン(PS)であってもよい。
【0042】
前記サルフェート系化合物は、負極の表面で電気的に分解され、高温貯蔵時にも亀裂しない安定したSEI膜を形成できる物質として、エチレンサルフェート(Ethylene Sulfate;Esa)、トリメチレンサルフェート(Trimethylene sulfate;TMS)、またはメチルトリメチレンサルフェート(Methyl trimethylene sulfate;MTMS)の中から選択された1種以上であってもよい。
【0043】
前記ホスフェート系またはホスファイト系化合物は、リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロホスフェート、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスフェート、およびトリス(トリフルオロエチル)ホスファイトの中から選択された1種以上であってもよい。
【0044】
前記ボレート系化合物は、リチウムテトラフェニルボレートであってもよい。
前記ニトリル系化合物は、スクシノニトリル(SN)、アジポニトリル(ADN)、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、カプリロニトリル、ヘプタンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベンゾニトリル、ジフルオロベンゾニトリル、トリフルオロベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル、2-フルオロフェニルアセトニトリル、4-フルオロフェニルアセトニトリル、エチレングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル(ASA3)、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル(HTCN)、1,4-ジシアノ2-ブテン(DCB)、および1,2,3-トリス(2-シアノエチル)プロパン(TCEP)の中から選択された1種以上であってもよい。
【0045】
前記アミン系化合物は、トリエタノールアミンおよびエチレンジアミンの中から選択された1種以上であってもよく、前記シラン系化合物は、テトラビニルシランであってもよい。
【0046】
前記ベンゼン系化合物は、モノフルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、およびテトラフルオロベンゼンの中から選択された1種以上であってもよい。
【0047】
前記リチウム塩系化合物は、前記非水電解液に含まれるリチウム塩とは異なる化合物であり、リチウムジフルオロホスフェート(LiDFP;LiPO)、リチウムビスオキサレートボレート(LiBOB;LiB(C)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF)、およびリチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート(LiDFOP)の中から選択された1種以上の化合物であってもよい。
【0048】
本発明の一実施態様に係る非水電解液は、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,3-プロパンスルトン(PS)、1,3-プロペンスルトン(PRS)、エチレンサルフェート(ESa)、スクシノニトリル(SN)、アジポニトリル(ADN)、エチレングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル(ASA3)、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル(HTCN)、1,4-ジシアノ2-ブテン(DCB)、1,2,3-トリス(2-シアノエチル)プロパン(TCEP)、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiODFB)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF)、リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート(LiDFOP)、およびリチウムジフルオロホスフェート(LiDFP)の中から選択された1種以上の添加剤をさらに含んでもよい。
【0049】
好ましくは、前記非水電解液は、ビニレンカーボネート(VC)、1,3-プロパンスルトン(PS)、エチレンサルフェート(ESa)、およびリチウムジフルオロホスフェート(LiDFP)の中から選択された1種以上の添加剤をさらに含んでもよい。
【0050】
一方、前記添加剤の含量は、前記非水電解液の全重量を基準として0.1重量%~10重量%であってもよく、好ましくは0.3重量%~5重量%、より好ましくは1重量%~3重量%であってもよい。前記添加剤の含量が上記範囲である場合、正極および負極に被膜の形成による副反応の抑制効果がある。
【0051】
(3)有機溶媒
本発明の非水電解液は、有機溶媒を含む。
前記有機溶媒としては、リチウム電解質に通常用いられる様々な有機溶媒を限定なく使用可能である。例えば、前記有機溶媒は、環状カーボネート系溶媒、直鎖状カーボネート系溶媒、直鎖状エステル系溶媒、環状エステル系溶媒、ニトリル系溶媒、またはこれらの混合物であってもよく、好ましくは、環状カーボネート系溶媒、直鎖状カーボネート系溶媒、および直鎖状エステル系溶媒の中から選択された2種以上の混合物を含んでもよく、より好ましくは、環状カーボネート系溶媒および直鎖状カーボネート系溶媒の混合物を含んでもよい。
【0052】
前記環状カーボネート系溶媒は、高粘度の有機溶媒として、誘電率が高く、電解質中のリチウム塩をよく解離させることができ、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、およびビニレンカーボネートからなる群から選択される1種以上であってもよく、好ましくは、エチレンカーボネート(EC)またはプロピレンカーボネート(PC)を含んでもよい。
【0053】
また、前記直鎖状カーボネート系溶媒は、低粘度および低誘電率を有する有機溶媒として、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、およびエチルプロピルカーボネートからなる群から選択される1種以上であってもよく、好ましくは、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、またはジエチルカーボネート(DEC)を含んでもよい。
【0054】
前記有機溶媒は、高いイオン伝導率を有する電解液を製造するために、環状カーボネート系溶媒と直鎖状カーボネート系溶媒の混合物を用いることが好ましい。
【0055】
前記直鎖状エステル系溶媒は、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、およびブチルプロピオネートの中から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、またはプロピルプロピオネートであってもよい。
【0056】
前記環状エステル系溶媒は、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン、およびε-カプロラクトンの中から選択された1種以上であってもよい。
【0057】
前記ニトリル系溶媒は、スクシノニトリル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、カプリロニトリル、ヘプタンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベンゾニトリル、ジフルオロベンゾニトリル、トリフルオロベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル、2-フルオロフェニルアセトニトリル、および4-フルオロフェニルアセトニトリルの中から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、スクシノニトリルであってもよい。
【0058】
前記非水電解液の全重量中の有機溶媒を除いた他の構成成分、例えば、前記化学式1で表される化合物、添加剤、およびリチウム塩の含量を除いた残部は、別に言及しない限り、全て有機溶媒であってもよい。
【0059】
(4)リチウム塩
本発明の非水電解液は、リチウム塩を含む。
前記リチウム塩としては、リチウム二次電池用電解液に通常用いられるものを限定なく使用可能であり、具体的に、前記リチウム塩は、カチオンとしては、Liを含み、アニオンとしては、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、B10Cl10 、AlCl 、AlO 、PF 、CFSO 、CHCO 、CFCO 、AsF 、SbF 、CHSO 、(CFCFSO、(CFSO、(FSO、BF 、BC 、BFCHF、PF 、PF 、PO 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CSO 、CFCFSO 、CFCF(CFCO、(CFSOCH、CF(CFSO 、およびSCNの中から選択されたいずれか1つ以上を含んでもよい。
【0060】
具体的に、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiBF、LiN(FSO(LiFSI)、LiN(SOCF(LiTFSI)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Lithium bis(pentafluoroethanesulfonyl)imide、LiBETI)、LiSOCF、LiPO、リチウムビス(オキサラト)ボレート(Lithium bis(oxalate)borate、LiBOB)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(Lithium difluoro(oxalate)borate、LiFOB)、リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート(Lithium difluoro(bisoxalato)phosphate、LiDFOP)、リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート(Lithium tetrafluoro(oxalate)phosphate、LiTFOP)、およびリチウムフルオロマロン酸(ジフルオロ)ボレート(Lithium fluoromalonato(difluoro)borate、LiFMDFB)の中から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、LiPFであってもよい。
【0061】
本発明の一実施態様において、前記リチウム塩および有機溶媒を含む非水性有機溶液中のリチウム塩の濃度は0.5M~4.0M、具体的には0.5M~3.0M、より具体的には0.8M~2.0Mであってもよい。リチウム塩の濃度が上記範囲である場合、低温出力の改善およびサイクル特性の改善効果を十分に確保しながらも、粘度および表面張力が過度に高くなるのを防止し、適した電解質含浸性を得ることができる。
【0062】
〔リチウム二次電池〕
次に、本発明に係るリチウム二次電池について説明する。
本発明に係るリチウム二次電池は、正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、前記正極と前記負極との間に介在されるセパレータ、および非水電解液を含み、この際、前記非水電解液は、前記本発明に係る非水電解液である。非水電解液については上述したため、それに関する説明は省略し、以下では他の構成要素について説明する。
【0063】
(1)正極
本発明に係る正極は、正極活物質を含み、正極集電体上に正極活物質、バインダー、導電材、および溶媒などを含む正極スラリーをコーティングした後、乾燥および圧延して製造することができる。
【0064】
前記正極集電体は、当該電池に化学的変化を引き起こさず、かつ、導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、ステンレススチール;アルミニウム;ニッケル;チタン;焼成炭素;またはアルミニウムやステンレススチールの表面を炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものが用いられてもよい。
【0065】
前記正極活物質は、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物であり、LCO(LiCoO);LNO(LiNiO);LMO(LiMnO);LiMn、LiCoPO;LFP(LiFePO);およびニッケル(Ni)、コバルト(Co)、およびマンガン(Mn)を含むリチウム複合遷移金属酸化物の中から選択された1種以上であってもよい。
一方、前記正極活物質は、遷移金属中のニッケルのモル比が60モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上であってもよい。
【0066】
本発明の一実施態様において、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記化学式2で表される化合物であってもよい。すなわち、本発明の一実施態様に係る正極活物質は、下記化学式2で表されるリチウム複合遷移金属酸化物を含んでもよい。
【0067】
[化学式2]
Li1+x(NiCoMn)O
【0068】
前記化学式2中、
Mは、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoの中から選択された1種以上であり、
1+x、a、b、c、およびdは、それぞれ独立した元素の原子分率であって、
-0.2≦x≦0.2、0.6≦a<1、0<b≦0.3、0<c≦0.3、0≦d≦0.1、a+b+c+d=1である。
【0069】
前記1+xは、リチウム複合遷移金属酸化物中のリチウムのモル比を示すものであって、-0.1≦x≦0.2、または0≦x≦0.2であってもよい。リチウムのモル比が上記範囲を満たす場合、リチウム複合遷移金属酸化物の結晶構造が安定的に形成されることができる。
【0070】
前記aは、リチウム複合遷移金属酸化物中のリチウムを除いた全金属のうちニッケルのモル比を示すものであって、0.70≦a<1、0.80≦a<1、または0.85≦a<1であってもよい。ニッケルのモル比が上記範囲を満たす場合、高いエネルギー密度を示し、高容量の実現が可能である。
【0071】
前記bは、リチウム複合遷移金属酸化物中のリチウムを除いた全金属のうちコバルトのモル比を示すものであって、0<b≦0.20、0<b≦0.15、または0<b≦0.10であってもよい。コバルトのモル比が上記範囲を満たす場合、良好な抵抗特性および出力特性を実現することができる。
【0072】
前記cは、リチウム複合遷移金属酸化物中のリチウムを除いた全金属のうちマンガンのモル比を示すものであって、0<c≦0.20、0<c≦0.15、または0<c≦0.10であってもよい。マンガンのモル比が上記範囲を満たす場合、優れた正極活物質の構造安定性を示す。
【0073】
本発明の一実施態様において、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選択された1種以上のドーピング元素を含んでもよく、好ましくは、ドーピング元素としてAlを含んでもよい。換言すれば、リチウム複合遷移金属酸化物中のリチウムを除いた全金属のうちドーピング元素のモル比を示す前記dは、0<d≦0.10、0<d≦0.08、または0<d≦0.05であってもよい。
好ましくは、前記化学式2のa、b、c、およびdは、それぞれ0.70≦a<1、0<b≦0.2、0<c≦0.2、0≦d≦0.1であってもよい。
【0074】
前記正極活物質は、正極スラリー中の固形分の全重量を基準として80重量%~99重量%、具体的には90重量%~99重量%で含まれてもよい。この際、前記正極活物質の含量が80重量%以下である場合、エネルギー密度が低くなり、容量が低下し得る。
【0075】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合および集電体に対する結合に助力する成分であり、通常、正極スラリー中の固形分の全重量を基準として1重量%~30重量%の含量で添加されてもよい。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スルホン化エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体であってもよい。
【0076】
また、前記導電材は、当該電池に化学的変化を引き起こさず、かつ、導電性を付与する物質であり、正極スラリー中の固形分の全重量を基準として0.5重量%~20重量%で添加されてもよい。
【0077】
前記導電材は、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、およびサーマルブラックなどのカーボンブラック;天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノチューブ、およびグラファイトなどの黒鉛粉末;炭素繊維および金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン粉末、アルミニウム粉末、およびニッケル粉末などの導電性粉末;酸化亜鉛およびチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;およびポリフェニレン誘導体などの導電性材料の中から選択されてもよい。
【0078】
また、前記正極スラリーの溶媒は、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)などの有機溶媒を含んでもよく、前記正極活物質、バインダー、および導電材などを含む際に好ましい粘度になる量で用いられてもよい。例えば、正極活物質、バインダー、および導電材を含む正極スラリー中の固形分濃度が40重量%~90重量%、好ましくは50重量%~80重量%となるように含まれてもよい。
【0079】
(2)負極
本発明に係る負極は、負極活物質を含み、負極集電体上に負極活物質、バインダー、導電材、および溶媒などを含む負極スラリーをコーティングした後、乾燥および圧延して製造することができる。
【0080】
前記負極集電体は、一般的に3μm~500μmの厚さを有する。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を引き起こさず、かつ、高い導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、銅;ステンレススチール;アルミニウム;ニッケル;チタン;焼成炭素;銅またはステンレススチールの表面を炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの;またはアルミニウム-カドミウム合金などが用いられてもよい。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で用いられてもよい。
【0081】
また、前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーション可能な炭素物質;金属またはこれらの金属とリチウムの合金;金属複合酸化物;リチウムをドープおよび脱ドープ可能な物質;リチウム金属;および遷移金属酸化物の中から選択された1つ以上を含んでもよい。
【0082】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーション可能な炭素物質としては、リチウムイオン二次電池に一般的に用いられる炭素系負極活物質であれば特に限定なく使用可能であり、その代表的な例としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらを共に用いてもよい。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状、または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)、ハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成コークスなどが挙げられる。
【0083】
前記金属またはこれらの金属とリチウムの合金としては、Cu、Ni、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al、およびSnからなる群から選択される金属またはこれらの金属とリチウムの合金が用いられてもよい。
【0084】
前記金属複合酸化物としては、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Bi、LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、およびSnMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)からなる群から選択された1種以上が用いられてもよい。
【0085】
前記リチウムをドープおよび脱ドープ可能な物質としては、Si、SiO(0<x<2)、Si-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Siではない)、Sn、SnO、Sn-Y(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、また、これらのうち少なくとも1つとSiOを混合して用いてもよい。前記元素Yは、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db(ドブニウム)、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
前記遷移金属酸化物の例としては、リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。
【0086】
本発明の一実施態様において、前記負極活物質は、前記炭素系物質および前記シリコン系物質の混合物であってもよく、好ましくは、黒鉛およびSiOの混合物であってもよい。
前記負極活物質は、負極スラリー中の固形分の全重量を基準として80重量%~99重量%で含まれてもよい。
【0087】
前記バインダーは、導電材、活物質、および集電体間の結合に助力する成分であり、通常、負極スラリー中の固形分の全重量を基準として1重量%~30重量%の含量で添加されてもよい。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スルホン化エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられる。
【0088】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であり、負極スラリー中の固形分の全重量を基準として0.5重量%~20重量%で添加されてもよい。このような導電材は、当該電池に化学的変化を引き起こさず、かつ、導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、またはサーマルブラックなどのカーボンブラック;結晶構造が非常に発達した天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノチューブ、またはグラファイトなどの黒鉛粉末;炭素繊維または金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン粉末、アルミニウム粉末、またはニッケル粉末などの導電性粉末;酸化亜鉛またはチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの導電性材料などが用いられてもよい。
【0089】
前記負極スラリーの溶媒は、水;またはNMPおよびアルコールなどの有機溶媒を含んでもよく、前記負極活物質、バインダー、および導電材などを含む際に好ましい粘度になる量で用いられてもよい。例えば、負極活物質、バインダー、および導電材を含むスラリー中の固形分濃度が30重量%~80重量%、好ましくは40重量%~70重量%となるように含まれてもよい。
【0090】
(3)セパレータ
本発明に係るリチウム二次電池は、前記正極と前記負極との間にセパレータを含む。
【0091】
前記セパレータは、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、リチウム二次電池においてセパレータとして用いられるものであれば特に限定なく使用可能であり、特に電解液のイオン移動に対して低抵抗であり、かつ、電解液含浸能力に優れ、安全性に優れることが好ましい。
【0092】
具体的に、セパレータとしては、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、およびエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子から製造された多孔性高分子フィルム;またはこれらの2層以上の積層構造体が用いられてもよい。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が用いられてもよい。また、耐熱性または機械的強度を確保するために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが用いられてもよく、単層または多層構造として用いられてもよい。
【0093】
上記のような本発明に係るリチウム二次電池は、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器;およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などに有用に用いることができる。
【0094】
これにより、本発明の他の一実施形態によると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよびそれを含む電池パックが提供される。
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;および電力貯蔵用システムのいずれか1つ以上の中大型デバイスの電源として用いることができる。
【0095】
本発明のリチウム二次電池の外形は特に限定されないが、缶を用いた円筒型、角型、パウチ(pouch)型、またはコイン(coin)型などであってもよい。
【0096】
本発明に係るリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに用いられるだけでなく、複数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池として好ましく用いることができる。
以下、具体的な実施例により本発明を具体的に説明する。
【0097】
<実施例:リチウム二次電池の製造>
実施例1.
(非水電解液の製造)
エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC)を30:70の体積比で混合した後、LiPFが1.2Mとなるように溶解させ、非水性有機溶液を製造した。前記化学式1Aで表される化合物2wt%、ビニレンカーボネート(VC)2wt%、および残部の前記非水性有機溶液を混合し、非水電解液100wt%を製造した。
【0098】
(リチウム二次電池の製造)
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に正極活物質として(Li(Ni0.8Co0.1Mn0.1)O)、導電材(カーボンブラック)、およびバインダー(ポリビニリデンフルオライド)を97.5:1:1.5の重量比で添加し、正極スラリー(固形分含量:60重量%)を製造した。前記正極スラリーを厚さ15μmの正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布および乾燥した後、ロールプレス(roll press)を行って正極を製造した。
【0099】
負極活物質(グラファイト96wt%およびSiO 4wt%で構成)、バインダー(SBR-CMC)、および導電材(カーボンブラック)を95:3.5:1.5の重量比で、溶媒として水に添加し、負極スラリー(固形分含量:60重量%)を製造した。前記負極スラリーを厚さ6μmの負極集電体である銅(Cu)薄膜に塗布および乾燥した後、ロールプレス(roll press)を行って負極を製造した。
【0100】
前記正極、無機物粒子(Al)が塗布されたポリオレフィン系多孔性セパレータ、および負極を順次積層して電極組立体を製造した。
円筒型電池ケース内に前記組み立てられた電極組立体を収納し、上記で製造された非水電解液を注液してリチウム二次電池を製造した。
【0101】
実施例2.
非水電解液の製造時に、前記化学式1Aで表される化合物の含量を1wt%に変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0102】
実施例3.
非水電解液の製造時に、前記化学式1Aで表される化合物の含量を1wt%に変更し、1,3-プロパンスルトン(PS)1wt%をさらに添加したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0103】
実施例4.
非水電解液の製造時に、前記化学式1Aで表される化合物の含量を0.3wt%に変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0104】
実施例5.
非水電解液の製造時に、前記化学式1Aで表される化合物の代わりに前記化学式1Bで表される化合物を用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0105】
実施例6.
非水電解液の製造時に、前記化学式1Bで表される化合物の含量を1wt%に変更したことを除いては、前記実施例5と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0106】
実施例7.
非水電解液の製造時に、前記化学式1Bで表される化合物の含量を1wt%に変更し、1,3-プロパンスルトン(PS)1wt%をさらに添加したことを除いては、前記実施例5と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0107】
実施例8.
非水電解液の製造時に、前記化学式1Bで表される化合物の含量を0.3wt%に変更したことを除いては、前記実施例5と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0108】
比較例1.
非水電解液の製造時に、前記化学式1Aで表される化合物を添加しないことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0109】
比較例2.
非水電解液の製造時に、前記化学式1Aで表される化合物を添加せず、1,3-プロパンスルトン(PS)1wt%をさらに添加したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0110】
比較例3.
非水電解液の製造時に、化学式1Aで表される化合物の代わりに下記化学式Cで表される化合物を用い、その含量を0.3wt%に変更したことを除いては、前記実施例3と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0111】
【化7】
【0112】
比較例4.
非水電解液の製造時に、化学式1Aで表される化合物の代わりに下記化学式Dで表される化合物を用い、その含量を2wt%にしたことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0113】
【化8】
【0114】
<実験例:電池性能の評価>
実験例1.高温貯蔵後の容量および抵抗の測定
前記実施例および比較例で製造されたリチウム二次電池に対して活性化(formation)工程を行った後、25℃で、0.5Cレートで4.25Vまで定電流/定電圧(CC/CV)充電(0.05C cut off)を行い、0.5Cレートで2.50Vまで定電流(CC)放電を行った後、初期放電容量および初期抵抗を測定した。
【0115】
その後、電池を同様の条件でSOC 100%まで満充電し、高温(55℃)で8週間保管した。その後、常温(25℃)の充放電器に移した後、再び容量および抵抗を測定し、下記式1および式2により容量維持率および抵抗増加率を計算し、下記表1にその結果を示した。
【0116】
式1:容量維持率(%)=(高温貯蔵後の放電容量/初期放電容量)×100
式2:抵抗増加率(%)={(高温貯蔵後の抵抗-初期抵抗)/初期抵抗}×100
【0117】
実験例2.高温貯蔵後のガス発生量の測定
前記実施例および比較例で製造されたリチウム二次電池に対して活性化(formation)工程を行った後、25℃で、0.5Cレートで4.25Vまで定電流/定電圧条件で充電(0.05C cut off)を行い、SOC 100%まで満充電した。満充電された電池を72℃で4週間保管した後、常温(25℃)の充放電器に移した後、円筒型缶内に捕集されたガスをGC-TCD(gas chromatography-thermal conductivity detector)を用いて分析し、比較例1で測定されたガス発生量を100%とした際の各電池の相対的なガス発生量を計算し、下記表1に示した。
【0118】
実験例3.高温寿命評価
前記実施例および比較例で製造されたリチウム二次電池に対して活性化(formation)工程を行った後、40℃で、0.3Cレートで4.25Vまで定電流/定電圧(CC/CV)充電(0.05C cut off)を行い、0.5Cレートで2.85Vまで定電流(CC)放電を行った。
【0119】
前記充/放電をそれぞれ1回ずつ行うことを1サイクルとし、同様の充/放電を250回繰り返した後、下記式3により抵抗増加率(DCIR increase)を測定した。測定結果を下記表1に示した。
式3:抵抗増加率(%)={(250サイクル後の抵抗-1サイクル後の抵抗)/1サイクル後の抵抗}×100
【0120】
実験例4.熱安全性の評価
前記実施例および比較例で製造されたリチウム二次電池に対して活性化(formation)工程を行った後、25℃で、0.5Cレートで4.25Vまで定電流/定電圧条件で充電(0.05C cut off)を行い、SOC 100%まで満充電した。満充電された電池を5℃/minの昇温速度で130℃まで昇温させた後、それぞれ30分ずつ放置し、発火有無を確認するホットボックス(hot box)評価実験を行った。
下記表1にその結果を示し、電池が発火しない場合をPASS、発火する場合はFAILで示した。
【0121】
【表1】
【0122】
前記表1の結果から、本発明によりリチウム二次電池の電解液添加剤として前記化学式1で表される化合物を適用した際に、前記化学式1で表される化合物を適用していない比較例1および比較例2と、前記化学式1と類似した構造を有するが、スルファイト基を含まない化学式Cで表される化合物を用いた比較例3とに比べて、高温耐久性が向上し、ガス発生量が減少するだけでなく、抵抗特性が改善されることを確認することができる。一方、比較例4の場合、化学式Dにビニレンカーボネート(VC)と重合して負極にSEI被膜を形成できるプロパルギル基を含有しないため、高温耐久性が低下することを確認することができる。
【0123】
特に、化学式1で表される化合物の含量が1重量%以上、最も好ましくは2重量%以上である場合、全ての評価項目に最も優れた結果を示すことを確認することができる。実施例2と実施例3、実施例6と実施例7の比較によっては、同一の含量を用いる場合、PSをさらに含むことが優れた結果を示すことを確認することができるが、実施例1と実施例3、実施例5と実施例7の比較によっては、化学式1で表される化合物の含量を高めることがPSを用いることに比べて有利であることを確認することができる。
【国際調査報告】