(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-04-15
(54)【発明の名称】口腔ケア組成物、方法、及びキット
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20250408BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20250408BHJP
A61K 8/21 20060101ALI20250408BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20250408BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20250408BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250408BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20250408BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20250408BHJP
A61K 33/16 20060101ALI20250408BHJP
A61K 33/00 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q11/00
A61K8/21
A61K8/365
A61P1/02
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/12
A61K33/16
A61K33/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024558194
(86)(22)【出願日】2023-03-07
(85)【翻訳文提出日】2024-10-01
(86)【国際出願番号】 IB2023052163
(87)【国際公開番号】W WO2023194819
(87)【国際公開日】2023-10-12
(32)【優先日】2022-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524062087
【氏名又は名称】ソルベンタム インテレクチュアル プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】イーチョン ワン
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー ディー.クレイグ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB22
4C076CC09
4C076DD23
4C076DD25
4C076DD26
4C076DD31
4C076DD41
4C076DD43
4C076FF11
4C083AB031
4C083AB032
4C083AB051
4C083AB172
4C083AB242
4C083AB281
4C083AB282
4C083AB321
4C083AB471
4C083AB472
4C083AC122
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4C083AC302
4C083AC312
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4C083AC862
4C083AD212
4C083AD262
4C083CC41
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4C083DD23
4C083DD27
4C083EE31
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA04
4C086HA23
4C086HA24
4C086MA03
4C086MA06
4C086MA17
4C086MA57
4C086NA05
4C086ZA67
4C086ZC75
(57)【要約】
水性口腔ケア組成物は、カルシウム、フッ化物、シトレート、及び水を含む。組成物は、シトレート少なくとも2モルをカルシウム3モル毎に、及びフッ化物少なくとも1モルをカルシウム1モル毎に含む。水は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも50重量%の量で組成物中に存在する。組成物は、溶液である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性口腔ケア組成物であって、
カルシウム、
フッ化物、
シトレート、及び
水を含み、
前記組成物が、シトレート少なくとも2モルをカルシウム3モル毎に含み、
前記組成物が、フッ化物少なくとも1モルをカルシウム1モル毎に含み、
水が、前記組成物の総重量に基づいて少なくとも50重量%の量で存在し、
前記組成物が溶液である、水性口腔ケア組成物。
【請求項2】
前記組成物が、前記組成物の形成後少なくとも2時間、溶液のままである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物のpHが2~11である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、遊離フッ化物、カルシウム及びシトレートを含む錯体、並びにフッ化カルシウムナノ粒子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
カルシウムが、前記組成物の総重量に基づいて少なくとも20ppmの量で前記組成物中に存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
フッ化物が、前記組成物の総重量に基づいて少なくとも20ppmの量で前記組成物中に存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
遊離フッ化物が、少なくとも50ppmの量で前記組成物中に存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、水溶性リン酸塩を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、可溶性カリウム塩を含む知覚鈍麻剤を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
水性口腔ケア組成物を作製する方法であって、
水溶液中でカルシウム源をキレート剤と反応させて、クエン酸カルシウム又はその水和物を含む準安定水溶液を形成すること、及び
前記クエン酸カルシウム又はその水和物が沈殿する前に、水溶性フッ化物塩を前記準安定溶液に添加することを含む、方法。
【請求項11】
前記カルシウム源が、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、又は炭酸水素カルシウムを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記キレート剤がクエン酸を含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記カルシウム源が、前記準安定溶液の総重量に基づいて少なくとも5ppmの量で前記準安定溶液中に存在する、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記水溶性フッ化物溶液が、フッ化物塩及び水を含み、前記フッ化物塩が、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アミン、フッ化銀ジアミン、又はフッ化アンモニウムを含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記フッ化物塩が、前記水溶性フッ化物溶液の総重量に基づいて少なくとも20ppmの量で前記水溶性フッ化物溶液中に存在する、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記準安定水溶液が、過飽和準安定水溶液を含む、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記水溶性フッ化物塩を前記準安定溶液に添加するステップが、前記準安定溶液の形成から2分以内に、前記水溶性フッ化物塩を添加することを含む、請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記水溶性フッ化物塩を前記準安定溶液に添加することが、前記準安定溶液の形成から数分以内に、前記水溶性フッ化物塩を添加することを含む、請求項10~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
患者の歯の表面にフッ化物を供給する方法であって、
請求項1~9のいずれか一項に記載の水性口腔ケア組成物を、前記患者の歯の表面に適用することを含む、方法。
【請求項20】
前記水性口腔ケア組成物を適用する前に、前記水性口腔ケア組成物が別の組成物に配合される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
練り歯磨き組成物であって、
請求項1~9のいずれか一項に記載の水性口腔ケア組成物を含む、練り歯磨き組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
フッ化物及びカルシウムイオンを有する口腔ケア組成物は、例えば、米国特許第10,064,802号及び同第10,682,300号に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0002】
フッ化物は、何十年もの間、モノグラフのマウスリンス、練り歯磨き(歯磨きペースト)、ワニスなどにおける主要な材料であった。近年、歯の再石灰化、並びに歯牙構造におけるヒドロキシアパタイト及びフルオロアパタイトの形成を助けるために、追加のカルシウムイオンやリン酸イオンを配合する試みがなされている。従来の材料には幾重もの制限があった。第1に、カルシウムイオン及びフッ化物(フルオライド)イオンを同じ水溶液に入れようとすると、非常に不溶性のフッ化カルシウムが形成され、フッ化カルシウムは水への溶解度がわずか8~10ppmであり、通常は溶液から沈殿する。このため、治療効果を得ようとして水性組成物に入れることができる利用可能なカルシウム及びフッ化物は限られてしまう。第2に、リン酸カルシウムのような化合物又は更にヒドロキシアパタイトの粒子を添加することが過去に様々な製剤で試みられてきたが、これらのタイプの材料を取り巻く問題は、材料の中のカルシウム又はホスフェートを放出するために、歯牙構造のヒドロキシアパタイトを溶解するのに必要なのと同じ生理的pHが必要であり、これは逆効果であるということである。第3に、亜鉛又はストロンチウムなどの他の望ましいイオンを添加すると、これらもイオン性生物学的利用能が最小の不溶性フッ化物となる。その結果、フッ化物並びにカルシウム及び/又は他の有益なカチオンを、更に生物学的に利用可能なイオンを有する単一の溶液中に含有する製剤は、そのような組成物が歯牙構造におけるそれらのイオンの取り込みに有益であり、追加の利点(例えば、抗菌活性、歯のマトリックス補強など)をもたらすので、望ましい。
【0003】
「準安定(metastable)」という用語は、自由エネルギー量が、平衡状態に含有される自由エネルギー量よりも大きい、材料の準平衡(quasi-equilibrium)状態を指す。
【0004】
「過飽和」という用語は、平衡状態で溶解するよりも多くの溶質(例えば、クエン酸カルシウム又はその水和物)を含有する組成物(例えば、水溶液)を指す。
【0005】
「化学錯体」という用語は、2つ以上の構成分子実体(イオン性若しくは非荷電)又は対応する化学種を含有する緩やかな結合によって形成される分子実体を指す。錯体の成分間の結合は、通常、共有結合よりも弱い。したがって、「化学錯体」という用語は、各成分の分子が混合され互いに弱く結合している、成分の任意の組み合わせと考えることができる。「化学錯体」という用語は、必ずしも成分間のイオン結合又は他の結合である必要はない。化学錯体はまた、錯体の成分間の共有結合を含まない。
【0006】
「溶液」という用語は、(標準温度及び圧力条件下で)溶媒中の溶質のいずれか1つの溶解限度まで連続的に変化させることができる相対量の、2つ以上の物質(溶媒及び1つ以上の溶質)の均質混合物を指す。本明細書で使用される場合、「溶液」は、ヒトの裸眼で視認できる量の溶質(例えば、沈殿物の形態)を有していないが、ヒトの裸眼で視認できないナノ粒子(例えば、50ナノメートル未満、20ナノメートル未満、又は10ナノメートル未満の平均最長寸法を有する粒子)を含んでもよい。
【0007】
「水溶液」という用語は、水が溶媒である溶液を指す。
【0008】
「遊離フッ化物」という用語は、溶液中の孤立したフッ化物(例えば、不溶性の錯体又は粒子を形成していない、溶液中のフッ化物の量)を指し、溶液中における濃度は、フッ化物選択性電極(フッ化物プローブ)を有するメーターによって決定することができる。
【0009】
「含む」という用語及びその変形は、これらの用語が本明細書及び特許請求の範囲に現れる場合、限定的な意味を有するものではない。そのような用語は、記載されたステップ若しくは要素又はステップ若しくは要素の群を含むことを意味するが、任意の他のステップ若しくは要素又はステップ若しくは要素の群を除外することを意味しないことが理解されるであろう。「からなる」とは、「からなる」という語句に続くものを含み、かつそれに限定されることを意味する。したがって、「からなる」という句は、列挙された要素が必要又は必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。「から本質的になる」とは、この句の後に列挙された任意の要素を含み、列挙された要素の本開示で特定された活性又は作用に干渉又は寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、「から本質的になる」という句は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は、任意選択的であり、それらが列挙された要素の活性又は作用に実質的に影響を及ぼすかどうかに応じて、存在するか又は存在しない可能性があることを示す。
【0010】
本出願において、「a」、「an」、及び「the」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、例示のために特定の例が使用され得るクラス全般を含む。「a」、「an」、及び「the」という用語は、「少なくとも1つ」及び「1つ以上」という句と互換的に使用される。リストが続く「のうちの少なくとも1つ」及び「のうちの少なくとも1つを含む」という句は、リスト内の項目のうちのいずれか1つ、及びリスト内の2つ以上の項目の任意の組み合わせを指す。
【0011】
「又は」という用語は、全般に、内容が明確に別段の指示をしない限り、「及び/又は」を含む通常の意味で利用される。
【0012】
「及び/又は」という用語は、列挙された要素の1つ若しくは全て、又は列挙された要素の任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0013】
また、本明細書において、全ての数は、「約」という用語によって修飾されるものとする。測定された量に関連して本明細書で使用される場合、「約」という用語は、測定を行い、測定の目的及び使用される測定装置の精度に見合ったレベルの注意を払う当業者によって予想されるであろう、測定された量の変動を指す。本明細書において、「最大」の数(例えば、最大50)は、その数(例えば、50)を含む。
【0014】
また、本明細書において、端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数、並びに端点を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0015】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「ある実施形態」、「特定の実施形態」、又は「いくつかの実施形態」などへの言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構成、組成、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所でこのような語句が現れるとき、必ずしも本開示の同じ実施形態を指すものではない。更に、特定の特徴、構成、組成、又は特性は、1つ以上の実施形態において、任意の好適な様式で組み合わされ得る。
【0016】
本開示の上記の概要は、本開示で開示された各実施形態又は全ての実施を説明することを意図していない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願全体のいくつかの箇所において、実施例のリストを通してガイダンスが提供され、それらの実施例は、様々な組み合わせで使用され得る。各例において、列挙されたリストは代表的な群としてのみ機能し、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【0017】
いくつかの実施形態において、本開示は、フッ化物の存在下で、口腔ケア溶液において有用なカルシウム及び他のイオンを安定化する方法に関する。本方法は、再石灰化、抗菌効果のために、並びに、歯科用及び/又は歯列矯正組成物における他の潜在的有用性のために、イオンを送達する可能性をもたらす。概して、本開示の方法は、材料の組み合わせの、特定の順序及びタイミング、並びにクエン酸(三官能性カルボン酸)、又はいくつかの実施形態においてエチドロン酸(ビスホスホン酸構造)のキレート効果を利用する。驚くべきことに、経口用途に許容されるpH領域で安定な溶液を得るためには、特定の成分の添加順序及びタイミングが重要であることが発見された。
【0018】
いくつかの実施形態において、本方法は、カルシウム源をキレート剤(例えば、エチドロン酸又はクエン酸)と(水溶液中で)反応させて、クエン酸カルシウム、エチドロン酸カルシウム又はそれらの水和物の準安定(例えば、過飽和準安定)水溶液を形成することを含んでもよい。次いで、本方法は、準安定溶液の形成直後に、水溶性フッ化物塩又は塩溶液を準安定溶液に添加することを含んでもよい。具体的には、いくつかの実施形態において、水溶性フッ化物塩又は塩溶液は、クエン酸カルシウム又はその水和物が沈殿する前に、準安定過飽和溶液に添加されてもよい。いくつかの実施形態において、水溶性フッ化物塩又は塩溶液は、過飽和準安定溶液の形成から0.5分以内、1.0分以内、1.5分以内、2.0分以内、3.0分以内、又は5.0分以内に、準安定過飽和溶液に添加されてもよい。驚くべきことに、フッ化物塩溶液がこの時間枠内に添加される場合、シトレート、カルシウム、及び一価イオンの錯体を含む水溶液が形成され得ることが発見された。このような水溶液は、透明で、視認できる沈殿物はなく、溶液中の測定可能な遊離フッ化物は最大数千(1000's)ppmであることが観察された。しかしながら、フッ化物塩溶液がこの時間枠内に添加されない場合、不溶性クエン酸カルシウムの沈殿が形成され、錯体は形成されない(すなわち、フッ化物は、過飽和クエン酸カルシウム又はその水和物が沈殿する前に添加する必要がある)。
【0019】
いくつかの実施形態において、準安定溶液(例えば、準安定過飽和溶液)は、水、及びカルシウム源とキレート剤との反応生成物を含み得る。
【0020】
いくつかの実施形態において、準安定溶液に好適なカルシウム源としては、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、又は硝酸カルシウムの水和物などの塩を挙げることができる。いくつかの実施形態において、好適なカルシウム源としては、水酸化カルシウム又は酢酸カルシウムを挙げることができる。
【0021】
いくつかの実施形態において、キレート剤としては、クエン酸又はエチドロン酸を挙げることができる。クエン酸は、エチドロン酸塩対応物よりも高濃度で安定であることが発見された。その結果、いくつかの実施形態において、キレート剤はクエン酸を含んでもよい。いくつかの実施形態において、クエン酸は、カルボン酸又はホスホン酸とクエン酸との混合物として含まれてもよい。水溶液のカルシウムイオンが安定な溶液を形成するには、カルシウムイオン1モル当たり少なくとも2モルのキレート酸基が必要であり、その結果、クエン酸の3モルのキレート官能基(カルボン酸又はカルボキシレート)で十分であることが発見された。安定性に影響を与えることなく、追加のキレート基を(例えば、クエン酸と追加の酸との混合物で、又は追加のクエン酸を添加することによって)一部に限らず利用することができる。
【0022】
いくつかの実施形態において、カルシウム源は、溶液の総重量に基づいて、少なくとも0.0005重量%(又は5百万分率(重量)(ppm))、少なくとも0.005重量%(又は50ppm)、少なくとも0.05重量%(又は500ppm)、少なくとも0.5重量%、又は少なくとも5.0重量%の量で準安定溶液(例えば、準安定過飽和溶液)中に存在してもよく、キレート剤は、カルシウムイオン対キレート官能性酸性基のモル比が少なくとも1対2であり、カルシウムイオン対クエン酸のモル比が1.5:1以下であるような量で、準安定溶液中に存在してもよい。
【0023】
いくつかの実施形態において、水は、溶液の総重量に基づいて、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、又は少なくとも99重量%の量で準安定溶液(例えば、準安定過飽和溶液)中に存在してもよい。
【0024】
いくつかの実施形態において、水溶性フッ化物溶液は、フッ化物塩及び水を含んでもよい。好適なフッ化物塩としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アミン、フッ化銀ジアミン、又はフッ化アンモニウムを挙げることができる。いくつかの実施形態において、フッ化物塩としては、フッ化ナトリウム又はフッ化アンモニウムを挙げることができる。フッ化ナトリウム及びフッ化アンモニウムを用いると、フッ化カリウムを用いた場合よりも高い濃度の遊離フッ化物及び高い安定性を得ることができることが発見された。
【0025】
いくつかの実施形態において、フッ化物塩は、水溶性フッ化物溶液の総重量に基づいて、少なくとも0.00024重量%(若しくは2.4ppm)、少なくとも0.0024重量%(若しくは24ppm)、少なくとも0.024重量%(若しくは240ppm)、少なくとも0.24重量%(若しくは2400ppm)、少なくとも2.4重量%、又は少なくとも5重量%の濃度で水溶性フッ化物溶液中に存在してもよく、水は、水溶性フッ化物溶液の総重量に基づいて、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、又は少なくとも99重量%の量で水溶性フッ化物溶液中に存在してもよい。
【0026】
前述したように、本開示の方法は、カルシウム、フッ化物、及びシトレート(クエン酸塩)を含む、水溶液を生成し得る。いくつかの実施形態において、水溶液は、遊離フッ化物、カルシウム及びシトレートのいずれか又は全てを含む錯体、フッ化物、並びに溶液中に分散された安定なフッ化カルシウム(CaF2)ナノ粒子を含んでもよい。このような溶液は、一部型組成物と考えることができる。CaF2ナノ粒子は安定であり得る。すなわち、それらのナノ粒子は、ナノ粒子が成長若しくは溶液から沈殿しない(又は実質的に成長若しくは沈殿しない)ように、溶液中に懸濁又は溶解したままである。
【0027】
いくつかの実施形態において、遊離フッ化物は、水溶液の総重量に基づいて、少なくとも0.0002重量%(若しくは2.0ppm)、少なくとも0.00024重量%(若しくは2.4ppm)、少なくとも0.001重量%(若しくは10ppm)、少なくとも0.002重量%(若しくは20ppm)、少なくとも0.01重量%(若しくは100ppm)、少なくとも0.05重量%、又は少なくとも0.50重量%の量で水溶液中に存在してもよい。いくつかの実施形態において、遊離フッ化物は、水溶液の総重量に基づいて、最大1.0重量%、最大2.0重量%、最大5.0重量%、又は最大10重量%の量で存在してもよい。
【0028】
いくつかの実施形態において、カルシウムは、水溶液の総重量に基づいて、少なくとも0.0005重量%(若しくは5ppm)、少なくとも0.002重量%(若しくは20ppm)、少なくとも0.02重量%(若しくは200ppm)、少なくとも0.2重量%(若しくは2,000ppm)、又は少なくとも0.5重量%の量で存在してもよい。いくつかの実施形態において、カルシウムは、水溶液の総重量に基づいて、最大1.0重量%、最大2.0重量%、最大5.0重量%、又は最大10重量%の量で存在してもよい。
【0029】
いくつかの実施形態において、水溶液中のシトレート対カルシウムのモル比は、少なくとも2モルのシトレートがカルシウム3モル毎に存在するモル比であってもよい。水溶液中のシトレート対カルシウムイオンのモル比がこれより小さい場合、沈殿が生じることが発見された。
【0030】
いくつかの実施形態において、水溶液中のフッ化物対カルシウムのモル比は、少なくとも1モルのフッ化物がカルシウム1モル毎に存在するモル比であってもよい。フッ化物対カルシウムのモル比がこれより小さい場合、沈殿が生じることが発見された。
【0031】
いくつかの実施形態において、水溶液は、透明な溶液を形成するための溶媒として水を含んでもよい。いくつかの実施形態において、水は、カルシウム、フッ化物、及びシトレートによって占められていない水溶液の重量の100重量%、少なくとも90重量%、少なくとも80重量%、又は少なくとも70重量%を占めるような量で水溶液中に存在してもよい。
【0032】
いくつかの実施形態において、水溶液は、水溶液中に分散されたフッ化カルシウムナノ粒子を含んでもよい。ナノ粒子は、50ナノメートル(nm)未満、20nm未満、10nm未満、又は5nm未満の平均最長寸法を有してもよい。いくつかの実施形態において、フッ化カルシウムナノ粒子は、水溶液中でナノ粒子が(ヒトの裸眼で)視認できないような濃度及びサイズで水溶液中に存在してもよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、水溶液を調製して安定な水溶液を形成した後、追加のフッ化物を添加して、溶液中の遊離フッ化物の濃度を高くしてもよい。これに関して、追加のフッ化物は、形成時の安定な水溶液の総重量に基づいて、フッ化物塩の溶解限度まで、少なくとも追加の0.1重量%、追加の0.5重量%、追加の1.0重量%、追加の2.0重量%、又は追加の5重量%のフッ化物が存在するように、供給されてもよい。
【0034】
前述したように、いくつかの実施形態において、本開示の口腔ケア一部型組成物(例えば、溶液)は水性組成物(例えば、溶液)であるが、少量の1種以上の有機溶媒を含んでもよい。有機溶媒の例は、エタノール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、イソプレンスルホン(IS)、ブタジエンスルホン(BS)、ピペリレンスルホン(PS)、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0035】
いくつかの実施形態において、水性口腔ケア一部型組成物(例えば、溶液)は、液体キャリアとして機能する有機溶媒(香味料又は甘味料のキャリア/溶媒として使用される有機溶媒とは対照的)を含まない。例えば、特定の添加剤は、液体キャリアとしての有機溶媒中の溶液又は分散液として供給されてもよい。本開示の水性口腔ケア一部型組成物(例えば、溶液)中に任意の有機溶媒(液体キャリアとして機能する)が存在する場合、有機溶媒は、水性組成物(例えば、溶液)の総重量に基づいて、5重量%未満の量で存在する。
【0036】
いくつかの実施形態において、本開示の水性口腔ケア組成物は、室温及び大気圧で密封容器内に保存された場合に、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、又は少なくとも6ヶ月間、(ヒトの裸眼で検出可能な)沈殿なく、常温保存可能(shelf stable)である溶液である。したがって、本開示の水性口腔ケア溶液は、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、又は少なくとも6ヶ月間保存して、透明(すなわち、全く濁りなく透き通っている又は半透明)のままであり得る。
【0037】
前述のように、本開示の水性口腔ケア組成物は、上記の安定性を示しながら、口腔用途に許容されるpHも有することができる。この点に関して、水性口腔ケア組成物は、2~11又は3~10のpHを有し得る。
【0038】
いくつかの実施形態において、本開示の水性口腔ケア一部型組成物(例えば、溶液)は、薬学的に許容される緩衝剤を含んでもよい。このような緩衝剤の種類及び量は、口腔ケア組成物(例えば、溶液)に、少なくとも3.0、少なくとも3.5、少なくとも4.0、少なくとも4.5、少なくとも5.0、少なくとも5.5、少なくとも6.0、又は少なくとも6.5のpHをもたらすように選択されてもよい。特定の実施形態において、このような緩衝剤の種類及び量は、口腔ケア組成物(例えば、溶液)に、最大10、最大9、最大8.5、最大7.5、又は最大7のpHをもたらすように選択されてもよい。特定の実施形態において、このような緩衝剤の種類及び量は、口腔ケア組成物(例えば、溶液)に、6.5~7.5のpH、又は7.0のpHをもたらすように選択されてもよい。多種多様な好適な薬学的に許容される緩衝剤が含まれ得る。例としては、酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)、炭酸ナトリウム、シトレート(例えば、クエン酸ナトリウム)、酒石酸塩、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、グリシン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0039】
本開示の水性口腔ケア一部型組成物(例えば、溶液)はまた、フッ化物源に加えて更に、1種以上の活性剤をもましてもよい。含まれる場合、1種以上の追加の活性剤は、常にではないが、通常、歯、歯肉、頬、舌、口蓋などの障害、疾患、又は状態に対して口腔内において活性である1種以上の活性剤を含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、本開示の溶液は、ホスフェートを更に含んでもよい。ホスフェートは、水溶性リン酸塩、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、又はそれらの混合物の形態で存在してもよい。
【0041】
フルオロアパタイトを形成するために、カルシウム及びフッ化物に加えて、ホスフェートが存在する必要がある。唾液中には低レベルのホスフェートが存在する場合があるが、追加のホスフェート源があることが望ましい。本開示の組成物には、上述した安定化の利点を台無しにすることなくホスフェートを添加できることが発見された。
【0042】
利用することができる追加の活性剤の例としては、1種以上のホワイトニング剤、抗歯石剤、再石灰化剤、第一スズ源、抗菌剤、抗酸化剤、唾液分泌促進剤、呼気清涼化剤、歯垢防止剤、抗炎症剤、H2ブロッカー、知覚鈍麻剤、栄養素、及びタンパク質が挙げられる。所望により、このような追加の活性剤の様々な組み合わせを使用することができる。利用される場合、1種以上の追加の活性剤は、典型的には、意図される効果を得るのに十分な量で使用される。
【0043】
利用される場合、抗菌剤としては、多種多様な経口的に許容される抗菌剤を挙げることができる。例としては、トリクロサン、8-ヒドロキシキノリン、亜鉛イオン、第一スズイオン、第二銅化合物、フタル酸及びその塩、第四級アンモニウム化合物、サンギナリン、サリチルアニリド、サリチル酸、チモール、オイゲノール、ネオマイシン、カナマイシン、クリンダマイシン、アモキシシリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、メトロニダゾール、クロロヘキシジンなどが挙げられる。
【0044】
利用される場合、抗酸化剤は、多種多様な経口的に許容される抗酸化剤であり得る。例としては、ブチル化ヒドロキシアニソン、ブチル化ヒドロキシトルエン、ビタミンA、カロチノイド、ビタミンE、フラボノイド、ポリフェノール、アスコルビン酸又はその塩、クロロフィル、メラトニンなどが挙げられる。
【0045】
利用される場合、唾液分泌促進剤は、多種多様な経口的に許容される唾液分泌促進剤であり得る。例としては、乳酸、コハク酸、アスコルビン酸、アジピン酸、フマル酸、及び酒石酸が挙げられる。
【0046】
利用される場合、呼気清涼化剤は、多種多様な経口的に許容される呼気清涼化剤であり得る。例としては、亜鉛塩、例えばグルコン酸、クエン酸、亜塩素酸、α-イオノンなどの亜鉛塩が挙げられる。
【0047】
利用される場合、歯垢防止剤は、多種多様な経口的に許容される歯垢防止剤であり得る。例としては、第一スズ塩、銅、マグネシウム又はストロンチウムの塩、ジメチコンコポリオール、例えば、セチルジメチコンコポリオール、パパイン、グルカミラーゼ(glucamylase)、グルコースオキシダーゼ、尿素、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、ポリアクリル酸ストロンチウムなどが挙げられる。歯垢防止剤の更なる例としては、バイオフィルム阻害剤、特に米国特許第8,968,709号(Yang et al.)に記載されているものが挙げられる。
【0048】
利用される場合、抗炎症剤は、多種多様な経口的に許容される抗炎症剤であり得る。例としては、ステロイド、例えば、フルオシノロン及びヒドロコルチゾン、非ステロイド抗炎症薬、例えば、ケトロラク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、ジクロフェナック、エトドラク、インドメタシン、スリンダック、トルメチン(tomlmetin)、ケトプロフェン、フェノプロフェン、ピロキシカム、ナブメトン、アセチルサリチル酸、サルチル酸、ジフルニサル、メクロフェナメート、メフェナム酸、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾンなどが挙げられる。
【0049】
利用される場合、H2ブロッカーは、多種多様な経口的に許容されるH2ブロッカーであり得る。例としては、シメチジン、エチニジン、ラニチジン、チオチジン、ルピチジン、デネチジン、ファモチジン、ロキサチジン、ピファチジン、ラムチジン、ザルチジン、ニザチジン、ミフェンチジン、ラミキソチジン、ロキシジン、ビスフェンチジン、スフォチジン、エブロチジン、インプロムジンなどが挙げられる。
【0050】
利用される場合、知覚鈍麻剤は、多種多様な経口的に許容される知覚鈍麻剤であり得る。例としては、クエン酸カリウム、塩化カリウム、酒石酸カリウム、炭酸水素カリウム、シュウ酸カリウム、硝酸カリウム、ストロンチウム塩、アルギニン、アセチルサリチル酸又はその塩、サリチル酸又はその塩、コデイン、アセトアミノフェンなどが挙げられる。
【0051】
いくつかの実施形態において、任意の数の、追加の従来の経口的に許容される再石灰化剤を利用することができる。
【0052】
利用される場合、栄養素は、多種多様な経口的に許容される栄養素であり得る。例としては、ビタミン、例えば、ビタミンC、D、チアミン、リボフラビン、葉酸、ニコチンアミド、ナイアシン、ピリドキシン、バイオフラボノイドなど、サプリメント、例えば、アミノ酸、脂肪親和物質(lipotropics)、魚油、多価不飽和脂肪酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサン酸(docosahexanic acid)、コエンザイムQ10、ユビキノン、ミネラル、例えば、カリウムなどが挙げられる。
【0053】
利用される場合、タンパク質としては、多種多様な経口的に許容されるタンパク質を挙げることができる。例としては、乳タンパク質、過酸化物生成酵素、アミラーゼ、パパイン、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼなどが挙げられる。
【0054】
特定の実施形態において、本開示の水性口腔ケア一部型組成物(例えば、溶液)は、組成物(例えば、溶液)に、所望の適用方法を可能にする好適な粘度をもたらすように、任意選択で増粘剤を含んでもよい。例えば、十分な量の好適な増粘剤を使用して、最大4分間(専門的に適用されるフッ化物処置の典型的な時間)、逆さにしたマウスピーストレーアプリケータ内で組成物(例えば、溶液)を維持するのに適切であり、更に、歯科施術者にとって(例えば、歯科用トレーアプリケータ内に分注するとき)許容可能な取り扱い特性を有するのに十分な流動性を有する、組成物(例えば、溶液)粘度を得ることができる。あるいは、好適な増粘剤を十分な量で使用して、歯の表面に塗布するのに適切な粘度を得ることができる。あるいは、好適な増粘剤を十分な量で使用して、厚いゲル/ガム/ストリップとして歯の表面に付着させるのに適切な粘度を得ることができる。
【0055】
特定の実施形態において、増粘剤の種類及び量は、口腔ケア組成物(例えば、溶液)に、1.0/秒の剪断速度で少なくとも0.05パスカル秒の粘度をもたらすように選択されてもよい。特定の実施形態において、増粘剤の種類及び量は、口腔ケア組成物(例えば、溶液)に、1.0/秒の剪断速度で最大0.5パスカル秒の粘度をもたらすように選択されてもよい。特定の実施形態において、増粘剤の種類及び量は、口腔ケア組成物(例えば、溶液)に、1.0/秒の剪断速度で最大500パスカル秒又は最大5000パスカル秒の粘度をもたらすように選択されてもよい。
【0056】
特定の実施形態において、増粘剤は、0.1重量%~10重量%又は0.1重量%~5重量%の量で口腔ケア一部型組成物(例えば、溶液)中に存在してもよい。特定の実施形態において、増粘剤は、水性組成物(例えば、溶液)の総重量に基づいて、2.5重量%未満の量で口腔ケア一部型組成物(例えば、溶液)中に存在する。特定の実施形態において、増粘剤は、水性組成物(例えば、溶液)の総重量に基づいて、少なくとも0.5重量%の量で存在する。
【0057】
好適な増粘剤は、典型的には、ヒトによる摂取が全般的に安全であり(内服用でFDA承認)、フッ化物イオンに結合せず、フッ化物イオンの生物学的利用能にそれほど影響を及ぼさないものである。
【0058】
特定の実施形態において、増粘剤は、天然ガム、水溶性セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)、無機充填剤(例えば、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、アルミナ、チタニア、及び酸化亜鉛)、アルキレンオキシドポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマー)、変性水溶性デンプン、架橋剤ポリアクリル酸、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0059】
特定の実施形態において、本開示の水性口腔ケア組成物(例えば、溶液)は、香味剤(すなわち、香味料)及び甘味料を含む1種以上の任意選択の添加剤を含んでもよい。他の任意選択の添加剤としては、界面活性剤が挙げられる。所望により、このような添加剤の様々な組み合わせを使用することができる。他の任意選択の添加剤としては、防腐剤が挙げられる。
【0060】
特定の実施形態において、本開示の水性口腔ケア組成物(例えば、溶液)は、界面活性剤を含んでもよい。典型的には、そのような界面活性剤はアニオン性界面活性剤であり、その例としては、ポリソルベート、グリセロール、ポリグリセロール系界面活性剤、又はそれらの組み合わせが挙げられる。存在する場合、界面活性剤は、任意の好適な量、ほとんどの場合、濡れ性を付与するのに十分な量で使用することができる。好適な量は、典型的には、水性組成物(例えば、溶液)の総重量に基づいて0.1重量%~5.0重量%である。
【0061】
特定の実施形態において、本開示の水性口腔ケア組成物(例えば、溶液)は、ソルビン酸カリウム、CPC、CHG、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、任意の他のパラベン系防腐剤、及び混合物などの防腐剤を含んでもよい。好適な量は、典型的には、水性組成物(例えば、溶液)の総重量に基づいて0.001重量%~5.0重量%である。
【0062】
特定の実施形態において、本開示の水性口腔ケア組成物(例えば、溶液)は、キットに含まれる。典型的には、そのようなキットは、口腔ケア組成物(例えば、溶液)のためのアプリケータ(例えば、歯科用ブラシ、綿棒)を含む。このようなアプリケータは、口腔ケア組成物(例えば、溶液)が入った容器に組み込まれていてもよい。
【0063】
特定の実施形態において、口腔ケア組成物(例えば、溶液)は、個々の密封された単位用量容器に提供される。使用時には、そのような個々の密封された単位用量容器のシールを破り、組成物(例えば、溶液)をアプリケータで取り、組成物(例えば、溶液)を歯の表面に適用する。
【0064】
特定の実施形態において、口腔ケア組成物(例えば、溶液)は、複数回用量容器に提供される。使用時には、組成物(例えば、溶液)の液滴を、トレー、プラスチック片、紙片、ディッシュ、ウェル、パンなどの上に分注し、組成物(例えば、溶液)をアプリケータで取り、組成物(例えば、溶液)を歯の表面に適用することができる。
【0065】
特定の実施形態において、キットは、歯科用修復材、トレー、ディッシュ、ウェル、又はパンのうちの1つ以上を更に含んでもよい。歯科用修復材の例としては、接着剤、プライマー、セメント、ライナー、シーラント、アマルガム、レジン、レジン複合材、グラスアイオノマー、レジン添加型グラスアイオノマー、ガラスセラミック、セラミック、金属、プラスチック、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
本開示の水性口腔ケア組成物(例えば、溶液)は、当業者に公知である任意の技術を使用して作製することができる。特定の実施形態において、成分は、上記のように一緒に添加され、溶解され得る。
【0067】
特定の実施形態において、本開示の水性口腔ケア組成物(例えば、溶液)は、患者の歯の表面にフッ化物を供給する方法において使用される。本方法は、本明細書に記載される水性口腔ケア組成物(例えば、溶液)を患者の歯の表面に適用することを含む。水性口腔ケア組成物は、単独で適用されてもよく、又は水性口腔ケア組成物は、適用される前に別の組成物(例えば、練り歯磨き、マウスリンス、ワニス)に配合されてもよい。
【0068】
本開示はまた、例えば、フッ化物及びカルシウムを患者の歯の表面に供給すること、並びに虫歯の発生率を低減させることなどの方法を提供する。そのような方法は、本明細書に記載される水性口腔ケア一部型組成物を患者の歯の表面に適用することを伴う。
【0069】
特定の実施形態において、水性口腔ケア一部型組成物(例えば、溶液)を適用することは、口腔ケア一部型組成物(例えば、溶液)を患者の歯の表面に塗布することを含む。
【0070】
特定の実施形態において、水性口腔ケア一部型組成物(例えば、溶液)を適用することは、口腔ケア一部型組成物(例えば、溶液)を歯科用トレーに分注すること、及び口腔ケア一部型組成物(例えば、溶液)が入ったトレーを患者の歯の表面に取り付けることを含む。特定の実施形態において、歯科用トレーとしては、歯列矯正アライナー処置トレーが挙げられる。
【0071】
特定の実施形態において、本開示の水性口腔ケア組成物(例えば、溶液)は、処置を必要とする患者における虫歯の発生率を(例えば、虫歯を予防又は制止することによって)低減する方法において使用される。本方法は、本明細書に記載される水性口腔ケア組成物(例えば、溶液)を患者の歯の表面に適用することを含む。
【0072】
特定の実施形態において、本開示の水性口腔ケア組成物(例えば、溶液)は、処置を必要とする患者における(例えば、虫歯処置中の及び/又は露出した歯根の)象牙質知覚過敏及び/又は歯根知覚過敏を軽減する方法において使用される。本方法は、本明細書に記載される水性口腔ケア組成物(例えば、溶液)を患者の歯の表面に適用することを含む。
【0073】
特定の実施形態において、本開示の水性口腔ケア組成物(例えば、溶液)は、患者の歯の表面を処置する方法において使用される。本方法は、本明細書に開示される水性口腔ケア一部型組成物(例えば、溶液)を患者の歯の表面に適用して、処置された歯の表面を形成すること、及び任意選択で、処置された歯の表面に歯科用修復材を適用することを含む。
【0074】
特定の実施形態において、本明細書に記載される方法で処置される患者の歯の表面は、エナメル質、象牙質、セメント質、歯根、又はそれらの組み合わせを含む。
【0075】
上記の方法の特定の実施形態において、適用することは、口腔ケア組成物(例えば、溶液)を患者の歯の表面に塗布することを含む。上記の方法の特定の実施形態において、適用することは、口腔ケア組成物(例えば、溶液)を歯科用トレー(例えば、歯科矯正アライナー処置トレー)に分注すること、及び口腔ケア組成物(例えば、溶液)が入ったトレーを患者の歯の表面に取り付けることを含む。
【0076】
上記の方法の特定の実施形態において、口腔ケア組成物(例えば、溶液)は、歯の表面に適用された後、続いて(例えば、流動空気を使用して)乾燥される。
【0077】
上記の方法の特定の実施形態において、口腔ケア組成物(例えば、溶液)は、歯の表面に適用された後、続いて、綿、紙、及び任意の他の拭き取り材料で拭き取られ、歯の表面の過剰な口腔ケア組成物(例えば、溶液)を除去する。
【0078】
上記の方法の特定の実施形態において、方法は、口腔ケア組成物が適用された歯の表面に歯科用修復材を配置することを更に含む。上記の方法の特定の実施形態において、方法は、口腔ケア組成物と歯科用修復材とを組み合わせて歯科用修復材組成物を形成し、次いで歯科用修復材組成物を歯に適用することを更に含む。歯科用修復材の例としては、接着剤(3M SCOTCHBOND Universal Adhesive(3M Company(St.Paul,MN,USA)から入手可能)など)、プライマー、セメント(3M RelyX UNICEM 2 AUTOMIX Self-Adhesive Resin Cement(3M Company(St.Paul,MN,USA)から入手可能)など)、ライナー(3M ESPE VITREBOND Plus Light Cure Glass Ionomer Liner/Baseなど)、シーラント、アマルガム、レジン、レジン複合材(3M FILTEK Z250 Universal Restorativeなど)、グラスアイオノマー(3M KETAC Universal APLICAP Glass Ionomer Restorativeなど)、レジン添加型グラスアイオノマー(RelyX Luting Plus RMGI Cementなど)、ガラスセラミック、セラミック、金属、プラスチック、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
上記の方法の特定の実施形態において、歯の上で口腔ケア組成物を乾燥させた後、本方法は、例えば、初期齲蝕、白斑などの処置のための水分浸透を可能にするために、乾燥した口腔ケア組成物を透湿性ポリマー層でコーティングすることを更に含んでもよい。
【実施例】
【0080】
【0081】
実施例調製手順
実施例を調製するための手順全般は、以下の表及び説明に従って測定された成分を、以下の順序で組み合わせることであった。まず、カルシウム化合物を水に溶解し、続いてクエン酸(又は他のキレート剤、例えばエチドロン酸)を添加し、混合物をよく混合して溶液を形成した。次いで、フッ化物含有化合物を添加し、よく混合した。いくつかの実施例では、代替であるが同等の手順を使用した。カルシウム化合物及びクエン酸(又は代替のキレート剤)の水溶液を別々に調製し、次いで、フッ化物含有化合物の第2の水溶液と混合して、成分の所望の濃度を得た。添加の重要な順序は、最初にクエン酸カルシウム若しくはその水和物(又は適切なキレート剤)を含む準安定水溶液を調製し、次いでフッ化物含有化合物を、典型的には5分以内に添加することである。実施例の溶液を少なくとも24時間観察して、溶液のままであり沈殿物が形成されていないことを確認した。本発明の実施例は安定であり、沈殿物が形成されなかった。比較例は、場合により調製直後、又は少なくとも24時間以内に、視認できる沈殿物が形成された点で、安定な溶液ではなかった。
【0082】
【表2】
「YES」は、例が安定な溶液であり、沈殿物が観察されなかったことを示す。
「NO」は、沈殿物が観察されたことを示し、したがって比較例は安定な溶液でなかった。
*CEx.Aは、EX-1Eと同等の内容物を有していた。しかしながら、CEx.Aは、適切な添加順序に従わず、成分を全てほぼ同時に組み合わせたため、比較例であった。フッ化物含有化合物の添加前に、クエン酸カルシウムを含む準安定水溶液が最初に形成されなかったため、沈殿物が形成された。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
実施例における遊離フッ化物の測定
様々な実施例における遊離フッ化物を、Cole Parmerフッ化物イオン選択性電極を備えたMettler Toledoメーターで測定した。実施例の遊離フッ化物含有量を測定する前に、TISAB II(Total Ionic Strength Adjustment Buffer II、Sigma-Aldrichから入手可能)を使用して、フッ化物イオン選択性電極を最初に百万分率(ppm)フッ化物標準で較正した。実施例の溶液をTISAB II溶液5mlと混合し、各実施例の溶液中に電極を挿入し、2分間安定化させた後溶液中の遊離フッ化物イオンの百万分率(ppm)を記録することによって、これらの溶液中におけるフッ化物のppm濃度を、フッ化物電極を用いて測定した。
【0088】
【0089】
安定化カルシウム実施例への、様々なレベルでのホスフェートの添加
表7は、実施例EX-1Fへの様々なレベルでのホスフェートの添加により、カルシウム、シトレート、及びフッ化物を含む安定化錯体の存在下で沈殿物が形成されないことを示す。
【0090】
【0091】
硝酸カリウム(歯の知覚鈍麻剤)の添加
表8は、様々な実施例(実施例EX-1F、EX-1H、及びEX-1I)への、知覚鈍麻剤である硝酸カリウム(KNO3)の添加により、カルシウム、シトレート、及びフッ化物を含む安定化錯体の存在下で沈殿物が形成されないことを示す。0.25グラムの量のKNO3を、これらの実施例各5グラムに添加した。硝酸塩は溶解し、溶液は透明で沈殿がないままであった。
【0092】
【0093】
安定化カルシウム錯体+添加剤を含む実施例の長期安定性
表9は、歯科用組成物に有用である様々な追加の成分と組み合わせた実施例EX-1Aの安定化カルシウム錯体を含むいくつかの実施例の長期安定性を示す。全ての実施例において、室温(RT)において数ヶ月(mo.)後であっても沈殿は観察されなかった。
【0094】
【0095】
練り歯磨き実施例
表10は、ストック溶液として安定化カルシウム、シトレート、フッ化物錯体実施例EX-1F及びEX-1Jを使用して調製された例示的な練り歯磨き組成物実施例EX-1F-TP及びEX-1J-TPを示す。
【0096】
【0097】
マウスウォッシュ実施例
表11は、ストック溶液として安定化カルシウム、シトレート、フッ化物錯体実施例EX-1Fを使用して調製された例示的なマウスウォッシュ製剤EX-1F-MWを示す。
【0098】
【0099】
歯科用組成物のためのストック溶液
表12は、ストック溶液として実施例EX-1A、EX-1B、及びEX-1Mを使用して調製された、後続の歯科用組成物のための例示的なストック溶液を示す。
【0100】
【0101】
レジン添加型グラスアイオノマー(RMGI)歯科用組成物のための「ペーストB」調製
レジン添加型グラスアイオノマー(RMGI)セメントは、組み合わされると固化(硬化)する二部型である。以下のRMGI実施例は、ペースト-ペースト(ペースト「A」及びペースト「B」)二部型反応系として調製した。上記のカルシウム安定化錯体実施例(EX-1A、EX-1B、及びEX-1M)を、表12に記載されるストック溶液中で使用した。次いで、以下の表13に示されるペースト「B」実施例の調製において、表12に記載されるストック溶液を使用した。
【0102】
【0103】
レジン添加型グラスアイオノマー(RMGI)セメントの調製
表13に示す調製されたペースト「B」実施例を使用してRMGIを調製するためには、ペースト「B」と反応させるための好適なペースト「A」が必要であった。3Mの市販製品RelyX(商標)Luting Plus Automix Resin-Modified Glass Ionomer Cementにおける2つのシリンジバレルのうちの1つから白色ペースト(ベースペースト)のみを取り出す/使用することによって、ペースト「A」源を得た。あるいは、白色ペースト「A」(ベースペースト)はまた、市販の3M製品RelyX(商標)Luting Plus Cement Clicker(商標)Dispenser Refillから得ることもできる。ペースト「A」及びペースト「B」を、歯科用スパチュラを使用して、ミキシングパッド上においてそれぞれ5:4部比(A:B)で20秒間手混合した。次いで、混合した実施例を37℃のオーブンに入れて、硬化及び固化(セット)させた。混合物をスパチュラで叩いてセットされたことを確認し、時間を記録した。
【0104】
これらのRMGI実施例のセット時間を、既にペースト「A」とペースト「B」が入ったダブルバレルシリンジシステムになっている市販のRelyX(商標)Luting Plus Automix Resin-Modified Glass Ionomer Cementを使用したこと以外は同じ方法で調製した対照試料と比較した。表14は、レジン添加型グラスアイオノマー実施例EX-RMGI-1、EX-RMGI-2、及びEX-RMGI-3のセット時間(分:秒)を示しており、これらはそれぞれ実施例EX-1A、EX-1B、及びEX-1Mを原料として含んでいた。
【0105】
【0106】
レジン添加型グラスアイオノマー(RMGI)セメントの長期安定性試験
市販の3M製品RelyX(商標)Luting Plus Cement Clicker(商標)ディスペンサーを使用して、実施例EX-1A、EX-1B、及びEX-1Mを使用して作製されたRMGIセメント実施例の、高温での長期安定性を評価する実験のための製品模擬保存容器を提供した。黄色の触媒材料(市販のペースト「B」)を、RelyX(商標)Luting Plus Cement Clicker(商標)ディスペンサー製品のそれぞれのシリンジシリンダーから取り出した。次いで、空になったシリンジシリンダーに、実験例EX-ペースト-B1、EX-ペースト-B2、及びEX-ペースト-B3を充填した。各ディスペンサーにおいて、元の市販のペースト「A」を隣接するシリンジシリンダーに残した。実験例EX-ペースト-B1、EX-ペースト-B2、及びEX-ペースト-B3を含有するこれらの模擬製品を、45℃の温度制御されたオーブン内で数週間保存した。表15は、実験用レジン添加型グラスアイオノマー実施例EX-RMGI-1、EX-RMGI-2、及びEX-RMGI-3(それぞれ、EX-1A、EX-1B、及びEX-1Mを使用して調製した)について、4週間、6週間、10週間、45℃の製品容器内で長期保存した後のセット時間(分:秒)を示す。
【0107】
【0108】
歯科用組成物のための硬化性モノマー及びコポリマーを含む実施例
実施例EX-5A
実施例EX-5Aを以下の方法で調製した。表2に示す実施例EX-1B(シトレート:カルシウムのモル比1.5:1及びフッ化物:カルシウムのモル比2:1)0.5グラムの量を、10%VBCP水溶液0.5gと混合した。1.5gの量のHEMAを混合物に添加した。HEMAは、CPQ 0.22%、EDMAB 1.0%、DPIHFP 0.3%、及び9,10-EDMOA 0.1%で開始された。次いで、0.5gの量のCDMA/GDMAオリゴマーブレンドを混合物に添加した。CDMA/GDMAオリゴマーブレンドは、CPQ 0.22%、EDMAB 1.0%、DPIHFP 0.3%、及び9,10-EDMOA 0.1%で開始された。最後に、0.1gの量のSR454を混合物に添加した。SR454は、CPQ 0.22%、EDMAB 1.0%、DPIHFP 0.3%、及び9,10-EDMOA 0.1%で開始された。この混合物は透明な溶液を形成した。該溶液は安定で、沈殿がないようにみえた。
【0109】
追加の比較例:CEx.G~CEx.K
比較例CEx.G
0.1M硝酸カルシウム水溶液を、別の0.2Mフッ化アンモニウム水溶液と混合した。これらの2つの溶液を混合すると、不溶性フッ化カルシウム塩沈殿物が形成された(キレート剤(例えば、シトレート)は存在しなかった)。
【0110】
比較例CEx.H
0.32グラムの量のコハク酸カルシウムを、DI水9.68gに添加した(3.2重量/重量%)。この濃度において、コハク酸カルシウムはわずかにしか可溶性でないことがわかった。10グラムの量の0.4M NaF溶液を、コハク酸カルシウム混合物に添加した。新しい混合物は、透明な溶液を形成しなかった(完全には溶解しなかった)。代わりに、濁ったスラリー(沈殿物)が形成された(適切なキレート剤(例えば、シトレート)は存在しなかった)。
【0111】
比較例CEx.I
0.31gの量のフマル酸カルシウムを、DI水9.72gに添加した(3.1重量/重量%)。この濃度において、フマル酸カルシウムはわずかにしか可溶性でないことがわかった。10グラムの量の0.4M NaF溶液を、フマル酸カルシウム混合物に添加した。新しい混合物は、透明な溶液を形成しなかった(完全には溶解しなかった)。代わりに、濁ったスラリー(沈殿物)が形成された(適切なキレート剤(例えば、シトレート)は存在しなかった)。
【0112】
比較例CEx.J
Ca(OH)2及びクエン酸の溶液を、水酸化物0.1モル対シトレート0.15モルのモル比で調製した。最初は透明な溶液が形成された。しかしながら、数分(約30分)待つと、恐らくクエン酸カルシウム又はその水和物である、沈殿物が形成された。したがって、この混合物は、この時点でフッ化物塩と効果的に反応することができなかった。これは、クエン酸カルシウムを含む準安定水溶液の形成から5分以内(すなわち、クエン酸カルシウム又はその水和物が沈殿する前)にフッ化物含有化合物を添加しなかったという点で、適切な添加順序に従っていなかったため、比較例である。
【0113】
比較例CEx.K:
2.282グラムの量のクエン酸カルシウム四水和物を、DI水18.20グラム中で撹拌した(11.1重量/重量%)。クエン酸カルシウム四水和物は、この濃度で本質的に不溶性であった。20.07グラムの量の0.4Mフッ化アンモニウム溶液を、クエン酸カルシウム四水和物混合物に添加した。混合物の変化は視認で認められず、クエン酸カルシウム四水和物は溶解しないまま、溶液とはならなかった。
【国際調査報告】