(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-04-16
(54)【発明の名称】マスターバッチ組成物およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C08L 23/06 20060101AFI20250408BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20250408BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20250408BHJP
C08L 57/02 20060101ALI20250408BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20250408BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
C08L23/06
C08J3/22 CES
C08J5/18
C08L57/02
C08L45/00
C08K5/098
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024559152
(86)(22)【出願日】2023-04-06
(85)【翻訳文提出日】2024-11-27
(86)【国際出願番号】 AU2023050279
(87)【国際公開番号】W WO2023193058
(87)【国際公開日】2023-10-12
(32)【優先日】2022-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2023-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2023-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599060788
【氏名又は名称】ミリケン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】アデトゥンジ、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】イーガン、ブライアン
【テーマコード(参考)】
4F070
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AB09
4F070AC40
4F070AC74
4F070AC75
4F070AE30
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4F070FB06
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4F071AA16
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4F071AF08
4F071AF16
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4F071BA01
4F071BB06
4F071BB09
4F071BC01
4J002BA012
4J002BB031
4J002BK002
4J002EG096
4J002GG02
(57)【要約】
本開示は、核形成剤および炭化水素樹脂の相乗的組合せを含む高バリアポリオレフィン組成物およびマスターバッチ組成物、ならびに、包装用途に好適なバリア特性を有するバリア層およびフィルムを調製するためのそれらの使用に広く関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.01%~約1%w/wの量の核形成剤と;
約0.1%~約10%w/wの量の炭化水素樹脂と、
任意に1種以上の添加成分と、
ポリエチレンと
を含む、高バリアポリオレフィン組成物。
【請求項2】
前記ポリエチレンが、HDPEである、請求項1に記載の高バリアポリオレフィン組成物。
【請求項3】
前記HDPEが、90%w/w以上の量で存在する、請求項2に記載の高バリアポリオレフィン組成物。
【請求項4】
前記組成物が、均質である、請求項1~3の何れか1項に記載の高バリアポリオレフィン組成物。
【請求項5】
核形成剤と、炭化水素樹脂と、ポリエチレンとを含む、マスターバッチであって、
前記核形成剤が、前記マスターバッチ中に、約0.2%~約15%w/wの量で存在し;
前記炭化水素樹脂が、前記マスターバッチ中に、約2.5%~約80%w/wの量で存在し;
前記ポリエチレンが、前記マスターバッチ中に、約5%w/wより大きい量で存在し、
高バリアポリオレフィン組成物を形成するために使用される場合、
約0.01%~約1%w/wの量の前記核形成剤と;
約0.1%~約10%w/wの量の前記炭化水素樹脂と
を含む、マスターバッチ。
【請求項6】
核形成剤と、炭化水素樹脂と、ポリエチレンとを含む、マスターバッチであって、
前記核形成剤が、前記マスターバッチ中に、0.2%~約15%w/wの量で存在し;
前記炭化水素樹脂が、前記マスターバッチ中に、約25%~約55%w/wの量で存在し;
前記ポリエチレンが、前記マスターバッチ中に、約20%w/wより大きい量で存在する、
マスターバッチ。
【請求項7】
核形成剤マスターバッチと、炭化水素樹脂マスターバッチとを含む、キットであって、
核形成剤が、前記核形成剤マスターバッチ中に、約0.1%~約30%w/wの量で存在し;
炭化水素樹脂が、前記炭化水素樹脂マスターバッチ中に、約5%~約80%w/wの量で存在し、
高バリアポリオレフィン組成物を形成するために使用される場合、
約0.01%~約1%w/wの量の前記核形成剤と;
約0.1%~約10%w/wの量の前記炭化水素樹脂とを含み、
ここで、前記核形成剤マスターバッチおよび前記炭化水素樹脂マスターバッチが、約5:1~約1:60の比で使用される、
キット。
【請求項8】
核形成剤マスターバッチと炭化水素樹脂マスターバッチとを含む、キットであって、
核形成剤が、前記核形成剤マスターバッチ中に、約0.1%~約30%w/wの量で存在し;
炭化水素樹脂が、前記炭化水素樹脂マスターバッチ中に、約5%~約80%w/wの量で存在する、
キット。
【請求項9】
核形成剤混合物と、炭化水素樹脂マスターバッチとを含む、キットであって、
前記核形成剤混合物が、核形成剤およびポリオレフィンを含み;
炭化水素樹脂が、前記炭化水素樹脂マスターバッチ中に、約5%~約80%w/wの量で存在し、
高バリアポリオレフィン組成物を形成するために使用される場合、
約0.01%~約1%w/wの量の前記核形成剤と;
約0.1%~約10%w/wの量の前記炭化水素樹脂と
を含む、キット。
【請求項10】
核形成剤混合物と、炭化水素樹脂マスターバッチとを含む、キットであって、
前記核形成剤混合物が、核形成剤およびポリオレフィンを含み;
炭化水素樹脂が、前記炭化水素樹脂マスターバッチ中に、約5%~約80%w/wの量で存在する、
キット。
【請求項11】
前記核形成剤および炭化水素樹脂が、約1:4~約1:200の比で存在する、請求項1~4の何れか1項に記載の高バリアポリオレフィン組成物、請求項5もしくは6に記載のマスターバッチ、または請求項7~10の何れか1項に記載のキット。
【請求項12】
前記炭化水素樹脂が、C5オレフィンフィードストリーム、C9オレフィンフィードストリーム、テルペンオレフィン、ノルボルネン、純粋モノマー、およびそれらの組合せからなる群から選択される粗オレフィンフィードに由来する、請求項1~4の何れか1項に記載の高バリアポリオレフィン組成物、請求項5もしくは6に記載のマスターバッチ、または請求項7~10の何れか1項に記載のキット。
【請求項13】
前記核形成剤が、金属塩を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の高バリアポリオレフィン組成物、請求項5もしくは6に記載のマスターバッチ、または請求項7~10の何れか1項に記載のキット。
【請求項14】
前記核形成剤が、ヒドロフタル酸金属塩、ビシクロヘプタンジカルボン酸金属塩、またはそれらの組合せを含む、請求項1~4の何れか1項に記載の高バリアポリオレフィン組成物、請求項5もしくは6に記載のマスターバッチ、または請求項7~10の何れか1項に記載のキット。
【請求項15】
前記核形成剤が、ヒドロフタル酸金属塩を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の高バリアポリオレフィン組成物、請求項5もしくは6に記載のマスターバッチ、または請求項7~10の何れか1項に記載のキット。
【請求項16】
前記核形成剤が、ヘキサヒドロフタル酸金属塩を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の高バリアポリオレフィン組成物、請求項5もしくは6に記載のマスターバッチ、または請求項7~10の何れか1項に記載のキット。
【請求項17】
前記ポリエチレンが、HDPEである、請求項5または6の何れか1項に記載のマスターバッチ。
【請求項18】
高バリアポリオレフィン組成物を形成するための、請求項6に記載のマスターバッチの使用であって、前記高バリアポリオレフィン組成物中における前記核形成剤と炭化水素樹脂との比が、前記マスターバッチ中における核形成剤と炭化水素樹脂との比と同じである、使用。
【請求項19】
高バリアポリオレフィン組成物を形成するための、請求項8または10に記載のキットの使用であって、前記高バリアポリオレフィン組成物中における前記核形成剤と炭化水素樹脂との比が、前記キット中における核形成剤と炭化水素樹脂との比と同じである、使用。
【請求項20】
前記高バリアポリオレフィン組成物が、均質である、請求項5もしくは6に記載のマスターバッチ、請求項7もしくは10に記載のキット、または請求項18もしくは19に記載の使用。
【請求項21】
請求項1~4の何れか1項に記載の高バリアポリオレフィン組成物;
請求項6に記載のマスターバッチをバルクHDPEとブレンドすること;または
請求項8もしくは10に記載のキットをバルクHPPEとブレンドすること
から形成される、バリア層。
【請求項22】
請求項21に記載のバリア層を含むフィルムであって、前記フィルムが、ASTM F 1249-20によって測定された、請求項21に記載のバリア層を含まない同等の厚さのフィルムと比べて少なくとも約10%だけ低減している水蒸気透過度を有する、フィルム。
【請求項23】
フィルムの水蒸気透過度を低減させる方法であって、前記方法が、請求項21に記載のバリア層を前記フィルムに組み込むことを含み、前記フィルムが、ASTM F 1249-20によって測定された、請求項21に記載のバリア層を有さない同等の厚さのフィルムと比べて少なくとも約10%だけ低減している水蒸気透過度を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本開示は、包装用途に好適なバリア特性を有するバリア層およびフィルムを調製するための、高バリアポリオレフィン組成物およびマスターバッチ組成物に広く関する。ここで開示される特定の態様は、マスターバッチ組成物、およびフィルム中に高バリアポリオレフィン層を形成するためのそれらの使用に関する。
関連出願の相互参照
[002]本出願は、2022年4月6日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2022900898号、2023年3月24日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2023900832号、および2023年3月24日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2023900833号の優先権を主張し、そのそれぞれは、相互参照により、それらが完全に明記されているかの如くその全体がここに組み込まれる。
【背景】
【0002】
[003]ポリオレフィン、たとえばポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)、超低密度直鎖状ポリエチレン(VLLDPE)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)およびプラストマーは、様々な商業的使用を有する。
【0003】
[004]ポリエチレンは、特有の特性、たとえば化学的不活性、靱性、水蒸気および酸素に対する低い浸透性、ならびに成形性の組合せを持つ、多用途のポリマーである。
【0004】
[005]高密度ポリエチレン(HDPE)は、水蒸気および酸素透過に対する高い抵抗が有益であるブローフィルム用途、たとえばシリアルボックスライナーおよび乾燥食品用包装において、一般的に使用される。
【0005】
[006]水蒸気透過度(WVTR)および酸素透過度(OTR)は、バリアフィルムの重要な特性である。これらの特性は、フィルムを通過することができる水蒸気および酸素それぞれの量を反映する。概して、多くの食品包装において使用されるフィルムでは、フィルムが低い値のWVTRおよび/またはOTRを呈することが望ましい。
【0006】
[007]クラス最高のHDPEブローフィルムグレードは、40ミクロンゲージで約3.0~3.6g/m2/日の範囲内の水蒸気透過度(WVTR)を有する。WVTRはフィルム厚さの関数でもあるため、これは、50ミクロンゲージで約2.4~2.9g/m2/日に移行する。
【0007】
[008]特定のゲージでのWVTRは、HDPEの固有の特性だけではなくそれがどのようにフィルムに加工されたのかとも相関する特性である。ポリオレフィン、たとえばポリプロピレンおよびポリエチレンに混合された炭化水素樹脂(HCR)の添加は、バリア抵抗を改良するために使用されてきた。先行技術では、典型的なフィルムにおいて、好適なWVTR性能、すなわち、WVTRの約30%の減少を実現するためには、少なくとも約10%~20%w/wの比較的高濃度のHCRが要求されると一般的に教えられ、受け入れられている。たとえば、EP2520615、WO2010/104628およびUS2012/0107542は、その中で例示されているバリア層において所望のバリアおよび機械的特性を生じさせるためには、10%w/wより大きいHCRの濃度が必要であることを開示している。HCRのコストは比較的高いことから、バリアフィルムへの高濃度のHCRの包含は、全体的な生産コストを有意に増加させる。したがって、より少ないHCRを使用して好適なバリア特性を実現することができれば、有利かつ望ましいであろう。さらに、高濃度のHCR(たとえば、10%w/wを上回る濃度)は、有用なフィルムの機械的特性、たとえば靱性および引き裂き抵抗を大幅に悪化させることがあり、食品を包装するまたはそれに接触する際における使用へのフィルムの適性に悪影響を及ぼすことがある。
【0008】
[009]WVTRとは対照的に、加工性は、フィルムではなく材料/樹脂に固有の特性である。乏しい加工性は、樹脂からブローフィルムを作製する際に困難をもたらすだけでなく、フィルムの機械的特性、たとえば引き裂き強度および穿刺抵抗も悪影響を受けることがある。
【0009】
[0010]核形成剤は、加工中の結晶の形成を容易にかつ広く促進する。得られる成果は、より小さい結晶であり、これは、よく分散させると、樹脂を通過する気体分子にとってより過酷な経路を達成する。典型的なHDPEフィルムが有効に核形成されると、WVTRを約25%~約30%だけ低減することができる。しかしながら、核形成剤をHDPEに有効に導入するおよび均質化することに関連して、困難がある。
【0010】
[0011]核形成の有効性を改良するための1つのアプローチは、ポリマーの分子量分布を狭めることおよび長鎖分枝の程度を限定することを伴う。非常に低分子量の画分が、高分子量の画分と特定の比でブレンドされるように、ポリマーにおける分子量分布を変化させることにより、有効な核形成のための樹脂の処理能力は、WVTRを40~50%程度減少させることができるように、改良できる。別のアプローチでは、低いおよび高いメルトフローインデックスを有するHDPEポリマーと核形成剤とのブレンドは、WVTRを約20%~40%だけ低下させる際に有効であることが示されている。しかしながら、加工性ならびにフィルムの機械的特性、特に穿刺および引き裂き抵抗に悪影響を与えることなく、より高いメルトインデックスまたは低分子量ポリマーの添加によってバリア特性をどの程度改良することができるかには制限がある。より幅広い仕様のフィルム成分、たとえばより低いメルトインデックスおよびより広い分子量範囲のポリマーを使用して、好適な加工適性、機械的特性およびバリア特性を実現することができれば、有利かつ望ましいであろう。
【0011】
[0012]HDPEベースのフィルムの水蒸気バリアを改良するための、若干数の他のアプローチがあった。たとえば、HDPEの層を他の層材料と積層または共押出させて、改良された水蒸気バリア特性を持つ多層HDPEベースのフィルムを形成することができる。しかしながら、多層フィルムの形成は、典型的にはより高いコストを伴い、そのようなフィルムは、概してリサイクル性が低い。特に、多層フィルムにおける異なる種類の材料の使用は、結果として生じる環境への悪影響により、フィルムをリサイクルする能力を限定することがある。HDPEの単層フィルムを調製することもでき、単層フィルムの水蒸気バリアをその厚さを増大させることによって改良できるが、これは、これらのフィルムを用いて形成される包装に重量およびコストを追加するという有意な不利点を有する。
【0012】
[0013]堅牢なフィルム特性とバランスが取れた、好適なバリア特性、たとえば水蒸気および酸素透過に対する高い抵抗を有する、バリアフィルムが必要である。より低い量のHCRおよびより幅広い仕様の成分ポリマーを使用する、好適なバリア特性を有するバリアフィルムも必要である。
【概要】
【0013】
[0014]本発明は、改良されたバリア特性を有するフィルム、およびそのようなフィルムを調製するための方法に概して関する。
【0014】
[0015]ここで開示される発明の態様は、核形成剤、炭化水素樹脂、または核形成剤と炭化水素樹脂の両方、およびポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、より好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)を含む、マスターバッチ組成物、ならびに、フィルム中に、高バリアポリオレフィン(HBP)層、たとえばHBPバリア層を調製するための、そのようなマスターバッチ組成物の使用に関する。ここで開示される他の態様は、高バリアポリオレフィン(HBP)組成物を調製するためのマスターバッチ技術の使用、および高密度ポリエチレンフィルム中に高バリアポリオレフィン(HBP)層を調製するためのHBP組成物の使用に関する。
【0015】
[0016]好ましい態様では、ポリオレフィンは、ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)、超低密度直鎖状ポリエチレン(VLLDPE)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)およびプラストマーからなる群から選択され、より好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)である。
【0016】
[0017]第1の側面では、本発明は、
約0.01%~約1%w/wの量の核形成剤と、
約0.1%~約10%w/wの量の炭化水素樹脂と、
任意に1種以上の添加成分と、
ポリエチレンと
を含む、高バリアポリオレフィン組成物に関する。
【0017】
[0018]好ましくは、ポリエチエンは、HDPEである。
【0018】
[0019]好ましくは、ポリエチレン、たとえばHDPEは、90%w/w以上の量で存在する。他の態様では、ポリエチレン、たとえばHDPEは、95%w/w以上、または98%w/w以上の量で存在する。
【0019】
[0020]一部の態様では、高バリアポリオレフィン組成物は、
約0.01%~約1%w/wの量の核形成剤と、
約0.1%~約5%w/wの量の炭化水素樹脂と、
任意に1種以上の添加成分と、
ポリエチレンと
を含む。
【0020】
[0021]好ましくは、高バリアポリオレフィン組成物は、均質組成物である。好ましくは、均質性は、動的溶融混合、技術を介して、たとえば二軸スクリュー配合を介して達成されるせん断および伸長混合、または2ロールフライス加工等によって達成される。
【0021】
[0022]第2の側面では、本発明は、核形成剤と、炭化水素樹脂と、ポリエチレンとを含む、マスターバッチであって、
核形成剤が、マスターバッチ中に、約0.2%~約15%w/wの量で存在し;
炭化水素樹脂が、マスターバッチ中に、約2.5%~約80%w/wの量で存在し;
ポリエチレンが、マスターバッチ中に、約5%w/wより大きい量で存在し、
高バリアポリオレフィン組成物を形成するために使用される場合、
約0.01%~約1%w/wの量の核形成剤と;
約0.1%~約10%w/wの量の炭化水素樹脂と
を含む、マスターバッチに関する。
【0022】
[0023]一部の態様では、核形成剤は、マスターバッチ中に、約1%~約25%w/w、または約2.5%~約25%w/wの量で存在し;炭化水素樹脂は、マスターバッチ中に、約25%~約55%w/wの量で存在し;ポリエチレンは、マスターバッチ中に、約20%w/wより大きい量で存在する。
【0023】
[0024]第3の側面では、本発明は、核形成剤および炭化水素樹脂の相乗的組合せと;ポリエチレンとを含む、マスターバッチに関する。
【0024】
[0025]第4の側面では、本発明は、核形成剤と、炭化水素樹脂と、ポリエチレンとを含む、マスターバッチであって、
核形成剤が、マスターバッチ中に、約0.2%~約15%w/w、約1%~約25%w/w、または約2.5%~約25%w/wの量で存在し;
炭化水素樹脂が、マスターバッチ中に、約2.5%~約80%w/w、または約25%~約55%w/wの量で存在し;
ポリエチレンが、マスターバッチ中に、約20%w/wより大きい量で存在する、
マスターバッチに関する。
【0025】
[0026]第5の側面では、本発明は、核形成剤マスターバッチと、炭化水素樹脂マスターバッチとを含む、キットであって、
核形成剤が、核形成剤マスターバッチ中に、約0.1%~約30%w/wの量で存在し;
炭化水素樹脂が、炭化水素樹脂マスターバッチ中に、約5%~約80%w/wの量で存在し、
高バリアポリオレフィン組成物を形成するために使用される場合、
約0.01%~約1%w/wの量の核形成剤と;
約0.1%~約10%w/wの量の炭化水素樹脂とを含み、
ここで、核形成剤マスターバッチおよび炭化水素樹脂マスターバッチが、約5:1~約1:60の比で使用される、
キットに関する。
【0026】
[0027]第6の側面では、本発明は、核形成剤マスターバッチと、炭化水素樹脂または炭化水素樹脂マスターバッチとを含む、キットであって、
核形成剤が、核形成剤マスターバッチ中に、約0.1%~約30%w/wの量で存在し;
炭化水素樹脂が、炭化水素樹脂マスターバッチ中に、約5%~約80%w/wの量で存在する、
キットに関する。
【0027】
[0028]一部の態様では、核形成剤は、核形成剤マスターバッチ中に、約2.5%~約25%w/wの量で存在し;炭化水素樹脂は、炭化水素樹脂マスターバッチ中に、約25%~約55%w/wの量で存在する。
【0028】
[0029]一部の態様では、核形成剤は、核形成剤マスターバッチ中に、約5%~約25%w/wの量で存在し;炭化水素樹脂は、炭化水素樹脂マスターバッチ中に、約25%~約55%w/wの量で存在する。
【0029】
[0030]一部の態様では、核形成剤マスターバッチと炭化水素樹脂マスターバッチとの比は、約5:1~約1:60である。
【0030】
[0031]第7の側面では、本発明は、核形成剤と、炭化水素樹脂マスターバッチとを含む、キットであって、
炭化水素樹脂が、炭化水素樹脂マスターバッチ中に、約5%~約80%w/wの量で存在し、
高バリアポリオレフィン組成物を形成するために使用される場合、
約0.01%~約1%w/wの量の核形成剤と;
約0.1%~約10%w/wの量の炭化水素樹脂と
を含む、キットに関する。
【0031】
[0032]本発明の第7の側面の好ましい態様では、核形成剤は、ポリオレフィンと混和される。好ましくは、ポリオレフィンはポリエチレンである。
【0032】
[0033]ここで開示される高バリアポリオレフィン組成物、HBPマスターバッチまたはキットの好ましい態様では、核形成剤および炭化水素樹脂は、約1:4~約1:200の比で存在する。好ましくは、核形成剤および炭化水素樹脂は、約1:10~約1:100の比で存在する。好ましくは、核形成剤および炭化水素樹脂は、約1:10~約1:50の比で存在する。
【0033】
[0034]ここで開示される高バリアポリオレフィン組成物、HBPマスターバッチ、HCRマスターバッチまたはキットの好ましい態様では、炭化水素樹脂は、約10,000ダルトン以下の重量平均分子量を有する。好ましくは、炭化水素樹脂は、C5オレフィンフィードストリーム、C9オレフィンフィードストリーム、テルペンオレフィン、純粋モノマー、およびそれらの組合せからなる群から選択される粗オレフィンフィードに由来する。好ましい態様では、炭化水素樹脂は水素化炭化水素樹脂である。他の好ましい態様では、炭化水素樹脂は環状オレフィンコポリマーである。
【0034】
[0035]ここで開示される高バリアポリオレフィン組成物、HBPマスターバッチ、NAマスターバッチまたはキットの好ましい態様では、核形成剤は、有機化合物または無機化合物であってもよい。好ましくは、核形成剤は、金属塩を含む。好ましくは、核形成剤は、分枝アルキルホスホン酸の塩、ヒドロフタル酸金属塩、ビシクロヘプタンジカルボン酸金属塩、またはそれらの組合せを含む。一態様では、ヒドロフタル酸金属塩は、ヘキサヒドロフタル酸金属塩またはヘプタヒドロフタル酸金属塩である。好ましくは、核形成剤は、ヘキサヒドロフタル酸金属塩を含む。
【0035】
[0036]一部の態様では、ポリエチレンはHDPEである。一部の態様では、HDPEは、約0.94~約0.97g/cm3の密度を有する。一部の態様では、HDPEは、約0.08~40.0g/10分、好ましくは約0.08~10.0g/10分のメルトフローインデックスを有する。
【0036】
[0037]第8の側面では、本発明は、高バリアポリオレフィン(HBP)組成物を形成するための、核形成剤および炭化水素樹脂を含む本発明のHBPマスターバッチの使用であって、高バリアポリオレフィン組成物中における核形成剤と炭化水素樹脂との比が、マスターバッチ中における核形成剤と炭化水素樹脂との比と同じまたは実質的に同じである、使用に関する。
【0037】
[0038]第9の側面では、本発明は、高バリアポリオレフィン組成物を形成するための本発明のキットの使用であって、高バリアポリオレフィン組成物中における核形成剤と炭化水素樹脂との比が、キット中における核形成剤と炭化水素樹脂との比と同じまたは実質的に同じである、使用に関する。
【0038】
[0039]第10の側面では、本発明は、
本発明の高バリアポリオレフィン組成物から形成されるか;または
核形成剤および炭化水素樹脂を含む本発明のマスターバッチをバルクHDPEとブレンドすることによって形成されるか;または
本発明のキットの成分をバルクHDPEとブレンドすることによって形成される、
バリア層に関する。
【0039】
[0040]1以上の態様では、NA MB、HCR MB、HBP MB、HBP組成物またはバリア層は、1種以上の添加成分を含んでもよい。添加物の代表例は、酸化防止剤(一次および二次酸化防止剤を含む)、制酸金属塩、難燃剤、滑沢剤、UV安定剤、帯電防止剤、加工助剤等を含む。所望ならば、そのような添加物は、押出機に添加され、関連性のあるマスターバッチまたはHBP組成物に溶融配合されてもよい。
【0040】
[0041]一部の態様では、バルクHDPEは、約0.94~約0.97g/cm3の密度を有する。一部の態様では、バルクHDPEは、約0.08~40.0g/10分、好ましくは約0.08~10.0g/10分のメルトフローインデックスを有する。
【0041】
[0042]第11の側面では、本発明は、本発明のバリア層を含むフィルムであって、フィルムが、ASTM F 1249-20によって測定された、本発明のバリア層を含まない同等の厚さのフィルムと比べて少なくとも約10%だけ低減している水蒸気透過度(WVTR)を有する、フィルムに関する。
【0042】
[0043]第12の側面では、本発明は、フィルムの水蒸気透過度(WVTR)を低減させる方法であって、方法が、本発明のバリア層をフィルムに組み込むことを含み、フィルムが、ASTM F 1249-20によって測定された、本発明のバリア層を有さない同等の厚さのフィルムと比べて少なくとも約10%だけ低減しているWVTRを有する、方法に関する。
【0043】
[0044]ここで開示される発明の一部の態様では、核形成剤は、核形成剤マスターバッチまたはHBPマスターバッチ中に、約0.1%~約30%w/w、または約0.2%~約25%w/w、または約0.3%~約25%w/w、または約0.2%~約15%w/w、または約0.3%~約20%w/w、または約0.3%~約15%w/w、または約0.5%~約20%w/w、または約0.5%~約15%、または約0.5%~約10%w/wの量で存在する。
【0044】
[0045]ここで開示される発明の一部の態様では、炭化水素樹脂は、炭化水素樹脂マスターバッチまたはHBPマスターバッチ中に、約5%~約80%w/w、または約2.5%~約70%w/w、または約2.5%~約60%w/w、または約10%~約70%w/w、または約20%~約60%w/w、または約5%~約50%w/w、または約7.5%~約45%w/w、または約10%~約40%w/w、または約30%~約50%w/wの量で存在する。
【0045】
[0046]ここで開示される発明の一部の態様では、核形成剤および炭化水素樹脂は、HBPマスターバッチまたはHBP組成物またはバリア層中に、約1:4~約1:200、好ましくは約1:7~約1:150、より好ましくは約1:10~約1:100、さらに一層好ましくは約1:15~約1:50の比で存在する。
【0046】
[0047]ここで開示される発明の一部の態様では、ポリエチレンは、マスターバッチ中に、約5%より大きい量で、好ましくは約10%w/wより大きい量で、好ましくは約15%w/wより大きい量で、好ましくは約20%w/wより大きい量で、好ましくは約25%より大きい、より好ましくは約30%~約50%w/wの量で存在する。
【0047】
[0048]ここで開示される本発明の他の態様は、フィルム中にバリア層を形成するための、核形成剤および炭化水素樹脂を含む本発明のHBPマスターバッチの使用に関する。好ましい態様では、HBPマスターバッチは、バルクHDPEとブレンドされて、フィルム中にバリア層を形成する。
【0048】
[0049]本発明は、バルクHDPEと、核形成剤および炭化水素樹脂を含む本発明のHBPマスターバッチとをブレンドすることによって生成される、バリア層にさらに関する。
【0049】
[0050]本発明は、バルクHDPEを、核形成剤マスターバッチ中の核形成剤および炭化水素樹脂マスターバッチ中の炭化水素樹脂の相乗的組合せとブレンドすることによって生成される、バリア層にさらに関する。
【0050】
[0051]好ましい態様では、核形成剤は、バリア層中に、約0.01%~約1%w/w、好ましくは約0.02%~約0.7%w/w、好ましくは約0.03%~約0.5%w/w、好ましくは約0.03%~約0.2%w/w、または好ましくは約0.05%~約0.2%w/wの量で存在する。
【0051】
[0052]好ましい態様では、炭化水素樹脂は、バリア層中に、約0.1%~約10%w/w、好ましくは約0.2%~約9%w/w、好ましくは約0.3%~約8%w/w、好ましくは約0.5%~約7%w/w、好ましくは約0.5%~約6%w/w、好ましくは約0.5%~約5%w/w、好ましくは約0.5%~約4%w/w、好ましくは約0.7%~約3%w/w、または好ましくは約1%~約2%w/wの量で存在する。
【0052】
[0053]上記の側面の一部の態様では、炭化水素樹脂は、約10,000ダルトン以下、好ましくは約5,000ダルトン以下、より好ましくは約2,000ダルトン以下、さらに一層好ましくは約1,000ダルトン以下の重量平均分子量を有し、最も好ましくは、ここで、炭化水素樹脂は、約400~約800ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0053】
[0054]ここで開示される発明の一部の態様では、炭化水素樹脂は、C5オレフィンフィードストリーム、C9オレフィンフィードストリーム、テルペンオレフィン、純粋モノマー、およびそれらの組合せからなる群から選択される粗オレフィンフィードに由来する。好ましくは、炭化水素樹脂は、水素化炭化水素樹脂または環状オレフィンコポリマーである。
【0054】
[0055]ここで開示される発明の一部の態様では、核形成剤は、金属塩を含む。好ましくは、核形成剤は、分枝アルキルホスホン酸の塩、ヒドロフタル酸金属塩、ビシクロヘプタンジカルボン酸金属塩、またはそれらの組合せを含む。一態様では、ヒドロフタル酸金属塩は、ヘキサヒドロフタル酸金属塩またはヘプタヒドロフタル酸金属塩である。好ましくは、核形成剤は、ヘキサヒドロフタル酸金属塩を含む。
【0055】
[0056]ここで開示される発明の一部の態様では、HDPEは、約0.94~約0.97g/cm3、好ましくは約0.95~約0.965g/cm3の密度を有する。
【0056】
[0057]ここで開示される発明の一部の態様では、バルクHDPEは、約0.94~約0.97g/cm3、好ましくは約0.95~約0.965g/cm3の密度を有する。
【0057】
[0058]他の態様では、ここで開示される本発明は、ここで開示される本発明のバリア層を含むフィルムに関する。好ましい態様では、フィルムは、ASTM F 1249-20によって測定された、本発明のバリア層を有さない同等の厚さのフィルムと比べて、少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、または約80%だけ低減している水蒸気透過度を有する。一部の態様では、フィルムは、多層または単層フィルムである。
【0058】
[0059]ここで開示される本発明の他の態様は、フィルムの水蒸気透過度を低減させる方法であって、方法が、本発明のバリア層をフィルムに組み込むことを含み、フィルムが、ASTM F 1249-20によって測定された、本発明のバリア層を有さない同等の厚さのフィルムと比べて、少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、または約80%だけ低減している水蒸気透過度を有する、方法に関する。一部の態様では、フィルムは、多層または単層フィルムである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】[0060]
図1は、表1に記述されている通り、本発明の態様に従うフィルムおよび代替的な方法を使用して生成された比較用のフィルムについての、厚さに対して正規化された水蒸気透過度(WVTR)を示すグラフである。
【
図2】[0061]
図2は、本発明の非限定的な態様の概略図を示す:(a)ポリオレフィンおよび核形成剤(NA)混合物をブレンドして核形成剤マスターバッチ(NA MB)を生成するための溶融ミキサーの使用;(b)ポリオレフィンおよび炭化水素樹脂(HCR)をブレンドして炭化水素樹脂マスターバッチ(HCR MB)を生成するための溶融ミキサーの使用;(c)
図2(a)のNA MBおよび
図2(b)のHCR MBをブレンドして高バリアポリオレフィンマスターバッチ(HBP MB)を生成するための溶融ミキサーの使用。(d)NA混合物、HCRおよびポリオレフィンをブレンドして高バリアポリオレフィンマスターバッチ(HBP MB)を生成するための溶融ミキサーの使用。
【
図3】[0062]
図3は、溶融ミキサーが、HBP MBおよびバルクHDPEをブレンドして高バリアポリオレフィン(HBP)組成物を生成するために使用される、本発明の態様の概略図である。
【
図4】[0063]
図4は、溶融ミキサーが、NA MB、HCRまたはHCR MBおよびバルクHDPEをブレンドして、バリア層を形成するために好適なHBP組成物を生成するために使用される、本発明の態様の概略図である。
【詳細な説明】
【0060】
定義
[0064]ここで使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、単数のみを指定することが明示的に述べられているのでない限り、単数と複数の両方を指定する。
【0061】
[0065]ここで使用される場合、用語「約」および約という用語で条件付けされているか否かにかかわらず概して範囲の使用は、把握されている数字がここで明記される正確な数字に限定されないことを意味し、実質的に引用されている範囲内でありながら本発明の範囲から逸脱しない値を指すことが意図されている。ここで使用される場合、「約」は、それが使用されている文脈に従い適切なレベルの精度を反映して、小さいまたは実質的でない変動を許すことが、当業者には理解されるであろう。それが使用される文脈を考慮して当業者に明確でない用語の使用がある場合、「約」は、特定の用語のプラスマイナス10%までを意味することになる。
【0062】
[0066]用語「バリア」は、材料、たとえば層に関してここで使用される場合、酸素および水蒸気を含むがこれらに限定されない気体状、蒸気または液体であってよい1以上の分子または化合物の浸透を、材料が制御することを指し示す。
【0063】
[0067]ここで使用される場合、用語「を含む(comprises)」、「を含む(comprising)」、「を含む(includes)」、「を含む(including)」または同様の用語は、整数の一覧を含む方法、プロセス、システム、生成物、組成物または装置が、それらの整数のみを含むのではなく、挙げられていない他の整数も含んでもよい、非排他的な包含を意味することが意図されている。
【0064】
[0068]ここで使用される場合、用語「からなる」は、排他的用語であり、のみからなる、を意味する。
【0065】
[0069]ここで使用される場合、用語「から本質的になる」は、方法、プロセス、システム、生成物、組成物または装置の特性または機能を物質的に改変することもそれらに影響することもない、挙げられているもの以外の整数が含まれていてもよいことを意味する。
【0066】
[0070]ここで言及されるすべてのパーセンテージ(%)は、別段の指示がない限り、重量パーセンテージ(w/w)である。
【0067】
[0071]ここで言及されるポリマー分子量は、別段の指示がない限り、重量平均分子量(MW)である。
【0068】
[0072]ここで使用される場合、用語「マスターバッチ」は、担体材料内に成分が(好ましくは実質的に均質な分散を実現するために)分散されている、特定の添加物または添加物の混合物の濃縮物またはプレミックス組成物を指す。本明細書の文脈において、担体材料はポリオレフィンである。
【0069】
[0073]ここで使用される場合、用語「ポリオレフィン」は、オレフィンモノマーのポリマーを指す。ポリオレフィンは、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。「ホモポリマー」ポリオレフィンは、オレフィンから実質的になり(すなわち、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも97重量%)、故に、ホモポリマーが、好ましくは前記オレフィンを主に含む、ポリマーを指す。「コポリマー」ポリオレフィンは、1つのオレフィンおよび少なくとも1つの他のオレフィンの共重合から形成されているポリマーを指す。ポリオレフィンの非限定的な例は、ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)、超低密度直鎖状ポリエチレン(VLLDPE)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)およびプラストマーを含む。
【0070】
[0074]ここで使用される場合、用語「バルク高密度ポリエチレン」(「バルクHDPE」)は、マスターバッチ組成物が混合されてHBP組成物を形成する、HDPEを指す。
【0071】
[0075]ここで使用される場合、用語「HBP組成物」は、核形成剤および炭化水素樹脂を含み、バルクHDPEが、HBPマスターバッチ、または核形成マスターバッチおよび炭化水素樹脂マスターバッチ組成物と、ブレンドまたは混合された場合に生成される混合物を指す。
【0072】
[0076]ここで使用される場合、用語「フィルム」は、任意の厚さの実質的に平面状の材料を指してもよい。一部の態様では、ここで記述されている通りのフィルムは、約500μm以下、たとえば、約10μm~約500μm、好ましくは約20μm~約200μm、または約25μm~約100μm、または約30μm~約80μm、または約35μm~約70μm、または約40μm~約60μmの平均厚さを有する実質的に平面状の材料であることができる。本発明のフィルムは、たとえば、実質的に平面状のシートまたは織物の形態の、単層または多層フィルムであることができる。非平面配置または形状の形態の本発明のフィルムも企図されており、たとえば、フィルムは、成形プロセス、たとえばブロー成形または射出成形によって形成される物品において1以上の層を含んでいてもよい。射出成形は、部品およびケーシング、たとえばコーキングガンおよびシーラントカートリッジを調製するため、ならびに容器、たとえばボトルのブロー成形に使用されてもよい。
【0073】
[0077]ここで使用される場合、用語「層」は、実質的に均一な組成物を有する不連続なフィルム成分を指す。単層フィルムでは、用語「フィルム」および「層」は同義であろう。「層」または「バリア層」は、非平面配置または形状の形態であってもよい。
【0074】
[0078]ここで使用される場合、用語「多層」は、単一フィルム構造における複数の層を指す。層は、当技術分野において公知である任意の従来の手段(たとえば、共押出、積層、コーティングまたはそれらの組合せ)によって一緒に結合されうる。
【0075】
[0079]ここで使用される場合、用語「実質的に」は、大きいもしくは有意な程度まで、大部分が、またはほとんど、を意味する。すなわち、実質的にという用語は、あるパラメーター、測定、条件もしくは特色が絶対的ではないもしくはわずかに100%未満(たとえば、90%、95%、98%、99%)であるようなわずかな変動があってもよい、またはわずかな重要でない変動を有してもよいという条件付けをするために使用される。
【0076】
[0080]ここで使用される場合、用語「相乗効果」は、別個に使用された場合の各個々の成分の相加効果よりも大きい、2以上の成分によって生成された場合の効果を指す。たとえば、ここで開示される発明に従うバリア層を調製するために使用される場合の炭化水素樹脂および核形成剤の相乗的組合せは、バリア層のバリア特性を、炭化水素樹脂および核形成剤の使用により生じるまたはそれに起因しうる改良の総和または累積効果よりも大きい程度まで改良する。
略語
[0081]本明細書全体を通して使用される以下の略語は、以下の意味を有する:
[0082]「HBP」は、「高バリアポリオレフィン」を指す。
【0077】
[0083]「HCR」は、「炭化水素樹脂」を指す。
【0078】
[0084]「HDPE」は、「高密度ポリエチレン」を指す。
【0079】
[0085]「HHCR」は、「水素化炭化水素樹脂」を指す。
【0080】
[0086]「MB」は、「マスターバッチ」を指す。
【0081】
[0087]「MFI」は、「メルトフローインデックス」を指す。
【0082】
[0088]「MFR」は、「メルトフロー比」を指す。
【0083】
[0089]「NA」は、「核形成剤」を指す。
【0084】
[0090]「OTR」は、「酸素透過度」を指す。
【0085】
[0091]「WVTR」は、「水蒸気透過度」を指す。
態様の説明
[0092]本発明は、バリア特性を有するフィルムおよびそのようなフィルムを調製するための方法に概して関する。本発明は、比較的低濃度の炭化水素樹脂(特に、先行技術において不可欠であると考えられている閾値濃度未満の濃度)を含むポリオレフィン、たとえばポリエチレンが、良好な機械的特性および加工性とバランスが取れた好適なまたは改良されたバリア特性を実現することができるという、驚くべき所見を前提としている。
【0086】
[0093]特に、炭化水素樹脂および核形成剤は、これらの成分を含有するバリア層の、バリア特性、たとえばここで記述されている特性を改良するように相乗的に作用してもよいことが分かっている。すなわち、本発明に従う炭化水素樹脂および核形成剤の組合せは、炭化水素樹脂および核形成剤の総和または累積効果よりも大きくバリア層のバリア特性を改良してもよい。ここで開示される好ましい態様は、定義された比および/または量の核形成剤および炭化水素樹脂の使用に向けられる。一部の態様では、相乗効果は、炭化水素樹脂および核形成剤の累積効果よりも、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%大きい。
【0087】
[0094]有利なことに、マスターバッチ組成物は、良好な機械的特性、たとえば穿刺および引き裂き抵抗とバランスが取れた、改良されたバリアフィルム特性、たとえばより低いWVTRを実現するために低減した量または濃度の炭化水素樹脂を使用しながら、核形成剤の実質的に均質な分散を可能にしてもよい。
【0088】
[0095]好ましい態様では、本発明は、成分原料の実質的に均質なブレンドを含むマスターバッチ組成物、およびそのようなマスターバッチ組成物を生成する方法に関する。さらなる態様では、本発明は、高バリアポリオレフィン(HBP)組成物を形成するためのそのようなマスターバッチ組成物の使用、およびポリオレフィンフィルム中にHBP層を形成するためのHBP組成物の使用に関する。
【0089】
[0096]マスターバッチ技術は、本発明に従う高バリアポリオレフィン(HBP)層を調製するための、特に有効な技術である。有利なことに、フィルム中にバリア層を調製するためのマスターバッチ技術の使用は、1つ以上の利益、たとえば、ポリオレフィン、たとえばHDPE中における核形成剤および/または炭化水素樹脂の改良された分散、結果として生じたバリア層の結晶性特徴を改良すること、ならびに配合、溶融混合および/または押出プロセスの有効性を促進することを提供してもよい。
【0090】
[0097]好ましい態様では、マスターバッチ組成物の使用は、炭化水素樹脂を同じ時に導入する場合であっても、ポリオレフィン、たとえばHDPEの有効かつ実質的に均質な核形成を提供してもよい。さらなる態様では、核形成剤と炭化水素樹脂の両方を同じ時に含むマスターバッチ組成物、または同時にもしくは順次に使用される別個の核形成剤マスターバッチおよび炭化水素マスターバッチは、そのようなマスターバッチにおける好適な加工適性要件を保持しながら、各成分の必須量のバランスを取ってもよい。バリア層形成にそのようなマスターバッチを使用する場合、バリア層を含むフィルムは、良好な機械的特性を保持しながら、有意に改良されたバリア特性を実現することができる。
【0091】
[0098]したがって、好ましい態様では、そのようなマスターバッチならびにバリア層およびフィルムを調製する方法におけるそれらの使用は、生産中に全体的なコストの実現可能性を提供することができる。有利なことに、本発明の態様は、ポリオレフィン、たとえばHDPE中における炭化水素樹脂および核形成剤の実質的に均質なまたは均一な分散を実現することができる、選択された量または比でブレンドされた成分を提供する。さらなる態様では、そのようなマスターバッチおよびバリア層を調製する際のそれらの使用方法は、良好な機械的特性、たとえば穿刺および引き裂き抵抗を依然として保持しながら、特にWVTRに関して所望のバリア層抵抗を提供するために要求される炭化水素樹脂の量を有利に低減させることができる。炭化水素樹脂の量および濃度の低減は、全体的な製造コストを低下させることができ、これが有意な商業上の利点を提供する。
【0092】
[0099]ここで開示される発明の他の態様は、実質的に均質なブレンドを形成するために、たとえば、十分な滞留時間および混合のエネルギーを伴う好適なブレンディング技術を含む、方法に関する。
【0093】
[00100]驚くべきことに、本発明の態様に従って、比較的低濃度の炭化水素樹脂(たとえば、10%w/w未満のHCR濃度)の使用は、許容される機械的特性、たとえば穿刺および引き裂き抵抗を維持しながら、改良されたWVTRに導くことができる。これは、典型的なフィルムにおいて好適なWVTR性能、たとえばWVTRの約30%減少を実現するために、少なくとも約10%~20%w/wである比較的高濃度のHCRが要求されるという、当技術分野における従来の理解とは対照的である。
【0094】
[00101]引き裂き強度(機械方向および横方向に)は、フィルムにおける欠陥または裂け目の伸長に耐えるフィルムの能力である。これは、多くのフィルム用途において重要な特性である。配向効果を理由として、粗悪なフィルムは、フィルムにおいて欠陥または裂け目が始まると容易に裂ける望ましくない傾向を有することがある。引き裂き強度、またはより具体的には引き裂き伝播強度は、エルメンドルフ試験において振り子を活用して、機械方向と横方向の両方に一般的に測定される。この試験は、フィルムサンプルにおいて小さい裂け目として形成された引き裂きを伝播させるために要求されるエネルギーを測定する。
【0095】
[00102]穿刺抵抗は、材料において高応力領域を誘発する傾向がある突出および尖った構造からの損傷および穿刺に抵抗する、フィルムの処理能力を伴う。この特性は、材料を貫通するために要求される最大の力またはエネルギーの尺度である穿刺エネルギーによって、典型的には測定される。この種の二軸応力は、包装フィルムにおいて、硬い突起、たとえばペレット状の乾燥食品、たとえばシリアルおよびペットフード、ならびに冷凍野菜を包装する場合に見られる。
【0096】
[00103]本発明の好ましい態様は、バリア層の調製のために、核形成剤および炭化水素樹脂を別個にまたは組み合わせて含むマスターバッチ組成物、ならびにポリオレフィン、たとえばHDPEを使用する場合、炭化水素樹脂が、結果として生じたバリア層特性を依然として保持または改良しながら、低減した量(たとえば、10%w/w未満)で使用されてもよいという、驚くべき所見に基づく。他の態様では、マスターバッチ組成物の使用は、結果として生じた高バリアポリオレフィン組成物中における、マスターバッチ組成物内のおよび/またはバルクHDPEと一緒になった核形成剤および/または炭化水素樹脂の分散を改良し、それにより、結果として生じたバリア層の結晶性特徴を改良するならびに/または配合、溶融混合および/もしくは押出プロセスの有効性を補助する。
【0097】
[00104]したがって、1以上の態様では、本発明は、炭化水素樹脂、核形成剤、HCR MB、NA MBまたはHBP MBのうちの1つ以上をバルクHDPEと溶融混合または溶融配合する有効な方法を利用する。好ましい態様では、マスターバッチ技術を使用して、ポリオレフィン、たとえばHDPE中における炭化水素樹脂および/または核形成剤の実質的に均質なまたは均一な分散を生成してもよい。好ましい態様では、マスターバッチ技術を使用して、バリア層を生成するために、結果として生じた高バリアポリオレフィン組成物におけるバルクHDPE中の炭化水素樹脂および/または核形成剤の実質的に均質なまたは均一な分散を生成してもよい。本発明に従うマスターバッチ技術の使用は、比較的低濃度の炭化水素樹脂を含む、低減したWVTRを有するバリアフィルムが生成されることを予想外にも可能にする。
【0098】
[00105]有利なことに、フィルムにおける使用のためにバリア層を調製する場合、ここで記述されている通りの方法およびマスターバッチ組成物の使用は、フィルムにおいて、約38℃および90%の外部相対湿度で測定された約4g以下/m2/日の水蒸気透過度を付与することができる。
【0099】
[00106]1以上の態様では、バリア層を形成するために好適なHBP組成物は、適切な押出装置内、HCR MBおよびNA MBをバルクHDPEに溶融配合することによって調製されて、HBP組成物を形成してもよい。HCR MBおよびNA MBの量は、バリア層中におけるHCRおよびNAの所望の比を実現するために選択されてもよい。押出装置は、シングルパスまたはマルチパス押出機、好ましくはシングルパス押出機を含んでもよい。好ましい態様では、押出装置は二軸スクリュー押出機である。
【0100】
[00107]核形成剤および/または炭化水素樹脂をポリオレフィン、たとえばHDPEと混合して、マスターバッチを形成することにより、核形成剤または炭化水素樹脂を、それぞれ、加工中に直接組み込むことができる。故に、マスターバッチの使用は、核形成剤または炭化水素樹脂をバルクHDPEに組み込むための別個の配合工程の必要性を排除する。経済的考慮事項により、溶融混合および/または押出プロセス中にバルクHDPEに均一にブレンドされるマスターバッチの能力を損なうことなく、マスターバッチ中における望ましい濃度のHCRおよび/またはNAを実現することが好ましい。好ましい態様では、結果として生じたHBP組成物の所望の特性およびコストのバランスを依然として取りながら、マスターバッチ中における可能な限り高いHCR含有量を実現することが望ましい。
【0101】
[00108]核形成剤は、比較的乏しい混和性により、HDPE中に直接分散させることが概して困難であることが公知である。マスターバッチ中における核形成剤の実質的に均質な分散を生成するために、担体樹脂、たとえばポリオレフィン、たとえばHDPE中に、核形成剤を濃縮物として予め分散させるためのマスターバッチ技術の使用は、特に、核形成剤マスターバッチを炭化水素樹脂マスターバッチと共ブレンドしてHBPマスターバッチを形成し、次いでこれをバルクHDPEとその後ブレンドして、バリアフィルムを形成するために有用なHBP組成物を形成することができる場合、本発明のさらなる利点である。有利なことに、マスターバッチの使用は、少ない分量のNAを担体樹脂内に便利で制御可能な方式で分散させることを可能にすることができる。
マスターバッチ技術
[00109]用語「マスターバッチ」は、核形成剤(NA)もしくは炭化水素樹脂(HCR)、またはNAおよびHCRの組合せに関してここで使用される場合、ポリオレフィン樹脂、好ましくはポリエチレン樹脂、より好ましくはHDPE中に、比較的高濃度のNA、HCR、またはNAおよびHCRの組合せを含有する、組成物を指す。典型的には、炭化水素樹脂マスターバッチ(HCR MB)は、約5%~約80%w/w、または約2.5%~約70%w/w、または約2.5%~約60%w/w、または約10%~約70%w/w、または約20%~約60%w/w、または約5%~約50%w/w、または約7.5%~約45%w/w、または約10%~約40%w/w、または約30%~約50%w/wのHCRを含んでもよく、残りは、ここで記述されている通り、ポリオレフィン樹脂および任意に1種以上の従来の添加物である。典型的には、核形成剤マスターバッチ(NA MB)は、約0.1%~約30%w/w、または約0.2%~約25%w/w、または約0.3%~約25%w/w、または約0.2%~約15%w/w、または約0.3%~約20%w/w、または約0.3%~約15%w/w、または約0.5%~約20%w/w、または約0.5%~約15%、または約0.5%~約10%w/wの核形成剤を含んでもよく、残りは、ここで記述されている通り、ポリオレフィン樹脂および任意に1種以上の従来の添加物である。規模に応じて、適切な量(たとえば、一部またはすべて)のNA MBおよび/またはHCR MBをバルクHDPEとブレンドして、結果として生じたHBPマスターバッチまたはHBP組成物中における、所望の分量または濃度の核形成剤および/または炭化水素樹脂を得てもよい。
【0102】
[00110]本発明の利点は、均質な混合を実現する、好ましくは改良されたバリア特性をもたらすような手法で、押出プロセス中における少ない分量の核形成剤および/または炭化水素樹脂のバルクHDPEへの添加を可能にしてもよいことである。したがって、本発明の態様は、
ポリオレフィン担体、好ましくはHDPE樹脂中に核形成剤および炭化水素樹脂を含む高バリアポリオレフィンマスターバッチ(HBP MB)組成物;
ポリオレフィン担体、好ましくはHDPE樹脂中に核形成剤を含む核形成剤マスターバッチ(NA MB)、およびポリオレフィン担体、好ましくはHDPE樹脂中に炭化水素樹脂を含む炭化水素樹脂マスターバッチ(HCR MB);
ここで記述されている通りのNA MBおよびHCR MBを溶融混合することによって、またはNAおよびHCRをポリオレフィン担体、好ましくはHDPE樹脂と溶融混合することによって形成されるHBP MB組成物
に関する。
【0103】
[00111]マスターバッチ組成物は、バリア層を形成するために使用されるバルクHDPE樹脂に添加され、バルクHDPE樹脂とブレンドされてもよい。故に、マスターバッチ組成物中のポリオレフィン担体も、その後、バルクHDPE樹脂とブレンドされる。
【0104】
[00112]好ましい態様では、ポリオレフィン担体は、マスターバッチ組成物中において、バルクHDPEの粘度よりも低いかまたは近似している、結果として生じた粘度を提供するように、好ましくはマスターバッチ組成物とバルクHDPEとの間のブレンディングを促進するように選択される。
【0105】
[00113]別の態様では、核形成剤マスターバッチ中のポリオレフィン担体は、バルクHDPEのものよりも低い粘度を有する。さらなる態様では、核形成剤マスターバッチ中のポリオレフィン担体は、バルクHDPEのものよりも高いMFIを有するHDPEである。
【0106】
[00114]別の態様では、炭化水素樹脂マスターバッチ中のポリオレフィン担体は、バルクHDPEのものよりも高いまたは同様の粘度を有する。さらなる態様では、炭化水素樹脂マスターバッチ中のポリオレフィン担体は、バルクHDPEのものよりも低いまたは同様のMFIを有するHDPEである。
【0107】
[00115]マスターバッチを介する核形成剤および炭化水素樹脂の送達は、最終HBP組成物中における所望の分量の核形成剤および/または炭化水素樹脂のより均一な分散を促進することができることから、特に有利となることができる。加えて、マスターバッチを介する核形成剤および/または炭化水素樹脂の送達は結果として生じたバリア層の結晶性特徴も有利に改良してもよい。マスターバッチを介する核形成剤および/または炭化水素樹脂の送達は、良好な機械的特性を保持しながら、バリア層を形成するための配合、溶融混合および/または押出プロセスの有効性も有利に推進してもよい。好ましい態様では、本発明者らは、マスターバッチ組成物、および1以上の有利な特性を有するバリア層を形成するためのその使用方法を開発した。たとえば、使用したHCRの比較的低いレベルより、改良された加工適性、機械的特性、たとえば剛性は、生産コストを低下させた。
NAマスターバッチ
[00116]本発明のさらなる態様は、核形成剤マスターバッチ(NA MB)、およびそれを作製するための方法に関する。
【0108】
[00117]もう1つの好ましい態様では、核形成剤マスターバッチは、約0.1%~約30%w/w、または約0.2%~約25%w/w、または約0.2%~約15%w/w、または約0.3%~約25%w/w、または約0.3%~約20%w/w、たとえば約5%~約15%の核形成剤を含む。
【0109】
[00118]1以上の態様では、核形成剤マスターバッチは、約0.1%w/w~約1%w/w、または約1%w/w~約3%w/w、または約3%w/w~約5%w/w、または約5%w/w~約7%w/w、または約7%w/w~約8%w/w、または約8%w/w~約10%w/w、または約10%w/w~約12%w/w、または約12%w/w~約14%w/w、または約14%w/w~約16%w/w、または約16%w/w~約18%w/w、または約18%w/w~約20%w/w、または約20%w/w~約22%w/w、または約22%w/w~約25%w/w、または約25%w/w~約30%w/wの核形成剤を含んでもよい。
【0110】
[00119]別の態様では、本発明は、核形成剤を含む核形成剤混合物を、ポリオレフィン担体、好ましくはポリエチレンとブレンドして、核形成剤マスターバッチを形成することを含む、方法に関する。より好ましくは、ポリエチレンは、高密度ポリエチレン(HDPE)である。
【0111】
[00120]好ましくは、核形成剤混合物は、核形成剤およびポリオレフィン、好ましくはポリエチレンを含む。ポリエチレンは、ポリエチレン粉末であってもよい。好ましい態様では、核形成剤は、ポリエチレン粉末と乾式ブレンドされて、核形成剤混合物を形成してもよい。
【0112】
[00121]好ましくは、核形成剤混合物は、ここで記述されている通りの1種以上の添加成分を含む。
【0113】
[00122]本発明の別の態様は、ここで記述されている通りの方法によって生成される核形成剤マスターバッチに関する。
【0114】
[00123]好ましくは、核形成剤マスターバッチは、ここで記述されている通りの1種以上の添加成分を含む。
【0115】
[00124]代表的な態様は、
図2(a)において例証されている。
HCRマスターバッチ
[00125]別の態様では、本発明は、炭化水素樹脂マスターバッチ(HCR MB)およびそれを作製するための方法に関する。
【0116】
[00126]1以上の好ましい態様では、炭化水素樹脂マスターバッチは、約5%~約80%w/w、好ましくは約10%~約70%w/w、より好ましくは約20%~約60%w/w、さらに一層好ましくは約30%~約50%w/wの炭化水素樹脂を含む。
【0117】
[00127]1以上の態様では、炭化水素樹脂マスターバッチは、約5%w/w~約10%w/w、または約10%w/w~約15%w/w、または約15%w/w~約20%w/w、または約20%w/w~約25%w/w、または約25%w/w~約30%w/w、または約30%w/w~約35%w/w、または約35%w/w~約40%w/w、または約40%w/w~約45%w/w、または約45%w/w~約50%w/w、または約50%w/w~約55%w/w、または約55%w/w~約60%w/w、または約60%w/w~約65%w/w、または約65%w/w~約70%w/w、または約70%w/w~約80%w/wの炭化水素樹脂を含んでもよい。
【0118】
[00128]別の態様では、本発明は、炭化水素樹脂を、ポリオレフィン担体、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)とブレンドして、炭化水素樹脂マスターバッチを形成することを含む、方法に関する。
【0119】
[00129]好ましくは、炭化水素樹脂マスターバッチは、ここで記述されている通りの1種以上の添加成分を含む。
【0120】
[00130]本発明の別の態様は、ここで記述されている通りの方法によって生成される炭化水素樹脂マスターバッチに関する。
【0121】
[00131]この側面の代表的な態様は、
図2(b)において例証されている。
HBPマスターバッチ
[00132]さらなる態様では、本発明は、フィルム中にバリア層を形成するために使用されてもよい、高バリアポリオレフィン(HBP)マスターバッチ組成物に関する。
【0122】
[00133]HBPマスターバッチ(HBP MB)は、ポリオレフィン担体、好ましくはポリエチレン中に分散された、核形成剤および炭化水素樹脂を含む、濃縮組成物を指す。より好ましくは、ポリエチレンは、高密度ポリエチレン(HDPE)である。一態様では、HBP MBは、NA MBまたはNA混合物をHCR MBまたはHCRとブレンドすることによって生成されてもよい。別の態様では、HBP MBは、NAおよびHCRをHDPEとブレンドすることによって生成されてもよい。
【0123】
[00134]種々の態様では、HBPマスターバッチは、1種以上の核形成剤、好ましくは1種の核形成剤、1種以上の炭化水素樹脂、好ましくは1種の炭化水素樹脂を含み、HBPマスターバッチ組成物の残りは、ここで記述されている通り、ポリオレフィン担体、好ましくはポリエチレン、より好ましくはHDPE、および任意に1種以上の従来の添加物を含む。好ましくは、核形成剤は、HBPマスターバッチ中に、約0.1%~約30%w/w、または約0.2%~約25%w/w、または約0.2%~約15%w/w、または約0.3%~約25%w/w、または約0.3%~約20%w/w、または約0.3%~約15%w/w、または約0.5%~約20%w/w、または約0.5%~約15%、または約0.5%~約10%w/wの量で存在する。好ましくは、HCRは、HBPマスターバッチ中に、約5%~約80%w/w、または約2.5%~約70%w/w、または約2.5%~約60%w/w、または約10%~約70%w/w、または約20%~約60%w/w、または約5%~約50%w/w、または約7.5%~約45%w/w、または約10%~約40%w/w、または約30%~約50%w/wの量で存在する。
【0124】
[00135]1以上の態様では、HBPマスターバッチは、約0.2%w/w~約2%w/w、または約2%w/w~約4%w/w、または約4%w/w~約6%w/w、または約6%w/w~約8%w/w、または約8%w/w~約10%w/w、または約10%w/w~約12%w/w、または約12%w/w~約14%w/w、または約14%w/w~約16%w/w、または約16%w/w~約18%w/w、または約18%w/w~約20%w/w、または約20%w/w~約22%w/w、または約22%w/w~約25%w/wの核形成剤を含んでもよい。
【0125】
[00136]1以上の態様では、HBPマスターバッチは、約2.5%w/w~約5%w/w、または約5%w/w~約10%w/w、または約10%w/w~約15%w/w、または約15%w/w~約20%w/w、または約20%w/w~約25%w/w、または約25%w/w~約30%w/w、または約30%w/w~約35%w/w、または約35%w/w~約40%w/w、または約40%w/w~約45%w/w、または約45%w/w~約50%w/w、または約50%w/w~約60%w/w、または約60%w/w~約70%w/wの炭化水素樹脂を含んでもよい。
【0126】
[00137]別の側面では、本発明は、核形成剤(NA)および炭化水素樹脂(HCR)を含む高バリアポリオレフィンマスターバッチ(HBP MB)を生成するための方法であって、方法が、
(a)核形成剤を含む核形成剤混合物を、第1のポリオレフィンとブレンドして、核形成剤マスターバッチ(NA MB)を形成する工程と;
(b)炭化水素樹脂を第2のポリオレフィン中にブレンドして、炭化水素樹脂マスターバッチ(HCR MB)を形成する工程と;
(c)核形成剤マスターバッチおよび炭化水素樹脂マスターバッチをブレンドして、高バリアポリオレフィンマスターバッチ(HBP MB)を形成する工程と
を含む、方法に関する。
【0127】
[00138]別の側面では、本発明は、核形成剤(NA)および炭化水素樹脂(HCR)を含む高バリアポリオレフィンマスターバッチ(HBP MB)を生成するための方法であって、方法が、
核形成剤マスターバッチまたは核形成剤混合物を、炭化水素樹脂または炭化水素樹脂マスターバッチ、および任意にポリオレフィン、たとえば、ポリエチレン、たとえばHDPEとブレンドして、高バリアポリオレフィンマスターバッチ(HBP MB)を形成する工程を含む、方法に関する。
【0128】
[00139]好ましくは、第1のポリオレフィンは、ポリエチレン、より好ましくはHDPEである。
【0129】
[00140]好ましくは、第2のポリオレフィンは、ポリエチレン、より好ましくはHDPEである。
【0130】
[00141]工程(a)および工程(b)は、任意の順序で行われてもよい。
【0131】
[00142]本発明のこの側面の代表的な態様は、
図2(a)~2(c)において例証されている。
【0132】
[00143]1以上の態様では、核形成剤マスターバッチと炭化水素樹脂マスターバッチとの比は、約10:1~約1:100、または約25:4~約1:80、または約50:9~約1:70、または約5:1~約1:60、または約5:1~約1:50である。好ましくは、核形成剤マスターバッチと炭化水素樹脂マスターバッチとの比は、約5:1~約1:60、または約5:1~約1:50である。
【0133】
[00144]別の側面では、本発明は、核形成剤(NA)および炭化水素樹脂(HCR)を含む高バリアポリオレフィンマスターバッチ(HBP MB)を生成するための方法であって、方法が、
(i)核形成剤を含む核形成剤混合物、(ii)炭化水素樹脂および(iii)ポリオレフィンをブレンドして、高バリアポリオレフィンマスターバッチを形成する工程を含む、方法に関する。
【0134】
[00145]好ましくは、ポリオレフィンは、ポリエチレン、より好ましくはHDPEである。
【0135】
[00146]本発明のこの側面の代表的な態様は、
図2(d)において例証されている。
【0136】
[00147]上記の側面の一部の態様では、核形成剤および炭化水素樹脂は、マスターバッチ中に、約1:4~約1:200、好ましくは約1:7~約1:150、より好ましくは約1:10~約1:100または約1:15~約1:50の比で存在する。
【0137】
[00148]好ましい態様では、核形成剤混合物は、核形成剤およびポリオレフィン担体、好ましくはポリエチレンを含む。ポリエチレンは、ポリエチレン粉末であってもよい。好ましい態様では、核形成剤は、ポリエチレン粉末と乾式ブレンドされて、核形成剤混合物を形成する。
【0138】
[00149]第1および第2のポリオレフィンは、同じであっても異なっていてもよい。一部の態様では、第1および第2のポリオレフィンは、同じまたは異なるMFIを有してもよい。一部の態様では、第1および第2のポリオレフィンは、同じまたは異なる密度を有してもよい。一部の態様では、第1および/または第2のポリオレフィンは、ポリエチレン、好ましくはHDPEであり、ここで、HDPEは、同じであるかまたは異なっている。一部の態様では、第1および第2のポリオレフィンは、ポリエチレン、好ましくはHDPEであり、各HDPEは、同じまたは異なるMFIを有する。一部の態様では、第1および第2のポリオレフィンは、ポリエチレン、好ましくはHDPEであり、各HDPEは、同じまたは異なる密度を有する。好ましい態様では、第1のポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、より好ましくはHDPEは、第2のポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、より好ましくはHDPEよりも高いメルトインデックスを有する。
【0139】
[00150]他の態様では、HBPマスターバッチは、ここで記述されている通り、核形成剤マスターバッチ(NA MB)および炭化水素樹脂または炭化水素樹脂マスターバッチ(HCR MB)をブレンドすることによって生成されてもよい。
【0140】
[00151]本発明の側面は、ここで記述されている方法によって生成される高バリアポリオレフィンマスターバッチ(HBP MB)にも関する。好ましくは、HBPマスターバッチは、核形成剤および炭化水素樹脂の相乗的組合せを含む。
【0141】
[00152]好ましい態様では、ブレンディングは、溶融混合を含む。好ましくは、溶融混合は、実質的に均質な分散を生成するために十分な期間にわたって実施される。
【0142】
[00153]好ましい態様では、ブレンディングは、押出機、たとえば二軸スクリュー押出機を用いて実施される。
マスターバッチ調製
[00154]NA MB、HCR MB、およびHBP MBを含む、本発明に従うマスターバッチは、ここで開示される通りの方法を使用して調製されてもよい。マスターバッチを調製するための一般的な技術および装置は、当業者に公知であり、たとえばWO00/56806(Eastman)に記述されてもおり、その内容全体は、相互参照によりここに組み込まれる。
【0143】
[00155]好ましい態様では、マスターバッチは、溶融配合することによって形成される。一態様では、核形成剤および炭化水素樹脂は、ポリオレフィン担体、たとえばポリエチレン、好ましくはHDPE中で溶融配合されて、HBPマスターバッチを調製してもよい。溶融配合技術は、たとえば、HBPマスターバッチおよびバルクHDPEを溶融配合することによって、バリア層を調製するために使用されてもよい。
【0144】
[00156]好ましい態様では、溶融ブレンディングは、ポリオレフィン担体、たとえばポリエチレン、好ましくはHDPE中における核形成剤および炭化水素樹脂の有効な分散を有利に強化することから、マスターバッチ調製に使用される技術である。ポリオレフィン担体中における核形成剤および炭化水素樹脂の実質的に均一な分散が好ましく、何故なら、ポリオレフィン内の核形成剤および炭化水素樹脂の適正な分散、好ましくは均一なまたは均質な分散が望ましいバリア特性を促進することを、本発明者らが驚くべきことに見出したからである。同じく驚くべきことに、本発明者らは、改良された望ましいバリア特性が、低い割合の炭化水素樹脂を用いて実現されてもよいことを見出した。他の態様では、乾式ブレンディングは、マスターバッチ調製に使用されてもよい。
【0145】
[00157]1以上の態様では、マスターバッチは、選択された量の核形成剤および/または炭化水素樹脂を、ポリオレフィン担体、たとえばポリエチレン、好ましくはHDPE中、シングルパス押出機またはマルチパス押出機、好ましくは二軸スクリュー押出機内で溶融配合することによって形成されてもよい。例示的な態様では、二軸スクリュー押出機は、約150~220℃の一定の溶融温度をもたらすように設定されたバレルゾーンの温度を有する。
HBP組成物
[00158]別の側面では、本発明は、核形成剤および炭化水素樹脂の相乗的組合せを含む高バリアポリオレフィン(HBP)組成物を生成するための方法であって、方法が、核形成剤(NA)、炭化水素樹脂(HCR)およびポリオレフィン担体、たとえばポリエチレン、好ましくはHDPEをブレンドして、ここで記述されている通りのマスターバッチ組成物を使用して実質的に均質な分散を形成することを含む、方法に関する。
【0146】
[00159]好ましくは、HBP組成物は、核形成剤および炭化水素樹脂の相乗的組合せを含む。
【0147】
[00160]好ましくは、HBP組成物は、ここで記述されている通りの1種以上の添加成分を含む。
【0148】
[00161]この側面の種々の態様は、
図2~5において例証されている。
【0149】
[00162]ここで開示される態様に従って生成された、結果として生じたHBP組成物は、その後加工されて、バリア層を形成してもよい。バリア層を形成するための技術は、ここで記述されている。一態様では、バリア層は押出によって形成される。好適な押出技術は当技術分野において公知であり、代表的な技術はここで記述されている。
【0150】
[00163]1以上の態様では、ブレンディングは、成分を一緒にブレンドするために、それぞれの成分を溶融配合する(たとえば、溶融混合する)ことによって実現されてもよい。溶融配合は、当業者に公知の技術および装置、たとえば、押出機または他の好適なブレンディング装置を使用して実現されてもよい。押出機は、二軸スクリュー押出機または単軸スクリュー押出機であってもよい。好ましくは、押出機は、二軸スクリュー押出機である。
【0151】
[00164]1以上の態様では、好適な量または割合の核形成剤マスターバッチおよび炭化水素樹脂マスターバッチが、バルクHDPEと、溶融配合によってブレンドされてもよい。NAマスターバッチおよびHCRマスターバッチをバルクHDPEとブレンドすることによって、所望の量の核形成剤および炭化水素樹脂が、バルクHDPEと溶融配合するためにHBP組成物に導入されてもよい。NAマスターバッチは、HCRマスターバッチの前または後にバルクHDPEに導入されてもよい。あるいは、NAマスターバッチおよびHCRマスターバッチは、バルクHDPEに、同じまたは異なる速度で同時に導入されてもよい。
【0152】
[00165]ここで記述されている通りの態様に従い、核形成剤および炭化水素樹脂を含むHBPマスターバッチをバルクHDPEとともに添加する(たとえば、ブレンドする)ことによって、所望の量または割合の核形成剤および炭化水素樹脂が、バルクHDPEと溶融配合するためにHBP組成物に導入されてもよい。
【0153】
[00166]1以上の態様では、本発明は、高バリアポリオレフィン(HBP)組成物を生成するための方法であって、方法が、
(a)核形成剤を含む混合物を第1のポリオレフィン中にブレンドして、核形成剤マスターバッチ(NA MB)を形成する工程と;
(b)炭化水素樹脂を第2のポリオレフィン中にブレンドして、炭化水素樹脂マスターバッチ(HCR MB)を形成する工程と;
(c)核形成剤マスターバッチおよび炭化水素樹脂マスターバッチをブレンドして、高バリアポリオレフィンマスターバッチ(HBP MB)を形成する工程と;
(d)高バリアポリオレフィンマスターバッチ(HBP MB)およびバルクHDPEをブレンドして、高バリアポリオレフィン(HBP)組成物を形成する工程と
を含む、方法に関する。
【0154】
[00167]1以上の態様では、本発明は、高バリアポリオレフィン(HBP)組成物を生成するための方法であって、方法が、
(a)核形成剤マスターバッチまたは核形成剤混合物を、炭化水素樹脂または炭化水素樹脂マスターバッチ、および任意にポリオレフィン、たとえば、ポリエチレン、たとえばHDPEとブレンドして、高バリアポリオレフィンマスターバッチ(HBP MB)を形成する工程と、
(b)高バリアポリオレフィンマスターバッチ(HBP MB)およびバルクHDPEをブレンドして、高バリアポリオレフィン(HBP)組成物を形成する工程と
を含む、方法に関する。
【0155】
[00168]代表的な態様は、
図2および3において例証されている。
【0156】
[00169]1以上の態様では、本発明は、高バリアポリオレフィン(HBP)組成物を生成するための方法であって、方法が、
(a)核形成剤を含む混合物を第1のポリオレフィン中にブレンドして、核形成剤マスターバッチ(NA MB)を形成する工程と;
(b)炭化水素樹脂を第2のポリオレフィン中にブレンドして、炭化水素樹脂マスターバッチ(HCR MB)を形成する工程と;
(c)核形成剤マスターバッチ、炭化水素樹脂マスターバッチおよびバルクHDPEをブレンドして、高バリアポリオレフィン(HBP)組成物を形成する工程と
を含む、方法に関する。
【0157】
[00170]好ましくは、第1のポリオレフィンは、ポリエチレン、より好ましくはHDPEである。
【0158】
[00171]好ましくは、第2のポリオレフィンは、ポリエチレン、より好ましくはHDPEである。
【0159】
[00172]代表的な態様は、
図2(a)、2(b)および4において例証されている。
【0160】
[00173]当業者ならば、それぞれのマスターバッチ組成物中におけるこれらの成分の濃度を考慮して、所望の分量または濃度の核形成剤および炭化水素樹脂を有するHBP組成物を生成するために一緒にブレンドされるべきそれぞれのマスターバッチおよびバルクHDPEの好適な分量を、容易に決定することができるであろう。1以上の態様では、核形成剤マスターバッチの量は、HBP組成物の約0.04%~約30%w/wの範囲内であってもよく、炭化水素樹脂マスターバッチの量は、HBP組成物の約0.14%~約70%w/wの範囲内であってもよい。
【0161】
[00174]1以上の態様では、HBP組成物は、約0.04%w/w~約0.1%w/w、または約0.1%w/w~約0.5%w/w、または約0.5%w/w~約1%w/w、または約1%w/w~約3%w/w、または約3%w/w~約5%w/w、または約5%w/w~約7%w/w、または約7%w/w~約8%w/w、または約8%w/w~約10%w/w、または約10%w/w~約12%w/w、または約12%w/w~約14%w/w、または約14%w/w~約16%w/w、または約16%w/w~約18%w/w、または約18%w/w~約20%w/w、または約20%w/w~約22%w/w、または約22%w/w~約25%w/w、または約25%w/w~約30%w/wの核形成剤マスターバッチを含んでもよい。
【0162】
[00175]1以上の態様では、HBP組成物は、約0.14%w/w~約1%w/w、または約1%w/w~約5%w/w、または約5%w/w~約10%w/w、または約1%w/w~約10%w/w、または約10%w/w~約20%w/w、約20%w/w~約25%w/w、または約25%w/w~約30%w/w、または約30%w/w~約35%w/w、または約35%w/w~約40%w/w、または約40%w/w~約45%w/w、または約45%w/w~約50%w/w、または約50%w/w~約55%w/w、または約55%w/w~約60%w/w、または約60%w/w~約65%w/w、または約65%w/w~約70%w/wの炭化水素樹脂マスターバッチを含んでもよい。
【0163】
[00176]1以上の態様では、核形成剤マスターバッチまたは核形成剤混合物および炭化水素樹脂または炭化水素樹脂マスターバッチが、バルクHDPEとブレンドされて、HBP組成物内に分散された所望のまたは好適な分量および分布の核形成剤および炭化水素樹脂を有するHBP組成物を生成する、特に、相乗効果を実現する。
【0164】
[00177]1以上の態様では、好適な量のHBPマスターバッチが、バルクHDPEと、溶融配合によってブレンドされてもよい。1以上の態様では、約0.2%~約75%w/wの範囲内の量のHBPマスターバッチが、所望の分量のバルクHDPE樹脂と組み合わされて、所望の分量または割合および分散の核形成剤および炭化水素樹脂を有するHBP組成物を生成してもよい。
【0165】
[00178]1以上の態様では、HBP組成物は、約0.2%w/w~約2%w/w、または約2%w/w~約4%w/w、または約4%w/w~約6%w/w、または約6%w/w~約8%w/w、または約8%w/w~約10%w/w、または約10%w/w~約12%w/w、または約12%w/w~約14%w/w、または約14%w/w~約16%w/w、または約16%w/w~約18%w/w、または約18%w/w~約20%w/w、または約20%w/w~約22%w/w、または約22%w/w~約25%w/w、または約25%w/w~約30%w/w、または約30%w/w~約35%w/w、または約35%w/w~約40%w/w、または約40%w/w~約45%w/w、または約45%w/w~約50%w/w、または約50%w/w~約55%w/w、または約55%w/w~約60%w/w、または約60%w/w~約65%w/w、または約65%w/w~約70%w/w、または約70%w/w~約75%w/wのHBPマスターバッチを含んでもよい。
【0166】
[00179]一態様では、バルクHDPE樹脂とブレンドされるHBPマスターバッチの量は、マスターバッチ組成物およびHDPEの総重量に基づき、約7重量%である。
【0167】
[00180]もう1つの好ましい態様では、核形成剤マスターバッチは、約0.1%~約30%w/wの核形成剤を含む。
【0168】
[00181]1以上の態様では、核形成剤マスターバッチは、約0.1%w/w~約1%w/w、または約1%w/w~約3%w/w、または約3%w/w~約5%w/w、または約5%w/w~約7%w/w、または約7%w/w~約8%w/w、または約8%w/w~約10%w/w、または約10%w/w~約12%w/w、または約12%w/w~約14%w/w、または約14%w/w~約16%w/w、または約16%w/w~約18%w/w、または約18%w/w~約20%w/w、または約20%w/w~約22%w/w、または約22%w/w~約25%w/w、または約25%w/w~約30%w/wの核形成剤を含んでもよい。
【0169】
[00182]もう1つの好ましい態様では、炭化水素樹脂マスターバッチは、約5%~約80%w/wの炭化水素樹脂を含む。
【0170】
[00183]1以上の態様では、炭化水素樹脂マスターバッチは、約5%w/w~約10%w/w、または約10%w/w~約15%w/w、または約15%w/w~約20%w/w、または約20%w/w~約25%w/w、または約25%w/w~約30%w/w、または約30%w/w~約35%w/w、または約35%w/w~約40%w/w、または約40%w/w~約45%w/w、または約45%w/w~約50%w/w、または約50%w/w~約55%w/w、または約55%w/w~約60%w/w、または約60%w/w~約65%w/w、または約65%w/w~約70%w/w、または約70%w/w~約80%w/wの炭化水素樹脂を含んでもよい。
【0171】
[00184]1以上の態様では、核形成剤マスターバッチと炭化水素樹脂マスターバッチとの比は、約10:1~約1:100、または約25:4~約1:80、または約50:9~約1:70、または約5:1~約1:60、または約5:1~約1:50である。
【0172】
[00185]好ましくは、核形成剤マスターバッチと炭化水素樹脂マスターバッチとの比は、約5:1~約1:60、または約5:1~約1:50である。
【0173】
[00186]好ましくは、核形成剤混合物は、核形成剤およびポリエチレンを含む。ポリエチレンは、ポリエチレン粉末であってもよい。好ましい態様では、核形成剤は、ポリエチレン粉末と乾式ブレンドされて、核形成剤混合物を形成する。
【0174】
[00187]好ましい態様では、ポリオレフィンは、ポリエチレン、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)である。したがって、1以上の態様では、核形成剤マスターバッチおよび炭化水素樹脂マスターバッチと、炭化水素樹脂および核形成剤混合物と、または核形成剤マスターバッチおよび炭化水素樹脂と溶融配合されて、HBP組成物を形成するバルクHDPEは、それぞれのマスターバッチ組成物中に含有されるHDPEと同じであっても異なっていてもよい。マスターバッチ組成物中のポリオレフィン、好ましくはHDPEは、長鎖分枝なしに本質的に直鎖状であることが、概して好ましい。好ましい態様では、マスターバッチ組成物中のポリオレフィン、好ましくはHDPEは、マスターバッチ組成物とブレンドされてHBP組成物を形成するバルクHDPEと同じ種類またはグレードのものであり、何故なら、これは、非適合性の問題、または異なる種類もしくはグレードのHDPE樹脂の使用から生じる場合があるバリア層の特性の希薄化もしくは劣化のリスクを回避するまたは最小化することができるからである。好ましくは、マスターバッチ組成物中のポリオレフィン、好ましくはHDPEであるポリオレフィン、およびバルクHDPEは、長鎖分枝なしに本質的に直鎖状である。
炭化水素樹脂
[00188]本発明において有用な炭化水素樹脂(HCR)は、石油クラッキングプロセスにおいて生成された粗オレフィンフィード、または環状オレフィンコポリマーに由来する、低分子量材料を含む。これらの粗オレフィンフィードの例は、オレフィン分子1個当たり5個の炭素原子の平均炭素数を有する軽質オレフィン画分(C5フィード)またはオレフィン分子1個当たり平均6~9個の炭素原子を有する環状オレフィンを含む。ジシクロペンタジエン(DCPD)が豊富なオレフィンストリームから、テルペンオレフィン、たとえば柑橘類製品に由来するリモネンから生成される、または、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン、ノルボルネンおよびビニルトルエンからなる群から選択される1以上の純粋モノマー原料の重合に由来する、炭化水素樹脂も、利用されてもよい。
【0175】
[00189]1以上の態様では、炭化水素樹脂は、約10,000ダルトン以下の重量平均分子量(MW)を有する。一部の態様では、炭化水素樹脂は、約5,000ダルトン以下、好ましくは約2,000ダルトン以下、より好ましくは約1,000ダルトン以下の重量平均分子量(MW)を有し、最も好ましくは、ここで、炭化水素樹脂は、約400~約800ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0176】
[00190]樹脂のMWは、たとえば、ポリスチレンを標準として使用するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を含む、当業者に公知である技術を使用して、決定することができる。
【0177】
[00191]一部の態様では、炭化水素樹脂は、ポリオレフィン担体とのその適合性を補助するために特徴が脂肪族であり、好ましくはここでポリオレフィンがHDPEであることが好ましい。脂肪族系樹脂である炭化水素樹脂は、他の不飽和モノマー、たとえばエチレンとの共重合によって、または不飽和の特徴を有する炭化水素樹脂を接触水素化によって変換することによって、調製することができる。水素化により、炭化水素樹脂中の残存不飽和オレフィンおよび/または芳香族基は、水素による還元によって飽和種に変換される。水素化反応は、種々の条件下で行うことができ、例は、約150℃~約320℃の範囲内の温度で、約50乃至約2,000psiの水素圧を使用し、触媒、たとえばNi金属担持カーボンブラックの存在下である。
【0178】
[00192]好ましい態様では、ここで記述されている炭化水素樹脂は、水素化炭化水素樹脂(HHCR)または環状オレフィンコポリマーであってもよい。そのような水素化炭化水素樹脂は、部分的にまたは完全に水素化されていてもよい。一態様では、残存不飽和基が少ない水素化樹脂が所望されることがある。たとえば、好ましい種類の水素化炭化水素樹脂は、約80%超、好ましくは約90%超、さらに一層好ましくは約95%超の、水素化された残存オレフィンおよび/または芳香族基を有してもよい。
【0179】
[00193]1以上の態様では、炭化水素樹脂は、水素化C5樹脂、C9樹脂、ノルボルネンエチレンコポリマー樹脂、水素化芳香族樹脂および水素化ジシクロペンタジエン樹脂、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択される水素化炭化水素樹脂を含む。
【0180】
[00194]炭化水素樹脂の代表例は、粗C5および/またはC9原料の重合に由来する樹脂であり、これらは水素化されている。C5原料は、1分子当たり約5個の炭素原子を有する炭化水素オレフィン成分で構成される石油クラッキング中に生成されたオレフィンストリームである。C5フィードにおいて見られるオレフィンの例は、trans-1,3-ペンタジエン、cis-1,3-ペンタジエン、2-メチル-2-ブテン、シクロペンタジエン、シクロペンテン、およびジシクロペンタジエンを含むがこれらに限定されない。C9原料は、1分子当たり約9個の炭素原子を有する炭化水素オレフィン成分で構成される石油クラッキング中に生成されたオレフィンストリームである。C9フィードにおいて見られるオレフィンの例は、スチレン、α-メチルスチレン、インデン、種々のメチル置換インデン、4-メチルスチレン、β-メチルスチレンおよびエチルスチレンを含むがこれらに限定されない。
【0181】
[00195]一態様では、炭化水素樹脂は、水素化C5炭化水素樹脂、水素化C9炭化水素樹脂またはノルボルネンエチレンコポリマー樹脂を含む。
【0182】
[00196]別の態様では、炭化水素樹脂は、水素化C5/C9炭化水素樹脂を含む。そのような樹脂は、当技術分野において公知の技術を使用して、たとえば、C5およびC9原料を共重合させることおよび結果として生じた樹脂を水素化することによって、またはそのような原料に由来する水素化樹脂をブレンドすることによって、生成されてもよい。
【0183】
[00197]本発明に従う使用に好適な炭化水素樹脂の別の例は、ジシクロペンタジエン(DCPD)が豊富なオレフィンフィードの重合に由来する樹脂である。DCPDが豊富な炭化水素樹脂は、約50%乃至約100%のDCPDを含有するオレフィンストリームを、約200℃~約325℃の範囲内の温度で熱的に重合させて、水素化されて完全飽和材料を形成することができる樹脂生成物を生成することにより、生成することができる。別の態様では、炭化水素樹脂は、水素化ジシクロペンタジエン樹脂を含んでもよい。
【0184】
[00198]本発明に従って利用することができる炭化水素樹脂の別の例は、純粋モノマー、たとえばスチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン、ビニルトルエン、またはこれらのもしくは同様の純粋モノマー原料の任意の組合せの重合に由来する樹脂である。この重合によって生成される生成物は、特徴が芳香族であるが、上述したものと同様のプロセスを介する接触水素化によって脂肪族系樹脂に変換されてもよい。別の態様では、炭化水素樹脂は、水素化芳香族樹脂を含んでもよい。
【0185】
[00199]別の例では、本発明に従う使用に好適な炭化水素樹脂は、テルペンオレフィン、たとえばα-ピネン、β-ピネン、またはd-リモネンの重合に由来してもよい。これらの樹脂は脂肪族系材料であり、脂肪族の特徴を実現するために、水素化は概して要求されない。
【0186】
[00200]したがって、1以上の態様では、炭化水素樹脂は、水素化C5樹脂、水素化C9樹脂、ノルボルネンエチレンコポリマー樹脂、水素化芳香族樹脂、水素化ジシクロペンタジエン樹脂、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0187】
[00201]好ましくは、本発明における使用に好適な水素化炭化水素樹脂は、低い軟化点を有し、これは、好ましくは180℃未満である。低い軟化点は、樹脂の適合性および樹脂が分散されているポリオレフィンとの相互作用を推進するのを助けることができ、ここで、ポリオレフィンは好ましくはHDPEである。
【0188】
[00202]水素化炭化水素樹脂の軟化点は、当業者に公知の方法および技術を使用して決定されてもよい。樹脂の軟化点を測定するための例示的な方法は、ASTM E28に記述されている環球法である。
【0189】
[00203]1以上の態様では、水素化炭化水素樹脂は、ASTM E28に従って測定された、約160℃未満、好ましくは約150℃未満、より好ましくは約140℃未満、好ましくは約124℃の軟化点を有する。
【0190】
[00204]好ましい態様では、炭化水素樹脂は水素化炭化水素樹脂であり、好ましくは、水素化炭化水素樹脂は、ASTM E28に従って測定された、約140℃未満の軟化点を有する。
【0191】
[00205]ある範囲の市販の水素化炭化水素樹脂は、本発明に従う使用に好適となりうる。市販の水素化炭化水素樹脂の非限定的な代表例は、ピコタック1115、Eastotac(商標)H-100W、H-115W、H-130WおよびH-142W;Regalite(商標)R1090およびR1125(Eastman Chemical companyから市販されている);アルコンP100、アルコンP125、アルコンP140(日本の荒川化学工業株式会社から市販されている);ビトナーLH3115、LH3100、DH1100、DH1120、LH3100WおよびLH2100W(Qingdao Bater Chemical Co.,Ltdから市販されている);フークリアFD-100、フークリアFD-120(UPM Sun-Tackから市販されている);Oppera(商標)およびEscorez(商標)樹脂(ExxonMobil Chemical Companyから市販されている);水素化DCPD樹脂のHCR-D100シリーズ(Puyang Tiancheng Chemical Companyから市販されている);Regalrez(商標)炭化水素樹脂(Eastman Chemical Companyから市販されている);ならびにクリアロンPシリーズ樹脂(日本のヤスハラケミカル株式会社から市販されている)を含む。
【0192】
[00206]本発明の態様に従って特に有用となりうる市販の水素化炭化水素樹脂の例は、Escorez(商標)5320、Escorez(商標)5340、Topas(登録商標)8007F-04、Oppera(商標)PR100NおよびOppera(商標)PR120を含む。
【0193】
[00207]本発明の1以上の態様の利点は、比較的少量の炭化水素樹脂が、本発明のフィルムのバリア層に組み込まれてもよいことである。有利なことに、少ない分量の炭化水素樹脂、特に水素化炭化水素樹脂は、核形成剤およびバルクHDPEとブレンドされて、バリア特性、特にWVTRにおける実質的な改良を実現できることが分かっている。
【0194】
[00208]1以上の態様では、炭化水素樹脂は、バリア層中に、バリア層の成分の総重量に基づき、約0.1重量%~約10重量%の量で含まれてもよい。特定の態様では、バリア層は、0.5重量%~約7重量%まで、好ましくは1重量%~約4重量%までの炭化水素樹脂を含む。好ましくは、炭化水素樹脂は、水素化炭化水素樹脂または環状オレフィンコポリマーである。
核形成剤
[00209]核形成剤は、ポリマー溶融物中に核を形成する添加物であり、これは、溶融状態から凝固すると、ポリマー中における結晶成長および小さいけれども多数の結晶性領域の形成を推進する。
【0195】
[00210]任意の好適かつ有効な核形成剤が、本発明に従って使用されてもよい。好ましい核形成剤は、ポリオレフィン担体に適合し、ポリオレフィン中に分散でき、好ましくは、ここでポリオレフィンはポリエチレン、好ましくはHDPEである。ポリオレフィン適合性の、好ましくはHDPE適合性の核形成剤は、無機または有機であってもよい。2種以上の核形成剤の組合せが使用されてもよい。好ましい態様では、単一の核形成剤が使用される。
【0196】
[00211]無機核形成剤は、ナノスケール微粒子無機材料であってもよい。無機核形成剤の例は、炭酸カルシウム;タルク;硫酸バリウム;二酸化ケイ素;炭素粒子、たとえば膨張化黒鉛またはカーボンナノチューブ;多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS);ナノクレイ、たとえばハロイサイトおよびモンモリロナイト;ケイ酸塩鉱物、たとえばバーミキュライト;ならびにそれらの組合せを含むがこれらに限定されない。
【0197】
[00212]有機核形成剤は、好適な有機材料であってもよい。有機核形成剤の例は、カルボン酸金属塩、たとえば安息香酸金属塩、フタレート金属塩、ヒドロフタル酸金属塩およびビシクロヘプタンジカルボン酸金属塩;ホスフェート;アントラセン;亜鉛モノグリセロレート;ベンゾエート;ジベンジリデンソルビトールの有機誘導体;ソルビトールアセタール;分枝アルキルホスホン酸の金属塩;環状有機ホスフェート金属塩;ならびにそれらの組合せを含むがこれらに限定されない。
【0198】
[00213]核形成剤の他の例は、当業者に公知であり、たとえば、WO2022/226247、WO2022/226249およびWO2022/226250(Milliken)に記述されており、それらの内容全体は、相互参照によりここに組み込まれる。
【0199】
[00214]1以上の態様では、核形成剤は、ヒドロフタル酸金属塩、ビシクロヘプタンジカルボン酸金属塩、またはそれらの組合せから選択される。一態様では、ヒドロフタル酸金属塩は、ヘキサヒドロフタル酸金属塩またはヘプタヒドロフタル酸金属塩である。一態様では、核形成剤は、好ましくはヘキサヒドロフタル酸金属塩である。
【0200】
[00215]核形成剤の金属塩は、亜鉛、マグネシウム、ナトリウムおよびカルシウム塩、ならびにそのような金属塩の混合物を含むがこれらに限定されない。
【0201】
[00216]一態様では、核形成剤は、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸二ナトリウム塩であり、これは、MillikenからHyperform(登録商標)HPN-68Lで市販されている。別の好ましい態様では、核形成剤は、ヘキサヒドロフタル酸カルシウム塩であり、これは、MillikenからHyperform(登録商標)HPN-20Eで市販されている。これらの核形成剤の組合せも使用してもよい。
【0202】
[00217]核形成剤は、バリア層中に有効量で存在してもよく、概して、バリア層中の成分の総重量に基づき、約0.01重量%~約1重量%の量で存在することができる。一態様では、核形成剤は、バリア層中に、約0.03重量%~約0.5重量%の量で存在する。特定の態様では、核形成剤は、バリア層中に、約0.05重量%~約0.2重量%、または約0.075重量%~約0.125重量%の量で存在してもよい。
高密度ポリエチレン(HDPE)
[00218]高密度ポリエチレン(HDPE)は、ポリエチレンの好ましい態様であり、これは、ここで開示される通りのマスターバッチ組成物において使用されるポリオレフィン担体の好ましい態様である。
【0203】
[00219]HDPEは、マスターバッチ組成物が混合されてHBP組成物を形成する樹脂でもある。この文脈において、HDPEはバルクHDPEと称される。
【0204】
[00220]HDPEは、概して直鎖状ポリマーがポリマー鎖中に低レベルの分枝を有する、ポリエチレンのクラスである。その規則的な構造の結果として、HDPEは、高度に結晶性の材料である。好ましくは、HDPEは、層およびフィルムを形成するために好適なものから選択される。
【0205】
[00221]一部の好ましい態様では、HDPEは、「実質的に直鎖状」である。これは、HDPEが、長鎖分枝を本質的に含まず、分子量分布が比較的狭いことを意味する。長鎖分枝は、NMR、3D-GPC、およびレオロジーによって測定することができる。
【0206】
[00222]1以上の態様では、本発明に従って有用なHDPEは、エチレンのホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。したがって、用語「高密度ポリエチレン」および「HDPE」は、エチレンのホモポリマーおよびエチレンのコポリマーを表示するためにここで使用される。
【0207】
[00223]用語「エチレンホモポリマー」は、実質的に(すなわち、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも97重量%)エチレンからなるエチレンポリマーを指し、故に、ポリエチレンホモポリマーは、好ましくは、エチレンモノマーを主に含む。
【0208】
[00224]用語「エチレンコポリマー」は、エチレンおよび少なくとも1つのコモノマーの共重合から形成されるポリマーを指す。好ましくは、コモノマーは、少なくとも1つのアルファ-オレフィンである。アルファ-オレフィンコモノマーは、3~20個の炭素原子、好ましくは4~8個の炭素原子を含んでもよい。一部の態様では、アルファ-オレフィンコモノマーは、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。1つの優先傾向では、アルファ-オレフィンコモノマーは、C4、C5およびC6アルケン、ならびにそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンおよびそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0209】
[00225]1以上の態様では、本発明に従う使用に好適なHDPEは、23℃で約0.94~約0.97g/cm3の範囲内の密度を有してもよい。HDPEの密度は、当業者により、公知の技術を使用して決定することができる。例示的な技術は、ASTM D792に記述されている。密度は、HDPE結晶化度の尺度であり、ここで、より高い密度は、ポリマーによって開発された、より高いレベルの結晶化度に関する。
【0210】
[00226]好ましい態様では、HDPE(たとえば、バルクHDPEを含む)は、ASTM D792に従って測定された、23℃で少なくとも約0.940g/cm3の密度を有する。一態様では、HDPEは、ASTM D792に従って測定された、23℃で約0.95~約0.965g/cm3の範囲内の密度を有してもよい。
【0211】
[00227]バルクHDPEは、ISO 1133に従って測定された、190℃および2.16kgで約0.08~40.0g/10分の範囲内のメルトフローインデックス(MFI)を有してもよい。メルトフローインデックス(MFI)は、HDPE樹脂の流動性および加工適性の指標を提供し、その溶融した状態でのHDPEの粘度に関する。MFIは、HDPE樹脂中におけるポリマー鎖の平均分子量にも関していてもよい。定義された荷重および温度におけるより低いメルトインデックスは、HDPEについて、より高い粘度およびより高い平均分子量を指し示すものである。1以上の好ましい態様では、HDPEは、ISO 1133に従って測定された、190℃および2.16kgで約0.08~20.0g/10分、または約0.10~10g/10分、または約0.10~4g/10分、または約0.5~3g/10分、または約0.8~2.0g/10分の範囲内のMFIを有する。
【0212】
[00228]1以上の態様では、HDPEのMFIは、関連性のあるマスターバッチの1つ以上においてポリオレフィン担体として使用される場合、バルクHDPEのMFIと同じであるかまたは異なっている。好ましい態様では、核形成剤マスターバッチ中のHDPEは、バルクHDPEのものよりも高いMFIを有する。好ましい態様では、炭化水素樹脂マスターバッチ中のHDPEは、バルクHDPEのものよりも低いまたは同様のMFIを有する。
【0213】
[00229]ポリエチレンは、異なる分子量の分布を持つポリマー分子の混合物で概して構成され、これは、分子量分布曲線でグラフ表現することができる。1以上の態様では、HDPEは、約5,000~5,000,000g/molの範囲内の重量平均分子量を有してもよい。
【0214】
[00230]一部の態様では、2つの異なるせん断速度で測定されたHDPEの粘度の比は、HDPEについて分子量分布の幅の指標を提供するために使用されてもよい。一部の事例において、190℃の標準条件下で、21.6kgの荷重で測定されたMFIと、同じ条件下で、2.16kgの荷重で測定されたMFIとの比(たとえば、MI21/MI2)であるメルトフローインデックス比(MFR)は、分子量分布の幅の指標を提供することができる。本発明の一部の態様では、バルクHDPEは、100未満、好ましくは70未満、より好ましくは60未満のMI21/MI2メルトフローインデックス比(MFR)を有する。一部の態様では、樹脂のMFRは、50未満、より好ましくは45未満である。
【0215】
[00231]1以上の態様では、HDPEは、少なくとも1つのポリエチレンポリマーを含み、2つ以上のポリエチレンポリマーのブレンド、たとえばポリエチレンコポリマーおよびポリエチレンホモポリマーのブレンド、または異なる分子量および/または組成の2つ以上のポリエチレンホモポリマーまたはコポリマーのブレンドを含んでもよい。
【0216】
[00232]本発明の態様に従って、ここで記述されているHDPEは、1種以上の他の添加物を任意に含有してもよい。添加物の代表例は、酸化防止剤(一次および二次酸化防止剤を含む)、制酸金属塩、難燃剤、滑沢剤、UV安定剤、帯電防止剤、加工助剤等を含む。所望ならば、そのような添加物が、押出機に添加され、関連性のあるマスターバッチまたはHBP組成物に溶融配合されてもよい。
【0217】
[00233]誤解を避けるために、ここで記述されている各それぞれの態様について、核形成剤、炭化水素樹脂およびポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、より好ましくはHDPEは、ここで記述されているものの何れか1つから選択されてもよい。
バリア層
[00234]別の側面では、本発明は、バリア層を生成するための方法であって、方法が、ここで記述されている通りのHBP組成物からバリア層を形成することを含む、方法に関する。本発明の追加の態様は、そのような方法によって生成されるバリア層にも関する。
【0218】
[00235]好ましい態様では、HBP組成物は、押出されてバリア層を形成する。
【0219】
[00236]別の態様では、本発明は、ここで記述されている通りの方法によって生成されるバリア層を提供する。
【0220】
[00237]別の側面では、本発明は、フィルムにおける使用のためにバリア層を調製するための方法であって、方法が、核形成剤、炭化水素樹脂およびポリオレフィンの相乗的組合せを含むHBPマスターバッチを、バルクHDPEとブレンドして、HBP組成物を形成すること;ならびに、結果として生じたブレンドされたHBP組成物からバリア層を形成することを含み、ここで、ポリオレフィンが、好ましくはポリエチレン、より好ましくはHDPEである、方法に関する。
【0221】
[00238]別の態様では、HBP組成物は、炭化水素樹脂マスターバッチを使用せずに、核形成剤マスターバッチ、ポリオレフィンおよび炭化水素樹脂をブレンドすることによって形成されてもよく、ここで、ポリオレフィンは、好ましくはポリエチレン、より好ましくはHDPEである。
【0222】
[00239]本発明のさらなる態様は、フィルム用のバリア層を生成するための方法であって、方法が、(a)核形成剤マスターバッチをバルクHDPEに溶融混合すること、(b)炭化水素樹脂マスターバッチを工程(a)のバルクHDPEに同時にまたは順次に溶融混合して、HBP組成物を形成すること、ならびに(c)HBP組成物からバリア層を形成することを含む、方法に関する。ある態様では、核形成剤マスターバッチは、バルクHDPE中に、バリア層の約0.04%w/w~約30%w/w、好ましくは約0.1%w/w~約10%w/wの量でブレンドされてもよい。ある態様では、炭化水素樹脂マスターバッチは、バルクHDPE中に、バリア層の約0.14%w/w~約70%w/w、好ましくは約0.5%w/w~約25%w/wの量でブレンドされてもよい。
バリアフィルム
[00240]ここで記述されているバリア層は、フィルム内に組み込まれてフィルムの一部を形成してもよい。本発明に従うフィルムは、ここで記述されている通りのバリア層を組み込む。
【0223】
[00241]したがって、別の側面では、本発明は、フィルムの水蒸気透過度を低減させる方法であって、方法が、ここで記述されている通りのバリア層をフィルムに組み込むことを含む、方法に関する。好ましくは、フィルムは、約38℃および90%の外部相対湿度で測定された、約4g以下/m2/日の水蒸気透過度を有する。
【0224】
[00242]ここで使用される場合、用語「フィルム」は、任意の厚さの実質的に平面状の材料を指してもよい。一部の態様では、ここで記述されている通りのフィルムは、約500μm以下、たとえば約10μm~約500μm、好ましくは約20μm~約200μm、または約25μm~約100μm、または約30μm~約80μm、または約35μm~約70μm、または約40μm~約60μmの平均厚さを有する、実質的に平面状の材料であることができる。非平面配置または形状の形態のフィルムも企図されており、たとえば、フィルムは、ブロー成形または射出成形によって形成される物品において1以上の層を含んでいてもよい。
【0225】
[00243]バリア層を含むフィルムは、バリア層のみからなる単層(すなわち、単一層)フィルムであってもよく、これは、概して、実質的に平面状のシートの形態である。
【0226】
[00244]あるいは、フィルムは、バリア層が他の層と一緒にフィルムの成分である、多層フィルムであってもよい。故に、用語「多層」は、単一フィルム構造における複数の層を指す。層は、当技術分野において公知である任意の従来の手段によって、たとえば、共押出、積層、またはそれらの組合せによって、一緒に組み合わされうる。本出願に記述されている多層フィルムは、所望される限り多くの層、たとえば、少なくとも3、4、5つ以上のフィルム層を含んでもよい。多層フィルムにおける層の少なくとも1つは、ここで記述されているバリア層である。バリア層は、多層フィルムの他の層間に挟まれていてもよい。たとえば、多層フィルムは、3つの層を含んでもよく、バリア層は、多層フィルムの中心コア層であってもよい。
【0227】
[00245]多層フィルムにおける他の層は、他の酸素および/または水蒸気バリア材料を含む、包装用途のためのフィルムに好適な従来の材料を含むかまたはそれらで構成されていてもよい。
【0228】
[00246]本発明のフィルムは、配向または非配向フィルムであってもよい。
【0229】
[00247]配向フィルムは、長手方向(LD)におよび/または横(すなわち、横向き)方向(TD)に分子配向されていてもよい。何れかまたは両方の方向へのフィルムの配向は、任意の好適な技術によって、たとえば周知のバブルおよび/またはテンタープロセスによって、実現されてもよい。
【0230】
[00248]本発明のフィルムは、低い水蒸気透過度および/または酸素透過度を含む1以上の好都合なバリア特性を有利に呈する。特定のフィルムについて、水蒸気および酸素透過度の動向は相関があることがある。したがって、低い水蒸気透過度を呈しているフィルムは、対応する低い酸素透過度を呈することが予想されるであろう。
【0231】
[00249]1以上の態様では、本発明に従うフィルムは、約38℃および90%の外部相対湿度で測定された、約4g以下/m2/日の水蒸気透過度(WVTR)を有してもよい。試験温度は、38℃(100°F)の±10%以内であってもよい。
【0232】
[00250]水蒸気透過度(WVTR)は、水蒸気が指定された条件でフィルムを経由して浸透する定常状態速度である。WVTRは、g/m2/日(すなわち、24時間)、ならびに約38℃および90%相対湿度の条件で通常は表現される。WVTRは、湿度とともに増大することができ、温度または圧力も上昇する。WVTRを決定するための好適な方法は、ASTM E3に記述されている。一態様では、WVTRは、約40μm以上の厚さを有するフィルムを用いて決定される。
【0233】
[00251]1以上の態様では、バリア層は、所望のWVTR特性をフィルムに付与することを主として担っていてもよい。
【0234】
[00252]一部の態様では、バリア層自体が、約38℃および90%の外部相対湿度で測定された約4g以下/m2/日の水蒸気透過度という特性を有してもよい。たとえば、フィルムが単層フィルムである態様では、好ましくはフィルムが約40μm~約60μmの厚さを有する場合、バリア層自体が、約38℃および90%の外部相対湿度で測定された約4g以下/m2/日の水蒸気透過度を有してもよい。
【0235】
[00253]フィルムが多層フィルムである態様では、好ましくはフィルムが約40μm~約60μmの厚さを有する場合、フィルムは、約38℃および90%の外部相対湿度で測定された、約4g以下/m2/日、約3.5g以下/m2/日、好ましくは約3g以下/m2/日、好ましくは約2.5g以下/m2/日、好ましくは約2.0g以下/m2/日、好ましくは約1.5g以下/m2/日、好ましくは約1.0g以下/m2/日、好ましくは約0.5g以下/m2/日の水蒸気透過度を有してもよい。
【0236】
[00254]本発明に従って、バリアフィルムは、低い酸素透過度(OTR)を有してもよい。OTRは、酸素が指定された条件でフィルムを経由して浸透する定常状態速度である。OTRは、cc/m2/日(すなわち、24時間)ならびに23℃および0%相対湿度の条件で通常は表現される。OTRのより高い値は高湿度環境で観測することができ、温度および圧力が増大するのに伴って増大することができる。一態様では、本発明のフィルムは、約40μm以上の厚さを有するフィルムを用いて決定された、1,000cc以下/cm2/日のOTRを有してもよい。OTRは、当業者に公知の方法を使用して決定されてもよい。OTRを決定するための好適な方法は、ASTM D3985に記述されている。
【0237】
[00255]有利なことに、ここで記述されているバリア層は、酸素および/または水蒸気の浸透を制御することができる。一態様では、バリア層は、酸素および/または水蒸気浸透を阻害するまたは低減させることができる。したがって、バリア層を含むフィルムは、従来のフィルムのものよりも低いWVTRおよび/またはOTR値を呈してもよい。
【0238】
[00256]本発明の態様に従って、バリア層は、ここで定義されている通りのHBP組成物から形成されてもよい。1以上の態様では、HBP組成物および結果として生じたバリア層は、1種以上のポリオレフィン、好ましくはHDPE、1種以上の核形成剤、および1種以上の炭化水素樹脂を含む。好ましくは、HBP組成物およびバリア層は、1種の核形成剤および1種の炭化水素樹脂を含む。ポリマー層およびフィルムを形成するための従来の技術を使用して、HBP組成物からバリア層を調製することができる。
【0239】
[00257]バリア層を調製するための技術は、当業者に公知である。一態様によれば、バリア層は、ポリオレフィン、好ましくはHDPE内に分散された核形成剤および炭化水素樹脂の相乗的ブレンドを含む、溶融配合されたHBP組成物を押出させて、実質的に平面状のシートまたは織物を形成することによって、形成されてもよい。これは、たとえば、スリットダイを経由して鋳造ロール上への溶融したHBP組成物の押出、次いで、溶融した状態の間に押出されたブレンドを所望のシート厚さに延伸させることを伴ってもよい。
【0240】
[00258]代替的な態様では、バリア層は、キャストフィルムプロセスまたはブローフィルムプロセスを使用して調製されてもよい。ポリマーフィルムまたは層を作製するために好適な他のフィルム製作技術が使用されてもよい(たとえば、テンターフレーム)。
【0241】
[00259]ブローフィルムプロセスにおいて、HDPE内に分散された核形成剤および炭化水素樹脂の相乗的ブレンドを含むHBP組成物は、円環状ダイを経由して押出されて円筒状管を形成してもよく、次いでこれが、溶融したポリマー材料の管内側の内部空気圧を使用して膨張して、所望の厚さの層を形成する。
【0242】
[00260]一部の好適なフィルム押出技術は、「Film Extrusion and Conversion」と題された技術指針、Qenos Pty Ltd刊行(2015年7月発行)にも記述されており、その内容は、参照によりここに組み込まれる。
【0243】
[00261]一部の態様では、本発明の熱可塑性組成物を調製する方法は、
(a)ここで記述されている通りの高バリアポリオレフィン組成物を装置に添加し、装置は、ダイおよび鋳型を含み、鋳型は、成形物品の形状を画定する内部表面を有する工程と;
(b)加熱によって組成物を溶融させ、ここで、加熱は、組成物を溶融させるおよびダイを経由して押出させるために十分である工程と;
(c)押出された組成物から溶融した塊(パリソンとも称される)を形成する工程と;
(d)塊を鋳型に捕捉する工程と;
(e)押出された塊を加圧流体で膨らませて、塊を鋳型の内部表面に合致させることにより、成形物品を生成する工程と;
(f)成形物品を冷却して、組成物を少なくとも部分的に凝固させる工程と;
(g)鋳型から成形物品を取得する工程と
を含む。
【0244】
[00262]上記で言及した組成物は、本発明の組成物の何れかの態様であってもよい。好ましくは、装置は、任意の好適な押出ブロー成形装置、たとえば、連続押出ブロー成形装置、たとえばロータリーホイール押出ブロー成形装置およびシャトル押出ブロー成形装置、ならびに間欠押出ブロー成形装置、たとえば往復スクリュー押出ブロー成形装置およびアキュムレータヘッド押出ブロー成形装置である。好ましくは、装置は、可塑化された(溶融した)組成物が経由して押出されてパリソンを形成する、ダイを含む。好ましくは、装置は、鋳型キャビティを有する鋳型も含む。好ましくは、成形物品の形状は、鋳型キャビティ、または鋳型キャビティの内部表面によって画定される。好ましくは、成形物品の外部表面は、鋳型キャビティの内部表面によって画定される。
【0245】
[00263]一部の態様では、本発明の熱可塑性組成物からフィルムを生成する方法は、
(a)ここで記述されている通りの高バリアポリオレフィン組成物を装置に添加し、装置は、
管を押出させるように適応している円環状ダイオリフィスを有するダイ;
円環状ダイオリフィスから出る管に加圧流体を吹き込むための手段;ならびに
管を延伸させるおよび収集するための手段
を含む工程と;
(b)加熱によって組成物を溶融させ、ここで、加熱は、組成物を溶融させるおよびダイを経由して押出させるために十分である工程と;
(c)円環状ダイオリフィスから第1の方向に出る円環状ダイオリフィスを経由して溶融した組成物を押出させることによって管を形成し、管は、直径および長さを有する工程と;
(d)加圧流体を管に吹き込むことによって管を膨らませてその直径を増大させ、一方で、同時に管を第1の方向に延伸させてその長さを増大させて、フィルムを生成する工程と;
(e)フィルムを冷却して、組成物を凝固させる工程と;
(f)フィルムを取得する工程と
を含む。
【0246】
[00264]1以上の態様では、フィルムへのバリア層の組み込みは、バリア層を有さないかまたはここで記述されている通りのHBP組成物を用いて調製されていないバリア層(たとえば、バリア組成物内に実質的に均質に分散された核形成剤および炭化水素樹脂を含まないバリア層)を有するかの何れかである、同等の厚さの比較用のフィルムよりも、フィルムの水蒸気透過度(WVTR)を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも40%、または少なくとも60%だけ低減させてもよい。故に、本発明に従うバリア層は、比較用のフィルムのWVTRと比較した場合に、WVTRのより大きい低減を呈するフィルムが取得されることを可能にする。
【0247】
[00265]ここで記述されている通りの比較用のフィルムは、バルクHDPE樹脂単独で形成されたバリア層を含むまたはそれで構成され、その中に含有または分散された核形成剤も炭化水素樹脂も有さない、フィルムであってもよい。
【0248】
[00266]1以上の態様では、フィルムへのバリア層の組み込みは、バリア層を有さないかまたはここで記述されている通りのHBP組成物を使用して調製されていないバリア層(たとえば、バリア組成物内に実質的に均質に分散された核形成剤および炭化水素樹脂の相乗的組合せを含まないバリア層)を有するかの何れかである、同等の厚さの比較用のフィルムよりも、フィルムの酸素透過度(OTR)を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%だけ低減させてもよい。故に、本発明に従うバリア層は、比較用のフィルムのOTRと比較した場合に、OTRのより大きい低減を呈するフィルムが取得されることを可能にする。
【0249】
[00267]故に、ここで開示される態様に従ってマスターバッチ組成物の使用を経由し、バルクHDPEを核形成剤および炭化水素樹脂とポリオレフィン担体を介してブレンドしてHBP組成物を形成すること、ならびにHBP組成物からバリア層を形成することによって、WVTRの低減が実現されてもよいことを、本発明者らは驚くべきことに見出した。
【0250】
[00268]利用した比較的少ない分量の炭化水素樹脂および核形成剤により観測された効果は、予想外のものである。如何なる理論によっても限定されることを望むものではないが、ポリオレフィン、たとえばポリエチレン、好ましくはHDPE中に分散された炭化水素樹脂(好ましくは水素化炭化水素樹脂)は、ポリマー内における結晶性相の分散を強化しながら、ポリオレフィンの非晶質相を、要素、たとえば酸素および水蒸気に対して浸透性を低くすることを援助することができると考えられる。故に、このようにして、炭化水素樹脂は、ポリオレフィン中における核形成剤の作用を増強することができ、故に、酸素および/または水蒸気浸透をさらに、相加または累積効果を超越して低減させる、すなわち、「相乗」効果を生成するのを助ける。
【0251】
[00269]本発明のさらなる利点は、核形成剤および炭化水素樹脂(好ましくは水素化炭化水素樹脂)が、核形成に対して応答が少ないと慣例的にみなされているものを含む、多くの異なる種類のポリオレフィン、たとえばポリエチレン、好ましくはHDPEとともに使用されてもよいことである。故に、改良されたバリア特性は、ポリエチレンおよびHDPEを含むがこれらに限定されないより広範囲のポリオレフィンに有利に付与されうる。
【0252】
[00270]ここで記述されている改良されたフィルムは、低速度の水蒸気透過および/または酸素透過度が、穿刺および引き裂き抵抗のような良好な機械的特性を保持するとともに、包装された材料の貯蔵寿命を増大させるのを助けるように所望されうる場合、包装用途において価値がある。次に、改良されたバリア特性は、バリア層およびバリア層を含有するフィルムの厚さを低減させることを可能にし、それにより、環境上の利点に加えてコストを節減することができる。
【0253】
[00271]ここで、本発明について以下の例を参照して記述する。しかしながら、例は本発明の例証として提供されること、およびそれらは決して本発明の範囲への限定ではないことを理解されたい。
【0254】
[例]
材料:
[00272]以下の材料を後述する例において使用した:
HDPE(a)-QenosアルカタンHD0195FX-高密度ポリエチレンホモポリマー:1.4MI2、45MFR、0.955g/cm3の密度
HDPE(b)-QenosアルカタンHDF895-高密度ポリエチレンホモポリマー:0.8MI2、58MFR、0.962g/cm3の密度
HDPE(c)-QenosアルカタンHDF995X-高密度ポリエチレンホモポリマー:0.9MI2、70MFR、0.965g/cm3の密度
HDPE(d)-QenosアルカタンGF7660-高密度ポリエチレンコポリマー:0.3MI2、120MFR、0.959g/cm3の密度
HDPE(e)-QenosアルカタンHD1090-高密度ポリエチレンコポリマー:10MI2、0.956g/cm3の密度
NA-Millikenハイパーフォーム20E-66.6%シクロヘキサンジカルボン酸、カルシウム塩(1:1)および33.3%ステアリン酸亜鉛
HCR-水素化脂環式炭化水素樹脂:軟化点124℃、Mn400、Mw700
バリアフィルム形成用のHDPE組成物を生成する方法
方法1:C1~C15
[00273]選択されたHDPE樹脂に、指定された分量の核形成剤(NA)および炭化水素樹脂(HCR)添加物を次の通りに添加した:
・ C1:なし
・ C2:1%HCR(33%HCR MBを使用)
・ C3:3%HCR(33%HCR MBを使用)
・ C4:0.1%NA(20%NA MBを使用)
・ C5:なし
・ C6:0.1%NA(20%NA MBを使用)
・ C7:なし
・ C8:1%HCR(50%HCR MBを使用)
・ C9:2%HCR(50%HCR MBを使用)
・ C10:0.1%NA(20%NA MBを使用)
・ C11:なし
・ C12:0.1%NA(20%NA MBを使用)
・ C13:4%HCR(60%HCR MBを使用)
・ C14:なし
・ C15:0.1%NA(20%NA MBを使用)
[00274]得られた組成物を二軸スクリュー押出機内で溶融ブレンドし、次いで、フィルム形成のために吹き込んだ。
方法2:S1、S2、S5、S6、S7およびS8
[00275]選択されたHDPE樹脂に、指定された分量の核形成剤(NA)および炭化水素樹脂(HCR)添加物を次の通りに添加した:
・ S1:0.1%NA(20%NA MBを使用)+1%HCR(33%HCR MBを使用);NA MBおよびHCR MBを1:7の比で使用した
・ S2:0.1%NA(20%NA MBを使用)+3%HCR(33%HCR MBを使用);NA MBおよびHCR MBを1:18の比で使用した
・ S5:0.1%NA(20%NA MBを使用)+1%HCR(33%HCR MBを使用)
・ S6:0.1%NA(20%NA MBを使用)+2%HCR(33%HCR MBを使用);NA MBおよびHCR MBを2:25の比で使用した
・ S7:0.1%NA(20%NA MBを使用)+4%HCR(60%HCR MBを使用);NA MBおよびHCR MBを2:27の比で使用した
・ S8:0.1%NA(20%NA MBを使用)+4%HCR(60%HCR MBを使用)
[00276]得られた組成物を二軸スクリュー押出機内で溶融ブレンドし、次いで、フィルム形成のために吹き込んだ。
方法3:S3およびS4
[00277]指定された分量のNA、HCRおよびHDPEを、二軸スクリュー押出機で溶融混合して、HBP MB[2.5%NA+50%HCR+47.5%HDPEw/wのHBP MB]を生成した。
HBP MBをバルクHDPEと二軸スクリュー押出機で混合して、HBP組成物を生成した。
・ S3:0.05%NA+1%HCR(2%HBP MBを使用)
・ S4:0.1%NA+2%HCR(4%HBP MBを使用)
[00278]次いで、得られた組成物をフィルム形成のために吹き込んだ。
【0255】
[00279]バリア層組成を表1にまとめる。
フィルム形成のための一般的な方法:
[00280]フィルムは、HDPEブレンドおよび比較用のHDPEブレンドから、ブローフィルムラインでブローフィルム押出プロセスを使用して生成した。バルクHDPE樹脂のみを含有する(すなわち、核形成剤も炭化水素樹脂も加えない)フィルムも、比較のために調製した。
【0256】
[00281]ブローフィルムプロセスを使用して、HDPEを溶解させ、次いで、円環状ダイを経由して垂直上向きに押出させて、制御された直径および厚さの管を得た。押出された溶融物をダイの付近で冷却環を介して空冷させ、ダイ心棒の中心を経由して導入された空気により、フィルムの管を要求される直径のバブルに膨らませた。一対のニップローラーを経由してフィルムを引っ張って、ニップローラーとダイとの間に形成されるバブル内に一定体積の膨張空気を含有させた。次いで、バブルを崩壊フレーム中で崩壊させ、ニップローラーを経由して平板化して、管状フィルムとしてまたはシートフィルムにスリットを入れての何れかで巻き上げることができるレイフラットフィルムを形成した。
【0257】
[00282]フィルムは、以下のプロセスパラメーターを使用するブローフィルム押出によって形成した:
・ フィルムゲージ:40~50μm
・ ブローアップ比(BUR):2.5
・ フロストライン高さ:300mm(低)または800mm(高)
・ レイフラット幅:40~45cm
・ ゾーン温度:190℃最大20
・ スクリュー回転数:300rpm
WVTR試験:
[00283]形成されたフィルムを、約38℃の温度および約90%の外部相対湿度で、試験方法ASTM E398-20に従い、Mocon製のパーマトラン-Wモデル1/50Gを使用して、WVTRについて評価した。
【0258】
[00284]WVTRの改良(すなわち、水蒸気透過の低減)は、バルクHDPE樹脂のみを用いて調製されたフィルムおよびHDPEブレンドを用いて形成されたフィルムについて取得されたWVTRにおける差異を評価して決定した。改良は、以下の方程式を使用して、WVTRにおける変化(ΔWVTR)として表現されてもよい:
【0259】
【0260】
[00285]上記の結果から、(i)方法2を使用して0.1%NA+1~3%HCR(すなわち、サンプルS1およびS2);および(ii)方法3を使用して0.05~0.1%NA+1~2%HCR(すなわち、S3およびS4)を含有するHBP組成物から形成されたフィルムは、良好なフィルムの機械的特性とバランスが取れた、比較フィルムよりも有意に改良されたバリア結果を提供したことが分かる。
OTR試験:
[00286]形成されたフィルムを、約23℃の温度および約0%の外部相対湿度で、試験方法ASTM D3985-05に従い、Mocon製のオクストラン2/22を使用して、OTRについて評価した。
【0261】
[00287]OTRの改良(すなわち、酸素透過の低減)は、バルクHDPE樹脂のみを用いて調製されたフィルムおよびHDPEブレンドを用いて形成されたフィルムについて取得されたOTRにおける差異を評価して決定した。改良は、以下の方程式を使用して、OTRにおける変化(ΔOTR)として表現されてもよい:
【0262】
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
[00288]ここで提供される例は、本発明のバリア層およびフィルムの1以上の態様が、当技術分野において公知のバリア層およびフィルムの有用な代替、または、特に、好ましい態様では、1つ以上の利点、たとえば、以下のうちの1つ以上を提供してもよいことを示す:
機械的特性、たとえば剛性、または穿刺および引き裂き抵抗の改良されたバランス;
たとえば、使用した比較的低レベルの炭化水素樹脂による、生産コストの低下;
改良された加工適性;
核形成剤または炭化水素樹脂の均質な分散を改良すること;
核形成剤および炭化水素樹脂の相乗的組合せを提供すること;
結果として生じたバリア層の結晶性特徴を改良すること;
配合、溶融混合および/または押出プロセスの有効性を促進すること;
少ないまたは厳密な分量の核形成剤および/または炭化水素樹脂のバルクHDPEへの添加を可能にすること;
改良されたバリアフィルム特性、たとえばより低いWVTRまたはOTR;ならびに
上記の特性のうちの1つ以上を保持しながら、バリア層またはフィルムの厚さの低減を可能にすること。
【0267】
[00289]誤解を避けるために、本明細書における任意の文書、法令、または知識項目への如何なる言及またはそれらについての考察も、本発明の文脈を提供することのみを目的として含まれる。これらの事柄の何れかまたはそれらの任意の組合せが、優先日において普遍的な一般知識の一部を形成していたこと、または本明細書が関連するあらゆる問題を解決するための試みに関連性があると公知であったことは、示唆も表明もされていない。
【0268】
[00290]種々の他の修正および/または改変が、ここで概説される通りの本発明の趣旨を逸脱することなく為されてもよいことを理解されたい。
【国際調査報告】