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特表2025-511930水素自動車の熱圧力逃がし装置にポリマー製配管の使用を可能にする減圧装置
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  • 特表-水素自動車の熱圧力逃がし装置にポリマー製配管の使用を可能にする減圧装置 図1a
  • 特表-水素自動車の熱圧力逃がし装置にポリマー製配管の使用を可能にする減圧装置 図1b
  • 特表-水素自動車の熱圧力逃がし装置にポリマー製配管の使用を可能にする減圧装置 図1c
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-04-16
(54)【発明の名称】水素自動車の熱圧力逃がし装置にポリマー製配管の使用を可能にする減圧装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/12 20060101AFI20250409BHJP
【FI】
F17C13/12 301A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024559556
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(85)【翻訳文提出日】2024-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2023050711
(87)【国際公開番号】W WO2023198322
(87)【国際公開日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】102022109125.2
(32)【優先日】2022-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591044393
【氏名又は名称】ノルマ ジャーマニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル キンティ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ハース
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム ブロナー
(72)【発明者】
【氏名】ゲリット フォン ブライテンバッハ
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172AB04
3E172BA01
3E172BA04
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD03
3E172DA90
3E172EA02
3E172EB02
3E172EB19
3E172EB21
(57)【要約】
本発明は、高圧タンク(10)、特に自動車の高圧タンク(10)用の減圧システムに関し、この高圧タンク(10)には、流体が正圧下で貯蔵され、高圧タンク(10)は、圧力を逃がすための出口(9)を有し、高圧タンク(10)は、出口(9)を介して、圧力が逃がされたときに流体が流れ方向(x)に流れる熱圧力逃がし装置(20)に流体的に接続されている。本発明によれば、高圧タンク(10)の圧力を逃がす際に減圧するための減圧装置(1)が、熱圧力逃がし装置(20)に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧タンク(10)用、特に自動車の高圧タンク(10)用の減圧システムであって、前記高圧タンク(10)内に流体が正圧下で貯蔵され、前記高圧タンク(10)が、圧力を逃がすための出口(9)を有し、前記高圧タンク(10)が、前記出口(9)を介して、前記圧力が逃がされたときに前記流体が流れ方向(x)に流れる熱圧力逃がし装置(20)に流体的に接続され、前記熱圧力逃がし装置(20)に、前記高圧タンク(10)の前記圧力が逃がされるときに前記圧力を低減するための減圧装置(1)が設けられている、減圧システム。
【請求項2】
前記減圧装置(1)が、絞り弁(7)であり、該絞り弁(7)が、絞り開口(8)を有し、特に、環状の絞りとして設計されている、請求項1に記載の減圧システム。
【請求項3】
前記熱圧力逃がし装置(20)が、逃がし配管として設計され、前記出口(9)が、前記熱圧力逃がし装置(20)の管径に対応する直径(D1)を有する、請求項2に記載の減圧システム。
【請求項4】
前記絞り開口(8)が、前記出口(9)および前記熱圧力逃がし装置(20)よりも直径が小さくなるように設計されている、請求項2または請求項3に記載の減圧システム。
【請求項5】
前記絞り弁(7)が、前記高圧タンク(10)の前記出口(9)および熱圧力逃がし装置(20)内に間接的に配置されている、請求項2に記載の減圧システム。
【請求項6】
前記減圧装置(1)が、流れを超音速に加速する、請求項1に記載の減圧システム。
【請求項7】
前記減圧装置(1)が、ラバルノズル(5)であり、該ラバルノズル(5)が、収束部(2)と拡散部(6)とを有する、請求項6に記載の減圧システム。
【請求項8】
前記ラバルノズル(5)が、前記出口(9)と前記熱圧力逃がし装置(20)との間に配置され、前記ラバルノズル(5)の前記収束部(2)が、前記高圧タンク(10)の前記出口(9)に直接かつ直後に配置されている、請求項7に記載の減圧システム。
【請求項9】
前記ラバルノズル(5)が、ネック径(3)を有し、前記ラバルノズル(5)の前記収束部(2)が、前記ネック径(3)に到達した後、前記拡散部(6)に直接移行する、請求項7に記載の減圧システム。
【請求項10】
前記熱圧力逃がし装置(20)が、逃がし配管として設計され、前記出口(9)が、前記熱圧力逃がし装置(20)の管径(D3)よりも小さく設計された直径(D2)を有する、請求項7に記載の減圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の高圧タンク用の減圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水素または天然ガスを燃料とする自動車において、燃料を貯蔵するために高圧タンクが使用される。この種の高圧タンクにおいては、例えば、乗用車分野では700バールなど、数百バールの圧力が一般的である。
【0003】
安全上の理由から、高圧タンクには熱圧力逃がし装置が装備され、熱圧力逃がし装置は、通常、車両火災の際に高圧タンクを空にする配管システム、または逃がし配管である。
【0004】
水素高圧タンクに直接連結される逃がし配管または熱圧力逃がし装置は、先行技術から既に知られている。これらは通常、比較的高い機械的強度を有し、その結果、燃料流出時の高圧状態に耐えるステンレス鋼管である。システムの設計にもよるが、熱圧力逃がし装置が作動すると、水素が高圧タンクから配管に流入し、配管の圧力はタンク圧力の約80から95%に達する。
【0005】
ここでは、ステンレス鋼配管が比較的重く、しかも製造コストが高いという欠点がある。
【0006】
本発明の目的は、先行技術のこれらの欠点および他の欠点を克服し、簡単な手段を用いて費用効果の高い方法で構成され、同時に自重が小さい、水素自動車の高圧タンク用の改良された減圧システムを実現することである。
【発明の概要】
【0007】
本発明の主な特徴は、請求項1の特徴部分に記載されている。設計的な実施形態は、請求項2から請求項10の主題である。
【0008】
高圧タンク、特に、自動車の高圧タンクのための減圧システムにおいて、その高圧タンクには流体が正圧下で貯蔵され、高圧タンクは圧力を逃がすための出口を有し、高圧タンクは、圧力が逃がされるときに、流体が流れ方向に流れる熱圧力逃がし装置に出口を介して流体的に接続され、本発明によれば、熱圧力逃がし装置に、高圧タンクの圧力を逃がすときに圧力を低減するための減圧装置が備えられている。
【0009】
本発明は、熱圧力逃がし装置内に追加の減圧装置を使用することにより、驚くほど簡単な方法で本目的を達成する。この減圧装置により、熱圧力逃がし装置内の圧力が低減されるので、熱圧力逃がし装置を、著しく費用効率が高く軽量なプラスチック材料、特にポリマー材料で製造することができる。このようにして、本発明は、圧力逃がし時に配管内の低圧を保証する高圧タンクの排気システムを提供する。
【0010】
2 減圧装置は好ましくは絞り弁であり、絞り弁は絞り開口を有する。絞り弁により、高圧タンクの出口および熱圧力逃がし装置内の圧力は、それぞれ、流れ方向の下流において、または流れ方向において、効果的に低減される。本明細書では、絞り弁が環状絞り弁として設計されていることが特に好ましい。これは、費用効果の高い構造の変形例を表し、したがって、全体的な製造コストをさらに低減する。あるいは、例えば、単純な穴のあいた板金プレートのような、製造するのに費用効果が高い他の絞り形状も考えられる。
【0011】
絞り開口は、好ましくは、出口および熱圧力逃がし装置よりも直径が小さくなるように設計される。その結果、システム内の総圧力の効果的な減少、またはエントロピーの増加が達成される。同時に、絞りは、流れ方向下流または流れ方向において、熱圧力逃がし装置内の静圧を減少させる。
【0012】
本発明の実施形態の他の変形例によれば、絞り弁は、高圧タンクの出口および熱圧力逃がし装置内に間接的に配置される。出口と絞りとの間の間隔により、流出動作の間、出口の領域、または熱圧力逃がし装置の配管入口において、有利には過度に高い圧力ピークが生じない。
【0013】
好ましい実施形態によれば、本発明は、熱圧力逃がし装置が逃がし配管として設計され、出口が熱圧力逃がし装置の管径に対応する直径を有するものを提供する。逃がし配管を流れるとき、質量の均一な流量が保証される。絞り弁により,燃料の密度は,逃がし配管を流れるときに減少する。密度の減少を補償するために、出口または逃がし配管の直径は、原則として、先行技術からの公知の解決策よりも大きな寸法であり、その結果、絞られているにもかかわらず、十分な質量流量が達成される。
【0014】
さらに好ましい実施形態の変形例によれば、熱圧力逃がし装置はポリマー製配管として設計される。ポリマー製配管は、特に製造コストが低く、同時にステンレス鋼配管と比較して非常に軽量である。本明細書におけるポリマー製配管は、例えば、簡単な射出成形法によって製造することができる。
【0015】
重要な実施形態によれば、本発明は、減圧装置が出口において流れを超音速まで加速するものを提供する。流体、または燃料の超音速範囲への加速により、熱圧力逃がし装置において、それぞれ、流れの下流、または流れ方向において、効果的な圧力の低減を達成することができる。
【0016】
本明細書における減圧装置は、好ましくはラバルノズルであり、ラバルノズルは、収束部と拡散部とを有する。ラバルノズルは、好ましくは、出口と熱圧力逃がし装置との間に配置され、ラバルノズルの収束部は、高圧タンクの出口に直接かつ直後に配置される。ラバルノズルの配置により、システム内の総圧力を下げることなく静圧を下げることができる。高圧タンクの出口、または熱圧力逃がし装置の配管入口にラバルノズルを設置することにより、流出する燃料は超音速まで加速される。ラバルノズルの拡散部においては、超音速流まで、すなわちマッハ値>1まで、さらに加速することができる。マッハ値が上昇すると静圧が低下するため、総圧力が一定の場合、熱圧力逃がし装置内の圧力が大幅に低下する。この相互作用により、熱圧力逃がし装置または逃がし配管の直径は、それぞれ絞り構造よりも小さい寸法とすることができる。逃がし配管全体の流量は、摩擦力によって減少しても、好ましくは超音速範囲に維持される。
【0017】
好ましい実施形態において、ラバルノズルは、縮小したネック径を有し、ラバルノズルの収束部は、ネック径に達した後、拡散部に直接移行する。あるいは、ラバルノズルの収束部は、拡散部へと着実に移行し、ネック径の領域において軸方向にわずかな広がりを有することもできる。
【0018】
ラバルノズル構造において、出口は、好ましくは、熱圧力逃がし装置の管径よりも小さくなるように設計された直径を有する。本明細書におけるラバルノズルは、好ましくは、その全長にわたって円形または楕円形の横断面を有する。ラバルノズルの最も狭い横断面は、好ましくはネック径に対応し、流れはネック径において音速に達し、拡散部において超音速範囲まで加速される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明のさらなる特徴、詳細および利点は、特許請求の範囲の文言および図面を参照した例示的な実施形態の以下の説明から得られる。
図1a】先行技術による熱圧力逃がし配管を有する高圧タンクの概略図である。
図1b】本発明に係る減圧システムの概略図である。
図1c】本発明に係る減圧システムの他の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1aは、水素を高圧下で貯蔵できる高圧タンク10を示す。高圧タンク10は、出口側において熱圧力逃がし装置20に連結されている。熱圧力逃がし装置20は、ここでは、逃がし配管として設計され、管径Dを有する。高圧タンク10内の圧力が逃がされると、燃料は流れ方向(x)に流れて熱圧力逃がし装置20内に入る。この配置は従来技術に相当する。
【0021】
図1bは、正圧下で燃料が貯蔵される少なくとも1つの高圧タンク10を有する水素自動車用の減圧システムの概略図である。高圧タンク10は圧力を逃がすための出口9を備え、高圧タンク10は、出口9によって熱圧力逃がし装置20に流体的に接続されている。
【0022】
熱圧力逃がし装置20は、逃がし配管として設計されている。圧力が逃がされると、燃料は逃がし配管を通って流れ方向xに流れる。ここで出口9は、それぞれ熱圧力逃がし装置20または逃がし配管の管径に対応する直径D1を有する。
【0023】
減圧装置1は、逃がし配管内の出口9に配置される。図示された実施形態における減圧装置1は、絞り弁7として設計され、絞り開口8を有する。これは、特に環状の絞り弁である。
【0024】
図1cは、本発明の他の実施形態を概略的に示している。図1cにおいては、図1bの絞り弁7の代わりにラバルノズル5が配置されており、この実施形態においては、熱圧力逃がし装置も逃がし配管として設計されている。
【0025】
ここで、ラバルノズル5は、収束部2と拡散部6とを有する。ラバルノズル5は、出口9と熱圧力逃がし装置20との間、または一定のプロファイル(profile)を有する逃がし配管の一部分にそれぞれ配置される。ラバルノズル5の収束部2は、高圧タンク10の出口9に直接かつ直後に配置される。
【0026】
ラバルノズル5はさらにネック径3を有し、ラバルノズル5の収束部2はネック径3に達した直後に拡散部6に移行する。出口9は、それぞれ、逃がし配管、または熱圧力逃がし装置20の管径D3よりも小さくなるように設計された直径D2を有する。ここでのネック径3は、ラバルノズル5の最小の横断面、すなわち直径を有する。
【0027】
本発明に係る減圧システムは、一般に高圧容器および熱圧力逃がし装置に関する。本発明は、特に、正圧下で水素が充填される高圧タンクを通常有する水素自動車に関する。事故などの際に爆発や火災の危険性が高まるため、本発明は特にこの種の高圧タンクの排気に使用される。しかし、原理的には、減圧システムは、熱圧力逃がし装置を備えた定置式高圧容器にも実施することができる。
【0028】
構造的詳細、空間的配置および方法ステップを含め、特許請求の範囲、明細書および図面から導かれる特徴および利点はすべて、個々にだけでなく、最も多様な組み合わせにおいても、本発明に不可欠であり得る。
【符号の説明】
【0029】
D 直径(標準)
D1 直径(絞り)
D2 直径(ラバルノズル)
D3 直径(ラバルノズル)
x 流れ方向
1 減圧装置
2 収束部
3 ネック径
5 ラバルノズル
6 拡散部
7 絞り弁
8 絞り開口
9 出口
10 高圧タンク
20 熱圧力逃がし装置
図1a
図1b
図1c
【国際調査報告】