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  • 特表-補体依存性細胞傷害方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-04-17
(54)【発明の名称】補体依存性細胞傷害方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20250410BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20250410BHJP
【FI】
G01N33/53 N
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024559899
(86)(22)【出願日】2023-04-13
(85)【翻訳文提出日】2024-12-03
(86)【国際出願番号】 US2023018527
(87)【国際公開番号】W WO2023200973
(87)【国際公開日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】63/331,059
(32)【優先日】2022-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホートン,アンドリュー・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】エイブラムス,クリスティン・アール
(72)【発明者】
【氏名】クラウス-ゼインディーニ,ジル・エイ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR72
4B063QR77
4B063QX01
(57)【要約】
本発明は、補体依存性細胞傷害アッセイ及び補体の細胞への追加の方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイを実行するための方法であって、補体を標的細胞及びテスト分子の混合物に追加することを含み、前記補体は、少なくとも250μL/秒の速度で追加される、方法。
【請求項2】
前記補体は、少なくとも約400μL/秒の速度で追加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記補体は、約400μL/秒の速度で追加される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記補体は、約450μL/秒の速度で追加される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記補体は、約500μL/秒の速度で追加される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記補体は、少なくとも約500μL/秒の速度で追加される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記補体は、幼若ウサギ補体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記補体は、Bio-rad又はCedarlaneのものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記補体は、EMDのものではない、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
CDCアッセイを実行するための方法であって、標的細胞及びテスト分子を補体及び培地を含む混合物に追加することを含む、方法。
【請求項11】
前記補体は、幼若ウサギ補体である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
補体を標的細胞に追加することを含む方法であって、前記方法は、補体を前記標的細胞に少なくとも250μL/秒の速度で追加することを含む、方法。
【請求項13】
前記補体は、前記標的細胞に少なくとも約400μL/秒の速度で追加される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記補体は、前記標的細胞に約400μL/秒の速度で追加される、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記補体は、前記標的細胞に約450μL/秒の速度で追加される、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記補体は、前記標的細胞に少なくとも約500μL/秒の速度で追加される、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記補体は、幼若ウサギ補体である、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記補体は、Bio-rad又はCedarlaneのものである、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記補体は、アッセイにおいて標的細胞に追加されて、細胞死が決定される、請求項12~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記アッセイは、補体依存性細胞傷害アッセイである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記テスト分子は、抗体である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記テスト分子は、IgG1抗体又はIgG3抗体である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記テスト分子は、ヘテロ二量体分子である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月14日に出願された米国仮特許出願第63/331,059号明細書の利益を主張するものであり、この仮特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、細胞傷害方法に関する。特に、本発明は、補体依存性細胞傷害方法及び補体-細胞傷害アッセイのばらつきを低下させるための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
補体系は、病原体の細胞膜を攻撃するように機能する多くの異なるタンパク質から構成される免疫系の一部である。古典的補体カスケード経路は、補体(例えばC1q)タンパク質のIgG抗体への結合によって開始させることができる。補体依存性細胞傷害(「CDC」)アッセイは、生物製剤などの多くの分子について補体カスケード活性化を測定するために使用される。これらのアッセイは、産物が補体カスケードを活性化する能力の評価のために使用して、望まれない安全性についての懸念を回避することができる又はこれらは、標的経路の活性化のメカニズムを断定するために使用することができる。
【0004】
CDCアッセイ方法は、よく知られている。例えば、Duensing and Watson,Cold Spring Harb Protoc;2018 Feb 1;2018(2)を参照されたい。CDCの古典的アプローチは、補体系の成分を含む血清を、テストしている抗体が結合している標的細胞に追加すること及び次いで、色素をあらかじめ負荷した細胞の使用を介して細胞膜の完全性を決定すること又は細胞死を決定することである。補体又は組織培養グレードの血清の種々の材料は、Cedarlane(登録商標)、EMD Millipore、SigmaAldrich及びBio-Radを含む複数のメーカーから市販で入手可能である。
【0005】
CDCアッセイが産物放出などのアッセイの一部として使用される場合、ばらつきのコントロールは、必須である。しかしながら、本発明の発明者は、CDCアッセイがばらつきを見せるかもしれないこと及び補体追加の速度が遅いことが非特異的な細胞傷害を引き起こすことによりこのばらつきの原因となったことを明らかにした。産物の追加前のこの非特異的な細胞傷害は、望ましくないアッセイのばらつきをもたらす。CDCアッセイ方法はよく知られているが、Duensing and Watson(Cold Spring Harb Protoc;2018 Feb 1;2018(2))は、例えば、CDC方法について記載しているが、補体追加の速度については記載していない。WangらもまたCDCアッセイについて記載しているが、抗体非依存性の非特異的な細胞傷害を低下させるために、アッセイは、補体を標的細胞に20分間あらかじめ吸着させる追加のステップを含む(MAbs.2020 Jan-Dec;12(1):1690959)。
【0006】
本発明は、CDCアッセイにおいて幼若ウサギ補体追加の追加の速度を増加させることによって非特異的な細胞傷害(及びそれによる方法のばらつき)の問題を解決しようとするものである。補体がより速い速度で細胞に追加される場合、標的細胞の非特異的な死滅は、許容されるレベルまで低下する。加えて、代わりに、補体が標的細胞の追加前にアッセイプレートに追加される場合、非特異的な細胞傷害は低下する。これらの改善された方法は、より小さなアッセイのばらつきをもたらし、より頑強な方法につながる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Duensing and Watson,Cold Spring Harb Protoc;2018 Feb 1;2018(2)
【非特許文献2】Wang et al.MAbs.2020 Jan-Dec;12(1):1690959
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、細胞傷害アッセイを実行するための方法を提供する。一実施形態では、本発明は、補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイを実行するための方法を提供する。一実施形態では、方法は、補体を標的細胞及びテスト分子の混合物に追加することを含み、補体は、少なくとも約250μL/秒の速度で追加される。特定の実施形態では、補体は、約250μL/秒の速度で追加される。特定の実施形態では、補体は、約300μL/秒の速度で追加される。特定の実施形態では、補体は、約350μL/秒の速度で追加される。特定の実施形態では、補体は、少なくとも約400μL/秒の速度で追加される。別の特定の実施形態では、補体は、約400μL/秒の速度で追加される。別の特定の実施形態では、補体は、約450μL/秒の速度で追加される。さらに別の特定の実施形態では、補体は、約500μL/秒の速度で追加される。
【0009】
一実施形態では、方法は、補体を標的細胞及びテスト分子の混合物に追加することを含み、補体は、少なくとも250μL/秒の速度で追加される。特定の実施形態では、補体は、250μL/秒~500μL/秒の速度で追加される。特定の実施形態では、補体は、250μL/秒の速度で追加される。特定の実施形態では、補体は、300μL/秒の速度で追加される。特定の実施形態では、補体は、350μL/秒の速度で追加される。特定の実施形態では、補体は、少なくとも400μL/秒の速度で追加される。別の特定の実施形態では、補体は、400μL/秒の速度で追加される。別の特定の実施形態では、補体は、450μL/秒の速度で追加される。さらに別の特定の実施形態では、補体は、500μL/秒の速度で追加される。
【0010】
一実施形態では、補体は、幼若ウサギ補体である。特定の実施形態では、補体は、Bio-Rad又はCedarlane(登録商標)のものである。特定の実施形態では、補体は、EMDのものではない。
【0011】
本発明はまた、CDCアッセイを実行するための方法であって、標的細胞及びテスト分子を補体及び培地を含む混合物に追加することを含む方法も提供する。一実施形態では、標的細胞は、補体及び培地の混合物に追加され、その後で、テスト分子は追加される。一実施形態では、標的細胞及びテスト分子は、補体及び培地の混合物と同時に追加される。一実施形態では、補体は、幼若ウサギ補体である。一実施形態では、補体は、ヒト補体である。特定の実施形態では、補体は、Bio-rad、Cedarlane(登録商標)又はEMDのものである。
【0012】
本発明はまた、補体を標的細胞に追加するための方法であって、補体を標的細胞に少なくとも約250μL/秒の速度で追加することを含む方法も提供する。一実施形態では、補体は、標的細胞に少なくとも約400μL/秒の速度で追加される。一実施形態では、補体は、標的細胞に約250μL/秒の速度で追加される。一実施形態では、補体は、標的細胞に約300μL/秒の速度で追加される。一実施形態では、補体は、標的細胞に約350μL/秒の速度で追加される。一実施形態では、補体は、標的細胞に約400μL/秒の速度で追加される。一実施形態では、補体は、標的細胞に約450μL/秒の速度で追加される。一実施形態では、補体は、標的細胞に約500μL/秒の速度で追加される。一実施形態では、補体は、標的細胞に少なくとも約500μL/秒の速度で追加される。
【0013】
特定の実施形態では、補体は、250μL/秒~500μL/秒の速度で追加される。一実施形態では、補体は、標的細胞に少なくとも約400μL/秒の速度で追加される。一実施形態では、補体は、標的細胞に約250μL/秒の速度で追加される。一実施形態では、補体は、標的細胞に約300μL/秒の速度で追加される。一実施形態では、補体は、標的細胞に約350μL/秒の速度で追加される。一実施形態では、補体は、標的細胞に約400μL/秒の速度で追加される。一実施形態では、補体は、標的細胞に約450μL/秒の速度で追加される。一実施形態では、補体は、標的細胞に約500μL/秒の速度で追加される。一実施形態では、補体は、標的細胞に少なくとも約500μL/秒の速度で追加される。
【0014】
一実施形態では、補体は、幼若ウサギ補体である。一実施形態では、補体は、Bio-rad又はCedarlaneのものである。一実施形態では、補体は、EMDのものではない。一実施形態では、補体は、アッセイにおいて標的細胞に追加されて、細胞死が決定される。一実施形態では、アッセイは、補体依存性細胞傷害アッセイである。一実施形態では、補体は、幼若ウサギ補体である。特定の実施形態では、補体は、Bio-rad又はCedarlane(登録商標)のものである。特定の実施形態では、補体は、EMDのものではない。
【0015】
一実施形態では、テスト分子は、IgG1分子又はIgG3分子である。
【0016】
本発明はまた、CDCアッセイ(アッセイ1)を実行するための方法であって、望まれない非特異的な細胞の死滅がアッセイ1において観察される場合、CDCアッセイが、続いて、補体追加の速度の増加を含む方法で実行される(アッセイ2)、方法も提供する。本発明はまた、CDCアッセイ(アッセイ1)を実行するための方法であって、望まれない非特異的な細胞の死滅が観察される場合、CDCアッセイが、続いて、標的細胞及びテスト分子を補体及び培地を含む混合物に追加することを含む方法で実行される(アッセイ2)、方法も提供する。一実施形態では、アッセイ1における非特異的な細胞の死滅と比較してアッセイ2における非特異的な細胞の死滅が低下する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A図1は、コントロールに対する比率に対する幼若ウサギ補体(BRC)の様々な材料の追加の速度の効果を示す図である。「コントロール(培地)」は、細胞及び培地を有するウェルを指す。「細胞+補体」は、細胞、培地及び補体を有するウェルを指す。補体(又は培地のみ)の速度は凡例において表され、10μL/秒、50μL/秒、100μL/秒、200μL/秒、400μL/秒又は429μL/秒の手作業による追加とする。*は統計的に有意なp値<0.0001を示し、「ns」は統計的に有意でないことを示す。
図1B図1は、コントロールに対する比率に対する幼若ウサギ補体(BRC)の様々な材料の追加の速度の効果を示す図である。「コントロール(培地)」は、細胞及び培地を有するウェルを指す。「細胞+補体」は、細胞、培地及び補体を有するウェルを指す。補体(又は培地のみ)の速度は凡例において表され、10μL/秒、50μL/秒、100μL/秒、200μL/秒、400μL/秒又は429μL/秒の手作業による追加とする。*は統計的に有意なp値<0.0001を示し、「ns」は統計的に有意でないことを示す。
図1C図1は、コントロールに対する比率に対する幼若ウサギ補体(BRC)の様々な材料の追加の速度の効果を示す図である。「コントロール(培地)」は、細胞及び培地を有するウェルを指す。「細胞+補体」は、細胞、培地及び補体を有するウェルを指す。補体(又は培地のみ)の速度は凡例において表され、10μL/秒、50μL/秒、100μL/秒、200μL/秒、400μL/秒又は429μL/秒の手作業による追加とする。*は統計的に有意なp値<0.0001を示し、「ns」は統計的に有意でないことを示す。
図1D図1は、コントロールに対する比率に対する幼若ウサギ補体(BRC)の様々な材料の追加の速度の効果を示す図である。「コントロール(培地)」は、細胞及び培地を有するウェルを指す。「細胞+補体」は、細胞、培地及び補体を有するウェルを指す。補体(又は培地のみ)の速度は凡例において表され、10μL/秒、50μL/秒、100μL/秒、200μL/秒、400μL/秒又は429μL/秒の手作業による追加とする。*は統計的に有意なp値<0.0001を示し、「ns」は統計的に有意でないことを示す。
図2図2は、BRCを細胞の追加の前に追加した場合と比較して、細胞をBRCの追加の前に追加した場合にWIL2- S細胞の非特異的な死滅が増加することを実証する発光を示す図である(「細胞+BRC」を「BRC+細胞」と比較)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、例えば細胞傷害アッセイにおいて観察される非特異的な細胞の死滅の量を低下させることによって、細胞傷害アッセイにおいてばらつきを低下させるための改善された方法を提供する。特に、本発明は、非特異的な細胞の死滅が低下した補体依存性細胞傷害方法を提供する。
【0019】
細胞傷害アッセイは、細胞死を決定するアッセイを指す。本明細書で使用されるように、「細胞死」は、「細胞の死滅」又は「細胞溶解」と区別なく使用されてもよい。「補体依存性細胞傷害」は、CDCアッセイにおいて観察される細胞の死滅を指す。CDCアッセイにおいて、標的細胞、テスト分子及び補体が相互に作用すると、膜侵襲複合体が標的細胞の表面に形成され、その後、標的細胞は細胞溶解を受ける。CDCアッセイは、細胞溶解の量を決定する。
【0020】
本明細書で使用されるように、「補体依存性細胞傷害アッセイ」又は「CDCアッセイ」は、例えば細胞培養プレート中の培地中でなどのように補体及びテスト分子と混合された標的細胞の死滅を測定するために使用されるアッセイを指す。本明細書で記載されるいくつかの態様では、CDCアッセイは、非特異的な細胞の死滅の量を決定するために、テスト分子を追加せずに実行される。非特異的な細胞の死滅は、テスト分子の非存在下における細胞死を指す。
【0021】
CDCアッセイは、改変された方法を含め、当業者によって広く知られている方法によって実行することができる。例えば、CDCアッセイは、標的を発現している細胞をプレートの培地中に追加し、次いで、補体(幼若ウサギ補体など)及び標的に結合するテスト分子を追加することによって実行することができる。例えばテスト分子がFcを有する抗体である場合、抗体は細胞に発現された標的に結合し、抗体のFc部分は補体に結合する。結合している補体は補体カスケードを開始し、標的を発現している細胞の死をもたらす。本発明は、より速い速度で補体を追加することによる細胞傷害アッセイの改善された方法を提供する。このようなより速い補体追加の速度は、非特異的な細胞の死滅の低下をもたらし、方法の精度及び正確度を増加させた。
【0022】
本発明のCDCアッセイはまた、標的細胞及びテスト分子を補体及び培地を含む混合物に追加することを含む方法によっても実行される。このような方法において、補体及び培地は最初にプレートに追加され、次いで、標的細胞及びテスト分子はプレートに追加される。この特定の方法では、補体追加の速度は、非特異的な細胞の死滅を低下させるのに重要ではない。
【0023】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0024】
本明細書で使用されるように、「プレート」は、プレートの「ウェル」、フラスコ又は細胞培養に好適である他の用具と区別なく使用される。
【0025】
CDCアッセイは、標的細胞型及びテスト分子に好適である時間及び温度で実行されてもよい。
【0026】
本明細書で使用されるように、用語「約」は、特定の詳述される数値に関して使用される場合、値が詳述される値から10%以下であれば変動してもよいことを意味する。
【0027】
CDCアッセイは、既知の方法及び本明細書において記載される改善された方法に従って実行されてもよい。CDCアッセイに関して、「標的細胞」は、テスト分子が結合することができる抗原を発現するCDCアッセイにおいて使用される細胞を指す。標的細胞の例は、WIL2-S、A431、CHO-M7及びBT474を含む。「テスト分子」は、標的細胞に発現される標的抗原及び補体タンパク質(例えばC1q)に結合することができる分子を指す。テスト分子とすることができる分子のタイプの例は、抗体及びヘテロ二量体分子を含む。
【0028】
本明細書で使用されるように、「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互に連結された2つのHC及び2つのLCを含む免疫グロブリン分子である。各LC及びHCのアミノ末端部分は、そこに含有されるCDRを介して抗原を認識するのに主に関与する約100~120個のアミノ酸の可変領域を含む。CDRは、フレームワーク領域(「FR」)と称される、より保存的な領域によって点在されている。各LCVR及びHCVRは、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配置された、3つのCDR及び4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。LCの3つのCDRは、「LCDR1、LCDR2、及びLCDR3」と称し、HCの3つのCDRは、「HCDR1、HCDR2、及びHCDR3」と称する。CDRには、抗原との特異的相互作用を形成する残基の大部分が含有されている。従って、抗体が特定の抗原と結合する機能的な能力は、6つのCDR内のアミノ酸残基によって大きく影響を受ける。一般的な認識では、CDCは典型的にIgG1分子又はIgG3分子では高く、IgG2分子及びIgG4分子では低い。
【0029】
本明細書で使用されるように、ヘテロ二量体分子は、2つ以上の異なる抗原又は同じ抗原上の2つ以上の異なるエピトープに結合することができる。ヘテロ二量体分子は、多重特異性抗体と区別なく使用されてもよい。ヘテロ二量体分子の非限定的な例は、二重特異性抗体である。二重特異性抗体フォーマットの例は、例えばLabrijn et al.,Nat.Rev.Drug Disc.;18,585-608(2019)において見つけることができる。
【0030】
抗体又はヘテロ二量体分子は、抗体又はヘテロ二量体分子のFc領域を介して補体に結合してもよい。Fc領域は、主として、細胞受容体及び/又は補体への結合に関与する。Fc領域は、そのため、抗体エフェクター機能及び補体カスケードの開始に関与する。
【0031】
本明細書で使用されるように、「補体」は、免疫反応などの反応において活性化された状態になることができる血液中を循環するタンパク質を指す。補体タンパク質の例は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、及びC9を含む。補体は、購入する又は既知の方法によって作製することが可能なヒト補体、ウサギ補体又は別のタイプの補体とすることができる。補体は、ウサギ、幼若ウサギ、ヒト、ヤギ、ラマ又はモルモットなどのいろいろな種のうちの1つに由来してもよい。好ましい実施形態では、補体は、組織培養グレードの補体であり、これは、細菌フリー、マイコプラズマフリー、ウイルスフリー且つ低エンドトキシンである。ヒト補体は、ヒト血清から得られる補体タンパク質を指す。ウサギ補体は、ウサギ血清から得られる補体タンパク質を指す。いくつかの実施形態では、ウサギ補体は、幼若ウサギ血清から得られる。補体は、メーカーから購入することができる又は他の市販で入手可能な材料とすることができる。補体は、凍結乾燥させて、次いで溶液中で還元してもよい又は補体は、バイアルにおいて凍結溶液などの溶液中で調製されてもよい。
【0032】
CDCアッセイにおいて、補体は、手作業で又は補体を所望の速度で追加するようにプログラムされたTecan Freedom EVO(登録商標)自動化リキッドハンドリングシステムなどの自動化装置によって製造業者の指示に従って追加することができる。加えて、電動ピペットを補体を所望の速度で追加するように設定することができ、このような方法は関連するユーザーマニュアルから決定することができる。
【0033】
CDCアッセイにおける細胞の死滅(細胞死又は細胞傷害とも称される)は、CellTiter-Glo(登録商標)、GAPDHなどの細胞死の間の細胞成分の放出を蛍光又は発光の定量を介して検出すること、死細胞を染色し且つ検出すること、生細胞においてだけ蛍光分子に変換されるアラマーブルーを追加すること及び細胞死の間に細胞から放出される放射性化合物を測定するなどの放射性アッセイを含むが、これらに限定されない当業者に知られている方法によって測定することができる。テトラゾリウム化合物もまた、生細胞を検出するために使用することができる。テトラゾリウム化合物の例は、MTT、MTS、XTT及びWST-1を含む。
【実施例
【0034】
実施例1:CDCアッセイにおける補体追加の速度
補体追加の速度が非特異的な細胞の死滅及びばらつきに影響を与えるかどうかを決定するために、リキッドハンドリングプログラムスクリプトを、Tecan Freedom EVO(登録商標)自動化リキッドハンドリングシステム用に記述した。スクリプトにより、50μLのアッセイ培地及び50μLの細胞(WIL2S細胞に由来する2つの細胞バンク(Cell Bank A及びCell Bank B)からのもの)を正味1.65細胞/mLで3枚の96ウェルアッセイプレートに追加した。次に、50μLのBRC又はアッセイ培地を3枚のプレートのそれぞれに5つの異なる速度で1列ずつ追加するようにプログラムした。各速度は、Liquid ClassのDispense Speedパラメータによってスクリプトにプログラムした。5つのLiquid Classを、以下の速度で分注するように生成した:10μL/秒、50μL/秒、100μL/秒、200μL/秒又は400μL/秒。
【0035】
アッセイ培地又は幼若ウサギ補体(「BRC」)はまた、手作業で、各プレートの列に、9(10のうちの)の分注速度にセットしたRainin XLS(商標)マルチチャンネル電動ピペットを使用して追加した。プレートを45~75分間37℃及び5%COでインキューベートした。5~10分クールダウンした後、50μLのCellTiter-Glo(登録商標)(Promega)試薬をプレートの全てのウェルに追加した。15~30分インキュベーションした後、プレートをEnvision(登録商標)プレートリーダーで読み取り、発光を測定した。細胞及び培地を含有するウェルと細胞、補体及び培地を含有するウェルとの間のシグナルにおける差は、補体による細胞の非特異的な死滅の基準となる。より高い比率は、より多くの非特異的な細胞の死滅を示す。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
これらのデータは、BRCの追加の速度が非特異的な死滅にとって重要な要因となること及び補体追加の速度がより速いほど非特異的な細胞の死滅の低下をもたらすことを実証する。
【0038】
実施例2:CDCアッセイにおける補体の材料
BRCの他の材料についても、異なる追加の速度が非特異的な細胞の死滅に影響を与えるかどうかを決定するために試験した。実施例1において使用したロット違いのCederlane BRC(cat#CL3441-S100)、Bio-rad(cat#C12CA)の2つのロット及びEMDMillipore(cat#234400)のBRCの1つのロットをテストした。試験は、3枚のプレートの代わりに4枚のプレートを調製したこと及び各プレートに4つのロットの補体のうちロット違いの補体を使用したこと以外は、本質的に実施例1において記載されるように実行した。Cederlaneのロットは希釈したが(1:16.5)、その他の3つのロットは以前適していた濃度に基づいて1:12に希釈した。結果を図1に示す。
【0039】
これらのデータは、実施例1におけるデータと同様に、補体の他のロット及び材料(Cederlaneのロット及び2つのBio-radのロット)の追加の速度がWIL2-S細胞の細胞生存度の比率に影響を与えたことを実証する。特に、非特異的な細胞の死滅は、補体がより速い速度で追加された場合に低下した。しかしながら、追加の速度は、ウサギ補体のEMD Milliporeロットについてはテストした希釈(1:12)では要因とならなかった。
【0040】
別の実験において、EMD Milliporeウサギ補体血清の追加の速度は、コントロールとの比率に対して、1:2、1:15及び1:30の希釈では、WIL2-S細胞又はCHO-M7細胞において影響を有するように思われなかった。
【0041】
実施例3:BRCの追加の順序
細胞の前又は後にプレートにBRCを追加することが非特異的な細胞の死滅及びアッセイのばらつきに影響を与えるかどうかを決定するために、産物希釈物の調製物、細胞(WIL2-S)及びBRC(Cederlaneから購入した)を調製した。このアッセイのために、産物希釈物を追加し、その後でBRC、次いでその後で細胞を追加した。各成分の追加の間の経過は約1分未満とし、BRCを105μL/秒の速度で追加した。プレートを37℃で5%COで60分間インキューベートした。細胞の死滅は、Cell Titer Gloを使用して決定した。これらの手順後の細胞生存度の比率は0.94であり、細胞を追加する前にBRCをプレートに追加した場合、非特異的な細胞の死滅のレベルが比較的低いことを示した。
【0042】
理論によって束縛されるものではないが、これらのデータは、細胞を最初にプレートに追加し、その後でBRCを追加し、BRCの勾配が生じた場合、非特異的な細胞の死滅をもたらすことを示唆する。この非特異的な死滅は、より速い速度(例えば250μL/秒~約500μL/秒)で補体を追加することによって又はBRCをプレートに最初に追加し、その後で細胞を追加することによって低下させることができる。
【0043】
別の実験において、BRCを細胞の追加の前又は後にプレートに追加して、非特異的な細胞の死滅を分析した。24ウェルプレートにおいて、WIL2-S細胞を最初に追加し、その後でBRC(Cederlane)を追加した。別の24ウェルプレートにおいて、BRCを最初に追加し、その後で細胞を追加した。WIL2-S細胞の非特異的な死滅は、細胞及び培地だけを含有するコントロールウェルの平均に対する処置したウェルの平均の比率を比較することによって計算した。その比率が1に近いほど、アッセイにおける非特異的な死滅はより少ない。表2及び図1において示されるように、BRCを最初に追加した場合、WIL2-S細胞の非特異的な死滅は少ない。そのため、細胞を追加する前にBRCを追加することは、より信頼性があるアッセイ結果をもたらす。
【0044】
【表2】
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-12-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
図1A図1A、B、C及びDは、コントロールに対する比率に対する幼若ウサギ補体(BRC)の様々な材料の追加の速度の効果を示す図である。「コントロール(培地)」は、細胞及び培地を有するウェルを指す。「細胞+補体」は、細胞、培地及び補体を有するウェルを指す。補体(又は培地のみ)の速度は凡例において表され、10μL/秒、50μL/秒、100μL/秒、200μL/秒、400μL/秒又は429μL/秒の手作業による追加とする。*は統計的に有意なp値<0.0001を示し、「ns」は統計的に有意でないことを示す。
図1B図1A、B、C及びDは、コントロールに対する比率に対する幼若ウサギ補体(BRC)の様々な材料の追加の速度の効果を示す図である。「コントロール(培地)」は、細胞及び培地を有するウェルを指す。「細胞+補体」は、細胞、培地及び補体を有するウェルを指す。補体(又は培地のみ)の速度は凡例において表され、10μL/秒、50μL/秒、100μL/秒、200μL/秒、400μL/秒又は429μL/秒の手作業による追加とする。*は統計的に有意なp値<0.0001を示し、「ns」は統計的に有意でないことを示す。
図1C図1A、B、C及びDは、コントロールに対する比率に対する幼若ウサギ補体(BRC)の様々な材料の追加の速度の効果を示す図である。「コントロール(培地)」は、細胞及び培地を有するウェルを指す。「細胞+補体」は、細胞、培地及び補体を有するウェルを指す。補体(又は培地のみ)の速度は凡例において表され、10μL/秒、50μL/秒、100μL/秒、200μL/秒、400μL/秒又は429μL/秒の手作業による追加とする。*は統計的に有意なp値<0.0001を示し、「ns」は統計的に有意でないことを示す。
図1D図1A、B、C及びDは、コントロールに対する比率に対する幼若ウサギ補体(BRC)の様々な材料の追加の速度の効果を示す図である。「コントロール(培地)」は、細胞及び培地を有するウェルを指す。「細胞+補体」は、細胞、培地及び補体を有するウェルを指す。補体(又は培地のみ)の速度は凡例において表され、10μL/秒、50μL/秒、100μL/秒、200μL/秒、400μL/秒又は429μL/秒の手作業による追加とする。*は統計的に有意なp値<0.0001を示し、「ns」は統計的に有意でないことを示す。
図2図2は、BRCを細胞の追加の前に追加した場合と比較して、細胞をBRCの追加の前に追加した場合にWIL2- S細胞の非特異的な死滅が増加することを実証する発光を示す図である(「細胞+BRC」を「BRC+細胞」と比較)。
【国際調査報告】