(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-04-24
(54)【発明の名称】長期間着用可能な医療用感圧接着剤物品
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20250417BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20250417BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20250417BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20250417BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
A61K9/70 401
A61K47/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024558387
(86)(22)【出願日】2023-03-22
(85)【翻訳文提出日】2024-10-02
(86)【国際出願番号】 IB2023052830
(87)【国際公開番号】W WO2023203402
(87)【国際公開日】2023-10-26
(32)【優先日】2022-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524062087
【氏名又は名称】ソルベンタム インテレクチュアル プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】木下 康宏
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ピー.ディジオ
(72)【発明者】
【氏名】ブレット ダブリュ.ラドウィグ
(72)【発明者】
【氏名】オードリー エー.シャーマン
【テーマコード(参考)】
4C076
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4C076AA74
4C076BB31
4C076EE03
4C076EE09
4C076EE11
4C076EE16
4J004AA10
4J004AB01
4J004AB06
4J004EA06
4J040DF021
4J040JA09
4J040JB07
4J040JB09
4J040KA12
4J040KA13
4J040KA23
4J040KA26
4J040KA31
4J040LA06
4J040MA13
4J040MA14
4J040NA02
(57)【要約】
感圧接着剤物品は、第1の主表面及び第2の主表面を有する基材と、基材の第1の主表面の少なくとも一部に配置された感圧接着剤層とを備える。感圧接着剤層は、酸性官能基もアミド官能基も含まない(メタ)アクリレート系ポリマーと、水素化炭化水素樹脂である少なくとも1種の粘着付与剤とのEビーム硬化組成物である。感圧接着剤層の、プロテインレザーに対する静的せん断は少なくとも600分である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主表面及び第2の主表面を有する基材と、
前記基材の前記第1の主表面の少なくとも一部に配置された感圧接着剤層であって、
酸性官能基もアミド官能基も含まない(メタ)アクリレート系ポリマーと、
水素化炭化水素樹脂を含む少なくとも1種の粘着付与剤と、を含むEビーム硬化組成物を含み、
プロテインレザーに対する静的せん断が少なくとも600分である、感圧接着剤層と、を備える、感圧接着剤物品。
【請求項2】
少なくとも1種の炭化水素系可塑剤を更に備える、請求項1に記載の感圧接着剤物品。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレート系ポリマーが、少なくとも70重量%の量で感圧接着剤層中に存在する、請求項1に記載の感圧接着剤物品。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート系ポリマーが、重合反応混合物から調製され、前記反応混合物が、
少なくとも75重量部の、一般式I:
CH
2=CR
1-(CO)-OR
2
式I
(式中、R
1は水素又はメチル基であり、
R
2は、アルキル、ヘテロアルキル又はアリール基である)の第1の(メタ)アクリレートモノマーと、
酸性官能基もアミド官能基も含まない少なくとも1種の共重合性極性モノマーと、
少なくとも1種のフリーラジカル開始剤と、を含む、請求項1に記載の感圧接着剤物品。
【請求項5】
前記第1の(メタ)アクリレートモノマーが、4~12個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項3に記載の感圧接着剤物品。
【請求項6】
前記共重合性極性モノマーが、NVP(N-ビニルピロリドン)を含む、請求項3に記載の感圧接着剤物品。
【請求項7】
前記反応混合物が、少なくとも1種の共重合性モノマーを更に含む、請求項3に記載の感圧接着剤物品。
【請求項8】
前記感圧接着剤層が、0.5~4.0メガラドのEビーム線量で架橋される、請求項1に記載の感圧接着剤物品。
【請求項9】
少なくとも5日間接着した後に、哺乳動物の皮膚から、前記哺乳動物の皮膚に損傷を与えることなく除去可能である、請求項1に記載の感圧接着剤物品。
【請求項10】
前記基材が、ポリマーフィルム、布、不織布、発泡体、紙、メッシュ、又は剥離ライナーを含む、請求項1に記載の感圧接着剤物品。
【請求項11】
哺乳動物の皮膚を含む表面と、
前記表面に接着剤で貼り付けられた接着剤物品と、を備える医療用構造体であって、前記接着剤物品が、
第1の主表面及び第2の主表面を有する基材と、
前記基材の前記第1の主表面の少なくとも一部に配置された感圧接着剤層であって、
酸性官能基もアミド官能基も含まない(メタ)アクリレート系ポリマーと、
水素化炭化水素樹脂を含む少なくとも1種の粘着付与剤と、
少なくとも1種の炭化水素系可塑剤と、を含むEビーム硬化組成物を含み、プロテインレザーに対する静的せん断が少なくとも600分である、感圧接着剤層とを含む、医療用構造体。
【請求項12】
前記接着剤物品が、少なくとも21日後に、前記哺乳動物の皮膚を含む表面から、前記哺乳動物の皮膚を傷つけることなく除去可能である、請求項11に記載の医療用構造体。
【請求項13】
前記(メタ)アクリレート系ポリマーが、少なくとも70重量%の量で感圧接着剤層中に存在する、請求項11に記載の医療用構造体。
【請求項14】
前記(メタ)アクリレート系ポリマーが、重合反応混合物から調製され、前記反応混合物が、
少なくとも75重量部の、一般式I:
CH
2=CR
1-(CO)-OR
2
式I
(式中、R
1は水素又はメチル基であり、
R
2は、アルキル、ヘテロアルキル又はアリール基である)の第1の(メタ)アクリレートモノマーと、
酸性官能基もアミド官能基も含まない少なくとも1種の共重合性極性モノマーと、
少なくとも1種のフリーラジカル開始剤と、を含む、請求項11に記載の医療用構造体。
【請求項15】
前記第1の(メタ)アクリレートモノマーが、4~12個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項14に記載の医療用構造体。
【請求項16】
前記共重合性極性モノマーが、NVP(N-ビニルピロリドン)を含む、請求項14に記載の医療用構造体。
【請求項17】
前記反応混合物が、少なくとも1種の共重合性モノマーを更に含む、請求項14に記載の医療用構造体。
【請求項18】
前記感圧接着剤層が、0.5~4.0メガラドのEビーム線量で架橋される、請求項11に記載の医療用構造体。
【請求項19】
前記接着剤物品が、少なくとも5日間接着した後に、哺乳動物の皮膚から、前記哺乳動物の皮膚に損傷を与えることなく除去可能である、請求項11に記載の医療用構造体。
【請求項20】
前記基材が、ポリマーフィルム、布、不織布、発泡体、紙、メッシュ、又は剥離ライナーを含む、請求項11に記載の医療用構造体。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
感圧接着剤物品、及び感圧接着剤物品を使用して作製される医療用構造体が本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、感圧接着剤物品は、第1の主表面及び第2の主表面を有する基材と、基材の第1の主表面の少なくとも一部に配置された感圧接着剤層とを備える。感圧接着剤層は、酸性官能基もアミド官能基も含まない(メタ)アクリレート系ポリマーと、水素化炭化水素樹脂を含む少なくとも1種の粘着付与剤(tackifier)とを含むEビーム硬化組成物を含む。感圧接着剤層の、プロテインレザーに対する静的せん断は少なくとも600分である。
【0002】
また、医療用構造体も開示される。いくつかの実施形態において、医療用構造体は、哺乳動物の皮膚を含む表面と、表面に接着剤で貼り付けられた接着剤物品とを備える。接着剤物品は、上に記載されている。
本出願は、添付の図面に関連させて本開示の様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮することで、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】実施例E21、E22、E24、及びE25についての、皮脂コーティングプロテインレザーに対する静的せん断のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0004】
医療産業における接着剤製品の使用は、長く普及しており、増加している。しかしながら、接着剤及び接着剤物品は、それら自体が医療用途に非常に有用であることが示されているが、接着剤及び接着剤物品の使用には問題もある。特に、接着剤に望まれる特性はしばしば矛盾する。例えば、接着剤は、ヒトの皮膚を含む多数の表面に対して高い接着性を有することが望ましいが、接着剤はまた、皮膚を傷つけることなく除去可能であることが望ましい。加えて、医療用物品の着用期間はより長くなっており、医療用物品は接着されたままである必要があり、かつ皮膚を傷つけることも残留物を残すこともなく除去可能である必要がある。
【0005】
医療用接着剤関連皮膚傷害(Medical adhesive-related skin injury、MARSI)は、患者の安全に対して著しい悪影響を及ぼす。医療用接着剤の使用に関連する皮膚傷害は、あらゆるケア環境及びあらゆる年齢層で発生する、一般的ではあるがあまり認識されていない合併症である。加えて、皮膚損傷の治療には、サービスの提供、時間、並びに追加の治療及び消耗品の点でコストがかかる。
【0006】
皮膚傷害は、皮膚の表層が医療用接着剤製品と共に除去される場合に発生し、これは、皮膚の完全性に影響を及ぼすだけでなく、疼痛及び感染症のリスクを引き起こす、創傷のサイズを増大させる、並びに治癒を遅延させる可能性があり、これらは全て患者のQOLを低下させる。
【0007】
MARSIの病態生理学は部分的にしか理解されていない。皮膚傷害は、皮膚と接着剤との付着力が、皮膚細胞と皮膚細胞との付着力より強い場合に生じる。接着力が皮膚細胞-皮膚細胞相互作用の強度を超えると、皮膚細胞層内で凝集破壊が発生する。
【0008】
典型的な医療用接着剤物品は、接着剤層と基材層とを備え、基材層は、例えば、テープ裏材であり得る。他の医療用接着剤物品は、他の基材層を有し、複数の層、デバイスなどを含んでもよい。この場合、MARSIを引き起こし得るこれらの因子に対処するために、接着剤物品の全ての構成成分の固有の特性を考慮しなければならない。考慮すべき接着剤の特性としては、経時的な凝集性及びそれに対応する接着力が挙げられる。考慮すべきテープ/裏材/ドレッシングの特性としては、通気性、伸縮性、適合性、柔軟性、及び強度が挙げられる。
【0009】
医療用途における接着剤の広範な使用は、皮膚に優しい接着剤及び接着剤物品の開発をもたらした。これらの接着剤の一部は、感圧接着剤である。皮膚接着用の、(メタ)アクリレート系及びシリコーン系感圧接着剤を含む感圧接着剤の適用は、当該技術分野において公知であり、多くの例が市販されている。
【0010】
感圧接着剤として広く使用されている接着剤材料のクラスには、(メタ)アクリレート系感圧接着剤がある。これらの材料は、多くの場合本質的に粘着性であるために添加される粘着性付与剤(tackifying agent)の使用を必要としないなどの多くの望ましい特徴を有し、典型的には、フリーラジカル重合によって高転化率で形成され(これは、形成された感圧接着剤中に未重合モノマーがほとんど又は全く残っていないことを意味する)、広範囲のモノマーを使用して(メタ)アクリレート系コポリマーを形成して、感圧接着剤の所望の特性を調整することができる。多くの場合、(メタ)アクリレート系感圧接着剤は、酸性基及び塩基性基などの極性基を有するモノマーを含有する反応混合物から調製される。酸性及び塩基性モノマーは、(メタ)アクリレート系感圧接着剤の凝集力を高める傾向があるため、接着剤の技術分野ではしばしば補強モノマーとして分類される。したがって、酸性補強モノマーも塩基性補強モノマーも含めずに、医療用途において有用となるために必要な凝集力を保持する(メタ)アクリレート系感圧接着剤を調製することは難題である。
【0011】
本明細書で使用される場合、用語「接着剤」は、2つの被着体を一緒に接着するのに有用なポリマー組成物を指す。接着剤の例は、感圧接着剤である。
【0012】
感圧接着剤組成物は、以下:(1)強力かつ永久的なタック、(2)指圧以下の圧力による接着、(3)被着体上に保持される十分な能力、及び(4)被着体からきれいに除去するのに十分な凝集力を含む特性を有することが当業者に周知である。感圧接着剤として良好に機能することが見出されている材料は、必要な粘弾性特性を示すように設計及び配合されたポリマーであり、タック、剥離接着力、及びせん断保持力の望ましいバランスをもたらす。複数の特性の適切なバランスを得ることは容易なプロセスではない。
【0013】
用語「(メタ)アクリレート系」は、少なくとも(メタ)アクリレートモノマーを含有し、追加の共重合性モノマーも含有してもよいポリマーを指す。
【0014】
用語「(メタ)アクリレート」は、アルコールのモノマーアクリル酸又はメタクリル酸エステルを指す。アクリレート及びメタクリレートモノマー又はオリゴマーは、本明細書ではまとめて「(メタ)アクリレート」と称される。
【0015】
用語「プロテインレザー」は、本明細書では、その一般的に理解されている意味に従って使用される。プロテインレザーは、合成皮革(Pleather)としても知られており、タンパク質粉末と樹脂とから構成され、しなやかなシートを形成する。これらのシートは、外観及び耐久性が皮革に似ている。
【0016】
用語「炭化水素系」は、本明細書では、粘着付与樹脂及び可塑剤を説明するために使用され、炭化水素である材料を指し、これは、当該材料が炭素及び水素原子を含有し、官能基を本質的に含まないことを意味する。
【0017】
用語「水素化」は、本明細書では、完全に水素化している(材料若しくは樹脂が、不飽和基を実質的に含まないことを意味する)か、又は部分的に水素化している(材料若しくは樹脂中の相当量の不飽和基、典型的には70%以上が水素化していることを意味する)粘着付与樹脂などの材料を説明するために使用される。
【0018】
用語「室温」及び「周囲温度」は、20℃~25℃の範囲の温度を意味するために互換的に使用される。
【0019】
2つの層に言及するときに本明細書で使用される用語「隣接する」は、2つの層が、それらの間に介在する開放空間なしに互いに近接していることを意味する。それらは互いに直接接触していてもよく(例えば、一緒に積層されていてもよく)、介在層があってもよい。
【0020】
用語「ポリマー」及び「高分子」は、本明細書では、化学におけるそれらの一般的な用法と一致して使用される。ポリマー及び高分子は、多くの反復サブユニットから構成される。本明細書で使用される場合、用語「高分子」は、複数の繰り返しユニットを有するモノマーに結合した基を説明するために使用される。用語「ポリマー」は、重合反応から形成される、結果として得られた材料を説明するために使用される。
【0021】
用語「アルキル」は、飽和炭化水素であるアルカンのラジカルである一価の基を指す。アルキルは、直鎖、分枝鎖、環状、又はそれらの組み合わせであり得、典型的には1~20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~18個、1~12個、1~10個、1~8個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、及びエチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
用語「アリール」は、芳香族であり、炭素環式である一価の基を指す。アリールは、芳香環に結合又は縮合した1~5個の環を有することができる。他の環構造は、芳香族、非芳香族、又はそれらの組み合わせであってもよい。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アントリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナントリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、及びフルオレニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
用語「ヘテロアルキル」は、1個以上の格子間ヘテロ原子を有するアルキルの一価の基を指す。ヘテロ原子は-O-又は-NR-であり、ここでRはH原子又はアルキル基である。
【0024】
用語「フリーラジカル重合性」及び「エチレン性不飽和」は、互換的に使用され、フリーラジカル重合機構を介して重合することができる炭素-炭素二重結合を含有する反応性基を指す。
【0025】
感圧接着剤物品が本明細書に開示される。接着剤物品は、基材の表面の少なくとも一部に配置された感圧接着剤層を有する基材を備える。基材及び感圧接着剤層は、以下に詳細に記載されている。本開示の接着剤物品は、広範囲の望ましい特性を有する。望ましい特性には、皮膚損傷を与えることなく長期間着用できることがある。そのような接着剤物品の望ましい特徴をモデル化するための尺度の1つは、静的せん断の測定である。特に哺乳動物、特にヒトの皮膚を模した表面上での静的せん断測定により、接着剤物品の模擬的な長期間着用性が示される。本開示では、プロテインレザーが特に好適な試験表面として使用される。プロテインレザーは、しなやかなシートを形成する、タンパク質粉末と樹脂とから構成される人工皮革(合成皮革と呼ばれることもある)を指す。これらのシートは、外観及び耐久性が皮革に似ている。サンプルの試験におけるプロテインレザーの使用は、実施例の節で詳細に説明される。特に好適なプロテインレザーの1つは、イデアテックスジャパン株式会社製のプロテインレザーPBZ13001 KAKIである。
【0026】
上述したように、接着剤物品は、哺乳動物の皮膚から、皮膚損傷を与えることなく除去可能であることが望ましい。いくつかの実施形態において、接着剤物品は、5日後に除去可能である。多くの実施形態において、接着剤物品は、より長い期間、例えば7日、14日、21日、30日又はそれよりも長い期間の後に除去可能である。典型的には、皮膚損傷は、接着剤物品を貼り付けた部位の物理的検査によって決定される。
【0027】
いくつかの実施形態において、感圧接着剤物品は、第1の主表面及び第2の主表面を有する基材と、基材の第1の主表面の少なくとも一部に配置された感圧接着剤層とを備える。感圧接着剤層は、酸性官能基もアミド官能基も含まない(メタ)アクリレート系ポリマーと、水素化炭化水素樹脂を含む少なくとも1種の粘着付与剤とを含むEビーム硬化組成物を含む。いくつかの実施形態において、感圧接着剤物品は、少なくとも1種の炭化水素系可塑剤を更に備える。感圧接着剤層の、プロテインレザーに対する静的せん断は少なくとも600分である。いくつかの実施形態において、接着剤物品の静的せん断は、少なくとも1,000分、少なくとも2,000分、又は更には少なくとも2,880分である。プロテインレザーに対する静的せん断を測定するために使用される方法は、以下の実施例の節に記載されている。
【0028】
本開示の接着剤物品は、基材を備える。多種多様な基材が、本開示の物品に好適である。多くの実施形態において、基材は、医療用物品における使用に好適な基材を含む。好適な基材の例としては、ポリマーフィルム、布、不織布、発泡体、紙、メッシュ、接着剤、又は剥離ライナーが挙げられる。いくつかの実施形態において、基材は、高水蒸気透過性フィルム裏材などの通気性かつ適合性の裏材を含む。そのような裏材の例、そのようなフィルムを作製する方法、及びそれらの透過性を試験する方法は、例えば、米国特許第3,645,835号及び同第4,595,001号に記載されている。
【0029】
一般に、基材は、解剖学的表面に適合性である。したがって、物品が解剖学的表面に適用される場合、表面が動かされたときでも、物品は表面に適合する。一般に、基材は、動物の解剖学的関節にも適合性である。関節が屈曲され、次いで、その非屈曲位置に戻されるとき、基材は、関節の屈曲に適応するように伸長するが、関節がその非屈曲状態に戻されるときに関節に適合し続けるほど十分に復元性がある。
【0030】
特に好適なフィルム裏材の例は、米国特許第5,088,483号及び同第5,160,315号に見出すことができ、エラストマーポリウレタン、ポリエステル、又はポリエーテルブロックアミド製フィルムが挙げられる。これらのフィルムは、復元性、高水蒸気透過性、及び透明性を含む望ましい特性の組み合わせを有する。
【0031】
本開示の感圧接着剤物品はまた、基材に配置された感圧接着剤層を備える。感圧接着剤層は、主に(メタ)アクリレート系ポリマーを含む。これは、接着剤層の(メタ)アクリレート系ポリマー含有量が50重量%超であることを意味する。いくつかの実施形態において、感圧接着剤層中に存在する(メタ)アクリレート系ポリマーの量は、少なくとも70重量%である。
【0032】
(メタ)アクリレート系ポリマーは、重合反応混合物から調製され、反応混合物は、少なくとも第1の(メタ)アクリレートモノマーと、酸性官能基もアミド官能基も含まない少なくとも1種の共重合性極性モノマーと、少なくとも1種のフリーラジカル開始剤とを含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、反応混合物は、少なくとも75重量部の、一般式I:
CH2=CR1-(CO)-OR2
式I
(式中、R1は水素又はメチル基であり、R2はアルキル、ヘテロアルキル、又はアリール基である)の第1の(メタ)アクリレートモノマーを含む。広範囲の(メタ)アクリレートモノマーが好適である。いくつかの実施形態において、第1の(メタ)アクリレートモノマーは、4~12個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む。モノマーの例としては、アクリル酸又はメタクリル酸と、非第三級アルキルアルコール、例えば、1-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、1-メチル-1-ブタノール、1-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール、3-ヘプタノール、2-オクタノール、1-デカノール、1-ドデカノールなどとのエステル、及びそれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルモノマーは、当該技術分野において公知であり、市販されている。特に好適なのは、2-エチルヘキシルアクリレート及びイソオクチルアクリレートなどの、8~12個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーである。
【0034】
(メタ)アクリレート系ポリマーを形成するために使用される反応混合物は、酸性官能基もアミド官能基も含まない、少なくとも1種の共重合性極性モノマーを更に含有する。典型的には、感圧接着剤の内部凝集力を高めるために、感圧接着剤を形成するために使用される(メタ)アクリレートポリマーにおいて酸性官能基又はアミド官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーが共重合される。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのみを含有するポリマーから調製された感圧接着剤は、凝集力が非常に弱い傾向がある。
【0035】
本発明の反応混合物は、酸官能基又はアミド官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含有しない。その理由は、感圧接着剤ポリマー中にこれらのモノマーが存在すると、接着剤物品が長期間着用された場合に皮膚損傷問題を引き起こす可能性があるためである。したがって、酸官能基を有するモノマーでもアミド官能基を有するモノマーでもない極性モノマーが使用される。
【0036】
好適な極性モノマーの代表例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;N-ビニルピロリドン(N-vinylpyrrolidone、NVP);N-ビニルカプロラクタム(N-vinylcaprolactam、NVC);2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートを含むポリ(アルコキシアルキル)(メタ)アクリレート;ビニルメチルエーテルを含むアルキルビニルエーテル;並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。特に好適な極性モノマーの1つは、NVP(N-ビニルピロリドン)である。
【0037】
反応混合物中に存在する極性モノマーの量は変えることができる。典型的には、極性モノマーは少なくとも1重量%の量で存在し、典型的には30重量%を超える量で存在しない。より典型的には、極性モノマーは、2~20重量%の量で存在する。
【0038】
上に列挙したモノマーに加えて、反応混合物は、1種以上の追加の共重合性モノマーを更に含んでもよい。広範囲の共重合性モノマーが好適である。いくつかの実施形態において、共重合性モノマーは共重合性光架橋剤を含む。共重合性光架橋剤は、上記のモノマーと共重合するフリーラジカル重合性基を含有する材料である。共重合性光架橋剤はまた、適正な波長の光、典型的には高強度紫外線(ultra-violet、UV)放射に曝露されると、ポリマー中に架橋結合を形成することができるフリーラジカルを形成する感光性基を含有する。(メタ)アクリレート系ポリマーが光開始剤の使用によって形成される場合、光架橋剤は、光開始剤と同じ波長の光によって活性化されない。このようにして、共重合性光架橋剤はポリマーに組み込まれ、また、この架橋剤は、熱的に安定であり、適切な波長の光によって活性化されるまでもとのままであるので、熱処理することができる。これは、ポリマーがホットメルトコーティングされるまで、共重合性光架橋剤が活性化されることを可能にする。コーティングされた架橋性感圧接着剤層は、高強度UVランプに曝露されて、架橋が行われる。好適なUVランプの例としては、中圧水銀ランプ又はUVブラックライトが挙げられる。
【0039】
好適な光架橋剤としては、米国特許第4,737,559号(Kellen et al.)に記載されているものなどの、オルト芳香族水酸基を含まないモノエチレン性不飽和芳香族ケトンコモノマーが挙げられる。具体例としては、パラ-アクリルオキシベンゾフェノン(para-acryloxybenzophenone、ABP。AEBPとも呼ばれることがある)、パラ-アクリリオキシ(acrylyoxy)エトキシベンゾフェノン、パラ-N-(メチルアクリルオキシエチル)-カルバモイルエトキシベンゾフェノン、パラ-アクリルオキシアセトフェノン、オルト-アクリルアミドアセトフェノン、アクリル化アントラキノンなどが挙げられる。特に好適なのは、4-アクリルオキシベンゾフェノンとも呼ばれるABPパラ-アクリルオキシベンゾフェノンである。
【0040】
典型的には、そのような光架橋剤は約0.05~0.50phrの量で使用される。用語phrは、ゴム重量100当たりの重量部(Parts per Hundred Rubber)を意味し、これは、特に加硫前に必要とされる特定の成分の量を示すためにゴム業界において使用されている尺度である。この場合、用語phrは、反応混合物中に存在する全モノマー100重量部当たりの光架橋剤の重量部を指す。いくつかの実施形態において、光架橋剤は、反応混合物中に存在する全モノマー100重量部当たり架橋剤約0.10重量部の量で存在する。
【0041】
以下で更に詳細に記載されるように、感圧接着剤は電子ビーム放射への曝露を介して架橋を受けるため、光架橋剤の使用は必要ではないが、そのような材料は、追加の架橋をもたらすことによって、架橋感圧接着剤の形成を助けることができる。
【0042】
反応混合物はまた、少なくとも1種のフリーラジカル開始剤を含む。開始剤は熱開始剤であっても光開始剤であってもよい。熱開始剤は、高温に曝露されると活性化してフリーラジカルを形成する開始剤である。光開始剤は、光、典型的には紫外(UV)光によって活性化される開始剤である。開始剤の選択は、様々な因子、特に反応混合物の組成に依存する。光架橋剤が使用される場合、UV光のような光への曝露により光架橋剤が早期に活性化する可能性があるため、光開始剤は望ましくない。多くの実施形態において、熱開始剤が使用される。
【0043】
多くの可能な熱フリーラジカル開始剤がビニルモノマー重合の技術分野において公知であり、使用することができる。本明細書で有用な、典型的な熱フリーラジカル重合開始剤は、有機ペルオキシド、有機ヒドロペルオキシド、及びフリーラジカルを生成するアゾ系開始剤である。有用な有機ペルオキシドとしては、過酸化ベンゾイル、ジ-t-アミルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、及びジクミルペルオキシドなどの化合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用な有機ヒドロペルオキシドとしては、t-アミルヒドロペルオキシド及びt-ブチルヒドロペルオキシドなどの化合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用なアゾ系開始剤としては、DuPont製VAZO化合物、例えば、VAZO52(2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル))、VAZO64(2,2’-アゾビス(2-メチルプロパンニトリル))、VAZO67(2,2’-アゾビス(2-メチルブタンニトリル))、及びVAZO88(2,2’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル))が挙げられるが、これらに限定されない。更なる市販の熱開始剤としては、例えば、Elf Atochem,Philadelphia,PAから入手可能なLUPERSOL130(2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3)、及びArkema Canada,Inc.,Oakvilleから入手可能なLUPEROX101(2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキソキシ(butylperoxoxy))ヘキサン)が挙げられる。米国特許出願公開第2011/0300296号には重合プロセスが詳細に記載されており、いくつかの実施形態において開始剤の混合物が含まれる。
【0044】
いくつかの実施形態において、開始剤は、光開始剤である。好適なフリーラジカル光開始剤の例としては、BASF,Charlotte,NCから市販されているDAROCURE1173、DAROCURE4265、IRGACURE184、IRGACURE651、IRGACURE1173、IRGACURE819、LUCIRIN TPO、LUCIRIN TPO-Lが挙げられる。光開始剤DAROCURE1173が特に好適である。
【0045】
一般に、開始剤は、100重量部の全反応性構成成分に対して0.01~2重量部、より典型的には0.1~0.5重量部の量で使用される。
【0046】
感圧接着剤層は、水素化炭化水素樹脂を含む少なくとも1種の粘着付与剤を更に含む。粘着付与剤は、感圧接着剤層中の微量構成成分であり、これは、層の全構成成分の50重量%未満を構成することを意味する。典型的には、粘着付与剤は、5~40重量%、又は10~30重量%、又は15~25重量%の量で存在する。
【0047】
従来の(メタ)アクリレート感圧接着剤は、本発明の接着剤物品に好適ではないロジンエステル及びテルペンフェノール樹脂などの材料を含む粘着付与剤樹脂を使用する。ロジンエステル及びテルペンフェノール樹脂は、(メタ)アクリレートポリマーとの相容性が高いため、頻繁に使用される粘着付与樹脂である。ロジンエステル及びテルペンフェノール樹脂は、皮膚過敏症を引き起こす可能性があるため、本発明の接着剤物品に好適ではない粘着付与樹脂である。これは、電子ビームへの曝露によって架橋される本発明の物品において特に当てはまる。その理由は、そのような曝露は、ロジンエステル及びテルペンフェノール樹脂の分解を引き起こして、皮膚を刺激する小分子を形成する可能性があるためである。したがって、本発明の接着剤物品には水素化炭化水素樹脂が使用される。水素化炭化水素樹脂は、完全水素化炭化水素樹脂である場合もあれば、部分水素化炭化水素樹脂である場合もある。部分水素化炭化水素樹脂は、感圧接着剤の残りの構成成分と十分な相容性を有する限り、好適であり得る。完全水素化炭化水素樹脂は多くの実施形態において好ましいが、部分水素化炭化水素樹脂も有用であり得る。完全水素化炭化水素粘着付与剤樹脂は、不飽和基を実質的に含まず、極性基も含まない。広範囲の水素化炭化水素粘着付与剤樹脂が好適である。好適な樹脂には、Aquent ImpexからES300、ES320、ES340、ES380、ES600及びES615の商品名で入手可能な樹脂、並びに荒川化学から入手可能ないくつかの樹脂がある。荒川化学製の好適な樹脂の例としては、ARKON M-100、ARKON M-115、ARKON M-135、及びARKON M-90などのARKON Mシリーズ(部分水素化)、並びにARKON P-100、ARKON P-115、ARKON P-125、ARKON P-140、及びARKON P-90などのARKON Pシリーズ(完全水素化)などの、商品名ARKONのものが挙げられる。特に好適な粘着付与剤の1つは、ARKON P-100である。
【0048】
いくつかの実施形態において、本開示の感圧接着剤物品は、少なくとも1種の炭化水素系可塑剤を更に含む。可塑剤は、感圧接着剤などの多くのポリマー組成物に使用される、一般的な添加剤である。可塑剤は、典型的には、ポリマー系の柔軟性又は加工性を高めるために添加される。可塑剤は、典型的には、ポリマー組成物の粘度に影響を及ぼし、ガラス転移温度を低下させ、弾性率を低下させる。可塑剤の典型的なクラスには、フタレート及びテレフタレートがある。可塑剤は、粘着付与剤と同様に、ポリマー組成物との相容性によって選択される。(メタ)アクリレート系感圧接着剤と共に使用される典型的な可塑剤には、フタレート、テレフタレート、ベンゾエート、及びエポキシ化大豆油(Epoxidized Soybean Oil、ESO)などのエポキシ化油がある。
【0049】
本発明の感圧接着剤層における好適な可塑剤の選択は、様々な点において限定されている。本発明の感圧接着剤層の化学的性質により、どの可塑剤が好適であるかが限定され、医療用物品におけるこれらの感圧接着剤層の使用もまた、好適な可塑剤の選択を限定する。本発明の感圧接着剤層は水素化炭化水素樹脂を含むため、多くの従来の可塑剤は好適ではない。従来の可塑剤は、これらの水素化炭化水素材料との相容性が高くない。したがって、可塑剤が本発明の感圧接着剤層に使用される場合、これらの可塑剤は、典型的には炭化水素系である。その理由は、炭化水素系可塑剤は水素化炭化水素樹脂との相容性が高いためである。このようにして、可塑剤は、感圧接着剤層中の(メタ)アクリレート系ポリマーと水素化炭化水素粘着付与剤樹脂との相容化を助ける。加えて、上述したように、可塑剤は生体適合性でなければならない。これは、可塑剤が皮膚に適用された場合に有害反応を引き起こさないことを意味する。好適な可塑剤の例としては、IOP(iso-octyl palmitate)(パルミチン酸イソオクチル)、Crodaから入手可能なポリエステルポリオールPRIPLAST3197、ティーツリーオイル、及び鉱物油が挙げられる。
【0050】
上述したように、感圧接着剤層は、架橋感圧接着剤層であり、架橋は、電子ビーム(Eビーム)放射への曝露によって行われる。架橋は、感圧接着剤層の凝集力を高めるために使用される。Eビーム硬化は、架橋を行うのに開始剤を必要とせず、したがって架橋感圧接着剤層中に開始剤残留物が残らないため、本発明の物品において特に望ましい。
【0051】
Eビーム硬化のための様々な手順が周知である。硬化は、使用される特定の設備に依存し、当業者は、特定の設備、ジオメトリ、及びライン速度、並びに他の十分に理解されているプロセスパラメータのための線量較正モデルを定義することができる。
【0052】
市販の電子ビーム発生設備は容易に入手可能である。本明細書に記載される例では、Model CB-300電子ビーム発生装置(Energy Sciences,Inc.(Wilmington,MA)から入手可能)で放射処理を実施した。一般に、支持フィルム(例えば、ポリエステルテレフタレート支持フィルム)は、チャンバを通過する。いくつかの実施形態において、両面にライナー(例えば、フルオロシリコーン剥離ライナー)を有する(「閉鎖面」)、未硬化材料のサンプルを支持フィルムに貼り付け、約6.1メートル/分(20フィート/分)の固定速度で搬送してもよい。いくつかの実施形態において、未硬化材料のサンプルは、一方のライナーに適用され、反対側の表面にはライナーがなくてもよい(「開放面」)。一般に、チャンバは不活性化され(例えば、酸素含有室内空気が不活性ガス、例えば窒素で置換される)、サンプルは、特に開放面硬化の場合、Eビーム硬化される。
【0053】
広範囲のEビーム線量が、本開示の物品の架橋感圧接着剤層に好適である。いくつかの実施形態において、感圧接着剤層は、0.5~4.0メガラドのEビーム線量で架橋される。
【0054】
架橋感圧接着剤層は、所望の用途に応じて、任意の好適な厚さであり得る。いくつかの実施形態において、厚さは、少なくとも10マイクロメートル、最大2ミリメートルであり、いくつかの実施形態において、厚さは、少なくとも20マイクロメートル、最大1ミリメートル厚である。広範囲の中間厚さ、例えば25~500マイクロメートル、200~400マイクロメートルなども好適である。
【0055】
本開示の接着剤物品を作製する多種多様な方法が好適である。典型的には、(メタ)アクリレート系ポリマーは、モノマー構成成分と開始剤とを混合して反応混合物を形成することによって調製される。いくつかの実施形態において、構成成分は、溶媒又は溶媒の混合物中に分散される。好適な溶媒としては、炭化水素溶媒、例えばヘキサン、ヘプタンなど、芳香族溶媒、例えばベンゼン若しくはトルエン、又は酢酸エチルなどのエステルが挙げられる。反応混合物は、開始剤を活性化することによって(典型的には、開始剤の活性化温度を超えて加熱することによって)重合される。次いで、所望の添加剤(使用する場合は粘着付与剤及び可塑剤)が重合混合物に添加され、結果として得られた混合物は、表面(典型的には剥離ライナー)にコーティングされ、加熱によって乾燥され、硬化される。硬化には、上記のようにEビーム放射への曝露が必要であり、光架橋剤が(メタ)アクリレート系ポリマーに組み込まれた場合には、UV光への曝露が必要なこともある。剥離ライナー上で架橋された場合、結果として得られた感圧接着剤層は、次いで、所望の基材の表面に積層され得る。多種多様な剥離ライナーが好適である。剥離ライナーは接着剤技術分野において一般的に使用され、十分に理解されている。例示的な剥離ライナーとしては、紙(例えば、クラフト紙)又はポリマー材料(例えば、ポリエチレン若しくはポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルなど、及びそれらの組み合わせ)から作製されたものが挙げられる。少なくとも一部の剥離ライナーは、シリコーン含有材料又はフルオロカーボン含有材料などの剥離剤の層でコーティングされている。例示的な剥離ライナーとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムにシリコーン剥離コーティングを施した、CP Film(Martinsville,Va.)から「T-30」及び「T-10」の商品名で市販されているライナーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
また、本明細書には、医療用構造体も開示される。いくつかの実施形態において、医療用構造体は、哺乳動物の皮膚を含む表面と、表面に接着剤で貼り付けられた接着剤物品とを備える。接着剤物品は、上記の物品を含む。いくつかの実施形態において、接着剤物品は、第1の主表面及び第2の主表面を有する基材と、基材の第1の主表面の少なくとも一部に配置された感圧接着剤層とを備える。感圧接着剤層は、酸性官能基もアミド官能基も含まない(メタ)アクリレート系ポリマーと、水素化炭化水素樹脂を含む少なくとも1種の粘着付与剤とを含むEビーム硬化組成物を含み、任意選択で少なくとも1種の炭化水素系可塑剤を含有する。感圧接着剤層の、プロテインレザーに対する静的せん断は少なくとも600分である。
【0057】
上述したように、接着剤物品は、哺乳動物の皮膚から、皮膚損傷を与えることなく除去可能であることが望ましい。いくつかの実施形態において、接着剤物品は、5日後に除去可能である。多くの実施形態において、接着剤物品は、より長い期間、例えば7日、14日、21日、30日又はそれよりも長い期間の後に除去可能である。典型的には、皮膚損傷は、接着剤物品を貼り付けた部位の物理的検査によって決定される。
【0058】
好適な基材及び感圧接着剤層を含む接着剤物品の構成成分は、上に詳細に記載されている。
【実施例】
【0059】
特に断りのない限り、百分率は全て重量%である。
【0060】
【0061】
研究1:実施例E1~E8及び比較例C1~C4
モノマー、開始剤、及び溶媒を、表2に示すポリマー配合に従ってガラスジャー中で混合した。溶液を2分間(min)窒素パージした後、60℃で24時間(hr)重合を行い、粘稠なポリマー溶液を得た。
【0062】
得られたポリマー溶液を、表3に示す配合に従って添加剤P-100及び/又は3197と混合し、次いでナイフコーターを使用してTSCの表面にコーティングした。添加剤P-100は粘着付与剤として作用し、3197は可塑剤として作用する。コーティングされたTSCをオーブンで乾燥させた(70℃で2分間、続いて120℃で2分間)。表3に示すように、紫外線(UV)照射又は電子ビーム(Eビーム)のいずれかを使用して硬化させると、厚さ100マイクロメートル(μm)の感圧接着剤(PSA)シートが得られた。次いで、コロナ処理(PSA表面にコロナ発生器AGF-B10(春日電機株式会社製、0.15kW)を用いてコロナ処理を施した)後、120℃の熱缶積層(hot can lamination)により、PSAシートにSontaraを積層した。熱缶積層は、米国特許第6,703,108号(Bacon et al.)に記載されている。
【0063】
【0064】
【0065】
基材は、イデアテックスジャパン株式会社(日本、東京)から入手可能なプロテインレザーPBZ13001 KAKIプロテインレザーであった。プロテインレザーは、タンパク質粉末とブレンドされたポリウレタンの表面を有する合成材料である。プロテインレザーの表面特性及び弾性特性は、ヒトの皮膚に対する試験を模するために有用な伸縮性基材であることを本発明者らが見出すに足るものである。
【0066】
基材は、合成皮脂コーティングを施すことによって作製した。表4に従って調製した合成皮脂溶液を、Dバーコーター(No.30)を使用してプロテインレザーにコーティングし、70℃で乾燥させて、合成皮脂コーティングプロテインレザーを得た。コーティングプロテインレザーから切り出したブランクは、およそ30mm×125mmであった。
【0067】
【0068】
静的せん断試験
25mm×75mmサイズのサンプルテープを作製し、各サンプルテープの上部50mmの領域に厚さ25マイクロメートルのポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、PET)フィルムを積層して、サンプルテープの延伸剥離を防止した。
【0069】
PETフィルム積層サンプルテープを、コーティングプロテインレザーブランクの一端に25mmオーバーラッピングで積層し、次いで、2キログラム(kg)のローラー(往復、50ミリメートル/秒(mm/sec))をかけて圧縮して、作製された試験片を得た。
【0070】
追加作製した試験片を145-DP保持力試験機(株式会社安田精機製作所(日本、東京))に固定した。チャンバ条件が40℃及び75%相対湿度(RH)に達した後、作製した試験片を、これらの条件において、荷重負荷なしで4時間保持した。4時間経過後、各試験片に300gの荷重をかけ、保持時間を測定した。
【0071】
プロテインレザーを用いた静的剥離試験
寸法12.5mm×125mmのサンプルテープを作製し、サンプルテープの一端を折り曲げてタブを形成した。合成皮脂コーティングプロテインレザーにテープサンプルを積層し、次いで2kgローラー(往復、50mm/sec)で圧縮した。
【0072】
積層プロテインレザーの一端をジグに固定し、次いで積層テープサンプルのタブにクリップを取り付けた。100gの重りをクリップに取り付け、静的T型剥離試験を開始した。試験時間は10分とし、離層したテープの移動長さを測定した。テープが10分以内に完全に離層した場合、推定移動時間は、((積層長さ)/(落下時間)×(10分))に従って、落下時間に基づいて計算した。
【0073】
試験結果
合成皮脂コーティングプロテインレザーに対する静的せん断試験及び合成皮脂コーティングプロテインレザーに対する静的剥離試験の結果を表Xに示す。全ての試行サンプルは、商業用の3M医療用テープ4076(比較例C5)と比較して、好適な硬化レベル(EB:2メガラド(MRad)、UV:20ミリジュール(mJ))で良好な静的せん断性能を示した。より高いレベルで硬化すると、PSAは柔軟性を失い、応力緩和性能の低下を示し、PSAはプロテインレザーから離層した。試行配合物において、有意な静的せん断性能の差はなかった。優れた静的せん断性能を達成するための最も重要な因子は、良好な凝集及び応力緩和の両方をもたらすことができる好適なポリマーネットワークを有することであると考えられる。
【0074】
【0075】
静的剥離試験では、P-100粘着付与剤を配合したPSAが改善された性能を有していたことが分かる。粘着付与剤は、良好な初期粘着、及び剥離力に対する耐性をもたらした。3197可塑剤の添加により、皮膚に対する濡れ性を改善することができ、少なくともこの試行では、5%の可塑剤添加量により、許容可能な静的剥離性能が得られた。
【0076】
別の因子は、医療用接着剤関連皮膚傷害(MARSI)リスクを最小限に抑えるためには化学的に安定なPSA配合物が好ましいということである。残留モノマー又は光開始剤は、皮膚過敏症を引き起こす可能性がある。ABPは、好適なUV硬化によって良好なポリマーネットワークをもたらすことができるが、残留ベンゾフェノン部分が皮膚を刺激し得るリスクがある。特に長期間着用の場合、残留モノマー又は光開始剤を含有するPSAは、皮膚への適用に好ましくない場合がある。
【0077】
研究2:実施例E9~E12
モノマー、開始剤、及び溶媒を、表6に示す配合に従ってガラスジャー中で混合した。溶液を2分間窒素パージした後、60℃で24時間重合を行い、粘稠なポリマー溶液を調製した。
【0078】
得られたポリマー溶液を、表7に示す添加剤と混合し、ナイフコーターを使用してTSCの表面にコーティングし、次いでオーブンで乾燥させた(70℃で2分間、続いて120℃で2分間)。3MRadのEビーム硬化後、厚さ100μmのPSAシートが得られた。次いで、上記のように、コロナ処理後、120℃の熱缶積層により、硬化PSAシートにSontaraを積層した。配合及び試験条件の詳細を表6及び表7に示す。
【0079】
【0080】
【0081】
非コーティングプロテインレザーを用いた静的せん断試験
静的せん断試験用の試験片は、プロテインレザーが合成皮脂でコーティングされていないことを除き、研究1に記載されたように作製した。
【0082】
静的せん断試験は、チャンバ条件が30℃及び75%RHであったことを除き、研究1に記載されたように行った。最大試験時間は1440分であった。結果を表8に示す。これらの結果により、長期間着用用途に好ましいポリマー中のNVPのレベルが確認された。適切な凝集を得るためには、5%を超えるNVP添加量が必要となる場合がある。
【0083】
【0084】
研究3:実施例E13~E20
ポリマー1及び6を、表9に示すように、モノマー、開始剤、及び溶媒をガラスジャー中で混合することによって合成した。溶液を2分間窒素パージした後、60℃で24時間重合を行い、粘稠なポリマー溶液を調製した。
【0085】
得られたポリマー溶液を表10に示すように調合し、ナイフコーターを使用してTSC表面にコーティングし、次いでオーブンで乾燥させた(70℃で2分間、続いて120℃で2分間)。表8に示す各条件でのEビーム硬化後、厚さ100マイクロメートルのPSAシートが得られた。コロナ処理後、120℃の熱缶積層により、PSAシートにSontaraを積層した。
【0086】
【0087】
【0088】
非コーティングプロテインレザーを用いた静的せん断試験
静的せん断試験片を、30℃及び75%RHのチャンバ条件を使用し、非コーティングプロテインレザーを使用して上記のように作製した。結果を
図5に示す。本研究において、本発明者らは、アクリルポリマーの分子量の影響を確認した。ポリマー1はポリマー6よりも分子量が大きく、より良好な静的せん断性能を示した。低分子量ポリマーの場合、適切な凝集を達成するために、より高い架橋レベルが必要であった。しかしながら、ポリマーは高い架橋レベルにおいて応力緩和性能を失う。したがって、低分子量ポリマーに好適な架橋レベルを見つけるのは容易ではない。長期間着用用途には、より高分子量のポリマーの使用が好ましいはずである。
【0089】
【0090】
研究4:実施例E21~E50
表12に示す配合に従ってコーティング可能なPSA溶液を調製し、ナイフコーターを使用して紙ライナーにコーティングし、オーブンで乾燥させた。各条件でのEビーム硬化後、厚さ100マイクロメートルのPSAシートが得られた。静的せん断試験のために、コロナ処理後、120℃の熱缶積層により、各PSAシートにSontaraを積層した。タック試験のために、ハンドローラーを使用してPETをPSAシートに積層した。
【0091】
【0092】
合成皮脂コーティングプロテインレザーを使用して、静的せん断試験片を上記のように製作した。合成皮脂溶液を、表13に従って調製し、Dバーコーター(No.30)を使用してプロテインレザーにコーティングした後、70℃で乾燥させて、合成皮脂コーティングプロテインレザーを得た。実施例E21、E22、E24及びE25について、様々なレベルの電子ビーム線量での静的せん断試験結果を取得し、
図1に示す。
図1は、PSA架橋密度に対する電子ビーム線量の影響を示す。この結果は、PSAが中間レベルの架橋で最適な特性を有し得ることを示す。低レベルの架橋は凝集破壊をもたらし、高レベルでは不十分な剥離特性が示された。
【0093】
【0094】
フィンガータック試験
PSAタック安定性を、PSA開放面状態で評価した。接着剤表面が空気に曝露された状態で、PET積層サンプルを厚紙上に固定した。固定されたサンプルを、実験室の周囲条件で3ヶ月間維持した。次いで、フィンガータック試験を使用して、表14の基準に従ってPSAの粘着性をチェックした。
【0095】
【0096】
PSAタックの開放面安定性は、長期間適用に重要な性能特性である。PSAを使用して医療機器を皮膚に貼り付ける場合、機器/PSAの組み合わせは、アプリケーター内で空気に曝露された状態で、ライナーなしで保管することができる。粘着付与剤とアクリルポリマーとの相容性に問題がある場合、粘着付与剤がPSA表面に移行し、PSAの粘着性が失われる。表15に示す結果に基づくと、PSA-1とP-100との組み合わせが試行における唯一の解決手段であった。
【0097】
【国際調査報告】