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特表2025-513276レゾルシノール又はカテコール部分含有成分を含有する歯科用組成物及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-04-24
(54)【発明の名称】レゾルシノール又はカテコール部分含有成分を含有する歯科用組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/887 20200101AFI20250417BHJP
   A61K 6/62 20200101ALI20250417BHJP
   A61K 6/16 20200101ALI20250417BHJP
【FI】
A61K6/887
A61K6/62
A61K6/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024561580
(86)(22)【出願日】2023-03-29
(85)【翻訳文提出日】2024-10-17
(86)【国際出願番号】 IB2023053134
(87)【国際公開番号】W WO2023209463
(87)【国際公開日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】22169878.0
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524062087
【氏名又は名称】ソルベンタム インテレクチュアル プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】アードリアン エッケルト
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ タラッカー
(72)【発明者】
【氏名】カルステン デデ
(72)【発明者】
【氏名】マーリオン カンドルビンダー
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA06
4C089BA05
4C089BA13
4C089BC02
4C089BC08
4C089BD02
4C089BD04
(57)【要約】
本発明は、樹脂マトリックスと、開始剤系と、充填剤系とを含む組成物に関する。樹脂マトリックスは、レゾルシノール又はカテコール部分のいずれかを含む骨格を含有する重合性成分を含む。組成物は、歯科分野及び歯科矯正分野において、例えば有利な特性を有する歯科用充填材料として特に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)樹脂マトリックスと、
b)開始剤系と、
c)充填剤系と
を含む歯科用組成物であって、前記樹脂マトリックスが、以下の式(I)、(II)、又は(III)
【化1】
[式中、
X=H、アルキル、I、Br、Clから独立して選択され、
Z=H、CH、CHOHから独立して選択され、
n、m=1~10の範囲の整数から独立して選択され、
(m+n)=1~10であり、
R=H、CHから独立して選択される]
【化2】
[式中、
X=H、アルキル、I、Br、Clから独立して選択され、
Z=H、CH、CHOHから独立して選択され、
k、n、m=1~10の範囲の整数から独立して選択され、
(k+m+n)=1~15であり、
R=H、CHから独立して選択される]
のいずれかによって特徴付けられる重合性成分A1、及びこれらの混合物を含む、歯科用組成物。
【請求項2】
重合性成分A1が、
【化3】
[式中、
m、n、k=1~10の範囲の整数から独立して選択され、
かつ(m+n)=1~10であるか又は
(m+n+k)=1~15である]
及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の歯科用組成物。
【請求項3】
重合性成分A1が、以下の特性:
a)粘度:25mm/1°のコーン/プレートシステムを使用して、23℃及び100s-1の剪断速度で2~40Pas、
b)屈折率:589nmの波長で、20.0℃で測定して1.520~1.565
の単独又は組み合わせによって特徴付けられる、請求項1又は2に記載の歯科用組成物。
【請求項4】
前記樹脂マトリックスが、重合性成分A1とは異なる1種以上の重合性成分A2を含み、前記重合性成分A2が、好ましくは、以下の式:
BA
[式中、Aは、エチレン性不飽和基であり、
Bは、(i)ハロゲン化物若しくはOHで任意選択的に置換された直鎖若しくは分枝鎖C~C12アルキル、(ii)ハロゲン化物若しくはOHで任意選択的に置換されたC~C12アリール、又は(iii)1つ以上のエーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル、チオカルボニル、アミド、ウレタン、カルボニル、及び/若しくはスルホニル結合によって互いに結合している4~20個の炭素原子を有する有機基から選択され、
m、nは、0、1、2、3、4、5、又は6から独立して選択されるが、n+mは0より大きいことを条件とする]によって特徴付けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項5】
前記開始剤系が、光開始剤系、好ましくは、ケトン増感剤、アミン供与体、及び任意選択的にヨードニウム塩を含む光開始剤系を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項6】
前記充填剤系が、ナノサイズ粒子を含み、前記組成物全体の重量に対して20~90重量%の量で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項7】
以下の量の成分:
a)重合性成分A1:3~50重量%、
b)重合性成分A2:0~60重量%、
c)開始剤系:0.1~4重量%、
d)充填剤系:20~90重量%、
e)可塑剤:0~20重量%、
f)補助剤:0~15重量%
を含み、重量%は前記組成物全体の重量に対するものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項8】
以下の成分:
5重量%以上の量の150℃未満の沸点を有する溶媒、
2重量%以上の量のビスフェノールA由来成分、
2重量%以上の量の酸性部分を含む重合性成分
を、単独でもこれらの組み合わせでも含まず、重量%は前記組成物全体の重量に対するものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項9】
固化前に、以下の特徴:
a)粘度:25℃及び100s-1の剪断速度で5~100Pas、
b)pH値:6~8、
c)400~700nmの範囲の波長を有する光で照射した後10分以内に固化可能であること
の単独又は組み合わせによって特徴付けられる、請求項1~8のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項10】
固化後に、以下の特徴:
a)曲げ強度:ISO4049(2019)に従って決定して140~200Mpas、
b)弾性率(EM):ISO4049(2019)に従って決定して4~16GPa、
c)硬化深度:ISO4049(2019)に従って決定して3~7mm、
d)接着ディスク収縮歪み:実験セクションに記載のように決定して1.50~1.80%、
e)直径引張強度:ISO7489(2019)に従って決定して75~100MPa、
f)咬頭歪み:<12μm
の単独又は組み合わせによって特徴付けられる、請求項1~9のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項11】
前記歯科用組成物が、
a)3~50重量%の量の重合性成分A1、
b)0~60重量%の量の重合性成分A2、
c)0.1~4重量%の量の開始剤系であって、ケトン増感剤及びアミン供与体を含む開始剤系、
d)ナノサイズ粒子を含む、20~90重量%の量の充填剤系、
e)0~20重量%の量の可塑剤、
f)0~15重量%の量の補助剤
を含むことによって特徴付けられ、重量%は前記組成物全体の重量に対するものであり、
前記組成物が、5重量%以上の量のビスフェノールA部分含有成分を含まない、請求項1~10のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の歯科用組成物と、以下の品目:歯科用接着剤、歯科用プライマー、分注装置、研磨装置、歯科用硬化光の単独又は組み合わせとを含むパーツキット。
【請求項13】
歯科修復物を作製するための、歯科用ミルブランクを作製するための、又は歯科用物品を作製する積層造形法における樹脂としての、請求項1~11のいずれか一項に記載の歯科用組成物の使用。
【請求項14】
歯牙硬組織の表面に前記歯科用組成物を適用する工程と、前記歯科用組成物を固化させる工程とを含む、哺乳動物の口腔内の歯牙硬組織を治療する方法において使用するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項15】
コンポジット充填材料、歯科矯正器具の固定材料、キャビティライナー、又はシーラントとして使用するための、請求項14に記載の歯科用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂マトリックスと、開始剤系と、充填剤系とを含む組成物に関する。樹脂マトリックスは、レゾルシノール又はカテコール部分のいずれかを含む骨格を含有する重合性成分を含む。
【0002】
組成物は、歯科分野及び歯科矯正分野において、例えば有利な特性を有する歯科用充填材料として特に有用である。
【0003】
歯科用組成物はまた、ミルブランクを作製するために、及び積層造形(additive-manufacturing)法における樹脂として、使用することができる。
【背景技術】
【0004】
アマルガム及び歯科用コンポジット材料を含む、修復目的のための様々な歯科用充填材料が知られている。
【0005】
その主な機能(欠損歯構造の補填)を果たすために、歯科用充填材料は、適切な物理的特性を有する必要がある。特に、それらは、咀嚼力を吸収し、咀嚼力に耐えることができる十分な強度を有していなければならない。
【0006】
しかしながら、材料が硬すぎる場合は、より脆くもなる。
【0007】
したがって、歯科用充填材料は、十分に硬質である必要があるだけでなく、ある程度可撓性である必要もある。
【0008】
これらの必要性に対処するために、市販の歯科用コンポジット充填材料は、典型的には、特定の量の樹脂マトリックスと、充填剤と、開始剤とを含有する。
【0009】
樹脂マトリックス中に含有される広く使用されている重合性(メタ)アクリレート成分は、ビスフェノールA-グリシジルメタクリレート(bisphenol A-glycidyl methacrylate、Bis-GMA)又は他のビスフェノール系(メタ)アクリレートモノマーである。
【0010】
ビスフェノール系モノマーを含有する組成物は、高圧縮強度などの様々な有利な特性を有すると言われており、したがって、修復目的のために施術者が様々な異なる歯科用組成物を配合することを可能にする。
【0011】
しかしながら、いくつかの文献は、ビスフェノール系モノマーが全ての目的のために常に推奨されるわけではないことを示しているようである。したがって、代替の重合性(メタ)アクリレート成分が必要とされている。
【0012】
米国特許出願公開第2010/076115(A1)号(Heraeus Kulzer)は、ウレタン基を有するトリシクロ[5.2.1.02.6]デカンのアクリル酸エステルを含む歯科用コンポジットのための組成物に関する。
【0013】
米国特許第3,853,962号(Gander)は、メタクリレートモノマー1,3-ビス[2-,3-ジ(メタクリルオキシ)-プロポキシ]-ベンゼンを含む歯科用修復セメントに関する。この種類のモノマーを含有する修復組成物は、改善された圧縮強度及び関連する物理的特性を有すると言われている。
【0014】
米国特許第4,744,827号(Winkel)は、大幅により小さい重合収縮を呈するトリシクロデカンの(メタ)アクリル酸誘導体を記載している。
【0015】
米国特許第8,426,490(B2)号(Bissingerら)は、粘度、屈折率、分子量、及び収縮値に関してバランスのとれた特性を示す、ウレタン結合を含有するメタクリレート系モノマーを記載している。
【0016】
米国特許出願公開第2011/0315928(A1)号(Jinら)は、少なくとも1種の低応力重合性樹脂と少なくとも1種の充填剤とを含む低粘度かつ低応力の歯科用組成物に関する。この歯科用組成物は、高い硬化深度及び自己水平性を有すると言われており、バルク適用が可能である。
【0017】
国際公開第2012/106083(A1)号(3M)は、芳香族又は脂肪族環状部分を含む同等の剛性骨格単位と、スペーサー単位と、重合性末端基を含む単位とを含有する固化性化合物を含む歯科用組成物を記載している。この組成物は、歯科分野において、例えば脆性が低減されたコンポジット材料を提供するのに有用である。
【発明の概要】
【0018】
改善された特性を有する、歯科分野及び歯科矯正分野で使用することができる組成物が依然として必要とされている。
【0019】
この組成物は、その未硬化状態での取り扱いが容易であるべきであり、特に、処理される表面への適用が容易であるべきである。
【0020】
所望であれば、組成物が充填剤を大量に含むことを可能にする場合も望ましい。
【0021】
これらの特性は、ビスフェノール-A(bisphenol-A、BPA)含有モノマーを使用する必要なく達成可能であるべきである。
【0022】
理想的には、組成物を固化させた後、組成物は、十分な曲げ強度及び硬化深度などの適切な物理的-機械的特性を有するべきである。
【0023】
更に、可能であれば、所望の審美性及び硬化深度特性を達成するために、硬化性組成物の重合性成分(複数可)は、適切な屈折率を有するべきである。
【0024】
これらの目的のうちの1つ以上は、本明細書及び特許請求の範囲に記載される発明によって達成される。
【0025】
一実施形態では、本発明は、本明細書及び特許請求の範囲に記載されるように、a)樹脂マトリックスと、b)開始剤系と、c)充填剤系とを含む歯科用組成物であって、樹脂マトリックスが、以下の式I、II、又はIII
【0026】
【化1】
[式中、
X=H、アルキル、I、Br、Clから独立して選択され、Z=H、CH、CHOHから独立して選択され、n、m=1~10の範囲の整数から独立して選択され、(m+n)=1~10又は2~8又は2~6であり、R=H、CHから独立して選択される]
【0027】
【化2】
[式中、X=H、アルキル、I、Br、Clから独立して選択され、Z=H、CH、CHOHから独立して選択され、k、n、m=1~10の範囲の整数から独立して選択され、(k+m+n)=1~15又は2~10又は3~8であり、R=H、CHから独立して選択される]
のいずれかによって特徴付けられる重合性成分A1、及びこれらの混合物を含む、歯科用組成物を特徴とする。
【0028】
本発明の更なる実施形態は、本明細書及び特許請求の範囲に記載される歯科用組成物と、本明細書及び特許請求の範囲に記載される以下の品目:歯科用接着剤、歯科用プライマー、分注装置、研磨装置、歯科用硬化光の単独又は組み合わせとを含むパーツキットに関する。
【0029】
本明細書に記載される歯科用組成物はまた、本明細書及び特許請求の範囲に記載されるように、歯科修復物、歯科用ミルブランクを作製するために、又は積層造形法における樹脂として、使用することができる。
【0030】
歯科用組成物はまた、コンポジット充填材料、歯科矯正器具の固定材料、キャビティライナー、又はシーラントとして使用することができる。
【0031】
別の実施形態では、本発明は、本明細書及び特許請求の範囲に記載されるように、歯牙硬組織の表面に歯科用組成物を適用する工程と、歯科用組成物を固化させる工程とを含む、哺乳動物の口腔内の歯牙硬組織を治療する方法において使用するための歯科用組成物に関する。
【0032】
本明細書及び特許請求の範囲に記載される組成物を含むパッケージングデバイスも記載されている。
【0033】
別段の定義のない限り、本明細書では、以下の用語は、以下に記載の意味を有するものとする。
「固化性(hardenable)又は硬化性(curable)又は重合性(polymerizable)成分」は、固化反応によって、特に光開始剤の存在下で放射線誘導重合によって硬化させるか又は固めることができる任意の成分である。固化性成分は、1つのみ、2つ、又は3つ以上の重合性基を含有し得る。重合性基の典型的な例としては、とりわけ(メチル)アクリレート基中に存在するビニル基などの不飽和炭素基が挙げられる。
【0034】
本明細書で使用される場合、組成物の「固化」又は「硬化」は、互換的に使用され、例えば、組成物中に含まれる1種以上の材料が関与する、光重合反応及び化学重合技術(例えば、エチレン性不飽和化合物を重合するのに有効なラジカルを形成するイオン反応又は化学反応)を含む重合及び/又は架橋反応を指す。
【0035】
「放射線硬化性」は、成分(又は場合によっては、組成物)が、放射線の適用、好ましくは、周囲条件下及び適切な時間枠内(例えば、約15、10、又は5分以内)での可視光スペクトルの波長の電磁放射線の適用によって硬化させることができることを意味するものとする。
【0036】
用語「可視光」は、400~700ナノメートル(nm)の波長を有する光を指すために使用される。
【0037】
本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を指す省略語である。例えば、「(メタ)アクリルオキシ」基は、アクリルオキシ基(すなわち、CH=CH-C(O)-O-)及び/又はメタクリルオキシ基(すなわち、CH=C(CH)-C(O)-O-)のいずれかを指す省略語である。
【0038】
「樹脂マトリックス」は、固化性組成物中に存在する全ての固化性化合物(モノマー、オリゴマー、及び/又はポリマー)を含有する。樹脂は、1種のみの固化性化合物又は異なる固化性化合物の混合物を含有してもよい。
【0039】
「充填剤系」は、固化性組成物中に存在する全ての充填剤を含有する。1種類のみの充填剤又は異なる充填剤の混合物を使用することができる。
【0040】
「ナノサイズ充填剤」は、その個々の粒子がナノメートル範囲のサイズ、例えば、100nm未満又は50nm未満の平均粒子径を有する充填剤である。有用な例は、米国特許第6,899,948号(Zhangら)及び同第6,572,693号(Wuら)に記載されている。
【0041】
「粒子」は、幾何学的に決定され得る形状を有する固体である物質を意味する。形状は規則的であっても不規則であってもよい。粒子は、典型的には、例えば粒径及び粒径分布に関して解析することができる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「凝結した」は、例えば残留化学物質処理又は部分的焼結によって一緒に結合されることが多い粒子の強い会合を記述している。凝結粒子の比表面積は、典型的には、凝結体を構成する一次粒子の比表面積よりも小さい(DIN53206、1972を参照)。
【0043】
「開始剤又は開始剤系」は、固化性成分の硬化プロセスを開始することができる成分又は成分の組み合わせである。
【0044】
「樹脂内に分散した」は、充填剤粒子が、離散した、非会合(non-associated)(すなわち、非凝集(non-agglomerated)及び非凝結(non-aggregated))粒子として樹脂中に存在することを意味する。
【0045】
「歯科用組成物」は、歯科領域で使用することができるか又は使用される任意の組成物である。この点において、組成物は、患者の健康に有害であってはならず、したがって、組成物から漏出し得る有害成分及び毒性成分を含まない。
【0046】
考えられる歯科用組成物の使用は、永久的及び一時的なクラウン及びブリッジ材料、人工クラウン、歯科用充填材料、キャビティライナー、コーティング組成物、シーラント、ミルブランク、実験材料、並びに歯科矯正装置としての使用又はそれらを作製するための使用である。
【0047】
歯科用組成物は、典型的には、15~50℃又は20~40℃の温度範囲を含む周囲条件において、30分又は20分又は10分の時間枠内で固化され得る固化性組成物である。
【0048】
より高い温度は、患者に痛みをもたらすことがあり、患者の健康に有害な場合があるため、推奨されない。
【0049】
歯科用組成物は、典型的には、同程度の小容量、すなわち、0.1~100mL、又は0.5~50mL、又は1~30mLの範囲の容量で施術者に提供される。
【0050】
「歯科用物品」は、特に、歯科修復物として又は歯科修復物を作製するために、歯科分野で使用される物品を意味する。歯科用物品は、典型的には、2つの異なる表面部分である外側表面及び内側表面を有する。外側表面は、典型的には歯の表面と恒久的には接触しない表面である。それとは対照的に、内側表面は、歯科用物品を歯に取り付けるか又は固定するために使用される表面である。歯科用物品が歯科用クラウンの形状を有する場合、内側表面は典型的には凹形状を有し、一方、外側表面は典型的には凸形状を有する。歯科用物品は、患者の健康に有害である成分を含有してはならず、したがって、歯科用又は歯科矯正用物品から漏出し得る有害成分及び毒性成分を含まない。
【0051】
「歯科修復物」は、治療される歯を修復するために使用される歯科用物品を意味する。歯科修復物の例としては、クラウン、ブリッジ、インレー、アンレー、ベニヤ、前装、コーピング、クラウンブリッジフレームワーク、及びこれらのパーツが挙げられる。
【0052】
「歯科用ミルブランク」とは、歯科用物品を機械加工することができる材料の固体ブロック(三次元物品)を意味する。歯科用ミリングブロックは、典型的には、幾何学的に画定された形状を有する。歯科用ミリングブロックは、二次元において20mm~30mmのサイズを有してもよく、例えば、この範囲の直径を有してもよく、第3の次元において特定の長さであってもよい。単一のクラウンを作るためのブロック又はブランクは、15mm~30mmの長さを有してもよく、ブリッジを作るためのブロック又はブランクは、40mm~80mmの長さを有してもよい。
【0053】
上記の寸法以外にも、歯科用ミリングブロックは、立方体、円筒、又は直方体の形状を有してもよい。より大きなミリングブロックは、2つ以上のクラウン又はブリッジを1つのブランクから製造しなくてはならない場合に有利であり得る。これらの場合には、円筒形状又は直方体形状のミルブランクの直径又は長さは、80~200mmの範囲であってもよく、厚さは10~30mmの範囲であってもよい。
【0054】
「歯科矯正器具」としては、歯科矯正用ブラケット、バッカルチューブ、舌側リテーナー、歯科矯正用バンド、咬合挙上装置(bite opener)、ボタン、及びクリートが挙げられる。
【0055】
「積層造形」又は「3d印刷」は、デジタルデータから物体を層ごとに作製することを含む方法を意味する。物品は、ほとんど全ての形状又は幾何形状であることができ、三次元モデル又は他の電子データソースから作製される。
【0056】
多くの3d印刷技術が存在し、それらのうちの1つは三次元物品を作るために放射線硬化工程を使用する槽重合である。槽重合技術の例としては、ステレオリソグラフィ(SLA)及びデジタル光処理(DLP)が挙げられる。
【0057】
「ステレオリソグラフィ」は、積層造形技術の一例であり、典型的には、印刷領域全体にレーザビームを照準し、それによって印刷樹脂を固めるために、2つのモータを使用する。この方法は、設計を1層ずつ一連の点へと分解する。
【0058】
「デジタル光処理」は、積層造形技術の別の例であり、典型的には、積層造形ユニットのビルドプラットフォーム全体に各層の画像をフラッシュするためのデジタルプロジェクタスクリーンの使用を含む。画像は、典型的には、正方画素で構成され、その結果、ボクセルと呼ばれる小さな矩形のブリックから形成された層が生じる。
【0059】
「周囲条件」は、本明細書に記載される組成物が、保存及び取り扱い中に通常さらされる条件を意味する。周囲条件は、例えば、圧力900~1,100mbar、温度10~40℃、及び相対湿度10~100%としてもよい。実験室では、周囲条件は、典型的には、20~25℃及び1,000~1,025mbar(海上レベルで)に調整される。
【0060】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの(at least one)」、及び「1つ以上の(one or more)」は、互換的に使用される。また、本明細書において、端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0061】
用語に「(複数可)」を付加することは、その用語が単数形及び複数形を含むべきであることを意味する。例えば、用語「添加剤(複数可)(additive(s))」は、1種の添加剤及びそれよりも多い(例えば2種、3種、4種などの)添加剤を意味する。
【0062】
用語「含む(comprise)」又は「含有する(contain)」及びそれらの変化形は、これらの用語が本明細書及び特許請求の範囲で記載される場合、限定的な意味を有さない。「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特定の更なる成分、すなわち、物品又は組成物の本質的な特性に実質的に影響を及ぼさない成分が存在し得ることを意味する。「からなる(consisting of)」は、更なる成分が存在すべきではないことを意味する。用語「含む(comprise)」は、用語「から本質的になる(consist essentially of)」及び「からなる(consists of)」も含むものとする。
【0063】
組成物が本質的な特徴として特定の成分を含有しない場合、組成物は上記成分を「本質的に又は実質的に含まない(essentially or substantially free of)」。したがって、上記成分は、そのままで、又は他の成分若しくは他の成分の構成要素と組み合わせて組成物に故意に添加されることはない。特定の成分を本質的に含まない組成物は、通常、その成分を全く含有しない。しかしながら、例えば使用される原材料中に含まれる不純物のために、少量の上記成分の存在が避けられない場合がある。「本質的に含まない」は、典型的には、1、0.5又は0.1重量%未満の含有量を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本明細書に記載される組成物及び方法は、いくつかの有利な特性を有することが見出された。
【0065】
二官能性及び/又は三官能性(メタ)アクリレート成分は、かなり低い粘度と組み合わされた高屈折率を示す。
【0066】
高屈折率は、硬化後の歯科用組成物の硬化特性及び審美性に寄与し得る。
【0067】
低粘度のために、これらの(メタ)アクリレート成分は、高充填率であっても、容易に、樹脂マトリックス中に組み込むことができ、充填剤などの他の成分と混合することができる。
【0068】
現在、低粘度の流動性組成物を配合することが可能である。
【0069】
更に、これらの成分は、歯科用配合物に使用されることが多いビスフェノールA由来成分の好適な代替物であることが見出された。ビスフェノールA由来成分は、ビスフェノールA部分を含有する成分を意味する。
【0070】
これらの成分を含有する組成物は、低重合収縮応力、改善された引張強度及び曲げ強度、並びに十分な硬化深度などの好都合な機械的特性を示す。
【0071】
組成物はまた、硬化後に好都合な咬頭歪み(cusp deflection)値(すなわち、標準化された充填物の硬化時のアルミニウムブロックの低い変形)を示した。
【0072】
本発明は、歯科分野及び歯科矯正分野で使用することができる組成物に関する。
【0073】
組成物は、樹脂マトリックスと、開始剤系と、充填剤系と、任意選択的に希釈剤及び補助剤などの更なる成分とを含む。
【0074】
樹脂マトリックスは、重合性成分A1を含み、重合性成分A1とは異なる更なる重合性成分を含んでもよい。
【0075】
成分A1は、典型的には、以下の特性のうちの少なくとも1つ以上に寄与するか、又はそれを示すことが見出された。
【0076】
成分A1は、
a)典型的には、良好な充填剤湿潤性を有する。これは、所望であれば、比較的高い充填剤含量を達成するのに有益であり得る、
b)典型的には、比較的低い粘度(例えば、2.0~40Pas、又は2.0~30Pas、23℃、剪断速度:100s-1)を有する。これは、所望であれば、最終組成物の適切な取り扱いを達成するために有益であり得る。最終組成物の粘度が典型的には許容可能な範囲内にあるので、所望であれば、充填剤含量を増加させることも有益であり得る、
c)典型的には、比較的高い屈折率(例えば、1.520~1.565又は1.530~1.560(n 20))を有する。これは、所望であれば、光硬化性材料に適切な審美性及び/又は高い硬化深度を達成するために有益であり得る、
d)典型的には、比較的高い疎水性を有する。これは、所望であれば、比較的低い水分取り込み量及び/又は外因性染色を達成するのに有益であり得る、
e)硬化組成物の低減された脆性(すなわち、比較的高い衝撃強度及び/又は中程度の弾性率)を示す組成物を提供するために使用することができる。これは、亀裂及び/又は破壊による破損のリスクが低減されなければならない場合に有益であり得る。
f)高い硬化深度を示す組成物を提供するために使用することができる。これは、光硬化性材料のバルク硬化適用が望ましい場合に、有益であり得る。
【0077】
成分A1は、ジ又はトリヒドロキシベンゼン部分を含む骨格単位と、エーテル結合を介して骨格単位に接続されている2つ又は3つのスペーサー単位であって、構造要素-CH-CH-CH-を含むスペーサー単位とを含み、2つ又は3つの(メタ)アクリレート部分であって、アルキリデンオキシ(alkylideneoxy)部分を介して骨格に結合している(メタ)アクリレート部分を含み、スペーサー単位を介して骨格に結合している側基としての2つ又は3つのフェノキシ部分を含み、ウレタン部分を含まない成分として説明することができる。
【0078】
成分A1の分子量は、典型的には、500~1,200g/molの範囲である。
【0079】
成分A1の例としては、
【0080】
【化3】
[式中、
m、n、k=1~10の範囲の整数から独立して選択され、
かつ(m+n)=1~10であるか又は
(m+n+k)=1~15である]
及びこれらの混合物が挙げられる。
【0081】
成分A1の分子は、一般的に、フェノール化合物(例えば、レゾルシノール又はカテコール)、グリシジルフェニルエーテル化合物、及びエチレンカーボネートを反応させてアルコキシ化中間化合物を得て、これを加水分解してエトキシ化中間化合物を得て、これを更に(メタ)アクリル酸と反応させることによって生成することができる。
【0082】
成分A1は、典型的には、以下の量:少なくとも3、5、又は8重量%;最大50、40、又は30重量%;3~50、又は5~40、又は8~30重量%の範囲で組成物中に存在し、重量%は組成物全体の重量に対するものである。
【0083】
樹脂マトリックスは、成分A1とは異なる更なる重合性成分を含んでもよい。これらの更なる重合性成分のうちの1種以上が存在し得る。
【0084】
これらの更なる重合性成分を成分A2と称する。
【0085】
好適な成分A2は、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含有し、付加重合を行うことができる。
【0086】
好適な重合性成分は、以下の式:
BA
[式中、Aは、(メタ)アクリル部分などのエチレン性不飽和基であり、
Bは、(i)他の官能基(例えば、ハロゲン化物(Cl、Br、Iを含む)、OH、又はこれらの混合物)で任意選択的に置換された直鎖又は分枝鎖C~C12アルキル、(ii)他の官能基(例えば、ハロゲン化物、OH、又はこれらの混合物)で任意選択的に置換されたC~C12アリール、又は(iii)1つ以上のエーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル、チオカルボニル、アミド、ウレタン、カルボニル、及び/若しくはスルホニル結合によって互いに結合している4~20個の炭素原子を有する有機基から選択され、
m、nは、0、1、2、3、4、5、又は6から独立して選択されるが、n+mは0より大きい、すなわち少なくとも1つのA基が存在することを条件とする]によって特徴付けることができる。
【0087】
そのような重合性材料としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxyethyl methacrylate、HEMA)と2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(trimethyl-hexa-methylene diisocyanate、TMDI)との反応生成物であるUDMAと呼ばれるジウレタンジメタクリレート(異性体の混合物、例えば、Roehm Plex6661-0)、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジアクリレート、1,3-プロパンジオールジメタクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-ブタントリオールトリ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビス[1-(2-(メタ)アクリルオキシ)]-p-エトキシフェニルジメチルメタン、及びトリスヒドロキシエチル-イソシアヌレートトリメタクリレートなどの、モノ、ジ、又はポリアクリレート及びメタクリレート;分子量200~500のポリエチレングリコールのビス-アクリレート及びビス-メタクリレート、アクリル化モノマーの共重合性混合物(例えば、米国特許第4,652,274号を参照)、並びにアクリル化オリゴマー(例えば、米国特許第4,642,126号を参照);並びにスチレン、ジビニルスクシネート、ジビニルアジペート、及びジビニルフタレートなどのビニル化合物;ウレタン、尿素、又はアミド基を含む多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。所望であれば、これらのフリーラジカル重合性材料のうちの2つ以上の混合物を使用することができる。
【0088】
所望であれば、付加開裂モノマー(addition fragmentation monomer、AFM)もまた、添加してもよい。付加開裂モノマーは、以下の式:
【0089】
【化4】
[式中、
、R、及びRは、各々独立して、Z-Q-、(ヘテロ)アルキル基又は(ヘテロ)アリール基であるが、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、Z-Q-であることを条件とし、Qは、m+1の原子価を有する連結基であり、Zは、エチレン性不飽和重合性基であり、mは、1~6であり、各Xは、独立して、-O-又は-NR-(式中、Rは、H又はC~Cアルキルである)であり、nは、0又は1である]によって特徴付けることができる。
【0090】
これらのモノマーは応力を低下させると言われている。好適なモノマーは、米国特許第9,056,043号(Jolyら)にも記載されている。
【0091】
ヒドロキシル部分を含むモノマーを添加することもできる。好適な化合物としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)、2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、ジアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられ、更に1,2-又は1,3-及び2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル-1,3-ジ(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル-1,2-ジ(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイル-1,2-ジヒドロキシプロピルアミン、N-(メタ)アクリロイル-1,3-ジヒドロキシプロピルアミン、フェノールとグリシジル(メタ)アクリレートとの付加物、例えば、1-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1-ナフトキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが特に好ましい。所望であれば、これらの成分のうちの1つ以上の混合物を使用することができる。
【0092】
成分A2は、典型的には、以下の量:少なくとも0、1、又は5重量%;最大60、50、又は40重量%;0~60、1~50、又は5~40重量%の範囲で組成物中に存在し、重量%は組成物全体に対するものである。
【0093】
本明細書に記載される組成物は、開始剤系を含む。
【0094】
開始剤系は、樹脂マトリックス中に存在する固化性成分の硬化プロセスを開始することができる。一液型組成物を硬化させるために、典型的には、光開始剤系が使用される。
【0095】
フリーラジカル重合に好適な光開始剤系は、一般的に、歯科材料を扱う当業者に知られている。
【0096】
好適な光開始剤系は、アルファ-アルファジケト部分、アントラキノン部分、チオキサントン部分、又はベンゾイン部分を含む増感剤を含有することが多い。アルファ-アルファジケト部分を含有する増感剤が好ましいことが多い。
【0097】
典型的な光開始剤系は、増感剤と還元剤又は供与体成分との組み合わせを含み、これは光開始剤系と呼ばれることが多い。
【0098】
増感剤としては、390nm~830nmの波長を有する可視光の作用によって重合性モノマー(複数可)を重合できるものが好ましい。
【0099】
使用することができる増感剤の例としては、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2-メトキシエチル)ケタール、4,4,’-ジメチルベンジルジメチルケタール、アントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、1-ヒドロキシアントラキノン、1-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1-ブロモアントラキノン、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-ニトロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロ-7-トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン-10,10-ジオキシド、チオキサントン-10-オキシド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4-ジメチルアミノ-フェニル)ケトン、4,4,’-ビスジエチルアミノベンゾフェノンが挙げられる。
【0100】
還元剤又は供与体成分としては、第三級アミンなどが一般的に用いられる。第三級アミンの好適な例としては、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエタノールアミン、メチル4-ジメチルアミノベンゾエート、エチル4-ジメチルアミノベンゾエート、メチルジフェニルアミン及びイソアミル4-ジメチルアミノベンゾエートが挙げられる。
【0101】
更なる好適な還元剤としては、以下の式ArArRN[式中、Ar及びArは、フェニル又はアルキル(例えば、C~C)置換フェニルから独立して選択され、Rは、1個以上のH原子がハロゲンによって置換されていてもよいアルキル(例えば、C~C)基であり、Nは窒素である]によって特徴付けられるジアリールアルキルアミンが挙げられる。これらの還元剤は、米国特許第8,314,162号(Hailandら)に詳細に記載されている。
【0102】
更に、米国特許第6,187,833号(Oxmanら)、同第6,025,406号(Oxmanら)、同第6,043,295号(Oxmanら)、同第5,998,495号(Oxmanら)、同第6,084,004号(Weinmannら)、同第5,545,676号(Palazzottoら)、並びに同第8,314,162(B2)号(Hailandら)及び同第6,765,036号(Dedeら)に記載されているような、増感剤、電子供与体、及びオニウム塩からなる三元光重合開始系を使用することができる。
【0103】
三元光開始剤系では、第1の成分はオニウム、好ましくはヨードニウム塩、すなわちジアリールヨードニウム塩である。
【0104】
ヨードニウム塩は、増感剤及び供与体の存在下でモノマー中に溶解されるとき、好ましくはモノマーに可溶であり、また保存安定性がある(すなわち、自発的には重合を促進しない)。したがって、特定のヨードニウム塩の選択は、選択された特定のモノマー、ポリマー又はオリゴマー、増感剤及び供与体にある程度依存してもよい。好適なヨードニウム塩は、米国特許第3,729,313号、同第3,741,769号、同第3,808,006号、同第4,250,053号、及び同第4,394,403号に記載されている。ヨードニウム塩は、単塩(例えば、Cl、Br、I、又はCSO などのアニオンを含有する)又は金属錯塩(例えば、SbFOH又はAsF を含有する)であり得る。所望であれば、ヨードニウム塩の混合物を使用することができる。好ましいヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウム塩、例えば、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及びジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレートが挙げられる。
【0105】
三元光開始剤系における第2の成分は、増感剤である。
【0106】
増感剤は、望ましくは、モノマーに可溶であり、400超~1200nm、より好ましくは400超~700nm、最も好ましくは400超~600nmの波長範囲内で光吸収することができる。
【0107】
好適な増感剤としては、以下の範疇の化合物:ケトン、クマリン色素(例えば、ケトクマリン)、キサンテン色素、アクリジン色素、チアゾール色素、チアジン色素、オキサジン色素、アジン色素、アミノケトン色素、ポルフィリン、芳香族多環式炭化水素、p-置換アミノスチリルケトン化合物、アミノトリアリールメタン、メロシアニン、スクアリリウム色素、及びピリジニウム色素を挙げることができる。ケトン(例えば、モノケトン又はアルファ-ジケトン)、ケトクマリン、アミノアリールケトン、及びp-置換アミノスチリルケトン化合物が、好ましい増感剤である。
【0108】
例えば、好ましいクラスのケトン増感剤は、式ACO(X)B[式中、XはCO又はCRであり、R及びRは、同一であっても異なっていてもよく、水素、アルキル、アルカリール、又はアラルキルであり得、bは0又は1であり、A及びBは、異なり、置換されていてもよく(1つ以上の非干渉置換基を有する)、同じ若しくは非置換のアリール基、アルキル基、アルカリール基、若しくはアラルキル基であり得るか、又はA及びBは共に、置換若しくは非置換の脂環式、芳香族、複素芳香族、若しくは縮合芳香族環であり得る環状構造を形成することができる]を有する。
【0109】
上記式の好適なケトンとしては、モノケトン(b=0)、例えば、2,2-、4,4-又は2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、ジ-2-ピリジルケトン、ジ-2-フラニルケトン、ジ-2-チオフェニルケトン、ベンゾイン、フルオレノン、カルコン、ミヒラーケトン、2-フルオロ-9-フルオレノン、2-クロロチオキサントン、アセトフェノン、ベンソフェノン、1-又は2-アセトナフトン、9-アセチルアントラセン、2-、3-又は9-アセチルフェナントレン、4-アセチルビフェニル、プロピオフェノン、n-ブチロフェノン、バレロフェノン、2-、3-又は4-アセチルピリジン、3-アセチルクマリンなどが挙げられる。好適なジケトンとしては、アラルキルジケトン、例えば、アントラキノン、フェナントレンキノン、o-、m-及びp-ジアセチルベンゼン、1,3-、1,4-、1,5-、1,6-、1,7-及び1,8-ジアセチルナフタレン、1,5-、1,8-及び9,10-ジアセチルアントラセンなどが挙げられる。好適なアルファ-ジケトン(b=1かつX=CO)としては、2,3-ブタンジオン、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、3,4-ヘキサンジオン、2,3-ヘプタンジオン、3,4-ヘプタンジオン、2,3-オクタンジオン、4,5-オクタンジオン、ベンジル、2,2’-3,3’-及び4,4’--ジヒドロキシルベンジル、フリル、ジ-3,3’--インドリルエタンジオン、2,3-ボルナンジオン(カンファーキノン)、ビアセチル、1,2-シクロヘキサンジオン、1,2-ナフタキノンなどが挙げられる。
【0110】
三元開始剤系の第3の成分は、供与体である。
【0111】
好ましい供与体としては、例えば、アミン(アミノアルデヒド及びアミノシランを含む)、アミド(ホスホルアミドを含む)、エーテル(チオエーテルを含む)、尿素(チオ尿素を含む)、フェロセン、スルフィン酸及びそれらの塩、フェロシアン化物の塩、アスコルビン酸及びその塩、ジチオカルバミン酸及びその塩、キサンテートの塩、エチレンジアミン四酢酸の塩、並びにテトラフェニルボロン酸の塩が挙げられる。供与体は、非置換であっても、1つ以上の非干渉置換基により置換されていてもよい。特に好ましい供与体は、窒素、酸素、リン、又は硫黄原子などの電子供与体原子、及び電子供与体原子に対してα位にある炭素又はケイ素原子に結合した引抜き可能な水素原子を含有する。様々な種類の供与体が、米国特許第5,545,676号に開示されている。この参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0112】
あるいは、本発明において有用なフリーラジカル開始剤としては、アシルホスフィンオキシド及びビスアシルホスフィンオキシドのクラスが挙げられる。
【0113】
好適なアシルホスフィンオキシドは、一般式
(R)2-P(=O)-C(=O)-R10
[式中、各Rは、個々に、いずれもがハロ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基で置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキル、アリール、及びアラルキルなどのヒドロカルビル基であり得るか、又は2つのR基は結合してリン原子と共に環を形成することができ、R10は、ヒドロカルビル基、S、O、若しくはN含有5若しくは6員複素環基、又は-Z-C(=O)-P(=O)-(R基(式中、Zは、2~6個の炭素原子を有するアルキレン又はフェニレンなどの二価のヒドロカルビル基を表す)である]によって記載することができる。
【0114】
好ましいアシルホスフィンオキシドは、R及びR10基が、フェニル又は低級アルキル若しくは低級アルコキシ置換フェニルであるものである。「低級アルキル」及び「低級アルコキシ」とは、1~4個の炭素原子を有するそのような基を意味する。例はまた、例えば、米国特許第4,737,593号に見出すことができる。
【0115】
例としては、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-ビフェニリルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2-ナフチルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-クロロフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,4-ジメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)デシルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-オクチルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロ-3,4,5-トリメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロ-3,4,5-トリメトキシベンゾイル)-4-エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)-4-ビフェニリルホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)-4-エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)-2-ナフチルホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)-2,5-ジメチルホスフィンオキシド、ビス-(2-メトキシ-1-ナフトイル)-4-エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2-メトキシ-1-ナフトイル)-4-ビフェニリルホスフィンオキシド、ビス-(2-メトキシ-1-ナフトイル)-2-ナフチルホスフィンオキシド、及びビス-(2-クロロ-1-ナフトイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。
【0116】
第三級アミン還元剤を、アシルホスフィンオキシドと組み合わせて使用してもよい。本発明において有用な例示的な第三級アミンとしては、エチル4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエート及びN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。
【0117】
400nm超~1200nmの波長で照射された場合にフリーラジカル開始が可能な市販のホスフィンオキシド光開始剤としては、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの、重量で25:75の混合物(以前はIrgacure(商標)1700、Cibaとして知られていた)、2-ベンジル-2-(N,N-ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン(以前はIrgacure(商標)369、Cibaとして知られていた)、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタン(以前はIrgacure(商標)784DC、Cibaとして知られていた)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの、重量で1:1の混合物(以前はDarocur(商標)4265、Cibaとして知られていた)、エチル-2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィンオキシド(以前はLucirin(商標)LR8893X、BASFとして知られていた)、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(以前はIrgacure(商標)819、BASFとして知られていた)が挙げられる。
【0118】
代替的に使用することができる別のフリーラジカル開始剤系としては、ボレートアニオン及び相補的カチオン性色素を含むイオン性色素対イオン錯体開始剤のクラスが挙げられる。
【0119】
ボレート塩光開始剤は、例えば、米国特許第4,772,530号(Gottschalkら)、同第4,954,414号(Adairら)、同第4,874,450号(Gottschalk)、同第5,055,372号(Shanklinら)、及び同第5,057,393号(Shanklinら)に記載されている。
【0120】
これらの光開始剤において有用なボレートアニオンは、一般的に、式R[式中、R、R、R、及びRは、独立して、アルキル、アリール、アルカリール、アリル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、脂環式、及び飽和又は不飽和複素環基であり得る]のものであり得る。好ましくは、R、R、及びRはアリール基、より好ましくはフェニル基であり、Rはアルキル基、より好ましくは第二級アルキル基である。
【0121】
カチオン性対イオンは、カチオン性色素、第四級アンモニウム基、遷移金属配位錯体などであり得る。対イオンとして有用なカチオン性色素は、カチオン性メチン、ポリメチン、トリアリールメチン、インドリン、チアジン、キサンテン、オキサジン、又はアクリジン色素であり得る。より具体的には、色素は、カチオン性シアニン、カルボシアニン、ヘミシアニン、ローダミン、及びアゾメチン色素であってもよい。有用なカチオン性色素の具体例としては、メチレンブルー、サフラニンO、及びマラカイトグリーンが挙げられる。対イオンとして有用な第四級アンモニウム基は、トリメチルセチルアンモニウム、セチルピリジニウム、及びテトラメチルアンモニウムであり得る。他の有機親和性カチオンとしては、ピリジニウム、ホスホニウム、及びスルホニウムを挙げることができる。
【0122】
使用することができる感光性遷移金属配位錯体としては、コバルト、ルテニウム、オスミウム、亜鉛、鉄、及びイリジウムと、ピリジン、2,2’-ビピリジン、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン、1,10-フェナントロリン、3,4,7,8-テトラメチルフェナントロリン、2,4,6-トリ(2-ピリジル-s-トリアジン)及び関連配位子などの配位子との錯体が挙げられる。
【0123】
更なる代替において、フリーラジカル活性基の固化又は重合を開始するために熱が使用されてもよい。
【0124】
本発明の歯科材料に好適な熱源の例としては、誘導性、対流性、及び放射性熱源が挙げられる。熱の供給源は、通常条件下又は高圧で少なくとも40℃~15℃の温度を発生可能であるべきである。
【0125】
熱硬化手順は、口腔環境外で生じる材料の重合を開始させるために、例えば、組成物がミルブランクを作製するために使用される場合、又は積層造形法における樹脂として組成物を加工することによって得られる物品の後硬化工程において好ましい場合がある。
【0126】
開始剤系は、典型的には、以下の量:少なくとも0.1、0.2、又は0.3重量%;最大4、3、又は2重量%;0.1~4、0.2~3、又は0.3~2重量%の範囲で存在し、重量%は組成物全体に対するものである。
【0127】
本明細書に記載される組成物は、充填剤系を含む。充填剤系は、1種の充填剤又は異なる種類の充填剤の混合物を含むことができる。
【0128】
充填剤の添加は、例えば粘度のようなレオロジー特性を調整するために有益であり得る。
【0129】
充填剤粒子のサイズは、樹脂マトリックスを形成する固化性成分との均一な混合物を得ることができる程度とするべきである。
【0130】
充填剤の平均粒径は、5nm~50μmの範囲であってもよい。所望であれば、充填剤粒子の粒径測定は、実施例のセクションに記載されるように行うことができる。
【0131】
充填剤(複数可)は、典型的には、非酸反応性充填剤である。非酸反応性充填剤は、酸と酸/塩基反応をしない充填剤である。
【0132】
有用な非酸反応性充填剤としては、ヒュームドシリカ、非酸反応性フルオロアルミノシリケートガラスに基づく充填剤、石英、粉砕ガラス、CaFなどの非水溶性フッ化物、ケイ酸などのシリカゲル、特に焼成ケイ酸及びその顆粒、クリストバライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、モレキュラーシーブを含むゼオライトが挙げられる。
【0133】
好適なヒュームドシリカとしては、例えば、Evonikから入手可能なAerosil(商標)シリーズOX-50、-130、-150、及び-200、Aerosil(商標)R8200、R805、Cabot Corp(Tuscola)から入手可能なCAB-O-SIL(商標)M5、並びにWackerから入手可能なHDKタイプ、例えばHDK(商標)-H2000、HDK(商標)H15、HDK(商標)H18、HDK(商標)H20、及びHDK(商標)H30の商品名で販売されている製品が挙げられる。
【0134】
同様に使用することができ、歯科材料に放射線不透過性を提供する充填剤(複数可)としては、重金属酸化物(複数可)及びフッ化物(複数可)が挙げられる。本明細書で使用される場合、「放射線不透過性」は、従来方法で標準的歯科用X線装置を使用して、固化した歯科材料を歯構造と区別できることを説明する。歯科材料における放射線不透過性は、X線が歯の状態を診断するために使用される特定の例において有利である。例えば、放射線不透過性材料により、充填物周辺の歯の組織に形成され得る二次齲蝕の検出が可能となる。
【0135】
原子番号が28を超える重金属の酸化物又はフッ化物が好ましい場合がある。重金属酸化物又はフッ化物は、それが分散する固化した樹脂に望ましくない色彩又は濃淡を付与しないように選択するべきである。例えば、鉄及びコバルトは、歯科材料の中間色の歯の色に暗くコントラストの強い色彩を付与するので好都合ではない。より好ましくは、重金属酸化物又はフッ化物は、原子番号が30を超える金属の酸化物又はフッ化物である。好適な金属酸化物は、イットリウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、タングステン、ビスマス、モリブデン、スズ、亜鉛、ランタニド元素(すなわち、原子番号が両端を含め57~71の範囲の元素)、セリウム、及びこれらの組み合わせの酸化物である。好適な金属フッ化物は、例えば、三フッ化イットリウム及び三フッ化イッテルビウムである。最も好ましくは、原子番号が30より大きいが72未満の重金属の酸化物及びフッ化物が、本発明の材料に任意選択的に含まれる。特に好ましい放射線不透過性金属酸化物としては、酸化ランタン、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化セリウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。重金属酸化物粒子は凝結していてもよい。その場合、凝結粒子は平均直径が200nm以下であることが好ましい。
【0136】
放射線不透過性を増大させる他の好適な充填剤は、バリウム及びストロンチウムの塩、特に硫酸ストロンチウム及び硫酸バリウムである。
【0137】
同様に使用することができる充填剤(複数可)としては、ナノサイズシリカ又はナノサイズシリカとジルコニア粒子との混合物などのナノサイズ充填剤が挙げられる。好適なナノサイズ粒子は、典型的には、5~50nmの範囲の平均粒径を有する。
【0138】
好ましいナノサイズシリカは、Nalco Chemical Co.(Naperville,Ill.)から製品名NALCO(商標)COLLOIDAL SILICASで(例えば、好ましいシリカ粒子は、NALCO(商標)製品1040、1042、1050、1060、2327、及び2329を使用して得ることができる)、Nissan Chemical America Company,Houston,Texasから(例えば、SNOWTEX-ZL、-OL、-O、-N、-C、-20L、-40、及び-50);株式会社アドマテックス、日本から(例えば、SX009-MIE、SX009-MIF、SC1050-MJM、及びSC1050-MLV);Grace GmbH&Co.KG,Worms,Germanyから(例えば、製品名LUDOX(商標)で入手可能なもの、例えばP-W50、P-W30、P-X30、P-T40、及びP-T40AS);Akzo Nobel Chemicals GmbH,Leverkusen,Germanyから(例えば、製品名LEVASIL(商標)で入手可能なもの、例えば50/50%、100/45%、200/30%、200A/30%、200/40%、200A/40%、300/30%、及び500/15%)、及びBayer MaterialScience AG,Leverkusen,Germanyから(例えば、製品名DISPERCOLL(商標)Sで入手可能なもの、例えば5005、4510、4020、及び3030)市販されている。
【0139】
歯科材料中に加える前に充填剤粒子を表面処理することによって、樹脂中でより安定な分散を実現することができる。好ましくは、表面処理によって粒子が安定化され、それによって粒子が樹脂中によく分散し、実質的に均一な組成物が得られる。
【0140】
好適な表面処理剤又は表面改質剤としては、樹脂と重合することができるシラン処理剤が挙げられる。好ましいシラン処理剤としては、商品名A-174(Momentive社)で市販されているガンマ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、及び商品名G6720(United Chemical Technologies(Bristol,Pa.))で入手可能な製品であるガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0141】
したがって、シリカ粒子及び他の好適な非酸反応性充填剤を、樹脂相溶化表面処理剤で処理してもよい。
【0142】
好適な充填剤はまた、以下の特性:比表面積(BET):10~400又は15~300又は20~200m/gであること、SiO、ZrO、及びこれらの混合物、特にこれらの混合物の粒子を含むこと、の単独又は組み合わせによって特徴付けることができる。
【0143】
所望であれば、比表面積は、Quantachromeから入手可能な装置(Monosorb)を使用することにより、ブルナウアー-エメット-テラー(Brunauer,Emmet and Teller、BET)によって提案された方法に従って決定することができる。
【0144】
充填剤は、凝結ナノサイズ粒子を含んでもよいか、それを含有してもよいか、それから本質的になってもよいか、又はそれからなってもよい。所望であれば、これは、透過型電子顕微鏡法(transmission electron microscopy、TEM)により証明できる。
【0145】
樹脂中に分散されると、凝結ナノサイズ充填剤は、典型的には、凝結段階で留まる。すなわち、分散工程中、粒子は、離散した(すなわち、個々の)粒子及び非会合(すなわち、非凝集、非凝結)粒子へと分解されない。
【0146】
凝結充填剤、並びにその作製及び表面処理のための方法は、例えば、米国特許第6,730,156号(Wuら)及び同第6,730,156号(Windischら)に記載されている。
【0147】
充填剤系において使用される充填剤の量は、通常、組成物が使用されるべき目的に依存する。
【0148】
充填剤系は、典型的には、以下の量:少なくとも20、30、又は40重量%;最大90、85、又は80重量%;20~90、30~85、又は40~80重量%の範囲で存在し、重量%は組成物全体に対するものである。
【0149】
用途に応じて、充填剤系の量は、典型的には調整される。
【0150】
一時的なクラウン及びブリッジ材料(歯科用組成物の一例としての)は、通常、多量の充填剤を含有しない。これらの組成物に関して、充填剤含有量は、通常、組成物全体に対して30~60重量%の範囲である。
【0151】
一時的なクラウン及びブリッジ材料と比較してより多量の充填剤を典型的に含有する歯科用充填材料(歯科用組成物の一例としての;場合により歯科用コンポジット材料とも呼ばれる)において、充填剤含有量は、通常、組成物全体に対して60~90重量%の範囲である。
【0152】
より低粘度の歯科用充填材料(「流動性材料」と呼ばれることもある)は、典型的には、組成物全体に対して50~80重量%の範囲の充填剤含有量を有する。
【0153】
本明細書に記載される組成物は、更なる成分を含むことができる。
【0154】
存在し得る更なる成分としては、可塑剤及び補助剤が挙げられる。
【0155】
可塑剤はヒドロキシル基を含んでもよいが、典型的には、重合性部分を含まない。
【0156】
存在する場合、ヒドロキシル基含有可塑剤は、2つ以上の第一級又は第二級脂肪族ヒドロキシル基を含有してもよい(すなわち、ヒドロキシル基は非芳香族炭素原子に直接結合している)。ヒドロキシル基は、末端に位置していてもよいか、又はポリマー若しくはコポリマーから懸垂していてもよい。ヒドロキシル含有有機材料の分子量は、非常に低い(例えば、32g/mol)から非常に高い(例えば、100万g/mol以上)まで、様々であってもよい。好適なヒドロキシル含有材料は、低分子量、すなわち32~200g/mol、中分子量、すなわち200~10,000g/mol、又は高分子量、すなわち10,000g/mol超を有し得る。本明細書で使用される場合、全ての分子量は重量平均分子量である。
【0157】
ヒドロキシル基含有可塑剤は、本質的に非芳香族であってもよいか、又は芳香族官能基を含有してもよい。ヒドロキシ基含有可塑剤は、分子の骨格中に、窒素、酸素、硫黄などのヘテロ原子を任意選択的に含有してもよい。可塑剤は、例えば、天然に存在するか又は合成調製されたセルロース系材料から選択することができる。
【0158】
好適なヒドロキシ基含有可塑剤の代表例としては、アルカノール、ポリオキシアルキレングリコールのモノアルキルエーテル、アルキレングリコールのモノアルキルエーテル、及び当該技術分野において公知の他のものが挙げられる。
【0159】
有用な可塑剤の代表例としては、アルキレングリコール(例えば、1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,18-ジヒドロキシオクタデカン、3-クロロ-1,2-プロパンジオール);ポリヒドロキシアルカン(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール)及びN,N-ビス(ヒドロキシエチル)ベンズアミドなどの他のポリヒドロキシ化合物;2-ブチン-1,4-ジオール;4,4-ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルスルホン;並びにヒマシ油が挙げられる。
【0160】
有用なポリマーヒドロキシ基含有可塑剤の代表例としては、ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレングリコール、特に、ジオールの場合は100~5,000、トリオールの場合は70~3,300のヒドロキシ当量に相当する200~10,000g/molの分子量を有するポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレングリコールジオール及びトリオール;様々な分子量のポリテトラヒドロフラン又は「ポリTHF」などのポリテトラメチレンエーテルグリコール;ヒドロキシプロピル及びヒドロキシエチルアクリレート及びメタクリレートと、アクリレートエステル、ビニルハロゲン化物、又はスチレンなどの他のフリーラジカル重合性モノマーとのコポリマー;酢酸ビニルコポリマーの加水分解又は部分的加水分解により形成されるペンダントヒドロキシ基を含有するコポリマー、ペンダントヒドロキシル基を含有するポリビニルアセタール樹脂;ヒドロキシエチル化及びヒドロキシプロピル化セルロースなどの変性セルロースポリマー;ヒドロキシ末端ポリエステル;ヒドロキシ末端ポリラクトン、特にポリカプロラクトン;フッ素化ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレングリコール;並びにヒドロキシ末端ポリアルカジエンが挙げられる。
【0161】
様々なヒドロキシ基含有可塑剤のブレンドもまた、本明細書で企図される。
【0162】
可塑剤は、典型的には、以下の量:0又は少なくとも1若しくは5重量%;最大20、15、又は10重量%;0~20、1~15、又は5~10重量%の範囲で存在し、重量%は組成物全体の重量に対するものである。
【0163】
組成物はまた、界面活性剤、レオロジー変性剤、遅延剤、安定剤、顔料、色素、光退色性着色剤、フッ化物放出剤、及び当業者に周知の他の構成要素などの好適な補助剤又は添加剤を含有することができる。
【0164】
添加することができる界面活性剤としては、ポリエチレングリコール変性シロキサン(例えば、Momentiveから入手可能なSilwet(商標)型界面活性剤)及びポリエチレングリコール変性カルボシラン(例えば、米国特許第5,750,589号(Zechら)に記載)が挙げられる。
【0165】
添加することができるレオロジー変性剤としては、上記のような表面改質ヒュームドシリカ、有機親和性フィロシリケート、変性尿素、及びポリヒドロキシカルボン酸アミド(例えば、Byk-Chemie,Wesel,Germanyから入手可能なRheobyk(商標)型)が挙げられる。
【0166】
添加することができる遅延剤としては、1,2-ジフェニルエチレン及びその誘導体が挙げられる。
【0167】
使用することができる安定剤としては、特にフリーラジカル捕捉剤、例えば置換及び/又は非置換のヒドロキシ芳香族化合物(例えばブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT)、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル(hydroquinone monomethyl ether、MEHQ)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エトキシフェノール)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(ジメチルアミノ)メチルフェノール又は2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(UV-9)、2-(2’-ヒドロキシ-4’,6’-ジ-tert-ペンチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、フェノチアジン、及びHALS(hindered amine light stabilizer)(ヒンダードアミン光安定剤)が挙げられる。
【0168】
使用することができる顔料及び/又は色素としては、二酸化チタン又は硫化亜鉛(リトポン)、赤色酸化鉄3395、Bayferrox(商標)920Z Yellow、Neazopon(商標)Blue807(銅フタロシアニン系色素)、又はHelio(商標)Fast Yellow ERが挙げられる。これらの添加剤は、組成物の個々の着色のために使用することができる。
【0169】
光退色性着色剤の例としては、ローズベンガル、メチレンバイオレット、メチレンブルー、フルオレセイン、エオシンイエロー、エオシンY、エチルエオシン、エオシンブルーイッシュ、エオシンB、エリトロシンB、エリトロシンイエローイッシュブレンド、トルイジンブルー、4’,5’-ジブロモフルオレセイン、及びこれらのブレンドが挙げられる。光退色性着色剤の更なる例は、米国特許第6,444,725号(Tromら)に見出すことができる。
【0170】
フッ化物放出剤の例としては、天然に存在するか又は合成のフッ化物鉱物が挙げられる。これらのフッ化物源は、任意選択的に表面処理剤で処理することができる。
【0171】
補助剤は、典型的には、以下の量:少なくとも0、0.01、又は0.1重量%;最大15、10、又は5重量%;0~15、又は0.01~10、又は0.1~5重量%の範囲で存在し、重量%は組成物全体の重量に対するものである。
【0172】
本明細書に記載される組成物は、それぞれの成分を、以下の量:
a)重合性成分A1:3~50重量%、
b)重合性成分A2:0~60重量%、
c)開始剤系:0.1~4重量%、
d)充填剤系:20~90重量%、
e)可塑剤:0~20重量%、
f)補助剤:0~15重量%
で含んでもよく、重量%は歯科用組成物全体の重量に対するものである。
【0173】
本明細書に記載される組成物はまた、それぞれの成分を、以下の量:
a)重合性成分A1:5~40重量%、
b)重合性成分A2:1~50重量%、
c)開始剤系:0.2~3重量%、
d)充填剤系:30~85重量%、
e)可塑剤:1~15重量%、
f)補助剤:0.01~10重量%
で含んでもよく、重量%は歯科用組成物全体の重量に対するものである。
【0174】
本明細書に記載される組成物はまた、それぞれの成分を、以下の量:
a)重合性成分A1:8~30重量%、
b)重合性成分A2:5~40重量%、
c)開始剤系:0.3~2重量%、
d)充填剤系:40~80重量%、
e)可塑剤:5~10重量%、
f)補助剤:0.1~5重量%
で含んでもよく、重量%は歯科用組成物全体の重量に対するものである。
【0175】
組成物の特定の実施形態は、固化後に、以下の物理的-機械的特性:
a)曲げ強度(FS):ISO4049(2019)に従って決定して140~200MPas、
b)弾性率(E-M):ISO4049(2019)に従って決定して4~16GPa、
c)硬化深度(DoC):ISO4049(2019)に従って決定して3~7mm、
d)接着ディスク収縮歪み(SHR):1.50~1.80%、
e)直径引張強度(DTS):ISO7489(2019)に従って決定して75~100、
f)咬頭歪み(Cusp-D):<12μm
の単独又は組み合わせによって更に特徴付けることができる。
【0176】
組成物の特定の実施形態は、固化後に、以下の物理的-機械的特性:
a)曲げ強度(FS):ISO4049(2019)に従って決定して150~200MPas、
b)弾性率(E-M):ISO4049(2019)に従って決定して4~10又は12~16GPa、
c)硬化深度(DoC):ISO4049(2019)に従って決定して4~6mm、
d)接着ディスク収縮歪み(SHR):1.55~1.75%、
e)直径引張強度(DTS):ISO7489(2019)に従って決定して80~100、
a)咬頭歪み(Cusp-D):8~11
の単独又は組み合わせによって特徴付けられる。
【0177】
以下の物理的-機械的特性の組み合わせ、すなわち、a)とb)、a)とc)、a)とb)とc)、a)とc)とf)、a)とc)とd)の組み合わせが好ましい場合がある。
【0178】
組成物の特定の実施形態は、固化前に、以下の物理的-機械的特性:
a)粘度:23℃及び100s-1の剪断速度で5~100Pas、
b)pH値:6~8、
c)400~700nmの範囲の波長を有する光で照射した後10分以内に固化可能であること
の単独又は組み合わせによって更に特徴付けることができる。
【0179】
流動性コンポジット材料の場合、以下の物理的-機械的特性の組み合わせ、すなわちa)とb)又はa)とc)の組み合わせが好ましい場合がある。
【0180】
低粘度は、そうでなければ充填が困難であり得る準備された歯構造の深い空洞にも組成物が流れることを可能にするため、有利であり得る。
【0181】
組成物は、典型的には、酸性物質を含有しないため、pH値は本質的に中性範囲にある。
【0182】
本明細書に記載される組成物において使用される全ての成分は、十分に生体適合性であるべきである、すなわち、この組成物は、生体組織内で、毒性反応も有害反応も免疫反応も引き起こすべきでない。
【0183】
本明細書に記載される組成物は、典型的には、以下の成分:5重量%以上の量の低沸点溶媒(例えば、周囲圧力で150℃未満の沸点)、2重量%以上の量のBis-GMA又はビスフェノールA部分由来成分、2重量%以上の量の酸性部分を含む重合性成分を、単独でもこれらの組み合わせでも含有しない。
【0184】
本明細書に記載される組成物は、好ましくは「安全光」条件下で、組成物の個々の成分を組み合わせること(混合及び混練を含む)によって得ることができる。所望であれば、スピードミキサーを使用することができる。
【0185】
得られた組成物は、許容可能な時間枠、例えば、10分未満又は5分未満又は2分未満で、施術者が既に利用可能な可視光源装置を用いて十分な深さまで固化させることができる。
【0186】
本発明の更なる実施形態は、以下のものを含む:
【0187】
実施形態1
組成物は、以下の成分:
a)3~50重量%の量の重合性成分A1、
b)0~60重量%の量の重合性成分A2、
c)0.1~4重量%の量の開始剤系であって、ケトン増感剤及びアミン供与体を含む開始剤系、
d)ナノサイズ粒子を含む、20~90重量%の量の充填剤系、
e)0~20重量%の量の可塑剤、
f)0~15重量%の量の補助剤
を含んでもよいか、それらから本質的になってもよいか、又はそれらからなってもよく、組成物は、5重量%以上の量のビスフェノールA部分含有成分を含まず、重量%は組成物全体の重量に対するものである。
【0188】
実施形態2
組成物は、以下の成分:
a)5~40重量%の量の重合性成分A1、
b)以下の式:
BA
[式中、Aは、エチレン性不飽和基であり、
Bは、(i)ハロゲン化物若しくはOHで任意選択的に置換された直鎖若しくは分枝鎖C~C12アルキル、(ii)ハロゲン化物若しくはOHで任意選択的に置換されたC~C12アリール、又は(iii)1つ以上のエーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル、チオカルボニル、アミド、ウレタン、カルボニル、及び/若しくはスルホニル結合によって互いに結合している4~20個の炭素原子を有する有機基から選択され、
m、nは、0、1、2、3、4、5、又は6から独立して選択されるが、n+mは0より大きいことを条件とする]によって特徴付けられる、
1~50重量%の量の重合性成分A2、
c)0.1~4重量%の量の開始剤系であって、ケトン増感剤及びアミン供与体を含む開始剤系、
d)ナノサイズシリカ粒子を含む、20~90重量%の量の充填剤系、
e)0~20重量%の量の可塑剤、
f)0~15重量%の量の補助剤
を含んでもよいか、それらから本質的になってもよいか、又はそれらからなってもよく、組成物は、5重量%以上の量のビスフェノールA含有成分を含まず、
重量%は組成物全体の重量に対するものである。
【0189】
実施形態3
本明細書に記載される組成物は、
a)3~50重量%の量の重合性成分A1、
b)5~60重量%の量の重合性成分A2、
c)0.1~4重量%の量の開始剤系であって、ケトン増感剤及びアミン供与体を含む開始剤系、
d)ナノサイズ粒子を含む、60~90重量%の量の充填剤系、
e)0~20重量%の量の可塑剤、
f)0~15重量%の量の補助剤
を含んでもよいか、それらから本質的になってもよいか、又はそれらからなってもよく、重量%は組成物全体の重量に対するものである。
【0190】
実施形態4
本明細書に記載される組成物は、
a)3~50重量%の量の重合性成分A1、
b)0~60重量%の量の重合性成分A2、
c)0.1~4重量%の量の開始剤系であって、ケトン増感剤及びアミン供与体を含む開始剤系、
d)ナノサイズ粒子を含む、50~80重量%の量の充填剤系、
e)0~20重量%の量の可塑剤、
f)0~15重量%の量の補助剤
を含んでもよいか、それらから本質的になってもよいか、又はそれらからなってもよく、重量%は組成物全体の重量に対するものであり、組成物は、23℃及び100s-1で5~100Pasの粘度を有する。
【0191】
組成物は、典型的には衛生的条件下で施術者に提供される。保存の間、組成物は、典型的には、好適なパッケージング及び/又は送達デバイスにパッケージングされる。
【0192】
これを達成する一候補は、組成物を封止された容器の中に詰めるか又は収容することを含む。
【0193】
好適な容器は、前端部及び後端部と、容器内を移動可能なピストンと、容器内に配置された組成物を送達又は分注するためのノズル又はカニューレとを有し得る。容器は、通常、区画又は貯蔵部を1つのみ有する。
【0194】
容器の容量は、典型的には、0.1~100mL又は0.5~50mL又は1~30mLの範囲である。
【0195】
好適な単回使用容器は、0.1~2mLの範囲の容量を有し得る。これは、1回の適用手順に典型的に必要とされる容量である。そのような容器は、典型的には1回のみ使用される(例えば、使い捨てパッキング)。
【0196】
組成物は、ノズルの方向にピストンを動かすことにより、容器から分注することができる。ピストンは、手動で、又は、容器を受容するように設計された適用装置若しくは適用器具(例えば、コーキングガンの設計を有する適用装置)の補助を得て、動かすことができる。
【0197】
使用することができる容器の例としては、コンピュール、シリンジ及びスクリューチューブが挙げられる。
【0198】
コンピュールは、典型的には、前端部及び後端部を有する円筒形筐体と、ノズルとを有する。筐体の後端部は、通常、可動ピストンで封止される。典型的には、歯科用組成物は、可動プランジャを有する適用器具(例えば、コーキングガンの形状を有する適用装置)を使用して、コンピュール又は容器から分注される。
【0199】
好適なコンピュール又は容器の例は、米国特許第5,624,260号(Wilcoxら)、欧州特許出願公開第1340472(A1)号(Centrix)、米国特許出願公開第2007/0172789(A1)号(Muellerら)、及び米国特許第5,865,803号(Major)に記載されている。更なる好適な容器は、米国特許第5,927,562号(Hammenら)及び米国特許出願公開第2011/151403(A1)号(Pauserら)に例示されている。
【0200】
修復される歯を取り囲む歯の軟組織、また歯間領域付近への組成物の容易で安全な適用を可能にする形状及びサイズを有するノズルを備える容器が使用される場合は有利であり得る。
【0201】
ノズルの直径が小さいほど、2つの歯の領域中にノズルを容易に置くことができる。しかしながら、ノズルの直径が小さいと、装置から組成物を分注するのに必要とされる押出力が大きくなり得る。したがって、全てのカニューレサイズ及び直径が等しく好適であるわけではない。0.6mm~1.3mmの範囲の外径及び0.2mm~0.9mmの範囲の内径を有するノズル又はカニューレを備えた装置が特に有用であることが判明している。
【0202】
本発明の別の実施形態は、少なくとも色に関して互いに異なる少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ以上の組成物を含むパーツキットを対象とする。上で概説したように、組成物は、典型的には容器中に保存される。
【0203】
本明細書に記載される組成物は、歯科分野及び歯科矯正分野において特に有用である。
【0204】
組成物は、歯科修復物として、又は歯科修復物を作製するために使用することができる。歯科修復物は、典型的には、患者の口腔外で作製され、治療工程において後に挿入される。
【0205】
歯科修復物の例としては、直接修復材料(例えば、前部及び後部修復材)、プロテーゼ、ベニヤ、人工クラウン、人工歯、義歯などが挙げられる。
【0206】
本明細書で使用される場合、用語「プロテーゼ」は、歯に隣接して配置される前に、その最終用途(例えば、クラウン、ブリッジ、ベニヤ、インレー、アンレーなど)のために成形及び重合されるコンポジットを指す。
【0207】
歯科材料が歯に適用される場合、歯は、任意選択的に、当業者に公知の方法によって、例えば象牙質接着剤又はエナメル質接着剤などのプライマーで前処理されていてもよい。
【0208】
より正確には、組成物は、哺乳動物、特にヒトの口腔内の歯牙硬組織の治療のために使用することができる。
【0209】
そのような治療方法は、典型的には、以下の工程:
a)本明細書に記載される組成物を歯牙硬組織の表面と接触させて設置する工程、
b)組成物を固化させる工程を含む。
【0210】
より詳細には、本方法は、
c)歯科用組成物を歯牙硬組織の表面に適用する工程であって、所望であれば、歯牙硬組織の表面が、エッチングされた表面(例えばリン酸による)又はエッチングされていない表面であり得る工程、
d)任意選択的に、好ましくは空気流を使用して、歯科用組成物を薄膜に分散させる工程、
e)歯科用組成物を放射線硬化する工程を含んでもよい。
【0211】
特に、組成物は、コンポジット充填材料、キャビティライナー、歯科矯正器具の固定材料、又はシーラントとして使用することができる。
【0212】
用語「コンポジット充填材料」は、充填された歯科用組成物を指す。歯科用コンポジット材料は、典型的には、患者の口腔内の欠陥のある歯構造を修復するために使用される。
【0213】
「キャビティライナー」は、コンポジット充填材料又は歯科修復物が適用される前に歯髄を保護するための組成物を意味する。
【0214】
本明細書で使用される場合、用語「シーラント」は、歯に隣接して配置された後に硬化される、軽く充填された歯科用コンポジット材料を指す。シーラントは、典型的には、奥歯に適用され、歯のエナメル質を覆う保護シールドを形成する。
【0215】
好ましい態様では、歯科材料は低粘度の歯科用充填材料である。
【0216】
更なる実施形態では、本明細書に記載される歯科用組成物は、歯科用ミルブランクを作製するために使用される。
【0217】
歯科用ミルブランクは、硬化性組成物を型に入れ、続いて硬化工程を行うことによって作製することができる。
【0218】
別の実施形態では、歯科用組成物は、例えば3d印刷技術を適用することによって、三次元物体(歯科用物品など)を層ごとに作製するための積層造形法における樹脂として使用される。
【0219】
本発明はまた、本明細書に記載される組成物と、以下の品目:歯科用接着剤、歯科用プライマー、分注装置、研磨装置、歯科用硬化光、任意選択的に、使用のための取扱説明書の単独又は組み合わせとを含むパーツキットに関する。
【0220】
歯科用接着剤は、典型的には、かなり低い粘度(例えば、23℃で0.01~3Pas)を有する酸性歯科用組成物である。歯科用接着剤は、歯のエナメル質又は象牙質表面と直接相互作用する。歯科用接着剤は、典型的には一液型組成物であり、放射線硬化性であり、酸性部分を有するエチレン性不飽和成分(複数可)と、酸性部分を有さないエチレン性不飽和成分(複数可)と、水と、増感物質(複数可)と、還元剤(複数可)と、添加剤(複数可)とを含む。
【0221】
歯科用接着剤の例は、米国特許出願公開第2020/0069532(A1)号(Thalackerら)及び同第2017/0065495(A1)号(Eckertら)に記載されている。歯科用接着剤は市販されてもいる(例えば、3M(商標)Scotchbond(商標)Universal(3M Oral Care))。
【0222】
好適な歯科用プライマーは、米国特許第6,126,922号(Rozziら)及び国際公開第00/69393(A1)号(3M)に記載されている。歯科用プライマーは市販されてもいる(例えば、3M(商標)Transbond(商標)XT Primer(3M Oral Care))。
【0223】
好適な研磨装置としては、ゴムカス(rubber cuss)、研磨ペースト、及び研磨ディスクが挙げられる。研磨デバイスは市販されてもいる(例えばSoflex(商標)ディスク(3M Oral Care))。
【0224】
好適な歯科用硬化光は、米国特許第10,758,126(B2)号(Geldmacherら)又は同第10,231,810(B2)号(Gramannら)に記載されている。歯科用硬化光は市販されてもいる(例えば、3M(商標)Elipar(商標)S10又は3M(商標)Elipar(商標)DeepCure S LED硬化光(3M Oral Care))。
【0225】
好適な分注装置は、米国特許出願公開第2021/113301(A1)号(Pauserら)に記載されている。分注装置は市販されてもいる(例えば、3M(商標)カプセルディスペンサー(3M Oral Care))。
【0226】
使用のための取扱説明書は、歯科用組成物が日常業務においてどのように使用されるべきかを記載しており、例えば、適用工程及び硬化条件を概説している。
【0227】
本明細書で引用された特許、特許文献、及び出版物の完全な開示は、あたかも各々が個別に組み込まれているかのように、その全体が参照により組み込まれる。本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明に対する様々な修正及び変更が当業者には明らかとなるであろう。上記の明細書、実施例及びデータは、本発明の組成物及び方法の製造及び使用の説明を提供する。本発明は、本明細書に開示される実施形態に限定されない。当業者は、本発明の多くの代替の実施形態が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなくなされ得ることを理解するであろう。
【0228】
以下の実施例は、本発明を例示するために示される。
【実施例
【0229】
別段の指定がない限り、全ての部及び百分率は重量基準であり、全ての水は脱イオン水であり、全ての分子量は重量平均分子量(g/mol)である。更に、別段の指定がない限り、全ての実験は、周囲条件(23℃、1013mbar)で実施した。更に、ほとんど全てのプロセス工程は、乾燥空気の雰囲気下で実施された。
【0230】
方法
pH値
所望であれば、組成物のpH値は以下のように決定することができる:pH感受性紙(Carl Roth(商標)社)を用意する。pH感受性紙のストライプを湿らせる。少量の試験される組成物を、湿らせたpH感受性紙上に置く。5秒後、pH感受性紙の色の変化を決定する。
【0231】
粒径分布(非ナノサイズ粒子)
所望であれば、粒径分布は、光散乱によって、例えば装置Horiba(堀場製作所、日本)を使用して決定することができる。
【0232】
光散乱型粒径測定装置は、試料にレーザを照射し、173度の角度で粒子から散乱された光の強度変動を解析する。粒径を計算するために、器具による光子相関分光法(Photon Correlation Spectroscopy、PCS)の方法を用いることができる。PCSは、変動する光の強度を使用して、液体中の粒子のブラウン運動を測定する。次いで、粒径は、測定された速度で移動する球体の直径であるとして計算される。
【0233】
粒子によって散乱された光の強度は、粒子径の6乗に比例する。Z平均サイズ又はキュムラント平均は、強度分布から計算される平均であり、計算は、粒子が単峰性、単分散性、及び球状であるという仮定に基づく。変動する光の強度から計算される関連する関数は、強度分布及びその平均である。強度分布の平均は、粒子が球状であるという仮定に基づき計算される。Z平均サイズ及び強度分布平均の両方とも、より小さい粒子に対するよりも、より大きな粒子に対して、感度が高い。
【0234】
体積分布は、所与のサイズ範囲内の粒子に相当する粒子の総体積の百分率を示す。体積平均サイズは、体積分布の平均に相当する粒子のサイズである。粒子の体積は直径の3乗に比例するため、この分布は、より大きな粒子に対しては、Z平均サイズよりも感度が低い。したがって、体積平均は、典型的には、Z平均サイズよりも小さい値である。本文書の範囲では、Z平均サイズは、「平均粒径」と称される。
【0235】
粒径分布(ナノサイズ粒子)
ナノ粒子のサイズの測定は、好ましくはTEM(透過型電子顕微鏡)法に基づき、それによって集合が解析され、平均粒子径が得られる。粒子径測定の好ましい方法は、下記のように説明することができる:
およそ80nm厚の試料を、炭素安定化フォルムバール基板を備える200メッシュの銅グリッド(Structure Probe,Inc.,West Chester,PAの一部門であるSPI Supplies)上に置く。透過型電子顕微鏡写真(TEM)を、200KVでJEOL200CX(日本電子株式会社、昭島市、日本;JEOL USA,Incにより販売)を使用して撮影する。約50~100個の粒子の集団サイズを測定することができ、平均直径が決定される。
【0236】
曲げ強度(FS)
所望であれば、曲げ強度の測定は、万能試験機(Zwick Z010、クロスヘッド速度1mm/分)を使用して、ISO4049(2019)に従って実施することができる。曲げ強度は、典型的には、MPaで示される。
【0237】
弾性率(EM)
所望であれば、EMは、ISO4049(2019)に従って決定することができ、[GPa]で示される。
【0238】
接着ディスク収縮歪み(SHR)
所望であれば、接着ディスク収縮歪みは、Dent.Mater.1991,7,281-287により詳細に記載されているWattsプロトコルに従って決定することができる。単位:[%]。
【0239】
硬化深度(DoC)
硬化深度(すなわち、硬化の深さ)は、ISO4049(2019)に従って、ペースト試料を円筒形金属硬化型(深さ8mm、直径4mm)に詰め、Elipar(商標)Trilight Standard(800mW/cm)(3M Oral Care)を用いて試料を40秒間硬化させることによって解析した。約1分未満の硬化後に、硬化した試料を型から取り出し、未硬化ペーストをプラスチックアプリケータで試料から掻き取った。結果を3回の反復の平均として報告した。
【0240】
屈折率(n 20
所望であれば、屈折率は、Kruess AR4D装置(アッベの測定原理による屈折計)で測定することができる。屈折率は、典型的には、589nmの波長で、20.0℃で測定される。
【0241】
粘度(η)
所望であれば、粘度は、Physica MCR301(Anton Paar Germany GmbH,Ostfildern-Scharnhausen)を用いて測定することができる。25mm/1°のコーン/プレートシステムを使用して、100/sの剪断速度で、23.0℃でモノマーを試験する。流動性コンポジットは、15mmのプレート/プレートシステム及び0.2mmのギャップを用いて、100/sの剪断速度で、25.0℃で測定することができる。
【0242】
咬頭歪み(Cusp-D)
所望であれば、咬頭歪みは、以下の方法に従って測定することができる:
スロットを矩形15×10×8mmのアルミニウムブロックに機械加工する。スロットは、長さ8mm、深さ4.0mm、及び幅4.0mmであり、縁から2mmの位置にあり、したがって、試験される歯科用組成物を含有する幅4mmの空洞に隣接する幅4mmのアルミニウム咬頭を形成する。線形可変変位変換器(モデルGT1000、E309アナログ増幅器と共に使用し、両方ともRDP Electronics,UK製)を定置して、歯科用組成物を室温で光硬化させたときの咬頭端(cusp tip)の変位を測定する。試験前に、Rocatec(商標)Plus Special Surface Containing Blasting Material(3M Oral Care)を使用してアルミニウムブロックのスロットをサンドブラストし、RelyX(商標)Ceramic Primer(3M Oral Care)で処理し、最後に歯科用接着剤であるScotchbond(商標)Universal(3M Oral Care)で処理する。
【0243】
このスロットに、およそ250mgの材料に等しいペースト試料を完全に詰める。スロット内の材料に近接して(約2mm)定置された歯科用硬化ランプ(Elipar(商標)S10、3M Oral Care)を用いて材料を1分間照射し、次いで、ランプを消した9分後に、マイクロメータで咬頭の変位を記録する。
【0244】
直径引張強度(DTS)
所望であれば、DTSは、以下の方法に従って測定することができる。
ペースト試料を4mm(内径)ガラス管に注入し、ガラス管をシリコーンゴム栓でキャップし、次いでガラス管をおよそ2.88kg/cm圧で5分間軸線方向に圧縮する。次いで、試料をElipar(商標)DeepCure歯科用硬化光(3M Oral Care)に曝露することによって4×20秒間光硬化させる。
【0245】
次いで、硬化した試料をダイヤモンドソーで切断して、圧縮強度を測定するために長さ2.5mmの円筒形の栓を形成する。試験前に、栓を脱イオン水中に36℃で約24時間保存する。測定は、ANSI/ADA規格27に従って、10キロニュートン(kN)のロードセルを備えたZwick/Roell万能試験機(Zwick/Roell GmbH&Co.KG,Ulm,Germany)上で、1mm/分のクロスヘッド速度で行う。
【0246】
組成物
略語
使用した成分の名称及び/又は構造を表1に示す。
【0247】
【表1-1】
【0248】
【表1-2】
【0249】
【表1-3】
【0250】
【表1-4】
【0251】
合成化合物(A)
化合物(複数可)(A)は以下のように調製することができる:
一般手順1:例えばエチレンカーボネート(EC)を用いたアルコキシ化中間体の合成
保護N雰囲気下で、フェノール化合物(例えば、レゾルシノール)及びグリシジルフェニルエーテル(フェノール性OH基1つ当たり1当量)及び塩基性触媒(例えば、KOH又はNaOH又はKOtBu、フェノール性OH基1つに対して少なくとも3mol%)を、エポキシ基が完全に反応するまで(CDODにおけるH NMRによる検出)、少なくとも100℃の温度で撹拌する。次いで、エチレンカーボネートを添加し(最初のフェノール性OH基1つ当たり少なくとも1個のエチレンカーボネート)、エチレンカーボネートが完全に反応するまで(CDODにおけるH NMRによる検出)、混合物を少なくとも140℃の温度で撹拌する。両方の反応工程は、ワンポット反応として続けて、又は2つの別々の反応として別々に行うことができる。アルコキシ化中間体の合成は、伝統的なバッチ反応(常圧又は加圧)として、又はフロー反応器を使用して加圧下で連続的に行うことができる。
【0252】
次いで、反応混合物を約80℃に冷却し、130重量%の2N NaOH溶液(理論収率に対して)を添加する。この混合物を少なくとも2時間加熱還流して、EO側鎖内のカーボネートを加水分解する(CDOD中のH NMRによる検出)。混合物をRTに冷却し、200重量%のトルエン又は酢酸エチル(理論収率に対して)で希釈する。有機相を分離し、水で数回抽出する。次いで、10重量%のNaCO及び10重量%の木炭(各々理論収率に対して)を有機相に添加し、この混合物を空気下で一晩撹拌する。NaCO/木炭から濾過した後、濾液を20重量%の中性アルミナ(理論収率に対して)に通して再び濾過し、溶媒を真空中で濾液から除去する。エトキシ化中間体の収率は約90%である。
【0253】
一般手順2:例えばメタクリル酸(MA)を用いたアルコキシ化中間体のエステル化
例えばヘキサン及び/又はシクロヘキサン及び/又はトルエン中のエトキシ化中間体に、BHT及び/又はHQME、任意選択的にメチレンブルー及び/又はPTZ、例えば触媒としてのメタンスルホン酸又はHSO、並びに例えばメタクリル酸を添加する。Dean Starck装置を使用して、還流下で水を除去する。反応の完了後、粗反応混合物をNaOH水溶液(4N又は2N)で少なくとも2回抽出し、次いで水で少なくとも1回洗浄し、任意選択的に無水NaSO上で乾燥させる。濾過後、濾液を中性アルミナに通して再び濾過する。少なくとも100ppmのBHT及び100ppmのHQMEを濾液に添加する。次いで、粗試料中に空気をバブリングしている間、溶媒を真空中で除去する。最終モノマーの収率は約90%である。
【0254】
ERGP-MA(比較例1)の合成:
ERGP-MAは、国際公開第2012/106083(A1)号(3M)、45頁に従って合成した。
【0255】
ERGP-A(比較例2)の合成:
ERGP-Aは、国際公開第2012/106083(A1)号(3M)、45頁に従って合成した。
【0256】
RGP2.2EO-DMA(本発明の実施例1)の合成:
一般手順1に従って、25.0gのR、68.6gのGP、及び79.9gのECを、触媒としてKOtBuを使用して反応させた。112gのRGP2.2EO(225mmol、98.9%)を黄色がかった液体として単離した。一般手順2に従って、49.9gのRGP2.2EO、25.8gのMA、94.7mgのHQME、3.80mgのPTZ、及び2.30gのMSAを、溶媒としてシクロヘキサン:トルエン=92.5:7.50を使用して反応させた。58.5gのRGP2.2EO-DMA(92.2mmol、92.2%)を黄色がかった油状物として単離した:η=5.5Pas、n 20=1.542。
【0257】
RGP3.3EO-DMA(本発明の実施例2)の合成:
一般手順1に従って、60.0gのR、165gのGP、及び288gのECを、触媒としてKOHを使用して反応させた。290gのRGP3.3EO(494mmol、90.7%)を黄色がかった液体として単離した。一般手順2に従って、96.0gのRGP3.3EO、43.7gのMA、175mgのHQME、7.00mgのPTZ、及び4.20gのMSAを、溶媒としてシクロヘキサン:トルエン=70.0:30.0を使用して反応させた。109gのRGP3.3EO-DMA(140mmol、91.0%)を黄色がかった油状物として単離した。η=3.8Pas、n 20=1.538。
【0258】
RGP3.4EO-DMA(本発明の実施例3)の合成:
一般手順1に従って、25.0gのR、68.6gのGP、及び120gのECを、触媒としてKOtBuを使用して反応させた。120gのRGP3.4EO(205mmol、90.2%)を黄色がかった液体として単離した。一般手順2に従って、109gのRGP3.4EO、49.8gのMA、199mgのHQME、8.00mgのPTZ、及び4.80gのMSAを、溶媒としてシクロヘキサン:トルエン=70.0:30.0を使用して反応させた。126gのRGP3.4EO-DMA(180mmol、93.3%)を黄色がかった油状物として単離した。η=3.6Pas、n 20=1.538。
【0259】
RGP3.8EO-DMA(本発明の実施例4)の合成:
一般手順1に従って、20.0gのR、54.9gのGP、及び118gのECを、触媒としてKOHを使用して反応させた。102gのRGP3.8EO(175mmol、96.3%)を黄色がかった液体として単離した。一般手順2に従って、102gのRGP3.8EO、45.6gのMA、185mgのHQME、7.40mgのPTZ、及び6.30gのMSAを、溶媒としてシクロヘキサン:トルエン=70.0:30.0を使用して反応させた。118gのRGP3.8EO-DMA(165mmol、93.4%)を黄色がかった油状物として単離した。η=3.3Pas、n 20=1.538。
【0260】
BCGP2.5EO-DMA(本発明の実施例5)の合成:
一般手順1に従って、33.4gのBC、63.7gのGP、及び69.6gのECを、触媒としてKOHを使用して反応させた。114gのBCGP2.5EO(192mmol、95.5%)を黄色がかった液体として単離した。一般手順2に従って、114gのBCGP2.5EO、49.5gのMA、204mgのHQME、8.20mgのPTZ、及び7.00gのMSAを、溶媒としてシクロヘキサン:トルエン=70.0:30.0を使用して反応させた。130.4gのBCGP2.5EO-DMA(179mmol、93.5%)を黄色がかった油状物として単離した。η=5.3Pas、n 20=1.535。
【0261】
PhloGP6EO-TMA(本発明の実施例6)の合成:
一般手順1に従って、20.2gのPhlo、72.6gのGP、及び141gのECを、触媒としてKOHを使用して反応させた。119gのPhloGP6EO(142mmol、88.4%)を黄色がかった液体として単離した。一般手順2に従って、70.6gのPhloGP6EO、32.5gのMA、516mgのHQME、15.5mgのPTZ、及び3.09gのMSAを、溶媒としてシクロヘキサン:トルエン=20.0:80.0を使用して反応させた。83.2gのPhloGP6EO-TMA(79.6mmol、94.8%)を黄色がかった油状物として単離した。η=14.6Pas、n 20=1.538。
【0262】
PhloGP6EO-TA(本発明の実施例7)の合成:
一般手順1に従って、20.2gのPhlo、72.6gのGP、及び141gのECを、触媒としてKOHを使用して反応させた。119gのPhloGP6EO(142mmol、88.4%)を黄色がかった液体として単離した。一般手順2に従って、87.1gのPhloGP6EO、33.6gのAA、603mgのHQME、18.1mgのPTZ、及び3.70gのMSAを、溶媒としてシクロヘキサン:トルエン=20.0:80.0を使用して反応させた。95.6gのPhloGP6EO-TA(95.3mmol、92.0%)を黄色がかった油状物として単離した。η=30.3Pas、n 20=1.543。
【0263】
合成した成分の特定の特性を表2に示す。
【0264】
【表2】
【0265】
本発明の重合性成分は、低粘度であり、十分に高い屈折率を有し、ビスフェノール-A部分を含有しない。
【0266】
光硬化一成分組成物の合成
合成した化合物のいくつかを、(歯科用)組成物を作製するために使用した。作製し、その機械的特性に関して試験した組成物を、以下の表3に示す。表3において、成分a)~i)の値は、対応する配合物中の個々の成分の重量%を表す。
【0267】
一般手順A:
磁気撹拌しながら、光排除下で、開始剤系成分を、50℃(使用されるモノマーの固有粘度に応じて)を超えない温度でモノマー中に溶解した。
【0268】
一般手順B:
一般手順Aに従って、開始剤系成分をモノマー中に溶解した。光排除下で、二軸アーム式混練機を使用して、充填剤を、開始剤系とモノマーとの混合物と、少量ずつ混合した。充填剤の量は、歯科用組成物の所望の取り扱い特性に応じて手動で決定した。次いで、800mWのハロゲン硬化光(3M Oral Care、Elipar(商標)Trilight)を使用して、歯科用組成物を光硬化し、上に列挙した対応する測定に従って試験した。それぞれの値を表3に示す。
【0269】
組成物Aは、成分a)を含有するが、本発明による化合物(A)を含有しない。下記表2において、化合物(A)は、成分b)~e)によって表される。したがって、組成物Aは比較例とみなすことができるのに対し、組成物B~Eは本発明の実施例とみなすことができる。
【0270】
【表3】
【0271】
見て分かるように、本発明による化合物(A1)を含有する組成物は、本発明による化合物(A1)を含有しない組成物と比較して、特定の特性(例えば、FS、EM、DTS)に関して優れているか、又はそうでなければ高レベルで適切な特性(例えば、DoC、SHR、Cusp-D)を示す。
【手続補正書】
【提出日】2024-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0271
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0271】
見て分かるように、本発明による化合物(A1)を含有する組成物は、本発明による化合物(A1)を含有しない組成物と比較して、特定の特性(例えば、FS、EM、DTS)に関して優れているか、又はそうでなければ高レベルで適切な特性(例えば、DoC、SHR、Cusp-D)を示す。
以下の項目[態様1]~[態様15]に本発明の実施形態の例を列記する。
[態様1]
a)樹脂マトリックスと、
b)開始剤系と、
c)充填剤系と
を含む歯科用組成物であって、前記樹脂マトリックスが、以下の式(I)、(II)、又は(III)
【化5】
[式中、
X=H、アルキル、I、Br、Clから独立して選択され、
Z=H、CH 、CH OHから独立して選択され、
n、m=1~10の範囲の整数から独立して選択され、
(m+n)=1~10であり、
R=H、CH から独立して選択される]
【化6】
[式中、
X=H、アルキル、I、Br、Clから独立して選択され、
Z=H、CH 、CH OHから独立して選択され、
k、n、m=1~10の範囲の整数から独立して選択され、
(k+m+n)=1~15であり、
R=H、CH から独立して選択される]
のいずれかによって特徴付けられる重合性成分A1、及びこれらの混合物を含む、歯科用組成物。
[態様2]
重合性成分A1が、
【化7】
[式中、
m、n、k=1~10の範囲の整数から独立して選択され、
かつ(m+n)=1~10であるか又は
(m+n+k)=1~15である]
及びこれらの混合物から選択される、態様1に記載の歯科用組成物。
[態様3]
重合性成分A1が、以下の特性:
a)粘度:25mm/1°のコーン/プレートシステムを使用して、23℃及び100s -1 の剪断速度で2~40Pa s、
b)屈折率:589nmの波長で、20.0℃で測定して1.520~1.565
の単独又は組み合わせによって特徴付けられる、態様1又は2に記載の歯科用組成物。
[態様4]
前記樹脂マトリックスが、重合性成分A1とは異なる1種以上の重合性成分A2を含み、前記重合性成分A2が、好ましくは、以下の式:
BA
[式中、Aは、エチレン性不飽和基であり、
Bは、(i)ハロゲン化物若しくはOHで任意選択的に置換された直鎖若しくは分枝鎖C ~C 12 アルキル、(ii)ハロゲン化物若しくはOHで任意選択的に置換されたC ~C 12 アリール、又は(iii)1つ以上のエーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル、チオカルボニル、アミド、ウレタン、カルボニル、及び/若しくはスルホニル結合によって互いに結合している4~20個の炭素原子を有する有機基から選択され、
m、nは、0、1、2、3、4、5、又は6から独立して選択されるが、n+mは0より大きいことを条件とする]によって特徴付けられる、態様1~3のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様5]
前記開始剤系が、光開始剤系、好ましくは、ケトン増感剤、アミン供与体、及び任意選択的にヨードニウム塩を含む光開始剤系を含む、態様1~4のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様6]
前記充填剤系が、ナノサイズ粒子を含み、前記組成物全体の重量に対して20~90重量%の量で存在する、態様1~5のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様7]
以下の量の成分:
a)重合性成分A1:3~50重量%、
b)重合性成分A2:0~60重量%、
c)開始剤系:0.1~4重量%、
d)充填剤系:20~90重量%、
e)可塑剤:0~20重量%、
f)補助剤:0~15重量%
を含み、重量%は前記組成物全体の重量に対するものである、態様1~6のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様8]
以下の成分:
5重量%以上の量の150℃未満の沸点を有する溶媒、
2重量%以上の量のビスフェノールA由来成分、
2重量%以上の量の酸性部分を含む重合性成分
を、単独でもこれらの組み合わせでも含まず、重量%は前記組成物全体の重量に対するものである、態様1~7のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様9]
固化前に、以下の特徴:
a)粘度:25℃及び100s -1 の剪断速度で5~100Pa s、
b)pH値:6~8、
c)400~700nmの範囲の波長を有する光で照射した後10分以内に固化可能であること
の単独又は組み合わせによって特徴付けられる、態様1~8のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様10]
固化後に、以下の特徴:
a)曲げ強度:ISO4049(2019)に従って決定して140~200Mpa s、
b)弾性率(EM):ISO4049(2019)に従って決定して4~16GPa、
c)硬化深度:ISO4049(2019)に従って決定して3~7mm、
d)接着ディスク収縮歪み:実験セクションに記載のように決定して1.50~1.80%、
e)直径引張強度:ISO7489(2019)に従って決定して75~100MPa、
f)咬頭歪み:<12μm
の単独又は組み合わせによって特徴付けられる、態様1~9のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様11]
前記歯科用組成物が、
a)3~50重量%の量の重合性成分A1、
b)0~60重量%の量の重合性成分A2、
c)0.1~4重量%の量の開始剤系であって、ケトン増感剤及びアミン供与体を含む開始剤系、
d)ナノサイズ粒子を含む、20~90重量%の量の充填剤系、
e)0~20重量%の量の可塑剤、
f)0~15重量%の量の補助剤
を含むことによって特徴付けられ、重量%は前記組成物全体の重量に対するものであり、
前記組成物が、5重量%以上の量のビスフェノールA部分含有成分を含まない、態様1~10のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様12]
態様1~11のいずれか一態様に記載の歯科用組成物と、以下の品目:歯科用接着剤、歯科用プライマー、分注装置、研磨装置、歯科用硬化光の単独又は組み合わせとを含むパーツキット。
[態様13]
歯科修復物を作製するための、歯科用ミルブランクを作製するための、又は歯科用物品を作製する積層造形法における樹脂としての、態様1~11のいずれか一態様に記載の歯科用組成物の使用。
[態様14]
歯牙硬組織の表面に前記歯科用組成物を適用する工程と、前記歯科用組成物を固化させる工程とを含む、哺乳動物の口腔内の歯牙硬組織を治療する方法において使用するための、態様1~11のいずれか一態様に記載の歯科用組成物。
[態様15]
コンポジット充填材料、歯科矯正器具の固定材料、キャビティライナー、又はシーラントとして使用するための、態様14に記載の歯科用組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)樹脂マトリックスと、
b)開始剤系と、
c)充填剤系と
を含む歯科用組成物であって、前記樹脂マトリックスが、以下の式(I)、(II)、又は(III)
【化1】
[式中、
X=H、アルキル、I、Br、Clから独立して選択され、
Z=H、CH、CHOHから独立して選択され、
n、m=1~10の範囲の整数から独立して選択され、
(m+n)=1~10であり、
R=H、CHから独立して選択される]
【化2】
[式中、
X=H、アルキル、I、Br、Clから独立して選択され、
Z=H、CH、CHOHから独立して選択され、
k、n、m=1~10の範囲の整数から独立して選択され、
(k+m+n)=1~15であり、
R=H、CHから独立して選択される]
のいずれかによって特徴付けられる重合性成分A1、及びこれらの混合物を含む、歯科用組成物。
【請求項2】
重合性成分A1が、
【化3】
[式中、
m、n、k=1~10の範囲の整数から独立して選択され、
かつ(m+n)=1~10であるか又は
(m+n+k)=1~15である]
及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の歯科用組成物。
【請求項3】
重合性成分A1が、以下の特性:
a)粘度:25mm/1°のコーン/プレートシステムを使用して、23℃及び100s-1の剪断速度で2~40Pas、
b)屈折率:589nmの波長で、20.0℃で測定して1.520~1.565
の単独又は組み合わせによって特徴付けられる、請求項1又は2に記載の歯科用組成物。
【請求項4】
以下の量の成分:
a)重合性成分A1:3~50重量%、
b)重合性成分A2:0~60重量%、
c)開始剤系:0.1~4重量%、
d)充填剤系:20~90重量%、
e)可塑剤:0~20重量%、
f)補助剤:0~15重量%
を含み、重量%は前記組成物全体の重量に対するものである、請求項1又は2に記載の歯科用組成物。
【請求項5】
固化前に、以下の特徴:
a)粘度:25℃及び100s-1の剪断速度で5~100Pas、
b)pH値:6~8、
c)400~700nmの範囲の波長を有する光で照射した後10分以内に固化可能であること
の単独又は組み合わせによって特徴付けられる、請求項1又は2に記載の歯科用組成物。
【請求項6】
固化後に、以下の特徴:
a)曲げ強度:ISO4049(2019)に従って決定して140~200Mpas、
b)弾性率(EM):ISO4049(2019)に従って決定して4~16GPa、
c)硬化深度:ISO4049(2019)に従って決定して3~7mm、
d)接着ディスク収縮歪み:実験セクションに記載のように決定して1.50~1.80%、
e)直径引張強度:ISO7489(2019)に従って決定して75~100MPa、
f)咬頭歪み:<12μm
の単独又は組み合わせによって特徴付けられる、請求項1又は2に記載の歯科用組成物。
【請求項7】
歯牙硬組織の表面に前記歯科用組成物を適用する工程と、前記歯科用組成物を固化させる工程とを含む、哺乳動物の口腔内の歯牙硬組織を治療する方法において使用するための、請求項1又は2に記載の歯科用組成物。
【国際調査報告】