(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-04-30
(54)【発明の名称】電気絶縁用ホットメルト積層コーティングを施したアルミニウム合金製造物
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20250422BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20250422BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20250422BHJP
C22F 1/04 20060101ALN20250422BHJP
【FI】
B32B15/08 A
B32B7/025
C22F1/00 613
C22F1/00 622
C22F1/00 623
C22F1/00 627
C22F1/00 661Z
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 685Z
C22F1/00 686A
C22F1/00 686B
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 692A
C22F1/00 692B
C22F1/00 694A
C22F1/00 694B
C22F1/04 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024559884
(86)(22)【出願日】2023-04-10
(85)【翻訳文提出日】2024-10-09
(86)【国際出願番号】 US2023018051
(87)【国際公開番号】W WO2023200721
(87)【国際公開日】2023-10-19
(32)【優先日】2022-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン タッシング
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB10
4F100AB10A
4F100AB12
4F100AB12A
4F100AB13
4F100AB13A
4F100AB19
4F100AB19A
4F100AB31
4F100AB31A
4F100AK01B
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4F100AK07
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4F100AK42C
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4F100JA04C
4F100JG01
4F100JG04
4F100JL11
4F100JL11D
(57)【要約】
本明細書には、電気的に絶縁された金属製造物及び電気的に絶縁された金属製造物を調製するための方法が記載される。電気的に絶縁された金属製造物は、多層ポリマー絶縁構造を含むことができ、多層ポリマー絶縁構造は接合層と最上部ポリマー層とを含み、これらは金属ベース層上に配置されて金属ベース層に対する電気絶縁を提供し、これは、たとえば金属ベース層上にポリマーフィルムを積層するプロセスを使用して行う。多層ポリマー絶縁構造と金属ベース層とを積層後にアニーリングに供して、接着性能を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に絶縁された金属製造物であって、
アルミニウム合金シート金属基板と、
前記アルミニウム合金シート金属基板に接合された多層ポリマー絶縁構造と、を含み、前記多層ポリマー絶縁構造は、前記アルミニウム合金シート金属基板に隣接する接合層と、前記接合層上の最上部ポリマー層とを含み、前記多層ポリマー絶縁構造は厚さが5μm~100μmであり、前記アルミニウム合金シート金属基板に接合された前記多層ポリマー絶縁構造は、全体として、表面抵抗が1×10
12Ω~1×10
15Ω、体積抵抗が1×10
12Ω~1×10
15Ω、破壊電圧が2kV~50kV、または比較トラッキング指数値が175V~400Vのうちの1つ以上を示す、前記電気的に絶縁された金属製造物。
【請求項2】
前記接合層は、第1のポリエステルフィルムを含み、前記最上部ポリマー層は、前記第1のポリエステルフィルムとは異なる組成を有する第2のポリエステルフィルムを含む、請求項1に記載の電気的に絶縁された金属製造物。
【請求項3】
前記接合層は、第1の融解温度を示すポリマーシーリング層を含み、前記最上部ポリマー層は、前記第1の融解温度よりも高い第2の融解温度または分解温度を示す、請求項1に記載の電気的に絶縁された金属製造物。
【請求項4】
前記第1の融解温度は150℃~250℃であるか、または前記ポリマーシーリング層は、150℃~250℃に予熱した後に、前記アルミニウム合金シート金属基板に接合される、請求項3に記載の電気的に絶縁された金属製造物。
【請求項5】
前記最上部ポリマー層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び/またはポリエチレンテレフタレートを含む、請求項1に記載の電気的に絶縁された金属製造物。
【請求項6】
前記多層ポリマー絶縁構造は、積層温度175℃~300℃への暴露及び/または積層圧力1バール~7バールへの暴露を含む積層条件下で、前記アルミニウム合金シート金属基板に適用された積層多層フィルムである、請求項1に記載の電気的に絶縁された金属製造物。
【請求項7】
前記多層ポリマー絶縁構造は、アニール条件175℃~300℃に供されたアニールされた多層フィルムである、請求項1に記載の電気的に絶縁された金属製造物。
【請求項8】
前記アルミニウム合金シート金属基板と前記多層ポリマー絶縁構造との間に接着層が配置されていない、請求項1に記載の電気的に絶縁された金属製造物。
【請求項9】
前記接合層は、前記アルミニウム合金シート金属基板と前記最上部ポリマー層との間に接着層を含む、請求項1に記載の電気的に絶縁された金属製造物。
【請求項10】
前記アルミニウム合金シート金属基板を前記最上部ポリマー層に接合する前に、前記接着層は前記アルミニウム合金シート金属基板に配置されるか、または
前記アルミニウム合金シート金属基板を前記最上部ポリマー層に接合する前に、前記接着層は前記最上部ポリマー層に配置される、請求項9に記載の電気的に絶縁された金属製造物。
【請求項11】
前記多層ポリマー絶縁構造は、前記アルミニウム合金シート金属基板への伝導経路を提供するピンホールまたは他の欠陥が無い、請求項1に記載の電気的に絶縁された金属製造物。
【請求項12】
前記アルミニウム合金シート金属基板は、アルミニウム合金シート金属ベース層に表面前処理コーティングを含む、請求項1に記載の電気的に絶縁された金属製造物。
【請求項13】
前記表面前処理コーティングは、Ti-Zr系化成コーティング、Cr系化成コーティング、またはコポリマー系コーティングを含む、請求項12に記載の電気的に絶縁された金属製造物。
【請求項14】
前記アルミニウム合金シート金属基板は、非平面形状を有するか、または成形構成にある、請求項1に記載の電気的に絶縁された金属製造物。
【請求項15】
電気的に絶縁された金属製造物を調製するための方法であって、前記方法は、
アルミニウム合金シート金属基板を第1の温度150℃~250℃に予熱することと、
多層ポリマー絶縁構造を前記アルミニウム合金シート金属基板の表面に接合して、接合製造物を製造することであって、前記多層ポリマー絶縁構造は、接合層と、前記接合層上の最上部ポリマー層とを含み、前記多層ポリマー絶縁構造は厚さが5μm~100μmであり、前記アルミニウム合金シート金属基板に接合された前記多層ポリマー絶縁構造は、全体として、表面抵抗が1×10
12Ω~1×10
15Ω、体積抵抗が1×10
12Ω~1×10
15Ω、破壊電圧が2kV~50kV、または比較トラッキング指数値が175V~400Vのうちの1つ以上を示す、前記製造することと、を含む前記方法。
【請求項16】
前記接合層は、第1のポリエステルフィルムを含み、前記最上部ポリマー層は、前記第1のポリエステルフィルムとは異なる組成を有する第2のポリエステルフィルムを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記接合層は、第1の融解温度を示すポリマーシーリング層を含み、前記最上部ポリマー層は、前記第1の融解温度よりも高い第2の融解温度または分解温度を示す、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の融解温度は150℃~250℃である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記最上部ポリマー層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び/またはポリエチレンテレフタレートを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
接合は、前記多層ポリマー絶縁構造と前記アルミニウム合金シート金属基板とを、積層温度175℃~300℃への暴露及び/または積層圧力1バール~7バールへの暴露を含む積層条件に供することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記接合製造物をアニール温度175℃~300℃でアニーリングすることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記多層ポリマー絶縁構造は、前記アルミニウム合金シート金属基板の前記表面に、前記アルミニウム合金シート金属基板と前記多層ポリマー絶縁構造との間に接着層を使用せずに接合される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記アルミニウム合金シート金属基板と前記多層ポリマー絶縁構造との間に接着層が配置されていない、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記接合層は、前記アルミニウム合金シート金属基板と前記最上部ポリマー層との間に接着層を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記アルミニウム合金シート金属基板を前記最上部ポリマー層に接合する前に、前記接着層は前記アルミニウム合金シート金属基板に配置されるか、または
前記アルミニウム合金シート金属基板を前記最上部ポリマー層に接合する前に、前記接着層は前記最上部ポリマー層に配置される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記アルミニウム合金シート金属基板は、アルミニウム合金シート金属ベース層に表面前処理コーティングを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記表面前処理コーティングは、Ti-Zr系化成コーティング、Cr系化成コーティング、またはコポリマー系コーティングを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記接合製造物を1つ以上の成形プロセスに供し、成形製造物を生成することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項29】
前記接合製造物は、請求項1~14のいずれかに記載の電気的に絶縁された金属製造物である、請求項15~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
請求項15~28のいずれかに記載の方法により調製された、請求項1~14のいずれかに記載の電気的に絶縁された金属製造物。
【請求項31】
デバイス用の構造エンクロージャーであって、前記構造エンクロージャーは、
電気的に絶縁された金属製造物を含み、前記電気的に絶縁された金属製造物は、
アルミニウム合金シート金属基板と、
前記アルミニウム合金シート金属基板に接合された多層ポリマー絶縁構造と、を含み、前記多層ポリマー絶縁構造は、前記アルミニウム合金シート金属基板に隣接する接合層と、前記接合層上の最上部ポリマー層とを含み、前記多層ポリマー絶縁構造は厚さが5μm~100μmであり、前記アルミニウム合金シート金属基板に接合された前記多層ポリマー絶縁構造は、全体として、表面抵抗が1×10
12Ω~1×10
15Ω、体積抵抗が1×10
12Ω~1×10
15Ω、破壊電圧が2kV~50kV、または比較トラッキング指数値が175V~400Vのうちの1つ以上を示す、前記構造エンクロージャー。
【請求項32】
互いに機械的に接合した複数の電気的に絶縁された金属製造物を含む、請求項31に記載の構造エンクロージャー。
【請求項33】
前記電気的に絶縁された金属製造物は、請求項1~14のいずれかに記載の電気的に絶縁された金属製造物を含む、請求項31に記載の構造エンクロージャー。
【請求項34】
前記電気的に絶縁された金属製造物は、請求項15~28のいずれかに記載の方法により調製される、請求項31に記載の構造エンクロージャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第63/362,937号(2022年4月13日に出願)、発明の名称「ALUMINUM ALLOY PRODUCTS WITH HOT-MELT LAMINATION COATINGS FOR ELECTRICAL INSULATION」の利益及びこれに対する優先権を主張する。なおこの文献の内容はその全体において参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は全般的には、冶金学に関し、より具体的には、電気的に絶縁されたアルミニウム合金製造物に関する。
【背景技術】
【0003】
金属製造物は、あらゆる種類の製造物、デバイス、及びシステムに対する構造エンクロージャーとして日常的に使用されている。鋼製エンクロージャーは一般に、高強度が必要な用途に使用され、アルミニウムエンクロージャーも一部の用途に使用されている。
【発明の概要】
【0004】
用語実施形態及び同様の用語は、本開示の主題及び以下の特許請求の範囲のすべてを広く指すことが意図されている。これらの用語を含む記述は、本明細書に記載の主題を限定するものでも、以下の特許請求の範囲の意味または範囲を限定するものでもないことを理解すべきである。本明細書で扱われる本開示の実施形態は、以下の特許請求の範囲によって規定され、この概要によってではない。この概要は、本開示の種々の態様の高いレベルの概略であり、下記の発明を実施するための形態のセクションでさらに説明する考え方の一部を紹介している。この概要は、特許請求の範囲に記載された対象の主要または本質的な特徴を特定することは意図されておらず、特許請求の範囲に記載された対象の範囲を決定するために単独で使用されることも意図されていない。主題は、本開示の明細書全体、いずれかまたはすべての図面、及び各請求項の適切な部分を参照することによって理解すべきである。
【0005】
アルミニウムは、鋼よりもかなり密度が小さいが、高強度特性を提供することができ、多くの用途に有用である。構造部品(たとえば、電子デバイスのエンクロージャー)にアルミニウムを使用すると、鋼と比較して軽量で高強度を得ることができる。鋼と同様に、アルミニウムは伝導性材料であり、そのため、このような材料をエンクロージャーとして電子デバイスに使用することは、短絡または他の望ましくない影響のリスクを低減するなど、電子デバイスとエンクロージャーとの間の電気絶縁のためになる可能性がある。
【0006】
本開示では、多層ポリマー絶縁構造が接合、接合、または他の方法で表面に結合されたアルミニウム基板について説明する。いくつかの例では、多層ポリマー絶縁構造は、接着層を有しアルミニウム基板上に配置されたポリマーフィルムであるか、またはそれを含むことができる。いくつかの例では、多層ポリマー絶縁構造は、ポリマーフィルム及びポリマーフィルムをアルミニウム基板に接合する接着層であるか、またはそれらを含むことができる。このような例では、ポリマーフィルムをアルミニウム基板に、それらの間に接着層を使用して取り付けることができる。他の例では、多層ポリマー絶縁構造は、アルミニウム基板上に直接配置され、アルミニウム基板に接合されたポリマー多層フィルムであるか、またはそれを含むことができる。接合は、ホットメルト積層プロセス、たとえば、ポリマー多層フィルムのより低い融解温度のポリマー層を、その融解温度付近で、融解温度で、または融解温度超で加熱して、より低い融解温度のポリマー層とアルミニウム基板との間の密着を可能にするプロセスなどを使用して行う。これらの技法を使用して、多層ポリマー絶縁構造を、アルミニウム基板に複合構造として取り付け、複合構造に絶縁特性を付与することができる。
【0007】
いくつかの例では、本開示によって、アルミニウム合金シート金属基板と、アルミニウム合金シート金属基板に接合された多層ポリマー絶縁構造と、を含む電気的に絶縁された金属製造物が提供される。任意選択で、多層ポリマー絶縁構造は、アルミニウム合金シート金属基板に隣接する接合層と、接合層上の最上部ポリマー層とを含む。任意選択で、多層ポリマー絶縁構造は厚さが5μm~100μmである。任意選択で、アルミニウム合金シート金属基板に接合された多層ポリマー絶縁構造は、全体として、表面抵抗が1×1012Ω~1×1015Ω、体積抵抗が1×1012Ω~1×1015Ω、破壊電圧が2kV~50kV、または比較トラッキング指数値が175V~400Vのうちの1つ以上を示す。
【0008】
一態様において、本開示によって、電気的に絶縁された金属製造物を調製するための方法が提供される。方法例は、アルミニウム合金シート金属基板を第1の温度150℃~250℃に予熱することと、多層ポリマー絶縁構造をアルミニウム合金シート金属基板の表面に接合して、接合製造物を製造することであって、多層ポリマー絶縁構造は、接合層と接合層上の最上部ポリマー層とを含む、製造することと、を含む。任意選択で、多層ポリマー絶縁構造は厚さが、5μm~100μm、たとえば5μm~10μm、10μm~15μm、15μm~20μm、20μm~25μm、25μm~30μm、30μm~35μm、35μm~40μm、40μm~45μm、45μm~50μm、50μm~55μm、55μm~60μm、60μm~65μm、65μm~70μm、70μm~75μm、75μm~80μm、80μm~85μm、85μm~90μm、90μm~95μm、または95μm~100μmである。
【0009】
任意選択で、アルミニウム合金シート金属基板に接合された多層ポリマー絶縁構造は、全体として、表面抵抗が1×1012Ω~1×1015Ω、体積抵抗が1×1012Ω~1×1015Ω、破壊電圧が2kV~50kV、または比較トラッキング指数値が175V~400Vのうちの1つ以上を示す。例では、アルミニウム合金シート金属基板に接合された多層ポリマー絶縁構造は、全体として、表面抵抗が1×1012Ω~5×1012Ω、5×1012Ω~1×1013Ω、1×1013Ω~5×1013Ω、5×1013Ω~1×1014Ω、1×1014Ω~5×1014Ω、または5×1014Ω~1×1015Ωを示す。例では、アルミニウム合金シート金属基板に接合された多層ポリマー絶縁構造は、全体として、破壊電圧が2kV~5kV、5kV~10kV、10kV~15kV、15kV~20kV、20kV~25kV、25kV、30kV、30kV~35kV、35kV~40kV、40kV~45kV、または45kV~50kVを示す。例では、アルミニウム合金シート金属基板に接合された多層ポリマー絶縁構造は、全体として、比較トラッキング指数値が175V~180V、180V~185V、185V~190V、190V~195V、195V~200V、200V~205V、205V~210V、200V~205V、205V~210V、210V~215V、215V~220V、220V~225V、225V~230V、230V~235V、235V~240V、240V~245V、245V~250V、250V~255V、255V~260V、260V~265V、265V~270V、270V~275V、275V~280V、280V~285V、285V~290V、290V~295V、295V~300V、300V~305V、305V~310V、300V~305V、305V~310V、310V~315V、315V~320V、320V~325V、325V~330V、330V~335V、335V~340V、340V~345V、345V~350V、350V~355V、355V~360V、360V~365V、365V~370V、370V~375V、375V~380V、380V~385V、385V~390V、390V~395V、または395V~400Vを示す。
【0010】
任意選択で、接合層は、第1のポリエステルフィルムを含み、最上部ポリマー層は、第1のポリエステルフィルムとは異なる組成を有する第2のポリエステルフィルムを含む。任意選択で、接合層は、第1の融解温度を示すポリマーシーリング層を含み、最上部ポリマー層は、第1の融解温度よりも高い第2の融解温度または分解温度を示す。任意選択で、最上部ポリマー層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び/またはポリエチレンテレフタレートを含む。
【0011】
任意選択で、第1の融解温度は、150℃~250℃、たとえば150℃~155℃、155℃~160℃、160℃~165℃、165℃~170℃、170℃~175℃、175℃~180℃、180℃~185℃、185℃~190℃、190℃~195℃、195℃~200℃、200℃~205℃、205℃~210℃、210℃~215℃、215℃~220℃、220℃~225℃、225℃~230℃、230℃~235℃、235℃~240℃、240℃~245℃、または245℃~250℃である。
【0012】
任意選択で、接合は、多層ポリマー絶縁構造とアルミニウム合金シート金属基板とを、積層温度175℃~300℃への暴露及び/または積層圧力1バール~7バールへの暴露を含む積層条件に供することを含む。任意選択で、積層温度は、175℃~180℃、180℃~185℃、185℃~190℃、190℃~195℃、195℃~200℃、200℃~205℃、205℃~210℃、210℃~215℃、215℃~220℃、220℃~225℃、225℃~230℃、230℃~235℃、235℃~240℃、240℃~245℃、245℃~250℃、250℃~255℃、255℃~260℃、260℃~265℃、265℃~270℃、270℃~275℃、275℃~280℃、280℃~285℃、285℃~290℃、290℃~295℃、または295℃~300℃である。任意選択で、積層圧力は、1バール~1.5バール、1.5バール~2バール、2バール~2.5バール、2.5バール~3バール、3バール~3.5バール、3.5バール~4バール、4バール~4.5バール、4.5バール~5バール、5バール~5.5バール、5.5バール~6バール、6バール~6.5バール、または6.5バール~7バールである。
【0013】
任意選択で、この態様の方法はさらに、接合製造物のアニーリングを、アニール温度175℃~300℃、たとえば175℃~180℃、180℃~185℃、185℃~190℃、190℃~195℃、195℃~200℃、200℃~205℃、205℃~210℃、210℃~215℃、215℃~220℃、220℃~225℃、225℃~230℃、230℃~235℃、235℃~240℃、240℃~245℃、245℃~250℃、250℃~255℃、255℃~260℃、260℃~265℃、265℃~270℃、270℃~275℃、275℃~280℃、280℃~285℃、285℃~290℃、290℃~295℃、または295℃~300℃で行うことを含んでいてもよい。
【0014】
任意選択で、多層ポリマー絶縁構造は、アルミニウム合金シート金属基板の表面に、アルミニウム合金シート金属基板と多層ポリマー絶縁構造との間に接着層を使用せずに接合される。任意選択で、アルミニウム合金シート金属基板と多層ポリマー絶縁構造との間に、接着層が配置されていない。任意選択で、接合層は、アルミニウム合金シート金属基板と最上部ポリマー層との間に接着層を含む。
【0015】
たとえば、場合によっては、アルミニウム合金シート金属基板を最上部ポリマー層に接合する前に、接着層はアルミニウム合金シート金属基板上に配置されるか、またはアルミニウム合金シート金属基板を最上部ポリマー層に接合する前に、接着層は最上部ポリマー層上に配置される。
【0016】
任意選択で、アルミニウム合金シート金属基板は、アルミニウム合金シート金属ベース層上に表面前処理コーティングを含む。たとえば、場合によっては、表面前処理コーティングは、Ti-Zr系化成コーティング、Cr系化成コーティング、またはコポリマー系コーティングを含む。
【0017】
任意選択で、この態様の方法は、接合製造物を1つ以上の成形プロセスに供して、成形製造物を生成することをさらに含んでいてもよい。プロセス例としては、限定することなく、スタンピング、ロール成形などが挙げられる。
【0018】
いくつかの例では、本開示によって、電子デバイスなどのデバイス用の構造エンクロージャーが提供される。構造エンクロージャー例は、電気的に絶縁された金属製造物を含み、電気的に絶縁された金属製造物は、アルミニウム合金シート金属基板と、アルミニウム合金シート金属基板に接合された多層ポリマー絶縁構造とを含む。任意選択で、多層ポリマー絶縁構造は、アルミニウム合金シート金属基板に隣接する接合層と、接合層上の最上部ポリマー層とを含む。任意選択で、多層ポリマー絶縁構造は、厚さが5μm~100μm、たとえば5μm~100μm、たとえば5μm~10μm、10μm~15μm、15μm~20μm、20μm~25μm、25μm~30μm、30μm~35μm、35μm~40μm、40μm~45μm、45μm~50μm、50μm~55μm、55μm~60μm、60μm~65μm、65μm~70μm、70μm~75μm、75μm~80μm、80μm~85μm、85μm~90μm、90μm~95μm、または95μm~100μmである。
【0019】
任意選択で、アルミニウム合金シート金属基板に接合された多層ポリマー絶縁構造は、全体として、表面抵抗が1×1012Ω~1×1015Ω、体積抵抗が1×1012Ω~1×1015Ω、破壊電圧が2kV~50kV、または比較トラッキング指数値が175V~400Vのうちの1つ以上を示す。いくつかの例では、アルミニウム合金シート金属基板に接合された多層ポリマー絶縁構造は、全体として、表面抵抗が1×1012Ω~5×1012Ω、5×1012Ω~1×1013Ω、1×1013Ω~5×1013Ω、5×1013Ω~1×1014Ω、1×1014Ω~5×1014Ω、または5×1014Ω~1×1015Ωを示す。いくつかの例では、アルミニウム合金シート金属基板に接合された多層ポリマー絶縁構造は、全体として、破壊電圧が2kV~5kV、5kV~10kV、10kV~15kV、15kV~20kV、20kV~25kV、25kV、30kV、30kV~35kV、35kV~40kV、40kV~45kV、または45kV~50kVを示す。いくつかの例では、アルミニウム合金シート金属基板に接合された多層ポリマー絶縁構造は、全体として、比較トラッキング指数値が175V~180V、180V~185V、185V~190V、190V~195V、195V~200V、200V~205V、205V~210V、200V~205V、205V~210V、210V~215V、215V~220V、220V~225V、225V~230V、230V~235V、235V~240V、240V~245V、245V~250V、250V~255V、255V~260V、260V~265V、265V~270V、270V~275V、275V~280V、280V~285V、285V~290V、290V~295V、295V~300V、300V~305V、305V~310V、300V~305V、305V~310V、310V~315V、315V~320V、320V~325V、325V~330V、330V~335V、335V~340V、340V~345V、345V~350V、350V~355V、355V~360V、360V~365V、365V~370V、370V~375V、375V~380V、380V~385V、385V~390V、390V~395V、または395V~400Vを示す。
【0020】
他の目的及び利点は、非限定的な例の以下の詳細な説明から明らかとなる。
【0021】
本明細書は、以下の添付図を参照するが、異なる図中で同様の参照数字を使用した場合、同様または類似のコンポーネントを示すことが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】電気的に絶縁された金属製造物例の概略図である。
【
図2】圧延されたアルミニウム合金製造物を作製するための方法例の模式的な概要である。
【
図3】電気的に絶縁された金属製造物を作製するための方法例の模式的な概要である。
【
図4】ポリマー絶縁フィルムをアルミニウム合金シート金属基板に積層する概略図である。
【
図5】デバイス用の構造エンクロージャー例の概略的な分解組立図である。
【
図6】比較トラッキング指数試験に供された後の電気的に絶縁された金属製造物のサンプルの写真である。
【
図7】接着性能試験に供された後の電気的に絶縁された金属製造物のサンプルの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書では、電気的に絶縁された金属製造物、及び電気的に絶縁された金属製造物を作製する方法について説明する。金属製造物は、多層ポリマー絶縁フィルムのコーティングまたは層が1つ以上の表面上に配置されたアルミニウム合金シート金属基板を含む。金属製造物を、任意の好適な形状または形態に加工することが、たとえば、電気的に絶縁された金属製造物を、成形、スタンピング、または他の加工に供することによって可能であり、これにより、電気的に絶縁された金属製造物から、構造エンクロージャー(たとえば、接触または短絡の発生を防ぐために電気絶縁が望ましい場合がある電気または電子デバイス用の構造エンクロージャー)を調製することができる。
【0024】
多層ポリマー絶縁フィルムは、シーリング層を含むことができ、これにより、多層ポリマー絶縁フィルムを、ベースシート金属基板の表面に積層することが可能になる。これは、たとえば、多層ポリマー絶縁フィルムをシート金属基板に付与するときに、フィルムを熱及び/または圧力にさらすことによって行う。ベースシート金属基板に接合された多層ポリマー絶縁フィルムは、電気絶縁特性を示すか、またはそれによって特徴付けることができ、たとえば、表面抵抗が1×1012Ω~1×1015Ω、体積抵抗が1×1012Ω~1×1015Ω、破壊電圧が2kV~50kV、及び/または比較トラッキング指数値が175V~400Vである。このような特性は、多層ポリマー絶縁フィルムの薄層(たとえば、厚さが5μm~100μm)を使用して達成することができる。
【0025】
図1に、電気的に絶縁された金属製造物例100の概略図を示す。図示したように、電気的に絶縁された金属製造物100は、アルミニウム合金シート金属基板105と、アルミニウム合金シート金属基板105上に配置された多層ポリマー絶縁フィルム110とを含む。多層ポリマー絶縁フィルム110は、
図1では、アルミニウム合金シート金属基板105の上面にのみ示しているが、アルミニウム合金シート金属基板の上面及び下面の両方が多層ポリマー絶縁フィルムを含む例が、本説明には含まれる。
【0026】
多層ポリマー絶縁フィルム110は、たとえば互いに取り付けられ、接続され、または隣接する複数の異なるフィルムまたは層を含んでいてもよい。たとえばアルミニウム合金シート金属基板105の表面と接触する接合層115、及び接合層115に隣接する最上部ポリマー層120である。接合層115及び最上部ポリマー層120は、異なる材料を含むこともできるし、またはそれらは同じとすることもできる。いくつかの例では、接合層はシーリング層を含んでいてもよい。いくつかの例では、接合層115及び最上部ポリマー層120は、ポリエステル層(たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び/またはポリエチレンテレフタレートのうちの1つ以上)を含む。いくつかの例では、接合層115は、第1のポリエステルフィルムを含み、最上部ポリマー層120は、第1のポリエステルフィルムとは異なる組成を有する第2のポリエステルフィルムを含む。接合層115は、たとえば、最上部ポリマー層120よりも低い融解温度を示してもよい。いくつかの例では、シーリング層115は、融解温度が150℃~250℃、たとえば150℃~155℃、155℃~160℃、160℃~165℃、165℃~170℃、170℃~175℃、175℃~180℃、180℃~185℃、185℃~190℃、190℃~195℃、195℃~200℃、200℃~205℃、205℃~210℃、210℃~215℃、215℃~220℃、220℃~225℃、225℃~230℃、230℃~235℃、235℃~240℃、240℃~245℃、または245℃~250℃を示してもよい。有利なことに、多層ポリマー絶縁フィルム110は、アルミニウム合金シート金属基板105への伝導経路を提供するピンホールまたは他の欠陥が無いとすることができる。任意選択で、接合層115は、接着層を含んでいてもよい。いくつかの例では、接合層115は、最上部ポリマー層120と接合する前にアルミニウム合金シート金属基板105に付与される接着層であってもよい。他の例では、接合層115は、アルミニウム合金シート金属基板105と接合する前に最上部ポリマー層120に付与される接着層であってもよい。いくつかの例では、有用な接着剤としては、限定することなく、アクリル接着剤、ポリエステル接着剤、またはエポキシ接着剤が挙げられる。
【0027】
アルミニウム合金シート金属基板105は、任意の好適なアルミニウム合金を含むことができ、任意選択で、表面前処理層、陽極酸化層、または酸化物表面層を含んでいてもよい。多層ポリマー絶縁フィルム110を表面に配置した状態で、アルミニウム合金シート金属基板105を成形または他の加工に供して、電気的に絶縁された金属製造物を、非平面形状(たとえば、デバイスエンクロージャーの作製に有用であるなど)で提供することができる。さらに、他の電気的に絶縁された金属製造物を、アルミニウム合金シート金属基板105及び多層ポリマー絶縁フィルム110から調製することができる。
【0028】
定義及び説明
本明細書で使用する場合、用語「発明(invention)」、「本発明(the invention)」、「本発明(this invention)」、及び「本発明(the present invention)」は、本特許出願の主題及び以下の特許請求の範囲のすべてを広く指すことが意図されている。これらの用語を含む記述は、本明細書に記載の主題を限定するものでも、以下の特許請求の範囲の意味または範囲を限定するものでもないことを理解すべきである。
【0029】
この説明では、AA番号及び他の関連する記号(たとえば「シリーズ」または「7×××」)によって特定される合金に言及する。アルミニウム及びその合金を命名及び特定するときに最も一般的に使用される番号指定システムを理解するためには、以下を参照されたい。「International Alloy Designations and Chemical Composition Limits for Wrought Aluminum and Wrought Aluminum Alloys」、または「Registration Record of Aluminum Association Alloy Designations and Chemical Compositions Limits for Aluminum Alloys in the Form of Castings and Ingot」(両方とも、The Aluminum Associationにより刊行)。
【0030】
本明細書で使用する場合、プレートは全般的に厚さが約15mm超である。たとえば、プレートは、厚さが約15mm超、約20mm超、約25mm超、約30mm超、約35mm超、約40mm超、約45mm超、約50mm超、または約100mm超のアルミニウム製造物を指してもよい。
【0031】
本明細書で使用する場合、シェート(シートプレートとも言う)は全般的に厚さが約4mm~約15mmである。たとえば、シェートは、厚さが約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、約11mm、約12mm、約13mm、約14mm、または約15mmであってもよい。
【0032】
本明細書で使用する場合、シートは全般的に、厚さが約4mm未満のアルミニウム製造物を指す。たとえば、シートは、厚さが約4mm未満、約3mm未満、約2mm未満、約1mm未満、約0.5mm未満、または約0.3mm未満(たとえば、約0.2mm)であってもよい。
【0033】
本出願では、合金調質または状態に言及する場合がある。最も一般的に使用される合金調質の説明を理解するためには、「American National Standards(ANSI)H35 on Alloy and Temper Designation Systems」を参照されたい。F状態または調質は、作製されたままのアルミニウム合金を指す。O状態または調質は、アニーリング後のアルミニウム合金を指す。H××状態または調質(本明細書ではH調質とも言う)は、熱処理(たとえばアニーリング)の有無にかかわらず、冷間圧延後の非熱処理アルミニウム合金を指す。好適なH調質としては、H×1、H×2、H×3、H×4、H×5、H×6、H×7、H×8、またはH×9調質が挙げられる。T1状態または調質は、熱間加工から冷却され、(たとえば、室温で)自然時効されたアルミニウム合金を指す。T2状態または調質は、熱間加工から冷却され、冷間加工され、自然時効されたアルミニウム合金を指す。T3状態または調質は、固溶化熱処理され、冷間加工され、及び自然時効されたアルミニウム合金を指す。T4状態または調質は、固溶化熱処理され、自然時効されたアルミニウム合金を指す。T5状態または調質は、熱間加工から冷却され、(高温で)人工時効されたアルミニウム合金を指す。T6状態または調質は、固溶化熱処理され、人工時効されたアルミニウム合金を指す。T7状態または調質は、固溶化熱処理され、人工過剰時効されたアルミニウム合金を指す。T8×状態または調質は、固溶化熱処理され、冷間加工され、及び人工時効されたアルミニウム合金を指す。T9状態または調質は、固溶化熱処理され、人工時効され、及び冷間加工されたアルミニウム合金を指す。W状態または調質は、固溶化熱処理後のアルミニウム合金を指す。
【0034】
本明細書で使用する場合、「鋳造金属製造物」、「鋳造製造物」、「鋳造アルミニウム合金製造物」などの用語は、交換可能であり、製造物として、直接チル鋳造(直接チル共鋳造を含む)または半連続鋳造、連続鋳造(たとえば、双ベルト鋳造機、双ロール鋳造機、ブロック鋳造機、または任意の他の連続鋳造機の使用によるものを含む)、電磁鋳造、ホットトップ鋳造、または任意の他の鋳造法によって製造された製造物を指す。
【0035】
本明細書で使用する場合、「室温」の意味には、温度が約15℃~約30℃、たとえば約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、または約30℃であることを含めることができる。本明細書で使用する場合、「周囲条件」の意味は、温度がほぼ室温、相対湿度が約20%~約100%、及び気圧が約975ミリバール(mbar)~約1050mbarを含むことができる。たとえば、相対湿度は、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%、またはそれらの間のどこかである可能性がある。たとえば、気圧は、約975mbar、約980mbar、約985mbar、約990mbar、約995mbar、約1000mbar、約1005mbar、約1010mbar、約1015mbar、約1020mbar、約1025mbar、約1030mbar、約1035mbar、約1040mbar、約1045mbar、約1050mbar、またはそれらの間のどこかである可能性がある。
【0036】
本明細書で開示したすべての範囲は、その中に包含されるすべての部分範囲を包含すると理解すべきである。たとえば、提示範囲「1~10」は、最小値1と最大値10との間のすべての部分範囲(両端を含む)を含むと考えるべきである。すなわち、すべての部分範囲は、1以上(たとえば1~6.1)の最小値から始まり、10以下(たとえば5.5~10)の最大値で終わる。他に記載がない限り、表現「最大」は、元素の組成量を指す場合、元素が任意選択であり、その特定の元素のゼロパーセント組成を含むことを意味する。他に記載がない限り、すべての組成パーセンテージは重量パーセント(wt.%)である。
【0037】
本明細書で使用する場合、文脈上明らかに別の意味が示される場合を除き、「a」、「an」、及び「the」の意味は、単数形及び複数形の参照を含む。
【0038】
例では、アルミニウム合金製造物及びそれらの成分は、それらの元素組成に関して重量パーセント(wt.%)で記載する場合がある。各合金において、すべての不純物の合計に対して最大wt.%が0.15%であれば、残りの部分はアルミニウムである。
【0039】
随伴元素(たとえば、結晶粒微細化剤及び脱酸剤)、または他の添加剤が、本発明では存在する場合があり、本明細書に記載の合金または本明細書に記載の合金の特性から逸脱することもそれらを著しく変えることもなく、それ自体で他の特性を追加し得る。
【0040】
不可避の不純物(材料または元素を含む)が、アルミニウムの固有の特性、または処理装置との接触による溶出に起因して、合金中に少量存在する場合がある。記載したように、一部の合金は、合金元素、随伴元素、及び不可避の不純物に加えて、約0.25wt.%以下の任意の元素を含有し得る。
【0041】
合金及びアルミニウム合金製造物を製造する方法
本明細書に記載のアルミニウム合金製造物(たとえば、アルミニウム合金シート金属基板)は、適切な方法を使用して調製し得る。たとえば、アルミニウム合金を鋳造、均質化、熱間圧延、冷間圧延、熱処理、成形などして、アルミニウム合金製造物を生成してもよい。
【0042】
図2に、アルミニウム合金製造物を作製する方法例の概要を示す。
図2の方法は205で始まる。ここでは、アルミニウム合金206を鋳造して、鋳造アルミニウム合金製造物207(たとえばインゴットまたは他の鋳造製造物)を形成する。210では、鋳造アルミニウム合金製造物207を均質化して、均質化されたアルミニウム合金製造物211を形成する。215では、均質化されたアルミニウム合金製造物211を、1つ以上の熱間圧延パス及び/または1つ以上の冷間圧延パスに供して、圧延アルミニウム合金製造物212を形成する。これは、アルミニウム合金物品(たとえば、アルミニウム合金プレート、アルミニウム合金シェート、またはアルミニウム合金シート)に相当し得る。任意選択で、圧延アルミニウム合金製造物212を、以下に説明するようなさらなる処理ステップに供して、アルミニウム合金物品を形成する。
【0043】
鋳造プロセスの非限定的な例としては、直接チル(DC)鋳造プロセスまたは連続鋳造(CC)プロセスが挙げられる。たとえば、
図2では、205にDC鋳造プロセスの概略図を示しているが、他の鋳造プロセスを使用することもできる。連続鋳造システムは、一対の可動対向鋳造面(たとえば、可動対向ベルト、ロール、またはブロック)、一対の可動対向鋳造面間の鋳造キャビティ、及び溶融金属インジェクターを含むことができる。溶融金属インジェクターは、端部開口部を有することができ、そこから溶融金属が溶融金属インジェクターを出て、鋳造キャビティ内に注入されることができる。
【0044】
鋳造アルミニウム合金製造物(たとえば、鋳造インゴット、鋳造スラブ、または他の鋳造製造物)を、任意の望ましい技法によって処理することができる。任意選択で、この処理ステップを使用して、圧延アルミニウム合金製造物(たとえば、アルミニウム合金シート)を調製することができる。任意選択の処理ステップの例としては、限定することなく、均質化、熱間圧延、冷間圧延、アニーリング、固溶化熱処理、及び予備時効が挙げられる。
【0045】
均質化ステップでは、鋳造製造物は、約400℃~約600℃の範囲の温度で加熱してもよい。たとえば、鋳造製造物は、約400℃、約410℃、約420℃、約430℃、約440℃、約450℃、約460℃、約470℃、約480℃、約490℃、約500℃、約510℃、約520℃、約530℃、約540℃、約550℃、約560℃、約570℃、約580℃、約590℃、または約600℃の温度に加熱することができる。次いで、製造物を一定時間均熱して(すなわち、指示温度に保持して)、均質化された製造物を形成してもよい。いくつかの例では、均質化ステップ(加熱及び均熱段階を含む)に対する合計時間は、最大で24時間とすることができる。たとえば、製造物を最大500℃~600℃に加熱し、均熱することを、合計時間で最大18時間行って、均質化ステップを図ることができる。任意選択で、製造物を490℃未満に加熱し、均熱することを、合計時間で18時間超行って、均質化ステップを図ることができる。場合によっては、均質化ステップは複数のプロセスを含む。いくつかの非限定的な例では、均質化ステップは、鋳造製造物を第1の温度に第1の時間の間加熱し、続いて第2の温度に第2の時間の間加熱することを含む。たとえば、鋳造製造物を、約465℃に約3.5時間の間加熱し、次いで約480℃に約6時間の間加熱することができる。
【0046】
均質化ステップに続いて、熱間圧延ステップを任意選択で実行することができる。熱間圧延を開始する前に、均質化された製造物を温度300℃~450℃まで冷却させることができる。たとえば、均質化された製造物を、温度325℃~425℃または350℃~400℃まで冷却させることができる。次いで、均質化された製造物を、温度300℃~450℃で熱間圧延して、熱間圧延プレート、熱間圧延シェート、または熱間圧延シートであって、ゲージ3mm~200mm(たとえば、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、55mm、60mm、65mm、70mm、75mm、80mm、85mm、90mm、95mm、100mm、110mm、120mm、130mm、140mm、150mm、160mm、170mm、180mm、190mm、200mm、またはそれらの間のどこか)を有するものを形成する。
【0047】
任意選択で、鋳造製造物は、温度300℃~450℃まで冷却させることができる連続鋳造製造物とすることができる。たとえば、連続鋳造製造物は、温度325℃~425℃または350℃~400℃まで冷却させることができる。次いで、連続鋳造製造物を、温度300℃~450℃で熱間圧延して、熱間圧延プレート、熱間圧延シェート、または熱間圧延シートであって、ゲージ3mm~200mm(たとえば、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、55mm、60mm、65mm、70mm、75mm、80mm、85mm、90mm、95mm、100mm、110mm、120mm、130mm、140mm、150mm、160mm、170mm、180mm、190mm、200mm、またはそれらの間のどこか)を有するものを形成する。熱間圧延中、温度及び他の動作パラメータを制御して、熱間圧延ミルから出た熱間圧延された中間製造物の温度が470℃以下、450℃以下、440℃以下、または430℃以下となるようにすることができる。
【0048】
鋳造、均質化、または熱間圧延された製造物は、任意選択で、冷間圧延ミルを使用して冷間圧延して、より薄い製造物(たとえば冷間圧延シート)にすることができる。冷間圧延製造物は、ゲージが約0.5~10mm、たとえば、約0.7~6.5mmとすることができる。任意選択で、冷間圧延製造物は、ゲージが0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、4.5mm、5.0mm、5.5mm、6.0mm、6.5mm、7.0mm、7.5mm、8.0mm、8.5mm、9.0mm、9.5mm、または10.0mmとすることができる。冷間圧延を実行して、冷間圧延を開始する前のゲージと比べて、最大85%のゲージ減少(たとえば、最大10%、最大20%、最大30%、最大40%、最大50%、最大60%、最大70%、最大80%、または最大85%の減少)を表す最終ゲージ厚とすることができる。任意選択で、中間アニーリングステップを、冷間圧延ステップ中に実行することができる。たとえば、第1の冷間圧延プロセスを適用し、続いてアニーリングプロセス(中間アニーリング)、続いて第2の冷間圧延プロセスを適用する。中間アニーリングステップは、温度が約300℃~約450℃(たとえば、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、約400℃、約410℃、約420℃、約430℃、約440℃、または約450℃)で実行することができる。場合によっては、中間アニーリングステップは複数のプロセスを含む。いくつかの非限定的な例では、中間アニーリングステップは、部分的に冷間圧延された製造物を第1の温度に第1の時間の間加熱し、続いて第2の温度に第2の時間の間加熱することを含む。たとえば、部分的に冷間圧延された製造物を、約410℃に約1時間の間加熱し、次いで約330℃に約2時間の間加熱することができる。
【0049】
その後、鋳造、均質化、または圧延された製造物は、任意選択で固溶化熱処理ステップを受けることができる。固溶化熱処理ステップは、可溶性粒子の固溶化をもたらす製造物に対する任意の好適な処理とすることができる。鋳造、均質化、または圧延された製造物を、最大590℃(たとえば、400℃~590℃)のピーク金属温度(PMT)に加熱し、PMTにおいて一定時間均熱して、高温の製造物を形成することができる。たとえば、鋳造、均質化、または圧延された製造物を、480℃において、最大30分(たとえば、0秒、60秒、75秒、90秒、5分、10分、20分、25分、または30分)の均熱時間の間、均熱することができる。加熱及び均熱の後、高温の製造物を200℃超/sの速度で温度500~200℃まで急冷して、熱処理された製造物を形成する。一例では、高温の製造物を、200℃/秒超の焼き入れ速度で温度450℃~200℃に冷却する。任意選択で、別の場合では、冷却速度をより速くすることができる。任意選択で、別の場合では、温度をより低くすることができる。一例では、高温の製造物を、200℃/秒超の焼き入れ速度で温度450℃~200℃に冷却する。
【0050】
焼き入れ後、熱処理された製造物は、任意選択で、巻き付ける前に再加熱による予備時効処理を受けることができる。予備時効処理は、温度約70℃~約125℃において、最大6時間の一定時間の間、実行することができる。たとえば、予備時効処理は、温度約70℃、約75℃、約80℃,約85℃、約90℃、約95℃、約100℃、約105℃、約110℃、約115℃、約120℃、または約125℃において実行することができる。任意選択で、予備時効処理は、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、または約6時間の間、実行することができる。予備時効処理は、熱処理された製造物を、放射熱、対流熱、誘導熱、赤外線熱などを発する装置などの加熱装置に通すことによって実行することができる。
【0051】
本明細書に記載の鋳造製造物を使用して、シート、プレート、または他の好適な製造物の形態の製造物を作製することができる。たとえば、本明細書に記載する製造物を含むプレートは、インゴットを均質化ステップにおいて処理するか、または製造物を連続鋳造機において鋳造し、続いて熱間圧延ステップにおいて調製することができる。熱間圧延ステップでは、鋳造製造物は、200mm厚ゲージ以下(たとえば、約10mm~約200mm)に熱間圧延することができる。たとえば、鋳造製造物は、最終ゲージ厚が約10mm~約175mm、約15mm~約150mm、約20mm~約125mm、約25mm~約100mm、約30mm~約75mm、または約35mm~約50mmのプレートに熱間圧延することができる。場合によっては、プレートは、より薄い金属製造物(たとえばシート)に圧延してもよい。
【0052】
開示したアルミニウム合金製造物を使用する方法
本明細書に記載のアルミニウム合金製造物(たとえば、電気的に絶縁されたアルミニウム合金製造物)は、自動車用途及び他の輸送用途(航空機及び鉄道用途を含む)において使用することができる。たとえば、開示したアルミニウム合金製造物を使用して、自動車構造部品、たとえば、バンパー、サイドビーム、ルーフビーム、クロスビーム、ピラー補強材(たとえば、Aピラー、Bピラー、及びCピラー)、インナーパネル、アウターパネル、サイドパネル、インナーフード、アウターフード、またはトランクリッドパネルを調製することができる。本明細書に記載のアルミニウム合金製造物及び方法は、航空機または鉄道車両用途において使用して、たとえば、外部及び内部パネルを調製することもできる。
【0053】
本明細書に記載のアルミニウム合金製造物(たとえば、電気的に絶縁されたアルミニウム合金製造物、及び開示した方法)は、エレクトロニクス用途において使用することもできる。たとえば、本明細書に記載のアルミニウム合金製造物及び方法を使用して、電子デバイス(携帯電話及びタブレットコンピューターを含む)用のハウジングを調製することができる。いくつかの例では、アルミニウム合金製造物を使用して、携帯電話(たとえば、スマートフォン)、タブレットボトムシャーシ、及び他のエレクトロニクスの外部ケーシング用のハウジングを調製することができる。
【0054】
金属合金を処理及び使用する方法
本明細書では、金属及び金属合金(中でも、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、マグネシウム複合材料、及び鋼を含む)を処理する方法、ならびに結果として得られる処理された金属及び金属合金を記載する。いくつかの例では、本明細書に記載の方法で使用する金属は、アルミニウム合金、たとえば、1×××シリーズのアルミニウム合金、2×××シリーズのアルミニウム合金、3×××シリーズのアルミニウム合金、4×××シリーズのアルミニウム合金、5×××シリーズのアルミニウム合金、6×××シリーズのアルミニウム合金、7×××シリーズのアルミニウム合金、または8×××シリーズのアルミニウム合金を含む。いくつかの例では、本明細書に記載の方法で使用する材料には、非鉄材料、たとえば、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム系材料、マグネシウム合金、マグネシウム複合材料、チタン、チタン系材料、チタン合金、銅、銅系材料、複合材料、複合材料において使用されるシート、または任意の他の好適な金属、非金属、もしくは材料の組み合わせが含まれる。モノリシック、ならびに非モノリシック、たとえば、圧延接合された材料、クラッド合金、クラッド層、複合材料(たとえば、限定することなく、炭素繊維含有材料)、または種々の他の材料も、本明細書に記載の方法において有用である。いくつかの例では、鉄を含有するアルミニウム合金は、本明細書に記載の方法において有用である。
【0055】
非限定的な例として、本明細書に記載の方法で使用する典型的な1×××シリーズのアルミニウム合金としては、AA1100、AA1100A、AA1200、AA1200A、AA1300、AA1110、AA1120、AA1230、AA1230A、AA1235、AA1435、AA1145、AA1345、AA1445、AA1150、AA1350、AA1350A、AA1450、AA1370、AA1275、AA1185、AA1285、AA1385、AA1188、AA1190、AA1290、AA1193、AA1198、またはAA1199を挙げることができる。
【0056】
本明細書に記載の方法で使用する非限定的な典型的な2×××シリーズのアルミニウム合金としては、AA2001、A2002、AA2004、AA2005、AA2006、AA2007、AA2007A、AA2007B、AA2008、AA2009、AA2010、AA2011、AA2011A、AA2111、AA2111A、AA2111B、AA2012、AA2013、AA2014、AA2014A、AA2214、AA2015、AA2016、AA2017、AA2017A、AA2117、AA2018、AA2218、AA2618、AA2618A、AA2219、AA2319、AA2419、AA2519、AA2021、AA2022、AA2023、AA2024、AA2024A、AA2124、AA2224、AA2224A、AA2324、AA2424、AA2524、AA2624、AA2724、AA2824、AA2025、AA2026、AA2027、AA2028、AA2028A、AA2028B、AA2028C、AA2029、AA2030、AA2031、AA2032、AA2034、AA2036、AA2037、AA2038、AA2039、AA2139、AA2040、AA2041、AA2044、AA2045、AA2050、AA2055、AA2056、AA2060、AA2065、AA2070、AA2076、AA2090、AA2091、AA2094、AA2095、AA2195、AA2295、AA2196、AA2296、AA2097、AA2197、AA2297、AA2397、AA2098、AA2198、AA2099、またはAA2199を挙げることができる。
【0057】
本明細書に記載の方法で使用する非限定的な典型的な3×××シリーズのアルミニウム合金としては、AA3002、AA3102、AA3003、AA3103、AA3103A、AA3103B、AA3203、AA3403、AA3004、AA3004A、AA3104、AA3204、AA3304、AA3005、AA3005A、AA3105、AA3105A、AA3105B、AA3007、AA3107、AA3207、AA3207A、AA3307、AA3009、AA3010、AA3110、AA3011、AA3012、AA3012A、AA3013、AA3014、AA3015、AA3016、AA3017、AA3019、AA3020、AA3021、AA3025、AA3026、AA3030、AA3130、またはAA3065を含むことができる。
【0058】
本明細書に記載の方法で使用する非限定的な典型的な4×××シリーズのアルミニウム合金としては、AA4004、AA4104、AA4006、AA4007、AA4008、AA4009、AA4010、AA4013、AA4014、AA4015、AA4015A、AA4115、AA4016、AA4017、AA4018、AA4019、AA4020、AA4021、AA4026、AA4032、AA4043、AA4043A、AA4143、AA4343、AA4643、AA4943、AA4044、AA4045、AA4145、AA4145A、AA4046、AA4047、AA4047A、またはAA4147を挙げることができる。
【0059】
本明細書に記載の製造物の方法で使用する非限定的な典型的な5×××シリーズのアルミニウム合金としては、AA5182、AA5183、AA5005、AA5005A、AA5205、AA5305、AA5505、AA5605、AA5006、AA5106、AA5010、AA5110、AA5110A、AA5210、AA5310、AA5016、AA5017、AA5018、AA5018A、AA5019、AA5019A、AA5119、AA5119A、AA5021、AA5022、AA5023、AA5024、AA5026、AA5027、AA5028、AA5040、AA5140、AA5041、AA5042、AA5043、AA5049、AA5149、AA5249、AA5349、AA5449、AA5449A、AA5050、AA5050A、AA5050C、AA5150、AA5051、AA5051A、AA5151、AA5251、AA5251A、AA5351、AA5451、AA5052、AA5252、AA5352、AA5154、AA5154A、AA5154B、AA5154C、AA5254、AA5354、AA5454、AA5554、AA5654、AA5654A、AA5754、AA5854、AA5954、AA5056、AA5356、AA5356A、AA5456、AA5456A、AA5456B、AA5556、AA5556A、AA5556B、AA5556C、AA5257、AA5457、AA5557、AA5657、AA5058、AA5059、AA5070、AA5180、AA5180A、AA5082、AA5182、AA5083、AA5183、AA5183A、AA5283、AA5283A、AA5283B、AA5383、AA5483、AA5086、AA5186、AA5087、AA5187、またはAA5088を含むことができる。
【0060】
本明細書に記載の方法で使用する非限定的な典型的な6×××シリーズのアルミニウム合金としては、AA6101、AA6101A、AA6101B、AA6201、AA6201A、AA6401、AA6501、AA6002、AA6003、AA6103、AA6005、AA6005A、AA6005B、AA6005C、AA6105、AA6205、AA6305、AA6006、AA6106、AA6206、AA6306、AA6008、AA6009、AA6010、AA6110、AA6110A、AA6011、AA6111、AA6012、AA6012A、AA6013、AA6113、AA6014、AA6015、AA6016、AA6016A、AA6116、AA6018、AA6019、AA6020、AA6021、AA6022、AA6023、AA6024、AA6025、AA6026、AA6027、AA6028、AA6031、AA6032、AA6033、AA6040、AA6041、AA6042、AA6043、AA6151、AA6351、AA6351A、AA6451、AA6951、AA6053、AA6055、AA6056、AA6156、AA6060、AA6160、AA6260、AA6360、AA6460、AA6460B、AA6560、AA6660、AA6061、AA6061A、AA6261、AA6361、AA6162、AA6262、AA6262A、AA6063、AA6063A、AA6463、AA6463A、AA6763、A6963、AA6064、AA6064A、AA6065、AA6066、AA6068、AA6069、AA6070、AA6081、AA6181、AA6181A、AA6082、AA6082A、AA6182、AA6091、またはAA6092を挙げることができる。
【0061】
本明細書に記載の方法で使用する非限定的な典型的な7×××シリーズのアルミニウム合金としては、AA7011、AA7019、AA7020、AA7021、AA7039、AA7072、AA7075、AA7085、AA7108、AA7108A、AA7015、AA7017、AA7018、AA7019A、AA7024、AA7025、AA7028、AA7030、AA7031、AA7033、AA7035、AA7035A、AA7046、AA7046A、AA7003、AA7004、AA7005、AA7009、AA7010、AA7011、AA7012、AA7014、AA7016、AA7116、AA7122、AA7023、AA7026、AA7029、AA7129、AA7229、AA7032、AA7033、AA7034、AA7036、AA7136、AA7037、AA7040、AA7140、AA7041、AA7049、AA7049A、AA7149、AA7204、AA7249、AA7349、AA7449、AA7050、AA7050A、AA7150、AA7250、AA7055、AA7155、AA7255、AA7056、AA7060、AA7064、AA7065、AA7068、AA7168、AA7175、AA7475、AA7076、AA7178、AA7278、AA7278A、AA7081、AA7181、AA7185、AA7090、AA7093、AA7095、またはAA7099を挙げることができる。
【0062】
本明細書に記載の方法で使用する非限定的な典型的な8×××シリーズのアルミニウム合金としては、AA8005、AA8006、AA8007、AA8008、AA8010、AA8011、AA8011A、AA8111、AA8211、AA8112、AA8014、AA8015、AA8016、AA8017、AA8018、AA8019、AA8021、AA8021A、AA8021B、AA8022、AA8023、AA8024、AA8025、AA8026、AA8030、AA8130、AA8040、AA8050、AA8150、AA8076、AA8076A、AA8176、AA8077、AA8177、AA8079、AA8090、AA8091、またはAA8093を挙げることができる。
【0063】
図3に、シート金属基板305(たとえば、アルミニウム合金シート金属基板を含む)を処理して、電気的に絶縁された金属製造物を生成する方法の模式的な概要を示す。シート金属基板305は、任意選択で、前処理コーティング付与システム310内に送られ、前処理コーティングがシート金属基板305に付与される。前処理コーティング付与システム310は、前処理コーティングをシート金属基板305に付与するための任意の好適なシステムとすることができる。
図3における第1の拡大挿入図は、シート金属基板305に付与された前処理層306を示す。
【0064】
場合によっては、シート金属基板305は、前処理コーティング付与システムに入る前に処理してもよい。いくつかの実施形態では、シート金属基板305の表面は、表面を清浄にするために、(たとえば、酸性溶液またはアルカリ溶液を使用して)脱脂してもよい。いくつかの実施形態では、シート金属基板305は、前処理コーティング付与システムに入る前に予熱してもよい。
【0065】
任意選択で、シート金属基板305を、接着剤付与システム315において処理して、接着剤をシート金属基板305の表面に付与することができる。このようなシステムは、ポリマー層を接着剤を使用してシート金属基板に接合すべき場合には、有用である。ポリマーフィルムをシート金属基板305に接合するために接着剤を使用することは任意選択であることが理解される。ポリマーフィルムをシート金属基板305に接合するために接着剤を使用しない場合には、接着剤付与システム315は省略することができる。任意選択で、接着剤付与システム315は、アクリル接着剤、ポリエステル接着剤、またはエポキシ接着剤などを付与するためのロールコーティングシステムを含む。
【0066】
シート金属基板305を、任意選択で、予熱オーブン320に進めて、シート金属基板305を予熱温度(T1)まで加熱する。付与すべきポリマーフィルム325がシーリング層を含む場合、予熱温度T1は、シーリング層の融解温度より高くてもよい。いくつかの実施形態では、予熱温度T1は、175℃~300℃、たとえば175℃~290℃、175℃~280℃、175℃~270℃、175℃~260℃、175℃~250℃、185℃~300℃、185℃~290℃、185℃~280℃、185℃~270℃、185℃~260℃、185℃~250℃、195℃~300℃、195℃~290℃、195℃~280℃、195℃~270℃、195℃~260℃、195℃~250℃、205℃~300℃、205℃~290℃、205℃~280℃、205℃~270℃、205℃~260℃、205℃~250℃、215℃~300℃、215℃~290℃、215℃~280℃、215℃~270℃、215℃~260℃、215℃~250℃、225℃~300℃、225℃~290℃、225℃~280℃、225℃~270℃、225℃~260℃、または225℃~250℃である。下限に関しては、T1は、175℃超、たとえば185℃超、195℃超、205℃超、または215℃超であってもよい。上限に関しては、T1は、300℃未満、たとえば290℃未満、280℃未満、270℃未満、260℃未満、または250℃未満であってもよい。任意選択で、シート金属基板305を、前処理コーティング付与システム310、接着剤付与システム315、及び予熱オーブン320に、任意の順番で進めてもよい。任意選択で、前処理コーティング付与システム310、接着剤付与システム315、または予熱オーブン320のうちの1つ以上を使用しない。前処理コーティング例としては、限定することなく、Ti-Zr系化成コーティング、Cr系化成コーティング、またはコポリマー系コーティング、たとえばポリ(ビニルホスホン酸-コアクリル酸)コーティング層が挙げられる。予熱オーブン320はオーブンとして説明しているが、任意の好適な加熱方法を使用することができ、たとえば、誘導システム、赤外線熱の印加、加熱ロールとの接触、ガス燃焼オーブン、電気加熱オーブンなどである。
【0067】
前処理、接着剤付与、及び/または予熱(使用する場合)の後、シート金属基板305を積層システム330に通して、ポリマーフィルム325をシート金属基板305の片側に付与する。場合によっては、ポリマーフィルム325は、シート金属基板305の両側に付与することができる。積層システム330は、ポリマーフィルム325をシート金属基板305に積層するための任意の好適なシステムとすることができる。場合によっては、積層システム330はホットメルト積層システムである。積層シート金属基板が、積層システム330を出て、シート金属基板305を、それに接合された多層ポリマー絶縁構造326と結合する。
【0068】
図4に、本開示のある特定の態様による積層システム400の概略図を示す。積層システム400は、
図3の積層システム330とすることもできるし、別の積層システムとすることもできる。
図4に示した特定の要素は、説明目的のためだけに誇張した縮尺で示している。
【0069】
積層システム400は、一対のローラ405を含むことができ、この間をシート金属基板410が通過し得る。シート金属基板410は、シート金属ベース層415を含むことができる。シート金属ベース層415は、たとえば
図3の前処理コーティング付与システム310によって前処理されており、任意選択で、たとえば
図3の接着剤付与システム315によって付与される接着層をそこに有し、及び/またはたとえば
図3の予熱オーブン320によって予熱される。場合によっては、前処理されたシート金属基板410は、1つ以上の前処理層420(たとえば、1つ以上の化成コーティング、酸化物層、陽極酸化層、ポリマー前処理など)を含む。いくつかの例では、前処理層420は、Ti-Zr系化成コーティング、Cr系化成コーティング、またはコポリマー系コーティング、たとえばポリ(ビニルホスホン酸-コアクリル酸)コーティング層を含む。
【0070】
ローラ405を通過する際、ポリマーフィルム425をシート金属基板410に押し付けて、積層シート金属基板430を製造することができる。場合によっては、単一の積層システム400は、ポリマーフィルム425からシート金属基板410の反対側に第2のポリマーフィルムを付与するためのさらなるローラの組みを含むことができる。場合によっては、単一対のローラ405はさらに、ポリマーフィルム425からシート金属基板410の反対側に第2のポリマーフィルムを付与することができる。
図4には示さないが、ポリマーフィルム425は、任意選択で、多層構造(たとえば、シーリングポリマー層及び最上部ポリマー層、または接着層及び最上部ポリマー層)を含んでいてもよいし、またはシート金属基板が、任意選択で、その上に、たとえば前処理層420(存在する場合)上に、接着層を含んでいてもよい。
【0071】
図3に戻って、積層後、多層ポリマー絶縁構造326をその上に有するシート金属基板305は、任意選択であり得るアニーリングオーブン335内に進んでもよい。場合によっては、アニーリングオーブン335は積層システム330のすぐ下流に配置されて、多層ポリマー絶縁構造326をその上に有するシート金属基板305が、積層システム330を出てから、アニーリングオーブン335内に、他の機械類またはシステム内に進むかまたはそれらと接触する前に進むようになっている。アニーリングオーブン335は、多層ポリマー絶縁構造326をその上に有するシート金属基板305の温度を、アニール温度(T
A)まで上昇させる。アニール温度T
Aは、任意選択で、ポリマーフィルム325(またはそのコンポーネント)の融解温度(T
m)より低くてもよい。任意選択で、アニール温度T
Aは、ポリマーフィルム325(またはそのコンポーネント)の融解温度(T
m)よりも大きいかまたはそれとほぼ等しくてもよい。いくつかの実施形態では、アニール温度T
Aは、175℃~275℃、たとえば175℃~180℃、180℃~185℃、185℃~190℃、190℃~195℃、195℃~200℃、200℃~205℃、205℃~210℃、210℃~215℃、215℃~220℃、220℃~225℃、225℃~230℃、230℃~235℃、235℃~240℃、240℃~245℃、245℃~250℃、250℃~255℃、255℃~260℃、260℃~265℃、265℃~270℃、または270℃~275℃である。下限に関しては、T
Aは、175℃超、たとえば175℃超、180℃超、185℃超、190℃超、195℃超、または200℃超であってもよい。上限に関しては、T
Aは、275℃未満、たとえば、275℃未満、270℃未満、265℃未満、260℃未満、255℃未満、250℃未満、245℃未満、240℃未満、235℃未満、230℃未満、または225℃未満であってもよい。
【0072】
多層ポリマー絶縁構造326をその上に有するシート金属基板305は、多層ポリマー絶縁構造326をその上に有するシート金属基板305に所望の特性を付与するのに十分な長さの時間をアニーリングオーブン335内で費やし、これには、シート金属基板305のアニーリング及びポリマーフィルム325の所望の接着の達成が含まれる。アニーリングオーブン335内の時間は、たとえば、オーブン長さ及びシート金属基板の速度に基づくことができる。場合によっては、この時間は、約2秒~約30秒、約9秒~約15秒、約10秒~約14秒の範囲内、または約12秒とすることができる。場合によっては、この時間は、必要に応じて(たとえば、シート金属基板の速度を調整することによって)調整して、アニーリングオーブン335内の温度の変化を補償することができる。
図3における積層されアニールされたシート金属基板340の拡大挿入図は、シート金属基板305、前処理層306、及び多層ポリマー絶縁構造326(接合層321及び最上部ポリマー層322を含む)を示す。いくつかの例では、接合層321は、たとえば、接着剤付与システム315において付与されるか、またはポリマーフィルム325上に存在する接着層であってもよい。いくつかの例では、接合層321は、ポリマーフィルム325のポリマーシーリング層または低融点ポリマー層であってもよい。
【0073】
アニーリングオーブン335を出た後、積層されアニールされたシート金属基板340は、任意選択で、たとえば空気またはある量の焼き入れ液(たとえば、水)中で、または積層されアニールされたシート金属基板340への冷媒の付与によって、焼き入れしてもよい。積層されアニールされたシート金属基板340は、アニーリングオーブン335を出た直後に、焼き入れまたは他の方法によって冷却することができる。場合によっては、またはいくつかの用途に対して、積層されアニールされたシート金属基板340を、任意選択でラッカープロセスに供して、積層されアニールされたシート金属基板340の第2の側に、任意選択のラッカー層を付与することができる。
【0074】
アニーリングオーブンから出た後、積層されアニールされたシート金属基板340は、さらなる処理に供することができる。いくつかの例では、積層されアニールされたシート金属基板340をそのまま巻いて、たとえば出荷または以後の処理に備えることができる。任意選択で、積層されアニールされたシート金属基板340を、打ち抜きまたは切断システム345において処理して、電気的に絶縁されたシート金属ブランク、または電気的に絶縁されたシート金属ストリップもしくはセグメントを調製することができる。打ち抜きまたは切断システム345は、いくつかの例では、積層されアニールされたシート金属基板340を切断するかまたは打ち抜いて、より小さい電気的に絶縁されたシート金属製造物を作成するための任意の好適なシステムを含むことができ、シート金属製造物は、さらなる処理に供することができる。打ち抜きまたは切断システム345は、図示では、アニーリングオーブン335の下流にあるが、いくつかの例では、打ち抜きまたは切断システム345は、アニーリングオーブン335の上流にあってもよく、打ち抜きまたは切断された積層シート金属製造物を、アニーリングオーブン335においてアニーリングに供することができる。
【0075】
任意選択で、積層されアニールされたシート金属基板340、または積層されアニールされたシート金属基板340から切断または打ち抜かれた、より小さい電気的に絶縁されたシート金属製造物を、成形に、たとえば任意の好適な成形システム(たとえば、ロール成形機器、スタンピング機器、打ち抜き機器などを含む)によって供することができる。いくつかの例では、複数の異なるタイプの成形機器を使用して、たとえば、異なる形状の電気的に絶縁されたシート金属製造物を調製することができる。打ち抜き/切断及び成形(使用する場合)を、任意の所望の順序で行うことができ、たとえば、成形を1番目に行って、打ち抜きまたは切断を2番目に行うか、または打ち抜きまたは切断を1番目に行って、成形を2番目に行う。場合によっては、打ち抜き/切断及び成形の一方または両方を使用しない。
【0076】
いくつかの例では、電気的に絶縁されたシート金属製造物を、デバイス用の構造エンクロージャーに、またはその一部として組み立てることができる。
図5に、デバイス505用の構造エンクロージャー例500を分解組立図として示す。構造エンクロージャー500は、デバイス505を囲む複数の電気的に絶縁されたシート金属製造物510(たとえば、底部、上部、前部、後部、及び2つの側面)を含むとして示している。電気的に絶縁されたシート金属製造物510は、本明細書に記載の電気的に絶縁されたシート金属製造物のいずれかを含むことができ、シート金属ベース層と、デバイス505に面する内面上に多層ポリマー絶縁構造とを含むことができる。
【0077】
本明細書で開示した例は、本発明の態様をさらに説明するのに役立つが、同時に、その何らの限定も構成しない。反対に、種々の実施形態、その修正物、及び均等物に頼らなければならない場合があることを明確に理解すべきである。これらは、本明細書の説明を読んだ後、本発明の趣旨から逸脱することなく、当業者にそれら自体を示唆し得るものである。また本明細書で説明する例及び実施形態は、特に明記しない限り、従来の手順も利用し得る。手順の一部は、説明を目的として本明細書に記載される。
【0078】
例1
電気絶縁性能及び接着特性を評価するために、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをアルミニウム合金シート金属ベース上に付与することによって、様々な電気的に絶縁された金属製造物のサンプルを調製した。表1に、調製した様々サンプルの概要を示す。
【表1】
【0079】
サンプル(サンプル1)は、接着層が予め取り付けられたポリマーフィルムを含み、アルミニウム合金シート金属ベース上に、圧力のみによる付与または圧力及び熱による付与を使用して直接付与した。3つのサンプル(サンプル2~4)は、薄い接着層をアルミニウム合金シート金属ベース上に付与し、次いでポリマーフィルムを接着層上に加圧及び熱によって積層することによって調製した。3つのサンプル(サンプル5~7)は、ポリマーフィルムをアルミニウム合金シート金属ベース上に圧力及び熱を使用して直接積層し、続いてアニーリングプロセスをサンプル5~7において行うことによって調製した。
【0080】
サンプルを、電気抵抗(表面抵抗及び体積抵抗、10個のサンプルの平均)、絶縁耐力(破壊耐性、10個のサンプルの平均)、及び比較トラッキング指数(CTI)測定(5個のサンプル上へ50回の滴下後、破損なし)に対する標準試験に供した。表2に、得られた結果を要約する。
【表2】
【0081】
結果が入手可能な部分では、表面抵抗及び体積抵抗の測定値は、すべてのサンプルに対して非常に高抵抗を示し、良好な電気的絶縁がポリマーフィルムによって達成されたことを示した。同様に、絶縁耐力測定値は、5kVをはるかに超える非常に高い破壊電圧を示し、この場合も、良好な電気的絶縁がポリマーフィルムによって達成されたことを示した。すべてのフィルムに対するCTI値を、約200~250Vにおいて測定した。
図6は、CTI試験後のサンプル1、2、5、及び6の光学画像を示し、すべてのフィルムによる同様の性能を示している。
図6の画像内の黒棒は、約1mmを表す。200μmアルミニウム基板上に積層されたサンプルも、垂直燃焼性試験(UL94)に供し、すべてのサンプルがV-0燃焼性試験評価を受けた。
【0082】
サンプルをクロスカット試験に供して、アルミニウム合金シート金属基板上のポリマーフィルムの接着性能を評価した。接着性能は、ポストアニーリング及び冷却処理中のポリマーフィルムの層間剥離を制限するのに重要である可能性がある。一連のクロスカットを互いに直角に付与して、約1mmだけ離間に配置し、続いて接着テープ試験を行って、層間剥離力をポリマーフィルムに印加し、アルミニウム基板からのフィルムの層間剥離を試験した。
図7に、クロスカット試験後の一部のサンプルの光学画像を示す。サンプル1に対して基板からのフィルムの顕著な剥離が観察され、接着が不十分であることを示している。サンプル2及び3に対して基板からのフィルムの剥離がより少ないことが観察され、接着がより良好であることを示している。サンプル6及び7に対して基板からのフィルムの剥離がほとんど無いことが観察され、接着が良好であることを示している。
例示的な態様
【0083】
以下で使用するように、一連の態様(たとえば、「態様1~4」)または態様の列挙されていない群(たとえば、「先行または後続の態様のいずれか」)へのいかなる言及も、それらの態様のそれぞれへの離接的な言及と理解されたい(たとえば、「態様1~4」は、「態様1、2、3、または4」と理解されたい)。
【0084】
態様1は、電気的に絶縁された金属製造物であって、アルミニウム合金シート金属基板と、前記アルミニウム合金シート金属基板に接合された多層ポリマー絶縁構造と、を含み、前記多層ポリマー絶縁構造は、前記アルミニウム合金シート金属基板に隣接する接合層と、前記接合層上の最上部ポリマー層とを含み、前記多層ポリマー絶縁構造は厚さが5μm~100μmであり、前記アルミニウム合金シート金属基板に接合された前記多層ポリマー絶縁構造は、全体として、表面抵抗が1×1012Ω~1×1015Ω、体積抵抗が1×1012Ω~1×1015Ω、破壊電圧が2kV~50kV、または比較トラッキング指数値が175V~400Vのうちの1つ以上を示す、のうちの1つ以上を示す、前記電気的に絶縁された金属製造物である。
【0085】
態様2は、前記接合層が第1のポリエステルフィルムを含み、前記最上部ポリマー層は、前記第1のポリエステルフィルムとは異なる組成を有する第2のポリエステルフィルムを含む、先行または後続の態様のいずれかに記載の電気的に絶縁された金属製造物である。
【0086】
態様3は、前記接合層が、第1の融解温度を示すポリマーシーリング層を含み、前記最上部ポリマー層は、前記第1の融解温度よりも高い第2の融解温度または分解温度を示す、先行または後続の態様のいずれかに記載の電気的に絶縁された金属製造物である。
【0087】
態様4は、前記第1の融解温度が150℃~250℃であるか、または前記ポリマーシーリング層が、150℃~250℃に予熱した後に、前記アルミニウム合金シート金属基板に接合される、先行または後続の態様のいずれかに記載の電気的に絶縁された金属製造物である。
【0088】
態様5は、前記最上部ポリマー層が、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び/またはポリエチレンテレフタレートを含む、先行または後続の態様のいずれかに記載の電気的に絶縁された金属製造物である。
【0089】
態様6は、前記多層ポリマー絶縁構造が、積層温度175℃~300℃への暴露及び/または積層圧力1バール~7バールへの暴露を含む積層条件下で、前記アルミニウム合金シート金属基板に付与された積層多層フィルムである、先行または後続の態様のいずれかに記載の電気的に絶縁された金属製造物である。
【0090】
態様7は、前記多層ポリマー絶縁構造が、アニール条件175℃~300℃に供されたアニールされた多層フィルムである、先行または後続の態様のいずれかに記載の電気的に絶縁された金属製造物である。
【0091】
態様8は、前記アルミニウム合金シート金属基板と前記多層ポリマー絶縁構造との間に接着層が配置されていない、先行または後続の態様のいずれかに記載の電気的に絶縁された金属製造物である。
【0092】
態様9は、前記接合層が、前記アルミニウム合金シート金属基板と前記最上部ポリマー層との間に接着層を含む、先行または後続の態様のいずれかに記載の電気的に絶縁された金属製造物である。
【0093】
態様10は、前記アルミニウム合金シート金属基板を前記最上部ポリマー層に接合する前に、前記接着層が前記アルミニウム合金シート金属基板上に配置されるか、または 前記アルミニウム合金シート金属基板を前記最上部ポリマー層に接合する前に、前記接着層が前記最上部ポリマー層上に配置される、先行または後続の態様のいずれかに記載の電気的に絶縁された金属製造物である。
【0094】
態様11は、前記多層ポリマー絶縁構造が、前記アルミニウム合金シート金属基板への伝導経路を提供するピンホールまたは他の欠陥が無い、先行または後続の態様のいずれかに記載の電気的に絶縁された金属製造物である。
【0095】
態様12は、前記アルミニウム合金シート金属基板が、アルミニウム合金シート金属ベース層上に表面前処理コーティングを含む、先行または後続の態様のいずれかに記載の電気的に絶縁された金属製造物である。
【0096】
態様13は、前記表面前処理コーティングが、Ti-Zr系化成コーティング、Cr系化成コーティング、またはコポリマー系コーティングを含む、先行または後続の態様のいずれかに記載の電気的に絶縁された金属製造物である。
【0097】
態様14は、前記アルミニウム合金シート金属基板が、非平面形状を有するか、または成形構成にある、先行または後続の態様のいずれかに記載の電気的に絶縁された金属製造物である。
【0098】
態様15は、電気的に絶縁された金属製造物を調製するための方法であって、前記方法は、アルミニウム合金シート金属基板を第1の温度150℃~250℃に予熱することと、多層ポリマー絶縁構造を前記アルミニウム合金シート金属基板の表面に接合して、接合製造物を製造することであって、前記多層ポリマー絶縁構造は、接合層と、前記接合層上の最上部ポリマー層とを含み、前記多層ポリマー絶縁構造は厚さが5μm~100μmであり、前記アルミニウム合金シート金属基板に接合された前記多層ポリマー絶縁構造は、全体として、表面抵抗が1×1012Ω~1×1015Ω、体積抵抗が1×1012Ω~1×1015Ω、破壊電圧が2kV~50kV、または比較トラッキング指数値が175V~400Vのうちの1つ以上を示す、前記製造することと、を含む前記方法。
【0099】
態様16は、前記接合層が第1のポリエステルフィルムを含み、前記最上部ポリマー層が、前記第1のポリエステルフィルムとは異なる組成を有する第2のポリエステルフィルムを含む、先行または後続の態様のいずれかに記載の方法である。
【0100】
態様17は、前記接合層が、第1の融解温度を示すポリマーシーリング層を含み、前記最上部ポリマー層が、前記第1の融解温度よりも高い第2の融解温度または分解温度を示す、先行または後続の態様のいずれかに記載の方法である。
【0101】
態様18は、前記第1の融解温度が150℃~250℃である、先行または後続の態様のいずれかに記載の方法である。
【0102】
態様19は、前記最上部ポリマー層が、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び/またはポリエチレンテレフタレートを含む、先行または後続の態様のいずれかに記載の方法である。
【0103】
態様20は、接合が、前記多層ポリマー絶縁構造と前記アルミニウム合金シート金属基板とを、積層温度175℃~300℃への暴露及び/または積層圧力1バール~7バールへの暴露を含む積層条件に供することを含む、先行または後続の態様のいずれかに記載の方法である。
【0104】
態様21は、前記接合製造物をアニール温度175℃~300℃でアニーリングすることをさらに含む、先行または後続の態様のいずれかに記載の方法である。
【0105】
態様22は、前記多層ポリマー絶縁構造が、前記アルミニウム合金シート金属基板の前記表面に、前記アルミニウム合金シート金属基板と前記多層ポリマー絶縁構造との間に接着層を使用せずに接合される、先行または後続の態様のいずれかに記載の方法である。
【0106】
態様23は、前記アルミニウム合金シート金属基板と前記多層ポリマー絶縁構造との間に接着層が配置されていない、先行または後続の態様のいずれかに記載の方法である。
【0107】
態様24は、前記接合層が、前記アルミニウム合金シート金属基板と前記最上部ポリマー層との間に接着層を含む、先行または後続の態様のいずれかに記載の方法である。
【0108】
態様25は、前記アルミニウム合金シート金属基板を前記最上部ポリマー層に接合する前に、前記接着層が前記アルミニウム合金シート金属基板上に配置されるか、または前記アルミニウム合金シート金属基板を前記最上部ポリマー層に接合する前に、前記接着層が前記最上部ポリマー層上に配置される、先行または後続の態様のいずれかに記載の方法である。
【0109】
態様26は、前記アルミニウム合金シート金属基板が、アルミニウム合金シート金属ベース層上に表面前処理コーティングを含む、先行または後続の態様のいずれかに記載の方法である。
【0110】
態様27は、前記表面前処理コーティングが、Ti-Zr系化成コーティング、Cr系化成コーティング、またはコポリマー系コーティングを含む、先行または後続の態様のいずれかに記載の方法である。
【0111】
態様28は、前記多層ポリマー絶縁構造が、前記アルミニウム合金シート金属基板の前記表面に、前記アルミニウム合金シート金属基板と前記多層ポリマー絶縁構造との間に接着層を使用せずに接合される、先行または後続の態様のいずれかに記載の方法である。
【0112】
態様29は、前記接合製造物を1つ以上の成形プロセスに供し、成形製造物を生成することをさらに含む、先行または後続の態様のいずれかに記載の方法である。
【0113】
態様30は、前記接合製造物が、先行または後続の態様のいずれかに記載の電気的に絶縁された金属製造物である、先行または後続の態様のいずれかに記載の方法である。
【0114】
態様31は、先行または後続の態様のいずれかに記載の方法により調製された、先行または後続の態様のいずれかに記載の電気的に絶縁された金属製造物である。
【0115】
態様32は、デバイス用の構造エンクロージャーであって、前記構造エンクロージャーは、電気的に絶縁された金属製造物を含み、前記電気的に絶縁された金属製造物は、アルミニウム合金シート金属基板と、前記アルミニウム合金シート金属基板に接合された多層ポリマー絶縁構造と、を含み、前記多層ポリマー絶縁構造は、前記アルミニウム合金シート金属基板に隣接する接合層と、前記接合層上の最上部ポリマー層とを含み、前記多層ポリマー絶縁構造は厚さが5μm~100μmであり、前記アルミニウム合金シート金属基板に接合された前記多層ポリマー絶縁構造は、全体として、表面抵抗が1×1012Ω~1×1015Ω、体積抵抗が1×1012Ω~1×1015Ω、破壊電圧が2kV~50kV、または比較トラッキング指数値が175V~400Vのうちの1つ以上を示す、前記構造エンクロージャーである。
【0116】
態様33は、互いに機械的に接合した複数の前記電気的に絶縁された金属製造物を含む、先行または後続の態様のいずれかに記載の構造エンクロージャーである。
【0117】
態様34は、前記電気的に絶縁された金属製造物が、先行の態様のいずれかに記載の電気的に絶縁された金属製造物を含む、先行または後続の態様のいずれかに記載の構造エンクロージャーである。
【0118】
態様35は、前記電気的に絶縁された金属製造物が、先行または後続の態様のいずれかに記載の方法により調製される、先行または後続の態様のいずれかに記載の構造エンクロージャー。
【0119】
本明細書で引用されるすべての特許及び刊行物は、その全体において参照により組み込まれている。例示した実施形態を含む実施形態の前述の説明は、例示及び説明を目的としてのみ提示しており、網羅的であることも、開示した正確な形態に限定することも意図されていない。その多くの変更、適応、及び使用が、当業者には明らかである。
【国際調査報告】