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2025-514291マイクロオルガノスフェアを使用して肝細胞毒性を試験するための方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-05-02
(54)【発明の名称】マイクロオルガノスフェアを使用して肝細胞毒性を試験するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20250424BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20250424BHJP
【FI】
C12N5/071
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024563544
(86)(22)【出願日】2023-04-28
(85)【翻訳文提出日】2024-10-28
(86)【国際出願番号】 US2023066409
(87)【国際公開番号】W WO2023212732
(87)【国際公開日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】63/363,894
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523191775
【氏名又は名称】ザイリス, インク.
【氏名又は名称原語表記】XILIS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェン シーリン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジャオフイ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QQ61
4B063QR77
4B063QS40
4B065AA90X
4B065AA93X
4B065CA46
(57)【要約】
本発明に沿うシステム及び方法は、概して、マイクロオルガノスフェア(MOS)、並びにMOSを形成及び使用するための方法及び装置に関する。より具体的には、いくつかの実施形態では、本発明に沿うシステム及び方法は、肝細胞から生成されるMOSを形成及び使用するための方法及び装置に関する。肝細胞から生成されるMOSは、様々な薬剤の肝臓毒性及び薬物誘発性肝臓損傷の影響を試験するのに好適である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝細胞からマイクロオルガノスフェア(MOS)を生成するための方法。
【請求項2】
細胞密度が、80~160細胞/MOS液滴であり、前記液滴の直径が、200~300uMである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞密度が、100細胞/MOS液滴である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法によって得られた、MOS。
【請求項5】
肝細胞から生成された、MOS。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のMOSを使用する薬物スクリーニングの方法。
【請求項7】
前記方法が、薬物の薬力学的プロファイルの1つ以上の態様を評価する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、ハイスループット薬物スクリーニングに適用される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、薬物毒性を評価する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、薬物誘発性肝臓損傷(DILI)を評価する、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、薬物の長期投与の影響を評価する、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
薬物スクリーニングの方法における、請求項4又は5に記載のMOSの使用。
【請求項13】
前記肝細胞が、初代ヒト肝細胞(PHH)である、請求項1~12のいずれか一項に記載のMOS又は方法。
【請求項14】
前記肝細胞が、成体肝細胞である、請求項1~13のいずれか一項に記載のMOS、方法、又は使用。
【請求項15】
前記肝細胞が、ドナーから単離される、請求項1~14のいずれか一項に記載のMOS、方法、又は使用。
【請求項16】
前記ドナーが、治療を必要とする患者である、請求項15に記載のMOS、方法、又は使用。
【請求項17】
前記MOS内の細胞が、培養物中で3週間を超えて生存能を保持する、請求項1~16のいずれか一項に記載のMOS、方法、又は使用。
【請求項18】
前記MOS内の細胞が、肝臓特異的機能を保持する、請求項1~17のいずれか一項に記載のMOS、方法、又は使用。
【請求項19】
前記MOSが、肝臓再生をモデル化する、請求項1~18のいずれか一項に記載のMOS、方法、又は使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に沿うシステム及び方法は、概して、マイクロオルガノスフェア(MOS)、並びにMOSを形成及び使用するための方法及び装置に関する。より具体的には、いくつかの実施形態では、本発明に沿うシステム及び方法は、肝細胞から生成されるMOSを形成及び使用するための方法及び装置に関する。肝細胞から生成されるMOSは、様々な薬剤の肝臓毒性及び薬物誘発性肝臓損傷の影響を試験するのに好適である。
【背景技術】
【0002】
モデル細胞及び組織システムは、生物学的及び医学的研究に有用である。最も一般的な方法は、組織から不死化細胞株を誘導し、それらを二次元(2D)条件(例えば、ペトリ皿又はウェルプレート)で培養することである。しかしながら、2D細胞株は、基礎研究には非常に有用であるが、療法に対する個々の患者の応答とよく相関していない。特に、三次元細胞培養モデルは、発生生物学、疾患病理学、再生医療、薬物毒性及び有効性試験、並びに個別化医療において特に有用であることが証明されている。例えば、スフェロイド及びオルガノイドが、研究されている三次元細胞凝集体である。しかしながら、伝統的に形成されたオルガノイド及びスフェロイドの両方には、特定の用途での有用性を低下させる制限がある。
【0003】
多細胞腫瘍スフェロイドは、70年代初頭に最初に説明され、非接着条件下でがん細胞株の培養によって得られた。スフェロイドは、典型的には、超低付着プレートにおいて自由に浮遊する細胞凝集体としてがん細胞株から形成される。スフェロイドは、2D細胞培養よりも多くの幹細胞関連特性を維持することが示されている。
【0004】
オルガノイドは、主要な細胞系統の細胞に分化することができる幹細胞の集団を含むインビトロ由来の細胞凝集体である。オルガノイドは、典型的には、1mmを超える直径を有し、継代を通して培養される。典型的には、2D細胞培養物よりもオルガノイド培養物の成長及び拡大が遅い。臨床試料からオルガノイドを生成するには、十分な数(例えば、数百から数千)の生存細胞から開始する必要があるため、生検などの少量の試料からオルガノイドを誘導することは困難であることが多く、成功した場合でも、薬物検査などの用途のために培養を拡大するにはかなりの時間がかかることになる。更に、オルガノイドのサイズ、形状、及び細胞数には大きなばらつきがある。オルガノイドは、所望の細胞型を成長させ発現させるために、成長因子及び培養条件の複雑なカクテルを必要とする場合がある。
【0005】
腫瘍スフェロイドもオルガノイドも、迅速かつ信頼性の高いスクリーニング(特に、薬物応答の生体外エクスビボ試験)の実施などの個別化医療にとって最適ではない。例えば、腫瘍学の実施は、相対的な利益と最も好ましい結果を達成するためのリスクとのバランスをとることに加えて、正しい治療レジメンを正しい患者と一致させるという大きな課題に絶えず直面している。患者由来がんモデル(PDMC)は、より個別化された治療標的の同定及び開発を容易にするために、オルガノイド(患者由来オルガノイドを含む)の使用を含み得る。しかしながら、レトロスペクティブ研究は、切除又は生検された患者の腫瘍に由来するオルガノイドが、療法に対する患者の応答と相関することを示しているが、療法の指針となるオルガノイドを使用するには大きな制限がある。前述のように、薬物感受性試験のために腫瘍試料からオルガノイド(特に、患者由来のオルガノイド)を誘導及び拡大するには数ヶ月かかり、患者は治療を受けるためにそれほど長く待つことができないため、臨床適用性を低下させる。加えて、数十を超える化合物で薬物スクリーニングを行うために必要なオルガノイドの数は、現在、コア生検標本から臨床的に実行可能な時間枠で取得することができない。コア生検標本は、多くの場合、転移性又は手術不能ながんを有する患者からの組織の唯一の利用可能な形態である。生検からオルガノイドを導出する際の重大な失敗率も、信頼性の高い診断アッセイとしてのその使用を妨げる。更に、特に培養時間が長く、したがって、多数の継代で、オルガノイドのサイズ(及び応答、特に薬物応答の可能性)に高度のばらつきが存在する可能性がある。
【0006】
患者の転帰とのより良い相関関係を理由に、PDMCはまた、RNAi、CRISPR、及び薬理学的小分子スクリーニングなどの創薬のためのハイスループットスクリーニングプラットフォームとして2D細胞株を置き換えるために利用されている。しかしながら、細胞株と比較して、これらのPDMCモデル(スフェロイド及びオルガノイドを含む)は、典型的には、拡張及び操作がはるかに遅く、ハイスループットの用途には困難かつ高価である。これらのモデルを拡張して細胞数を増幅するのに必要な時間が長くなると、プラスチック中で最も急速に成長しているクローンが他のクローンを圧倒し、他のクローンを打ち負かす傾向があり、したがって、モデルがより均一になり、元の組織組成及びクローンの多様性が失われる。更に、それらの比較的大きく不均一なサイズ及び限定された拡散性により、多くの自動化された蛍光及びイメージングベースの読み出しアッセイにとって困難なものとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、切除、生検、及び他の組織源から患者由来の組織モデル(例えば、腫瘍モデル及び/又は非腫瘍組織モデル)を生成するための方法、組成物、及び装置が必要とされている。特に、18ゲージのコア生検などの単一の生検から予測可能かつ臨床的に関連する特性を有する多数の患者由来組織モデルを可能にすることができる(例えば、生検の取得後7~10日以内に完了することができる)方法及び装置を提供することが有用であろう。これにより、堅牢かつ信頼性の高い検査が可能になり、患者固有の療法を導く際の遅延を最小限に抑えることができる。更に、ハイスループットスクリーニング用途のために、より小さくてより均一なサイズ、単位当たりの細胞数に対するより良い制御可能性、及びより良い拡散性(例えば、表面積と体積の比の増加による)を有するユニットを生成する、高度に並列的な様式で迅速に拡張することができる患者由来モデルを生成することも有用であろう。更に、様々な薬剤の肝臓毒性及び薬物誘発性肝臓損傷の影響を試験するためのより良い肝細胞モデルを有することが有用であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
マイクロオルガノスフェア(MOS)、MOSを作製する装置及び方法、並びにMOSを使用する装置及び方法が本明細書に記載される。また、個別化された治療方法を含む、これらのMOSを使用して患者をスクリーニングするための方法及びシステムも本明細書に記載される。
【0009】
概して、(例えば、療法を導くための迅速な診断のために)切除された原発腫瘍又は機能的若しくは機能不全の臓器の一部を含む、切除された患者組織から、並びに/又は(例えば、ハイスループットスクリーニングのためのMOSを生成するために)患者由来異種移植片(PDX)及びオルガノイドを含む既に確立されたPDMCから抽出された患者に由来する細胞を含むMOSを形成及び成長させる方法及び装置が本明細書に記載される。
【0010】
これらのMOSは、正常(例えば、正常な臓器組織)である初代細胞から、又は腫瘍組織から形成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、これらの方法及び装置は、がん性腫瘍生検組織からMOSを形成し、検査された特定の腫瘍組織を使用して選択することができるカスタマイズされた治療を可能にする。驚くべきことに、これらの方法及び装置は、生検が患者から除去されてから数時間以内に、単一組織生検から数百、数千、又は数万(例えば、500、750、1000、2000、5000、10,000、又はそれ以上)のMOSの形成を可能にする。患者生検から分離された初代細胞は、MOSを形成するために、基質基底膜マトリックス(例えば、MATRIGEL)などの流体マトリックス材料と組み合わされ得る。得られた複数のMOSは、所定のサイズ範囲(例えば、直径、例えば、10μm~700μm、及びそれに伴う任意のサブ範囲など)、及び初期数の初代細胞(例えば、1~1000個、及び特に1~200個などのより少ない数の細胞)を有し得る。細胞数及び/又は直径は、例えば、+/-5%、10%、15%、20%、25%、30%内などで制御され得る。これらのMOSは、本明細書に記載されるように形成される場合、非常に高い生存率(>75%、>80%、>85%、>90%、>95%)を有し、形成後の最初の1~10日以内(例えば、1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、5日以内、6日以内、7日以内、8日以内、9日以内、10日以内など)を含む非常に短い期間内に使用及び試験に対して安定している。これにより、膨大な数となり得る患者固有の生物学的に関連するMOSの迅速な試験が可能になり、がん治療計画などの患者の療法の開発及び展開にかかる重要な時間を節約することができる。本明細書に記載のMOSは、三次元(3D)腫瘍微小環境などの生検された組織環境を再現及び対応する3D細胞構造を急速に形成する。本明細書に記載のMOSは、「液滴」とも称され得る。各MOSは、例えば、流体マトリックス材料の一部として、元の組織(例えば、腫瘍)環境を模倣し得る成長因子及び構造タンパク質(例えば、コラーゲン、ラミニン、ナイドジェンなど)を含み得る。各MOSはまた、元の組織の免疫細胞を含み得る。実質的に任意の腫瘍組織又は正常組織を含む、実質的に任意の初代細胞組織が使用され得る。
【0011】
例えば、今日までに、検査された全ての腫瘍の種類及び部位でMOSの生成に成功している(例、現在の成功率は100%、n=32、肝臓、網、横隔膜などを含む原発部位及び転移部位からの結腸がん、食道がん、皮膚がん(黒色腫)、子宮がん、骨がん(肉腫)、腎臓がん、卵巣がん、肺がん、及び乳がんを含む)。MOSを正常に生成するために使用される組織型は、他の位置から転移され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のMOSは、穿刺吸引物(FNA)から、又は循環腫瘍細胞(CTC)から、例えば、液体生検から成長させることができる。増殖(proliferation)及び成長(growth)は、典型的には、わずか3~4日で見られ、MOSは、数ヶ月間維持及び継代されるか、又はそれらは、直ちに(例えば、最初の7~10日以内に)凍結保存されかつ/若しくはアッセイに使用され得る。
【0012】
特に、患者由来MOSを形成する方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、これらの方法は、解離した初代組織細胞(がん/異常組織、正常組織などを含むが、これらに限定されない)を液体マトリックス材料と組み合わせて、未重合材料を形成し、次いで、未重合材料を重合させて、典型的には、解離した初代組織細胞が分布する直径が約1000μm未満(例えば、約900μm未満、約800μm未満、約700μm未満、約600μm未満、特に、約500μm未満)であるMOSを形成することを含む。解離細胞の数は、上述のように、所定の範囲内であり得る(例えば、約1個の細胞、約10個の細胞、約20個の細胞、約30個の細胞、約40個の細胞、約50個の細胞、約60個の細胞、約70個の細胞などを含む、約1~約500個の細胞、約1~200個の細胞、約1~150個の細胞、約100個の細胞、約1~75個の細胞、約1~50個の細胞、約35~約1~30個の細胞、約1~20個の細胞、約1~10個の細胞、約5~15個の細胞、約20~30個の細胞、約30~50個の細胞、約40~60個の細胞、約50~70個の細胞、約60~80個の細胞、約70~90個の細胞、約80~100個の細胞、約90~110個の細胞など)。これらの方法のいずれかは、本明細書に記載されるように、再現可能なサイズのMOS(例えば、狭いサイズ分布を有する)並びに免疫細胞を含むMOSを生成するように構成され得る。
【0013】
解離した細胞は、新鮮に生検又は切除されてもよく、機械的及び/又は化学的解離(例えば、コラゲナーゼ、トリプシンなどの1つ以上の酵素を使用することによる酵素分解)を含む任意の適切な様式で解離されてもよい。解離細胞は、任意選択的に、処理、選択、及び/又は修飾されてもよい。例えば、細胞は、1つ以上の特徴(例えば、サイズ、形態など)を有する細胞を特定及び/又は単離するように選別又は選択され得る。細胞は、選択を補助するために使用され得る(例えば、1つ以上のマーカーで)マーキングされ得る。いくつかの実施形態では、細胞は、マイクロ流体細胞選別、蛍光活性化細胞選別、磁気活性化細胞選別などを含むがこれらに限定されない、既知の細胞選別技術によって選別され得る。代替的に、細胞は、選別することなく使用され得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、解離細胞は、1つ以上の薬剤による治療によって改変され得る。例えば、細胞は、遺伝子改変され得る。いくつかの実施形態では、細胞は、CRISPR-Cas9又は他の遺伝子編集技術を使用して改変され得る。いくつかの実施形態では、細胞は、プラスミド、RNA、siRNAなどによるトランスフェクションを含む、任意の適切な方法(例えば、エレクトロポレーション、細胞圧搾、ナノ粒子注入、マグネトフェクション、化学トランスフェクション、ウイルストランスフェクションなど)によってトランスフェクションされ得る。代替的に、細胞は、改変することなく使用され得る。
【0015】
1つ以上の追加の材料が、解離細胞及び流体(例えば、液体)マトリックス材料と組み合わされて、未重合混合物を形成し得る。例えば、未重合混合物は、支持細胞を含む追加の細胞又は組織型を含み得る。追加の細胞又は組織は、異なる生検(例えば、異なる解離組織からの初代細胞)及び/又は培養細胞に由来し得る。追加の細胞は、例えば、免疫細胞、間質細胞、内皮細胞などであってもよい。追加の材料は、培地(例えば、成長培地、凍結培地など)、成長因子、支持ネットワーク分子(例えば、コラーゲン、糖タンパク質、細胞外マトリックスなど)などを含み得る。いくつかの実施形態では、追加の材料は、薬物組成物を含み得る。いくつかの実施形態では、未重合混合物は、解離組織試料(例えば、初代細胞)及び流体マトリックス材料のみを含む。
【0016】
本方法は、単一の組織生検から複数のMOSを急速に形成することができ、その結果、生検当たり約500超(例えば、約600超、約700超、約800超、約900超、約1000超、約2000超、約2500超、約3000超、約4000超、約5000超、約6000超、約7000超、約8000超、約9000超、約10,000超、約11,000超、約12,000超など)の患者由来MOSが形成される。生検は、18G(例えば、14G、16G、18Gなど)コア生検などの標準サイズの生検であり得る。例えば、生検によって取り出され、複数のMOSを形成するために使用される組織の体積は、約1/32~1/8インチの直径、及び約3/4インチ~1/4インチの長さの小さなシリンダー(生検針で採取される)、例えば、約1/16インチの直径×1/2インチの長さのシリンダーであり得る。生検は、針生検によって、例えば、コア針生検によって採取され得る。いくつかの実施形態では、生検は、穿刺吸引によって行われ得る。使用され得る他の生検タイプとしては、シェーブ生検、パンチ生検、切開生検、切除生検などが挙げられる。典型的には、単一の患者生検からの材料を使用して、上記のように、複数(例えば、約2000超、約5000超、約7500超、約10,000超など)のMOSを生成し得る。複数の患者MOSは、本明細書に記載されるこの多数の非常に規則的な(サイズ、細胞数など)MOSを生成するように構成され得る(本明細書に記載される)装置を使用して形成され得る。いくつかの実施形態では、これらの方法及び装置は、複数のMOSを高速で生成することができる(例えば、1分当たり約1MOS超、10秒当たり約1MOS超、5秒当たり約1MOS超、2秒当たり約1MOS超、1秒当たり約1MOS超、1秒当たり約2MOS超、1秒当たり約3MOS超、1秒当たり約4MOS超、1秒当たり約5MOS超、1秒当たり約10MOS超、1秒当たり50MOS超、1秒当たり100MOS超、1秒当たり125MOS超など)。
【0017】
例えば、いくつかの実施形態では、これらの方法は、未重合混合物を、未重合材料と不混和性である材料(例えば、液体材料)と組み合わせることによって行われ得る。本方法及び装置は、未重合混合物(及び/又は解離組織及び流体マトリックス)及び未重合混合物と不混和である材料(例えば、疎水性材料、油など)のうちの1つ以上の流れを少なくとも部分的に制御することによって、MOSのサイズ及び/又は細胞密度を制御し得る。例えば、いくつかの実施形態では、これらの方法は、マイクロ流体装置を使用して行われ得る。いくつかの実施形態では、複数のMOSを並列に形成し得る(例えば、並列に2つ、並列に3つ、並列に4つなど)。したがって、同じ装置は、複数の平行チャネルを含み得、これは、同じ未重合材料の供給源、又は同じ解離初代組織の供給源及び/若しくは流体マトリックスの供給源に結合され得る。
【0018】
未重合材料は、様々な異なる方法でMOSを形成するために重合され得る。いくつかの実施形態では、本方法は、温度を変化させることによって、MOSを重合させること(例えば、約20℃超、約25℃超、約30℃超、約35℃超などの閾値を上回るように温度を上昇させること)を含み得る。
【0019】
重合したら、MOSを、例えば、培養によって成長させてもよく、かつ/又は培養の前若しくは後のいずれかでアッセイしてもよく、かつ/又は培養の前若しくは後のいずれかで凍結保存してもよい。MOSは、任意の適切な長さの時間培養され得るが、特に、1日~10日(例えば、1日~9日、1日~8日、1日~7日、1日~6日、3日~9日、3日~8日、3日~7日など)培養され得る。いくつかの実施形態では、MOSは、6回の継代の前に凍結保存又はアッセイされ得、これは、MOS内の細胞の不均一性を維持し得、継代の回数を制限することで、より速く分裂する細胞がより遅く分裂する細胞に勝ることを防止し得る。
【0020】
概して、同じ患者生検は、高い数(例えば、2,000超、3,000超、4,000超、5,000超、6,000超、7,000超、8,000超、9,000超、10,000超など)の細胞を提供し得るため、MOSの一部(例えば、半分以上)を凍結保存してもよく、一方、一部を培養及び/又はアッセイしてもよい。本明細書でより詳細に説明されるように、凍結保存されたMOSは、バンクされ、後で使用され得る(例えば、アッセイされ、継代され得る)。
【0021】
したがって、複数のMOSを形成する方法を含む方法が本明細書に記載される。例えば、複数のMOSを形成する方法は、解離組織試料及び流体マトリックス材料を組み合わせて、未重合混合物を形成することと、未重合混合物の複数の液滴を形成することと、液滴を重合させて、各々50~500μmの直径を有し、その中に1~200個の解離細胞が分布する複数のMOSを形成することと、を含み得る。
【0022】
例えば、複数のMOSを形成する方法は、解離組織試料及び流体マトリックス材料を組み合わせて、未重合混合物を形成することと、未重合混合物の連続的な流れから複数の液滴を形成することであって、液滴が、25%未満の実施形態のサイズを有する、形成することと、液滴を加温することによって重合させて、各MOS内に分散された1~200個の解離細胞を各々有する複数のMOSを形成することと、を含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、複数のMOSを形成するための本明細書に記載の方法は、解離組織試料及び流体マトリックス材料を組み合わせて、未重合混合物を形成することと、未重合混合物の流れを、未重合混合物と不混和性である流体の1つ以上の流れと収束させることによって、液滴が25%未満の実施形態のサイズを有する複数の液滴を形成することと、液滴を重合させて、50~500μmの直径を有し、その中に1~200個の解離細胞が分布する複数のMOSを形成することと、複数のMOSを不混和性である流体から分離することと、を含み得る。
【0024】
これらの方法のいずれかは、液滴を形成する前に、解離組織試料内の細胞を改変することを含み得る。
【0025】
複数の液滴を形成することは、約25%未満の実施形態のサイズ(例えば、約20%未満の実施形態のサイズ、約15%未満の実施形態のサイズ、約10%未満の実施形態のサイズ、約8%未満の実施形態のサイズ、約5%未満の実施形態のサイズなど)を有する、均一なサイズの未重合混合物の複数の液滴を形成することを含み得る。サイズの実施形態は、狭い分布のサイズの実施形態としても説明され得る。例えば、サイズの分布は、低い標準偏差(例えば、15%以下の標準偏差、12%以下の標準偏差、10%以下の標準偏差、8%以下の標準偏差、6%以下の標準偏差、5%以下の標準偏差など)を有するMOSサイズ分布(例えば、MOS直径対形成されたMOSの数)を含み得る。
【0026】
これらの方法のいずれかはまた、MOSをプレーティング又は分配することを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、アッセイする前に、様々な供給源からのMOSをレセプタクルに組み合わせることを含み得る。例えば、MOSは、マルチウェルプレートに配置され得る。したがって、これらの方法のいずれかは、MOSをアッセイする前に、MOSをマルチウェルプレートに分配することを含み得る。1ウェル当たり1つ以上(又はいくつかの実施形態では等量)のMOSが含まれてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、MOSをレセプタクルに適用することは、MOSを、少なくとも部分的に透過性の膜によって分離された複数のチャンバに配置して、チャンバ間の上清材料の循環を可能にすることを含み得る。これは、MOSが同じ上清を共有することを可能にし得る。
【0028】
これらの方法のいずれかでは、MOSがアッセイされ得る。アッセイは、概して、個々のMOSを条件(例えば、本明細書に記載の薬物組成物のいずれかを含むがこれに限定されない、薬物組成物又は薬物組成物の組み合わせ)に曝露又は処理して、条件がMOSの細胞に対する影響を有するかどうか(及び場合によっては、それがどのような影響を有するか)を決定することを含み得る。アッセイは、MOSのサブセットを(個々に又はグループで)1つ以上の濃度の薬物組成物に曝露すること、及びMOSが所定の期間(分、時間、日など)曝露されたままであることを可能にすること、及び/又は薬物組成物を曝露及び除去し、次いで、MOSを所定の期間培養すること、を含み得る。その後、MOSを調べて、特にMOS中の細胞に対する毒性、又はMOS中の細胞の形態及び/又は成長の変化を含む任意の影響が特定され得る。いくつかの実施形態では、アッセイすることは、MOS内の生細胞又は固定細胞をマーキングすること(例えば、免疫組織化学によって)を含み得る。細胞は、手動又は自動でアッセイされ得る(例えば、検査され得る)。例えば、自動リーダー装置を使用して、任意の毒性(細胞死)を決定するために細胞を検査してもよい。いくつかの実施形態では、複数のMOSをアッセイすることは、分泌された因子及び他の影響について、MOSの上清、環境、及び微小環境のうちの1つ以上をサンプリングすることを含み得る。これらの実施形態のいずれかは、MOSは、その後の検査のための更なるアッセイ、拡大、又は保存(例えば、凍結保存、固定など)のためのアッセイの後に回収され得る。
【0029】
前述のように、実質的に任意のアッセイが使用され得る。例えば、ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオミクス、又はメタゲノムマーカー(メチル化など)は、本明細書に記載のMOSを使用してアッセイされ得る。したがって、本明細書に記載のこれらの組成物及び方法のいずれかを使用して、1つ以上のマーカー及び生物学的/生理学的経路(例えば、エクソソームを含む)を特定又は検査し得、これは、患者の治療のための薬物及び/又は療法の特定を支援し得る。
【0030】
任意の適切な組織試料が使用され得る。いくつかの実施形態では、組織は、体の任意の部分からの正常な非がん性組織であり得る。いくつかの実施形態では、組織は、肝臓からの組織であり得る。いくつかの実施形態では、組織試料は、転移性腫瘍からの生検試料を含み得る。例えば、組織試料は、臨床腫瘍試料を含み得、臨床腫瘍試料は、がん細胞及び間質細胞の両方を含み得る。いくつかの実施形態では、組織試料は、腫瘍細胞と、間葉系細胞、内皮細胞、及び免疫細胞のうちの1つ以上と、を含む。
【0031】
本明細書に記載の方法のいずれかは、組織生検からの解離細胞を、最初に、任意の適切な濃度で、流体マトリックス材料全体を均一に、又はいくつかの実施形態では不均一に分配することを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、解離組織試料及び流体マトリックス材料を組み合わせて、解離組織細胞が流体マトリックス材料内で、1×10細胞/ml未満(例えば、9×10細胞/ml未満、7×10細胞/ml、5×10細胞/ml、3×10細胞/ml、1×10細胞/ml、9×10細胞/ml、7×10細胞/ml、5×10細胞/mlなど)の密度に分配することを含み得る。
【0032】
概して、液滴を形成することは、未重合混合物の連続的な流れから液滴を形成することを含み得る。例えば、液滴を形成することは、未重合混合物と不混和性である流体の1つ以上の収束する流れを、未重合混合物の流れに適用することを含み得る。流れは、マイクロ流体デバイス、例えば、未重合混合物と不混和性流体が相互作用して正確に制御された体積を有する液滴を形成する複数の収束するチャネルを有するデバイスにおいて組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、液滴は、過剰の不混和性材料中で形成され(例えば、ピンチオフされ)、液滴は、同時に及び/又はその後重合して、MOSを形成し得る。例えば、流れが収束する領域は、例えば、加熱によって液滴が形成された後に未重合混合物を重合させるように構成され得、かつ/又は下流の領域は、液滴が形成され、不混和性材料によって囲まれた後に未重合混合物を重合させるように構成され得る。いくつかの実施形態では、不混和性材料は、未重合材料の重合を促進する温度まで加熱され(又は代替的に冷却され)、MOSを形成する。例えば、重合は、液滴を35℃超に加熱することを含み得る。
【0033】
したがって、これらの方法のいずれかでは、液滴を形成することは、未重合混合物と不混和性である流体中で液滴を形成することを含み得る。更に、これらの方法のいずれかは、不混和性流体をMOSから分離することを含み得る。更に、これらの方法のいずれかは、MOSから不混和性流体を除去することを含み得る。概して、不混和性流体は、特に、疎水性材料又は未重合(例えば、水性)材料と不混和性である他の材料を含む、液体(例えば、油、ポリマーなど)を含み得る。
【0034】
流体マトリックス材料は、合成又は非合成の未重合基底膜材料であり得る。いくつかの実施形態では、未重合の基礎材料は、高分子ヒドロゲルを含み得る。いくつかの実施形態では、流体マトリックス材料は、MATRIGELを含み得る。したがって、解離組織試料及び流体マトリックス材料を組み合わせることは、解離組織試料を基底膜マトリックスと組み合わせることを含み得る。
【0035】
組織試料は、組織試料を患者から除去してから6時間以内に、又はそれより早く(例えば、約5時間以内、約4時間以内、約3時間以内、約2時間以内、約1時間以内など)、流体マトリックス材料と組み合わせてもよい。
【0036】
また、MOSをアッセイ又は保存する方法が本明細書に記載される。例えば、方法は、解離組織試料及び流体マトリックス材料を組み合わせて、未重合混合物を形成することと、液滴が25%未満の実施形態のサイズを有する未重合混合物の複数の液滴を形成することと、液滴を重合させて、50~700μmの直径を有し、その中に1~1000個の解離細胞が分布する複数のMOSを形成することと、複数のMOSをアッセイ又は凍結保存することと、を含み得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、方法は、解離組織試料及び流体マトリックス材料を組み合わせて、未重合混合物を形成することと、未重合混合物の複数の液滴を形成することと、液滴を重合させて、各々50~500μmの直径を有し、その中に1~200個の解離細胞が分布する複数のMOSを形成することと、15日以内に複数のMOSを凍結保存又はアッセイすることと、を含み得、MOSをアッセイして、MOS内の細胞に対する1つ以上の薬剤の影響を決定する。
【0038】
例えば、方法は、解離組織試料及び流体マトリックス材料を組み合わせて、未重合混合物を形成することと、未重合混合物の流れを、未重合混合物と不混和性である流体の1つ以上の流れと収束させることによって、液滴が25%未満の実施形態のサイズを有する複数の液滴を形成することと、液滴を温めることによって重合させて、各々50~500μmの直径を有し、その中に1~200個の解離細胞が分布するMOSを形成することと、6回の継代の前に、MOSをアッセイ又は凍結保存することと、を含み、それによって、MOS内の細胞の不均一性が維持され、更に、アッセイすることが、MOS内の細胞に対する1つ以上の薬剤の影響を決定するために、アッセイすることを含む。
【0039】
これらの方法のいずれかでは、複数のMOSは、6回の継代の前に凍結保存又はアッセイされてもよく、それによって、MOS内の細胞の不均一性が維持される。これらの方法のいずれかは、液滴を形成する前に、解離組織試料内の細胞を改変することを更に含み得る。
【0040】
液滴を形成することは、約25%未満の実施形態のサイズ(例えば、約20%未満、約15%未満の35、約10%未満、約7%未満、約5%未満など)を有する、均一なサイズの未重合混合物の複数の液滴を形成することを含み得る。
【0041】
これらの方法のいずれかは、上述のように、MOSを適切な長さの時間培養すること(例えば、アッセイ前の2~14日間のMOSの培養)を含み得る。例えば、これらの方法は、培養する前に、MOSから不混和性流体を除去することを含み得る。いくつかの実施形態では、MOSを培養することは、懸濁液中でMOSを培養することを含む。
【0042】
概して、MOSをアッセイすることは、MOSをアッセイ又は凍結保存する前及び/又は後に、MOS中の細胞を、ゲノムにより、転写により、エピゲノムにより、及び/又は代謝により分析することを含み得る。これらの方法のいずれかは、MOSを薬物(例えば、薬物組成物)に曝露することによってMOSをアッセイすることを含み得る。
【0043】
これらの方法のいずれかでは、アッセイは、MOS中の細胞に対する1つ以上の薬剤の影響を手動及び/又は自動で視覚的にアッセイすることを含み得る。これらの方法のいずれかは、視覚化のためにMOS中の細胞をマーキング又はラベリングすることを含み得る。例えば、アッセイすることは、細胞に対する1つ以上の薬剤の影響を蛍光アッセイすることを含み得る。
【0044】
本明細書に記載のMOSは、それ自体が新規であり、物質の組成物として特徴付けられ得る。例えば、物質の組成物は、複数の凍結保存されたMOSを含んでもよく、各MOSは、50μm~500μmの直径を有する球形を有し、重合した基材と、6回未満継代された基材内に分布する約1~1000個の解離初代細胞と、を含み、それによって、MOS内の細胞の不均一性が維持される。いくつかの実施形態では、MOSは、肝臓細胞を含む。いくつかの実施形態では、MOSは、肝細胞を含む。いくつかの実施形態では、MOSは、初代ヒト肝細胞(PHH)を含む。いくつかの実施形態では、MOSは、単一のドナーのPHHから形成される。いくつかの実施形態では、MOSは、複数のドナーからプールされたPHHから形成される。いくつかの実施形態では、MOSは、成体肝細胞から形成される。いくつかの実施形態では、MOSは、成体PHHから形成される。いくつかの実施形態では、MOSは、(例えば、本明細書に記載のタイプの)肝細胞(例えば、PHH)をマトリックス材料と混合し、それによって、混合物を形成し、次いで、本明細書に記載されるように、混合物の流れを不混和性流体の流れと交差させ、それによって、MOSが形成される。いくつかの実施形態では、次いで、MOSは、本明細書に記載の方法に従って解乳化される。したがって、肝細胞(PHHを含む)は、組織源が機械的及び/又は酵素的に消化された後、それが流体マトリックス材料と混合される準備ができているように、本明細書に記載の任意の組織源と同じ様式でMOSを形成するために使用され得る。
【0045】
また、複数の凍結保存されたMOSを含む物質組成物が本明細書に記載され、各MOSは、50μm~500μmの直径を有する球形を有し、MOSは、25%未満の実施形態のサイズを有し、各MOSは、重合基材を含み、6回未満継代された約1~500個の解離初代細胞が基材内に分布し、それによって、MOS内の細胞の不均一性が維持される。いくつかの実施形態では、MOSは、起源の組織からの肝細胞を含む。
【0046】
初代細胞は、初代腫瘍細胞であり得る。例えば、解離初代細胞は、遺伝的又は生化学的に改変され得る複数の凍結保存されたMOSは、サイズが25%未満の実施形態で均一なサイズを有し得る。いくつかの実施形態では、複数の凍結保存されたMOSは、様々な供給源からのMOSを含み得る。これらのMOSのいずれかは、各MOS中の細胞の大部分は、幹細胞ではない細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、初代細胞は、転移性腫瘍細胞を含む。初代細胞は、がん細胞及び間質細胞の両方を含み得る。いくつかの実施形態では、初代細胞は、腫瘍細胞と、間葉系細胞、内皮細胞、及び免疫細胞のうちの1つ以上と、を含む。
【0047】
初代細胞は、重合基材内に、例えば、5×10細胞/ml、1×10細胞/ml、9×10細胞/ml、7×1010細胞/ml、5×10細胞/ml、1×10細胞/ml、9×10細胞/ml、7×10細胞/ml、5×10細胞/ml、1×10細胞/ml未満などの密度で分布し得る。
【0048】
概して、重合基材は、基底膜マトリックス(例えば、MATRIGEL)を含み得る。いくつかの実施形態では、重合基材は、合成材料を含む。
【0049】
MOSは、50μm~1000μm、又はより好ましくは50μm~700μm、又はより好ましくは50μm~500μm、又は50μm~400μm、又は50μm~300μm、又は50μm~250μmなど(例えば、約500μm未満、約400μm未満、約300μm未満、約250μm未満、約200μm未満など)の直径を有し得る。
【0050】
前述のように、本明細書に記載のMOSは、各MOS中に最初に任意の適切な数の初代組織細胞(例えば、約200個未満の初代細胞、又はより好ましくは約150個未満の初代細胞、又はより好ましくは約100個未満の初代細胞、又はより好ましくは約75個未満の初代細胞、又は約50個未満の細胞、又は約30個未満の細胞、又は約25個未満の細胞、又は約20個未満の細胞、又は約10個未満の細胞、又は約5個未満の細胞など)を含み得る。いくつかの実施形態では、各MOSは、約1~500個の細胞、約1~400個の細胞、約1~300個の細胞、約1~200個の細胞、約1~150個の細胞、約1~100個の細胞、約1~75個の細胞、約30 1~50個の細胞、約1~30個の細胞、約1~25個の細胞、約1~20個の細胞などを含む。
【0051】
また、MOSを形成するための装置、及びこれらの装置を操作してMOSを形成する方法が本明細書に記載される。例えば、MOS形成装置を操作する方法が本明細書に記載され、本方法は、第1のポートで、解離組織試料及び第1の流体マトリックス材料の冷却混合物を含む未重合混合物を受容することと、第2のポートで、未重合混合物と不混和性である第2の流体を受容することと、未重合混合物の流れを第2の流体の1つ以上の流れと組み合わせて、25%未満変動する均一なサイズを有する未重合混合物の液滴を形成することと、未重合混合物の液滴を重合させて、複数のMOSを形成することと、を含む。
【0052】
MOS形成装置を操作する方法は、第1のポートで、解離組織試料及び第1の流体マトリックス材料の冷却混合物を含む未重合混合物を受容することと、第2のポートで、未重合混合物と不混和性である第2の流体を受容することと、第1の速度の未重合混合物の流れを第2の速度の第2の流体の1つ以上の流れと組み合わせて、25%未満変動する均一なサイズを有する未重合混合物の液滴を形成することであって、液滴が、50μm~500μmの直径である、形成することと、未重合混合物の液滴を重合させて、複数のMOSを形成することと、を含む。
【0053】
これらの方法のいずれかは、第1のポートと流体連通する未重合混合物を含む第1のリザーバを結合することを含み得る。例えば、本方法は、解離組織試料及び第1の流体マトリックス材料を組み合わせて、未重合混合物を形成することを含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、未重合混合物を第1のポートと流体連通する第1のリザーバに添加することを含む。これらの方法は、第2のポートと流体連通する第2の流体を含む第2のリザーバを結合することを含み得る。これらの方法のいずれかは、第2の流体を第2のポートと流体連通する第2のリザーバに添加することを含み得る。いくつかの実施形態では、第2の流体を受容することは、油を受容することを含む。
【0054】
概して、これらの方法は、第2の流体(例えば、不混和性流体)を複数のMOSから分離することを含み得る。この流体は、手動又は自動で分離され得る。例えば、第2の(不混和性)流体は、洗浄、濾過、疎水性膜との接触、又は任意の他の適切な方法によって除去され得る。
【0055】
流れを組み合わせることは、第2の流量で移動している第2の流体の1つ以上の流れにわたって、第1の流量で未重合混合物の流れを駆動することを含み得る。いくつかの実施形態では、第1の流量は、第2の流量よりも大きい。いくつかの実施形態では、第2の流量は、第1の流量よりも大きい。流量及び/又は材料(例えば、未重合混合物)の量のいずれか又は両方は、未重合混合物が、次いで、(例えば、第2の流体内で)重合され得る、本明細書に記載される、正確に制御された液滴中に封入されるように、第2の流体よりも少ない量で存在してもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、流れを組み合わせることは、未重合混合物の流れを、第2の流体の1つ以上の流れも収束する接合部にわたって駆動することを含む。液滴を重合することは、未重合材料が重合する温度よりも高い温度(例えば、約20℃超、約25℃超、約30℃超、約35℃超など)まで液滴を加熱することを含み得る。
【0057】
これらの方法のいずれかは、複数のMOSをアリコートすることを含み得る。例えば、マルチウェル皿にアリコートする。
【0058】
また、これらのMOSを使用して患者を治療する方法及びそれらをアッセイする方法が本明細書に記載される。例えば、方法は、腫瘍から患者生検を受けることと、生検を採取してから2週間以内に、患者生検から、50~500μmの直径を有し、1~200個の解離腫瘍細胞が重合基材を介して分布する複数のMOSを形成し、解離腫瘍細胞が5回超の継代を経る前に、MOSの少なくとも一部を薬物製剤に曝露することによって、腫瘍が薬物製剤に応答するであろうことを決定することと、MOSの少なくとも一部内の細胞に対する薬物製剤の影響を測定して、決定された影響に基づいて薬物が腫瘍を治療するであろうかどうかを決定することと、を含み得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、これらの方法は、患者が薬物製剤で治療された後に第2の患者生検を受け、第2の患者生検から第2の複数のMOSを形成し、第2の複数のMOSの少なくとも一部を薬物製剤に曝露し、第2の複数のMOSの少なくとも一部内の細胞に対する薬物製剤の影響を測定することによって、患者に薬物を1回以上投与した後も腫瘍が依然として薬物製剤に応答していると決定することを含み得る。
【0060】
腫瘍が薬物製剤に応答するであろうことを決定することは、MOSの少なくとも一部を複数の薬物製剤に曝露することと、薬物製剤の各々について測定された影響を報告することと、を含み得る。いくつかの実施形態では、決定することは、MOSをアッセイする前に、MOSをマルチウェルプレートに分配することを更に含む。
【0061】
これらの方法のいずれかは、患者を生検して、患者生検を収集すること(又はそうでなければ、患者からの組織試料又は患者由来組織若しくは細胞の試料を採取すること)、及び/又は患者を薬物製剤で治療すること、又は医師が患者を治療するのを支援すること(例えば、どの薬物製剤が有効であろうかについて医師に推奨すること)を含み得る。概して、生検を受けてから報告するまでの時間は、約21日未満(例えば、約15日未満、約14日未満、約13日未満、約12日未満、約11日未満、約10日未満、約9日未満、約8日未満、約7日未満など)であり得る。
【0062】
初代組織由来肝細胞は、依然として承認薬物の中止の主な原因となっている薬物誘発性肝臓損傷(DILI)の影響を評価するために広く使用されている。しかしながら、細胞をインビトロで培養する場合、肝細胞の細胞生存能及び生物学的機能を維持するための堅牢なハイスループットシステムが欠如している。
【0063】
本明細書では、MOS技術に基づいてインビトロで初代組織由来肝細胞を培養するための新しい方法を提供する。この方法によって生成された肝細胞は、少なくとも3週間の生存能及び生物学的機能(アルブミン及び尿素分泌)の維持を含む肝臓特異的機能を保持する。これは、従来の2D肝細胞培養方法を使用して達成することは不可能である。
【0064】
MOS(HepatoMOS)中で培養された肝細胞は、HepatoMOS培養の3日目に適切な構造を形成し、経時的に構造を維持する。
【0065】
更に、HepatoMOS培養物は、DILI陽性化合物を懸念される非DILI薬物から区別し、慢性及び反復投薬レジメンに関連するDILIを捕捉することができる。HepatoMOSベースのDILIアッセイに必要な細胞の質量は、2D培養システムよりもはるかに(5~10倍)少ないため、HepatoMOSベースのアッセイのスループットは、2D培養システムと比較して有意に高い。HepatoMOSシステムの主な改善点の中には、MOS培養によって提供される3D環境の改善、肝細胞/液滴の最適な密度、及びMOS培養によって提供される効率的な成長因子/酸素の拡散が含まれる。
【0066】
HepatoMOSは、DILI評価に特に有利である。HepatoMOSは、懸念されるDILI化合物と、DILIの影響と関連していない化合物とを区別する。このシステムは、改善された感度を示し、慢性投与レジメンの長期的な影響を捕捉することができる。無制限のDILIアッセイのために単一ドナーからHepatoMOSを継代/拡大する選択肢がある。HepatoMOS培養ベースのDILIアッセイの所要時間は、他の3Dスフェロイド培養システムと比較して短い。
【0067】
肝細胞(HepatoMOS)から生成されるMOSは、以前は試験することが困難であった特定の療法を試験するために使用され得る。従来のバルクオルガノイドの形成とは異なり、生検された患者由来の(例えば、腫瘍からの)組織に存在する肝細胞は、本明細書に記載のMOS形成のための広範な処理の後でさえ、それらの形成時にMOS中に存在及び持続し得る。MOSはまた、患者由来の肝細胞から直接生成され得る。更に、従来のバルクオルガノイドを使用する場合、いくつかの療法は、患者由来の組織(例えば、腫瘍から)に浸透し、到達し、それと相互作用することが困難である可能性がある。対照的に、MOSは、それらの療法の浸透及び試験をはるかに容易にする。
【0068】
本明細書に記載のMOS形成は、患者由来の組織からの肝臓細胞(肝細胞を含む)を組み込むことを可能にするため、MOS中の前述の薬物製剤の試験の精度は、従来のバルクオルガノイドにおける試験よりも優れている。加えて、患者に由来する肝細胞は、浸透が容易であるため、既に形成されているMOSに別々に導入してもよい。患者由来の組織(例えば、腫瘍由来)は、患者の体によって天然に産生される様々な肝細胞を含む。特定の薬物製剤及び療法に対する患者の応答は、標的部位に存在する肝細胞によって直接影響を受ける可能性がある。本明細書に記載されるように産生されたMOSは、そのような薬物試験に有利であり得、本明細書に記載の薬物は、形成時に起源の組織からの肝細胞を含むMOS、又はMOSが形成された後に導入される肝細胞を含むMOSにおいて試験することができる。肝細胞を使用して生成されたMOSを使用して、様々な薬剤の肝臓毒性及び薬物誘発性肝臓損傷の影響を試験することができる。
【0069】
肝細胞(例えば、PHH)から生成されたMOSを利用して、様々な薬物の肝臓毒性及び薬物誘発性肝臓損傷の影響について様々な薬剤をスクリーニングすることが望ましい。MOSのサイズ、性質、組成、及び改善された細胞生存能は、様々な薬剤のハイスループットスクリーニングを可能にする。
【0070】
本開示に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本発明の様々な実施形態及び態様を例示する。図面は、以下の通りである:
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1A】MOS当たり単一の解離した初代組織細胞を含むように本明細書に記載のように形成され、形成後1日間培養した、患者由来MOSを示す。細胞は、大腸がん(CRC)組織に由来する。
図1B】MOS当たり単一の解離した初代組織細胞を含むように本明細書に記載のように形成され、形成後3日間培養した、患者由来MOSを示す。細胞は、大腸がん(CRC)組織に由来する。
図1C】MOS当たり単一の解離した初代組織細胞を含むように本明細書に記載のように形成され、形成後7日間培養した、患者由来MOSを示す。細胞は、大腸がん(CRC)組織に由来する。
図2A】MOS当たり5つの解離した初代組織細胞を含むように本明細書に記載のように形成され、形成後1日間培養した、患者由来MOSを示す。細胞は、大腸がん(CRC)組織に由来する。
図2B】MOS当たり5つの解離した初代組織細胞を含むように本明細書に記載のように形成され、形成後3日間培養した、患者由来MOSを示す。細胞は、大腸がん(CRC)組織に由来する。
図2C】MOS当たり5つの解離した初代組織細胞を含むように本明細書に記載のように形成され、形成後7日間培養した、患者由来MOSを示す。細胞は、大腸がん(CRC)組織に由来する。
図3A】MOS当たり20個の解離した初代組織細胞を含むように本明細書に記載のように形成され、形成後1日間培養した、患者由来MOSを示す。図1A及び図2Aと同様に、細胞は、大腸がん(CRC)組織に由来する。
図3B】MOS当たり20個の解離した初代組織細胞を含むように本明細書に記載のように形成され、形成後3日間培養した、患者由来MOSを示す。図1B及び図2Bと同様に、細胞は、大腸がん(CRC)組織に由来する。
図3C】MOS当たり20個の解離した初代組織細胞を含むように本明細書に記載のように形成され、形成後7日間培養した、患者由来MOSを示す。図1C及び図2Cと同様に、細胞は、大腸がん(CRC)組織に由来する。
図4A】MOS当たり10個の解離した初代組織細胞を含むように本明細書に記載のように形成された患者由来のMOSの例を示す。形成直後のMOSを(低倍率で)示す。
図4B】MOS当たり10個の解離した初代組織細胞を含むように本明細書に記載のように形成された患者由来のMOSの例を示す。2日間培養した後に撮られた図4AのMOSの一部のより高倍率の図を示す。
図4C】MOS当たり10個の解離した初代組織細胞を含むように本明細書に記載のように形成された患者由来のMOSの例を示す。3日間の培養した後のMOSを示す。
図4D】MOS当たり10個の解離した初代組織細胞を含むように本明細書に記載のように形成された患者由来のMOSの例を示す。4日間の培養した後のMOSを示す。
図4E】MOS当たり10個の解離した初代組織細胞を含むように本明細書に記載のように形成された患者由来のMOSの例を示す。5日間培養した後のMOSを示す。
図5A】正常なマウス肝臓の肝細胞から本明細書に記載のように形成された、形成後1日間培養した(図1A)又は10日間培養した(図1B)、MOSの例を示す。マウス肝細胞は、正常な(例えば、非疾患)マウス肝臓から採取される。
図5B】正常なマウス肝臓の肝細胞から本明細書に記載のように形成された、形成後1日間培養した(図1A)又は10日間培養した(図1B)、MOSの例を示す。マウス肝細胞は、正常な(例えば、非疾患)マウス肝臓から採取される。
図6】本明細書に記載される、初代組織(例えば、生検)試料から患者由来のMOSを形成する方法を示す。
図7A】アセンブリの一部としてのマイクロ流体チップを含む、本明細書に記載される患者由来MOSを形成するための装置の一例を概略的に示す。
図7B図7Aに示されるような装置のマイクロ流体チップ部分の一例の斜視図である。
図7C図7Aに示されるような患者由来MOSを形成するための装置のマイクロ流体アセンブリの一部を概略的に示す。
図8図7Aに示されるような装置を使用して形成された複数の患者由来MOSを示す画像の一例を示す。これは、装置からアリコートされる前に不混和性流体(例えば、油)を含むチャネル内で懸濁された、重合直後の患者由来MOSを示す。
図9図7Cに示されるものと同様に、患者由来MOSを形成するための装置のプロトタイプマイクロ流体アセンブリの一部の画像であり、患者由来MOSの形成を示す。
図10】重合直後の、本明細書に記載される複数の患者由来MOSを示す。患者由来MOSは、不混和性流体に懸濁される。
図11A】低倍率での、不混和性流体(例えば、油)に懸濁された、形成直後の複数の患者由来MOSの別の例を示す。
図11B】高倍率での、不混和性流体(例えば、油)に懸濁された、形成直後の複数の患者由来MOSの別の例を示す。
図12A】低倍率での、患者由来MOSの形成の数時間以内に不混和性流体から分離した後の複数の患者由来MOSを示す。
図12B】高倍率での、患者由来MOSの形成の数時間以内に不混和性流体から分離した後の複数の患者由来MOSを示す。
図13】本明細書に記載されるように形成された複数の患者由来MOSを示す画像の別の例。
図14】例示的な生検試料から形成された複数の患者由来MOSからの直径のサイズ分布を示すチャート。
図15A】重合後の、解離組織生検試料及び流体マトリックス材料から形成された複数の患者由来MOSの一例の低倍率図を示す。未染色画像である。
図15B】重合後の、解離組織生検試料及び流体マトリックス材料から形成された複数の患者由来MOSの一例の高倍率図を示す。MOSをトリパンブルーで染色して、MOS中の解離細胞が生きていることを示す。
図16A図15Aに示されるものと同様に、複数の患者由来MOSの一例の低倍率図を示す別の例。未染色画像である。
図16B図15Bに示されるものと同様に、複数の患者由来MOSの一例の高倍率図を示す別の例。MOSをトリパンブルー(矢印)で染色して、MOS中の解離細胞が、細胞がMOS内で生存している(例えば、生きている)ことを示したことを示す。
図17図17A,B,C,D,Eは、複数の薬物製剤に対する薬物応答プロファイルを決定するために、患者腫瘍生検から形成された複数の患者由来MOSをアッセイする方法の一例を示す。示された手順は、生検から結果までに2週間未満(例えば、約1週間)かかる。
図18】治療手順の一部としての、複数の患者由来MOSの形成及び使用を含む、患者を治療するための方法の例を概略的に示す。
図19】治療手順の一部としての、複数の患者由来MOSの迅速な形成及びアッセイを複数回繰り返すことを含む、患者を治療するための方法の例を概略的に示す。
図20】本明細書に記載される複数の患者由来MOSを形成するための装置の一部の一実施形態を概略的に示す。
図21図20に示されるものと同様に、複数の患者由来MOSを形成するための装置を操作する方法を概略的に示す。
図22A-B】図22A,22Bは、本明細書に記載される複数の患者由来MOSを使用して薬物耐性を特定する方法の検証の一例を示す。薬物耐性を予測するための従来の(「2D」)腫瘍細胞アッセイ方法の使用を示す。
図22C-D】図22C,22Dは、本明細書に記載される複数の患者由来MOSを使用して薬物耐性を特定する方法の検証の一例を示す。患者由来MOSベースの方法が、従来の培養細胞とは異なり、腫瘍の実際の応答(薬物応答性)を正確に予測したことを示す。
図23図23A,B,C,Dは、薬物耐性を特定するための本明細書に記載される患者由来MOSの使用を検証する別の例を示す。これは、オキサリプラチン及びイリノテカンの両方に対する予測される薬物応答を示すものであり、これらの薬物による治療後の実際の腫瘍応答と一致している。
図24】本明細書に記載される患者由来MOSを使用する薬物スクリーニングの一例を示す。ここで、単一の腫瘍生検は、ほぼ同一のMOSを大量に非常に速く(例えば、2週間以内に)生成し、並行して多数の薬物製剤(例えば、27種類が示されている)に対して迅速に試験され得る。
図25A】300pmの直径を有し、MOS当たり1個の細胞を有する、マウス肝臓組織から形成されたマウス肝臓MOSの例を示す。1日目のMOSを示す。
図25B】300pmの直径を有し、MOS当たり1個の細胞を有する、マウス肝臓組織から形成されたマウス肝臓MOSの例を示す。10日目のMOSを示す。
図26A図25Aに示されるものと同様に、300pmの直径を有し、MOS当たり25個の細胞を有する、部分肝切除マウス肝臓組織から形成されたマウス肝臓MOSの例を示す。1日目のMOSを示す。
図26B図25Bに示されるものと同様に、300pmの直径を有し、MOS当たり25個の細胞を有する、部分肝切除マウス肝臓組織から形成されたマウス肝臓MOSの例を示す。10日目のMOSを示す。
図27A】ヒト肝臓組織から形成されるヒト肝臓MOSの例を示す。40細胞/液滴で播種した1日目のMOSを示す。
図27B】ヒト肝臓組織から形成されるヒト肝臓MOSの例を示す。18日目のMOSを示す。MOSは、肝細胞様構造である。
図27C】ヒト肝臓組織から形成されるヒト肝臓MOSの例を示す。18日目のMOSを示す。胆管細胞様MOSを示す。
図28A】300pmの直径を有し、MOS当たり1個の細胞を有する、患者由来の異種移植片腫瘍株から生成されたMOSの例を示す。1日目のMOSを示す。
図28B】300pmの直径を有し、MOS当たり1個の細胞を有する、患者由来の異種移植片腫瘍株から生成されたMOSの例を示す。3日目のMOSを示す。
図28C】300pmの直径を有し、MOS当たり1個の細胞を有する、患者由来の異種移植片腫瘍株から生成されたMOSの例を示す。5日目のMOSを示す。
図28D】300pmの直径を有し、MOS当たり1個の細胞を有する、患者由来の異種移植片腫瘍株から生成されたMOSの例を示す。7日目のMOSを示す。
図29A】300pmの直径を有し、MOS当たり5個の細胞を有する、患者由来の異種移植片モデルから生成されたMOSの例を示す。1日目のMOSを示す。
図29B】300pmの直径を有し、MOS当たり5個の細胞を有する、患者由来の異種移植片モデルから生成されたMOSの例を示す。3日目のMOSを示す。
図29C】300pmの直径を有し、MOS当たり5個の細胞を有する、患者由来の異種移植片モデルから生成されたMOSの例を示す。5日目のMOSを示す。
図29D】300pmの直径を有し、MOS当たり5個の細胞を有する、患者由来の異種移植片モデルから生成されたMOSの例を示す。7日目のMOSを示す。
図30】従来のオルガノイド及び大腸がん患者由来オルガノイドから形成されたMOSのオキサリパラチンに対する応答を比較するグラフ。従来のオルガノイド及びMOSについて同等の応答を示す。
図31】従来のオルガノイド及び2つの大腸がん患者由来の異種移植片モデルから形成されたMOSのSN38(7-エチル-10-ヒドロキシ-カンプトテシン)に対する応答を比較するグラフ(同等の応答を示す)。
図32】従来のオルガノイド及び大腸がん患者由来の異種移植片モデルから形成されたMOSの5-FU(フルオロウラシル)に対する応答を比較するグラフ(同等の応答を示す)。
図33A】マウス肝臓MOSを使用する毒性アッセイの例を示す。対照群のマウス肝臓MOSにおける組織のサイズが比較的大きいことを示し(矢印によって示される)、ほとんどのMOSにおける組織は、より小さく、多くの死細胞を含む。
図33B】マウス肝臓MOSを使用する毒性アッセイの例を示す。アセトアミノフェン(10mM)処理群を示し、ほとんどのMOSにおける組織は、より小さく、多くの死細胞を含む。
図34A】ヒト肝臓MOSを使用する毒性アッセイの例を示す。組織構造を含む、対照群で観察される典型的なヒト肝臓MOSを示す(矢印によって示される)。
図34B】ヒト肝臓MOSを使用する毒性アッセイの例を示す。非定型の組織構造(矢印)及びデブリを示す、アセトアミノフェン(10mM)処理群におけるMOSを示す。
図35】0日目のカプセル化後にHepatoMOSが生存していたことを示す。100個及び200個の肝細胞を、MOS液滴にカプセル化した。生存能の評価は、生細胞色素カルセインAM(緑色チャネル)及び死細胞色素エチジウムホモ二量体(赤色チャネル)を使用してモニタリングした。染色結果は、カプセル化後に肝細胞が生存していたことを実証する。
図36】3日目のHepatoMOSの生存能を示す。
図37】経時的なHepatoMOSのモニタリングを示す。
図38】HepatoMOSが3週間にわたって非常に高い細胞生存能を維持したことを示す。
図39】2D培養条件で肝細胞の生存能が失われたことを示す。
図40】HepatoMOSが安定したレベルの尿素及びアルブミン分泌を保持していることを示す。HepatoMOSには機能的な肝細胞が含まれていることを示唆する。
図41】HepatoMOSベースのDILI評価の結果を示す。
図42】2D肝細胞単層培養におけるDILI評価の結果を示す。
図43A】10人の個々のドナーからプールされたPHHからのHepatoMOSの確立及び特徴付けを示す。A)HepatoMOS培養物における異なる細胞密度の影響を試験する。
図43B】10人の個々のドナーからプールされたPHHからのHepatoMOSの確立及び特徴付けを示す。B)HepatoMOSの培養を成功させるための4つの培地選択肢を評価する。
図43C-1】10人の個々のドナーからプールされたPHHからのHepatoMOSの確立及び特徴付けを示す。C-1)CTGアッセイは、異なる細胞密度及び培地条件間でのHepatoMOS培養物の生存能を測定した。
図43C-2】10人の個々のドナーからプールされたPHHからのHepatoMOSの確立及び特徴付けを示す。C-2)CTGアッセイは、異なる細胞密度及び培地条件間でのHepatoMOS培養物の生存能を測定した。
図43D】10人の個々のドナーからプールされたPHHからのHepatoMOSの確立及び特徴付けを示す。D)CDFDA染色により、HepatoMOSにおける細管の形成を確認した。
図43E】10人の個々のドナーからプールされたPHHからのHepatoMOSの確立及び特徴付けを示す。E)ELISA結果は、経時的なHepatoMOS培養物におけるアルブミン産生を示した。
図43F】10人の個々のドナーからプールされたPHHからのHepatoMOSの確立及び特徴付けを示す。F)尿素ELISAの結果は、経時的なHepatoMOS培養物における尿素分泌を示した。
図43G】10人の個々のドナーからプールされたPHHからのHepatoMOSの確立及び特徴付けを示す。G)IF染色は、HepatoMOS培養物における主要マーカーの発現を確認した。
図43H】10人の個々のドナーからプールされたPHHからのHepatoMOSの確立及び特徴付けを示す。H)HepatoMOSのH&E染色及びKi67 IHC染色。
図44A】様々な条件で培養された(10人の個々のドナーからプールされた)HepatoMOSに対する生細胞及び死細胞の染色を示す。A)4つの異なる細胞密度を有するHepatoMOSの生及び死色素染色。B)3つの培地条件におけるHepatoMOSの生及び死色素染色。C)3つの一致した細胞密度でのドーム条件で培養されたPHHの生及び死色素染色。D)様々なサイズ及び密度で同じウェルで培養されたHepatoMOSの生及び死色素染色。
図44B】様々な条件で培養された(10人の個々のドナーからプールされた)HepatoMOSに対する生細胞及び死細胞の染色を示す。A)4つの異なる細胞密度を有するHepatoMOSの生及び死色素染色。B)3つの培地条件におけるHepatoMOSの生及び死色素染色。C)3つの一致した細胞密度でのドーム条件で培養されたPHHの生及び死色素染色。D)様々なサイズ及び密度で同じウェルで培養されたHepatoMOSの生及び死色素染色。
図44C】様々な条件で培養された(10人の個々のドナーからプールされた)HepatoMOSに対する生細胞及び死細胞の染色を示す。A)4つの異なる細胞密度を有するHepatoMOSの生及び死色素染色。B)3つの培地条件におけるHepatoMOSの生及び死色素染色。C)3つの一致した細胞密度でのドーム条件で培養されたPHHの生及び死色素染色。D)様々なサイズ及び密度で同じウェルで培養されたHepatoMOSの生及び死色素染色。
図44D】様々な条件で培養された(10人の個々のドナーからプールされた)HepatoMOSに対する生細胞及び死細胞の染色を示す。A)4つの異なる細胞密度を有するHepatoMOSの生及び死色素染色。B)3つの培地条件におけるHepatoMOSの生及び死色素染色。C)3つの一致した細胞密度でのドーム条件で培養されたPHHの生及び死色素染色。D)様々なサイズ及び密度で同じウェルで培養されたHepatoMOSの生及び死色素染色。
図45A】単一ドナーからの肝細胞(PHH)のHepatoMOS培養物の確立及び特徴付けを示す。A)経時的なHepatoMOS培養物の代表的な画像。B)4つの一致した細胞密度で、ドーム条件で培養したPHHの生及び死色素染色。C)培養14日目のHepatoMOSの生及び死色素染色。D)CDFDA染色は、HepatoMOSにおける細管の形成を示した。E)異なる条件で培養したHepatoMOSにおける経時的なアルブミン産生。F)異なる条件で培養したHepatoMOSにおける経時的な尿素分泌。
図45B】単一ドナーからの肝細胞(PHH)のHepatoMOS培養物の確立及び特徴付けを示す。A)経時的なHepatoMOS培養物の代表的な画像。B)4つの一致した細胞密度で、ドーム条件で培養したPHHの生及び死色素染色。C)培養14日目のHepatoMOSの生及び死色素染色。D)CDFDA染色は、HepatoMOSにおける細管の形成を示した。E)異なる条件で培養したHepatoMOSにおける経時的なアルブミン産生。F)異なる条件で培養したHepatoMOSにおける経時的な尿素分泌。
図45C】単一ドナーからの肝細胞(PHH)のHepatoMOS培養物の確立及び特徴付けを示す。A)経時的なHepatoMOS培養物の代表的な画像。B)4つの一致した細胞密度で、ドーム条件で培養したPHHの生及び死色素染色。C)培養14日目のHepatoMOSの生及び死色素染色。D)CDFDA染色は、HepatoMOSにおける細管の形成を示した。E)異なる条件で培養したHepatoMOSにおける経時的なアルブミン産生。F)異なる条件で培養したHepatoMOSにおける経時的な尿素分泌。
図45D】単一ドナーからの肝細胞(PHH)のHepatoMOS培養物の確立及び特徴付けを示す。A)経時的なHepatoMOS培養物の代表的な画像。B)4つの一致した細胞密度で、ドーム条件で培養したPHHの生及び死色素染色。C)培養14日目のHepatoMOSの生及び死色素染色。D)CDFDA染色は、HepatoMOSにおける細管の形成を示した。E)異なる条件で培養したHepatoMOSにおける経時的なアルブミン産生。F)異なる条件で培養したHepatoMOSにおける経時的な尿素分泌。
図45E】単一ドナーからの肝細胞(PHH)のHepatoMOS培養物の確立及び特徴付けを示す。A)経時的なHepatoMOS培養物の代表的な画像。B)4つの一致した細胞密度で、ドーム条件で培養したPHHの生及び死色素染色。C)培養14日目のHepatoMOSの生及び死色素染色。D)CDFDA染色は、HepatoMOSにおける細管の形成を示した。E)異なる条件で培養したHepatoMOSにおける経時的なアルブミン産生。F)異なる条件で培養したHepatoMOSにおける経時的な尿素分泌。
図45F】単一ドナーからの肝細胞(PHH)のHepatoMOS培養物の確立及び特徴付けを示す。A)経時的なHepatoMOS培養物の代表的な画像。B)4つの一致した細胞密度で、ドーム条件で培養したPHHの生及び死色素染色。C)培養14日目のHepatoMOSの生及び死色素染色。D)CDFDA染色は、HepatoMOSにおける細管の形成を示した。E)異なる条件で培養したHepatoMOSにおける経時的なアルブミン産生。F)異なる条件で培養したHepatoMOSにおける経時的な尿素分泌。
図46A】単一の小児ドナーからの肝細胞(PHH)のHepatoMOS培養物の確立及び特徴付けを示す。A)経時的なHepatoMOS培養物の代表的な画像。B)異なる細胞密度で培養されたHepatoMOSの生及び死色素染色。C)異なる細胞密度で培養されたHepatoMOSの生及び死色素染色。D)ドーム条件で培養された肝細胞の生及び死色素染色。E)CDFDA染色は、HepatoMOSにおける細管の形成を示した。F)IF染色は、HepatoMOS培養物における主要マーカーの発現を確認した。
図46B】単一の小児ドナーからの肝細胞(PHH)のHepatoMOS培養物の確立及び特徴付けを示す。A)経時的なHepatoMOS培養物の代表的な画像。B)異なる細胞密度で培養されたHepatoMOSの生及び死色素染色。C)異なる細胞密度で培養されたHepatoMOSの生及び死色素染色。D)ドーム条件で培養された肝細胞の生及び死色素染色。E)CDFDA染色は、HepatoMOSにおける細管の形成を示した。F)IF染色は、HepatoMOS培養物における主要マーカーの発現を確認した。
図46C】単一の小児ドナーからの肝細胞(PHH)のHepatoMOS培養物の確立及び特徴付けを示す。A)経時的なHepatoMOS培養物の代表的な画像。B)異なる細胞密度で培養されたHepatoMOSの生及び死色素染色。C)異なる細胞密度で培養されたHepatoMOSの生及び死色素染色。D)ドーム条件で培養された肝細胞の生及び死色素染色。E)CDFDA染色は、HepatoMOSにおける細管の形成を示した。F)IF染色は、HepatoMOS培養物における主要マーカーの発現を確認した。
図46D】単一の小児ドナーからの肝細胞(PHH)のHepatoMOS培養物の確立及び特徴付けを示す。A)経時的なHepatoMOS培養物の代表的な画像。B)異なる細胞密度で培養されたHepatoMOSの生及び死色素染色。C)異なる細胞密度で培養されたHepatoMOSの生及び死色素染色。D)ドーム条件で培養された肝細胞の生及び死色素染色。E)CDFDA染色は、HepatoMOSにおける細管の形成を示した。F)IF染色は、HepatoMOS培養物における主要マーカーの発現を確認した。
図46E】単一の小児ドナーからの肝細胞(PHH)のHepatoMOS培養物の確立及び特徴付けを示す。A)経時的なHepatoMOS培養物の代表的な画像。B)異なる細胞密度で培養されたHepatoMOSの生及び死色素染色。C)異なる細胞密度で培養されたHepatoMOSの生及び死色素染色。D)ドーム条件で培養された肝細胞の生及び死色素染色。E)CDFDA染色は、HepatoMOSにおける細管の形成を示した。F)IF染色は、HepatoMOS培養物における主要マーカーの発現を確認した。
図46F】単一の小児ドナーからの肝細胞(PHH)のHepatoMOS培養物の確立及び特徴付けを示す。A)経時的なHepatoMOS培養物の代表的な画像。B)異なる細胞密度で培養されたHepatoMOSの生及び死色素染色。C)異なる細胞密度で培養されたHepatoMOSの生及び死色素染色。D)ドーム条件で培養された肝細胞の生及び死色素染色。E)CDFDA染色は、HepatoMOSにおける細管の形成を示した。F)IF染色は、HepatoMOS培養物における主要マーカーの発現を確認した。
図47】生/死染色がATP含有量ベースの読み出しと同様の特異性及び感度でDILIの影響を検出したことを示す。
図48A】HepatoMOSがDILIの影響を予測することを示す。A)2D又はHepatoMOSアプローチによって測定されたDILI応答。B)HepatoMOS又はSpheroidアプローチを使用するDILI予測の比較。C)表は、HepatoMOSベースのDILI予測の特異性及び感度を要約した。
図48B】HepatoMOSがDILIの影響を予測することを示す。A)2D又はHepatoMOSアプローチによって測定されたDILI応答。B)HepatoMOS又はSpheroidアプローチを使用するDILI予測の比較。C)表は、HepatoMOSベースのDILI予測の特異性及び感度を要約した。
図48C】HepatoMOSがDILIの影響を予測することを示す。A)2D又はHepatoMOSアプローチによって測定されたDILI応答。B)HepatoMOS又はSpheroidアプローチを使用するDILI予測の比較。C)表は、HepatoMOSベースのDILI予測の特異性及び感度を要約した。
【発明を実施するための形態】
【0072】
概して、MOS、それらを形成するための方法及び装置、並びにそれらを使用して、例えば、組織(がん性及び非がん性組織を含む)の応答をアッセイするための方法及び装置が本明細書に記載される。
【0073】
本明細書に記載のMOSは、典型的には、基材内に分布する解離初代細胞から形成された球体である。これらのMOSは、約50μm~約500μm(例えば、約50μm~約400μm、約50μm~約300μm、約50μm~約250μmなど)の直径を有し得、最初、基材内に分布する約1~1000個の解離初代細胞(例えば、約1~750個、約1~500個、約1~400個、約1~300個、約1~200個、約1~150個、約1~100個、約1~75個、約1~50個、約1~40個、約1~30個、約1~20個など)を含み得る。
【0074】
驚くべきことに、それらの小さいサイズ(多くの場合、約50~250μm)、及び低い細胞密度(例えば、MOS当たり100細胞未満)にもかかわらず、これらのMOSは、直ちに使用されるか、又は非常に短い期間(例えば、14日以内、10日以内、7日以内、5日以内など)培養され得、MOS内の細胞が、それらが抽出された腫瘍組織及び非腫瘍組織を含む組織の特徴の全てではなくても多くを維持しながら、生存することを可能にし得る。MOS内の細胞の生存率は著しく高く、MOSは、細胞が分裂し、クラスター化し、親組織と同様の構造を形成する複数の継代を介して数日間(又は数週間)培養され得る。また、驚くべきことに、いくつかの実施形態では、MOS内の解離組織からの細胞は、最小のMOSの内部でさえ形態学的構造を形成する。いくつかの用途では、そのような構造の存在は、これらのMOSの有用性にとって必要ではない(例えば、実質的な構造再編成が起こる前に使用され得る)が、いくつかの実施形態では、それらは特に有用であり得る。
【0075】
MOSを形成及び使用するための本明細書に記載の方法及び装置は、単一の生検から多くの(例えば、10,000超)MOSを生成するために使用され得る。これらのMOSは、生検が採取された患者に効果的に適用され得る療法を予測することができる薬物組成物のスクリーニングに使用され得る。これは、例えば、健康な正常組織からの、及び/又はがん性(例えば、腫瘍)組織からの、薬物又は他の化学組成物の毒性スクリーニングに有用であり得る。特に、それらを形成するためのMOS、方法、及び装置、並びにそれらを試験するための方法及び装置は、薬物療法を受ける前に患者(例えば、がん患者)を効果的に治療することができる1つ以上の薬物組成物又は薬物組成物の組み合わせを特定するためのスクリーニングのために使用され得る。これにより、例えば、がん患者が、他の方法では有効ではない可能性がある数ヶ月の化学療法を受ける前に、非常に迅速ながん患者のスクリーニングが可能になり得る。
【0076】
したがって、単一の患者特異的生検(又は他の適切な組織/細胞源)を使用したハイスループット薬物スクリーニング方法(及びこれらの方法を行うための装置)が本明細書に記載される。解離され、基底マトリックス(例えば、MATRIGEL)に懸濁された患者由来の腫瘍試料から形成され得る液滴形成MOSが本明細書に記載される。MOSは、マイクロ流体マイクロウェルアレイ上にパターン化され、インキュベートされ、薬物化合物と投与され得る。この小型化されたアッセイは、腫瘍試料の使用を最大化し、試料当たりはるかに低いコストで、より多くの薬物化合物をコア生検からスクリーニングすることを可能にする。
【0077】
細胞株、オルガノイド、及び患者由来異種移植片(PDX)などの患者由来のがんモデル(PDMC)は、新しい療法の特定及び開発を容易にするための「標準」前臨床モデルとしてますます受け入れられている。例えば、がん患者に由来する細胞株及びオルガノイドの大規模な薬物スクリーニングは、多数の候補療法に対する感受性を特定するために使用されている。PDXはまた、薬物応答を予測し、新規の薬物の組み合わせを特定するために使用される。これらの様々なPDMCモデルの探索を通じて精密医療戦略が開発されているが、それらの効果的な使用には実質的な障壁がある。例えば、オルガノイドの表現型及び遺伝子型プロファイリングが、元の患者腫瘍と高度の類似性を示す場合が多いことが研究で示されているため、患者由来オルガノイド(PDO)が、患者腫瘍を描写するのに最も正確であると考えられる。残念ながら、少なくとも2つの制限が、療法を導くためのPDOの使用を妨げている。第一に、オルガノイドにおける薬物感受性を開発及び試験するのに数ヶ月かかり、それは臨床適用性を低下させる。第二に、臨床的に関連する18ゲージのコア生検から得られるオルガノイドの数は、ハイスループット薬物スクリーニングを行うのに十分ではない。理想的には、アッセイは、7~10日以内に単一のコア生検から行われるべきである。本明細書に記載のMOS、並びにそれらを作製及び使用する方法は、これらの臨床的制限に対処し得る。
【0078】
本開示の主題の1つ以上の実施形態の詳細は、本明細書に示されている。本明細書に記載の実施形態及び他の実施形態に対する修正は、本明細書に提供される情報を検討すれば、当業者には明らかになるであろう。本明細書で提供される情報、特に、記載された例示的な実施形態の特定の詳細は、主に理解を明確にするために提供されており、そこから不必要な制限が理解されるべきではない。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先されるであろう。
【0079】
本明細書で使用される用語は、当業者にはよく理解されていると考えられるが、本開示の主題の説明を容易にするために本明細書に定義が記載される。
【0080】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示の主題が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものに類似の、又は等しい任意の方法、装置、及び材料が、本開示の主題の実践又は試験に使用可能であるにもかかわらず、好ましい方法、装置、及び材料が本明細書に記載される。
【0081】
「未重合混合物」という用語は、本明細書では、解離組織試料及び第1の流体マトリックス材料を含む、生物学的に関連する材料を含む組成物を指すために使用される。流体マトリックス材料は、典型的には、重合して、支持体又は支持体ネットワーク(その中に解離組織(細胞)が分散される)を形成することができる材料である。重合すると、重合した材料は、ヒドロゲルを形成することができ、細胞に加えて、生体適合性媒体を形成するタンパク質を形成するか、及び/又は含むことができる。本開示の主題に従って使用するための好適な生体適合性媒体は、典型的には、ゲル、半固体、又は液体(例えば、低粘度液体)である任意の生体適合性材料から、室温(例えば、25℃)で形成することができ、目的の細胞、組織、タンパク質、及び他の生体材料のための三次元基質として使用することができる。本開示の主題に従って生体適合性媒体を形成するために使用することができる例示的な材料には、コラーゲン、フィブリン、キトサン、MATRIGEL(商標)(BD Biosciences,San Jose,Calif.)、ポリエチレングリコール、デキストラン(化学架橋性又は光架橋性デキストランなどを含む)、並びにエレクトロスピニング生体、合成、又は生体合成ブレンドを含む、ポリマー及びヒドロゲルが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、生体適合性媒体は、ヒドロゲルを含む。
【0082】
「ヒドロゲル」という用語は、本明細書では、水が分散媒体として作用し、ポリマー鎖間の空間を満たす、ポリマー鎖の三次元ネットワークを含む二成分又は多成分ゲルを指すために使用される。本開示の主題に従って使用されるヒドロゲルは、概して、MOSを形成するために使用されるパラメータ、並びに選択されたヒドロゲルが、構造内に配置される生体懸濁液に組み込まれる生体材料(例えば、細胞)の挙動及び活性に及ぼす影響を考慮して、構造の意図される用途に基づいて、特定の用途のために選択される。本開示の主題の例示的なヒドロゲルは、ポリマー材料から構成され得、ポリマー材料には、アルギン酸塩、コラーゲン(I型及びVI型を含む)、エラスチン、ケラチン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、糖タンパク質、ポリラクチド、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリコリド、ポリジオキサノン、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリスルホン、ペプチド配列、タンパク質及び誘導体、オリゴペプチド、ゼラチン、エラスチン、フィブリン、ラミニン、ポリメタクリレート、ポリアセテート、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ酸無水物、ポリアミノ酸、炭水化物、多糖類及び修飾多糖類、及びこれらの誘導体及びコポリマー、並びに無機材料(例えば、生体活性ガラスなどのガラス、セラミック、シリカ、アルミナ、カルサイト、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、骨、及び前述の全ての組み合わせ)が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
更に、本明細書に記載のMOSを生成するために使用されるヒドロゲルに関して、いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、アガロース、アルギン酸塩、コラーゲンI型、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(例えば、Pluronic(登録商標)F127(BASF Corporation,Mount Olive,N.J.))、シリコーン、多糖、ポリエチレングリコール、及びポリウレタンからなる群から選択される材料からなる。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、アルギン酸塩からなる。
【0084】
本明細書に記載のMOSはまた、生物学的に関連する材料を含み得る。「生物学的に関連する材料」という語句は、本明細書に定義される生体適合性媒体に含まれ、その後、生体系と相互作用する、かつ/又は生体系に影響を与えることができる材料を説明し得る。例えば、いくつかの実施態様では、生物学的に関連する材料は、磁気ビーズ(すなわち、磁気自体、又は鉄粒子などの磁場に応答する材料を含むビーズ)であり、これを未重合材料の一部として組み合わせて、方法及び組成物で(例えば、MOSの分離及び精製のために)使用することができるMOSを生成することができる。別の例として、他の実施態様では、生物学的に関連する材料は、解離組織試料(例えば、生検)材料に加えて、追加の細胞を含み得る。未重合混合物中では、解離組織試料及び追加の生物学的に関連する材料は、均一な混合物中に、又は分散混合物として(例えば、形成されたMOSのコア内又は外側領域内を含む、MOSのちょうど半分又は他の部分に)存在することができる。いくつかの実施形態では、未重合材料内の追加の生物学的に関連する材料は、例えば、MOSを形成する液滴が重合する前に、懸濁液中の解離組織試料とともに懸濁され得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、解離組織試料(例えば、生検)材料に含まれ得る生物学的に関連する材料は、前駆脂肪細胞、間葉系幹細胞(MSC)、内皮前駆細胞、T細胞、B細胞、肥満細胞、及び脂肪組織マクロファージ、並びに間質血管画分内に見出される小さな血管又は微小血管の断片を含む、いくつかの細胞型を含み得る。
【0086】
概して、本明細書に記載のMOSに含まれる解離組織試料(例えば、生検)材料に関して、これらの組織は、典型的には、生検によって採取される、患者からの任意の適切な組織であり得る。非生検組織を使用してもよいが、概して、これらの組織(及び得られた解離細胞)は、例えば、針生検によって、上記のように患者生検から採取された初代細胞であり得る。組織は、健康な組織生検に由来し得るか、又はがん性(例えば、腫瘍)細胞生検に由来し得る。解離細胞は、そのMOSの意図される用途に基づいて、本開示の主題のMOSに組み込まれ得る。例えば、関連する組織(例えば、解離生検組織)には、典型的には、その組織又は臓器(又は腫瘍など)に一般的に見られる細胞が含まれ得る。その点で、本開示の主題のMOSに組み込まれ得る例示的な会合している細胞には、ニューロン、心筋細胞、筋細胞、軟骨細胞、膵腺房細胞、ランゲルハンス島、骨細胞、肝細胞、クッパー細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、衛星細胞、内皮細胞、脂肪細胞、前駆脂肪細胞、胆管上皮細胞などが含まれる。これらのタイプの組織は、当該技術分野で既知の従来の技法によって解離され得る。好適な生検組織は、骨髄、皮膚、軟骨、腱、骨、筋肉(心筋を含む)、血管、角膜、神経、脳、胃腸、腎臓、肝臓、膵臓(膵島細胞を含む)、肺、下垂体、甲状腺、副腎、リンパ、唾液、卵巣、精巣、子宮頸部、膀胱、子宮内膜、前立腺、外陰、及び食道組織に由来し得る。正常な又は罹患した(例えば、がん性)組織が使用され得る。いくつかの実施形態では、組織は、これらの正常組織のいずれかに起因する腫瘍を含む腫瘍組織から生じ得る。
【0087】
MOSが形成されると、凍結保存及び/又は培養され得る。培養MOSは、静的(例えば、ウェル、バイアルなど)又は運動中(例えば、ローリング又は撹拌)のいずれかで、懸濁液中で維持され得る。MOSは、既知の培養技法を使用して培養され得る。例示的な技術は、とりわけ、Freshney,Culture of Animal Cells,A Manual of Basic Techniques,4th ed.,Wiley Liss,John Wiley & Sons,2000、Basic Cell Culture:A Practical Approach,Davis,ed.,Oxford University Press,2002、Animal Cell Culture:A Practical Approach,Masters,ed.,2000、及びU.S.Pat.No.5,516,681及び5,559,022に見出すことができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、MOSは、流体疎水性材料(例えば、油)などの不混和性材料中の解離組織試料及び流体マトリックス材料の未重合混合物(例えば、いくつかの実施形態では、冷却混合物)の液滴を形成することによって形成される。例えば、MOSは、未重合材料の流れを不混和性材料の1つ以上の流れと組み合わせて液滴を形成することによって形成され得る。液滴中に存在する細胞の密度は、未重合材料中の解離材料(例えば、細胞)の希釈によって決定され得る。MOSのサイズは、形成された液滴のサイズに相関し得る。概して、MOSは、安定した幾何学的形状を有する球状構造である。
【0089】
本開示の主題の実施は、別段の指示がない限り、当該技術分野の範囲内である、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来の技術を用いることができる。そのような技術は、文献において十分に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual(1989),2nd Ed.,ed.by Sambrook,Fritsch and Maniatis,eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Chapters 16 and 17、米国特許第4,683,195号、DNA Cloning,Volumes I and II,Glover,ed.,1985、Oligonucleotide Synthesis,M.J.Gait,ed.,1984、Nucleic Acid Hybridization,15 D.Hames & S.J.Higgins,eds.,1984、Transcription and Translation,B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.,1984、Culture Of Animal Cells,R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,1987、Immobilized Cells And Enzymes,IRL Press,1986、Perbal(1984),A Practical Guide To Molecular Cloning、Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.)を参照、Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells,J.H.Miller and M.P.Calos,eds.,Cold Spring Harbor 20 Laboratory,1987、Methods In Enzymology,Vols.154 and 155,Wu et al.,eds.,Academic Press Inc.,N.Y.、Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987、Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I-IV,D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,1986を参照されたい。
【0090】
本明細書で使用される場合、薬物組成物は、任意の薬物、薬物希釈物、薬物製剤、複数の薬物(例えば、複数の活性成分)を含む組成物、薬物製剤、薬物形態、薬物濃度、併用療法などを含み得る。いくつかの実施形態では、薬物製剤は、薬物及び1つ以上の不活性成分の混合物を含む製剤を指す。本明細書で使用される場合、「継代」という用語は、MOS内の細胞の倍加の平均数を指し得る。従来の継代数は、ある培養容器から別の培養容器への細胞の移動又は継代培養を指すが、MOS内の細胞は、同じMOS内に安定して保持され得、成長及び分裂を継続し得る。したがって、本明細書で使用される継代数は、典型的には、MOS内の生検組織からの解離細胞による倍加の平均数を指す。集団の倍加数は、単離以来(例えば、新鮮に解離した生検組織からのMOSの形成以来)、細胞集団が経た倍加のおおよその数である。概して、本明細書に記載のMOSは、MOS内の細胞の一部又は全ての成長、例えば、倍加(例えば、10回未満の継代、9回未満の継代、8回未満の継代、7回未満の継代、6回未満の継代、5回未満の継代、4回未満の継代、3回未満の継代など)に対して短期間培養され得る。
【0091】
培養中、MOS中の解離生検組織からの細胞は、MOS内で凝集、クラスター化、又は集合する可能性がある。細胞の凝集物は、高度に組織化され得、定義された形態を形成し得るか、又は一緒にクラスター化若しくは付着した細胞の塊であり得る。組織は、起源の組織を反映し得る。いくつかの実施形態では、MOSは、単一の細胞型(ホモタイプ)を含み得るが、MOSは、2つ以上の細胞型(ヘテロタイプ)を含み得る。
【0092】
前述のように、MOS(例えば、解離組織)を形成するために使用される(例えば、生検)組織は、正常若しくは健康な生物学的組織、又は疾患若しくは病気に罹患した生物学的組織(例えば、腫瘍に由来する組織若しくは流体)に由来し得る。MOSで使用される組織は、Tリンパ球、Bリンパ球、多形核白血球、マクロファージ、及び樹状細胞などの免疫系の細胞を含み得る。細胞は、幹細胞、前駆細胞、又は体細胞であり得る。以下に更に詳細に記載されるように、これらの免疫細胞の存在を使用して、薬物/生物製剤試験の有効性及び正確性を高めることができる。組織は、ヒト細胞などの哺乳類細胞、又はマウス、ラット、ウサギなどの動物由来の細胞であり得る。
【0093】
概して、組織(及び得られる細胞)は、大抵は生検から採取されて、MOSを形成し得る。したがって、組織は、生検、外科標本、吸引、排液、又は細胞含有流体のいずれかに由来し得る。好適な細胞含有体液としては、血液、リンパ液、皮脂腺液、尿、脳脊髄液、又は腹水のいずれかが挙げられる。例えば、経体腔転移を有する患者では、卵巣がん又は結腸がん細胞は、腹水から単離され得る。同様に、子宮頸がんを有する患者では、子宮頸がん細胞は、例えば、移行帯の大規模な切除によって、又は円錐生検によって、子宮頸部から取り出されてもよい。典型的には、そのようなMOSは、起源の組織又は流体中に存在する複数の細胞型を含むであろう。細胞は、継代培養の中間ステップなしに対象から直接得てもよく、最初に中間培養ステップを経て初代培養物を産生してもよい。生物学的組織及び/又は細胞含有流体から細胞を回収するための方法は、当該技術分野で周知である。例えば、生物学的組織から細胞を得るために使用される技術としては、R.Mahesparan(Extracellular matrix-induced cell migration from glioblastoma biopsy specimens in vitro.Acta Neuropathol(1999)97:231-239)によって記載されている技術が挙げられる。
【0094】
概して、細胞は、MOSを形成する前に、最初に互いに解離又は分離される。細胞の解離は、当該技術分野で既知の任意の従来の手段によって達成され得る。好ましくは、細胞は、酵素による処理などによって、機械的及び/又は化学的に処理される。「機械的に」とは、例えば、メス若しくはハサミを使用するか、又はホモジナイザーなどの機械を使用することによって、関連する細胞間の接続を破壊する意味を含む。「酵素的に」とは、例えば、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、DNAse、及び/又はヒアルロニダーゼのいずれかを含む、関連する細胞間の接続を破壊する1つ以上の酵素で細胞を処理する意味を含む。1つ以上の酵素は、水浴中37℃で又は室温でのインキュベーションなどの異なる反応条件下で使用することができる。
【0095】
解離組織を処理して、死んだ細胞及び/又は死にかけた細胞及び/又は細胞デブリを除去してもよい。そのような死んだ細胞及び/又は死にかけた細胞の除去は、例えば、ビーズ及び/又は抗体方法を使用して、当業者に既知の任意の従来の手段によって達成することができる。例えば、ホスファチジルセリンが、アポトーシス性細胞又は死細胞において形質膜リーフレットの内側から外側に再分布することが知られている。アネキシンV-ビオチン結合の使用、続いて、ビオチンのストレプトアビジン磁性ビーズへの結合は、生細胞からのアポトーシス性細胞の分離を可能にする。同様に、細胞デブリの除去は、例えば、濾過を含む、当該技術分野の任意の好適な技術によって達成され得る。
【0096】
解離細胞は、流体マトリックス材料と組み合わせる前に、担体材料及び/又は流体マトリックス材料(担体材料と称され得る)中に懸濁してもよい。いくつかの実施形態では、担体材料は、MOSを重合及び形成する前に、細胞懸濁液中の細胞の沈降を遅らせる粘度レベルを有する材料であり得る。担体材料は、重合するまで、解離生検組織細胞が懸濁液中に懸濁されたままであることを可能にするのに十分な粘度を有し得る。これを達成するために必要な粘度は、当業者によって、様々な粘度での沈降速度をモニタリングし、細胞を含む未重合材料の液滴を重合することによってMOSを形成する装置に細胞懸濁液を充填する間の予想される時間遅延に対して適切な沈降速度を与える粘度を選択することによって、最適化することができる。いくつかの実施形態では、未重合材料は、細胞を懸濁液中に維持及び/又は所望に応じて分布させるために、より低粘度の材料が使用される場合でも、装置によって流動又は撹拌され得る。
【0097】
前述のように、いくつかの実施形態では、解離組織試料及び流体マトリックス材料を含む未重合混合物は、1つ以上の成分(例えば、生物学的に関連する材料)を含み得る。例えば、含まれ得る生物学的に関連する材料は、細胞外マトリックスタンパク質(例えば、フィブロネクチン)、薬物(例えば、小分子)、ペプチド、又は抗体(例えば、細胞の生存、増殖、若しくは分化のいずれかを調節するためのもの)のいずれか、及び/又は特定の細胞機能の阻害剤であり得る。かかる生物学的に関連する材料は、例えば、細胞死及び/又は細胞成長/複製の活性化を低下させることによって細胞生存能を増加させるために、又はそうでなければインビボ環境を模倣するために使用され得る。生物学的に関連する材料は、以下の成分:血清、インターロイキン、ケモカイン、成長因子、グルコース、生理学的塩、アミノ酸、及びホルモンのうちの1つ以上を含み得るか、又は模倣し得る。例えば、生物学的に関連する材料は、流体マトリックス材料中の1つ以上の薬剤を補充し得る。いくつかの実施形態では、流体マトリックス材料は、合成ゲル(ヒドロゲル)であり、1つ以上の生物学的に関連する材料によって補充され得る。いくつかの実施形態では、流体マトリックスは、天然ゲルである。したがって、ゲルは、1つ以上の細胞外マトリックス成分、例えば、コラーゲン、フィブリノーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ヒアルロン酸、フィブリン、アルギン酸塩、アガロース、及びキトサンのいずれかから構成され得る。例えば、MATRIGELは、細胞の生存能、増殖、発生、及び遊走に重要な生物活性ポリマーを含む。例えば、マトリックス材料は、ラット尾から得られるコラーゲン1型などのコラーゲン1型を含むゲルであり得る。ゲルは、他の細胞外マトリックスタンパク質などの他の成分に加えて、純粋なコラーゲン1型ゲルであり得るか、又はコラーゲン1型を含有するゲルであり得る。合成ゲルは、天然に存在しないゲルを指し得る。合成ゲルの例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)のいずれかに由来するゲルが挙げられる。
【0098】
MOS
MOSの例を図1A図1C図2A図2C図3A図3C、及び図4A図4Eに示す。例えば、図1A図1Cは、MOS当たり単一の細胞を有する、形成されたMOSを示す。示されるように、MOSは全て、ほぼ同じサイズ(例えば、直径約300μm)である。図1Bは、培養3日後に同時に形成されたMOSを示す。細胞は、サイズが拡大しており、場合によっては倍加及び/又は成長している。図1Cに示されるように、培養7日目までに、細胞は複数回倍加し、細胞のクラスター又は塊を示す。
【0099】
同様の結果が、図2A図2C及び図3A図3Cに示される。それぞれ、MOS当たり5個の細胞又はMOS当たり20個の細胞から形成されたMOSを示す。図4A図4Eでは、形成直後のMOS及び5日間培養したMOSが示される。MOSはほぼ同一であり(例えば、同じ直径を有し)、各々、MOS当たり10個の細胞を含む。図4Aでは、形成直後のMOSが示されており、0日目は、依然として不混和性流体(この場合は油)に囲まれている。不混和性流体からMOSを除去し、洗浄し、5日間培養する。図4Bは、2日後のMOSを示し、図4Cは、3日後のMOSを示し、図4D及び図4Eは、それぞれ、4日目及び5日目のMOSを示す。図4A図4Eは、MOS内の生検からの解離組織(細胞)が生存しており、ほぼ全てのMOS内で同等の速度で成長していることを示す。ここでより詳細に説明されるように、これらのMOSは、単一の平均サイズの生検からでも大量に形成され得、かなりの数の生存細胞を含む数百又は数千個(例えば、500、750、1000、2000、5000、10,000個、又はそれ以上)のMOSが生成され得、複数の迅速なアッセイを並行して行うことが可能になる。
【0100】
図5A及び図5Bは、マウス肝臓の解離生検から本明細書に記載されるように形成されたMOSの例、例えば、重合流体マトリックス材料(この例では、MATRIGEL)内に分布するマウス肝細胞を示すMOSの例を示す。各MOSは、設定された数の肝細胞507が分散している、例えば、約300μmの直径を有する球体に形成された重合マトリックス材料503を含む。図5Aでは、生検、解離、及びMOSの形成後1日目のMOSが示されている。次いで、これらのMOSを10日間培養した。その間、図5Bに示されるように、細胞(肝細胞)は生存し続け、成長し、多くの場合、複数回倍加し、構造505を形成した。
【0101】
MOSは、概して、MOS内の固定数又は既知の数の細胞及び/又は濃度(細胞/ml又は細胞/mm3)で解離(例えば、生検)組織(例えば、細胞)を含み得る。前述のように、このマトリックス材料は、アルギン酸塩、アガロース、ヒアルロン酸、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、エラスチンのうちの1つ以上などの天然ポリマー、又はポリエチレングリコール(PEG)及びポリアクリルアミドのうちの1つ以上などの合成ポリマーであり得る。有機合成ポリマー及び無機合成ポリマーの両方が使用され得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、MOSに最初に含まれる細胞の数は、1細胞~数百細胞から選択され得る。具体的には、いくつかのアッセイ(例えば、薬物毒性アッセイ)では、約1~75個又は約1~50個(例えば、より少ない数の細胞)を含むことが有益であり得る。MOS当たりの細胞の数は、ユーザによって設定又は選択され得る。いくつかの実施形態では、以下に説明するように、装置は、各MOSに含まれる初代組織からの細胞の数を設定するための1つ以上の対照を含む。細胞の数は、ユーザがMOSをどのように使用することを意図するかに基づいて選択又は設定され得る。例えば、非常に少ない数の細胞を有するMOS(例えば、MOS当たり1細胞、MOS当たり1~5細胞など)は、クローン多様性の研究(例えば、腫瘍の異種性)に特に好適であり得る。各MOSは、単一の細胞から成長するので、どのクローンが薬剤耐性であるかを観察することができ、これらの特異的MOSは、特定のクローンに関連するゲノム(変異)多様性を決定するために(例えば、ゲノム配列決定によって)検査され得る。MOS当たりの低度~中程度の数の細胞(例えば、約3~30個の細胞、5~30個の細胞、5~25個の細胞、5~20個の細胞、10~25個の細胞など)は、これらのMOSが典型的には急速に成長するので、迅速な薬物試験(毒性試験を含む)に特に有用であり得る。MOSは、上皮(又はがんなど)及び間葉系(又は間質、免疫、血管など)細胞を含む可能性のある異なる系統を含み得るため、MOS当たりのより多くの数の細胞(例えば、約20~100個の細胞、例えば、30~100個の細胞、40~100個の細胞、50個を超える細胞など)は、各MOSにおける組織組成を模倣するために特に好適であり得る。
【0103】
MOSは、任意の適切なサイズで形成されてもよく、これは、含まれる細胞の数に一致してもよい。例えば、サイズは、直径が約20μmと小さくてもよく、最大500μm(例えば、平均で50又は100μm、例えば、約100~200μmなど)であり得る。いくつかの実施形態では、サイズは、約300μmであり、各MOSには、約10~50個の細胞(例えば、約10~30個の細胞)が含まれる。細胞の数及びサイズは、変動してもよく、かつ/又は制御されてもよい。いくつかの実施形態では、MOSの細胞の数及び/又はサイズは、MOSを形成する装置上で1つ以上の制御によって設定され得る。例えば、MOSのサイズ及び/又はMOS内の細胞の密度は、解離組織試料(例えば、生検からの細胞)の流量及び/又は濃度を調節することによって調節され得る。
【0104】
図1A図5Bに示されるように、本明細書に記載のMOSを培養した後でも、MOSの全体積を通して生存可能で健康な細胞を可能にする。MOSのサイズ及び/又はMOSに含まれる細胞の数は、MOSがどのように使用されることが予想されるか、又は使用されることが意図されるかに基づいて選択され得る。例えば、MOSが生検材料の細胞間の関係を調べるために使用される実施形態では、MOSは、複数の細胞を有するように形成されてもよく、長期間(例えば、最大1週間又はそれ以上)培養されてもよい。
【0105】
本明細書に記載のMOSは、解離組織試料(例えば、生検試料)を、制御された様式で重合してMOSを形成し得る流体マトリックスと組み合わせることによって作製され得る。図6は、MOSを形成する1つの方法を示す。任意選択的に、本方法は、患者組織601から生検を採取するなど、患者から試料を採取することを含み得る。前述のように、生検は、例えば、生検針又はパンチを使用して行われ得る。例えば、生検は、生検を取り出すために患者組織に挿入される14ゲージ、16ゲージ、18ゲージなどの針を用いて採取され得る。患者から組織を取り出した後、組織は、材料を機械的及び/又は化学的に解離するように処理され得る。解離された細胞は、記載のように、直ちにMOSを形成するために使用してもよく、いくつかの実施形態では、細胞の全て又は一部は、例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーションなどによって、細胞603を遺伝子改変することによって改変してもよい。
【0106】
生検材料からの解離組織試料は、流体(例えば、液体)マトリックス材料と組み合わされて、未重合混合物605を形成し得る。この未重合混合物は、解離組織からの細胞が混合物内に懸濁されたままであり得るように、未重合状態で保持され得る。いくつかの実施形態では、細胞は、例えば、室温以下(例えば、1~25℃)で冷却されたままに保つことによって、疑わしく、未重合のままであってもよい。
【0107】
次いで、未重合混合物は、液滴のサイズの形成(したがって、形成されたMOS607のサイズ)を制御する様式で、例えば、油などの不混和性材料中に、液滴として分配され得る。例えば、均一なサイズの液滴は、未重合材料の流れを、不混和性材料(例えば、油)の1つ以上の流れと組み合わせる(例えば、2つが収束する)ことによって形成され得、その結果、2つの流れの流量及び/又は圧力は、未重合材料の液滴が不混和性材料と交わるときにどのように形成されるかを決定し得る。液滴を重合609して、不混和性材料中にMOSを形成することができる。いくつかの実施形態では、不混和性材料は、未重合混合物(例えば、未重合材料中の流体マトリックス材料)を重合させる温度まで加熱又は加温され得る。一度形成されると、MOSは不混和性流体から分離され得、例えば、MOSを洗浄して、不混和性流体611を除去し、培地中に配置して、MOS内の細胞を成長させることができる。MOSは、任意の所望の時間培養してもよく、凍結保存及び/若しくは直ちにアッセイしてもよい。いくつかの実施形態では、MOSは、短期間(例えば、1~3日間、1~4日間、1~5日間、1~6日間、1~7日間、1~8日間、1~9日間、1~10日間、1~11日間、1~14日間など)培養され得る。これにより、解離生検組織に由来する細胞が、最大5回又は6回の継代の間、成長及び/又は分裂(例えば、2回)することが可能になり得る。培養後、細胞は、凍結保存615及び/若しくはアッセイ617のいずれかが行われるか、又はその両方が行われ得る。使用され得るアッセイの例も、本明細書に記載される。
【0108】
本明細書に記載のこれらの方法及び装置のいずれかでは、MOSは、重合後に不混和性流体(例えば、油)から回収され得る。例えば、いくつかの実施形態では、MOSは、解乳化及び/又は脱乳化によって、例えば、乳化された液滴を形成し、液滴が形成された後にMOSを回収して、任意の油(及び他の汚染物質)を除去することによって回収され得る。これにより、細胞は、不混和性流体によって阻害されることなく、重合した液滴(MOS)内で成長することができる。
【0109】
本明細書に記載の方法及び装置は、未重合混合物を不混和性流体(例えば、油又は他の疎水性材料)の1つ以上の流れに流すことによって、複数の液滴、したがって、複数のMOSを形成する方法を例示するが、いくつかの実施形態では、液滴は、本明細書に記載されるように、液滴のサイズを制御することを可能にし得る他の方法によって形成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、液滴は、印刷することによって(例えば、液滴を表面に印刷することによって)形成され得る。これは、乳化/脱乳化の追加の回収工程の必要性を低減又は排除し得る。例えば、液滴は、平坦な表面又は形作られた表面などの表面上に印刷され、重合され得る。これらの実施形態のいずれかでは、液滴は、圧力、音、電荷などを使用して分配され得る。いくつかの実施形態では、液滴は、少量の未重合混合物を表面上に、空気中に、及び/又は液体媒体(不混和性流体を含む)中に放出するように適合された自動ディスペンサ(例えば、ピペッティングデバイス)を使用して形成され得る。
【0110】
MOSを形成するための方法は、自動化され得るか、又は1つ以上の装置を使用して行われ得る。特に、MOSを形成する方法は、MOSのサイズ(したがって、細胞数の密度)の選択及び/又は制御を可能にする装置によって行われ得る。例えば、図7Aは、記載のように、MOSを形成するための装置700の一例を示す。
【0111】
図7Aでは、装置は、典型的には、解離組織試料及び流体マトリックス材料の(既に組み合わされている)未重合混合物のいずれかを入力するための入力を含むか、又は(例えば、保持溶液中の)解離組織試料及び流体マトリックス材料を別々に受け取ってもよい。いくつかの実施形態では、装置は、未重合混合物を保持するための保持チャンバ706、及び/又は解離組織(例えば、生検)試料を保持し、流体マトリックス材料を保持するための保持チャンバ(図示せず)を含む。これらの保持チャンバのいずれか又は全てを加圧して、チャンバから出て装置に入る流体の流れを制御及び/又は加速することができる。装置は、未重合混合物を受け取ってもよく、成分を受け取って混合してもよい。いくつかの実施形態では、装置は、未重合混合物中の細胞の濃度を制御することができ、混合物を希釈することができる(例えば、追加の流体マトリックス材料を添加することによって所望の密度を達成する)。例えば、装置は、未重合混合物中の細胞の密度(例えば、光学密度)を読み取るためのセンサ(例えば、光学リーダ)を含み得る(図示せず)。センサはまた、コントローラ724に結合されてもよい。これは、未重合混合物中の細胞の希釈を自動的又は半自動的に(例えば、ユーザに示すことによって)制御することができる。装置はまた、未重合混合物を受け入れるためのポートを含み得る。ポートは、バルブを含んでもよく、バルブに結合されてもよく、バルブは、コントローラ724(又は別個のコントローラ)によって制御されてもよい。
【0112】
装置700は、不混和性流体を保持及び/又は受容するためのチャンバ708及び/又はポートを含み得る。いくつかの実施形態では、不混和性流体は、流量が制御され得るように、加圧されたチャンバ内に保持され得る。加圧チャンバのいずれかは、コントローラ724によって制御され得、コントローラ724は、1つ以上のポンプ726を使用して、圧力、したがって、装置を通る流れを制御することができる。デバイスを通る流れをモニタリングするために、1つ以上の圧力及び/又は流量センサがシステムに含まれ得る。
【0113】
図7Aでは、装置700全体がハウジング702内に納められ得るか、又は装置704の一部がハウジング内に納められ得る。いくつかの実施形態では、ハウジングは、例えば、不混和性流体及び/又は未重合混合物を添加するための、デバイス上に1つ以上の開口部又はアクセス部分を含み得る。
【0114】
前述のように、これらの装置700のいずれかはまた、製造プロセスの全て又は重要な部分主要な部分をモニタリングするための1つ以上のセンサ728を含み得る。いくつかの実施形態では、センサは、光学センサ、機械的センサ、電圧及び/又は抵抗(又はキャパシタンス、又はインダクタンス)センサ、力センサなどを含み得る。これらのセンサは、MOSの形成を含む、アセンブリの進行中の動作をモニタリングするために使用され得る。装置700はまた、不混和性流体及び/又は未重合性混合物(及び/又は流体マトリックス材料)のいずれか又は両方の温度を制御するための1つ以上の熱/温度調節器718を含み得る。
【0115】
これらの装置のいずれかは、図7C及び図9に以下に示されるように、(例えば、1つ以上のセンサを使用して)モニタリングされ得る1つ以上の液滴形成アセンブリ720を含み得る。液滴MOS形成アセンブリは、ディスペンサ(例えば、MOSディスペンサ)722を含み得る(又はそれと結合され得る)。ディスペンサは、例えば、マルチウェルプレート716に分配し得る。
【0116】
概して、液滴MOS形成アセンブリ720は、1つ以上のマイクロ流体チップ730、又は未重合混合物の流れを形成及び制御し、実際の液滴を形成する構造を含み得る。図7Bは、MOS730を形成するためのマイクロ流体チップの一例を示す。図7Bでは、チップ730は、MOSを形成するための一対の平行構造を含む。図7Cは、MOSを形成するためのマイクロ流体チップの液滴形成領域を示す。これには、チャネル出口741及び不混和流体出口(複数可)743、743’に対して交差部737の「+」接合部又は領域を(この例では、直角に)開く未重合チャネル出口741が含まれる。いくつかの実施形態では、不混和性流体チャネル(複数可)からの入力は、未重合材料との角度(及び交点)に対してある角度をなしていてもよい。図7Cでは、寸法を示すこの説明の全ての図と同様に、示される寸法は単に例示的であり、それらが別途指定されない限り、限定することを意図しない。
【0117】
図7Aでは、マイクロ流体チップ730は、(例えば、図7Aに示される入口ポート又は保管チャンバから)チップへの不混和性流体のための入口(入力ポート)733を含む。チップへの第2の入口ポート735は、未重合材料を受け取り、それを半蛇行した経路で接合領域に輸送するように構成され得る。同様に、不混和性流体の入口ポートは、上記の不混和性流体チャンバ又は入口から出口に確実に結合され得る。
【0118】
チップへの未重合材料のための入口ポート735は、(図7Cに示されるように)入口を接合領域に接続する送達経路741を介して結合され得る。同様に、不混和性流体のための入口733は、接合領域737への2つ(又はそれ以上)の接続経路743、743’に接続し得る。接合領域737を離れるチャネルは、(不混和性流体中に)形成されたMOSを、チャネルを下って出口731まで通過させ得る。出口731は、MOSから(例えば、培養/又はアッセイ用の)1つ以上のチャンバに分配するためのディスペンサ(図示せず)に接続し得る。
【0119】
図7B及び図7Cに示される例では、形成された液滴は、重合するとMOSになり得、装置(図示せず)から分配される前に、長い温度制御されたマイクロ流体環境に伝達され得る。例えば、図8は、各々所定の数の細胞805を含む複数のMOS803を含む、透明に示されているチャネル領域839(例えば、図7Bの要素739)の一例を示す。
【0120】
図9では、接合領域937は、未重合混合物911を運ぶチャネルが、未重合混合物と不混和性である流体(例えば、油)を運ぶ1つ以上(例えば、2つ)のチャネル909と交差するように、上記のように形作られる。未重合混合物が第1のチャネル911から第1の速度で流れるように加圧されると、交差チャネル909、909’内を流れる不混和性流体は、所定量の未重合混合物を通過させた後、未重合混合物をちぎって液滴903(出口チャネル939に送られる)を形成することを可能にする。したがって、いくつかの実施形態では、直径<1mmなどの組織の粉砕(例えば、解離)された臨床(例えば、生検又は切除)試料を、温度感受性ゲル(すなわち、4℃のMATRIGEL)と混合して、未重合混合物を形成し得る。この未重合混合物は、マイクロ流体デバイスに配置され得る。これにより、体積及び材料組成が均一である液滴(例えば、油中水液滴)が生成され得る。同時に、解離腫瘍細胞は、これらの液滴に分画され得る。未重合材料中のゲルは、(例えば、37℃で)加熱すると固化し得、結果としてMOSが形成され得る。いくつかの実施形態では、この方法を使用して、組織(例えば、生検材料)から10,000超(例えば、20,000超、30,000超、40,000超、50,000超、60,000超、70,000超、80,000超、90,000超、100,000超)の均一な液滴(MOS)が生成され得る。これらのMOSは、従来の3D細胞培養技術と互換性がある。図10は、上記のように形成され、不混和性材料1008(例えば、油)に懸濁された複数のMOS1005を示す。
【0121】
上に図示された例示的なマイクロ流体チップでは、接合部は、マイクロ流体のフローフォーカシングがMOSの制御可能なサイズを形成するT接合部又はX接合部として示されている。いくつかの実施形態では、液滴は、例えば、不混和性流体中に及び/又は固体若しくはゲル基板上に、マイクロ流体チップの代わりに、ロボットマイクロピペッティングによって形成され得る。代替的に、いくつかの実施形態では、未重合材料の液滴は、マイクロキャピラリ生成によって、必要な寸法及び再現性で形成され得る。代替的に、指定されたサイズ範囲でMOSを形成し、未重合材料から再現性を得るために使用され得る技術の他の例としては、例えば、音響、磁気、慣性、エレクトロウェッティング、又は重力などの外力によるコロイド操作が挙げられる。
【0122】
図11A及び図11Bは、上記のように形成された油中のMOSの例を示す。図15A図15B及び図16A図16Bに示されるように、生体色素染色によって見られるように、単一の生検試料に由来するこれらのMOS中の細胞は生存可能である。例えば、図12A図12Bは、不混和性材料(例えば、油)を除去するために洗浄され得る腫瘍細胞(図11A図11Bに示されるものと同様)を有するMOSを示す。この不混和性材料は、MOS内の細胞への損傷を防止するために、MOSを形成した後、比較的迅速に除去され得る。
【0123】
以下の実施例に記載されるように、本明細書に記載のMOSは、様々な薬物製剤の有効性の良好なモデルを提供する。薬剤(様々な薬物及び他の療法を含む)の効果は、肝臓毒性及び薬物誘発性肝臓損傷の影響について試験することができる。
【0124】
いくつかの実施形態では、ゲル液滴は、油相から回収され、例えば、PFO(ペルフルオロオクタノール)及び遠心分離を介してPBS中に再懸濁される。これは、MOSから不混和性流体を分離し得る。したがって、上記の図1A図1C図2A図2C図3A図3C、及び図4A図4E、並びに図13に示されるように、腫瘍ベースのMOSを含むこれらのMOSは、正常に成長することができる。これは、患者の転帰を予測するために、患者の腫瘍からの特性を保持している生存可能かつ成長している初代腫瘍細胞に対して薬物スクリーニングが行われなければならないため、重要な改善である。これらのMOSの数が多く、均一であるため、以下に説明するように、スクリーニングが可能かつ信頼性の高いものになる。
【0125】
本明細書に記載のマイクロ流体チップ又はデバイスのいずれかでは、チャネルはコーティングされ得る。例えば、マイクロ流体デバイスのチャネルは、疎水性材料でコーティングされ得る。
【0126】
概して、本明細書に記載のMOSは、直径が非常に均一であり、非常に小さいサイズ(例えば、直径、分散)を有し得る。これは、例えば、液滴の直径サイズの一例の分布を示す図14に示されている。
【0127】
前述のように、図15A図15Bは、本明細書に記載のように形成されたMOSを示す。図16A図16Bでは、これらのMOSをトリパンブルー(矢印)で染色し、それらが生きていることを示している。このようにして液滴として形成されたMOSは、組織が生じた生物学的環境を模倣するために、成長因子及びマトリックスを含み得る。患者試料(例えば、生検試料)は、組織を取得してから数時間以内にMOS(数百、数千、又は数万のMOSを含む)に形成され得る。MOSは、MOS当たりわずか1個又は4~6個の細胞(例えば、腫瘍をサンプリングするときのがん細胞)を有してもよく、数百個もの細胞を有してもよい。これらの方法は、結腸がん、食道がん、黒色腫、子宮がん、肉腫がん、腎臓がん、肝臓がん、卵巣がん、肺がん、横隔膜がん、網がん、横隔膜がん、及び乳がん組織を含む、これまでに試験された事実上全てのタイプのがん及び非がん組織(n=32)に対して機能することが示されている。MOSは、任意の所望の期間培養され得、典型的には、わずか3~4日で増殖及び成長を示す。それらは、数ヶ月間維持及び継代され得る。以下により詳細に説明するように、それらを使用して、組織を採取(例えば、生検)してからわずか4~6日以内に、何千もの薬物組成物をスクリーニングすることができる。
【0128】
本明細書に記載のMOSは、それらが形成された後の任意の時点で、例えば、それらを凍結保存することによって、バンクされ得る。腫瘍MOSは、多くの異なる患者から採取され得、毒性及び/又は有効性を決定するために、複数の薬物製剤をスクリーニングするために、個別に又は集合的に使用され得る。非腫瘍細胞(健康な組織)も、生検され、バンドされ、かつ/又は並行してスクリーニングされ得る。したがって、これらの方法及び装置は、ハイスループットスクリーニングを可能にし得る。いくつかの実施形態では、MOSを形成し、2回継代(例えば、2回倍加)し、凍結保存することができる。前述のように、正常な健康な組織を使用して、これらの同じMOSを形成して、数百、数千、又は数万のMOSを生成することができる。これらは、薬物効果、薬物応答、バイオマーカー、プロテオイミックシグナル、ゲノムシグナルなどをアッセイするために使用され得る。
【0129】
これらのMOSが生物学的に有意な様式で生存することは特に重要であり、図22A図22D及び図23A図23Dに記載されるように、特に、薬物応答に関して、臨床的及び生理学的に関連するデータを提供することを可能にする。特に、本明細書に記載のMOSは、特にオルガノイド又はスフェロイドと比較して、組織抽出物/生検起源の細胞が非常に良好に成長し、より代表的なデータを提供することを可能にする。特定の理論に束縛されるものではないが、これは、細胞がMOSでより制約された細胞密度を有し得、細胞がシグナルを共有しながら互いを阻害することなく通信することを可能にするためであり得る。MOSはまた、非常に大きな表面積対体積比を有し、成長因子及び他のシグナルの伝達がより容易にMOSに浸透することを可能にする(例えば、MOSは拡散制限が少ない)。
【0130】
アッセイ
本明細書に記載のMOSは、様々な異なるアッセイで使用することができ、特に、正常及び/又は異常(例えば、がん性)組織に対する薬物製剤の影響(毒性を含む)を決定するために使用することができる。例えば、薬物スクリーニングは、マルチウェル(例えば、96ウェル)プレートの全て又は一部のウェルにMOSを適用することを含み得る。代替的に、カスタムプレートが使用され得る(例えば、10,000マイクロウェルアレイは、100×100ウェルから形成され得る)。MOS(例えば、ゲル液滴)は、複数のマイクロウェルアレイ中に適用されるか、又はいくつかの実施形態では、複数のマイクロウェルアレイ上に適用され、培養培地とインキュベートされ得る。MOSは、3~5日間にわたって培養され得る。次いで、いくつかの実施形態では、5日目に、ウェル(例えば、マイクロリアクタ)に、例えば、FDA承認抗がん剤のセットに基づいて、薬物化合物を投与して、薬物パネルの影響を調べることができる。例えば、テキスト化された薬物は、がん研究、創薬、及び併用薬物試験を可能にすることが意図された147種の薬物からなる国立がん研究所(がん治療及び診断部門)スクリーニングに基づいてもよい。7日目に、MOSを標準的な蛍光顕微鏡を介してイメージングし、薬物応答に基づいてランク付けしてもよい。
【0131】
このアッセイ技術の例を、図17A図17Eに示す。
【0132】
この例では、スクリーニングアッセイは自動化され得る。これにより、反復可能で自動化されたワークフローが可能になり得、これにより、スクリーニングされる薬物の数が数個から数百個に増加し得る。図17A図17Eは、このワークフローの一例を示す。図17Aでは、腫瘍生検が採取され、複数の(例えば、>10,000)MOSが、上記のように形成される(図17Aでは、MOSを形成する接合領域が示されている)。その後、MOSを回収し、(例えば、それらが形成された不混和性(例えば、油)材料を除去するために)洗浄することができる。次いで、MOSは、1つ以上のマイクロウェルプレートにプレーティングされ得る。図17Cに示されるように、MOSは、1世代以上(例えば、1回以上の継代)にわたって培養され得る。これは、0日目から3日目、4日目、又は5日目までに生じることを示す。その後、図17Dに示されるように、例えば、レプリカントウェルのサブセットに薬剤を適用することによって、MOSをスクリーニングすることができる。その後、図17Eに示されるように、7日目に、MOS中の細胞は、イメージングされてもよく、かつ/又は薬物の影響(例えば、薬物スクリーニング及び成長プロファイリング)を特定するために自動若しくは手動でスコアリングされてもよい。
【0133】
図17A図17Eに示されるワークフローは、MOSの成長、投薬、及び/又は審査のために統合デバイスを使用することを可能にし得る。1つの例示的なデバイスでは、新たに生検又は切除された患者腫瘍試料は、(上記のように)MOSを形成するために、解離され、試薬とともにゲルに播種され得る。形成されたMOSの一部は、凍結保存され得る。残りは、先ほど説明したように、薬物試験又はスクリーニングのためにマイクロウェルプレートに播種されるまで回収及びインキュベートされ得る。成長及び生存能アッセイは、MOSに対して行うことができ、これは、イメージングされ、追跡され得る。IC-50、細胞毒性、及び成長曲線などの薬物治療に対するそれらの応答を測定して、患者の腫瘍に対する有効な療法を特定することができる。
【0134】
本明細書に記載の方法及び装置は、再現性を含む多くの利点を有する。試料調製プロセスは、マイクロ流体試料分画によって自動化され得、これは、診断検査及び手動ピペッティングのための専門職員の必要性を低減する可能性がある。これは、臨床環境で特に有用であり得る。更に、これは、シグナル液滴間の均一性を可能にし得、アッセイ感度を増加させる。加えて、これらのアッセイは、MOSを生成するのに必要な時間を最小限に抑え得る。予備データに基づいて、これらの方法は、約15分未満で100,000を超えるMATRIGEL-腫瘍液滴(MOS)のライブラリを生成することができる場合がある。これらの方法はまた、非常に拡張性が高く、複数の患者生検を並行して行うために多重化することができる。
【0135】
最後に、これらの方法は、柔軟性があり、他の技術と互換性がある。研究ツールとして、液滴ベースのマイクロ流体は、概して、アガロース、アルギン酸塩、PEG、及びヒアルロン酸などの幅広いヒドロゲル材料と互換性がある。したがって、出発ゲル組成物は、MOSの成長を伴い、促進するように容易に改変することができる。更に、液滴サイズは、マイクロ流体デバイスのサイズを改変することによって調整することができる。総合すると、これらは、ゲル材料組成物及びマイクロリアクタのサイズの幅広い選択を可能にする。
【0136】
例えば、MOSを使用して、本明細書に記載の小型アッセイは、患者の腫瘍生検を最大化し、より多くの薬物化合物をスクリーニングすることを可能にし得る。例えば、600uLの腫瘍試料は、体積が約4nLである約143,000の個々のマイクロリアクタに分画され得る。組織試料を最大化することによって、複数の実験反復を調べることができ、検定力を増加させる。これらの技術は、腫瘍内不均一性、薬物摂動の検査を可能にし、薬物耐性などのまれな細胞事象を特定し得る。MOSは、概して、単一細胞RNAトランスクリプトーム分析及びエピジェネティックプロファイリングを含む下流アッセイと互換性があり得る。加えて、MOSによって提供される組織(例えば、生検)試料の効率を最大化することによって、MOSの一部分は、遺伝子スクリーニングを含む、将来の新規薬物アッセイ及び/又は確認分析のために(例えば、バイオバンキングのための凍結保存によって)バンクされ得る。
【0137】
例えば、図18及び図19は、本明細書に記載のMOSを含む方法及び装置を使用する治療方法を示す。精密医療及び個別化医療の場合、これらの方法及び装置は、臨床転帰及び薬物応答を改善するための適切な薬物選択のための臨床指標として使用され得る。一実施形態として、転移性がんと診断された患者は、本明細書に記載されるような生検から形成された複数のMOSの組織病理学及びスクリーニングのための生検を受ける。7~10日以内に、生検からスクリーニングを行って、患者が14日前後で治療を開始できるように、最も効果的な標準治療療法を特定してもよい。
【0138】
この例を、図18に示す。この実施例では、腫瘍は、0日目に(例えば、CTスキャンによって)1801で特定され得、生検は、5日目に1805で採取され、同じ日に数百、数千、又は数万のMOSが形成され、1~5日間培養され、スクリーニング1805して、使用され得る1つ以上の薬物組成物を特定することができる。この同じステップ(MOSを形成し、スクリーニングすること)を使用して、疾患の進行全体を通して複数の臨床決定時点で精密医療を導くことができる。この例では、特定された1つ以上の薬物組成物を使用する療法は、14日目(1809)に開始されてもよく、患者は、後で治療過程(例えば、約90日目のフォローアップCTスキャン)の間にモニタリングされてもよく、腫瘍が治療1811に応答していることを確認する。その場合、療法が継続1813され、進行中の進行がモニタリング1815され得る。
【0139】
前述のように、アッセイへのMOSの使用は、治療全体を通して、及び治療過程の間に、複数の時点で繰り返され得る。これを図19に示す。例えば、患者が最初に切除可能な原発腫瘍と診断1907された場合、この技術(例えば、MOSの生成及びスクリーニング1905)を使用して、最も有効なネオアジュバント療法1921を決定することができる。したがって、生検が採取され得、数百、数千、又は数万のMOSが形成され得、候補薬物組成物のパネルでスクリーニングされ得る。原発腫瘍が切除1923されると、この技術1905’は、アジュバント療法を選択すべきかどうか及びどのアジュバント療法を選択すべきか1925を示し得る。原発腫瘍1927の外科的除去後に再発又は転移が生じる場合、同じ技術(例えば、新鮮な生検1905”、1905’’’、195’’’’からのMOSの生成及びスクリーニング)を使用して、第1選択1929、第2選択1931、及び第3選択1933療法を含む標準治療療法を導くことができる。患者が最終的に全ての標準治療療法に対して寛容又は耐性になる場合、この技術1905’’’’’を行って、耐性の腫瘍1935を治療するための適応外薬物を特定することができる。この技法は、特定の治療のための患者を特定するためのコンパニオン診断としても使用され得る。最後に、この技術を使用して、患者由来のMOSを導出及び保存し、スクリーニング、ゲノムプロファイリング、新薬発見、薬物試験、及び臨床試験設計のためのオルガノスフェアベースの生きたがんバンクを確立することができる。
【0140】
これらの技術、及び膨大な数のMOSの生成は、スクリーニングからの合理的に迅速な結果を提供するために、比較的低侵襲性で(例えば、切除又は生検によって)行われ得るため、これらの方法は、標準治療に容易に適合され得る。例えば、組織(例えば、生検)入力からの細胞材料の体積は非常に小さく、例えば、10μL~5mlの体積に解離され得る。
【0141】
概して、スクリーニングのための本明細書に記載のMOSの使用は、自動化されてもよく、手動で行われてもよい。共焦点顕微鏡、蛍光顕微鏡、液体レンズ、ホログラフィー、ソナー、明視野及び暗視野イメージング、レーザー、平面レーザーシート(例えば、コンピュータビジョン及び/又は教師あり若しくは教師なしモデル、例えば、CNNを使用する画像ベースの分析方法のハイスループット実施形態を含む)のうちの1つ以上によるイメージングを含む、実質的に任意のスクリーニング技術が使用され得る。下流スクリーニングは、培地をサンプリングすること及び/又はMOSからの細胞上で遺伝子又はタンパク質スクリーニング(例えば、scRNA-seq、ATAC-seq、プロテオミクスなど)を行うことを含み得る。
【実施例
【0142】
実施例1
図20及び図21は、本明細書に記載のような複数のMOSを形成するための装置の別の例を示す。図20では、装置は、不混和性材料(例えば、油)2002がデバイスにおけるリザーバ及び/又はポート2004に添加され得る複数のMOS形成接合部を含んでもよい。同様に、未重合材料2006(この例では、解離生検細胞及び流体マトリックス材料を含む)は、装置におけるリザーバ又はポート2008に添加され得る。いくつかの実施形態では、第2の又は追加の材料(例えば、生物学的に活性な薬剤)は、ポート2010の第3のセットを介して添加され得る。これらの成分は、MOSに重合され得る不混和性材料中に液滴を形成する接合部(上に記載のものと同様)で組み合わされ得る。図20では、対応する入力及び出力を有する3つ(又はそれ以上)の並列接合部が示されている。
【0143】
図21は、図20に示される装置を使用してMOSを形成する方法を示す。この実施形態では、得られるMOSは、標的(例えば、腫瘍)生検細胞と、また、MOSを形成するために組み合わされる1つ以上の追加の生物学的活性剤との両方を含む。例えば、第1のチャネル2103は、未重合材料(解離生検細胞及びマトリックス材料を含む)を含み得、第2のチャネル2107は、追加の活性生体材料を含み得、不混和性材料(例えば、油)を運ぶ一対の交差チャネル2109、2109’は、接合部で収束し、MOS2107を形成するために重合されるサイズ制御された液滴を形成する。
【0144】
この例では、追加の活性生体材料は、例えば、凍結培地(例えば、MOSのバンクを補助するために)、並びに/又は追加の細胞(例えば、免疫細胞、間質細胞、内皮細胞など)、追加の支持ネットワーク分子(例えば、ECM、コラーゲン、酵素、糖タンパク質、生体模倣足場など)、追加の成長因子、及び/若しくは薬物化合物との共培養であり得る。
【0145】
実施例2:スクリーニング結果
前述のように、MOS、及びそれを使用して薬物組成物をスクリーニングする方法は、1つ以上の薬物療法に対する患者の腫瘍の応答を正確に予測するために使用され得る。場合によっては、従来の培養薬物スクリーニングでは薬物応答を正確に予測できない場合でも、MOSの使用により、正確な結果が提供される可能性がある。例えば、図22A図22Dでは、細胞株ではなく、MOSが、患者応答と相関することができた。図22Aでは、薬物(例えば、オキサリパリチン)を投与された従来の細胞株を検査した。この細胞株は影響を示さず、腫瘍は検査した全ての用量範囲で薬物に耐性があると予測した。
【0146】
比較のために、図22Bに示されるように、患者生検から複数のMOSを生成した。この例では、MOSは、腫瘍MOSからの細胞生存の有意な低下を示し、薬物感受性を予測した。実際、薬物で治療した場合、腫瘍は、図22C(治療前)及び図22D(治療後)に示されるように、治療に応答した。
【0147】
実施例3:MOSと患者反応との間の相関
同様の実験セットでは、生検材料からMOSを生成し(図23A)、得られたMOSを使用して薬物効果スクリーニングを行った。図23Bは、これらのMOSに対する第1の薬物(オキサリパラチン)の影響を示し、薬物の存在下でのMOSの生存率(%)の変化を示さず、薬物耐性を予測する。同様に、第2の薬物であるイリノテカンによる治療は、図23Cに示されるように、MOSに対する効果の欠如を示し、薬物耐性を予測する。患者は、オキサリパラチン及びイリノテカンの両方で治療され、治療の6か月後は応答を示さなかった。したがって、MOSは、標準治療薬に対する患者の応答と強く相関した。この場合、患者は、MOSからの予測された応答によって回避され得る6ヶ月間の副作用及び毒性に耐え、(生検から7~10日以内に)腫瘍がこれらの薬物に応答しないことを示した。
【0148】
実施例4:多剤スクリーニング
図24は、本明細書に記載される患者由来の複数のMOSを使用して生成され得る薬物(例えば、化学療法剤)のパネルの例を示す。この例では、患者由来のMOSを使用する薬物スクリーニングを、複数(27種類)の薬物の各々について複数の反復を投与することによって行った。単一の腫瘍生検を使用して、非常に速く(例えば、2週間未満以内)大量の複数のMOSを生成し、これらのMOSを薬物製剤のパネルに対して試験した(例えば、27種類の製剤が示されている)。この試験は並行して行われ、(例えば、光学検出及び定量によって)自動的に定量することができる。この例では、この特定の腫瘍に対して最大の毒性を示す薬物は、パゾパニブであった。
【0149】
薬物の組み合わせ、並びに異なる薬物濃度を並行して調べることができる。同じ腫瘍生検から数百、数千、又は数万のMOSが生成され得るため、この種のアレイ試験は、本明細書に記載の方法及び装置によって実用化される。
【0150】
実施例5:生検試料の調製
材料:上記のMOSを形成するための液滴マイクロ流体チップ(200um)を含む装置、EvaGreen用Bio-rad液滴生成オイル(カタログ#186-4006)、実行当たり3~5mL、ペルフルオロオクタノール(PFO),Sigma、Novec HFE7500中の10%ペルフルオロオクタノール(PFO)、PBS、細胞培地(すなわち、10%FBS及び1%PenStrepを含むRPMI)、70um又は100umフィルター、50mLコニカル、ペトリ皿。
【0151】
生検試料の解離:生検試料(ヒト/動物)を使用して、患者から解離試料(すなわち、単一細胞組織)を生成する。マイクロ流体チップをコーティングし、マイクロ流体チップ及びホルダーを組み立てる。MOS及び廃油の出力(マルチウォールプレート、15mLエッペンドルフなど)にマイクロ流体チューブ及びフィッティングを接続する。
【0152】
デバイスを実行して、MOSを形成する。インキュベーターから液滴を含む出力(プレート、Eppendorfチューブなど)を取り出す(少なくとも15分後)。出力から過剰な油を除去する。液滴には浮力があるはずなので、油はバイアルの底にあるはずである。チューブから液滴を除去しないように注意する。100uLの10%(v/v)PFOを出力に添加する。注意深く渦巻くように混ぜ、約1分待つ。試料をピペッティング又は撹乱しないこと。300gで60秒間遠心分離する。上清(過剰な油/PFO)を除去する。試料をピペッティング又は撹乱しないこと。この化学物質は、培養中に細胞の生存能を低下させる可能性があるため、できるだけ多くのPFOを除去する。1mLの細胞培地を添加する。試料をピペッティング又は撹乱しないこと。300gで60秒間遠心分離する。上清及び過剰な油/PFOを除去する。1mLの細胞培地を添加する。1mLピペットチップを用いて、試料を上下に慎重にピペッティングする(約30回)。液滴試料をオーバーピペッティング又は撹乱しないように注意すること。1mLピペットチップを用いて、液滴培地溶液を70um又は100umフィルター(50mLコニカルに接続)に通す。一部の液滴は、出力(例えば、15mL Eppendorf)の内側に付着するであろう。各チューブを2~3mLのPBSですすぎ、上下にピペッティングする。すすいだPBS及び液滴をフィルターに通す。このステップを2回、又はチューブが透明になり、液滴がフィルターに移されるまで繰り返す。1mLピペットチップを用いて、液滴を含むフィルターを、約5mLのPBSで慎重に洗浄する。フィルターの表面全体を覆うようにすること。この洗浄ステップは、試料から過剰な油及びPFOを除去し、ゲル液滴の細胞培養培地への最終的な回収を可能にする。
【0153】
正しく排水されたら(約1~2分)、50mLコニカルから慎重にフィルターを取り外す。フィルターを裏返し、裏側を新鮮な細胞培地で洗浄し、溶液を新鮮なペトリ皿に受ける。これにより、フィルターから液滴が分離され、細胞培地に配置される。1mLピペットチップを使用し、約5mLの培地で洗浄することが推奨される
【0154】
顕微鏡下で液滴の品質を確認する。ほとんど/全ての油を除去する必要がある。回収率が低い場合、試料を再濾過してもよい。回収されたMOSの密度は、血球計によって確認され得る
【0155】
実施例6:腎組織MOS
別の例では、MOSは、生検腎組織から形成され得る。例えば、使用される器具には、チューブローテーター又は100μm及び70μmセルストレーナー、15mLコニカルチューブ、50mLコニカルチューブ、カミソリの刃、ピンセット及び外科用ハサミ、ペトリ皿(100×15mm)、又は組織培養皿が含まれ得る。試薬は、以下を含み得る:EBM-2培地、コラゲナーゼ(5mg/mLストック)、Hank平衡塩溶液(HBSS)、塩化カルシウム(10mMストック溶液)、リン酸緩衝溶液(1×PBS)、MATRIGEL、0.4%トリパンブルー溶液、及びトリプシン。
【0156】
レンタル組織は、常に冷たい輸送媒体及び氷上に保管すること。2mLの酵素消化溶液は、15mLのコニカルチューブに配置され得る。600uLの塩化カルシウム(最終濃度:3mM)を添加し、200uLのコラゲナーゼ(最終:0.5mg/mL)を添加する。腎試料をペトリ/培養皿に移す。滅菌組織又はカミソリの刃で、過剰又は非腫瘍組織を全て除去する。組織に1mLの酵素溶液を添加する。滅菌カミソリの刃で試料を小片(<2mm2)に切断する。プレートをピンセット又は手で保持する。切り刻んだ組織及び酵素溶液を、酵素溶液を含む15mLチューブに戻す。チューブを、チューブローテーター又は37℃のインキュベーター内の15mLのチューブローテーターに30~60分間配置する。インキュベーターからチューブを取り出す。少なくとも6mLのEBM-2(酵素消化溶液の少なくとも3倍の量)で酵素消化をクエンチする。ピペッティングして混合する。100μm又は70μmセルストレーナーを50mLコニカルチューブ上に配置する。ストレーナーを介して試料を移す。新しい15mLコニカルチューブに溶液を移す。試料を、1500rpmで5分間遠心分離する。上清を廃棄し、細胞ペレットを残す。ペレットを、1mLのEBM-2培地に再懸濁する。パラフィルム片上の10μLのトリパンブルーに、10μLの細胞混合物を添加し、細胞計数プレート又は血球計に移す。細胞濃度(#/mL)を計算する。1500RPMで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、ペレットを残す。細胞ペレットを、1.25×105細胞当たり50uLのMATRIGELに再懸濁する。氷上で行う。予温した24ウェルの平底プレート内のウェルの中心に、MATRIGEL細胞懸濁液の50uLドームをプレーティングする。プレートを、37℃の細胞インキュベーターに移し、少なくとも20分間インキュベートする。ドームが重合していることを確認する。ウェルの500μLの予温したEBM-2培地を壁に沿って穏やかに加える。37℃のインキュベーターでインキュベートする。MOSを拡大するには、2日ごとに完全な培地交換を行う。
【0157】
実施例7:肝臓マイクロオルガノスフェア
前述のように、MOSは、正常(例えば、非がん性)及び/又は異常な組織から形成され得る。例えば、図25A図25及び図26A図26Bは、脱臼したマウス肝臓組織から形成されたMOSの一例を示す。マウス肝臓組織を流体マトリックス材料と組み合わせて、未重合混合物を形成し、次いで、未重合混合物の液滴を重合させて、MOSを形成した。この例では、MOSは、約300μmの直径を有する。図25A図25Bでは、MOSは、液滴当たり単一の細胞で形成された。図26A図26Bでは、MOSは、液滴当たり25個の細胞で形成された。図25Aでは、形成後1日目のMOSを示し、図25Bは、培養10日後のMOSを示す。一部のMOSの細胞は分裂し、構造を示すクラスターを形成している。他のMOSには、分裂が遅かった細胞又は分裂しなかった細胞が含まれていた。同様に、図26A図26Bでは、MOSは、最初、各MOSに約25個の細胞を含む。培養10日後、一部のMOSは、多量の細胞成長を示し、構造を形成したが、他のMOSは、わずかな成長しか示さなかった。どちらの場合も、MOS内の細胞は、それらが由来する元の組織(例えば、肝細胞)に特徴的な特性を示すことが見出されている。
【0158】
図27A図27Cに示されるように、同じ手順がヒト肝臓組織に対して成功裏に行われた。この実施例では、MOSは、図27Aに示されるように、最初に約50個の細胞で形成された。培養の18日目までに、一部のMOSは、クラスターを有し、構造を形成する細胞を示したが、他のものは、より小さい構造を有し、又は細胞が分裂しなかった。
【0159】
実施例8:培養細胞マイクロオルガノスフェア
初代組織、例えば、MOSを形成する直前又は少し前に患者から取り出された初代組織に加えて、MOSは、2D培養細胞又は3D培養細胞のいずれかを含む培養細胞又は細胞から形成され得る。
【0160】
いくつかの実施形態では、MOSは、患者由来異種移植片(PDX)の一部として成長した細胞株から形成され得る。例えば、図28A図28Dは、培養PDX240細胞から形成されたMOSを示す。PDX240細胞は、患者由来異種移植片(PDX)腫瘍細胞株であり(患者源に基づいて240と番号付けられた)、免疫不全マウス(PDX)で成長して、インビボで腫瘍を形成したヒト腫瘍であった。異種移植組織を抽出し、解離し、上記のようにMOSを形成するために使用した。この例では、各MOSには、形成時、単一の細胞が含まれた。図28Aは、培養1日後のMOSを示し、図28Bは、培養3日後のMOSを示し、図28C及び図28Dは、それぞれ、培養5日後及び7日後のMOSを示す。培養時間が経過するにつれて、少なくとも一部のMOSは、細胞が分裂し、構造を形成することを示す。
【0161】
図29A図29Dは、同様の実験を示し、MOSの各々を形成する各液滴には、最初に、5つのPDX240細胞が含まれた。培養時間とともに(例えば、それぞれ図29A図29に示されるように、1日目、3日目、5日目、及び7日目から)、細胞が分裂し、構造を形成し得る。
【0162】
実施例9:MOSと従来のオルガノイドとの比較
オルガノイドが、患者由来の異種移植片細胞(上記のPDX240細胞及び第2のPDX細胞株PDX19187を含む)から形成され、同じ細胞を使用して形成されたMOSと比較した。オルガノイドは、従来の技術を使用して形成され、ウェル又はディッシュに、細胞とともに大量のMATRIGELを播種し、成長が確認されるまで培養した。MOSは、従来のオルガノイドから生成された。
【0163】
次いで、従来の(「バルク」)オルガノイド及びMOSの両方を、同じ薬物(例えば、オキサリプラチン又はSN38)で処理し、処理の3日後、細胞生存能を測定した。図30及び図31に示される薬物応答曲線が生成され、同様の応答曲線を示す。例えば、図30では、PDO19187バルクオルガノイド及びMOSの薬物応答曲線は、PDX240バルクオルガノイド及びMOSと同様に、オキサリプラチン濃度と同様の応答曲線を示した。図31では、PDX19187及びPDX240の両方についての薬物応答曲線も、SN38に対して、バルクオルガノイド及びMOSの両方について同様の結果を示した。図32は、別の抗がん剤である5-FU(フルオロウラシル)の応答曲線を示し、PDZ-19187及びPDX-240の従来のオルガノイド及びMOSの両方について同様の薬物応答曲線を再び示す。
【0164】
したがって、本明細書に記載のMOSは、より迅速かつ確実に形成され得、従来のオルガノイドと比較して、全体的により高い生存率を有し得、同じ細胞を使用して形成されたバルクオルガノイドに匹敵する薬物応答を提供し得る。しかしながら、本明細書に記載されるように、MOSは、より迅速に使用され得、はるかに大きな数で形成され得る。
【0165】
実施例10:MOSに対する薬物の影響
概して、本明細書に記載のMOSは、毒性アッセイを含む1つ以上のアッセイを行うために使用され得る。任意の適切なアッセイが行われ得、MOS内に懸濁された組織(例えば、細胞、組織構造)を分析することによって結果が決定される。本明細書に記載のMOSは、光学的、化学的、電気的、遺伝的に、又は当該技術分野で既知の任意の他の様式でアッセイ又は分析され得る。
【0166】
光学(手動又は自動のいずれか)検出は特に有用であり得、MOS内の組織(細胞、細胞のクラスター、細胞の構造などを含む)に対する1つ以上の薬物製剤の影響を光学的に分析することを含み得る。いくつかの実施形態では、上述のように、薬物製剤が、試験されるMOS内の細胞死(例えば、組織の数及び/又はサイズ)についてアッセイされ得る。他の実施形態では、MOSは、サイズ、タイプ、及び/又は成長の速度の減少を含む、細胞成長についてアッセイされ得る。いくつかの実施形態では、MOSは、形成された組織構造の変化についてアッセイされ得る。
【0167】
例えば、図33A図33Bは、マウス肝臓MOSに対する1つの薬物製剤(この実施例では、アセトアミノフェン(10mM))の影響を示す。図33Aは、MOSが処理されなかった対照群であり、培養時に成長したMOS(矢印)内の組織を示す。図33Bは、代わりに10mMのアセトアミノフェンで処理した、マウス肝臓から形成されたMOSの同様のセットを示す。対照群では、MOS内の組織構造は、処理群と比較して比較的大きい。アセトアミノフェン群のほとんどのMOSの組織は、より小さく、多くの死細胞を含んでいる。
【0168】
同様に、図34A図34Bはまた、ヒト肝臓MOSを使用する毒性アッセイを示す。図34Aは、その中に形成された組織構造を含む、対照群で観察される典型的なヒト肝臓MOSを示す(矢印によって示される)。図34Bは、ヒト肝臓MOSがアセトアミノフェン(10mM)で処理された処理群を示す。処理されたMOS中の組織は、対照群と比較して、非定型組織構造(矢印)及びデブリの顕著な増加を示した。
【0169】
光学的審査を含むこれらの審査のいずれかは、スコアリング、等級付け、ランク付け、又はその他の方法で定量され得る。例えば、図33A図33B及び図34A図34Bでは、これら2つのアッセイの結果は、サイズ差、生/死細胞/組織の数などを示すために定量され得る。いくつかの実施形態では、スコアリングは自動化され得る。
【0170】
実施例11:HepatoMOSの生存能
HepatoMOSの形態を、MOS液滴当たり50個の細胞、100個の細胞、及び200個の細胞を使用して評価した。明視野(BF)イメージング及び生存能染色に基づいて、形態、細胞構成、及び生存能の改善によって定義されるように、100細胞/MOSを使用して最適な条件を観察した。HepatoMOSは、少なくとも24日間持続した生存能を示す。
【0171】
図35は、HepatoMOSが、0日目のカプセル化後に生存していたことを示す。
100個及び200個の肝細胞を、MOS液滴にカプセル化した。生存能の評価は、生細胞色素カルセインAM(緑色チャネル)及び死細胞色素エチジウムホモ二量体(赤色チャネル)を使用してモニタリングした。染色結果は、カプセル化後に肝細胞が生存していたことを実証する。
【0172】
図36は、3日目のHepatoMOSの生存能を示す。100細胞/液滴条件は、生細胞色素(カルセインAM)及び死細胞色素(エチジウムホモダイマー)(赤色チャネル)によって示されるように、最良の細胞生存能を示した。
【0173】
肝細胞を、MOS液滴にパッケージングし、細胞密度に基づいて成熟させた。100個の細胞/液滴で、BF画像に基づいて、経時的に、密接に接触した場合、細胞が会合し、オルガノイド構造を形成し始めた。適切な細胞密度範囲は、80~160細胞/液滴(直径200~300uM)である。肝細胞の培養に好適であると判断される任意の培地が使用され得る。
【0174】
図37は、経時的なHepatoMOSのモニタリングを示す。
【0175】
図38は、HepatoMOSが3週間にわたって非常に高い細胞生存能を維持したことを示す。
【0176】
HepatoMOSからの結果は、2D培養条件の肝細胞と比較して改善された。
【0177】
図39は、2D培養条件下で失われた肝細胞の生存能を示す。図39Aは、明視野画像に基づいて、2D培養条件で7日目に大量の死んだ肝細胞が観察されたことを示す。図39Bは、2D条件での肝細胞培養の低い生存能を示す明視野を有する対照ウェルの代表的な生/死画像を示す。
【0178】
実施例12:HepatoMOSの機能性
HepatoMOSは、図40に示されるように、安定したレベルの尿素及びアルブミン分泌を保持していた。これは、HepatoMOSには機能的な肝細胞が含まれていることを示唆する。
HepatoMOSは、少なくとも24日間持続した機能を示した。
【0179】
実施例11及び12は、384ウェルプレート中、300umの液滴当たり100個の細胞、及びウェル当たり40個の液滴を使用する方法が、毒物学的評価アッセイで使用するのに十分な実験シグナルを提供することを示す。この細胞バイオマスの大幅な減少により、ハイスループットスクリーニングの用途が広がった。
【0180】
本明細書に記載のMOS生成システムは、典型的には、ウェル当たり30,000個の細胞が播種される従来の2D方法と比較して、ウェル当たり4,000個の細胞のみを使用する384ウェルプレートでのスクリーニングを可能にした。
【0181】
実施例13:薬物誘発性肝臓損傷の評価
HepatoMOS及び2D肝細胞培養物を使用して、様々な薬剤の薬物誘発性肝臓損傷(DILI)の影響を評価した。
【0182】
Lonzaからの凍結ヒト肝細胞を、ウェル当たり30,000個の細胞でプレーティングし、プレーティング培地中で確立させた。2日目に、プレーティング培地を除去し、維持培地と交換し、1日間培養した。3日目に、培地を処理培地に交換し、細胞を72時間処理した。回収前に、HepatoMOSをCTG試薬で処理して、生存能をモニタリングした。
【0183】
HepatoMOS 3Dモデルにおける毒性パラメータを評価するために、既知の臨床肝臓毒性を有する化合物を選択した。3Dスフェロイド及び2D HepG2モデルについて、公開されているIC50値を示す(表1)。199を超える値は、報告されたアッセイにおいて毒性を示さない。
【表1】
【0184】
蛍光ベースの画像分析を使用して細胞傷害性を観察し、既知の毒性物質に対する用量依存性応答を提供した。
【0185】
図41は、臨床環境では、HepatoMOSベースのDILI評価が、より感度の高い薬物応答を示し、DILIの影響との相関を改善したことを示す。この実験では、100細胞/液滴を使用し、細胞生存能を、Celltiter Glo 3Dによって決定した。
【0186】
対照的に、図42に示されるように、2D肝細胞培養ベースのDILIアッセイでは、臨床的なDILIの影響が捕捉されなかった。
【0187】
これらの結果から、HepatoMOS培養物が、DILIの影響が懸念されない薬物とDILI陽性化合物を区別することができることが明らかとなった。
【0188】
実施例14:HepatoMOS培養物の確立及び機能特徴付け
MOSの独特の特徴が、肝細胞(特に、初代ヒト肝細胞(PHH))を維持するための好ましい3D環境を提供するかどうかを評価するために、性別をよりよく表し、個体差を排除するために、5人の成人女性及び5人の成人男性を含む10人の個々のドナーからのプールされたPHHを含む市販の凍結保存製品を使用した。肝細胞は互いに緊密な細胞間連絡を形成することが報告されており、これはPHHの適切な機能及び極性にとって重要である。HepatoMOS培養に成功するために必要な最適な細胞密度を決定するために、PHHを、約240μmの直径で様々な密度:液滴当たり10、50、100、及び200個の細胞を有するMatrigel液滴にカプセル化した。無血清の市販培地である肝細胞培地(HCM)を、HepatoMOS培養物を試験するために最初に選択した。HepatoMOSの形態変化及び生存能を、最大21日間モニタリングした。図43aは、7日後のHepatoMOS培養物を示し、細胞密度が増加するにつれてPHHクラスターの数が増加することを示す。試験した4つの密度の中で、100細胞/液滴の密度条件下のHepatoMOSは、最も均一でコンパクトな微細組織様構造を形成した。生及び死細胞色素染色(カルセインAM及びEtH)は、100細胞/MOSが、試験した4つの密度全てにわたって最も均一で生存可能な培養物を示すことを更に確認した(図44a)。これは、約100細胞/液滴の最適な密度が、HepatoMOS培養物に最適であることを示唆した。この観察と一致して、同じ培地及び条件を使用して培養された不均一な液滴サイズのウェルにおいて、我々はまた、非常に高密度のPHHを含む大きな液滴及びまばらなPHHを含む液滴が、カルセインAM及びEtH染色によって示されるように、より多くの死細胞を示し、密接な細胞間相互作用だけでなく、効率的な栄養素/酸素浸透を提供することができる最適な細胞密度を示唆した。対照的に、一致するドーム培養条件では、生細胞色素カルセインAMは、ドームの周辺領域でのみ陽性シグナルを示したが、ドームの中心のほとんどのPHHは、7日目及び14日目の両方で死細胞色素EtHで染色され(図44c)、MATRIGELドーム内のPHH生存能の低下を示した。本発明者らは更に、3つの他の無血清培地オプション(InSphero,INVITROGRO HI、及びWilliam’s E)を用いたHepatoMOS培養を試験し、HepatoMOSが、InSphero又はHCM培地条件で長期培養物の生存能を示したが、HepatoMOSの大部分は、INVITROGRO HI及びWilliam’s E培地条件で14日以内に死滅した(図43b及び図44b)。InSphero及びHCM培地条件の両方で、4日目から7日目までのCTGシグナルのより急速な増加、並びに7日目から14日目までのCTGシグナルの比較的安定した増加が観察された(図43c)。したがって、本発明者らは、この研究で実施された作業のほとんどについて、100細胞/液滴、及びHCM又はInSphero培地の密度条件を使用してPHHを成長させた。
【0189】
更に、CDFDA陽性染色は、細管形成の重要な指標であるHepatoMOS培養物(図43d)において観察される。HepatoMOS培養物における肝臓特異的機能の保存を更に確認するために、試験した全ての成長条件で、アルブミン及び尿素分泌(2つの最も広く使用されている肝臓特異的機能の指標)を調べた。図43e及び図43fに示されるように、4日目から7日目までのアルブミン産生の増加は、全てのHepatoMOS培養条件で観察されたが、対応する2D培養条件では、4日目から7日目までにアルブミン産生の急速な減少が生じた。同様に、4日目から21日目までHepatoMOS培養における尿素の安定した産生が観察されたが、対応する2D条件では、尿素産生の急速な減少が観察された。特に、アルブミン及び尿素の両方の産生のレベルは、最大21日間、対応する2D PHH培養条件よりも有意に高かった。アルブミン及びCYPの免疫蛍光染色により、HepatoMOS培養物(図43g)では、PHHの主要な機能が保存されていたことを確認した。
【0190】
4日目から10日目までのCTGシグナル及びアルブミン産生の増加がHepatoMOS培養で観察され、HepatoMOS培養でPHHの拡大があるかどうかを確認するために、H&E(ヘマトキシリン及びエオシン)並びにIHC(免疫組織化学)染色によってHepatoMOS培養の組織学を調べた。H&E染色結果は、HepatoMOS培養における倍数体の存在を確認した。これは、インビボで観察されるPHHの典型的な特徴的な細胞特徴の1つである。更に興味深いことに、7日目のHepatoMOS培養物においてKi67陽性細胞が観察され、CTGシグナル及びアルブミン産生の増加がHepatoMOS培養物におけるPHHの拡大に起因している可能性があることが示唆された。
【0191】
更に、1人の成人及び1人の小児ドナーを含む2人の個々のドナーからの市販の凍結保存されたPHHにおいて、このHepatoMOS培養条件の再現性及び堅牢性が確認された(表2)。全ての個々のドナーの結果は、プールされたドナーとして、一貫した培地、密度選好、及び成長パターンを示した(図45及び図46)。上記の結果は、PHHを成長させるためのMOS技術を使用することの明らかな利点を示唆する。
【表2】
【0192】
PHHの培養及びHepatoMOSの生成:PHHのプールされたドナー及び個々のドナーは、BioIVT(www.bioivt.com)から購入した。スフェロイド法対
HepatoMOS法のDILI予測可能性と比較するために使用したPHHは、InSpheroキットに付属していた。この研究では、4つの異なる無血清培地オプション(InSphero、HCMTM Hepatocyte Culture Medium BulletKit(商標)、BioIVT INVITROGRO HI Medium、及びWilliam E)を、最初のHepatoMOS培養のために選択した。PHHを、コラーゲンでコーティングされた96ウェルプレート上の2D単層として、又は異なる細胞密度のHepatoMOSを生成するようにMOS中にカプセル化されたものとして培養した。HepatoMOSをドーム培養法と比較するために、ドームに使用してHepatoMOSを作製するために一致した細胞密度を使用した。
【0193】
HepatoMOS培養物におけるアルブミン及び尿素産生の定量化:2D単層培養物又はHepatoMOS培養物由来の上清条件培地を採取し、アルブミン及び尿素産生について分析した。2D培養条件では、肝細胞をコラーゲンでコーティングされた96ウェルプレート上に20,000細胞/ウェルで直接プレーティングし、肝細胞培地(HCM,Lonza)を使用して培養した。MOS条件では、10、50、100、又は200個の肝細胞/MOSを含むHepatoMOSを、HCM培地に50MOS/ウェルで96ウェルプレートに3連でプレーティングした。また、100細胞/MOSを含むHepatoMOSを、比較培地組成として、InSphero(以下、InSphero培地と称する)からの3D InSightヒト肝臓微小組織キットの構成要素として提供されている培地に、50MOS/ウェルで、3連でプレーティングした。条件培地を1日目、4日目、7日目、10日目、14日目、及び21日目に採取し、-80℃で保管した。
【0194】
アルブミン産生を定量化するために、条件培地を、室温(25℃)で解凍し、ヒトアルブミンELISAキット(Invitrogen)を使用して分析した。試料を希釈して、アルブミン濃度をアッセイの動的範囲内にした:50細胞/MOS(全ての時点について1:50)、100細胞/MOS(1日目、4日目、21日目について1:50、4日目、7日目、10日目について1:100)、200細胞/MOS(1日目、4日目、21日目について1:50、4日目、7日目、10日目について1:100)、InSphero培地中100細胞/MOS(全ての時点について1:50)、2D培養(全ての時点について1:50)。尿素生成を、尿素窒素BUN比色検出キット(Invitrogen)を使用して評価し、試料を以下の比率で希釈した:HCM培地中50、100、200細胞/MOS、及びInSphero培地中100細胞/MOS(1日目及び4日目について1:5)、HCM培地中50、100、200細胞/MOS、及びInSphero培地中100細胞/MOS(7日目、10日目、14日目、及び21日目について1:10)、2D培養(全ての時点について1:5)。アルブミンELISA及び尿素検出キットの両方について、製造業者によって記載されたアッセイの手順に従った。最終測定値は、ClarioSTARプレートリーダー(BMG)を使用して捕捉された。
【0195】
実施例15:HepatoMOSプラットフォームは、DILIの正確な予測のための感度と迅速なアッセイを可能にする
HepatoMOS培養物における細胞生存能、維持、及び肝臓特異的機能保存の高い忠実度を考慮して、薬物開発中のDILIの影響の予測における可能性のある応用を評価した。HepatoMOSの感受性及び特異性を、DILI検出のために広く使用されている2つのアプローチであるi)2D培養及びii)スフェロイドPHHと比較した。図48aに示されるように、試験された化合物の中で、HepatoMOSは、薬物のDILIの影響の予測において、2DベースのDILIアッセイと比較して、有意に高い感度を示した。HepatoMOSベースのDILIアッセイもまた、スフェロイドベースのDILIアッセイよりも優れていた。より低いIC50値及び大きな安全マージンによって示されるように、2つの重度のDILI薬物であるトルカポン及びトログリタゾンの検出においてより良い感度を示した(図48b及び図48c)。3つのアプローチのいずれかも、非DILI関連化合物に対するDILIの懸念は示されなかった。
【0196】
CTGアッセイによって検出された生存能読み出しに加えて、HepatoMOSベースのDILIアッセイは、生細胞及び死細胞染色の組み合わせを組み込み、化合物の急性細胞毒性の影響を判定した。図47に示されるように、生/死染色は、ATP含量ベースの読み出しと同様の特異性及び感度でDILIの影響を検出したことを観察した。
【0197】
HepatoMOSアッセイの予測可能性を更に検証するために、AMG-510のDILI懸念の評価を評価した。AMG-520は、Kras G12C変異を有する成人NSCLCの治療についてFDAによって承認された新規KRAS G12C阻害剤である。第1相臨床試験研究では、最近、この薬物が、免疫療法と併用した場合、重度の肝臓副作用の発生率がより高くなることが報告された。2D及びスフェロイドベースのDILIアッセイの両方は、この薬物に対するDILIの懸念を捕捉することができなかった。しかしながら、HepatoMOSベースのアッセイでは、10人のドナーのバッチにおけるAMG-510のIC50が10μM未満であり、単一ドナーにおけるIC50が3.7μM未満であり、この薬物の報告されたCmax(13.4μM)を更に下回ることが示された。これは、AMG-510が、薬剤の変異体特異的な性質により当初は許容可能であると考えられていた過剰投与量で患者に投与される場合、肝臓毒性を引き起こす可能性があることを示唆した。
【0198】
細胞生存能アッセイ:2D単層培養物又はHepatoMOS培養物中のPHHの細胞生存能を、CellTiter-Glo(登録商標)3D細胞生存能アッセイ(Promega)によって測定した。HepatoMOSの生存能の測定には、以前に報告されているCTGアッセイに加えて、カルセインAM及びEtH染色の組み合わせも適用した。
【0199】
2D PHH及びHepatoMOSにおけるDILI評価:PHH培養物の2D単層におけるDILI評価の場合、PHHを、コラーゲンでコーティングされた96ウェルプレートに、20,000生細胞/ウェルの細胞密度で播種した。培養の24時間後、PHHを、異なる濃度のDILI化合物に曝露した。次いで、PHHの細胞生存能を、CTGアッセイを使用して測定し、DILIの影響を、CTG読み取りの変化によって評価した。HepatoMOS培養物におけるDILI評価の場合、HepatoMOSを、100細胞/液滴でカプセル化し、HCM又はInSphero培地で4日間培養した。次いで、HepatoMOSを、96ウェルプレートに分注し、その後、薬物で処理した。
【0200】
結果の考察:HepatoMOSは、PHHの生成と長期培養のための、シンプルで迅速なハイスループットの自動化互換性プラットフォームを提供する。HepatoMOS培養は、高い細胞生存能を維持し、PHHの均一な細胞クラスターを形成することが見出された。実質的な成長が、4日目から14日目まで観察された。重要なことに、PHHは、ドーム培養では、同じ条件下で生存も成長もしなかった。これは、細胞間相互作用、周囲の細胞外マトリックス、及び効率的な栄養素/酸素貫通システムを含むMOS技術によって提供される3つの重要な要素を示し、全てがPHHの3D培養の成功を可能にした。HepatoMOS培養は、いくつかの異なるレベルでPHHの真正な機能を再現する。1)形態及び構造:HepatoMOSは、毛細胆管及び多核細胞などのPHHの形態及び主要な特徴を保持する。2)肝臓特異的機能:HepatoMOS培養物中のアルブミン及び尿素の持続可能な高レベルの分泌が最大21日間検出された。これら3つの特徴全てにより、HepatoMOSは、インビトロで肝疾患及び肝臓特異的機能を研究するために使用することができるユニークで堅牢なモデルとなる。
【0201】
3Dスフェロイド又はオルガノイド中で成長するPHHの開発は、近年大きな進歩を遂げている。ヒト肝臓オルガノイドの3D長期培養に関する以前の報告とは異なり、ここで確立されたHepatoMOS培養物は、初期拡張のためにEpCAM+細胞を濃縮する必要がなく、したがって、分化培地を使用して前駆細胞を成熟肝細胞に変換する必要がなく、これにより、手順が大幅に簡素化され、培養時間が短縮される。PHHをスフェロイドとして成長させることにも、いくつかの課題がある。1)細胞生存能:スフェロイド形成の過程でPHHの生存能を維持することが困難であり得る、2)細胞機能:スフェロイドにおける代謝及び胆汁分泌などの肝臓特異的機能を維持することが困難であり得る。3)スフェロイドのサイズ及び均一性:一貫したスフェロイドのサイズと均一性を達成することが困難であり得、結果の再現性に影響を与える可能性がある。4)長期的な維持:スフェロイドを長期間維持することが困難であり得、結果の精度に影響を与える可能性がある。5)拡張性:拡張性は、単一のスフェロイドで培養され得る細胞の数が限られているため、スフェロイド培養にとって課題である。上記の結果に基づいて、HepatoMOSは、上記の各問題に対する新しい解決策を提供し、様々な方法でPHH培養の効率及び信頼性を改善する。
【0202】
DILIを予測するためのインビトロ2Dモデルは、精度及び再現性が限られているため、ヒトでDILIを正確に予測することが困難になっている。3D培養システムは、より生理学的に関連する情報を提供し、したがって、DILI予測の精度を改善する可能性がある。しかしながら、現在の3D培養システムは、依然としていくつかの課題に直面している。1)肝臓特異的機能の維持、
2)標準化されたプロトコルの欠如、3)細胞の生存能を維持することの困難さ:
3D培養で長期間にわたって細胞生存能を維持することは、酸素及び栄養素の利用可能性が限られているため困難であり得る、4)薬物試験の困難さ:3D培養でのPHHに対する薬物の影響を正確に評価することは、システムの複雑さ、並びにモニタリング及び測定ツールとしての制限のため困難であり得る。
HepatoMOSは、DILIが懸念される薬物に対してより高感の高い応答を示し、市販のPHHスフェロイドキットと同様の性能を示している。HepatoMOSはまた、ヒト肝臓の多くの特徴及び肝臓特異的機能を再現する能力を含む、PHHの他の3D培養物よりもいくつかの利点を示した。
【0203】
MOS技術は、オルガノイド培養物のハイスループット及び自動化を可能にする。同様に、HepatoMOSプラットフォームはまた、単一のドナー又はプールされたドナーに由来する何千もの均一なPHH微小組織様構造の同時培養を可能にする。PHH培養のハイスループット及び自動化のためのHepatoMOSシステムの使用は、いくつかの利点を提供し、肝臓生物学及び疾患の理解を大きく前進させる可能性がある。
【0204】
本明細書に記載の方法(ユーザインタフェースを含む)のいずれかは、ソフトウェア、ハードウェア又はファームウェアとして実装され得、プロセッサ(例えば、コンピュータ、タブレット、スマートフォンなど)によって実行され得る命令のセットを記憶する非一時的コンピュータ可読記憶媒体として説明され得、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、表示、ユーザとの通信、分析、パラメータ(タイミング、頻度、強度などを含む)の変更、決定、警告などが含まれるがこれらに限定されないステップのいずれかを制御/実行させる。
【0205】
特徴又は要素が本明細書で別の特徴又は要素の上にあると称されるとき、それは、他の特徴若しくは要素の上に直接あり得るか、又は介在する特徴及び/若しくは要素もまた存在し得る。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素の上に「直接」存在すると称されるとき、介在する特徴又は要素は存在しない。また、特徴又は要素が別の特徴又は要素に「接続されている」、「取り付けられている」、又は「結合されている」と称されるとき、それは、他の特徴若しくは要素に直接接続され、取り付けられ、若しくは結合され得るか、又は介在する特徴若しくは要素が存在し得ることも理解されるであろう。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素に「直接接続されている」、「直接取り付けられている」、又は「直接結合されている」と称されるとき、介在する特徴又は要素は存在しない。特徴及び要素は、一実施形態に関して説明又は示されるが、そのように説明又は示される特徴及び要素は、他の実施形態にも適用され得る。当業者はまた、別の特徴に「隣接して」配置された構造又は特徴への言及が、隣接する特徴と重複するか、又は隣接する特徴の下にある部分を有し得ることも理解されるであろう。
【0206】
本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を記載する目的のためであり、限定することが意図されない。例えば、本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明らかに他を示す場合を除き、複数形をも含むことが意図される。「含む(comprises)」及び/又は「含む(comprising)」という用語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、ステップ、動作、要素、及び/又は成分の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、ステップ、動作、要素、成分、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除しないことが更に理解されるであろう。本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上の任意及び全ての組み合わせを含む(「/」と略される場合がある)。
【0207】
空間的に相対的な用語、例えば、「下」、「より下」、「上」、「より上」などは、図に示されているある要素又は特徴の別の要素(複数可)又は特徴(複数可)との関係を説明するための記載を容易にするために、本明細書で使用される場合がある。空間的に相対的な用語は、図に示されている方向に加えて、使用中又は動作中のデバイスの異なる方向を包含することを意図していることが理解されるであろう。例えば、図のデバイスが反転している場合、他の要素又は特徴の「下方」又は「真下」として説明されている要素は、他方の要素又は特徴の「上」に配向されることになる。したがって、「下方」という例示的な用語は、上方及び下方の配向の両方を包含し得る。デバイスは、他の向き(90度回転させるか又は他の向き)であってもよく、本明細書で使用する空間的に相対的な記述子は、それに応じて解釈される。同様に、「上向きに」、「下向きに」、「垂直に」、「水平に」などの用語は、特に明記されない限り、本明細書では説明の目的でのみ使用される。
【0208】
「第1の」及び「第2の」という用語は、様々な特徴/要素(ステップを含む)を説明するために本明細書で使用され得るが、これらの特徴/要素は、文脈が別段の指示をしない限り、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある特徴/要素を別の特徴/要素から区別するために使用され得る。したがって、本発明の教示から逸脱することなく、本明細書で論じられる第1の特徴/要素は、第2の特徴/要素と称され得、同様に、本明細書で論じられる第2の特徴/要素は、第1の特徴/要素と称され得る。
【0209】
本明細書全体を通して、文脈上別段必要とされない限り、「含む(comprise)」という単語、及び「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの実施形態は、様々な構成要素を方法及び物品(例えば、デバイス及び方法を含む組成物及び装置)において共に用いることができることを意味する。例えば、「含む(comprising)」という用語は、任意の記載された要素又はステップの包含を意味するが、任意の他の要素又はステップの除外を意味するものではないことが理解されるであろう。
【0210】
概して、本明細書に記載される装置及び方法のいずれかは、包含的であると理解されるべきであるが、代替的に、構成要素及び/又はステップの全て又はサブセットは、排他的であり得、様々な構成要素、ステップ、サブ構成要素、又はサブステップ「からなる(consisting of)」若しくは代替的に「から本質的になる(consisting essentially of)」として表され得る。
【0211】
本明細書で使用される場合、実施例で使用される場合を含み、別途明示的に指定されない限り、全ての数字は、用語が明示的に表示されていなくても、「約」又は「およそ」という単語で前置されているかのように読み取られ得る。「約」又は「およそ」という語句は、大きさ及び/又は位置を説明する場合、記載された値及び/又は位置が値及び/又は位置の合理的に予想される範囲内にあることを示すために使用され得る。例えば、数値は、記載された値(又は値の範囲)の+/-0.1%、記載された値(又は値の範囲)の+/-1%、記載された値(又は値の範囲)の+/-2%、記載された値(又は値の範囲)の+/-5%、記載された値(又は値の範囲)の+/-10%などの値を有し得る。文脈が別段の指示をしない限り、本明細書で与えられる任意の数値はまた、「約」又は「およそ」その値を含むと理解されるべきである。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」もまた開示される。本明細書に記載される任意の数値範囲は、その中に含まれる全ての部分的な範囲を含むことが意図される。当業者によって適切に理解されるように、ある値が「その値以下」であることが開示される場合、「その値以上」及びその値の間の可能な範囲も開示されることも理解される。例えば、値「X」が開示される場合、「X以下」並びに「X以上」(例えば、Xは数値である)も開示される。また、本出願全体にわたって、データは、いくつかの異なる形式で提供され、このデータは、終点及び始点、並びにデータポイントの任意の組み合わせの範囲を表すことも理解される。例えば、特定のデータポイント「10」及び特定のデータポイント15が開示される場合、10と15の間に加えて、10より大きい、10以上、10未満、10以下、及び10に等しい、15より大きい、15以上、15未満、15以下、及び15に等しい値が開示されるとみなされることが理解される。また、2つの特定の単位間の各単位も開示されることも理解されたい。例えば、10と15が開示されていれば、11、12、13、及び14も開示されている。
【0212】
様々な例示的な実施形態が上に記載されているが、特許請求の範囲によって記載される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態にいくつかの変更のいずれかが行われ得る。例えば、記載された様々な方法ステップが行われる順序は、代替の実施形態では、多くの場合に変更され得、他の代替の実施形態では、1つ以上の方法ステップは、完全に省略され得る。様々なデバイス及びシステムの実施形態の任意選択的な特徴は、いくつかの実施形態に含まれるが、他の実施形態には含まれない場合がある。したがって、前述の説明は、主に例示的な目的のために提供され、特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0213】
本明細書に含まれる例及び図は、限定ではなく、例示として、主題が実施され得る特定の実施形態を示す。前述のように、本開示の範囲から逸脱することなく、構造的及び論理的な置換及び変更が行われ得るように、他の実施形態が利用され、そこから誘導され得る。本発明の主題のそのような実施形態は、単に便宜上、及び複数が実際に開示されている場合、本出願の範囲を任意の単一の発明又は本発明の概念に自発的に限定することを意図することなく、「本発明」という用語によって本明細書において個別に又は集合的に言及され得る。したがって、特定の実施形態が本明細書に例示及び説明されているが、同じ目的を達成するために計算された任意の実施形態は、示されている特定の実施形態に置き換えられ得る。本開示は、様々な実施形態のあらゆる適合又は実施形態を網羅することが意図される。上記の実施形態と本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態との組み合わせは、上記の説明を検討すれば、当業者には明らかであろう。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21
図22A-B】
図22C-D】
図23
図24
図25A
図25B
図26A
図26B
図27A
図27B
図27C
図28A
図28B
図28C
図28D
図29A
図29B
図29C
図29D
図30
図31
図32
図33A
図33B
図34A
図34B
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43A
図43B
図43C-1】
図43C-2】
図43D
図43E
図43F
図43G
図43H
図44A
図44B
図44C
図44D
図45A
図45B
図45C
図45D
図45E
図45F
図46A
図46B
図46C
図46D
図46E
図46F
図47
図48A
図48B
図48C
【国際調査報告】