(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-05-02
(54)【発明の名称】レーシングタキメータ
(51)【国際特許分類】
G04C 3/00 20060101AFI20250424BHJP
G04B 47/06 20060101ALI20250424BHJP
【FI】
G04C3/00 B
G04B47/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024565129
(86)(22)【出願日】2023-03-14
(85)【翻訳文提出日】2024-12-11
(86)【国際出願番号】 EP2023056481
(87)【国際公開番号】W WO2023213467
(87)【国際公開日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】CH000530/2022
(32)【優先日】2022-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524404276
【氏名又は名称】ブルックランズ ウォッチ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェフズ、サイモン チャールズ
【テーマコード(参考)】
2F101
【Fターム(参考)】
2F101AB00
2F101AB05
2F101AC01
2F101AF02
2F101AF04
(57)【要約】
移動物体の平均速度を示すためのタキメータ装置およびそのようなタキメータ装置を備える腕時計は、物体が開始マークを通過したときにタイマを手動で始動させ、物体が開始マークから定義済みの距離を通過したときにタイマを停止させるためのタイマおよびアクチベータを備える。それらは、ハウジングと、移動物体の平均速度を示すための目盛と、測定された平均速度を目盛上に示すためのポインタとを備え、測定された平均速度は、前述の定義済みの距離と、タイマによって測定された前述の定義済みの距離をカバーする時間とから導出される。目盛は、ハウジングに着脱可能に配置された目盛部として設計されている。目盛部は、異なる所定の距離に対応する速度範囲を示すための速度表示を有する目盛をそれぞれ有する複数の異なる目盛部を含む一組の目盛部から選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動物体の平均速度を示すタキメータ装置であって、
前記物体が開始マークを通過したときにタイマを手動で始動させ、前記物体が前記開始マークから定義済みの距離を通過したときに前記タイマを停止させるためのタイマおよびアクチベータ(4)と、
ハウジング(1)と、前記移動物体の平均速度を示すための、前記ハウジング上の目盛(6)と、測定された平均速度を前記目盛(6)上に示すためのポインタ(13)とを備え、前記測定された平均速度が、前記定義済みの距離と、前記タイマによって測定された前記定義済みの距離をカバーする時間とから導出され、
前記目盛(6)が、前記ハウジング(1)に着脱可能に配置される目盛部(5、5’、5’’)として設計され、
前記目盛部が、異なる所定の距離に対応する速度範囲を示すための速度表示部を有する目盛(6)を各々が有する複数の異なる目盛部(5、5’、5’’)を含む一組の目盛部から選択される、タキメータ装置。
【請求項2】
前記一組の目盛部の前記目盛部(5、5’、5’’)の各々が、前記複数の異なる目盛部(5、5’、5’’)の各々に対して相異なる所定の距離を規定するトラックに対応し、所定のトラックのための目盛部上の前記速度表示部が、前記所定のトラックに対する移動物体の典型的な平均速度の範囲をカバーする、請求項1に記載のタキメータ装置。
【請求項3】
前記所定のトラックに対する前記目盛部(5、5’、5’’)上の前記速度表示部が、前記トラック上の最も遅い移動物体の平均速度から前記トラック上の最も速い移動物体の平均速度までの範囲である、請求項2に記載のタキメータ装置。
【請求項4】
前記一組の目盛部の前記目盛部(5、5’、5’’)が、速度範囲を示すための速度表示部がベゼルの円形表面上に表示される腕時計の円形ベゼルとして設計される、請求項1から3のいずれか一項に記載のタキメータ装置。
【請求項5】
前記目盛部の各々における速度表示部間の距離が、前記所定のトラックの典型的な平均速度の範囲に適合され、
前記速度表示部が、ベゼルの円形表面の一部のみ、好ましくは前記円形表面の半分以下のみをカバーする、請求項3または4に記載のタキメータ装置。
【請求項6】
前記一組の目盛部の前記目盛部(5、5’、5’’)の各々が、ループトラックに対応し、前記ループトラックの長さが、前記ループトラックの前記対応する目盛部の前記所定の距離を規定し、前記開始マークが、目盛部の前記ループトラック上の所定の位置として規定され、前記タイマを停止させるための停止マークが、前記移動物体が前記ループトラック上の1周をカバーした後の前記開始マークに対応する、請求項1から5のいずれか一項に記載のタキメータ装置。
【請求項7】
所定の距離を有するトラックの目盛部(5、5’、5’’)の前記速度表示部が、前記トラックのトラック記録もしくはラップ記録、および/または前記トラックの最速ラップの表示を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のタキメータ装置。
【請求項8】
目盛部(5、5’、5’’)を前記ハウジング(1)に解放可能に取り付けるための取付け部が、前記ハウジング上の第1の取付け部(7)と前記目盛部(5、5’、5’’)上の第2の取付け部(8)とによって実現され、前記第1の取付け部(7)と前記第2の取付け部(8)が、前記目盛部(5、5’、5’’)が前記ハウジング(1)に取り付けられるときに形状嵌合または摩擦嵌合で係合する、請求項1から7のいずれか一項に記載のタキメータ装置。
【請求項9】
前記一組の目盛部が、1年間にわたるある種の移動物体のレーシングシリーズを確立する所定のレーシングトラックの数に対応するいくつかの個々の目盛部(5、5’、5’’)を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のタキメータ装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のタキメータ装置を備える腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の前文による、自動車またはボートなどの移動物体の速度を示すために速度目盛と速度目盛に沿って移動可能なポインタとを備えるタキメータ装置に関する。特に、本発明は、レーシングカー用のレーシングタキメータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タキメータ機能を有するストップウォッチおよび時計は、時間間隔にわたってカバーされた距離に基づいて車両、オートバイまたはボートなどの移動物体の平均速度を測定して示すために使用される。それらは、例えば時速キロメートル、時速マイルまたは時速海里で速度単位を示す目盛を含む。ストップウォッチは、移動物体が開始マーカを通過すると開始され、既知の距離が移動物体によってカバーされた後、第2のマーカで停止される。ポインタは、目盛上に結果の平均速度を示す。さらに、車両が開始マークから定義済みの距離にいつ到達したかを識別することは困難である。したがって、タイマの停止は不正確であり得、速度表示に不具合を引き起こす可能性がある。
【0003】
腕時計にタキメータ装置を搭載することが知られている。例えば、独国特許出願公開第10 2007 005 592号明細書(特許文献1)は、時計のベゼル上に表示された円形の速度目盛を備える腕時計を開示している。第1の速度目盛は、レースコース上での速度を示すために使用される125km/h~178km/hの速度範囲をカバーするための速度部の3つの同心列を含む。第1の目盛の内側に同心円状に配置された第2の速度目盛は、試験コース上での速度を示す140km/h~260km/hの間の速度範囲をカバーする。押しボタンは、車両が開始マークを通過したときにタイマを始動させ、開始マークの後の定義済みの距離に位置する第2のマーカが当該車両によって到達されたときにタイマを停止させるために使用される。目盛の中心軸の周りを回転する指針は、第1および第2の目盛上の物体の平均速度を示す。第3の目盛は、第1の速度目盛の3つの同心円列のうちのどれを使用して平均速度を読み取る必要があるかを示すために、2つの平均速度目盛の内側に配置される。その結果、この腕時計の時計文字盤は、読みにくく、区別しにくい表示で雑然としている。この腕時計に由来する速度読み取り値は、容易に不正確になり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2007 005 592号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、移動物体の平均速度を確実に反映し、広範囲の速度表示をカバーし、広範囲の定義済みの距離をカバーし、正確な速度読み取りを容易にし、装置の簡単な取り扱いを可能にし、様々な所定の距離に対する瞬間平均速度読み取りを提供するタキメータ装置を提供することである。
【0006】
これらおよび他の目的は、独立請求項1に記載のタキメータ装置および独立請求項10に記載の腕時計によって達成される。本発明によるタキメータ装置および腕時計の有利な特徴および好ましい実施形態は、従属請求項2から9に開示されている。
【0007】
本発明によれば、移動物体の平均速度を示すためのタキメータ装置は、物体が開始マークを通過したときにタイマを手動で始動させ、物体が開始マークから定義済みの距離を通過したときにタイマを停止させるためのタイマおよびアクチベータを備える。タイマは、移動物体が定義済みの距離をカバーするのに必要な時間を測定する。さらに、タキメータ装置は、ハウジングと、移動物体の平均速度を示すための、ハウジング上の目盛と、測定された平均速度を目盛上に示すためのポインタとを備え、測定された平均速度は、定義済みの距離と、タイマによって測定された、前述の定義済みの距離をカバーするために移動物体によって必要とされる時間とから導出される。本発明によるタキメータ装置のハウジング上の目盛は、ハウジングに着脱可能に配置された目盛部として設計されている。さらに、目盛部は、異なる所定の距離に対応する速度範囲を示すための速度表示部を有する目盛をそれぞれ有する複数の異なる目盛部を含む一組の目盛部から選択される。一組の目盛部は、タキメータ装置を備える。装置のユーザは、移動物体によってカバーされる所定の距離に対応する目盛部を選択することができる。
【0008】
本発明によるタキメータ装置は、様々な相異なる所定の距離で平均速度を測定するように容易に適合させることができる。所定の距離に対応する目盛部をハウジングから簡単に取り外すことができ、別の所定の距離に対応する別の目盛部をハウジングに取り付けることができる。このようにして、タキメータ装置は、例えば、車両またはオートバイのための相異なるレースコース、ボートの相異なるレガッタコース、または馬レースの相異なるレースコースに使用することができる。有利には、目盛部の各々の速度表示部は、個々の移動物体の異なる所定の距離のそれぞれに対する典型的な平均速度値をカバーする。また、速度表示部の互いからの距離は、目盛の延長部が目盛部のサイズと一致し、重なり合う速度表示部が存在しないように調整することができる。このようにして、測定された平均速度は、目盛部で容易かつ正確に読み取ることができる。
【0009】
したがって、本発明のタキメータ装置の一実施形態では、一組の目盛部の各目盛部は、複数の異なる目盛部の各々に対して相異なる所定の距離を規定する既知のトラックに対応することができ、所定のトラックのための目盛部上の速度表示部は、前述の所定のトラックに対する移動物体の典型的な平均速度の範囲をカバーする。好ましくは、目盛部上の速度表示部の距離は、目盛が1列の表示部のみをカバーするように選択されて、目盛を雑然とさせず読みやすく保つ。
【0010】
タキメータ装置の好ましい実施形態では、前述の所定のトラックに対する目盛部上の速度表示部は、前述のトラック上の最も遅い移動物体の平均速度から前述のトラック上の最も速い移動物体の平均速度までの範囲である。例えば、タキメータ装置と共に使用される所定のトラックおよびそれらの対応する目盛部は、車両のレーシングトラックであり、タキメータ装置は、相異なる所定のトラック上の車両の平均速度を測定するために使用される。この場合、所定のレーシングトラックの目盛部上の速度表示部は、前述のトラック上の湿式レース日における最も遅い車両の平均速度から、前記トラック上の乾式レース日における最も速い車両の平均速度までの範囲とすることができる。さらに、目盛部は、車両のような移動物体によって達成された前述の所定のトラックの記録速度を示すことが好ましい。このようにして、移動物体の性能は、そのような移動物体による過去の速度結果と容易に比較することができる。任意選択的に、目盛部はまた、前述の所定のトラックに対する移動物体の最も遅い速度を示す。
【0011】
好ましくは、目盛部上の速度表示部の距離は、目盛が1列の表示部のみをカバーするように選択されて、目盛を雑然とさせず読みやすく保つ。
【0012】
本発明によるタキメータ装置のさらなる実施形態において、一組の目盛部の目盛部は腕時計の円形ベゼルとして設計され、速度範囲を示すためのベゼル上の速度表示部がベゼルの円形表面上に表示される。特定の目盛部を表すベゼルを、タキメータ装置のハウジングとして機能する腕時計のハウジングに取り付けることができる。
【0013】
各ベゼル上の速度表示部間の距離は、速度表示部がベゼルの円形表面の一部のみまたは表面全体をカバーすることができるように、所定のトラックの典型的な平均速度の範囲に適合される。タキメータ装置の有利な実施形態では、目盛部の速度表示部は、ベゼルの円形表面の半分以下しかカバーせず、例えば、円形表面の約1/3をカバーする。例えば、ベゼルが時計に取り付けられている場合、時計の下部にのみ目盛が配置される。このようにして、時計によって提供される相異なるパラメータ、例えば、時刻、日付、秒、および平均速度に関する個々の目盛は、時計上の相異なる領域に位置する。ユーザは相異なるパラメータの値を迅速かつ確実に読み取ることができ、特にタキメータ装置によって測定された平均速度を容易に識別することができる。
【0014】
本発明によるタキメータ装置のさらなる実施形態では、一組の目盛部の各目盛部は、ループトラックに対応し、ループトラックの長さは、前述のループトラックの前述の目盛部のための所定の距離を規定する。開始マークは、対応する目盛部によって表されるループトラック上の位置として定義される。例えば、開始マークは、ループトラックに立って移動物体を見ている人の位置として定義することができる。タイマを停止させるための停止マークは、移動物体がループトラック上を1周した後の開始マークに対応する。したがって、停止マークは、ループトラックに立って、ループトラック上を1周した後の移動物体を見ている人の位置によっても示される。このような目盛部により、ループトラック上の移動物体の連続するラップの平均速度を容易に決定することができ、相異なる平均速度値を比較することができる。
【0015】
本発明によるタキメータ装置のなおさらなる実施形態では、目盛部をハウジングに解放可能に取り付けるための取付け部が、ハウジング上の第1の取付け部と目盛部上の第2の取付け部とによって実現され、第1の取付け部と第2の取付け部は、目盛部がハウジングに取り付けられるときに形状嵌合または摩擦嵌合で係合する。例えば、取付け部の形状嵌合は、クリップ接続によって実現することができ、2つの取付け部の縁部は、互いに柔軟に係合する。さらに、形状嵌合は、取付け部間のねじ接続またはバヨネット接続によって実現することができる。摩擦嵌合は、例えば、取付け部間に摩擦力を生成して取付け部を係合させたままにする圧入によって実現することができる。
【0016】
本発明のタキメータ装置の好ましい実施形態では、一組の目盛部は、1年間にわたるある種の移動物体のレーシングシリーズを確立する所定のレーシングトラックの数に対応するいくつかの個々の目盛部を含む。例えば、一組の目盛部は、所与の年におけるレースカーのフォーミュラ1レースシリーズのレーストラックの各々に対する目盛部を含む。フォーミュラ1シリーズのレースのいくつかに参加しているタキメータ装置のユーザは、装置のハウジングにおいて所定のレーストラックに対応する目盛部を選択して取り付けることにより、タキメータ装置をシリーズの個々のレースの所定のトラック長に容易に変更することができる。例えば、一組の目盛部は、モナコ、英国、ベルギー、ブラジルス、デンマークなどにおけるGPシリーズに対応する個別化された目盛部を含むことができる。一組の目盛部は、23回の各GPレースに対応する個々の目盛部を提供し、これは、所定のトラック長、平均最低速度表示および平均最高速度表示、ならびにラップ記録表示において異なり得る。
【0017】
ユーザは、レースコースでギャラリーまたはプラットフォームからレースを見るだけで、タイマを作動させることによってレーシングトラックの各ラップの平均速度を決定することができる。各ラップの平均速度、一連のラップの平均速度、またはレース全体の平均速度は、タキメータ装置によって決定することができる。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、上述のタキメータ装置を備える腕時計に関する。腕時計は、少なくとも、ハウジングと、好ましくは丸い形状の時計文字盤と、その日の時刻の時間目盛と、その時間目盛上の時刻を示す指針とを備える。タキメータ装置の要素は、時計のハウジングに取り付けられた目盛部を除いて、腕時計の一体部品として実現することができる。例えば、目盛部に平均速度を示すためのポインタは、腕時計の追加の指針であり、時計の指針と同様に腕時計の中心軸を中心に移動することができる。さらに、腕時計は、タイマとタイマ用のアクチベータとを備えることができ、これらはタキメータ装置のタイマおよびアクチベータとして使用することができる。
【0019】
本発明による腕時計は、目盛部を交換するだけで、相異なる所定の距離のトラック上の移動物体の平均速度を決定する用途に容易に調整することができる。測定された速度は、時計上の明確に定義された領域に明確に示され、例えば時間表示などの他の表示と干渉しない。
【0020】
本発明のいくつかの例示的な実施形態を以下の図面に示すが、これらは単に説明のために役立つものであり、限定的であると解釈されるべきではない。図面から明らかになる本発明の特徴は、それ自体および任意の組み合わせの両方で本発明の開示の一部であると見なされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による第1の目盛部を有するタキメータ装置の3次元分解図である。
【
図2】組み立てられた状態の
図1のタキメータ装置を示す図である。
【
図3】
図1のタキメータ装置の第2の目盛部の上面図である。
【0022】
以下の説明では、特定の用語は便宜上使用され、本発明を限定することを意図しない。「右(right)」、「左(left)」、「上(up)」、「下(down)」、「下(under)」、および「上(above)」という用語は、図中の方向を指す。用語は、明示的に言及された用語ならびにそれらの派生語および類似の意味を有する用語を含む。また、空間的に相対的な用語、例えば、「真下(beneath)」、「下(below)」、「下(lower)」、「上(above)」、「上(upper)」、「近位(proximal)」、「遠位(distal)」などは、図に示すように、ある要素または特徴と別の要素または特徴との関係を記述するために使用することができる。
【0023】
図1は、腕時計と組み合わせて使用される、本発明による移動物体の平均速度を示すためのタキメータ装置を示す。腕時計は、タキメータ装置のハウジング1としても機能するハウジングを備える。ハウジング1は、円形の平面形状を本質的に備え、平面形状の表面2は、時間目盛の時計文字盤および時間目盛上の時刻を示す指針(図示せず)のための領域として使用することができる。指針は、一般的に知られているように、時計文字盤の中心軸を中心に回転することができる。あるいは、平坦な形状は、デジタル時間表示用のディスプレイを備えてもよい。ハウジング1は、2対の延長部3を備え、2対の延長部3は、ハウジングの対向する両側に配置される。延長部の対は、リストバンドの取付け部として機能する。
【0024】
タキメータ装置は、タイマと、タイマを手動で始動および停止するためのアクチベータ4とをさらに備える。図には3つのアクチベータ4が示されている。これらのアクチベータのいずれかを、その時刻のアクチベータとして選択することができる一方で、他のアクチベータは、腕時計の他の機能に役立つことができる。タイマは、腕時計の一体ユニットとすることができ、または、タキメータ装置による平均速度を決定するためにのみ使用することができる。目盛部5は、移動物体の平均速度を示す速度表示部を有する目盛6を備える。時計文字盤の表面2には、測定された平均速度を目盛6で示すためのポインタ13が配置されている。ポインタは、腕時計の指針のように、時計文字盤の中心軸の周りを回転するように配置されることが好ましい。
【0025】
目盛部5は、
図1に示すように、ハウジング1から取り外すことができる。目盛部は、複数の異なる目盛部を含む一組の目盛部(図示せず)から選択される。目盛部の各々は、異なる所定の距離に対応する速度範囲を示すための速度表示部を有する目盛を有する。所定の距離は、所定の長さを含むトラックまたはレースコースの個々の特徴に合わせて目盛部の各々をカスタマイズするための基礎として機能する。例えば、複数の異なる目盛部は、所与のトラック長もしくはコース長の平均速度表示の目盛範囲、または所与のトラック長、所与のコース長、もしくは相異なるレースシリーズの相異なる表面もしくは気象条件の目盛範囲において異なり得る。
【0026】
目盛部5は、円環状であり、腕時計のベゼルとして機能する。目盛6は、目盛部5の上面に位置し、一方、目盛部5は、反対側の下面で腕時計に取り付けられる。目盛部5は、ハウジング1に設けられた第1の取付け部7と、目盛部5に設けられた第2の取付け部8とによって、ハウジング1に対して着脱可能に取り付けられる。第1の取付け部7は、ハウジング1の円周から半径方向に延びるリップの形態を有する。リップは、ハウジング円周の4分の1未満にわたって伸びる。第1の取付け部7は、ハウジングの対向する両側でハウジングから延びる2つのそのようなリップを含む。第2の取付け部8は、目盛部5の内周壁から半径方向に延びるリップの形態を有する。第1の取付け部7は、周壁の対向する両側で周壁から延びる2つのそのようなリップを含む。これらのリップは、周壁の4分の1未満にわたって伸びる。目盛部5をハウジング1に取り付けるために、目盛部5は、第2の取付け部8のリップがハウジング1の円周のリップのない領域と位置合わせされるようにハウジング1上に配置される。したがって、目盛部5がハウジング1の表面2上に置かれるとき、第2の取付け部8のリップは、第1の取付け部7のリップを通過し、目盛部5がハウジング1の表面2上に載置されるまでハウジング円周に沿って下方にスライドすることができる。この位置では、第2の取付け部8のリップは、第1の取付け部7のリップより表面2から離れて配置される。次に、目盛部5がハウジング1に対して回転し、第2の取付け部8のリップが第1の取付け部7のリップの下にスライドする。この位置では、第2の取付け部8のリップが第1の取付け部7のリップと係合するため、目盛部5をハウジング1からそれ以上持ち上げることができないようになっている。目盛部5は、目盛部5上の突起(図示せず)がハウジング1の凹部11に嵌まるまで、ハウジング上で回転する。
【0027】
これにより、目盛部5がハウジング1に形状嵌合で確実に取り付けられる。この位置は、目盛6上に移動物体の平均速度を示すための、ハウジング1上の目盛部5の正しい取付け位置を規定する。目盛部5上のロケータ標識9は、時計文字盤の12時の数字のように、時計文字盤上の制御標識(図示せず)と位置合わせされる。この位置合わせは、ハウジング1上の目盛部5の正確な位置決めを保証するのに役立つ。目盛部5をハウジング1から取り外すために、目盛部5は、第2の取付け部8のリップがハウジング1の円周のリップのない領域と位置合わせされるまで、ハウジング上で回転させてスナップフィットを解除することができる。この位置では、目盛部5をハウジング1から持ち上げることが可能となる。
【0028】
図2aおよび
図2bは、組み立てられた状態のタキメータ装置を示し、目盛部5はハウジング1に取り付けられている。
図2aは3次元図であり、
図2bは上面図である。図示のとおり、目盛部5は腕時計のベゼルとして実現されている。
【0029】
目盛部5は、移動物体によってカバーされる所定の距離に合わせてカスタマイズされ、目盛部5のこの実施形態では、所定の距離は、目盛部5の名称10が表示されている
図2bの左上領域における目盛部5に示されるように、2022年のSilverstone International Circuitに対応する。したがって、所定の距離は、1.8508マイルに相当する3.809kmのループトラックによって特徴付けられる。目盛部5はまた、CTCRC Pre-83クラスの歴史的サルーンカーである移動物体のためにこの実施形態でカスタマイズされる。
図2bは、目盛部5の右上の領域に名称12を表示している。
【0030】
Silverstone International Circuit目盛部5の目盛6は、時速70マイル(mph)から最大85mphまでの平均速度表示の範囲をカバーし、これは、乾燥した路面の日の最低平均速度から乾燥した路面の日の最高平均速度まで、過去に達成されたこのループトラックの典型的な平均速度結果をカバーする。さらに、目盛6は、現在83.8mphであるSilverstone International CircuitでのCTCRC Pre-83クラスのラップレコードの表示LRを含む。この例では、速度範囲を示すための速度表示部は、このレースコースでの最低平均速度結果および最高平均速度結果に対応し、最低および最高平均速度より上の小さな部分に及ぶ。小さな部分は、例えば、最低平均速度結果および/または最高平均速度結果の約1~10%、好ましくは約1~5%を意味する。例えば、ラップ記録が83.8mphである場合、目盛表示は約85mphまでの範囲となる。各目盛部上の速度表示部間の距離は、目盛6が目盛部5の円形表面の一部のみをカバーするように、この所定のレーストラックの典型的な平均速度の範囲に適合される。この実施形態では、目盛6は、円形表面の約1/3のみをカバーし、0.1mphまでの速度表示を示す。
【0031】
目盛は、腕時計の目盛部5および表面2の下半分にそれぞれ配置されている。このようにして、目盛部5の残りの表面は自由であり、レーストラックの名称10およびレースシリーズ12のような他の情報に使用することができる。時計文字盤の全体的なデザインはすっきりとしており、相異なるパラメータに対応する絡み合った時計の目盛によって雑然とすることはない。
【0032】
使用中、開始マークは、Silverstone International Circuitに沿ったタキメータ装置のユーザの位置によって規定され、より具体的には、ユーザの前の既定点として規定することができる。対象のレースカーがユーザまたは既定点を通過すると、ユーザはタイマを起動する。レースカーが再びレースコースを1周した後に再びユーザまたは既定点を通過すると、ユーザはタイマを停止する。ポインタは、完了直後のラップの平均速度を示し、平均速度は、所定の距離、およびタイマによって測定された前述の距離をカバーする時間から導出される。タイマを停止させるための停止マークは、移動物体がレースコースを1周した後の開始マークに対応する。ユーザは、レースカーが平均速度結果のより低いまたはより高い範囲にあるかどうかを容易に見分けることができ、平均速度がラップ記録に近いかまたはさらに高いかどうかを識別することができる。
【0033】
上述のSilverstone International Circuit目盛部5は、本発明による一組の目盛部のうちの1つの目盛部にすぎない。一組の目盛部の他の目盛部は、Silverstone International Circuitよりも長いまたは短い他のレーストラック用にカスタマイズされてもよい。特定のレーストラックに対応する目盛部の目盛は、目盛範囲およびループ記録の表示を選択することによってカスタマイズされる。他のレーストラックおよびレースシリーズは、フォーミュラ1の23サーキットである以下のサーキットを含み得るが、これらに限定されない。
【表1】
【表2】
【0034】
図3は、本発明のタキメータ装置用の目盛部5’の別の実施形態を示す。この目盛部は、名称10’によって示されるように、Monaco Grand Prixループトラックの所定の距離に合わせてカスタマイズされている。Monaco Circuitの長さは、それぞれ3.337km、2.074マイルである。速度範囲を示すための速度表示部は、このレースコースにおける最低平均速度結果および最高平均速度結果をカバーし、65mphから120mphまで延びる。ラップ記録LRは102mphである。0.1mph単位の目盛を使用することができるが、
図3の例の単位は、明確にするために最小限に抑えられている。速度表示部は等間隔ではない。低速域における5刻みの単位間の距離は、高速域における距離よりも大きい。目盛はロケータ標識9から始まり、最低速度表示から最高速度表示まで反時計回りに延びることに留意されたい。ベゼルの下半分の表示は、ベゼルの上半分の表示に対して反転されている。これは、ベゼルがハウジング上の固定位置にあり、従来技術の腕時計のベゼルのように回転させる必要がないことを示すためである。ベゼルは、ベゼルをハウジングから着脱する必要があるときの良好なグリップのためにローレット縁部を有する。
【0035】
図4は、本発明のタキメータ装置用の目盛部5’’の別の実施形態を示す。この目盛部は、名称10’’によって示されるように、Brookland Grand Prixループトラックの所定の距離に合わせてカスタマイズされている。Brookland Circuitの長さは、それぞれ4.21km、2.61マイルである。速度範囲を示すための速度表示部は、この特定のレースコースにおける最低平均速度結果および最高平均速度結果をカバーし、65mphから100mphまで延びる。
図4の実施形態には、最速ラップを表すマーカFLがある。この実施形態の速度表示部は、ベゼル上のほぼ全周にわたって延在する。目盛は、カウンタを最低速度表示から最高速度表示まで反時計回りに延びる。ここでも、ベゼルの下半分の表示は、ベゼルの上半分の表示に対して反転され、ベゼルはローレット縁部を有する。
【0036】
要約すると、本発明によるタキメータ装置は、直感的で取り扱いが容易であり、装飾的でもある。各目盛部の設計は、トラックの長さ、レースの種類、特定のシリーズの移動物体の速度、および乾燥状態または湿潤状態を考慮に入れている。この設計は、最も遅い移動物体および最も速い移動物体をカバーし、現在の周回記録を示す。好ましい実施形態では、タキメータ装置はサーキットタキメータであり、一組の目盛部は、レーシングカーのためのレーシングシーズンのレースコースの様々なサーキット向けに設計される。腕時計の所有者の95%超が、腕時計のタイマ機能の使い方を知っている。必要とされるのは、レースサーキットのような所定の距離に対応する正確なベゼルをハウジングに適合させることだけである。
【0037】
以下の特許請求の範囲において、「を含み、」という語は他の要素またはステップを排除せず、不定冠詞「a」または「an」は複数を排除しない。単一のユニットまたはステップは、特許請求の範囲に記載のいくつかの特徴の機能を果たすことができる。特定の手段が相互に相異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。属性または値に関連する「本質的に」、「約」、「おおよそ」などの用語はまた、特に、それぞれ属性または値を正確に定義する。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0038】
1 ハウジング
2 表面
3 延長部の対
4 アクチベータ
5,5’,5’’ 目盛部
6 目盛
7 第1の取付け部
8 第2の取付け部
9 ロケータ
10,10’,10’ ’ 標識名
11 スナップ凹部
12 レースシリーズ
13 ポインタ
LR ラップ記録
FL 最速ラップ
【国際調査報告】