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特表2025-515520段階的吸収アンモニア系脱炭酸のための装置及び方法
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  • 特表-段階的吸収アンモニア系脱炭酸のための装置及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-05-20
(54)【発明の名称】段階的吸収アンモニア系脱炭酸のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20250513BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20250513BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20250513BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20250513BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/18 150
B01D53/18 110
B01D53/18 130
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553233
(86)(22)【出願日】2023-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 CN2023083689
(87)【国際公開番号】W WO2023221646
(87)【国際公開日】2023-11-23
(31)【優先権主張番号】202210553874.4
(32)【優先日】2022-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523330189
【氏名又は名称】ジァンナン・エンバイロメンタル・テクノロジー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN ENVIRONMENTAL TECHNOLOGY INC
【住所又は居所原語表記】65 Challenger Road, Suite 420, Ridgefield Park, NJ, 07660, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】ツァン、ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キ、リファン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ジンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、ジン
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA13
4D002BA16
4D002CA01
4D002CA06
4D002CA07
4D002DA07
4D002GA01
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB02
4D002GB04
4D002GB08
4D002GB09
4D002GB11
4D002HA08
4D020AA03
4D020BA11
4D020BA30
4D020BB03
4D020CB01
4D020CB08
4D020CB25
4D020CD01
4D020DA01
4D020DA02
4D020DA03
4D020DB03
4D020DB04
4D020DB06
4D020DB07
4D020DB08
(57)【要約】
アンモニウム塩を含む吸収循環液体を用いてガス中の二酸化炭素を除去し、段階的な液組成制御及び反応条件制御を介して効率的な脱炭酸を実現しながら、アンモニア漏出を抑制する、段階的吸収アンモニア系脱炭酸である。段階的な溶液組成制御は、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、アンモニア、又はそれらの組み合わせの濃度勾配制御を含んでもよく、これは、全COに対する全アンモニアのモル比によって特徴付けられてもよい。反応条件制御は、温度制御、pH制御、及び圧力制御を含んでもよい。煙道ガスは、脱炭酸塔に入り、段階的な吸収、濃度、温度の確立、及びアンモニアの多点添加を介して、脱炭酸効率を改善してもよく、脱炭酸の運転コストを節約してもよく、アンモニア漏出を制御してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
段階的吸収アンモニア系脱炭酸のための方法であって、アンモニウム塩を含有する吸収循環液体を用いてガス中の二酸化炭素を除去し、段階的な溶液組成制御及び反応条件制御を介して効率的な脱炭酸を実現しながら、アンモニア漏出を制御する、方法。
【請求項2】
前記段階的な溶液組成制御は、全COに対する全アンモニアのモル比によって特徴付けられ、前記溶液組成は、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、アンモニア又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応条件制御が、温度制御、pH制御、及び圧力制御を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記冷却された煙道ガスを炭酸水素アンモニウム生成循環液体及び脱炭酸吸収循環液体と順次接触させて、炭酸水素アンモニウムの生成、炭酸水素アンモニウムの結晶化、二酸化炭素の吸収及びアンモニア漏出の相乗的制御を実現し、
前記炭酸水素アンモニウム生成液体には、少なくとも1段の気液接触が設けられ、溶液中の全COに対する全アンモニアのモル比は、1~3、好ましくは1~2であり、全アンモニアは、アンモニア及びアンモニウムラジカルを含み、全COは、遊離CO及び炭化COを含み、
前記脱炭酸吸収液体には、少なくとも2段の気液接触が設けられ、第1段の溶液中の全COに対する全アンモニアのモル比は、1.2~4、好ましくは1.4~3.5、より好ましくは1.6~3、最も好ましくは1.8~2.5であり、第1段と最終段との間の溶液中の全COに対する全アンモニアのモル比は、1.5~4.5、好ましくは1.8~4、より好ましくは2~3.5であり、最終段の溶液中の全COに対する全アンモニアのモル比は、1~3、好ましくは1.2~2.8、より好ましくは1.5~2.5、最も好ましくは1.6~2である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記炭酸水素アンモニウム生成液体の気液接触形態が、噴霧式、充填式及びバブリング式であることが好ましく、前記脱炭酸吸収液体の気液接触形態が、噴霧式及び充填式であることが好ましい、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記脱炭酸吸収液体のpH値は、8.0より大きく、好ましくは8.2以上、より好ましくは8.5以上、最も好ましくは9.0以上である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記脱炭酸吸収液体には主にアンモニアが添加され、前記炭酸水素アンモニウム生成液体にはアンモニアが添加されないか、又はほとんど添加されず、最終段の脱炭酸吸収液体に添加されるアンモニアの量は、前段の脱炭酸吸収液体に添加されるアンモニアの量より少ないか、又はアンモニアが添加されない、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
アンモニアが複数の段で別々に前記脱炭酸吸収液体に添加される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記炭酸水素アンモニウム生成液体の温度が、10~30℃、好ましくは12~28℃、好ましくは15~25℃、最も好ましくは16~22℃であり、第1段において、前記脱炭酸吸収液体の温度が、前記炭酸水素アンモニウム生成液体の温度よりも高く、且つ最終段において、前記脱炭酸吸収液体の温度が、前記炭酸水素アンモニウム生成液体の温度よりも低い、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
アンモニア系脱炭酸装置が、常圧±50kPa、好ましくは常圧±40kPa、より好ましくは常圧±30kPa、最も好ましくは常圧±25kPaを維持する、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
清浄な煙道ガスのSOが、10mg/Nm以下、好ましくは5mg/Nm以下、より好ましくは2mg/Nm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
清浄な煙道ガスのアンモニア漏出が、20ppm以下、好ましくは15ppm、より好ましくは10ppmである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
CO除去効率が、60%以上、好ましくは80%以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
脱炭酸系、アンモニア漏出制御系、炭酸水素アンモニウム処理系、アンモニア供給系、及び冷却系を含む、段階的吸収アンモニア系脱炭酸のための装置。
【請求項15】
前記脱炭酸系は、炭酸水素アンモニウム生成ゾーン及び脱炭酸吸収ゾーンを含むゾーン制御を採用し、前記炭酸水素アンモニウム生成ゾーンには、少なくとも1段の気液接触が設けられ、前記脱炭酸吸収ゾーンには、少なくとも2段の気液接触が設けられ、前記ゾーンと前記段との間には、ガスのみを通過させる設備/構成要素が設けられる、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
1層以上のデミスタが、前記脱炭酸吸収ゾーンの前記最終段の後に設けられ、必要に応じて残りの層には、1層以上のデミスタが設けられず、前記デミスタは、バッフル、リッジ、充填物及びスクリーン式、又はそれらの組合せである、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記アンモニア漏出制御系は、多段洗浄サイクル制御を採用し、少なくとも1層の酸性溶液洗浄が設けられる、請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記冷却系は、前記炭酸水素アンモニウム生成液体及び前記脱炭酸吸収液体の温度を低下させるために使用される、請求項14に記載の装置。
【請求項19】
前記炭酸水素アンモニウム処理系が、炭酸水素アンモニウム結晶化設備及び固液分離設備を含む、請求項14に記載の装置。
【請求項20】
前記煙道ガスを前記炭酸水素アンモニウム生成液体及び前記脱炭酸吸収液体に順次接触させて、炭酸水素アンモニウムの生成、炭酸水素アンモニウムの結晶化、二酸化炭素の吸収及びアンモニア漏出の相乗制御を実現し、
前記温度制御は、冷熱源を介して前記炭酸水素アンモニウム生成液体及び前記脱炭酸吸収液体の温度を低下させ、前記炭酸水素アンモニウム生成液体及び前記脱炭酸吸収液体は、煙道ガスと接触させられて煙道ガスの温度を低下させ、
前記pH制御は、アンモニアの添加又は前記段の間の溶液置換を介して達成され、
前記圧力制御は、アンモニア系脱炭酸系及び同様の手段に制御弁又は液体シールを設けることによって達成され、常圧動作のための圧力制御装置は設けられない、請求項3に記載の方法。
【請求項21】
脱炭酸前のプロセスガス中のCO含有量が、6~50v%、好ましくは8~40v%、より好ましくは10~30v%であり、処理後のガス中のCO含有量が0~10v%、好ましくは0~8v%、好ましくは0~6v%である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記ガスが、アンモニア系脱硫後のプロセスガスである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記炭酸水素アンモニウム生成液体のpH値が、前記脱炭酸吸収液体のpH値よりも低く、その炭酸水素アンモニウム含有量が、前記脱炭酸吸収液体の炭酸水素アンモニウム含有量よりも多い、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2022年5月19日に出願された中国特許出願第202210553874.4号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、環境保護の技術分野に属し、特に、段階的吸収アンモニア系脱炭酸のための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気候温暖化は、人間全体の発展に影響を与える問題である。気候温暖化の主な要因は二酸化炭素である。化学工業の生産活動により発生する工業ガスには大量の二酸化炭素が含まれている。
【0003】
アンモニアを吸収液体として使用する化学吸収法は、強い吸収能力、低腐食、低再生エネルギー消費、低補充コスト、煙道ガス中の他の成分による容易でない分解、及び様々な酸性ガス汚染物質の同時除去などの特徴を有する。化学吸収法について多くの研究が国内外の学者によって行われている。
【0004】
中国特許出願公開第108144428号は、アンモニアのセクション制御及び多点添加のプロセスを提案しており、これは、予備洗浄セクション、吸収セクション、及び微粒子制御セクションに主に分割され、これらセクションのそれぞれには、多数の噴霧層が設けられている。予備洗浄セクションは、循環洗浄液を予備洗浄セクション内で濃縮しながら煙道ガスを冷却し、吸収セクションは、煙道ガス中の二酸化硫黄を吸収及び除去する。各セクションにおけるアンモニアの漏出及びエアロゾルの発生が制御される。同様に、この方法はまた、産業ガスからCOを除去するための排出制御を欠いている。
【0005】
中国特許第101524621号は、吸収系、再生系及び熱交換系から構成され、従来技術よりもエネルギー消費が低い、段階的な吸収及び再生を備える煙道ガス脱炭酸系を提供している。しかしながら、この系は、エタノールアミンを脱硫剤とする系に適用可能であり、多段階の再生液戻り及び吸収系を制御することによってエネルギー節約効果が達成される。
【0006】
中国特許出願第200880122376.2号は、煙道ガス流を処理するための多段CO除去系及び方法を開示しており、そこでは吸収容器が使用され、煙道ガス流は、0~20℃の低温でアンモニアを含有するイオン溶液と接触させられ、第1の吸収段における溶液は、第3の吸収段における溶液よりも高い温度及び低いアンモニア対炭素比を有する。アンモニア漏出は、低温で制御し且つ第3の段においてより低い温度を有することによって低減されることができるが、第3の段におけるより高いアンモニア対炭素比は、アンモニア漏出を増加させる。このプロセスは、低い脱炭酸効率、高いエネルギー消費、及び深刻なアンモニア漏出を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許出願公開第108144428号
【特許文献2】中国特許第101524621号
【特許文献3】中国特許出願第200880122376.2号
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の原理による例示的な装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
アンモニウム塩を含有する吸収循環液体を用いてガス中の二酸化炭素を除去し、段階的な溶液組成制御及び反応条件制御を介して効率的な脱炭酸を実現しながら、アンモニア漏出を抑制する段階的吸収アンモニア系脱炭酸のための方法を提供する。
【0010】
10~30℃及び1気圧で、CO及びアンモニアは反応して、主生成物としてカルバミン酸アンモニウム及び炭酸アンモニウムを生成し、この反応は可逆反応である。
【0011】
全体の化学反応式は以下の通りである。
【化1】
【0012】
実際の反応過程では、多くの中間反応が存在する。一般的な過程は以下の通りである。
【化2】
【0013】
カルバミン酸アンモニウムの加水分解:
【化3】
【0014】
NHとHOとの反応:
【化4】
【0015】
加水分解によって生成された炭酸水素アンモニウムは、アンモニアと反応して炭酸アンモニウムを生成する:
【化5】
【0016】
炭酸アンモニウムは、二酸化炭素を吸収して炭酸水素アンモニウムを形成する:
【化6】
【0017】
上記の反応から、二酸化炭素とアンモニアとの間には様々な複雑な化学反応が存在し、それらのほとんどは可逆反応であり、溶液組成は複雑であることが分かる。アンモニア漏出を減少させながらCOとアンモニアとの間の反応の効率を改善するには、合理的な段階的溶液組成制御及び反応条件制御が必要である。
【0018】
段階的溶液組成制御は、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、アンモニア、又はそれらの組み合わせの濃度勾配制御を含んでもよく、これは、全COに対する全アンモニアのモル比によって特徴付けられてもよい。
【0019】
反応条件制御は、温度制御、pH制御、及び圧力制御を含んでもよい。
【0020】
冷却された煙道ガスは、炭酸水素アンモニウム生成液体及び脱炭酸吸収液体と順次接触させられて、炭酸水素アンモニウムの生成、炭酸水素アンモニウムの結晶化、二酸化炭素の吸収及びアンモニア漏出の相乗制御を実現することができ、ここで、炭酸水素アンモニウム生成液体には、少なくとも1段の気液接触が設けられてもよく、その溶液中の全COに対する全アンモニアのモル比は、1~3、好ましくは1~2の範囲であってもよく、全アンモニアは、アンモニア及びアンモニウムラジカルを含んでもよく、全COは、遊離CO及び炭化COを含んでもよく、且つ脱炭酸吸収循環液体には、少なくとも2段の気液接触が設けられてもよく、第1段の溶液中の全COに対する全アンモニアのモル比は、1.2~4、好ましくは1.4~3.5、より好ましくは1.6~3、最も好ましくは1.8~2.5の範囲であってもよい。第1段と最終段との間の溶液中の全COに対する全アンモニアのモル比は、1.5~4.5、好ましくは1.8~4、より好ましくは2~3.5の範囲であってもよく、最終段の溶液中の全COに対する全アンモニアのモル比は、1~3、好ましくは1.2~2.8、より好ましくは1.5~2.5、最も好ましくは1.6~2の範囲であってもよい。
【0021】
炭酸水素アンモニウム生成液体の気液接触形態は、噴霧式、充填式及びバブリング式が好ましく、脱炭酸吸収液体の気液接触形態は、噴霧式及び充填式が好ましい。
【0022】
温度制御は、冷熱源を介して溶液の温度を低下させてもよく、溶液は、煙道ガスの温度を低下させるために煙道ガスと接触していてもよい。冷熱源については、冷蔵機を用いて冷水を調製し、その冷水は、熱交換器又はコイルを介して溶液を冷却してもよい。炭酸水素アンモニウム生成液体の温度は、10~30℃、好ましくは12~28℃、好ましくは15~25℃、最も好ましくは16~22℃の範囲になるように制御されてもよい。第1段において、脱炭酸吸収液体の温度は、炭酸水素アンモニウム生成液体の温度よりも高くてもよい。高い溶液温度は、冷却設備への投資を低減するのに有益であり得る。第1段と最終段との間の脱炭酸吸収液体の温度は、通常、第1段の脱炭酸吸収液体及び最終段の脱炭酸吸収液体の温度よりも高い。最終階において、脱炭酸吸収液体の温度は、炭酸水素アンモニウム生成液体の温度より低くてもよく、これはアンモニア漏出を制御し得る。好ましくは、炭酸水素アンモニウム生成循環液体の温度は、15℃~25℃の範囲になるように制御してもよい。第1段において、脱炭酸吸収循環液体の温度は、炭酸水素アンモニウム生成循環液体の温度よりも高くてもよく、最終階において、脱炭酸吸収循環液体の温度は、炭酸水素アンモニウム生成循環液体の温度よりも低くてもよい。
【0023】
pH制御は、段の間のアンモニアの添加又は溶液置換を介して達成してもよい。
【0024】
アンモニアは、主として脱炭酸吸収液体に添加されるが、複数段に分けて脱炭酸吸収液体に添加してもよい。炭酸水素アンモニウム生成液体には、アンモニアを添加しないか、又は、ほとんど添加せず、最終段の脱炭酸吸収液体に添加するアンモニアの量は、前段の脱炭酸吸収液体よりも少ないか、又はアンモニアを添加しなくてもよい。好ましくは、第1段及び第2段の脱炭酸吸収循環液体にアンモニアが添加され、第2段の脱炭酸吸収循環液体に添加されるアンモニアの量は、添加されるアンモニアの総量の80~50重量%(重量パーセント)、好ましくは75~55重量%、より好ましくは72%~57重量%、最も好ましくは60~65重量%を占めてもよい。最終段の脱炭酸吸収循環液体及び炭酸水素アンモニウム生成循環液体にはアンモニアを添加しない。アンモニアの多段添加を通して、溶液組成を制御し、溶液のpH値を調整し且つ脱炭酸吸収効率を確保しながらアンモニア漏出を制御することが有益である。炭酸水素アンモニウムの製造を確実にするために、炭酸水素アンモニウム生成液体にはアンモニアを添加しないか、又はほとんど添加しない。最終段の脱炭酸吸収液体に添加するアンモニアの量は、前段よりも少ないか、又はアンモニアを添加しなくてもよく、これはアンモニア漏出を抑制し得る。
【0025】
溶液置換は、前段の溶液を次段に移送するための管のオーバーフロー又はポンプ移送を介して行ってもよく、溶液組成及びpH値を制御し得る。炭酸水素アンモニウム生成液体のpH値は、脱炭酸吸収液体のpH値よりも低くてもよく、炭酸水素アンモニウム生成液体の炭酸水素アンモニウム含有量は、脱炭酸吸収液体の炭酸水素アンモニウム含有量よりも多くてもよい。
【0026】
脱炭酸吸収液体のpH値は、8.0以上、好ましくは8.2以上、より好ましくは8.5以上、最も好ましくは9.0以上であってもよい。
【0027】
圧力制御は、例えば、アンモニア系脱炭酸系に制御弁又は液体シールを設けることによって達成してもよい。必要に応じて、系の内圧を維持するために、制御弁又は液体シール装置が、脱炭酸吸収ゾーンの後又はアンモニア漏出制御系の後のガス管に設けられてもよい。
【0028】
アンモニア系脱炭酸装置は、常圧±50kPa、好ましくは常圧±40kPa、より好ましくは常圧±30kPa、最も好ましくは常圧±25kPaを維持してもよい。
【0029】
段階的吸収アンモニア系脱炭酸のための装置であって、脱炭酸系と、アンモニア漏出制御系と、炭酸水素アンモニウム処理系と、アンモニア供給系と、冷却系とを含んでもよい、装置が提供される。
【0030】
脱炭酸系は、炭酸水素アンモニウム生成ゾーン及び脱炭酸吸収ゾーンを含むゾーン制御を含んでもよく、ここで炭酸水素アンモニウム生成ゾーンには、少なくとも1段の気液接触器が設けられ、脱炭酸吸収ゾーンには、少なくとも2段の気液接触器が設けられ、ガスのみを通過させる設備/構成要素がゾーンと段との間に設けられる。
【0031】
脱炭酸吸収ゾーンの最終段の後に1層以上のデミスタを設けてもよく、必要に応じて残りの層には1層以上のデミスタを設けなくてもよい。デミスタは、バッフル、リッジ、充填物及びスクリーン式、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0032】
アンモニア漏出制御系は、多段洗浄循環を含んでもよく、少なくとも1層の酸性溶液洗浄を備えてもよい。
【0033】
冷却系は、炭酸水素アンモニウム生成循環液体及び脱炭酸吸収循環液体の温度を低下させるために使用されてもよい。
【0034】
炭酸水素アンモニウム処理系は、炭酸水素アンモニウム結晶化設備及び固液分離設備を含んでもよい。
【0035】
脱炭酸前のプロセスガス中のCO含有量は、6~50v%(体積パーセント)、好ましくは8~40v%、より好ましくは10~30v%の範囲であってもよい。
【0036】
段階的吸収アンモニア系処理後のガス中のCO含有量は、0~10v%、好ましくは0~8v%、好ましくは0~6v%の範囲であってもよい。
【0037】
清浄な煙道ガスのSOは、10mg/Nm以下、好ましくは5mg/Nm以下、より好ましくは2mg/Nm以下を有してもよい。
【0038】
清浄な煙道ガスのアンモニア漏出は、20ppm以下、好ましくは15ppm、より好ましくは10ppmであってもよい。
【0039】
CO除去効率は、60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であってもよい。
【0040】
本方法は、アンモニウム塩を含有する吸収循環液体を使用してガスから二酸化炭素を除去することを含んでもよい。本方法は、循環液体の制御された組成を異なる段でガスに適用することによって、アンモニア漏出を制限することを含んでもよい。各段は、制御された反応条件を有してもよい。
【0041】
制御された組成は、全COに対する全アンモニアのモル比によって特徴付けられてもよい。制御された組成は、炭酸アンモニウムを含んでもよい。制御された組成は、炭酸水素アンモニウムを含んでもよい。制御された組成は、カルバミン酸アンモニウムを含んでもよい。制御された組成は、アンモニアを含んでもよい。
【0042】
本方法は、煙道ガスを冷却することを含んでもよい。本方法は、冷却後、煙道ガスを炭酸水素アンモニウム生成循環液体と連続的に接触させることを含んでもよい。本方法は、冷却後、煙道ガスを脱炭酸吸収循環液体と連続的に接触させることを含んでもよい。炭酸水素アンモニウム生成液体は、少なくとも1段の気液接触に含まれてもよい。その段の後、炭酸水素アンモニウム生成液体中の全COに対する全アンモニアのモル比は、1~3の範囲であってもよい。脱炭酸吸収液体は、少なくとも2段の気液接触に含まれてもよい。第1段の後、脱炭酸吸収液体中の全COに対する全アンモニアのモル比は、1.2~4の範囲であってもよい。最終段の後、脱炭酸吸収液体中の全COに対する全アンモニアのモル比は、1~3の範囲であってもよい。第1段と最終段との間に生じる任意の段の後、脱炭酸吸収液体中の全COに対する全アンモニアのモル比は、1.5~4.5の範囲であってもよい。全アンモニアは、アンモニア及びアンモニウムラジカルを含んでもよい。全COは、遊離CO及び炭化COを含んでもよい。
【0043】
炭酸水素アンモニウム生成液体の気液接触は、噴霧式、充填式又はバブリング式であってもよい。脱炭酸吸収液体の気液接触は、噴霧式又は充填式であってもよい。
【0044】
炭酸水素アンモニウム生成液体のpH値は、脱炭酸吸収液体のpH値よりも低くてもよい。炭酸水素アンモニウム生成液体の炭酸水素アンモニウム含有量は、脱炭酸吸収液体の炭酸水素アンモニウム含有量より多くてもよい。
【0045】
脱炭酸吸収液体のpH値は、8.0より大きくてもよい。
【0046】
本方法は、炭酸水素アンモニウム生成液体に第1の量のアンモニアを添加することを含んでもよい。本方法は、第1の量よりも多い第2の量のアンモニアを脱炭酸吸収液体に添加することを含んでもよい。脱炭酸吸収液体に添加することにおいて、最終段の脱炭酸吸収液体に、最終段よりも前の脱炭酸段の脱炭酸吸収液体に添加するアンモニアよりも少ないアンモニアを添加してもよい。
【0047】
脱炭酸吸収液体に第2の量のアンモニアを添加することは、第2の量のアンモニアのみを複数の段に別々に分配することを含んでもよい。
【0048】
煙道ガスを脱炭酸吸収循環液体と接触させることは、常圧±50kPaでの接触を行うことを含んでもよい。
【0049】
本方法は、反応条件を制御することを含んでもよい。反応条件は、温度、pH及び圧力のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0050】
本方法は、煙道ガスを、炭酸水素アンモニウム生成循環液体と、脱炭酸吸収循環液体とに順次接触させることを含んでもよい。制御することは、冷熱源を使用して炭酸水素アンモニウム生成液体の温度を低下させることを含んでもよい。制御することは、冷熱源を用いて脱炭酸吸収液体の温度を低下させることを含んでもよい。
【0051】
制御することは、段の間に、炭酸水素アンモニウム生成液体にアンモニアを添加するか又は液体を置換して炭酸水素アンモニウム生成液体のpHを制御することを含んでもよい。制御することは、段の間に、脱炭酸吸収液体にアンモニアを添加するか又は液体を置換して脱炭酸吸収液体のpHを調節することを含んでもよい。制御することは、段の間に、制御バルブ又は制御バルブではなく液体シールを用いて、煙道ガスと脱炭酸吸収液体との接触を常圧に維持することを含んでもよい。接触により、煙道ガスの温度を低下させてもよい。
【0052】
本方法は、炭酸水素アンモニウム生成液体の温度を10~30℃の範囲に維持することを含んでもよい。
【0053】
本方法は、ガスを脱炭酸吸収液体と接触させる第1段において、脱炭酸吸収液体を炭酸水素アンモニウム生成液体の温度よりも高い温度に維持することを含んでもよい。本方法は、ガスを脱炭吸収液体と接触させる最終段において、脱炭酸吸収液体を炭酸水素アンモニウム生成液体の温度よりも高い温度に維持することを含んでもよい。
【0054】
本方法は、ガスが10mg/Nm以下のSO濃度を有する状態でガスを放出することを含んでもよい。本方法は、アンモニア漏出が20ppm以下の状態でガスを放出することを含んでもよい。
【0055】
COは、60%以上のCO除去効率で除去されてもよい。
【0056】
脱炭酸前のプロセスガス中のCO含有量は、6~50v%(体積パーセント)の範囲であってもよい。処理後のガス中のCO含有量は、0~10体積%の範囲であってよい。
【0057】
本方法は、アンモニア系脱硫プロセスからガスを受け取ることを含んでもよい。
【0058】
本装置は、段階的吸収アンモニア系脱炭酸のための装置を含んでもよい。
【0059】
本装置は、脱炭酸系を含んでもよい。本装置は、アンモニア漏出制御系を含んでもよい。本装置は、炭酸水素アンモニウム処理系を含んでもよい。本装置は、アンモニア供給系を含んでもよい。本装置は、冷却系を含んでもよい。
【0060】
脱炭酸系は、炭酸水素アンモニウム生成ゾーンを含んでもよい。脱炭酸系は、脱炭酸吸収ゾーンを含んでもよい。炭酸水素アンモニウム生成ゾーンは、少なくとも1段の気液接触を含んでもよい。脱炭酸吸収ゾーンは、少なくとも2段の気液接触を含んでもよい。
【0061】
ガスのみを通過させる構成要素が、ゾーンの間に配置されてもよい。ガスのみを通過させる構成要素が、段の間に配置されてもよい。
【0062】
本装置は、脱炭酸吸収ゾーンの最終段の後に、1層以上のデミスタを含んでもよい。本装置は、少なくとも1層の酸性溶液洗浄を含んでもよい。
【0063】
アンモニア漏出制御系は、多段洗浄サイクル制御を含んでもよい。冷却系は、炭酸水素アンモニウム生成液体の温度を低下させるように構成されてもよい。冷却系は、脱炭酸吸収液体の温度を低下させるように構成されてもよい。炭酸水素アンモニウム処理系は、炭酸水素アンモニウム結晶化設備を含んでもよい。炭酸水素アンモニウム処理系は、固液分離設備を含んでもよい。
【0064】
本発明の方法において処理されるガスは、任意の適切なガス、好ましくはアンモニア系脱硫後のプロセスガスである。
【0065】
ガス中のCO含有量は、本発明の段階的吸収アンモニア法によって著しく低減される。具体的には、脱炭酸前のプロセスガス中のCO含有量は、6~50v%、好ましくは8~40v%、より好ましくは10~30v%である。
【0066】
本発明の段階的吸収アンモニア系処理後のガス中のCO含有量は、0~10v%、好ましくは0~8v%、好ましくは0~6v%である。
【0067】
本発明によって保護される段階的吸収アンモニア系脱炭酸のための方法は、好ましくは、本発明によって定義される段階的吸収アンモニア系脱炭酸のための装置において実行される。
【0068】
本発明の有益な効果は、主に、脱炭酸効率、アンモニア漏出、及び炭酸水素アンモニウム肥料(炭酸水素アンモニウムと略される)の製造に反映される。本発明による方法によって達成される脱炭酸効率は、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%である。脱炭酸後、アンモニア漏出はより少なくなり(800~5000ppm)、アンモニア漏出制御系の負荷を低減することができ、それによって投資コスト及び運転コストを低減する。アンモニア漏出制御系を通過した後のアンモニア漏出は、20ppm以下、好ましくは15ppm、より好ましくは10ppmである。炭酸水素アンモニウム生成ゾーン中の炭酸水素アンモニウムの固形分は、2重量%超、好ましくは5重量%超、より好ましくは8重量%超である。一方、脱炭酸装置は、汚染物質SOを部分的に吸収して、10mg/Nm未満、好ましくは5mg/Nm未満、より好ましくは2mg/Nm未満の低いSO濃度を得ることができる。
脱炭酸効率=(Q1×w1-Q2×w2)/(Q1×w1)×100%
【0069】
Q1は、脱炭酸装置入口における標準状態下の乾燥煙道ガスの流量(m/h)であり、w1は、計器によって測定された脱炭酸装置入口における煙道ガス中の二酸化炭素の体積割合(%)であり、Q2は、脱炭酸装置出口における標準状態下の乾燥煙道ガスの流量(m/h)であり、w1は、計器によって測定された脱炭酸装置出口における煙道ガス中の二酸化炭素の体積割合(%)である。
【0070】
ガス中のSO含有量は、HJ629-2011 Fixed Pollution Source Waste Gas-Determination of Sulfur Dioxide-非分散赤外線吸収法に従って試験することができ、CO含有量は、HJ 870-2017 Fixed Pollution Source Waste Gas-Determination of Carbon Dioxide-非分散赤外線吸収法に従って試験することができ、NH含有量は、HJ 533-2009 Determination of Ammonia in Ambient Air and Waste Gas-ネスラー試薬分光分析に従って試験することができる。
【0071】
次に、本発明の原理による装置及び方法の例示的な実施形態を、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照して説明する。本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、構造的、機能的及び手順的な修正、追加、又は省略を行うことができ、装置であろうと方法であろうと、例示的な実施形態の特徴を組み合わせてもよいことを理解されたい。
【0072】
装置及び方法は、例示的な実施例1並びに比較例1及び2を含んでもよく、これらは本発明の段階的吸収アンモニア系脱炭酸のための装置及び方法及び機器をさらに例示する。
【0073】
図1に一例を示す。
【0074】
実施例1
アンモニア系脱硫後のプロセスガス1は、炭酸水素アンモニウム生成ゾーン2に入り、溶液は、炭酸水素アンモニウム生成ゾーン循環ポンプ3及び炭酸水素アンモニウム生成ゾーン熱交換器4を介して冷却され、煙道ガスと反応して炭酸水素アンモニウムを形成する。炭酸水素アンモニウム溶液/スラリーは、炭酸水素アンモニウム排出ポンプ26を介して晶析装置27に送られ、次いで固液分離設備28及び充填機29を通過して、固体炭酸水素アンモニウム30が得られる。
【0075】
ガスは、脱炭酸吸収ゾーン6にさらに入り、脱炭酸吸収ゾーン6は、下段から上段に第1段の脱炭酸吸収ゾーン7、第2段の脱炭酸吸収ゾーン9及び第3段の脱炭酸吸収ゾーン11を含み、これらのゾーンは液体収集器によって分離されている。液体収集器は、トレイ及びガスキャップ構造を採用し、これは、ガスが下方から上方に向かって通過することを可能にし、上部領域における循環液体を収集する。第1段の脱炭酸吸収ゾーン7において、循環液体は、第1段の脱炭酸吸収ゾーン循環ポンプ12及び第1段の脱炭酸吸収ゾーン熱交換器13を介して冷却され、煙道ガスと接触して二酸化炭素を吸収し、循環液体の一部は、炭酸水素アンモニウム生成ゾーン2に向かう。ガスは、液体収集器8を介して第2段の脱炭酸吸収ゾーン9に入り、循環液体は、第2段の脱炭酸吸収ゾーン循環ポンプ14及び第2段の脱炭酸吸収ゾーン熱交換器15を介して冷却され、煙道ガスと接触して二酸化炭素を吸収し、循環液体の一部は、第1段の脱炭酸吸収ゾーン7に向かう。アンモニア5は、管を介して第1段の脱炭酸吸収ゾーン7及び第2段の脱炭酸吸収ゾーン9に供給される。ガスは、液体収集器10を介して第3段の脱炭酸吸収ゾーン11に入り、循環液体は、第3段の脱炭酸吸収ゾーン循環ポンプ16及び第3段の脱炭酸吸収ゾーン熱交換器17を介して冷却され、煙道ガスと接触して二酸化炭素を吸収し、循環液体の一部は、第2段の脱炭酸吸収ゾーン9に向かう。
【0076】
ガスは、アンモニア漏出制御系18に入り続ける。アンモニア漏出制御系は、下方から上方に向かってアンモニア漏出制御系水洗浄ゾーン19及びアンモニア漏出制御系酸洗浄ゾーン21を含む。2つのゾーンは液体収集器によって分離される。液体収集器は、トレイ及びガスキャップ構造を採用し、これは、ガスが下方から上方に向かって通過することを可能にし、上部領域における循環液体を収集する。アンモニア漏出制御系水洗浄ゾーン19において、循環液体は、アンモニア漏出制御系水洗浄ゾーン内の循環ポンプ22を介して洗浄され、煙道ガスと接触して遊離アンモニアを吸収する。ガスは、液体収集器20を介してアンモニア漏出制御系酸洗浄ゾーン21に入り、アンモニア系脱硫系からの循環液体24が使用され、煙道ガスと接触して遊離アンモニアを吸収し、反応した溶液(すなわち、脱硫循環液体)23は脱硫系に戻る。アンモニア除去後の煙道ガスは排出される25。
【0077】
温度制御は、冷熱源を介して循環液体の温度を低下させ、循環液体は、煙道ガスと接触して煙道ガスの温度を低下させる。冷熱源については、冷凍機を用いて冷水を生成し、その冷水はプレート式熱交換器を介して循環液体を冷却する。循環液体は、煙道ガスと噴霧接触して煙道ガスの温度を低下させる。炭酸水素アンモニウム生成循環液体の温度は、20℃~25℃、好ましくは22℃に制御される。第1段では、脱炭酸吸収循環液体の温度が、炭酸水素アンモニウム生成循環液体の温度よりも高く、最終段では、脱炭酸吸収循環液体の温度が、炭酸水素アンモニウム生成循環液体の温度よりも低い。
【0078】
pH制御は、アンモニアの添加及び段の間の溶液置換による。
【0079】
第1段の脱炭酸吸収循環液体及び第2段の脱炭酸吸収循環液体にアンモニアを添加し、第2段の脱炭酸吸収循環液体に添加されるアンモニアの量は、添加されるアンモニアの総量の80~50重量%、好ましくは60重量%を占める。第3段の脱炭酸吸収循環液体及び炭酸水素アンモニウム生成循環液体には、アンモニアを添加しない。
【0080】
溶液置換は、前段の循環液体を次段に輸送するための管のオーバーフローを介して行われ、これは溶液組成及びpH値を制御することができる。炭酸水素アンモニウム生成循環液体のpH値は、脱炭酸吸収循環液体のpH値よりも低く、炭酸水素アンモニウム生成循環液体の炭酸水素アンモニウム含有量は、脱炭酸吸収循環液体の炭酸水素アンモニウム含有量よりも多い。
【0081】
脱炭酸吸収循環液体において、pH値は8.0以上、好ましくは8.2以上、より好ましくは8.5以上、最も好ましくは9.0以上である。
【0082】
系は、常圧(実際の圧は大気圧よりもわずかに高く、具体的な圧は以下の表に示される)下で動作し、圧力制御装置は備えない。
【0083】
これらのうち、溶液組成及び制御条件を以下の表に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
アンモニア脱炭酸は、吸収剤として99.6%の無水アンモニアを採用し、プロセスガス1のパラメータを以下の表1に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
脱炭酸吸収ゾーン6で処理された後のプロセスガスの主なパラメータを以下の表2に示す。
【0088】
【表3】
【0089】
アンモニア洗浄器18によって処理された後のプロセスガスの主なパラメータを以下の表に示す。
【0090】
【表4】
【0091】
比較例1
実施例1と比較して、温度制御のみが異なる。第1段の脱炭酸吸収ゾーン及び第2段の脱炭酸吸収ゾーンの温度制御は、第3段と同様であり、いずれも20℃とした。
【0092】
第1段の脱炭酸吸収ゾーン及び第2段の脱炭酸吸収ゾーンの温度制御が比較的低くて、冷熱源に対する温度差が低下されるので、熱交換器13及び熱交換器14の必要な熱交換領域が増大し、設備投資コストが増加する。また、周囲温度が20℃である場合、実施例1における第1段の脱炭酸吸収ゾーン熱交換器13及び第2段の脱炭酸吸収ゾーン熱交換器15の冷熱源は、低温周囲空気を使用する空気冷却器による冷却を採用して、運転コストを節約することができる。比較例1では、周囲温度が目標温度と同じであって、ともに20℃に設定されているため、空気冷却器による冷却ができず、消費エネルギーの高い冷水しか冷却に使用できない。
【0093】
比較例2
比較例2は、実施例1と比較して、アンモニアの添加量が異なるだけである。炭酸水素アンモニウム生成ゾーン、第1段の脱炭酸吸収ゾーン、第2段の脱炭酸吸収ゾーン及び第3段の脱炭酸吸収ゾーンに等量のアンモニアを添加した。
【0094】
炭酸水素アンモニウム生成ゾーンで添加されるアンモニアの量は25重量%に達するので、溶液中で炭酸水素アンモニウムを生成することができず、炭酸水素アンモニウム結晶を得ることができない。第3段の脱炭酸吸収ゾーンで添加されるアンモニアの量は25重量%に達し、これは脱炭酸アンモニア漏出の大幅な増加につながり、脱炭酸吸収ゾーン6における処理後のプロセスガスのアンモニア漏出は6000ppmに達する。
【0095】
上記のような本発明の実施例と比較例との比較から分かるように、本発明の方法及び装置を用いた処理による段階的な溶液組成制御及び反応条件制御を通して、アンモニア漏出を制御しながら効率的な脱炭酸を達成することができ、それによって優れた技術的効果及び経済的効果が達成される。
【0096】
他の例示的な実施形態
1.段階的吸収アンモニア系脱炭酸のための方法であって、アンモニウム塩を含有する吸収循環液体を用いてガス中の二酸化炭素を除去し、段階的な溶液組成制御及び反応条件制御を介して効率的な脱炭酸を実現しながら、アンモニア漏出を制御する、方法。
2.段階的な溶液組成制御が、全COに対する全アンモニアのモル比によって特徴付けられ、溶液組成が、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、アンモニア又はそれらの組み合わせを含む、実施形態1に記載の方法。
3.反応条件制御が、温度制御、pH制御及び圧力制御を含む、実施形態1に記載の方法。
4.冷却された煙道ガスは、炭酸水素アンモニウム生成循環液体及び脱炭酸吸収循環液体と順次接触させられて、炭酸水素アンモニウムの生成、炭酸水素アンモニウムの結晶化、二酸化炭素の吸収及びアンモニア漏出の相乗的制御を実現し、炭酸水素アンモニウム生成液体には、少なくとも1段の気液接触が設けられ、溶液中の全COに対する全アンモニアのモル比は、1~3、好ましくは1~2であり、全アンモニアは、アンモニア及びアンモニウムラジカルを含み、全COは、遊離CO及び炭化COを含み、且つ
脱炭酸吸収液体には、少なくとも2段の気液接触が設けられ、第1段の溶液中の全COに対する全アンモニアのモル比は、1.2~4、好ましくは1.4~3.5、より好ましくは1.6~3、最も好ましくは1.8~2.5であり、第1段と最終段との間の溶液中の全COに対する全アンモニアのモル比は、1.5~4.5、好ましくは1.8~4、より好ましくは2~3.5であり、最終段の溶液中の全COに対する全アンモニアのモル比は、1~3、好ましくは1.2~2.8、より好ましくは1.5~2.5、最も好ましくは1.6~2である、実施形態2に記載の方法。
5.炭酸水素アンモニウム生成液体の気液接触形態が、噴霧式、充填式及びバブリング式であることが好ましく、脱炭酸吸収液体の気液接触形態が、噴霧式及び充填式であることが好ましい、実施形態4に記載の方法。
5.炭酸水素アンモニウム生成液体のpH値は、脱炭酸吸収液体のpH値よりも低く、その炭酸水素アンモニウム含有量は、脱炭酸吸収液体の炭酸水素アンモニウム含有量よりも多い、実施形態4に記載の方法。
6.脱炭酸吸収液体のpH値は、8.0より大きく、好ましくは8.2以上、より好ましくは8.5以上、最も好ましくは9.0以上である、実施形態4に記載の方法。
7.アンモニアは主に脱炭酸吸収液体に添加され、炭酸水素アンモニウム生成液体にはアンモニアは添加されないか又はほとんど添加されず、最終段の脱炭酸吸収液体に添加されるアンモニアの量は、前の段よりも少ないか又はアンモニアは添加されない、実施形態4に記載の方法。
8.アンモニアは、複数の段で別々に脱炭酸吸収液体に添加される、実施形態7に記載の方法。
9.炭酸水素アンモニウム生成液体の温度は、10~30℃、好ましくは12~28℃、好ましくは15~25℃、最も好ましくは16~22℃であり、第1段では、脱炭酸吸収液体の温度は、炭酸水素アンモニウム生成液体の温度より高く、最終段では、脱炭酸吸収液体の温度は、炭酸水素アンモニウム生成液体の温度より低い、実施形態3に記載の方法。
10.アンモニア系脱炭酸装置が、常圧±50kPa、好ましくは常圧±40kPa、より好ましくは常圧±30kPa、最も好ましくは常圧±25kPaを維持する、実施形態4に記載の方法。
11.清浄な煙道ガスのSOが、10mg/Nm以下、好ましくは5mg/Nm以下、より好ましくは2mg/Nm未満である、実施形態1に記載の方法。
12.清浄な煙道ガスのアンモニア漏出が、20ppm以下、好ましくは15ppm、より好ましくは10ppmである、実施形態1に記載の方法。
13.CO除去効率が60%以上、好ましくは80%以上である、実施形態1に記載の方法。
14.脱炭酸系、アンモニア漏出制御系、炭酸水素アンモニウム処理系、アンモニア供給系及び冷却系を含む、段階的吸収アンモニア系脱炭酸のための装置。
15.脱炭酸系は、炭酸水素アンモニウム生成ゾーン及び脱炭酸吸収ゾーンを含むゾーン制御を採用し、炭酸水素アンモニウム生成ゾーンには、少なくとも1段の気液接触が設けられ、脱炭酸吸収ゾーンには、少なくとも2段の気液接触が設けられ、ゾーンと段との間には、ガスのみを通過させる設備/構成要素が設けられる、実施形態14に記載の装置。
16.1層以上のデミスタが、脱炭酸吸収ゾーンの最終段の後に設けられ、必要に応じて残りの層には1層以上のデミスタが設けられず、デミスタは、バッフル、リッジ、充填物及びスクリーン式、又はそれらの組合せである、実施形態14に記載の装置。
17.アンモニア漏出制御系は、多段洗浄サイクル制御を採用し、少なくとも1層の酸性溶液洗浄が設けられる、実施形態14に記載の装置。
18.冷却系は、炭酸水素アンモニウム生成液体及び脱炭酸吸収液体の温度を低下させるために使用される、実施形態14に記載の装置。
19.炭酸水素アンモニウム処理系が、炭酸水素アンモニウム結晶化設備及び固液分離設備を含む、実施形態14に記載の装置。
20.煙道ガスは、炭酸水素アンモニウム生成液体及び脱炭酸吸収液体と順次接触させられて、炭酸水素アンモニウムの生成、炭酸水素アンモニウムの結晶化、二酸化炭素の吸収及びアンモニアの放出の相乗的制御を実現し、ここで、温度制御は、冷熱源を介して炭酸水素アンモニウム生成液体及び脱炭酸吸収液体の温度を低下させ、炭酸水素アンモニウム生成液体及び脱炭酸吸収液体は、煙道ガスと接触させられて煙道ガスの温度を低下させ、pH制御は、アンモニアの添加又は段の間の溶液置換を介して達成され、圧力制御は、アンモニア系脱炭酸系及び同様の手段に制御弁又は液体シールを設けることによって達成され、常圧動作のために圧力制御装置は設けられない、実施形態3に記載の方法。
21.脱炭酸前のプロセスガス中のCO含有量は、6~50v%、好ましくは8~40v%、より好ましくは10~30v%であり、処理後のガス中のCO含有量は、0~10v%、好ましくは0~8v%、好ましくは0~6v%である、実施形態1に記載の方法。
22.ガスが、アンモニア系脱硫後のプロセスガスである、実施形態1に記載の方法。
【0097】
本明細書に開示される全ての範囲及びパラメータは、その中に包含される任意の及び全ての部分範囲、端点間の全ての数、及び端点を包含すると理解されるものとする。例えば、「1~10」と記載された範囲は、最小値1と最大値10との間(及びそれらを含む)のありとあらゆる部分範囲、すなわち、最小値1以上(例えば、1~6.1)で始まり、最大値10以下(例えば、2.3~9.4、3~8、4~7)で終わり、最後に範囲内に含まれる1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10の各数までのすべての部分範囲を含むと考えられるべきである。
【0098】
このように、段階的吸収アンモニア系脱炭酸のための装置及び方法が提供された。当業者は、本発明が、限定ではなく例示の目的のために提示される、説明される実施形態以外によって実践され得ることを理解するであろう。本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0099】
プロセスガス 1
炭酸水素アンモニウム生成ゾーン 2
炭酸水素アンモニウム生成ゾーン循環ポンプ 3
炭酸水素アンモニウム生成ゾーン熱交換器 4
アンモニア 5
脱炭酸吸収ゾーン 6
第1段の脱炭酸吸収ゾーン 7
液体収集器 8
第2段の脱炭酸吸収ゾーン 9
液体収集器 10
第3段の脱炭酸吸収ゾーン 11
第1段の脱炭酸吸収ゾーン循環ポンプ 12
第1段の脱炭酸吸収ゾーン熱交換器 13
第2段の脱炭酸吸収ゾーン循環ポンプ 14
第2段の脱炭酸吸収ゾーン熱交換器 15
第3段の脱炭酸吸収ゾーン循環ポンプ 16
第3段の脱炭酸吸収ゾーン熱交換器 17
アンモニア漏出制御系 18
アンモニア漏出制御系水洗浄ゾーン 19
液体収集器 20
アンモニア漏出制御系酸洗浄ゾーン 21
アンモニア漏出制御系水洗浄ゾーン循環ポンプ 22
脱硫循環液体戻り 23
アンモニア系脱硫系からの循環液体 24
煙道ガス排出 25
炭酸水素アンモニウム排出ポンプ 26
晶析装置 27
固液分離設備 28
充填機 29
固体炭酸水素アンモニウム 30
図1
【国際調査報告】