(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-06-26
(54)【発明の名称】電気化学的検出のためのフェロセン標識プライマー
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6844 20180101AFI20250619BHJP
C12Q 1/34 20060101ALI20250619BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z
C12Q1/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024572197
(86)(22)【出願日】2023-06-07
(85)【翻訳文提出日】2025-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2023065313
(87)【国際公開番号】W WO2023237641
(87)【国際公開日】2023-12-14
(32)【優先日】2022-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】サハール,サウラブ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ41
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR56
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX01
4B063QX04
(57)【要約】
本発明は、フェロセン標識がプライマーに付着している新規プライマーを提供する。フェロセン標識は、増幅産物に組み込まれている。フェロセン標識を組み込んだ増幅産物が変性されると、捕捉プローブに結合し、電気化学的検出によりフェロセン標識の存在または非存在を検出することができる。このシステムは、電気化学的検出中に歴史的に使用されているようなサンドイッチアッセイにおけるシグナルプローブの使用を回避する。
【選択図】
図1b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の標的核酸の存在または非存在を検出する方法であって、前記方法が、
a.標的核酸を含むかまたは標的核酸を含むと疑われる溶液を増幅試薬と組み合わせて、前記標的核酸が存在する場合にはそれを増幅させることであって、ここで、前記増幅試薬が前記標的核酸にハイブリダイズすることができる標識プライマーを含むものである、
b.前記標的核酸が存在する場合、前記標的核酸を増幅して二本鎖標識アンプリコンを産生することと、
c.前記二本鎖標識アンプリコンをエキソヌクレアーゼと共にインキュベートして、一本鎖標識アンプリコンを形成することと、
d.前記一本鎖標識アンプリコンを第1の捕捉プローブとハイブリダイズさせることと、
e.電気化学的検出を用いて前記試料中の前記標的核酸の存在または非存在を検出することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記標識プライマー、前記二本鎖標識アンプリコン、および/または前記一本鎖標識アンプリコンが、フェロセン、メチレンブルーまたはオスミウムからなる群から選択される少なくとも1つの標識を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標識プライマーが、5’末端、5’末端のヌクレオチド1~3のいずれか1つのヌクレオチド、3’末端、3’末端のヌクレオチド1~3のいずれか1つのヌクレオチド、または5’末端と3’末端の両方にフェロセン標識を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記標識プライマーが、前記標識プライマーの内部にフェロセン標識を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記標識プライマー、前記二本鎖標識アンプリコン、および/または前記一本鎖標識アンプリコンが、少なくとも2つの場所に複数のフェロセン標識を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記一本鎖標識アンプリコンが、前記第1の捕捉プローブにハイブリダイズすることができる第1のセクションと、前記捕捉プローブに結合することができない第2のセクションと、少なくとも1つの標識を含む第3のセクションとを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記標識が、フェロセン、メチレンブルーまたはオスミウムからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記標識プライマーが、前記第1の捕捉プローブにハイブリダイズすることができる第1のセクションと、リンカーを含む第2のセクションと、少なくとも1つの標識を含む第3のセクションとを含み、前記リンカーが、前記第1のセクションと前記第3のセクションとを接続する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
電気化学的検出の前に前記標識プライマーと前記一本鎖標識アンプリコンとを分離することを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
電気化学的検出の前に前記標識プライマーと前記二本鎖標識アンプリコンとを分離することを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記標識プライマーが、前記捕捉プローブにハイブリダイズすることができる第1のセクションと、少なくとも第1の標識を含む第2のセクションとからなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
試料中の標的核酸の存在または非存在を検出する方法であって、前記方法が、
a.試料を受け取ることと、
b.前記試料から核酸を抽出することであって、前記核酸が標的核酸を含むと疑われる、前記試料から核酸を抽出することと、
c.前記核酸を増幅試薬と組み合わせて、前記標的核酸が存在する場合、それを増幅することであって、ここで、前記増幅試薬が、前記標的核酸にハイブリダイズすることができるシグナルプライマーを含むものである、
d.前記標的核酸が存在する場合、前記標的核酸を増幅して二本鎖シグナルアンプリコンを産生することと、
e.前記二本鎖シグナルアンプリコンをエキソヌクレアーゼと共にインキュベートして、一本鎖シグナルアンプリコンを形成することと、
f.前記一本鎖シグナルアンプリコンを第1の捕捉プローブとハイブリダイズさせることと、
g.電気化学的検出を用いて前記試料中の前記標的核酸の存在または非存在を検出することと
を含む、方法。
【請求項13】
前記シグナルプライマーが、電気化学的に検出可能な標識を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記シグナルプライマーが、フェロセン、メチレンブルーまたはオスミウムからなる群から選択される少なくとも1つの標識を含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記シグナルプライマーが、前記第1の捕捉プローブに結合しない、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記一本鎖シグナルアンプリコンの第1の部分が前記第1の捕捉プローブに結合し、前記一本鎖シグナルアンプリコンの第2の部分が第2の捕捉プローブに結合する、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
試料中の目的の一本鎖または二本鎖核酸の存在を検出するためのプロセスであって、前記プロセスが、
a.
i.前記目的の核酸を含有すると疑われる試料、
ii.
1.前記目的の核酸の少なくとも一部に相補的な核酸配列と、
2.第1の電気化学的に検出可能な標識と、を含む、核酸プライマー、
iii.核酸鎖伸長を行うための試薬
を提供する工程と、
b.上記(i)、(ii)および(iii)を含む反応混合物を形成する工程と、
c.ハイブリダイゼーション条件下で、前記核酸プライマーを、存在する場合、前記目的の核酸と接触させる工程と、
d.前記核酸プライマーを伸長し、それによって前記電気化学的に検出可能な標識をアンプリコンに組み込み、前記目的の核酸が存在する場合、電気化学的に標識されたアンプリコンを形成する工程と、
e.前記電気化学的に標識されたアンプリコンを変性させる工程と、
f.前記電気化学的に標識されたアンプリコンを電極表面に結合した捕捉プローブとハイブリダイズさせる工程と、
g.前記電気化学的に標識されたアンプリコンと前記電極表面との間のエネルギー移動を検出することによって、前記目的の核酸の存在を検出する工程と
を含む、プロセス。
【請求項18】
前記電気化学的に検出可能な標識が、フェロセン、メチレンブルーまたはオスミウムからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記核酸プライマーが、前記捕捉プローブに結合する第1の部分と、前記捕捉プローブに結合しない第2の部分とを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記核酸プライマーが、第2の電気化学的に検出可能な標識を更に含み、前記第1の電気化学的に検出可能な標識と前記第2の電気化学的に検出可能な標識とが異なる、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電気化学的検出技術および分子診断の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
診断試験へのアクセスは、疾患の伝播を制限するのに役立つために重要である。しかし、COVID-19のパンデミックの間、効果的な診断試験へのアクセスは、特に2020年の最初のアウトブレイクの間、重大な問題であった。COVID-19試験の開発の加速および製造および提供のスケールアップは、COVID-19との戦いにおいて重要であった。更なるCOVID-19の型変異株および新たな感染症が発生したときに迅速に市場に出すために、正確で迅速なアッセイを迅速に開発し、それらのアッセイを製造する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0003】
電気化学検出システムで使用するためのシグナルプライマーを使用して、DNAおよび/またはRNA等の核酸を増幅および検出するための方法、装置、およびシステムが本明細書で提供される。シグナルプライマーを使用して核酸(DNAおよび/またはRNA等)を増幅および検出することは、診断キットを迅速に開発し、必要とする患者に送達することができることを確実にするために、検出アッセイの開発を加速し、その精度を改善し、結果をもたらす時間を短縮し、製造を簡素化する。診断キットの迅速な開発および配布は、疾患の伝播を減少させるのに役立つであろう。
【0004】
第1の態様では、試料中の標的核酸の存在または非存在を検出する方法であって、(a)標的核酸を含むか、または標的核酸を含むと疑われる溶液を増幅試薬と組み合わせて、存在する場合、標的核酸を増幅することであって、増幅試薬が、標的核酸にハイブリダイズすることができる標識プライマーを含む、標的核酸を含むか、または標的核酸を含むと疑われる溶液を増幅試薬と組み合わせて、存在する場合、標的核酸を増幅することと、(b)標的核酸が存在する場合、標的核酸を増幅して二本鎖標識アンプリコンを産生することと、(c)二本鎖標識アンプリコンをエキソヌクレアーゼと共にインキュベートして、一本鎖標識アンプリコンを形成することと、(d)一本鎖標識アンプリコンを第1の捕捉プローブとハイブリダイズさせることと、(e)電気化学的検出を用いて試料中の標的核酸の存在または非存在を検出することと、を含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、標識プライマー、二本鎖標識アンプリコン、および/または一本鎖標識アンプリコンは、フェロセン、メチレンブルーまたはオスミウムからなる群から選択される少なくとも1つの標識を含む。特定の実施形態では、少なくとも1つの標識は、フェロセンである。いくつかの実施形態では、標識プライマーは、5’末端、5’末端のヌクレオチド1~3のいずれか1つのヌクレオチド、3’末端、3’末端のヌクレオチド1~3のいずれか1つのヌクレオチド、または5’末端と3’末端の両方にフェロセン標識を含む。いくつかの実施形態では、標識プライマーは、前記標識プライマーの内部にフェロセン標識を含む。いくつかの実施形態では、標識プライマー、二本鎖標識アンプリコン、および/または一本鎖標識アンプリコンは、少なくとも2つの場所に複数のフェロセン標識を含む。いくつかの実施形態では、一本鎖標識アンプリコンは、前記第1の捕捉プローブにハイブリダイズすることができる第1の部分と、前記捕捉プローブに結合することができない第2の部分と、少なくとも1つの標識を含む第3の部分とを含む。特定の実施形態では、標識は、フェロセン、メチレンブルーまたはオスミウムからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、標識プライマーは、前記第1の捕捉プローブにハイブリダイズすることができる第1の部分と、リンカーを含む第2の部分と、少なくとも1つの標識を含む前記第3の部分とを含み、前記リンカーが、前記第1の部分と前記第3の部分とを接続する。いくつかの実施形態では、方法は、電気化学的検出の前に標識プライマーと一本鎖標識アンプリコンとを分離することを更に含む。別の実施形態では、方法は、電気化学的検出の前に標識プライマーと二本鎖標識アンプリコンとを分離することを更に含む。いくつかの実施形態では、標識プライマーは、捕捉プローブにハイブリダイズすることができる第1の部分と、少なくとも第1の標識を含む第2の部分とからなる。いくつかの実施形態では、増幅試薬は、核酸ポリメラーゼ、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、核酸ポリメラーゼの機能に必要な反応緩衝液および二価カチオン(例えば、Mg2+および/またはMn2+等)を含む。いくつかの実施形態では、標的核酸は、DNAである。いくつかの実施形態では、核酸はRNAであり、方法は、逆転写酵素を使用してRNAを逆転写してcDNAを生成する工程を更に含む。いくつかの実施形態では、核酸ポリメラーゼはDNAポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、核酸ポリメラーゼは逆転写酵素活性を更に示す。
【0005】
第2の態様では、試料中の標的核酸の存在または非存在を検出する方法であって、本方法は、(a)試料を受け取ることと、(b)試料から核酸を抽出することであって、核酸が標的核酸を含むと疑われる、試料から核酸を抽出することと、(c)核酸を増幅試薬と組み合わせて、存在する場合、標的核酸を増幅することであって、増幅試薬が、標的核酸にハイブリダイズすることができるシグナルプライマーを含む、核酸を増幅試薬と組み合わせて、存在する場合、標的核酸を増幅することでと、(d)標的核酸が存在する場合、標的核酸を増幅して二本鎖シグナルアンプリコンを生成することと、(e)二本鎖シグナルアンプリコンをエキソヌクレアーゼと共にインキュベートして、一本鎖シグナルアンプリコンを形成することと、(f)一本鎖シグナルアンプリコンを第1の捕捉プローブとハイブリダイズさせることと、(g)電気化学的検出を用いて試料中の標的核酸の存在または非存在を検出することと、を含む。いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは、電気化学的に検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは、フェロセン、メチレンブルーまたはオスミウムからなる群から選択される少なくとも1つの標識を含む。特定の実施形態では、少なくとも1つの標識は、フェロセンである。本明細書において、検出可能な標識は、シグナル伝達部分として作用し得る。いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは、第1の捕捉プローブに結合/ハイブリダイズしない。いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコンの第1の部分は第1の捕捉プローブに結合/ハイブリダイズし、一本鎖シグナルアンプリコンの第2の部分は第2の捕捉プローブに結合/ハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、標識プライマー、二本鎖標識アンプリコン、および/または一本鎖標識アンプリコンは、フェロセン、メチレンブルーまたはオスミウムからなる群から選択される少なくとも1つの標識を含む。特定の実施形態では、少なくとも1つの標識は、フェロセンである。いくつかの実施形態では、標識プライマーは、5’末端、5’末端のヌクレオチド1~3のいずれか1つのヌクレオチド、3’末端、3’末端のヌクレオチド1~3のいずれか1つのヌクレオチド、または5’末端と3’末端の両方にフェロセン標識を含む。いくつかの実施形態では、標識プライマーは、前記標識プライマーの内部にフェロセン標識を含む。いくつかの実施形態では、標識プライマー、二本鎖標識アンプリコン、および/または一本鎖標識アンプリコンは、少なくとも2つの場所に複数のフェロセン標識を含む。いくつかの実施形態では、一本鎖標識アンプリコンは、前記第1の捕捉プローブにハイブリダイズすることができる第1の部分と、前記捕捉プローブに結合することができない第2の部分と、少なくとも1つの標識を含む第3の部分とを含む。特定の実施形態では、標識は、フェロセン、メチレンブルーまたはオスミウムからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、標識プライマーは、前記第1の捕捉プローブにハイブリダイズすることができる第1の部分と、リンカーを含む第2の部分と、少なくとも1つの標識を含む前記第3の部分とを含み、前記リンカーが、前記第1の部分と前記第3の部分とを接続する。いくつかの実施形態では、方法は、電気化学的検出の前に標識プライマーと一本鎖標識アンプリコンとを分離することを更に含む。別の実施形態では、方法は、電気化学的検出の前に標識プライマーと二本鎖標識アンプリコンとを分離することを更に含む。いくつかの実施形態では、標識プライマーは、捕捉プローブにハイブリダイズすることができる第1の部分と、少なくとも第1の標識を含む第2の部分とからなる。いくつかの実施形態では、増幅試薬は、核酸ポリメラーゼ、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、核酸ポリメラーゼの機能に必要な反応緩衝液および二価カチオン(例えば、Mg2+および/またはMn2+等)を含む。いくつかの実施形態では、標的核酸は、DNAである。いくつかの実施形態では、核酸はRNAであり、方法は、逆転写酵素を使用してRNAを逆転写してcDNAを生成する工程を更に含む。いくつかの実施形態では、核酸ポリメラーゼはDNAポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、核酸ポリメラーゼは逆転写酵素活性を更に示す。
【0006】
第3の態様では、試料中の目的の一本鎖または二本鎖核酸の存在を検出するためのプロセスであって、当該プロセスは、(a)(i)当該目的の核酸を含有すると疑われる試料、(ii)当該目的の核酸の少なくとも一部に相補的な核酸配列を含む核酸プライマー、および第1の電気化学的に検出可能な標識、ならびに(iii)核酸鎖伸長を実施するための試薬を提供する工程と、(b)上記の(i)、(ii)および(iii)を含む反応混合物を形成する工程と、(c)ハイブリダイゼーション条件下で、核酸プライマーを、存在する場合、目的の核酸と接触させる工程と、(d)核酸プライマーを伸長し、それによって電気化学的に検出可能な標識をアンプリコンに組み込み、当該目的の核酸が存在する場合に電気化学的に標識されたアンプリコンを形成する工程と、(e)電気化学的に標識されたアンプリコンを変性させる工程と、(f)電気化学的に標識されたアンプリコンを、電極表面に結合した捕捉プローブとハイブリダイズさせる工程と、(g)電気化学的に標識されたアンプリコンと電極表面との間のエネルギー移動を検出することによって、目的の核酸の存在を検出する工程と、を含む。いくつかの実施形態では、電気化学的に検出可能な標識が、フェロセン、メチレンブルーまたはオスミウムからなる群から選択される。特定の実施形態では、少なくとも1つの標識は、フェロセンである。本明細書において、検出可能な標識は、シグナル伝達部分として作用し得る。いくつかの実施形態では、核酸プライマーは、捕捉プローブに結合/ハイブリダイズする第1の部分と、捕捉プローブに結合/ハイブリダイズしない第2の部分とを含む。いくつかの実施形態では、核酸プライマーは、第2の電気化学的に検出可能な標識を更に含み、前記第1の電気化学的に検出可能な標識と前記第2の電気化学的に検出可能な標識とが異なる。いくつかの実施形態では、核酸プライマーは、第1の捕捉プローブに結合/ハイブリダイズしないシグナルプライマーである。いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコンの第1の部分は第1の捕捉プローブに結合/ハイブリダイズし、一本鎖シグナルアンプリコンの第2の部分は第2の捕捉プローブに結合/ハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、核酸プライマー、二本鎖標識アンプリコン、および/または一本鎖標識アンプリコンは、フェロセン、メチレンブルーまたはオスミウムからなる群から選択される少なくとも1つの標識を含む。特定の実施形態では、少なくとも1つの標識は、フェロセンである。いくつかの実施形態では、核酸プライマーは、5’末端、5’末端のヌクレオチド1~3のいずれか1つのヌクレオチド、3’末端、3’末端のヌクレオチド1~3のいずれか1つのヌクレオチド、または5’末端と3’末端の両方にフェロセン標識を含む。いくつかの実施形態では、核酸プライマーは、前記標識プライマーの内部にフェロセン標識を含む。いくつかの実施形態では、核酸プライマー、二本鎖標識アンプリコン、および/または一本鎖標識アンプリコンは、少なくとも2つの場所に複数のフェロセン標識を含む。いくつかの実施形態では、一本鎖標識アンプリコンは、前記第1の捕捉プローブにハイブリダイズすることができる第1の部分と、前記捕捉プローブに結合することができない第2の部分と、少なくとも1つの標識を含む第3の部分とを含む。特定の実施形態では、標識は、フェロセン、メチレンブルーまたはオスミウムからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、核酸プライマーは、前記第1の捕捉プローブにハイブリダイズすることができる第1の部分と、リンカーを含む第2の部分と、少なくとも1つの標識を含む前記第3の部分とを含み、前記リンカーが、前記第1の部分と前記第3の部分とを接続する。いくつかの実施形態では、本プロセスは、電気化学的検出の前に核酸プライマーと一本鎖標識アンプリコンとを分離することを更に含む。別の実施形態では、本プロセスは、電気化学的検出の前に核酸プライマーと二本鎖標識アンプリコンとを分離することを更に含む。いくつかの実施形態では、核酸プライマーは、捕捉プローブにハイブリダイズすることができる第1の部分と、少なくとも第1の標識を含む第2の部分とからなる。いくつかの実施形態では、核酸鎖伸長を実施するための試薬は、核酸ポリメラーゼ、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、核酸ポリメラーゼの機能に必要な反応緩衝液および二価カチオン(例えば、Mg2+および/またはMn2+等)を含む。いくつかの実施形態では、標的核酸は、DNAである。いくつかの実施形態では、核酸はRNAであり、方法は、逆転写酵素を使用してRNAを逆転写してcDNAを生成する工程を更に含む。いくつかの実施形態では、核酸ポリメラーゼはDNAポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、核酸ポリメラーゼは逆転写酵素活性を更に示す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1a】
図1aは、電気化学的検出に使用される典型的なサンドイッチアッセイを示す。
図1aでは、サンドイッチは、3つの主要な要素、捕捉プローブ(2)、シグナルプローブ(3)および標的(4)を含む。標的は、核酸の実施形態ではPCRアンプリコン配列と同義であり得る。標的は、シグナルプローブの所望の部分(3b)に特異的に結合またはハイブリダイズする部分(4b)、対応する捕捉プローブ部分(2b)に結合またはハイブリダイズする部分(4a)、および任意により1つ以上の隣接部分、例えば(4c)を有することができる。捕捉プローブは、捕捉プローブ(2)を電極表面(1)に連結する、つなぐまたは結合するリンカー(2a)を含むことができる。図示されているように、シグナルプローブは、電極表面に近接している検出可能に標識された部分または標識(3a)を有する。標識部分3aは、シグナルプローブ結合部分(3b)にコンジュゲートしているか、またはその内部にある。いくつかの変形例では、捕捉プローブリンカー(2a)と同様の形式の1つ以上のリンカーを介して電極表面にも付着し、電極表面への望ましくない電子移動事象(「ノイズ」)を防止または低減するのに役立つ自己組織化単層(SAM:self-assembled monolayer)は描かれていない。
【
図1b】
図1bは、本明細書に開示される典型的なシグナル複合体を示す。
図1bでは、アッセイは、捕捉プローブ(2)および標的(4)の2つの主要要素のみを含む。標的は、核酸の実施形態ではPCRアンプリコン配列と同義であり得る。標的は、捕捉プローブ部分(2b)の所望の部分に特異的に結合またはハイブリダイズする部分(4a)を有することができる。図示されていないが、標的(4)は、捕捉プローブに隣接する1つ以上の部分を任意に含むことができる。捕捉プローブは、捕捉プローブ(2)を電極表面(1)に連結する、つなぐまたは結合するリンカー(2a)を含むことができる。図示されているように、標的は、電極表面に近接している検出可能に標識された部分または標識(3a)を有する。標識部分3aは、シグナル結合部(4b)で標的にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、捕捉プローブリンカー(2a)と同様の形式の1つ以上のリンカーを介して電極表面にも付着し、電極表面への望ましくない電子移動事象(「ノイズ」)を防止または低減するのに役立つ自己組織化単層(SAM)は描かれていない。
【
図2】
図2は、本明細書に開示されるシグナルプライマーの実施形態を示す。
図2a~2cは、本明細書に開示されるシグナルプライマーの異なる実施形態を示す。いくつかの実施形態では、第1のシグナル部分(3つの円として示されている)はシグナルプライマーの5’末端にあり、第2のシグナル部分はシグナルプライマー自体に内部でコンジュゲートされている(
図2a)。いくつかの実施形態では、シグナル部分(3つの円として示されている)は、シグナルプライマーの5’末端にある(
図2c)。いくつかの実施形態では、シグナル部分(3つの円として示されている)は、シグナルプライマー自体(
図2b)に内部的にコンジュゲートされる。別の言い方をすれば、レドックス部分がプライマーに付着され、この標識は、5’末端または配列の中央のどこかに導入され得る。
図2(a~c)において、「ii」は検出部分、例えばフェロセンであり、「i」はアニーリング領域、例えばPCR中にDNA鋳型に結合する領域である。
図2d~2fは、本明細書に開示される一本鎖シグナルアンプリコンの異なる実施形態を示す。いくつかの実施形態では、第1のシグナル部分(3つの円として示されている)は一本鎖シグナルアンプリコンの5’末端にあり、第2のシグナル部分はシグナルプライマー自体に内部でコンジュゲートされている(
図2d)。いくつかの実施形態では、シグナル部分(3つの円として示されている)は、一本鎖シグナルアンプリコン(
図2f)の5’末端にある。いくつかの実施形態では、シグナル部分(3つの円として示されている)は、一本鎖シグナルアンプリコン(
図2e)に内部でコンジュゲートされる。別の言い方をすれば、レドックス部分は一本鎖シグナルアンプリコンに付着しており、この標識は5’末端または配列の中央のどこかに導入され得る。
図2(d~f)において、「ii」は検出部分、例えばフェロセンであり、「i」はアニーリング領域、例えば検出中に捕捉プローブに結合する領域である。
図2g~2kは、本明細書に開示される二本鎖シグナルアンプリコンの異なる実施形態を示す。いくつかの実施形態では、第1のシグナル部分(3つの円として示されている)は二本鎖シグナルアンプリコンの5’末端にあり、第2のシグナル部分はシグナルプライマー自体に内部でコンジュゲートされている(
図2g)。いくつかの実施形態では、シグナル部分(3つの円として示されている)は、一本鎖シグナルアンプリコン(
図2i)の5’末端にある。いくつかの実施形態では、シグナル部分(3つの円として示されている)は、一本鎖シグナルアンプリコン(
図2h)にコンジュゲートまたは内部にある。
図2jは、二本鎖シグナルアンプリコンの5’末端のシグナル部分を連結する余分な末端ヌクレオシドを示し、第2のシグナル部分はシグナルプライマー自体の内部にコンジュゲートされている。
図2kは、二本鎖シグナルアンプリコンの5’末端のシグナル部分を連結する余分な末端ヌクレオシドを示す。あるいは、プライマーは、電子移動部分を共有結合的に付着させるために使用されるリンカーを含有してもよい。
図2lは、シグナル部分を連結する5’-末端上のリンカーを示す。
図2mは、シグナル部分を連結する3’末端上のリンカーを示す。
図2nは、プライマーが5’末端および3’末端の両方にシグナル部分を含有する実施形態を示す。
【
図3】
図3は、本明細書に開示されるシステムの一実施形態を示す。
図3に見られるように、検出可能な標識(円として示される)に結合した捕捉プローブは、検出部位に個別にまたは連続的にスポットされ得る。検出可能な標識に結合した捕捉プローブは、目的の分析物に特異的であり得る。検出可能な標識に結合した捕捉プローブは、対照として機能することができ、分析物に結合したものと区別可能なそれ自体のシグナルを含み得る。別の言い方をすれば、標識された核酸捕捉プローブは、一本鎖シグナルアンプリコン上の標識と同じまたは異なる酸化還元電位であり得る。場合によっては、一本鎖シグナルアンプリコンは標識捕捉プローブに結合することができ、場合によっては結合することができない。いくつかの実施形態では、捕捉プローブ上の標識と一本鎖シグナルアンプリコン上の標識は同一であるが、それらは同一である必要はない。いくつかの実施形態では、それらはエネルギー移動部分である。いくつかの実施形態では、それらはフェロセン系、フェロセン誘導体化合物、メチレンブルーまたはオスミウムである。
【
図4】
図4は、本明細書に開示されるシステムの一実施形態を示す。アンプリコンはもはや、典型的なサンドイッチアッセイのようにシグナルプローブに結合する部分を有する必要がないため、アンプリコンをより短くすることができる。さらに、場合によっては、より長いアンプリコンを増幅し、アンプリコンの異なる部分に結合する複数の捕捉プローブを有することが有益であり得る。本方法は、一本鎖シグナルアンプリコンの異なる部分に結合する、同じ検出電極上の1つ以上の捕捉プローブを利用することができる。いくつかの実施形態では、第1の捕捉プローブ(e)に結合する一本鎖シグナルアンプリコン(a)の部分は、第2の捕捉プローブ(d)と交差ハイブリダイズしない。いくつかの実施形態では、第1の捕捉プローブ(d)に結合する一本鎖シグナルアンプリコン(b)の部分は、第2の捕捉プローブ(e)と交差ハイブリダイズしない。いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコン(b)の第1の部分は第1の捕捉プローブ(d)に結合し、一本鎖シグナルアンプリコン(a)の第2の部分に結合する第2の捕捉プローブ(e)と交差ハイブリダイズしない。いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコン(a)の第1の部分は第1の捕捉プローブ(d)および第2の捕捉プローブ(e)に結合することができ、一本鎖シグナルアンプリコン(b)の第2の部分は第2の捕捉プローブ(e)および第1の捕捉プローブ(d)と交差ハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコン(a)の第1の部分は第1の捕捉プローブ(d)および第2の捕捉プローブ(e)に結合することができるが、一本鎖シグナルアンプリコン(b)の第2の部分は第2の捕捉プローブ(e)にのみ結合することができる。
【
図5】
図5は、本明細書に開示されるシステムの一実施形態を示す。
図5に見られるように、いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコンは3つの部分を有する。第1の部分(a)は捕捉プローブ(d)に結合され、第2の部分(b)はシグナルプローブ(e)に結合され、第3の部分は電子移動部分(c)に結合される。いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコン検出可能標識は、対応するシグナルプローブとは異なる電位を有する。いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコン検出可能標識は、対応するシグナルプローブと同じ電位を有する。いくつかの実施形態では、捕捉プローブ(d)に結合する一本鎖シグナルアンプリコン(a)の部分は、シグナルプローブ(e)と交差ハイブリダイズしない。いくつかの実施形態では、捕捉プローブに結合する一本鎖シグナルアンプリコン(a)の部分は、シグナルプローブ(b)とクロスハイブリダイズする。
【
図6】
図6は、本明細書に開示される一本鎖シグナルアンプリコンの一実施形態を示す。
図6に見られるように、部分cは、捕捉プローブに結合することができる一本鎖シグナルアンプリコンの領域である。部分bは一本鎖シグナルアンプリコンのプライマー領域であり、捕捉プローブに結合することができない。部分aは、捕捉プローブに結合することもできない一本鎖シグナルアンプリコンのシグナル伝達部分の領域である。いくつかの実施形態では、部分aは、部分cから5~100塩基対離れている。いくつかの実施形態では、部分aは、部分cから5~200塩基対離れている。いくつかの実施形態では、部分aは、部分cから25~100塩基対離れている。
【
図7】
図7は、N6を示す。N6は、使用可能な標識であり、その合成は、同一出願人が所有する米国特許第7,393,645号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載される
【
図8】
図8は、QW56フェロセン標識を示す。QW56およびQW80フェロセン標識は、本質的に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、同一出願人が所有する出願PCT/US08/82666(国際公開第2009/061941号A2および米国特許第第7,820,391号)に記載されているような通例のDNA合成技術を使用して調製され得る。米国特許第9,891,215号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)において、
図3AはQW56を示し、
図3BはQW80を示す。
【
図10】
図10は、SARS-CoV-2アンプリコンによって生成されたシグナル(nA)を示す。3連の両方の検出パッドからのデータを示す。
【
図11】
図11は、検出ゾーン内の全ての標的からの最大シグナル(nA)を示す。
【
図12】
図12は、従来のサンドイッチアッセイ(対照プライマー)および示される標的に対するシグナルプライマーを使用して、標的からのシグナル(nA)を比較する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
特許請求の範囲および本明細書で使用される場合、以下の用語は、以下の定義を有する。
【0009】
本明細書で使用される場合、「増幅」は、ポリメラーゼを使用してヌクレオチド配列のコピー数を増加させるための任意のインビトロ方法を指す。核酸増幅は、核酸分子(例えば、DNA)またはプライマーへのヌクレオチドの組込みをもたらし、それによって核酸鋳型に相補的な新しい核酸分子を形成する。形成された核酸分子およびその鋳型は、更なる核酸分子を合成するための鋳型として使用することができる。本明細書で使用される場合、1回の増幅反応は、多数回の核酸合成からなり得る。増幅反応には、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が含まれる。1回のPCR反応は、核酸分子の変性および合成の5~100「サイクル」からなり得る。
【0010】
「増幅プライマー」または「プライマー」は、プライマー伸長による標的配列の増幅のためのプライマーである。
【0011】
「アンプリコン」、プライマーまたはプライマーの一部と、プライマー結合部位の下流の配列の相補体である新たに合成された鎖とを含む核酸分子である。伸長産物は、相補的配列を含む鋳型へのプライマーのハイブリダイゼーション、および鋳型を用いたポリメラーゼによるプライマーの伸長から生じる。
【0012】
「分析する」とは、何かの存在または非存在または組成を測定、検出または判定することを意味する。
【0013】
「分析物」は、捕捉結合リガンドに選択的に結合することができる任意のものである。分析物は、例えば、「捕捉結合リガンド」に対する異常に良好なまたは特異的な結合親和性を示す、創薬に使用される合成または他の分子のいずれかのように、天然、生物学的または合成であり得る。分析物および捕捉結合リガンドの両方は、1つ以上の異なるドメインからなり得る。当業者は、分析物と捕捉結合リガンドとの間の相補的な配向が必要であることを理解するであろう。適切な分析物としては、生体分子を含む有機および無機分子が挙げられる。一実施形態では、分析物は、環境汚染物質(殺虫剤、殺虫剤、毒素等を含む);化学物質(溶媒、有機材料等を含む);治療分子(治療薬および乱用薬物、抗生物質等を含む);生体分子(ホルモン、サイトカイン、タンパク質、脂質、炭水化物、細胞膜抗原および受容体(神経、ホルモン、栄養素、および細胞表面受容体)またはそれらのリガンド等を含む);全細胞(原核細胞(病原性細菌等)および真核細胞(哺乳動物腫瘍細胞を含む)を含む);ウイルス(レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス等を含む);および胞子等であり得る。
【0014】
適切な核酸標的分析物としては、限定されないが、オルトミクソウイルス、(例えば、インフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、呼吸器合胞体ウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス)、アデノウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、レオウイルス、トガウイルス(例えば、風疹ウイルス)、パルボウイルス、ポックスウイルス(例えば、天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス)、エンテロウイルス(例えば、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス)、肝炎ウイルス(A、BおよびCを含む)、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン-バーウイルス)、ロタウイルス、ノーウォークウイルス、ハンタウイルス、アレナウイルス、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス)、レトロウイルス(HIV、HTLV-Iおよび-IIを含む)、パポバウイルス(例えば、パピローマウイルス)、ポリオーマウイルスおよびピコマウイルスを含む任意の数のウイルスの核酸、ならびに細菌((バチルス(Bacillus);ビブリオ(Vibrio)、例えばコレラ菌(V.cholerae);エシェリキア(Escherichia)、例えば、エンテロトキシン産生大腸菌(E.coli)、赤痢菌(Shigella)、例えば、志賀赤痢菌(S.dysenteriae);サルモネラ(Salmonella)、例えばチフス菌(S.typhi);マイコバクテリウム(Mycobacterium)、例えば、結核菌(M.tuberculosis)、らい菌(M.leprae);クロストリジウム(Clostridium)、例えば、ボツリヌス菌(C.botulinum)、破傷風菌(C.tetani)、C.ディフィシル(C.dificile)、C.パーフリンジェンス(C.perfringens);コリネバクテリウム(Comyebacterium)、例えばジフテリア菌(C.diphtheriae);ストレプトコッカス(Streptococcus)、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae);ブドウ球菌(Staphylococcus)、例えば黄色ブドウ球菌(S.aureus);ヘモフィルス(Haemophilus)、例えばインフルエンザ菌(H.influenzae);ナイセリア(Neisseria)、例えば、髄膜炎菌(N.meningitidis)、淋菌(N.gonorrhoeae);エルシニア、例えばG.ラムブリア(G.lamblia)、ペスト菌(Y.pestis)、シュードモナス(Pseudomonas)、例えば緑膿菌(P.aeruginosa)、P.プチダ(P.putida);クラミジア(Chlamydia)、例えばC.トラコマチス;ボルデテラ(Bordetella)、例えば百日咳菌(B.pertussis);トレポネーマ(Treponema)、例えばT.パラジウム(T.palladium)等を含む多種多様な目的の病原性および非病原性原核生物を含む)(集合的に「細菌およびウイルス標的」)が挙げられる。
【0015】
適切な核酸標的分析物としては、限定されないが、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)群、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)群、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、コリネバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、エンテロコッカス(Enterococcus)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、リステリア(Listeria)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、ミクロコッカス(Micrococcus)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・ルグデュネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)(GBS)、ストレプトコッカス・アンギノーサ(Streptococcus anginosus)群、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)(GAS)、耐性遺伝子mecA、mecC、vanA、またはvanB(集合的に「グラム陽性標的」)を含む任意の数のグラム陽性生物の核酸が挙げられる。
【0016】
適切な核酸標的分析物としては、限定されないが、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、バクテリオイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、シトロバクター(Citrobacter)、クロノバクター・サカザキ(Cronobacter sakazakii)、エンテロバクター(Enterobacter)(非クロアカエ複合体)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)複合体、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、フソバクテリウム・ネクロフォルム(Fusobacterium necrophorum)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)群、モルガネラ・モルガニイ(Morganella morganii)、ないセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)、プロテウス(Proteus)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、サルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、ステノトロフォモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、耐性遺伝子、CTX-M、IMP、KPC、NDM、OXA(OXA-23およびOXA-48)、またはVIM(集合的に「グラム陰性標的」)を含む任意の数のグラム陰性生物の核酸が挙げられる。
【0017】
適切な核酸標的分析物としては、限定するものではないが、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・オーリス(Candida auris)、カンジダ・デュブリニエンシス(Candida dubliniensis)、カンジダ・ファマタ(Candida famata)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・ギリエルモンディ(Candida guilliermondii)、カンジダ・ケフィル(Candida kefyr)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・ルシタニア(Candida lusitaniae)、カンジダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、クリプトコッカス・ガティイ(Cryptococcus gattii)、クリプトコッカス・ネホフォルマンス(Cryptococcus nehoformans)、フザリウム(Fusarium)またはロドトルラ(Rhodotorula(集合的に「真菌標的」)を含む任意の数の真菌の核酸が挙げられる
【0018】
いくつかの実施形態では、標的はヒト特異的感染性病原体または標的であり、マーカーまたは標的は核酸マーカーである。
【0019】
「アレイ」とは、異なる捕捉結合リガンドを有する複数の別個の部位を意味する。いくつかの実施形態では、個々の部位が、任意に、電子コネクタおよび/またはソフトウェアの助けを借りて、互いに対して所定のまたは決定可能な位置を有する限り、アレイは「アドレス指定可能(addressable)」である。
【0020】
「捕捉結合リガンド」は、「捕捉プローブ」または「捕捉結合プローブ」と同義であり、化合物の混合物中の他の化合物の群からその化合物を引き離すことができるように、別の化合物に対して比較的強いまたは特異的な親和性を示す化合物である。捕捉結合リガンドは、タンパク質、炭水化物、核酸、小分子、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0021】
「二本鎖シグナルアンプリコン」とは、電気化学的に検出可能な標識を含むPCR中のプライマーの使用によって作製された二本鎖アンプリコンを意味する。二本鎖シグナルアンプリコンは、核酸およびシグナルプライマーを含む。
【0022】
「電極」とは、電子装置に接続されたときに電流または電荷を感知し、それをシグナルに変換することができる組成物を意味する。電極は当技術分野で公知であり、限定されないが、金、白金、パラジウム、シリコン、アルミニウムを含む特定の金属およびそれらの酸化物;酸化白金、酸化チタン、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化パラジウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化モリブデン(Mo206)、酸化タングステン(W03)、および酸化ルテニウムを含む金属酸化物電極;ならびに炭素(グラッシーカーボン電極、グラファイト、カーボンペーストを含む)が挙げられる。
【0023】
「電気化学的検出」とは、電位を印加し、化学反応によって生成される電流を測定するための少なくとも2つの電極の使用を意味する。明確にするために、「電気化学的検出」は、(i)液滴の導電率、インピーダンスもしくはキャパシタンス、液滴の一部、または液滴の内容物の検出;(ii)電気化学発光による検出;および(iii)光学的手段による検出を除外する。
【0024】
本明細書における「電子供与部分」、「電子受容部分」、および「電子移動部分」という用語または文法上の等価物は、特定の条件下で電子移動することができる分子を指す。電子供与体および受容体の能力は相対的であることを理解されたい。すなわち、ある実験条件下で電子を失うことができる分子は、異なる実験条件下で電子を受け取ることができる。可能な電子供与部分および電子受容部分の数は非常に多く、電子移動化合物の当業者はいくつかの化合物を利用することができ、それらの化合物の選択は当業者の技術の範囲内であることを理解されたい。レドックス媒介電子検出の1つの利点は、それぞれが選択的に測定またはフィルタリングすることができる独自の別個の電位を有する様々な異なる電子移動部分標識があることである。いくつかの電子移動部分としては、遷移金属錯体、有機電子移動部分、電極、フェロセン等のメタロセン、およびフェロセン誘導体またはメチレンブルーもしくはオスミウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーション」および「ハイブリダイズする」という用語は、二本鎖分子を与える2つの相補的な一本鎖核酸分子(RNAおよび/またはDNA)の対合を指す。本明細書で使用される場合、2つの核酸分子がハイブリダイズし得るが、塩基対合は完全に相補的ではない。したがって、ミスマッチ塩基は、当技術分野で周知の適切な条件が使用されるならば、2つの核酸分子のハイブリダイゼーションを妨げない。
【0026】
「固定化する」という用語またはその派生語は、共有結合であろうと非共有結合であろうと、付着(affixation)、会合または結合を含む。
【0027】
「感染性疾患」とは、ウイルス性、細菌性または真菌性であるかどうかにかかわらず、感染性疾患マーカー、病原体または標的によって特徴付けられる疾患を意味する。例示的な感染症標的としては、例えば、以下のような天然、合成または増幅生体分子が挙げられる:ウイルス標的、グラム陰性標的、グラム陽性標的および真菌標的。
【0028】
「標識」とは、事象または分子もしくは分子の複合体の存在をシグナルするようにシグナル伝達または刺激され得るものを意味する。標識は、例えば、色素、放射性原子または分子、レドックス活性化合物、酵素、酵素基質、核酸、それらの誘導体等を含み得る。レドックス活性標識は、異なる色の染料および化学粘性化合物の存在と同様に、使用することができる様々な異なる可能性がある。
【0029】
本明細書において「単層」または「自己組織化単層」または「SAM」とは、表面上に自発的に化学吸着した分子の比較的秩序だった集合体を意味し、ここで分子は互いにほぼ平行に配向し、表面に対してほぼ垂直である。各分子は、表面に付着する官能基と、単分子層中の隣接する分子と相互作用して相対的に規則正しい配列を形成する部分とを含む。「混合」単層は、不均一単層を含み、すなわち、少なくとも2つの異なる分子が単層を構成する。
【0030】
本明細書における「核酸」または「オリゴヌクレオチド」または文法上の等価物とは、共有結合的に連結した少なくとも2つのヌクレオチドを意味する。核酸は一般にホスホジエステル結合を含有するが、いくつかの場合には、以下に概説するように、例えばホスホラミドを含む代替骨格を有し得る核酸類似体が含まれる。核酸は、DNA、ゲノムとcDNAの両方、RNAまたはハイブリッドであってもよく、核酸は、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの任意の組み合わせ、およびウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニン等を含む塩基の任意の組み合わせを含む。本明細書で使用される場合、「ヌクレオシド」という用語は、ヌクレオチドならびにヌクレオシドおよびヌクレオチド類似体、ならびにアミノ修飾ヌクレオシド等の修飾ヌクレオシドを含む。さらに、「ヌクレオシド」は、天然に存在しない類似体構造を含む。したがって、例えば、それぞれが塩基を含有するペプチド核酸の個々の単位は、本明細書ではヌクレオシドと呼ばれる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド」は、塩基-糖-リン酸の組み合わせを指す。ヌクレオチドは、核酸配列(DNAおよびRNA)のモノマー単位である。ヌクレオチドという用語は、デオキシリボヌクレオシドおよびリボヌクレオシドならびにそれらの誘導体のモノ-、ジ-およびトリリン酸形態を含む。ヌクレオチドという用語は、特に、dATP、dCTP、dITP、dUTP、dGTP、dTTP等のデオキシリボヌクレオシド三リン酸、またはそれらの誘導体を含む。そのような誘導体としては、例えば、[αS]dATP、7-デアザ-dGTPおよび7-デアザ-dATPが挙げられる。本明細書で使用される場合のヌクレオチドという用語はまた、ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸(ddNTP)およびそれらの誘導体を指す。ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸の例示的な例としては、限定されないが、ddATP、ddCTP、ddGTP、ddITPおよびddITPが挙げられる。本明細書で使用される場合、ヌクレオチドは標識されていない。
【0032】
本明細書で使用される場合、「ポリメラーゼ」は、ヌクレオチド重合活性を有する任意の酵素を指す。ポリメラーゼ(DNAポリメラーゼおよびRNAポリメラーゼを含む)としては、限定されないが、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)(Tth)DNAポリメラーゼ、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼ、サーモトガ・ネオポリタナ(Thermotoga neopolitana)(Tne)DNAポリメラーゼ、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)(Tma)DNAポリメラーゼ、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)(TliまたはVENT(登録商標))DNAポリメラーゼ、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furious)(Pflu)DNAポリメラーゼ、DEEPVENT DNAポリメラーゼ、パイロコッカス・ウォオシイ(Pyrococcus woosii)(Pwo)DNAポリメラーゼ、バシラス・ステアサーモフィラス(Bacillus sterothermophilus)(Bst)DNAポリメラーゼ、バシラス・カルドフィルス(Bacillus caldophilus)(Bca)DNAポリメラーゼ、スルフォロブス・アシドカルダリアス(Sulfolobus acidocaldarius)(Sac)DNAポリメラーゼ、サーモプラズマ・アシドフィラム(Thermoplasma acidophilum)(Tac)DNAポリメラーゼ、サーマス・フラバス(Thermus flavus)(Tfl/Tub)DNAポリメラーゼ、サーマス・ルーバー(Thermus ruber)(Tru)DNAポリメラーゼ、サーマス・ブロキアナス(Thermus brockianus)(DYNAZYME)DNAポリメラーゼ、メタノバクテリウム・サーモオートトロフィカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)(Mth)DNAポリメラーゼ、マイコバクテリウム(mycobacterium)DNAポリメラーゼ(Mtb.Mlep)、ならびにそれらの突然変異体、変異体および誘導体が挙げられる。T3、T5およびSP6等のRNAポリメラーゼならびにその突然変異体、変異体および誘導体も使用され得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、「プライマー」は、核酸分子の増幅または重合中にヌクレオチドモノマーの共有結合によって伸長される合成または生物学的に産生された一本鎖オリゴヌクレオチドを指す。核酸増幅は、多くの場合、核酸ポリメラーゼまたは逆転写酵素による核酸合成に基づく。多くのそのようなポリメラーゼまたは逆転写酵素は、そのような核酸合成を開始するために伸長することができるプライマーの存在を必要とする。
【0034】
本明細書で使用される場合、「プローブ」は、設計または選択により、規定のストリンジェンシーの下で標的核酸配列に特異的に(すなわち、優先的に)ハイブリダイズすることを可能にする特定のヌクレオチド配列を含む合成または生物学的に生成された核酸(DNAまたはRNA)を指す。
【0035】
「レドックス活性」化合物または部分とは、別のレドックス活性化合物から電子を移動、往復または受け取ることができるものを意味する。いくつかのレドックス活性化合物は、フェロセンおよびその誘導体、メチレンブルーまたはオスミウムを含む電極およびメタロセンを含む。
【0036】
「試料溶液」は、体液(限定されないが、ヒト試料を含む哺乳動物試料等の実質的に任意の生物の血液、尿、血清、リンパ液、唾液、肛門および膣分泌物、発汗、ならびに精液を含む);環境試料(限定されないが、空気、農業、水および土壌の試料を含む);生物学的兵器剤試料;研究試料(すなわち、核酸の場合、試料は、PCR増幅反応等の標的およびシグナル増幅の両方を含む増幅反応の産物であり得る);精製された試料、例えば精製されたゲノムDNA、RNA、タンパク質等;生試料(細菌、ウイルス、ゲノムDNA)等を含むがこれらに限定されない任意の数のものを含み得て、当業者によって理解されるように、実質的に任意の実験操作が試料に対して行われていてもよい。
【0037】
「シグナルプライマー」とは、電気化学的に検出可能な標識を含むプライマーを意味する。
【0038】
「シグナルプローブ」とは、分析物に結合し、分析物の存在をシグナル伝達することができる何らかの種類の標識を有するプローブ分子を意味する。電気化学的検出のために、標識は、多くの場合、フェロセンまたはフェロセン誘導体であり、これらは、分析物の1つのドメインに結合し、分析物の別のドメインは、固体支持体表面部位上の捕捉結合リガンドに結合する(「サンドイッチアッセイ」として知られる構成)。
【0039】
「一本鎖シグナルアンプリコン」とは、電気化学的に検出可能な標識を含むPCR中のプライマーの使用によって作製されたアンプリコンを意味する。一本鎖シグナルアンプリコンは、核酸およびシグナルプライマーを含む。
【0040】
「固体支持体」または「支持体」は、オリゴヌクレオチド/捕捉プローブを付着するのに適した任意の材料またはマトリックスであり得る。そのようなオリゴヌクレオチドおよび/または捕捉プローブは、当技術分野で周知の任意の技術または技術の任意の組み合わせによって支持体に(共有結合的または非共有結合的に)付加または結合され得る。支持体は、室温の水相以外のものであってもよく、例えば、ビーズ、ゲル、カラム、カラムマトリックス、マルチタイタープレート、紙、膜、プリント回路基板、または他のアレイ表面もしくは支持体を含む。
【0041】
本明細書における「標的核酸」または「標的」という用語または文法上の等価物は、増幅または検出される核酸配列を指す。これらは、増幅される元の核酸配列、その相補的な第2の鎖、および複製または増幅によって産生される元の配列のコピーのいずれかの鎖を含む。標的配列は、ハイブリダイズしたプライマーの伸長のための鋳型とも呼ばれる場合がある。
【0042】
標的配列は、遺伝子、調節配列、ゲノムDNA、cDNA、mRNAおよびrRNAを含むRNA等の一部であり得る。より長い配列がより特異的であるという理解の下で、それは任意の長さであり得る。当業者には理解されるように、相補的標的配列は多くの形態をとり得る。例えば、それは、より大きな核酸配列内、すなわちとりわけ、遺伝子またはmRNAの全部または一部、プラスミドまたはゲノムDNAの制限断片内に含まれ得る。以下により十分に概説されるように、プローブを標的配列にハイブリダイズさせて、試料中の標的配列の存在または非存在を判定する。標的配列はまた、異なる標的ドメインから構成される場合もあり、例えば、試料標的配列の第1の標的ドメインは、捕捉プローブまたは捕捉プローブの一部にハイブリダイズし得て、第2の標的ドメインは、異なる捕捉プローブの一部にハイブリダイズし得る。標的ドメインは、隣接していても分離されていてもよい。「第1」および「第2」という用語は、標的配列の5’-3’配向に対する配列の配向を付与することを意味しない。例えば、相補的標的配列の5’-3’方向を想定すると、第1の標的ドメインは、第2のドメインに対して5’または第2のドメインに対して3’のいずれかに位置し得る。標的は、特定のプライマーまたはプローブが優先的にハイブリダイズすることができる核酸分子を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「標的配列」は、特定のプライマーまたはプローブが優先的にハイブリダイズすることができる標的分子内の核酸配列を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、「鋳型」という用語は、増幅、合成または配列決定される二本鎖または一本鎖分子を指す。二本鎖DNA分子の場合、第1および第2の鎖を形成するためのその鎖の変性は、これらの分子を増幅、配列決定または合成するために行われる。鋳型の一部に相補的なプライマーを適切な条件下でハイブリダイズさせ、次いでポリメラーゼ(DNAポリメラーゼまたは逆転写酵素)が当該鋳型またはその一部に相補的な核酸分子を合成し得る。新たに合成された分子は、元の鋳型と長さが等しいかまたはそれより短くてもよい。新たに合成された分子の合成または伸長中のミスマッチ組込みは、1つまたはいくつかのミスマッチ塩基対をもたらし得る。したがって、合成された分子は、鋳型に正確に相補的である必要はない。鋳型は、RNA分子、DNA分子またはRNA/DNAハイブリッド分子であり得る。新たに合成された分子は、その後の核酸合成または増幅のための鋳型として機能し得る。
【0045】
本明細書で使用される場合の組換えDNA技術および分子生物学および細胞生物学の分野で使用される他の用語は、一般に、適用可能な技術分野の当業者によって理解されるであろう。
【0046】
装置および方法の一般的な説明
核酸増幅および検出のための装置および方法が開示される。装置は、電気化学的検出方法のために装備されてもよい。核酸配列の増幅のための方法および試薬、ならびに核酸の検出におけるそれらの使用が開示される。
【0047】
第1の実施形態では、プライマー領域および電子移動部分(ETM:electron transfer moiety)(例えば、フェロセン標識)を含む、核酸増幅アッセイに使用するためのオリゴヌクレオチドプライマー(すなわち、シグナルプライマー)が開示される。いくつかの実施形態では、プライマーは、いかなる温度においても溶液中に二次構造を含まない。いくつかの実施形態では、プライマーは、任意の温度で標的核酸に結合することができる。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマーは自己アニーリング性である。
【0048】
したがって、第1の態様では、1つ以上の核酸分子を増幅する方法であって、(a)つ以上の鋳型または標的核酸分子または標的核酸を含むと疑われる試料を、本明細書に記載される1つ以上のシグナルプライマーおよび増幅を実施するために必要な試薬と混合することと、(b)当該混合物を、当該鋳型または標的分子の全部または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を増幅するのに十分な条件下でインキュベートすることと、を含む方法が提供される。増幅された核酸分子は、本明細書に開示される1つ以上のシグナルプライマーまたはその一部を含む。一態様では、電子移動部分(ETM)は、増幅によって産生された合成または増幅された核酸分子の一方または両方の末端またはその近くに組み込まれる。一態様では、電子移動部分(ETM)は、5’末端またはその近くに組み込まれる。
【0049】
別の態様では、本方法は、核酸増幅アッセイを実施する方法であって、(a)核酸増幅のための試薬、核酸ポリメラーゼ、標的核酸または標的核酸を含むと疑われる試料と、修飾プライマーとを組み合わせることであって、当該修飾プライマーが検出可能な標識を含み、検出可能な標識がフェロセンである、核酸増幅のための試薬、核酸ポリメラーゼ、標的核酸または標的核酸を含むと疑われる試料と、修飾プライマーとを組み合わせることと、(b)標的核酸が試料中に存在する場合、当該修飾プライマーを組み込んだアンプリコンの複数のコピーを提供するために(a)の混合物をサイクリングすることと、(c)アンプリコンを一本鎖シグナルアンプリコンに変性させることと、(d)当該一本鎖シグナルアンプリコンを、当該一本鎖シグナルアンプリコンに相補的な捕捉オリゴヌクレオチドに曝露することと、(e)当該一本鎖シグナルアンプリコンのハイブリダイゼーション領域を当該捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせることと、(f)当該ハイブリダイゼーションに関連する当該標識を検出することと、を含む方法を含む。いくつかの実施形態では、検出は、電気化学的検出である。いくつかの実施形態では、標的核酸は、DNAである。いくつかの実施形態では、核酸はRNAであり、方法は、逆転写酵素を使用してRNAを逆転写してcDNAを生成する工程を更に含む。いくつかの実施形態では、核酸ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼである。
【0050】
更に別の実施形態では、本方法は、核酸増幅アッセイを実施する方法であって、(a)試薬、核酸ポリメラーゼ、標的核酸、または標的核酸を含むと疑われる試料、修飾プライマーおよび第2のプライマーを組み合わせることであって、当該修飾プライマーが検出可能な標識を含み、検出可能な標識がフェロセンであり、当該第2のプライマーが当該標的核酸の第2の領域に相補的であり、検出可能な標識を有しない塩基の配列を含む、試薬、核酸ポリメラーゼ、標的核酸、または標的核酸を含むと疑われる試料、修飾プライマーおよび第2のプライマーを組み合わせることと、(b)標的核酸が試料中に存在する場合、(a)の混合物をサイクリングして、当該修飾プライマーおよび当該第2のプライマーを組み込んだ二本鎖アンプリコンの複数のコピーを提供することと、(c)当該改変プライマーを組み込んだアンプリコンを変性させること、および当該第2プライマーを組み込んだアンプリコンを一本鎖に変性させることと、(d)当該修飾プライマーを組み込んだ一本鎖シグナルアンプリコンを、当該一本鎖シグナルアンプリコンに相補的な捕捉オリゴヌクレオチドに曝露すること、および第2の一本鎖アンプリコンを、当該第2の一本鎖アンプリコンに相補的な捕捉オリゴヌクレオチドに曝露することと、(e)当該修飾プライマーを組み込んだ当該一本鎖シグナルアンプリコンを当該捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせること、および当該第2の一本鎖アンプリコンを当該捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせることと、(f)当該アンプリコンに組み込まれた当該第1のプライマーと会合した当該標識を検出することと、を含む方法を含む。いくつかの実施形態では、検出は、電気化学的検出である。いくつかの実施形態では、標的核酸は、DNAである。いくつかの実施形態では、核酸はRNAであり、方法は、逆転写酵素を使用してRNAを逆転写してcDNAを生成する工程を更に含む。いくつかの実施形態では、核酸ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼである。
【0051】
更に別の態様では、本方法は、核酸増幅アッセイを実施する方法であって、(a)試薬、ポリメラーゼ、標的核酸または標的核酸を含むと疑われる試料、第1の修飾プライマーおよび第2の修飾プライマーを組み合わせることであって、当該第1の修飾プライマーが第1の検出可能な標識を含み、当該第2の修飾プライマーが第2の検出可能な標識を含み、第1および第2の検出可能な標識がフェロセンであり、当該第2の修飾プライマー当該標的核酸の第2の領域に相補的な塩基の配列を含む、試薬、ポリメラーゼ、標的核酸または標的核酸を含むと疑われる試料、第1の修飾プライマーおよび第2の修飾プライマーを組み合わせると、(b)標的核酸が試料中に存在する場合、(a)の混合物をサイクリングして、当該第1の修飾プライマーおよび当該第2の修飾プライマーを組み込んだ二本鎖アンプリコンの複数のコピーを提供することと、(c)当該第1の修飾プライマーを組み込んだアンプリコンを変性させること、および当該第2の改変プライマーを組み込んだアンプリコンを一本鎖に変性させることと、(d)当該第1の修飾プライマーを組み込んだ一本鎖シグナルアンプリコンを、当該第1の一本鎖シグナルアンプリコンに相補的な捕捉オリゴヌクレオチドに曝露すること、および第2の一本鎖シグナルアンプリコンを、当該第2の一本鎖シグナルアンプリコンに相補的な捕捉オリゴヌクレオチドに曝露することと、(e)当該第1の修飾プライマーを組み込んだ当該第1の一本鎖シグナルアンプリコンを当該第1の捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせること、および当該第2の一本鎖シグナルアンプリコンを当該第2の捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせることと、(f)当該アンプリコンに組み込まれた当該第1のプライマーに会合した当該標識を検出すること、および当該アンプリコンに組み込まれた当該第2のプライマーに会合した当該標識を検出することと、を含む方法を含む。いくつかの実施形態では、検出は、電気化学的検出である。いくつかの実施形態では、標的核酸は、DNAである。いくつかの実施形態では、核酸はRNAであり、方法は、逆転写酵素を使用してRNAを逆転写してcDNAを生成する工程を更に含む。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼである。
【0052】
システムの概要
現在の電気化学的検出アッセイは、サンドイッチアッセイ形式を使用する核酸ハイブリダイゼーションの原理に基づいており、一本鎖アンプリコンは配列特異的シグナルプローブに結合し、シグナルプローブ/一本鎖アンプリコン複合体(「シグナルプローブ複合体」)は、現在の捕捉プローブ/シグナルプローブサンドイッチ技術を使用したシグナル発生を示す概略図である
図1aに示すように電極結合捕捉プローブに結合する。
【0053】
これとは対照的に、本明細書では、シグナルプローブおよびシグナルプローブ複合体の必要性を排除する方法およびシステムが提供される。開示された方法およびシステムは、遺伝子タイピング、サブタイピング、アイソタイピングまたは発現アッセイにおいて有用である。
【0054】
まず、試料から標的核酸を抽出し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いてシグナルプライマーを用いて増幅し、二本鎖シグナルDNAを形成する。いくつかの実施形態では、標的核酸は、少なくとも1つのシグナルプライマーを含むプライマー対を使用して直接増幅されるDNAである。いくつかの実施形態では、標的核酸はRNAであり得、RNAは、シグナルプライマーを使ったポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使った増幅の前に逆転写増幅に供されて、二本鎖シグナルDNAを形成する。ここで、逆転写用プライマーは、追加の逆転写プライマーであってもよく、またはシグナルプライマーであってもよい。場合によっては、逆転写および増幅反応は、一段階反応(RT-増幅)で行われ得る。次いで、得られた二本鎖シグナルDNAをエキソヌクレアーゼによって消化して、一本鎖シグナルDNAを作製する。一本鎖シグナルDNAと捕捉プローブとの結合は、電子移動部分ETM(例えば、フェロセン標識)を金電極の表面付近にもたらす。ハイブリダイズした複合体に特異的な電気シグナルは、系に電圧が印加されると、還元酸化反応の副生成物として生成される(
図1b)。各電極の逐次分析は、複数の分析物標的の検出を可能にする。検出機器は、この電気出力(ナノアンペア、nA)を(例えば、「検出された」または「検出されなかった」等の定性的な方法において)測定および解釈して、各標的核酸の結果を判定する。
【0055】
本明細書では、本明細書で提供される少なくとも1つの「シグナルプライマー」は、標的核酸の増幅に使用される。いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは、非リン酸化オリゴヌクレオチドプライマーの5’末端または5’末端に近い(例えば、5’末端でヌクレオチド1~3のいずれか1つのヌクレオチドに付着しているか、または5’末端でヌクレオチド1~2のいずれか1つのヌクレオチドに付着している)フェロセン標識(例えば、N6、QW56またはQW80等)を有するように設計される。いくつかの実施形態では、シグナルプライマーを使用することによって生成されたアンプリコンは、その5’末端またはその5’末端付近(例えば、その5’末端のヌクレオチド1~3またはヌクレオチド1~2内)にフェロセン標識を有する。
図1bに示すように、一本鎖シグナルアンプリコンは捕捉プローブに結合し、電圧が印加されるとフェロセン標識を金電極の表面近くに運んでシグナルを生成する。したがって、シグナルプローブはもはや検出のために必要とされない。
【0056】
本開示の前には、フェロセン標識に連結されたプライマーを使用して核酸増幅を行うことができるかどうかは不明であった。例えば、ポリメラーゼがETMが付着したプライマー(例えばフェロセン標識等)を認識するかどうかは知られていなかった。プライマーに結合したETM(例えばフェロセン標識等)が熱サイクリングに耐えることができるかどうかも知られていなかった。例えば、ETM(例えばフェロセン標識等)自体が熱サイクリングに耐えることができるかどうかは知られていなかった。Taqポリメラーゼまたは逆転写酵素がETM(例えばフェロセン標識等)によって阻害されるかどうかも知られていなかった。さらに、本開示の前には、検出可能な標識がシグナルを検出するのに十分に電極の近くに保持され得るかどうかが不明であったという点で、ETM(例えばフェロセン標識等)に連結されたプライマーを使用してシグナル検出が起こり得るかどうかは不明であった。
【0057】
例えば、従来の先行技術のサンドイッチアッセイでは、ETM(例えばフェロセン標識等)がシグナルプローブに付着され、シグナルプローブがアンプリコンに結合する。ここで、シグナルプローブ結合部位と捕捉プローブ結合部位との間のギャップは、通常0塩基である。あるいは、シグナルプローブと捕捉プローブとの間の配列ギャップは0~2塩基であってもよい。さらに、従来のサンドイッチアッセイシステムでは、ETM(フェロセン標識等)が捕捉プローブから5塩基以上離れている場合、シグナルが劇的に減少することが知られている。
【0058】
本開示のいくつかの実施形態のようにフェロセン標識がアンプリコンの5’末端または5’末端付近(例えば、その5’末端のヌクレオチド1~3またはヌクレオチド1~2内)に付着している場合、それは捕捉プローブから更に離れており(場合によっては100塩基対も離れている)、したがって、当業者は、そのような「はるかに離れた」フェロセン標識が検出可能なシグナルを生成することができるかどうかを知らないであろう。したがって、本明細書では、ETM(例えばフェロセン標識等)が、捕捉プローブがハイブリダイズする位置から5塩基対を超えて離れている捕捉プローブシグナルプライマー複合体が提供される。いくつかの実施形態では、ETM(例えばフェロセン標識等)が、捕捉プローブがハイブリダイズする位置から10塩基対を超えて離れている捕捉プローブシグナルプライマー複合体が提供される。更なる実施形態では、本明細書では、ETM(例えばフェロセン標識等)が、捕捉プローブがハイブリダイズする位置から50塩基対を超えて離れている捕捉プローブシグナルプライマー複合体が提供される。更なる実施形態では、本明細書では、ETM(例えばフェロセン標識等)が、捕捉プローブがハイブリダイズする位置から100塩基対を超えて離れている捕捉プローブシグナルプライマー複合体が提供される。更なる実施形態では、本明細書では、ETM(例えばフェロセン標識等)が、捕捉プローブがハイブリダイズする位置から200塩基対を超えて離れている捕捉プローブシグナルプライマー複合体が提供される。いくつかの実施形態では、ETM(例えばフェロセン標識等)が、捕捉プローブがハイブリダイズする位置から5~100塩基対離れている、捕捉プローブシグナルプライマー複合体が本明細書で提供される。追加の実施形態では、ETM(例えばフェロセン標識等)が、捕捉プローブがハイブリダイズする位置から5~500塩基対離れている、捕捉プローブシグナルプライマー複合体が本明細書で提供される。特定の実施形態では、ETM(例えばフェロセン標識等)が、捕捉プローブがハイブリダイズする位置から5~50塩基対離れている、捕捉プローブシグナルプライマー複合体が本明細書で提供される。
【0059】
電気化学的検出システム
標的核酸セグメントを特異的に検出する電気化学検出システムを、本明細書に更に提供する。このシステムは、アンペロメトリック電位が印加されたときに測定可能な電流を生成するために、検出可能な標識に結合した標的核酸セグメントに相補的であり、特異的にハイブリダイズする、核酸またはペプチド核酸プローブ等の捕捉プローブを利用する。いくつかの実施形態では、電気化学シグナルは、試料中の標的核酸の量に比例する。
【0060】
試料中の標的分析物を検出するのに有用な組成物および方法も提供される。シグナルプライマー、一本鎖シグナルアンプリコン、および一本鎖シグナルアンプリコンに結合したハイブリダイゼーション複合体は、標的分析物を検出するための新しい有用な方法を提供する。ここで、標的核酸の増幅に用いられるシグナルプライマーは、標的核酸に特異的にハイブリダイズすることができる核酸と、電気化学的に検出可能なシグナル伝達部分とを含む。したがって、シグナルプライマーを使用した増幅後、一本鎖シグナルアンプリコンは核酸および電気化学的に検出可能なシグナル伝達部分を含む。アッセイ複合体は、電極(例えば、金電極)に結合した捕捉結合リガンドおよび捕捉結合リガンドに付着した一本鎖シグナルアンプリコンを含み、一本鎖シグナルアンプリコンは核酸および電気化学的に検出可能なシグナル伝達部分を含む。
【0061】
シグナルプライマーはアッセイ開発を単純化する
シグナルプライマーを利用する電気化学的検出システムを本明細書に記載する。従来技術の電気化学検出システムは、検出のためにサンドイッチアッセイを利用する。したがって、アンプリコンは、捕捉プローブとシグナルプローブの両方に結合するのに十分な長さでなければならない。これとは対照的に、本明細書に開示されるシグナルプライマーを使用すると、シグナルプローブを結合する必要がなくなるため、アンプリコンの長さが減少する。これは、(1)標的核酸を区別するためのより短い領域が必要であるため、また(2)4つの保存領域が必要とされる従来のサンドイッチアッセイ(フォワードプライマー、リバースプライマー、シグナルプローブおよび捕捉プローブ)とは異なり、本明細書に開示されるようなシグナルプライマーでは、3つの保存領域のみが必要とされる(フォワードプライマー、リバースプライマーおよび捕捉プローブ)ことから、プライマーの設計をより容易にする。さらに、核酸アンプリコンに結合した電気化学的検出部分を使用することにより、バックグラウンドシグナルを減少させるかまたはシグナル対ノイズ比を増強する必要がなくなる。具体的には、ドナー/クエンチャー色素対、すなわち蛍光ドナー色素またはドナーフルオロフォアのためのクエンチャーを含む必要はない。
【0062】
シグナルプライマーは感度を改善する
シグナルプライマーを使用して改善された感度が観察されている。特定の理論に縛られることなく、先行技術のサンドイッチアッセイでは、アンプリコンが100%の効率でシグナルプローブに結合しない場合、アッセイの感度は負の影響を受ける。アンプリコンがシグナルプローブに結合する必要性を排除することによって、アッセイの感度を改善することができる。ETM(例えばフェロセン標識等)を含めると、増幅を妨げないが、シグナルプライマーを標的核酸分子にミスプライミングする能力が低くなるとも考えられる。感度の増加は、増幅が困難であり、PCR反応において所望の増幅産物を少量しか産生しないかまたは全く産生しない鋳型核酸の増幅にとって特に重要である。
【0063】
シグナルプライマーは結果として生じる時間を短縮する
最近の研究では、重症敗血症または敗血症性ショックの患者は、抗生物質治療を適用しない1時間ごとに7.6%の死亡の可能性の増加を示したことが示されている。Liang et al.,Empiric Antimicrobial Therapy in Severe Sepsis and Septic Shock:Optimizing Pathogen Clearance,Curr Infect Dis Rep.2015 Jul;17(7):493.検出システムがより迅速に行われた場合、生存率が増加する可能性がある。
【0064】
上記のように、増幅のためにシグナルプライマーを使用する場合、アンプリコンはシグナルプローブ結合領域を必要とせず、その結果、アンプリコンをより短くすることができる。より短いアンプリコンは、増幅に必要な時間が短縮されることを意味する。増幅時間を短縮すると、結果に至るまでの時間が短縮され、ひいては患者の生命を節約することができる。
【0065】
さらに、従来技術のサンドイッチアッセイでは、アンプリコンは最初にハイブリダイゼーション反応中にシグナルプローブに結合しなければならず、次いでシグナルプローブ-アンプリコン複合体が捕捉プローブに結合する。シグナルプライマーの使用は、別個のシグナルプローブ/アンプリコンハイブリダイゼーションステップの必要性を排除し、結果として生じる時間を更に短縮する。
【0066】
シグナルプライマーは製造プロセスを単純化する
シグナルプローブの必要性を排除することにより、検出ハイブリダイゼーション複合体が3つの成分から2つに単純化され、その結果、診断試験/キットの製造プロセスが単純化される。
【0067】
従来技術との差異
一定のタイプのシグナルプライマーは当技術分野で公知である(例えば、米国特許第8,323,929号、同第9,068,948号および米国特許第20190024167号を参照されたい)。しかしながら、これらの先行技術のシグナルプライマーは全て蛍光標識を利用する。これとは対照的に、本明細書で提供されるシグナル伝達プライマーは、電気化学的検出によって検出することができる標識を使用する。この違いは、本開示の前に、核酸(例えば、DNA)をETM(例えばフェロセン標識等)の存在下で増幅できるかどうかが不明であったため、重要である。例えば、Taqポリメラーゼまたは逆転写酵素がETM(例えばフェロセン標識等)によって阻害されるかどうかは知られていなかった。更に重要なことに、捕捉プローブに結合したときに一本鎖シグナルアンプリコンを検出できるかどうかは知られていなかった。これは、捕捉プローブからのETM(例えばフェロセン標識等)の距離に起因する。従来のサンドイッチアッセイシステムでは、シグナルプローブが捕捉プローブから離れるにつれて、シグナルは劇的に減少する。
【0068】
本実施形態は、レポータープローブを使用せず、その3’末端は、シグナルプライマーの5’アダプター配列の相補体にハイブリダイズして、米国特許第8,323,929号に開示されているような5’オーバーハングをもたらす。さらに、本実施形態はまた、オーバーハングを埋めるためにポリメラーゼを使用せず、レポータープローブの5’オーバーハングの相補体を合成しない。本実施形態は、標的核酸の存在の指標として直接的または間接的のいずれかでレポータープローブ相補体の合成を検出しない。
【0069】
さらに、本実施形態は、米国特許第9,068,948号に開示されているように、核酸プライマー中の第1のエネルギー移動要素と組み込まれた標識ヌクレオチド中の第2のエネルギー伝達要素との間のエネルギー移動を検出することによって、目的の核酸の存在または量を検出しない。本実施形態は、標識プライマー間のエネルギー移動、標識プライマーとヌクレオチド(複数可)との間のエネルギー移動、標識ヌクレオチド間のエネルギー移動、蛍光インターカレーターと標識プライマー(複数可)との間のエネルギー移動、または標識プローブとヌクレオチド(複数可)との間のエネルギー移動を検出しない。本実施形態は、米国特許第9,068,948号のように、各鎖上のプライマーまたは核酸構築物間の近接度に依存しない。
【0070】
さらに、本実施形態のシグナルプライマーは、米国特許出願公開第20190024167号のように固定化されていない。本実施形態では、米国特許出願公開第20190024167号のように、標識から放出されるエネルギーまたは他の検出可能な特性を低減またはクエンチする必要はない。
【0071】
本システムは、リアルタイムでの検出を可能にしない。反応が起こっているとき、すなわち「リアルタイム」で標識を監視し得る蛍光ベースのシステムとは異なり、開示されるシグナルプライマーは、増幅の終わりに検出のために捕捉プローブに結合しなければならない。これは、いわゆる「エンドポイント」検出システムである。したがって、システムは、存在する標的の初期量に関する半定量的または定量的情報を提供するために使用することができない。それにもかかわらず、シグナル発生は特異的であり、試料中の適切な標的分子の存在に比例すると予想される。さらに、本明細書で提供されるシグナルプライマーは、検出のために捕捉プローブとのハイブリダイゼーションを必要とし、PCR産物から直接検出することはできない。
【0072】
核酸試験の価値に関する一般的な背景
核酸試験の用途は広い。現在の商業的試験の大部分は、クラミジア、淋病、肝炎およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)ウイルス負荷を含む感染性疾患;嚢胞性線維症を含む遺伝性疾患;ヘモクロマトーシスを含む凝固および血液学因子;乳癌の遺伝子を含む癌に関する。他の関心領域としては、薬理ゲノミクスと呼ばれる心血管疾患および薬物耐性スクリーニングが挙げられる。試験の大部分は、現在、1日に数千ではないにしても数百の試料を処理する集中検査室で行われている。
【0073】
標識オリゴヌクレオチドプローブの配列特異的ハイブリダイゼーションは、選択されたヌクレオチド配列を検出および同定するための手段として長い間使用されてきた。核酸分析の最終工程のための従来の検出方法は当技術分野で周知であり、放射能、比色、蛍光、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)および電気化学に基づくサンドイッチ型捕捉方法を含む。
【0074】
プローブをフェロセンで標識することにより、プローブハイブリダイゼーションの検出を容易にするための比較的高感度の手段が提供されている。いくつかの特許は、核酸の電気化学的検出を扱っており、例えば、米国特許第10,001,476号(参照によりその全体が組み込まれる)は、捕捉プローブ制御、ならびに正確かつ効率的な多重分析物検出を容易にすることができる様々な捕捉およびシグナルプローブ構成ならびに構成の組み合わせによる検出を開示している。米国特許米国特許第10,001,476号は、標的に結合する電極(捕捉プローブ)上の一本鎖DNAを開示している。そのようなシステムは、フェロセン標識が機能するために電極に近接して保持されることを必要とする。電極に対するフェロセン標識の適切な配向を達成するために、従来技術ではサンドイッチアッセイが使用されてきた。上述のように、サンドイッチアッセイは、捕捉プローブおよびシグナルプローブの両方に結合することができるアンプリコンを必要とする。捕捉プローブとシグナルプローブの両方に結合することができるユニークで保存された配列を増幅するためのプライマーの開発は複雑である。したがって、より単純なシステムを開発する必要がある。
【0075】
電気化学的検出
本明細書で提供される方法およびシステムは、核酸捕捉プローブに特異的な一本鎖シグナルアンプリコンが検出電極に近接して保持され、検出され得る条件下で、検出電極上にハイブリダイゼーション複合体を形成することを含む。したがって、本明細書で提供される方法は、捕捉プローブに結合した一本鎖シグナルアンプリコンが電極に近接しており、そこに電子を伝達する条件下で、電極上のハイブリダイゼーション複合体の存在について試験することを含む。捕捉プローブに結合していない一本鎖シグナルアンプリコンおよびシグナルプライマーは、電圧/電流がオンにされて検出されないとき、電極から離れるように駆動される。
【0076】
いくつかの実施形態では、検出方法は、電気化学的検出を使用する単回使用カートリッジで実施される。いくつかの実施形態では、電気化学的検出は、導電性オリゴマーおよび捕捉結合リガンドを含む単層を含む電極を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、本方法は、一本鎖シグナルアンプリコンの異なる部分に結合する、同じ検出電極上の1つ以上の捕捉プローブを利用することができる。複数の捕捉プローブが使用される場合、それぞれが目的の共通の核酸配列の異なる部分に特異的である。目的の核酸配列は、例えばPCRによって核酸を増幅することができる。いくつかの実施形態では、電極は自己組織化単分子膜(「SAM」)を有する。いくつかの実施形態では、電極は、2つ以上の種の混合SAMを有し、各種は、異なる鎖長、共役結合数(存在する場合)および/または置換基(存在する場合)を特徴とする。
【0078】
いくつかの実施形態では、ETMは、フェロセン標識等の検出可能な標識である。いくつかの実施形態では、フェロセン標識は、N6、QW56およびQW80からなる群から選択される。特定の実施形態では、検出可能な標識は、N6(例えば、
図7を参照)である。特定の実施形態では、検出可能な標識は、QW56(例えば、
図8を参照)である。特定の実施形態では、検出可能な標識は、QW80(例えば、
図9を参照)である。ここで、検出方法は電気化学的である。
【0079】
特定の実施形態では、捕捉オリゴヌクレオチドは、金表面に固定化される。他の実施形態では、捕捉オリゴヌクレオチドは、電極上に固定化される。いくつかの実施形態では、修飾シグナルプライマーを含む一本鎖シグナルアンプリコンは、捕捉オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、使用される標識は、電子移動部分(ETM:electron transfer moieties)であり、アドレス可能な固体支持体検出部位は、捕捉プローブがスポットされた検出電極である。いくつかの実施形態では、例えば、検出電極を使用する核酸分析物電気化学的検出実施形態では、部位はまた、絶縁性自己組織化単層または混合単分子膜層を特徴とする。
【0080】
電気化学的検出は当業者に公知である。一般に、少なくとも第1の入力シグナルがアッセイ複合体に印加され、出力シグナルが受信される。次いで、出力シグナルを処理して、当該標的分析物の存在を検出する。いくつかの実施形態は、アレイの異なる細胞またはパッドにそれぞれ付着した複数のアッセイ複合体を利用する。
【0081】
ハイブリダイゼーション
上記のPCR反応において、アンプリコンは、2つの異なる一本鎖領域を生成する2つの増幅プライマーによって生成される。増幅後、各増幅された一本鎖シグナルアンプリコンは捕捉プローブに結合し、シグナルを生成することができる。
【0082】
電子移動
いくつかの実施形態では、ETMの検出は、二本鎖核酸の積層π軌道を通る電子移動に基づく。この基本的な機構は、米国特許第5,591,578号、同第5,770,369号、同第5,705,348号およびPCT US97/20014号(これらは全て参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。簡潔には、以前の研究は、電子移動が、二本鎖核酸の積層π軌道を通って急速に、および一本鎖核酸を通って著しくよりゆっくりと進行し得ることを示している。したがって、これはアッセイの基礎として役立つ可能性がある。したがって、導電性オリゴマーを介して検出電極に付着した核酸にETMを添加することによって、核酸および導電性オリゴマーを介したETMと電極との間の電子移動が検出され得る。
【0083】
検出電極
一実施形態では、検出電極は、典型的には金電極から形成される基材上に形成される。しかしながら、当業者によって理解されるように、他の電極も同様に使用することができる。基材は、当業者によって理解されるように、多種多様な材料を含むことができる。一実施形態では、基材はプリント回路基板(PCB)を含む。したがって、一般に、適切な基材としては、ガラス繊維、テフロン、セラミック、ガラス、ケイ素、雲母、プラスチック(アクリル、ポリスチレンおよびスチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、テフロン(商標)、およびそれらの誘導体等を含む)、GETEK(ポリプロピレンオキシドとガラス繊維とのブレンド)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
一般に、材料はプリント回路基板材料を含む。回路基板材料は、導電層でコーティングされ、リソグラフィ技術、特にフォトリソグラフィ技術を使用して処理されて電極および相互接続(当技術分野では相互接続またはリードと呼ばれることもある)のパターンを形成する絶縁基材を含む。絶縁基材は、一般的にポリマーであるが、必ずしもポリマーである必要はない。当技術分野で知られているように、「2次元」(例えば、平面内の全ての電極および相互接続)または「3次元」(電極は一方の表面上にあり、相互接続は基板を通って他方の側に行く可能性がある)基板のいずれかを作製するために、1つ以上の層が使用され得る。三次元システムは、しばしば、「スルーボード(through board)」相互接続が行われるように、穿孔またはエッチングの使用、それに続く銅等の金属による電気めっきに依存する。回路基板材料には、銅箔等の基材に既に取り付けられた箔が設けられることが多く、必要に応じて(例えば相互接続のために)、例えば電気めっきによって追加の銅が追加される。次いで、銅表面は、接着層の付着を可能にするために、例えばエッチングによって粗面化される必要がある場合がある。
【0085】
したがって、いくつかの実施形態では、金電極等の複数の電極を含む基材を含むバイオチップ(本明細書では「チップ」と呼ばれることもある)が開示される。電極の数はアレイを形成する。各電極は、本明細書に概説され、当業者に公知の自自己組織化単層を含むことができる。一実施形態では、単層形成種の1つは、本明細書に概説され、当業者に公知の捕捉リガンドを含む。さらに、各電極は、一端で電極に取り付けられ、最終的に電極を制御することができる装置に取り付けられる相互接続を有する。すなわち、各電極は独立してアドレス指定可能である。
【0086】
基材は、所与の体積の試料を検出電極に曝露する検出チャンバを含むより大きな装置の一部とすることができる。一般に、検出チャンバは、約1μl~1ml、または約10μl~500μlの範囲である。当業者によって理解されるように、実験条件およびアッセイに応じて、より小さいまたはより大きい体積が使用され得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、検出チャンバおよび電極は、電子部品(AC/DC電圧源、電流計、プロセッサ、読み出しディスプレイ、温度コントローラ、光源等)を含む装置に配置することができるカートリッジの一部である。この実施形態では、各電極からの相互接続は、カートリッジを装置に挿入すると、電極と電子部品との間の接続が確立されるように配置される。
【0088】
回路基板材料(または他の基材)上の検出電極は、一般に、多種多様な方法で作製される。一般に、高純度の金が用いられ、真空蒸着法(スパッタリングおよび蒸着)または溶液蒸着法(電気めっきまたは無電解プロセス)によって表面に蒸着され得る。電気めっきが行われるとき、基材は最初に導電性材料を含まなければならない。ガラス繊維回路基板には、銅箔が設けられることが多い。多くの場合、基材に応じて、良好な機械的安定性を保証するために、基材と金との間の接着層が使用される。したがって、いくつかの実施形態は、金について上記のように堆積することができる、クロム、チタン、チタン/タングステン、タンタル、ニッケルまたはパラジウム等の接着金属の堆積層を利用する。電気めっきされた金属(接着金属または電極金属のいずれか)が使用される場合、光沢剤としばしば業界で呼ばれる細粒化添加剤を任意に添加して、表面堆積特性を変えることができる。光沢剤は、コバルトおよびニッケル等の有機種と無機種との混合物である。
【0089】
一般に、接着層は、約100Å~約25ミクロン(1000マイクロインチ)の厚さである。接着金属が電気化学的に活性である場合、電極金属は、「ブリードスルー(bleed-through)」を防止する厚さでコーティングされなければならならず、接着金属が電気化学的に活性でない場合、電極金属はより薄くてもよい。一般に、電極金属(金)は、約500Å~約5ミクロン(200マイクロインチ)、約30マイクロインチ~約50マイクロインチの範囲の厚さで堆積される。一般に、金は、直径約5ミクロン~約5mmまたは約100~250ミクロンのサイズの範囲の電極を作製するために堆積される。次いで、このようにして形成された検出電極を洗浄し、以下で論じるようにSAMを添加する。
【0090】
したがって、複数の金電極を含む基材を作製する方法が提供される。この方法は、最初に、ニッケルまたはパラジウム(任意に、光沢剤を含む)等の接着金属を基材上にコーティングすることを含む。次いで、金等の電極金属は、電気めっきを介して接着金属上にコーティングされる。次いで、電極およびそれらの関連する相互接続を含む装置のパターンは、リソグラフィ技術、特に当技術分野で知られているフォトリソグラフィ技術、および湿式化学エッチングを使用して作製される。多くの場合、ソルダーマスクまたはプラスチック等の非導電性化学抵抗性絶縁材料は、これらのフォトリソグラフィ技術を使用して敷設され、電極および露出したリードへの接続点のみを残す。リード自体は一般にコーティングされている。
【0091】
自己組織化単層
本方法は、捕捉プローブリンカー(
図1aおよび
図1bの要素2a)と同様の形式の1つ以上のリンカーを介して、いくつかの実施形態では、電極表面にも付着され、電極表面への望ましくない電子移動事象を防止または低減するのに役立つSAM(
図1aおよび
図1bには図示せず)の添加と共に継続し得る。いくつかの実施形態では、液滴堆積技術を使用して、必要な化学種、すなわち単層形成種を添加し、その1つは捕捉リガンドである。液滴堆積技術は、「スポット」アレイを作製するために周知である。これは、各電極に異なる組成物を加えるために、すなわち、異なる捕捉リガンドを含むアレイを作製するために行われる。あるいは、SAM種は、各電極について同一であってもよく、これは、液滴堆積技術または基材全体もしくは基材の表面の溶液への浸漬を使用して達成されてもよい。
【0092】
本システムは、アレイ形式では、すなわち、アドレス指定可能な検出電極(本明細書では、一般に「パッド」、「アドレス」、または「マイクロ-ロケーション」と呼ばれる)のマトリックスが存在する場合に、特定の有用性を見出す。本明細書において「アレイ」とは、アレイ形式の複数の捕捉リガンドを意味し、アレイのサイズは、アレイの組成および最終用途に依存する。約2個から数千個の異なる捕捉リガンドを含むアレイを作製することができる。一般に、アレイは、電極のサイズ、ならびにアレイの最終用途に応じて、2個から100,000個以上も含む。範囲は、約2~約10,000、約5~約1000、および約10~約100である。いくつかの実施形態では、組成物はアレイ形式でなくてもよく、すなわち、いくつかの実施形態では、単一の捕捉リガンドを含む組成物も同様に作製され得る。さらに、いくつかのアレイでは、異なる組成物または同一の組成物のいずれかで、複数の基材を使用してもよい。したがって、例えば、大きなアレイは、複数のより小さい基材を含んでもよい。
【0093】
一実施形態では、多くのシステムでこれは必要ではないが、電極は自己組織化単層(SAM)を含む。本明細書に概説されるように、標的アナタイト結合(例えば、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション)の効率は、分析物が電極から離れている場合に増加し得る。同様に、標的分析物を含む生体分子の電極への非特異的結合は、一般に、単層が存在する場合に減少する。したがって、単層は、電極表面から離れた分析物の維持を容易にする。さらに、単層は、荷電種を電極の表面から遠ざける働きをする。したがって、この層は、電極とETMとの間、または電極と溶媒中の荷電種との間の電気的接触を防止するのに役立つ。そのような接触は、試料中に存在し得る荷電種を介した直接的な「短絡」または間接的な短絡をもたらし得る。したがって、単分子層は、電極表面上の均一な層に密に充填され、最小の「穴」が存在する。したがって、単層は、電極への溶媒の接近を阻止するための物理的障壁として機能する。
【0094】
SAMは、導電性オリゴマーのみを含んでいてもよいし、導電性オリゴマーと絶縁体との混合物を含んでいてもよい。本明細書に概説されるように、単層の使用は、表面への生体分子の非特異的結合の量を減少させ、核酸の場合、電極からのオリゴヌクレオチドの距離の結果としてオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションの効率を増加させる。したがって、単層は、電極表面から離れた標的分析物の維持を容易にする。さらに、単層は、電荷キャリアを電極の表面から遠ざける役割を果たす。したがって、この層は、電極と電子移動部分(ETM;レドックス活性)との間、または電極と溶媒中の荷電種との間の電気的接触を防止するのに役立つ。そのような接触は、試料中に存在し得る荷電種を介した直接的な「短絡」または間接的な短絡をもたらし得る。したがって、単分子層は、電極表面上の均一な層に密に充填され、最小の「穴」が存在する。したがって、単層は、溶媒および電極への望ましくないシグナル(「ノイズ」)アクセスを遮断するための物理的障壁として機能し得る。
【0095】
単回使用装置を用いた核酸試験
例示的なプロセスを一般的に説明する。様々な要素(工程)は、所定の順序を有する連続した工程として説明されているが、プロセスは例示的なものであり、限定することを意図するものではないことを理解されたい。当業者であれば、様々な要素(工程)の多くは、本明細書に記載されたものとは異なる順序で行うことができ、他の要素(工程)と同時にまたは実質的に同時に行うことができ、または完全に省略することができることを認識するであろう。したがって、説明した要素(工程)の順序は限定的ではない。
【0096】
工程1:試料をロードする。
工程2:核酸、例えばDNAを抽出する。
工程3:核酸、例えばDNAを、ETM標識プライマー(すなわち、シグナルプライマー)を含む増幅試薬と組み合わせる。
工程4:核酸、例えばDNAを増幅して、二本鎖シグナルアンプリコンを産生する。
工程5:二本鎖シグナルアンプリコンをエキソヌクレアーゼとインキュベートして一本鎖シグナルアンプリコンを形成する。
工程6:一本鎖シグナルアンプリコンを捕捉プローブと組み合わせる。
工程7:電気センサ検出。
【0097】
いくつかの実施形態では、工程2のプロセスは、RNAを抽出することを含み得、cDNAを提供するためにRNAを逆転写する工程3aを更に含み得る。
【0098】
PCR一般
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、DNA鋳型を増幅して特定のDNA断片をインビトロで生成する比較的単純な技術である。典型的な増幅反応としては、標的DNA、熱安定性ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ等)、2つのオリゴヌクレオチドプライマー(5’および3’)、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、反応緩衝液および二価カチオン(例えば、Mg2+および/またはMn2+等)が挙げられる。PCRの各サイクルは、鋳型変性、プライマーアニーリングおよびプライマー伸長のための工程を含む。最初の工程は、標的DNAを加熱することによって変性させる。変性プロセスでは、絡み合った2本のDNA鎖が互いに分離し、熱安定性DNAポリメラーゼによる複製に必要な一本鎖DNA鋳型を産生する。サイクルの次の工程では、オリゴヌクレオチドプライマーが変性した標的DNAと安定な会合を形成し(アニール)、DNAポリメラーゼのプライマーとして機能することができるように温度を下げる。最後に、新しいDNAの合成が始まる。「Taqポリメラーゼ」と呼ばれる酵素は、元の鎖を鋳型として使用して、DNAの2つの新しい鎖を合成(「構築」)する。このプロセスは、元のDNAの複製をもたらし、新しい分子のそれぞれがDNAの1つの古い鎖および1つの新しい鎖を含む。次いで、これらの鎖のそれぞれを使用して、2つの新しいコピーを作成することができ、以下同様である。新しいDNAを変性および合成するサイクルは、30回または40回も繰り返され、元のDNAセグメントの10億を超える正確なコピーをもたらす。PCRのサイクリングプロセスは、典型的には、反応の温度を変更してDNAの変性および合成を可能にするようにプログラムされたサーモサイクラーで自動化される。
【0099】
反応が単一の温度で行われるという点で、従来のPCR反応とは異なるいくつかの核酸増幅技術がある。これらの等温法としては、サイクリングプローブ反応、鎖置換、Invader(商標)、SNPase、ローリングサークル反応およびNASBAが挙げられる。本明細書に記載の方法およびシステムを、等温法と共に使用することもできる。
【0100】
いくつかの実施形態では、核酸合成の非存在下では、プライマーは捕捉プローブに結合することができず、シグナルプライマーと電極との間の電子移動はほとんどまたは全くないはずである。他の実施形態では、核酸合成の非存在下で、プライマーは捕捉プローブに結合することができるが、電子移動は検出不能または所定の限界未満である。
【0101】
適切なPCR条件の選択は、当業者の理解の範囲内である。当業者は、所与の標的およびプライマーについてPCR反応を最適化するために、核酸標的、プライマーおよび様々な工程の温度の濃度を調整することが必要であり得ることを理解するであろう。そのような最適化は、過度の実験を必要としない。
【0102】
PCRの種類
本明細書に開示されるシグナルプライマーは、PCR、5-RACE、アンカーPCR、「片側PCR」、LCR、NASBA、SDA、RT-PCR、リアルタイムPCR、定量PCR、定量RT-PCR、およびユニバーサルプライマーフォーマットを含む当技術分野で公知の他の増幅システムを含む任意の増幅反応で使用され得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは、2つの領域:
図2aの項目「i」に記載のPCR増幅中にDNA鋳型に結合することができるもの、および
図2aの項目「ii」に記載のレドックス媒介電子検出中にシグナルを生成することができるものを有する。いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは、3つの領域、すなわちPCR増幅中にDNA鋳型に結合することができる1つの領域(
図2lの項目「i」)と、レドックス媒介電子検出中にシグナルを生成することができる第2の領域(
図2Iの項目「ii」)と、第1および第2の領域を連結する第3の領域(
図2lの三角形として記号化されたリンカー)とを含む。
【0104】
シグナルプライマーが増幅する配列は、相補的な標的配列へのハイブリダイゼーションが起こる場合、増幅がかなりの検出可能な速度で進行するように、既知の標的配列に基づいて選択される。
【0105】
PCR反応は、急激な温度変動を伴い得る。ここで、シグナルプライマーがこれらの温度変動に耐え得るかどうかは知られていなかった。例えば、二本鎖DNAを変性させるために使用される高温(例えば、90~99℃)、DNAプライマーがDNA鋳型にハイブリダイズする低温(例えば、40~60℃)、およびハイブリダイゼーション温度(例えば、60~80℃)。
【0106】
アッセイ開発
先行技術のサンドイッチアッセイ(シグナルプローブに結合したアンプリコンに結合した捕捉プローブ)を利用するアッセイを開発する場合、高度に保存されている(すなわち、多くの変異体にわたって検出可能である)が、目的の標的生物をユニークに同定する標的生物配列の部分を見つけることは困難であり得る。これは、高度に保存されているが固有の識別子が、捕捉およびシグナルプローブ結合の両方を可能にするのに十分な長さでなければならない場合、更に複雑である。
【0107】
提供される方法およびシステムの重要な利点は、シグナルプローブを開発する必要がないことである。別の言い方をすれば、シグナルプローブ結合領域を有するアンプリコンを開発する必要はない。このように、産生されたアンプリコンははるかに短くすることができ、アッセイの設計をより単純かつ迅速にする。これは、合成量が従来のサンドイッチアッセイシステムと比較して低減されるので、各増幅ラウンドにおいて、より短い伸長時間、より鋭い融点、および全体的により高い効率をもたらすはずである。これはまた、より高い検出シグナル、したがってより高い感度をもたらすことができる。
【0108】
シグナルプローブを利用しないアッセイが記載される。検出中にサンドイッチアッセイを利用しないアッセイが記載される。
【0109】
電圧が印加されると非結合シグナルプライマーが電極から離れるように駆動されるため、シグナルプライマーを一本鎖シグナルアンプリコンから分離する必要はない。クエンチャーの使用を必要とする蛍光ベースの系とは異なり、本システムは、そのようなドナー/クエンチャー色素対の使用を必要としない。
【0110】
合成オリゴヌクレオチドの設計
増幅反応に使用するための合成オリゴヌクレオチドの設計に関して、Rychlik et al.,(1989,Nucleic Acids Research,vol 17(21):8543-8551)and Rychlik(1995,Molecular Biotechnology,vol 3:129-134)は、DNAのインビトロ増幅のためのプライマーを含むプローブおよびプライマーを設計するための選択基準およびコンピュータプログラムを記載している。両方とも、プライマーは二次構造を生成したり、自己ハイブリダイゼーションを示したりすべきではないことを教示している。米国特許第6,495,323号(参照によりその全体が組み込まれる)は、電子移動部分に付着したプローブの形成を詳細に記載している。フェロセン標識プローブを作製するための同じプロセスを使用して、フェロセン標識プライマーを作製することができる。
【0111】
プローブの合成、官能化およびコンジュゲーション-一般的
米国特許米国特許第10,001,476号明細書は、プローブの合成、官能化および共役をより詳細に開示しており、その開示は、その全体が参照により組み込まれる。プローブの合成、官能化およびコンジュゲーションは全て、当技術分野で周知の技術である。
【0112】
核酸捕捉プローブは、典型的には、標的核酸内の約40~50塩基の配列に相補的であるように設計される。捕捉プローブ配列は、通常、標的核酸の3’領域に相補的であり(ただし、その逆、すなわち標的核酸の5’領域も真であり得る)、約50°Cの融解温度(TM)を有するように設計される。捕捉プローブは、例えば、本質的に同一出願人が所有する米国特許第6,753,143号および米国特許第7,820,391号(これらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているように、金電極表面への共有結合による付着のためのジスルフィドリンカーで3’末端または5’末端のいずれかを修飾することができる。
【0113】
例えば核酸を含む捕捉プローブを、様々な周知の技術を使用して、直接的または間接的に、共有結合的または非共有結合的に電極または他の基材表面に接着することができる。例えば、Ch.13,Chemically Modified Electrodes,Martin and Foss,pp.403-442,Laboratory Techniques in Electroanalytical Chemistry;2d Ed.,Kissinger and Heineman,Eds.,MARCEL DEKKER,INC.(1996);Biochip Technology,Cheng and Kricka,Eds.George H.Buchanan Printing Company,Bridgeport,N.J.(2001)を参照されたい。いくつかの実施形態では、これは、上記のジスルフィド基を持つ3’または5’修飾核酸捕捉プローブと共にジスルフィド自己組織化単分子膜絶縁体配列前駆体を混合し、金または金めっき電極上にスポットすることによって行われる。これは、リンカー/官能基、例えば、米国特許第7,820,391号(参照によりその全体が組み込まれる)に参照および記載されるW330、または米国特許第第6,753,143号(参照によりその全体が組み込まれる)に参照および記載されるN150によって媒介される。当業者が理解するように、例えば、先に参照した文献に記載されているように、利用可能な多くの種類のリンカーが存在する。
【0114】
シグナルプライマー合成
シグナルプライマー配列(複数可)は、標的の特定の領域(複数可)に相補的である。配列の識別が必要な場合、配列多型はアンプリコン配列の中心に可能な限り近くなければならず、2つのアンプリコンのTMは可能な限り厳密に一致しなければならない。
【0115】
シグナルプライマーを作製する場合、電子移動部分(ETM)を、様々な位置、すなわち、5’末端(
図2c)、配列の中央(
図2b)、またはその両方(
図2a)で核酸に共有結合的に付着させることができる。一実施形態では、結合は、ヌクレオシドの塩基への付着、またはリボース-リン酸骨格のリボースもしくはリン酸部分のいずれかを含む核酸の骨格への結合を介したものである。実施形態では、組成物は、電子移動部分が可能な限り「π道(π-way)」に近くなるように設計される。
【0116】
いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは、フェロセン標識(例えば、N6、QW56またはQW80等)を有するように設計される。フェロセン標識の付着は、電子移動部分が結合しているプライマーのワトソン-クリック塩基対形成を乱すべきではなく、標的へのプライマーのアニーリングを妨害しない。他の実施形態では、プライマーは、核酸(n+1またはn+2)の末端に余分な末端ヌクレオシドを含有してもよく、これらは電子移動部分(ETM)を共有結合的に付着するために使用されるが、
図2jおよび
図2kに示されるものと同様に塩基対ハイブリダイゼーションに関与しない。更に他の実施形態では、
図2Iおよび2mに示すように、電子移動部分をプライマー領域から分離するリンカーアームを挿入することが望ましい場合がある。更に他の実施形態では、
図2nに示すように、プライマー領域上に2つ以上のシグナル部分を有することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、1個のフェロセン標識が、シグナルプライマー配列に付加される。いくつかの実施形態では、2個のフェロセン標識が、シグナルプライマー配列に付加される。いくつかの実施形態では、3個のフェロセン標識が、シグナルプライマー配列に付加される。いくつかの実施形態では、4個のフェロセン標識が、シグナルプライマー配列に付加される。いくつかの実施形態では、5個のフェロセン標識が、シグナルプライマー配列に付加される。いくつかの実施形態では、6個のフェロセン標識が、シグナルプライマー配列に付加される。いくつかの実施形態では、7個のフェロセン標識が、シグナルプライマー配列に付加される。いくつかの実施形態では、8個のフェロセン標識が、シグナルプライマー配列に付加される。いくつかの実施形態では、9個のフェロセン標識が、シグナルプライマー配列に付加される。いくつかの実施形態では、10個のフェロセン標識が、シグナルプライマー配列に付加される。いくつかの実施形態では、1~10個のフェロセン標識が、シグナルプライマー配列に付加される。いくつかの実施形態では、1~6個のフェロセン標識が、シグナルプライマー配列に付加される。いくつかの実施形態では、シグナルプライマーあたり6個のフェロセン標識が付加される。
【0117】
いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは、非リン酸化オリゴヌクレオチドシグナルプライマーの5’末端または5’末端に近い(例えば、シグナルの5’末端でヌクレオチド1~3のいずれか1つのヌクレオチドに付着しているか、または5’末端でヌクレオチド1~2のいずれか1つのヌクレオチドに付着している)フェロセン標識(例えば、N6、QW56またはQW80等)を有するように設計される。いくつかの実施形態では、フェロセン標識(複数可)が、シグナルプライマー配列(複数可)の5’末端に付加される。いくつかの実施形態では、1個のフェロセン標識が、シグナルプライマー配列の5’末端に付加される。いくつかの実施形態では、2個のフェロセン標識は、シグナルプライマー配列の5’末端に付加される。いくつかの実施形態では、3個のフェロセン標識は、シグナルプライマー配列の5’末端に付加される。いくつかの実施形態では、4個のフェロセン標識は、シグナルプライマー配列の5’末端に付加される。いくつかの実施形態では、5個のフェロセン標識は、シグナルプライマー配列の5’末端に付加される。いくつかの実施形態では、6個のフェロセン標識は、シグナルプライマー配列の5’末端に付加される。いくつかの実施形態では、7個のフェロセン標識は、シグナルプライマー配列の5’末端に付加される。いくつかの実施形態では、8個のフェロセン標識は、シグナルプライマー配列の5’末端に付加される。いくつかの実施形態では、9個のフェロセン標識は、シグナルプライマー配列の5’末端に付加される。いくつかの実施形態では、10個のフェロセン標識は、シグナルプライマー配列の5’末端に付加される。いくつかの実施形態では、1~10個のフェロセン標識は、シグナルプライマー配列の5’末端に付加される。いくつかの実施形態では、1~6個のフェロセン標識は、シグナルプライマー配列の5’末端に付加される。いくつかの実施形態では、シグナルプライマーあたり6個のフェロセン標識が付加される。全てのハイブリダイゼーション反応は単一の温度で行わなければならないため、全てのシグナルプライマーのTM値は5℃の範囲内でなければならない。全ての検出反応は同じ溶液内で行わなければならないため、シグナルプライマーおよび捕捉プローブは、いかなるクロスハイブリダイゼーションも回避するように設計されなければならず、クロスハイブリダイゼーションの最大ΔG0値は経験的に確立されている。
【0118】
シグナルプライマーは、標準的なホスホラミダイト化学を使用して合成され、DNAポリメラーゼに適した任意のヌクレオチドまたは修飾塩基を含むことができる。シグナルプライマーの核酸部分は、DNAもしくはRNAまたはキメラ混合物もしくは誘導体またはそれらの修飾バージョンであり得る。電気化学的に検出可能な標識で標識されることに加えて、シグナルプライマーは、塩基部分、糖部分またはリン酸骨格で修飾され得、他の付加基または標識を含み得る。
【0119】
シグナルプライマーは、任意の適切なサイズであり得るが、理想的には伸長なしで捕捉プローブに結合しない。いくつかの実施形態では、シグナルプライマー(複数可)は10~100ヌクレオチドまたは10~80ヌクレオチドまたは11~40ヌクレオチドまたは17~25ヌクレオチドの範囲にあるが、シグナルプライマー(複数可)は必要に応じてより長くても短くてもよい。
【0120】
シグナルプライマーのシグナル伝達部分は、フェロセンおよびフェロセン誘導体を含むがこれらに限定されない群から選択される少なくとも1つ以上の電子移動部分を含み得る。一実施形態では、シグナルプライマーのシグナル伝達部は、1~6個の電子移動部分を含み得る。一実施形態では、シグナルプライマーのシグナル伝達部は、1~10個の電子移動部分を含み得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、シグナルプライマーまたは一本鎖シグナルアンプリコンまたは二本鎖シグナルアンプリコンは、1つまたは複数の標識(同じであっても異なっていてもよい)を含み得る。一態様では、オリゴヌクレオチドは標識され、標識は、電極表面上の捕捉プローブとのハイブリダイゼーション時に検出可能な電気化学的変化を受ける任意の部分である。一実施形態では、標識はフェロセンタグであり、標識は1つ以上の電気化学的特性の検出可能な変化を受ける。そのような特性には、シグナル強度、電気化学ポテンシャル、または反応定数が含まれるが、これらに限定されない。
【0122】
シグナルプライマーのシグナル伝達部分は、シグナルプライマー内の1つ以上の位置および/または5’末端もしくはその近くに位置し得る。一実施形態では、シグナルプライマーのシグナル伝達部は、第1もしくは第2の3’もしくは5’最末端ヌクレオチド、第1もしくは第2もしくは第3の3’もしくは5’最末端ヌクレオチド、最初の5つの3’もしくは5’最末端ヌクレオチドのうちの1つ、最初の10個の3’もしくは5’最末端ヌクレオチドのうちの1つ、最初の15個の3’もしくは5’最末端ヌクレオチドのうちの1つ、または最初の20個の3’もしくは5’最末端ヌクレオチドのうちの1つに位置し得る。特定の実施形態では、シグナルプライマーのシグナル伝達部分は、3’末端または5’末端の第1の塩基上に位置する。
【0123】
シグナルプライマーは、増強基を欠いている。それらは、ハイブリダイゼーションおよび/または伸長時に観察可能な特性の検出可能な変化を受けない。シグナルプライマーのシグナル伝達部分は、蛍光部分ではない。
【0124】
シグナルプライマーは、任意の公知の標識方法を使用して(上記のように)標識することができる。一例として、シグナルプライマーは、以下によって標識され得る:(1)ホスホロチオエート結合の硫黄における付着;(2)2’-アミノ基における結合;(3)例えば、アルキルアミン置換カルボキサミドを含む適宜修飾された糖を用いた1’位での付着;(4)例えば脱塩基部位と、例えばリンカーとしてのアルキルジアミンとを用いた1’位での付着;(5)アルキルジアミンと脱塩基部位との間に形成された付加物の還元アルキル化による構造の生成;(6)4’-チオ-2’-デオキシウリジンまたは4’-チオチミジンを用いた組込み;(7)4-チオチミジンまたは4-チオ-2’-デオキシウリジンの2’位での付着;(8)4-アミノ基がアルキルアミンで誘導体化されている場合、デオキシシチジンの4-アミノ位置での付着;(9)6-アミノ基がアルキルアミノ部分で誘導体化されている場合、アデニンの6’位を介した結合;(10)8’位がアルキルチオアミンで置換されている場合、この位置を使用したアデニンの組込み;(11)N2アミノがアルキルアミノ基で誘導体化されている場合、グアニンのN2における付着;または(12)2-アミノ基がアルキルアミンで誘導体化されている場合、アミノアデニンのN2位での付着。
【0125】
全てのシグナルプライマーは、当技術分野で公知の技術を使用して精製され得る。
【0126】
偽陽性結果
偽陽性の結果は、抗生物質、抗菌剤または抗真菌処置の不必要な使用を含む深刻な問題を引き起こす可能性がある。偽陽性結果を回避するために、シグナルプライマーは捕捉プローブに結合すべきではない。例えば、
図6において、部分cはアンプリコンの伸長部分であり、部分bはプライマー領域であり、部分aはシグナル伝達部分である。部分bは捕捉プローブに結合することができず、したがって偽陽性が減少する。さらに、方法工程では、分離工程を用いて、一本鎖シグナルアンプリコンからシグナルプライマーを分離することができる。
【0127】
偽陰性結果
偽陰性の結果はより稀である。先行技術のシステムでは、アンプリコンはシグナルプローブに結合する。シグナルプローブの機能または設計に誤差がある場合、偽陰性が生じる。アンプリコンがシグナルプローブに結合する必要性を排除することによって、偽陰性を低減することができる。
【0128】
シグナルプライマー
システムで使用される捕捉プローブとは異なり、シグナルプライマーは検出前に電極に結合していない。検出中、それらは電極に直接結合されるのではなく、検出のためにそれらを定位置に保持する捕捉プローブに結合する。
【0129】
従来技術のシステムで使用されるシグナルプローブとは異なり、シグナルプライマーは増幅および検出に関与する。
【0130】
いくつかの実施形態では、プライマーは、デオキシリボ核酸、リボ核酸、ペプチド核酸、PEG修飾核酸、ヘキサ-ポリエチレングリコール修飾核酸、キメラ混合物もしくは誘導体またはそれらの修飾バージョンで作製される。
【0131】
いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは捕捉プローブと重複しない。いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは、捕捉プローブと約1~10塩基対重複する。いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは、捕捉プローブと約1~12塩基対重複する。
【0132】
本明細書に開示されるシグナルプライマーは、以下の実施形態によってよりよく理解され得る。一実施形態では、シグナルプライマーは、核酸および検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは、核酸および電子移動部分を含む。特定の実施形態では、シグナルプライマーは、核酸およびフェロセン標識を含む。別の実施形態では、シグナルプライマーは、核酸および電子移動部分を含み、電子移動部分はプライマーの5’末端に付着している。いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは、核酸と、レドックス媒介電子検出中にシグナルを生成することができる標識とを含む。いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは、核酸および電気化学的に検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは、5~12個の核酸および電気化学的に検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは、5~25個の核酸および電気化学的に検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは自己アニーリングプライマーであり、電気化学的に検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは、核酸および電子移動部分を含み、電子移動部分は、プライマーの5’末端に付着しており、レドックス媒介電子検出中にシグナルを生成することができる。いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは、核酸および電気化学的に検出可能な標識を含み、電気化学的に検出可能な標識は、プライマーの5’末端に付着している。いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは
【0133】
核酸および電気化学的に検出可能な標識からなる。
【0134】
標的濃度の決定
電気化学的検出が使用される場合、核酸増幅工程の主な目的は、これが電気化学的検出のための検出下限の範囲内であることが分かっているため、標的分子から約0.01ピコモル濃度の検出可能な核酸を生成することである。知られているように、1マイクロリットルの血液が約5×103分子のDNAを含有する場合、合理的に入手可能な試料体積である1ミリリットルは、5×106分子、または約107分子を含有する。血液1ml中のDNAの量から0.01pmolのDNAにするには、約103倍の増幅が必要である。これは、いくつかの周知の増幅技術を使用して確実に達成可能である。増幅度を決定するために、異なる試料タイプおよび試料体積について同様の計算を行うことは、当業者には明らかであろう。
【0135】
増幅後のプライマーの除去
迅速なPCR反応を組み込んだ系、すなわち約10分未満で増幅が完了した系を開発しようとする結果、プライマー濃度を増加させる必要があることが分かった。上記のように、検出中に過剰なプライマーが混合物中にある場合、これは検出工程で「プライマーバックグラウンド」を生成する可能性があり、捕捉オリゴヌクレオチドに結合した一本鎖シグナルアンプリコンのシグナル生成を妨害または低減する可能性がある。
【0136】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる共同所有の米国特許第10,864,522号は、試料中の病原体を検出するための処理カートリッジおよび方法を記載している。具体的には、10,864,522特許は、デジタルマイクロ流体経路上で試料、プライマーおよびアンプリコンを移動させることを記載している。そのようなシステムでは、プライマーおよびアンプリコンは、それらをデジタルマイクロ流体経路に沿って移動させることによってそれらを互いに分離することができるように、異なる電荷対質量比を有する。PCR二本鎖増幅材料はデジタルマイクロ流体経路を通って移動し、小さい合成オリゴヌクレオチドプライマーは最も速く移動し、大きいアンプリコンはより遅く移動する。一定時間後、PCR増幅された材料を、1/2のオリゴヌクレオチドプライマーおよび他方のより大きなアンプリコンを用いてデジタルマイクロ流体経路上で分割することができる。いくつかの実施形態では、PCR増幅材料がエンドヌクレアーゼで変性された後に分割が生じる。一実施形態では、材料の分割を助けるために、短いものと比較して大きな分子を遅くする膜またはゲルをデジタルマイクロ流体経路に追加することができる。
【0137】
検出可能な標識
検出可能な標識は、電子移動部分を含むことができる。電子移動部分は、フェロセン標識を含む。いくつかの実施形態では、フェロセン標識(例えば、N6、QW56またはQW80等)は、プライマーの5’末端にあるか、プライマーの5’末端に近い(例えば、5’末端でヌクレオチド1~3のいずれか1つのヌクレオチドに付着しているか、または5’末端でヌクレオチド1~2のいずれか1つのヌクレオチドに付着している)。しかしながら、フェロセン標識は、プライマーの3’末端または5’末端と3’末端の両方に存在することもできる。シグナルプライマーは、二本鎖シグナルアンプリコンを産生する。二本鎖シグナルアンプリコンが変性すると、一本鎖シグナルアンプリコンを形成し、捕捉プローブに結合して電気化学シグナルを生成することができる。したがって、シグナルプライマーは、増幅および検出の両方において役割を果たす。シグナルプライマーは、システムがより短いシグナルアンプリコンを利用することを可能にする。いくつかの実施形態では、アンプリコンは約60塩基対である。いくつかの実施形態では、アンプリコンは約30~120塩基対である。いくつかの実施形態では、アンプリコンは約70~250塩基対である。いくつかの実施形態では、アンプリコンは約50~500塩基対である。
【0138】
一実施形態では、核酸は、1箇所で少なくとも1個の電子移動部分で修飾される。一実施形態では、核酸は、2箇所で少なくとも2個の電子移動部分で修飾される(
図2nを参照)。一実施形態では、核酸は、3箇所以上で3個以上の電子移動部分で修飾される。一実施形態では、核酸は、複数の位置で複数の電子移動部分で修飾される。例えば、プライマーから得られるシグナルを増大させるために、複数箇所の複数の電子移動部分を用いてもよい。例えば、電子移動部分は、
図2nに一般的に示されるように、5’および3’の両方に付着することができる。一実施形態では、複数の電子移動部分は同じであり、均一なシグナルをもたらす。別の実施形態では、複数の電子移動部分の各々は異なっていてもよい。一実施形態では、2つの電子移動部分は同じであり、均一なシグナルをもたらす。別の実施形態では、2つの電子移動部分は異なっていてもよい。
【0139】
いくつかの実施形態では、検出可能な標識は、捕捉プローブから1塩基対離れて保持され、依然として検出可能なシグナルを生成する。いくつかの実施形態では、検出可能な標識は、捕捉プローブから1~10塩基対離れた任意の場所に保持され、依然として検出可能なシグナルを生成する。いくつかの実施形態では、検出可能な標識は、捕捉プローブから1~50塩基対離れた任意の場所に保持され、依然として検出可能なシグナルを生成する。いくつかの実施形態では、検出可能な標識は、捕捉プローブから1~100塩基対離れた任意の場所に保持され、依然として検出可能なシグナルを生成する。いくつかの実施形態では、検出可能な標識は、捕捉プローブから36~72塩基対離れた任意の場所に保持され、依然として検出可能なシグナルを生成する。したがって、本明細書では、ETM(例えばフェロセン標識等)が、捕捉プローブがハイブリダイズする位置から1~10塩基対離れている捕捉プローブシグナルプライマー複合体が提供される。いくつかの実施形態では、ETM(例えばフェロセン標識等)が、捕捉プローブがハイブリダイズする位置から1~50塩基対離れている捕捉プローブシグナルプライマー複合体が提供される。更なる実施形態では、本明細書では、ETM(例えばフェロセン標識等)が、捕捉プローブがハイブリダイズする位置から1~100塩基対離れている捕捉プローブシグナルプライマー複合体が提供される。更なる実施形態では、本明細書では、ETM(例えばフェロセン標識等)が、捕捉プローブがハイブリダイズする位置から36~72塩基対離れている捕捉プローブシグナルプライマー複合体が提供される。
【0140】
一本鎖シグナルアンプリコン
一本鎖シグナルアンプリコンを
図2(d~f)に示し、「ii」は検出部分、例えばフェロセンであり、「i」はアニーリング領域、例えば検出中に捕捉プローブに結合する領域である。いくつかの実施形態では、アンプリコンは2つの領域を含み、1つは捕捉プローブに結合することができ、もう1つはレドックス媒介電子検出中にシグナルを生成することができる。いくつかの実施形態では、アンプリコンは3つの領域を含み、1つは捕捉プローブに結合することができ、第2の領域はレドックス媒介電子検出中にシグナルを生成することができ、第3の領域は第1および第2の領域を連結する。
【0141】
適切な標的および関連成分を有するDNAポリメラーゼの存在下で、開示された合成的に標識されたオリゴヌクレオチドプライマーを使用してPCRを進行させることにより、シグナル部分領域が組み込まれた新たに合成されたDNA分子が生成される。次いで、この分子を変性させ、固体支持体上の標的配列にハイブリダイズさせることができる。次いで、シグナル部分領域をシグナルの生成に使用することができる。いくつかの実施形態では、シグナル部分はフェロセン標識である。
【0142】
いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコンは60塩基長である。いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコンは30~60塩基長である。いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコンは20~100塩基長である。いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコンは20~150塩基長である。
【0143】
いくつかの実施形態では、アンプリコンは、デオキシリボ核酸、リボ核酸、ペプチド核酸、PEG修飾核酸およびヘキサ-ポリエチレングリコール修飾核酸の群から選択される。
【0144】
いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコンは、核酸および検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコンは、核酸および電子移動部分を含む。いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコンは、核酸およびフェロセン標識を含む。いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコンは核酸および電子移動部分を含み、核酸は第1の部分および第2の部分を含み、第1の部分と第2の部分は異なる。
【0145】
いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコンは核酸および電子移動部分を含み、核酸は第1の部分および第2の部分を含み、第1の部分および第2の部分は異なり、第1の部分は第1の捕捉プローブに結合することができ、第2の部分は第2の捕捉プローブに結合することができる。いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコンは核酸および電子移動部分を含み、核酸は第1の部分および第2の部分を含み、第1の部分および第2の部分は異なり、第1の部分は第1の捕捉プローブに結合することができるが第2の捕捉プローブに結合することはできず、第2の部分は第2の捕捉プローブに結合することができるが第1の捕捉プローブに結合することはできない。いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコンは核酸および電子移動部分を含み、核酸は第1の部分および第2の部分を含み、第1の部分および第2の部分は異なり、第1の部分は第1の捕捉プローブおよび第2の捕捉プローブに結合することができる。いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコンは核酸および電子移動部分を含み、核酸は第1の部分および第2の部分を含み、第1の部分および第2の部分は異なり、第1の部分は第1の捕捉プローブおよび第2の捕捉プローブに結合することができ、第2の部分は第1の捕捉プローブおよび第2の捕捉プローブに結合することができる。特定の実施形態では、電子移動部分は、一本鎖シグナルアンプリコンの5’末端または5’末端付近に付着している(例えば、5’末端でヌクレオチド1~3のいずれか1つのヌクレオチドに付着しているか、または5’末端でヌクレオチド1~2のいずれか1つのヌクレオチドに付着している)。いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコンは、電気化学的に検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコンは、捕捉プローブ結合領域、プライマー結合領域および電気化学的に検出可能な標識領域を含む。ここで、特定の実施形態では、電気化学的に検出可能な標識領域は、捕捉プローブ結合領域から5~100塩基対離れている。いくつかの実施形態では、電子移動部分は、電気化学的に検出可能な標識である。ここで、特定の実施形態では、電子移動部分は電気化学的に検出可能な標識であり、一本鎖シグナルアンプリコンの5’末端または5’末端付近に付着している。いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコンは、捕捉プローブ結合領域、プライマー結合領域および電気化学的に検出可能な標識領域からなる。ここで、特定の実施形態では、電気化学的に検出可能な標識は、捕捉プローブ結合領域から5~100塩基対離れている。いくつかの実施形態では、一本鎖シグナルアンプリコンは、一本鎖シグナルアンプリコンの5’末端および3’末端に付着した電気化学的に検出可能な標識を含む。
【0146】
二本鎖アンプリコン
いくつかの実施形態では、二本鎖シグナルアンプリコンは、60塩基対の長さである。いくつかの実施形態では、二本鎖シグナルアンプリコンは、30~60塩基対の長さである。いくつかの実施形態では、二本鎖シグナルアンプリコンは、20~100塩基対の長さである。いくつかの実施形態では、二本鎖シグナルアンプリコンは、20~150塩基対の長さである。
【0147】
いくつかの実施形態では、二本鎖シグナルアンプリコンは、核酸および検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、二本鎖シグナルアンプリコンは、核酸および電子移動部分を含む。いくつかの実施形態では、二本鎖シグナルアンプリコンは、核酸およびフェロセン標識を含む。いくつかの実施形態では、二本鎖シグナルアンプリコンは核酸および電子移動部分を含み、核酸は第1の部分および第2の部分を含み、第1の部分と第2の部分は異なる。いくつかの実施形態では、二本鎖シグナルアンプリコンは核酸および電子移動部分を含み、電子移動部分は二本鎖シグナルアンプリコンの5’末端または5’末端付近に付着している。いくつかの実施形態では、二本鎖シグナルアンプリコンは核酸および電子移動部分を含み、電子移動部分は二本鎖シグナルアンプリコンのフォワードおよびリバース末端に付着している。いくつかの実施形態では、二本鎖シグナルアンプリコンは、電気化学的に検出可能な標識を含む。
【0148】
ハイブリダイゼーション複合体:捕捉プローブおよびシグナルアンプリコン
いくつかの実施形態では、フォワードプライマーおよびリバースプライマーは、電気化学的に検出可能な標識で標識される。いくつかの実施形態では、フォワードプライマーは、電気化学的に検出可能な標識で標識される。いくつかの実施形態では、リバースプライマーは、電気化学的に検出可能な標識で標識される。いくつかの実施形態では、電気化学的に検出可能な標識で標識されたフォワードプライマーに特異的な第1の捕捉プローブおよび電気化学的に検出可能な標識で標識されたリバースプライマーに特異的な第2の捕捉プローブが存在する。
【0149】
いくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーション複合体は、アンプリコンに結合した捕捉プローブを含み、アンプリコンは核酸および検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーション複合体は、アンプリコンに結合した捕捉プローブを含み、アンプリコンは核酸および電子移動部分を含む。いくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーション複合体は、アンプリコンに結合した捕捉プローブを含み、アンプリコンは核酸およびフェロセン標識を含む。いくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーション複合体は、アンプリコンに結合した捕捉プローブを含み、アンプリコンは核酸および電子移動部分を含み、核酸は第1の部分および第2の部分を含み、第1の部分と第2の部分は異なる。いくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーション複合体は、アンプリコンに結合した捕捉プローブを含み、アンプリコンは核酸および電子移動部分を含み、核酸は第1の部分および第2の部分を含み、捕捉プローブは第1の部分に結合することができるが、第2の部分に結合することはできない。いくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーション複合体は、アンプリコンに結合した捕捉プローブを含み、アンプリコンは核酸および電子移動部分を含み、核酸は第1の部分および第2の部分を含み、捕捉プローブは第2の部分に結合することができるが、第1の部分に結合することはできない。いくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーション複合体は、アンプリコンに結合した捕捉プローブを含み、アンプリコンは核酸および電子移動部分を含み、核酸は第1の部分および第2の部分を含み、捕捉プローブは第2の部分および第1の部分に結合することができる。いくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーション複合体は、アンプリコンに結合した捕捉プローブを含み、アンプリコンは核酸および電子移動部分を含み、ハイブリダイゼーション複合体は電極に結合し、電極は単層を含む。
【0150】
方法
本明細書に開示されるシグナルプライマーを、診断方法で使用することができ、シグナルプライマーは、感染性疾患因子の配列(例えば、ゲノムまたはcDNA)に相補的であるか、または感染性疾患因子、例えばウイルス(例えば、HIV、HPV等)、細菌、寄生虫および真菌を含むがこれらに限定されないヒト疾患の配列の合成または増幅を開始することができ、それによって患者からの試料中の感染因子の存在を診断する。標的核酸の種類は、ゲノム、cDNA、mRNAもしくは合成であり得るか、または供給源は、ヒト、動物、真菌もしくは細菌であり得る。疾患または障害の診断または予後診断に使用することができる別の実施形態では、標的配列は、その突然変異がヒトの疾患または障害の存在に関与する野生型ヒトゲノムDNAもしくはRNA、またはcDNA配列であるか、あるいは突然変異配列であり得る。そのような実施形態では、増幅反応は、野生型配列または変異型を選択的に同定する異なるセットのシグナルプライマーを用いて(例えば、異なるように標識されたシグナルプライマーを用いて)同じ試料について繰り返すことができる。例として、突然変異は、1つ以上のヌクレオチドの挿入、置換および/または欠失、または転座であり得る。別の実施形態では、シグナルプライマーを、SNP分析、薬理ゲノミクスおよび毒物遺伝学において使用することができる。
【0151】
特定の実施形態では、核酸増幅または合成反応の産物を検出または測定するための方法であって、(a)1つ以上の標的核酸分子を含むかまたは含むことが疑われる試料を1つ以上のシグナルプライマー(そのようなプライマーは、1つもしくは複数の標識を含み、それらは同じであっても異なっていてもよく、内部で、および/または3’末端もしくはその付近で、および/または5’末端もしくはその付近で標識されていてもよい)と接触させることであって、標的配列または核酸分子が試料中に存在する場合、当該プライマーが当該増幅または合成反応の増幅または合成産物に組み込まれるように、当該プライマーが当該増幅または合成反応での使用に適合されている、1つ以上の標的核酸分子を含むかまたは含むことが疑われる試料を1つ以上のシグナルプライマーと接触させることと、(b)増幅または合成反応を行うことと、(c)レドックス媒介電子検出によって1つ以上の合成または増幅産物分子を検出または測定することと、を含む方法が開示される。
【0152】
別の実施形態では、標的核酸配列を検出するための方法であって、核酸の混合物を含有する試料を少なくとも1つのオリゴヌクレオチドと接触させることを含み、オリゴヌクレオチドが、標的核酸配列とハイブリダイズすることができ、少なくとも1つの検出可能な部分を含み、検出可能な部分が、電気シグナルが印加された後に酸化還元反応を受け、酸化還元電位の変化が、標的核酸配列の存在を示す方法が開示される。いくつかの実施形態では、標的核酸配列は混合物から分離されない。
【0153】
別の実施形態では、標的核酸分子を定量するための方法であって、標的核酸分子を含む核酸の混合物を含有する試料を、検出可能な部分を含有する少なくとも1つのオリゴヌクレオチドと接触させることであって、検出可能な部分が、電荷の印加時に検出可能な酸化還元反応を受ける、標的核酸分子を含む核酸の混合物を含有する試料を、検出可能な部分を含有する少なくとも1つのオリゴヌクレオチドと接触させることと、反応を観察することであって、観察可能な反応が、試料中の標的核酸分子の量に比例する、反応を観察することと、を含む方法が開示される。
【0154】
別の実施形態では、1つ以上の核酸分子を増幅する方法であって、(a)1つ以上の鋳型または標的核酸分子を1つ以上のシグナルプライマーと混合することと、(b)当該混合物を、当該鋳型または標的分子の全部または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下でインキュベートすることと、を含む方法が開示される。一実施形態では、増幅された核酸分子は、1つ以上のシグナルプライマーを含む。一態様では、シグナルプライマーは、産生された合成または増幅された核酸分子の一方または両方の末端またはその付近に組み込まれる。そのような増幅または合成反応によって産生される1つ以上の核酸分子も開示される。
【0155】
別の実施形態では、試料中の標的の存在または非存在を判定する方法が開示される。いくつかの実施形態では、標的配列は、野生型ヒトゲノムまたはRNAもしくはcDNA配列である。いくつかの実施形態では、標的配列は、変異ヒトゲノムまたはRNAもしくはcDNA配列である。突然変異は、ヒトの疾患または障害の存在に関与している。いくつかの実施形態では、シグナルプライマーは、野生型標的を増幅し、他の実施形態では、変異した標的を増幅する。例として、突然変異は、1つ以上のヌクレオチドの挿入、置換および/または欠失、または転座であり得る。別の実施形態では、シグナルプライマーを、SNP分析、薬理ゲノミクスおよび毒物遺伝学において使用することができる。
【0156】
特定の実施形態では、核酸増幅産物の存在または非存在を検出するための方法であって、(a)1つ以上の標的核酸分子を含むかまたは含むと疑われる試料を1つ以上のシグナルプライマー(そのようなプライマーは、1つまたは複数の標識を含んでもよく、それらは同じであっても異なっていてもよく、内部で、および/または3’末端もしくはその近くで、および/または5’末端もしくはその近くで標識され得る)と接触させることであって、当該シグナルプライマーが、標的配列または核酸分子が試料中に存在するときに当該シグナルプライマーが当該増幅反応の増幅産物に組み込まれるように、当該増幅または合成反応での使用に適合されている、1つ以上の標的核酸分子を含むかまたは含むと疑われる試料を1つ以上のシグナルプライマーと接触させることと、(b)増幅反応を行うことと、(c)電気化学的検出によって1つ以上の増幅産物分子を検出または測定することと、を含む方法が開示される。
【0157】
別の実施形態では、試料中の少なくとも1つの特定の標的または鋳型核酸分子の非存在を判定するための方法であって、(a)当該試料をシグナルプライマーと接触させることであって、シグナルプライマーの少なくとも一部が、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成(例えば、ハイブリダイズ)することができる、当該試料をシグナルプライマーと接触させることと、(b)シグナルプライマーおよび核酸分子混合物を、標的核酸分子の少なくとも一部を増幅するのに十分な条件下でインキュベートすることと、を含む方法が開示される。そのような条件下では、増幅の欠如は、試料中に特定の1つ以上のヌクレオチドが存在しないことを示す。
【0158】
一実施形態では、(a)ポリメラーゼ連鎖反応のための試薬、ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)、標的核酸、および修飾プライマーを組み合わせることであって、当該修飾プライマーが、検出可能な標識を含む、ポリメラーゼ連鎖反応のための試薬、ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)、標的核酸、および修飾プライマーを組み合わせることと、(b)(a)の混合物をサイクリングして、当該改変プライマーを組み込んだアンプリコンの複数のコピーを提供することと、(c)(b)の混合物をエキソヌクレアーゼに曝露して一本鎖アンプリコンを産生することと、(d)(c)の当該混合物を、当該修飾プライマーを組み込んだ当該一本鎖シグナルアンプリコンに相補的な捕捉オリゴヌクレオチドに曝露することと、(e)当該修飾プライマーを組み込んだ当該一本鎖シグナルアンプリコンを捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせることと、(f)当該ハイブリダイゼーションに関連する当該標識を検出することと、を含む核酸増幅アッセイを実施する方法が提供される。いくつかの実施形態では、当該標的核酸は、デオキシリボ核酸およびリボ核酸ならびにそれらの修飾および誘導体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、当該標的核酸は、血液、口腔スワブ、組織、体液、環境試料、材料の表面、植物、動物、細菌または真菌から抽出される。いくつかの実施形態では、当該ポリメラーゼはDNAポリメラーゼであり、Taqポリメラーゼまたはサーモコッカス・コダキエンシス(thermococcus kodakiensis)ポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、当該プライマーは、デオキシリボ核酸、リボ核酸、ペプチド核酸、PEG修飾核酸およびヘキサ-ポリエチレングリコール修飾核酸の群から選択される。いくつかの実施形態では、当該検出可能な標識は、電子移動部分である。いくつかの実施形態では、当該検出可能な標識は、フェロセン標識である。特定の実施形態では、当該検出可能な標識は、N6、QW56またはQW80である。いくつかの実施形態では、サイクルは、等温である。いくつかの実施形態では、サイクルは、第1の温度と第2の温度との間である。いくつかの実施形態では、当該捕捉オリゴヌクレオチドは、金表面に固定化される。いくつかの実施形態では、当該捕捉オリゴヌクレオチドは、電極表面に固定化される。いくつかの実施形態では、当該検出は、電気化学的である。いくつかの実施形態では、当該標識は、第2の標識またはクエンチャーを有する第2の部分に曝露されない。
【0159】
別の実施形態では、核酸増幅アッセイを実施する方法であって、(a)PCR試薬、ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)、標的核酸、または標的核酸を含むと疑われる試料、修飾プライマーおよび第2の未修飾プライマーを組み合わせることであって、当該修飾プライマーがフェロセン標識を含む、PCR試薬、ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)、標的核酸、または標的核酸を含むと疑われる試料、修飾プライマーおよび第2の未修飾プライマーを組み合わせることと、(b)標的核酸が試料中に存在する場合、(a)の混合物をサイクリングして、当該修飾プライマーを組み込んだ第1アンプリコンおよび当該第2非修飾プライマーを組み込んだ第2アンプリコンの複数コピーを提供することと、(c)(b)の混合物をエキソヌクレアーゼに曝露して、当該修飾プライマーを組み込んだ第1の一本鎖シグナルアンプリコンおよび当該非修飾プライマーを組み込んだ第2の一本鎖アンプリコンを産生することと、(d)(c)の混合物を、当該修飾プライマーを組み込んだ当該一本鎖シグナルアンプリコンに相補的な捕捉オリゴヌクレオチドに曝露することと、(e)当該修飾プライマーを組み込んだ当該アンプリコンの当該一本鎖シグナルアンプリコンを当該捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせることと、(f)当該アンプリコンに組み込まれた当該修飾プライマーと会合した当該標識を検出することと、を含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、当該標的核酸は、デオキシリボ核酸およびリボ核酸ならびにそれらの修飾および誘導体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、当該標的核酸は、血液、口腔スワブ、組織、体液、環境試料、材料の表面、植物、動物、細菌または真菌から抽出される。いくつかの実施形態では、当該試薬は、ポリメラーゼ連鎖反応増幅のための試薬を含む。いくつかの実施形態では、当該ポリメラーゼはDNAポリメラーゼであり、Taqポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、当該ポリメラーゼはDNAポリメラーゼであり、サーモコッカス・コダキエンシス(thermococcus kodakiensis)ポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、当該プライマーは、デオキシリボ核酸、リボ核酸、ペプチド核酸、PEG修飾核酸およびヘキサ-ポリエチレングリコール修飾核酸の群から選択される。いくつかの実施形態では、当該検出可能な標識は、N6、QW56およびQW80からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、当該検出可能な標識は、フェロセン、メチレンブルーまたはオスミウムである。いくつかの実施形態では、サイクルは、等温である。いくつかの実施形態では、サイクルは、第1の温度と第2の温度との間である。いくつかの実施形態では、当該捕捉オリゴヌクレオチドは、金表面に固定化される。いくつかの実施形態では、当該捕捉オリゴヌクレオチドは、電極に固定化される。いくつかの実施形態では、修飾プライマーを組み込んだ一本鎖シグナルアンプリコンは捕捉オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、当該検出は、電気化学的である。
【0160】
一体型核酸試験カートリッジ
一体型多重標的分析システムは公知であり、参照により組み込まれる米国特許第10,864,522号に記載されている。
【0161】
増幅および検出を行うことができる一体型核酸試験カートリッジが本明細書で提供される。一般に、一体型核酸試験カートリッジは、試料を受け取り、DNAを抽出し、DNAを、ETM標識プライマーを含む増幅試薬と組み合わせ、DNAを増幅し、シグナルアンプリコンをエキソヌクレアーゼとインキュベートして一本鎖シグナルアンプリコンを形成し、一本鎖シグナルアンプリコンを捕捉プローブおよび電気センサ検出と組み合わせることができる。
【0162】
特定の実施形態では、標的核酸は、デオキシリボ核酸およびリボ核酸ならびにその改変および誘導体からなる群から選択され、他の実施形態では、標的核酸は、血液、口腔スワブ、組織、体液、環境試料、材料の表面、植物、動物、細菌および真菌から抽出される。
【0163】
増幅および検出を行うことができる一体型核酸試験カートリッジが本明細書に更に開示される。電気化学的検出と共に使用するための一体型核酸試験カートリッジが、本明細書に更に開示される。増幅を行うことができる一体型核酸試験カートリッジが本明細書に更に開示される。検出を行うことができる一体型核酸試験カートリッジが、本明細書に更に開示される。増幅および検出を行うことができる一体型核酸試験カートリッジが本明細書に更に開示される。本明細書では、リーダ機器と連携して動作する核酸試験用の一体型カートリッジを更に開示する。
【0164】
キット
試料中の核酸分子を検出するためのキットが開示される。そのようなキットはまた、核酸増幅反応の間または後に目的の核酸分子を検出するように設計され得る。そのようなキットは、核酸の存在が疾患または障害の存在または非存在と相関する診断キットであり得る。本明細書に記載の増幅反応を実施するためのキットおよび本明細書に記載の組成物を調製するためのキットが開示される。
【0165】
特定の実施形態では、キットは、本明細書で定義される1つ以上のシグナルプライマーを含む。キットは、検出アッセイまたは他の方法を実施するための追加の構成要素を更に含むことができる。
【0166】
そのようなキットは、1つ以上のポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼおよび逆転写酵素)、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上の緩衝塩(核酸増幅緩衝液を含む)、1つ以上の対照核酸標的分子(アッセイを試験するための陽性対照として作用するため)、方法を実施するための説明書等からなる群から選択される1つ以上の追加の構成要素を含み得る。
【実施例】
【0167】
実施例1:シグナルプライマーを用いた増幅および検出
SARS-CoV-2アンプリコンを対照プライマーまたはシグナルプライマーのいずれかによって増幅した(
図10)。本実施例では、N6タグを有するSARS-CoV 2 N1遺伝子用リバースプライマーを合成した。タグなしの同時リバースプライマーを対照として使用した。λエキソヌクレアーゼによる消化後、「対照」アンプリコンをSARS-CoV-2 N1シグナルプローブと共にインキュベートした。一方、シグナルプライマーを用いて作製したアンプリコンはλエキソヌクレアーゼで消化したが、シグナルプローブとはインキュベートしなかった。次いで、アンプリコンをGenMarkのRespiratory Panelカートリッジ(カリフォルニア州カールスバッド)の検出ゾーンにロードした。シグナルプライマーを使用してアンプリコンから生成されたシグナルは、対照プライマーを使用して生成されたシグナルよりも高かった(
図10)。さらに、検出ゾーン内の他の標的から偽陽性シグナルは検出されず、シグナルプライマーが捕捉プローブに非特異的に結合していないことが確認された(
図11)。
【0168】
実施例2:捕捉プローブから離れたフェロセンを用いた従来のサンドイッチアッセイ(対照プライマー)対シグナルプライマーを用いた検出
アデノウイルスC、OC43、RSV AおよびSARS-CoV-2を、タグを含まない現在のリバースプライマー(「対照プライマー」)または対応するシグナルプライマーのいずれかによって増幅した。フェロセン標識と捕捉プローブとの間の塩基距離を
図12に示す。
図6では、これは、部分bで示す距離である。エキソヌクレアーゼλによる消化後、「対照」アンプリコンをそれぞれのシグナルプローブと共にインキュベートした。シグナルプライマーを使用することによってλ生成されたアンプリコンは、エキソヌクレアーゼで消化されず、シグナルプローブとインキュベートされなかった。次いで、アンプリコンをGenMarkのRespiratory Panelカートリッジ(カリフォルニア州カールスバッド)の検出ゾーンにロードした。シグナルプライマーを使用してアンプリコンから生成されたシグナルは、一般に、様々な標的に対して対照プライマー(
図12)を使用して生成されたシグナル以上であった。
【国際調査報告】