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特表2025-5196832D/3D切り替え可能なオートステレオスコピック表示装置におけるディスクリネーションを低減するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-06-26
(54)【発明の名称】2D/3D切り替え可能なオートステレオスコピック表示装置におけるディスクリネーションを低減するための方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20250619BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20250619BHJP
   G02F 1/1347 20060101ALI20250619BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20250619BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1335
G02F1/1347
G02F1/1337 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024573488
(86)(22)【出願日】2023-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-12-26
(86)【国際出願番号】 NL2023050341
(87)【国際公開番号】W WO2023244117
(87)【国際公開日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】2032216
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524219647
【氏名又は名称】ディメンコ ホールディング ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DIMENCO HOLDING B.V.
【住所又は居所原語表記】De Run 4281, 5503 LM Veldhoven (NL)
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ピーターズ,パトリック ゴデフリダス ヤコブス マリア
(72)【発明者】
【氏名】デ ヨング,ピーター ヴィルヘルムス テオドルス
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
2H290
2H291
【Fターム(参考)】
2H088EA06
2H088EA42
2H088EA45
2H088HA02
2H088HA15
2H088HA17
2H088HA18
2H088HA26
2H088JA05
2H088MA01
2H088MA20
2H189AA22
2H189AA35
2H189HA16
2H189JA05
2H189LA03
2H189LA18
2H189MA15
2H189NA13
2H290AA14
2H290BB23
2H290BF13
2H290CA22
2H290CB33
2H291FA22Z
2H291FA30Z
2H291FA60Y
2H291GA04
2H291HA06
2H291LA03
2H291LA21
2H291LA40
2H291MA01
2H291MA20
2H291PA44
(57)【要約】
本発明は、2Dビューモードと3Dビューモードとの間で電気的に切り替え可能であるオートステレオスコピック表示デバイスにおけるディスクリネーションを低減するための方法に関し、方法は、レンチキュラデバイスにおける2つの液晶配列方向間の角度を変化させ、それによって、両方のビューモード間の切り替え後のディスクリネーションの最小限又は許容可能な発生をもたらす角度を決定することを含む。本発明は更に、両方のビューモード間で切り替えるときに低減されたディスクリネーションを示すオートステレオスコピック表示デバイスに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のビューモードから第2のビューモードに電気的に切り替え可能であるオートステレオスコピック表示デバイス(11)におけるディスクリネーションを低減する方法であって、前記オートステレオスコピック表示デバイス(11)は、
-表示パネル(1)であって、
○表示出力を生成するための表示ピクセル素子のアレイと、
○前記表示出力を明確に規定された偏光方向にフィルタリングするように構成されている直線偏光子と、を備える、表示パネル(1)と、
-前記表示パネル(1)の上に提供された、前記第1のビューモード又は前記第2のビューモードを提供するように電気的に切り替え可能であるレンチキュラデバイス(2)であって、前記レンチキュラデバイス(2)は、
○第1の液晶配列方向を有する液晶配列特性を備えた第1の内側面(4a)を有するレンチキュラ素子のアレイを備える第1の光学的に透明な基材(4)と、
○第2の光学的に透明な基材(5)であって、
-前記直線偏光子に面する、前記表示出力を受け取るように構成された外側面(5b)と、
-前記直線偏光子の前記偏光方向と一致する第2の液晶配列方向を有する液晶配列特性を備えた第2の内側面(5a)であって、前記第1の内側面(4a)及び前記第2の内側面(5a)が互いに面する、第2の内側面(5a)と、を有する、第2の光学的に透明な基材(5)と、
○前記第1の光学的に透明な基材(4)の側に配置された第1の平面切り替え電極(6)と、
○前記第2の光学的に透明な基材(5)の側に配置された第2の平面切り替え電極(7)と、
○液晶分子(9)を含む液晶媒体(8)と、を備え、前記液晶媒体(8)は、2つの前記基材(4、5)間に挟まれており、かつ前記第1の内側面(4a)及び前記第2の内側面(5a)と接触しており、
-前記第1のビューモードにおいて、前記液晶分子(9)は、2つの前記平面切り替え電極(6、7)の平面内にあり、かつ
-前記第2のビューモードにおいて、前記液晶分子(9)は、前記2つの平面切り替え電極(6、7)に対して垂直に配向されている、レンチキュラデバイス(2)と、
-前記第1のビューモードから前記第2のビューモードへの切り替えを達成するために、両方の平面切り替え電極(6、7)の両端に切り替え電圧を印加するための手段(3)と、を備え、
前記第1のビューモードにおいて、前記液晶分子(9)は、前記第1の液晶配列方向と前記第2の液晶配列方向との間の角度によって規定されるねじれを有する螺旋(10)を規定し、
前記方法は、前記レンチキュラデバイス(2)における前記第1の液晶配列方向と前記第2の液晶配列方向との間の前記角度を変化させ、それによって、前記第1のビューモードから前記第2のビューモードへの切り替え後のディスクリネーションの最小限又は許容可能な発生をもたらす角度を決定することを含む、方法。
【請求項2】
ディスクリネーションの最小限又は許容可能な発生は、
-ディスクリネーションの最小限又は許容可能なサイズ、
-ディスクリネーションの最小限又は許容可能な数、
-ディスクリネーションの最小限又は許容可能な持続時間、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表示パネル(1)は、液晶表示装置(LCD)を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記表示パネル(1)は、有機発光ダイオード(OLED)表示装置を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記表示パネル(1)は、OLED表示装置及び四分の一波長板を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記レンチキュラデバイス(2)における前記第1の液晶配列方向と前記第2の液晶配列方向との間の前記角度を変化させることは、前記表示パネル(1)に対して、及び前記第1の液晶配列方向に対して、前記第2の液晶配列方向を変化させることを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記角度を変化させることは、前記直線偏光子の前記偏光方向を、前記第2の液晶配列方向を変化させる程度と同じ程度まで変化させることを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記直線偏光子と前記第2の内側面(5a)との間に偏光回転子が位置決めされており、前記偏光回転子は、1)前記直線偏光子の前記偏光方向と、2)第2の液晶配列方向との不一致を補償する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記レンチキュラデバイス(2)における前記第1の液晶配列方向と前記第2の液晶配列方向との間の前記角度を変化させることは、前記表示パネル(1)に対して、及び前記第2の液晶配列方向に対して、前記第1の液晶配列方向を変化させることを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1のビューモードから第2のビューモードに電気的に切り替え可能であるオートステレオスコピック表示デバイス(11)であって、前記オートステレオスコピック表示デバイス(11)は、
-表示パネル(1)であって、
○表示出力を生成するための表示ピクセル素子のアレイと、
○前記表示出力を明確に規定された偏光方向にフィルタリングするように構成されている直線偏光子と、を備える、表示パネル(1)と、
-前記表示パネルの上に提供された、前記第1のビューモード又は前記第2のビューモードを提供するように電気的に切り替え可能であるレンチキュラデバイス(2)であって、前記レンチキュラデバイス(2)は、
○第1の液晶配列方向を有する液晶配列特性を備えた第1の内側面(4a)を有するレンチキュラ素子のアレイを備える第1の光学的に透明な基材(4)と、
○第2の光学的に透明な基材(5)であって、
-前記直線偏光子に面する、前記表示出力を受け取るように構成された外側面(5b)と、
-前記直線偏光子の前記偏光方向と一致する第2の液晶配列方向を有する液晶配列特性を備えた第2の内側面(5a)であって、前記第1の内側面(4a)及び前記第2の内側面(5a)が互いに面する、第2の内側面(5a)と、を有する、第2の光学的に透明な基材(5)と、
○前記第1の光学的に透明な基材(4)の側に配置された第1の平面切り替え電極(6)と、
○前記第2の光学的に透明な基材(5)の側に配置された第2の平面切り替え電極(7)と、
○液晶分子(9)を含む液晶媒体(8)と、を備え、前記液晶媒体(8)は、2つの前記基材(4、5)間に挟まれており、かつ前記第1の内側面(4a)及び前記第2の内側面(5a)と接触しており、
-前記第1のビューモードにおいて、前記液晶分子(9)は、2つの前記平面切り替え電極(6、7)の平面内にあり、かつ
-前記第2のビューモードにおいて、前記液晶分子(9)は、前記2つの平面切り替え電極(6、7)に対して垂直に配向されている、レンチキュラデバイス(2)と、
-前記第1のビューモードから前記第2のビューモードへの切り替えを達成するために、両方の平面切り替え電極(6、7)の両端に切り替え電圧を印加するための手段(3)と、を備え、
-前記第1のビューモードにおいて、前記液晶分子(9)は、前記第1の液晶配列方向と前記第2の液晶配列方向との間の角度によって規定されるねじれを有する螺旋(10)を規定し、
-前記第1の液晶配列方向と前記第2の液晶配列方向との間の前記角度は、4~86°の範囲内である、オートステレオスコピック表示デバイス(11)。
【請求項11】
前記表示パネル(1)は、液晶表示装置(LCD)を含む、請求項10に記載のオートステレオスコピック表示デバイス(11)。
【請求項12】
前記表示パネル(1)は、有機発光ダイオード(OLED)表示装置を含む、請求項10に記載のオートステレオスコピック表示デバイス(11)。
【請求項13】
前記第1の液晶配列方向と前記第2の液晶配列方向との間の前記角度は、5~35°の範囲内である、請求項10~12のいずれか一項に記載のオートステレオスコピック表示デバイス(11)。
【請求項14】
前記第1の液晶配列方向と前記第2の液晶配列方向との間の前記角度は、5~25°の範囲内、具体的には、10~20°の範囲内である、請求項10~12のいずれか一項に記載のオートステレオスコピック表示デバイス(11)。
【請求項15】
前記直線偏光子と前記第2の内側面(5a)との間に偏光回転子が位置決めされており、前記偏光回転子は、1)前記直線偏光子の前記偏光方向と、2)第2の液晶配列方向との不一致を補償する、請求項10~14のいずれか一項に記載のオートステレオスコピック表示デバイス(11)。
【請求項16】
前記第1の内側面(4a)と前記第2の内側面(5a)との間の最短距離は、5.0~50μmの範囲内である、請求項10~15のいずれか一項に記載のオートステレオスコピック表示デバイス(11)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1のビューモードから第2のビューモードに電気的に切り替え可能であるオートステレオスコピック表示デバイスにおけるディスクリネーションを低減するための方法、及び第1のビューモードから第2のビューモードに電気的に切り替え可能であるオートステレオスコピック表示デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
2D/3D切り替え可能オートステレオスコピック表示装置として一般に知られている、二次元ビューモードと三次元ビューモードとの間で電気的に切り替えることができる表示装置は、過去20年間に大きな注目を集めてきた。一般的な手法は、電場の影響下で2つの液晶配向の間で切り替わることができる液晶媒体に隣接する半円筒形マイクロレンズ(レンチキュラ)のアレイを備えるレンチキュラデバイスをともにピクセルのアレイを並べることである。第1の配向では、液晶媒体のダイレクタは表示装置の平面内にあり、第2の配向では、液晶媒体のダイレクタは表示装置の平面に垂直である。
【0003】
そのような設定では、各レンチキュラは、レンズと平行に、又はそれに対してある角度で(傾斜して)延びる(サブ)ピクセルの少なくとも2つの列のグループと関連付けられる。レンチキュラデバイスを通って進むピクセル出力は、レンチキュラ及び液晶媒体の光学特性に従う。レンチキュラの屈折率は固定されるが、隣接する液晶媒体の屈折率は、2つの液晶配向の間で切り替えることによって2つの値の間で切り替えることができる。第1の屈折率は、液晶のダイレクタに沿って偏光された光に対応し、第2の屈折率は、ダイレクタに垂直に偏光された光に対応する。ピクセル出力が表示装置の平面に対して実質的に垂直に進むとき、ピクセル出力は、第1又は第2の屈折率のいずれかを「見る」。第1のビューモードでは、液晶媒体は第1の配向にある。その屈折率はレンチキュラの屈折率と一致し、それによってレンチキュラを集束効果から奪い、レンチキュラデバイスを透明で平坦な光学パネルとして挙動させる。これは、オートステレオスコピック表示装置の二次元ビューモードを形成する。第2のビューモードでは、液晶媒体は第2の液晶配向にある。屈折率が一致しないので、各レンチキュラは集束効果を示すことができる。これは、異なるピクセル列からの出力を表示装置の前方の異なる空間位置に向けることを可能にし、それは次に、視聴者が左画像及び右画像から構成される三次元画像を知覚することを可能にする。これは、オートステレオスコピック表示装置の三次元ビューモードを形成する。したがって、液晶配向間の良好に制御された切り替えが、二次元ビューモードと三次元ビューモードとの間で切り替えることができる表示装置の設計において重要になっていることは明らかであろう。
【0004】
1つの液晶配向から別の配向への切り替えは、液晶材料が受ける電界を変化させることによって生じる。これは通常、電界を印加すること(そのような電界が存在しない場合)、又は電界をオフに切り替えること(そのような電界にさらされた場合)のいずれかを伴う。このような電界の変化により、液晶配向が均一に変化することが重要である。しかしながら、これはしばしば当てはまらない。次いで、異なる液晶配向を有する異なるドメインが液晶媒体中に形成されることが観察される。これらのドメインの境界では、液晶分子の配向が急激に変化する。このような境界は「ディスクリネーション」と呼ばれる。隣接するドメインの光学特性は正確には同じではないが、ディスクリネーションでは光学収差が生じる。これは、3Dビューモードに切り替えられたときにクロストークの増加につながり、2Dビューモードに切り替えられたときに画質の低下につながる。
【0005】
従来の電気的に切り替え可能な2D/3D表示装置では、ディスクリネーションが問題である。それらは、1つの液晶配向から他の液晶配向への切り替え時に形成される。更に、これは通常、特定の表示装置における単一の発生に限定されない。ディスクリネーションは、表示装置上の複数の位置によく現れることがある。その形成に加えて、その持続性が問題であり、多くのディスクリネーションは、より長い期間、例えば、1分を超えて、10分を超えて、又は更に永久的に安定しているからである。
【0006】
今日まで、ディスクリネーションの形成を低減するか、更には完全に防止するために、いくつかの努力がなされてきた。例えば、切り替えが瞬間的ではなく徐々に生じるように、特定のランプを有する電圧を印加することによって、特定のプロファイルを有する電界を印加することが試みられている(例えば、国際公開第2020135731号を参照)。これは問題をある程度まで軽減するが、その実施は不十分である。
【0007】
具体的な欠点は、電圧ランプを使用する場合、2D/3D切り替えがより多くの時間を要することである。その時間、典型的には5~30秒に、表示装置の性能が損なわれ、具体的には、クロストークのレベルが増大する。また、特定の電圧ランプは、それぞれの新しいモデルタイプに対して注意深くプログラムされ、テストされなければならず、一方、製造上のばらつきは、液晶媒体の挙動と電圧ランプとの間の不整合を容易に引き起こし得る。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の目的は、電気的に切り替え可能な2D/3D表示装置であって、切り替え時にディスクリネーションが形成されないか、又は少なくとも既知の切り替えプロセスよりも少ない程度で形成される表示装置を提供することである。例えば、ディスクリネーションは、サイズ、数及び/又は持続時間が低減される。また、ディスクリネーションが、問題として認識されるには短すぎるタイムスパンの間しか存在しないことも目的である。また、目的は、当技術分野で知られている解決策よりも複雑でない解決策を提供することである。より一般的には、本発明の目的は、オートステレオスコピック表示装置の視聴者の視聴経験を改善することである。
【0009】
これらの目的の1つ以上は、表示出力の偏光方向を適合させることによって達成され得ることが見出された。
【0010】
したがって、本発明は、第1のビューモードと第2のビューモードとの間で電気的に切り替え可能であるオートステレオスコピック表示デバイス(11)におけるディスクリネーションを低減するための方法に関し、オートステレオスコピック表示デバイス(11)は、
-表示パネル(1)であって、
○表示出力を生成するための表示ピクセル素子のアレイと、
○表示出力を明確に規定された偏光方向にフィルタリングするように構成されている直線偏光子と、を備える、表示パネル(1)と、
-表示パネル(1)の上に提供され、第1のビューモード又は第2のビューモードを提供するように電気的に切り替え可能であるレンチキュラデバイス(2)であって、レンチキュラデバイス(2)は、
○第1の液晶配列方向を有する液晶配列特性を備えた第1の内側面(4a)を有するレンチキュラ素子のアレイを備える第1の光学的に透明な基材(4)と、
○第2の光学的に透明な基材(5)であって、
-直線偏光子に面する、表示出力を受け取るように構成された外側面(5b)と、
-直線偏光子の偏光方向と一致する第2の液晶配列方向を有する液晶配列特性を備えた第2の内側面(5a)であって、第1の内側面(4a)及び第2の内側面(5a)が互いに面する、第2の内側面(5a)と、を有する、第2の光学的に透明な基材(5)と、
○第1の光学的に透明な基材(4)の側に配置された第1の平面切り替え電極(6)と、
○第2の光学的に透明な基材(5)の側に配置された第2の平面切り替え電極(7)と、
○液晶分子(9)を含む液晶媒体(8)と、を備え、液晶媒体(8)は、2つの基材(4、5)間に挟まれており、かつ第1の内側面(4a)及び第2の内側面(5a)と接触しており、
-第1のビューモードにおいて、液晶分子(9)は、2つの平面切り替え電極(6、7)の平面内にあり、かつ
-第2のビューモードにおいて、液晶分子(9)は、2つの平面切り替え電極(6、7)に対して垂直に配向されている、レンチキュラデバイス(2)と、
-第1のビューモードから第2のビューモードへの切り替えを達成するために、両方の平面切り替え電極(6、7)の両端に切り替え電圧を印加するための手段(3)と、を備え、
第1のビューモードにおいて、液晶分子(9)は、第1の液晶配列方向と第2の液晶配列方向との間の角度によって規定される螺旋状のねじれを有する螺旋(10)を規定し、
方法は、レンチキュラデバイス(2)における第1の液晶配列方向と第2の液晶配列方向との間の角度を変化させ、それによって、第1のビューモードから第2のビューモードへの切り替え後のディスクリネーションの最小限又は許容可能な発生をもたらす角度を決定すること、を含む。
【0011】
本発明は更に、第1のビューモードと第2のビューモードとの間で電気的に切り替え可能であるオートステレオスコピック表示デバイス(11)に関し、オートステレオスコピック表示デバイス(11)は、
-表示パネル(1)であって、
○表示出力を生成するための表示ピクセル素子のアレイと、
○表示出力を明確に規定された偏光方向にフィルタリングするように構成されている直線偏光子と、を備える、表示パネル(1)と、
-表示パネルの上に提供された、第1のビューモード又は第2のビューモードを提供するように電気的に切り替え可能であるレンチキュラデバイス(2)であって、レンチキュラデバイス(2)は、
○第1の液晶配列方向を有する液晶配列特性を備えた第1の内側面(4a)を有するレンチキュラ素子のアレイを備える第1の光学的に透明な基材(4)と、
○第2の光学的に透明な基材(5)であって、
-直線偏光子に面する、表示出力を受け取るように構成された外側面(5b)と、
-直線偏光子の偏光方向と一致する第2の液晶配列方向を有する液晶配列特性を備えた第2の内側面(5a)であって、第1の内側面(4a)及び第2の内側面(5a)が互いに面する、第2の内側面(5a)と、を有する、第2の光学的に透明な基材(5)と、
○第1の光学的に透明な基材(4)の側に配置された第1の平面切り替え電極(6)と、
○第2の光学的に透明な基材(5)の側に配置された第2の平面切り替え電極(7)と、
○液晶分子(9)を含む液晶媒体(8)と、を備え、液晶媒体(8)は、2つの基材(4、5)間に挟まれており、かつ第1の内側面(4a)及び第2の内側面(5a)と接触しており、
-第1のビューモードにおいて、液晶分子(9)は、2つの平面切り替え電極(6、7)の平面内にあり、かつ
-第2のビューモードにおいて、液晶分子(9)は、2つの平面切り替え電極(6、7)に対して垂直に配向されている、レンチキュラデバイス(2)と、
-第1のビューモードから第2のビューモードへの切り替えを達成するために、両方の平面切り替え電極(6、7)の両端に切り替え電圧を印加するための手段(3)と、を備え、
-第1のビューモードにおいて、液晶分子(9)は、第1の液晶配列方向と第2の液晶配列方向との間の角度によって規定される螺旋状のねじれを有する螺旋(10)を規定し、
-第1の液晶配列方向と第2の液晶配列方向との間の角度は、4~86°の範囲内である)。
【0012】
角度は、具体的には、オートステレオスコピック表示デバイス(11)が第1のビューモードから第2のビューモードに切り替えられた後のディスクリネーションの最小限又は許容可能な発生をもたらす角度である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1のビューモードにおける既知のオートステレオスコピック表示デバイス(11)を概略的に表示する。
図2】第2のビューモードにおける既知のオートステレオスコピック表示デバイス(11)を概略的に表示する。
図3図1のオートステレオスコピック表示デバイス(11)のレンチキュラデバイス(2)の簡略化された表現を表示する。
図4】本発明の方法の結果として得られるレンチキュラデバイス(2)の簡略化された表現を表示する。
図5】第1のビューモードから第2のビューモードへの切り替え後の、ディスクリネーションを生成する既知のレンチキュラデバイス(2)の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図中の要素は、簡略化及び明確化のために示されており、必ずしも縮尺通りに描かれていない。例えば、図中のいくつかの要素の寸法は、本発明の様々な例示的な実施形態の理解を向上させるのを助けるために、他の要素に対して誇張されている場合がある。例えば、オートステレオスコピック表示デバイスの他の構成要素に対する概略的な液晶分子及びレンチキュラ素子の相対的な寸法は、図から導き出すことができない。また、図から導き出すことができる角度は、これらの角度についての説明において報告される例示的な値と必ずしも同じ値を有するわけではない。
【0015】
更に、本明細書及び請求項における「第1」、「第2」などの用語は、もしあれば、一般に、同様の要素を区別するために使用され、必ずしも連続的又は経時的な順序を説明するために使用されるわけではない。
【0016】
本発明の文脈において、「視聴者」という用語は、オートステレオスコピック表示装置によって提示されるコンテンツを消費する、具体的には、見ることができる人を意味する。本文全体を通して、視聴者への言及は、「彼(he)」、「彼(him)」又は「彼(his)」のような男性の単語によって行われる。これは、明確さ及び簡潔さの目的のためだけであり、「彼女(she)」及び「彼女(her)」のような女性の単語が等しく適用されることが理解される。
【0017】
本発明の文脈において、「ねじれ」又は「螺旋状のねじれ」という用語は、螺旋の始点から螺旋の終点までで決定される、螺旋がねじられる絶対角度及び全角度を意味する。既知のレンチキュラデバイスにおいて液晶分子によって形成される螺旋のねじれは、通常0~180°、具体的には、0~90°である。本発明によるレンチキュラデバイス(2)において、ねじれは4~86°の範囲内である。螺旋は、第1の内側面(4a)と第2の第1の内側面(5a)との間に存在するので、螺旋の始点及び終点は、これらの2つの面によってマークされる。
【0018】
液晶媒体は複屈折材料であり、液晶媒体のダイレクタに沿って進む光に対する第1の屈折率と、液晶媒体のダイレクタに垂直に進む光に対する第2の屈折率とを有することが理解される。「屈折率」という用語が、液晶媒体に関連して本文全体を通して使用される場合、別段に明記されない限り、これは、平面切り替え電極に垂直な方向すなわち、表示出力が進む方向における液晶媒体の屈折率を指す。この屈折率は、液晶媒体にわたって印加される電界に応じて、上で規定した第1の屈折率又は第2の屈折率を指すことができる。
【0019】
本発明の方法において使用されるオートステレオスコピック表示デバイス(11)は、3つの主要素(1、2、3)を備える。これらの要素は図1及び図2にも表示されている。
-直線偏光された表示出力(すなわち、光)を提供する目的を果たす表示パネル(1)、
-表示パネル(1)の上に提供され、直線偏光されたピクセル出力を単一画像(二次元ビュー)として、又は左画像及び右画像(三次元ビュー又はオートステレオスコピックビュー)として視聴者に方向付ける光学特性を切り替えることができるレンチキュラデバイス(2)、
-2つの平面切り替え電極(6、7)の両端に切り替え電圧を印加して、これらの2つの光学特性間の切り替えを可能にするための手段(3)。
【0020】
レンチキュラデバイス2において、液晶媒体(8)は、2つの対向する面の間に存在し、すなわち、両方の面と接触している。これらは、レンチキュラ素子のアレイのレンチキュラ表面である第1の内側面(4a)(このアレイは、第1の光学的に透明な基材の一部である)と、第2の光学的に透明な基材の平坦面である第2の内側面(4b)と、に関する。両方の内側面(4a、4b)が液晶配列特性を有する。第1の内側面(4a)の液晶配列特性は、第1の液晶配列方向を有し、第2の内側面(4b)の液晶配列特性は、第2の液晶配列方向を有する。表示出力は、第2の内側面(4b)との界面を介して液晶媒体(8)に入り、第1の内側面(4a)との界面を介して液晶媒体(8)から出る。次に、表示出力は、レンチキュラ素子を通って進む。
【0021】
好ましくは、第1の液晶配列方向(レンチキュラ表面上の)は、通常、レンチキュラ素子の長手方向に平行である。これは、液晶配列方向の導入が、配列させたい方向に面をラビングすることによって行われるためである。レンチキュラ素子の表面をラビングする必要がある場合、レンチキュラ方向に対して角度をつけてラビングするよりもレンチキュラ方向にラビングする方が有利である。
【0022】
第1の光学的に透明な基材(4)は、オートステレオスコピック表示デバイス(11)の視聴者に面する外側面を有し、第2の光学的に透明な基材(5)は、表示素子(1)に面する外側面を有する。
【0023】
液晶媒体(8)は液晶分子(9)を含む。2つの平面切り替え電極(6、7)は、液晶媒体(8)の両側に位置決めされているので、液晶媒体(8)にわたって電界を印加することができる。液晶分子(9)は、両方の面の配列特性の影響下で、平面切り替え電極(6、7)の平面内で配向することができ、又は、両方の切り替え電極(6、7)にわたって印加される電圧の影響下で、平面切り替え電極(6、7)の平面に対して垂直である。電圧が十分に低減され、好ましくは完全に除去されると、液晶分子は、平面切り替え電極の平面内の配向に戻ることができ、両方の面の配列特性に従う。
【0024】
平面配向及び法線配向は、それぞれ図1及び図2に示されており、これらの図は、既知のオートステレオスコピック表示デバイス(11)の断面図である。図1の液晶分子(9)は、平面切り替え電極の平面に平行な平面内に細長い方向を有する(第1のビューモード)。手段(3)は電圧を印加しない。液晶分子(9)は、その平面内で変化する方向を有し、これは、以下で更に説明されるように、螺旋(10)の形態でのそれらの存在として現れる。図2の液晶分子(9)は、平面切り替え電極の平面に垂直な細長い方向を有する(第2のビューモード)。手段(3)は、交流切り替え電圧を印加する。
【0025】
電位が存在しない場合、分子は、平面切り替え電極の平面において、第1及び第2の面の液晶配列特性に従って配向し、第1のビューモードを規定する。十分に強い電位(「切り替え電圧」)が印加されると、それらは、平面切り替え電極の平面に対して垂直な対応する電界に沿った配向に切り替わり、第2のビューモードを規定する。したがって、切り替え電圧は、オートステレオスコピック表示デバイスが第2のビューモードに変化し、第2のビューモードに留まる電圧である。通常、閾値電圧が存在し、それを超えると第2のビューモードへの変化が生じる。したがって、切り替え電圧は、原則として、この閾値電圧を上回る任意の電圧である。
【0026】
オートステレオスコピック表示デバイスは、第1のビューモードが二次元ビューを提供する光学特性に対応し、第2のビューモードが三次元ビューを提供する光学特性に対応するように構成されてもよい。代替的には、第1のビューモードが三次元ビューを提供する光学特性に対応し、第2のビューモードが二次元ビューを提供する光学特性に対応するように構成されてもよい。
【0027】
三次元ビューが提供されるビューモードにおいて、レンチキュラデバイス(2)は、左画像及び右画像から構成されるステレオスコピック画像の表示を可能にするために、異なる表示ピクセル要素からの表示出力をオートステレオスコピック表示デバイス(11)の視野内の異なる空間位置に向けることを可能にする光学特性を有する。
【0028】
上述したように、液晶媒体は、それぞれが液晶配列特性を有する2つの面すなわち、第1及び第2の内側面の間に挟まれている。表示パネルの表示出力は、最初に第2の内側面と交差し、その後、第1の内側面と交差する。第2の内側面の液晶配列(すなわち、第2の液晶配列方向)は、直線偏光子の偏光方向と一致していなければならず、その結果、液晶媒体に入る表示出力は、液晶分子の長い分子軸の(平均)方向(すなわち、ダイレクタ)に直線偏光される。このようにして、表示出力は、液晶媒体の意図された屈折率を「見る」。
【0029】
しかしながら、直線偏光子の偏光方向が第2の液晶配列方向と同じ方向であるという上記の記述に対する例外がある。これは、いわゆる「偏光回転子」が直線偏光子と第2の内側面との間に位置決めされる場合であり、これは、それを通って進む光の偏光方向を回転させることができる手段である。次に、偏光回転子は、直線偏光子から出射する光の偏光方向を第2の液晶配列方向に回転させる。そのような偏光回転子は、ホイル又は光学板として提供されてもよく、回転特性は、ホイル又は光学プ板の材料に含まれる。あるいは、本発明のレンチキュラデバイスと同じ螺旋液晶配列の原理を介して働く液晶セルの形態で提供されてもよい(もちろん、レンチキュラ素子が欠けていることを除く)。
【0030】
しかしながら、表示出力の偏光方向との角度的な一致は、表示出力が液晶媒体から出射する第1の内側面に対して必要ではない。第1の内側面は、第2の内側面の配列特性とは別の方向に配列特性を有してもよい。その結果、両面間に積層された液晶分子は、螺旋を形成することによって、この方向変化に徐々に追従する。これは、例えば、図1に示されており、図1は、レンチキュラデバイス(2)を備えるオートステレオスコピック表示デバイス(11)を示しており、螺旋は側面から見たものであり、螺旋軸は、図が示されている平面に平行であり、平面切り替え電極の平面に垂直である(見かけ上短い分子(9)は、図が示されている平面内になく、見かけ上最長の分子(9)は、図が示されている平面内にある)。次いで、螺旋の螺旋状のねじれαは、両方の液晶配列方向間の角度(螺旋の各末端における2つの末端分子間の角度)として規定される。これは図3に示されており、螺旋軸は、図が示されている平面に対して垂直である(図3は以下で更に説明される)。
【0031】
螺旋内の2つの隣接する液晶分子間の角度が特定の(量子力学的に規定される)角度を超えない限り、表示出力の偏光は、第1の内側面に向かう螺旋に沿った液晶分子の長い分子軸の方向に従う。このようにして、表示出力が液晶媒体を通って進むことにより、表示出力の偏光方向が効果的に変化する。両方の配列方向間の角度は、レンチキュラデバイスの光学特性に影響を及ぼさない(少なくとも、オートステレオスコピック表示デバイスの適切な動作に関連する特性に影響を及ぼさない)。この要件が満たされる場合、両方の配列方向の間の角度は、原則として、0°~180°の任意の角度であり得る。
【0032】
図3は、図1のレンチキュラデバイス(2)の簡略化された表現を表示し、第1の光学的に透明な基材(4)及び第2の光学的に透明な基材(5)のみを示し、これらは図が提示される平面に平行である。明確にするために、レンチキュラ素子のアレイは図3に示されていない。第2の光学的に透明な基材(5)は、最前面に示されており、垂直に対して角度αで、水平液晶配列並びに水平表示偏光を有する。第1の光学的に透明な基材4は背景に示されており、垂直に対して角度αで、傾斜方向に液晶配列を有する。螺旋の全体のねじれαは、背景板に向かって徐々に薄れる10段階によって示されている。この表現は、上から見た渦巻状の階段の段を連想させる。
【0033】
しかしながら、本発明者らは、両方の配列方向の間の特定の角度が、第1のビューモードから第2のビューモードへの切り替え時にすなわち、液晶分子が切り替え電極(特定の螺旋積層を有する)の平面内の配向から2つの平面切り替え電極に垂直な配向に切り替えられたときに、他の角度よりもディスクリネーションの発生を多くすることを見出した。ディスクリネーションに関する問題を最小限に抑えるか、更には完全に解消するように、両方の配列方向間の最適な角度に到達することが可能であるように思われた。具体的には、それらのサイズの低減、それらの数の低減(例えば、オートステレオスコピック表示デバイスごとの切り替えイベントごとの)、及びそれらの持続時間の低減のうちの1つ以上が生じたように思われた。
【0034】
逆方向へのすなわち、第2のビューモードから第1のビューモードへの切り替えは、一般に、(螺旋の実際のねじれαがどうであれ)妨害するディスクリネーションを生じさせないように思われる。
【0035】
したがって、本発明の方法は、レンチキュラデバイスにおける第1の液晶配列方向と第2の液晶配列方向との間の角度を変化させ、それによって、第1のビューモードから第2のビューモードへの切り替え後のディスクリネーションの発生を最小限又は(視聴者にとって)許容可能にする角度を決定すること、を含む。
【0036】
実際には、これは通常、表示パネル内の直線偏光子の偏光方向と第1の液晶配列方向との間の角度を変化させることに帰着するが、それは、表示パネル内の直線偏光子の偏光方向と第2の液晶配列方向とが結合されているからである(上記で説明したように偏光回転子が存在しない限り)。
【0037】
本発明の方法の結果を図4に概略的に表示する。ここでは、第2の液晶配列方向及び表示偏光が、垂直に対してより小さい角度αであることを除いて、図3と同じレンチキュラデバイスが示されている。これは、螺旋のねじれαがそれに応じて低減されるという結果を有する(第1の液晶配列方向の角度及び傾斜αが不変のままであるので)。この低減した螺旋ねじれ角αは、第1のビューモードから第2のビューモードへの切り替え後にディスクリネーションの発生させないことが決定された後に得られたものである(実施例も参照)。偏光方向の両側の2つの反対の矢印は、角度αを複数回変化させる反復プロセスが適用され得ること、及び各回の後にディスクリネーションの発生が判定され、角度の最適化を進めるかどうかの決定がなされることを示す。
【0038】
本発明の方法において、ディスクリネーションの発生が最小限であること又はディスクリネーションの発生が許容可能であることは、以下の少なくとも1つを含むことを意味する。
-ディスクリネーションの最小限のサイズ又は許容可能なサイズ、
-ディスクリネーションの最小限の数又は許容可能な数(ここで、数は、例えば、オートステレオスコピック表示デバイス当たりの数、又はレンチキュラ素子のアレイの表面積の単位当たりの数である)、
-ディスクリネーションの最小限の持続時間又は許容可能な持続時間。
【0039】
本明細書において、「ディスクリネーションの発生が最小限」という用語は、ディスクリネーションが完全に存在しないことも含み得る。
【0040】
通常、ディスクリネーションの発生が最小限であることは、ディスクリネーションの最小限のサイズ及び最小限の数及び最小限の持続時間を含む。
【0041】
通常、ディスクリネーションの発生が許容可能であることは、ディスクリネーションの許容可能なサイズ、許容可能な数、及び許容可能な持続時間を含む。
【0042】
当業者は、実施例によって証明されるように、本発明の方法(具体的には、最適な角度、すなわち、ディスクリネーションの発生を許容可能にする角度を決定すること)を、日常的な実験によって、発明的努力を行うことなく、どのように実施するかを知っている。例えば、角度を変えることができる実験的なセットアップを作成したり、それぞれが異なる角度を有する複数のオートステレオスコピック表示デバイスを製造したりする。全ての角度に対して、オートステレオスコピック表示デバイスの切り替えを実行し、次に、ディスクリネーションが形成されるか否か、具体的には、それらのサイズ、数及び/又は持続時間が、特定の最小値に向かう特定の傾向に従うか否かを観察する。
【0043】
両方の配列方向間の角度は、好ましくは、第2の液晶配列方向を、オートステレオスコピック表示デバイスの残りの部分に対して変化させることによって変化する。言い換えれば、レンチキュラデバイスにおける第1の液晶配列方向と第2の液晶配列方向との間の角度を変化させることは、好ましくは、表示パネルに対して、及び第1の液晶配列方向に対して、第2の液晶配列方向を変化させることを含む。
【0044】
通常、これは、両方の方向を揃える必要があるので、直線偏光子の偏光方向を同じ程度に同時に変化させることを含む。したがって、液晶配列の両方の方向の間の角度を変化させることは、第2の液晶配列方向が(依然として)直線偏光子の偏光方向と一致するように、直線偏光子の偏光方向を、第2の液晶配列方向を変化させる程度と同じ程度まで変化させることを更に含み得る。
【0045】
しかしながら、上述したように、直線偏光子と第2の内側面との間に偏光回転子を位置決めすることも可能である。これにより、偏光方向と液晶配列方向との不一致を補償することができるので、直線偏光子の偏光方向を同時に変化させる必要がなくなる。
【0046】
第1の液晶配列方向をオートステレオスコピック表示の残りの部分に対して変化させることによって、角度を変化させる別の可能性がある。言い換えれば、レンチキュラデバイスにおける第1の液晶配列方向と第2の液晶配列方向との間の角度を変化させることは、次いで、表示パネルに対して、及び第2の液晶配列方向に対して、第1の液晶配列方向を変化させることを含む。
【0047】
しかしながら、レンチキュラ上の液晶配列がレンチキュラの細長い方向にあることが非常に好ましいので、第1の液晶配列方向を変化させることは、レンチキュラの方向(すなわち、それらの傾斜)を同じ程度だけ変化させることをほとんど不可避的に必要とする。しかしながら、レンチキュラの方向をデバイスの残りの部分に対して(したがって、ピクセルのアレイに対して)変化させることは望ましくない。なぜなら、レンチキュラ液晶セルが良好に動作するためには、ピクセルピッチとレンチキュラ傾斜との数個の組み合わせのみが可能であり、ほとんどの組み合わせは、使用可能な画像化をもたらさないからである。また、ピクセルピッチ及び対応するレンチキュラ傾斜の選択は、3Dビューモードにおける解像度及び最適な観察距離を決定する。更に、傾斜を変化させることができる範囲は80°(すなわち、垂直方向の両側で0~40°)であり、したがって、最適な螺旋状のねじれは、この範囲外の傾斜を必要とする場合であってもアクセスすることができない。
【0048】
したがって、要約すると、両方の配列方向の間の角度を変化させる間、レンチキュラのアレイと表示ピクセル要素のアレイとの相対的な位置決めが不変のままである、すなわち、第2の液晶配列方向をオートステレオスコピック表示の残りの部分に対して変化させることが非常に好ましい。偏光回転子が存在しない場合、直線偏光子の偏光方向はそれに応じて変化する必要がある。偏光回転子が存在する場合、偏光回転子は両方の方向の間の不一致を克服することができるので、両方の方向を互いに独立して選択することができる。
【0049】
表示パネルが液晶表示装置(liquid crystal display、LCD)である場合、直線偏光子は表示パネルに一体化される必要があるので、直線偏光子の偏光方向を変化させることは、典型的には、LCDの新しい設計を必要とする。しかしながら、OLEDは表示出力を生成するために偏光子を必要としないので、表示パネルが有機発光ダイオード(organic light-emitting diode、OLED)表示である場合、これは当てはまらない。その結果、OLED表示装置を再設計する必要なく、直線偏光子の偏光方向を自由に選択することができる。これにより、本発明の方法における表示パネルは、LCDではなくOLED表示装置を含むことが好ましい。
【0050】
しかしながら、LCDを使用することの欠点は、偏光回転子が使用される場合に軽減することができ、なぜなら、これにより、第2の液晶配列方向を、LCDに組み込まれた直線偏光子の偏光方向とは無関係に選択することができるからである。
【0051】
表示パネルは、液晶表示装置(LCD)又は有機発光ダイオード(OLED)表示装置を含み得る。表示パネルがOLED表示装置を含む場合、それは好ましくは四分の一波長板も含む。これは、そのような板が、表示パネル内の直線偏光子と組み合わせて、視聴者に対する反射防止手段として機能するためである。このような手段がない場合、OLED表示装置はミラーとして機能することがある。そのようなミラーによって引き起こされる周囲光の反射は、通常、オートステレオスコピック表示デバイスの視聴者に可視であり、視聴者はこれを妨害として経験する可能性が高い。表示された画像は、反射の付加的な光のためにコントラスト及び/又は黒さを失う。
【0052】
本発明は更に、第1のビューモードと第2のビューモードとの間で電気的に切り替え可能であるオートステレオスコピック表示デバイスに関し、当該デバイスは、第1のビューモードから第2のビューモードへの切り替え後のディスクリネーションの最小限又は許容可能な発生をもたらす、第1の液晶配列方向と第2の液晶配列方向との間の、角度を有する。このようなデバイスは、典型的には、上述した方法において使用されるデバイスである。
【0053】
表示パネルは、液晶表示装置(LCD)又は有機発光ダイオード(OLED)表示装置を含み得る。上記で概説したのと同じ理由で、表示パネルは、好ましくはOLED表示装置を含む。
【0054】
ディスクリネーションは、第1の液晶配列方向と第2の液晶配列方向との間の角度が0°又は90°であるときに特に発生するように思われる。ディスクリネーションは、通常、角度が0°~4°又は86°~90°である場合にも生じる。
【0055】
したがって、本発明のオートステレオスコピック表示デバイスにおいて、第1の液晶配列方向と第2の液晶配列方向との間の角度は、4~86°の範囲内、具体的には、5~85°の範囲内である。
【0056】
より具体的には、45°未満の角度がディスクリネーションを低減するのに効果的であることが分かった。したがって、角度は、好ましくは5~40°の範囲内、例えば、5~35°、5~30°、5~25°、5~20°又は5~15°の範囲内である。より好ましくは、10~25°の範囲内であり、例えば、10~20°の範囲内である。
【0057】
本発明のオートステレオスコピック表示デバイスでは、偏光回転子が直線偏光子と第2の内側面との間に位置決めされ、1)直線偏光子の偏光方向と、2)第2の液晶配列方向との不一致を補償することができる。
【0058】
通常、第1内側面と第2内側面との間の最短距離は、5.0~50μmの範囲内である。これは、典型的には、レンチキュラ素子の頂点と(平坦な)第2の光学的に透明な基材との間の距離である。
【実施例
【0059】
1.当技術分野で知られている比較のためのオートステレオスコピック表示デバイス。
対角直径15.6インチの切り替え可能なオートステレオスコピック表示デバイスが準備された。レンズの上部(レンチキュラ頂点)と、対向する板との間のセルギャップは10ミクロンであり、0.12の複屈折を有する液晶媒体を含む。デバイスは、水平表示偏光を有し、すなわち、表示出力は、それが液晶媒体に出会うときに水平偏光を有する。更に、デバイスは、垂直軸に対して16.7°のレンチキュラ傾斜角αを有する。この傾斜方向と同じ方向の液晶配列では、セルギャップ(第1内側面と第2内側面との間)全体にわたって、螺旋配置した液晶分子のねじれαが73.3°となる。
【0060】
これは図3に概略的に示されており、図3は、垂直に対して角度αで、水平表示偏光に沿って水平に揃えられた(α=90°)前景板(5)と、垂直に対して角度αで、傾斜方向に揃えられた背景板(4)(α=16.7°)と、を示している。両方の板(4、5)の間の全体のねじれαは、渦巻状の階段の段のような、背景板に向かって徐々に薄れる10個の段(α=73.3°)によって示されている。
【0061】
このオートステレオスコピック表示デバイスは、第1のビューモード(平面電極に垂直な螺旋軸に沿った螺旋液晶配列)から第2のビューモード(平面電極に垂直な液晶配列)への切り替え後に非常に持続的なディスクリネーションを示す。これらのディスクリネーションは、図5の顕微鏡写真に表示されており、左から右への規則的な形状(12)はレンチキュラを表し、曲線(13)は、異なる液晶配向を有する異なる液晶ドメイン間の境界を表す(すなわち、それらは実際のディスクリネーションを表す)。ディスクリネーションをクリアするために、最終切り替え電圧に達する前に、ランプ電圧が20秒の期間中印加された。その期間中、著しいクロストークが観察された。これは、この期間の後にのみ、正常で許容可能な値に良好に低減した。更に、いくつかのディスクリネーションが、最終切り替え電圧に達した後にも持続することが観察された。
【0062】
2.本発明のオートステレオスコピック表示デバイス。
本発明の方法は、第1のビューモードから第2のビューモードへの切り替え時により少ないディスクリネーションを示す表示デバイスに到達するために適用された。この目的のために、垂直軸に対して表示偏光α=32°を有し、ねじれα=15.3°(32°の表示偏光から16.7°の傾斜方向を引いたもの)を生じるオートステレオスコピック表示デバイスが準備された。このセルでは、切り替え中又は切り替え後にディスクリネーションは現れなかった。更に、切り替え遅延(ランプ電圧)は必要でないように思われ、クロストークの初期増加は観察されなかった。
【0063】
これは図4に示されており、液晶配列及び表示偏光の方向は、図3の90°ではなく、32°の角度αである。これは、図3の73.3°ではなく15.3°のねじれαをもたらす。このより小さいねじれαは、図3のより大きいねじれとは対照的に、ディスクリネーションを生じさせないので好ましい。
【0064】
したがって、本発明によるこのオートステレオスコピック表示デバイスは、切り替え時に基本的にディスクリネーションを示さず、このことは、既知の2D/3D切り替え可能オートステレオスコピック表示デバイスを大幅に改善する。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】