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特表2025-520243ポリアミド酸を調製するための水性プロセス及びポリアミド酸関連ゲル材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-07-03
(54)【発明の名称】ポリアミド酸を調製するための水性プロセス及びポリアミド酸関連ゲル材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20250626BHJP
【FI】
C08G73/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545900
(86)(22)【出願日】2023-03-30
(85)【翻訳文提出日】2024-08-01
(86)【国際出願番号】 US2023016821
(87)【国際公開番号】W WO2023244287
(87)【国際公開日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】63/352,571
(32)【優先日】2022-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506229844
【氏名又は名称】アスペン エアロゲルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス レベンティス
(72)【発明者】
【氏名】レドゥアン ベガグ
(72)【発明者】
【氏名】ルシー ソニ
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア バーテルズ
(72)【発明者】
【氏名】フーマン ヤグーブネジャド アズル
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043PA04
4J043PA08
4J043PA10
4J043PA19
4J043PB08
4J043PB14
4J043PB15
4J043QB15
4J043QB21
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA06
4J043RA35
4J043SA06
4J043SB01
4J043TA22
4J043TB01
4J043UA121
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA142
4J043UA152
4J043UA262
4J043UA632
4J043UA662
4J043UA672
4J043UA761
4J043UB011
4J043UB022
4J043UB062
4J043UB122
4J043UB132
4J043UB152
4J043UB302
4J043UB402
4J043VA022
4J043VA032
4J043VA062
4J043XA12
4J043XA34
4J043XA35
4J043XB15
4J043XB17
4J043XB26
4J043YA06
4J043YA12
4J043YA28
4J043ZA60
4J043ZB05
4J043ZB47
4J043ZB49
4J043ZB60
(57)【要約】
本発明は、水溶性炭酸塩または重炭酸塩を利用して、水性条件下でポリアミド酸、ポリアミド酸金属塩、及びポリイミドゲルを形成する方法に関する。これらのゲルはエアロゲルまたはキセロゲルに変換され得、さらにカーボンエアロゲルまたはキセロゲルに変換され得る。そのようなカーボンエアロゲルまたはキセロゲルは、従来の方法、すなわち有機溶媒ベースの方法に従って得られるポリイミドエアロゲルから調製されるカーボンエアロゲルまたはキセロゲルと同じ物理的特性を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド酸の塩の水溶液の調製方法であって、前記方法が、
ポリアミド酸を提供し、
前記ポリアミド酸と水溶性炭酸塩または重炭酸塩とを水中で混合し、それによって前記ポリアミド酸の塩の溶液を提供することを含む、前記調製方法。
【請求項2】
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩が、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、またはグアニジニウム陽イオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩が、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸グアニジニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ポリアミド酸の塩の水溶液の調製方法であって、前記方法が、
水溶性ジアミン、水溶性炭酸塩または重炭酸塩、及びテトラカルボン酸二無水物を水中で混合し、
前記成分を反応させて、前記ポリアミド酸の塩の溶液を提供することを含む、前記調製方法。
【請求項5】
前記混合が、
水溶性ジアミンを水に溶解してジアミン水溶液を形成し、
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩を前記ジアミン水溶液に添加し、
テトラカルボン酸二無水物を前記ジアミンと前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩の水溶液に添加して、溶液を形成し、
前記溶液を、約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記混合が、
水溶性ジアミンを水中に溶解してジアミン水溶液を形成し、
前記ジアミン水溶液にテトラカルボン酸二無水物を添加して懸濁液を形成し、
前記懸濁液を、約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌し、
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩を前記懸濁液に添加し、
前記懸濁液を約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌して、前記ポリアミド酸の塩の水溶液を提供することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記混合が、
水溶性ジアミン、テトラカルボン酸二無水物、及び水溶性炭酸塩または重炭酸塩を同時にまたは迅速に連続して水に添加し、
得られた混合物を約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間撹拌して、前記ポリアミド酸塩の水溶液を提供することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩が、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、またはグアニジニウム陽イオンを含む、請求項4~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩が、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸グアニジニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記水溶性炭酸塩もしくは重炭酸塩が炭酸塩であり、かつ前記水溶性炭酸塩と前記ジアミンとのモル比が約1~約1.4であるか、または
前記水溶性炭酸塩もしくは重炭酸塩が重炭酸塩であり、かつ前記水溶性重炭酸塩と前記ジアミンとのモル比が約2~約2.8である、請求項4~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記テトラカルボン酸二無水物と前記ジアミンとのモル比が約0.9~約1.1である、請求項4~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記テトラカルボン酸二無水物が、ビフタル酸二無水物(BPDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ナフタニルテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物(PMDA)からなる群から選択される、請求項4~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ジアミンが、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、またはそれらの組み合わせである、請求項4~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ジアミンが1,4-フェニレンジアミンである、請求項4~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記水溶液中の前記ポリアミド酸塩の濃度範囲が、前記ポリアミド酸の重量に基づいて約0.01~約0.3g/cmである、請求項4~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩が炭酸グアニジニウムであり、前記ポリアミド酸の塩の溶液がチキソトロピック挙動を示す、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリアミド酸塩の水溶液に電気活性材料を添加することをさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記電気活性材料が、炭素、黒鉛、ケイ素、硫黄、プルシアンブルー、リン酸鉄リチウム、それらの組み合わせ、またはそれらの任意の1つ以上の前駆体を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ポリアミド酸エアロゲルを形成することをさらに含み、前記ポリアミド酸エアロゲルを形成することが、
前記ポリアミド酸塩溶液を酸性化して、ポリアミド酸湿潤ゲルを形成し、
前記ポリアミド酸湿潤ゲルを乾燥させて、前記ポリアミド酸エアロゲルを形成することを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリアミド酸湿潤ゲルを乾燥させることが、
任意選択で、前記ポリアミド酸湿潤ゲルを洗浄または溶媒交換し、
前記ポリアミド酸湿潤ゲルを高温条件に供するか、前記ポリアミド酸湿潤ゲルを凍結乾燥するか、または前記ポリアミド酸湿潤ゲルを超臨界流体二酸化炭素と接触させることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリアミド酸エアロゲルを同形カーボンエアロゲルに変換することをさらに含み、前記変換が、前記ポリアミド酸エアロゲル材料を、不活性雰囲気下、少なくとも約650℃の温度で熱分解することを含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
ポリイミドエアロゲルを形成することをさらに含み、前記ポリイミドエアロゲルを形成することが、
前記ポリアミド酸塩をイミド化してポリイミド湿潤ゲルを形成し、
前記ポリイミド湿潤ゲルを乾燥させて、前記ポリイミドエアロゲルを形成することを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリアミド酸塩をイミド化することが、ゲル化開始剤を前記ポリアミド酸塩の水溶液に添加してゲル化混合物を形成し、前記ゲル化混合物をゲル化させることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ゲル化開始剤が無水酢酸である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリイミド湿潤ゲルを乾燥させることが、
任意選択で、前記ポリイミド湿潤ゲルを洗浄または溶媒交換し、
前記ポリイミド湿潤ゲルを高温条件に供するか、前記ポリイミド湿潤ゲルを凍結乾燥するか、または前記ポリイミド湿潤ゲルを超臨界流体二酸化炭素と接触させることを含む、請求項22~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記洗浄または溶媒交換を、水、C1~C4アルコール、アセトン、アセトニトリル、エーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、液体二酸化炭素、またはそれらの組み合わせを用いて実施する、請求項20または25に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリイミドエアロゲルを、同形カーボンエアロゲルに変換することをさらに含み、前記変換が、前記ポリイミドエアロゲルを不活性雰囲気下で少なくとも約650℃の温度で熱分解することを含む、請求項22~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
請求項1~18のいずれか1項に記載の方法によって調製されるポリアミド酸塩。
【請求項29】
請求項19または20に記載の方法によって調製されるポリアミド酸エアロゲル。
【請求項30】
請求項22~26のいずれか1項に記載の方法によって調製されるポリイミドエアロゲル。
【請求項31】
残留量の前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩を含む、請求項29に記載のポリアミド酸エアロゲル。
【請求項32】
残留量の前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩を含む、請求項30に記載のポリアミド酸エアロゲル。
【請求項33】
請求項21または27に記載の方法によって調製されるカーボンエアロゲル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「Aqueous Process For Preparing Polyamic Acids and Polyamic Acid Related Gel Materials」と題する、2022年6月15日に出願された米国仮特許出願第63/352,571号への優先権及び利益を主張し、その文献は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、一般に、ポリアミド酸の塩の水溶液を調製するための水性プロセス、ならびにそのような材料を多孔質ポリアミド酸、ポリイミド、及び対応する多孔質炭素材料に変換するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エアロゲルは、相互に接続されたミクロ、メソ、及びマクロサイズの細孔の多孔質ネットワークを含む固体材料である。使用される前駆体材料及び行われる処理に応じて、エアロゲルの細孔は、多くの場合、体積の90%超の割合を占め得る。エアロゲルは、一般に、湿潤ゲル(溶媒を含有するゾル-ゲルプロセスによって調製される固体ネットワーク)の細孔壁での毛細管力による収縮を最小限または完全に抑制可能な様式で、湿潤ゲルから溶媒を除去することによって調製される。溶媒除去の方法としては、超臨界乾燥(すなわち、ゲル内の高表面張力のゲル化溶媒を低表面張力の超臨界流体で置き換えるような超臨界流体を使用した乾燥)、超臨界流体による溶媒の交換、後に超臨界状態に変換される流体との溶媒の交換、亜臨界または臨界点近傍乾燥、及び凍結乾燥プロセスでの凍結溶媒の昇華が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、PCT特許出願公開第WO2016127084A1号を参照のこと。周囲条件において乾燥させる場合、ゲル収縮が溶媒蒸発を伴って起こる場合があり、キセロゲルが形成され得ることに留意されたい。したがって、ゾル-ゲル法(または任意選択で類似のプロセス)によるエアロゲル調製は、一般的には以下の一連のステップで進行する:溶媒中のモノマー、もしくはモノマーの混合物、またはゲル前駆体の溶解、モノマーまたはゲル前駆体の反応を誘導または促進する触媒または試薬の添加、反応混合物の形成、湿潤ゲルの形成(追加の加熱または冷却ステップが含まれる場合がある)、及び収縮もしくは細孔の崩壊を引き起こすことなくゲルから溶媒を除去する超臨界乾燥技術または任意の他の方法による溶媒の除去。
【0004】
エアロゲルは、無機材料、有機材料、またはそれらの混合物から形成され得る。有機材料から形成される場合、有機エアロゲルは炭化可能であり(例えば、不活性雰囲気下、高温での熱分解によって)カーボンエアロゲルを形成することができ、カーボンエアロゲルは、使用する前駆体材料及び方法論に応じて、対応する有機エアロゲルとは異なるかまたは重複する特性(例えば、細孔容積、孔径分布、形態など)を有し得る。炭化され得る有機材料の例としては、レゾルシノール-ホルムアルデヒド(RF)及びフロログルシノール-フルフルアルデヒド(PF)などのフェノール-アルデヒドポリマー、ポリアクリロニトリル(PAN)などのポリオレフィン、選択されたポリイミド(PI)、ポリウレタン(PU)、ポリ尿素(PUA)、ポリアミド(PA)、ポリジシクロペンタジエン、前駆体またはそのいずれかのポリマー誘導体、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0005】
近年、リチウムイオン電池(LIB)などのエネルギー貯蔵装置への用途向けに性能が向上した電極材料として、カーボンエアロゲル、キセロゲル、及びアンビゲルの開発及び特性評価に注力する取り組みが行われている。したがって、対応する有機エアロゲルが求められている。そのような有機エアロゲルは、一般に、有機溶媒中で調製される。例えば、ポリイミドエアロゲルは、一般に、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を有機溶媒中で反応させ、その後、反応により得られるポリマー一次生成物であるポリアミド酸を脱水してポリイミドゲルを形成することによって調製される。経済的、安全性、及び環境上の理由から、「グリーン」化学プロセス(すなわち、従来の有機溶媒及び/または有機試薬に代わる環境に優しい代替物を使用すること)を使用して、そのようなポリアミド酸系ゲル材料の形成及びゲル化を実行することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0006】
本技術は、一般に、(a)有害な有機溶媒の使用を最小化または排除し、(b)有機試薬の使用を最小化する一方で、ポリアミド酸及び関連ゲル材料(例えば、ポリイミドウェットゲル、エアロゲル、キセロゲル、及びアンビゲル)を形成する方法に関する。具体的には、本技術は、ポリアミド酸の可溶化のために水溶性炭酸塩または重炭酸塩を使用して、水中でポリアミド酸及びポリイミドゲルを形成することに関する。任意選択で、そのようにして形成したゲルを、その後、ポリアミド酸エアロゲル、ポリイミドゲル、及びエアロゲル、ならびに対応するカーボンエアロゲル、キセロゲル、及び/または他のゲル材料に変換してもよい。
【0007】
開示される方法は、一般に、水溶性ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との反応から、水溶性炭酸塩または重炭酸塩の存在下で、ポリアミド酸塩の水溶液を調製することを含む。あるいは、予め形成したポリアミド酸から、水溶性炭酸塩または重炭酸塩の存在下で、酸を水に溶解することによって、ポリアミド酸塩の水溶液を調製してもよい。驚くべきことに、本開示によれば、そのような水溶性炭酸塩または重炭酸塩(限定されないが、特定のアルカリ金属、アンモニア、及びグアニジンの炭酸塩及び重炭酸塩を含む)は、対応するポリアミド酸塩(ポリアミド酸の塩、または単にポリアミド酸塩とも呼ばれる)の形成をもたらし、さらに、イミド化の際に、得られたポリイミドは、機械的に強固であり、多くの場合、光学的に透明であることが見出された。特に、得られたポリイミドは、従来の(すなわち、有機溶媒に基づく)方法によって調製されたポリイミドと実質的に同様の物理的特性を有していた。対照的に、同じ条件下で求核性が低下したアミン塩基(例えば、トリエチルアミン)を使用すると、通常、湿潤ゲルが生じ、これは、一般に、半透明または不透明であり、それらの物理的強度に対して弱かった。
【0008】
したがって、一態様では、ポリアミド酸塩の水溶液の調製方法を提供する。一般的な非限定的な態様では、本方法は、水溶性ジアミン、水溶性炭酸塩または重炭酸塩、及びテトラカルボン酸二無水物を水中で混合し、成分を反応させ、ポリアミド酸塩の溶液を提供することを含む。反応成分(すなわち、水溶性ジアミン、水溶性炭酸塩または重炭酸塩、及びテトラカルボン酸二無水物)の各々の添加の順序は、様々に異なり得る。
【0009】
いくつかの態様では、反応成分を混合することは、水溶性ジアミンを水に溶解してジアミン水溶液を形成し、水溶性炭酸塩または重炭酸塩の塩をジアミン水溶液に加え、テトラカルボン酸二無水物をジアミンと水溶性炭酸塩または重炭酸塩の水溶液に加えて溶液を形成し、約4℃~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間、溶液を撹拌することを含む。
【0010】
いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、アルキルアンモニウム、グアニジニウム、またはそれらの組み合わせを含む。
【0011】
いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0012】
いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、炭酸グアニジニウム、炭酸アンモニウム、及び重炭酸アンモニウムからなる群から選択される。いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、炭酸グアニジニウムである。
【0013】
いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は炭酸塩であり、ジアミンに対する炭酸塩のモル比は約1~約1.4である。
【0014】
いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は重炭酸塩であり、ジアミンに対する重炭酸塩のモル比は約2~約2.8である。
【0015】
いくつかの態様では、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとのモル比は約0.9~約1.1である。
【0016】
いくつかの態様では、テトラカルボン酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、ビフタル酸二無水物(BPDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、エチレンジアミン四酢酸二無水物(EDDA)、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様では、テトラカルボン酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)である。いくつかの態様では、テトラカルボン酸二無水物は、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)である。
【0017】
いくつかの態様では、水溶性ジアミンは、C2-C6アルキレンジアミンであり、C2-C6アルキレンの炭素原子の1つ以上は、任意選択で1つ以上のアルキル基で置換される。いくつかの態様では、C2-C6アルキレンジアミンは、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、及びエチレンジアミンからなる群から選択される。
【0018】
いくつかの態様では、水溶性ジアミンは、1,3-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンジアニリン、またはそれらの組み合わせである。いくつかの態様では、水溶性ジアミンは、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様では、水溶性ジアミンは1,4-フェニレンジアミンである。いくつかの態様では、水溶性ジアミンは1,3-フェニレンジアミンである。
【0019】
いくつかの態様では、水溶液中のポリアミド酸塩の濃度範囲は、ポリアミド酸の重量に基づいて約0.01~約0.3g/cmである。
【0020】
いくつかの態様では、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとのモル比は約0.9~約1.1である。
【0021】
いくつかの態様では、本方法は、電気活性材料をポリアミド酸塩の水溶液に添加することをさらに含む。いくつかの態様では、電気活性材料は、炭素、黒鉛、ケイ素、スズ、硫黄、プルシアンブルー、リチウム金属リン酸塩、リチウム混合金属リン酸塩、またはリチウム金属フルオロリン酸塩を含む。いくつかの態様では、電気活性材料は、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム、それらの組み合わせ、またはそれらの任意の1つ以上の前駆体を含む。いくつかの態様では、電気活性材料はシリコンである。いくつかの態様では、電気活性材料は、リン酸鉄リチウムである。
【0022】
いくつかの態様では、本方法は、ポリアミド酸エアロゲルを形成することをさらに含み、その場合、ポリアミド酸エアロゲルを形成することは、ポリアミド酸塩溶液を酸性化してポリアミド酸ゲルを形成し、ポリアミド酸ゲルを乾燥させて、ポリアミド酸エアロゲルを形成することを含む。
【0023】
いくつかの態様では、ポリアミド酸ゲルを乾燥させることは、任意選択でポリアミド酸ゲルを洗浄または溶媒交換し、任意選択で洗浄または溶媒交換したポリアミド酸ゲルを高温条件に供し、任意選択で洗浄または溶媒交換したポリアミド酸ゲルを凍結乾燥するか、または任意選択で洗浄または溶媒交換したポリアミド酸ゲルを超臨界流体二酸化炭素と接触させることを含む。
【0024】
いくつかの態様では、洗浄または溶媒交換を、水、C1~C4アルコール、アセトン、アセトニトリル、エーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、液体二酸化炭素、またはそれらの組み合わせを用いて実施する。
【0025】
さらに別の態様では、本明細書に開示される方法によって調製されたポリアミド酸エアロゲルを提供する。
【0026】
いくつかの態様では、ポリアミド酸エアロゲルは、残留量の水溶性炭酸塩または重炭酸塩を含む。
【0027】
いくつかの態様では、方法は、ポリイミドエアロゲルを形成することをさらに含み、その場合、ポリイミドエアロゲルを形成することは、ポリアミド酸塩をイミド化してポリイミドゲルを形成し、ポリイミドゲルを乾燥させて、ポリイミドエアロゲルを形成することを含む。
【0028】
いくつかの態様では、ポリアミド酸塩をイミド化することは、ゲル化開始剤をポリアミド酸塩の水溶液に添加してゲル化混合物を形成し、ゲル化混合物をゲル化させることを含む。いくつかの態様では、ゲル化開始剤はカルボン酸無水物である。いくつかの態様では、ゲル化開始剤は無水酢酸である。
【0029】
いくつかの態様では、ポリイミドゲルを乾燥させることは、任意選択でポリイミドゲルを洗浄または溶媒交換し、ポリイミドゲルを高温条件に供し、ポリイミドゲルを凍結乾燥するか、またはポリイミドゲルを超臨界流体二酸化炭素と接触させることを含む。
【0030】
いくつかの態様では、洗浄または溶媒交換を、水、C1~C4アルコール、アセトン、アセトニトリル、エーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、液体二酸化炭素、またはそれらの組み合わせを用いて実施する。
【0031】
さらなる態様では、本明細書に開示される方法によって調製されたポリイミド酸エアロゲルを提供する。
【0032】
いくつかの態様では、ポリイミド酸エアロゲルは、残留量の水溶性炭酸塩または重炭酸塩を含む。
【0033】
いくつかの態様では、本方法は、本明細書に開示されるようなポリアミド酸エアロゲル及び/またはポリイミドエアロゲルを同形カーボンエアロゲルに変換することをさらに含み、その場合、変換することは、少なくとも約500℃の温度で不活性雰囲気下にてエアロゲルを熱分解することを含む。
【0034】
さらなる態様では、本明細書に開示される方法によって調製されたカーボンエアロゲルを提供する。
【0035】
いくつかの態様では、カーボンエアロゲルは、電気活性材料を含む。
【0036】
いくつかの態様では、カーボンエアロゲルは、従来の非水性方法によって調製された対応するポリイミドエアロゲルを熱分解することによって調製されたカーボンエアロゲルと実質的に同様の特性を有する。
【0037】
別の態様では、ポリアミド酸塩の水溶液の調製方法を提供し、この方法は、予め形成されたポリアミド酸の水中の懸濁液を提供し、懸濁液に水溶性炭酸塩または重炭酸塩を添加することを含み、水溶性炭酸塩または重炭酸塩を、ポリアミド酸を完全に溶解するのに十分な量で添加し、ポリアミド酸塩の水溶液を形成する。そのようなポリアミド酸塩の水溶液を、上記の態様のいずれかに従って、さらに処理してもよい。
【0038】
本開示は、限定されないが、以下の態様を含む。
【0039】
態様1:ポリアミド酸の塩の水溶液の調製方法であって、前記方法が、ポリアミド酸を提供し、前記ポリアミド酸と水溶性炭酸塩または重炭酸塩とを水中で混合し、それによって、前記ポリアミド酸の塩の溶液を提供することを含む、前記調製方法。
【0040】
態様2:前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩が、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、またはグアニジニウム陽イオンを含む、態様1に記載の方法。
【0041】
態様3:前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩が、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸グアニジニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1または2に記載の方法。
【0042】
態様4:ポリアミド酸の塩の水溶液の調製方法であって、前記方法が、水溶性ジアミン、水溶性炭酸塩または重炭酸塩、及びテトラカルボン酸二無水物を水中で混合し、成分を反応させ、前記ポリアミド酸の塩の溶液を提供することを含む、前記調製方法。
【0043】
態様5:前記混合が、水溶性ジアミンを水に溶解してジアミン水溶液を形成し、前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩を前記ジアミン水溶液に添加し、テトラカルボン酸二無水物を前記ジアミンと前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩の水溶液に添加して溶液を形成し、前記溶液を、約4~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間、撹拌することを含む。
【0044】
態様6:前記混合が、水溶性ジアミンを水に溶解してジアミン水溶液を形成し、テトラカルボン酸二無水物を前記ジアミン水溶液に添加して懸濁液を形成し、約1時間~約4日間の範囲の期間、約4~約60℃の範囲の温度で前記懸濁液を攪拌し、前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩を前記懸濁液に加え、前記懸濁液を約1時間~約4日間の範囲の期間、約4~約60℃の範囲の温度で撹拌して、前記ポリアミド酸の塩の水溶液を提供することを含む、態様4に記載の方法。
【0045】
態様7:前記混合が、同時にまたは迅速に連続して、水溶性ジアミン、テトラカルボン酸二無水物、及び水溶性炭酸塩または重炭酸塩を水に加え、得られた混合物を、約1時間~約4日間の範囲の期間、約4~約60℃の範囲の温度で撹拌して、前記ポリアミド酸塩の水溶液を提供することを含む、態様4に記載の方法。
【0046】
態様8:前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩が、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、またはグアニジニウム陽イオンを含む、態様4~7のいずれか1項に記載の方法。
【0047】
態様9:前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩が、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸グアニジニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様4~8のいずれか1項に記載の方法。
【0048】
態様10:前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩が炭酸塩であり、前記水溶性炭酸塩と前記ジアミンとのモル比が約1~約1.4であるか、または、前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩が重炭酸塩であり、前記水溶性重炭酸塩と前記ジアミンとのモル比が約2~約2.8である、態様4~9のいずれか1項に記載の方法。
【0049】
態様11:前記テトラカルボン酸二無水物と前記ジアミンとのモル比が約0.9~約1.1である、態様4~10のいずれか1項に記載の方法。
【0050】
態様12:前記テトラカルボン酸二無水物が、ビフタル酸二無水物(BPDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、オキシジフタル酸二無水物(ОDPA)、ナフタニルテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物(PMDA)からなる群から選択される、態様4~11のいずれか1項に記載の方法。
【0051】
態様13:前記ジアミンが、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、またはそれらの組み合わせである、態様4~12のいずれか1項に記載の方法。
【0052】
態様14:前記ジアミンが1,4-フェニレンジアミンである、態様4~13のいずれか1項に記載の方法。
【0053】
態様15:前記水溶液中の前記ポリアミド酸塩の濃度範囲が、前記ポリアミド酸の重量に基づいて約0.01~約0.3g/cmである、態様4~14のいずれか1項に記載の方法。
【0054】
態様16:前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩が炭酸グアニジニウムであり、前記ポリアミド酸の塩の溶液がチキソトロピック挙動を示す、態様1~15のいずれか1項に記載の方法。
【0055】
態様17:前記ポリアミド酸塩の水溶液に電気活性材料を添加することをさらに含む、態様1~16のいずれか1項に記載の方法。
【0056】
態様18:前記電気活性材料が、炭素、黒鉛、ケイ素、硫黄、プルシアンブルー、リン酸鉄リチウム、それらの組み合わせ、またはそれらの任意の1つ以上の前駆体を含む、態様17に記載の方法。
【0057】
態様19:ポリアミド酸エアロゲルを形成することをさらに含み、その場合、前記ポリアミド酸エアロゲルを形成することが、前記ポリアミド酸塩溶液を酸性化してポリアミド酸湿潤ゲルを形成し、前記ポリアミド酸湿潤ゲルを乾燥させて、前記ポリアミド酸エアロゲルを形成することを含む、態様1~18のいずれか1項に記載の方法。
【0058】
態様20:前記ポリアミド酸湿潤ゲルを乾燥させることが、任意選択で、前記ポリアミド酸湿潤ゲルを洗浄または溶媒交換し、前記ポリアミド酸湿潤ゲルを高温条件に供し、前記ポリアミド酸湿潤ゲルを凍結乾燥するか、または前記ポリアミド酸湿潤ゲルを超臨界流体二酸化炭素と接触させることを含む、態様19に記載の方法。
【0059】
態様21:前記ポリアミド酸エアロゲルを同形カーボンエアロゲルに変換することをさらに含み、前記変換が、前記ポリアミド酸エアロゲル材料を、不活性雰囲気下、少なくとも約650℃の温度で熱分解することを含む、態様19または20に記載の方法。
【0060】
態様22:ポリイミドエアロゲルを形成することをさらに含み、前記ポリイミドエアロゲルを形成することが、前記ポリアミド酸塩をイミド化してポリイミド湿潤ゲルを形成し、前記ポリイミド湿潤ゲルを乾燥させて、前記ポリイミドエアロゲルを形成することを含む、態様1~18のいずれか1項に記載の方法。
【0061】
態様23:前記ポリアミド酸塩をイミド化することが、ゲル化開始剤を前記ポリアミド酸塩の水溶液に添加してゲル化混合物を形成し、前記ゲル化混合物をゲル化させることを含む、態様22に記載の方法。
【0062】
態様24:前記ゲル化開始剤が無水酢酸である、態様23に記載の方法。
【0063】
態様25:前記ポリイミド湿潤ゲルを乾燥させることが、任意選択で前記ポリイミド湿潤ゲルを洗浄または溶媒交換し、前記ポリイミド湿潤ゲルを高温条件に供し、前記ポリイミド湿潤ゲルを凍結乾燥するか、または前記ポリイミド湿潤ゲルを超臨界流体二酸化炭素と接触させることを含む、態様22~24のいずれか1項に記載の方法。
【0064】
態様26:前記洗浄または溶媒交換を、水、C1~C4アルコール、アセトン、アセトニトリル、エーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、液体二酸化炭素、またはそれらの組み合わせを用いて実施する、態様20または25に記載の方法。
【0065】
態様27:前記ポリイミドエアロゲルを、同形カーボンエアロゲルに変換することをさらに含み、前記変換が、前記ポリイミドエアロゲルを不活性雰囲気下で少なくとも約650℃の温度で熱分解することを含む、態様22~26のいずれか1項に記載の方法。
【0066】
態様28:態様1~18のいずれか1項に記載の方法によって調製されるポリアミド酸塩。
【0067】
態様29:態様19または20に記載の方法によって調製されるポリアミド酸エアロゲル。
【0068】
態様30:態様22~26のいずれか1項に記載の方法によって調製されるポリイミドエアロゲル。
【0069】
態様31:残留量の前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩を含む、態様29に記載のポリアミド酸エアロゲル。
【0070】
態様32:残留量の前記水溶性炭酸塩または重炭酸塩を含む、態様30に記載のポリアミド酸エアロゲル。
【0071】
態様33:態様21または27に記載の方法によって調製されるカーボンエアロゲル。
【0072】
本技術の態様の理解を提供するために、添付の図面を参照するが、これらの図面は必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。図面は、例示的であるにすぎず、本技術を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載される開示は、添付の図面に、限定としてではなく例示として示される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1図1Aは、本開示の非限定的な態様による、有機ゲルの固体窒素-15核磁気共鳴(NMR)スペクトルであり、図1Bは、本開示の非限定的な態様による、有機ゲルの固体窒素-15 NMRスペクトルである。
図2図2は、本開示の非限定的な態様による、アルミニウムシート上にキャストされた薄膜の写真である。
図3図3は、本開示の非限定的な態様による、エアロゲルの材料特性評価データの表である。
図4図4は、本開示の非限定的な態様による、エアロゲルの材料特性評価データの表である。
図5図5Aは、本開示の非限定的な態様による、有機ゲルの固体窒素-15 NMRスペクトルであり、図5Bは、本開示の非限定的な態様による、有機ゲルの固体窒素-15 NMRスペクトルである。
図6図6は、本開示の非限定的な態様による、エアロゲルの材料特性評価データの表である。
図7図7は、本開示の非限定的な態様による、ポリイミドの炭化試料の走査型電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真である。
図8図8は、本開示の非限定的な態様による、様々な水性グアニジニウムポリアミド酸溶液についての振動応力に対する貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)のグラフ表示である。
図9図9は、本開示の非限定的な態様による、グアニジニウムポリアミド酸溶液の温度と降伏応力との関係を示すグラフ表示である。
図10図10は、本開示の非限定的な態様による、水性グアニジニウムポリアミド酸溶液について、tan(d)によって測定された時間に対する振動粘弾性応答のグラフ表示である。
図11図11は、本開示の非限定的な態様による、様々なポリアミド酸水溶液についての剪断速度に対する粘度のグラフ表示である。
図12図12は、本開示の非限定的な態様による、様々なポリアミド酸水溶液についての一連のゲル濾過クロマトグラム(GPC)である。
図13図13は、本開示の非限定的な態様による、様々なポリアミド酸水溶液についての粘度に対するGPC分子量のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本技術のいくつかの例示的な態様を説明する前に、本技術は、以下の説明に記載される構成またはプロセスステップの詳細に限定されないことを理解されたい。本技術は、他の態様であり得、様々な方法で実施または実行することができる。一般に、本技術は、有害な有機溶媒を使用せずにポリアミド酸ゲル及びポリイミドゲルを形成する方法に関する。
【0075】
一態様では、本方法は、一般に、ポリアミド酸を提供し、水中でポリアミド酸と水溶性炭酸塩または重炭酸塩を混合し、それによってポリアミド酸の塩の溶液を提供することを含む。他の態様では、本方法は、一般に、in situでポリアミド酸塩を調製することを含む。そのような態様では、本方法は、一般に、水溶性ジアミン、水溶性炭酸塩または重炭酸塩、及びテトラカルボン酸二無水物を水中で混合し、成分を反応させ、ポリアミド酸塩の溶液を提供することを含む。いくつかの態様では、本方法は、ポリアミド酸塩を、ポリアミド酸湿潤ゲルもしくはエアロゲル、ポリイミド湿潤ゲルもしくはエアロゲル、または対応するカーボンエアロゲルに変換することをさらに含む。
【0076】
開示される方法は、ポリイミド及びポリアミド酸ゲル材料を調製する従来の方法に対して経済的に好ましく(例えば、高価な有機溶媒が回避され、廃棄コストが最小限に抑えられる)、「グリーン」(すなわち、潜在的に有毒な有機溶媒及び試薬が回避されるかまたは最小限に抑えられ、有毒な副生成物の生成が最小限に抑えられるかまたは排除されるため、環境的な視点から有益である)であり、カーボンゲル材料を提供するために行わなければならない操作の全体の数を潜在的に低減するのに有利である。
【0077】
開示される方法は、一般に、アルカリ金属、アンモニウム、または炭酸グアニジニウムもしくは重炭酸塩を含むが、これらに限定されない水溶性炭酸塩または重炭酸塩の使用に依存し、形成される際にポリアミド酸を中和し、得られるポリアミド酸塩の電荷補償陽イオンを提供する。理論に拘束されることを望むものではないが、特に炭酸塩及び重炭酸塩は、中和種及び陽イオンプロバイダの役割が分離されるという点で有利であると考えられる。具体的には、炭酸塩または重炭酸塩は、形成されたポリアミド酸と反応し、COに変換され(ガスとして反応混合物から離れる)、炭酸塩または重炭酸塩と共に導入された陽イオン(例えば、アルカリ金属、アンモニウム、またはグアニジニウム陽イオン)と共にポリアミド酸塩を残す。さらに、そのような炭酸塩または重炭酸塩は、緩衝活性を有し、溶液のpHを所望の範囲に維持する。
【0078】
驚くべきことに、本開示によれば、1,4-フェニレンジアミン及びピロメリット酸二無水物の水中での反応から生成されたポリアミド酸塩の溶液は、類似の条件下であるがトリエチルアミン(EtNまたはTEAと略記される)を使用して達成される粘度とは対照的に、炭酸塩溶液中で、より低い標的密度(Td)値でより高い粘度に達したことが発見され、これは一般に非求核性アミン塩基と考えられる。ここでも、任意の特定の理論に拘束されることを望むものではないが、EtNのいくらかの残留及び無視できない求核性は、おそらくPMDAの一部を副反応に転換することによって、それと共に得られる低粘度に少なくとも部分的に関与し、したがってポリアミド酸ポリマーの長さを制限し得ると考えられる。別の非結合理論は、EtNの加水分解が高濃度の水酸化物イオンを生成するが、対照的に、炭酸塩/重炭酸塩/炭酸/CO系の緩衝効果が、より低いpH値(より低い濃度の水酸化物イオン)を維持するというものである。さらに、上記のように、重炭酸塩及び炭酸塩の塩基のプロトン化は、HCOを生成し(これは、CO+HOに分解する)、反応混合物を完全にガスとして分離し、炭酸塩または重炭酸塩の陽イオンをポリアミド酸塩中の電荷平衡陽イオンとして残す。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、ポリマーの成長を妨害する有意な副反応(例えば、トリエチルアミンなどの塩基で起こり得る反応など)が存在しないと、重合は比較的高分子量のポリマーに進むようであると考えられる。望ましくは、ポリアミド酸のリチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、及びグアニジニウム塩、例えば、PDA及びPMDAから生成されるものは、非常に水溶性であり、対応する炭酸塩及び重炭酸塩は、容易に市販され、安価である。さらに驚くべきことに、水性条件下での化学イミド化によってそのようなポリアミド酸から調製されるポリイミドゲルは、従来の有機溶媒プロセス(例えば、DMACのような有機溶媒中)から得られた対応するポリイミドゲルと物理的に類似している(透明度、色、質感)ように見える。具体的には、ゲルは透明であり、淡黄色から琥珀色であり、プラスチックの感触を有していた。
【0079】
さらに驚くべきことに、本開示によれば、ポリアミド酸と炭酸グアニジウムとの水中での反応から生成されるポリアミド酸塩の特定の溶液、または特定のジアミン、テトラカルボン酸二無水物、及び炭酸グアニジウムとの水中での反応から生成されるポリアミド酸塩の特定の溶液が、チキソトロピック挙動を示すことが発見された。チキソトロピーとは、時間依存的な剪断減粘特性である。具体的には、静的条件下で粘性である特定のゲルまたは流体は、特定の応力(例えば、振盪、攪拌、または剪断応力を受けた場合)に、粘性が低くなる(例えば、流動する)。次いで、応力が除去された場合、より粘性の高い状態に戻るために一定の時間を要する。いくつかのチキソトロピック流体は、ほぼ瞬時にゲル状態に戻り、一方、他の流体は、固体またはほぼ固体の状態に戻るためにはるかに長い時間を要する。チキソトロピック挙動は、高い流速(すなわち、剪断速度)での特定の材料の処理に好ましい。そのような流動挙動は、3次元(3D)印刷に適用可能であり、その場合、粘性溶液は、小さな力で注射針を通って流れ、針の内部に高剪断状況を生じるが、次いで、溶液は、針を出た後、ほぼ直ちに高い粘性を回復して固体構造を形成する。
【0080】
したがって、本明細書では、水性条件下で、ポリアミド酸塩溶液、ポリアミド酸ゲル、及びポリイミドゲルを調製する方法を提供する。さらに、水性条件下でポリアミド酸をポリイミドに変換する方法、ならびにポリアミド酸及びポリイミドゲル材料を、対応するカーボンゲル材料に変換する方法を提供する。様々な方法のそれぞれを、本明細書において以下にさらに記載する。
【0081】
定義
本開示において使用される用語に関して、以下の定義を提供する。本出願では、用語が出現するテキストの文脈で別の意味が必要でない限り、以下に定義される用語を使用する。
【0082】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法的対象の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。本明細書全体にわたって使用される用語「約」は、小さな変動を記述し説明するために使用される。例えば、用語「約」は、±10%以下または±5%以下、例えば±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.2%以下、±0.1%以下または±0.05%以下を指し得る。本明細書におけるすべての数値は、明示的に示されているか否かにかかわらず、用語「約」によって修飾されているものとする。用語「約」で修飾される値には、当然のことながら、その特定の値が含まれる。例えば、「約5.0」には5.0が含まれている必要がある。
【0083】
本開示に関して、用語「フレームワーク」または「フレームワーク構造」とは、ゲルまたはエアロゲルの固体構造を形成する相互連結されたオリゴマー、ポリマー、またはコロイド粒子のネットワークを指す。フレームワーク構造を構成するポリマーまたは粒子は、通常、約100オングストロームの直径を有する。しかしながら、本開示のフレームワーク構造は、ゲルまたはエアロゲル内で固体構造を形成する全ての直径サイズの相互接続されたオリゴマー、ポリマー、またはコロイド粒子のネットワークも含み得る。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語「エアロゲル」は、形状またはサイズに関係なく、フレームワーク内に組み込まれた相互接続された細孔の対応するネットワークを有し、分散された格子間媒体として空気などの気体を含有する固体を指す。したがって、使用する乾燥方法に関係なく、エアロゲルは、その全体積にわたって気体によって膨張され、対応する湿潤ゲルから、体積減少または圧縮させることなく全ての膨潤剤(例えば、溶媒)を除去することによって形成される、開放非流体コロイドネットワークまたはポリマーネットワークである。本明細書における「エアロゲル」への言及には、特に明記しない限り、材料(例えば、ポリイミド、ポリアミド酸、またはカーボン)に関係なく、エアロゲル、キセロゲル、クリオゲル、アンビゲル、微多孔性材料などとして分類され得る任意の連続気泡多孔質材料が含まれる。
【0085】
一般に、エアロゲルは、以下の物理的及び構造的特性のうちの1つ以上を有する:(a)約2nm~約100nmの範囲の平均孔径、(b)約60%以上の気孔率、(c)約1、約10または約20~約100または約1000m/gの比表面積。通常、そのような特性は、窒素吸着ポロシメトリー試験及び/またはヘリウムピクノメトリーを使用して測定される。補強材または電気化学的活性種、例えばシリコンまたはリン酸鉄リチウムなどの添加剤を含めると、得られるエアロゲル複合材料の気孔率または比表面積が低下する可能性があることが理解できる。高密度化も、結果として生じるエアロゲル複合体の気孔率を減少させ得る。
【0086】
いくつかの態様では、ゲル材料は、特にキセロゲルと呼ばれることがある。本明細書で使用される場合、用語「キセロゲル」とは、実質的な体積減少を回避するか、または圧縮を遅らせるための予防措置を講じることなく、対応する湿潤ゲルから全ての膨潤剤を除去することによって形成される、開放非流体コロイドネットワークまたはポリマーネットワークを含むエアロゲルの一種を指す。キセロゲルは、一般に、コンパクト構造を含む。キセロゲルは、常圧乾燥中に大幅な体積減少を起こし、通常、気孔率は約40%以下になる。
【0087】
本明細書で使用される場合、用語「ゲル化」または「ゲル転移」とは、ポリマー系、例えば本明細書に記載のポリイミドまたはポリアミド酸から湿潤ゲルを形成することを指す。ゲル化に関して本明細書に記載される反応中のある時点(「ゲル化点」として定義される)で、ゾルは流動性を失う。本発明に関して、ゲル化は、初期のゾル状態(例えば、ポリアミド酸の塩の溶液)から、高粘度の分散状態を経て、分散状態が固化してゾルがゲル化し(ゲル化点)、湿潤ゲル(例えば、ポリイミドまたはポリアミド酸ゲル)が得られるまで進行する。特に、ゲル化及びゲル化点のそのような定義は単純化されており、本明細書で記載の特定のゲルのチキソトロピック挙動などの、応力下での流動性の可能性を考慮しない。
【0088】
ポリマー溶液(例えば、ポリアミド酸の塩の水溶液)が流動不可能なゲルに変化するのに要する時間は、「現象論的ゲル化時間」と呼ばれる。形式的に、ゲル化時間は、レオロジーを用いて測定される。ゲル化点では、固体ゲルの弾性特性は、流体ゾルの粘性特性よりも支配的になり始める。正式なゲル化時間は、ゲル化ゾルの複素弾性率の実数成分と虚数成分が交差する時間に近い。2つの弾性率を、レオメーターを用いて時間の関数としてモニタリングする。ゾルの最後の成分を溶液に添加した瞬間から時間のカウントを開始する。例えば、H.H.Winter “Can the Gel Point of a Cross-linking Polymer Be Detected by the G‘-G’’ Crossover?” Polym.Eng.Sci.,1987,27,1698-1702;S.-Y.Kim,D.-G.Choi and S.-M.Yang “Rheological analysis of the gelation behavior of tetraethylorthosilane/vinyltriethoxysilane hybrid solutions” Korean J.Chem.Eng.,2002,19,190-196;及びM.Muthukumar “Screening effect on viscoelasticity near the gel point” Macromolecules,1989,22,4656-4658におけるゲル化の考察を参照のこと。
【0089】
本明細書で使用される場合、用語「湿潤ゲル」とは、相互接続された細孔のネットワーク内の移動間質相が主に従来の溶媒または水などの液相、液体二酸化炭素などの液化ガス、またはそれらの組み合わせから構成されるゲルを指す。エアロゲルは通常、最初の湿潤ゲルの生成、続いて、ゲル内の移動間隙液相を空気または別のガスで置換するための処理及び抽出を必要とする。湿潤ゲルの例としては、アルコゲル、ヒドロゲル、ケトゲル、カルボノゲル、及び当業者に公知の任意の他の湿潤ゲルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
本明細書で使用される場合、ポリイミドゲル材料を形成するための「従来の」または「有機溶媒系の」方法とは、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との縮合により有機溶媒中でポリアミド酸溶液を調製し、続いてポリアミド酸を脱水してポリイミドゲルを形成する方法を指す。例えば、Rhineらの米国特許第7,071,287号及び第7,074,880号、ならびにZafiropoulosらの米国特許出願公開第2020/0269207号を参照のこと。
【0091】
本明細書で使用される用語「アルキル」とは、一般に1~20個の炭素原子(すなわち、C1~C20)を有する直鎖または分岐の飽和炭化水素基を指す。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、及びn-ヘキシルが挙げられるが、これらに限定されず、一方、分岐アルキル基としては、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル、及びネオペンチルを挙げられるが、これらに限定されない。アルキル基は、非置換型または置換型であり得る。
【0092】
本明細書で使用される用語「アルケニル基」とは、一般に、1~20個の炭素原子(すなわち、C1~C20)を有し、少なくとも1つの不飽和部位、すなわち、炭素-炭素二重結合を有する炭化水素基を指す。例としては、エチレンまたはビニル、アリル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルケニル基は、非置換型または置換型であり得る。
【0093】
本明細書で使用される用語「実質的に」とは、特に明記しない限り、特定の文脈に関連する参照特性、量などの大きな程度、例えば、約95%超、約99%超、約99.9%超、99.99%超、または100%などを意味する(例えば、実質的に純粋、実質的に同じなど)。
【0094】
ポリイミド、ポリアミド酸、ポリアミド酸金属塩、及びカーボンエアロゲルの形成方法
本明細書に開示される方法は、一般に、ポリアミド酸及びポリイミド湿潤ゲルを利用し、これは、有機溶媒を使用せずに、及び有機塩基(例えば、アミン)を使用せずに調製され得る。本明細書における「有機塩基を使用しない」ポリアミド酸及びポリイミド湿潤ゲルの調製への言及は、アミンなどの炭素系アルカリ性物質が、予め形成されたポリアミド酸の水中での可溶化にも、形成されるときのポリアミド酸のin situ可溶化(すなわち、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物の反応による)にも利用されないことを意味する。疑義を避けるため、「有機塩基」への言及には、炭酸塩及び重炭酸塩が含まれず、さらに窒素含有陽イオン種(アンモニウムまたはグアニジニウムなど)を含む炭酸塩及び重炭酸塩も含まれない。
【0095】
本明細書における水溶液への言及は、溶液が有機溶媒を実質的に含まないことを意味する。有機溶媒に関して本明細書で使用される用語「実質的に含まない」とは、有機溶媒が意図的に添加されておらず、そして有機溶媒が微量を超えて存在しないことを意味する。例えば、特定の態様では、水溶液は、1体積%未満の有機溶媒、または0.1体積%未満、または0.01%未満、またはさらには0体積%の有機溶媒を含むものとして特徴付けることができる。これらの水ベースの方法は、材料と廃棄物の処理コストを削減し、潜在的な安全上及び環境上の危険を低減するのに有利である。
【0096】
水性条件下でのポリアミド酸及びポリイミドゲル材料の調製
本明細書では、水性条件下でポリアミド酸及びポリイミドゲル材料を調製する方法を提供する。この方法は一般に、有機塩基を使用せずにポリアミド酸塩の水溶液を調製し、続いてポリアミド酸塩をポリアミド酸ゲルもしくはエアロゲル材料、ポリイミドゲルもしくはエアロゲル材料、または対応するカーボンエアロゲル材料に変換することを含む。これらの材料のそれぞれ及び対応する方法(複数可)について、本明細書において以下でさらに説明する。
【0097】
ポリアミド酸及びポリアミド酸塩
本明細書では、ポリアミド酸塩の水溶液を調製する方法を提供する。ポリアミド酸は、カルボン酸基、カルボキサミド基、ならびにポリアミド酸の由来となるジアミン及びテトラカルボン酸を含む芳香族または脂肪族部分を含む繰り返し単位を有する高分子型アミドである。本明細書で定義される「繰り返し単位」とは、その繰り返しにより、繰り返し単位がポリマー鎖に沿って連続的に連結されることによって、完全なポリマー鎖(末端アミノ基または未反応の無水物末端を除く)が生成される、ポリアミド酸(または対応するポリイミド)の一部分である。当業者であれば、ポリアミド酸の繰り返し単位は、テトラカルボン酸二無水物のカルボキシル基とジアミンのアミノ基との部分縮合から生じることを認識するであろう。
【0098】
一態様では、この方法は、ポリアミド酸を提供し、そのポリアミド酸と水溶性炭酸塩または重炭酸塩とを水中で混合し、それによってポリアミド酸の塩の溶液を提供することを含む。そのような態様では、ポリアミド酸は、予め形成されたポリアミド酸であり、これは、購入された市販の材料、または従来の既知の技術(有機溶媒溶液中での調製など)に従って適切なジアミン及びテトラカルボン酸無水物から調製された材料のいずれかである。in situ合成されるポリアミド酸に関して、適切な予め形成されたポリアミド酸は、本明細書において以下に記載されるとおりである。適切な水溶性炭酸塩または重炭酸塩について、本明細書において以下でさらに説明する。
【0099】
あるいは、ポリアミド酸をin situで調製してもよい。したがって、別の態様では、ポリアミド酸塩の水溶液を、水溶性炭酸塩または重炭酸塩の存在下で、水溶性ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させることによって調製する。一般に、ジアミンを上記炭酸塩または重炭酸塩の存在下でテトラカルボン酸二無水物と反応させてポリアミド酸塩を形成する。したがって、この方法は、水溶性ジアミン、水溶性炭酸塩または重炭酸塩、及びテトラカルボン酸二無水物を水中で混合し、成分を反応させてポリアミド酸塩の溶液を提供することを含む。ポリアミド酸塩は、炭酸塩または重炭酸塩由来の陽イオンによって電荷補償された陰イオン性カルボン酸基を含み、ポリアミド酸塩は水溶性である。この方法で利用される各成分(例えば、水溶性ジアミン、テトラカルボン酸二無水物、水溶性炭酸塩または重炭酸塩など)について、以下でさらに説明する。
【0100】
様々な成分の添加順序は様々に異なり得る。例えば、いくつかの態様では、混合は、水溶性ジアミンを水に溶解してジアミン水溶液を形成し、水溶性炭酸塩または重炭酸塩をジアミン水溶液に添加し、テトラカルボン酸二無水物をジアミン及び水溶性炭酸塩または重炭酸塩の水溶液に添加して溶液を形成し、溶液を、約15~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間、撹拌することを含む。
【0101】
いくつかの態様では、混合は、水溶性ジアミンを水に溶解してジアミン水溶液を形成し、テトラカルボン酸二無水物をジアミン水溶液に添加して懸濁液を形成し、懸濁液を、約15~約60℃の範囲の温度で、約1分~約24時間の範囲の期間、撹拌し、水溶性炭酸塩または重炭酸塩を懸濁液に添加し、懸濁液を約15~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間、撹拌して、ポリアミド酸塩の水溶液を提供することを含む。
【0102】
いくつかの態様では、混合は、水溶性ジアミン、テトラカルボン酸二無水物、及び水溶性炭酸塩または重炭酸塩を同時にまたは迅速に連続して水に添加し、得られた混合物を約15~約60℃の範囲の温度で、約1時間~約4日間の範囲の期間、撹拌して、ポリアミド酸塩の水溶液を提供することを含む。
【0103】
非限定的な一般的な反応順序をスキーム1に示す。いくつかでは、反応を一般にスキーム1に従って実施し、試薬及び生成物はスキーム1の式による構造を有する。
スキーム1.水溶性炭酸塩または重炭酸塩の存在下でのモノマーの反応によるポリアミド酸の塩の水溶液の形成
【化1】
【0104】
本明細書に開示されるジアミンは、一般に「水溶性ジアミン」と記載される。本明細書で使用される場合、用語「水溶性ジアミン」とは、開示される方法で利用される条件下で合成的に有用な濃度のジアミンが得られるように、ジアミンが水中でかなりの溶解度を有することを意味する。例えば、開示される方法での使用に適したジアミンは、20℃の水に100mL当たり少なくとも約0.01g、100mL当たり少なくとも約0.1g、100mL当たり少なくとも約1g、または100mL当たり少なくとも約10gの溶解度を有し得る。
【0105】
いくつかの態様では、複数のジアミンの組み合わせを使用してもよい。ゲル材料の特性を最適化するために、ジアミンの組み合わせを使用してもよい。いくつかの態様では、単一のジアミンを使用する。
【0106】
スキームIに示すように、ジアミンの構造は様々に異なり得る。いくつかの態様では、ジアミンは式Iによる構造を有し、式中、Zは脂肪族(すなわち、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、またはシクロアルキレン)またはアリールであり、それぞれ本明細書で上記に記載されたとおりである。いくつかの態様では、Zは、C2~C12アルキレンまたはC2~C6アルキレンなどのアルキレンである。いくつかの態様では、ジアミンは、限定されないが、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、及びエチレンジアミンなどのC2~C6アルカンジアミンである。いくつかの態様では、アルカンジアミンのC2~C6アルキレンは、メチルなどの1つ以上のアルキル基で置換されている。
【0107】
いくつかの態様では、Zはアリールである。いくつかの態様では、アリールジアミンは、1,3-フェニレンジアミン、メチレンジアニリン、1,4-フェニレンジアミン(PDA)、またはそれらの組み合わせである。いくつかの態様では、ジアミンは1,3-フェニレンジアミンである。いくつかの態様では、ジアミンは1,4-フェニレンジアミン(PDA)である。
【0108】
引き続きスキーム1に示すように、テトラカルボン酸二無水物を添加する。いくつかの態様では、複数のテトラカルボン酸二無水物を添加する。ゲル材料の特性を最適化するために、テトラカルボン酸二無水物の組み合わせを使用してもよい。いくつかの態様では、単一のテトラカルボン酸二無水物を添加する。テトラカルボン酸二無水物の構造は様々に異なり得る。いくつかの態様では、テトラカルボン酸二無水物は、式IIによる構造を有し、式中、Lは、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、またはそれらの組み合わせを含み、それぞれ本明細書で上記に記載されたとおりである。いくつかの態様では、Lはアリーレン基を含む。いくつかの態様では、Lは、フェニル基、ビフェニル基、またはジフェニルエーテル基を含む。いくつかの態様では、式IIのテトラカルボン酸二無水物は、表1に示される1つ以上の構造から選択される構造を有する。
【表1】
【0109】
いくつかの態様では、テトラカルボン酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、ビフタル酸二無水物(BPDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、エチレンジアミン四酢酸二無水物(EDDA)、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様では、テトラカルボン酸二無水物はPMDAである。
【0110】
本明細書に開示される方法は、水溶性炭酸塩または重炭酸塩を利用する。水溶性炭酸塩または重炭酸塩は様々に異なり得る。本明細書で使用される場合、塩に関して「水溶性」という用語は、開示された方法で利用される条件下で合成的に有用な濃度の炭酸塩または重炭酸塩の陰イオンが得られるように、炭酸塩または重炭酸塩が水中でかなりの溶解度を有することを意味する。例えば、開示される方法での使用に適した水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、20℃の水に100mL当たり少なくとも約0.1g、100mL当たり少なくとも約1g、または100mL当たり少なくとも約10gの溶解度を有し得る。
【0111】
本明細書で使用される場合、用語「炭酸塩または重炭酸塩」とは、炭酸塩または重炭酸塩の陰イオンを含むアルカリ性物質を指し、特に、炭素-水素共有結合を含むアルカリ性物質(すなわち、アルキルアミン、アリールアミン、及び複素芳香族アミンを含むがこれらに限定されない有機塩基)を除外する。開示される方法での使用に適した水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、非求核性であるとさらに記載され得、これは、炭酸塩または重炭酸塩が、プロトン受容体として以外に電子対を供与することによって化学反応に関与しないことを意味する。
【0112】
特定の態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は炭酸塩である。他の特定の態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は重炭酸塩である。引き続きスキーム1に示すように、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、一般式MCOまたはMHCOを有し、式中、Mは+1の価数を有する陽イオン種である。
【0113】
いくつかの態様では、陽イオン種Mは、アンモニウムイオン、グアニジニウムイオン、もしくはアルカリ金属イオンを含むか、またはアンモニウムイオン、グアニジニウムイオン、もしくはアルカリ金属イオンである。いくつかの態様では、陽イオン種Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、グアニジニウム、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、陽イオン種Mはリチウムである。いくつかの態様では、陽イオン種Mはナトリウムである。いくつかの態様では、陽イオン種Mはカリウムである。いくつかの態様では、陽イオン種Mはアンモニウム(NH )である。いくつかの態様では、陽イオン種Mはグアニジニウム(NH-C(=NH )-NH)である。
【0114】
特に好適な水溶性炭酸塩及び重炭酸塩としては、アルカリ金属の炭酸塩及び重炭酸塩が挙げられる。いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び重炭酸カリウムからなる群から選択される。
【0115】
いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸グアニジニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0116】
いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、炭酸グアニジニウムである。本明細書において上記及び下記の実施例に関して記載されるように、炭酸グアニジニウムを用いて調製された特定のポリアミド酸塩溶液はチキソトロピックである。このチキソトロピック挙動は、例えば、3Dプリント用途において望ましい。例えば、3Dプリント構造は、本明細書に記載のチキソトロピック溶液(例えば、水性グアニジニウムポリアメート)のニードル堆積(ポリマー溶液がニードルから出る際に、ニードルを所定の方法で動かして所望のパターンを形成する)によって調製される。得られた構造を、文献中で以前に記載されたように処理して、押し付けられた構造を保持するポリマーまたはカーボンエアロゲルのいずれかを形成してもよい。
【0117】
添加される水溶性炭酸塩または重炭酸塩の量は様々であってよく、例えば、使用する特定の塩の化学量論に依存し得る。例えば、当業者であれば、塩中に存在する特定の陰イオン種(炭酸塩または重炭酸塩)に関連する電荷に依存することを認識するであろう。例えば、重炭酸ナトリウム(NaHCO)は、それぞれ1つのプロトンと反応できる1当量の塩基(重炭酸イオン、HCO )を供給し、さらに重炭酸ナトリウムの各モル当量に対して1当量のナトリウムイオンを供給する。対照的に、炭酸ナトリウム(NaCO)は、ポリアミド酸の各繰り返し単位からの2当量のプロトンと反応できる2当量の塩基(炭酸イオン、CO 2-)を供給し、炭酸ナトリウムの各モル当量に対して2当量のナトリウムイオンを供給する。
【0118】
水溶性炭酸塩または重炭酸塩の量は、別の反応成分(例えば、ジアミン)に対するモル比で表してもよい。水溶性炭酸塩または重炭酸塩とジアミンとのモル比は、各セットの反応物及び条件に応じて最適化する必要がある場合がある。いくつかの態様では、モル比は、ポリアミド酸の溶解度を維持するように選択される。いくつかの態様では、モル比は、ポリアミド酸のいかなる沈殿も避けるように選択される。いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩とジアミンとのモル比は、約1~約4、または約2~約3の範囲である。いくつかの態様では、モル比は、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、または約1.5から、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、または約2.0までである。いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩とジアミンとのモル比は、約2.0~約2.6、例えば、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、または約2.6である。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、いくつかの例示的な態様では、ポリアミド酸の実質的にすべての遊離カルボン酸基の中和を可能にする(すなわち、塩を形成する)のに少なくとも十分な塩基が必要であると考えられる。いくつかの態様では、利用される水溶性炭酸塩または重炭酸塩の量は、反応中に形成されるポリアミド酸中に存在する実質的にすべてのカルボン酸基を中和する量である。
【0119】
いくつかの態様では、水溶性塩は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウムまたは炭酸グアニジニウムなどの炭酸塩であり、炭酸イオンとジアミンとのモル比は約1.0~約1.3である。
【0120】
いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、重炭酸リチウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、または重炭酸アンモニウムなどの重炭酸塩であり、重炭酸イオンとジアミンとのモル比は約2.0~約2.6である。
【0121】
いくつかの態様では、存在する水溶性炭酸塩または重炭酸塩の量は、反応中に形成されるか、または別の方法で反応混合物中に存在するポリアミド酸のカルボン酸基に比較して表すことができる。いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、重炭酸リチウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムまたは重炭酸アンモニウムなどの重炭酸塩であり、ポリアミド酸のカルボン酸基に対する重炭酸イオンのモル比は約2.0である。いくつかの態様では、水溶性炭酸塩または重炭酸塩は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、または炭酸アンモニウムなどの炭酸塩であり、ポリアミド酸のカルボン酸基に対する炭酸イオンのモル比は約1.0である。
【0122】
存在するジアミン及び二無水物の相対量を、モル比で表してもよい。ジアミンと二無水物とのモル比は、所望の反応時間、試薬構造、及び所望の材料特性に応じて様々であり得る。いくつかの態様では、モル比は、約0.1~約10、例えば、約0.1、約0.5または約1~約2、約3、約5または約10である。いくつかの態様では、この比は約0.5~約2である。いくつかの態様では、この比は約1(すなわち、化学量論)、例えば約0.9~約1.1である。特定の態様では、この比は約0.99~約1.01である。
【0123】
ポリアミド酸の分子量は、反応条件(例えば、濃度、温度、反応時間、ジアミン及び二無水物の性質など)に基づいて様々であり得る。分子量は、スキーム1の式IIIの構造についての整数「n」の値によって示されるように、ポリアミド酸繰り返し単位の数に基づく。開示される方法によって製造されるポリマー材料の特定の分子量範囲は様々であり得る。一般に、分子量を特に考慮することなく、上記の反応条件を様々に変化させて、所望の物理的特性を有するゲルを提供してもよい。いくつかの態様では、分子量の代用値は、温度、濃度、反応物のモル比、反応時間などの変数によって決定されるポリアミド酸塩溶液の粘度で提供される。
【0124】
反応を実施する温度は様々であり得る。適切な範囲は一般に約4℃~約100℃である。いくつかの態様では、反応温度は、約15~約60℃、例えば、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、または約60℃である。いくつかの態様では、温度は約15~約25℃である。いくつかの態様では、温度は約50~約60℃である。
【0125】
反応を一定期間進行させ、一般に、利用可能なすべての反応物(例えば、ジアミン及び二無水物)が互いに反応するまで進行させる。反応が完了するまでに必要な時間は、試薬の構造、濃度、温度によって様々であり得る。いくつかの態様では、反応時間は、約1分~約1週間、例えば、約15分~約5日、約30分~約3日、または約1時間~約1日である。いくつかの態様では、反応時間は約1時間~約12時間である。
【0126】
水溶液中のポリアミド酸塩の濃度は様々であり得る。例えば、いくつかの態様では、水溶液中のポリアミド酸塩の濃度範囲は、ポリアミド酸の重量に基づいて、約0.01~約0.3g/cmである。
【0127】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるポリアミド酸、ポリイミド、またはカーボンゲル及びエアロゲル材料に、電気活性材料、従来のポリマー充填剤、炭素材料などの1つ以上の追加の材料をドープしてもよい。そのようなドーパントまたはその前駆体を、様々な段階及び様々な方法で導入してもよい。いくつかの態様では、ドーパントを、ポリアミド酸塩溶液の形成中または形成直後に導入する。したがって、いくつかの態様では、本方法は、ポリアミド酸塩の水溶液、または水溶性ジアミンの溶液にドーパントを添加することをさらに含む。
【0128】
いくつかの態様では、ドーパントは、電気活性材料またはその前駆体である。好適な電気活性材料としては、グラファイト、シリコン、例えば、シリコン粒子、スズ、またはプルシアンブルー、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄マンガンリチウムなどの種、それらの組み合わせ、他のアノード及び/またはカソード活性材料、またはそれらのいずれかの1つ以上の前駆体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、電気活性材料またはその前駆体は粒子形態である。いくつかの態様では、ドーパントは、ナノメートルまたはミクロン範囲の粒子状物質(すなわち、約1nm~約10マイクロメートル以上の範囲の2次元または3次元の粒子を有する)である。
【0129】
いくつかの態様では、粒子形態のドーパントは、シリコン、例えば、シリコン、シリコンワイヤ、結晶シリコン、アモルファスシリコン、シリコン合金、シリコン酸化物(SiOx)、シリコンカーバイド、シリコン窒化物、コーティングされたシリコン(例えば、炭素コーティングされたシリコン)、及び本明細書に開示されるシリコン粒子材料の任意の組み合わせを含む。
【0130】
いくつかの態様では、粒子形態のドーパントは、炭素、グラファイト、スズ、硫黄、ニッケル、マンガン、コバルト、鉄、バナジウム、マンガン、またはそれらの組み合わせを含む。例えば、いくつかの態様では、粒子形態のドーパントは、リン酸鉄リチウムまたはそのマンガンもしくはバナジウムのバリアントである。
【0131】
ドーパント粒子(例えば、リン酸鉄リチウム)は、本明細書に開示されているように、いくつかの方法でポリアミド酸、ポリイミド、またはカーボンゲルに組み込んでもよい。一般に、電気活性ドーパント粒子(例えば、リン酸鉄リチウム)をゾル-ゲルプロセス中に組み込む。非限定的な一態様では、電気活性ドーパント粒子(例えば、リン酸鉄リチウム)を、イミド化の前にポリアミド酸ゾル中に分散させる。いくつかの態様では、電気活性ドーパント粒子(例えば、リン酸鉄リチウム)を、ポリイミド前駆体と混合する前に、溶媒、例えば、水、または極性非プロトン性溶媒中に分散させる。いくつかの態様では、電気活性ドーパント粒子(例えば、リン酸鉄リチウム)を、イミド化プロセス中にポリアミド酸ゾル中に分散させる。いくつかの態様では、電気活性ドーパント粒子(例えば、リン酸鉄リチウム)を、ポリアミド酸塩の水溶液に添加する。他の態様では、電気活性材料の前駆体(例えば、硫黄もしくは硫黄自体、またはニッケル、マンガン、コバルト、鉄、バナジウム、マンガン、リン酸塩、プルシアンブルーなどを含む材料)を、ポリアミド酸塩の調製中を含むがこれに限定されない様々な段階で導入してもよい。
【0132】
いくつかの態様では、例えば水溶性炭酸塩または重炭酸塩由来の残留リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、またはグアニジニウムイオンは、ポリアミド酸、ポリイミド、またはカーボンゲル材料中に保持される。
【0133】
ポリアミド酸及びポリイミドゲル
いくつかの態様では、この方法は、ポリアミド酸塩の水溶液を対応するポリアミド酸ゲルに変換することをさらに含む。一般に、ポリアミド酸塩溶液を対応するポリアミド酸ゲルに変換する方法は、ポリアミド酸塩溶液を酸性化してポリアミド酸塩をポリアミド酸に変換し、ポリアミド酸をゲルとして相分離させることを含む。この酸は、ゲル化開始剤とも称される。ポリアミド酸を形成するための酸性化は一般にスキーム2に従う。
【0134】
酸性化の方法は様々に異なり得る。例えば、いくつかの態様では、ポリアミド酸塩溶液を酸溶液に添加し、ポリアミド酸塩溶液の酸性化は急速である。あるいは、ポリアミド酸塩溶液に酸を添加することによって、ポリアミド酸塩溶液を酸性化してもよい。いくつかの態様では、当業者に公知の条件または技術を使用して、ポリアミド酸塩溶液を、徐々にまたはゆっくりと酸性化してもよい。例えば、非限定的な一態様では、酸前駆体を使用する。酸前駆体は、例えば加水分解によって徐々に酸に変換され得る物質である。そのような好適な酸前駆物質の1つは無水酢酸であり、これは水の存在下で酢酸を生成する。
スキーム2.ポリアミド酸の塩と酸の反応によるポリアミド酸ゲルの形成
【化2】
【0135】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるように調製されるポリアミド酸湿潤ゲル、または以下に記載される対応するエアロゲルは、残留炭酸塩または重炭酸塩(複数可)を含む。一般に、残留量は微量であるが、炭酸塩もしくは重炭酸塩、及び/または関連する対陽イオン(例えば、アルカリ金属イオン、グアニジニウムイオンなど)は、当業者に公知の分析方法によって検出され得る。
【0136】
続いて、得られたポリアミド酸ゲル材料を乾燥させて、ポリアミド酸エアロゲルを形成してもよい。ポリアミド酸ゲル材料の酸性化及び形成の方法は、例えば、国際特許出願公開第WO2022125835号に記載されており、その全体が本明細書に援用される。対応するエアロゲルを形成するための乾燥方法について、本明細書において以下にさらに説明する。
【0137】
いくつかの態様では、この方法は、ポリアミド酸塩の水溶液からポリイミドエアロゲルを形成することをさらに含む。一般に、この方法は、ポリアミド酸塩をイミド化してポリイミドゲルを形成し、ポリイミドゲルを乾燥させてポリイミドエアロゲルを形成することを含む。ポリアミド酸塩の水溶液をイミド化する方法は、例えば、国際特許出願第PCT/US2021/062706号(その全体が本明細書に援用される)に記載されており、好適な方法もまた、本明細書において以下にさらに記載される。対応するポリイミドエアロゲルを形成するための乾燥方法については、本明細書において以下にさらに説明する。
【0138】
いくつかの態様では、ポリアミド酸塩をイミド化することは、対応するポリアミド酸を熱的にイミド化することを含む。マイクロ波周波数エネルギーによる湿潤ゲルポリアミド酸材料の照射は、1つの特に好適な熱処理である。遅い熱伝導に依存する従来の加熱と比較して、マイクロ波加熱は、迅速かつ効率的なエネルギー伝達を可能にする。したがって、マイクロ波加熱は、本発明の熱イミド化反応を行うのに特に適している。一般に、マイクロ波周波数の照射は、ポリアミド酸のアミド基及びカルボキシル基の大部分をイミド基に変換するのに十分な出力及び時間で行われる。アミド基及びカルボキシル基をイミド基に変換することに関連して本明細書で使用される場合、「かなりの部分」とは、アミド基及びカルボキシル基の80%超、例えば85%、90%、95%、99%、または99.9%、または99.99%、またはさらには100%がイミド基に変換されることを意味する。
【0139】
他の態様では、ポリアミド酸塩をイミド化することは、化学イミド化を行うことを含み、化学イミド化は、ゲル化開始剤をポリアミド酸の塩の水溶液に添加してゲル化混合物(「ゾル」)を形成し、ゲル化混合物を(例えば、型内で、またはシート上に流し込み、またはビーズなどの他の様々な形式で)ゲル化させることを含む。そのような態様では、ゲル化開始剤を添加して、イミド化を開始及び促進し、ポリアミド酸塩からポリイミド湿潤ゲルを形成する。非限定的な一般的な反応順序をスキーム3に示す。いくつかの態様では、ポリイミドは、スキーム3に示すように、式Vによる構造を有し、式中、L、Z、及びnは、それぞれ、式IIIのポリアミド酸塩の形成に関して本明細書で上述したとおりである。
スキーム3.ポリアミド酸の塩からポリイミドへの変換
【化3】
【0140】
ゲル化開始剤の構造は様々であり得るが、一般に、水溶液との反応性が最小限でありながら、反応溶液に少なくとも部分的に可溶性であり、ポリアミド酸塩のカルボン酸基と反応し、ポリアミド酸のカルボキシル基及びアミド基のイミド化を促進するのに効果的な試薬である。好適なゲル化開始剤の種類の一例は、無水酢酸、無水プロピオン酸などのカルボン酸無水物である。いくつかの態様では、ゲル化開始剤は無水酢酸である。
【0141】
いくつかの態様では、ゲル化開始剤の量は、テトラカルボン酸二無水物またはポリアミド酸の量に基づいて様々であり得る。例えば、いくつかの態様では、ゲル化開始剤はテトラカルボン酸二無水物と様々なモル比で存在する。いくつかの態様では、ゲル化開始剤は、ポリアミド酸と様々なモル比で存在する。ゲル化開始剤とテトラカルボン酸二無水物またはポリアミド酸とのモル比は、所望の反応時間、試薬構造、及び所望の材料特性に応じて様々に異なり得る。いくつかの態様では、モル比は、約2~約10、例えば、約2、約3、約4または約5~約6、約7、約8、約9または約10である。いくつかの態様では、この比は約2~約5である。
【0142】
ゲル化反応を進行させる温度は様々に異なり得るが、一般に約50℃未満、例えば約10~約50℃、または約15~約25℃である。
【0143】
上記のゲル化条件(酸性化及びイミド化の両方)は一般的なものであり、ゲル化を実施する方法に関して限定することを意図していない。例えば、当業者であれば、モノリスまたはビーズ(マイクロビーズを含む)を調製する様々な順列を認識するであろう。例えば、本明細書では、ゲル化混合物を型に流し込むことによってモノリスを形成する方法、ポリアミド酸塩溶液を酸性受容溶液に滴下または噴霧することによって様々なサイズのビーズを形成する方法、またはエマルジョン中でポリアミド酸またはポリイミドゲルのミクロンサイズのビーズを形成する方法が企図される。さらに、本明細書では、ポリアミド酸塩溶液を溶液中の特定の金属イオンと接触させることによってポリアミド酸金属塩ゲルを形成する方法も企図する(例えば、スキーム4を参照のこと)。スキーム4に示すように、特定の金属塩(例えば、アルカリ土類金属塩、dブロック元素塩、pブロック元素塩、ランタニド金属塩、アクチニド金属塩)は、所望の特性を有する金属ポリアミド酸ゲルを形成する。これらの追加のゲル化方法(すなわち、金属ポリアミド酸塩、ビーズモノリス)は、例えば、Leventisらの国際特許出願公開第WO2022/125835号に記載されており、これは、水溶液からのポリアミド酸、ポリイミド、及び金属ポリアミド酸ゲルの形成の開示に関して参照により本明細書に援用される。
スキーム4.金属ポリアミド酸塩ゲルの形成
【化4】
【0144】
当業者であれば、本明細書に記載の方法に従って調製されるポリイミド湿潤ゲルが、個々のポリマー鎖の一方の末端または両方の末端に未反応の末端アミノ基を有することを認識するであろう。ポリイミド湿潤ゲル中のそのようなアミノ基の濃度の割合は、ポリイミド湿潤ゲル中に存在する繰り返し単位の平均数(すなわち、分子量)に反比例して変動する。いくつかの態様では、末端アミノ基は、ゲル化開始剤(例えば、無水酢酸)と反応して、例えばアセトアミドなどの末端アミドを形成し得る。そのような末端アミンまたはアミドの相対濃度は、固体15N-NMRなどの核磁気共鳴分光法を含むがこれに限定されない当技術分野で公知の方法に従って決定してもよい。
【0145】
いくつかの態様では、本明細書に開示されているように調製したポリイミド湿潤ゲルの水分含有量は、溶媒交換または乾燥の前に、本質的に反応溶媒として最初に使用した水の全量であり、蒸発、または本明細書で上述したポリイミド合成中に起こる様々な反応で生成または破壊された水は考慮されない。
【0146】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるように調製されるポリイミド湿潤ゲル、または本明細書において以下に記載される対応するエアロゲルは、残留炭酸塩または重炭酸塩(複数可)を含む。一般に、残留量は微量であるが、炭酸塩もしくは重炭酸塩、及び/または関連する対陽イオン(例えば、アルカリ金属イオン、グアニジニウムイオンなど)は、当業者に公知の分析方法によって検出され得る。
【0147】
ポリアミド酸、ポリイミド、及び金属ポリアミド酸塩エアロゲル
本明細書で上述したように、いくつかの態様では、この方法は、ポリアミド酸塩を、対応するポリアミド酸、ポリイミド、または金属ポリアミド酸塩湿潤ゲルを介してエアロゲル材料に変換することをさらに含む。一般に、エアロゲルの形成は、湿潤ゲルを1つ以上の段階で乾燥させることを含む。いくつかの態様では、湿潤ゲル(ポリアミド酸、ポリイミド、または金属ポリアミド酸)をエージングする。エージング後、得られた湿潤ゲル材料を回収し(例えば、型から取り出す)、最初に水で洗浄または溶媒交換して未反応の有機塩または酸を除去し、次いで湿潤ゲル中に存在する一次反応溶媒(すなわち、水)を好適な二次溶媒中で置換してもよい。そのような二次溶媒は、超臨界流体二酸化炭素(CO)と混和性である必要があり、1個以上の脂肪族炭素原子を有する直鎖アルコール、2個以上の炭素原子を有するジオール、または分岐アルコール、環状アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール、ポリオール、エーテル、ケトン、環状エーテルもしくはそれらの誘導体が挙げられる。いくつかの態様では、二次溶媒は、水、C1~C4アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、またはn-、イソ-、もしくはsec-ブタノール)、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリル、超臨界流体二酸化炭素(CO)、またはそれらの組み合わせである。いくつかの態様では、二次溶媒はエタノールである。
【0148】
湿潤ゲルが形成され、処理されると、次に、処理及び抽出技術を含む抽出方法を使用して、湿潤ゲル材料から湿潤ゲルの液相を少なくとも部分的に抽出して、エアロゲル材料を形成することができる(すなわち、「乾燥」)。液相抽出は、数ある要素の中でも特に、気孔率や密度などのエアロゲルの特性、及び熱伝導率などの関連特性を設計する上で重要な役割を果たす。一般に、エアロゲルは、湿潤ゲルの多孔質ネットワーク及び固体フレームワークに低収縮を引き起こす方法で湿潤ゲルから液相を抽出する際に取得する。湿潤ゲルを様々な技術を使用して乾燥させてエアロゲルまたはキセロゲルを提供することができる。例示的な態様では、湿潤ゲル材料を周囲圧力、真空下(例えば、凍結乾燥による)、亜臨界条件、または超臨界条件で乾燥させて、対応する乾燥ゲル(例えば、キセロゲルなどのエアロゲル)を形成することができる。
【0149】
いくつかの態様では、乾燥ゲルの表面積を減少させることが望ましい場合がある。表面積の減少が望ましい場合は、エアロゲルを完全にまたは部分的に、様々な気孔率を有するキセロゲルに変換することができる。エアロゲルの高い表面積は、細孔の一部を強制的に崩壊させることで減少させることができる。これは、例えばエアロゲルをエタノールもしくはアセトンなどの溶媒に一定時間浸漬することによって、またはエアロゲルを溶媒蒸気に曝露することによって行うことができる。続いて、溶媒を周囲圧力で乾燥させることによって除去する。
【0150】
エアロゲルは通常、液体移動相の臨界点付近またはそれ以上の温度及び圧力で湿潤ゲル材料から液体移動相を除去することによって形成される。臨界点に達する(臨界付近)か、または臨界点を超える(超臨界、すなわち、系の圧力及び温度がそれぞれ臨界圧力及び臨界温度以上になる)と、液体または蒸気相とは異なる新しい超臨界相が流体中に現れる。その後、液体-蒸気界面、毛細管力、または後退する液体-蒸気境界に典型的に関連する任意の関連する物質移動の制限を導入することなく、溶媒を除去することができる。さらに、超臨界相は一般に有機溶媒との混和性がより高く、このため、より良好な抽出が可能である。超臨界流体乾燥プロセスを最適化するために、共溶媒及び溶媒交換も一般的に使用される。
【0151】
超臨界点未満で蒸発または抽出が発生すると、液体の蒸発によって発生する毛細管力により、ゲル材料内で収縮及び細孔崩壊が引き起こされる可能性がある。溶媒抽出プロセス中に移動相を臨界圧力及び温度付近またはそれ以上に維持すると、そのような毛細管力による悪影響が軽減される。本開示の特定の態様では、溶媒系の臨界点直下の近臨界条件を使用すると、収縮が十分に低いエアロゲルまたは組成物の製造が可能になる場合があり、したがって商業的に実現可能な最終製品が製造される。
【0152】
エアロゲルを提供するために、様々な技術を使用して湿潤ゲルを乾燥させることができる。例示的な態様では、湿潤ゲル材料を、周囲圧力、亜臨界条件、または超臨界条件で乾燥させることができる。
【0153】
室温プロセスと高温プロセスの両方を使用して、周囲圧力でゲル材料を乾燥させることができる。いくつかの態様では、溶媒、湿潤ゲルの量、曝露表面積、湿潤ゲルのサイズなどに応じて、溶媒を除去するのに十分な期間、例えば数時間から数週間の範囲の期間、開放容器内で湿潤ゲルを空気に曝露するゆっくりとした常圧乾燥プロセスを使用することができる。
【0154】
別の態様では、湿潤ゲル材料は、加熱によって乾燥される。例えば、湿潤ゲル材料を対流式オーブン内で一定期間加熱して、溶媒(例えば、エタノール)の大部分を蒸発させることができる。部分的に乾燥させた後、ゲルを周囲温度で放置して、一定期間、例えば数時間から数日かけて完全に乾燥させることができる。この乾燥方法によりキセロゲルが生成される。特に、本開示によれば、モノリシック形態の湿潤ゲルを乾燥させると亀裂が生じるが、ビーズ形態の湿潤ゲルは、目標密度Tdが低い(例えば、Td=0.05g cm)溶液からでもその球形を保持することがわかった。
【0155】
いくつかの態様では、湿潤ゲル材料を凍結乾燥によって乾燥させる。「凍結乾燥(freeze drying)」または「凍結乾燥(lyophilizing)」とは、溶媒を除去するための低温プロセスを意味し、これは、材料(例えば、湿潤ゲル材料)を凍結させ、圧力を下げ、次いで凍結した溶媒を昇華によって除去することを含む。水は凍結乾燥による除去に理想的な溶媒であり、また、本明細書に開示される方法では水が溶媒であるため、凍結乾燥は開示されたポリイミド湿潤ゲル材料からのエアロゲル形成に特に適している。この乾燥方法により、エアロゲルによく似ている可能性があるクリオゲルが生成される。
【0156】
超臨界乾燥及び亜臨界乾燥の両方を使用して、湿潤ゲル材料を乾燥させることができる。いくつかの態様では、湿潤ゲル材料を亜臨界条件または超臨界条件下で乾燥させる。超臨界乾燥の例示的な態様では、超臨界COで溶媒を抽出するために、ゲル材料を高圧容器に入れることができる。溶媒、例えばエタノールを除去した後、容器を一定期間、例えば約30分間、COの臨界点より上に保持することができる。超臨界乾燥後、容器を大気圧まで減圧する。一般に、エアロゲルは、このプロセスによって得られる。
【0157】
亜臨界乾燥の例示的な態様では、室温で約800psi~約1200psiの範囲の圧力で液体COを使用してゲル材料を乾燥させる。この操作は超臨界乾燥よりも速く、例えば、溶媒(例えば、エタノール)は約15分で抽出できる。一般に、エアロゲルは、このプロセスによって得られる。
【0158】
いくつかの追加のエアロゲル抽出技術が当技術分野で公知であり、これらには、エアロゲルの乾燥に超臨界流体を使用する様々なアプローチ、ならびに常圧乾燥技術が含まれる。例えば、米国特許第6,670,402号は、実質的に超臨界条件またはそれ以上に予熱及び予圧された抽出器に超臨界(液体ではなく)二酸化炭素を注入することにより、急速な溶媒交換を介してゲルから液相を抽出し、それによってエアロゲルを製造することを教示している。
【0159】
いくつかの態様では、湿潤ゲルからの液相の抽出に、COの超臨界条件を使用する。
【0160】
ポリアミド酸またはポリイミドエアロゲルからのカーボンエアロゲルの形成
いくつかの態様では、この方法は、ポリアミド酸またはポリイミドエアロゲルを同形カーボンエアロゲルに変換することをさらに含み、変換は、好適な条件下でそれぞれのエアロゲルを熱分解することを含む。したがって、いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示されるポリアミド酸またはポリイミドエアロゲルを熱分解(例えば、炭化)することをさらに含み、これは、実質的にすべての有機材料を炭素に変換するのに十分な温度及び時間でエアロゲルを加熱することを意味する。本明細書において熱分解に関して使用される「実質的にすべて」とは、重量で有機物質の80%以上が炭素に変換されることを意味し、例えば、80%、85%、90%、またはそれ以上、例えば、重量で有機物質の最大99%、99.9%、99.99%、または100%が炭素に変換されることを意味する。エアロゲルを熱分解すると、エアロゲルは、同形カーボンエアロゲルに変換され、これは、物理的特性(例えば、気孔率、表面積、細孔径、直径など)が対応するカーボンエアロゲル内に実質的に保持されることを意味する。熱分解に必要な時間及び温度は様々に異なり得る。いくつかの態様では、ポリイミドエアロゲルを、このエアロゲルを炭化するために、約650℃以上、800℃以上、1000℃以上、1200℃以上、1400℃以上、1600℃以上、1800℃以上、2000℃以上、2200℃以上、2400℃以上、2600℃以上、2800℃以上、またはこれらの値の任意の2つの間の範囲の処理温度に供する。一般に、有機材料または炭素材料の燃焼を防ぐために不活性雰囲気下で熱分解を行う。適切な雰囲気としては、窒素、アルゴン、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、熱分解を窒素下で行う。
【0161】
いくつかの態様では、エアロゲルは、本明細書で上記に説明した金属ポリアミド酸塩エアロゲルである。そのような金属ポリアミド酸塩エアロゲルを熱分解すると、得られるカーボンエアロゲルは、対応する金属、金属酸化物、金属炭化物、またはそれらの組み合わせを含む(すなわち、ドープされる)可能性がある。存在する種は、温度及び還元雰囲気などの熱分解条件、及び特定の金属イオンに依存する。
【0162】
エアロゲルの特性
本明細書に開示されるエアロゲルは、密度を有する。本明細書で使用される場合、用語「密度」とは、エアロゲル材料または組成物の単位体積あたりの質量の測定値を指す。用語「密度」は、一般的に、エアロゲル材料の真密度または骨格密度、及びエアロゲル製品のかさ密度を指す。密度は、通常、kg/mまたはg/cmとして報告される。エアロゲル(ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミド酸金属塩、または炭素)の骨格密度は、ヘリウム比重測定法を含むがこれに限定されない、当技術分野で公知の方法によって決定してもよい。エアロゲル(ポリアミド酸、ポリイミド、またはカーボン)のかさ密度は、Standard Test Method for Dimensions and Density of Preformed Block and Board-Type Thermal Insulation(ASTM C303,ASTM International,West Conshohocken,Pa.);Standard Test Methods for Thickness and Density of Blanket or Batt Thermal Insulations(ASTM C167,ASTM International,West Conshohocken,Pa.);またはDetermination of the apparent density of preformed pipe insulation(ISO 18098,International Organization for Standardization,Switzerland)を含むがこれらに限定されない当技術分野で公知の方法によって測定してもよい。本開示に関して、特に明記しない限り、密度測定はASTM C167規格に従って取得される。いくつかの態様では、本明細書に開示されるエアロゲル(ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミド酸金属塩、またはカーボン)は、約0.01~約1、例えば約0.1~約0.3g/cmのかさ密度を有する。
【0163】
本明細書に開示されるエアロゲルは、孔径分布を有する。本明細書で使用される場合、用語「孔径分布」とは、多孔質材料のサンプル容積内の各孔径の統計的分布または相対量を指す。より狭い孔径分布は、比較的大きな割合の細孔が狭い範囲の孔径にあることを指す。いくつかの態様では、例えば、電気化学的活性種を取り囲むことができる細孔の量を最適化し、利用可能な細孔容積の使用を最大化する上で、狭い孔径分布が望ましい場合がある。逆に、より広い孔径分布は、比較的小さい割合の細孔が狭い範囲の孔径にあることを指す。したがって、孔径分布は、通常、細孔容積の関数として測定され、孔径分布チャートにおける主ピークの半値全幅の単位サイズとして記録される。多孔質材料の孔径分布は、当技術分野で公知の方法によって決定してもよい。孔径分布を決定するための好適な方法としては、ガス吸着/脱着(例えば窒素)の測定、水銀ポロシメトリーなどが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で報告される孔径分布の測定値は、特に明記しない限り、窒素吸着分析によって取得される。特定の態様では、本開示のエアロゲル(例えば、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミド酸金属塩、またはカーボン)は、比較的狭い孔径分布を有する。
【0164】
本明細書に開示されるエアロゲル材料は、細孔容積を有する。本明細書で使用される場合、用語「細孔容積」とは、多孔質材料のサンプル内の細孔の総容積を指す。細孔容積は、多孔質材料内の空隙の容積として具体的に測定され、通常は立方センチメートル/グラム(cm/gまたはcc/g)として記録される。例えば、窒素ポロシメトリー、水銀ポロシメトリー、またはヘリウムピクノメトリーとかさ密度の測定との組み合わせを含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の方法によって、多孔質材料の細孔容積を測定してもよい。特定の態様では、本開示のエアロゲル(ポリアミド酸、ポリイミド、またはカーボン)は、約1cc/g以上、1.5cc/g以上、2cc/g以上、2.5cc/g以上、3cc/g以上、3.5cc/g以上、4cc/g以上、またはこれらの値の任意の2つの間の範囲内の比較的大きな細孔容積を有する。他の態様では、本開示のエアロゲル及びキセロゲル(ポリアミド酸、ポリイミド、またはカーボン)は、約0.03cc/g以上、0.1cc/g以上、0.3cc/g以上、0.6cc/g以上、0.9cc/g以上、1.2cc/g以上、1.5cc/g以上、1.8cc/g以上、2.1cc/g以上、2.4cc/g以上、2.7cc/g以上、3.0cc/g以上、3.3cc/g以上、3.6cc/g以上、またはこれらの値の任意の2つの間の範囲内の細孔容積を有する。
【0165】
本開示のいくつかの態様では、エアロゲル材料(ポリアミド酸、ポリイミド、またはカーボン、エアロゲルもしくはキセロゲル)は、繊維状の形態を含み得る。本開示に関して、用語「フィブリル形態」とは、支柱、ロッド、繊維、またはフィラメントを含むナノ多孔質材料(例えば、カーボンエアロゲル)の構造形態を指す。
【0166】
いくつかの態様では、開示される方法のいずれかによって産生されるカーボンエアロゲルは、従来の非水性方法によって調製された対応するポリイミドエアロゲルを熱分解することによって調製されたカーボンエアロゲルと実質的に同様の特性を有する。例えば、Rhineらの米国特許第7,071,287号及び第7,074,880号を参照のこと。
【0167】
いくつかの態様では、本開示の炭素エアロゲル材料、例えば、ポリアミド酸由来、ポリアミド酸金属塩由来、またはポリイミド由来のカーボンエアロゲルは、元素分析によって測定される残留「ヘテロ原子」(すなわち、非炭素原子)窒素含有量が少なくとも約1重量%であり得る。例えば、カーボンエアロゲル材料は、少なくとも約1重量%、及び最大約10重量%の残留窒素含有量を有し得る。いくつかの態様では、残留窒素含有量は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10重量%である。
【0168】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書において別途指示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書で提供される全ての実施例、または例示的な文言(例えば「など」)の使用は、材料及び方法をわかりやすく説明することのみを目的としており、特に断りがない限り、請求範囲を制限することを提起するものではない。本明細書中のいかなる文言も、任意の請求されていない要素が、開示される材料及び方法の実施に必須であることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0169】
本明細書に記載の組成物、方法、及び用途に対する好適な修正及び適応を、その任意の態様の範囲から逸脱することなく行い得ることは、関連技術の当業者には容易に明らかであろう。提供される構成及び方法は例示的なものであり、請求される態様の範囲を制限することを意図するものではない。本明細書で開示される様々な態様及びオプションは全て、あらゆるバリエーションで組み合わせることができる。本明細書に記載の組成物、製剤、方法、及びプロセスの範囲には、本明細書に記載の態様、オプション、実施例、及び選好の実際のまたは潜在的な組み合わせがすべて含まれる。
【0170】
本明細書の技術を特定の態様を参照して説明してきたが、これらの態様は単に本技術の原理及び用途を例示するものに過ぎないことは理解されるべきである。本技術の精神及び範囲から逸脱することなく、本技術の方法及び装置に様々な修正及び変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本技術は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内の修正及び変形を含むように意図されている。
【0171】
本明細書全体を通じて「1つの態様」、「特定の態様」、「1つ以上の態様」、または「一態様」と言及される場合、その態様に関連して記載される特定の機能、構造、材料、または特性が、本技術の少なくとも1つの態様に含まれることを意味している。したがって、本明細書の様々な場所で「1つ以上の態様では」、「特定の態様では」、「1つの態様では」、または「一態様では」などの語句が使用される場合、必ずしも本技術の同じ態様を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性を、1つ以上の態様において任意の好適な方法で組み合わせてもよい。本明細書で引用される任意の範囲は包括的である。
【0172】
以下の実施例を参照して、本技術の態様を、より完全に例示する。本技術のいくつかの例示的な態様を説明する前に、本技術は、以下の説明に記載される構成またはプロセスステップの詳細に限定されないことを理解されたい。本技術は、他の態様であり得、様々な方法で実施または実行することができる。以下の実施例は、本技術の特定の態様を例示するために記載されており、それらを限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0173】
本発明は、方法を説明する以下の非限定的な実施例によってさらに説明され得る。
【0174】
実施例1:LiCO(標的密度0.05g/cc)を塩基として使用する水中のポリイミドエアロゲルの調製、及び対応するカーボンエアロゲルへの熱分解
p-フェニレンジアミン(3.315g,0.03065mol)を200mLの脱イオン水に溶解した。炭酸リチウム(2.718g,1.2mol過剰)を添加し、同じ水溶液に溶解した。ピロメリット酸二無水物(6.685g)を同じ溶液に懸濁した。数分後、固体は懸濁液中に残っていなかった。反応の初期段階で、ガスの発生(CO)が観察された。粘性の黄色溶液を最大4日間撹拌した。アリコートを24時間毎に採取し、レオメーターで粘度を測定した。その値は、1日目:76.6cP、2日目:74.2cP、3日目:71.0cP、4日目:70.8cPであった。
【0175】
2日目に、粘性溶液の50gアリコートを除去し、無水酢酸(1.471g,アリコート中に含まれるモノマー反復単位に対して2.0モル過剰)を添加した。無水酢酸を添加した後に得られた溶液を約30秒間撹拌し、続いて円筒形の型に移した。5分未満で溶液がゲル化した。得られたゲルは、透明で、薄い褐色で、ゴム状であり、従来の経路によって得られた(すなわち、有機溶媒中で調製された)ゲルに非常に似ている。それらの型内でゲルを室温で24時間エージングし、次いで、エタノールで洗浄し(4回)、超臨界流体COで乾燥させて、対応するモノリシックポリイミドエアロゲルを得た。これらのエアロゲルを、Td005-Li2-d2-AA2と称する。モノリスを、窒素を流しながら1050℃にて対応するカーボンエアロゲルへ熱分解し、これをC-Td005-Li2-d2-AA2と命名した。Td005-Li2-d2-AA2及びC-Td005-Li2-d2-AA2の両方の材料特性データを表2及び3に示す。
【0176】
2日目に再度、粘性溶液の別の50gアリコートを除去し、無水酢酸(1.471g,アリコート中に含まれるモノマー反復単位に対して2.0モル過剰)を添加した。無水酢酸を添加した後に得られた溶液を約30秒間撹拌し、続いて円筒形の型に移した。溶液は5分未満でゲル化した。得られたゲルは、透明で、薄い褐色で、ゴム状であり、従来の経路によって得られた(すなわち、有機溶媒中で調製された)ゲルに非常に似ている。型の中でゲルを68℃で24時間エージングし、次いで室温まで冷却し、型から取り出し、エタノールで洗浄し(4回)、超臨界流体COで乾燥させて、対応するモノリシックポリイミドエアロゲルを得た。これらのエアロゲルを、Td005-Li2-d2-AA2-68と称する。図1Aは、湿潤ゲルを68℃でエージングすることによって得られたポリイミドエアロゲルの固体15N NMRスペクトルを示す。図1Bは、湿潤ゲルを25℃でエージングすることによって得られたポリイミドエアロゲルの固体15N NMRスペクトルを示す。
【0177】
選択されたモノリスを、窒素を流しながら1050℃にて対応するカーボンエアロゲルへ熱分解し、これをC-Td005-Li2-d2-AA2-68と命名した。Td005-Li2-d2-AA2-68及びC-Td005-Li2-d2-AA2-68の両方の材料特性データを表2及び3に示す。
【0178】
4日目に、粘性溶液の50gアリコートを除去し、無水酢酸(3.163g,アリコート中に含まれるモノマー反復単位に対して4.3モル過剰)を添加した。無水酢酸を添加した後に得られた溶液を約30秒間撹拌し、続いて型に移した。溶液は約1分でゲル化した。得られたゲルは、透明で、薄い褐色で、ゴム状であり、従来の経路によって得られた(すなわち、有機溶媒中で調製された)ゲルに非常に似ている。それらの型内でゲル試料を24時間エージングし、次いで、エタノールで洗浄し(4回)、超臨界流体COで乾燥させて、対応するポリイミドエアロゲルを得た。これらのエアロゲルモノリスをTd005-Li2-d4と称する。選択されたモノリスを、窒素を流しながら1050℃にて対応するカーボンエアロゲルへ熱分解し、これをC-Td005-Li2-d4と命名した。Td005-Li2-d4及びC-Td005-Li2-d4の両方の材料特性データを表2及び3に示す。
【0179】
4日目の粘性の黄色溶液の残りの一部を塩酸水溶液(脱イオン水中の30%濃HCl)に滴下した。ポリアミド酸のビーズが瞬時に形成された。このビーズを受容HCl溶液中で24時間エージングし、次いで水で洗浄し(4回,各回12時間,各回1Lの水を使用)、同様にエタノールで洗浄し、超臨界流体COで乾燥させて、対応するポリアミド酸エアロゲルビーズを得た。これらのエアロゲルビーズを、PAA-ビーズ-Td005-Li2-d4と称する。これらのビーズの一部を、窒素を流しながら1050℃にて対応するカーボンエアロゲルビーズへ熱分解し、これをC-PAA-ビーズ-Td005-Li2-d4と命名した。PAA-ビーズ-Td005-Li2-d4及びC-PAA-ビーズ-Td005-Li2-d4の両方の材料特性データを表2及び3に示す。PAA-ビーズ-Td005-Li2-d4及びC-PAA-ビーズ-Td005-Li2-d4の両方における元素分析によるリチウム残留量(それぞれ、0.02%及び0.05%重量/重量)は、Td005-Li2-d4及びC-Td005-Li2-d4におけるリチウム残留量(それぞれ、1.45%及び1.52%重量/重量)よりもはるかに少ないことが注目される。エアロゲルビーズ中のリチウム量の減少は、湿潤ゲルビーズの水洗浄によるものであると考えられた。
【0180】
4日目に粘性の黄色溶液の残りの一部を上記のように無水酢酸で処理し、ゲル化材料をアルミニウムシート上にキャストして薄膜を形成させた。膜は、強靭でしなやかであった。膜の写真画像を図2に示す。図2に示すように、膜の一方の端部は50ミクロンの厚さであり、他方の端部は120ミクロンの厚さである。
【0181】
実施例2:LiCO(標的密度0.1g/cc)を塩基として使用する水中のポリイミドエアロゲルの調製、及び対応するカーボンエアロゲルへの熱分解
ポリイミドゲルを実施例1と同様に調製したが、標的密度を2倍とした。p-フェニレンジアミン(6.63g、0.06131mol)を200mLの脱イオン水に溶解した。炭酸リチウム(5.435g,1.2mol過剰)を添加し、同じ水溶液に溶解した。この溶液にピロメリット酸二無水物(13.37g,0.06130mol)を懸濁させた。数分後、固体は懸濁液中に残っていなかった。反応の初期段階で、大量のガスの発生(CO)が観察された。粘性の黄色溶液を2日間撹拌した。アリコートを24時間毎に採取し、レオメーターでアリコートの粘度を測定した。値は:1日目:422cP、2日目:348cPであった。2日目には、モノマー繰り返し単位に対して3.43mol過剰の無水酢酸を非常に粘性の高い溶液に加えた(無水酢酸の量:21.512g)。得られた溶液を約30秒間撹拌し、次いで型に分割した。溶液は、1分未満でゲル化した。ゲルは非常に暗色ではあったが、なお透明でゴム状であり、古典的経路によって有機溶媒中で得られたゲルと同等であった。それらの型内でゲルを24時間エージングし、次いで、エタノールで洗浄し(4回)、超臨界流体COで乾燥させた。これらのエアロゲルモノリスを、Td01-Li2-d2-AA3.43と称する。選択されたモノリスを、窒素を流しながら1050℃にて対応するカーボンエアロゲルへ熱分解し、これをC-Td01-Li2-d2-AA3.43と命名した。Td01-Li2-d2-AA3.43及びC-Td01-Li2-d2-AA3.43の両方の材料特性データを表2及び3に示す。
【0182】
実施例3:他の標的密度でLiCOを塩基として使用する水中のポリイミドエアロゲルの調製、及び対応するカーボンエアロゲルへの熱分解
ポリイミドゲル、エアロゲル、及びカーボンエアロゲルを、反応混合物中のモノマー濃度を適宜調整することによって、実施例2と同様に、標的密度(Td)0.02及び0.085で調製した。
【0183】
Td=0.085の場合、p-フェニレンジアミン(5.64g,0.0521mol)を200mLの脱イオン水に溶解した。炭酸リチウム(4.620g,1.2mol過剰)を添加し、同じ水溶液に溶解した。同じ溶液にピロメリット酸二無水物(11.36g,0.0521mol)を懸濁させた。数分後、固体は懸濁液中に残っていなかった。反応の初期段階で、大量のガスの発生(CO)が観察された。粘性の黄色溶液を2日間撹拌した。2日目にレオメーターで粘度を再確認した:126.7cP。2日目には、モノマー繰り返し単位に対して4.3mol過剰の無水酢酸を非常に粘性の高い溶液に加えた(無水酢酸の量:22.87g)。無水酢酸を加えた後の新しい溶液を約30秒間撹拌し、次いで型に分割した。溶液は、1分未満でゲル化した。ゲルは暗色ではあったが、なお透明でゴム状であり、古典的経路によって有機溶媒中で得られたゲルと同様であった。それらの型中でゲルを室温にて24時間エージングした。次いで、これらをエタノールで洗浄し(4回)、超臨界流体COで乾燥させて、対応するモノリシックポリイミドエアロゲルを得た。これらのエアロゲルモノリスをTd0085-Li2-d2と称する。選択されたモノリスを、窒素を流しながら1050℃にて対応するカーボンエアロゲルへ熱分解し、これをC-Td0085-Li2-d2と命名した。Td0085-Li2-d2及びC-Td0085-Li2-d2の両方の材料特性データを表2及び3に示す。
【0184】
Td=0.02の場合、p-フェニレンジアミン(1.33g,0.0123mol)を200mLの脱イオン水に溶解した。炭酸リチウム(1.087g,1.2mol過剰)を添加し、同じ水溶液に溶解した。同じ溶液にピロメリット酸二無水物(2.674g,0.0123mol)を懸濁させた。数分後、固体は懸濁液中に残っていなかった。ガス(CO)の発生は顕著ではなかった。淡黄色の溶液を2日間撹拌した。2日目にレオメーターで粘度を再確認した:2.7cP。2日目には、モノマー繰り返し単位に対して4.3mol過剰の無水酢酸を溶液に加えた(無水酢酸の量:5.399g)。無水酢酸を加えた後の新しい溶液を約30秒間撹拌し、次いで型に分割した。ゲル化は、1時間を超えて起こった。ゲルは、淡黄色、透明、及びゼリー様であった。それらの型中でゲルを室温にて7日間エージングした。その間に、ごく少量の離水が起こり、ゲルを型から取り出すことができた。次いで、これらをエタノールで洗浄し(4回)、超臨界流体COで乾燥させて、対応するモノリシックポリイミドエアロゲルを得た。これらのエアロゲルモノリスをTd002-Li2-d2-age7と称する。選択されたモノリスを、窒素を流しながら1050℃にて対応するカーボンエアロゲルへ熱分解し、これをC-Td002-Li2-d2-age7と命名した。Td002-Li2-d2-age7及びC-Td002-Li2-d2-age7の両方の材料特性データを表2及び3に示す。
【表2】
【表3】
【0185】
実施例4.NaHCOを塩基として使用したTd 0.05g/ccにおける水中のポリイミドエアロゲル、及び対応するカーボンエアロゲルへの熱分解.
p-フェニレンジアミン(3.315g,0.03065mol)を200mLの脱イオン水に溶解した。重炭酸ナトリウム(5.666g,2.2mol過剰)を添加し、同じ水溶液に溶解した。ピロメリット酸二無水物(6.685g,0.03065mol)を同じ溶液に懸濁した。数分後、固体は懸濁液中に残っていなかった。反応の初期段階で、ガスの発生(CO)が観察された。粘性の黄色溶液を3日間撹拌した。アリコートを24時間毎に採取し、レオメーターでアリコートの粘度を測定した。値は、1日目:43.2cP、2日目:44.7cP、及び3日目:44.8cPであった。4日目に、粘性溶液50gを分離し、これに、その量に含まれるモノマー繰り返し単位に対して4.3mol過剰の無水酢酸を添加した(無水酢酸量:3.120g)。得られた溶液を約30秒間撹拌し、次いで型に分割した。溶液は約1分でゲル化した。ゲルは透明ではあったが、淡褐色でゴム状であり、古典的経路によって有機溶媒中で得られたゲルと同等であった。それらの型内でゲルを24時間エージングし、次いで、エタノールで洗浄し(4回)、超臨界流体COで乾燥させた。
【0186】
3日目の粘性の黄色溶液の残りを塩酸水溶液(脱イオン水中の30%濃HCl)に滴下した。ビーズは瞬時に形成された。受容HCl溶液中でビーズを24時間エージングし、次いで水で洗浄した(4回,毎回12時間,毎回1Lの水を使用)。次いで、ビーズを同様にエタノールで洗浄した後、超臨界流体COで乾燥させた。Td005-NaH-d3及びC-Td005-NaH-d3(モノリス及びビーズ)の材料特性データを図3(表4)に示す。
【0187】
実施例5.炭酸アンモニウムを塩基として使用したTd 0.05g/ccにおける水中のポリイミドエアロゲル、及び対応するカーボンエアロゲルへの熱分解.
p-フェニレンジアミン(3.315g,0.03065mol)を200mLの脱イオン水に溶解した。炭酸アンモニウム(3.535g,1.2mol過剰)を添加し、同じ水溶液に溶解した。ピロメリット酸二無水物(6.685g,0.03065mol)を同じ溶液に懸濁した。数分後、固体は懸濁液中に残っていなかった。反応の初期段階で、ガスの発生(CO)が観察された。粘性の黄色がかった溶液を1日間撹拌した。レオメーターで粘度を測定した。値は、205cPであった。次いで、モノマー繰り返し単位に対して4.3mol過剰の無水酢酸を溶液に加えた(無水酢酸の量:13.563g)。無水酢酸を加えた後の新しい溶液を約30秒間撹拌し、次いで型に分割した。溶液は約1分でゲル化した。ゲルは透明ではあったが、淡褐色でゴム状であり、古典的経路によって有機溶媒中で得られたゲルと同様であった。それらの型中でゲルを室温にて24時間エージングした。続いて、これらをエタノールで洗浄し(4回)、超臨界流体COで乾燥させて、対応するモノリシックポリイミドエアロゲルを得た。これらのエアロゲルモノリスをTd005-Am2-d1と称する。選択されたモノリスを、窒素を流しながら1050℃にて対応するカーボンエアロゲルへ熱分解し、これをC-Td005-Am2-d1と命名した。Td005-Am2-d1及びC-Td005-Am2-d1の両方の材料特性データを図4(表5)に示す。
【0188】
実施例6.炭酸グアニジニウムを塩基として使用した標的密度0.05g/ccにおける水中のポリイミドエアロゲル、及び対応するカーボンエアロゲルへの熱分解.
p-フェニレンジアミン(PDA;3.32g,0.0307mol)を200mLの脱イオン水に溶解した。炭酸グアニジニウム(6.63g,1.2mol過剰)を添加し、PDA水溶液に溶解した。ピロメリット酸二無水物(PMDA;6.69g,0.0307mol)を溶液に懸濁した。反応の初期段階でガスの発生(CO)が観察された。固体PMDAは、添加の数分以内に懸濁液中に残留していなかった。溶液は、迅速に(数分以内に)粘性になった。粘性溶液を2つに分け、反応開始の2時間後または3時間後、溶液に無水酢酸(13.48g、モノマー繰り返し単位に対して4.3mol過剰)を加えてゲル化した。無水酢酸を添加した後、溶液を短時間撹拌し、数秒以内にゲル化することが観察された。得られたモノリシックゲルは黄色で不透明であった。モノリシックゲルを室温(25℃)または68℃のいずれかで24時間エージングし、より小さな塊に分割し、エタノールで4回洗浄し、超臨界流体COで乾燥させて、泡状の外観を有する対応するモノリシックエアロゲルを得た。これらのエアロゲルモノリスを、無水酢酸によるゲル化が反応の開始2時間後または3時間後に誘導されたかどうかに応じて、Td005-G2-1.2-2_時間及びTd005-G2-1.2-3_時間と表題した。
【0189】
Td005-G2-1.0-2_時間及びTd005-G2-1.0-3_時間と題する別のエアロゲルモノリスのセットを、モノマーに対して1当量の炭酸グアニジニウムのみを使用したことを除いて、同様に調製した。1当量の炭酸グアニジニウムを使用して調製し、室温(25℃)または68℃で24時間エージングしたエアロゲルモノリスの試料を固体15N NMRで分析した。図5A及び図5Bは、それぞれ、高温及び室温のエージングで得られた有機ゲルのエアロゲルの重ね合わせた固体15N NMRスペクトルである。図5Aに示すように、68℃でエージングするとイミド化が促進され(177ppmにおけるより大きなピーク)、一方、図5Bのスペクトルは、室温でエージングするとイミド基よりもアミドが多くなる(132ppm)ことを示している。さらに、引き続き図5Bに示すように、室温でのエージングで、試料は、74ppmのグアニジニウム陽イオン共鳴によって示されるように、残留ポリアミド酸グアニジニウム塩を含有していた。
【0190】
選択されたモノリスを、窒素を流しながら1050℃で対応するカーボンエアロゲルへ熱分解し、これを接頭辞Cで示した。材料の特性評価データが図6(表6)、及び図7に示されており、これは、炭化された試料のSEM顕微鏡写真である。図7に示すように、高倍率(50,000×)では、泡状の外観を提供するより大きな細孔の壁は、絡み合ったナノファイバーからなる。
【0191】
PDA+PMDAポリアミド酸グアニジニウム塩の同様の溶液(Td=0.05)を24時間反応させた。その時点で、溶液(Td005-G2-1.0-24_時間と称する)は、流動を止めるほど粘性になった。しかしながら、撹拌(攪拌)時に溶液が流れた。この現象をさらに試験するために、異なる量の炭酸グアニジニウム及び異なる標的密度のPDA+PMDAポリアミド酸グアニジニウム塩の溶液を同様に調製した。温度制御ペルチェプレート上の円錐(直径60mm,傾斜2°)及びプレート形状によるレオメトリーを使用して、ポリアミド酸溶液の線形粘弾性応答を測定した(図8)。具体的には、図8は、様々な比率の炭酸塩:PDA(モノマー)での炭酸グアニジニウムから調製された異なる標的密度(Td,Tdはゾル中の全固体(PDA+PMDA)濃度(g/cm)を指す)でのポリアミド酸グアニジニウム溶液の振動振幅掃引についての振動応力に対する貯蔵弾性率及び損失弾性率のグラフ表示である。図8に示すように、振動モード及び低剪断応力において、一部のポリアミド酸グアニジニウム溶液は、振動応力に依存しない貯蔵弾性率(G’)、及び損失弾性率(G’’)を含む固体様の挙動(G’>G’’)を示す。しかしながら、降伏応力と呼ばれる臨界応力を超えると、貯蔵弾性率G’が急激に低下し、システムが流動する。ポリアミド酸グアニジニウム濃度を減少させると、ポリマーネットワークがより分散するにつれて、プラトー弾性率がより低くなり、降伏応力がより低くなった。引き続き図8に示すように、2%の固形分を有する溶液(Td=0.2)に対して十分に低いポリマー濃度では、ポリマー溶液はもはや浸出ゲルを形成せず、全ての観察された応力で流動する。さらに、ポリアミド酸グアニジニウム濃度が臨界ゲル濃度をわずかに上回る一部の溶液は、ポリマーを低い分子量に限定した場合、ゲル化しないことが観察されている。ポリアミド酸グアニジニウムの濃度に加えて、降伏応力は温度にも感受性であり、図9に示すように、温度が低いほど流動を開始するためにより高い臨界応力が必要になる。
【0192】
実験が終了すると、溶液はすぐに固体の挙動に戻った。降伏応力を下回り、その後上回る剪断振幅値のサイクルは、図10に示すように、固体(tan(δ)<1)から液体様(tan(δ)>1)粘弾性応答への迅速な再現可能な切り替えを示しており、tan(δ)はG’’/G’比である。図10に示すように、ポリアミド酸グアニジニウム溶液(Td=0.05;モノマーとグアニジニウムカーボネートとの比1:2)の場合、材料は、剪断速度の増加に伴って剪断減粘を受ける(チキソトロピー)。
【0193】
図11は、様々なポリアミド酸水溶液の定常状態の回転スイープについての剪断速度対粘度のグラフ表示である。図11に示すように、炭酸グアニジニウム系ポリアミド酸溶液について、剪断速度の増加に伴う粘度の減少(剪断減粘)が観察された(チキソトロピー)。引き続き図11に示すように、一価の金属陽イオンNa(NaCO,Td=0.5)で形成されるポリアミド酸水溶液については、チキソトロピック挙動は観察されない。Li、K、及びアンモニウムのような他の一価の金属陽イオンもまた、対応するポリアミド酸溶液のチキソトロピック挙動を生じなかった(データは示さず)。多価陽イオンを含有する溶液にポリアミド酸溶液を曝露することによって形成されたゲルもまた、チキソトロピック粘弾性応答を示さなかったが、それらはむしろ、ゲルを形成した(データは示さず)。この点に関して、理論に拘束されることを望むものではないが、チキソトロピック挙動には、複数のポリマー鎖(例えば、グアニジニウム)と動的に相互作用(例えば、水素結合を介して)することができる陽イオンが必要であると考えられる。
【0194】
実施例7.塩基として他の水溶性炭酸塩を使用する水中のポリイミドエアロゲル
上記の具体的な実施例に含まれていない他の一般的な水溶性炭酸塩としては、重炭酸リチウム(LiHCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、重炭酸カリウム(KHCO)、及び重炭酸アンモニウム(NHHCO)が挙げられる。これらの各々は、上記実施例の手順に従ってポリアミド酸水溶液を形成した。
【0195】
実施例8.塩基として炭酸ナトリウムを用いて生成されるポリアミド酸塩の分子量測定
前述の実施例に従って(すなわち、水溶液中のPDA-PMDAから)、塩基として炭酸ナトリウムを使用してポリアミド酸ナトリウム塩溶液を調製した。参照ポリアミド酸塩溶液を、従来のプロセス(溶媒としてジメチルホルムアミド、塩基としてトリエチルアミン、沈殿前及びアセトンによる洗浄)ならびに以前の水性プロセス(溶媒として水、塩基としてトリエチルアミン)を用いて調製した。沈殿したポリマーを水及びNaCO(1.2mol当量のNaCO:モノマーを含む5%固体PAA)溶液に溶解した。既知の分子量を有する以前のポリアミド酸塩を分子量標準として用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、ポリアミド酸ポリマーの分子量について、参照及び本発明のポリアミド酸溶液を分析した(図12)。0.2M NaSOを用いてポリアミド酸を水中に溶出し、以前に測定された分子量を有するポリアミド酸ポリマーを用いて、ピーク溶出時間から分子量を計算した。図12に示すように、開示される炭酸塩/水プロセスの生成物(黒い実線)は、参照TEA水プロセス(灰色の実線)と比較してより早い溶出時間(より高い分子量)を示し、従来の方法に従ってDMF中で調製したより高い分子量の試料と重複する分子量ピーク分布(黒い点線)を示した。一般に、GPC結果では、溶媒ベースの従来の方法及び開示される本発明の炭酸塩を塩基とする方法の生成物について、分子量のピーク及び分布が同等であり、両方法に由来する生成物に対する分子量のピークが約20,000~30,000g/molであることが示された。対照的に、以前の水性プロセス(溶媒として水、塩基としてトリエチルアミン)の生成物についてのGPC結果では、非常に低い生成物の分子量(2,000~8,000g/mol)が示された。
【0196】
溶液のレオロジー分析を行った(粘度測定;1rad/秒での連続流で測定した)。具体的には、上記の3種のポリアミド酸ナトリウム塩溶液(従来のDMF法、再溶解;以前の水-TEA法;及び開示される水-炭酸塩法)の粘度を測定し、GPCによって測定された各々の分子量に対してプロットした(図13)。図13に示すように、等価の溶液(同じポリマー濃度及び同じNaCO濃度)の粘度からは、べき法則の関係が示され、GPC分析結果が確認された。
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
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図10
図11
図12
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【国際調査報告】